1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十六年三月十八日(木曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 山本 保君
理 事
松村 龍二君
吉田 博美君
千葉 景子君
木庭健太郎君
委 員
青木 幹雄君
岩井 國臣君
鴻池 祥肇君
陣内 孝雄君
野間 赳君
今泉 昭君
江田 五月君
角田 義一君
堀 利和君
井上 哲士君
国務大臣
法務大臣 野沢 太三君
副大臣
法務副大臣 実川 幸夫君
大臣政務官
法務大臣政務官 中野 清君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局総務局長 中山 隆夫君
事務局側
常任委員会専門
員 加藤 一宇君
政府参考人
法務大臣官房司
法法制部長 寺田 逸郎君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/0
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001・山本保
○委員長(山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び裁判所法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/1
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002・山本保
○委員長(山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/2
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003・山本保
○委員長(山本保君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び裁判所法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/3
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004・吉田博美
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
平成十三年の四月の司法制度改革審議会において、裁判所の人的体制の充実について最高裁から、事件数が現状のまま推移するとして、今後十年間で現状の審理期間を半減させる観点からシミュレーションをしたところ、約五百人の増員が必要である、また事件数が増えれば更に三百人、四百人の増員が必要であるという報告がされました。裁判迅速化の体制整備のためにも裁判官の大幅増員が必要であると思われますが、その点を踏まえ、幾つかの質問をさせていただきます。
まず、大臣にお伺いいたしますが、この両法案はいずれも司法の人的基盤を充実することにより裁判の迅速化等を期待する国民の声を反映したものと思われますが、大臣は、人的基盤の重要性についてどのように考えておられるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/4
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005・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 委員御指摘のとおり、国民の期待にこたえる司法を構築するためには司法の人的基盤を充実強化することが必要不可欠であると認識しております。そのためには、法曹人口を現状より大幅に増加させると同時に、裁判所の職員、検察庁職員などをより一層充実強化して体制を整えることが必要であると考えております。
現在、司法制度改革推進計画に従いまして、司法試験合格者の増加による法曹人口の大幅な増加に加えまして、裁判所等の人的体制の充実等の必要な体制の整備を行っているところでありますが、今後もその時々における事件数等を考慮いたしまして、関係省庁とも御相談しつつ、裁判官等の増員を含めた必要な体制の整備を行ってまいりたいと考えております。今年度も手始めに相当な手配をさせていただきました。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/5
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006・吉田博美
○吉田博美君 次に、裁判所職員定員法についてお伺いしますが、最近、裁判所に持ち込まれる事件は、件数が大幅に増えているとともに複雑かつ多様化していると聞いております。その動向について説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/6
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007・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。
事件の類型別に御説明申し上げたいと思います。
まず、民事訴訟事件でございますが、地方裁判所に提起されております民事訴訟事件の新受事件数は、バブル経済崩壊後の平成三年以降増加基調にあり、ここ数年は過去最高水準域を上下しているという状況でございます。しかも、内容的にも、医事関係訴訟等のように専門的な知見が必要な専門訴訟に代表される複雑困難な事件が増加してきております。
加えて、知的財産関係事件全体が増加傾向にあることも特徴で、特に東京高裁が専属管轄とされる審決取消し訴訟事件が急増しております。また、先般の民訴法改正、さらには、今後も予定されておるようでございますが、知的財産関係事件が専属管轄化され、紛争解決体制の整備が図られるということにより、裁判所への提訴が促進され、事件数が更に増加するということが予測されるところでございます。
次に、倒産関係事件でございますが、長引く景気の低迷を反映し、倒産事件は激増しており、特に破産事件の新受事件数は平成十五年には二十五万件を突破し、過去最高値を記録いたしました。生活苦からの多重債務者や住宅ローンの支払に行き詰まった債務者等の個人の自己破産事件が激増しているのに加え、不況の長期化を反映して、企業倒産事件の大規模化、複雑化も依然として目立っております。さらに、これは破産事件だけではなく、いわゆる簡裁における特定調停というところの激増にもつながっているところでございます。
次に、刑訴事件でございます、刑事訴訟事件でございますが、地方裁判所に提起されます刑事訴訟事件は平成四年以降増加傾向にあり、平成十四年には十万件を超え、平成十五年には約十一万二千件に達しております。殺人、強盗殺人等の凶悪事件、組織犯罪、外国人事件等の複雑困難な事件が増加しているのが特徴でございます。
最後に、家庭事件でございますが、家事事件はここ十年間一貫して増加傾向にございます。子の監護に関する事件、あるいは夫婦間の調整の事件、成年後見事件等でございますが、特にこの数年は史上最高値を更新し続けているという状況であります。
平成十二年の四月にスタートいたしました成年後見制度は、旧制度であります禁治産、準禁治産という制度当時に比べ、四倍以上の事件の申立てがありますし、また、少年事件については、事件数は長期的に見れば減少傾向にありますものの、動機の理解が困難な凶悪事件が増えている状況にあるほか、社会的な関心を集める重大な事件など、内容的にも極めて難しいものが増えているのが実情でございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/7
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008・吉田博美
○吉田博美君 昨年成立しました裁判迅速化法には、すべての第一審の事件は二年以内のできるだけ短い時間内に処理することと明記されていますが、そのための体制整備が必要と思われますが、今回の改正案を含め、今後の増員計画はどうなっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/8
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009・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 先ほど委員が御紹介いただきましたとおり、平成十三年四月に、例えば民事訴訟事件で証人等を調べますとその平均審理期間は十九・三か月でありましたので、この審理期間を半減するということを目標に試算をして出したものが五百人という数字でございました。しかし、その後、迅速化法が成立し、すべての事件を二年ということにいたしますと、私どもの目標はあくまでも平均審理期間がそこに落ち着くというところでございましたから、更に人員増が必要であるということになろうと思っております。
この迅速化法に基づきましては、現在、最高裁の事務総局に検証委員会という外部の方も入っていただいた委員会を設け、そこで、どの観点からまずその検証を始めてみるべきかということを今決めているところでございまして、データの収集に取り掛かるという段階に入っております。
これは十年のスパンできちんとした答えを出さなければならないというふうに私ども考えておりますが、基本は裁判全体についての基盤整備法というふうに考えておりますので、その検証結果等も待って、それに増員が必要であるということになればそこに反映をさせていきたいということを考えているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/9
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010・吉田博美
○吉田博美君 かなり人数が足らないわけでございますが、いわゆるオウム裁判が長期化したことで裁判に対する国民の信頼を失うのではないかとマスコミ等でも取り上げられています。
長期化している裁判の現況とその対応策はどのようになっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/10
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011・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) オウム事件が長期化したことにつきましては裁判所としてもじくじたるところがございますし、また、その問題点については様々な分析が可能かと思っております。
ただ、刑事事件全体で申し上げますと、その平均審理期間は実は第一審においては三・二か月というところでございます。二年を超えて裁判所に係属している事件、これは毎年減少傾向を示しておりまして、平成十四年における二年を超えた事件は二百三十四件で、全既済事件、すべてを終えた事件のうちの〇・三%程度にすぎないというのが実情でございます。昭和四十九年には五千五百件ぐらいそういうものがございましたから、それに比べると相当格段に減ったということが言えようかと思っております。
しかしながら、一部の事件では依然として審理が長期化しており、そして、それらのものの中に重大事件あるいは社会的な関心の高い事件が相当数含まれているということもあって、国民に対しては裁判が遅いのではないかという印象を与えているというところでございます。
しかし、そういうことになりますと、裁判そのものに対する信頼が揺らぐことになりかねない、今御指摘のとおりでございますので、こういったところから、裁判所としても、弁護士会あるいは検察庁とともに協議をしながら、できる限り早く迅速化できるようにということで検討を進めてまいりました。
迅速化検証、迅速化法に基づく検証は先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、通常でありますと、毎年、第一審強化地方協議会というのがございまして、これは法曹三者で構成されているものであり、そういう中でこういった審理遅延の問題というものも扱うようにしております。特に、長期化が予想される事件につきましては、これまでも検察官や弁護人の協力を得ながら事前準備を徹底して、早期に争点を整理し、審理計画を策定した上、開廷間隔、これはある期日とある期日の間隔でございますが、それをできる限り短くして、争点に重点を置いた無駄のない証拠調べを行うことによって適正迅速な裁判に努めているというところでございます。その成果が先ほどの〇・三%というところにも表れてきているところでございますけれども、今後ともこれを更に徹底していきたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/11
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012・吉田博美
○吉田博美君 〇・三%をゼロに限りなく近づけていただきたいと思っているところでございますが、先ほども答弁の中でございましたが、知的財産関係でございますけれども、知的財産関係事件については、その適正迅速な処理を求める声が大変強いようでございますが、知的財産関係事件の発生件数の推移やその審理期間はどのようになっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/12
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013・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 全国の裁判所におきます知的財産関係事件の新受件数は、平成五年当時は五百九十七件でございました。それが平成十五年は、これはまだ速報値でございますけれども、八百九十四件と、過去最高となってきております。
一方、その間の審理期間について見ますると、平成五年には約三十か月でございましたものが、平成十五年には十三・三月、一年ちょっとと大幅に短縮してきている実情にございますし、特に東京の裁判所におきましては一年を切っているというふうに承知しております。
これらの審理期間の短縮につきましては、裁判所として、全国の知財事件の約八割が集中する東京、大阪の裁判所に知的財産関係事件の専門部を設けてまいりました。東京地裁では既に本年、この四月からは四か部十六人体制、大阪地裁につきましては二か部六人体制、あるいは東京高裁におきましては四か部十八人体制ということをすることに予定しているところでございますが、そこにこの種の訴訟に精通した裁判官や技術専門家である裁判所調査官を配置し、その結果こういったような成果に表れてきているというふうに考えてきております。今後とも、この点は更に力点を注いでまいりたいというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/13
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014・吉田博美
○吉田博美君 今回の定員法の改正案では、沖縄の本土復帰に伴ういわゆる沖縄定員を統合して組み入れることとしていますが、行政サイドでは省庁再編の際に組入れが行われたと聞いています。裁判所だけがこの時期になった理由は何でしょうか。また、沖縄の裁判所の体制に影響はないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/14
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015・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今御指摘ありましたように、行政機関については、中央省庁等改革基本法にのっとった府省の再編に合わせ、平成十三年一月六日以降、沖縄における定員の特例措置は既に廃止されましたが、裁判所は中央省庁等改革基本法の対象となっていなかったことなどから、同時期の沖縄定員の統合を見送ったものであります。
しかし、私どもの方も独り取り残されるのは嫌だったものでございますから、国会答弁でこういう言葉を使うのは正しいかどうか分かりませんが、駄目元で実はその官庁の方に裁判所も併せてやっていただけないかということをこの話がありましたときから持ち込んでいましたけれども、中央省庁再編の対象になっていないということであっさり却下されたというのが実情でございます。
裁判所としてこの時期になりましたのは、その後、中央省庁でそういった沖縄定員が廃止されるところの影響というものが沖縄の方にどんな形で表れてくるかということ、それから裁判所は結局単独でここの部分の廃止を求めるということになりますので、本当に問題はないのかどうかというものを相当慎重に検討しなければならない、その辺りの検証を行ってきた結果、現在に至ったということでございます。
また、その間の沖縄の定員の今後の影響でございますが、近時は、裁判所におきましては、事件数、繁忙度、そういったものによって機動的に人員を配置すると、こういった施策を続けておりますが、それを沖縄に対してもそういうようなやり方をしてきておりますので、既に沖縄の人員配置の在り方は本土と同じということになっております。したがって、ここで沖縄定員が廃止されましても別段何の影響もないというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/15
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016・吉田博美
○吉田博美君 何となく縦割り行政の弊害が出たような感じだなと思いました。申入れされても入っていないからということでございますが、こうしたことも気を付けていかなきゃいけないなと思っております。
裁判官の大幅増員のためには、人材の供給源を多様化しなければならないと考えます。弁護士から登用を積極的に進めるべきだと思いますが、実際には余り進んでいないと聞いております。進まない理由はどのようなことで、その対策はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/16
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017・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 裁判官の多様化、多元化というのは司法制度改革審議会の意見書でも強く求められたところでありますし、裁判所自体、自身もそういった多様化、多元化が実現する中で真に足腰の強い組織になる、更にいい裁判が実現できると、こういうことにつながると思っておりますので、弁護士からも適任者であれば多数裁判官に任官してほしいと往時から考えておりました。
昭和六十三年から日弁連と語り合い、弁護士任官を募っておりますが、ただいま委員御指摘のとおり、任官を希望する弁護士の数はこれまで年間せいぜいが四人ないし五人程度になっているというのが実情でございます。むしろ、最近は裁判官の増員を実現したくとも、言わば数だけは増えるというような状況にあっても、それがなかなか埋まらない。裁判官に任官してもらう人がいませんと、増員だけをしてもそれは絵にかいたもちになりますので、むしろその辺りのところから制約が掛かってきているという状況もあり、この弁護士任官の問題はそういう意味では切実な問題であります。
弁護士がなぜ裁判官にならないかというところでございますが、確かに同じ法曹として共通する部分はございますが、実はそれぞれの職務に求められている役割、あるいは職務内容というのは相当違います。弁護士の方はクライアントから事情を聞いてそれを正当化すると、言わば一方から見て主張を整理し裁判所に訴えるというのが仕事になるわけでありますが、裁判官になりますと、これが両方から同じように正しいと思われるようなものが出てくるというわけでございまして、その中でどちらが正しいかというものを心証を取り判断をしなければならない。そこの部分がやはり相当違いますし、しかもそのことを判決書きというかなり詳細な理由付けというものを伴ったものに作っていかなければならない。ここの部分がやはりかなりしんどいというふうに思われているようでございます。そういうことで、弁護士から任官されましても、残念ながら、その後かなり精神的にも悩まれるという方も少なくないという状況でございます。
また、裁判官になりますと、これ国家公務員でございますから、基本的には成功されている弁護士さんの処遇に比べてそれは相当下がるということになりますので、処遇下がってまでも基本的にそういったしんどい仕事をするのはなかなかというような思いをやはり成功されている弁護士さん方は思うというのも次の点でございます。
さらに、日本では弁護士事務所の共同化、大規模化が十分に進んでいないため、事件の引継ぎというものができない。先生、私を見捨てて裁判所に行くんですかというような形で、なかなか事件をこうやってフェードアウトできないと、こういうようなところもございます。事務官、雇っている事務員を今後どうするかといったところも考えなければならない、そういった問題もあるわけでありまして、そういったところが弁護士任官者が増えない一因というふうに言われているところでございます。
最高裁としては、そういうようなところから、弁護士任官体制に対する研修の充実を努めているところでありますし、あるいは得意分野、そういったところへ任官していただく、そういうことも併せて考えてきているところであります。
さらに、本年一月から、これは昨年国会で制定いただいたところでございますが、導入されます調停官制度、これも弁護士任官制度、弁護士任官推進のための環境整備としては有力なものになるのではないかと。週一回の裁判所勤務ではございますが、その間に、先ほど言った顧客をどのように減らしていくかというものを比較的計画的にやっていけるという面、あるいは裁判所というものはこういうものだということで、場合によっては酒も飲めない、カラオケもできないと、こういうふうに思われている向きもあるようでございますが、そんなこともないということをちゃんと理解していただける、そういうようなところから裁判所の雰囲気も知っていただける。また、私どもの方からも、この方は非常に人間的にもすばらしい方で事件処理能力にもたけておられるというところも見れる。むしろ、こちらから進んで常勤裁判官の方にお変わりいただけませんかという形にも使えるのではないか。そういう意味で、その効果について非常に期待しているところでございます。
また、日弁連と弁護士任官の推進についてはここ数年集中的にいろんな問題を語り合ってきておりまして、その成果もあり、平成十五年は合計十名の弁護士任官があり、初めて二けたの任官となったところであります。今後とも、日弁連とも協力し合いながら、任官のしやすい環境作りに努めてまいりたいと思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/17
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018・吉田博美
○吉田博美君 いかに裁判官というのは弁護士からの転身というのが非常に厳しいかという実情等もお聞きしたわけでありますが、確かに自分に振り返って申し上げますと、お願いする顧問弁護士が、じゃ、これから裁判官になりますよと言ったら、自分のことはどうなるんですかという心配になると思いますから、そうしたことも、今言われたのも何となく理解ができるような気がします。
しかしながら、そうした中で、司法制度改革の中で本年四月に法科大学院がスタートをしますが、これに伴い裁判官が実務家教員として派遣されることになりますが、裁判官の増員の手当ては本当に先ほどの事情の中でなされているのか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/18
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019・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 法科大学院への実務家教員、裁判官の派遣は、法科大学院が成功するかどうかというところにも絡む大きな問題であり、また国の責務として行われるものということでございますから、裁判所としてもできる限り協力していくべきものであるというふうに認識しております。
現段階では、裁判所では五十二大学六十四人の実務家教員の派遣を予定しているところであります。もっとも、裁判官の派遣はいわゆるパートタイム型によることとされておりますので、そういったところから、六十四人といいましても六十四人が丸々言わば戦力外になるというわけではございません。そういったところを、六十四人を一定の数、もしこれをずっと常勤で教員として抜けられているということを考えた場合にはどうかというところも踏まえて、今回の増員はその手当ても含めお願いしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/19
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020・吉田博美
○吉田博美君 裁判官の増員は先ほど来申し上げているように必要だと考えますが、あわせて、裁判官の更なる能力向上も社会の要請だと思います。裁判官の能力向上について、最高裁はどのように取り組まれる所存でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/20
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021・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 委員御指摘のとおり、このように複雑多様化する社会の要請にこたえ適正迅速な裁判を行っていくためには、裁判官が優れた専門的な能力に加えて柔軟な思考と幅広い識見を備えるということはますます重要になってくるものと考えております。
裁判官は、そもそもはそれぞれの具体的な事件を通じ、あるいは日常の社会生活を通して、それぞれ自己研さんにより人格識見の涵養に努めるというのが本筋であろうと、これは一生そういったことを一生懸命努めなければならないというものでございますが、そのような自己研さんの一助とするために、最高裁といたしましても、従来から能力向上のための種々のプログラムというものを実施してきているところでございます。
具体的には、司法研修所におきまして、裁判官任官後、節目節目あるいはその時代、社会の要請に応じた課題の研修、そういった形での研修を行っておりますし、さらには、比較的若い裁判官を中心に、社会の実情への理解等を更に深めるべく報道機関や民間企業等に派遣する、あるいは行政官庁や在外公館に出向させる、そういった異文化に接し多角的視点を持ちつつ、言わば複眼的な思考ができる裁判官というものを養成するようにしているところでございます。
毎年、このような形で外部に出している者は、各期の百人のうち四十人あるいはもっとそれ以上になっているかとも思いますけれども、今後もこれらのプログラムの拡充に向けてその環境、条件の整備を積極的に推進してまいりたいというふうに思っているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/21
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022・吉田博美
○吉田博美君 次に入りますが、研修所の問題について質問をさせていただきます。
既存の研修所を統合し、裁判所職員総合研修所を設置し研修体制の整備を図るとのことでございますが、統合する意義と理由はどういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/22
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023・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 最近の社会の複雑構造化に伴って裁判所の果たすべき役割が一層増大しているのは、裁判官の養成について、あるいは研修についても申し上げたところでございますが、特に最近では家庭裁判所においても家事事件で利害関係が非常に複雑に入り組んだものがある、あるいは少年事件では動機の解明というものが難しい凶悪事件などが増えている状況であります。
こうした中で事件を適正迅速に処理していくためには、裁判所書記官と裁判所調査官を始めとする裁判所職員の専門性というものをより高めるとともに、各職種、例えば少年事件あるいは家事事件を考えましても、裁判官、家裁調査官、書記官あるいは調停委員と、こういったような人たちが絡んでくるわけでありますけれども、そういう中で各職種がばらばらでありますと、これはなかなかスムーズに事件が解明できないということになります。
こういった各職種がばらばらでなく、この具体的な事件においては争点は何であるかとか、あるいは今後審理さらには調査はどうやってやっていくべきかといったことについての問題点、それについての共通意識というものを持つということが非常に大事であり、その意味では、昨今裁判所において協働を図る、各職種間の協働を図る、そういうことの重要性ということが非常に強調されてきているところであります。
今般の裁判所書記官と家裁調査官との研修所の統合というところもこの点を踏まえたものであり、合同研修の必要性もますます高くなってきているところから、その実を更に上げようというところが根本でございます。
現には、これまでにも裁判所書記官研修所と家裁調査官研修所で今申し上げたような視点から合同研修は行ってきたのでございますけれども、何といっても場所が白山と十条ということで非常に遠くに分かれていたために、その打合せ等にも時間を取るといった本末転倒なことが行われたわけでございまして、この辺りを合同化することによってより効率的に行えることもできるということになります。
さらに、今後、この職員総合研修所ができます和光市は、すぐそばに司法研修所がございますので、その裁判官との一緒の合同研修、これも行うことができ、先ほど申し上げた協働体制が更に確立するということにつながっていくんではないかというふうに期待しているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/23
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024・吉田博美
○吉田博美君 協働体制がより確立されるということでございますが、またその反面、既存の研修所ではその職種の専門性に着目して個別の研修を行っていたと思われますが、合同研修によってその専門性の趣旨が損なわれることはないのでしょうか。研修のカリキュラムを充実させる等で対応すべきだと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/24
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025・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) おっしゃるように、書記官は法律専門職として、調査官は人間関係諸科学の専門家として、それぞれ裁判所の組織の中でその役割、機能を果たしていくということでありますから、その礎というものが築かれなければならないのはこれは当然のことでございます。また、今回、研修施設の拡充により、設備面からもそういったところがきちんと担保されるような形になってきております。
先ほど申し上げました合同研修というのは、あくまでもそのそういった専門性をきちんと成し遂げた後、あるいはその課程においてその協働関係の重要性というものを互いに学んでいくと、こういうような位置付けでございますので、決してその辺のところはないがしろにならないように研修のカリキュラムの充実に今後とも努めてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/25
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026・吉田博美
○吉田博美君 先ほど来も触れられておりますが、再度確認を申し上げますが、研修所の統合によるメリットは事務の合理化など数多くあると考えますが、どのようなことを一番期待されているのか、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/26
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027・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 先ほど来のお答えで恐縮でございますが、協同関係を作る合同研修というものができるということが一つ。それから、お互いに一つの場所でそういった研修を行うということにより、日常、各職種がそれぞれ接し合うということになります。
例えば、裁判所におきましては、窓口相談というのは、基本的には窓口の受付は書記官が行うわけでありますけれども、そこにおいては実は面接技法というものが非常に大事になってまいります。来られた人間、来られた方がどういう方なのかどうかということを把握した上でいろんな対応をするということがまた必要なわけでありますが、そういったところは、調査官補と一緒に生活をする、あるいは調査官と語らい合うと、こういう中でそういうところについても刺激を受けることになりましょうし、また、調査官の方は調査官の方で、あるいは法律的な知識、事件処理についてのやり方、そういったものについては書記官から学ぶところは非常に多いだろうというふうにも思っております。
そういったところにも表れてくればよろしいかなというふうにも思っているところであり、一言で言いますと、職員間の相互理解と啓発というものがより進むのではないかなと、こういうふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/27
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028・吉田博美
○吉田博美君 裁判の迅速かつ適正さを実現をしていくためには、裁判所の人的体制について、今後より一層の充実が必要だと先ほど来の説明でも感じておるわけでございますが、そのためにはないそでは振れないということでございますので、そのためには予算獲得が不可欠だと考えますが、この点についての大臣の御意向をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/28
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029・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 裁判所の経費につきましては、最高裁判所が独自の判断に基づいて内閣に提出することとされておりますので、法務省としては直接これに責任を持って申し上げることはできませんが、司法の重要性の高まりについては私どもも裁判所も共通の認識でございますので、今後とも、裁判所の判断を前提とした上で、十分協力して司法の基盤の充実に努めてまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/29
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030・吉田博美
○吉田博美君 是非取り組んでいただきたいと思います。
次に、司法に対する国民の負託に的確にこたえるためには、今後、裁判官や裁判所職員を含めた、いわゆる司法人口の大幅な増員が必要と考えますが、国民の視線に立った真の司法制度改革が実現されますよう、改めて大臣の決意のほどをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/30
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031・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 司法制度は、国民の権利の実現を図るとともに、国民の基本的人権を擁護し、安全な国民生活を維持するなど、国民生活にとって極めて重要なものであります。司法制度を所管する省庁の責任者といたしましては、適切に司法の人的基盤の充実強化が図られるよう努力するとともに、国民にとってより身近で信頼される司法制度の構築に全力を挙げて取り組んでいく決意でございます。
既にスタートを切っておりますいわゆる法科大学院、ロースクールに対する国民の皆様のいわゆる関心も大変高いものがございまして、競争率も相当高い、優秀な人材も集まっていただけるものと我々は期待している次第でございます。担当の文部科学省とも力を合わせまして、より一層この充実に努めてまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/31
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032・江田五月
○江田五月君 裁判所関係二法案の質疑を行います。今日は、実は質問の入念な打合せができないまま来ておりますので、ちょっともたもたするかもしれませんが、お許しいただきたいと思うんですが。
最初に、通告をしていないんですが、中山最高裁判所長官代理者に伺いたいんですが、衆議院の方でこの二法案についての質疑はもちろん行われております。衆議院と参議院、別の院ではありますが、国民との関係でいえば一つの国会ですから、なるべくいろんな重複はないようにとした方がいいだろうと。それでも念を押さなきゃならぬところは押さなきゃならぬと。別の院としての機能、参議院もあるわけですけれども、こんなところで余り衆議院でやったことをそのまま参議院でまたなぞるようなことはやめようと思って、私も衆議院の方の速記録を読んでまいりました。
まだ未定稿ですから、いろいろまだ訂正部分があるかと思うんですけれども、この未定稿を読んでいて、これはどういう意味なのかなとちょっと思うんですが、中山さん、速記官の執務環境の整備について職員団体からも非常に強い要求が出ているところでありますと、その次ですが、今日も後ろに私どもの職員団体である全司法の委員長がしかとにらみに来ておりますけれども、そういうような職員団体の意見も十分聞きながらと、こうなっておるんですが、私どもの職員団体、全司法の委員長がしかとにらみに来ておる、これはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/32
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033・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) その後、非常に余計なことを言ってしまったなというふうに反省をしているところでございますが、答弁の過程で、左の方に私どもの全司法の委員長の姿が目に入ったものですから、ついついそういうふうにお話をしてしまったわけでございますけれども、御理解いただきたいのは、言わば全司法、全司法としては職員の執務環境の整備に向けて全力を尽くしてきている、その表れがこういったところの傍聴にも表れてきているのではないだろうか、また、そういったものを私どもとしてもきちんと受け止めていかなければならない、こういうような趣旨で申し上げたつもりではございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/33
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034・江田五月
○江田五月君 私は、中山さんにもちろん個人的に何の恨みもありませんし、いや、それどころか人格識見ともに非常に優れた司法の一員であって、私も司法畑にいた人間として、すばらしい後輩が育ってきておると、本当にうれしく、尊敬もしておるんですが、しかし、やっぱりその中山さんにしてこういう言葉が出てくるというところに司法制度改革をしなきゃいかぬという理由があるように思うんですね。
職員団体の皆さんが、自分たちのこれからの仕事にかかわる、非常に大きく影響する、そういう法案の審議を傍聴に来るのは当たり前の話で、それを何かにらみに来ているというような表現で言われるというのは一体どういう関係があるのか。にらみ返したという意味で言われたのか、あるいはそういう軽口もたたけるような仲のいい関係であるのか、いずれにしてもそれは問題ですよ。
やはり、裁判というのは、裁判官がもちろん責任を負いながら全部の法廷の過程を主宰をしておる。しかし、裁判官だけでできるものではありませんね。それは書記官もいる、あるいは速記官もいる、多くの裁判所の職員が皆お互いにそれぞれの役割を果たしながら、国民から負託された司法という重大な職務を遂行しているわけでありまして、そこはやはり、まあ何とか言い逃れはできるかもしれませんが、この職員団体の委員長が来て、にらみにというような、そういう感覚でいてもらっては困ると思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/34
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035・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今申し上げましたとおり、にらむというのは、お互いににらみ返すあるいはにらむと、こういったようなことではございませんで、言わば全司法としても非常な重大な位置付けということでここに来られていて、そして最高裁がどういった答弁をし、するかというようなところをきちんと見届けるぞと、こういうようなことで使った言葉であります。また、決してそうやってお互いの関係がなあなあであるというようなつもりで話したつもりもございません。そこの点は御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/35
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036・江田五月
○江田五月君 反省をしていただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/36
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037・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 余計な疑念を差し挟まれるという結果に対しては、不徳の致すところであったと思っております。今後、気を付けたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/37
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038・江田五月
○江田五月君 緊張感を持って国会審議に臨んでいただきたいと、一言苦言を呈しておきます。
さて、裁判所職員定員法の一部改正の方にまず入ります。
先ほど吉田委員の方からも質問があり、答えもいただいているので、それと重複しないようにいたしますが、今回、昭和四十六年の沖縄の本土復帰の後に、この特別措置に関する法律中の特例規定に基づいて最高裁判所規則で定められていた裁判官の員数、これを今回定員法の中に組み入れるということですね。四十六年の本土復帰の前と後で、沖縄県における裁判官と裁判所職員の制度というものはどう変わったのか、簡単で結構ですが御報告ください。
私も、昭和四十一年から四十三年まで司法研修所におりました。その当時はたしか琉球政府の委託の修習生がいて、非常に仲良く、今も付き合っていますが、その修習生の皆さんは本土のいわゆる司法試験を通ってきた我々とちょっと違っていたのではないか。その辺りがどうなって、それがその後どう変わったかを簡単にお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/38
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039・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。
復帰前の沖縄では、琉球政府の下に裁判所が設置され、裁判官等について独自の任用や定員配置が行われておりました。復帰後は、本土のほかの裁判所と同じ任用制度になるとともに、定員配置についても、復帰直後はともかく、近年は本土と全く同様に事件動向や事務処理状況に応じた体制整備を図っているところでございます。
それが概要でございますが、今御質問のいただいたところを私どもの方も必ずしも詳しくは知らないところでございますけれども、復帰前の沖縄には琉球政府裁判所の裁判官が存在いたしました。裁判官の任命資格につきましては、昭和二十五年から実施されました米国軍政府本部特別布告により、裁判官については琉球法曹会試験局によって正当に証明された者に限ると定められるのみであり、必ずしも弁護士資格、いわゆる法曹資格を有していなくても裁判官に任命されることが可能であったというようであります。
昭和四十七年の沖縄復帰後の裁判官の任命資格に関しましては、沖縄についても本土同様に裁判所法が適用されることから、本土と同様の資格が必要になったわけであります。このため、復帰前の琉球政府裁判所の裁判官が引き続き裁判官となるためには法曹資格が必要ということになりますので、昭和四十五年に成立しました沖縄の弁護士資格等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する特別措置法により資格を取得された方が多かったというふうに推測しているところでございます。
司法研修所時代のお話をされましたけれども、確かに、それらによりますと、沖縄の法令の規定による司法試験に合格し、沖縄の裁判官経験三年未満の者で、本邦において司法修習生の修習と同一の修習課程を終えた方が、司法試験管理委員会が行う選考に合格して本邦の裁判所法六十七条一項の規定による司法修習の修習を修了したものとみなされる、沖縄復帰時に判事補に任命されたということでございますから、恐らくそういった例かなと思います。
また、私、沖縄に赴任しておりましたので、そこで知っている経験といたしましては、本土の方の正規の司法試験に合格されて、その上で沖縄の方で弁護士をされるというようなこともございましたし、あるいは司法研修所を出てその直後に琉球高裁の方の、言わばこちらの最高裁判所の調査官という形にすぐに、本土の、日本の判例等、実務について一番詳しいということでなられた方という方についても承知しているところでございます。
その程度でございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/39
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040・江田五月
○江田五月君 以来三十年でしょうか、もっとか、経過をして、その復帰前の裁判官あるいは職員の任用の形がもうほぼ、どう言いますかなくなってきて、今やもう完全に一元化しているのだと思いますが、今さっき、ちょっと、平成十三年に駄目元で一元化を申し出てみたと。駄目元という言葉がいいかどうかは別として、しかしそれは駄目だということで今回と。今回、こういう法案をお出しになるについては、更に一元化の状況など組み入れることによって不都合が起きないかどうかを十分検証された、その結果、何もない、不都合がないということで今回の修正ということになったということですが、まあ聞かなくてもいいのかもしれませんが、平成十三年に駄目元で出されたときにはそういう検証はしていなかったんですか、それでは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/40
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041・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 平成十三年にもうそれが動く、もう国会に上程されるという段階でそういうことをやったわけではございませんで、そういった当たり行為というものはそういった動きが出始めたときにしたものである。したがって、その後もしこれが受け入れられるということであれば、その過程でまた私どもの方は併せてそういった検討を、検証を行ってきた、こういうふうに、こういうスケジュールでやったというふうに御理解いただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/41
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042・江田五月
○江田五月君 定員法の方はその程度にして、裁判所法の改正について伺っておきます。
まず、幾つか法文、条文上のことを伺いますが、この十四条の三ですね、これは裁判所書記官等々、「裁判官以外の裁判所の職員の研究及び修養に関する事務」、こういうことで総合研修所を作られるということになっておるわけですが、この職員の中にこれは当然速記官というものは入る、これはそう考えてよろしいんですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/42
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043・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) 今お尋ねは十四条の二の法案の方だと思いますが、その他の裁判官以外の裁判所職員の中には裁判所速記官はもちろん含まれます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/43
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044・江田五月
○江田五月君 失礼しました。十四条の二です。当然含まれると。
そして、この新旧を比べてみますと、旧といいますか現行の十四条の二は「裁判所書記官及び裁判所速記官の研究及び修養並びにその養成に関する事務」、それが今のような「裁判官以外の職員の裁判所の職員の研究及び修養」ということで、「その養成」というのがなくなっているわけですが、これは養成は、もちろん養成はするんですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/44
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045・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) この「研究及び修養」でございますが、文言の意味といたしまして、養成そのものを包含するということよりは、むしろ研究及び修養によりまして養成もされるということは当然予想されますので、そういった意味で、法文の意味としてはこの「研究及び修養」には養成も含まれると言って差し支えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/45
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046・江田五月
○江田五月君 何だか禅問答みたいな感じもちょっとありますが、現行で「研究及び修養並びにその養成に関する」と書いてあることと、今度の改正で「研究及び修養に関する」と書いてあることは、これは同じ意味だと、同じ内容のことだと考えていいのですか。それとも、何か内容が変わるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/46
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047・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、結論としては内容は変わりません。御承知のように、現行法は司法研修所で一般の事務官に相当する方々の研究等を行っておりまして、それとは別に、個別の形で書記官研修所で書記官と速記官のものをやり、それから家庭裁判所の調査官については家庭裁判所調査官研修所でやるというふうに、そういう個別の方式を取っていたわけでございます。そのために養成という、つまりあるものでないものからあるものにするというものを特出しで規定していたわけでございますが、今度の総合研修所ではこのすべての裁判官以外の職員についての研究、修養するということでございますので、あえて養成ということを言わなくてもその一部には養成というものが含まれるという形で行うことは可能ですのでそういう規定の仕方をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/47
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048・江田五月
○江田五月君 職員には速記官も含まれる、そして今の研究及び修養ということの結果、養成ということは当然結果として行われるということで、この十四条の二の改正によって、今、いつからでしたか、裁判所では裁判所の速記官の養成というものは中止をされているんでしたね、たしか。その中止をしていることをそのまま法律上、後付けするとかあるいは裏付けるとか、あるいは逆に速記官の養成ということもこの中にあるからもう一遍速記官の養成を再開するとか、そういうこの法律の規定が直接速記官の養成ということに、中止をするとかあるいは再開するとかということにつながるという、そういう論理的な必然性というのはあるんですか、ないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/48
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049・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) 今回の改正は、あくまで速記官補という官職を廃止すると。これは、裁判所の方で速記官補という官職を採って、そういう方の中から速記官を養成するということをかつてなさっておられましたが、それは委員の今の御説明どおり平成九年からそれを行わないという形で、現在は速記官補という官職は全く使われておりません。その使われていない官職を廃止するという形式的なものでございまして、これで速記がどうなるかあるいは速記官がどうなるかということには直接影響を及ぼさないものだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/49
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050・江田五月
○江田五月君 今の御説明は六十条の三を削るということに関することだと思うんですが、今の十四条の二の規定の改正、これも速記官の養成について論理的に法律上何かの結論に結び付くというものではないということだと思うんですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/50
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051・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) 法律の規定上はおっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/51
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052・江田五月
○江田五月君 それでは次に、六十条の三のことを伺いますが、この裁判所法の一部を改正する法律案というものでは、わずか十文字、丸を入れて、「第六十条の三を削る。」と。それだけのことで、中身は速記官補というものをなくするということですが、これは結構裁判所に働く者にとっては気になる改正なんですね。ところが、この提案理由の説明にはそのことにはただの一字も触れられていない、などの、「など所要の法整備」と。「など」、それだけしかないんですが、これは何か勘ぐってみると、速記官補をなくするということを滑り込ませて、人目に付かないうちに改正をしてしまおうとしたというようにも勘ぐれないわけじゃないんですが、そういうような不純な動機はあるんですか、ないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/52
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053・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) これは、先ほども御説明申し上げましたとおり、速記官補というもう既に使わない官職を削るという形式的な改正で、先ほど申し上げましたように、速記あるいは速記官を今後どうするかということについての政策的な問題とは別の問題でございますので私どもは「など」という扱いをしたわけでございまして、今、江田委員のおっしゃったような趣旨は全くございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/53
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054・江田五月
○江田五月君 動機不純ではないと伺っておきましょう。
この削除で速記官補という官職はなくなると。しかし、もちろん速記官がなくなるわけではない。しかも、速記官の研究、修養、その結果、養成ということもこれはあると。そして、伺いますと、家庭裁判所調査官、これは家裁調査官補として採用して、二年の研修を行って家庭裁判所調査官になり、実務に就くと。一方、速記官の方は、事務官として採用して、二年の研修で速記官補になり、実務に就いて、さらに半年の実務体験を経て試験を受け、合格して、もっとも不合格になった人はいないということのようですが、速記官になると。したがって、速記官補という官職がなくなっても、今これをなくするという修正なんですが、なくなっても、家庭裁判所調査官のような養成の仕方、すなわち速記官をある期間養成をして、そして直ちに速記官として実務に就けるというやり方は可能なわけで、速記官補をなくするというこの削除の規定から直接に、当然に文理上、法律上、速記官の養成というものはなくなると、そういう論理的必然性はないと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/54
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055・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) 法律の規定上はおっしゃるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/55
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056・江田五月
○江田五月君 さてそこで、やはり速記官の養成停止と、速記官の新規養成を中止をした最高裁、平成九年、これはやはり若干の議論はしてみたいんですけれども。
私は、職員、裁判所職員をどういう制度にするか、あるいはその養成とか配置とか、こういうものは基本的に司法行政に属するものだと思っています。司法の独立というのは憲法上の大原則で極めて重要で、まず第一義的にはそういう職員の制度をどうして、それをどう運用するかというのは裁判所が決めることだと思っております。しかし、法律で枠組みを決めてそれを実行するという場合には、これは当然その部分については立法マターになること、これも言うまでもありません。その部分は国会が権限も責任も持っておると。
裁判所職員の在り方について、個別具体的なことについてはこれはもう国会が口を差し挟むようなことがあってはならないと思いますが、制度に関することになりますと、例えば速記官という者を養成するのかしないのかとか、速記官というのはどういう位置付けにするのかとか、そういうことについてはこれは微妙な関係に多分なるのだろうと。第一義的には裁判所が決める。しかし、国会というのがいろんな、国権の中で国民に直接責任を負っていると、国民から直接選ばれた議員によって成り立っていると、これもまた間違いないことであって、裁判所の方はそういう意味で国民と直接の関係があるものではないので、そういうことに着目して、憲法は国会を国権の最高機関であるというように書いてあるわけですね。
そこで、そういう司法行政に属する様々な制度問題というのは、国会としても国権の最高機関として関心を持ち、いろいろ物も言います。言いますが、同時に、司法の独立を害するようなことにまでなってはいけないというので、事柄によって両方が節度を持ちながらお互いに対話の関係を作って、そして両者の立場を尊重しながらいい対話の関係でいい制度にしていくということかなと思っておるんですが、これはどうお考えになりますかね。最高裁判所の方ではどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/56
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057・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 非常に難しい問題かと思いますけれども、今、議員、委員おっしゃったとおり、司法権の独立というものが認められており、これを実質化するものとして、司法行政権というものも憲法上最高裁判所が持つというふうに明記されております。例えば、それを人事面で明らかにするものとして、裁判所職員については最高裁判所が人事院権能を果たすということで、いわゆる行政官庁と違い、人事院傘下とされていないところもその表れでございます。
そういう中で、国会の方からはどういうような、どういう関係で裁判所に対して物言いをし、裁判所がそれをどう受け止めていくかと、こういうお尋ねかと思いますけれども、基本的には、裁判所は独善に陥ってはなりません。司法行政でいかに司法権が独立である、自律権を持っているからといって独善に陥ってはいけない。そういう意味では、裁判所が取ってきた施策につき、国会の方から国民の視点に基づきこういう考えもあり得るではないかというような視点を指摘あるいは御提起をいただくということは、これは非常に有り難いことであります。裁判所も、そういったときに、裁判所の自律権というところにあぐらをかくわけではなく、謙虚にそういった視点も踏まえた上で、最終的には自分たちの責任で判断をさせていただくと、こういう意味での言わばいい緊張関係というものが司法と国会の間にあるべきものではないかな、こういうふうに思っております。
ただ、これは司法行政ということで簡単に申し上げましたけれども、司法行政の中には個々の裁判事務に直接関係してくるというようなものもございますので、その辺の程度というものは、やはり委員御指摘のとおり、節度を持ってやっていかなければ、お互いにやって考えていかなければならない問題かなというふうに思いますが、これまでのところ、国会の方からは、あるいは私どもの方も、その辺のところは適切に対応させてきていただいているし、対応いただいてきているんではないかと、こういうふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/57
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058・江田五月
○江田五月君 そこで、平成九年に最高裁の裁判官会議で速記官の養成中止を決定しておられる。これは最高裁の司法行政上の政策決定であると思います。立法府としてもそれを尊重すべきものだと思います。
しかし、どうもその政策決定に当たって、主権者である国民の意見が十分に反映されたのかどうか。どうもいろんな議論がなおあって、一つに、一に帰することになっていないような感じも受ける。衆議院の方で速記官の関係について小林千代美さんが細かな質問をいろいろしておられます。これはこれで私はなかなか聞きごたえのある質問であり、また聞きごたえのある答弁もされておると思うんですけれども、もう直ちに中山さんの答弁について、執務の時間のことであるとか、あるいはいろんな速記の方法であるとか、あるいは速記以外の音声認識技術の可能性であるとか、いろんなことについて現場におられる皆さんから疑問や反論が私どものところにも寄せられておるんで、これは司法行政のことですから一々細かく言いませんけれども、そうでない一般の行政のことであったら、私ども、ここでもっともっと細かくいろいろつつかなきゃならぬ問題が山ほどある。
そういうことについて、最高裁判所として、司法行政をつかさどっている立場の者として、そういう意見を十分そしゃくをしながら、よりいいものにしていく努力というのをされているのかどうかということを、そのぐらいは多分聞かせていただいてもいいと思うんで、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/58
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059・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 平成九年の二月に速記官の養成停止を裁判官会議で決定いたしました。しかし、その間、卒然としてそういった決定を行ったわけではございませんで、たしか平成五年の夏ころから、それこそ速記官の職種も含め、検討してきた結果であります。
当時、裁判所においては、バブル崩壊による民事事件、民事事件の増加が非常に顕著になってきており、逐語録の需要というものは非常に多くなってくるだろう、今後右肩上がりに上がっていくだろう、そういう中で、現在の速記官の体制でそれに応じていけるかどうか、これが問題の発端でございました。
しかし、その検討を単に裁判所当局側がやっていくということになりますと、それは一つの職種に大きな影響を与えるということでありますので、当時、職員団体の委員長経験者とかそういった方、この方たちは速記官でございますが、速記官の方に最高裁の中に入っていただき、現在の速記をめぐる客観的な状況とそれから将来に向けての展望、いったん速記官を養成して雇うということになりますと定年まで速記官として雇わなければならない、今から四十年間雇わなければいけない、そういったところも踏まえて更で検討していただきたいと、こういうことをやりました。
その結果、今の録音技術の発展というところをかんがみれば、昭和三十年代に、三十年に速記官制度を作ったときとは全く格段の進歩があるということで、録音反訳ということが裁判に使えるかどうかということをきちんと検証してみましょう、こういった提言をもらい、全国で二千時間、二千について録音反訳を行い、これを反訳して、これをすべてのデータを弁護士会に提供し、また職員団体にもすべてのデータを提供し、問題があるようであれば指摘してもらいたいというような検証を経て、これは使えるということになり、今後の逐語需要の増加に対してはこちらを主として考えていかなければならない。さらに、今後のOA技術等の発展等を見ますれば、それはやはり速記官というものが今後ずっとそのままできるかどうかというのは非常に不安定な状況にあるというような提言があり、それを受けて職員団体とも十分交渉をしながら、平成九年二月の裁判官会議で養成停止を決めたということでございます。
当時は、国会でもたしか質問があったんではなかったかなというふうに思っておりますので、決して国民的な視点というものをないがしろにしている、あるいは内部の一部の人たちの声、そういったものをないがしろにしているということはないというところは御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/59
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060・江田五月
○江田五月君 そのような経過ももちろんあると思いますが、それでもなおいろいろな声があるわけですね。もちろん、それはいろんな人がいていろんな声があるのは当たり前のことでありますが、問題は、この速記官の皆さんが自主的に「はやとくん」あるいはステンチュラというような、この職務の遂行方法の改革、改善というのを一生懸命やってきておること、これはやはり事実だと思うんですね。そういうその職員の皆さんの職務を遂行するに当たっての努力を一体どういうふうに受け止めるかというのはなかなか難しいことでありますが、少なくとも一部の速記官には、裁判所のその責任者の方の対応が、おまえたちは余計なことをするなと、むしろ迷惑がられたというように受け止めているような、そういうことも出てきているように思うんですね。
これは、やっぱり余り人事行政上賢明な、賢いやり方だとは思えない。部下の皆さんが真摯な努力をしていることに水を掛けるというのは、職員の士気が上がらないことにつながってしまう。そういう状態は良くない。いろんな自助努力というものを最高裁として、どちらかというとどうも無視をしてきたと、そういうふうに受け止められていることについて、これは何か感想ありますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/60
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061・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 平成九年の二月に停止をするに際しまして、既に衆議院の方でお答え申し上げておりますけれども、今後、残る速記官の人たちにはきちんと裁判所内でやりがいを持って働けるような環境作りに努めたい、最大限の努力をすると、こういうふうに約束したところでございますから、仮に、そういうような白眼視されているとか、あるいは余計なことをしているというふうに思われているのではないかというふうに思っている人が一部にでもいるとすると、それは残念なことであります。
ただ、「はやとくん」あるいはステンチュラの問題というのは、その労は多といたしますし、やっぱり敬服するところもございますけれども、他方で速記官には立会い時間の問題もあり、これを増やすということについて必ずしも速記官内部で全員が一致してということになっているわけでもございません。
そういった例えば「はやとくん」のような効率機器というものについて最高裁が理解を示すということは、取りも直さず、そちら側をやっている方にとってはいい話ではありますけれども、他方でそれが事件増に、時間増につながるのではないか、そうするとまた頸肩腕症候群等の病気が出てくるのではないかと、こういうふうに負担を感じる層もいることも確かでございますし、また速記官に対する処遇ということを考えましたときに、効率的に立会い時間を非常に増やしている人たちに対して同じでよいのかどうか、ほかの人たちと同じでよいのかどうかというような問題も起きてくることになり、その辺、速記官の中に二層化を招くということが本当に裁判所の組織としていいことなのかどうなのか、そういったところも考えなければならない。そういうことで慎重に対応させていただいているというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/61
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062・江田五月
○江田五月君 私は、今の「はやとくん」あるいはステンチュラ、こういうものに取り組んでおられる速記官の一部の皆さんの努力というのはやはりこれは貴重なことだと、そういう努力というものが何とか生きる方法はないかということも考えなきゃならないが、しかし同時に、裁判の過程を記録に残すというやり方はいろんなものがある。
訴訟というのは生き物で一つ一つがいろんな個性を持っていますから、そういう方法で逐語訳を残すことも一つですが、私なんかは、場合によってはもう書記官の、あれは何というの、要領調書ですか、要点だけをぱっと書いて残しておく、これ辺りの方がむしろいいというような事件の場合もあるだろうと思いますし、あるいは今そのほかに録音反訳もあるだろうし、あるいは音声認識技術、これも言うほど可能性が高いかどうか、諸外国でどうなっているかなどという検証もしっかりしなきゃいけませんが、そういうこともあるし、あるいはこれから、今はIT技術も非常に進んできているんで、音声とか映像とかでいろんな訴訟の経過を残しておくというようなこともあるだろうし、それより何より、裁判というのは直接主義で口頭主義で自由心証主義ですから、後でいろんな残っている記録をいろいろ精査をしてというよりも、もうその法廷の中で直接にやり取りをし、心証を取り、とりわけこれから裁判員制度が導入されるとそういうことが非常に重要になってくると思うので、そういうような訴訟のプロセスを後に残す方法というのはもっと総合的に、いろんな可能性を真剣に、裁判所の中だけでなくて何か特別のチームでも作って研究をしていかれるようなことを考えたらどうかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/62
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063・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今後、裁判員制が特に視野に入ってきておりますから、そういうところでは正に委員おっしゃるような記録の在り方の検討というのも抜本的に考え直さなければならない、私どもも全く同感であります。
私は、昔、ある座談会に出まして、調書のあるべきもの、本当に理想的なものは何かということを問われたときに、全部が全部逐語調書ではないと。例えば、証人尋問が始まりますときに、あなたはどういうような経歴の方ですかというようなところからすごく、導入部分というのがすごく長い、そういうところは要旨調書あるいは要領調書で十分なんであります。しかし、肝心の争点の部分、間接事実が何であるかと、そういった機微にわたるようなところはできる限りその調書、逐語的なものが残るのがベストである、本当はそういったものが一番裁判官あるいは関係当事者にとっても有り難いものである。
しかし、残念ながら、これまでは書記官による要領調書、他方、速記官による逐語調書、録音反訳による逐語調書、こういうふうに大きく二つに分けられ、それらの混在型というのはなかなかできないというようなことでありました。録音反訳のときに、実はそういったことを考えられないかということも思考してみたんですが、なかなかそれもうまくいかなかったのが実態であります。
そういう中で、例えば日本の刑事裁判をもう一回こうやって見てみますると、精密司法と言われ、それはそれとして正しかったものもありますけれども、やはり行き過ぎたところがあるんではないか。そして、過度の精密司法ということになってきたその根幹、最大の原因は書証依存にある、供述調書依存にあるというところだったと思います。
戦後、アメリカの当事者主義が入ってきて、そこで、恐らくドイツの大陸法、アメリカの、ドイツの参審、これは大陸法でありますが、それからアメリカの陪審も片っ方にあり、日本はその中間形態でいくだろう、相当口頭弁論主義というものが実質化するんではないか、こういうふうに各学者、先生方は大いに期待をされたというところがございます。ところが、実際にはどういうふうに今なっているかというと、むしろドイツは、一見職権主義で供述調書を大事にしているようでありますが、かなりの部分は実は証人尋問でやっている。これだけ書証に依存しているというのは、むしろドイツ、アメリカが向こうの極にあり、日本がこちらの極にあると、こういうような状況であります。
裁判員制が入りましたときに、裁判員に対して、これだけの書証を法廷に積み上げてそれを全部読んでくれというようなことは、これはとても無理であります。もうそれだけでもう出てきたくありませんと、こういうようなことになります。そうなりますと、法廷で、そこで心証を取り、その心証がビビッドなうちに反対尋問を行う、そしてその上で、その証言が終わったときに中間評議をして、それを皆の中に、問題点はどこだった、今のところはこういうような心証だなということを押さえておかなければならない。そうなってきますと、その逐語調書の在り方あるいは記録の在り方というのは大きく様変わりするだろう。今後、記録というものは、上級審においてその重要性というものはそれは変わりませんけれども、少なくとも一審においてはその重要度というのは相対的にかなり下がってくるんではないだろうかと。
また、仮に、これも今後また検討していただかなければなりませんが、個人的な思い付きでありますけれども、音声認識技術というところを踏まえての話でありますが、例えば裁判員の方がどうしても抜けざるを得なくなって更新手続というようなものを今からやるということを考えたときに、調書を全部読んでもらうというようなことになりますとまた元に戻ってしまうことになります。そういったときには、むしろ江田委員から御指摘いただいたように、映像も含めてそういったものを残しておく、それによって何とかその直接主義、口頭主義というところを担保すると、こういった制度設計というものも十分考えられるんではなかろうかというふうに思っているところでありますし、そういったことも踏まえてこの問題というのは考えていかなければならないと、こういうふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/63
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064・山本保
○委員長(山本保君) 江田委員、時間が来ております。簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/64
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065・江田五月
○江田五月君 もう時間が来ておりますので、最後に法務大臣、今、司法制度改革真っ最中ですが、司法制度改革の中には大きなこともあるけれども、こういう小さな、しかし非常に重要なこともあるので、ここは法務大臣の緊張感というのが一番大事だと思いますが、覚悟のほどを聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/65
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066・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 江田先生には、これまで司法の専門家といたしまして様々な貴重な御提言をちょうだいいたしまして、私もこれについては大変敬意を表している一人でございます。今回の司法制度改革におきましても、是非ともその御識見を生かして御提言をちょうだいいたしますことを私ども期待をいたしております。よろしくお願いしたいと思います。
司法制度は、いわゆる近代国家の基本であります法の支配、これは人の支配とかあるいは習慣の支配ということではなく、法によりその罪を決め量刑を決め、そして社会の健全化を図るという、これを現実化するものとして極めて重要なものと認識をしておるものでございます。特に、国民の権利の実現を図り、また基本的な人権を守り、安全な国民生活を維持するためにも、もうこれなくしては国が成り立たないと、かように心得ているわけでございますが、特に二十一世紀に入りまして、我が国の社会も、いわゆる社会の複雑化、多様化、国際化ということに加えまして、規制緩和等の改革により自由な社会活動あるいは経済活動をやりながら事前規制から事後チェックに移行していく社会様体にしていかなきゃいかぬと、かように考えまして、これによって、今度の司法制度の改革というのは極めて大切な役割を持っていると考えておるわけでございます。
司法制度を所管する官庁の責任者といたしまして、国民の皆様にとってより身近で分かりやすい司法制度の構築に向けて全力を尽くす所存でありますので、どうぞよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/66
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067・江田五月
○江田五月君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/67
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068・木庭健太郎
○木庭健太郎君 野沢法務大臣、質問通告しておりませんが、一問お尋ねをしたいと思うんです。
それは、今、国民の一番の、司法という問題というより、実は週刊文春、昨日、差止めの仮処分が出まして、今これが非常にどう考えるかという問題で話題になっております。私どもも、週刊誌とプライバシーの問題、前々からこの問題については関心も抱いており、その一方で、対抗手段としてはこういうことが成り立ち得るのかなと正直驚いた面もございます。その一方で、やはりこれはプライバシーの問題と報道の自由、表現の自由という問題に対しても大きな波紋を今投げ掛けていると私は思っております。
法をつかさどる大臣、法務大臣でございます。もちろん関心を持っていらっしゃると思うし、なかなか言いにくい点もあるでしょうけれども、この問題についてどういう御感想をお持ちか、一言述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/68
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069・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 私の立場から一つ一つの事案についてこの良しあしを言う立場にございませんけれども、プライバシーの尊重ということは、これは極めて大事なことであり、同時に、言論の自由、これまた大事な課題であろうかと思います。
今、再審査という手続にも入っているようでございますので、この辺の経過を十分見守りながら、適切な御判断がいただけるものと期待をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/69
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070・木庭健太郎
○木庭健太郎君 是非こういう問題は関心を持ちながら見守って、大臣、いただきたいというつもりで、突然でございましたが、お聞きをいたしました。
それでは、法案の審議に入らせていただきたいと思います。
先ほど吉田先生からも御質問ありましたけれども、今回のこの増員問題というのは、一つは、これは昨年の通常国会でしたか、裁判迅速化法、これとの絡みの問題で、私も、やはり今の人員体制を前提とする限りは、なかなかこの迅速化という問題、実際に実現できるのかという、二年以内という問題でいうと極めて厳しい点もあると思っておりますし、今後、飛躍的に裁判所の人的体制を増大させなければ、この迅速化法が規定する範囲内に事件を処理することは実現できないという面があったんだろうとも思っておりますが、こういった関係について大臣の所見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/70
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071・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 御指摘のとおり、裁判の迅速化のためには大変工夫が必要かと思います。
特に、人的体制の充実が私は大事であると考えておりまして、充実した手続の下で裁判の迅速化を図るために、現在、司法制度改革推進計画に従いまして、裁判所、検察庁の人的体制の充実等の必要な体制の整備を行っているところでございます。
また、法科大学院等の発足に伴って弁護士さんの大幅な増員等も見込まれて、この点については相当軌道に乗ったと既に考えておりますが、今後とも引き続きまして、裁判迅速化法の趣旨を踏まえまして、充実しました手続の下で一層の迅速化を実現し、その時々における事件数等を考慮しながら、増員を含め必要な体制の整備を行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/71
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072・木庭健太郎
○木庭健太郎君 もう一つは、やはり迅速化法もあるんですけれども、もちろんそういったものに対応するということもあるんですけれども、やはり事件そのものが増えているという現状の問題もあると思っているんです。
特に感じるのは、最近の報道を見ていますと、外国人の刑事事件というのを中心に、凶悪な刑事事件というのが急増しているような印象を私は受けておるんです。もちろん、今回、国会の一つのテーマでもある安心、安全な国家というような大きなテーマもございますが、日本の治安維持ということを考えれば本当に憂慮する事態だと思っております。
最高裁の方に、先ほどもちょっとお話しされていましたが、新受件数の動向、どんなふうに推移しているか、この辺を教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/72
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073・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 委員御指摘のとおり、近時の国際交流の活発化に伴い、外国人事件は平成元年以降、急激に増加しております。
平成元年は、刑事通常第一審において通訳、翻訳人の付いた外国人事件、これは要するに在日の方ではないということでございますけれども、そういった外国人事件は、当時六百八十三人でございましたが、平成十四年は九千九十人ということになっており、十四倍強というのが実態でございます。
そういう中で、殺人、強盗等の凶悪事件や組織犯罪も増加してきております。そういった刑事訴訟事件全体を申し上げますと、平成五年以降増加傾向になり、平成十五年の地方裁判所の新受件数は十一万件を超え、平成五年と比べると約一・七倍、戦後、昭和三十年にかけてはまだ戦後の混乱期でありましたのでこれ以上の受件数はあったのでございますが、その後、安定期に入り、昭和五十九年をピークとしてずっと下がってまいりましたが、最近、そういった平成五年以降また増勢傾向に転じ、今はその昭和五十九年のピークもかなり超えているという状況にございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/73
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074・木庭健太郎
○木庭健太郎君 ちょっとびっくりしました。すごいですね、増え方が。
今回の定員法案、増員理由というのも、もちろん刑事訴訟事件の審理充実ということが掲げられているわけでございますけれども、今回の裁判官とか書記官の増員、こういった刑事訴訟事件の処理について、是非、この増員によってどういう形でその充実強化を図るのか、その点も最高裁に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/74
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075・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 簡単にかいつまんで申し上げますと、近時、特にこういった刑事事件の増加傾向というのは、東京あるいはその周辺、言わば大都市周辺で起こってきておりますので、そこのところに裁判官、書記官を手当てしてきているということでございます。
東京地裁につきましても、この四月から一か部増設してこれに、事件に対応しようというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/75
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076・木庭健太郎
○木庭健太郎君 今回、裁判員制度の導入というのが議論をされているわけですけれども、その一つが、とにかく事件が多いということも大変なんですけれども、もう一つは、やっぱり我が国の刑事裁判に時間が掛かり過ぎるというような点もやはり裁判員制度の導入に当たっての一つの契機になったと先ほどもお話がありました。
我が国の刑事裁判における事件処理に関する期間というのは、これは先ほど国内のお話はされたんですけれども、諸外国と比べてどんなふうにこれなっているのか、ちょっとこの辺を法務省から教えていただき、おきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/76
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077・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) 我が国の刑事裁判で第一審の通常事件で見ますと、平均審理期間は三・二か月でございます。詳細なデータはなかなか分かりにくいのでございますけれども、アメリカ、イギリス、ドイツ等を見ますと、やはり第一審の刑事の通常事件につきまして、平均審理期間はおおむね三か月から六か月程度でございますので、我が国も国際的に見ますと遜色のないレベルにはあるということは言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/77
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078・木庭健太郎
○木庭健太郎君 是非、そういう増えている刑事事件の取組という意味での今回の一つの増員でございますし、そこは重点配備、今お話がありましたが、それもしていただきながら、ともかくこの裁判迅速化法、それが形としてきちんとできるようなことへ要望しておきつつ、もう一点は、先ほどもこれ御指摘がありましたが、倒産事件についても、ちょっと統計上の数字もこの際お伺いしておきたいと思うんですけれども、倒産事件もバブル崩壊後の経済不況を反映して、事件数、大幅に増えているとお聞きしておりますし、特に自己破産という問題、私たちもよくこういう問題、相談を受けるんですけれども、倒産件数の新受件数、これが司法統計から見れば、これも推移を含めてお話をいただいておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/78
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079・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) お答え申し上げます。
自己破産事件の新受件数でございますが、平成四年には前年の二倍というふうに急激に増加し、これはよく言われるバブル崩壊後ということでございますが、平成五年以降も高い水準で推移し、平成八年からは更に急増傾向といったものが続いてきております。平成十五年は過去最高の約二十五万一千件であり、バブルが崩壊したとされる平成三年と比較して約十倍の増加ということになっております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/79
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080・木庭健太郎
○木庭健太郎君 その増えた件数に対してどういう状況で臨んでいくのかというのが次の課題になるわけでありまして、対応するのは、刑事事件は刑事事件で対応する。さらに、こういう倒産事件にも重点強化した形での対応をしていかざるを得ない状況があると思うんですけれども、これもまた今回の定員を増員するという問題と極めて密接に関係あると思いますので、増員したことによってこういった事件に対してどういう部門を特に取組を強化されようとしているのか。体制の問題、取組の問題、含めてお話しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/80
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081・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) これも事実をもって語らしめた方がよろしいかと思いますので、例えば、平成三年四月段階で東京地裁で破産事件を担当しておりました裁判官は四名、書記官は十二名でございました。これが十五年の四月の段階で裁判官は十四名、したがって三・五倍でございます。それから、書記官が五十七名ということで約五倍。これだけのことをやっておりまして、これを大阪地裁とかそのしかるべき破産事件が増えているところにはこういった体制を皆組んできているというところでございます。今回の増員の結果というものも、そういった形で各所で使わさせていただこうというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/81
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082・木庭健太郎
○木庭健太郎君 本当に今司法が抱える課題の多さをある意味では感じる点もございますし、今回、この法律、ある意味では、法務大臣は何か大英断を持って人数を増やされたという話ですけれども、何か聞いているとまだ足りないような気がしますが、是非今後もお取り組みをいただきたいと思います。
もう一つの今回の法律の論点は何かといいますと、裁判所の職員総合研修所の設置の問題でございます。もちろん、この問題はこれまで個別で置かれた書記官、家庭裁判所の調査官、この両方を相互に連携を強化するというお話がありましたし、先ほどからお話をお聞きして、ある意味では幅広な形でいろんな対応ができる書記官、職員というものの養成という意味で極めて妥当だとは思いますが、先ほども御説明あったのでダブる部分は外していただいて結構でございますが、新しい研修所に変わることによって従前と比較してどう研修が変わっていくのかという点について最高裁に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/82
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083・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 先ほど合同研修の重要性ということを申し上げましたが、もう一つは、その合理化という観点から、合理化というとちょっとあれかもしれませんけれども、調査官補とそれから書記官になる前の事務官、これが一緒にこうやって合同して講義を聴くあるいは研究する、そういった場面として、例えばDNA鑑定とか最近の生命科学とか、そういったようなこれから裁判所にこうやっていろいろ持ち込まれるであろう基盤となる科学知識のそういったものについて一緒に学んでいく。あるいは、最近はDV法とかあるいは男女共同参画とか、そういったような新規立法というのが非常に多いわけでございますが、そういったものについても一緒に講義を聴く。そして、調査官的な視点あるいは書記官的な視点、それをそれぞれ議論し闘わせるというようなこともできていけるのではないかなと思っております。
それからもう一つは、管理者研究会と申しまして、裁判所の方で管理職になった者につき、これも職員総合研修所で研修をさせることを考えておりますが、これまでもその点につきましては、調査官については調査官研修所で、書記官については書記官研修所でということで一部しか合同で行われていなかったところが、これが全体として行えることになると。調査官と書記官あるいは事務官、その間の相互理解というものがそういうことによってますます進んでいきますし、組織としても相当足腰の強いものになっていくんではないかなと、こういうふうに思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/83
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084・木庭健太郎
○木庭健太郎君 そういった書記官と調査官の協働にやることによってのメリットのお話を今お伺いしたんですけれども、もう一つ是非これはどういう形でおやりになるのかということでお聞きしておきたいのは、今後、裁判所における民事手続の問題です。
民事訴訟法の改正が行われたり、またこれから民訴・執行法の改正と、これからいろんな課題ございます。これ改正していくとどんなことが起きていくかというと、裁判所書記官の権限、さらに役割というのが、要するにその分野を広げていくという形での法改正がこれから進んでいくことになるわけでございますが、今後、その書記官の方たち、こういうふうな役割の増大に伴ってそれに対する対応をどうしていくかというのはなかなか大変な課題だと思いますし、今回は総合研修所も作られると。
そういった中で、これからその役割の増えていく書記官の皆さんに対してどんなふうに研修の充実を行おうと最高裁は考えているのか、この辺も含めて御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/84
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085・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 御指摘のように、書記官権限というのは今後ますます拡充の方向になってまいるかと思います。例えば裁判員制、民事訴訟法のお話になりましたが、例えば裁判員制のことを考えましても、今後裁判官の方は、例えば事前準備というもの一つをとらまえましても、恐らくそちら側の方に力を取られることになるだろう。そうすると、残りの事件についてだれが中心になって事前準備を進めていくかというようなことを考えましても、やはり書記官に大いに活躍してもらわなければならない。そういう意味で、民事はどんどんどんどん新規立法がなされ、権限の拡充がなされているところでございますが、刑事も含めて書記官として更に力量を付けさせていかなければならない、こういうような状況にあるわけでございます。
そういう中で、今般のこの職員総合研修所ができたということは非常にタイミングとしては良かったなというふうに私どもは思っているところでございまして、かつまた、今の民事裁判の実行ということを考えますと、これは裁判所、裁判官との特に連携というものが非常に重要になるところであり、裁判官とどんなふうに平素から情報を交換し、同じ共通の問題意識を持ち、スケジュールを進めていくかと、こういうことをやっていかなければならないわけでありますが、そういったものが、職員総合研修所のすぐそばに司法研修所がございますので、そことの提携ということが相当程度図っていけることになるだろうというふうにも思っているところであります。
問題は、人的体制、書記官について今後どうやって進めていくかということでございますが、実は平成九年以降、バブルが崩壊して六年たったところからでございますが、これはもう明らかに例えば執行事件、破産事件の増加等々が見えてまいりましたので、書記官が非常に必要になってくることは確かであるということを考えまして、当時から職員の振替を含め、毎年二百五十人程度書記官を増やしてきております。したがって、平成九年以降これまでに既に千六百人ぐらい増加させてきており、言わばそういう形の手当てをもう事前に先取りする形で行ってきたというところもございます。
ただ、これで本当に足りるのかどうかというところも含め、今後更に書記官の人的体制の充実には努めてまいりたいというふうに思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/85
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086・木庭健太郎
○木庭健太郎君 じゃ、最後に大臣、同じような、冒頭の質問と同じような形になるかもしれませんが、お聞きいただいたとおり、裁判所は裁判所で今後の増員の問題、大きな必要性があるという認識がある。裁判所がそうやって人が増え、事件を扱うのが早くなっていけば、当然対応する検察の問題も出てくる、弁護士の問題もある。そこへ向けた、増員へ向けた、つまり、ある意味では司法制度の確立へ向けた大臣の、大臣からお話を最後に伺って、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/86
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087・野沢太三
○国務大臣(野沢太三君) 委員御指摘のとおり、今後裁判を適正かつ迅速に処理するためには、司法の人的基盤を充実強化することが必要不可欠と、これは何度繰り返しても大事なことと認識をいたしております。そのためには、法曹人口を大幅に増加させると同時に、これをお支えいただく裁判所職員や検察庁職員についてもより一層の充実強化が必要であると考えておるわけでございまして、法務省といたしましても、司法制度改革の進捗状況やこれから起こってまいります事件の数、あるいは社会の法的需要などを踏まえまして、関係省庁ともよく相談しながら必要な体制の整備を図ってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/87
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088・木庭健太郎
○木庭健太郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/88
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089・井上哲士
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今回、総合研修所を作るということでありますが、書記官と家裁調査官というのはおのずと職能も権限も違います。特に家裁調査官の場合はその独立性というのが非常に重要でありますし、人訴移管に伴いましてこの調査官の役割は非常に大きくなっております。
先ほど来、合理的な研修ができるという答弁もあったわけでありますが、一方でそういう家裁調査官の独立性、専門性が損なわれるんではないかと、こういう危惧の声もお聞きをしております。労働組合等とも協議をされているとは思いますけれども、こうした独立性、専門性を確保していくという点でどういう配慮がなされているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/89
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090・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 独立性というよりは調査官の独自性といいますか、それを大事にした研修ということかと思いますが、平成十六年四月からの人訴移管に適切に対応するとともに、増加する成年後見事件を始めとする家庭事件の事務量の増加に対応し適正迅速な処理を行うためには、今御指摘のあった家裁調査官の専門性の向上を目的とした研修の必要性はこれまで以上に高まっているものというふうに認識しております。
新しい研修所におきましては、先ほど来お話し申し上げている職種間の一層の連携、協働を意図した合同研修の充実を図る一方で、研修の企画、実施に当たっては、家裁調査官の研修を独自に担当する部門を設けるなどの専門性に配慮した体制を整備することにしております。その専門性に配慮した研修を実施することができるというふうに考えております。
具体的には、人訴移管に適切に対応できるように、家事実務研究会等の各種研修において人事移管等をテーマに取り上げて実施するほか、家裁調査官の専門技術である面接技法や心理テストに関する専門的研修をマジックミラーやビデオ等の設備の整った演習室で小グループで実施したり、動機等の理解の難しい少年事件の事例を分析、研究する専門的研修等、家裁調査官の専門性の向上を目的とした研修をこれまでより充実した形で実施する予定でございます。
協働、協働と申し上げましたけれども、その専門職性というものが十分に発揮できませんと、それはかえって何の力にもならないというふうに思っておりますので、その辺はきちんとめり張りを付けてやってまいりたいというふうに思っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/90
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091・井上哲士
○井上哲士君 私は独立性というもの、大変大事だと思っておりますので、その点、改めて強調しておきますし、今後とも研修を受ける当事者、労働組合ともよく協議をして良いものにしていただきたいと思います。
先ほど、裁判所法の現行法の十四条の二で、速記官という言葉、また研修及び修養並びにその養成となっていた中から、速記官またこの養成というのが削られることについてお話がありました。内容は変わらないという答弁でありましたけれども、では、あえてなぜこの養成という言葉を削る必要があるのか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/91
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092・寺田逸郎
○政府参考人(寺田逸郎君) 繰り返しになりますが、先ほども申し上げましたとおり、現行法では、職員の研究等について三つの規定がございまして、司法研修所で一般の事務官についての研究等を行う、それで書記官研修所で書記官等を行う、家庭裁判所の調査官研修所で家庭裁判所の調査官等を行うという三つに分かれていたわけでございます。
特に、後の二つが分かれていた関係で、それぞれの者を養成するということを特に取り出していたわけでございますが、今回は総合的に事務官も含めまして研究と修養を行うという形で包括的に規定をするということができることになりましたので、その結果、養成ということも特にあえて規定しなくても、その研究と修養ということに文言的に含まれることが読めることになりましたので、あえて養成ということを掲げないということが法文としては適当だと、こういう判断でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/92
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093・井上哲士
○井上哲士君 最高裁の中には引き続き養成部というような仕組みもあるわけでありますし、私は、書き分けるなどしての養成という言葉を残すことは可能だし必要だと思います。
先ほど、その他の裁判官以外の裁判所職員の中には速記官も含まれるという答弁もありましたし、この研修、修養には養成というものがおのずから入ってくるということでありますから、速記官の養成そのものをできなくなるということではないんだというのが先ほどの答弁にもありました。
そういう点では直接の形式的な影響はないと言われますが、やはり法律からこういう言葉がなくなっていくということは速記官の養成再開等にやっぱり新たな困難を設けるものだと、こういう心配は当然だと思うんです。
そこで、速記官の問題についてお聞きをするわけでありますが、司法行政の問題であると同時に、国民が受ける司法サービスの問題だと思います。一年前にも私、お聞きをしたわけでありますが、この「はやとくん」のその反訳の正確さとか速度について検証したのかと、こういうお尋ねをいたしましたけれども、していないという答弁でありました。今大体、いろんな努力もありまして、精度で言いますと九八%ぐらいということもお聞きもしております。リアルタイムの反訳も可能だと。
改めてお聞きをいたしますけれども、局長自身がこの「はやとくん」などを使ったこういうリアルタイムの状況をごらんになったことがあるのか。あったとすれば、その感想はいかがか。そして、最高裁として、昨年以来、この「はやとくん」による反訳の正確さや速度、ステンチュラの性能等について検証されたのかどうか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/93
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094・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 最高裁として「はやとくん」の検証は実施しておりません。私自身としては、そういったものが記録されているビデオ、そういったものを拝見してはおります。
「はやとくん」の検証をなぜ実施していないかということでございますが、これは、「はやとくん」の活用というものを想定したときに、現時点においてまだまだ幾つかの制約があるからでございます。
衆議院の方でも御説明申し上げたところでありますが、裁判所においては、IT技術の進展に伴いまして、各種事件処理システムのほか、Jネットという裁判所全体をつなげるそういうシステムを導入、展開し、あるいは全庁LAN化も並行して進めてきているところでございます。
しかし、そこに基本的には認められていないソフトを導入したり、インストールしたり、あるいは私物のパソコンを付けるということで、これは先般の内閣府の下に設けられましたセキュリティー対策室からの方からも強い警告、注意があったわけでありますけれども、内部に対してウイルス被害を、内部からのウイルス被害、こういったものを生じていて、そこら辺の脆弱性は大変な問題であると、こういうような指摘も受けているところであり、そういったことも十分に考えなければならないのが第一点。
それから、元々「はやとくん」はNECの98という日本独自のOS、これを前提に作られていたところでございましたが、裁判所の方はいち早くその間、DOSV、それからウィンドウズ三・一、95、98、さらに二〇〇〇、XPというふうにオペレーティングシステムを変えてきているところでございます。
そういう過程で、「はやとくん」が一生懸命努力されて、ウィンドウズまで一応対応できるようになってきているというふうにも聞いてきておりますけれども、今後システムを全国展開する中で、そういったところをじゃどうやって整合性を持って進めていくのかどうか、これも非常に難しいところでございますし、さらに、いったん官側で導入するということになりますと、その後のメンテナンス、あるいはシステムに対する影響等も官側として対応しなければならない、こういったところも、そういった保守管理体制というものが非常に重要になってくるわけでございます。
そのような制約の中で、活用を前提とした研修についてはまだ行っていないというところで御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/94
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095・井上哲士
○井上哲士君 セキュリティーの問題言われましたけれども、現実にこれまでにこうした「はやとくん」などを使ったことによったそういうトラブルというのは起きたことがあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/95
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096・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 「はやとくん」のインストールあるいはネットへの端末として付けるということは認めておりませんので、「はやとくん」自体ではございませんが、その他のものとして、現実にいろいろ裁判所内でも生じているというのが実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/96
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097・井上哲士
○井上哲士君 速記官の方の八七%は既にこの「はやとくん」を使っているとお聞きをしておるわけですね。先ほどのOSの問題もありましたけれども、DOS版にもウィンドウズ版にも対応しておるし、最新のXPにも既に対応済みだというふうに聞いております。
いずれにしても、言われた問題というのは、この「はやとくん」の有効性というものをしっかり検証して、その上でいろんな問題があるならば当局として対応されるべき問題だと思うんです。あれこれ理由を挙げて、やはり検証自体をしないということになっていると思うんですね。これまで非常にやはり速記官の皆さんが自主的な研究や研修、開発努力を積み重ねてこられたのに、それに言わば無視をして支援を行わないでおいて、あれこれ問題だけを挙げられるということが今いろんな声になっていると思うんです。
私もいろんなものも見せていただきましたけれども、例えば選挙の、百日裁判のレポートというのも読ませていただきました。週二回から三回ぐらい開廷して、検察の側から次回の期日までに速記録が欲しいと、こういう要求にこたえて、初稿に関してはほとんど毎期日、即日に当事者に渡されたとお聞きをしております。完成稿もほとんど即日か翌日にでき上がって、弁護側からも検察側からも大変感謝をされたと、こういう、これは札幌の例でありますけれどもお聞きをしておりまして、こういうような事例についてもやはり検証をしていくべきだと思うんです。国民の裁判を受ける権利を守ろうと、正確で迅速な速記録を作ろうという、こういう多くの速記官の皆さんの努力にやはりもっと真剣にこたえていくべきだと思うんですね。
先ほどやりがいのある職場ということも言われましたし、執務環境の整備を行うんだということも言われておりますけれども、そうであるならば、こうしたステンチュラの官支給であるとか、「はやとくん」のインストールに向けて、問題があるならばしっかり解決をして取り組むべきだと思いますけれども、改めていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/97
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098・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 百日裁判の例をお出しになりました。
裁判所といたしましては、先ほども御説明いたしましたように、二千時間を超える検証を行った録音反訳が基本的にはそういったことには対応できるものという位置付けで考えております。
現実に、これはもうマスコミ等で非常に大きく報道されましたけれども、集中審理方式の先取りと言われました埼玉地裁の本庄保険金殺人事件、これは多いときには週四日の開廷で動かしていたわけでございます。あるいは、先般論告がございました仙台地裁の筋弛緩剤点滴投与事件、これも週二日、あるいは三日のというときもあったかもしれませんが、そういったものとして行われていると。そういうものについて、録音反訳できちんと対応されて、対応はしてきているというところも併せて御理解いただければというふうに思っております。
速記官が自分たちの努力でそういったことを進めてきているということについては敬服したい、敬服するところは多々ございます。しかし、これも先ほど来申し上げておりますように、「はやとくん」について、これをインストールして活用するということになりますと、そういった言わば反訳の効率機器ということでございますから、その余力というものはどういった形で活用するのか、特に立会い時間といったものがそれでもって増えるのかどうかと、そういったような問題に直面する。そして、そういった問題につきましては、速記官の中にまだまだいろんな意見があるというところも御理解いただきたいと思います。
いずれにしましても、今委員が御指摘になったところにつきましては、職員団体の方からも非常に強い要求が出てきているところでもありますので、今後とも職員団体と意見交換をしながら検討を進めてまいりたいというふうに思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/98
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099・井上哲士
○井上哲士君 私は、やはり今、現にこうして、先ほどの例も挙げましたけれども、有効なシステムがあり、弁護側からも検察側からも非常に喜ばれていると、これについてもっとしっかりとした検証をして活用を図るべきだと思うんです。
その一方で、まだ実用化途上である音声認識システムについては、まあ完全なものであるかのように語られる場面が大変多い。法廷での音声認識システムというのを採用している、そういう国はあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/99
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100・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 昨今、ドイツの方でそういったことを入れたという州があるというようなことにちょっと接しておりますが、まだ詳細については未確認でございます。ほかに諸外国でそういう例はあるというふうには把握しておりません。
ただ、これは、例えば参審、ヨーロッパの関係の方でありますけれども、そこではほとんど供述調書というものが作成されていない、あるいはその重要性が非常に低いというところがございます。また、アメリカでは全部が全部そういった逐語録を作るわけではなく、当事者の方が必要だと思ったところを当事者の費用で反訳してもらっているという、そういったシステムの相違、裁判システムの相違、そういったところもあろうかというふうには考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/100
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101・井上哲士
○井上哲士君 今、アメリカの例も挙げられましたけれども、IBMの本社があるアメリカの場合も、一般には日本語よりも英語の方がこうしたシステムが容易だと言われておりますけれども、直接認識するというシステムは取られていないわけですね。
じゃ、もう一つ聞きますけれども、日本の国内で民間企業等でこれを実用化しているところがあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/101
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102・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) すべてを承知しているわけではありませんけれども、現在、カーナビあるいはチケットの予約等の電話音声応答システムなどの分野で実用化されているというふうに聞いております。
また、三月四日付け朝日新聞によりますと、不特定話者に対応する音声認識技術を利用して電子カルテを作成するソフトや議事録作成用ソフトが開発されているほか、テレビ番組の音声の字幕化システムへの応用も検討されているというふうに聞いているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/102
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103・井上哲士
○井上哲士君 今実用化されているというのは、今ありましたカーナビとかチケット販売とか、非常に単純なものでしか現在のところでは実用化をされておりません。そういう段階だと思うんですね。
最高裁のビデオも見せていただきました。早口とか小声とか詰問調とか、いろんな場面もやっておりましたけれども、あくまでもまだきれいな原稿を読むという段階であります。普通の自然発声の場合では六割から七割しか認識できないんではないかという研究者のお話もあります。
実際には、法廷にはいろんな人が来るわけでありまして、きついなまりの方もいらっしゃるし、例えばいろんな中毒、薬漬けでろれつが回らないという方もいらっしゃる、泣きながら訴える当事者もいると、いろんな場面があります。原稿のように文法的にきちんと話す人ばかりでもないと。そういう言葉を果たして確実に認識ができるんだろうかと。この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/103
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104・中山隆夫
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) IBMの例を出されましたが、日本IBMというのは、日本語の変換技術については、これは本社であるIBMとは全く独自にそういったシステムを開発しているところであり、その信頼性は非常に高いものだというふうに思っているところであります。
また、法廷というところは限られた空間であり、証人がどのような証言をするか、あるいは代理人がどういった質問をするか、それについて全員が耳を傾けなければいけない、集中をしなければいけない。そういう意味では普通の自由発話とはこれは違ったところでございまして、むしろ皆が意識的にその音に集中するということでありますから、日本IBMによれば、かえってそういった自由話者のものを音声認識としてやっていくシステムよりははるかにいい環境にあるというようなことも言われております。そういった視点も考えていく必要があろうかと思います。
きついなまりとか、あるいは泣きながらと言われるものは、例えばきついなまりである、あるいは方言で全く分からないというような場合には、これは、実は裁判官、全国異動でありますから、東京出身の者が沖縄に行く、あるいは青森に行くということがありましたときに、津軽弁で話されて裁判官が分かるわけではありません。裁判官はそこでそれを言わば標準語の形に何らかの形でとにかく直してもらうということが必要であります。それでもって初めて心証を取るわけでありまして、そういう意味では、その方言がどういう言葉だったかということはほとんどの場合はそれほど重要なことではないわけであります。
それから、泣きながら、あるいは言いよどんだ、うなずいただけである、そういった態度証拠につきましては、本来、裁判官が意識的にその辺りのものを残すというのが大事であります。全件について逐語調書が入っているわけではもちろんこれはございません。要領調書でやっていくのが大半でありますが、そういう中でそういうことがありましたときには、今うなずきましたねとか、泣きながら証言をされていますがどうしてですかとか、そういった態度証拠というものを調書上残して、それを上級審における審理に役立てると。これは当然裁判官の職責であります。そういうことによって十分これまでも対応できてきたわけですし、録音反訳についてもそういうことをやっておりますから問題を生じてきてはいないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/104
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105・山本保
○委員長(山本保君) 井上哲士君、簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/105
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106・井上哲士
○井上哲士君 時間なので終わりますが、やはり裁判のような厳格な場での実用化の状況というのはしっかり検証はしながら、今ある優れたシステムをしっかり活用するということを改めて求めまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/106
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107・山本保
○委員長(山本保君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915206X00320040318/107
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