1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年六月二日(木曜日)
午後三時開会
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委員の異動
五月二十四日
辞任 補欠選任
佐々木さやか君 秋野 公造君
五月二十五日
辞任 補欠選任
柘植 芳文君 衛藤 晟一君
若松 謙維君 竹谷とし子君
六月二日
辞任 補欠選任
秋野 公造君 下野 六太君
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出席者は左のとおり。
委員長 山田 宏君
理 事
石田 昌宏君
小川 克巳君
川田 龍平君
山本 香苗君
田村 まみ君
委 員
衛藤 晟一君
島村 大君
そのだ修光君
羽生田 俊君
比嘉奈津美君
藤井 基之君
古川 俊治君
本田 顕子君
三原じゅん子君
石垣のりこ君
打越さく良君
福島みずほ君
森屋 隆君
下野 六太君
竹谷とし子君
足立 信也君
石井 苗子君
梅村 聡君
倉林 明子君
事務局側
常任委員会専門
員 佐伯 道子君
参考人
認定特定非営利
活動法人児童虐
待防止協会理事
長
特定非営利活動
法人子どもセン
ターぬっく理事 津崎 哲郎君
浜田・木村法律
事務所弁護士 浜田 真樹君
全国児童家庭支
援センター協議
会会長 橋本 達昌君
特定非営利活動
法人インターナ
ショナル・フォ
スターケア・ア
ライアンス ユ
ース・レプレゼ
ンタティブ
特定非営利活動
法人Givin
g Tree相
談員(ユース担
当) 畑山 麗衣君
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本日の会議に付した案件
○児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/0
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001・山田宏
○委員長(山田宏君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、佐々木さやか君、若松謙維君及び柘植芳文君が委員を辞任され、その補欠として秋野公造君、竹谷とし子君及び衛藤晟一君が選任されました。
また、本日、秋野公造君が委員を辞任され、その補欠として下野六太君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/1
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002・山田宏
○委員長(山田宏君) 児童福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
御出席をいただいております参考人は、認定特定非営利活動法人児童虐待防止協会理事長・特定非営利活動法人子どもセンターぬっく理事津崎哲郎君、浜田・木村法律事務所弁護士浜田真樹君、全国児童家庭支援センター協議会会長橋本達昌君及び特定非営利活動法人インターナショナル・フォスターケア・アライアンス ユース・レプレゼンタティブ・特定非営利活動法人Giving Tree相談員(ユース担当)畑山麗衣君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚ない御意見を頂戴いたしまして、今後の審査に参考にさせていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、津崎参考人、浜田参考人、橋本参考人、畑山参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず津崎参考人からお願いいたします。津崎参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/2
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003・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) よろしくお願いいたします。津崎でございます。大阪の方の児童虐待防止協会の津崎哲郎といいます。よろしくお願いします。
今回は、このような場をいただきまして、ありがとうございます。
私、長年、児童福祉の実務家をしてきましたので、今日はその実務家の立場で見たときの法改正についての意見を多少述べさせていただきたいと思います。
お手元に参考人資料を配らせていただいておりますので、それを参照していただければと思います。
まず、市区町村、それからこども家庭センターの設置と子育て家庭への支援の充実というふうなことに関しての意見です。
これは、一つの大きな方針は、市区町村の行政とそれから民間機関が具体的なサービスを提供する事業を起こし、やる市区町村と民間が一体となって支援の幅を持たせたり中身を充実させるという、そういう事業でございます。
そこに書かせていただいています後半の部分をちょっと見ていただきたいと思います。
児童虐待は、児童相談所の数字で、今、年間約二十万件でございます。しかし、長期分離保護されるケース、例えば施設とか里親ですね、これは二、三%にすぎません。ということは、九七%は在宅ということです。それはどこで対応されるかといいますと、市区町村の要保護児童対策地域協議会ですね、通常、要対協、そこの見守りケースとして対応されるということになります。そのケースが今どんどんと増えてきています。だけど、実態はそのサービスを提供、余り十分できない単なる見守りのケースが一般的です。地域で孤立し課題を抱えた家族、例えば一人親家庭、あるいは若年の親の家庭、何らかの障害を抱えた家庭、貧困家庭、それから、逃げていかないDVを抱え込んだ家庭、あるいは連れ子再婚のステップファミリー、夜間就労の家庭、あるいは外国人家庭、そういう家庭が要対協の登録ケースで非常に多いわけです。それに対して十分サービスが提供されていませんので、本来であれば、具体的なサービスメニューを創設して家族を支える仕組みづくり、これが必要不可欠ということでございます。
従来、厚生労働省は、早く関わる予防支援ですね、いわゆる時間軸で早く関わる、例えば、こんにちは赤ちゃん事業、これは生後四か月までに全部チェックするという、そういう事業ですね。それから特定妊婦、これはもう妊娠中から必要性のある人はチェックし支援に乗せる、そういう活動はされてきたと、事業化してされてきたと。しかし、これまで、生活空間軸、私はもう横軸というふうに言うてますが、これの予防支援策が不十分だったと、そこから虐待ケースが多発していたと。
今回、市区町村の分野で具体的民間サービスメニューを創設又は拡充し、公民一体となった家族を支える仕組みをつくられたことは非常に意義が大きいと感じています。初めて縦軸と横軸、双方からの予防支援がこれで何とか実現できるという、そういう形になったわけです。
ただ、一つ現場の視点で希望を言わせてもらいますと、今、地域によっては外国人の生活困難ケースが顕著に増えています。難民の受入れというようなこともあります。その支援をメニューに是非盛り込んでいただきたいというふうに思っているところです。
それから、二つ目でございます。二ページのところですが、児童相談所による支援の強化、とりわけ親子再統合支援事業に関してです。
厚生労働省さんが家庭を重視する方針を打ち出されていることもあって、児相の実務では施設入所等ケースにおいて家庭復帰が強く意識されています。
しかし、アメリカでは、元々、家庭復帰可能なケースと家庭復帰が無理なケースの基準を作っていまして、どのケースも家庭復帰させるわけではありません。また、元の家族の改善をアメリカでは裁判所が直接家族に要請し、それに従わなければ親権喪失になります。子供の養育そのものができなくなる仕組みというのがしかれています。
日本にはそのような仕組みがないため、基本的に家族が余り改善していない、家庭復帰した子供が再被害に遭うケースが多発している。例えば、昨年、滋賀県では、別々の施設に入っていました兄と妹が母子家庭に引き取られ、お母さんが不在がちの中で兄が妹を死なせてしまったという、そういう悲惨な事件も起こっています。
したがって、再統合を成功させるためには、再統合ができるようなノウハウを持つ事業者、今は大阪のチャイルド・リソース・センターぐらいしかないと思うんですけど、今後、時間を掛けて広く養成していく必要があると考えています。
加えて、家族が十分改善していませんので、課題のある家族を支えるためには、一時的な再統合支援だけでなく、市区町村の具体的なサービスメニューの拡充と要対協の家族支援機能強化、これが必要不可欠であるということも常に意識して取り組む必要があるというふうに考えています。
三番目に、子供の意見聴取等の仕組みです。
子供の意見をしっかり聞き取って、その処遇に反映することが重要です。しかし、子供は、親の支配や影響がある間はなかなか本心を言えません。私は一時保護所長を三年した経験がありますが、親から虐待され、けがをした子供であっても、その原因を尋ねられますと、転んだとかあるいはぶつけたなどと説明することが多いということです。しかし、二、三週間たちまして、親の影響がなくなり、また保育士などと関係ができる中で初めて、実は親にされたというふうなことが言えるようになります。
そのような子供の特性を考えれば、第三者であっても、見知らぬ人が来ていきなり聴取しても、本心の思いとはずれ、本当の意見を聞き取ったことにはならないと。
したがって、意見を聞き取る際の環境や人物、子供の特性や関係性など、配慮の仕方に十分留意が要ることを踏まえた制度にしていただきたい。だから、例えば、意見聞き取ったそのことだけが全面のあれではなくて、調査所見との総合的判断や、場合によってはノンバーバルですね、表情とか態度とか、そういうものの酌み取りみたいなものも必要だと。
なお、現在行われております、警察、児相、検察による合同司法面接というのがやられています。これは、証拠の能力の観点から、面識のない検察官が子供と面接し、児相と警察はモニター越しに見るという、そういう仕組みになっていますが、検察官と子供は全く面識がありませんので、子供が全くしゃべらないというふうなことも間々生じているというふうなことも知っておいていただければと思います。
それから、一時保護開始時の司法審査に関してです。
一時保護開始前の司法審査創設とは、子どもの権利条約に基づけば大切な制度です。本来、ただ、一時保護というのは予防的に子供の安全確保を優先することが大切ですので、裏付け資料が十分そろわない段階での判断になります。そうしますと、裁判所の証拠主義とはなじまない、そういう側面を持っています。したがって、どのようなおそれの条件で保護が可能なのかどうか、裁判所と児相の共通の具体的な例示作成をしっかりしておいていただくということが大切になります。
日本では、実務的一般論でいいますと、欧米に比べて保護者の意向に反する子供の保護には基本的に慎重です。社会的養護下に置かれている子供の数も、欧米に比べますと相当少ないということがあります。その現実を十分踏まえないまま保護の際の厳密さを求めれば、本来であれば必要な保護が十分なされず、子供のリスクが適切に対処されないまま子供が被害を受け続けるということも懸念されます。したがって、リスクに対する子供の安全確保が積極的にできる制度となるように望みたいと。
これまでの経緯を振り返りますと、児童虐待防止法成立、平成十二年ですが、それによって初めて保護者の意向に反する保護が可能になりましたので、それまでは保護者の意向に反した保護するということはなかったんですね、実務で。逆戻りしてはいけないというふうに考えています。
また、一時保護の承認が得られたとしても、保護者と子供の面会や接触をどのような形でどのぐらいの頻度で認めるのかは、実は裁判沙汰になっているケースもありますので、具体的な実施に関する指針も示すことが望まれると。親から威圧されている子供は、親の接触があるといつまでも本音が言えないし、逆に制限し過ぎますと、乳幼児などの場合、親との愛着形成に支障が生じることも考えられます。
要は、子供の最善の利益に基づくケース・バイ・ケースの判断になりますので、その判断の正確さ、客観性を担保できる仕組みづくりについて検討が要るというふうに考えています。
この点に関しましては、明石の児童相談所が児相の一時保護や面会などに関して第三者の立場で評価、判断する仕組みを既に実践していますので、その知見なども踏まえた取組を期待したいと思います。
最後になります。実務者の専門性の向上です。
児童相談所や市区町村職員の専門性確保は喫緊の課題であると考えています。厚生労働省が児相の数を増やす政策を実施されていることもあって、その数は少しずつ増えてきています。しかし、その業務を担う職員の専門力が追い付かず、多くの児相において主力の児童福祉司はせいぜい経験二、三年ということが少なくありません。そうなりますと、難しいケースにおいてしっかりした判断や対応ができず、児相が関わっていてもうまくケースが運べないということが頻繁に生じています。
今回、新しい児童家庭福祉専門職の資格を民間資格として考えられているようですが、実務上最も大きい課題は、公務員の人事の異動サイクルが短く、専門職が職場で定着できない、そういうシステムになっていることです。したがって、専門資格の内容もさることながら、知事会、市町村会などの協力も得て、福祉専門職の採用、異動、格付などの在り方を一般行政職とは異なったシステムとして制度化することをできれば検討願いたいというふうに考えています。多くの自治体においては、福祉専門職であっても一般行政職の人事ルールが適用され、専門職としての積み上げができにくい、そういう実情に置かれているということです。
なお、実務的には各児相や市区町村から外部スーパーバイザーを求めるニーズが急増していますので、そのような制度の後押しも検討願えれば幸いです。
ちなみに、私が所属します児童虐待防止協会は、大阪市と契約し、大阪市二十四区の要対協の実務者会議にスーパーバイザーを派遣する制度を十年ほど前に立ち上げ、実践しています。
なお、大阪市の各区要対協の実情を少し説明しますと、各区とも月一回の実務者会議と随時の個別ケース検討会議を開催していますが、西成区だけが中学校校区ごとに実務者会議を開催しておりまして、ここは月に六回実施しています。その会議には、子供食堂や居場所提供などの民間団体が積極的に参加していまして、情報が細かく支援体制の活動も積極的です。したがって、課題が多い区であっても、かえって死亡事例の発生が少ないという効果が上がっています。
これは、最初の、民間と公、市区町村が一体となって支援する、それの先行事例みたいな形になっていますので、また御検討願えればと、参考として御検討願えればというふうに思っています。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/3
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004・山田宏
○委員長(山田宏君) ありがとうございました。
次に、浜田参考人にお願いいたします。浜田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/4
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005・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 浜田でございます。大阪で弁護士を始めて今二十年目になります。
本日は、これまで児童虐待対応に関わってきた立場から意見を申し上げます。
お手元に資料をお配りしておりますので、これ適宜御覧いただければと思います。
私からは、一時保護の司法審査に限って意見を申し上げたいと思います。
先生方にはもう言わずもがなのことでございますが、端的に言えば、国会のこの審議におきまして、一時保護についての考え方の大きな枠組み、そしてまた基本的な考え方を是非先生方からお示し願いたいと考えております。それがこの先、施行に向けての準備、そしてまた施行された後の各機関の判断に大きな影響を与えてこようかと思いますので、是非ともよろしくお願いを申し上げます。
資料の三ページを御覧ください。
そこでまず、私の理解するこの点の大きな枠組みを確認しておきたいと思います。
我が国の制度では、児童虐待対応は基本的に行政権、児童相談所であったり市町村が対応することとされておりまして、司法の関与は限定的であります。具体的には、特定の場面、場面場面ごとにスポットとして関与するということ、そしてまた、その関与は原則として行政の判断を承認するや否やのところに限定をされているということです。これはすなわち、児童相談所が判断についての広い裁量権を有しており、裁判所もそれを尊重すべきシステムが採用されているというふうに言ってよかろうかと思います。
資料四ページを御覧ください。
以上を前提として、今回の改正案について、私の最大の懸念は、一時保護が必要な場合に、場面でそれができなくなるおそれがあるのではないかということでございます。これを法文案から見ていきたいと思います。
改正案の法文、三十三条一項でございますが、こちらを拝見しますと、児童虐待のおそれがあるとき、中略しまして、その他の場合であって、これが青字の部分ですが、児童相談所長が必要と認めるときには一時保護が可能としております。
次に四項を見ますと、裁判所の判断は、まず第一項に規定する場合に当たると認めるときには一時保護状を発するのであるとしつつ、明らかに一時保護の必要がないと認めるときには一時保護状は発付しないのだという立て付けになっております。一時保護が必要と思われるような場面に当たるかどうかの判断とは別に、一時保護が必要かどうかが改めて問われることとなるように見えます。
しかし、考えてみますれば、児童虐待のおそれがあるときという場合に当たるということは、普通に考えれば一時保護の必要性も認められるのではなかろうかと思います。となると、果たして、明らかに一時保護の必要がない場面というのは一体どのような場面が想定されるのだろうかといったところが気になっております。この辺りについては、施行までに考え方を十分に整理していくべき必要があろうと考えております。
続いて、資料五ページを御覧ください。
ここで、一時保護状と逮捕状では実は意味合いが大きく異なるということを確認をしておきたいと思います。両者は、人権保障の観点から裁判所が審査を行うという点では共通をいたします。もっとも、その目的は大きく異なるものと考えられます。すなわち、逮捕というのは過去の犯罪の捜査のためです。つまり、極端なことを申しますと、仮に逮捕状が発付されなかったとしても、それによって新たな犯罪が生じるということは基本的にありません。
他方、一時保護ですが、こちらは、このお子さんをこの先発生するおそれのある危険から守るために行うものです。すなわち、一時保護が行われなかった場合、最悪の場合、子供が被害を受けてしまうということが起きる。
このように考えますと、若干場面は違うかもしれませんけれども、この関連で想起いたしますのは、最近、神奈川県で発覚した事案です。小学校一年生のお子さんを殺害したとして、お母さんが逮捕された事案がございました。報道によれば、児童相談所はこのお子さんの施設入所が必要と判断をし、それを実現するために児童福祉法二十八条に基づく審判の申立てもなすったんですけれども、家庭裁判所でその申立てが却下されたというふうに聞いております。児童虐待事案への対応が失敗の許されないものであるということと、児童相談所とそして裁判所との関係を改めて考えさせられる事案と言えるのではないでしょうか。
続きまして、資料六ページを御覧ください。
一時保護状の話に戻ります。今回の改正案では、一時保護が必要な場面について詳細は内閣府令で定めることとされております。現在と同様に、一時保護が必要な場面で適切に一時保護を行うことができるという運用を維持するためには、この内閣府令に一時保護が必要となる場合を漏れなく書き込むということが極めて重要になろうと思います。これが実現できませんと、そういった場面での一時保護はできないこととなっており、取り返しの付かない結果を招きかねません。加えて、この点に関しては、現状の一時保護が極めて広範な目的の下で行われていることにも注目すべきと考えます。
平成二十八年改正でしたか、児童福祉法三十三条に一時保護の目的規定が加えられました。ただ、そこでは大きく二つ書かれましたけれども、必ずしもそのどちらかに峻別されないような形の一時保護も現行の実務上行われているということが現実の世界でございます。
そこで、この内閣府令制定に、策定に向けまして、これまでにできていた一時保護ができなくなるような事態は生じないのである、あっ、失礼、生じない、そのようにすべきであるということを是非確認をしていただきたいと考えております。
もう一つは、先ほども述べました一時保護の必要性とは何ぞやというところです。ここの考え方については関係者間できちんとすり合わせをしておきませんと、一時保護がなされるべき事案で一時保護状が発付されないという事態が起きかねないということを危惧するものであります。
続いて、資料七ページを御覧ください。
今度は、親権者の同意に関する問題について意見を申し上げます。
今回の一時保護制度で一時保護状請求の対象となるのは、開始七日目において親権者等の同意がない事案でございます。まず、このスライドでは親権者について申し上げます。
通告を受けて緊急一時保護を行うケースなど、一時保護開始時点では誰が親権者であるかということが正確に把握できていないケースがございます。そういったケースでは、住民票を調べ、戸籍を調べていくわけですけれども、当然のことながら、他の自治体に依頼をして調査をするということも多くございますので、どうしても時間が掛かる、日数が掛かります。
そこで、何らかの方法でこの調査を迅速に進めることができるような方策を検討すべきではないでしょうか。例えば、オンラインでその戸籍が自由自在にといいますか、見れるといったところでの日数短縮、調査への日数短縮というものも検討されなければならないのではないかと思います。
また、七日目の時点では親権者が誰なのかが判明していないというケースも当然ございます。そういった場合も、条文の文言上、一時保護状の請求が必要になるものと思われます。
資料の右の図は厚労省の検討会で出されたもので、一時保護の開始から日数がたつほど同意のないケースは減っていくんだということが示されております。もっとも、保護開始から七日目の時点で親権の所在は明確に判明しており、しかも、それは資料の裏付けができており、そして、その親権者の同意も確認できているというケースのみが一時保護状請求から外れるというふうに考えられますと、そこまで判明していない限りは請求が必要となると思われます。となると、日数の結果に、あっ、失礼、日数の経過に伴って順調に対象件数が減るのかについては私はやや懐疑的でございます。請求すべき件数は想定よりも多くなる可能性があると考えねばならないのではないでしょうか。
次に、資料八ページを御覧ください。
こちらは同意についての問題です。
親権者の同意がある、ないという判断は、まず児童相談所がせねばなりませんが、例えば同意するかどうかを明示しないとか、条件付で同意してやってもいいぞみたいなときに同意があると評価してよいのかどうか。また逆に、ちゃんとした説明を受けていないままに同意をしてしまったというふうに後から言われるということも生じ得ます。これはいずれもそういうことはあるべきではなかろうと思います。
さらに、形式面、運用面で申しますと、同意書へのサインを求めることを必須とするかどうか、こういった点はあらかじめ考え方を明確にしておく必要性が極めて高いものと考えます。なぜかと申しますと、結局のところ、現場がその場での判断に困るようなことはあってはならないものと考えます。
そういたしますと、全国統一の書式を作っておくということが望まれることになります。その書式の中では、児童相談所が何をどのように説明をしたのか、そして親御さんはそれに対してどう答えたのかということが全て確認できるようなものが望ましいのではなかろうかと思います。
さらに、同意撤回の問題がございます。
こういうケース、一旦した同意を撤回するということは必ず出てまいります。これは、二か月を超えて引き続き一時保護を継続する際の司法審査が導入されたときも同じような問題がございました。しかし、今回は一時保護の開始から七日以内でございますので、親権者の意向がまだ揺れている場合というのは今までよりも多くなるものと思われます。例えば、こういった理由で請求期限を徒過してしまった場合に救済される余地があるのかどうか、それはちょっとさすがに難しいとなった場合、そういったときに児童相談所はどう対処すべきであるのか、そういったことについても検討しておく必要があるように思います。
そこに記載しました表からも見て取れますとおり、二か月経過時点と七日経過時点とでは同意なしの件数は大きく違います。同意が曖昧なケース、そしてまた、同意はあるけれども撤回されそうなケースについても請求の準備を進めていかなければならないことになろうと思いますので、繰り返しになりますが、請求すべき事案の数は思いのほか増える可能性があるものと思われます。
さて、資料九ページを御覧ください。
こちらは児童相談所が行う事務回りについての話です。
令状型の手続でございますので、手続としては逮捕状請求の流れが参考になると思われます。そうなると、ケース担当の児童福祉司は少なくとも半日掛けて裁判所に出向く必要があろうかと思います。
全国の児童相談所現場からは、今回の案の基となる考え方が厚労省の専門委員会で示された際、七日間の請求での準備は困難という声がたくさんあったものと認識をしております。が、実は、最終日、七日目には一日裁判所に行くために空けておかねばならないとすれば、実は準備に充てられる期間は開始から六日、更に減るわけです。
言うまでもありませんが、その担当児童福祉司はほかにもたくさんのケースを抱えております。そういたしますと、その件の業務に時間を取られることによって、その児童福祉司の抱えている業務全体の遅延を招きかねません。こういった事態を回避する方策も是非とも考えていかねばならないものと思います。具体的には、例えば、逮捕、失礼、一時保護状の請求手続がオンラインでできるといった仕組みも検討に値すべきものと考えます。
資料十ページを御覧ください。
最後に、子供の意見について申し上げます。
今回の法案では、子供さんが一時保護に同意するか否かは司法審査の有無に影響しないこととされております。もちろん、親権の下にあるといった観点から理解することはできるものの、今、このように子供の意見表明が着目され、制度としても導入されてくることとの兼ね合いで申しますれば、残念な面は否定できません。
特に、一時保護はお子さんが非行に及んでいる場合にも利用される手続であります。こういったケースを中心に、親権者の意見とは切り離したところでお子さんの意見をどう扱うか、これは引き続き検討されるべきではないかと思います。今後の宿題と言ってもよいのではないかと思います。
もっとも、今回の法改正では、一時保護開始の場面を含めて、お子さんから意見を聴取する措置が設けられることとなっております。その具体的な姿はまだちょっと見えないところもございますが、その制度によってお子さんの意見が的確に手続において勘案されるようになることに期待をしたいと思います。
資料十一ページ、最後のまとめでございます。
以上のような課題を見るにつけ、やはり毎度のことではありますけれども、児童相談所の体制強化は必須、不可欠なものであると改めて感じます。
とはいえ、単に人数を増やせばいいというものではありませんし、急速な人数の増大、増員がむしろ一時的には現場の負担感を、負担感の大きさを招いているということも否定できない事実かと思います。
最後に、私が付け加えておきたいのは、児童相談所に対するリクエストと申しますか希望でございます。
児童相談所は、今日触れてきましたように、大きな行政裁量を有する機関でありますからこそ、適切な権限行使に一層努めなければならないということをいま一度確認をしておきたいと思います。
端的に申しますれば、児童相談所は、一時的な判断はあくまで児童相談所が行うのである、そのことをきちんと認識をされて、司法の判断に助けを求めるのではなく、自らの判断の質を担保できるよう児童福祉の専門性の醸成に努めていただきたいし、国はその実現のための方策を引き続き提供してほしいということでございます。
私の意見は以上です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/5
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006・山田宏
○委員長(山田宏君) ありがとうございました。
次に、橋本参考人にお願いいたします。橋本参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/6
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007・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) 全国児童家庭支援センター協議会の橋本と申します。
現在、福井県越前市の社会福祉法人越前自立支援協会、児童家庭支援センター・子育て支援センター・児童養護施設一陽に勤めています。
本日はこのような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
早速ですが、既にお配りしている私の資料に基づきまして私見を述べさせていただきたいと思います。
児相の虐待相談対応件数が二十万件を超える今日、虐待に至る背景は貧困や障害、家族構成員間の不和、仕事と子育ての両立による日々の疲労の積み重ねなど実に様々です。
そこで、児相はもとよりのこと、市町村や児童家庭支援センター、市社協などの民間支援機関、子供食堂や子供宅食、学習支援拠点を運営する市民ボランティア団体などが連携、協働し、どうやって地域社会全体が言わば総掛かりで子育てを支えていくかが重要となっています。
こうした中で、では具体的にどういうアプローチが必要かといえば、まずは児相と市、両者の体制強化と連携力強化が必要であると同時に、母子保健と児童福祉、教育行政など、いわゆる縦割り行政の克服が必要と考えます。次に、市の段階において、単なる見守りだけではない具体的な家庭への支援を提供する権限やメニューを豊かにする必要があると考えます。そして最後に、私が最も重要と思う点ですが、行政と民間支援機関や市民ボランティア団体との多機関協働の推進を図ることが必要と思います。
総じて、今回の法改正は、社会的養育専門委員会において、これらの改革を実現していくためにはどうしたらいいのかを様々な現場から極めてリアルな意見をも交えながら真摯に議論した結果の反映であり、特に実際にファミリーソーシャルワークを担ってきた支援者たちからは大いに期待されているところです。
なお、今回の法改正は大変多岐にわたるものですが、従来からの予算事業を制度に位置付けたり、先進事例を基にして考えられたりしたものが大半なので、実現可能性も十分にあり、むしろ国がそうした事例を制度に位置付け、財政面で安定的に支援し、さらに、好事例を横展開していくことで施策展開は一層加速されるものと考えています。
心配事は、自治体間格差が広がるのではという点です。残念ながら、地方分権の今日的情勢においては、やる自治体とやらない自治体が二分され、ナショナルミニマムが破壊されるおそれがあります。全ての市町村には、自分たちは児相へのつなぎ役、児相に通告すれば任務終了などといった了見を超えて、児童虐待対策を自らの責務として自覚し、主体性を持って計画的に整備を進めてほしいと思います。その際、国は、とりわけ規模の小さい市町村が民間支援機関を有効に活用できるよう、民間と連携したり協働して相談支援を実施したりすることに対し何らかの財政的インセンティブを付与することも検討してほしいと思います。
さて、平成二十三年の児童福祉法改正以降、市町村の役割は年々大きくなってきています。そのような状況に対応すべく、一部の先進的市町村では母子保健と児童福祉とを一体的に運用しようとする動きも出てきました。
また、私も元市の職員でしたので市の内情はある程度分かっているつもりですが、市は地域の実情が詳しく手に入り、家庭環境の変容が瞬時に捕捉できるという強みがあります。それゆえ、ここが中核となり、自ら実施している子育て支援や母子保健事業を一体化した上で、さらに、障害児者や生活困窮家庭への支援制度等を総動員して子供家庭支援に乗り出していけば、望まない妊娠や育児困難が懸念される特定妊婦、ヤングケアラー、施設退所後の生活環境にリスクを抱えている青年や生活困窮児童などにも支援は行き届き、その守備範囲は一気に拡大するでしょう。
もちろん、これらの支援を市の職員だけでやってくださいと言っているわけでは決してありません。実際、保護者自身の発達障害や精神疾患等が原因で家庭内での生活環境が著しく悪化している状態、いわゆるごみ屋敷と言われるような状況で、市の担当部署ではとても手に負えないようなケースに対しては、児童家庭支援センターが家庭の立て直しに向けアウトリーチ支援を行っているような動きもあります。
こうした現場の動きも踏まえつつ、社会的養育専門委員会においては、市が積極的に支援を行えるための権限を持たせること、市と児相が一緒にケースを検討し、支援の見立てを共有すること、市が民間の社会資源を生かしながら多様な家庭支援事業を実施することで、支援を必要とする人に確実に支援をつなげることなどが議論されてきました。今日の制度改正では、これらの議論の結果を尊重して、このこども家庭センターの設置や新たな家庭支援事業の実施などを盛り込んでいます。
なお、これらを実現するためには、必要な人員体制や財源の確保が必要であり、国には一層の支援を求めたいと思います。
一方、虐待相談対応件数が増加の一途をたどる中、児相の人員体制も大変厳しい状況にあると認識しています。児相は、相談対応、一時保護、施設への入所、里親への委託といった仕事のほかにも保護者の支援や里親の支援など、多岐にわたる業務をこなしています。これに、今回の制度改正で意見聴取や自立支援にも今後取り組んでもらうことになりました。国は児相の体制強化を計画的に進めており、平成二十九年から児童福祉司の数は堅調な増加を見せていますが、残念ながら、業務はそれ以上に増加しています。国には引き続き体制の強化に取り組んでいただきたいと思います。
加えて、何でも児相がやればいいではなくて、児相でないとできないこと、児相と民間との協働で十分にできること、むしろ民間の方が柔軟にできることなど、いわゆる児相の抱え込みからの脱却を図るなど、役割の進化や業務の効率化も同時に考えていかなくてはいけないと思います。
実は、現状でも、一部の先進的な社会的養護施設では、既に市や児相との連携、協働した様々な取組が展開されています。
例えば、大分県別府市の光の園子ども家庭支援センターは、今春、こどもセンターパーネムを創設しました。その一階には別府市子ども家庭総合支援拠点が設けられ、支援対象児童等見守り強化事業の実施拠点ともなっています。さらに、二階には一時保護所が開設され、児相機能の一翼まで担っています。
また、福岡市の子ども家庭支援センターはぐはぐでは、福岡市の児相からの委託により家庭移行支援事業を実施しています。具体的には、虐待再発防止、家族再統合プログラムを用いて、乳児院や児童養護施設からの家庭復帰、親子関係再構築支援を行っています。
また、私の地元ですが、福井県越前市では、児童家庭支援センター一陽の職員が市に派遣され、要対協の研修事業や相談支援業務、関係機関調整業務の一部を担っています。
さらに、北海道の美深子ども家庭支援センターと美深育成園は、施設から車で三時間も離れている稚内市内に地域小規模児童養護施設を新設し、実質的に北海道旭川児相の稚内分室の一時保護機能を担っています。
このように、一部の自治体では、既に市町村や児相の負担を軽減するための官民協働が果敢に実践されています。今般の法改正により、このような実践が燎原の火のごとくいかに拡大していくのか、大いに楽しみなところです。
余談ながら、最近、児相のOBや施設のケアワーカー経験者、さらには多様な支援者仲間が市民活動的に連帯し、いわゆる協同労働の形態で児童家庭支援センターや自立援助ホーム、ファミリーホームなど、小規模な社会的養育リソースを創設し運営していこうという機運が高まってきているように感じます。
労働者協同組合法の施行を目前に控えた今、同法の理念が広く福祉関係者に浸透することで、社会的養育を必要とする子供たちのために何かをしたいと願う市民有志らの熱意によって、地域に溶け込んで、小回りが利いたり、アットホームな雰囲気で子供を包み込んだりといったユニークな社会資源が増えていくことにも期待したいと思います。
最後に一点。全国児童家庭支援センター協議会が調査した直近の令和三年度実績によると、全国の三分の二の児童家庭支援センターでは、児相から委託を受ける形で、子育て支援に関するノウハウを生かし、在宅指導措置を行っています。今回の制度見直しの中では、この際の費用の在り方を明確にすることも盛り込まれており、これが義務的経費化し定着していけば、家庭支援機能が向上することはもちろん、児相の機能強化という問題にも寄与すると確信しています。
以上で私の発言を終えたいと思います。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/7
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008・山田宏
○委員長(山田宏君) ありがとうございました。
次に、畑山参考人にお願いいたします。畑山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/8
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009・畑山麗衣
○参考人(畑山麗衣君) 皆さん、こんにちは。NPO法人インターナショナル・フォスターケア・アライアンス、そしてNPO法人Giving Treeの畑山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、貴重な機会をいただき、本当にありがとうございます。
私はゼロ歳から十八歳まで、乳児院、児童養護施設、ファミリーホーム、週末里親といった社会的養護の下で育ってきました。措置延長し大学進学、その後、措置解除して独り暮らしをしました。ケアを離れてやっと自由になったのではなくて、経済的な課題、保証人の課題、精神的な問題、また家族との関係、本当に様々な困難が同時に襲って、降りかかってきました。社会的養護に望んで入ったわけではないのですが、なぜケアを離れてもこんなにしんどいんやろう、同年代の若者と同様の経験や選択肢が何でないんやろうというふうに悔しく思っていました。
現在、親となり子育てをする中、やはりライフステージに応じて、社会的養護のケアから離れた今も社会的養護経験者であることに引き戻されることがあります。そうした経験を生かしながらですが、IFCAでは当事者活動をしながら、Giving Treeで支援者として当事者に関わらせていただいています。
IFCAは、日本とアメリカのそれぞれの国で社会的養護のケアを受けた経験のある若者が互いに交流し、制度を学びながら、自分たちの声や政策やケアに届け、参画することを目指しています。また、Giving Treeでは、里親、里子、社会的養護のケアから離れた若者を対象にサポートを行う団体で、そこでピアカウンセラーとして子供たちに関わらせていただいています。
今回、児童福祉法改正の議論の中心にある子供の意見を聞く機会、自ら意見を述べることができる機会の確保とありますが、子供を取り巻く法律改正に伴う議論の場にこのように当事者を参画させていただいたことを心から感謝申し上げます。
また、厚労省の皆様におかれましては、社会保障審議会で多くの当事者の声を反映した改正案を作っていただき、本当にありがとうございます。今回から社会的養護を経験した委員が私を含めて二名になったこと、これは大きな変化だったと考えています。
限られた時間ではありますが、ケアリーバーとしての経験、そして支援する側となり、関わる子供たちのことを少しでもお伝えできたらと思います。ケアリーバーとしてですが、経験者一人一人の背景も、経験、家族との関係、現在置かれている状況もそれぞれ違いますので、全ての当事者の状況ではありません。この点、御了承いただければと思います。
この度の児童福祉法改正案は、やはり社会的養護を必要とする子供、若者、ケアを離れたユースにとって一定評価できるものであると思います。
ここからはレジュメに沿ってお話しさせていただきます。インケアの課題、ケアを離れた若者の課題と分けてお話しさせていただきたいと思います。
まず、インケアについてです。
一つ目は、子供の意向等の聴取、アドボケートについてです。
障害のある方たちの自立生活を求める運動の中に、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たち抜きに私たちのことを決めないでという言葉があります。これは当事者とともに考える姿勢のことです。
ケアリーバーや社会的養護の下で生活している子供たちの多くは、措置されるときから社会的養護を離れるまで、大人や社会の都合で人生の多くを決められてきました。子供たちの意向等を考慮する、反映する手続を設けている児相は全体の五六%です。これはなぜなのでしょうか。
例えば、現在、社会的養護の下で生活する子供たちの中で、どれだけの子が措置されている施設や里親家庭を選べたでしょうか。また、自分の置かれている状況をどれだけ把握している子がいるのでしょうか。なぜ措置されているのか、いつまでこの生活が続くのか、親はどうしているのか、どんな生活がこれから始まっていくのか、大切な人に会えるのか、学校に行けるのか、自分のことなのに何も分からないという不安な状況があります。
そもそも、社会的養護のケアに来るまでに大切な大人からの傷つけられた経験、大人から裏切られた経験など、また、声を出しても助けてもらえなかった経験、主体的に生きてこれなかった子供、若者は、そうした中で意見表明を求められてもなかなか簡単なことではありません。そもそも、意見表明するために、自分の意見を形成することへのサポートがすごく重要になってきます。
厳しい状況を生き抜いてきた子供は、暴れたり、自分や他者を傷つけたり、泣いたり、言葉にならない表現を取らざるを得ないときもあります。場面によっても人によっても、今日言ったことがあしたには違うということがあります。日常の中で話を聞いてもらうこと、入所時、また一時保護の決定、そういった断片的に行っても意味がありません。日常の生活の中にいかに繰り返し話を聞いてもらえるか、安心して話をできる場所があるのか、話ししたら受け止めてもらえる場所や人がいるのか、そういった経験を繰り返してこそ、やっと意見が表明できるようになっていきます。
一時保護するにしろ、社会的養護に措置するにしろ、また社会的養護での生活の中でも、子供たちが自分の状況を理解できるように、子供たちに分かる言葉で、親しみやすい方法で、理解できるまで一人一人の子供の状況に合わせて丁寧に複数回を、伝える機会を設ける必要があると思います。
入所、一時保護の決定といった人生が大きく変わるような時期には、大人であっても混乱し、自分の言葉で思いを伝えることは容易ではないと思います。意見表明という点において、子供たちの意見、意向を聞き取った上でどのように反映していくことができるのか、丁寧に考えなければいけないと思います。
こうした子供の意見表明を支援する仕組みの一つとしてアドボケートの検討が進んでいますが、法律案には都道府県の努力義務となっています。なぜ努力義務なのでしょうか。全ての子供に必要ではないかと考えます。努力義務のためにアドボケートの仕組みが使われない都道府県はどうなるのでしょうか。
暴力は、子供の声や生きようとする意欲を奪います。だからこそ、意見を表明していくプロセスそのものを支えていくことが不可欠なのです。意見表明保障のプロセスによって、自分の生活に、人生に影響を与えることができます。例えば、自分の望む結果にならなくとも、そのことがきちんと説明される、それによって自分自身の人生の主導権を取り戻していくことができます。それは、後で述べる退所後にどうやって生きていくとかという問題にも関わってきます。
子供の意見表明、参加の権利は、子どもの権利条約の一般原則に位置付く子供の権利の核となる部分です。子供の権利を保障できる仕組みをつくるためにも、子供や若者の声、当事者参画で取り入れながら国レベルで議論していただきたいです。
次に、退所後のお話をさせていただきます。
一九四七年に児童福祉法ができてから七十年以上たって初めて、二〇二〇年に厚生労働省によってケアリーバーの全国調査が実施されました。その中でも、ユースの多くが過酷な状況に置かれていて、支援につながっていない、支援を求められない、そういった現状が明らかになったと思います。
しかし、社会的養護のケアから離れた若者、ユースは、家族などから経済的、精神的なサポートを期待できず、進学、就労、自活、様々な場面での困難な状況をユース自身で乗り越えていかなければなりません。特に、生活していた施設、里親さんが約三割のユースしか所在をつかめていないという数字、とても衝撃的ではないでしょうか。家族が機能している御家庭であれば、自分の子供が独り暮らしを始めたとき、どんな生活をしているのか、御飯食べているのかというのは気になるのではないでしょうか。
また、日本においては、家族主義であるがゆえに、様々な場面で家族がセーフティーネットとしての機能を期待されます。しかし、私たちは、その家族が機能しないがために、ケアを離れ困難な状況に陥ったとき、ちょっと一息つきたいな、エネルギーため直したいな、再チャレンジしたいなと、そう思ってもかないません。孤立、孤独な状況で走り続けなければ生活が成り立たない、そんな状況で暮らしていかなければなりません。
IFCAが行ったコロナ禍の影響調査においても、二割が食料の確保に困難を感じ、三割が一か月以内にお金がなくなると回答し、四割が必要な医療や精神的ケア、カウンセリング、薬の入手ができなくなり困っていると答えています。社会的養護経験者の生活保護の高さや、この三年で三十名のユースが亡くなっている、そういう数字もあります。社会的養護経験者が社会的養護のケアを離れた後の不安定さや支援の拡充の必要性が分かるのではないでしょうか。
次に、レジュメの二に進みます。
こうしたユースの状況から、自立支援生活援助事業の対象者等の年齢要件等の弾力化についてはとても評価できます。これまで、十八歳、制度を利用できれば二十二歳で自立を求められてきました。措置延長という制度ができたにもかかわらず、ほとんどと言って使われていない現状があります。つまり、年齢で区切られ、子供主体での生き方ができていないということです。この法改正によって年齢制限がなくなるということでは、ユースの状態であったり個々の状況に応じ、年齢に関わらない自立支援が受けられるようになります。
私たち社会的養護経験者は、私たちが望んで社会的養護にやってきたわけではありません。社会や大人の都合で社会的養護のケアの下で生きています。児童福祉法の下、衣食住守られているわけではありますが、年齢が来たから社会的養護のケアはそれ以降受けられませんは社会、大人の都合です。子供自身が十八歳で社会的養護から離れることを選択したり、離れたいと思う場合ももちろんあります。また、十八歳でケアから、十八歳までにケアから離れる場合もあります。その際にも、アフターケア期間等につなぐ自立の準備をする等、安心して社会で生活していけるような移行ケアが本人が望めば受けられる制度を整えていただきたいです。
これまで措置延長や社会的養護自立支援事業の活用が進まないその理由として、子供主体の選択ではなく、児童養護施設、児相、里親の判断が大きかったのではないかと思います。もう少しいたかったけど十八歳になったら出ないといけないと言われた、みんなそうしているから就職したらもう出なあかんよと言われた。幾ら年齢要件の弾力化が行われたとしても、子供を中心に置いて子供の意見をどのように反映させていくのかということを検討しなければ、ここには課題が残り、法律ができても使われないということが起きます。子供の主体的な選択、主体性の保障を確実に、そして全ての望む子供が使えるような制度にしていただきたいです。
現在の社会的養護システムにおいて、子供は自分が生活したい施設や里親家庭を選べません。そうした中、入った施設によって当たり外れがあってはいけないと思います。
また、施設、里親さんと関係が悪くケアを離れた若者、また様々な理由で自立支援の制度を活用せずに社会的養護のケアを離れた若者も、確実に措置解除後のケアが受けられるようにしていただきたいです。
若者の生活にとって、就職、進学に伴い県域を越える移動は当然起こり得ることです。自治体間の移動が支援の切れ目にならないように、引継ぎ等を確実に行っていただける仕組みを検討いただきたいです。
レジュメの三です。
また、社会的養護自立支援拠点事業について、この法改正では義務的経費になっていません。都道府県等の事業であること、自治体間格差が是正される方策の検討をお願いしたいです。補助事業から必置になるよう、法律への明記が必要ではないかと思います。特に、措置解除後は数年は手厚い支援の検討を、検討していただきたいです。
私たちは支援される側であったがゆえに支援を求めることを苦手としたり、若者の支援窓口や行政窓口につながっても、社会的養護への理解のない言葉からつながらないというケースもあります。社会的養護に理解のある、社会的養護に特化したセンター、社会的養護自立支援拠点が全ての県に複数あることが大切だと思います。就職や進学で当たり前のように離れる、誰でも物理的に心理的にアクセスしやすい制度づくりを目指していただきたいです。
また、拠点事業は、通い、相互交流等を行う場所とありますが、もちろんそれも重要ですけれども、来られるユースはいいんですけれども、拠点を設けたら来るかといったらそうではありません。現在関わる若者も、交通費がなくて相談に行けない、また、日々の生活がいっぱいいっぱいで通いというのはすごくハードルが高いんですという声もあります。機能としては、アウトリーチを行い、伴走型の支援を行えるものを要望します。
次に、政策決定のプロセスにおける当事者参画です。
今回の法律改正のプロセスにこのように当事者を参画させていただけたこと、本当に感謝いたします。先ほどの繰り返しにもなりますが、子供の意見表明、参加の権利は子供の政策を検討する上での中核となる価値で、当事者参画があってこそ真に子供にとって活用しやすい制度になります。
もちろん、ヒアリングやインタビュー調査での子供のニーズ把握も重要ですけれども、都道府県等が子供家庭福祉に関する制度、政策を決定する場に子供が参画し、常に子供、経験者の視点が制度や政策に反映されるような仕組みを検討していただきたいです。
次に、ケアリーバー調査についてですが、社会的養護経験者の実態を把握し調査することは、それ自体が当事者参画の一つの形態であると言えます。それゆえに、ケアリーバー調査の実態把握については都道府県だけでなく国の責務であることを明確にし、ケアリーバー調査の定期化、継続化をお願いしたいです。また、ケアリーバー調査から明らかになったケアリーバーの状況や声から、社会的養護の制度の問題としてインケアを含む制度を改善するよう検討いただきたいです。
今後の検討課題としましては、社会的養護から、ケアから離れ社会生活を送ってみたら意外と難しかった、金銭面、精神面、様々な理由で生活を維持できない、病院に行きながらだったら学校に継続できるかもしれない、生活のサポートをすれば立て直せるかもしれない、そういったケースも少なくありません。しかし、今の社会的養護のシステムでは再措置ができません。しばらく生活を立て直すための期間、チャレンジし直すための期間を確保したいけれど、できない。里親家庭では里親さんが個人負担でされているケースもあります。今後の課題としては、一度社会に出たものの、本人が必要とした場合は一定の年齢まで社会的養護に戻ってこられる仕組みを検討していただきたいです。
また、自立支援の対象としましては、社会的養護につながってこなかった若者、本来、社会的養護を必要とした若者も、児相への抵抗であったりとか、児相って何をしてくれるところか分からぬ、急に親と会えんくなる、友達と会えんくなる、そう思って児相から回避した子もいます。社会的養護経験者同様に、それ以上に厳しい状況にある若者も多くいます。社会的養護自立支援拠点事業に、社会的養護につながってこられなかった若者も含めるよう検討お願いします。
最後にですが、一人の当事者の声を紹介します。
アフターケアという言葉ですが、これは制度上のアフターであって、子供たちにとってはこれからの人生であり、アフターケアでは、アフターではありません。子供たちの人生のスタートを安心して切れるようにサポートできる体制、是非子供たちの声を聞き、本当に必要な支援の枠組み、実務や運用に関して検討していただきたいです。一人でも多くの子供、若者が取りこぼされないように、当事者を中心に置きながら、皆さん議論をし続けていっていただきたいと思います。
以上で私の意見を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/9
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010・山田宏
○委員長(山田宏君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/10
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011・小川克巳
○小川克巳君 参議院自民党の小川克巳でございます。
四人の参考人の皆様、様々な御意見ありがとうございました。仕組みをつくっていくことの難しさというのを改めて感じたところでございます。その上で、何点か質問をさせていただきます。
まず、津崎参考人にお伺いいたします。
今回の改定で、子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターを見直して、新たな相談支援拠点としてこども家庭センターをつくるというふうなことが努力義務として出されておりますけれども、この改正によって、参考人が御指摘いただきました、いわゆる早く関わる時間軸対策あるいは生活空間軸の予防支援策が不十分だというふうなことの御指摘をいただいておりますけれども、ここら辺の、そうする仕組みの改正で御指摘いただいた課題が解決できるのかどうなのかという、その辺りの受け止めについていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/11
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012・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) 今の御指摘でございますけれども、例えば、今回の目玉は児童福祉の分野と母子保健の分野を一つの総合的なこども家庭センターという形で統合する、加えて、これに民間のいろいろ事業創設を行い、民間とも合同の支援体制をつくるということです。
いわゆる公の児童福祉と母子保健とだけが合同して全て問題が解決するかというと、これは行政内部の連携とかノウハウの一体化というのが大きいんですけど、私は、今回は、そこは民間が具体的サービスをメニュー化してつくって、実際のサービスの提供を一般家庭にできる、それを行政が積極的に取り込んでいくというのが今回は非常に大きい制度改正ではないかなというふうに考えているところです。
よろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/12
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013・小川克巳
○小川克巳君 今回、市区町村に対してサポートプランということの作成が義務付けられているわけですけれども、その辺りのこととリンクさせてということでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/13
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014・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) 問題なのが、民間も含めた地域のそのサービスのつくり、それを組織化する力、いわゆるコミュニティーソーシャルワークみたいな、そういうワーカーの能力が求められる。そうすると、相当その専門力を高めないとそういう組織化がやっぱりできないということになりますので、専門家の人材を各その市区町村にキープできるのかどうなのかというのが一番大きな課題のように考えています。それがキープできればそういう実のある中身ができるし、そこが余り、不十分であれば形骸化してしまうという可能性があるんではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/14
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015・小川克巳
○小川克巳君 ありがとうございます。
では、続いて、浜田参考人にお伺いいたします。
参考人の御意見では、いわゆる法的な司法審査に特化してお話をいただきましたけれども、非常に難しい問題だなと、御指摘もっともだというふうに私も思いました。
ただ、これまでのいわゆる相談所長にかなりの負担がやっぱり掛かっているところで、裏付けが欲しいということが多分あるんだと思いますけれども、今回、その司法審査という制度を入れることによって、そこら辺のその負担感というものは少し薄れるといいますか、救われる思いをしている所長さんもおられるんだろうなというふうに思いますが、かなりの問題点を指摘いただいたわけですけれども、これは否定されているというふうには受け止めていないんですが、これをすなわち、どういうふうにしたらもっといい形になるのかなということをちょっとお伺いしたいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/15
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016・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
今委員御指摘の点は大変難しいところでございまして、やはり一時保護の開始直後に審査をしようと思うと、どうしても短い時間で速やかな判断がなされなければならないと、これはもう避けて通れないところだと思います。
そういたしますと、この令状、今ある令状型を採用するというのは、その一つの方策としてやはり前向きに捉えるべきであろうというふうには考えます。もっとも、ちょっと子供さんの意見とか、あとは親御さんの意見を直接裁判所に伝えることは必要なのではないかといったところは今後の課題として残るかなと思います。
もう一つ付け加えさせていただきますと、何かもうこれ気持ちの問題になっちゃう、半分ぐらいなっちゃうんですけれども、裁判所のお墨付きがある方が業務がしやすい、親御さんへの説明がしやすいという現場の声は私も現に耳にしております。もっとも、最後にちょっと触れましたけれども、それが司法権に寄っかかり過ぎるようになるというのは、それは何か違うと思うんですよね。児童福祉に関与する者の強い矜持を持って専門性を高めていっていただきたいなと、そこは児童相談所に期待しているところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/16
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017・小川克巳
○小川克巳君 ありがとうございます。
その上で児相の強化ということを御指摘いただいたんだと思いますけれども、ただ、児相の方々とお話ししていると、結構皆さん頑張っているんだけれども、抱え込んでいる件数が多いというふうなことで、とても処理がし切れないということをよくおっしゃるんですね。
ですから、救いの手を差し伸べる側が救いの手を待っているというような状況もあって、何とかしなきゃいけないなというふうに思うんですけれども、先ほど御指摘いただいた、要するに時間が掛かり過ぎるというふうなことで、即座の対応ができないんじゃないかというふうなことも問題として御指摘いただきました。
この辺り、例えば司法審査に関わる手続をもう少し児相の中である程度その処理ができるような、何らかの方法論で短縮するということが考えられるのかどうかという点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/17
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018・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) ありがとうございます。
一番端的には、やはりその児童相談所の中の人たちがこういった法的手続に慣れていってくださるということは必要。ただ、元々その法的なことをやっていらっしゃる方たちではないわけですから、そこにはおのずと限界があろうかと思います。
そういたしますと、その周辺的なところ、例えば、ちょっと書式の話に触れましたけれども、現場のワーカーさんが迷わずに一つ一つプロセスを進んでいけるような段取り、そういったものを、例えば法律家が関わることであらかじめ準備をしていくといったことも必要かなと思います。全国の児童相談所で弁護士との連携というのは進んでおりますので、そういった弁護士もその中の人間としてそこをお手伝いすることもできるかなと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/18
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019・小川克巳
○小川克巳君 ありがとうございました。
では、続いて、橋本参考人にお尋ねをいたします。
虐待についてなんですけれども、様々な背景があって一様には語れないというふうには思っております。ただ、その中で、要するに、先ほどちょっと畑山参考人もおっしゃっていましたが、いわゆる家庭、要するに家族、家庭、そこに対する問題解決のプランニングがないというふうなことも御指摘いただいておりますけれども、要するに、例えば母親の産前産後の心身両方の状態なんかでも随分変わってくるのかなというふうに思っておりますけれども、そこに対するそのアプローチといいますか支援が手薄感が非常にあるんですけれども、その辺りについてちょっと御意見ございましたらお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/19
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020・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) 御指摘のとおり、この法案では産前産後の母親への支援について改善強化が図られているので、大いに期待したいなとは思っています。
なお、端的に言って、この産前産後の母親への支援の成否は、母子保健行政に関わる保健師が、乳児院や母子生活支援施設、児童家庭支援センター、シェルターを運営しているNPOなどとうまく連携できるかどうか、これに懸かっているのかなというふうに思っています。専門委員会では親子丸ごと支援というふうな表現をして、親子を丸ごと支援していこうということも議論になりました。
先ほどの津崎参考人のお言葉をお借りしますが、官と民との連携というか、民間支援団体とどう連携していくか、そしてその両者にどれだけいい人材をキープできるかというところも、そういうところに成否が懸かっているのかなというふうに思っているところです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/20
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021・小川克巳
○小川克巳君 ありがとうございました。
今、その産前産後のいわゆるマイナートラブル等に関するアンケート調査、これ全国、世界でも余りエビデンスが出ていないものですから、少しアンケート調査をやっているところなんですけれども、様々な問題が指摘をされておりまして、産後の育児だとか、扶育の問題に関しても大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきつつあります。ありがとうございました。
畑山参考人にもちょっとお伺いしたかったんですけれども、済みません、時間が来てしまいましたので、申し訳ありませんでした。
これで質問を終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/21
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022・森屋隆
○森屋隆君 立憲民主党の森屋隆です。
参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。よろしくお願いいたします。
まず初めに、津崎参考人と橋本参考人、両名の方にお伺いをしたいと思います。
二年半以上に及ぶこのコロナ禍でテレワークも当然増えたんですけれども、そういったテレワークの普及などによって家庭内のトラブルが大分増えたと。いいこともあったんだと思うんですけれども、一方でトラブルが増えて、DVだったり虐待があったり、そういったこともあったと思います。そしてまた、コロナによっていろんなものが寸断されたといいますか、地域とのつながりもやっぱりなくなったというふうに思っています。そして、孤立化が増え、結果として児童の虐待相談、まあ虐待も実際に増えたんだと思っています。
そこで、二点伺いたいんですけれども、一点目については、今お話ししましたそのコロナ禍の緊急事態宣言などによって、学校だとか保育園、休校、休園を始めとする、また様々な、先ほどお話をしていただきましたけれども、この官民のセーフティーネットが一時的に機能停止というか機能低下というか、そういったことがあったと思うんですけれども、そのときの教訓からどのような対策が必要なのか、また今回の法改正でそこは当然カバーできているのかがあったら伺いたいと思います。
二点目は、やはりこのコロナ禍で、そういった時期に育ったお子様、特にゼロ歳児から二歳児ぐらいまでがその発育に最重要と言われています。震災などがあったときに生まれた子なども、その発育に少し障害があったりとか自閉症になったりとか、そういったことも聞きますけれども、そういったケアが今の状況の中でできているのか、あるいは、なければこういったことが必要なのか、あれば伺いたいと思います。よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/22
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023・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) まず一点目の、コロナの状況の中でセーフティーネットが十分機能しなかったんではないか、これ、確かに課題のある家庭ほどうまくつながらない。地域の支援員が訪問するという対処をしましても、コロナだから来ないでほしいというふうに言われてしまって行けない。場合によっては、子供食堂等が、そこへ何かいつも来てくれていたんですけど、それもまた何か開きにくいと、食事の提供とかですね。何か場合によってはお弁当を作って配るとか、いろんな工夫をされて。
要は、その家庭が孤立して外部から見えにくい状態になるというのは、特に課題の抱えていただいている家族ほどリスクが高くなりますので、何らかの方法で社会とつながるということを重点的に皆工夫をされているんですが、どうしてもそこが制約出ますので、子供がそのしわ寄せを受ける。さらには、保護者のその職種等によっては経済的にかなり不利な状態になっていますので、それがもろに場合によったら子供の方にも影響を受ける、そういうことが散見されるという状態にあったように思います。
ただ、児相等に聞きましても、コロナで虐待が増えたかというふうに問われると、余りそれが顕著には見えないという言い方がどこの児相もされておられたように思います。
二点目の方も、低年齢の発育が、やっぱり刺激、周りの刺激を受けて子供の健全な成長を促すという点もやっぱりコロナ状況下で制約を受けていますので、限られた人と空間だけということですから、それもやっぱり良くない影響というのは想定される。ただ、それがどんな形になって現れてきているかというその証拠付けまではまだちょっとよく分からない、そういう実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/23
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024・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) 御質問ありがとうございます。
コロナ禍でセーフティーネットが機能したかどうかという点ですけど、これ実務的に言わせていただくと、全国児童家庭支援センター協議会では、このタイミングで実は子どもの食緊急支援プロジェクトというのを実施しました。具体的にどういうことかというと、先ほど津崎参考人もありましたけど、子供食堂が閉鎖される、学校も行けない、じゃ、子供たち今それぞれのおうちでどうなっているんだろうということで、その心配な、要支援児童ですね、心配な子供たちのおうちに我々が直接、食を届ける。
先ほど、食を、いろんな相談来ないでというお話があると言いましたけど、ドアノブに、レトルトのカレーとかスパゲッティとかを置いてドアノブに掛けてお渡しして、また電話を掛けて、今ドアノブにちょっと食事を持っていって置いておいたけれども、お子さんどうですかというような話をする。そういう工夫をして、何とかその御家庭とつながるという支援をやっていきました。
これ、実は、同時並行的に国の方も支援対象児童等見守り強化事業というのを制度化されました。これも非常にそれなりに私は効果があったんじゃないかなと実は思っています。自治体数は少なかったですけれども、やった自治体はそれなりに効果があったというふうに聞いています。
ここでの教訓ですけれども、やはり私は、やっぱり今回このコロナ禍の中で、相談支援、アウトリーチがすごく大事だと。訪問していく、困っていることあったら来なさいじゃなくて、我々がそのうちに訪ねていく、こういうことすごく必要。そのアウトリーチに際しては、食支援が伴うとより効果的だというところが実務的に私はすごく実感したところです。
あわせて、子供への影響と、二点目ですね、子供への影響というところですが、これは、私もドクターでないので実はそうそう軽々なことは言えないなというふうに思っていますが、児童養護施設を運営していて子供たちと接していて一つ思うことがあって、この二年半で、みんなマスクが外せなくなりました。外すのが恥ずかしい、何か、外してしゃべるのが、あるいは外して友達と会うのが嫌だというふうになって、何かちょっと変わってきたなというのは実は率直な思いです。
お答えになっているかどうかちょっと分かりませんけれども、以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/24
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025・森屋隆
○森屋隆君 ありがとうございます。
次に、ハタケヤマ参考人にお聞きをしたいと思います。
ハタケヤマ参考人は……(発言する者あり)あっ、ハタヤマ、畑山参考人。済みません。
畑山参考人にお伺いしたいと思います。
畑山参考人、自らの生い立ちをお話をいただいて、そして、血のつながりは関係なく、私たちはたくさんの、私にはたくさんの家族がいますと、こういうふうにお話をされています。一方では、高校のときに、証明書や領収書、あるいは友達がファミリーホーム等々のそういった施設をなかなか知らないで、そういう説明に、一々一々説明することに戸惑いもあったというふうにおっしゃっていました。
そして、子供は社会全体で守り育てるという、そういうことがしっかりできていけばいいと思うんですけれども、先ほどお話にあったように、まだまだ日本はその家庭というところに重きが当然ありますし、それも悪いわけではないんですけれども、そういう概念が強いように思います。
この間の経験の中で、先ほども少しお話があったと思うんですけれども、自立してからがやはりまた大変だというふうなこともあったと思います。日本では何が足りないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/25
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026・畑山麗衣
○参考人(畑山麗衣君) 御質問ありがとうございます。
何が足りないのか。やはり、そうですね、私たちケアリーバーは、やはり社会的養護を離れるときにおいて、やはり家族基盤が希薄、経済的な基盤が希薄、本当、不利や困難が同時に降り注ぐんですね。そうしたときに、自分の置かれている状況ってなかなか整理しづらいんですけれども、そうしたときにやはりヘルプを求めにくかったりするんですね。
それが、先ほど橋本参考人がおっしゃっていた、やっぱり自分から相談しに行くということは本当にすごく大変で、自分が困った人にならないと相談を受けれなかったりとか、しんどいことを一生懸命表現しなければ支援を受けれない、また支援を受けに行くと支援対象者になってしまうので、私たちこれまで支援を受けてきたのにまた受けないといけないのかというような、いろんな葛藤が生まれるんですね。なので、そういった相談先ではなくて、やはり家族基盤を持たない若者にとっては、何か困る前に、あっ、これってどうしたらいいのかなとか、日常生活レベルですね、何か聞けるような場所が、実家機能じゃないですけれども、そういった場所が社会的養護自立支援拠点事業に期待できるところではないかなというふうには感じています。
お答えになっているかどうか分かりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/26
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027・森屋隆
○森屋隆君 ありがとうございます。
浜田参考人、済みません、時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/27
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028・山本香苗
○山本香苗君 四名の参考人の先生方、今日は大変貴重なお話を聞かせていただきまして本当にありがとうございます。
まず最初に、津崎先生と橋本先生にお伺いしたいと思うんですが、私も従前より津崎先生から、とにかくこの地域、地域のこのネットワークによる家庭支援の充実って物すごく大事だという話を様々お伺いしてきて、何とか今回の法改正でちょっと取っかかりができたかなと思っているんですが、しかしながら、それをワークさせていくためには、要対協が、もう本当に進行管理ばっかりやっているような見守りが一般的と先生書いていただいているように、これではいかぬ、ここを変えなきゃいけない、活性化しなきゃいけないと思っているんですが、両先生の、何か方策として御示唆いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/28
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029・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) 今御指摘いただいたとおり、要対協は、とにかく件数が物すごく多いんですね。私も実は大阪市の要対協、幾つかアドバイザーで出ているんですけど、一ケースに掛かる時間、一、二分なんですよ。相当慣れた者がぱぱぱっと見ていかないと、これは個別のケース会議がまた必要だとか、これはこうすべきだというのを判断できない。判断できる人がいるかいうたら、いないんですよ。
大阪市の場合は、二十四区に我々の虐待防止協会が登録した二十名ちょっとぐらいの専門家を派遣してその機能を補充しているという、そういう状態なんですね。先ほどちょっと事例で申し上げました西成区だけがそれを中学校校区でやっていまして、六校あるんですけど、月六回やっている。ほかの行政区は月一回なんですね。六倍やっていて、そしてそこに民間がみんな入っていると、課題が多い区ではあるのに、そこはほとんど死亡事例起きない。そういう形の、やっぱり民間がかなりもう、行政で任せてしまうんじゃなくて、一体になって地域のサポートづくりをされる、そういう形が多分どこの地域にも求められる。
今回の、だから、法改正の意図が多分そういう形だと思うんですが、それが、だから実効性のあるものとして実践できる、そういうことが一番これから必要ではないかなというふうにちょっと思うところです。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/29
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030・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) 御質問ありがとうございます。
私から二点お話しさせてもらいたいと思います。
まず、要対協の形骸化、マンネリ化を防ぐには、まず一点目ですけれども、会議の持ち方ですね、御指摘のように、状況報告会的なこの持ち方を変えることが一つ。二つ目ですけれども、このメンバーを替えること、それがすごく大事なのかなというふうに思っています。
具体的に言うと、やる気とエネルギーにあふれた民間支援団体の参画がこれから私は不可欠なんじゃないかなと思っているんです。
例えば、越前市の要対協には、児家センはもとより、里親会やフォスタリング機関などの民間機関が多数参加しています。とりわけ、今日、隣に畑山さんいらっしゃいますけど、当事者団体も構成メンバーに入っています。まだ本格稼働はしていないんですけれども、近い将来にはピアサポートやピアアドボカシー的な活躍に期待したいなというふうに思っているところです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/30
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031・山本香苗
○山本香苗君 ありがとうございます。
本当に、活性化するに当たって、本当に民間の方々がちゃんと入っているという要対協にしなきゃいけないと思うんですけれども、結構、そういうふうに見直せと言われても、そういう団体いませんとかいうような自治体がいっぱいいます。コロナ禍においても、先ほど橋本先生が御紹介いただいたように見守り強化事業をやろうとしても、そんな任せられる団体いませんとか、しらっと言われるわけですね。もう自治体間格差があるということ、本当にここを何とかしていかなくちゃいけないと思っているんですが。
そこで、ちょっと橋本先生に御紹介いただきたいと思うんですけど、私は、越前市でやっている官と民と市民の有機的な連帯ってこの越前自立支援協議会だと思うんですね。ちょっと成り立ちと取組をコンパクトに御説明いただけますでしょうか。いい事例として勧めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/31
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032・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) ありがとうございます。
私の社会福祉法人越前自立支援協会ですけれども、これ、実は今から十数年前に、市立の児童養護施設が大幅な赤字経営が続いているので、施設を廃止して入所している子供たちを県内の各施設に分散しようという動きが市議会で発生したんですね。そのときに、それは駄目だろうということで、里親や障害児の保護者の方、町づくりや子育て支援系NPOの活動家の方、市の職員など市民有志が集まって、市民活動の乗りで基本金を集めて、この社会福祉法人を創設して児童養護施設の運営を始めました。そんな生い立ちで、市民や市の職員との結び付き、連携力がとても強いというふうに思っています。
御指摘のように、やっぱり民間も、民間なら何でもいいということじゃなくて、やっぱり民間自身に自主性や民主性、それから公共性や公開性、こういうものをしっかり持っている民間に育ってもらう、そういうところとパートナーシップで一緒に仕事をやっていくということが必要なんだろうなと思っているところです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/32
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033・山本香苗
○山本香苗君 ありがとうございます。
大変いいお取組だと思うので、人口八万人ちょっとというところでもこれだけやれるんだというところを全国にしっかりと周知できるようにしていきたいと思います。
次に、畑山参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
私は、本当に、この社会的養護の関わる中で、本当に当事者の方々がいかにないがしろになっているかということをこの間痛切に感じてきました。社会的養護のエキスパートはまさしく経験者なんだと、この方々が参画していくことによって制度が本当に変わっていくんだということを、今回、まさしく入っていただいたおかげで、より現実的なものになってきたと深く感謝しております。
ただ、ちょっとお伺いしたいのは、先ほどお話ありましたように、つながれていないお子さんたちもいます。措置解除になった後の方がもう大変な課題の中で戻ってこれない。ここを今回、社会的自立支援事業を法定化して都道府県の業務としてきちっとやるんですが、ここを皆さんの、当事者の立場から見て安心して相談できる場所にするためには、どういう機能、事業として期待されているのかというところを是非教えていただけないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/33
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034・畑山麗衣
○参考人(畑山麗衣君) ありがとうございます。
やはり生活が不安定なケアリーバーは本当に多くいますので、そういった部分では、何か緊急的に避難できるような居住支援を行えるような仕組みというのはまず一番重要になってくるのかなと思う一方で、やはり一般的な行政の窓口につながりづらいというのは、自分自身のことを話しても分かってもらえないんじゃないかと思うところが根本的に持っている子たちも多くいますので、そういったところでは、先ほど橋本参考人も言ったように、ピアという関わりを持つようなピアサポーターを配置するというのは、すごく子供たちが入口、そこのセンターに入ってきやすくなるというか、同じような経験した先輩がいるんだなと思うとすごくアクセスしやすくなってくると思うんですね。
米国でもそういった取組があって、やはりそういった子供、ユースたちが退所後に行けるようなユースセンターの中にはピアという役割がしっかり配置されていますので、子供たちがいかにアクセスしやすくなるかをしっかり検討していただきたいんですけれども、そういったときには、私もそうですけれども、当事者の声をしっかり反映して、どうやったらアクセスしやすいかなというのを、インケアにいる子たちも含め、出た子の声もしっかり聞いていただきたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/34
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035・山本香苗
○山本香苗君 ありがとうございます。
まさしく、施設にいるときから私はつながれるような仕組みに是非したいなと思っております。
浜田先生、大変申し訳ありません。同窓でございまして、いつでも大阪でまたしっかり聞かせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/35
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036・田村まみ
○田村まみ君 国民民主党・新緑風会の田村まみです。
本日は、四名の参考人の先生方、本当にありがとうございます。全てしっかりと受け止めて、今後の審議にも生かしていきたいというふうに思います。
私の方からは、まず初めに、先ほど質問がなかった浜田参考人の方に、では聞かせていただきたいというふうに思います。
様々、改正法案の法文も用いてきめ細やかな御示唆をいただきました。一つずつ私も今後の法案審議で確認していきたいというふうに思います。
それとは別で、先ほども質問にありましたけれども、やはりその事務負担だったり、専門的な知識が必要となっていく今後の一時保護の対応だったり、司法審査に向けてというところで、現場からは、やはり処遇改善とその人員不足についてという声がたくさん私の下にも届いています。もちろん連携できる弁護士さんが見付かればいいんですけれども、なかなかこの仕事も難しい仕事ですし、様々なお考えの弁護士さんもいらっしゃるので、そう簡単に適正な人が、適切な方が見付かるというわけにもいかないと思います。
その上で、今日、書類の整備だったりとかオンラインで活用して申請を簡素化するみたいな御提案いただきましたけれども、こういうことが進む中で、その事務的な作業みたいなことを業務分担できるというような可能性が少し見えてきたような気がしています。
私、次回の質問のときに、いわゆる医療現場での医師不足や看護師不足の中で、いわゆる医療クラークというふうに呼んだりとか、処方箋の業務等での業務分担できるような事務みたいなことを今進めていますけれども、その辺りについての可能性だったり、どのような人材、資格をすぐつくるとなるとやっぱりまた議論が増えてくるので、先ほどの御提案あった簡素化も含めて、どういうことをすればどんな人たちでもその事務負担を分担できるかというところを、もう少し詳しくお願いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/36
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037・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
今委員御指摘の件ですけれども、まず一つ申し上げたいことは、弁護士もここに関わるべきだとは思うものの、例えば弁護士がこの一時保護状の請求とか、それの直接書面を作るという枠組みではきっと回らないのだろうなと思います。原因は、今委員御指摘のとおり、どこにでもいるわけではないというのと、人材が十分とは限らないということでございます。
そういたしますと、もっとも、とはいえ件数が増える中でということになりますと、今医療クラークのお話ございましたけれども、例えば、裁判所には裁判所書記官や裁判所事務官という存在がございます。法律事務所も、事務所によってはいわゆるパラリーガルさんという人がいたりします。今後の件数の推移、特に多い自治体、多い児童相談所においては、そのような特にその事務的な書類作成係、係と申しますか、特にこの法律対応係みたいなこと、これは必ずしもその法曹資格は必要ないとは思いますけれども、そういった方を、専従にするかどうかはさておくことながら、その各児童相談所でそういった、それの専門と申しますか、それを中心的になさる人材というのがこれから必要になってくるのではないかなと思います。
私ども弁護士は、むしろ、そこの現場というよりは、その制度とか児童相談所全体の事務回りを見るような立場の仕事の方がよいのではないかなと、このように考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/37
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038・田村まみ
○田村まみ君 ありがとうございます。
整備しなければいけない点はありますけれども、このコロナ禍の中でテレワークだったり在宅ワークということが進んでくる中で、その自治体にいなきゃできないことでもないというふうに位置付けられる仕事にもなってくるというふうに私も思っていますので、様々な人たちが活躍できる場をつくるときにもいい活用の仕方があればと思って、また今後検討していきたいと思います。ありがとうございます。
続きまして、畑山参考人の方に伺いたいと思います。
先ほど御挨拶したら、優しくお願いしますというふうにお願いをされてしまいました。優しくなかったら言ってください。
今日私が聞きたいのは、実は午前中に内閣委員会と厚生労働委員会でこども家庭庁の創設についての質疑を私やってまいりました。その中で、直接そのこども庁、こども家庭庁を創設することには関係するわけではないんですけれども、この今回の厚生労働省の方の審議の中で聞きたいなと思っていたのが、乳児院と児童養護施設のそこの措置変更のところ、そこがまた一つの、何でしょう、心の切離しというか、これまで育ててきてくれた職員の方からまた児童養護施設に移っていく、里親のところに行く、様々な、家庭に戻っていくというような先があるかもしれませんけれども、そこのその別れるというところを少しでも減らした方がいいのではないかということが当事者の近い方から実はお声としていただいておりました。
とはいえ、一番乳児院にいる子たちというのはその声をアドボケートできない年齢、なかなか難しい年齢だというふうに思いますので、是非その経験されている畑山参考人の方から、もし御記憶なかったとしてもとか、今携わっている人たちからの中の声で、その乳児院から児童養護施設や里親家庭に戻っていくというところで、なくせるとすれば乳児院と児童養護施設のところを統合していくというのは一つの手段かなというふうに思っていますので、その辺りについての、何でしょう、御経験上の見解を述べていただきたいなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/38
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039・畑山麗衣
○参考人(畑山麗衣君) ありがとうございます。
すごく難しい質問かなと思うんですけれども、私自身も乳児院から児童養護施設に措置変更された経験はありますけれども、本当に同じ法人の中で同じ職員さんが同じ敷地の中でいるというところでは安全性は、安心というのもあったのかなと思いますけれども、私が関わらせていただいている方の中には、やはり乳児院から御家庭に帰ったり、乳児院から児童養護施設に入った方、で、また児童養護施設から家庭復帰されて、また家庭復帰した後に児童養護施設に戻っていったりという方もいらっしゃって、そうしたときにやっぱり環境と人とというのがすごく分断され続けるんですね。そうしたときにそういった若者が語る言葉としては、自分たちの過去がなかなか語れないとか、自分は誰が育ててくれて、どこで育ったのかというのが分からなくなるという言葉があったんですね。
そういったところでは、本当に今御指摘いただいたように、分断されることによって子供たちの生活であったり過去の記憶というのがかなり不安定になる部分はありますので、乳児院と児童養護施設を切り離すべきかどうかというのは私は回答できないんですけれども、子供たちの生活において分断されたところをどうやって紡いでいくかという方法として今ライフストーリーワークが行われていたりしますので、そういった子供たちの心のケアというところもしっかり行っていただきたいなというふうには思っています。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/39
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040・田村まみ
○田村まみ君 それぞれの年齢に応じたケアも必要ですので、単純に統合すればいいという問題でもないというのも受け止めさせていただいております。やっぱり、その子供たちの心が引き裂かれないようにというようなことにしっかり注力していきたいなというふうに今お伺いしました。
そして、もう一点、先ほど来、津崎参考人、橋本参考人から、やっぱり民間との連携というところは度々口にされていらっしゃいます。その中で、今日、これも午前中に聞いたんですけれども、民生委員と児童委員というのが今まで両方兼務という形で統合されていたんですけど、こども家庭庁となったときに、児童委員の所掌というところがこども家庭庁に移る部分もあるということで、現場としてはどういうふうになるんだろうという疑問からお声いただいております。
そういう中で、民間という言葉がずっと出続けていたんですが、既に地域にいる、見守りをされているその児童委員の皆様に対しての今日の主題においてどのようなことを期待されていらっしゃるかというところを、お二人、津崎参考人、橋本参考人からお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/40
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041・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) 民生委員、特に主任児童委員さん、最近、子供を専門にやっていただく主任児童委員さんは、ちょっと年齢が若い人になっているんですね。要対協なんかで実務者会議に主任児童委員さんが入っておられるところと入ってないところがあるんですね。入っていますと、地域のことをかなり御存じですね。あっ、あのお母さんならちゃんとこういう形でよく知っていますよというね。だから、そういう人をやっぱり積極的に公のその要対協の会議なんかに入ってもらって、民間の立場で活動していただくというのが非常に重要だと思うんです。
多くの自治体は、民間の人が入ってきたときに、守秘義務がうまく守れないんちゃうかと。児童委員さんというのは、いい人もいれば、ちょっと課題のある人もいて、どういう人になるのかということを、役所的発想になると、何でもかんでも個人情報をそこへ伝えていいのかという、そういう戸惑いもあるんですね。民間とうまく連携できないというのは、割と守秘義務を気にされている方がいるので、それを気にすると公だけのメンバーで集まろうということになって、一歩踏み出せないですから。
守秘義務は大切ですけれども、やっぱり共に地域のサポート役を担うんだという意識の下でこれからはやっぱり公民が連携しないと、公の機関だけで地域守れるということが、そういうことはもうできないですから、やっぱり民間の人ともいろんな形で入っていただいて一緒にするということがこれからの方向性としては極めて重要だというふうに考えています。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/41
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042・山田宏
○委員長(山田宏君) ちょっと時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/42
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043・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) はい。
いろんなところで私ちょっと発言させてもらっているんですけど、私たちみたいな民間の支援機関は支援のプロ、民生委員さんとか主任児童委員さんとかは地域のプロ、この支援のプロと地域のプロが一緒になって関わっていくことで、私はより良い支援ができるんじゃないかなというふうに思うところです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/43
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044・田村まみ
○田村まみ君 以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/44
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045・梅村聡
○梅村聡君 日本維新の会の梅村聡です。
今日、四人の参考人の皆様、誠にありがとうございました。
早速ですが、まず浜田参考人にお聞きしたいと思いますが、今日、資料を作っていただきまして、これ、いわゆる一時保護に関する親権者等が同意ができなかった場合の司法審査の導入についてなんですけれども、一つ、なぜこの制度を入れるかという根本のところに立ち返って、ちょっとお聞きしたいことは、現実的に今起こっている困難の何を解決がこの制度でできるのかという根本のところをお聞きしたいんですね。
それ、何でかというと、こういう我々国会審議をすると、適正性を確保しますとか透明性を確保しますとか、第三者が判断しますとか司法が判断しますと言われたら、何かいいことだというふうに頭がフリーズしてしまうんですけど、本来だったら、こういう価値が新たに生まれるからこの制度を入れるんだという、ここの根本がないと、何のためにこれを入れるのかというところがあると思いますので、これ、改めて、今言われている公平性とか透明性以外にどういうメリットがあるのかということを少し、思い付くことが、思い付くというか、論点としてあれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/45
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046・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
委員御指摘の点は私も大変気になっておりまして、大きな意味で申しますと、いわゆる行政権の作用について、その行政が暴走をしないように、そのチェックをすべき立場としては司法だということが言えようかと思います。いわゆる国の権力の分立というやつで、その行政作用に対するチェック機能を果たすものとしての司法権という存在が元々ございますので、そこの一番大枠のところで今回の制度は説明ができるのかなというふうに思います。
ただ、ですので、その公平性とかその透明性とか、今までの報告書等でもいろいろ語られているところがありますので、そういった意味でいいますと、そこは実は二番目の問題で、今一番大枠のところで申し上げた、その行政に対するチェックというのが一番大本で必要なところであろうかなというふうに理解をしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/46
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047・梅村聡
○梅村聡君 ありがとうございます。ですから、役所というか行政をしっかり第三者がチェックするということだと思いますが。
そうしますと、先生がいただいたこの資料の十ページで、その暴走とは何かというと、親権者が、親権者等が拒否をしているのに保護するというのは暴走ではないかという、こういう考え方だと思うんですが、そうすると、子供さんが拒否しているものを保護するというのも、暴走と言うかどうか分かりませんが、一定の暴走ではないかなと思うんですけど、これに関しては、今回、先生は引き続き検討すべきではないかという文章で終わっているんですけれども、そうしますと、このチェックというものはどのように整理ができるのかという、これもちょっと教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/47
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048・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) ありがとうございます。
暴走、現状が暴走だというふうには実は私、余り思っておりませんけれども、暴走に至ると困るのでそのような枠組みがはめてあるのだということであろうかと思います。
それは、ちょっと抽象的な話になってしまいますけれども、よく語られているとおり、子供がどこに住むのか、誰と生活するのかといった自由を制約するものですので、それというのは、時と場合によっては暴走、当たり前ですけれども、その子供さんの意向に反することがございますと。同様に、親権者の御意向に反することもございます。
もっとも、児童相談所が行っている児童、いや、失礼、一時保護というものは、そうであっても子供さんを今緊急に保護することが大切だ、そうであっても一遍離れてもらって調査することがとても大切だという観点の下に行っているわけです。ただ、そこが、繰り返しになりますけれども、児童相談所の、何というのかな、余りに一方的な思い込みになっては、それではその権利を害する。もちろん、権利を害することそのものは、変な話、その制度に内在もうしているものだと思いますが、それが、繰り返しますが、行き過ぎないようなチェックが必要だということになろうかと思います。
以上です。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/48
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049・梅村聡
○梅村聡君 ありがとうございます。私の中では頭が整理できましたので、また次の審議に生かしていきたいなというふうに思っております。
それでは次、津崎参考人にお伺いをしたいんですが、私も関西地方が地盤になるんですけど、よくニュース等で、ちょっとニュースの言葉で言えば誤認保護という言い方をされることがあるんですけれども、いわゆるそのいろいろレアなケースの中で、親権者の方が、本来は虐待がなかったんだけれども、現実的には引き離されて会えなくなっているということで、これ行政訴訟になったりですね。
厚生労働省にもこのこと私、一回ヒアリングしたことあるんですけれども、それは訴訟になって初めて誤認、誤認だという言い方をするわけであって、別に一般的にはそういうものはないんだというふうに言われておるんですが、これは現実的に業務というかお仕事の中で起こり得るものなのかどうか。この辺は少し、私現場のこと分からないので、こういう報道がありましたので、ちょっと教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/49
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050・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) そこが、今流れがありまして、特に揺さぶられ症候群ってありますね、外傷はないんだけれども脳内で出血をしているとか眼底出血しているとか。あれが、従来は小児医療の分野では、そういう揺さぶられることによって外傷がない形で脳内出血が起こる。それはやっぱり誰かがそういうことをしている、まあ意図的なのか意図的でないのか、両方ありますけれども、そういうことをしているということで、やっぱり子供は保護が必要であるというふうな形の特に小児医療なんかの見解があって、医師が判断して、これは自然には起こらない、何らかの人為的なものがやっぱり働いているというときに、普通そういうケースは病院から連絡入って保護する。
ところが、保護者の方は、いや、心当たりがない、知らないということを通されたときに、客観的に誰がしたかしていないかというのは家庭内のことで分かりませんので、もししたということになれば、どういう状況で誰がしたということも説明しないといけない。ところが、していない、分からないというふうに通されますと、偶発的なことで起こった可能性もあるということで、それが全部無罪になるという流れが今できていまして、結果的に、無罪になったじゃないかということで、誤認の保護だったんじゃないかというものが今出てきている。
だから、なかなか判断が難しいので、それは両方の可能性があるということで、再発がどうすれば防げるのかという観点がより大切なのかなと。司法になると白か黒かだけど、それは白、黒というのは福祉では付けられないですから、そういう双方の可能性があるということを前提にして、要は再発、ほんならどうするんかという、ウエートの置き方ちょっと変えて対応していくということが今求められているのかなという状況ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/50
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051・梅村聡
○梅村聡君 その課題というのは私もよくお聞かせいただいて、その司法審査の話と今回つながっていますけど、やっぱりそこが、司法の世界のやり方と現実的に起こっていることとのそごというのが、やっぱりそこが非常に僕は難しいんじゃないかなというふうに感じております。ありがとうございます。
それでは、ちょっと、あとお二方行きたいんですけれども、もう一問しかできませんので、橋本参考人にお伺いしたいと思いますが、今回いただいた資料の中に外国人の生活困難ケースというお話がありましたけど、これ、具体的には、何か拡充をしてほしいというか、そういう特別なメニューというのは具体的にどういうものがあるのか、もしあれば教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/51
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052・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) 御質問ありがとうございます。
外国人のというところ、越前市は実は人口の五%が今外国籍の家族ということなので、外国籍の子供たちの課題って今いっぱい上がっているんですけど、今回、児童福祉法の改正で、あるいは新たな制度メニューの中で、出てきたメニューの中でどう解決するかということに挑んでいきたいなというふうに思っているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/52
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053・梅村聡
○梅村聡君 ありがとうございます。
畑山参考人、ちょっと質問ができなかったんですけど、いただいた資料、全部拝見させていただきましたので、またこれからもよろしくお願いいたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/53
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054・倉林明子
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
今日は、四人の参考人の皆さん、本当に貴重な意見をありがとうございました。
それでは、梅村委員の続きで、畑山さんからお聞きさせていただきたいと思います。
インケアのところでお話があったように、子供の意見を、子供の意見の表明権を保障するということがいかに難しいのかということをお聞きしていて思ったんですね。
アドボケートが努力義務になっているということについても御指摘ありました。このアドボケートの義務化していくという方向は必要だと思うんですけど、求められる役割ですよね。日常生活の中で繰り返し話を聞くという機会が大事だという御指摘もありました。
どういうアドボケートというのが子供の意見をしっかり表明させる、表明することが役割発揮できるのかというところで、もう少しイメージを聞かせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/54
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055・畑山麗衣
○参考人(畑山麗衣君) ありがとうございます。
今アドボケートが検討されている中で、よく施設の中に今第三者の方で皆さんの話を聞いてくれますよというようなチラシが貼られていたりすることがあるんですね。何か困ったことがあればこの人たちを呼んでくださいというようなものがあるんですけれども、呼ばないですよね、自分自身で。もし呼ぶと、何かこの子言うんかなというふうに大人に見られたりとか、ほかの子供たちの目線を気にして、視線を気にして、あの子何か今から言いに行くでと思われると、やっぱり自分からは言いに行きにくい、呼びにくいですし、やっぱりそれでは活用は進まないと思うんですね。現在も、なかなかそこにアクセスしていく子供たちというのは少ないと思うんです。
なので、やはり日常的に、定期的にアドボケートの方が通っていただく、子供たちが呼ばなくとも来てくれる、みんながみんなちゃんと話を聞いてもらえる機会を、自分、困った人が、その子たちが私ちょっと話ししたいんですと言ってしまうと、やっぱり行けない子たちが出てくるので、みんながみんな話を聞いてもらえるような機会の提供であったりとかを是非していただきたいなというふうには思いますけれども。
やはり、困ったことを聞くではなくて、日常レベルで、今こんなことが起きているんだよという日常の会話を繰り返してほしいなと思うんですね。施設で嫌なこと何と聞くのではなくて、今学校でこんなことがあって、こんなことがあってというのを聞いていただいたりとか、本当に、困ったら呼ぶ人ではなくて、日常的に聞いていただける、また、第三者であることというのはすごく重要だろうなと思います。自分のケアに直接関わらないようなことというのは、すごく子供たちの安心を、安全を担保できるのではないかなというふうに感じます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/55
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056・倉林明子
○倉林明子君 ありがとうございます。
津崎参考人に伺いたいと思います。
今日お触れにはならなかったんです、お触れにはならなかったんですけれども、里親のことで、御自身も里親をされたということで資料を読ませていただいたんですけれど、前回ですか、法改正、前々回か、法改正のときに、里親制度を本当に展開していくんだというような勢いで目標も作ったわけですけれども、現状と課題ということでいうとどういうことをお感じなのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/56
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057・津崎哲郎
○参考人(津崎哲郎君) 理念からいうと、施設という集団生活よりは、個々の家庭が保障されて、そこで子供が育つというのがいいように思うんです。
ただ、私も里親して、今もう二十六になりますけど、やっぱり途中から子供を引き取って家庭で自分の実子と一緒に育てる、それなりの難しさがありまして、私の子も途中で高校も中退になってしまったりとか紆余曲折がありました。
だから、理念はその方がいいんですけど、それを数字的に増やすためにどんどん難しい子も里親家庭で委託したらいいんだという単純にはいかない。下手すると失敗する。失敗しますと、施設でうまくいかないより傷つきが大きいんです。里親も傷つくし、子供も傷つく。欧米の委託率高いところは、もう転々としている子供がいると。そうすると、もう傷つき体験を追体験をさせる。
そうなったら、やっぱり数字だけ目標追って結果的にはまずいというのは良くないから、やっぱり安定した里親に子供が委託できる、そのためには、ほんならどういうケースのときに不調になっているのかということをもうちょっとしっかりデータを調べて、事前にそういううまくいかない要素を少なくしていく。そういう取組もないと、ただ数字の目標だけでというのは難しいのではないかというように感じています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/57
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058・倉林明子
○倉林明子君 ありがとうございます。
次に、橋本参考人にお願いします。
市町村の役割がすごく大きくなっていて、市町村は自治体間格差がこの現場でもすごく広がっているという実感で、それが是正されていく方向に向けばいいんですけれど、大きいのは、やっぱりその財政措置、財政的な裏付けだとも思っているんですね。
特に人的体制の部分で専門性が物すごく求められている、市町村にもですね。ところが、会計年度任用職員というのが多様に相談員の分野にも入ってきているというようなところで、その辺りの現状と課題、改善した方がいいよという御提案いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/58
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059・橋本達昌
○参考人(橋本達昌君) 御質問ありがとうございます。
まさに、会計年度職員、それから非常勤も、十五分ぐらいの時間が短いだけで非常勤職員だということで、そういう枠組みの中で雇われている人が、市町村の場合、特に家庭相談員とか女性相談員、そういう方が非常に多いという現実、もう間違いなくあると思います。そういう人たちの労働条件ですね、これをしっかりと良くしていくということは、もう市町村の相談体制をしっかりつくっていく上ですごく大事。
それから同時に、やはり民間の地元にある児童養護施設とか乳児院とか児童家庭支援センターとか、そういうところの民間の人にも一緒になって支援に関わってもらうという姿勢ですよね。児童相談所も抱え込みとよく言いますけど、市町村もある意味抱え込みをするところがあるんですね。その辺の改善が今回の法改正で進んでいくといいなというふうに思うところです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/59
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060・倉林明子
○倉林明子君 ありがとうございます。
最後、浜田参考人に一つだけ。
四ページ、いただいた資料のところで、私、御指摘、本当にそうだと思って、現状の一時保護が後退してはならないと繰り返し御指摘ありました。今回、その審査、司法審査を入れるということで、そういうことが起こらないようにということは前提にした上で、ここで指摘されている裁判所は明らかに必要がないと考えるケースが具体的にどういうことが想定されるか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/60
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061・浜田真樹
○参考人(浜田真樹君) 御質問ありがとうございます。
今委員御指摘の点なんですけれども、そこが私にもよく分からないといったところでございます。ここのページの、資料のここのページに書きましたのは、その法律の条文を読んでいくとこういう場面があり得るよねと、裁判官が明らかに必要がないと考えたらこうなるよねというふうに操作すると読める。もっとも、私の中では、果たしてそれは一体どういったケースなのであろうかと考えると、率直に申し上げてよく分からないというところがございます。
そうだとするならば、普通に考えますと、今児童相談所でやっているような一時保護というのは、この改正法の下でもう従前どおりにできる、裁判所の審査はちゃんと通るということが想定されますし、私はそうあるべきだと思っております。
ただ、ちょっとそこが、もし、ちょっとこんなことを言うとあれですけれども、裁判所にちょっと何らかの誤解か何か、一時保護の目的とか機能について何らかの誤解でも生じて、いやいや、ここの必要性ないじゃんかみたいな判断がなされてしまうと、それは子供の保護の観点から極めて重大な問題たり得るのではないかなと危惧するところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/61
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062・倉林明子
○倉林明子君 ありがとうございました。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/62
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063・山田宏
○委員長(山田宏君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼申し上げます。
本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120814260X01720220602/63
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