1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和三年三月十九日(金曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 義家 弘介君
理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君
理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君
理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君
理事 階 猛君 理事 大口 善徳君
井出 庸生君 井野 俊郎君
大塚 拓君 神田 裕君
黄川田仁志君 国光あやの君
杉田 水脈君 武井 俊輔君
出畑 実君 中曽根康隆君
野中 厚君 深澤 陽一君
藤原 崇君 盛山 正仁君
山下 貴司君 吉野 正芳君
池田 真紀君 寺田 学君
中谷 一馬君 松平 浩一君
緑川 貴士君 屋良 朝博君
山花 郁夫君 吉田 宣弘君
藤野 保史君 青山 雅幸君
串田 誠一君 高井 崇志君
…………………………………
参考人
(早稲田大学大学院法務研究科教授) 山野目章夫君
参考人
(日本司法書士会連合会会長) 今川 嘉典君
参考人
(公益財団法人東京財団政策研究所研究員・政策オフィサー) 吉原 祥子君
参考人
(司法書士総合研究所主任研究員)
(司法書士) 石田 光曠君
法務委員会専門員 藤井 宏治君
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委員の異動
三月十九日
辞任 補欠選任
国光あやの君 杉田 水脈君
屋良 朝博君 緑川 貴士君
串田 誠一君 青山 雅幸君
同日
辞任 補欠選任
杉田 水脈君 国光あやの君
緑川 貴士君 屋良 朝博君
青山 雅幸君 串田 誠一君
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本日の会議に付した案件
民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案(内閣提出第五六号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/0
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001・義家弘介
○義家委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、民法等の一部を改正する法律案及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案の両案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
本日は、両案審査のため、参考人として、早稲田大学大学院法務研究科教授山野目章夫君、日本司法書士会連合会会長今川嘉典君、公益財団法人東京財団政策研究所研究員・政策オフィサー吉原祥子君及び司法書士総合研究所主任研究員・司法書士石田光曠君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いと存じます。今日はよろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、山野目参考人、今川参考人、吉原参考人、石田参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず山野目参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/1
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002・山野目章夫
○山野目参考人 皆様、おはようございます。
本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。早稲田大学の山野目と申します。勤める大学におきまして法科大学院の教育研究に携わっており、また、国土審議会の土地政策分科会において分科会長を務めております。
この度審議されます民法等の一部を改正する法律案及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案を政府が準備するに当たりましては、法制審議会に設けられた専門部会の調査審議が行われましたところ、これにも参画をいたしました。この経験に基づき、本日は、これらの法律案について所見を申し述べます。
所有者又は所有者の所在が不明であるという事象がもたらす諸問題への対処ということが時局的な重みを持って解決が要請されていることは、改めて申すまでもございません。本日御審議をお願いする法律案に盛り込まれる事項は多岐にわたりますが、大きく二つの問題意識がございますから、順次に御説明を申し上げます。
お手元のカラーの配付資料の表と記してあるページを御覧くださいますようにお願い申し上げます。
まず、一方におきまして、何よりも、所有者不明土地の発生を防ぐという観点がございます。本年三月五日の法務大臣の当委員会における所信においても、このことが指摘されておりました。
顧みますと、この課題についての政府の取組は、二〇一八年の所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議に遡ります。その第一回会議におきまして、私は意見陳述の機会をいただきました。
そこで申し上げました提言は、まず、土地所有者の責務を明確にしていただきたいということでございます。この観点におきましては、昨年、土地基本法が改正され、所有者が土地を管理する責務、そして、登記をし、境界を明確にしておくよう努める責務が盛り込まれました。
この抽象的な責務の宣言を民事の法制において受け止めるべく、本日の法律案におきまして、相続をした人は、自分が土地を相続した事実を知ってから三年以内に登記をしてくださいという義務の規定を盛り込み、その義務を果たしていないことについて、諸般の経過を確かめた上、正当な理由がないと認められる際、十万円以下の過料に処するという提案をしてございます。
もっとも、登記の手続はしばしば複雑であります。国民に義務を課するからには、手続のバリアがそのままというわけにはまいりません。相続をした人が申出をしてくれれば、少なくともその人が土地を受け継ぐ一人の人であることを示す登記を登記官の方で職権的にする仕組みや、相続に関わる登記手続の簡略化の提案を添えてございます。
関係閣僚会議におきまして私から意見を申し述べた事項といたしましては、さらに、登記と戸籍や住民票との情報連携ということがございます。
ともすると簡単に所有者不明土地と呼びますが、しかし、所有者が失踪したりしているものではありません。土地とその持ち主が国のデータ管理上つながっていないという事態であります。戸籍を扱う役場は、死亡の届出がされた者が不動産を所有している事実を知りませんし、不動産の登記をつかさどる官庁は登記名義人が死亡しているかどうかを知りません。これではいけませんから、登記官が住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報や住所の変更情報を取得する運用を想定する仕組みを今般の法律案に盛り込みました。
ここまで、大きく二つあります問題意識のうち、一つ目のお話を差し上げました。
お手元の配付資料の裏と記してあるページを御覧くださいますようお願いいたします。
もう一つのお話は、適正な土地の管理を実現するという課題でございます。
大臣所信におきましても、所有者不明土地の発生を防止するというお話に続け、土地の適正な利用等を図るということが述べられました。相続登記の義務化のような施策は、それが講じられるとしても、政策効果が表れるまで時間の隙間が避けられません。現にある所有者不明土地を放置するわけにはまいりませんし、所有者不明土地になっていなくても、土地の適正な管理が一般的に望まれます。
ここからのお話は、現に生じている問題になりますから、何と申しましても現場の声を聞かなければなりません。
その一例を御案内いたします。
山形県の鶴岡市は、いわゆるランドバンクの、地域における先進的な活動を進めています。二〇一八年二月十六日の国土審議会計画推進部会国土管理専門委員会におきまして、鶴岡市からは幾つかの国への要望が示されました。今読み返しますと、鶴岡市からは幾つかの要望を出していただいておりますが、法務省所管事項につきましては、鶴岡市がお述べになったものと法制的な表現が異なる側面があるものの、現場の声として出された悩みの実質に対してはほぼ全てそれらに即応する措置を本日の法律案に盛り込んでございます。
まず、遺産共有などの共有の法律関係が全員一致ではなく多数決の考え方で進むようになるとよいという要望があり、これにつきましては、裁判所の関与の下、金銭を供託して不明共有者の持分を取得し又は売却する仕組みを設け、遺産共有の場合も、相続開始から十年を経過した後は、法定相続分又は指定相続分の割合を基準にして同じ扱いをしてよいとしております。
次に、相続財産の管理など土地に関する財産管理の制度を使いやすくしてほしいという要望につきましては、所有者不明土地管理制度や管理不全土地管理制度という制度を設け、裁判所が選任する管理人による管理がされるようにいたし、また、複雑であった相続財産の管理のルールを整備してございます。
昭和より前など古い時期にされた担保権の登記が簡便に抹消される手続が望まれますから、解散した法人の担保権に関する登記や、さらに、存続期間が満了した地上権の登記などの形骸化した登記につきまして、要件と手続を定め、その抹消を簡略に行う仕組みを設けてございます。
続きまして、隣地の所有者の容易な探索がかなうとよいという、隣地、近隣の関係での悩みもいただきました。これまでも、民法には隣り合った土地の間のルールが盛り込まれてございます。起草に際し、明治の先輩たちが当時の全国の慣習を調べ、それを参考にして規定を考えてくれました。およそ百二十年を経る私たちにとっての難題は、隣の土地の持ち主の方を見かけたことがないという事象であります。
本日の法律案におきましては、慎重な手順を定め、必要がある場合において、隣地に立ち入り、木の枝を切り、また、ガス管などを設けてもよいという規定を提案してございます。
鶴岡市の要望事項の当面の御紹介のうち、最後になりますが、空き地や空き家を解決するための不動産の処分を容易にする財政支援が欲しいというお話があります。
なかなか法務省のみでの対応が難儀であり、一遍に包括的な施策を整えるには困難がありますが、今般は、所有者不明土地の発生を抑制する観点から、相続等により土地を取得した所有者が定められた要件を満たす場合において、法務大臣による承認を経て、土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度を提案してございます。国に帰属させる際、その承認を受けた人は、国において引き受ける土地の管理に要する十年分の費用を負担金として納付してもらうという提案が添えられてございます。
ここまで御案内した事項を盛り込む法律案を御採択いただく際には、我が国の土地政策が大きく前進するものと信じます。
もとより、課題は残ります。
関係閣僚会議におきましては、私から、登録免許税のことを考えてほしいという要請もいたしました。国民に相続登記を義務づけるとすれば、なおさら、軽減、減免を講じなければなりません。令和三年度与党税制改正大綱において、令和四年度税制改正に向けた課題として指摘されているところを注視してまいります。
空き地、空き家の問題は、今般御審議をいただく法律案がその一端への対処にとどまるものであります。本年五月頃には、昨年の土地基本法改正後の最初の土地基本方針の改定が予定されており、その改定のため、国土審議会の調査審議を予定しており、そこでは、いわゆるランドバンクの考え方を推進していくための施策なども考えたいところでございます。
鶴岡市からは、このほか、成年後見制度のことを考えてほしいという要望も述べられました。政府の試算によりますと、二〇二五年には認知症高齢者が約七百万人になりますから、土地の管理においても難しい問題が生ずることでしょう。
改めて考えますと、所有者不明土地問題は、それ自体の解決が自己目的ではありません。不動産登記制度も、制度のためにあるものではありません。この度の提案におきましても、配偶者から暴力を受けてきた方、あるいは虐待されるおそれのある児童などが不動産の登記名義人になる場合の登記情報の提供について、住所が秘匿されるよう特例も整備してございます。
現下の社会経済情勢の下、土地の上で暮らす人々に少しでも役立つ土地政策であらねばならないと願うばかりでございます。
本日は、このような意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/2
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003・義家弘介
○義家委員長 ありがとうございました。
次に、今川参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/3
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004・今川嘉典
○今川参考人 皆さん、おはようございます。
ただいま御紹介をいただきました日本司法書士会連合会会長の今川でございます。
本日は、お招きをいただき、お話をする機会を与えていただいたことに誠に感謝いたします。ありがとうございます。
こういうクリアファイルで、資料を机上に配付させていただいておりますが、これは、当連合会並びに全国の司法書士会が相続登記促進に向けて活動するためのパンフレットであったり、一般の方に詳しく今回の法改正を説明するためのQアンドAであったり、そもそも相続、相続登記とはどういうものかを説明するためのハンドブック等であります。特に、この「よくわかる相続」というハンドブックは、市民の方、それから自治体に、もちろん無料で配布させていただいておりますが、累計五十一万部を配布しておるものであります。またお時間のありますときにお目通しをいただければ幸いでございます。
本日は、我々司法書士の業務と所有者不明土地問題との関連、それから、相続登記促進について当連合会がどのような活動をしているかということを御紹介申し上げ、本法案について我々がどのように受け止めているかについて述べさせていただきます。
なお、一昨年、実に十七年ぶりに司法書士法が改正されまして、我々は法の中に使命規定を持つに至りました。先生方におかれましては、お力添えをいただいたことに対しまして、改めて、この場をおかりしてお礼を申し上げます。ありがとうございます。
では、まず司法書士についてですが、司法書士は、現在、法人会員を含め、全国約二万三千五百の会員がおります。全国五十の司法書士会に登録をしています。それら司法書士会を束ねる形として、当司法書士会連合会があります。
司法書士は、日々、多くの不動産登記や商業登記の申請を行うとともに、裁判書類作成関係業務や簡裁訴訟代理等関係業務を通じて裁判事務も行っております。
また、身近な暮らしの中の法律家として、高齢者や障害者の権利擁護のために、成年後見制度というのができておりますが、その制度成立当初より成年後見業務に積極的に取組を行っておりまして、専門職の中では司法書士が最も多く後見人等に就任しております。公表数値によりますと、令和二年の就任件数は、司法書士が一万一千百八十四件、弁護士さんが七千七百三十一件、社会福祉士さんが五千四百三十七件となっております。
所有者不明土地問題と司法書士の実務との関係でございますが、所有者不明土地問題の発生の大きな要因として、相続登記や住所、氏名の変更登記が未了となっているということが挙げられております。一方、相続登記を含む不動産登記の大部分は司法書士が代理人となって申請をしており、我々は登記の専門家であると自負をしているところであります。したがって、国家的課題とも言える相続登記等の促進は、まさに我々にも与えられた課題であるというふうに理解をしております。
そのほかにも、相続人の中に高齢者が含まれており、遺産分割協議を行うために成年後見人を選任するという例が少なくありません。このような場合には、司法書士は、家庭裁判所への成年後見開始の申立てをサポートするとともに、先ほども述べましたように、成年後見人に就任して、遺産分割協議等も遂行しております。
裁判事務としては、土地所有権の集約、例えば、時効取得を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟や抵当権抹消登記手続訴訟等に関与しています。また、簡易裁判所における土地を目的とする訴えに関して、原告、被告双方又は一方に司法書士が訴訟代理人として選任された率は、司法統計上、平成二十七年から令和元年において大体平均五七・六六%、五七%ほどとなっております。多くの司法書士が土地を目的とする訴えに関与しているということになります。
また、空き家等の対策においても、自治体から依頼を受けまして、所有者や相続人の調査、探索を行い、必要に応じて財産管理人に就任し、空き家の解体撤去等も行っております。
今回の改正により導入される新制度、すなわち相続登記や住所変更登記等の義務化への対応はもちろん、所有者不明問題解消に資するために幾つかの簡略化される登記手続も用意されております、それにも関与していきます。そして、共有持分の取得や譲渡、所有者不明土地管理人等の新たな財産管理制度など、いずれも多くの司法書士が日常的に関与しており、また対応できる業務であるというふうに考えております。
法案に対して、我々の考えを二点述べさせていただきます。
一点目。相続登記等の義務化と過料の制裁は、確かに、新たに国民に負担を課すこととなります。単に相続登記を義務化するだけでは直ちに問題の解決にはならず、国民への周知を徹底し、土地基本法に規律されている土地所有者の責務等を含めて、新制度に対する理解を得ることがまず必要であり、併せて、義務化を実効性あるものとするための負担軽減措置をパッケージとして導入することが必要であります。また、民法や不動産登記法の改正とは別に、個人で管理したり流通に乗せることが困難な土地の受皿としてのランドバンクのような施策も併せて取り入れることも必要であると考えております。
当連合会では、法制審議会の検討の初期段階から、単に相続登記を義務化するのではなく、専門家にアクセスすることが困難である相続人の権利擁護の観点、それから相続人間の対立、紛争が深刻でなかなか遺産分割協議等ができない方、そのような方の救済措置などを鑑みて、登記に代わるより簡易な手続で相続登記の義務を履行したものとみなすこととする制度をつくる、これを提言し続けたところでございます。それは、私的自治に配慮し、かつ、国民の皆様への負担を最小限とすることにつながると考えたからであります。
今般、提出法案においては、相続人である旨の申出制度が創設され、その申出により義務の履行があったものとみなすという規定を置くことが提案されています。これは、負担軽減策として当連合会の意見が受け入れられたものとして評価しております。
また、過料の制裁についても、厳罰化を目的とするものではなく、事前に登記官から登記申請を催告するなど相続人に対する配慮の仕組みを予定し、そのような仕組みを省令等で定めることが、法制審議会で採択された要綱に盛り込まれております。その点も評価するとともに、適切な制度運用がされるよう期待をしております。
二点目です。財産管理制度は、従来、人を単位としておりまして、原則としてその人の全財産を管理するという制度でしたが、今回の提出法案では、所有者不明土地管理人等、不動産単位の財産管理を実現することができるようになっています。これは、不動産の状況に応じ、柔軟でかつ効率的な管理を行うことができる提案であるというふうに我々は受け止めております。
司法書士の取組についてお話をさせていただきます。
当連合会では、昭和六十年頃から、「相続登記はお済みですか月間」と題し、相談会の開催など、相続登記の促進に関する事業を実施しております。また、平成二十八年頃からは、法務局と各司法書士会とが連携し、未来につなぐ相続登記プロジェクトとして、国民に対し、相続登記の重要性を周知するための活動を全国的に展開しております。
また、所有者不明特措法に基づいて平成三十年度からスタートしている法務局による長期相続登記未了の土地の解消作業については、全国の法務局の入札において、全て司法書士の団体が落札し、法定相続人の調査を実施しております。そのほか、相続に関する研修会、講演会、シンポジウムの開催などを通じ、相続登記の重要性を訴えかけているところであります。
本年三月一日、全国の五十の司法書士会に、相続登記相談センターを設置いたしました。また、全国どこからでも統一フリーダイヤルで最寄りの司法書士会へつないでいく、こういうシステムを構築をしました。既に多くの国民の皆様から、相続登記の義務化に対する相談も寄せられているという状況であります。このように、各司法書士会では、法律の施行前から、国民の皆様に対し、法的な情報を提供するための基盤整備を実施しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、面談による相談が難しい情勢もありますので、ウェブを活用した相談についても導入を今進めているところであります。
これまで申し上げましたとおり、全国の司法書士は、まず相続登記の申請、それから前段階の相続人調査、裁判業務を通じた土地所有権の集約、担保権の抹消、成年後見制度を活用した遺産分割協議などを行ってまいりました。また、不在者財産管理人や相続財産管理人に就任し、所有者不明土地問題の発生を抑止するための業務も行っております。
これまで、国民に対し、相続に関する法律的なアドバイスを提供してきました。そして、本改正による新制度の運用に当たっては、正確な情報、適切なアドバイスなど、専門家がしっかりとサポートすることが不可欠であります。したがって、我々司法書士が事件に関与していくというその立場は、今後は一層重要なものになると考えております。
法案が成立した暁には、これまでの実績を生かし、司法書士界総体を挙げて、所有者不明土地問題の解消及び抑止のための活動をしていく所存でございます。
以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/4
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005・義家弘介
○義家委員長 ありがとうございました。
次に、吉原参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/5
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006・吉原祥子
○吉原参考人 本日は意見陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。
公益財団法人東京財団政策研究所の吉原と申します。東京財団は民間の政策シンクタンクで、私は、その中で、所有者不明土地問題について調査を行ってまいりました。また、法制審議会民法・不動産登記法部会に委員として参加させていただきました。
本日は、これまでの調査結果と、そして民法・不動産登記法部会の議論を踏まえながら、この度の法案について所見を申し述べます。
お手元にA4一枚の資料を配付させていただきましたので、御参照いただければ幸いです。
この度の法改正議論の契機となった所有者不明土地問題とは、不動産登記簿などの所有者台帳により土地の所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない事象を指します。
東京財団では、この問題の実態や構造を把握するために、これまで全国の自治体へのアンケート調査などを行ってまいりました。そこから見えてきたのは、人口減少、高齢化といった社会の変化に対して、不動産登記制度やその根底にある相続の仕組みなど、従来の制度が十分に対応できていない実態でした。
アンケート調査に自治体から寄せられた回答には、例えば、相続登記が進みづらい理由として、現行法において相続登記が義務ではないことや、手続の煩雑さや、費用の問題を挙げる声が多くありました。また、山林や耕作放棄された農地など、わざわざ相続登記をするメリットが相続人の側に感じられなくなっているといった記述や、土地の売買も鎮静化しており、正しく相続登記を行っていなくても当面実質的な問題が発生しないケースが増えているといったコメントも寄せられました。
また、土地の資産価値の低さや管理負担を理由に相続放棄が増加傾向にあることや、親族関係の希薄化に伴う遺産分割協議の難航を指摘する声もありました。
さらに、所有者が不存在となった土地の利用について、相続財産管理制度などの仕組みはあるものの費用対効果が見込めず、放置せざるを得ない事例もあることなど、制度的な課題を指摘するコメントもありました。
こうした問題は、自治体の努力だけでは解決は困難であり、国による制度の見直しが必要です。
振り返ってみますと、日本の土地制度は、明治以来、人口の増加や、土地は有利な資産という前提の下で構築されてきました。従来の土地政策は、戦後の高度経済成長やバブル経済を背景に、地価高騰や乱開発など市場の行き過ぎを抑制することが主眼であり、現在、日本の各地で発生している低未利用の土地の管理や人口が減る中での相続の在り方など、市場原理では解決が難しい、また個人の所有権にも関わる課題については、踏み込んだ検討が行われてきたとは言えません。
所有者不明土地問題とは、そうした従来の制度と人口減少という社会の変化のはざまで広がってきた構造的な問題です。万能薬はなく、問題の解決のためには、既に不明化してしまった土地への対応策と、そして今後の問題の発生予防のための方策を、土地政策と民事基本法制の両面から一つ一つ積み重ねていくことが必要です。
こうした観点から見ますと、この度の民法等の一部を改正する法律案並びに相続土地国庫帰属法案は、まさに社会の要請に応える法律案であると言えます。
この度の法案では、所有者不明土地問題の発生予防と、土地の適正な利用と管理、そして相続による権利の承継の円滑化に向け、共有制度、相続制度、財産管理制度など、多岐にわたる重要論点について抜本的な改正案が示されています。これだけ多くの重要な見直しが行われたことに大変驚くとともに、これらは、土地の権利調整に多大な時間を費やしてきた地域の関係者の方々の間では待ち望まれてきたことであると思います。
それでは、今後、こうした新たな制度について議論を深め、広く社会に浸透させていくには、どのような点が大切になるでしょうか。二点述べたいと思います。
まず一点が、この法案を読み解く上で鍵となる土地基本法の存在です。
先ほど山野目参考人からもお話がありましたが、政府による所有者不明土地問題への一連の対策の中で、昨年、約三十年ぶりに土地基本法が改正されました。そこでは、所有者不明土地の発生抑制や災害の予防、復興、持続可能な地域の形成を図る観点から、土地の適正な利用と並んで、新たに管理の必要性が明示されました。そして、土地所有者の責務として、登記など権利関係の明確化と土地の境界の明確化に努めることが新たに規定されました。さらに、土地所有者の適正な利用、管理を支える観点から、国、地方公共団体、事業者、国民一般の責務にも、管理の重要性が盛り込まれています。
この度の民事基本法制の改正案にある相続登記の義務化や所有者不明土地管理制度の創設などの土台には、この土地基本法の考え方があります。今後、法案の議論を深め、また、新たな制度を広く社会に普及していくに当たっては、こうした土地基本法の考え方を土台として、共通認識を醸成していくことが大切であると考えます。
新たな制度を広く社会に浸透させていく上で、もう一つ大切な点が、制度の実効性をどのように高めていくかということです。
所有者不明土地問題は、短期的な費用対効果から考えれば、誰にとっても解決のインセンティブが働きづらい問題です。また、土地や相続についての制度改革は、個人の権利に関わる問題であり、国民の理解がなければ進めることはできません。そう考えますと、新たな制度の普及と実効性の確保には、今後、地道な息の長い取組が必要であると考えます。
具体的には、相続登記の義務化は、できるだけ手続コストを下げるとともに、制度の丁寧な周知を図り、一人一人の行動を促していくことが求められます。所有者不明土地管理制度などの新たな財産管理制度の創設においては、各管理人の選任場面や要件を分かりやすく整理し、また、管理人の選任申立てに関わる費用負担の在り方を工夫するなど、制度が有効に活用されるよう環境を整えることが必要です。
相続土地国庫帰属の制度については、窓口となる法務局の人員、予算を確保するとともに、農林水産省、財務省など関係省庁間の政策連携を図り、そして、住民からの問合せへの対応など窓口となる法務局と市町村が円滑に連携していく必要があります。その際には、市町村の業務の効率化や合理化に配慮することも大切です。
相続土地国庫帰属の制度は、文字どおりゼロからのスタートであり、また、国民の関心や期待が高い分、厳格な審査要件や負担金の在り方などについて、今後、様々な議論や検討が必要になると予想されます。そのプロセス自体が、人口減少時代における土地の利用、管理の新しいサイクルを模索する過程であり、重要な意味を持つものだと考えます。
そして、こうした民事基本法制の見直しによって土地の適正な利用、管理が実現し、問題の発生、拡大が抑制されることで、土地政策における管理不全土地対策や低未利用土地の利用促進策が地域で進展することが望まれます。
所有者不明土地問題は様々な土地利用の足かせとなり、地域の活力をそぐものです。今後の防災や災害復旧などにも支障となります。是非この問題を我々の世代で解決し、土地を次の世代へ適切に引き継いでいけるよう、この度の二つの法案が成立することを心より願っております。
以上が所見でございます。ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/6
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007・義家弘介
○義家委員長 ありがとうございました。
次に、石田参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/7
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008・石田光曠
○石田参考人 皆様、おはようございます。司法書士の石田でございます。
本日はこのような貴重な機会をお与えいただきまして、本当に感謝いたしています。ありがとうございます。
私は今京都に住んでおるんですけれども、そういうことと関係あるかどうか分かりませんが、昔から景観というものに非常に興味がございまして、世界を旅行したときに、やはり、世界ではこういう景観、これは町だけじゃなくて、農村や林野など、そういう全ての景色ですね、非常にきちんと保全されている、なぜそれが日本でできないんだろうとずっと疑問に思ってまいりました。逆に、この疑問が今この職業につながっているのかもしれません。景観を見ると、その国のいわゆる国民のモラルといいますか、その国の制度というものがやはり見えてくるのではないか、そういうふうなことも感じたこともございます。
ということで、そこから、二十年以上ぐらい前の話ですが、世界の土地所有制度というものを個人的に勉強を始めた次第でございます。
その後、今から十年ほど前ですかね、放置空き家の増加問題というものが話題になりました。そして、今から五年ぐらい前から、今度は所有者不明土地問題、これに関しまして、先ほど言いましたいわゆる景観問題と全く本質は同じでございますので、そこで、日本司法書士会連合会の中で司法書士総合研究所というのがございまして、そこで世界の不動産の所有制度及び相続制度を調査研究させてほしいということでチャンスをいただきまして、チームを結成いたしました。
そんなことから今日はお話をさせていただきたいんですが、お断りしますが、私は今日は団体の代表として参っておるのではなくて、一研究員、一実務家としてお呼びいただいております。そういう立場でお話しさせていただきますので、御了承をお願いいたします。
まず、なぜ日本において所有者不明土地問題、こういったものが起こりやすいのかという本質論ですね。お手元に資料を配っております。これに沿ってお話しさせていただきます。
やはり発見できたのは、日本は世界で類を見ないほど、土地というものが物理的に細分化しております。そして、一つ一つ細分化されたものが権利的に非常に分散化している。この細分化しているというのは、明治以降、産めよ増やせよということで人口が急速にやはり増えました、この国は。核家族化が進みました。ですから、世帯というものが非常に増えまして、狭い国土の中で、住むための土地が非常に細かく細分化していった。これは当然のことでございましょう。
あるいは、この国では土地の分筆というのが自由でございます。世界は土地の分筆というのは非常に厳しい制限が取られまして、ほとんどされておりません。あとは、相続税対策での切り売り、そんなことも含めまして、やはり、特に戦後、急激に、土地の物理的単位というのがちっちゃくちっちゃく切り分けられた。これはもう、世界の中で日本だけの現象の一つでございます。
分散化というのは、要は、一つ一つの土地が、戦前までは家督相続制度といいまして、絶対に分散化しない超合理的な制度があったんですが、戦後は非常に、均分政策といいまして、平等に分けられるということが基本になって、逆に言いますと、共有というものが非常に進んでいった、あるいは、相続登記をしないと事実上共有状態になっているということも含めて、権利的に非常に分散化している。一つのちっちゃなちっちゃな土地の権利者が、探してみれば数千人というのはざらにございます。まあ、ざらというのはおかしい、数十人、数百人というのはもう当たり前のようにございますね。これが一つ、大きな特色でございます。そこで急速にかつ長期の人口減少が始まったら、こういう問題が起こるというのは、当然の結末かもしれません。
そこで、今日は二つ、項目に対して御意見をまずさせていただきたいと思います。
最初にまず、相続登記の義務化、要綱案の第二部の、不動産登記法の見直しにおける相続登記の義務づけについてということに対して、まず御意見を言わせていただきます。
この相続登記の義務化というのは、これは非常に強いインパクトの言葉でございます。恐らく、この立法が完成したら、報道も含めまして、いよいよ相続登記の義務化開始というのが、この言葉がもう日本中にアピールされていくと思います。これは国民にとって非常にインパクトのある言葉で、と同時に、アドバルーン効果、要は、相続登記をやはりしなきゃいけないんだというアドバルーン効果は非常に高い、ここは私もそう思っております。
ただ、反面、非常にインパクトが強いだけに、誤解が起こるのではないかという心配を、実務家として、本気でしております。この誤解というのは、いわゆる遺産分割というものを十分にせずに相続登記だけをしなきゃいけないのかということ、それともう一つは、相続登記の手続そのものが形骸化すること、これを非常に恐れます。形骸化というのは、例えば、今テレビなんかで法律事務所のコマーシャルをいっぱいしていると思うんですけれども、本当に、ベルトコンベヤーで手続ができるような、薄利多売のような感じで相続手続を受ける、あるいは依頼する、こういったような形骸というのは、非常にこれは逆効果でございまして、ますます権利の分散につながると思います。
たかが相続、されど相続。実は、私ども実務家としましては、相続って本当に、何かどれも一緒だろう、パターンがあるんだろうと思われるかもしれませんが、相続手続というのは一つのパターンがあると思いますが、相続そのものというのは、一つ一つ全部ドラマが違います。一つ一つ固有のものです。
そこで、意見を申し上げますが、この相続登記の義務化という中身をちょっとお考えいただければと思います。
まず、絶対的にしていただかなきゃいけないのは何だろう。いわゆる相続が発生したことに対する登記簿上への、登記情報への公示、まずこの点が一点ございます。それと、もう一つ、遺産分割。
遺産分割が最終的にきちっとできました、その上で確定的に相続登記をしますという遺産分割の確定の部分と、それから、先ほど言いましたように、死亡の事実の公示の部分、この二つを分けて、是非考えていただければと思います。レジュメ二ページのところですね。
そこで、まず、世界では、じゃ、どうしているんだろうということなんですが、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、この四つ、ここら辺の国の情報が一番多いので、この辺を中心に今研究をしているんですけれども、中身を細かくちょっと御説明する時間がございませんが、大体大枠で捉えていただければと思うんですけれども、それぞれタイムリミットを取っています。それぞれペナルティーだとかインセンティブというのは取っているんですけれども、ここで共通しているのは、いわゆる相続が発生しました、登記名義人の死亡がございましたという公示、まず、これに対して義務づけているんです。
その方法はそれぞれの国の制度によって違いますけれども、遺産分割をいつまでにしてくださいという制度を取っている国は、私が調べたところでは、一つもございません。
なぜなら、先ほど言いましたように、意思のない遺産分割による、その結果の登記というのは、これは、先ほど言いましたように、本当に危険な権利の分散、いわゆる責任のない所有者を増やすだけでございますので、これだけは、これだけはといいますか、世界でもやはりそういう考え方をきちっと持っているということがはっきり分かりました。
ですから、もちろん、遺言があったり、あるいは相続人が少なかったり、話合いがすぐにできたりという場合は、この期間にやってくださいねと、それに至った場合は、それぞれ、ペナルティーというよりもインセンティブ、いわゆる、この期間でやったら登録免許税を減免しますよとか、そういう、北風と太陽でいいましたら太陽政策のような部分を取っているという部分がございますね。
ただ、それと同時に、遺産分割を急がせるということはありません。この期間内で遺産分割が全て完了できる、十分な話合いができるということは、それはなかなか、この多様化の時代、難しいことでございますので、それはまた別のことです。
仮に長期にわたって話合いができない場合は、それはまた別の政策で、国家あるいは市町村などがその土地を回収していくような制度というのが別にございますので、ちょっとそれは、今、おいておきましょう。
イギリス、アメリカなんかでは元々、いわゆる国民に絶対的所有権というものを観念しておりませんので、まず、遺産の中に不動産があれば、その遺産管理人を登記上に公示してくださいということで、遺産管理人がいろいろな責任を取ってやっていくということで、先ほど言いましたように、最終的な相続登記、いわゆる遺産分割を伴う相続登記を早くしなさいということでは全然ございません。
ちなみに、台湾の情報も入れておきました。これは非常に厳しい制度ですが、恐らく台湾でも、六か月以内に最終の相続登記をしろということではないと思われます。
さて、そこで、意見をまとめます。
今言いましたように、まず義務づけすべきは、登記名義人の相続開始の届出、死亡情報の義務化ですね、これは徹底してやっていただきたいと思います。これによって地面師事件対策というのが当たり前のように取れます。今それをやっていない国は、日本だけでございます。
このときに必要な情報は何かといったときには、死亡の事実と死亡の年月日、私は、最低限、それでいいと思います。その年月日からどれだけたったか、それで次の展開ができるということでございます。
次に、いわゆる最終的な、確定的な遺産分割、意思を伴った遺産分割、結果の相続登記、これに関しましては、やはり早々にする方が当然いいと思います。
ですから、いろいろな意味で、死亡の公示をきっかけに、行政や専門家や法務局や、いろいろなところから、名義人の相続に対して遺産分割を促す、促進するような対策を取っていく、これは世界の共通の流れだと思います。
続きまして、もう一つ、三ページですね、今度は、土地所有権の国庫への帰属の承認に関する制度の創設について、いわゆる、これは所有権の放棄、土地所有権の放棄を認めるかどうかという問題に関しまして、ちょっと御意見を申し上げます。
私がこんな研究をしているということでは決してないんですが、最近、やはり、お手伝いする中で、遺産の中に本当に処分に困る不動産が含まれている相続の案件というのは非常に年々、実は増えております。年々増えているというのは、恐らく年々増えてきたんじゃなくて、恐らく私が気がつかなかっただけだと思います。多くの専門家がスルーしているだけかもしれません。掘り起こせば幾らでもあるかもしれませんね。
そんなときにどうするかということなんですが、代表的な例をちょっと紹介します。
これは、去年、実際にあった話なんですが、大概の依頼者の方たち、相続が発生して自分が法定相続人の一人になったという前提で、遺産分割協議の作成を含めて相続登記をお願いしますというふうにまず来られます。その中には、先ほど言いましたように、御実家の不動産、建物、土地だけではなくて、自分が存在すら知らなかった、親の土地、あるいはおじいさんの名義になったままの土地、そんなものも含まれている。
どうしますかと言ったときには、皆さん、やはり最初はプラス財産としてのいわゆる金銭的な遺産、こればかりに着目されますので、うちの兄弟はみんな仲いいので均等に分けたいと思います、それで遺産分割協議書を作ってくださいと。ではこの不動産はどうしますか、ううん、相続人の中で誰も欲しいという者はいないので、どこか引き取ってくれるところはありませんかね、あるいは、なかったら、取りあえず法定相続分で登記したいんですけれどもというふうに。
私は、そういうときに必ず言うんですけれども、では、この遺産分割のお話合いの内容はちょっと保留して、その御存じでない、行ったこともない土地というものを一緒に見に行きませんかと。
不動産というのは、現場を見なくても評価額は出るんです。路線価や評価額、これは文書でちゃんと出てきます。そんなものだけで皆さん計算して、電卓をたたいて分けようという話になるんだけれども、そうじゃない。これは本当に、果たして、まず使えるのか使えないのか、あるいはお金に換わるのか換わらないのか、それ以前に、これをもしも所有したままだと、将来、どんな負担、どんな金銭負担も含めて、管理費がかかってくるのか、全て全部理解した上でやはり遺産分割のお話合いを再開しませんかというふうに御提案すると、分かりましたということで、相続人さんの中で、これは決して仲が悪いとかそういうことじゃないですよ、紛争性があれば、これはもう私どもの世界ではなくて弁護士さんの方にお願いする世界なんですけれども、そうじゃなくて、今は、紛争がなくても、やはり相続人間というのは非常に希薄な関係になっております。うちは仲いいんですよと言いながら、やはりそういうわけにはいかない、全て、皆さん、財布が違うわけだから。
その中で一番お時間に余裕のある方、それから元気な方と一緒に、私はできるだけ現場におつき合いするようにしました。これは、京都だけではないです、北海道だとか九州だとか四国だとか山陰だとか、本当にそんなところも平気であります。皆さん、御両親の御出身なのか、そういうところはやはりたくさんございますね。
行ってみると、決して僻地ということではないんですね。それぞれ、昔はにぎやかだったんだろうなというところなわけであります。やはり、何らかの理由で、今はそういう人が住まない土地に変わっていったということでございましょう。
で、御近所に挨拶がてら、この辺の土地の流通事情を聞いたり、誰か引取り手を探ったり、地元の役所に行って相談したり、あるいは農業委員会に相談へ行ったりとか、いろいろなことをしながらやるんですけれども、運よくその中で引き取っていただける方を見つけることもあります。これはもう本当によかったということになるんですけれども、大体その勝率というのは三〇%ぐらい、ごめんなさい、ということです。
そのときにお願いしているのは、やはり、将来、処分が分からない土地に関しましては、共有で登記するのはやめましょうと。できるだけ、誰か最後まで責任を取れそうな方、あるいは、その方の代でできなくても、その次の代の方に頼めるような方の単独で相続登記をするようにお願いしております。必ずいつか、きちっとしていれば、国が受け取ってくれる日が必ず来ますからという、そんなことを言いながらやっているんですけれども、これはちょっと言い過ぎかもしれません。
要は、こういうプラス財産があるときというのは、私ども、これだけ努力してできるんですけれども、このプラス財産がないときというのは、やはりどうしようもない。逆に言いますと、この法律というのは、我々の努力ができない、あるいは努力してもできなかった案件をある程度対象にしていただきたいと思っているんですね。
どうも、いろいろ案を見てみますと、やはりプラス財産があるときにしか使えないねというふうな部分が幾つか見られますので、是非この発想というのはちょっと御理解いただければと思います。
そこで、ちょっとごめんなさい、三ページに戻ります。もう余り時間がないので簡単に言います。
では、世界ではどうしているのかといったら、先ほど言いましたように、国民に最終的にずっと永代的に土地の所有権を委ねっ放しという国は一つもございません。元々、土地というのは、私財であるとともに公共財です。したがいまして、どこかの段階でやはり行政が引き取ることをやっています。あるいは積極的に譲渡を受けるということも含め、そういう受皿があることによって、遺産分割というのは進んでいくものです。
やはり、その中で共通しているのは、受皿はほとんど市町村です。国が受け取ったとしても、それは市町村に権利移譲しています。今回の法案によりますと、なかなか厳しい要件がついております。これは、恐らく受皿は財務省の想定だと思うんですが、やはり財務省が受皿であると、それは土地として受け取るというのが非常に困難で、これだけの要件がついてくるのは当然かなと思います。
そうじゃなくて、世界では、土地を土地として受け取って、その町の再生に活用する、そういう団体、いわゆる市町村に最終的に移譲しております。そうすることによって、非常に要件は個別具体的に変わっていきます。そのお手本はアメリカのランドバンクでございます。これは日本のランドバンクとはちょっと違って、元々、その権利の主体となります。ただのあっせん機関ではございません。
ということで、まとめますと、最終的には、土地を受け取って、再生プランをつくって、その再生プランとともに国民が引き取れなくなった土地を生かしていく、これが一番国策にとってプラスなはずです。こういう仕組みを前提に、所有権放棄の政策をもう一度考え直していただければと思っております。
済みません、ちょっと長くなってしまいました。ありがとうございました。失礼しました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/8
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009・義家弘介
○義家委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/9
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010・義家弘介
○義家委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。深澤陽一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/10
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011・深澤陽一
○深澤委員 自由民主党の深澤陽一でございます。
本日は、参考人の皆様、本当に貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
また、理事の皆様も、このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
早速ですけれども、質問をさせていただきます。
まず、山野目参考人様に質問をさせていただきますが、今回の法案というのは、これからの土地への所有者の責務と適切な利用、また適切な利用と管理という表現でもありますけれども、これは実現するために不可欠なものだというふうに、ただいまの御説明からも私なりに理解させていただきました。
この効果を発揮するために、また更に御尽力を賜りたいというふうに思いますけれども、以前、不動産登記法の改正案について、参考人は、国土交通委員会の参考人として御参加されたときに、いわゆる課題として、義務化をされても違反事例が多く発生することが予測されて、それに対し国のどの機関が予算とマンパワーを備えて対応していくのかという御指摘をされておられました。また、過料が科されたとしても相続人は登記しない可能性がある、一度処罰したらその後は登記されないまま、一度だけ処罰なので、それ以降処罰されないということで、事例がそのまま残されてしまうという可能性も御指摘をされております。
今回の法改正によって、現時点で、こういった課題はどのような状況になっているのか、お考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/11
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012・山野目章夫
○山野目参考人 深澤議員におかれましては、これまでの所有者不明土地対策に係る法制の展開に深い御関心をいただき、ありがとうございます。
経緯は御指摘のとおりでございまして、顧みますと、平成三十年法律第四十九号、先ほど御指摘いただいた審議の機会でございますが、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が制定され、次いで、昨年、令和二年法律第十二号として土地基本法が改正され、そして、本日御審議の法律案に至ります。
お尋ねの事項につきまして、二つのキーワード、ないこと証明、そして、あること証明というペアの言葉を題材として考えているところを申し述べます。
いわゆる相続登記の義務化は、その仕組み方によっては国民に無用な負担を課する施策となりかねないものでございました。自分が受け継いだ土地はこのほかに本当にないかという、ないことの証明、ないことの説明ないし証明を遂げ、さらに、自分とともに土地を受け継ぐ人の顔ぶれは果たしてここにいる人たちのほかにないと見てよいかという、ないこと証明を経なければ登記を全うしたことにならないということになりますと、これは難題でございます。
ある事実の不存在の証明というものは、一般に、容易なものではございません。理想は、ハードルの高い、ないこと証明は政府が引き受け、国民に対しては、相対的に容易な、あること証明をお願いするという組合せであります。
この理想に近づかない限り、やみくもに相続登記を義務化しても、ただいま議員御指摘のとおり、違反事例の捕捉に困難があるばかりで、費用や手続の面で国民に過重な負担を求める結果に至るという悲観的な見通しを抱かざるを得ませんでした。これが、御指摘の二〇一八年五月二十二日の本院の国土交通委員会において、私が所見を述べた段階における見方でございました。
その後、法制審議会の調査審議が進むのと並行して、政府部内で精力的な連絡調整がされました。その成果として、本日御審議をいただいている法律案におきましては、自分が相続した土地が確認されたもののほかには本当にないかという、ないこと証明は、所有不動産記録証明制度により政府が担いますし、国民の側は、少なくとも自分は相続人であるという申出をすればよいとし、他に相続人がいないという、ないこと証明までしないと義務を果たしたことにはならないという仕組みにはいたしておりません。
加えて、申出をしなければならない三年の期間は、相続により取得した土地などの不動産があることを知ったときから三年というふうに計算をする仕組みにしてございます。
さらに、登記名義人が死亡している事態の把握は、登記官が住民基本台帳ネットワークシステムから情報を取得する運用を想定した法律案の中にその規律を盛り込んでございます。
正直、法務省と総務省がここまで調整してくれるとは思わなかったです。そういうふうな関係者の大いなる努力がこの間ありました。改めて、法制審議会の調査審議に携わった関係者の努力に思いをいたし、御紹介申し上げましたような経緯を踏まえ、本院において充実した御審議をなさっていただくことがかないますれば誠にありがたいものでございます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/12
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013・深澤陽一
○深澤委員 ありがとうございました。
今まではないこと証明だった、しかし、これからは現実的な部分で、あること証明の部分に移っていくということで、より政府の役割、これがきっちりとしていかなければならないということもよく分かりましたので、また、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
それでは、今川参考人の方に続きましてお伺いしたいと思います。
不動産登記法の改正案、今のことについて、今月、経済誌に司法書士会連合会の御発言が次のように取り上げられておりました。相続登記を怠ると十万円以下の過料という罰金が科されるが、過料となるケースはかなりレアケースであるとした上で、登記の義務化による国民負担軽減のため、税制改正要望等で登録免許税の軽減などを求めていく、このように書かれておりました。
過料が科されることがかなりレアケースだというふうに述べられておりますが、過料を科す前に適切な配慮があると先ほども御指摘をされておりましたけれども、例えば、手続の簡略化も含めて、専門家の視点ではそうかもしれませんけれども、国民の視点にとっては何がどう簡略化になっているのか、何が配慮されているのかというのは全くまだ分からないというところで、広報等々もこれから大変必要だというふうに思います。
まさに先ほどの言葉で、実務家の立場、実務家ということで、そういった立場で、司法書士会さんは、まさに土地のスペシャリストとして、これからこういった対象の方々に対応していかなきゃいけないと思いますけれども、より一層丁寧にそういったことをしていかなければいけないと思いますけれども、そのような立場、役割で、このことについて、どのような役割があるのか、役割を担わなければいけないのか、お立場のお話をしていただければと思います。
お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/13
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014・今川嘉典
○今川参考人 今川でございます。お答えいたします。
まず、レアケースといった表現ですが、いろいろと説明をする中であえて極端に申し上げたフレーズの一つでありますので、決して過料に処されることはないというような意味で申し上げたわけではないですので、御理解をいただきたいと思います。資格者がしっかりとサポートすることで登記を促進していく、そして過料案件を減らしていくという意味も含まれております。それから、山野目参考人が先ほど説明をされました、相続人である旨の申出、こういう簡便な制度が用意されておりますので、過料義務を履行したものとみなされるという例が、かなり選択が増えていますので、そういう意味で申し上げました。
過料について少し申し上げますと、まず、登記の義務履行ですけれども、相続人が相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から三年以内ということになっていまして、相続発生から三年が経過したから直ちに形式的に過料に処されるというものではないというのがまず一点あります。
それから、申請義務違反の場合の過料の制裁に関してですが、提出法案では、正当な理由がないのにその申請を怠った場合ということになっております。したがって、正当な理由がないのに怠った場合に限り過料に処されるということで、この正当な理由があるかないかは登記官が判断するということになると思われますが、法制審議会で採択されました要綱から見ますと、あらかじめ登記官が相続人に登記の申請を催告する、それでもなお申請を怠った場合に過料に処するということが書いてありまして、この点は先ほども述べましたが、過料を科す科さないといった基準やその後の手続が省令や通達で定められるというふうになっております。この点、厳罰化を目的とするものではないという理解をしております。
この辺り、司法書士は、現場で依頼者、相続人から、どういう場合に過料に処されるんだ、どうしたらいいんだという不安をお持ちだと思いますので、その方々に対してはしっかりと説明をしたいわけです。ですから、過料の手続はできる限り明確にしていただいて、我々実務家の意見も取り入れていただき、国民の皆様にとって、不意打ちや不公平な取扱いがなされないような運用を図ることを希望しています。
なお、国民の皆様の意識として、過料に処されるから登記をするというのではなく、相続登記の重要性を理解していただいて、自発的に登記をしていただく、これが本来の制度の目的であろうと考えておりますので、我々登記の専門家として、それもしっかりと国民の皆様に御説明をして、相続登記の促進につながるようにしていきたいというふうに思っております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/14
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015・深澤陽一
○深澤委員 御説明ありがとうございました。
今の御説明を聞いていても、様々なケース、また様々なメニュー、方法があるということで、やはり専門的な部分だと思います。先ほどのレアケースという発言が、専門家がサポートをしていくことでレアケースになるという意味なのがよく理解できましたので、また引き続き、実務家のレベルでしっかりと支えていただけたらというふうに思います。
続きまして、ちょっと時間もあれなので、吉原、石田両参考人に御質問をさせていただきたいと思います。
石田参考人のレポート、論文ですね、こちらの元の部分も大変興味深く読ませていただきました。本当に、根本的な、また歴史的な部分があって、先ほどの発言の、分散化、共有化、また、相続税の課題、意味ですね、また、家督制度なんてものもおっしゃっておりましたけれども、なかなか、最後に御本人も、石田さんもおっしゃっておりましたけれども、すぐにこれをやろうと思っても難しいと御本人も認識をされておりますように、ここまで一気に変えていくのは難しいのかなと。
という意味では、吉原参考人が先ほどおっしゃいました、万能薬はなくて、一つ一つ積み上げていくということが一番効果的だと思いますし、今回、山野目参考人が御披露いただきました山形県のランドバンクの事例を、実態、実装の部分で、今回の法律案が十分であるという御表現をいただいたように、こういったところから一つ一つやることが必要なんじゃないかなというふうに私も今感じております。
ということで、そういったことを含めて、ちょっと一点、質問を簡単にさせていただきたい。
相続土地国庫帰属法案に関連して、お二人、まあ皆さん言っていますけれども、アメリカのランドバンクのことを先ほども取り上げていただいておりました。石田参考人は日本版のランドバンクのことをおっしゃって、提言されておりましたけれども、このランドバンクについて、何か活用方法等々をお話しいただけたらと思います。
これはちょっと私の考えなんですけれども、様々なケースがあるんです。市場ではなかなか取引されないようなものに対して、特に中山間地の土地なども何となく想定をされます。しかし、今、新型コロナウイルスによって、リモート、ワーケーション、あるいは自然を求める動きがあったり、また、若者が古民家をリノベーションしたり、家族が広い土地で暮らしていきたいので移住していくような動きが実際起きております。
そういった意味では、今回のこの国庫帰属法案が、市場に出回っている情報ばかりではなく、可能性をすごく感じるなというふうに感じますので、時間が来てしまったんですけれども、簡単に、今回の国庫帰属法案に関して、ランドバンクまではいかないんですけれども、何かひとつ、お考えがあれば簡単にお話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/15
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016・吉原祥子
○吉原参考人 御質問ありがとうございます。
この度の相続土地国庫帰属の制度というのは、土地に関するこれまでの制度をもう一度見直して、そして、政策連携を図るチャンスだと思っております。
例えば、農林地については、既に農林水産省、それから林野庁の方で、相続人の一部が不明な林地、農地について、利用権を設定できる、あるいは農地中間管理機構を介して賃借権を設定できるといった制度がございます。そうしたことの制度の活用も視野に入れたこの度の制度です。
そして、法務局の窓口に住民から問合せがあった際には、いきなり、土地を手放すということ、国庫へ帰属させるという前に、そうした既存の仕組みを利用したり、あるいはその情報を市町村にも地元の自治体にも共有をして、何か活用策があれば自治体の方で寄附として受け入れてください、そういった方策も提案をしております。
そこで、これは、いきなり国庫に権利を全部帰属させるというものではなくて、あくまでも、国の負担が過大にならないように、また国民にモラルハザードを起こさない限度において、最終的な手段としての国庫帰属制度です。そして、そこに至るまでのプロセスにおいて、国と地方自治体、そして省庁間で政策連携が図られる、そういうところが視野に入っております。その意味では、今回の制度というのは大きなチャンスであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/16
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017・石田光曠
○石田参考人 ありがとうございます。
ランドバンク制度に関しましては、アメリカのランドバンク制度が非常に参考になるんですけれども、これはやはり、いわゆる再生プラン、プランを実行するための受皿、その受皿というのはあっせんではありません。日本のランドバンクというのはただの空き家バンクでございまして、登録プラスあっせんしかできない状態ですね。これを市町村が受け取る、市町村が受け取ったままでは公有地になってしまうので、ランドバンクに移管して、ランドバンクが、市町村が作ったプラン、土地再生プラン、これは現在、日本にはございません、具体的な土地再生プランに沿ってその土地を随意に活用していく、この随意性というのが非常に重要な部分でございます。まあ、これはまた、あれとしまして。
活用プランとしましては、人口減少、人口動向に合わせたプラン、中には自然に戻していくということも含まれております。それが中長期的には経済のプラスになっているとアメリカでは実証しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/17
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018・深澤陽一
○深澤委員 以上です。終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/18
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019・義家弘介
○義家委員長 次に、大口善徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/19
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020・大口善徳
○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
四人の参考人の先生方、本当に貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。
まず、山野目先生におかれましては、法制審の専門部会の部会長で御尽力されたとともに、二〇一八年の発言から一貫して精力的に所有者不明土地問題のことに御尽力いただきまして、今回、所有者不明土地の対策の各法案の中でも一つの到達点ともいうべき法案をこういう形で御提示を、法制審で出していただいた、心から感謝を申し上げたいと思います。そういう中で、今日の御説明で、体系的に分かりやすく理解することができまして、ありがとうございます。
その中で、民法の二百三十九条二項がございます。これは、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」とあるところでございますけれども、土地所有者が所有権を放棄して土地を所有者のないものとし、これを国庫に帰属させることができるかが民法上明らかでないことから、当初は、所有権放棄を一定要件の下で可能にする民法の改正ということも検討されていたと思います。今回、この民法の改正は見送られまして、相続土地国庫帰属制度ということで、土地を国庫に帰属させるということにされたということ、これは、所有者不明土地の発生予防という観点でこういう形にされたということは理解をしております。
そこで、土地所有権の放棄は可能なのかという解釈問題が残されているところでございます。民法学者であられる先生に、このことについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/20
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021・山野目章夫
○山野目参考人 大口議員におかれましては、本日御審議の法律案の主題である所有者不明土地問題はもちろんのこと、しかし、これに限られず、厚生労働副大臣をお務めでいらした折は成年後見制度について、また近時は、父母が離婚した子のための養育費の問題につきまして親しく御指導いただき、深く感謝を申し上げる次第でございます。
仰せのとおり、所有者不明土地問題の解決を要請した重要な画期が二〇一一年の東日本大震災でありました。それから五年がたつ二〇一六年三月十三日、NHKの「日曜討論」に出演した南三陸町長は、土地の権利に関わる困難がなければ、あと二年は早く仮設住宅からの移転など復興の事業が進捗したに違いないというお話をしてくださいました。
東北の冬は寒くございます。本当に寒くございます。被災した皆さんに幾とせもの冬を強いたことを思いますと、胸が締めつけられます。
二〇一四年には、岩手県司法書士会の支援を得て、私が三陸を訪ねました。大槌町や山田町におきまして、不便な立地の仮設住宅を見た、その様子も見ました。もとより、あの東北に限られず、これから起こるかもしれない西日本や首都圏の大きな災害に際しても、土地政策、不動産登記制度に関わる人々の総力を尽くし、つらい思いをなさる方々をなくしていかなければなりません。そのためには、所有者不明土地の発生を防ぐことが望まれます。御審議をいただく相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案は、この観点の施策を盛り込むものにほかなりません。
議員御指摘のとおり、法制審議会において、当初は民法において、土地の所有権の放棄というものの可否、その要件に係る規定を置くという構想を持っておりました。ところが、そのようにいたしますと、土地とともに動産や建物についても放棄の可否などを検討して規定を置くという話になってまいりますが、それらについて法律家の間に異論のない考察が熟しているかと申しますと、そうでもございません。そこで、端的に、立法事実として政策的要請のあるところを的確に捉え、個別法で処することとし、法的構成も、議員おっしゃられたように、放棄ということではなく、端的に国への帰属としてございます。
確かに、御高察のとおり、その場合におきましても、民法の解釈として土地の所有権の放棄ができるかという論点が今後も残ります。改めて考えてみますと、国に帰属させる際の負担金の納付を回避する結果となるような放棄に限って申せば、そのような放棄を是認すべきではないと考えますし、その法的構成につきましては、従来の裁判例において見られたような権利濫用で考えることとしたり、あるいは近時の一部の学説が説くように公序良俗違反として捉えたり、いろいろ見方はあることであると思います。
さらに、今般の法律案を御採択いただく際は、むしろ、所有物の処分は法令の制限内においてのみすることができると定める民法二百六条の趣旨の理解として、今般法律案が一つの重みを持ってくるという理解も生まれるかもしれません。実際の運用も、理論研究における課題も、いずれも今後が大切という側面がございます。
引き続き御指導賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/21
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022・大口善徳
○大口委員 先生は福島県御出身ということで、この法案も東日本大震災を契機として本格的な真剣な議論がされたということを存じております。よろしくまた御指導の方をお願いいたします。
次に、日本司法書士連合会の今川会長、今川参考人にお願いします。
法案では、所有者不明土地管理人や管理不全土地管理人などの新しい財産管理制度が幾つも提案されています。これをできるだけ利用しやすいものにしていくことは極めて重要な課題であります。
司法書士の皆さんは、新たに司法書士法第一条に設けられました使命規定、登記等の法律事務の専門家として、国民の権利擁護や自由かつ公正な社会の形成に寄与するという使命規定がうたわれたわけでございます。専門的知見を持っておられ、また、財産管理の実績も持っておられる司法書士の皆さんに、どのように対応されるのかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/22
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023・今川嘉典
○今川参考人 今川でございます。お答えします。
当連合会としましては、まず、新制度に関する会員研修の充実を図って、管理人の養成をしていきたいというふうに思っております。そして、新たな財産管理制度に的確に対応できるように組織的な対応をしたい。
また、東日本大震災の復興の際に、公共事業の実施において、不在者財産管理人、相続財産管理人を選任しなければならない事例というのが少なくありませんでした。そのときに、復興庁と連携をしまして、司法書士の財産管理人候補者名簿を作成し、提出いたしております。この所有者不明土地管理人におきましても、例えば候補者名簿を裁判所に提出するなどの組織的な対応も今検討しているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/23
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024・大口善徳
○大口委員 次に、今川参考人にお伺いしますけれども、この相続土地国庫帰属法案につきましては、同法の二条三項の各号、それから同法の第五条一項各号で様々な要件が必要とされております。この国庫帰属を認められるハードルが相当高いのではないかということで、所有者不明土地発生の防止という観点からどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/24
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025・今川嘉典
○今川参考人 今川です。お答えします。
確かに、御指摘のように、国庫帰属が広く認められるという制度ではないというふうに理解しています。これは国の管理コストであるとかモラルハザードの問題がありますので、やむを得ず様々な要件が設定されているということも理解しています。
しかし、現場で相談を受ける中では、土地の所有権を手放したいという声は相当多くあります。山林や農村地域の田畑について管理が困難となった不動産について、国庫帰属を認めてほしいという要請はたくさんありますので、今後、この国庫帰属制度がどのように運用されていくのか、地方公共団体や他の関係機関と密に連携を取っていただいて、国民の皆様への負担感が少しでも軽減されるように、円滑な運営をしていただきたいと思います。
それと、法案の中で、五年後に再度見直しを行うという見直し規定も入っておりますので、連合会としましては、実例を集めて検討して、また実のある提言をしていきたいというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/25
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026・大口善徳
○大口委員 さらに、不動産登記制度の見直しの中で、相続登記の申請を相続人に義務づける提案がなされております。種々御説明もありました。所有者不明土地の発生を抑制する必要から、国民に負担をおかけするということも、これはやむを得ないと思いますが、その御負担が最小限となるように取組をしていくこと、コスト面でどのようなことが重要なのか、これをお伺いしたいのが一点。
それから、相続登記の義務化に係る規定は、施行以前に開始した相続についても、三年という猶予期間を置きながらも適用される、こういう附則が設けられているわけであります。だから、施行日において既に相続登記未了となっているものも相続登記の義務化の対象となるわけで、法的なサポートを必要とする一般の方々も少なくないと思われます。司法書士会としてはどのように対応されるのかもお伺いしたい。
もう一つ、経過措置に関する問題点として重要なのが、相続開始後十年の経過で具体的相続分による遺産分割の利益を消滅させるという今般の見直しについての附則です。新たなルールは施行の時点で既に相続が開始していたケースについても適用されますが、この場合、相続開始から十年と施行時から五年のいずれか遅い時期までに遺産分割手続を取っておく必要があります。したがって、例えば、施行より五年以上前に相続が発生したケースでは、施行時から五年以内に遺産分割の手続を取っておかないとその遺産分割の利益が消滅することになるということで、遺産分割の促進などの政策目的でこの規定が入ったわけでありますが、国民への影響は非常に大きいわけでございまして、この周知徹底が不可欠でございます。
これらの経過措置についての周知に当たって、国民に身近な法律家である司法書士の皆さんの御協力が不可欠であると思います。この点、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/26
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027・今川嘉典
○今川参考人 まず、一つ目の軽減策についてですが、いろいろな軽減策をパッケージとして導入することがまず必要だと思われますが、我々司法書士の実務の観点から見ますと、まず登録免許税の軽減措置を是非お願いをしたいと思っております。現在、固定資産税評価額の千分の四が免許税になりますけれども、義務化された場合には、登録免許税の軽減や免除措置というのを是非導入していただきたいなというふうに思っております。
それから経過措置ですけれども、確かに、現在、相続登記未了の不動産は四百十万ヘクタールあると言われております。その相続登記未了の案件にも、相続登記の義務化と、それから遺産分割協議の一部制限が適用されるというのは、これは非常に大きい問題であり、国民も不安を抱くと思います。
したがって、我々は、先ほど申し上げましたとおり、相続登記相談センターを五十の司法書士会に設置しまして、きめ細やかに説明をするような体制を整えて、国民の皆様に混乱が生じることがないように、しっかりとサポートをさせていただきたいと思っております。
なお、既に相続登記未了となっているものは、数次相続が発生しまして、相続人が数十人に上るということもざらにありますので、是非、過料制裁の運用については慎重かつ丁寧な取扱いをしていただきたいなというふうにお願いをしておきます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/27
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028・大口善徳
○大口委員 まだまだお伺いしたいことはあるんです。吉原参考人は、本当に土地基本法から御説明いただいて、ゼロからのスタートということで、しっかりやっていかなきゃいけないと思いますし、また、石田参考人は、我が党のPTにも来ていただいて、ランドバンクのことでいろいろ御説明をいただきました。
いずれにしましても、今日いただいた御意見をしっかりこれからの法案の審議に参考にさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
今日は本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/28
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029・義家弘介
○義家委員長 次に、青山雅幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/29
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030・青山雅幸
○青山(雅)委員 日本維新の会・無所属の会、青山雅幸でございます。
今日は大変貴重な御意見をありがとうございました。
若干私的なことになりますけれども、山野目先生は東北大学御出身で、私、実は入ったときに先生がまだおられまして、そのまま大学にお残りになって、それでよその大学へお移りになって、後輩として、大変御活躍されているのをいつも目にしておりまして、今日お会いできて大変うれしいなと思っております。ありがとうございます。
私は今言ったように法学部出身で、弁護士をやっておりまして、今回の改正、非常に立法事実というか、これが必要であることは、大変、私も今まで事件を通して実感しているところでございます。
所有者不明とは若干違うわけですけれども、例えば相続登記がもう本当に、明治の頃というか、すごく古い名前でしか残っていなくて、そこを何とか相続人がやりたいというところで、相続人を追っていったところ、百何十人いて、とても同意を取り付けられないものですから、取得時効でもって訴訟を起こして一気に片づけるとか、何件か実はそれをやったことがあります。そういう意味で、所有者不明土地の発生を予防する方策というのは、これからますます必要になってくるかなと。
私も、地元が静岡でございまして、やはり、山林であるとか、山林でなくても市街地でも、ちょっと郊外の方へ行きますと、既に余り土地としての換価価値もないものですから、これを手放したいという方が結構おられるわけですね。御相談に来られるんですけれども、市町村の方が寄附として受け取るには、よっぽど換価価値があるものじゃないと受け取らない。困ってしまうなというのがあって、その意味で、非常に時宜を得た適切な立法だというふうに思っております。
そんな中で、ちょっと気になるのは、先ほどもちょっと質問にあったかと思いますけれども、国庫に帰属するに当たって、具体的な運用において、政令で定められるわけですけれども、十年分の土地管理費相当額の負担金、これは、やはり手放す方は、なかなか、換価価値もないし利用価値もないようなところを、その後、負担だけずっと負っていくというのはやはり切ないということで、手放すと。そういう方というのは、やはり経済的に困窮されている方も多いものですから、そういう方がちょっと利用しにくい制度だと困るなと私は思っているんですね。
それで、例えば原野、これは二十万円ということですけれども、原野を何か管理する必要があるのかなということが一つと、それから市街地の宅地、これは八十万円、これも分からなくはないんですけれども、何か柵をわざわざ設けて草刈りもやってということのようなんですけれども、もう少し簡便化、あるいは費用を安くできないかなと思うんですけれども、この点、山野目先生、ちょっと御意見をもしお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/30
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031・山野目章夫
○山野目参考人 青山議員におかれましては、大学御在学中の折の懐かしいお話を仰せいただきまして、誠に恐縮でございます。どうもありがとうございます。
お尋ねをいただきました、国庫帰属に際して納付をしなければならない負担金のことに関して、二つの側面のことを申し述べさせていただきます。
一つは、議員が御心配になった、負担金の金額のことでございます。
法制審議会から、さらに、衆議院に法律案を提出する過程で、政府部内において、この金額のことにつきましても、ひとまずの検討が進められてきたところでございます。ただいま議員が仰せになった金額というのも、そのような過程で、一つのイメージの中心に添えられたものでございます。
しかしながら、あくまでも法律案の中におきましては、十年分の管理の費用ということを基準にして政令で金額を定めるということになっております。
今般、この法律案を審議する当委員会、そしてまた参議院において審議される際に指摘される事項等を、政府においては十分に踏まえて、国民の負担が適切になるような政令による規定の措置を施してほしいものと望みます。
強調しておきたいことといたしまして、法制審議会と並行して土地政策の審議を進めてまいりました国土審議会におきましては、この間、粗放的管理ということが一つのキーワードといいますか、そういう管理の在り方も、一つ、これからの日本においてはあってよいんだというふうな見方、思想といいますか、それが定着してまいりました。
政府としては、ただいま議員がおっしゃっていただいたような市街地を想定した金額だけではなくて、段階的に、土地の種類ごとに適切な金額を見定めて定めるという運用をしてほしいと考えるところでございますし、本院における審議においても、そのような方向での政府の検討を促していただきたいものと感じます。
もう一つの側面を申し上げます。
さはさりながら、そこの負担金の金額のところをどのように定めるとしても、議員が御心配になったような、暮らし向きに困っておられるような方がどうしてもその土地の放棄をやむを得ず望まれるというような局面に、十分に今般の法律案のたてつけのみで対応することができるかということ自体については、よく分からない側面がございます。
実は、先ほど深澤議員との間で話題になりました二〇一八年五月十二日の衆議院国土交通委員会における審議の際にも、同じ月に行われた政府に対する質疑の際に、生活保護の受給の局面において、土地を持っているから生活保護の受給の要件を満たさないのではないのか、そういうふうな事例に直面して困っている方が選挙区にいます、これはどうなっているのだという政府に対する質疑があったところでございまして、厚生労働省の方から、不適切な結果にならないように努めるという答弁がされているところでございます。
しかしながら、土地政策と社会福祉との接点という問題については、まだ論点がよく整理されていないところがございまして、今後の宿題だという側面がございます。
当委員会における三月十日の質疑におきましても、池田議員から、扶養照会の問題についてお話をいただいているところでありまして、生活保護の制度全般について今後いろいろな見直しがされていくところであるというふうに想像し、また期待するところでありますが、そのような観点からの土地政策を見てもらうということも欠かしてはならないのではないかと感ずるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/31
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032・青山雅幸
○青山(雅)委員 生活困窮者、あるいは今の日本の置かれた状況について、事細かい目配りをしていただいているということがよく分かりました。ありがとうございます。今後も是非有用な御提言をお続けいただければと思っております。
続きまして、やはり、私も弁護士で、しかも余りお金が裕福でない方の、いわゆる一般庶民の方が顧客層である弁護士をずっとしてきたものですから、どうしてもお金に困っている人のことを、いつも頭に先に浮かんでしまうわけです。
今回、所有者不明土地の発生を予防するために、相続登記を義務づける、義務づけるだけではなくて過料の制裁を科す場合がある。これもやはり、お金に困っている人が困らないのかなというところが一つ心配な点でございます。
というのは、婚姻届などは、あるいは離婚届などは、自分で持っていけば、さほど費用というのも基本的に全くかからない。なので、こういったことであればいいわけですけれども、登記となると、今回創設される相続人申告登記であるならば、簡便化もよりよいかと思いますけれども、本格的な登記となれば、これはもう、例えば私などが自分でやるときも司法書士の先生にお願いするくらいなものですから、やはりなかなか素人は手を出しにくい。さらに、それだけじゃなくて印紙もかかる。あるいは、意外とばかにならないのが、戸籍謄本をずっと遡っていくと結構な値段になってきます。こういったことが負担ができないものだから放っておくという方も一定程度おられると思うんですね。
なので、その過料をかける範囲というのは、やはり、そういった経済的な困窮な方が、やむを得ずできないでいるというような方にまでかけるのはどうかと思うんですけれども、その点について、できましたら各参考人の方お一人ずつ御意見をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/32
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033・山野目章夫
○山野目参考人 ありがとうございます。
相続登記の義務化に係る過料の制裁につきましては、正当な理由がない限り過料を科さないという改正法案の百六十四条の規定のたてつけをお示ししているところでございまして、今川参考人が先ほど力説されました、詳しくお話しいただきましたとおり、これは、丁寧に経過を調べた上で、あらかじめ法務省が通達等で定めている限られた事由に該当する場合に発動される、そういう運用が期待されるところでございます。
議員御指摘のような、お金に困っているということ自体を正当な理由に掲げられるかどうかということ自体はちょっと改めて考えてみないと分かりませんけれども、元々、こういう場合に過料を科するよということの事由を限定して列挙して、示して運用していくということを考えていますので、そこのところがしっかり運用されるのであれば、様々な暮らし向きの困難がある人に対して乱暴に過料を支払えというお話にはならないのではないか、また、そういう運用に留意をしてくださいということを政府に対しても促していただきたいというふうに考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/33
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034・今川嘉典
○今川参考人 今川です。
私は、先ほど申し上げましたとおり、司法書士の立場としまして、登録免許税の減免策というものは、これは是非導入をしていただきたいと思っております。
それから、相続人である旨の申出も、これも適切に利用することによって負担を軽減していけるのかなと思っております。
それから、戸籍の交付請求ですけれども、先生おっしゃったとおり、かなり負担になるときもあります。ややこしいのになりますと、人に頼むと、その手間の料金がかかってくるということですので、例えば、戸籍のオンライン申請等、もう少し簡便に戸籍等を交付請求できるような仕組みも検討していただけたらなというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/34
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035・吉原祥子
○吉原参考人 ありがとうございます。
登録免許税は、例えば相続が発生してから三年と一日過ぎれば自動的に厳罰に処せられるというものではなくて、今回過料が入れられた経緯というのは、私の理解している範囲では、今回の公法上の責務という、先ほど土地基本法の中で規定をされましたと申し上げましたが、国民には、土地所有者には登記をする公法上の責務があるんですよということを明確に国民に伝えるために、パッケージとしてこの登記の在り方というものを作ったということが背景にあります。
義務化ということ、そして罰則を伴うということ、そして、そうした厳しい側面もあるけれども、相続人申告登記制度ということによって、責務を果たす簡便な方策というものがそろえられていて、また、登録免許税の減免というものも模索されているということで、トータルでこの相続登記を促進させていくための一つの項目であるというふうに理解しております。
よって、過料を科すことが目的ではなくて、あくまでも促進するための強いメッセージということも含まれていると理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/35
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036・石田光曠
○石田参考人 先ほどの相続登記の義務化に対する過料の件ですが、私は、先ほども申し上げましたように、ペナルティーではなくてインセンティブでやるべき、一定期間に何らかの登記をした場合には非課税という期間を設けて、いわゆる北風と太陽、太陽政策というのがいいと思います。
それと、先ほど言いましたように、お金のことなんですが、お金がかかるということで、非常に、形骸化ということを避けなきゃいけないということを申し上げました。
私、今、いろいろな無料相談会というものを自治体の中でやっております。最近、やはりこの話というのは非常に皆さん御存じで、相続登記の具体的な手続の仕方を教えてください、もうお金がもったいないから自分でやるんだと言う。それは大いに結構なんですけれども、中身を見させていただいたら、やはり非常に危ないです。先ほど言いましたように、相続ってそんなに簡単なものではない。ドラマがあります。遺産のことを全て調査した上で考えないと、とても危険な状態というような例がたくさんございまして、無料相談の時間ではとてもじゃないけれども対応できない。
そういうときに、やはり、法テラスじゃないですけれども、専門家に御相談いただく、その費用を補助していただくような施策をお願いしたいと思います。
世界では、登記申請に関して本人申請を簡単に認めている国はございません。禁止しているところもございます。やはりそれほど、正確で、正しい、きちっとした内容、これが登記制度の根本だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/36
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037・青山雅幸
○青山(雅)委員 今参考人の皆さんがおっしゃったように、いろいろな配慮もいただきたいと思いますし、今おっしゃったように、お金のない方が公的な援助が受けられるような制度の創設というのも、反面、バックアップとして必要かなと思いますので、また参考人の方々も、その旨、政府とかと協議する場がございましたら、是非御提言いただければと思います。もちろん、私ども国会の責務でもございます。
まだ幾つか聞きたいことはあったんですけれども、大変御熱心な議論をいただきましたので、時間となってしまいました。
本当に今日はありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/37
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038・義家弘介
○義家委員長 次に、高井崇志君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/38
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039・高井崇志
○高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井でございます。
今日は、四人の参考人の皆様、本当にありがとうございました。
それでは、早速、まずは司法書士会の今川会長にちょっとお伺いしたいと思います。
私は地元が岡山なんですけれども、岡山の司法書士会の皆様にも大変お世話になっておりまして、今日も、さっきまでいたんだけれども元法務大臣の山下さんとか、あと、参議院議員なのでここにはいらっしゃいませんけれども、法務大臣政務官の小野田紀美さんでありますとか、あるいは日本維新の会の片山虎之助共同代表なども、あと、公明党の谷合さんもよくお会いしますけれども、新年会などに招いていただき、また意見交換し、いろいろな懇親でも深めていただいて、本当に立派な先生方ばかりで、非常に崇高な理想に燃えて頑張っていらっしゃる司法書士の皆様をいつも拝見しておりますので、今日は是非、まずは司法書士のお話を聞きたいと思うんです。
今回、これまで司法書士の皆様は、登記、裁判の専門家として、広く国民の権利擁護を実践いただいておりますけれども、一昨年の司法書士法改正で、第一条に、司法書士は、司法書士法の定めるところにより、業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、また、自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすると、非常にすばらしい一条が入ったわけでありますけれども、こうした司法書士会が、今、公共財として行ってきた取組の実績とか、あるいはその相談活動などについて、とりわけ相続という観点から、ちょっとその辺りのお話をお聞かせいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/39
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040・今川嘉典
○今川参考人 ありがとうございます、今川です。
全国の司法書士会においては、先ほど御紹介しました本年三月から稼働している相続登記に特化した相続登記相談センターとはまた別に、平成十七年から、幅広い相談を受ける司法書士総合相談センターを設置しています。大体一年間で約六万六千件の相談を受けております。相談センターは、全国で二百六か所あります。
相談内容としましては、やはり最近、相続に関するものが非常に多くなっておりまして、相続に関する相談の割合は三三・五%となっております。
それから、相続に関する相談では、登記に関する相談はもちろんなんですけれども、相続人がいない事案、それから認知症の方がいらっしゃる事案、あるいは相続人の中に不在者がいる事案などが多数含まれておりますし、最近増えております相続放棄についての相談もたくさんあります。これを見ますと、近年の所有者不明土地問題の中で指摘されている傾向が見て取れると思います。
一方で、今現在、相続登記は、アンケートによりますと、司法書士、一月に、一人三件ぐらい受けているということのようであります。これは今後も増えていくというふうに思っております。
ですから、今回の制度改正が施行されたら、施行されるまでもそうですけれども、国民の皆さんの意識が高まりますので、その法的需要にしっかりとこれからも応えてまいりたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/40
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041・高井崇志
○高井委員 ありがとうございます。
大変多岐にわたっての業務で御尽力いただいていること、本当に感謝いたしたいと思います。
もう一問、今川会長にお聞きしたいんですが、この所有者不明土地の問題に関して、これまで累次の法改正が行われてきまして、農地法や森林法の改正でありますとか、空き家特措法でありますとか、あるいは、近年では所有者不明土地特措法、それから、つい最近では表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律、一連の法改正が行われてきて、今回の法改正ということになっていると思うんですが、この辺りの、それぞれの一連の法律、一個一個挙げ出すと切りがないかもしれませんけれども、司法書士会がどのように関わってこられ、また、これからどのように関わっていかれるのかもお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/41
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042・今川嘉典
○今川参考人 お答えします。
先生御指摘のとおり、この所有者不明土地の問題については、民法、不動産登記法等の改正だけではなく、一群の法律を活用して予防と解消を図っていくというのが必要だと思っております。
司法書士は、今までも相続登記の促進に努力をしてまいりましたし、不在者財産管理人等にも多く選任されております。
また、空き家特措法では、多くの司法書士が市区町村の空き家協議会に参加して、空き家計画の策定に関わっております。それから、自治体と連携して、空き家に関する相談会も開催しています。
また、所有者不明土地の特措法の関係では、司法書士が全国全ての都道府県で、法務局の登記官が行う相続人調査、これを受託して、法務局による長期相続登記未了の土地の解消に協力をしております。
また、表題部所有者不明土地については、司法書士も土地家屋調査士さんと同じように、所有者等探索委員というのがあるんですが、それに選任されております。
以上の活動に加えて、今後も、改正後の民法、不動産登記法等にしっかりと対応していただきたいというふうに思っております。
司法書士は、土地基本法の意義や、それから一群の法律、そして今回の改正による新しい制度、これを踏まえて、しっかりと国民の皆様がその責務を適正に果たすことができるように支援していく、これが司法書士の社会に対する責任であるというふうに自覚しております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/42
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043・高井崇志
○高井委員 ありがとうございます。
本当に、これからますます司法書士の皆さんの活躍の場が広がり、また大変御期待を申し上げておりますので、是非頑張っていただきたいと思います。
それでは次に、吉原参考人にちょっとお聞きしたいんですが、これは法案に直接関わらないかもしれないのでちょっと恐縮なんですけれども、大変興味があることでして、実は、平成二十九年の朝日新聞の記事を私、読んで、吉原参考人がこの問題に関心を持ったきっかけが、土地について我々が調べ始めたのは二〇〇八年、外資が日本の森を買っているという問題がきっかけですと。
実は私も、外資が今どんどん日本の森林を買っているということに非常に危惧というか、どうしていったらいいんだろうかということを考えておりまして、是非、これは二〇〇八年頃からということなんですけれども、現状、そこからどのように進んでいるのかということとか、あるいは政府としてどういった対策が考えられるか、できれば、この法務委員会、法務行政に関わることで何かアドバイスをいただけたらありがたいと思いますが、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/43
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044・吉原祥子
○吉原参考人 御質問ありがとうございます。
現状については、その点についての法制度というのはほとんど進んでいないというのが残念ながら実態ですので、恐らく傾向としては変わりはないと思います。
私は、この話をするときに、よく、ある外交の専門家から言われた言葉を言うんですけれども、この問題はイデオロギー的に捉えられてしまって、議論をするのがすごく難しいんですね。ただ、そのある専門家が私に言ったのは、外国人云々ではなくて、お客さんを家に招くときには、なくなって困るものはちゃんと片づけるよね、そういう問題だよね、これはと言うんです。
つまり、ちゃんといろいろな投資をしてほしい、いろいろな優良な投資や人材に日本に来てほしい、それが地域の活性化につながります。そのときに、やはりここは守らなければいけないというところ、自由な経済活動の対象にすべきでないところとかことというのが国にはあって、そこをまず自分たちで考えましょう、そしてそれを明文化しましょうということなんだと。
よって、買いに来る人が悪いというわけではなくて、ということですので、まずは、実態、どこが大切なところなのかを規定をして、そこをどう調べるのかを決めましょうというのが第一歩だと思います。それについては、今、政府の方でも、内閣官房の方でも調査室が設けられまして検討が進んでいる、法案が作られたと。是非、早期に閣議決定されて提出されればなというふうに強く願っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/44
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045・高井崇志
○高井委員 分かりました。ちょっと私も不勉強で、まだ対策の法律は何もないというお話でしたので、是非、内閣官房と連携して私も取り組んでいきたいと思います。
それでは、山野目先生にもお伺いしたいんですが、これはちょっと政府に聞く話かなとも思うんですが、先生は御専門ということで、今回、先ほど隣地の使用のお話がございまして、法の二百九条に、一定の目的のために必要な範囲内において隣地を使用することができるというのがございますけれども、一方で、ただし書では、住家についてはその居住者の許諾がなければ立ち入ることはできないとあると。そうすると、土地についてはこのただし書のような規律がないので、必要な範囲内であれば所有者の反対があっても隣地を使用することができるとも読むことができるとも思われる。
そういった中で、我が国は自力救済が禁止されている、ないわけですけれども、今般のこの提出法案の読みようによれば、あたかもこの部分については自力救済ができるというふうにも考えられるんですけれども、先生のお考えはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/45
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046・山野目章夫
○山野目参考人 高井議員におかれましては、本法律案に御関心をお寄せいただき、ありがとうございます。
晴れの国であるはずなんですけれども、大きな災害もあって、大変復興に御尽力をなさっておられるところではないかと想像いたします。私も真備地区に伺わせていただきました。ありがとうございます。
それで、民法などの法令の法文において何々することができるという表現が用いられている場面というのは、議員が話題にしていただいた隣地立入り権の場合もそうでありますけれども、民法の中でこう眺めてみますとたくさんあるわけでありまして、債権者は債務者に対して履行を請求することができるという法文があります。
そうすると、お金を貸した人はお金を借りた人に対して返せと請求することができるというのが通常の法律理解として得られるんですが、だからといって、借りた人が返さないと言っているときに、借りた人のかばんをもぎ取ってきて、その中に手を入れて財布を取り出して、このお金、幾ら幾らの金額の分、貸したよねといって無理やり取り出していいかというと、その義務の履行を迫られた人が、いやいや、それは困ります、私はちょっとそれはここで任意でするつもりはありませんというふうに言われたときには裁判を通してくださいというお話になるものでありまして、それはこの隣地立入り権に関しても同じであります。
確かに、必要がある範囲で隣地に立ち入ることができるという法文を御提示して御審議いただいておりますけれども、しかし、例えば庭でバーベキューパーティーを今日は家族でやるんだ、いやいや、民法に立ち入ることができると書いてありますので入らせていただきますよ、バーベキューパーティーのテーブルはちょっとよけてくださいというふうに言えるということになるのではなくて、言われた側は、ちょっと待ってください、その趣旨は分かりますけれども今日は困りますよ、あしたにしていただけませんかと。いやいや、今ここに工事の人が来ていますからどかどかと入りますということで押し問答になったときには、それはそこまでです、裁判を通してくださいというお話になります。
議員御指摘の住家に関するただし書は、裁判を通しても拒むことができますよ、もう絶対に入らないでくださいと。そこはもうプライベートな、私事の空間なわけでありますから、そこは更にそのもう一段上の方が働くということにしておかなければなりませんという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/46
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047・高井崇志
○高井委員 ありがとうございます。真備地区にも入っていただいたということで、本当に感謝を申し上げます。
では、最後の質問になると思いますけれども、石田参考人にもお聞きしたいんですが、諸外国の事例ですね、海外の。資料、今日は時間がなかったので余り説明いただけなかったんですけれども、諸外国、海外と比べて、今日本でもっと取り入れた方がいいと思われる制度、これは是非参考にした方がいいんじゃないかというのがあれば御紹介いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/47
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048・石田光曠
○石田参考人 非常に大きなテーマでございます。
たくさんあるんですけれども、まず一つは、先ほど言いましたように、やはり受皿をきちっとつくって、まず再生プラン、人口動向に合わせたプランをつくって、そのための受皿をつくって、国民が要らないと言っている土地は積極的に回収できるような仕組みをつくって、そして再生していく。これが中長期的に非常に重要ですので、いわゆるランドバンク制度、一つ参考になるかと思います。
あと、外国人の所有制度、これも、それぞれ各国、いろいろ制度を取っていますので、これも参考にする時代に来ているんじゃないか。というのは、かなり今日本で外国人所有が増えております。都会の高級マンションから林野、山林まで、これは本当にかなり、手遅れじゃないかと思うぐらい進行しておりますので、これに対する制度もこれから考えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/48
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049・高井崇志
○高井委員 大変参考になる意見をたくさんありがとうございました。
どうもありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/49
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050・義家弘介
○義家委員長 次に、稲富修二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/50
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051・稲富修二
○稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。今日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。
まず、四人の参考人の皆様にお伺いをいたします。
私は福岡なんですけれども、どちらかというと都市部なんですね。同じ所有者不明土地といっても、都市部とそうでないところは随分と対応が違うかと思います。その点について、この法案、あるいはこの対応についてどのように考えればいいのか、是非御意見をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/51
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052・山野目章夫
○山野目参考人 ありがとうございます。
所有者が不明であるという事態、それから土地の管理が不全であるという事態を抽象的に取り上げて対策を講じようという提案を盛り込んでいるのが、今般の民法等の一部改正の法律案でございます。
民事の法律の特性から申しまして、国土交通省が進めている土地政策とは性格が異なりますから、都市部と山村部、それから大都市圏か地方であるかといったようなことの振り分けの観点を入れて、とりわけ法文の規定の文言をたてつけるというようなことはされてございません。
しかしながら、この法律に基づいて、当然、その進められていく施策の実効性を確保する上では、そういうことを意識しておかなければいけないということは当然でございます。
一言で土地の管理不全といいますけれども、管理不全って何ですか、あなた、管理不全というのを見たことありますかというふうに問われたときに、その具体像をイメージしますと、例えば、ごみの散らかしが放置されている、雑草が繁茂している、このあたりまでは多分都会でも山村でもあるんだろうと思います。樹木の管理がよろしくないといったあたりになってきますと、都会にもあるかもしれませんけれども、どちらかというと山村部が多い。反面、建物の施錠がきちっとされていないので危なくて困りますよねというのは都市部だと思いますね。また反面、鳥獣被害みたいなことになってきますと、これは山村部の方々を大変悩ませている事象です。
いずれも、今回御提示申し上げている民法の法文にしたときには、管理が不全であるために他人の権利を侵害するおそれという抽象的な文言に収められますけれども、運用に当たる裁判所の各庁が、その事案の特性を見ながら適切な管理人を選任してくれるなど、対応してくれることだろうというふうに期待いたします。
議員お尋ねの所有者不明ということに関しても、都会に存在する不動産、建物なんかも含めて申しますと、都会でお亡くなりになった方の相続人は、実は地方にいらっしゃる、あるいはその逆であるかもしれないというような仕方で、居住が分散して地域コミュニティーが脆弱になっているということを背景とする所有者不明土地問題があるかもしれません。
他方、地方に参りますと、東日本大震災の場合が典型的でございますけれども、高台の権利関係が不明であったという事象がたくさんあって、あれに悩まされました。あれは神戸の震災の際にはなかった事象でありまして、高台の所有者不明のため、災害復興住宅が三陸において建てることができませんでした。
高台というのは、何かとても響きがよくて、一見、耳から入ってくる、あるいは、漢字の言葉を見ると、何かすてきなところであるような印象すらありますけれども、現地に行ってみれば、それは、小高い丘の、ただ草ぼうぼうの場所であります。誰も今まで関心を持たなかった土地が急に災害復興住宅の適地として注目を浴びる、しかし、長い間にわたって、明治、大正の時期から権利関係が投げやりにされてきた。これが地方で、都会に全くないわけではありませんけれども、地方で見かける光景であります。
土地が、あるときに、もて期がやってきたというふうに申し上げればよろしいでしょうか。それまで全然もてなかった土地が、震災という全く不幸な出来事でありますけれども、それをきっかけに突然もて始めて、あなたの権利関係はどうなのと言われても、長年放っておいて今更何ですか、それはと。災害のときに適地だというなら、あらかじめきちっとその権利関係を追って相続登記をするなどフォローしておくべきだったのではありませんかというお話になるものでありまして、まさに今般、法律案にその観点の施策を盛り込んでいるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/52
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053・今川嘉典
○今川参考人 お答えします。
今回の所有者不明土地問題というのは、今、山野目参考人もおっしゃいましたとおり、都市部と地方で基本的には変わらないとは思います。
ただ、地方は人口減が進んでおります。そして、山林や農地が多いということで、やはり相続登記未了の案件が増えている、多いと思われます。それから、管理もしにくい、流通も乗せにくいということで、所有者不明土地の問題は、感覚ですけれども、地方の方がより深刻なのではないかというふうに思います。
それと、地方の山林等ですと、一般の方はちょっと勘違いがありまして、相続登記をなぜしないか、相続したくないからという勘違いがありまして、登記をしてもしなくても相続をしておるわけでありますけれども、登記をしないことによって、二次相続、三次相続が起きることによって、更に問題が深まるということもちゃんと理解をしていただかなければならないなというふうに考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/53
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054・吉原祥子
○吉原参考人 ありがとうございます。大変本質的な問いをいただいたなと思っています。
日本のこの今の都市部からの人口流出、コロナで少し傾向が変わっていると思いますけれども、都市部と中山間地などによって土地に対する感覚、金銭感覚とかあるいは権利の意識というものが大きく異なると思います。
土地というのは、ふだんは負担に思っていても、いざ手放すとなると、いろいろなしがらみがあったり、実は思い入れがあったり、親族の目も気になったりして、次の一歩が踏み出しづらいというものもあります、地域の目もあったりして。そういうのがやはり地域性というものが出てくると思います。
あと、問題の構造は同じなんですけれども、都会の場合はマンション問題がこれから非常に、同じ問題が発生してくると思います。
それから、こうした所有者不明という構造の問題に対応する際の弁護士などの実務家の方の声を聞いても、例えば立入りということの感覚が随分違うと聞きます。都会の場合は、立ち入るんだとなるとすごく権利意識が喚起されるわけですけれども、田舎で広大で空き家がぽつんぽつんとあるような状況で立入りという中での感覚というものも違うんだと。当然、役所の方々の感覚も違うでしょうから、そういうところに配慮しながら、民法では原則を定め、そして地域性に応じた運用というものを地域ごとに実践していけるようにするということが大事ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/54
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055・石田光曠
○石田参考人 私も皆さんと同じように、都市部と地方部という区別というのは必要ないと思います。そうではなくて、やはり都市部、地方部それぞれに独自の再生プランといいますか具体的な活用プランですね、これが異なる場合があるというだけの問題だと思います。
ただし、一つ大きな問題としましては、山林という問題がありますね。日本の六八%が山林だと言われておりますが、これは本当に今物すごい勢いで細分化されてきまして、境界確定なんてとてもできない、あるいは立入りもできないような区画がいっぱいありまして、そこに所有権がついております。この中で非常に、外国人の所有率が今物すごく増えている。現場を見たわけではなく、ただ買っているだけの話なんですけれども。この山林に関しては、やはり所有と活用というものをしっかりとこれから分けざるを得ないと思います。これは災害対策も含めてです。
これは私のただの私見でございますが、山林に関しては全て国家の方でそこの所有権というのはひとつ確立していただきまして、境界とかそういったことは関係なく、活用に関して、民間に広く活用できるように、放置がなくなるような、活用ができるような施策をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/55
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056・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
また、続きまして、四人の参考人の皆様にお伺いします。在留外国人についてです。
相続などに際し、身分関係の証明が困難なケースがございます。ちょっと、もし答えられればということで教えていただければと思います。
二〇一二年七月に外国人登録法が廃止されまして、一定の在留外国人に外国人住民票が創設されましたが、身分関係については記載がされていない。このことを放置したままで相続登記を義務化するということに関しては、やはり問題があるのではないかということでございます。
今現在、在留外国人は三百万人に達さんというところ、そして、永住者は八十万人いらっしゃるという現状でございます。何かそれに対する御示唆があれば、いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/56
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057・山野目章夫
○山野目参考人 御質疑ありがとうございます。
不動産登記制度と国際化という課題で物を見てアプローチしたときに、今議員御示唆いただきましたとおり、幾つか解決しなければならない問題がございます。
もちろん、お話にありましたような外国人住民票の制度の創設以降の運用経過を踏まえて、今後とも施策の見直しをしていくことが肝要でございますけれども、ひとまず、本日御審議をいただいている法律案ないしその関連のことで、二つのことを申し上げますと、一つは、法律案に既に盛り込んである内容のことでございまして、外国におられる方で連絡がうまく取れないという方については、その方が登記名義人になっているときには、国内の連絡先を登記してもらう、これは所有権の登記についての措置として提案してございますけれども、そういうことを講じていて、所有者探索の過程など、あるいは御指摘のあった相続登記の履践の過程などにおいて問題になる際にも、関連するコミュニケーションが今まで以上にうまくいくようにということの観点からの施策を提案しているところでございます。
もう一つは、外国人の住所がどこにあるかという問題につきましては、日本の戸籍ないしは住民票の書類だけでは公的には容易に確認をすることができない場合もございます。外国政府が関与して作成した書類によって外国人の住所を確認しなければならないことになりますけれども、これについては、運用がこれまで合理的なものであったかどうかを、法制審議会の審議の過程で一旦点検をし、問題点を洗い出し、今後の運用に生かしていくということが現在法務省において検討されてきたし、今後も検討されていくだろうというふうに見通しております。
これは、運用として措置すべき事項でございますので、法律案のこの条文にこれですという形に、目に見える仕方に必ずしもなっていないかもしれませんけれども、政府の決意としてはそういうふうな見方で臨んでいるという理解をしておりますから、またその点どうなんだということは、政府をただしていただければありがたいと感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/57
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058・今川嘉典
○今川参考人 外国人の方の住民票の登録制度については、先生が御指摘のとおりの問題もあると思っています。
私、司法書士の立場で、今回、住所、氏名の変更登記も義務化となりました。そして、経過措置によって、既に名義人となっている者で住所変更登記がまだ未了のものにも適用されるということになります。
そうすると、外国人の方の住所変更、氏名変更等をするときには、外国人住民票制度が導入される前の外国人登録の情報というものも、例えば、プライバシーに配慮はしながらも、我々資格者がその確認をできるようにしていただきたいというのは、要望としてあります。
なぜならば、法務局に対して、住所の変更を証する資料というものを添付しなければなりませんので、その交付の在り方についても検討はしていただいた方がいいかなというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/58
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059・吉原祥子
○吉原参考人 ありがとうございます。
基本的には、内外無差別で、先ほども少しお話ありましたけれども、ここは経済活動の対象としてはいけないというところについては、外国人であろうと日本人であろうと、売買の状況を国が把握をしておく、実態調査をするという基本があると思います。
今回、連絡先、今、山野目参考人からお話がありましたように、登記に、非居住者については国内の連絡先を登記事項として書いてもらうということになりました。それは大きな一歩であると思います。
ただ、非居住者の方については、これは別に、日本人も、非居住者になれば外国にいるということになって、戸籍や住民票からたどるということができません。そういう意味では、やはり探索の困難というものはあると思います。そこについては、ただ、今回、連絡先が入ったということは、一つ、一歩かなというふうに思います。
それから、土地基本法において土地所有者の責務がうたわれたということは、すなわち、それが個人であっても法人であっても、そしてどこの国の方であっても、日本の土地を所有する以上、責務があるんだよということが広くうたわれたということは意味があると思います。今まで、国民の責務というのはあったんですけれども、土地所有者の責務というのはなかったので、そこは一歩前進かなと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/59
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060・石田光曠
○石田参考人 外国人に関しまして、外国の例でいきますと、大体、日本人であろうが外国人であろうが、不明者の探索というのは、基本的に、公示をして、公告をして、名のり出てこなかったら権利がないよ、そういうふうな考え方が外国の主流でございまして、日本はやはり戸籍がありますので、探索をしなきゃいけないという問題があります。
私は、経験した中で、アメリカ人の国籍の方が相続人になったケースがありまして、不明、これでどうしようかと思ったときに、専門の調査会社に頼みまして、アメリカのデータを全部捜していただきました。アメリカではやはり、そういう個人認証データというのは非常に充実していて、公開もされております。特に不動産関係の情報というのは非常にオープンにされております。そこから見つけることができました。
日本もやはり、これから非常に国際的になるとしたら、そういう個人データというものを非常に連動しなきゃいけない時代が来るかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/60
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061・稲富修二
○稲富委員 どうも、参考人の皆様、ありがとうございました。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/61
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062・義家弘介
○義家委員長 次に、藤野保史君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/62
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063・藤野保史
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
今日は大変貴重な御意見をありがとうございます。
相続登記の義務化についてお聞きしたいんですが、この点で、先ほど石田参考人から、意思の伴わない、そういう状態をつくるというのは危険だという御指摘がありました。
今年の二月二十五日には、全国青年司法書士協議会の会長声明も出ておりまして、この中で、この相続登記の義務化について、こういう指摘があります。
いわゆる所有者不明土地の問題は、多数当事者の共有状態を解消するための合意形成の困難性にこそ、その原因がある。相続人全員が関与せずとも可能である法定相続分による所有権移転登記を推進することは、法定相続分による登記を行ったことによるあつれきの発生等により、登記手続に関与しなかった当事者との合意形成をますます困難にする。
こういう指摘がありまして、この点につきまして、まずは、石田参考人以外の三人の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/63
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064・山野目章夫
○山野目参考人 ありがとうございます。
藤野委員がお挙げになった全国青年司法書士協議会は、本日の所有者不明土地問題にかかわらず、子の養育費の問題であるとか様々な課題に取り組んで、精力的に、司法書士の観点から、社会経済の各種の難題についての対策提言をしてくれている団体でございます。
今回、この相続登記の義務化に関して、御指摘の、その会長声明という形で意見をお述べになっているところも拝読させていただきました。
遺産分割が適切に進められるために法律家の支援が必要である、その視点はどうなのだという、その全国青年司法書士協議会の問題意識は誠にごもっともなものであるというふうに感じます。
したがいまして、本日御審議をいただいている法律案は、不動産登記制度の側面から、登記の手続の側面からこれをしてくださいということをお願いするという、その規定をお示ししていただいて、直接にはそれを審議していただいているということになっていますけれども、それだけなのですか、あるいは、その周りで展開すべき政策については何も関心を払わなくてよいのですかというと、話は全く逆でありまして、そんなことはありません。
いわば硬い性質と軟らかい性質の施策ということを申し上げれば、登記の手続をしてくださいという硬い施策を本日の法律案で御審議いただいておりますけれども、広い意味での法律家の支援を差し上げて、国民が納得のいく遺産分割をしてもらう、我が国社会の制度環境を整えていくために、まだやることがあるでしょう、軟らかい施策として、その支援はどうなんですかということについては、引き続き立法府としても関心を抱いていただきたいと望みます。
司法書士の役割もそうです。それから、弁護士も仕事をしてくれると思います。それから、近時やはり注目していかなければいけないのは、法務局行政に対して、いろいろな負荷がかかっている面もあるんですけれども、新しい役割をお願いしてきているという部分があります。
これらの人たちの総力を結集して、よい遺産分割がされる社会に日本をしていくということについて、議員のお尋ねは御関心を払っていただきましたものであって、深く御礼を申し上げます。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/64
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065・今川嘉典
○今川参考人 お答えします。
我々も、私も、単なる義務化は消極であるというふうに常々申し上げております。何年以内に登記をせよということになりますと、何年以内に遺産分割協議をしなさいということになりまして、意思表示を強制するのは余りよろしくないのではないかと。
そして、それを回避するために、法定相続分による登記、これは、相続人が多数いた場合に、そのうちの一人が法定相続ということで登記をできますが、先生御指摘のとおり、知らない間に自分の名義の住所、氏名が入ってしまうとか、いたずらに登記名義人が増えてしまうということもありますので、それを強制することもなかなかできないので、私たちは、当初から登記手続に代わる簡便な申出制度を入れてはどうかということを提唱してまいりました。
それで、この度、相続人である旨の申出が入ったということに関して、その申出をすることによって義務履行があったとみなすという規律が入ったことを前提としまして、この義務化全体に賛成をしたわけであります。
ただ、相続人による旨の申出さえすればそれでいいんだということではありません。最終的には、遺産分割協議を経て、その結果を踏まえた登記をするというのが、これが本来の在り方でありますので、遺産分割協議を促進していくという面において、司法書士も含めて、弁護士の先生方は当然ですけれども、資格者が相続人をサポートしていく、こういう体制が必要なんだろうなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/65
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066・吉原祥子
○吉原参考人 ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、相続が発生したら、なるべく早期に相続財産の清算が行われるというのが理想の姿であると思います。
今回の改正案の内容は、法定相続分による相続登記をすればそれだけでいいとは決して言っていませんで、その後、遺産分割協議が行われた場合には、それに沿って改めて遺産分割協議に基づく登記をしてくださいねということを盛り込んであります。そして、その際には、手続が簡便になるように、更正登記という扱いで単独申請できますよというふうな配慮がされています。したがいまして、これは段階的に登記情報を拡充していくようなたてつけになっております。
したがいまして、法定相続分だけで止まるというような趣旨では決してないということは申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/66
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067・藤野保史
○藤野委員 石田参考人にお伺いします。
先ほど、そういう意思の伴わない相続というのは危険だというお話もありました。もし何かそれでつけ加えることがあれば教えていただきたいことと、あと、先ほど来出ておりますアメリカのいわゆるランドバンク、これについて、もう少し詳しく教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/67
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068・石田光曠
○石田参考人 ありがとうございます。
先ほどの、意思の伴わない所有になってはいけないというのは、先ほど言いましたように、形骸化の心配です。
やはり、死亡の公示と、確定的な承継人による遺産分割協議としての相続登記は分けるべきだということで、後者の方は強制してはいけない、これは先ほど今川会長もおっしゃったとおりでございます。
外国ではどうなのかといいますと、今申しました、そういうたてつけができております。
なぜできるのかというと、遺産分割の中で、やはりどうしても、これは日本の現実でもありますが、法律的にはいわゆる権利というのが発生しているというのはあるんでしょうけれども、相続が発生して、相続人の権利が発生するというのは、法律上それはあるんですけれども、実際に、やはり受け取れない、相続できない、誰も責任が取れないという遺産というのはあると思います。それを放棄するためには、今、相続放棄、全部を放棄するという方法しかないんですが、海外ではどうしているかというと、やはり、不動産に関しては、そういうふうな、簡単に言いますと、嫌々相続されるぐらいであれば、いわゆる市町村、地元の市町村に返してください、そして市町村が活用プランに沿って使わせてもらいますと。その方がよっぽど有効であるということで、お手本になってきたのがアメリカのランドバンクでございます。
アメリカのランドバンクは、レジュメの四ページに詳しく書いておりましたが、アメリカでも、ラストベルトの辺りで相当な空き家問題が発生した時期がございました。このときにどうしたかというと、日本と同じようにいわゆる空き家を積極的に空き家バンクに登録をさせて、市場経済にどんどんどんどん送り込んだ。その結果、人口が増えない状態でそういうことをすると、結局、投機的な買主に行ってしまう、かえって町がスラム化が拡大した、こういう時代が現実にありました。
日本でも今、同じです。そういうふうに空き家バンクで一生懸命空き家を掘り起こしたところで、結局は、京都なんかでは外国人による外国人のための民泊が増えたりとか、そんなことも現実、ありました。
まあ、それはいいとしまして、そこでアメリカはどうしたかというと、逆に市場に出さない、いわゆるマスタープランに沿ってそれを再生しようじゃないかと。実際に空き家なんかは解体費用がかかります。これは日本と同じぐらい、二百万前後、お金がかかってきます。これは全部公費で出しています。何でそんなことができるのかといったときには、やはりそれはいわゆる日本でいう憲法二十九条の補償と同じで、それぐらいは出しましょう、ただし土地は無償ですと。固定資産税というのはそのために取っているんだというふうな意見もありました。
そういうふうに、公費をかけてでも自分たちで積極的に早期に回収して、それを地域のマスタープランに押し込んだ方が、現実的に経済の回復につながった。まず、経済だけではなくて治安、こういったことも回復したということが現実に起こったので、今、アメリカでは非常に広まっていった。フランスでも同じようにまねて、そういう制度を今つくって、できました。
そういうことで、一番大切なのは、遺産分割を促進するためにはやはり受皿が必要なんです。どんなに相続人が要らないと言った土地でも、実は国家としては、要るんです。市町村としては、要らない土地なんかありません。
なぜそれが受け取れないのかといったら、まずプランがないこと、それと、余りにも細分化されてしまって、プランすら、活用すらできない土地が増えてしまった。ということは、集約すればいいんです。集約するために回収すればいい。そのためにやはり受皿というのは必要でございます。
そういう意味では、日本版ランドバンクというものをつくって、積極的に回収できる、受皿がある、このことがあることによって、いろいろな財産管理人も含めて、相続人も安心して遺産分割ができる、意思ある遺産分割が促進できるということにつながっていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/68
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069・藤野保史
○藤野委員 ありがとうございます。
ちょっと時間がなくなってきたんですが、山野目参考人にお聞きしたいんです。
全国青年司法書士協議会はもう一つ指摘していまして、民法の登記の対抗要件主義との関係で、民法は御承知のとおり百七十七条及び八百九十九条で登記を第三者対抗要件と定めております。つまり、登記を備えるかどうかというのは当事者の意思に委ねられているのが原則でありますが、今回、民法とは違う手続法である不動産登記法において相続による所有権の移転の登記に限って申請義務を課すとなりますと、民法の定める原則とのそごが生じるのではないか、こういう指摘があるんですが、これはどのように考えたらいいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/69
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070・山野目章夫
○山野目参考人 民法の百七十七条と、それから八百九十九条の二の規定でしょうかね。(藤野委員「八百九十九条の二」と呼ぶ)そうですね。
対抗要件として定められている登記、そういう理解で今までしてきたということは、議員御指摘のとおりでございます。
裏返してみたときに、対抗要件としての役割を果たすということしか登記には期待してはいけないということなのかというと、そうではないという側面に、今般提出されている法律案は、不動産登記制度に対する見方を点綴するということを促す要素が含まれているのではないかと感じます。
不動産登記制度というのは今まで何となく民法の附属法令みたいなようなイメージで受け止められてきたかもしれませんけれども、もう少し公的な側面というのがあるのではないでしょうか。民事行政、国民の権利基盤を支えるものとして育てていく、その役割の一つが、振り返ってみたら対抗要件ですねということがあること自体は否定しませんけれども、対抗要件のみですかというと、そうではないんじゃないでしょうか。
私たちが知っているよい例は、自動車の登録制度なんですね。あれは、確かに一面では、誰が所有者であるかということを登録し、そして対抗要件としての機能を果たさせますけれども、同時に、国土交通省が保安基準を満たしていますかということをチェックしましたということを明らかにし、そのことを継続してコントロールするよすがでもあるんですね。自動車というのは、危険なものが町じゅうを走られたら、それは我々にとっては危なくて困りますから、登録制度に、民事の制度としての側面と、誤解を恐れずに言えば、広い意味での警察対応としての側面と両方を持たせているんだというふうに理解しますけれども。
これからの日本の不動産制度は、やはり、そのような民事の対抗要件としての制度としての側面と、もう少し公的な、土地政策の側面からの大事な役割という点にバランスよく光を当てて見ていってほしい。
全国青年司法書士協議会がおっしゃったことはそのとおりでありますけれども、今回の新しい制度がもし法律になるのならば、またそれを踏まえて、全青司においてもいろいろ批判的な検証をしていただければ土地政策にとって有益であるというふうに感ずるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/70
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071・藤野保史
○藤野委員 今日は大変ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/71
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072・義家弘介
○義家委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
次回は、来る二十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00520210319/72
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