1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成二十九年三月八日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第七号
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平成二十九年三月八日
午前十時 本会議
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第一 北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議す
る決議案(山本順三君外十名発議)(委員会
審査省略要求)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一
一、所得税法等の一部を改正する等の法律案(
趣旨説明)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/0
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001・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
日程第一 北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議する決議案(山本順三君外十名発議)(委員会審査省略要求)
本決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、これを議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/1
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002・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 御異議ないと認めます。
よって、本決議案を議題といたします。
まず、発議者の趣旨説明を求めます。山本順三君。
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〔議案は本号末尾に掲載〕
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〔山本順三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/2
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003・山本順三
○山本順三君 ただいま議題となりました自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党、日本共産党、日本維新の会、希望の会(自由・社民)及び無所属クラブの各派共同提案に係る決議案につきまして、発議者を代表し、提案の趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読いたします。
北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議する決議案
去る三月六日、北朝鮮は四発の弾道ミサイルをほぼ同時に発射し、そのうち三発は日本海上の我が国の排他的経済水域内に落下した。これは、昨年十一月に国連安全保障理事会で採択された安保理決議二三二一号を始めとする累次の安保理決議や日朝平壌宣言に違反するとともに、六者会合共同声明の趣旨にも反するものであり、断固として抗議する。また、航空機や船舶の安全確保の観点から極めて問題のある危険な行為であり、断じて容認できない。
北朝鮮は、昨年、核実験を二度にわたり実施し、また、長距離弾道ミサイルや潜水艦から発射したものを含め、二十発を超える弾道ミサイルの発射を実施した。さらに、今年に入り、日米首脳会談直後の二月十二日の発射に続き、今般も四発の弾道ミサイルを発射するなど、こうした核実験及び度重なる弾道ミサイルの発射は、新たな段階の脅威であることを明確に示すものであるとともに、我が国及び地域、そして国際社会全体の安全保障に対する明らかな挑発行動であり、強く非難する。
本院は、北朝鮮に対し、核及び弾道ミサイル計画を放棄し、更なる挑発行動を行わないよう強く求める。また、関連する安保理決議を即時かつ完全に履行することを改めて要求する。さらに、国際社会に対して、安保理決議に基づく制裁措置を完全に履行するよう強く求める。国際社会は、結束した外交努力を展開し、平和的な解決を模索すべきである。
そして政府は、我が国が安保理非常任理事国であることを踏まえ、安保理決議の確実な履行を強く働きかけるべきである。加えて、日米韓の情報共有を含む連携を強化し、国民に対して的確な情報提供を行うとともに、我が国の平和と安全の確保、国民の安全・安心の確保に努め、万全の措置を講ずるべきである。併せて、米国、韓国、中国、ロシア等関係各国と緊密に連携し、北朝鮮に挑発行動の自制を強く求めるべきである。同時に、我が国独自の制裁の徹底及び強化を図るべきである。
北朝鮮の核・ミサイル問題のみならず、拉致問題も我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、国際社会が結束して北朝鮮による核、ミサイル、そして、最重要課題である拉致問題の包括的かつ早急な解決を図るべく、政府の総力を挙げた努力を傾注し、もって国民の負託に応えるべきである。
右決議する。
以上であります。
何とぞ皆様方の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/3
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004・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより採決をいたします。
本決議案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/4
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005・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/5
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006・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十四
賛成 二百三十四
反対 〇
よって、本決議案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
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〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/6
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007・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) ただいまの決議に対し、内閣総理大臣から発言を求められました。内閣総理大臣安倍晋三君。
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/7
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008・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいまの御決議への所信を申し述べます。
三月六日、北朝鮮は四発の弾道ミサイルをほぼ同時に発射し、うち三発を我が国の排他的経済水域内に着弾させました。これは、北朝鮮が新たな段階の脅威であることを明確に示すものです。重大な挑発行為であり、断じて容認できません。安保理決議や日朝平壌宣言に明白に違反し、六者会合共同声明の趣旨に反するものです。さらに、航空機や船舶の安全確保の観点からも極めて問題です。北朝鮮に対し、厳重に抗議し、この暴挙を最も強い表現で非難します。
昨日行った日米首脳電話会談においては、トランプ大統領から、米国は一〇〇%日本と共にあるとの発言があり、日米、日米韓で、国連の場を含めて緊密に連携していくことを確認しました。
拉致、核、ミサイルの諸問題を解決しない限り、世界からますます孤立し、明るい未来を描くことはできない、北朝鮮にこのことを理解させなければなりません。
我が国は、引き続き、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、北朝鮮に対し、更なる挑発行動を自制し、安保理決議を即時かつ完全に履行し、核・弾道ミサイル計画を放棄するよう強く求めてまいります。安保理非常任理事国として、国際社会に対し、決議の履行を強く働きかけるとともに、我が国独自の措置の実施を徹底し、毅然かつ断固として対応してまいります。北朝鮮の脅威に対処するため、日米、日米韓の連携を主導し、安保協力での取組を更に前進させてまいります。
北朝鮮は、これまで、新型ミサイルの発射を示唆していますが、我が国としても重大な関心を持っており、引き続き高度な警戒監視態勢を維持し、万全の態勢を取ってまいります。国民に適時適切な情報提供を行い、我が国の平和と安全の確保、国民の安全、安心の確保に万全を期してまいります。
拉致問題は、安倍政権の最重要課題です。被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が訪れるまで私の使命は終わりません。対話と圧力、行動対行動の原則の下、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしてまいります。
ただいまの御決議の趣旨を体し、核、ミサイル、そして、引き続き最重要課題である拉致問題に関し、北朝鮮が問題の解決に向け具体的行動を取るよう強く求めてまいります。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/8
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009・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) この際、日程に追加して、
所得税法等の一部を改正する等の法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/9
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010・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 御異議ないと認めます。財務大臣麻生太郎君。
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/10
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011・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する等の法律案の趣旨を御説明申し上げさせていただきます。
本法律案は、日本経済の成長力の底上げのため、就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築、経済の好循環の促進、酒類間の税負担の公平性の回復、国際的な租税回避への効果的な対応などの観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。
以下、その大要を御説明申し上げます。
第一に、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しを行うことといたしております。
第二に、経済の好循環を促す観点から、研究開発税制及び所得拡大促進税制の見直し、中小企業向け設備投資促進税制の拡充等を行うことといたしております。
第三に、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、酒類の税率構造及び酒類の定義の見直しを行うことといたしております。
第四に、より効果的に国際的な租税回避に対応するという観点から、外国子会社合算税制の見直しを行うことといたしております。
このほか、災害に関する特例の整備を行うとともに、土地の売買等に係る登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。
以上、所得税法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/11
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012・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。大家敏志君。
〔大家敏志君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/12
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013・大家敏志
○大家敏志君 自由民主党の大家敏志です。
私は、自民・公明を代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
安倍内閣は結果を出す内閣です。外交で、経済で、大きな成果を出し続けています。今こそ、これまでのアベノミクスの成果を更に一層全国津々浦々に至るまで、そして未来に至るまで推し進める施策が求められています。
税は国家なりと申しますように、税制が変わることで、人々の生き方、社会の在り方にも大きな影響が生じます。人々の生活に直結した税法、何がどう変わるのか、国民の皆様にしっかりと説明をする責任があります。
まず、円滑な事業承継のための税制改正について伺います。
先日、地元の経営者の方から、自分の子供が事業を継いでくれる気になったのに、事業承継が円滑にできず工場を畳まざるを得なくなったという残念な話をお聞きしました。経営者が子供に事業を引き継ごうと思うとき不安材料になるのは贈与税や相続税ですが、地域雇用の中核を担う中小企業が、これらの税のために泣く泣く事業を整理しなければならないといったことはあってはなりません。
このため、平成二十一年度には、贈与税や相続税の納税を猶予する事業承継税制が設けられました。今回の改正では、より安心して制度が利用できるよう、災害などやむを得ない理由で要件を満たせなくなった場合でも引き続き納税猶予を受け続けられるようにすること、また、より早期の計画的な事業承継を促進するため、要件を満たせなくなった場合の税負担の軽減を図ることとしています。こうした取組によって、地域の特色ある中小企業がバトンリレーのようにその技術や雇用を未来へつないでいける環境をつくっていくことが重要です。
税制のみならず金融措置も含めて、親世代から子世代への円滑な事業承継を政府として全力で支えていくという決意を安倍総理にお伺いします。
次に、我が国の未来を支える研究開発について伺います。
今、世界各国は、IoT、ビッグデータ、人工知能などを活用した第四次産業革命でリードを取るべく、壮絶な研究開発競争を繰り広げています。例えば、自動運転技術は日米欧で主導権を競い合っており、どこの国のシステムが国際基準となるかにより今後の自動車産業の勢力図が塗り替わるとも言われています。これらの最先端技術は日米欧以外の新興の自動車産業国との差別化にも大いに寄与するものでありますから、絶対に負けられない研究開発分野の一つであります。この自動運転技術の例だけでなく、製造業からビッグデータを活用したサービス業にもこの革命は広がりつつあり、まさに第四次産業革命という新しい時代の幕開けと言えるでしょう。
明治の日本が文明開化を経て工業国になったときも、高度成長期に大きく発展したときも、我が国経済の競争力の源となったのは、高い技術力とそれを追求する研究開発でありました。この革命は、我が国が飛躍を遂げるきっかけとなるものであります。
第四次産業革命の後押しのためにどのような施策を税制面で講ずるおつもりか、物づくりに思い入れの深い麻生財務大臣にお伺いいたします。
我が国の経済成長を確実にするためには、持続可能な財政が不可欠であります。そこで、税収確保のための給与支給額の拡大策についてお伺いいたします。
米国で誕生したトランプ大統領は、インフラへの投資と大型減税を打ち出し、株式市場を中心に経済は活況を呈していますが、一方、英国のEU離脱、新興経済国の景気減速の懸念などから、世界経済の先行きは決して楽観できないとも言われています。
こうした中で持続可能な財政を実現するためには、我が国経済の足腰を鍛え、内需拡大を通じた税収増を実現していくことが重要でありますが、それには、何といっても国内総生産の六割を占める個人消費を伸ばすための所得拡大施策が欠かせません。先日始まったプレミアムフライデーの導入など多角的な消費促進策も必要ですが、やはり個人所得、給与を伸ばし、国民が成長を実感すること、これこそが最も重要であります。
政権交代以降、安倍政権は一貫して所得水準の向上が重要であると主張してきました。このため、政労使会議を開催して、賃上げの重要性について認識を共有しつつ、最低賃金の引上げ、賃上げを行う企業への税制支援などに取り組んでまいりました。結果、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現していますが、国民全体の実感としては道半ばであります。
そこでお尋ねいたします。政府は、今後どのように一層の所得、給与の拡大を進めていくのか、また、その際に給与の引上げが中小企業の健全な成長の支障とならないよう、どのようにバランスを取っていくおつもりか、安倍総理にお伺いします。
次に、地方創生に資する税制についてお伺いします。
これまで、企業の地方移転や地方拠点の拡充を支援するため、自治体の計画に沿って建物を取得した企業や雇用を増加させた企業に対する税制上の支援措置が講じられてきました。しかし、これまでの政府や自治体の努力にもかかわらず、東京一極集中には歯止めが掛かっておらず、東京圏への転入超過は毎年十万人を超え、企業の本店移転状況を見ても、東京圏への転入超過が進んでいるとの調査結果があります。
そこで、今回の改正では、これまでの支援措置を更に強化するため、地方において無期、フルタイムの新規雇用を行った企業に対する税額控除の上乗せが行われます。地方の発展をより一層進める税制改正になると思います。
これまでの成果を踏まえ、地方拠点強化税制による今後の見通し、総理の地方創生への決意をお伺いします。
最後に、配偶者控除等の見直しについてお伺いします。
安倍内閣は、女性活躍、働き方改革を最重要課題の一つに掲げています。現在、共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、多くの女性が働き、家計を支えています。
こうしたパート労働の方を始め働く方々の意欲をそぐものとして、税制では所得税、企業では家族手当や扶養手当、そして社会保障においては社会保険料の制度、三つの課題が挙げられます。例えば、月十万円の給与収入のパート労働者が、本当はもっと働きたいのに十月以降は働きを控えてしまう、それによって雇用する側の労働力も不足するという、いわゆる百三万円の壁があります。
しかし、本法案の配偶者控除と配偶者特別控除の見直しによって、この三つの課題のうち所得税の部分は解消が見込まれます。配偶者控除の適用範囲が引き上がることにより、働く側の意欲は増し、また雇用する側の企業にとっても労働力不足の解消が期待されます。
ただ、これで完全とは言えません。企業では、所得の少ない配偶者に対し、月に数万円程度の家族手当や扶養手当を支給する場合、この判断にも百三万円の基準が使われています。また、社会保険料においては、百三十万円で支払の義務が生じ、これが次の壁となり得ます。
今回の配偶者控除等の見直しが、就業調整をしなくなる環境づくりに向けた大きな一歩になることは間違いありませんが、今後は、税制だけではなく、家族手当の仕組みや社会保険料の制度も併せて、一体的かつ総合的に改革を進めていく必要があります。
安倍総理のお考えをお伺いし、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/13
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014・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大家敏志議員にお答えをいたします。
円滑な事業承継に向けた取組についてお尋ねがありました。
これから数年のうちに多くの中小企業が世代交代の時期を迎えます。企業価値を高めるほど相続税が重くなり、やる気がそがれるといった経営者の声も上がっています。中小企業の事業承継の円滑化は待ったなしの課題であります。
こうした相続税の負担については、事業承継税制を措置しています。御指摘のとおり、来年度の税制改正において、災害や主要取引先の倒産があった場合でも適用を継続できるよう、また小規模事業者であっても使いやすいよう、雇用維持の要件を緩和します。
後を継ぐに当たって個人保証が求められることが後継者不足を悪化させます。経営者保証ガイドラインを融資慣行として定着させ、金融機関が取引先企業の事業内容や成長可能性を適切に評価し、経営者の個人保証によらない融資等を行うことを促します。
事業引継ぎ支援センターにおいては、後継者不足に悩む中小企業や譲受けを希望する事業者とのマッチング支援を行ってまいります。今後とも、あらゆる施策を総動員して、中小企業の事業承継の円滑化に向け全力で取り組んでまいります。
今後の所得、給与の引上げについてお尋ねがありました。
アベノミクスにより、政権交代後、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、賃上げは中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現、長らく言葉すら忘れられていたベースアップも三年連続で実現し、税や社会保障負担等を差し引いた家計の可処分所得は二年連続で増加するなど、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。
この流れをより確かなものとするため、今年の賃上げに向けて、少なくとも昨年並みの水準の賃上げ、特に、四年連続のベアの実施、期待物価上昇率も勘案した賃上げの議論、下請等中小企業の取引条件の改善を産業界に対してお願いをしているところであります。
経団連が今年の春季労使交渉に向けた基本スタンスを取りまとめた経労委報告はこれを受けたものとなっています。今年の春季労使交渉においても前向きな成果が出ることを期待しています。
政府としても、賃上げの流れを後押しすべく、最低賃金については四年間連続で引き上げ、合計七十四円の大幅な引上げを行いました。今後も、年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均で千円を目指すこととしています。
また、中小企業の賃上げに向けた環境整備についても、五十年ぶりに下請代金の支払についての通達を見直し、現金払を原則とするなど、下請等中小企業の取引条件の改善に取り組むとともに、高い賃上げを行う中小企業に対する所得拡大促進税制による税額控除の拡充、固定資産税の軽減措置の拡充、生産性向上のための設備投資等を行う中小企業に対する助成金の拡充など、税制、予算措置を総合的に講じてまいります。
地方拠点の強化税制及び地方創生に向けた決意についてお尋ねがありました。
地方において急速に進みつつある人口減少に歯止めを掛けるためには、地方に安定した良質な雇用を確保しなければなりません。地方拠点強化税制については、平成二十七年度に導入して以来、百件を超える事業者の計画が認定され、約七千人の雇用創出が図られています。
例えば、ある大手製造企業は、東京都内の本社機能の一部を富山県に移転させ、研究開発部門を集約して四百人規模の拠点を設けています。このように、企業の本社機能の地方移転や地方拠点の拡充に向けた具体的な取組が動き始めています。
さらに、御指摘のとおり、来年度税制改正には、地方における無期かつフルタイムの新規雇用に対し年間最大九十万円を税額控除額とするなど、更なる拡充を盛り込みました。
もちろん、税制だけではありません。自由度の高い地方創生推進交付金による財政面の支援、地域経済分析システムによって官民のビッグデータを分析し、自治体のどのような取組が高い効果を生むかを見極める情報面での支援、地方の活性化に情熱と知見を有する国家公務員等を市町村に派遣し、また地方創生の様々な担い手を育成するなどの人材面の支援など、東京一極集中の是正に向けてあらゆる施策を組み合わせ、若者を引き付ける個性豊かな地方をつくり上げる挑戦を支援してまいります。
就業調整を意識しなくて済む仕組みについてお尋ねがありました。
就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築は、税制だけで達成できるものではありません。御指摘のように、就業調整の一因となっている企業の配偶者手当や社会保険制度についても取組を進めていく必要があります。企業の配偶者手当については、経団連は、その再点検や見直しの検討を企業に促しており、一月の経済財政諮問会議では、私からも企業の配偶者手当の見直しなどの取組をお願いいたしました。
社会保険制度については、働きたい人が働きやすい環境を整えるとともに、将来受け取る年金を充実させていくため、昨年成立した年金改革法により、中小企業で働く短時間労働者にも被用者保険の適用拡大の道を開きました。今後とも、このような取組を進めていくことにより、働きたい人が就業調整を意識せずに働くことができる環境づくりに努めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/14
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015・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 大家議員からは研究開発税制について一問お尋ねがあっております。
御指摘のとおり、IoT、ビッグデータ、人工知能、AIなどなどを活用いたしました第四次産業革命は新たな成長力の礎となり得るものでありまして、政府としてもしっかり後押しをしてまいりたいと考えております。
そのため、今般の税制改正において、研究開発税制については、第四次産業革命型のサービス開発のための試験研究に係る一定の費用も新たに本税制の対象に追加するとともに、試験研究費の増加率に応じた税額控除率とすることで研究開発投資の増加インセンティブを強化するなどの見直しを行うことといたしております。
こうした見直しにより、第四次産業革命型による新たなビジネス開発を含めまして、企業による研究開発が一層活発化していくものと期待をいたしております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/15
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016・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 古賀之士君。
〔古賀之士君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/16
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017・古賀之士
○古賀之士君 民進党・新緑風会の古賀之士です。
私は、会派を代表いたしまして、所得税法等の一部を改正する等の法律案について質問をいたします。
冒頭、先ほどこの参議院で抗議の決議が行われました、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国の排他的経済水域に落下した事案についてお尋ねいたします。
本参議院においては、昨年二月九日にも抗議の決議を行いましたが、それを無視する四発ほぼ同時発射という、まさに暴挙と断ぜざるを得ません。今後、我が国としてどのように対応すべきか、特に拉致問題解決の意思とともに総理にお伺いをいたします。
この所得税法改正案は、言うまでもなく税を定める法律です。税の在り方は国民の生活に大きく影響を与えます。特に負担の追加をお願いされる国民にとっては、税の議論は必ずしも心地の良いものではありません。それでも、政治を信頼することができれば、多くの国民が国の未来のために受け入れてくれると考えます。
ところが、残念なことが起きております。ある小学校では、総理の名を冠して寄附金を募り、総理夫人が名誉校長を務めていました。その学校に国有地が格安で払い下げられました。豊中市に売却されたすぐ隣の国有地の実におよそ十分の一の価格です。地下にごみがあるからという理由ですが、見積りは外部の業者ではなく、今までやったことのない国交省が行いました。そして、経緯を示した公的文書は既に廃棄されています。官庁に便宜を図るよう学校理事長が自民党の国会議員に働きかけていたことが明らかになりましたが、事実関係を調べようともしていません。
当時、国有財産を管轄していた財務省理財局長は、現在、税務行政をつかさどる国税庁長官です。言わば、歳入のプロ中のプロです。しかし、この問題について説明責任を果たすお考えはないようです。
森友学園をめぐる疑惑は、単に一学校法人の問題ではありません。国の貴重な財産の処分がずさんに行われている。その上、国会での調査要求に対し真摯に応じているとはとても言えません。
総理、この所得税法改正案の参議院での議論の前に、強いリーダーシップを発揮され、財務省及び国土交通省の担当部局に対して、政治家から働きかけを受けたことがあるかについて、総理大臣として徹底的な調査を行うお考えをお持ちかお尋ねをいたします。また、本件が国有財産法などの法令、告示、訓令及び通達などに違反していないか、財務大臣に確認をいたします。
売買交渉記録が廃棄されたなど、公文書管理がいかにずさんであったかも白日にさらされました。この問題については、南スーダンのPKOの活動を記録した日報が僅か三か月で廃棄され、自衛隊の安全に関する情報が隠蔽されていた事実もあります。
そこで、公文書管理を担当する山本大臣にお尋ねをいたします。
公文書管理法によりますと、「行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」とされております。その公文書管理法の目的を鑑み、今回の財務省の行動は適切とお考えでしょうか。また、目的がより徹底されるよう法令など見直すお考えはないのでしょうか。
さて、昨年六月二日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針二〇一六において、税制の構造改革として、税体系全般にわたるオーバーホールを進めるとされました。
まず、総理にお伺いいたします。
今後、我が国はどのような経済社会を目指すべきであり、そのために必要な税体系のオーバーホールとは一体どのようなものとお考えなのでしょうか。その中における本法案の位置付けも含めてお答えを願います。
基本方針二〇一六を受けて、政府税制調査会では、経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告など、様々な検討が行われてきました。しかし、いざ法案、出てきたものを見れば、項目として税体系全般の改革とは程遠く、その内容も中途半端で、まさに羊頭狗肉と言わざるを得ません。
まず、個人所得課税改革、その中でも大きな論点である配偶者控除及び配偶者特別控除の問題についてお尋ねいたします。
政府は、働き方の選択に対して中立的な税制を構築する一環とうたっていますが、その効果があるようには思えません。今回の配偶者特別控除の百五十万円への拡大によって、どれくらいの納税者に影響が及ぶのでしょうか。また、どれくらいの配偶者がどの程度就労時間を増やすのでしょうか。対象となる人数や増加する時間数など具体的な御答弁を財務大臣よりお願いをいたします。
配偶者控除及び配偶者特別控除の問題については、納税者とその配偶者との関係を整理することも必要です。そもそも、現行の配偶者控除については、納税者の控除と配偶者自身の控除の両方が存在するといういわゆる二重の控除の問題も指摘されています。さらに、現在は法律婚の配偶者を要件としていますが、これを事実婚などへ拡大するという考え方もあります。これらの点につき、財務大臣のお考えをお示しください。
ほかにも検討すべき課題が残っております。配偶者控除及び配偶者特別控除を別の控除方式に変えるえることができないかどうかです。
政府税制調査会の経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告では、移転的基礎控除を税額控除方式で導入する案や、配偶者控除に代えて夫婦世帯を対象とした新たな控除を設ける案を検討した上、両案について様々な課題が記されていました。
まず、前者について、配偶者の所得を適時、正確に把握して納税者本人に課税を行うことが実務上困難であると指摘されていますが、マイナンバーの本格的稼働によってもなお困難と判断されているのか、財務大臣のお考えをお聞きいたします。
また、後者について、規模拡大に伴う財源の確保のための課題が指摘されています。この点については、与党がまとめた税制大綱でも、夫婦控除は非常に多額の財源を必要とすると指摘されました。しかし、いずれも抽象的表現であり、検討の結果としては不十分です。政府として夫婦控除の導入に伴う財源の試算は行われたのでしょうか、財務大臣にお尋ねをいたします。あわせて、税制大綱では、世帯単位の所得把握が難しいともしていますが、これもマイナンバーの活用でもなお困難とお考えになるのか、お聞かせ願います。
金融所得課税、特に今回の積立NISAの創設についてもお伺いをいたします。
初年度、五年後及び十年後における利用人数と市場規模はどの程度と試算していらっしゃるのでしょうか。また、既存NISA及び個人型確定拠出年金、いわゆるiDeCoとのすみ分けについてどうお考えなのでしょうか。いずれも金融担当大臣よりお答えをください。特に、既存のNISAについては、非課税期間及び制度自体の恒久化又は延長を望む声がありますが、この点に留意して御答弁願います。
なお、経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告では、老後の生活に備えるための自助努力を支援する公平な制度の構築という項目がありますが、自助努力の支援の本当の目的は、公的社会保障制度の責任を放棄することにあるとの懸念があります。この点について、総理大臣より御回答をお願いいたします。
次に、デフレ脱却、経済再生措置に向けた税制措置についてお伺いをいたします。
総理は、今年の年頭記者会見を含め、度々デフレ脱却の決意を述べられています。しかし、デフレではないがデフレから脱却していないという禅問答のような表現をされているのもまた事実です。では、デフレ脱却を宣言できるのはいつをめどとされているのか、総理大臣にお聞きいたします。
デフレから脱却するに当たっては、総理もおっしゃるとおり、賃上げが重要かつ必要です。本法案では、賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直しも含まれております。この見直しによりどれくらい賃上げが実現すると見込まれているのでしょうか、財務大臣よりお答えください。
個人のみならず企業、特に中小企業の状況を改善していくことも求められます。地域経済を牽引する企業向けの設備投資促進税制の創設及び中小企業向け設備投資促進税制の拡充について、対象となる企業の数はどの程度で経済効果はどれくらいと見込んでいらっしゃるのか、財務大臣にお尋ねをいたします。
麻生財務大臣の総理大臣時代に道路特定財源は一般財源化されました。自動車関係諸税については受益と負担の関係はなくなったはずです。本税制によるエコカー減税の縮小ではなく、自動車取得税の廃止、自動車重量税の当分の間税率の廃止を含む自動車関係諸税の抜本的改革を可能な限り早期に行うべきと考えますが、財務大臣の御所見を伺います。
税を徴収する現場の状況についてお尋ねをいたします。
あらゆる税の徴収は法律の制定のみでは不十分であり、最終的には優秀な人材によって確保されるものです。しかし、現状には大きな不安を抱えております。所得税や法人税の申告件数は、趨勢としては増加傾向にあります。また、国際課税をめぐる状況について言えば、海外現地法人企業数は十年間でおよそ一・六倍に増加、国外送金等調書提出枚数に至っては二倍以上になっています。さらに、今後は、消費税率の引上げや国際取引の一層の課税適正化に対処するため業務量が増加する見込みです。
その一方で、国税庁の定員は過去五年間で五百九十七人の減員となっており、ようやく来年度で増員が予定されているものの、定員五万五千六百六十六人に対し僅かに一名、全体の〇・〇〇一八%にすぎません。また、国際課税を担当する国際税務専門官は三百六十三人であり、全国五百二十四の税務署の数と比べても少な過ぎると考えられます。業務量の傾向に見合った人員配置とはとても言えないのではないでしょうか。
人員不足の結果は、実際に調査する割合、実調率の低下として表れています。法人は全体の三・一%、個人は一・一%。単純に計算すれば、それぞれの調査は三十三年に一度、百年に一度となります。こうした状況のままでは、納税者のコンプライアンスに悪影響が及ぶことは間違いありません。適正、公正な課税と徴収の実現及び歳入の確保のためには、国税職員の定員確保と機構の拡充が急務であり、今後とも計画的、中長期的に定員の拡充、増員を行っていくことが重要と思われますが、総理大臣のお考えをお聞かせ願います。
結びに、繰り返しになりますが、総理に再び申し上げます。国民の信頼なくして税の在り方を決めることはできません。まず、税金の無駄遣いは許さないと、安倍総理自ら、行政府の長として強いリーダーシップを発揮されることをお願いいたしまして、私の代表質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/17
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018・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 古賀之士議員にお答えをいたします。
北朝鮮による弾道ミサイル発射及び拉致問題についてお尋ねがありました。
今般の北朝鮮による弾道ミサイル発射は、昨年二月の参議院本会議による決議を無視した暴挙であり、断じて容認できません。昨日行った日米首脳電話会談では、トランプ大統領から米国は一〇〇%日本と共にあるとの発言があり、日米の緊密な連携を確認しました。
我が国は、引き続き、米国、韓国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、更なる挑発活動をやめ、安保理決議等を完全に遵守するよう強く求めてまいります。国連安保理の理事国として、関連安保理決議の実効性を確保し、我が国独自の措置の実施を徹底することを始め、先ほど本会議で可決された決議に対する私の所信で表明した方針に基づき、断固として対応してまいります。
拉致問題は、安倍政権の最重要課題です。被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が訪れるまで私の使命は終わりません。対話と圧力、行動対行動の原則の下、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を目指すべく全力を尽くしてまいります。
森友学園に対する国有地の売却についてお尋ねがありました。
今回の国有地の売却については、財務省や国土交通省から、法令等に基づき適正に手続が行われ、また価格について適切な算定がなされた旨、既に説明しているところであります。また、本件の土地処分について政治家から不当な働きかけがあったかどうかについては、財務省理財局長が一切なかったと何度も答弁しているところであります。政府としては、引き続き、適切に御説明していくことが重要と考えており、その旨徹底してまいります。
なお、国有地の価格が適正であったかどうかについては、独立した機関である会計検査院がしっかりと検査を行うと聞いています。会計検査院長から既に関連する情報の収集に一部着手したとの答弁もあったところであり、政府としてはその検査に全面的に協力してまいります。
税体系のオーバーホールについてお尋ねがありました。
我が国は、成長し富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できるという成長と分配の好循環が確立した経済社会を目指すべきだと考えています。
こうした経済社会を構築する観点から、骨太方針二〇一六においては、税体系全般にわたるオーバーホールを進めることとしており、特に、個人所得課税や資産課税について、経済社会の構造変化を踏まえた税制の構造的な見直しを行う、国際課税について、グローバルなビジネスの構造変化に対応した制度の再構築を進めることとされています。
これを踏まえ、今般の税制改正法案においては、個人所得課税改革の第一弾として、配偶者控除等の見直し、国際的な租税回避により効果的に対応するため、外国子会社合算税制の見直しを盛り込んでいます。今後とも、経済社会の状況を踏まえつつ、税制改革を行ってまいります。
老後の生活に備えるための自助努力についてお尋ねがありました。
少子高齢化が進展する中で、国民の老後の所得保障を充実していくためには、公的年金に加え、企業や個人の自助努力による私的年金等を充実させていくことは重要な課題と認識しております。
御指摘の老後の生活に備えるための自助努力の支援については、老後の生活の柱としての役割を果たしている公的年金制度による保障を前提として取り組むこととしているところであり、公的社会保障制度の責任を放棄するとの御懸念は当たらないと思います。
デフレ脱却についてお尋ねがありました。
デフレ脱却とは、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした見込みがないことを指すものと認識しています。政権交代後、アベノミクス三本の矢により、極めて短い期間で物価が持続的に下落する状況を脱し、デフレではないという状況をつくり出すことができました。しかしながら、再びデフレに戻るおそれがないという意味で、完全にデフレを脱却したと言い切れる状況にはありません。
今後とも、経済最優先で、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢の政策を続けることにより、できるだけ早期にデフレから脱却をし、そして日本経済を力強く成長させていきたいと考えております。
平成二十九年度予算においては、国家公務員全体で定員純減となる中、国税庁の定員については、歳入官庁としての重要性も踏まえ、僅かではありますが純増にするなど、厳しい行財政事情の下で配慮を行っています。
税務行政については、申告件数の増加や経済活動の国際化により、業務量が増加し、実地調査率が低下している状況にあります。また、国際的な租税回避への対応や富裕層などの税務コンプライアンスの維持向上についても戦略的に取り組むことの重要性が増しています。こうした中で、例えば申告内容の簡易な誤りについては書面などにより納税者に自主的な見直しを要請するなど、限られた定員の下で効率的な事務運営を図っております。
政府としては、今後とも業務の効率化を図りつつ、中長期的に必要な定員を確保し、税務執行体制の充実に努めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/18
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019・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 古賀議員からは、財務大臣として配偶者控除など九つの点、金融担当大臣としてNISAに関する三つの点、合計十二の点についてのお尋ねがあっております。
まず、国有地の売却についてのお尋ねがありました。
国有財産につきましては、いずれの場合においても適正な価格により処分を行うことが定められておりまして、時価による処分がなされております。本件につきましては、発見された地下埋設物に対応するため、近畿財務局と大阪航空局とで協力し、国有財産法等の法令に基づき適正な手続、価格によって処分されたものであり、問題はないと考えております。
次に、配偶者控除の見直しの効果についてのお尋ねがありました。
今般の見直しにより、女性を含め、働きたい人が就業調整を意識せずに働くことができる仕組みの構築に寄与できるものと考えております。実際、民間企業の配偶者手当についても見直しが検討され始めているものと承知しております。一定の効果があるのではないかと考えております。
他方、就業調整の問題につきましては、税制や社会保障制度のみならず、民間企業の配偶者手当の支給基準や、また家事や育児に時間を要するなど複合的な要因が存在をいたしております。このため、配偶者控除の見直しのみで就業調整問題が解消されるものと考えているわけではなく、その効果を定量的に見積もることは困難であると考えております。
なお、今般の見直しにおける配偶者の収入制限の引上げにより負担減となる人数は、約三百万人程度と考えております。
次に、配偶者控除における二重の控除と事実婚等への拡大についてのお尋ねがあっております。
二重の控除の御指摘につきましては、配偶者の基礎控除はあくまでも配偶者自身の負担を調整する仕組みである傍ら、納税者本人の配偶者控除は一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力に配慮する仕組みであります。したがって、それぞれ別の目的を有しており、これらが併存していることには合理性があるものと考えております。
また、配偶者控除の対象を事実婚等へ拡大することにつきましては、事実上の婚姻関係にあるのかそうでないのかを統一的に判断することは極めて困難であることなどを踏まえますと、一律かつ強制的に徴収をいたします税制の下では、民法上の婚姻関係を基礎とせざるを得ないものと考えておるところであります。
次に、移転的基礎控除についてのお尋ねもあっております。
いわゆる移転的基礎控除は、配偶者が控除し切れなかった基礎控除の額を納税者本人に移転する仕組みであるため、その配偶者の所得を適時、正確に把握することが必要になるものと考えております。この点、御指摘のありましたマイナンバー制度というものを仮に導入したとしても、課税最低限以下の方々については、そもそも申告義務がなく、その所得を把握することはできないことには変わりがないことなどから、配偶者の所得の適時、正確な把握にはなお困難があるものと考えております。
次に、いわゆる夫婦控除についてのお尋ねもあっております。
御指摘のいわゆる夫婦控除につきましては、具体的な控除の額がどの程度に設定するのか、全ての夫婦世帯を対象にするのかどうかなど多様な論点がありまして、具体的な制度設計が固まっていなかったことから、必要な財源の試算は行っておりません。
また、昨年末の与党税制改正大綱におきましては、仮に夫婦世帯の所得に上限を設ける場合、世帯単位で所得を把握することが難しいとの問題があると指摘をされております。この点につきましても、先ほど申し上げたとおり、マイナンバー制度を導入いたしたとしても課税最低限以下の方々の所得を把握できないことなどから、世帯単位で所得を把握することにはなお困難があるものと考えております。
次に、NISAに関する三つの点についてのお尋ねがあっております。
第一に、積立NISAの利用人数と市場規模についてですが、お尋ねのように、制度開始後の年数に応じた個別の試算は、これは困難でありまして行っておりません。
なお、現行NISAにおいて現状約五百三十万件の非稼働口座があり、これらの利用者はまとまった資金がないことなどを理由に投資を行っておられないのではないのかと考えられます。少額で利用可能な積立NISAに関しては、まずこれらの利用者が活用することを考えるほか、その他の投資未経験者層も含め、幅広く利用していただけるものと考えております。
第二に、積立NISAと既存NISA及びiDeCoとのすみ分けについてですが、iDeCoは御存じのように老後の備えを目的といたしました私的年金制度であり、原則として六十歳になるまで払出しができない仕組みになっております。これに対して、積立NISAや現行NISAは、老後に限らず、様々なライフイベントに備えた家計の資産形成を促す仕組みであり、払出しの制限はありません。また、積立NISAは、現行NISAと異なり、特に投資初心者を念頭に、少額の積立・分散投資に限ることといたしております。
最後に、既存NISAの非課税期間及び制度自体の恒久化又は延長についてお尋ねがあっておりますが、平成二十九年度与党税制改正大綱におきましては、制度の簡素化や税制によって政策的に支援すべき対象の明確化の観点から、複数の制度が並立するNISAの仕組みについて、少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化を検討することとされております。
今後のNISAの制度の在り方につきましては、こうした考え方や積立NISAの制度開始後の政策効果も踏まえつつ、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
次に、所得拡大促進税制についてのお尋ねがありました。
安倍政権において、経済の好循環を達成する上で、賃金引上げは重要な課題であり、このため、政労使会議などの取組のほか、所得拡大促進税制の創設、拡充といった対応を進めてきております。この税制も一つのきっかけとして、三年連続二%台の賃金引上げが実現したものと考えております。
企業がどれだけの賃金引上げを行うかは、これは税制のみならず労働市場の状況や労使交渉、また企業の収益状況等々、様々により決まりますので、経済全体の賃金引上げの中で、今般の税制改正の効果のみを切り出してお答えすることは困難でありますが、今回の改正では、中小企業について、現行制度による賃金引上げ支援に加え、平成二十九年度に二%以上の高い賃金引上げを行う企業に対する税額控除率を大幅に引き上げるなど、インセンティブ機能を強化することといたしており、一定の効果があるものと考えております。
次に、地域経済を牽引する事業に対する設備投資促進税制及び中小企業向け設備投資促進税制についてのお尋ねがあっております。
今回の改正の効果につきましては、所管省庁であります経済産業省においては、地域経済を牽引する事業に対する設備投資促進税制は二百社、約一千億円程度の投資、また、中小企業向け設備投資促進税制は、件数ベースで見込みは行われてはおりませんが、対象設備の拡大により約三千億円程度の投資が、それぞれ新しい制度の要件に該当することになると見込んでいるものと承知をいたしております。
こうした税制面を含む取組を通じまして、地域経済を牽引する中核企業による積極的な投資やサービス業を含めた中小企業による投資が進むことを期待をいたしております。
最後に、自動車関係諸税についてのお尋ねがありました。
自動車関係諸税につきましては、これは、消費税率を一〇%に引き上げる予定であります平成三十一年十月に、自動車取得税を廃止するとともに自動車税等において環境性能割を導入することといたしております。一方で、道路特定財源の一般財源化後も、自動車の走行が道路損壊等の社会的費用を発生させております事実、また、自動車ユーザーは道路整備等による利便性向上の恩恵を受けているという考え方に変わりはありません。
今後の自動車関係諸税の在り方につきましては、こうした考え方や国、地方の厳しい財政事情なども踏まえて検討する必要があるものと考えております。(拍手)
〔国務大臣山本幸三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/19
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020・山本幸三
○国務大臣(山本幸三君) 森友学園への国有地売却に関連して、公文書管理についてのお尋ねがありました。
公文書管理法は、公文書が、国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることに鑑み、現在と将来の国民への説明責任を全うすること等を目的として、行政文書の適正な管理に関するルール等を定めております。
行政文書の保存期間については、例えば法令の制定等、全行政機関で共通した保存期間を適用すべきもの以外は、行政機関の事務及び事業の性質、内容等に応じて各行政機関が定めることとされており、御指摘の件については、財務省において、公文書管理法及び財務省行政文書管理規則等に基づき、適切に判断されたものと考えております。
内閣府としては、引き続き、政府における公文書管理の取組全体の質を向上させていくことは重要であると考えており、行政文書の管理に関するガイドラインの継続的な見直しや、各府省の職員の公文書管理に対する意識を高めるための研修の充実等を着実に進めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/20
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021・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 大門実紀史君。
〔大門実紀史君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/21
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022・大門実紀史
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。
三月六日、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射したことは、核兵器の開発と不可分に結び付いた軍事行動であり、国連安保理決議、六か国協議の共同声明、日朝平壌宣言に違反する暴挙です。質問に先立ち、厳重に抗議するものであります。
所得税法等の改正案に関連して、現下の経済情勢及び税制の在り方について質問をいたします。
まず、アメリカのトランプ新政権の発足を踏まえ、日米経済関係と安倍内閣の政策対応についてお聞きいたします。
アメリカでは、一九八一年のレーガン政権以来、歴代の共和党、民主党政権を通じ、多国籍大企業や金融資本の利益を最優先した新自由主義政策が進められてきました。その結果、国内産業の空洞化、正規雇用の減少、中間層の貧困化が進行する一方、富裕層に富が集中し貧富の格差が拡大しました。本来であれば、多国籍大企業のもうけ本位の好き勝手なやり方を規制し、格差是正と国民の暮らしを守る方向へ政策転換すべきですが、トランプ氏は、露骨な排外主義、差別主義を掲げ、メキシコ移民やイスラム系の人々への敵意を扇動することで大統領に当選をいたしました。
二月二十八日の連邦議会における施政方針演説でも、トランプ大統領が打ち出した政策は、軍事費拡大、インフラ投資、法人税減税、規制緩和など大企業支援が中心であり、産業の空洞化や格差問題を解決するものではありませんでした。また、トランプ大統領は演説の中でアメリカ第一主義を強調しましたが、これは単なる内向きの話ではなく、他国に対しアメリカの要求を正面から押し付ける姿勢を改めて表明したことにほかなりません。
安倍総理は、トランプ大統領の施政方針演説をどのように受け止められたか、お聞きしたいと思います。
これらのことに関連し、日本政府の対応について二点質問します。
第一は、二国間交渉についてです。
安倍総理は、アメリカとの二国間交渉に際し、TPPの合意水準が前提になるという考えを示してこられました。そうなれば、今後、僅かに残った関税の撤廃にとどまらず、農業、医療、金融などの分野でアメリカが一層の規制緩和を求めてくることは必至です。安倍総理とトランプ大統領の首脳会談において日米経済対話の設置が決まりました。今までも、日米構造協議や年次改革要望書、この間のTPP交渉における日米並行協議など、二国間交渉が行われてきました。様々なやり取りはあったにせよ、アメリカ農産物の輸入拡大や保険分野へのアメリカ企業の参入など、結果的にアメリカの要求に日本が譲歩させられてきたのが二国間交渉の歴史ではなかったでしょうか。
新設の日米経済対話においてそうならない保証はどこにあるのか、安倍総理、明確にお答えください。
第二は、税の引下げ競争の問題です。
トランプ大統領は、就任演説で現行三五%の法人税率を一五%に引き下げると公約し、下院の共和党も二〇%まで引き下げる案を示しています。イギリス政府は、既に法人税率を一七%に下げる方針を表明しています。これまで、各国の法人税の引下げ競争については、多国籍大企業の負担を限りなく軽くするだけで、どの国も国民生活向け予算の財源を失い、社会保障の削減と庶民増税に突き進むことになる底辺への競争だとOECDなどでも指摘され、世界のNGOや市民運動からも懸念が示されてきました。
税の引下げ競争を加速するようなことはやめるよう、日本政府としてアメリカにきちんと意見を言うべきではありませんか。麻生財務大臣の答弁を求めます。
次に、日本経済の現状と税制について質問します。
昨年十―十二月期のGDPを見ても、個人消費の低迷が続き、相変わらず外需依存で、日本経済の基盤の脆弱さを示すものとなっています。個人消費が低迷している一番の原因は、賃金の伸び悩みと社会保険料などの負担増で可処分所得が減少していることにあります。
今まで安倍総理や麻生大臣と何度も経済の議論をしてきましたけれど、対決点は多々ありますが、大企業の巨額の内部留保を国民の賃金や暮らしに回せという我が党の主張に対しては、総理も麻生大臣も共感を示されてきました。しかし、大企業の内部留保は、安倍内閣の四年間で七十二兆円も増加し、三百九十兆にまで膨らんでおります。いよいよ本気で内部留保の国民への還元を考えるべきときではないでしょうか。
方法は二つあります。
一つは、賃金政策による内部留保の還元です。
この点では、長時間労働を追認し残業代をゼロにする働き方改革などもってのほか、直ちに撤回すべきであります。我が党は、低賃金の非正規雇用をこれ以上増やさず、正社員化を進めるための法改正に直ちに着手すること、中小企業に大胆な支援をしながら、最低賃金を大幅に引き上げることが必要だと考えます。安倍内閣として、大企業の内部留保を賃金に回させる具体的な政策をお示しください。
二つ目は、税制を通じた大企業の内部留保の再分配です。具体的には、大企業に適正な税負担を求め、それを社会保障や教育など暮らしの予算に回すことです。
今回の税制改正で最大の焦点になったのは、大企業優遇と批判されてきた研究開発減税の見直しでした。この三年間の実績を見ても、毎年の減税額は六千億円以上に上り、資本金十億円以上の大企業が減税額の九割程度を占め、上位十社だけで減税額の三割から四割を占めています。例えば、トヨタ自動車は一社で三千二百二十五億円、年間一千億円もの減税です。直近のトヨタの利益は二兆円を超えており、内部留保は十兆円近くも積み上がっております。一千億円もの減税が必要な企業とは到底考えられません。
三年前に出された政府税制調査会の報告でも、この研究開発減税に対しては大胆な縮減が提案され、昨年の通常国会では、我が党の追及に対し、総理も財務大臣も見直しを約束していました。しかし、蓋を開けてみれば、大企業への増税は財務省の資料によると僅か百億円程度です。しかも、減税対象をサービス開発にまで拡大をいたしました。これでは、政府税調が求めていた大胆な縮減には程遠いのではありませんか。
総理、本気で大企業の内部留保を国民に還元する気があるのなら、こういう優遇税制こそ見直し、国民の暮らしを応援する予算に振り向けるべきではありませんか。
税金の取り方、使い方を国民の暮らし本位に抜本的に改革することを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/22
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023・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大門実紀史議員にお答えをいたします。
トランプ大統領の上下両院合同会議における演説についてお尋ねがありました。
トランプ大統領は、この演説において、税制改革やインフラ投資、規制改革等により強い経済を実現し、国防予算の拡大や国境制度改革等の推進を通じて、米国を再び偉大な国にするとの決意を強調しました。
世界に不確実性が増してきている中にあって、米国が強い国となり、日米同盟が更に強化されることは、地域や世界の平和と繁栄に資するものであり、トランプ政権と緊密に連携し、揺るぎない日米同盟のきずなを更に強化していきたいと考えています。
今回の日米首脳会談で立ち上げた経済対話についてお尋ねがありました。
これまでも日米構造協議などの二国間協議を行ってきましたが、これは日本の経済構造に課題があると米側が言ってきたことに対し、あくまでも我が国の国益に照らし、その指摘が正しいと考える部分については対応し、他方で、そうでない部分に対してはノーと言ってきたものであります。したがって、米国の要求に日本が譲歩させられてきたのが二国間交渉の歴史であるとは考えておりません。
今般、日米がウイン・ウインの経済関係を一層深めるため、麻生副総理とペンス副大統領の下で新たな経済対話の枠組みを立ち上げることで合意しました。日米主導で自由で公正な市場を世界に広げていくという日米共通の目標の下、今後、建設的な議論をしてまいります。
なお、二国間FTAについては、今回、具体的な要請はありませんでした。今後の日米対話の中で、どのような枠組みが最善かを含め議論してまいります。二国間であれ、多国間であれ、日本の国益をしっかりと守ってまいります。
賃金政策に関するお尋ねがありました。
まず、政府が進めている働き方改革については、長時間労働の慣行を断ち切り、同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、多様な働き方の選択肢を処遇の差を気にすることなく選べる社会を実現するものであります。長時間労働を追認する等の御批判は当たりません。
アベノミクスにより、政権交代後極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、雇用と賃金の環境は大きく改善をしてきています。
雇用については、就業者数が百七十万人増加しました。特に正規雇用は、最近二年間で七十七万人増加し、非正規雇用の増加を上回っています。また、有効求人倍率は一・四三倍と約二十五年ぶりの高水準となり、史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、その状況が続いています。失業率は三・〇%と約二十二年ぶりの低い水準となっています。
賃金についても、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現し、パートで働く方々の時給はここ二十四年間でも最高の水準となっているなど、所得環境の改善が進んでいます。さらに、最低賃金について四年間連続で引上げを行い、合計七十四円の大幅な引上げとなりました。最低賃金については、今後も年率三%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていき、全国加重平均が千円に到達していくことを目標として取り組みます。
さらに、労働環境の改善に向け、非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金の拡充など、企業における正社員転換や待遇改善の強化を進めることとしております。
働き方改革での同一労働同一賃金については、働く人の立場に立ち、不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争えることを保障する実効性ある法制度としてまいります。働き方改革実現会議等の場でしっかりと議論いただいて法改正の内容を具体化します。
企業の内部留保の活用については、これまで取り組んできた法人税改革や二十九年度税制改正における所得拡大促進税制のめり張りを付けたインセンティブ強化により、企業に対して前向きな取組を促しているところです。これを受け、経済界も賃上げに向けて取組を進めていく旨表明しています。このような政策を積み重ねることにより、今後とも労働者の賃金、待遇の改善に努めてまいります。
研究開発税制の見直しについてお尋ねがありました。
御指摘の研究開発税制については、大企業を優遇するためのものではなく、将来の経済成長の基礎となる企業の研究開発投資を後押しするためのものであり、中小企業も含め幅広く利用されております。
今般の平成二十九年度税制改正においては、本制度について、特に大企業について、研究開発投資を増加させる場合には高い税額控除率を適用する、一方で、減少させる場合には従来よりも低い税額控除率を適用する制度とするなど、めり張りを付けた見直しを行ってきたところであります。
研究開発税制を含む政策税制については、今後ともその必要性や政策効果を見極めて、適切に見直しを行ってまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/23
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024・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 大門先生より、法人税の引下げ競争について一問お尋ねがあっております。
トランプ新政権の具体的な税制改革案の内容はまだ明らかではありません。現時点で、米国の法人税改革について具体的なコメントをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
なお、一般論として、法人税引下げ競争について申し上げさせていただければ、各国が競争で極端な法人税の引下げを続けていけば、各国とも財政が立ち行かないということになりかねぬと考えております。また、法人税というのは、所得税や消費税、こういったものと同時に基幹税を成すものでありまして、これらの税目のバランスを考慮しつつ組み合わせていくことによって、いわゆる国の行政サービスを賄う財源が確保されておりますのは御存じのとおりです。
したがいまして、こうしたことを顧みずに安易に法人税についてのみ競争の下で引き下げていくとするならば、これは税制に対する信頼が損なわれるということにつながりかねないというのは基本的な考え方であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/24
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025・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 石井苗子君。
〔石井苗子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/25
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026・石井苗子
○石井苗子君 日本維新の会の石井苗子です。
党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の改正案について質問いたします。
少子高齢化と人口減少、働き方や産業構造の変化など、我が国が抱える課題を解決していく上で、税制の果たす役割は極めて重要です。身を切る改革、徹底した行財政改革による歳出の無駄、組織のスリム化を進めることで、歳出を真に必要なものに絞り込むことも必要だと考えております。歳出歳入の両面を厳しく見直しつつ、真に効果のある政策を実行することが求められています。
我が党は、社会経済情勢の変化を的確に捉え、簡素、公平の理念の下、国民の暮らしや社会に活力を与える税制改正を目指しています。
以上の観点から、本法案について質問させていただきます。
まず、所得税について。
昨年の政府税制調査会の議論では、配偶者控除の廃止と夫婦控除の導入が検討されていましたが、残念ながら、また先送りとなりました。政府が一億総活躍社会の理念を掲げる以上、共働き世帯が専業主婦世帯を大幅に上回っている社会情勢の中で、専業主婦世帯が多かった一九六一年に導入された配偶者控除制度は抜本的に見直されるべきです。
現在の配偶者控除制度は、専業主婦がパート労働をした場合、一定の収入を超えなければ、夫は自分の基礎控除に加え、配偶者控除もあるという制度です。これは二重控除ではないかという指摘もあり、税法の在り方や国民の公平感の点から問題があると思います。
少子化や人口減少が起こっている日本で、安心して子供を産み育てられる社会を目指すためには、フランスで効果があった、子供の数が多いほど税負担の軽減インパクトが大きくなるというN分N乗方式の導入や、あるいはそれと同様の効果を生じる日本型の政策が必要だと思います。
そこで、総理に三点質問させていただきます。
配偶者控除制度については、先ほど申しました二重取りの指摘がありますが、さらには、配偶者が百三万円以上百三十万円以下の収入だった場合、本人の基礎控除と配偶者特別控除、加えて配偶者の基礎控除と三点が適用されています。これは制度的にかなりの優遇ではないか。総理の御所見をお伺いします。
さて、フランスで少子化を食い止めたと言われている政策、N分N乗方式ですが、一方で、この方式は中低所得者に対する減税効果が見られないという分析もあります。このN分N乗方式、日本での適用可能性について、総理の御見解をお伺いします。
次に、配偶者控除制度の見直しには、所得や資産の把握や、過誤や不正受給の問題との関係に伴い、慎重にならざるを得ないという見解を総理は示されました。しかし、今の生活保護制度でも同様な問題が起きていると考えます。受給者が本当に生活保護の要件を満たしているかの把握に各自治体が苦労していると聞いております。この点について、総理の改善策をお伺いします。
次に、法人税についてお伺いします。
法人税の実効税率引下げと租税特別措置の整理統合という政府の基本的な方向については賛成です。しかし、その規模が小さ過ぎ、スピードが遅過ぎると感じております。特に、政府が租特の経済効果をしっかり試算していないことは大きな問題です。
先月の衆議院の質疑での我が党の質問に対し、総理は、租特についてはその経済効果を検証することが重要とお答えになりました。そして、今後とも効果検証の徹底、質の向上に努めるとお答えになりました。それについて、具体的にどの府省でどのような取組をされるのか、また、どのようなスケジュールで実施するのかというお考えをお聞きしたいと思います。
法人税減税については、企業が巨額の内部留保を抱えていることから慎重な意見も聞かれます。確かに、せっかく減税をしても、それが配当にも賃上げにもつながらないのでは、景気刺激の効果は限られてしまいます。そこで、我が党は、法人税減税とセットで、今述べました租特の原則廃止とともに内部留保課税の強化を主張しています。
アメリカの内部留保課税制度では、事業の合理的な必要性を超えて内部留保を行った場合、課税逃れの意図があったものとみなされ、配当可能な所得に高い税率で課税されます。合理性の判断については財務省令で基準が定められており、事業拡張や企業買収の必要性などの例が挙げられています。アメリカのこうした制度も参考にして、日本での内部留保課税の強化も必要なのではないでしょうか。
我が国では現在、特定同族株式会社についてのみ、例外的に内部留保に課税する制度があります。これを更に拡充して、上場企業に導入することも検討すべきではないでしょうか。財務大臣の御認識をお伺いいたします。
次に、資産課税について、事業承継税制の問題についてお伺いします。
衆議院では、我が党の主張として、後継者が取得した株式などにつき納税猶予の割合を一〇〇%に引き上げるべきこと、また、経営者の配偶者が筆頭株主の場合でも適用すべきと、この二点について質問しました。
本院では、更に加えて、以下の二点をお伺いしたいと思います。
まず、現経営者の配偶者など親族からの相続や贈与で後継者が非上場株式などを取得した場合にも納税猶予制度の適用を受けられるようにするべきではないでしょうか。この改正は、閉鎖会社の実態に即したもので、しかも市場で高い評価を得ている優良な中小企業にとって大きなメリットがあると考えます。いかがでしょうか。
もう一点は、取引相場のない株式の評価式についてです。来年度税制改正では多少の変更が予定されていますが、円滑な事業承継を促すため、評価式自体を変更すべきと考えます。いかがでしょうか。
以上二点につき、総理大臣の御所見をお伺いいたします。
日本維新の会は、民間の活力を最大限発揮できるような実効性の高い税制の実現とともに、真に支援が必要な方々へのサポートと将来世代への思い切った重点投資を目指します。
日本の国際競争力を高め、未来に希望の持てる社会の実現に向け必要な改革や改善を実施することを国民の皆さんにお約束して、私の質問を終わらさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/26
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027・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 石井苗子議員にお答えをいたします。
配偶者控除等についてお尋ねがありました。
配偶者控除については、昨年末の与党の税制改正大綱において、扶養控除と同様、一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力に配慮する仕組みであること、諸外国においても配偶者の存在を考慮した仕組みが設けられていることを踏まえれば、廃止して配偶者に何らの配慮も行わないことには問題があるとされたところであります。
その上で、二重の控除の御指摘については、配偶者の基礎控除は、あくまでも配偶者自身の負担を調整する仕組みである一方、納税者本人の配偶者控除は、一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力に配慮する仕組みであります。したがって、それぞれ別の目的を有しており、それらが併存していることは合理性があるものと考えております。
なお、N分N乗方式については、政府税制調査会の中間報告において、高額所得者に税制上大きな利益を与える結果となること等の問題点があり、個人単位課税を基本とすべきとの指摘がなされております。
他方、政府、与党の税制調査会においても若い世代や子育て世帯に光を当てていくことが重要と指摘されており、こうした議論も踏まえつつ、引き続き、個人所得課税改革について検討を進めてまいります。
生活保護についてお尋ねがありました。
生活保護制度においても、収入や資産の的確な把握や不正受給の防止に取り組む必要があると考えております。
このため、平成二十五年の生活保護法改正において、福祉事務所の調査権限の拡大や罰則の引上げなど、不正受給対策を強化しています。今後も、地方自治体における受給要件の確実な確認など、制度の適切な運用に取り組んでまいります。
租税特別措置の効果検証についてお尋ねがありました。
租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となり得る一方、税負担のゆがみを生じさせる面があることから、必要性や政策効果をよく見極めることが重要と考えています。
そのため、行政機関が行う政策の評価に関する法律等に基づき、毎年度の税制改正プロセスにおいて、各府省は、租税特別措置の拡充・延長要望を行う場合には、その政策効果等について評価を行い、総務省がその内容を点検し、結果を公表することとされており、当該評価等の内容も踏まえ、改正要望についての精査を行っております。今後、こうした政策効果の検証、点検のプロセスを更に徹底し、質の向上に努めてまいります。
事業承継税制についてお尋ねがありました。
我が国の経済において大きな役割を果たしている中小企業がきちんと後継者に引き継がれていくことは重要であります。中小企業の事業承継税制においては、そのような観点からまさに特例を設けています。さらに、二十九年度の税制改正においては、事業者の声も踏まえ、小規模事業者にも使いやすくするなどの要件緩和を行っているところです。
後継者が現経営者の親族から株式を取得した場合にも適用を認めるべきとの御提案についてでありますが、事業承継税制は、全ての財産を平等に課税するという税制の原則の中で、安定的な事業承継のために必要な範囲に限って設けられた特例であることから、現経営者から取得した株式のみを対象としているものであり、慎重な検討が必要と考えています。
また、取引相場のない株式の評価方法については、課税の公平性の観点から適正な時価が把握されるものであることが必要であります。
いずれにせよ、今後とも、事業者の方々の意見に耳を傾け、必要な支援を行ってまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/27
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028・麻生太郎
○国務大臣(麻生太郎君) 石井議員より、内部留保課税について一問お尋ねがあっております。
税制面からも、企業における内部留保を活用した設備投資等を一層促していくべきとの問題意識は理解できます。
政府として、これまでも取り組んできた法人税改革や平成二十九年度の税制改正におけます研究開発税制、所得拡大促進税制の制度にめり張りを付ける見直し、また、業績に連動した給与の柔軟化など、コーポレートガバナンスの強化に資する税制の改正などを通じて、企業に対しては前向きな取組を一層促しておるところでもあります。
こうした制度改正を受けまして、経済界も設備投資や賃金引上げに向けて取組を進めていく旨の表明をされておりますことから、まずは実際の取組をされる姿勢を見極めてから、私どもとして更に考えてまいりたいと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/28
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029・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X00720170308/29
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