1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年四月二十八日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月二十六日
辞任 補欠選任
松下 新平君 中川 雅治君
三木 亨君 山崎 正昭君
宮崎 勝君 石川 博崇君
東 徹君 石井 章君
四月二十七日
辞任 補欠選任
中川 雅治君 竹内 功君
山崎 正昭君 中西 哲君
石井 章君 東 徹君
四月二十八日
辞任 補欠選任
竹内 功君 進藤金日子君
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出席者は左のとおり。
委員長 矢倉 克夫君
理 事
清水 真人君
高橋 克法君
有田 芳生君
安江 伸夫君
川合 孝典君
委 員
岡田 広君
加田 裕之君
進藤金日子君
竹内 功君
中西 哲君
福岡 資麿君
森 まさこ君
山下 雄平君
真山 勇一君
石川 博崇君
東 徹君
山添 拓君
高良 鉄美君
嘉田由紀子君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
参考人
一橋大学大学院
法学研究科教授 杉山 悦子君
日本司法書士会
連合会会長 小澤 吉徳君
弁護士 国府 泰道君
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本日の会議に付した案件
○民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/0
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001・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、宮崎勝君、三木亨君及び松下新平君が委員を辞任され、その補欠として石川博崇君、竹内功君及び中西哲君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/1
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002・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいている参考人は、一橋大学大学院法学研究科教授杉山悦子君、日本司法書士会連合会会長小澤吉徳君及び弁護士国府泰道君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、杉山参考人、小澤参考人、国府参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。
それでは、まず杉山参考人にお願いをいたします。杉山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/2
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003・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 皆様、おはようございます。一橋大学大学院法学研究科の杉山と申します。
本日は、民事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私は、大学では民事訴訟法を含む民事手続法の教育と研究に携わっておりますが、今回の法律案との関係では、民事裁判手続等IT化研究会及び証拠収集手続の拡充等を中心とした民事訴訟法制の見直しのための研究会の委員として参加し、それぞれにおいて外国法制の調査研究にも協力させていただきました。また、現在では、法制審議会の民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会に幹事として参加しております。
本日は、民事訴訟手続のIT化を中心に法律案について意見を述べさせていただきます。
今回の法律案は、オンラインによる申立てを認めること、さらには、それを一部の利用者には義務化すること、ウエブ会議方式などによる手続への参加を認めること、訴訟記録を電子化することを柱として、民事訴訟手続の全面的なIT化を目指すものです。
現在の民事訴訟手続は、基本的に、書面を用いて申立てなどを行い、訴訟記録は紙媒体で保管し、また、当事者らは裁判所に現実に出頭して対面で審議をするというものです。オンライン申立てを認める規定はございますが、訴訟記録は紙媒体として保管するものであり、実際にはほとんど用いられていませんでした。また、裁判所に出頭せずに手続に遠隔参加することも可能ではありましたが、利用できる場面や方法も限られており、インターネットが普及した社会に必ずしも対応しているものではありませんでした。
他方で、海外に目を向けてみますと、アメリカやヨーロッパの諸国、さらには近隣のアジア諸国はオンライン申立てを含めた民事裁判のIT化に早くから着手しており、この領域で日本が大きく後れを取っていたことは改めて御説明するまでもございません。
民事裁判のIT化への対応の遅れは、コロナ禍においては、裁判期日が入らずに手続が遅延するといった形でも顕在化し、迅速な対応が望まれていたところでした。そのため、DXの一環としても、民事訴訟手続がデジタル化に大きくかじを切ることは必然の流れであったわけですが、今回の法律案によって様々なメリットが期待されます。
まず、民事訴訟の利用者、つまり当事者や代理人の視点から見れば、司法アクセスが容易になります。
例えば、裁判所に紙媒体の書類を持参したり郵送したりしなくても、いつでもどこからでもオンラインで様々な申立てをすることができるようになります。費用の支払も、これまでのように手数料を収入印紙で支払ったり郵便費用を郵便切手で予納したりする必要はなく、電子納付の方法でできることになります。そして、送達についても、従来の郵便などの方法に限らず、オンラインでも可能になり、システムにアクセスして送達を受けることが可能になります。
また、ウエブ会議を利用した口頭弁論期日や証人尋問なども認められるようになるため、当事者や証人などが遠方の裁判所に出頭する負担やコストが軽減されます。移動の時間が減れば、期日も入れやすくなり、手続が迅速に進むことが期待されます。
今回の法律案では、ウエブ会議による参加で和解、調停によって離婚を成立させることも可能にしていますが、これにより、DV被害者が加害者と対峙したくないような場合など双方当事者が現実に裁判所に出頭することが困難であっても離婚をすることができるようになります。
さらに、訴訟記録が電子化され、電子データで保管されることになります。そして、当事者はいつでも裁判所の外から訴訟記録にアクセスして閲覧、ダウンロードをすることができるようになります。そのため、大量の紙の記録を持ち運ぶ必要もなくなり、また、電子化された記録の場合には検索も容易ですので、訴訟の準備を効率的に進めることが可能になります。
民事裁判のIT化には、裁判を運営する裁判所にとっても事務負担の軽減という利点があります。例えば、大量の紙の記録を管理、保管する負担が軽減されますし、印紙や郵券などを管理する必要もなくなり、事務処理の効率化が期待されます。
このような事務処理の効率化とそれに伴うコストの削減は、反射的に、裁判の潜在的な利用者である国民にも利益をもたらすものでありますが、それ以外にも、事件の電子記録を閲覧したり、将来的には、判決のデータを活用することによって自分に関連する裁判に対する予測可能性を高めることもできると思われます。
他方で、民事裁判のIT化を進めるに当たっては克服すべき課題もございます。いわゆるデジタルデバイドの問題ですが、これに対処するためには、誰もが使いやすいシステムの構築に加えて、ITリテラシーを高めるための教育や研修の普及、安価で安定した通信環境の提供、セキュリティー対策、システム障害や災害への対策など、制度を運営するのに必要な環境を整備することが不可欠になりましょう。
さて、IT化に関する様々な論点のうち、一点、オンライン申立ての義務化について更に意見を述べさせていただきます。
法律案では、オンライン申立てができるとするのみならず、弁護士など士業の方についてはオンラインによる申立てを義務付けています。諸外国でも同様の例が見られますが、その背景には、多額の初期費用を投じてシステムを構築したにもかかわらず、オンライン申立てが任意であるために実際には利用者が増えず、利用を促進するために早期に弁護士らのオンライン申立てを義務化するという方向に移行したという事情もあるようです。
民事訴訟では、相手方がいますので、一方当事者のみがオンライン申立てをするのではIT化のメリットを十分に享受することができませんし、電子データと紙の書類が混在する状態では事務処理も煩雑になります。そのような非効率を生じさせないためには、オンライン申立てを全面的に義務化するのが望ましいのでしょうが、そのためには十分なサポート体制が必要となり、現段階では時期尚早ということでしたら、法律案のように、なるべく多くの利用者がシステムを使うことを保障する形で立ち上げ、それと並行してスムーズに全面義務化に進められるような環境を整えていくというのも適当であろうと考えております。
そして、民事訴訟手続のIT化以降は、民事執行、倒産、家事事件手続等のIT化を進めていく必要があります。
例えば、倒産手続には債権者など多くの利害関係人がいるため、ITツールを用いてコストを削減する要請が強く働きます。家事事件でも、例えば少額の養育費を効率的に回収するためには手続のIT化がより求められるものと考えられます。これらのIT化を進めるためにも、まずは民事訴訟手続のIT化を迅速に実現していただきたいと思います。
その他の点についても、併せて若干の意見を述べさせていただきます。
まず、氏名などの秘匿措置についてです。これは、性犯罪の被害者やDV被害者などが相手方当事者に対して自分の氏名や住所、それを推知する事項を秘匿することができる制度です。
現行法では、訴訟記録などは当事者以外の第三者にも一般公開されますが、プライバシーに関する事項については、第三者による閲覧を制限することはできるものの、相手方当事者に対しては秘匿することができません。
しかしながら、氏名や住所など個人が特定される情報が相手方に開示されることによる報復などを恐れて訴えに踏み切れないと、裁判を受ける権利が害されることになります。これは実務上重要な課題として認識されていましたが、法律上の手当てがなく、また、運用による対処には限界がありました。
今回の法律案は、相手方当事者の防御権に配慮しつつこの問題への対処を可能とするものであり、是非実現していただきたいと思っております。
最後に、法定審理期間の制度です。これは、双方の当事者の申出などがある場合に、手続開始から六か月以内に審理を終結させ、一か月以内に判決の言渡しをする制度です。
民事訴訟手続を迅速化する取組はこれまでもあり、一定の成果は収めてきましたが、終期が予測できないことが訴訟の利用をちゅうちょさせる一因となっているという指摘もありました。現行法でも、訴訟の終期を予測させる制度として、例えば訴訟手続を計画的に進行しなければならないという規定や審理の計画という制度もございますが、訓示規定であることや対象事件が限定されていることなどから、活用がされてこなかったようです。
この法定審理期間の制度は、通常訴訟への移行の可能性を残しつつ早い終期を担保するもので、早期の紛争解決や早期の債務名義の取得のために民事訴訟手続を利用したいと考える当事者にとっては、新たな選択肢、新たな利用方法の可能性を与えてくれるものであると思っております。
以上、私自身は基本的に法律案に賛成しておりますが、この法律案の目指すところの利用しやすい司法、迅速で効率的な司法を実現するためには、単に法律の仕組みを整えるのでは足りず、それを支える諸制度の整備、そして何よりも、民事訴訟に実際に携わる個々の当事者、実務家の方だけでなくて、裁判所、弁護士会、司法書士会、法テラス、その他様々な機関による多方面からの協力が欠かせません。
IT化の機運が高まっている今こそ、法制度とそれを支える仕組みを集中的に整え、誰もが取り残されることのない使いやすい司法が実現されることを切に願っております。
以上で私からの意見陳述を終えさせていただきます。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/3
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004・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ありがとうございました。
次に、小澤参考人にお願いをいたします。小澤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/4
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005・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 本日は、参考人として発言する機会を与えていただき、誠にありがとうございます。私は、日本司法書士会連合会会長の小澤吉徳と申します。
裁判のIT化に関しましては、平成三十年の七月から公益社団法人商事法務研究会で行われました民事裁判手続等IT化研究会にオブザーバーとして参加をさせていただき、研究会で報告書が取りまとめられた後は、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の委員として審議に関わってまいりました。
法案につきましては、本人サポート体制の構築及び拡充の必要性について御留意いただきたい点はございますが、総論といたしまして、部会で慎重審議を重ねた要綱を基に作成されたものと理解しているところです。国際的な動向を見渡しましても、裁判のIT化は待ったなしの状況となっておりますことから、弁護士、司法書士等の訴訟代理人のインターネット利用の義務化、当事者の住所、氏名等の秘匿制度、法第三百八十一条の二以下の法定審理期間訴訟手続に関する特則が盛り込まれた本法案の早期実現を強く望むものでございます。
さて、司法書士は、裁判書類若しくは電磁的記録等を作成することによって、本人訴訟をする当事者の支援をするとともに、簡易裁判所においては、代理人として弁護士と同様の業務をすることもございます。いずれも、比較的争点が複雑ではなく、迅速に紛争を解決したいと考える当事者の方々が、書類若しくは電磁的記録作成業務や代理業務として司法書士に委任されますので、これらの方々を念頭に置いて、当事者に使いやすく、当事者に利便性がある制度とすべきであるという視点から意見を述べてまいりました。
こういった視点を踏まえまして、本日は、御審議いただく法案について、主に本人訴訟のサポートの重要性について意見を述べさせていただきたく存じます。
法案では、インターネットを用いてする申立て等は、国や地方自治体が当事者となる場合を除きますと、委任を受けた訴訟代理人が申立てをする際には、電子情報処理組織を使用する方法により申立て等をしなければならないこととされております。
近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るためには、もちろん申立て等をする者の全てがインターネットを用いることが望ましいこととはなるのですが、パソコンやスマホが普及し、日常的にインターネットにアクセスすることができる者が増えたとはいいましても、まだまだインターネット機器の操作が難しいと感じる方も少なからずいらっしゃいますし、物理的にインターネット環境を利用することができない状況で生活をする方もいないわけではございません。
そこで、国民の司法アクセスを後退させないという観点から、インターネットを用いてする申立て等を義務化するのは司法書士、弁護士などの法律専門士業者のみとし、当事者につきましては、電子情報処理組織を使用する方法によりすることができる者は、申立て等の電子情報処理組織を使用する方法によるものとするという旨の規律を最高裁規則に設けるものとするとの注意書きを要綱案に付すことによって、義務化の対象でない方々においてもできる限り積極的にインターネットを利用するものとする訓示規定を設けることが提案されてございます。
裁判手続全体を俯瞰しますと、電磁的記録を活用するためには、訴訟記録を全て電子化することが肝となります。そのため、書面で申立て等をされる当事者の訴訟記録につきましては、訴訟記録を全て電子化、裁判所の負担で電子化をすることとされているところでございます。
しかしながら、裁判所の負担が過度に増加してしまいますと、円滑な裁判手続の支障となるおそれが生じます。したがいまして、義務化の対象とならない方々、インターネットを用いた申立て等をしていただくための方策が最も重要な事項になると考えております。
他方で、円滑な裁判手続の実現という国民全体の利益のみならず、当事者の方々個々人にとっても、インターネットを用いることで裁判所への出頭が不要となり、また郵送費用削減という経済的利益や郵送手続が不要となるという手間の削減という大きな利益があるものと考えられます。
このように申しますと、それほど利便性が高いということであれば、特段の手当てをせずとも当事者が自発的に利用するのではないかという御疑問もあろうかとは思います。しかしながら、ほとんどの国民にとっては、裁判は一生のうちに数回経験するかどうかといった手続でありまして、そうした数少ない手続に直面する場面では、わざわざインターネットを用いた操作方法を学ぶよりは、慣れ親しんできた書面で出してしまいたいと考える方が多いというのが現時点での実情だと考えています。
具体的な数値で御説明します。
昨年公表されました令和二年度の司法統計によりますと、地方裁判所全事件の第一審通常訴訟既済事件の総数は十二万二千七百四十九件であり、このうち原告、被告双方に弁護士が付いたものが五万四千六百二十五件、原告のみに弁護士が付いたものが五万四千七百九十六件、被告のみに弁護士が付いたものが三千四百三十九件となっております。これらから、双方本人訴訟であったものは九千八百八十九件となり、双方若しくは原告、被告の一方が本人訴訟であった事件は割合として五五・五%となり、地方裁判所においても半数以上が少なくとも一方当事者が本人訴訟であることが分かります。
また、簡易裁判所になりますと、同じく令和二年度の司法統計では、第一審通常既済事件の数の総数は二十九万七千百四十二件であり、このうち原告、被告双方に弁護士、司法書士が付いたものが一万九千七百七十一件、原告のみに弁護士、司法書士が付いたものが三万六千百四十二件、被告のみに弁護士、司法書士が付いたものが二万九百二十一件となっています。これらから、双方本人訴訟であったものは二十二万三百八件となり、双方若しくは原告、被告の一方が本人訴訟であった率は何と九三・三五%と、簡易裁判所では実に九割以上が少なくとも一方当事者が本人訴訟となっております。
御参考までに、登記の本人申請率及び本人申請におけるオンライン利用率としましては、令和三年三月三十日、内閣府規制改革推進会議第九回デジタルガバメントワーキング・グループの資料二によりますと、不動産登記においては本人申請率が約一〇%であり、このうちオンライン利用はほぼ見られず、商業・法人登記につきましては、株式会社設立の本人申請率が約二五%であり、このうちオンライン利用率は約六・五%、役員変更登記の本人申請率が約二〇%であり、このうちのオンライン利用率は約〇・七%という法務省からの回答がなされております。つまり、システム稼働後十七年以上が経過した登記制度におきましても、本人が積極的にオンラインによる手続を利用しているとは言い難い実態がございます。
登記と比べて本人訴訟率が高い裁判については、本人に利用していただくためには、システム構築の際、当事者が使いやすいユーザーインターフェースをすることはもちろんですが、ほかにも個々人のインターネット環境の整備の拡充、電子証明書の普及など様々な方策を一気呵成に進める必要があると考えております。
これらの方策のうち、喫緊の対応としては、本人訴訟による申立て等についても司法書士、弁護士などの士業者を活用することが考えられるのではないかと考えております。委任を受けた訴訟代理人となる司法書士、弁護士については、インターネットを用いてする申立てをすることが義務になるわけですから、当然インターネットを用いてする申立て等をする環境は整ってございます。
少なくとも、司法書士は登記のオンライン申請を十五年以上前から利用しております。現に、不動産登記分野の申請等件数に対するオンライン利用率は、令和三年九月二十四日のオンライン利用率引上げに関する基本計画によりますと、令和元年度は約七九・五%となりますが、これらの申請の大多数は司法書士、土地家屋調査士等の士業者を活用した成果によるものと理解をしておるところでございます。
このように、オンライン申請に熟練した司法書士を活用し、代理業務としての委任を望まない当事者については、司法書士が書類作成業務として委任を受けることで、インターネットを用いてする申立て等の利用件数を増加させることが可能になるというふうに考えております。こういった方策こそが裁判IT化に関する新制度を成功させるための重要なポイントになるんだろうと、こういうふうに考えているところです。
ここで、日本司法書士会連合会として検討を進めております本人訴訟のサポート体制について簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
すなわち、IT環境の不十分な方、操作に不安のある方をサポートするために、全国の司法書士会に設置されている百五十七か所の総合相談センターのインターネット環境や電子化のための機器を充実させるための助成を計画するとともに、既に一部の総合相談センターでは、ネット予約やウエブ面談相談の導入などのIT化対応も実施しております。また、総合相談センターでは、業務に付随する相談として、裁判IT化に関する相談にも対応していただくよう全国の司法書士会にお願いをしているところでございます。
さらに、全国四十五の司法書士会において最大六十五インチの大型タブレットを設置済みでございまして、これらは複数のシステムによるウエブ会議機能を備えているところであります。また、中央大学の先生方とも共同で、本人の関与する訴訟事件について、ウエブ会議等による口頭弁論参加の模擬裁判も実施し、会員向けの研修題材とするとともに、問題点等の具体的な検討も行っているところでございます。
法案の御審議の際に、本人訴訟の当事者にいかにインターネットを用いてする申立て等を利用していただくかという観点からの方策を検討されることと思いますが、是非とも士業者の活用について考慮していただくよう希望する次第でございます。
なお、日本司法書士会連合会におきましては、執行部が平成三十年一月三日から五日にかけて、韓国の大法院、弁護士事務所、法務士事務所を訪問し、電子訴訟の具体例、そして本人訴訟支援における電子訴訟の利用例、代理人訴訟の電子訴訟の利用例を視察するとともに、電子化後の士業者と依頼者との関係性などを聴取してまいりました。
韓国では、大法院運営のサイトとは別に、大韓法律救助公団、まあ日本で言う法テラスだと思いますが、法律支援センターというホームページを運営されておりまして、こちらでは、同公団が提供する全ての書式について、書式エディターを利用してサイト上で直接作成をすることができるようにもなってございます。こちらのサイトの利用は無料であり、会員登録をしなくても利用はできるのですが、会員登録をしないと若干の機能制限がある仕様のようでございます。
このように、システム上も工夫された上で、官民で複数の本人サポート体制を整えているという状況にあるというふうに聞いております。
以上で私からの報告を終わらせていただきたいと思います。本日は、このような発言の機会を与えていただき、誠にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/5
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006・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ありがとうございました。
次に、国府参考人にお願いをいたします。国府参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/6
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007・国府泰道
○参考人(国府泰道君) じゃ、発言させていただきます。
まず最初に、自己紹介を申し上げたいと思います。
私は、大阪で弁護士をしておりまして、弁護士登録三十八年になろうかと思います。今から十年前には、日本弁護士連合会の消費者問題委員会の委員長もやらせていただきましたが、三十八年の弁護士生活ずっとわたって、消費者や生活者のための訴訟活動であったり、それから制度の改革提言であったり、さらには中小零細企業者の法律紛争の支援、そういったことを中心にやってきた、普通、町にいる弁護士の一人であります。
今日、私は、今回の民事訴訟法の改正法案の中で、法定審理期間訴訟手続を新設するという提案がされておりますので、これに対する反対の立場から意見を申し上げたいと思っております。
まず最初に、この手続の問題点として三点申し上げたいと思っております。
この期間限定裁判というのが近代裁判の原則にない、そういった制度ではないのかということであります。
この法定審理期間訴訟手続というのは、裁判における審理期間、つまり主張を立証をする期間、これを六か月に限定しようという、そういった訴訟手続です。法務省は、裁判の迅速化と期間の予測可能性を高めるための制度だと説明しています。この二つが立法目的だというわけですね。
これまで、訴訟といいますのは、判決に熟したとき、つまり主張、立証が尽くされたときに判決をするということになっています。これが近代訴訟の原則でもあります。諸外国でも同様です。期間を定めて、期間が到来したから判決するんだといった制度は諸外国にはないわけです。これは裁判の本質を根底から変えてしまうものではないのかと、そういった危惧を持っております。
裁判を受ける権利、これは憲法で定められた権利です。その中には、裁判所が当事者の言い分をしっかり聞いて、審理を尽くして判決をするというものが内容として含まれています。国民は、裁判所に事実を解明してもらいたい、そういったことを求める権利も持っているということであります。それで正しい裁判をやっていただく、これが国民の権利であります。
第二点目として、この制度では不十分で粗雑な審理になる危険性があると考えております。
この手続では、審理期間が限定されるということのために、事実上、主張や証拠が制限されてしまいます。不十分で粗雑な審理がなされる危険性があるんです。その結果、裁判にとって不可欠である事実の解明が不十分になったり、正しい裁判ができなくなってしまうおそれがあるわけです。
もちろん、迅速な裁判、これは誰もが望むところではありますが、どういった方法によってそれを実現するかが問題であります。利用者は、裁判は証拠に基づいて適切な事実認定がなされることがまず大前提であります。そして、それが早く行われることを望んでいるわけです。
実際の裁判では、そう単純なものではなくて、裁判というのは生き物だというふうに言われることもありますが、思い掛けない相手の主張や証拠が出てくることもありますし、それから、期間を制限されたことによってそういったものに対する反証が準備できない、そういったこともある。その結果、思い掛けなく敗訴するリスクもあります。この手続には元々そういったリスクがある、そういった手続であります。
こういったリスクがあることについては実は法務省も認めておられまして、そのためにはいろんな手当てを講じているんだということの説明がなされています。それについては後ほどまた詳しく述べたいと思いますが、それらの手当てを継ぎはぎしたとしても、この手続は粗雑な認定がなされるリスクを解消したとは言えないというふうに考えております。
三つ目の問題点としては、立法事実の検討ができていないことであります。
立法事実といいますのは、制度の必要性、それからそれを根拠付ける事実、社会的事実、そういったことをいいます。
立法提案者は、争点が少ない簡単な案件では本手続の需要があると言いますけれども、そのような事件は実は現行制度下でも短期間に判決ないし和解で終了しています。そもそも、このような手続を必要とするような事件類型が明らかになっていません。どんな場合に本手続の需要があるのか、そういったことが必ずしも明らかになっていないのです。立法事実が極めて不十分な提案であると言わざるを得ません。
この制度に賛成する方でも、せいぜい、あってもいいのではないの、選択肢が増えるからいいんじゃないのといった程度の賛成理由です。しかし、リスクが懸念されるのですから、その程度の必要性ならば立法は見送られるべきではないでしょうか。
次に、衆議院での審議を通じて明らかになった問題点について申し上げたいと思います。
今述べましたような問題点が指摘されてきたことに対しまして、法務省は、衆議院の法務委員会の審議の中で、予想される弊害については様々な手当てを講じていますという説明をされてきています。果たしてそうかという点について、以下六点にわたって述べたいと思います。
第一点目は、IT化の法案と同時に審議すべきテーマではないという点です。
期間限定訴訟といいますのは、そもそも民事裁判のIT化と直接関係のない提案であります。今述べましたようないろんな問題があって、裁判制度の根幹に関わるようなこの手続の問題をIT化の問題と併せて議論すべきではないというふうに考えています。
IT化は裁判実務に劇的な大変化をもたらすものです。様々な懸念があります。そういったものについての慎重な検討が必要です。そういった、日本の裁判にとって大変革となる大きな課題に取り組むときに、それと直接関連しない制度を導入して、それを一緒に審議させようというのはこそくなやり方ではないでしょうか。本手続は、期間制限というこれまでなかった制度、外国にもないような制度ですので、他の迅速化のための課題とも併せて別の場で堂々としっかり議論されるべき課題ではないでしょうか。
第二に、調査が不十分だという点であります。
衆議院の審議では、最高裁がこの手続の提案をした際には論文や調査報告書のなかったことが明らかになりました。海外にもないような制度なので、これについて書かれた論文もなく、研究はなされていないテーマであります。事前の調査研究が余りにも不十分で、生煮えの提案だったのではないかというふうに思います。
第三に、訴訟代理人の要件が付いていない点であります。
この制度をどんな場合にどんな事件に利用するのか、これを適切に判断するためには弁護士などの訴訟代理人が付いていることが不可欠です。法務省は、期間限定裁判は訴訟代理人が付いているような場合でないと認められないという説明をしましたが、しかし、実際の条文にはそのようなものは存在しません。条文を設けなかった理由について、法務省は、法務部を設けている企業が当事者になるような場合は、訴訟代理人が選任されていなくても期間限定裁判の使用を認める、認めていいんではないか、まあそれはそうでしょう、そういった説明をしました。
しかし、果たしてそのような企業が弁護士を訴訟代理人に選任しないで本人訴訟の形式を選択するでしょうか。本人訴訟というのは、法人の場合は社長若しくは支配人が裁判所に出頭しなければできないんです。そのために代理人に委任するわけですから、立派な法務部を設けている企業がそんなことは到底想像できないものであります。
それから、法務省は、訴訟代理人が選定されていなくても、適正な審理の実現を妨げると認められるときという条文に該当するとしまして、この手続の利用をさせないという決定を裁判所がすることができると言って説明しています。
しかし、そのような抽象的基準で適用除外されるでしょうか。ちょっと考えていただきたいんですが、本人訴訟の当事者がこの手続の利用をしたいというふうな申出をしてきたときに、裁判所が、あなたは代理人が付いていないから適正な審理の実現を妨げる場合に当たりますよ、この手続は利用できないんですよと果たして決定できるでしょうか。
結局、法務省の説明は、この手続には弊害とリスクのあることは認めながら、訴訟代理人が選任されている場合に限ることを明文化せず、裁判所の判断次第の抽象的な規定を設けるにとどまっております。これではリスク回避の制度的保障にはなっていません。
第四に、適用除外の類型が不十分だということです。
消費者契約に関する紛争、それから個別労働紛争、そういったものについて除外すると言っていますが、除外されるべきはそれだけではありません。労働者といっても、コンビニの店長や料理のデリバリー配達員や偽装請負のように形式的労働者でない場合もあります。そういった人たちも保護されるべきではないでしょうか。
第五に、通常訴訟への移行の点であります。
この手続は、粗雑な判決になってしまう、裁判になってしまうというリスクがあることから、途中で一方当事者が通常訴訟への移行申立てができる制度案に変更されました。つまり、乗り降り自由になったわけですが、これはそういったリスクに対応しようというものです。しかし、その結果、通常訴訟に移行することによって、当初、訴訟期間が予測できる制度だというふうに言われていたものが、とんでもないものに変わってしまいます。
そういったことで、私たちは、この訴訟手続には様々な問題があるので別の場でじっくりと御検討いただけないかと思って、今回の民事訴訟法の改正法案の中からは除外して、IT化の問題だけで改正法案を実現して進めていただきたいというふうに思って、意見を述べさせていただきました。
以上で私の意見陳述を終えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/7
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008・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/8
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009・高橋克法
○高橋克法君 ありがとうございます。
自民党の高橋克法です。
今日は、参考人の先生方には、大変お忙しいところ、ありがとうございます。一生懸命勉強させていただきますので、よろしくお願いします。
今回のこの民訴法改正の問題点は二つあると思っています。
本人訴訟の割合が地裁約五割強、簡裁約九割強という中で、このIT化が混乱を引き起こすという結果にならないのかという、そういう問題と、それから、今、国府先生がおっしゃったように、期間限定裁判について、国民の裁判を受ける権利を侵害する危険性が大いにあるんではないかという問題点を私自身も認識をいたしております。
そういう問題意識の中から、参考人の先生方に質問をさせていただきます。
まず、小澤参考人の説明を聞きまして、先ほど申し上げた問題点の一番目、IT化がもたらす混乱、このIT化の土俵に乗れない方々がたくさんいらっしゃる、そういう方々をどうするのかと。それに対して、日司連を始めとする実務家の皆さんが力強いサポート体制をつくろうということで努力されていることも今よく分かりました。
そういう中で、小澤参考人にお伺いしたいんですが、小澤参考人は現場で実務家としてお仕事をされていますから、そういった問題点を解決するために具体的に国がどのような方策を講じればよいのか、そのことをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/9
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010・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問どうもありがとうございます。先生が御指摘いただいた、その現場で本人訴訟の支援に当たっている者の立場から回答申し上げたいと思います。
御質問いただいたとおり、本人訴訟の当事者の方が書面での訴えを続けたままということになりますと、裁判所内部の事務負担が増えるばかりではなく、IT化の恩恵を肝腎の国民が享受できないと、それでは何のために多額の国費を投入するかという意見が出てきてしまうのではないかというふうにも考えております。
具体的にどのような施策をということにつきましては、冒頭意見で述べさせていただいた日本司法書士会連合会の取組がございますけれども、それに加えて、被告の方に訴えの通知をされる際には、定型的に法テラスや弁護士会、司法書士会の相談窓口の連絡先を記載するといった工夫とともに、相談窓口の充実の一環として、司法書士、弁護士を積極的に活用するため、民事法律扶助における相談援助の拡充も併せて検討されるべきではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/10
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011・高橋克法
○高橋克法君 加えまして、簡易裁判所についても地方裁判所と同様にIT化する内容となっています。簡易裁判所に対する専門家とも言える司法書士の立場から、例えばですよ、失礼な言い方ですが、簡易裁判所はIT化に対応することが本当にできるのかというようなことも含めて心配な点はありますでしょうか。小澤参考人にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/11
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012・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) ありがとうございます。
簡易裁判所を利用される方々というのは、やはり紛争の額が少額であることから、迅速に解決したいというニーズをお持ちの方が極めて多いというふうに考えております。こういった意味で、おいてはIT化の活用と非常に親和的なのではないかというふうに考えているところであります。ですので、簡易裁判所のIT化こそ国民が最も望んでいるものであるというふうにも考えているところであります。
他方で、少額紛争の特性から、その解決に要するコストをできるだけ低廉に抑えたいというニーズをお持ちの方も多いというのが特徴だと思います。すなわち、士業者に委任するとしても、できるだけ費用を抑えたいとお考えになるということが多いと思いますので、私たち司法書士としても、代理業務としての受任とともに書類作成業務としてのメニューも提示をしながら、まさに当事者と二人三脚で紛争解決に当たっています。先ほどの申し上げた民事法律扶助制度の拡充などによって対応されるべき問題というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/12
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013・高橋克法
○高橋克法君 ありがとうございました。
日本は裁判のIT化が進んでいない、片や外国では進んでいる。それについての研究については杉山参考人が非常に深い研究を、調査研究をされているというのを文献等を読ませていただいて知った次第です。
先ほどの、この今回の民訴法改正の問題点にも関わるんですけれども、そういう問題意識の上に立った上で、杉山参考人が諸外国の民事裁判のIT化の状況を研究されて、そういった諸外国に見習うべき点があれば是非とも御紹介をいただきたいと思います。杉山参考人に質問します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/13
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014・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございました。
私は裁判IT化の研究会では特にイギリスの制度について調査をいたしましたので、そちらの例を簡単に紹介させていただければと思います。
イギリスの場合には、今、日本がしているように一気に国の全ての裁判所でオンライン申立てとかIT化を進めるというのではなくて、やっぱりこのIT化の問題というのは技術にも依存するところでありますので、なるべく実験をして試行錯誤をしながら、良いところは取り入れる、良くないところは修正していくという形で、民事訴訟法というのは、民事訴訟規則を改正するとなりますと国会で審議をしなければなりませんので、それを実務の通達レベルに委託をしまして、そこで期間を決めてテストをしているというところはあります。
さらに、そのテストをするに当たりましても、まずはロンドンのなるべくビジネスというか商事紛争を主に扱うような裁判所から実験を始めて、それがやはりかなりいいということで、もう少し一般の少額の訴訟などでも広がっているというような事情がございます。
さらに、一般の人が関わるものでも少額の債権を回収するというものになりますと、やっぱりオンラインでなるべく裁判所に出頭することなく判決などが出る方が望ましいということで、それもテストのようなプログラムがありまして、オンラインで裁判を受けることができるような制度というものがつくられていると、調べて分かっております。
最初はそのロンドンの一つの裁判所から始まったんですけれども、今はかなりの裁判所でオンライン申立てが広がっておりますし、またコロナ禍でかなりウエブなどを利用した審理というものもいち早く活用しているということも分かっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/14
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015・高橋克法
○高橋克法君 ありがとうございました。
国府参考人が問題点として挙げられた期間限定裁判、これ正直、私自身も今回の参考人のこの質疑の前に国府参考人の論文等も読ませていただいて、正直言います、自分自身は、例えば双方の申立てによる期間限定裁判、しかしその期間限定裁判をやっていても途中から通常裁判への移行ということもできるというような、そういう制度が組まれているとすれば余り問題はないのではないかというような素人の安易な感覚、先ほど国府先生がおっしゃった、まあ選択肢が増える、あってもいいのではないかなと、まさにそういう感覚を持っていましたが、国府先生の論文を読み、また今先生の説明を聞いて、三つの大きな問題点、また弊害については法務省側から、役所の方から様々な手当てをしているといっても、それはやっぱり問題があるよという六つの点という話を聞きました。これは、私自身が以前に考えていた、感じていた、そんなに簡単な話ではないんだなと、こういった危険性、リスクというのは十二分に議論をしてこの民訴法改正の制度設計を進めていかないと、やはり万が一のことが起こり得るという認識を持った次第なんですね。これ、お恥ずかしながら私はそういう感覚を持っていましたので。
その上で、あえて、別に国府先生を無視しているわけじゃないんですよ、国府先生から今いろいろお話も聞きましたんで、杉山先生と小澤先生からは、この期間限定裁判について、杉山先生ちょっと触れられましたけれども、この国府参考人の問題意識、これらについて杉山先生と小澤先生がどういうふうな御所見を持っていらっしゃるか、お願いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/15
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016・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) それでは、まず杉山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/16
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017・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございました。
この法定期間制度に関しましては、確かに裁判を受ける権利を侵害するのではないかという批判があることは承知しているのですが、他方で、終わりが見えない、いつ裁判が終わるか分からない、どれぐらい時間が掛かるか分からないがために訴えを提起することができない人たちがいるとすれば、それこそ裁判を受ける権利の侵害になるのではなかろうかと思っています。
じっくり時間を掛けて聞いてもらうということも重要なんですけれども、特にビジネスの世界などでは何年も紛争解決に時間が掛かっていると困るということもあり、そうすると民事訴訟の利用を控えてしまうというよりは、より使いやすい、そして短期間に、そして集中的に審理をするという制度をつくり、裁判を受ける権利を実質的なものにするということが必要であろうかと思っておりまして、この法定審理期間の制度がそのような制度になるかどうかと、実は実務家の方の努力にも懸かっているかと思いますけれども、一つのそのきっかけになるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/17
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018・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 私は、この手続については一定のニーズがあるのではないかというふうな意見を当初から持っております。また、法制審議会部会においても様々な、国府先生がおっしゃられたような御懸念は多くの委員から出され、そしてそれに応える形で練りに練られた案だというふうに私は理解をしておりまして、特則が濫用的に利用されることを防止するためには、先ほど国府先生の説明にもありましたが、消費者契約に関する訴えなどなど適用除外を設けておりますし、その点については私としては心配はないのではないかというふうな意見を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/18
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019・高橋克法
○高橋克法君 大変ありがとうございました。
今日、私自身は一番目の質疑者ですが、これから与党の先生、野党の先生方からも参考人の先生方に質疑を行います。その質疑の中でしっかりと自分自身学んでいって、この民訴法改正についての議論に参加をしていきたいと思っておりますので、国府先生に対する質疑も野党の先生方からもたくさんあると思いますので、先生、済みません、もう時間が来ちゃったんで、国府先生に質疑ができないんで申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/19
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020・有田芳生
○有田芳生君 立憲民主党の有田芳生です。
今朝も電車に乗っておりましたら、まあ最近いつでもそうなんですけれども、電車の中で本読む人というのはほとんど見ないどころか、それ以上に新聞を読んでいる人なんていうのはもう珍しいぐらいな時代になってしまいました。ですから、新聞社なども、恐ろしい勢いで今紙媒体が少なく、減少している状況の下で、各新聞社もネットの重視という時代になっておりますというところに見られるように、この司法の分野だけではなく、あらゆる社会の中でのIT化というのはもう避けられないというのは分かるんです。
そういうことは前提として理解しながらも、まず杉山参考人にお聞きをしたいんですけれども、全面的なIT化という表現なされました。そういう流れは押しとどめることはできないのは分かりつつ、外国法制についての研究もなさっているという、一言おっしゃっておりましたけれども、外国での流れというものは、例えば韓国などが結構進んでいるということも聞くんですけれども、先生から見ていて、諸外国での著しい水準というのはどういうことがあるのか、ちょっと典型的なことをお聞きしたいというのが一点目。
二点目は、私が危惧するのは、オンラインでの証人尋問の際、不正を排除できるのかどうかという問題なんですよね。大学入試でも、女子学生が試験の内容を外に送って、外から解答が来るというような、非常に、恐らく複雑ではないやり方なんだけど、今ネットの社会において様々な不正が可能な時代だと思うんです。その点についての危惧があるんですが、いかがでしょうかというのが二点目。
三点目の質問は、デメリットの件ですけれども、やはり、私も何度も訴えられたりして裁判所に行くことはあるんだけれども、やはり相手の弁護士などとの、やっぱり顔色を見て、この人は本当に正直に語っているんだろうかということを含めて、人間と人間の関係というのはやはり対面というのが物すごく重要だと思うんですよね。確かに、私は沖縄の仕事やっていますけれども、沖縄までわざわざ行かなくたってズームで会議をやることができるという便利さはあるんだけれども、ただ、恐らく先生なんかも、ズームで講演なんかをなさるときでも、相手の表情が見えないという物すごいデメリットもあると思うんです。
だから、特に裁判という機微な問題において、そういう人間の根源的な感覚というものを重視すべきだという点からすると、デメリットになるんではないかななんというふうに思ったんですけれども、その三点、お聞きをまずしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/20
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021・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございました。
一点目からでありますけれども、諸外国に関しましても、私自身はイギリスを調査いたしましたが、ほかにもドイツ、フランス、アメリカの調査もございますし、韓国、シンガポールなどの調査も弁護士の先生などがされているものを拝見することがございます。
特に、何か電子的な法廷というよりはオンライン申立ての方が諸外国では進んでいるようでありまして、どのようなシステムを使うかについては国によって差はございますけれども、基本的には弁護士の人については書類等はオンラインで申し立てると、記録も電子記録を閲覧するということが、という点が多くの国が採用している制度になっているようです。ちょっと、細かな制度はちょっと少し紹介するのはあれですけれども。したがって、特に、紙ではなくて電子で申立てという点につきましては、それらの国ではかなり進んでいるというふうに理解をしているところであります。
二点目ですけれども、オンラインの証人尋問で不正があるかどうかということは、これは法制審議会でもそうですし、その前の研究会でも、特に実務家の先生から指摘がされてきたところであります。証人がいる部屋に第三者がいて何か指示をしているのではないか、そういう可能性なども指摘がされてきたところでありますが、そこは運用で対処するという点で、対処せざるを得ないところであろうかと思います。
ただ、よくよく考えてみますと、対面で法廷で証人尋問するときであっても、技術がだんだん発達していますので、もしかしたらカンニングなんてことも将来できるようになるのではないかという気もしているところでありますが、ただ、ウエブの場合にはそのような不正が見えない場面が多いので、しやすいというのが現在の状況であろうかと思います。
実務家の方から聞く工夫としては、最初にその部屋に誰もいないのかカメラで全部部屋を映して確認をしてもらうとか、もしそれでもなお不正をする可能性がある人、ような可能性がある場合にはやっぱりオンラインではしないと、対面で聞くということが保障されているので、そのような不正の可能性がある場合には、実際には裁判所に出頭してきていただくということになろうかと思います。
最後の点もその点と関わりますけれども、オンラインの方よりは対面の方が、これは実際に当事者の主張だけ聞く場面と証人の機微な、何といいますか、動作などを見ながら証人尋問する場合とでは少し違うのかもしれませんけれども、まだ現在の技術では対面の方がその辺りがよく酌み取りやすいことが多いということは承知をしているところです。
ただ、他方で、実際に裁判所に出頭するのがすごく困難であるような人、証人については、ウエブで尋問できるとかなり便利、メリットの方が上回ることになりますし、今後、もう少し通信環境などが良くなれば、実際に対面、技術が発展していきまして、対面で話を聞くのとオンライン上で話を聞くのとそれほど大差がないような時代も近いうちに来るのではないかと思っておりまして、そうであれば、両者の、何といいますか、垣根は、要するに対面の場合とウエブの場合と、オンラインの場合の違いというのは余りなくなっていくのではないか、その辺りを少し期待はしているところであります。
以上になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/21
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022・有田芳生
○有田芳生君 更に一点追加でお聞きを、杉山参考人にお聞きしたいんですけれども、オンラインでの証人尋問について法務省に聞いたところ、限定的にやるんだというようなニュアンスの説明だったんですよね。
じゃ、それはどういう意味かというと、オンラインでの証人尋問は、例えばお医者さんなら信用できるという言い方なんですよね。これはもう、お医者さんは立派な方で悪いことはしないという性善説に立った説明だったと思うんですけれども、私は、性善説にも性悪説にも立たず、性弱説、人間は弱いものだという考えにおりますので、幾らお医者さんだから大丈夫だみたいな説明されると、それはちょっと甘いんじゃないかなと思うんですけれども、法務省の説明がそうだったんです。それについてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/22
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023・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
お医者様を裁判に呼んでくるときに、要するに証人ですね、例えば実際に原告となっている患者さんを診た立場として証人尋問する場合と、あとは中立的な専門家として意見を述べる場合と、両方あるかと思います。双方ウエブで尋問とか意見陳述をすることが可能になるわけでありますが、後者の事例であれば、比較的お医者様であれば大丈夫だということは言えるかと思いますが、前者の場合には、先生御指摘のとおり、ケース・バイ・ケースであろうかとは思います。
したがって、万が一その不正をするような可能性があるということを思うのであれば、裁判所として、やっぱり相当な事情があるかどうかということを判断してウエブによる尋問を認めるかどうかを決定することになりますので、こういう類型の人であれば定型的にウエブでやって、そうでない人は対面だというわけではなくて、やっぱり事案を見て裁判官が判断していくことになろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/23
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024・有田芳生
○有田芳生君 次に、小澤参考人に二点お聞きをしたいんですけれども、今日の資料の中の写真で説明されている取組の中で、四番目に裁判IT化に関する市民公開シンポジウムの開催と、非常に貴重な取組をなさっているなと思いましたけれども、この写真の中で、宇宙からでも裁判できますかとあるんだけれども、これについてはどういう御回答をなされたのかなというのが素朴な疑問と、二点目に、この市民公開シンポジウム、三月二十六日なんですけれども、どのぐらいの人々が集まられたのかということと、これからも定期的にこういう催しを進めていらっしゃるんでしょうかという二点をお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/24
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025・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
この宇宙からでも裁判できますかという点なんですけれど、これは少し大げさに表現をしたもので、もちろん現状では難しいということは御案内のとおりかと思います。
参加者でございますけれども、二百名程度の参加者があったというふうに記憶しております。内訳としては、やはり司法書士会で開催するシンポジウムでございますので司法書士の割合が多かったわけでございますけれども、弁護士さんであるとか一般の方の参加もありました。
そして、こういった市民の皆様にこの裁判のIT化のメリットを考えていただくという、こういった機会は今後も会として継続をしてまいりたいと思っておりますし、また同時に、会員に対する研修も今後充実させていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/25
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026・有田芳生
○有田芳生君 二百人というのはよく集まられたなというふうに思いましたんで、これからの御活動を期待したいと思うんですが。
最後に、国府参考人に三点お聞きをしたいと思います。
期間限定裁判について、諸外国にはそういうケースはないというお話でしたけれども、議論もなかったのかどうかというのをお聞きしたいのが一点。それから二番目に、IT化の流れの中でなぜこのテーマが入ってきたのか。私が知る限り、法制審の審議の中では思い付きなんだという発言もあったと記憶しているんですけれども、やはりIT化の法改正案の中にこれが入っているというのはいかがなものかというのは私は思っているんですけれども、それについてお聞きをしたい。三点目に、期間限定なんだけれども、なぜ六か月ということなのか、その認識についてお話し願えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/26
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027・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
まず第一点目の、外国にはないということで、外国で議論がどうなっているのかということですが、残念ながら私は外国の議論の状況は知りませんが、ただ、最初から期限を定めてそれでやろうというやり方はやはり裁判の原則に反するものではないかというふうに思いますので、そういった発想が僕はそもそもないのではないのかなというふうに思います。
それから、我が国では期間の定めのないのかというと、審理計画を定めて審理をするというのが民訴法の百四十七条辺りにあったと思うんですが、これはまあ基本的に複雑な訴訟を前提にしてやるわけですが、そこでは、主張、立証の期間をいつまでとする、判決をいついつまでに出す、証人尋問もいつまでにするという期間を定めているものはあります。だけど、この期間を定めたものは全く使われていないということで、そういったものがなぜ使われていないのかについてまず検証することが先ではないかというふうに思います。
それから第二点目の、IT化の議論になぜ入ってきたのか、これは私も分かりませんし、見た限りそういったことが説明されてきたものはございません。ただ、これも、ここから私の推測ですが、これがIT化研究会の第二読会に出てきたときに、その年の一月の最高裁長官の年頭の御挨拶の中で、IT化だけではなくて、この機会に訴訟手続のいろんな見直しをしてはどうかという、そういうお話がありました。だから、そういうお話を受けて、最高裁の事務局が何かないかなということで言われたのかもしれません。ここはもう全く私の推測ですので、確証のない話です。
それから三つ目が、あれですかね、なぜ六か月なのかということなんですが、これも、六か月に定められた理由は、これまでなぜ六か月かという説明はありませんでしたが、元々、準備書面の通数を三通に制限するとか弁論の回数を三回程度にするとか、そういう議論から出発してきました。だけど、主張、立証することで制限するのはおかしいという議論が出てきて、その立証方法の制限ではなくて期間の制限に変わっていったわけですね。そのときに、弁論と弁論の期日の間隔が一か月とか二か月ということだとしたら、まあ三回弁論するんだったら六か月ぐらいでいいんじゃないかというようなことで出てきた期間ではないかというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/27
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028・有田芳生
○有田芳生君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/28
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029・安江伸夫
○安江伸夫君 公明党の安江伸夫です。
今日は、杉山先生、小澤先生、また国府先生、大変、それぞれのお立場、専門性を生かした貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。
私からは、まず小澤参考人に御質問をさせていただきたいと思います。
今回の法改正の趣旨は、言うまでもなく、一層の裁判の迅速化と効率化を図り、民事裁判が国民により利用しやすいものにするという当然の前提が、目標がございますが、その上で、先ほど小澤参考人からも御説明をいただいております、様々な司法書士会の皆様方の取組については本当に敬意を表しますとともに、引き続き、とりわけこの本人訴訟を行われる方に対するサポートということを行っていただきたいということを改めて強く思った次第であります。
その上で、御質問でございますけれども、先ほどの高橋委員の御質問とも若干重複をいたしますが、やはり国として、政府として、この本人訴訟、これを支援していく、そのために何ができるかという観点でお伺いをしますが、先ほど高橋委員からの御質問に対して、民事法律扶助制度、この充実ということも御指摘をいただいたところであります。そのあるべき制度の姿、求めるところということをいま一度深掘りして御答弁をいただきたいということと、あわせまして、アクセスを図っていくという観点から、被告に対して窓口等を紹介するということも御示唆をいただいたところでございます。これについて付言するところがあればということと併せて、先ほどの御答弁なかった点で更にこれをというものがあれば、付加して御答弁いただければと思います。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/29
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030・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問どうもありがとうございます。
先生から御指摘いただいたとおり、本人訴訟の当事者の多くが書面による訴えを続けたままとなってしまいますと、書面の電子化作業という裁判所内部の事務負担が増えるばかりでなく、IT化の恩恵を肝腎の国民の皆様が享受できないと、こういう事態になることが非常にまずい事態だというふうに思っています。それでは何のためにこの多額の国費を投入するのかという、こういうことになってしまうのではないかというふうに思っています。
先ほど述べた点と若干重複する部分もございますが、一般の方々へのIT機器の利用促進を図るために、国には専門家の活用を意識していただきたい。そして、そのための十分な予算付けをお願いしたいというふうに考えているところでございます。とりわけ、先生御指摘いただいた、被告の方が対応できないということが想像されるものですから、被告がいわゆる事件管理システムを利用するか否かという点が、この訴状をインターネットでシステム送達することができるか、それとも今までどおり書面で送達しなければならなくなってしまうかというところが隘路になるというふうに考えておりますので、被告が司法書士や弁護士さんなどの法律専門職に直接アクセスする体制づくり、これが重要な点というふうに考えています。
具体的には、被告に訴えの通知をされる際には、定型的に法テラスや司法書士会、弁護士会の相談窓口の連絡先を案内するといった工夫が考えられますし、相談窓口の充実の一環としまして、司法書士、弁護士を積極的に活用するために、民事法律扶助の相談援助の拡充も併せて検討されればよいのではないかというふうな意見を持っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/30
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031・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。
もう一問、小澤参考人に御質問させていただきます。
今日配付していただいております資料の中でお示しをいただいている点でありますけれども、登記の分野で司法書士のオンラインの申請利用率は非常に高いということを御指摘いただいておりますし、また裁判書類等の作成関係業務としても従前から本人訴訟の支援を行っているという御指摘もございました。こうしたオンライン申請を日常的に行い、本人訴訟支援も行っているというところが、今回の法改正を踏まえてどのように引き続き生かすことができるのかというふうにお考えなのかをお教えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/31
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032・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) ありがとうございます。
この資料で、冒頭も若干申し上げましたが、やはりこの登記分野については、全体としてはオンライン申請利用率は高いということで七九・五%ということになっておりますが、御本人が申請する分につきましてはほぼほぼオンライン利用がされていないということでありまして、ですので、繰り返しになりますが、やはり専門家の活用こそがこのIT化を成功させる肝だというふうに考えておりますので、その点については会を挙げてきっちりと研修、そして広報など周知を図っていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/32
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033・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
それでは、続きまして杉山参考人に御質問させていただきたいというふうに思います。
杉山参考人、イギリス法を中心としていろいろと今回の法改正に当たっても調査研究をしていただいたということも、文献も見させていただいたところであります。先生の文献にも書いてあるところでありますが、やはりこのIT弱者に対する対応、支援ということが将来的にもここは肝になる大事なポイントであるというふうに改めて認識させていただいております。
その上で、英国におけるこのIT弱者、ITリテラシーの乏しい方に対する支援制度についても先生調査をされたというところも確認させていただいたところでありますので、改めて、イギリスにおけるまずこの裁判所がどういったサポートをこのリテラシーの乏しい方にされているのか、また、裁判所の外でのサポート、こうした体制がまずどうなっているのかというところを確認させていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/33
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034・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
イギリスにおきましては、本人訴訟、IT弱者、その他、そもそも裁判へのアクセスが困難な人に対するサポート、公的サポートがかなり充実しているという印象を受けました。
まず、裁判所の中でのサポートでありますけれども、無料の法律相談、弁護士の方がいて、受けるようなコーナーがあったり、あとは、実際に裁判所に行きますと、パソコン、端末が置かれておりまして、そこで、要するに自宅なんかで見ることができない人はそこで閲覧、記録を閲覧したりすることもできますし、また、先ほどのロンドンで一番IT化が進んでいる裁判所ではあったわけですけれども、どうしても自宅でただPDFにすることができないような人は、裁判所に紙を持ち込んできて、ここでPDFにしてくださいという形で、部屋とか設備が整っているということで、まず裁判所に行けば何とか、何といいますか、ITに詳しくない人であってもオンライン申立てとか記録閲覧ができるということになっています。
また、裁判所の外でも、様々なIT弱者、あるいは経済的な弱者で、日本でもいるかもしれませんけれども、そもそも携帯電話すら持てないような人をどのようにサポートしたらいいのかということについて取り組んでいまして、そのような人たちの駆け込み寺というものもたくさんあるところであります。また、ITだけが分からないということであると、例えば公的な機関ですと、図書館に行くと教えてもらえるというようなこともインタビューなどで聞きました。
したがいまして、裁判所と、あと裁判所の外の、通常、法的な相談なんかを受けるような機関もそうですけれども、図書館その他の公的な機関においてもIT弱者に対するサポートが充実しているというような印象を受けたところであります。
以上になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/34
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035・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
続いて、国府参考人にもお伺いをさせていただきます。
直接的には御意見のところとは若干それますが、今回のIT化というところが法改正の大きな柱となっております。先生も弁護士というお立場から、今回のこのIT化の民訴法改正について、この部分についての先生の御意見についてもお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/35
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036・国府泰道
○参考人(国府泰道君) ありがとうございます。
IT化というのは大変便利でいいことだということで、私なんかも業務上は大変歓迎したいと思っています。ただ、残念なことに、我が国ではまだパソコンを持っている方が五割強ぐらいですか、パソコンよりもスマートフォンの利用者が多いというふうに聞いています。そのように、社会全体の中でIT化が進んでいない中で、裁判制度だけが突出してIT化をしたり、義務化をしたりということについては、私は懸念を持っております。
法制審の議論でも、IT化、オンライン申立てを義務化するかみたいな話があって、最終的には訴訟代理人が付いている場合に限定されましたが、これがもし本人訴訟の場合にまで義務化されるということになると、これは大変なことになろうかと思っています。
裁判所は簡単に手続を進めたいからオンラインは歓迎でしょうが、当事者は、今までは自宅に待っていたら相手方から書類がファクスや郵便で送られてくるということで本人訴訟で対応できたのが、IT化になったら、IT機器を利用するために裁判所まで出向いていかなきゃならないとか、場合によっては司法書士さんの事務所まで出向いていかなきゃならないという、本人にとって不便ですよね。
ですから、IT利用できる本人さんたちにとってはもちろん便利なんですけれども、やはりIT環境にない国民にとっては大変不便な制度なんだということをよく理解した上で慎重に進めていただきたいと思うのと、それから、諸外国の例、僕の聞き及んだところでは、最初から義務化したようなところはほとんどなくて、今義務化したところでも、最初は義務化せずに、制度を実施して、それをやっていく中で利用者を増やしていくという、誘導政策というんですかね、そういうことがやられているようですので、義務化については慎重になされるべきではないかというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/36
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037・安江伸夫
○安江伸夫君 国府参考人、ありがとうございます。今の先生の御意見も伺って、改めて、やはり今回、リテラシーのない方、本人訴訟にならざるを得ないような方々に対してもしっかり支援の手を差し伸べていくことの重要性を認識させていただきました。
引き続きまして、国府参考人にこの法定審理期間を限定していくという法改正についても伺っておきたいというふうに存じます。
様々、冒頭の意見陳述でも今回の法改正に対する御懸念をお示しいただきました。今の御意見をしっかり踏まえた上で、これからの法案の審議についても慎重にやっていきたいというふうに思っております。
その上で、先生が結論として今日の配付資料の中でも御指摘いただいております、そもそもの出発点として、やっぱり裁判の迅速化を図っていこうという前提でこの法改正がなされていくという流れの中で、先生の御意見としては、裁判の迅速化というものは、裁判官を増員させ、またこの証拠収集手続を整備していくということをもってしてやるべきであるという御意見かというふうに思います。
この点につきまして、更に具体的に先生がお考えになっているところ、御提言等あればお伺いさせていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/37
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038・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
裁判所の期日が入りにくいということのためには、裁判所の法廷が空いていない、弁論準備室が空いていないということがよく指摘されているので、裁判所の物的、人的な基盤整備が必要であるというのが、これは皆さん言われていることです。
それから、証拠収集制度というのが我が国では不十分であるということがかねてから言われているので、英米とはもう格段の開き、違いがあるわけですが、実際は、弁論準備の中でも、この証拠を出せ、出さない、それだったら文書提出命令の申立てをする、決定をもらう、そんなことのために半年間ぐらいやり取りをするような、そういうことでは、やはり弁論準備手続、争点整理手続が長引いてしまうのは、これは当然のことではあります。
ですから、まずそういった迅速をやるための改善をするためには、まず、訴訟を長期化している要因が一体何なのかということをまず明らかにする、そのことを踏まえて一つずつ手を打って是正していくということであって、期間を限定するみたいな大なた振るいでは駄目ではないかというのが私の考え方です。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/38
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039・安江伸夫
○安江伸夫君 貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
もう間もなく私の時間も終了となりますので、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/39
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040・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、竹内功君が委員を辞任され、その補欠として進藤金日子君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/40
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041・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典と申します。お三方の参考人には大変貴重なお話を頂戴しまして、ありがとうございました。
私から、まず国府参考人に対しまして質問させていただきたいと思います。
今回のいわゆる法定審理期間訴訟手続に関する話でございますが、この件に関しまして、この期間を限定することのいわゆるメリット、デメリットが様々議論されておりますが、メリットとして考えられることですが、訴えられた被告の側にも裁判をできる限り早く終わらせたいというニーズがあるということを、よくそういうお話を耳にします。
原告と被告が合意の上で、お互いに一定期間内でこの裁判を終わらせることを求める手続があるということ自体は、これ、そういった当事者が利用されるのであれば、実際に弊害、どういった弊害が出るのかというと、弊害は出ないのではないかとも考えられるわけであります。
時間を掛けて審理すべき事案はどちらか一方がこれ応じなければよいだけということでありますので、当事者の裁判に関する権利保障にもこれ特に問題が生じないのではないのかという、このことも考えられますが、国府参考人は私のこの疑問に対してどのようにお考えになりますでしょうか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/41
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042・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
今言われた、当事者のニーズがある、で、当事者が合意する、だからそれはそれでいいんじゃないかということなんですが、実際の裁判では、何というのかな、訴訟の当事者になられる方というのは、皆さん自分が勝つと思っているんですよね。裁判官という非常に特殊、専門的な方が自分の訴えを聞いてくれたら、必ず自分の言っていることは分かってもらえるはずだと。だから、裁判所行ったら、全て自分の主張は通って、自分は勝てるはずだというふうに思っている方が多いです。
他方、勝てる裁判をやるんだったら、それは短い、期間は短いにこしたことはない、これ誰だって早い方がいいと考えます。ですから、そういう場合には、うかつに、はい、じゃ、こういう迅速な方法があるんだったらそういう方法でやってくださいというふうになりがちなんですね。
ところが、訴訟の現場を知っている我々弁護士からすれば、そんなもんじゃないと、証拠がなければ、幾らあなたが主観的に正しいと思っていても、その主張は認められないんですよと、それを認めてもらおうと思えば、もっといろんな間接的な証拠、いろんなものを集めないと駄目なんだという、そういうことになるわけです。
だけど、弁護士が幾らそういうことを言っても、当事者の方は勝てると思っていたら、先生、そんなことを言わずにこちらの六か月の手続の方でやってくれませんかということにやっぱりなっていかざるを得ない。そういうリスクはあるので、弁護士を付けるということも、そのリスク、弊害のための手当てとして考えられるようになっていったということです。
ですから、それともう一つは、さっき申し上げましたように、簡単な、争点の少ない事件であればこの手続に適するというんだけど、そういう事件は原告も被告も早くやりたいと思っていますから、別に期間の制限設けなくても実際運用でやれているので、わざわざ制度を設ける必要まではないだろうというふうに考えています。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/42
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043・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
もう一点、国府参考人に御質問したいんですが、先ほどの参考人の御答弁の中で、訴訟が長期化している理由というものをそもそもきちっと検証しなければいけないといった趣旨の御発言がございましたが、参考人は、訴訟が長期化しているそもそもの理由は何だとお捉えになられていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/43
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044・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
長期化の要因については、最高裁が迅速化検証法に基づいて二年ごとに報告書を出されている、その中でも分析はされているんですが、最近、徐々にではありますが、長期化の傾向にあります。
これは、司法制度改革をやった頃は、裁判というのは二年、三年が普通だみたいなものがあったのが一年でやれるようになって、大幅な期間短縮が実現できました。今の民事訴訟制度では、そういう意味では大変な効果を発揮しました。
ところが、平成十年に施行されてから短期間になったのが、最近また徐々に、九・一か月とかいって〇・数か月ずつぐらい増えてきたりしている状況があるようですが、報告書などを見ると、最近は、典型的な売買契約に基づく紛争とか、お金の貸し借りに伴う契約書のある紛争とかではなくて、非典型的な損害賠償事件が増えていると。そういう複雑で難しい損害賠償事件が増えると、どうしても争点整理が長期化していくということがあって、そういう類いの事件が増えていることが全体の平均値としての長期化に結び付いているのではないかというふうに言われています。
ただ、ここで一言申し上げておきたいのは、我が国の裁判制度は決して長期的とは言えません。G7の国では、世界銀行の報告書によりますと、G7の中では一番訴訟期間が短いです。それから、全世界百九十か国の中でも上位十七番目ぐらいに入っておりまして、日本の裁判は先進国の中では比較的審理期間は短く終わっているという点も御理解いただけたらというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/44
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045・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
続きまして、小澤参考人に御質問させていただきたいと思います。
今回、IT化に関してですが、簡易裁判所も地裁と同様にIT化を進めるということとなっておりますが、簡易裁判所といいますと、司法書士の皆さん、専門家と言えるお立場かと理解しておりますが、簡易裁判所におけるいわゆるIT化を推進していく上で、参考人のお立場から、今回法律が改正されることによって心配される点は何かございますでしょうか。小澤参考人にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/45
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046・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
簡易裁判所こそ、このIT化のメリット、ニーズが高いのではないかというふうに実は考えておりまして、つまり、簡易裁判所というのは利用者が簡易かつ迅速に紛争を解決してもらえる場所、そしてそれが求められる場所でございますので、潜在的には最もIT化のニーズが高い裁判所であるというふうに考えております。ですから、確かに先ほど申し上げた本人訴訟率が極めて高いという、その点はそのとおりなのですが、本人の利用が多いからIT化を遅らせるということではなく、だからこそ、司法書士や弁護士などの士業者を活用して、任意の利用であっても、本人のIT化、本人がIT化に対応できる方策を是非国には進めていただきたいというのが私の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/46
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047・川合孝典
○川合孝典君 もう一点、小澤参考人に質問させていただきますが、簡易裁判所では、今御説明いただきましたとおり、本人訴訟が非常に多いということでありますが、事件管理システムの利用はこれ任意になるということですから、規律としてはこれ同時に施行されるということになるとしても、運用としては御本人方のIT環境がもう少し整ってから導入した方が税金の投入方法としても望ましいのではないのかと考えられますが、この点について小澤参考人はどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/47
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048・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) ありがとうございます。
確かに、先生のおっしゃる御指摘の点については、そのような意見もあるのではないかというふうに理解はしているところでありますが、先ほどの答えと重複して恐縮ですけれども、やはり潜在的にはこの簡易裁判所におけるニーズというのは非常に高いというふうに考えております。なぜなら、簡易迅速な紛争解決を求めて利用する裁判所であるからであります。しかしながら、それを環境整備することが当然大前提となってきますので、そこについては、まずは司法書士、弁護士などの士業者を活用していただくこと、そして、任意であっても本人がIT化に対応できるようなサポート体制を国でも行っていただきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/48
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049・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
もう一つ小澤参考人に御質問したいと思いますが、いわゆる簡易裁判所事件のような、いわゆる少額紛争における裁判書類の作成などのサポート、こういうことをなさっているということでありますが、そういった関与の仕方をされますと、そのいわゆる代理業務と比べまして相対的に報酬が低くなるんじゃないのかということが考えられるんですが、その上、今回IT化ということでITのサポートまでされることになりますと、これビジネスとしてペイするものなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/49
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050・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
まさに、その点も先生御指摘のとおりでございますが、司法書士は、依頼者の権利実現や泣き寝入りがないように、そして社会正義の実現のために、時にはやはり報酬が多く見込めない事件であってもそういった裁判業務を受任しているという現実がございます。もちろん、会と、連合会としましては、その会員の負担が増えることについては良くないともちろん考えておりますけれども、実は、連合会におきましては、そういった少額の裁判手続を受任した会員に一定の報酬を助成するような制度を運用しておりまして、まだこれについては規模は小さいわけですが、そのようなことも今後検討していく必要があるのではないかというふうに考えていますし、また、IT化に関し予算が付くのであればそういったサポートの助成を士業者にも検討していただきたいとは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/50
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051・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
時間の関係がありますので、最後に杉山参考人に御質問させていただきたいと思います。
参考人の御説明の中で、いわゆるIT化を導入する上でITリテラシーを高めるということの必要性について言及をされました。ITリテラシーを高めるための方策等が課題だということをおっしゃったんですが、どうすれば、いわゆるITリテラシーを高めることにつながる有効な手段はどういうものだと参考人はお考えになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/51
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052・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) このITリテラシーというときに、その一般的なITリテラシーの問題もありますし、この裁判のIT化で必要なITリテラシーと双方あると思いますけれども、そもそも一般論として、先ほど来お話出てくるように、全ての国民の方がパソコンなどを使えているわけではなく、スマホ、スマートフォンは使えるけれどもパソコンの使い方分からないというような場合であれば、やっぱり学校教育とか、あるいは社会人とか御高齢の方などにIT機器の使い方についての研修とか教育の機会があった方がいいというのは一般論として言うことができるかと思います。
裁判のIT化に関しても、イギリスの例が実際にそうなんですけれども、やっぱりマニュアルみたいなものを配付をして、一般の人でもこのような手順に沿えば、法的な問題については分からないかもしれないけれども、システムについては使うことができるというような情報を提供していくということが重要であろうと思っております。
以上になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/52
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053・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
時間前ですが、私はこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/53
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054・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
今日は、三人の参考人の方々、お越しいただきましてありがとうございます。
まず、杉山参考人の方から質問をさせていただきたいと思います。
杉山参考人からの先ほどのお話から、海外では結構進んできたというふうな話でありました。もちろん、イギリスだけではなくて、アメリカもヨーロッパも、そしてまたシンガポールとか、そういったところも進んできたということなんですが、その研究の中で、もし分かれば教えていただきたいんですが、なぜ日本はこのIT化が遅れてきたんだというふうに思っておられるのか、もしそういうことを、何かあれば教えていただきたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/54
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055・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
実は、日本もIT化に対応する、日本の民事訴訟法もIT化に対応する、何といいますか、規定がないわけではなくて、音声だけ、音声とか、あるいはそれに映像を加えた形で例えば証人尋問とか争点整理に参加するという規定は置かれていたわけでありますけれども、ただ、電話会議とかテレビ会議というような一旦つくられた裁判所のシステムで運用がされ、その後、ちょっとコロナ禍でパソコンのウエブ会議などを使う例も見られるようになったんですけれども、その技術が変わっていくというもの、変わっていったことに実務上対応し切れなかったというその理由はちょっと分からず、予算が付かなかったのか、その辺りのことは分かりませんけれども、設備を整えるということができていなかったというのが特にそのウエブ会議なんかの利用については言えるかと思います。
オンライン申立てに関しましても、一応できるという規定はございますけれども、対応する規則というものができなかったというふうに伺っておりまして、その理由もちょっとよく分からないんですけれども、オンライン申立てをすることはできても、今の民事訴訟法上、オンライン申立ての規定はございますけれども、オンライン申立てをした後、それを一旦紙に出力するという規定になっていて、紙でその後交換をしたり審理をするということになっていますので、実際、非常に使い勝手が良くない規定であったのではなかろうかと思います。
規定ができたときには、何といいますか、例えば電子メールなりシステムで申立てがあって、それをプリントアウトするというのが当たり前の時代だったかもしれませんけれども、時代がかなり変わりまして、オンラインで申立てがされて、それをスクリーンで見ると、出されたデータもそのデータそのものを見るというような、技術が変わってきたところにちょっと法律が追い付いていかなかったというところもあり、なかなか日本ではオンライン、まあIT化が進まなかったのではないかとは思っています。
済みません、これぐらいのことしか分かりませんけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/55
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056・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
実は国会もオンライン化がなかなか遅れておりまして、今日は杉山参考人がパソコン持ち込んでおられますけれども、これ実はこの四月から持ち込めるようになったところでございまして、こういったところもそういったことに影響しているのかなと少し思った次第であります。
杉山参考人にもう一点、イギリスのことがお詳しいということなんですけれども、今回の日本の制度とイギリスの制度と比べたときに、まだまだこういったところが日本では不十分ですよとか、そういったところがあれば、また違いとか、あれば教えていただきたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/56
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057・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) ありがとうございます。
オンライン申立てをすることができる制度をつくり、それを、何といいますか、特定の裁判所だけじゃなくて日本全国で一気に裁判所で取り入れようとするところは、実はイギリスよりも進んだ制度をつくろうとしていると思いますし、代理人の弁護士などに義務付けをするという点、ここも同じであるところになります。
さらに、日本の方が進んでいるのは、まだイギリスの方では送達は基本的に当事者が郵便でするというのが原則になっているのを、システムで送達ができるということを今回の法律案に入れておりますので、もう少し、何といいますか、利用者にとっては使いやすい制度になるということで、実はイギリスの制度よりもう少し進んだところになっているかと思います。
ただ、先ほども申し上げましたように、やっぱり本人、本人といいますか、ITに疎いような、しかも本人訴訟に対するサポートというものがやっぱりイギリスかなり手厚いところがありまして、ここはやっぱり日本がこのIT化を進めるに当たっての大きな課題であろうというふうには認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/57
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058・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
では、小澤参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
小澤参考人から先ほどお話がありました、簡易裁判所の九割以上の事件が本人訴訟の当事者が関与しているというふうなお話でありました。本人の訴訟がこんなにも多いのかというふうに改めて思いましたけれども、司法書士さんを活用することによって迅速にできるんだというお話もありましたが、そのスピードだけではなくてほかにももっとメリットがあるのではないのかというふうに思ったりもするんですが、その点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/58
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059・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
簡易裁判所における本人訴訟率については資料でお示しさせていただいたとおりです。簡易裁判所におけるIT化が進むことによってその御本人が受けるメリットは何かということだと思いますけれども、そういった迅速化のほかに、例えばでありますけれども、訴えられた場合の被告が裁判所に出頭することなく裁判期日において主張ができるというようなことも当然考えられますし、その他、一般で言われているようなメリットは幾つかあるというふうに理解しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/59
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060・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
もう一点、小澤参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
かなり、先ほどから、国の方でもそのサポート体制をというようなお話がありました。どのようなサポート体制、具体的に教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/60
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061・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
まず、これにつきましては、先ほどもお話をした点ではございますけれども、まず、裁判所におけるサポート体制というのも当然重要だとは思っていますけれども、やはりそれが、裁判所にその負担を過度に負わせることによってその裁判所の負担が大きくなり、その裁判の迅速化にも影響が出てくると、こういうことになってはいけませんので、それゆえ、私どもは士業者の活用ということを提案をしているわけでございます。
一方、やはり一つ重要なのは、法律扶助、法テラス、法テラスですね、法テラスにおける援助が、費用面、そしてITサポートというところでも活用することが一つ肝になるのではないかというふうに理解をしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/61
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062・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
続きまして、国府参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕
国府参考人は、この当事者申出の期間がこれ半年ということで限定されることについて反対だという御意見でございました。ただ、確かに言われることも分かるようなところもあるのですが、ただやはり、当事者同士がやはり半年でもいいというふうに思っていて、でもやっぱり、やったけれども、やっぱりもうちょっとしっかりと議論を尽くし、審議を尽くして長くした方がいいなと思ったときには、これは、手続は開始した後であっても、期間の限定のない通常の手続の審理の方に移行することができるということで、であれば、率直に私も問題がないのではないのかなというふうに思ったりするわけでありますが、この点についてもう少し、いや、やっぱりこういうところが問題なんだというところをもう少し教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/62
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063・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
今、東委員御指摘の点は皆さんよく言われることなんですが、通常訴訟に移行するからリスクが大きく減少できたというのが法務省の説明で、なるほど、そういうことをしなければもっとリスクは高かったなというのは、そのとおり、分かります。
ただ、問題は、通常訴訟に移行する制度にしたから、手当てできたからいいんだというんだけれども、その結果、この制度の目的だと言われていた期間の予測が高まると言われることは損ねてしまうわけですよね。そうすると、そういった制度にはやっぱりゆがみがあるのではないのかというふうに思っています。
それから、さっきも申し上げたことですが、当事者はこれでいいと思っていたけど、大きな見込み違いだったということに途中で気付くこともあります。そんなときに通常訴訟に移行する、かえって期間が長引くという、そういうことですね。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕
それからもう一つは、通常訴訟に移行したいというふうに言ったときに、我々はやはり裁判所の顔色をいつも見ているわけですよね。裁判官はこの事件についてどういう心証を持っているだろうか。というのは、裁判官が全ての判断権者ですので、裁判官に逆らうことはできないというのがあって、最近の裁判の傾向というのは、例えば証人尋問で証人申請を五人しました、だけど裁判官は、AさんとBさんは本件の争点とは直接関係ないからもう採用しませんよと、だから、もう原告本人と被告本人、この二人だけ話聞けばいいんじゃないですかというふうなことを言われたりすると、それでも裁判官に異議を出しても、これは裁判官の裁量ということに、最終的に証拠の採否は裁判官の裁量になりますので、そこは覆りません。そんなふうに、なかなか訴訟の進行に対して裁判官に異議もきちっと言えないままに裁判が行われている現実があるという中で、異議を言える機会があるからいいというんだけれども、そういったことは実際きちっと機能するかどうかもちょっと不安だというのが私の持っている懸念です。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/63
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064・東徹
○東徹君 ありがとうございます。
あと、杉山参考人にもう一点お聞きさせていただきたいと思います。
イギリスの方ではもうIT化が進んでいて、ITで訴訟をするというふうなことになって、相手側がパソコンを持っていないとか、どういう訴状が届いているのか分からないとかいったときには、イギリスではそういった場合は郵送で送っているのかとか、その点について御存じでしたら教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/64
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065・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
イギリスは試験をしながらやっていますので、もしかしたら今現在は違うかもしれませんけれども、基本的に、相手方が紙で、要するにシステムを使えない場合にやっぱり紙で郵送して、紙でやり取りをしているというところで、実は紙とオンラインがちょっと混在しているというのが現状のようではあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/65
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066・東徹
○東徹君 混在ということで、多いのはやっぱりオンラインでの方が多いんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/66
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067・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
基本的に弁護士が義務化でありますので、ほとんどはオンラインでありまして、そこから漏れた人で、どうしてもオンラインのシステムが使えないという人のみ書類で対応ということになりますし、また、そのオンラインのシステムも特定の裁判所でしかまだ採用はされていないので、例えばほかの裁判所に移送されたときには、そこでまた書面にプリントアウトすることで作業が必要になったりするというところで、その点でも少しちょっと混乱は実はあるという印象を抱いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/67
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068・東徹
○東徹君 ありがとうございました。
以上で終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/68
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069・山添拓
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
国府参考人に、法定審理期間訴訟手続、いわゆる期間限定裁判について伺います。
立法事実の検討ができていないという御指摘がありました。確かに、当事者双方の主張や証拠が明らかで、争点が絞られた事案であれば、あらかじめ期間を定めなくても迅速な審理というのは可能だと思います。審理計画の仕組みも指摘されたようにあります。予測可能性を高めるというわけですが、これも先ほど参考人お話あったように、途中で通常訴訟に戻る、その余地も大きい制度ですので、必ず期間内に判決だと約束されているわけでもないものだと思います。
それでもなお審理期間を法定するこのような仕組みが盛り込まれることになった、その狙いはどこにあると参考人はお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/69
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070・国府泰道
○参考人(国府泰道君) お答えいたします。
先ほど有田委員の御質問にもあったかと思うんですが、そういういろんな問題がありながらなぜ出てきたんだろうかということなんですが、国民が裁判に対して長いなという不満を持つのは、僕は、やっぱり一年ぐらいで終わってほしい裁判が一年半、二年掛かるという、そういう普通の裁判であって、本件で元々対象にしているのは、簡単で、争点も余りない簡潔な事件に六か月を適用しようというものなわけで、国民が求めているもっとスピーディーにやってほしいというものとこの制度でもって対象にしようとしている事件では違うんではないかというふうに僕は感じております。
だけど、一年から二年掛かるような事件を更にスピードアップしようというと、さっきも申し上げたように、裁判所の人的設備、物的設備も拡充しなきゃならないし、それから証拠収集の仕方ももっと迅速で、訴訟の当初からできるような制度をつくらなきゃならないという、大変、どういうんですか、しっかりした議論をしなきゃならないし、困難の伴う作業なわけですね。ですから、今直ちに、すぐにその方策、対処方針案が立つというものではない。
そんな中で、恐らくですよ、例えば役人的発想ではないかと思うんだけれども、何とかスピーディーに裁判できるような方策を考えろというふうに言われたときに、そういう本来やらないかぬことは大変だからやれない、だけど、この六か月という短縮したスピーディーなものをつくれば、これはそれなりに頑張っているというふうに見てもらえる。労働審判とか少額訴訟もありますので。だから、僕ははっきり言って、そういう裁判所なり法務省なりのポーズでこんな制度をつくっているんじゃないかと、余り実効性はない、役に立たない制度だというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/70
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071・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。
続いても国府参考人に伺いたいのですが、適切な訴訟指揮がされて主張、立証がスムーズになされれば、裁判の早期終結は可能だと思います。しかし、それはあくまで個別事件の運用の問題であって、制度として期間を定めることに意味があるというのが法務省のこの間の国会での説明です。
これは、私は、裁判所に対しては期限を切って判決を書かせて事件処理を促す、当事者に対しても期間を区切ることで主張、立証を集中的に行う、急がせると、事件の早期処理ですね、としてはそういう意向は示したものだと思うんですが、これ、判決するのに機が熟したときという民事訴訟の原則的な要請よりも期間や期限を優先する制度ということになると思います。その下で当事者の主張、立証はどのように変わることが予想されるでしょうか。
また、代理人が付くケースが想定されていますけれども、当事者と代理人との関係にどのような変化があり得るとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/71
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072・国府泰道
○参考人(国府泰道君) まず第一点の主張、立証がどのように変わっていくかなんですが、今現在でも訴訟の迅速化というのはかなり裁判所は意識されております。我々弁護士も、そういった中で迅速な裁判のために取り組んでいます。例えば、次回、準備書面の提出期限は何月何日までというふうなことも必ず各弁論準備期日で定めたりもしています。そういう意味では、当事者も裁判所もみんなが迅速化のために取り組んできている、そういう意識はあるわけですね。
ですから、それで、そんな中で、例えば鑑定が減っている、検証が減っている、外部への文書の取り寄せや調査嘱託が減っているなど、それから先ほど述べたように証人尋問の数も減っているなど、どんどん省力化の方向に進んでいる中で、今現在でももう既にやっているわけですね。これが法定の期間が六か月というふうに制限されてしまうと、もうそれまでにやらなきゃならなくなるということで、今の訴訟迅速化の流れを更に拍車を掛けると。それから、期間が来たら、はい、これでもうおしまいというふうになってしまうというのはやはりとんでもないことだと考えています。
それから、第二点もよろしいですか。当事者と代理人の関係にそれがどう影響を及ぼすかなんですが、当事者にとっては、やはり丁寧に調べてほしかったという、裁判終わってから裁判を振り返ったときにまた大変な不満が残ってくると思うんですよね。それは弁護士に対する不満であったり裁判所に対する不満であったり、そういったものになると思います。
今、現状でも、利用者調査の結果、裁判を利用した人たちは、裁判に対する不満を持っている人たちが八割ぐらいいるんですよね。それは、本当はもっと丁寧に当事者の言い分聞いてもらえると思っていたのに聞いてもらえなかったという不満が結構大きいです。ですから、私はこういう意見を述べております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/72
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073・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。
杉山参考人と国府参考人に伺いたいと思います。
期間限定裁判による判決は、判決において判断すべき事項を当事者双方と確認し、その事項のみを記載すれば足りるとされています。これ、法務省は簡略化ではないんだと説明していますが、通常の判決よりは部分的で簡略なものになることが想定されます。
こうした判決の、言わばフルのものとは異なる類型が新たにつくられることによる当該事件の当事者への影響と、それから、こうした判決が積み重なることで、将来その判決を先例とする事件が生じた際の懸念される影響などについて御意見がありましたらお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/73
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074・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) では、まず杉山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/74
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075・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
確かに、この法定審理期間制度の場合には、判決の書き方も従来のものとは違うものを想定しているようでありますが、そもそも、何といいます、当事者間である程度争点がほぼ自主的に整理ができていると、そのようなケースを想定して、逆にそういう場合でないとこういう判決は書けないのであろうというふうには理解をしているところです。
判決の書き方自体も昔の旧様式から新様式に変わっておりまして、事案も、従来の要件事実に沿って書くタイプのものから、事実の概要から始めるという判決の書き方にもなっておりまして、それによって何か将来判例としての価値がなくなるとか、そういう問題は大きく問題になっていないというふうには理解をしておりまして、繰り返しになりますけど、事案の概要を、何といいますか、当事者が双方できちんと争点整理をして作っていくというタイプの判決になっていくのであろうというふうに理解をしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/75
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076・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 今の点ですが、これは法制審の議論でも終盤になって突然出てきたもので、私たちは大変驚きました。
判決というのは、異議を申し立てたり控訴をしたりするときに、その判決に書かれていることに対して具体的にこういう不服があるんだということを書いて控訴、上告をしていったりするわけですね。ところが、それが簡略化されるということになると、実際にこの判決に対してどういう不服を書けばいいのかということについても不安が残ります。それから、そもそもこの手続というのは、事案の簡略な、簡潔な事件に対象、対応させようということなんですから、判決というのも普通の判決どおりで短期間でできるはずなんですよね。
今、民事訴訟法の現行法では、判決は弁論終結してから二か月以内に言渡しをするというふうになっています。これを一か月に短縮化したわけですけどね。これは既に簡単な事件だったら一か月でも書けるはずなわけで、殊更判決の書き方を改めるということは、何でこんなことが出てきたのかと、本当に驚きに堪えません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/76
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077・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。
もう一問、杉山参考人と国府参考人に伺います。
期間限定裁判による判決に対しては異議申立てができます。それにより口頭弁論終結前の状態に戻ることとされ、同じ裁判官がもう一度判決を行うことになります。しかし、この裁判官は、事件について既に心証を形成し、判決まで下している裁判官です。敗訴した当事者にとっては、一度敗訴判決を書いた裁判官に逆転判決を期待すると、これは難しいんではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/77
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078・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございました。
異議の申立てがされてという場合だと、通常は、何といいますか、新しい証拠とか重要な証拠が実はあったというようなケースなのではないかというふうに理解をしておりまして、そうであれば当事者の申出で通常訴訟に移行したような場合と同じで、裁判官としては新しく出た証拠などを基礎に考えたりすることになるのではないかというふうには考えているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/78
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079・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 今委員の御指摘のとおりの問題があろうかと思っております。
本件は、判決が出たらそれに対して異議の申立てをできるという手続で、同じ裁判官がその後も引き続き審理するんですが、これに類似したものとして、私の経験でいうと、仮処分決定が出された、その仮処分決定に対して異議申立てができる、これ保全異議手続なわけですけど、この保全異議の申立てをしたときに、僕の経験では、例えば和歌山とか小さな裁判所では民事の部が一つしかありません。そうすると、仮処分を出した裁判官もそこの部の一人の裁判官。それが保全異議の申立てをしたら今度三人の合議に変わるということですよね。そうすると、仮処分を出したのが、三人の合議の裁判長が単独で仮処分決定出すと、もうその保全異議はその地裁では通りません。ですから、僕の場合は大阪高裁でその地裁の保全異議決定の取消しを求めて逆転させることができたという、そういう経験もあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/79
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080・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。
最後に、杉山参考人、小澤参考人に伺いたいのですが、私の周囲の弁護士などに聞いても、最近は本当に裁判の期日が入りにくいという話があります。特に離婚や相続、家事事件の調停で二か月待たされるということもざらだと。裁判官や調停員の日程、裁判所のスペースの問題もあろうかと思います。国府参考人から先ほど言及があったんですが、やっぱり裁判の迅速化に当たっても、裁判所の人的、物的体制をより充実させる、それによって改善するところは非常に大きいんじゃないかと。先ほど杉山参考人のイギリスのあのお話の中でも、裁判所の中に無料相談の弁護士がいたりパソコンが使えたりと。
そういう意味で、人的、物的体制の拡充についてお二人の御意見も伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/80
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081・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問と御指摘ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、実は、裁判が遅延する原因って様々なところがありまして、その一つに期日が入りにくい、裁判所の施設の設備の問題というのもあるというのは承知しているところであります。ウエブというかITツールを使うことによって従来より期日が入りやすくはなるであろうというふうには期待はしているところでありますが、ただ他方で、それも裁判所とか当事者、代理人がどれほどの充実したIT環境にあるかに依存するというふうには思っているところです。
そのため、裁判所でも、例えばウエブ会議を使えるような部屋を多めに設置するとか、あるいは先生おっしゃるその物的な設備、さらには人員を増やす、サポートする人を増やすというようなことはやっぱり併せて検討していく必要はあるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/81
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082・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、その裁判所の人的、様々な拡充ですかね、当然必要かと思っています。
実は、私、アメリカに視察に行ったときには、シアトルとサンフランスシスコでしたが、セルフヘルプセンターという、そういうところが、弁護士さんであるとかパラリーガルが家事事件の書類の作成をサポートしておりました。そして、いわゆる貧困層で弁護士さんを雇えないような方々のサポートをしておりました。
ですので、そういったことも非常に参考になったわけでありますが、これは繰り返しになりますけれども、裁判所の充実ももちろん必要でありますが、喫緊の課題としては士業者の活用がこのITサポート、IT化を成功させる肝だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/82
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083・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/83
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084・高良鉄美
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
今日は七十年前に沖縄が分離されたという四・二八の日ですけれども、その講和条約の中に、立法、行政、司法、この司法までアメリカが施政権の、この一部を又は全部を持つという、こういう状況で、沖縄の司法は、実は琉球政府の裁判所とそれから米国民政府の裁判所がありまして、沖縄の中の民事事件、刑事事件は基本的にこの裁判所だったんですね。で、弁護士もそこにいると。ただ、そのアメリカの利益に関わる場合には移送されると、沖縄の人同士の民事裁判であっても移送されるというのがあって、やっぱりこれ考えますと、刑事事件は全く、まあ今回民事のあれですけれども、刑事事件は全く関われないということなんですよ。
だから、そういうことになると、今、憲法から分離されたわけで、憲法の三十一条の適正手続というのがありますが、この適正手続の次に、今日問題になっている裁判を受ける権利というのがあるわけですね。そうすると、裁判を受ける権利というのは、先ほどやっぱりあったように、迅速性というのは当然公正な中でやる場合に必要だと思います。IT化の問題もこの迅速性にはかなり関わりを持っているだろうと私は思います。
ただ、やっぱり幾つか指摘の中で、迅速性だけではないだろうと、一つの要素ではあるかもしれないけれども、迅速性だけがこの裁判を受ける権利の保障に役に立つのかどうかということがあると思いますので、私、今日お聞きして、本当に三名の参考人の方々、やっぱりこの民事訴訟の中において実際の裁判でどういうふうになっていくのか、非常に参考になりました。そういう中で、私が、今あっているこのIT化については基本はどなたも反対されていないんじゃないかなと、基本はですよ。ただ、この期間限定をする審理期間ですね、これの六か月というのがまず入ると、しかし、これは合意によってということで途中で通常の方に戻ると。この辺が問題があるんじゃないかということでは、幾つか杉山参考人もちょっと述べましたし、それから国府参考人もそれは随分述べられました。
そこで、やっぱりまずITの問題からちょっとお聞きしたいということで、これは小澤参考人にお伺いしたいと思います。
この裁判のIT化というのは、ずっと本人訴訟のお話をされていましたので、裁判所が本人確認をするということが大切だと思うんですけれども、この士業者の方々は依頼者の本人確認をどの程度されているのかな、どのような感じですかねということで、ちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/84
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085・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 先生、御質問ありがとうございます。
先生が冒頭おっしゃられた、迅速性も大事だけれども、国民が裁判を受ける権利、これを保障することがより大切だという御指摘についても全く共感するものでして、司法書士は今年百五十周年を迎えるのですが、制度発足以来、司法代書人と言われてきた頃から、訴状、準備書面等の作成を通じて国民の裁判を受ける権利を保障してきたというふうに自負しているところでございます。
そして、今先生からの御質問がございました本人確認の点ですが、司法書士が深く関わる不動産登記業務につきましては、成り済ましを未然に防ぐために、当連合会、そして司法書士会としても本人確認を厳格に行うことを指導しておりまして、ふだんよりそういった研修なども実施をさせていただいているところでありますし、各司法書士においても職責として執務の現場において本人確認を厳格に行っているところでございますので、このIT化後の民事裁判業務についても同様に成り済ましなどを防止する本人確認を厳格に行っていくことになろうかというふうに理解しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/85
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086・高良鉄美
○高良鉄美君 本人確認、非常に大事な、入口としてもう大事なことだと思いますけれども。
今日、小澤参考人のこの資料で、いろんな取組が司法書士連合会のありますけれども、写真があって、先ほど宇宙からというのが、お話がありましたけれども、こういう形で本人訴訟が多いということで、一般の人がどれだけ利用するかということが肝要だと思うんですけれども、どうすれば本人がインターネットを用いた訴えに、まあ、なじむと言ったら変ですけれども、こういう、どういうふうにしたら本人が訴えをされてくるのかなというふうに思うんですが、そこら辺いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/86
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087・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、やはりこの本人訴訟の多い我が国においては、一般の方がどれだけ利用するかというところが肝になるということは、従前、繰り返し申し述べてきたところであります。
やはり、当事者でも使いやすい事件管理システムのいわゆるユーザーインターフェースの問題、これから構築されるそのシステムの仕様によって大きく左右されるところはあるのだろうと思っております。また、ITを利用した際の経済的なインセンティブというのも一つ、それを大きくすれば利用する方が増えるのではないかというふうに思っているところでもございます。また、当事者であってもウエブ会議を積極的に活用できるような運用、この三つが重要ではないかというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/87
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088・高良鉄美
○高良鉄美君 ありがとうございます。
この辺りの利用促進をしっかり、今回お話を聞くと国のサポートも非常に重要だということをお伺いしました。ありがとうございました。
先ほどちょっと問題にしたこの法定の審理期間の訴訟手続、この関連について、ちょっと先ほどから国府参考人もその点を少しお話ししましたし、日弁連の方からも問題点が多く指摘されておりますが、この辺についてちょっと問題があるのかなというふうに私も考えているわけですけれども、この訴訟期間の手続について、立法事実のお話が先ほどもありましたけれども、法務省の方では、やはりこの目的というんでしょうかね、裁判の迅速化と、そして期間の予測可能性を高めるための制度というふうに説明をされているわけですけれども、これについては杉山参考人はどのように御意見がありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/88
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089・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 期間制限をすることに対してどのように評価するかということでよろしいでしょうか。
裁判がそもそも遅い原因というのは様々あるということは先ほど国府参考人からも御指摘があったかと思いますけれども、一つはその期日がそもそも入りにくいということであれば、それは裁判所側でウエブ会議なんかも導入しながら進めていくという必要性もあると思いますし、あと、実は、今のこの民事訴訟法、平成八年に改正されて平成十年に施行されたわけなんですが、そのときの理念というのは、それまではじっくり長く、五月雨式と呼んでいるんですけれども、期日を点々と入れて、当事者はこのときに少し主張をして、でも、また新しい証拠が出たからということで、いわゆるだらだらと審理をしていたと。その場合には、結局時間が掛かっているんだけれども、充実した審理になるかというと必ずしもそうではないと。
したがって、なるべく当事者も主体になりながら、きちんと何が重要な問題であるのか事前に整理をして、一気に証拠調べを集中してすると。それこそが、期間は短くなるし、さらに、何といいますか、より真実に近づくといいますか、裁判になるんだという発想に基づいて民事訴訟法というものが今できているわけなのですが、その当時のこの改正の何というか熱意というものも少し下がってきたのもあるかもしれませんし、事実が複雑になっているということもあるかと思いますが、実際に、本来集中して審理しなければならないのが、何といいますか、だらだらと昔の民事訴訟みたいに、五月雨式といいますか、ちゃんと証拠を開示せずに少しずつ開示するとか、一旦争点整理の手続に来るんだけれども、分からないので持ち帰るとか、そういう形で実は審理が長引いているというようなお話、調べたりするとそのような指摘も見られるところであります。
そういうものについては、やはり、何といいますか、本来であれば、本来この民事訴訟法が目指したところの、集中的に当事者が主体となって争点を整理をして、裁判所には判断してほしいところを集中して迅速に判断してもらう、これこそが正しいといいますか、当事者が納得し、かつ充実した裁判につながるんだという発想を、何といいますか、期間を制限するとか、そこだけに、何といいますか、期間を制限することがいいかどうかというところに、何といいますか、批判の目が向いているところでありますが、元々のこの今の民事訴訟法の理念をより、何といいますか、実現するといいますか、より目に見える形で実現するというのがこの制度であろうと思います。裁判所側の努力もありますし、また当事者の方でも十分に事前にちゃんと準備をして裁判に臨むということができるのであれば実現できる制度であろうかと思っておりますし、迅速イコール拙速という発想に基づく制度ではないというのは私が認識しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/89
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090・高良鉄美
○高良鉄美君 ありがとうございました。
今長期化している原因とかいろいろそういうものもあるだろうと、改善余地もということも先ほどもありましたが、実は私、裁判所定員法の問題で反対したんです。減員されていると、事務職も含めて職員、何でこんな毎年減っていくんだと。これ、今ちょうどお話ありましたけれども、先ほどの迅速化、集中審理をして整理していくということも重要だと思いますし、また、受皿としての裁判所も、やっぱり施設だけじゃなくて人員をきちんと充実させるということ、とてもこの迅速化に役立つんじゃないかなと私は思っているんですね。それでちょっとお聞きして、まあもう一つの要素としては、やっぱりこの施設、司法権の充実というのが大事かなとちょっと思った次第でした。ありがとうございました。
国府参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど来ずっとリスクというお話をされていますけれども、このリスクについてももう少しお聞かせいただけますでしょうか。リスクの問題ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/90
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091・国府泰道
○参考人(国府泰道君) お答えします。
先ほどもちょっと申し上げましたように、当事者の方というのは、裁判所へ行けば、自分の言っていることよく理解してもらえて、自分は勝つものだと思っている方が多いですね。だけど、実際の裁判は、さっきも申し上げたように、非常に迅速、スピーディーにやる傾向が強まっておりまして、なかなか言い分をやっぱり聞いていただけなかったという不満があります。
それと、もし期間に対する不満があるとしたら、やっぱり争点整理のやり方の問題もあろうかと思うんですね。今先生がおっしゃったように、裁判官の人員の問題なわけですけども、一人の裁判官が手持ち事件が二百件もあって、それで毎月四十件も新件が入ってくるという中で、一か月実質稼働二十日間の中でどれだけの事件がこなせるかというのがあるんですね。
そうすると、争点整理手続というふうに言っても、裁判官自身がその事件について十分頭の中に入っていないということになれば、原告代理人、被告代理人、裁判官の三者が膝を突き合わせて議論しようにも議論ができません。そうすると、裁判官は、はい、本日は原告から準備書面が出ましたので、次回は被告、これに対する何か反論があれば反論してくれますかだけで弁論準備は終わってしまうわけですね。
杉山先生がさっきおっしゃったように、平成八年改正で弁論準備の活性化というふうに言われてきているわけですが、そこでは実質的な期待された活性化が実現できていないというのも、やはり裁判官の事件が過重負担になっているということが影響しているのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/91
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092・高良鉄美
○高良鉄美君 ありがとうございます。
今裁判官のお仕事の話にも関わっているということがありましたけれども、裁判官が例えばこの審理期間を六か月の限定に、そうしましょうというような、アドバイスといったら変ですけれども、何かそういう方向でお話を法廷の中で進めていくようなことというのは、国府参考人の立場から、現場で一緒に裁判の中でやっている方として、この辺はどういう御意見があるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/92
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093・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 高良君、時間が。
じゃ、国府参考人、短めにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/93
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094・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 御質問ありがとうございます。
確かに、その裁判官からこの手続やりませんかと言われると、当事者としてはやっぱりそれに乗りやすいという傾向があります。そういうこともあるので、元々は、それからこういう手続使うことは慎重でないといけないというので、書面による、書面によって申入れをするというふうになっているんですが、実は裁判期日においては当事者は同意をするだけでいいということになっているので、裁判官から促しがあって当事者が同意をしたら、この手続に移行してしまいます。そういう意味では、慎重な検討がやられない、また嫌だとは言いにくい、訴訟の迅速な進行に協力してほしいという裁判所の促しがあれば、なかなか当事者としては、当事者代理人としては断りにくい問題もあるのではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/94
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095・高良鉄美
○高良鉄美君 もう時間になりましたので。
大変参考になりました。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/95
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096・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
それぞれの御専門の立場からの参考人御意見、ありがとうございました。大変参考になりました。
まず、杉山委員に二点お伺いしたいと思います。
一点は、かなり総論的なことなんですけど、私、アメリカに留学をし、またアメリカで特に環境裁判とかあるいは家事裁判などを勉強したことがありまして、どちらかというと、日本の司法制度と比べるとアメリカの裁判官はより独立的で、それで日本の裁判官が官僚制的なところで、前例踏襲、そして政府・与党の方針には反論しない、そういう司法の判断が多いと思うんですけれども、その辺り、アメリカの司法制度も研究、勉強していらして、裁判官の独立を前提とした場合、紛争解決処理機関として、裁判所は、日本の裁判所はどんな地位を占めている、あるいは改善方法があるかどうか、少し御意見をいただけたら有り難いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/96
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097・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
大変難しい問題でありますのですぐにお答えできるかどうか分かりませんけれども、一応日本の裁判官は官僚制であって、アメリカは選任方法が違うという点では違いますけれども、一応裁判官の独立という点は憲法上は保障されているわけでありまして、基本的には個々の裁判に当たって裁判官は自身が考えることに基づいて法律を適用しているというふうには理解をしているところではあります。したがって、官僚制でありますけれども、その点は保障がされているのではないかというふうには理解をしているところであります。これでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/97
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098・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 結構です、はい、そういう御理解で。ありがとうございます。
今のはかなり抽象的な総論なんですけど、二点目は、まさに今回のIT化とそれから期間限定裁判ということに関わって具体的にお伺いしたいんですが、期間限定裁判の問題は、私は、裁判の被告、原告なり、当事者の社会関係によって大きく違うんじゃないのかと。
例えば、消費者問題でしたら相手は大企業だったり、あるいは公害訴訟の問題でしたら、これも相手が大企業だったり、あるいは労働問題だったら、またこれも相手が大企業だったり、あるいは災害の被害とか、あるいは原発問題などですと相手が国家という、それこそ大きな組織だったり、そういうところでは期間限定というのはかなり問題で、多分そういう方向は選ばれないと思うんですけれども、私は専ら子供の幸せを実現するために日本の家族制度はどうあるべきかということを、ずっともうここ、三年目になるんですが、一貫して考えさせていただいております。
そうすると、夫と妻が離婚訴訟などのときには、どちらかというと子供はそこに声を上げられないので、夫と妻が、しかも日本の場合には離婚のとき、単独親権なので子供を奪い合ってしまうというような構造。そうすると、夫と妻の持っているリソースというのは、消費者と大企業と、あるいは国家と住民というほどアンバランスではないんですね。そういう場合には、できるだけ速やかに、しかも子供のためには、ちゃんとオンラインででも話ができて、そして期日が短縮できると。子供は日々成長しますので、両親がずっと長く争っていることは子供にとって良くない。まあ、両親が争うこと自身を子供の虐待というような判断もありますので、そういう状況の中で、杉山さんに、IT化なり、あるいは期間限定というのは、こういう家事事件、家族事件などには有利じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/98
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099・杉山悦子
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
まず、この法定の期間制限というものは、基本的にはBツーBといいますか、企業間の紛争などを想定しているのではないかというふうに理解をしておりまして、つまり、裁判所に来る前にある程度当事者間で自主的に対等な立場で話合いなんかをして、何が争点で何が争点でないのかというのをきちんと理解できるような人たちが使う、もちろんそれ以外にも使うことはあると思いますけれども、特に経済界からのニーズというのはそういうところにあるかと思いまして、実際にも、当事者間でアンバランスがある場合にはこの制度を使うのは良くないということで、消費者契約に関する訴えとか労働紛争はきちんとこの手続の対象外であるということにはなっているところです。
家事事件、子供の幸せの問題に関しましては、家族法、民法の話として法制審議会でも今議論がされているところでありますし、手続という関係になりますと、家事事件手続、調停とか審判とかそちらになっていきますので、今回は、民事訴訟法といいまして、財産権に関する紛争に関する手続でIT化をまず進めるという話でありますが、その後引き続いて、その子供が関わるような紛争についてIT化はどこまで進めるのが適当であるのかということの審議が進んでいくことになりますので、基本的には今回の法律案をベースにいかに応用できるのか、修正する必要性があるのかというのを今後考えていくということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/99
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100・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます、御丁寧に。
次に、小澤参考人にお伺いしたいんですが、本当に司法書士の皆さん、全国で活躍していただきまして、ありがとうございます。
今日も地図を出していただいていますけれども、このIT化が、それぞれの地域、本当に私は、自治体の経営を担っていた立場から、同じ県内でも本当に山間部と大都会と違うと、全国で大変地域差が大きいと思うんですが、こちらでこのオンライン利用率を高める努力をいろいろしていただいていますけれども、この地方による違い、あるいは男女による違い、年齢による違い、この三つで何か傾向が見えるでしょうか。それによってどう対策を立てたらいいかということの御意見いただけたら幸いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/100
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101・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問どうもありがとうございます。
資料を付けさせていただいたこの司法書士事務所の点在状況、御覧になっていただければお分かりになると思いますけれども、司法書士は全国に津々浦々に存在しているというところがございまして、むしろ私は、IT化が行われることによっていわゆる都市の一極集中から離れることができるというふうな、そんなメリットも私はあると思っていまして、一方、やはり依頼者側から考えますと、やはり顔が見える形での依頼を望む依頼人が多うございますので、ですので、そういう意味でいいますと、やはり地方にいる司法書士、弁護士さんもそうでしょうけれども、こそがこのIT化の、何というんですかね、恩恵をより享受できるのではないかなどというふうにも考えているところでございます。
回答になったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/101
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102・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
本人訴訟の場合に、女性の参画は少ないかもしれないんですが、このIT利用で、現場で見ていらして、男女差というのはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/102
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103・小澤吉徳
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
私の、申し訳ございませんが、本人訴訟の当事者の男女比率までは存じ上げてはないのですけれども、私、地元静岡なので、静岡簡易裁判所に実際自分の事件として出廷することは間々あるわけでございますが、そこで傍聴している限りにおいて、男性ばかりとか女性ばかりということではなく、まあいずれの当事者もたくさんいらっしゃるなと、そういう印象ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/103
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104・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
これからますます財産関係なり女性が関わってくる領域でもございますので、また現場でのサポートをよろしくお願いいたします。
国府参考人に次にお伺いしたいんですが、本日の御主張、極めてよく分かりました。全国の弁護士会あるいは社説などでこの期間限定裁判への懸念を社会的にも示されているということの御主張はよく理解をできました。
その上で、先ほど杉山参考人にお伺いしたことの続きなんですが、それぞれ原告、被告なり、あるいは関係者が、社会的リソースなりあるいは法的リソースがアンバランスの場合には、もちろんこの期間限定というのは問題だろうと思いますが、家族法の問題は特に、それぞれそんなにアンバランスではない。また、家族の問題、御存じのように一ケースごとに本当に情念が関わってくるので、長引けば幾らでも長引かせることができる。しかし、例えば子供が関わる離婚などですと、あるいはDVなどが関わってくると、これは短期間で早く結論を出してあげる方が家族全体の福祉の向上になるだろうと私は思っておりまして、ですから、DVが絡む高葛藤の離婚問題などは、このIT化と短期の期間限定というのは、選択肢として、当人たちが選べば選択肢としてはメリットがあるんじゃないのかと思うんですが、その辺について、三十八年弁護士をやっていらしたという御経験から、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/104
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105・国府泰道
○参考人(国府泰道君) 私の問題意識は、嘉田委員がおっしゃったのには同意できます。というのは、我々は、こういう期間限定訴訟を一般的な訴訟制度として盛り込むことが問題だというふうに申し上げています。ですから、個別事件類型ごとにそれに合った制度をつくっていくというのは御指摘のとおりだと思いますね。
例えば、労働審判についても、これは短期間で手続を終結するような仕組みがつくられております。労働審判については、問題があるという御意見もあるんだけど、労働者はいつまでも例えば未払給料が払われていないのは困る、生活がやっていけない、だから短期間でやってもらう制度は、完全に十分とは言えないけど、まあそこそここれは使い勝手がいいよねというのもあるわけですから、事案事案において適切な制度が組み立てられていくという意味で、嘉田委員がおっしゃったような家事事件について、こういう必要性があるからもっと簡易迅速な手続を考えようねというのは考え方です。
ですから、僕は、こういった手続については、今の民訴法改正の中で議論するんではなくて、別の場でしっかり議論をしていただきたいということで、私がこの手続に反対する立場と、嘉田委員が今おっしゃっている御意見とは矛盾するものではないというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/105
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106・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。大変端的な御意見いただきました。
もう時間ですので、以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/106
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107・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X00920220428/107
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