1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十八年五月十一日(木曜日)
午前十時三分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 弘友 和夫君
理 事
荒井 正吾君
谷川 秀善君
簗瀬 進君
木庭健太郎君
委 員
青木 幹雄君
山東 昭子君
陣内 孝雄君
関谷 勝嗣君
南野知惠子君
江田 五月君
千葉 景子君
前川 清成君
松岡 徹君
浜四津敏子君
仁比 聡平君
亀井 郁夫君
事務局側
常任委員会専門
員 田中 英明君
参考人
筑波大学大学院
図書館情報メデ
ィア研究科助教
授 新保 史生君
桜美林大学国際
学部教授 加藤 朗君
弁護士 難波 満君
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本日の会議に付した案件
○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/0
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001・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科助教授新保史生君、桜美林大学国際学部教授加藤朗君及び弁護士難波満君でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方について申し上げます。まず、新保参考人、加藤参考人、難波参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますけれども、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと思います。
それでは、新保参考人からお願いいたします。新保参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/1
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002・新保史生
○参考人(新保史生君) 筑波大学の新保と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
このたびは参考人として意見を述べさせていただく機会を賜りまして、お礼申し上げます。
専門は憲法、情報法ですので、その観点から上陸審査時の個人識別情報の採取を中心に、個人情報の適正な取扱いと保護に係る問題及び憲法上のプライバシーの権利の保障との関係における問題、並びに生体認証情報の取扱いに関する問題につきまして意見を述べさせていただきます。
まず初めに、配付をさせていただいております資料につきまして、最初のページでありますけれども、個人情報とプライバシー、この両者について検討が必要な部分が非常に多いわけでありますが、まず個人情報保護の問題といたしましては、これは個人情報の適正な取扱いと、それからルールに基づいて適切に取り扱うということと保護という、この両面の問題がございます。
また一方、プライバシーの権利の保障の問題につきましては、保障と制約という、その両者のバランスについて検討を行うということが必要となっておりますけれども、しかしながらその両者の関係にはなかなか難しい点もありまして、二ページ目の資料にございますとおり、個人情報とプライバシー、両者は同一のものではございません。
こちらの図にございますとおり、個人情報というものは、公知の情報から非公知、特定の機微な情報という縦軸で説明をさせていただいておりますとおり、個人情報というものは特定の個人を識別できる情報が個人情報となっております。一方、プライバシーというものは、この横軸にございますとおり、個人情報のうちでも非公知の情報又は特定の機微な情報というものがプライバシーに属するものであります。
また、プライバシーにつきましては、個人情報の保護という部分はこちらのとおりでございますけれども、それ以外につきましては、自らに関する事柄について外部からの干渉を受けずに自らの意思に基づいて行うことを認める、いわゆる個人の自律を保障するという側面もございます。また、他人から干渉を受けたり望まない侵入を受けない隔絶された状態や利益を保護するためのいわゆる私的な領域の保護という、領域の保護という保護法益もございます。そして最後に、社会において自らの存在を証明し、他人との識別を行う上で個人を識別する徴表としての個人情報のうち、いまだ非公知又は他人に知られることを欲しない情報、その個人情報を保護するというものもプライバシーの保護法益となっております。
このように、プライバシーと個人情報、両者が同一のものであるというふうに議論がされることが多いわけでありますけれども、必ずしも同一ではないということであります。
この点につきましては、両者の区別があいまいになされますと、結果的には、プライバシー保護とは無関係の公知の、公になっている個人情報の取扱いにまでプライバシーの権利の保障の問題が議論されるといったような問題も生じているわけでありまして、この点につきましては昨今の個人情報保護のいわゆる過剰反応の問題の淵源ともなっております。
つまり、本来は個人情報保護の問題として単にルールに基づいた適切な保護と取扱いというものについて考えるべきところを、プライバシーの保護といういわゆるバランスを、バランス感覚の部分で論じなければならない部分の議論が合わさっているからであります。
では、次に、個人情報の適正な取扱いと保護の問題につきまして述べさせていただきます。
今回のこの個人識別情報の取得に係る問題につきましては、国家機関が個人識別情報を取り扱うに当たっては、行政機関個人情報保護法に基づく取扱いが義務付けられております。本法におきましては、法第三条におきまして、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を保有してはならないと定められております。
この点につきまして、上陸審査時の個人識別情報の採取に係る個人情報の利用目的、こちらはテロの未然防止等の目的が明確なものとなっております。しかし、採取の目的、そのテロの未然防止という目的は明確ではありますけれども、採取の対象となる個人識別情報、そのうち例えば顔の情報につきましては、例えば皮膚の色から人種が判別できる、指が欠損しているということによって本人の障害の有無が判別できると。つまり、本来、取得の対象となる情報は指紋、顔という情報でありますけれども、それに付随して言わば副次的に取得される情報というものがございます。
今回議論されているものにつきましては、指紋、顔という情報に関するその取得の利用目的でありますが、言わば副次的に取得される、結果的に顔の色から人種が分かるといったような副次的な情報の取得に係る問題につきましては余り議論がされていないように思われます。つまり、それらの情報の取扱いも含めて、法三条の定める利用目的の特定と保有制限の問題について十分に検討を行う必要があると考えます。
その一方で、例えばEUの各国のように、国内の情報、特に個人情報を海外に移転、提供するということにつきまして、我が国の法制度におきましては、提供を行うに当たっての根拠法令は存在いたしますけれども、提供を包括的に制限する法令は存在いたしません。例えば、EUにおきましては、今般この法案でも同様の対応をすることとなっているいわゆる名簿の提供、EUにおきましてはPNR、パッセンジャー・ネーム・レコードの提供、搭乗者名簿の提供の問題が議論がなされたわけでありますけれども、この際には、米国への搭乗者名簿の提供については、EUの個人データ保護指令、これに基づく規制ということで、各国が法令に基づく第三国への国内からの個人データの移転を制限しております。
これに基づいて様々な議論が行われたわけでありますけれども、我が国におきましては、まず法令に基づく提供、今回は入管法の六十一条の九に基づく情報の提供、また行政機関個人情報保護法におきましては八条一項に基づく法令に基づく提供、また、捜査機関への提供につきましては刑訴法の百九十七条二項に基づく提供ということで、提供に当たっての根拠はございますけれども、それを包括的に制限をするという法制上の根拠は、個人情報保護法制の現行法上、制限はなされておりません。
続きまして、個人情報の取得に係る問題でありますけれども、取得に当たっては、上陸審査時の個人識別情報の採取は直接書面取得に当たるものと考えられます。この際には利用目的を明示するという義務が課されておりますけれども、反面、例えば映像を撮影したり、本人から直接書面によらない方法で個人情報を取得するという手続につきましては、法におきまして利用目的の明示義務はございません。したがいまして、直接書面取得時に利用目的を明示する、その一方で、間接的に取得する場合には特に利用目的の明示というものは法では義務付けられていないということになっております。
続きまして、安全管理の問題でありますけれども、取得の対象となる個人識別情報、こちらは取扱いに非常に慎重な取扱いを求められるだけではなく、終生不変の情報である指紋等の情報、顔の情報というものを取得することになりますので、漏えいや不正利用に伴う当該本人への影響、それから予想される不利益というものは極めて大きなものであるということが予想されます。
その一方で、情報システムによるこのような情報の自動処理におきましては、エラーや不具合といったようなものが一定の頻度で発生いたします。つまり、万全の安全管理措置を講じていても予想し得ない事故の発生は一定の頻度で避けることができないという現状がございます。つきましては、安全管理措置につきましてはどのような対応を行うのか、最後に述べさせていただきますプライバシー影響評価、PIAといったようなものも活用が必要かというふうに考えております。
続きまして、プライバシーの権利の保障との関係につきましては、憲法十三条が保障する幸福追求権を根拠に保障される権利として認められているわけでありますけれども、これによりまして、例えば指紋につきましては、個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有しているとするところは最高裁判決のとおりであります。これによりまして、国家機関が正当な理由もなく指紋の採取を強制するということは、当然のことながら憲法十三条の趣旨に反して許容されるものではございません。また、この自由の保障は外国人にもひとしく及ぶものと解されております。
しかしながら、この自由も、当然のことながら、公共の福祉のために必要がある場合には相当の制限を受けるということになっておりますので、個人識別情報の採取の必要性が公共の福祉に反しないこと、並びにその方法が精神的、肉体的に一般的に許容される限度を超えない相当なものであるということが必要となります。よって、正当な理由に基づき、この場合はテロを未然に防止する等の目的、これについて、公共の福祉に反しない限り、一定の範囲において国家機関が個人のプライバシーに属する個人識別情報たる指紋や顔といった情報を採取することは憲法上も許容されるというふうに考えられます。
しかしながら、例えば米国におけるテロ対策との関係における個人のプライバシーの権利の侵害、制約との関係について考えてみますと、テロへの脅威ということにつきましては、先進各国政府の喫緊の課題と認識されていることは異論がないところであります。しかしながら、例えば米国の方針におきましては、テロこそが自由への最大の脅威であるという方針に基づきまして、テロ対策のためには個人の自由や権利が一定の制約を受けることを甘受すべきであるという認識が特に米国政府のテロ対策管理の政策の背景にはございます。その例といたしまして、例えば令状によらずして通信傍受を堂々と行うといったようなことを始めといたしまして、プライバシーの権利の制約、侵害をめぐる状況、現在の米国の状況はある意味でかなり異常な状況にあると言っても過言ではございません。
つまり、この点から考えますと、テロ対策の必要性は当然あるわけでありますけれども、米国のテロ対策と同様の政策を我が国においても追認しそのままそれを追従するということにつきましては、非常に危険性があるというのも事実であります。
しかしながら、反面、テロを未然に防止するという必要性が高い現状にかんがみますと確実な対策が望まれているところもこれも事実でありまして、そのためには網羅的、即時的かつ確実、有効な対策としてこのような個人識別情報の取得をするということは当然必要かと思います。
そのためには、当然このような確実な本人確認を行うということでテロリストの上陸を防止するということとともに、このようなシステムを導入することによって一定の萎縮効果というものも重要な意味を持つというふうに考えられます。そのために必要な個人情報、個人識別情報の取得というものにつきましては、プライバシーの保護という利益を尊重しつつ、その目的からしても公共の福祉にかなうものであるというふうに考えられます。
しかしながら、政府のこういった取組に関してはやはり公権力によるプライバシーの侵害に当たるという指摘がなされることも多く、その利用実態や運用体制の不透明さについても批判がなされることも多いのは事実であります。そのために、例えばプライバシー影響評価、プライバシー・インパクト・アセスメントと呼ばれるものでありますけれども、そういったものを導入して、その運用についての透明性を確保するということも重要ではないかと考えております。
なお、プライバシー影響評価とはどのようなものかといいますと、この影響評価、つまりアセスメントというものにつきましては、主に環境保全の分野においては導入され発展してきた概念でありますけれども、我が国におきましても環境アセスメント制度として既に実現しているところであります。つまり、これは例えば個人のプライバシー、それから環境、両者とも一度失われるとこれは取り返しが付かないものであります。つまり、個人のプライバシー、個人情報は、漏えいをいたしますと、漏えいをしたということをもってもう取り返しが付かない、また、プライバシーの侵害につきましても、プライバシーが侵害されるということについて、それが回復されるまでには非常に多くの時間を要する場合があったり困難を要するわけであります。つまり、環境もプライバシーも一度失われると取り返しが付かないということから、事前にその影響を評価するということが重要と考えております。
なお、最後に、生体認証情報の取扱いにつきましては、こちらの資料のとおり、現在様々な生体認証情報が使われておりますけれども、こちらにつきましては、そもそも生体認証情報、二つの側面がございます。そもそも指紋につきましては、指紋そのものの情報並びに指紋から特定の特徴量を抽出したいわゆるテンプレートと呼ばれる情報、こちらがございます。それぞれ、指紋そのものについては個人情報と考えられますけれども、いわゆるテンプレートにつきましては、他の情報と照合することによって特定の個人を識別できる情報となりますので、今後はこういった、そのままそれが個人情報となるものと、他の情報と照合することによって特定の個人を識別できる情報という両者との関係についても、行政機関、個人情報保護法の枠組みの中において検討することが重要と考えます。
以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/2
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003・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) ありがとうございました。
次に、加藤参考人にお願いいたします。加藤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/3
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004・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 桜美林大学国際学部の加藤でございます。
本日は、私の意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことを深く感謝いたします。
それでは、私は元々の専門が国際政治、中でも紛争研究、なかんずくテロの研究をしてまいりました。その観点から今回の問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、結論でございますけれども、私はこの人的ファイアウオールとしての高度にコンピューター化された情報社会に合致するよう出入国管理の改善は不可欠であるというふうに判断しております。
まず、情報社会とは何かということでございますけれども、現在私たちが暮らす情報社会といいますのは、地球規模で人間とコンピューター、マン・アンド・マシンのコンピューター化された社会だというふうに考えております。社会全体が人間が組み込まれたコンピューターのようなものだというふうにお考えください。その結果、社会全体はこの情報の流通によって政治、経済、金融、安全保障など、その社会の仕組みが決定されるという、これまでにない、人類史上にない新しい時代が今訪れたと思います。
その結果、コンピューターがウイルスやバグに非常に脆弱であるように、社会全体が脆弱になってまいりました。その脆弱性を防ぐためには、脆弱性があるがゆえに各国が情報でネットワーク化、グローバル化されていく、そしてその結果、影響は一国にとどまらずグローバル化していくということであるというふうに思います。
付け加えるならば、この情報化された新しい情報時代というのは、正に自分が自分であることを証明する必要がますます必要になっているにもかかわらず、自分が自分であることを証明する手段がますます難しくなってきているということだろうというふうに思います。何につけ私たちは個人の識別を求められますけれども、自分が自分であることを証明する手段は一体何であろうかというふうに考えたときに、最後に残されたものが生体情報であるということになってしまいますけれども、その生体情報ですらなかなか難しいという状況があるかと思います。
さて、その情報社会におけるテロという問題について少し考えてみたいと思いますけれども、情報社会におけるテロの特徴といいますのは、コンピューターにおけるウイルスやバグと同じような扱いだろうと思います。つまり、コンピューター化された金融や交通、情報などの情報社会のシステムの破壊がこのテロの目的となっております。かつてのように、民族解放であるとか、あるいは何らかの政治目的を持ってそれを宣伝するために行うようなテロという時代はもう既に過ぎ去ったというふうに考えております。
第二点目がメガデステロ、大量破壊テロの時代になったということであります。これはABC兵器、核兵器、生物兵器、化学兵器などによる大量破壊の可能性が正に現実のものとして出てきた時代だろうというふうに思います。
三番目の特徴でありますけれども、現在のテロはある種反近代あるいは反西洋テロというふうに考えるべきテロだろうと思います。これは西洋に対するルサンチマンというふうに考えた方がいいかもしれません。植民地化された怨念あるいは西洋に対するある種の劣等感のようなものが第三世界を中心にして、あるいは非西洋を中心にして大きく不満となって渦巻いているというような状況。その中で恐らくテロが起こっているんだろうと思います。
七〇年代、八〇年代のように、植民地解放や民族解放のための戦術としてのテロというのはもはや過去のものとなりつつあります。
さて、情報社会のテロ組織の特徴でございますけれども、これは国家から自立した非国家主体テロ組織が出現してまいりました。これもまた七〇年代、八〇年代とは大きく様相を異にしております。七〇年代、八〇年代のテロ組織と申しますのは、何らかの形で背後に国家が控えておりました。その結果、間接的には国家テロという形で、つまり冷戦の枠組みの中でテロが行われてきたということなんですけれども、現在、冷戦が終わった現在はこうした国家によるテロ、国家が支援するようなテロというものは相当程度数が減少してまいりました。というよりも、恐らく私はほとんどないのではないかと思っております。
なぜこのようなことが可能になってきたかといいますと、テロによる株価操作、麻薬・武器売買などを利用したやみ経済によるテロ組織自体の財政的自立が可能になってきたということが挙げられます。オサマ・ビンラディンの例を見ても分かりますけれども、彼自身はある意味ではアフガニスタンを買収するぐらいの個人資産を持っておりました。
それから、もう一点重要な点は、大量破壊兵器の取得による軍事的自立が可能になったという問題でございます。
かつて武器というのは、軍隊が、国家が、国家の軍事組織しか武器というものは持てないというふうにみんな考えておりましたけれども、現在ではテロ組織でさえも相当有効な効果的な武器を保有することが可能になりました。何よりも恐れられるのは核兵器、核兵器すら非国家組織、テロ組織が持つ可能性が出てきたということでございます。
さて、情報社会のテロ組織のもう一つの特徴ですけれども、これはウェブ型のネットワークのテロ組織をつくり始めたということでございます。
これはアルカイダの例を見ても分かりますけれども、インターネットによって接続された正に中心のないスワームと申しますが、ハチが群れるように、あるいはアリが群れるように、そうしたスワームのような知性を持った組織ができてきた。どこを切っても、分断しても、それが一つ一つまた独自の動きをし始めるという、これまでのような上意下達型のテロ組織というものとは全く違ったものが出始めたということでございます。
さて、こうした情報社会のテロやテロ組織の特徴を踏まえた上で、予防がなぜ重要かということでございますけれども、抑止、対処が非常に困難でございます。
自殺型テロは事実上抑止は不可能でございます。懲罰であれ報酬であれ、自殺型テロを抑制することは不可能です。
軍事力による対処はますますこれは困難になっております。軍隊というものは対称的な国家の軍事組織、準軍事組織の組織的テロに対してのみ有効でございます。ところが、先ほど申しましたように、現在のテロはそのような国家が行うようなテロにはなっておりません。したがって、軍事組織がテロに対抗することは非常に難しいということであります。
それから三点目が、警察力による対処もまた困難であるということです。これは基本的にはやっぱり法律の壁が、国内法の壁が大きくそびえ立っているということであります。さらには、国家によって近代法が整備されていない国家もある、あるいは破綻国家に至っては法執行組織さえもない状況の中では、ますますこのテロを警察力でもって取り締まることさえも難しいということになるかと思います。
さらに、予防の重要さということでございますけれども、コンピューター化された社会を何としても守るためには、人的ファイアウオールとしての出入国管理の強化というものが必要だろうというふうに思います。つまり、セキュリティーホールを作らないということであります。国際社会全体の中で一国がセキュリティーホールを作ってしまいますと、そこにおいてテロの温床になりかねないということがございます。そういう意味では国際協力が非常に重要になってくるということでございます。
さて、こうした出入国管理の問題点というのももちろんございます。
第一点は、個人識別情報の提供に関する問題でございますけれども、これもまた三点ほど問題があるかと思いますが、憲法十三条、自由権規約の七条、同十七条に関する問題というのが盛んに議論されております。
これは、身体の安全という配分的正義にかかわる基本的人権と、個人の尊重という承認的正義にかかわる基本的人権の、両基本的人権のバランスの問題であるというふうに考えます。いずれを重視するかの功利的判断は時代、状況によって異なり、それこそ国民の合意の問題であるかと考えます。
それから第二点目、生体情報の精度の問題であります。
生体情報は一〇〇%その個人を識別するということはもちろんございません。しかしながら、一〇〇%でなくても、テロリストの側からしますと常に一〇〇%識別されることを前提にしてテロを計画せざるを得ず、その意味での抑止効果は大きいかと思います。
それから、第三点目の情報管理の問題でございます。
これもまた一〇〇%情報が管理できるという保証はございません。しかしながら、この問題に関して言いますと、生体情報を政府が独占するということ、だからいけないということではなくて、この情報社会というのは、逆に、だれもが情報を独占するような状況にはないということだろうというふうに思います。国家が情報を独占するという考え方自体が既に過去のものであって、実は、国民の側にも政府の情報を入手することができるような状況が生まれつつあるということが実は情報社会の大きな特徴であり、また問題点であろうかと思います。
さて、次に、テロリストの認定に関する問題です。
これもう何度も議論されておりますけれども、テロリスト、テロ行為の定義の問題です。もちろん、これに関する定義はございません。明確な定義はございません。ただ、テロリストやテロ行為は、動機の善悪や戦争の論理、民族解放であるとか自由の戦いであるとかということではなくて、法の論理、実行行為の違法、合法を判断すれば、ある程度の定義は明確化できるかと思います。
それから、テロリスト及びテロ団体をどのように指定するかという問題でありますけれども、確かに一度もテロを起こしていない団体に対してこれを事前認定することは事実上極めて困難であります。しかしながら、独立したテロ組織や個人がテロを実行することは現在においてもまだ非常に困難を伴う。したがって、何らかの形でテロネットワークに関連した個人や団体を認定はできなくても監視下に置くことはある程度可能かと思います。それから、民族解放闘争における民族解放組織及び戦術としてのテロをどのように認定するかは、正にこれは高度な政治判断だと考えます。
最後に一言述べさせていただきますけれども、日本はこれまでテロの倫理的障壁を破り、といいますのも、日本赤軍が中東に初めて自殺テロを持ち込みました。テロの世界に初めて自爆型、自殺型のテロを持ち込んだのは日本赤軍であります。それ以前に中東に自殺型のテロは全くございませんでした。そういう意味では、日本赤軍が中東に与えた影響あるいはテロ自体に与えた影響は非常に大きいと思います。
第二点目、オウムがこのテロの問題に与えた国際的影響というのは計り知れません。それは、BCテロ、つまり毒ガスや化学兵器を使ったテロを初めて大々的に行ったのがオウムであるということであります。そして、その結果、現在、メガデステロ、大量破壊兵器テロの時代が切り開かれてしまったということです。
私たち日本国民は、こうした新たな倫理的障壁を、テロの、これまで歯止めが掛けられた倫理的障壁を二度も打ち破ってしまったという国際社会に対する大きな責務があるかと思います。その意味では、日本が国際社会に率先してテロを防止することは、正に地球社会全体に対する日本国民の責務であるかというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/4
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005・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) どうもありがとうございました。
次に、難波参考人にお願いいたします。難波参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/5
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006・難波満
○参考人(難波満君) ただいま御紹介いただきました弁護士の難波と申します。本日は参考人としてお呼びいただき、誠にありがとうございます。
資料として配付させていただいたペーパーに基づいて、私の方から今回の入管法改正案に対する意見を述べさせていただきます。
なお、ここで述べる私の意見というのは私の所属する団体とは必ずしも関係がなく、私の個人的意見であることを付加させていただきます。
この法案につきましては、既に御審議されているとおり、外国人の入国時の生体情報の提供の義務化、提供、登録された生体情報の保管、利用、提供、それからテロの未然防止を理由とする退去強制事由の整備、この三点が主たる論点になっております。
これらの論点について述べる前提として、この法律案の特徴ないしは日本の制度に与える影響について若干述べさせていただきます。
まず第一に、既に御承知のとおり、この法案においては、日本に上陸する年間六百万人から七百万人の外国人に対して上陸時に生体情報の提供を義務付けることが予定されております。また、これは任意であることが前提ですけれども、自動化ゲートの導入により、日本人又は特別永住者等からの生体情報の登録が予定されております。このように、本法律案においては、公権力による生体情報の収集が義務的ないしは任意が前提としてありますが、いずれにしても一般化が予定されているという、こういう状況にあります。
第二は、これらの制度によって取得された大量の生体情報についてデータベースを構築し、個人単位で管理することが予定されているということです。
このように、この法律案においては、いわゆるセンシティブな情報である生体情報に関するかつてない膨大なデータベースを構築することが予定されております。このことは、公権力による個人情報の管理体制というものを従前にも増して大きく変容させることになるものと考えられます。
第三の特徴として、この法律案においては、公衆等脅迫目的という概念を用いて、その犯罪行為、予備行為のみならず、実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由があると法務大臣が認定する者と、こういう事由が退去強制事由として追加されております。他方で、日本におきましては、この退去強制手続というのは、裁判官の令状によらずして行政手続限りで収容という身柄拘束によって開始するものとされております。つまり、この規定は、行政機関が独自の判断で予防的に外国人の身柄拘束、退去強制を行うことを制度化したものと言うことができます。
このような本法律案の特徴ないしは日本の制度に与える影響について、ドイツの憲法学者であるデリンガーの言葉をかりて述べれば、個人の自由と自律に依拠する自由な法治国家から、あらゆる種類のリスクを未然に防止し、その現実化を防止しようとする予防国家への変容をもたらすものではないかということが言えるかと思います。
しかしながら、これらの制度は、テロリズムの防止を目的とする規制の強化が一般にそうであるように、いずれも人権保障との関係で厳しい緊張関係にあります。
本法案においては、まず、プライバシーないし自己情報コントロール権に対する制約との関係、次に、国籍を理由とする差別的取扱いの禁止の関係、三点目として、人身の自由の基本原則である適正手続の保障との関係が検討されなければなりません。
ただ、ここで留意されるべきは、テロ対策に必要であるという立法目的の必要性のみをもってあらゆる制度が正当化されるということはあってはならないということです。すなわち、プライバシー、自己情報コントロール権に対する制約との関係においては、その具体的な制度内容が立法目的を達成する手段として相当な範囲のものと言えるか。また、国籍を理由とする差別的取扱いの禁止の関係においては、合理的な理由なくして法的取扱いを区別していないか。三点目に、人身の自由の原則である適正手続の保障との関係においては、告知や聴聞、つまり弁解、防御の機会という手続の適正、それから規定が明確であるかどうかという実体の適正との関係について、それぞれ非常に慎重な吟味がされなければいけません。
以下においては、これまで述べたような観点から、具体的な論点について述べさせていただきます。
まず一点目は、外国人の入国時の生体情報の提供の義務化についてです。
これについては、生体情報による個人識別機能、これが果たして十分に信頼するものに足りるかどうかという問題点があります。また、個人識別情報、つまり指紋、顔情報あるいはその他の情報、そういった個人識別情報の種類につきまして、それを法律ではなく省令という行政機関が作成するものに委任していいかどうかという、こういう重要な論点がございます。
ただし、時間の関係で論点を限定して述べさせていただきます。
まず第一点ですが、これは当委員会でも既に御審議されているというふうにお伺いしておりますが、外国人登録における指紋押捺制度を廃止した経緯との関係です。
私からは、その指紋廃止に至った経緯について若干述べさせていただきます。
まず、この制度については、立法後、一九五八年の法改正によって、まず在留期間一年未満の者について指紋押捺が免除されました。その後、範囲につきましては、九二年の法改正によりまして永住者、特別永住者につき廃止されております。さらに、その方法につきましても、立法当初はいわゆる黒インクを利用して十指から採取するという方法によっておりましたが、その後は無色の薬液により一指のみから採取するという方法に方法が変更されておりました。しかしながら、このような立法後の改正にもかかわらず、九九年の法改正によりまして指紋押捺の義務付け自体が全面的に廃止されたわけであります。
このような背景的事情としましては、日本では公権力による一般的な指紋の採取それ自体が人権侵害に当たるという社会通念が存在しているんじゃないかということが考えられます。
第二に、諸外国の状況についてです。
既に御承知のとおり、現時点で入国時に指紋、顔写真の提供を義務付けているのはアメリカ合衆国のUS—VISITのみというふうにされております。また、EUでは二〇〇七年から査証情報システムというものを運用開始するということが政府側の答弁で指摘されております。しかしながら、制度の内容を具体的に見ますと、US—VISITでは、十四歳未満、八十歳以上、あるいは公用・国際機関ビザの所持者のみならず、日本の永住者に相当しますアメリカの永住権所持者も適用除外とされていることに留意する必要があります。また、EUの査証情報システムでは、少なくとも査証免除の対象になる観光や商用といった短期的な滞在の場合について、生体情報の提供の義務化の範囲から除外されることとなるものというふうに考えられます。
しかしながら、本法案では、US—VISITでは適用除外とされているいわゆる日本における永住者や、EUの査証情報システムでは除外されるはずの観光、商用等の査証免除の対象になる短期滞在者も含めて、生体情報の提供の義務付けの対象になるというふうにされております。すなわち、今現在検討されている入管法の改正案は、このような諸外国、アメリカやイギリスといった国における生体情報の提供の義務化の導入状況から見ても過度に広範ではないかという疑いがあります。
特にこのことについては、永住者、これは入管法によりまして日本国の利益に合致するとして永住を許可した場合に許可されるというふうにされております。しかしながら、こうした永住者についても、いったん本国に里帰り、帰国したとして、その後日本に帰ってこようとした場合、この指紋提供を拒否したとすればそれだけで上陸を拒否されて日本から退去を命令されてしまうと、こういうふうな著しい不利益が課されることになります。このことからしても、かなり広範ということの意味が御理解いただけるのではないかというふうに思います。
次に、提供された生体情報の保管、利用、提供に関する論点について述べさせていただきます。
この点については衆議院法務委員会においてかなり詳細な議論がされたというふうに聞いておりますが、政府側の答弁によりますと、保管期間については、出入国の公正な管理に必要な期間という抽象的な答弁がされて、具体的な期間については、現在それを言うことはできないというふうにされております。また、利用については、在留中は出入国の公正な管理のために利用するというふうな形での表現にとどめておりまして、出国後については、事後的な確認や再度の入国時の審査に利用するというふうにされております。さらに、他の行政機関に対する提供については、行政機関等個人情報保護法八条の規定の提供によるというふうにされております。
しかしながら、生体情報というのは、御承知のとおり、個人に固有の変更が不可能な情報であります。その取扱いによっては個人の自由や自律といった領域においてそれを脅かすような危険があるということになり、この点については最高裁の判例等でも指摘されたところであります。しかしながら、こうした答弁の内容からすれば、これは保管期間、利用、提供のいずれについても著しく透明性を欠くものというふうに言わざるを得ないかというふうに思われます。
この個人の自由や自律を脅かすことになるというおそれがあるという点については、現在政府が検討しておりますいわゆるインテリジェンスシステムの導入の構想からも伺うことができます。すなわち、本年三月三十一日付けで公表されました法務省のCIO決定であります出入国管理業務の業務・システム最適化計画によりますと、このインテリジェンスシステムの構想においては次のように述べられております。すなわち、外国人の入国、在留に関するデータ、関係行政機関などから提供される様々なデータを一元的に管理した上、警察庁、外務省を始めとする様々な関係行政機関との情報連携を促進するというふうに述べられております。
ここに言う外国人の入国に関するデータについて、入国時に提供された指紋や顔写真、そういった生体情報も含まれるとすれば、保管された生体情報による個人識別機能の利用によって外国人全体を監視する言わば統一的な管理システムというものが構築されることになることが危惧されます。
最後に、テロの未然防止等を理由とする退去強制事由の整備について若干述べさせていただきます。
この点については、とりわけ公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする行為、しかもそれを行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由があるという者を退去強制事由に含まれていることの規定の明確性について述べさせていただきます。
この点、先ほども申したとおり、人身の自由の基本原則である適正手続の保障においては、法律による規定の明確性というものが求められております。このことの意味は、法律によって明確に定めることによって、事前にその不利益を課す者に対して公正な告知を与えるということ、二点目として、行政機関が恣意的な裁量行使ということを制限するということ、三点目として、それによって言論や集会等の表現の自由を含むその行動に対して萎縮的な効果を及ぼしたらいけないと、こういう観点からよるものです。しかしながら、先ほどの規定はこのいずれの観点からしても著しくあいまいないし不明確というふうに言わざるを得ません。
二点目としては、手続の適正の問題です。
この法案の審議における答弁によりますと、法務大臣の認定の根拠を、具体的な証拠を含めた根拠を示すことについては、あくまで運用上あるいは実務上の配慮によるというふうにされております。しかしながら、身柄拘束あるいは退去強制という重大な不利益処分の内容からしますと、これは弁解、防御の機会としては極めて不十分であり、このような容疑で身柄拘束された者が十分な防御を行うことを事実上不可能とするものです。
また、この法務大臣の認定に当たって、他の国から提供された証拠に信用性が欠いていたり、あるいは拷問等の違法な手続による証拠が含まれたりする可能性がありますが、こういう証拠が法務大臣の認定において採用されることを制限する制度的な担保というのは全く講じられておりません。
さらに、そういった認定の根拠が容疑者に開示されないとしますと、容疑者が事後的にその評価の証拠の信用性や適正といったものを検討する手段すらも奪うことになります。
なお、この点については、特にイギリス等において証拠の信用、適正についてはかなりの議論がされておりますが、現在、遺憾ながら、この入管法の議論においてはこの点について議論がされないままになっているのは非常に問題だというふうに考えております。
第三に、このテロの未然防止を理由とする諸外国の状況について、ここではイギリスの事情を述べさせていただきます。
まず、イギリスにおきましては、同時多発テロ直後に制定された二〇〇一年の反テロリズム、犯罪及び安全保障法におきまして、主務大臣の認定によるテロリスト容疑者の身柄拘束、退去強制というのも規定されていました。しかしながら、これにつきましては、二〇〇四年の十二月に、日本の最高裁判所に当たる上院上訴委員会が、一時的又は無期限に送還措置がとれないにもかかわらず、行政機関の判断によって身柄拘束を可能とすることを定めた規定が外国人に限って適用されるという差別的な権限によるというものであること、またテロリズムの脅威と比較しても余りに権限が広範であるということ、そういう観点から、欧州人権条約の五条の人身の自由及びその十四条の差別の禁止に反するとして判断されております。その結果、二〇〇五年にはこれらの規定がイギリスで廃止されるに至っております。
この点、日本におきましても、テロリストの疑いのある者が本国で拷問等のおそれがあるとされた場合には、拷問等禁止条約の三条によりまして本国に対する送還が禁止されることになります。そうすると、これらの者につきましては、仮に退去強制手続によって収容したとしても、イギリス同様に無期限の身柄拘束という問題が生じるおそれがあります。こういった点についても、この条項については十分に議論していただければというふうに考えております。
最後に、以上のように、この意見においては、この本法案に規定された制度がテロの未然防止という立法目的の必要性があるとしても、人権保障の観点からは様々な問題点があることを指摘してきました。
しかしながら、翻ってみますに、テロリズムの本質的な解決のためには、その先進諸国における規制の強化のみならず、その根源的な原因であるところの途上国の紛争、貧困、社会的不公正の解決の必要性があることは言うまでもありません。
このような観点から、近時、人間の安全保障という概念によりまして、途上国における貧困の削減、民主化、人権保障の促進の観点、促進の支援の必要性がテロの根絶の文脈で述べられるようになっていると思います。
他方、日本におきましては、近時、少子高齢化社会や犯罪・不法滞在者対策を理由として、外国人が主として労働力や管理の対象として議論されており、とりわけ外国人の出入国・在留管理が著しく強化されている傾向にあります。
しかしながら、多民族、多文化の傾向が急速に進展する現在の日本において長期的に安定した社会を形成していくためには、外国人をそういった管理の対象として疎外するんじゃなくて、社会の構成員としてともに生きていく主体であるという観点を社会に醸成していくことこそが必要であるというふうに思われます。すなわち、外国人の人権保障を確立するとともに、多文化の共生を推進を、施策を推進していくことによって初めて国内におけるいわゆる人間の安全保障が確立されることが今日強く求められるというふうに考えられます。
以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/6
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007・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) どうもありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/7
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008・荒井正吾
○荒井正吾君 三先生、どうもありがとうございました。自民党の荒井正吾と申します。若干御質問をさせていただきます。
私は、参議院議員になる前に海上保安庁の長官をしておりまして、密輸、密航の取締りの現場に当たっておりました。また、その前には観光部長、運輸省の観光部長をして観光客を日本にたくさん持ってくる仕事を一生懸命いたしました。この調和というのが課題になっておりますので、この法案の実効に大変関心を持っております。今日のお話も大変参考になりました。
それで、まず大きな論点は、公共福祉、治安の維持というのの維持と個人情報のプライバシー確保ということが大きな課題になっておりますが、犯罪の現場を見ますと、犯罪組織の方がグローバル化、IT化が進んでいる実態がずっと日本の近辺でございました。
例えば、密輸の麻薬を日本に持ってくるときは、これ国際連携をしないと日本人だけあるいは中国人だけではできない状況ですので、船で、日本の沖合にGPSという位置情報を持った船が北緯何度何分というふうに位置を暗号で日本の受取人に知らして、そこに浮き輪を付けてぽっと置いて、暗やみの中で置いておくと。その情報を持った日本の漁船がとんとんと行って引っ掛け日本の漁港に揚げると。これは通関も何も要らないと。これは捕捉するのは極めて困難でありまして、別の情報でその辺りにいるということで夜間監視をするわけですが、夜間の監視には日本の巡視船は赤外線のカメラもない状況でございましたので、夜見えないと。向こうは十分夜見えるというように、IT化が犯罪人の方が進んでいる状況でございます。
また、保秘の電話が日本の警察と海上保安庁と軍の間は私の長官時代ないことで、通常電話でやっておりましたので、情報の動向が向こうに筒抜け、向こうのは分からないという非常にアンバランスな治安の国境の監視の現状でございました。したがって、この国境監視というのはとても大事だと思っております。
海の方の密航を取り締まった結果、海から来るのが経済的な事情で来る人が多かったんですが、たくさんの密航費用を払って取り締まられると、これは成田から上がった方が安上がりだというので、成田に転換された経緯がございます。成田がどうも成り済ましその他、配偶者、偽装配偶者等で入りやすかったという状況がここ数年来ておりましたので、成田での入管の厳密な検査というのは是非してほしいというふうに思っていたものでございます。
自分の立場を長々といたしまして恐縮でございますが、それで、新保参考人にお聞きしたいんですが、この治安のための情報を個人の動静監視、情報の把握というのはとても大事だと思うんですが、一方、プライバシー・インパクト・アセスメントというこの制度を新しくIT化に備えてせないかぬというのについてのアセスメントの観念とか仕組みがまだ日本にない。まあ世界的にも余りないかもしれません。情報リテラシーという、適正な情報利用というのがなかなかない。
この入管の現場だけじゃなしに、e—Japanというのが日本政府進めておりますが、日本の情報化社会の中での個人情報管理をどうするかと。これは、この入管情報だけじゃなしに、民間の銀行だとかその間の情報あるいは住民登録等の情報等をどう監視するかということについてのアセスメントをどうするかと。専門家もまだ育っていないし、概念、関心もまだ深まっていないというように思っておりますが、今日のPIAという概念を提示されましたことに大変感銘を受けた次第でございますが、そのPIAの今後の進め方あるいは望ましい行政あるいは政府の運用の仕方ということについて、もう少しお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/8
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009・新保史生
○参考人(新保史生君) ただいまの御指摘のPIAにつきまして、そもそも例えば技術の進歩に伴いまして、犯罪者が用いる技術というものは非常に高度化をしていると。それに伴って、当然のことながら、取り締まる側もより高度な技術を用いるということが当然必要となっております。
しかしながら、新しい技術を用いるということは、それに伴う副作用といいますか、弊害も当然生ずるわけでありまして、特に効率的に情報を取り扱うということは、逆に考えますと、効率的に監視をしたり、またそれに伴う権利の侵害というものも非常に影響が大きいというのが事実であります。そのような背景から、例えばUS—VISITにおきまして、米国ではUS—VISITの導入に当たってはPIA、プライバシー・インパクト・アセスメントの実施をもう既に行っております。
このように、新しい技術を導入することに伴って、それに伴う副作用、これを事前にある程度把握をするということと同時に、やはり取り返しが付かないいわゆる権利の侵害でありますとか情報の漏えい、不正利用といったようなものに対するリスク、これを認識、分析、評価をして、それに対する対策を講ずるということが非常に重要となっておりますので、これは政府におきましても、どのようなリスクがあるのかということをまず洗い出す、認識をすると。その上で、それに対する個別のリスクを分析し、個々のリスクに対する対策を講ずるということが今後は重要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/9
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010・荒井正吾
○荒井正吾君 リスクの認識って、日本人なかなか、情報の活用のための価値あるいはその逆のリスクということの認識自身が低い社会であったような気がするんですが、アメリカのように若干日本人から見れば進み過ぎるのも問題かというふうに思うんですけれども、その面が若干あるんですが、しかし世の中は確実に監視社会へ進んでいるように思うんですよね。
これは望ましい監視社会になるか、リスク、困難が発生する社会であるかという、情報化の中で大きな問題といいますか課題が発生しているように思うんですけれども、今まで家族、地域が監視していた社会、少年犯罪の防止等その他が国家へ監視の機能をゆだねてきているような気がする。もちろん取り戻すのも大事なんですけれども、やはり効率的に適正に国家にある面ゆだねるという社会になってきた。逆に、加藤先生おっしゃったように、二元的な、監視する者も監視されるという社会にもなってきているようにも思うんですけれども。
そこで、アメリカのUS—VISITの、国家の監視機能が市民の社会の自由度に比べて非常に大きく観念される社会と。日本は今までの家族、地域の監視をまだ信用していると、あるいは内部のお互いの監視を信用していると。これが一般に開かれた信頼社会というふうにグローバル化になってくると思うんですが、そうなると、社会のシステムが大きく変わらなきゃいけないというふうに思うんですが、アメリカの社会と日本の社会の情報管理ということについて若干触れていただきましたが、その点に御所見を再び新保先生から伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/10
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011・新保史生
○参考人(新保史生君) この点につきまして、特にやはり監視社会ということについて、監視社会化が非常に進んでいるというのは事実であると思いますけれども、それに対するプライバシーへの意識が特に米国、欧米と我が国では違うという点がまず挙げられると思います。
この点につきまして、例えば、例えますと、我が国におきましては、個人のプライバシー、他人から監視をされるという文化的なその背景については、いわゆる障子、ふすまの文化ですから、障子を隔てて隣の人の声が聞こえるというのが従来からのプライバシー意識でありますけれども、欧米においてはこのプライバシーというものは石造りの壁の文化でありますので、簡単に言えば隣の人の声が聞こえないということで、そもそもプライバシーの観念というものへの意識が違うということであります。ひいては、石造りの壁から隣の人の声を聞こうとすると、積極的に、かなり積極的に隣の人の声を聞くように何らかの装置を用いたりいろいろな手段を用いるということが従来行われてきたわけでありますが、我が国においては障子、ふすまについてはそれほど大掛かりなものは以前は必要はなかったわけであります。
ですから、そういう観点からすると、ここへ来て欧米が導入しているような非常に強力、効果的な監視手段を用いるということについて、我が国においてはまだそういった文化、文化的な背景がまだない、まだなれていないということは事実であると思いますので、今後こういった面につきましては、やはりそういった意識、プライバシーへの意識というそもそもの根本的な問題からやはり考えていくべきであるというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/11
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012・荒井正吾
○荒井正吾君 加藤先生に伺いたいんですが、日本の周辺動向、周辺、沿岸含めて動向をどう監視するかと、あるいは、テロリストあるいは犯罪人の事前摘発をどうするかというのは国家の課題だと思いますが、これは国際協力の面で、例えば軍艦の動静というのは米軍がすべて把握している、原潜も含めて。そういうシステムが構築されているわけですが、先ほど、かさの低い、ABC兵器も含めてかさの低い大量破壊兵器を運搬、使用をもくろむテロリストというのは、米国のセキュリティーシステムを、対処が十分でないというふうに思いますが、日本においてもその点は更に不十分だと思っております。
拉致が起こった海岸線というのは、見に行きましたが、夜間はもうだれでも上陸できるような真っ暗い海岸、東京からは想像できない海岸が日本海にずっと続いておるわけでございますので容易に上陸可能ですが、その海岸を全部監視できたらと思ったこともありますが、なかなか難しい。
結局、人が共同して、国際的に犯罪人が共同して犯罪を起こす、テロを起こすということだと思いますので、日本のその予防が重要だけれども、「抑止、対処が困難」と書いておられるところがあるわけですが、日本のテロリスト、国際犯罪の予防措置を進展させるには更にどのようなことを心掛けていけばいいのか、もう少しお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/12
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013・加藤朗
○参考人(加藤朗君) まず第一に、そもそも論として、要するにテロというものが我々にとってどういうものなのかというある種のコンセンサスができない限り、この問題に効果的に対処することは非常に難しいだろうというふうに思っております。
テロが定義できないのはそれこそコンセンサスがないからだということなんですけれども、これはアメリカにしても日本にしてもどこの国も同じことですけれども、そもそも軍隊はテロに対処できるような組織ではありません。逆に、警察は軍事組織のようなテロ組織には対処できません。ちょうどグレーゾーンにはまったところに現在のテロ組織がある。このテロ組織なりテロをどのように解釈するのかということについてもコンセンサスがなければ、コンセンサスがないがゆえにこれに対する法的な縛りも構築できない。更に言えば、軍事組織あるいは警察組織もこれに十分に効果的に対処できるようなハードウエアといいますか、武装も持っておりません。ちょうど私たちが、グレーゾーンに当たる部分ができてしまったということなんだろうと思います。
歴史を振り返ってみますと、これは近代国家が成立する段階で、いわゆる私掠船という海賊船が横行した時代がございます。これを取り締まるために、国際法と国内法を明確にしていくことによってこの海賊船を取り締まるということをやってきたわけですけれども、現在これをもう一回やろうというのが近代国家のやり方ではありますけれども、恐らく情報時代においてはそういうことはもはやできないだろうというふうに思っております。
そこで、できるのは何かというと、やはりもう国家間の国境を越えた国際協力以外にない。そうしますと、情報を持った国が一番強いということになります。結果的にアメリカに、これはもう言葉の問題として、追従するのかそれとも協力するのか、それはもう言葉の問題でありますけれども、実態としてはアメリカとの協力がもう必要不可欠な状況になってきているんだろうと思います。
残念ながら、我が国独自で何らかの対応を取ろうというふうなことはもはやもう時代後れの時代になってきた。それは我が国だけではなくて各国とも、それはアメリカも同じことだろうと思います。各国の協力なくしてこうした問題はもはや解決できないということだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/13
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014・荒井正吾
○荒井正吾君 話が弾み掛けて終わります。大変残念ですが、以上、終わります。ありがとうございました。
難波さんには大変失礼しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/14
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015・松岡徹
○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
三人の参考人の皆さん、大変本日はありがとうございます。
今、荒井先生おっしゃったように、大変多岐にわたっているんで、私は幾つかに絞って質問させていただきたいと思うんですが、今の加藤参考人の話の中にありましたように、テロの定義というのが非常に定義しにくいといいますか、これは当然この法案を、改正法案を議論するときも当然議論になります。しかし、抑止していくといいますか、そういった効果があるだろうというふうにはおっしゃっていました。
改めて加藤参考人に簡単にお聞きしたいんですが、今回の法改正、すなわち入国時に指紋等の生体情報によってテロリストをどこまで未然に防ぐことができるのか。私は効果としては、加藤参考人がおっしゃったように、抑止をしていく効果が一つあるだろうというふうにおっしゃっていましたけれども、元々テロ対策というのはこういう入国時で解決すべき問題ではないと思うんですね。総合的な先ほどおっしゃったように施策の中で、入国時はどういうふうな対応をするべきかというふうなものでなければならないというように思うんですね。そういうことからすると、今回の法改正でどのような具体的にテロ対策につながっていくかということをもう一度お聞かせいただきたいと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/15
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016・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 最初に申し上げましたように、私のこの現代社会のとらえ方といいますのがある種コンピューターに似ているんだろうというふうに思っております。
そこで、入国管理というのは、コンピューターのシステムでいいますと、いわゆるファイアウオールという、ウイルスやバグが入らないように関所のような役割をするという。でも、ファイアウオールがあるからといってすべてが解決するわけではもちろんございません。いったん侵入されてしまえばそれを、ウイルスやバグをとにかく取り除くというシステムはもちろん必要なわけでありまして、そういう意味で総合的な対策が必要であることはもう言うまでもありません。
その意味では、警察なり公安あるいは自衛隊、関係各官庁が協力してテロ対策に当たることはもう言うまでもないことではありますが、ただ、その一番最初の段階での入国管理というところで、一番ある意味では情報が取りやすいところでの管理の強化というのは、管理といいますか、余り管理とか監視とかという言葉は私は余り使いたくはないんですけれども、情報を収集する必要はあろうかと思います。
ただし、だからといってこれが効果的にどれほど抑止できるかということについては全く分かりません。これまでのテロとその対策の繰り返しを見ておりますと、ある意味でのイタチごっこであります。予防する側は物すごい負担を強いられてきます。ところが、テロ側は全くそれほどの負担を被らないままに、講じないままにあっという間にある種のセキュリティーホールといいますか、をかいくぐっていきますので、恐らくこの辺りで十分だろうというふうに思っていたことも何年か先にはこれは全く不十分であったという時代が恐らく早晩来るだろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/16
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017・松岡徹
○松岡徹君 私もその辺の危険性を感じているわけでありまして、テロリストという、テロというものの定義がない段階で入国のときに阻止するという理念で法改正をするということに余りにも不十分な改正だと今私自身は感じるんですが、水際で情報を取るためにということでやれば、今回は指紋で、次は更なる生体情報を取っていこうというふうにエスカレートしてくる。そのことが本当に全体のテロ対策の中で果たす役割の中でどれだけの重要な位置を占めるのかということの検証がされていないままにやられるという危険性を私は感じております。
そこで、今回のところで、一方で犯罪、まあ不法入国も含めてあるんですが、この指紋の場合、当然、プライバシーという問題がありました。それで、新保参考人もおっしゃっておりましたように、プライバシーそのものに対する国民の意識がどう変わっていくべきなのかというとらえ方なんですけれども、確かに混同しているところがあるかもしれませんが、私は、今回のやつで、指紋を取るか取らないかではなくて、入国のときには、その人が、入国する人がその本人であるかどうかということを確かめることが主たる目的なんですね。その本人であるかどうかを証明する方法として指紋というふうに出ています。そういう意味では、先ほど新保参考人の中にありましたように、公共の福祉のためにとする場合、その個人の固有の情報である指紋、生体情報を提供するという義務も、義務というか、プライバシー権をある程度制約するということになります。
しかし、そのときに当然配慮されるべきという考え方が出てきますね。それがすなわちプライバシー、PIA、すなわち影響評価とかにかかわってくるというふうに思うんですが、公共の福祉のためといいながら、そうする場合、当然配慮すべき条件とはどういうことを考えられるのかということを新保参考人、それから難波参考人にちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/17
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018・新保史生
○参考人(新保史生君) このような指紋等の生体認証情報の特徴といたしましては、万人不同性と呼ばれますけれども、みんな違う情報であるということ、それから終生不変性ということで、生涯変わらないということが大きな特徴でありますので、その利用方法次第では非常に著しく、その人の一生にかかわるほど私生活あるいはプライバシーが侵害されるというおそれがあるわけであります。
この点につきましては、やはりどのような目的、公共の福祉の範囲内といいましても、それが正当な理由かどうかということがやはり大きな問題となりますので、その理由、正当な理由というものについては、やはりどのような利用目的かと。その利用目的については、それを利用することによって得られる効果とそれに伴う権利の制約と、この両者のバランスを考えたときにどの程度の効果があるのかと。それによって得られる効果と果たしてそれによって侵害される個人の権利というもの、これがどの程度の関係なのかというこのバランスを考えた上で検討するということ。
並びに、個人情報の取扱いの観点からいたしますと、これを利用するということについて必然的に様々な形で提供を行うことが必要となってくるわけでありますけれども、この提供につきましては、提供の範囲をどこまでの範囲に設定をするかと。国内ではどのような範囲で利用するか、国外に対してはどの範囲で提供するかといったようなこの提供の範囲というものが非常に重要であると。
それから最後に、やはり安全管理の面であります。安全管理につきましては、こういった終生変わらない情報が不正又は利用されるということは、これは漏えいをするということが最も顕著なリスクでありますけれども、この点については、安全管理を行うということは結果的に個人のプライバシーを保護するという、技術的には保護するということになりますので、このような観点から非常に検討事項が多いというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/18
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019・難波満
○参考人(難波満君) 先ほど申しましたとおり、プライバシーの制約については目的の必要性、これはもちろんです。ただ、それだけではなくて、その目的を達成する手段としてそれが相当かどうか、言い換えますと、できる限りその目的を達成する方法として権利を制約する割合が少ないものがないかどうかということを吟味することが必要だと考えております。
この点について私は二点を述べたいと思うんですが、まず一点目として、まず入国時のチェックなんですけれども、現在、指紋と顔写真というふうに言われております。今言われたその他水際の防止といいますと、実は現在採用されているのはIC旅券、日本に三月に導入されましたけれども、これが各国でも導入されようとしている背景があって、そういう旅券の偽変造対策というものをチェックしようとしております。そういった観点からしても、生体情報としては果たして指紋まで取る必要があるのかとか、顔情報を取って、それを旅券等とチェックする、IC旅券が導入された場合にはその偽変造を十分にチェックしていくということによって目的を一定以上達成できるんじゃないかということがあると思います。
二点目としては、プライバシーについては、やっぱり各国における社会通念ないしはその歴史的経緯ということを十分に考える必要があると思います。この点、日本においては、先ほど申しました外国人登録法の廃止の経緯とかいったものにかんがみると、やはりいまだ指紋を公権力が一般的に採取することについては、それに対する社会的な反発が強いように思っております。
私は、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/19
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020・松岡徹
○松岡徹君 公共の福祉ということでどうしても指紋を提供義務を義務付けるとするならば、当然のようにその利用目的というものをはっきりしなくてはならない。そして、その利用の、先ほど言いましたように、それが効果としてどういうふうなものがあるのか、それに伴うリスクをどういうふうに整備していくのか、リスクをなくしていく、あるいはフォローするための整備をする、そういう意味ではその辺なんだと思うんですが、先ほど新保参考人が言いました、アメリカの方法をそのまま今現在追従するのは危険だとおっしゃっていました。
その辺について、それと海外への提供という提供の範囲ですね。すなわち、それがどういうふうに利用されるのか。すなわち、それが今回の非常に最も問題になるところでありまして、個人の生体情報が本人チェックとして、その条件としてされることがいいのかどうかという問題になってきます。
そういう意味で、アメリカへの方法をそのまま追従するのは危険だという点と、そして海外へこういった私たち国民のあるいは個人の生体情報を本人が全く分からないところで流用される、提供されていくということについてどういうふうに考えられているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/20
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021・新保史生
○参考人(新保史生君) まず前者の問題でありますけれども、この点につきましては、公共の利益とプライバシーの権利の保障という観点から、米国における昨今の状況は、もう公共の利益を優先すると。その利益というのは、国民の生命、身体、財産の保護という公共の利益を優先するということから、結果的に、かなりの相当部分において個人のプライバシー、また通信の秘密の保障といったようなものも含めて、それが制約を受けてもこれはやむを得ないということが社会的に認められているということに基づいて、かなりの部分でプライバシーの侵害が発生していると。これは公権力によるプライバシーの侵害、憲法上のプライバシーの権利の侵害がなされているというのは、これは事実であります。ですから、このように、国民の生命、身体、財産の保護という名の下に、あらゆる場面でプライバシーの権利を侵害してもいいというような風潮、ある意味これは風潮でありますけれども、これはそのまま我が国においてこれを追従するということは非常に危険であるというふうに考えております。
また、海外、国外への個人情報の提供につきましては、これは例えばEUと比較いたしますと、EUは個人データ保護指令という指令を制定しております。この指令に基づきまして、EU域外の国に対して個人データを提供するに当たっては、その相手方の国の個人情報の保護制度、そのレベルが十分なレベルに達しているかどうかということが条件となっております。
我が国におきましてはそのような基準は全くございませんので、相手方の国においてどのようにその個人情報が利用されるのかということを考慮する、又はそれを提供に当たっての条件とするような法律はございません。ですから、この点については、我が国を経由して、また例えば我が国から提供される個人情報、それからまたひいては我が国をいわゆる経由して出ていく情報も同じでありますので、この点については今後はやはり検討が必要であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/21
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022・松岡徹
○松岡徹君 最後に、難波参考人に聞きたいんですが、おっしゃっていましたように、例えば今回の法改正で、テロリストあるいは不法入国者というふうに法務大臣の認定を含めてやった場合、強制送還という手だて、ところが本人の不服申立てとかいう手続がないというのをおっしゃっていましたが、どういうふうなルールが必要だというふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/22
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023・難波満
○参考人(難波満君) まず、この法制度の中では法務大臣の認定という、関係機関からの意見の聴取という、ただそれだけが定められております。しかしながら、その中身につきまして、つまりどういう、例えばその認定の根拠とかその事実についてどこまで示すべきなのか、そういったことについてはあくまで運用等に、実務にゆだねるんだという非常にあいまいな、言わば行政へのフリーハンドを与えているというふうな問題点があります。
二点目としては、更に法務大臣の認定に当たって使われる証拠等についても、先ほど申し上げたように、その信用性とか、それが果たして適正なものかについて、例えばイギリスを含めた各国におかれても議論がされてないままに導入されるという意味で、法務大臣の認定が非常に恣意的というか、広範なものになる危険が払拭されてないという意味で非常に大きな問題があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/23
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024・松岡徹
○松岡徹君 それじゃ、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/24
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025・木庭健太郎
○木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。三人の参考人の皆様、貴重な意見を本当にありがとうございます。
私は、今回の法改正、つまりテロの未然防止ということを目的にこういった形の新たな制度を設ける、このこと自体はやむを得ざるやり方ではないだろうかと、こう思っている一人でございます。ただ、御指摘もあるように、個人情報等の問題、人権等の問題、またその範囲の問題、様々な問題点も御指摘もいただいております。
そこで、まず三人の参考人、皆さんにお聞きをしたい第一点目は、先ほど難波参考人の御指摘もございましたが、今回の措置によって、日本に上陸する年間六百万から七百万人の外国人に対して生体情報の提供を求めてこれが保管されるという問題でございます。
法務省は、具体的に言うならばということで、その人が生きている期間であれば七十年、八十年ということは理論上はあり得ると、理論上はあり得ると、ただ、一体どれくらいの期間これを保管すべきなのかということについては今後の検討をきちんとやりたいと、こういうふうに言っているわけでございます。
ただ、私も、これは新保参考人の問題提起にもありますが、情報が漏れるということがあり得るという危険性は既にあるんであって、したがって、この保管という問題に関して言うならば、できるだけ早い段階にこの取った情報というのは廃棄すべきであると。一番早ければ、適合情報というか、テロに関する問題でチェックをしたならば、それが終わったら直ちにこれを排除というか廃棄すべきだと、こんな考えも実は持っているものでございますが、この辺の考え方、こういった情報の保管、期間の問題について、それぞれ三人の参考人から御意見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/25
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026・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) じゃ、新保参考人からお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/26
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027・新保史生
○参考人(新保史生君) 情報につきましては利用目的の範囲内で利用するということが法律で定められておりますけれども、法律では保有期間については設定義務がございません。しかしながら、利用をするということは、これは同時に保管をする、保有するということが必要になりますので、つまり利用目的を達成するというこのことについては当然保管をするということが必要となります。
その期間についてはどの程度という問題が出てくるわけでありますが、これにつきましては、情報についてはやはり賞味期限がございます。古くなった情報は必ずしも正確ではないと。つまり、正確性の確保という観点からすると、その情報が一定の時の経過によって正確性がなくなるということがあるのも事実であります。
この点につきましては、例えば例を申し上げますと、指紋について画像を保存していると。この画像についてはデジタルの情報で保存をするということで、ある一定の範囲で正確さを確保することはできると考えられますけれども、しかし幾ら終生不変の情報であるというこの指紋についても、例えばけがをした後は指紋に欠損部分が出ますし、一定の時の経過によってその情報の内容が変化するということが当然出てまいります。
ですから、時の経過による変化、経年変化、それからその情報については利用目的があるわけでありますけれども、当然賞味期限というものもあるわけであります。ですから、この点につきましては、情報が利用可能な範囲、期間というものも、まず利用目的の範囲内の期間と併せまして、利用可能な期間はどの程度かということも併せて検討する必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/27
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028・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 七十年、八十年の先のことを、今のような日進月歩ではなくて秒進分歩の時代で技術がどのように発展しているのかということも踏まえますと、なかなか正確に申し述べることは難しいかと思いますけれども、ただ、テロといいますか、犯罪の視点からいいますと、直ちに廃棄すべきだということになりますと、それは期間を恐らく明示しなければならないだろうと思います。もしも私がテロリストならば、その明示された期間をうまくかいくぐっていろんなことを考えるだろうと思います。ということで私の意見は終わりにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/28
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029・難波満
○参考人(難波満君) 私もその点については、この利用目的というか、言わば採取する目的との関係によると思います。ただ、やはり、これが採用される背景としては、テロリストの未然防止というか、テロリストが日本に入ってくるのを防止するということになるのが主眼であることは言うまでもありません。そうすると、そこが、ストレートに言うと、入国時において照合が済んでしまえば当然その情報は必要なくなるわけで、入国して、その在留を許可した者について更にそれを保管しておくのは、やはりその目的を超えているだろうというふうに思います。そういう意味で、私としては入国時で消去すべきだというふうに考えております。
また、保管については、先ほどもおっしゃったように、生体情報がセンシティブ情報であるという問題点、またそれが漏えいすることによる非常に大きな個人の自律に対する危険という問題点、さらには、先ほど申し上げた、残念ながら現時点では運用実態というか、利用実態がやっぱり非常に不明確であるということ、それを踏まえたことからしても、やはり入国時に消去すべきであるというのが私の意見です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/29
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030・木庭健太郎
○木庭健太郎君 それと、今回は生体認証情報ということで指紋と顔写真、この二つということになったわけで、法務省に対してもこれ質疑の中で、これ以外を何か考えているのかという質疑に対して、法務省の方は現在のところこの指紋と顔写真だという答弁をなさっております。ただ、本当にテロの未然防止という目的で生体情報を取るときに、この指紋と顔写真で足りるのかという意見もあります。その一方で、指紋まで必要なのかという意見もございます。
将来的に、先ほど、これは加藤参考人の資料を見さしていただくと、将来的には目の虹彩の問題であってみたり、それから静脈等、そういったものまできちんとやる必要があるんではないかという意見も一方でございます。そういった意味では、今回の法律、法改正では、これもまた御意見があるところで、これを省令で定めるのはどうなのかという意見もあります。
こういった問題に対して、つまり、今回の生体認証情報というのは指紋と顔写真である、この点について、これで足りるのか足りないのか、また、こういった生体情報を取るときの定め方として省令にゆだねるということを言っていると、この点についてどうお考えになられるのか。正に人権、プライバシーという問題とも絡めて御意見があれば、三人の参考人からそれぞれ御意見をいただいておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/30
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031・新保史生
○参考人(新保史生君) 本人確認情報として指紋と顔ということにつきましては、これは必要最低限度の情報として考えられたものと考えられますけれども、顔につきましては、対面で目の前にいる者との本人確認を行うということ、指紋につきましては、より正確に特徴を抽出することができますので、それによって既に保有している情報と、例えば犯罪者等の情報との照合を行うということが可能となりますので、ですから、最低限度必要な情報の取得という観点からすると、この二つの情報はやはり最低限度必要だろうと。
また、プライバシーの問題との関係におきましても、プライバシーの権利というのは、やはり取り扱う情報の量が少なければ少ないほどプライバシーが侵害される可能性も低いという観点からいたしますと、こういった最低限度の情報の取得から始めるということがまず望ましいかと思います。
しかしながら、より精度が高い、正確性、それから本人確認の精度を高めるためには、より多くの情報が必要となります。その際に確実なものとしては、やはり照合性を高めるということになります。複数の情報を照合することによってより高い精度の本人確認を行うことができるというのが挙げられますので、ですから、指紋だけではなく、虹彩、静脈などの情報も含めて、今後、技術動向も踏まえて、より高いレベルでの照合精度を高めていくということも当然必要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/31
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032・加藤朗
○参考人(加藤朗君) テロの対策と効果の問題ですけれども、どのように判断するかというのは正にこのコップの水の問題と同じで、コップの水が半分減ったと考えるのか、まだ半分残っているのかと考えるのか。つまり、楽観的に考えるか悲観的に考えるかという判断の問題であって、それは一人一人の主観の問題だろうというふうに思います。ただ、単純に主観の問題とは言いましたけれども、それは、その主観というのは時代や状況によって大きく異なるということでございます。
振り返ってみますと、一九七〇年の日航機よど号事件のときに、それ以前に空港でのセキュリティーチェックなど全くございませんでした。ところが、時代がセキュリティーチェックが必要な要請してきたわけです。当時、セキュリティーチェックをするときにみんながどのように反対したのかということを恐らく覚えていらっしゃると思います。身体検査までするのかという、そのうちにガードをくぐるようになると、これで一体どういうことになるんだといって、プライバシーの問題が盛んに叫ばれたんですね。
ところが、やっぱり時代、状況によって少しずつ少しずつ上げていかざるを得なくなってきたというところが現実だろうと思います。逆に、このことは、時代が良くなればまたそれは少しずつ少しずつ下がっていくだろうと思います。
ですので、将来どうなるんだ、これで十分なのかという議論は、実はにわかに判断し難い、現在においてどのように判断するかしか我々としてはもう考えようがないんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/32
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033・難波満
○参考人(難波満君) 私も、どこまで生体情報を採取するのがいいのかということについては、確かに、その時代情勢とかあるいはその国際情勢ですか、それによるところはあると思いますけれども、まず一点目に、生体情報を取得して、それがあらゆる外国人についてすべてに取得する必要があるのかと、一律にと、そういう問題点は当然あると思います。ただ、取得した場合に、じゃ顔でいいのか、じゃ指紋も必要か、それ以外はどうかということになりますと、私はやっぱり、今の現在の情勢からすると、まず国際情勢でアメリカのUS—VISITのみが採用されているという点、それ以外の国ではまだ採用されていないという点。また、日本では、一九九九年、わずか五、六年前の改正によって外国人の指紋押捺制度は廃止されたという経緯からして、やはり指紋まで取るのは行き過ぎだろうと思っております。
また、それを省令に入れるのがどうかという問題点については、個人識別情報につきましても、当然顔、指紋、それから虹彩、あるいは場合によってはDNAといった、そういったものもあります。ただ、それを今の法律では、全部行政機関が省令で定めることによって幾らでも入ってくるということになっています。それはやっぱり私の意見では余りに広範ではないかと、あくまでそれは法律によってやっぱり個人識別情報の種類についてもきちっと定めるべきではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/33
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034・木庭健太郎
○木庭健太郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/34
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035・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。三人の参考人の方々、本当にありがとうございました。
まず、加藤参考人にお尋ねしたいと思うんですが、略歴を拝見をいたしまして、今日、参考人からのお話の中には触れられてはいなかったんですけれども、難波参考人からお話のありましたインテリジェンスシステムについて、どんな概念のものとして考えるか、あるいはその目的あるいは有効性、こういう点について御所見がおありなのではないかと思いまして、まずお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/35
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036・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 恐縮でございますが、私の略歴といいますのは、法務委員会の委員になっているということの略歴でございましょうか。法務委員会といいますか、法務省の入国管理の委員会の委員になっているということ……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/36
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037・仁比聡平
○仁比聡平君 私が申し上げたのは、警察庁情報システム安全対策研究会等々のことでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/37
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038・加藤朗
○参考人(加藤朗君) ひょっとしますと、それ、ちょっと不正確な略歴ではないかとは思うんですけれども、ちょっと簡単に私の略歴を申しますと、一九八一年に防衛庁の防衛研究所に勤務いたしまして、十五年間、研究生活を送ってまいりました。その間、もちろんテロの問題につきまして、警察庁等あるいは公安調査庁などの研究会にも出席したことはございますけれども、個人的に何か警察や公安等のプロジェクトに参加したということは余り記憶に、記憶にではなくて、ございませんので、御指摘のありましたインテリジェンスの問題につきましては、残念ながらその知識は今持ち合わせておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/38
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039・仁比聡平
○仁比聡平君 そうしましたら、難波参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほど法務省の最適化計画の部分を引用をされて、その計画が統一的管理システムの構築のおそれがあるという御指摘があったわけですね。ここの最適化計画の構想がどういうものになるというおそれを考えていらっしゃるのかという点について、もう少し詳しくお話しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/39
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040・難波満
○参考人(難波満君) ここではインテリジェンスシステムの導入構想を挙げたんですが、実は今現在、政府部内ではどうも外国人の在留管理に関するワーキングチームというのが立ち上げられて、そこで外国人の在留の管理をどうも検討されているようです。その中で一つは、このインテリジェンスシステムというのは言わば外国人の入国情報、それから在留、つまり外国人登録関係の情報、そういったものを含めたデータベースを一元化した上で、更にそこに警察庁、外務省を始めとする行政機関からの情報を一元化して、つまりその方のすべての個人情報について行政機関が統一的に保有するということが考えられております。
ただ、これはこの制度だけではなくして、どうも昨年の六月に自民党の方から出された提言等を拝見しますと、例えば今現在、外国人登録証に代えてIC在留カードといったものを例えば採用するとか、あるいは留学生の関係について学校等の受入れ機関からその情報を提供させるとかいったような制度も、どうも昨年六月の段階では自民党の提言で出されております。
そういった様々な在留管理制度が組み合わさったときには、外国人についてのあらゆる情報を政府が把握し、かつそれをもって外国人の在留を一般的に管理すると。そういう意味におきまして、外国人についての統一的な管理システムが構築されるんじゃないかというふうなおそれがあるというふうに考えている次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/40
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041・仁比聡平
○仁比聡平君 今お話しの中にありました外国人登録のカードにICチップ化というようなお話が、難波参考人のこれまでの実務経験などからしてどんな形で具体化されるといいますか、外国人にとってどういうものになるというふうに思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/41
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042・難波満
○参考人(難波満君) あくまで想像の域でしかないんですが、今現在、不法滞在者の半減という政策の下に、非常に外国人に対する、例えば現場での警察官、交番等の警察官による職務質問等非常に厳しくなっている状況にあります。
例えば、最近の二月にあった例でありますと、日本人の方なんですが、外見が東南アジア風というふうに報道ではなっておりましたけれども、そういう方が、例えば警官と目をそらしたと、それだけで外国人じゃないかというふうに疑われて職務質問をされて、ただ、その方がどうもなかなかうまく言葉を話せなかった方らしくて、その結果として、旅券の不携帯の疑いがあると、つまりその方は外国人とみなされた上で旅券の不携帯があるとして逮捕されてしまったというふうな事例があると、ただその方は実は日本人だったというふうなことがあるというふうに聞いております。
そういった現場の状況から考えますと、そういった外国人登録証明書にICチップが入ってくると、場合によっては現場の端末を用いてその方の日常的な行動まで監視することになるようなおそれがあるんじゃないかということを危惧しておる次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/42
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043・仁比聡平
○仁比聡平君 政府が、この法改正に当たってもそうなんですけれども、在留管理というこの言葉を使うことがあるんですが、この在留管理というのは、難波参考人の御経験からすると、今、先ほどお話のあったような出来事というようなことになるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/43
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044・難波満
○参考人(難波満君) それも一つにあると思います。それも含めて、つまり外国人の方が在留している状況において、その方の在留に関する情報をすべて把握するとともに、実際に日常的な行動についても、場合によっては現場の警官等からのそういった職務質問等による管理、そういったものも含めた意味でここでは在留管理という言葉を私どもは用いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/44
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045・仁比聡平
○仁比聡平君 新保参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、少し戻りますけれども、インテリジェンスシステムの概念の問題で、参考人の法律時報の以前の論文を拝見をいたしまして、かつてなのでしょうか、アメリカでTIAというシステム構築が計画をされたことがあると。その柱の一つが先ほど難波参考人が指摘をされたものと似通っているようにも私は思うんですが、まず、新保参考人が今現在言われておりますインテリジェンスシステムというものについてどのようにお考えか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/45
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046・新保史生
○参考人(新保史生君) TIAにつきましては、米国におきましても、やはりプライバシーの問題などについてかなり問題が大きいということで、事実上中止に追い込まれたという現状がございます。
この際には大きく三つの側面から問題が指摘されまして、一つは、即時的に対応するということで先進的に各行政機関が情報を共有するという、そういう先進的な共同の決定支援のプログラム、それから、言語を翻訳するということで、外国人の方の音声とか文字のものを、通信を傍受するというプログラムがあったわけですけれども、さらに、最後には、いわゆるエシュロンを始めといたしまして米国が現在用いております様々な手段を用いて取得した膨大な量のデータを分析する、データの検索及びパターン認識というものについて研究を行ってきたわけでありますけれども、これについては、やはりかなり先進的な技術を用いて効率的に情報を分析すると。
この点については、やはりシステム的にはかなり効率的に行うことができるということは事実でありますけれども、やはり従来から懸念されていますとおり、ビッグブラザーへの懸念というものが正に現実のものになるということで、米国の上院におきましても、事実上この研究プログラム、これもあくまで研究段階でありましたけれども、研究プログラムについては計画を事実上凍結するという結論に至っておりますので、やはりあらゆる場面であらゆる情報を取得すると、これは無制約にあらゆる情報を取得して利用するということになりますので、これはやはり著しく公権力がみだりに正当な理由なく個人情報又はこのプライバシーを侵害するという可能性に当たるというふうに考えられますので、ですから、あらゆる情報をあらゆる局面で何でも情報を取得するというシステムについては、これは著しくやはりプライバシーを侵害する可能性があるということで、そういったシステムの導入については極めて慎重な方向で検討するということが必要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/46
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047・仁比聡平
○仁比聡平君 そうしますと、先生のお書きになられた法律時報の七十五巻十二号、この時点から後、これに変わる変化があるわけではないということですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/47
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048・新保史生
○参考人(新保史生君) その後、米国におきましては、やはりUS—VISITを稼働するということで現在に至っておりますので、この過程はあくまでアメリカの高等研究計画庁が様々な研究を行って今後導入可能なものを模索するという段階でございましたので、現在におきましては実際にどのようなことが行われているか、これは、安全保障にかかわる問題については米国におきましてはやはり実際にどのようなことを行っているかということについては公になっていない部分もかなり多いわけでありますので、その後の状況につきましては私も承知していない部分が大部分でありますけれども、この段階におきまして、米国の国防総省の高等研究計画庁が行っていたこういった研究については、現在は凍結されているという状況にあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/48
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049・仁比聡平
○仁比聡平君 そうしますと、難波参考人が先ほど御紹介をされた最適化計画の文言を拝見すると、私も省庁を超えて一元的な管理、統一的な管理という、こういうものとして概念するというふうに読むのがこれはまあもっともなことかというふうに思っているわけですけれども、仮にそうだとしますと、この個人情報保護法制との関係、つまり特定の目的のために情報を保有、管理をするんであるという、だから目的外利用というのは問題だというそこの枠組みそのものも簡単に乗り越えられてしまうのではないか。そういう意味では、個人情報保護法制のその枠組みを実質否定するということになるのではないかと私は感じるわけです。
先ほど、提供の制限あるいは範囲、この一般的な法規範が日本の法制の中にはないという御指摘も厳しくあったわけですけれども、この辺りと併せてどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/49
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050・新保史生
○参考人(新保史生君) 提供につきましては、これは一部誤解がございますけれども、提供は国外への提供に当たっての制限、包括的な制限がないということでありまして、行政機関相互における提供につきましては、行政機関個人情報保護法の八条にも、そもそも利用目的の範囲内であれば提供ができるようになっております。
それ以外の目的で、利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し又は提供するということに当たりましては、行政機関個人情報保護法八条に基づく法令に基づく場合と、八条の柱書きの法令に基づく場合、並びに八条二項二号に基づいて行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合又はということになっておりますので、ですから、この場合には、所掌事務の範囲内でまず利用するということについては相当な理由があれば利用できるということ、目的外であっても利用できるということ。
また、同条の同項第三号におきましては、提供に当たっても、当該個人情報を利用することについて相当な理由があるときには提供ができるというふうになっております。ですから、この相当な理由については従来どおりの判断で、目的が正当であるかどうか、客観的かつ具体的な必要性があるかどうかといったような観点から相当な理由があるかということで判断がなされると思いますので、あくまで提供については、国外の提供については包括的な規制がないと、国内では行政機関が法令に基づく利用、提供というものについては法律の範囲内でのみ行うことができるというふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/50
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051・仁比聡平
○仁比聡平君 できれば一言でといいますか、短くお願いできればと思うんですけれども、新保参考人に。
先生、利用目的について、今度の法案ですね、この利用目的というのはどんなふうに解釈をしていらっしゃいますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/51
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052・新保史生
○参考人(新保史生君) これはもう、テロを未然に防止するという利用目的だと思いますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/52
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053・仁比聡平
○仁比聡平君 難波参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、先ほど新保参考人からも、アメリカの今の状況は異常な状況でしたか、そういうお話がありました。イギリスのこの強制退去の問題についてのお話で先ほど大変勉強になったわけですけれども、アメリカの運用実態について何かお感じ、あるいは御存じのことがあれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/53
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054・難波満
○参考人(難波満君) 御承知のとおり、アメリカでは、同時多発テロ直後に愛国者法というのができまして、その中の条文でいうと四百十一条及び四百十二条になるんですが、その中で、テロ組織に物的支援等をした者あるいはテロリストの疑いがある者に対して同じように身柄拘束あるいは退去強制ができるというふうな条文が入っております。その下では、実態としては非常に、司法長官等に対して、行政機関に対して広範な裁量を与えた、かつそれに対して歯止めがないものであったために、特に中近東あるいは南アジア諸国の男性を中心にして非常に、理由があるかどうか非常に微妙なケースであるにもかかわらず、大量に外国人、それも永住資格等を持っていらしているような、安定した在住者資格を持っている外国人についても身柄拘束がされたというふうなことを聞いております。
そういった観点からしても、行政機関に対してフリーパスを与えるようなこの退去強制事由に対する今回の規定についてはやっぱり問題があるんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/54
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055・仁比聡平
○仁比聡平君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/55
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056・亀井郁夫
○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございますが、三人の参考人の皆さん、今日はお忙しい中、ありがとうございました。大変貴重なお話をお聞かせいただきまして、感謝申し上げたいと思います。
若干お尋ねしたいと思いますが、この委員会でもいろいろと議論される中で一番問題になっていたのは、平成十六年の外国人登録者の数は約二百万人、そのうち五十万人が特別永住者と、いわゆる百五十万の方々は平穏に生活しておられるという方なんですね。それを今回の法改正ではやはり対象にするということになっておるわけですけれども、そうすると、指紋を取られ、写真を撮られということで、そういう意味では退去強制者や国際指名手配容疑者ですか、それらテロリスト等との照合をされるということになるわけですけれども、特別永住者についてはそういうことないわけですから、せっかく百五十万の永住者についても同じような扱いでいいじゃないかということがあったんですが、皆さんがどうお考えなのか、三人の参考人の方々、それぞれの立場で、立場も違いますけれども、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/56
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057・新保史生
○参考人(新保史生君) ただいまの御質問については、ちょっと趣旨が私よく理解をできませんで、申し訳ございませんけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/57
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058・亀井郁夫
○亀井郁夫君 特別永住者は対象になっていないけれども、永住者は対象になっているわけですね。しかし、その永住者も対象にするのおかしいではないかと、対象にしなくていいんじゃないかというふうなことに対して、法務省はやっぱりやるんだと、こう言っているわけですが、それについての御意見どうですかということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/58
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059・新保史生
○参考人(新保史生君) この点につきましては私は全く考えておりませんので、意見を申し上げることができません。申し訳ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/59
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060・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 私は、そのプライバシーの保護に余り敏感でないのかもしれませんけれども、結論から申しますと、私の個人的な意見はまあどちらでもいいなという、その状況によって皆さんの、それこそ政府の皆さんの判断だろうというふうに思っております。
なぜかといいますと、プライバシーの保護ということなんですけれども、考えてみましたら、私たちは運転免許証でほとんどもう、プライバシーというところでは、ある意味では一元管理というものはもう日本国民においてさえ実行されてしまっているという状況をかんがみれば、どれほどの意味があるのだろうかという気がしております。それはもうあくまでも個人的な意見でございますので、特にそういう意味では反対でも賛成でもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/60
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061・難波満
○参考人(難波満君) 先ほども申し上げましたけれども、この法律の利用目的は、新保参考人のおっしゃるとおり、テロの未然防止ということであるとすると、やはり言わば指紋等の生体情報を照合した上で、さらにそれを外国人登録と、つまり日本に居住していらっしゃる方についての保管まで義務付けるというのは、言わばそういう方はテロをする疑いあるんじゃないかというふうな思想が根底にあるというふうに言っても過言じゃないかと思います。
そうすると、やはり特別永住者の方はもちろんですけれども、永住者、すなわち日本国が、日本に居住することは利益というふうに、日本国の利益にかなうとして許可したにもかかわらず、その片方では指紋まで採取すると。余りにそれは行き過ぎであることは間違いありませんし、当然それ以外の在留資格の方についても、日本での在留を認めているわけですから、そこら辺について他方でテロの疑いがあるというふうな形でその指紋等を保管していくというのは、やっぱりそれは行き過ぎてないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/61
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062・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
それで二つ目にお尋ねしたいのは、テロリストを防ぐということは非常に大事なことでございますけれども、しかし改正案の第二十四条三号の二の、テロリストの認定の要件として、行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者ということで、非常にあいまい表現になっておりますので、そういう意味では拡大解釈される可能性あるし、これについてはもうちょっと具体的に決めるべきではないかということも議論されたんですけれども、このことについては先生方、三人の先生方にどうお考えなのか、非常に常識な質問で申し訳ないんですけれども、よろしくお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/62
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063・新保史生
○参考人(新保史生君) 確かにテロリストの認定につきましては、客観的に考えて明確な基準というものが求められるわけでありますけれども、そもそもテロリストの活動というものが非常に広範多岐にわたるということになりますので、一律に確定することが難しいのも現状かと思います。
しかしながら、やはり法規制を行うに当たっては、テロリストの認定ということについてはやはり一定の明確な基準というものに基づいて認定を行うということは当然必要かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/63
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064・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 発表のところでも申し述べましたが、実行行為について本来ならば認定すべき問題ではあろうかと思いますけれども、テロリストをどのように認定するのかということで常に拡大解釈の問題が議論されますが、逆に言うと、縮小解釈された場合どうするんだという問題がございます。
この場合の縮小解釈というのはどういうことかと申しますと、国際社会では明らかにこれはテロと認定してもよいのではないかというような事案に対して、国内法においてこれはそうではないというふうに判断した場合にどのように対応するのか。それは、私は最後に申し上げましたけれども、日本が国際社会に対して負っている責任というものをやはりきちっと認識すべきだろうと思います。日本が国際テロに与えた影響というのは日本人が考えている以上に甚大なものがあるというふうに考えます。私たちはその自殺テロやあるいはオウムのテロのことについてほとんどもう忘れてしまいましたけれども、テロの分野の研究者の中では、日本赤軍のスーサイドアタック、スーサイドテロとかオウムというのはいまだに研究の対象でございます。そういう意味で、日本人としてのその主観を、主観といいますか判断の基準をきちんと持つべきだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/64
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065・難波満
○参考人(難波満君) 私もそのテロリストの規制については必要であるのは当然だろうと思います。ただし、今回のこの法律の中について、やっぱり必ずしもテロリスト、まあそれ自体があいまいですけれども、ではない方が含まれる可能性は非常に大きいと。かつ、この同様の規定を用いているイギリスあるいはアメリカでもやっぱり非常に大きな問題が起きているというのは先ほど申したとおりです。
特に問題が大きいのは、例えば実行を容易にする行為をするおそれがあるというふうな非常にあいまいな文言になりますと、単に言論あるいは出版ないしは集会といった表現行為ですね、その中についても、例えばこれはテロリストを支援した、テロ組織を支援、いわゆる精神的に支援したとかいう形でこの条項に入ってくる可能性はやっぱりそれは否定できないと。それはやっぱりアメリカ等の例を見てもそれは実際に否定できないとも考えております。
そういう意味で、先生がおっしゃるとおり、やはりそこは非常に厳格に、仮に作るとしても非常に厳格に作る必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/65
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066・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございます。
それで、新保参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、バイオメトリックスの利用に伴う問題についていろいろあるわけでございますけれども、諸外国ではどのような検討が行われているのか、お尋ねしたいと思います、よその国における。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/66
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067・新保史生
○参考人(新保史生君) バイオメトリックスにつきましては様々な検討、利用の可能性が行われておりますけれども、大きく分けまして、こちらの資料にございますとおり、物理的に領域へアクセスする際の制御を行う目的で利用する、それから情報システムやネットワークへのアクセスを制御するために論理的なアクセスコントロールをする、それから本人確認、不正利用を防止するための信頼性の確保、利用局面といたしましては、これは我が国も各国も含めまして、もうおおむね、まずセキュリティーの確保、取引の安全確保、安全保障、法執行という観点から現在様々な利用について検討がなされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/67
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068・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございます。
そうしたら、今度、加藤参考人にお尋ねしたいんですけれども、テロ行為の定義の問題ですけれども、二十四条三号の二で書かれてありますけれども、非常にこれは問題で、これについては、先生のお話だと、法の論理で実行行為の違法性、合法性を判断すればテロ行為の定義は明確化することは可能だというようなお話でございますけれども、もうちょっと分かりやすくお話しいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/68
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069・加藤朗
○参考人(加藤朗君) 動機の善悪で判断しては恐らくこの問題はいけないだろうと。つまり、政治の論理やあるいは戦争の論理を持ち出してテロの問題を論じてはいけない。つまり、自由の戦士であるとかあるいは民族解放の闘士であるとかというようなことを持ち出しては恐らくテロの問題は法律にはなじまないだろうと思いますので、法律になじむような定義というところまで議論をブレークダウンといいますか、具体化していかなければいけないんですけれども、そうしますと、実行行為に関連してどこまでその網を広げ、定義を広げていけるかということになるんだろうと思います。
あくまでも、例えば殺人行為、結果としての殺人行為が起こった、そのことについてどのように判断するのか、その支援者をどのように判断するのかというところで定義をしていくべきだろうと思います。それがやっぱり法律から見たテロの定義だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/69
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070・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
それでは、最後に難波参考人にお尋ねしたいんですけれども、外国人登録法によって指紋押捺制度が廃止されたと。そしてまた、最近では七百四十五万ですか、多くの人が来てくれている、特に四五%が韓国や台湾という近隣諸国から来てくれているというような状況の中で、上陸審査時にこういった生体情報も義務付けるということが近隣諸国にどのような影響を与えるというふうに考えたらいいのか、先生の御意見をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/70
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071・難波満
○参考人(難波満君) やっぱり、先ほど申したとおり、例えばEUにおいては査証情報システムがありましたけれども、その中では、あくまで査証の段階ですので、観光とか商用等のビジネスの短期滞在は入らないと。仮に、そうすると、EUから日本に来られる方については指紋は取ると、逆に日本がEUに仮に商用とか観光で行く場合には指紋は取られないという意味では、やはり非常に不公平というか、というものがあると思います。
やっぱりそれは、取りも直さずそれはやっぱり一つの、その方が日本に来られたときの印象として、あの国で指紋を取られて、かつそれが、取られただけじゃなくて、自分が死ぬまで七十年、八十年あの国で保管されているというのが果たしてその国に対する印象についてその方にどういう影響を与えるかというのは、私としては非常に悪影響を与えるんじゃないかと。かつ、現段階ではどうもそういった諸外国との関係についてまだ政府サイドでは十分な調整を全くしてないという話ですので、そういう点からも非常に問題、外交的にも非常に問題があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/71
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072・亀井郁夫
○亀井郁夫君 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/72
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073・弘友和夫
○委員長(弘友和夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
本日は、大変お忙しいところを貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後零時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415206X01620060511/73
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