1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成十八年三月二十二日(水曜日)
午後零時一分開議
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○議事日程 第九号
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平成十八年三月二十二日
正午 本会議
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第一 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う
義務教育費国庫負担法等の一部を改正する等
の法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/0
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001・扇千景
○議長(扇千景君) これより会議を開きます。
日程第一 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する等の法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。小坂文部科学大臣。
〔国務大臣小坂憲次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/1
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002・小坂憲次
○国務大臣(小坂憲次君) 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する等の法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
資源の少ない我が国にとって、人材育成こそ国家の存立の基盤であります。特に義務教育は、子供たちが社会の一員として将来の日本を支えていくための基礎的資質を培うものであり、政府といたしましては、その充実を目指し、義務教育の構造改革を推進しているところでございます。
また、国及び地方を通じた行財政の効率化を図る観点から、三位一体の改革に取り組んでいるところでもあります。このうち、国庫補助負担金の改革としては、義務教育費国庫負担制度を堅持するという方針の下、その国庫負担の割合を改めるほか、公立文教施設整備費について一部交付金化等の改革を進めることといたしております。
この法律案は、こうした政府の方針等を受け、公立の義務教育諸学校等の教職員の給与及び施設の整備に係る費用負担等に関する制度を改めるものでございます。
次に、この法律案の内容の概要について御説明を申し上げます。
第一に、義務教育費国庫負担金の国庫負担率を二分の一から三分の一に改めるとともに、公立の小中学校、盲・聾学校の国庫負担制度と養護学校の国庫負担制度を統合するものであります。
第二に、市町村立の小中学校等の教職員は、都道府県が給与を負担して任用しておりますが、これに加えて、現在、構造改革特別区域においては、市町村が給与を負担して教職員を任用することが可能となっております。この措置を全国展開するものでございます。
第三に、公立の義務教育諸学校等の施設の整備に充てるため、学校等の設置者に対し、一括して交付金を交付する制度を創設するものであります。
以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/2
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003・扇千景
○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。那谷屋正義君。
〔那谷屋正義君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/3
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004・那谷屋正義
○那谷屋正義君 民主党の那谷屋正義です。
私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました義務教育費国庫負担法等の一部改正案に対し、小坂文部科学大臣並びに竹中総務大臣に質問をいたします。
本題に入る前に、少し寄り道をお許しいただきたいと存じます。
王貞治監督に率いられたチーム・ジャパンが野球のワールド・ベースボール・クラシック、いわゆるWBC初代世界王者の栄冠をかち取られました。日本国じゅう、わけても暗い話題に覆われがちだった子供たちを大いに元気付けてくれたことに、元教員の一人として、またスポーツを愛する一人として御礼とお祝いを申し述べたいのであります。
さて、本題です。
名は体を表す。憲次を名とする小坂大臣が文科相に就任されたことは、義務教育費国庫負担制度を守り抜く、文字どおり堅持するための天の配剤に当たるものとして、期待を込めてエールを送った次第です。
ところが、事のてんまつは、歴代文科大臣が死守する、必ず守り抜くとした最低ラインでもある国庫負担割合二分の一、つまりは文科省の存在意義そのものであった二分の一死守の決意のほどがついぞ見られないまま一敗地にまみれる事態に至りました。それも、一片の教育論もなく、地方分権の本筋から懸け離れた圧力に屈服する形においてであります。子供たちが主人公になるべき義務教育の真の在り方からすれば、本丸をいともやすやすと引き渡した文科省の腰砕けに対してごうごうたる非難が沸き起こることはやむを得ないでしょう。
胸に手を置いて省みていただきたい。
世紀の愚策であっても、行政担当者はやり直しが利くのです。しかし、実験台となった子供たちには、それを取り戻す機会は永遠にやってくることはありません。大人たちの政治的思惑に翻弄され、失敗が必然として待つ結果を押し付けられようとしている子供たちに、普通の常識では掛ける言葉すらないのであります。この重みにこそ粛然とすべきではありませんか。
小泉政権に幕が引かれた後の義務教育費にかかわる国庫負担割合二分の一回復への確固たる道筋を必ず付ける、この大命題を絶えず念頭に文科大臣としての職を全うすることが、せめてもの子供たちに対する責任の果たし方となります。これなくしては、決して消せぬ汚点を教育行政に残すだけに終わってしまいます。確たる答弁を求めるものです。
次に、市町村立学校職員給与負担法の改正目的をお聞きします。
本来ならば、教育特区導入と同時セットで、県費負担教職員と市町村費教職員の混在を前提に、両者の間の給与水準や勤務条件にかかわる権衡、いわゆる同一性原則を敷衍することが必要とされていたのです。遅きに失したとはいえ、今回の全国展開にかかわる措置で、市町村採用の教員を任用する場合、やっと人材確保法や給特法の適用が行われることになりました。
ただし、全国展開に際してしっかりと確認しておきたいことがあります。市町村費負担教職員の任用拡大によって、都道府県が義務標準法どおりの配置をしなくなる危惧はないか。あるいは、義務教育の水準維持や向上に都道府県が財政上果たしている役割は大きいことからも、県独自の財政負担に基づき展開されている少人数教育などが本制度導入によって後退するおそれはないのかという問題です。併せて明快な答弁をお願いするものです。
この労働条件の在り方の関連で、教職員にかかわる就業環境等の抜本的改善こそが時代の要請でもあるという確信の下、お尋ねをいたします。
旧聞に属することはお許しいただくとして、ILOが作成したエンプロイメント アンド コンディションズ オブ ワーク オブ ティーチャーズという資料にはバーンアウト、つまり燃え尽きるという言葉は、教師が肉体的にも精神的にも大変疲れてしまい、もはや効率良く仕事をすることができなくなった状態を意味するために用いられる、それは兵士間の戦争神経症の症状にもなぞらえられるという趣旨の引用があります。これは、教師には兵士並みの精神的負荷、ストレスが掛かっている現実、それらに対する実証的分析にほかなりません。我が国の教育現場を取り巻く状況からしても、いまだになぜ文科省がこのILOがまとめた資料に関心を寄せようとしないのか、私には理解できないところです。
かてて加えて、子供たちのためにという信念に象徴的ですが、教育において真に求められる結果は何かという永遠の命題も教職員の奮起を求めてやまないのであります。また、保護者との連携、地域社会との交流など、重層的な人間関係を基盤として成り立つ職場環境であることも考慮するならば、ILOのこの指摘は正に正鵠を射たものと言えます。
教職員のゆとりと希望の再生は、義務教育費国庫負担制度堅持と並ぶ文科省の存在価値を占うに足る課題、試金石になると考えます。御決意をお聞かせください。
学びの場において負の連鎖が根を張ろうとしていることは、就学援助受給者数が二〇〇四年までの十年間で約二倍もの伸びを示していることからも明白です。格差は活力の源と放言してはばからない小泉首相が推し進める改革によって、学びの場を侵食するいわゆる光と影がはらむ問題は放置し得ない臨界点に達しつつあるのではありませんか。
子供たちの就学環境の整備に今文科省の総力を結集せずして、いつ行う意義を見いだそうというのでしょうか。確たる答弁を求めます。
以上、小坂大臣にお尋ねいたします。
次に、竹中大臣にお聞きします。
子供たちの最善の利益を図る施策に一貫して冷淡であり続けた小泉政権時代の当面の措置だととらえるにしても、義務教育費国庫負担割合が三分の一に縮減された道理は多くの国民には理解しかねます。
負担金は国が義務として支出するものであり、出す、出さないの裁量の余地はありません。これに対して補助金は、役所の裁量があり、国が地方をコントロールする手段、道具になっていることは多くの識者が指摘するところでもあります。地方分権の理念からは、このような公共事業関係の補助金こそが四番バッターとしてまず最初に地方へ移譲されるべきでありました。その正当性は、今回の補助金改革を評価する首長の少なさからも明らかです。そこには数合わせの論理のみがあり、教育論など何一つなかったことは明白です。
他方、金目については、十六日の総務委員会で私の質問に対する答弁において、竹中大臣から、義務標準法がある限り所要の教育予算確保に支障はないとの趣旨の確約をいただいたのであります。今回、一般財源化された六分の一にかかわる部分も含めて、総務省の責任において都道府県単位の所要額を過不足なく充当するという決意をお示しいただいたところです。
いま一度、本会議の場で、交付税総額の縮減が叫ばれる中にあっても、義務教育費国庫負担金削減に伴う地方財政措置について、竹中大臣の見識にふさわしい明快な答弁をお願いするものです。
義務教育諸学校施設費関連で、是非、竹中大臣の英断を強く求めたいことがあります。
総務省が管轄している消防庁の調査によると、耐震性がない学校施設にもかかわらず非常災害時の地域住民の避難所に指定しているという、人命軽視、許し難い不作為の実態があります。避難所に指定したにもかかわらず、未耐震の公立学校施設に地域住民が難を逃れて来たときに甚大な余震が発生したとすれば、子供たちや住民の尊い生命が損なわれることは避けようもありません。
学校施設の耐震化については、文部科学省だけに任せるのではなく、全省庁で対応すべきであり、特に、消防庁を所管し地方自治体を監督する立場から、総務省としては最大限のバックアップが必要ではないでしょうか。
民主党がさきに本院に提出したいわゆる公立学校施設にかかわる耐震補強等促進特措法では、全国どこでも大地震は起きる、子供や住民の命に地域差はないという観点から、東海地域以外にも地震補強工事に係る起債の元利償還費に対する交付税措置を講じています。
民主党の法案に賛成した形になることにこだわりがあるのなら、百歩譲って、避難所に指定されている学校施設だけでも東海地域と同様の交付税措置をとり、耐震補強を早期に完了すべきです。
特段の法律改正も必要のない事項でもあります。前例にとらわれない竹中大臣の真骨頂の発揮を強く強く望まないではおられません。確たる答弁をお願いします。
ノーベル文学賞を受賞した英国の詩人エリオットが喝破した、狭量さや非寛容さを押し付けていることを分かろうともしない想像力に欠けたうつろな人間たちが小泉政権下で増殖しないことを願わずにはおれません。それは、紛れもなく競争原理至上主義に毒された社会の病理現象の一断面、縮図です。その対極にあるのが、子供たちの共生、協調を立脚点とする教育の持つ力、可能性です。
この問題意識において、私を触発してやまないのが、ヒマラヤ山ろくの人口七十万人弱のブータンという国が掲げる国民総幸福量、グロス・ナショナル・ハピネス、GNHの理念です。
自然環境や伝統文化を守り、家族や地域で助け合いながら生きる。言わば、自然や人間との共生の哲理実現を目指す思想とも言えましょう。ブータンの実践が問い掛けるのは、所得の増大、GDPの成長が豊かさや幸福、満足度を測る尺度となっている我が国のありようです。
ある気鋭のジャーナリストは、自然が保全され、川や泉から水を飲んでいてもGDPとは関係ないが、ボトルに入ったミネラルウオーターをいっぱい飲めばGDPは上がる、健康であればGDPは増えないが、病気になって薬を飲んだりすればGDPは上がる、命までもすり減らす会社人間になって働き続けなくてはGDPは上がらないなどなど、市場原理の宿業とも言えるゆがんだ因果関係を例示した上で、こうしたGDP信仰の虚構に気付かせてくれるのがブータンの試みだと読み解きます。
多分、ブータンにはうつろな人間たちが巣くう土壌はないのでしょう。我が国の学びの場を覆う閉塞状況を打ち破るための多くの示唆がここにはあります。
民主党は、これらの原点、教訓に学び、教育再生に向けた第一線に立ち続ける決意を明らかにして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣小坂憲次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/4
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005・小坂憲次
○国務大臣(小坂憲次君) 那谷屋議員にお答えを申し上げます。
議員が冒頭御発言をなさいました王監督率いるジャパンチームのWBC世界一の快挙は、スポーツが国民に勇気と希望を与えるという健全な影響力の大きさを改めて認識させる出来事でございました。
さて、議員からは四点、御質問がございました。
最初に、義務教育費にかかわる文部科学大臣としての責任についてのお尋ねがございました。
今回の措置は、政府・与党として、昨年十月二十六日の中央教育審議会答申を踏まえつつ、三位一体の改革を進める中にあって、広く国民の意見を聞きながら丁寧に問題に取り組んだ結果でありまして、義務教育費国庫負担制度を堅持する方針の下、国庫負担割合を三分の一としたものであります。
今後とも、義務教育に対する国の責任をしっかり果たせるよう、国と地方の負担により義務教育の教職員給与費の全額を保障する仕組みである義務教育費国庫負担制度を堅持し、義務教育の構造改革に取り組んでまいる所存であります。
次に、市町村費負担教職員任用の全国化による都道府県の教職員配置への影響についてお尋ねがございました。
御指摘の措置は、国が義務標準法により標準的な規模の教職員数を定め、国と都道府県の負担により教職員給与費の全額を保障するという基本的な制度が保障された上でなされるものであります。また、都道府県独自の取組としての教職員配置は、義務標準法による配置に加え、都道府県の事情による少人数学級などの必要性に基づき行われるものであり、引き続きこれまでと同様の措置がなされるものと考えております。
次に、教職員にかかわる就業環境等の抜本的改善についてのお尋ねでございます。
教職員が意欲と使命感を持って学校教育活動に専念できるようにすることが重要ですが、教職員の意識調査を見ると、多くの教職員が多忙感を抱いているものと認識をいたしております。
文部科学省としては、各教育委員会に対して、会議などの見直しによる校務の効率化、都道府県、市町村が行う調査等の精選、事務処理体制の整備等について指導してきたところであります。今後とも、教職員の多忙感の解消に向けて、各学校や教育委員会の取組を促すとともに、文部科学省としても教員の勤務の実態についてよく現状を把握してまいりたいと考えております。
最後に、就学環境の整備についてお尋ねがございました。
義務教育について、国は、憲法の要請により、すべての国民に対して無償で一定水準の教育の機会を提供する責任を負っております。国としては、教育基本法や学校教育法等に基づいて、授業料の無償や教科書の無償給与を実施しているところであります。また、学校教育法の規定に基づき、市町村においては、経済的理由により就学が困難な児童生徒に対し就学援助が行われております。
これらの施策により、実質的に義務教育の機会均等が図られますよう、引き続き就学環境の整備に努めてまいる所存であります。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/5
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006・竹中平蔵
○国務大臣(竹中平蔵君) 那谷屋議員から二問、質問がございました。
最初に、義務教育費国庫負担金の税源移譲に伴う地方財政措置についてお尋ねがございました。
今回の三位一体の改革におけます義務教育費国庫負担金の税源移譲につきましては、国庫負担金の削減総額八千五百億円については、同額を地方税への移譲で手当てをいたします。次に、団体ごとに生ずる国庫負担金の削減額と税源移譲額との差額については、地方交付税によって確実に調整することとしております。
近年、地方財政計画の歳出抑制の結果として地方交付税が抑制されてきた経緯は確かにございます。しかし、法令で教職員配置等の基準が示されている義務教育教職員の給与費は、適切に地方財政計画に計上して必要な一般財源を確保しております。こうした枠組みを踏まえまして、今後も地方団体の財政運営に支障がないようにしてまいります。
次に、学校施設の耐震補強に係る地方財政措置についてお尋ねがございました。
総務省といたしましても、学校施設の耐震化は極めて重要な政策課題であり、その推進が急がれているというふうに認識をしております。
耐震補強に係る地方財政による支援につきましては、これまでも危険改築事業に対する地方財政措置によって対処してきたところでございます。さらに、現在国会において審議中の地震防災対策特別措置法の改正も踏まえまして、我々としても適切に対応してまいりたいというふうに考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/6
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007・扇千景
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116415254X00920060322/7
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