1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十六年五月二十六日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第二十四号
平成十六年五月二十六日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(北朝鮮訪問
に関する報告について)
第二 投資の自由化、促進及び保護に関する日
本国とベトナム社会主義共和国との間の協定
の締結について承認を求めるの件(衆議院送
付)
第三 東南アジアにおける友好協力条約の締結
について承認を求めるの件(衆議院送付)
第四 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正
の受諾について承認を求めるの件(衆議院送
付)
第五 消費者保護基本法の一部を改正する法律
案(衆議院提出)
第六 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
第七 環境情報の提供の促進等による特定事業
者等の環境に配慮した事業活動の促進に関す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
第八 総合法律支援法案(内閣提出、衆議院送
付)
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○本日の会議に付した案件
一、武力攻撃事態等における国民の保護のため
の措置に関する法律案、武力攻撃事態等にお
けるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が
国が実施する措置に関する法律案、武力攻撃
事態等における特定公共施設等の利用に関す
る法律案、国際人道法の重大な違反行為の処
罰に関する法律案、武力攻撃事態における外
国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案
、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関
する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律
案、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊と
の間における後方支援、物品又は役務の相互
の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国
政府との間の協定を改正する協定の締結につ
いて承認を求めるの件、千九百四十九年八月
十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛
争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定
書Ⅰ)の締結について承認を求めるの件及び
千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条
約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関
する追加議定書(議定書Ⅱ)の締結について
承認を求めるの件(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/0
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001・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案、武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案、武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)の締結について承認を求めるの件及び千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅱ)の締結について承認を求めるの件、以上十件について、提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/1
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002・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 御異議ないと認めます。井上国務大臣。
〔国務大臣井上喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/2
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003・井上喜一
○国務大臣(井上喜一君) ただいま議題となりました武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案、武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案及び国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
初めに、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案について御説明申し上げます。
この法律案は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性にかんがみ、これらの事項に関し、国、地方公共団体等の責務、住民の避難に関する措置、避難住民の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置その他必要な事項を定めることにより、事態対処法と相まって、国全体として万全の態勢を整備し、もって国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とするものであります。
以上がこの法律案の提案理由であります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
総則的事項としては、国、地方公共団体及び指定公共機関等は、国民の保護のための措置の実施に当たり、相互に連携協力し、的確かつ迅速な措置の実施に万全を期さなければならないこと、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならないこと、政府は国民の保護に関する基本指針を策定し、地方公共団体及び指定公共機関等は基本指針等に基づいて国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画を作成すること等を定めております。
住民の避難に関する措置については、対策本部長は、警報を発令するとともに避難措置を指示すること、都道府県知事は住民に対し避難を指示すること、市町村長は避難住民を誘導すること等を、避難住民等の救援に関する措置については、都道府県知事は避難住民等に対し、食品の給与、医療の提供その他の救援を行わねばならないこと、都道府県知事は救援のため必要があるときは、医薬品、食品その他の救援の実施に必要な物資の売渡しを要請することができること等を、武力攻撃災害への対処に関する措置については、国は武力攻撃災害への対処に関し自ら必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体と協力して的確かつ迅速に措置を実施しなければならないこと、内閣総理大臣は放射性物質等による汚染への対処のため関係大臣を指揮し必要な措置を実施しなければならないこと等を、国民生活の安定に関する措置等については、指定行政機関の長等は生活関連物資等の価格の安定のために必要な措置を講じなければならないこと等を、復旧、備蓄その他の措置については、指定行政機関の長等は武力攻撃災害の復旧を行わねばならないこと等を、財政上の措置等については、収用その他の処分が行われたときは損失を補償すること、地方公共団体の措置に要する費用は原則として国が負担すること等を定めております。
また、緊急対処事態に対処するための措置については、国民の保護のための措置に準ずる措置を講ずること等を定めております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。
引き続きまして、武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案について御説明申し上げます。
この法律案は、武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って我が国に対する外部からの武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置等について定めることにより、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。
以上がこの法律案の提案理由であります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
合衆国軍隊の行動による国民等への影響を考慮した措置として、政府は、合衆国軍隊の行動に関する状況等について情報の提供を適切に行うこと、合衆国軍隊の行動等について関係地方公共団体との連絡調整を行うこと、合衆国軍隊の緊急通行等による損失を補償すること等を定めるとともに、合衆国軍隊に対する支援に係る措置として、自衛隊が物品及び役務の提供を実施すること、内閣総理大臣は、合衆国軍隊の用に供するため緊急やむを得ない場合に土地等を使用することができること等を定めております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。
続きまして、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案について御説明申し上げます。
この法律案は、武力攻撃事態等における特定公共施設等、すなわち、港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域及び電波の利用に関し、指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、その総合的な調整を図り、もって対処措置等の的確かつ迅速な実施を図ることを目的とするものであります。
以上がこの法律案の提案理由であります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
対策本部長は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、特定公共施設等ごとにその利用に関する指針を定めることができること、港湾施設及び飛行場施設の利用に関し、対策本部長は、港湾管理者や飛行場施設の管理者に対し、利用の確保に関する要請を行うことができること、内閣総理大臣は、対策本部長の求めに応じ、港湾管理者や飛行場施設の管理者に対する指示等を行うことができること等を定めております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。
最後に、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案について御説明申し上げます。
この法律案は、国際人道法に規定する重大な違反行為を処罰することにより、刑法等による処罰と相まって、国際人道法の的確な実施の確保に資することを目的とするものであります。
以上がこの法律案の提案理由であります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
この法律案では、重要な文化財を破壊する罪、捕虜の送還を遅延させる罪、占領地域に移送する罪及び文民の出国等を妨げる罪を新設するほか、これらの行為その他のジュネーヴ諸条約等が規定している重大な違反行為について、国外犯の処罰を可能とするため、所要の法整備を行うこととしております。
以上がこの法律案の趣旨でございます。
なお、これらの法律案のうち、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案につきましては衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりでございます。
第一は、緊急対処事態への対処について、緊急対処保護措置のみならず、緊急対処事態における攻撃の鎮圧等の事態を終結させる措置についても対処方針に定めるとともに、事態対処法の中に位置付けることとし、事態対処法について所要の改正を行うものであります。
第二は、武力攻撃事態等において国民の保護のための措置を行う組織として現地対策本部を、また、緊急対処事態においても同様に現地対策本部を設置することができるよう、所要の規定を追加するものであります。
第三は、国民の保護のための措置の訓練について、災害対策基本法に基づく防災訓練との有機的連携に配慮するとともに、国が地方公共団体と共同して行う訓練に係る費用で地方公共団体が支弁したものについては原則として国の負担とすることとし、所要の規定を追加するものであります。
第四は、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案について、今まで述べました武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案の修正に伴う所要の規定の整理を行うものであります。
以上が衆議院における一部修正の概要でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/3
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004・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 国務大臣石破防衛庁長官。
〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/4
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005・石破茂
○国務大臣(石破茂君) 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
まず、武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案について申し上げます。
本法律案は、武力攻撃事態に際して、我が国領海又は排他的経済水域を含む我が国周辺の公海における外国軍用品等の海上輸送を規制するため、海上自衛隊の部隊が実施する停船検査及び回航措置の手続並びに外国軍用品審判所における審判の手続等を定め、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
第一に、外国軍用品等の海上輸送を規制する必要があると認めるときは、防衛庁長官は、内閣総理大臣の承認を得て停船検査等の措置の実施を命ずることができることとし、そのために必要な規定を整備するものであります。
第二に、外国軍用品等及びそれを輸送する船舶に係る規制措置について、必要な規定を整備するものであります。
第三に、外国軍用品等を輸送している疑いのある船舶に対する停船検査及び回航措置の手続、武器の使用について、必要な規定を整備するものであります。
第四に、防衛庁に臨時に外国軍用品審判所を置くこととし、審判の手続等所要の規定を設けるものであります。
第五に、補償、罰則に係る規定等を整備するものであります。
次に、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案について申し上げます。
本法律案は、捕虜等の拘束、抑留その他の取扱いに関し必要な事項を定め、自衛隊の円滑かつ効果的な行動の実施に資するとともに、武力攻撃事態におけるジュネーヴ第三条約その他の捕虜等の取扱いに係る国際人道法の的確な実施を確保することを目的とするものであります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
第一に、捕虜等の人道的な待遇を確保すること、その他捕虜等の取扱いに関する責務等を定めるものであります。
第二に、捕虜等の範囲を定め、自衛官による捕虜等の拘束権限及び資格認定手続を規定するものであります。
第三に、臨時に捕虜収容所を設置できることとし、ジュネーヴ第三条約その他の国際人道法の規定に従って、食糧、衣服、衛生、医療の提供等の規定を整備するとともに、捕虜等に対する懲戒制度を整備するものであります。
第四に、防衛庁に捕虜資格認定等審査会を臨時に設けるとともに、その審理手続等所要の規定を設けるものであります。
第五に、捕虜等の抑留の終了に必要な規定を設けるものであります。
第六に、自衛官による武器の使用権限、捕虜等が逃走した場合の再拘束の権限等を整備するものであります。
第七に、罰則に係る規定を整備するものであります。
最後に、自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案は、今般、日米間で合意に達し、署名が行われた日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定に定める物品及び役務の提供の実施に関し、天災地変その他の災害に際して災害応急対策のための活動を行う合衆国軍隊、外国における緊急事態に際して邦人の輸送と同種の活動を行う合衆国軍隊、及び訓練、連絡調整その他の日常的な活動のため本邦内にある自衛隊の施設に到着して一時的に滞在する合衆国軍隊に対する物品、役務の提供権限を整備し、併せて所要の規定の整備を行うものであります。
以上が武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/5
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006・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 川口外務大臣。
〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/6
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007・川口順子
○国務大臣(川口順子君) 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
日米両政府は、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律に言う武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際しての活動、並びに国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のための活動を行う日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間の後方支援、物品又は役務の相互の提供を、平成八年に締結され、平成十一年に改正された日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定によって確立された枠組みに従って行い得るようにするため、現行協定を改正することにつき協議を行ってまいりました。その結果、平成十六年二月二十七日に東京において、先方、ベーカー駐日大使との間でこの協定に署名を行った次第であります。
この協定の主な内容としましては、日米共同訓練、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動又は周辺事態に際しての活動に必要な後方支援、物品又は役務の提供について現行協定が定める自衛隊と米軍との間の相互主義の原則に基づく枠組みを、武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際して日本国に対する武力攻撃を排除するために必要な活動並びに国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のための活動に必要な後方支援、物品又は役務の提供についても適用し得るようにするため、現行協定を改正するものであります。
この協定による現行協定の改正により、日本国の平和及び安全に寄与することとなるとともに、国際連合を中心とした国際平和のための努力等に積極的に寄与することとなると考えられます。
以上を御勘案の上、この協定の締結について御承認くださいますよう、お願い申し上げる次第でございます。
以上がこの協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。
次に、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
武力攻撃事態等に対処するに当たっては、傷病者、捕虜、文民等の武力紛争の犠牲者を保護することによって、武力紛争による被害をできる限り軽減するため、国際人道法の的確な実施を確保することが重要であります。また、我が国として、国際人道法を遵守する体制を整備することは、我が国国民の生命、身体及び財産の保護に資するのみならず、憲法の理念である国際協調主義にも合致し、国際社会における我が国に対する信頼を一層向上させるものであります。
この追加議定書は、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約を補完し及び拡充することによって、国際的な武力紛争の犠牲者を一層保護することを目的とするものであり、傷病者、捕虜、文民等の保護並びに戦闘の方法及び手段の規制等について規定するものであります。我が国がこの追加議定書を締結することは、国際人道法の的確な実施を図るとの見地から有意義であると認められます。
以上を御勘案の上、この追加議定書の締結について御承認くださいますよう、お願い申し上げる次第でございます。
以上がこの追加議定書の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。
次に、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅱ)の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
いわゆる内乱等の非国際的な武力紛争に対処するに当たっては、傷病者、文民等の武力紛争の犠牲者を保護することによって、武力紛争による被害をできる限り軽減するため、国際人道法の的確な実施を確保することが重要であります。また、我が国として、国際人道法を遵守する体制を整備することは、我が国国民の生命、身体及び財産の保護に資するのみならず、憲法の理念である国際協調主義にも合致し、国際社会における我が国に対する信頼を一層向上させるものであります。
この追加議定書は、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約を補完し及び拡充することによって、非国際的な武力紛争の犠牲者を一層保護することを目的とするものであり、傷病者、文民等の保護及び戦闘の方法の規制等について規定するものであります。我が国がこの追加議定書を締結することは、国際人道法の的確な実施を図るとの見地から有意義であると認められます。
以上を御勘案の上、この追加議定書の締結について御承認くださいますよう、お願い申し上げる次第でございます。
以上がこの追加議定書の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。
以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/7
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008・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。平野達男君。
〔平野達男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/8
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009・平野達男
○平野達男君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる有事関連法案・条約について質問をいたします。
我が国の安全保障にかかわる極めて重要な法案については、与野党の枠を超えて対応するとの考えの下、民主党は、昨年は武力攻撃事態対処法等を与党と共同で成立させました。
有事関連七法案・三条約についても、党内において、国民の立場に立った実効性のある法律等とするための真摯な議論を重ね、それを踏まえた与党との議論を展開いたしました。その結果、衆議院において、与党との間で有事関連法案の共同修正と緊急事態基本法案の骨子についての合意がなされ、法案が衆議院通過、参議院に送られる運びとなったことを冒頭報告申し上げます。
まず、最初に特筆されるべきは、民主党の主張を基に、三党間で緊急事態についての基本法の制定及びその骨子について合意に至ったことであります。
現行憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意して確定され、恒久平和の希求と平和主義に貫かれております。太平洋戦争という無謀な戦争の結果、未曾有の犠牲と国民資産の喪失によって、悲惨な状況がもたらされたこと、とりわけ我が国が、唯一の被爆国として残酷かつ貴重な体験をしたことが根底にあることは言うまでもありません。
先達の、一切の言語を絶するであろう戦争体験の上に起草された現行憲法の精神、これは、国民が一致団結し、不断の努力によって永久に受け継いでいくべきものであると確信しております。しかし、現行憲法が平和主義に意を用いた結果、我が国への侵略や大規模テロ、騒乱などの緊急事態に関して言及していないことにも、しっかりと目を向けないわけにはいきません。
緊急事態に関して言及していない憲法と、緊急事態の発生形態に応じた個別法と橋渡しをするのが基本法であります。
特に、基本的人権に関しては、実力部隊が発動する場面において、人権侵害に至る可能性が常に高いことを想起すべきであります。だからこそ、緊急事態において、基本的人権に関し国が守るべき基本理念を明らかにし、それを最大限尊重する義務を定めておかなければなりません。
こうした緊急時の基本的人権の尊重、さらには国、地方公共団体の責務や国民の役割など、緊急事態対応に関しての基本的な考え方を明示する緊急事態基本法制定への明確な道筋ができたことの意義は極めて大きいと言えます。
この緊急事態基本法制定とその骨子が民主党と与党間にて合意された意義、さらには制定に向けた意気込みについて、官房長官に伺います。
基本法の制定に関し、さらに政府の見解を伺います。
現行憲法には、我が国の安全保障や自衛隊に関しても言及がありません。これまで、我が国の安全保障は、官僚組織の権化とも言える内閣法制局による憲法解釈という枠組みの下、事態が発生すれば個別に法制度を構築して対応してきました。その結果、周辺事態法、テロ特措法、イラク復興支援法という法制定が示すように、有事関連における自衛隊の派遣範囲は逐次拡大されてきました。
さらには、憲法解釈の下、武力行使と一体とはならないとされている自衛隊の後方支援は、その性格が変質していることに注意が必要であります。周辺事態法における後方支援は自衛権の発動的な色彩が強いのに対し、アフガンにおける米国などの武力活動を支援するテロ特措法の後方支援は、憲法解釈では禁止されている集団的自衛権の発動的な色彩を帯びていることは明らかであります。
また、イラク復興支援法の定める復興支援は、米国などのイラク占領政策への協力ととらえられても仕方がありません。また、事実上の武力衝突が続くイラクにおいて、その活動地域に関して非戦闘地域なる概念を持ち出し、イラクへの自衛隊の派遣と憲法との整合性を保とうとしております。しかし、自衛隊の活動するサマワやその周辺の情勢は悪化の一途をたどっており、この地域が非戦闘地域であるとの客観性、合理性はなくなっております。
こうした中、自衛隊を派遣し続けることは、派遣を合法化するために憲法が認めるとする自衛隊の活動地域や内容の考え方を大きく変質させることになりかねません。
明確な基本理念を持たないままの個別法制定による対応は、場当たり的、なし崩し的に我が国の安全保障を変質させていく危険性を強く秘めております。官僚主導の精緻な議論を積み重ね、ガラス細工と言われる憲法解釈対応の限界を示すものであり、憲法を遵守する上でも極めて憂慮すべき事態であります。
シビリアンコントロールが徹底している今日とは次元が違いますが、かつて統帥権をなし崩し的に拡大解釈することで軍部が台頭、我が国を破滅へと導いたのと構図が似ていることに我々は気が付く必要があります。
国連中心主義を掲げてきた我が国は、ここでその原点に立ち返るとともに、我が国の安全保障の基本理念とそれに基づく自衛隊の行動原理などを明示した安全保障基本法、すなわち憲法と個別法をつなぐ法の制定が急務であると思いますが、内閣官房長官あるいは防衛庁長官の見解を伺います。
国民保護法案において新たに位置付けられた緊急対処事態について伺います。
当初の政府案では、この緊急対処事態に係る規定は、事態発生時の国民保護についてのみに限定されていました。民主党は、緊急対処事態は武力攻撃事態に準ずる事態であり、武力攻撃事態へと発展する可能性もあるとの観点から、保護だけではなく、侵害排除の規定も必要との判断に立ち、緊急対処事態を武力攻撃事態対処法に位置付けることを主張しました。
さらに、緊急対処事態への対応に際しての、国会の機能強化や、武力攻撃事態等も含め事態発生時に機動的な対応をするための現地対策本部の設置などを強く求め、いずれも法案修正によって盛り込まれました。武力攻撃事態対処法の対象が拡大され、国家の緊急事態への機動的、弾力的な対応が可能となり、さらには国民保護法案も厚みを持ったことは大いに評価されると考えられますが、その経過と意義について井上担当大臣の所見を伺います。
〔議長退席、副議長着席〕
さて、緊急事態としていかなる事態を想定するかによって、今後の体制整備や訓練の在り方も変わってきます。事態に即した整理がされないと、事態発生時の対応に重大なそごを来すことも考えられます。
武力攻撃事態については、政府は、着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイルの攻撃、航空機による攻撃と客観性のある四つの類型化をしています。緊急対処事態に関しても、衆議院の審議において、危険性を内示する物質を有する施設等に攻撃が行われる事態など四つの類型化がされ、それぞれの類型ごとに事態例が示されています。こうした類型化やその例示が示すことは、緊急事態の多様化、複雑化であります。
こうした取り組まなければならない緊急事態の多様化、複雑化に警察、自衛隊はどのように対応しているのか、また対応しようとしているのか、国家公安委員長並びに防衛庁長官に伺います。
さらに、先日、アルカイダの中堅幹部とされるアルジェリア系フランス人が、二〇〇二年から二〇〇三年に少なくとも二回、日本に入国し、計一年二か月滞在していたことがドイツ警察による逮捕をきっかけに判明しました。
アルカイダのメンバーが日本に滞在していた事実を公安当局が把握していなかったことは、我が国のテロ対策上深刻な事態と言えます。全容解明に向け、関係者の一斉捜査に入るとの報道もされていますが、そもそもどこに問題があったのか、その原因と対策について国家公安委員長にお聞きします。
国民保護法案は、基本的に緊急事態を武力攻撃事態対処法によって認定されたことを前提として組み立てられています。しかし、実際に緊急事態が発生した場合の現実的対応と法案が想定する対応では、若干の、しかし重要なずれがあるように思えます。
例えば特殊部隊によるテロや炭疽菌等を用いたテロでは、実際に緊急事態が発生した時点と、それを武力攻撃事態や緊急対処事態と法的に認定するまでの間には、場合によっては大きな時間的な差があると想定する必要があります。その間、事態の発生現場では、現場の判断で的確かつ迅速な対応をしなければならないことは当然のことであります。
事態発生への初期初動をいかに行うかは、その後の事態への対応のかぎとなります。こうした法的な事態認定前の、体制が整わない中での困難な判断と厳しい対応を迫られる現地の対応について、法案ではどのような取扱いとなっているのでしょうか。また、実際はどのような対応を想定しているのか、井上担当大臣にお聞きします。
法に基づく事態認定のいかんにかかわらず、国民保護のために重要な役割を果たすのが現地であります。まずは市町村レベル、あるいは住民、NGOなどが主体の地域レベルの体制整備が必要であります。事態の発生も多様化、複雑化し、場合によっては高度な知識を求められる武力攻撃事態等や緊急対処事態を想定した体制はどうあるべきか。そして、その体制がうまく動くかどうかは、平時における訓練に大きく懸かっています。
市町村、地域レベルでの体制はどうあるべきか。また、訓練は、そのやり方次第ではいたずらに国民の危機意識をあおるという指摘があることや、訓練に関しての民主党と与党との合意も踏まえ、その在り方について総務大臣に伺います。
外国軍用品等海上輸送規制法案に基づく停船検査について伺います。
停船検査は、戦時国際法では臨検と言われ、交戦権の一環として実施されます。しかし、我が国憲法は交戦権を認めておらず、法案が想定する停船検査について政府は、自衛権の行使に伴い実施する措置としています。それでは、実態上、停船検査と臨検とはどのように違うのか、また、違いがある場合、我が国の安全保障上、何か支障が生じるのかについて、防衛庁長官に伺います。
さらに、停船検査は、防衛出動を命じられた海上自衛隊が実施することとされ、武力攻撃予想事態においては実施できません。一方、周辺事態法と並行して制定された船舶検査活動法では、周辺事態に際し、一定条件の下で自衛隊による船舶検査活動が認められています。武力攻撃予測事態においても、周辺事態における船舶検査活動法に準じた船舶検査活動を認めることは可能であったと思いますが、そうしなかった理由について防衛庁長官にお聞きします。
報道の自由に関して伺います。
政府案では、指定公共機関である放送事業者の報道の自由、取材の自由に関する具体的な保障規定がありません。これでは、政府から放送事業者が取材源の提供を迫られたり、報道への公権力の介入を許すことになりかねません。
衆議院における附帯決議において、特に報道の自由に言及する記述がされています。しかし、本来であれば、法律上明確な規定を置くべきであると思いますが、官房長官の所見を伺います。
これに関連してお聞きします。
総理の訪朝を前に、訪朝取材をめぐり飯島秘書官と特定の報道機関との間にトラブルがありました。まず、官房長官に、その事実関係を詳細に明らかにすることを求めます。
伝えられるような、秘書官が報道内容を理由に、特定報道機関の総理同行の拒否、取材源の提供要求といった行為があったとすれば、内閣の信用を失墜させる著しい越権行為であり、即刻罷免すべきであります。官房長官の見解を求めます。
もっとも、秘書給与の企業肩代わりが明らかになった官房長官がまず辞任すべきでありまして、秘書官罷免に関する見解を述べる資格がないと判断されるのであれば、その旨明らかにして答弁いただかなくても結構であります。
緊急事態においては、強いリーダーシップの下、的確な判断と指示を出す総理がこの国の命運を左右します。このための総理の権限や総理を支える官邸機能の強化が不可欠であり、この旨、緊急事態基本法の骨子にも盛り込まれたところであります。
総理の権限の強化、官邸機能の強化の基本的考え方について、内閣官房長官の考えを伺います。
その官邸には、今、自身の秘書問題にけじめを付けられない官房長官、自分を権力者と思い違いし、しかも報道機関相手にとんでもない権力行使をしようとした秘書官と、それに支えられ、国民へのサプライズだけをねらっている総理がおります。こんな官邸にそもそも国の危機管理などができるわけがありません。
今の官邸これ自体がこの国の緊急事態、危機であると申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/9
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010・石破茂
○国務大臣(石破茂君) まず、新たな法の制定、委員のお言葉をかりれば、安全保障基本法についてのお尋ねがございました。
従来から、政府としては、憲法の下、専守防衛に徹し、日米安全保障体制を堅持し、適切な防衛力を整備するとともに、国際協調の下、国際の平和と安全を確保するための外交努力を推進し、我が国の安全を確保することが我が国の安全保障の基本である、このように考えてまいりました。
このような内容は、平成七年に策定された現在の防衛計画の大綱や防衛白書におきましても明確に申し述べておるところであり、これに基づき、防衛力の適切な整備、維持、運用を図ってきておるところであります。
御指摘の安全保障基本法の制定につきましては、国民的議論や議会における御議論の推移を見守ってまいりたい、このように考えておるところであります。
次に、多様化、複雑化する緊急事態への自衛隊の対応についてのお尋ねがございました。
防衛庁といたしましても、法制面、運用面、装備面にわたり、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす各種の事態への対処体制を強化しております。
まず、法制面につきましては、テロや武装工作員への対処のため、平成十三年に自衛隊法を改正し、所要の法整備を行ったところであります。
運用面につきましては、艦艇、航空機等による警戒監視に努めますとともに、実動訓練などを通じて部隊の即応性の維持に努めております。また、テロや不審船といった各種の事態に対しましても、それぞれの事態に応じた訓練を実施するとともに、警察や海上保安庁など警察機関との連携を強化するなど、対応に万全を期してまいっておるところであります。
装備面につきましては、ゲリラや特殊部隊による攻撃、NBC兵器を用いた攻撃、さらには不審船等に対しても対応できる防衛力を整備してきたところでありますが、今後も、テロや弾道ミサイルの拡散等、新たな脅威に実効的に対応できる防衛力を構築してまいります。
次に、航空輸送規制をどうするのか、お尋ねがございました。
失礼しました。
次に、また、武力攻撃予測事態において、周辺事態における船舶検査活動に準じた措置を取ることとしない理由についてお尋ねがありました。
本法案に基づく措置は、我が国に対する武力攻撃事態が発生した事態において、自衛権の行使に伴う必要最小限の範囲内の措置として実行するものであり、武力攻撃予測事態において実施することは当然認められません。
その上で、仮に武力攻撃予測事態において、我が国として、ある国に対する物品等の海上輸送の規制のために船舶の積荷の検査等を実施するとなれば、基本的に、対象となる船舶の旗国の同意を得た上で行う任意の措置しか取れないこととなると考えます。このような任意の措置を我が国が単独で実施したとしても、規制の実効性は確保し得ないと考えます。
さらに、武力攻撃事態対処法において、「武力攻撃予測事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」と規定されておりますように、武力攻撃予測事態における措置につきましては慎重な対応が必要であると、このように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣井上喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/10
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011・井上喜一
○国務大臣(井上喜一君) まず、基本法についてのお尋ねがございました。
この基本法につきましては、この有事の関連の法案の衆議院におきます審議の過程におきまして、与党と民主党の間におきまして、その内容となります骨子と、それから法律制定の時期につきまして合意がございました。
対象とする事態でありますけれども、対外的な武力攻撃、外からの武力攻撃あるいはテロ等による大規模な攻撃とか大規模な自然災害等、国民生活に非常に影響のあります緊急事態に対する、その事態への対処の基本的なルールといいますか、基本的な原則を定めようとするものと理解をするものでございまして、私どもといたしましても、非常に意義のある合意と、こんなふうに考えているわけでございます。
今後、与党と民主党の間におきましてその中身につきまして議論が詰められてくると思うんでありますが、政府といたしましても並行して十分検討を行いこの内容を詰めてまいりたいと、こんなふうに考える次第でございます。
次に、安全保障法の関係でありますけれども、我が国は従来から適切な防衛力を整備をするとともに、日米安全保障体制を堅持をして、また、国際の平和と安全を確保するための外交努力を推進することによりまして、国や国民の安全を確保することが重要と考えてまいりまして、この御指摘の安全保障基本法の制定につきましては今なお国民的な議論の推移を見守ってまいりたいと、こんなふうに考える次第であります。
それから次に、国民保護法案の衆議院におきます審議の中で、緊急対処事態に関係する部分の修正がございました。この修正によりまして、緊急対処事態については、緊急対処保護措置のみならず、攻撃の鎮圧等の事態を終結される措置が緊急対処事態対処方針の中に位置付けられると、こういうことになったわけでございまして、これによりまして適切に緊急対処事態に対処できるものと理解をいたしている次第でございます。
それから、法律的な事態の認定前にいろんなことが起こるのではないか、それに対する対応の仕方、在り方はどうなのかという御質問でございますけれども、緊急対処事態の認定がなされる前において、現に何らかの被害が発生している場合におきましては、警察法あるいは消防法等の現行法の関連法規に基づきまして所要の捜査や救難救助活動が行われることは当然でございます。政府としては、当該事態を緊急対処事態等として認定した場合には、法案の規定に基づきまして、この当該認定に基づく所要の措置を講ずることといたしております。
いずれにしましても、平素からいかなる事態にもすき間なく対処できる体制を整えておくことは大変重要でございまして、各種の事態に際して、所要の事態認定等の判断を的確かつ迅速に行えるような体制について十分な検討を進めていきたいと、こんなふうに考える次第でございます。
次に、報道の自由に関連してのお尋ねでございますが、国民保護法案では、国と地方公共団体は放送事業者である指定公共機関等が実施する国民の保護のための措置について、その言論その他表現の自由に特に配慮しなければならない旨を明確に規定をいたしております。
武力攻撃事態等においても、表現の自由などの国民の自由と権利が尊重されることは当然でございまして、政府としては、報道の規制など報道の自由を制限することは全く考えてないところでございます。
次に、官邸の強化等についてのお尋ねがございました。
緊急事態に的確に対処する上で、内閣総理大臣の権限や必要な体制の整備は極めて重要な問題でございまして、これらは基本法の中でも十分検討されることと思いますけれども、我々といたしましては、これらの点につきましては、現行の法令との関係を十分に整理をしまして、国民にも分かりやすい議論となるように必要な検討を真剣に行ってまいりたいと、こんなふうに考えます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣細田博之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/11
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012・細田博之
○国務大臣(細田博之君) 平野議員にお答えいたします。
まず、いわゆる基本法及び安全保障基本法の制定、総理の権限と官邸機能の強化並びに報道の自由についてのお尋ねがございました。
いわゆる基本法及び緊急事態における内閣総理大臣の権限や体制の整備につきましては、与党と民主党において検討が続けられるものと承知しておりますが、政府としても必要な検討を真摯に行ってまいります。
御提案の安全保障基本法の制定については、国民的議論の推移を見守りたいと考えております。
報道の自由につきましては、今、所管の井上大臣がお答えしたとおり、政府として報道の自由を制限することは考えておりません。
関連して御質問のありましたことでございます、本議題とは直接の関係はないとは存じますが、五月十六日のテレビ番組におきまして、北朝鮮に対する支援を政府が検討しているという具体的な内容の報道がございました。これは、具体的な数字まで挙げての報道であり、北朝鮮との厳しい協議が予想される中で、日朝間の様々な懸案について、我が国が北朝鮮と協議を行うに当たりまして、重大な支障や悪影響を与えることにもなりかねないとの観点から、当該報道機関との間でいろいろな厳しいやり取りがあったと聞いておりますが、最終的には私自身の判断によりまして、本来あるべき形に収めさせていただいたということを申し上げたいと思います。
また、詳細、また所管の担当大臣からのお答えがあると思いますが、一つですね、内閣の強いリーダーシップ、官邸機能の強化についてのお尋ねがありましたので、この点をお答え申し上げます。
緊急事態における内閣総理大臣の権限や体制の整備につきましては、与党と民主党との間で合意されましたいわゆる基本法の骨子に基づきまして、今後、与党と民主党におきまして検討が続けられるものと承知しております。
政府としても、既存の法令との関係を十分に整理し、国民にも分かりやすい議論となりますよう、必要な検討を真摯に行ってまいります。(拍手)
〔国務大臣小野清子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/12
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013・小野清子
○国務大臣(小野清子君) 緊急事態への警察の対応についてお尋ねがございました。
警察は、従来から、様々な緊急事態を想定をいたしまして、必要な装備の充実を図るとともに、関係機関との連携を強化をいたしまして、対応するための訓練等を実施してきていることと承知をいたしております。
例えば、主要八都道府県警察にNBCテロ対応専門部隊を設置するなど生物化学テロへの対応に万全を期しているほか、強力な武器を使用したテロ等への対処能力の向上を図るための特殊部隊や銃器対策部隊の充実強化を図っているところでございます。
また、武装工作員等の我が国への侵入などの事態におきましても、警察と自衛隊とが相互に円滑な連携を図ることができるよう、治安出動の際における治安の維持に関する協定を改正するとともに、共同図上訓練を順次実施しているところでございます。
国民保護法案におきましては、武力攻撃事態等や緊急対処事態における国民の保護に関しまして、あらかじめ基本指針や計画を策定することとしておりますので、同法案が成立いたしました後、警察はその果たすべき具体的な役割や関係機関との連携について関係機関とも協議しつつ十分な検討を行い、対処に万全を期してまいる所存でございます。
いずれにいたしましても、あらゆる緊急事態に迅速かつ的確に対処することは警察にとって最も重要な責務でございますので、引き続き体制の整備、訓練の実施、装備資機材の充実等に努めてまいります。
二点目でございますが、我が国にアルカイダ関係者が入国していた件についての対策についてお尋ねがございました。
御指摘の者は、他人名義の旅券を使用いたしまして我が国に不法に入出国を繰り返していたことが確認されておりまして、本日、関係警察におきまして関連事案の強制捜査に着手した旨報告を受けているところでございます。
テロにつきましては、未然防止が何よりも大切であり、警察といたしましては、関係機関と連携をいたしまして水際対策等に取り組んできたところでございますけれども、そうした中、今回の不法入国事案が明らかとなったことから、早急に真相解明に努めますとともに、そこから得られました教訓を関係省庁とも共有いたしまして、偽造旅券対策等、今後の対策の強化や再発防止策に生かしてまいりたいと、そのように考えておるところでございます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/13
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014・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 平野議員からは、市町村や地域レベルでの体制整備と訓練の在り方についてのお尋ねがあっております。
国民保護法におきましては、国全体として対処する一方、身近な市町村また地域で活動している消防団、自主防災組織等々、役割が重要でありますのは当然のことで、このため、総務省としては、国民保護モデル計画というものを提示すること、国と地方が共同して訓練すること、啓発や研修機会を確保することなどにより、市町村や区域での体制整備を支援してまいりたいと存じます。
また、訓練につきましては、与野党協議による法案修正を踏まえまして、防災訓練との有機的携帯を十分に配慮しつつ、国民の理解を得ながら取り組んでまいります。
また、その際の費用につきましても、修正によりまして国の負担とすることとなっておりますので、円滑に実施できるようにしたところであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/14
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015・本岡昭次
○副議長(本岡昭次君) 山口那津男君。
〔山口那津男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/15
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016・山口那津男
○山口那津男君 私は、ただいま議題となりました有事関連七法案及び三条約につきまして、自由民主党及び公明党を代表して、関係閣僚に御質問いたします。
このたび、衆議院において、自由民主党、公明党、民主党の賛成の下に、修正の上、議案が送付されましたことは、一連の有事法制が国民の幅広い理解を得て制定されていくことが望ましいとの観点から極めて重要な意義を持つものであり、合意形成に寄与した方々の努力を高く評価するものであります。
あわせて、緊急事態に係る基本的な法制についても三党の合意がなされておりますことから、本院におきましても法体系の確立に向けての建設的な論議を期待いたします。
そこで、まず井上有事法制担当大臣にお伺いします。
緊急事態基本法の制定についての三党合意の中には、緊急事態における体制の整備が盛り込まれ、具体的には、政府が緊急事態に迅速かつ的確に対処するために、内閣総理大臣ないし内閣の判断を適切かつ機動的に補佐する仕組みを設けるとともに、対処措置の効果的な実施体制を担保する組織を整えることとされております。
有事を含めた緊急事態への対応に当たっては、本来、内閣として一元的かつ集中的に関係部局に指揮命令できる仕組みが重要となります。官邸機能の強化は省庁再編の際の重点事項でありましたことから、内閣官房には危機管理監などのスタッフが置かれたものの、この危機管理監と安全保障を担当している官房副長官補との関係には明確でないところがあるなど、現状においては制度上も運用上も混乱している部分があるのではないかと思われます。
このような現状を改めるために、緊急事態基本法の制定を機に、危機管理に当たる内閣職員の権限の明確化とその強化、また補佐スタッフの増強を行うとともに、緊急事態に即応できる機動的なチームの編成などを検討することが必要と考えますが、井上大臣の御見解を伺います。
次に、緊急事態への適切な対応を行うためには、その前提として、膨大な情報を集約し、分析し、その上で明確な判断を行うことが必須であることは言うまでもありません。
現在、内閣官房には内閣情報官及び内閣情報調査室が置かれていますが、現状の体制、人員数、能力などの点において、内閣として保有すべき情報集約・分析機能として十分なものと考えているのか、井上大臣に御認識を伺います。
このたびの三党合意に基づく基本法においては、対象とすべき緊急事態として、外部からの武力攻撃、テロリストによる大規模な攻撃及び大規模な自然災害等が掲げられております。
現状においては、武力攻撃は武力攻撃事態対処法、治安事態については警察法、海上保安庁法等、また大規模災害については災害対策基本法等というように個々の事態ごとに個別の法律が並列的に存在する現状にあります。
基本法を制定するに当たっては、これらの個別法の間にすき間が生じないよう、また個別法に基づく対応措置が相互に有機的に働くよう、個別法相互の関係を十分整理、調整する必要があると考えますが、有事法制を担当するお立場から、井上大臣の見解をお聞かせください。
次に、海上輸送規制法案について石破防衛庁長官にお尋ねいたします。
武力攻撃事態において、我が国の平和と安全の確保に資するため、外国軍用品等の海上輸送を規制する必要があります。一般に海上輸送を行う船舶に対する臨検や拿捕は交戦権に基づくものとされ、憲法はこれを否認しております。それでは、本法案による各規制や手続は、憲法や国際法上どのような根拠に基づくものであり、どのような立法上の特色を有するか、御説明願います。
特に、第三国の船舶に対する規制は、国際的に十分な理解を得られるものであるかどうかも併せてお尋ねいたします。また、航空輸送に対する規制を考えなくてよいかについても御所見をお示しください。
特定公共施設利用法案は、港湾、飛行場、道路、海域、空域及び電波といった有事の際に利用が集中することが予想される重要施設等の利用調整を行うものであり、迅速、的確な国民保護のための措置と、自衛隊、米軍の行動の円滑化の観点から、極めて重要な仕組みを設けるものであると考えます。
しかしながら、法案を見るだけでは、一般国民には国として具体的にどのような利用調整が図られるか必ずしも明らかではありません。これまでの国会質疑におきましても抽象的な説明しかなされておりません。一般国民にとっては最も身近である道路を例に取って、どのような利用調整が図られ、かつその実効性はどのように確保されるのか、井上大臣から分かりやすく御説明願います。
ところで、国民の保護のための措置を十分に行うためには、自衛隊が全力を挙げて救助活動等を実施できる自然災害とは異なり、諸外国におけるような文民保護のための専門組織を設立し、住民の避難誘導や救助活動を行わせる必要があります。
この問題に関しては、衆議院の附帯決議においても、国際人道法の精神等を踏まえ、自助、共助の精神に基づく民間の仕組みを含め、実効性のある施策を検討すべきこととされ、文民保護のための専門組織の検討を行うこととされておりますが、この点に関する政府の具体的対応を井上大臣にお伺いいたします。
さらに、武力攻撃事態等において、国民の保護のための措置を的確、迅速に実施するため、訓練を行うことは非常に重要であることは論をまちません。その際、これまで重ねられてきた自然災害に対する訓練の経験の上に、それとは異なる点を国民が体得していく必要があると考えますが、その実施の在り方について、井上大臣にお答え願います。
我が国有事においては、防衛出動を命じられた自衛隊、また日米安保条約に基づき来援する米軍が共同して対処することとなり、その結果、自衛隊及び米軍ともに捕虜を拘束することが想定されますが、我が国有事に、我が国の国内において捕虜に対する虐待等の非人道的行為が生じることは万が一にもあってはならないことであります。自衛隊においても、ジュネーヴ条約等の教育に一層力を入れることは当然として、米軍に対しても、今回のイラクにおけるような事態が生じることのないよう、我が国政府としても万全の対応を行う必要があると考えますが、川口外務大臣の御所見をお聞かせください。
また、捕虜取扱法案においては、逃走捕虜の再拘束には、捕虜等警備自衛官の権限となっており、そのために新たな武器使用権限も認められておりますが、捕虜の再拘束について、警察機関との関係はどのようになっているのでしょうか。また、捕虜等警備自衛官の権限行使に当たっては、国民に対する不当な権利制限が行われないよう十分な運用上の配慮が必要と考えますが、防衛庁長官の御見解をお伺いいたします。
最後に、我が国が六者会合の場を通じて、北朝鮮の核をめぐる問題の平和的な解決に積極的な役割を果たすことは重要であります。さらに、この六者会合をベースに、将来、北東アジアの安全保障対話の継続的な枠組みへと定着させるべく外交努力を重ねる必要があると考えますが、外務大臣のお考えを伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣井上喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/16
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017・井上喜一
○国務大臣(井上喜一君) 緊急事態に対応します体制の強化に関連して御質問がございました。
緊急事態への対処につきましては、関係する省庁の機能を十分に生かしながら政府全体として総合力を発揮することが重要でございまして、これまでも内閣を中心に様々な緊急事態に対処する体制を整備強化をしてきたところでございます。
このたび、基本法の検討が行われることになりまして、その中でも緊急事態への体制の在り方といいますか整備につきまして議論をされることになっておりまして、そういった議論の動向も見ながら、今後とも危機管理体制の整備強化につきまして引き続き不断の点検を行ってまいりたいと、そんなふうに考えている次第でございます。
次に、内閣の情報収集・分析体制についてお尋ねがございました。
まず、内閣情報調査室に現在二十四時間体制で情報を集約する体制、あるいは情報収集衛星によります情報収集活動を行うための体制を整備したところでございますけれども、内閣官房を中心に、外交、防衛、治安等を担当する各省庁において収集した情報を分析する体制が整備されているところでございますが、さらに、引き続き、一層、内閣全体の情報集約あるいは分析機能の充実強化を図って、国民の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。
次に、いわゆる基本法についてのお尋ねがございました。
このたび、与党と民主党の間で緊急事態に係る基本的な法制の骨子について合意をなされたことでございまして、これらの点について更に深い議論が進んでいくものと思いますが、先ほどの答弁でも申し上げましたように、我々としてもその意義を高く評価するものでございます。
政府としても、必要な検討をこういった与党と民主党との検討に並行して真剣に行ってまいりたいと考えておりまして、武力攻撃事態対処法、警察法、海上保安庁法、災害対策基本法等の既存の法令との関係を十分に整理しまして、国民にも分かりやすい議論となるように政府としても努めてまいりたいと、そんなふうに考える次第であります。
次に、道路の利用を例にいたしまして利用調整や実効性の確保についてのお尋ねがございました。
武力攻撃事態等におきましては、住民の避難などの国民の保護のための措置や自衛隊の部隊等の行動が的確かつ迅速に行われるように道路の利用の調整を図ることは言うまでもなく大変重要なことでございます。
このために、特定公共施設利用法案におきましては、対策本部長が、その時々の状況に応じて適切に判断した上で、住民の避難や自衛隊の部隊等の行動のための道路などを示した道路の利用に関する指針を策定をすることといたしております。この指針に沿って、都道府県知事は要避難地域の住民に対し避難経路を指示するとともに、自衛隊の部隊等が行動することになりますように努めてまいりたいと、こんなふうに考える次第であります。その際、都道府県公安委員会が適切に交通規制を実施することは言うまでもございません。
次に、文民保護のための専門組織に関する政府の対応についてのお尋ねがございました。
ジュネーヴ諸条約第一追加議定書の文民保護組織としましては、基本的には、国民保護法案において、国民の保護のための措置を実施する指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関等が該当するものと考えております。この国民の保護のための措置を実施するに当たり、国全体として万全の措置を講ずるためには国民の協力が必要でございまして、国や地方公共団体が対処措置を実施する際に、それを補完する形で国民に必要な協力を要請することといたしております。
また、国民保護のための措置の実施に当たりましては、自発的な活動を行う住民の自主防災組織やボランティアに対し、自助、共助の精神に基づきまして国や地方公共団体が必要な支援を行うことによって国民保護の実効性を確保していきたいと考えております。
最後に、国民保護のための措置に関する訓練の在り方について御質問がございました。
武力攻撃事態等において、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するためには、訓練を行うことは大変重要なことであると考えております。国民の保護のための措置に関する訓練につきましては、これまで訓練を、経験を重ねてきた自然災害に対する訓練との有機的な連携について配慮することも必要であると考えておりますが、国民保護のための措置を円滑に実施するためには、地方公共団体の区域を越えた広域の避難訓練やNBC攻撃からの避難の訓練など武力攻撃事態等に特有の訓練を実施していく必要があると考えています。(拍手)
〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/17
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018・石破茂
○国務大臣(石破茂君) 山口議員にお答えを申し上げます。
まず、海上輸送規制法案につきまして、国際法及び憲法上の根拠と立法上の特色についてのお尋ねをいただきました。
国連憲章第五十一条におきまして、武力攻撃を受けております国は、自衛権を行使することが認められております。また、憲法第九条におきましても主権国の固有の権利である自衛権の行使として自衛のための必要最小限度の実力を行使できることは当然認めておるところでございます。
本法案に基づきます措置は、このように国連憲章及び我が国憲法上認められております自衛権の行使に伴う必要最小限度の範囲内の措置として実施するものであり、いわゆる伝統的な戦時国際法の下での交戦権の行使としての臨検、拿捕とは法的根拠を異にし、また、その具体的な内容につきましても、まず、実施区域は告示して定める範囲内に限られ、相手国領域は含まれないこと、次に、相手国商船についても常に停船検査が必要であること、そして、規制の対象となる物品の範囲を相手国による武力攻撃の遂行に直接資するものに限っておりますこと、さらには、回航措置は船舶の占有権や所有権を取得するものではないこととするなど、法文上もその違いを明確にしておるところでございます。
また、第三国船舶への規制は国際的理解を得られるのかと、このようなお尋ねを賜りました。
国際法上、武力攻撃を受けております国は、相手国の海上交通、通商を制約するための措置として、第三国を旗国とする船舶の積荷の検査を実施するなどの制約を加えることも可能であると、このように解されておるところでございます。
このように、本法案に基づきます措置は、このような武力攻撃を受けている国に国際法上認められている正当な権利の下で、自衛権の行使に伴う必要最小限度の範囲内のものとして実施するものであり、停船検査を実施する区域を告示して定め、外国政府等に周知することともいたしており、国際的理解を十分得られるものと考えております。
次に、航空輸送規制をどうするのかと、お尋ねをいただきました。
武力攻撃事態における航空機による輸送の規制につきましては、現実の問題として、飛行中の航空機を空中で停止させて検査するということは不可能でございます。また、各国の実行について見ましても、船舶の場合に比べ具体的な国家実行として確立をしておらないと、このように承知をいたしております。
以上のような理由から、本法案においては航空機を対象とはしなかったところであります。お尋ねの点につきましては、今後の国際社会の動向も注視してまいりたいと考えております。
次に、逃走捕虜の再拘束のための武器使用権限についてのお尋ねであります。
捕虜に対する武器使用につきましては、捕虜の拘束、抑留等、自衛権の行使に伴い実施する措置の一環として認められるものであり、自衛隊法第八十八条に規定しております武力の行使や防衛出動時に準用される警察官職務執行法第七条の規定による公共の秩序維持を目的とする武器使用とは異なる性格のものでありますので、本法律案の規定による捕虜の拘束、抑留ないし再拘束等の任務遂行のために必要な武器権限として新たに規定をいたしたものでございます。
次に、再拘束に際しての警察機関との関係についてのお尋ねをいただきました。
ジュネーヴ第三条約上、捕虜の逃走行為自体を刑事処罰することが許されません。また、現行法上、逃走捕虜を再び拘束する権限を有する機関は存在しておりません。そのようなことなどから、捕虜取扱法案におきましては、逃走捕虜の再拘束に関する権限は、犯罪捜査を担当する警察機関ではなく、捕虜の拘束、抑留に責任を有する自衛隊の捕虜等警備自衛官の権限として規定をしたところであります。
他方、捕虜等警備自衛官が再拘束するに当たって、法案上、警察機関に照会して必要な事項の報告を求めることができ、また、警察機関は捕虜等警備自衛官と相互に密接に連絡し、及び協力することとされておりますので、逃走捕虜の再拘束は警察機関との密接な連携の下で行われるものと考えております。
再拘束に際して、運用上、いかなる配慮が必要と考えるかと、このようなお尋ねをいただきました。
逃走捕虜の再拘束権限の行使に際しましては、捕虜等警備自衛官が本法律案に定められた手続に厳格に従うべきことは当然であります。また、新たに付与された権限でもあることから、その実施に必要な教育訓練も十分に行い、いかなる場合であっても国民に対する不当な権利制限にわたることのないよう、その運用に当たっては万全を期してまいらねばならないと考えております。
もとより、本法律案の規定による捕虜等の取扱いを含め、自衛隊がその任務を適切に遂行するに当たりましては、ジュネーヴ諸条約等の国際人道法に関する十分な知識を有することが不可欠であると認識をいたしております。そのため、これまでも自衛隊の各学校におきまして国際人道法に関する必要な教育を行ってまいっておるところでございますが、今後、その一層の徹底に努力をしたいと、このように考えておる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/18
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019・川口順子
○国務大臣(川口順子君) まず、在日米軍の行動に係る我が国政府の対応についてのお尋ねがございました。
今回のイラクにおける事件について、米国が関係者の処罰等の適切な措置を取りつつあることにも表れていますように、米軍は一般に国際人道法の基本的な考え方を踏まえて行動するものと考えておりまして、米軍が日本国内で国際人道法に違反する行為を行うとの前提に基づく議論、これは適切ではないと考えております。
なお、日米安保体制の下、日米間では密接な協議等が随時行われており、また、我が国に対する武力攻撃に際しては、調整メカニズムの運用を早期に開始し、整合性を確保しつつ、適切に共同で対処をすることとなることからも、米軍が共同対処行動に際し国際人道法に違反する行為を行うことは想定されません。
あえて一般論として申し上げますと、我が国政府として、米軍を含む米国政府に対して必要なことはきちんと言っていくのは当然のことでございまして、例えば、今回のイラク人拘留者の取扱いにつきましても、遺憾の意及び適切な対応への期待を米国に伝えているところでございます。
次に、北朝鮮問題に関する六者会合は北東アジアの安全保障対話の枠組みになるべきではないかとのお尋ねがございました。
北東アジアにおける安全保障の枠組みといたしまして六者による対話の場を設定していくことは、域内諸国間の信頼醸成を促進し、同地域全体の平和と安定のために有益であると考えています。
しかしながら、北朝鮮問題の六者会合につきましては、当面、核を中心とする問題に集中するものと考えています。この対話の実現に当たりましては、関係国等の意向も踏まえ、注意深く進めていくことが必要であり、ARF、ASEAN地域フォーラムですが、などの機会をとらえて、関係国間の対話の慣行を積み重ねていくことが重要であると考えています。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/19
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020・本岡昭次
○副議長(本岡昭次君) 小泉親司君。
〔小泉親司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/20
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021・小泉親司
○小泉親司君 私は、日本共産党を代表して、有事関連七法案並びに関連条約について質問をいたします。
まず指摘したいのは、日本国憲法と国の進路にかかわるこれらの重要法案が、残り会期わずか数週間という状況の下で当院の審議に付されることであります。これは、参議院の審議を軽視する以外の何物でもありません。十分な審議時間も保障されないこれらの有事関連法案を強行することは断じて許されないことをまずもって強調したいのであります。
今回の法案は、昨年強行した武力攻撃事態法を具体化し、日本国民をアメリカの戦争に動員するものであります。
まずお伺いしたいことは、今日の情勢の下で、一体アジアのどの国が日本に攻めてくるというのですか。これまで政府は、日本が攻撃を受ける可能性は万々々々が一のことだと言ってきたのではありませんか。いかなる情勢認識で有事法制を作るのですか。明確な答弁を求めるものであります。
問題は、この有事法制法案が何に対応するものかということであります。
自民党政府は、九七年、日米ガイドラインに合意し、日本有事とは無関係のアメリカの戦争、いわゆる周辺事態で自衛隊や国民を戦争に動員する日米軍事協力の強化を進めてきました。今回の有事関連法案によって、このガイドラインを実行するための法的整備はほとんど完結することになるのではありませんか。
日米ガイドラインは、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合があると明記し、周辺事態と日本有事との密接な相互関係に留意すると強調しています。これは、日本有事と直接関係のないアメリカの戦争に協力することによって日本が攻撃を受ける場合の対策ではありませんか。答弁を求めます。
今回の米軍円滑化法案には、武力攻撃予測事態で米軍への弾薬の提供、兵員、物資の輸送などの支援を決めています。周辺事態と武力攻撃予測事態が併存すると政府も認めている中で、政府が武力攻撃予測事態と認定すれば、周辺事態でも米軍に弾薬の提供を始めあらゆる物資、民間企業を動員することになるのではありませんか。一体どのように切り分けできるというのですか。日米で調整するなどというあいまいな答弁は許されません。明確な答弁を求めるものであります。
日本有事との関連でただしておきたいのは、アメリカが国連憲章違反のイラク戦争と占領の中で起こしている実態についてであります。
米軍は、今、大義なき戦争と無法な軍事占領を進め、掃討作戦を強化し、多くのイラク国民を殺りくしています。ファルージャでは、町を包囲、封鎖し、その中に戦闘機と攻撃ヘリで空襲し、無辜の市民を無差別に殺りくしました。モスクも攻撃しました。しかも、アブグレイブ刑務所で発覚した拷問、虐待行為は常態化しています。
政府はこれまで、アメリカは国際法を守る国だと正当化してきましたが、これらの行為はジュネーヴ条約と国際人道法に明らかに違反していると認めないのですか。それでもなお、アメリカは国際法に従う国だと言い続けるおつもりですか。
有事関連法案は、国民保護法案などと一くくりに総称されていますが、実態は、米軍に対し、自衛隊ばかりか国民を動員して、全面的な軍事支援を行うことが中心であります。
ところが、武力攻撃予測事態で米軍がどのような軍事行動を行うのか、米軍の軍事行動を制約する規定は全くありません。アメリカは、周知のように、先制攻撃戦略を国家政策としています。今回の法案には、このようなアメリカの先制攻撃を制約する規定はあるのですか。
また、政府はこれまで、日米安保条約に基づく日米共同作戦において核兵器の使用も敵地攻撃も可能と答弁してきました。法案は、米軍がこのような軍事作戦を実施することを制約するものにはなっていないのではありませんか。
今回の法案では、行動関連措置という米軍支援に、自衛隊や地方自治体、民間会社を動員するとしていますが、先制攻撃や敵地攻撃を行う米軍への支援も行動関連措置になるのですか。米軍が求めるものは何でも支援するという仕組みになっているのではありませんか。明確にお答えいただきたいと思います。
公共施設利用法案では、日本有事の際、米軍が港湾、飛行場、空域、海域、電波、道路を優先的に使用することを規定しています。
空域の問題を例に挙げれば、既に日米安保条約に基づく日米航空合意によって、米軍の要請があればいつでも米軍の軍事行動を優先する仕組みが作られています。沖縄では、暫定的といいながら、いまだに嘉手納ラプコンという米軍優先の体制が続けられています。その上、法案で米軍の優先使用を規定するのはなぜなのですか。
この際、日米安保条約に基づく秘密の取決めも含めて、米軍優先を規定した法律や取決めはどのようなものがどれぐらいあるのか、明らかにすべきであります。
この法案はまた、国民と地方自治体が平和を守るために築き上げてきた成果を根こそぎ奪うものとなっています。
例えば、神戸市では、港湾法に基づく港湾管理者として、七五年以来、核兵器を搭載していないという非核証明を提出しない外国船舶は入港させない方針を実施しています。公共施設利用法案では、港湾管理者が非核証明なしの米軍艦船の入港を許可しない場合は、総理大臣が国土交通大臣を指揮して入港を強行するのですか。地方自治体の権限を基本とした港湾法を改正することなしに、港湾法の権限を剥奪できるのですか。これは明白な地方自治の制限、侵害ではないのですか。明確な答弁を求めるものであります。
次に、国民保護法制について伺います。
政府は、国民保護だといいますが、その主体となる地方自治体からは、武力攻撃がどのような形態を取るか分からないのに、避難計画など考えようがないという批判と疑問の声が上がっています。
その一方、法案では、戦争のための訓練を規定しているのであります。この戦争の訓練は、一体どれくらいの規模で行うのですか。訓練を通じて、日常から戦争態勢を作ることになるのではありませんか。明確にしていただきたい。
関連法案には、国民に強制しないなどといいながら、国民をアメリカの戦争に動員する内容が随所にちりばめられています。米軍円滑化法でいう事業者には、あらゆる職種の企業、会社が含まれるのですか。自衛隊への協力には事業者の責務がないのに、なぜ米軍だけにはこの規定が置かれたのですか。事業者は米軍への支援要請を拒否できるのですか。職務命令となれば、労働者、国民が強制的に動員することにならないという保証はどこにあるのですか。併せて答弁を求めるものであります。
今日の特徴は、イラク戦争への反対運動で明らかなように、無法な戦争に対する世界諸国民の新しい平和の運動が広がっていることであります。アジアでもこの流れが確実に大きくなっています。こうしたときに有事関連法案を作ることが、いかにこの世界とアジアの新しい平和の流れに水を差し、アジアの緊張を激化させ、日本への警戒心と懸念を増幅させるかは、政府は真剣に考えたことがあるのですか。
今、大事なことは、有事法制を作ることではありません。憲法九条に基づいて、アジアの平和の流れを更に大きくするために国際的な平和外交のイニシアチブを発揮することです。日朝首脳会談で強調されたように、敵対から協調の関係に発展させることであります。これこそが有事を起こさせないための本当の保証だと思いませんか。答弁を求めるものであります。
私は、世界とアジア、日本の平和を実現するために、アメリカの戦争に日本国民を動員する、憲法違反の有事関連法案の廃案を強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣井上喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/21
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022・井上喜一
○国務大臣(井上喜一君) 有事法制整備に当たっての情勢認識についてのお尋ねがございました。
外部からの武力攻撃などに備え、国家の緊急事態に対処するために必要な法制を整備することは、法治国家としての当然の責務だと考えております。
こうした考えの下に法律の整備を行うものでありまして、昨年成立した武力攻撃事態対処法と相まちまして、今回提出している七法案・三条約により、国家の緊急事態に対処する基本的体制が整備されるものと考えております。
次に、周辺事態と武力攻撃予測事態とが併存する場合の行動関連措置につきお尋ねがございました。
武力攻撃予測事態において、我が国の平和と安全の確保のために万全の措置を講ずるのは当然のことでありまして、米軍行動関連措置法案では、必要な措置を講ずることとしております。
武力攻撃予測事態において、合衆国軍隊に対し我が国が実施する措置は、法案上もACSA上も我が国に対する武力攻撃を排除するために必要なものに限られ、また、運用上も日米間の調整メカニズムにおいて適切な調整が行われることとなります。したがって、武力攻撃予測事態における行動関連措置が、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための合衆国軍隊の行動に対して実施されることが確保されると考えております。
次に、米国の先制攻撃戦略や核兵器の使用、敵地攻撃といった米軍の行動と、これに対する我が国の支援についてお尋ねがございました。
御質問は具体的にいかなる米軍の行動を想定しているのか明らかではありませんが、武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動を実施している合衆国軍隊は、一般国際法及び国際連合憲章第五十一条において認められた自衛権の範囲内で行動することとなることから、我が国に対する武力攻撃を排除するために必要最小限度の範囲内で行動することになります。
また、米軍行動関連措置法案は、我が国が実施する措置を定めたものであり、合衆国軍隊の行動自体を規律するものではありませんが、いずれにせよ、法案に規定をする行動関連措置は法令に基づいて実施され、また、法案第四条にも規定するとおり、武力攻撃を排除する目的の範囲内において、事態に応じ合理的に必要と判断される限度において行われるものであり、無制限に米軍に支援を行うものではありません。
次に、武力攻撃事態等において、合衆国軍隊は日米安保条約に従い、我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動を取ることとなりますが、国民の保護のための措置の実施のため、その利用が必要な港湾施設などについて、同時に合衆国軍隊による利用が必要な場合も想定されるところでございます。このような場合においては、それぞれの必要性などについて、その時々の状況に応じて総合的に勘案し、優先すべき措置を適切に判断する必要があることから、合衆国軍隊の行動についても本法案の利用調整の対象といたしたところでございます。
次に、港湾施設の利用における内閣総理大臣の権限の行使についてのお尋ねでございます。
内閣総理大臣の権限行使を含む特定公共施設利用法案の運用に当たっては、その時々の対処措置の実施状況や港湾施設の利用状況などのほか、法案の趣旨、目的、事態の緊迫性などを総合的に勘案をして対応をしてまいりたいと考えております。いずれにせよ、我が国に対する武力攻撃に際し、我が国の平和と国民の安全を確保するために当該港湾施設の利用が不可欠な場合には、関係者の御理解は当然いただけるものと考えているところであります。
港湾施設の利用調整と港湾法の権限との関係などについてお尋ねがございました。
特定公共施設利用法案は、港湾管理者等が有する港湾施設の利用についての許可等の権限の一部について、法案に定められた厳格な要件を満たす場合に、内閣総理大臣が国土交通大臣を指揮して行使することができるということにしているものでございます。したがって、御指摘のような港湾法の権限を剥奪するものではありません。また、武力攻撃事態等において我が国の平和と国民の安全を確保するためにはこのような仕組みが必要であり、地方自治の本旨に反するものでもありません。
次に、訓練の御質問がございましたが、国民保護法案において、指定行政機関の長、地方公共団体の長、指定公共機関等がそれぞれ又は共同して訓練を実施するよう努める旨の規定を置いております。訓練の実施方法等については、それぞれの実施機関において今後検討していくものであります。これらの訓練は、あくまで国民を保護するために必要な平素からの備えであり、御指摘のような戦争態勢を作るようなものではございません。
最後に、行動関連措置法案に規定をする事業者の範囲等についてのお尋ねがございました。
米軍行動関連措置法案第五条に規定する事業者は、その範囲を限定しておりませんが、これら事業者に具体的な作為又は不作為の義務を課するものではございません。また、自衛隊については、自衛隊法第百三条など、自衛隊に対して事業者が行う措置に関する規定がありますが、米軍行動関連措置法案は、米軍に対して政府が行う措置に関して政府に対する事業者の協力を規定しているものでございます。さらに、協力を要請された事業者の従業員との関係については当該事業者の内部規程等の問題と考えますが、いずれにせよ、米軍行動関連措置法案は、個々の従業員はもとより、事業者に対して具体的な作為等の義務まで課するものではなく、強制的に動員するとの御指摘は当たりません。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/22
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023・川口順子
○国務大臣(川口順子君) 有事法制の整備と日米防衛協力のための指針との関係についてお尋ねがありました。
現在、御審議いただいている有事関連七法案・三条約の一部は、その成立、発効後、武力攻撃事態対処法とも相まって、日米防衛協力のための指針にも想定をされている、我が国に対する武力攻撃に際しての日米協力の実施に当たり重要な役割を果たすこととなります。したがって、これらを成立、発効させることは、我が国の安全を確保する上で非常に意義深いことと考えます。
次に、イラクにおける米軍の行為と国際人道法との関係についてお尋ねがありました。
我が国は、イラクにおける米軍の行動について、その事実関係の詳細を承知する立場になく、ジュネーヴ諸条約を含む国際人道法上の評価について確たることを申し上げることは困難ですが、そのような前提で申し上げれば、米軍は一般に国際人道法の基本的な考え方を踏まえて行動するものと考えます。
他方、今回の一部の米軍人によるイラク人拘留者に対する取扱いについては極めて遺憾であると考えており、このような我が国の認識は米側にも伝えています。米側自身、今回の事件を深刻に受け止め、謝罪や調査を行うとともに、関係者の処罰や再発防止策等に取り組んでいると承知をしています。
このような米国政府の対応にも現れているように、政府としては、関連する国際人道法を遵守するとの米国政府の立場に何ら変わりはないものと理解しています。
三番目に、米軍の優先を規定した法律や取決めについてお尋ねがございました。
御指摘の米軍優先がいかなるものか明確でありませんが、いずれにせよ、日米安保条約の目的達成のために我が国に駐留する米軍は、我が国において円滑な活動を確保するために、必要な限りにおいて、米軍には一定の権利が認められているところでございます。
四番目に、有事関連法案がアジアの緊張を激化させ、日本への警戒心を増幅させないかとの御趣旨のお尋ねがありました。
いわゆる有事法制は、国の独立と主権、国民の安全を確保するために主権国家が当然整備すべきものであり、周辺国に不安感や警戒感をもたらすようなものではないと考えています。
他方、無用の誤解を避けるとの観点から、今後とも、有事関連法制の趣旨、内容等について随時説明を行うなど、周辺諸国の幅広い理解が得られるよう努めていく考えです。
最後に、国際的な平和外交のイニシアチブを発揮することが有事を起こさせないための備えであるとの御指摘がありました。
我が国に対する武力攻撃事態等の発生を未然に防止するため、周辺諸国を始めとする諸外国との友好関係を構築するとともに、国際社会全体の平和と繁栄の実現に取り組んでいくことは重要であると考えます。
一方、このような取組を行いつつ、平素から備えあれば憂いなしとの考え方に立ち、我が国に対する武力攻撃に対処する体制を整えておくことは国としての責務であると考えております。(拍手)
〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/23
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024・石破茂
○国務大臣(石破茂君) 武力攻撃事態関連法制の整備と米国との協力関係についてのお尋ねがありました。
日米防衛協力のための指針は、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、すなわち、周辺事態における協力等、日米間の防衛協力の在り方を示したものであり、御指摘にあったように、我が国の平和と安全に全く関係のない米国の戦争に協力することで、例えば我が国がそれに巻き込まれるといったことを想定をしているものではございません。
また、武力攻撃事態関連法制の整備は、武力攻撃事態という国及び国民の安全にとって最も緊急かつ重大な事態が生じた場合における対処について、国全体としての体制の整備を図るものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/24
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025・本岡昭次
○副議長(本岡昭次君) これにて質疑は終了いたしました。
これにて午後零時三十分まで休憩いたします。
午前十一時四十四分休憩
─────・─────
午後零時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/25
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026・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
日程第一 国務大臣の報告に関する件(北朝鮮訪問に関する報告について)
内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。小泉内閣総理大臣。
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/26
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027・小泉純一郎
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、五月二十二日、北朝鮮の平壌を訪問し、日朝首脳会談を行いました。
私は、金正日国防委員長との会談で、拉致問題及び核問題やミサイル問題といった安全保障上の問題等について、大局的かつ率直な意見交換を行いました。この首脳会談の結果、今後の日朝関係を進めていく上で、日朝平壌宣言がその基礎であり、同宣言を双方が誠実に履行していくことが再確認され、国交正常化に向けて互いに努力していくことを申し合わせました。
拉致問題については、拉致被害者である蓮池薫さん、祐木子さんの御家族、地村保志さん、富貴恵さんの御家族、計五名の御家族の日本への帰国が実現しました。
曽我ひとみさんの御家族三名については、私から直接、御主人のジェンキンスさん及び二人の娘さんに来日を強く働き掛けました。しかしながら、御本人たちの意思は固く、今般の帰国は見合わされましたが、今後、早期に第三国で御家族が再会されることで調整することになりました。
安否不明の拉致被害者の方々に関する徹底した真相究明を私から強く働き掛けました。この結果、金正日国防委員長より、改めて白紙の状態から直ちに本格的な調査を行う旨の明言がありました。また、私からは、今後新たに拉致と認定される事案がある場合には真相究明の対象として取り上げる考えを北朝鮮側に伝えました。
核問題については、私から、北朝鮮による核開発は日本の安全保障にとり脅威であり、絶対に容認できないことを強調し、国際的な検証の下における完全な核廃棄を強く求めました。これに対し、金正日国防委員長からは、朝鮮半島の非核化が最終目標である、六者会合を活用して平和的解決に努力したい、核の凍結は非核化の第一歩であり、検証が伴うものである旨の発言がありました。今後、六者会合の場を通じてこの問題の平和的解決に向けて一層の努力を傾けることで意見の一致を見ました。
私より、我が国の安全保障との関連で、ミサイル問題の解決が重要であることを強調し、金正日委員長との間でミサイル発射のモラトリアム継続の再確認も行いました。
私は、今回の首脳会談の結果を踏まえつつ、とりわけ、拉致問題につき、安否不明の方々に関する真相究明、曽我さんの御一家の再会、核問題やミサイル問題の解決に向けて、早期に具体的な前進が図られることが重要と考えております。
政府としては、今後とも、米国及び韓国等関係国と緊密に連携しながら、諸懸案の包括的解決を図り、日朝関係を改善させていくことにより、日本の安全保障及び日本国民の生命と安全を確保するとともに、北東アジアの平和と安定のために一層積極的な役割を果たしていく考えであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/27
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028・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。舛添要一君。
〔舛添要一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/28
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029・舛添要一
○舛添要一君 私は、自由民主党を代表して、ただいま報告のありました訪朝報告について、総理に対して質問を行います。
膠着状態に陥っていました日朝関係を打開すべく、二十二日、総理は政治的リスクを顧みず北朝鮮に赴かれ、金正日国防委員長とのトップ会談に臨まれました。私は、このたびの総理の決断を高く評価するものであります。
外交慣例上、例のない総理の再訪朝の結果、国民皆が望んでいた拉致被害者御家族の帰国については、八名のうち、家族二組五名の帰国が実現いたしました。御家族の再会は実に一年七か月ぶりであり、国民とともに喜びたいと思います。
また、このたびの総理の決断を評価する声が高いことは、各種世論調査においても六割以上の国民の支持が得られていることでも明らかであります。
しかしながら、これで拉致問題が解決されたわけではなく、あくまでもこの再会談が拉致問題解決の一歩を踏み出したものであること、それを我々は認識しなければならないと思います。
こうした成果を踏まえた上で、曽我ひとみさんの御家族の帰国はもとより、拉致被害者十名を始め、特定失踪者に対しても、今後、北朝鮮に積極的に働き掛け、政府一丸となって徹底的な真相究明を図っていかねばなりません。
また、安全保障問題に関しては、ミサイルの発射凍結を確認したことは一定の成果と考えます。しかし、核問題に関しては、一昨年九月の日朝首脳会談以降、北朝鮮がNPT体制からの離脱を表明するなど、むしろ事態が悪化しております。北朝鮮が本当に検証可能な形で核の完全廃棄を行うのかどうか、確証がありません。総理、この点について総理はしっかりと金正日氏に詰め寄ったんでしょうか。
今後とも、我が国は、アメリカや韓国などと連携をして、六者会合の中で、北東アジアの平和と安定のために北朝鮮の核廃絶に向けて引き続き努力をしていかねばなりません。
そこで、まず、このたびの訪朝の成果やその意義について、総理自らの口から国民に分かりやすく御説明願います。
あわせて、今後の日朝国交正常化交渉の再開の見通しについてお尋ねいたします。
次に、拉致問題について伺います。
このたびの総理訪朝により、五人の御家族の帰国が実現いたしました。しかしながら、ジェンキンス氏は、総理の説得にもかかわらず、本人の意向もあり、残念ながら第三国で再会する段取りとなりました。
また、安否不明者については、金正日委員長は白紙から再調査を徹底的に行う旨の表明を行ったものの、時間稼ぎ、問題の先送りではないのかと危惧する声も聞こえてまいります。
こうした懸念を打ち消すためにも、両国が協力して行う再調査に関しては、調査期限をしっかりと設けて、日本が主体的に参加できるような体制に持っていくべきであります。総理は、昨日の衆議院本会議での質疑において、調査を十分に行うために調査期限を設けないんだとおっしゃいましたけれども、我々はいつまでも待てるわけではございません。迅速な対応を望みたいと思います。
また、よど号グループ犯人の引渡しが拉致問題の解決につながると考えますので、引き続き早期の引渡しを求めていくべきであります。
今後、我が国は、安否不明者十名及び特定失踪者に対する真相解明をどのように図っていくのかが重要となってまいります。前回の北朝鮮が示した安否不明者の報告書はでたらめばかりであり、その後、我が国からの調査要請に対して北朝鮮は何ら誠意ある回答をしてきませんでした。そのため、国民には、今回の会談を受けて再調査をすると言っても、果たして北朝鮮がしっかりとした調査を行うのかどうか、全く不信感にみなぎっているだけであります。
家族五名の帰国をもって拉致問題の幕引きとすることがあっては絶対にならないのであります。したがって、再調査に関しては、日本の専門家の参加を確保するなど、我が国の主張を最大限反映できるような検証可能な体制を整備した上で、今回約束したことの実現を急ぐべきであります。
この点についての総理の御所見をお伺いいたします。
また、曽我さん御家族の第三国での再会は、北朝鮮からの影響力が弱く、アメリカに引き渡されることのない、御家族がゆっくりと安心して時間を掛けられる場所で行うことが望ましいと考えます。また、アメリカに対しましても、ジェンキンス氏の処遇について善処するよう引き続き強く働き掛けるべきだと思いますが、家族再会へ向けた総理の御所見を伺います。
核問題に関しましては、総理は、核廃絶と国際的な検証受入れを強く働き掛けたことによりまして、金正日委員長から、朝鮮半島の非核化が最終目標である、核の凍結は非核化の第一歩であり、検証が伴うのは当然である、また六者会合を活用した平和的解決に向けて努力する、こういう旨の発言を引き出しました。また、ミサイル問題に関しましては、弾道ミサイル発射実験のモラトリアム延長の確認が行われたと伺っております。
こうした一定の前進はありましたが、一抹の不安も残ります。さきに北京で行われました作業部会でも、完全核廃棄を求める日米韓に対し、北朝鮮は核凍結を核兵器計画に限定するなど、両者の間には今なお大きな隔たりがあります。この先、北朝鮮がノドン及びテポドンミサイルなどに核兵器を搭載し得るようになり、我が国にとっても深刻な脅威となるような事態は断じて避けねばなりません。
そこで、今後、北朝鮮の核問題に対して六か国協議などでいかに取り組むのか、日米韓が連携して更なる完全廃棄の圧力を掛けていくべきであると思いますが、政府の基本方針をお伺いいたします。
今回、政府は、北朝鮮に対して二十五万トンの食糧支援を始め一千万ドルの医療支援を表明いたしました。さらに、総理は、日朝平壌宣言が遵守される限り制裁措置を発動することはない旨の発言を行いました。こうしたことは、家族の無条件帰国という政府の従来の北朝鮮に対する基本方針を逸脱するものであると、そういう指摘がございますが、これに対してはいかがお答えになりますか。
また、制裁発動のカードを放棄するのは、対話と圧力という我が国の対北朝鮮基本政策の方針転換ではないかと、そういう見方もございます。
しかしながら、これには平壌宣言の遵守という限定がなされており、またすべての外交カードを失ったわけではありません。我が国には無償資金協力などの経済協力という最終カードが残っているのであります。北朝鮮のねらいは、我が国からの大規模な経済支援にあります。しかし、我が国は拉致及び核・ミサイル問題の解決なくしては国交正常化なく、国交正常化なくして経済支援はあり得ないという基本方針を有しております。我々は、こうした基本方針を崩すことなく、北朝鮮に対して拉致問題、安全保障問題の包括的な解決を求めていかねばなりません。
そこで、たとえ例外的な措置としても、日朝正常化交渉の過程においての本格的な経済支援はあってはならないと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
今後、六月上旬には先進国サミット、また下旬には六者協議の第三回会合が開かれますが、今回の総理の訪朝を踏まえて、こうした機会に我が国は更なる外交努力を展開すべきと考えます。これらの外交舞台における総理の戦略についてお伺いいたします。
以上、伺ってまいりましたが、御家族が高齢となり、一刻も早い解決が急がれる拉致問題を始め、我が国の安全保障の懸案となっている核問題、ミサイル問題などに対して、総理が今後とも積極的に取り組まれることを御期待申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/29
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030・小泉純一郎
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 舛添議員にお答えいたします。
今回の訪朝の成果、意義についてでございますが、先ほど御報告したとおり、今回の訪朝は、日朝関係の現状を踏まえ、日朝双方が日朝平壌宣言を履行していくことを改めて確認することが我が国の国益に資するとの大局的な政治判断によって決断したものであります。
具体的には、拉致被害者家族五名の帰国を実現し、曽我ひとみさんの御家族についても第三国での再会につき調整することとし、安否不明の方々の真相究明に向けた白紙状態からの徹底した調査を直ちに再開することになりました。
また、核問題については、私より、国際的な検証の下における核廃棄を強く求めました。これに対し金正日委員長自身から、凍結は非核化への第一歩であり、当然検証を伴うものとの発言があり、六者会合を通じ核問題の平和的解決に向けて一層の努力を傾けることで合意しました。
さらに、ミサイル発射のモラトリアム継続を再確認するなど、我が国のみならず地域の安全保障にとって重要な諸問題についても成果があったと考えます。
日朝国交正常化交渉の再開の見通しでございますが、国交正常化交渉の再開については、政府として従来より、まずは拉致被害者御家族の帰国を実現し、その上で再開された国交正常化交渉の中で安否不明者に関する真相究明も行っていくという方針であります。今次訪朝の結果を踏まえ、しかるべき時期に日朝国交正常化交渉の再開に向けて調整を行っていく考えであります。
安否不明の方々に関する問題ですが、本件に関し、今回北朝鮮から新たな情報提供はありませんでしたが、金正日国防委員長は、改めて白紙に戻り、早期に本格的かつ徹底した調査を行う旨明言しました。安否不明の方々についての真相究明は一刻も早く行う必要があります。我が国としては徹底的な調査を求めるとの観点から、現在のところ調査に期限を求めることは考えておりませんが、早急に先方の再調査の結果を求めるとともに、我が国独自の調査結果とも突き合わせて真相の解明を図っていく考えであります。
ジェンキンス氏の問題ですが、政府としては、今回の日朝首脳会談及びその後の私とジェンキンス氏とのやり取り、並びに曽我さんの御意向を踏まえ、曽我さん御一家が一日も早く適切な第三国において再会し、再び生活をともにできるよう最大限に努力してまいりたく、米国とも鋭意話し合っていく考えであります。
今後の核問題への取組、各国との連携についてですが、北朝鮮の核開発は我が国の安全保障にとって重大な脅威であり、六者会合を通じて平和的に解決するというのが我が国の基本的考えであります。先日の訪朝では、金正日国防委員長に対し、北朝鮮による核開発は絶対に容認できないことを強調し、国際的な検証の下における完全な核廃棄を求めました。
我が国としては、米国、韓国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、完全、検証可能かつ後戻りできない核廃棄という目標に向け、建設的な役割を果たしていく考えであります。
日朝国交正常化についてですが、政府としては、今回の日朝会談の成果を踏まえ、今後とも、日朝平壌宣言に沿って、拉致、核、ミサイルといった日朝間の諸懸案を包括的に解決した上で、北東アジア地域の平和と安定に資する形で日朝国交正常化を実現すべく、引き続き努力を傾注していく考えであります。
また、国交正常化なくして北朝鮮に対する本格的な経済協力はないという方針に変わりはありません。
今回の訪朝を踏まえたG8サミット、あるいは次回六者会合における問題についてでございますが、G8サミットでは、今後の六者会合の進展にもつながり得る今回の訪朝の成果を説明し、我が国の対北朝鮮政策に対する理解と支持を求めたいと考えております。
次回六者会合では、今回の訪朝の成果を踏まえ、引き続き、米韓両国を始めとした関係国と緊密に連携しつつ、核問題等の平和的解決に取り組んでいく考えでございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/30
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031・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 広野ただし君。
〔広野ただし君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/31
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032・広野ただし
○広野ただし君 民主党・新緑風会の広野ただしです。
ただいま議題になりました小泉総理の北朝鮮訪問に関する報告について、民主党・新緑風会を代表して質問いたします。
まず、今回の小泉総理の再訪朝は、拉致被害者の御家族五名の帰国を除けば、大失敗だと申し上げたいと思います。
確かに、拉致被害者の御家族五名の帰国は大変歓迎すべきことではありますが、他方、曽我さんの御家族三名が北朝鮮にとどまったままであること、また、横田めぐみさん等、安否が確認されない十名の拉致関係者の方々の情報、更には数十名あるいは数百名と言われる特定失踪者の情報などがいまだに全く明らかになっていないなど、総理自らが二度も訪朝しているのにもかかわらず、誠に不十分な成果しか出ていません。
北朝鮮による日本国民に対する拉致問題全体を見れば、成果は誠に不十分で、本当に残念でたまりません。この拉致問題に長年苦しまれている関係者の皆様に、改めて心からお見舞いを申し上げるものであります。
元々、拉致問題は、北朝鮮は否定していますが、明らかに組織的で、かつ憎むべき国家犯罪であります。北朝鮮は、直ちにすべての情報を明らかにし、拉致関係者を日本に帰国させて当然であります。何か、北朝鮮にお願いをして、あるいは頼み込んで、取引をして返してもらうといった筋合いのものではありません。日本国、そして日本国民の主権が北朝鮮によって踏みにじられたのです。即時かつ無条件で原状に復帰させ、帰国させることが当たり前なのであります。
政府のなすべき最優先課題は、日本国民の生命、財産を守ることであるはずです。しかし、小泉総理を始め日本政府は、二十数年もの長い間、多数の拉致問題から目を背け、真剣にこの問題に取り組んできていません。今回の小泉総理の再訪朝も、日帰り外交で、かつ金正日委員長との会談もわずかに一時間足らずというもので、真剣に拉致問題全体を解決しようという気概や意気込みが伝わってきません。
そこで、まず、拉致問題全体の解決にかかわる小泉総理の気概と見解を伺います。
さらに、小泉総理に伺います。
曽我さんの御家族三名の帰国のための今後の取組、そのスケジュール等をお聞かせください。
曽我ひとみさんの夫のジェンキンスさんについて、米軍からの脱走の罪等、米国からの訴追について、総理は自分が保証するとしてジェンキンスさんを説得しようとされたようでありますが、日米地位協定上、あるいは日米犯罪人引渡し条約上、成算があってそのように説得されたのか、その根拠をお示しください。また、この点、アメリカ大統領あるいは国務長官、国防長官等と折衝されたのか、総理の答弁を求めます。
横田めぐみさん等安否が確認されていない十名の方々の再調査はいつから始まり、いつまでにはっきり情報が得られるのか、お聞かせください。
数十名あるいは数百名と言われる特定失踪者に対する情報、そしてその取扱いは対北朝鮮との関係でどうなるのか、また、日本の捜査当局では再捜査などどのように取り図られているのか、お聞かせください。
北朝鮮側からの拉致問題に対する明確な謝罪はいまだに行われていません。はっきりと謝罪等を要求すべき等と思いますが、総理の見解を伺います。
今回の小泉総理の再訪朝・日帰り外交は、北朝鮮に拉致家族の出迎えに行かされたもので、北朝鮮の人質外交の術中にはまったもの、また、人道支援と称しているものの、食糧二十五万トン、医薬品一千万ドル、約十一億円を人質と引換えに取引したものとも言われています。
また、北朝鮮は拉致家族を小出し小出しで帰国させ、その都度、人道支援などの見返りを取る戦術という見方もあります。このような見方に総理はどのように反論されるのか、具体的に、かつ国民に分かりやすく御説明ください。
人道支援で二十五万トンの食糧支援が行われるようですが、場合によってはこの援助は百億円を突破するような膨大な金額になるものと予想されます。アメリカやヨーロッパに比べ、一けたも二けたも多い支援となります。
北朝鮮は軍事独裁国家であり、テロ支援国家、拉致を行う極めて危険な国家であります。決して友好国家ではありません。まして、国交正常化以前であります。
元々、小泉内閣の北朝鮮外交は、国交正常化で名を上げたいという功名心が先走り、焦って前のめりになっているという批判があります。そんなに焦って国交正常化を急ぐ必要がどこにあるんですか、大きな疑問であります。昔から、焦った外交ほど失敗すると言われています。
ところで、なぜ貴重な国民の税金を、赤字国債を出し借金までして、欧米に比べ格段に多く北朝鮮に支援するのか、総理の答弁を求めます。
総理は、山崎拓元自民党副総裁や平沢勝栄衆議院議員を前もって裏取引の下交渉に派遣したという見方もありますが、その真相をお聞かせください。
外務省等の正規ルートではなく、何か不明瞭かつ不透明な裏コネクションを利用することによって裏取引があったのではないか、また、それによって人道支援の量あるいは金額が跳ね上がったのではないかと言われています。
また、田中均外務審議官を重用しておられるようですが、なぜか、お聞かせください。
日本テレビの食糧支援二十五万トン報道に激怒し、マスコミに圧力を掛けた事実にどのような責任を取るのか、総理の明確な答弁を求めます。
拉致問題の一部解決に併せて、人道支援とはいえ食糧二十五万トン、医薬品一千万ドル、約十一億円の支援を表明したことは、見返りの取引としてしか受け止められず、日本はやっぱりお金で解決をするのかと国際的に受け止められ、日本の将来に大きな禍根を残すことになりました。
まして、日朝平壌宣言を守る限り経済制裁を発動しないと明言したことは、今国会で多くの国会議員が努力して成立させた対外送金の禁止が可能となる外国為替法の改正、そして今話題となっている特定船舶の日本への入港禁止の法案等、拉致問題の全容解明、全面解決の有力な外交カードを自ら捨ててしまうおそれのある外交上の大失態であります。対話と圧力と口では言いながら、誠に腰の引けた弱腰外交と言わざるを得ません。
総理は、自分が訪朝しなければ拉致被害者五人、そしてその家族五人の日本への帰国は実現しなかったかのように言われますが、民主党政権であれば、日本の威信を保ちながら対話と圧力をうまく活用し、もっと良いタイミングで必ずやもっと良い成果を上げることができたと断言します。総理の答弁を求めます。
我が国の安全保障に重大な影響をもたらす北朝鮮の核の問題、ミサイルの問題、武装工作船、そして麻薬、けん銃等密貿易の問題は平壌宣言の再確認程度にとどまっており、その後の北朝鮮の核不拡散条約、NPT脱退や核保有の示唆などを強く批判するでもなく、六か国協議に丸投げする態度では、関係諸国も心の中では、日本の安全保障のことなのに、責任を持ってもっと真剣かつ緊迫感を持って臨めとあきれ返っています。小泉総理の日本の安全保障に対する切迫感のなさに、心ある国民は憤慨しているのです。
小泉内閣は、日本からはるかに離れたイラク問題では、大量破壊兵器を持っているかどうか明確でないまま、英米軍のイラク攻撃にいち早く賛意を表明し、アメリカ、イギリスに安易に追従して、現在、自衛隊も派遣して協力しています。
それに対して、北朝鮮は核兵器の保有を示唆しているにもかかわらず、また支援国家で、正に日本に大きな脅威を直接的に及ぼしている国です。日本のもっと毅然とした北朝鮮外交が求められているのです。総理の見解を求めます。
そもそも、今回の訪朝は総理の独断で日程を早めて行われました。その裏には、小泉総理自身の年金未納問題を隠ぺいする意図もあったのではないかとも言われています。
小泉総理は、年金問題では今後十四年間にもわたって毎年毎年保険料を引き上げ、国民に合計二十兆円もの負担を押し付けるばかりか、本人御自身は、国民年金未加入の期間は入っていないのだから未納ではないと、まやかし的かつごまかし的答弁をしてしらっとしています。これまで短い言葉で、払うべきときには払っていますと言っていたわけですから、明らかに国民に対する背信的、詐欺的答弁です。
ところで、小泉総理の年金問題でありますが、一九七〇年四月から一九七四年十一月の間、三福不動産に勤務し、サラリーマンが入っている厚生年金に加入していましたが、勤務実態がないのに月給約二十万円を支給され、厚生年金保険料を支払っていたとの情報がありますが、この事実関係を総理に伺います。
また、総理は、サラリーマンの経験がないとかつて国会で答弁されましたが、そのことと、このサラリーマンの加入する厚生年金支給問題との整合性を明確にお答えください。
勤務実態がないのにこのようなことが行われていたとしたら、誠にゆゆしきことであり、総理として極めて重大な責任があります。
また、総理は、この五月十四日、北朝鮮への再訪問の発表と併せて、一九八六年以前の年金の加入・未加入状況、そしてその支払状況、さらに八六年以降の年金納付状況を発表されましたが、その納付記録を厚生労働委員会でも要求していますので、是非とも委員会にお示しいただきますようお願いいたします。
今指摘しましたことは、三十兆円の国債枠という約束を国民にしながら、守れなければ大したことはないと言って平然と公約をほごにする総理の政治姿勢と共通する誠に無責任かついい加減な実態を表すものであり、国民のトップとしてあるまじきことであります。総理の責任ある答弁を伺います。答弁を逃れずに必ず答弁されることを強く要請いたします。
総理が総理なら他も推して知るべしです。
細田官房長官は秘書給与を道路公団ファミリー企業から払ってもらっている政治資金規正法違反事件、年金未納の閣僚、六閣僚が居座ったまま、そして年金改正法案担当の副大臣二人が年金未納、さらに年金を無駄遣いしたり運用で六兆円も損金を出しても平気の平左でだれも責任を取らない年金官僚、日本歯科医師会政治連盟の多額献金スキャンダル等、社会保険庁の泥まみれ、金まみれの体質、言わば小泉内閣は総無責任体制の政府であり、スキャンダルだらけの汚れた政府・与党であります。
国民は年金未納問題が発覚するたびに驚き、怒り、今ではみんな白け切っています。これではばかばかしくてだれも年金を支払いたくなくなります。このような状況を引き起こした小泉内閣の責任は極めて重大です。大丈夫、大丈夫と言っても年金は本当に大丈夫なのか、老後はどうなるのか、国民は大変不安になっています。
倒産、失業、自己破産、自殺者、犯罪、ホームレス、不登校、教育の荒廃、農業、環境の問題と、数え上げれば日本の将来は全く真っ暗です。小泉さんが人気取りをやっているときではありません。真摯に、かつ緊迫感を持って直ちにこれらの問題に立ち向かわなければなりません。
しかし、小泉さんではもう駄目です。もう無理です。この三年間でこのことがはっきりしました。早く交代してもらわなければ日本はどんどん悪くなるばかりです。
民主党にはこれらの問題に直ちに、かつ的確に対応できる具体的プランがあります。民主党は国民の皆さんの期待にこたえて、来るべき参議院選挙に勝利し、小泉政権を打倒する覚悟であるという強い決意を申し述べまして、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/32
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033・小泉純一郎
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 広野議員にお答えいたします。
拉致問題の解決に向けた私の考えでございますが、今般、拉致被害者御家族五名の方々の帰国が実現しましたが、曽我ひとみさんの御家族の問題、安否不明の拉致被害者の方々に関する真相究明について、引き続き、今回の首脳会談で得られた進展を踏まえ、政府として最大限の努力を払う考えであります。
曽我さんの御家族の帰国についてでございますが、政府としては、今回の日朝首脳会談及びその後の私とジェンキンス氏とのやり取り並びに曽我さんの御意向を踏まえ、曽我さん御一家が一日も早く適切な第三国において再会し、再び生活をともにできるよう最大限努力していく考えであります。
ジェンキンス氏らの問題と米国との関係についてですが、私は、ジェンキンス氏に対して来日を説得した際、同氏の御家族が日本において一緒に暮らせるよう日本政府として最善の努力を払うということをお伝えしました。米国政府との間では、ジェンキンス氏に関して人道的観点から一定のやり取りを行ってきていましたが、日朝首脳会談に先立って米国との間でその身柄の扱いについて何らかの合意があったということはありません。
安否不明の方々に関する問題ですが、我が国としては、早急に北朝鮮側に再調査を求める一方、我が国独自の調査結果とも突き合わせて真相の究明を図っていく考えです。徹底的な調査を求めるとの観点から、現在のところ、調査に期限を求めることは考えていませんが、できる限り早期に成果を得るべく努力してまいります。
いわゆる特定失踪者についてですが、政府としては、従来より、被害者と認定された十五名の方々に限定することなく、広く北朝鮮による日本人拉致という観点から、諸外国との間で情報収集・交換を行ってきております。
今回の首脳会談においても、今後新たに拉致と認定される事案がある場合には真相究明の対象として取り上げていく旨、北朝鮮側に伝えております。
特定失踪者への捜査当局の対応でございますが、警察においては、既に拉致被害者と認定されている十五名以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があることから、今後とも関係機関と緊密に連携を図りつつ、国の内外からの情報収集や関連する捜査、調査を推進して、実態の解明に全力を挙げてまいります。
拉致問題に関する謝罪でございますが、一昨年九月に私が訪朝した際、金正日国防委員長は拉致問題について、過去に北朝鮮当局が行ったことを率直に認め、遺憾なことでありおわびする旨、明確に述べております。
拉致被害者御家族の帰国と北朝鮮への人道支援の問題ですが、今般の首脳会談を踏まえ、我が国としては、国連機関を通じ、食糧及び医薬品等の人道支援を行う考えであることを表明しました。これは、国連機関の人道支援についてのアピールにこたえ、国際社会の一員として支援するという観点から判断したものであり、北朝鮮側に対して見返りを与えたというものではありません。
北朝鮮への人道支援の額が欧米諸国に比べてけた違いに多いのではないかとのお尋ねでございますが、我が国が最後に北朝鮮食糧支援を行った二〇〇一年以降、米国は毎年約十万トンから四十万トン、韓国は毎年約十万トンから五十万トンの食糧支援を北朝鮮に対して行っており、今般表明した我が国の支援が特段多いとは考えておりません。
いずれにせよ、さきに述べたように、今回の支援の量は、国連機関のアピールに対し国際社会の一員として応分の貢献を行うという観点から決定したものであります。
政府間でない北朝鮮側との接触等に対しお尋ねがございましたが、今回の首脳会談は、日朝関係の現状を踏まえ、日朝双方が日朝平壌宣言を履行していくことを改めて確認することが我が国自身の国益に資するとの大局的な政治的判断によって決断したものであります。また、政府としては、一体となって対北朝鮮外交に取り組んできており、個々の案件について最も適切な陣容で対処してきております。
報道機関に圧力を掛けたのではないかとのお尋ねでありますが、私の訪朝に関する事前の報道をめぐって報道機関との間で何か食い違いがあったようでありますが、やはり正しい報道をしてもらうなら日ごろから記者諸君との円滑な意思疎通が必要であり、そういう面についてよく配慮して対応するように指示したところであります。
いずれにしても、最終的には問題のない形で調整が付いたものと承知しております。
北朝鮮に対する経済制裁についてですが、日朝平壌宣言は、日朝双方が日朝間に存在する諸問題に誠意を持って取り組むとしております。政府として、北朝鮮に対し、拉致問題の解決に向けた前向きかつ誠意ある対応を促していくため、その時々に最善の方策を取っていく考えでありますが、いずれにせよ、日朝平壌宣言の精神に従った取組がなされようとしている現時点において、拉致問題を理由として北朝鮮に対しいわゆる経済制裁を発動する考えはありません。
北朝鮮による安全保障上の脅威と我が国の対応についてですが、今回の首脳会談では、核問題について金正日委員長から、凍結は非核化への第一歩であり、当然検証を伴うものとの発言があり、六者会合を通じ、核問題の平和的解決に向けて一層の努力を傾けることで合意しました。我が国としては、米国、韓国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、完全、検証可能かつ後戻りできない核廃棄という目標に向け、建設的な役割を果たしていく考えであります。
さらに、ミサイル発射のモラトリアム継続を再確認するなど、我が国のみならず、地域の安全保障にとって重要な諸問題についても成果があったと考えております。
なお、年金の問題については訪朝の問題とは直接関係はないものと考えておりますが、お尋ねがありましたのでお答えいたします。
御指摘のあった期間、私が厚生年金に加入していたことは事実ですが、不動産会社での勤務実態がなかったということはありません。
また、当時は議員秘書、後に衆議院議員との兼職という立場にあり、サラリーマンと聞いて国民が一般的に思い浮かべるいわゆる会社員ではありませんでした。サラリーマンの経験がないとの私の発言はこうした点を踏まえて申し上げたものであります。
なお、既に社会保険庁発行の被保険者記録を官邸記者クラブの要請に応じて閲覧に供したところですが、私の年金納付記録の厚生労働委員会への開示要求については、理事会で協議が行われているところと承知しております。その結果を待って、適切に対処する考えであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/33
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034・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 千葉国男君。
〔千葉国男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/34
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035・千葉国男
○千葉国男君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま小泉総理から御報告のありました日朝首脳会談につきまして御質問いたします。
二〇〇二年九月十七日、小泉総理が最初に北朝鮮を訪問されてから一年八か月、この間、拉致被害者五人の皆様は、帰国の喜びもつかの間、御家族離れ離れになり、北朝鮮の八人の御家族との再会のめども立たず、今日まで余りにもつらい日々を送られてきました。また、安否未確認十人の拉致被害者の御家族の再調査要請、そのほか特定失踪者の安否など、関係者の皆様の長きにわたるその苦悩は計り知ることができません。
小泉総理は、北東アジアの平和と安定の実現のため、また、様々なこれら御家族の思いの象徴であるブルーリボン・バッジを胸に平壌空港に降り立たれました。
そこで、まずお伺いいたします。今回の訪朝の成果について、国民の世論調査を見ますと、総体的には高い評価がなされています。今の小泉総理の率直な心境をお伺いしたいと思います。
日本国民と拉致被害者の御家族の方たちがいちずに思い続けてきたことは、この膠着状態にある局面を解決するためには、再び二国間で首脳同士が胸襟を開いて対話する以外に解決の道はないという切なる願いでありました。これを受けて小泉総理は、勇気を持って二回目の訪朝を決断されたことを高く評価いたします。
会談の結果、無事帰国されました地村さん御夫妻の三人の子供さん、蓮池さん御夫妻の二人の子供さんが両親の元に帰れましたことを私たちは心の底から率直に喜び、祝福したいと思います。そして、五人の子供さんが一日も早く日本の生活に慣れ、新しい出発ができますように、国と地方自治体が緊密な連携を図って、教育、就職等、自立に向けて万全の対策を講ずるべきだと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
残念ながら、帰国のかなわなかった曽我ひとみさんの御主人のジェンキンスさん、二人の子供さんについては、日朝間において第三国でお会いすることが合意されました。具体的に今後どう取り組まれるのか、総理の御見解をお伺いします。
そして、何としても四人そろって生活がしたいという希望を達成させていただきたい。特に、米国に対し訴追の免除が可能になるよう粘り強く交渉し、曽我さんの願いが一日も早く実現できますよう取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
今回の訪朝に対し、安否不明の拉致被害者十人の調査状況を確認することも重要な被害家族の強い要請でありました。
総理は、日朝首脳会談を終えて、夜十時過ぎから、拉致被害者と家族会のメンバーに対し再訪朝の御報告をなされました。御承知のように、予想していた最悪の結果が出た等と厳しい批判が浴びせられました。しかし、この言葉は、家族会ならではのやむにやまれぬ切実な思いの言葉であります。総理、この言葉をしっかりと受け止めていただきたいと思います。
これら安否不明の拉致被害者十人について、金正日国防委員長は、前回の報告を白紙にし、再調査する旨、回答がありました。
この回答に対し、被害者家族との認識の乖離はうずめ尽くし難いものがあります。私は、二十二日夜の拉致被害者と家族会の報告の声を、是非、金正日国防委員長にも聞かせたいという思いで一杯であります。
この再調査の実効性を確保するため日本政府はどう取り組まれるのか、特定失踪者の調査について北朝鮮はどう対応するのか、お伺いをいたします。
拉致被害者と家族の納得のいく調査結果を得るため全力で取り組んでいただきたい。納得のいく調査結果が示されない場合、どのような対策、制裁措置を考えているのかお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/35
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036・小泉純一郎
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 千葉議員にお答えいたします。
今回の訪朝の評価でございますが、今回の訪朝は、日朝関係の現状を踏まえ、日朝双方が日朝平壌宣言を履行していくことを改めて確認することが我が国の国益に資するとの大局的な政治判断によって決断したものであります。
具体的には、拉致、核、ミサイルといった諸懸案について、北朝鮮側の前向きな対応を強く求め、重要な成果を得たと考えています。
世論調査等における評価については、これを謙虚に受け止め、北東アジア地域の平和と安定に資する形で日朝国交正常化を実現すべく、引き続き努力を傾注していく考えであります。
帰国した五人の子供の支援でございますが、政府としては、拉致被害者の御家族の方々が社会生活を円滑に営むことができるよう、御家族の要望を踏まえ、給付金の支給、生活相談、雇用・教育機会の確保など拉致被害者支援法に基づき、総合的な支援策を関係自治体と連携して効果的に実施することとしております。
ジェンキンス氏らの問題ですが、政府としては、今回の日朝首脳会談及びその後の私とジェンキンス氏とのやり取り並びに曽我さんの御意向を踏まえ、曽我さん御一家が一日も早く適切な第三国において再会し、再び生活をともにできるよう最大限努力してまいりたく、米国とも鋭意話し合っていく考えであります。
安否不明の拉致被害者の方々についてですが、安否不明の方々についての真相究明は一刻も早く行う必要がありますが、我が国のみでできることには限界があり、北朝鮮側の協力が是非とも必要であります。今回、北朝鮮側が本件は解決済みであるとの従来の姿勢を改め、白紙に戻り、早期に本格的かつ徹底的な調査を行うとしたことは極めて重要であると考えております。
我が国としては、早急に北朝鮮側の再調査の結果を求める一方、我が国独自の調査結果とも突き合わせて真相の究明を図っていく考えであります。
また、今後新たに拉致と認定される事案がある場合には、真相究明の対象として取り上げていく考えであり、この旨、今回の首脳会談においても北朝鮮側に伝えました。
いずれにせよ、政府としては、北朝鮮に対し、安否不明の方々に関する調査を含め、拉致問題の解決に向けた前向きかつ誠意ある対応を促していくため、その時々に最善の方策を取っていく考えであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/36
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037・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 吉岡吉典君。
〔吉岡吉典君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/37
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038・吉岡吉典
○吉岡吉典君 日本共産党を代表して、小泉総理の訪朝報告に対して質問を行います。
日朝間の懸案を交渉によって平和的に解決することを主張し続けてきた我が党は、小泉総理の訪朝計画が発表されたとき、日朝首脳会談を通じて、拉致問題を始め日朝平壌宣言で確認された方向の前進を期待したいとの態度を表明しました。訪朝の結果、日朝平壌宣言を日朝関係の基礎として確認し、拉致問題、核・ミサイル問題などで我々が期待した方向での一定の前進があったことを歓迎いたします。
我が党が日朝平壌宣言を重視するのは、これが北朝鮮による拉致問題、核・ミサイル問題、不審船問題など、今日の懸案の包括的解決とともに、日本の植民地支配という過去の問題の清算という目標を明確にし、この過去、現在の諸懸案の解決の上に日朝国交正常化を図るという道理の合った現実的な解決方法を示すものだからであります。関係各国を始め、国際的にも非常に強い支持と期待を受けているものであります。
ところで、国交正常化交渉の再開をめぐっては、政府・与党内に議論があると報道されていますが、総理は日朝平壌宣言を基礎にした国交正常化交渉をどういう手順で進める考えですか。お答え願います。
再確認された日朝平壌宣言に基づいて日朝関係を改善することは、日朝二国間にとどまらず、六か国協議と併せて北東アジアの平和と安定につながる国際的にも意義のあるものとして期待されているのであります。
最近、東京で行われた日中韓三国の学者によるある国際シンポジウムで、六か国協議とARF、ASEAN地域フォーラムが合わさって北東アジアの平和と安全保障の枠組みができるだろうという発言がありました。
総理自身、訪朝に先立って、今回の私の平壌訪問を機に、北朝鮮との交渉を更に進めていきたいと思っています。そして、早期に北東アジア地域の平和と安全に資する形で北朝鮮との間の国交正常化を何とか実現したいと思っているんですと語っていました。
総理、今回の訪朝は、こうした発言に見られる北東アジア、さらにアジアと世界の平和を進めたいとする期待に沿うものになったと考えていますか。
次は、拉致問題です。
今回の拉致被害者家族五人の帰国が実現したことを率直に喜ぶものであります。拉致問題は、日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として許すことのできないものであります。
他国に侵入し、少女を含む平和な生活を営んでいる市民を拉致するなどという、人権じゅうりん、主権じゅうりんの犯罪は、いつの世にも許さないものであります。それが国連憲章、世界人権宣言、国際人権規約など、基本的人権のシステムが確立された七〇年代、八〇年代に発生したのです。なおさら許せないことでございます。我が党は、こうした立場から、拉致問題の徹底的な究明を求めてきました。
前回の首脳会談で金正日軍事委員長が、拉致の事実を認めて謝罪しました。そして、今回の会談で、安否不明とされた十人について、北朝鮮側が取っていた解決済みという態度を改め、従来の調査結果を白紙にして再調査することを約束し、日本側も参加して徹底的な調査を進めることで合意しました。
この合意は、どのようなやり取りの結果そうなったのですか。新たな合意を踏まえての再調査のやり方について答弁を求めます。
次に、核問題についてであります。
平壌宣言は、双方が、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」と宣言しました。残念ながら、その後、核問題をめぐる厳しい米朝対立が生まれ、日本を含む北東アジア諸国に不安を与えました。宣言の核問題の合意はどこへ行ってしまったのかと言える状況となりました。しかし、その後の各国の努力で、大局的には六か国協議で解決することが期待できる方向にあると外務大臣は説明しております。
そこで、六か国協議において、核問題で一致に至っている点、まだ一致に至っていない点を分かりやすく整理して答弁していただきたいと思います。さらに、今回の会談を踏まえて総理がどのような見通しをお持ちか、併せてお伺いいたします。
総理は、金正日委員長から、朝鮮半島の非核化が最終目標である、六者会合を活用して平和的解決に努力したい、核の凍結は非核化の第一歩であり、検証が伴うものであるなどの発言があったことを前進と報告しました。
今回の会談で、総理の核廃棄に関する説明を金委員長はどう受け取ったのですか。昨日の衆議院本会議では明確な答弁がありませんでしたので、改めてお伺いします。
核兵器を廃絶し、非核の世界を実現することに世界各国はもっと真剣な努力が必要であります。日本は、唯一の戦争による被爆国としてその努力を一層強める責任を持っていると思いますが、総理はどうお考えですか。
日朝間の諸問題の包括的な解決という点では、日本の植民地支配の清算という日本側に努力が求められるもう一つの重大問題があります。
日朝平壌宣言で、日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明し、その償いの内容についても合意しています。その内容の具体化がなければ、真の新しい日朝関係は成り立ちません。
北朝鮮側に拉致問題など今日の懸案解決で誠実な態度を求められるのと同じように、我が国もこの植民地支配の歴史を誠実に、事実に沿って清算する誠実な態度を取らなければなりません。一部の議論に見られる植民地支配正当化の居直り的態度はあってはならないことだと思います。総理のお考えをお尋ねいたします。
私は、日朝関係に携わってきたある政府の関係者の一人から、拉致犠牲者家族の話を聞き、その苦悩を知り、拉致家族の気持ち、苦労が分からなければ日朝交渉を成功させることはできないだろうと思った、同時に、拉致家族者の苦労が分かれば分かるほど、かつて日本に強制連行された人々の家族の苦悩がどんなに大きいものだっただろうかと考えさせられた、その苦労が分からなければ、過去の清算をめぐる日朝交渉を成功させることは難しいだろうと思ったという話を聞いて、感銘を覚えたことがあります。
過去の歴史の清算についての総理の見解をお伺いしたいと思います。
植民地支配を誠意を持って清算することは、北朝鮮との関係だけでなく、韓国との関係でも積極的な意味を持つことになり、アジア諸国からも好感を持って受け入れられ、信頼と友好を深める力にもなるでしょう。
最後に、北東アジアの平和と安定にも希望を与える日朝首脳会談の成果が今後あらゆる面で生かされることを求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/38
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039・小泉純一郎
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 吉岡議員にお答えいたします。
日朝国交正常化交渉についてですが、国交正常化交渉の再開については、政府として、従来より、まずは拉致被害者御家族の帰国を実現し、その上で再開された国交正常化交渉の中で安否不明者に関する真相究明も行っていくという方針であります。今次訪朝の結果を踏まえ、しかるべき時期に、日朝国交正常化交渉の再開に向けて調整を行っていく考えであります。
今回の訪朝と北東アジアの平和についてですが、政府としては、今回の日朝会談の成果を踏まえ、今後とも、日朝平壌宣言に沿って、拉致、核、ミサイルといった日朝間の諸懸案を包括的に解決した上で、北東アジア地域の平和と安定に資する形で日朝国交正常化を実現すべく、引き続き努力を傾注していく考えであります。
安否不明者の再調査でございますが、今回の首脳会談では、安否不明の拉致被害者の方々に関する真相究明が極めて重要であることにつき、私から金正日国防委員長に強く働き掛けました。これに対して、金正日国防委員長は、改めて白紙に戻り、早期に本格的かつ徹底した調査を行う旨、明言いたしました。
我が国としては、早急に先方の再調査の結果を求める一方、我が国独自の調査結果とも突き合わせて真相の解明を図っていく考えであります。
核問題に関する六者会合及び日朝首脳会談におけるやり取りでございますが、二月に開催された第二回六者会合においては、朝鮮半島の非核化が共通の目標であること、対話を通じ核問題を平和的に解決すること、第三回会合を六月末までに開催すること等で一致が見られました。他方、北朝鮮に対し原子力の平和的利用を認めるか否か、そもそも、北朝鮮はウラン濃縮計画を有しているか否かといった点については、関係六者の間で相違があります。
我が国としては、米国、韓国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、完全、検証可能かつ後戻りできない核廃棄という目標に向け、六者会合の場で建設的な役割を果たしていく考えであります。
首脳会談では、私から金正日委員長に対し、国際的な検証の下における完全な核廃棄を強く求めたのに対し、金正日委員長からは、朝鮮半島の非核化が最終目標である、六者会合を活用して平和的解決に努力したい、核の凍結は非核化の第一歩であり検証を伴うものである旨の発言がありました。
核廃絶への努力についてでございますが、我が国は、唯一の被爆国として、核兵器のない平和で安全な世界を一日も早く実現することを目指して、現実的な措置を積み重ねていくことが重要であると考えており、毎年の国連総会への核軍縮決議案の提出、包括的核実験禁止条約の早期発効に向けた働き掛け等、積極的な外交努力を行ってきております。今後とも、こうした現実的かつ着実な努力を継続していきたいと考えております。
過去の歴史の清算でございますが、日朝平壌宣言は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することによって両国関係を正常化することが、日朝双方の利益に合致するとともに、地域の平和と安定に寄与するとの認識を確認しております。
我が国としては、過去の歴史の問題についても、日朝平壌宣言に沿って今後の日朝関係を取り進めていく考えであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/39
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040・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/40
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041・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 日程第二 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第三 東南アジアにおける友好協力条約の締結について承認を求めるの件
日程第四 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件
(いずれも衆議院送付)
以上三件を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長山本一太君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔山本一太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/41
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042・山本一太
○山本一太君 ただいま議題となりました条約三件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、日・ベトナム投資協定は、我が国とベトナムとの間の経済的協力を強化し、投資の自由化、促進及び保護を通じて両国間における資本及び技術の交流を促進するため、投資の許可段階における最恵国待遇及び内国民待遇の原則供与、技術移転要求を始めとする特定措置の履行要求の原則禁止等について定めるものであります。
次に、東南アジア友好協力条約は、東南アジアにおける平和、友好及び協力の促進を目的とし、経済、社会等の各分野における一般的な協力の原則について定めるものであります。
最後に、欧州復興開発銀行を設立する協定の改正は、モンゴルを欧州復興開発銀行の受益国とすることについて定めるものであります。
委員会におきましては、三件を一括して議題とし、ベトナムの投資環境の改善に向けた取組、東南アジア友好協力条約と東南アジア非核兵器地帯条約との関係等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終え、順次採決の結果、三件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/42
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043・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これより三件を一括して採決いたします。
三件の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/43
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044・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/44
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045・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十二
賛成 百八十二
反対 〇
よって、三件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/45
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046・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 日程第五 消費者保護基本法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長和田ひろ子君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔和田ひろ子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/46
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047・和田ひろ子
○和田ひろ子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
現行の消費者保護基本法は、昭和四十三年に制定されたものでありますが、近年における消費者を取り巻く社会経済情勢の変化にかんがみ、本法律案では、消費者政策を拡充強化し、もって国民の消費生活の安定と向上を確保するため、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、事業者の責務等を明らかにし、消費者基本計画の作成について定め、並びに消費者契約の適正化、苦情処理及び紛争解決の促進等に係る基本的施策を拡充するとともに、その推進に必要な体制を整備しようとしており、法律の題名は、消費者保護基本法から消費者基本法に改めることとしております。
委員会におきましては、提出者衆議院内閣委員長山本公一さんより趣旨説明を聴取した後、消費者の権利を明記したことの意義、消費者と事業者との情報格差の是正策、消費者の努力義務規定の趣旨、消費者政策会議の在り方と消費者基本計画の内容等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
昨日、質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/47
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048・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/48
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049・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/49
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050・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十三
賛成 百八十三
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/50
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051・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 日程第六 家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長岩永浩美君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔岩永浩美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/51
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052・岩永浩美
○岩永浩美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過と結果を御報告をいたします。
本法律案は、我が国における高病原性鳥インフルエンザの発生において、農家の届出がなされず、生きた鶏の出荷先で感染が拡大する事例が生じたほか、移動制限の対象となった畜産農家の経営に大きな影響が生じたことを踏まえ、より的確な蔓延防止が図られるようにするため、届出義務違反に関する制裁措置を強化するとともに、移動制限により影響を受けた畜産農家に対する助成措置を制度化すること等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、家畜伝染病発生農家等に対する経営支援の在り方、鳥インフルエンザの感染原因の究明状況、家畜伝染病の発生と蔓延防止における関係機関の連携の在り方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局した後、日本共産党の紙理事より家畜所有者の届出義務の拡大と通報義務の新設、移動制限により畜産農家に生じた経営上の損失補償を国、都道府県に義務付けること等の修正案が提出をされました。
本修正案は予算を伴うものでありましたので、国会法第五十七条の三の規定に基づいて内閣から意見を聴取いたしましたところ、亀井農林水産大臣より、政府としては反対である旨の発言がありました。
次いで、採決の結果、修正案は否決され、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/52
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053・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/53
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054・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/54
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055・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十七
賛成 百八十七
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/55
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056・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 日程第七 環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。環境委員長長谷川清君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔長谷川清君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/56
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057・長谷川清
○長谷川清君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、環境と経済が好循環する社会を構築していくためには、環境報告書の作成等による事業者の自主的な環境配慮の取組が極めて重要となっております状況にかんがみて、環境報告書の普及及び信頼性の確保のための措置を講じようとするもので、特定事業者に対してその作成を義務付けること等により、環境に配慮した事業活動の促進を図ろうとするものであります。
委員会におきましては、環境と経済活動との統合、事業者による環境配慮活動の促進策等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/57
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058・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/58
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059・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/59
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060・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十七
賛成 百八十七
反対 〇
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/60
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061・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 日程第八 総合法律支援法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長山本保君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔山本保君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/61
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062・山本保
○山本保君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、より自由で公正な社会を形成する上で、法による紛争の解決が一層重要になることにかんがみ、全国どの地域においても弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援の実施及びその体制の整備に関し、基本理念、国等の責務等基本事項を定めるとともに、その中核として設けられる日本司法支援センターの組織及び運営について定めるものであります。
なお、衆議院において、総合法律支援の実施等について、連携の確保強化を図る対象として高齢者又は障害者の援助を行う団体を加えるなど、所要の修正が行われております。
委員会におきましては、司法制度改革における本法律案の意義、支援事業を独立行政法人の枠組みに従った日本司法支援センターが行う理由とその妥当性、支援センターの業務の内容と透明性を確保するための手段、業務の実施に当たっての関係機関との協力、連携の重要性、民事法律扶助など業務運営に必要な予算の拡充等について質疑が行われたほか、参考人からの意見聴取、仙台市と大阪市において地方公聴会を開会する等慎重に審査を行いましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/62
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063・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/63
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064・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/64
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065・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十七
賛成 百八十五
反対 二
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/65
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066・倉田寛之
○議長(倉田寛之君) 本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/115915254X02420040526/66
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