1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成二十九年四月十七日(月曜日)
午後零時一分開議
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○議事日程 第十七号
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平成二十九年四月十七日
午前十時 本会議
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第一 原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一
部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/0
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001・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
日程第一 原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。国務大臣世耕弘成君。
〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/1
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002・世耕弘成
○国務大臣(世耕弘成君) ただいま議題となりました原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故から約六年が経過する中、福島の復興再生を一層加速していくため、昨年末に原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針を閣議決定し、必要な対策の追加、拡充を行うこととしました。
福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の安全かつ着実な実施は、福島の復興再生の大前提であります。本基本指針に基づき、東京電力が廃炉の実施責任を果たしていくという原則を維持しつつ、長期にわたる巨額の資金需要に対応するための制度を国が整備し、廃炉の実施をより確実なものとしていく必要があります。
こうした状況を踏まえ、事故炉廃炉の確実な実施を確保すべく、本法律案を提出した次第であります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、事故炉の廃炉を行う原子力事業者に対し、廃炉に必要な資金を、毎年度、国の認可法人である原子力損害賠償・廃炉等支援機構に積み立てる義務を課します。
第二に、積立金の額は、同機構が、廃炉の実施に関する長期的な見通し等を踏まえて定め、主務大臣の認可を受けなければならないこととします。
第三に、事故炉の廃炉を行う原子力事業者は、廃炉作業に充てるために積立金を取り戻す際には、同機構と共同して取戻し計画を作成し、主務大臣の承認を受けなければならないこととします。
第四に、主務大臣による積立金の額の認可等に当たり、必要な場合には、国の職員又は同機構の職員が、事故炉の廃炉を行う原子力事業者の本社や廃炉作業の現場に立入検査を行うことを可能とします。
以上が、本法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/2
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003・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。礒崎哲史君。
〔礒崎哲史君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/3
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004・礒崎哲史
○礒崎哲史君 民進党・新緑風会の礒崎哲史です。
会派を代表し、ただいま議題となりました原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案、いわゆる原賠機構法改正案について質問いたします。
東日本大震災から六年、熊本の震災から一年が経過をいたしました。復旧・復興が思うように進まない、そうした被災地の皆様の思いとともに、今後とも復興に向けた諸活動に取り組んでいく決意、まず述べさせていただきます。
とりわけ厳しい環境に置かれているのが福島県であります。福島第一原子力発電所の事故炉は燃料デブリの取り出しめどさえも立たない状況であり、いまだ避難をされている方々が県の内外を合わせて約七万二千名もいる中、原発事故との戦いは長期に及ぶことは間違いありません。
こうした環境の中、福島から他県に避難している子供たちに対するいじめの報道に、同僚国会議員を含め多くの方々が胸を痛めておられることと思います。文部科学省において実態調査が行われましたが、松野文部科学大臣におかれましては、事態の収束に向けて、メッセージの発信にとどまらず、継続した対応をお願いしたいと思います。
一方、このように解決すべき課題が山積しているにもかかわらず、避難は本人の責任、裁判でも何でもやればよいなどと公式の記者会見の場で言い放ち、どなり散らす今村復興大臣の言動には正直言葉を失いました。複雑な感情を抱えながら少しでも前進していこうとしている被災地域、福島の皆さんに全く寄り添うことのできない大臣に、復興を進めることができるとは到底思えません。逆に、今すぐ大臣をお辞めいただくことこそが地元の方々の思いに寄り添うことであり、復興を進めることにつながることをまずは指摘しておきたいと思います。
今回の今村復興大臣を始め閣僚による相次ぐ問題発言の根底には、安倍内閣の数のおごりがあると言わざるを得ません。
また、国民が求めている森友学園問題の真相究明は終わっていませんし、安倍内閣で始まった国家戦略特区制度を使った加計学園による獣医学部の設置経緯にも腑に落ちないところがあります。安倍内閣には、これらの問題についても質問や答弁を拒否することなく、謙虚かつ真摯な対応を求めます。
それでは、法案について質問してまいります。
まず、福島第一原発事故に係る費用についてであります。
福島事故及びこれに関連する確保すべき資金の全体像と東電と国の役割分担というペーパーが飛び交っています。それによると、廃炉・汚染水、賠償、除染、中間貯蔵の四つの領域に係る費用の合計が、これまでの試算十一兆円から二十一・五兆円、およそ二倍に膨らんでいます。その結果、東電の負担分は七・二兆円から十五・九兆円、二倍以上に拡大することとなりました。
本法案の対象範囲はこのうちの廃炉・汚染水に関わる費用のみでありますが、東電が賠償、除染も負担する立場であることを踏まえれば、本法案は、それらに対する費用負担も含め、電力会社の事業継続性に照らし合わせて議論することが適切と考えます。
今回の法改正においては、廃炉・汚染水に係る費用に関しては二兆円と見込まれていたものが八兆円に増加したことから、東電として年平均三千億円程度の資金を準備することが求められることとなりました。しかしながら、現実的には、先ほど申し上げましたように、賠償費用の負担も合わせると、東電の負担額は年平均五千億円となります。電気の安定供給のための東電の事業に支障とならない金額、また、電気の消費者に著しい負担を及ぼすおそれのない金額として捻出できそうな金額とはとても思えません。というのも、事故前の電力事業が地域独占や総括原価方式などで守られていた二〇一〇年度までの十年間平均の東電の収益を経常利益で見ると、年間二千七百億円強にすぎません。
今後も事業改革に拍車を掛けていく計画にあるとはいえ、その一方で競争環境が厳しくなっている中、毎年三千億円あるいは五千億円を拠出していくことが可能なのでしょうか。東電が多額の資金を継続して拠出していくことに不安を抱いているとしても不思議ではありません。世耕原賠機構担当大臣は、本当に現実的な拠出額とお考えなのでしょうか。答弁を求めます。
政府によれば、東電の収益水準は過去三年間の平均において年間約四千百億円規模であるとのことですが、どのように算出されたものなのでしょうか。算出根拠は確かなものなのでしょうか。担当大臣からの説明を求めます。
廃炉に至るまで最低でも三十年、四十年も掛かると言われる中で、今回費用が膨張したように、必要な費用が今後更に増えていく可能性を否定できません。もし、その中で東電の負担が更に大きくなってしまった場合の負担の在り方について、政府としてどのような検討をするのでしょうか。担当大臣に伺います。
また、今回の廃炉・汚染水費用八兆円の試算については、機構の責任において評価したものではなく、また経産省として評価したものでもないとされています。この数字に政府が責任を持たないとすれば、私たちは一体何を審議しているのでしょうか。本法律案を議論する大前提として、まずは試算により増加した六兆円という数字に政府として責任を持つべきと考えますが、担当大臣の答弁を求めます。
次に、東電の事業改革についてであります。
東電改革提言における東電の収益拡大目標について触れておかなければなりません。それは、提言が想定する信頼回復の上での柏崎刈羽原子力発電所再稼働についてであります。
同提言では、廃炉、賠償のための対応を確実なものとするために、二基を再稼働することによって年間一千億円の利益を生み出すこととしています。
しかし、その柏崎刈羽原子力発電所はというと、重大事故時の対策拠点の一つにする予定だった免震重要棟が、想定される地震の半分にも耐えられない可能性があることが本年二月に明らかになりました。これでは東電改革のそもそもの前提条件が崩れつつあると危惧しますが、代替案の可能性も含め、どういった対策を講じていくのでしょうか。担当大臣の答弁を求めます。
また、除染費用における東電の負担は四兆円となり、そこには株式売却益を充てることを想定しているとのことでありますが、現在、機構が保有する東電株式の総額は一兆円であり、どのようにして四兆円の売却益を得るつもりなのでしょうか。事業利益の大部分が賠償や廃炉の費用等に充てられていく構図の中で、東電の株価が上がると見る根拠がよく分かりません。その妥当性について、担当大臣の見解をお聞かせください。
そもそも今になって、経営努力によりいきなり年間数千億円もの収益が拡大するといった自信はどこから来るのでしょうか。それが可能ならば、なぜ今までやってこなかったのか、疑問を呈さざるを得ません。こうしたもくろみがそのとおりにならず、国民負担が増大することにつながるとしたら、看過できません。企業価値を高めていくための諸施策につき、その内容、具体的にいつから実現するのか、その見通しについて担当大臣の説明を求めます。
東電改革提言では、先ほど述べた年間五千億円規模の資金確保等を求める一方、東電の競争力の維持、安全防災、そして原子力の廃炉事業のために人材の維持確保と育成がうたわれています。
しかし、膨大な資金の確保にこだわれば、ややもすると雇用を縮減する方向にかじを切ろうとする経営判断がされる可能性もあります。そうなった場合、国家的事業と位置付ける長期の廃炉事業や、電力の安定供給、収益を生み出していくために強力に推進していかなければならない改革事業などにもネガティブな影響を与えることが懸念されます。必要不可欠な人材の確保と育成について、国としてどのような支援を行うつもりなのでしょうか。担当大臣、お答えください。
あわせて、三・一一以降、過酷な条件下で働いている従業員の安全対策や、事業構造改革を進めていく上での労働環境の整備を行っていくことが欠かせないと考えますが、こうした環境をどのように整えていくべきとお考えでしょうか。担当大臣の答弁を求めます。
次に、託送料金の合理化についてお尋ねいたします。
本改正案が成立した場合、福島第一原発の廃炉に向けた財源確保策として、送配電事業合理化分を事故廃炉事業に優先的に充てられるよう制度改正が行われます。託送料金の仕組みを活用することとなれば、これは新電力を含む東電管内の全利用者が廃炉費用を負担していくことにほかなりません。
また、仮に政府が想定するように、東電が託送料金を合理化できたとするならば、それは本来であれば、電気事業法第十九条等に基づき、託送料金の値下げに充てられるべきと考えます。事実上の電気料金の値上げと受け取られても仕方ないと思いますが、担当大臣の所見をお聞かせください。
また、送電部門の合理化分が廃炉費用に充てられた場合、その額をしっかりと毎年国民に示すべきであると考えますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。
託送料金は安全に電気を運ぶための料金であり、送配電部門の人件費や送配電設備の修繕費であると理解しています。そうしたことからすれば、当該部門を合理化するということにいささかの不安を感じるのは私だけではないはずです。埼玉県新座市で起きた火災によって都内で大規模停電が起きたことは記憶に新しいところです。送配電部門の合理化をいたずらにあおることによって、停電や事故を誘発するようなことになっては本末転倒です。必要以上の合理化や単なる人員削減で安全対策がおろそかにならないようにするための方策について、担当大臣の答弁を求めます。
次に、原発の廃炉で避けては通れない課題である最終処分場の問題があります。
既に国内で一万七千トン超もたまっている使用済核燃料、全国各地の原発における貯蔵能力は限界に達しつつあります。しかし、政府は最終処分場の問題で国が前面に出て対応する方針を打ち出したものの、その言葉以上の具体的な方策が全く聞こえてきません。国民の不安を払拭するためにも、最終処分場の選定方法や検討状況、その手続について、担当大臣のお考えをお聞かせください。
最後に、国の責任についてであります。
東日本の復興という大目的を踏まえれば、福島第一原発の廃炉の最終責任は国家にあるということに異論はないでしょう。国の責任の在り方を検討すべきだということは、衆参両院の附帯決議にも度々示されてきた国会の意思でもあります。
ところが、国の責任の範囲は不明瞭なままです。原発政策は国が中心になって進めてきたものです。そして今、国は機構を通じて東電に五四%を超える出資をし、経営陣にも人を送り込んでいることも現実です。
通常は、株主としての責任には負債を肩代わりすることまでは含んでいないことを承知していますが、そろそろ何らかの明確で現実的な国の責任の範囲を示すべきではないかと考えます。そうすることによって、東電の皆さんがモチベーションを高め、強い責任感を持って、やる気と創意工夫を発揮することにつながり、やがて改定されていく東電の新々総合特別事業計画の実行を力強く後押しすることになると考えますが、担当大臣のお考えを伺います。
私たち民進党は、原発事故にきちんと正面から向き合い、一日も早い円滑な廃炉を目指していくことを申し上げ、私の質問といたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/4
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005・世耕弘成
○国務大臣(世耕弘成君) 礒崎議員にお答えいたします。
廃炉、賠償のための資金の確保の実現性についてお尋ねがありました。
東京電力は、福島第一原発の事故以降、廃炉や賠償等に必要な資金を捻出するため、約三兆円の合理化を行っております。その結果、過去三年間の収益水準は約四千億円となっております。今後、発電や小売部門での合理化や事業範囲の拡大に加えて、送配電事業における大胆なコスト削減などを行うことで、現行の収益水準を約五千億円にまで引き上げることは十分に可能だと考えております。
東京電力の過去三年間の平均収益水準についてお尋ねがありました。
御指摘の約四千百億円という数字は、東京電力が二〇一三年度から二〇一五年度にかけて、福島第一原発の廃炉や被災者への賠償のために支出した金額と、これらを差し引いた上で算出された東電の利益の金額を足し上げたものの年度当たりの平均額であります。これは、言わば東京電力の実際の稼ぐ力、すなわち収益力であり、昨年の東京電力改革・1F問題委員会において報告された数字であります。
福島第一原発の廃炉に係る費用についてお尋ねがありました。
福島第一原発の廃炉は、世界にも前例のない困難な作業です。現時点では、燃料デブリの取り出しの作業方針や工法が決定されておらず、そうした中で廃炉に要する資金を具体的かつ合理的に見積もることは非常に困難であります。そうした中でも、廃炉等を着実に実施していく観点から、現時点で可能なことはあらかじめ対応していくことが国としての責務と考えます。
このため、廃炉に関する専門的知見を有する原子力損害賠償・廃炉等支援機構に依頼し、その機構において、有識者のヒアリング結果を基に、一定の蓋然性を有するものとして六兆円と算出したものであります。この数字は、現時点における最新の情報に基づき保守的に計算されたものであると認識しており、上振れることは想定しておらず、したがって、所要資金が増えた場合の追加的な対応を想定することが必要とは考えておりません。
柏崎刈羽原発の再稼働についてお尋ねがありました。
まず、柏崎刈羽原発の免震重要棟の問題については、東京電力のデータの出し方等が原因で厳しい批判を招く事態を引き起こしたことは誠に遺憾です。引き続き、東京電力に対して強く指導してまいります。
昨年末の東電委員会提言においては、改革の第一段階として東電の単独コスト改革によって廃炉、賠償のための年間約五千億円の収益水準を確保し、その上で、柏崎刈羽原発の再稼働は、改革の次の段階として、廃炉、賠償に係る資金確保をより確実なものとするために必要なステップと位置付けております。
東京電力は、安全確保を最優先に取り組むことはもちろん、国民の不安や懸念にしっかりと応え、国民の信頼を取り戻すべく努力することが極めて重要と考えております。東京電力には、個別の再稼働の可否にかかわらず、こうした国民の信頼回復を始めあらゆる分野での取組を積み上げ、福島への責任を果たしてもらう必要があると考えております。
東京電力の企業価値の上昇の実現についてお尋ねがありました。
東京電力の株式売却益四兆円を確保することは決して容易ではありませんが、売却益の確保は腰を据えて長い時間を掛けて実現していくものであること、電力、ガスの自由化等の進展により東京電力にとって海外を含め大きな成長機会が広がっていること、他産業においても経営改革の断行によって時価総額を数倍から十倍程度に上昇させた実例があることなどを考慮すれば、決して不可能なことではありません。
東京電力は、震災以降、様々な経営改革に取り組んできました。今後、新しい経営陣を迎え、東電委員会でも示された他社との再編、統合といった更なる改革も断行してもらいたいと考えております。
東京電力の人材の確保や育成についてお尋ねがありました。
東電改革の実行は、現場の一人一人の行動と努力に懸かっています。一人一人が気概を持って挑戦し、行動できるような環境整備が重要です。東電は、既に、次世代を担う若手や女性管理職の登用の拡大、高度な専門能力を有する外部人材の登用を進めるほか、新卒採用も再開し、適切な新陳代謝が行われるようにするなど、人材確保や育成に資する取組がなされていると承知しております。政府としても、引き続き、こういった取組が着実に進められ、現場が活性化するよう適切に指導していきたいと考えております。
東京電力で働く従業員の安全対策や労働環境、そして送配電部門の安全対策についてのお尋ねがありました。
従業員の安全対策や労働環境の整備は、東電自らが責任を持って行うことが大原則です。実際、東電は、分社化後もグループ全体で防災体制を構築するとともに、福島第一原発においては敷地の除染を進め、構内の約九割で一般作業服での作業を可能とするなど、作業員の負担軽減の取組を進めております。国としても、引き続き、こういった安全対策や労働環境が整えられるよう適切に指導監督してまいります。
また、送配電部門において安全対策のために必要な投資や人材確保を図るために必要な費用については、基本的には託送料金原価に算入することとしています。そうした中で、東電には、送配電事業に真に必要な費用が削減され、それによって支障が生じるなどという事態が発生しないようしっかりと取り組んでもらいたいと考えております。
託送の合理化分についてのお尋ねがありました。
今回の措置は、世界にも前例のない困難な事業である福島第一原発の廃炉に当たり、東電に対して改革のインセンティブを付与することで東電のグループ総力を挙げた合理化努力を引き出し、資金捻出を図る観点から、合理化分を廃炉費用に充てることができるようにするものです。これは、そもそもこの措置がなければ実現しないような合理化を引き出すものであることから、実質値上げであるとの指摘は当たらず、むしろ、東電の最大限の合理化努力を引き出すことで国民負担の抑制に資するものと考えています。
実際に廃炉費用に充てられた額については、電力・ガス取引監視等委員会が毎年行う託送収支の事後評価等において明確化するとともに、ホームページでの公表などの情報提供を適切に行ってまいります。
最終処分についてお尋ねがありました。
高レベル放射性廃棄物の最終処分については、現世代の責任として解決すべき重要な課題です。その処分場所は、三段階の調査を経て選定することが法定されています。一昨年五月に最終処分法に基づく基本方針を改定し、国民の皆様に関心や理解を深めていただくため、地層処理に関する地域の科学的な特性を全国地図の形で示すこととするなど、国が前面に立って取り組むこととしました。地図の提示に必要な要件、基準について、専門家の方々にお集まりいただき、原子力委員会からの評価やパブリックコメントなども踏まえ、二年間にわたって精力的に議論を重ねてまいりましたが、まさに先週、その議論の成果が得られたところです。
今後は、この地図の提示の前に、その趣旨などについて改めて国民や自治体の皆様にお伝えしていくことが重要と考えています。国民の皆様の御理解を得ながら一歩ずつ着実に進めてまいります。
福島第一原発の廃炉に係る国の責任範囲についてお尋ねがありました。
福島第一原発の事故に係る廃炉の対応については、炉の設置者である東電が最後まで責任を持って行うという大原則を踏まえつつ、その上で、福島の復興再生を一日も早く実現するため、国も前面に立って対応していくこととしています。
このような考えに基づき、円滑な廃炉の実施のため、国は必要な予算措置、立法措置を講じているところです。具体的には、技術的難易度の高い研究開発に対する財政措置に加え、中長期にわたり、着実に廃炉を進める資金を確保するための積立金制度の創設や、東電の経営合理化分について、福島第一原発の廃炉のために活用できる措置を講ずることとしています。
こうした取組により、福島第一原発の廃炉を着実に進めるとともに、東電の経営改革を国としてもしっかりと後押しをしてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/5
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006・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 辰巳孝太郎君。
〔辰巳孝太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/6
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007・辰巳孝太郎
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法改正案について質問をいたします。
まず、今村復興大臣に伺います。
大臣は、今月四日、福島原発事故の自主避難者への住宅の無償提供の打切りをめぐり、本人の責任、裁判でも何でもやればいいなどと国の責任を放棄する発言をいたしました。絶対に許すことはできません。自主避難者は国の原発政策の被害者です。大臣、そもそもその認識はありますか。
子ども・被災者支援法は、避難指示が解除されようとされまいと、原発事故から避難し、どこに住むかは避難者の権利であること、国はそれを支援することを明確に定めています。三月十七日の前橋地裁判決でも、自主避難者に対する賠償と国の法的責任が認められました。
大臣発言は、国の責任を放棄する安倍政権の本音が出たものではありませんか。帰りたくても帰れない、それが被災者の声であり、実態であります。大臣はそれでも、帰らないのなら自己責任だと言えますか。被災者に寄り添うというなら、被災者の怒りの声を受け止め、直ちに辞任すべきです。答弁を求めます。
被災者には自己責任と冷たく言い放ちながら、事故を起こした東電と国の責任を曖昧にし、国民に負担を転嫁する仕組みを新たにつくるのが本法案です。
東電改革提言では、東電の債務超過を回避させながら、国民に新たな原発事故費用を負担させる計画が打ち出されました。原発再稼働と原発海外輸出がこの改革の実現の条件だとし、それが福島への責任だと述べています。圧倒的多数の福島県民を始め、大多数の国民の声は、原発再稼働に一貫して反対をしています。大臣、福島への責任と言うのなら、まずふるさととなりわいと普通の暮らしを奪った原発からの決別をきっぱり決断すべきではないですか。
事故処理費用について伺います。
この提言が示すとおり、二十一・五兆円で済むのでしょうか。政府は、廃炉・汚染水対策費用八兆円について、保守的で上振れしない妥当な金額と言っています。しかし、この試算は、燃料デブリの取り出しまでの試算にすぎません。燃料デブリを取り出した後の輸送や貯蔵、処分、原子炉施設解体の総費用は、三十年から四十年後に示すと言ったきりです。つまり、幾らになるか分からないのです。大臣、莫大な廃炉費用を、この先ずっと国民に負担をさせるというのですか。
日本経済研究センターによる試算では、事故費用は、廃炉・汚染水処理、賠償、除染などで総額七十兆円に上るとされており、国家予算にも迫る金額です。また、同試算では、原発による電力価格は火力を上回るとしています。大臣はこの試算をどのように受け止めますか。青天井に膨張する費用を加味してもなお原発は低廉だと言えるのですか。
本来、経営合理化による超過利潤は、電気料金を下げて消費者に還元すべきです。しかし、提言では、これらを廃炉費に優先的に充てるとしており、消費者には実質的な値上げとなります。また、その利潤幅について、妥当性や合理性を国会がチェックする仕組みもありません。国民の承認なく、際限なく値上げが可能なスキームを認めるわけにはいきません。
賠償費用についてお聞きします。
政府は、原子力損害賠償制度の不備だったとして、賠償費の不足分である二・四兆円を四十年にわたって消費者から徴収しようとしています。まさに過去分の不当請求であり、国民から納得を得られるはずはありません。原発事故以降、原発由来の電力は使いたくないと新電力を選択した方々や、原発事故後に生まれた人たちへの費用の徴収を一体どうやって正当化するのか、お答えください。
また、大臣は、この仕組みを通常の商取引ではないと言っています。では、どのような取引なのか。原賠機構法上の条文はありますか。お示しください。
この度のスキームは、発送電分離、電力自由化などを盛り込んだ電力システム改革の下で、唯一総括原価方式が残る託送料金に賠償費用を上乗せし、消費者にツケ回しをしようというもので、到底納得できません。
原賠機構法は、原発事故の加害者である東京電力を何度でも資金援助するスキームの下で発足し、実質債務超過の東電を虚構の黒字決算にして延命をさせてきました。大臣は、事故費用について、国民全体が原子力に裨益をしてきたのだから国民全体で負担をすると主張しています。ならば、真っ先に負担すべきは、事故と放射能汚染を起こした東電に加え、まさに原発事業から裨益をしてきた株主、メガバンクなどの貸し手、原子炉メーカーではありませんか。とりわけ、メガバンクは事故以降も莫大な利益を上げています。
大臣、事故以降、東電が支払った銀行借入れや社債への利息は幾らになっていますか、お答えください。また、今後、事故炉以外の廃炉の費用についてもこの託送料に上乗せをするつもりですか。また、それは幾らになるのですか、お答えください。
大臣は、国や事業者が安全神話に浸ってきたことを反省するとも述べています。しかし、歴代政府は、我が党や多くの科学者からの指摘や、チェルノブイリなどで明らかになった原発の危険性を無視し続け、福島原発事故を招きました。危険性を語れば原発は造れない。政府は、安全神話を国民に振りまいて、地震大国日本に原発を増設させてきたということではありませんか。
原発がなくても電力は足りています。むしろ原発に固執することが日本経済にとって大きなリスクです。
東芝は、二〇一七年三月期の決算で約一兆百億円の連結赤字となり、債務超過は六千二百億円に達するという見通しです。監査法人が結論不表明の報告書を提出するという異常な事態に至っています。国内企業の単年度の赤字は製造業では過去最大であり、全産業で見ても東京電力に次いで史上二位です。日本企業の決算で史上一位、二位の赤字が原発によってもたらされたということは、原発ビジネスが日本経済の重荷になっていることを物語っています。事実、各地での工場閉鎖や一万人以上の人減らしは、雇用や下請など地域経済に深刻な影響を及ぼし、技術の流出も懸念されています。
大臣、国策として政官財一体となって原発推進路線をひた走り、こうした結果を生じさせた責任をどう考えておられますか。また、福島の復興、日本経済のためにも、原発と決別すべきではありませんか。
日本共産党は、事故処理に当たっては、原発利益共同体に応分の負担を求め、究極の高コスト電源である原発をベースロード電源とするエネルギー基本計画を撤回させ、原発政策からの撤退を行い、再生可能エネルギーの普及に全力で取り組む路線に転換することに全力を尽くすことを決意申し上げて、私の代表質問といたします。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/7
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008・世耕弘成
○国務大臣(世耕弘成君) 辰巳議員にお答えいたします。
東京電力の原子力事業についてお尋ねがありました。
昨年末の東電委員会では、福島第一原発事故による廃炉、賠償などに要する資金が拡大する中で、その資金を捻出し、福島への責任を果たすために、東電がいかなる改革を行うべきか御提言をいただきました。この中で、原子力事業については、発災事業者としての自覚の下、地元本位と安全最優先で信頼回復を行うことを前提とした上で進めていくことが述べられております。東電には、提言を踏まえて改革を断行し、福島への責任を果たしてもらいたいと考えております。
廃炉費用の負担についてお尋ねがありました。
福島原発事故に係る資金については、東京電力が責任を持って確保し、負担することが大原則であります。今般お示しした廃炉の所要資金八兆円については、東電が合理化に最大限取り組むことによって捻出し、確保してまいります。
福島第一原発の事故対応費用に係る民間の試算についてお尋ねがありました。
その試算は、国がお示しした試算とは相当異なる前提を置いており、単純に比較することは適当ではないと考えております。例えば、当該試算は、汚染水処理費用についてトリチウムを分離することを前提に、最大二十兆円掛かると試算しておりますが、国の有識者会議では、トリチウムの分離については直ちに実用化できる段階にある技術が確認されなかったと報告されており、前提が異なります。また、発電コスト試算について、政府としては、二〇一五年の発電コスト検証において、事故対応費用が増加した場合の感度分析も行っており、その結果は妥当であると考えております。
原発のコストについてのお尋ねがありました。
原発の発電コストについては、直近の発電コスト検証の際に、事故対応費用が増加した場合の発電コストへの影響を機械的に算出することができるよう感度分析を行っております。その試算に従うと、仮に福島第一原発事故関連費用が十兆円増加した場合、原発の発電コストはキロワットアワー当たり十・二から十・四円となり、福島第一原発事故の賠償費用等を勘案したとしても低廉な電源と考えられます。
託送の合理化分についてお尋ねがありました。
今回の措置は、世界にも前例のない困難な事業である福島第一原発の廃炉に当たり、東電に対して改革のインセンティブを付与することで、東電のグループ総力を挙げた合理化努力を引き出し、資金捻出を図る観点から、合理化分を廃炉費用に充てることができるようにするものです。これは、そもそもこの措置がなければ実現しないような合理化を引き出すものであることから、実質値上げであるとの指摘は当たらず、むしろ、東電の最大限の合理化努力を引き出すことで国民負担の抑制に資するものと考えております。
なお、国としては、託送料金が高止まりすることがないよう、東電に対して、福島事故関連の資金を捻出するのみにとどまらず、消費者還元をも生み出すような最大限の合理化を求めることとしたいと考えています。
賠償への備えの不足分に関する負担の在り方についてお尋ねがありました。
賠償への備えの不足分については、政府としても、福島事故前の制度が不十分であったことを真摯に反省しつつ、福島を支えるという観点や、原子力の電気を広く消費者が利用していた実態があること等も勘案し、消費者間の公平性の観点から、託送制度を利用した公平な回収措置を講じることといたしました。
この措置について、一部の消費者の受益と負担が一致しないとの御指摘ですが、現在の規制料金においても、受益と負担の厳密な一致までは求めておらず、全ての消費者から回収することにより公平性を確保することとしております。
賠償への備えの不足分に関する措置の考え方についてのお尋ねがありました。
電気事業は、電気事業法に基づく規制料金の下で、将来に追加的な費用が発生するリスクを勘案し、あらかじめその費用を回収することは認めず、費用の発生が明らかになった時点でその時点の料金原価に算入し、全ての消費者から回収することで消費者間の公平性を確保するという考え方で運営されてきました。つまり、原賠機構法というよりも、こうした電気事業法に基づく規制料金の下に置かれていたという点を捉えて、電気事業は通常の事業とは異なると申し上げているところであります。
原発事故以降に東電が支払った利息の額についてお尋ねがありました。
東京電力の有価証券報告書によれば、借入れや社債などに対する東京電力の支払利息は、平成二十三年度以降二十七年度までの五年間で計約五千四百六十億円となっております。
通常の原発の廃炉に伴って生じる費用についてお尋ねがありました。
原発依存度を低減し、廃炉を円滑に進める観点から、現在既に廃炉に伴って一括して生じる費用を分割して計上することを認める会計上の措置を講じていますが、こうした措置は、小売の規制料金が撤廃された場合には制度が成り立たなくなります。原発依存度の低減といった目的を果たすためにはこうした措置の効果を継続させる必要があるため、今回、制度の継続に必要な費用を託送料金の仕組みを利用して回収する措置を講ずることとしましたが、その金額は廃炉の時期や設備の償却の状況などによって異なるため、現時点でお示しすることは困難であります。
これまでの原発の増設及び原発との決別についてお尋ねがありました。
原子力の利活用の在り方については、政府として長期計画等で示してきたことは事実ですが、具体的な個々の原発の建設や運営については、民間事業者の判断によって進められてきたものと認識をしております。
資源に乏しい我が国が、エネルギー供給の安定性を経済性、気候変動の問題にも配慮しつつ確保するためには、原子力はどうしても欠かすことができません。いかなる事情よりも安全性を最優先し、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。
東芝の問題に対する政府としての責任についてお尋ねがありました。
我が国においては、国内にある燃料だけで数年にわたって発電を続けることができ、運転時に温室効果ガスを排出せず、経済性の高い電源である原発の活用は引き続き重要です。政府としては、福島原発事故の反省を踏まえ、いかなる事情よりも安全を最優先にしつつ、原子力政策を進めることとしております。
他方、原発に関する個々の事業を具体的に進める主体は民間事業者であり、原子力をめぐる事業環境や各社の経営事情に基づき、各事業者が各自の責任において実施されるものだと考えております。(拍手)
〔国務大臣今村雅弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/8
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009・今村雅弘
○国務大臣(今村雅弘君) 私の記者会見での発言等に関するお尋ねがありました。
自主避難者の皆様が原発事故のために避難されていることにつきましてはよく承知をいたしております。その上で、御指摘の発言につきましては、帰還されるかどうかは、仕事の関係や子供の教育等様々な事情がある中、それぞれ御本人の自主的な判断を尊重すべきとの思いで述べたつもりであります。
しかしながら、原発事故のために避難しておられるにもかかわらず、避難そのものまでが自らの責任のような伝わり方と印象を与えてしまい、この点について深くおわび申し上げます。
国としては、これまでも子ども・被災者支援法の趣旨を踏まえ取り組んできたところであり、今後も引き続き、それぞれの方の御事情に応じて生活の再建が果たされるよう、福島県と連携し、しっかりと取り組んでまいります。
また、私としても、引き続き、誠心誠意職務に当たり、被災者に寄り添い、被災地の一日も早い復興再生に全力を尽くしてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/9
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010・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 石井章君。
〔石井章君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/10
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011・石井章
○石井章君 日本維新の会の石井章です。
私は、日本維新の会を代表し、ただいま議題となりました原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案について質問いたします。
我が党は、原子力政策については、安定的な代替エネルギーの開発促進とともに、電力、エネルギーの競争市場の確立により原発依存度を下げていくのが現実的と考えております。一方、原発再稼働のためには、最終処分場の問題をクリアする必要があるとともに、原発事故があった場合の国、事業者、自治体などの責任の明確化、透明化が必要と考え、そのための法案も提出しております。
議題となっております原子力損害賠償制度についても課題が残されていると考え、法案を提出しております。福島第一事故の半年ほど後に原子力損害賠償支援機構法の附則で求められた国等の責任の明確化について、我が党は一昨年に議員立法で法案化いたしました。
内閣府特命担当大臣にお伺いいたします。
現行の原子力損害賠償制度では、事業者の無限責任を定めながら、結局は国が交付国債や出資等の形で負担をしており、誰がどこまで責任を負い、その負担をどのような形で国民に転嫁するのか、かえって分かりづらい制度となっているのではないでしょうか。御認識をお伺いいたします。
今年一月、内閣府原子力委員会の専門部会は、無限責任制を維持する方針を決定いたしました。これに対し我が党の法案は、国、事業者の責任を明確化、透明化する趣旨で、事業者責任について、諸外国の例をはるかに上回る五兆円を上限額として設けた有限責任制としております。
内閣府特命担当大臣にお伺いいたします。
原子力損害賠償について事業者を無限責任としたままでは、予測可能性が低いために原子力事業自体を続けるのが難しくなるか、事業者の責任を事後的に国が幾らでも補填していく結果とならないでしょうか。事業者の無限責任制を定めることがかえって事業者の国家予算への依存を生み、結果として企業責任が十分問われない事態となっていないでしょうか。御認識をお伺いいたします。
以上は原子力損害の責任に関する責任の明確化の問題ですが、本法案の前提となっている廃炉・汚染水処理費用の算定についても同様に責任の明確化、透明化が必要と考えております。
本法案の内容は、廃炉・汚染水処理費用につき、有識者ヒアリング結果により、新たにデブリ取り出し費用として六兆円が加算されて八兆円になったことに伴い、東京電力の収入の中から年間三千億円程度の金額を三十年間にわたって積み立てていくものであります。
六兆円の算出根拠は、スリーマイル島の原発事故と比べて、デブリの取り出し量が約二倍、原発の基数が三基で三倍、デブリの分散や高放射線下の作業、物価の上昇などで十倍掛かるので、スリーマイル島で掛かった費用一千億円の約六十倍で六兆円と算出されました。大変粗い試算方法とも感じますが、前例のない難しい試算を有識者が行ったものであり、数字については一定の理解をすべきものと考えております。
問題は、費用算出に関わる責任の所在であります。この算出結果に対し、経済産業省は、経済産業省として評価したものではないことに留意とし、原子力賠償機構は、機構の責任において評価したものではない点に留意されたいとしています。両者が互いに責任の回避をしているようにさえ見えます。
そこで、内閣府特命担当大臣にお尋ねいたします。
廃炉等積立制度による積立金の規模を決める根拠となったデブリ取り出し費用が六兆円という算出は、確かに政府の責任で行われたものでしょうか。御認識をお伺いいたします。
関連しまして、もしもデブリ取り出し費用が六兆円をはるかに上回るものとなった場合、誰の、あるいはどの機関の責任となるのか、また具体的にはどのような追加的対応を取ることになるのか、併せて内閣府担当大臣にお伺いいたします。
次に、廃炉等実施認定事業者である東電ホールディングスに関連して質問いたします。
平成二十八年十二月二十日に、東京電力改革・1F問題委員会から提言が出されました。この提言によれば、廃炉に係る三千億円と賠償に係る二千億円の合計年間五千億円は毎年の収入から確保するとしております。
同じ提言では、廃炉、賠償、除染、中間貯蔵施設等に係る費用の総額を約二十一・五兆円とし、そのうち東京電力が捻出する資金を約十六兆円としております。そして、東京電力の企業価値を高めて株価を上げた上で、原子力賠償機構が所有している一兆円の東京電力株を売却することによって除染のための費用の四兆円を捻出することにしております。しかし、ここで想定されているような売却益に頼ることは、企業価値が高まる技術的、経営的な裏付けがなければ、財源の捻出方法としては問題があると考えております。
そこで、内閣府特命担当大臣にお伺いいたします。
柏崎刈羽原発の再稼働が見通せない上、廃炉、賠償等を進めながらの共同事業体設立にもほかの事業者の協力が得られるか不明確な状態で、除染費用の確保に十分なほどの企業価値の上昇はどのように実現されるのか、見通しをお伺いいたします。また、企業価値が十分に上がらなかった場合の費用負担の在り方についても併せてお伺いいたします。
最後に、機構に納付される事業者の負担金に関連してお伺いいたします。
元々、原子力事業者は、原子力事故に備えるため、機構法に基づき一定の負担金を機構に納付することを義務付けられています。東京電力は、一般負担金として五百六十億円、特別負担金として五百億円から七百億円程度を毎年負担をしております。一般負担金の額は過去の経常利益の平均額を参考に算出し、特別負担金は収支の状況に照らして経理的基礎を毀損しないでできるだけ高額の負担をすると業務命令で定められています。本法案では、これに加えて廃炉等積立金を積む義務が課せられます。
内閣府特命担当大臣にお伺いしますが、負担金に関するこうした重い納付義務に加えて、本法案での積立義務を間違いなく履行できるほどの経営体力や将来性が東京電力にあるのでしょうか。御認識をお伺いいたします。
私たち日本維新の会は、原子力政策について、国民負担の明確化、透明化を求めています。問題の先延ばしをせず、福島第一事故の関連費用や原子力産業のバックエンドコスト等の政治的に解決困難な課題についても、国民に社会的費用を率直に示して責任の所在を明確にしつつ、あるべき政策を訴えてまいります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/11
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012・世耕弘成
○国務大臣(世耕弘成君) 石井議員にお答えいたします。
原子力損害賠償制度の在り方についてお尋ねがありました。
現行の原子力損害賠償制度では、原子力損害賠償法で、事故を起こした原子力事業者が無限責任を負うことが規定をされております。その上で、事故を起こした事業者が円滑に賠償責任を果たすため、原子力損害賠償法や原子力損害賠償・廃炉等支援機構法など関連する法令等において明確な制度が整備されております。そのような仕組みについて、引き続き関係省庁とも連携しながら、分かりやすい説明に努めてまいります。
原子力損害賠償制度における事業者責任の在り方についてお尋ねがありました。
まず、原子力損害賠償制度の見直しについては、現在、原子力委員会の専門部会において、一昨年五月から検討が行われており、昨年八月にはこれまでの議論を踏まえ中間的な論点整理が行われましたが、原子力事業者の責任の在り方を含め、結論が取りまとめられた事実はないと承知しております。むしろ、仮に事業者の無限責任を前提とする場合であっても、例えば賠償措置額を引き上げるなどの措置により、原子力事業者の予見可能性を確保し、事業継続が可能な制度設計とすることができるとの議論も行われていると承知しております。
他方で、原子力事業者を無限責任としている現行制度においても、国の関与の在り方は法令等において明確に規定されているため、国が事業者の責任を上限なく補填することとなるのではないかとの御指摘は当たらないと考えております。
福島第一原発のデブリ取り出しの費用の試算についてお尋ねがありました。
福島第一原発の廃炉は、世界にも前例のない困難な作業であります。現時点では燃料デブリの取り出しの作業方針や工法が決定しておらず、そうした中で廃炉に要する資金を具体的かつ合理的に見積もることは非常に困難であります。そうした中でも、東電改革の具体策や廃炉費用に係る制度整備の検討を進めるに当たっては、廃炉費用について一定の規模感を示す必要があったため、廃炉に関する専門的知見を有する原子力損害賠償・廃炉等支援機構に依頼し、その機構において、有識者のヒアリング結果を基に、一定の蓋然性を有するものとして六兆円を試算したものであります。
デブリ取り出し費用が試算を上回った場合についてのお尋ねがありました。
今回お示しした数字は、現時点で最新の情報に基づき、一定の蓋然性を有するものとして算出されたものであり、上振れることは想定しておりません。そのため、現時点で特段の追加的な対応を想定することが必要とは考えておりません。また、今回の試算は、工法が定まらず、合理的な見積りが困難な中で一定の規模感を示すための数字であり、何らかの責任が問われるといったものではないと考えております。
除染費用の確保のための東京電力の企業価値の上昇及び企業価値が上昇しなかった場合の費用負担の在り方についてお尋ねがありました。
東京電力の株式売却益四兆円を確保することは決して容易ではありませんが、売却益の確保は腰を据えて長い時間を掛けて実現していくものであること、電力、ガスの自由化等の進展により、東京電力にとっても海外を含めて大きな成長機会が広がっていること、他産業においても経営改革の断行によって時価総額を数倍から十倍程度上昇させた実例があることを考慮すれば、決して不可能なことではありません。
東京電力は、震災以降、経営合理化や分社化など様々な改革を相次いで実現してきましたが、今後は、次世代を担う若手から成る新体制の下で、東電委員会で示された他社との再編、統合といった更なる経営改革も断行して、企業価値の向上を実現してもらいたいと考えております。企業価値が十分に上がらなかった場合のことを今から懸念するのではなく、まず、こうした東電改革に取り組むことが重要と考えております。
東京電力による賠償のための負担金納付と廃炉のための積立金納付の両立についてのお尋ねがありました。
東京電力は、賠償と廃炉を両立させるために、年間約五千億円程度の資金を確保することを目標としております。これを実現することは決して簡単ではありませんが、発電や小売部門での合理化や事業範囲の拡大に加えて、送配電事業における大胆なコスト削減などを行うことで、現行の収益水準約四千億円を約五千億円にまで引き上げることは十分に可能だと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/12
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013・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119315254X01720170417/13
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