1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和元年五月二十二日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十九号
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令和元年五月二十二日
午前十時 本会議
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第一 国有林野の管理経営に関する法律等の一
部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/0
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001・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
日程第一 国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。農林水産大臣吉川貴盛君。
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/1
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002・吉川貴盛
○国務大臣(吉川貴盛君) 国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
我が国の森林については、戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎えております。この森林資源を切って、使って、植えるという形で循環利用していくことで、先人の築いた貴重な資産を継承、発展させることが、これからの森林・林業政策の主要課題であります。
こうした課題に対応するため、昨年の第百九十六回国会で成立した森林経営管理法においては、経営管理が不十分な民有林を意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化する新たな森林管理システムを構築することとされております。
この新たな森林管理システムを円滑に実施し、こうした林業経営者を育成するためには、安定的な事業量の確保が必要となります。そのためには、民有林からの木材供給を補完する形で、国有林から長期安定的に林業経営者が樹木を採取できるよう措置することが有効であります。
このような認識の下、効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、国有林野の一定区域において、国有林野の公益的機能の維持増進や地域の産業振興等に配慮した上で、木材の需要者と連携する事業者が、一定期間、安定的に樹木を採取できる権利を創設するとともに、あわせて、川上側の林業と木材の需要拡大を行う川中、川下側の木材関連産業の連携により木材の安定供給を確保する環境整備を行うため、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、樹木採取権の設定についてであります。
農林水産大臣は、効率的かつ安定的な林業経営の育成を図るため、国有林野の一定の区域を樹木採取区として指定した上で、当該区域において生育している樹木を、一定の期間、安定的に採取する権利として、樹木採取権を設定することができるものとしております。
第二に、樹木採取権の設定を受ける者の選定についてであります。
樹木採取権の設定を受ける者については、農林水産大臣が公募を行い、公募に応じた者のうちから、森林の経営管理を効率的かつ安定的に行う能力を有することや、民有林からの木材の供給を圧迫することがないよう林業経営者が川中、川下側の木材関連業者と連携すること等を条件とした上で、地域における産業の振興への寄与の程度等を勘案し、選定するものとしております。
第三に、樹木採取権の行使についてであります。
国有林野の公益的機能の維持増進等を図るため、樹木採取権の設定を受けた者は、事業を開始する前に、施業の計画や現行の国有林における伐採のルールなど樹木の採取の具体的な条件等を定めた契約を五年ごとに農林水産大臣と締結しなければならないものとしております。この契約に係る重大な違反があったとき等の場合は、農林水産大臣は樹木採取権を取り消すことができるものとしております。
第四に、樹木の採取跡地における植栽についてであります。
農林水産大臣は、樹木採取区内の樹木の採取跡地において国有林野事業として行う植栽の効率的な実施を図るため、樹木採取権者に対し、当該植栽をその樹木の採取と一体的に行うよう申し入れるものとしております。
第五に、木材の安定取引に取り組む事業者に対する金融上の措置についてであります。
独立行政法人農林漁業信用基金は、林業経営者と川中、川下側の木材関連事業者が、木材の需要の開拓等に関する事業計画を共同で作成し、都道府県知事等の認定を受けた場合に、その計画に係る事業に必要な資金の供給を円滑にするため、資金の貸付け及び債務の保証を行うものとしております。
以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/2
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003・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小川勝也君。
〔小川勝也君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/3
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004・小川勝也
○小川勝也君 立憲民主党・民友会・希望の会の小川勝也です。
ただいま議題となりました国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、会派を代表し、農林水産大臣に質問いたします。
JR北海道の路線維持問題はまだ議論の真っ最中ですが、北海道開拓は、新しい大地であったにもかかわらず鉄道の敷設は意外と早く、その理由は、豊富な木材資源を本州に運ぶためだったとも言われています。私に物心が付いた頃、昭和四十年代半ばの記憶は、駅裏の貯木場に積まれた木材、いろいろな合板、割り箸、折り箱の各工場からの白煙でした。
質問準備のため林野庁からいただいた資料を見ますと、昭和四十五年に木材の自給率は五〇%を割り、昭和四十八年に木材が暴騰し、緩やかに外材に依存しつつ今日を迎えていることが分かります。昭和三十六年に木材の増産計画が策定され、昭和四十年代までにたくさん切り、たくさん植え、今、そのときの木がまさに伐期を迎え、この法改正案が提出となったのはほぼ必然と言えるでしょう。
平成七年に国会の議論に参加をさせていただき、平成八年の行革の議論から平成十年の国有林野事業の抜本改革へ。一般会計化を悲願としていましたが、その悲願達成までは平成二十五年までの十五年の時間を要しました。
現地視察に伺うと、間伐、除伐が施されず光が入らない国有林を見せられ、山地災害が起こるたびに山の手入れ不足を指摘され、人員を減らされ続け、間伐予算もままならず、つらい日々を思い出すと、今回の林野庁の威風堂々たる法案提出は隔世の感があり、正直うれしい気持ちでいっぱいです。しかしながら、時代の流れの中でも忘れてはいけないこと、乗り越えなければならない幾つかの課題を厳しく指摘をさせていただきたいと存じます。
まず、第一に指摘しなければならないのは、樹木採取権の設定の最長五十年という驚くべき長さです。樹木の成長に五十年掛かるのはよく承知しておりますし、雇用や高額機械の投資のために長い方がいいという説明は理解いたしますが、余りにも常軌を逸しています。五十年の信用がある企業は特定の大企業だけに限定されるのではないでしょうか。常識の範囲で審査、延長を繰り返すことで何が不自由なのか、納得し難い年限の長さです。分かりやすく説明してください。
この法律は、林業を成長産業にという未来投資会議からの提案を林政審議会を通して出してきました。昨今の悪法は、もうけしか考えない官邸系審議会のよこしまをそのまま法案に出してくることがしばしばあり、それよりはいいということでしょう。言うまでもなく、国有林はもうけの材料ではなく、水源の涵養等を始めとする森林の多面的機能をしっかり守ることが必要です。そして、伐採後、植林すれば、その後手入れをしっかりするという条件はあるものの、五十年、六十年後に木材利用が可能で、その恵みは国民全体で分かち合いつつ、そして少し多めに山元に利益をということだろうというふうに思います。未来投資会議での議論、林政審議会での議論を吉川大臣に御紹介いただいた上で、大臣の考える国有林の役割について御答弁をいただきたいと思います。
この法改正の肝は、山元をどう元気にできるかということだと思います。五十年、六十年前に栄えた山元にはかつてのにぎわいはありません。国有林の近くで素材生産を続けてきた会社が多数存在します。大企業ではなく、これらの地場企業が人を雇用し、機械に投資し、頑張る姿をこの法案はいかに担保していますか、お答えください。
平成の大部分、非地元の中堅企業が国有林の仕事を受注し、地元企業が下請に甘んじざるを得ないという話を何度となく聞いてきました。工夫と対策はありますか、お答えください。
冒頭お話をさせていただいたとおり、昭和五十年代以降、我が国の林業は停滞期にあり、先進国の林業に大きく水を空けられました。その要因は、道、機械、労働安全衛生にあります。特に、素材生産、搬出の効率化を進めるに当たって、高性能林業機械の導入は不可欠であります。国産の高性能林業機械の開発は進んでおらず、また外国製機械は高額であるため、その導入は中小企業にとって高いハードルとなっています。グループ化、組合化などにより中小事業者が高性能機械にアクセスできるような、そんな配慮が必要と考えますが、この点についての答弁を求めます。
また、価格のみならずメンテナンスの面からも、国産の林業機械の開発も求められています。取組はいかがでしょうか。
林道、作業道、路網整備について伺います。
オーストリア、ドイツなどの林業先進国に比べ、我が国は台風、モンスーン地域にあり、林道、作業道などのコストがかなり違うことを理解しております。しかしながら、搬出コストを下げるには道幅が広い方が有利で、スピードを上げるには、クローラーといいますけれども、キャタピラのようなものからホイール、タイヤ型の機械が使えるような道が必要になってきます。さらに、機械が普及すればするほど森林管理署に道をもっと整備してほしいという要求が高まってくることが予想されます。これまでの路網の整備状況とこれからの課題について認識を伺います。
林業を活性化させる上での最大の課題は人手不足です。各地に林業大学校的な人材育成機関が設立されてきました。大変喜ばしいことです。しかしながら、造林、植林、地ごしらえ、下草刈りの作業は大変厳しく、機械化が遅れれば有為な人材を失うおそれがあります。また、他の流通、運輸分野の人手不足は深刻です。中でも、最も危険で熟練の技が必要な木材の搬出の人材をどう確保するのか、この問題は極めて深刻です。伐採と集材の機械化はある程度進んできましたが、困難を要する植林等の分野への機械化と人材不足への取組を伺います。
また、製材所の分布は最盛期と比べるべくもなく、山元から消費地までに必要な加工所がないケースも多数あります。言うまでもなく、効率的な流通を考えれば、山元から消費地までの適切な場所に製材や加工の工場の立地が不可欠です。流通、加工分野への取組の遅れについてはどう挽回するおつもりでしょうか、お答え願います。
CLT建築もやっと市民権を得て、公共建築物を木材でという法律もでき、若干の高コストではありますが、木造建築への関心は高まっています。しかしながら、平成十年の建築基準法改正以降、木造建築のバリューが下がり、設計技術者、それを教える立場の人が非常に減っているという調査もあります。木造建築の増加を妨げるこれらの困難に対する今後の取組についてもお伺いいたします。
私は、常々、林業政策の目標を、国産材で戸建て住宅を建ててもらえるようにすることと訴えてまいりました。顧客も国産材の住宅に高い関心を持っていると言われていますし、大手ハウスメーカーの方々も、品質、ロットがそろい、価格差が微少であれば輸入材から変更したいという声も多数聞いてまいりました。人工林の五十分の一は利用可能ということであれば、今後、人口減少で住宅着工件数は減少傾向にあるとはいえ、付加価値を国内へという意味では最大の効果が期待できると考えます。この目標に向けての大臣の決意を伺います。
最後に、国有林のあるべき姿について伺います。
今、伐期が来たから現世代が利益を得る、ひたすらもうけの材料にする、この考え方は間違っていると思います。改めて国有林の役割の確認を大臣にただし、さらに、国有林の将来に向けてのあるべき姿を吉川大臣に伺います。
この法案をもって所属する農林水産委員会の閣法審議は終わります。何を慌てているのか、今週の木曜日、すなわちあしたと来週の火曜日までの審議はもう決まっています。
解散風が吹こうとしています。解散があろうが、ダブル選挙になろうが、参議院選挙単独になろうが、予算委員会を開かない、この政府・与党の暴挙は許すことができません。逃げ切ろうという暴挙は絶対に許されません。政府・与党は予算委員会を開催すべきということを強く訴えまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/4
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005・吉川貴盛
○国務大臣(吉川貴盛君) 小川議員の御質問にお答えいたします。
樹木採取権の存続期間の上限の考え方についてのお尋ねがありました。
樹木採取権については、地域の意欲と能力のある林業経営者の育成の観点から、これらの林業経営者が対応しやすい規模に鑑み、その期間は十年を基本として運用していく考えであります。
他方で、現に地域の森林組合等から長期間の権利設定を求める声があることも踏まえ、国産材の需要拡大のニーズが特に大きい地域においては、当該地域の需要動向や森林資源の状態などを勘案しつつ、一般的な人工林の造林から伐採までの一周期の五十年を上限として十年を超える期間も設定できることとしているものでございます。
なお、例えば、地域の取組として投資回収期間が長期にわたる大型の製材工場等を誘致するような場合、まとまった権利期間が確保されることにより、当該工場等への安定的な木材供給とそれを前提とした設備等への投資が円滑に行われることが重要であることから、権利の期間を短期に設定して延長することでは地域の要請に応じられないと考えるところでございます。
未来投資会議や林政審議会での議論の内容と国有林野の役割についてのお尋ねがありました。
未来投資会議においては、林業の成長産業化に向けて、長期、大ロットでの国有林の立木の伐採、販売方策について議論されております。また、林政審議会においては、本法案の考え方に沿って、林業経営者による安定的な事業量の確保、公益的機能の維持等について審議されております。
国有林野については、国土の二割、森林の三割を占めていることに鑑み、その公益的機能の維持増進を図るとともに、林産物を持続的かつ計画的に供給し、地域の産業振興や住民の福祉の向上に寄与する必要があると考えております。
このため、本法案により、国有林の有する公益的機能の維持増進を図りつつ、国有林が民有林を補完する形で意欲と能力のある林業経営者に長期安定的に木材を供給することにより、森林経営管理制度の円滑な実施を支援し、地域の産業振興に寄与してまいる考えであります。
中小事業者の育成についてのお尋ねがありました。
今回の新たな仕組みについては、現行の入札による方式を引き続き基本とした上で、今後供給量の増加が見込まれる国有林材の一部について導入することとしております。また、地域の産業の振興につながるよう、樹木採取区は地域の意欲と能力のある林業経営者が対応できる規模を基本とする考えです。加えて、複数の中小事業者が協同組合等として申請することも可能とすることで、本法案は大企業を優先するものではなく、地域の林業経営者の育成に資するものとしているところでございます。
地元企業に対する配慮についてお尋ねがありました。
樹木採取権者の選定に当たっては、地域の産業振興への寄与の観点から、樹木料の高低だけでなく、地域における雇用増大への取組など、地域への貢献度合い等を総合的に評価することにより、地域の林業経営者の育成に資するものとしてまいります。
中小事業者の高性能林業機械の導入に関するお尋ねがありました。
素材生産、搬出の効率化を図るためには、高性能林業機械の導入が極めて重要であると認識しております。このため、中小事業者等が高性能林業機械を導入しやすくなるよう、高性能林業機械の購入の支援に加え、初期投資を抑えられるリース事業への助成を行うとともに、複数の事業者への貸付けのために森林組合等が導入する高性能林業機械への支援等の取組を行っております。
国産の林業機械の開発についてのお尋ねがありました。
林業機械については、急傾斜地での作業の安全性、生産性を向上させる架線系の搬出機械、苗木植栽ロボットなど、伐採、造林の各作業に対応し、我が国の条件に合った機械の開発を進めているところでございます。この中で、効率性の高い作業を実現する性能と価格のバランスに留意するとともに、メンテナンス性も考慮に入れて国産の林業機械の開発を行うよう引き続き取り組んでまいります。
路網整備についてのお尋ねがありました。
林業の成長産業化を実現するためには、林道等の路網整備を進めることが重要であり、平成二十九年度末の路網延長は約三十五万キロメートルで、森林・林業基本計画に定める令和七年度の目標に対し、約七五%の進捗となっております。
今後、より効率的な木材輸送を進める必要があることから、大量の木材運搬等に対応できる幹線林道の整備を実施するなど所要の予算を確保しつつ、路網整備を推進してまいります。
植林等の機械化と人材確保についてお尋ねがありました。
利用期を迎えた森林資源を循環利用し、林業を活性化していくためには、伐採後、再造林を確実に行うことが重要であり、そのためには植林等の分野の機械化と人材確保は重要な課題と認識をしております。
このため、農林水産省では、植林等の機械化に向けて、苗木植栽ロボットや小型の乗用下刈り機械、アシストスーツ等の開発を行うとともに、人材確保に向けて、林業大学校に関する支援のほか、緑の雇用事業等により、集材の機械化を支える高度技能者の育成や、植林や下刈り等の森林施業を安全かつ効率的に行える現場技能者の育成を支援しているところです。
国産材の流通、加工分野における施設整備の取組についてのお尋ねがありました。
我が国の製材工場数は十年前と比較すると約七割以下に減少しており、地域によっては山元から加工所までの輸送距離が広域化しているものと認識しています。
このため、農林水産省としては、地域における森林資源、施設の整備状況を踏まえながら、規模拡大、生産性向上に資する施設整備、協定取引による製材工場等への直送化、本法案による木材運送業者への金融支援を追加などを通じて、効率的で競争力の高い国産材の加工流通体制を構築してまいります。
木造建築分野の専門人材の育成についてお尋ねがありました。
建築物の木造化を推進していくためには、木造建築物を設計できる技術者の確保、育成が重要であると認識しております。このため、農林水産省では、木造建築物に携わる設計者等に対する研修の実施、企画から設計段階に至る課題を解決するための指導、助言を行う専門家の派遣等の取組を支援しているところです。
引き続き、これらの取組により、木材需要の拡大に向け、木造建築物に携わる設計者等の育成を進めてまいります。
戸建て住宅における国産材利用の促進についてのお尋ねがありました。
我が国においては、戸建て住宅などの低層住宅の八割が木造であるものの、おおむね五割が外材となっていることから、木造住宅での国産材の利用促進が重要と認識しております。
このため、川上から川下までのサプライチェーンを構築することにより、工務店等が求める部材を川上側が安定供給できる体制を整えること、はりや桁、ツーバイフォー工法の部材について国産材が活用できるような技術的開発、普及等を通じて、木造住宅における国産材利用を促進してまいります。
国有林野の将来に向けてのあるべき姿についてのお尋ねがありました。
国有林野は、国土保全上重要な奥地脊梁山地や水源地域に広く分布するとともに、人工林や原生的な天然林等の多様な生態系を有するなど、国民生活に重要な役割を果たしております。
このため、公益重視の管理経営を一層推進するとともに、その組織、技術力、資源を活用した我が国の林業の成長産業化など、森林・林業政策全体の推進に貢献する役割を積極的に果たすこととしています。
こうした取組を着実に推進し、森林・林業や国有林野事業に対する多様な要請と期待を踏まえつつ、森林資源の適正な利用に十分配慮し、国が責任を持って一体的に管理経営することにより、五十年後、百年後の世代への豊かな森林を引き継いでいく考えであります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/5
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006・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 徳永エリ君。
〔徳永エリ君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/6
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007・徳永エリ
○徳永エリ君 国民民主党・新緑風会の徳永エリです。
会派を代表して、国有林野管理経営法改正案について、吉川農林水産大臣に質問いたします。
法案の質問に入る前に、先週金曜日、大生産地である愛知県田原市の養豚場で国内二十三事例目、田原市では五事例目の豚コレラの発生が確認されました。
大臣、農林水産省は一体何をやっているんでしょうか。昨年九月に岐阜市で発生してから、間もなく九か月になろうとしています。既に九万三千頭を超える豚が殺処分されています。民主党政権時代、宮崎県で口蹄疫が発生したときは四か月で終息させました。いつになったら終息するんでしょうか。農林水産省が今行っている防疫措置対応は、果たして正しいのでしょうか。
そこで、吉川大臣にお伺いいたします。
まず、なぜ感染予防のためのワクチンを打たないのか。まずは、飼養衛生管理の遵守というならば、早急に予防的殺処分を行い、豚舎を空にして徹底するべきではないのか。また、養豚農家への補償、手当金について、支払の時期や金額がいまだに明らかになっていないと現場から不満と不安の声が上がっています。一日も早く明確にし、生産者に安心してもらうべきなのではないでしょうか。これらの点について、丁寧に納得いく説明をお願いいたします。
さて、林業の成長産業化とは誰のためのものなのでしょうか。
本法律案は、昨年成立した民有林を対象とした森林経営管理法に続いて、意欲と能力のある林業経営者が長期間にわたり大規模な国有林の伐採を可能とするもので、効率的かつ安定的な林業経営の育成を図ることを目的としていますが、提出に至るまでの経緯に大きな不安が否めません。
昨年五月十七日の未来投資会議では、あの竹中平蔵氏が、今後、国有林などの分野でいわゆるコンセッションのような考え方を導入して大胆に改革の仕組みをつくることが不可欠ではないかと思う、是非とも長期、大ロットで国有林などの伐採が可能となるような法的措置がとられることをお願いしたいと思うと発言。また、日本商工会議所の三村会頭は、これまでの林業政策は、産業政策という視点が不足していたのではないか、社会政策や環境政策に偏り、今ある林業の経営体をどう支えていくかに集中し過ぎているように見える、人工林が成熟した今こそ千載一遇のチャンスであり、林業政策を産業政策の方向に大きく転換する必要があると発言しています。
国有林は国民共有の財産ですから、改正案が、成長産業化の名の下に、公益的機能を損ない、地域の振興にも寄与せず、大企業の利益だけを図るためのものであるならば、しかも、しかもですよ、コンセッションであるならば、決して賛成をするわけにはまいりません。
そこで、法律案について質問いたします。
未来投資戦略二〇一八において国有林や関連の法整備はコンセッション重点分野の取組強化等の項目に分類されていますが、コンセッションとは、施設の所有権を発注者である公的機関に残したまま、運営権を民間事業者に設定するものであります。
本法律案で国有林を伐採する権利を民間事業者に設定する最長五十年の樹木採取権は、コンセッションによる国有林の民間開放への第一歩と見えなくもありません。林野庁は、伐採する権利のみを設定するもので、コンセッションではないとしておりますが、改正案の施行後も国有林野の経営管理は国が、そして林野庁がしっかりと責任を持って行っていく、コンセッションではないし、今後もそうはならないということを明言していただきたいと思います。
新たな制度で樹木採取権の設定を受ける事業者は、森林経営管理法により意欲と能力のある林業経営者として都道府県が公表する事業者などが想定されています。この意欲と能力のある林業経営者に相当する事業者は、現在国有林の伐採を行っている事業者全体の中でどの程度の割合を占めているのか、また、樹木採取権の取得を希望しない事業者の受注機会が減少することがないように、従来の仕組みと新たな仕組みのすみ分けをどのように行っていくのか、御説明ください。
新たな制度では、樹木採取権の存続期間は五十年以内とされています。大臣は、十年を基本として運用していくと説明されています。現行の仕組みでは一年又は二、三年ごとに入札が行われていますが、十年でもこれまでより長く、五十年という長期間にわたり樹木採取権が設定されれば、設定期間中に事業者が倒産するケース、また、景気の情勢の変化によって事業者が撤退することも考えられます。樹木採取権の移転は可能とされていますが、同様の条件で樹木採取権の設定を希望する事業者が見付からなかった場合、計画どおりに伐採を行うことができなくなる可能性は否めません。そのようなことが起きた場合にはどのように対応していくのでしょうか。
樹木採取権実施契約の内容と異なる伐採を行った場合、国は事業者に対して損害賠償を請求することができますが、国有林野の知識や経験が浅い事業者は保残帯まで伐採してしまうことも考えられます。違反だ、損害賠償だでは済まされない治山上大きな問題が生ずるなど、災害にもつながりかねない事態も起こり得ます。このような事態の発生をどのようにして防止していくのか、お伺いをいたします。
改正案では、樹木採取権の設定に関する公募、選定、契約、報告徴収、調査、指示等を農林水産大臣が行うこととされていますが、実際に事務を行うのはその地域の森林管理局です。従来の仕組みに追加して新たな仕組みが導入されるので、業務負担が相当に増えることが予測できます。職員の労働条件や労働環境に悪影響を及ぼすことにならないように、新たな制度ができることによる森林管理局の人員体制の強化が必要なのではないでしょうか。
昭和三十九年度には林野庁本庁、地方組織と合わせると八万九千二百八十九人だった林野庁の職員数が、平成三十年度には四千八百五十九人まで減っているんです。業務の重要性や業務量に応じた人員確保を進めていくべきだと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
本法律案では、農林水産大臣は、樹木採取権を設定された事業者に伐採と植栽を一体的に行うように申し入れるものとされています。樹木採取権による伐採を行った後に植栽される樹木は国の所有物となるため、経費も国が支出するということで、再造林を事業者に義務付けることは法律上難しいということは私も理解はできます。しかし、再造林は確実に行われなければ、伐採により森林資源が枯渇し、戦後の林業衰退の道をたどってきた過去の歴史をまた繰り返すことになります。
植栽だけではありません。下草刈りや間伐、長期にわたる保育、確実な再造林をどのように行うのか。再造林を事業者に申し入れるということでは、余りにも不確実であります。どのようにして確実な再造林を担保するのか、大臣の御見解をお伺いいたします。
国内においては、大型国産材産業やバイオマス発電事業に木材を安価で大量に供給することが求められている、また、木材輸出も、平成二十五年以降五年連続で増加している中で、丸太中心の輸出から付加価値の高い製品輸出に転換を進めているということで、まさに我が国林業は今大きなビジネスチャンスを迎えていることは理解しております。
しかし、国民共有の財産である国有林野を活用することとなれば、成長産業化、ビジネスの観点からだけではなく、現行法第三条の国有林野の管理経営目標である、国有林野の有する公益的機能の維持増進、林産物の持続的かつ計画的な供給、地域における産業の振興又は住民の福祉の向上に寄与すること、この三つの目的を今後も果たしていけるのかどうか大変に心配をしております。
そのことを最後に質問させていただきまして、新たな制度が一部の事業者の利益のためだけになることが決してないように、今後の委員会審議を通じて政府の納得いく説明を更に求めていくことを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/7
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008・吉川貴盛
○国務大臣(吉川貴盛君) 徳永議員の御質問にお答えいたします。
飼養豚へのワクチン接種についてのお尋ねがありました。
豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針では、発生農場における迅速な屠殺及び周辺農場の移動制限のみによっては感染拡大の防止が困難と考えられる場合には、蔓延防止のための緊急ワクチンの接種を決定するとしております。
これまでの発生事例については、飼養衛生管理基準の遵守がなされていたとは言えない部分もあると指摘されており、まずは飼養衛生管理を強化することが同病の発生予防及び蔓延防止に必要不可欠であると考えているところであり、今のところワクチン接種を直ちに行う状況にあるとは考えておりません。
一方、飼養豚へのワクチン接種については、消費者がワクチン接種豚の購入を控えるなど風評被害が懸念されること、農家における飼養衛生管理の向上意欲がそがれ、アフリカ豚コレラ等の農場への侵入リスクが高まること、接種豚のトレーサビリティーや移動制限が必要になること、他の非清浄国からの豚肉輸入解禁の圧力が強まる可能性があることなどのデメリットも考えられる。ワクチン接種を行う場合には、これらの影響を受ける可能性のある全国の関係者間の合意形成が前提となると考えております。
予防的殺処分についてのお尋ねがありました。
予防的殺処分は、強制的に家畜を殺処分させる仕組みであり、私人の財産権を侵害するおそれのあるものであることから、特に伝播力の強い口蹄疫のみに限って認められております。このため、豚コレラについて予防的殺処分を行うことは非常に慎重な議論が必要と考えています。
農林水産省としては、飼養衛生管理の徹底を図るため、任意的措置である早期出荷の促進を中心とした対策を進めることが重要と考えております。農家や関係者の方々に寄り添った対策となるよう、岐阜県、愛知県の状況や要望を踏まえつつ、より多くの方々が本対策を実施していただくようにしたいと考えております。
豚コレラ発生農家に対する手当金の支払についてのお尋ねがありました。
この手当金は、家畜伝染病予防法に基づき、通報の遅れ等の明らかな飼養衛生管理基準の不履行が認められない限り、殺処分された家畜の評価額の全額を手当金として交付することとしております。その豚の評価額の算出に当たっては、肥育豚であれば地域の市場価格を考慮し、繁殖豚であれば血統による価値や導入時の価格を考慮するなど、適正に評価しています。
農家の皆様の経営再開を支援するため、一刻も早く支払を行う必要があると考えており、県からの申請があり次第、順次支払を進めております。
本法律案提出の経緯についてのお尋ねがありました。
本法律案は、民有林における森林経営管理制度の要となる意欲と能力のある林業経営者を育成するためには、国有林が民有林を補完する形で長期安定的にこうした林業経営者に木材を供給することが有効であることから、林政審議会等における議論を経て、今回提出することとしたものです。
本法律案で創設する樹木採取権制度においては、権利に基づく伐採について現行の国有林の伐採ルールに適合させるための仕組みや、権利者を選定する際に地域の産業振興に対する寄与の程度を評価する仕組みを措置しており、公益的機能を確保しつつ、地域の林業経営者の育成を図るものであります。
樹木採取権とコンセッションの関係についてのお尋ねがありました。
本法律案で創設する樹木採取権は、一定期間、安定的に樹木を採取することのみができる権利として民間事業者に設定するものであり、国が国有林野の管理経営の主体であることに変わりはありません。
このため、公共施設の運営全般を民間に委ねるコンセッション方式とは根本的に異なるものであり、それは本改正案が施行された後も変わらないものであります。
意欲と能力のある林業経営者の国有林の伐採における割合と、従来の仕組みと新たな仕組みのすみ分けについてのお尋ねがありました。
現在国有林の伐採を行っている森林組合や素材生産業者については、その大部分が、森林経営管理法に基づき、今後、都道府県が公表する意欲と能力のある林業経営者になり得るものと考えております。
また、この度の新たな仕組みは、現行の立木販売などの入札による方式を引き続き基本とした上で、今後供給量の増加が見込まれる国有林材の増加量の一部について導入することから、樹木採取権の取得を希望しない事業者の受注機会が減少することはないものと考えています。
権利の移転を受けることを希望する事業者が見付からず、計画どおりの伐採ができなくなった場合の対応についてのお尋ねがありました。
農林水産大臣は、樹木採取権の行使の適正性を担保し、又は適正かつ効率的な国有林野の管理経営の実施を確保する必要がある場合は、その限度において樹木採取権を取り消すことができることとしているところです。
このため、樹木採取権者が権利の移転を受けることを希望する事業者を見付けられず、計画どおりに伐採できなくなった場合には、樹木採取権の取消しを行い、当該樹木採取区については国有林野として国が責任を持って管理経営を行ってまいります。
樹木採取権実施契約に反した保残帯の伐採の防止等についてのお尋ねがありました。
本法律案においては、樹木採取権者は、事業を開始する前に、権利の行使方法等を定めた五年ごとの樹木採取権実施契約を農林水産大臣と締結することとしております。この契約により、樹木採取権者の施業の計画は、保残帯の設置や取扱い等について定めている国有林野の地域管理経営計画等に適合しなければならないこととしております。
保残帯の伐採の防止については、森林管理署等による伐採できる範囲の現地表示、森林官による巡視等により万全を期していく考えであります。
国有林野事業の組織体制についてのお尋ねがありました。
現在、国有林野事業については、伐採、造林等の事業の実施は全面的に民間に委託し、国の職員が行う事務は、計画作成、監督、検査等に限定しており、従事する職員数は約四千人となっています。国有林においては、資源の成熟に伴い事業量が増加する見通しとなっており、これまでも国有林野事業全体の効率的な執行に努めてきたところです。
引き続き、事業全体を通じた事務、業務の改善や必要な組織、定員の確保に努めるとともに、新たな仕組みの導入においても、職員の負担増につながらないよう現場の実情に応じた効率的な運用に取り組む考えでございます。
国有林の植栽と保育についてのお尋ねがありました。
植栽については、樹木採取権が区域内の樹木を採取することのみを対象としていることから、伐採後の植栽は国が責任を持って行うこととしております。
一方、伐採後の植栽作業を事業者に委託するに当たっては、低コストで効率的に実施するため、樹木採取権者が伐採と一貫して行うことが望ましいことから、法律案の「申し入れる」との規定に基づき、国が公募する際に、樹木採取権者が植栽作業を行う旨を国が申し入れることとしております。
国は、この申入れに応じ、申請した者の中から樹木採取権者を選定し、植栽作業を行う旨の契約を当該樹木採取権者と締結することとなるため、樹木採取権者が確実に植栽を行うこととなります。
さらに、植栽後の森林の保育については、今回の樹木採取権が国有林の管理経営を民間事業者に委ねるものではないことから、国が責任を持って行うこととしております。
国有林野管理経営の目標との関係についてのお尋ねがありました。
本法案は、国有林が民有林を補完する形で意欲と能力のある林業経営者に長期安定的に木材を供給することにより、森林経営管理制度の円滑な実施を支援し、国有林野の管理経営の目標のうち、林産物の持続的かつ計画的な供給や地域の産業振興に寄与することを狙いとしているものです。
また、本法律案におきましては、樹木採取権者に、事業を開始する前に、権利の行使方法等を定めた五年ごとの契約を農林水産大臣と締結させるなど、公益的機能を確保するための措置を設けております。加えて、公用・公共施設への国有林野の貸付けなど、住民福祉の向上に寄与する取組を妨げないよう配慮することとしています。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/8
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009・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 儀間光男君。
〔儀間光男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/9
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010・儀間光男
○儀間光男君 日本維新の会・希望の党の儀間光男でございます。
会派を代表して、国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
我が国は、国土の三分の二が森林に覆われた世界有数の森林国です。国有林野は、そのうち三一%に当たる七百五十九万ヘクタールあります。国有林野は、特に山の奥地や水源地域に広く分布しており、国土の保全や水源の涵養といった公益的機能を果たしております。
林業分野は緑の雇用という取組が続けられてきており、高齢化が続いてきた森林管理の担い手に対し若年化が進められてきましたが、それでも担い手不足の問題は深刻で、放置されて無管理となった森林は多く、環境問題対策としての重要性を考えれば、まだまだ多くの対策が必要であります。
第百九十六回国会において森林管理経営法が成立したことにより、意欲と能力のある森林経営者を支援し、林業の活性化を図る取組への道が築かれました。
本改正案は、森林管理経営法に続き、国有林野の森林経営をも一括して管理できる道を切り開くものであると理解し、民有林と国有林が連携して路網の整備や国産材の販売の拡大を行うなどの相乗効果が発揮されることを期待されております。
戦後に植林された杉やヒノキは、本伐の時期を迎えたこともあり、建設業においても国内の森林資源の活用への関心が高まっています。直交集成材や木質耐火部材という新しい木材製品の技術の活用を見込み、地方再生の中核を担う林業の新しい発展をもたらすよう法整備を行うことが必要であることを指摘した上で、質問をさせていただきます。
国有林野事業は、豊富にある林業資源を活用し、独立採算が取れることから、昭和二十二年以来、国有林野事業特別会計により、黒字を上げることで国家財政を支えることに寄与してまいりました。しかし、木材需要の逼迫によって、昭和三十九年には木材の完全輸入化を行ったことから、国産材の利用は平成十四年まで下がり続けました。その後の国産材の利用は持ち直しましたが、平成二十五年度には国有林業事業は特別会計ではなく一般会計で行う事業に移行いたしました。
農林水産大臣、あなたに伺います。国有林業事業一般会計への移行から六年が経過しました。国有林野の管理経営に関する基本計画によって進められてきた公益重視の管理経営の一層の推進、森林の地域管理システムの下での森林・林業再生に向けた貢献、国民の森林としての管理経営という基本方針が取り組まれてきましたが、国有林野事業に対して大臣はどのような評価をされているのでしょうか、見解を伺います。
今回新たに設定される樹木採取権について質問いたします。
本改正案においては、農林水産大臣は、林業経営者に一定期間、安定的に樹木採取区に生育している樹木を採取する権利を設定することができる、樹木採取権は物権とみなす、樹木採取権の存続は五十年以内とするとしております。ここで樹木採取権という新しい権利が創設されます。森林経営管理法には経営管理権があり、似たような権利を設定することで、林業の現場に混乱を招くおそれがあるとの懸念を抱きます。
農林水産大臣、本改正案で創設される樹木採取権と森林経営法に基づく経営管理権とはどのような違いがあるのでしょうか。
また、樹木採取権を物権とみなす理由をお答えいただき、あわせて、どのような効果を期待するのかも御見解を賜ります。
さらに、樹木採取権の存続を五十年以内としておりますが、初年度に伐採し、すぐ植林をしたとしても、五十年では十齢級以下にしか育ちません。本改正案は、伐採後の再植林は想定していないのでしょうか。伐採後、再植林なしでは森林資源を維持できないと危惧します。伐採後の保育について、事業者に対する植林の申入れなど、国はどのように関与するのでしょうか。また、国有林であるがため、国が責任を持って管理すべきだと考えますが、御見解を賜ります。
本改正案においては、農林水産大臣は、樹木採取権の設定に際し、その設定を受けた者から樹木採取権の設定の対価として権利設定料を徴収するとしております。一定期間、国有財産から独占的に伐採する権利を持つため、対価としての権利料の位置付けと考えられますが、国有林野の管理と資源の利用の両面から考えた適切な管理料の設定がなされるべきだと考えます。
農林水産大臣、樹木採取権の権利設定料は、想定される販売価格や管理費用などの維持費を考慮し、どのような金額設定にしようとしているのでしょうか、お答えを願います。
木材利用の動向として、住宅需要は、在来工法の木材住宅とツーバイフォーなどの新工法の木造住宅と合わせて七五%となっており、国内の国産材の潜在的な需要は大きいと予想されますが、少子高齢化の動向や空き家問題などの影響で需要が維持できないとの見方もあります。林業分野において様々な振興策が打たれる中で、国産材の需要をどのように維持していこうとしているのか、今後の地方産業の軸となり得る林業発展の鍵を握ると考えます。
農林水産大臣に伺います。国産材の新たな需要の創出のため、どのような取組を行うのでしょうか、お答えを願います。
本改正案で、川上事業者、川中事業者及び川下事業者は、共同して事業計画を作成し、知事等の認定を受けた場合、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証及び低利融通措置が受けられるようになります。
昨年の森林経営管理法により、信用基金は経営管理実施権の設定を受けた民間事業者に対する経営改善のための助言や支援ができるようになりました。さらに、本改正により、信用基金には新たな業務が追加されることになります。
農林水産大臣に伺いますが、独立行政法人農林漁業信用基金に対する今回のような追加的な業務拡張に対して、きちんと対応できる体制の整備が行われているのでしょうか。また、政府からの交付金を増加させる必要が生じる可能性を想定しているのだろうか、お答えを願います。
林業は、国土の保全や治水だけでなく、温暖化問題などの環境保全について、その重要性が注目される分野です。日本維新の会は、林業分野を地方再生の軸になるよう成長産業として発展させることに努力をしてまいることをお約束を申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/10
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011・吉川貴盛
○国務大臣(吉川貴盛君) 儀間議員の御質問にお答えいたします。
一般会計化後の国有林野事業の取組についてのお尋ねがありました。
国有林野事業については、森林吸収源対策として間伐等の森林整備の積極的な実施や、国有林の組織、技術力、資源を活用した民有林の指導やサポート、森林浴等に適した国有林野のレクリエーションの森としての提供など、平成二十五年度の一般会計化以降、その目的に沿った管理経営を着実に推進してきたものと考えております。
引き続き、公益重視の管理経営を推進するとともに、民有林の森林経営管理制度の要となる意欲と能力のある林業経営者の育成支援を始め、我が国の林業成長産業化への貢献などに全力で取り組んでまいります。
樹木採取権と経営管理権の違いについてのお尋ねがありました。
樹木採取権につきましては、国有林において、その一定区域内の樹木を一定期間、地域の意欲と能力のある林業経営者が伐採し取得できる権利です。
一方、経営管理権及び経営管理実施権につきましては、経営管理が不十分な民有林の所有者から委託を受けた市町村が、立木の伐採及び木材の販売、造林並びに保育を、意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化して実施させることができる権利でございます。
このように、両権利については、設定される対象が国有林と民有林で異なり、また、権利の設定に関わる者が国と市町村で異なることなどから、現場において混乱が生じることはないと考えております。
樹木採取権を物権とみなす理由と、これによって期待される効果についてのお尋ねがありました。
樹木採取権については、これを安定的な権利とするため、物権とみなすこととしているところです。物権とみなすことにより、意欲と能力のある林業経営者においては、将来の見通しが確実になり、雇用や機械設備のための資金調達や事業の拡大が可能となると考えております。
国有林の植栽と保育についてのお尋ねがありました。
植栽については、樹木採取権が区域内の樹木を採取することのみを対象としていることから、伐採後の植栽は国が責任を持って行うこととしております。
一方、伐採後の植栽作業を事業者に委託するに当たっては、低コストで効率的に実施するため、樹木採取権者が伐採と一貫して行うことが望ましいことから、法律案の「申し入れる」との規定に基づき、国が公募する際に、樹木採取権者が植栽作業を行う旨を国が申し入れることとしております。
国は、この申入れに応じ、申請した者の中から樹木採取権者を選定し、植栽作業を行う旨の契約を当該樹木採取権者と締結することとなるため、樹木採取権者が確実に植栽を行うこととなります。
さらに、植栽後の森林の保育については、今回の樹木採取権が国有林の管理経営を民間事業者に委ねるものではないことから、国が責任を持って行うこととしております。
樹木採取権の権利設定料の金額設定についてのお尋ねがありました。
権利設定料は、国民共通の財産である国有林において一定の区域の樹木を長期にわたり独占的に伐採して取得する権利を得ることに対し、公平性、公正性を図る観点から納付を求めるものです。
その金額については、長期にわたる権利の設定によって期待される管理費用などの低減に見合う額を樹木採取区ごとに国が算定して公募時に提示し、権利の設定の際に樹木採取権者に納付させることとしています。
国産材の新たな需要の創出についてのお尋ねがありました。
戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎えた中で、林業の成長産業化に向けて、豊富な森林資源を循環利用することが重要な課題であると認識しており、木材需要の拡大を進める必要があります。
このため、木材の主な用途である住宅分野での木材利用に加えて、公共建築物を始め、これまで余り木材が使われてこなかった中高層建築物、非住宅などの木造化、木質化、付加価値の高い木材製品の輸出拡大、木質バイオマスのエネルギー利用等により、国産材の需要の拡大に取り組んでまいります。
独立行政法人農林漁業信用基金の業務体制と交付金の増加についてお尋ねがありました。
本法案では、川上、川中、川下が連携して木材需要の開拓等に取り組む事業計画に必要な資金を円滑に供給をするための新たな措置を講じておりますが、この措置については、現行の信用基金法及び林業経営基盤強化法に基づく資金貸付けと債務保証の仕組みと同様のものであり、既存の業務体制や財務基盤を活用することとしております。
また、この措置の対象者として川下事業者が追加されますが、川上、川中、川下で連携する取組を行う事業者に限定される上、債務保証の対象者は中小企業に限定されております。
したがって、農林漁業信用基金の業務体制と交付金については、現行の体制や財務基盤で対応できるものと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/11
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012・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) 紙智子君。
〔紙智子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/12
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013・紙智子
○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
会派を代表して、国有林野の管理経営法の一部改正案について、農林水産大臣に質問します。
安倍政権の六年半で、日本の農林漁業が大きく変化させられてきました。
安倍政権は、農林漁業を国際市場に売り渡すTPPなどの貿易自由化政策、国際競争力強化と称する農林漁業の成長産業化、輸出産業化、企業化などを推進する規制緩和を進めてきました。
安倍首相が公言する、企業が一番活躍できる国づくりを具体化するために、多国籍企業の種子支配に道を開く主要農作物種子法を抜き打ち的に廃止したのを始め、自由化、国際化を推進するための農業競争力強化支援法を制定し、卸売市場法の改悪では、中央卸売市場への民間参入を認め、取引ルールの規制も緩和しました。昨年の年末には、漁業者を置き去りにしたまま漁業法の改正を行いました。
現場の受け止めはどうでしょう。日本農業新聞が四月二十五日に発表したモニター調査によると、安倍政権の農政を評価できないという回答が約七割です。その中でも、規制改革推進会議に基づく官邸主導の農政については、八三%が評価できないと答えています。安倍政権の農政がなぜ現場から支持されないのでしょうか、答弁を求めます。
今回の国有林野法改正案も、出発は安倍晋三総理が議長を務める未来投資会議での提案からです。
農林水産省の諮問機関である林政審議会会長の土屋俊幸東京農工大学教授は、衆議院の参考人質疑で、今回の改正案が未来投資会議の提案で始まったことに言及し、トップダウンで行われた、長い複雑な成立経緯と多様な公益的機能を併せ持つ国有林の重要な経営判断は少数の非専門家に委ねるべきではないと不快感を示しました。大臣、林政審議会会長の発言に対する認識をお聞きします。
安倍晋三総理が議長を務める未来投資会議において国有林の見直しを初めて提案したのは、林業をもうけの対象にしようとする竹中平蔵氏ではありませんか、答弁を求めます。
森林・林業基本法第五条は、国民の共有財産である国有林には三つの使命と役割があると言っています。第一は公益的機能を発揮すること、第二に林産物の計画的、持続的供給をすること、第三に地域振興又は住民の福祉の向上に寄与することですが、間違いありませんか。大臣、お答えください。
本改正案は、国有林が持っている三つの役割を損ないかねない問題を持っています。
第一は、地域経済を支え、地域に根を張って活動している中小林業家が淘汰されかねない問題です。
国有林野の立木販売の販売先になっている事業者は、件数、材積共に、地元事業者が八割以上、中小事業者も八割以上を占めています。
大規模な林業経営者を育成するために、農林水産大臣は、樹木採取区を指定します。樹木採取区とは、樹木の採取に適する相当規模の森林資源が存在する一団の国有林の地域であって、国有林と民有林に係る施策を一体的に推進できる区域です。なぜ民有林に隣接する区域なんでしょうか。それは、民有林のみでは利益を上げることができない経営者に、国有林をも提供して利益を上げてもらうためです。
つまり、樹木採取権を取得した大規模林業経営者は、広大な地域において、大型機械を導入し人件費などのコストを抑えることによって利益を最大化できるのです。これでは、地域経済を支えている中小林業家が淘汰されるのではありませんか、明確な答弁を求めます。
しかも、国有林を伐採する権利、樹木採取権は、最大五十年もの間、排他的、独占的に使用し収益を得る権利を与えるものとなっています。バイオマス発電事業者やハウスメーカーなどが五十年もの間、樹木採取権を手に入れることが可能になります。大規模林業経営者や企業に至れり尽くせりの政策ではないでしょうか。長伐期で何度も間伐する自伐型の林業者が排除されるのではありませんか、答弁を求めます。
第二は、国有林が持っている公益機能が損なわれる問題です。
森林には、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化、生物多様性の保全など多面的機能があります。日本学術会議は、森林の多面的機能は、貨幣評価できる部分だけでも年間約七十兆円に上るとの答申を出しています。
改正案は、林業経営者に、公益的機能の維持増進を条件に伐採できる権利、樹木採取権を与えていますが、伐採の跡地に植栽する義務が課されていません。これでは、国有林が荒廃するのではありませんか、明確な答弁を求めます。
これだけではありません。国有林を伐採した後に植栽するのであれば、費用は税金で負担すると言います。伐採して利益を上げるのであれば、山が後退しないように植栽して国に返すのが当然ではないでしょうか。利益が上がれば、その利益を国民に還元すべきです。植栽は、伐採した業者が責任を持って行うのが当たり前ではありませんか、答弁を求めます。
国民の共有財産である国有林を、なぜ企業が利益を上げるために提供するのでしょうか。それは、世界的に生物多様性、環境保全を求める動きや持続的な生産体制を自国で育成する動きが進み、輸入材を優先してきた木材の供給が困難になりつつあるからではありませんか。国産材を犠牲にし、輸入偏重で行ってきた政府の林業政策そのものが問われているという認識はありますか。大手木材メーカーや燃料材を求める大規模なバイオマス発電会社が国産材を安く手に入れたいと求めているから、国有林を民間に払い下げようとしているのではありませんか。大臣、お答えください。
昨年、安倍晋三首相は、戦後以来の林政改革に挑戦しますと言って、森林経営管理法を強行しました。これは、素材生産者を初めて森林経営の担い手に位置付け、森林所有者を意欲と能力がないと決め付けて、森林所有者の経営権に介入し、強権的に経営の自由を奪うものでした。企業が利益を上げるためには、林業所有者の経営権に介入する、今度は国有林も提供する、これが安倍内閣が進める戦後以来の林政の大改革ではありませんか。大臣、明確にお答えください。
国有林は、国土面積の二割、森林面積の三割を占め、奥地山岳地帯や水源地帯に広く分布しています。国有林の九割が保安林に指定され、国土保全や環境保全など国民生活にとっても重要な役割を担っています。
歴代自民党政権は、国有林には保安林が多く生産活動が制限されているにもかかわらず、無理な独立採算制を求めたことから、荒廃と借金漬けが続きました。国有林の管理経営責任を果たさずに、一般競争入札などで民間開放を進めました。安倍政権は、この路線を今回の法改正によって加速させ、国有林が果たすべき役割を更に損なおうとしています。
日本共産党は、国有林の持つ役割を確実に実行するためには、技術者を育成確保し、自治体、住民との連携を図り、地域の経済や雇用に配慮をした持続的な管理経営に取り組むことを提案し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/13
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014・吉川貴盛
○国務大臣(吉川貴盛君) 紙議員の御質問にお答えいたします。
農政の評価についてのお尋ねがありました。
御指摘の報道は承知していますが、特定の報道機関が独自に行った調査の一つ一つについてコメントすることは差し控えさせていただきます。
いずれにいたしましても、安倍内閣では農政全般にわたる改革を行い、これにより、生産農業所得は過去十九年間で最高となり、四十代以下の新規就農者が四年連続で二万人を超え、輸出も六年連続で過去最高を更新し、一兆円目標の達成も視野に入ってきたなど、着実に成果が現れ始めています。
引き続き、現場の農業者の皆様と真摯に向き合い、政策の内容を丁寧に説明しながら、農業の成長産業化と農業者の所得向上の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
林政審議会の土屋会長の発言についてのお尋ねがありました。
本法律案につきましては、一昨年閣議決定された未来投資戦略二〇一七に基づき実施した国有林野の木材販売についての民間事業者からの改善提案において、現行よりも長期にわたり樹木を伐採できる制度の創設の希望が多数寄せられたことから、それらの提案を踏まえ、林政審議会において十分に審議をいただき、政府として本法律案を提出したものであり、検討のプロセスは適切であったと考えております。
なお、林政審議会の土屋会長は、衆議院の参考人質疑において、林政審議会で必要最低限の検討はできたとも発言をされているところでもございます。
未来投資会議における提案についてのお尋ねがありました。
未来投資会議においては、林業の成長産業化に向けた改革の方向性について議論され、竹中議員より、国有林での使用収益権の創出について、PFI法のコンセッション制度を活用した法制化について提案があったところです。
他方で、本法律案におきましては、国が国有林野の管理経営の主体であることに変わりはなく、PFI法に基づくコンセッション方式のように、施設の運営を事業者に委ねる仕組みとは根本的に異なっております。
国有林野の管理経営の目標についてのお尋ねがありました。
国有林野の管理経営の目標は、森林・林業基本法第五条及び国有林野の管理経営に関する法律第三条の規定のとおり、公益的機能の維持増進を図るとともに、林産物の持続的かつ計画的な供給及び国有林野の活用により地域の産業振興又は住民の福祉の向上に寄与することとなっております。
中小企業家が淘汰されるのではないかというお尋ねがありました。
今回の仕組みについては、地域の意欲と能力のある林業経営者の育成の観点から、これらの林業経営者が対応しやすい規模を基本として樹木採取区を指定することとしております。
また、樹木採取権者の選定に当たっては、樹木料の高低だけでなく、地域への貢献度合いなどを総合的に評価するとともに、複数の中小事業者が協同組合等として申請することも可能としております。
このように、今回の仕組みは中小規模を含めた地域の林業経営者の育成に貢献するものであり、中小企業家が淘汰されることはないと考えているところです。
権利の対象者についてのお尋ねがありました。
今回の新たな仕組みについては、地域の産業の振興につながるよう、樹木採取区は、地域の意欲と能力のある林業経営者が対応できる規模を基本とすることとしています。
また、樹木採取権の設定に当たっては、樹木料の高低だけでなく、地域への貢献度合いなどを総合的に評価するなど、本法案は、大企業優先ではなく、地域の林業経営者の育成につながるものであると考えています。
また、権利の対象者は、意欲と能力のある林業経営者及び同等の者としており、自伐林家であっても効率的かつ安定的な林業経営を行う技術能力を有する者であれば対象となり得ると考えています。
国有林への植栽の義務付けについてのお尋ねがありました。
植栽については、樹木採取権が区域内の樹木を採取することのみを対象としていることから、伐採後の植栽は国が責任を持って行うこととしております。
一方、伐採後の植栽作業を事業者に委託するに当たっては、低コストで効率的に実施するため、樹木採取権者が伐採と一貫して行うことが望ましいことから、法律案の「申し入れる」との規定に基づき、国が公募する際に、樹木採取権者が植栽作業を行う旨を国が申し入れることとしております。
国は、この申入れに応じ、申請した者の中から樹木採取権者を選定し、植栽作業を行う旨の契約を当該樹木採取権者と締結することとなるため、樹木採取権者が確実に植栽を行うこととなります。
国有林の植栽、事業者に行わせることについてのお尋ねがありました。
植栽については森林所有者が行うものであることから、国有林においては国が責任を持って行うこととしております。仮に、樹木採取権者に費用を負担させて植栽を義務付けた場合、植栽した樹木は財産権の観点から樹木採取権者の所有物とすべきであり、そうなれば当該樹木は国有林ではなくなるため、適当ではないと考えております。
なお、樹木採取権者は、樹木の評価である樹木料のほか、権利設定料として、国有林で一定期間、安定的に樹木を採取できることによるコスト低減額の一部を国に納付することとしております。
本法案について、大手木材メーカーや大規模バイオマス発電会社のためではないかとのお尋ねがありました。
各国において、木材産業の振興を図るため、丸太の輸出を規制し、製品での輸出を促進するなど、世界の木材貿易をめぐる環境に変化があることは事実であるが、木材の輸入自体が困難になっているとは考えておりません。
一方、本法案において、意欲と能力のある林業経営者の育成のため、国有林の一定区域で長期安定的に立木を伐採する権利を与えるものであり、大規模な木材需要者に安価に木材を供給することを目的とするものではありません。実際に、今回の仕組みにおいて、樹木料が市場価格以上となるよう公募時に条件を付すこととしていることから、国有林を安価に払い下げるものとはなりません。
林業改革についてのお尋ねがありました。
森林経営管理法により措置された森林経営管理制度は、民有林において経営管理が行われていない森林について、市町村が森林所有者の同意を得て、意欲と能力のある林業経営者への集積、集約化を進めるものです。
また、今回の法律案は、この森林経営管理制度の要となる意欲と能力のある林業経営者の育成を図るため、国有林が民有林を補完する形で、公益的機能を確保しつつ、長期安定的にこうした林業経営者に木材を供給する仕組みを整備するものです。
このように、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図ることが林業改革の目的とするものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/14
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015・伊達忠一
○議長(伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815254X01920190522/15
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