1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年四月七日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月五日
辞任 補欠選任
山下 雄平君 世耕 弘成君
四月六日
辞任 補欠選任
世耕 弘成君 舞立 昇治君
水落 敏栄君 清水 真人君
蓮 舫君 那谷屋正義君
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出席者は左のとおり。
委員長 元榮太一郎君
理 事
今井絵理子君
上野 通子君
堂故 茂君
宮沢 由佳君
委 員
清水 真人君
高橋はるみ君
竹内 功君
舞立 昇治君
丸川 珠代君
那谷屋正義君
水岡 俊一君
宮口 治子君
佐々木さやか君
横山 信一君
伊藤 孝恵君
片山 大介君
吉良よし子君
舩後 靖彦君
国務大臣
文部科学大臣 末松 信介君
副大臣
文部科学副大臣 田中 英之君
事務局側
常任委員会専門
員 武蔵 誠憲君
政府参考人
文化庁次長 杉浦 久弘君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○博物館法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/0
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001・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、山下雄平君、蓮舫君及び水落敏栄君が委員を辞任され、その補欠として那谷屋正義君、舞立昇治君及び清水真人君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/1
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002・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
博物館法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、文化庁次長杉浦久弘君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/2
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003・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/3
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004・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 博物館法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/4
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005・今井絵理子
○今井絵理子君 自由民主党の今井絵理子です。本日は質問の機会をいただき、ありがとうございます。
まず初めに、今回の改正の重要なポイントである博物館の登録制度の見直しの意義について文化庁にお伺いします。
博物館法は一九五一年に制定された非常に古い法律で、博物館の登録制度は約七十年の長きにわたり大きく枠組みを変えてこなかったと聞いています。時代の変化に伴ってということでしょうが、なぜ今のこのタイミングで変更を行われようとするのか。具体的には、この度の改正で登録の対象となる博物館の設置者の要件を広げるということですが、今回設置者の要件を広げることにした背景とその意義についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/5
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006・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
本法の制定から約七十年が経過する中で、博物館を取り巻く状況は大きく変化し、例えば、地方独立行政法人立や株式会社立の博物館、美術館等が設置されるなど、地方公共団体や社団・財団法人等に限られていた登録博物館の設置者要件が時代にそぐわなくなってきています。今回の法案では、このような背景の下、博物館登録制度の見直しを行い、設置主体となる法人類型にかかわらず、博物館としての事業を行う体制等の基準に適合するかどうかを審査することによりまして、地方独立行政法人立や株式会社立などの博物館も登録ができることとしております。
博物館の設置者は、登録されることによって信用や知名度の向上が期待できますとともに、税制上の優遇措置等を受けることが可能であり、文化庁としても、こうしたメリットを広く周知し、博物館登録制度の意義を高めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/6
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007・今井絵理子
○今井絵理子君 ありがとうございます。
博物館を設置する法人の類型に限らず、博物館の活動を審査することで株式会社などの民間による博物館が登録を行える制度に変えていくという御説明でした。また、お答えの中で、登録された博物館への優遇措置として、私立の博物館への税制上のメリットなども取り上げていただきました。
私は、税制上のメリットを今回の改正により新たに登録される博物館についても適用していくことによってこそ、この制度改正の趣旨が果たされると考えております。政府として、今回の改正に合わせた支援の拡充をしっかりと検討していただくようお願いを申し上げます。
その点を指摘させていただき、次の質問に移らせていただきます。
博物館は地方の文化資源が集積する場でもあり、地域に貢献する在り方の一つとして、観光面での大きな貢献を果たしていると考えます。現在はコロナ禍により外国人観光客の受入れなどが困難となっていますが、コロナ禍を、コロナ後を見据えて、先手先手を打っていくことが必要だと考えます。
私が生まれ育った沖縄でも、琉球舞踊やエイサーなど様々な伝統文化とともに、博物館も文化資源として観光客を引き付けています。例えば、おきみゅーという愛称で呼ばれている沖縄県立博物館・美術館は、沖縄の自然、歴史や近現代の美術も含めて沖縄の文化に丸ごと触れることができる博物館としてとても人気があり、博物館の建設そのものもグスクをイメージとした独創的なものとなっていて、グッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得ています。また、博物館法上の登録がされている沖縄美ら海水族館は、日本でも最も入館者が多い水族館として有名で、コロナ前では年間三百万人を超える方が訪れるなど、地域の経済に大きく貢献を果たしています。
このように、博物館は文化観光の拠点として大きな役割を果たすことが可能だと考えています。今後、博物館の文化観光拠点としての魅力を、魅力の向上の視点に立った場合、国はどんな支援を行っていかれるのでしょうか、御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/7
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008・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
博物館は、地域の文化資源を集約している場であることから、国内の方々はもちろん、インバウンド旅行者等に対しても魅力的な情報を提供し、地域や日本文化への理解を促進する文化観光の拠点となり得ると考えております。
このような観点から、文化庁では、令和二年度に成立した文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律、いわゆる文化観光推進法に基づく拠点計画及び地域計画について認定を行うとともに、その取組に対する支援を進めているところでございます。
これらの認定計画においては、例えば、学芸員による特別解説の実施など文化資源の展示解説の充実を図る取組や、地元食材を活用したミュージアムカフェメニューの開発など、地域の飲食や宿泊と連携した取組などといった各地の特色を生かした取組が展開されておりまして、文化庁といたしましては、文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光推進事業などの予算を本年度約二十億円措置しているところでございます。
本改正案においても、博物館の事業として、他機関との連携を図りながら文化観光その他の活動を通じて地域の活力の向上に取り組むことに努めることを追加したところでございまして、引き続き、文化観光拠点施設として地域社会への貢献を目指す博物館の取組を支援してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/8
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009・今井絵理子
○今井絵理子君 ありがとうございます。
御答弁の中で、他機関との連携というお話がありました。障害のある方々のアート作品、これまで、とても今幅広く活動をされている方々も多く、障害のある方々にも光が当たる環境づくりについて、続いて御質問をしたいと思うんですけれども。
博物館は、観光以外の分野においても多様な主体と連携することでその価値は無限に広がるのではないかと期待しています。例えば、近年、世界的に障害のある方々の芸術活動やアート作品への注目が集まっています。美術館が障害のある方々の芸術活動を支援する団体と連携することで、作品を創造する機会や発表の場を提供することもあります。
私も、昨年十月に開催された第七回アート・ツー・ユー、東北障がい者芸術全国公募展や、また、今年一月、障害のある方々のアートの活動を支援するパラリンアート世界大会二〇二一の表彰式に出席し、その熱を肌で感じました。作品そのものも大変すばらしく、感動させていただきました。それだけではなく、障害のある方々が芸術活動を通じて経済的に自立したり社会の様々な方とつながったりすることで生きがいを感じられていることにも感銘を受けましたし、非常に意義深い活動だと思いました。
私自身の経験からも、障害のある方々がそれぞれの夢や生きがいを見付けることで、そしてそれを支援する仕組みはとても重要だと考えています。ハンディキャップがあろうがなかろうが、人間の可能性は無限に広がっています。
日本においても、近年、障害のある方々の芸術活動を支援したり、障害のある方が創造するアート作品を専門に展示したりする美術館が見受けられるようになりました。こうした新たな美術館にも、例えば地域の学校との連携による教育面での価値の発揮など、様々な主体との連携が期待できると思っております。これらの美術館のように、博物館は多様な主体との連携を一層推進していく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
また、こうした美術館は社会福祉法人が設置していることが多いと聞いています。今回、登録博物館の設置主体の要件を広げることで社会福祉法人が設置する博物館についても登録の対象となると思いますが、こうした館が登録を受けることによってどのようなメリットを受けられることができるのでしょうか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/9
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010・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
今回の法案では、博物館の事業として、第三条第三項にも書いてございますけれども、地方公共団体、学校、社会教育施設その他の関係機関及び民間団体との相互連携、協力を通じて地域の活力の向上に寄与するよう努めること、こうした努力義務が追加されているところでございます。
この趣旨に基づきまして、今議員御指摘のような障害のある方々の芸術活動やアート作品を支援する専門の博物館が、地域住民や商品と、あっ、商店と、失礼しました、商店と連携して作品を紹介したり、多様な連携、交流の下で事業を企画することで、博物館や地域の魅力を広く発信することなども期待されているところでございます。文化庁としても、令和四年度から、新たにそのような地域の課題に先進的に取り組む活動を支援することとしております。
また、今回の改正案においては登録博物館の設置主体を拡大することとしておりますが、博物館の設置者は登録されることで信用や知名度の向上が期待できますとともに、税制上の優遇措置など、優遇措置を受けることが可能となるところでございます。
また、障害者芸術のことにつきましては、文化庁はそもそも京都移転等を機に機能強化を図るといったことが進められているところでございますが、その設置法の改正の際に、厚労省ともしっかりと連携することで、一緒になって今障害者芸術の新たな振興を図っているところでございます。そうしたところを文化庁としても、しっかりとそうした面も応援していきたいというふうに考えております。
いずれにしろ、こうしたメリットを生かしながら、文化庁としても登録を促してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/10
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011・今井絵理子
○今井絵理子君 是非、このメリットを幅広い方々に活用していただいてというか、障害のある方々の文化芸術なども含め、私は期待をしております。ありがとうございます。
是非大臣にも、そしてここにいらっしゃる国会議員の皆さんにも、是非一度、障害のある方々のアート作品を御覧いただきたいと思っております。とてもすばらしい作品に出会い、作家の背景に触れることで、これまでにない感情の変化も感じることができると思います。今回の法改正によって、より多くの民間の施設で障害のあるアーティストに対して創作の機会や発表の場を提供する機会が増えることを心より願っております。
最後に大臣にお伺いいたします。
これまで文化庁にも御答弁をいただきましたように、今、博物館には観光での貢献や新たな文化芸術を創造していく場としての働きなど、従来の社会教育法の精神に基づく社会教育施設としての役割にとどまらない様々な役割が期待されています。
今回の改正案では、法律の目的として、社会教育法に加え、文化芸術基本法の精神にも基づくことを定めています。この改正により、博物館の文化施設としての位置付けも明確になりますし、博物館の役割が多様になっている今の状況に対応する、まさに時期にかなった改正だと考えます。
今回、法律の目的として文化芸術基本法の精神に基づくことを加える意義について、改めて大臣の思いをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/11
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012・末松信介
○国務大臣(末松信介君) お答え申し上げます。
本法案におきまして、博物館法の目的に文化芸術基本法の精神に基づくということを追記をいたしましたのは、博物館がその事業を通じまして文化の振興を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与する施設であることを明確にする趣旨でございます。この趣旨に基づきまして、本法案では、博物館が地域の多様な主体と連携協力をし、そして地域の活力の向上に寄与するように努めることを規定することを新たな条項として設けてございます。
文部科学省といたしましては、博物館が今後、社会教育施設、そして文化施設の両方の性格を持つ施設として地域住民から信頼されて親しまれる存在となることが重要と考えております。本法案を契機に博物館が社会から新たな期待に応えれるように全力で取り組んでいきたいと、そのように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/12
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013・今井絵理子
○今井絵理子君 ありがとうございました。
今回の法改正によってこの博物館法上の登録の対象が拡大されることになり、まさに新しい博物館が文化芸術基本法の精神に基づくものであるということを明記することとなりました。それによって博物館は、従来の学術資料の収集、保存、研究、展示といった役割を果たすにとどまらず、まさにインクルーシブな社会づくりを支える柱の一つになり得ると考えております。
七十年にわたり改正されなかった法律ではありますが、時代はとてつもなく今も早くもう変化をされています。今、今後、NFTと呼ばれるデジタルアートの出現によって、これまでにはなかった概念の作品に注目が集まるようになります。博物館がNFTを主導することの可能性もあり、これらに対する法整備も含めて、博物館法についても柔軟にこれからも対応していく必要性があると考えています。
また、先ほど述べました障害のある方々の作品創造の機会や展示される場が増えることを期待しています。その一方、障害のある方々が貴重な資料や作品に触れる機会もこれ拡大していく必要があると思うんです。
例えば、施設のバリアフリーであるとか、また目が不自由な方々にとって点字そして音声での御案内、耳の不自由な方には文字案内などを含めた様々な配慮が必要になるのではないかと。そういった取組を、それらを推進する支援策も是非充実させていただきたいと思っております。これは、文化庁だけではなく、バリアフリーであったら国交省などを始めとした関連省庁と連携をして、横断的な取組として進めていただきたいと思っています。
今回の改正によってインクルーシブな社会づくりが一層推進することを期待して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/13
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014・宮沢由佳
○宮沢由佳君 立憲民主・社民の宮沢由佳でございます。
質問の機会をありがとうございます。早速質問に入らせていただきます。
まず、総論として、大臣、そもそも博物館とはどのような施設でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/14
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015・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 最初に衆議院の方でもこういう御質問をいただきました。
私の体験から申し上げましたら、小学校のときに京都市の美術館を訪問しまして、遠足でしたけれども、ツタンカーメン展とかドラクロワ展を見学して、非常に感銘を受けたことを覚えております。最近では、上京して在京の折には、漱石山房館であるとか、根津美術館であるとか、台東区の樋口一葉記念館など、こういったところを訪ねまして、大変印象的で心に刻まれたところもございます。
博物館は、歴史博物館あるいは美術館、動物園、水族館など多様な施設を含むものでありますけれども、これはもう子供から大人までが、多様な文化そして芸術、様々な展示に触れまして理解を深めることができる場であるというふうに考えてございます。
博物館法は博物館を、資料の収集、そして保管、展示、教育、そして調査研究の活動を行う機関として位置付けております。また、近年、国際博物館会議京都大会では、文化をつなぐミュージアムとして、数多くの様々な博物館同士が互いに連携協力しまして地域や社会の課題解決を図っていくことも提言をされております。
私としましては、今回の法案を契機といたしまして、各地の博物館が、社会教育施設と文化施設の両方の性格を併せ持つ施設として地域住民から信頼されて、親しまれて、国民にとって欠くことのできない存在になることが重要であると、そういうように頭の中では位置付けてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/15
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016・宮沢由佳
○宮沢由佳君 そこで、大臣、博物館が、国民の知る権利、思想、表現の自由に資する施設だと思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/16
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017・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 質問のその真意のところはともかくとしましても、私は、やっぱり知る権利は当然だ、表現、守られているものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/17
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018・宮沢由佳
○宮沢由佳君 ありがとうございます。
そのような施設であるがゆえに支援を充実させるべきだと私も思っております。
この支援を充実させる意義について、大臣、所見をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/18
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019・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
登録博物館になることのメリットということでお答えさせていただきます。
博物館の設置者は、登録されることで信用や知名度の向上が期待できますとともに、税制上の優遇措置や美術品登録、美術品補償制度の利用などの法律上の優遇措置を受けることが可能となります。また、文化庁の予算事業においても、登録博物館を中心に措置するなどの取組を行い、登録を受けることによって様々な支援が受けられるようにしてまいります。
海外でも、フランスではミュゼ・ド・フランスという認証制度がございまして、約千二百件の公私立の博物館が認証され、様々なメリットを享受していると伺っております。
文化庁としては、法案成立後、これらの例も参考にしながら、登録のインセンティブについて更に検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/19
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020・宮沢由佳
○宮沢由佳君 何か先の質問に飛び越えて答えていただいちゃいました。私、大臣に更問いをさせていただいて、博物館が国民の知る権利や思想や表現の自由に資するというところで共感しましたので、その支援について大臣の所見をお願いしたわけですけれども、その次に私が質問通告させていただいた、根本的、あっ、登録博物館になるメリットは何でしょうかという問いに文化庁の方が先に答えてしまったということで、大変残念でございますが、続けさせていただきたいと思います。
公益法人立等の民間博物館に対しては税制優遇の措置など多少はあるのですが、公立館にとってはメリットとは言えず、登録博物館を目指す必要がないと考える自治体が多いのではないかと危惧しています。
公立館が登録するメリットは何でしょうか。また、法改正によりどのくらいの公立館が登録博物館に移行することを見込まれているのでしょうか。また、登録博物館への移行に関する自治体への調査、これは行われているのでしょうか。もし調査をされていれば、その結果について伺いたいと思います。
以上四点、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/20
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021・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) 先ほどは大変失礼いたしました。
お答え申し上げます。
博物館の設置者は、登録されますことで法律上の地位が与えられ、信用や知名度の向上が期待できますとともに、税制上の優遇措置や美術品補償制度の利用などの法律上の優遇を受けることが可能となります。文部科学省としては、法案成立後、本法案を契機として、登録のインセンティブについて更に検討を進めるとともに、これらの登録のメリットを関係者に対し広く周知してまいります。
また、全国の地方公共団体に対する意向調査等ということでございますが、これはまだ行っているわけではございませんけれども、具体的にどの程度の数の公立博物館が新たに登録されるか予断を持ってちょっとお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、文化庁としては、今回の制度改正に合わせて、博物館関係者に広く登録を呼びかけることとしております。
また、今回の新たな登録制度の理念の一つは、規模の大小にかかわらず、基本的な要件を満たすできる限り多くの博物館に対して振興策を適用し、各館の活動と経営を継続的に改善、向上することにあることから、多くの博物館に登録博物館となっていただけますよう、まずは各地域の声、各館の声を丁寧に聞いて話し合ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/21
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022・宮沢由佳
○宮沢由佳君 お答えを差し控えさせていただくというところから感じますのは、公立博物館がこの登録に積極的に参加していただけるかどうかということも消極的なのではないかとちょっと心配されますけれども、この調査については是非行っていただきたいというふうに思います。
また、税の優遇についてもお話ありましたけれども、確かに、都道府県立博物館は普通交付税において措置されており、市町村立博物館については特別交付税に関する省令の規定に基づき考慮して定める額を手当てされるようですが、地方交付税は一括して自治体に交付されるものであり、実際に博物館に使用されたかどうか分からない。これは国は調査しているのでしょうか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/22
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023・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) おっしゃるとおり、地方交付税交付金は、各地方自治体の御判断によって使われる交付金ですので、自由な使途が保障されているところでございます。そういう意味で、博物館の方でもそこで措置される費用がございますので、博物館の大切さ、そしてその活動が地域でいかに貢献しているかといったことを各地方公共団体にも御認識いただきながらしっかりと予算措置をしていただくということがまずは肝要かと考えております。
それから、調査につきましてですけれども、ちょっと今手元には資料ございませんが、たしか地方教育費調査というものがございまして、これは文部科学省でやっているものでございますが、その中でもいろいろな社会教育施設のものについてもあったかと記憶しておりますけれども、いずれにしても、これから博物館がどういう形で活動しているかについては、地方の協力、もちろん一番大切ですけれども、地方と協力しながら、データとかもいろいろと皆さんと考えて集めながら、どういう課題があり、どういうふうに改善していくかを一緒になって考えていきたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/23
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024・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非調査していただきたいと思います。
もしも登録を目指さないのであれば、登録博物館が備えるべき登録要件を満たす必要がなくなり、適切な人員や設備の整備、そして適切な収蔵、展示、教育普及などに対する予算措置を行わない自治体が多くなるのではないでしょうか。大臣、どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/24
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025・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 先ほど先生から御質問いただいた一般財源、平成八年からなっておりまして、状況については一度文化庁と協議をしてみたいと思ってございます。
それで、今御質問いただきましたこの予算面を含めまして、博物館の人員あるいはその設備、収蔵、展示、教育の普及など、博物館の具体的な経営や活動をどのように維持発展させるかにつきましては、その登録を目指すか否かにかかわりませず、基本的には、これ、それぞれの設置者が館の特性や地域の実情を踏まえまして創意工夫すべきものであるように認識はしてございます。
その上で、博物館全体の振興を図る立場から申し上げれば、今回の法案成立後は、もう館の大小にかかわらず、基本的要件を満たす博物館はできる限り多く登録博物館になっていただくことが肝要であると。その点、私は先生と同じだと思います。都道府県教育委員会と連携しながら、最大限の努力はしたいと思います。
そのためには、文部科学省として、こうした登録博物館を対象として、各自治体等の創意工夫を生かした取組に追加的な支援を行うことが重要であると考えておりますが、法案が成立した暁には、様々な予算事業を通しまして、各地域の博物館の更なる振興が図られるように努めてまいりたいと思います。限られた確かに予算なんですけれども、そのように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/25
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026・宮沢由佳
○宮沢由佳君 そこで提案したいのですが、改正法の趣旨を達成するためには、多くの展示館の登録博物館化、これを進めるべきだと思います。これは大臣と同じでございます。
そのためには、やっぱりメリットが必要だと思います。例えば、登録博物館だけの補助金があるとメリットになるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/26
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027・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 博物館の設置者は、登録されることによって、先ほども答弁ありましたけれども、信用や知名度の向上が期待できるとともに、税制上の優遇措置等を受けることが可能でございます。もう先生御承知のとおりです。文化庁としては、まず、法案の成立後にこうしたメリットを博物館関係者に広く周知をしたいと、できるだけ多くの博物館に登録博物館になっていただけるようにまずは働きかけを行いたいと思います。
このため、文化庁としては、税制上や法制度の優遇措置のほか、登録博物館を始めとしまして、先進的な取組や機能強化、経営改善などを図っています博物館に対し予算上の支援も行っておりまして、令和四年度予算において約二十六億三千万円を計上をいたしております。こうした支援策に今度ともしっかり取り組んでいきたいわけであります。このうち、令和四年度の新規事業としましては、社会的、地域的課題への対応に関する先進的な取組、あるいは博物館の経営改善、機能強化の促進、それとデジタル化によります美術館の管理の高度化などを行ってまいりたいと思います。
なお、先生御指摘のとおり、登録博物館に限定した補助につきましては、例えば公立の登録博物館に対して施設整備補助金が、地方分権の観点からは、今申し上げて、調べたいと言いましたのは、平成八年度に一般財源化した経緯もありまして、こうした点も踏まえまして慎重に考えていく必要があるというふうに、そういうふうに認識をいたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/27
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028・宮沢由佳
○宮沢由佳君 ありがとうございます。
確かに、国は、令和二年に制定された文化観光推進法に基づき博物館等の文化観光拠点施設を中核とした地域の文化観光の推進に係る計画を認定し、その計画に基づく事業に対する予算措置を行っています。
このように、観光や文化財の活用など、博物館資料のアウトプットという観点からの補助金は今も出していただいていると思いますけれども、その前段階の、資料を収集して、適切に保存して、整理、調査するという博物館本来の機能について更に補助金を出してはいかがでしょうか。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/28
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029・末松信介
○国務大臣(末松信介君) まさに先生御指摘されました、この博物館、収集、保存、展示、公開、調査研究という基本的な機能というのはどのように維持発展させていくかにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、設置者が館の特性であるとか地域の実情を踏まえて適切に判断すべきものであるということには考え方は変わりはございません。
ただ、その上で、博物館全体の振興を進める国の立場としましては、令和四年度から新たに博物館機能強化推進事業を実施をしておりまして、宮沢先生御指摘のような博物館本来の機能に関わる部分も含めまして、博物館、地域の博物館が行う創意工夫を生かした先進的な取組に支援を行いまして、その普及を図ることといたしてございます。令和四年度予算は四億二千万円なんですけれども、一つは地域課題に対応するための事業であるとか、二つ目はネットワーク形成による広域的な課題に対応する事業であるとか、三つ目は、これは外部資金獲得等のための組織改革の取組、こうした先進的な取組を例に挙げてございます。
全国各地のより多くの博物館が、その機能を十分発揮しまして地域や社会に貢献するとともに、地域住民に親しまれて信頼できる存在になるように努力を文化庁としてもやっていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/29
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030・宮沢由佳
○宮沢由佳君 より野心的、先進的、そしてネットワークを生かして連携をして、そういったところには予算が付くんですけれども、そもそもの博物館の保存や整理や、そして調査、本来の機能になかなか補助が付かない。ここを是非是非厚くしていただきたいと重ねて申し上げたいと思います。
今回の改正では、博物館の事業に博物館資料のデジタルアーカイブ化が追加されることになりましたが、その実現にはデジタルアーカイブ化の作業に当たる方の人件費やシステム構築等の費用を要することから、現場ではデジタルアーカイブ化に至る前の段階で苦慮をし、そこまでたどり着けないところもあると聞いています。また、単なるデジタルアーカイブ化の業務委託だけでは足りず、デジタルアーカイブ化を行った後、その後の維持のための人的、物的コストが必要となります。
博物館の事業にデジタルアーカイブ化を追加するのであれば、それに伴い博物館が新たに担うこととなる作業への補助制度が必要だと考えますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/30
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031・末松信介
○国務大臣(末松信介君) なかなか厳しい状況でありますけれども、御指摘の点は大変重要なポイントになってまいりました。
博物館の資料のデジタルアーカイブ化は、国内外への成果の還元、文化観光への貢献など、様々な面から重要な意義がございます。また、コロナ禍で来館者を受けたくてもこれは受けられない状況続く中で、今は予約制がまだ多いと思うんですけれども、その必要性や有効性が関係者に改めて認識をされております。
一方、各博物館がそれぞれの資料のデジタルアーカイブ化をどのように進めていくかは、確かにこれも、館種や館の特性、地域の実情に応じてそれぞれの館が判断をしていくべきものではございます。こうしたことから、文化庁では、博物館に関連した予算事業においても、それぞれの事業の目的の下でデジタル化を併せて促進できる支援メニューも設けてございます。
いずれにしましても、各施策を進める上で、常にデジタル化を意識しながら改めて進めていくことが肝要であると思います。引き続き、先生方の声、また関係者の皆様方の声にしっかり耳を傾けていきたいと思います。デジタルアーカイブ化というのは、やっぱり紙は展示しても劣化していきますので、これきちっと保存をするということが大事なことであると、一番根本だと思ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/31
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032・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非お願いしたいと思います。
デジタル化に関連して、災害等への備えとするとともに、様々な手法を通じて文化財の価値に触れる機会を広く提供する画期的な手段とも言える文化財のクローン技術について、現状と今後の活用方法について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/32
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033・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
国民が文化財に親しむ機会を確保する観点から、文化財の公開は積極的に推進していく必要がございます。一方で、国宝や重要文化財に指定された文化財には、木材、紙材、紙材などの脆弱な材質のものが多く、その公開に当たっては、一年当たりの公開日数が一定以内となるよう制限されるなど、取扱要項が設けられているところでございます。
このような中、こうした文化財、美術工芸品などを広く公開するため、先端技術を活用し、本物と同じような高精度、同素材、同質感のものを作るいわゆる文化財のクローン技術等の取組が進められているところでございます。こうしたことから、文化庁においても、国立博物館が有する重要文化財等の高精細レプリカを作成し、希望する地方博物館に貸与することで地方への誘客や消費の拡大を促進するなどの取組を推進しているところでございます。
こうした取組により、先端技術を活用した文化資産コンテンツの制作、活用を図り、国民が貴重な文化財に広く親しむことができるよう、今後とも取り組んでまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/33
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034・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非お願いいたします。
クローン技術で生まれた作品は、例えば移動美術館などの展示、教育の現場での活用など、期待されてもいます。また一方で、災害で失われた文化財を再現する手段としてもクローン技術が生かされています。ロシアの侵攻が続くウクライナでも、多くの文化財、また博物館が被害を受けたという情報を聞いております。
残された資料からクローンを生み出す技術は、文化財保護や活用の新しい形と言えると思います。大臣の所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/34
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035・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 東京芸術大学の宮廻正明名誉教授らによるいわゆる文化財のクローン技術の取組は承知をいたしておりますが、これまでも文化庁と意見交換も実施をしております。
こうした取組を支援するために、文部科学省としましても、科学技術振興機構、JSTですけれども、ここが実施をしますセンター・オブ・イノベーション、COIというのがありまして、このプログラムとして令和三年度に、感動を創造する芸術と科学技術による共感覚イノベーション拠点の一部として支援がなされております。また、令和四年度COIプログラム加速支援として、ウイズポストコロナ社会に適合した新たな文化継承の加速推進、クローン文化財、まちづくりのスマートビジョンを支援をしているところでございます。
こうした文化芸術の分野におきまして、先端技術の活用につきましてはまだまだこれからなんですけれども、積極的な支援は行いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/35
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036・宮沢由佳
○宮沢由佳君 よろしくお願いいたします。
また、博物館の施設整備の老朽化、これも深刻でございます。博物館の規模にかかわらず、その活動を支えるために最低限必要なリソースを手当てするとともに、登録博物館がその活動の質の保証のために行う取組を評価し、その取組への支援を行う観点から、改修、増築、設備補強などの小規模な施設整備に係る費用への補助も強化されますと、自治体も更に登録するモチベーションが上がるのではないでしょうか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/36
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037・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
先ほど大臣からも少し答弁されましたとおり、公立の登録博物館に対する施設整備費補助金につきましては、地方分権の観点から平成八年にて一般財源化されているというのが今の状況でございます。
しかし、こうした中で、委員御指摘のような老朽化の問題とか、今起こっている問題ですね、こうしたものとか、改修、増築、設備補強などのこうした小規模な施設整備への支援というものも、また現場からもいろいろ声が上がってくるというふうに私も推測しておりまして、いずれにせよ、これまでの経緯も踏まえながらも、今ある、今から、今起こるその地域の声や各館の状況もしっかり伺いながら検討を重ねていくという必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/37
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038・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非よろしくお願いいたします。
新たな博物館登録制度の下で、登録審査等の手続に関与する都道府県、指定都市の教育委員会における業務負担の増大が想定されます。業務負担増大に対して国はどのように対応していくのでしょうか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/38
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039・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
本改正に伴い、都道府県、指定都市の教育委員会では、新しい登録基準を定め、勤務体制を整えるなど、準備をしっかり進めていただく必要がございます。このため、本法案では施行日を令和五年四月一日といたしまして、教育委員会において審査体制を整える時間を確保させていただいているところでございます。また、施行日から五年以内に登録を受け直す形とする経過を設け、教育委員会の登録の業務が一定期間に過度に集中しないように配慮させていただいているところでもございます。
これまでも都道府県等の教育委員会には、文化審議会の審議状況など、節目節目に説明を行ってまいりました。文化庁としても、各教育委員会の声をしっかり伺いながら、円滑な登録審査ができますよう、今後ともしっかり協議を重ねてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/39
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040・宮沢由佳
○宮沢由佳君 業務負担増大にならないように御配慮いただければと思います。
改正法の趣旨に沿った登録博物館を増やすには、やはり登録博物館に対する補助制度を更に充実することに尽きるのではないでしょうか。大臣の所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/40
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041・末松信介
○国務大臣(末松信介君) おっしゃる趣旨、そのとおりでございます。
先ほども先生に申し上げましたけれども、登録博物館に対する施設整備費補助金について、分権の観点から平成八年度から一般財源化されたということで、このことについては、そういう補助の体制になっておりますので、慎重に考えていく必要があると認識をしております。
ただ、財政状況の厳しさ、多くの行政分野で共通している課題ですけれども、文化観光とかまちづくりなど、地域の活力の向上を果たす上でやはり博物館の役割というのは私は随分大きくなってきているという、そういうように位置付けております。
こうしたことから、文化庁としましては、登録博物館を中心に博物館の創意工夫を生かした取組に対して追加的な支援を行うことにより、優れた取組の普及を通じまして全体の質の向上を促していくことが重要でございます。
本法案を契機として、様々な予算事業を通して全国各地の博物館の更なる振興に努めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/41
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042・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非よろしくお願いします。
人的にも予算的にも、地域には大変脆弱な博物館も多くございます。そういった博物館が、登録をしよう、登録博物館になろうと思えるような御配慮をいただければと思います。
少し現場の職員の声を披露させていただきます。
昨今の博物館は、調査研究に注力され、公開が後手になっているように感じています。入館料が激減し、館の維持管理も厳しいです。大切なのは入館料ではなく、入館者数だと思います。地元に愛され、学校行事に取り入れられ、コミュニティーのような施設になれば入館も増えるはずです。そのためには、御物、国宝級の巡回展示を行ったらいかがでしょうか。また、高精度レプリカ作成への財政支援、展示ではなく触れる体験、体感できる工夫も必要です。いつも同じ展示では、リピーターが増えるのは難しいと思います。例えば、正倉院御物の各県巡回展など入場者数が増えると思いますとの声と具体的な提案までいただきました。
大臣にも現場の職員の皆さんの声が届いていると思います。国宝を巡回展示することは、輸送など大変とは思いますが、地域の子供たちの学習の契機にもなります。国立博物館など今回の法改正には直接関係のない施設も含め、我が国の博物館全体のネットワーク化を推進し、こうした国立の巡回展、あっ、国宝の巡回展の実現に向けた検討を進めてはいかがでしょうか。大臣の御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/42
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043・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 昨年の七月二十四日から京の国宝展というのが京都でございまして、私もそこへ行ってまいりまして、なかなか良かったです、これは。こういうものを初めて見たなというのが、仏像もたくさんございました。
それで、今回の法案では、博物館同士の連携協力、地域の活力の向上に努めるなど、博物館の役割として新たに規定をいたしてございます。こうした中で、国立博物館については、指定施設、指定施設ですね、指定施設として位置付けまして、他の博物館への資料の貸出しであるとか、あるいは職員の研修などを積極的に協力するなど、ナショナルセンターとしての役割を担っていただきたいというのが考え方でございます。
御提案をいただきました全国の博物館の巡回展につきましては、博物館のネットワークを促す意味で大変有効な方策と思います。そうした巡回展を企画、実施することでお互いの館同士とか職員の間にネットワークが形成されまして、具体的で分かりやすい手法でありまして、今先生おっしゃったことについては貴重な御提案として検討していきたいというように、そのように考えております。
ただ、私もよく存じておりませんでしたけれども、これは、公開日数も延べは六十日以内にするとか、一展覧会に伴う回数の移動は原則一往復一回とか、非常にやはり丁寧に扱っていかないといかないということで、いろんな制約があることは国宝については学んだところでございます。
いろいろと御提案いただいて、ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/43
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044・宮沢由佳
○宮沢由佳君 ありがとうございます。積極的に進めていただけるということで、職員も喜ぶと思います。
国宝の巡回展示は地域の活性化にもなります。子供たちが本物を見て、文化財保護の必要性についても子供たちにも感じてもらうことになると思います。今回の改正を機に、国民みんながわくわくするような企画、国と国立博物館も含め、博物館の皆さんで考えてはいかがでしょうかという質問だったんですが、もうそのお答えを先に言われてしまったと思います。順番にやり取りしたいので、是非注意していただければと思います。
では、次の質問に移ります。
近年、期待が高まっている地域の文化観光施設としての博物館の役割と、子供たちの地域学習など社会教育施設として博物館施設がそもそも担うべき役割、子供たちの地域学習イコール地域に誇りを持つ子供たちの育成、地域資源の掘り起こしと意義付けなどの調和について、大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/44
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045・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 本法案では、博物館が文化施設として地域の様々な主体と連携して文化観光などを推進しまして地域の活力の向上に寄与するということ、そのことに努めるようになってございます。一方で、社会教育法の精神は引き続き法の目的に規定しておりまして、社会教育施設としての博物館の基本的役割は何ら変わるところもございません。
御指摘のとおり、幼少期からやはり地域の文化を学んで地域に誇りを持つ子供を育てることは、教育上、また次の時代の地域づくりにとっても大変重要でございます。今後は、各地の博物館が本改正を機に原点に立ち返りまして、社会教育と文化の両方の性格を持つ施設として地域の様々な課題の解決にも寄与してほしいというのが私の、まあ文科省の願いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/45
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046・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非よろしくお願いいたします。
文化観光施設としての博物館の機能と社会教育施設としての博物館の機能の両立、これは予算と人員が十分であれば可能です。しかしながら、これがなかなか難しいと思います。地域の事情もそれぞれ違います。最も効率よく改正法の趣旨を生かすために、国としてはどのように対応するのでしょうか。
もっと現場のお一人お一人の声を聞くべき、先ほどから大臣ももっと聞きます聞きますとおっしゃっていましたけれども、法改正後に更に博物館を充実したものにするためにも、学芸員や職員から個別に意見聴取をすることも大切です。私が伺っただけでも、たくさんの提案をいただいています。
聞きます聞きますではなくて、具体的にしっかりとこういった意見聴取をする場、設けていただけるというお約束していただきたいんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/46
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047・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 二週間前に私も、兵庫県の、久方ぶりに、陶芸美術館という古丹波の焼き物を展示している博物館がございまして、そこの関係者の方々といろんな意見の交換をいたしてまいりました。登り窯が近くにございまして、これを是非、特別名勝でしたか、重要文化財にしてほしいというそういうお話で、今後の焼き物の振興などの話があったんですけど、やっぱり具体的に外に出て話を聞くということが、まず私はこういう場合大事だというのが認識でございます。
今回の改正案では、博物館が文化施設として地域の様々な主体と連携しまして文化観光などを推進し地域の活力の向上に寄与するように努めておるわけですけれども、新たな博物館法の趣旨に基づきまして、博物館が原点に立ち返って各館の最初の使命を踏まえた上で、現場の館長さん、そして職員の皆さんの意識が高まってそれぞれの地域の活性化に資する拠点としての活動がなされるように、やはり館員の方も、また我々も外に出る、そういう意味での話合いの場づくりも必要だと、私はそのように思います。
先生からの御質問、そのように答えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/47
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048・宮沢由佳
○宮沢由佳君 ありがとうございます。全国の学芸員や職員が待っておりますので、是非大臣、いろんなところに足を運んで直接声を聞いていただければと思います。
博物館の二〇二〇年調査によりますと、財政面が厳しい、七九%、調査研究が進んでいない、七二・三%、町村立の博物館においては、学芸員がいない、これが三割、そんな調査結果も出ております。是非後押しをしていただいて、登録博物館が増えるようにいろいろな方策を練っていただきたいというふうに思います。
アメリカでは、美術館の運営を寄附金で賄っているところがあると聞いています。文化庁ではこうした事例を把握されているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/48
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049・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
文化庁が行いました近年の調査によりますと、全収入のうち、企業、団体や個人からの寄附金が占める割合を調べてみますと、メトロポリタン美術館では四一%、ニューヨーク近代美術館では一七%、ワシントンのナショナルギャラリーでは六%、アメリカ歴史博物館や航空宇宙博物館等を運営するスミソニアン機構では約一八%などとなってございます。また、アメリカ博物館協会のデータを基に作成したアメリカ国内全体の博物館の平均的な収入構造についての資料によりますれば、全収入の約四割が慈善的な寄附によるものとされているところでございます。
これに対しまして、我が国の全国の博物館における全収入のうちの寄附金や外部資金が占める割合は、令和元年度の日本博物館協会の調査によれば、平均して約七%にとどまっているところでございます。
国情の違いや制度の違いがあるので単純な比較というのは難しいところがありますけれども、今申し上げた平均で比べますと、アメリカにおいては、我が国と比較してより多くの収入を寄附金等で賄っているというふうに言えるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/49
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050・宮沢由佳
○宮沢由佳君 ありがとうございます。
先ほど出ましたメトロポリタン美術館、これも入場料を払う際に、私の友人から聞いた話なんですけれども、メトロポリタン美術館の入場料を払う際に、料金は寄附で結構ですと言われたそうなんですけれども、よく見たら入場料二十五ドルと書いてあったので、一応二十五ドルを払ってきたという話なんですけれども。文化などの、要は、つまりお金がない人も無料で入れる、お金がある人はしっかり二十五ドル払ってください、つまり子供や学生、またお金を持っていない方にもしっかりと最高の美術品に触れることができる、これすばらしいことだなというふうに感じます。
文化の違いはありますので、運営費を全部寄附で賄うこと、また先ほど、四〇%の寄附で賄うことは難しいと思いますけれども、例えば個人が博物館に少額でも寄附をしたら無料で入場できる感謝デーを設けるなど博物館の取組を国が支援するなど、我が国においても博物館への寄附を促すべく税控除以外の優遇措置についても検討してみてはいかがでしょうか。大臣、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/50
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051・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 先生の御提案、大変大切かなと。大英博物館は入場料無料でしたですね、あそこは。東京芸大の黒田清輝美術館も、小さいところですけど無料であったと。そういうところでやはり寄附をして帰りたいなという気持ちになるのは自然だと、私はそう思っています。
先生御指摘のとおり、博物館においては運営費の確保が大変重要な課題でございます。現在、国内の博物館におきまして、例えば企業から協賛金を得ることによる無料観覧日の設定であるとか、一般から広く寄附を募る、今お話がありましたクラウドファンディングなど、寄附を募るため様々な工夫がなされていることを承知をしております。一方で、国内の博物館全体としては、人員の不足であるとか知識、ノウハウの不足等によりまして、自ら寄附の獲得に取り組む館はまだまだ少ない状況であるというところで先生御質問いただいたと思います。このため、文科省としましては、令和四年度から、博物館における寄附、支援者の獲得等の活動を、博物館界にですね、博物館の世界全体に普及するための実証事業を行うことといたしております。
先生の御指摘も踏まえて、まずこうした取組を通じまして、博物館における寄附の獲得への意欲を高めて取組が根付くように進めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/51
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052・宮沢由佳
○宮沢由佳君 是非よろしくお願いします。
質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/52
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053・佐々木さやか
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかでございます。よろしくお願いいたします。
私の方からは、まず、二〇一九年に開催をされましたICOM、国際博物館会議京都大会について伺いたいと思います。
この国際博物館会議は、二〇一九年に初めて日本で開催をされました。日本としては、昭和二十七年に加盟していたわけでございますけれども、これまで一度も残念ながら開催をされなかったと。
私ども公明党、この国際博物館会議の日本での開催を是非ということでこれまでも訴えさせていただいておりまして、この参議院の文教の、文部科学委員会の方で二〇〇八年に、当時参議院議員でいらっしゃいました浮島智子議員がこのICOMの日本開催ということについて質問をさせていただきました。それから十一年が経過をしての開催となりましたけれども、その間、関係者の方々のこの日本での開催に向けての様々な御努力に心から敬意を表したいというふうに思います。
このICOMの開催、アジアでの開催ということでいっても、二〇〇四年のソウル大会、二〇一〇年に上海大会、それに次いで三回目ということでございました。実際に、京都大会への参加者も、大変多くの皆様が参加をされて、また有意義な議論が行われたというふうに伺っております。
まず、このICOM京都大会の成果について大臣に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/53
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054・末松信介
○国務大臣(末松信介君) ICOM京都大会のことにつきましては、鰐淵政務官からもいろんなお話伺いまして、池坊当時の副大臣のお話、浮島先生のお名前、たくさん出てまいりまして、少し話を伺ってございます。
二〇一九年に開催されましたこの国際博物館会議、ICOM京都大会は、海外百二十の国と地域から大会史上最多となります四千人を超える人が、方々が参加をしまして、京都を中心に関西エリアで地域の文化や歴史に触れる多彩なイベントなども開催され、大成功を収めたと思います。特にこの大会におきましては、多様な博物館同士が互いに連携協力をしまして地域や社会の課題解決を図っていこうとする新しいコンセプト、また、すなわち文化をつなぐミュージアムの理念の徹底が採択されたことは大変意義深いことであるというふうに考えてございます。
今回の改正法案では、この理念を踏まえまして、第三条第二項において博物館等相互の連携協力を推進する規定を設けるとともに、第三条三項では地域の多様な主体との連携協力による地域の活力の向上への寄与に努める規定を新たに置いたところでございます。
文部科学省としましては、引き続き、ICOM京都大会の成果を踏まえまして、博物館の振興に取り組んでまいりたいと、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/54
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055・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今大臣からもございましたICOM京都大会のテーマは文化をつなぐミュージアムということで、従来の単なる施設にとどまらない、様々な社会的な課題を解決するための重要な資源であるという点、また専門的な議論を行うためのフォーラム、そういった、まさにつなぐ役割、これが求められているということも確認をされました。そして、私もそうだなと思うんですけれども、博物館に求められる機能として、従来どおり、資料の保存、調査、こういったことも主要機能であるわけですけれども、社会との様々なコミュニケーションですとか、また教育の機能ということも非常に重要だということも認識が確認されたと伺っております。
今大臣から少し今回の法改正についても触れていただきましたけれども、こういった京都大会の大成功、そしてそこでの議論の成果というものが、そういったことを踏まえて今回の博物館法の改正が行われているというふうに認識をしております。
そこで、改めまして、先ほど少し一部触れていただきましたけれども、今回の博物館法の改正の趣旨について、大臣に改めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/55
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056・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 佐々木先生にお答え申し上げます。
博物館法の制定から約七十年が経過をする中で、博物館の数は約三十倍に増加をしました。地方独立行政法人立や株式会社立の博物館や美術館が設置されるなど、博物館を取り巻く状況は大きく変化をしてしまいました。
また、近年、文化芸術基本法であるとか文化観光推進法を新たに成立しまして、博物館は、文化観光、そしてまちづくりなど、文化施設としての役割も求められております。このような中で、文化審議会で約二年にわたりまして幅広い博物館関係者から意見を聴取した上で議論を重ねてきまして、昨年末に答申を頂戴をいたしました。
今回の法案は、この答申を踏まえまして、博物館の設置主体の多様化を図りつつその適正な運営を図るために、法律の目的や博物館の事業内容、登録制度の見直し等を行うものでございます。関係者からも早期の改正等について要望をいただいておりました。
文科省としても、喫緊の課題として博物館の振興に取り組むという、そういう考えで今臨んでいるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/56
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057・佐々木さやか
○佐々木さやか君 この博物館法が制定された当時というのは、まず公立の博物館を増加させていくと、まずそこからスタートをしたというふうに伺っております。ですので、最初はそうした対象ということだったんだと思いますけれども、そこから大きく、大臣にもお話ししていただきましたとおり、状況が変わってきたと。様々なこの現代の状況を反映をさせて、より良い博物館の振興を後押ししていくために今回の法改正がなされるというふうに認識をしております。
お話の中にもあったんですが、設置主体というのは多様化をしてございます。民間が設置している博物館というものは、現行法ではこの登録指定制度の対象外ということですけれども、数も非常に今たくさんございますし、それぞれの地域の特性を反映したいろいろな取組もしていただいております。ですので、民間が設置している博物館というものも振興をしっかりと支援をしていく、促進をしていくということが重要だと思いますけれども、今回の法改正では、この民間の設置している博物館の振興という点、どのような手当てがなされているのか伺いたいと思います。
それと併せまして、この現行法の課題の一つとして、博物館登録制度について、まあ博物館自体はすごく増えたんですけれども、登録博物館というものが少ないと、その登録のインセンティブが不足しているのではないかと、こういう指摘もあるわけでございます。
この問題にはどのように対応していくのか、この二点について併せて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/57
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058・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
現行の登録博物館制度では、その設置主体を地方公共団体や社団法人、財団法人等に限定しておりまして、民間企業等が設置する博物館は対象としておりません。しかしながら、民間企業が設置する博物館の中にも登録博物館と遜色ない優れた博物館活動が行われているところがございます。
このため、本法案により、博物館の設置者の多様化を図りつつその適正な運営を確保するため、法人類型の限定をなくし、地方独立行政法人や民間企業等が設置する博物館につきましても、一定の要件を満たすことで新たに登録できることといたしております。この登録を受ければ、博物館の設置者は、信用や知名度の向上が期待できますとともに税制上の優遇措置などを受けることが可能となります。
文化庁といたしましては、こうした登録のメリットを関係者に対し広く周知するとともに、法案成立後、本法案を契機といたしまして、登録のインセンティブについて更に検討を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/58
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059・佐々木さやか
○佐々木さやか君 このコロナ禍で博物館の状況というのも大変厳しいものがあったと思います。また、引き続き続いているかと思います。
私の子供は一歳なんですけれども、最近動物園に初めて行きまして、やっぱりコロナでなかなかそういう子供たちの体験の機会も失われました。動物園で初めて象を見まして、それから象が大好きになりまして、最初は怖がっていたんですけれども。
今はいろんな動画もありますし絵本もたくさんありますから、事前にいろんなものは子供たち見るわけですけれども、やっぱりこの体験、実際に実物のもの、動物もそうですし、美術品、様々な芸術文化に触れていくというのは本当に大切なことだなと、このコロナ禍だからこそ感じている次第でございます。今日もほかの委員からもございました。そういった意味で、全ての方が実際に触ってみることができたりとか、障害のある方がいろんな体験をすることができたりとか、いろんな全ての方に開かれた博物館の振興ということを今回の法改正も更に後押しをしていただきたいと思います。
その中で重要な役割を担っている一つが、私は民間の博物館でもあるかなと思っております。このコロナ禍で非常に厳しいというのは民間の博物館の皆さんからも伺っておりますので、税制上の優遇措置と、また様々な予算措置も是非お願いしていきたいというふうに思います。
次の質問でございますけれども、博物館と観光振興について伺いたいと思います。
博物館の魅力というものは、やはり国内外、日本の博物館、多くの人を引き付けると思います。観光を通じて、海外の方もそうですし、国内の方もそうですし、日本の文化資源への理解を深めていただくということは、この日本の文化芸術を維持発展させていくためにも重要ですし、また観光という側面でも非常に重要なポイントかなと思います。
このコロナ禍の状況はありますけれども、過去のデータでは、訪日外国人の方が日本にいらっしゃって博物館を訪れるという方は三〇%を占めるというふうに、一つの数字、私は聞いたことがございます。
この文化の保存、また継承、発展には、接する機会を拡大して理解を深めていただくということも必要でありますので、様々な面からこの博物館と観光振興についてということは重要なことかなと思っております。この点、どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/59
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060・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
博物館を始めとした文化観光拠点施設に、失礼しました、文化観光拠点施設を核として文化と観光の連携を密接にし、地域の活性化を図っていくことは重要であると考えております。
こうした観点から、令和二年五月に文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律、いわゆる文化観光推進法が施行され、博物館等の文化観光拠点施設の機能強化を図る拠点計画、自治体や事業者等が連携し地域での文化観光を総合的かつ一体的に推進する地域計画といった四十一件の計画を認定し、全国各地で意欲ある取組が展開されているところでございます。
例えば、WiFiの整備、入館チケットやショップのキャッシュレス化などの基盤整備といったものや、美術館での作品の鑑賞はもちろんでございますけれども、飲食を楽しみながら鑑賞もできるといったアートカフェの開設、周辺地域と連携したイベントの実施、それから、地域の文化施設を保存するというだけではありませんで、周辺の市街地や宿泊施設でのサテライト展示によります新たな観光周遊の動線づくり、あるいは伝統的な物づくり体験ができるといったコンテンツの企画などなど様々な取組が行われておりまして、各地の特色を生かした様々な取組が展開されているところでございます。
博物館は地域に伝わる文化資源が集約されている場でありまして、文部科学省としては、こうした文化資源の継承とともに、文化観光拠点施設と各事業者等との連携を促進し、文化の振興、観光の、文化の振興、観光の振興、地域の活性化の好循環の創出に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/60
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061・佐々木さやか
○佐々木さやか君 令和二年の九月付けの日本の博物館総合調査報告書というものを拝見しますと、その中で多くの博物館が課題として認識しているものが、外国人向けの対応が不十分である、それから、ICTを利用した新しい展示方法が導入できていないと、こういう博物館が多いようでございます。
今御答弁の中で、いろんな取組がされていて、WiFiの整備とかですね、そういったことも一部では一生懸命やってくださっているんだと思うんですが、やっぱり全体を見ると、まだまだこの外国人対応ですとかICT化というのは不十分なのかなと思っております。こういったところをやはりもっと進めていかなければならないと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/61
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062・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
博物館の外国人対応につきましては、インバウンド旅行者の皆様の日本文化への理解をより深めていただくことはもちろん、利便性を向上させ、在住外国人の方々が利用しやすい環境を整備することも重要であると考えております。
このため、文化庁といたしましては、展示解説の多言語化や多言語アプリ、オーディオガイドの導入の取組、それから、博物館とNPO法人が連携した地域の在住外国人が利用しやすい平易な日本語による情報発信等への支援を予算事業を通じて行ってきたところでございます。
また、博物館におけるICTを利用した展示方法につきましても、特にコロナ禍を契機といたしまして、全国の博物館において、ユーチューブ等を活用したオンラインで学芸員が展示資料の解説を行うギャラリーツアー、博物館の展示室内の3Dモデルを作成しオンラインでVR映像により展示室を鑑賞できるようにする工夫等の新たな取組が行われ、こうした取組の基盤となりますデジタルアーカイブの必要性、有効性が関係者に改めて強く認識されたと伺っております。
このため、本法案におきましては、博物館におけるデジタルアーカイブ化の取組を一層推進するべく、博物館の事業に博物館資料のデジタルアーカイブ化とその公開を追加することといたしております。また、令和四年度から新たに、博物館同士でネットワークを形成しつつデジタル技術の活用を含む新たな課題に取り組む予算事業を行うこととしております。
先ほど委員御指摘のように、まだまだ不十分というところはあろうかと思いますけれども、文化庁といたしましては、引き続き、こうした博物館における外国人対応の取組を推進しますとともに、この法案の改正を契機といたしまして、ICTの活用を一層積極的に支援してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/62
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063・佐々木さやか
○佐々木さやか君 このICT化、また多言語対応ということが実現をすれば、このコロナ後の社会においてもいろんなところで文化芸術に触れていただくことができる、ネットを使って海外からも見ていただける、それを契機に日本に行ってみたいなと、こういうふうに思っていただくこともできるかと思います。是非よろしくお願いいたします。
最後に、この博物館の振興という観点からは、学芸員その他専門人材の育成ということが重要だと思いますけれども、この点はどのように進めていくんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/63
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064・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
博物館の役割、機能が多様化、高度化する中で、学芸員はもとより、保存、収集、展示等の基本的な機能をそれぞれ担当する専門家や館種ごとの特殊性に対応するための専門家、さらには広報やPR、デジタル化、ファンドレーズなどの多様な人材を博物館に確保することが求められていると認識しております。
こうした中、文化庁といたしましては、学芸員を始め博物館の様々な職員に対する研修をしっかりと進めるとともに、本改正案においても、国及び都道府県の教育委員会の行う研修に、これらの様々な人材に対する研修を行う条項を努力義務として新たに盛り込んだところでございます。また、博物館同士の連携協力を通じまして、人材確保や人材交流、研修の機会の拡大を図っていくことも効果的でございまして、文化庁では、令和四年度から新たに博物館の人材養成のネットワーク化を促進するための事業を実施することとしています。
これらの取組を通じまして、学芸員を始めとする博物館の専門職員の能力、資質の向上を支援してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/64
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065・佐々木さやか
○佐々木さやか君 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/65
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066・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 本改正案についての衆議院の質疑、附帯決議、また衆参両院の調査室の資料では、我が国の博物館政策についての充実した課題抽出が行われておりました。
私からは、本改正案の論点の一つである登録博物館たることのインセンティブについて伺いたいと思います。
博物館一館当たりの社会教育費の公費支出はピークの三分の一になってしまったにもかかわらず、期待される役割というのは増すばかりです。多様化、複雑化、高度化しているにもかかわらず、施設基盤も人員も予算も圧倒的に不足しておりますし、この脆弱な調査研究環境、非正規の問題や行政職出身館長の課題など、こういった学芸員制度改革については、文化審議会の答申や学術会議からの提言でも既に指摘されているところではありますが、今回も抜本改正は先送りされました。
もとい、大臣に寄附税制についての御意見を伺いたいと思います。
例えば、日本で美術品のコレクターの方が亡くなった場合、遺族は相続税を納めねばならないので、結果として、家や土地を売るよりも、そのコレクションしたものというのをオークションに出してキャッシュをつくるという方が多いんだそうです。結果、大概は名画等が海外に渡ってしまいます。もちろんこの納税を猶予する制度というのはあるんですけれども、結局は免除じゃなくて猶予でありますので、対象も重要文化財や登録有形文化財に限られるなど、利用のハードルは極めて高いです。
じゃ、これを寄附すればいいのかといえば、そこにもハードルがありまして、現在、国公立や地方公共団体等に美術品を寄贈する場合、個人なら所得控除、企業なら損金算入されるのが一般的ですが、これにも上限額がありますので、価値があるものであるほど納税のために売るしかない、海外に流出していくルートをたどるしかないといったような状況です。
更に言うと、この額は購入価格です。買ったときの値段ということになりますので、例えば、作品を買ったときは駆け出しの若いアーティストだったんですけど、その方が超有名になって市場価格が上がったとしても、あくまで買ったときの値段、購入価格なんです。一方、先ほども事例でたくさん出てきていますが、アメリカなどでは、寄附する時点の市場価格の一〇〇%が控除される、つまり時価評価額で控除され、しかも五年間の繰越控除も可能だそうなので、個人の寄附が年間三十兆円にも上り、それらが良い作品を国内にとどめる理由になっているそうです。
この寄附する時点の時価評価というのが、コレクターたちが若いアーティストの作品を青田買いする動機になっているというふうに聞きました。これ、何というか、夢もあるし若い世代の育成のエンジンにもなっている、そういう税制になっているそうです。今回、この改正案を拝見して、もし改正するならこういったところにもやっぱり踏み込んでいただきたかったなというような思いがいたします。
というのも、やっぱり博物館の命というのはコレクションの内容だと思うんですね。人は別に館に来るわけではなくて、その中の作品を目指して来る、それを見に来るわけです。その作品を集めてきて、それを守って、魅力ある企画にして展示をしていく、それをたくさんの人に見てもらう、そういうようなものが本質であるし、それをする人たちの環境整備というのは、先にこれを、頑張って人を呼びなさい、もうけなさいっていうよりも先の課題だと思うんです。
今回の改正によって民間企業やNPO法人も登録博物館になれることになりましたので、この登録博物館になるとどういういいことがあるのか。例えば寄附をしてもらいやすくなる、例えば今は国等に限られています寄附の際の所得控除等の対象を拡大したり、また取得時ではなく時価の評価、この二点について御検討されてはいかがかなと思うんですが、先ほど大臣、令和四年度から寄附獲得についての実証実験されるというふうに御答弁されていましたので、こういった今私が御指摘申し上げたこの二点も含めてフィージビリティーされるのかどうか、そこも含めて御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/66
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067・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 実証作業につきましては、今年度、今文化庁と協議をいたしているところでございます。
それで、先生の方から税制のことにつきましてのお話でございました。登録博物館に対する寄附、贈与、遺贈につきましては、現在、公立のみならず、財団法人あるいは社団法人立の私立の博物館についても、一定の要件を満たせば税制上の優遇措置を受けれることも可能でございます。このうち、令和四年度税制改正では、地方独立行政法人立を含めまして、博物館への贈与及び遺贈のみなし譲渡所得の非課税等については認められたところであります。これはもう先生御承知だと思います。
登録のインセンティブを高める方策として、更なる税制上の優遇措置につきましては、令和五年度税制改正、今年の年末、まあ十一月ぐらいになりますけれども、改正について要望していくこととしておりまして、具体の内容につきましては今内部で協議をいたしているところでございます。
先生おっしゃったように、寄附する時点での時価評価という話もありました。こういった点は確かにおっしゃるとおりでして、できるだけ館として財産を持たないと新しい展示物買えませんから、やはり展示物の充実が来館者を呼ぶということですから、そういう点をできるだけ、入館料だけでやっていくということはもう本当にできないことでありますので、そういう点をやはり公的に知恵を貸すということ、このことがやっぱり重要でありますので、いろんな御指導をいただきたいと思います。
それと、博物館の設置者は、登録されることで法律上の地位が与えられまして信用や知名度の向上が期待できるとともに、税制上の優遇措置や美術品の補償制度の利用などの法律上の優遇措置を受けることが可能となります。これはもう、美術品の補償制度は先生の御質問から離れていますけれども。
そういう状況でございまして、税につきましては、一覧で資料のところにありますけれども、国税、地方税共に、例えば登録美術品におきまして、相続税の物納順位の特例、相続税の物納順位の特例等がありまして、これなった場合には。というのは、一番の優先は金銭とか不動産とか株式、二番目は非上場株式、三番目は美術品となっているんですけど、この場合は美術品を納めることができるというのは、そういうことも実際上許されていることだと、私はそのように聞いてございます。
詳しいことはちょっと事務方、次長がおりますのでお聞きをいただけたらと思いますけれども、とにかく、今言ったお話、反映できるようにという、そのことは念頭に置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/67
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068・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 今御指摘申し上げた点については反映いただくよう御検討いただけるということでしたので、是非お願いいたします。
今、今後、各地の博物館が地域に根差したもの、地域の方々に愛されるものにしていくんだというようなことをるるおっしゃっていましたけれども、だとしたらやっぱり、地域に眠る文化財、財産というのが集まってくる仕掛けが、自分亡き後、自分が長年コレクションしたものが地域の子供たちのそれがわくわくになるならそれを差し上げようという人もいるんだとしたら、その人が寄附をしやすくするという制度というのをつくっていくことが必要ですし、これからやはりたくさんの登録博物館ができる中で、各々が特色を出していかなければいけません。何々をやっている博物館だから、国内のみならず、地域のみならず、海外からも見に来る、そういうようなものを一つ一つ、スペシャリティーを持った博物館を一つ一つつくっていくんだというのがこの改正の目的だと思いますので、だとしたら、今コレクターたちが持っているお宝と出会える、マッチングされる仕組みというのもこれ当然必要になってきて、その結果として税制の優遇される拡大、それからそれがやっぱり時価で評価されるというのが何より大事だというふうに思います。
大臣がおっしゃったみなし譲渡所得税というのは、国等に対して文化財を譲渡した場合、課税されないという、もうメリットもデメリットもないというか、ゼロですから。そうではなくて、この若いアーティストたちを育成する仕掛けとともに、自分がコレクションしたものを、地域の子供たちのために、世界中の人たちに見てもらうためにそれを寄附するという、そこのこの仕組みをつくれるのは、これ国しかないです、大臣しかないです、文科省しかありません、文化庁しかありませんので、是非御検討いただきたいと思います。
それから、博物館を社会的処方の拠点として活用することについての大臣の御所見も伺いたいと思います。
私、衆議院の議事録を読んでいて、議員の方が、幼い頃から美術館や博物館がすごい大好きで、月に何度も足を運んでいた、そういった文化芸術に親しむ素地があるので、今も出張先とかで文化的施設を訪れているという答弁を読んで、ああ、羨ましいなというふうに思ったし、じゃ、今、今この瞬間そういうことができる子供たちって一体この国にどれぐらいいるんだろうというような思いもいたしました。
実際、我が家は週末に博物館に出かけて美術に触れるみたいな家庭環境ではございませんでしたし、まあ私に素地が、今そういう素地がございませんので、今、母となった今も子供たちを美術館や博物館に週末に連れていくなんていう習慣も我が家にはありません。
ただ、先ほど大臣が、学校の遠足で行かれたという話で、そして今、そこですごく感動して、今、出張先でも自分が訪れるというような御答弁をされていたので、やっぱり学校でそういうところに連れていっていただいて何かこう芽が芽吹くとすごくうれしいし、多くの子育て世帯が、自分たちでは連れていけない入場料、自分たちでは連れていけない、時間的余裕も、精神的余裕も、肉体的余裕もない中で有り難いなと思うところなんですが、私のような者が校長をしてしまうと、なかなか学校等との連携というのが進まないと思うんです、元々素地がありませんから。
なので、こういう、今回学校との連携というのが、学校等との連携というのが法律にも明記されましたけれども、校長先生の存在というか、校長先生との連携、啓蒙、研修、そういったものがすごく大事になってくるんじゃないかなと。子供たちをもっと博物館、美術館にいざなうには、この校長先生、キーになってくると思うんですけど、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/68
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069・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 時間があったときに小さな美術館に、まあ大体四時半入館で終わってしまいますから時々の時々に行くということなんですけど、ただ、一番強烈に印象に残ったのはやはり、ツタンカーメン展が小学校四年生のときでした。百七万人と書いていましたね、その当時。その記録は今でも、京都市市立博物館ですか、破られていないということぐらい、それほどドラクロワ展とこの二つは頭に残っております。だから、幼き頃にはそういうような貴重な美術品を見るということは、心の中で何かやっぱり残っていって、また大きくなって花開くときが出てくるという、私は大事なことだと思っております。
今回の改正案では、第三条で博物館の事業として、地方公共団体、学校、教育施設その他の関係機関及び民間団体との相互協力、連携を通じまして地域の活力向上に寄与に努めるということを追加いたしております。
先生から直接の御指摘なかったんですけれども、地域においてはいろんな、先生からはお話はありませんでしたが、不登校であるとか貧困などの困難を抱える子供たちが在籍する学校で博物館と連携して、子供たちに文化芸術に触れる喜びや楽しみを提供したり新しい発見や学びの機会を提供することを大いに期待されるところでございます。
例えば、文部科学省においては、群馬県の前橋のアート、前橋が中核となって実施しているアートを通じて、学校や社会へ行くことに困難を感じる子供たちの居場所づくりなどの取組も支援をいたしているところでございます。
今少し例を挙げたわけなんですけれども、やはり、学校長が替われば学校も変わりますんでね。私は、そういう意味では、校長がやはり心を豊かにしていくにはこういったところ、ただ、なかなか学校現場も遠足とかそういった校外行事を取るというのは相当の時間と準備が掛かりますので大変ですけれども、まずやっぱり校長先生はその気持ち持っていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/69
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070・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 是非よろしくお願いします。
児童養護施設で育った子供は、私は水族館に行ったことがないというふうに言っていました。また、その不登校の子供も、学校には行きたくないけれども美術館になら毎日行きたいというふうに言っていました。
そういう、私たちは今、子供たちにいろんな出会いや経験を、そして好きをもっと好きにする、そういう仕掛けをつくらないといけない中で、学校に行けないんだったら、じゃ、美術館に行ったら、そこで例えばアートカードを使った対話型鑑賞をしたという子供がいたら、じゃ、それは出席日数にカウントしてもいいというぐらい、大臣が言ってしまうぐらい、そういうような拠点としてこの博物館、美術館がなしていくことを願いまして、質問を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/70
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071・片山大介
○片山大介君 日本維新の会の片山大介です。
結構質問がかなり似通ってくる部分もあるかもしれませんが、順次聞いていきたいと思います。
私は、まず、やっぱり博物館法の目的規定についてちょっと聞きたいんですけど、今回の博物館法は、そもそもは戦後の復興期に制定されて、単体で改正されるというのはほとんどなかったから、今回七十年ぶりというんですね、だから博物館法が博物館みたいなものだと思うんですけど。その目的規定に文化芸術基本法の精神に基づくことをこれ追記したと、それから博物館の事業に地域と連携して文化観光などの活動への貢献に努めることも規定をされたと、追記された。
そう考えると、今回、そうした目的だとか事業というその法の根本的な部分にこうした文化芸術的な部分を要素に加えるということは、博物館の役割がこれまでとは変わってきたということなのかどうなのか、まずそこからお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/71
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072・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 目的そのものが変わったわけではないと私は思います。本改正案においては、博物館法の目的に、文化芸術、これ第一条でしょうね、文化芸術基本法の精神に基づくことを追記したということでございます。これは、博物館が文化の振興を図って、もって心豊かな国民生活、活力ある社会の実現に寄与する施設であることを明確にする趣旨でございます。
長くなっちゃいかぬので、それだけにしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/72
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073・片山大介
○片山大介君 私もそうだと思うんです。私も、だから別に変わったわけじゃなくて、これまでも文化芸術的な要素ってあったですね、私も行ったときにやっぱりそういうことを感じていましたからね。だから、改めて規定する、改めて追記することによって、やっぱりこれをしっかりとやっていこう、こうした博物館を増やしていこうというのが今回の狙いなんだろうと、文科省のことをおもんぱかって言いますと、そうなんだと思う。
そうすると、じゃ、そのための登録博物館を増やしていく、登録博物館制度の見直しというのが今回の目玉というか一番の特徴なんだと思うんですが、これまでは対象外だった株式会社だとか地方の独立行政法人だとかの博物館も登録ができるようになると。これは、登録博物館の裾野を広げていこうということなんで、これ自体すごいいいと思いますよね。
ただ、株式会社の博物館などがこうした形で登録されるということになるんであれば、行政側がまずきちんとこれ審査を行うようにする。それで、その博物館に対して、民間であろうが、博物館のその活動の継続性や信頼性、これをきちんとやっぱり担保することがまず必要であって、そのためには、その経済的基礎、今回、何、経済的基礎とか社会的信望を有することなどを求めることにしているというんですけれども、じゃ、これって具体的にどういう部分、どういうことなのかというのがちょっとよく分かんないんで、これどのような基準になるのだろうか、そしてこれを国としてどういうふうに決めていくんだろうか、教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/73
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074・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
本法案では、登録博物館の審査基準については、文部科学省令で定める基準を参酌した上で審査を行う都道府県や指定都市の教育委員会が定めると、このようにされております。また、登録を受けようとする博物館がその基準に適合するかどうかにつきましては、都道府県の教育委員会等が個別具体的に判断すると、このようになってございます。
この参酌すべき文部科学省令についてでございますけれども、この法案成立後、文化審議会において議論した上で、文部科学省において各教育委員会に示すということとしております。
このため、詳細について今ここでもって予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、今例えばということで、目安として想定されそうなもの、現時点においては、経済的基礎とは、会社更生法による更生手続や民事再生法による再生手続の中にはないこと、あるいは社会的信望とは、登録申請の時点において、社会的信用の面から博物館の運営を担当する役員について適切な業務運営が期待できること等が想定されますけれども、いずれにせよ、法案成立後に審議会において、文化審議会において議論をお諮りして、よく御意見聴取してからしっかりと考えてまいりたいと、このように考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/74
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075・片山大介
○片山大介君 その経済的基礎は何か、今分かりました。じゃ、社会的信望というのは何なんでしょうかね。これを教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/75
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076・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) 社会的信望と申しますのは、先ほども少し申し上げましたが、登録申請の時点において、社会的信用の面から博物館の運営を担当する役員について適切な業務運営が期待できるということでございまして、公的な施設を運営するに当たりまして、そのような資格があるという、資格というかその資質があるということでございます。
ちょっと、これはまだ検討のときにいろいろ出てくることでありますけれども、少なくとも、例えば暴力団排除条例に規定する暴力団との関係がないですとか税金が滞納していないこととか、そういう明らかなところはもちろんあると思いますけれども、いずれにせよそういったことを想定されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/76
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077・片山大介
○片山大介君 ここすごい難しいところだと思いますけど、ここしっかり議論を、これはまあこれからするんでしょうから。それで、施行が来年の四月でしたっけ、だからそれまでにきちんと示して、それを基に各教育委員会が作っていくんですよね、たしか基準をね。だから、そういう段階を経ていくんで、これ大切だからしっかりやっていっていただきたいなと思います。
それで、その審査、教育委員会がやる審査というのは、これまでは外形的な基準だったんですよね、これ聞くと、学芸員の有無や施設の面積とかと。これだったら分かりやすかったと思いますけど、これからは博物館資料の収集、保管、それから展示、それから調査研究の体制とか、活動内容をきちんと見るようにしていくというんですよね。これすごく、これもいいことだと思います。
だけど、博物館といってもいっぱいいろんなものありますよね、動物園から始まって水族館までいっぱいあって、多種多様なのがありますよね。そうした中で、国の方で参酌基準を決めるんでしょうが、これってなかなか大変なんじゃないかなと思いますけど、そこ大丈夫ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/77
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078・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 先生の御指摘ですけれども、本法案で新たなその登録基準ですよね、先生、この省令の話だと思います、御指摘は。これ都道府県の教育委員会が定めることとしておりまして、その際に参酌すべき基準については文部科学省が省令で定めることとなってございます。
この省令の内容につきましては、法案成立後に、今若干、次長も申し上げましたけれども、文化審議会において検討した上で制定して各教育委員会に示すこととなっております。このため、現時点で決定したものではありませんが、現時点で想定していることを若干申し上げます。
例えば、博物館資料の収集、保管、展示や調査研究体制については、資料の収集方針が策定され、体系的に資料が収集されていること、それと教育普及活動が実施されていること、調査研究の方針が策定され、その成果が展示、教育普及活動等を通じて利用者に還元されていること等を想定しております。これらの例は、いずれも規模、館種にかかわらず必要なものと考えているところでございます。そんな感じです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/78
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079・片山大介
○片山大介君 そこを是非きちんと示してあげて、それで教育委員会の方が、各都道府県や政令市の教育委員会が作りやすいように国が示してあげる必要があるなと思います。
それで、教育委員会の方も、やっぱりこれから、申請をたくさんこれから受け付けようという話なんですから、じゃ、専門性を有さなきゃいけなくなってくる。これまでは外形的な基準だったから余り専門性がない人だってできたと思いますけど、これからはある程度、教育委員会側もその審査するための専門性を養わなければいけないですよね。
そうすると、ある程度詳しい方、専門性を持った方という人をどういうふうに取り入れていくのか、各教育委員会側。そこも各教育委員会の課題になってくると思うんですけど、そこら辺はどのように認識しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/79
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080・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
この改正案では、新たな制度における専門的観点での審査に必要な知識、経験を確保するため、都道府県等の教育委員会が登録を行う際、学識経験を有する者の意見を聞くことと新たに規定したところでございます。
また、今後、登録審査の実施に向けて関係団体と協力し、登録審査に係る学識経験を有する者を紹介する体制の構築ですとか、あるいは登録審査に係る学識経験を有する者や教育委員会の職員への研修などを行うことを考えております。
文部科学省といたしましては、登録審査の体制がしっかり整えられますように、引き続き、教育委員会等よく御意見を伺いながら準備を進めてまいりたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/80
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081・片山大介
○片山大介君 だから、先ほど最初に言った、何だっけ、社会的信望だとか経済的基礎だとか、そういうものをきちんと判断をしてそれぞれ審査もやっていくというんですから、これは教育委員会も大変だと思うので、そこは国、連携取って、なおかつきちんとアドバイスしながらやっていってほしいと思います。
それで、今回の、いろいろその法の勉強をして、私も余り知らなかったんですけど、やっぱり一番驚いたのは、今回のその登録博物館制度で、国立、それから独立行政法人、それから国立の大学法人の博物館は今回の改正案でもその登録博物館の対象外になる、これなるんだというんですよね。
それで、じゃ、この博物館何かといったら、博物館の事業に類する事業を行う施設、博物館相当施設という指定を受けるというんですよ。だから、同じ法律上の中で、登録博物館というのと指定を受ける博物館相当施設というのが二種類あるということですよね。どっちかというと、我々が知っている上野の博物館だとか国立西洋美術館って、こっちの博物館相当施設の方なんですよね。今回、どっちかというとこの博物館登録制度の方も頑張って強めていこうとなっているので、結局まだダブルスタンダードが残っちゃうままになっている。
これ、文化審議会なんかの話を聞くと、将来的には一本化というようなことも何か検討しているようなんですけど、どうせ七十年ぶりの改正だったら、これ一挙に一本化することも可能だったんではないかなと思うんですが、そこら辺はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/81
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082・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 先生の御指摘、意見が出ておりました。
国立の博物館等の設置及び運営に関する事項ですけれども、各独立行政法人の個別法等においてそれぞれの目的の下で定められていることなどから、今回の法案では、博物館登録制度の対象として、例えば国立の博物館を含まないこととしております。こうしたことから、国立博物館については、今回の法案ではこれを指定施設として位置付けまして、資料の貸出しや職員の研修の実施など、他の博物館に協力を行うことなども明確に規定したところであります。文科省としましては、本法案の成立を機に、国立博物館が一層全国の博物館のネットワークの中核的役割を担うように期待をいたしております。
法律案としてこのような整理となっておりますけれども、今回の法律案の基となりました文化審議会の答申においては、本改正を第一歩として、設置者の枠を超えた連携を促進するとともに、国立博物館を含む全ての博物館の振興のために更なる制度整備について視野に入れまして、その在り方を検討していくことが提言されております。今後、この審議会の博物館部会において検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/82
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083・片山大介
○片山大介君 これはしっかり検討した方がいいと思いますよ。やっぱり分かりづらい。それから、さっき伊藤委員が言っていたように、やっぱり博物館は、結局、博物館に行くというより中身の展示施設見に行くんですけれども、ただ、その前提となる博物館にそれぞれ違う類型があるというのはちょっとやっぱりおかしいなと思いますから、これはやっぱり直していった方がいいなと思います。
それと、最後に私もちょっと補助の関係で聞きたいんですけど、その登録博物館制度、登録博物館になると、地方税の優遇措置、固定資産税でしたかね、その非課税措置というのになるんですけれども、今後、新しく株式会社の博物館とかが登録博物館だった場合は、それもその補助の対象というか優遇措置の対象となるのかどうか。これ今後の税制改正の話にもなってくるんだと思うんですけど、一応それを前提に考えているということじゃないと余りみんな申請したがらないんじゃないかと思いますけど、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/83
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084・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
現在、博物館法に基づく登録を受けた博物館の一部に対しましては、国税及び地方税の一部の税目において減免措置が講じられています。国税につきましては、令和四年度税制改正要望におきまして法改正に伴う所要の措置を要望して全て認められて、これまで登録博物館に認められていた優遇措置が法改正後の登録博物館についても引き続き措置されるというふうになっていますし、地方税についても、今回の法改正を踏まえて新たに令和五年度の税制改正要望において対応するということとなっております。
いずれにしましても、そのメリットがしっかりと感じられますように、引き続き、登録のこの措置、インセンティブについてはしっかりとまた検討を進めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/84
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085・片山大介
○片山大介君 是非そこは、関係府省、財務省とかとしっかりと議論をやって、それは是非そうなるようにしていただきたいというのと、最後に、自治体の財政支援、これもちょっと聞きたいんですけど、地方税の優遇措置になってしまうと、その自治体にとっては逆に税収が減るという問題も起きてくるわけで、地方自治体、これだけ新たな制度によってコスト的な負担も掛かるようになるんですけど、最後、地方自治体への支援についてはどのように考えているのか聞いて、終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/85
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086・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 時間ですので、お答えは簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/86
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087・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) はい。
お答え申し上げます。
おっしゃるとおり、地方自治体の方につきましては、税の減免となればその分収入が減るわけではございますけれども、それを上回るような形で、地方に誇りを持って住民が参画でき、地域づくりができ、さらには観光やいろんな業とつながることで更に地域おこしが進むということは、これまた税収を上げていく意味でも重要なところでございますので、できますれば、その首長の皆様あるいは各地方の議会の先生方にもいろいろ御議論いただきながら、その地方の宝の博物館をどうやってうまく活用して地域振興とかに進めていくかといった観点で是非とも今回の法案を機に考えていただきたいと思いますし、文化庁、文科省の方でも、そうしたものを応援する形でいろんな補助制度とか基盤的なところをしっかりと応援していきたいと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/87
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088・片山大介
○片山大介君 終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/88
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089・吉良よし子
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
現在、博物館は危機だと言われています。二〇二〇年八月二十七日の博物館法改正へ向けての更なる提言では、公立館の多くが人事、予算、運営の面で窮迫するに至った、その結果、予算や人員の削減に始まり、挙げ句は休館や廃館にしたりするなど、まるで博物館を厄介者扱いにする事例もあり、設置主体の責任が問われるべき事態が起こっていると指摘されています。この人員、そして予算が足りない、これが博物館の現状だと。こうした現状を改善することも本改正案の目的の一つだと私は理解しているわけですけれども。
ここで確認をしたいと思います。現在、登録博物館は全国九百十四館あると聞きますが、そのうち学芸員がいない、ゼロ人の博物館というのは幾つあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/89
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090・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
平成三十年度社会教育調査報告書によりますと、二〇一八年十月一日現在で、全国の登録博物館のうち学芸員の配置数がゼロ人となっている館は二百五十六館となってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/90
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091・吉良よし子
○吉良よし子君 二百五十六館、九百十四分の二百五十六なので、実に二八%の登録博物館に学芸員がいないということなわけです。
本法案では、現在登録を受けている博物館も経過措置のある五年以内に再登録をしなければならないと。それから、今答弁のあったこの二百五十六館というのは、つまりは、このまま何もしないまま放置しておけば五年後になれば登録から外れてしまうということになってしまうわけですね。そうでなくとも、博物館が資料の収集、保管、展示、教育、調査研究といった基本的な機能を果たすためには、人の配置、とりわけ専門職である学芸員の配置というのは不可欠なわけです。
これまで登録博物館であったところが、この学芸員の配置が困難だということを理由にして再登録を断念、本当はしたいけれどもそれを断念してしまうようなことにならないで済むように、やっぱり国として今こそ学芸員配置の底上げ、雇用の改善、進めるべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/91
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092・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 学芸員は、先生御指摘のとおり、資料の収集、保管、展示、教育、調査研究という博物館運営の中核的な役割を担う専門的職員でありまして、その役割は引き続き重要であるという認識でございます。
現在の博物館法では登録博物館には学芸員を配置することが求められておりまして、そのことは今回の法案でも全く変わりはございません。一方、博物館に学芸員を配置するかどうか、また学芸員をどのように処遇をするか、最終的にはそれぞれの博物館の設置者が判断すべきであると考えておりますけれども、博物館が、全体を見た場合に、御指摘のように配置の促進や処遇の見直しは重要な課題でございます。
このため、文科省としては、学芸員の能力の底上げを図ってその処遇の改善につなげるため、若手から中堅に至る学芸員の研修、研修はもう積極的に行っております。また、本法案では、既に登録されております博物館については、改正法の施行後、先生お話しになったとおり五年間は登録博物館となる経過措置を置いておりまして、今後、国として登録を促すこととなります。
文科省として、この過程を通じて各博物館が必要な学芸員を配置してもらえるように、登録博物館となるよう様々な機会を通じて設置者に働きかけてまいりたいと、そのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/92
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093・吉良よし子
○吉良よし子君 この学芸員の配置、重要な課題だという御答弁でありました。
本法案では、この登録博物館の水準を維持するために定期報告も求めるということになっているかと思うんですが、この水準維持ということであれば、やっぱりそれ博物館任せにせず、やはり少なくとも今の登録博物館が学芸員ちゃんと配置できるように、国として何らかの財政措置も含めた学芸員配置の底上げ、強く求めておくものです。
あわせて、この人員問題、ちょっとジェンダーの観点からも私見ていきたいと思うんです。
登録博物館、そして博物館相当施設の学芸員の総数と男女別での人数、そして、それら施設の館長の総数とその男女別の人数をそれぞれお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/93
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094・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
平成三十年度社会教育調査報告書によりますと、二〇一八年十月一日現在で全国の登録博物館及び博物館相当施設には合計で五千二十五名の学芸員がおります。その内訳は、全国九百十四館の登録博物館の合計でいきますと、男性が千九百六十七名、女性が千六百二十六名、全国三百七十二館の博物館相当施設の合計でいきますと、男性が七百二十九名、女性が七百三名となってございます。
同様に館長についてでございますが、全国の登録博物館、博物館相当施設の合計千二百八十五名でございまして、登録博物館では、男性が七百九十八名、女性が百二十名、博物館相当施設では、男性が三百二十三名、女性が四十四名となってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/94
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095・吉良よし子
○吉良よし子君 学芸員そのもの、学芸員の総数から見ると男女比率というのは大体ほぼ半々だと、登録でも相当施設でもそういう数字だったかと思うわけです。しかし、館長となると途端に女性の数が少なくなると。総数で見ると、登録と相当施設合わせると、男性千百二十一人に対して女性館長というのは百六十二人と、女性の比率というのは一二・七%という数字になってしまう。かなり少ないということが分かるわけですが、こうした組織の末端では女性比率は一定あるが、地位が高くなると男性比率が高くなってしまう、女性比率が低くなってしまうという傾向というのは、ここ国会も含めた、政治分野も含めた日本社会全体の問題であり、これらの改善というのは急務なわけです。
それはもちろん博物館、美術館、文化芸術の分野であっても同じなわけで、こうした学芸員として業務に当たる女性、半数に上る一方で、指導的立場に女性が極端に少ないという現状をやっぱり変えていく、博物館の指導的地位である館長などにも女性を積極的に登用するように是非この機に促すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/95
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096・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 今回の改正案におきまして、博物館が地域や社会の多様な課題に対応するよう求めていることを踏まえれば、女性も含めた多様な人材に博物館職員としてその知見、経験を生かしていただくこと、重要なことであります。まさに先生の主張と方向は同じですね。
具体的にどのような資質、能力を持った者を博物館の館長にするか、それぞれの設置者が適切に判断することでありますが、全体として見れば女性の登用が少ない状況でございます。これらの博物館の運用を考えますと、やはり多様な考え方が必要でありまして、女性の活躍は必要でございます。先生、今数字を示されまして、一二・七%ということでした。
法案成立の暁には、施行通知を含めまして、あらゆる機会を捉えて女性職員の育成や幹部登用に積極的に取り組むよう設置者や各博物館に促します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/96
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097・吉良よし子
○吉良よし子君 法案の改正の暁には、こうしたジェンダー平等、女性登用を積極的に求めていくという御答弁でした。もう是非やっていただきたいと思うんです。
そうでなくても、この間、博物館や美術の世界というのは本当男性中心になっているという指摘があって、国公立の美術館の場合ですが、その収蔵作品の男女比について調査をしたものを見ると、男性作家による作品というのは七八%から八八%を占めていて、女性作家による作品というのは一〇%から一三%と。これは単に女性作家が少ないとかいう話ではなくて選ぶ側の視点も問われる問題であり、それは美術館だけじゃなくて博物館の収蔵品についてもそういう問題が指摘される、ジェンダー的な観点を取り入れる、多様性が重要だというところで、そのためには女性の参入も不可欠なわけですから、是非、積極的にということは併せて、重ねてお願いしておきたいと思います。
ところで、冒頭申し上げたとおり、博物館には予算もないということは指摘されていることであります。
平成三十年、二〇一九年の文化庁委託事業、持続的な博物館経営に関する調査によると、博物館全体の五二・七%、特に郷土博物館の約七割、歴史博物館の約六割が資料を購入する予算がないと答えています。また、同じ調査で、博物館での調査研究に充てる予算についても、全体の五二・六%、特に郷土博物館では六四・二%が予算がない、足りないではなく、ないと回答をしているわけです。
この博物館資料の収集、そして調査研究というのは博物館法第二条の定義にも明示されている博物館の基本的な役割なんですが、その予算がない博物館が半数超えているというのはゆゆしき事態で、今回の改正を機に改めて国として博物館の資料購入、調査研究などへの財政的な支援すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/97
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098・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 今日は、宮沢先生、伊藤先生からもこの同様の御指摘をいただきましたです。
先生御指摘のとおり、博物館の資料購入とか調査研究というのは、博物館の基本的な機能であり、一番重要なことです。一方、限りのあるリソースをどう配分していって維持発展させていくかにつきましては、まず、何度も申し上げるんですけれども、やっぱり設置者が館のミッションであるとか地域の実情を踏まえて適切に判断いただかなければなりません。
文科省では、地域博物館の創意工夫を生かした先進的な取組を支援するために令和四年度から新たに博物館機能強化推進事業を実施することとしておりまして、この中で調査研究に係る経費を措置することも可能であると考えてございます。まだ令和四年度始まったばかりですからあれですけれども。
厳しい財政状況でございますが、文科省としては様々な予算事業を通じまして、より多くの博物館が地域や社会に貢献するとともに、地域住民に親しまれて信頼される存在になるように取り組みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/98
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099・吉良よし子
○吉良よし子君 機能強化推進事業など進めているということでしたけれども、そもそも、予算が足りないんじゃなくて、先ほど言ったように、ないって答えているところが多数、半数以上いるというところなわけで、そのない状況というのをやっぱり変えていかなきゃいけない、そのためには公立博物館設置している地方自治体が財政的にも責任持てるように国が支援する、そういう体制整えていくべきだということを指摘しておきたいと思うんです。
そして、同時に、今回の法改正の対象、直接の対象ではないですが、国の文化施設についても予算が十分にあるというわけでは決してないわけです。それでも、今回の改正を機に、国立の博物館、美術館への運営費交付金なども多少は拡充されるのかなと思いましたらそうではなくて、今年から国立文化施設の自己収入の増加インセンティブを強化するということで、運営費交付金に競争的資金枠を設けて、自己収入の増加率に応じて再配分を行うと。
要するに、国立博物館等、様々な施設の間で競争をさせて、その運営費交付金の多寡が変わっていくというシステムになったということなんですが、いや、国の文化施設そのものが、劇場から博物館、美術館、研究所まで、そもそもその性格も成り立ちも違っていて、それらを横に並べて競わせるということ自体がやっぱりおかしいんじゃないかと。そもそも、博物館、美術館の予算がない、足りないって言っているときに、無理に競わせて、ただでさえ少ない予算の取り合いさせるような仕組み入れることは社会教育や文化芸術に対する見識がないと言われても仕方がないんじゃないかと思うんですが、こうした競争的な経費を運営費交付金に入れること、これは大臣、やめるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/99
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100・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 交付金の中から一%ということと聞いております。先生は競争であるという見方でありまして、これを少しでも工夫してくれないかという、そういう一%と捉える見方もございます。
したがいまして、今回、文化関係の独立行政法人におきましては、ポストコロナを目指しまして、入場料収入だけに頼るのではなくて、施設の貸出しやクラウドファンディングの活用など、多様な財源の確保に向けた積極的な取組が必要でございます。このため、今年度から自己収入増加インセンティブの仕組みを導入しました。この仕組みは、入場料収入を含む総収入のそのものを評価することに加え、寄附金の確保や施設の貸付けの外部資金の獲得に向けた取組を評価する仕組みと考えてございます。
私、この一年、状況を見守りたいなということは思ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/100
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101・吉良よし子
○吉良よし子君 大臣、様々工夫なんだとおっしゃいましたけれども、一方で、日本学術会議の提言でも、国立博物館への運営費交付金が減少傾向にあって、新たに開拓した収益源からの総額というのは決して十分じゃなくて、これらを多様化するには限界があるということも指摘がされているわけで、やはり私は、今回の法改正を機に、競争的経費ではなくて、博物館予算そのものを増やしていくべきだということを申し上げて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/101
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102・舩後靖彦
○舩後靖彦君 れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。
まずは、大臣に基本認識をお伺いいたします。
本改正の目的は博物館の質の向上という認識で間違いございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/102
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103・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 博物館の法の制定から、認識は間違いございませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/103
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104・舩後靖彦
○舩後靖彦君 大臣が博物館の質を向上させるために最も力を入れるべき分野はどこだとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/104
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105・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 本日、各先生方からいろんな意見も頂戴をしました。
博物館法の制定から約七十年が経過しまして、博物館をめぐる状況が大きく変化する中で、今回の改正法案におきましては、法律の目的に文化芸術基本法の精神に基づくことを追加をいたしました。この趣旨は、博物館がその事業を通じて文化の振興を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与する文化施設であることを明確化するものでございます。
博物館の質の向上には様々なことが必要となりますが、最も大事なことは、この法改正を機に、各館のミッションに立ち戻って限りあるリソースの中で文化施設として今何をすべきか改めて考えていただくことなど、館長を始め職員の方々の意識が変わることだと考えてございます。このため、博物館では、貴重な文化資源の集積、管理と国民への展示、共有を通じまして我が国の文化芸術の振興に寄与するとともに、文化施設としての使命を果たすために必要な活動の在り方や体制整備について、これは館長を中心にしっかり考えていただくことが重要と思います。
その上で、それぞれの地域において求められる役割や各館の状況に応じた機能を博物館が着実に果たしていくことによりまして、博物館が地域住民に親しまれ、信頼され、そういった存在となりまして活動や体制が更に充実するという好循環が生まれることが、生まれてくることが大切だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/105
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106・舩後靖彦
○舩後靖彦君 私は、岸田内閣がうたう人への投資の強化だと考えますが、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/106
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107・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 舩後先生の、人への投資ということでありまして、その人というのは、やはり入館者のことを指されるか、あるいは学芸員の方々など館を運営される方々などを指すか定かではございませんけれども、いずれにしましても人が主体でございますので、先生の御趣旨も私は当たっているかと思います。そのようにも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/107
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108・舩後靖彦
○舩後靖彦君 本改正案では、学芸員の処遇改善や正規学芸員がいない博物館への人的補充、学芸員の非正規化に対する歯止め対策など、人への投資の具体的施策が盛り込まれなかったと認識しております。
令和二年九月の日本の博物館総合調査報告書で、平成九年と平成二十五年の常勤職員の平均数を比較すると一・六一人減、一方、非常勤職員は〇・八五人増となっています。さらに、学芸員資格を持った常勤職員がいない博物館が全体の三五・三%に及んでいます。
博物館の質を高めるためには、学芸員の方々への投資が不可欠です。なぜ改正案で人への投資が盛り込まれなかったのでしょうか。大臣、その理由をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/108
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109・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 今回の改正法案につながります基本的な考え方を取りまとめました昨年末の文化審議会の答申では、お尋ねの学芸員制度の今後の在り方につきましては、実態の把握を行いながら中長期的な課題として引き続き検討していくことが提言されております。このため、今回の法案では学芸員制度の在り方について見直すことはしておりませんが、今後更に関係者の方々から意見を伺いながら、引き続き文化審議会で議論を深めまして、一定の方向性を得るべくしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
また、学芸員の処遇につきましては一義的には設置者の判断となることから、文部科学省としては、今回の改正法案を契機として、博物館と地域とのつながりを強め、地域からの信頼を確保していく施策を充実させながら、設置者に学芸員の専門性や果たすべき役割をしっかりと御理解いただきつつ処遇改善の機運を盛り上げていくことが大切と思っております。
こうした認識の下、今後、引き続きの施策の充実に努めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/109
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110・舩後靖彦
○舩後靖彦君 学芸員の非正規化に付随する問題があります。学芸員が非正規化することによって専門職として処遇されることがなくなり、科学研究費の申請が困難になっている点です。
博物館の環境整備を進める上で科学研究費の予算の積み増しは急務だと考えますが、大臣、この点についてどのような方策をお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/110
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111・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
自らが収集、管理する資料等に関する調査研究を行うことは博物館が従前から担っている重要な業務の一つでございまして、その役割は今回の改正にかかわらず十分に果たされていく必要があるものと考えております。
今御指摘の科研費、科学研究費補助金のうち一部費目については、申請する研究者が大学等のほか文部科学省が指定する研究機関に所属していることが必要ですが、博物館の中にもこの研究機関として指定されているものが約六十機関あると承知しております。また、学会によっては、この研究機関としての指定を受けるために必要な申請に関してマニュアルを作成し、博物館の指定を支援している例もあると伺っております。
文部科学省としては、博物館における調査研究活動が円滑かつ十分に行われますよう、御指摘の科研費の申請も含め、各館の声や要望に丁寧に耳を傾けながら、必要な情報提供等に取り組んでまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/111
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112・舩後靖彦
○舩後靖彦君 もう一点、本改正案で置き去りになった点について質問させていただきます。
今回の改正では、博物館館長の資格要件については手が付けられておりません。既存の博物館法では館長については人材の属性の規定がなく、非常勤の行政職の天下り館長や一般行政職の昇進ポストの一つとなっている現状が生まれる元凶となっているという有識者の指摘もあります。令和元年度日本の博物館総合調査報告書によると、館長が学芸系職員の職歴を有する博物館の割合は一三・八%とのことです。
こうしたことを踏まえ、館長は、原則学芸員資格を有し、実務経験が豊富な常勤の専門家館長とすることを省令である博物館の望ましい基準に明記すべきと考えますが、大臣の御見解をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/112
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113・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 博物館の館長は、館の展示内容に関する専門性への理解を有することはもちろんでございますし、館の魅力ある社会への発信、地域社会の関係構築など様々な役割が求められておりまして、博物館の事業全体をマネジメントする重要な役職であると認識をしております。博物館法第四条には、「館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、博物館の任務の達成に努める。」とあります。
それで、一方、その博物館ですけれども、その扱う分野によって多様な種類がありまして、具体的にどのような資質、能力を持った方が館長にするかは、館の目的とか特性、地域の実情、館の抱える課題等を踏まえましてそれぞれの設置者が判断しておりまして、国が一律の資格要件を設けることは慎重な検討が必要であると考えております。
その一方で、舩後先生御指摘のとおり、館長の資質の向上は重要なテーマでございます。このため、本改正案では、国、都道府県が館長に必要な研修を行うことを新たな規定にしてございます。法案の成立の暁には、新任の館長さんへの研修等によりまして資質向上に一層努めてまいりたいと、まずこれを一歩にしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/113
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114・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/114
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115・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/115
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116・舩後靖彦
○舩後靖彦君 代読いたします。
研修の具体的要件はお決まりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/116
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117・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
管理職の関係の研修につきましては、新任の館長、博物館館長の研修をもう措置しておりまして、管理運営や博物館を取り巻く社会の動向などの研修を行うこととされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/117
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118・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/118
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119・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/119
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120・舩後靖彦
○舩後靖彦君 代読いたします。
今の答弁ではよく分かりませんでした。例えば研修期間がどのぐらいなのか、教えていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/120
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121・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
令和三年度に行われた例で申し上げますと、博物館館長研修は令和三年十月六日から三日間実施したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/121
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122・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/122
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123・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/123
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124・舩後靖彦
○舩後靖彦君 代読いたします。
専門家になるには三日間の研修で十分だと思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/124
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125・杉浦久弘
○政府参考人(杉浦久弘君) お答え申し上げます。
この三日間の研修につきましては、社会教育施設として、博物館の役割、機能、管理、運営、サービスに関する専門知識、また博物館を取り巻く社会動向などについて学ぶということを趣旨といたしまして、責任者としての力量を高めるというところでございます。
今お尋ねの意味の、専門の意味は学芸的な専門ということをおっしゃっていると思われますが、もしそういうことであれば、この研修で学芸的な、専門的な研究をしたりとか、そういう学ぶというものではないと思います。
ただ、そのような資質が求められるという博物館であれば、やはり設置者の方でも、そのときにその博物館が必要だということであれば、それはやっぱりそうしたふさわしい方を選んでいただくというのが基本でございまして、博物館の館長は、もちろん専門家も大切ですが、同時にマネジメントもありますので、今のようなこの研修は、この三日間のスタイルというのは、その全体を見た上でのスタイルとなってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/125
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126・舩後靖彦
○舩後靖彦君 博物館を観光資源としてインバウンドの起爆剤とするためには、博物館に従事する人への待遇改善、予算増額が必須だと考えます。
大臣、法案成立後も引き続き具体的施策を講じていただきますようお願い申し上げて、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/126
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127・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/127
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128・舩後靖彦
○舩後靖彦君 私は、れいわ新選組を代表して、博物館法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、文化芸術基本法制定、文化財保護法改正、文化観光推進法制定との整合性を取ることが主な目的と言えると考えます。つまり、文化財の保存よりも活用を重んじるという政策の延長上にあります。
登録制度の改正や審査の見直しなどについては異論はありませんが、館長の資格や学芸員の処遇改善、科学研究費の拡充については手付かずでした。博物館の表側に関してはてこ入れがなされたが、肝腎の内側については放置されたと言っても過言ではありません。人への投資の強化をうたう岸田政権なら、本法案でも、学芸員の処遇改善や事務員の増強など、改正案の中に盛り込むべきです。
以上の理由をもって、本法案に反対をいたします。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/128
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129・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
博物館法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/129
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130・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、宮沢君から発言を求められておりますので、これを許します。宮沢由佳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/130
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131・宮沢由佳
○宮沢由佳君 私は、ただいま可決されました博物館法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、国民民主党・新緑風会、日本維新の会及びれいわ新選組の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
博物館法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一、本法による新たな博物館登録制度が十分に活用されるよう、登録により各博物館の信用や認知度の向上につながる制度の実現に向けた施策を推進するとともに、新たな登録制度の活用状況や博物館の振興に及ぼす効果等について調査・検証を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
二、登録博物館について、その設置主体が民間の法人等に拡充されることから、登録の審査に当たっては、博物館の社会教育施設としての役割を尊重し、過度に利益を求めないという非営利性に配慮の上、公益性及び公共性の確保に十分留意すること。また、登録後の博物館の運営状況について、定期報告等を通じ、博物館が持続的に活動できるよう経営の改善・向上を継続的に図るための支援を行うこと。
三、博物館の中核的職員である学芸員については、文化審議会の答申においても中長期的な課題とされたことから、学芸員に求められる専門的な能力を再定義するなど学芸員の在り方について制度的な検討を行い、必要な見直しを行うこと。また、学芸員をはじめ、学芸員補など様々な専門的職員の育成・配置が重要であることを踏まえ、その社会的地位の向上及び雇用の安定等の処遇改善や、博物館職員の充実を図るための財政的支援に努めるとともに、研修及び調査研究助成等を充実させることにより、我が国の博物館の活動の基盤を担う人材の育成・確保等に努めること。
四、博物館の活動や経営の向上においては、責任者として事業や業務に十分な見識を持つ館長の果たす役割が重要であることから、学芸員で高度かつ専門的な知見を有する者の登用や研修等の実施を通じ継続的にその専門性の向上を図るなど、館長としての職責を十分果たすことのできる環境の整備に努めること。また、館長の専門職化に努めること。
五、これからの博物館には、地方公共団体や民間団体等と連携し、社会的・地域的課題の解決を図ることが期待されることから、国立博物館を中核として設置者の枠を越えた全ての博物館の連携を促進するとともに、地域の多様な主体とのネットワークの形成が円滑に実現するよう、必要な支援を行うこと。
六、本法による新たな博物館登録制度の下で、都道府県・指定都市の教育委員会における業務負担の増大が想定されることに鑑み、都道府県・指定都市の教育委員会において、博物館に係る知見を有する専門人材の配置及び育成、博物館関連業務に当たる職員の増員等の体制の強化が可能となるよう、必要な支援に努めること。
七、博物館については、多くの博物館が非常に厳しい財政状況にあり、施設・設備の老朽化への対応も求められる中、従来担ってきた社会教育施設としての機能に加え、文化施設としての新たな役割も担うこととなる。多様な役割を担う博物館の更なる振興を図るため、博物館に対する財政上の措置の拡充や新たな税制上の優遇策の検討などの様々な振興策を講ずるとともに、とりわけ小規模な博物館における経済的・人的資源の不足が深刻であることを念頭に置きつつ、博物館の持続的経営を可能とする新たな運営指針の策定など、各博物館が長期的に安定して資金を確保し得る仕組みの構築に向けた支援を行うこと。また、博物館に対する公的支援の必要性等に関し広く国民の理解が得られるよう、博物館が担う社会的機能の重要性等について広報活動を実施すること。なお、振興策を講ずるに当たっては、社会教育法及び文化芸術基本法の精神に基づき、博物館の多様性を尊重することや、その特性に格段の配慮をすること。
八、博物館法第八条に定める「博物館の設置及び運営上望ましい基準」を定めるに当たっては、本附帯決議の精神を反映させるよう努めること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/131
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132・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) ただいま宮沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/132
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133・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 全会一致と認めます。よって、宮沢君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、末松文部科学大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。末松文部科学大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/133
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134・末松信介
○国務大臣(末松信介君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意いたしまして対処をしてまいりたいと存じます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/134
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135・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/135
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136・元榮太一郎
○委員長(元榮太一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815104X00520220407/136
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