1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十七年十月十二日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第五号
平成十七年十月十二日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(パキスタン
等における大地震について)
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○本日の会議に付した案件
一、常任委員長辞任の件
一、常任委員長の選挙
一、日程第一
一、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、
郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案
、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理
機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関
係法律の整備等に関する法律案(趣旨説明)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/0
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001・扇千景
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
この際、常任委員長の辞任についてお諮りいたします。
農林水産委員長中川義雄君、決算委員長鴻池祥肇君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申出がございました。
いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/1
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002・扇千景
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
よって、いずれも許可することに決しました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/2
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003・扇千景
○議長(扇千景君) この際、欠員となりました常任委員長の選挙を行います。
つきましては、常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/3
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004・扇千景
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、
農林水産委員長に岩城光英君を指名いたします。
〔拍手〕
決算委員長に中島眞人君を指名いたします。
〔拍手〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/4
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005・扇千景
○議長(扇千景君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(パキスタン等における大地震について)
細田国務大臣から発言を求められております。発言を許します。国務大臣細田内閣官房長官。
〔国務大臣細田博之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/5
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006・細田博之
○国務大臣(細田博之君) 去る十月八日、パキスタンを震源とする大規模地震が発生し、未曾有の被害が出ております。既に分かっているだけでも二万人以上もの尊い命が犠牲となり、楢原覚JICA専門家とその御子息がお亡くなりになりました。心からお悔やみ申し上げます。
政府としては、国際緊急援助隊の救助チームと医療チームを派遣し、また、二千五百万円相当の緊急援助物資を供与しました。さらに、被害状況が悪化している現状にもかんがみ、昨日、我が国政府として二千万ドルの無償支援の実施を決定しました。これらの支援が被災された方々の救援に役立つことを願っております。
また、現地では、昨晩現地入りした谷川外務副大臣が、政府要人との会談、現場視察等を通じて現地のニーズの把握を行っております。他方、現地では、道路や通信等のインフラが壊滅的な打撃を受けており、救援物資の運搬手段としてヘリコプター等のニーズが指摘されております。加えて、昨日には国連も統一緊急アピールを発出し、国際社会に対する支援を呼び掛けております。
我が国としては、今後、こうした点を含め現地のニーズを見極めながら、できる限りの支援を行っていく考えであります。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/6
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007・扇千景
○議長(扇千景君) この際、日程に追加して、
郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、以上六案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/7
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008・扇千景
○議長(扇千景君) 御異議ないと認めます。竹中国務大臣。
〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/8
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009・竹中平蔵
○国務大臣(竹中平蔵君) このたび、政府から提出いたしました郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の六法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
郵政民営化は、民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが、より自由で活力ある経済社会の実現に資することにかんがみ、内外の社会経済情勢の変化に即応し、日本郵政公社、以下公社と申し上げます、に代わる新たな体制を確立するものであり、地域社会の健全な発展及び市場に与える影響に配慮しつつ、公社が有する機能を分割し、その機能を引き継ぐ新たな株式会社を設立するとともに、一定の期間、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講ずるものであります。これにより、経営の自主性、創造性及び効率性を高め、公正かつ自由な競争を促進するとともに、多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上、資金のより自由な運用を通じた経済の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。この郵政民営化を実現するため、これら六法案を提出するものであります。
それぞれの法律案の概要について、順次御説明申し上げます。
初めに、郵政民営化法案についてであります。
第一に、郵政民営化の基本的な理念及び方針並びに国等の責務を定めております。
第二に、郵政民営化を推進するとともに、その状況を監視するため、政府に、郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会を平成二十九年九月三十日まで設置することとし、郵政民営化委員会が、三年ごとに、郵政民営化の進捗状況について総合的な見直しを行うこと、郵政民営化推進本部がその見直し等について国会に報告すること等郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会の所掌事務、組織等について定めております。
第三に、準備期間中の公社の業務について、国際貨物運送に関する事業を行うことを主たる目的とする会社に出資することができる等の特例等を定めております。
第四に、日本郵政株式会社を準備期間中に設立することとし、日本郵政株式会社に、公社の業務等の承継に関する実施計画を作成させ、この実施計画に関する事項を決定する経営委員会を設置することその他の準備期間中の業務の特例等並びに移行期間中の郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の保有及び完全処分等の業務の特例等について定めております。
第五に、郵便事業株式会社、郵便局株式会社及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構、以下機構と申し上げます、を平成十九年十月一日に設立することとし、その設立及び移行期間中の業務の特例等について定めております。
第六に、一般の商法会社として郵便貯金銀行及び郵便保険会社を日本郵政株式会社に設立させるとともに、銀行法及び保険業法の特例等として、郵便貯金銀行及び郵便保険会社がそれぞれ銀行業の免許及び生命保険業免許を平成十九年十月一日に受けたものとみなすことを定めるほか、預入限度額、保険金額等の限度額、業務範囲等について適正な競争関係等を確保するための必要な制限を加えるとともに、民営化に関する状況に応じ、移行期間中にこれらの制限を解除し、自由な経営を可能としていくこと、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の定款に議決権の行使に関する事項を定めなければならないこと等について定めております。
第七に、公社の業務等の日本郵政株式会社等及び機構への承継に関する基本計画、その承継を円滑に行うための税制上の措置その他の所要の規定を設けております。
次に、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案及び郵便局株式会社法案についてであります。
いずれの法案も会社の目的、業務の範囲等について定めるものでありますが、まず、日本郵政株式会社につきましては、第一に、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の発行済株式の総数を保有し、両社の経営管理を行うこと並びに両社の業務の支援を行うことを目的とすることを定めております。
第二に、政府は、常時、日本郵政株式会社の発行済株式の総数の三分の一を超える株式を保有していなければならないことを定めております。
第三に、日本郵政株式会社は、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社が発行する株式を引き受けるとともに、両社の発行済株式の総数を保有していなければならないこと、両社の経営の基本方針の策定及びその実施の確保並びに両社の株主としての権利の行使の業務を行うほか、その目的を達成するために必要な業務を行うことができることを定めております。
郵便事業株式会社につきましては、第一に、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むことを目的とすることを定めております。
第二に、郵便事業株式会社は、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むほか、お年玉付郵便葉書等及び寄附金付郵便葉書等の発行の業務を営むことができるとともに、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、これらの業務以外の業務を営むことができることを定めております。
郵便局株式会社につきましては、第一に、郵便窓口業務及び郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことを目的とすることを定めております。
第二に、郵便局株式会社は、郵便事業株式会社の委託を受けて行う郵便窓口業務及び印紙の売りさばきの業務を営むほか、地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律に定められた事務に係る業務、銀行業及び生命保険業の代理業務その他の郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことができるとともに、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、これらの業務以外の業務を営むことができることを定めております。
第三に、郵便局株式会社は、郵便局の設置について、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならないことを定めております。
さらに、郵便事業株式会社に関し、第三種郵便物、第四種郵便物に係る業務等であって一定の要件を満たす社会貢献業務に関する規定を、郵便局株式会社に関し、地域住民の生活の安定の確保のために必要であること等の要件を満たす地域貢献業務に関する規定を、それぞれ設けることとしております。また、これらの業務の実施のため、日本郵政株式会社に社会・地域貢献基金を設け、一兆円に達するまで積み立てなければならないこととするとともに、一兆円を超えて積み立てることができること、二兆円まで積み立てる場合には、一兆円までと同じルールで積み立てなければならないこと等を定めております。
この他、これら三会社に対する監督に関する規定その他の所要の規定を設けております。
次に、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案についてであります。
この法律案は、機構が、公社から承継した郵便貯金及び簡易生命保険を適正かつ確実に管理し、これらに係る債務を確実に履行し、もって郵政民営化に資することを目的とすることのほか、機構の役職員、業務、財務、会計等について定めております。
最後に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案についてであります。
この法律案は、郵政民営化法、日本郵政株式会社法、郵便事業株式会社法、郵便局株式会社法及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法が施行されることに伴い、郵便貯金法、簡易生命保険法、日本郵政公社法等十三の関係法律を廃止するほか、郵便法について郵便認証司の制度を設けるなど百六十の関係法律について規定の整備等を行うとともに、所要の経過措置を定めるものであります。
これら六法案は、一部を除き、平成十九年十月一日から施行することとしております。なお、システム対応上の問題がある場合には民営化の実施時期を延期できるよう、所要の規定を設けております。
以上が郵政民営化法案等の六法案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/9
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010・扇千景
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。尾立源幸君。
〔尾立源幸君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/10
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011・尾立源幸
○尾立源幸君 民主党・新緑風会の尾立源幸でございます。
ただいま議題になりました郵政民営化関連六法案について質問に入る前に、十月八日にパキスタン北東部において発生した大地震について、犠牲者と被災者の皆様方に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。とりわけ、この大地震で国際協力機構、JICAパキスタン事務所の楢原覚さんと長男の輝さんがお亡くなりになったことは悲しみに堪えません。また、十一日のパキスタン・アジズ首相の記者会見によれば、死者数は二万三千人に上りますが、最終的には四万人を超すとの見方もあります。
この未曾有の大災害に対し、民主党は若林秀樹議員を派遣し、現地の情報収集、支援ニーズの調査などを進めています。政府も谷川秀善外務副大臣をパキスタンに派遣されておりますが、無償資金援助の実行に当たっては、財団法人日本国際協力システムなどの天下り法人を通すことなく、迅速かつ効率的な支援がなされることを期待します。
郵政民営化関連六法案については、まず参議院の存在意義について皆様と考えたいと思います。
何のために参議院は存在するのでしょうか。参議院は多様な民意を反映させ、抑制と均衡の機能を果たすことが求められております。参議院は理を貫く立法府としての役割が期待されております。参議院は権力よりも大所高所に立った中長期的な審議に基づく権威を期待されています。参議院は行政を監視し、衆議院の動向をチェックする再考の府としての機能が求められているのです。正にこの意義を踏まえ、この郵政民営化法案の審議を通じて良識の府参議院の存在意義を改めて示すときではないでしょうか。
さきの総選挙により、与党の皆さんは三分の二の議席数を上回る大勝利を収めました。敵ながらあっぱれだと正直に思います。民主党としては、反省すべき点はしっかりと反省し、民主党にいただいた二千四百八十万票という票の重みを真摯に受け止め、前原新代表の下で新たなスタートを切ったところです。しかし、参議院では、その大勝した与党の皆様に元気がないと感じたのは私だけでしょうか。どうか元気を出してください。我々は、二院制における独立した参議院であり、衆議院の動向に関係なく、純粋に国民生活の向上という観点からこの法案を審議しようではありませんか。
小泉総理は今回の選挙を通じて郵政民営化の信任を得られたとおっしゃいますが、果たして本当にそこまで言い切っていいのか、今でも疑問に思っています。仮に小選挙区で与党票が郵政民営化賛成票なら、野党に投じられた郵政民営化反対票は賛成票より百万票多いのです。
そこで、まず伺いますが、何を根拠に選挙結果を通じて郵政民営化法案の中身まで含めて信任されたと判断するのでしょうか。自民党のマニフェストには、たった一行、「参議院において否決された民営化関連六法案を次期国会で成立させる。」とあるだけです。これでは、国民に対し政府案の中身を理解させたくないと思われても仕方がありません。竹中大臣にお聞きいたします。
郵政民営化は国民の賛成を仮に得たとしても、郵政民営化の中身が不問にされたわけではありません。総選挙の結果を受けてすぐに賛成に回るのであれば、法案の中身を審議する参議院議員の責務を放棄することにはならないでしょうか。正に今我々が問われているのは、この法案を慎重に審議することであり、必要に応じて修正を加え、それができなければ院として同じ判断もあり得るということです。
我々は政党人でありますが、同時に国民から選ばれた参議院の議員として、今こそこの法案の慎重審議が求められているときではないかと思います。どうか参議院議員の皆様方の真摯な議論を心よりお願い申し上げ、更に幾つかの質問をさせていただきます。
冒頭申し上げたように、この参議院の審議で問われているのは郵政改革であり、郵政民営化法案の中身なのです。参議院での審議を通じて法案を修正するつもりはあるのか、竹中大臣に伺います。
次に、経営形態について伺います。
政府案は、政府が三分の一超保有する持ち株会社と、持ち株会社が一〇〇%保有する郵便・窓口ネットワーク会社、そしてそれらと株式持ち合いをする郵便貯金銀行、郵便保険会社です。言わば実質国有の特殊会社と政府系金融機関ができるにすぎず、民営化の名に全く値しないのではないでしょうか。この際、郵便貯金銀行、郵便保険会社との株式持ち合いはできないようにしたらどうでしょうか、竹中大臣の見解を伺います。
なお、民主党は、資金を官から民へシフトさせるために、郵便貯金の段階的縮小と簡易保険の廃止を提案しております。
また、総理は、新会社を地域分割するかどうかの判断については新会社の経営陣に丸投げしました。総理はかつて、地域分割は絶対に必要であり、そうでなければ巨大な新会社が誕生することになり、公平な競争が妨げられると主張していましたが、法案策定に対して総理からそのような指示はなかったのか、あったならなぜ盛り込まなかったのか、改めて竹中大臣に伺います。
郵政民営化は世界の潮流であるかのごとく説明をされていますが、全世界約二百前後の国と地域がある中で、郵便事業の民営化を行っている国は何か国あるのでしょうか。また、郵政民営化を日本に押し付けているアメリカは世界一の郵便量を誇ると思われますが、そのアメリカが郵便事業は国の責任でやることを決めた理由は何だと思われますか、竹中大臣に伺います。
次に、民業圧迫とイコールフッティングについて伺います。
郵便貯金の残高は一九九〇年代にかけて急増しました。この要因としては、預け入れ限度額の引上げ以上に、民間金融機関より有利な定額貯金の存在、民間金融機関より有利な金利設定、民間金融機関の経営不安があったと考えられます。民主党が資金量を縮小せよと主張するのは、民業圧迫を解消するとともに、金利変動リスクを小さくすることも必要だと考えるからです。政府案では、三百三十兆円の巨大資金量を持った郵便貯金銀行、郵便保険会社が新規事業を行えるようになり、国の信用をバックにした巨大民間会社が既存のマーケットを荒らしまくる構図が出現すると思われます。このことに対する認識と、四つの新会社が既存の民業を圧迫することをどうチェックするのか、竹中大臣に伺います。
政府案は、民間企業であって民間企業でないと思います。その典型的な例は、基金という、名前を変えただけの二兆円もの補助金、地域・社会貢献基金の存在です。公社でも投入していない二兆円もの補助金がなぜ民間企業になると必要になるのか、竹中大臣に明快な答弁をお願いします。
その際、採算が悪い郵便局は地域ごとに基金からの支援を申請できるようになっています。しかし、個別の郵便局の経営が立ち行かなくなり、継続的に郵政事業を続けられるかどうかは経営全体としての判断であるはずです。郵便局ごとに不採算を穴埋めするように基金から直接財政支援を受ければモラルハザードを引き起こし、ひいては生産性向上に逆行すると思いますが、竹中大臣はどのような認識ですか。
また、政府案において今後の経営計画の青写真となる粗っぽい骨格経営試算というのが発表されています。しかし、その前提が十年間でGDPが一・四倍から一・五倍になると見込んでいるのですが、四年間でGDPを八兆円も減らした小泉内閣になぜそのようなことが可能なのか、竹中大臣、御説明願います。
次に、お金の流れと政府系金融機関について伺います。
政府案では、郵貯、簡保の資金が官から民に流れるどころか、ますます官に向かいます。そして、小泉政権が巨額の国債、財投債を発行し続ける限り、政府系金融機関となる郵便貯金銀行、郵便保険会社はそれに付き合わされることになります。この際、来年度は国債発行額を三十兆円以下に抑えるなど、国債、財投債の発行を抑えると明言してはいかがでしょうか、谷垣財務大臣に伺います。
また、政府は十一月中に政策金融改革の基本方針を出す予定と伺っています。八政府系金融機関の統廃合だけに問題を矮小化するのではなく、それ以外の組織の政策金融、すなわち、特殊法人、認可法人、独立行政法人、公益法人その他の公的機関による政策金融にも範囲を拡大すべきではないでしょうか。その点についての認識を竹中大臣に伺います。
さらに、今申し上げた八政府系金融機関以外の公的機関による政策金融、つまり、出資、直接貸出し、債務保証、利子補給等、全体でどのぐらいあるのか、併せて伺います。
改革が進んだかどうかは借金が増えたかどうかが一番分かりやすい指標です。財務省が発表した本年六月末現在の国債及び借入金残高は七百九十六兆円で、四年前、平成十三年三月末の五百三十八兆円から何と借金が二百五十八兆円も増えました。在任期間で割れば、一日当たり一千六百億円、一時間六十七億円、こうやっている間にも一分一億円を上回る借金を垂れ流しているのです。本年度の国の税収見込みは四十四兆円ですので、税収の十八倍の金額に当たり、国家財政は破産同然であります。
その意味において、財政再建とはおよそ関係のない郵政民営化が改革の本丸なのか、いまだに理解できません。この借金漬けの国家にした責任をどう取り、財政再建をどう果たすのか、谷垣大臣に最後にお伺いいたします。
私たち民主党は、前原代表を先頭に、まがいものでない真の改革政党として国民の信頼を獲得し、近い将来必ず政権を担うことをお約束をいたします。
どうか与党の皆様も、改革という言葉だけを念仏のように唱えるのではなく、お互いに切磋琢磨をして、本当に国民のためになる改革競争をやろうではありませんか。
その意味で、冒頭に申し上げましたように、参議院として、本当に国民の生活向上につながる郵政改革の中身になるよう、皆様方の真摯な審議をお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございます。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/11
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012・竹中平蔵
○国務大臣(竹中平蔵君) 尾立議員から質問は十問あったと思います。
まず、このたびの総選挙の結果及び法案の修正についてお尋ねがございました。
郵政民営化関連法案は、さきの通常国会において衆参合わせて百九十時間を超える審議を行ったものでございます。この審議を通じて、法案の内容について国民の理解は十分深まったものと考えております。
そして、郵政民営化の是非が問われたさきの総選挙において、自民党及び公明党は、郵政民営化関連六法案を次期国会で成立させる旨をマニフェストに掲げ、小泉総理を始め与党の候補者は、同法案の内容についてしっかりと有権者に御説明をして選挙戦を戦ったものと承知をしております。
その結果、自民党、公明党合わせて目標の過半数を大きく超える議席を獲得することができたものでございまして、私たちがその意義を訴えてきた法案について多くの国民の信任をいただいたものと考えております。
また、今国会に提出した法案は、さきの通常国会における衆議院修正を反映するとともに、実施時期を半年延期するほかは骨格を変更することなく再度御提出申し上げているものであり、郵政事業を改革する最善の策と考えております。さきの総選挙において多くの国民の信任をいただいたところでもあり、これを修正する必要はないと考えております。
新会社の経営形態と株式持ち合いについてお尋ねがありました。
郵政民営化は、郵便局ネットワークの確保、郵便のユニバーサルサービスという公共的な役割をしっかりと果たしながら、四機能が、それぞれの市場に吸収統合されて、市場原理の下で自立することを実現するものでございます。
このため、郵便事業会社及び郵便局会社については、政府が三分の一超の株式を保有する日本郵政株式会社の下に一〇〇%子会社として位置付ける一方で、貯金と保険の金融二社については、日本郵政株式会社が保有する株式を移行期間中に完全処分し、民有民営を実現することとしております。
また、移行期間後、金融二社は普通の銀行、普通の保険会社となるので、日本郵政株式会社等がその経営判断により、独占禁止法や銀行法等の一般的な法規の下、特殊会社法の規制の範囲内で両社の株式を取得することは妨げないこととしております。これは、完全民営化後の二社については他の民間金融機関と同様の取扱いをするものでありまして、正に民営化の趣旨に沿ったものであるというふうに考えております。
新会社の地域分割についてお尋ねがございました。
地域分割については、経済財政諮問会議における種々の議論を踏まえまして、郵政民営化の基本方針におきまして、窓口ネットワーク会社、郵便貯金会社及び郵便保険会社を地域分割するか否かについては、新会社の経営陣の判断にゆだねることとするとされておりまして、これに基づいて制度設計を行ったものでございます。
なお、規模の問題について特に懸念が示されたのは郵貯、簡保でございますけれども、後ほど詳しく述べますように、公正な競争を妨げないような様々な制度設計に工夫を凝らしているところでございます。
さらに、移行期間終了後、地域分割をするかどうかは、基本方針にもありますとおり、新会社の経営陣の判断にゆだねるべきところでありまして、制度設計において将来の経営の自由度を縛るべきではないというふうに考えております。
諸外国の郵便事業の民営化の状況についてお尋ねがございました。
郵便事業の民営化を行っている国の数でありますが、UPU加盟国百九十か国・地域の中で、事業体の名前にストックカンパニーやリミテッドという英文表記の文言がある国を民営化している国と便宜上仮定してとらえて推計いたしますと、合計三十二か国となります。
また、アメリカにおいて郵便事業を国の責任で行うことを決めた理由についてでございますけれども、一昨年、USPSに関する大統領委員会が取りまとめた報告書におきまして、USPSは世界最大量の郵便物を取り扱っており、その民営化は市場を混乱させるおそれがあること等から民営化を行わないこととされたものと承知をしております。しかしながら、アメリカのUSPSは、既に一九六六年に郵便貯金事業を完全廃止しており、巨額の資金規模を有する郵貯、簡保を併せ営んでいる日本郵政公社とは大いに事情を異にするところでございます。
また、我が国では民営化後の郵便事業会社が経済成長著しいアジア市場の中で広く国内外の物流事業に進出していくことが十分期待されるのであるのに対して、アメリカではそうした点が国策上余り重要でなかったという点も重要な背景であったというふうに推察しております。
民営化された新会社による民業圧迫の懸念についてお尋ねがございました。
貯金と保険の金融二社については、まず民営化に当たり、郵貯、簡保の資金を新旧分離いたします。当初、資金規模の大宗を占めるいわゆる旧契約分は国債等の安全資産に運用することとしており、政府保証付きで集めた巨額の資金をもって貸付け等の新規業務に進出していくということはありません。また、新規業務が認められるいわゆる新勘定につきましても、市場経済の中で適正規模に収れんしていくものというふうに考えられます。
さらに、金融二社は、これは一般商法会社として設立して、全株処分によって国の信用、関与を断ち切る、株式処分等国の関与の度合いの低減に応じて、民営化委員会の意見を聴取の上、段階的に規制緩和をしていくという仕組みにしております。
また、郵便事業会社及び郵便会社につきましても、移行期間中は同種の業務を営む事業者の利益を不当に害することのないよう配慮する義務を法律上課しておりまして、民業圧迫とならないよう制度設計をしているところでございます。
社会・地域貢献基金についてお尋ねがございました。
社会・地域貢献基金は、日本郵政公社がこれまで第三種、第四種郵便や過疎地の金融サービスの提供など公共的な役割を果たしてきたこと等を踏まえ、民営化後においても、これら社会、地域にとってその実施が真に必要なサービスを確実かつ安定的に提供することを可能とするため、日本郵政株式会社に設置をするものでございます。
この基金は、持ち株会社が保有する株式の売却益、配当収入などの自己資金を活用するものであり、補助金には頼らないものであります。また、その積立てにつきましても、持ち株会社の株主たる国に入るべき配当収入を確保しつつ行うということでありまして、優れた制度設計であると考えており、補助金であるとの御指摘は当たらないものと考えております。ちなみに、民主党の案にも同様の構想が含まれております。
社会・地域貢献基金のスキームと郵便局の経営についてお尋ねがございました。
社会・地域貢献基金について、単に個々の郵便局の経営が赤字であるからといって資金交付の対象となるものではございません。また、地域貢献業務の実施に要する具体的な費用の算定は、主務大臣が地域貢献業務計画の認可を行う際にチェックすることによりまして、その適正性を担保することとしております。
この認可に当たっては、例えば、同規模の郵便局における平均的な費用の水準でありますとか、費用低減のための経営努力の状況を勘案することなどによりまして、基金からの資金交付が経営効率化のインセンティブを阻害することのないよう配慮することになると考えております。
GDPの今後の見込みが実現可能かどうかというお尋ねがございました。
名目GDPはピークの二〇〇〇年度から二〇〇四年度にかけて八兆円程度減少しておりますが、これは、御承知のとおり、特に二〇〇〇年度から二〇〇二年度にかけての不良債権問題、デフレが影響したものでございます。しかしながら、小泉内閣では一貫して構造改革を行い、不良債権の処理に成功するとともに景気回復も実現するなど、着実に成果を上げております。今年度の前半の実質GDPは、先進工業国の中でも高い部類に入ります。デフレも収束に向かいつつあります。名目GDPも、二〇〇二年度のボトムからは、本年度にかけては十四兆円程度の増加となる見通しでございます。
御指摘の十年間でGDPが一・四倍から一・五倍になるという見込みは「改革と展望」参考試算や日本二十一世紀ビジョンの試算を参考にしたものでございますけれども、これらの試算は各般の政策努力を前提として計量モデルを用いて客観的に行ったものでございまして、この試算結果は今後とも政策努力を継続していけば十分に実現可能なものであるというふうに考えております。
最後になりますが、八政府系金融機関以外の政策金融についてお尋ねがございました。
政策金融八機関以外の特殊法人等の融資事業につきましては、百六十三の特殊法人及び認可法人を対象に、平成十三年十二月に閣議決定しました特殊法人等整理合理化計画におきまして大幅な整理合理化が図られ、本計画に基づき改革が実施されているものと承知をしております。
なお、同計画で残された課題として、経済財政諮問会議において検討することとされた政策金融八機関につきましては、本年十一月を目途に、この諮問会議においてあるべき姿の実現に関する基本方針を策定することとしております。
また、八機関以外の政策金融の規模については承知をしておりませんが、いずれにせよ、残された課題であります政府系金融機関の改革にまずは全力で取り組むことが我々の責務であるというふうに考えているところでございます。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/12
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013・谷垣禎一
○国務大臣(谷垣禎一君) 尾立議員にお答えいたします。
まず、国債、財投債の発行抑制についてのお尋ねがございました。
小泉内閣発足以来、財政規律を堅持するという方針の下で、重立った歳出項目について歳出の抑制を行いまして、公共事業費を約四割削減するなど、既に十兆円に上る歳出改革を断行したところでございます。しかしながら、平成十七年度末の公債残高が五百三十八兆円程度に達するなど、我が国財政は引き続き極めて厳しい状況にございます。
こうした中、財政構造改革を強力に推進するため、平成十八年度予算におきましては、十七年度に引き続き一般歳出を減額するとともに、新規国債発行額について十七年度を上回る規模で減額するとの方針の下、あらゆる歳出分野を聖域なく見直し、歳出の抑制に取り組んでまいる所存でございます。
なお、財政投融資につきましては、平成十三年度の財投改革以降、真に必要な額のみ財投債を発行して調達することといたしまして、対象事業の見直しを強力に行ってまいりました。この結果、平成十七年度の財投計画の規模は、ピーク時、これは平成八年度でございますが、その四十・五兆円の約四割の十七・二兆円となっており、既に相当程度の縮減を図っております。
今後の財投編成に当たりましても、真に必要な資金需要には的確に対応しつつ、事業の重点化、効率化を推進してまいる所存でございます。
次に、債務残高累増の責任及び財政再建についてのお尋ねがございました。
近年の債務残高累増の主たる原因は、高齢化の本格的な推進によります社会保障関係費の増加や、経済情勢の深刻な悪化等による税収の低迷などであると考えております。
他方で、小泉内閣におきましては、発足以来、財政規律を堅持するという方針の下、重立った歳出項目について歳出の抑制を行い、公共事業費を先ほど申し上げましたように約四割削減する、そして十兆円に上る歳出改革を断行いたしました。
こうした結果、国及び地方の基礎的財政収支赤字の対GDP比が平成十四年度の五・五%から平成十七年度には四・〇%に改善する見込みであり、また平成十七年度予算において新規国債発行額を四年ぶりに減額するなどの成果を上げてきております。
政府としては、まずは二〇一〇年代初頭における国、地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指して、医療制度改革を始めとした社会保障制度改革や三位一体の改革、公務員人件費の削減など、様々な分野の改革に聖域なく取り組むなど、今後とも歳出、歳入両面からバランスの取れた財政構造改革を推進してまいりたいと考えております。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/13
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014・扇千景
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116315254X00520051012/14
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