1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年五月二十四日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月十九日
辞任 補欠選任
山下 雄平君 進藤金日子君
山本 博司君 石川 博崇君
五月二十日
辞任 補欠選任
進藤金日子君 山下 雄平君
五月二十三日
辞任 補欠選任
山崎 正昭君 中西 哲君
五月二十四日
辞任 補欠選任
中西 哲君 山崎 正昭君
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出席者は左のとおり。
委員長 矢倉 克夫君
理 事
清水 真人君
高橋 克法君
有田 芳生君
安江 伸夫君
川合 孝典君
委 員
岡田 広君
加田 裕之君
中川 雅治君
中西 哲君
福岡 資麿君
森 まさこ君
山崎 正昭君
山下 雄平君
真山 勇一君
石川 博崇君
東 徹君
山添 拓君
高良 鉄美君
嘉田由紀子君
国務大臣
法務大臣 古川 禎久君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局家庭局長 手嶋あさみ君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
警察庁長官官房
審議官 森元 良幸君
警察庁刑事局長 大賀 眞一君
法務省大臣官房
政策立案総括審
議官 吉川 崇君
法務省民事局長 金子 修君
法務省刑事局長 川原 隆司君
法務省矯正局長 佐伯 紀男君
法務省保護局長 宮田 祐良君
法務省人権擁護
局長 松下 裕子君
出入国在留管理
庁次長 西山 卓爾君
外務省大臣官房
審議官 岡田 恵子君
外務省大臣官房
参事官 股野 元貞君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
法律の整理等に関する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/0
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001・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、山本博司君及び山崎正昭君が委員を辞任され、その補欠として石川博崇君及び中西哲君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/1
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002・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
刑法等の一部を改正する法律案外一案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁長官官房審議官森元良幸君外十名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/2
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003・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/3
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004・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
政府から順次趣旨説明を聴取いたします。
なお、刑法等の一部を改正する法律案は衆議院において修正議決されましたので、この修正部分につきましても併せて政府から説明を聴取いたします。古川法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/4
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005・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) まず、刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
新たな被害者を生まない安全、安心な社会を実現するためには、罪を犯した者の改善更生及び再犯防止を図ることが重要です。これまで国、地方公共団体、民間協力者が一体となって様々な取組を進めてきたこともあり、再犯者の人員は減少傾向にありますが、依然として刑法犯の検挙人員のうち五割近くを再犯者が占めています。
こうした状況を踏まえますと、罪を犯した者について、その特性に応じたきめ細やかな指導、支援を行うことができるようにするなど、その改善更生及び再犯防止に向けた処遇の充実を更に推進することが必要であると考えられます。
また、近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識も高まっていることに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であると考えられます。
そこで、この法律案は、罪を犯した者の施設内・社会内処遇をより一層充実させるため、刑法、刑事訴訟法、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、更生保護法その他の法律を改正し、所要の法整備を行うとともに、刑法を改正して侮辱罪の法定刑を引き上げようとするものであります。
この法律案の要点を申し上げます。
第一は、懲役及び禁錮を廃止し、これらに代わるものとして、拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとするとともに、再度の刑の全部の執行猶予の言渡しをすることができる対象者の範囲を拡大し、あわせて、猶予の期間内に更に犯した罪について公訴の提起がされている場合には、当該罪についての有罪判決の確定が猶予の期間の経過後となったときにおいても、猶予された当初の刑を執行することができることとするものであります。
第二は、資質及び環境の調査の結果に基づき受刑者ごとに定めるものとされている処遇要領について、入所後できる限り速やかに、矯正処遇の目標並びに作業、指導ごとの内容及び方法をできる限り具体的に記載して定めることとするほか、再び保護観察付全部執行猶予を言い渡された者については、少年鑑別所による鑑別を行うなどして再犯の要因を的確に把握し保護観察を実施することとするものであります。
第三は、刑事施設の長や保護観察所の長は、被害者等から申出があったときは、その心情等を聴取することとし、これを矯正処遇や保護観察に生かすこととするほか、被害者等から申出があったときに保護観察対象者に対して被害者等の心情等を伝達する現行法上の措置に加えて、受刑者に対しても被害者等の心情等を伝達することとするものであります。
第四は、侮辱罪の法定刑について、現行の拘留又は科料から、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に引き上げるものであります。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、刑法等の一部を改正する法律案は、衆議院において一部修正されており、その内容は、政府は、第一条の規定の施行後三年を経過したときは、同条の規定による改正後の刑法第二百三十一条の規定の施行の状況について、同条の規定がインターネット上の誹謗中傷に適切に対処することができているかどうか、表現の自由その他の自由に対する不当な制約になっていないかどうか等の観点から外部有識者を交えて検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることであります。
続いて、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴い、爆発物取締罰則等の関係法律の懲役及び禁錮を拘禁刑に改めるなど所要の整理等を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。
以上が、これら法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/5
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006・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 以上で両案の趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/6
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007・清水真人
○清水真人君 おはようございます。自由民主党の清水真人であります。
通告に従いまして、刑法等の一部を改正する法律案につきまして順次質疑をいたします。
ただいま趣旨説明があったところでありますけれども、まず刑法の一部を改正する法律案について、処遇を一層充実させ、立ち直りを後押しするための諸制度を導入することとしておるところでありますが、今回の提案をするに至った背景及び経緯につきまして大臣にお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/7
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008・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
新たな被害者を生まない安全、安心な社会を実現するためには、罪を犯した者の改善更生、再犯防止を図ることが重要であり、これまで官民を挙げて罪を犯した者の改善更生、再犯防止に取り組んでまいりました。こうした取組により再犯者の人員は減少傾向にございますが、それを上回るペースで初犯者の人員が減少しているため、刑法犯の検挙人員のうち約五割を再犯者が占めているところです。
こうした状況を踏まえますと、安全、安心な社会を実現するためには、罪を犯した者について、その特性に応じたきめ細やかな指導、支援を行うことができるようにするなど、その改善更生、再犯防止に向けた処遇の充実を更に推進することが必要であると考えられます。
また、近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機としまして、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、こうした誹謗中傷を抑止すべきとの国民の意識も高まってきております。
こうしたことに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対する厳正な対処を可能とすることが必要であると考えられます。
そこで、罪を犯した者の改善更生、再犯防止に向けた処遇をより一層充実させるための諸制度を導入するとともに、侮辱罪の法定刑を引き上げることを内容とする刑法等一部改正法案を提出したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/8
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009・清水真人
○清水真人君 ただいま背景及び経緯についてお伺いをさせていただきました。
それでは、順次、その内容等について質疑をしていきたいというふうに思います。
処遇の充実、立ち直りの後押しという点で、今回の改正では、大きな柱として拘禁刑の創設、そして刑の執行猶予制度の拡充等、社会内・施設内処遇の一層の充実強化を行うということとしておりますけれども、まず拘禁刑についてお伺いをいたしますが、懲役と禁錮を廃止し、これに代わるものとして拘禁刑を創設、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には改善更生のため必要な作業を行わせる、また必要な指導を行うことができるとするものでありますが、なぜ今までのままでなくこの拘禁刑を創設するのか、その創設の意義、また創設でもたらされる効果についてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/9
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010・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
近年、刑罰の目的の一つであります受刑者の改善更生、再犯防止の重要性についての認識が高まってきております。
現行法におきましては、懲役か禁錮かという刑の種類によって作業を行わせるか否かは異なりますが、作業は重要な処遇方法でありますから、それを行わせるか否かが刑の種類という形式的な区分によって定まるものとするのではなく、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるようにすることが重要であります。
そこで、個々の受刑者の特性に応じた処遇を可能として、一層の改善更生、再犯防止を図る観点から、現行法の懲役及び禁錮を廃止し、これらに代えて拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置する、改善更生を図るため必要な作業を行わせ又は必要な指導を行うことができると規定することとするものであります。
これによりまして、例えば、教育を十分に行うべき若年者に対しては、作業を大幅に減らしたり作業を全くさせずに改善指導、教科指導を行うことが可能となったり、高齢者や障害者についても同様にその特性に応じた作業以外の改善指導を行うことが可能となるなど、より一層個々の受刑者の特性に応じたきめ細やかな処遇が可能になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/10
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011・清水真人
○清水真人君 ただいま答弁がありましたとおり、出所後の再犯防止という観点からは、作業、指導という面において、受刑者それぞれの特性に応じ、適した処遇を行うことが大切であることは言うまでもありません。改正案では、受刑者それぞれの問題特性に対応した作業、指導が認められる場合には、受刑者はこれを正当な理由なく拒否してはならないとされているところでもあります。
受刑者個々人の問題性、特性の判断については、それぞれの受刑者の生まれ育ちや生活の環境等が大きく関わってくることからも、相応の専門性、分析力を持つ人や機関というのが行うことが重要であるというふうに考えております。
このことにつきまして、誰がどのように行っていくのか、また、この作業と指導についてでありますが、具体的にどのようなことを行うのか、今までと違う点についてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/11
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012・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 刑事施設におきましては、従来も個々の受刑者につきまして、医学、心理学、教育学その他の専門的知識及び技術等を有する職員による処遇調査を通じて、その特性の把握に努めてきているところでございます。拘禁刑受刑者に対しましても、このような専門的知識及び技術等を有する職員による処遇調査を通じて作業や指導の必要性を判断することとなります。
今回の改正によりまして鑑別対象となる受刑者の年齢の上限が撤廃されますれば、必要に応じて二十歳以上の受刑者に少年鑑別所の鑑別を受けさせることで、専門的知識を用いた科学的調査の手法を用いて受刑者の特性をより精緻に把握することも可能となると考えてございます。
今回の法改正によりまして、個々の受刑者に対する処遇調査で把握した特性を踏まえ、例えば、先ほども答弁ございましたが、基礎的な学力の不足により社会生活に支障がある者など教科指導等を十分に行うべき若年の受刑者には学力向上のための指導を中心とした処遇を実施すること、あるいは高齢又は障害により受刑中の認知機能や身体機能の低下が懸念される受刑者につきましては、当該機能の維持向上に資する作業であったり、出所後の社会適応に必要な知識、能力を付与する改善指導あるいは福祉支援等の社会復帰支援を個々の受刑者の特性に応じバランスよく実施したり、あるいは依存症などの問題性を抱える受刑者に対しまして、出所後の生活を見据え、受刑者の特性や問題性に着目した指導と作業をバランスよく実施するなど、これまで以上に柔軟に処遇を組み合わせて実施することが可能になるものだと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/12
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013・清水真人
○清水真人君 本当に特性に合わせて作業や指導を行っていただくことは再犯の観点からも重要であると思います。
そして、この受刑者個々人の問題性や特性の判断ということにつきましては、新たに入所する受刑者については入所後速やかに、かつ入念に行う必要がありますし、判断を行う人員等の負担が相応に増えていくんだろうというふうに考えているところであります。現在の体制で十分にこの判断を行う人員等が対応できるのか、また、どのような専門的人材にて対処していくのか、お伺いをしたいと思います。
また、受刑者個々人の特性に合わせた作業や指導を行うためには、刑務官が適切にその内容というものを理解し、刑務官としての任をしっかりと全うしていただかなければ意味がないわけでありますが、今後どのようにそういった職員教育等を行うのかについてもお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/13
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014・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 今回の改正によりまして、受刑者の特性を把握し、処遇への動機付けを適切に行うとともに、個々の受刑者の問題性に応じた処遇を進め、受刑早期から円滑な社会復帰を見据えた指導や支援につきまして、これまで以上にきめ細かに対応していく必要がございます。
これまでも主に心理学を専門とする調査専門官などの配置を順次拡大してきたところでございますが、今後は、御指摘のとおり、専門スタッフの確保がますます重要になるものと認識してございます。法改正の趣旨を踏まえまして、受刑者の改善指導の実現に向けて、関係機関の理解を得ながら必要な人的体制の整備に努めてまいりたいと考えてございます。
また、刑務官に対する研修でございますが、刑務官に対する研修は、刑事収容施設法第十三条の三項に基づきまして、その専門性であったり処遇力の向上を図るため、矯正研修所あるいは各刑事施設において実施しているところでございます。
今回の法改正の趣旨に沿いまして、個々の受刑者の能力向上が求められるものと考えてございます。受刑者の特性や問題性に応じた適切な処遇、対応力を向上させるための更なる研修の実施にも取り組んでまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/14
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015・清水真人
○清水真人君 研修をした上で、しっかりと刑務官の方たちに理解をしていただかなければ効果が出ないわけでありますので、丁寧にきめ細やかに行っていただきたいというふうに思います。
また、現行法では、拘留は、懲役や禁錮と比べ、拘留については期間が一日以上から三十日未満ということで、短期の刑罰ということでありますので作業が課されておりません。今改正案では、拘留についても、改善更生につなげるために必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるという規定が新たに追加されることとされているところであります。
拘留につきましては、期間が短いため、速やかに拘留者の特性を把握し、分析し、よほど効率的に行わなければ成果が出づらいというふうに感じているところでありますけれども、どのような体制でその判断をし、また実際は、人数はどれぐらい拘留されている方というのはいるのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/15
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016・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
その前に、今答弁させていただいた中でちょっと誤りがございましたので、訂正させていただきます。個々の刑務官の能力向上と言うべきところを受刑者のと言ってしまいました。この点、訂正させていただきたいと思います。
それから、ただいまの御質問でございますが、拘留受刑者につきましては収容期間が三十日未満とされておりまして、また令和二年の新受刑者で五名と、極めて収容が少ない状態でございます。
今回の法改正によりまして、拘留受刑者につきましても、拘禁刑受刑者と同様、改善更生を図るために必要な作業や指導を行うこととなります。具体的には、刑が確定した施設におきまして、拘禁刑受刑者と同様、その年齢を考慮し、資質や環境に関する処遇調査を行った上で、拘留受刑者の短い収容期間内でも可能な範囲内で円滑な社会復帰を図るため、最低限必要な遵法精神を養うための指導であったり、勤労習慣を維持するための作業などの矯正処遇を行うことが考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/16
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017・清水真人
○清水真人君 期間が短いわけでありますから、社会に戻ってから適応できるような、そうした指導というのは本当によく分析して適切にやっていただく必要性があると思いますので、そういったことをしっかりと行っていただければと思います。
続いて、障害を持つ受刑者についてお伺いをいたします。
現在、障害、特に知的障害でありますが、この障害を持つ受刑者についてどの程度いらっしゃるのか、またその再犯の状況についてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/17
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018・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
令和二年における新受刑者の総数は一万六千六百二十名でございましたが、そのうち知的障害を有する新受刑者というのは二百九十七人、約一・八%でございます。
知的障害を有する受刑者のみをその母数といたしました再犯、再入の状態というものを表した資料というのは持ち合わせてございませんが、総じて、再入者全体と比べまして再犯に至るまでの期間が比較的短く、刑事施設への入所の回数も全体よりも多い傾向にあるものと承知してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/18
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019・清水真人
○清水真人君 パーセンテージは一・八%程度ということですが、再犯を犯す期間が短い、回数も多いというようなお話だったというふうに思っております。
障害を持つ受刑者、特に知的障害を持つ方につきましては、裁判でその責任能力に問題がないというふうに判断をされて刑の執行が行われるということになったわけですから、例えば懲役刑の宣告がなされた場合には、これまでの懲役刑であれば、ほかの受刑者と同じ何らかの作業をすることになるんだろうというふうに思っております。
今回の改正案では、受刑者それぞれの問題特性に対応した作業、指導が認められる場合にはそれを行うということになるわけでありますけれども、先ほど答弁があったとおり、再犯の回数も短いというような、回数もあるということを受けまして、障害を持つ受刑者にとって今回の改正がどのように影響をするのか、どのような変化が起こり得ると考えているのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/19
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020・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 今回の法改正によりまして、個々の受刑者の特性に応じて作業や指導が柔軟に実施できることとなるとともに、社会復帰支援が刑事施設の長の責務として規定されることとなります。それを踏まえまして、障害を有する受刑者に対しましても、個々の特性を把握した上で障害に配慮した作業と改善指導を柔軟に組み合わせて実施してまいりたいと考えてございます。
さらに、障害によりまして出所後の自立が困難な受刑者に対しましては、出所後、直ちに福祉サービスを受けられるよう、関係機関と連携した調整を必要な作業や改善指導と並行して行うなどいたしまして、障害を持つ受刑者の特性やニーズに応じた矯正処遇の充実に引き続き努めてまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/20
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021・清水真人
○清水真人君 特にこの障害を持つ受刑者につきましては、それぞれの特性というのがやはり重要になってくるんだろうというふうに思っておりますので、この辺についてもやはり刑務官がどのように対応するのかというのももちろん重要ですし、先ほどお話があった福祉との連携というのも重要であると思います。こうした点をしっかりと強化をしていっていただきたい、このように思うところであります。
続いて、PFI刑務所についてお伺いをいたします。
PFI刑務所につきましては、申すまでもありませんけれども、民間の資金やノウハウを活用して官民協働で運営する刑務所であります。
栃木県さくら市の喜連川社会復帰促進センターにおきましては、法務省が今年度から、持続可能な社会の実現への貢献というものが受刑者の更生へ役立つとのことから、受刑者に絶滅危惧種の保全活動をさせる新たな処遇を導入するということを決めたという、こういった新聞記事を拝見をいたしました。
環境省のレッドリストにて絶滅危惧種に指定をされているシルビアシジミというチョウでありますけれども、この餌となるミヤコグサを育てる、また、同じくレッドリストにあるカワラノギクを育てるということでありまして、そのほかにも循環型農業の導入等を行うということであります。
法務省が目指す最終的な目標が、社会的な問題の解決と受刑者の改善更生を結び付けるという、刑務所と持続可能な開発目標、SDGsが融合したサステナブルプリズンということであるということでありますが、このことについては大変すばらしい取組であるというふうに評価をしているところであります。
PFI刑務所は、もとより自由度の高い先進的な職業訓練などの作業を取り入れているところでありますけれども、こういった自由度のある取組が今回の改正によりましてどのようになるのか、影響がないのかにつきましてお伺いをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/21
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022・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 御紹介ございましたPFI手法を活用しておりました喜連川社会復帰促進センターにつきましては、官民協働での施設運営を行ってございまして、本年度から、御紹介いただいたような施設周辺の絶滅危惧種の保全活動、循環型農業などを矯正処遇の中に取り入れることとしているところでございます。
受刑者がこのような社会的な課題の解決に資する取組に参加することは大変意義があるものと考えてございまして、拘禁刑を創設する趣旨は、受刑者の改善更生及び再犯防止を図るため、個々の受刑者の特性に応じた柔軟な処遇を可能とするものでありますので、この点を踏まえまして、引き続きこの種の活動にも取り組んでまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/22
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023・清水真人
○清水真人君 こういったサステナブルプリズンという考え方でありますけれども、こうしたものについては全体の刑務所等にも今後広げていくというお考えなんでしょうか。ちょっと通告していなかったんですが、お答えいただければと思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/23
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024・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) まずは喜連川センターにおきまして本年度始めたところでございますので、今後の見通しというのをちょっと軽々に申し上げることは難しいところではございますが、この趣旨につきましては十分考慮するに値するものと考えてございますので、そういった点を含めて検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/24
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025・清水真人
○清水真人君 やはり社会的な問題の解決と受刑者の改善更生を結び付けるということは非常にすばらしい取組であるというふうに思いますし、こういった取組が、それぞれどんな作業や指導と、それぞれの刑の重さ、低さによっても違いはあるとは思いますが、そういった考え方というのは非常にすばらしいことであると思いますので、広げていっていただければと私自身は思うところであります。
続いて、侮辱罪についてお伺いをいたします。
SNSの普及は、我々に多くの情報に接する機会を与えてくれるとともに、他方、誹謗中傷の温床となり、多くの方々に深刻な被害を与えるものになっております。その結果として、被害者自らの命を絶つという事案も起こるに至っているところであります。しかし、現状は軽犯罪法違反と並び刑法の中で最も軽い罰則しかなく、このことが問題視をされてきたところであります。
私ども自民党におきましても、他者からの誹謗中傷を受け、自らの命を絶つに至った被害者の御家族等の声を聞きながら、侮辱罪の見直し、誹謗中傷対策について議論を進めてきたところであります。
今回の改正で、侮辱罪の法定刑を拘留又は科料から、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に引き上げることとしているところでありますけれども、侮辱罪の現在の状況、また自ら命を絶つに至るような方が少しでも減っていく方向に向かわねばならないと考えておりますけれども、今回の改正による法定刑の引上げによる効果について、改めてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/25
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026・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
一般に、刑罰には、犯罪を犯した者を処罰することによって社会の一般人を威嚇し警戒させて犯罪から遠ざからせる一般予防の機能があるとされております。
侮辱罪の法定刑を引き上げ、厳正に対処すべき犯罪であるという評価を刑法として示すことにより、その威嚇力によってインターネット上のものを含めて侮辱罪に該当する行為を抑止する効果があると考えております。
また、今回の改正により、当罰性の高い悪質な事案に対してこれまでよりも厳正な対処をすることができるようになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/26
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027・清水真人
○清水真人君 ネットニュースを見ておりましたら、昨日、木村花さんのお母さんが、プロレス大会が命日に合わせて行われたということで、一日だけの復帰をしたというようなネット記事を見ました。そうした記事やイベントというのを見るたびに、こうした事件を起こさぬ社会をつくっていかねばいけない、こうしたものを改めて強く感じたところであります。
さて、今質問した事項とともに、法定刑の引上げに伴い諸規定の適用関係が変わることとなりました。公訴時効が一年から三年へと延びることとされているところであります。今回の改正において、これは非常に私はある意味では大きな点であろうというふうに思っております。
他者による誹謗中傷においては、インターネット上、しかも匿名で行われるということが多いことは知られているところでありますが、誹謗中傷の被害者が発信者である加害相手の特定をする場合に、特にサーバー等が海外にあったりプロバイダー本社が海外である場合、特定に時間が掛かり、犯人を突き止めたときには公訴時効を過ぎ、訴えることができない、泣き寝入りをするしかないといったことが少なからずあったというふうにも聞いているところであります。
発信者の特定の迅速化を図るプロバイダー責任制限法、これが今年十月までに施行されることと併せ、公訴時効の一年から三年への延長により、こうした事案を減らすことができるのではないのかというふうに考えているところでもあります。
一方で、そうしたデータがどのぐらいのタイミングで消されてしまうのかという課題もあるんだと思いますが、この延長の効果について法務省としてどのようにお考えなのか、お伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/27
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028・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
公訴時効は一定の期間の経過により公訴権を消滅させるものであり、期間を経過した後は起訴することができなくなるものでございます。
侮辱罪の法定刑引上げに伴い、その公訴時効期間が一年から三年となることになりまして、御指摘のような事案がどの程度減少するかについて具体的に申し上げることは困難でありますが、一般論として申し上げますと、公訴時効期間が長くなると、その間に、行為者の特定などに時間が掛かるとしても、必要な捜査を行って起訴するに足りる証拠を収集することができる場合はあると考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/28
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029・清水真人
○清水真人君 少しでも今まで泣き寝入りをしていた方が少なくなるということが、こうした一年から三年に引き上がることでできれば非常にいいことかなというふうにも思っているところであります。
この侮辱罪の改正をめぐっては、自民党でも、「自由民主」、いわゆる自民党の新聞、広報でありますけれども、こうしたところでも特集をしてきたところであります。そうした特集の記事を参考にしながらも質問させていただきたいと思いますが、例えば、侮辱罪をめぐって、政治家が悪用するのではないか、表現の自由が脅かされるのではという意見も聞かれているところであります。
しかし、ただ相手を傷つけるだけの侮辱というものと批判や表現というものは違うわけであります。どんな職業の方であれ、どんな立場の方であれ、侮辱をされてもいい方というのは一人もいないということであろうというふうに思っております。
この侮辱罪は、具体的な事実を伴わないで公然となされる暴言等を罰するものでありまして、例えば、○○のような政治姿勢、○○の政策はこうだというような、政策や政権運営等、こうしたものに対しての批判等、これの正当な表現行為についてはこれまでどおり処罰をされない、つまり言論弾圧を目的としていないのは明らかであるというふうに認識をしておりますし、我が党としてもそうした理解をしているところであります。
そこで、さきに述べました政治家が悪用するのではないかとか、また表現の自由が脅かされるのではといった意見に対しての政府の見解を改めてお伺いをさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/29
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030・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
表現の自由は憲法で保障された極めて重要な権利でありまして、これを不当に制限することがあってはならないということは、これはもう当然のことであります。
今回の法改正は侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでありまして、構成要件を変更するものではありません。したがいまして、処罰の対象となる行為の範囲が広がるわけではありません。侮辱罪が成立する行為の範囲が全く変わらない、つまり、これまで対象とならなかったものが今回によって新たに対象になるということはないわけでございます。また、拘留、科料を存置することとしておりますから、当罰性の低い行為を含めてこれは侮辱行為を一律に重く処罰するという、そういう趣旨ではございません。さらに、公正な論評といった正当な表現行為につきましては、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却されて処罰されないと考えられます。
その上で、御懸念の点については、法制審議会の部会においても、捜査、訴追を行う警察、検察の委員から、これまでも表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については今般の法定刑の引上げにより変わることはないとの考え方が示されたところでございます。
したがいまして、今回の法改正は言論の弾圧につながるものでも表現の自由を脅かすものでもないと考えておりますけれども、この表現の自由に対する御懸念という御指摘があることはやはり真摯に受け止めたいというふうに思っておりまして、引き続き、法改正の趣旨等について丁寧な御説明に努めてまいりたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/30
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031・清水真人
○清水真人君 今、政府の見解を改めてお伺いをしたところであります。私どもも、しっかり懸念を持っている方々にこの見解を正しく伝えてまいりたい、このように思っております。
そろそろ時間でありますので、私の質疑は以上で終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/31
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032・有田芳生
○有田芳生君 立憲民主党の有田芳生です。
今、清水委員からの質問でも触れられましたけれども、インターネット上の暴力と言っていいような表現に基づいて多くの人たちが今も傷ついております。木村花さんの件はもうとんでもない事件と言っていいと思いますけれども、同時に、特にインターネット上では誹謗中傷、悪口雑言などなど、もう繰り返し、この時間にも恐らく続いているでしょう。
私が関わった、近くで見てきたケースでも、ヘイトスピーチに反対する在日コリアンの方がやはりとんでもない誹謗中傷、攻撃を受けて、これはもう許せないということで弁護士と一緒に裁判に訴えました。しかし、それが誰の発言なのかというのを特定するために、これまでは二回裁判をやって、IPアドレスの開示から人物の特定に至って、そしてようやく本裁判をやって、結果的に侮辱罪ということで九千円の科料。
御存じのように、この侮辱罪というのは明治の法律ですから、貨幣価値がもう全く違うわけですよね。で、九千円。これはどうしようもないということで、結果的に、迷惑防止条例を使って、そして三十万円という科料になったというケースがあります。もう本当に時間と労力を使って、大変な目に遭った、それを何とかしようということで、当初九千円ということに驚いたんです、みんな。
だから、そういうことを何とか解決していかなければいけないということでは与党も野党も政府も一致する今度の法律改正だと思っているんです。しかし、素朴な疑問が幾つもあるんです。ですから、今日、一回目の質疑ですから、本当に基礎知識のところから教えていただきたいというふうに思います。
まずお聞きをしたいのは、侮辱罪とは何かということなんですけれども、この法律において侮辱とはどういう意味なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/32
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033・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
侮辱罪における侮辱とは一般に他人に対する軽蔑の表示をいい、侮辱罪の保護法益は名誉毀損罪と同じく人の社会的名誉であると解されているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/33
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034・有田芳生
○有田芳生君 私は国会議員になってから、特に二〇一三年をピークにして、ヘイトスピーチに今でも強い反対の行動をしております。非常に攻撃が激しいときには、国会の前に来てのぼり立てて、有田許さないというような叫ぶ人たちがおりました。来週の日曜日には神奈川県で有田粉砕デモというのがあるんです。二〇一三年にはインターネット上で有田死ねというようにしょっちゅう書かれて、今も書かれている。
これは表現の自由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/34
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035・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
今委員から具体的な形で御指摘をいただきましたが、表現の自由に当たるかどうかということは、私ども、刑事法の観点で申し上げますれば、もしそれが侮辱罪の構成要件に該当する場合であっても、刑法三十五条の正当行為として社会的相当性のあるものとして違法性が阻却されるかということになるかと思います。
どういった場合にその違法性が阻却されるかということに関しましては、個々の事案の事実関係によって判断されるべき事柄でございますので、私どもとしてお答えを申し上げることは差し控えたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/35
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036・有田芳生
○有田芳生君 いや、有田死ねって書かれているわけですよ。私、当時、警察庁の方に来ていただいて、こういうのどうすればいいんですかと聞いたら、いや、何ともし難いですねという返事だったんですよね。
端的にお答えください。有田死ねというのは表現の自由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/36
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037・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
大変申し訳ございません。委員、具体的な事案を前提としてお尋ねでございますが、個別事案における犯罪の成否は収集された証拠に基づき事案ごとに判断される事柄でございますので、私どもとしてお答えを申し上げることは差し控えたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/37
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038・有田芳生
○有田芳生君 今思い出したんですけれども、その延長で、池袋などで、それこそのぼりを立てて、有田に天誅を下すという人物がいたんです。天誅を下す、殺すということでも一緒なんだけれども、これに対しては警察が動いてくれたんです。取調べも行ったんです。それと死ねというのは違うんでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/38
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039・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
再三のお答えになって申し訳ございません。委員のお尋ね、その具体的な事案を前提に犯罪の成否をお尋ねになっている趣旨であろうかと存じますが、それにつきましては、先ほど申し上げたとおり、私どもの立場として答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/39
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040・有田芳生
○有田芳生君 そうしたら、有田死ねというのは侮辱罪に当たることもあり得るんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/40
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041・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
個別の事案として当たる当たらないということをお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じますが、もし収集された証拠によりまして、今委員御指摘の文言が先ほど申し上げましたような他人に対する軽蔑の表示という形で侮辱罪の侮辱に当たるということになりますれば、その後、違法性の有無といった判断過程はございますが、そういった犯罪の成立要件を満たすことがあれば犯罪に当たることがあろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/41
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042・有田芳生
○有田芳生君 それでは、処罰範囲についてどうお考えなんでしょうか。衆議院の審議の中では処罰範囲は変わらないという答弁ですけれども、それで間違いないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/42
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043・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
今回の法改正は侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでありまして、もとより構成要件は変更しておらず、処罰対象となる行為の範囲は変わらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/43
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044・有田芳生
○有田芳生君 そうしますと、いかなる言動が侮辱罪の構成要件になるんでしょうか。その基準はあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/44
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045・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
先ほども申し上げましたが、侮辱罪における侮辱というのは一般に他人に対する軽蔑の表示をいうと解されておりますので、具体的な行為がこの侮辱に当たる場合は侮辱罪の構成要件を満たすこととなります。
その上で、違法性の有無等といった犯罪成立要件に関する判断過程を経て、犯罪の成立要件があると認められる行為につきまして侮辱罪が成立するということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/45
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046・有田芳生
○有田芳生君 私は、先ほども言いましたように、この問題で厳罰化というのは基本的に賛成なんだけれども、しかし、おかしいぞという大きな疑問は、なぜ懲役を入れたんでしょうか。その具体的な根拠をお示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/46
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047・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
人の名誉を害する行為が行われた場合に適用される罰則といたしましては、名誉毀損罪と侮辱罪が考えられるところでございます。この二つの罪はいずれも人の社会的名誉を保護するものでありますが、事実を摘示するか否かによりまして類型的に名誉侵害の程度が異なると考えられるために、名誉毀損罪の法定刑の上限は懲役三年とされておりまして、現行の侮辱罪とでは法定刑に差が設けられているところでございます。
もっとも、近年における侮辱罪の実情等に鑑みますと、事実の摘示の有無をもってこれほど大きな法定刑の差を設けていくことはもはや相当とは言い難いと考えるところでございます。そのため、侮辱罪につきまして、厳正に対処すべき犯罪であるとの法的評価を示し、これを抑止するとともに、当罰性の高い侮辱行為に対して厳正に対処するためには、その法定刑を名誉毀損罪に準じたものに引き上げることが相当であると考えられるところでございます。
法制審議会の部会におきましても、事務当局から、今般の侮辱罪の法定刑の引上げは名誉毀損罪の法定刑に準じて懲役、禁錮の長期を一年とするものであることを説明した上で議論が進められまして、刑事法学者の委員、幹事からは、法定刑の上限が懲役一年とされている刑法上の他の犯罪と比較して侮辱罪による法益侵害の程度は低いとは言い難く、侮辱罪の法定刑として一年以下の懲役を加えることは合理的であるなどの意見がありまして、議論が行われた結果、侮辱罪の法定刑に一年以下の懲役、禁錮を加えることが相当との意見が大勢を占め、答申に至ったところでございます。
今回の法改正におきましては、これらのことを踏まえて、侮辱罪の法定刑の上限を懲役一年に引き上げることとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/47
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048・有田芳生
○有田芳生君 これまで侮辱の罪の法定刑は拘留又は科料でしたよね。その場合の拘留というのは、具体的にはどういう中身なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/48
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049・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
拘留といいますのは、三十日未満の身柄拘束を内容とする刑でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/49
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050・有田芳生
○有田芳生君 一日以上三十日未満、刑事施設に拘置する、それでよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/50
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051・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/51
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052・有田芳生
○有田芳生君 そうしますと、まあ明治からの法律ですから明治に遡ってとは言いませんけれども、例えばこの五年間で侮辱罪で拘留されたケースというのはあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/52
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053・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
平成二十八年から令和二年までの間に、侮辱罪のみによりまして処罰された事例で拘留に処せられたものは把握をしておりません。
そして、他の罪と併せて侮辱罪により処罰した事例で、侮辱罪により拘留に処せられたものは一件把握をしております。具体的には、駐車中の自動車に傘で傷を付け、さらに相手方の名前を示した上で、「バイキンゴミネット触るな」と記載した紙を路上に置かれたごみネットに貼り付けた事案におきまして、器物損壊罪により懲役六月、執行猶予二年に、そして侮辱罪により拘留二十九日にそれぞれ処せられたものがあると承知しております。なお、この拘留につきましては、未決勾留日数が満つるまで算入されているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/53
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054・有田芳生
○有田芳生君 それでは、インターネット上の侮辱によって侮辱罪に問われたケースというのはどれぐらいあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/54
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055・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
私どもとして、お尋ねのような観点で統計として把握しておりませんのでお答えすることは困難ではございますが、令和二年中に侮辱罪のみにより第一審判決、略式命令があった事例を調査いたしましたところ合計三十件でございましたが、そのうちインターネット上の侮辱行為は二十一件でございました。
今申し上げたこの事例につきましては、侮辱罪の事例集として法制審議会の部会においてお配りしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/55
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056・有田芳生
○有田芳生君 侮辱罪に問われたのは今お示しいただいた数だと理解しておりますけれども、しかし、それ以外に、インターネット上では侮辱罪に問われても仕方がないようなケースというのはもう毎日毎日とんでもない数が流れていると思うんですけれども、インターネット上で侮辱罪に関わるかも分からないような言動というのはどのぐらいあるかということは把握されているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/56
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057・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
委員がお尋ねになったその数につきましては、法務省におきましては統計として把握はしていないところでございます。
その上で、参考として申し上げますが、一般社団法人セーファーインターネット協会においては、インターネット上で誹謗中傷にさらされている被害者からの連絡を受けて、事業者に対して削除を促す通知を行っておりますが、この誹謗中傷ホットラインにおきましては、令和三年中、二千八百五十九件の連絡を受理し、そのうち、被害を受けた個人が特定可能であること、公共性がないことが明らかである又は公益目的の表現でないことが明らかであること、特定個人の社会的評価が低下させられるものであること又は社会生活上許される限度を超えた侮辱的表現を内容とすることのいずれにも該当する特定誹謗中傷情報は七百九十六件だったものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/57
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058・有田芳生
○有田芳生君 今、数をお示しいただきましたけれども、この法律が成立したとしたら、そうした言動というのは減ると理解されていますか。あるいは、その根拠はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/58
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059・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
一般に、刑罰には、犯罪を犯した者を処罰することによって社会の一般人を威嚇し警戒させて犯罪から遠ざからせる一般予防の効果があるとされております。
侮辱罪の法定刑の引上げにより、お尋ねのように、その数が減少するかや、あるいはそれがどの程度かについて定量的にお示しすることは事柄の性質上困難でございますが、法定刑を引き上げ、厳正に対処すべき犯罪であるという評価を示すことにより、その威嚇力によって侮辱罪に該当する行為を抑止する効果があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/59
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060・有田芳生
○有田芳生君 これまではインターネット上の言動についてお聞きをしてきましたけれども、インターネットだけではなくて、現実に問題が生じないのかということで、私は、二〇一九年七月に札幌で起きた、安倍総理が来られたときのやじ問題、国賠訴訟が今も続いておりますけれども、私はその当事者からも当時話を聞きましたし、現場にも行っていろいろ調べました。
一体、二〇一九年七月に札幌でどういう事態が起きたんでしょうか。警察庁、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/60
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061・森元良幸
○政府参考人(森元良幸君) お答えします。
お尋ねの事案は、令和元年七月十五日、札幌市におきまして参議院議員通常選挙の街頭演説が行われた際、北海道警察が警護警備を行う中で、現場の警察官がトラブル防止の観点から警察官職務執行法等に基づき一部の方々を移動させるなどした事案と承知しております。
具体的に申し上げますと、札幌駅前の聴衆の中で突如男性が大声を上げ、周囲からは反発の声が上がり、聴衆の一人がその男性を手で押すなどの行為も発生したことから、トラブル防止の観点から当該男性を移動させ、その後、当該男性が次の街頭演説場所に現れ、大声を上げながら要人に近づこうとしたため制止を行った事案。
もう一つが、札幌駅前の聴衆の中で突如女性が大声を上げ、聴衆が密集している場所に進んでいこうとしたことから、トラブル防止の観点から当該女性を移動させるなどした事案であると承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/61
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062・有田芳生
○有田芳生君 言葉で言えば、大声を上げた人物に問題があるかのように聞こえるんだけれども、いわゆるやじですよ。皆さんも経験されることあるかも分からない、私も経験しますけれども、街頭で演説をやっていたらやじが飛ぶ。だけど、それはもうやむを得ない、嫌なことだけれども、やむを得ないと私は判断しているんですけれども。
当時の札幌というのは、支援者の方々の中にいて、当時の総理に対して帰れというようなことを叫んだから、それは支援者の方からすれば、おまえ、何だということになる。だけど、そこに警察官が物すごくやってきて強力に体を移動させたんですよね、何度も、女性に対しても。実は、裁判になっていないけど、それだけじゃないんです。ただ年を取った女性がプラカードを持っているだけで、消費税に関する政策変えてくれというプラカードを持っているだけでそのプラカードを下ろさせたり、これが現実なんですよ。
だから、適切な職務を執行されたと、警察の方々は、衆議院の、国家公安委員長も含めて、この間の山添委員の質問に対して本会議でもそういう発言ありましたけれども、言葉として言えば、何かとんでもない人がいて、それを問題あるから移動させたということなんだけど、現場を見たら異常な状況だったんです。
警察庁の方、改めてお聞きしますけれど、今説明していただきましたけれども、そのときの映像って見られました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/62
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063・森元良幸
○政府参考人(森元良幸君) 委員御指摘の映像と一致するかどうか分かりませんけれども、私としても拝見したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/63
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064・有田芳生
○有田芳生君 時間なくなってきたので急ぎます。
現行犯逮捕は、そういう場合、これは侮辱罪だぞということになればできるんでしょうか。統一見解が出ていますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/64
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065・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
侮辱罪の現行犯逮捕についてお尋ねでございます。
侮辱罪による逮捕に関しましては、今般の法定刑の引上げにより住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますが、それ以外の要件に変わりはないところでございます。
すなわち、現行犯逮捕は、現に罪を行い又は現に罪を行い終わった者が対象とされておりまして、犯人による特定の犯罪であることが明白で、かつ犯人も明白である場合にしか行うことができないものでございます。
今回の改正後は、侮辱罪による現行犯逮捕は、ただいま申し上げた要件を満たす場合には、住居不定であることなどの要件がなくても法律上は可能となるものでございます。しかし、現行犯逮捕の要件である犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないことを明白ということでありまして、侮辱罪につきましては、表現行為という性質上、仮に構成要件に該当したとしても、違法性阻却事由の存否に関して、表現の自由などの憲法上の重要な権利との関係を慎重に考慮しなければ正当行為かどうかを判断できないため、現行犯逮捕時の状況だけで正当行為でないことが明白とまで言える場合は実際上は想定されないところでございます。
政府統一見解としてさきにお示しいたしました考え方は、このようなものとして御理解をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/65
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066・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 質疑をおまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/66
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067・有田芳生
○有田芳生君 私人逮捕の問題もありますけれども、更なる疑問については、次回、国家公安委員長をお呼びしてお聞きしたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/67
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068・真山勇一
○真山勇一君 立憲民主・社民の真山勇一です。
今日は、刑法改正について質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
今回のこの刑法の改正ですけれども、これ、刑法できたのは、明治四十年に制定されたということですから百十五年ぶりの私は大改正と思いますし、そう言われています。刑罰が変わったということですね。
私は、この仕事の前にテレビの世界で働いておりましたので、ちょっと話を御紹介させていただきたいんですが、テレビの番組の中で刑事物とか捜査物、とても人気があります。視聴率高いです。各局たくさんいろんな番組作っていますね、捜査一課長が主人公になったり、検察医務医が主人公になったりして。
それで、最後はその事件が解決すれば当然裁判をやると。裁判をやると法廷が出てくるわけですね。そのとき裁判長が言渡しをする。被告を懲役○○年に処す、あるいは被告を禁錮○○年に処す、こういうふうに出てきますね。懲役とか禁錮という言葉は、一般の人たちなかなか裁判というのはなじみがないと思うんですけれども、テレビドラマを見る限りは非常になじみが深くて、こういう言葉が出てきます。
これが今度の改正で、ずうっと使われていたこの判決のときに使われる言葉が、被告を拘禁○○年に処すというふうに変わる、せりふが変わるというふうに理解しております。やはり、この刑法というのはなかなか普通の人たちにはなじみがないけれども、こうしたものを通して、テレビドラマなどを通して、ああ、懲役ってなくなっちゃって拘禁という刑になったのかということが分かってもらえるんじゃないかなというふうに思っています。それほど今回大きな、私は、社会でもこういうふうに受け入れられる大きな改革であるというふうに思っております。
それで、とてもこの大事な今回の改正について基本的なことをお伺いしたいんですが、明治四十年に刑法が制定されて以来、このときは現行法で懲役刑と禁錮刑というのが設けられているわけですね。このとき、この現行法でこれが決められた理由、意義、これについて、それから、これを今般拘禁刑に一本化しようとするその理由と意義、これについてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/68
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069・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) ただいま委員から二点についてお尋ねがありました。
懲役、禁錮が設けられている理由、意義についてお答えいたします。
懲役は作業が義務付けられておりますのに対しまして、禁錮は作業が義務付けられておりませんが、このような区別は、作業が過去の犯罪に対する報い、懲らしめとして課されるものであるという考え方を前提とした上で、そのような作業を行わせることがふさわしくない一定の犯罪による受刑者に対しては、拘置に純化した刑として禁錮を科すべきとする考え方によるものと承知をいたしております。
そこで、二点目のお尋ね、拘禁刑の創設の理由と意義ということでございますけれども、近年、刑罰の目的の一つであります受刑者の改善更生、再犯防止の重要性についての認識が高まってきております中で、作業というのは重要な処遇方法でありますから、それを行わせるか否かが刑の種類という形式的な区分によって定まるものとするのではなく、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるようにすることが重要でございます。
そこで、個々の受刑者の特性に応じた処遇を可能として、一層の改善更生、再犯防止を図る観点から、現行法の懲役及び禁錮を廃止して、これらに代えて拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置する、改善更生を図るため必要な作業を行わせ又は必要な指導を行うことができると規定することとするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/69
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070・真山勇一
○真山勇一君 懲役刑は、作業を義務付けるという、報いとか懲らしめのためというふうにおっしゃいました。それを一本化するのは最近のやっぱり認識の変化があって、言われているように、基本的には新たな犯罪を生まないということとその再犯防止ということから、今回のこの一本化の改正になったというふうな理解をしております。
それでは、その懲役刑は刑務作業が義務とおっしゃいました。義務ですけれども、拘禁刑は作業、これは義務化、義務では、つまり義務ではないわけですね。なぜ義務化されないのか、これが一点。それから、懲役刑と拘禁刑のその作業、つまり現行とそれからこれからの改正の拘禁刑で、作業、違いが何かあるんでしょうか。これを踏まえて、この二点、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/70
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071・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
懲役は、刑法におきまして、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせると定められておりまして、全ての懲役受刑者に必ず作業を行わせる、行わせなければならないものでございます。
この作業は、過去の犯罪に対する報い、懲らしめとして課されるという性格を有するとされてきておりましたが、実際の行刑におきましては、罪を犯した者の改善更生、再犯防止や円滑な社会復帰を図る上で重要な機能を有する処遇方策として、基本的かつ重要な地位を占めているところでございます。そして、近年では、作業に対し、出所後の就労の確保等に資する機能を求める要請が更に高まってきており、作業について、過去の犯罪に対する報い、懲らしめとして課されるという性格は希薄化しているところでございます。
そこで、拘禁刑におきましては、作業について、過去の犯罪に対する報い、懲らしめとして課されるという性格よりも、むしろ、罪を犯した者の改善更生、再犯防止という特別予防のために課すものとして位置付けることといたしまして、刑法において、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため必要な作業を行わせ又は必要な指導を行うことができると規定することとしております。
このように、拘禁刑におきましては、全ての受刑者に必ず作業を行わせなければならないこととせず、個々の受刑者の特性に応じて、改善更生を図るために必要な作業と指導をベストミックスして行うことができるようにしておりまして、作業を行わせない場合もあり得るところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/71
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072・真山勇一
○真山勇一君 今ちょっと、済みません、刑事局長、ちょっと聞こえにくかったんですけれども、これは拘禁刑になってもその作業というのは必ずさせるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/72
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073・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) 済みません、私のあれが聞こえにくかったというのは先ほどの答弁の最後の部分だと思いますが、作業を行わせない場合もあり得るところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/73
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074・真山勇一
○真山勇一君 分かりました。そういうふうに私も理解しております。
今の懲役刑というのはこれ義務になっている、それが新しいこの改正で拘禁刑になると義務じゃないということになると思います。なぜならば、拘禁刑では作業又は指導を行うことができると書いてある、言われています、できるですね。つまり、ねばならないじゃなくて。ですから、従わなければならないとかそういうことになっていない、できる、できるということはできない可能性もあるんじゃないかと思うんですが。
ここでちょっと確認させていただきたいのは、受刑者に課せられるのは作業又は指導ということですけれども、どちらか一方ですか、それとも両方課せられることがあるんですか。それから、何を基準にしてそれを決めるということになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/74
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075・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 拘禁刑におきましては、受刑者の改善更生及び再犯防止を図る観点から、個々の特性に応じて作業や指導の内容等を決定することとなるため、理論的には、特性を踏まえた結果といたしまして、作業又は指導のいずれかのみを行うことが相当と判断される場合はあり得るものと考えてございます。しかしながら、刑事施設に収容されております受刑者の現状を踏まえますと、多くの受刑者には作業と指導をバランスよく組み合わせて行うことが必要になるものと現実的には想定されるところでございます。
また、個々の受刑者に対する作業や指導は、矯正処遇としてその内容や方法などを定める処遇要領に基づき実施されるところでございますが、現行法の下においても、処遇要領の策定につきましては、法務大臣訓令、それから矯正局長依命通達等におきまして詳細が定められておりまして、本法案が成立した後には、拘禁刑創設の趣旨を踏まえて必要な改正を行うことを考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/75
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076・真山勇一
○真山勇一君 そうすると、いろんなことを考えてやられるということなんですけれども、そうすると、拘禁刑で収容されている受刑者の中には、何も作業も指導も受けないという受刑者も存在することになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/76
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077・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 先ほどもお答えしたとおりでございますが、拘禁刑受刑者につきまして、個々の特性を踏まえて、その必要性に応じて作業あるいは指導といったものを個人ごとに、計画といいますか、策定していくことになります。
ただ、刑事施設に収容されるに至った原因であるとか、そういった問題性ということを踏まえますと、何も指導をする必要がないという状態というのはちょっと考えにくいかなというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/77
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078・真山勇一
○真山勇一君 ただ、一つのケースとして、いろいろ考えてみたけど、どうも適当なあれがないなということになって、義務じゃないんだから、そういうことができない場合というのはないんですか。必ず、やっぱり検討した結果、やっぱり受刑者にはこういうことが必要であるということが必ず出てくるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/78
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079・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 法律上その可能性というのは排除されないんだろうと思っておりますが、私がお答えしておるのは、受刑者の現状を踏まえた現実問題として、なかなかそういった状況というのは想定し難いという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/79
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080・真山勇一
○真山勇一君 つまり、やっぱり拘禁刑というのは、そうすると、実質的には強制ではないけれども、やはり受刑者を見て、それにふさわしいやはり対応を何か考えなくちゃいけないということで、必ず指導かあるいは作業ということ、あるいは両方ということもあり得るわけですね。そういうことが課せられるというか、やるようなことになってくるということだと思いますね。
ちょっと質問変えまして、そうすると、拘禁刑における作業、これ義務とか強制でないわけですね。これは基本的にそういうことですね。ですから、そうすると、受刑者の方に指導とか作業を拒否するその権利というのはあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/80
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081・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 本法案改正後におきまして、改善更生、円滑な社会復帰を図るために必要と認められる場合には、作業であったり指導というものを行わせることとしております。
一方で、受刑者の遵守事項といたしまして、正当な理由なく作業等を拒否してはならない旨を定めまして、これに違反した場合には、各種の事情を考慮した上で懲罰を科すことができることとなります。その趣旨で、間接的に強制されているということでございます。
したがって、必要と認められる作業あるいは指導といったものを拒否する権利があるとは考えてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/81
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082・真山勇一
○真山勇一君 そうですね。例えば、当局側というか刑務所側から言わせればそういうふうに見えるかもしれないけど、受刑者側にしたら、拒否すべき理由があって拒否しているけれども、それが受け入れられなくて、今おっしゃったように、懲罰とかそういうものの対象になってくることもあり得るということですけど、そうなると、受刑者としては自分の意思に反して作業とか指導をやられたという、後でそういうことが発生するおそれというか可能性はどうなんでしょうか。何かあるような気もするんですけど。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/82
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083・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 必要と認めて課しております作業であったり指導というものにつきましては、先ほどもお答えしたとおり、その懲罰をもって言わば矯正をしておるという状況でございます。これは、受刑に至りました原因その他を分析した本人の問題性といったものを解決する趣旨でそういったものを課しておるわけでございますから、個々の受刑者の問題性に応じて必要と認められる矯正処遇を専ら受刑者の意思に委ねるということは適当でないと考えてございます。
したがって、御本人の意図で、これは私にふさわしくないであるとかやりたくないということのみをもって拒否をするということについては懲罰の対象となり得ると考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/83
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084・真山勇一
○真山勇一君 今回の拘禁刑というのは、そのいろんな認識が変わってきたことによって、大臣もおっしゃったように、現行法では懲役ということで、何というんですか、罪を犯したんだから、それに対する報いとか懲らしめという意味もあって例えば作業をさせられるということがあるけれども、それが今回そうじゃなくなってきているという御説明がありましたけれども、今の説明伺っていると、結局、懲役刑が名前はなくなって拘禁刑となったけれども、ほとんど今の御説明ですと、やっぱりその罪に対する懲らしめとか、そういう意味で作業とか指導を適宜採用してやはり受刑者に課すということになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/84
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085・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 現行法における懲役刑におきましては懲らしめの趣旨が含まれていたというふうに考えてございますが、新たな拘禁刑の下におきましては、改善更生、あるいは円滑な社会復帰に必要な指導の一環として行うということでございます。
ただ、その対象が受刑者ということでございまして、その必要な指導については受けていただく必要があるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/85
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086・真山勇一
○真山勇一君 分かりました。そういうことで、じゃ理解するとして、するとして、やっぱり強制的にはそういうことはさせていないんだというのが基本的には方針になっているわけですね。
私、気になるのは、今回、法案のその提出理由を見ると、新たな被害者を生まない安全、安心な社会を実現するため、罪を犯した者について、その特性に応じた指導、支援を行うことができるようにする、つまり、受刑者の改善更生、それから再犯防止、こうした趣旨の処遇を充実させる、これは確かに充実されているような印象もあります。私も、保護司をやっていた関係で、これやっぱり再犯をどうやって防ぐかということは非常に苦労していろんなことをやってきましたので、これ分かります。
ですから、今回のこの改正は、受刑者のためを思っていろんなことが、対応が入っているのは分かるんですが、その一方で、ふと読み返してみると、被害者、犯罪被害者に、それからその家族や関係者に対する対応というのはどこにあるのかなという気がするんですけど、これについてはどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/86
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087・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 現行の矯正処遇におきましては、被害者等やその支援団体の方による講話、あるいは被害者の命を奪う罪を犯すなど特定の受刑者を対象といたしまして、被害者の視点を取り入れた教育を行うなどいたしまして、被害者等の心情を理解させるため必要な働きかけを行ってございます。
もっとも、その受刑者の処遇におきまして、被害者等の心情を反映し、受刑者の反省や悔悟の情を深めさせ、その改善更生を効果的に図るためには、受刑者に対しまして、被害者等の心情や状況等により、直接的な形で触れさせることが重要だと考えてございます。
そこで、今回の法改正におきましては、拘禁刑に処された者を含めた受刑者に関しまして、刑事施設の長がその被害者等から被害に関する心情等を聴取いたしまして、被害者等の方がその心情等の内容を伝達することを希望した場合には受刑者に伝達する枠組みを設けるとともに、刑事施設の長が受刑者への教育的な処遇を行うに当たって被害者等の心情やその置かれた状況を考慮すべき旨を盛り込むこととして、被害者の方との関係というものを深めていくという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/87
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088・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 時間になりましたので、おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/88
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089・真山勇一
○真山勇一君 細々とした対応がされていることは分かるんですけれども、被害者の反省をどうするのかとか、それからその起こした事件についての、何というんですかね、ざんげみたいなもの、つまり反省を深くするというところがどうも抜け落ちているような、被害者の立場をどういうふうに考えているんだというようなところが私にはどうしても見えないんですね。
やっぱりその辺をもう少し、ただ伝えたり、聞いたり、聞いたことを伝えるということじゃなくて、そうしたものをやっぱりやるべきだ、この辺の議論をもう少しすべきだということを主張しまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/89
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090・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、中西哲君が委員を辞任され、その補欠として山崎正昭君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/90
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091・安江伸夫
○安江伸夫君 公明党の安江伸夫です。質問の機会をいただき、ありがとうございます。
先ほどの委員の皆様の質問とも若干趣旨、重複する部分ございますけれども、順次通告に従って飛ばさずに伺ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
今回の改正法の大きな柱の一つ、すなわち処遇を一層充実させ、立ち直りを後押しするための諸制度の導入という点でございますが、これ、私自身も弁護士として、弁護人として刑事司法に携わってきた一人として、大変評価をし、歓迎する法改正であるということをまず冒頭申し上げたいというふうに存じます。
弁護人としては、真実を発見し、適切な刑罰権を発動させていくという、こうした意義を持って弁護活動を行っておることは言うまでもありません。他方で、事実関係に争いのない刑事事件にあっては、その刑罰の量定と併せて、やはり本人がもう二度と犯罪を起こさないように、二度と再犯をしては駄目だよということをやはり決意をしていただくために刑事裁判を私自身も弁護士として行ってきたつもりであります。
しかし、他方で、数字上も明らかなとおり、再犯者というものが非常に多いというのが我が国の実情であり、私自身も弁護人として活動したその多くの事件が前科等を有する再犯者であったというのが実感としてもございます。そうした事件に相対するたびに、その方にとって、その被疑者、被告人にとって、前の刑事裁判はどういった意味があったんだろうかと、刑務所等に行って刑罰を受けて何の意味があったんだろうかということを本当に深く、つくづく考えさせられる事案に多数接してきたところであります。
ある意味、刑事司法の限界ということを実感してきたところでありますが、これまでの従前の現行法の枠組みの中でも、そうした刑事司法の限界を乗り越える、あるいはその足らざる点を補うという観点から、地域との連携とか、あるいは関係機関との連動、再犯防止のための様々な諸施策を法務省が力を挙げてやっていただいているということも十分に承知をしております。そのことに本当に感謝申し上げるとともに、そうした取組を一層加速化させ、強化させていくための今回の重要な法改正なんだというふうに思っておりますので、そうした観点を踏まえて順次質問をしていきたいというふうに思っております。
さて、まず法案の内容そのものに入る前に、先ほども別の委員の方からも質問ありましたけれども、本法案の提出の背景について、犯罪動向について確認をさせていただきたいというふうに存じます。
刑法犯の認知件数、発生率、再犯者数、再犯者率等、最近の犯罪動向がどうなっているのかということを刑事局の方にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/91
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092・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
令和三年版の犯罪白書によりますと、刑法犯により検挙された再犯者の人員は、平成十八年に十四万九千百六十四人であったのをピークとして、その後は減少傾向にありまして、令和二年は八万九千六百六十七人でございます。
一方、再犯者率は、再犯者数がピークに達した平成十八年には約三八・八%だったところ、その後増加し続けまして、令和二年には約四九・一%となり、刑法犯の検挙人員のうち五割近くを再犯者が占めているところでございます。
私どもといたしましては、こうした状況を踏まえまして、罪を犯した者について、その特性に応じたきめ細やかな指導、支援を行うことができるようにするなど、その改善更生及び再犯防止に向けた処遇の充実を更に推進することが必要であると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/92
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093・安江伸夫
○安江伸夫君 前提の背景を改めて確認をさせていただきました。
その上でもう一点、刑罰を科す意義、それは何なんだろうかということも法務省の御認識をお伺いをしておきたいというふうに思います。
刑罰、これを何のために、誰のために科していくのか。一つには、趣旨説明にもございましたとおり、次なる被害者を生まないために本人の改善更生を図っていく、潜在的な被害者を守っていくという、こういう社会的な要素もあると思います。
他方で、考え方によっては、被害を受けられたその被害者の皆様のために、あるいは亡くなられた、事件に遭った御遺族の皆様のために本人に応報的な刑罰を与えていく、こういうような考え方もあろうかと思います。
講学的には応報刑論とか目的刑論とか、様々なこの刑法の刑罰の目的論というのは大変奥の深い難しい論点ではございますが、差し当たって、現在のこの刑罰を科す意義についてどのような御認識を有しておられるのか、確認をさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/93
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094・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
刑罰を科す意義、刑罰の目的は、一般的に、過去の犯罪に対する報いとして科す応報とともに、犯人の処罰によって一般社会に警鐘を鳴らして将来における犯罪を予防しようとする一般予防と、特定の犯人が将来再び犯罪に陥ることを予防しようとする特別予防であるとされております。
このことは、今回の改正により創設する拘禁刑においても変わらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/94
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095・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。
特に、私自身としても申し上げておきたいのは、やはりこの犯罪には当然原因と結果があって、その犯罪に至るに当たっては、その個々の個人、個々人に応じた原因があるんだろうなというふうに思っております。
その原因を取り除いて潜在的な被害者を救済し、社会を良くしていくと同時に、その犯罪を犯した本人にとってもその後の人生がより良くなっていく、本人の利益のためにも改善更生を図っていくという観点も重要であり、であればこそ、こうした福祉的な要素を加味しての刑事処遇の在り方を推進しているんだなというふうに私自身は理解をさせていただいているところでございます。
ちょっと通告がないので大変恐縮なんですけど、もし、大臣、この刑罰の目的で本人の利益についてもしっかりと配慮をしていく、本人の改善更生というのは本人の人生にとってもより資するんだという、こういう考え方について、もし御意見あればお伺いさせていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/95
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096・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 刑罰の目的ということについては、先ほど刑事局長からも答弁を申し上げましたけれども、やはりこれ歴史的にもいろんな考え方の推移があるのだと思います。
その中で、現在も諸説様々な、諸説あるのだろうとは思いますけれども、やはり一度つまずいた人であっても、やはり立ち直って再び社会の中で胸を張って生きていけるということは社会全体の利益に資することだというふうに思いますから、先ほど局長が申しましたこの応報、それから一般予防、特別予防というふうに御説明申しましたけれども、これは非常に大事な視点であるというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/96
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097・安江伸夫
○安江伸夫君 御答弁いただきまして、ありがとうございます。
そして、本体の話題に、法案の話題に入っていきますけれども、改めて、今回、懲役、禁錮を廃止をし、拘禁刑という新たな刑罰を創設するということでございます。改めて、その趣旨について刑事局にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/97
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098・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
近年、刑罰の目的の一つである受刑者の改善更生、再犯防止の重要性についての認識が高まっているところでございます。
現行法におきましては、懲役か禁錮かという刑の種類によって作業を行わせるか否かが異なるところでありますが、作業は重要な処遇方法でありますことから、それを行わせるか否かが刑の種類という形式的な区分によって定まるものとするのではなく、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるようにすることが重要であります。
そこで、個々の受刑者の特性に応じた処遇を可能として、一層の改善更生、再犯防止を図る観点から、現行法の懲役及び禁錮を廃止し、これらに代えて拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置する、改善更生を図るため必要な作業を行わせ又は必要な指導を行うことができると規定することとするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/98
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099・安江伸夫
○安江伸夫君 その拘禁刑の創設に伴いまして、本改正案では刑事収容施設法の改正もなされるということになっております。この刑事収容施設法の改正内容、その概要について矯正局にお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/99
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100・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 今回の刑事収容施設法の改正部分でございますが、拘禁刑の創設に伴いまして、拘禁刑の執行を受ける受刑者の処遇に関する規定を整備することとしてございます。
具体的には、懲役刑では全ての受刑者に作業を行わせることが前提であったのに対しまして、拘禁刑受刑者には、改善更生及び円滑な社会復帰を図るために必要な場合に限り作業及び指導を行わせること、それから、個々の受刑者の特性に応じた処遇を行うことを一層徹底するため、受刑者の矯正処遇の目標及びその内容等を定める処遇要領につきましてできる限り具体的に記載するものとすること、受刑者の処遇要領は刑の執行後できる限り早期に策定するとともに、その策定前においても可能な範囲で矯正処遇を行うものとすることなどが挙げられるというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/100
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101・安江伸夫
○安江伸夫君 もう一問確認させていただきますが、拘禁刑に処せられた場合、その具体的処遇がどのようになっておるのか、改めて確認をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/101
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102・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
現行法におきましては、受刑者の大部分を占める懲役受刑者につきまして一定の時間を必ず作業に割かなければならないとされているところ、拘禁刑の創設によりまして、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇を目指すものでございます。
具体的には、例えば、学力の不足により社会生活に支障があるなど教科教育等を十分に行うべき若年の受刑者には学力向上のための指導を中心とした処遇を実施したり、依存症などの問題性を抱える受刑者に対しましては、その問題性に着目した指導と、出所後の就労を見据えて作業を個々の特性に応じたバランスで実施するなど、柔軟な処遇を実施することを想定しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/102
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103・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
いずれにいたしましても、現行法の下以上によりきめ細やかなそれぞれの特性に応じた処遇を実現をしていこうと、ある意味、この刑事司法の福祉的な機能を強化していくという改正なのかなというふうに理解をしているところであります。
先ほど清水委員の質疑の中でもございましたが、これは、きめ細やかな対応をするという以上は、刑事収容施設側も、今まで以上にスキル、ノウハウ、そしてまた教育のシステムを含めて、体制の強化が求められるところだなというふうに思っております。
そうした関連で一問お伺いいたしますけれども、拘禁刑下における個々の受刑者に対する処遇内容を適切に決定するには、刑事施設の長が十分にその個々の受刑者の資質、これを把握することが一層重要であると考えております。そのための方策について矯正局にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/103
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104・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 刑事施設におきましては、処遇要領を策定するため、個々の受刑者につきまして、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術を活用した処遇調査を行いまして、その特性の把握に努めているところでございます。拘禁刑受刑者に対しましても、このような専門的知識及び技術を活用して処遇調査を行った上で作業や指導の必要性を判断することとなります。
その判断の適正さを担保するためには、一層的確に受刑者の特性を把握することが重要でございます。そのため、実務運用上、このような処遇調査の内容を更に充実させていくとともに、必要に応じまして、受刑者に対し、長年にわたり若年者を中心に専門的知識を用いた科学的調査を行ってきた少年鑑別所の鑑別を受けさせることも可能とする法改正も含めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/104
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105・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
また、拘禁刑に処せられた者には改善更生のために必要な作業を行わせ、指導を行うことになるというふうに、先ほども御答弁の中にあったとおりでございますが、そのうち、この指導と作業のうち、この作業について具体化をしている改正後の刑事収容施設法第九十三条、ここには、改善更生及び円滑な社会復帰を図るために必要と認められる場合には受刑者に作業を行わせることができるというふうに規定をされているところでございます。
かかる条文が想定するのは具体的にどのような場合であるのか、矯正局にお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/105
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106・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
改善更生及び円滑な社会復帰を図るために必要と認められる場合とは、自己の犯罪の責任を自覚、反省させ、犯罪に至った要因となっている悪い点を改めるとともに、再び犯罪に及ぶことなく社会生活を送るために必要と認められる場合をいうものと理解してございます。
具体的には、個々の受刑者の事情によるものの、例えば、就労意欲が乏しく困窮したことを一因として罪を犯した者につきまして、作業を通じて勤労意欲を養ったり職業的な技能及び知識を付与したりする必要性が認められる場合でありますとか、一定の就労経験があり、出所後、就労により生計を維持して社会に定着していく必要性が高い者につきまして、その勤労習慣を維持させる必要が認められる場合などが想定されるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/106
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107・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
また、刑務所の高齢化の問題についても関連して伺っておきたいというふうに思います。
高齢化社会の進展に伴って受刑者の高齢化というところも進んでいるというふうに認識をしているところであります。若年の受刑者と異なって、その身体的な状況に配慮をしたり、あるいは社会復帰に向けて留意すべき点、当然若年者と異なって、出たとしてもなかなか就労まではもう行かないよという御年齢の方もいらっしゃるかというふうに思います。そうした高齢の受刑者に対して取るべきアプローチ、個別具体の配慮も必要になってくるかと存じます。
そこで、矯正局にお尋ねをいたしますけれども、刑事施設の高齢受刑者の現状がまずどうなっているのか。あわせまして、高齢受刑者に今現在行わせている作業の実情、そして拘禁刑下における高齢受刑者に対する今後の御展望についてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/107
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108・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
令和二年における新受刑者の総数は一万六千六百二十人でございますが、そのうち六十五歳以上の高齢受刑者数は二千百四十三名でありまして、新受刑者に占める割合は約一三%となってございます。
このような高齢受刑者に対しまして、現状におきましては、個々の体力や能力等に合わせて様々な刑務作業を実施しているところでございます。拘禁刑下におきましては、円滑な社会復帰のため、社会適応に必要な知識、能力を付与する改善指導であるとか、認知機能や身体機能を維持向上させるための作業に加えまして、釈放後に円滑な社会復帰を図ることが、社会生活を送ることができるよう、関係機関と連携した社会復帰支援を実施するなどして柔軟な処遇の実施に努めてまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/108
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109・安江伸夫
○安江伸夫君 以上、今、矯正局の方を中心にお伺いをさせていただきましたが、次は保護局の方に中心的にお尋ねをしていきたいというふうに思います。
まず、満期釈放者の再犯防止対策についてお伺いをしたいというふうに思います。
近時、満期の釈放者の二年以内の再入率、これ令和元年出所者の数字になりますけれども、二三・三%であります。仮釈放者の数字が一〇・二%ということで、満期釈放者はその二倍を超える実情にあるということで、その再犯防止対策の強化が喫緊の課題になっているというふうに認識をしております。安全な国を目指す上で、この再犯防止対策が最重要の課題の一つであると言っても過言ではありません。
この点に関連をいたしまして、公明党の再犯防止対策強化プロジェクトチームは、法務大臣に対し、令和二年、また令和三年と、満期釈放者対策についての提言を行ってまいりました。
今般の改正におきまして、更生緊急保護の期間が延長されることや、矯正施設収容中から更生緊急保護の申出ができるようにされたことが含まれておりますけれども、これらの趣旨を改めて御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/109
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110・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 満期釈放者についてですけれども、地域で適切な支援につながることができないで孤独、孤立に陥り、結果として再犯に至ることも少なくないというふうに考えております。このような人たちを息長く支援するということは、安全、安心な地域社会づくりのためにも極めて重要であると考えます。
そこで、統計的に再犯による再入所率を見てみますと、刑務所からの釈放後二年以内がその再入所率の増加幅が大きいということに鑑みまして、現行の一年を超えて定期的な生活指導や相談、助言等の更生緊急保護の措置をとることができるよう、その期間を最長一年から二年、最長二年としたいというものでございます。
また、現行におきまして、更生緊急保護の申出は身体拘束を解かれた後にその申出ができるということになって、限られているわけですけれども、刑事施設等から釈放後直ちに必要な措置が受けられることによって円滑な社会復帰ができるように、その申出を矯正施設収容中から行うことができるようにしたいというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/110
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111・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。我が党も強くお願いをしてきた点でございまして、引き続きこの取組、法改正の後も更なる強化をお願いしたいというふうに思います。
今回の改正に伴いまして、満期釈放者等への支援を充実化することができれば、行き場のないその満期釈放者等を支援している更生保護施設が果たす役割、これもまたこれまで以上に大きくなってくるものと考えております。今回の改正法の趣旨を十分に実現をするためにも、更生保護施設の活動の拡充、そして支援が重要であるというふうに認識をしております。
現在、一部の更生保護施設は、施設を退所した者の元を定期的に訪問するなど支援をしてきておりまして、こうした活動も強化していかなければなりません。また、設備が老朽化をし、その役割を果たしづらいと思われる更生保護施設もあり、施設整備についての支援も重要であると考えております。実際にこうした更生保護施設の現場を私自身も拝見させていただいておりますが、本当に限られた財政的な状況の中でも一生懸命取組をやっていただいておりまして、まさに国が責任を持ってこうした取組を後押ししていかなければいけないというふうに考えております。
そこで、お尋ねをいたしますけれども、現在、更生保護施設が行っている訪問支援の意義と、また更生保護施設が満期釈放者等を支援する上で抱えている課題等があればお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/111
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112・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 御紹介いただきました訪問支援事業、全国八の更生保護施設で今実施しておりますけれども、これは満期釈放者らが地域において孤独、孤立に陥ることを防止し、その人の問題性に応じて地域の適切な支援につなぐといったことで再犯の防止等に大きな意義を有しているというふうに考えております。
更生保護施設において満期釈放者らを支援する上での課題としましては、今の訪問支援事業の実施状況を踏まえまして各地域で必要な訪問支援が円滑に行われること、また満期釈放者らに対する支援、その基盤となる建物や設備の老朽化への対応等があるものと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/112
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113・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。
大臣にもお尋ねをさせていただきます。
大臣は、今国会の冒頭の所信の表明におきましても、「犯した罪を償い、立ち直ろうとする人たちを受け入れられる懐の深い、しなやかな社会づくりを推進します。国、地方公共団体、民間協力者が一体となった息の長い支援が可能となるよう、保護司、更生保護施設、協力雇用主等の民間の方々の活動に対する支援や、地域における支援ネットワークの一層の充実強化に取り組んでまいります。」というふうに、このように所信を表明していただいているところでもございます。
今、保護局の方から御答弁もありました更生保護施設のこれらの活動の支援と、また抱えておられる課題の解決を引き続き強力に御推進をいただきたいと考えます。古川法務大臣の御所見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/113
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114・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 更生保護施設は、地域における息の長い支援を担う中心的な存在であり、委員御指摘のとおり、今回の法改正によって、行き場のない満期釈放者等の再犯防止において更生保護施設の果たすべき役割というものはこれまで以上に大きくなってきているということを認識いたしております。
訪問支援の円滑な実施や施設の老朽化への対応など、更生保護施設における課題を踏まえまして、施設がその役割を十分に果たしていけるよう、国として必要な人的、物的体制の整備に引き続き努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/114
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115・安江伸夫
○安江伸夫君 是非ともよろしくお願いを申し上げます。
続きまして、保護司と地方公共団体との連携についてもお伺いをいたします。
犯罪を犯した者の中には、複合的な課題あるいはニーズを持つ者は少なくありません。満期釈放者等が再犯することなく、地域において安定した生活を送るためには地方公共団体による取組が不可欠であり、また、保護観察所が関係機関等と連携をして地方公共団体による支援につないでいくということも重要であると考えております。
そこで、このような支援が広く、また着実に行われるためには、国が地方公共団体に適切な財政支援を行っていくべきだと考えております。その上で、地域で罪を犯した者の支援の最前線に立っていただいているのは保護司の皆様でございます。保護司の活動に対する支援の強化が重要です。
そこで、御確認いたします。現在、保護司と地方公共団体とが連携して犯罪をした者の支援などを行っている実例や、保護司から求められている地方公共団体による保護司活動への支援の内容について保護局にお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/115
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116・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) お答えいたします。
一部の地方公共団体では先進的な取組が見られます。例えば、静岡市ですけれども、保護司らと連携しまして、静岡市の財源で再犯防止相談支援事業を実施し、満期釈放者らに対して寄り添い型の支援が行われていると承知しております。
他方で、今申し上げたような取組を行う地方公共団体というのは一部にとどまっておりまして、実際は保護司がその知見あるいはつてを頼りまして独自に地方公共団体の支援につないでいる例が多いものと認識しております。
保護司から地方公共団体への要望といたしましては、満期釈放者らに対する保護司と地方公共団体が連携した取組の推進、保護司が面接を行うための場所の提供、保護司の相談に応じてくださる窓口の設置などがあるものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/116
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117・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。
今御紹介いただいた静岡の事例ですね、大変すばらしい取組でございまして、こうした好事例、既存のものを広く横展開していくということも重要ですし、まだ俎上に上がってきていない良い取組をしている事例なんかも潜在的にもあろうかと思いますので、そうしたものの抽出も引き続きお願いをしていきたいというふうに思っています。
改めて、また大臣にもお伺いさせていただきます。この保護司と地方公共団体の連携や自治体からの支援を一層推し進めていただきたいというふうに思っております。古川法務大臣の御所見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/117
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118・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 保護司は、地域の安全、安心を支えていただいておりますまさに国の宝だというふうに思っております。
今回の法改正では、再犯率の高い満期釈放者等への支援の充実強化も求められておりますが、これらを踏まえますと、今後は特に保護司と地方公共団体との連携、これを一層緊密にする必要があると考えております。委員の御指摘は大変重要な御指摘だというふうに受け止めております。
法務省としては、地方公共団体に対し保護司活動に対する一層の理解と御協力を求めておりますけれども、地域によってはまだ理解が得られていないというお声もお聞きするところでございまして、地方公共団体の御理解、御協力どう得ていくかというのがこれは大事な課題だというふうに思います。
一方、地方公共団体からは、再犯防止施策に関する国と地方公共団体との役割分担の整理や施策を実施するための財政支援などについて御要望をいただいているものと承知をいたしております。
こうした課題や要望をしっかりと受け止めさせていただいて、保護司と地方公共団体との連携がより一層推進されていくよう努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/118
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119・安江伸夫
○安江伸夫君 大臣、ありがとうございます。是非、保護司の皆様のこの御要望に応えていただけるよう御尽力を賜れば幸いに存じます。
続きまして、今般の改正保護事業法改正によって新たに地域連携・助成事業とされた事業には、公共の衛生福祉に関する機関その他の者との地域における連携協力体制の整備も含まれることが明確化されるというふうになっております。
更生保護事業者が民間の立場から各種の住民サービスを行っている地方公共団体、その他様々な支援を行っている関係者と円滑に連携ができるよう、ネットワークを構築して地域で必要な支援が行われるようにすることが重要であるというふうに考えており、そのような地域の連携協力体制が全国的に整備されていくべきと考えております。
そこで、更生保護事業法の今般の改正の趣旨と、現在そのような連携協力体制を広げるために国は何らかの取組を行っているか、また、現在明らかになっている課題があればお示しを願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/119
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120・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 今回の更生保護事業法の改正におきましては、更生保護事業の三類型のうち更生保護事業の啓発、助成を実施する連絡助成事業を、御紹介いただきました地域連携・助成事業とすることとしております。これは、国、地方公共団体、そして民間の地域連携がとりわけ重要性を増しているということに着目いたしまして、これを事業の一つとして法的に明確に位置付けるということで、更生保護事業の一層の充実を図りたいというものでございます。
地域における連携協力体制を構築するため、法務省では、今年の十月から、全国の三か所、全国三か所で専任のコーディネーターを都道府県域に配置をいたします更生保護地域連携拠点事業を開始することとしております。
今後、この事業を通じて得た知見やノウハウ、課題などを集積しまして、地域において息の長い支援が円滑に行われるよう適切に対応していきたいというふうに考えてございます。
〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/120
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121・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。今御答弁いただいたような内容を引き続き強力に推進をし、また御答弁求めませんけど、大臣の応援も、また大臣の強力なリーダーシップもお願いをしたいというふうに存じます。
続きまして、再度の刑の全部の執行猶予に関連して伺います。
再度の刑の全部執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を今回二年に引き上げるということでございますが、改めてその趣旨をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/121
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122・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
現行法上、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限は一年とされ、一年を超える刑期の場合にはいわゆる実刑に処さなければならないこととされております。
しかし、執行猶予の期間内に再犯に及んだ者について、一年を超える刑期とする場合であっても、改善更生、再犯防止を図る観点からは実刑に処するよりも再度の執行猶予を言い渡して社会内処遇を続けさせる方が適当な場合もございます。そのため、裁判所の処分の選択肢の幅を広げてより適切な処遇ができるようにする観点から、猶予の期間内に再犯に及んだ者について、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を引き上げることが必要であると考えられます。
もっとも、執行猶予の言渡しを受けた者は言わば再犯に及んではならないとの警告を受けていたのであり、それにもかかわらずあえて猶予の期間内に再犯に及んだ以上、その行為責任は執行猶予の言渡しを受けていない者よりも重いのでありまして、再度の執行猶予に対する安易な期待を与えるべきではないと考えられることからいたしますと、刑期の上限を初度の、最初の、初めての刑の全部の執行猶予の場合と同じ三年にまで引き上げることは相当でないと考えられるところでございます。
そこで、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を一年から二年に引き上げ、刑期が二年以下の場合には再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができるようにするものでございます。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/122
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123・安江伸夫
○安江伸夫君 確認をさせていただきました。ありがとうございます。
この再保護観察付執行猶予者は最初の、初度の保護観察中に再犯に及んだ者でありますが、再度の保護観察におきましては、再犯要因を的確に把握した上で、必要な指導監督が行われるよう特に留意すべきであるというふうに考えます。
この点についてはどのように対応していくのか、保護局にお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/123
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124・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 今御指摘いただきましたとおり、今回の改正では、再度の保護観察付執行猶予を言い渡された者に関しまして、再犯に結び付いた要因の的確な把握に留意して保護観察を実施しなければならない旨を明記した上で、その要因を的確に把握するため、原則として少年鑑別所の長に対して鑑別を求めるものとする規定を設けるなどの特則を設け、それまで処遇に携わった更生保護官署以外の視点を取り入れ、その問題性について多角的な分析を行って、より慎重かつ綿密な処遇方針を立てて保護観察を実施することとしております。
改正法施行後は、この特則も活用いたしまして、再保護観察付執行猶予者の特性に応じた指導、支援を適切に行い、再犯防止、改善更生を図ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/124
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125・安江伸夫
○安江伸夫君 今の御答弁いただいた今回の改正によって、保護観察付執行猶予を選択しやすくなるということになろうかと思います。ただ、他方で、この選択がしやすくなったとしても、肝腎の保護観察の処遇が充実していなければ意味がないというふうに思っております。
今般の改正によりまして、保護観察処遇はどのように充実強化なされることになるのか、保護局にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/125
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126・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 今回の法改正により、保護観察処遇につきましては、犯罪に結び付く要因及び改善更生に資する事項を的確に把握して保護観察を実施すること、保護観察対象者に対しましては、更生保護事業者らが行う特定の犯罪的傾向を改善するための専門的援助の受講を義務付けることを可能とすること、また、当該専門的援助の受講状況など特定の行動の状況を示す事実であって、指導監督を行うために把握すべきものの申告を義務付けることなどの規定を新設することとしております。
これら改正によりまして、保護観察対象者の犯罪の要因及び改善更生に資する事項を把握した上で、その特性に応じた働きかけを一層的確に行うことができるようになるものと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/126
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127・安江伸夫
○安江伸夫君 この専門的な援助を受けるようこれを義務付けると、専門的援助を受けることを義務付けるということを御答弁いただいたところでありますが、この専門的援助を受けるよう指導したり義務付けたりする改正につきまして、再犯防止のためには、刑務所出所者等を支援する方策だけではなくて、犯罪的傾向に応じた指導を強化することも必要であり、かかる改正は大変重要であるというふうに認識をしております。
もっとも、現在、更生保護施設が行う処遇のうち、国が施設に対しまして対応する委託費を支払っているのは、薬物依存、依存性薬物の再乱用防止に向けた処遇に限られているものと承知をしております。そのほかの、例えば性犯罪の防止に向けた処遇などには委託費が措置されていないとのことであります。
法改正によって保護観察対象者への指導強化を図ろうとする以上は、更生保護施設に対する委託費をその処遇の内容に対応したものに整備すべきものと考えております。更生保護施設による処遇等の現状と課題を保護局にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/127
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128・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 更生保護施設におきましては、近時、保護観察所において実施している専門的処遇プログラムと同様、認知行動療法に基づく処遇でありますとか、薬物以外の依存を抱える者に対する処遇、社会生活に適応するための生活技能訓練など、各施設において創意工夫を凝らした処遇が実施されるようになってきております。そのうち、薬物の再乱用防止に向けました処遇につきましては、これに特化した委託費が措置されているというところでございます。
今回の法改正を踏まえると、更生保護施設における処遇につきましては、薬物以外の依存を抱える者等に対する処遇につきましても的確に対応できるようにするための国から更生保護施設への支援の在り方、専門的な援助の実施に伴う報告等の新たな負担が発生することへの対応などの課題があるものと認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/128
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129・安江伸夫
○安江伸夫君 古川法務大臣にお尋ねをいたします。
この委託費を支払う処遇を一層拡充をしていただきまして、再犯防止を強化していただきたいと存じます。大臣の御所見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/129
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130・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 御指摘のとおり、再犯防止のためには、薬物の再乱用防止のみならず、犯罪傾向に応じた指導や援助を強化することが必要であり、更生保護施設における処遇の充実強化は重要な課題であると認識をしております。
更生保護施設における処遇の充実強化に向けて、専門的な援助を含め、処遇の内容や負担に応じた委託の在り方の検討など、国として更生保護施設の人的、物的体制整備に向けた必要な支援を行い、再犯防止対策を強化してまいりたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/130
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131・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございます。
薬物は従前から依存性がある犯罪でございますので再犯防止の取組やられておりますけど、先ほど申し上げた性犯罪などもやはり再犯率が高い犯罪類型となっております。やはり単純にこの再犯の防止をするためには専門的なこうした処遇が必要になってきますので、今申し上げた委託費の対象の処遇、これを拡充をしていただきたい、これを重ねて強くお願い申し上げたいというふうに思います。
最後の質問とさせていただきます。
保護司活動の手続面での負担軽減、なり手不足の解消のため、保護司活動の一部をウエブ上で行うことができる保護司専用のホームページの運用が開始されたと承知をしており、非常に有益な取組だというふうに考えております。
こうした保護司活動のデジタル化はもとより、刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討も行われていると承知をしております。
刑事司法制度の一翼を担う更生保護官署におきましても、更生保護行政のデジタル化、これを推進すべきと考えますが、デジタル化によりどういう利点、また発展が見込めるのか、御見解をお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/131
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132・宮田祐良
○政府参考人(宮田祐良君) 保護司専用ホームページの運用を昨年から開始しておりまして、報告書の電子化、あるいは処遇に役立つ研さん資料への簡便なアクセスなど、保護司の負担軽減やその活動基盤の整備を図っているところでございます。
更生保護行政のデジタル化の推進というお尋ねでございますけれども、これら事件に関するデータをデジタル化して関係機関等とのデータ連携を一層進めることなどによりまして、保護観察処遇に活用することができる情報の質、量の充実化に加え、業務の効率化を図ることができるものというふうに考えております。
また、こうしたデータをAI技術も活用し詳細に分析することで、より実効性のある再犯防止策の立案にも資するものと考えております。AI技術導入に関する調査研究を本年度実施いたしますけれども、その成果も踏まえ、保護司活動を含む更生保護行政のデジタル化及びこれに伴う処遇の一層の充実に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/132
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133・安江伸夫
○安江伸夫君 ありがとうございました。
時間が参りましたので、以上で質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/133
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134・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時五十六分休憩
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午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/134
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135・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/135
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136・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
本日も、古川法務大臣にはよろしくお願いいたしたいと思います。
私の方からも、今回の法改正の主な目的である改善更生及び再犯防止に向けた取組について幾つか確認をさせていただきたいと思います。
先ほど来、いわゆる刑罰の趣旨、目的についての議論もありまして、その犯罪に対するいわゆる応報の目的、そして社会に対する警鐘並びに再犯防止といった目的があるということ、先ほど刑事局長からの御答弁でもございましたが、とはいいつつ、長年、日本の刑罰は犯罪に対するいわゆる応報の意味合いが強かったという意味では、今次法改正によって再犯防止の方向にかじを大きく切ったという意味では私自身はかなり革命的な法律改正ということだと考えておりますし、その趣旨について私自身は評価をいたしております。が、しかしながら、今回の法改正の目的を達成するためには、再犯防止に向けていかに実効性のある制度を今後つくり上げていくのかということ、同時に、現場における具体的な取組についてどのように今後推進していくのかということが問われているというふうに思っております。
そうした意味では、まず、その職員のサイドでありますが、今回創設されます拘禁刑では、更生改善に向けて受刑者ごとに合った処遇が必要となるということでありますので、受刑者に対する職員らのいわゆるスキル、それから、従来はいわゆる犯罪応報目的という刑罰であったものが意識を切り替えて対応していっていただかないといけないという意味では、かなり意識改革の必要性というものが現場では問われているというふうに思っております。そうした取組を行っていく上で、私、少し懸念を持っているところがございますので、その点についてまず法務大臣にお伺いしたいと思います。
今回の法改正、刑法第十二条二項の刑の内容がいわゆる作業と指導という形に拡充をされるということになります。刑罰として実施される各種の指導等の有効性というものについて、私自身は、正直言って、現場の対応という意味では少し、本当に有効性が高いのかということについて疑問を少し持っております。と申しますのも、受刑者は、刑務所の中でいわゆる懲役、作業を行うということでありますので、当然のことながら、指導者や評価者に迎合する、要は、いわゆる模範囚であるという姿勢をそもそも示さなければいけないという意味では、他者評価を意識した皮相的な対応になってしまうのではないのかという懸念を実は私自身は感じておりまして、そうした意味で、受刑者のいわゆる指導評価者のスキルアップがこうした面で今後非常に必要になってくるのではないのかという問題認識を持っております。
この点について、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/136
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137・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 拘禁刑の下では、今委員が御指摘になりましたとおり、受刑者の表層的な態度のみにとらわれることなく、その真の特性、真の特性をしっかりと見極めた上で、その上で処遇の在り方や手法を判断、実施することがより一層重要になるというふうに考えています。ですから、刑事施設の職員の意識あるいは向上のスキルアップというものは、これは必要不可欠であると、まさに委員御指摘のとおりだというふうに考えております。
そこで、刑事施設の職員に対しましては、今回の法改正の趣旨を十分に理解をさせました上で、例えば個々の受刑者の特性等を的確に把握し、その特性に応じた効果的な指導を行うこと、受刑者が自発的に作業や指導に取り組むよう意欲を引き出し、動機付けを高めることができるように、必要な知識や技能を習得させるよう、これまで以上に取り組んでいきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/137
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138・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
今大臣の御答弁の中に自発性を高めるという御発言がございましたが、私自身も自発性をいかに引き出していくのかということは物すごく大事なことだと認識しております。
と申しますのも、現在のいわゆる刑務所内での作業というのは強制ということでありますので、有識者、専門家の間でも、この刑務所内での作業自体は再犯防止効果としてほぼ機能していないと、こういう指摘もあるわけであります。そうした意味では、いわゆる自発性を高めるということについて、収容者の改善更生を促す上でいかにして、では自発性を高めていくのかということについて、大臣に何か御所見があればお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/138
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139・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) まさに委員御指摘のとおり、受刑者自身に自分が受ける処遇の意義を理解させて、これを自発的に受ける気持ちを持たせる、これはとても重要なことであるというふうに認識をいたしております。
そのため、これまでも、実務上、受刑者が自発的に処遇を受ける意思がない場合には職員による面接を行ったりなど、本人に対する動機付けを高める働きかけ、必要な働きかけをこれまでも行ってきたところでございます。
今回の法改正によりまして、作業や指導を組み合わせた柔軟な施設内処遇が実施できるようになることを踏まえまして、刑事施設職員の意識の向上やスキルアップを図った上で、受刑者に対しては、受刑期間を通じて、施設内処遇に対する本人の希望や意欲などを丁寧に聴取して、動機付けを高めるための働きかけを手厚く行っていくということなど、これまで以上に効果的な施設内処遇の実施に努めていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/139
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140・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
ちょっと通告をしていないんですが、矯正局長で結構ですので確認させていただきたいんですが、刑務所内作業を自発性を持って取り組んでいただくということになった場合に、その作業自体も一定の選択肢というものが求められると思うんですが、私、事前に確認させていただきましたところ、その刑務所内作業について幾つか選択肢があるということは伺っておりますが、そもそもこの刑務所内作業の種類だとか作業内容についてはどういった形で決まっているのかということについて、お答えできる範囲でお答えいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/140
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141・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/141
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142・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/142
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143・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 突然のことでございますので、細かなところはちょっと御容赦いただきたいと思いますが、作業としましては、木工であるとか印刷、洋裁、金属、革工業、農業、その他、あるいは構外での作業、こういったものを実施しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/143
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144・川合孝典
○川合孝典君 そうした種類の作業が実際にあるということでありますが、そうした作業の、限られた作業の種類でいかにしていわゆる受刑者の方の自発性を高めるのかということが今後問われるということになるわけでありまして、この刑務所内作業の内容ですよね、このことについても今後検討する必要があることだと私は思っているんですが、申し訳ございません、大臣に通告しておりませんが、今御答弁お聞きいただいて、どうお感じになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/144
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145・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 先ほど私からも答弁申し上げましたけれども、自発性を高めると、受刑者がですね、これは非常に大事な観点だと思っておりますから、これまでも様々な取組は現場においてなされているとは思いますが、更に加えて、今回の法改正を機に更にこの自発性を高めるために心を砕いていく、そのような工夫をしていくというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/145
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146・川合孝典
○川合孝典君 突然の質問にもかかわりませず、前向きな御答弁いただきまして、ありがとうございます。
ちょっと質問の順番を変えて、問いの六番の方から先にやらせていただきたいと思います。
作業報奨金に関する質問でありますが、刑務所内で作業を行っている受刑者に対して、いわゆる作業したことに対して、一定の見返りというか、報奨金という形で支給されているということは皆さんも御存じかと思いますが、この金額が一体どうなっているのかということを昨日質問のレクで確認させていただきましたところ、一等工から十等工までのランクがあって、一等工が一時間当たり五十五・五円で十等工が一時間当たり七・七円という金額が設定をされております。
一時間作業して七・七円ということでありますが、法律に基づいてこの作業報奨金が支給されているということ自体は分かっているんですけれども、この金額というのはどういった経緯で設定されたのかということについて確認をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/146
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147・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
作業報奨金、刑務作業の対価性のない報奨という、こういう性質でございます。
それで、ただいま御紹介いただきました単価といいますか、時間当たりの単価につきましては大臣訓令でその基準を定めておるところでございますが、その支給金額の考え方でございますが、釈放時の支給額が生活保護法に基づく一か月の生活扶助基準額を目安として設定しているところでございます。
令和四年度における受刑者一人当たりの予算上の報奨金の釈放時の平均支給額、これは七万九千九百二十円となってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/147
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148・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。初めて聞かせていただいて、大変勉強になりました。
ちなみに、このいわゆる作業報奨金の予算というのは、これは法務省の予算ということでよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/148
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149・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 法務省予算でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/149
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150・川合孝典
○川合孝典君 だとすると、限られた予算の中でこんなやりくりもしなければいけないということですから、当然、金額を大きく動かすということについては、そもそも対価性がないということでもありますので、なかなか現時点では難しいんだろうと思います。
その上でなんですけれども、いわゆる生活保護レベルの最低水準というところで設定していただいているということなんですが、いわゆる再犯防止を行うということを考えたときに、長年刑務所内で懲役に服し、罪に服し、そして日常社会に満期で出所をするということになったときに、新たな生活をリスタートさせるに当たってその金額というものがいわゆる十分なのか。
同時に、一定の時間を掛けて生活の再建を行っていくという上で、今おっしゃった七万九千九百二十円ですか、平均金額、この金額が果たして十分なのかということを、私、これまでの刑法であればこういう議論は一切しないと思うんですが、いわゆる更生改善にかじを切るということにし、さらには、いわゆる再犯防止を行う、二度と刑務所に戻ってこないようにするということを考えたときには、出所後の生活というものを視野に入れた上でどういった刑務所内での生活を送っていただくのかということに、ここにも視点を当てなければいけないと思うんですね。
そうなったときに、この金額が出所後、何年も刑務所にいた後、出所した後、社会生活を始めるに当たって、大臣としてはこれ十分な額だと思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/150
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151・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) この作業報奨金、刑の執行としての作業ですから、一般の労働契約に基づく対価、報酬としての、賃金としてのですね、位置付けとはやっぱりこの報奨金というものはこれ内容が必ずしも一致するとは思いませんけれども、しかし、先ほど来委員とこの場で御議論させていただいておりますように、やはりその再犯防止、改善更生、ここに重点を置いて考えた場合に、やはりここはそういう観点、そして社会情勢ということもございます。
そういうことも考えた上で、やはりこの適正な金額というのはどの程度のものであろうかということについては、私は、改めてそういうことを考えていく、検討していくと、それは大事なことだろうというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/151
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152・川合孝典
○川合孝典君 刑務所内で作業を行う中で、先ほど木工なんかもやっているという話ありましたが、矯正展でしたっけ、年に一回、刑務所内で作業して作ったものを展示販売を行う企画をやっていらっしゃって、今年も六月に入ったらそれが開催されるという話を伺っております。
そこで実際に作られたものを見てみますと、非常に手の掛かったものが破格の値段で当然置かれているわけでありますけど、ああしたものを見ていたときに、いわゆる再犯防止という観点から考えたときに、刑務所内で作業をするということを、対価性の問題をどう捉えるのかというのは別の問題として、刑務所内で作業をするということを通じて働くことの動機付けになるような枠組みに見直した方がより社会に出てから再犯防止の効果が高いんじゃないのかということを実は私はかねがね感じていたわけでありまして、したがって、働くことの動機付けとなるような、このいわゆる作業報奨金という考え方がいいのかどうかは分かりませんけれども、動機付けになるような、例えば何らかの手当といったようなものがいわゆる服役中の方に対して支給をされるといったようなことも、今すぐは無理にしても、考えてみる価値はあるんじゃないかというふうに考えておるんです。
今回こういった形で刑法が改正されるということ自体が、これまで、正直、の経緯を考えたときに、皆さん、我々も大きく意識を変えて物事にアプローチしなければいけないということだと思っておりますので、この機会にそういったことについても是非検討の一助にしていただければと思うんですけど、お願いできますでしょうか。はい、ありがとうございます。
それでは、質問戻って問いの三番の方に行かせていただきたいと思います。
今後、いわゆる服役中の受刑者が社会復帰を容易に行っていく上でどういう形で環境を整えていくのかということを考えたときに、欧米なんかのいわゆる例を拝見しておりますと、刑務所から外部に対して通勤していわゆる仕事をしているといったような、社会との接点を増やすような取組をしている欧米諸国もあるというふうに聞いており、そのことの結果、再犯防止効果が極めて高くなっているという指摘があります。
また、イタリアやノルウェーなどでは、受刑者は刑務所内にいる間も日常生活に近い環境で市民サービスにも例えばアクセスができるといったような事例もあります。あわせて、ノルウェーでは、福祉的な支援が必要な受刑者を自治体担当者が途切れることなく支援をしている、こういった事例もあります。先ほどの高齢受刑者の御指摘が安江先生からありましたが、そうした点、問題についても、このような取組を行うことができれば問題解決につながっていくと思っております。
こうした欧米諸国の取組事例から、日本でも、社会との受刑者が接点を増やせるような枠組みをつくることで社会復帰を容易にできる環境を整えるということが、今後、再犯防止効果を高める上で効果が期待できるのではないかと考えられますが、この点についての御認識をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/152
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153・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
この社会復帰のためには、御指摘のとおり、受刑中から社会と接点を持つということは、これは非常に大事な視点だというふうに考えています。
今回の法改正におきましては、これを改めて明記をいたしました。受刑者処遇の一層の充実を図るため、出所後の就労や帰住先の支援など受刑者に対する社会復帰支援を刑事施設の長の責務として行うこと、これを明記をいたしております。
また、その効果的な実施を図るために、刑事施設の外の適当な場所で社会復帰支援を行うことが可能となり、例えば、出所後の就労先などの見学ですとか帰住予定の福祉施設の事前体験など、これまで以上に受刑中からの社会との接点を持つことができるようになるというふうに考えています。
そこで、今申し上げましたとおり、これまでもやっておりましたところですが、明記をすることによって更にこの施策を充実していきたいということを考えておるわけですけれども、そこで、今委員の方から海外の事例を幾つか引用されて、そのような考え方でどうかという御質問がございましたけれども、この受刑中から民間企業を含む社会とのつながりを意識させながら作業を行うこと、これは社会復帰を図る上で重要なことだということは今申し上げたとおりなのですが、現在でも、実は現在でも、限られた受刑者に対してではありますけれども、民間企業において刑務作業を実施させておりまして、具体的には、職員の同行なしに民間企業に通勤させる外部通勤作業ですとか、受刑中に内定を得た職場での仕事を体験させる職場体験などを実施しているところです。
外部通勤作業等は、刑事施設からの円滑な社会復帰を図る上で重要な処遇方策でありまして、法制審議会の答申においてもその促進が求められております。社会とのつながりを意識したこの矯正処遇の更なる充実を是非進めていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/153
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154・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
外部にいわゆるトライアルというか、職場の経験をする形で若干の対応をしていただいているということについては、昨日も少しその辺りのところを法務省さんの方から御説明を受けましたが、ちなみに、そういったいわゆる外部の企業等に見学というか、経験、体験という形で実際に行かれている方というのは具体的にどのぐらいの人数いらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/154
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155・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 外部通勤作業でございますが、令和三年十二月末現在の数字でございますが、三施設六名が外部通勤作業を実施しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/155
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156・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
大臣、お聞きのとおりということでありまして、一応枠組みとしてはあるんですが、細々と、一応制度はあるよということ程度の実は今現状だということでありまして、これ、私がこの問題を提起させていただきましたのは、これイタリアの事例ということなんですが、自治体のトライアル雇用を利用して仕事に実際に刑務所から通っているということで、相当な人数の方が実際外部に通勤をしているという事例があります。
逆に、ボランティアを含めて外部の人間がプログラムや余暇の活動の、刑務所内の受刑者に対する余暇の運営を行っているという、ボランティアがそういった取組を行っているというようなこともあって、内部と外部が相互に協力をしながら受刑者の立ち直りを促すという作業をしていらっしゃるわけであります。
日本でも、これまでの従来の枠組みをうまく活用してということから更に一歩を踏み出して、いわゆる本格的なトライアル雇用というものを一定の要件を満たしたいわゆる受刑者の方に対しては広げていくといったようなことを行うことが、いわゆる再犯防止に対して一定の効果があるのではないのかと私は考えているんですが、こうした考え方について大臣はどうお感じになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/156
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157・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今委員が引用されましたイタリアにおける取組なんですけれども、いわゆる社会内処遇をイタリアでは取り組んでおられるということなんですが、これはその矯正というカテゴリーよりも保護観察措置としての取組であるというようなことも聞いております。
それはお国柄、それぞれの国でいろいろまちまち微妙に異なるのだろうと思いますけれども、いずれにしましても、委員が御指摘のその方向性、考え方というものは、私は、その改善更生、再犯防止につながるという観点からしますと、非常に大事な視点だというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/157
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158・川合孝典
○川合孝典君 いわゆる受刑者の方は、一般の国民の皆さんからするとやっぱり怖いという感じもあり、さらには前科があるということで、社会もやはり受け入れにくいという意味では、満期出所した方がやっぱり新たに仕事と生活の基盤を得て生活を再建するというのは相当やっぱりハードルが高いのが事実だと思うんです。
社会になかなか受け入れられないことが結果的に、行き場を失った人が改めてもう一度罪に手を染めてしまうという、犯罪に手を染めてしまうということにもつながるという意味でいくと、これまでの日本の刑法の運用ということとは別に、今回法改正を行うということでありますので、今問題提起させていただきましたこと、そして、この間大臣が御答弁いただいたことも含めて、これまでとは発想を変えて、何をすることが再犯防止をより進める上で効果的なのかというこの新たな目線、切り口から検討することが必要だということを御指摘をさせていただきまして、時間が参りましたので私の質問は終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/158
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159・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
前回、一般質疑だったんですけれども、ちょっと時間がなくて途中になったものもありますし、本来、今日は刑法の質疑なんですが、それの前に、成年後見制度と、それから子の連れ去りの問題について質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず、成年後見制度ですが、前回、後見人の費用、そのことについてお尋ねをいたしました。成年後見人等の報酬額の目安、大体相場あるんですかということで、最高裁判所事務総局家庭局長からは、いや、それはお示しすることができませんという御答弁でありました。
ところが、今日、資料でお付けさせていただいていますけれども、成年後見人等の報酬額の目安ということで、これは家庭裁判所の方で、ホームページには出ております。
これを見ると、報酬額の目安が書かれておりまして、管理財産額が一千万を超え五千万円以下の場合には基本報酬額三万から四万、管理財産が五千万を超える場合には基本報酬額は月額五万から六万円としますというふうに書いてあります。
ですから、例えば報酬額が五万円としたら年間六十万円なんですが、問題は、一旦後見人を決めてしまうと、一生ですね、一生それを外すことができない、やめることができない。だから、十年たつと六百万円、二十年たつと一千二百万円の報酬金額が掛かってくるということです。
今現在、認知症の方々、七百万人おられるというふうに言われていますけれども、二〇二五年になれば八百万人になる。ところが、後見人というのは二十四万人にとどまっていて、なかなか後見人を選ぶ方が増えないというような状況にあるわけです。
だからこそ、こういったきちんとした、大体報酬額の目安、こういったこともきちんと皆さんにお示ししていくということも大変大事ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/159
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160・手嶋あさみ
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
東京家庭裁判所の資料を御共有いただきまして、ありがとうございます。
この資料は、この資料の一の三段落目にもございますとおり、東京家庭裁判所が、これまでの東京家庭裁判所における審判例等、実務の算定実例を踏まえて、標準的な報酬額の目安を示しているものでございます。
委員御指摘のとおり、報酬の金額は制度を利用される方々にとって大変重要な事項でございますので、その予測可能性を可能な限り確保するということが大変重要だという御指摘の趣旨はよく理解をしているところでございます。
もっともでございますが、報酬の性質というところに、この資料で申しまして最初のところでございますけれども、この報酬……(発言する者あり)はい、申し訳ございません、成年後見人の報酬は、家庭裁判所が後見人及び被後見人の資力その他の事情によって被後見人の財産の中から相当な報酬を後見人に与えることができるという民法の定め、八百六十二条の定めに基づきまして審判という形で決定をするものでございますけれども、この資料にもございますとおり、成年後見人に対する報酬は審判で決定されるということでございまして、裁判官が対象期間中の後見等の事務内容、それから、管理する、成年後見人等が管理する財産の内容等を総合考慮して、裁量によって定めるということになってございます。
この御本人の状況等にもよりまして、成年後見人等が行う……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/160
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161・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 端的に答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/161
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162・手嶋あさみ
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) はい。
成年後見人等の行うべき事務も多様でありまして、裁判官の職権行使の独立の観点から、なかなか統一的な基準を置くということも現行法の下ではできないことでございますので、正確にこれを御説明するというのは難しいところがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/162
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163・東徹
○東徹君 いやいや、これ、家庭裁判所のホームページに掲載されているじゃないですか。こうやって示してくれたら、皆さんが、ああ、大体の相場観はこういうものなのか、目安が分かるわけですよね。これ、家庭裁判所東京支部では、立川支部でやってくれている。だから、これを全国でもちゃんと示してくれたら、皆さん、大体、ああ、こんな金額なのかと、後見人頼んだらこんな金額なのかということが分かるわけですよ。まずは、こういったことをするということが大事だということです。
今の後見人制度なんですけれども、これは途中でやめられないんですよ、やめられない。負担が重たいからもうやめようと思っても、これやめられない。また、中には、弁護士さんがおられて、弁護士さんの中にもいい人もおれば悪い人もおって、結構、非常にとんでもないことを言われるケースもあるわけですよ。替えたいと思っても、これも替えられない。だから、こういう制度ではやっぱり使いづらいから、もっと使いやすいように制度を見直す必要があるんじゃないんですかということで、親族などの負担軽減のためにどのような制度を見直すべきと考えているのか、これ大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/163
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164・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 今年の三月に第二期成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されましたが、その策定に向けた専門家会議での検討におきまして、現行制度の問題点として、本人の実際のニーズにかかわらず、一時的な法的課題等が解決した後も成年後見制度の利用が継続することが指摘されました。また、制度の見直しの方向性に関する指摘としましては、本人にとって適切な時期に必要な範囲、期間で制度を利用できるようにすべき、後見人等の報酬の決定についてできるだけ予測可能性の高い制度にすべきなどの指摘がなされたものでございます。
これ、委員の御関心と申しますか、問題意識と沿った指摘であろうかというふうに思うわけですけれども、今御紹介しましたこの計画では、このような指摘も踏まえて、成年後見制度の見直しに向けた検討を行うということとされたところでございます。
そして、このような中、今年の六月には、成年後見制度の見直しについて検討する研究会が立ち上げられることとなりまして、法務省からもこの研究会に担当者を参加させることといたしております。この研究会では、成年後見制度をより利用しやすい制度とするための方策などについて幅広い検討がなされるものと承知をしております。
法務省としては、まずこの研究会における議論に積極的に参加をいたしまして、制度の見直しに向けた検討を深めていきたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/164
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165・東徹
○東徹君 ありがとうございます。是非見直しを検討していっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
家庭局長におかれましては、もう質問がございませんので、委員長の判断で決めていただいて結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/165
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166・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 手嶋家庭局長、御退席いただいて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/166
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167・東徹
○東徹君 次に、子の連れ去りのことについてお伺いさせていただきたいと思います。
子供を一方の親に会わせない状態は欧米主要国などでは犯罪行為とみなされているということで、二〇二〇年七月八日ですけれども、EU議会が日本に非難決議を行いました。ということで、これはもう国際的にも非常に問題になってきているということであります。
共同親権、日本は単独親権で、やっぱり共同親権にすべきじゃないかという議論があります。その中で、結婚前にですね、結婚前に共同親権を婚前契約、婚前契約書みたいな形で結婚前に共同親権を結んだらどうかというような観点から質問させていただきたいと思います。
まず最初にお聞きいたしますが、民法七百五十四条がありまして、ここには、夫婦間でした契約というのは、婚姻中、いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができると、ただし、第三者の権利を害することはできないというふうになっておりますが、がなんですが、これが時代の変化もあって、平成八年には法制審議会の総会でこの規定を削除するということが決定をされております。ただ、平成八年に削除することが決定されたにもかかわらず、いまだにこの規定が残っている理由と、近い将来削除するのかどうか、この点についてまずお伺いをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/167
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168・金子修
○政府参考人(金子修君) 法制審議会の平成八年の答申におきまして、夫婦間の契約の取消し権に関する民法七百五十四条を削除する旨が含まれているということは御指摘のとおりです。
法務省は、その当時、この点も含め法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備していたところでございますが、この答申に含まれていた一部の論点、例えば夫婦の氏に関する改正部分等について国民の間に様々な意見があったほか、当時の政権内においても様々な意見があったこと等から、全体として改正法案の提出にまでは至らなかったものでございます。
もっとも、法務省としましては、法制審議会における審議及びその結果である答申については重く受け止めるべきものであると考えており、御指摘の民法七百五十四条の規定の取扱いについても可能な限り早期に対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/168
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169・東徹
○東徹君 もう二十五年以上たっているわけですから、もう四半世紀なわけですから、可能な限り早期にということですけれども、余り期待できないなというふうに思っております。
そんな中で質問させていただきますが、民法第七百五十四条があることで、夫婦である期間に離婚後の子供の親権をどちらの親が持つかを夫婦間で決めたとしても、これを取り消すことができるため、決めても意味がなくなってしまうわけです。今、結婚する前にですね、結婚する前に離婚後のことを決めておく婚前契約書を結ぶよう勧めている団体もこれあるわけなんですね。
我が国として、これ離婚後も共同親権を認めていればこういったことが必要なくなるわけでありますが、共同親権の変更について現状どのように考えているのか、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/169
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170・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 父母の離婚後の子の養育の在り方につきましては、これは子供の生活の安定、それから心身の成長に直結する問題でありまして、子供の利益の観点から大変重要な課題だというふうに認識をしています。
父母の離婚後の親権制度につきましては、離婚後も父母の双方が子供の養育の責任を負うべきであるとして、いわゆる共同親権制度を導入すべきであるとの意見がある一方で、共同親権制度を導入することに対しては、父母の離婚後に子供の養育に関する様々な事項の決定を適時に行うことが困難となるといった慎重な意見もあるなど、様々な意見があるものと承知をいたしております。
父母の離婚後の子の養育の在り方や、それに関連する諸課題につきましては、現在、法制審議会において、これらの意見も踏まえながら様々な角度から幅広く調査審議中でございます。引き続き、子の最善の利益を確保する観点から、充実した調査審議が行われることを期待をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/170
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171・東徹
○東徹君 これはいつもの答弁でございますので、また質問をさせていただきたいと思います。
では、刑法について質問させていただきます。
今回、拘禁刑を創設するということでありますが、その目的は再犯を防止することということで、再犯防止は当然これも大事な観点だというふうに思いますけれども、そもそも犯罪を抑止していくということも重要だというふうに考えております。
今回の法案では、懲役刑や禁錮刑を廃止して新しく拘禁刑をつくるということですけれども、一般的な国民の感覚として、懲役というと、何か重く厳しい処罰というふうなことが現在私は浸透していると思います。この間の代表質問でもお聞きしましたが、やっぱり懲役刑、無期懲役とか、そういった言葉というのは非常に重たいというふうな言葉だというふうに認識していますし、大体そういったことは浸透していると思いますけれども、それが無期拘禁ということに変わるというふうにお聞きしております。
一般的な国民の感覚として、懲役というと重く厳しい処罰と浸透しているわけですけれども、そのこと自体が犯罪を抑止する効果があったと思いますが、なぜ新しい刑の呼び名が拘禁刑、拘禁刑という言葉になったのか、そのことについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/171
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172・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
刑事施設に収容する新たな刑の名称につきましては、その創設を内容とする法制審議会からの答申の後に、その調査審議を行った同審議会部会の委員であった刑事法研究者、弁護士、マスコミ、研究者、被害者の御遺族に御参加いただいて意見交換会を開催し、御議論いただいたところでございます。
新たな刑の名称につきましては、この意見交換会においても指摘されたところでございますが、まず、刑の内容を適切に反映した名称であり、刑罰の性格、目的に照らしてふさわしいものであること、そして簡潔かつ平易な名称であること、また他の法令上の用語との関係で問題を生じないことが求められると考えるところでございます。その上で、具体的な名称としては、意見交換会において拘禁刑との名称を支持する意見が多数を占め、これに対する異論はなかったものと承知をしております。
以上を踏まえて検討した結果、新たな刑の名称を拘禁刑とすることとしたものでございます。
なお、委員から懲役との比較でという御指摘がございましたので、ちょっとこの点について具体的に申し上げますと、拘禁とは、一般的な用語といたしまして、捕らえてとどめておくことを意味するとされておりまして、これと刑を組み合わせた拘禁刑との名称は、刑罰として刑事施設に拘置するという内容を適切に反映したものとなること、字句といたしましても、拘には捕らえること、捕まえておくことなどの意味が、禁には自由な行動をさせないこと、閉じ込めておくこと、戒めなどの意味がございまして、峻厳な意味内容を含むものでございますので、これと刑を組み合わせた拘禁刑との名称は、刑罰の性格、目的に照らしてふさわしいものであると考えるところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/172
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173・東徹
○東徹君 今の御答弁にちょっと関連でお聞きしますけれども、例えば、これ、拘禁刑にすることによって作業と指導の両方ができるようになるというふうなことをずっと答弁されておりますけれども、例えば懲役刑であっても、懲役刑という名称のままで作業とそれから指導、こういったことが両方できるような、そういった改正というのは、これは検討なされなかったんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/173
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174・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
まず、今回の議論は、先にどのような刑の内容とするかということが決まりまして、それからその名称ということで、その名称について検討したものでございます。
委員おっしゃるとおり、今私どもが御提案申し上げている内容の、拘禁刑の内容のまま懲役刑とすることも考えられなくはないのかもしれませんが、具体的な議論としては、そういった懲役刑のままで置くという議論はされておりませんで、現在、懲役刑ということで既に意味内容を持った刑がございますので、これと違う刑を定めるということから、懲役刑とは異なる、あるいは禁錮刑とは異なる刑の名称ということで、先ほど申し上げたような経緯で拘禁刑という名称としたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/174
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175・東徹
○東徹君 だから、大事なことは、まずは犯罪を抑止していくということが大事だと思いますし、その次に再犯を防止していくという、そういった考え方が僕は大事だというふうに思うわけですね。
だから、まずは犯罪を抑止していくということであれば、懲役刑というものを残しておいて、そして懲役刑であったとしても、きちんと作業とそれから指導が、僕は余り好きな言葉じゃないですけれども、ベストミックスとかっていつもおっしゃっていますけれども、ベストミックスでやっていくということの方が犯罪を抑止し、そして再犯も防止することができる、そういうふうに思うわけであります。
続いてお聞きしますけれども、懲役刑というのは、作業は法律上の義務であって、その上で性犯罪者などには個別のプログラムが、これ受講などが現在も行われています。要するに指導と同じ形ですよね、こういうのは。拘禁刑では、その作業は、作業の時間を指導などのために使うことができるようになるわけですけれども、そうすることで刑務所を出た後の再犯を減らすことができるようになるのかどうか、この点についてもお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/175
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176・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 刑事施設では、これまでも再犯防止のために、受刑者の特性に応じて可能な範囲で職業訓練を含む作業や改善指導を行うとともに、社会復帰に向けた就労支援などにも取り組んできたところでございます。近年、二年以内再入率も低下をしてきておりまして、刑事施設における処遇は再犯防止に一定の効果を上げているものというふうに認識をいたしております。
もっとも、現行法の下では作業が刑の本質的要素とされておりますことから、作業以外の指導や支援を重点的に行う必要があると認められる場合であっても、作業に優先してその指導や支援を行うことに一定の限界が生じてしまいます。そのため、法改正によりまして、個々の受刑者の特性に応じて作業、指導、社会復帰支援を組み合わせた柔軟な処遇を可能とすることが重要であると、それを目指したいということなのでございます。
今後は、各種のこの改善指導を始めとした処遇の効果などを更に検証しながら、法改正の趣旨を踏まえて、受刑者に実施すべき改善指導を適時適切に実施するなど柔軟な対応を進めることによって、再犯防止に効果的な矯正処遇の実施に一層努めてまいりたいというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/176
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177・東徹
○東徹君 今の答弁でもう一つちょっとお聞きしたくなるわけなんですけれども、懲役刑というのは作業が法律上の義務なわけですけれども、その上で性犯罪者などには個別のプログラム、こういったものが受講、まあこれは指導ですよね、行われているわけです。でも、その指導には上限があるというふうにおっしゃいましたけれども、それは、例えば性犯罪の場合は、作業の時間と指導の時間と、これどういう時間の割合になっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/177
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178・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
作業と指導を合わせて八時間以内ということで、八時間を上限として現在定めがございまして、その作業と指導のそれぞれ何時間という具体的な定めはございませんが、いずれにしろ、その懲役刑の所定の作業ということで、これを中心とするべしということがその法律の要請でございますので、やはり作業が大部分を占めるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/178
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179・東徹
○東徹君 じゃ、確認ですが、作業と指導で例えば八時間ということが決まっておれば、作業一時間、指導七時間、これもできるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/179
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180・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) ある日における一時的なものとしてはそういう在り方というのもあるかもしれませんが、実施の方法としてですね。総じて、作業が中心となるべしというのが法の要請だと理解してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/180
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181・東徹
○東徹君 私が聞いているのは、制度上、一時間と七時間は可能なんですかとお聞きしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/181
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182・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) ですから、ある日における指導の割り振りとしてはそういう割り振りというのは可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/182
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183・東徹
○東徹君 だから、実際には、その個別の事案によって、その人の特性に応じて作業と指導をその幅を変えているということだというふうに思います。
あと、質問しますけれども、拘禁刑に変更したことによる効果をこれ見極めていくためには、懲役刑と拘禁刑のそれぞれで服役した人の再犯率を私これ比較してはどうかというふうに考えます。法務委員会に出ていて思うんですけれども、やっぱりデータがないんですね、データというものが。もうやっぱり法務省もデータでしっかりと判断していくということが僕大事だと思います。
法改正によってこれ拘禁刑ができたとしても、これまでに懲役刑で服役している人が急に拘禁刑に変わるわけではなくて、評価にある程度時間は掛かるわけであります。懲役刑と拘禁刑とを区別して、再犯率を把握して公表することをしてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/183
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184・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 拘禁刑導入の影響を客観的指標に基づいて見極めるということは大変重要なことだというふうに認識しています。
法務省としては、刑事施設を所管する立場から、刑事施設からの出所や再入所についてはデータとして把握することが可能でございます。したがいまして、法務省では、再犯率の一つの指標として、再犯率の一つの指標としまして、ある年の刑事施設出所者のうち、出所後の一定期間内に新たな罪を犯して刑事施設に再入所した者がどの程度いるかを把握し、二年以内再入率や五年以内再入率を算出して公表をしているところでございます。今後、拘禁刑が導入された場合においても、懲役刑と拘禁刑を区別して、それぞれの再入率を公表していくことを予定しております。
拘禁刑導入後においても再入率という同一の客観的指標を用いることは、統計分析の継続性の観点から必要だというふうに考えておりますけれども、委員の御指摘の点も含めまして、拘禁刑導入の影響を見極めるための効果的な指標の在り方、そのためのデータの収集、分析などの在り方についてもこれは検討を進めていきたいと、進めなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/184
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185・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 時間になりましたので、おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/185
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186・東徹
○東徹君 これまでもいろいろと聞く中で、そういった数字は把握しておりませんというふうな答弁が結構ありましたので、是非、懲役刑と拘禁刑、区別して再犯率を把握することができるデータをしっかりと取っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/186
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187・山添拓
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
侮辱罪の法定刑引上げについて伺います。
侮辱罪や名誉毀損罪は、一八七五年、政府批判を封じるために作られた讒謗律が由来とされます。讒謗というのは、名誉毀損を意味する讒毀と侮辱を意味する誹謗を組み合わせた言葉とされます。同じ日に布告された新聞紙条例とともに、自由民権運動の弾圧に用いられました。この讒謗律によって最初に処罰されたとされるのは、ある新聞の編集長で、讒謗律の布告を批判する投書を新聞に掲載したということで二か月の禁錮刑となったとされます。讒謗律は明治刑法の制定で廃止され、旧刑法では官吏、公務員侮辱罪が規定されました。これが現行法の侮辱罪にも引き継がれております。
大臣に伺います。
現行刑法の侮辱罪も表現の自由を脅かす危険を否定できないものだと思います。どのような認識でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/187
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188・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
表現の自由は、現行憲法で保障されている極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことであるというふうに考えています。
今回の法改正は侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、構成要件を変更するものではなく、処罰の対象となる行為の範囲、すなわち侮辱罪が成立する行為の範囲は全く変わりません。したがって、これまで対象とならなかったものが新たに対象となるわけではありません。また、拘留、科料を存置することとしておりますから、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨でもございません。さらに、公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられます。
その上で、御懸念の点については、法制審議会の部会におきましても、捜査、訴追を行う警察、検察の委員から、これまでも表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については今般の法定刑の引上げにより変わることはないとの考え方が示されたところでございます。
したがいまして、今回の法改正は言論の弾圧につながるものでも表現の自由を脅かすものでもないと考えておりますが、この点を懸念する御指摘があることは真摯に受け止めさせていただきます。
引き続き、先ほども申し上げましたこの法改正の趣旨等について丁寧な説明に努めてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/188
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189・山添拓
○山添拓君 私、法改正のこと、まだ聞いていないんですよね。
現行法の侮辱罪についても、その侮辱の文言も解釈も明確とは言えません。表現の自由を脅かす懸念があるということを確認したまでなんですが、そしてこれは正確に通告もしているんですけれども、その懸念については共有いただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/189
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190・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 御懸念というのは、その表現の自由を脅かす危険を内包しているのではないかという懸念ですよね。
今回の侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでありますから、今回の法改正はですね、構成要件を変更するものではございません。処罰の対象となる行為の範囲も変わりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/190
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191・山添拓
○山添拓君 質問にはお答えいただいておりません。
国連自由権規約委員会が二〇一一年に発表した一般的意見三十四は、意見を持つ自由及び表現の自由は個人の完全な発展に欠かせない条件であるとした上で、その四十七項で、締約国は名誉毀損を犯罪の対象から外すよう検討しなければならない、刑法の適用が容認されるのは最も重大な事件に限られなければならず、拘禁刑は決して適切な刑罰ではないとしています。
法務省に伺います。
なぜこのような見解が示されたと認識していますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/191
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192・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
このような見解が示された詳細なプロセス等につきましては必ずしもつまびらかではございませんが、いずれにしろ、このような意見が述べられたところでございます。
今おっしゃられたように、自由権規約委員会の一般的意見におきまして、締約国は名誉毀損の非犯罪化を考慮すべきなどとされておりまして、このことは承知をしているところでございますが、これは法的拘束力を有するものではなく、それに含まれる勧告的な内容は各締約国にその実施を法的に義務付けているものでもないと認識をしております。名誉毀損を抑止する手段としての刑罰の要否や内容については、各国の実情に応じて検討がなされるべきものであると考えられるところでございます。
そして、我が国における近時の名誉毀損及び侮辱の罪の実情等に鑑みれば、名誉毀損罪及び侮辱罪を非犯罪化することは相当ではなく、むしろ侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対する厳正な対処を可能とするためには、その法定刑を名誉毀損罪に準じたものに引き上げることが相当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/192
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193・山添拓
○山添拓君 なぜ示されたかつまびらかでないという答弁だったのですが、表現の自由は透明性と説明責任の原則を実現するために必要な条件である、人権の促進及び保護に不可欠だと、こういう前提の上で自由権規約委員会は勧告をしたものではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/193
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194・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
私どもとして、勧告の内容、一般的な意見、先ほどのは承知しております。
ただ、これがまとめられるに至った経緯につきまして詳細を承知しておりませんので、お答えは差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/194
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195・山添拓
○山添拓君 外務省、違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/195
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196・股野元貞
○政府参考人(股野元貞君) お答え申し上げます。
自由権規約委員会でございますが、こちらの十八名の委員が締約国の国民の中から締約国により選出され、個人の資格で職務を遂行するものでございまして、同委員会は、締約国による報告に関する総括所見、あるいは自由権規約の解釈についての委員会としての見解を整理した一般的意見を発出しますが、いずれの文書も法的拘束力はないものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/196
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197・山添拓
○山添拓君 法的拘束力がないから、それと逆行するような法改正やってよいということにはならないと思うんですね。
刑法の侮辱罪は、最も重大な事件に限らず刑罰の対象としています。今回、その法定刑を引き上げ、懲役刑まで科そうとするものです。国連の一般的意見に反する方向となるものだと指摘しなければなりません。
アメリカやイギリス、フランスなどでは、名誉に対する罪を廃止し、あるいは法定刑から拘禁刑を削除する法改正が行われております。これは国際的な動向だと思うんですね。
こうしたことについて、法制審では、弁護士委員から指摘があって、しかし、それに対しては、そういう議論にはくみしないと、こういう意見が別の委員から出されて、なぜ国連でこのような方向が示されたのか、それを受けて日本はどうするべきなのか、そういう議論はされていないわけですね。これで本当によいのかということが私は問われると思います。
侮辱罪の法定刑引上げでインターネット上の誹謗中傷に対する抑止力となるのか、この点も質問したいと思います。
匿名で行うことができるインターネット上の書き込みは、加害者の特定が困難であることが最大のネックです。大量の投稿が短時間になされ、過激化し、炎上しがちです。これは、侮辱罪の法定刑引上げによって抑制できるという保証はないと思います。
衆議院で参考人としてお話しされた木村響子さんは、必ずしも実名でSNSをやる必要はないかもしれないけれども、問題のある発言をしたときには特定できるようなことを考えてほしいという御意見でした。
法務省に伺います。
SNSの運営者や管理者に発信者情報の保存を義務付ける、あるいは外国の会社には日本国内で代表者登記をきちんと行わせるなど、こうした投稿の削除と被害賠償を迅速にかつ実効性あるものとすることが求められていると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/197
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198・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) どなたが答弁されます。
速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/198
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199・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/199
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200・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 失礼しました。
今御指摘のようなその民事上の手続につきましては、御指摘のような例えば新たな発信者情報開示手続の創設を内容とする改正プロバイダー責任制限法の円滑な施行に向けて私どもも関係省庁の一つとして協力を行っておりますほか、御指摘のような会社法が定める代表者登記義務の関係についても、法務省の中で、様々な制度の周知ですとか、そういった対応を行っていると承知しております。
また、私ども法務省の人権擁護機関におきましては、様々な御相談に関しまして全国の法務局において人権相談に応じておりまして、人権相談では、人権侵害の疑いのある事件を認知した場合には人権侵犯事件として調査を行っており、例えばインターネット上の誹謗中傷の投稿による被害に関しては、相談者の意向に応じまして、損害賠償を求める方には法テラスなどを御紹介する、あるいは投稿の削除を求める方には削除依頼の方法等を助言したり、違法性を判断した上でプロバイダーに対して投稿の削除依頼をするなどの対応を行っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/200
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201・山添拓
○山添拓君 ちなみに、実際削除がなされた件数などについては情報がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/201
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202・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 過去三年間、昨年の十二月までの過去三年間のトータルといたしましては五千三百件余り、五千四百件弱ぐらいでございます。人権侵犯事件数としてはそのぐらいでございまして、その中の全部又は一部投稿が削除されたものは約七割というふうに把握しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/202
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203・山添拓
○山添拓君 そういった対策を進めることが大事だと思うのですが、この名誉毀損あるいは侮辱罪などの対応でそれが十分な対策となるのかということについては、これは法制審で二度の議論しかなされていないということもあり、必ずしも実効的な対策となるものではないのではないかと、逆に、表現の自由との関係の十分な検討がされないままに法定刑の引上げが行われることへの懸念が広がっているという状況ではないかと思います。
名誉毀損罪では公共の利害に関する特則があります。政治家や候補者に関する事実で、真実が証明できるか、そう信じる相当な理由があるような場合には違法性が否定されます。しかし、侮辱罪ではこれがありません。そのために、政治的な批判が侮辱と扱われ、法定刑の引上げで逮捕の対象にもされてしまうのではないか、こういう懸念が広がっているわけです。
これは大臣にお答えいただければと思いますが、大臣は本会議で、正当な表現行為は、刑法三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと述べました。先ほどもそういう答弁ありました。処罰すべき侮辱と、正当行為として違法性が否定される政治的批判とはどのように区別されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/203
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204・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 具体的にいかなる行為が侮辱罪における侮辱に該当するかということについては、収集された証拠に基づき個別的に判断されるべき事柄でありますから、一概に基準としてお示しすることは困難でございますけれども、過去に侮辱罪で有罪が確定した裁判例において示された犯罪事実が参考になると考えられます。
法制審議会の部会では、過去に裁判所において侮辱罪の成立が認められた事案の概要などをまとめた事例集を資料として配付したほか、侮辱罪の成立が認められた複数の事例を口頭で紹介したところでありまして、それぞれ配付資料あるいは議事録として法務省のウエブサイトに掲載をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/204
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205・山添拓
○山添拓君 侮辱罪が正当行為に当たるとして違法性が否定されて無罪となった例というのはあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/205
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206・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをします。
御指摘のような例は承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/206
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207・山添拓
○山添拓君 ないんですよ。ですから、大臣が言われるように、過去の事例の例があるからといって、それによって許される政治的批判と侮辱とは区別できないということになると思うんですね。
正当行為というのは、法令又は正当な業務による行為をいいます。
法務省に伺います。
政治家に対する批判的な言葉は、どのような場合に正当行為になり得るんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/207
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208・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
侮辱罪というのは、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合に構成要件に該当するものでございますが、公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容でありましても、御指摘のように、刑法三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないものでございます。
具体的にどのような場合がこれに当たるかということでございますが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき事案ごとに判断されるべき事柄であることから、いかなる場合がこの正当行為に該当するかについてこの場で確定的なお答えをすることは困難でございますが、法制審議会の部会におきましては、例えば、民事上の不法行為についての公正な論評の法理を踏まえつつ、民事上の不法行為責任より広く侮辱罪の成立が認められることはないとする考え方が示されたところでございますので、このような考え方は、今委員のお尋ねのどういった場合に正当行為となり得るかという判断に当たっては参照されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/208
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209・山添拓
○山添拓君 じゃ、例えば政治家について、うそつきだとか裏切り者だとか、そういうツイートをする、街頭演説で聴衆が叫ぶ。侮辱に当たると言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/209
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210・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
具体的にどのような場合がということについてはお答えを差し控えたいと存じますが、繰り返しになって恐縮でございますが、法制審議会の部会におきましては、民事上の不法行為につきまして公正な論評の法理というのが、これがございまして、これを踏まえつつ、こういった考え方が刑法の侮辱罪の成否においても参照されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/210
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211・山添拓
○山添拓君 法制審でも十分議論が尽くされたとは言い難いと思うんですね。そもそも立件された数が少ないですから裁判例は乏しいわけです。萎縮効果がゼロかというと、懸念があって否定できないという意見まで法制審で出されています。名誉毀損と同じように、違法性が否定される場合があり得るとは思います。しかし、そのことは明文で規定しなければ表現の自由の観点から重大な疑念が生じる、こういう指摘が法制審でもされてきたと思うんですね。
資料をお配りしています。衆議院で、法務省、警察庁連名で出された政府の統一見解です。侮辱罪による現行犯逮捕の可否について述べています。表現の自由の重要性に配慮しつつ慎重な運用がなされるとあります。国家公安委員長は本会議で、慎重な運用とは逮捕権の運用を慎重に行うという趣旨だと述べました。
警察庁に伺いますが、現行犯逮捕の要件との関係で、いかなる規定に基づいて慎重に行うと言っているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/211
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212・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 逮捕権の運用につきましては、身体の自由に直接関連することでもございますので、国家公安委員会規則であります犯罪捜査規範の第百十八条において、逮捕権は慎重適正に運用しなければならない旨が規定をされているところでございます。
その上で、侮辱罪による現行犯逮捕につきましては、身体の自由に加えまして表現の自由への配慮も重要と考えられることから、先般、表現の自由の重要性に配慮しつつ逮捕権の運用を慎重に行う旨を政府統一見解としてお示しをしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/212
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213・山添拓
○山添拓君 今答弁のあった犯罪捜査規範の百十八条、確かに慎重適正に運用しなければならないと書かれています。要するに、ここで慎重に運用しなければならないと書いているので、そのことをこの統一見解にも書いただけだと、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/213
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214・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 先ほども答弁したとおりでございまして、逮捕権というのはそもそも身体の自由を拘束するものでございますので、慎重に運用しなければならないと考えております。
その上で、侮辱罪におきましては表現の自由への配慮も重要と考えることから、このような政府統一見解としてお示しをしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/214
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215・山添拓
○山添拓君 身体の自由に関わりますから慎重に運用しなければならないのは当然ですね、もとよりです。そして、今警察庁がおっしゃったのは、表現の自由に関わる行為であるのでなおさら慎重にと、そういう趣旨での答弁であったと思います。
しかし、現実はどうかということを私は問いたいと思います。今のように、慎重な運用をしなければならないというのはまさに運用上の問題ですから、法的な規範に基づいて、要件に沿って慎重さが求められるということではありません。そのため、現場の判断で、現場の判断次第の運用となっていると思います。
例えば、二〇〇九年十一月三十日、最高裁は、東京都葛飾区のマンションでのビラ配布が住居侵入罪に問われた事件で罰金五万円の有罪判決を下しました。民間の分譲マンションのドアポストに日本共産党発行の都議会報告、区議団だより、区民アンケートを投函していたところ、マンションの住民の通報によって逮捕され、これ現行犯逮捕です、二十三日間身体拘束をされ、起訴されました。オートロックはありませんでした。ドアポストにはピザ屋や不動産業者のチラシ、ほかの政党のビラも日常的に入っておりましたが、ほかのポスティング行為が逮捕、起訴された事実はありませんでした。それでも住居侵入罪に問われたんですね。
警察庁に伺います。
こうした現行犯逮捕というのは、今私が説明したような現行犯逮捕は慎重な運用とは言えませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/215
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216・大賀眞一
○政府参考人(大賀眞一君) 個別具体の事案についてのお尋ねでございますので、それは恐らく個別具体の状況に応じて逮捕の必要性を判断したものでございます。
お尋ねの事案は私人による現行犯逮捕で、警察はその引渡しを受けたものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/216
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217・山添拓
○山添拓君 その後、二十三日間も身体拘束しているんですよ。それは警察の判断ですよ。
法務省にも伺います。
この事件、わざわざ起訴しました。慎重な運用ではありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/217
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218・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
委員のお尋ねは検察官の公訴の提起及び裁判所の判決でございますので、個別具体的な事件における裁判所の判決あるいは検察当局の活動について法務省として所感を述べることは差し控えたいと思います。
なお、委員は、さきに私ども示しました政府統一見解との関係でお尋ねでございます。
私ども、さきに示しました政府統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕につきまして、侮辱罪の成否が問題となるのは表現行為であることから、その性質上、仮に構成要件に該当したとしても、違法性阻却事由の存否に関して、表現の自由などの憲法上の重要な権利との関係を慎重に考慮しなければ正当行為かどうか判断できないので、実際上は逮捕時の状況だけで正当行為でないことが明白とまで言える事案は想定されないと考えているところでございます。
これに対しまして、御指摘の事件は侮辱罪ではなくて住居侵入罪による現行犯逮捕が行われているところでございまして、一般論として申し上げれば、住居侵入罪の構成要件に該当する行為は人の住居に侵入する行為であり、言語等による表現行為そのものが実行行為として問題となる侮辱罪とは異なるために、同列に論ずることはできないと考えております。
いずれにしましても、捜査当局におきましては、侮辱罪による現行犯逮捕につきまして、再三申し上げておりますとおり、表現の自由に配慮しつつ慎重な運用がなされるものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/218
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219・山添拓
○山添拓君 罪に問うわけですから、表現の自由に関わる問題であれば、どの罪状であっても慎重な運用というのは当然求められると思うんですね。身体拘束までする、起訴する。違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/219
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220・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
表現の自由というのは、委員御指摘のとおり、憲法上重要な権利でありますので、これを尊重するということは当然でございまして、犯罪の成否を判断するに当たりまして、正当な理由の存否を検討するに当たっては、そういった権利の性質に鑑みた検討が行われるところでございます。その上で、私ども、再三、先ほど申し上げたことの繰り返しでございますが、私どもの統一見解といたしまして、侮辱罪と現行犯逮捕の関係につきまして見解を示したところでございます。
委員御指摘の事案は、先ほど来申し上げておりますように、人の住居に侵入する行為の事案でありまして、侮辱罪の事案とは異なっているため、私ども、同列に論ずることはできないと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/220
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221・山添拓
○山添拓君 表現の自由に関わることが明らかな事件を平気で逮捕し、起訴してきた事実があるわけです。それが表現の自由、政治活動の自由への弾圧であるということの自覚もなければ反省もないように私は今の答弁を伺って受け止めました。
侮辱罪の法定刑引上げによって不当逮捕の懸念が広がるのは当然だと思います。この資料の中には、表現行為という性質上、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないとあります。
正当行為であるかどうか、いつ誰が判断するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/221
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222・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
現行犯逮捕の場合ですので、その判断は逮捕者がすることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/222
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223・山添拓
○山添拓君 その段階で正当行為であるかどうかということを逮捕者自身が、これは正当行為などではないと、だから侮辱罪であって逮捕しなければならない、そういうふうになることはあり得るということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/223
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224・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
再三申し上げておりますが、この私どもの政府統一見解におきまして、現行犯逮捕は、逮捕時に犯罪であることが明白で、かつ犯人も明白である場合にしか行うことができないということを前提に、犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないことも明白ということでございまして、侮辱罪については、表現行為という性質上、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないと、このように考えているところでございまして、その考えに基づいてこの政府統一見解をまとめたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/224
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225・山添拓
○山添拓君 想定外があり得ることについては否定されていないと思うのですが、そして実際の事案になれば、個々の事案の問題なので答弁はできないとおっしゃる。
先ほどの葛飾のビラ配布事件の第一審東京地裁は、ビラをドアポストへ投函することを刑事処罰の対象と見るような社会通念は確立しておらず、立入り行為は正当な理由があって、住居侵入罪は成立しない、無罪判決を言い渡していたんですね。
住居侵入と侮辱とは構成要件が異なって、同列に論じることができない、それはそのとおりでしょう。しかし、表現の自由に基づく行為であっても、捜査機関は正当性を認めてこなかったわけです。この当時、ほかにも様々、類似の事件がありました。恣意的な捜査によって政治的な弾圧が加えられてきたわけです。慎重な運用、想定されない、それが歯止めになるなどとは到底言えないと思います。
今日は国家公安委員長の出席を求めておりましたが、実現しませんでしたので、この点は次回以降、直接確認をしたいと思います。
質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/225
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226・高良鉄美
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
先ほど山添委員の方から表現の自由の問題がありました。
これ、まず基本的なところがもう違っているんですよ。表現の自由がなぜ重要かというのは、これは国家に対する権利です。で、今、インターネットの中傷誹謗の問題というのは、これはなぜまた制限される可能性があるのか、あるいは制限しなきゃならないのがあるかというのは、これは私人の関係で、相手の人格の問題ですよ。だから、表現の自由の重要性というのは、そういったインターネットの問題でやるんではなくて、国家に対する権利だということを申し上げておきます。そして、最後にそれを触れますが。
まず、一昨日、沖縄の方に行ってまいりましたら、外国人技能実習制度廃止全国キャラバンが沖縄とそれから北海道でスタートしました。私も沖縄でのタウンミーティングに参加をしましたが、これは、移住連、つまり移住者と連帯する全国ネットワークが立ち上げたキャラバンです。移住連は、外国人技能実習生の長時間労働、賃金不払、実習実施機関等による人権侵害、保証金の徴収や強制帰国の問題など、外国人技能実習生に対する人権侵害行為を摘発し、技能実習生を保護、支援しています。
今起きている問題は、二〇一六年の外国人技能実習法案の審議のときから懸念されていた問題であり、国際貢献の名の下に外国人の技能実習生が安価な労働力として扱われるのではないかということを多くの議員が指摘しましたが、強行採決の末、制度が開始されました。政府は技能実習制度の見直しを検討されていると承知していますが、外国人技能実習制度は一旦廃止をして、外国人の人権を保障した上で受入れを図る制度を新たに創設すべきだと考え、本日は、先に外国人技能実習制度から質問いたします。
まず、技能実習基本方針及び技能実習制度運用要綱において例外が認められています。この例外の中ですけれども、技能実習基本方針では、技能実習生が実習実施者から人権侵害行為を受けた場合はもとより、実習先の変更を求めることについて、やむを得ない事情があると認められる場合には実習先変更の支援を行うとされています。技能実習制度運用要綱においては、実習実施者の経営上、事業上の都合、実習実施者における実習認定の取消し、実習実施者における労使間の諸問題、実習実施者における対人関係の諸問題等、現在の実習実施者の下で技能実習を続けさせることが技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護という趣旨に沿わないと認められる事情による実習先の変更が認められています。
これが、具体的にはどのようなケースが例外的に認められているのか、法務省に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/226
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227・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘ございました実習先の変更についてのやむを得ない事情があると認められるか否かにつきましては、現在の実習実施者の下で技能実習を継続することが適正な技能実習という趣旨に沿わないと認められるような事情の有無、専ら本人の自分本位によるものではないか否かなどを個別の事案ごとに総合的に判断することとなります。
その上で、具体例といたしましては、実習実施者による暴行、パワハラ、セクハラなどの重大な人権侵害行為があった場合、実習実施者の経営上、事業上の都合や実習実施者における実習認定の取消しにより実習の継続が困難になった場合、労働契約の不履行や契約をめぐる争い、実習実施者との相性が悪いなどの事情により、客観的にも技能実習の継続を困難ならしめるほどの事情が認められる場合などが考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/227
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228・高良鉄美
○高良鉄美君 やっぱり具体的にちょっと例を挙げていただくと非常に分かりやすくなりました。理解しやすいというんでしょうかね。
この例外的に転職できることを、技能実習者はもちろん、支援団体、一般にも広く伝わることが重要ですが、今言われたような転職できるというような内容も含めて、周知をどのようにされるのかを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/228
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229・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 技能実習生に対しましては、入国時に技能実習生全員に配付しています技能実習生手帳におきまして、実習先の倒産、廃業や事業縮小など、やむを得ない事情で技能実習を行うことが困難な場合は転籍が可能なこと、また、監理団体が転籍の責務を履行しないときは機構において実習先変更の支援を行うので機構又は母国語相談に相談してほしいことを明記して周知をしているところでございます。
また、監理団体や支援団体等、技能実習関係者に対しましては、委員からも先ほど御指摘があった技能実習制度運用要領におきまして、実習先の変更に係る規定について記載することを通じ、周知をしております。
委員御指摘のとおり、技能実習生本人はもとより監理団体や支援団体等、技能実習関係者に対して、こうした取組について正確な理解、認識を徹底いただくことが重要でありますことから、制度を共管する厚生労働省や外国人技能実習機構と連携し、周知やその内容の充実に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/229
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230・高良鉄美
○高良鉄美君 やはり沖縄の方で質問もありました。そもそもが転職できるんですかというのがありましたので、今のような形で今後も周知していただきたいと思います。ありがとうございます。
最近、この外国人技能実習生には、ベトナムから来日されるケースが多くなっています。地域によっては、中国からの技能実習生を抜いて一番多いというようなところもあります。
そこで次に、日本、ベトナムの合意内容について伺います。
先般、岸田総理がベトナムを訪問され、五月一日には共同記者発表をされています。外務省のウエブサイトには幾つかの項目で合意をしたとあるんですが。第二に人的交流です、日本では技能実習生を含む多くのベトナム人に活躍していただいていますが、このシステムを悪用する関係者がいるのも事実です、今般、ブローカーを介さずに技能実習生が自ら送り出し機関や求人情報にアクセスできるサイトの構築で合意しました、問題ある慣行を抜本的に変え、技能実習生等の適切な訪日が実現するよう引き続きチン首相と協力していきます、と紹介されています。
悪質な仲介業者には言及があるものの、送り出し機関については言及がありません。送り出し機関についても様々な問題が指摘されてきたので、やはり送り出し機関も対象とすべきではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/230
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231・岡田恵子
○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。
五月一日の日越首脳会談におきまして、技能実習生等の送り出しに関する公的なプラットフォームの構築について合意いたしまして、今後、両国の関係機関の間で具体的な制度設計を進めていく予定でございます。
プラットフォームの構築によりまして、日本での実習や就労を希望される方が送り出し機関の情報や求人の情報に直接アクセスできるようになることを通じまして、悪質な仲介事業者が排除されることが期待されるところでございます。
委員御指摘の悪質な送り出し機関の排除につきましても、技能実習制度の適切な運用におきまして重要な点と認識してございます。具体的に申し上げますと、このプラットフォームの構築に当たりまして、送り出し等実績、費用、行政処分歴といった送り出し機関に関する情報が客観的かつ正確にプラットフォームに掲載されるようにすること、及びベトナムに帰国された方からのフィードバックを適切に反映してプラットフォームに掲載される情報の質を高めていくことが重要と考えてございます。
今後、プラットフォーム構築の検討を具体化してまいりますが、検討に当たりましては、今申し上げました考えの下で、日越両国の関係機関の間で鋭意調整を進めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/231
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232・高良鉄美
○高良鉄美君 今、だんだん外国人技能実習生の多さ、ベトナム、特に増えておりますので、是非、せっかく二国間でいろんな合意をされたので、今のような形で送り出し機関も、そして両国の情報交換ということも非常に重要だと感じました。
今御説明されましたが、やはり重要なことは外国人技能実習生を取り巻く問題解決に向けた今後の取組だと思うんですけれども、そこで、今後の取組についてちょっと伺いたいんですが、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/232
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233・股野元貞
○政府参考人(股野元貞君) お答え申し上げます。
ベトナムとの技能実習制度の今後の取組についてでございますけれども、外務省といたしましては、引き続き、在ベトナム日本大使館並びに主務省庁でございます法務省や厚生労働省と連携しつつ、ただいま答弁ありましたプラットフォーム構築に係るプロジェクトや二国間取決めに基づくベトナム側との情報連携をしっかりと行い、ベトナムとの間で技能実習制度のより一層の適切な運用に取り組んでまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/233
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234・高良鉄美
○高良鉄美君 総理の訪問でいろいろ進歩があったということで、ほかの外国人技能実習生の入っている国々、そことも同じような改善を望みたいと思います。
さて、本題の刑法等改正案について伺いたいと思います。
処遇を一層充実させ立ち直りを後押しするための諸制度の導入ということと、侮辱罪の法定刑の引上げのための法改正と、これを同時に行うことについて質問いたします。
両案は別々の諮問であり、別々の部会で議論されてきたと承知していますが、なぜ同時に行うことにしたのか、その理由を改めて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/234
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235・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
今回の法改正は、罪を犯した者の改善更生、再犯防止に向けた施設内・社会内処遇をより一層充実させるため所要の法整備を行うとともに、インターネット上のものを始めとする侮辱行為を抑止し、また、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対する厳正な対処を可能とするため、侮辱罪の法定刑を引き上げるものでございます。これらはいずれも、刑事法に関する現下の課題に対処するため刑法を改正するという点で共通していることから、一つの法律案で改正しようとしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/235
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236・高良鉄美
○高良鉄美君 まだきちんと答えになっているか分からないんですけれども、刑事法の改正だからという今お答えでしたけれども。
実は、私は、前回の委員会で、民訴法改正案の審議においてもこのIT化を推進する法案に法定審理期間訴訟手続が盛り込まれたことを指摘したところですが、本来行う法改正に、性質の異なる多くの問題点が指摘された内容を盛り込むことは問題ではないでしょうか。実際、このIT化を推進するための質問よりこの法定審理期間訴訟手続に質問が多かった、集中しているということで、法案審議の在り方から見ても望ましくないと思いますけれども、法務省の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/236
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237・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
二つ以上の法律改正を一つの法律案にまとめて一括化して国会に提出いたしますことは過去にも例があるところでございまして、先ほども申し上げましたとおり、今回の法改正の内容はいずれも刑事法に関する現下の課題に対処するため刑法を改正するという点で共通していることから一つの法律案で改正するものでございまして、過去の例に照らしましても一つの法律案として提出することが問題であるとは考えていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/237
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238・高良鉄美
○高良鉄美君 それは、過去の例はちょっと分かりませんが、問題はあったものもあるんじゃないでしょうか。
例えば、今回、その前半の部分というんでしょうかね、再犯防止の部分とか、そこはもう大体、いい処遇を考えていくと、再犯防止のためにと思うんですね。それで、インターネットの誹謗中傷の問題もそれはそうかもしれないと、しかし、もう少し慎重なという中で、今委員の方々、やっぱり問題ありというところもあるわけですね。そうしたときに、例えばAの部分、A案の部分とB案の部分というふうに分かれるわけですね。同じ刑法の部分であっても。そうすると、A案に賛成だけれども、B案の部分に反対だったら私はどうすればいいんですか、反対すればいいんですか、賛成すればいいんですかという、こういう問題が起こると思うんです。
ですから、やはりこの性質、内容を、まあ刑事法であることは間違いないとは思いますけれども、やっぱりそこの考え方を今後も少し考えていただく、あるいはこれから慎重に考えていくということでありますけれども、関連して、もう少し侮辱罪の法定刑の引上げと法制審の在り方について伺いたいと思います。
侮辱罪の法定刑を引き上げることがインターネット上の誹謗中傷への対処として的確なのか疑問があります。侮辱罪の法定刑の引上げについては法制審が異例の短期間で答申をしていますが、どの程度議論されたのでしょうか。法制審の審議時間とパブリックコメント、あるいは関係団体から意見聴取などをされたのか、実施状況を法務省に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/238
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239・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
侮辱罪の法定刑の引上げにつきましては、法制審議会の部会においては、この分野に精通した刑事法の専門家を交えて、表現の自由との関係を中心に議論が行われたところでございます。
具体的には、第一回会議において、侮辱罪の法定刑の引上げの相当性に関連して正当な表現行為との関係について各委員、幹事から様々な御意見が述べられ、第二回会議においては、これらの御意見を踏まえ、論点を整理しつつ更なる議論が行われたところでございます。審議の時間といたしましては、第一回会議が二時間四十四分、第二回会議が一時間四十五分でございまして、合わせて四時間二十九分でございました。
これらの会議では、全体を通じて非常に活発な議論が行われ、第二回会議において本諮問に対する議論は尽くされたと認められたことから、全ての委員、幹事が同意した上、部会としての意見の取りまとめが行われたところでございます。
それから、パブリックコメントについてお尋ねがございました。法制審議会におきましてはパブリックコメントは実施しておりませんが、部会での審議におきましては、インターネットの悪用に対する実効的な対策を立案、実行する民間団体の役員の方にも委員として御参加いただき、その専門的知見に基づく御意見を随時お示しいただいたものと認識しております。
また、総会におきましては、刑事法の専門家以外にも、憲法、会計学、政治学の研究者、経済界、労働界、マスコミといった各界各層の有識者が委員を務めておりまして、その諮問時と答申時の二回にわたる審議を経て答申がなされたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/239
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240・高良鉄美
○高良鉄美君 パブリックコメントは実施していないということですので、やはりこの大きな法改正があるときには従来実施していたと思うんですが、委員の中にそういう方々を、関連の方々を入れているという今お話がありました。
この法制審議会で、侮辱罪の法定刑の部分ですけれども、この引上げについては日弁連の委員が反対をし、労働組合の委員が保留をしています。反対や慎重な立場からどのような意見が出されたのでしょうか。また、その意見はどのように反映されたのか、法務省に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/240
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241・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
法制審議会の総会及び部会におきまして侮辱罪の法定刑の引上げに対して述べられた反対意見の内容は、表現の自由に対する萎縮効果が懸念される、法定刑を引き上げるとしても、懲役、禁錮ではなく罰金とすべきであるなどというものでございました。また、法制審議会の総会におきましては、現時点で賛成又は反対という明確な判断を下すことができないため意見を保留するという意見が述べられました。
法制審議会におきましては、これらの御意見において示された懸念を踏まえ、表現の自由との関係について論点を整理しつつ、集中的に審議が行われたところでございます。そして、侮辱罪の構成要件に該当する行為であっても、公正な論評といった正当な表現行為については、現行法の下での刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され処罰されないと考えられ、この点は今回の法改正によって何ら変更されないことが確認されたところであり、こうした議論の結果、諮問のとおり侮辱罪の法定刑を引き上げるべきであるという意見が大勢を占め、最終的に、法務大臣に対し、今回の侮辱罪の法定刑の引上げと同じ内容の答申がなされるに至ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/241
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242・高良鉄美
○高良鉄美君 労働組合の方は保留、慎重にして明確に賛成、反対が言えないということでした。それから、日弁連の方は反対をしたということなので、これどちらも大きな組織ですね。そこが保留やあるいは反対の立場というようなことを示されているわけですから、ここは慎重さの上に慎重さを、特に今、表現の自由との関係ですね、どのような関連性があるかというのをこの二回あるいは三回目で決めてしまうというのは余りにも短いんじゃないかなと。要するに、このプロセスも非常に大事じゃないかなと私は思っています。一か月だったと思いますけれども、そういう審議ではいけないだろうと思います。
そして、先ほど憲法の学者も入っているということでしたけれども、これは、表現の自由を基本的人権ということで非常に重要視しているというお話も大臣の方からありましたので、この権利が制限される懸念があると、まあ制限されるという確実なものじゃなくても、懸念があるということは何度も表明されているわけですね。だから、ここの中に、例えば憲法学会とかいろんなところから意見を聴取するなり、委員のお一人だけではなくて、そういうことが必要じゃないかなと私は思います。
そして、表現の自由は実は精神的自由なんですよね、表現はしているけれども。これは、心の中で思ったことを外に出すだけの話になるわけですから、精神的な内面で考えているものと同じなわけです。それぐらい重要であるというのが国際的な認識なんですね。だから、これが表現になって、例えば個人の人格、あるいはそれを侵害して侮辱をするということは、これ相手の人権だからですよね。人権と人権がぶつかるということが問題なんですよ。そこでしか制約は受けないんです。だから、国家の都合とかいろんなもので人権が制約されるというのは大きな問題です、憲法学上はですね。
その上で、先ほども刑法三十五条が出て、正当行為であるか、そのときには違法性が阻却されるということですけれども、これは、表現の自由が侵される側はこの違法性が阻却されるかということを心配するわけですね。判断するのはどこかといったら裁判所が最終的なんでしょうけれども、この間のバランスというのは、表現の自由が非常に重要だけれども、萎縮効果はここに出るんですよね。自分がやることが、これ、その正当行為にちゃんと保護されるのかどうかというのは分からないわけです。やってみなければ分からないというような、こういう法律の仕組みではこれ問題なんです。
やはり構成要件についても、これはその該当性がはっきりしていないといけない。過去の事例があって、あるいは過去の裁判例をというのは、表現する国民にとってはそれ簡単なことじゃないわけですよ。今から、今言わなきゃいけないと。これを、過去のものを持ってきてどう判断していくというのは、これ自体がもう萎縮効果になるわけです。だから、この捉え方はきちんとこれから議論をしていかなきゃいけないだろうと。
私、もちろん、人格、個人の尊厳を侵害されたインターネットの誹謗中傷というのは、これは問題だろうと思います。しかし、表現の自由の中身というのをしっかりとこれ検討していかないといけないだろうということで、罪刑法定主義と言われていますけれども、憲法の三十一条の適正手続というのは、特に刑事手続の場合は非常に慎重にやらなければいけない、こういうものを突き付けているんだろうと思います。
インターネットの問題と、それから今回の再犯防止ですね、これ、やはり慎重に、どちらも違う問題だということでこれからもまた議論していきたいと思いますけれども。根本的な法の支配というのを何度も何度も私は問うていますけれども、法の支配の中のこの適正手続の問題というのも、法制審の在り方というものが問われていると思います。少なくとも、何年を掛けたという法制審もありますけれども、答申までですね。一か月というのは余りにも短い。まあ期間の問題ではないかもしれませんが、この中身の入り方というのが、あるいはそこでの議論の深みというのが、余りにも表現の自由というものに対する、まあこれは問題だから、批判だからおかしいというようなことで片付けるんではないと。
それから、正当行為の問題もしっかりと今後も質問したいと思いますけれども、時間が来ましたので終わりたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/242
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243・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子です。
私も、まず、今回の刑法等の一部を改正する法律案関係で、表現の自由と侮辱罪の重罰化についてお伺いしたいと思います。
実は、政治家、そして特に首長などしておりますと、どちらかというと、この侮辱なり、あるいはかなり批判を受ける側になります。それで、ちょっと個別の事例なんですけど、個別の事例で考えさせていただきます。
二〇〇六年に知事になって、二〇〇七年に新幹線の新駅の中止について二つ言わば誹謗中傷をいただきました。一つは、二〇〇七年の四月二十三日ですが、ちょうど長崎市の市長がピストルで殺された、長崎市のようになりたくなかったら新幹線の新駅造れと。これは電話で、まあ脅迫でしょうか。同じく七月、二〇〇七年の七月に、ああ、駅を止める、女の人は視野が狭いんだと、これはある有名な政党の元総理大臣でした。
それから、駅の街頭で私は公共事業の見直しでダムを止めると言っていたら、それは悪代官だと、命を守れないのかというような批判もいただきました。
今回は、ツイッターとかSNSの問題です。木村花さんの事例は心を大変打つ問題なんですが、私自身も参議院に出るとき、二〇〇九年の七月八日でした、もう今もまだ記事が残っていますけど、参議院議員で共同親権を言っている嘉田由紀子は、共同親権、ここにまだ記事が残っています、共同親権は貧困対策になるというけど、貧困対策にはなりませんと、この人を、言わば嘉田を落選させろということがツイッターで広がりました。
それから、去年ですけど、二〇二一年の五月十四日、実はシェルター問題というのがありまして、滋賀県内にある、ある婦人相談所、これは厚労省にも場所が書いてあるんですけど、そこの情報を出したということで参議院議員を辞めろと、かなり盛り上がったというか、バズりました。
こういう、私自身、どちらかというと、この対象にされる、そういう立場から見て、今回の改正で法定刑を引き上げる刑法二百三十一条では、事実を摘示しなくても公然と人を侮辱した者が罪に問われることとなっておりますが、SNSなどのネット上の書き込みがどの程度であれば「公然と」と判断されるのでしょうか。捜査当局によって判断が分かれる可能性は生じないのでしょうか。刑事局長さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/243
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244・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
委員は、侮辱罪の構成要件のうち「公然と」という場合は、具体的にどの程度ならばというお尋ねでございますが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき事案ごとに判断されるべき事柄でございますので、どのような場合に侮辱罪の公然性要件を満たすかについて、この場で私ども法務省として確定的なお答えをすることは困難でございます。この点はまず御理解賜りたいと存じます。
その上で、一般論として申し上げますれば、侮辱罪の要件である「公然と」とは、名誉毀損罪の要件である「公然と」と同じ意味でありまして、不特定又は多数人が認識できる状態をいい、相手方が特定少数人であったとしても伝播して間接に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれると解されておりますことから、公然性の要件を満たすか否かにつきましては、そのような状態にあると認められるか否かによることとなるところでございます。
〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕
そして、公然性、「公然と」の要件の意義につきましては、最高裁判例を始めとして裁判例の積み重ねがあるところでございまして、捜査機関におきましては、こういった判例等も踏まえて事案の内容等に応じて適切に対処しているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/244
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245・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
いろいろ判例があるということでございますけれども、もう具体的にはお答え要りませんが、例えば、今のような私自身がネット上で大変誹謗中傷を受けている、侮辱と言えるかどうか。これまた、ただ、六か月以上たっていますので、またこちらが訴えるつもりもございませんけれども、ただし、一方で、私は表現の自由は必要だと思っております。自分が侮辱の対象にされたとしても、政治家というのはそこは耐えなきゃいけないということを思っておりますので。
また、二点目ですけど、侮辱罪の法定刑の引上げによって当罰性の高い行為に対してはこれまでより重い刑が科されることになりますが、当罰性の高低をどのように判断することが想定されているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/245
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246・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。
当罰性の程度につきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえてどの程度の重さの処罰が適当であるかが判断されるべきものでありますため一概にお答えすることは困難でございますが、一般論として申し上げれば、行為の結果、態様、動機等の様々な事情が考慮されるものと考えられるところでございます。
侮辱罪と保護法益が同じ名誉毀損罪について、有罪判決において量刑の理由として示されているところを調査した結果を御紹介いたしますと、おおむね、被害者の社会的評価を害した程度、犯行の手段、方法や公然性の程度、犯行の期間、回数、犯行の動機や公益目的の有無、被害者の精神的苦痛、処罰感情の程度、示談の有無、原状回復措置の有無などの事情が量刑上考慮されているようでございまして、侮辱罪におきましてもこれらが参考になると考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/246
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247・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 この表現の自由の問題、大変難しいとかねがね思っております。
批判する側もされる側も、健全な民主制を維持するためには、社会生活の中で公私にわたり活発な批判、批評が行われることは重要です。しかし、批判、批評を行う側も、批判、批評の対象となる側も、どのような表現に侮辱を感じるのか、その受け止め方は様々でございます。
また、ある表現が誹謗中傷であると非難する社会全体の意識も流動的です。個人のレベルでも社会のレベルでも、どの程度の表現活動なら刑罰が科されても仕方がないと判断されるべきか、客観的な基準を示すことは困難でございます。
そういう中で、従来より重い刑罰を科することが表現の自由の保障を従来よりも損なわないと言えるのでしょうか。これまでも皆さんの質問にお答えしていただいていますけれども、刑事局長の法務省の御見解、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/247
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248・川原隆司
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
今回の法定刑は侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでございまして、構成要件を変更するものではなく、処罰の対象となる行為の範囲、すなわち侮辱罪が成立する行為の範囲は全く変わらないところでございます。また、法定刑に拘留、科料を存置することとしておりまして、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重くする趣旨でもございません。さらに、公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられるところでございます。
その上で、法定刑が引き上げられた場合の運用につきましては、一般に、侮辱罪を含め、刑事事件における捜査機関や裁判所の判断は、刑事訴訟法等の規定に従い、証拠に基づいて個別の事案ごとになされるものでありまして、御懸念の点につきましては、法制審議会の部会においても、捜査、訴追を行う警察、検察の委員から、これまでも表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については今般の法定刑の引上げにより変わるところはないとの考え方が示されたところでございます。
したがいまして、今回の法改正は表現の自由の保障を不当に損なうものではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/248
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249・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
公然と人を侮辱する行為に向けた社会の批判に応えるために、民事上の不法行為責任を追及しやすくするのではなく、つまり民民としての私的自治の観点ではなく、例えば、先ほど私がツイッターでいろいろ批判を受けております、参議院議員として不適切だ、議員辞職しろとか、あるいは言わば落選運動をされるとか、そういうところを民事上の不法行為責任を追及しやすくするのではなく、刑法上の刑罰強化を行うこと、これは社会の在り方として望ましい方向であるのか、少し抽象度の高い質問ですけれども、法務大臣の御見解、お聞かせいただけますか。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/249
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250・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) インターネット上で行われます悪質な侮辱行為は、時に人を死に追いやる、あってはならない行為でありまして、その根絶を図る必要がございます。
こうした侮辱行為を含め、近時、社会問題となっております誹謗中傷に適切に対処するためには、行政的な諸施策を含めた様々な取組を進めることが必要でございます。
法務省においては、これまでも、被害に遭われた方からの人権相談への対応や、プロバイダー等に対する投稿の削除要請などを行ってきたところでございます。また、令和三年四月、発信者情報の開示に関する新たな裁判手続の創設、開示請求を行うことができる範囲の見直しなどを内容とするプロバイダー責任制限法の改正法が成立、公布されていると承知をいたしております。
その一方で、近時の侮辱の罪の実情等に鑑みれば、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、侮辱行為を抑止するとともに、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対してこれまでよりも厳正な対処を可能とすることが必要であり、そのような観点から侮辱罪の法定刑を引き上げる必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/250
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251・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 社会的価値観の違いだなと、改めて今法務大臣の答弁を聞いて思いました。
プロバイダー責任なり、あるいはネット上の様々な規制というのは既にやっていただいている。それで十分ということではなく、逆に重罰化するというのは、社会の在り方としてまさに言語空間あるいは発言を大変萎縮させてしまう、そこを私は元々社会学者としても大変気にしております。ですから、自分が様々な落選運動の対象になり、また特にこの共同親権問題というのはネットですぐ、ある意味で燃え上がるんですね。その対象に自らがなりながらも、ここは重罰化ではないということを私自身は政治家として選んだ方がいいと思っております。ですから、今回のこの刑法改正については大変慎重な姿勢を取りたいと思っております。
次の質問は、再犯防止推進計画、これについては、今回の刑法改正、社会として望ましい方向に行っていると思っております。
知事時代からとても気にしていたんですけれども、本当に検挙される方の約半数が再犯者であると。しかも、その中には障害を持っていらしたり、あるいは高齢者で常習的に万引きをしてしまうとか、そういう方がとても多いんですね。この方たちをどうやって社会の中で、その方たちも幸せに、そして言わば社会として平和的な社会にできるかということで、それで今日資料としてお出ししました、滋賀県再犯防止推進計画というのを出させていただきましたけれども、これ全国の都道府県で作っていられると思います。二〇一九年に滋賀県では五年計画を策定しております。
大切にする視点としては三つございます。一つは、気付きからつながる仕組みづくり。まさに、あっ、この人、万引きしてしまったのは寂しいからかなとか、孤立していたからかなとかいうことを周囲の方が気付くことによって社会関係を豊かにしていこうと。それから、多職種、多分野によるネットワークづくり。これもいろいろ現場で警察情報をいただいた市役所の職員さんがそのサポートする仕組みをつくる、そういうようなこともやっていただいています。それから三点目は、一人一人の人格と個性を尊重して支援し続けるための基盤づくり。
この三点で、成果指標としては、刑事司法手続段階における支援事業等を開始した対象者に二年後も何らかの形で地域の支援者が関与している割合、これ定着率と定義していますけれども、目標値はKPI九〇%以上なんですけれども、滋賀県の場合に、平成三十年九四・九%、令和元年九五・一%、令和二年はまだ途中経過なんですが九〇・五%という形になっております。
それで、ここは、このような滋賀県の取組をどのように評価なさいますでしょうか。法務大臣に対して、感想で結構です、御意見いただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/251
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252・古川禎久
○国務大臣(古川禎久君) 滋賀県では、県の再犯防止推進計画を策定いただくとともに、モデル事業を受託していただいて、これまでも先進的な取組を実施していただいているところでございます。また、このモデル事業終了後も県独自の事業としてこれらの取組を継続して実施していただくなど、再犯防止の分野における地方公共団体の先駆的な存在であるというふうに認識をいたしております。
実は、私も昨年、滋賀県更生保護ネットワークセンターを訪問をいたしまして、罪を犯した人の立ち直りを地域で支えておられる方々のお話をまさにこれ膝詰めでお伺いする機会を得ました。いろんな具体例を含めて、やっぱり様々悩みつつ取り組んでおられる皆様の本当にこの思いといいますか、この事業に懸ける本当に高い志というようなものを私自身も肌で感じさせていただきまして大変感銘を受けた、そういう経験も私、持っております。
非常に、罪を犯した人の立ち直りという、大変地味なのですけれども、なかなか光が当たりづらい分野ではあるけれども、本当に尊いんだということを感じておりまして、先駆的にこの実践をし、かつ実績、成果を上げておられるこの滋賀県の取組については心から敬意を表したいと思っております。
また、さらに、令和元年には当時の山下貴司法務大臣が滋賀県を訪問されたそうでございます。その当時の、今の三日月知事との間で、三方よし宣言ですか、三方よし宣言という共同宣言を交わして、何といいますか、より高い理想を目指して取り組んでおられると、こういうお姿にも大変敬意を表したいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/252
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253・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
何も身びいきでということではなくて、こういうモデル、もちろん他府県もいろいろやっておられると思いますけれども、身近なところで見てきたのでより具体的に、また、まさにこれは横串を刺す政策が必要なんですね。というところで御紹介させていただきました。
私、知事になって、ある意味で権力行使というよりは工夫を入れ込むのに、例えば建設工事の入札資格にいろいろ点数入れますけど、そこに男女共同参画度であるとか、それから保護観察対象者の就労というようなことで点数化する、そうすると、そこのところをポジティブに受け止めていただくというので、地域社会もだんだん認識が変わってくるかなということを学ばせていただきましたので、紹介をさせていただきました。
もう時間もありませんので、法務省の矯正局長さんに、受刑者の社会復帰支援の効果を高めるために、刑の執行段階のうちに、刑事収容施設内等で就業あるいは修学支援などの社会復帰支援の機会、種類を増やすことは検討されているでしょうか。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/253
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254・佐伯紀男
○政府参考人(佐伯紀男君) 刑事施設におきまして、出所後の自立した生活を営む上で困難を有する受刑者に対しまして就労支援や福祉的支援等の社会復帰支援を行ってきたところでございますが、今回の法改正では、処遇の一層の充実を図るため、受刑者に対する社会復帰支援が刑事施設の長の責務とされてございます。
今後におきましては、受刑者の資質や環境、本人のニーズを見極めた上で、これまで以上に支援が必要な受刑者に対し適切に動機付けを行い、支援を希望する受刑者に対しましては、出所後の就労や福祉サービスなどを提供できるように調整する支援を想定してございます。さらに、就労内定先の見学であったり、利用が想定される福祉サービスの事前体験を実施するなどの取組、こういった社会復帰支援の一層の充実に努めてまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/254
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255・嘉田由紀子
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
予防的な措置を、また再犯に至らないように、これはもう、それこそ本人にもよし、また家族、周囲にもよし、社会にもよしという、私たちは三方よしといつも言っておりますけど、それが今回のこの刑法等の一部改正する法律案の中で前向きに対処していただけたらと思います。
私の方はこれで終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/255
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256・矢倉克夫
○委員長(矢倉克夫君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815206X01420220524/256
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