1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成三十年十二月五日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
平成三十年十二月五日
午前十時開議
第一 水道法の一部を改正する法律案(第百九
十六回国会内閣提出衆議院送付)
第二 サイバーセキュリティ基本法の一部を改
正する法律案(第百九十六回国会内閣提出、
第百九十七回国会衆議院送付)
第三 原子力損害の賠償に関する法律の一部を
改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/0
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001・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
日程第一 水道法の一部を改正する法律案(第百九十六回国会内閣提出衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長石田昌宏君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔石田昌宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/1
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002・石田昌宏
○石田昌宏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、第百九十六回国会において衆議院より送付され、本院において継続審査となっていたものであります。
本法律案の内容は、人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化等に対応し、水道の基盤の強化を図るため、都道府県による水道基盤強化計画の策定、水道事業者等による水道施設台帳の作成等の規定を整備するとともに、地方公共団体である水道事業者等が水道施設運営等事業に係る公共施設等運営権を設定する場合の許可制の導入等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、水道事業における広域連携の必要性、水道施設運営権方式の導入の是非、継続的な水道関係予算確保の必要性、水道事業を担う人材確保策等について質疑を行うとともに、参考人より意見を聴取いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局しましたところ、立憲民主党・民友会、国民民主党・新緑風会及び希望の会(自由・社民)を代表して石橋通宏委員より、水道施設運営権の設定の許可に関する規定を削ることを内容とする修正案が提出されました。
次いで、討論に入りましたところ、立憲民主党・民友会を代表して川田龍平委員より修正案に賛成、原案に反対、日本共産党を代表して倉林明子委員より原案に反対、希望の会(自由・社民)を代表して福島みずほ委員より修正案に賛成、原案に反対の旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終局し、順次採決の結果、修正案は否決され、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/2
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003・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。川田龍平君。
〔川田龍平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/3
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004・川田龍平
○川田龍平君 私、川田龍平は、立憲民主党・民友会を代表して、ただいま議題となりました水道法の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。
この改正案は、人口減少に伴う需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の直面する課題に対し、水道の基盤強化を図るため所要の措置を講ずるとして提出されたものです。
政府の法案説明によれば、広域連携を促すことで、小規模自治体の脆弱な経営基盤が連携によって強化されるとのことでした。しかし、委員会審議における根本大臣の認識では、その広域連携のターゲットが、経営難の自治体ではなく、裕福な大規模都市の水道事業者だということが明らかになりました。
そもそも、コンセッション方式の導入で水道事業の基盤が強化されるという政府の主張ですが、一体何を根拠に言っているのでしょうか。
コンセッション方式の現実についての分かりやすい例を挙げましょう。商業施設の売上げ増加やスマートセキュリティーの導入などでコンセッション方式の成功例として喧伝されていた関西国際空港です。しかし、実態はどうだったでしょうか。今年九月に台風二十一号が上陸した際、冠水した関西国際空港には八千人もの滞留者が閉じ込められ、台風が去った後も速やかに空港から避難させられず、復旧作業もろくに進まないといった惨状でした。
経済効果だ、基盤強化だと言って導入したコンセッション方式によって、経済の要である空港が機能麻痺を引き起こしてしまった。この大失態の裏にあるものこそが、その目的が社会的公共資本の維持ではなく企業利益の追求であるというコンセッション方式の本質です。空港という公益性のある事業でありながら、目先の利益に集中し、それを長期にわたり継続させるための整備の方に資本とエネルギーを注ぐことが後回しにされていたことが、コンセッション方式を導入した関西国際空港が大惨事を引き起こした最大の原因であることは誰が見ても明らかでしょう。
ですが、なぜか政府側は、これだけ分かりやすい失敗例が出ても、まだコンセッション方式がインフラの基盤を強化すると主張しています。
ならば、こうしたらどうでしょう。コンセッション方式を導入した関西空港が、災害発生から復旧まであれだけ時間が掛かったその原因を現在究明中の国土交通省の調査結果が年内に明らかになるということです。この報告を待って、公共インフラにコンセッション方式を導入した際の負の側面もまずはしっかりと検証してから、空港以上に大切なライフラインである水道へのコンセッション方式導入の是非について丁寧な議論をすべきではないでしょうか。
安倍政権の政策パンフレット二〇一七のスローガンは、「この国を、守り抜く。」でした。守り抜こうとしているこの国が自然災害大国であることを本当に認識しているのでしょうか。今年一年を振り返っただけでも、地震、台風、酷暑にゲリラ豪雨など、我が国は次々に自然災害に襲われ、多くの地域はいまだにその傷痕から復旧しておりません。
この夏、豪雨に見舞われた岡山県倉敷市真備町では、浸水した家の泥をかき出すシャベルを洗う水すらなかった。豪雨で水道管が破損し、その直後にやってきた酷暑によって、被災した人々の中には熱中症で亡くなる人も続出いたしました。
本当にこの国を守り抜くならば、日本に頻繁にやってくる自然災害という有事において、どんな小さな脆弱性も許してはならないのが水道事業のはずです。安倍政権は、国を動かす立場にいながら、一番大事なことを忘れています。民営化の問題は、平時ではなく有事にやってくるからです。そして、政府の最大の役目とは、有事の際に国を守り抜くことなんです。そのために、いかに詳細に緊急事態をシミュレーションし、いざというときに国民を災害から守る備えを万全にできるかどうか。その役目を忘れ、有事の際に国民の命を危険にさらすリスクを抱えたコンセッション方式を水道に導入しようとする、どう見てもこの国を守り抜けない法案を我々は断じて許すことはできません。
世界でなぜコンセッション方式が失敗したか。その理由は五つあります。水道料金の高騰、水質の劣化、人件費カットによるサービス悪化、事業内容のブラックボックス化、地域独占による地域住民の主権喪失、そして先ほど申し上げた有事の際の防災機能の弱体化です。
水道事業は、電気と同じ総括原価方式ですから、自治体経営のときにはなかった役員報酬、株主報酬、法人税など、ビジネスに係る経費が全て新しく料金に上乗せできるので、水道料金が間違いなく跳ね上がります。こうした経費の上乗せが合法ですから、根本大臣の言う厚生労働省の審査や地方自治体のモニタリングなどは全く歯止めになりません。
政府は、健全な経営という文言を新たに加えることで価格が適正に保たれると言いますが、健全な経営の基準は誰が決めるのでしょうか。巨額の役員報酬を普通だと言った元日産の外国人CEOの発言からも分かるように、外資系企業にとっての健全な経営と日本の我々が考える健全な経営は決して同じではありません。地方自治体が報酬額をチェックして高過ぎると文句を言ったとして、外国企業はこれが普通だと言われたら話はおしまいです。
我々は厚生労働委員会で、この健全な経営の基準をはっきりさせるよう政府に求めましたが、政府は全く答えられません。ここを曖昧にしてそのまま進めてしまうと、今後、外国基準の法外な役員報酬が上乗せされた水道料金の請求書を見て国民が悲鳴を上げても、もう取り返しが付かなくなってしまいます。
また、料金が適切かどうかを地方議会がモニタリングするから問題ないというのも全く当てになりません。海千山千の外国企業を相手に、難解な言葉で書かれた契約書の中身を、果たして地方議会がチェックできるのでしょうか。
広域連携する際も、各自治体や議会の意見を統一するのは至難の業です。混乱した状況では、当然企業側に都合の良い契約内容ばかりまかり通るリスクは大きくなりますが、政府は、厚労省が事前に審査すれば大丈夫の一点張りで、何をどう審査するのか、それ以前に水の水質維持と安定供給という本来の公共性をどう担保させるかという対策は全くありません。数年以上も公的機関による障害者の水増し雇用問題を見抜けなかった厚労省が、世界規模でビジネスを手掛ける巨大外資系企業を相手に、その穴を見抜けるような審査ができますと胸を張って、果たして国民が納得するでしょうか。
自民党二〇一七年政策パンフレットには、総理の言葉でもう一つ、こう書いてあります。「危機管理にも全力を尽くし、皆様の生命と財産を守り抜いてまいります。」。まさに水道事業は、総理の言うとおり、国民の命の源泉であり、これまで地方自治体が守り抜いてきた国民の財産です。
本法案が施行されれば、我が国の水道ビジネスに今よりもっと外国企業が参入してくるでしょう。しかし、総理の言う危機管理の観点から見ると、例えば何らかの理由でどこかの国と対立するような有事になった場合、もしも相手の国の企業が我が国の水道事業を握っていたら、国民のライフラインを盾に要求をのまされる事態も十分想定されるでしょう。外国企業に水道を売却するこの政策は、危機管理に全力を尽くすという安倍政権のスローガンと明らかに矛盾しています。
二〇二五年には、地球の人口の約三分の一が安全な水へのアクセスを失うと言われています。年々枯渇し、奪い合いになる水資源をめぐる戦争が激しくなっていく中、安倍政権がこの国を守り抜くと声高に喧伝するならば、日本国民の命につながる水を企業に売り渡すのではなく、世界規模の水戦争の中で、どうすれば水という我が国の資源を死守できるかを政府として真剣に考えるべきではないでしょうか。
私たち日本人にとっては当たり前のようにある水道は、安心、安全もさることながら、水道料金徴収率が九九・九%という、世界の水ビジネスにとって喉から手が出るほど欲しい優良商品です。
戦後七十年、水道法と地方公営企業法の下、命の水に公が責任を持ち続けてきたからこそ、全国いつでも蛇口をひねれば安全な水が出てきて、感染症の心配もなく安心してそれを飲めるのです。世界中でこんなすばらしいインフラを持った国はありません。
我が国の政府がやるべきことは、水というこの日本が誇る社会的共通資本をこの先何世代にもわたって守っていくための、百年単位の制度設計です。今回の水道法改正は、政府が国を守る責任を逸脱し、今だけ、金だけ、自分だけの価値観に基づいた、絶対に通してはならない法案です。
私が薬害エイズの頃から何度も繰り返し言っているように、命を守らない政治に存在意義はありません。
安倍政権に日本の宝である水道を任せることはできないこと、コンセッション方式による水道民営化は絶対にやってはならないことを申し上げ、私の反対討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/4
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005・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 東徹君。
〔東徹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/5
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006・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹です。
会派を代表して、内閣提出の水道法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。
今年六月十八日の大阪北部地震では、老朽化した水道管の破断によって道路が冠水し、多くの世帯で断水するなど、大きな被害を生じました。大阪府では、主要水道の約三割が四十年の法定耐用年数を超えており、耐震性が確保されているのも約四割にとどまっているなど、老朽化、耐震化対策は待ったなしであります。
水道管の老朽化は、今や全国的な問題です。今後、人口減少により利用料金の伸び悩みが予測される中、どのようにして水道料金を抑えながら設備の老朽化対策を進めていくのか、大きな課題であります。
この法案には、その解決策として広域化と官民連携が含まれています。
民間の予測では、給水人口三万人未満の小規模な事業体では、将来、半数以上が三割以上の料金値上げが必要と見込まれており、給水人口が少ないほど高くなる傾向にあります。今広域化を進めなければ、老朽化対応が遅れ、将来、水道を維持するためのコストが更に上がっていくことは明らかです。将来の国民のために今コストを抑えられるような仕組みをつくる、そのことが我々の責務であります。
今回の法改正によって都道府県を広域化の推進役とすることは評価できます。
大阪では、橋下知事の時代に大阪府と大阪市の水道事業を統合しようとしましたが、大阪市の反対に遭って実現できませんでした。同じ淀川水系で、隣同士で、大阪府、大阪市が別々の浄水場を建てて水を取っているという極めて非効率な状態が続いています。このような状況を解消し、将来の世代のために効率化を進めなければなりません。
厚生労働大臣には、財政融資も活用して、積極的に広域化、老朽化対策を進めることを求めます。
次に、コンセッション方式について申し上げます。
今回の法改正の大きな目玉となっているコンセッション方式ですが、施設の所有権は地方公共団体にあり、イギリスのような完全民営化とは異なります。
また、コンセッション方式は今回の法改正の前でも導入可能でありますが、今回の法改正では、コンセッションの導入後も地方公共団体に給水義務を残すなど、公の関与を強くする内容となっています。この給水義務とは、ただ単に水を安定的に供給する義務だけではなくて、安心、安全な水の質を確保することも地方公共団体の責務であります。さらに、災害時においても、地方公共団体に水の供給を迅速に復旧させる責任があります。
コンセッション方式の導入後も、安全で安心な水の供給が地方公共団体の責任で行われるため、コンセッション方式に対する住民の不安を解消するものと評価できます。
また、一番の問題である水道料金については、条例で料金の上限を定めるとともに、国も許可権限をもとに料金の設定をチェックすることで、料金の高騰を抑える仕組みが取られています。条例で定めるということは、議会の議決が必要だということです。このような仕組みはイギリスやフランスにはなく、海外の失敗例を教訓に我が国で制度化されたものとして、高く評価できます。
コンセッション方式に批判的な立場からは、よくパリ市の例が持ち出され、コンセッション方式によって水道料金が二・七倍になったと言われます。そもそも、条例で料金の上限を定める仕組みを持つ我が国と、それがない海外の事例を単純に比べることはできず、海外で失敗した例があるから我が国でも失敗すると決め付けるのは適当ではありません。
また、パリでのコンセッションと同じ期間に公営でやっていた下水道は料金が四・七倍になり、上水道より大幅に上がるなど、水道料金の高騰の原因をコンセッション方式のみに求めることはできません。
また、パリでは、コンセッション方式が二〇一〇年に再公営化され、水道料金が下がったとの指摘があります。しかし、これに対して、値下げ幅は小幅にとどまっており、再公営化後の管路の更新率は低下しているとの指摘もあります。再公営化については、パリ市が、運営権者である第三セクターに対して適切に関与できていなかったことに原因があります。
今回の法改正では、地方公共団体のモニタリングに加え、国も報告聴取や立入検査を行う権限を持つことになります。これによって、民間事業者へのガバナンスを徹底でき、急な倒産や撤退を予防することも可能です。
世界では再公営化が進んでいるとの見解もありますが、フランスでも再公営化された件数と同程度コンセッション等へ移行されており、また、既にコンセッション等が行われている事業体の約九割が契約を更新するなど、再公営化の動きは全体から見れば一部にとどまっております。
むしろ、国内では宮城県や浜松市において、全国に先駆けてコンセッション方式の導入が検討されています。
もちろん、コンセッション方式を導入するためには、この法案が成立し、施行されたとしても、議会の議決が必要なんです。議会の議決が必要だということは、地方公共団体の首長も提案するにおいて責任もあるし、承認する議会にも責任が必要となってくるわけです。
民間のノウハウや創意工夫によって効率化が期待されますが、宮城県では、コンセッション方式によって三百三十五億円以上のコスト削減が期待されています。浜松市でも、平成四十九年度の水道料金が、公営のままだと四六%上がるところ、コンセッション方式によって値上げを七%以上抑えることが見込まれています。将来に向けて安全で安価な水道事業を維持しようとする地方公共団体の取組を止めてしまわないように、国はしっかりと支えなければなりません。
先ほどの反対討論に加えて、この後も反対討論が続きます。本来であるならば、与党である自民党、公明党こそ賛成討論をしっかりとやってほしいところです。維新以外の野党に言われっ放しでは、残念でなりません。
今後、地方公共団体でこのようなコンセッション方式の提案がなされた場合には、与党である自民党、公明党の皆さんには、しっかりと後押しをしていただくことをお願いいたします。
少子高齢化により、人口減少は進み、社会保障費も今後ますます増加していきます。国民の負担を抑えるため、国民の生活の命でもある水が、できるだけ安くて、そして安全に提供されるよう、厚生労働省、又は根本大臣におかれましても、より積極的に対応していくことを求め、賛成の討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/6
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007・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 礒崎哲史君。
〔礒崎哲史君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/7
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008・礒崎哲史
○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史です。
私は、会派を代表し、水道法の一部を改正する法律案に関し、反対の立場から討論を行います。
本年は、豪雨、地震等の大災害が頻発し、甚大な被害がもたらされた年でありました。改めて、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りしますとともに、被災された皆様に対し心からお見舞いを申し上げます。
大阪府北部地震、七月の豪雨、北海道胆振東部地震における水道管の破裂や断水等は記憶に新しく、とりわけ、七月の豪雨では最大断水日数が三十八日、北海道胆振東部地震では三十四日に及ぶなど、重要な生活インフラの一つである水道はそのたびに甚大な被害を受けました。水道が国民の日常生活や命にも直結する貴重な財産であること、また、水道の基盤強化を図ることの重要性を改めて我々に思い起こさせました。
その災害復旧の過程では、被災自治体のみならず、全国の自治体における水道関係者が昼夜を問わず一生懸命に作業に当たられ、安心、安全な水を早期に復旧させる原動力となりました。御尽力に心から敬意を表するものであります。
本法律案では、都道府県が水道基盤強化計画を定めることができるとするなど、水道の基盤強化を前面に押し出しています。水道の老朽化や耐震化対策などを強力に推進していこうという姿勢は理解をいたします。
その一方で、本法律案には、水道施設の所有権を地方公共団体が有したまま、運営権を民間事業に設定できるコンセッション方式の導入を促進させる規定が設けられており、災害時において復旧対応の責任の所在が、地方公共団体にあるのか、それとも民間事業者にあるのかが不明瞭となるなど、肝腎の災害対応が迅速に実施できなくなるおそれがあります。コンセッション方式の導入によって十分な災害対応が行えるという保証はあるのでしょうか。法律を変えようとする政府の責任は十分なのでしょうか。
政府は、本法律案は、水道民営化を推進するものではなく、官民連携の一類型であるコンセッション方式を推進するものであるとの説明を繰り返してきています。国民向けに水道民営化という言葉を使うことが刺激的過ぎるため、コンセッション方式であるとか、PFIであるとか、PPPであるとか、様々な言い方を使って何とか民営化という言葉を和らげたいと考えているのかもしれませんが、間違いなく政府が積極的に水道事業の民営化を推し進めていく姿勢であると受け止められます。
実質的な民営化であることを前提とし、水メジャーと呼ばれる外資系などの水道関連企業は、コンセッション方式の導入によって参入しやすくなった水道事業で利益を得ようと狙っています。水道関連企業が運営権を得ることになれば、これまで国民が享受してきた水の安心、安全という無形の財産が、役員報酬や株主配当に簡単に変わっていきます。そればかりか、健全な経営を維持しようとすれば、企業収入を増やすために水道料金を引き上げることも容易に想像できます。コンセッション方式が導入されることにより、日本がこれまで築き上げてきた世界に誇る水道事業が世界に売られてしまうおそれのある、このような法律案に我々は断固反対いたします。
また、参考人質疑においては、本法律案に賛成する参考人の方、反対する参考人の方、いずれも、コンセッション方式の導入に際し、水道事業を適切にモニタリングする機関を創設しなければならないということを指摘しておられました。
コンセッション方式を導入する最大の目的は、民間のノウハウや技術を活用して事業の効率化を図り、結果として事業コストを削減することにあるはずなのに、水道事業において、新たなモニタリング機関のような事業を監視する仕組みが必要となるのであれば、当然新たな経費を要することとなり、それこそ本末転倒と言わざるを得ません。
そして、このコンセッション方式は、水道を所管し、現場を知る厚生労働省が推進してきたものではなく、大規模事業者に焦点を当てて小規模事業者への配慮がないまま、官邸が強力に推し進めてきた政策であるとしか思えません。
平成二十七年に厚生労働省が全国の水道事業者に行ったコンセッション事業に関するアンケートの結果によれば、当時のコンセッション事業導入検討の可能性について、約一六%が検討対象にならない、約七八%が分からないと回答し、コンセッションが検討対象になるとの回答は僅か四%でした。
このように、水道事業へのコンセッション方式の導入に慎重な意見が大多数を占めていたにもかかわらず、政府はそのまさに一年後に、骨太の方針二〇一六等において、コンセッション事業の推進を閣議決定しています。水道事業者の大多数がリスク面での不安や水道事業の継続性確保への懸念を掲げる中で、コンセッション方式の推進という方針が決められてしまったわけです。
委員会審査では、海外において民営化した、若しくはコンセッション方式を導入した水道事業において、再び公営化に戻してしまう事例が近年増加しているにもかかわらず、そういった最新事例が本法案の検討過程において全く考慮されていないことが明らかとなっています。
十分な海外事例の調査も行わないままに、多くの水道事業者が必要のないと考えているコンセッション方式を推し進めるのは一体何のためでしょうか。麻生副総理は、平成二十五年四月、ワシントンDCにおいて、日本の水道は全て民営化する旨の発言をされました。つまり、官邸の意向は、五年前から水道民営化ありきだったのではないでしょうか。官邸の強い意向により水道法改正案が作成されたのだとすれば、厚生労働省自身が諸外国の水道民営化に関する失敗事例の分析、調査をほとんど行っていない理由についても、つじつまが合うわけであります。
国民や自治体の不安や懸念をよそに、結論ありきで突き進んでいく。安倍政権発足以来、このような姿勢を国民は一体何度見せ付けられればよいのでしょうか。
立法府たる国会は、政府から提出された法律案について、ただ漫然と質疑時間を積み重ね、しかるべきときが来たら賛否の結論を出せばよいわけではありません。国会は、政府から提出された法律案について、立法事実は何か、法律案に問題点はないか、改善点はないか、今後想定される課題は何かなどについて、国民の代表である国会議員が、与野党問わず政府に対してただしていくことで議論を深め、結論を出していく場所であります。
しかしながら、今般の本法律案における委員会審査は、そこから余りにも懸け離れたものでした。委員会審査における根本厚生労働大臣の答弁は質問と全くかみ合っておらず、コンセッション事業を導入するに当たっての自治体への支援策についてただしても、コンセッション方式の許可に当たって事前の審査をしっかりやると言うだけで、何ら具体性のない答弁に終始していました。
仮に本法律案が成立することになれば国民の生活に極めて重大な変化がもたらされるのに、十分な説明責任が果たされないままとなっているほか、参考人質疑を経て更に議論を深めるべき点が掘り起こされたにもかかわらず、審議も十分に尽くそうとせず、水道民営化をごり押ししようとする姿勢は、到底許されるべきものではありません。
水はまさに命の源であります。そして、水道はその命を支える重要な生活基盤であります。国民民主党は、生活者の立場から、これからも命と生活の根幹を支える水の安全、安心を守り抜いていくことをお誓い申し上げ、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/8
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009・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 倉林明子君。
〔倉林明子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/9
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010・倉林明子
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表して、水道法改正案に反対の討論を行います。
水道事業は、日本国憲法が保障する生存権を具現化するものとして、地方公営企業法と相まって、公共の福祉の増進が目的とされてきました。
しかし、国策による過剰な水需要を見込んだダム建設など、過大な投資が水道事業の経営を大きく圧迫しています。赤字であっても、独立採算制により、一般会計からの繰入れも原則できません。必要な老朽管の更新や耐震化も進まない実態が全国で広がりました。
本法案は、こうした深刻な水道事業の現状を解決するどころか、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与すると定めた水道法第一条の目的を損なう危険が極めて高い内容となっています。
反対する第一の理由は、水道事業に関し、施設の所有権を自治体に残しながらも、運営権を民間に移すコンセッション方式を導入しようとしている点です。これは水道の民営化にほかなりません。
世界では、水道民営化の失敗から、再公営化の動きが加速しています。ところが、法案提出に当たって厚労省が検証した海外の事例は僅か十件にとどまり、その内容も十年も前の古い資料の調査結果であることが明らかになりました。
当時の再公営化水道事業者は全体の四分の一になっているにもかかわらず、そこから導き出された結論は、官民連携が単純に失敗と判断を下すことはできないというものでした。
直近、二〇〇〇年から十五年間を見ますと、水道事業を再公営化した水道事業は、三十七か国、二百三十五事業にも上っています。
調査時点で民営化事業が少なくなかったイギリスでは、現在、水道の再公営化の方針が国民に支持され、PFI法による新規事業は行わないことを決めています。
調査時点では民営化の方針を決めていたインドネシアでは、民営化したジャカルタ水道で料金の高騰、水質の悪化などが問題になる中、市民が提訴し、二〇一七年には最高裁で勝訴が確定しています。インドネシア最高裁は、水道の民営化は住民の水に対する人権を守ることに失敗したと断じたのです。
これらの事例を見れば、法案提出に当たって、直近の再公営化の事態をまともに検証していなかったことは明らかです。
政府は、水道施設の所有は自治体であり、厚生労働大臣が実施方針や契約を確認するため、監視は可能だと繰り返し答弁しました。しかし、海外の事例では、企業秘密が情報公開の壁となり、利益や株主配当など経営の詳細を公的機関がつかめなかったことも民営化破綻の要因となっているのです。
コンセッション方式では、民間企業との長期契約を結ぶことになり、契約途中で地方自治体が再び公営に戻す決断をしたとしても、多額の違約金や訴訟リスクが地方自治体に重くのしかかります。実際に、ドイツ・ベルリン市では、民営化した後、料金値上げという事態に直面し、民間企業に料金値上げをやめるよう要請したものの、民間企業が要請に応じなかったために再公営化を決めました。しかし、契約途中の打切りということで、多額の違約金が発生し、再公営化の大きな障害となりました。ブルガリア・ソフィア市では、再公営化の動きがあったものの、多額の違約金の支払が障害となり、コンセッション契約を続けざるを得ない状況に追い込まれています。
民営化を継続しているところでも、再公営化に戻したくても戻せない実態も見るべきです。民営化で担保されるのは企業の利益であることは余りにも明白ではありませんか。
再公営化したパリ市では、利益を施設整備や水道料金の引下げに還元し、八%もの水道料金引下げを実現しています。
政府は、こうした世界の最前線で起こっている水道民営化の失敗と再公営化から教訓を学ぶべきです。
厚労省は、官民連携の選択肢を広げるものであり、あくまでも導入の可否は自治体が決めると説明してきましたが、要望書を提出した自治体は僅か一件のみで、自治体首長にトップセールスで売り込んでいたのが厚労省だったことも明らかになりました。公共インフラの民間開放ありきでコンセッション方式を導入するなど、到底認められません。
第二の理由は、広域化を推進強化することで、広域水道の押し付け、簡易水道など自己水源の廃止につながる危険があるからです。それはまた、災害対応にも有効な地域分散型水道の否定にもつながります。
これまでも、都道府県が主導して広域化を進め、簡易水道は統合が推進されてきました。基盤が脆弱な簡易水道に対する補助金の期限を切って縮小、廃止するなど、国は簡易水道の統合、廃止を促進してきたのです。
これまで広域化された水道事業では、大都市でも広域水道への依存度が高まり、災害に対する脆弱性が高まっていることが大阪府北部地震の調査を行った土木学会からも指摘されています。地域の自己水源だった簡易水道も統合で廃止される中、過疎地や離島でも、地震や豪雨など、災害時の断水が長期に及んでいる事態が少なくありません。
そもそも、工業団地の造成や人口増加を前提として、過剰な水需要を見込んだダムなどの大規模水源を建設推進してきた政府の責任が問われるものです。自己水源を廃止してまでダム水や工業用水の利用を押し付けることになったのが広域化の大きな問題でした。
さらに、広域化の推進によって深刻な人材不足の問題が解消されるものではありません。水道事業者の六割を超える給水人口五万人未満の事業者では、技術職が一人というところも少なくありません。この最大の要因は、政府が進めてきた行政改革によって自治体が職員削減に追い込まれた結果ではありませんか。新規採用を抑制した結果、退職者が出ても補充されず、人材育成や技術の継承が行えなくなっているのが実態です。全国の水道事業者の人材不足が政府の政策によってつくられてきたことに対する真摯な反省と総括は全くありません。
本法案では、これまで市町村が主体という原則をなくし、経営基盤の強化のために、国及び都道府県が主体となって広域化を含む基盤強化を推進することとしています。
都道府県が設置する広域的連携等推進協議会に参加する市町村は、協議会の協議結果を尊重しなければならなくなり、簡易水道や貴重な自己水源の放棄を更に加速させることになりかねません。良質で安定的な自己水源を確保することは、災害対応にも極めて有効です。自己水源を生かした地域分散型の水道事業への転換を求めるものです。
世界の水道事業の民営化の失敗は、水は人権、自治が基本だということを教えています。国民の貴重な財産である水道インフラは、市町村主体で健全な運営が可能となる道こそ目指すべきです。
現在の水道事業が抱える問題の解決のためには、過大な需要を見込んだダム開発はきっぱり中止し、人員確保、必要な財政支援を行うことこそ必要である、このことを申し上げまして、私の反対討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/10
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011・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/11
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012・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/12
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013・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/13
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014・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十七
賛成 百六十五
反対 七十二
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/14
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015・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 日程第二 サイバーセキュリティ基本法の一部を改正する法律案(第百九十六回国会内閣提出、第百九十七回国会衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長石井正弘君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔石井正弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/15
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016・石井正弘
○石井正弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、サイバーセキュリティーに対する脅威の一層の深刻化に鑑み、サイバーセキュリティーに関する施策の推進に関し必要な協議を行うため、サイバーセキュリティ戦略本部長及びその委嘱を受けた国務大臣その他関係事業者等を構成員とするサイバーセキュリティ協議会を組織するものとするとともに、サイバーセキュリティーに関する事象が発生した場合における国内外の関係者との連絡調整に関する事務をサイバーセキュリティ戦略本部の所掌事務に追加する等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、サイバーセキュリティ協議会の体制及び運営の在り方、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたサイバーセキュリティー対策の取組、サイバーセキュリティー人材の確保、育成の必要性、サイバーセキュリティー対策における海外との連携及び協力等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党の田村委員より反対、希望の会(自由・社民)の木戸口委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/16
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017・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/17
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018・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/18
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019・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十八
賛成 二百十六
反対 二十二
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/19
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020・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 日程第三 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長上野通子君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔上野通子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/20
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021・上野通子
○上野通子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、原子力損害の被害者の保護に万全を期するため、原子力事業者に対する損害賠償実施方針の作成及び公表の義務付け、特定原子力損害賠償仮払い資金の貸付制度の創設、原子力損害賠償紛争審査会が行う和解仲介手続の利用に係る時効中断の特例に関する規定の新設、原子力損害賠償補償契約の締結及び原子力事業者に対する政府の援助に係る期限の延長等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、損害賠償実施方針の内容の適切性を確保するための方策、原子力損害賠償紛争審査会が策定した中間指針の見直しの必要性、現行の賠償措置額の妥当性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終局した後、立憲民主党・民友会の神本理事より、国民民主党・新緑風会の伊藤委員より、希望の会(自由・社民)の山本委員より、それぞれ修正案が提出されました。
次いで、討論の後、順次採決の結果、三修正案はいずれも否決され、本法律案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/21
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022・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。杉尾秀哉君。
〔杉尾秀哉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/22
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023・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 立憲民主党・民友会の杉尾秀哉です。
この度議題となりました原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、私は、立憲民主党・民友会を代表して、断固反対の立場から討論を行います。
平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災と、それに伴う東電福島原発事故では、広範囲にわたり未曽有かつ甚大な被害が生じました。
そもそも、皆さんもよく御存じのように、それまで我が国では、いわゆる安全神話の下、原発推進政策が文字どおり国策民営によって進められてきました。ところが、あの忌まわしい事故により、安価でクリーンなエネルギーだったはずの原子力発電が、一たび深刻な事故が起きれば、一体幾らコストが掛かるか分からないダーティーなエネルギーだったということ、そして、そうした原発の安全神話に基づいた原子力損害賠償法、いわゆる原賠法が被害者保護の観点から極めて不備が多いことが白日の下にさらされたのです。
本来であれば、事故後初めてとなる今回の原賠法の見直しは、そうした福島事故の教訓と従来の原子力政策の深刻な反省の上に行われるはずでした。事実、平成二十三年八月に成立した原子力損害賠償支援機構法の附則第六条第一項において、できるだけ早期に原賠法の改正等の抜本的な見直しを始めとする必要な措置を講ずることが明記され、また、同法案に対する衆参の附帯決議においても同様の文言が盛り込まれています。
にもかかわらず、今回の原賠法見直し案では、東電福島原発事故における対応を踏まえ、一般的に実施することが妥当なものとして、損害賠償実施方針の作成、公表の義務付け、仮払い資金の貸付制度の創設など、四項目を柱とする施策が盛り込まれる一方で、法律の目的として原子力事業の健全な発達が維持され、現行の一千二百億円の賠償措置額の引上げが見送られるなど、根幹部分はそのまま維持されました。
また、最近では、被害者への賠償を迅速かつ円滑に進めるために設置された原子力損害賠償紛争解決センター、いわゆるADRセンターが示す和解案を東電が拒否したため、福島県浪江町の集団ADRのように、審理打切りや裁判に持ち込まれるケースが相次いでいます。こうした被害者の救済措置についても、今回の見直し案では実効性のある措置が何らとられないままとなりました。
今回の原賠法改正案については、先週の委員会での参考人からの意見聴取でも、四人中三人の参考人が抜本的見直しには程遠い内容と述べ、失望を禁じ得なかったように、単なる現状追認のお茶濁しにしかすぎません。こうした内容での法改正には断固反対を表明いたします。
では、本来の法改正はいかなる方向でなされるべきなのか。私たち立憲民主党・民友会は、以下の三点を柱とする修正案を委員会に提出しました。
まず、第一の点は、あくまで本法律は、被害者の保護を唯一の目的とし、目的規定から原子力事業の健全な発達を削除することです。
そもそも、一九六一年に制定された原賠法は、被害者の保護を図るとともに、原子力事業の健全な発達に資することが目的とされました。しかし、半世紀以上も前の法制定当時ならまだしも、あの過酷事故を経験した今となっては、この規定自体が誤りだったと言わざるを得ませんし、あえて今なお原子力産業を特別扱いする理由も、またこの規定を維持する必要もありません。
そして、第二の点は、政府が賠償措置額の引上げについて速やかに検討することです。
政府の発表によれば、今回の福島事故に関連して確保すべき資金は二十一・五兆円と、既に当初見込みの十一兆円のおよそ二倍。最終的には最大七十兆円を要するとの民間試算、試みの計算さえあります。このうち、賠償、除染等に係る費用は十三・五兆円に上りますが、これに対して手当てされている賠償措置額は、今回の法改正でも従来どおり千二百億円のまま。何と実際に必要な金額の百分の一以下にすぎません。
政府は、据置きの理由として、これ以上保険会社が引き受けられないことなどを挙げていますが、これでは事実上無保険に近い状態で車を運転するようなもので、そもそも、それほどリスクがあるのなら、原発を使い続けるべきではないのではないでしょうか。
そして、三点目は、原子力事業者は原則として、ADRセンターから提示された和解案について、相手方当事者が和解案を受諾しない場合、一定期間内に訴訟が提起された場合等を除いて、これを受諾しなければならない旨を規定することです。
先ほども述べましたように、ADRに対する東電の姿勢はますます厳しいものとなっています。浪江町の集団ADRのケースでは、申立てから既に五年半が経過し、この間、町民の代理人となった町の町長さんを始め、高齢者など申立人八百五十人が亡くなったと聞きます。
もはや迅速な解決とは名ばかりで、こうした事態が繰り返されれば、制度の意義とADRセンターの存在価値そのものが否定されることにつながりかねません。こうした事態を避け、被害者救済を万全なものとするためにも、ADRに法的強制力、いわゆる裁定機能を持たせる必要があるのではないでしょうか。
以上、ここまで私が述べた以外にも、今回の法改正をめぐっては、国の責任の明確化や原子力事業者以外の株主や銀行などステークホルダーの責任、さらには原子炉メーカーを始めとする原子力産業への求償権の問題など、数多くの論点があります。
しかし、これらに対する十分な議論の時間も確保されず、また、私たち立憲民主党・民友会など野党各会派の修正案についても、ろくに審議されることなく委員会で否決されたのは、極めて遺憾と言わざるを得ません。
あの福島原発事故では、ふるさとを奪われ、平穏な日々の生活をめちゃくちゃにされて、今なお避難所生活を余儀なくされている方々がたくさんいらっしゃいます。
そのうちの一人で、現在も二本松の災害復興公営住宅にお住まいの浪江町民、佐々木茂さんは、先週の委員会の参考人陳述でこのように私たちに切々と訴えかけました。
私のふるさとは、今回の原発事故で全ての住民が避難を強いられ、全国各地に散り散りになりました。そんなに豊かな村ではありませんが、自然の恵みを受け、そこで、小さな幸せかもしれませんが、生活を営んでおりました。私たちは、よもや原発事故が起こるなどとは思ってもいませんでしたし、国も東電も原発は安全であるという神話を私たちに植え付けたはずです。私たちはそれを信じて生活をし、その結果、現在置かれている立場に理不尽さを感じて毎日を過ごしています。どうか皆さん、福島を見に来てください。そして、役人の話を聞くんじゃなくて、住民と対話をして、それを国政に反映してほしい。こうおっしゃいました。これはまさに被害者の魂の叫びだと思います。
私たち国会議員は、こうした全ての被害者の、そして事故の犠牲となられた方々の断腸の思いを正面から受け止めなければなりません。そして、かかる取り返しの付かない事態を招来させた福島原発事故の真摯な反省の上に立ち、再び安易な安全神話に寄りかかってはなりません。
どうか、そうした立法府としての明確な意思を示すためにも、議場にいる全ての議員が、今回の改正案に明確な異議を唱え、改めてより抜本的な見直しのための議論を始めるよう呼びかけまして、私の反対討論とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/23
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024・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 吉良よし子君。
〔吉良よし子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/24
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025・吉良よし子
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
私は、日本共産党を代表し、原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
二〇一一年三月十一日に始まる東京電力の福島第一原発事故により、放射能汚染という巨大かつ深刻な事態が引き起こされ、多くの方々がふるさとの喪失を押し付けられました。
現在、福島第一原発は、収束には程遠く、事故の真っただ中にあります。溶け落ちた核燃料の位置や状態はいまだ把握できず、ALPSで処理できなかった放射性物質が含まれた汚染水が増え続けています。
今なお五万人が避難生活を余儀なくされ、避難指示が解除されても、暮らしを支える商店や病院がなかなか整わないなど、帰還と復興を進める上での課題は山積しています。
ところが、安倍政権は、避難指示解除とセットで賠償を打ち切り、福島原発事故を終わったことにしようとしています。その下で、自主避難者とされる人は増え、必要な支援を受けられなくなっている方も多くいます。被災者を分断する線引きや排除、期限切れを口実にした切捨ては許せません。
いわゆる自主避難者を含む全ての被災者、被害者を賠償の対象にすることを求めます。生活となりわいが再建され、希望する人がふるさとに帰り、命と健康を守る医療や介護、子供たちの教育を保障し続け、安全、安心の福島県を取り戻すまで、国の責任で復興を支援しなければなりません。
そして、賠償についても、被災者、被害者の皆さんの思いに寄り添っているとは言えない状況が続いています。
私も、先日、福島に行き、旅館業の皆さん、漁協の皆さん、そして農家の皆さんのお話を伺いました。皆さん共通しておっしゃっていたのは、お金だけの問題じゃないということです。
例えば、自ら作った野菜をリヤカーで引き売りをしていた八十代のおばあちゃんは、毎日の売上げをカレンダーに記入していた。それが事故以降は売れなくなって、毎日毎日、売れないと書いている。そのカレンダーを見せても東京電力は賠償を認めなかったといいます。
事故が起こるまで細々とでも毎日売上げがあり、おいしいと言われるのが誇りだったというおばあちゃん。そういう誇り、生きがいを奪ったのが原発事故です。だから、国や東電はその加害責任を認めてほしい。これが福島の皆さんの共通する願いなのではないでしょうか。
本法案が、こうした皆さんの願いに応える改正になっているのか、東京電力福島第一原発事故を受け、現に行われている賠償の実態を踏まえた見直しになっているのかといえば、決してそうとは言えません。
東電福島原発事故の損害賠償額は、既に八兆六千億円に膨れ上がっています。この賠償額は、ふるさとの喪失を押し付けられた被害者にとっては極めて不十分であるにもかかわらず、東京電力を始め、大手銀行や原子力メーカーなどの責任は曖昧にされ、その多くは税金と電気料金という形で国民に負担が押し付けられています。
福島原発事故では、原賠法第十六条の政府の援助を根拠に、国が交付国債や政府保証、直接補助で東電を支える枠組みがつくられました。建前上は、原賠法の無過失責任、責任集中、無限責任の三原則が維持されているように見えますが、実際は、賠償金額が幾ら掛かり、いつまでに払い終えるかさえ定まっていません。この仕組みで原発事業を続けていくこと自体が既に実質的に破綻しているのです。
ところが、本法案は、電力会社が準備する賠償措置額を千二百億円に据え置いて、電力会社に融資した大手銀行や原子力メーカーの責任も不問にしたままです。東京電力を超過債務に陥らさせないためにつくられた東電救済の枠組みを一般化して、全国の原発再稼働に備えようとしている本法案には到底賛成できません。
東電の経営陣、株主、大銀行、メガバンク、原子炉メーカー、ゼネコンなど、原発利益共同体に責任に応じた負担を求め、国民負担の最小化をするべきです。原賠法の目的から原子力事業者の健全な発達を削除して、被害者への賠償のみを目的とすることを求めます。
また、東京電力が被害者の賠償請求に真摯に向き合っているとは言えない現状も問題です。例えば、二〇一五年に入ってから東電は、営業損害に関して一括賠償方式を取っています。この方式は、事実上の打切りであるとして多くの批判がありますが、特に問題なのは、この一括賠償方式を採用して以降、この方式での請求でない限り東電が賠償請求を受け付けない、合意しないという態度を取っているということです。
本法案では、賠償の迅速かつ適切な実施を図るためとして、新たに原子力事業者に損害賠償実施方針の作成、公表を義務付けていますが、その中身は事業者任せ。質疑の中でも、その中身について省令などで細かく定める予定もなく、それらが白紙委任されていることが明らかになりました。これでは、一括賠償方式のような賠償方式を事業者側が勝手に決め、それを被害者に押し付ける、被害者の賠償請求権が制限される危険性も否定できません。
さらに、東電が、原子力損害賠償紛争解決センター、ADRから提示された中間指針を超える和解仲介案を拒否する事例を繰り返していることも問題です。そもそも、原子力損害賠償紛争審査会が定める中間指針は目安であり、上限ではありません。にもかかわらず、指針を上限であるかのように扱って、指針以上の和解仲介案を拒否することは許されません。加害者である原子力事業者に和解仲介案への受諾義務を課すべきです。
また、福島県内の全ての市町村から四千人以上が参加し、ふるさとにおいて安心して元の生活を取り戻すことができるように原状回復を求める集団訴訟では、既に七件、いずれも国が定めた中間指針を超える賠償を認める判決が出されています。昨日の質疑で文部科学大臣は、今は中間指針を見直す状況ではないなどと言いましたが、出された判決を踏まえれば、今こそ、国が責任を持って中間指針を抜本的に見直すべきときです。
既に、原発避難者訴訟では、事故に対する国の法的責任も認められています。原発を推進してきた歴代自民党政府、国が根本的な反省を行って、原発ゼロへの政策転換を明確にした上で国が責任を取ることが不可欠です。
福島原発事故以来、毎週金曜日の官邸前を始めとし、全国で原発ゼロを求める声は広がり続け、再稼働反対が国民多数の世論となっています。事故により原発安全神話が完全に崩壊した今、原発の再稼働と輸出という無謀な道はやめ、原発ゼロの日本へ政治決断を行うべきです。
全ての原発を再稼働せず、直ちに廃炉へ。この国民の声にこそ応えるよう強く求め、反対討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/25
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026・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/26
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027・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより採決をいたします。
本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
〔投票開始〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/27
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028・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
〔投票終了〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/28
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029・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 二百三十九
賛成 百八十九
反対 五十
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────────────
〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/29
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030・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119715254X00820181205/30
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