1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十八年四月二十五日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月二十日
辞任 補欠選任
尾立 源幸君 江田 五月君
四月二十四日
辞任 補欠選任
江田 五月君 尾立 源幸君
前川 清成君 広田 一君
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出席者は左のとおり。
委員長 弘友 和夫君
理 事
荒井 正吾君
谷川 秀善君
簗瀬 進君
木庭健太郎君
委 員
青木 幹雄君
山東 昭子君
陣内 孝雄君
関谷 勝嗣君
南野知惠子君
尾立 源幸君
千葉 景子君
広田 一君
松岡 徹君
浜四津敏子君
仁比 聡平君
亀井 郁夫君
国務大臣
法務大臣 杉浦 正健君
副大臣
法務副大臣 河野 太郎君
大臣政務官
法務大臣政務官 三ッ林隆志君
事務局側
常任委員会専門
員 田中 英明君
政府参考人
法務省刑事局長 大林 宏君
法務省矯正局長 小貫 芳信君
参考人
中央大学法科大
学院・法学部教
授 椎橋 隆幸君
弁護士 宇都宮健児君
日本女子大学家
政学部助教授 細川 幸一君
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本日の会議に付した案件
○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関
する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に
関する法律案(内閣提出)
○政府参考人の出席要求に関する件
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/0
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001・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日、前川清成君が委員を辞任され、その補欠として広田一君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/1
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002・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見をお伺いします。
御出席いただいております参考人は、中央大学法科大学院・法学部教授椎橋隆幸君、弁護士宇都宮健児君及び日本女子大学家政学部助教授細川幸一君でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
議事の進め方について申し上げます。まず、椎橋参考人、宇都宮参考人、細川参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
御発言の際は、その都度、委員長の許可を得られますようお願いいたします。なお、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。
また、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございます。
それでは、椎橋参考人からお願いいたします。椎橋参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/2
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003・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 中央大学の椎橋と申します。意見を述べさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/3
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004・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) どうぞ御着席いただいて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/4
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005・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 座ってよろしいでしょうか。
今回、問題になっております二法案は、基本的には組織的犯罪処罰法の改正案と、それによって没収、追徴した資金を被害者に給付すると、そういう内容のものでございます。
基本はあくまでも組織的犯罪処罰法の改正ということで、基本的な考え方が、組織的犯罪処罰法の改正をして、そしてその没収、追徴した資金を被害者に給付する、それを適切に行うということでありまして、そのもとに流れる考え方というのは、あくまでも組織的な犯罪によって被害の回復が困難であるという場合にその回復を国が助けようというところにあると思います。そういうところに基本があるということを前提にして話を進めさせていただきたいと思います。
組織的犯罪処罰法は犯罪収益を確実に剥奪するということを目的としておりますけれども、犯罪被害財産については没収、追徴を禁じております。まあ汚れた金ですね、犯罪収益を犯罪者が保有するという正当な理由はそもそもございませんし、また、犯罪収益を用いて事業活動へ干渉して経済活動に不当な悪影響を与えると、これは究極的には自由主義体制の、経済体制の根幹を揺るがすようなことになるおそれもあると、そういうような重大な悪影響を与えるということがありますので、それを防ぐ必要があるということで犯罪被害財産を没収するということになっているんですけれども。
しかし、没収、追徴されますと、これが国庫に入るということになります。そうしますと、被害者は、被害者自身が損害賠償請求権等、私法上の請求権を持っております。国庫にお金が歳入されてしまうということになりますと、その実現を妨げるおそれがあるということで、没収、追徴を禁じているということでございます。
ですから、そのねらいはよく分かるのでありますけれども、現実には組織的犯罪あるいはマネーロンダリング等の犯罪行為の場合には被害者はだれに対してその被害の回復を求めたらいいのか、あるいは分かっていてもどういうふうに権利を行使したらいいのか、あるいはお金が掛かるのではないか、あるいは暴力団から報復をされるのではないかというようなおそれがあって、私法上の請求権の行使をためらうということが多くございます。その結果、結果的には犯人に不法な利益が残るという結果となってしまう、そういう事態が生じておりました。
そのことをよく表すものとして、旧山口組五菱会系やみ金融事件というのがございます。この事件の展開をめぐるところに私はこの法案の立法事実が集約的に表れているというふうに考えます。すなわち、多くの国民から不当な犯罪行為によってお金を取り上げる、それ自体犯罪行為でありますけれども、それによって多額のお金を得ました。しかもそれを海外の銀行に隠匿するというような行為を行っております。そのときに被害者がどうするかということで、裁判所にその被害の回復を求める。
裁判所は、まず第一審は犯罪被害財産であるということを認めませんでした。したがって、没収、追徴されて、それが国庫に帰属するということになる。そうしますと、被害者は利益を受けられないということになります。ところが、それは一つの法解釈としては理由のある、一つのあり得る解釈でありました。ところが、やっぱり現実の結果は余りにも被害者にとって酷であり、正義に反するというふうに思われました。
これに対して高等裁判所はやや柔軟な解釈をいたしまして、結論的に犯罪収益の没収、追徴を認めるということを判断いたしました。それによってこれは被害者の救済という具体的な妥当性を図ろうというふうにした判断だというふうに思いますし、これまた理由のある判断だというふうに思います。
ところが、そのうちの三億円については民事裁判で争われているということで、これは認めませんでした。ところが、それについてその後国税によって差し押さえられるということがあって、被害者が回復しようとしていたものを国税というところでそれがまた妨げられてしまうのではないかというような批判もございまして、この一連の事件をめぐりまして、今の法律の解釈によってはどうしてもこの事態は解決できないということに至っていると思われます。
そこで、この法案が出てきたわけでありますけれども、それは諮問の七十三号という形で諮問されて、これが法制審議会の刑事法部会で審議され、さらに本委員会で可決されて、そして国会に上程されたということ、そういうプロセスを踏んでおります。
そして、この法案ですけれども、先ほど申しましたように、一定の犯罪収益を剥奪するということと、それからそれを被害者に的確に給付するということを内容としているわけでございます。
その中身ですけれども、これはすべてお話しするということには時間的にまいらないと思いますけれども、重要なところだけをかいつまんで申し上げますと、まず組織犯罪の場合に、犯罪被害財産についても、それが組織的に行われた場合、それからマネーロンダリングによるという場合には犯罪被害財産の没収、追徴の禁止を解除すると、そしてその没収、追徴した財産を被害者の給付金に充てるということが、これが主な組織的犯罪処罰法改正案の第一の柱でございます。
それから、外国から、これも先ほどの五菱会の事件に出ておりましたように、あの過程でスイスが、汚れた金だ、犯罪収益だということで、それを認定して没収、追徴をいたしましたけれども、それを日本国としてどうするかということで、これが相互主義の壁に当たって、やはりお互いにもらうだけではなくて、同じような事態が起これば日本も同じようなことをするということでなければ、これは国家として礼儀に反するということになりますので、相互主義というのが当然必要になってきますので、その相互主義を確認して、それでスイス、この場合はスイスなどのように要請国に譲与することができるようなことにすると。
それから第三には、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給の施行ということですね。
それからもう一つの法案であります被害回復給付金支給法案につきましては、これはまず、一定の犯罪、組織犯罪、それからマネロンによる犯罪、これの被害に遭った者、当該のその犯罪行為と、それから一連の犯行として行われた財産犯の犯罪行為の被害者等をその対象として、その者に適切に被害を回復するということが目的であり、その対象だということになります。
それで、それからその手続としては、検察官が犯罪行為の範囲を定めて公告すると。で、どうしても、元々がなかなか訴え出ることが難しいということがありますので、その人たちにあまねく周知させるということで、何が犯罪被害財産でありだれが被害者であるのかということを可能な限り努力してそれを確知して、それを公告という形で知らしめると。そして、分かっている被害者に対しては直接に通知をする、あるいはそれ以外の消費者団体という関連の団体にもそのことを周知して掘り起こしを行う。さらには、場合によっては照会という手続をも行使して、どういうような犯罪行為があって、それによってどういうお金を没収して、その被害者はどういう範囲の人たちなのかということを分かるようにして、そしてその方々に申請していただいて、できるだけ集められる資料は集めていただいて、それを出していただいて、そしてそれを基にして検察官が裁定する。そのときには、弁護士の方に、特に破産管財人になったような、そういう手続に精通した方々に事務手続を一定の範囲でお任せして、そしてそれを基に検察官が裁定して、なるべく早い段階で適切に迅速に回復の支給を行うと。
そして、基本的に、被害の回復が受けられるのは犯罪被害に遭った財産の額でありますけれども、それに没収、追徴額が足りない場合はその割合に応じて支給を受けると。で、場合によってはその期間内に、十分な期間内にその申請手続が行われるようにというふうに、この法案はその内容となっていると思いますけれども、それでもなおかつその手続内に申請できなかったという被害者に対しては、もし残余のお金があれば更に特別な支給手続を設けて、そして更に被害の回復を図るというようなことにして、そういうようなことにして被害者の回復を図ると。
私は、これは結論を申しますと、組織犯罪対策として有効であるというふうに思いますし、それと同時に、被害者対策としても数歩、歩を進めるものだということで評価できるものだというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/5
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006・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) どうもありがとうございました。
次に、宇都宮参考人にお願いいたします。宇都宮参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/6
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007・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) 弁護士の宇都宮です。
私は、現在、全国ヤミ金融対策会議の代表幹事とヤミ金融被害対策弁護団の団長をしています。この被害対策弁護団としましては、現在、山口組系五菱会のやみ金の被害者百七十五人から依頼を受けて、山口組系五菱会のやみ金融グループの幹部、梶山進と奥野博勝を被告として、東京地裁と松山地裁において損害賠償請求訴訟を提起しております。
この訴訟の目的というのは、まず第一にやみ金被害者の救済、被害の回復ということですけど、もう一つは、捜査当局によって押収された資金がやみ金融グループあるいは暴力団グループに還流することを防ぐということを目的としております。なぜかと言いますと、現在の組織的犯罪処罰法案によりますと、この犯罪収益が犯罪被害財産に当たるものとされた場合は没収、追徴されませんので、もし犯罪被害者が損害賠償請求訴訟をやらなければ、これはそのままやみ金融グループあるいは暴力団側に返ってしまうことになるからです。これを阻止するために今回の訴訟を提起しているわけです。
ところが、この訴訟をやる上では様々な困難が生じております。一つは、この山口組系五菱会のやみ金融グループというのはピラミッド型組織をつくっておりまして、直接この幹部の梶山とか奥野がやみ金の融資をやって取立てをしているわけではないわけですね。この末端の組織、約千店舗あったと言われていますけれども、この末端の組織の店長あるいは従業員が直接融資と取立てをやっているわけで、そうすると、多くの被害者は、自分が梶山とか奥野の被害者であるかどうかはなかなか分からないわけです。まず、その山口組系五菱会の支配下にあった店舗の名前とか、そこが使っていた銀行口座、こういうことが判明しないと自らが被害者かどうか分からない、こういう確認作業が訴訟を提起する場合かなり必要だったわけです。
それからもう一つは、先ほど椎橋先生もおっしゃられましたけど、原告になって訴訟を提起するということは、自分の名前と氏名をこのやみ金融グループの幹部に全部さらすことになります。やみ金融の被害者は、暴力的、脅迫的取立てによって多くの人が自殺を考えたり一家離散、職場を失ったり、大変な苦しみを負っていますので、これを、自分が氏名、住所をさらけ出すことになりますと、その報復のおそれがあるわけです。だから、自分が被害者だと分かっても、こういう報復を恐れて提訴に踏み切れない、こういう被害者も存在するわけです。
それから、訴訟をやるということになりますと、訴訟費用とか弁護士費用が掛かります。こういうのも被害者負担ということになります。
それから、非常に困難だったのは、この梶山とか奥野、この幹部の責任を追及するためには、末端の店舗をこの梶山、奥野が指揮命令していたと、こういうことを立証しないと梶山、奥野の損害賠償責任を問えないわけなんで、これを立証するためには刑事記録がどうしても必要になります。今、いろいろ法改正によりまして刑事事件の起訴状の被害者として名前が出ている人については、刑事事件が確定しなくても刑事記録を取り寄せやすいような制度が確立していますけど、現在原告になっている百七十五人のうち刑事事件の起訴状で被害者として載っている人はわずか二名にすぎません。そうすると、この刑事事件の取り寄せについては、なかなか、各地の検察庁に記録がばらばらになっていたんですけど、素直に応じてくれませんで、弁護団としては大変な苦労をして取り寄せているところなんですね。この刑事事件の記録が取り寄せられて初めて被害者が取立てを受けた店舗が山口組系五菱会の支配下、店舗であるということが立証できて、梶山、奥野の責任追及ができるわけです。
それから、今回の組織犯罪処罰法改正法案あるいは被害回復給付金支給法案は、こういうような今弁護団が被っている様々な困難、幹部の責任追及をするのについての困難を解決する法律になっておりますので、積極的に評価するものです。それからまた、これは先生方御存じのとおり、二〇〇四年に制定されました犯罪被害者等基本法における犯罪被害者の権利の具体化として、具体化されている法律として積極的に評価できるものだと思います。
ただ、これだけで完璧かといいますと、いろいろその運用とかあるいは今後検討すべき課題があると思いますので、その点について述べてみたいと思います。
まず、運用の点ですけど、最も重要なのはこの被害者の掘り起こしをどうするかということなんです。
一般的にこういう没収措置がなされて、被害者に回復給付金を支給しますよと言っても、なかなか名のり出ないんじゃないかと思います。例えばこれ、山口組五菱会の件でいえば、梶山とか奥野の被害者は名のり出てくださいと、これだれも多分名のり出ないと思います。この支配下にあった店舗の名前、それから使っていた銀行口座をオープンにしないと駄目です。それから、こういうことだけでも、もう既にこの事件があったのは数年前なんですね。そうすると、積極的に被害を掘り起こして被害者だと思われる人にいかに告知するのか、広報するのかと。こういう作業をやらないと、せっかくこういういい制度ができてもほとんどが名のり出ない。そうすると、残ったお金というのは本来犯罪被害財産であって被害者に支給されるべきなんですけど国庫に入ってしまうと、こういう問題が起きてしまいます。
それから二番目は、今の点なんですけど、剰余金が生じた場合に、現在の制度は一般会計、つまり国庫に入るというようなことになっているんですけど、これは私も法制審議会刑事法部会での審議のときで意見を述べさせてもらったんですけど、本来犯罪被害財産であれば犯罪被害者の救済のために使われるべきじゃないかと、一般会計に入れて国庫で他の予算に使われるというのはいかがなものかと。現在、犯罪被害者基本法ができて被害者救済を進めようと国全体がやっている中では、こういう余剰金について使途をもっと考えて、例えば犯罪被害者保護基金とか被害者救済基金というのをつくるべきじゃないかというふうに考えております。
それから、租税債権に対する優先という問題です。
これ、私たちは国内で奥野と梶山の関係で約三億円相当の米ドルと現金が押収されていたので、これを法律扶助協会の助けを得まして仮差押えをやったんですけど、仮差押えをやった後、奥野に関して押収された一億円について、国税が差押えしているということが分かったんですね。結果として、我々、国税当局にも要請したんですけど、被害者に返すべきじゃないかと。だけど国税当局としては、今の制度ではいかんともし難いと。我々は着々と徴収業務をやるだけだということで一億円を持っていってしまったんですね。
今回の犯罪被害者基本法というのは、この三条に、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」ということが基本理念で明記されています。それから、四条は国の責務を規定していまして、「国は、前条の基本理念にのっとり、犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」ということが規定されていますので、こういう観点からいきますと、租税優先というのはこの分野に関しては改めるべきではないかと考えています。
つまり、犯罪被害財産に当たるものを国税が滞納処分で差押えしていたとしても、この組織犯罪処罰法によって没収できるというような形に変えて、その没収したのを被害者に支給するような、こういう制度にすべきじゃないかというふうに考えております。
こういうことをつくづく感じた事件として、私自身も関与していますオウム真理教の破産事件というのがあります。
私、地下鉄サリン事件の被害対策弁護団の団長もやっているんですけど、オウム真理教の破産事件では管財人が努力しまして、オウムの資産を売却する等して財団を確保したんですけれども、実は国も債権届出をしています。それから租税債権も届出があったわけですね。
御承知のとおり、破産手続においては租税債権が最優先になるわけです。そうすると、オウム真理教の犯罪によって亡くなった方、これは地下鉄サリン事件では十二名の方が亡くなって、五千五百人の人が負傷しております。あるいは坂本弁護士一家の遺族、こういう人たちの損害賠償債権よりも先に国とか租税債権が持っていくことになる。これはいかにもおかしいじゃないかということで、我々がいろいろ要請行動を行いまして、一九九八年の四月にオウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律、いわゆる特例法案でオウム真理教の犯罪による被害者の損害賠償債権は国の債権に優先すると、わずか二条の規定なんですけど、これがつくられています。
これはオウム真理教の破産事件だけで特例法だったんですけど、こういう犯罪被害者基本法ができた今では、一般的な犯罪被害者の救済というのを優先するように、せめてこの犯罪被害財産に関しては租税債権を上回るような規定がされるべきではないかというふうに考えております。
それから、更に今後の検討課題としましては、犯罪者集団の違法収益の吐き出しとか等に関しては新たな制度を検討すべきじゃないかと思っております。
その理由としましては、例えば詐欺事件等の場合でかつ財産が隠匿されてない場合は、基本的にこの法律で没収できるのは起訴状で記載されている被害者の犯罪被害財産だけに限られることになります。豊田商事の場合は犯罪被害者が三万人ぐらいいますね。これを三万人の被害者を全部起訴状に書くことは普通検察官はやってないんですね、その中のごくわずかの人を被害者として記載していますので。そうすると、その余の財産については没収できないことになります。これはいかにも不都合なんではないかと思います。
それから、一般的に刑事事件は厳格な立証が要求されますので、その場合、立証が困難な場合は、没収されない犯罪収益も出てくるのではないかと思われます。
さらに、今回の制度というのは、あくまでも捜査がなされて刑事事件として立件された場合の制度でありまして、じゃ、捜査が行われて立件できない場合の問題については手当てがなされておりません。そういうような問題に対処するために、広く民事上の違法収益を吐き出しさせる被害回復のための新制度を検討すべきではないかと。例えば、国とか自治体に民事上の権限、立入調査権、差止め請求権あるいは損害賠償請求権を認めて、こういうところが犯罪被害者の代わりに損害賠償請求をして犯罪者集団から収益を取り戻して被害者に分け与えると、こういう制度が検討される時期に来ているんじゃないかと。
具体的には、これはアメリカではSEC、証券取引委員会とか、FTC、連邦取引委員会、あるいは各州の司法長官、これはアトーニーゼネラルと呼ばれているようですけど、そういうところがこういう損害賠償請求をして取り戻したお金を被害者に分け与えるというような制度ができております。
この点は、特に必要だなと感じているのは最近の悪徳商法、これは高齢者がねらい撃ちにされています。例えば、昨年起こったリフォーム詐欺事件ですね。埼玉県富士見市の事件では、認知症の姉妹が被害に遭っています。高齢者や認知症は、自分が被害に遭ったことすら分からないし自分の権利行使が分からないんですね。こういう場合に自治体とか国が代わって損害賠償をしてあげて、そして被害者を救済してあげると、こういう制度が必要になってきているんじゃないかというふうに考えますので、是非検討していただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/7
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008・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) ありがとうございました。
次に、細川参考人にお願いいたします。細川参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/8
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009・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私は、消費者政策及び消費者法を研究いたしております。その中で、悪徳商法による不当な利益をどう吐き出させ、それを被害救済に活用することができるかという点について大きな関心を持っております。
そこで、本日は、組織犯罪処罰法改正等による犯罪収益の剥奪及び被害回復給付金の支給制度につきまして、いかに悪徳商法のやり得を防ぎ被害者を救済していくかという観点から、それがどのように制度的に位置付けができるのかという点につき、刑事規制だけではなく行政規制、民事法規なども視野に入れて見ていきたいと思っております。
と申しますのも、今回の制度は、公法と私法の分離あるいは刑事事件と民事事件の峻別といった日本の法制度の原則を大きく変えるものであり、高く評価できるものではありますけれども、悪徳商法の中で、宇都宮先生も言われましたけれども、犯罪として取締りが可能となる事案はむしろ少数であり、多くの消費者被害は、犯罪としての立件が困難であるけれども詐欺的であるとか、あるいは弱い者を寄ってたかって食い物にするという違法な行為によるものがたくさんございます。
したがいまして、今回審議されている制度をファーストステップとして、国民、消費者がより安心して消費生活を送ることができるような法制度の確立に更に御尽力いただきたいと思っており、そのための議論の過程で御参考になるであろう政策のメニューを提示することによって、本日の私の参考人としての責を果たしたいと考えております。
お手元に資料をお配りしております。まずは、私の意見についてのレジュメでございます。次に、米国の父権訴訟という制度について紹介しました朝日新聞の記事がございます。最後は、クレジット会社のグレーゾーン金利に対する対応についての論文でございます。
グレーゾーン金利問題は今回の法改正と直接の関係ございませんし、時間の都合でこの件について詳しく意見を述べることはできませんが、先週の本委員会でこの問題が取り上げられておりましたし、現在の非常に大きな問題でございますので、資料を配らせていただきました。
グレーゾーン金利については、既に支払った金利についてのその支払の任意性というものが問題になっておりますけれども、以前私は、クレジットカードを使用して外国でキャッシングをいたしましたところ、利息制限法に違反する金利を請求されたために口座引き落としの前にそれを支払う意思がない旨クレジット会社に通知いたしました。しかし、クレジット会社は強引に支払を要求したり、あるいはキャッシング契約を一方的に解除するという手段に出ました。法律はある意味、私は妥協の産物であるとは思いますけれども、あいまいな形で法律を作ると、結局、強者の理論がまかり通り、弱者である消費者の権利が著しく侵害されるという問題を示していると思いますので、御一読賜ればと思います。
それでは、本論に入りまして、悪徳商法等による不当利益を剥奪し、それを被害救済に活用できる可能性を刑事法規分野、行政法規分野、それに民事法規分野、また自主規制分野に分けて御掲示したいと思います。それにより、今回の制度の意味や限界がより明らかになると思うからであります。なお、ここでお示ししたものは、あくまで考えられる方策のメニューということでありまして、現行法制度との整合性あるいは実現可能性等については触れておりませんことを御承知願います。
まずは、刑事法規分野での方策でありますけれども、これにつきましては、既に政府及び本委員会で議論されているところと思いますので、簡単に御紹介いたしたいと思います。
まずは、今回の審議されております組織犯罪処罰法における追徴、没収した犯罪収益を被害者救済に利用できるというこの制度でございます。それ以外に、ここでも既に議論があったと思いますけれども、附帯私訴制度の導入あるいは刑罰としての損害賠償命令というものの創設、あるいは刑事事件で得た証拠等を積極的に民事裁判で活用できるようにするための刑事裁判記録を情報公開法の対象情報とするとか、あるいは民事裁判上の文書提出義務の対象文書とするというようなことも考えられるのではないかと思います。
ちなみに、アメリカでは、アミカス・キュリエと言われているこういう考え方がございまして、これは裁判所の友あるいは法廷の友と言われるものですけれども、第三者がその裁判において積極的に証言とか資料を提供し、その裁判が円滑に行われるようにするというシステムでございまして、こういうところでアメリカの行政というのは積極的にいわゆる消費者とか弱者を支援しているということで、日本の行政は非常に冷たいなという感じを持っております。
二番目には、行政法規分野におけるこういった方策というものも考えられるのではないかなというふうに思います。
一つは、いわゆる課徴金制度というものが独禁法上のカルテルに対してなされていますけれども、これを独禁法の不公正な取引方法、あるいは景表法違反に対しても導入するということが検討できるのではないかなと思います。ちなみに、二〇〇五年四月より証券取引法違反に対する課徴金制度が創設されましたので、決して課徴金という制度は公取だけのものではなく、各省庁においても導入が検討できるものではないかなというふうに思います。ただ、現在のこの課徴金というのは、その金銭は国庫に入ってしまうので、これを被害者の救済に利用できるようにすればより被害救済、制裁プラス被害救済の役割を果たすことができるということになります。
次は、主務大臣の行政処分に不当利益吐き出しあるいは損害賠償命令を含めるということが検討されてよいのではないかなと思います。ちなみに、米国のSECが、最近知られるようになりましたけれども、ディスゴージメントという権限を持っています。これは、先ほどの刑事事件ではなくて、行政処分として不当利益吐き出し命令を出せるというものでございます。
次に考えられるのが、行政が管轄する法律の違反者に対して被害者に代わって民事損害賠償請求できる制度の導入、これがこの次に、朝日新聞の記事ですけれども、いわゆる父権訴訟と言われているもので、行政が民事裁判に訴えて消費者、被害者に代わって損害賠償請求するという制度でございます。
次に考えられるのがこの過料ですね。科料ではなくて過料の方ですけれども、これは秩序罰とされ、非刑事の行政罰なんですけれども、これはほとんど日本では活用されておりません。これの活用が考えられるのではないかなと思います。
御参考までに、千代田区が禁煙条例によって路上喫煙者に対する二千円の過料処分というのを始めました。これは正にこの過料なんですね。私が思いますのは、市民が路上でたばこを吸っているということで二千円の過料を取れるのであれば、悪徳商法からたくさんの過料金を取るということは当然できる話だと思います。ただ、その際、一定額だと制裁効果を生みませんので、違法行為一回当たりの金額を定め、総額が不当利益吐き出し効果を生むようにするということが考えられるのではないかなと思います。
この一つの例として、アメリカにシビルペナルティーという、こういう制裁金がございます。これ刑事ではないのでシビルという名称になっていますけれども、民事制裁金あるいは民事罰というふうに訳されておりますけれども、これは一回当たり五千ドルとかという規定があるんですね。例えば、不当な広告を新聞に掲載するとします。そして、その新聞がもし百万部売れているとすると、理論的には民事罰の額を百万倍できるという、そういう制度でございまして、実際には裁判官の裁量で決定するということなので、どのぐらいの人が実際には広告を読んでいるかとか、あるいはどのぐらいの人が被害に遭っているかということで何倍にするかということは決めるんですけれども、そういうような形でいわゆる制裁効果が十分上がるような仕組みになっております。
ただ、これも過料で得た金銭というのは、これ制裁的機能があるということなので、これは国庫に入ってしまって被害救済に使われないので、これを使えるようにするということも考えられます。ちなみに、米国でもそういう議論があったようで、米国証券取引規制法でありますサーベンス・オクスリー法においては、このシビルペナルティーを被害救済へも使えるような法改正が行われております。
次に、民事法規分野における方策というものも考えられるのではないかなと思います。
一つが懲罰的賠償、これはよく知られているところだと思いますけれども、ただアメリカではこの金額がむしろ高過ぎてしまってそれを制限する方向にありますので、こういうものの導入というとかなり拒否反応があると思いますけれども、少なくともこの重畳賠償と言われている制度、これは二倍あるいは三倍という損害賠償の額をもう法律で定めてしまうということですね。懲罰賠償はいわゆるコモンロー分野、裁判官の判断で何倍とか幾らということを決める、だから額が多くなっちゃうわけですけれども、重畳賠償は法律でもう二倍、三倍って定めてしまう。これなら制裁効果もあり、かつそれほど高額になるというようなこともないので、こういうものも導入が考えられるんではないか。
二つ目には、クラスアクション制度の導入ということですね。
日本はクラスアクションよりも団体訴訟制度がなじむという判断があったようでして、消費者団体における団体訴訟というのが今衆議院の内閣委員会で審議中だと思います。ただ、今の政府・与党案では、これについては差止め請求権だけを盛り込んでいるということで、民主党は対案として、それに対して損害賠償請求権も含めて対案を出していると伺っておりますので、私は是非この団体訴訟制度の中に損害賠償請求も入れていただきたいと思っております。
最後が、いわゆる自主規制分野での工夫というものもあり得るんではないかなと思います。
例ですけれども、業界団体が、会員企業が違法行為を行ったときの過怠金制度を定めるというものです。これ実際には日本商品先物取引協会の定款で一億円以下の過怠金賦課を定めております。こういう制度を自主規制分野で活用するという方策も考えられるのではないかなと思います。ただ、ここでは被害者救済には利用できないという形になっておりますので、これを被害救済に利用できる形にしてもいいのかなと思います。
最後が、違法行為を行った事業者が消費者支援基金に対して寄附をするということで、これは実際に消費者支援基金というものが学者等を中心にして既にできております。本当に悪いことをしようと思ったいわゆる悪質商法は別ですけれども、普通の企業が図らずも何か違法な行為をしてしまった、ちょっと申し訳ないという気持ちがある。そういう場合はこういう消費者支援基金に寄附をするという、そういう制度でございまして、この消費者支援基金は、消費者団体訴訟制度が確立して、その後、消費者団体が団体訴権を行使する際の資金を提供する予定でおりますので、こういう制度を考えてもいいんではないかなというふうに思っております。
以上、主に米国の制度を参照にしながら、導入が検討できる違法行為に対する制裁あるいは不当利益吐き出し及び被害救済制度について御紹介いたしました。立法府におかれましても、国民、消費者が安心して生活を送ることができる公正な社会を目指して御尽力いただければと思います。
また、最後に、こうした制度は弱者を救済する制度というだけではないということを強調したいと思います。消費者のための法制度となるとすぐに事業者や業界団体は反対しますけれども、違法行為のやり得を許さない制度を整備することによって健全な市場を形成し、消費者が安心して商品やサービスを購入できる環境をつくることができれば、それは真っ当な事業者も潤い、そして消費者も潤い、結果として国民経済が健全な形で形成され経済も発展していくんだと、そういう視点を是非持っていただければなというふうに思います。
これで私の意見を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/9
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010・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) どうもありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/10
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011・谷川秀善
○谷川秀善君 自民党の谷川秀善であります。
椎橋、宇都宮、細川参考人におかれましては、大変お忙しい中、当委員会に御出席を賜りまして、ただいまは貴重な御意見を拝聴をさせていただきました。大変参考になりました。心から厚く御礼を申し上げる次第であります。
さて、最近、やみ金融の高利貸し事件やら振り込め詐欺事件が後を絶っておりません。大変な被害者が出ておりますし、また被害額も非常に、何といいますか、多額に上っておりまして、非常に皆さんが迷惑をしているという事件が頻々に起こっているわけであります。
現在の組織的犯罪法はこのような犯罪収益を確実に剥奪することを目的といたしておりますけれども、財産犯罪の犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産、いわゆる犯罪被害財産を没収、追徴することを禁止をいたしております。これは、私法上の請求権の実現を妨げるおそれがあるということで、被害者保護の観点から犯罪被害財産の没収を禁止しているわけでありますけれども、しかし現在の民事では被害財産が完全に被害者に返るということはほとんど考えにくいといいますか、ほとんど非常に不可能に近いというふうに私は考えておるわけでございます。
ただいま宇都宮参考人からもお話がございましたが、例えば旧五菱会系のやみ金融事件では、同会幹部らに対する東京高裁の控訴審判決は被害者が特定されず犯罪被害財産とは言えないというようなことを言っているわけです。そして、合計九十四億円につきましては追徴を命じておりますけれども、その多額の金額、いわゆる五十一億は外国、スイスの銀行に隠匿をされておりまして、既にスイス政府に没収をされているわけであります。スイス政府が没収した財産を日本に分配をするためには日本が没収した財産を外国に譲与する、いわゆる先生がおっしゃったように相互主義が必要でありますが、これは現在の法律では、今現在ではその法律が日本にはございません。
そういう意味では、今回の法案は大変私は、それぞれ先生方が評価をされておられますけれども、大変有意義な法案ではないかと思いますけれども、なかなか完全な法律を作るというのは非常に難しいのではないか。今参考人の先生方のお話の中にもございました、難しいんではないかと思いますが、今回この法案を作るに当たりまして、何を一番重要視すべきであるかというふうにそれぞれ参考人の先生方はお考えになっておられるのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/11
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012・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 私も今の御意見にもう基本的に賛成であります。今回の法案において、何が一番重要視すべきだということが御質問だと思います。
私は、組織犯罪対策というのは結局、組織犯罪対策というのはいろいろなものにかかわっております。すなわち、国民の生活に多大な悪影響を及ぼしている。それは、犯罪の被害というのはだんだんだんだん弱い者、弱い者へ向かってしわ寄せしていくという傾向がございますので、最近は、例えば少年なんかも振り込め詐欺の中に取り込まれているというようなことがあります。それから、高齢者が対象になるということがございます。それから、外国人犯罪というのも組織がなければこのような形で増加しているということはございません。
したがいまして、組織的な犯罪対策というのは少年対策でもありますし、それから被害者対策にもなるということで非常にこれが重要だと。組織犯罪というのはどうしてもお金を目的に動きますものですから、したがいまして、組織的犯罪対策の、根絶するために重要なことは、やっぱりいかにお金、違法な収益を取り上げるか、さらにそれを使わせないかということが大事で、そしてその際に考えるべきことは、まずもって被害者がいるわけですから、その違法収益は被害者に返すということで、組織犯罪対策が少年対策であり、外国人犯罪対策であり、そして被害者対策であるということで、これが回って初めて有効な対策になるということで、そういう意味でもこの法案は重要だというふうにとらえております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/12
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013・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) この法案で一番重要なのはやっぱり被害者救済、私自身、被害者救済をやってきましたので、それがきちっと行えるかどうかということが重要な点だと思います。
その点で憂慮しているのは、先ほどお話ししましたけど、この犯罪被害回復金の支給において被害者をどれだけ掘り起こすことができるか、検察官が中心になってやることになっていますけど、これはサボろうと思ったら簡単にサボることもできるし、一生懸命やるといったらどれだけでもやれるんですね。この点が非常に試されていると。
私、心配しますのは、これの法律ができたらいずれスイスからお金が、まあ五十一億円ですから半分返ってきても二十五、六億円ですね。これは犯給法の国家予算、国の年度予算が十四、五億と言っていますから、その倍ぐらいのお金が返ってくることになります。やりましたけど、おざなりの公告をやって、ほとんど名のりを上げる人がいなくって全部国庫に入れちゃったと。じゃ、何のためにこんな法律を作ったのかということで国民の批難を浴びることになると思います。
だから、一番の試金石は、スイスから返ってきたお金、差し当たり梶山の米ドルに限っては我々やっていますから、この今の梶山の米ドルの損害賠償についてはこの法案は遡及効はありませんけど、少なくともスイスの五十一億ドルの一部の返還については五菱会のやみ金被害者の救済に充てられることになりますけど、これがちゃんと被害の掘り起こしがなされて、多くがやっぱり被害者の救済に充てられたと。これがすぐ目の前に迫っているわけですから、そこが問われると思うんですね。そのためにはやっぱり、被害者をいかに掘り起こすのか、それを十分検察官は工夫していただきたいし、そういう手当てを真剣にやっていただきたいと、そこがポイントだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/13
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014・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私は、二点ございます。
一つは、今回の法律でどの程度いわゆる経済事犯の中で追徴、没収できて、それが被害救済にできるのかという、これは今後の課題になるかもしれませんけれども、是非そういうシミュレーションを今後も続けていただいて、本当にこれが、せっかく作ったけれどもほとんど活用されない。まあはっきり言って五菱会のやみ金というのは本当に巨大な、特殊な事例だと思うんですね。それ以外のもっと小さいというか、悪質だけれども表へ出てこない、そういった経済犯罪一杯ありますので、そういうものに本当に活用できるのかどうかという、そこに尽きるんではないかと思います。そういう意味では、適切な捜査がなされないと結局こういう法律を作っても意味がないということになります。
それで、もう一つは、宇都宮先生と同じですけれども、追徴、没収したお金が本当に被害救済に使われるのかどうかという、そこの仕組みづくりですね。特に高齢者は被害意識もない、あと権利行使についての考えも乏しいということになりますと、なかなか手を挙げないということなので、そこら辺の工夫だと思います。
一つアメリカで、先ほど記事をお配りしました父権訴訟ってございますけれども、これも、お金を集めて後から消費者に分配するわけですけれども、アメリカの場合はこういうものに対して民間企業をうまく活用しているんですね。そして、民間企業でこういうものを、衆知集めて、それを分配するようなことを、国なりから委託を受けて、まあ手数料は取るわけですけれども、それでやる企業という、そういう産業が発達しているんですね。それで、正に通信販売の会社みたいに百人ぐらいオペレーターがいるコールセンターみたいのがもう用意しておりまして、そこで周知して、そこでもう電話を受け付けて、そうやって被害者がフリーダイヤルで電話できて、それでやり取りするなんていう、そういう仕組みをつくって被害救済を図っていますので、そこら辺の工夫も必要ではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/14
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015・谷川秀善
○谷川秀善君 ありがとうございます。
それと、もう一点だけお伺いしたいんですが、いわゆる没収した金額に国税が差押えをすると。そうすると、債権優先だと言うて国税をまず持っていくという考え方についてということと、それから、残余財産が例えばできた場合に、まあできないとこう法務省辺りは言うているんですけれども、残余財産ができた場合にこれを国庫へ入れると、こういうことになっていますね。
この二点についてどのように、私はやっぱり犯罪財産ですから犯罪者救済に充てる方がいいんじゃないかなと思うんですが、現在の法案ではそういうことになっておりますので、どうお考えになっておられるか、御意見をお伺いいたしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/15
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016・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) どなたですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/16
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017・谷川秀善
○谷川秀善君 三人の先生から簡単に御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/17
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018・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) なかなかこれは難しい問題だと思いますけれども、国税は国税でやはり非常に国の全体の施策をどうするかという国民の福利厚生全体の共益費的な性格を持っているということで、そういう意味でこれ自体重要なことであるということは間違いないと思います。
それから、もちろん被害者の救済というのは、これもまた重要な要請でありますから、これの調整ということが必要でありますけれども、ここで一気に国税優先という考え方を変えるというのも非常にこれはドラスチックな考え方になると思います。実際上考えてみますと、ここで一気にそういう考え方を改めなければならないかということを考えますと、その改めた場合のいろいろな、何といいますか、いい面というか、いろいろな問題点とかということがあると思います。
今回の法律が通った場合に、それでどこまでできるかということとのバランスを考えるといった場合に、私は今度の法案は、これはこれで合理性のある考え方だというふうに思います。といいますのは、国税は国税で行われて、これは一定の、例えば五菱会のやみ金融事件でも、滞納ということで追徴されるということですよね。そうすると、この場合、通常は税務調査というのは定期的に行われる。そして、滞納されているとそれに対する処分がなされるということでありますので、これはこれで必要だと。
ところが、今回の法案が考えられておりますのは、組織的な犯罪があって、それによって被害が生じた場合に、その犯罪被害財産を没収して被害者に給付するということで、そうしますと、犯罪が起こった場合に捜査が入るということでありますから、その当該問題が起こったときに、捜査があって、それによって裁判があって、確定した場合に犯罪被害財産と認められたものについては被害者に給付されるということで、そういう社会的な問題になれば、捜査は捜査で迅速的確にしてやっていただくということであれば、この被害者救済という目的は相当図れるということになるだろうというふうに思いますので、そういう意味では、まあ一気に解決というのもなかなか難しいところがありますので、この法律はこの法律で相当な有益なものであると。
それから、今度の法案の中で民事の関係と刑事の関係との調節も図られたという規定がありますので、まあそういう意味ではここで国税優先の原則をやめるというところまで行くというところにはまだすべきではないのではないかと。もっとそれは次の段階で幅広く多角的な観点から検討すべきではないかと、こういう考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/18
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019・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 済みません、ちょっと時間が過ぎておりますので、簡潔に御答弁よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/19
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020・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) 御質問の件については先ほどの意見陳述の際にお話ししましたけど、当然、犯罪被害財産、一般犯罪収益ではなくて犯罪被害財産に当たる犯罪収益ですので、それは当然被害者救済に回すべきであって、国税優先はおかしいと思っております。それから、余剰金は当然国庫に入れるべきではなくて、被害者救済の何らかの基金に充てるべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/20
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021・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私も宇都宮先生と同じ意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/21
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022・谷川秀善
○谷川秀善君 どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/22
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023・尾立源幸
○尾立源幸君 民主党・新緑風会の尾立でございます。代表して質問をさせていただきたいと思います。
お三方におかれましては、本当にそれぞれのお立場でこの法律、成立に向けて御尽力いただきましたことを本当に心から感謝を申し上げますし、また、宇都宮先生に関しましては、大変被害者の救済という立場で日夜御努力されていることに心から敬意を表したいと思います。
そしてまた、今し方谷川委員からも、先生からも心強い御発言をいただきましたので、少しこの辺りを突っ込んで話をさせていただきたいと思います。
まず、失礼な質問になるかと思いますが、今回の二法案の趣旨でございます、犯罪の被害者の保護を一層充実させるためという言葉が、私はこれは非常に目に飛び込んでくるわけでございますが、お三方に、そういった趣旨から、今政府提案の法案の相対評価といいますか総合評価、百点満点だったら何点かなというのを、一言それぞれの立場からお聞かせ願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/23
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024・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 私は被害者対策というのはいろいろな形でやるべきだと思っております。犯給法、財産的被害の回復、精神的被害の回復、それから刑事裁判への参加等、そういったことを総合的にやって初めて被害者の完全な救済というものが得られると思っておりますので、これだけですべてというわけにはいきません。
で、これはその一環を、財産的被害の回復の一環を担うもので、まあそういう意味ではその一角を担う重要なものとして、合格点といいますか、私は教師しておりますけれども、Aを付けてもいいんじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/24
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025・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) これも先ほどお話ししましたけど、現在、私たちが五菱会の幹部相手に損害賠償請求をやっています。これ、非常に困難にぶち当たってますけど、それを解消するという制度で、しかもこれまでになかった制度であるということで、画期的な制度であるという点では積極的に評価しております。まあ点数でいえば、今までなかったわけですから、七十点ぐらいは付けてもいいんじゃないかと。
ただ、先ほどお話ししましたような、運用において工夫すべき点とか、実は先ほどの国税の問題は法制審議会の審議の段階で出てこなかった問題なんですね。その後こういう問題が出てきまして、その段階でもう少しこの点十分議論していたらなと悔やまれるわけですけど、そういう新たな問題も出てきましたので、その点を是非先生方の方で補充していただけたらと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/25
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026・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私は、今回のこの問題だけではなく、団体訴訟制度あるいはグレーゾーンの撤廃というような議論がなされていますけれども、こういった最近のこの法律の制定を眺めますと、二つの全く違う感想を持つんですね。
一つは、今までの日本の状況だけを見た場合に、よくここまで来たなという、そういう思いはあります。そういう意味では、まあ少し国会も変わったなって言っちゃうとあれなんですが、大分いい方向に行っているなという、そういう意味で、まあ八十点、九十点付けてもいいかなと思います。
ところが、目を一歩海外に向けて、しかも先進国だけじゃなくて、隣の韓国あるいは台湾、中国、そこら辺に目を向けても、日本というのは非常に歩みの遅い国で、何でこの程度のことがここまで待たないとできなかったのかというのを強く思うんですね。そういう意味でいうと、まあ五十点いかないかなという感じで、是非、これで終わりということではもちろんないと思いますけれども、やはり今後これが本当に生かされているかどうかというのを是非関心を持ち続けていただいて、一歩でも進めるようにしていただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/26
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027・尾立源幸
○尾立源幸君 それでは、宇都宮参考人にお聞きをさせていただきたいんですが、先ほど被害者の方の、名のりを上げていただくのも大変だというお話をお聞きしましたが、実際、今回、数年前の事件に対して犯罪の財産が分配されるということになりますが、その手続、私も、大変これ難しいし、大変な困難だなと思っておるんですが、今回の法律案では官報で周知するというような一条を書いてあるわけでございます。
この点、さきの委員会でも質問しましたところ、ホームページもやりますと、こんなお話もあったわけでございますが、私、そんなものでは全然、自身が被害に遭ったということすら意識ない人も多いと思いますので、この辺りのもっと掘り起こしというのは具体的にはどうすればいいのか。先ほど細川委員からはアメリカの例がございました。一般企業を使うというような、アウトソーシングみたいな話でございますが、宇都宮参考人の御意見をちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/27
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028・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) これは、検察官が主導してこの被害回復給付金の支給を行うわけなんで、起訴されて裁判所に提出されなかった捜査記録にも恐らく検察官は当たれると思うんですね。警察レベルである、そういう捜査記録あるいは起訴された刑事記録の中から判明した被害者、これは当然知れたる被害者として通知をするということはやるべきだろうと思いますね。
それから、できましたら、結局は、先ほどお話ししましたように、奥野とか梶山から取立てを受けた人はなくて、具体的な店舗等口座に振り込んでいるんですね、彼らの使っている口座に。この口座は特定されているわけですけど、この口座を洗っていけば振り込んだ被害者が全部名前が出てきます。そして、その口座から更に振り込み先の、被害者が使った銀行なんかも出てきますから、そういうところを洗っていけばかなりの被害者が特定される可能性がありますから、そういう作業をやっていかないと、なかなか自らが被害者だということを名のり出る人が少ないんですね。この構図というのは振り込め詐欺の構図も同じなんです。振り込め詐欺も、結局は、犯罪者集団との接点があるのは、当然担当者は全部偽名でやっていますから、指定された口座だけなんですね。そこの口座に大量のお金が振り込まれているわけで、振り込んだ人が被害者なんですけど、それを洗って調査して、そういう人にアクセスしてもらうような努力が必要ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/28
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029・尾立源幸
○尾立源幸君 今日、刑事局長はいらっしゃってないんですけれども、よくお聞きになっていただいて、運用面で是非法務省さんには今の御意見を参考にしていただいて進めていただきたいなと思っております。
それでもう一点、先ほどの谷川先生からございました国税が優先するのか被害者への分配が優先するのかという話でございますが、若干私の見解を再度述べさせていただきますと、やはり幾ら国税といえども、違法に稼いだお金に税金を掛けてそれを国民のために使うという、私はこういう考えは予定してないと思うんですね。だからこそオウムの件も、国税のその優先権というのを例外規定としたということでございますので、やはり本来の趣旨に戻って健全な、適法な企業活動等々からの税金は確かに国税が私は何に増しても優先すると思いますが、こういう違法なものまでも国税が持っていってそれを国民のために使うと言われても、国民は私は喜ばないんじゃないかと思うわけです。私、厳しいことを言うようですが、椎橋参考人、国民の代表として私たち物を申しておりますので、そういう感覚であるということを是非今後参考にしていただきたいと思います。よろしくお願いします。参考人に注文して申し訳ございません。
それと、もう一点でございます。今、出口論の、犯罪が起こった後の処理の話をしておりますが、やはりもっと私大事なのは入口論の話ではないかなと思います。談合、ライブドアの問題ややみ金、違法の消費者金融等々、これ違法なことで収益を上げる、後を絶たないのは、私はやはり抑止力が足りないからじゃないかなと、こんなふうに思うわけでございます。そういった意味で、やり得であるという今の現状が非常に問題である。
私もアメリカにおりましたが、やはり、すごい自由を与えてくれるわけですけれども、何か違法なことをしたときにはすごいペナルティーを払うということでバランスが私は取れているというふうに思うわけでございますが、そういった意味で金商法や先物取引等々、今また問題になっております、改正も予定されております。
そんな中でよく言われるのが、一本の電話から悲劇が始まったというこの不招請勧誘の話もよく出てくるわけですが、この辺り、特に宇都宮参考人、細川参考人に不招請勧誘の是非について御意見を聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/29
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030・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) これは、不招請勧誘は、私たち消費者被害の救済をやっている弁護士からいえば、ほとんど自分から進んで被害に遭うんじゃなくて相手から融資勧誘あるいはいろんな勧誘が来て被害に遭っているところが多いと。これは日本的な特徴じゃないかと思うんですね。そういう電話等あるいは訪問販売等で、それで先物でも悪徳商法の被害でも遭っていると。ヨーロッパ辺りはそういう一方的な電話とか勧誘ということ自体を禁止している、そういう法律が多いと聞いていますけど、日本はもうのべつ幕なし、勤務先にも電話が掛かってきますよね。こういうことが許されているというのは非常に問題があると思います。当然そういう不招請勧誘、今、金融先物だけですけど、こういう禁止というのはほかの関係法律にも広げるべきじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/30
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031・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 昭和四十年代でしたか、訪問販売法、今の特定商取引法ができたときにこういう議論があったそうです。訪問販売を規制するということは、それは裏返して言えば訪問販売を認めるということになる。なぜならば禁止ではないからですね。そういうことで、訪問販売は認められたビジネスだけれども規制はありますよという感じなんですね。そこで、不招請の電話勧誘とかをどうするかというときに、訪問販売は認めているのに何で電話は駄目なんだという議論が出てきてしまうということを聞いたことがありますので、正に、まあ確かにそう言われると訪問販売はいいのに電話は駄目だというそこら辺の法的な理論付けというものもしなければならないと思います。
一つできるのは、禁止の前により厳しくする、これはアメリカでもうかなり行われておりまして、夜の何時以降は禁止だとか、あるいは、これはいろいろ議論ありましたけれども、ドゥー・ノット・コール・レジストリー制度というFTCが作った、自分がもう望まないということをFTCに電話一本すれば、もうそこでのリストを事業者はチェックしてからじゃなきゃ電話を掛けちゃいけない。それで、消費者がFTCに私は不招請勧誘を望まない、電話勧誘を望まないと登録してあるのに事業者が電話を掛けた場合は、先ほど紹介いたしましたシビルペナルティー、これを科すというそういう制度ということなので、禁止となるといろいろ問題あると思いますけれども、やはり規制はいろいろ考えられるんではないかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/31
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032・尾立源幸
○尾立源幸君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/32
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033・木庭健太郎
○木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。
今日は、三人の参考人の方、本当に貴重な御意見をありがとうございます。
私も、今回の法案というのは、犯罪被害者の財産的な支援、保護という意味では正に画期的な法案であり、極めて重要な法案だと思っておりますし、その意味で審議もしてまいりました。そして、ポイントがこの法案成立した後の運用の問題であるという宇都宮参考人の御指摘、極めて大事な問題だと思っておりますし、私も一番この法案通った後どうなるのかなと心配しているのは、おっしゃっている掘り起こしというか、潜在被害者をどうやるのかという問題だと思っております。
先ほど尾立さんから御紹介ありましたが、法務省はどうも官報でやって、その後は何かホームページを使えばみたいなことで、やっぱり、これじゃどうなるのかなという心配は現実にあるんであって、ここをどうするかが一番のポイントだと思っております。
その意味で、御三人の参考人の方にそれぞれお聞きしたいんですけれども、椎橋参考人にまず、全体これどうするのかということを是非お聞きしたいし、宇都宮参考人にお聞きしたいのは、加えて、宇都宮参考人は検察に是非きちんとやれと、こうおっしゃっているけど、大丈夫かなと、逆に、それだけのことで。逆に、これまで取り組んだ宇都宮参考人として、それだけでなく、どうほかの意味で掘り起こしをやる方法があるのかないのか。ある意味では、宇都宮参考人のようにこれまで取り組んだ方々の協力なしにはこの掘り起こしはできないような気もしておるんで、その点についても御意見をいただきたいと思うし、細川参考人、海外の事例をちょっと御紹介いただきましたが、そのほか、一体こういう制度を持っている国がこのいわゆる潜在被害者に対してどんな仕組みを持っていらっしゃるのか、先ほどの民間活用の例以外にももしあれば、教えていただきたいと。
それぞれ御三人の方から、この潜在被害者の掘り起こしについて御意見を賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/33
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034・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 私も潜在的被害者の掘り起こしは重要であるというふうに考えております。
法案が予定しているものは、今御指摘がありましたように、原則的には官報で公告をする、そして被害者だと判明している者については個別に報告するということでございます。さらに、御指摘ありましたように、検察庁でホームページを開設して周知を図るということでございますが、さらに運用として消費者団体等関係機関との連絡を密にして掘り起こしを図るということだと思います。
私は、これは捜査とか裁判の過程におきまして犯罪事実が相当明らかになってくるというふうに思います。そして、特に、先ほど宇都宮先生おっしゃっておりましたけれども、口座をたどっていくということによって相当被害者が分かると。これも実は捜査の過程で相当分かってくるだろうと思いますので、その捜査、裁判で明らかになった事実を利用して、そしてその被害者の掘り起こしをするということは相当程度可能であるというふうに思います。
それから、その報復を恐れてということにつきましても、これはもう既に犯罪として確定したということが前提でありますので、そうしますと、前の状況に比べると相当そういうおそれも減るということが期待されるのではないかと。それから、マスコミの協力も必要だというふうに思います。
ちなみに、給付金、犯給法の運用についても着々とその申請をする人が増えておりますので、そういったことも参考になるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/34
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035・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) この掘り起こしをやるのは検察官だけではやっぱり限界があるんじゃないかと思いまして、審議の過程でやっぱりどちらかといえば弁護士等が中心になってというような議論もあったんですけれども、基本的にはいろんな制度上の問題があって、検察官が中心ということになっています。
ただ、検察官はこの支給事務を弁護士等に手伝わせることができるような規定になっていますから、そこで一定のこういう被害者救済、あるいは破産事件における管財人の経験のある、そういう人たちを有効に使ってこの被害掘り起こし作業も手伝わせると、徹底させるということが重要じゃないかと思いますね。検察官だけでは、まあ検察官も大分いろんな捜査に忙殺されているようですから、そこだけでやるというのはやっぱりかなり限界があると。だから、弁護士の利用ということを是非考えていただけたらと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/35
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036・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私は、先ほど民間の活用ということで一つそういうビジネスがあるという御紹介いたしましたけれども、それ以外にやはり民間ということでいえば、NPO等が積極的にそういったところで役割を果たすということも考えていいんではないかなと思います。
例えば、何かの事例が起きて、その被害者の属性というものが高齢者に集中しているということであれば、高齢者の問題をやっているそういった行政なりあるいはそういったNPOに例えば何か協力を求めるとか、あるいは身障者をねらって何か犯罪を犯しているということであれば、そこの近くに、いろんな活動をしている行政とかあるいはNPOにそういった協力体制をしくとか、そういうような仕組みがあっていいんではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/36
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037・木庭健太郎
○木庭健太郎君 先ほど、これは細川参考人が、よくこんな制度が日本でできたなと、でも比べてみるとえらく後れているんじゃないかなという御指摘がございました。これ、法制審議委員されている椎橋参考人も、実はあるものをめくらせていただきましたら、犯罪被害対策は日本は二、三十年後れていると言われる中にあってというような御発言があっていたのも見させていただきました。
そういう意味では、そういう後れている、いろんな評価がある中で今回の制度ができたというのは、もう先ほど申し上げたように極めて大きな意味を私は持っておりますし、犯罪被害者の給付金から始まって、基本計画ができて、その中でこの財産権という意味でいけば極めて本当に大きな一歩が踏み出せたと思っておるんですが、全体、基本計画も含めてなんですが、この犯罪被害者に対する対策という意味でいけば、先ほどおっしゃったように、財産の問題もあれば精神的問題もあれば司法参加の問題、様々な面がまだ課題として私は残されているという気がいたしておりますが、今回、一つこういう画期的な法案は作ることができたと。
それでは、今残されている課題の中でどういう課題が今後この犯罪被害者のいわゆる回復というか救済に当たって取り組まなければならない問題として残っているのかという点について、それぞれ御三人の方、この法案そのものについて、問題点、こういうところが残っているよという御指摘は宇都宮参考人からも細川参考人からもいただいております。全体を総括して、犯罪被害者の救済という意味でいけば、今後、とにかくまずこれができたら次にはこれはもう必ず取り組まなくちゃいけないんじゃないかと、こう考えていらっしゃるか、それぞれ御三人の方から御意見をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/37
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038・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 二、三十年後れていると申しましたけれども、最近の一連の被害者保護対策によって、私は相当これは後れを取り戻してきているというふうに最近では言っておりますので、かなり先進国並みにといいますか、近くなってきていると。
今後取り組むべき課題といたしましては、何といいましても、今までの犯罪被害者対策自体、非常に関係者の御努力あるいは国会の御努力によって進展させられてきたわけでありますけれども、何といっても何かパッチワーク的な形で進展してきたという感が否めません。
それは、一つにはどうしても縦割り行政の限界ということがあったと思いますので、今後は縦割り行政ではできない各省庁横断的な取組、そして総合的な施策というものが必要だと思いますので、それは、しかし現在進行中で、一昨年ですか、基本法ができまして、それを実現すべく検討会議が、基本計画推進会議ですかね、それとその下の検討会議というところで精力的に検討が進められておりまして、現在また各省庁に戻って、それぞれ主体となる省庁を決めて、そして幾つかの省庁が協力して取り組むべきところは協力するという形での作業が進められているようですので、これが一番最初にねらいとしているという形で進んでいけば、私はこれはもう世界の中でも恥ずかしくない被害者対策ができる可能性はあるというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/38
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039・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) 犯罪被害者対策あるいは犯罪被害者の救済、あるいは犯罪被害者の権利の確立と、こういう流れというのは大分できてきているし、その関係では、是非先ほど細川先生が紹介された諸外国の先進的な制度も考慮して新たな制度の構築に向けて頑張っていただきたいと思いますけれども。
私、振り込め詐欺とかやみ金の被害者の相談を受けている現場でいつも感じていることは、犯罪が起きて被害者救済というのは非常に重要なんですが、犯罪を起こさないような社会にすることが一番重要であって、そのことが重要なんです。犯罪を起こさない制度というのは何なのかという。検挙に勝る予防なしと言うんですね。これは警察のやっぱり捜査力、摘発、それから厳罰に処するということが犯罪者集団を追い込んでいくので、この基礎的なところが非常に日本は弱体化していると思います。それは警察力の弱体化です。
そこのどこが一番我々問題なのかというと、やみ金の被害者とか振り込め詐欺の被害者が地元の警察に行ってもほとんど取り合ってくれません。これは、この前、栃木リンチ殺人事件で警察の怠慢を問題にした損害賠償が認められましたけれども、あれは特殊なケースではないんです。我々はもうほとんどそういう状況ですね。幾ら被害者がやみ金から取立て受けて相談に行っても全然相手にされないと。その間、自殺する人も出てきています。これはどういうことなのかと。日本の警察は優秀だと言われていましたけれども、本当に国民生活の安全、安心を守ろうとしているのかどうか、そこの点がやっぱり日本の警察というのは非常に問題がありますね。
それから、振り込め詐欺とかやみ金組織というのは全国組織になっています。拠点は東京ですけれども、一定の被害、ターゲットになる人の名簿、それから口座は架空口座、他人名義の口座ですけれども、口座と電話によって日本全国の人をターゲットにして犯罪を、収益を上げているわけですね。ところが、被害者は、北海道とか九州は地元の警察に行きます。だけれども、そこの警察で本当に犯人を検挙しようと思ったら、主に口座が集中している東京に上京して捜査しなきゃいけないんですけれども、相談を受けても積極的に上京して捜査するような警察はすごく少ないんですね、警察は都道府県警に分かれていますので。
それで、実は振り込め詐欺の相談なんか受けていると、二次被害、三次被害が多いんです。どういう被害かというと、被害に遭っても家族からは、おまえがばかだからだまされたんだとか、それから警察に行っても相談に乗ってくれないと、そういう悩みの相談が多いんですね。
被害に遭って一番悪いのは犯罪者集団なんですよ。それを検挙して、それからこういう犯罪収益を捜査当局が確保すれば被害救済もできるんですけど、ほとんどあきらめています。重要な将来の老後の資金を丸ごと持っていかれて、さらに家族からもばかにされる、こんな社会があっていいはずないんですよ。つまり一番の問題は、そういう人たちの相談に対して真っ正面から向かっていないんです、現場の警察。私は警察改革が一番重要だと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/39
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040・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私は、今回、これのいわゆる被害回復給付金という言葉に非常に疑問を持ちました。給付金ですか、これ。奪われた金を返してもらうというのは当然の権利であって、税金で施しを受けるわけじゃないんですよ。それを何でこの給付金という呼び方でこのまま通すのかというのは、私はちょっと疑問に思いますけれども。そこには何か行政だけが公のことができる、そして行政がいわゆる施してやるみたいな、本来国庫に入るべきものを分けてやろうという、何かそういう発想なのかなというふうに私は感じるんですけれども。
そういう意味では、正にこれは犯罪に至る前にそういった芽を刈るとか、そういう意味で言えば、やはり行政だけじゃなくて、「法の実現における私人の役割」という、そういう名著もございますけれども、そういったいろんなところで、犯罪に至る前に損害賠償請求があったり制裁機能があったりということで芽を刈っていくという、やっぱりそういう法制度を是非作っていただきたいなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/40
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041・木庭健太郎
○木庭健太郎君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/41
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042・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は三人の参考人の先生方、本当に情熱あふれる御意見がずっと続いておりまして、心から敬意を申し上げたいと思います。
まず、椎橋参考人にお尋ねをしたいと思うんですけれども、先ほど、今回の改正がドラスチックなものであるというような、ドラスチックという言葉もあったわけですが、公法と私法の分離というこの伝統的な考え方、あるいは刑罰としての没収というこういう伝統的な考え方というのは、私どもが法律の基礎を学ぶときに刷り込まれるような部分もございまして、そういう意味では、ここを源泉として被害回復を図っていくという意味では本当にドラスチックなものと私は言っていいんじゃないかと思うんですね。
ところで、先ほどの、給付をして残ったものが国庫に入るというのはこれ、没収あるいは追徴というものを原資にしていればこれは不可避なものなのか。あるいは支給の手続ですね、これは没収をしたものを原資としているから、だからという形での限界があるのか。つまり刑罰としての没収、追徴を原資としている制度というのに限界があるのか。あるいは、あるとするならばどんな限界なのかという辺りについてお伺いをしたいと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/42
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043・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) まず、私がドラスチックという言葉を使ったのは、ちょっと違う文脈で申し上げました。ただ、先生の言われることはよく分かりますので。
まず、その公私、民刑ですね、民事、刑事の分離ですね。これは、古くは民事、刑事の分離というのは余りそう厳格なものではありませんで、犯罪によって損失を被った場合にその損害を金銭によって賠償するということは、先ほど細川先生の話にありましたように、二倍賠償、三倍賠償というような考え方というのは古くからございました。それが十九世紀になって民刑の分離というのが完成いたします。そこで被害者の疎外が始まったというふうに言われるんですけれども、そういう意味で、今回の法案は、民刑の分離が余りにも極端に行き過ぎていたものを刑事を通して、刑事の裁判を通じて被害者の財産的損害の回復を図るということを実現するという意味では非常に画期的なもので、これは先生の評価のとおりだと私は思っております。
それから、刑罰としての没収の限界ということですけれども、これも非常に難しい問題ですけれども、必ず没収したのは最終的には国庫に入るのかというと、私は理論的には必ずしもそうではないというふうに思います。
といいますのは、没収の本質をどうとらえるかという問題と関連しますけれども、没収というのは、例えば犯罪に使用したものとか犯罪によって得たものとか、例えば殺人の凶器でありますとか、あるいは麻薬でありますとか、そういったものを没収すると、これは基本的には保安処分的な考え方で、危険なものをそれ以上使わせるというのはまずいということで国が没収すると。そういう意味では、犯罪収益というのも同じように考えられるということだと思うんですが。ただ、ですから、没収の本質を保安処分だということで、危険な状態になる、あるいは更に悪いことに使われるのを阻止するというところまでが没収の本質だというふうに考えれば、その先どうするかというのは政策の問題として別に考えられる。つまり、国庫に入れないという考えもあり得るとは思います。
ただ、罰金も含めて考えますと、犯罪から生じた制裁としてのお金、これをどう使うかというのは、非常に大きな広い視野から考えると本当にそれこそ国会で先生方に考えていただかなきゃならない問題なんですけれども、これは、単にこの問題だけではなくて、罰金ですね、あるいは制裁としての、そのほかの証券取引法上のものとか、制裁的な性格を帯びるいろいろなお金を取り上げる、国が取り上げるということがありますので、それをどう使うかということを全体として考えなければいけないので、犯罪から取ったものは全部犯罪の被害者にということになると、これは相当国の財政ということを考えてみると問題が出てくる可能性がある、罰金というのは相当多額に達しますので。
そういう観点から考えると、本質ではないけれども、政策的に考えて、犯罪から得たものは全部被害者にという、そういうふうには簡単には言えないと。もしそう考えるのはむしろドラスチックだというふうに申し上げたんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/43
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044・仁比聡平
○仁比聡平君 理論的にすべて国庫に行かなければならないものなのだということではないということをお伺いをして、私、大変心強く思いました。
宇都宮参考人にお尋ねをしたいと思います。
クレサラややみ金被害を始めとして、先生の様々な分野での活動に私からも心から敬意を申し上げたいと思います。
被害者掘り起こしの問題が今日、先生に中心に聞かれているわけですけれども、大きな被害が起こったときに実際にそれを掘り起こしていくというときに、弁護士は、例えば電話一一〇番などに始まりまして、被害が集中している地域に相談会をやったり、あるいはひざ詰めで懇談をしたり、様々な努力をしていると思います。つまり、手を挙げる人を待っているという、そういうスタンスでは被害の救済は図れないということかと思うんですね。その背景には、恐怖や後難のおそれというのももちろんありますし、もう一方では金を借りた方が悪い、だまされた方が悪いという誤った偏見の中で、家族にすら相談をすることができないという形で追い詰められていっているという状況があると思うわけです。そこをどうやって掘り起こして現実にこられたか。
で、そのことを今回の手続の中で、先ほど先生の方からは、一生懸命やったらどれだけでもできるはずだというお話がありました。どういう、これはそういう意味では官民合わせてということだと思いますけれども、効果的に本当に被害が救済される運用が果たされるためにどんなことが具体的な課題になっていると思われるか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/44
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045・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) それでは、今度この山口組系五菱会の幹部に対する損害賠償請求の原告をどうして集めたかというのをちょっとお話ししたいと思いますけど、先ほどお話ししましたように、山口組系五菱会の被害者であるかどうかというのは、その店舗が判明しないと分からないわけですね。で、これは具体的には刑事記録に当たらないと店舗が出てきません。そして、その店舗の被害者がどの程度いるかというのは、店舗を公表しないと被害者と気が付かないわけですね。
まあそういうことは我々は独自にはいろんなルートを通じて、被害者救済、やみ金被害の救済をやっている弁護士、司法書士、被害者の会にはやっているんですけど、何せこの山口組系五菱会の事件というのは三年も四年も前の事件なんですね。なかなか古い記録に当たれない。弁護士であっても、三、四年前の記録を探り当てて、さらに店舗、場合によれば同じような名前がありますから、口座まで当たらなきゃいけない。
それで、一番多く被害を掘り起こせたのは、実は私たち、全国ヤミ金融対策会議を二〇〇〇年に結成しておりまして、それから先ほどの、警察がほとんど被害者が相談に行ってもやりませんので、これは問題だということで、全国一斉のやみ金の刑事告発を、今まで集団告発を七回にわたって繰り返しています。この中で、三万社ぐらいを刑事告発しています。
それで、この三万件ですね、だから、延べ三万件ですから、業者数は名寄せするともう少し少なくなりますけど、そのリストを、私の事務所に事務局があるんですけど、被害者の名前、それから業者の名前、業者の口座ですね、こういうやつを全部集約しているわけです。
それで、明らかになった山口組系五菱会、これは千店舗あったと言われていますけど、判明しているのは百店舗ぐらいなんです。この百店舗の被害者について、今まで告発した人にずっと当たっていって、そういう告発した人を担当している弁護士とか司法書士とか被害者の会を通じて、この方は山口組系五菱会の被害者である可能性が強いと。それで当たって、原告になるよう呼び掛けてくれないかと。
こういう掘り起こし作業をやって、まあその人が中心で、これまで何回か提訴に当たって記者会見をやっていますけど、まあマスコミというのは、最初の提訴のときはかなり報道してもらいましたので、それを見て、私の事務所に問い合わせがあった人も何人か含まれていますけど、結局、この原告になった中心というのは、これ二〇〇二年から二〇〇五年、ずっと一斉告発を繰り返している集団告発の被害者と、山口組系の店舗を割り出してこちらが特定した人たちが中心になっています。その人たちに説得して、まあ今まで百七十五人ぐらいを発掘しているということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/45
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046・仁比聡平
○仁比聡平君 今、短時間でお伺いをするだけでも大変な御努力だと思うんですね。
で、一連の犯行等の被害者というのも対象に加えるということであれば、法務省が、今、宇都宮先生からお話のあったような努力をして、これもホームページで公表するとか、あるいはマスメディアに伝えるとかいうようなこともあっていいのではないかということも私思うわけです。
最後に、細川先生にお尋ねをしたいと思うんですけれども、先ほど課徴金やあるいは過料ですね、こういったものも含めて被害救済に利用できるようにするという、こういうシステムがアメリカ含めて外国ではあるんだというお話がございまして、その被害救済に当たって、被害の経済的な回復の問題、あるいは今、宇都宮先生からもお話がありましたような相談やあるいは訴訟や権利行使そのものを支援するというような問題ですね、いろんな取組あると思うんですけれども、先ほど御紹介いただいた、名前だけだったような気もしますので、紹介も含めて先生のお考え聞かしていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/46
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047・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 名前も含めた、どういう……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/47
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048・仁比聡平
○仁比聡平君 名前は後ほど、先ほど伺いましたので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/48
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049・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 済みません。もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/49
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050・仁比聡平
○仁比聡平君 制度の名前も含めて御紹介をいただければと思います。
先ほど、制度の名前と簡単な説明だけにとどめられたように思いましたので、もう少し詳しくと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/50
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051・細川幸一
○参考人(細川幸一君) それは父権訴訟のお話でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/51
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052・仁比聡平
○仁比聡平君 いえいえ、例えばシビルペナルティー、サーベンス・オクスリー法ですか、こういうようなものについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/52
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053・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 時間が参っております。簡潔によろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/53
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054・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 正に、シビルペナルティーは、その名のとおり、いわゆる刑事罰じゃないということであえてシビルというのを付けてペナルティー、要は制裁金にしたということで、これは行政が、違法行為があったときに、それが社会的な正義に反するということで科す制度ということで、これを非常に活用することによって被害救済に充てているということであります。
そして、それの、特にその動きとして、サーベンス・オクスリー法というのは、米国証券取引規制法分野において、もちろんシビルペナルティーというのはいろんなところで活用されているんですけれども、特にやはり証券取引関係でいろんな不正とかが多いということで、このシビルペナルティーを制裁目的としてそれを科すというだけじゃなくて、それを被害救済に活用できるように法改正してこのシビルペナルティーを広く、制裁プラス被害救済、かつそれは不当利益の吐き出しということになりますけれども、その機能に役立たせるようにしているという、そういうことでございますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/54
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055・仁比聡平
○仁比聡平君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/55
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056・亀井郁夫
○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございますが、今日は三人の参考人の皆さん方、本当に熱心な、また分かりやすいお話を聞かしていただきまして、ありがとうございました。
この法案は、これまで議論ありましたように被害者の救済という格好で新しく作られるわけでございまして、先ほど参考人の方々の採点では、椎橋先生が百点満点と、それで宇都宮参考人は七十点と、細川参考人は八十点だけども見方変えたら六十点だという厳しい見方もあるんだというお話があったわけですけども、特に今回の犯罪被害者等基本計画に従ってこれやられているわけでございますけども、それについては、今後は刑事手続の成果を利用する制度を新たに導入する方向で検討するということが書かれておりまして、具体的には、附帯私訴や損害賠償命令、没収、追徴を利用した損害回復が掲げられておるわけですね。そして、今度、没収、追徴についてはこの法律で行われたわけでございますけども、さらにまた、附帯私訴や損害賠償命令についても法務省では今真剣に検討しているという話でございますから、これができればまた百点満点であるかどうか分かりませんが、まあそういうことでまた更に一歩前進すると思うんですが、そういう意味ではいろいろと問題があろうかと思いますので、これをやるための具体的な課題について三人の参考人の皆さん方はどう考えておられるか、お話聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/56
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057・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 財産的な被害の回復ということで考えますと、私は今回の法案というものは非常に重要ですので、これがあると。それから、従来から犯給法による給付というのがございます。それで、それだけでは十分ではありませんので、その間を埋めるということがありますので、そこで今検討されている中では、損害賠償命令というのと、それから附帯私訴というのがございますが、それぞれ刑事事件の中で刑事手続を利用して、そういう意味では刑事の結果を利用して被害者に余計な負担を掛けないで被害が回復されるという利点があるというふうに思います。
ただ、附帯私訴についてはどうも余りドイツではそれほど利用されていないというふうに聞きますし、我が国の場合には訴訟構造がドイツとは違うということがありますので、その訴訟構造との関係をいかにうまく調整できるかという問題があろうかと思います。ただ、非常に検討に値するものではあると思います。
それから、損害賠償命令というのはアメリカで行われておりますので、これは訴訟構造との関係では余りそごはないだろうと思われます。ただ、これは刑罰としての損害賠償命令でありますので、そういう意味で実効性は上がるだろうと思いますけれども、どうしても犯罪とそれによって得たものということに基本的には限定されるということで、そういう限界はあるだろうと。それからさらには、その被告人に財力がない場合にはある意味では絵にかいたもちだということがあります。
そういう意味では、いろんな組合せで、まずやはり順序としては、犯罪を行った者からそれを取り上げて被害者に給付する、それから生命・身体犯については犯給法がある、そして、それでもやはり救済されない被害者については補償制度ですね、補償制度で国が最終的には救済するというような、そういう順位を決めて、しかし最終的には漏れなく被害者が保護されると、そういうような仕組みを全体として考えていくべきではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/57
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058・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) まず、犯罪被害者の救済ということであれば、犯給法のやっぱり給付金というのはすごくレベルが低いと思います。今、最高が多分一千万ぐらいだったんじゃないかと思いますけど、交通事故の死亡者は今自賠責で三千万の賠償が行われています。そういうところと比較しても、非常にまだ低い手当てしかなされていない。それは財源の問題だと思いますけど、先ほどの財源のことを考えれば、それこそ余剰金を国庫に入れるんじゃなくて、基金をつくるとかそういう手当てを工夫していただけたらと思います。
それから、今回の改正は刑事事件を前提とする被害者救済なんですけど、先ほどもお話ししましたけど、すべてが刑事事件になるわけではありません。それから、最近の状況を見ますと、やっぱり認知症とか障害者とか高齢者、こういう弱い立場にある人を食い物にするような悪徳商法が広がっておりまして、こういう悪徳商法から犯罪収益を取り上げて、そして被害者の救済に充てると、こういう制度をこれをステップに是非、これが第一段階として、次のステップとしてそういう制度の検討を始めていただけたらと思います。具体的には、海外ではそういう具体的な制度がたくさんあるようですし、一番あれなのは、国とか自治体がそういう被害に遭った人、高齢者、認知症の被害者のために被害回復をしてあげるような制度が是非検討していただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/58
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059・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私も一つ、こういう制度を案外日本人というのは、こういういろんなもの、制度をつくるのをうまいというか、いろんな工夫する民族じゃないかなというふうに思いますけれども、ところが一方、その辺が本当に活用されているかという辺りの評価とか監査というのは非常に日本人というのは弱いというか、そういう制度というものがない国じゃないかなというふうに日ごろ思っています。そういう意味でいうと、最近言われています法のエンフォースメント、法の実効性確保というところでやっぱり議論していただきたいと思います。
例えば、せっかくこういう法律作っても、だらだら犯罪捜査していてその間に犯罪者が逃げられちゃう、あるいは犯罪者捕まえても資産がどこに行っているか分からないなんということになれば、これはエンフォースメントとしての効果がないわけですから、今後いろんな制度をつくることはいいと思いますけれども、そこでの実効性確保のための工夫というものにも是非目を向けていただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/59
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060・亀井郁夫
○亀井郁夫君 もう一点だけお尋ねしたいんですけれども、今お話がございましたように、これから実効性を上げるためにはどうするかということが大きな課題だと思いますけれども、特に日本の場合は民事事件と刑事事件が截然として分かれておったということの中で、今回の法改正によって裁判上、民事事件と刑事事件が新たに融合し、あるいは併合した裁判制度が行われるということも射程の中に入れなきゃいかぬだろうと思うわけでありますけれども、戦後六十年ずっとこういった形で分けてきたわけでございますから、なかなか大変だろうと思うんですね。
そういう意味では、この両者の融合というのが本当にうまくいくんだろうかと、人員面についてもなかなか難しいものがあるんじゃないかと私は思うんですけれども、こういう点について三人の参考人の皆さん方に、こうしたらいいんじゃないかとかいろいろ御意見があったらお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/60
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061・椎橋隆幸
○参考人(椎橋隆幸君) 民事は民事でそれが実効的に、被害者が原告となった場合に、それが迅速に的確に被害回復ができるような、そういうようなことはそれはそれで考えていかなければいけないというふうに思います。
それから、これは、この法案は、刑事で犯罪被害者の被害回復を図るということでありますから非常に画期的なんでありますけれども、その両者の組合せといいますか、先ほどちょっと私、言い足りなかったんですけれども、犯給法なんかも拡大、拡張して、更に、非常に評判がいいですので、それを拡張していくということは大事だというふうに思いますね。ですから、いろんなことの組合せが必要だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/61
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062・宇都宮健児
○参考人(宇都宮健児君) 実効性確保をするためにはやっぱり人の手当てとか、そういうのがかなり重要になると思います。
先ほどの被害の掘り起こし一つにしても、たった一人の検察官がやれるはずではないですから、そういうことをやるスタッフ、その辺をどうするのか。あるいは、細川先生が言われたような民間の団体の利用とか、そういう工夫が一つ重要だと思います。
それから、刑事だけでなくて、先ほど民事上の損害賠償請求を国とか自治体なんかが行うというような話もしましたけど、アメリカのSECという組織は数千人の組織だと聞いています。それから、FTCも職員は千人ぐらいいるわけですね。日本の証券監視委員会は二、三百人しかいない。やはりこういうことを、被害者救済を重視する、そういうことをやるためにはそれなりのスタッフとか組織をつくって、そこに予算措置を講ずるということをやらない限り、形式はそういう制度ができても運用を行えないんじゃないかと。だから、実際にそれをやるというからにはそれなりの人と物と金ですね、それをやっぱり割いて、是非とも実効性を上げるようなそういう制度的な保障をやっておかないとなかなか、形はできて、いいものはできても眺めておるだけになるんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/62
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063・細川幸一
○参考人(細川幸一君) 私は、刑事と民事の分離というのが、法理論だけではなくて制度的にもそれが非常に強いんだと思うんですね。
先ほど宇都宮先生が、警察というのはなかなか動かないというお話されましたけれども、例えばアメリカの州の司法長官、アトーニーゼネラルと言われているのは、日本でいうと検察庁と公正取引委員会と消費生活センターをくっ付けたような組織だと言われている。というのは、中に刑事部門と民事部門があるんですね。言葉の矛盾ですけれども、民事検察官というのがいるんですよ。刑事事件を扱う検察官と、民事裁判、父権訴訟をやる民事裁判に訴えて損害賠償をかち取ってくるというような検察官というか、そういう役割の人もいる。
ですから、ある意味、被害者対策という枠組みの中で刑事、民事を区別せず、そういった組織を設けるとか、消費者からは昔から消費者庁をつくれとかあるいは消費者省をつくれというふうに、そういう主張もしてきましたけれども、そういう制度的な仕組みというものももう少し頭を柔軟にして、刑事、民事なんていう分け方をしないそういったシステムづくりも必要なのではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/63
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064・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
委員長、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/64
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065・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変お忙しいところを貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
午後一時四十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時一分休憩
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午後一時四十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/65
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066・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省刑事局長大林宏君及び法務省矯正局長小貫芳信君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/66
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067・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/67
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068・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 休憩前に引き続き、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/68
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069・簗瀬進
○簗瀬進君 私の質問時間は三十分ということでございますので、端的に質問をさせていただければと思っております。
お手元に質問要旨が届けられていると思いますけれども、若干はしょったり、それから順番を変えたりすることがございますので、どうかお気を付けていただければ有り難いなと思います。
まず、一番最初の質問でありますが、私としても、また我が会派としても、今回の立法については基本的にはこれは評価したいなとは思っております。民主党も、まあかなりこなれない名前ではございましたけれども、犯罪利益吐き出しプロジェクトチームと、吐き出しという言葉を作りまして、枝野座長、それから尾立事務局長と、ということで検討が始まったのはもう二年前でございました。法務省の皆さんとも様々な意見交換をしながら、その結果が今日、この法案に表れていると、このように思いますので、基本的には評価をしたいなと思っておるわけでございます。ただ、当然それは一〇〇%もろ手を挙げてというわけにはこれはございませんで、その我々の問題意識をここで、三十分間の中で改めて指摘をさしていただければと思っております。
まず、これは午前中の参考人の三人の方々もそれぞれお触れになっておりましたけれども、やはり諸外国においては、被害者の失われた、あるいは奪われたそういう利益を回復するためのかなり公共的なバックアップ体制が進んでいると、こういうお話がございました。例えば、自由競争、市場原理主義と言われているそういうアメリカでも父権訴訟というそういう観念があって、検察官が民事の損害賠償を検察官としてやっていくというそういう取組もあると。あるいは、ドイツやフランス等の国では、附帯私訴ということで、刑事手続の中に民事の損害賠償を私の訴えとして込めて、民事、刑事一体になったそういう取組をしながら被害者の被害利益を回復していこうと、こういうふうな動きがあるというふうな指摘があるわけでございます。
今回、こうして検察官、裁判所、そして被害回復のいわゆる管理人としての弁護士と、こういうふうな形で、スタートラインは裁判からこう検察が流れてきて、検察が弁護人を選任してと、こういうふうな流れを選択をなさったわけでございますけれども、私はやっぱり、IT革命の進展やらあるいはいわゆるボーダレス経済の進展、さらには格差社会が拡大をすることによってやみ金融が更にはびこっていくと、こういうふうなそれぞれの社会変化というようなものがあるわけでございます。
そういうことで、今までよりも大量の類型的な被害者というようなものが社会にどんどん生まれてくるのではないのかなと。当然それは予想しなければなりません。それについての一般的な救済スキームというようなものをしっかりと考えておく必要があるのではないのかなと。そういう意味で諸外国の立法例も勘案しながら、総合的な検討を更にこの二つの法律を出発点として進めていく必要があると思っておりますけれども、大臣の御所見を聞かせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/69
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070・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) 先生の諸外国の立法例等を参考にしながら総合検討すべきだというお考えには同感でございます。犯罪被害者等のための施策につきましては、御案内のとおり犯罪被害者等基本法がございます。それに基づきまして、昨年十二月に犯罪被害者等基本計画が閣議決定されたところでございます。この基本計画では、犯罪被害者等に対する経済的支援制度を現状よりも手厚いものとする必要があることを前提にいたしまして、その経済的支援政策のあるべき姿などを検討するため、推進会議の下に有識者及び関係省庁から成る経済的支援に関する検討会を設置し、二年以内を目途に結論を出すこととされております。
この問題については様々な御意見があるものと承知しておりますけれども、その検討会においては、御指摘のような考え方も含めまして、種々な角度から検討がなされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/70
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071・簗瀬進
○簗瀬進君 次に、被害回復の具体的なプロセスの中で気になる点が何点かございますので、質問をさせていただければと思います。
まず、この被害回復給付金支給法の七条というようなものがございます。これは、尾立議員も既に質問をした点ではございますけれども、いわゆる官報に掲載をして支給手続開始の決定の公告をしなければならないと、これが七条であるわけでございます。その七条の三号に、七条の一号から六号まであるわけでございますが、特にその中の私が気になるのは三号でございまして、支給対象犯罪行為の範囲と、こういうふうな概括的な法律の定めがあるわけでございます。
午前中の宇都宮参考人のお話で指摘をされておりますように、被害者の中には本当に自分が当該のいわゆる犯罪行為の被害者であるかどうかということを認識しない者すらおると、こういうお話でございます。例えば、あの五菱会の事件でございますと、被害者の件数、被害件数というのは二万件、そして、その頂点にいわゆる山口組関係者がいるということを知らない人だっているわけですね。そういう人たちが、どこで自分が被害に遭ったのかということを認識できるのは取引をした店舗、あるいは自分がいわゆる高額な金利を払わされたその銀行口座、それによって知り得ていくと、こういうふうなお話でございます。そして、店舗の数たるや日本全国で一千軒以上あると。それに二万人の被害者の銀行口座がそれぞれちりばめられているわけでございます。
こういう状況を考えてみたときに、しかも自分が被害者かどうか分かり得ないという、そういうことも前提になってまいりますと、この支給対象犯罪行為の範囲、それを公告をすると、ということなんですが、その範囲もかなり丁寧な、そして緻密な、そしてしかもしっかりと被害者にそれが伝わるような公告の仕方をしない限りはこれは意味がないんですね。
ということで、どなたも参考人の皆さん意識しておりましたいわゆる被害の掘り起こしの、そのスタートラインに置かれるその公告の中で指摘をしなければならない対象犯罪行為の範囲というようなものをどういうふうにお考えになっているのか。あるいはこの五菱会、あるいはその次については具体的にどのようにこの範囲というようなものを公告をしていくのか、そのお考えを聞かせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/71
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072・大林宏
○政府参考人(大林宏君) お答え申し上げます。
支給対象犯罪行為の範囲は、個別具体的な事案の内容に応じて定められるべきものであるため、典型的な、定型的な例を挙げることは困難でございますが、例えば高金利受領罪の出資法違反を前提とする犯罪収益等隠匿罪の事例で考えますと、私どもで考えております例を申し上げますと、例えば犯罪行為が行われた期間をいつからいつまでと特定します。それから、今御指摘もありましたけれども、店舗名が幾らでもあるということがありますので、店舗名、所在地、電話番号、それからその店における活動期間、それから利息等を振り込むのに使った銀行口座の口座番号、あるいは主な犯行態様のやり方等を具体的に書きまして、それで被害者になられた人が自分がどれに該当するということが分かるような形でなるべく工夫して公告をしたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/72
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073・簗瀬進
○簗瀬進君 既にこれは確定をしておる事件でございますので更に突っ込んで聞かせていただきたいと思うんですけれども、じゃ、大体範囲としてどの程度のものが出るのかという、先ほど二万件と出ましたね。店舗数が一千件。そして銀行口座が、具体的なそういう数字が参考人の口からは出ているんですけれども、五菱会に関してはそれはどれぐらいになるんですか。それが可能な公告制度というのは今あるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/73
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074・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 具体的なものについては東京地検の捜査記録で把握しているわけですけれども、今度のこの法案が成立した場合には、取りあえず、今、委員が御指摘の五菱会関係のものについて、スイスの方で没収されている多額のお金について譲与を受けると。それについて向こう側の条件といいますか、スイス側の条件は、ある程度やはり被害の額、規模を明らかにしてほしいと。それを前提に向こうが譲与額を決めるというふうな話がございます。(発言する者あり)
いえ、今言っている具体的な例としては二通りありまして、基本的には例えば国内のものについては没収の例ですね。それで、今私が申し上げているのは、今委員がおっしゃられるような今回の五菱会の被害者の把握の問題について言えば、差し当たりの問題としては、今申し上げたとおり、スイスのものの分配の問題が大きな要素になってまいります。そのために、向こうの外国の分についても、今回のスキームは没収の判決によって保管し、分配するわけですけれども、今度の五菱会関係のものについては既に外国に没収されたものがあります。それについても分配するために特別規定を設けて、それも譲与を受ける形の法案になっております。
ですから、私が今申し上げているのは、例えばとして、そちらから譲与を受ける前提として、やはりそれを詳しく把握しなきゃならぬ私ども義務を負っております。そのために、今東京地検において、この法案を前提にして、これからの分配手続を円滑に進めるためにもう既に準備行為に入っております。ですから、私、今どのくらいの額があるかという具体的な数字を持ってはいませんけれども、この法案が成立しましたら、その作業にすぐに入れるような形で今把握作業を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/74
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075・簗瀬進
○簗瀬進君 確認だけさせていただきます。
被害を受けたと思われる店舗、銀行口座名は公告対象になるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/75
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076・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 具体的な店舗名等についても公告の対象にすることを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/76
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077・簗瀬進
○簗瀬進君 同条三項に、検察官は、対象被害者であって知れているものに対し通知しなければならない、公告のみならず、知れているものに対しては通知しなければならない、これが七条三項の規定でございます。
先ほどの宇都宮参考人の話でも出ておりましたけれども、いわゆる宇都宮さんの弁護団、原告になっている人が百七十五人、名のり出た被害者ですよね、そしてその百七十五人のうち実は起訴状に載っておるのが二人と、こういうふうな状況でございます。でありますから、この知れているものというようなものを、もし起訴状記載というような形になりますと、ほとんど通知される人の数はもう極めてもう微々たるものになってしまう。
この知れているものというのはどの程度のものを考えているんですか。いわゆる捜査記録の中で知り得たもの全員を対象にすべきだと私は思いますけれども、その範囲について明瞭に御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/77
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078・大林宏
○政府参考人(大林宏君) この知れているものの解釈につきましては、今、委員御指摘のとおり、捜査記録上分かるものについては基本的には通知するということで、今御指摘のように、公判請求するものについては種々の要素、被害額とか証拠等いろいろ勘案していわゆる絞り込みをする場合がございます。今回は、起訴されたもの以外においてもいわゆる同種の余罪について被害を受けた方も救済するということを目的としております。ですから、今、委員御指摘のとおり、知れているものというのは捜査記録上分かるものということで、余罪部分について被害を受けた方についてもその対象にすると、そういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/78
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079・簗瀬進
○簗瀬進君 質問、後先になるかもしれませんけれども、没収のそういう言渡しが確定をしてからこの手続が始まってくると、こういうふうな建前になっているわけですよね。そこが一つ私も弁護士でございますので気になるんですが、没収という一種の刑事手続の最終結論、そしてそれの確定と、こういうふうに至るまでには様々な例えば厳格な証拠が要求をされますので、落ちてくるものもございます。ということで、どうもその没収対象の犯罪収益なのかどうかということを見極めるのにもある程度絞り込みをしなければならないんではないのかなと。逆に、被害者の立場からいえば、その絞り込みの結果、本来ならば自分の手元に返っていいものが遺失してしまうんではないのかなという、こういう懸念があるんですが、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/79
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080・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 捜査の過程で発見された犯人の財産につきましては、当該犯人に関する具体的な犯罪事実が特定され、それらの財産が形成された経緯が解明されていくにつれて、そうした犯罪事実を理由として没収されるべき財産の範囲が特定されていくこととなると思います。また、このようにして刑事手続の過程で特定された没収対象財産について、その保有、管理等の状況から、犯人や関係者によって隠匿されたり費消されたりする可能性が認められる場合には、捜査機関はこれを押収し、あるいは没収保全の処分をするなどしてそうした事態を防ぐことになります。
犯罪による収益については、これを犯人から確実に剥奪していくことが重要であることは言うまでもございません。今回の法整備により一定の場合に没収が可能となった趣旨を踏まえ、このような措置が的確にとられるように努力したいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/80
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081・簗瀬進
○簗瀬進君 これ大臣にお尋ねしたいんですが、宇都宮弁護士も相当熱心に、あの弁護団の皆さんも相当熱心に五菱会の被害者に呼び掛けをした、ところが原告として手を挙げたのが百七十五名であったと。これがやっぱり実態だと思うんですね。二万人の被害者がいながら、原告として訴え出る、まあ御自身の訴訟費用負担の問題もあったでしょう、いずれにしても、多くの皆さんがこういう暴力金融を相手にいたしますとしり込みをします。そして、自らの名前が表に出るということに大変恐れを抱く、結果として犯罪集団が犯罪的な利益を確保し続けるような、そういう大変おかしな状況になってしまってはならないということでございますので、これもどんどん率先をして、そういう被害者の方が名のり出てこれるような、そういう安全確保というようなものが非常に重要になってくると思いますけれども、その点についてどんな措置を講ずる必要があるとお考えになるのか、法務大臣としてのお考えを聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/81
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082・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) 五菱会なんかは典型的な例ですけれども、被害に遭われる方々が支給手続に参加されない可能性もあり得るわけで、支給手続でその皆様方の安全に配慮することが必要だということはもう委員御指摘のとおりだと思います。
したがって、本制度の運用に当たりましては、申請される方々の個人情報の管理、取扱いに最大限の配慮を尽くすなど、その安全確保には十分に意を用いる考えでございますが、委員御指摘のように、施行後に更に改善をする点が明らかになれば、迅速かつ適切にその対応を検討してまいる考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/82
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083・簗瀬進
○簗瀬進君 次に、支給法の九条一項の解釈について聞かせていただければと思うんですけれども、一項一号では、いわゆる被害回復をしていただきたいと思う者がその基礎となる事実、対象被害の基礎となる事実についてこれを疎明する資料を添付して検察官に申請をしなければならないと、こういうような規定を置いております。もしこの疎明資料というようなものをかなり厳格に解されるという形になりますと、例えばもう二、三年前の、そして余り思い出したくもないような記録というのはどんどんどんどん廃棄をする人たちだって一杯あるわけです。
ということで、ここに疎明資料の添付というようなことを書いてあるんですけども、これを言葉どおり適用されますと、手を挙げて被害回復を求めるそういう被害者というのはもう極めて減ってしまうんではないのかなと、こういう懸念を持ちますね。
そういう考え方に立って、ここに言うその基礎となる事実とは何かとか、あるいはその次の二号に価額というようなことがある。価額にしても、基礎となる事実にしても、疎明資料を付けて、自分はどれぐらい被害に遭いましたということを言わなきゃならないというのは、まあ昨日の今日だったらできるかもしれないけれども、ちょっと前になるとどんどん難しくなると思いますね。
さあ、この点についてどういうふうな御工夫をなさるのか、どういう解釈をなさっているのか、聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/83
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084・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 給付金の支給申請に当たって提出すべき疎明資料は、個別具体的な事案の内容によって異なるものであるため、一概に申し上げることは困難ですが、例えば被害者の受渡しに銀行振り込みが利用されたような事件であれば、振り込みを行ったことを明らかにする預金通帳や振り込み明細書等、ダイレクトメールや電子メールによる欺罔や害悪の告知があった事件であれば、それらの郵便物や電子メールを印字した紙等が考えられるところでございます。
疎明の内容を厳格に解釈し過ぎることについての御懸念については、余り客観性に乏しい資料であると、いわゆる成り済ましに対する支給を防ぐことが困難になりかねないという問題があることにも留意する必要があるというふうに考えております。
しかしながら、今御指摘になりますように、例えば適切な資料を紛失してしまった被害者もおられると思います。先ほども申し上げましたとおり、基本的には刑事記録上、検察官が把握しているものについて手続が進んでいきますので、資料を提出していただかなくてもそちらの方で把握できる方がおられますので、そのような場合には申請人に過度の負担を掛けないような柔軟な対応を取ることも可能であると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/84
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085・簗瀬進
○簗瀬進君 時間も限られておりますので、あとは二点。
これは谷川委員も御質問でございましたけれども、言うならば組織犯罪法十三条二項というものがいわゆる被害財産についての没収や追徴を原則的に禁止したわけです。これはどういうことかといえば、立法者の解説している参考書なんかありますね、それを読んでみますと、原状回復を優先させると、被害者の。ということは何を意味しているかというと、この組犯法に言う被害財産というようなものはだれに帰属しているんだと、これは、帰属するのは被害者あるいは被害回復のための原資、こういうふうなことをしっかりと明記したのが僕は十三条二項だと思うんです。ところが、そこで明記しておきながら、法体制自体が矛盾しているんですよ。
まず一つの矛盾は、先ほど来御質問があった国税債権による先着主義というのをやっぱりこの部分でも認めている。これ、国税というのは税金ですから。税金というのは、通常ならば正当な経済活動に対する課税でしょう。不当な課税についても税金で取ろうというのは、これはどういうことかと考えてみると、私から言わせれば、これは国家が組織犯罪者の上前はねているようなものじゃないですか。これがまず、その国税債権との関係では言えることじゃないでしょうかね。
それからもう一つ、支給法三十四条一項。これも谷川議員も御指摘でございますけれども、一般会計の歳入に繰り入れると。これも、十三条二項はいわゆる被害財産は被害者のものだと、被害者に返すべき原資なんだと、ということを組犯法の十三条二項で言っておきながら、余りがあれば国家がいただきますと。しかも、どうも先ほど来のお話で、僕は宇都宮弁護士とか恐らくやみ金の弁護団の皆さんはもう必死になって不正な利得をそのまま維持させないという、そういう思いもあって一生懸命被害者の皆さんにアピールしたと思いますよ。結果として出た原告が百七十五人ですよ。二万件のうち百七十五人ですよ。でありますから、前回の尾立さんの質問でも、いや、余ることは余りないと思いますよ的な、そういう御答弁もあったけれども、僕はそれは現状認識が随分違うだろうと。逆に、これももう質問のあれを離れてしまうんだけれども、被害者はその程度だからこれだけしか返さないって逆にスイス政府言ってくるかもしれないよね。
そういうことも何かどこかの機会で、衆議院でもこれは質問をしてもらいたいなと思いますけれども、まだその返される額が確定をしていなかったのかなということは、初めて答弁で私聞いて、ちょっとそれも意外な感じがしたんですけれども。
そういうようなものもろもろ含めて見ると、正に随分やっぱり剰余金が出てくる可能性というようなものはあるんではないのか。二万人の被害者とおぼしき人たちの中で百七十五人しか名のりを上げなかったというこの事実を相当重く受け止めてもらいたいし、その結果として、返されたものが随分余りました、全部それは一般会計の歳入に繰り入れますと、こういう建前を支給法三十四条で、一項でやったら、これもまた、国家がいわゆるその被害者の利益を奪う。ピンはねですよね。正にこの二点で、夜盗国家という言葉が昔ありましたけれども、強盗国家にも勝るとも劣らないような所業を国家がしていいのかと、こういうふうに私は感ぜざるを得ないんですよ。
でありますから、様々な国税との絡みについては先着主義とかいろいろあるだろうと思います。だけれども、これは通常の先着主義の問題とは僕は違うと思う。被害者に返すべきものであって、被害財産についての第一義的な帰属は被害者のものなんだと。それが前提になった議論の立て方をしたときに、先着主義の僕は例外になるものだと思うんですよ。
だから、国税債権とそれから国庫への繰入れ、残余金の国庫への繰入れ、この二点について大臣の御所見を聞かせていただいて、質問を終わりにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/85
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086・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 一つ申し上げたいのは、実は、国税当局の問題、先日も厳しく御指摘をいただいたところでございますが、実は、組織的犯罪処罰法でその没収関係につきましては、今の国税の滞納処分の問題と同時に、強制執行による差押え、一般民事において犯人側に対して差押えしている場合も規定してありまして、それについても先着主義の原則になっております。それを、その調整規定みたいなのがあって、それで基本的には今の強制執行の場合の差押え、それから滞納処分による差押え、それから没収保全、これの優劣関係になっている関係がございます。ですから、今回の場合、その先着手主義の場合に、国税だけの問題だけではなくて、民事上の強制執行手続との問題もあるものですから、そこの問題についてもやっぱり考えていく必要があるという問題が一つございます。
それから、残ったものを取っちゃうのはけしからぬという御指摘もいただきました。これは、先般申し上げたとおり、今の没収制度自体のシステムが、没収したらもう国に帰属する、直ちに帰属するというシステムを取っています。その中で、今回の新しい法律によって、一時的に検察官が保管して分配するというスキームなものですから、その没収の入り方というものを根本的に変えないと、そこのところがなかなか難しいという問題があります。
ですから、これは私も先日申し上げたとおり、まず、今委員がおっしゃったように、その潜在的な被害者にできるだけ多く分配する、そういうことが一番肝心かなと。その面で努力していかなきゃならないし、そのためのスキームとして、今回、一回目だけではなくて、特別の支給手続、それに漏れた人たちも救うという形のスキームになっていますので、この過程において努力して、なるべく被害者の方に剰余を残さずに分配できるようにやっぱり努力していくことが必要かなと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/86
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087・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 杉浦法務大臣、時間が来ておりますので簡潔に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/87
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088・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) 今、局長が申したように、基本的には被害者の方をできるだけ発掘をしてお返しするというように努力することが基本だと思います。
もし、運用の結果、相当剰余金が出るという場合が将来出てまいることも考えられないわけじゃないんですが、そのお金をどう利用するかと、どういうような具体的、実効的な施策を構築するかといったような問題につきましては、被害者保護支援のための施策全体の中で検討していかなければならない問題でございますので、これについては、犯罪被害者等基本計画に基づき設置されました経済的支援に関する検討会、もう第一回やっておりますけれども、そこにおいて議論されるべきではないかと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/88
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089・簗瀬進
○簗瀬進君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/89
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090・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
ちょっと私も通告と少し順番を変えまして、今の簗瀬理事の御質問に続いて、国税の滞納処分との関係についてまずお伺いをしたいと思うんです。
国税あるいは租税とのこの優先関係について、今回の法案の作成段階で検討がなされたんでしょうか。私も法制審議会の議事録等を拝見して、どうもこの辺り議論されていないように思うんですが、この法案提出に当たって、今日も随分御議論になっている問題について省としてどんなふうに検討しておられたのか、御答弁お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/90
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091・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 法制審においてここまでの検討はなされておりませんでした。しかしながら、いわゆる五菱会事件の捜査の過程において、被告人から押収されていた現金一億円が東京地検において保管中であったところ、国税当局によりその還付請求権の差押えがなされたということで、本年一月に国税当局に当該現金が引き渡される事態になりました。
私ども、今回、法案提出したのは本年二月二十四日でございます。この事実を踏まえて、私どもとしてこのような事態をどう受け止めるべきかということを検討はしました。結論的にはこのような形にはなったんですけれども、やっぱりそういう事態が具体的に生じましたので、私どもとして、やはり結論的には没収保全という制度で、やはりそういう裁判所からの処分禁止のものをもらわざるを得ないんじゃないかなというふうな形になったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/91
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092・仁比聡平
○仁比聡平君 その五菱会事件の事態を受けて、審議会は終わっていたけれども改正提案の前にして検討されたということは、つまり五菱会事件の事態というのは、これはやっぱり正さなきゃいけないものだという認識に立っておられるわけですよね。
今、没収保全のお話が出たわけですけれども、確かに改正後の法律を想定しますと没収保全手続というのがあるわけです。この没収保全命令を検察官の請求によって裁判所に手続をしてもらっていれば、今回のような事態は起こらなかったわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/92
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093・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 今度の法律ができてからということであればそういうことになると思いますけれども、今のスキームができていない場合は、没収保全の命令を得ても最終的に裁判が確定すれば還付せざるを得ないという形になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/93
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094・仁比聡平
○仁比聡平君 この改正後の法律というものを想定して議論をするときに、私たちがずっと懸念をしている国税と抵触をしてそっちに持っていかれてしまうと。それも民事で、被害者が執行手続というか仮差押えの手続掛けているにもかかわらず持っていかれてしまうと。これはとんでもない話なわけで、少なくとも没収保全手続をこれ検察官が請求をしなければ、裁判所としてはなかなか職権ではやりにくいものだと思いますから、この没収保全命令が少なくとも遺漏なきように行われることが大事だと思いますが、いかがですか、もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/94
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095・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 委員の御指摘のとおりでございます。
今回の法律ができて、被害者分配ということを前提にした場合には、今の没収保全の請求を励行するような形で運用せざるを得ないと思いますので、私どももその徹底をしたいと、このように考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/95
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096・仁比聡平
○仁比聡平君 大臣に、この改正がかなったならば、どのような問題意識でこの運用に臨み、どのような構えでこの新しい制度の見直しあるいは評価を検討していかれるのかという点をお尋ねしたいと思うわけです。
といいますのも、今度のこの法改正の制度で、被害者の掘り起こしの問題、あるいは給付対象の範囲の問題、あるいは残余の資金が国庫に入ってしまうというのでいいのかというようなことなど、もうなどなどですけれども、たくさんの問題意識、課題が指摘をされたわけですね。基金をつくるべきなのではないかというお話もございます。
一方で、伺いますと、この実務に当たるのは、つまり支給手続の実務に当たるのは、基本的にはどうやら当該事件を担当している検察官が想定をされておられるのかなという感じもするわけですね。捜査検事あるいは公判担当の検事、どの体制を考えましても、検察官と検察事務官がそれぞれの事件を大変繁忙に対応しておられるというのはこれは常識でございまして、ここで、この中でどんなふうに被害者の権利回復、被害回復に向けた法務省としての責任を負っていかれるのかと。これ、実務、運用の問題としても大変重大だと思うわけです。今日、参考人からも、人、物、金ですね、ここをちゃんと確保することが必要だというお話もありましたが、大臣の所感をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/96
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097・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) この法案そのものは五菱会事件をきっかけにして、どう被害者に対する回復措置をとるかということが直接の契機になって出発したわけですが、先生御指摘の様々な問題があることは間違いないと思います。
滞納処分が優先するのはどうかという点、そして先ほど局長が御説明しましたけれども、これは行政法上の手続、民事、刑事上の手続、連帯でどうするかという大きな問題を持っております。それから、剰余財産をどうするか。先ほど御答弁申し上げたように、これもまず第一にそういうのが残らないように、ともかく被害者を発掘して、見付け出して配分するということが基本なんですけれども、残る場合があり得ると、あり得ない話ではない、どうするか、これも大きな問題でございます。
したがいまして、いろいろいい仕組みを考えまして、没収保全とか、国税と競争して早く押さえちまおうとか、知恵を働かせていい制度ができ上がっていると思うんですが、まずはともかく実施してみて着実な運用に努めてまいりまして、今御指摘を受けている問題点、あるいは様々な問題点が出てくると思います。実質上は、配分については弁護士さん、弁護人をお願いしてやらざるを得ないと思うんですが、そういったことをいろいろやってみた結果、改善すべき点があればもう改善していくということにならざるを得ないんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/97
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098・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 恐縮でございますが、さっき私の答弁でちょっと舌足らずなところがありましたのでちょっと説明したいんですが、先ほど御質問の中で、今度の、国税に差し押さえられた、五菱会の関係で差し押さえられたものについて没収保全を掛けていたらどうなのかという御質問がありました。そのときの説明なんですけれども、今の時点では没収保全を掛けても被害財産については没収できないという形になっていますから、仮に裁判が確定すれば、それは犯人側に戻るような形になるということが、ちょっと私の方の説明が不足していましたので、そういう形で。今度法令ができればあくまでも犯罪被害財産としてそれが没収できるようになりますんで有効な形になると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/98
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099・仁比聡平
○仁比聡平君 おっしゃるとおりなのでしょうね。
それで大臣に、必要な見直し、手直し、これはやっていかなきゃいけないんだというお話で、これを法改正がかなった後のそういう実際の運用がどうなっているかの評価をどんな受け止めで法務省としてやっていくのかということも大事だと思うんですね。法改正がかなったから、だからこれは後は現場の検察官がやってくださいよという話にはやっぱりならないと。
そういう意味では、大臣、今国会の中でチームのお話などもされておられるわけですけれども、何かこの制度の運用をどういうふうに評価をしていくというような点について省として考えておられることがありますでしょうか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/99
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100・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 先ほどから御指摘のあるように、やっぱり体制の問題が重要であるというふうに考えております。先ほど御質問にもありましたように、今のじゃ現場の検察庁においてそれだけ出せる体制が取れるのかという問題があります。ですから、これは法務省としては、当然それに対する人員の要求とか予算の問題もあると思いますし、これはできるだけの努力をしていかなきゃならないというふうに考えております。
先ほど私がちらっと言いましたけれども、東京地検、この五菱会の関係ではそれなりの体制を組んで、検事、検察官、捜査担当ではない専属チームをつくって、今そのための準備をしていると聞きます。ですから、このような支援体制をきちっとやっぱりつくっていくことが一番大事ではないかと、こんなふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/100
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101・仁比聡平
○仁比聡平君 東京地検のように体制を整え得るところばかりではありません。そういう検察官、検察事務官の数が足りないところ、法曹の数が足りないところでも当然犯罪被害は起こるわけでございまして、そのことを含めて、今日は特段の体制を取った評価のチームを是非つくっていただきたいということを御要望をしておきたいと思います。
それで、ちょっと別の角度になりますが、前回の質疑で、この法改正の対象になります組織犯罪処罰法の、特に団体あるいは団体の活動等の構成要件があいまいで、濫用の危険があるのではないかという御質問をいたしました。その際、労働組合が未払賃金の支払などの金銭要求で団体交渉を行う中で、経営者の側から監禁だとかあるいは恐喝だとかというふうに言われるケースがないわけではないという例を挙げて局長に御答弁いただいたんですが、どうもその御答弁を私拝見しまして、団体あるいは団体の活動については法文の要件をそのまま御紹介をいただいておりまして、特に犯罪行為を実行するための組織という要件にかかわって、犯罪行為を実行することが構成員の結合関係の基礎になっている組織をいうという御表現でございまして、しますと、団体あるいは団体の活動、これには当たると、労働組合だとか市民団体だとか。だけれども、その犯罪行為を実行するための組織、ここに当たらないから構成要件該当性がない場合があると、そういうお話なのかなというふうに読めちゃうんですけどね。真意はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/101
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102・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 今御指摘のとおり、組織的犯罪処罰法第二条に団体の定義がありまして、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの」と定義があります。
団体というのは社会に存在する多種多様な人の集まりでございますので、まずは人の結び付きが強く組織性の高いものを選別するということで団体を挙げておりまして、これは、今御指摘のとおり、団体それ自体で犯罪の実行を目的とするものに限られるものではないというふうに考えております。
しかしながら、この定義に該当する団体の活動すべてが組織的犯罪処罰法第三条第一項に該当するわけではなくて、ある団体の活動について第三条第一項により加重して処罰するためには、団体の活動として当該犯罪行為を実行するための組織によって行われたと、こういう要件を満たす必要があると。したがって、正当な目的で活動している団体の活動がこれに該当することは想定されないというふうにこの間申し上げたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/102
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103・仁比聡平
○仁比聡平君 そうしますと、法務省の担当検察官、当時かもしれませんけども、まとめていらっしゃる組織的犯罪対策関連三法案の解説という法曹会の出版の解説書がありまして、これは私どもの経験上からいえば、実務では大変な参考にされるということになると思うんですけども、ここには団体の定義を、典型的には一定の組織性を有する暴力団や会社などがこれに該当するが、それ以外にも一定の目的で継続的に活動する相当規模の組織化された集団はこれに該当し得るとして、団体は暴力団その他の犯罪の実行を目的とするものに限定されないとなっているわけです。これは間違いではないんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/103
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104・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/104
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105・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 御指摘の解説書に今のような記載があることは事実でございます。第二条第一項にその定義が定められている団体という文言自体の説明として、必ずしも誤りがあるというふうには考えておりません。
ただ、先ほども申し上げましたとおり、団体の活動すべてが第三条第一項に該当するわけではないと、団体の活動として当該犯罪行為を実行するための組織により行われたという要件を満たす必要があると、したがって正当な目的で活動している団体の活動がこれに該当することは想定されないということでございまして、この点は解説書にもその旨記載があるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/105
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106・仁比聡平
○仁比聡平君 私、この点は大変疑問に思っておりまして、今後もよく吟味をさせていただきたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/106
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107・亀井郁夫
○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございますけども、最後でございますけども、二、三お尋ねしたいと思います。
今朝も、参考人への質問で尾立委員が何点ぐらいだということを聞かれましたら、ある人は百点満点と言われ、ある人は七十点と言われ、またある人は、八十点だけども、韓国や中国や台湾なんか考えたら六十点ぐらいかなというようなことがありましたけども、いずれにしても新しい試みで思い切った制度だということで評価は高かったわけでございますけども、これは、従来のように民事事件と刑事事件を完全に分けてきた仕組みが、今度はこの制度によって両方が融合ないしは併合をされるというふうな形が考えられなきゃいけないということも確保されるわけでございます。
そういう意味では、戦後六十年間、こういう制度をやってきて、今回大幅に変えるわけでございますけども、こうした刑事事件と民事事件の融合ということができるのかどうか。いや、できなきゃいけないわけです、ですからやらなきゃいけないんですけども、これについてもいろいろな危惧があろうかと思いますけども、これについての大臣のお考えをまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/107
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108・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) 先生御指摘のとおり、今回の新しい制度の創設は画期的なものだと思います。本来ならば、被害者が民事手続に基づいて加害者、まあ五菱会なら五菱会に請求すべきものなんですね。まあ現に訴訟も幾つかありますが。その手続を省略をして、検察官がしかるべき措置をとって犯罪財産を押さえてしまって、それを一定のこの法律に従って被害者へ配分するというわけですから、被害者にとっては民事的法手続を取らなくても一定限度は回復できるということになりますので、非常に画期的なことだと思います。
民刑の融合とおっしゃいましたが、融合ではなくて、民事で行使すべき権利を行使しやすくしたといいますか、官が間へ入って回復を早めるんだということだと思います。
政府が、被害者の対策基本法というのを設けて、犯罪被害者に対する基本計画を作ってこれから画期的に進めてまいりますが、その一部ではありますけれども、これは新しい時代の進展に沿った新しい制度の創設だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/108
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109・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
今大臣が言われたように、非常に画期的な仕組みだということで、是非ともうまく定着させなきゃいけないわけでありますけれども、これに絡んで、これまでも議論がありましたが、一番大きな課題は、何といっても被害者の掘り起こしが大変なんだということで、弁護士の先生なんかもそのことを非常に大事だと言っておられたんですが、そうするとなかなか大変だと、人手が掛かるということで、従来のやり方も変えなきゃいけないし人手も掛かるということで、スタッフの関係でかなり増やしていかなきゃいけないということになるわけでございますから、そういう意味では人員面においても、当然のことですが、いろいろなことを考えておられると思うんだけれども、増員要求は何人ぐらいの増員を考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/109
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110・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) まだそこまで考えておるわけじゃないんですが、ただ、これ生まれた以上動かさなきゃいけません。どれぐらい事件数になるかちょっとまだ見当付きませんということはございます。
ですから、先ほど申しましたように、着実に実行していくと、人的体制も考える、裁判所の方にも対応していただかなきゃいかぬわけですが、努力していくところだと思いますけれども、これはまだ生まれたばっかりで、何をやるか法務省の方でも検討していませんが、日本司法支援センターというのが四月十日に発足いたしました。その事業の中に犯罪被害者対策という柱が立っておるんです。立っておるんですが、何をやるかはこれから計画を決めて検討していくということになりますので、私のまだ個人的な考えの段階ですけれども、日本司法センター、これはもう相当弁護士も抱えますし、全国にネット張りますので、そこが検察庁と協力をして実質上進めていくということも考えられるんじゃないだろうかと。つまり、役所を増やすんじゃなくて、そういうところでうまくスキームを作ってやっていくということも考えられるんじゃないかなと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/110
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111・亀井郁夫
○亀井郁夫君 大臣のお言葉に民間の組織も使うんだというお話ございましたので、そういう形でできるだけ役人が増えないようにやっていただきたいと思います。
それから、被害者の救済という観点から考えた場合、一つちょっとお話ししたいと思うのは、刑務作業で受刑者に支払われる作業賞与金ですか、これ一か月にわずか四千二百円程度だということで、年間で五万円程度ということで非常に低いんですけど、ところが、全国に今五万八千人の受刑者がおるそうでございますから、そういう意味では、金持ちじゃないところから取ろうにも取れませんから、そういう意味では、もうちょっと価値のある仕事をさして、この作業賞与金がもうちょっと増える形になって、それをもって被害者に弁償するというか、そういう形になるようなことを考えることはできないのかと思うわけでございますが。
そういうことで、被害の賠償に意を注いでいく必要があると思いますが、こういうことについて大臣はどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/111
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112・小貫芳信
○政府参考人(小貫芳信君) その前に、若干数字的なことでお話し申し上げたいんですが、十七年度の一人当たりの計算額、これ一月三千八百三十三円でございました。で、平均支給額、これ出所時に持って出る金額でございますが、これが約五万七千円程度と、こういう数字でございます。
この作業賞与金につきましては、引き上げて被害者への賠償金に充てさせるべきだという御意見があることは十分承知しておるところでございますけれども、刑務作業といいますのは懲役刑を科された者の義務として行われるものでありまして、作業賞与金はその報酬ではないと、こういう位置付けでございます。したがいまして、これを労働に見合う対価にまで引き上げることは適当ではないという意見も一方にございます。
なおかつ、被害者への賠償のために作業賞与金の額を引き上げることといたしますと、犯罪には被害者がいる犯罪とそうでない犯罪というのがございまして、これを一律に引き上げるということになりますと、なかなか国民感情から受け入れられ難いという意見も出てくるだろうと、こういうふうに考えているところでございます。
しかし、いずれにいたしましても、犯罪被害者の方々が犯罪によりまして受けた損害を回復して経済的な負担を軽減するようにこれ支援すること、これは極めて重要なことだと、こういう認識をしているところでありまして、このような犯罪被害者の方々への経済支援につきましては、現在内閣府の方でいろいろ検討が進められているところでございます。法務省におきましても、犯罪被害者等の基本計画に従いまして引き続きこの点での検討に努めてまいりたいと、こう考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/112
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113・亀井郁夫
○亀井郁夫君 最後に一点だけお尋ねしますが、この没収と追徴ということが今回実現したわけでございますけど、この前もお話ししましたが、附帯私訴と損害賠償命令ですね、これいろいろ検討しているということですけれども、これについても越えなきゃいけない山がいろいろあるんじゃないかと思うんですけれども、そういう意味でこの問題について具体的な課題は何なのか、もう一度教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/113
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114・大林宏
○政府参考人(大林宏君) 仮に我が国に附帯私訴の制度を導入するとして、その際に検討すべき主な課題としては例えば次のようなことが考えられます。
まず第一に、我が国の現行の刑事訴訟においては、検察官と被告人、弁護人とが相対立する訴訟当事者として互いに攻撃防御を行い、これを踏まえて中立の裁判所が判断をするという基本構造が取られています。したがって、仮に附帯私訴の制度を導入しますと、検察官の主張立証と被害者等の主張立証とが異なるような場合に、被告人としては検察官、被害者等のいずれの主張立証に対しても防御活動を行わなくてはならなくなり、また、裁判所としてもいずれの主張立証についても判断しなければならず、極めて複雑な審理を行わなければならない場合もあるのではないかという問題がございます。
また、我が国の現行の民事訴訟と刑事訴訟とでは当事者の挙証責任が異なっていることから、仮に附帯私訴の制度を導入すると、同じ訴訟において、一つの事実について、存在する存在しないという相反する判断が生じてしまうのではないかという問題もございます。
また、損害賠償命令の制度の導入につきましては、仮に裁判所が厳密に被害額を認定してその支払を命じることとするのであれば、民事上の複雑な争いが刑事裁判に持ち込まれることとなる結果、迅速な刑事裁判の実現を阻害することになるのではないかなどの問題点がございます。
ただ、いずれにいたしましても、この附帯私訴の問題につきましては、先日も申し上げたとおり、被害者保護という観点からやはり考えていかなければならない一つの大きな課題であると私ども認識しておりまして、今後更に検討を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/114
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115・亀井郁夫
○亀井郁夫君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/115
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116・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
両案の修正について尾立源幸君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。尾立源幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/116
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117・尾立源幸
○尾立源幸君 私は、ただいま議題となっております組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対し、民主党・新緑風会を代表して修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりです。
今回の政府案の提案理由とされております犯罪収益の剥奪及びそのような犯罪の被害者の保護を一層充実させるため所要の法整備を行おうとすることにつきましては、民主党としても全く異論はありません。しかし、より被害者救済を徹底するために、政府案では犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴ができる場合についての要件から、犯罪の性質に照らしを削除すべきです。
また、犯罪被害財産に係る滞納処分と没収の調整について、政府案では先着手主義によっていますが、滞納処分によって被害回復給付金が減少することを防ぐためにその例外を認めるべきです。
裁定表を閲覧できる者については、政府案では申請人となっておりますが、被害者に対する二次被害及びそのおそれによって被害者が申請をちゅうちょすることを防ぐ観点から、資格裁定を受けた者に限定すべきだと考えます。
本修正案は、こうした問題点について必要最小限の修正を行うことにより、本来の目的である犯罪被害者の保護救済を実現するものであります。
以下、その内容を御説明いたします。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、第一に、犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴の要件のうち、その他犯罪の性質に照らしを削る。
第二に、犯罪被害財産に係る滞納処分と没収について、滞納処分に係る財産の没収の制限の例外を設けること、滞納処分の停止を可能とすることなど。
犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対する修正案について、第一に、検察官は、広報活動等を通じて公告した事項の周知に努めるものとすること。
第二に、裁定表を閲覧できる者を申請人から資格裁定を受けた者に改めること。
第三に、政府は、この法律施行の状況などを勘案し、一般会計の歳入に繰り入れるものとされている給付資金の額に相当する金額を犯罪被害者等の援助を行う団体の支援に必要な経費に充てるための制度の導入についての検討条項を置くものとする。
以上が本修正案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、何とぞ各委員の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/117
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118・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) これより両原案並びに両修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。
まず、尾立君提出の修正案の採決を行います。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/118
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119・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 少数と認めます。よって、尾立君提出の修正案は否決されました。
それでは、次に原案全部の採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/119
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120・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案について採決を行います。
まず、尾立君提出の修正案の採決を行います。
本修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/120
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121・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 少数と認めます。よって、尾立君提出の修正案は否決されました。
それでは、次に原案全部の採決を行います。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/121
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122・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、簗瀬進君から発言を求められておりますので、これを許します。簗瀬進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/122
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123・簗瀬進
○簗瀬進君 私は、ただいま可決されました組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び国民新党・新党日本の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府及び最高裁判所は、両法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一 両法の趣旨、内容、他の犯罪被害給付手続との相違等について、司法関係者、犯罪被害者団体等のほか、広く国民にも周知徹底がなされるよう努めること。
二 本制度が損害賠償請求権の行使が困難な被害者を救済するものであることを踏まえ、その捜査及び法の適用に当たり、個々の事件やその犯罪被害者の実情を十分勘案した柔軟かつ的確な運用が行われるよう努めること。
三 被害回復給付金の申請ができる者に対しては、自己が申請可能であることを十分認識しうるよう、事案に応じて、積極的に広報活動を行うとともに、犯罪被害者団体等を通じての情報提供などできる限り法定の公告・通知以外の方法をも活用し、周知徹底が図られるよう配慮すること。
四 被害回復給付金の申請者が安心して確実に申請できるよう、その安全の確保については、遺漏なきを期するとともに、両法の施行後の状況等を勘案し、必要があれば迅速に適切な措置を講ずること。
五 被害回復事務管理人については、適任者を確保するための必要な措置を講ずるとともに、被害回復事務が公平かつ適正に行われるよう十分配慮すること。
六 被害回復給付金の申請書に添付する疎明資料に関しては、被害者や被害額の特定のために必要である場合にのみ追加提出が行われるものであることを周知徹底し、被害回復給付金の支給手続が適正に運用されるよう十分配慮すること。
七 一般会計の歳入に繰り入れる給付資金に関しては、両法の施行後の状況等を勘案し、これを新たに判明した犯罪被害者等に支給することができる制度や犯罪被害者支援団体等の経費に充てることができる制度など、犯罪被害者等の支援に直接利用できる方策について、引き続き検討すること。
八 被害回復給付金の支給手続が迅速かつ確実になされるよう、検察官に対する研修の充実等を含め検察庁の人的・物的体制の整備に遺漏なきを期すること。
九 被害回復給付金の支給対象となる犯罪被害者の範囲の拡大及び犯罪被害財産に係る国税滞納処分の在り方については、両法の施行後の状況等を勘案し、我が国の民事法制度等との関連も踏まえつつ、引き続き検討をすること。
十 犯罪被害者等基本計画に基づき政府において検討が進められている被害者が刑事裁判に直接関与することのできる制度の導入等について、できるだけ早期に結論を出し、その結論に従った施策を速やかに実施すること。
十一 犯罪被害者等への支援については、社会全体の理解と協力が必要不可欠であることを踏まえ、関係機関と民間団体との連携強化や犯罪被害者等に対する国や地方公共団体の財政支援の在り方などに関して、諸外国の施策や立法例等も勘案し、必要な施策の推進に努めること。
十二 犯罪被害者を含む違法行為により被害を被った者の損害の回復を国等の関与により容易にする制度の導入を含め、新たな被害者救済の仕組みについて、諸外国の立法例や損害賠償請求に関する諸施策等も勘案し、速やかに所要の検討を行うこと。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/123
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124・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) ただいま簗瀬君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/124
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125・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 全会一致と認めます。よって、簗瀬君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、杉浦法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。杉浦法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/125
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126・杉浦正健
○国務大臣(杉浦正健君) ただいま可決されました組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案及び犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨をお伝えしたいと存じます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/126
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127・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/127
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128・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01320060425/128
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