1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成二十年十一月七日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
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平成二十年十一月七日
午前十時 本会議
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第一 金融機能の強化のための特別措置に関す
る法律及び金融機関等の組織再編成の促進に
関する特別措置法の一部を改正する法律案及
び保険業法の一部を改正する法律案(趣旨説
明)
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○本日の会議に付した案件
一、元議員上田耕一郎君逝去につき哀悼の件
一、検察官適格審査会委員及び同予備委員の選
挙
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/0
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001・江田五月
○議長(江田五月君) これより会議を開きます。
さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員上田耕一郎君は、去る十月三十日逝去されました。誠に痛惜の極みであり、哀悼の念に堪えません。
つきましては、この際、院議をもって同君に対し弔詞をささげることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/1
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002・江田五月
○議長(江田五月君) 御異議ないと認めます。
弔詞を朗読いたします。
〔総員起立〕
参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ 特に院議をもって永年の功労を表彰せられました 元議員上田耕一郎君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/2
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003・江田五月
○議長(江田五月君) この際、欠員中の検察官適格審査会委員、同予備委員各一名の選挙を行います。
つきましては、これら各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/3
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004・江田五月
○議長(江田五月君) 御異議ないと認めます。
よって、議長は、
検察官適格審査会委員に内藤正光君を、
同君の予備委員に白眞勲君を、
それぞれ指名いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/4
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005・江田五月
○議長(江田五月君) 日程第一 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
両案について提出者の趣旨説明を求めます。中川国務大臣。
〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/5
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006・中川昭一
○国務大臣(中川昭一君) ただいま議題となりました金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
現在、米国のサブプライムローン問題に端を発した外的な環境変化の下、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援していくことが喫緊の課題であります。このため、国の資本参加によって、金融機関等の資本基盤の強化を図り、金融機関等が適切な金融仲介機能を発揮し、地域における中小企業に対する金融の円滑化に資する政策を積極的に推進していくことが重要であります。
このような考え方を踏まえ、金融機能強化法の活用、使い勝手の改善のために必要な見直しを図るため、本法律案を提出することとした次第であります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、現行法上、平成二十年三月末までとされていた国の資本参加及び組織再編成における手続の特例等に係る申請期限について平成二十四年三月末までとしております。
第二に、国の資本参加の要件を一部緩和しております。具体的には、金融機関の経営責任等の明確化の要件や抜本的な組織再編成を伴わない場合に加重されていた要件を、制度上一律には求めないこととしております。
第三に、協同組織金融機関全体で提供している金融機能の発揮の促進を目的として、協同組織金融機関の中央機関に対して、あらかじめ国が資本参加することを可能とする枠組みを整備しております。
また、この法律案は衆議院におきまして一部修正がされております。その概要は次のとおりでございます。
第一に、責任ある経営に関する国の資本参加の要件について、従前の経営体制の見直しが求められる場合があることを明確化する修正が行われております。
第二に、国が資本参加を行った協同組織金融機関の中央機関により資本支援を受けた協同組織金融機関の名称について、主務大臣による公表事項とする修正が行われております。
以上が衆議院における一部修正の概要でございます。
次に、保険業法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
最近における保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、この厳しい状況の下において保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、セーフティーネットの確保が図られるよう本法律案を提出することとした次第であります。
以下、その大要を申し上げます。
生命保険会社が破綻した場合のセーフティーネットにつきましては、来年三月末までに破綻した場合、これに関連して生命保険契約者保護機構が行う資金援助等に関し、政府の補助を可能とする特例措置が設けられております。これに関し、平成二十四年三月末までの破綻に係る資金援助等について政府の補助を可能とするため、現行規定を三年間延長することとしております。
以上、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。
何とぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/6
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007・江田五月
○議長(江田五月君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。富岡由紀夫君。
〔富岡由紀夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/7
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008・富岡由紀夫
○富岡由紀夫君 民主党の富岡由紀夫でございます。民主党・新緑風会・国民新・日本を代表し、ただいま議題となりました金融機能強化法改正案及び保険業法改正案について質問をいたします。
今回の金融機能強化法は、さきに発表された生活対策の中において金融資本市場安定対策、中小・小規模企業等支援対策の具体的対策として位置付けられておりますので、生活対策と関連して質問をさせていただきます。
まずお伺いしたいのは、総理が生活対策を発表された際、日本経済の基本認識は全治三年で、当面は景気対策、中期的には財政再建、中長期的には改革による経済成長を目指すと説明されました。すなわち、三年で日本経済を立て直す経済政策を示されました。そして、日本経済を立て直した上で三年後に消費税の引上げをお願いしたいと表明されたわけであります。
ところがどうでしょうか。何日もたたないうちに、三年では全治しない、景気が立ち直っていない時期に消費税を上げられないとすっかり変節してしまいました。三年で全治しないということは、この生活対策が有効でないということを自らお認めになったことと同義であります。どこまで本気でこの生活対策を実施し、三年後に消費税を上げることを目指すのか、総理の本心をお伺いします。
そのようなことですから、施策の内容もこれまでのものと余り違いは見られません。ここで言われている景気対策、財政再建、改革による経済成長は、これまでも政府・与党がずっと政策の中心課題として叫んできたものであります。今までずっと取り組んできたにもかかわらず、まだ全治三年で、いまだに同じことを叫び続けています。今まで政府は日本経済を立て直すために一体何をやってきたのでしょうか。全く成果が得られておりません。
政府の基本認識は、日本経済が停滞する本質的な原因をとらえていないことを露呈しております。効果の少ない経済対策にこれ以上日本国民は付き合い切れないと感じております。本当に国民から評価される自信がおありでしたら、今すぐ衆議院を解散し、国民の声を聴いてはいかがでしょうか。
アメリカでは大統領選が行われ、イエス・ウイ・キャンを標語とするオバマ氏が勝利しました。総理は、当初、臨時国会冒頭で解散をやり抜くお覚悟があったのではないですか。総理の見解をお伺いします。
また、先日、見過ごすことのできない重大な問題が発覚しました。航空自衛隊の田母神前航空幕僚長の問題です。政府見解と異なる言動を行う者を自衛隊幹部にした任命責任、組織的な論文応募、なぜ懲戒処分でなく退職扱いなのか、日本のシビリアンコントロールを揺るがす極めて重大な事件であります。
今回の問題が生じるに至った本質的な原因と責任はどこにあるのでしょうか。さらに、防衛省のシビリアンコントロールの現状と今後の具体的対処方針について、総理の見解をお伺いします。
なお、これは事前にお話はしていませんが、お答えいただく際には、前提条件が変わってくると全く状況は変わりますので、これまでの政府見解、すなわち村山元総理の談話を踏襲するのか、集団的自衛権の行使を認めるのか、武器使用基準の変更はあるのか説明をしていただいた上でお答えしていただきたいと思います。
政府・与党は、これまで経済成長をさせるためには生産性の向上が必要だと言い続けてきました。生産性の向上とは響きはいいのですが、中身を見ると単なるリストラ、正規社員を非正規社員に切り替えることによる人件費の抑制といったものが散見されます。
政府がやらなくてはならないのは、生産性向上の陰でリストラされた人々の就業に対して効果的な成果を上げることであります。非正規社員の不安定な雇用形態を改善することであります。介護分野、医療分野等、人材が不足している分野がありながら、失業者の就業に結び付いていない現実があります。失業者、低賃金労働者が増えれば、国内消費は低迷、内需が減少するのは明らかです。年長フリーターの雇用奨励金の創設、非正規労働者就労支援センターの増設、職業訓練の強化等によって六十万人の雇用を生むとの計画ですが、これでは根本的な解決にはなりません。
雇用問題の本質的な問題は、やはり内需を拡大し、中小企業の業績を回復させ、求人を増加させることであります。生活支援定額給付は一過性の需要創造にすぎず、企業の業績回復に結び付く可能性は見込めません。総理の見解を伺います。
今回の対策の中で、家計対策として経済界に対する賃金引上げの要請を示されております。これは一体どういったものなのでしょうか。経済界に要請すれば実現できるものなのでしょうか。経済界は、労働組合の賃上げ要請には聞く耳を持たないが、政府の要請にはこたえるものなのでしょうか。これで賃金が上がるのであれば労働組合は要らなくなってしまいます。具体的な効果をどのように見込んでいるのでしょうか。総理にお伺いします。
政府・与党は、大企業の要求にはこれまで随分こたえてきました。例えば法人税率の軽減です。この約二十年の間に、法人税率は四三・三%から三〇%へ段階的に一三・三%引き下げられました。平成十八年度の法人税収額は十四・九兆円でしたが、法人税率が四三・三%のままであれば二十一・五兆円の税収が見込まれていたはずであります。法人税額は六・六兆円減ったことになります。
一方で、法人の利益処分の内訳を見ると、昭和六十二年では三・二兆円であった配当金の支払額が、平成十八年では十六・二兆円と十三兆円も増えているのであります。大企業は、国際競争力を高めるために法人税率を下げろと要求してきた結果、法人税額が引き下げられましたが、その分は丸々配当金の支払に充てられたことになります。配当金の増加が国際競争力の本質を占めるとは考えられません。
総理におかれましては、消費税を引き上げて庶民の生活を苦しめるのではなく、企業献金をしてくれる大企業の要求をよく吟味して、検証していただきたいと思います。御認識をお伺いいたします。
また、大企業に対してお願い申し上げたいのは、もうそろそろ株主の顔色をうかがいながらリストラを叫び続けるのはやめてはどうでしょうかということです。リストラを強烈に要求していたのは、今回の金融危機を引き起こした最大の原因である投機マネーであります。短期的な企業収益の向上を要求する投機マネー株主は、リストラを強要し、下請の中小企業をいじめ、従業員の人件費を下げ続けてきました。こうして得られた利益は、投機マネー株主に配当として支払われます。
中小企業や従業員をいじめて収益を計上しても長続きはしません。中小企業や従業員は、国内消費、内需の担い手であるからであります。中長期的には自社の業績に返ってくるはずです。大企業経営者もこういった投機マネー株主には毅然とした対応を取り、中長期的観点で経営に専念していただきたいと思います。下請企業、従業員を大切にする経営こそ今の日本に必要なことであると考えますが、総理大臣、いかがでしょうか。
さらに、生活対策の中で最も納得のいかない点を指摘させていただきます。
今回の対策の財源については、赤字国債に依存しないと強弁しております。赤字国債に依存せず、財政投融資特別会計の金利変動準備金、いわゆる埋蔵金を使うとしております。金利変動準備金の余剰分については国債整理基金特別会計に繰り入れ、国債残高の圧縮に充てることが定められております。これを財源とすることは、国債の残高を減らせないこととなり、赤字国債の発行と実質的には全く変わりありません。民主党の会議で財務省担当者にこの点を指摘したところ、実質的に同じことは認めるが、赤字国債を発行しないというメッセージを市場に伝えるためだと説明されました。市場関係者の中にはそんな小手先のメッセージに惑わされる人はいないと考えますが、総理大臣、いかがでしょうか。
金融機能強化法の政府保証枠の考え方についてお伺いします。
現行の政府保証枠の算出には、地域銀行の一割、十二行でございます、信用金庫の一・五割、四十九金庫、信用組合の一・五割、二十九組合が合併し、資本注入することを前提に二兆円という枠が設定されております。これを十兆円に拡大するという与謝野大臣の説明があったと報道されていますが、現行の五倍の枠が本当に必要なのか、新たな算出根拠を経済財政担当大臣にお伺いします。
金融機能強化法は、金融機関に資本を注入し、金融機能を強化し、中小企業の資金繰りを支援するものであります。この目的からすると、ビジネスモデルとしては当初から破綻しており、金融機能の発揮を見込めない、例えば新銀行東京のような金融機関は一般論として対象から外れると考えますが、金融担当大臣、いかがでしょうか。
さらに、新銀行東京においては、ずさんなビジネスモデルを構築した地方自治体の責任が重大であります。地方自治体が支配株主である金融機関は一般の民間金融機関とは同列に議論をすることはできません。地方自治体が資本充実に一義的に責任を持つべきであり、本法案の対象から除外すべきと考えますが、金融担当大臣、いかがでしょうか。
また、同趣旨で、農林中央金庫のように、主目的が中小企業の資金繰り支援ではなく、運用の大半を過度な証券投資に依存するような機関も一般論としては対象から外れると考えますが、金融担当大臣、農水大臣、いかがでしょうか。
次に、個別の農協は今般の改正で資本増強の対象になりますが、一般的に金融業務とそれ以外の業務との切り分けが困難である農協に対する資本増強の判断はどのように実施するのか、金融担当大臣、農水大臣にお伺いします。
さらに、農林中金と下部金融機関の政治的中立を担保すべきと考えますが、その必要性、是非についての見解を金融担当大臣、農水大臣にお伺いします。
保険業法改正案についてお伺いします。
大和生命保険の破綻により見込まれる保護機構の負担見込額はどの程度でしょうか、金融担当大臣にお伺いします。
また、同社の破綻に関しては、高コストの保険事業を高利回りの有価証券運用で補てんするという同社の特異な収益構造が主たる要因であり、他の保険会社とは状況が異なるとの説明がなされていますが、そうであれば、破綻前の適切な業務改善命令等の対応が必要であったのではないでしょうか。金融担当大臣にお伺いします。
最後に、政府はここ数年来、貯蓄から投資へと投資を国民に勧めてまいりました。日本国民に株式投資や投資信託の購入を奨励してきたわけですが、これにより現在損失を被っている国民に対し事情を説明していただきたいと思います。総理大臣、お願いします。
また、投資を進めるために、アメリカの個人金融資産の構成が株主や投資信託の割合が高いので日本も見習うべきだと説明をしております。しかし、アメリカと日本では金融資産を所有している分布がそもそも大きく相違します。アメリカにおける金融資産は、資産家上位一%の人がアメリカ全金融資産の四割を占有し、資産家上位五%の人で見ると全金融資産の約七割、上位一〇%で約八割の金融資産を占有しているのであります。アメリカの国民の九割の人で金融資産の残った二割を分かち合っているのであります。そして、全体の六割の人はほとんど金融資産を持っていないのです。このように、アメリカはごく一部の人が莫大な金融資産を占有し、その資産構成の多くが株式や投資信託になっているのです。アメリカではごく一部の人が投資を行っているからという理由で、日本の一般的な国民に投資を勧めていいのでしょうか。総理大臣にお伺いします。
さらに、日本において貯蓄を減らし投資へ金融資産をシフトさせることは、銀行等の預金が減少し、中小企業への貸出しが減少することになります。株式市場で資金調達できるのは上場企業の約四千社にすぎません。日本全企業二百五十九万社のうち〇・一五%の企業だけです。これも上場している大企業には有利ですが、株式市場で資金調達ができないほとんどの中小企業にとってはメリットが感じられません。
総理の御認識をお伺いし、質問を終了いたします。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/8
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009・麻生太郎
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 富岡議員から十一問いただいております。
まず最初に、生活対策と消費税の引上げについてお尋ねがありました。
私は、日本経済は全治三年と申し上げましたが、当面は景気対策、中期的には財政再建、そして中長期的には改革による経済成長という三段階で経済財政政策を進めてまいります。
現在のところ、世界の金融・資本市場は百年に一度と言われる危機に陥っており、当面は生活対策に基づいて自律的な内需拡大を通じた景気回復を最優先で図ります。その上で、中期的に持続可能な社会保障を構築し、国民の将来への安心を確かなものにするため消費税の引上げが必要であると考えております。
私は、そうした意味で、生活対策を発表したときから、大胆な行政改革を行った後、経済状況を見た上で三年後に消費税の引上げをお願いしたいということを申し上げており、この方針は一貫しておると存じます。
次に、解散の時期についてのお尋ねがありました。
現在の経済情勢は、百年に一度の危機と理解をいたしております。そのため、政局より政策を優先し、国民のための生活対策を早急に実施するとともに、国際的責任を果たすべきと考えております。
臨時国会冒頭に解散する予定ではなかったのかとの御質問もありましたが、私は野党との主張の違いを明確にした上で国民に信を問うと申し上げております。解散時期は、これら様々な点を勘案して判断をいたします。
次に、田母神前航空幕僚長の論文についてのお尋ねがありました。
私は、村山談話というものは基本的に踏襲をしてまいります。集団的自衛権につきましても、憲法上許されないという立場は変更しているつもりはございませんし、また、武器使用基準の変更はあるのかということについては、現在のところ考えておりません。以上の前提に立ちまして、この論文は、自衛隊が厳格な文民統制の下にあることや、航空幕僚長という立場を踏まえれば、極めて不適切であると思っております。
私の指示に基づき、現在、防衛省におきまして、隊員の監督、教育の在り方、部外への意見発表の際の届出など、再発防止策を検討させております。政府としては、文民統制に万全を期すよう全力を尽くしたいと存じます。
次に、雇用問題への対応と内需拡大についてお尋ねがありました。
政府・与党が取りまとめた生活対策においては、自律的な内需拡大による確実な経済成長を実現するために、経済の体質を転換し、日本経済の底力を発揮させることをねらっております。
このため、本対策におきましては、生活支援をするための定額給付金というようなものの実施や、また、六十万人規模の雇用下支え強化など、生活安心の確保に資する施策を行ってまいります。これに加えて、大幅な住宅ローン減税などによる住宅投資の活性化、また省エネ・新エネ設備投資減税、いわゆる即時償却等々、設備投資の促進などを図ることといたしております。こうした施策により、自律的な内需拡大による確実な経済成長、雇用創出に資するものと考えております。
経済界に対する賃金引上げ要請についてのお尋ねがありました。
家計に対します緊急支援の観点から、勤労者の生活、消費を支える賃金引上げの環境づくりを進めていくことが重要だと考えております。そのため、賃金の引上げの環境づくりの一環としても政府自ら雇用保険料の引下げに向けた取組などを進めてまいりたいと考えております。
次に、政府・与党は、大企業の要求にこたえ、庶民を苦しめているとの御指摘があっておりました。
企業が国際社会で競争をしてまいるためには、ある程度海外の税体系と整合的にする必要があるのは御存じのとおりであります。一方、安心できる社会保障制度とするためには、大胆な行政改革を行った上で消費税などの増税が不可避と考えております。
下請企業、従業員を大切にする経営についてのお尋ねがありました。
経営者を経験しておられる方であれば、自社の仕事になじんだ熟練の従業員や、こちらの求める水準を常に満たすだけの技術又はサービスを持つ下請企業は貴重で欠かすことのできない、いわゆる経営資源であるとの認識を持っておられることと存じます。あの大恐慌と言われるところの際にも、工場や製品の信頼を第一に考え、従業員の雇用を守り、そしてその後に大きな発展を遂げた日本企業の成功例は有名なところであります。こうした経営は日本型経営の強みであると考えております。
今回の経済対策でも、賃金を引き上げるための環境づくりや下請取引の適正化を進めることとしております。こうした政策により、従業員、下請企業を大切にする経営者を積極的に応援してまいりたいものだと考えております。
次に、生活対策の財源についてのお尋ねがあっておりました。
対策の財源として新規に赤字国債を発行することは、国民や市場に対して財政健全化に向けた姿勢が後退したという誤ったメッセージというものが与えられるおそれがあります。そうした観点から、今回の生活対策の財源としては、新規の赤字国債の発行は行わないこととし、その代わり、当面の緊急的な対応として、一時的、特例的に財政投融資特別会計の金利変動準備金の活用ということを考えております。
いずれにせよ、我が国は、巨額の借金を抱えておりますのは御存じのとおりです。したがって、経済や社会保障に悪い影響を与えないため、財政再建は当然の課題であります。引き続き、日本経済の持続的で安定した繁栄を図ることを基本線として踏み外さず、中期的に財政再建に取り組んでまいる覚悟であります。
貯蓄から投資への流れと市場の現状についてのお尋ねがありました。
今後、日本経済の持続的な成長を確保する中で国民が成長の果実というものを享受していくためには、自己責任原則の下で、国民に長期的に適切な投資機会が提供され、資産形成が図られることが重要だと考えております。
今般、米国のサブプライムローン問題に端を発する国際的な金融市場の混乱により世界的な株価の下落などが生じております。かつて金融危機を克服した経験を有する日本としては、今後とも米国を始めとする関係国と協議をし、リーダーシップを持って金融危機克服に貢献していきたいと考えております。
また、先般取りまとめた生活対策に沿って必要な施策を迅速に進めるとともに、市場の公正性、透明性の確保など、国民が安心して投資できるような環境の整備に一層努めてまいりたいものと考えております。
米国との比較において、日本の国民の一般層にとっての投資の在り方についてお尋ねがありました。
我が国の、御存じのように一千五百五十兆円を超えます個人金融資産のうち、半分以上が現金、預金となっております。アメリカのみならず主要先進国の多くと比べて、株式、投資信託の割合は低いと思っております。低金利の下にあって株式、投資信託の保有を通じたキャピタルゲインや配当所得の確保というものは、国民一人一人が経済成長の果実というものを享受するために重要な手段の一つだと考えております。
また、厚みのある市場の形成のためにも、個人投資家を含め、多様なニーズを持つ投資家が幅広く市場に参加することが重要であり、前にも述べましたとおり、このための環境整備に努めてまいりたいと考えております。
最後に、貯蓄から投資へのシフトによる中小企業金融への影響についてのお尋ねがあっております。
中小企業を含め我が国企業が円滑な資金調達というものを行い、その成長を実現していくためには、直接金融、間接金融、双方を通じた適切なリスクマネーの供給が必要です。国民が様々な規模の企業に対して投資を通じて直接リスクマネーを提供する環境の整備が必要だと考えております。
また、中小企業の業況が厳しい中において、民間金融機関の金融仲介機能の発揮による中小企業金融の円滑化も同時に重要な課題であろうと存じます。このため、政府としては、先般取りまとめた生活対策において、自社株買い規制、空売り規制などの金融市場安定対策、また信用保証協会によります緊急保証枠十四兆円の追加などの中小・小規模企業等支援対策といった施策を盛り込んだところでもあります。
これらの施策を迅速に進めることにより、金融、経済の安定強化を図ってまいる所存であります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/9
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010・中川昭一
○国務大臣(中川昭一君) 富岡議員にお答え申し上げます。
本法案の対象となる金融機関にかかわる考え方についてのお尋ねがありました。
個別の金融機関にかかわる仮定の場合の対応等についてお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
一般論として申し上げれば、本法案は、国の資本参加を通じて金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援することを目的としたものであります。このため、金融機関から資本参加の申請がなされた場合、民間有識者の御意見を聴きつつ、収益性、効率性等の向上が見込まれるかどうか、中小企業に対する金融の円滑化が見込まれるかどうか、公的資金の回収が困難でないかどうか、自己資本の充実の状況に照らし必要な範囲であるかどうか等を厳正に審査し、国の資本参加の可否を判断することとなります。
次に、地方公共団体が支配株主である金融機関の取扱いについてのお尋ねがありました。
一般論として、金融機能強化法に基づき資本参加する際には、国は、経営強化計画の履行や公的資本の返済などを確保する観点から、対象金融機関に対して関与を行うこととなります。これらは、主要株主への監督権を介して行われるものではなく、金融機関に対する監督上の措置として行われます。このような金融機能強化法の枠組みにかんがみますと、地方公共団体を主要株主とする金融機関が国の資本参加の対象となることを制度上当然に排除するものではないと考えております。
いずれにせよ、地方公共団体が支配株主となっている金融機関については、支配株主である公共団体がその資本の充実について一義的に責任を持つことという衆議院における附帯決議も踏まえつつ、制度の適切な運営に努めてまいります。
次に、証券投資の割合の高い金融機関を国の資本参加の対象に含めることについてのお尋ねでございます。
個別の金融機関にかかわる仮定の場合の対応等についてはお答えを差し控えさせていただきます。
一般論として申し上げれば、本法案は、国の資本参加を通じて金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援することを目的としたものであります。このため、金融機関から資本参加の申請がなされた場合、民間有識者の御意見を聴きつつ、収益性、効率性等の向上が見込まれるかどうか、中小企業に対する金融の円滑化が見込まれるかどうか、公的資金の回収が困難でないかどうか、自己資本の充実の状況に照らし必要な範囲であるかどうか等を厳正に審査し、国の資本参加の可否を判断することとなります。
次に、個別の農協に対する資本増強の判断についてのお尋ねでございます。
本法案における中央機関にあらかじめ国が資本参加する枠組みは、相互支援制度を最大限活用することで協同組織金融機関全体としての金融仲介機能の発揮を促進し、中小企業向け貸出しを始めとする地域金融の円滑化を図っていくことを目的としております。したがって、個別農協の経済事業の赤字の穴埋めのために本法案による公的資金が利用されることは認められないものと考えております。
これを確保する観点から、農林中央金庫が作成する協同組織金融機能強化方針において、農協に注入された資本が信用事業以外に使用されないための審査・監督体制の整備を盛り込むことを求め、国がこれを厳格に審査することとしております。
また、資本注入が実施された後においても、国は農林中金の審査体制、監督体制を継続的にモニターし、必要があれば、農林中金に農協等に対し改善のための措置をとるよう命令する等のフォローアップを適切に行ってまいります。
次に、農林中央金庫等の政治的中立性についてのお尋ねがありました。
農林中金及び農協系統金融機関は、本法に基づく公的資金注入の対象となることにかんがみ、貸出し等の金融業務の実施に際しては、厳正な政治的中立性を確保することは当然のことであると考えております。
大和生命の破綻に関して、生命保険契約者保護機構の負担見込みについてのお尋ねでございます。
生命保険契約者保護機構の資金援助の有無や規模については、大和生命の資産、負債の精査が行われた上で作成される更生計画において決定されることとなります。現在、裁判所に任命された更生管財人が更生計画の前提となる資産、負債について精査を行っているところであり、資金援助の見込みについて現段階で申し上げることは困難であることを御了解いただきたいと思います。
大和生命への破綻前の行政対応に関するお尋ねがありました。
大和生命は、直近の平成二十年三月期決算においては、財務の健全性を示すソルベンシーマージン比率が早期是正措置による業務改善命令の発動基準である二〇〇%を超えておりました。しかしながら、本年四月以降の市況の更なる悪化に伴い有価証券の損失が拡大する中、当局としては、大和生命に対し資本増強等の対応を求めてまいりました。大和生命においては、こうした努力も結実せず今般破綻に至ったことは、誠に遺憾であります。
当局としては、今後、更生計画の策定に当たって、保険業法の趣旨を踏まえつつ、保険契約者保護の立場から適切に対応してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣与謝野馨君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/10
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011・与謝野馨
○国務大臣(与謝野馨君) 預金保険機構における政府保証枠についてお尋ねがありました。
国際金融・資本市場の混乱により経済金融情勢の先行き不透明感や不確実性が高まっていることを踏まえ、十分な枠として考えられる金額を例示したものでありまして、所要額については今後精査が必要と考えております。(拍手)
〔国務大臣石破茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/11
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012・石破茂
○国務大臣(石破茂君) 富岡議員にお答えいたします。
まず、農林中央金庫を本法案の対象に含めることについてであります。
農林中央金庫法第一条におきましては、農林中央金庫は、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合その他の農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とするとされております。
この協同組織の金融の円滑化を図るという目的を果たすため、農林中央金庫は、農協、信連等の会員に対して預金の受入れ、貸出し等の資金面や決済システムなどの機能面での役割を提供しております。また、系統外の一般の金融市場や様々な経済活動との接点に立って、資金の供給者である会員の負託にこたえ、資金を系統外の需要者と結び付け、効率的に運用し、収益を会員に還元するという役割を担っております。したがいまして、農林漁業者への貸付けは農協等の単位組合が行い、信連等はこれを補完し県域レベルでの貸付けを行いますが、農林中央金庫は自らが農林漁業者に直接貸し付けることをその本務とするものではございません。
こうした役割分担の下、農林中央金庫は、平成十九年度では果実として三千億円強を還元し、農協系統金融機関の経営基盤を強化し、農協系統金融組織全体として農林漁業者に対して適宜適切に資金を融通できるようにすることにより、農林漁業者の経営の安定や農林漁業の発展に寄与するものでございます。したがいまして、金融機能強化法の対象とすることが適当と考えております。
なお、系統組織を基盤とする協同組織中央金融機関の性格は、信金中金、全信組連、労金連と農林中央金庫とで異なるものではございません。
次に、個別の農協に対する資本増強の判断についてのお尋ねをいただきました。
今般、協同組織金融機関の中央機関に対してあらかじめ国が資本参加し、さらに傘下の金融機関に資本支援をする仕組みを設けるのは、中央金融機関による資本支援機能等を最大限活用しつつ、協同組織金融機関全体としての金融機能の発揮を促進するためでございます。
したがって、本改正案においては、国から資本参加を受けた農林中央金庫が行う農協への資本の支援は、信用事業に損失が発生することにより、自己資本比率の低下や貸出し余力が低下した場合に限っておりまして、信用事業以外の事業に起因して損失が発生した場合は資本の支援の対象外となっております。
具体的には、農協においては、信用事業とそれ以外の事業は、農業協同組合法第十一条の六の規定により、区分して経理するものとされておりますことを踏まえ、資本の注入に際して、信用事業以外の資産規模を原則として増加させないこと、信用事業以外による損失で自己資本が減少した場合、信用事業以外の資産規模をその分減少させることにより、注入した資本を信用事業以外の事業に使用することを防止することといたしております。
また、これらを担保するため、農林中央金庫に対しましては、農協に資本を注入するに際し、資本が信用事業以外に使用されないことを確認するための審査体制の整備、資本を注入した農協に対し、半期ごとに報告を求め、必要に応じ監査を行い、改善のための措置をとらせる等の監督体制の整備を求めまして、厳格に実施させることとしております。
最後に、農林中央金庫等の政治的中立性の担保についてのお尋ねであります。
農林中央金庫及び農協系統金融機関は、本法に基づく公的資金注入の対象となることにかんがみ、貸出し等の金融業務の実施に際しましては、厳正な政治的中立性を確保することは当然であると考えております。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/12
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013・江田五月
○議長(江田五月君) 椎名一保君。
〔椎名一保君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/13
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014・椎名一保
○椎名一保君 私は、自由民主党、公明党を代表いたしまして、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案につきまして、総理及び関係大臣に質問をいたします。
現在、米国発のサブプライムローン問題に端を発した金融・資本市場の混乱は、欧州に波及し、その後、中国やロシア、新興国にまで拡大し、世界的な広がりを見せております。グローバル経済が深化する中で生じたこのような大規模な混乱は、麻生総理のお言葉をお借りすれば、百年に一度の危機、米国発の金融災害と考えられます。
このような状況を踏まえ、十一月十五日、ワシントンで金融サミットが開催されますが、欧米諸国は各種諸施策を着実に進めていると承知しています。例えば、米国、イギリス、フランスなどでは、公的資金注入の枠組みを整備し、既に公的資金注入を実施しております。
こうした中で、日本の状況を見れば、九〇年代後半に日本発の金融危機を経験し、不良債権処理に取り組んだ結果、現時点では、日本の金融システムは相対的に安定していると聞き及んでおります。
日本は、ある意味で、ソートリーダー、実践的先駆者とも言えるような立場にあるとも考えられます。アメリカではオバマ氏が第四十四代大統領に決まりましたが、アメリカの政権とも手を携えて、日本は世界の金融・資本市場の混乱の中で強いリーダーシップを発揮すべきであります。世界の金融・資本市場の混乱とそれが我が国金融システムに与える影響をどうとらえ、いかに対処していくのか、麻生総理の御所見をお伺いしたいと思います。
他方で、我が国の経済の実態の先行きにもう少し目を凝らしてみると、今後、米国発の暴風雨が、グローバルにつながった株式・債券・為替市場を経て、世界の、また日本の実物経済、実体経済に影響を及ぼしてくることが懸念されます。こうした中で、我々政治が気を配らなければならないことは、国民の生活の暮らしの不安、中小企業の不安を取り除くことであります。そういう意味で、先般、麻生総理が公表された生活対策は大変時宜にかなったものと言え、速やかな実行が期待されるところであります。
そして、今回の金融機能強化法等の一部を改正する法律案も、まさに厳しい状況に直面する中小企業、地域経済の不安を金融の面から取り除くという意味で誠に重要な法案であると考えられます。特に、中小企業の資金繰りの実情は厳しいものがあり、私も地元の企業の方々から、金融機関の貸出し姿勢が厳格化している、年末の資金繰りに不安を感じる旨の声をお伺いしております。これらの要因としては、米国発の暴風雨を受けて地域の金融機関が疲弊しているということも考えられるところですが、まずは、このような中小企業を取り巻く地域金融機関の実情について中川大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、今回の金融機能強化法は、このような厳しい状況に直面する中小企業、地域経済を支援する強い決意の表れた法律であると思われますが、いま一度、改正のねらいについて中川大臣の御所見をお伺いいたします。
また、今回の改正法は衆議院で修正がなされております。特に、金融機関の経営責任の明確化については、制度上一律には求めないこととはしつつ、一部法律の修正がなされていると承知しています。金融機関の経営責任の問題は重要な論点であると思われますので、このような修正に関して中川大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
次に、中小企業向け貸出しの状況は、ここ一年を見ても、国内銀行の中小企業向け貸出し残高が実に七兆円から八兆円規模で減少しております。あるいは、日銀短観によれば、金融機関の貸出し態度も悪化傾向にあると言われます。このような金融機関の行動を見れば、金融機能強化法によって、金融機関は中小企業に対する資金供給を積極的に行うかどうかという点の疑問が残るところです。
今回の金融機能強化法は、あくまでも中小企業、地域経済の不安を取り除くものでなければなりません。したがって、本法案において、国の資本参加を受ける金融機関が、中小企業に対して円滑な資金供給を行うのかどうかを見極めなければならないと考えます。
そこで、今回の改正案においては、国の資本参加を受けようとする金融機関が中小企業に対する資金供給の円滑化に向けてどういう工夫を凝らしているのか、中川大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
最後になりますが、十年前のちょうどこの十月、日本は日本発の金融危機を迎えることになりました。十年前は、公的資金を使うという初めての経験ということで、与野党の党派を超えてかんかんがくがくの本音の議論がなされたものと承知しておりますが、最後は、国会において、与野党の協力の下、金融再生法、金融機能早期健全化法が成立しました。
今回は、残念ながら、衆議院での審議では、修正部分を除く原案について、民主党を始めとする野党の皆様の賛同は得られなかったと承知をしております。しかし、いま一度、十年前の経験を思い起こし、民主党を始めとする会派の皆様にも賛同を訴えかけまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/14
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015・麻生太郎
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 椎名議員の質問にお答えをさせていただきます。
世界の金融・資本市場の混乱というものが日本の金融システムに与える影響及び対応についてのお尋ねがあっております。
現在の世界の金融・資本市場の混乱は、FRBの前議長でありますグリーンスパン氏の言葉を借りるまでもなく、百年に一度の緊張が続いていると存じます。ただし、日本の金融システムそのものは、欧米に比べ相対的に安定をいたしております。また、日本にはバブル崩壊以来、金融安定化の問題に取り組んできた経験と知識があります。
しかしながら、こうした事態が世界のみならず、日本の実体経済、実物経済へ影響を及ぼすことが懸念される状況にあります。まさに今、日本が自らの経験を伝え、また新しい問題に対する対処を率先して世界と議論をしていくべき立場にあると考えております。
今月十五日にワシントンにて金融サミットが予定をされております。私としては、十月三十日に発表させていただきました新たな生活対策を紹介するとともに、世界経済の減速に対応した適切なマクロ政策運営、国際金融システムの機能の強化、また金融機関に対する監督と規制の国際協調体制や会計基準の在り方、格付会社の在り方といった点につき各国と実質的な議論を行いたいと思っております。
日本といたしましては、今後とも国際会議の機会などを通じてできる限り日本の培った経験、知識を伝えるとともに、米国を始めとする関係各国と緊密に連携しつつ、国際金融市場の安定化に向けてリーダーシップを発揮していかねばならぬと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/15
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016・中川昭一
○国務大臣(中川昭一君) 椎名議員にお答え申し上げます。
中小企業を取り巻く地域金融機関の実情についてのお尋ねでございます。
地域金融機関においては、地域密着型金融機関の取組等によって収益力の向上に努めてきたところであります。しかしながら、例えば地域銀行では、金融市場の混乱や地域経済の厳しい状況等を背景に、二十年九月期の業績予想は、有価証券の減損処理費用や不良債権処理費用の増加等により減益となる銀行が多いと承知をしております。
金融庁としては、引き続き、高い警戒水準を維持しつつ、金融市場の動向や地域の経済情勢が地域金融機関に与える影響について注視してまいります。
次に、金融機能強化法改正のねらいについてのお尋ねでございます。
世界的な金融市場の混乱を始めとする外的な環境変化の下、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援し、適切な金融仲介機能を発揮できるよう、国の資本参加によって金融機関の資本基盤の強化を積極的に推進することが重要であります。本法案は、このような考え方を踏まえ、同法の活用、使い勝手の改善を図るものでございます。
金融機関の経営責任にかかわる法案修正についてのお尋ねでございます。
衆議院における法案修正は、国の資本参加を受けようとする金融機関について、従前の経営に関する分析結果によっては経営責任の明確化が求められる場合があることを法律上明確にすることを内容とするものであります。この修正は、法案の趣旨、目的をより明確化すべく、与野党の間で精力的な協議を経て修正に至ったものと認識しており、修正後の法案について迅速な御審議をお願い申し上げます。
中小企業に対する資金供給の円滑化のための工夫についてのお尋ねでございます。
本法案においては、資本参加を受けようとする金融機関が経営強化計画において中小企業向け貸出しの円滑化のための方策を明記し、金融庁がその方策について審査することとなっております。また、資本参加後においても、当該金融機関は中小企業向け貸出しの円滑化の方策等の実施状況を定期的に金融庁に報告することが求められており、金融庁は計画の履行状況について定期的にフォローアップすることとしております。なお、フォローアップの結果、必要な場合には監督上の措置を講ずることとしております。
本法案では、こうした枠組みを通じて、中小企業金融の円滑化を促す仕組みとなっているところでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/16
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017・江田五月
○議長(江田五月君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/117015254X00820081107/17
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