1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成二十六年六月十二日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
六月十日
辞任 補欠選任
堂故 茂君 森 まさこ君
六月十一日
辞任 補欠選任
森 まさこ君 堂故 茂君
六月十二日
辞任 補欠選任
藤川 政人君 中西 祐介君
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出席者は左のとおり。
委員長 山本 香苗君
理 事
二之湯 智君
丸川 珠代君
吉川 沙織君
若松 謙維君
渡辺美知太郎君
委 員
井原 巧君
石井 正弘君
礒崎 陽輔君
小泉 昭男君
島田 三郎君
関口 昌一君
柘植 芳文君
堂故 茂君
中西 祐介君
石上 俊雄君
江崎 孝君
難波 奨二君
林 久美子君
藤末 健三君
片山虎之助君
寺田 典城君
吉良よし子君
又市 征治君
主濱 了君
事務局側
常任委員会専門
員 小野 哲君
参考人
早稲田大学大学
院法務研究科教
授 長谷部恭男君
大阪大学大学院
高等司法研究科
教授 鈴木 秀美君
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本日の会議に付した案件
○放送法及び電波法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/0
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001・山本香苗
○委員長(山本香苗君) ただいまから総務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日までに、藤川政人君が委員を辞任され、その補欠として中西祐介君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/1
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002・山本香苗
○委員長(山本香苗君) 放送法及び電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、二名の参考人から御意見を伺います。
本日御出席いただいております参考人は、早稲田大学大学院法務研究科教授長谷部恭男君及び大阪大学大学院高等司法研究科教授鈴木秀美さんでございます。
この際、参考人の方々に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ、当委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、お一人十五分程度で、長谷部参考人、鈴木参考人の順に御意見をお述べいただいた後に、委員からの御質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、発言の際は、挙手をしていただきまして、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
なお、参考人、質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず長谷部参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/2
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003・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) 本日は、意見陳述の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
私、平成十九年の放送法改正に関しまして、その際の附則において、施行後五年を経過したときに見直し、そして検討を加えるべきだとされた問題につきまして検討を行いました放送政策に関する調査研究会のメンバーでございました。今回の改正案は、この放送政策に関する調査研究会での検討の結果、これを下敷きにしているところがございますので、その経験を踏まえながら若干の事柄につきまして所見を申し述べさせていただきます。
今回の放送法の一部改正でございますが、御案内のとおり、NHKによる放送番組等、これをインターネット等を通じて利用、提供する業務に関する事柄、そしてNHKの協会国際衛星放送に係る手続の簡素化、それらの手続の整備に関する事柄、そして国内基幹放送事業者の経営基盤の強化に関する事柄、そして認定放送持ち株会社の認定の緩和に関する事項、これを含んでございます。
放送事業に関しましては、近年、いわゆる規制の緩和が進んでおりまして、なるべく業界の実情、実態に即した形で、したがいまして、各事業者の自主性、自律性を生かした経営努力が可能な制度環境を整えると、これを通じて放送サービスの便益、効用を全国の視聴者の方々に享受をしていただけるよう、それを目指すという方向性が取られております。もちろん、その際は、放送の不偏不党、そして真実及び自律の保障を理念とする放送による表現の自由の確保、さらには、放送サービスが健全な民主主義の発展に貢献するようにするという放送法の基本理念はしっかりと踏まえる必要があることはもちろんのことでございます。
今回の部分改正案におきまして、NHKの業務に関連するものは、主として、放送サービスの便益、効用を多様な形で視聴者の方々に享受していただくこと、そして、手続の簡素化等を通じて自主性、自律性の確保を狙いとしていると申し上げることができると思います。
他方、基幹放送事業者の経営基盤の強化、そして認定持ち株会社の認定の緩和に関するもの、これは、人口の減少に直面しまして地域の経済が低迷を続ける中で、放送事業者の経営基盤を強化し、地域の住民の方々の日常生活に必要な情報でありますとか災害等の緊急時に必要となる情報、これを引き続き安定的に提供することができるようにと、それを狙いとしております。
一般論として申し上げますと、放送に関する法制の整備に当たりましては、お互いに必ずしも整合させることが容易でない、複数の要請のバランスを取りながら最適解を探求するというかなり難しい作業が必要になります。
NHKに関する事柄で申しますと、受信料を財務基盤とする公共放送というこのNHKの基本的な性格と、NHKの放送に関連する多様な情報をインターネットなどを通じてなるべく簡便な形で多くの視聴者に利用していただくこの目標とは、誰の目から見ても常に一〇〇%ぴたりと折り合いが付くというわけのものではございません。さらに、何よりも放送事業の自主性、自律性の確保という極めて重要な価値、これを十分に勘案をする必要がございます。
このために、今回の改正提案におきましては、インターネットを通じたNHKの情報提供等の業務につきましては、まずNHK自身が業務の実施基準を定めまして、それを総務大臣の認可に係らしめ、さらに、業務の実施状況については定期的な評価を行い、それに基づく業務の改善の努力をすべきだと、その旨も定めておりまして、一方では業務実施の自主性、柔軟性を図るとともに、他方ではその業務の透明性、そして適正性の確保を図ると、そのための措置をとり得ることとしております。
他方、地域に根差した放送事業の多様性及び多元性を確保しながら、同時に持続可能性のある形での放送サービスを安定的に可能とするように経営基盤の強化を目指すと。その際にも、やはり異なる複数の方向性を含む政策目標の間でどのようにバランスを取るのか、どう調整を図るのかという、そういう考量が要求されます。そのために、ここにおきましても、指定放送対象地域に係る基幹放送事業者には、収益性の向上を図る経営基盤強化計画、これを自主的に作成をしてもらいまして、総務大臣の認定を受けることとしております。それによりまして、ここで言う特定放送番組の同一化に伴う経営基盤の強化と、そして他面での放送内容の多様性や地域での需要への対応、これもあくまで放送事業者の自主性、自律性を尊重しながら図っていく、これを目指しているところでございます。
今回提出されました放送法の一部改正案、以上申しましたとおり、複数の必ずしも簡単には折り合いの付かない政策目標、バランスを取りながら調整をし、全体として形を整えていくという、そういう作業の結論でございます。もちろん、それぞれの提案につきまして、これは必ずしも唯一の正解である、最適解であるという御納得までは得られないかもしれませんが、それなりの検討の努力をした結果であるということは申し上げることができるかと存じます。
最後に、一言ですが、私は学者をしていることもございまして、海外で時々暮らしたり、旅行をしたりということがございますが、そういう折は可能な限りその地の放送番組などを見るようにして、テレビが研究対象であるということでなるべくテレビ等を見るようにしておりますが、そういう乏しい経験から申し上げますと、日本の放送番組はやはり平均してみるとかなり手の掛かった質の高いものではないかというふうに考えております。恐らくテレビの番組の質の高さという点では、多分イギリスと並んで水準は高いのではないかと考えております。先人の努力もありまして、そうした放送サービスを支える制度環境が形作られているところでございまして、こうした大事な遺産をなるべく損なわない形で、しかし変化する社会経済状況に合わせて次代に伝えていくということができればと考えている次第でございます。
以上、非常に簡単ではございますが、私の所見を申し述べました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/3
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004・山本香苗
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
次に、鈴木参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/4
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005・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 大阪大学の鈴木秀美でございます。
本日は、意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございます。
私は、これまで主として表現の自由に関わる問題、特に新聞や放送などメディアに関わる法的問題について憲法学の観点から研究をしてまいりました。私の問題関心は、メディアがジャーナリズム機能を発揮するためには法制度がどうあるべきかという点にあります。
本日は、まず、私が放送の自由をどのように理解し、日本の放送法制の特徴とその問題点についてどのように考えているかということをお話しさせていただいた上で、主な改正事項についての意見を述べさせていただきます。
まず、放送の自由についてです。
放送法制の基本原理は、民主主義社会にとって不可欠な表現の自由の確保であり、知る権利の保障と言えます。放送法も目的規定の中で、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」という原則を掲げております。
ただ、ここで難しいのは、放送、特に地上テレビの場合、チャンネル数が少ないので、放送事業者の表現の自由さえ守っておけばおのずと視聴者の知る権利が確保されるとは限らないという面があるということです。だからこそ、放送法四条は、放送事業者に、放送番組の編集に当たって、政治的に公平であること、意見の対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを要求しています。この四条は番組編集準則と呼ばれています。
憲法学では、表現の自由に対して法律によりこのような内容規制を課すことは許されないと考えられていますが、放送については例外的に許されるというのが通説でした。その理由とされてきたのは、電波の有限希少性と、放送には他のメディアには見られない強烈な社会的影響力があるということです。ところが、近年、憲法学者の中には、多チャンネル化などの社会状況の変化の中で番組に政治的公平を要求するのは表現の自由に対する規制として正当化できない、憲法違反だという意見も見られるようになりました。視聴者が成熟しつつある現在、公平、客観的であると標榜しながら、実際には偏った、又は主観的な放送がなされることの弊害の方が大きいという理由からです。多チャンネル化の時代に入った今、内容による淘汰は視聴者の手に委ね、立法目的が曖昧で、かつ時代遅れになった内容規制は、違憲としてもはや撤廃すべき段階に入ったと説く人もいます。
また、従来、内容規制を合憲としてきた憲法学者の多くは、番組編集準則が倫理的な意味を持つにとどまると考えてきました。私はこのような考え方を倫理的規定説と呼んでおり、私自身もこの考え方を支持しています。倫理的規定説によれば、番組編集準則は放送事業者による自律のためのガイドライン、言わば行動指針にすぎません。倫理的規定説は、番組編集準則を厳密な意味での法規範ではないと理解します。もし番組編集準則が法規範であるとすれば、合憲とは言えないと考えている点では、さきに述べた違憲説と同じだとさえ言えます。
放送に対する国家権力の介入の余地を最小化するためには、番組編集準則を民間放送との関係では放送法から削除すべきだという指摘もあります。二〇一〇年の法改正で、放送概念が、公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信とされ、放送と非放送の区別が不明確になったという問題があります。番組編集準則を民放に適用しないことにすれば、放送規律がインターネットによる動画配信サービスにまで広がるという懸念もある程度まで払拭することができると思います。
憲法学でこのような議論がなされているのは、もし政府、総務省が直接に個々の番組内容を例えば政治的公平性の観点から一般的に監督することになれば、そのような監督が放送事業者に及ぼす萎縮的効果が民主的政治過程の維持や情報の多様化といった目標を著しく損なうと考えられているからです。番組内容に関する規律は、放送法の目的規定にあるように放送事業者の自律に基づくべきで、番組編集準則違反に対して電波法の無線局の運用停止や放送法の業務停止などの行政処分を行うことは憲法上許されないということになります。
次に、日本の放送法制の特徴についてお話しいたします。
欧米先進国では、放送に対する政治や行政の介入を回避するため、行政機関からは独立した合議制の放送のための規制機関が設置されています。そうすることで、放送行政の政治的独立性がより良く実現されると考えられてきたからです。ところが、日本では、総務省が放送行政を担当しており、放送規律の多くは法律よりも省令に委ねられています。憲法学の観点からは、ここにも大きな問題があります。放送の国家からの自由を確保するためには、日本でも放送行政の担い手を独立行政委員会にすべきだと前から指摘されてきたのはそのためです。
日本でも、放送法と電波法が制定された際には独立行政委員会が設置されましたが、約二年で幕を閉じ、旧郵政省が放送行政の担い手になったという経緯もあります。私も、十年以上前には、導入のために克服すべき問題が多いとしても理論的には独立行政委員会の設置が望ましいと指摘したことがあるのですが、その後考えを変えております。
私が研究対象としているドイツの場合、民間放送について、国家からの独立性を確保された規制機関の下、青少年保護と広告についての詳細な規律が設けられ、違反すると制裁金を支払わなければなりません。放送における意見多様性確保のための集中排除の規律も厳格です。
これに対し日本では、放送法が放送事業者の自律の尊重という制度趣旨の下、放送事業者に自主規制を促す制度を採用してきました。番組規律は緩やかで、青少年保護と広告について、放送法ではなく、放送事業者が定める番組基準による規律に委ねられており、それがほとんど問題視されていないことも欧米諸国の放送規律とは大きく異なっています。そういう意味で、日本の放送法制は世界に余り例のない仕組みによっており、それを通じて放送事業者の表現の自由が守られてきたという面もあります。
放送法については、いろいろなおきてを認識しつつも、その根本的変革より、既存の法体系をできる限り維持したまま、運用のレベルで社会に対応するという日本法の典型事例の一つであり、近代法の装いを和風に着こなす日本の知恵をここにも見出すことができると指摘されています。
日本には、自主規制機関として設立されました放送倫理・番組向上機構、BPOもあります。放送法に基づく厳格な規制をするためには、規制機関の国家からの独立性確保が必要になりますが、それよりも、総務大臣による監督の下、番組内容規律を放送事業者の自主規制に委ねるという、この方向を更に進めていく方が望ましいと思います。現行の仕組みを合憲と見るためには、総務省が番組内容を直接に規制しないことが必要になります。BPOで見解、勧告などの結論が出された案件については、総務省が重ねて行政指導を行うことは控えるという慣行の確立、これをすべきではないかと思っています。
放送法制の今後の在り方を検討するに当たっては、放送事業者の自律を重視することで、近代法の和風の着こなしをしてきた放送法制の仕組みを、欧米先進国を参考に独立規制機関の導入という洋装に本格的に変えるより、工夫を加えて国家権力の介入の余地を最小化し、和風の着こなしを更に洗練された装いにすることを考えるべきではないでしょうか。
ここで、主たる改正事項について、私の意見を述べさせていただきます。
まず、民放関係です。
放送事業者の経営基盤強化計画の認定に係る制度の創設についてですが、ラジオの場合、経営状況の悪化を背景に、異なる放送対象地域において放送番組の同一化を可能にすることには、放送の地域密着性が低下するという副作用が懸念されていることは周知のとおりです。私も、日本の放送法制において、民間放送が放送における地域性確保に貢献してきたことを高く評価しているので、もし新しい制度が簡単にテレビについても認められるとすれば、それには賛成できません。ただし、ラジオ限定ということでしたら、災害放送の必要性もありますから、新しい制度がたとえ地域性の低下という副作用を伴う劇薬であるとしても、そういう劇薬が必要になるほど事業者の経営状況が悪化しており、延命のためには仕方がないという現状があるということでしたら、これはやむを得ないと考えます。
地域性確保のための代替措置については、表現の自由に配慮するのでしたら具体的な措置を法律で義務付けるべきではありません。経営上可能な範囲で放送事業者の創意工夫に期待したいと思います。
なお、指定放送対象地域に係る基幹放送事業者は、経営基盤強化計画を作成し、総務大臣の認定を受けることができることとするとのことですが、規制緩和の名の下に収益性の向上を図る方法を放送事業者の判断に委ねることの反映として、認定についての総務省の判断余地が広がって総務省の判断次第になるという問題があるのではないかと思います。運用上の自己抑制を求めたいと思います。
次に、認定放送持ち株会社の認定の要件緩和についてです。
持ち株会社による株式引受けを三分の一を超えて持てるようにすることで、地方局に任せずにホールディングスが交渉に出ていくという希望が一部の系列から出ていると聞いております。系列により考え方も異なるそうですが、これが活用されますと、ただでさえ強まっているキー局の地方局に対する影響力がますます強くなるのではないでしょうか。その結果、地方局の自社制作番組比率が低下するなど、放送における多様性、多元性、地域性が脅かされるのではないかということを危惧します。
「地方の時代」映像祭、あるいはギャラクシー賞などを通じて、地方局においてすばらしいドキュメンタリーが制作されているのを見てきました。株式会社として収益を上げることが大切なのは分かりますが、民間放送といえども放送事業には公共性があるのですから、放送の多元性、多様性、地域性を維持することも忘れないでいただきたいと思います。先ほどと同じく、病気の悪化を防ぐためとはいえ副作用のある強い薬と言えますから、その使い方についてホールディングスの側にも賢慮を求めたいと思います。
次に、NHK関係の国際放送番組の国内放送事業者への提供業務の恒常化等についてです。
日本国内にも日本語は駄目でも英語は分かる外国人が暮らしており、また外国人旅行者も増加していることからすれば、この改正には賛成です。英語を解する外国人限定とはいえ、日本における多文化共生の促進にとってもプラスの効果があるでしょう。
NHKの国際放送につきましては、国費が投入されているとはいえ、政府広報にならないよう、BBCをお手本に報道機関として国際社会で高い信頼を得られるような存在になってほしい、このように期待しております。
最後に、NHKのインターネット活用業務の拡大についてです。
放送事業者のインターネット活用は時代の趨勢であると思います。そういう意味で、どのようなサービスを提供するかについてNHKの柔軟な判断を可能にしつつ、放送法に新たに定められる認可基準によりNHKが実施基準を定め、大臣が認可を与えるという方法は一つの工夫だと思います。
具体的な運用に当たって、NHKには民業圧迫にならないための慎重な配慮が必要になるでしょう。認可の権限を通じて具体的なサービスの在り方に総務省が口出しをするのは、NHKの独立性、自主性の観点から見て問題があります。総務省の側にもNHKの独立性や自主性への配慮を求めておきたいと思います。
イギリスのBBCやドイツの公共放送は、インターネットを積極的に活用し、同時配信による番組視聴も現在は可能になっております。NHKが番組の同時配信も行うようにするためには、受信料制度の見直しが必要になるというのが衆目の一致するところだと思います。そのためには、今後、国民的にどのようなやり方をするのか議論していくことが必要になるでしょう。
以上、私の意見です。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/5
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006・山本香苗
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
以上で参考人の方々の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/6
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007・島田三郎
○島田三郎君 自由民主党の島田三郎でございます。
お二人の参考人、大変御多忙の中、本当に恐縮でございます。ありがとうございます。
まず、国際放送についてお伺いいたします。
昨今、自民党内では、NHKのテレビ国際放送を充実強化すべきであるとの意見が出ております。私もNHKワールドTVの充実強化は非常に重要なことだと考えております。特に、東京オリンピック・パラリンピックに向けて今後日本に対する世界の関心が一層高まってくる情勢の中で、その世界の関心に応えるために、BBCやCNNでもなく、NHKワールドTVを通じて日本の正しい情報や魅力を世界に発信していくことが重要であると考えております。また、昨今の国際情勢を考えてみますと、日本の主張も海外に積極的に情報発信をしていく必要もあると思っております。そのため、今後NHKワールドTVの果たす役割はますます大きくなっていくものと私は思っております。
そこで、放送政策に関する調査研究会での議論を踏まえて、NHKワールドTVをどのように充実強化していくべきか、また、今後どのような役割を担っていくべきか、長谷部参考人にお考えをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/7
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008・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうも御質問ありがとうございました。
先生が御指摘のとおり、NHKが今後国際放送において果たすべき役割、非常に大きなものがあると考えております。ただ、他方で、放送番組というのは、何しろ向こう側に視聴者がおりまして、やはり視聴者の需要でありますとか要望に応えるような番組であるということがこれまた他方でとても重要でございます。
そうなりますと、つまり聴いている方がとても関心を持つ、見ている方、視聴者の方々がとても関心を持つもの、それから、とても視聴したいと思う番組をいかに作るのか、そして、そのための要するに財源、それをどうやって確保するのかということがこれまた大変重要な、むしろそれが一番重要なことではないかと思います。
それは、こんなことを言うとおまえは無責任だとお叱りを受けるかもしれませんが、制度をこうつくると面白い番組ができるという、そういう因果関係はなかなかできないものでございまして、かといって、従来型の日本に対する関心の在り方というのは一体どこにあるかというと、やはりとても日本らしい、例えばアニメが面白いとか、あるいは時代劇風のものという、いかにもジャパネスクといったものが視聴者の関心を引くということもあるんです。逆に、そういうものばかり作っておりますとかえって日本に対する特殊な見方を植え付けてしまうことにもなりかねないところがございまして、やはり番組作りについてもいろいろバランスが必要なことだと思います。
なかなか適切な方向性、見出すことは難しいところかと思います。ここも、やはりNHKの基本的には自主性、自律性にまつところが大きいのではないかというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/8
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009・島田三郎
○島田三郎君 次に、放送と通信の融合についてお伺いいたします。
今回の放送法改正案では、NHKがインターネットを活用して放送番組を提供する業務を更に拡大させる改正も盛り込まれております。やはりインターネットはこれだけ普及しておりますので、放送事業者のネットとの連携は今後必要不可欠であると私は思っております。
諸外国の動きを見ると、英国、ドイツ、フランスなどヨーロッパの主要な公共放送ではインターネットでの同時配信にも取り組んでいると聞いております。一方、NHKについては、テレビ放送の同時配信についてまでは認めることは今回の制度改正でも見送られております。
NHKもラジオや国際放送など同時配信を実施している例はあるようですが、テレビ放送についてもそろそろ実施を検討するのが時代の流れではないかと私は思っております。この点について、長谷部参考人の御意見をお伺いしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/9
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010・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) これまた非常に重要な御質問をありがとうございました。
私も、これは鈴木参考人も先ほどそうおっしゃっておられましたが、将来的な方向性といたしましては、NHKの番組あるいはNHKが保有する、作成する情報がインターネット等を通じまして国民の方々の利用に供されるという方向性、これは間違いなく進んでいくところであろうかと思います。
ただ、先生御指摘の、海外の公共放送とそして日本のNHKとの間の一つ特徴的な違いは、海外の放送事業者というのは基本的にソフトの事業者なんですね。番組を作ると。それは、どのようなハード、どのような経路を使って視聴者の方々に届けるかというのは、これは基本的には自由であると、経営判断の問題であるということがございますので、なら、インターネットもその選択肢の一つであるということになっておりますが、NHKの場合は御案内のとおりハード、ソフト一体型の放送事業者でございまして、基本は放送波、衛星も含めてですが、地上波、衛星波を使って番組を届けるということを基本にNHKという制度自体ができ上がっております。
そのことからして、では、それ以外、インターネットについては一体どれだけのことができるのかということが逆に問題になってくるというところがございまして、日本特有の難しさがあるのかなと思っております。とはいえ、先生御指摘のような方向性自体は十分検討しなくちゃいけないところであると思いますので、今後も、私もその点どのような解決策があるのか考えていこうというふうに考えているところでございます。
どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/10
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011・島田三郎
○島田三郎君 今、長谷部参考人の方から非常に難しい部分があるということをお伺いいたしまして、ちょっと私もこの後の質問どうしようかなと思っているんですが、実はインターネットを活用した受信料のことをちょっとお伺いしたいと思っているんです。
これからどんどん進んでいきますと、若い方々、従前でもテレビ離れというような話がございまして、スマートフォンなどの携帯端末のコンテンツの習慣がどんどん進んでいきます。そうなりますと、今の現在の受信料制度というものが形骸化していくものと私は思っています。外国においては、例えばドイツなどでは、視聴端末の多様化を背景に、テレビなどの受信機の設置にかかわらず、税金のような形で世帯や事業者から徴収する放送負担金制度に移行したところもあります。
今後、長谷部先生の考え方をお伺いしたいのは、放送負担金の仕組みは、PCなどを含めた形で徴収する仕組みも参考になると思いますが、どのようにお考えになっておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/11
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012・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございました。これまた大変重要な御質問、論点でございます。
受信料につきましては、鈴木参考人も御指摘のとおり、とても難しい問題が多々ございます。従来、いろいろな国で受信料あるいはそれに相当するような法制度、公共放送の財務を支える制度がございますが、それについて言われておりますのは、日本でそうしておりますように、基本的にはテレビの受信機器を設置をした人がその公共放送の受信料を負担をすると。今そういう制度は実は論理必然のものとはなかなか言い難い。
と申しますのも、公共放送の番組の提供の利益を得ているのは実はテレビを見ている方々だけではないはずで、社会全体に広がっているはずだということも一方でございますし、他方では、先生御指摘のとおり、いろいろなルートを使って公共放送の番組を見るということもあり、また、テレビの受信機を設置しているからといって必ず公共放送の番組も見るとも論理的には、これまた論理必然とは言えないということがございます。とはいえ、他の例えば税金で公共放送の財務を賄うとか、あるいは、みんなコマーシャル、広告料で賄ってしまう等々というものに比べますと、こういう受信料という制度というのはより悪くない制度であると、レッサーイーブルであるというふうに言われている、これは恐らくどの国でもそうなのではないかというふうに思います。
先生御指摘のとおり、ドイツでは最近、一種の税金という形で公共放送の財務を支えるという、そういう判断をなさったわけなんですが、これもドイツの場合は、従来はコマーシャルも含めてということもございまして、なかなか日本とは違った公共放送の財務の歴史を持っているところでございます。直ちに日本でこれが参考になるというふうには私自身は実は考えていないところではございますが、将来、現在の受信料のままでいいというふうにはなかなか言えないところも出てくると思います。これまたいろいろな制度的な選択肢を考えながら将来を考えていかなくてはいけないところかなと考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/12
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013・島田三郎
○島田三郎君 以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/13
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014・難波奨二
○難波奨二君 民主党の難波奨二でございます。
今日は、参考人の皆さん、大変ありがとうございました。
簡単な質問から行いたいと思いますけれども、先ほど鈴木参考人の方から、番組規制とか番組編成の問題、編集の問題もあったわけですけど、私、常々不思議に思っているんですが、今民放の番組で深夜、これBSもそうでございますけれども、深夜になりますとショップチャンネルがございますよね。あれは、鈴木参考人、番組なんですか、広告、コマーシャルなのか、私、どうもこの線引きといいますか、不思議なんですよね。役所に聞いてもなかなか明快な答えが返ってこなくて。いつの時代からああいうショップチャンネルが増えて、民放としてはどういう目的、意図があって放映をされているのか、その辺を含めてちょっと知っておられることがあったら、この間の経過等もお教えいただいて、参考人のショップチャンネルに対するお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/14
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015・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問どうもありがとうございました。
今回の改正とは関係のないテーマかと思いますけれども、これに関しましては、前の放送法改正によりましてショップチャンネルの割合が多過ぎるのではないかという問題に制度的な対応はなされているかと思います。何のためにといえば、それは収益を上げるためにということだと思いまして。私は大学をいろいろと変わっておりまして、昔、金沢におりましたし、それから広島の大学に勤めていたこともございます。東京以上に地方のローカル局の場合にはいわゆるそういう物を売るための、まさにコマーシャルではなくて番組としてそういうものが放送されている、かなり多いなと、もう十年以上前になりますけれども、地方は多いなというふうに思っておりました。
そういう意味で、放送の公共性ということを考えますと、たとえ民間放送でもそういうショップチャンネルが余りにも増えるのはやはりこれは良いことではないというふうに思いますので、そういう意味で、本来これは放送事業者が自ら決めていくべきことなので余り法的に規制するというのはよろしくないかと思いますけれども、何らかの工夫をして、余りにもそういう番組ばかりにならないように、そういう制度的な対応は必要であるし、今のところそのために一定程度の対応は既にされているかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/15
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016・難波奨二
○難波奨二君 ありがとうございました。
引き続き鈴木参考人にお伺いしますけれども、自主規制の一つとしてBPOがあるわけでございますが、これの運用というのは実効性が今伴っているとお思いかどうか。問題点等あれば、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/16
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017・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問ありがとうございました。
私は、こういう自主規制の仕組みにつきまして、ドイツの制度などと比較して、放送及び活字メディアについてもいろいろと日頃考えております。それから、私自身、二年か三年の短い間でしたけれども、BPOの青少年委員会の委員を実際させていただいたことがございます。
自主規制ですので、いわゆる拘束力が、たとえ意見とか勧告が出されても拘束力がございませんから、見る見る何かそれの効果が上がるというようなことはなかなか難しいのではないかと思いますが、根気よく取り組んでいく以外に方法はないというふうに考えております。
例えば、青少年委員会ですと、いわゆるバラエティーの中で、子供がいじめのまねをするような罰ゲームですか、そういうのがよくタレントさんたちの間でなされるわけですけれども、タレントさんたちはそれ覚悟してやっているわけですが、それが学校などで子供たちにまねされてしまうという問題がありまして、私がその委員をしていた頃にもそういうことについて、民間放送のある番組に向けて意見がBPOから出された、青少年委員会から出されたことがありました。
ただ、その番組のそういう罰ゲームはなくなっても、それと似たような罰ゲームがまた別の番組とかあるいは継続番組で出てきたりしまして、特に青少年保護というのは線引きが非常に難しい問題でもありますので、BPOが意見を言って、そのときには少し、何というんでしょう、控えられても、また同じようなことが繰り返されているというようなことはやはりあるのではないかと思います。
ただ、ドイツにも報道評議会といいまして、これは活字メディアの自主規制のための組織なのですけれども、牙のないライオンだというふうにやゆをされたりしておりまして、活字メディアによる名誉毀損とかプライバシー侵害について読者から苦情が出た場合に、報道評議会から注意その他一定の制裁を科すことができるのですけれども、最悪の場合には、その評議会から出た警告文、この部分でプライバシー侵害とか名誉毀損があったというその文章を必ず紙面に載せるという、それを約束して報道評議会に加盟しているはずなのですが、その掲載義務を無視する新聞社なども出てきたりして、拘束力のない組織ですから無視されても非難する以外には方法がないわけですね。
これが自主規制のジレンマでして、しかし、報道機関のことでございますから、それを例えば公的な機関が、たとえそれが独立性のある委員会でも活字メディアに対してそこまでするのはやはり表現の自由との関係では問題ですし、放送の場合には活字メディアとは違ってもう少し強い規制があってもいいかなと思いますけれども、私の先ほどの意見にもありましたように、もし強制力のある規制をする場合には、その規制機関にはいわゆる普通の行政とは独立性、中立性のある、そういう組織が必要になるというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/17
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018・難波奨二
○難波奨二君 ありがとうございました。
長谷部参考人に最後お伺いいたしますが、これも法律に関係ないことで大変恐縮でございますけれども。
今回の一連のNHKの会長あるいは経営委員のメンバーの騒動がございましたけれども、これをちょっと見ておられまして、どういう問題点がその中にはあったと、やっぱりこういうこともこの改善で考えていかなくちゃならないよねと、そのような、ちょっとなかなかお答えしにくい質問ではありますけれども、少し御見識、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/18
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019・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございました。
これは公共放送の経営委員会でございますね。この経営委員会というのは、お互いに反対の方向を向いた二つの任務というのを持って、これはBBCにもやはり似たようなNHKの経営委員会に当たるボードがございますけれども、つまり、一方では、政府からの圧力が直接に公共放送に及ばないようにする、ある種のバッファーですね、防波堤としての役割も果たさないといけないと、他方で、公共放送がきちんと仕事をして、業務の適正性、公正性が図られるようにきちんと監督をすると、両方のなかなか両立させることの難しい任務を同時に果たさないといけないということでございます。
ですから、そういう意味では、こういった難しい仕事ができる方というのは世の中にもそうそう多くはないだろうと私は思います。数少ない人材の中で、しかもさほど報酬が高くないという、そういう仕事をしてくださいというのは、やはり人材を選択するという意味でもなかなか難しいことがあるというのは、それはそのとおりだろうと思います。
他方で、先生御指摘の問題点というのは、やはりいろいろな意味で、あるいは少なくとも若干の意味では偏りがあるのではないかという、そういう御指摘なのかなと、あるいは御懸念なのかなと思いますが、これまた一般論になってしまって恐縮ですが、例えば赤組と白組がいるというときに、赤組からも批判され、白組からも批判されるというのであれば、それはある程度バランスが取れているということかもしれませんが、赤組からは批判されて、白組からは頑張れと言われているようですと、そうでもないのかなということもございますので、そこはやはり、外側の人はいろいろ批判をされる、中にいる方々はそれを受け止めてなるべくバランスを取るように方向性を考えていただくと、そういうことではないかなというふうに考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/19
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020・難波奨二
○難波奨二君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/20
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021・若松謙維
○若松謙維君 公明党の若松謙維です。
長谷部参考人、鈴木参考人、大変御苦労さまです。
私から、まず長谷部参考人に、いわゆる指定放送対象地域について御質問いたします。
私の住まいが福島県郡山市でして、福島は今、福島テレビ、福島放送、福島中央テレビと、たしか三社あったと思うんですけれども、そういう中、結局、地方のやはり放送経営、事業が厳しいというのは、東京一極集中、これにも大きな原因があると思うんですね。
そういう中、今回、経営基盤強化計画、これ作るのはいいと思うんですが、これ全ての放送事業者がやらなくちゃならない話になると思うんですけれども、そういう中、各地方に行きますと幾つかあるということで、やはり競合関係もあるし、かつ経営も厳しいということは、やはり地方にとってテレビというのは非常に大事な公共放送ですので、何というんですかね、競争しながらも経営が厳しいということは、どういう方向性を、例えば、今後、総務大臣がこの強化計画を認定するにしても、やっぱり一つの見方というか判断基準が必要だと思うんですけど、どうあるべきだと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/21
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022・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございます。
御指摘のとおり非常に難しい問題でございまして、ただ、今回の改正案が想定をしておりますのは、先生御指摘のとおり、なかなか経営環境が厳しくなっていると、その中で放送事業者同士で視聴率も含めましていろいろ競争していかなくてはいけないと。ですから、なかなか苦しいところの中で公共的な業務も果たさなくてはいけないという中にあって、ただ、これはもう政府なり行政官庁なりが、あなたのところはちょっと苦しそうだからこういうことをしたらどうですかという、そういうことを言うような種類の問題で私はないというふうに考えております。
ですから、今回の提案もそうです。あくまで放送事業者の側が、例えば隣の県の放送事業者とのパートナーシップというものでお互い見付けてきて、パートナーになる方、放送事業者見付けてきて、かつ、お互いの間で仲よく話がまとまるというようであれば、その上で、さらに自主的にどんな経営の強化をするのか、かつ、経営の強化をしつつもそれぞれの地域の放送需要に対してはちゃんと応えるような、そういう番組の制作なり提供なりをするのかと、そういう計画をまずは放送事業者の方で作ってくださいと。これで大体問題はないでありましょうということを総務大臣の方でお認めになるようでしたらその認定をしましょうと、そういう段階を踏むことになっております。
ですから、あらかじめこういうものが物差しでなくてはならないということを最初から決めていくという、そういう性質のものでは恐らくないのではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/22
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023・若松謙維
○若松謙維君 今、長谷部参考人のお話聞きながら、この強化計画ですか、これ策定することによって、経営的な課題、例えば経営の継続性という問題があると、そのときいろいろと知恵を出して、さっきの広域連携とかそういうことをしっかりやりなさいという、そういうことだと思うので、私もそう思います。頭の整理できましたので、ありがとうございます。
その上で、引き続き長谷部参考人に、先ほど、日本の放送ですか、イギリスに近いと。私も、もう二十数年前ですが、イギリスに四年おりました。そのときには民放二社とBBC系二社、四つしかないので、はっきり言って、特にBBCって大変お堅い番組ですから、もうテレビ見ても何か敬遠してしまい、そこでビデオ屋さんに行くという、そういう構図だったんですけれども、日本のNHKと民放の数も含めてバランスというのは、先ほど質は高いというお話ですけれども、民放とNHKのバランスという観点からはどう評価されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/23
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024・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) 確かに、イギリスと日本はそうそう簡単に比較ができないところがございますが、私ちょっとぼんやりと認識をしておりますところでは、イギリス全体のGNPというのは南関東のGNPと大体同じぐらいだろうと思います。
したがいまして、経済規模がそもそも違います。ですから、そういう経済規模でございますので、その社会によって、受信料をそこから徴収をして番組を作っていくということでございますけれども、作ることのできる番組の財務的な基盤になる経済規模が相当違いますので、そういう意味では、日本に比べますとイギリスの方がチャンネルの数が少ない、BBCは地上波二つ、民間放送についてはITVとチャンネル4であるというのはまあまあそれほどおかしくないといいますか、不思議ではない数ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/24
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025・若松謙維
○若松謙維君 それでは、鈴木参考人にお尋ねしますが、先ほどテレビショップの質問がありました。
私も、いわゆるこの放送に関して、放送法、あと今、何ですか、NHKで、フェイスブックですか、やり取りしながら、ネットナビゲーターですか、という番組もありますし、私は、放送法、電気通信事業法、これをどう理解したかということで、放送法は瞬間的ないわゆる情報を提供すると、電気通信事業法の方はデータベース化できるというんですか、オンデマンド化できるというんですか、というふうに理解しているんですけれども、で、そこをつなぐ電波法があると。
ところが、御存じのように、今クロスしていますよね。そうすると、現在の、質問がちょっと難しいかもしれないのですが、放送法と電気通信事業法と電波法、この三法ですか、これを統合というか何というか、再編成というか、そんなことが今の時代には必要ではないかという疑問、問題意識があるんですけれども、それについてどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/25
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026・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問どうもありがとうございました。
いわゆる放送と通信の融合に法制度がどのように対応すべきなのかという、そういうテーマではないかと思います。
それにつきましては、二〇一〇年に放送法、電波法、その他かなり大きな改正がなされまして、それまで特に放送に関しては有線に限定の法律とか幾つかありましたものを大きな放送法一本に取りまとめたというのが二〇一〇年改正だったと思うのですけれども、その際、もっと大きく全部まとめてしまおうという、そのような案もあったかと、情報通信法構想とたしか呼ばれていたと思うのですけれども、なかなかこれ一つにまとめるのは多分非常に手間暇の掛かる作業だと思います。
そういう意味で、一つに完全にまとめようといたしましても、それによって本当に、それが何か大きな効用をもたらすかどうかに関しては私は疑問を持っておりまして、そういう意味で、しばらく二〇一〇年改正のこの仕組みの中で、放送と通信の、特にインターネットの普及の様子をしばらく見た方がよいのではないかと。すぐに一つにまとめるというようなことが必要だというふうには私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/26
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027・若松謙維
○若松謙維君 了解しました。
あと、先ほど放送は政府広報になっちゃいけないと。でも、さっき和食とかビジット・ジャパンですね、どんどんPRしてもらいたいわけですよ、国策として。そういう面の日本広報というんですか、日本を広報するという意味ではどんどんやるべきじゃないかと思うんですけれども、鈴木参考人、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/27
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028・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 国際放送についてですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/28
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029・若松謙維
○若松謙維君 そうです、国際放送です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/29
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030・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 国際放送で世界でも高い信頼を得ているのはBBCだと思います。そのBBCが国際放送としての信頼を得ているのは、いわゆる政府からも一定程度の独立性というのを守られていて、その意味で、誰かの意見ではなくあくまでBBCが報道すべきだと選んだことを報道しているという、そういう意味で情報の信頼性があるというふうに考えられているからです。
もしも日本の国際放送が、NHKとして報道しているのではなくて、日本のいわゆる政府の立場を伝えているだけにすぎないとすれば、先ほど長谷部参考人から視聴者が何を見たいかというのが大事だという御指摘もございました。日本の政府の立場なら別に国際放送を見なくても新聞報道とかそういうのでも分かるから、そういう意味で国際放送、いわゆる魅力というか信頼性が低くなってしまっては元も子もございませんので、そういう意味で、日本の魅力、例えば先ほど長谷部参考人も御指摘のアニメとか、あとカワイイとか、私、ドイツやフランスなどでいわゆるコスプレというんですか、若い人たちが盛んにしていたり、あるいは漫画のことを隣の見知らぬ青年から質問されたりしたというようなこともございまして、日本の魅力を世界に伝えることももちろん大事だと思うのですけれども、そういう宣伝のメディアだというふうに思われるようになっては、それは本末転倒だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/30
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031・若松謙維
○若松謙維君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/31
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032・寺田典城
○寺田典城君 寺田でございます。よろしくお願いします。
長谷部先生、鈴木先生、大変勉強になりました。
それで、両参考人にお聞きしたいと思うんですが、放送法にはおきてというものがあるわけで、それを良識的に守るというような形になるんですが、一つは、大きい意味でいうと知る権利というような形でどのように情報を確保するかということになるんですが、私、今心配しているのは、先ほどもちょっと出たんですが、NHKの籾井会長ですね、あの人の性格というのは、右向けと言うと右向けという。これは、右向けと言われると、消防庁だとか警察だとかそれから自衛隊だとかというのは右向け右というのはやるんですよ。そういう性格に見えるんです。ですから、そういう人がトップになって良識が守られるかというのをちょっと心配しているんですが、両先生の御意見を。人事を見ても右向けスタイルなんです、あの人は。それをちょっとお聞きしてから本論に入りたいと思います。ごめんなさい、ひとつ教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/32
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033・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) 大変難しい御質問ありがとうございました。
私自身は籾井会長と例えば面と向かってお話もしたこともございませんし、また、遠くからいろいろなニュース、報道を経て間接的に情報を得ているというだけでございますので、お人柄も含めましてあれこれということを直接申し上げることはなかなか難しいですけれども、ただ、先生が御指摘のような御懸念、御批判が世間にあるということはそれは恐らく事実であろうと思いますし、公共放送の会長たるもの、そういう批判をなるべく受けないように行動をしていくべき、言動にはもちろん気を付けるべきものであるというふうに私は考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/33
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034・寺田典城
○寺田典城君 どうも。
鈴木参考人にもお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/34
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035・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問ありがとうございます。
最近、私、ある月刊誌に、放送の政治的公平性を強く要求すると、かえってそれは批判するなと言っているのと同じだというふうな話を書きまして、そのきっかけになったのは多分、籾井会長が公平性を個々の番組でやるべきだというような発言をしたという報道がなされ、その後、発言の修正をされたというふうに伺っているんですけれども、それがそのような原稿を依頼された一つのきっかけだったのではないかと思います。
一般論として、NHKにおいて確かに会長は番組の最終責任者ではあるのですけれども、実際に番組を作っているのは現場の人たちなわけでして、そういう意味で、よほどのことがない限り、会長どころか局長クラスの人たちでさえ番組作りに口を出すというのは普通はないことのはずですし、番組作りの基本方針を放送法の本来の要求以上に会長として示すということなどは本来はあってはいけないことではないかというふうに思っております。そういう意味で、現場を萎縮させるような発言は本来会長は控えるべきでして、むしろ会長としては、現場の自律、内部的自由、放送人の内部的自由ということを私たちは言うんですけれども、内部的自由というのは、たとえ経営者との関係でも放送を作る人の良心を守っていかなければいけないという考え方でございます。
本来、会長の責任は、そういう現場の自律とか放送人の内部的自由を対外的な圧力から守っていく、もしも圧力が外から掛かったら自分が矢面に立って防いでいくというのが会長の本来の役割だというふうに考えておりますので、是非、今の籾井会長にも私のこういう考えに耳を傾けていただけたらと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/35
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036・寺田典城
○寺田典城君 本当に無理な御質問して、済みませんでした。今後はそのような質問は余りしないようにします。
それで、認定放送持ち株会社の認定の要件の緩和ということになっているんですが、十二地域特例というような形で。現実問題として、キー局がほとんど八割番組編成しておって、地方の場合は、あと二割が地方で作っているとか一割作っているとか、そういう程度なんですね。で、地方自治体なんかはよく、地方番組をもっと強力にお願いしたいということで公共団体も応援したりなんかしているんですが、何というんですか、ここまで、マスメディア集中排除規制というのは総務省は持つ必要はあるのかなと思うんです。もっと規制緩和した方がいいんじゃないのかなと思うんですがね。
多チャンネルの方がやはり視聴者にとっては非常に幸せなことですから、そういう点ではどうお考えになりますか。鈴木参考人の方からお聞きしたいと思います。私は八分までしか時間ありませんので、もう三分しかありません。一分ぐらいで答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/36
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037・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) はい。
規制緩和というのは、放送事業者の経営面では非常に良いところがあると思うんですけれども、うっかり規制を緩和しますと、多元性、多様性、地域性という放送法制が今まで目指してきたことにマイナスになってしまうというおそれがあるわけですね。そういう意味で、放送事業者に自由を与えるということが必ずしも知る権利にとってプラスになるとは限らない、だからそこが一番の放送法制の難しいところでございまして、そういう意味では、現状をよく確かめ、経営状態その他、そういったことをよく把握された上で、両方の要請、規制緩和の要請とそれからいわゆる放送の公共性と呼ばれるものを低下させないための配慮と、この辺を全て総合的に考慮をして、今回このような改正提案が出されたものというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/37
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038・寺田典城
○寺田典城君 放送と通信の融合だとかいろいろあるんですけれども、その中で、これ、NHKが国際放送もっと力を入れていきますというような形で、CATV事業者への提供もしますということで、恒常的な業務、任務にするということなんですが、NHKは、JIBというNHKの子会社にそれを全部、番組を制作させているわけなんですよ。それが果たして適正であるのかないのか、競争の原理はどこで働くのか、選択肢は何があるのか、その辺を長谷部参考人からお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/38
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039・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) 先生御指摘の点はこれまた非常に難しい問題でございまして、これはとても商売になりそうであると、ですので、いろいろな方がどんどん参入をして、お互い競争して切磋琢磨したいというそういう業務でございますと、先生のおっしゃるようなお考えでうまくいきそうなんですが、この国際放送、特に外国に向けて日本で制作をした番組を売り出していこうということは、なかなかそう簡単には収益上がりそうなというそういうものでもございませんので、まずはそこはNHKがある種イニシアティブを取ってもらいたい。
ただ、NHK自身がそれにどれだけ関与するのかということになりますと、何しろ基本は国民が受信料を払って番組を作ってそれを国民に還元をするという話のはずでございますので、果たして外国向けの番組についてNHKは直接ということで本当にいいのかどうか、そこもなかなか難しい問題がありそうだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/39
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040・寺田典城
○寺田典城君 どうもありがとうございました。
はい、右向け右。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/40
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041・渡辺美知太郎
○渡辺美知太郎君 みんなの党の渡辺美知太郎です。
今日は、長谷部参考人、鈴木参考人、本当にありがとうございます。
まず、長谷部参考人に伺いたいことがあります。
島田先生もおっしゃっていましたが、国際放送についてですが、私は総務委員会で何度も何度も国際放送についてちょっと質問させていただいたことがありまして、例えばこの国際放送、NHKのワールドTV、たしか交付金が大体、税金が二十四億円ぐらいであると。それに対して、例えばほかの欧米諸国、かつてのBBC、今税金が多分十倍ぐらい多かったような気がいたします。
この予算規模について、NHKワールドTVの二十四億という金額がほかの国に比べて少ないことは明らかであるんですが、これについてどういった方向でいった方がいいのか。例えば、NHKはNHKで、この金額で、限られた予算で、逆に税金余り使わないで優れた作品を作った方がいいのか。それとも、例えばBBCみたいに、ある一定時期まではある程度の予算を投入して、時期が来たら完全に交付金をなくした方がいいのか。そういったことがもしありましたら、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/41
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042・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございました。
これは、ある程度までは、何といいますか、経路依存性のある問題でございます。これは、先ほど鈴木参考人も御指摘のとおり、BBCについては一種、国際的なグローバルなブランドとしてもう確立をしております。これは一つは、やはり第二次大戦中のBBCの国際放送の在り方というのが、必ずしもイギリスにとって有利でない情報、戦争の結果等についてイギリスや連合国側にとって有利でない情報であってもやはり正確にそれを報道するという、そういう歴史や経験を踏まえた上でそういうブランドを要するに確立をして、それで世界各国でやはりあのBBCの放送を聞きたいと需要が拡大をしてきたという、長年にわたる歴史と経験の結果としての蓄積がございます。
その状態を前提といたしますと、やはり国費を投入してということもそれなりに合理性があると思うのですけれども、他方で、これまた鈴木参考人がおっしゃっていた点ですけれども、これ国費を投入してということは、やはり外側から見たときにその政府の希望するような、望んでいるような番組あるいは報道内容になったりはしないのかという、そういう懸念を持たれかねないところがございますので、必ずしも国費を増大させることがいろいろな意味で良い結果になる、直接につながるというわけではないのかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/42
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043・渡辺美知太郎
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。
まあBBCは確かに歴史がありますし、ドイツの例えばドイチェ・ベレなんかもたしかそれなりに予算を取っていると思うんですが、そういったヨーロッパ、アメリカの国際放送に比べると、やっぱりNHKはまた違う性質を持ったものであるから、今の段階ではそんなに予算規模のことは考えなくてもいいということでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/43
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044・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) 確かに違うところはいろいろございます。
イギリス人というのは、やはり世界各国植民地を持っていろいろなところでコロニーをつくって生活をしておりますし、ドイツ人もイギリス人ほどではございませんが、やはり世界各国それぞれいろいろなところでドイツ人住んでいるというところがございます。それに比べますと、日本はそれなりに経済発展はしているとはいえ、どれほどの需要があるかという点におきますと、そこはある程度、程度の差はあるというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/44
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045・渡辺美知太郎
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。
引き続きちょっと質問したいんですけれども、先ほど長谷部先生、日本のテレビは質の高いものが多いとおっしゃっていました。ちょっとこれは先生の御専門ではないのかもしれないのですが、私は以前にこの委員会でも質問したんですが、日本のテレビ番組の輸出額というのが韓国に比べるとたしか三分の一程度しかない、金額だと六十億ぐらいだったと思うんですが、もしこのテレビ番組の輸出戦略について何かお考えがありましたら是非ともお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/45
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046・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございます。
やはり国内で、とても、要するに国内の需要にきめ細かく手を掛けて応えている番組作りをしているということは、必ずしも海外の市場にアピールをする番組になっているということにはならないということだろうと思います。
というのは、イギリスの場合は、何しろ英語圏というのは世界各国広がっておりまして膨大な人口があります。それに対しまして、日本は、やはり日本語を主にしゃべっている社会というのはまずは日本だけでございまして、やはり日本の視聴者に対する需要に応える、きめ細かく作るというと、そこはやはり和風の日本テイストのいかにも日本という番組になりますので、それを海外の市場に向けてどうやってアピールしていくのかというのは、それはやはりイギリスに比べますと一工夫も二工夫も必要になってくるのかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/46
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047・渡辺美知太郎
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。
続きまして鈴木先生に伺いたいんですけれども、先ほどおっしゃっていました番組内容の質の保証と申しますか規制と申しますか、先生がおっしゃった芸人の方が子供のいじめを誘発するような、確かに眉をひそめる番組があることは私も承知をしております。
しかし一方で、私、ちょっと幼児教育をやっていたものですから、子供というのは本当にもういたずらの天才なんですね。もう大人が思い付かないようなことをして大人を困らせると、そういったことに関しては彼らは天才的だと思うんですが、例えばいじめを防ぐために規制を掛けていっても、まず一つは切りがないんじゃないかという懸念がございますし、あと、余り厳しくし過ぎてしまうと今度はテレビの番組の創造性をストップしてしまうんではないかと、そういったちょっとある種ジレンマのようなものがあると思うんですが、そういった観点からだと先生はどのようなお考えをお持ちか、ちょっともしあれば教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/47
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048・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問ありがとうございました。
私、放送の中身に関しましては放送事業者の自主性、自律性に基本委ねていくべきだというふうに考えておりますし、特に民間放送の事業者に関しましては、まあNHKは少し違うとは思うのですけれども、先ほど私の意見の中で、民間放送との関係では、もはや番組編集準則は法律の中に書かなくても自ら作っている番組基準で十分ではないかという意見があるというふうに、そういう意見があるというふうにお話をしたのですけれども、実は私も二〇〇〇年頃に出した本の中で民間放送に関してはもうそういう方向に行ってよいのではないかというふうに述べておりまして、そういうことからしますと、私は、現在の日本において民間放送の番組の中身にいわゆる法的な規制を掛けて、その規制に違反したから何らかの制裁をするというような、そういうことは控えるべきではないかというふうに考えております。そういう意味で、自主規制のBPOに期待したいと。
実際、先ほどは青少年委員会の自分の経験だけをお話ししましたけれども、二〇〇七年につくられました放送の倫理検証委員会の方はかなり強い権限も持っておりまして、ここの活動は放送事業者からは非常に重視されていますというか、影響力というか、効果を私は上げているし、時に効果が効き過ぎているのではないかと思うことさえあるほどでして、そういう意味で、この自主規制の仕組みに更に工夫を重ねていくことが放送事業者の表現の自由を守っていく上では大事なことではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/48
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049・渡辺美知太郎
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。
あと、もし時間があればちょっとこれも聞きたいんですけれども、先生が第三者機関による事後的チェック体制の整備ということをおっしゃっていまして、ただ、国家に代わって第三者機関がしっかりチェックをするというお考えであると思うんですが、なかなかこれ人選という意味では結構難しいというところもあると思うんですね。つまり、同じ価値観の方が選ばれた場合に、例えば厳格な方が集まった場合にちょっとつまらない番組が多くなるんじゃないかとか、あるいは、かなりカジュアルな方が多くなった場合、かなり質が低下するんじゃないかとか、あるいは逆にいろんな方向の価値観の方を合わせた場合に第三者機関の中でもう神学論争みたいになっちゃって全然機能しないんじゃないかと、そういった問題があると思うんですが、もし強力な第三者機関を設置する場合にそういった人選はどのようにすれば割と公平なチェックができるのか、ちょっとその辺り、もしお考えがあればお尋ねしたいんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/49
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050・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) ありがとうございます。
私自身としましては、そのような独立性のある機関であっても、法律に基づいて設置されて番組の中身を監督、チェックするということになりますと、これはたとえ制度的に独立性をつくっても、その人選の関係で政治的な影響力が間接的に行使されることもありますし、御指摘のとおり、誰がその委員をやるのかとか、あるいは事務局は誰が担当するのかということも含めて、実際にきちんと独立性、中立性のある監督機関の運用ができるかということには懸念を持っていますので、私自身としてはそのような方向の制度改革は反対だと思っております。
例えばアメリカとかあるいはドイツなど、そういう監督機関の人選が一定程度バランスが取れているのは、きちんと二大政党制が確立されている中で、政党などの影響力もバランスが取れるように、そこに工夫が凝らされているし、それを支える社会の実態もあるからなんですね。そういうことが果たして日本で今、仮に似たような制度をつくったとして、うまくバランスの取れた運用ができるかどうかについて私はかなり大きな危惧を抱いているため、このような制度改革はプラスの効果は現実には低いのではないかというふうに考えているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/50
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051・渡辺美知太郎
○渡辺美知太郎君 ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/51
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052・吉良よし子
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
参考人の皆様、今日はありがとうございます。よろしくお願いします。
本改正案では、地域経済の低迷などに起因して経営悪化していると認められる放送事業者に経営基盤強化計画を作らせ、コスト削減につながるとして異なる放送対象地域においても同一番組を放送することなどを認めるとしています。
そもそも、放送による表現の自由をできるだけ多くの者に享受、享有されるよう、放送の対象地域については、文化的一体性や生活圏としての一体性が持てるようにとの配慮はなされてきたと思います。だから、放送事業者においても、その理念を生かすために、地域に密着した番組作りのために日々努力されており、私は、そうした地域の放送事業者を応援し、ローカル番組比率が向上するような手だてこそ必要と考えますが、ここで長谷部、鈴木両参考人にお伺いします。
ローカル局の維持発展、放送における地域性の確保のために必要な方策とはどのようなものとお考えか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/52
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053・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございました。
先生御指摘のとおり、地域密着型の放送サービスというのは大変重要でございます。地域の日常生活のためにも、あるいは災害時等の緊急時においてももちろん重要でございます。その観点から申しますと、実は今回のこの経営基盤強化というのは、主として念頭に置いているのはやはりラジオ局のことなんですが、ラジオ局というのはテレビ局に比べますと実はローカルの番組制作比率は比較的高いというふうに言われておりまして、それは恐らく事実だろうと思います。ですので、これはなぜなのかといったら、ラジオの聴取の形態とテレビの視聴の形態、どういう情報を取ろうとしているのか、あるいは何を望んでいるのかというのは、やはりラジオとテレビでは恐らく違うところがあるだろうと思います。
ですので、私の考え方ですと、少なくともラジオに関する限りでは、やはりそれぞれの放送事業者の自主的な判断あるいは制作の方針というものを尊重するということが、むしろ先生がおっしゃるような地域の利益に貢献するような番組作りにつながってくるだろうと。そういう意味でも、やはり地域の放送事業者の自主性、自律性をなるべく尊重していくという、そういう方向性が必要なのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/53
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054・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問ありがとうございました。
外国の例ですと、地域性を保つために例えば地方番組割合などを定めるというような方法もあるかと思いますが、このような方法を取るためには、先ほどお話ししたきちんとした独立性のある監督機関の下というのが条件になりますので、日本の今の仕組みでそういう中身に関わるような制度を法律で義務付けるのは難しいのではないかというふうに思います。
そして、現在既にラジオ局が存在しているわけでして、その数をまず減らさないということが大事だというふうに考えられているので、今回、特例としての異なる地域でも番組を同じにしていいという、そういう対策が考えられたと思っております。一度こういうメディアの集中というのは進んでしまうと、もう後戻しをするのは非常に難しいんですね。減ってしまったラジオ局、あるいは減ってしまった新聞社、そういう数を政策的に戻そうとしてもそれはなかなかできません。そういう意味で、多様性、多元性、地域性を少なくとも現状のまま守ろうとすれば、数を減らさない工夫をするということが非常に重要になってくるのではないかというふうに思います。
これはもうあくまで私のアイデアですけれども、例えば、今の受信料はNHKのためというふうに位置付けられていますけれども、放送制度全体のためのそれを支える資金なのだ、財源なのだというふうに捉えれば、そういう地域の局に対してその受信料の中から何かそれを支えるような仕組みをつくるというのも一つかなと思いますし、例えば、先ほど地方で優れたドキュメンタリーがたくさん作られているという話をしましたが、その財源を使って、ドキュメンタリーの制作には一定の、それこそ審査委員みたいなものは必要かと思いますけれども、ドキュメンタリー制作には助成をするとか、あと、私、昔、郵政省の時代に放送政策の研究会のメンバーだったことがあるのですが、そのときは、ネットワーク全体で地方を支えるという発想をしたらどうかということを個人的には考えたことがございまして、テレビですと、いわゆる複数のネットワークがある中で地方局をキー局が支えていくというようなことも一つの方法として、まさに経営のことですので法律で義務付けるということは難しいとはいえ、中身に関わらないように工夫をすることでそういう政策をしていくこともできるのではないかなと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/54
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055・吉良よし子
○吉良よし子君 ありがとうございます。
では、長谷部参考人に伺います。
マスコミ集中排除原則というのは、戦前の反省に立って、一人の者が所有したり又は支配したりすることができる基幹放送局の数を制限することで、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにするものだと考えますが、ローカル局の経営悪化に伴い番組制作機能が低下したり、また東京キー局への集中がこれからも進んでいけば、一ローカル局の存続という問題にとどまらず、先ほどの話にもあったネットワーク全体、民放系列のネットワーク全体の力を弱めることになり、その原則を根底から揺るがす危険もあるのではないかと考えますが、この点はいかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/55
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056・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございます。
マスメディア集中排除原則、特に放送に関する複数の放送局の支配に関しては制約を設けると、非常に重要な原則でございまして、それが鈴木参考人も御指摘の放送の多様性、そして多元性を確保することにつながっていく非常に重要な原則でございます。
ただ、私、冒頭の所見で申し上げましたとおり、放送に関する法制度をつくっていくときには、一つの原則だけを貫徹をするということはなかなか難しいところがございます。と申しますのも、やはり放送事業も一種の企業体でございますので、やはり経営が成り立たないことにはサービスも維持ができないということがございます。
したがいまして、これはどちらかを一〇〇%というよりは、どちらかというと衰退をしていく傾向のある地域におきまして、いかにして既存の、これまた鈴木参考人がおっしゃっていましたけれども、既存の放送局の数をなるべく減らさないようにしていくと。そのことが、少なくとも中長期的に見たときには、その地域に密着した放送サービスの確保、持続性につながっていくという、そういう考え方で今回の提案がなされているというふうな、そういうことで御理解をいただければというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/56
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057・吉良よし子
○吉良よし子君 最後になると思いますけれども、また長谷部参考人に伺います。
先ほども、ラジオでは特に大規模災害時に大きな役割を果たしているということのお話がありました。一方、放送ネットワーク強靱化に関する検討会の中間取りまとめの中では、AMラジオの送信アンテナの老朽化とともに、AMラジオが使用している中波の特性上、海岸や河川敷などに送信所が置かれていることから、その脆弱性というものが指摘されております。ところが、その送信アンテナの更新には多額の費用が掛かるため計画すら立てることが困難だというお話もありましたけれども、今度の法案では経営基盤の強化というものは掲げられていますが、このことだけでこうした老朽化対策などについても対応できるものなのかどうかという点、お答えをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/57
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058・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうも御指摘ありがとうございます。
御指摘のとおりでございまして、特にマスターアンテナの大きな災害に対する脆弱性というのは非常に重要な論点でございますが、実は今回のこの経営基盤強化を通じまして、複数の放送対象地域を対象とする一つのマスターアンテナを新規に創設をすると、造り上げるということも、これまたそうしなさいというふうに政府や総務省が言うわけではございませんで、あくまで地域の放送事業者の間のパートナーシップでそういう計画を立てることも可能になるということでございますが、これも先生御指摘の問題に対する解決策の、実質的な解決の一つにはなり得るのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/58
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059・吉良よし子
○吉良よし子君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/59
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060・又市征治
○又市征治君 社民党の又市です。
今日は、両先生、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。
私まで回ってきますと、この法案などでほとんどダブってくる質問ばかりなんで、大体お聞きしたように思うんですが、ダブらない格好で幾つかお聞きをしたいと思います。
まず長谷部先生にお伺いしますが、事前に長谷部先生と法政大学の杉田先生の対談、若干読ませていただきました。放送法の一部改正案とは直接に関係はないんですけれども、その中で先生の御発言で、日本の法制は内閣がイデオロギー的に極端な人事を行うことを想定していません、内閣がその気になれば独裁に近い状態もつくれないことはないとおっしゃっておるわけですが、もちろん先生がそのことを是認されているわけではないことはもう言うまでもありませんけれども、この独裁に近い状態がつくられないための放送の責務というものは一体全体どのようなものだというふうにお考えなのか、まずお伺いさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/60
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061・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございました。
こういう独裁といいますか、あえて英語を使いますとティラニーということになりますけれども、そういう方向に向けて民主政治が漂流していかないようにするというのは、何よりも大事なのはやはり世論の態度だろうと思います。そして、世論を形成する上におきましてマスメディアというものが非常に重要な役割を果たしていく、これも御案内のとおりでございます。
ですので、これにつきましてはいろいろなメディアがいろいろな構えで世論の形成に対して貢献をしていくことになりますが、放送事業の場合につきましては、これはまた鈴木参考人冒頭の所見で御指摘のとおり、番組放送準則に則した公平性、そして論点の多角的な解明と、その基本的な原則に沿った番組作りに従った特に報道番組の提供というものが非常に重要ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/61
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062・又市征治
○又市征治君 ありがとうございます。
もう一点、今回の放送法の改正によって今後テレビ放送とネットとの関係が密接になっていくということだろうと思うんですが、その際、NHKは公共放送としてどのような役割を果たすべきだというふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/62
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063・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) これは、そういう御質問、前にも承ったように記憶をしておりますけれども、やはり放送とインターネットを典型例とするような通信との融合というのは、これからも進んでいくことはあっても後退していくことはないだろうと思います。そして、何しろコンテンツの制作という意味では放送事業者は非常に大きな力を持っておりますので、ネットを通じたそういった非常に豊富で内容の優れたコンテンツの提供というものは、今後放送事業者はどんどん行っていくことになるのではないかと思います。
ただ、NHKに関しましては、これはまた先ほども若干触れましたけれども、日本のNHKというのはハード、ソフト一体型の公共放送事業体という非常に特殊な経営形態を取っていることから、そのことから、やはり受信料を使った番組の制作とその提供というものが果たしてインターネットを中心とした通信としてどれだけ提供ができるのか、この点についてやはり特殊な配慮が必要になってくるということがございます。
その点も含めて考えた上で、やはり基本的な方向性としては、NHKもインターネットを中心とした通信網を通じて豊富な情報を提供していくべきであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/63
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064・又市征治
○又市征治君 ありがとうございました。
そこで、鈴木先生に二問ばかりお伺いをしたいと思うんですが。
まず初めに、大変ドイツの問題もお詳しいようでございますので、ドイツの連邦憲法裁判所が、公共放送である第二ドイツテレビの内部監督機関のメンバー構成について、政治からの影響が大きいとして違憲判決を下したことに関連して、先生は新聞に、日本でも公共放送への介入がよりしにくくなるような法なり制度とその運用の在り方を見直すべきではないかというようなコメントをお寄せになったと思うんですけれども、大変これは大きなテーマだろうと思うんですが、この問題について、先生としては、一定のお考えなりイメージというのをお持ちであれば、これについて御意見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/64
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065・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) ありがとうございました。
ドイツの場合は、大臣が公共放送を監督するというよりも内部に監督機関を置いて、そこが合議制になっております。ドイツでは憲法判例が放送制度を戦後つくってきたと言われるほどにたくさんの憲法判例がありまして、その中で憲法裁判所が重視していますのが、組織を国家から独立させて政治や行政の口出しができにくくするという、そこがすごく重視されております。
ところが、その内部監督機関の委員の中に、これは、第二ドイツテレビは全国放送でして、連邦政府や州政府の代表、それから政党の代表なども一部含まれていて、多過ぎるのが憲法違反だと今回判決が出ました。政治の影響力を少なくとも三分の一以下に人数で制限すべきだというのが多数意見でございまして、三分の一でも多過ぎるという少数意見も八人中一人付いていたほどでございます。
そのようなことを横目に見つつ、日本の場合、今回NHKの制度を変えてはどうかとか、そういう提案も昨今なされているというふうに思いますけれども、私は、今の段階では制度を多少変えても、先ほどの長谷部参考人の新聞の発言ではありませんが、法制度というのはそんな極端な使われ方をするということを想定せずにつくられているんですね。特に放送とか教育とか文化に関わる分野の場合、良識のある人が良識のある使い方をするだろうと、そういうことを前提に制度設計がなされております。とすると、使う人のまさに良識、それが求められるわけでして、その経営委員の人を選ぶ段階とか、そういうときに極端な人選をしないということが何よりも大事になってくるというふうに考えます。
そういう意味で、新聞のコメントでは制度と運用と言っているのですけれども、現時点では運用の仕方がまずいということをもっとはっきり野党の皆さんが批判され、より、もう既にされているとは思うんですけど、批判すること。さらに、やはり市民の声、先ほど長谷部参考人が世論が大事とおっしゃいました。視聴者がはっきりとそういうことに対する批判の態度を示していくということ、その繰り返しがこの制度の運用の在り方を改善していくというふうに考えているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/65
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066・又市征治
○又市征治君 大変どうもありがとうございます。
それじゃ、時間が余りありませんので、もう一問だけ簡潔にお願いしたいんですが、資料によれば、ドイツの公共放送では、インターネット関連業務は必須業務として位置付けられて、同時配信も無料で行われているようですけれども、この公共放送をめぐる環境もドイツと日本とでは大分違うんでしょうけれども、ドイツにおける公共放送のインターネット活用状況から日本がドイツから学ぶとすればどういうことがあるか、簡潔にお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/66
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067・鈴木秀美
○参考人(鈴木秀美君) 御質問ありがとうございます。
ドイツでは、先ほどお話しした憲法判例の中で公共放送が社会にとって非常に重要なものだと位置付けられておりまして、そのような公共放送が放送と通信の融合に対応するために、二〇一三年度から放送負担金という、テレビを持つか持たないかに関係なく、先ほど長谷部先生の発言の中に、社会の中で生きていればテレビを見ていなくても公共放送の恩恵を必ず大なり小なり被っているはずだと、こういう理由から、全ての世帯それから事業者に対して放送負担金が課せられることになりました。そういう制度改革を受けてインターネット同時再送信というのが始まったというふうに認識しております。
果たして日本でこれが社会に受け入れられるかどうかというところが問題だと思います。ドイツでも反対する人たちがおりまして、例えば、これは憲法違反だといって、見ないのに負担金を払うのは不平等だというような主張をし、憲法裁判を実際にし始めた人もおりまして、今のところ結論ははっきり出ていないのですけれども、ただ、これは少数だというふうに聞いています。
日本ですと、もしも仮に日本がドイツのようにすると、テレビをそもそも見ていないのに負担金なんてとんでもないという声はドイツ以上に大きくなるというふうに私は思っておりまして、この辺、どういう制度設計をするかはまさに世論を見つつ先生方にお考えいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/67
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068・又市征治
○又市征治君 どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/68
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069・主濱了
○主濱了君 生活の党の主濱了であります。
本日は、貴重な御意見賜り、誠にありがとうございます。私からも感謝申し上げます。
早速質問をいたします。
先ほど吉良委員からも質問あったわけですが、マスメディア集中排除原則について長谷部恭男参考人にまずお伺いしたいと思います。
本法案の提案理由の中で、実は新藤総務大臣から、地域の経済の低迷等により、既存の株主が放送事業者の株式を保有し続けることができない事態が発生していることを踏まえ、認定放送持ち株会社の下で放送事業者の議決権保有が可能な範囲を拡大することとしておりますと、こういったような説明がありました。地方の放送局を守るためにはこの認定放送持ち株会社の下で放送事業者の議決権保有が可能な範囲を拡大すること、今の時点では前向きに検討しなければならないのかなというふうに思っているところであります。
一方、先ほどもありましたけれども、少数の者により複数の基幹放送事業者が支配されることを防ぎ、多くの者、要するに国民だと思いますけれども、この国民が表現の自由を享受できるようにするため、複数の基幹事業者に対する出資を制限しているマスメディア集中排除原則があるわけであります。
流れを見ますと、平成十九年に行われました認定放送持ち株会社制度の創設、そしてこの度の認定放送持ち株会社の認定の要件の緩和と、マスメディア集中排除原則が私には緩められてきていると、こういうふうに受け取っております。
そこで伺うわけですが、今後、この放送関係の政策におきまして、マスメディア集中排除原則が守られる方向に向かうのか、逆に更に緩和する方向に向かうのか、是非ともこれは先生のお考えを伺いたいと思いますし、あわせて、そうしなければならない、あるいはそうならなければならない背景あるいは理由についても併せてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/69
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070・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) 御質問ありがとうございました。
マスメディア集中排除原則は認定放送持ち株会社制度の関係で緩和の方向の改正であるということは、これは御指摘のとおりでございます。
ただ、一つ申し上げられますのは、今までの現行制度の下でも実は子会社化をすることはできたわけですね。ところが、他方で、その他の基本的なマスメディア集中排除原則は残っておりますので、三分の一を超えるところ、それから二分の一までは行かないというところまでの議決権の保有が、これができないと。言ってみれば、全体の制度の整合性から見ると若干穴が空いているところがあったと、そこを何とかした方がいいのではないかというそういう性格も持っているものでございます。
したがいまして、過剰に制度を緩めているというわけでは私はないのではないのかというのが一つございますのと、それから、先生御指摘のとおり、地域の経済、なかなか低迷をしているところがございまして、したがいまして、今までのローカルの放送事業者の株主の方が株を手放したいと、その放送事業者以外の方が主になりますけれども、というときに、じゃ、ほかに引き受けてくれる人がその地域にいるのかということになります。それを見付けてくるのがなかなか難しいということがございますので、そこは助けてくれる人を別に見付けてこなくてはいけないという、そういうところもございます。
そういうわけで、確かにマスメディア集中排除原則からすると緩和の方向ではございますけれども、今回のような改正提案がなされているという、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/70
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071・主濱了
○主濱了君 非常に、どちらの方向に向かうかというのも、私どもこれから考えていかなければいけない問題だというふうに思います。
では、続いて、厳しい経営環境と、こういう観点でまた長谷部恭男参考人に伺いたいと思います。
長谷部参考人は、放送政策に関する調査研究会の座長を務められております。第二次取りまとめにおいて、総務省に検討会ができたわけでありますけれども、この開催の背景には、広告市場の縮小の環境の変化への対応の必要性があると、こういったような状況、それから、民間放送を取り巻く厳しい経営環境の中、経営状況の悪化に対し、より早い段階で適切な対処を行うことができるような制度、これを検討する必要があると、こういうふうにしているわけであります。
厳しい経営環境ということになりますと、一般的には、日本全体としては確かにGDP、これはもう五百兆、平成九年から五十兆も下がっているわけでありますし、それから可処分所得も下がっております。あるいは、地方経済全体を見ればこれはもう明らかなわけであります。ただ、最近は、アベノミクスの効果による経済指標が改善してきているという宣伝も一方ではなされているんです。最近の新聞見ても、GDP、一—三月期の年率が六・七%上方修正、こういったような宣伝もなされていると。
こういうことで、実は政府の対応を見てみますと、どうも都合よく、例えば消費税なんかのときは、随分経済は良くなっていますよ、それから、例えば今回のようなものについては、地方経済は厳しいですよ、こういうふうな使い分けがうまくなされているんじゃないかなと、こういう気がしてならないんですよ。
ついては、座長として、地方の放送局の現実の経営環境の厳しさについてどのように認識をされているのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/71
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072・長谷部恭男
○参考人(長谷部恭男君) どうも御質問ありがとうございました。
先生御指摘の調査研究会におきまして、民間放送事業者の一社当たりの売上高の推移に関しましても、これはここ二、三年ということではございませんで、かなり長期的、中長期にわたる傾向を分析をいたします。その結果、やはり中長期的に見ますと、特にラジオ単営局、そしてあるいはFM単営局につきましては、売上高、中長期的に低落傾向にあるということ自体はなかなか否定のし難いところでございまして、これに対する制度的な対応、何らか必要ではないのかと、今そういう方向性になっているということでございます。
それから、他方、今までの先生方からの御質問の中にもございましたが、放送という事業は言わばグローバルなマーケットにおきましてもある種の競争をしているところでございます。そのために、日本という市場自体が場合によっては縮小をしているというところで、果たしてマスメディア集中排除という形で分断をしていく、経営的に分断をしていくということになりますと、場合によってはこれが各個撃破されてしまうと、何か要するにグローバルなメディア企業によってという、そういう危険性も実は少なくとも可能性としては想定をせざるを得ないところがございます。
例えば、先ほどイギリスの例が出ましたけれども、イギリスのITVは実は以前は各ローカル局の連合体という形態を取っておりましたが、現在は事実上一社に統合されております。これは、やはりグローバルなマーケットにおきまして、どうやって競争する体力、経営体力を付けるのかという観点から、ある意味ではマスメディア集中排除原則、ラジカルな形で犠牲にしているところがあるということでございます。
日本の今回の放送法の部分改正につきましては、それほどラジカルなものではございません。障子に空いた穴を埋めているという、どちらかというとそちらの方に近いものかと思いますけれども、そういう視点がないわけでもないという、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/72
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073・主濱了
○主濱了君 実は鈴木参考人にも質問を用意していたんですけれども、時間の都合でかなわなくなりまして、申し訳ございませんです。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/73
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074・山本香苗
○委員長(山本香苗君) 参考人に対する質疑はこの程度といたします。
参考人のお二方には、長時間にわたりまして大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして心より厚く御礼申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118614601X02720140612/74
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