1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十三年五月二十八日(月曜日)
午後零時一分開議
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○議事日程 第二十六号
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平成十三年五月二十八日
正午 本会議
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第一 確定給付企業年金法案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/0
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001・井上裕
○議長(井上裕君) これより会議を開きます。
日程第一 確定給付企業年金法案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。坂口厚生労働大臣。
〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/1
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002・坂口力
○国務大臣(坂口力君) ただいま議題となりました確定給付企業年金法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
我が国は、少子高齢化の進展、産業構造の変化等、社会経済情勢が大きく変化しており、公的年金に上乗せして給付を行う年金制度につきましても、このような変化に対応することが要請されております。
この法律案は、確定給付型の企業年金について、受給権保護等を図る観点から、労使の自主性を尊重しつつ、統一的な枠組みのもとに制度の整備を行うものであり、これにより、公的年金を土台としつつ、確定拠出年金と相まって、国民の自主的な努力を支援する仕組みを整備するものであります。
以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、確定給付企業年金は、事業主が、労使で合意した規約に基づき、信託会社、生命保険会社等と年金資金を積み立てる契約を締結するか、または、事業主とは別法人の企業年金基金を設立することにより実施することとしております。
第二に、給付は、加入者が老齢になった場合及び脱退した場合に支給するものとしているほか、障害を負った場合または死亡した場合にも支給することができることとしております。
第三に、加入者の受給権保護等を図る観点から、将来にわたって約束した給付が支給できるよう、約束した給付に見合う積立金を積み立てなければならないものとするとともに、企業年金の管理または運営にかかわる者の責任や行為準則を明確化するほか、年金規約の内容を従業員に周知し、企業年金の実施状況について加入者に情報開示することとしております。
第四に、確定給付企業年金相互や、厚生年金基金、確定拠出年金との間での移行ができることとしております。
最後に、確定給付企業年金に係る給付、掛金及び積立金について、各税法で定めるところにより、税制上必要な措置を講じることとしております。
なお、この法律の施行日は、一部の事項を除き、平成十四年四月一日としております。
政府といたしましては、以上を内容とする法案を提出した次第でありますが、衆議院におきまして、確定給付企業年金の業務概況については、事業主等が加入者に周知させなければならないこととしていたところを、受給者等にも、できる限り同様の措置を講ずるよう努めるものとする修正が行われたところでございます。
以上がこの法律案の趣旨でございますので、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/2
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003・井上裕
○議長(井上裕君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。木俣佳丈君。
〔木俣佳丈君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/3
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004・木俣佳丈
○木俣佳丈君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました確定給付企業年金法案に対し、厚生労働大臣、経済財政政策担当大臣及び財務大臣に質問をいたします。
質問に入ります前に、ハンセン病問題について一言申し上げたいと思います。
先週水曜日、熊本地裁の原告勝訴の判決に対し、政府は控訴断念を決定いたしました。これは、平成八年二月、我が党菅幹事長が厚生大臣時代、エイズ訴訟において行った謝罪にまさるとも劣らない英断であります。小泉総理の御決断並びにそれを支えられた坂口大臣を初めとする関係閣僚の決断に心から敬意を表します。(拍手)
今後、判決の趣旨にのっとり、国会、内閣ともに率直に反省し、誠実な対応をすべきだと考えております。
それでは、質問に入ります。
そもそも年金制度とは、老後の生活を保障するものでなければならず、私は簡素、公平、安心が原則だと考えます。御近所の奥さんも、老後は年金だけが頼りなのよ、それだけは守ってくださいねと切実な願いが一般的なのです。民主党は、真に豊かな老後を迎えられるよう、ナショナルミニマムとしての基礎年金を税方式にすることを中心とした年金制度の抜本改正を提唱いたしてまいりました。
しかしながら、政府は、ここ二十年来、年金改革のたびに保険料は引き上げ、給付水準は引き下げる、さらに支給年齢は先延ばしと、まさに逃げ水のような年金改革を行い、国民の不安と不信を増長させてきたのであります。
これは、昨年、与党三党が強行採決までして成立させた改正公的年金制度で、給付水準五%カット、支給年齢五歳引き上げなど、大改悪をしたことでも明らかであり、この改悪によって、我々三十代では一生の間に受け取る年金の総額を改正前に比べ何と一千数百万円も減額されたのであります。この改革で坂口大臣は安心が増したと思いますか。まさかこのことが小泉総理の言う将来のために我慢をする米百俵のことではないでしょうね。
政府は各種の景気対策を掲げますが、個人消費拡大が景気回復の絶対条件であると考えたとき、こうした公的年金への不安と不信によって老後を案ずる消費者の消費マインドを冷やすことは、全くナンセンスです。
小泉総理は、所信表明の中で、構造改革なくして景気回復なしと述べられました。しかし、四度も厚生大臣を歴任されながら、年金制度に対し抜本改正、すなわち年金制度の構造改革を行うことができなかった小泉総理に一体どんな抜本改正ができるというのでしょうか。政府は今、財政論に終始した小手先の改正ではなく、長期のスパンで見た老後所得のトータルプラン、将来の姿を国民に提示する義務があるのです。
そこで、私はまず公的年金のあり方についてお伺いします。
現在、国民年金は、四十年加入し毎月保険料を納めても何と月額六万七千十七円にしかなりません。これはすなわち、生活保護を受ける最低生活保障水準よりも低いのでございます。
先日の厚生労働省発表によれば、未納者、未加入者、免除者の合計は何と八百七万人にも及び、国民年金第一号被保険者の三六%が保険料を払っておりません。大臣、これで安心なのでしょうか。その一方で、政府への信頼がないため、超低金利の中でも預金の額はふえているのであります。我が党は、老後の安心の柱である基礎年金について、直ちに国庫負担を二分の一へ引き上げ、その後、速やかに全額税方式へ転換を図ることで充実させるべきであると提案しております。
内閣総理大臣の諮問機関である経済戦略会議においては、平成十一年の答申の中で、基礎年金については、「将来的には税方式に移行することが望ましい。」としており、民主党と全く同じ主張をしております。
竹中大臣、あなたはこの経済戦略会議のメンバーであったかと思いますが、大臣がもし答申どおり税方式が望ましいと考えるのであれば、民主党としてはこれを大いに歓迎するところでございます。
ところが、これは同時に、社会保険方式を維持すべきであるとお考えの坂口大臣と見解が全く異なることにもなります。残念ながら、これでは内閣不一致であると指摘せざるを得ません。
基礎年金のあり方について、社会保険方式がよいとお考えなのか、それとも税方式がいいとお考えなのか、坂口大臣に御見解を伺うとともに、いつもにこにこ歯切れよくお話をされる竹中大臣の明快な御説明をよろしくお願い申し上げます。
次に、企業年金と厚生年金の関係についてお尋ねします。
新しい企業年金制度は、受給権保護などを中心にいかにも美しいフレーズを使い、一見、大進歩のように見えますが、支払い保証制度、または税制などを見てみると、全く不備が多く、まがいものであると思います。これはまるで、私の大学時代に友人のA君が持っていたスニーカーのアディダスならぬアビバスのようなにせものブランドのようでございます。
そこで、お伺いいたしますが、今回の法案で政府は、企業年金の将来像を、二階部分である厚生年金に純粋に上乗せする三階部分として企業年金を充実させるつもりなのでしょうか。それとも、小泉総理が所信表明の中で述べられた「民間にできることは民間に」という方針で、戦略会議の主張する二階部分の民営化の足がかりとして発展させていくおつもりなのでしょうか。坂口、竹中両大臣、将来像を示してください。
次に、新企業年金制度の導入過程について、坂口大臣にお尋ねいたします。
我が国の企業年金は、バブル経済崩壊による経済情勢の悪化などで、年金資産に積み立て不足が生じております。平成十年度末現在、積み立て不足となっている厚生年金基金の数は約一千三百基金となっており、全体の七割を占めております。これらの基金の積み立て不足の総額は数兆円とも言われております。現に、ここ五年の間に八十四もの厚生年金基金が解散に追い込まれました。
さらに、新会計基準の導入により、これら企業内における隠れ借金、隠れ債務は企業会計上明らかになります。その上、年金債務は企業収支を悪化させ、競争力をそぐことになっているのです。そこで慌てた企業と政府が、受給権保護という聞こえのよい理念をもって、企業内の年金債務に対処する方便として新企業年金制度を急遽導入したものではないか、私はそんな気がしてなりません。御意見が相違しましたら、坂口大臣、お答えください。
次に、支払い保証制度について伺います。
今回、支払い保証制度は検討課題として、その創設が見送られました。ところが、諸外国では、アメリカのスチュードベイカー事件、そしてイギリスのマックスウェル事件と、受給権が保護されていなかったために年金支給に問題が生じ、これらの事件を契機として支払い保証制度が創設されたと聞いております。こうした諸外国の先例があるにもかかわらず、支払い保証制度の創設を見送ったということは、政府は事件が起きるまで年金権を保護しないつもりだと言われても仕方ないのではありませんか。
政府は、支払い保証制度を導入しない理由として、企業が悪用し、モラルハザードを引き起こす可能性があることを挙げておりますが、しかし、チェック機能を強化し、モラルハザードが起こらない支払い保証制度の創設は、私は可能であると思います。なぜなら、現在でも厚生年金基金には連合会による通算制度や支払い保証制度があるからであります。
坂口大臣、もっと民の力を信用しましょう。日本には厚生年金基金によき先例があるんです。どうしてこれを応用させて、新しい企業年金制度にも取り入れることができないんですか。坂口大臣、答えてください。
次に、適格退職年金の新制度への移行措置についてお尋ねします。
適格退職年金は、中小企業から大企業まで退職金の積み立てとして多くの企業で導入され、現在一千万人が加入しております。特に、中小企業においては、手続が簡素で掛金も損金算入されるなど、退職金の積み立てとして使い勝手のよい制度となっておりますが、政府案では、今後十年で廃止し、新制度など他の企業年金へ移行させることとしております。しかし、新制度の実施に当たっては財政検証など新たなコストが発生するため、多くの中小企業は新制度を採用しないばかりか、他の企業年金制度への移行もせずに適格年金を単純にやめてしまうのではないかと心配しております。
中小企業が本当に心配であります。中小企業が他制度に移行しやすい環境を政府はどのように整備していくおつもりなのか、坂口大臣、お答えいただきたいと思います。
次に、代行部分の返上についてお尋ねいたします。
今回の改正では、政府は、代行部分のない企業年金を新設し、厚生年金基金からの移行を認めるとともに、代行返上の際に一定の条件のもとに現物による返還を認めております。その理由として、政府は、国への納付を現金に限った場合、大量の株が市場で売られ、株式市場に大きな打撃を与える可能性があるからだと説明しております。
しかしながら、返上された株式等は厚生年金本体の資産となるのでありますから、もし仮に将来返上された株式等の資産価値が下がった場合に一番影響を受け、またその穴埋めをしなければならないのは厚生年金本体であります。
資産の返上が時価評価で行われるとはいえ、企業は当然、将来的に運用益が得にくい資産を現物で返上しようとすることが予想されます。現物により代行部分が返上された場合、坂口大臣は公的年金にどのような影響を与えるとお考えなのでしょうか。また、厚生年金本体への影響を考慮した場合、こうした現物返上のルールを定めなければ公平は保てないと私は考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか、お答えください。
次に、企業年金税制についてお尋ねします。
今回の企業年金制度改正で、企業年金税制は、拠出時について、事業主が拠出する掛金は全額損金算入されるものの、加入者本人が拠出する掛金は五万円を上限とする生命保険料控除の対象となっております。それ以上は課税対象となり、厚生年金基金が全額控除を受けられることに比べますと大きな後退でございます。さらに、運用時には特別法人税、給付時には所得税が課税されるのです。現在、特別法人税は平成十四年度まで凍結されることになっておりますが、悪税中の悪税であるこの特別法人税は廃止すべきであると考えますが、坂口大臣、塩川大臣の御所見をお伺いします。
企業が将来従業員に支払う年金額を充実させることは重要であります。こうしたことを考えれば、拠出、運用、給付すべてに課税するということは、本来の年金の趣旨に全く反します。このような税制に対し、私はどうしても矛盾を感じざるを得ません。私は、年金税制は給付段階のみの課税とすべきと考えますが、坂口、塩川両大臣の御見解を伺います。
用意しました質問は以上でありますが、年金制度のあり方について、最後に一言だけ申し添えたいと考えます。
老後の所得保障を行う年金制度は社会保障の幹であります。この年金制度を充実発展させることは二十一世紀においても最重要課題であると考えます。現在の年金制度は、イソップ童話の「アリとキリギリス」に例えますれば、自分はアリになるんだと決意をし、冬のために蓄えをしようと努力を続けてきたアリが、気がついてみると老後には急にキリギリスになってしまったというような不安な国にしないよう、政府にはまじめに働く国民のために蓄えはきちんと保障する義務があることを再度指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/4
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005・坂口力
○国務大臣(坂口力君) 木俣議員にお答えを申し上げたいと思います。
九問ちょうだいをいたしました。
一番最初は、昨年の年金法改正についてのお尋ねでございました。
昨年の改正は、一つには、将来の世代の過重な負担を防ぐということが第一。第二には、確実な給付を約束するというのが第二。そして第三には、制度の長期的な安定を図るためというのが第三。この三つを中心にして改正が行われたところでございます。
この改正によりまして、将来の保険料負担を年収の二割程度にとどめることにより過重な負担を防ぐこととし、このため、将来に向けて給付総額の伸びを調整いたしましたが、年金を受け始める時点で現役世代の手取り収入の約六割の水準を保障しますとともに、将来の保険料負担を軽減されており、生涯の給付総額の減少のみをもって不安を助長したとの御指摘は当たらないのではないかというふうに思っております。
年金制度につきましては、次期財政再計算を平成十六年までに行うこととされておりますが、国民の老後を支える公的年金の役割を将来にわたって果たしていくことができますように、世代間の給付と負担の均衡を図りまして、お互いが支え合う、持続可能な安心できる制度を再構築していかなければならないと考えております。
それから、公的年金のあり方についてお尋ねがございました。
基礎年金につきまして、免除者を含めて国民年金第一号被保険者の三六%が保険料を払っていないとの御指摘がございました。
低所得等によります保険料納付を免除された者を法律上の義務を果たしていない未納者、未加入者と同一に論じることは適当でないというふうに思っておりますが、給付に必要な費用を二十歳から五十九歳までの全国民で支える枠組みで考えますと、未納・未加入者の割合は全体で見れば五%程度でございます。
社会保険方式で運営している現在の公的年金制度がこのままで立ち行かない状況にあるとは考えておりませんが、しかし、未納者を削減するための努力を一層高めなければならないことは御指摘のとおりでございまして、我々も懸命にこれは努力をしなければならないと思っているところでございます。
また、御提案の基礎年金を全額税方式とすることにつきましては、これは国民が自助と自律の精神に基づいて老後に備えて拠出をするという考え方に立ちますと、一番中心になりますのはやはり社会保険方式を選択することではないかというふうに思っております。しかし、社会保険方式だけということを我々もしているわけではございませんで、現在、国庫負担は三分の一でございますが、これを将来二分の一まで引き上げていくということも考えているわけでございまして、そうしたベストミックスでいきたいというふうに思っているところでございます。
三番目は、企業年金の将来像についてのお尋ねがありました。
老後の所得保障の基本は高齢者の生活の基本部分を終身にわたり確実に支える公的年金であり、企業年金などの私的年金は、公的年金を基盤とした上で、多様化する老後のニーズにこたえて、より豊かな老後生活を実現するという役割を担っているものというふうに考えているところでございます。御指摘いただきましたように、二階部分の民営化の足がかりにするという考えはございません。
それから、新企業年金制度の導入経過についてのお尋ねがございました。
現在の企業年金におきましては、企業倒産の際に、年金資産が十分確保されていないなどの事例がたくさん出ておりますことから、かねてより受給権保護のための制度整備が課題となっておりました。
このため、今回の法案におきましては、確定給付型の企業年金におきましては、積立基準の設定、それから受託者責任の明確化、情報開示など、受給権保護を図るための措置を盛り込んでおります。これまでの課題につきましての答えを出したものであり、新会計基準への対応などを目的とするものではございません。
なお、数兆円の積み立て不足との御指摘がございましたけれども、平成十年度末現在、積み立て不足のあります厚生年金基金における不足の総額は、約一兆九千億円でございます。
それから、支払い保証制度についてお尋ねがございました。
今回の法律に基づきます新たな企業年金としましては、積み立て義務のあります厚生年金基金から移行しますグループと、それからもう一つは、積み立て義務のない適格退職年金から移行しますグループと、両方があるわけでございます。おのおのの企業年金の積み立て状況にかなりの違いが生じておりますことから、現時点でこの支払い保証制度を創設することは公平の観点からも困難でありまして、法案に盛り込むことができなかったわけでございます。
また、これまでの検討でございますが、支払い保証制度の導入は、先ほども御指摘がございましたように、積み立て不足を放置するようなモラルハザードを招くのではないかという、そうした議論のあることも事実でございます。
しかし、いずれにいたしましても、支払い保証制度につきましては、委員から御指摘のように、民の力を信頼いたしまして、引き続き検討すべき課題であると認識しているところでございます。
適格退職年金の新制度への移行措置についてのお尋ねがありました。
適格退職年金につきましては、基本的には積立基準など受給権保護の措置が整備された新たな企業年金に移行していただくことを想定しております。
このため、円滑な移行が図られるように、十年間という移行期間を設けることといたしておりますが、積み立て義務でありますとか給付設計の面で一定の経過措置を講じることといたしました。特に、中小企業に対する配慮として、簡易な財政再計算等の方法を示すことにより、負担の軽減を図ることといたしております。
さらに、移行先につきましては、新制度への移行のほかに、確定拠出年金でありますとか、中小企業退職金共済制度への移行も可能といたしております。
適格退職年金からの移行に当たりまして、企業に過重な負担がかからないよう、さまざまの配慮を行っているところであります。円滑な移行が図られるものと考えております。
それから、現物資産に対する代行部分の返上についてのお尋ねがございました。
現物資産によります代行返上を認めるに当たりまして、その資産について、公的年金の積立金の運用方針に沿ったものに限定をいたしました。十分なチェックを行った上で納付を認めることとしております。これにより公的年金の財政が不利益をこうむることはないと考えております。
具体的には、法案において、現物資産による代行返上の対象資産につきましては、厚生年金本体の運用に沿うよう、市場全体の動きをあらわす指標に連動するような、各種の銘柄を組み合わせたものでなければならない旨を定めているところでございます。
特別法人税につきましてのお尋ねがございました。
特別法人税につきましては、新企業年金の積立金に対しまして課税されることとなっておりますが、平成十四年までその課税は停止されております。今後、政府税制調査会等の各方面で年金課税のあり方に関する総合的な検討が行われるものと承知をいたしております。特別法人税の取り扱いにつきましては、その検討状況を十分踏まえつつ対応してまいりたいと考えております。
最後に、年金税制は給付段階のみの課税とすべきではないかとのお尋ねがございました。
まず申し上げたいことは、現在の企業年金税制では、拠出につきましては、そのほとんどが事業主の拠出でありまして、これは損金算入されております。また、給付につきましては、公的年金等控除が適用されまして、実質的には課税額は少なくなっております等のことから、すべての段階で課税と言えるものではございません。
いずれにいたしましても、年金税制全体のあり方につきまして、今後、政府税制調査会等の各方面において拠出時、運用時、それから給付時を通じた総合的な検討が行われるものと思います。厚生労働省といたしましては、各方面における検討状況を踏まえまして対応をしていく考えでございます。
以上、お答えを申し上げました。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/5
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006・竹中平蔵
○国務大臣(竹中平蔵君) 木俣先生から二つの御質問をいただいていたと思います。
一つ目は、保険方式、税方式の話でありますけれども、たしか二年半ぐらい前に経済戦略会議の答申を私たち出しましたときに、民主党の皆さんから大変高い評価をいただいたということを私もよく記憶しております。
あそこで議論された重要な点は、本質的な問題というのは、年金には保険原理の部分と福祉原理の部分があるだろうと。保険原理の部分については、これは積み立てということになりますからこれは保険だろう、福祉原理については、これは一種の世代間の移転といいますか賦課の方式であるから税の方がすっきりするのではないだろうかと、そういう主張だったというふうに記憶しています。論理的な区分としては、それは経済学の分野では割と一般的に議論されていることだというふうに私は今も認識しています。
ただ、現実問題として世界の国を見渡しますと、この福祉原理の部分について税にしているか保険にしているかということを見てみると、これはどっちもありだというのが世界の現実だと思います。それは、国民の負担の意識の問題でありますとか、先ほど坂口大臣からお話のありましたように、別途国の方からどれだけ補助しているかということのベストミックスの中で、さらには歴史的な要因の中で決まってくる問題だと思いますので、これは重要な問題ではありますけれども、どちらでなければいけないという問題ではないというのが基本的な私の認識であります。
いずれにしても、より本質的な問題というのは、先ほど言いましたように、保険原理の部分と福祉原理の部分の考え方に立って、制度そのものを持続可能な、サステーナブルなものにしていくということであるというふうに思っておりますので、そういう方向での改革が今後も進むというふうに考えています。
二問目の問題は、これも先ほど坂口大臣からのお答えがありましたけれども、二階部分である厚生年金の民営化とはかかわりがあるかということに関しては、これはかかわりがないというふうに私も認識しています。
年金制度の改革という観点からは、先ほど坂口大臣からお話がありましたのですけれども、経済財政担当の立場からは、マクロ的に見てやはり今大変重要なのは、国民の健全な貯蓄が、民間部門の健全な貯蓄が健全な形でリスクマネーという形でマーケットに流れるということでありますので、今回の制度はその点では大変重要である。スウェーデンはまさにこのやり方で経済活性化の糸口をつかんだというふうに考えておりますので、こういう方向で議論がされていくということを担当の大臣としても期待をしております。(拍手)
〔国務大臣塩川正十郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/6
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007・塩川正十郎
○国務大臣(塩川正十郎君) 木俣さんの御質問にお答えいたします。
特別法人税についてお尋ねでございましたんですが、現在の低金利の状態等を踏まえまして、臨時的な措置として、現在は課税を停止しておるところでございます。
しかし、特別法人税は、従業員の年金のために事業主が負担する掛金等について、その支出時に従業員に対する所得課税を行わず、また年金受給時まで課税を繰り延べること等から、その遅延利息相当分の負担を求めるという意味において課税するものであり、課税の公平の観点から必要なものと考えております。
また、年金の税制についてのお尋ねがございましたんですが、年金に係る所得につきましては、公的年金等控除や老齢者控除等により、課税ベースからほとんど除かれており、掛金の拠出段階においても、事業主負担分については給与課税が行われず、本人負担分についても社会保険料控除等により所得控除がなされております。なお、運用段階においても、現在、特別法人税の課税が停止されておるところでございます。
このようなことから、我が国の年金に係る税負担は、拠出段階から給付段階を通じて実質的に課税がなされておらず、主要国と比べても極めて低い段階となっております。
いずれにいたしましても、この諸制度の改正並びに諸段階におきますところの課税の検討をする必要があると思っておりますので、その際に検討する項目は多々あると信じております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/7
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008・井上裕
○議長(井上裕君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115115254X02620010528/8
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