1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成二十六年四月二十二日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月十七日
辞任 補欠選任
礒崎 哲史君 櫻井 充君
新妻 秀規君 山口那津男君
中山 恭子君 藤巻 健史君
四月十八日
辞任 補欠選任
山口那津男君 新妻 秀規君
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出席者は左のとおり。
委員長 丸山 和也君
理 事
石井 浩郎君
二之湯武史君
大島九州男君
松沢 成文君
委 員
上野 通子君
衛藤 晟一君
中曽根弘文君
橋本 聖子君
堀内 恒夫君
水落 敏栄君
石橋 通宏君
斎藤 嘉隆君
櫻井 充君
那谷屋正義君
新妻 秀規君
矢倉 克夫君
田村 智子君
藤巻 健史君
柴田 巧君
事務局側
常任委員会専門
員 美濃部寿彦君
参考人
一般社団法人日
本出版者協議会
会長
株式会社緑風出
版代表取締役 高須 次郎君
公益社団法人日
本漫画家協会著
作権部員 幸森 軍也君
専修大学文学部
教授
株式会社出版デ
ジタル機構取締
役会長 植村 八潮君
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本日の会議に付した案件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/0
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001・丸山和也
○委員長(丸山和也君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る十七日、礒崎哲史君及び中山恭子君が委員を辞任され、その補欠として櫻井充君及び藤巻健史君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/1
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002・丸山和也
○委員長(丸山和也君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、参考人として一般社団法人日本出版者協議会会長・株式会社緑風出版代表取締役高須次郎君、公益社団法人日本漫画家協会著作権部員幸森軍也君及び専修大学文学部教授・株式会社出版デジタル機構取締役会長植村八潮君の三名の方に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議の進め方でございますが、まず、高須参考人、幸森参考人、植村参考人の順でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、参考人、委員とも御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず高須参考人から御意見をお述べいただきます。高須参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/2
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003・高須次郎
○参考人(高須次郎君) 一般社団法人日本出版者協議会の高須でございます。
一般社団法人日本出版者協議会は、著作物の再販制度や言論、出版の自由の擁護、取引条件の改善などを目的に、一九七八年に結成された出版流通対策協議会を前身とする出版業界団体です。専ら人文社会科学、自然科学などの学術専門書、教養書など、少量出版物を発行する中小零細出版社九十五社で構成されております。出版者への権利付与につきましては、紙と電子の一体的な総合出版権を提言している超党派の電子書籍と出版文化の振興に関する議員連盟の議連案を支持してまいりました。
出版者への権利付与は、電子出版への対応と海賊版対策を目的に、著作権分科会出版関連小委員会で検討されてきましたが、現在審議されている著作権法の一部を改正する法律案は、出版者の電子出版への対応を可能とし、紙の出版物にも再許諾が認められるなどの歴史的側面の一方で、後で述べますような不十分な点があると考えております。
出版協が二〇一〇年に行った電子書籍会員アンケートによりますと、DTPで自社製作している社が六五%、最終組み版データを自社で所有している社が八五%となっております。中小零細出版社においては、電子出版の環境は基本的に整っていると言えます。
実は、電子出版をちゅうちょさせている理由は別のところにあります。
第一は、出版者への電子出版権の付与などの著作権法の未整備でしたが、これにつきましては、今回の改正で問題点を含みながら実現しようとしております。
第二に、電子書籍の価格の問題があります。
公正取引委員会は、紙の出版物は再販商品、オンライン系電子書籍は非再販商品、パッケージ系電子書籍も非再販商品であるという見解で、行政指導を行っております。同一出版物をパッケージ系電子書籍で発行すると非再販商品とされ、買いたたかれ値引き販売されるので、出版社は積極的に出版しようとはしません。また、電子配信業者が電子書籍の安売りをすると紙の出版物の売行きに大きく影響いたします。したがって、出版者としては、電子出版物についても何らかの価格決定権を自ら保持しないと出版経営が成り立たなくなる現実があり、この点への懸念が電子出版へのブレーキとなっております。早急に文化政策の観点から、フランスで成立した電子書籍の価格維持法のような法整備が求められていると思います。
今回の法改正の契機ともなった二〇〇九年のグーグルブック検索和解問題の際には、日本で市販されている出版物の九〇%以上がリスト化され、一〇%以上が無断でデジタル化されていたと言われております。今はもっと進んでおります。
電子出版物は、紙の校了データのない場合でも、紙の出版物からのスキャニングによって作ることができます。また、例えばアマゾンは「なか見!検索」サービスに協力している出版者の出版物をデジタル化し、さらには紙の出版のデータを提出するよう出版社に求めるなど、電子配信の加速化を整えています。公衆送信目的の複製は既に合法、非合法の形で進行しています。
こうした現実があるにもかかわらず、改正案は、公衆送信目的の複製に対する出版権者の専有が盛り込まれておりません。
出版者は、企画から多大の労力と経費を掛け出版した紙の本を、初期投資をせずに紙の出版データのスキャニングや二次加工するだけの巨大電子配信業者に奪われるのではないかと恐れています。大部分が中小零細企業である出版者が、印税等の経済面での条件で巨大電子配信業者と競争することは極めて困難と言えます。
しかも、紙の書籍が再販商品で電子書籍が非再販という現実の中では、出版者が紙と電子の出版権を保持できない場合、価格決定権を失い、値引き競争に巻き込まれ、紙の出版もままならず、経営危機に陥るのは火を見るよりも明らかです。
以上の理由から、出版者が一体的に紙と電子の出版権を得、再許諾を通じて電子配信業者に配信してもらうことが出版者としては不可欠です。
改正案は、著作物の複製物を用いて公衆送信行為を行うことを引き受ける者に対し出版権を設定できることになっています。これは単に、公衆送信行為を引き受ける者が誰でも第二号出版権者になれることを条文上は意味し、出版者への権利付与という本来の趣旨とは異なります。電子配信業者が企画から編集制作、広告販売に至るまでを担う出版者として登場、参入してくることは歓迎いたします。しかし、出版者は外国の巨大配信業者がこの規定を用いて紙の出版物の刈取りをすることを恐れております。
したがって、改正案の出版権の設定は、紙の出版並びに電子出版を引き受ける出版者に対して一体的に出版権を設定するよう修正するよう要望をいたします。
「出版ニュース」の二〇一二年十月上旬号で、前文化庁次長の吉田大輔氏は、現行とほぼ同じ出版権制度は一九三四年に法制化されたが、立法当時、無断出版や競合出版に対して先行出版者の利益をどのように確保するかという議論が高まっており、制度導入時の立法作業担当者も、その趣旨をどのような方法で実現するかについて様々な案を検討をしたようであると指摘しております。この設定出版権の理念に沿って、紙の出版物を初めて世に出した出版者には、電子出版権についての一定の優先権を付与するなどの措置を講じていただきたいと思います。
次に、海賊版対策のために出版者への権利付与が急務となったのは、先に触れましたグーグルブック検索問題が契機ですが、このとき、日本の出版者は、現行法では和解案の法的な当事者になれないという問題が発生し、組織的対応に苦慮いたしました。今回の法案で、再許諾を含めて改正が行われることは評価いたします。
しかし、日本においてグーグルブック検索問題のようなことが起きた場合、第一号出版権のみの出版者は当事者となれません。海賊版対策は、出版者が第一号出版権並びに第二号出版権の両方を持たない限り差止め請求などができず、海賊版対策としては不十分です。
海賊版のほとんどが紙の出版物からのデジタル海賊版であり、紙の版面には版面権もない現状を踏まえますと、紙の権利のみでも違法デジタルスキャンに対抗できなければ、法改正の目的である海賊版対策に不備があると言わざるを得ません。第一号出版権のみの出版者も海賊版対策が可能となるよう、この点の法案の修正を求めます。
出版社の大部分は従業員が五十人以下の出版社であり、新刊書籍の大半を発行しており、とりわけ学術専門書にその傾向が顕著です。先見性と専門知識を持った優秀かつ職人的な編集者がそうした出版活動を担っており、知の伝達と継承が行われております。ところが、そうした出版社が長期にわたる出版不況の中で我慢の限界を超え、倒産、廃業が続いております。
参議院におかれましては、今申し上げました法案の修正点、疑問点、私ども出版協が三月に出しました改正案の修正を求める声明等を御検討いただき、今回の法改正が、真に出版のルネサンスのエンジンとなることを願い、私の意見といたします。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/3
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004・丸山和也
○委員長(丸山和也君) ありがとうございました。
次に、幸森参考人、お願いいたします。幸森参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/4
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005・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 日本漫画家協会著作権部員の幸森軍也でございます。よろしくお願いいたします。
この度は、日本漫画家協会に発言の機会を与えていただき大変感謝をいたします。
過去において、漫画は読み捨てるべき低俗なものとの認識で一顧だにされてまいりませんでした。現行著作権法の条文の中にも漫画という単語は全く書かれておりません。しかし、現在、漫画雑誌のタイトル数は年間約三百タイトル、約五億部出ております。漫画単行本は約一万三千作品、約四億部という膨大な作品が毎年のように生み出されております。現在、国内の雑誌、単行本などの出版物の約四分の一が漫画でございます。
海外におきましても、漫画やアニメは日本の文化を紹介する重要なコンテンツであり、近隣の東南アジアはもちろん、フランス、イタリア、スペインなどの欧州、そしてメキシコやブラジルなど地球の裏側にまで広がって、多くの人々に受け入れられております。
まあ、これを嘆かわしい事態と感じるか、すばらしいと感じるかはそれぞれでございましょうが、漫画は日本の文化の一部であり、世界に日本の文化を発信しているのは事実と言えましょう。これほどまでに漫画が大量に発行されて、国民に愛されている国は世界にも類はございません。
先ほど申し上げた、全出版物の中に漫画が占める割合が約四分の一であるということは紙の出版物のことでございまして、電子出版となると更に割合は増えるものと存じます。このように、現在流通しているだけで漫画の出版は膨大な数に上ります。過去からの蓄積分も含めるとどれほどの量となりましょうか。本来はこれを集中管理する機関の設立も急がれております。
絵と文字から成る漫画表現は、大変理解がしやすく、紙の本と同様に電子書籍でも多くの人に受け入れられると同時に、電子化による流通の簡便さのために海外でもいち早く広まってまいりました。
ところが、海外で流通する漫画の大部分は著作者の許諾がない、いわゆる海賊版でございます。海賊版の取締りを行わなければならない、それは間違いございません。この点について、これまで文化審議会などを通じてどのように対策をしていくのかが議論されてまいりました。けれども、国内の現行著作権法を改正して、出版者に何らかの権利を付与しても、世界に対して有効かどうか。また、侵害を発見するたびに国際裁判を何件も起こすのは、訴訟のための手間や費用や実態調査や損害額認定、そしてスピード面などでも大変困難なことと存じます。
今回の法整備によっても全ての海賊版を撲滅することは難しいですが、今回の法整備を契機として、新たに出版者が可能となるインターネット上の海賊版対策はもちろんのこと、海外での海賊版対策についても前向きな取組が行われるようになることを期待しております。
漫画の場合は、一つの作品が、出版のみならず映像化やキャラクター商品、そして本件のような電子化、海外に対して翻訳出版など、マルチに展開してまいります。
従来の出版社は紙の本を日本全国にあまねく頒布することを目的に特化しており、そのおかげで廉価で高品質な雑誌、書籍を容易に手に入れることができました。そういう意味では、出版社にとって紙の本を印刷、頒布すること以外は本質的な業務でないのかもしれません。けれども、契約上は、その本質的でない業務、すなわち映像化や商品化、海外出版許諾、電子化までもを著作者に対して権利を預けるよう契約を迫ります。
日本には、御案内のとおり大小三千七百社もの出版社があり、自社で電子配信をしない、できない、配信するつもりもない出版者もたくさんございます。それらが一様に著作者に対して電子出版権を排他独占的に預けるように迫ることというのは、著作者としては到底理解ができません。
漫画家は著作者であり、創作した著作物の掲載する権利を出版者に許諾することが著作権法の考え方でございますけれども、実際はそんなに偉そうなことはありません。
漫画家は小説家などと比べて若い年齢でデビューする例も多く、甚だしい場合には中学生や高校生のプロの漫画家というのもおります。一般的な社会経験や社会常識がないままプロの漫画家になることもまれなことではございません。この場合、社会に対する唯一の窓口が出版社でございます。このような新人の漫画家や売れていない漫画家が出版者に対して著作者然としてもし振る舞うようなことがあれば、仕事の依頼がたちまち途切れ、収入が絶たれてしまいます。つまり、どのような契約内容であろうと、出版社の言いなりで署名捺印をするほかございません。著作権の保護があっても、多くの漫画家は出版者から仕事をもらう下請に近い状態でございます。
今回の法整備において今以上の権利を出版者が得たときに、著しく公平性を欠くことになったり、弱い立場の漫画家が更に弱くなることを正直大変危惧しております。
漫画という日本文化を世界に紹介し、より広く流通させるためには、漫画の利用方法を熟知しているそれぞれの流通に関わる企業が分担して行うことが必要だと考えます。既存の出版者に著作者の持つ全ての権利を委託することで実現できるわけではないと思います。
これは電子書籍の配信も同じでございます。自ら電子書籍の配信を行うつもりがない出版者に権利を預けることは、著作物を死蔵させることにほかなりません。しかし、もし権利を預けるべく契約を結ばねばならないのならば、契約内容に沿った業務を出版者が一定期間内に必ず遂行するよう義務付けることが公平な契約と存じます。
ただ、そうは申しましても、漫画はこれまで出版者と二人三脚で発展してまいりました。漫画家にとって出版者はなくてはならないパートナーだと考えております。既存の出版者が電子書籍の配信を積極的に進めるならば、漫画家と出版者はお互いそれぞれ力を合わせて、より良い文化発展のために尽くすことが可能となるでしょう。
このことから、今回の法整備をきっかけとして、著作者と出版者のどちらかにとって一方的ではない公平な契約を結ぶ慣行を構築できるよう双方が努力し、日本の出版文化の発展と電子書籍の促進に役立つことができるようになることを切に望んでおります。
以上、日本漫画家協会から申し上げさせていただきました。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/5
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006・丸山和也
○委員長(丸山和也君) ありがとうございました。
では次に、植村参考人、お願いいたします。植村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/6
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007・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 御紹介にあずかりました植村八潮です。
八〇年代から電子出版、電子書籍に興味を持って研究しておりまして、その縁もありまして、現在は専修大学文学部人文・ジャーナリズム学科の教授であるとともに、株式会社出版デジタル機構の取締役会長も務めております。
印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会、いわゆる中川勉強会にも参加させていただいております。このような関係から、電子書籍市場の現状や法改正が目的とします健全な市場形成についてどのように考えるのか、御質問を承るべくお呼びいただいたのかと思っております。このような機会をいただきましたことにお礼を申し上げたいと思います。
さて、健全な電子書籍市場の形成とインターネット上の海賊版対策を趣旨として、このほどこの出版権の整備等を目的とした著作権法の改正が行われる見通しとなりましたことは、ここに至る経緯も含めて大変意義深いことと考えております。とりわけ、実際の法案作成に際しまして、文化審議会著作権分科会出版関連小委員会におかれましては、多岐にわたる利害関係人の意見を調整いただき、このような成案に集約いただきました。このことのすばらしい成果に、まず関係者の御尽力に感謝申し上げたいと思います。
また、平成二十四年からは、超党派の国会議員、作家、出版関係者などから成る印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会、中川勉強会が出版者への権利付与について問題提起を行い、電子書籍と出版文化の振興に関する議員連盟に引き継ぎながら論議をリードし、世論形成や合意形成を図っていただきました。これがもう一つの複線となりまして、ともすればなかなか見えにくい法改正のプロセスが大変分かりやすい形で進んだと受け取っております。超党派の国会議員により著作権者や出版事業者、関係者という国民の声を拾い上げる形で法改正が進んだということは、まさに議会制民主主義における立法の大変理想的な形によって成し得たことと考えております。ここに改めて敬意を表させていただきます。
これからは、紙の書籍出版に加えて電子出版が普及する時代になります。それは、電子書籍という新たな市場創出ということだけではなく、従来の紙の書籍の価値を増す形での電子の役割や、両方が合わさることでの読者にとっての利便性の向上などが図られるわけです。出版メディア産業の新しい形がより一層魅力を増す時代になるのだと思います。その魅力ある分野に対して、若い人たちを始めとして新しい人材が参加されてくると、そういうような分野に向かって新たな道を切ったのかなと思っています。
このような時代をすぐにでもつくるためにも法改正の意義はとても大きく、それを受けて出版関係者の果たすべき役割も大きいと考えています。そこには当事者間の信頼関係に基づく契約がとても重要になります。法改正の議論を進める中で、様々な課題や問題点も明らかになったと思います。
一つには、著作権者と出版者の間におけるある種の意見対立とも受け取れる点もありました。確かに三千七百社とも言われる数多くの出版社があり、多くの人が働く中で、ともすれば不信感を募らせる行為もあったかとは思います。しかし、私は、著作権者と出版者には基本的には、そして今もまた揺るぎない信頼関係があると思っています。そして、その変わらぬ信頼関係があるからこそ議論の積み重ねができたと信じております。その上で、潜在化していた個々の取引における問題が議論の積み重ねの中で顕在化し、話し合われたことがとても重要なことだと思っています。
今や出版者は、海外事業者を中心とした企業との間で極めて細部にわたり規定した契約が存在する時代です。当然出版者も著作者と契約をしていく時代です。口頭で済んだある意味牧歌的とも言えるよき時代は終わりを遂げつつあるわけで、信頼関係に基づく契約が重要と先ほど申しましたが、それは取りも直さず契約に基づく信頼関係の構築が求められるということも意味しております。
そこで、法改正が注目されたそもそもという点に、述べておきたいと思います。
出版は、各国の母語に依存した文字表現メディアです。当然各国の文化や歴史に依拠します。そして、最も長い間この文化を支える産業として出版があります。グーテンベルクの印刷技術の発明以来という意味では、六百年にわたり技術革新や産業改革や知識や知恵の伝達を果たしてきました。
当然、この日本文化風土を背景に数多くの出版社が多様な活動をし、全国に多くの書店が小売業を営み、著作者の自由で多様な言論活動を支えるという、この著者と読者をつなげてまいるという日本の文化風土を背景とした営みが長く行われてきているわけです。
これまでは創作から出版、流通、小売、そして読者による購読、読書活動まで、全てがと言っていいほど日本人により構築され、その大半が読者の購入によって支えられているという大変幸せなシステムでした。毎年国立国会図書館に納本される本はおよそ十一万点と聞いておりますが、そのうちの八万点は出版活動によって生み出されています。残りの三万点はおよそ行政資料と自費出版と聞いておりますが、つまりはほとんど、ほとんどの本が、実は私たち国民、読者が買ったお金によって出版されています。書店の経営も、取次ぎにおける流通も、そして出版活動も、そして著作権者への印税という形での支払も含めて、それは全て読者の投資によって支えられているわけです。これは本当にすばらしいシステムだと私は思っています。
ただ、このような母国語に守られた、つまりある種、言語の壁というのが存在して長くわたってきましたが、他の産業を見れば、既にグローバル化の時代を迎える中で様々な産業育成策というのが必要になる時代を迎えていたわけですが、実は出版産業に限って言えば、ある意味、国による特段の産業育成策がなくても、日本語という壁の存在で日本自国内での国民による事業が成立してきたわけです。
まさにインターネットはこの壁を壊しました。日本語の出版もグローバル化の波に洗われる時代になったのです。このことを明確にしましたのが二〇〇九年におけるグーグルブックサーチの和解訴訟だったと思います。このことが明らかになり、まさに一私企業によって世界中の本が検索対象となり、場合によっては中身がのぞけるようになるというようなことは、それは世界中の著作権者並びに出版者、出版業を営む人々に震撼とさせた事態となりました。
これを受けてヨーロッパではヨーロピアーナという、ある種パブリックセクターによる事業が始まっております。一方、もちろんアメリカ国内でもこれに対する反対がプライベートセクターから大きな声が上がり、結果的にこの和解訴訟そのものは認められなかったという形にはなっていますが、まさにこれを機に日本の出版活動も国際化を迎えました。
私は、よく二〇一〇年を電子書籍元年といいますが、私自身はそれよりはるかに重要なのがこの二〇〇九年、まさに日本の出版の国際化元年、このことの方がはるかに今日の出版に多大なる影響を与えた年だったんではないでしょうか。これを受けまして、総務省、経済産業省、文部科学省三省によるデジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会、いわゆる三省デジタル懇談会が翌年始まったということは、まさにこの背景の下にあったというのが私の理解です。
日本の出版産業の特徴、繰り返しますが、大手から中小、多様な出版活動が水平分業的に行われている、決して一私企業の垂直統合ではなく、多様な人々の参加により営まれていた、まさにこれは三省デジタル懇の報告書の中にある日本型出版産業の大変すばらしい点だったという指摘があります。そして、これを今後デジタルネットワークの時代にどのようにつないでいくのか、これを受けまして経済産業省、総務省、文部科学省はそれぞれの事業をしていただき、その一つが文化庁による電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議、まさに今日に至る著作権法改正の論議の始まりだったわけです。
また、私自身は、経済産業省、総務省の関わりの中で、まさに日本的な電子書籍流通基盤がまだまだでき上がっていない、脆弱である、出版活動ができ上がる中で電子書籍流通基盤をいかにつくるかというアイデアの一つとして、結果として、まさに株式会社出版デジタル機構を関係者の御尽力でつくり出したことに、そのことにも関わらさせていただきました。
その意味で、まさに、もう一度、元、返りますと、今回の新たな制度設計、その制度設計に基づきまして、今後は関係者の手により運用が重要な役割を果たす段階になったと思っております。先ほど申しましたように、いろんな御意見もありますが、基本は、今回の改正は紙と電子の一体設定を想定していただいたということは、まさにそこに出版者と著作者の信頼関係を基礎に、あるいは出版者の今後の活動にも期待をいただいたというふうに考えております。
私ども、ここで出版デジタル機構の立場で申し上げれば、出版者と著作者の信頼関係を基礎にして、積極的に期待に応えるべく活動をしていきたいと。まさに各著作権者と出版者の契約の在り方、実効性の上で、電子書籍事業の活性化と新しい読書文化の構築に向けて、まさに出版社を始めとする関係各社の皆様の御協力があってこそですので、その協力の下に全力を尽くしていきたいと思います。
さて、もう少しの時間で、もう一つの肩書というんでしょうか、電子書籍の研究者ということで、少し未来の絵というか、大きな絵をやはりもう一度確認しておきたいと思います。
この二〇一〇年代以降の論議の中で常に問われているのは、まさに未来にどのような大きな絵を描くかということで、度々キーワードとしているのがナショナルアーカイブであり、そのナショナルアーカイブをどうつくるかということの方策として、例えばオーファンワークスへの対策が考えられました。契約をしっかりやるということは、今後オーファンワークスを生み出していかないということですが、既にあるオーファンワークスをどのようにまさに市場に投入できるのか、あるいは文化発展に寄与するかということも今後考えていただきたいことだとは思っています。
インターネット時代に代表されるデジタルネットワークと出版活動のデジタル化、まさに急速に拡大する中で、まさに日本が世界に誇るべき豊かで多様な出版・活字文化を守り育て、新しい時代にふさわしい発展をさせていく、その未来に向けた一つのこれからの仕事というのが、まさに国家のお力もいただきながら、関係者、民間が働いていくという、このより良い関係というのを今後とも継続できればと思っています。
まさに今回の著作権法改正、間もなくこれが決まっていくかとは思うのですが、これはゴールではなくスタートだと私は理解しています。まさにここから始めなくてはいけません。今回がファーストステップであるならば、まさにセカンドステップ、サードステップの次のステップに向けてナショナルアーカイブス、そして、場合によっては電子書籍のアクセシビリティーとか様々な可能性が問われています。この実現に向けまして、今後とも御協力のほどよろしくお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/7
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008・丸山和也
○委員長(丸山和也君) ありがとうございました。
以上で参考人の皆様からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/8
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009・二之湯武史
○二之湯武史君 自民党の二之湯でございます。
今日は、三人の参考人の先生方、お忙しい中、この参議院の文教委員会にお越しをいただきましてどうもありがとうございます。
時間が限られていますので、早速質問させていただきたいんですけれども。
今回の法改正の大きな柱といいますか、一つは電子書籍、こういったものをどういうふうに国内に更に育成していくか、そのときにおける制度設計並びにやはり昨今大きな問題となっている海賊版対策の問題、その二つに集約されるかというふうに考えるんですが。
植村参考人にお伺いしたいんですけれども、今のお話、非常に大枠として私も大変賛同するお話ですし、そういった業界全体の今までの経緯とかあるべき姿、そしてこれからの未来への展望等々、いろいろお話しいただいたんですが、非常に個別的な話ですけれども、紙と電子が一体的に運用されなければ、現在の、要は紙をスキャンしたデータによる海賊版対策に実効性がないんじゃないかというような業界からのお話等々あるんですが、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/9
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010・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 御質問ありがとうございます。
まさに、出版を引き受け、企画、編集等を通じて出版物を作成し、世に伝播する、まさにこれが出版者の役割だとしますと、実は、もちろん著作権法の中で出版というのを限定的に定義しているというのは、これは法の在り方として理解できるんですが、そもそもメディアの発展を考えれば、メディア概念は常に変わり続けています。一例を挙げれば、私どもは携帯と言いますが、これは何も、今の若い人にとってはほとんど会話しない機械であって、それは世の中につながって、多量の文字を読み、情報を発信し、エンターテインメントを使うものとして携帯と言っています。決して電話ではないです。
同じように、何かパブリッシュするという役割は今後広く広まっていきまして、それは紙か電子かとかではなく、紙も電子もという構造で実は産業構造ができ上がるのは当然の流れだと思います。それを両方併せ持つから強い力になるんであって、ここは紙だけだよ、これは電子だけだよというような分け方そのものは、そもそも民間とか読者とかユーザーと言われる人たちが受け入れるわけがないですね。全て決めるのは、別に上から決めるわけではなくて、実はそれを利用する人々があっての世界ですから、私はそういう区別は一切必要ないと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/10
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011・二之湯武史
○二之湯武史君 もう一回ちょっと分かりやすくお伺いしたいんですけど、例えば政策的な観点でいいますと、今例えばクール・ジャパンとか等々で日本のコンテンツをある種産業として捉えたときに、例えば海外における海賊版の被害、これはいろんな査定の額があると思いますけれども、やはりそれなりの被害総額というものが出ていると。そういったものを今回の法改正においてしっかり取締りができる、実効的な取締りができるということが恐らく業界の中での一つの大きな主眼だったと思うんですね。
そういった意味で、実効性を持って、今おっしゃったようなメディア文化の育成であるとか時代の変化、それはもう私も大きな意味では当然そういうふうになっていくんだろうというのはよく理解はできるんですが、そこで事業を営む一事業者という観点に立てば、そういった大きな中で実際どういうふうに実効性を上げていってそれぞれの出版文化なりというものを守っていくかという観点でいいますと、やはりどのようにしていわゆる海賊版を取り締まっていくか、その実効性を上げていくかということが私はこの法改正での大きな目的の一つなんじゃないかなというふうに考えているんです。
そういった意味で、今回の法改正において、植村さんが御覧になって問題はないのか、実効性をしっかり上げていけるのかと、その辺についてちょっともう一度お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/11
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012・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 私も当初は出版者における著作隣接権という議論から入りましたが、やはり多くの著作権者の方との議論の中で、そうではなく、出版権ともう一つ電子出版権と一体型の法制度をつくっていただいたということで、結構だと思っています。
そして、これはもう出版者はちゃんと契約をして、今後海賊版を取り締まるというまさにツールを得たわけですから、その道具をもってまさに海賊版を退治していただかなきゃいけないと思います。そのためには、ちゃんとした契約があってその道具が生かされるわけですから。ただ、一出版者だけがやれるかという問題ではありませんので、これに関しましてはやはり国の何らかの対策、これは著作権法以外の制度設計もまた求められるかとは思います。まず、まさに第一歩として道具を手にした、これから戦いに臨むにおいては大いなる援軍が欲しいというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/12
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013・二之湯武史
○二之湯武史君 ありがとうございます。
それと、これは皆さんにお伺いをしたいと思っているんですけれども、要は再販制度の問題で、紙と電子が今ばらばらであるということでいうと、紙メディアが値段が崩れない、一方で電子メディアの方が崩れる可能性があると、こういうふうになったときに、これも紙対電子という、そういうような話にはしたくはないんですけれども、やはりそういった意味で産業の基盤として不公平感が出てくるんじゃないかというような、そういうようなお話もありますけれども、この辺についてそれぞれ簡潔にお話をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/13
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014・丸山和也
○委員長(丸山和也君) じゃ、高須参考人から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/14
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015・高須次郎
○参考人(高須次郎君) ありがとうございます。
この問題は、基本的には、今の出版社は、先ほど中小出版社は非常にDTP化率が非常に高いと。今はほとんど九〇%ぐらいまでやっているわけですね。つまり、私の机とか隣の机のデスクトップのところで、もう全部、紙用のデータと今度はそれを電子化するデータはデータ作成の方法を変えれば、PDF版なんかはその場ですぐできるわけです。
そういうふうな今状態がありますので、同じ出版物について、片方が仮に千円だとしますね、電子の方については、これを出版社としては紙に余り影響しないような形でどう安く価格設定をしていくかと、こういうことで両方のニーズに対応していこうというふうに考えているわけです。
ところが、この価格決定権が非再販ということで奪われてしまうと、とんでもないディスカウントが始まるわけですね。そうすると、同一出版物についての紙の方の売行きが全然落ちてきちゃうと。そうすると、出版社としては、基本的に編集から、企画、依頼から印刷、製本までの全体の工程をやってきたその部分の売行きができなくなって、再生産が不可能になって経営危機になるんだと、そういうことで両方のコントロール権をいただきたいと、こういうふうに申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/15
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016・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 再販制度というのが電子に適用しやすいものなのかどうなのかという、著者の収入面で考えますと、これまで紙のものというのは、要するに定価掛ける発行部数掛ける印税率というような形で書籍に関してはいただいていたわけですけれども、電子の場合は、実売、ダウンロード数に応じてになってくるわけです。
〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
例えば、一年間掛けて書いた作品が一ダウンロードしかされなかったということであれば、要するに非常に生活が安定しないわけですから、そういう形ではなくてもっと違う形の計算方法というのを考える中においては、それほど再販制度にこだわるということではなくて、もう少し考えた方がいいのかなというふうには思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/16
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017・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 御指摘のとおり、紙の再販制度があり、電子の非再販になっているということに関する問題点は、現状においては確かに内在されていると思います。
ただ、ビジネスをやる場合におきましては、その枠組みの中でむしろできることもあるというふうに取りあえず私は考えています。現に新聞はその両者をセット販売することによってサービスという展開も考えていますが、私は、ビジネスの場として考えるならば、それは今ある枠組みの中で戦っていくというふうに思っています。
ただ、そのことにおける問題点は、既に指摘されたように、巨大なプラットフォーマーこそが値引きをやるということが許されていることは非常に多々の問題を含んでいるとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/17
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018・二之湯武史
○二之湯武史君 ありがとうございます。
いずれにしても、電子化というこの大きな流れというものは当然止まることはないわけですから、今まで、どなたかおっしゃっていましたが、非常に牧歌的な、本当にドラマになるような編集者と作家のほのぼのとした、そういった漫画のまさに「まんが道」、私好きでしたけれども、ああいった世界というものが、シンパシーは確かにそんなふうに感じるのはこれは日本人的に当然なんですが、今までそういった慣行があったがゆえに、一方でいわゆる西洋的なシビアな契約社会というか、そういうような慣行が育ってこなかったというような指摘もございます。
是非、この新しい時代、まさに電子化という流れの中で、一方でやはり日本の本当に隅々にまで浸透している出版文化というものが消えないように、皆さんおっしゃっておられたように、本当に信頼のある契約関係に基づいた新しい商慣行というか、そういったものがこの法律を機にできるように、是非またこの論点をあぶり出していただいて、またこの法律審議ありますので、そこに生かしていけるようにというふうに思っております。
本日は、お忙しい中、ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/18
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019・石橋通宏
○石橋通宏君 民主党の石橋通宏でございます。
今日は、三人の参考人の皆様、貴重な御意見を本当にありがとうございます。また、この場をお借りして、ほぼこの一年間にわたりますが、私ども超党派の議員連盟の活動に対しても様々に御助言、御指導いただきましたことを改めて感謝を申し上げたいと思います。
そこで、今日、早速ですが、質問に入らせていただきたいと思いますけれども、まず高須参考人にお伺いしたいのは、衆議院の方でも質疑がございましたけれども、私、個人的に今回一番違和感を感じているのは、政府の説明で、いわゆる出版というのは有体物を複製して頒布する行為なんだと。つまり、著作物を電子で配信することは出版ではないというような説明をされております。それで、今回こういう制度設計になっているわけですけれども。
高須さん、この点についてどうお考えですか。今御説明あったように、ほぼ、もう中小の出版社の皆さんもかなりの割合で電子の形で進めておられる。最終的に出てくるものが紙になろうが電子になろうが、出版に係る皆さんの御努力、プロセスというのはこれは同じであって、出てきたときに、いや、デジタルで出てきたら出版じゃないんだというのは、これは実態にそぐわない話ではないかと思いますが、御意見をお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/19
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020・高須次郎
○参考人(高須次郎君) 全くそのとおりだと思うんです。
出版というのは、何というんですか、企画を立てて、それで先生に依頼して原稿をいただいた後、また何度も何度も校正しながら直していくわけですよね。そういう長い時間を使ってようやく、昔でしたら木の版に活字でこうやっていくということですけれども、今のは電子データで、もう私の机の前でできると、こういう状態になっておるわけですね。
ですから、それを電子出版ってやった場合にはどういう意味になるかというと、もう既にできている最終データの版を、今は印刷はCTPというそのまま刷版で刷っちゃうわけですね。その間にフィルムなんかなくて、CTPでやるわけです。今度は電子の方はどうするかというと、EPUBであるとか様々な形式に合わせるようにそこで加工を加えてやるわけです。ただ、これは私どもから言わせますと、コピー、一種の、まあ複製自体コピーですけれども、もう非常にコピーだけなんですよね。ですから、そういうふうなことで言いますと釈然としないと。その部分はほかに取られていっちゃうと。
ですから、昨日の朝日新聞に、国会図書館の近代デジタルライブラリーのあれがアマゾンによってスキャニングされて、それを売りに出すというふうなことが新聞に出ていましたよね。あれは結局、国民の予算、血税というかそういうものを使って、それで一生懸命ああいうふうなものをつくった。つくって、利用者に提供するというんじゃなくて、それをそのままコピーして売ると。これは著作権法、期限切れのものですから、要するに止めることができないわけですよね。
我々もそういうふうに考えれば、御質問の最初に戻れば、やはり紙の本作りと電子出版の作り方というのは全く概念が違うので、それを同じ並列に置いていくというのは出版社の人間としてはやはり納得ができないというふうに思います。
ちょっと長くなりましたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/20
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021・石橋通宏
○石橋通宏君 ありがとうございます。
その上で、高須さんからもお話ありましたけれども、今回、要は一号、二号を併せて契約をしないと、出版者側は有効な対抗をデジタルの海賊版に対してできないと。実態的にこれ中小零細の出版社の皆さんにとってどういうことになると思われますか。皆さん問題なく、著作者の皆さんとの信頼関係に基づいて、一号、二号併せて出版契約を勝ち取ることができる、そういう世界になっていくのか。むしろ、中小零細の皆さんにとっては、著作者の皆さんにそこのところを、なかなか二号併せて出版契約を勝ち取ることができなくて、二号だけはプラットフォーマーに流れてしまうようなこと、むしろそうなってしまうのか。今のところの率直のお考えを簡潔にお伺いさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/21
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022・高須次郎
○参考人(高須次郎君) かなり厳しいんじゃないかなと思います。
私どもの場合は、著者の皆様との関係はどちらかといいますと弱い立場ですから、著者の方の意向に沿っていくという傾向がやはりありますので、契約ということだけですと、必ずしもうまくいくというふうには思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/22
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023・石橋通宏
○石橋通宏君 ありがとうございます。
そこで幸森参考人にお伺いをしたいんですが、今、高須参考人からそのようなお話がありました。漫画家の皆さんにとって、今回、この法案成立した暁に、まさに一号、二号併せて契約を結んでいく、促進をしていくという方向に、漫画家の皆さん、なっていくのか。いや、むしろ、いろんなお考えの漫画家さんもおられるでしょうから、いや、取りあえず一号だけにしておこう、二号はやっぱりプラットフォーマーの方が売れるだろうからそっちに行こうというような現実的選択をされる漫画家さんも現実的には多いのではないかなということを懸念する。そうなると、有効な海賊版対策という観点からも、日本の出版文化を守るという観点からもなかなか難しい状況がひょっとして生まれてしまうのではないかと思いますが、現在のところ、漫画家協会としての立場で結構ですので、お考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/23
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024・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 二種類に考える必要があると思うんですけれども、現在出版社さんで刊行中のもの、例えば雑誌連載中のもの、これに関しては多分一号、二号とも一体化で契約することはそれほど漫画家にとって不自然なことではないだろうと思います。ただ、過去のものを再版するということが漫画の場合はたくさんあるわけですけれども、もう要するに出版社さんから出て十年か二十年たっているんだけれども、でも埋もれてしまっている作品をプラットフォーマーさんがこれを出したいと言ってきたときに、えっ、出版社に聞かないとちょっと分からないですけどという、もう十年以上お付き合いないんですけれどもという場合と分かれるんだろうと思います。
後者の場合は多分一体化の契約というのは成立しないんだろうと思いますけれども、現在刊行中のものというのは多分一体化というのが比較的容易にできるだろうと思います。
〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/24
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025・石橋通宏
○石橋通宏君 ありがとうございます。
あわせて、幸森参考人に、ちょっと触れられていたと思いますが、塩漬けの懸念について。
今回、海賊版対策するためにも、仮に今現在、若しくは将来的にも電子出版する気がない漫画家さんでも、二号も併せて契約をしておかないと出版者側に対抗してもらえないということで、ある種意にそぐわない契約を当初結ぶ必要が出てくるということだと思いますが、逆にそれによって将来契約がこじれるか何かして塩漬けにされてしまうという懸念があるというのがあの幸森参考人のお話だったと思いますが、そうすると、むしろ、一号、二号併せて契約するんだけれども、そのときにはもう確実にその出版者が出版する義務を負う形で契約を結ぶんだと、そういう形の契約を漫画家さんたちとしては志向していくだろうという理解でよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/25
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026・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) はい、そのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/26
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027・石橋通宏
○石橋通宏君 ありがとうございます。
それでは、植村参考人にお伺いしたいと思いますが、端的に、今回の法律成立の暁、施行されてから電子書籍が爆発的に流通促進をされていくという確信を持っておられるかどうか、そのことについてまず端的にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/27
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028・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 爆発的にという形容ではなくて、確実に伸びていくと私は思っています。それは、一歩一歩確実に行けば戻ることがない歴史だと思います。それは、他国は確かに急速に伸びたかもしれませんが、もう既に一定のところでとどまっているという話も聞きます、まあアメリカの例ですが。ヨーロッパはずっと遅く堅実に進んでいます。日本は日本型な確実な進み方を、今回の制度設計を利用しながらも、ただ、明確に制度設計が応援になったとは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/28
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029・石橋通宏
○石橋通宏君 ありがとうございます。
それと裏表の関係で一つ大切なことをお伺いしたいんですが、植村参考人に。
町の書店はどうなるでしょうか。電子書籍の流通促進、時代の趨勢でこれから確実に増加していくだろうと。一方で、私たち、全国の日本の国民の皆さん、豊かな書籍・出版文化に触れていただく、今、町の書店がどんどんどんどんなくなっていっています。これは、今後、町の書店、更になくなっていく方向に行ってしまうのか、若しくは電子書籍の流通促進に合わせて、逆にそのリアルな書店とそしてこの電子書籍とマッチングしながら、それぞれの地方の町の書店もこれから新たな展開が望めるのか、また望む方向に行くべきなのか、その点について、最後にお考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/29
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030・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 業態変化していかざるを得なければ、つまり紙の本だけを売るのを書店と定義するのか、あるいは、そこにおける豊かな文字文化を支える小売業が書店なのかという定義によるんだと思います。そして、小売業の業態というのは確実に変わり続けているわけですので、変わることによって、全国津々浦々、文字文化の豊かなハブというんでしょうか、そのアウトプットする機関としての役割は非常に大きいと思っています。
ちょっとだけ例えると、私はよく、私が子供の頃、牛乳は専門の配達人が瓶に入れて持ってきました。そういう流通チャネルも瓶というパッケージもほとんどなくなりましたが、私たちは牛乳というのを大切な栄養素であり飲物として味わっています。そういう意味において、私たちが文字文化というのを味わうための役割というのは、そこにおける小売業、今後とも大いなるその応援も是非お願いしたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/30
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031・石橋通宏
○石橋通宏君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/31
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032・新妻秀規
○新妻秀規君 公明党の新妻秀規と申します。
早速質問に入ります。
これ、お三方に最初、著作権者と出版権者の契約の在り方についてお尋ねをしたいと思います。この点については、二之湯先生からも今お尋ねがありました。
まず、幸森先生からお尋ねしたいと思うんですけれども、幸森先生は先ほどの意見陳述の中で、出版権者と漫画家との間で一方的でない契約を結べるような双方の努力をという話をされました。
また、漫画家協会としても、昨年の五月の御提言の中で、デジタルへの出版権拡大を見据えて、標準契約書、契約書のひな形のようなものについて早急に設定すべきと御提言をされております。そうした御提言の中では、新たに発生する権利については全て特約にすべきというふうにされておりまして、また、同じ月に行われたヒアリングの中でも、漫画家は法律家ではないので、複雑な内容の契約書というのは出版社から提案されてもなかなか理解できるものではないと。先ほども、社会経験がなかなかない若い年齢でデビューされる方もいらっしゃる、そんなお話もありました。そうした中で、漫画家を始めとした著作権者の権利の保護のためにこうした標準契約書の整備、これは私も極めて重要な問題だと、課題だと認識しております。
ここで、そういう標準契約書の在り方、誰が作って、どんなような項目が含まれるのが望ましいか、御所見をまず幸森先生、お願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/32
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033・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 質問をありがとうございます。
現在、日本漫画家協会内部で標準契約書的なものを作っております。これをコミック出版をされている出版社さんたちと打合せをしながら、より良いものにしていこうというふうに現在考えているところでございます。こちらの要望だけではなく、あるいは出版社さんの要望だけではなく、どちらか一方ではなくて双方が納得できる形のものというのが一番いいのかなというふうに現在は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/33
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034・新妻秀規
○新妻秀規君 ありがとうございます。
それじゃ、同じ質問を高須先生、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/34
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035・高須次郎
○参考人(高須次郎君) お答えします。
先ほど申し上げました私ども会員アンケートしましたときに、出版契約書を取り交わしている会員社は五割でした。最近は増えてきて、大体六割から七割ではないかと思っています。
それで、標準契約書を私ども作っております。これは、日本ユニ著作権センターと私ども著作権管理団体が協力して、これは設定出版権ではないいわゆる独占型の契約書、それを作ってやっております。ただ、書協さんなんかの標準契約書を使っている社が半分ぐらいで、そうでないものが、いろいろ変形したものとか入れまして、まあ半々ぐらいの使用状況になっています。
今、経産省、あちらの方で出版契約についての検討会議されていますので、私は、非常に著者の方が分からない、そういうことが質問でも出ておりますので、やはり分かりやすくちゃんと説明をするとか、そういうふうな契約書をやっぱり作っていく方が望ましいのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/35
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036・新妻秀規
○新妻秀規君 ありがとうございます。
最後に、植村先生、先ほども契約に基づく信頼関係とおっしゃっていました。御所見をお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/36
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037・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 好むと好まざるにかかわらず契約の時代になったんだということは、それは出版者もまた個人事業主である著作権者の方もやはり理解して、その枠組みの中で生きていかなきゃいけない時代になったということだと思います。
その契約でうまくいかないことは、既に経済産業省を中心とした枠組みの中でのガイドラインの作成とか、あるいは出版者自ら著作権者との話合いの中でのADRの設立とか、その外側に二重、三重にもそこをうまく運用する仕組みづくりというのが求められるんだと思います。
契約は第一歩ですが、そしてそれが担保されないときにやはりそれは著作権者を守る形というのも、ガイドライン、ADRという枠組みの中で構築されていく必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/37
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038・新妻秀規
○新妻秀規君 それでは、続いて植村先生にお伺いをします。ナショナルアーカイブについてです。
先生はこれまで中川勉強会や様々な場でこのナショナルアーカイブの課題、検討されていらっしゃると承知をしております。また、先生御自身としても専門誌の「ず・ぼん 図書館とメディアの本」の昨年の二月号にも寄稿されておると認識をしております。そこで先生は、公共図書館では電子書籍を扱う必要はない、民間の運営に委ねるべきと主張される一方で、国会図書館でのナショナルアーカイブは電子書籍の納本も含めて推進をすべきと訴えていらっしゃいます。先生がそのようにお考えになる理由について御教示をお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/38
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039・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 一つの持論の世界になってしまいますが、公共図書館の果たす役割というのは、私たちの国民の知る権利を担保するということで、とても重要だと思います。何の対価も求めず知識にアクセスできるということだと思います。ただ、もう一方において、先ほど述べましたように、読者のお金によって出版物が生み出されるというのは言論表現の自由を担保するために非常に重要だと思いますので、このお金の回る仕組みを考えたときに、それは公共図書館でやはり全て自宅で読めていくということは、うまいこの仕組みづくりを壊してしまう可能性がある。
ただし、日本の出版物というのを、生み出されたものが国家の資金によってちゃんと保存されているのは重要です。それは国立国会図書館の中にアーカイブとして収まるべきだと思います。ナショナルアーカイブといいますと、どうしてもデジタル文化財全てを含んでしまいますが、その中核にあるのはやはり出版物だと思います。一番長い、長いってもちろん博物館のものはもっと古いですけれども、私たちが知恵、知識の枠組みの中として保存してきた出版物というものをこのアーカイブスの中核に置いて、国がずっと保存するということは大事なことだと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/39
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040・新妻秀規
○新妻秀規君 同じくナショナルアーカイブについて、今度は漫画のナショナルアーカイブについて幸森先生にお尋ねをします。
先生、先ほど意見陳述の中で、漫画を、集中管理機関みたいなものをつくろうとおっしゃっていました。また、昨年の五月の御提言の中では、漫画家協会はナショナルアーカイブの必要性は認めつつも、漫画についてはハードルが高いとおっしゃっております。その理由としては、漫画はJASRACのような報酬請求権で成り立っているのではないと。多くの場合で監修作業が行われて、作者の人格権侵害が起こらないようにすることが必要なことがよくある、また、使用金額についても度々交渉が行われて一定ではない、こんなようなことが挙げられております。
私が思うのは、やはり漫画は日本が誇るべき文化であって、こうした文化がナショナルアーカイブに含まれるのが望ましいのではないか、このように考えておるのですが、どのような条件が満たされればナショナルアーカイブに漫画を組み込むことが可能になるのか、検討の余地の有無も含めて御所見をお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/40
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041・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) ありがとうございます。
難しいといえば難しいですけれども、まず、多分漫画家というのは、先ほど申し上げましたように、中学生の女の子とか高校生の女の子がデビューしてプロでやっていたりして、非常に幅が広い分野だと思います。
ナショナルアーカイブとか集中管理というのはしていく必要がとてもあると思いますし、マストだと思っておりますけれども、そういう意味では、やはり、今個人情報の問題もありますけれども、出版社さんとかそういういろんな周辺の企業さんの協力を得てでないとなかなかつくっていくことができないと思います。
現在、漫画家協会の会員が六百人ぐらいだと思うんですけれども、漫画で確定申告をしている人はもっと、多分その十倍ぐらいはいるのかもしれません。そういう中でどこまでを漫画家と言うのか。日本のクリエーティブというのはハイアマチュアとプロというものの境というのが非常に曖昧な部分がありますので、そういう意味では、どこまでを漫画家として登録するのかというのが、現在、日本漫画家協会でも会員資格という意味で非常に悩んでいるところでございます。
それから、もう一点付け加えさせていただきたいのは、現在、国立国会図書館におきまして、先ほど申し上げましたように、日本の漫画が海外で発売されていますけれども、多分、漫画だけではなくて文芸もそうだと思うんですけれども、海外で発売された日本の作品というものは国立国会図書館にほとんど保存されておりません。これは、国立国会図書館法を改定しないと保存ができないそうです。許諾は日本で出しているわけですから、サンプルは日本に一冊、二冊ではなくて十冊、二十冊レベルで来ていますので、そこを改定していただければ国立国会図書館に納本することは多分できると思うんですけれども、今はできないそうです。
ということで、現在、日本の漫画が海外でどれぐらい出ているのかというデータはどこにもございません。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/41
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042・新妻秀規
○新妻秀規君 ということは、じゃ、やはりそうした調査も含めて、また法整備も含めて、また漫画家協会の中で御検討があって初めてナショナルアーカイブに漫画が組み込むことができるかということが、ようやくその検討の舞台ができ上がる、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/42
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043・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) はい、そうだと思います。先ほど植村先生がおっしゃったように、これからがスタートなんだろうと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/43
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044・新妻秀規
○新妻秀規君 御三方、先生方、本当にありがとうございました。
以上で質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/44
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045・松沢成文
○松沢成文君 みんなの党の松沢成文と申します。今日は三人の参考人の先生方、お忙しい中ありがとうございました。
まず、私は、ちょっと今までの質問とは違った角度で、今回の法改正に絡んでの消費者対策についてお伺いをしたいと思うんです。
今回の法改正のポイントというのは、今までの議論ありましたけれども、インターネット上の海賊版対策と健全な電子書籍市場の形成ということが目的だと思います。ただ、これまでの文化審議会の小委員会とかあるいは各関連事業団体の検討経過というのを見てみると、作家などの著作権者とまあ出版社ですね、それから経済団体とか、主に供給者側の視点から議論が進められてきたというふうに思えてならないんですね。
出版者への権利付与の在り方という、供給者側の権利規定を整備することが本来の趣旨であるということは私も分かりますけれども、健全な電子市場が形成されるためには、もう一方の受給者側、消費者であるユーザー側との理解と適切な権利行使というのが欠かすことができないというふうに考えています。
そこで、一月三十日の朝日新聞の朝刊に面白い記事載っていたんですね。面白いと言っては失礼かな。「電子書籍 消える蔵書 企業撤退で読めなくなる例も」という大きな見出しが付いておりました。これ、電子出版事業から企業が撤退してしまうことで電子書籍を読めなくなるケースが発生していると、こう書いてあります。
そもそも紙媒体の書籍と違って、電子書籍を購入しても、それは自分のものにはならないわけですね。電子書籍というのは、物ではなくてデータであると。つまり、所有権がないわけなんです。最大手のこれ、アマゾン・キンドルストアというのの利用規約には、「コンテンツは、コンテンツプロバイダーからお客様にライセンスが提供されるものであり、販売されるものではありません。」と、確かにこういうふうに書かれているらしいんです。
しかし、たとえこの規約を読んだとしても、素人が正確にその意味を把握するというのはなかなか難しいし、実際にはこうした細かい規約に目を通してから購入する人も少ないというふうに思うんですね。多くの購入者は、購入したデータが自分のものではないということすら分からないで、買ったんですから、自分のものだと思って購入してしまう人が多いと思うんです。
こうしてせっかく買ったのに、事業者が配信から撤退してしまって読めなくなってしまうというような消費者に不利益を与える事態にはどのような対応が考えられると思いますか。また、消費者にこうした電子書籍の実態を知らせることの必要性についてどのように考えるか。これ、それぞれ皆様からこの消費者対策についての御意見をいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/45
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046・丸山和也
○委員長(丸山和也君) まず、じゃ高須参考人、よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/46
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047・高須次郎
○参考人(高須次郎君) 大変難しいお話だと思うんですけれども、これはこれから起きてくるということは当然考えられますね。その場合の対応をどうするかということですけれども、出版者の考え方で申しますと、それなりに出版者がそういうふうなデータをまたお渡しするとか、そういうふうな対応をしていくということぐらいしか考えられないんですね。それ以上のものはもう少し大きな法律的な対策をしていただく以外にないんではないでしょうか。余りこの点については正直考えておりませんでしたので、こんなところでお許しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/47
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048・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 非常に難しい問題かつ重要な問題だというふうに認識しておりますけれども、既に時代がそういうふうに動いてきておりますので、利便性とか選択肢の中の一つというふうに考えるべきなんでしょうけれども、教育の問題なのかもしれないですけれども、例えばウィンドウズのソフト、OSですよね、それを買ってバージョンアップ、XPのサポート期間が終わってしまって、みんな変えなきゃ、バージョンアップしなきゃいけない、それも同じ理由のような気がするんですよね。それに対してやっぱり文句言う人ってそんなには、もちろん腹の底では文句はあるでしょうけれども、マイクロソフトに対して文句を言う人というのはなかなかいないわけでありまして、電子書籍も多分そういう意味では閲覧権を期間限定で買っているというふうな認識をするべきなんだろうと思います。ハードウエアとかソフトウエアというものがバージョンアップしてしまうと、サイトが生きていてもそれは多分読めなくなるんだろうなというふうに今私は思っております。
そういう意味では、その電子書籍、国立国会図書館で電子書籍のアーカイブというのも含めて長く読めるようになるというのが一番いいんでしょうし、そういうものであるべきなんでしょうけれども、それは逆に海賊版が出やすくなるということにもなるということで、非常に難しい問題なんだろうと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/48
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049・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 今ほどありましたように、幸森参考人も御指摘されたように、パソコンに関しては結構理解されているけど、電子書籍に関しては、えっ、所有していないのと思うって、これがまさに電子書籍というのが全く新しいメディアだということで、ですから、多分時間の経過の中で理解は進むかとは思います。
ただ、私どもは、どうしても新しいメディアを古いメディアの延長で捉えがちです。つまり、書籍と同じように電子書籍を捉えているという読者の方がいるならば、それに沿ったことをするのがビジネスの、あるいは提供する側の責任だと思っています。それは、単に告知しろとかリテラシーを上げろという話ではなくて、まさにそれこそチャンスなんですから、それをうまく利用するビジネスというのは当然考えるべきだと思います。
現にアメリカでは、ソニーがリーダーの提供をやめるというときにコボが引き受けるということがあるように、これこそまさに私はビジネスのチャンスで、今できていないという不満があるならば、不満に応えるように我々は、我々というんでしょうか、業界も考えていくということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/49
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050・松沢成文
○松沢成文君 今回の法改正、海賊版対策というのが一つの最大の問題であると思うんですけれども、もう一度お三方にお聞きしたいんですが、少し問題を整理するという意味で、先ほど植村参考人の方からも、まだまだ今回の改革はスタートだと、これから著作権の問題、海賊版の問題を含めてしっかりと内容を詰めて新しい時代に対応できるものにしていかなきゃいけないというのがありました。
で、具体的に、それでは、今回の法案のどこの部分がまだまだ問題であって、それに対してどういう更なる改革を望むのか、これを各団体、端的に教えていただければ今後の私たちの議論に参考になりますので、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/50
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051・丸山和也
○委員長(丸山和也君) じゃ、今度は逆に植村参考人から各お三方、端的に時間の関係でお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/51
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052・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 一つは、著作権制度、今回の法改正の中の話ではなくて、そのもう一つの制度としてはやはり登録制度、著作権の所在を明らかにするということだと思います。それは必ずしもコンテンツだけではなくて、いわゆるメタデータとか書誌情報とかをちゃんと登録するということでオーファンワークスをなくすような制度設計が求められると思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/52
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053・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 今回、これまでは著作者のみが海賊版対策、要するに訴訟権を持っていたというところでございますが、今後出版者も持てるようになったということで、これをいかに、現状は持てるようになっただけで、いかに実効性を持たせていくかというところが一番難しいところなんだろうなと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/53
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054・高須次郎
○参考人(高須次郎君) これは最初意見陳述で申し上げましたとおり、一体的にしていただきたいと、出版を引き受ける者に対して出版権を設定していただきたいと、それが一つです。
もう一つは、一号出版権者であっても海賊版対策について何らかの措置がとれるような対応をしていただきたいというのは、みなし侵害規定の議論もありました。一番最初には特定版面権がありました。私的には、特定版面権といいますか、特定出版物権というような形でそういうふうな違法なデジタルスキャンを止められるような対策をしていただきたいというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/54
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055・松沢成文
○松沢成文君 以上です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/55
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056・田村智子
○田村智子君 よろしくお願いいたします。日本共産党の田村智子です。
まず、高須参考人にお聞きをいたします。
やはり御主張の中心点が、出版権の一号と二号を一体的にということが御主張の中心点だったかと思いますので、その件に関してなんですけれども、やはり一号のみで契約になってしまって二号の出版権を契約上得ることが困難というケースを、もう少し具体的に考えられるケースとして、先ほど過去の著作物というのは幸森参考人からの御指摘でなるほどと思ったんですけれども、これから発売するような、これから出版するようなものについて、一号は取得できるけれども二号はなかなか契約上結ぶことが難しいと考えられるような具体のケースというのがどのようなものになるのか、考えられましたらちょっとお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/56
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057・高須次郎
○参考人(高須次郎君) 一番簡単なのは、著者の方が、一号については高須君のところでやるよ、だけど二号についてはこういうふうな、例えば外国のそういう配信業者から言われたからこっちでやりたいというふうに分けてこられたら、こちらとしては、ああ、そうですかということにならざるを得ないと。
ですから、本来はコンテンツというのをつくるのに時間を掛けて投資をしてきているわけですね。ですけれども、それができた段階で分けられちゃうということになってしまうと、紙の方の出版物の再生産が利かなくなるということを恐れているわけです、私どもは。ですから、一体的に欲しいんだと。少なくとも最初はやらせてくださいというふうなのが私どもの主張です。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/57
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058・田村智子
○田村智子君 やはり大手のプラットフォーマーなどに対してどう対抗していくかということが一つ大きな問題になっていくんだろうということは私も理解をいたします。
その問題では、先ほどフランスなどでは、電子書籍の価格についても一定の価格の値崩れを防ぐような価格維持法のような法整備がフランスでは成立しているというふうに御指摘があったんですけれども、日本において電子書籍の価格の在り方について、フランスの事例などももう少し詳しくお聞かせいただければと思うんですが、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/58
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059・高須次郎
○参考人(高須次郎君) フランスの場合は、紙の方は再販制でラング法というので保護されて、五%程度の値幅再販ということなんですが、電子の方は一昨年か何かにできたんですけれども、そのきっかけが海外の巨大プラットフォーマーの本についての値引き販売だったんですね、電子書籍についての。猛烈な値引き販売をしてお客を集めて、それで周りのほかの商品も売っていくと、こういうややおとり販売的なやり方をしたために、いわゆる町のリアルな書店さん、そういったところとかが売行きが悪くなってきた。そういうことで、リアル書店さんを基本的に守らなきゃいけないということで、これは価格を出版社側に作ってやらないとまずいと、そういうことから法律ができたと。そういう意味では、統一的なやり方をして、出版、書店を守るというやり方をフランスはやっている、やはり文化国家だな、やっていないと文化国家じゃないと言うと問題になりますけれども。
やはり私としてはそういうふうな両方をやっていっていただきたいと思うんですよ、統一的に。でないと、出版社には優秀な編集者がいっぱいいるわけですよ。そういう方たちが時代を見ながらこういう本を作っていくということで、日本の全体的な知の継承とか創造をやってきた、伝達をやってきたということで、その部分が壊れてしまうと著作者の方も当然困っていくということになると思うんですね。
ですから、そういう意味で、何も出版社だけの利害を言っているんじゃなくて、書店さんなんかを含めた全体をどうやって守っていくのかという意味で、その両方を是非いただきたいと、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/59
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060・田村智子
○田村智子君 同じ質問を植村参考人にもお聞きをしたいんですけれども、やはり電子書籍は購入ではなく閲覧や使用だと、基本的には。そういうことも含めて、じゃ、価格の一定のルールというのはやっぱり国境がないのでなかなか難しいところはあるかもしれないのですが、何か一定のルールというものが求められてくるかと思うんですけれども、御所見をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/60
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061・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 価格はどうやって決まるかと、それは結局、消費者、読者と売手とのバランスの中で決まっていくものです。これは、本もその例外ではないと私は思っています。
ですから、別にそれが、出版社は別に勝手に値段を決めているのではなくて、どの程度の価格設定をするとよりよく売れるのかということを考えながら値付けされていますし、その結果として、日本の書籍は大変安い、いろんな理由がありますが、安いという形が生まれています。だから、電子書籍も、別に必ずしも安いとは限らなくて、高くなることも考えられます。現に学術情報は、全てが電子ジャーナルといってほぼ全部電子化、世界中の最先端の学術情報は電子化が終わっていますが、これはむしろ高くなりました。というか、もっと高くなって大変な事態になっていますが、まさにそれは市場との枠組みの中で決まっていく問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/61
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062・田村智子
○田村智子君 幸森参考人にお聞きをしたいんですけれども、幸森参考人は、一号、二号の一体的というのは余りに出版者側の権利として強大になり過ぎるのではないかというお話だったんですけれども、その出版者と著作者の契約の在り方、先ほどもお話がありましたが、やはりこれ改善をしていく上で具体にもし御提案がありましたら、こういうルールがあればとか、あるいはプロ野球なんかは直接契約でなく代理人が契約をするような方も生まれてきていますけれども、まあ十代の若い方もいらっしゃるというのでなかなか一律のルール化というのは難しいかとは思いますが、何らかの具体の改善の方向というのがありましたらお聞かせいただきたいんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/62
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063・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) ちゃんと話合いをするということだと思いますけれどもね。そういう意味では、今まで、これが標準の契約書だから黙って判こをつけみたいな、まあ極端な言い方をすればそういう形で、受け取る側も読んでもよく分からないから黙って判こをつきますというような、どちらが悪いということではなくてそういうのが慣行だったわけですけれども。
その中に、今回も含めてですが、どんどんどんどん著作権法が改正されていって、もう訳が分からないものに署名捺印しているということではなくて、ここはこういう意味なんですよと。例えば、おうちを借りるときには重要事項説明みたいなことがありますよね。そういう形で、ここはこういう意味ですよ、ここはこういう意味ですよということを理解した上でやっぱり判こ、署名捺印をするというような慣行をしていくのが一番大切なことなんだろうなと思っておりますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/63
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064・田村智子
○田村智子君 もう一つ、先ほどの御意見の中でも塩漬けの問題というのもあったかと思います。著作権法上は八十四条で、六か月を過ぎても出版がされない、今回はインターネットでも配信されないが加わりますけど、その場合には、義務に違反をしたということで出版権を消滅させることができる。それは理解している著作者がどれだけいるかということにはなってくるかと思いますが、この条項が本来機能すればその塩漬けの問題というのはもっと解決していくということなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/64
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065・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) おっしゃるとおり、多分、出版者側も著者側もそんなことは誰も知らないというのが実際だとは思いますし、例えば現在の出版契約書、書協さんが出している標準契約書の中には、紙の出版だけではなくて、翻訳権とか映像化権とか商品化権とか、いろんな支分権を含めた形で契約をしているわけですけれども、例えば、出版は六か月以内にしますよ、映像も六か月以内にしますよ、翻訳も、そんなことはあり得ないわけで、出版はしていますけれどもほかのものはしていないものに対して削除要求をしたときに、それだけはできないというのが多分実態なんだろうなと思いますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/65
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066・田村智子
○田村智子君 ありがとうございます。
もう一点なんですけれども、高須参考人と幸森参考人にお聞きをしたいんですけれども、現行法上、雑誌を丸々一つの単位として出版権を設定できるか否かというところが明確にはなっていないというふうに思います。それで、今回の出版権を電子書籍にも拡張したことで、丸ごと出されちゃうということが、発売日の前にもう「ジャンプ」とかそのまま出されちゃう、そういうやり方に対して今回の法改正が有効に働くのかどうかということについて御所見をお聞かせいただきたいと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/66
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067・高須次郎
○参考人(高須次郎君) 現在のあれでは違法ですよね、それは。今回のことで止められるのかというと、違法行為であればそれは止められるんじゃないかなと思うんですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/67
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068・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 契約の内容によると思うんですけれども、雑誌に執筆するときというのは基本的には契約書はないんですね、雑誌の場合は。ですから、その大前提となるときに期間限定で一部譲渡するとか、そういうことも含めてですけれども、今回の改正でかなり有効な方向に動くようには思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/68
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069・田村智子
○田村智子君 最後に、私もちょっと電子図書館の問題で植村参考人にお聞きをしたいんですけれども、先ほども質問にお答えいただいているんですけれども、図書館に行かずに得ることができるということで使用料、サービス料が発生する。ただ、公立図書館の場合はやはり無料で閲覧ができるということが大原則になっている。その下で電子図書館のそのサービス料を有料な、ビジネスモデルにしていくようなということも検討されていると思うんですけれども、そこをどう考えたらいいかということについてお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/69
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070・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 私たちにとって、より良いサービスが無料だからとは限らないんです。むしろ、有料だからより良いサービスが実現できる。
一番いい例を挙げますと、ビデオって実は当初、公共図書館も貸出しするし、今でも貸出ししているんです。でも、私たちが豊かなビデオに触れるのはなぜか。それは、民間によるレンタルビデオというのが大きな市場を形成して、そしてそのことによって、実はハリウッド映画は映画館での売上げよりもレンタルビデオからの売上げが既に多いんですね。つまり、どれほどすばらしい映画が生まれるかというのは実はレンタルビデオがつくり出したんです。
この関係があると考えたら、電子書籍という、レンタルという、それを電子図書館といっては何ですか、有料電子図書館的にいえば貸出しというんでしょうか、そういう有料貸出しというビジネスがあってしかるべきじゃないでしょうか。何でもかんでも無料だからいいんではなく、有料によってより良いビジネス、二十四時間、にこやかな対応、いや、いつも、あっ、ごめんなさい、図書館もにこやかな対応をしていただいていますが、そういうような枠組みが、考えていくのが実は市場の形成だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/70
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071・田村智子
○田村智子君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/71
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072・藤巻健史
○藤巻健史君 日本維新の会、藤巻です。お願いします。
今日は、お三方どうもありがとうございます。
お話を聞いているうちにちょっとコンフューズしてきたことがあるので、基礎的なあほらしい質問というか、ばかにされちゃうかもしれないような質問をさせていただきますけれども。
高須参考人が、第一号出版権と第二号出版権を一緒にしていただかないと、一生懸命そのコンテンツを作るためにいろんなことをしたのに、何か簡単に第二出版権を持った人に持っていかれちゃうというお話をされていたと思うんですけれども、漫画の場合にはその原作者が書いたものがそのままきっと出版されていっちゃうんだろうと思うんですけど、私が書いたような本、私自身は全部、一〇〇%自分の本だというふうに、原稿だと思っていますけど、聞くところによると、多くの方はゴーストライターが書いたり、それから編集者がどんどん直していったりして出しますよね。そのときに、その第一号出版権で出したものを、いろんな人の手が掛かっているものを第二号出版権の方がそのまま使えるんですか。
私、ちょっと考えていたのは、今まで思っていたのは、その第二号出版権を持った人というのは第一号出版権を持っている人にかなりのお金を払わないと第二号出版権というのは得られないかなと思ったんですけど、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/72
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073・高須次郎
○参考人(高須次郎君) お金を払う必要はないんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/73
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074・藤巻健史
○藤巻健史君 ということは、著作権じゃないから、ないということですか。そうですか。分かりました。ちょっと後で考えてみます。
次の質問ですけれども、幸森参考人にお聞きしますけれども、漫画って、雑誌の場合、一枚幾らで書いていると思うんですけれども、それを本にした場合、本を書く場合は、ちょっと人の懐を聞くようで恐縮ですけれども、印税って何%なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/74
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075・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) ケース・バイ・ケースですけど、おおむね一〇%だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/75
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076・藤巻健史
○藤巻健史君 じゃ、植村参考人にお聞きしますけれども、漫画以外の本って私は全部一〇%と理解していたんですけれども、一〇%以外のケースってありますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/76
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077・植村八潮
○参考人(植村八潮君) それはもちろん著作権者と出版者の契約と、コンテンツの例えば販売力とか、あるいはそれにおける読者の存在によって様々ですので、いわゆる買取りもありますし、私がかつて関わった学術出版で、そもそも論文の投稿に著作権者がお金を払わないと学会が載せてくれない世界があるわけですから、真逆ですよね。
これはまさにニーズとの関係の中で様々な取引形態はあると思いますが、ただ、上の方は大体一〇%で、ある枠になるのかなというところはあるかとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/77
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078・藤巻健史
○藤巻健史君 上の方って、何が上の方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/78
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079・植村八潮
○参考人(植村八潮君) ごめんなさい、言葉が足りませんでした。例えば二〇とか三〇はないですねということです。それは、どうしても本の原価から考えまして、大体一〇%というのが業界的にでき上がった約束事かなと思います。ただ、翻訳しますとこれと別な経費が原著作者にも掛かりますので、どうしてもトータルすると一六とかいうことにはなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/79
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080・藤巻健史
○藤巻健史君 今ちょっと翻訳の話が出てきたんですけれども、例えばこれも基本的な質問なんですけれども、日本語で出している本を例えば私が英語に直した場合というのは、これ、別な本になるんですか、それとも同じ本なんでしょうか、植村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/80
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081・植村八潮
○参考人(植村八潮君) それは著作権における二次的利用と言われていまして、あくまでも基の本をベースにして、ただし、その翻訳という新たな作業が二次的な創作として認められていますので、原著に新たな二次的な著作権が乗るという形にはなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/81
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082・藤巻健史
○藤巻健史君 ちょっと今、本題とずれてきちゃったんですけど、その場合にはお金は払う必要はあるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/82
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083・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 創作的な行為に対して対価が払われるというのは普通の資本主義の美徳だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/83
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084・藤巻健史
○藤巻健史君 ちょっと印税の話に戻りまして、一〇%だとしまして、それで、昔ですと、著作権者って、大体、判こを押していましたですよね、本に一つずつ、それで何部売れたか大体理解していたんですけれども、最近、出版社が本の部数をごまかしているというニュース、どこか、何か出ていましたですね。それでも、普通の本というのは第一版とか二版とか出ているので、それなりの信頼関係もありますし、ある程度その数分かるかと思うんですけれども、電子出版になっちゃった場合、著作権者を守る方法というか、要するに部数、アクセス数が幾らとか、そういうチェックというのは著作権者はできるんでしょうかね。植村参考人にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/84
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085・植村八潮
○参考人(植村八潮君) まさに、契約には信頼関係があるということが大前提ですし、その上ででき上がった契約に沿わないで、それは部数の報告義務というものがあるわけですから、それはやっぱり社会的に罰せられる、そのような組織、仮に出版社であれば信用失墜するというわけですから。今まで以上にそのことが明らかになった時代であるし、その一つの流れとして、著作権法改正の文化庁の今までの御尽力の結果として、ありようの形として著作権者と出版者が契約に基づくという枠組みをつくっていただいて、明らかになったことが非常にすばらしい成果だと私は思っています。
ですから、契約社会である以上、もし出版者に、今までの編集者って確かに文芸作家と銀座でお酒飲んじゃうだけみたいなことがなかったわけではないですが、やっぱり全ての人が現場教育をするというのは、これは出版社であり、出版界の義務だと思いますし、一方において、個人事業主である作家の先生方もやはり勉強する時代になったと私は理解しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/85
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086・藤巻健史
○藤巻健史君 今、印税の方は一〇%からそれなりに掛かってくるというお話だったんですけれども、電子出版の場合の著者に対する支払というのは、先ほどのお話、アクセス数掛ける単価というお話だったと思うんですけど、その単価って大体、一般書ですけれども、集約してきているんでしょうか、それともまだかなり開いているんでしょうか。かなり開いているということは、もし開いているのであれば、二次出版権に関してA出版よりもB出版の方にするというインセンティブが、モチベーションが働く可能性もあるかなと思うんですけれども、現状としてはどうなんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/86
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087・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 私の知る限りですけれども、電子出版の印税というのがほぼほぼ固まりつつありますが、掛ける部数が固まっているかという、点数というんですが、ダウンロード数が固まっているかというと、まだまだ非常に未熟な市場で、期待は大きいですが、実態としては非常に売れていない、紙のようには。オーダーが二桁も三桁も違うと御理解していただいていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/87
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088・藤巻健史
○藤巻健史君 いや、私も、確かに紙の方はそれなりにいただいていますけど、データの方は百円単位で、年間、ぐらいしか来ないものですから、それはよく分かりますけれども。
最後に、図書館のお話出ていたんですけど、図書館で、時々私も自分の本が図書館でどのくらい読まれているかチェックするんですけど、私は、実際、本で生活しようと思っていないので、別にそれは図書館で読まれているとうれしいなと思うんですけど、逆に、話聞いたある方では、図書館で読まれるとその分売上げが減ってがっくりするという話をしていた方がいらっしゃるわけですね。
かなり図書館って今使われていて、これいいことなんですけど、逆に言うと、著者にとってみると収益減ということもあるんですけれども、図書館で、やっぱり著作権というか、そこからお金を取るというのは、やっぱり社会通念上かなりまずいんでしょうか。それは幸森参考人と植村参考人の両方にお聞きしたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/88
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089・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) ありがとうございます。
現在、一年間で、図書館で貸出件数が七億件だそうでございます。漫画はそれほど置かれていないんだろうと思っておりますけれども、特に多いのが児童書、絵本でございます。
これは同じく絵本とか児童書の著作者団体さんから伺った話でございますが、今、少子化になっておりますので、三歳向けの絵本というのは四歳になったら読まないんですよ。昔だったら兄弟がたくさんいるので、下の子に読ませるために買って家に置いておくということがあったんですけれども、少子化ですから、三歳の子が四歳になったら読まないものは買わないので、図書館に行ってしまう。図書館も、一冊ずつ保管のために置いているわけじゃなくて、貸し出すために十冊、二十冊と買って、要するに近所の書店なりを圧迫するようなことというのも当然起こっておりまして、それは明らかに著者の収入には影響しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/89
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090・植村八潮
○参考人(植村八潮君) まず、公共図書館には図書館法による無料原則というのがありますが、これはまさに法律の制度の問題ですので、それは所蔵物、資料等を無料にするというのは法律によって決められているわけですので。
ただ、そのもう一歩だけ先を行けば、それに加わるサービスとして、今でも例えばコピーは大体一回十円で提供されているとか、あるいは今後、アメリカなどを見ると予約したときには有料にしましょうとか、つまり、図書館法における所蔵物は無料の外側として何かのサービスを有料にしていくというのはないわけじゃないとは思います。
もっと言うと、データベースは所有していませんので有料化ということもあるかもしれませんが、現状の公共図書館でそういうコンテンツを利用するのに何か有料になるというのは、今の国民の感覚からするとそぐわないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/90
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091・藤巻健史
○藤巻健史君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/91
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092・柴田巧
○柴田巧君 結いの党の柴田巧です。
今日はお忙しい中、御出席をいただきまして、それぞれに貴重なお話を賜りましたことに私からも感謝を申し上げたいと思います。
まず最初に、植村参考人にお聞きをしたいと思いますが、先ほども、この著作権法の改正が第一ステージで、これから第二、第三ステージもあるというお話でしたが、その中でいわゆるオーファン、孤児著作権といいますか、著作物の取扱いも今後の課題になるだろうということに言及をされましたが、現時点でどういうふうな取組といいますか、やっていけばいいかとお考えなのか、まずこの点からお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/92
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093・植村八潮
○参考人(植村八潮君) ありがとうございます。
整理しますと、オーファンというのは誰も利用できないわけですね。つまり、明確に著作権者の死後五十年でパブリックドメインになったというものは、当然それはパブリックドメインということで利用できるわけですが、切れたか、切れたかも分からないというのは誰もそれをできない。その結果として、文化庁における裁定というのはありますが、実態としてはなかなか運用が難しい。
ということを考えますと、今、ヨーロッパ、EUを中心として動いていますように、まず利用してしまって、ただし、そのときに明らかに著作権者が分かり、そうだったときにそれに対する対価を支払っていくというような形で、利用というのは結局、国民に資するわけですので、そういう埋蔵された作品を単なる市場とか産業という切り口ではなく、やっぱりそれが利用できるようになるということをまず念頭に置いておいていただいて制度設計していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/93
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094・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございます。
次に、幸森参考人にお聞きをしたいと思いますが、先ほどもお話があったかと思いますし、先般も読売新聞か何かに大きく出ておりましたが、発売前の漫画が海外で海賊版ですぐ出回ってしまうということで、いろんな国としても取組を相手国などともしていると思うわけですけれども、幸森参考人から御覧になって、どういう防止策がまず必要だとお考えになっていらっしゃるか、この海外での海賊版の取締りというか、特にどういうところに力を入れてほしいというお考えがあれば、お聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/94
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095・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) ありがとうございます。
雑誌という単位あるいは単行本という単位で、どうしても実際に訴訟を起こすとなると莫大なお金が掛かるわけですけれども、それを例えば漫画家あるいは作家あるいは出版者というような単位で実際に払い切れるのか。あるいは、費用対効果ですね。例えば、二万円の著作権使用料が海賊版で侵害されているというのに、弁護士に二十万円払っていたのでは話にならないわけですから、そういう部分でやっぱり費用対効果を考えてなかなか訴訟に踏み切れないということがありますので、やっぱり国とかそういう大きなところで支援していただかなければなかなか海賊版対策というのは進んでいかないんだろうなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/95
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096・柴田巧
○柴田巧君 その中でも、特に優先順位としてというか、まずこれをやってほしいという何か特にございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/96
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097・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) 優先順位と言われると困るんですけれども、多分どれも同時進行的にやらなければ海賊版対策というのはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/97
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098・柴田巧
○柴田巧君 ありがとうございました。
次に、お三方にそれぞれお聞きをしたいと思いますが、これまでのものとちょっと重なる部分も一部あると思いますけれども、今回の法改正も、いわゆる書籍文化というか活字文化、出版文化、日本の豊かなそれぞれの文化をデジタル化やネットワーク化に対応すべく改正をしようということではありますが、この法改正以外に皆さんのそれぞれのお立場から、そういう文化をしっかり次世代に継承して、更に言えば海外にも強く発信をしていくためにどういう支援策が足りない、施策が海外などと比較して足りないと、もっとこういうバックアップが、サポートがあればいいなと思っていらっしゃることがあれば、それぞれお三方にお聞きをしたいと思います。
私はこれが最後の質問になると思いますので、言い足りなかったことも含めて、もしあれば御参考のためにおっしゃっていただければ幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/98
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099・高須次郎
○参考人(高須次郎君) 多少繰り返しになりますが、出版物、本につきましては、紙の方と電子の方が共に発展していくような形で、フランスのような価格拘束法のようなものを是非作っていただきたいということが一つございます。
それから、やはり海賊版の対策では、一号出版権で海賊版対策ができないということでは非常に困りますし、ほとんどは、九五%以上は紙の本からの海賊版であると、デジタルスキャニングみたいなもの、そういうことを考えますと、やはりこれはこの法改正をステップにして早急にまた見直しを含めた検討をしていただきたいというふうに思います。
それから、電子出版物等の概念です。国会図書館の方の考え方は、電子書籍というのはパッケージ系の電子書籍とオンライン系の電子書籍というふうに考え方を分けております。そういう考え方を取っております。ところが、この著作権法では、第二号はオンラインで、パッケージ系は有体物ということで一号に入れちゃっているということになっているわけで、その辺のことも含めて整理をしていただきたい。特に、公正取引委員会の方がパッケージ系は非再販であるということでやっていますと、逆に有体物なのに何でそれを再販指定できないのかという問題、いろいろあります。
そういうことを含めてやっていただいて、特に海外、巨大なメガプラットフォーマーが入ってきます。それにやはり十分に対応できて、かつ出版社から書店さん、そういった皆様が共に今後も発展できるような、そういうふうな制度設計を著作権法の方においてももう少し考えていただけないかというふうに思います。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/99
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100・幸森軍也
○参考人(幸森軍也君) ありがとうございます。
冒頭申し上げましたとおり、漫画というのは著作権法の中に一回も書かれていないので、せめて漫画の著作物というような形で著作権法の中に入れていただきたいなということが一つございます。
それから、今の中でもさんざん出てまいりましたけれども、JASRACとはちょっと違う形になるかもしれないんですけれども、権利の集中処理機構、JASRACは一部譲渡している形になりますけれども、なかなか漫画ではそこがハードルが高いんだろうと思いますけれども、権利の集中処理機構的なものをつくることが最も急がれるんだろうなと思います。それがオーファンワークスを減らす形でありますし、ナショナルアーカイブにつながっていくものなんだろうなと思います。
それから、冒頭申し上げましたとおり、海外で日本の漫画あるいはアニメというものは受け入れられているんですけれども、実は日本の漫画の本というのは、最も広く海外に広がったのが「ドラゴンボール」で三十か国です。三十か国なんです。物すごく少ない。これはなぜかというと、具体名出すとまずいのかもしれないですけど、タイとか東南アジアで一部百円ぐらいなのが三千部で八%の印税というような非常に、著者に入ってくるのは二万四千円、これビジネスじゃないんですよね。なので、一生懸命やっていられない。日本の漫画だったら、四百円ぐらいのものが四百万部出たりするんですけれども、海外はそんな事情ではありませんので、いまだにやっぱり子供が読み捨てる低俗なものという認識で、百円以下で売られているというのが多い形になっていますので、そういう海外に広げていくような支援というのがしていただければと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/100
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101・植村八潮
○参考人(植村八潮君) 言い足りなかったことをということをお伺いいただきましたが、まず、冒頭の繰り返しになりますが、私どもはグローバル時代の中に何らかの出版政策あるいは産業育成策として国のお力をいただかなきゃいけない事態になったということだと思います。そのために、今回、まず著作権制度の改正ということで、当初、私も度々申し上げましたように、出版者への権利付与という枠組みの中では、古くから出版界は、第八小委員会ですか、あれからほぼ四半世紀このテーマを願望してまいりましたし、二〇一〇年の三省デジタル懇からも五年という議論があったわけですが、でも、何よりもここでまとめていただいたという文化庁の御尽力に本当感謝していまして、なぜなら、我々は今まで持っていなかった道具を手にしたわけですから、まずこの道具を我々はそれぞれの立場で使い切ってみるということが問われていると思います。
その上で、要望になるわけですが、海外海賊版対策、実は一番有効な対策はやはり正規品をちゃんと売れるようにするということで、海賊版があるからけしからぬという前にちゃんと売っていく。これが先ほどあった価格の問題とか様々な、やっぱりできにくい。でも、あらゆる産業で、例えば特許における違反とか技術的なものに関して、あるいは商標とかパテントにおける海賊版行為を見ると、やっぱりちゃんと売り始めるとそれは市場として消えていくわけですね。という意味において、やはり日本の出版物を海外に展開していく、この方策に関しての御支援をお願いしたい。
もう一つは、グローバル社会ですから、我々が出ていくだけでなく、当然、私は海外企業が日本で活躍するのは当然のことだと思っています。その結果、読者にとってより良いサービスが生み出されるということも、それは歓迎すべき事態だと私は思っているんです。海外だからいけない、国内事業だからいけないという区分けは私にはありません。
ただ、一点非常に懸念があるとしたら、それはプラットフォーマーによる独占だけは許せないです。なぜか。それはというと、メーカーが独占したとしても、それは多様なメーカーがあるから結構ですが、プラットフォーマーというのは私たちの言論表現におけるアクセスそのものの最初の入口が独占されてしまうわけです。これはほかの商品とまた違って、まさに出版物におけるプラットフォーマーの独占というのは言論表現の自由ということが脅かされる、その可能性を懸念せざるを得ないと思っています。
ということにおいて、まさにプラットフォーマーの独占に関しまして、やはり次なる方策というのは、これは民間の努力と国の政策というその組合せの中で、今後問題点が浮上するやに思っています。
そのためにも、長年、議員の皆様、特にまた議連の皆様方とか、様々な形でこのことを論議して注目いただいていますが、今後とも是非注目していただきたいというふうに思っています。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/101
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102・柴田巧
○柴田巧君 どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/102
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103・丸山和也
○委員長(丸山和也君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118615104X01120140422/103
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