1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成十九年十二月十三日(木曜日)
午前十時開会
─────────────
委員の異動
十二月十二日
辞任 補欠選任
榛葉賀津也君 藤末 健三君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 高嶋 良充君
理 事
加藤 敏幸君
那谷屋正義君
内藤 正光君
河合 常則君
末松 信介君
委 員
梅村 聡君
加賀谷 健君
行田 邦子君
武内 則男君
外山 斎君
長谷川憲正君
藤末 健三君
吉川 沙織君
礒崎 陽輔君
岸 信夫君
世耕 弘成君
二之湯 智君
溝手 顕正君
吉村剛太郎君
魚住裕一郎君
弘友 和夫君
山下 芳生君
又市 征治君
事務局側
常任委員会専門
員 高山 達郎君
参考人
社団法人日本民
間放送連盟副会
長
北海道文化放送
株式会社代表取
締役社長 上澤 孝二君
放送倫理・番組
向上機構放送倫
理検証委員会委
員長 川端 和治君
上智大学文学部
新聞学科教授 音 好宏君
─────────────
本日の会議に付した案件
○放送法等の一部を改正する法律案(第百六十六
回国会内閣提出、第百六十八回国会衆議院送付
)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/0
-
001・高嶋良充
○委員長(高嶋良充君) ただいまから総務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日、榛葉賀津也君が委員を辞任され、その補欠として藤末健三君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/1
-
002・高嶋良充
○委員長(高嶋良充君) 放送法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査に関し、参考人の方々から御意見を賜ることといたしております。
参考人の方々を御紹介いたします。
社団法人日本民間放送連盟副会長・北海道文化放送株式会社代表取締役社長上澤孝二君、放送倫理・番組向上機構放送倫理検証委員会委員長川端和治君及び上智大学文学部新聞学科教授音好宏君、以上の方々でございます。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見をいただきまして、本案の審査に反映をさせてまいりたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日の議事の進め方について御説明いたします。
まず、参考人の皆様からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。
なお、参考人の皆様及び質疑者の発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず上澤参考人からお願いをいたします。上澤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/2
-
003・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 日本民間放送連盟の副会長を務めております北海道文化放送社長の上澤と申します。
本日は、私ども放送事業者に直接かかわりのあります放送法改正案の審議に際しまして、発言の機会をいただいたことに感謝申し上げます。
私は、地方テレビ局選出の民放連副会長という立場にもありますので、本日は、特にデジタル放送計画を進めております地方テレビ局の実情を北海道の事例を中心に御説明申し上げます。その上で、このたびの放送法改正案の中で地方テレビ局とかかわりがあります持ち株会社制度の導入について基本的な考え方を申し上げ、法案御審議のために参考人としての務めを果たしたいと考えております。
初めに、私ども地方テレビ局の役割といったことについて申し上げたいと思いますが、元々放送法は、全国放送は公共放送としてのNHK、地方放送は民間放送という精神から成り立っているものと理解しております。したがいまして、私どもローカルテレビ局の存在意義と大きな使命は、地域の視聴者の皆さんの日々の生活のお役に立つ地域メディアとしての役割を果たすことであります。現在進めておりますデジタル放送計画は地域にとりまして新しい情報インフラの整備でありまして、地域に情報格差を生じさせないためにも、私ども放送事業者にはこの計画を完成させる大事な使命があります。
しかし、二〇一一年アナログ停波という限られた期間の計画であることもありまして、私ども北海道地区はもちろんでございますが、デジタル化の設備投資によって過重な経営負担を強いられているローカル局が少なくありません。そこで、せっかくのデジタル化計画のために、一方で番組制作努力などローカル局本来の仕事がないがしろにされてはならないわけでありまして、限られた経営資源の中で各ローカル局ともこの点で大いに苦心しているところであります。
このたびの放送法改正案の認定持ち株会社の導入は、こうした地方局の事情も踏まえまして盛り込まれたものと理解いたします。この制度が今後どのように活用されるのか、私は具体的な予測を持ち合わせておりませんが、現時点での私の意見としては、この制度の導入は民放経営の今後の選択肢を広げるものとして基本的に賛成であります。しかし、導入に当たっては、ローカル局の自主性、独自性の確保が何としても大事であります。
以上が私の基本的な考え方であります。
ここで、デジタル化の取組について、私ども北海道の事例を御説明申し上げたいと思います。
北海道では、西暦五〇年代後半に二つの民放局が相次いでテレビ放送を開始いたしまして、その後、六〇年代から八〇年代にかけまして私ども北海道文化放送を含む三つのUHF局が開局しました。現在、NHKとともに五つの民放局が放送を行っております。
御承知のように、北海道は国土の二二%を占めます広大なエリアをカバーしております。私ども民放各社は、それぞれ百六十か所以上の中継局を備えております。この中継局の数は他府県に比べて圧倒的に多いものでありますが、広いエリアに加えて人口が散在しているという地理的条件の下で、また開局当時の脆弱な経営基盤との闘いの中で中継局建設は進められました。こうした事情も背景にありまして、北海道では過疎地域の中継局建設は放送局だけの力で間に合わず、小規模中継局の一部は自治体が所有者となるなど、北海道独自の方式が取られてきました。現在のアナログ放送の送信体制は、こうして半世紀前から長い時間を掛けて構築されたものであります。
そこで、目下のデジタル化計画でありますが、私ども民放連が今年九月に集約しましたテレビ全社のデジタル化設備投資額調査によりますと、全百二十七社の全国のデジタル投資額は一兆円余に上ります。このうち、東阪名の広域局を除くローカル局の一社当たりの平均投資額は五十四億円であります。これに対して、北海道の民放五社の一社当たりの設備投資額は平均百十六億円と、他府県の二倍強の投資額であります。
アナログ放送と同等の世帯カバー率を新しい体制で実現するためには現状並みの中継局建設が必須課題でありますが、短い短期の集中投資体制は北海道の民放各社に経営努力を超える大きな負担を強いるものとなっております。
実際に、道内民放五社の今年の三月決算は各社とも経常利益が前期比率で二けた減益となり、二社が純損益で赤字に転落しました。これは、デジタル化投資に伴う減価償却費用の計上が本格化する一方で広告収入が昨今低迷していることを反映したものでありますが、各社とも中継局建設が追い込みに入るこれから数年は、こうした赤字構造を抱えて一段と厳しい経営を迫られる状態にあります。
しかし、こうした困難な条件下にありましても、北海道の民放五社は中継局の共同建設など協力体制を組みまして、全百六十余りの中継局のうち主要な六十二局を自力で建設し、世帯カバー率九八・六%達成まで計画を立てて作業を進めております。そして、残る百余りの過疎地域の小規模な送信設備、対象世帯にして三万世帯でありますが、この建設についてただいま国の支援を求めているところであります。
地方のテレビ局の役割は、冒頭でも述べましたように、地域のメディア企業として放送を通じまして、またスポーツや文化事業などの取組を通しまして、地域の生活、文化、福祉や経済の発展に貢献することであります。さらに、災害報道や生活情報を届ける地域のライフライン機能を不断に発揮することであります。こうした立場を踏まえて、北海道の民放各社は自主的な地域向けの番組制作に日々努力しております。
ローカル局はキー局の番組を流しておればいいということであれば、今や衛星放送など代替のメディアは、媒体は幾らでもありまして、ローカル局の意義はありません。キー局を中心とする系列局の協力体制は全国をカバーするネット放送や取材・制作網などの確保の上で欠かせないものでありますが、同時に、地域メディアとして独自の仕事ができないようでは地方放送局の存在理由はございません。そのような気持ちで仕事をしております。
広告収入が低迷して収益状況が厳しくなり、デジタル設備投資の負担増が響いて、私どもは今番組制作予算の再検討を迫られる状況にもありますが、しかし、デジタル化を進めると同時に、地方局としての情報発信力の維持発展のために決意を新たにしているところであります。
以上、地方局の現在の立場を申し上げました。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/3
-
004・高嶋良充
○委員長(高嶋良充君) ありがとうございました。
次に、川端参考人にお願いをいたします。川端参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/4
-
005・川端和治
○参考人(川端和治君) 本日は、発言の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
私は、放送倫理・番組向上機構、BPOの放送倫理検証委員会で委員長を務めております弁護士の川端和治です。
本日、審議の対象となっております放送法改正案には、当初、虚偽放送が行われ国民の経済や生活に悪影響を及ぼした場合、その放送局に対して総務大臣が再発防止計画の策定と提出を求めることができる旨の条項が入っておりましたが、与党と民主党において修正協議がなされて同条項が削除されたと伺っております。この条項は放送の内容について政府に一定の規制権限を与えるものでありましたので、私自身といたしましても、表現の自由、言論の自由との関係で問題があると考えざるを得ませんでした。したがいまして、しかるべき修正が行われたことにつきましては、思想、表現と言論の自由の保障という意味で安堵いたしますとともに、国会がお示しになった高い御見識に深甚の敬意を表明させていただきたいと存じます。
さらに、衆議院においては、同条項を削除するに当たりまして、BPO、特に放送倫理検証委員会による効果的な活動などの取組に期待が表明され、その趣旨の附帯決議もなされたと伺っております。誠にこの修正によって放送倫理検証委員会といたしましても一層重い責任を担うことになったものと改めて痛感しております。
言うまでもなく、思想、表現と言論の自由は、本来、思想、表現の自由市場の中で優劣が競われ、その結果として取捨選択が行われ、誤りが正されていくべきものであります。しかしながら、どのような市場におきましても、そこにおける競争は市場のルールに従って行われなければなりません。特に放送の場合、電波という公共財が使用されるため、そのルールは放送法が大枠を決めており、また自主的に定められた放送倫理基本綱領などの放送倫理が更に具体的な自主的、自律的ルールとなっているものと理解しております。
放送倫理検証委員会の果たすべき役割は、公平な第三者として、この市場のルールについて放送事業者の自覚を促し、ルールの侵犯があったときには見解や勧告の表明によって自主的に逸脱行為の是正を図るところにあります。
ここで、既に御承知のことかもしれませんが、BPOと放送倫理検証委員会の仕組みについて概略を御説明させていただきます。
BPOは、今から四年前の二〇〇三年にそれまでにあった二つの組織を統合して設立されました。BPOには、放送倫理検証委員会以外に、放送と人権委員会、BRCと、放送と青少年に関する委員会の二つの委員会がございます。放送と人権委員会と青少年に関する委員会は、それぞれ、放送による人権侵害からの被害者の救済、テレビの青少年への影響についての検討と提言を行うことを目的とした委員会です。
これに対して、放送倫理検証委員会、以下委員会と略称させていただきたいと思いますけれども、放送倫理検証委員会は、放送界の第三者機関として、放送番組全般に関する審議を行うとともに、虚偽放送事案については審理を行い、放送倫理の向上を目指すということを目的といたしております。すなわち、虚偽の疑いがある番組が放送されたことにより視聴者に著しい誤解を与えた疑いがあると委員会が判断した場合には、委員会は審理に入り、放送内容に虚偽があるかどうか、視聴者に著しい誤解を与えたかどうかを調査し、議論することになっております。一方、番組に放送倫理上の問題があるが虚偽放送とは言えないとされたときには審議に入り、放送倫理と番組の質の向上のために、取材、制作の在り方や番組内容の問題について議論することになるわけです。
なお、審理に入る要件としての虚偽の疑いとは真実に反する放送がなされた疑いのことでありますけれども、もちろん絶対的な真理は神のみぞ知るところでありますので、ここでは、放送内容が信じるに足る証拠で裏付けられているかどうか、取材内容を意図的にゆがめていないかどうか、あるいは不注意な誤りによって取材内容とは異なった放送をしていないかなどを審理することになるわけであります。
審理を行った場合には、委員会は見解又は勧告を出すことになっております。そして、委員会は、勧告又は見解の中で、当該放送事業者に対し、再発防止計画の提出を求め、その実施状況の報告も受けることもできることになっております。各放送局とBPOの間では合意書が締結されておりまして、委員会の調査に協力するだけでなく、放送倫理検証委員会の勧告や見解を遵守することも約束されております。
委員会がこれまでに審理した案件は、TBS「みのもんたの朝ズバッ!」における不二家関連の二番組に関するものです。本日お手元に見解本文をお配りいたしました。これをごらんいただければ、当委員会が本件について真剣かつ詳細な検討を行ったことが御理解いただけると思います。調査についても、TBSから資料の提供を受けるとともに、取材、制作の当事者への長時間にわたるヒアリング、取材ビデオの視聴などを行い、番組の制作の仕組みや発言の信憑性について確認を行っております。
委員会はこの見解におきまして、一月に放送された番組の問題点について、一、取材調査上の問題点、二、内部告発VTR編集上の問題点、三、スタジオ演出上の問題点の三点に分けて指摘いたしました。さらに、四月十八日のおわび放送番組の不十分さも指摘しています。結論では、TBSの番組制作体制の欠陥を厳しく指摘した上で、番組はもっとちゃんと作るべきだという委員会の総意を結びといたしております。
これまでに審理に入った案件はこの一件だけですが、この半年間で個別の番組について十件ほど、当該局に対して番組の録音ビデオの提供を含む調査を行ったり、自主的に御報告していただいたケースがございます。これらについては審議をいたしましたけれども、審理するまでの案件ではないと判断しております。
なお、審議であっても意見を公表することができる規定になっておりますので、虚偽放送事案以外でも放送倫理上で重大な問題がある番組があった場合には、委員会としての意見を明らかにしていきたいと考えております。
表現の自由、言論の自由は民主主義社会の根幹そのものであり、それを守ることは極めて重要であります。しかしながら、一方、放送は電波という限られた公共財を使用して行われるものであり、また直接お茶の間に届き、五感に訴えることによって極めて強力な影響力を発揮するものですから、必要にして最小限のルールに従うことが求められます。このルールの遵守は各表現者が自主的かつ自律的に行うことが理想であり、万一逸脱行為があったときにも、その是正はまず放送の世界の中で自主的かつ自律的に行われるべきものであります。すなわち、放送で生じた問題については放送の中で解決されるべきであり、また放送事業者が自らを律することによって社会に対する責任を取らなければなりません。
冒頭に申し上げましたとおり、放送倫理検証委員会の活動は、放送事業者と一般社会の間に立って、表現する者が自主的、自律的に責任を取ることができるようその自覚と反省を促すとともに、適正な放送の在り方について専門性を持った第三者としての見解を明らかにしたり、一定の勧告をしたりするものです。その意義は、このような活動により公的権力によって表現の自由が、表現の内容が規制されることを避けながら、適正な放送を実現する一つの力となることにあると考えております。放送事業者に対しましては各社との合意により強力な権限を与えられております委員会ではありますけれども、放送法の基本理念であります放送の自律を踏まえながら、社会の期待にこたえる活動をしていきたいと考えております。
以上、概略のみ御説明いたしました。あとは委員の皆様の質疑に応じてお答えしていきたいと思います。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/5
-
006・高嶋良充
○委員長(高嶋良充君) ありがとうございました。
それでは最後に、音参考人にお願いをいたします。音参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/6
-
007・音好宏
○参考人(音好宏君) 上智大学の音でございます。よろしくお願いいたします。
私、マスメディア論を研究している立場で、今回の放送法の改正の論議に関しまして考えておりますことを幾つかポイントを絞って意見を述べさせていただければと思います。今回の放送法の改正に関しては幾つか論点がございますけれども、私、お手元に幾つかポイントのみを書かせていただきました。それに沿いましてお話をさせていただきます。
まずは、今の放送サービスに関しましてでございますけれども、その環境というものは非常に変化をしております。特に、二〇一一年の地上波、BSの完全デジタル化、全国ブロードバンド化に向けて、正に次世代の情報社会をデザインする正念場というふうに認識をしております。その意味では、制度整備を早急に進めるべきときにあるというふうに考えております。この四月に放送法の改正案が出されてから半年余り審議が止まっているという状況がございましたけれども、この時期に改正に向けて大きく動いたことに関しまして関係者の方々に敬意を払うものでございます。
また、その中での議論におきまして幾つか論点が出ておるかと思うんですが、そのことに関しまして私の日ごろ考えていることをポイントを絞って述べさせていただきます。
まず第一点目は、NHKに関する改正につきましてでございます。NHKのガバナンス強化と経営委員会の在り方についてまず述べさせていただきます。
今回のNHKのガバナンス強化を目指した改革といいますのは、御存じのとおり二〇〇四年夏に発覚をいたしましたNHKの不祥事に端を発するもので、その中で経営委員会の監督機能を強化する、それによってNHKのガバナンス強化を図ろうという趣旨と理解をしております。歴史的に見ましても、NHKの経営委員会は会長以下執行部のやや承認機関といった色彩が強かったことも確かというふうに感じております。放送法に関する論議におきましても、一九五九年、昭和三十四年の放送法改正に当たって論議がされた程度でございまして、経営委員会の在り方に関しての論議というのは放送法を研究する立場としましても非常に少ないというふうに認識をしております。
放送法上、執行部の長でありますNHKの会長は非常に大きな権限を有している形になっております。その会長以下執行部を監督するのが経営委員会ということですが、そこで改めて確認しなくてはならないのは、経営委員会は国民の代表としてNHK執行部をチェックをしているということでございます。だからこそ、その任命に当たっては国会の承認を経てということになっているわけでございます。とすれば、経営委員会で何が論議されているかにつきましては常に広く国民に知らせる必要がある、またどのような形で経営委員が選任されているのか、その透明性が求められているというふうに私は認識をしております。
現行の制度運用におきまして、経営委員会の選任に関しましては国民から見えにくい部分が多いようにも感じております。経営委員会委員長の選任は経営委員会の委員の互選によって選ばれているのに、この人は経営委員長含みで経営委員に選ばれたですとか、その理由は総理大臣に近い人だからといったことが新聞などで報じられていることがございます。国民の代表であるということからすれば、その選任過程はより透明性が求められるべきだというふうに考えます。
特に今回の改正案では、常勤の経営委員が置かれるとされております。とすれば、当然、非常勤のみであったこれまでの経営委員とは異なり、常勤で経営委員のできることが事前要件になるであろうということが考えられ、その上で選任されることにならざるを得ないというふうに認識をいたします。加えて、常勤の経営委員と非常勤の経営委員とでは、常勤の経営委員の方が日ごろからNHK内部にいる分、当然NHKに関する知識量もより多く持つことになるでしょう。そこでは経営委員会での発言力の差も付いてくるというようなことが容易に予想されます。であるからこそ、その選任過程につきましての透明性が求められますし、また経営委員会での論議が広く国民に分かるように公開されるべきだと考えます。
経営委員会で何が論議されたのかに関してNHKのホームページで公開されるようになったことは、以前よりもよりアクセスが容易にはなりましたが、とはいいましても、現在の議事録では、経営委員のみの打合せという部分についてはその内容が公開されていません。国民の代表であるならば、まず国民にその論議を広く伝えるべきではないかと考えます。言い換えれば、経営委員会の強化というのが今回議論をされておるわけですけれども、その透明性とセットでなされるべきなのではないのかというふうに考えます。
引き続きまして、国際放送の命令放送の制度に関しましてでございますけれども、昨年六月の政府・与党合意を受けて総務省でなされた国際放送の論議に私も参加をいたしました。国際放送の強化に関しましては、諸外国、特に東アジア諸国の情報発信力の高まりなどを受け、その要請の声が高まったと聞いております。海外に向けた日本の発信力が強化されることは良いことだというふうに私も思います。ただし、注意しなければならないのは、その発信の仕方でございます。
日本は幸運にもアジアの中で比較的早く近代化が進み、また曲がりなりにも民主的な政治体制が構築されている国です。アジア諸国の中にはいまだ民主化の遅れている国があることもまた確かでございます。そのような同じアジアにあって、日本から発信されている国際放送は民主国家にふさわしい放送であるべきだというふうに考えます。政府にとって都合の良いことも悪いことも、日本国民にとって恥ずかしい出来事も隠さず客観的に報ずるメディアであるべきだというふうに考えます。そのようなメディアを持っていることこそが誇りなのだというふうに考えるべきだと思います。その意味におきまして、今回の改正案において、命令放送制度を取りやめ、要請放送制度にすることはメディア研究者としても支持するところでございます。
次に、認定持ち株会社制度の導入に関しましてでございます。
今回の認定持ち株会社制度の導入に関しましては、放送のデジタル化に向けた設備投資などにより、特にその経営基盤が脆弱な地方民放局でその経営が大きく揺らぐことが懸念されたということによってなされたことは御存じのとおりでございます。具体的には、ネットワークによる資本関係を強化することで相互補完により地方民放局の経営を強化しよう。言い換えれば、地方民放局の経営の下支えをするための方策としての認定持ち株制度というふうに私は認識をしております。
しかし、当然のことながら、それにより放送の多様性がどの程度担保されるのか。特に地方文化の放送サービスがどの程度担保されるのかが重要になってくるわけでございます。特に戦後のテレビネットワークが発達する過程で、在京キー局と新聞全国紙との資本関係が整理、強化されていった歴史がございます。在京五局の社長の半数以上が全国紙出身であるということを見ても分かるとおりでございます。
日本の放送におけるクロスオーナーシップに関しましては、マスメディア集中排除原則によりまして三事業支配の禁止などが定められております。しかしながら、日本のメディアの歴史的な発展過程の中で新聞資本が常に新たなメディアサービスの開拓をしてきたという歴史的な経緯もあり、新聞資本との新しいメディアとの関係ということに関しましては、先進諸国と比べてもやや緩やかであるというふうにしばしば指摘されるところでございます。
ローカル民放局の経営基盤を強化するために立て直しをするため、今回の認定持ち株制度を導入することは、取りも直さず、ローカル放送局の経営基盤を強化することにより、それぞれの地方文化の発展がなされることが求められるわけでございます。そのことは、ひいては多様で豊かな日本の放送文化の発展につながることが期待されるわけですけれども、そのことのために、今回の認定持ち株会社制度の導入によって全国のローカル放送局の系列化が強化されるというのではなく、また放送の多様性が損なわれるということがないように、運用に当たっては十分な配慮がなされるべきだというふうに考えます。
ちなみに、このような論議は先進諸国でも度々行われております。デジタル化など放送技術の発達により多メディア多チャンネル化が実現したので、多様性が担保されているのだから所有規制を緩和してもよいというような議論でございます。
ただし、このような議論は、えてして産業政策的な論議と連動しているケースが多く見られます。そのようなこともありまして、近年、この多元性に関しましては科学的な指標により検討がなされるケースが多うございます。
例えば、米国におきましては、二〇〇三年にFCC、連邦通信委員会によって、科学的な指標としてどのぐらい多元性が担保されているのかということを示すダイバーシティー・インデックスの研究を発表し、それに基づいてFCCは所有規制の緩和を図ろうとしました。ただし、米国の場合はこのダイバーシティー・インデックスの有効性が問題となり、市民団体などがFCC、放送局を訴え、その所有規制の緩和政策の妥当に関して裁判で争われ、結果的にFCCが負けるというような事例もございました。
私が注目をいたしますのは、多元性がどのぐらい担保されているのかを科学的なデータを基に説得力のある説明が求められているということでございます。多元性が担保されているのだからといって多様性が担保されているのかというと、そこには若干問題がございます。この点に関しましては、後ほど、もし御質問がございましたらもう少し詳しく申し上げようかと思います。
ただ、いずれにいたしましても、日本においても放送の多様性がどれだけ担保されているのかを科学的に測定し、説明できるデータ、指標が求められているのではないかというふうに考えられます。
私事で恐縮でございますが、このような研究開発はメディア研究者の中では随分議論がされているところでございます。私も昨年度、放送文化基金より研究助成をいただき、放送の多様性に関する研究を行い、放送の多様性に関する指標化の試みを行ったことがございます。今後、BS、CS、ケーブルテレビなど多メディア状況になる中で、その多メディア状況に対応した指標づくりというものを日本でも検討し、それが政策に反映されていくような状況がなされるべきなのではないのかというふうに思います。
最後に、再発防止計画の提出を求める制度についてコメントを述べさせていただきます。
お聞き及びの方も多いかと思いますけれども、この一月に発覚をいたしました「発掘!あるある大事典Ⅱ」のデータ捏造問題に関しましては、私も外部調査委員会のメンバーの一人として参加をいたしました。その後の再生委員会のメンバーとして、原因究明、再発防止、その後の関西テレビの再生に向けた提案などにも深くかかわった経緯がございます。
今回、政府案として提出されました、行政が再発防止計画の提出を求めるに係る制度に関しましては、言論・表現機関である放送局の独立性を損なう危険性をはらむものと見ておりました。この案が浮上した際、正直、政治的なパフォーマンスのにおいすら感じました。その意味におきましては、今回修正案としてこの制度を設ける案が削除されたことを支持するものでございます。
ただ、この春にこの制度の導入の論議としてBPOが強化がなされたわけですが、先ほど川端先生の方からもその辺り御紹介をされましたけれども、この第三者機関としてのBPOの活躍に関しましては私は非常に評価をしておるところでございます。ただ、「あるある」の調査に実際にかかわった者としては、若干このところの議論に関して疑問を持っているところもございます。
放送メディアにはそれぞれの事情があり、その状況を十分に把握し、かつ、その中で健全な放送サービスの在り方を視聴者とともに模索してこそ豊かな放送サービスは発展していくものだというふうに考えます。その意味におきまして、CS放送ですとかケーブルテレビですとかというものも含めてBPOの守備範囲に含めるべきとの御論議があると聞いておりますが、その辺りの部分に関しましては十分に議論をする必要があるのではないのかなというふうに私は認識をしております。
特に、今BPOに関しましては東京にございます。先ほど御案内の関西テレビの例で申し上げますと、関西にある放送局のことでございました。やはりどうしても地域によって少し事情が違うなどというようなことと同様に、ただ、地上放送に関しましてはBPOさんの活躍を非常に私は頼もしく思ったのですけれども、これがCS、ケーブル等々他のメディアに関しても展開をするというふうなことになることに関しては、若干大丈夫かなというふうに思うところもあるものでございます。やや厳しい言い方を申し上げれば、放送監督機関のやや下請になってしまう危険性はないのかというふうに研究者として思うものでございます。
最後に、まとめになりますけれども、先ほど述べましたとおり、今は放送の将来を設計する非常に重要な時期だというふうに考えております。国民にとって豊かでかつ健全な放送サービスが実現されるために、国民の代表が集まる国会の場において十分な検討を行っていただければと存じます。
以上でございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/7
-
008・高嶋良充
○委員長(高嶋良充君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/8
-
009・藤末健三
○藤末健三君 民主党・新緑風会・日本の藤末健三でございます。
私は本来は経済産業委員会のメンバーではございますが、本日は民主党の放送法研究チームのメンバーとして質問させていただきます。
まず、三人の、上澤先生、川端先生、音先生、本当に意見陳述ありがとうございました。
私がまずお話お聞きしたいのは、音先生にお聞きしたい点がございます。
音先生の方から放送の多様性の議論をいただいたわけでございますが、今の我が国の地域の放送の多様性というものを見ますと、先生がおっしゃいました三事業の支配禁止というのがございます。この三事業の支配禁止はどのように決まっているかということを私いろいろ調べてみますと、まず省令というレベルで、放送局の開設の根本的基準という省令で決まっていると。これは総務省が独自に決めることができる基準になっているということと、そしてもう一つございますのは、同一地域におけるテレビとそしてAMラジオを特定の新聞などが支配しちゃいけないと、一〇%を超える出資をしちゃいけないという基準になっているわけでございますけれど、このような地域における様々な多様なメディアを一つの資本が支配しちゃいけないというような事業規制について、ちょっと先生にもうちょっと深くお教えいただければと思います。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/9
-
010・音好宏
○参考人(音好宏君) 音でございます。
今の先生の御指摘でございますけれども、これは諸外国を見てみましても、メディア資本の集中というものに関しては様々な形で規制をされているというのが実態でございます。もちろんのこと、その目的といいますのは多元的なメディアサービスというものが維持されることによって多様な意見が出るようにということでなされているものでございます。
近年、先ほど私ちょっと御紹介をさせていただきましたけれども、新しいメディア技術の発達によりまして様々な放送メディアですとか活字系のメディアですとか通信系のメディアというものが出てくる中で、その所有の緩和というものが特に先進各国で議論をされておるところでございますが、つまり緩やかにはだんだんなりつつはございますが、常にここでは、正に三事業支配の禁止にございますように、集中をどこまで許していいのかというのはそれぞれの国で大きく議論をされているところでございます。
私が先ほど、それを一つの指標化、科学的な指標に基づいてそれをしっかり議論すべきなのではないのか、例えば米国などではそういうことがなされておるというふうに申し上げましたのは正にその点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/10
-
011・藤末健三
○藤末健三君 今の日本のこの基準、三事業支配の禁止の規制でございますけれども、細かい内容を申し上げますと、ある地方の新聞社が、例えばテレビの一〇%を超えて出資しちゃいけない、同時にAMラジオに対して一〇%を超して支配しちゃいけないと。
今、非常に、この基準自体がもう昭和二十年代に定められ、テレビの基準も三十年代に作られたと思うので、非常に古い時代に定められた基準でございますが、例えば私がお聞きしたいのは、新聞社がAMラジオを支配しなければテレビは幾らでも出資できるような今仕組みになっていますよね、これ。このような規制が国際的に見て私はちょっと異常じゃないかと感じているんですけれども、その点、先生いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/11
-
012・音好宏
○参考人(音好宏君) 済みません、私が特に研究領域としておりますエリアが米国が多いものですから、また米国の例を申し上げさせていただきますと、例えば米国の例ですと、ラジオ放送に関しましては、比較的マーケットパワーが弱くなったこともありまして緩和というものが早く進みました。逆にテレビと新聞に関しましては、社会的影響力が大きいということで、メディアとしてのマーケットパワーがあるということで、ここに関しての複数所有というものに関しては厳しい規制がなされて、それがこのところの多メディア多チャンネル化の中でやや緩やかになってきているということでございます。つまり、その時代又はその社会のメディアのポジショニングということを十分検討しながら規制というものがなされているというのが米国の事例でございます。
これは、今具体的に米国の事例を申し上げましたけれども、ヨーロッパの先進諸国におきましても同様な検討、議論がなされているというふうに考えていただいて結構かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/12
-
013・藤末健三
○藤末健三君 先生のちょっと御意見をお聞きしたいのは、今この基準はAMラジオを支配しなければ新聞社は幾らでもテレビに出資できると。
今、地方の状況を見ますと、地域で地方の新聞が大体過半数を占め、かつ放送局も二つしかないと、民放は、というような事例がございますけれども、AMラジオ放送に出資しなければ新聞社はテレビに関してどんどん出資をできるよというような基準はちょっとどういうふうにお考えですか。私はおかしいんじゃないかとちょっと思っているんですけれども、先生の御見解を明確に伺えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/13
-
014・音好宏
○参考人(音好宏君) これは非常に難しい問題ではございますけれども。私、名前が非常にラジオ的な名前なものですから、ラジオに非常にシンパシーを感じておるのですが、例えば災害のときなどにラジオの媒体価値というものは非常に大事であるということはしばしば言われるところでございます。先ほどアメリカの事例でラジオは比較的早く規制緩和がなされましたよということを申し上げましたけれども、本当にラジオの価値というものがアメリカでなされたような形で緩和されていっていいのかどうなのか、これは私、非常に検討する必要があるのではないのかなというふうに思います。
今先生の御指摘は、恐らく、言葉は悪いですけれどもラジオを捨てることによってフリーハンドになるメディア資本が出てくるのではないのかと、そのことを危惧されていらっしゃるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、私も、そのような形で日本の場合ラジオというものが切り捨てられていくというようなことが起こってはなかなかいけないのではないのかなというふうに思います。
アメリカとの比較で申し上げますと、アメリカでは正にラジオの規制緩和がされる中で非常に多チャンネルのラジオというものが出てまいりました。数人でしか放送局をやっていないというようなラジオ局が圧倒的に多いわけですけれども、日本の場合、その意味でいいますとAMラジオ局は相当人数を掛け、ニュース等も割としっかりとやっている。その意味では日本の社会に合った形のラジオの在り方、それに連なる形での三事業の関係性というものが論議されるべきなのではないのかなというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/14
-
015・藤末健三
○藤末健三君 それともう一つお聞きしたいのは、この三事業の支配規制が、日本の場合は省令という総務省が定められる規則でやられているわけでございますが、アメリカとかあとヨーロッパの例を見ますと、アメリカは連邦法とあと州法で規制しているという状況でございまして、放送とかメディアの規制という非常に重要なものが省令というレベル、行政機関が独自に決めるレベルで定められていることについては、先生の見解をちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/15
-
016・音好宏
○参考人(音好宏君) この点に関しましても、様々議論をするべきところだと思うんですけれども、正にメディアの多様性、メディアから提供されるサービスの多様性というものをどういうふうに考えていくのかということだと思います。
あるメディア研究者は、マスメディア集中排除原則というのはメディアの中における憲法のような存在なのであるというふうに非常に強くおっしゃる方もいらっしゃいます。憲法なのであるというふうにまで言っていいのかどうかというのは私はちょっと微妙なところもあると思いますけれども、少なくとも言論の多様性というものを担保するということにおいては十分な議論ができるような仕掛けというんでしょうか、そこは必要ではないのかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/16
-
017・藤末健三
○藤末健三君 私も、先生のおっしゃいますように、メディアというのは非常に大きな力を持っておりますので、きちんとした規制の在り方などは、行政府じゃなくて、もっと広く議論されるべきじゃないかと思います。
そして同時に、メディアの独占規制という話を先生からお聞きしますと、アメリカの事例を教えていただいたんですが、FTC、日本でいうと公正取引委員会みたいな一般産業やビジネスの独占状況を規制する組織が、アメリカでは例えばメディアなんかの独占状態を評価するという仕組みがあると聞いているんですが、その点についてもっと詳しく教えていただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/17
-
018・音好宏
○参考人(音好宏君) アメリカの場合は、先ほど私の報告の中で御紹介させていただきました連邦通信委員会というところが、FCCというところが放送、通信に関して所管をしておるわけですけれども、それとは別に、今先生から御指摘がありました連邦取引委員会、FTCも同様に放送に関して、又はメディアに関しての様々な活動に関して命令をしたりですとかというようなことがございます。
例えば、放送に関しましては、虚偽の内容を含む広告放送に関しての監視、規制なども行っておりますし、また、日本でもしばしば報じられるかと思いますけれども、巨大メディア資本の合併などに関して、それが市場において十分な競争がなされる状況を担保できるかどうかということに関してFTCの方から様々な意見が出されるというふうなこともございます。
その意味におきましては、FCCと並び称する形でFTCも放送に関して発言をしている、行政の仕掛けとして様々な形で関与しているというふうに言っていいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/18
-
019・藤末健三
○藤末健三君 音先生、どうもありがとうございました。やはり欧米との制度的な比較というのは、私はちょっとこの議論、放送法の議論で大事じゃないかと思っていますので、いろいろ勉強させていただき、ありがとうございました。
次に川端参考人に御質問をさせていただきたいと思います。
今日、川端参考人から御報告がございましたこの「みのもんたの朝ズバッ!」のレポートでございますが、こちらの方は、議事録を見ますと、衆議院の総務委員会の参考人質疑でも議論がございました。その中で、郷原参考人、この方はたしか弁護士の方だと思うんですが、郷原参考人の発言を見てみますと、カントリーマアムとチョコレートを誤解していたという担当ディレクターの証言はちょっとおかしいんじゃないかという御指摘がございまして、郷原参考人のちょっといろいろ話を見てみますと、捏造を疑われている放送事業者の言い分をそのまま何かうのみにしている傾向があるんではないかという指摘があったわけでございますが、その点について川端参考人からお話しいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/19
-
020・川端和治
○参考人(川端和治君) この「TBS「みのもんたの朝ズバッ!」 不二家関連の二番組に関する見解」というのを放送倫理検証委員会の見解として公にしておりますので、その内容について委員長個人として更にいろいろ申し上げることは適切でないかと思いますけれども、念のために、この見解は大変長いものですので、今の問題になっている点について委員会がどのような審理をしてどのような判断をした結果、郷原さんの指摘するような問題はないと考えたかということについては、この見解の十三ページの「(2)カントリーマアムとチョコレートの混同」というところで記載してあります。
ごくかいつまんで要約すれば、カントリーマアムに関する発言とチョコレートに関する発言が同趣旨のものがあったので、そのうちカントリーマアムに関する発言を担当ディレクターが同じチョコレートに関する発言と誤解して使ってしまったということであります。
もちろんTBS側の言い分をそのまま信頼して委員会の見解としたものでないということは、この審理の経過、どのような調査をしたかということも詳細にこの見解の中で述べておりますので、そのようなことはないということを御理解いただけるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/20
-
021・藤末健三
○藤末健三君 この「朝ズバッ」の見解もそうなんですけど、もう一つ川端参考人にお聞きしたいのは、川端参考人が朝日新聞の記事の中で、BPO検証委員会が公権力介入に対する防波堤的な位置付けであるという議論の中で、余り防波堤の役割を強調し過ぎると我々が総務省の下請検閲者になるおそれがあるというような感じのことを述べておられますが、私のちょっと個人的な見解を申し上げますと、やはりこのBPOは非常に重要な位置付けじゃないかと思っておりまして、そもそも第三者的な位置付けからチェックするという位置付けでございますので、厳しくチェックをしても、それが例えば総務省の下請とかいうことには僕はならないと思うんですが、この点についてちょっと何かコメントをいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/21
-
022・川端和治
○参考人(川端和治君) ただいま御指摘いただきましたとおり、BPO、私が委員長をしておりますその中での放送倫理検証委員会は、放送倫理に反する番組が放映されたときには、これを厳しくチェックして、見解を述べ、あるいは勧告を出すということを任務としております。そして、その任務を果たすことについて我々はいささかもちゅうちょすることはないということは申し上げたいと思います。
ただ、角を矯めて牛を殺すという言葉があります。余りにも重箱の隅をつつくような細かい番組に対する規制を行いますと、表現者が萎縮をしてしまうということが起こるのではないかと思います。これはもちろん、公権力によってそのような規制がされた場合と、第三者機関であり民間の立場にある我々が行った場合とは大きな違いがあると思いますけれども、しかし我々は、先ほど申し上げましたとおり、各放送局と合意書を取り交わし、各放送局から相当強大な権限を与えられている立場でもあります。そのような立場を余りにも使い過ぎると、それが放送局の中で実際に番組を制作されている方々、表現されている方々に萎縮効果を与えてしまうというおそれがあることはやはり否めないのではないかと思います。表現はあくまでも自由に生き生きとなされてこそ初めて価値があり力があるものであると私は認識しております。
そのような表現の自由をそぐような結果になるということのないよう、しかし一方でルールの逸脱は厳しく見守るというこのバランスを取りながら放送倫理検証委員会を運営していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/22
-
023・藤末健三
○藤末健三君 私もメディアの表現の自由というのは非常に重要だと思います。ただ、その表現の自由を守るためにもBPOの役割は非常に重要だと思いますので、是非、川端先生にあられましては、やはりきちっと捏造がもう二度と起きないような管理をお願いしたいと思います。
最後にお聞きしたいのは、上澤先生にちょっとお聞きしたいのは、先生の方から地域メディアのローカル局の独自性の確保は最優先事項であるという御説明をいただいたわけでございますが、具体的にこういうことをやるべきだということをちょっとあれば教えていただけないでしょうか。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/23
-
024・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 北海道の在札幌テレビ局で全国ニュースを追い掛けるということはあり得ませんで、ひたすら地域の日々の暮らしだとか出来事だとか、そういうものがこの地域の将来にとってどのような展開をしていくのかとか、日々生活している方々が一番興味のあることについて私どもは取材を展開しているわけです。
天下国家、世界についてもちろん取材に出向くこともありますが、何よりも大事なことは、北海道という限定された地域で放送免許をいただいている放送事業者として、その肝心の、足下の出来事についての情報インフラとしての役割が果たせなければこれは存在理由がないわけで、そういう意味で、すぐれて地域に生かされている放送局として日々仕事をしていると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/24
-
025・藤末健三
○藤末健三君 どうもありがとうございました。
私も地方出身でございますので、地方のテレビ局が流していただく地域のニュース、情報というのは非常に重要だと思いますので、是非とも上澤社長におかれては頑張っていただきたいと思います。
私のちょうど時間が来ましたんでこれで質問を終わらさせていただきますが、本当に今日は三人の参考人の方々、ありがとうございました。このメディア、やはり第四の権力、三権に次ぐ権力というものでございますので、皆様の方からいただいた御意見を参考にさせていただきこの放送法の審議をやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/25
-
026・末松信介
○末松信介君 自民党の末松です。
今日は、三人の先生方にいいお話を聞かせていただきまして、誠にありがとうございました。
最初に、北海道の上澤先生、地上波デジタルへの移行、二〇一一年ということで、非常に民放、かなりの投資が要るという話がありまして、全体的には我々一兆四百四十億円と、各社平均が五十四億円のお金が掛かるということは伺っておりまして、この問題につきましてはこの委員会でも、せんだっても世耕先生も質問されたんですけれども、大変大きな問題として取り上げております。と同時に、別に条件不利地域だけではなくて、都市部においても難視聴地域が出てくることが予想されまして、総務省の方にもいろんな申入れを行っているところでございます。
今日は、その話が後で出るかもしれませんけれども、先にお聞きをいろいろしていきたいことがございます。
放送というのは私すごいもんだなということを思うんですよね、とりわけテレビ放送というのは。せんだってというか、この七月の二十九日に参議院の選挙がありまして、私と同じ政党の丸山和也さんというのは、兵庫県の姫路市の奧にたつの市というのがあるんですけど、そこの御出身なんですよ。半日だけ姫路市に入ってこられて一緒に回りましたんですけれども、人通りの少ない商店街、人垣ができまして、写真を撮ってくれ撮ってくれということでびっくりしましたんですよ。もう百万票ぐらい出るんじゃないかと思ったんですけれども、二十七万票しか出なかったと。よく考えたら中学生、高校生がやっぱり集まってくるんですよね。だから、有権者、二十歳以上の方は少なかったということなんです。
それにしても、御本人の魅力もさることながら、あの「行列のできる法律相談所」という番組と、二十四時間テレビでマラソンされた姿というのはやはり焼き付いておるという、もうこのことはやっぱりすごいなということを思ったんです。
それともう一つ、日経新聞のコラムで、先ほど藤末先生からもみのもんたさんの話が出ましたんですけれども、日経新聞に「風見鶏」というコラムがありますけれども、これについていろんな、社説というか現代社会を切るようなお話が出ているわけなんですけれども、ここに、みのポリティクス時代となっているんですよね。
露出度の多さから見て、みの氏は今や最も影響のあるオピニオンリーダーであると。みの氏は話術の天才であると。赤坂の議員宿舎はけしからぬ、なぜなら家賃が安過ぎるからだと、この二段論法は強力だと言っているんですね。裁判官になって判決を下すような弊害もあるが、影響力という点であの番組が主戦場となっていると。政治とテレビとの関係を専門とする東大大学院助手の逢坂巌先生はみのポリティクスと名付けていると。「朝ズバッ」の研究を行っていると。単純な切り口で分かりやすいから、国民がどう見ているかという日々世論の調査の場となって、あそこで日々の相場観ができるというんですよね。
ですから、それほど大きな影響があるわけでございますので、私はみのさんのあの番組というのは、そういう点ではユーモラスでかつしっかりとした取材、と同時に慎重さが必要であるということなんですね。一つ間違ったら先ほどのお話のように不二家のような問題が起きてきて、大変なことになってしまうわけなんです。
そこで、最近、放送に関する不祥事というのが総務省から行政指導の件数の推移を見ますと、近年随分増加をしてきています。まあ多いといっても、年間六件ですよね、具体的な行政指導、厳重注意であるとかいうことにつきまして。これはやらせや捏造が多いわけなんですけれども、意図的に間違った映像が放送されますと、「あるある大事典」のように間違った情報を視聴者に与えたり、名指しされた企業や個人の名誉というのは著しく傷付けられるわけなんですね。
私は、このやらせの問題とか捏造というのはNHKより民放が圧倒的に多いと思うんですよ。その原因は、民放の視聴率万能主義と番組の制作の大部分を外注に頼っているというところに大きな問題点があると思っています。
放送局の視聴率が激化する中で、番組制作現場のプロデューサーあるいはディレクターあるいは制作スタッフというのは、視聴率がすべてという、そういう思いの可能性が強いと思うんですよ。営利企業として放送局がコストの削減をやらなきゃならないということで、プレッシャーを与えているということで。
関西テレビのときにもあの問題が起きましたよね、納豆の問題が。あれだって外注していますよね。外注して、孫請までやっていましたよね。そこが請けて、結局三日前に何か実際見て、そのまま流してしまったという。だから、本体そのものが十分なチェックをしていないということなんですけれども、しかしそこにはそういうコスト削減という、視聴率万能という、そういった一つの足かせがあるということなんですけれども、私はそういった背景というものをどのように解消していくのかということをお聞きをしたいわけなんですよ。解消しない限りは捏造とかやらせというのは絶対消えるわけがないんですよ。
この点について、最初に上澤参考人にお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/26
-
027・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 二つの問題を指摘されたかと思いますが、最初のテレビの影響の大きさといいますか、テレビの力といいますか、これについては、具体的な他局の番組について直接言及はし難いですが、物事を単純二分割して、あれかこれかと非常に分かりやすい形で、パネルを使いましてテレビで生活情報として提供すると。先生御指摘のとおり、そのような傾向が極めて強くなっていまして、確かに分かりやすいのでありますけれども、すべての物事にはニュアンスがありますので、そこから落ちこぼれる、大事な話がテレビから抜けちゃうと。最近とみにこの点についてのテレビ批判というのが識者の方から随分本、書物などでも指摘されております。
これは、私自身もふだんそのように感じていまして、できるだけ物事は、AかBかという形じゃなくて、Cもあるぞという話をきちっと取材した上で展開するということに努力しないと、見てくれだけのすばらしい視聴率を取っても悪い影響が残ると、こういう懸念を私も持っています。自戒しているところであります。
もう一つの視聴率を至上とするがための様々な不祥事、その構造的な問題としての下請、孫請の問題でございますけれども、今度の放送法改正の中に行政処分ということが盛り込まれるに至ったのも私ども民放の番組に起因することでありまして、私としては極めて残念に思いますし、とりわけ関西テレビは私ども同じ系列局でもありますし、北海道文化放送も放送責任もございましたので、これは極めて深刻に受け止めた次第です。
視聴率ですが、現場のテレビをつくる人たちは、これは御指摘のとおり、やっぱり視聴率、高い視聴率を目指して仕事をしています。そのために、その意欲がいい方向に出れば極めて大きな力を発揮する番組を作ることもできると思います。
残念ながら、しかし間々、視聴率を得んがためにフェアでないそういう手法が出てくるということも事実でございまして、この点に関しては日ごろ、社員、それから私どもにも関連会社の下請の仕組みがございますので、そこに働く人も含めて大いに自戒すべしと日々言っているところであります。具体的には、放送倫理についての研修等、これは本社の社員それから関連会社の社員、一緒にそういう講習をしているところであります。
下請について、具体的に、これは平成十六年に改正下請法というのが施行されまして放送の番組が新たに法律の規制対象になりましたけれども、その際民放連としては、公正取引委員会の協力を得まして丸一年掛けて法遵守のマニュアルを作成しまして各社に周知徹底方をお願いした経緯がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/27
-
028・末松信介
○末松信介君 先ほど関西テレビの件、孫請、下請というような話をしましたけれども、私、風聞で耳にしただけでありまして、私自身も間違ったことを言っちゃいけませんので、まあ風聞でありますから、今ちょっとお話を出させていただいただけでございます。
それで、ただ私、放送界に身を置く人間がおりまして、今回こういった問題について意見をいろいろ聞いたんですよ。今お聞きしたいのは、川端先生にお聞きしたいんですけれども、BPOによる放送不祥事の抑制効果について伺っていきたいんですけれども、彼はどう言うかといいましたら、政府が放送に介入する代わりに公平な民間の第三者機関がマスメディア各社の自浄作用に強い影響力を与える体制にすべきだという意見を持っていました。その意味で、今回の修正案で、BPOに期待して、政府から再発防止計画を求める改正規定を削除したということは評価できるというふうに言っております。同時に、BPOが問題のあった放送事例を審議するだけで、意見を伝えた後、各放送会社に対してその自浄作用にゆだねるだけでは十分な抑止力と再発防止力を引き出せるのかという懐疑的なことも実は語っていました。
それと、特に延べ数十分にわたって虚偽報道を繰り返したわけですよね。指摘を受けた末、不承不承、わずか数秒のおわびをしてうやむやにしてしまうというこの姿勢はひきょうであると言っているんですよ。絶対に改めるべきであると。同じ時間何らかの形でやっぱり謝罪の放送ぐらいするべきだというような、同じ対価を、代償を支払うべきであるという、謝罪として、そういう話も言っているんですよね。「あるある大事典」の問題で民放連からあそこは除名されたそうですけれども、随分苦労をされているということもある方はおっしゃっておられました。
私は、川端先生にお話ししたいのは、民放連は明文化した一定の、BPOが行った判定に対してですよ、民放連は明文化した一定の基準と罰則を設けて、その規定に従って厳格にペナルティーを放送局に科すということが必要だというふうに考えておりますんですけれども、この点についてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/28
-
029・川端和治
○参考人(川端和治君) まず、BPO、特に、放送倫理検証委員会が見解を発表するだけで自浄作用が担保されるのかどうかという御懸念でありますけれども、これは今まで一つの事例があるだけですけれども、TBSのその後取られた対応というのを見ますと、単に放送倫理検証委員会の見解を聞きおくというようなことではなくて、自ら自主的に厳しい反省をされて処分をなさったり、あるいは番組制作の体制について一定の改良をされたりしており、またそのことについて、放送倫理検証委員会に対してTBSの社長から報告がなされております。したがって、見解をただ出しているだけではなく、その後の各社の対応についても我々はきちんと関心を持って見守っており、それが不十分であれば更にこちらの見解をお伝えするということもあるのではないかというふうに考えております。そのような形で、民間の第三者である我々が行動することによって放送倫理の向上が図られるのではないかと思います。
また、民放におかれましては、放送倫理手帳というものがありますけれども、ここに載っている民放連放送基準というものがございます。これは相当詳細な基準でありまして、我々が放送倫理からの逸脱があるかどうかということを判断する際には、当然のことながらこれを参照させていただいております。その結果として、放送倫理の逸脱があるということになり、それが著しければ、先ほど御指摘になられましたとおり民放連で問題にするという形になっておりますので、そこには一つのつながりがあり、体制があるというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/29
-
030・末松信介
○末松信介君 今回、衆議院で修正される前の原案というのは、先生、政府から再発防止計画を求める改正規定を設けたのは、結局、電波法七十六条第一項による運用停止処分や同三項の免許取消処分という厳しい行政処分と、もう先生御存じの、警告との行政指導との間に余りの大きな開きがあると。これは前の総務大臣の菅さんも指摘があったわけですよね。ただ、表現の自由のこととか放送番組編集の自由のため、政府の介入をできるだけ避けて民間の自律機能に期待するということが大切であると、それを尊重していこうじゃないかということで今回の修正になったわけなんですけれども、私、今申し上げたのは、先生、ペナルティーということについて公平性もやっぱり欠けちゃいかぬということなんですよね。だからそれは、おっしゃったように、一定の基準と罰則というのはこのBPOの中の放送の倫理検証委員会の中でこれは作っていくということになるんですかね。今のお話で大体分かったんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/30
-
031・川端和治
○参考人(川端和治君) 放送倫理検証委員会は、事案を一つ一つ取り上げて、それに対して見解を明らかにし、あるいは勧告を行うという先例をつくることによって全体としての明確なルールが形成されていくということを期待しながら活動しております。したがいまして、放送倫理検証委員会が出した見解について各社がどのような対応をするべきかというようなことも、今回のTBSの例が一つの先例となって対応していただけるものだと思います。事案の重大性、深刻性にもよるでしょうけれども、更に大きな問題が起こったときにはより厳しい勧告あるいは再発防止計画の提出を求めることによって、またそれが公表され、各社もそれを放送しなければならないということになっておりますので、視聴者に伝えられることによって自浄作用が果たされていくものというふうに期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/31
-
032・末松信介
○末松信介君 次に川端先生にお聞きするんですけれども、放送倫理検証委員会のこの調査、審理の対象はどこまで入るのかということでありまして、衛星放送やケーブルテレビはこれは範疇に入ってくるのかどうかということをまずお尋ねをしたいのと、それと、衆議院の附帯決議には、政府がBPOの取組に資する環境整備について検討を行うことの事項が盛り込まれているんですが、自主規制機能を強化すべきだという論調を背景に、ある面では第二総務省あるいは総務省の下請化するおそれというのはあると思うんですよね。そういうことで、総務省との関係はどう考えているのかということをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/32
-
033・川端和治
○参考人(川端和治君) まず、放送倫理検証委員会が対象としております番組というのはあくまでも地上波の番組でありまして、CS等は含まれておりません。それについてこれからどうするかというようなことは、私は放送倫理検証委員会を代表して具体的な審理を行っている立場でありますから、発言する立場にないというふうに思います。
今後、放送倫理検証委員会がどのような活動をしていくかということについては、我々の方では、今回の修正案によって我々に対する役割が一層重要性を増したということを、また期待が増しているということを自覚しておりますので、それを見守っていただきたいというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/33
-
034・末松信介
○末松信介君 最後に、時間がなくなりまして、音先生にもう一言だけ。
いろいろとお聞きをしたかったんですけれども、ローカル局、地上波デジタルの対策に相当の金が掛かって苦しいと、今のこの認定放送持ち株会社制度の導入ということによって、ある面でこれは資本的には支えられる面が出てきますけれども、しかしキー局がローカル局を支配してしまうということがあってしまうと。これによっていろいろと、先ほど申し上げられたように、地域の文化とかそういったものが発信しにくくなるし、自社の制作ができなくなってくるということなんですけれども、この点について、改めてどういう方向で持っていくべきかということの先生のお考えだけ、もう一度ちょっと述べていただいて、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/34
-
035・音好宏
○参考人(音好宏君) 今回の新たな制度というものに関して、私は否定するものではございません。それは先ほど申し上げたとおりでございます。
研究者として地方民放局を調べている中で、やはり今回のデジタル化ということは相当厳しい経営に対するプレッシャーになっていることは間違いないかと思います。
もう片方で、今までの日本の民間放送は地元のやっぱり放送文化の担い手であったことも非常に間違いございませんでして、正に先ほどの上澤さんのお話にございましたとおり、地元と向き合ってどのような形で放送サービスをちゃんと提供していけるのかという、ある種の志というようなものが示されるかどうかということが非常に重要なのではないのかというふうに認識をしております。
その意味では、この制度の運用に関して十分に議員の方々も御議論をいただきまして、地元の放送局が自分たちの番組をうまく発信できるような、そういうような形にしていただければなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/35
-
036・末松信介
○末松信介君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/36
-
037・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。三人の参考人の先生方、御苦労さまでございます。
それでは早速質問をさせていただきますが、まず上澤参考人にお願いをしたいと思いますが、今日、参考意見は主にローカル性を維持しながらこの認定放送持ち株会社制度を中心にコメントをされたと思っておりますが、最近の不適正な事例を考えた場合、やはり各放送局の取組というのは非常に大きいと思っております。
事後の対応ではなくして、やはり本来は不適正な番組が放送されることがないようにしていく必要があろうかと思いますが、北海道文化放送としてこの放送倫理確立のために具体的にどのような取組をなされているのか。もちろん独自の番組もあるし、また「あるある」を、例えばこれはもう全国ネットですから、それを流してしまうというか、やはりきちっと事前にローカル局としてチェックして、これはおかしいねということもあっていいんだろうと思うんですね。そんなことを含めてコメントをいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/37
-
038・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 北海道文化放送として関西テレビのような番組をどうチェックできるか、またその後どのような再発防止策を取っておるのかと、こういう御質問だというふうに理解しますが、先ほども申し上げましたけれども、今年初めに発覚しました関西テレビの番組捏造問題、同じ系列社でありますので、しかも一定の視聴率を取っておる番組でもありますし、明らかになった結果について、私ども極めて大きなショックを受けました。直ちに、これは放送法でも決められていますが、放送の番組の中で視聴者に対しておわびするのはもちろんでございますけれども、ホームページ等で謝罪をいたしました。いろんな企業が不祥事で糾弾されている中で、テレビ、おまえもかというふうな事件でありまして、そういう意味でテレビ半世紀の歴史の中でもこれはなかなか取り返しの付かないような出来事だったというふうに認識しました。
しかし、今現在、関西テレビは、連盟を除名になりましたけれども、社の全力を挙げて、外の方の様々なお知恵も拝借して、表現すれば関西テレビモデルといいましょうか、そのような新しいテレビ局の極めて高次の放送倫理を背景にした仕事の仕組みを構築すべく頑張っております。これは関西テレビの名誉のためにも是非御理解していただきたいと思いますが。それで、科学番組新しく立ち上げて、その科学番組の新しい方向といいますか、そういうものも関西テレビは今追い求めていると、こんなふうに理解しています。
私ども、これは民放各社がそうですけれども、文字どおり他山の石としまして、関西テレビが取り組んでおります新しい放送倫理の在り方についての果実、成果ですね、これを逐一いただいております。例えば、先ほど御質問のありました下請会社との関係だとか、その制作の新しい在り方とか、これは関西テレビさんが取り組んだマニュアルを各社がそしゃくしまして、それぞれが新しい仕事の仕組みというものをつくり始めていると、こんなこともございます。
民放連が一月中旬以来様々な、BPOの問題もそうですが、放送倫理の確立に向けて仕事をしてきたことと併せて、私ども北海道文化放送も、各種のマニュアル、それから社のコンプライアンス体制、番組作りの在り方、そういうものについて改めて足下、身の回りを見直していると、そういう最中にあります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/38
-
039・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 上澤参考人は雑誌のインタビュー記事の中で今回の認定放送持ち株会社に関連してコメントしておりますけれども、会社の経営が厳しいからといってすぐキー局が出資する持ち株会社の傘下に入るとか、隣接県の同じ系列局と水平統合するといった話にはならないと思うと。その理由として、地元紙、地元の新聞、ブロック紙とのつながりが深いですからと、うちと東海テレビとテレビ西日本はというふうに書いておいでになるわけでございますけれども、要するにこれは資本のしっかりしていますよということ以上に何かございますか。北海道文化放送も資本を見ると北海道新聞社の比率が高いとは思いますけれども、そういうことだけではないと思うんですね。もうちょっとそこの部分のつながりを教えていただければと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/39
-
040・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 私、そのとおり談論した記憶がありますので否定はしませんが、こんなふうに考えます。
確かに、音先生が申されましたように、壮大なこのたびの地上デジタル放送の計画、これを進めるために、この辺、極めて短時間の間にやられるものですから、放送経営者にとっては非常に難儀な部分が出てくるので、その経営の枠組みだとか仕組みについてサポート、カバーしましょうと、このような趣旨の制度の導入だと思いますけれども、実態として、それでは右から左にそのような枠組みができるかというと、いろんな株主がそれぞれ今でもおりますので、私どももおります、その方々がどのように考えるかによって、これはなかなか右から左に事が進むというふうには考えないということが一つと。
それから、やっぱり放送がどういう枠組みであれ、地方の放送局が本来持っている地域主義といいますか、それから、五つの放送局があればそれぞれがニュアンスが違う仕事をしているとか、その多様性ですね、多元性、そういうものを新しい枠組みの中で失っちゃうということになれば、これは視聴者の皆さんというのはもう非常に敏感でありますから、そういう地域の密着を目指した放送の中身が失われるような事態になれば、これは経営的に一時カンフル剤が注入されても、最終的には放送会社としては成り立たないと、これくらいの認識は持っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/40
-
041・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 次に川端参考人にお願いをしたいと思いますけれども、今回、再発防止計画の条項が削除されまして、BPOの、あるいは放送局の自律が非常に期待されるといいますか、重要になってくるわけでございます。
もちろん先生のお立場は放送倫理検証委員会という立場でございます。これ自体、発足が今年ですから責任ないわけでございますが、しかしこの「あるある」の案件からしてみると、何かBPOの対応が遅いなというのが実際の感覚でございまして、五月に発足したわけですからこれからということもあるかもしれませんが、本当に迅速な対応が可能かどうか、先生にお伺いをしたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/41
-
042・川端和治
○参考人(川端和治君) 「あるある大事典」の問題は放送倫理検証委員会のできる前のことですのでコメントするのは適切でないと思いますけれども、現在の体制について申し上げますと、事務局の下に各放送局から自主的に問題があった事例が寄せられ、またそれ以上に一般視聴者の方からいろいろな問題があるという指摘が多数なされております。放送倫理検証委員会は毎月一回の開催でありますけれども、その間に、事務局がその中から問題事例を取り上げて、事前に放送局に番組のVTRの提出を求めるなどして、直ちにその次に開かれる放送倫理検証委員会で審議できるように体制を取っておるところであります。
したがって、これからは、もちろん限界はありますけれども、相当迅速な活動ができるものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/42
-
043・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 香川県で、坂出市でおばあさんとお孫さん二人が遺体で見付かった事件、結局おばあさんの義理の弟が逮捕されたという事例がございました。大きく、一時、十数年前の松本サリン事件をほうふつとするような場面が現出したわけです。これは激しい取材攻勢等があったわけでございます。
本来的にBRCは人権という立場で活動されて、苦情を申出によってどう対処するか、そこで報道の自由との関連で種々調整を図るといいますか、人権擁護という点も含めてであると思いますけれども、最近どうも苦情なしでもいろいろ発信するぞというふうに変わってきた場面もあるかもしれませんけれども、やはり本来的には、こういう案件も含めてこの倫理検証委員会が本来的には発信すべきことなんじゃないかなというふうに思いますが、特にこの案件については、例の「朝ズバッ」でもいろいろずばずば言っていただいているようで、お父さんも大変憤慨していたというふうにお聞きしておりますけれども。
このような例えば過熱報道に対する対処も、先生のところでどのような形で対処されるのか。月一回じゃちょっと遅いんじゃないんですかね。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/43
-
044・川端和治
○参考人(川端和治君) ただいま御指摘のありました坂出市の事案については既に資料が私のところ、ほかの委員のところにも届いておりまして、次回の委員会でそれをどう扱うかということを検討することになろうかと思います。
また、犯罪報道の在り方というのは放送倫理の検討の上でも非常に重要な課題でありまして、この問題を契機にするかどうかは分かりませんけれども、誤った犯罪被害報道あるいはメディアスクラムとかモブジャーナリズムと言われるような現象によって被害を受けることがなくなるような一般的なルールのつくり方、そういったものは我々の放送倫理検証委員会の役割というふうに認識しておりますので、それについても検討を進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/44
-
045・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 次に音先生にお願いをしたいと思っておりますけれども、実際の放送で、国民の利益というか権利の侵害のような放送がなされた場合、苦情がやっぱり行政にわあわあ行くと思うんですね、行政に。
今回、この再発防止計画に関する条項が削除されて、ツールとしてはやはり行政指導しかないんで、停波とか免許取消しみたいなものは、それはもうドラスチック過ぎるから、結局、行政指導で厳重注意とか警告とか、それはどんどん行政としては発せざるを得ないような状況。だからこそ逆に検証委員会というのは非常に大事になるというふうに思うわけでございますが。
先生は先ほど、行政の下請機関のようなものになってはいけないよとは言いながら、しかし行政の一部そういう機能を代替をしてしっかり機能してもらわなきゃ何のためにやっているか分からないということになると思うんですが、この辺はどうですか。要するに、下請機関になっちゃいけないよというのは、余り動くなよという話ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/45
-
046・音好宏
○参考人(音好宏君) 私は全く違う考え方を持っております。放送局と視聴者との関係がよくできていれば、視聴者の側が一番最初にクレームを付けるのは行政ではなくて放送局だというふうに思います。つまり、放送番組に対して問題があるというふうに視聴者が思えば、一番最初に放送局に連絡をするのではないのかな、最初から行政に連絡をするのではなくて、放送局の窓口に連絡をして、その放送局の窓口でそれなりの対応をしてくれるかどうかということが実は非常に大事なのではないのかというふうに認識をしております。とすると、放送局の側が視聴者に対してどういうふうな形の窓口を用意をしておるのか、そこがまず第一に問われるところなのではないかというふうに認識をしております。
次のステップとしまして、正に第三者機関として放送事業者たちがBPOという組織をつくったというふうに認識をしております。ということは、第一のステップである放送局が視聴者に向き合う仕掛けというものがまずはしっかり構築されることが大事だというふうに認識をしておりまして、先ほど御紹介をさせていただきました関西テレビの外部調査委員会として、我々、私を含めて調査をさせていただいて、再発防止計画というものを関西テレビに提案をしたわけですけれども、そのときも、視聴者とちゃんと向き合える仕掛けをつくりなさいということを提案をいたしました。それは、その後の再生委員会というところで、やはりその具体的な形というものを求めて、それは今、活性化委員会という形で、関西テレビの事例ですけれども、というようなものが用意をされて、常に視聴者からいつでも連絡が入るようにというふうにしてあります。
もう片方で、御存じのとおり、今の放送局に関しては、番組審議会という仕掛けで、言うなれば地元の有識者の方々、視聴者の代表が番組について議論をする場というものも用意されていますけれども、もう片方で、普通の市民が放送局にいろいろクレーム等を言える仕掛けをつくりましょうということをいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/46
-
047・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 そうなりますと、やっぱり一般視聴者のメディアリテラシーというものが一番大事になると思うんですね。
ここに二〇〇六年版のBPOの年次報告書がございますが、ざっと見てみますと、いろんな議論がなされているなとは思うんだけど、こういう言い方もあったんですよ。出演者も視聴者ももう少しメディアリテラシーが必要だという意見、出演者もという。それはその辺のデリカシーを持ってしっかりやってもらいたいと私は思っておりますけれどもね。
放送する側も受け手も両方必要だという指摘だと思っておりますが、このメディアリテラシーに関する教育に関して、先生の御所見があれば承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/47
-
048・音好宏
○参考人(音好宏君) 今の御指摘、正にそのとおりで、メディアリテラシーというのは、受け手、メディアメッセージを受け取る、日ごろ受け取ってばかりの視聴者の側に必要だということだけではなくて、送り手側のリテラシーも非常に重要だというふうに私も認識をしております。ちなみに、送り手のリテラシーという本を書かせていただいております。もし御興味があれば是非ごらんいただければと思うんですけれども。
送り手側が日ごろ番組作りのときに視聴者をどういうふうにイメージできるのか、視聴者がどういうふうにそのメッセージを受け取ってもらえるのか、そのことも送り手側は非常に学ぶ必要があるんだと思うんです。正にそれは先生の今の御指摘の送り手側のリテラシー、それを高めることの重要性だというふうに思います。
その一つの仕掛けが何かといいますと、繰り返しになってしまいますが、視聴者とのやっぱりキャッチボールが重要だというふうに思います。放送局の現場が視聴者からの声というものを真摯に受け取って制作現場にそれを生かしていくことがより重要なのではないのかなというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/48
-
049・魚住裕一郎
○魚住裕一郎君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/49
-
050・山下芳生
○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
初めに音先生に、国際放送の命令放送について伺いたいと思います。
先生は、グローバル化の中で国際放送の要請が高まっているということを先ほどお述べになって、その在り方としては、政府にとって都合の良いことのみならず悪いことも発信すること、あるいは国民にとって少し恥ずかしいと思われることも発信すること、これによってアジアの中で民主主義が発展することに資するような発信の仕方が重要ではないかということをお述べになって、非常に共感をしたんですけれども。
そこで、この命令放送の命令という言葉の意味なんですが、私は、国際放送をやってくださいと、つまり日本のいろいろな国民の生活だとか社会の状況だとかをアジアや世界に発信する、その放送を世界に向かってやってくださいという命令ということであって、こういう内容を放送せよという命令ではないと。そうなると放送内容に対する権力の介入ということになりますので、国際的に放送してくださいということの要請ないし命令は分かるんですが、内容に踏み込むことは間違いだというふうに思うんですが、先生の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/50
-
051・音好宏
○参考人(音好宏君) 私も先生のおっしゃるとおりだと思います。
昨年の六月の政府・与党合意の後でこの国際放送のことが議論になったのですけれども、やはりその延長線上で非常に個別具体的なことに関して命令放送ということが出されたことでこれだけこの問題が議論になったんだというふうに私は認識をしております。
正に先生御指摘のとおり、日本からどんどん発信をしなさいということの意味で国際放送は進んでいたんだと思うんですね。日本のことが広く世界に知れるということは、それは私はいいことだというふうに思っております。繰り返しになりますけれども、それはありのままの日本を伝えることがすごくいいことなんだというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/51
-
052・山下芳生
○山下芳生君 続いて音先生にお伺いしたいんですけれども、NHKの経営委員会の在り方についてですが、国民の代表であるべきだと、非常に大事な位置付けだと思うんですが、そのためには、常に公開をされることと、それから選任をどのようにしてするのか、これが大事だということで、いずれも見えにくいという御指摘だったと思うんですが。
私も、昨日の委員会でも少し取り上げたんですが、現在のNHKの経営委員会の構成を見ますと、地域枠というのがありながら、もうほとんど大企業、財界の御代表が特定の地域からずっと継続して選ばれているというような問題がありまして、これは少し国民の代表というにはどうなのかという意見を持っているんですが、先生の選任の在り方についての問題意識、またどういう改革が必要かという問題意識をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/52
-
053・音好宏
○参考人(音好宏君) 諸外国を見てみますと、この辺りのところは相当いろんな形で議論をされているところがあるかと思います、例えばイギリスですとか。それから、研究者の中では、ここの部分は公募制にすべきだというような議論をされる方もいらっしゃいます。これがいいというふうなことはここでは特に申し上げませんけれども、少なくともこの件に関してもっとしっかり議論をまずしてはどうかなと、そこから始めるのが大事ではないのかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/53
-
054・山下芳生
○山下芳生君 次に、放送と国民の政治意識の関係について伺いたいと思います。
二〇〇五年の総選挙にかかわって、ある調査では、テレビを見る時間が長い人ほど自民党の投票率が高いという結果が、相関関係が現れたと。二〇〇五年ですから、このときは小泉さんの郵政解散の総選挙でしたから、まあ何といいましょうか、小泉劇場型政治選挙の最高潮という特殊な選挙だったのかもしれませんが、私はテレビの影響の大きさ、放送の在り方はどうあるべきかを非常に考えさせられました、その結果を見て。同時に、これは特殊な、一回の選挙だけではないんじゃないかというふうに思っております。
現在、特に衆議院の選挙制度は小選挙区制になっておりまして、私はこの制度は民意を正確に議席に反映させるという選挙制度の一番大事なかなめをゆがめる制度だと思っております。要するに、小選挙区では一人しか通りませんから、少数意見が切り捨てられるのではなくて多数意見が議席から切り捨てられるという根本的な欠陥を持っているからであります。二大政党制に無理やり国民の意識を押し込んでいく作用がこの制度によって果たされ進められているんではないかというふうに感じております。
そのときに、放送が、先ほど上澤参考人はAかBかではなくてCもあるというふうに、これは選挙ではないですけれども、報道の在り方として留意する必要があるというのをお述べになりましたが、そのときに、選挙制度が無理やりAかBかということを迫るような制度に今なっているときに、放送までAかBか、あるいはAとBの対決というような図式で放送されますと、仮にAとBが大連立しようとしているにもかかわらず、AとBの対決などということになりますと、これは私は選挙報道の公正性という観点のみならず、この国の民主主義の豊かな、懐の深い発展をも妨げることになるのではないかというふうに思っております。AかBかではなくて、AとBもあるし、Cもあるし、Dもあるし、Eもあるし、Fもあるというふうにすべきではないかと思うんですが、まず上澤参考人、続いて音先生の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/54
-
055・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 私が答えられる範囲は、どのような政治制度、選挙制度の下でも一貫して私どもメディアの報道は公平な、報道対象者の公平な扱いを旨として、日々留意してやっております。そのように申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/55
-
056・音好宏
○参考人(音好宏君) 今の先生の御指摘、非常に難しい問題だと思います。
つまり、マスメディアの社会的影響力というのをどういうふうに測定をするのかという、これはマスコミ研究者がずっと悩んでいるところでございます。そのことがありながらということで、二つ例を申し上げます。
一つは、私の大学の隣の研究室で社会心理学を専門にされている先生が調査研究をしたものなんですけれども、日本では新聞に関しては宅配制度が割と発達しているものですから、一軒で二紙取っている家庭って非常に少のうございます。一紙取っているわけですね。新聞の方は、そのことでいいますと、どちらかというと与党寄りですとか、どちらかというと野党寄りですとかっていろんなことが言われる新聞があるわけですけれども、その私の隣の先生の調査によりますと、一方で、一紙だけ取っていて比較的与党寄りの新聞を読んでいる人だとすると、その新聞だけずっと読んでいるとやはり自分の考え方というのがそちらにずっと寄っていく傾向があるというんですね。ところが、もう片方で、テレビを見ている、その調査では具体的にはニュースステーションですとかニュース23というふうなものを挙げているんですけれども、そうすると、両方見て読むと少しバランスが出てくるというお話なんですね。
ということは何を意味しているのかというと、先ほどリテラシーのお話がございましたけれども、オーディエンスの側がメディアメッセージどういうふうに受け取っていくのかって実はすごく大事であろうと。複数読み比べみたいなことをすることが大事であろう。もう片方で考えると、これは今日の一番最初に私御紹介させていただきましたマスメディアの集中ということと議論が重なるところなんですが、一方で活字メディアというものが、これは制度的な規制がなく出版されているわけですけど、そうすると、もう片方で、放送に関しては放送法というものに基づいて政治的公平性ということが規定されているわけですね。とすると、その二つがあることにすごく意味があるのではないのかという議論なんですね。とすると、そこでの資本関係がつながるということについての非常に批判的な意見が特にアメリカなど、又はヨーロッパなどで出されるのはこういうような考え方からでございます。
放送はどこからチャンネルをひねっても、つまり与党側の議員が話をされているときからチャンネルを開いても野党側のところから開いても全然違う方がしゃべっているところからチャンネルひねって接触をしても、どこから出てくるかも分からないからこそ放送に関しては政治的公平性ということが制度で決められている。もう片方で、活字メディアの方はだれでも自由にアクセスをしていいですよというふうになっている。その両方があるということの持っている意味というのがすごく大事なのではないのかなというふうに思います。
その意味でいうと、先生の御指摘も片方で非常によく分かるんですが、もう片方で、放送に関しては政治的公平ということが制度でうたわれていることの持っている意味というのはやっぱりすごく大事なんだろうというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/56
-
057・山下芳生
○山下芳生君 続いて川端参考人とまた音先生に伺いたいと思いますけれども、「あるある」のあの番組の影響の大きさというのを私も感じておりまして、私のよく知る弁護士の方がちょっとメタボを気にされている方で、あの「あるある」の番組を見てから毎日納豆を食べ続けていたと。弁護士の方でもそういうことがあるのかなと、それほどテレビの影響というのは大きいなというふうに感じたわけです。
ただ、放送局と制作会社の責任はこれは直接的に非常に重大ですが、同時に、なぜこうした番組作りがなされて放映までされてしまったのか。先ほど末松先生からもお話がありましたけれども、その背景に構造的な問題があるとすれば、これは他の民放にもそういう過ちを犯すおそれがないとは言えないんじゃないかと思います。
私が感じるのは、一つは、先ほどの末松先生のお話にもあった過大な視聴率の競争ですね。それからもう一つは、広告料を背景としたスポンサーの意向の番組内容への影響というものがあるのではないかとちょっと感じているんですが、その辺り、直接検証された川端先生、音先生の方から御意見承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/57
-
058・川端和治
○参考人(川端和治君) 放送倫理検証委員会では、具体的な問題が起こったときに、一体それがどうしてそういう問題が起こったかということを調査し見解を発表する、勧告を行うということを役割としております。また、いろんな事例が重なって、これは一般的に放送番組の制作の上で倫理的な基準の逸脱があるというふうに考えた場合にも見解を発表することになるだろうと思います。そういう見解はまだ発表しておりませんけど、そういうことになるだろうと思います。もし仮に視聴率競争あるいはスポンサーの意向というものが放送番組に倫理に反するような影響を与えるという事例があれば、それはそのようなものとして取り上げて意見を述べるということになりますが、今御指摘のありましたその二つの点、それ自体について意見を述べるような役割は我々は持っていないというふうに認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/58
-
059・音好宏
○参考人(音好宏君) 「あるある」の事件に関して調査をしましたので「あるある」の件に関して申し上げますと、今日も報告書を持ってきたんです、こういうような報告書を最終的に作りました。随分ヒアリングをしたのですが、その調査をやっている最中も、それからその後も、視聴率至上主義がこういう問題を引き起こしたのだというような御意見をなさる方、随分いらっしゃいました。実はこの報告書の中ではそういうような書き方はしておりません。
つまり、こういうふうに考えていただければよろしいかと思います。当該ディレクターが捏造をして、そのビデオテープを放送局に納めたわけですね。で、納豆を食べるとやせるというそのデータが出されるわけですけれども。じゃ、その当該ディレクターになったつもりで考えていただければと思うんですけれども、視聴率を二%上げるために納豆のデータを改ざんしたのかと。つまり、データを改ざんすれば視聴率は上がるというふうに考えたのかというと、そんなことはございません。そうではなくて、締切りに何とか間に合わせたい、追い詰められた中で変えたんだということなのだというふうに私は認識をしております。
つまり、視聴率至上主義が問題であるというふうなのは、今世間でいろんなところで言われておりますけれども、もう少し丁寧に見てみると、実はそのときの制作構造がどうなっているのかですとかというような辺りのところをより考えていく必要があるであろうと。もし視聴率至上主義が問題なのであれば、ある全国紙で記事の捏造ということがございましたけれども、じゃそういうことは起こらないはずなんですね。つまり、視聴率至上主義がテレビの悪である、テレビを悪くしているんだというふうなのは非常にステレオタイプなのではないのかなというのが私の認識でございます。
確かに、視聴率の問題、視聴率に非常に目先が行ってしまうことが放送現場を非常につらいことにしていることももちろん間違いないことではございますが、その辺りは、ただもう少し丁寧に見た方がいいのであろうというふうに私は認識をしております。
もうちょっとだけ付け加えさせていただくと、正にその制作構造の問題というのは確かにございまして、それに関しては、先ほどの関西テレビに関して申し上げると、上澤さんも少し御紹介してくださいましたけれども、関西テレビは、番組を外に発注をしている制作会社との契約関係を変えるという努力を今されていらっしゃいます。正にそれはこの報告書で求めたことでございます。
というような形の改善というものを日本の放送界全体が変えることによって制作現場は随分変わっていくでしょうし、それからよりチェック機能というものが働く仕掛けになるのではないのかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/59
-
060・山下芳生
○山下芳生君 最後に上澤参考人にお伺いします。
地方独自の番組を作る、これは非常に地域の文化や生活の向上にとって大事なことだと思っておりますが、いろいろ御苦労がおありだと思いますし、またやりがいもあると思います。そして、視聴者の反応もいろいろあるんだと思いますが、その辺り、御苦労ややりがいなどをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/60
-
061・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 冒頭のお話の中で、北海道の各民放局、これはNHKさんもそうですが、地域密着型の番組作りに精を出しているというお話も申し上げました。もう少し具体的に申し上げたいと思いますが、各社とも、午前中、それから午後は三時台から夕方にかけて約三時間ぐらいの情報番組、生活情報番組、それから夕刊の時間帯の、これは中央のニュースと地元のニュース、いわゆるニュース番組ですね。つまり、朝から夕方まで地域から発信するニュースや情報番組を作って競っています。
それで、この中で、これは私どもの社ではありませんが、札幌の放送局で、全国でもトップ級のそういう地域の番組を作って、視聴率の話をすれば相当高いですね、支持者を得て頑張っているところがありまして、私どももその優れた放送局に追い付くべく日々努力しているところです。
参考までに、全く手前みそですが、私どものテレビ局の自主制作番組の有様の一端をお伝えしますと、朝四時五十分から番組をスタートさせます。今、札幌の朝四時五十分は真っ暗です。だれが見ているかという時間帯ですが、これは、例えば何年に一遍かの地震や災害時に放送局に人間がいなくては対応できないではないかという、突発時への人的備えといいますか、そういうたくらみもありまして、やるなら朝四時過ぎからやれと、そういうことであります。それが終わりますと、これはもう十四年続いている番組ですが、午前中に主婦向けの長時間番組を組んでいまして、午後になりますと、これは札幌駅の構内に常設したスタジオから今度はヤング向けの一時間ぐらいの番組を展開しています。それで夕方のニュース番組につなぐと。ほぼ終日にわたって地域の情報発信を心掛けておるところであります。
他社の取組にお互いに切磋琢磨して、展開している番組それぞれが、これは地域にとっては非常に活性化に役立つといいますか、日本ハムが勝てば一斉に取り組みますし、コンサドーレがJ1に昇格すれば一斉に取り上げますし、本当に手前みそですが、テレビ各社のそういう地域とつながった放送事業の働きは、これは大いに地域の元気、活性化につながっていると、こんなふうに自負をしております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/61
-
062・山下芳生
○山下芳生君 どうもお三方、ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/62
-
063・又市征治
○又市征治君 社民党の又市でございます。
お三方には、大変師走のお忙しい中、放送法の審議のために御出席いただきましてありがとうございます。
随分といろんな話が出てまいりましたが、特に今放送界、様々事件というか問題が起こっておりますけれども、総務省や国会からとやかく言われる前に、放送業界は、これは制作会社やNHKも含めてですけれども、正に自己規律を高めるべきだ、こんなふうに思います。
これまで、国会審議の中でも、元郵政大臣あるいは総務大臣、かねがね業界の自主努力や向上に任せるんだと、こう言ってきたわけですが、それでも問題が起こっているということだと思います。やはりその中で私は、業界幹部が自主性の中で質の向上や制作倫理というものを発揮し切れているのかどうかというところが問われているんだろうと思うんですね。
そこで、放送界の問題を問うていますから、音参考人と川端参考人にお伺いをするわけですが、私は、「あるある」事件の問題、この不祥事が生まれた原因は、先ほどから何人も述べられていますけれども、営業優先ないしは視聴率問題ということがありますけれども、例えば関西テレビの報告書などを見ていますと、予算の額と制作現場に渡るお金の額の落差がすごい大きい、こういう問題があって、社会常識からすれば何分の一という額しか渡っていない。そして、偽装請負的な行為が恒常的に行われておるという、こういう問題があるというのは一端がかいま見えるという気がするんですね。
ということはつまりどういうことか。事実上そこに働く現場の人たちの責任にされているけれども、その労働条件の問題というか、現場の人々がどんなふうに置かれているかという問題もこれあるんではないか。そういう意味では、法令遵守あるいは倫理観、職能人意識を求められるのは、もちろん現場の人たちもそうですけれども、むしろ私は局幹部や経営者、ここにもそうした意味で大きな責任がある。現場責任に任せてしまう、現場が悪かったみたいな話にはさせてはならない、こんなふうに思うんですが、この点について、労働条件の問題や現場責任みたいなことだけに寄せられているというところは問題ではないのかと、こう思っているんですが、お二方から順次お考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/63
-
064・川端和治
○参考人(川端和治君) TBSの「みのもんたの朝ズバッ!」に関する見解を例に引いて申し上げたいと思います。
この見解の中で、実際の番組制作に当たられた方の放送した告発内容の裏付けの取り方あるいはその記録の仕方、そういった体制に問題があると。しかも、それは、現場で制作に当たられた方がそういう意味で十分な教育を受けていない、プロフェッショナルとして十分な見識をお持ちでないということが一つの原因であるということも分かりました。そのことは見解で申し上げて、その結果、TBSではそういう事実認定の在り方とか取材の在り方についても研修をするということになったと伺っております。
我々としては、その今御指摘になられたような点はこのように具体的な事案についての見解を明らかにする中で是正していただくというのが我々のポジションというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/64
-
065・音好宏
○参考人(音好宏君) 先ほども申し上げたのですけれども、「あるある」に関しては視聴率だけが問題だというふうには全く考えておりません。それから、現場の責任にのみ押し付けたというふうな形の報告書にもなっておりません。もう少し構造的なことを含めて問題にさせていただきました。
それから、御指摘の制作費の問題でございますけれども、実はこの報告書を作った後に、ある放送局の方から制作費のところまで踏み込んで書いたものは初めてではないのかというふうなことを言われたのですが、実際に調べていく過程の中で、多分今の御質問の御趣旨は、中間搾取といいましょうか、というものが構造的に行われているのではないのかということをお含みの中での御質問かと思うのですけれども、実際問題調べてみますと相当きつきつの中で作られていたというのが実態でございます。非常に細かなことはここでは申し上げませんけれども、そのことで言うと、実は意外と放送局はこれでもうかってないんですね。
それから、今のお話の延長線上、御質問の延長線上では、ひょっとすると一番末端の番組制作会社は非常にお金が少ないのではないのかというふうに思われていらっしゃるんじゃないのかなと今お聞きしていて思ったんですけれども、一番末端の番組制作会社は、意外とこれは、何というんでしょう、もうかる仕事というふうに受け取っていたんですね。細かいことはここでは申し上げませんけれども、若干その辺りのところはやや読みにくかったかなと、今御質問をいただきながら反省をしております。
ただ、正に御指摘のとおり、「あるある」の場合は、私たちはあえてこの報告書では下請、孫請という言葉は使わなかったんですが、委託契約、再委託契約という非常に構造的な制作システムが恒常的になされていた、そこは非常に問題であるであろうというふうに認識をしております。正にそういうことを放送界全体でどう変えていくのか、加えて、制作現場の方々が正に番組を作っていく、文化をつくっていくという当事者意識をどうつくっていくのか、そこが非常に大事なんではないのかというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/65
-
066・又市征治
○又市征治君 ありがとうございました。
それじゃ、引き続き川端先生にお伺いしますが、私の事務所にBPO報告、定期刊行物として届けていただいているわけですが、たまたま十一月十五日付けのナンバー五十三では、特集がBPOの青少年委員会による「出演者の心身に加えられる暴力に関する見解」というものでありますが、委員会の見解だけでなく、その背景に集められた視聴者の意見を実に多く、詳細に載せられておりまして、平素から熱心に広聴又は広報活動をされていることがうかがい知れます。
番組内容の自律的な向上のためにはこういった業界独自の不断の取組が貴重なんだろうと、こう思うんですが、この中に、一ページの一番下の方から載っていたんですが、十月十二日の放送倫理検証委員会の審議の概要が載せられておりまして、ここでは昨年から件数が増えている総務省の行政指導についてというのが載っておりました。幾つか見てみますと、総務省がどういう根拠で指導を行ったかが分からないものが多い、社会に公開する仕組み、言わば可視化が重要だ、こういうふうに述べられている委員、また、何か問題があるとしても行政指導に対して表現する側、つまり放送局が毅然とした態度を示さなければ委員会としてはやりようがないのではないかというふうに、こんなことなどが載せられておりました。
これだけ読ませていただく限りにおいては、現時点では正鵠を得た意見だとは思うんですが、この点で先生の方から補足されることがございましたら、御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/66
-
067・川端和治
○参考人(川端和治君) 私個人といたしましては、たとえ行政指導という形でありましても、その背後に電波法の強大な権限をもって行われた場合には、これは表現に対する非常に重大な萎縮効果を与えるという意味で決して好ましくないというふうには考えております。
ただ、ここで、放送倫理検証委員会で議論した結果、その行政指導の問題それ自体を取り上げることにはしなかったのでありますけれども、それは、あくまでも放送倫理検証委員会というのは、先ほどから申し上げているとおり、具体的な番組について問題点があった場合、その背景となっている問題を探るということでありますから、その過程で行政指導が問題になることはあるとは思いますけれども、行政指導それ自体を取り上げるのは委員会として現時点で適当でないということで取り上げないことにしたということが報告されているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/67
-
068・又市征治
○又市征治君 ありがとうございました。
引き続いて、今、同じことになるのかもしれませんが、総務省が行政指導を乱発をしている現状を見て、放送法第三条などが正しく運用されているとかどうかということを今言わずもがなおっしゃっているんだろうと思いますが、本来ならば政府や国会が言論活動を許すとか許さないとか議論すること自体が異常なことであって、放送法はそこまで行政指導を認めるものではなかったはず、私はこんなふうに思っています。BPOの機能強化が放送人によって自主的に本来やられるべきなんですが、そうではなくて総務省から行われることは、むしろこれはもう警戒すべき問題と、こんなふうに思います。
先般、衆議院で附帯決議が上げられているんですが、ちょっとこの中でも、附帯決議の中身はお目通しなさっているかもしれませんけれども、六項のところは随分問題だなと。政府は、環境整備に配慮することなんて、政府に何か義務付けるみたいなことが衆議院側で上げられているのはいかがかなという危惧もいたしておりますが。現行法の趣旨からしてこの行政指導は趣旨に反している疑いがあるわけであって、放送業界、BPOが唯々諾々と従う必要はないし、むしろここは毅然と物を言ってほしいなと、こういう感じを私は持っています。BPOには正に放送人の自己規律という大任を担っているわけでありまして、総務大臣答弁で最終的な評価が総務大臣にあるとしている部分は、むしろ放送法第三条に照らして越権行為ではないのかと、こういう感がいたします。
そういう意味では、BPOの独立性というものを自覚をして今やっていただいているんだろうと思うんですけれども、このBPOでの審査中の案件であるとか結果が出た問題について、行政指導はむしろ御無用に願いたいというくらいの強い姿勢が必要ではないかと、こんなふうに私は考えますけれども、お二方の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/68
-
069・川端和治
○参考人(川端和治君) 放送界が自主的、自律的に問題を解決していくべきであるというのはおっしゃるとおりでありまして、私自身は法科大学院で憲法訴訟を教えている立場でもありますけれども、言論の内容に対する政府あるいは国家権力の規制というものは、非常に重要な目的を実現するためにどうしてもそれをしなければならない、その規制が必要最小限であって、ほかに手段がないというようなことが必要であろうというふうに考えております。
その意味で、やはり行政指導というような形で内容に対する規制が行われることは放送界にとって決して好ましいことではありませんので、自主的、自律的にきちんと問題を解決していかなければならないというふうに考えます。であるからこそ、この五月に放送倫理検証委員会というものも設置されたというふうに理解しております。
したがって、この放送倫理検証委員会が、あくまでも放送界の自主的、自律的なルールを尊重しながら、いろいろな問題に対する見解を明らかにしていくことによって政府がわざわざ口を出すまでのことはないという実績がつくられていくということが非常に重要であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/69
-
070・音好宏
○参考人(音好宏君) 私も全く川端先生と考え方、同様でございます。
本来であれば、変な言い方なんですけれども、BPOは暇である方がいいんだと思うんです。つまり、放送局自身が自らを律して、そこで視聴者と向き合って問題が解決できればいいことで、できるだけそれがBPOに行かない方がいいんだと思います。ですけれども、正に同じ放送業界、放送界の中で起こった問題を自ら解決をする、自らそのことについてチェックをしていくということでBPOというものがあるんだというふうに思います。
変な言い方ですが、民主国家というものを考えると、正に言論、表現の自由がどれだけたくさん、しっかりと担保されているのかということが民主国家の一つの指標だというふうに言うことができるかと思います。その意味においては、放送ということに関して公権力が介入がいかにされないかということはやっぱりすごく大事だというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/70
-
071・又市征治
○又市征治君 ありがとうございました。
最後に上澤参考人にお伺いをしたいと思います。
今日ずっとここで議論をされてまいりましたように、放送業界は当面BPOの機能を強化する方法によって自浄作用を働かせようと、こういう努力をされているんだと思います。ただ、本来は、それぞれの放送事業者が放送倫理を守って、ジャーナリズム精神をしっかり発揮して番組作りをするのが良いことは今もおっしゃったとおり望ましいことであります。
そこでお伺いをするわけですが、北海道文化放送は、今年、民放連の番組コンクールでテレビ報道部門の最優秀賞を受賞なさったそうでありまして、受賞された番組は財政破綻をした夕張。私はこの破綻という言葉は余り好きじゃないんで、この破綻の責任は大いに中央政府にもあると思うんで、破綻という言葉は括弧付き、留保付きにしたいと思うんですが、この夕張市と東京と石炭の産地でもあるベトナムを石炭というキーワードでつながれたドキュメンタリー番組、これを作られたということで、そのことが受賞されたことのようですけれども、このように世界の中で自分たちの地域をとらえる視点もこれからの地域メディアには望まれることなんだろうし、先ほどもそのようにおっしゃったというふうに聞きました。
デジタル化で中央からの雑多な情報の洪水の時代ということになるんだと思うんですが、大切なのは、この例のように、自分たちの地域に奉仕する、あるいは地域ジャーナリズムの担い手としての心意気が非常に大事になってくるんではないか、このように思うんですが、そういう意味では、民放を代表してということになるかどうか分かりませんが、上澤参考人の御決意も含めてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/71
-
072・上澤孝二
○参考人(上澤孝二君) 今日は、北海道の事例を中心に、今進めておりますデジタル化計画の状況について、放送事業者の経営者の立場から、国の支援をお願いしておりますということをお話し申し上げ、さらに、今先生がおっしゃった自浄努力ですね、これについても努力していかなければならないと、このようなことを申し上げました。
そこで、私どもの番組の紹介もしていただきましたが、決意表明しろということでありますので。
私、四年前に地元の新聞社からテレビ局に来まして、最初に耳にしたのが、地方のテレビ局で自主制作番組を作ると経営が危うくなるぞ、注意した方がいいぞと、こういう非常に親切な御忠告をいただきました。実際に地方の番組を支えるマーケットといいますか、これは圧倒的に中央に依存しておりまして、なかなか経費をつぎ込んで自主制作番組を作っても、それをサポートする体制というのはなかなか難しいんでありますが、しかし、先ほどもちょっと紹介しましたが、他局の例で見事にそういう状況を克服して成功されている局もございます。したがって、構造的には確かにそのように言えるかもしれませんが、歯を食いしばって、そうではないぞというふうに申し上げて社員を督励しているところであります。
たまたま今年度の民放連の報道部門で私どもの社の夕張問題を取り上げた作品が有り難いことに最優秀賞という賞を得ましたが、北海道文化放送、開局してちょうど今年で三十五年です。三十五年にして初めて栄えある賞をいただいたということで、非常に励みになっているところでありまして、これは何度も先ほどから出ております視聴率ということで言えば、これは圧倒的に視聴率は取れないんです、この種の番組は。ドキュメンタリーで、もう本当に見ていただきたいと思っているんですけれども、なかなか視聴率は取れません。
しかし、視聴率は取れなくても、今先生御紹介いただきました夕張のエネルギーの問題が、今そのエネルギーの石炭開発技術がベトナムに行って花を開いているという側面があって、しかしまた花の東京の膨大なエネルギーの消費量という社会があってという、地方から見た東京、それから世界といいますか、そういう人々がいずれもきちっと住んでいる地域地域の落差といいますか、こういうものについてどう考えたらいいのかと。別に特段の主張があるわけでもありません番組ですが、そういう番組を地方から発信していく余地は十分にあるものだというふうに考えています。
デジタル化も一生懸命やらなくちゃいけませんし、あわせて、番組内容、地域への貢献といいますか、引き続き頑張ってまいりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/72
-
073・又市征治
○又市征治君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/73
-
074・高嶋良充
○委員長(高嶋良充君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
本日は貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116814601X01020071213/74
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。