1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和二年五月十五日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十七号
令和二年五月十五日
午前十時開議
第一 株式会社日本政策投資銀行法の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
第二 森林組合法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第三 電気通信事業法及び日本電信電話株式会
社等に関する法律の一部を改正する法律案(
内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、年金制度の機能強化のための国民年金法等
の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/0
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001・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/1
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002・山東昭子
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。加藤勝信厚生労働大臣。
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/2
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003・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
今後の社会経済の変化を展望すると、人手不足が進行するとともに、健康寿命が延伸し、中長期的には現役世代の人口の急速な減少が見込まれる中で、特に高齢者や女性の就業が進み、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれます。こうした社会経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る必要があります。
今般、こうした社会経済の変化に対応し、年金制度の機能を強化するため、この法律案を提出いたしました。
以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。
第一に、被用者保険の適用範囲を拡大するため、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げます。また、五人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加します。
第二に、高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者の年金額を毎年定時に改定することとします。また、特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を引き上げ、支給停止とならない範囲を拡大します。
第三に、現在六十歳から七十歳までとされている年金の受給開始時期の選択肢を六十歳から七十五歳までに拡大します。
第四に、確定拠出年金の加入可能年齢を引き下げるとともに、受給開始時期の選択肢を拡大します。また、確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大、企業型確定拠出年金加入者の個人型確定拠出年金加入の要件緩和など、制度面及び手続面の改善を行います。
最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和四年四月一日としています。
政府としては、以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、衆議院において次の四つの事項を主な内容とする修正が行われたところであります。
第一に、児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直しに当たっては、児童が二人以上である受給資格者に支給される手当の額が、児童が一人である受給資格者に支給される手当の額を下回ることのないように政令で定めるものとすること。
第二に、附則第二条第一項及び第二項の検討は、これまでの財政検証において、国民年金の調整期間の見通しが厚生年金保険の調整期間の見通しと比較して長期化していること等を踏まえて行うものとすること。
第三に、国民年金の第一号被保険者の育児期間に係る保険料負担に対する配慮の必要性等について検討を行うものとすること。
第四に、個人型確定拠出年金の加入の要件等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/3
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004・山東昭子
○議長(山東昭子君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小川克巳さん。
〔小川克巳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/4
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005・小川克巳
○小川克巳君 自由民主党の小川克巳です。
私は、自民、公明を代表し、ただいま議題となりました年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
冒頭、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた皆様に謹んで哀悼の意を表しますとともに、治療中の皆様の一日も早い回復を心からお祈り申し上げます。
また、命や暮らしを守るために、感染のリスクに身をさらしながら医療・福祉活動に携わっておられる皆様、社会的基盤を支えておられる皆様、さらに外出自粛要請に応じておられる皆様、全ての皆様に心から敬意と感謝を申し上げます。
では、質問に入らせていただきます。
全国を対象に期間が延長された特措法に基づく緊急事態宣言は、昨日、三十九の県で今月末の期限を待たずに解除、また、感染者が十分に減っているとは言えない八都道府県では見送りとなりました。
収束に向けた第一歩となりますが、ここまでの努力が無とならぬよう、宣言が解除された県では経済社会活動の段階的再開に伴い感染が再び拡大しないよう新しい生活様式を広げる、それ以外の都道府県ではこれまでの取組を緩めないことが必要です。
しかし、営業や外出の自粛継続により収入は途絶えるがテナント料などの固定費の支払に迫られるなど、事業、雇用、生活への痛みは大きくなっています。これまでも政府はかつてない規模、前例のないやり方で対策を講じてきましたが、収束に至るまで感染抑制と医療体制の維持、そして雇用と生活、事業の継続を全力で守るために総理はどのような姿勢で臨まれるのか、その決意をお伺いします。
あわせて、現下、新型コロナウイルス感染症によって経済に不透明感が漂う中、年金法改正案を審議するというのはいかがなものかとの声に対して、安倍総理から説得力のある説明をお願いいたします。
雇用者や事業者が新型コロナウイルスに伴う経済活動の収縮を乗り越え、事業や生活を維持していくためには、手元流動性を高めておかなければなりません。そこで、事業収入に相当の減少があった事業主は、一年間、特例として延滞金なしで年金保険料の納付を猶予、国民年金においても所得が相当程度まで下がった場合、免除を申請することができます。
しかし、いまだ収束の見えない中、年金保険料の猶予や免除についても、地域や業種などそれぞれの状況に目を配り、臨機応変に期間の延長や現場での柔軟な対処などを講じなければならないと考えます。この点について、厚労大臣の御所見を伺います。
新型コロナウイルスによりもたらされる経済への影響等から、株価は大きく値を下げました。このあおりで本年一月から三月の年金積立金の運用は過去最大の十七兆円を超える赤字になるとの試算が公表されました。
しかし、運用を行っているGPIF、年金積立金管理運用独立行政法人の投資原則には次のようにあります。
年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保すること。資産、地域、時間等を分散して投資することを基本とし、短期的には市場価格の変動等はあるものの、長い投資期間を生かして、より安定的に、より効率的に収益を獲得し、あわせて、年金給付に必要な流動性を確保すること。つまり、短期的な市場変動に一喜一憂すべきものではないということです。
そこで、改めて長期的に見れば年金積立金の運用には問題はない、年金給付の安定性が毀損されることはないという説明を厚労大臣にお願いします。
高齢者や女性の就業が進んでいく中で、これまでよりも多様な働き方が広がっています。
今回の法案では、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、現行の五百人超から段階的に引き下げて、二〇二二年には百人超、最終的には二〇二四年に五十人超としています。これにより短時間労働者の方々については、基礎年金のみから基礎年金プラス厚生年金となることで老後の年金受給額が増えます。就業不能時には傷病手当金として健康保険から所得補償が受けられます。また、社会保険料は労使折半となることで、短時間労働者の方が支払う額は引き下げられます。
一方、中小・小規模事業者にとっては社会保険料の負担が増えることとなります。働き方改革への対応に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による深刻なダメージもあります。
そこで、新型コロナウイルスから中小・小規模事業者の事業継続と雇用を守り抜くことと被用者保険の適用拡大をどのように並行して進めていく考えなのか、この点について厚労大臣の御所見を伺います。
在職老齢年金制度は、厚生年金の受取と月当たりの給与収入が基準額を超えた場合に年金給付を減額する仕組みです。現在の基準額は、六十五歳未満では二十八万円、六十五歳以上は四十七万円となっています。六十五歳未満では、年を重ねても働きたいという意欲を持った人たちが増えているにもかかわらず、働けば働くほど年金が減るという実に悩ましい形となっています。
そこで、今回の法改正では、人生百年時代にふさわしく、六十五歳未満の支給停止の基準額を二十八万円から六十五歳以上と同じ四十七万円にします。この改正で、六十五歳未満の方々が年金支給額のことを理由に就労を止めることは防げると思います。一方、高額所得者に現行以上に年金が支給されるのではないかという指摘もあります。このような指摘について、厚労大臣の見解を伺います。
就労期間の長期化に伴って、今回の改正で、現在六十歳から七十歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、六十歳から七十五歳の間に拡大します。これにより、一か月受給を繰り下げた場合には一月当たり〇・七%の増額、七十五歳からの受給となれば、八四%増額された年金を受給できるようになります。
平均寿命が延び、働き方や老後の過ごし方が多様となっていることに合わせて年金の受給開始時期を改正することは合理的です。この改正により、受給開始時期を理由に、まだ働きたいけど引退するということは少なくなると考えています。
受給開始時期の選択肢の拡大については相当程度理解が広がっていると考えていますが、残念ながら、一時、受給開始年齢が引上げされるとの誤解がありました。そこで、改めて今回の受給開始時期の選択肢の拡大の趣旨と目的など、制度自体について誤った理解が広まることがないよう努める必要があると考えますが、いかがでしょうか。厚労大臣に伺います。
言うまでもなく、年金制度が成り立つためには、制度への高い信頼感が不可欠です。しかし、ある大手新聞社の世論調査によれば、公的年金制度は必要だとの回答は全体の九〇%となっているものの、公的年金制度の将来に不安を大いに感じるは六六%、特に、現役世代では七二%となっています。また、仮に公的年金への加入を選択できるとした場合、加入したくないとの割合が若年層ほど上がり、三十代以下では四割となっています。一方、年金制度への仕組みの理解度と将来不安の関係を見ると、年金制度への理解度が低くなればなるほど、年金制度への将来に対する不安が高まるという傾向が示されています。
そこで、年金制度への安心感、信頼感を高めていくために、まずは分かりやすい説明により理解度を上げていく、このことが不可欠だと考えますが、年金制度への信頼感をどのように高めていくおつもりか、この点を総理にお伺いして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/5
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006・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小川克巳議員にお答えをいたします。
新型コロナウイルス感染症対策に対する政府の姿勢についてお尋ねがありました。
昨日、期間満了を待つことなく、三十九の県で緊急事態宣言を解除することができました。改めて国民の皆様のこれまでの御協力、医療従事者の皆さんの献身的な御努力に感謝申し上げます。
しかしながら、緊急事態宣言が解除されても、有効な治療法やワクチンの開発まで、このウイルスとの闘いは長期戦を覚悟する必要があります。国民の皆様には、ウイルスが身の回りにいることを前提に、感染のリスクをできる限りコントロールしながら、日々の暮らしを一歩一歩取り戻していただきたいと思います。
五月四日に専門家の皆さんが策定された新しい生活様式は、その指針となるものです。また、昨日、専門家の助言の下、八十を超える業態ごとに感染予防のためのガイドラインも策定されました。こうしたものを活用していただきながら、社会経済の本格的回復と感染拡大の抑制を同時に図っていくための新たな日常を、国民の皆様の御協力をいただきながらつくり上げていかなければなりません。
その間も、雇用と暮らしを守り抜いていく、それが政府の責任です。そのため、もう一段の強力な対策が必要と判断し、第二次補正予算を編成することとしました。飲食店などの皆さんの家賃負担の軽減のための新たな支援制度などの対策を早急に具体化し、厳しい状況にある御家庭、事業者の方々を徹底的に下支えしてまいります。
同時に、次なる流行の波をできる限り起こさないように、抗原検査の活用や唾液を使ったPCR検査を含め、スムーズに検査を実施するための体制を整えるとともに、治療薬の開発を進め、また、感染者の増大に十分対応できる医療提供体制を確保し、万全の準備を進めてまいります。
本法案の国会審議についてお尋ねがありました。
国会での法案審議のスケジュール等については国会でお決めになることですので、政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止し、国民の命と健康を守るとともに、国民生活や経済への影響を最小限に食い止めることは国家としての最重要課題であり、引き続き政府として万全を期していく所存です。
また、急速に少子高齢化が進み、人生百年時代を迎えようとする中で、全世代型社会保障への改革も待ったなしの状況にあると考えており、政府としては年金制度改革にもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
年金制度への信頼確保についてお尋ねがありました。
年金制度の安心感、信頼感を高めていくために分かりやすい説明が重要であることは御指摘のとおりであります。
今般の法案は、人生百年時代の働き方の変化に年金制度がより柔軟に対応できるものとするため、パートの皆さんへの厚生年金の適用を、中小企業への生産性向上支援を行いながら従業員五十人を超える企業まで段階的に拡大し、自分で選択可能となっている年金受給開始時期の選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても八四%までの割増しを受けることを可能とし、在職老齢年金について、働くインセンティブを失わせることのないような見直しなどを通じ、支え手を増やしながら令和の時代にふさわしい年金制度を構築するものです。
こうした今回の法案の趣旨や内容などについて、年金受給者のみならず現役世代に対しても、広報媒体の多様化も踏まえつつ、分かりやすく正確な広報に取り組んでまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/6
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007・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 冒頭、先ほどの趣旨説明の中で、確定拠出年金の加入可能年齢について、引き上げるとすべきところを引き下げると述べました。正しくは引き上げるでございます。訂正をさせていただきます。
小川克巳議員より五問の質問をいただきました。
年金保険料の猶予や免除についてお尋ねがありました。
厚生年金保険料などについては、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により収入に相当の減少があった事業者に対して、財政措置の対応と同様に無担保かつ延滞金なしで一年間納付を猶予する特例措置を講じております。
また、国民年金保険料については、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が急減するなどし、当年中の見込み所得が保険年金保険料の免除基準相当に該当する方については、簡易な手続によって保険料の免除等を可能にする特例措置を講じております。
今般の新型コロナウイルス感染症拡大への対応に当たっては、これらの仕組みをしっかり活用していただくことが重要と考えております。このため、この仕組みの周知をしっかりと行うとともに、関係機関と十分連携しながら、現場での迅速かつ柔軟な対応が図られるよう取り組んでまいります。
年金積立金の運用についてお尋ねがありました。
年金積立金の運用は長期的な観点から行うこととされており、株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきものではありません。
自主運用開始以降の平成十三年度から令和元年度第三・四半期までの収益額の累積は約七十五・二兆円となっており、このうち、半分程度の約三十六・五兆円は株価下落時等でも着実に収益として確保される利子や配当収入等のインカムゲインであり、それ以外の約三十八・七兆円は評価損益等のキャピタルゲインであり、これは時価の変動により上下する性質のものであります。このため、市場の動向などによる一時的な評価損が生じたとしても直ちに年金財政上の問題は生じず、年金給付額に影響するものでもありません。
新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえた被用者保険の適用拡大の進め方についてお尋ねがありました。
本来、被用者である者には被用者保険を適用することが原則でありますが、適用拡大は負担面での企業への影響が大きいことから、これを進めるに当たっては、中小企業の経営への配慮も欠かせません。
こうした要請がある中で、事業所団体、労働者団体などを含む関係者の意見や専門家の意見を丁寧に聞きつつ議論を重ねた結果、今回の改正では、二〇二四年十月に五十人超規模の企業まで適用という結論が得られたところであります。
また、今回の新型コロナウイルスの影響による困難な状況に対しては、実質無利子、無担保、最大五年元本返済据置きの融資による資金繰り支援、雇用調整助成金による雇用維持、中堅・中小企業などには最大二百万円、個人事業者には最大百万円の持続化給付金、税、社会保険料の無担保、延滞金なしでの猶予といった取組を通じ、中小企業がこの難局を越えられるよう、政府として総力を挙げて支援をしてまいります。
その上で、中小企業がその先の適用拡大の円滑な施行に向けて対応いただけるよう、生産性向上支援や周知、専門家活用支援を通じて後押しをしてまいります。
六十歳代前半を対象とする在職老齢年金制度、いわゆる低在老の見直しについてお尋ねがありました。
今回の低在老の見直しは、就労に与える影響が一定程度確認されているという観点、六十歳代前半の就労、特に、二〇三〇年度までに支給開始年齢の引上げが続く女性の就労を支援するという観点、低在老を六十五歳以上を対象とする高在老と同じ基準とすることは制度を分かりやすくするという利点もあるという観点から、現行の二十八万円という基準を高在老と同じ四十七万円に合わせるものであります。
また、この四十七万円の基準は、現役男子被保険者のボーナスを含む平均月収を基準として設定をされており、今回の低在老の見直しによる給付増は、高所得者優遇にはならないものと考えています。
今般の低在老の見直しにより、年金制度が就労に対してより中立的となることによって、年金が調整されることを気にせず就労していただけるようになるものと考えております。
受給開始時期の選択肢の拡大についてお尋ねがありました。
今回の受給開始時期の選択肢を七十五歳まで拡大する見直しは、今後、より多く多様な形で人々が就労することが見込まれる中、そうした社会経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るために行うものです。
現在の年金制度は、将来世代の負担を過重にしないよう、保険料の上限を固定し、その範囲内で給付水準を調整するマクロ経済スライドを既に導入しており、六十五歳の支給開始年齢を堅持した上で年金財政の長期的なバランスが取れる仕組みとなっています。また、現在六十五歳からとなっている年金の支給開始年齢について引上げを行わないことは、昨年十二月の全世代型社会保障検討会議の中間報告でも示されているとおりであります。
公的年金は、個々人が自分がどこまで長生きするか予測できない中で、繰下げ受給を選択した場合には、それにより増額した額を終身受給できるという安心感がある保険としてのメリットを持つ仕組みでもあります。国民の皆さんにこうした特徴をしっかりと御理解をいただき、それぞれの就労環境やライフプランに合わせた形で年金受給タイミングを選択していただくことが重要であり、今回の見直しの内容も含めて積極的な周知に取り組んでまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/7
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008・山東昭子
○議長(山東昭子君) 芳賀道也さん。
〔芳賀道也君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/8
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009・芳賀道也
○芳賀道也君 立憲・国民.新緑風会・社民の芳賀道也です。
会派を代表して、議題となりました国民年金法等の一部改正案について質問をいたします。
まず冒頭、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、現在治療中の皆様の一日も早い御回復をお祈りいたします。
また、新型コロナウイルス感染症の検査や診断、治療に当たっていらっしゃる全ての医療関係者の皆様に感謝を申し上げ、あわせて、介護、教育、保育、物流、販売など、様々な社会を支える現場で新型コロナウイルスの感染のリスクを負いながら国民のために働いていただいているエッセンシャルワーカー、社会を支える全ての皆さんに心から感謝を申し上げます。
昨日、政府は、緊急事態宣言について、特定警戒都道府県の茨城、石川、岐阜、愛知、福岡を含めた三十九県を解除しました。しかし、緊急事態宣言の解除で人の移動などが活発になり、感染が再び拡大するおそれも指摘されています。
安倍総理は、再び感染が拡大し蔓延するおそれが出てくる場合に再指定する基準、宣言を解除する地域での取組の基準など、新しい基本的対処方針についても述べられましたが、この基準のエビデンスも含め、これで第三波、第四波が発生する可能性を止められるのでしょうか。総理の御見解を伺います。
そして、この先どうなっていくだろう、国民が大きな不安を抱いている中で、なぜ今、年金の受取を七十五歳まで延ばすことを可能にする法案の審議を行わなければならないのでしょうか。コロナ禍の今、民主主義国家としての在り方の根幹を揺るがす検察庁法改正案の審議を急ぐ必要があるのでしょうか。
この国民の感覚とのずれが、ふだんは政治に関心のない国民の不信感にもつながり、その結果、ネットでも爆発的にその声が広がって、反対表明、当初四百万件が更に増え、一説には一千万件を超えたとも言われています。この多くの反対の声を総理はどう受け止めているのでしょうか。お答えください。
また、安倍政権はこれまで新型コロナウイルス感染症対策で迷走に次ぐ迷走、国民生活は窮地に追い込まれています。その対策の遅さを報じた海外のメディアは、ナメクジのようなスピードだと表現するほどです。総理には、コロナで仕事を失った一人親家庭、特に、シングルマザーの子供に今日食べさせるものがないという声が聞こえないのでしょうか。お店や商売をされている方のあしたからやっていけないという悲鳴が届かないのでしょうか。
我々の会派は、維新や共産党とも協力して、こうした商売が続けられないという声に応え、先月、テナントの家賃を全額、政策金融公庫が肩代わりをし支援する法案を提出しました。さらに、野党は、アルバイトもなくなって学業が続けられない困窮する学生を支援する法案、一人親家庭など児童扶養手当を受給する世帯を支援する特別給付金支給法案を提出しています。さらに、市民の声を聞く多くの良識のある与党議員の皆さんの中からも、こんな支援では全く足りない、今やるべきは可能な限り早い追加支援だという声が上がっています。
命の危機にあるとき、与党も野党もなく、考え方の違いを乗り越えて、みんなで命を守るために協力していくべきです。総理、そうした姿が見えたとき、不安と感染の恐怖に耐えている国民に政治が安心と信頼を与えることができるのではないでしょうか。
ところが、安倍政権は今、非常事態であることを無視するかのごとく、国会で検察庁法改正案の審議を強行し、全く急ぐことのないこの年金法案の審議を進めています。また、小規模農家や子供の食の安全を心配するお母さんたちなど多くの国民が反対の声を上げている種苗法改正案も、今国会で審議し、成立させようとしています。
特に、検察庁法改正案は、国家公務員法等の一部改正案と称して十本の法案を束ねて提出された中に潜り込ませてありました。黒川東京高検検事長の定年延長のごり押しを後付けで正当化する法案で、検察の正義をねじ曲げる法案です。政権の意のままになる検察づくりを進め、検察官の独立性、中立性を揺るがし、三権分立と法の支配を揺るがすものです。
誰が考えても、今はコロナウイルス感染症対策とそれによる経済対策に全力を挙げなければならないときです。総理、こうした待ったなしの命と暮らしを守ることに真っ先に取り組まなければならないのではないでしょうか。総理・総裁として、不要不急の法案は後に回せと指示すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
また、衆議院本会議でも指摘がありましたが、私も、今回の検察庁法改正の動機として総理が自らの疑惑を検察に追及されたくないという気持ちがあるのではないかと改めて問います。さらに、疑惑を持たれないためにも、内閣が認めた者だけが定年を延長できる検察官定年延長特例を削除するように求めます。
あわせて、今、コロナの混乱の言わばどさくさに紛れて国論を二分する法案を急ぐ必要はありません。検察庁法改正案の採決を強行しないように指示すると、総理・総裁として確約を願います。
昨日の参議院厚生労働委員会の審議において、妊婦の皆さんに支給する布マスク四十七万枚のうち、実に一割に当たる四万七千枚余りにカビ、汚れ、黄ばみがあり、あるいは髪の毛が混じっていたことが取り上げられました。このような不衛生なマスクは妊婦さんには使わせられません。全量回収すべきですし、このような不良品の検品に八億円掛かるとの答弁がありましたが、この費用はどこが支出するのでしょうか。まさか業者のミスで追加費用が掛かったものを国費で賄うということはあってはならないと思いますが、いかがでしょうか。
また、いまだに届かないアベノマスクも含め布マスクの配布は、マスクの供給の改善が見られる中、直ちにやめて、その予算はそのほかのコロナ予算に向けるべきではないでしょうか。加藤厚労大臣にも伺います。
次に、年金法案の質問に入ります。
まず、衆議院にて野党案も取り入れての法案の修正がなされました。特に、児童扶養手当と障害年金の併給調整について、障害基礎年金を受給している方にお子さんがいて児童扶養手当が支給される場合、子供さんが二人あるいはそれ以上いらっしゃる御家庭で、子供が一人の場合の児童扶養手当の受給金額を下回らないようにするという条文が加わりました。少子化を国難と位置付けた安倍総理に、衆議院における修正に対する評価についても伺います。
さて、昨年四月から、国民年金に加入する第一号被保険者は、出産予定日又は出産日が属する月の前月から四か月間、年金保険料が免除されるようになりました。それ以外の時期、子供を養育するために仕事を離れている期間については、国民年金の優遇措置はありません。厚生年金の場合は、子供が三歳に達するまでですが、育児休業を始めた月から終了した日の前月まで、年金保険料免除の制度があります。野党の修正案のように、子育て世代の応援のため、国民年金でも、例えば一歳に満たない子を養育する間は年金保険料を免除するようにすべきではないでしょうか。官房長官時代から少子化対策に取り組む安倍総理に御見解を伺います。
参議院選挙があった昨年七月、日本テレビにて七党首討論番組がありました。
ここで安倍総理は、物価上昇分を除いた実質で見てもですね、基礎年金においては、マクロ調整が終わった段階でも六万三千円はこれ確保できますと断言。しかし、この放送があった昨年七月時点で公開されていた年金財政検証データは平成二十六年のもので、それによれば、最悪のケースHでマクロ経済スライドが終わる以前に年金積立金が枯渇。マクロ経済スライドが終わった段階で基礎年金六万三千円を一〇〇%確保できるとは到底断言できません。
総理が昨年、参院選前におっしゃったマクロ経済スライド終了時点で実質基礎年金六万三千円を必ず確保できる根拠をお示しください。うまくいけば六万三千円を確保できる可能性があるが、そうでなければ確保できないという話であれば、安倍総理の発言内容と違います。安倍総理は、何の前提もなく基礎年金六万三千円を確保できると断言され、国民に約束されました。安倍総理の発言を取り消し、有権者に過度な期待を与えたことを謝罪すべきではないでしょうか。総理の説明と謝罪を求めます。
特に、基礎年金のみ受け取られる単身の御年配の皆さんは、マクロ経済スライドによるカットの影響で経済的に苦しい状況が続きます。年金生活者支援給付金について、野党が修正案を通じて求めたように、被保険者としての加入期間に関係なく毎月六千円、年間七万二千円が支給されるように検討すべきですが、安倍総理の見解を伺います。
厚生労働省によれば、昨年二〇一九年の年金の新規裁定で、モデル世帯が初めてもらう年金の金額は、前年と比べてプラス〇・一%、二〇二〇年にはこれが前年比プラス〇・二%です。この年金改定に関して、安倍総理に伺います。
昨年七月、参議院選挙戦スタートの七月四日に放送された日本テレビ「news zero」にて安倍総理は、今年は年金実額一%上がりましたと述べていますが、この放送があった二〇一九年には、年金のモデル世帯の新規裁定額は、名目で〇・一%上がった、が正しいのではないでしょうか。
昨年の物価変動率が〇・五%プラスだったことを考えれば、年金が一%上がったのか、それとも〇・一%しか上がっていないのかは、物価上昇率を超えて実質プラスで受け取れたのか、そうでないのかという大きな差があります。七月の参院選挙に当たり、有権者に誤った印象を与えて投票選択をゆがめる発言を行ったことに謝罪と訂正をすべきですが、安倍総理の答弁を求めます。
そもそも年金は分かりにくい制度ですが、特に、繰下げ受給をする場合や在職老齢年金を受け取る場合に、満額受給がスタートしたら幾ら年金がもらえるかを幾つかモデルとして提示することで、国民に分かりやすくする必要があります。
また、繰下げ受給で満額受給したときに、受給額は最大八四%アップする一方で、住民税や健康保険、介護保険料の保険料も増えます。市町村ごとに違う税額、保険料となりますので、市町村ごとにそれぞれのモデル世帯の税、保険料負担を数字を出して明確にしておくべきではないでしょうか。加藤大臣と高市総務大臣の御見解を伺います。
現状でも既に日本年金機構は、税務署から、従業員を雇って給与を支払っている事業所の情報をもらい、これを受けて年金の加入指導をしています。今回の法改正により保険料納付の義務がある事業所が増えていけば、納税義務がある事業所と年金保険料納付義務のある事業所とが更に重なります。米国の内国歳入庁のように税金徴収と公的年金保険料徴収を行う役所として、日本でも国税庁と日本年金機構を統合すべきだと考えますが、安倍総理の見解を伺います。
新型コロナウイルス対策でも、年金の制度設計でも、威勢のいいスローガンを連発する安倍政権の姿勢にはうんざりです。昨年の参議院選挙中も、その後も、地元の方から、長年真面目に働いたら老後の心配のない国にしてほしいという切実な声をいただきました。
安心して暮らしていける国にすることが政治の務めだと指摘し、あわせて、検察庁法改正案、年金法案よりも命と暮らしを守るコロナ対策を優先すべきだと申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/9
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010・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 芳賀議員にお答えをいたします。
今後の感染防止対策についてお尋ねがありました。
これまでの国民の皆様の多大なる御協力により、欧米のような爆発的な感染拡大という事態に至ることなく、昨日、三十九の県で緊急事態宣言を解除することができました。
しかしながら、有効な治療法やワクチンの開発まで、このウイルスとの闘いは長期戦を覚悟する必要があります。緊急事態宣言が解除された後もウイルスは確実に存在しており、国内外での事例を見るまでもなく、第二波、第三波の可能性に常に備える必要があります。仮に、感染が拡大し、蔓延のおそれがあると判断された場合には、再度、緊急事態宣言の対象区域に指定するという事態にもなりかねません。
このため、このような事態となることをできる限り防止するため、国民の皆様には、新しい生活様式や、八十を超える業態ごとの感染予防のためのガイドラインを活用していただきながら、経済社会の本格的回復と感染拡大の抑制を同時に図っていくための新たな日常をつくり上げていくことの必要性についてお伝えいたしました。
政府としても、次なる流行の波をできる限り起こさないように、抗原検査の活用や唾液を使ったPCR検査を含め、スムーズに検査を実施するための体制を整えるとともに、感染者の増大に十分対応できる医療提供体制を確保し、万全の準備を進めてまいります。
年金制度改正法案や検察庁法の改正案等の審議についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、感染症を収束させるとともに、国民の雇用と暮らしを守るための経済対策が最優先であることは当然であり、第一次補正予算に加え、昨日の政府対策本部において第二次補正予算の編成を指示したところです。
一方で、国会に提案した法案をできる限り成立させるとともに、選挙で国民に約束した政策を実現していくことは、政権の重要な責務であると認識しております。
その上で、今般の年金制度改正法案は、全世代型社会保障の実現のため、人生百年時代の到来を見据えながら、見据えながら働き方の変化を中心に据えて改革を進めるものであり、まさに待ったなしの改正であると考えております。
また、今般の国家公務員法等の改正法案の趣旨、目的は、高齢期の職員の豊富な知識、経験等を最大限に活用する点などにあるところ、検察庁法の改正部分の趣旨、目的もこれと同じであります。
インターネット上の様々な御意見に対して政府としてコメントすることは差し控えますが、今般の法改正においては、検察官の役職定年制の特例等の判断を、他の国家公務員と同様、その任命権者である内閣府又は法務大臣が行うこととし、また、特例等が認められる要件については事前に明確化することとしております。このため、内閣の恣意的な人事が行われることはなく、自らの疑惑追及を逃れることが改正の動機の一つといった御指摘も全く当たりません。
なお、御指摘の法案の審議スケジュール等については国会でお決めいただくことであり、政府としてコメントすることは差し控えさせていただきます。
衆議院における修正案についてお尋ねがありました。
御指摘の児童扶養手当と障害年金の併給調整に関する衆議院での修正については、政府としても、一人親の障害年金受給者の子育て負担に配慮し、適切な受給額を定めてまいります。
また、御指摘の国民年金第一号被保険者が一歳に満たない子供を養育する期間の保険料を免除するという御提案については、衆議院において育児期間における保険料負担に対する配慮の必要性等について検討を行う旨の規定を追加する修正がなされたものと承知しており、政府としては、それに沿ってしっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。
基礎年金の給付水準及び年金生活者支援給付金についてお尋ねがありました。
御指摘の昨年の党首討論における私の発言は、二〇一四年財政検証における代表的なケースを根拠に、マクロ経済スライド調整終了後の二〇四三年の基礎年金額は実質価格で六万三千円であり、二〇一四年の六万四千円と比較しておおむね横ばいと見込んでいるという説明をしたものであります。
また、年金生活者支援給付金は、平成二十四年の社会保障と税の一体改革における三党合意において、定額給付金は保険料納付のインセンティブを損なうため社会保険方式になじまないとの観点から、月額五千円を基準としつつ保険料納付済期間に比例した給付として、当時の民主党政権が法案化した経緯があり、こうした経緯は重いものと考えています。さらに、どのような給付を行う場合も、それを支える安定財源がなければ持続可能な制度とならないものと考えます。
令和元年度の年金額の改定についてお尋ねがありました。
令和元年度の年金額は、物価上昇等の結果、マクロ経済スライドの調整を行った上で〇・一%のプラス改定でした。御指摘の言い間違いについては、同番組内でプラス〇・一%であると訂正しております。
いわゆる歳入庁の設置についてお尋ねがありました。
いわゆる歳入庁につきましては、政府の検討チームで平成二十五年八月に取りまとめた論点整理において、現在、非公務員が行っている年金業務を公務員に行わせることになり、行政改革の取組に逆行すること、年金保険行政において、適用や徴収と記録管理を含む給付業務との接続が必要であり、関係部局の切り離しによる影響があることなど、歳入庁に関する様々な問題点が指摘されており、その上で、組織を統合して歳入庁を創設すれば年金保険料の納付率向上等の課題が解決するものではないと整理されたと承知しています。
政府としては、この論点整理も踏まえ、行政改革の取組の一環として、厚生年金の適用対策や保険料徴収について、国税庁が保有する情報を厚生労働省に提供するといった関係当局間の情報連携強化などの取組を着実に進めています。
また、今般提出した法案では、日本年金機構の立入検査権限の整備を盛り込み、国税庁から提供を受けた情報をより効果的に活用することとしています。今後とも、更にこうした取組を強化していくことが重要であると考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/10
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011・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 芳賀道也議員より二問の御質問をいただきました。
布マスクの配布についてお尋ねがありました。
妊婦向けマスクについて不良品があったことは遺憾であります。今回の妊婦向けマスクの不良品報告事案を踏まえて、メーカーでの検品に加え、国の負担で全数の検品を行うことで複層的なチェックとなり、更なる品質の確保を図ることにより妊婦の皆さんが安心してマスクを使っていただけるよう取り組んでいきたいと考えております。
また、洗濯することで繰り返し利用できる布製マスクは、使い捨てマスクの店頭における価格が依然として高く、品薄状況がいまだ必ずしも解消されていないことに対する国民の皆さんの不安や、解消や、増加しているマスク需要の抑制といった観点から、引き続き有効であると考えております。
なお、御指摘の約八億円は、全戸配布向けと介護施設等向けの検品も含めた契約額で、このうち妊婦向けマスクに要する費用は一%にも満たないものと考えております。
厚生労働省としては、配布するマスクの品質が確保され、国民の皆さんに安心してマスクを使っていただけるよう、適切に配布を進めてまいります。
繰下げ受給と税、社会保険料の負担の変化についてのお尋ねがありました。
高齢期の税、社会保険料負担は、年金受給額のみならず、その他の所得の有無や額、居住する市町村、世帯の構成など個々人の生活状況に係る様々な要因で変動するものであります。
また、繰下げ制度は、高齢者が年金受給のタイミングを御自身の就労状況などに合わせて自ら選んでいただくための制度であり、様々なケースがあることから、特定のケースを設定すること自体が制度の趣旨に鑑みれば困難であることは御理解いただきたいと思います。
その上で、個々人が自らの受給開始時期などをできるだけ十分な情報に基づき選択できるよう、しっかりと御理解いただくことは重要であります。このため、日本年金機構においては、年金を請求される方に向けた繰下げ制度の周知のお知らせの中で、繰下げを行うことで税や社会保険料に影響を及ぼし得る旨を説明をしております。
国民の皆さんにとってより分かりやすい情報提供をどのように行っていくのか、今後も検討を深めていきたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/11
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012・高市早苗
○国務大臣(高市早苗君) 芳賀道也議員からは、年金受給者に係る個人住民税についてお尋ねがございました。
今、厚生労働大臣から答弁がありましたとおり、厚生労働省において年金の繰下げ制度について周知するに当たりましては、総務省としましても、必要に応じて個人住民税に関する情報提供を行ってまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/12
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013・山東昭子
○議長(山東昭子君) 梅村聡さん。
〔梅村聡君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/13
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014・梅村聡
○梅村聡君 日本維新の会の梅村聡です。
ただいま議題となりました年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、我が党を代表して質問いたします。
初めに、今般の新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、療養中の皆様の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。
まず、新型コロナウイルス感染症への政府の対応についてお伺いします。
五月の四日、安倍総理は、新型コロナウイルス感染症治療薬の有力候補とされるアビガンについて、五月中の薬事承認を目指したい旨を表明されました。当初の報道では、開発企業がスタートさせた第三相臨床試験、企業治験で新型コロナウイルス感染症患者の対象を絞り込み、観察期間二十八日間、目標症例九十六例でアビガンの有効性、安全性を評価するというものでした。この場合、二〇二〇年六月末に第三相臨床試験が終了し、その後に開発企業からの承認申請が行われることが予想されました。
その予定が一か月以上も大幅に前倒しされることとなるわけですが、その場合は、この企業治験を早期に終了させることを想定されているのでしょうか。あるいは、これまでの日本国内では行われてこなかったような別の方法での薬事承認の道を選ぶのでしょうか。五月中の薬事承認を目指すという目標を総理はどのように達成されるのかをお教えください。
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、会議終了後に記者会見と議事録公開をされていると認識しています。
一方で、大阪府新型コロナウイルス感染症対策本部会議あるいは大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議等は、原則マスコミフルオープンで開催し、一部メディアはこの様子をインターネットなどを通じて生中継する場合もあります。もちろん、個人情報や開示できない情報を含む話合いの場合には、一旦マスコミの皆さんには退席いただくという配慮も行っています。こういった議論の生の声を大阪府民の皆さんに見ていただく、あるいはマスコミ各社に報道してもらうことで、政策決定プロセスを明快にすることができ、結果として、今、大阪府民の間に一体感が生まれているとも言えます。
可能な範囲で政府の対策本部会議等の議論をマスコミフルオープンで公開し、戦略の明確化、判断の見える化を実現することが国民の皆さんの広範な協力を得るためにも極めて重要だと考えますが、総理の御所見をお伺いします。
次に、今回の改正法案について質問いたします。
今回の改正案では、短時間労働者について、年金等の保障を厚くする観点から、被用者保険の適用拡大を進めていくこととなっています。
具体的には、現行の五百人超規模の企業から、二〇二二年十月には百人超規模の企業まで、二〇二四年十月には五十人超の規模の企業まで適用範囲を拡大することとなります。この適用拡大により年間の事業主負担の増加は、百人超規模の企業までの拡大で約千百三十億円、五十人超規模の企業までの適用拡大で約千五百九十億円となります。労働者側にも負担増はありますが、その分、長期化する高齢期の経済基盤の充実につながります。
一方、事業主側から見れば大きな負担増になります。大変厳しい経済情勢の中で、負担増によりどのようなメリットを事業主側にもたらすことができるのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。
週労働時間三十時間未満の短時間労働者の比率に注目すると、全産業平均が一七・五%であるのに対し、飲食サービス業での短時間労働者比率は四三・六%と断トツに高くなっています。また、厚生労働省の調査でも、適用拡大に伴う負担増加割合は、人数ベースでも、標準報酬額ベースでも、飲食店が最も大きくなっています。今回の新型コロナウイルス感染症流行の影響が大変大きいとされる飲食店が、最も負担増の苦境に立たされることになります。このことについてどう対応されるのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。
また、今回の改正案では在職老齢年金の見直しが行われることとなっています。具体的には、六十歳から六十四歳の在職老齢年金制度について、支給停止が開始される賃金と年金の合計金額の基準を現行の二十八万円から四十七万円に引き上げることとされています。
二〇一九年厚生労働省年金局の年金制度に関する総合調査によりますと、第二号被保険者のうち、六十歳から六十四歳の約六割が年金額が減らないように、収入が一定の額に収まるよう就業時間を調整しながら働くと回答しています。よって、今回の見直しで六十歳から六十四歳の世代の就業を減らそうという意向は働きにくくなり、この年代の労働力確保にもつながると期待されます。
しかし、そもそもの議論として、人生百年時代と言われる令和の時代においては、この在職老齢年金制度の必要性自体を検討すべきです。政府が二〇一九年六月に閣議決定をした骨太方針二〇一九には、「在職老齢年金制度について、公平性に留意した上で、就労意欲を阻害しない観点から、将来的な制度の廃止も展望しつつ、社会保障審議会での議論を経て、速やかに制度の見直しを行う。」と書かれています。ここに書かれている最終ゴールは在職老齢年金制度の廃止だと読み取れますが、なぜ今回は廃止ではなく微修正に終わっているのでしょうか。社会保障審議会での議論の内容も含めて、総理の答弁を求めます。
在職老齢年金制度の縮小又は廃止は、高額所得者優遇につながるという議論もあります。しかし、所得格差を是正するのは、本来、累進課税等の税制を通じて調整を行うのが筋だと考えます。自営業者が高額所得者であっても年金は減額されないことも考え合わせると、所得格差の是正を被用者保険の制度内での給付調整によって行うことには無理があると考えますが、総理の見解をお伺いします。
安倍内閣が、年金制度を始めとする社会保障制度の様々な課題解決の必要性を認識しておられることは理解できます。しかし、本改正案自体は、時代に合った抜本的な改革案には程遠いと言わざるを得ません。
我が党は、年金の積立方式への移行、歳入庁を創設し、年金保険料の徴収と税金と同じ徴収方式で行うこと、マイナンバーのフル活用など、多くの改革案を提案してきました。本改正案のような制度の延命のパッチワークではなく、社会保障制度全体を設計し直すべきと考えているのです。
日本維新の会は、新型コロナウイルス感染症対策に全力を挙げるとともに、年金を始めとした社会保障制度を再構築し、日本が抱える本質的な問題の解決に精いっぱい取り組むことをお誓いし、私からの質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/14
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015・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 梅村聡議員にお答えをいたします。
新型コロナウイルス感染症の治療薬に関する薬事承認の見通しについてお尋ねがありました。
国民の皆様の不安を一日でも早く解消できるよう、治療薬の研究開発については、日本中、世界中の企業、研究者の英知を結集して開発を進めています。
我が国で開発されたアビガンについては、観察研究では既に三千例近い投与が行われ、臨床研究や治験も着実に進んでいます。薬事承認の審査に当たっては、従来のように治験の成績の提出は必須とせず、観察研究や臨床研究等の成果も活用することで、有効性が確認されれば五月中の承認を目指したいと考えています。その際、催奇形性が確認されていることも踏まえ、安全性についてはしっかりと審査するほか、適正使用を徹底させたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症対策本部等の会議の公開についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス感染症対策本部の会議は、新型コロナウイルス感染症に関する政策の決定又は了解を行う場であり、議論の過程において機微な事項等についても言及を行う可能性があるため、会議全体を公開する形とはしていないところです。
他方で、対策本部長である私が決定事項を確認するとともに、閣僚に指示を出し、国民や関係団体等に対して呼びかけや要請を行う部分についてはメディアに公開しています。その発言内容と動画については官邸のホームページでも公開しているほか、対策本部での配付資料や基本的対処方針等の対策本部での決定内容についても、対策本部の開催後、速やかにホームページで公表しており、議事概要についても作成次第公表しているところです。
加えて、対策本部での政策決定等に当たり重要な役割を果たしている専門家会議や基本的対処方針等諮問委員会の資料についても、内閣官房において、対策本部と同様、速やかに公表しているところです。
今後も、私自らの会見など様々な機会を捉えて新型コロナウイルス感染症についての政府の方針等を国民の皆様に丁寧にお伝えし、御理解を得ていきたいと考えております。
在職老齢年金制度の見直しについてお尋ねがありました。
我が国において急速に少子高齢化が進み、人生百年時代を迎えようとする中で、年金制度改革においても働き方の変化を中心に据えて改革を進めることが必要であると考えています。在職老齢年金の制度についても、今後、更に高齢期の就労が進んでいくことが見込まれることを踏まえると、変化する高齢者の雇用環境に合わせて制度の在り方の見直しを行うことが必要な状況にあります。
こうした中で、今回の改正では、六十歳から六十四歳を対象とする在職老齢年金制度について、就労に与える影響が一定程度確認されたこと、六十五歳以上を対象とする在職老齢年金制度と同じ基準とすることが制度を分かりやすくするという利点があることなどから、六十歳から六十四歳を対象者とする部分について支給停止の基準額を二十八万円から四十七万円に引き上げ、高齢者の就労意欲に応える改正を行うこととしたものであります。
他方、六十五歳以上を対象者とする部分についても、高齢者の雇用環境の変化を展望した上で、その在り方を幅広く議論してきましたが、就労に与える影響が確認されなかったこと等から、今回の見直しの対象には含めず、引き続き検討することとされたものです。
また、高齢期の就労と年金の調整については、年金制度だけで考えるのではなく、税制での対応や各種社会保障制度における保険料負担等での対応と併せて今後とも検討していくべき課題と整理されたところであり、高齢期の就労と年金の調整についてはこの間受けた様々な指摘を踏まえて引き続き検討していくこととしています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/15
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016・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 梅村聡議員より二問の御質問をいただきました。
まず、被用者保険の適用拡大のメリットについてのお尋ねがありました。
被用者保険の適用拡大により、働く方々にとって、将来、基礎年金に加えて報酬比例部分の年金を受給できるようになるなど保障が手厚くなること、また、扶養認定の収入基準などを気にすることなく、本人の希望に応じて能力を発揮する働き方を選択していただけるようになることといった効果が期待をされます。こうしたことは、事業者側にとっても、必要となる人材の確保や、また定着につながるというメリットがあるものと考えております。
被用者保険の適用に関し、新型コロナウイルス感染症により影響を受ける企業への対応についてお尋ねがありました。
本来、被用者である者には被用者保険を適用することが原則ではありますが、適用拡大は負担面での企業への影響が大きいことから、これを進めるに当たっては中小企業の経営への配慮も欠かせません。こうした要請がある中で、事業者団体、労働者団体などを含む関係者の意見や専門家の意見を丁寧に聞きつつ議論を重ねた結果、今回の改正では、二〇二四年に十月に五十人超規模の企業まで適用という結論が得られました。
今回の新型コロナウイルスの影響による困難な状況への対応として、飲食店を始めとする生活衛生関係営業者に対しては、実質無利子、無担保、最大五年元本返済据置きの融資による資金繰り支援を実施するなど、資金繰り支援に万全を期しております。これに加えて、雇用調整助成金による雇用維持、中堅・中小企業などには最大二百万円、個人事業者には最大百万円の持続化給付金、税、社会保険料の無担保、延滞金なしでの猶予といった施策も総動員し、飲食店を始めとする中小企業がこの難局を乗り越えられるよう、政府として総力を挙げて支援をしてまいります。
その上で、中小企業がその先の適用拡大の円滑な施行に向けて対応いただけるよう、生産性向上などの支援や周知、専門家活用支援を通じて後押しをしてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/16
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017・山東昭子
○議長(山東昭子君) 倉林明子さん。
〔倉林明子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/17
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018・倉林明子
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表し、年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問します。
法案に先立ち、検察庁法改正案について質問します。
法案に抗議する声はSNSで日増しに広がり、日弁連、全国三十八の弁護士会、さらには検事総長経験者など検察OBからも反対の意見が上がっています。
総理は、内閣によって恣意的な人事が行われるという懸念は当たらないと言います。しかし、衆議院内閣委員会で武田担当大臣は、特例的に定年延長を認める際の運用基準は、今はない、今後検討すると述べています。これでは白紙委任せよというようなものです。
法案の強行は許されません。国公法との一括法案から切り離し、定年延長の特例規定を削除する野党の要求を受け入れるべきです。総理、答弁を求めます。
年金法案の大きな改正内容の一つが、これまで七十歳までだった年金受給開始時期の選択肢を七十五歳開始にまで広げることです。その改正の趣旨で、より多くの人が、より長く多様な形で働く社会へと変化する中だと社会を捉えています。
しかし、コロナによって社会は大きく変容しています。雇用環境は激変し、正規雇用以外の多様な働き方をしている人たちが真っ先に首切りや雇い止めに直面しています。働く意欲があっても、働く場所を急速に奪われているのが現実ではありませんか。また、新たな生活様式への行動変容が求められる中、仕事はあっても、感染リスクが高い高齢者が、働き続けることで感染するのではないかとの不安を抱えながら仕事を続けている例も少なくありません。
総理にお聞きします。
コロナによって法改正の前提は大きく変化しているとの認識はありますか。
改正法案では、厚生年金の適用対象とすべき企業の対象を五十一人以上まで段階的に拡大するとしていますが、これまで早期に実施することが求められていたものでした。しかし、やるのは今でしょうか。コロナによって、対象となる中小企業の経営環境は激変しています。必死で雇用を守り、事業を継続させている小規模・中小企業に対し、新たに社会保険料負担を求めるというには、余りにも最悪のタイミングではありませんか。総理、新型コロナが起こる前に検討してきた年金制度改正案は一旦撤回し、改めて提案し直すべきではありませんか。
政府が今やるべきは、新型コロナの対応に全力を尽くすことであり、年金制度についても、いかに年金生活者の生活を支えていくのかという具体的な対応策が求められているのです。
以下、本法案の内容に沿って、問題点を指摘し、見直すべき提案をさせていただきます。
第一に、七十五歳までの繰下げ受給を選択すれば本当にお得になるのかという点です。
確かに、受給額は一・八倍まで増えるものの、年収が増えれば税や医療、介護の保険料の負担も増加します。東京都新宿区在住の年金受給者で見れば、八十五歳までの受給期間で比較したときに、六十五歳から受給した年金が月十五万円なら、住民税、所得税の総額は四十二万円です。受給開始を七十五歳とした場合、受け取る年金は月二十七・六万円となるものの、負担総額は二百二十五万円と五倍を超える負担となることが衆議院の論戦で明らかになりました。つまり、七十五歳まで受取を遅らせた場合、受給額は増えても、手取りの年金は六十五歳から受給した方がお得だということではありませんか。
第二に、本法案は公的年金の水準を自動的に削減するマクロ経済スライドの維持を大前提にしていることです。この仕組みにより、将来の基礎年金の水準は三割も削減されることとなります。マクロ経済スライドが終了した後に七十五歳から年金の受取を開始した場合の所得代替率は、現在の上限である七十歳から受け取った場合よりも低くなるのではありませんか。以上、厚労大臣の答弁を求めます。
受け取れる年金水準が減れば、生活できる収入を確保するために、感染リスクが高い高齢者も働き続けなければならない事態に追い込まれることは明らかです。コロナの下でやるべきは、年金で安心できる生活を選択できるようにすることではありませんか。まずは、減らない年金制度への転換が必要です。マクロ経済スライドを今こそ停止すべきではありませんか。
そもそも、日本の年金水準は国際的に見て決して高い水準とは言えません。OECDの比較にとどまらず、世界的なコンサル会社のマーサーが、二〇〇九年以来、年金制度の国際比較を四十以上の質問項目から構成された評価指数で行っています。そのマーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキングの二〇一九年版によれば、日本の総合指標は三十七か国中三十一位であり、とりわけ十分性での評価が低いと報告されています。国際的に見ても十分な給付レベルが確保できていないことを認めるべきではないでしょうか。
暮らせる年金制度にするために、最低年金の底上げに今こそ踏み出すべきです。新型コロナ対応として年金生活者支援給付金を抜本的に拡充すべきです。あわせて、最低保障年金制度の実現を求めるものです。総理、いかがですか。
底上げのための財源をどう確保するかも問われます。一つは、保険料の能力に応じた応分な負担を求めることです。保険料負担の上限を現在の年収一千万円から二千万円まで引き上げれば、一兆円規模の財源確保が可能です。そして、二〇一九年度末では百七十兆円に達する年金積立金は、今こそ計画的に取り崩して、年金底上げの財源に充てるべきではありませんか。以上四点、総理の答弁を求めます。
本法案の第三の問題は、公的年金の削減を進める一方で、リスクを伴う確定拠出年金を更に推奨するとしていることです。
コロナによる世界的な株安が広がっています。GPIFの運用実績にどんな影響を与えているのか、厚労大臣、二〇二〇年一月から三月の見通しを示していただきたい。
コロナ経済危機の影響で、今後の株価の推移によっては、投資信託型の確定拠出年金を選択した年金受給者で元本割れ、運用利回りがマイナスになる場合が想定されています。元本保証型を選択している人でも、手数料の方が高くなる手数料負けになり得るのではありませんか。その可能性について、厚労大臣の説明を求めるものです。
安倍政権は、年金積立金の株式運用比率を拡大し続けてきました。今年の四月からは五年半ぶりに基本ポートフォリオを変更し、国内債券を一〇%減らし、外国債券を一五%から二五%に増やしています。コロナによる世界同時株安は、株式の運用比率を高めれば高めるほど、国民の財産である年金積立金を大きく毀損させることになることが明らかになったのではありませんか。株式運用比率拡大方針を見直し、リスクを下げる運用に転換すべきです。GPIFが管理する年金積立金の資産構成に占める株式の割合を、まずは二〇%に戻すべきではありませんか。総理の見解を求めます。
新型コロナウイルスは、年金制度のありようにも大きな問題提起をしています。今やるべきは、自動年金引下げ装置となっているマクロ経済スライドを中止し、減らない年金、頼れる年金制度への転換であることを強く求めまして、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/18
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019・安倍晋三
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 倉林議員にお答えをいたします。
検察官の定年引上げを含む国家公務員法等改正案についてお尋ねがありました。
今般の国家公務員法等の改正法案の趣旨、目的は、高齢期の職員の豊富な知識、経験等を最大限に活用する点などにあるところ、検察庁法の改正部分の趣旨、目的もこれと同じであり、一つの法案として束ねた上で御審議いただくことが適切であると承知しております。
現行の国家公務員法上の勤務延長の要件は改正法において緩和されておらず、また、役職定年制の特例の要件も勤務延長と同様とされており、これらの具体的な要件については、今後、人事院規則において適切に定められるものと承知しております。
その上で、検察官について勤務延長等が認められる要件については、改正後の国家公務員法上の勤務延長等の場合と同様とされており、かつ、これらの具体的な要件は、新たな人事院規則に準じて、あらかじめ内閣府又は法務大臣が定めることとしており、白紙委任との御批判は当たりません。
なお、法案審議のスケジュール等については国会でお決めいただくことであり、政府としてコメントすることは差し控えさせていただきます。
新型コロナウイルスの発生による年金制度改正案への影響についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況にある御家庭、事業者の方々を徹底的に下支えし、雇用と事業活動、生活を守り抜いていくため、政府としてはあらゆる手だてを講じているところです。
その一方で、我が国において急速に少子高齢化が進み、人生百年時代を迎えようとする中で、全世代型社会保障への改革も待ったなしの状況にあると考えており、年金制度改革においても、働き方の変化を中心に据えて改革を進めることが必要であると考えています。
このため、政府としては、高齢者が意欲を持って働ける環境整備を進めるとともに、そのための手段として、受給開始時期の選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても、年金財政中立の考え方の下、八四%までの割増しを行うことといたしました。
また、被用者保険の適用拡大については、特に、中小企業への影響も大きいことから、関係者の意見を丁寧にお伺いした上で、五十人超の中小企業まで、二〇二二年十月から二〇二四年十月までかけて、段階的に適用範囲を拡大していくこととしております。
こうした改革により支え手を増やし、年金制度全体の安定性を高めることで、低所得の方を含めた将来の年金水準の確保にもつなげていくこととしております。
公的年金制度の給付水準や低年金の方への対応等についてお尋ねがありました。
年金のマクロ経済スライドは、将来世代の給付水準の確保のために不可欠な仕組みであることから、政府として廃止することは考えておりません。また、将来世代に対しても責任ある対応をするためにも、長期的に給付と負担をバランスできる水準を超えて積立金を取り崩し、現在の給付に充当すべきではないと考えています。年金水準の確保については、今回の改正では、被用者保険の適用拡大等を行い、老後の支えとして年金の役割強化を図ることとしているところです。
各国の年金制度を適切に比較するに当たっては、制度内容や保険料率、高齢化率等の前提条件の違いを踏まえる必要があります。御指摘の調査は、海外のコンサルティング会社等が私的年金の評価等にも重点を置いて独自に行ったものであり、こうした前提条件の違いを考慮していないことに加え、評価項目も公的年金制度とは直接関係ない項目が相当程度を占めていると承知しており、公的年金制度を比較する上で必ずしも適当ではないと考えています。
年金生活者支援給付金は、定額給付とした場合は保険料納付のインセンティブを損なうため、社会保険方式になじまないとの観点から、月額五千円を基準としつつ、保険料納付済期間に比例した給付としているものです。さらに、どのような給付を行う場合も、それを支える安定財源がなければ持続可能な制度とならないものと考えます。
最低保障年金については、多額の税財源が必要になり、保険料を払っている方々と払っていない方々との間の公平性をどう担保していくのかといった課題があり、導入は難しいと考えています。
年金積立金の運用についてお尋ねがありました。
年金積立金の運用は、長期的な観点から行うこととされており、株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきではありません。また、年金積立金の運用は、安全かつ効率的に行うことが重要です。このため、経済動向や運用環境などを踏まえて、株式や内外の債券を含めた分散投資により、ポートフォリオ全体としてのリスクを抑えつつ、年金財政上必要な利回りを確保していくことが必要であると考えています。
こうした観点から、GPIFにおいて、専門的な知見に基づき十分に検討を行った上で、被保険者の利益のために最適の資産構成割合が定められたものと考えています。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/19
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020・加藤勝信
○国務大臣(加藤勝信君) 倉林明子議員より四問の御質問をいただきました。
繰下げ受給と税、社会保険料の負担についてお尋ねがありました。
公的年金は、終身で受給できることが最大の特徴の一つであります。何歳まで年金を受給することになるかは個々人によって大きく異なるわけであります。また、何歳まで働き、何歳から年金の受給を始めるかについても、個々人が自身の就労状況等に合わせて選んでいただくものであります。
したがって、個々人による選択が様々であることから、一概にどのような選択が得であるかは申し上げられませんが、それぞれの方が御自身にとって適切と思う選択をしていただけるようにしていくことが重要であると考えております。国民の皆さんが自らの就労状況などに合わせて受給開始時期などを適切に選択できるよう、分かりやすい情報提供に努めてまいります。
マクロ経済スライドと繰下げ受給についてお尋ねがありました。
マクロ経済スライドは、将来世代の負担を過重にしないため、保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を徐々に調整する世代間の分かち合いの仕組みであり、現在の受給者も将来の受給者も共に調整されるものであります。また、マクロ経済スライドは、賃金、物価の伸びの範囲内で年金額の伸びを抑えるものであり、実際に支給される名目の年金額そのものが減額されるものではありません。
将来の年金水準を見通す上では、現役期の賃金との比較である所得代替率と年金受給者の購買力を表す物価上昇分を割り戻した実質価格の双方を見ることが大切と考えております。
その上で、そもそも世代が違うということはありますが、あえて比較をしてみると、所得代替率で見た場合、マクロ経済スライドが終了した後に受給者となる世代が七十五歳から受給した水準は、現在受給者となる世代が七十歳から受け取った場合の水準よりも低くなりますが、一方で、購買力を示す実質価格では、二〇一九年の財政検証の代表的なケースでは、六十五歳時点における年金額はマクロ経済スライド調整期間中においてもおおむね横ばいとなっていますので、マクロ経済スライドが終了した後に七十五歳から受給した方が高くなります。
年金積立金の運用実績についてお尋ねがありました。
GPIFの運用状況については、法律に基づきGPIFが業務概況書を作成し、これを公表しなければならないこととされており、年度単位の運用状況の公表を基本としております。一方、四半期ごとの運用状況については、GPIFが中期計画などに基づき自主的な取組として公表しております。
自主運用開始以降の平成十三年度から令和元年度第三・四半期までの収益額の累積は約七十五・二兆円となっていますが、半分程度の約三十六・五兆円は株価下落時でも着実に収益として確保される利子や配当収入等のインカムゲインであり、それ以外の約三十八・七兆円は評価損益などのキャピタルゲインであり、これは時価の変動により上下する性質のものであります。
その上で、GPIFの本年の一月から三月の運用状況については、GPIFにおいて本年七月に昨年度の通期の運用状況を記載した業務概況書において公表することとなっており、それにのっとって公表されるものと承知をしております。
確定拠出年金の運用についてお尋ねがありました。
公的年金に上乗せする確定拠出年金は、拠出、運用、給付において公的年金と同様の税制優遇が認められる制度であります。運用に当たっては、元本確保型を含む様々な運用商品の中から選択することになりますが、長期間にわたって運用を行うものであり、短期的な動向に過度にとらわれるべきものではありません。
また、元本確保型の運用商品を選択した場合、手数料の方が上回る手数料負けになり得るのではないかとの御指摘については、掛金の額、運用商品の利率、受給の回数などによって状況が様々であること、また、拠出、運用、給付時の税制優遇もあることから、一概に申し上げることはできません。
投資教育を担う事業主等への支援などを通じて、加入者が長期的な視点に立って、自身の年齢、資産等の属性に応じた適切な運用の手法を選択できるよう、引き続き取り組んでまいります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/20
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021・山東昭子
○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/21
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022・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第一 株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。財政金融委員長中西祐介さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔中西祐介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/22
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023・中西祐介
○中西祐介君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財政金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本法律案は、地域活性化又は我が国の企業の競争力の強化等に資する資金供給を引き続き促進するため、株式会社日本政策投資銀行による特定投資業務について投資決定期限等を延長するものであります。
委員会におきましては、危機対応融資の活用による資金繰り支援等の現状、特定投資業務に創設する新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンドの意義と課題等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して大門実紀史委員より本法律案に反対する旨の意見が述べられました。
討論を終了し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/23
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024・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/24
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025・山東昭子
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/25
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026・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第二 森林組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長江島潔さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔江島潔君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/26
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027・江島潔
○江島潔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、森林組合の経営基盤の強化を図るため、組合間の合併以外の多様な連携手法の導入、正組合員資格の拡大、事業の執行体制の強化等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、販売事業の拡大を通じた組合の経営基盤の強化、組合への女性、若年者の参画促進、組合の事業の目的から非営利に関する規定を削除する理由等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して紙委員より反対する旨の意見が述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/27
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028・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/28
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029・山東昭子
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/29
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030・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第三 電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。総務委員長若松謙維さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔若松謙維君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/30
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031・若松謙維
○若松謙維君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保及び電気通信役務の利用者の利益の保護等を図るため、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社による他の電気通信事業者の電気通信設備を用いた電話の役務の提供を可能とするための措置を講ずるとともに、外国法人等が電気通信事業を営む場合の規定の整備等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、ユニバーサルサービスの在り方、NTT東西による他者設備利用の認可要件、電話サービスの安定的な提供と利用者の利便の確保、外国法人等に対する法執行の実効性の強化等について質疑が行われました。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して伊藤岳委員より反対する旨の意見が述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/31
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032・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/32
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033・山東昭子
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120115254X01720200515/33
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