1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和三年三月二十三日(火曜日)
午前九時三分開議
出席委員
委員長 義家 弘介君
理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君
理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君
理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君
理事 階 猛君 理事 大口 善徳君
井出 庸生君 井野 俊郎君
大塚 拓君 神山 佐市君
神田 裕君 黄川田仁志君
国光あやの君 小林 鷹之君
武井 俊輔君 武部 新君
出畑 実君 中曽根康隆君
野中 厚君 深澤 陽一君
藤原 崇君 盛山 正仁君
山下 貴司君 吉野 正芳君
池田 真紀君 寺田 学君
中谷 一馬君 松平 浩一君
屋良 朝博君 山花 郁夫君
吉田 宣弘君 藤野 保史君
串田 誠一君 高井 崇志君
…………………………………
法務大臣 上川 陽子君
法務副大臣 田所 嘉徳君
法務大臣政務官 小野田紀美君
財務大臣政務官 船橋 利実君
政府参考人
(法務省民事局長) 小出 邦夫君
政府参考人
(財務省理財局次長) 井口 裕之君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局長) 橋本 泰宏君
政府参考人
(国土交通省不動産・建設経済局次長) 吉田 誠君
法務委員会専門員 藤井 宏治君
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委員の異動
三月二十三日
辞任 補欠選任
小林 鷹之君 武部 新君
山下 貴司君 神山 佐市君
同日
辞任 補欠選任
神山 佐市君 山下 貴司君
武部 新君 小林 鷹之君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案(内閣提出第五六号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/0
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001・義家弘介
○義家委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、民法等の一部を改正する法律案及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案の両案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長小出邦夫君、財務省理財局次長井口裕之君、厚生労働省社会・援護局長橋本泰宏君及び国土交通省不動産・建設経済局次長吉田誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/1
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002・義家弘介
○義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/2
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003・義家弘介
○義家委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/3
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004・山下貴司
○山下委員 自由民主党の山下貴司であります。
まず冒頭、与野党の理事の皆様に感謝を申し上げたいのは、この重要な所有者不明土地対策のための民法等の改正案、これについて、やはり与党の議員もしっかりと質問をしたい。これは、やはり与党の議員としては、国民の皆様になぜこの法律が必要なんだということをしっかりと国会審議を通じて訴える必要があるからなんですね。往々にして、与野党の議員の質問の配分というのは、与党の議員が野党の議員の半分ぐらいというふうなこともあります。ただ、今回は、与野党の理事の皆様の御尽力によって、与党も一時間半、そして野党も一時間半という平等な時間配分の中で、国民の皆様にとってとても大事な法案をしっかりと訴えることができる、そのことに関して与野党の理事の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。
さて、今回の所有者不明土地対策のための民法等改正案、これは、本当に、国土が狭い日本において大きな懸念であった所有者不明土地対策の切り札として、明治以来の大改正を含む大きな民法及び不動産登記法の改正をするものであります。
国土交通省の調査によれば、この日本において所有者不明土地というのが二二%もあるというふうな資料もあります。これは九州よりも広い土地。これが所有者不明土地である以上、例えば譲渡であるとか処分もできない、また管理にも支障を来している。そういうような状態を解決するという形でこの法案が出されるものであります。
政府においては、二〇一七年の骨太の方針などを受ける形で、所有者不明土地対策関係閣僚会議を設置、そして対策の基本方針を決定した上で、次々と法改正を重ねてこられました。それから僅か四年という短期間の間に、明治以来の大改正も含め、この法案提出に至ったことについて、本当に関係者の皆様には心から敬意を表したいと思います。
そして、上川大臣におかれては、関係閣僚会議が設置された当初から、メンバーとして、法務大臣として基本方針を策定され、そして昨年、法務大臣に再々登板されてからは法案作成にリーダーシップを発揮され、この法案提出には特別の感慨をお持ちだと思います。
まず、上川大臣のこれまでの所有者不明土地対策への取組を踏まえ、この法案提出について思いをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/4
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005・上川陽子
○上川国務大臣 所有者不明土地問題に関しましては、全国津々浦々で様々な課題が寄せられまして、そしてこの国会におきましても、また政府におきましても、また各党におきましても、随時の検討を進めていただきながらここに至ったという長いプロセスがございまして、今改めて、今回、総合的かつ本格的な民法改正ができる、また不動産登記の改正ができるということについては感無量の思いでございます。
ちょっと時間が限られてはおりますが、私自身、一番初めに当選した直後でございましたが、私の地元の一級河川が氾濫しまして、のり面が全部やられて、そしてそれを対応するために一生懸命土地の所有者を市の方が追っかけながらも、やはり所有者不明の土地があったということで、そのところを除いたところで工事をしたんですが、その次、次ぐらいのときにまた同じところから被害が出ましてそれが剥がれてしまった、こういう現実がございました。いかに、所有者不明の土地があるかないかで、その後の利活用も含めて大きな課題があるということを強く認識した場面でございましたので、この問題に関しては、大臣ということのみならず、一議員としても心を砕いて活動してきたところであります。
また、当時、山下大臣もこの問題につきましては大変力強く推進していただいてきたということについて、そのバトンを今受け止めながら動いている状況でございます。
所有者不明土地につきましては、民間の土地取引や公共事業の用地取得、また森林や農地の管理など、様々な場面で問題となっております。
政府におきましても、関係省庁が役割分担をしながら、連携協力して各種の法整備を行ってきたところでございまして、法務省におきましても、これまでに、平成三十年の通常国会で成立した所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法、これは私が二回目の大臣のときでございましたが、この折に、長期間にわたり相続登記がなされていない土地の解消を図るための制度の創設が図られたところでございます。また、このほかにも、相続登記の登録免許税の免除措置を設けたり、また、法務局におきまして、自筆証書遺言書の保管制度、これを創設したりするなど、相続登記の促進に向けた方策も講じてまいりました。
これまでの取組でございますが、所有者不明土地対策として早期に実現可能な方策について、所要の法律の制定、改正を含め、先行的に行ってきたものでございます。
他方で、この法律案でございますが、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化という二つの側面から総合的かつ本格的な対策を行うというものでありまして、一連の対策におきましての大きな節目となるものというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/5
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006・山下貴司
○山下委員 ありがとうございました。
大臣御指摘の災害対策もそうですね。先日参考人として出席された山野目先生もおっしゃっておられました。南三陸町の町長が、土地問題、その権利関係の集約がもっと容易であれば、二年間復興は早かっただろう、そういう思いもございました。そういうことは、我々、東日本大震災を経験した、あるいはそれに対して対応したいと思った議員一人一人が胸に持っているところであると思います。そしてまた、経済対策、そういったものもある。
そうしたことから、国民皆さんに関わりのある法律として、今日は、国民の皆さんに、容易に入手できる資料一あるいは資料二、これはホームページなどで公開されてあるものでございます、それに基づいて御説明を求めたいと思います。
まず、大臣からも御指摘がありました所有者不明土地問題につきまして、これは法務省だけ、あるいは何々省だけということではなくて、政府を挙げて内閣官房がしっかりと工程表を作って、そして力強く進めてきた、そうしたことが資料の二に書いてあるわけでございますけれども、今日は、法務省のほかに国交省にも来ていただきました。
この資料二の所有者不明土地問題対策推進工程表に基づいて様々な法律が作られたわけですけれども、大臣御指摘の法律に加えて、様々な法律、大変効果があったというふうに聞いております。その点について、それぞれの省庁から御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/6
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007・小出邦夫
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
まず、法務省における取組でございますけれども、これまで所有者不明土地対策といたしまして、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に基づきまして、平成三十年十一月から、長期間にわたり相続登記がされていない土地について登記官が法定相続人を探索する制度の運用を開始し、令和三年一月三十一日現在、全国五十局の法務局において登記名義人約五万三千人分、約十四万二千筆の法定相続人情報の備付けを完了し、事業実施主体へ提供してまいりました。
また、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づきまして、令和元年十一月から、歴史的経緯により登記簿の表題部所有者欄の氏名、住所が正常でない土地につきまして登記官が所有者の探索を行い、探索の結果を踏まえて表題部所有者の登記を改める制度の運用を開始し、令和三年二月一日現在、全国五十局の法務局において約一万六千筆の土地について所有者の探索を行っております。
そして、租税特別措置法の見直しによりまして、平成三十年から、数次相続が生じた土地における相続による所有権の移転の登記の登録免許税につきまして、死者を登記名義人とするものを免除する特例と、市街化調整区域外の土地で価格が十万円以下のものに係る相続による所有権の移転の登記の登録免許税を免除する特例が設けられたところ、その適用状況は、令和元年十二月までの間に前者が合計約六万筆、後者が合計約五十六万筆でございます。
さらに、法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づきまして、令和二年七月から、遺言者の申請によって法務局が遺言書の原本とその画像情報等を保管、管理し、遺言者の死亡後、遺言書の画像情報等を用いて相続人等に証明書の交付等を行う制度の運用を開始し、令和二年十二月末現在、全国三百十二か所の遺言書保管所におきまして合計約一万三千件の申請を受け付けております。
このような取組につきましては、これまで申し上げたように、それぞれ所期の成果、効果を上げているものと認識しています。もっとも、先ほど大臣の答弁にもございましたとおり、これまでの対策は早期に実現可能な諸方策でありまして、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化を本格的に図るためには、今回提出させていただいた法律案に基づく諸施策の実施が重要であると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/7
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008・吉田誠
○吉田政府参考人 国土交通省からもお答え申し上げます。
所有者不明土地対策といたしましては、平成三十年六月に所有者不明土地法を制定していただき、また、昨年三月に土地基本法の改正を行っていただいたところでございます。
まず、所有者不明土地法につきましては、その効果といたしまして、例えば所有者探索のための土地所有者に関する情報の利活用でありますとか、あるいは公共事業の用地取得に係る収用手続などが円滑に進むようになってきたと承知しているところでございます。
また、昨年、三十年ぶりに改正された土地基本法におきましては、土地の適正な利用と管理が規定されるとともに、土地所有者等の責務として、土地の権利関係と境界を明確化すべきことが規定されたところでございまして、このような改正土地基本法の理念に基づきまして、例えば今般の民事基本法制の見直しにおきます相続登記の義務化等の検討でございますとか、また土地の境界を明確化する地籍調査の円滑化、迅速化など、具体的施策が展開されてきたところでございます。
さらに、土地の適正な利用と管理を確保していくためには関係省庁が一体となって施策を推進していくことが重要でありますことから、改正土地基本法に基づきまして、政府全体の土地政策の具体的方向性を示す土地基本方針を閣議決定したところでございます。
このように、改正土地基本法及び土地基本方針に基づきまして各般の施策を推進しているところでございまして、今後とも各関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/8
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009・山下貴司
○山下委員 今、御説明がありました。また、国交省におかれては、例えば公共事業などでも、所有者不明土地があるから事業が進まないといったようなことも大分早期に解消されているように聞きます。
こうした、先ほどの御説明でも、すごい勢いで、明治以来動かなかった所有者不明土地問題が大きく動き出している。これは、与野党を通じた同僚議員の皆様の御尽力でありますし、思いでありますし、また、それに応えてくれた関係省庁の皆さんの御尽力、これは本当に大きなものがあると思います。そして、これまで累次なされてきた所有者不明土地対策のいわば集大成として今回の抜本改革がある、そういった意味でのこの法改正でございます。
本日は、お時間を多くいただいておりますので、この抜本改正について、主に、例えば登記事項であるとか、あるいは相続の土地についての国庫帰属であるとか、これについてもいろいろ大きく注目されておりますけれども、私の場合は、前半部分といいますか、民法の大改正部分にどちらかといえば焦点を絞ってお話を伺いたいと思います。登記等に関しましては後ほど大口先生がしっかりとおっしゃってくださるというふうに聞いておりますので、まず、民法の明治以来の大改正部分を含む改正について、分かりやすく、審議を聞いただけで分かる、それが私は国会議員の質疑のお手本だと思っておりますので、それを目指してやっていきたいと思います。
それでは、今回の民法改正部分の見直し、これは、大きく分けて、私の理解では、先ほど大臣がおっしゃった、まず共有物の利用の促進が第一、第二は共有関係をいかに円滑に解消するかというもの。今回の法改正の中には、所有者不明土地そして建物の管理に特化した命令等も含まれておりますが、これらも共有物の利用促進、そして共有関係の円滑な解消に資するものだと思っております。
この二本柱があって、さらに、ほかにも、所有者不明土地とは言えないんだけれども、例えば、ごみ屋敷であるとか、空き家でほったらかしになっているような管理不全土地、建物、そういったものをどう管理するか、あるいは、例えば隣地の使用権、これが明治以来余り整理されてこなかった部分をしっかりと規定する、そういった民法の改正部分、大きく分けて三つが含まれているんだろうと思います。これらについて順次伺いたいと思います。
まず、共有物の利用の促進について、原理原則を確認した上で、さらに今回どういう改正が行われているのかということについて、不明共有者がいる場合も含めて伺いたいと思います。
まず、明治以来の現行法上、共有物の利用については、共有物の全部について利用できるんだ、持分に応じて利用できるんだという規定があります。そして、資料一の二でございますが、それの左側の欄の下の方にもありますけれども、保存行為は各共有者が単独で可能なんだ、管理行為は持分の過半数で決定するんだ、変更行為は共有者全員の同意が必要なんだというふうな規定はあります。でも、実際は、何が保存で何が管理で何が変更なのかということが明確ではなかったということであります。
そして、そういったことから、この度、まず、所有者不明土地問題発生を防ぐために、あるいは管理をしっかりやってもらうためということで、持分の過半数の共有者の同意で可能な管理行為を拡充、明確化したということでございます。
その中には、条文でもありますけれども、形状、効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は管理行為として過半数でできるんだということになった。これで、例えば、土の歩道がある、土ぼこりが舞い上がるのでアスファルト舗装をしたい、でも、これは形状を変更するから、変更だから全員の同意が要るんじゃないか、でも、一人が反対する、あるいは一人が不明共有者だということになると、上げも下げもならない、そういったことがあったわけですが、今回それができるようになった。
あるいは、短期賃貸借、建物であれば、五年以内の賃貸借であればできるようになった。これは特に、最高裁判例で既に認められていたんですけれども、ずっと条文自体は明治以来の条文のままであったということであります。
そうしたことに加えて、例えばこの管理行為について、共有者の同意というのを取るときに、期限内に異議があるかどうか教えてくださいというふうに言っても異議を述べないような方もおられるということであります。そうしたときに、期限内に異議を述べないその人を除いて過半数を超えれば管理行為ができるのだということ、これも入れられたということであります。そうしたことで、管理行為の拡充、明確化をしたというわけであります。
加えて、共有物の管理促進については、共有物の管理者制度が整備されたということで、この管理について過半数の同意があれば管理者として管理行為ができるということが含まれたということであります。
こうした、何が管理に当たるのだということをきちっと整理されたということは、今までは、いや、もしかしたら全員の同意が要るんじゃないか、でも全員の同意が取れないやということでずっと塩漬けになっていた土地の利用が一気に動き出すという意味において、一歩進んだ、非常に大きな前進だというふうに思います。
ただ、ここでもう一つ、今回の大改正がありましたのは、不明共有者がいる場合の共有物の利用促進ということでございます。
不明共有者がある場合、全員の同意が得られないため変更はできない、これは今まで当然ですが、例えば、持分の過半数の共有者が所在が分からない、そういう場合には管理行為すらできないということであります。こうしたことに対応するために、今回の法改正、不明共有者等がいる場合の共有物の利用促進のためにどういう改正がなされたのか、当局に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/9
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010・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
現行民法では、共有物の変更行為は共有者の全員の同意により、また、管理行為は共有者の持分の過半数の決定によりそれぞれ実施することとされております。委員御指摘のとおりでございます。このため、共有者の一部が不特定又は所在不明である場合には、所在等不明共有者の同意を得ることができず、意思決定をすることが困難となる場合がございます。
所在等不明共有者につきまして、裁判所が選任した不在者財産管理人の同意等によって代替するという方法もございますが、これにつきましては、不在者財産管理人の報酬等を事実上選任を求めた他の共有者が負担しなければならないこと、また、共有者の一部が不特定である場合には不在者財産管理人の選任ができないといった問題点の指摘がされております。
そこで、今回の改正案では、共有者の一部が不特定又は所在不明である場合に、裁判所においてそのことを確認し、かつ公告を実施するなどの手続を取った上で、管理人の選任を経ることなく、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、又はその持分の過半数の決定によって共有物の変更又は管理を可能とする仕組みを創設することといたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/10
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011・山下貴司
○山下委員 ありがとうございます。
既存の制度というのがなかなか使いにくい、そういったところにおいて、裁判所の確認を経た上で、不在共有者を除いた過半数で管理行為ができるということ、そしてまた共有物の変更行為についても、判明した共有者の同意があればこれも変更行為ができるということでございました。そうした新しい制度でございます。
ただ、これは管理行為ということで、全員の同意があれば変更もできるということでありますけれども、そうした管理を超える変更について、全員の合意が調わない場合についても今回の改正法というのは対応していると思いますが、それについて概要を御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/11
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012・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
今回の改正案を前提といたしましても、管理を超える共有物の変更、あるいは他人への譲渡などの共有物の処分につきましては、所在等不明共有者がいる場合の特別な手続を取ることができる場合を除いては共有者全員の同意が必要となるわけでございます。それで、共有物の変更や共有物の処分についての全員の合意が調わない場合には、現行法と同様、共有物分割手続を取って共有関係を解消することによって対応することになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/12
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013・山下貴司
○山下委員 こうした変更とか処分のために必要な共有物については分割請求をやるということになります。ただ、今回の改正では、共有物分割についても新たな規定がされております。
共有物分割制度については、実はこれまで、現物分割、要するにケーキのように等分してしまうということであるか、あるいは、一括他人に売却してそれを金額で割ってしまうかということもあったんですが、中には、例えば共有者の一人がずっと住み続けている土地、建物の場合には、自分が買い入れたいという場合もある。そういったときには、その共有者が相当金額を賠償して、いわゆる価額賠償という方式で所有権を一体として得られるというふうな、価額賠償による一括取得ということもあるということが明らかになったということを聞いております。このことについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/13
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014・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
共有物の利用を促進する観点からは、共有関係の円滑な解消が極めて重要でございまして、改正法案ではこれに関するルールの見直しを幾つかしているところでございます。
まず、御指摘の共有関係の解消をする共有物分割訴訟につきましては、御指摘のとおり、特定の共有者に金銭を支払わせて他の共有者の持分を取得させるという、いわゆる全面的価格賠償の方法による分割ができることを明記するなどして共有物分割訴訟のルールを明確化しているところでございます。
また、共有物分割訴訟には、共有者全員を当事者としなければならないなどの手続上の負担があることも踏まえまして、共有者の一部の所在等が不明である場合に、訴訟手続ではなく非訟手続の下で、共有者全員を当事者とすることなく、他の共有者が適正な代価を支払った上で所在等不明共有者の持分を取得したり譲渡したりすることができる仕組みを創設しております。
また、共有関係が相続によって生じている場合も少なくなく、この場合に、遺産共有関係を解消するためには早期に遺産分割が実施されることが重要でございまして、改正案では、相続開始時から十年を経過するまでに家庭裁判所に遺産分割の請求をしなかった場合には、原則として具体的相続分による分割の利益を失い、法定相続分又は指定相続分によって遺産分割を行うこととしております。これによって、具体的相続分による分割を求める者にできる限り早期に遺産分割手続をすることを促すとともに、相続開始時から十年を経過した後は、法定相続分の簡明な数値の割合により円滑に遺産分割を行うことを可能としているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/14
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015・山下貴司
○山下委員 ありがとうございます。
共有者全員が分かっている場合には共有分割訴訟ということで、それが価額賠償方式でという方式がきちっと明記されたということであります。
そして、不明共有者がいる場合の不動産の共有関係の解消については、先ほど局長から御答弁があったとおり、分かっている共有者が不明共有者の持分に相当する金額を供託する、そしてその持分を取得、売却する、そうした仕組みを創設したということでございます。
そしてまた、こういった所有者不明土地あるいは不明共有者が生ずる一番の場合というのは、相続でございます。相続開始からずっと遺産分割がなされない、そういったことで、この東京を見ると、どう見てもこれはもう七十年前に亡くなっている方だという登記が幾らでもあるわけですけれども、その後、そういった権利関係が錯綜するということがよくある。
こうした場合に、相続開始から十年を経過して不明相続人がいる場合には、ほかの相続人が、やはり不明な方の法定相続分でいいんだと、法定相続分に相当する金銭を供託して不明な相続人の持分を取得、売却するという仕組みがあるということでございます。
ちょっと具体例については後で聞きますけれども、ここで、不明共有者あるいは不明相続人と言われますけれども、この不明というのはどこまで調べればよいのかということなんですね。どう立証するのかということなんです。
お配りした資料の一の一では、問題点としてまずイの一番に挙げられているのが、所有者の探索に多大な時間と費用が必要なんだと。物すごく負担がある、時間がかかる。こうしたことについて手続をつくってくれたんですが、不明の立証が物すごくハードルが高いのであれば、結局この所有者不明問題は解決できないんですが、この不明の程度というものについてどのようにお考えかということについて、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/15
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016・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
最終的に、どのような調査がされ、立証がされれば不明という要件が満たされるのかにつきましては個々の事案ごとの裁判所の判断によることになりますが、一般論として申し上げますと、例えば共有者の所在を知ることができないと認められるときには、登記簿や住民票といった公的記録を調査し、その住所に当該共有者が居住しているのかを調査してその所在が不明であることを立証することとなるものと思われます。そのほか、共有者が死亡して相続が開始しているケースでは、相続人やその所在を確認することが必要となりますため、戸籍や相続人の住民票などの調査が必要となるほか、当該不動産の利用状況を確認したり、他に連絡を取ることができる相続人がいればその相続人に確認してみるなど、そのようなことをして調査をしてその所在等が不明であることを立証することになると解されるところでございます。
いずれにいたしましても、新しい制度の適切な実施、運用のためには、その趣旨、内容を、不明をどのようにして立証したらよいかということも含めましてしっかり広報、周知することが重要であるというふうに考えておりまして、このような共有者の探索方法に関する考え方についても、今後、具体的な周知方法について検討をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/16
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017・山下貴司
○山下委員 局長がおっしゃるように、これはやはり裁判官の判断ではあるんですけれども、不明かどうかを確定するのは非訟手続、つまり公開されない裁判ですよね。ですから、どこまでやれば不明だと言えるのかということは、しっかりとガイドラインなりマニュアルなどを関係省庁と作っていただきたいと思うんですね。
今の御説明では、やはり公的記録をまず見てくださいと。そのために公的記録の信頼性を増すための登記の整備というのをやるわけでございますし、また、現地に行くということは、やはり売買、処分をするんだったら当然なのかもしれませんが、それが合理的な範囲で済むように、是非国民への周知の仕方を工夫していただきたいと思います。
そして、不明共有者の持分の取得、売却ということでございますが、判明している共有者だけで例えば共有物分割手続を行いたい、あるいは第三者に売却したいというようなときにどうすればいいのかというのは、私なりの理解で考えますと、不明共有者がいる場合には、まず不明共有持分を分かっている共有者で取得していただく、その上で協議をやったり、あるいは共有分割訴訟をやってもらう、それでめでたく個々の所有権ができるということでありましょうし、第三者に売却したいというときには、例えば、第三者への一括譲渡が前提の場合には不明共有者持分の譲渡権限を認めるという新たな規定がございますよね、それを使ってやれば登記も一回で済むという形で整理されておるという理解でございますが、それでよろしいでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/17
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018・小出邦夫
○小出政府参考人 ただいま委員から御指摘いただいたとおりでございまして、改正案によれば、例えば所在等が判明している共有者のみを当事者として共有物分割手続を行いたい場合には、まず、所在等不明共有者の持分の取得の裁判を利用しまして所在等不明共有者の持分を他の共有者に集約することが考えられます。その上で、集約後の共有者間で協議をし、又はその共有者のみを当事者として共有物分割訴訟の手続を取ることが考えられます。
さらに、共有物である土地を第三者に売却したい場合には、所在等不明共有者の持分の取得の裁判を利用して所在等不明共有者の持分を他の共有者に集約した上で、集約後の共有者がその持分をまとめて第三者に譲渡することも考えられますし、このような形で持分の集約をするのではなく、共有者の一人が、所在等不明共有者の持分の譲渡の裁判を経てその譲渡権限を得た上で、他の共有者全員とともに、所在等不明共有者の持分を含めた持分全部を第三者に譲渡することも考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/18
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019・山下貴司
○山下委員 そういった形で解消できるということですが、ちょっと比較のために、前に御指摘がありました表題部所有者不明土地、これも物すごく大変なんですね。
例えば、明治時代、地主さんが土地を出し合って地域のために公共的な土地をつくった、その登記が、登記上は例えば山下太郎兵衛ほか十六名というのがある、では、そのほか十六名というのは誰なんだというと、これは分からないわけですね。
こうした表題部所有者不明土地に関してはもう既に手当てがされておりますが、ちょっと御参考までに、それについてはどういうふうな手当てがなされるのかというのは御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/19
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020・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、誰々ほか十六名といったような、不動産登記簿の表題部に所有者の氏名及び住所の全部又は一部が正常に登記されていない土地が存在いたします。このような表題部所有者不明土地につきましては、委員御指摘の表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づいて対応することが可能でありまして、登記官において探索等を行ってもその共有者が不明なケースでは、裁判所が管理命令を発し、その選任した管理人がその共有持分の管理、処分を行うことができる、そういう仕組みは設けられております。
また、今回の改正案で新たに設けられます所有者等不明共有者の持分の取得、譲渡の制度、これは先ほど来お話しいただいていることですけれども、この制度も表題部所有者不明土地について適用することが可能であると考えております。そのため、申立人が、表題部所有者不明土地の共有者が不明であることを立証し、裁判所が命ずる金銭を供託するなど所要の手続を取れば、管理人の選任を経ることなく持分の取得、譲渡をすることができることになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/20
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021・山下貴司
○山下委員 ありがとうございます。
そうした形で、本当に今までしこってきた土地というのがどんどん利活用可能あるいは譲渡可能になるということになるわけでございます。
次に、もう一つ、この共有関係の解消の柱であります長期間経過後の遺産分割における相続分の見直し、これについては、相続開始から十年経過したときには具体的な相続分による分割の利益が消滅する、画一的な法定相続分により簡明に遺産分割を行う仕組みというのができ上がるというわけであります。
これは、具体的相続分による分割を求める相続人は、十年経過前に遺産分割の申立てをしてくださいということになります。そうなると、やはり、具体的な相続分を主張される方は、分割を求める相続人は遺産分割請求を早くやろうねということで、これは反面的効果として所有者不明土地問題の解決に資するんじゃないかと思われます。これについては経過措置があって、施行時に、相続開始後十年を経過している土地については、施行後五年経過してもなお遺産分割がなされない場合にはこの法令が適用されるということで、早い遺産分割が必要なんだろうと思います。
ちょっと例を二つ聞こうと思ったんですが、時間の関係で一つだけ。
登記名義人が五十年以上前に死亡している土地について、子供の兄弟が三人いることが分かっている、二人についてはやっと連絡が取れました、でも、残り一人についてはどうも外国で亡くなっているらしい、相続人がどれだけいるかも分からない。この土地を譲渡を受けたい、あるいは処分したいという場合には、どういうふうにすればいいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/21
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022・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
今お尋ねいただいたケースにつきましては、現行法の下では、判明している相続人、それから家庭裁判所が選任した不在者財産管理人、また相続財産管理人等との間で遺産分割協議をするなどして土地を売却しているものと承知しております。
これに対しまして、今回の改正法案におきましては、相続開始時から十年を経過していれば、遺産共有状態の不動産につきましても所在等不明共有者の持分の取得、譲渡の制度を利用することができます。
したがいまして、御指摘の相続開始時から五十年を経過したケースにつきましては、この制度を御利用いただき、遺産分割を経ることなく、他の相続人が当該土地の持分を取得するなどして譲渡することも可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/22
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023・山下貴司
○山下委員 そういった形で進むわけです。
なお、こういった遺産分割に関しましては、遺言書があれば遺産分割の問題にはならないわけであります。先ほど大臣がおっしゃった自筆証書遺言の整備、これは、やはりこうした遺産分割に伴う家族内の様々ないさかいの原因となることもあります。そうしたものも防ぐため、そしてまた所有者不明土地問題を防ぐためにも、自筆証書遺言とか、そうした遺言の活用を是非国民の皆様にはお願いしたい、そういうふうに思うところでございます。
次に、この新法では、所有者不明土地あるいは建物の管理制度が設けられました。これは、時間がございませんので私から御説明いたしますと、資料一の三の冒頭に、所有者が特定できず、又は所有者の所在が不明な個々の所有者不明土地の管理に特化した新たな財産管理制度を創設すると。これまであった不在財産管理人や相続財産管理人制度というのは、この土地だけというのではなくて、所有者の財産全部、預金財産から何から、ほかの土地まで全部管理する必要があったということであったり、あるいは、共有者のうち複数名が分からないということがありますが、そうしたらその人数分だけ管理人を選任するとか、そういったことがあります。それに対して、この土地だけということで特化したということで、これも非常に評価できるものでございます。
そうなると、これは所有者不明土地だけではなくて、先ほどの国交省のお話にもありました、やはり所有者は管理もしてくださいというふうな責務が設けられました。それに対応する形だろうと考えておりますけれども、管理が不全な土地、建物について管理制度を創設するということがございます。
よくあるのが、私の地元でもあるんですけれども、いわゆるごみ屋敷ですね。もう全然管理する気がない、悪臭が漂っている、あるいは、いつごみが崩れるか分からない、隣近所が迷惑している。こういったごみ屋敷にはこの制度は使えるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/23
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024・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
管理不全建物管理命令の要件ですけれども、これは、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に当たるというものでございます。したがいまして、御指摘のようないわゆるごみ屋敷についても、他人の権利利益の侵害の状況等によってはこの要件を満たす場合はあるものと考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/24
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025・山下貴司
○山下委員 こうした現代的な課題にもしっかり対応する、これが今回の法改正であろうと思います。
そして、現代的な課題といえば、隣近所との関係、これについても、なかなか、これまでは話合いで解決できていたものが、もちろんこれは正しい権利意識ではあるんですけれども、やはり調整ということが必要になってくるということで、隣地使用権、資料の一の三にもあります隣地使用の規律の整備ということで、ニーズの高い境界調査や枝の切取りのために隣地を使用することができたり、あるいは隣地の所有者が不明な状態にも対応できる仕組みを整備する。
あるいは、ライフラインの設備の設置権。例えば、水道であるとかガス管であるとかを自己の土地に引き込むための導管について、他人の土地を通るというときに、じゃ、それは同意するから判こ料をくれというふうなことがあるように聞いております。そうしたことについてもしっかりと対応する、隣地の権利者が分からないときでも対応できる、そうしたことも書いてあるところであります。
越境した枝の切取りを認める規律の整備、そういったこともなされるということでありますけれども、ちょっとここで一つ伺いたいのが、そもそも土地の境界の確定についてなんですね。
土地の境界の確定というのは、実は土地取引の基本であります。でも、この境界を確定するというときには、どうも隣り合う同士の土地所有者が全員そろわないと、全員同意しないと境界が決まらないというふうな実務上の取扱いがなされているとも聞いている。でも、これをやると、不明共有者がいる場合、あるいは、たった一人が、マンションの共有地なんかそうですね、反対するというような場合に動かなくなってしまう。こういった問題についてはどういうふうに取り組まれる予定なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/25
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026・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
分筆や地積更正などの登記申請をする場合には、隣地所有者との間で公法上の境界である筆界の現地における位置を確認した上で、その確認結果を登記官に提供し、登記官はこれを筆界の認定の有力な証拠として取り扱う実務が行われております。もっとも、委員御指摘のとおり、隣地所有者が不明であったり隣地所有者の協力が得られなかったりするなどの理由により筆界の確認ができず、登記申請に困難を生じている例があると承知しております。
そこで、法務省といたしましては、地積測量図などの既存の資料を活用することなどによって効率的に筆界認定を行うための方策について、この分野の実務家や有識者を交えた検討を現在行っているところでございます。法務省といたしましては、この検討の結果をできる限り速やかに取りまとめ、必要な登記事務の見直し等を図ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/26
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027・山下貴司
○山下委員 ありがとうございました。
そうした改正、しっかりやっていただきたいと思います。
そして最後に、所有者不明土地問題、この法案は大きな大きな一歩ですけれども、これにとどまるものではない。今後の取組について、大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/27
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028・上川陽子
○上川国務大臣 今回提出しております両法律案でございますが、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化、この両面から総合的かつ本格的な対策を行うものであるということでございます。一連の対策の節目となるものと考えております。両法律案に盛り込まれた施策、着実な実行が何よりも重要と考えております。
その内容につきまして、また趣旨につきましても、国民の皆様、まさに利用される立場の中で御理解をいただくということが重要であるというふうに考えておりますので、両法律案が成立した場合におきましては、関係機関としっかりと連携をしながら広報、周知活動に努めてまいりたいというふうに思います。
また、両法律案につきましては、法務省、法務局におきまして新たな業務を担うことになる施策も数多くございまして、様々な取組が着実に実行できるように、計画的な体制整備、そして十分な事前準備ということに尽くしてまいりたいと思います。
今般の民事基本法制の見直しにつきましては、これを踏まえて関係省庁における取組も更に進められていくものと考えておりますが、法務省といたしましては、民事基本法制及び民事法務行政を所管するという立場から、引き続き、関係省庁と連携をし、この所有者不明土地対策の推進、さらに、新たなそうした創設する制度を含めまして、各種の施策の運用状況を見極めながら適宜適切な見直しということについても行ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/28
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029・山下貴司
○山下委員 ありがとうございました。期待しております。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/29
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030・義家弘介
○義家委員長 次に、大口善徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/30
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031・大口善徳
○大口委員 公明党の大口善徳でございます。
所有者不明土地問題は、山野目参考人も指摘されていますように、東日本大震災の復旧復興の整備事業推進の妨げになったことから、本格的な見直しの議論が始まったわけでございます。
そして、この問題が大きな経済的損失をもたらすものであり、二〇四〇年にはその損失が推計で約三千百億円、累計では約六兆円にも膨らむおそれがあることを憂慮し、我が党も、二〇一七年の十一月に、私が座長となりまして所有者不明土地問題等対策プロジェクトチームを立ち上げ、課題に向けて対応してきた次第でございます。
この問題の解決のため、平成三十年には所有者不明土地利用円滑化等措置法、令和元年には表題部所有者不明土地の登記・管理適正化法、戸籍法改正案が相次いで成立しました。
また、同年、デジタル手続法も成立し、私が当時、野田聖子元総務大臣に働きかけをし、その後、総務省とも協議を重ねて、同法一部施行に伴う住民基本台帳法施行令等の一部改正政令で、所有者不明土地の所有者の探索のための重要な資料である住民票、そして戸籍の付票等の除票の保存期間を五年から百五十年に延長する措置も講じられました。
そのほか、私が以前から法務省民事局に提案していたもので、本店移転をした会社が所有する不動産について、その住所の変更登記が申請されていないことを奇貨として、同一商号、同一本店の別の会社による不正な登記の成り済ましがなされることを防ぐため、今般の法改正案に、会社法人等番号を登記事項に追加する旨の見直しが提案されています。
そして、昨年の、これは三十年ぶりの土地基本法の改正で、土地所有者等の責務として、登記等権利関係、また、その土地の境界が明確になるよう努めることが規定されております。
さらに、今般の両法律案の提出という流れの中で、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化という両面から総合的な対策を講じようとしており、民事基本法制を多角的に見直し、これまで政府によって順次進められてきた所有者不明土地対策の一つの到達点となるものであり、重要な節目であります。上川大臣も一貫してこの問題に取り組んでいただき、こういう時点を迎えたわけで、感慨深いものがございます。
そこで、まず、不動産登記法等の一部改正についてお伺いをしたいと思います。
所有者不明土地問題が発生する最大の要因は、相続登記の申請がなされていないことと言われています。実際に、国土交通省の地籍調査によれば、所有者不明土地であるものが二二・二%、その発生原因の主なものが相続登記の未了で、六五・五%であった。
今般の改正では、この主な発生原因である、相続登記の申請がなされないことを解消するため、相続登記の申請を義務化し、これは新法七十六条の二第一項、そしてそれに違反した場合には過料を科する、同法の第百六十四条第一項としていますが、この新不動産登記法七十六条の二は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内の登記申請を義務づけています。
同条の第一項、第二項を併せて読むと、ここでの登記は、遺産分割の協議などが成立していない場合には法定相続分での相続登記の義務づけをしていると理解し得ます。
このように、相続登記と一口に言っても、遺産分割を経てする移転登記や、法定相続分での相続人の一人でも申請が可能な移転登記もあれば、新たに設けられる相続人申告登記もあります。また、遺産分割が成立したというケースについては、当然ながら、遺産分割の内容を踏まえた登記がなされることが、所有者不明土地問題を真に解決するという観点からは重要であります。
どのようなケースでどのような登記義務が課されるのかを類型的に説明していただきたく、法務省の見解を問います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/31
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032・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
まず、前提といたしまして、不動産の所有権の登記名義人に相続の開始があった場合における実体的な権利関係について御説明させていただきます。
まず、法定相続分の割合に応じた相続人らによる共有状態が生じまして、その後、例えば、その不動産を相続人のうちの一人が単独で相続する旨の遺産分割協議が成立した場合には、相続開始時に遡ってその相続人のみが不動産の所有権を取得することになります。
また、被相続人が遺言を作成しており、これにより不動産を取得する者があらかじめ定められているケースもございますが、この場合には、遺言において不動産を取得することとされた者が相続の開始時から不動産の所有権を取得することとなります。
今申し上げたことを前提に、今般の不動産登記法の見直しによって、どのような形で相続登記の申請義務が課されるかということについて申し上げますと、まず、所有権の登記名義人について相続が開始した場合、各相続人は、相続により法定相続分の割合に応じて所有権を取得することとなるため、法定相続分での相続登記の申請義務を負うことになります。そして、この登記申請義務につきましては、相続人申告登記の申出をすることによって履行することが可能でございます。
次に、この法定相続分での相続登記が実際にされた後に遺産分割があった場合には、その遺産分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産分割の日から三年以内に遺産分割の内容を踏まえた登記申請をする義務を負うことになります。相続人申告登記がされた後に遺産分割があったケースについても、遺産分割によって所有権を取得した者は、同様の登記申請をする義務を負うこととされます。
また、遺言が作成されていた場合には、遺言により不動産を取得すると定められた者は、所有権を取得したことを知った日から三年以内にその旨の所有権の移転の登記の申請をする義務を負うことになります。そして、この登記申請義務については、相続人申告登記の申出をすることによっても履行することが可能となっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/32
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033・大口善徳
○大口委員 次に、新不動産登記法の七十六条の三の第一項で新たに設ける相続人申告登記が、通常の相続登記より簡易に行うことができるものである一方、権利関係を公示するものでないといった違いもあります。
このような整理は、法律家としては十分に理解をすることができるんですが、新たな登記であるため、その登記を初めて見た一般の方々からすると、申告相続人として登記事項証明書に記載されている者をその不動産の真実の所有者と誤認するのではないかという懸念もあり得ます。こうした懸念に対して、どのような対策を検討しているのか、法務当局に問います。
また、申出人の手続的な負担を軽減するために、申出の際の添付書面は相続人であることが証明できる最低限のものとしてもらいたいと考えていますが、具体的にどのような書面を添付することを考えているのか、また、数次相続が発生している場合はどうなのか、法務当局の見解を問います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/33
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034・小出邦夫
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
相続人申告登記、これは相続による権利移転を公示するものではなく、所有権の登記名義人に相続が発生したこと及び当該登記名義人の法定相続人と見られる者を報告的に公示するにとどまるものでございます。委員御指摘のとおりでございます。
このように、相続人申告登記は、その公示する内容面において従来の相続登記とは異なるところがありますため、相続人申告登記の有する意味内容等については国民に分かりやすいものとなるようにする必要がございます。具体的には、相続人申告登記はあくまでも相続人の地位にある者を公示するにすぎず、申告をした相続人が最終的に不動産の所有者とならない可能性があることが読み取りやすいように、例えば登記事項証明書の表記に工夫を凝らすことなどを実務上検討してまいりたいと思っております。
また、相続人申告登記の添付書面でございますけれども、これは、相続の発生や法定相続人と見られる者を報告的に公示するにとどまり、相続人による権利移転を公示するものではございませんので、その申出に当たっての添付書面としては、申出をする相続人が被相続人の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足り、通常の相続登記の申請の場合のように、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍の除籍簿あるいは戸籍の謄本を提出するまでの必要はないものとすることを想定しているところでございます。
また、数次相続が発生している場合の相続人申告登記でございますけれども、数次相続が発生している場合にもこの相続人申告登記の申出をすることは可能でございまして、相続人申告登記をした相続人について更に相続が開始した場合にも、その相続人は相続人申告登記の申出をすることができるものと整理しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/34
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035・大口善徳
○大口委員 次に、相続登記の申請を義務づけることは重要でありますが、その履行がなされるようにするためには、手続面での配慮に加えて、費用面での負担軽減も重要であります。前回の参考人質疑でも、各参考人からその旨の意見が述べられていました。
現在は、相続登記をするためには不動産の固定資産税評価額の千分の四の登録免許税を納付する必要がありますが、所有者不明土地を解消してしっかりとした国土管理を進めていくために相続登記の申請を義務づけるという政策目的に照らせば、その負担はできるだけ抑える配慮も必要ではないかと思います。
今後の登録免許税の減免策について法務大臣にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/35
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036・上川陽子
○上川国務大臣 所有者不明土地の発生予防の観点から、この相続登記等の申請を義務化するに当たりましては、この申請人の手続的な負担だけではなく、申請人の費用面での負担軽減を図るための方策を講ずることが必要である、このことにつきましては法務省としても同様の認識をしているところでございます。
その上で、御指摘の登録免許税ということでございますが、令和三年度の与党税制改正大綱におきまして、登録免許税の在り方については、所有者不明土地問題の解決に向けて、相続発生時における登記申請の義務化等を含めました不動産登記法等の見直しの成案を踏まえ、令和四年度税制改正において必要な措置を検討することとされております。
法務省といたしましては、今般の不動産登記法の見直しの成案が得られた場合には、相続登記等に係る費用面での負担軽減を図る観点から、引き続き、令和四年度税制改正に向けまして取組を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/36
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037・大口善徳
○大口委員 税制改正におきましては、大臣を先頭に、私どもも応援をしていきたい、こう思っています。是非ともよろしくお願いします。
先ほどの国土交通省の地籍調査によりますと、所有者不明土地の発生原因の三三・六%が、住所等の変更が登記に反映されていないことにあると言われています。
今般の改正で、新不動産登記法第七十六条の五で、住所等の変更についても登記申請を義務化することとしていますが、その登記申請を義務づけるだけでは実効的なものにならないので、行政機関の情報連携をデジタル化で図り、積極的に登記の変更につなげていくことは、デジタル社会推進という観点からも大いに重要であると思います。
今回、そのような観点から、住所等の変更登記の申請を義務化することへの負担軽減策として、職権による住所等の変更の登記の制度が設けられ、これは第七十六条の六、しっかり対応されているわけでありますが、住所等の変更登記に当たっての他の公的機関との情報連携の全体像について法務省にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/37
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038・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
今般の不動産登記法等の見直しでは、住所等の変更登記の申請を義務づけるとともに、その手続の簡素化、合理化を図る観点から、登記官が他の公的機関から所有権の登記名義人の住所等の異動情報を取得し、これを登記記録に反映させる仕組みを創設することとしております。
この新たな仕組みでは、所有権の登記名義人が自然人である場合には住民基本台帳ネットワークシステムから、また、法人である場合には商業・法人登記のシステムから、それぞれ必要な情報を取得することを想定しております。この仕組みの具体的な運用につきましては、今後省令等において具体化していくことになりますが、現時点では次のようなことを想定しております。
まず、自然人の場合には、所有権の登記名義人から、その氏名、住所のほか、生年月日等の情報を提供してもらい、これを検索キーとして法務局側で定期的に住基ネットに照会して情報の提供を受けることにより、住所等の変更の有無を確認します。
他方で、法人の場合には、省内のシステム間連携による対応が可能でありますため、法人の住所等に変更が生じた場合には、不動産登記システム側からの定期的な照会を要さずに、商業・法人登記のシステムから不動産登記システムにその変更情報を通知することにより、住所等の変更があったことを把握することとしております。
このような情報取得の仕組みに基づきまして住所等の変更の情報を取得した上で、登記官が職権的に住所等の変更の登記を行うことになるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/38
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039・大口善徳
○大口委員 次に、職権的に転居の事実が不動産登記に公示されると、誰の目からも転居先が明らかになるということになる。しかし、例えば、DV被害に遭われている場合などにおいて、幾らデジタルでの情報連携を進めるといっても、登記官が住所等の変更登記を職権でしたことで、かえってDV被害者の住所が加害者に知るところとなるのは大変な問題であります。
このようなことがないように、プライバシーの保護という観点も含めて慎重な対応も必要であり、同法七十六条の六ただし書では、自然人についてはその申出が必要ということで、配慮されていると思います。そして、特にDV被害者等の保護に関して、新不動産登記法百十九条の第六項を新設し、登記事項証明書に真実の住所を記載せず、これに代わるものを記載するという新たな取扱いを始めることにしており、時宜にかなったものと言えます。
このような配慮は、登記簿の附属書類の閲覧においても全うされる必要があります。今般の改正では、同法の百二十一条第三項で、要件を利害関係から正当な理由に改めるとのことでありますが、この改正後において、DV被害者の提出した書面はどのように扱われるのか、また、戸籍などプライバシー性が高いと考えられる書面についてはどのように扱われるのか、法務当局にお伺いします。また、この正当な理由として、運用のみでDV被害者等の方の保護を行うに当たっては十分な配慮が必要であると考えますが、これについても法務省の見解を問います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/39
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040・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
現行の不動産登記法におきましては、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類につきましては、請求人が利害関係を有する部分に限って閲覧を請求することができるものとされておりますが、この利害関係が具体的にどのような範囲のものを指すかは、解釈上、必ずしも明らかではないところでございます。また、近時におきましては、プライバシーへの配慮の要請が強まり、登記簿の附属書類に含まれる各種書類についても、その性質、内容ごとに閲覧の可否を検討すべきものが増えてきております。
そこで、今般の不動産登記法の見直しでは、登記簿の附属書類の閲覧につきましては、その閲覧の可否の基準を合理化いたしまして、利害関係との要件を正当な理由に改めることとしております。
DV被害者等の提出した書面等の扱いでございますが、登記簿の附属書類のうち、DV被害者等の住所等の情報に係る部分につきましては、基本的に、正当な理由がないものとして本人以外の者による閲覧は認められないことになると考えられます。また、附属書類のうち、戸籍などのプライバシー性の高い情報につきましても、正当な理由の有無の判断に当たりましては慎重な検討がなされることになると考えられます。
このように、今般の不動産登記法の見直し後におきましては、登記簿の附属書類の閲覧の可否の基準である正当な理由の有無を適切に判断することによりDV被害者等の保護が図られるものと認識しておりますが、委員の御指摘も踏まえまして、法務省としては、この点も含め、正当な理由の内容につきまして、できる限りこれを具体化、類型化して、通達等において明確化することを予定しており、これにより、適切な実務運用、これが安定的に行われるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/40
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041・大口善徳
○大口委員 しっかりお願いしたいと思います。
また、相続登記の申請や所有権の登記名義人の住所等について変更がありその登記を怠った場合には、新不動産登記法の百六十四条で過料の制裁が科されているわけです。
前回、参考人質疑で今川参考人からは、相続登記等を義務化し、過料の制裁が科されてはいるが、厳罰化を目的としたものではないとして、義務化の負担軽減策等をパッケージとして導入することを提案されています。そして、正当な理由があれば制裁は科されないとの意見が述べられています。
私は、DV等被害者であることなどは正当な理由に十分なり得ると考えております。実際、登記官が判断することになり、省令、通達等でその運用がなされていくと考えますが、相続登記等を申請できなかった理由を丁寧に精査し、今般の義務化が制裁を科すものではなく相続登記の促進であるとの趣旨を十分に踏まえ、また、国民に分かりやすい運用をしてもらいたいと考えますが、法務大臣の見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/41
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042・上川陽子
○上川国務大臣 今般の不動産登記法の見直しにおきましては、相続登記や住所等の変更登記の申請を履行期間内に行わない場合であることに加えて、申請をしないことに正当な理由がないときに限り過料を科すとの規定を設けているところでございます。
法務省といたしましては、相続登記の申請の義務の重要性は前提としつつも、委員御指摘のようなDV被害者等を含めまして、正当な理由があると判断することがあり得るケースにつきまして、制度の実施に当たりましては、正当な理由の具体的な類型について通達等において明確化するほか、裁判所における過料通知の手続も省令等に明確に規定する予定でございます。
丁寧にその事情を酌むよう、運用におきましても国民に分かりやすい対応をしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/42
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043・大口善徳
○大口委員 よろしくお願いしたいと思います。
次に、これは参考人のときにも私も質問させていただきましたけれども、相続登記の申請の義務づけに関する規定で、これらの規定の施行日前に所有権の登記名義人について相続開始があった場合にも適用することとし、また、施行日又は自己のために相続開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に相続登記をしなければならないとされております。また、所有権の登記名義人の住所等について変更があった場合に関する経過措置についてもほぼ同様の措置が設けられております。
また、民法改正の部分ですけれども、同じ経過措置に関するものとして、民法等の一部を改正する法律案の附則第三条によれば、相続開始後十年が経過すれば、具体的相続分による遺産分割の利益を消滅させ、法定相続分で遺産分割をすることとする今般の見直しについて、施行の時点で既に相続が開始した場合についても適用され、相続開始から十年と施行時から五年のいずれか遅い時期までに遺産分割手続を取っておく必要があります。例えば、施行より五年以上前に相続が発生した場合では、施行時から五年以内に遺産分割の手続を取っておかないと遺産分割の利益が消滅するということでございます。
これらの経過措置は、相続人にとっての激変緩和を図りつつ、相続登記や遺産分割の促進など政策的な目的を実現しようとするものと理解されますが、既に発生した全ての相続に適用され得るものであり、実務に与える影響が大きいことから、国民への周知徹底が不可欠であります。
今川参考人も、現在相続登記未了の不動産は四百十万ヘクタールある、こういう指摘もされており、これらの経過措置を設けた理由及び国民への周知方法について法務省よりお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/43
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044・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
相続登記や住所等の変更登記の申請義務に係る規定につきましては、既に発生している相続未登記あるいは住所変更未登記の不動産についてもその解消を図っていく必要性を否定することができないものですから、改正法の施行日前に相続の開始等があった場合においても適用することとされております。
もっとも、施行日前に既に相続が開始した場合又は住所等の変更があった場合であっても、登記の申請に必要な期間を確保する観点から、少なくとも施行日から三年間又は二年間の猶予期間を置くこととしております。
施行日前に相続の開始等があった場合であっても、相続人申告登記など、今般の不動産登記法の見直しにおいて講じられる各種の負担軽減策を活用することができるということがその前提でございます。
また、御指摘のございました施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、共有関係を適切に解消するため、遺産の分割を促すとともに、長期間が経過している場合には、法定相続分等の割合により簡明にその分割を行うことを可能とすべく、改正法を適用する必要がございます。
他方、改正法の規定をそのまま適用し、施行と同時に具体的相続分による遺産分割を求める利益を失うなど、相続人に不測の損害が生ずることがないようにする必要もございます。
そこで、改正案においては、相続人に不測の損害が生ずることがないよう、施行日前に生じた相続についても改正後の規定を適用することとしつつ、少なくとも施行日から五年間は具体的相続分による遺産分割の請求を求めることができるとして、猶予期間を設けているところでございます。
相続登記等の申請の義務化につきましては、国民に新たな負担を課すものであるとともに、過料を伴う具体的な義務を設けるものでございますので、御指摘の経過措置の点も含めて、国民一般に対して十分な周知を図る必要があると考えております。また、その際には、関係機関や関係士業団体を含めた関係団体とも十分に連携を図ることとし、できるだけ効果的な周知方法を実施することができるよう検討を進めてまいりたいと考えております。
また、遺産分割に係る見直しにつきましても、その重要性に鑑み、改正案が適切に施行されるよう、これについても効果的な周知活動を行うことを予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/44
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045・大口善徳
○大口委員 相続土地国庫帰属法案についてお伺いします。
土地の国庫帰属に係る申請時の要件の一つである相続土地国庫帰属法案第二条第三項五号の、境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属又は範囲について争いがないことというものがありますが、この土地の境界には、いわゆる公法上の境界を指す場合と、それから土地所有権の境界を指す場合、どちらなのかということについてまず問いたいと思います。
そして、所有権の境界が明らかであるかどうかを確認するための資料として、例えば隣地共有者全員の承諾印と印鑑証明を添付した境界確認書の提出を求めたり測量図面の提出を求めたりすると、準備に多大な費用、労力を要し、申請者にとって大きな負担となるものと考えます。隣地共有者の一部の所在が分からないためにその確認書が得られない場合や、単に土地について測量図面が作成されていない場合を直ちに制度の対象外とすべきではない。
この制度が所有者不明土地の発生を予防するという機能を十全に果たすためには、申請者の負担も十分に考慮すべきであり、特に粗放的管理で足りる土地については、隣地との所有権の境界が明らかであるかどうかについての詳細な資料の提出までは求めない運用にすべきではないか。法務省の見解を問います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/45
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046・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
御指摘の境界が明らかでない土地とは、例えば、隣接する土地の境界を客観的に示すものがなく、隣接地所有者間で所有権の範囲等について争いがある土地などが該当するものと考えておりまして、ここでの境界は所有権の境界を指しているものと整理しております。
所有権の境界が明らかでない土地を承認申請の対象から除外しているのは、土地の所有権の境界が不明確である場合、国庫帰属後において国がどの範囲に管理権限を有しているかが不明確となり、管理に支障を来すためでございます。
境界が明らかでない土地をこの制度の対象から除外したのは、今申し上げましたとおり、国が管理をすべき土地の範囲を特定するためでございますので、現地において認識可能な程度の境界の特定は必要であると考えられるところですが、他方で、委員御指摘のとおり、申請者に対して所有権の境界が特定されていることについて詳細な資料の提出を求めた場合には、申請者の負担が重過ぎることになりかねません。また、どの程度の資料の提出を求めるかは、国庫帰属後に国が行う管理の態様等によっても異なるものと考えられます。
境界が明らかでない土地等の認定の在り方につきましては、粗放的な管理で足りる土地の取扱いも含めまして、申請者の負担や国有財産管理の実務の観点も考慮し、今後、その具体的な運用について関係省庁と連携して検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/46
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047・大口善徳
○大口委員 ここは本当に大事ですので、よろしくお願いしたいと思います。
それから、山下委員からも御指摘がありましたが、今回、共有関係、非常に抜本的な改正を行ったと思います。
所有者不明土地の中には、相続登記の未了等により既に共有者が多数となったメガ共有地と呼ばれている土地も存在しており、相続登記の義務化だけでは不十分であるとして、今般の改正では民法の共有の規定も見直しています。このようなメガ共有地は共有者間の合意形成が難しく、土地の適正な管理、処分が困難であると言われており、実務からの解決のニーズも高いと聞いています。
そこで、共有関係の解消をするための規定の整備、新民法案の二百五十八条、二百五十八条の二。二百六十二条の二、所在等不明共有者の持分の取得。二百六十二条の三、所在等不明共有者の持分の譲渡や、共有物の管理者制度を設けているわけでありますが、これらの規定を新設する趣旨及びその内容について法務大臣にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/47
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048・上川陽子
○上川国務大臣 共有状態が解消されないまま放置され、共有者が数十人、数百人に及ぶというケースにおきましては、共有者の所在等が不明なことが少なくなく、また、共有関係の円滑な解消、また共有物の適正な管理を図ることは極めて重要な課題であると考えております。
改正案におきましては、共有関係を円滑に解消するという観点から、共有物分割訴訟に関するルールにつきまして、次の二点につきましての見直しを図っております。
まず一点目でありますが、現行法におきましては、現物を分割する方法と競売によってその代金を分割する方法のみが規定をされているところでございます。今般は、本改正案におきましては、判例によって認められておりますいわゆる全面的価格賠償による分割の方法、これを明記をいたし、共有物分割訴訟でよるべきルール、これを明確化したところでございます。
二点目として、現行法におきましては、地方裁判所等における共有物分割訴訟と家庭裁判所における遺産分割手続とで別個に分割手続を取らなければならない。こうしたケースにつきまして、一定の要件の下で、地方裁判所等における共有物分割訴訟で一括して解消することを可能にしたところでございます。
また、共有物分割訴訟におきましては、共有者全員を当事者としなければならないなど手続の負担が重いことを踏まえまして、訴訟手続ではなく非訟手続の下で、共有者全員を当事者とすることなく、所在者等不明共有者の不動産の持分を適正な対価を支払った上で他の共有者が取得したり第三者に譲渡したりすることができる制度を創設しているところであります。
さらに、共有者が多数であっても、あらかじめ管理者を選任し共有物の管理を管理者に委ねることができれば便宜でございます。共有物の適正な管理を図るということの趣旨から、改正案におきましては、共有物の管理者の規定を整備し、その選任の要件等のルールを明確にしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/48
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049・大口善徳
○大口委員 次に、今回創設した財産管理制度の各管理人の選任についてお伺いします。
第百九十八回国会の司法書士法等の一部改正に対する当法務委員会の附帯決議で、三項に、空き家や所有者不明土地問題等の諸課題の解決に当たっては、司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見や財産管理、境界確定についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ることとされています。
空き家や所有者不明土地問題等の諸課題に当たっては、司法書士の有する専門的知見や財産管理等についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ることとされたわけであります。
前回の参考人質疑において、今川参考人から、所有者不明土地利用円滑化等措置法に基づく法務局による長期相続登記未了の土地の解消作業では、全国の法務局の入札において、全て司法書士の団体が落札し、法定相続人の調査を実施していること、また、専門職の中で司法書士が最も多く成年後見人等に就任し、財産管理や遺産分割協議を遂行していること、司法書士が不在者財産管理人や相続財産管理人に就任し、所有者不明土地問題の発生を抑止するための業務を行っていると発言されました。また、所有者不明土地管理人についても、候補者名簿を裁判所に提出するなどの組織的な対応の検討に加えて、研修体制の充実を始めとして、取組を強化していく決意も示されたわけであります。
今回の見直し後において、この共有持分の取得、譲渡、所有者不明の土地管理人等の新たな財産管理制度における司法書士の活用についてどのような対応をしていくのか、法務大臣の見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/49
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050・上川陽子
○上川国務大臣 財産管理制度の担い手として司法書士が果たすべき役割はますます重要になっており、御指摘の司法書士法改正の附帯決議におきましても、このような観点からされたものというふうに受け止めております。
法務省としては、改正案が成立した場合には、所有者不明土地管理制度等の新たな財産管理制度の円滑な運用が図られるよう、積極的に努力していく所存でございます。
どのような者を管理人として選任するかにつきましては、個別の事案に応じまして裁判所におきまして適切に判断されるものでありますが、所有者不明土地管理人の職務は不在者財産管理人などとも類似をするところがございます。これまでの実績からしても、司法書士の皆様も新制度における管理人の重要な給源であり、制度の円滑な運用を図るためにはその協力が必要不可欠なものというふうに認識をしております。
また、委員御紹介いただきました先日の参考人質疑におきまして、日本司法書士会連合会におきまして、管理人の候補者を養成するための研修を実施するなど組織的対応をする予定であるとお聞きをしたところでございます。
法務省といたしましては、御指摘の附帯決議の趣旨、また日本司法書士会連合会における取組も踏まえ、新たな財産管理制度の適正かつ円滑な運用が実現されるよう、関係機関と連携をし、必要な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/50
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051・大口善徳
○大口委員 また、所有者不明土地管理命令の請求権者、これは、新民法案ですと二百六十四条の二第一項について、今回の所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法、所有者不明土地利用円滑化等措置法の一部の改正案、同三十八条二項で、適切な管理のため特に必要があると認めるときは国の行政機関の長や地方公共団体の長も請求できるとされていますが、一方、管理不全土地管理命令、新民法案第二百六十四条の九第一項については、所有者不明土地管理の制度とは異なり、市区町村が利害関係人でない場合はこの制度の請求権者になることができないことになっていますが、管理不全土地管理の制度について地方公共団体の長などを請求権者としなかったのはなぜなのか、法務省にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/51
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052・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
御指摘の所有者不明土地特措法は、所有者不明土地の利用の円滑化のための特別の措置を講ずるものでございまして、今回新設する所有者不明土地管理制度の申立て権者についての民法の特例規定を設けることは、同法の趣旨に合致するものと言えると考えられます。
これに対しまして、管理不全土地管理制度は、不適切な土地の管理により権利利益が侵害されている者などの利害関係人の申立てにより、管理が不適当である土地の管理を可能とするものであり、所有者不明土地をその対象とするものではございません。
このような管理不全土地管理制度につきまして、権利利益を侵害されるなどの利害関係の有無に関係なく地方公共団体に申立て権を付与することは、現行の所有者不明土地特措法で定められた目的の範囲を超えており、その是非につきましては、同法の趣旨、目的や、同法における管理不全土地対策の位置づけも踏まえ、国土管理の観点から、別途検討すべき課題と整理されたところでございます。
そこで、今回の改正法附則では、所有者不明土地特措法において、地方公共団体の長等に管理不全土地管理命令の申立て権を付与する旨の特例規定は今回は設けなかったわけでございますが、この点につきましては引き続き検討されるものと理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/52
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053・大口善徳
○大口委員 住民が利害関係人として請求した場合は、手続上の負担、手数料や予納金を払わなきゃいけないとか、様々な負担があるわけですね。これに対して、自治体の首長が申し立てる場合には、住民がその負担をする必要がなくなるわけでありますし、首長が申し立てるニーズはあると思うんですね。そういう管理不全の土地等について、そのまま放置しておくということは、自治体においてもいろいろな不都合が生じるわけです。
国交省には、行政的な観点から、管理不全土地の対策を推進するためにも、所有者不明土地円滑化等特措法の施行後三年経過の見直しがありますので、自治体の首長への管理制度の申立て権の付与も含めて検討する必要があると考えますが、国交省の見解をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/53
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054・吉田誠
○吉田政府参考人 お答えいたします。
国土交通省といたしましては、管理不全土地は、周辺に悪影響を及ぼすだけでなく、最終的に所有者不明土地となってしまうおそれもありますことから、管理不全土地の対策は重要であり、地域の良好な環境の確保等の観点から、地方公共団体を始め、行政の役割に対する期待は大きいものがあると考えているところでございます。
このため、委員からもお話ございました所有者不明法につきまして、来年度に施行後三年経過の見直しの時期となりますことから、その一環として、法務省など関係省庁とも連携しつつ、また、地方自治体の意見などもお聞きしながら、管理不全土地対策につきまして様々な観点から検討を進めて、令和四年に必要な制度見直しを目指すこととしているところでございまして、本年二月二十四日に開催されました所有者不明土地等対策の関係閣僚会議におきましてもその旨を御報告させていただいたところでございます。
今後、委員から御指摘のございました管理不全土地管理命令を請求する主体として地方公共団体を追加することを含めまして、地域のニーズを踏まえた管理不全土地対策を検討してまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/54
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055・大口善徳
○大口委員 しっかり法務省と連携してやっていただきたいと思います。非常に今大変な問題になっているわけですから、スピーディーにやっていただきたいと思うんですね。
最後でありますが、他の土地へのライフラインの設備設置権が明文化されたことによって、私道等に導管を設置する際に不当な承諾料を求められるという事態を防止する効果が期待されます。このようなライフラインの設備設置権の明文化、新民法案二百十三条の二、二百十三条の三の趣旨について、期待される効果を発揮するには積極的な周知が必要であると考えます。この点について、法務省の考え、具体的な周知方法についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/55
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056・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
現行法の下では、解釈上、他の土地に導管や導線等の設備を設置したり、他人が所有する設備を設置したりしなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者には、他の土地にその引込みのための設備を設置等する権利があると考えられております。しかし、明文の規定がないため、実務上支障を来しているとの指摘がございます。
そこで、御指摘のとおり、改正案では、現行法上の解釈を踏まえつつ、各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者には他の土地等にその引込みのための設備の設置等をする権利があることを明確化することとしております。
この改正案は国民にとって身近な事項についてのルールを定めるものでございまして、その趣旨及び内容については、ライフラインの整備を行う事業者や地方公共団体も含め、幅広く周知をすることが重要であると認識しております。
具体的な周知方法については今後検討してまいりますが、例えば説明会の開催やパンフレットの配布、また法務省、法務局のホームページを活用した広報など国民に直接周知する取組のほか、法律実務家やライフラインに関わる各種関係機関と連携して国民への周知を図る取組をしていくことも想定しております。
いずれにしても、法務省としては、改正案が適切に施行されるよう効果的な周知活動を行ってまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/56
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057・大口善徳
○大口委員 動画の活用も考えてください。
以上で終わります。ありがとうございました。
〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/57
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058・宮崎政久
○宮崎委員長代理 次に、稲富修二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/58
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059・稲富修二
○稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。今日はよろしくお願いいたします。
大部の法案でございますので、以下、確認をさせていただければと思います。
まず、基本事項についてなんですけれども、所有者不明土地の割合は、令和元年の法務省調査によれば約一九・七%。所有者不明土地の発生予防のために相続登記、住所変更登記の申請の義務化が盛り込まれておりますが、昨年の相続登記のまず件数、また、相続が発生した場合に実際に登記されている割合と義務化による相続登記の件数増の見込みについて、まずお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/59
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060・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
令和元年度につきましては、土地、建物、合わせて百二万八千九百六十九件の相続による所有権の移転の登記がされております。例年の統計を見ましても、相続その他一般承継による所有権の移転の登記につきましては、おおむね百万件程度の申請がされているものと承知しております。
お尋ねがございました、相続が発生した場合に実際に登記される割合や相続登記の申請を義務化した場合における申請件数の増加に関する具体的な見込みにつきましては、そもそも個々の土地の所有者について死亡の事実が発生したかどうかを全国的に漏れなく把握すること自体が現状では困難な状況にございますため、法務局において御指摘の数値等を把握することはできておりませんので、お答えすることは困難でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/60
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061・稲富修二
○稲富委員 次に、先ほど来ありますけれども、国民への周知について伺います。
相続登記、住所変更登記の義務化がされたからといってすぐに登記が、皆さんされるわけじゃないということだと思います。実効性を高めていくためには、周知とともに経済的動機づけ、時には負の動機づけの二つが欠かせないと私も思います。先日の参考人質疑でも、様々な参考人から同趣旨の御発言がございました。
まず一つ目の、国民が誰もが義務化を知らなければならないわけですが、相続する人も、相続されるであろう人への周知も欠かせないと思いますが、具体的にどのような取組をするのかまず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/61
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062・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
相続登記の申請を促進し相続登記の申請義務の実効性を確保するためには、関係者において相続登記の重要性等を御理解いただき、相続開始後に自発的に相続登記を申請することができるような環境整備を手続面、費用面で図っていくことが不可欠であると考えております。
今般の不動産登記法の見直しにおきましては、相続登記の申請義務の実効性を確保するために、申請人である相続人の手続的な負担を軽減する観点から、申請義務の簡易な履行手段としての相続人申告登記という新たな登記を創設するとともに、相続登記の漏れを防止する観点から、被相続人が所有権の登記名義人となっている不動産を相続人が一覧的に確認することも可能にする所有不動産記録証明制度を創設するなどの環境整備策をパッケージで講じております。
法務省といたしましては、相続人及び被相続人となられる方双方の理解と協力の下、相続登記の申請義務が実効的なものとなるよう各種施策の周知啓発に努めてまいりたいと考えております。具体的な周知方法につきましては今後検討しておきますが、例えば、説明会の開催、パンフレット等の配布、法務省法務局のホームページを活用した広報など、国民に直接周知する取組のほか、遺産分割や相続登記を専門に扱う法律実務家と連携して国民への周知を図る取組をしていくことなどを想定しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/62
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063・稲富修二
○稲富委員 是非お取組をお願いします。
次に、二つ目の経済的動機づけ、登録免許税について伺います。先ほど他の委員からもございました。
先日の参考人質疑において、登録免許税の軽減の必要性については各参考人の皆様から御指摘を様々いただきました。今改正においても、環境整備策パッケージの一つとして登録免許税の軽減が検討されているということでございます。
資料一を御覧いただければと思います。
現在においても、数次相続などについて登録免許税の免税措置が取られているということで、今日は財務省から政務官にお越しをいただきましてありがとうございます。この免税措置の目的あるいは効果、そして今後の取組について、政務官からお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/63
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064・船橋利実
○船橋大臣政務官 お答えいたします。
相続登記に係る登録免許税については、令和三年三月末までの措置といたしまして、長期間相続登記がされていない土地への対応といたしまして、相続登記がされないまま数次の相続が発生している土地について、相続登記をせずに亡くなった故人を登記名義人とするために受ける登記を免税するとともに、相続登記が未登記の土地を発生させないための対応といたしまして、相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地について、一筆当たり価額が十万円以下の土地を免税とする措置を講じているところでございます。
両措置の適用件数につきましては、前者、数次相続が発生している土地に関しましては令和元年度で六千九百十五件、後者、十万円以下の土地に関しましては令和元年度で十二万五千十七件と承知いたしておりまして、登記名義人と実際の所有者の名義が乖離している状態を解消するとともに、地方部を中心に相続登記を行うことの経済的なインセンティブが低い土地につきまして、所有者不明土地の発生の防止に一定の効果があったものと考えてございます。
その上で、これらの措置につきましては、与党税制改正大綱におきまして、不動産登記法等の見直しを踏まえ、相続登記に係る登録免許税の在り方について令和四年度税制改正で検討するとされたことを踏まえまして、今般の令和三年度税制改正法案におきましては、適用期限を一年間延長することとさせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/64
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065・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
今御答弁ありましたように、今回の免税措置、数次相続について、その他もありましたけれども、免税措置が一定効果を上げたという御評価をされてのことと思います。
登免税が下がれば、確かに登録する側の手続コストは下がりますので、登記促進にはつながると思います。しかし、他方で、土地に価値があれば経済的動機づけは働いておりまして、今でも登記は行われているわけでございます。したがって、登録免許税の減税がどの程度効果を発揮し登記促進につながるのか、効率性の観点から私は更なる検証が必要だろうと思います。
また、例えば高額の土地登記のような場合を想定すると、高額所得者ほど登録免許税の軽減を受けることになるかもしれません。公平性の問題からも検証があろうかと思います。当然、登免税の軽減というのは私も必要だという立場からあえて申し上げております。
そこで、大臣に伺います。
登免税について、先ほど来ありましたけれども、令和三年度税制改正大綱検討事項の中に必要な措置を検討するとあります。
資料二を御覧をいただきたいと思います。
一口に登録免許税といっても、様々ございます。不動産登記の中で、ここでは二つ書いてありますが、相続の移転登記、その他の原因による移転登記、あるいは先ほど、数次相続の場合の付記登記など、様々な項目があります。
具体的に、その必要な措置をどのようなことを考えているのか、それが相続登記、住所変更登記未了の解決につながり、所有者不明土地解消につながると考えていらっしゃるのか、大臣の決意を含めてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/65
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066・上川陽子
○上川国務大臣 今回、これまで任意とされていた相続登記や住所等の変更登記の申請の義務づけをするところでございますので、それに対応して、その実効性を上げるための環境整備策の導入、パッケージの政策は極めて重要だというふうに思っております。
具体的な政策については先ほど民事局長が答弁したところでございますが、相続登記に限りませんで、今回新設する相続人申告登記や、登記官が職権的にする住所等の変更登記などに係る登録免許税の在り方も含めまして、今後しっかりと検討していく必要があるというふうに認識をしているところでございます。
この不動産登記法の見直しの成案が得られた場合におきましては、相続登記等がなされるという大目的を達成するための様々な負担軽減策につきましては、これまでの実績も踏まえまして、しっかりと対応してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/66
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067・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
財務政務官、もうこれで終わりました。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/67
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068・宮崎政久
○宮崎委員長代理 船橋政務官は御退席いただいて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/68
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069・稲富修二
○稲富委員 次に、司法書士の役割について伺います。
先ほど大口先生からもありましたけれども、先日の参考人質疑において、日本司法書士連合会の今川参考人から以下のような趣旨の御紹介、御発言がございました。今年三月一日、全国の五十の司法書士会に相続登記相談センターを設置した旨。また、こういった御発言もございました。本改正による新制度の運用に当たっては、正確な情報、適切なアドバイスなど、専門家がしっかりとサポートすることが不可欠である。力強い、心強い御発言でございました。
他方で、これだけ大きな改革ということになりますので、業務範囲がかなり拡大をするということだろうと思います。司法書士さんたちのような専門家の数が今のままで、現状で、この膨大な改革を対応できるのか、増やす必要があるのではないかというふうに思うわけですが、認識をお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/69
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070・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
司法書士の会員数、現在約二万二千人を超えておりまして、二〇〇〇年代になってからも一貫してその人数は増加しているものと認識しております。そして、司法書士の方々には市民に身近な存在として御活躍をいただいているものと認識しておりまして、現状では、法務省において、司法書士の数が不足しているといった声は特に聞いてはいないところでございます。
もっとも、御指摘のとおり、今般の不動産登記法の見直しを始め、本法律案が成立した場合には、司法書士の業務も増大することが見込まれるなど、その役割は一層大きなものとなっていくことが想定されるため、法務省といたしましても、引き続き、司法書士の現状等についてしっかり注視してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/70
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071・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
次に、登記官の人員についても同じような趣旨で御質問いたします。
住所変更未登記の対応として、変更登記の申請を義務づけると同時に、他の公的機関から取得した情報に基づき登記官が職権的に変更登記する新たな方策を導入することとなります。登記官の役割も更に大きくなるわけでございまして、この業務拡大の中、人員増加が必要なのか、その見込みについてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/71
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072・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、今般の民法等の一部を改正する法律案及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案におきましては、法務局が実施する新たな施策が多数盛り込まれておりまして、登記官の担う業務が増加することが見込まれます。
法案が成立した場合には、これらの業務を適正に遂行することができるよう、法務局において必要となる人的体制の整備にしっかり努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/72
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073・稲富修二
○稲富委員 次に、所有権の国庫帰属について伺います。
相続土地国庫帰属法案について、要件では、通常の管理又は処分をするに当たり、過分の費用又は労力を要する土地に該当しないこととなっております。相続により取得した土地を手放して国庫に帰属させる、どれぐらいの割合がこうなるのかという見込みをされているのか、お伺いをいたします。
〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/73
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074・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
令和二年に法務省が実施したニーズ調査によりますと、土地を所有する世帯のうち、土地を手放して国庫に帰属させる制度の利用を希望する世帯の割合は約二〇%と推計されております。この調査によれば、法制審議会の民法・不動産登記法部会の中間試案における要件設定を前提として、利用希望世帯の約五%、すなわち、土地を所有する世帯全体の約一%がその要件を充足するものと見込まれると推計されております。
もっとも、これらの推計は本法律案における承認要件等の詳細を示した上でのニーズ調査に基づく結果ではないために、現時点では、国庫に帰属させることができる土地の数や、逆に国庫に帰属させることができない土地の数について、具体的な見込みをお示しすることは困難でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/74
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075・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
大体の規模感は何となく伝わりましたけれども、どれぐらいのボリューム感になるのかということ、また是非これは運用する中で教えていただければというふうに思います。
次に、民法の共有制度の見直しについて伺います。
利用の円滑化を図る方策の中で、先ほども御議論ありました管理行為の拡充、明確化についてでございますが、共有者の一部が不明であっても土地の利用が可能となるということでございますが、仮に、不明共有者が後で現れた場合で異議を唱えた場合、どのような解決方法があるのかということをお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/75
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076・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
所在等不明共有者以外の共有者の同意又はその持分の過半数による決定により、共有物の変更、管理を行うことができる旨の裁判がされて、それが確定した場合には、その裁判に基づいてされた共有物の変更行為あるいは管理行為は、その後、所在等不明共有者が現れて異議を述べたとしても適法でございます。
ただし、所在等不明共有者は、他の共有者が共有物を単独で使用しているような場合には自己の持分に応じて使用の対価の償還を請求することができますし、共有物を使用している共有者は、使用について善管注意義務を負っておりますので、それに反すれば所在等不明共有者に対し損害賠償責任を負うことになると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/76
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077・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
次に、財産管理制度の見直しについて伺ってまいります。
私の地元は福岡なんですけれども、この所有者不明土地、どちらかというと山林とか放棄耕作地など、何となく郡部というか、都市部には余り関係のないことのように思われるかもしれませんが、実は私の、住宅地なんかも相続がうまくいっていなくて所有者不明のところ、もちろん空き家とセットでそういう問題が実は住宅地にもかなりたくさんあります。なので、今回、この法案は、もちろん多くはそういう大きな、あるいは田舎の方でということかもしれませんが、我々の住宅地の中でも非常に大きな課題というか、適用することがございます。その中でいうと、この財産管理制度の見直しというのは非常に大きいものがございます。
そこで、お伺いをいたします。
この中で、所有者不明土地・建物管理制度の創設がされるということで、所有者に代わって所有者不明土地を売却するなどのために、ここは誰が裁判所に対して管理人の選任を申し立てることができるのかということ。あわせて、管理不全の土地についてでございますが、土地、建物の管理制度の創設がされますが、放置している土地の管理人を選任するよう、誰が、こちらも同じ種類の質問ですが、裁判所に申し立てることができるのか。併せて、誰がというところをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/77
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078・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
所有者不明土地あるいは所有者不明建物管理命令及び管理不全土地、管理不全建物管理命令の申立て権者につきましては、改正案ではいずれも利害関係人と規定しておりますところ、これには各制度の対象となる土地、建物の性質に応じて、その管理について利害関係を有する者が該当することになると考えられます。
まず、所有者不明土地あるいは建物管理制度は、所有者又はその所在が判明しないために適切な管理が困難になっている土地や建物を対象とするものでございまして、そのような土地や建物の管理について利害関係を有する者が申立て権を有するものと考えられます。
具体的にどのような者がこれに当たるかについてでございますが、個別の事案に応じて裁判所により判断されるものではありますが、一般論としては、例えば公共事業の実施者などの土地の利用、取得を希望する者がこれに当たり得るものと考えられます。
もう一つ、管理不全土地、管理不全建物管理制度は、管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益の侵害又はそのおそれがあるという土地や建物を対象とするものでございまして、そのような土地や建物の管理について利害関係を有する者が申立て権を有するものと考えられます。
どのような者がこれに当たるかにつきましても、個別の事案に応じて裁判所により判断されるものでございますが、一般論としては、例えば、隣地に擁壁が設置されているわけですが、劣化して倒壊して、それによる土砂崩れが生ずるおそれがあるというようなケースで、そのことを主張するその隣地の所有者などはこれに当たり得るものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/78
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079・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
先ほど山下先生からもごみ屋敷の話がございました。これ、誰が利害関係人かというのは、もちろん隣接しているところの方はそうだとは言える。ただ、その周辺の、町内会の方、どこまでそれが言えるのかということ。あと、それを、本来であればもちろん自治体が、先ほどの御議論ありましたけれども、やればいい。だけれども、それができなくて、町内会で何とかやりたい、何とかしたいという場合、それは利害関係人と言えるのか。そこら辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/79
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080・小出邦夫
○小出政府参考人 個別の事案に応じて、管理不全の方は、他人の権利又は法律上保護される利益の侵害又はそのおそれがあるかどうかというところで判断されることでございまして、ごみ屋敷、あるいは所有者が無関心に放置されているといってもいろいろなケースがございますので、例えば、ごみ屋敷状態で、草が生えて獣が入って悪臭が漂うとか、具体的な意味での隣地に対する影響が出ていればこれに該当するのではないかと思われますが、いずれにいたしましても、この問題につきまして、町内会あるいは自治体も含めて申立て権を認めるかどうか、利害関係に含めるかどうかにつきましては、引き続き議論をして検討していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/80
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081・稲富修二
○稲富委員 誰がこれを言えるのかということは、要するに利害関係人が、この管理不全土地の対応について誰がこれを裁判所に申し立てられるのかというのは、この法律のまさに大事なことだと思うんですよね。だから、先ほどもちょっと大口先生もおっしゃいましたけれども、何らかの誰がというガイドラインなり何か、誰がこういうことを申し立てられるのかということをどこかで示していただくことはできないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/81
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082・小出邦夫
○小出政府参考人 利害関係人の範囲につきまして、可能な限り検討して、周知の方法を取りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/82
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083・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
次に、民法の相隣関係規定の見直しについて伺います。
隣地を使用する場合の方法について、隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとされておりますが、運用基準はどのようになるのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/83
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084・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
現行法の下でも、土地の所有者は一定の目的のため必要な範囲内で隣地の使用を請求することができるとされておりますが、その限界等に関する規律は設けられていないわけでございます。
もっとも、隣地使用権の行使は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者の権利を制約し得るものでありまして、現行法上も、隣地の使用が必要である場合であっても、具体的に使用が許される隣地の範囲、使用方法、使用の日時等については、当該隣地使用に必要な限度に限られると考えられております。
そこで、現行法におけるこれらの解釈を明確化する観点から、今回の改正法では、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとしているところでございます。
隣地使用が認められる限度につきましては、具体的な事案に応じて定まるべきものでございまして、現時点において隣地使用に関する限界を示す運用基準等を作成する具体的な予定はありませんが、改正法の趣旨については十分に周知する必要があると認識しておりまして、御指摘を踏まえまして、その周知方法あるいは周知の内容についても今後検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/84
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085・稲富修二
○稲富委員 次に、隣地等の円滑、適正な使用という中に、同じく、越境した枝の切取りを認める規律の整備というのがございます。
督促しても越境した枝が切除されない場合などについてどうするかということなんですけれども、今回、越境されている土地の所有者が自ら枝を切り取ることができる仕組みということになりました。その場合の費用を請求することができるということでございますが、費用請求が両者に折り合いがつかない場合はどのように解決をするのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/85
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086・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
改正案では、竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除されないときなどの一定の場合には、土地所有者が自ら越境した枝を切り取ることができるとしております。
改正案では土地所有者が越境した枝を切り取る場合の費用に関する規律を設けておりませんが、枝が越境して土地所有権を侵害していることや、土地所有者が枝を切り取ることにより竹木の所有者が本来負っている枝の切除義務を免れることになることを踏まえますと、枝の切取り費用は基本的には竹木の所有者が負担することになると考えられます。
最終的には個別の事案ごとに判断されることになりますが、枝の切取り費用の負担について当事者間で合意ができない場合には、土地の所有者は、竹木の所有者に対して、最終的には裁判手続により不法行為に基づく損害の賠償あるいは不当利得の返還を求めることになると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/86
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087・稲富修二
○稲富委員 これはすごくあると思います。
それで、もう一回ちょっと要件を伺いたいんですけれども、どのような場合に切除をしていいのかということをちょっと分かりやすく、どういう場合がその要件を満たすのかということをもう一度御説明願えますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/87
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088・義家弘介
○義家委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/88
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089・義家弘介
○義家委員長 速記を起こしてください。
小出民事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/89
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090・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
まず、条文の構造といたしましては、「土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」という条文がございまして、違う項で、この場合において、「次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。」という記載がございます。
その具体的な内容でございますが、「竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。」「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。」これが二つ目でございます。最後が「急迫の事情があるとき。」以上の三つの要件を満たすときには土地の所有者はその枝を切り取ることができるという条文になってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/90
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091・稲富修二
○稲富委員 ありがとうございます。
これは結構、やはり実際ある問題でございますので、また、事実上どういう場合に具体的に当てはめが利くのか、あるいは費用請求の場合、これはかなり多くの場合があると思いますので、そういったことも是非具体的にガイドライン的なものがあればというふうに思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/91
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092・義家弘介
○義家委員長 次に、池田真紀君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/92
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093・池田真紀
○池田(真)委員 立憲民主党の池田真紀です。よろしくお願いいたします。
今日は法案の質疑なんですけれども、その質疑に入る前に、前回、私、三月十日の質疑の際に、厚生労働省の答弁、異なっていたということだったんですが、議事の訂正ができないということなので、重要なところですから、この場でお答えをいただきたいと思います。
改めまして、生活保護法七十七条の実績、厚生労働省が把握している件数ということでお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/93
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094・橋本泰宏
○橋本政府参考人 お答えいたします。
三月十日の本委員会におきまして、生活保護法第七十七条第二項の適用件数についてお尋ねをいただきました。それで、平成二十八年七月に保護を開始した世帯の扶養義務者につきまして自治体に照会した結果が三件ということで厚労省の政府参考人の方から御答弁を申し上げましたが、その後、自治体の方から訂正の連絡がございまして、正しくはゼロ件ということでございました。
もう少し具体的な経緯として申し上げますと、三月十日の時点では、平成二十九年度に調査を行い自治体から回答いただいた件数の集計値として把握をしておりました三件ということでお答えしたところでございます。なお、この調査は扶養照会の概況を把握するために行ったものなので、自治体の回答の一つ一つについて精査を行っていなかったというものでございました。
一方、委員の議員事務所から担当課の方へ別途情報提供いただきました最高裁が保有している申立ての受理件数の資料では、平成二十八年にゼロ件、平成二十九年に一件の申立てを受理したということでございました。この数字のそごにつきまして、回答した自治体の方に確認を求めましたところ、厚労省に対して回答した三件は誤りで、正しくはゼロ件という回答があったものでございます。
訂正し、おわび申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/94
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095・池田真紀
○池田(真)委員 重要なことだったので議事録をきちっと残したいということで、ちょっとお時間を使わせていただきました。
やはり二十五年改正というのが大きな転換点の一つでもありましたので、その前とその後という、極めて大きな御回答だったと思っていますので、その二十五年改正の後、要するに今の、現在、最高裁の令和二年までの間にやはり結論が出ているのはゼロ件なんですね、却下もなければ。ゼロ件なんですよ。
なので、扶養照会の話に関しましては、実効性といいますか、極めて、通常の一般家庭でも、家裁の実績というのは一九五七年でいうと三千二十五件、僅か一、二%なんですよ。それなのにもかかわらず、今の親族扶養関係というんですね、こういった家族関係が形骸化しているので、とりわけ親族に経済的に頼れない、こういう生活保護の方々に扶養関係を求めていくというのは貧困を生み出しているだけで、憲法で守られる権利を奪うことになりかねない。極めて懸念しているところでありますから、これについてはまた、今後の在り方はまた改めて議論といいますか、いろいろお伺いもしていきたいと思いますし、改正も求めていきたいというふうに思っています。
私自身は、そもそも法六十一条で届出の義務がありますし、そして、万が一、皆さんも、多くの方が御懸念されている不正受給みたいなものに関しては、不正に関しては法七十八条がありますので、極めて、今回、こういった大きな議論になっている扶養照会といったものは必要ではないというふうに思っています。
厚生労働省さんは以上で結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/95
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096・義家弘介
○義家委員長 どうぞ御退席ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/96
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097・池田真紀
○池田(真)委員 早速ですけれども、法案の審議に入りたいと思いますが、質疑に入らせていただきたいと思います。
今までの質疑だけでも、もう少し整理を、確認をしたいなというふうに思うことが幾つも、たくさんありました。私も、整理するだけですごくたくさん質問があったんですが、時間が限られておりますので、私からは、今回の新たな制度がきちっと機能するのかどうかということで、より当事者に寄り添った仕組みであるのかどうかというところをお聞きしてまいりたいというふうに思っています。
まず初めに、相続土地国庫帰属法案の部分につきましての負担金についてですが、いろいろな手続はもちろん、今回要件になっていますけれども、審査の手数料のほかに、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した十年分の土地管理費相当額の負担を納付しなければならないというふうになっています。法務省が今例示しているというのが、原野で二十万、市街地で二百平米であれば宅地であれば八十万みたいな負担金が、結構ハードルは高いのではないかというふうに感じています。
私も、ごくごく、ごくごくまれでありますけれども、生活保護とか困窮状況にある方々が、まれにこういったものが相続するかしないかの議論に見舞われることがあるんですね。そういったときに、ちょっともう一度ここで確認をしておきたいんですが、この費用が払えるかどうかということで国庫帰属を認めるかどうかというのは、差が非常に出てくるんじゃないか、不公平であるのではないかというふうに思っています。
ということなので、減免とか、負担金の減免措置とかそういうことが、あるいは、他法関係の整理をした上で、こういう場合は除外をするとか、何か御検討されたのかどうか、あるいは、今現在そういうことを検討されてあるのであれば案をお示しいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/97
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098・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
この相続土地国庫帰属制度により国庫に帰属する土地、これは、基本的に利用の需要がないものでありまして、国庫帰属後は国が所有者として永続的に管理しなければならない可能性が高く、その費用は長期間にわたって国民全体の負担で賄うことになります。他方で、承認を受けた者は、国庫帰属がなければ負担すべきであった土地の管理費用を免れることになります。このような制度であることに鑑みまして、実質的公平の観点から、承認を受けた者に、委員御指摘ございましたけれども、一定の負担金を納付させることといたしております。
もっとも、所有者不明土地の発生を抑制する観点から、相続土地国庫帰属制度が実効的に運用、利用されることも重要でございまして、承認申請者の負担にも配慮する必要があると考えております。
いずれにいたしましても、負担金の額の算定方法は政令で定めることといたしておりますので、承認申請者の負担能力などにも配慮しながら、適切な算定方法になるよう、関係省庁とも連携して、今後検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/98
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099・池田真紀
○池田(真)委員 今後というのはいつまででしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/99
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100・小出邦夫
○小出政府参考人 この制度の施行は公布から二年以内で政令で定める日でございますので、そこで一応の制度設計はする必要がございます。
また、これは非常に新しい制度、これまで類例のない制度でございますので、五年後の見直し条項もついております。そういったことも含めまして、柔軟な対応をしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/100
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101・池田真紀
○池田(真)委員 施行前にはやはり精査をして、他省庁との連携も含めて、確認をして示していただきたいというふうに思います。
次の質問に入らせていただきますが、次なんですけれども、相続土地の国庫帰属、先ほどの続きになりますけれども、承認時の要件ですね、崖という土地などは認められないというふうに書かれているんですが、こういうような崖を除いた趣旨と、そして、あと、国庫に帰属させるのではなくて、法務省の説明では、国土の管理の観点から、行政的な措置を取るということで対応しますというふうにされているんですが、この具体的な内容をお聞かせいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/101
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102・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
相続土地国庫帰属制度は、所有者不明土地の発生を抑制する目的で、本来所有者が管理すべき土地を国に引き受けさせ、国民の負担で土地を管理することとするものでございます。そのため、崖がある土地のうち、通常の管理をするに当たり過分の費用又は労力を要するものにつきましては、財政負担等の観点から、国庫帰属の対象外としております。
もっとも、国庫帰属の対象とならない危険な崖地につきましては、所有者不明土地の発生抑制とは別の考慮を要するものと考えておりまして、例えば、急傾斜地の崩壊により災害が発生するおそれがある場合には、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づいて、崖の崩壊を防止するための行政的な措置が取られることがあるものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/102
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103・池田真紀
○池田(真)委員 今回、この国土の管理ということでの観点からいいますと、行政的な措置が十分に取られていないために災害が発生しているのではないかというふうに思っています。なので、逆に、そのような措置を十分に取るのであれば、どちらにせよ費用はかかるので、国庫に帰属させても問題はないというふうに考えているんですけれども、大臣の方はどのようにお考えになられているのか、大臣にちょっとお伺いをしたいと思います。何か、面倒な土地は引き受けないみたいな、そんなような印象を受けますので、そこについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/103
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104・上川陽子
○上川国務大臣 今般創設いたしますこの相続土地国庫帰属制度でございますが、所有者不明土地の発生を抑止、抑制するという目的でございまして、本来所有者が管理すべき土地を国に引き受けさせ、国民の負担で土地を管理することとするものでございます。
この制度はこれまでにない新しい制度でありまして、どのような土地がどの程度国庫に帰属し、国民の負担がどの程度になるかを厳密に見通すことがなかなか現時点では難しい状況にございます。こうしたことも踏まえまして、今回の法律案におきましては、崖がある土地のうち、通常の管理をするに当たり過分の費用又は労力を要するものについては、財政負担の観点からも、国庫帰属の対象外としているところでございます。
法律案につきましては、施行後五年経過の際の検討条項を盛り込んでおります。委員御指摘の崖がある土地の取扱い、これも含めまして、制度の運用状況をしっかりと踏まえて、関係省庁と連携して、必要な見直しを検討する予定でございます。
いずれにいたしましても、所有者不明土地の発生の抑制ということにつきまして、まず、この相続土地国庫帰属制度、新しい制度をしっかりと円滑な運用を図り、また、再度検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/104
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105・池田真紀
○池田(真)委員 そもそも今回の目的はというところからお話をいただきまして、ただ、今回、やはり、この条件というのが極めて、条件といいますか要件に当てはまる土地というのは、所有権を放棄しなくても、価格を妥協すれば引取り手が見つかるなど、そういうことが考えられるので、もしかしたら、これからの事例という中では、自治体を含めていろいろな現場で、もう一歩進めたい、もっと困っていることがあるんだというところがもう少し見えてくるのではないかなというふうに思っていますので、引き続き他省庁等も含めて連携をしてお願いをしたいと思います。
そうしましたら、次ですね、今度は土地の利用の話に移らせていただきたいと思います。
まず、国庫に帰属した土地についてどのように利用することになるのかということで、この間にもお話がいろいろありましたけれども、収益が上がれば負担金を減額することも可能になるかと思うんですけれども、政府として国庫に帰属した土地を利用する方策についてどのようなお考えがあるのか、お伺いをしたいと思います。こちらは財務省にお願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/105
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106・井口裕之
○井口政府参考人 お答えいたします。
国有財産につきましては、本制度の対象になるものか否かにかかわらず、地域や社会のニーズに対しきめ細かく対応しつつ、個々の財産の状況を踏まえて適切な形で管理、処分を行っていくことが重要と考えております。
その上で、本制度において国庫に帰属する土地につきましては、先ほど民事局長からも御答弁ございましたが、その経緯からも、その多くは売払いや貸付けに至らず、国庫帰属後は……(発言する者あり)はい、済みません。
その上で、本制度により国庫に帰属する土地につきましては、その経緯から、その多くは売払いや貸付けに至らず、国庫帰属後は、国が長期にわたり保有、管理し続けるということになるものが多く見込まれます。
そうした場合、看板や柵の設置、草刈り、巡回といった標準的な管理費用を始め、様々なコストを国民負担、国が負担し続けることになります。
このため、仮に処分可能なものがあったとしてもごく一部にとどまり、全体としては国の負担する費用の方が大きいと考えております。
ただ、いずれにいたしましても、本制度により国庫に帰属した土地についても、引き続き、地域や社会のニーズを踏まえて適切な管理、処分を行ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/106
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107・池田真紀
○池田(真)委員 今の地域のニーズのうちにも入ってくるんですけれども、市町村等のプランの下に国庫帰属した土地を適正に利用するための枠組み、手続ですね、こういった検討をしているのかどうかといいますか、どうなっているのかというのも少しお伺いをしたいなというふうに思っていますが、現在の状況をお示しいただきたいと思います。国交省にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/107
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108・吉田誠
○吉田政府参考人 お答え申します。
今回の新たな制度に基づき国庫に帰属することとなる土地につきましては、一般的には、その時点では買手や借り手を見つけることが困難な土地であったり、また、地方公共団体の利活用も見込まれていない土地であったものと考えられるところでございます。
先ほど財務省からも御答弁ありましたように、国庫に帰属した土地につきましては、長期間にわたって国が適正に管理していくというケースが多いものと見込まれ、利用可能性が見出せるケースは非常に少ないのではないかと考えられるところでございます。
いずれにいたしましても、今後、実際にどのような土地が国庫帰属することになるかにもよるとは思いますけれども、財務省の国有財産部局とも連携しつつ、国土交通省として今後何ができるかにつきまして考えてまいりたいと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/108
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109・池田真紀
○池田(真)委員 状況を見ながらということだったので、これからの発生状況等を見た上でということになるかと思いますが、参考人さんもおっしゃっていたように、あとは、市町村、地域でいろいろ、利活用を含めて、地域活性化の観点も含めてまた御検討いただきたいというふうに思います。私たちも議論してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
そうしたら、次は、相続登記の申請に行く前にいろいろ要件を私は確認したかったんですが、ちょっと時間がないので。
今回の改正の中では、この相続登記の申請がなされないことを解消するために、相続人が自己のために相続の開始があったことを知ってからの三年以内の登記を義務づけ、十万円の過料を科すということですが、こちらについて、実際にこういうのを、義務づけを国民にして、全国ですよ、そして、その上過料まで科されるというふうになりますと、国民の負担感というのはすごく大きいかと思うんですね。相続登記の申請の義務違反に過料を科すその目的といいますか趣旨とその効果ですよね、それはどういうふうになっているのかということ。
それと、先ほど来、いろいろあるかと思うんですが、司法書士の費用なども非常にかかってくると思います。生活困窮者とかそういった方々について一律に過料で強制するというのは非常に無理があるのではないかというふうに思いますけれども、ここに書かれてありますこの「正当な理由」というのを、これが、登記費用を負担する能力がないと、いろいろな、方法といたしまして、理由が様々あるかと思うんですが、そういった場合もこれに当たるのかどうかということを確認したいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/109
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110・小出邦夫
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
まず、今回の法改正で相続登記の申請を義務づけた理由でございますけれども、これは、もうるる話が出ておりますように、所有者不明土地の主な発生原因が相続登記の未了にある。相続登記がされない理由については、まず、相続登記の申請が義務化されておらず、申請をしなくても相続人が不利益を被ることが少なくないこと、また、相続をした土地の価値が乏しく、売却も困難である場合には、手間暇をかけて登記の申請をするインセンティブが働きにくいというところにございまして、今回、相続登記につきましては、その費用負担あるいは手続の負担軽減を含めたパッケージとして相続登記の義務化、それと併せての過料の制裁というのも導入しているわけでございます。
それで、正当な理由があれば過料の制裁を科さないこととしておりますけれども、この正当な理由がある場合といたしましては、例えば、相続が数次にわたって何度も発生して、相続人が数十人を超えるなど極めて多数に上ったり、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するケース、あるいは遺言の有効性、遺産の範囲等が争われているケース、あるいは申請義務を行う相続人自身が病気で入院しているなどの事情があると考えられます。
また、御指摘ございました登記費用を負担する能力がないケースにつきましても、その財産状況や具体的な生活環境にもよるわけですけれども、そのものについて正当な理由があるとされる場合もあると考えられます。
他方で、相続登記の申請の義務が適切に履行されることが重要であることに鑑みまして、より簡易な義務履行手段として相続人申告登記を新設することとしておりまして、相続人本人が自らこれを行うことも想定されるということに鑑みますと、相続登記に係る手続を司法書士に依頼した場合にかかる費用を負担することができないとの理由のみをもって正当な理由があるとは言い難いものと考えております。
いずれにいたしましても、法務省といたしましては、相続登記の申請の義務の重要性は前提としつつも、正当な理由があると判断することがあり得るケースについては、丁寧に、個別にその事情を酌むように運用を行う必要があるものと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/110
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111・池田真紀
○池田(真)委員 費用を負担する能力がないのに、でもやりますよという今御答弁だったので、余りにも酷だなというふうに思いますので。そうですね、本当はむしろ、登録免許での減免に加えて、この司法書士費用も含めてですけれども、法テラスのようなところで一定の期間無料になるような枠組み、だから、要は速やかに手続を行っていただくというようなところに向けての工夫といいますか仕組みの検討といったものが必要ではないかというふうに思いますので、様々な事例を通して、また、この後の議論も通して御検討いただきたいというふうに思います。
次の質問ですが、この間もずっと出ていましたDV被害者の保護関係についてお伺いをしたいと思います。
ここも正当な理由の話になりますけれども、今回も住所等が公開されると危ないというような方々について特例が設けられていますが、一方で、登記簿の附属書類の閲覧については正当な理由があるときに認められるということになっています。違うんですね、取扱いが。
なので、この正当な理由というのがどのようなものなのか、そして、DV加害者からの閲覧請求は正当な理由がないとして開示を拒めることになるのかということを確認したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/111
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112・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
改正後の不動産登記法の規定によります登記簿の附属書類の閲覧についての正当な理由でございますが、これは、請求人において、少なくとも当該不動産について何らかの関係を有し、そのために当該不動産の登記簿の附属書類を閲覧することに理由があり、かつ、当該不動産の登記簿の附属書類を利用する正当性があることを意味するものと考えられます。
御指摘のDV被害者等の場合でございますが、このDV被害者等の住所等の情報につきましては、加害者から閲覧請求があった場合の取扱いについては、正当な理由がないものとして、その閲覧を許さないこととすることを想定しております。
現在の登記実務におきましても、登記簿の附属書類のうちDV被害者等の住所等の情報に係る部分につきましては、課長通知に基づく実務運用として、既に本人以外の者に対しては閲覧を制限する措置が取られているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/112
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113・池田真紀
○池田(真)委員 現在も、他法ですけれども、閲覧を制限するものがあるというふうに、その認識は私もありますけれども、しかし、運用の場面では、本当に残念なことなんですが、守られていないというか、不慮の事故的にミスが多発してしまっているというようなのも現に実例として後を絶たないわけですね。
なので、そこは何とかDV被害者側の方に寄り添うことが私は必要だというふうにも思っていますし、DVということが今お話をされていますけれども、例えば、過去の虐待とかそういったものがウン十年たってその後ということも考えられるわけですね。それは誰も証明がなかなかできない、加害者、被害者といった部分が分からない部分についても極めて配慮が必要だなというふうに思っていますので、この寄り添い型といいますか、被害者側の寄り添い型について、きめ細やかな配慮が私は必要だと思っていますが、大臣、この点について、お考え、御見解、そして制度の中でもしこれから、御検討していただいているのであれば、お示しをいただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/113
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114・上川陽子
○上川国務大臣 改正後の不動産登記法の第百二十一条第三項でございますが、閲覧を許容する基準というのを、これまで利害関係ということであったわけでありますが、その要件を正当な理由があるという要件に改めているところでございます。
正当な理由があることにつきましては、請求人において附属書類を閲覧する理由があり、そのことに正当性があることを意味するわけでございまして、御指摘いただきましたDV被害者等の住所等の情報につきましては、加害者から閲覧請求があった場合につきましては、閲覧をする正当な理由はないとして、その閲覧は許さないこととすることを想定しているところ、民事局長が答弁したところでございます。
寄り添ってしっかりと対応していく現場の運用ということが何よりも大事であるということでございますが、法務省といたしましては、正当な理由の内容につきまして、できる限りこれを具体化、類型化して、通達等におきまして明確化することを予定しておりまして、安定的な運用が図られるように努めてまいりたいというふうに思っております。また、加えてでございますが、各法務局におきまして、DV被害者等への配慮に欠けることのないように十分に意を払い、万全を尽くすよう、努めるよう指示をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/114
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115・池田真紀
○池田(真)委員 運用の失敗とかではなくて、仕組みから再検討が必要な場面というのも出てくると思いますので、是非引き続き、一例二例ということがもうないようにお願いをしたいというふうに思います。
これはちょっと、質問というわけではないんですけれども、関連してなんですが、全然ちょっとまた別の視点かと思いますけれども、ここのDVのこの件に関してということではなく、全般的な、今回、相続登記の義務化に対してということなんですが、全国青年司法書士協議会の会長声明というのがもうネットの方で出ていまして、その中にちょうど相続人の個人情報保護の観点からという項目がありました。相続登記の義務化により、相続人の意思によらず、相続人の法定相続分、住所、氏名を登記させて公示を強制させることは相続人のプライバシーの侵害に当たる可能性があるなんというような声明も出ていますので、これはまた時代の変化とかそういうのもあるから、ここの深い解釈というところ、受け止めというのは多様にあるかとは思いますけれども、こういった声もあるんだということを受け止めていただいた上で、更なる御検討をお願いしたいというふうに思います。
委員長、済みません、もう時間が終了なので、もう質問はできないですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/115
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116・義家弘介
○義家委員長 おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/116
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117・池田真紀
○池田(真)委員 済みません。そうですね。ごめんなさい。
じゃ、とにかく、言い切りにさせていただきます。本当は予納金の話をしたかったんですけれども、それもとても高いとか、あと、とにかく今回分からないものを整理しましょうということなんですけれども、そこにとどまらず、地域全体の利益につながるので、つながるようにと言った方がいいかと思いますが、何らか公的な負担の枠組みの必要性みたいなものも私は思っておりますので、是非、様々なケースを通じて、更なる検討をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/117
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118・義家弘介
○義家委員長 次に、松平浩一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/118
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119・松平浩一
○松平委員 どうもこんにちは。立憲民主党、松平浩一です。
今日は、所有者不明土地の帰属を国庫に移すという、その制度を新設するということなんですけれども、まず、これの法的性質についてお聞きしたいと思います。
これは、所有者不明土地の所有者から国に譲渡という形で所有権が行くのか、どうなんでしょうか、その辺。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/119
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120・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
相続土地国庫帰属制度におきましては、相続等により土地所有権を取得した所有者から承認の申請を受けた法務大臣が法律上の要件を満たすと認めた場合に国庫帰属の承認をし、これに基づいて所有者が負担金を納付した時点で対象土地の所有権が国庫に帰属することとしております。
このように、相続土地国庫帰属制度におきましては、土地は一般の売買等のように当事者の意思表示に基づいて譲渡がされるものではなく、所定の手続を経て法律の規定により国庫に帰属するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/120
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121・松平浩一
○松平委員 売買ではないということなんですね。民法二百三十九条、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」そういう規定があります。仮に所有権の放棄が認められると、その時点で国の所有に移ることになります。
そこで、ちょっとこれも念のための確認なんですが、今回の法律は所有権の放棄というものを認めた上で国庫に帰属するということなのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/121
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122・小出邦夫
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、この相続土地国庫帰属制度は、土地が一般の売買のように当事者の意思表示に基づいて譲渡されるのではなく、土地所有権を所定の手続を経て法律の規定により国庫に帰属させるものでございまして、土地所有権の放棄を認めた上で土地が国庫に帰属するというものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/122
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123・松平浩一
○松平委員 分かりました。
じゃ、今回、所有権の放棄を認めないで、直接国に所有権が移るとした理由を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/123
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124・小出邦夫
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
法制審議会の民法・不動産登記法部会においては、当初、一定の場合に土地所有権を放棄して無主のものとした上で国庫に帰属させることを可能とする土地所有権の放棄の制度の創設も検討されていたところでございます。
しかし、検討の過程で、この制度は所有者不明土地の発生を抑制することを目的とするものであり、その目的達成のために、放棄によって一旦無主の土地とするという法的構成は迂遠であろうということでございまして、法務大臣の承認という処分によって国庫に帰属するという構成を取ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/124
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125・松平浩一
○松平委員 迂遠だからということでございました。
動産の所有権については、これはもう一般的に放棄が認められるというふうに考えられています。動産の所有権の放棄については、民法上、規定がありません。けれども、そういうふうに考えられています。同じように、不動産の所有権についても、民法上、放棄について規定がありません。
そういうことで、じゃ、不動産の所有権について、放棄できるのかどうかというところで、昔、民事局長の回答というものが書面でありまして、これで、不動産所有権を放棄できないとされていたものがあるんです。これについて、私、今からちょうど三年ぐらい前の、平成三十年の三月二十日の法務委員会で聞いたときに、この回答については個別事例への回答であって、一般的な回答を述べたものではないというふうに答弁されました。
そこで今度、今回、一般的にお聞きします。不動産所有権は放棄できるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/125
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126・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
土地の所有権を放棄して所有者のないものとすることの可否につきましては、現行民法上、明文の規定はなく、解釈に委ねられており、確立した最高裁の判例もございません。
学説を見ますと、土地の所有権についても放棄することができると解釈する説がある一方で、現行法では土地の所有権の放棄は認められないと解する説などもあり、また、誰に対して放棄の意思表示をすることが必要かなど、要件的にも解釈が確立していない点もあることから、その可否を一概にお答えすることは困難でございます。
土地の所有権の放棄を認める見解によれば、権利を処分することは権利者の自由であるという権利の一般的な性質の下、所有権の一方的な放棄の意思表示のみにより、民法二百三十九条第二項を解して、土地が国庫に帰属することを認めることになるものと考えられます。
これに対して、今回の相続土地国庫帰属制度は、土地所有権を国庫に帰属させるための要件を設け、法務大臣の要件審査を経て、土地が国庫に帰属することを認めるものでございます。
この制度は、土地所有者には適切な土地の管理をする責務があることを前提とするものでございますので、このようなたてつけを有する制度が今般法律として成立した場合には、権利者の一方的な意思表示によって土地の所有権を放棄することはできないという解釈に親和性を有するものと考えられます。民法の解釈においても、このような考え方が有力になるものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/126
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127・松平浩一
○松平委員 今、放棄できないという解釈に親和性を有するとおっしゃられましたけれども、あくまで、できないと解釈はされないということでよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/127
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128・小出邦夫
○小出政府参考人 いずれにしても、解釈に委ねられておりまして、この立法をどのように評価され、どのように解釈されていくかということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/128
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129・松平浩一
○松平委員 あくまでも解釈に委ねるということで、法務省としては解釈されないというお立場なんだろうと思います。
ぎょうせい出版という出版社の法令解釈の基礎という本がありまして、これによると、国又は地方公共団体の行政機関は、制定された法令を施行、執行する際に必要な解釈をします、法令の解釈抜きにはその施行、執行はあり得ないと言っても過言ではありません、そして、内閣及びその下にある国の行政機関は、憲法七十三条一号により法律を誠実に執行しなければならない立場にありますから、その所管法令の執行に当たってその解釈を行うことは、むしろ当然の職責と言わなければならないというふうに書いてあります。当然の職責なんです。
私、この委員会でも何度も紹介されていますけれども、日本の所有者不明土地、合わせると九州以上の面積にもなるというふうに言われています。これだけ所有者不明土地がある一つの原因として、やはり法務省が土地を放棄できるかどうかという立場を明確にしなかったというのもあるんじゃないかなと思っています。だから、自分の土地について責任を持てずに、持たずに、もう放っておいてしまうということがまかり通ってしまったんじゃないかなというふうに思います。
なので、この所有者不明土地の問題については、この点を曖昧にして、今回国庫帰属の制度をつくったからいいよというふうにしないで、やはり解釈してほしい。土地所有権を放棄できるのかどうか解釈してほしいと思います。
そういう意味でいうと、今回なぜここまで解釈できないのか、しないのかというところ、理由を教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/129
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130・小出邦夫
○小出政府参考人 申し訳ございません、繰り返しになって恐縮でございますけれども、土地所有権の放棄の可否については、明文の規定がなく、解釈に委ねられており、確立した最高裁判例は存在しないところでございます。
この点に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、相続土地国庫帰属制度の施行によりまして、ある程度、これまでの解釈には変容が加わるのであろうと思いますが、それでもなおかつ、土地の所有権の放棄の可否につきましては様々な学説がございましていろいろな考え方があって、また、これが一般的に、放棄できるのか、そのときの要件は何なのかということにつきまして非常に影響も大きいわけでございまして、法制審議会で、当初、土地所有権の放棄ということで議論した際も、検討すべき様々な課題があるということで、端的に、法務大臣の承認による帰属という答申に至っているわけでございまして、なかなか、土地所有権の放棄が可能かどうか、あるいは、どの要件を満たした場合に可能なのかということについて法務省が解釈を示すことは難しい状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/130
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131・松平浩一
○松平委員 今、解釈できないことによる影響も大きいというお声もいただきましたが、本当にそのとおりだと思います。やはり私としては、これは解釈してほしいと思います。
ちょっと大臣にお聞きしたいなと思います。
上川大臣、平成三十年三月二十日の法務委員会でこうおっしゃられています。「法務省としても、現在、登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会におきまして、土地所有権の放棄の可否等を鋭意検討しているところでございます。」そして、「法律上、土地所有権の放棄を認めることにつきましては、その要件、放棄された土地の帰属先のあり方など、検討すべき課題も多くあるということでございますが、先ほどもさまざまな提案もいただいたところでございます、引き続き、関係省庁連携をして、しっかりと検討を進めてまいりたいと思います。」
放棄の可否について検討していて、三年前です、しっかりと検討を進めると大臣もおっしゃられているんです。この所有権放棄の可否についての検討、どうなったんでしょうか。大臣、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/131
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132・上川陽子
○上川国務大臣 三年前の御質問に対しての私の答弁ということで御紹介をいただきましたが、まさにその点につきましても、法制審議会の民法・不動産登記法部会におきまして、諮問を受けた上で検討されてきたところでございます。今、民事局長からこの間の経緯につきまして御説明をし、最終的には、土地所有権の放棄に関する規律につきましては設けることはしないという、この段階での結論に至ったというふうに考えております。
土地所有権の放棄の可否についての引き続きの解釈に委ねるというところでとどまっているわけでございますが、土地の所有に関することについては、国の大変重要なことでございますので、これはこれからも更に議論が出てくるものというふうに考えております。
今のこの段階の土地の帰属の規定につきましての状況の中で、法制審議会でしっかりと検討していただいた上でのこの法案の審議ということになっておりますので、その点につきまして、これからもまた引き続きの問題意識を持っていくべきことというふうに私自身は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/132
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133・松平浩一
○松平委員 事前のレクよりもかなり積極的に、これからも議論が出てくる、重要なところであるというところをおっしゃっていただいたのを本当にありがたく思います。
この点に関して、私なりの意見を申させていただきますと、法制審議会の幹事まで務められた松尾弘教授も、法学セミナーの二〇一九年の十月号でコメントをしていらっしゃるんですけれども、土地所有権の放棄をめぐって争われた裁判例で、土地所有権の放棄を一般論としては認めるというふうにおっしゃられて、ただ、個別の、個々の事案において、事実認定として放棄を否定したり、権利濫用などを理由に無効であると効果を否定している例があるというふうにおっしゃられているんです。つまり、結構裁判例もあって、放棄を一般的には認めている、そういったものが多いということなんです。
更に言うと、土地所有権放棄を認めるのは、私としては、これは今の民法の法体系とも整合的だと思っています。民法二百八十七条にも、土地所有権の放棄を部分的に認める条文があります。承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄し地役権者に移転し、というふうにあります。
日本の民法、これはドイツ法、フランス法を参考にしています。このドイツ法、フランス法でも、やはり所有権の放棄を認めているんです。
ドイツの民法九百二十八条一項は、土地の所有権は、所有者が放棄の意思を土地登記所に対して表示し、かつ、この放棄が土地登記簿に登記されることによって放棄することができるというふうに言っています。
あと、フランスでも、フランス民法五百四十四条、所有権は、法律又は規則が禁ずる行使をしない限り、最も絶対的な方法で物を享受し処分する権利であると。そこで、処分として所有権の放棄も可能であるというふうに解釈しており、実際所有権放棄が認められた例もあるということです。
更に言うと、やはり、放棄を認める実際上の実益もあります。
先週金曜日の参考人質疑で、石田参考人、今回の国庫帰属制度は、受皿が国というたてつけにしたから要件が厳しく、プラス財産があるときにしか使えません、その上で、方向性としては、市町村や関係団体に再生プランを作って引き継がせる方がいい、そういう仕組みを前提に土地の所有権放棄の政策を考え直してほしいというふうに御意見をいただきました。本当にそのとおりで、私も、ここは所有権の放棄を正面から認めて、市町村であるとかランドバンクであるとかそういったところに引き継がせて、不要な土地を有効活用する、そういった道を開くべきだと思っています。
先ほども紹介ありましたけれども、法制審の議論でも、放棄を認めて、放棄された土地の帰属先として、地域コミュニティーであるとかまちづくり団体であるとかに、希望する場合に優先的な帰属を認めるという案も出ていたというふうに承知しています。
この点、啓蒙思想家のジョン・ロック、所有権の絶対性というものを述べています。財物について、放棄も含めてどのような処分をするかは、本来、所有者の自由である権利なのです。人間の自然権、基本的人権なのです。
私は、今回の国庫帰属の手続ができたことで、この土地所有権の放棄の議論が後退してしまうということを懸念しています。実際に、先ほど答弁でもおっしゃられましたけれども、放棄できないことに親和性だ、こういう考え方には私はならないと思いますし、あってはならないと思っています。
大臣、この議論も踏まえて、不要な土地の有効利用という観点からも、積極的な御意見を最後にいただければというふうに思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/133
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134・上川陽子
○上川国務大臣 今委員御指摘のとおり、所有者にとりまして不要な土地をどのように有効活用していくのかは、国土の適正かつ合理的な利用という観点から重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、関係省庁が連携して検討を進める必要があるのではないかというふうに考えております。
法務省といたしましては、民事基本法制を所管するという立場でございまして、引き続き、その検討におきましても協力してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/134
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135・松平浩一
○松平委員 是非、積極的な議論をお願いできればと思います。
では、次に行きます。
ちょっと細かい点にはなるんですが、今回の新法で、相続等で取得した土地を国庫帰属させる手続を定めています。そして、この相続等については相続又は遺贈と規定されています。それで、ここで相続又は遺贈、遺贈と限定されていて、死因贈与は除外されているんですね。
それで、ちょっとお聞きしたいんですが、この死因贈与というのは新法の適用対象外なのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/135
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136・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
今回の制度が適用されますのは、委員御指摘のとおり相続又は遺贈、この遺贈も相続人に対する遺贈に限りますけれども、それにより取得した土地に関するものでございます。
委員御指摘の死因贈与によって土地を取得した者は、今申し上げましたとおり相続又は遺贈により土地を取得した者には当たりませんので、この相続土地国庫帰属制度における国庫帰属の承認申請権がなく、制度の対象外でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/136
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137・松平浩一
○松平委員 制度の対象外とされた理由を教えていただいてもいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/137
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138・小出邦夫
○小出政府参考人 お答えいたします。
この相続土地国庫帰属制度におきましては、承認申請権者を、相続又は相続人に対する遺贈により土地の所有権又は共有持分を取得した者に限定しております。
相続人は、類型的に、その土地を利用する見込みやその土地から受ける利益等がないにもかかわらず、やむを得ず相続又は遺贈により土地所有権を取得し、処分をすることもできずに所有し続けていることがあると指摘されております。このように、相続等を契機として土地を望まずに取得した相続人にとっては、土地の管理についての負担感が大きく、類型的に将来その土地の所有者が不明となるおそれが高いと考えられます。そのため、所有者不明土地の発生を抑制するためには、相続人については、国がその土地を引き受けて、国民の負担で管理することとする必要性があると考えたところによるものでございます。
これに対して、自らの意思で土地を取得した所有者につきましては、その責任において土地の管理に関する負担を引き受けたものと言うことができ、このような土地につきましては、国がこれを引き受ける必要性は低いものと考えたところでございます。そのため、相続土地国庫帰属制度においては、自らの意思で土地を取得した所有者には承認申請権を与えないこととしております。
御指摘の死因贈与は、遺贈者と受贈者との間で締結される契約でございまして、死因贈与によって土地を取得した受贈者は自らの選択で対象土地を取得したというふうに評価できますので、改正案ではこの制度の対象外とすることにしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/138
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139・松平浩一
○松平委員 受贈者、死因贈与の場合は自らの意思で取得したからということでおっしゃられたんですが、私は、ちょっとそこの部分、そんな形式的なところで線を引くだけでいいのかというふうに思います。
死因贈与、これは口頭で約束しても成立します。実際に、単に、もう私が死んだらこの土地を上げるよと言って、もらう側は、はいと言うだけでも成立して。そういう文脈というのは、私が死んだらみたいな話の文脈というのは、一々その内容を精査して契約書にしてということは余りしないと思うんです。つまり、死因贈与も遺贈に実質的にはかなり近いのが実態であると思います。
民法五百五十四条というのがあって、死因贈与について、「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。」というふうに言っています。民法上も、死因贈与と遺贈を同じようなものと認めてしまっているんです。裁判例もそうなんですけれども、裁判例で、自筆証書遺言、それによる遺贈、それが無効とされる場合に、いやいや、幾ら無効だとはいえ死因贈与ですよというふうに言ってくれる裁判例、非常にたくさんあるんです。死因贈与への転換というんですけれども、このように両者は非常によく似ています。だから、これだけ似ていると、よく分からないままに、当事者としては遺贈か死因贈与かよく分からないということは多いです。
そうなったときの不都合、不利益について、仕方ないと考えるのかどうなのか、単なる単独行為か契約かというだけの形式的なところで線を引いただけでいいのかという問題意識があります。ここの部分、課題として、今後の見直しの際に、私としてはやはり注意を払っていただきたいと思っています。大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/139
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140・上川陽子
○上川国務大臣 この制度でありますが、これまでにない新しい制度であります。どのような土地がどの程度国庫に帰属し、また国民の負担がどの程度になるか、厳密に見通すことは現時点ではなかなか難しい状況でございます。
本法律案には施行後五年を経過した際の検討条項を盛り込んでおりまして、委員御指摘の死因贈与の受贈者の取扱いも含めまして、制度の運用状況を踏まえて、関係省庁と連携をして必要な見直しを検討をする予定でございます。
いずれにいたしましても、所有者不明土地の発生を抑制するというために、まずは相続土地国庫帰属制度の円滑な実施に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/140
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141・松平浩一
○松平委員 ちょっとその点、御留意いただければと思います。
ちょっと時間がなくなってきたんですが、次のトピックとして、この一条の規定ぶりから、新法の適用は、先ほど相続人に限るというところで趣旨をおっしゃっていただきましたが、やはり相続人に対する遺贈というものを除いているんです。なぜ相続人に対する遺贈を除いたのかというところを具体的に教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/141
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142・小出邦夫
○小出政府参考人 お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたとおり、所有者が自らの意思で取得した土地につきましては、所有者がその責任においてその土地の管理に関する負担も引き受けたものと言うことができますので、このような土地を国が取得して国民の負担で管理する必要性は低いと考えております。
遺贈につきましては、受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄をすることができることとされております。そのため、相続人以外の者で遺贈を受けた者は、遺贈の放棄をすることなく、自らの意思で対象土地を取得したものと考えられます。
これに対しまして、相続人に対する遺贈におきましても、相続人は遺贈の放棄をすることは可能でございますが、この場合には、相続人が遺贈の放棄をしたとしても、相続の放棄をしない限りはその土地の所有権を取得することになります。
そこで、相続土地国庫帰属制度におきましては、相続人以外の者で遺贈により土地を取得した土地所有者につきましては、国庫帰属の承認申請権を与えないこととしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/142
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143・松平浩一
○松平委員 その場合の不利益を具体的に言いますと、相続人以外への遺贈をした場合に国庫への帰属手続はできないとした場合に、受遺者が放棄することになると思うんです。そうなると、放棄した場合に、ほかのそもそもの相続人にその不要な土地が戻ってしまう。そうなると、その相続人は、その土地は要らないので、今度は自分が国庫帰属手続をしなければならなくなってしまうということで、負担が増えてしまうんじゃないかということもあります。
あと、もう一つ理由があるのは、今のは相続人以外への特定遺贈の場合なんですけれども、相続人以外への包括遺贈の場合もあります。それで、特定遺贈と包括遺贈と違うだけで、実は、相続人以外への包括遺贈の場合は、新法上、国庫帰属への承認手続をすることは可能とされているんです、この案では。つまり、第三者への特定遺贈の場合は、今回の手続、除かれているのでできないのに対して、第三者への包括遺贈の場合は国庫帰属手続の利用ができるということなんです。つまり、不均衡になっているんですね。
だから、その辺の不均衡さと、先ほど申しました実際上のちょっと煩雑さというところもあると思います。そういった部分も、五年後の見直しというところもあると思いますけれども、問題意識としてとどめておいていただければと思います。
時間が参りましたので、以上になります。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/143
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144・義家弘介
○義家委員長 次回は、明二十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405206X00620210323/144
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