1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年四月二十日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十八号
令和四年四月二十日
午前十時開議
第一 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
第二 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の
発給の特例に関する法律を廃止する法律案(
内閣提出、衆議院送付)
第三 関税暫定措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第四 外国為替及び外国貿易法の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、新議員の紹介
一、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一
部を改正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/0
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001・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。
議席第百五十九番、比例代表選出議員、中田宏さん。
〔中田宏君起立、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/1
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002・山東昭子
○議長(山東昭子君) 議長は、本院規則第三十条の規定により、中田宏さんを経済産業委員に指名いたします。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/2
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003・山東昭子
○議長(山東昭子君) この際、日程に追加して、
教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/3
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004・山東昭子
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。末松信介文部科学大臣。
〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/4
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005・末松信介
○国務大臣(末松信介君) おはようございます。
教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
グローバル化や情報化の進展により、社会の在り方そのものが急速に変化する状況が生じつつあり、教育をめぐる状況の変化も速度を増しております。このような中で、教師自身も高度な専門職として新たな知識、技能の修得に継続的に取り組んでいく必要が高まっています。また、平成二十八年の教育公務員特例法の改正により、文部科学大臣が定める指針を参酌した上で、教育委員会が教師の資質の向上に関する指標を定め、当該指標に基づく教員研修計画を定めることとされており、各地域の課題やニーズに応じた体系的な研修の実施が図られるようになるとともに、教師についてもオンライン化された学びが新型コロナウイルス感染症に対する対応を契機に急速に広まっています。
このような社会的変化、学びの環境の変化を受け、教師の学びの在り方もまた変化することが必要であり、令和の日本型学校教育を実現する新たな教師の学びの姿として、主体的な学び、個別最適な学び、協働的な学びなどが求められているところです。
この法律案は、校長及び教員の資質の向上のための施策をより合理的かつ効果的に実施するため、公立の小学校等の校長及び教員の任命権者等による研修等に関する記録の作成並びに資質の向上に関する指導及び助言等に関する規定を整備し、普通免許状及び特別免許状の更新制を発展的に解消する等の措置を講ずるものであります。
次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一に、公立の小学校等の校長及び教員の任命権者は、校長及び教員ごとに研修等に関する記録を作成しなければならないこととするとともに、指導助言者は、校長及び教員に対し資質の向上に関する指導助言等を行うものとしております。また、指導助言等を行う場合、校長及び教員の資質の向上に関する指標及び教員研修計画を踏まえるとともに、当該記録に係る情報を活用するものとしております。
第二に、普通免許状及び特別免許状を有効期間の定めのないものとし、更新制に関する規定を教育職員免許法から削除することとしております。あわせて、本法律案の施行の際に現に効力を有し、本法律案による改正前の規定により有効期間が定められた普通免許状及び特別免許状には、本法律案の施行日以後は有効期間の定めがないものとする等の経過措置を講じることとしております。
第三に、普通免許状を有する者が他の学校種の普通免許状の授与を受けようとする場合に必要な最低在職年数について、当該年数に含めることができる勤務経験の対象を拡大するとともに、主として社会人を対象とする教職特別課程について、その修業年限を一年以上に弾力化することとしております。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/5
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006・山東昭子
○議長(山東昭子君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。勝部賢志さん。
〔勝部賢志君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/6
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007・勝部賢志
○勝部賢志君 おはようございます。立憲民主・社民の勝部賢志です。
会派を代表して、ただいま議題となりました教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案について質問いたします。
ロシアによるウクライナ戦争で多くの子供たちや一般市民の尊い命が奪われました。命を落とされた方々に心から哀悼の意を表します。目の前で親や家族、友達を殺された子供たちの心をどう癒やしたらよいのか、胸が張り裂けそうな思いです。
このようなロシアの蛮行を決して許してはなりません。一刻も早く戦争をやめさせるために、我が国も国際社会の協調した取組に全力を挙げなければなりません。そのことを申し上げ、質問に入りますが、答弁は全て文科大臣にお願いをいたします。
この度の法改正は、教員の研修等に関する記録の作成と指導、助言の規定を整備し、教員免許更新制に関する規定を削除するというのが中身です。
免許更新制に対しては、導入すべきではないというのが私たちの主張でありましたから、制度の廃止自体は基本的に歓迎します。しかし、この十三年、免許更新制がどれほど学校現場にマイナスの影響を与えたか、ただでさえ多忙を極める教員にどれほどの負担を強いたか、しっかりとした検証と反省が必要です。なぜなら、そのことが結果として子供たちに跳ね返ってくるからです。
そもそも、免許更新制は、教員の資質の向上のためと導入されましたが、医師や看護師、保育士などと同様の、生涯有効だった教員資格だけを狙い撃ちにすることの合理的な説明は最後までなされないまま、この制度は導入されました。免許更新時の講習は極めて形式的で、実際に講習を受けた大半の教員は実践には役に立たないと口をそろえ、三十時間の講習の申請や講習受講費の自己負担が重くのしかかりました。さらには、教員志望者を減少させ、臨時採用や中途退職者の再雇用などを困難にしたことで、全国的な教員不足を招きました。この制度は、教員の資質向上という目的と手段が全くかみ合わない誤った政策でした。制度導入を勧めた当時の安倍総理を始めとした責任者に猛省を促します。
文科省は、法案の説明で、免許更新制は発展的に解消すると言い、研修受講履歴の記録を新たに任命権者に義務付けようとしていますが、制度設計自体のまずさなどの教訓が生かされているのか疑義を抱きます。
免許更新制は失敗だったから廃止すると素直に認め、すっきりとした法改正にすべきです。まずは、免許更新制の問題点をどのように反省し、今後に生かすつもりなのか、見解を伺います。
これまでも、例えば、近年だと教育基本法の改正、つい最近だと大学入試における英語検定の記述の問題や、英語検定や記述式の問題など、教育改革と称して政府から出された制度改正には問題があるものもたくさんありました。免許更新制はそれに匹敵するか、それ以上の愚策であり、百害あって一利なしとはこのことです。
そこで、この間、免許更新制がどれほど学校現場や子供たちにマイナスの影響を与えたか、明らかにしてまいりたいと思います。
一つは、教員不足です。
今年一月、文科省は教員不足に関する実態調査を行いました。その結果、年度初めの四月に学級担任がいない、規定の教員数を満たしていないという学校が全国で千五百八十六校もあることが明らかとなりました。四月、新年度が始まって学校へ行ってみたら、自分の担任の先生がいないなんて考えられますか。文科省は、この要因について臨時的任用教員が確保できなかったとしていますが、これはまさに、免許更新制によって、一旦退職した教員に非常勤講師などを頼もうとしても、免許状が失効していて直ちに教壇に立てないということが起こっていたからです。
また、非常勤講師などは、今や六十代、七十代の方々に頼っているのが現状です。しかし、その方々が免許の更新時期を迎えたときに、身銭を切って三十時間の講習を受けて、引き続き教員として仕事をしていただけるかというと、そうはならず、その時点で非常勤講師を辞めるということも実際にたくさん起こってきました。
免許更新制が教員不足の大きな要因となったのは間違いない事実です。その認識を伺うとともに、喫緊の課題である教師、教員不足の改善にどのように取り組むのか、見解を伺います。
教員不足に対応するため、退職教員など、現在教職に就いていない人たちに教員として学校現場を支えていただくことは、当面、極めて有効な手段です。今回の免許更新制の廃止によって、これまで失効や休眠状態になっていた免許の効力を本人の負担なく速やかに回復できるようにすることが重要です。
そのために、手続の簡素化を図ると考えますが、どのように対応するのか、見解を伺います。また、同時に、休眠、失効している方々にどのように周知徹底を図っていくのかも併せてお聞かせください。
さて、二つ目は、教員への負担増です。
令和三年十一月に出された中教審の審議まとめでは、教師の多忙化が進む中、土日や長期休業中も含め、受講や手続に時間を割くことは、教員免許更新制が導入されたときに比べて負担が大きくなっている、学校における働き方改革を進めることが急務であるにもかかわらず、免許更新制に起因して負担が生じることは看過できないと厳しい指摘がなされています。
このような負担は制度導入時から明らかになっていたにもかかわらず、十三年間放置し続けられたことは、働き方改革を進めなければならない現状と真逆になっていて、それが教員採用試験の倍率低下にもつながっているのです。免許更新制がいかに教員への負担増につながったか、改めてその認識を伺います。
三つ目は、教員の身分や地位の不安定化です。
これまでの制度では、現職教員が十年に一度の更新時講習を受講、修了しなければ免許状は失効することになるわけですが、公立教員、公立学校の教員は、免許状が失効した場合は、教育職員としての地位のみならず地方公務員としての地位も喪失することになります。
前出の審議まとめでは、こうした職務上の地位の喪失を招きかねない状況下での学びは形式的なものとなり、学習効果を低下させ、探究心を持ちつつ自律的に学ぶことは期待できないと指弾しています。
人材確保及び職務執行上、教員の身分と地位を確立させることは極めて重要と考えますが、その認識を伺うとともに、どう取り組むのか、見解を伺います。
今申し上げた教員不足や負担増が結果として教員の子供たちに向き合う時間を奪い、そのしわ寄せを子供たちが受けるとしたら、その改善を図るのは当然ではありませんか。
次に、研修の在り方について伺います。
一人一人の子供たちの豊かな学びを保障するためには、教員の日々の探求が欠かせません。教員は現場で育つものです。そのために、同僚と学び合い、研究、研修を重ね、授業に臨んできました。個々の子供たちの変化や成長を知っているからこそ、どういう研修や工夫が必要なのかが分かるのです。
今も昔も、教員たちは、子供たちに分かりやすく教えたい、学ぶ楽しさ、考える喜びを知ってほしいと願い、自ら進んで研修に励んできたのです。しかし、今は余りにも多忙過ぎてその時間が取れないことが問題なのです。
一九六六年、ユネスコにおける特別政府間会議で我が国も賛成して採択された教員の地位に関する勧告には次のようにあります。
教育職は、専門職としての職務の遂行に当たって学問上の自由を享受すべきである。教員は、生徒に最も適した教材及び方法を判断するための格別の資格を認められているものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて、教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。
このように、教員にとって主体的で自由な研修が必要不可欠であることは国際的な常識となっており、そのことによって得られた知識や技能などが子供たちの学びに生かされていくのです。
子供たちの豊かな学びにとって、教員の主体的で自由な研修がいかに重要か、見解を伺います。
今回の法改正では、教員の研修等に関する記録の作成と指導、助言の規定を整備するとしていますが、なぜいきなり研修記録の義務化が出されてきたのか、とても違和感を覚えます。
国際常識に加え、教員の学びの多様性と日々の経験や他者から学ぶという現場の経験の重視、校内研修や授業研究といった日々の営みを重視することが求められる中で、この研修記録が研修の主体性や自由を萎縮させるものになってはならないと考えます。
そこで伺いますが、任命権者が作成する研修等に関する記録については、研修のテーマや内容に踏み込むべきではなく、日時、場所と、どの教科に関わる研修であるか程度にとどめるべきと考えますが、いかがですか。
また、各学校で実施する校内研修、授業研究に加え、自律的で自由な研修を奨励するという観点から、教特法二十二条に規定する勤務場所を離れて行う研修も含まれると考えますが、見解を伺います。
また、研修に関する記録は、任命権者、管理職及び本人が作成することとなるようですけれども、個人情報の管理をしっかりすべきことと併せて、当然、本人が自由に閲覧できるようにすべきと考えますけれども、見解を伺います。
さらに、審議まとめでは、人事評価制度との趣旨の違いに留意しつつと書かれていますが、研修の記録が人事評価と結び付くものではないと考えますが、明快な答弁をお願いします。
教員に対して行う資質の向上に関する指導、助言等については、教員の意欲、主体性を重んじるべきであることから、指導助言者は当該教員の意向を十分に酌み取って行われるべきであることと併せて、審議まとめでは、研修に対して主体性を有しない教員への対応という記述がありますが、いかなる教員に対しても研修が強制とならないよう配慮すべきと考えますが、見解を伺います。
教員の研修がいかに必要なことかは、先ほどから申し上げてきたとおりですが、何よりも今、一番問題なのは、自己研さんも必要だし、研修の重要性も分かっており、学びたいこともたくさんある、しかし、研修に掛ける時間がどこにあるのかという教員の叫びに応えられていないということです。教員の働き方改革は、一向にその成果は現れていません。教員の研修時間を確保するためにも、まず、学校現場の多忙化を何としても解消すべく、文科省としての特段の取組が求められます。
研修したくてもその時間がないという現状をどのように受け止めているのか。その解決に不退転の決意で当たるべきと考えますが、見解及び決意を伺います。
子供への虐待、貧困、いじめ、不登校、自死、暗いニュースばかりを目にします。私たちにとって、子供は宝です。子供の笑顔は何物にも代え難い希望です。その子供たちの夢と未来をつくるのが私たちの仕事ではないでしょうか。その子供たちが多くの時間を過ごす学校が楽しくて生き生きとしたものになってほしいと願っています。
教員における研修は、学びに専念する時間を確保された一人一人の教員が自らの専門性を高めていく営みであり、子供たちの豊かな学びを保障するためには欠かせないものです。誇りを持って、主体的で自由に研修に打ち込むことができるような学校現場を一日も早く実現していただくよう強く要請し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/7
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008・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 勝部議員にお答え申し上げます。
まず、教員免許更新制の問題点についてお尋ねがありました。
教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、大学による教師の資質、能力の向上に対する関与の拡大など、一定の成果を上げてきました。一方で、これまでの免許更新制の下での十年に一度の講習は、常に最新の知識、技能を学び続けることと整合的でないことや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難といった課題がありました。
このため、教員免許更新制の下で大学等が形成した良質な教育コンテンツを継承しつつ、個々の学校現場や教師のニーズに即した新たな研修システムによって、これからの時代に必要な教師の学びを実現させることとし、現行の教員免許更新制を発展的に解消する本法案を提出したものであります。
次に、免許更新制と教員不足についてお尋ねがありました。
本年一月に公表した教師不足に関する実態調査では、半分以上の自治体が、免許状の未更新又は更新手続の負担感等により臨時的任用教員を採用できなかったことを教師不足の要因の一つとして挙げているものと承知をいたしております。文部科学省としては、教師不足について危機感を持って受け止めており、教育委員会における計画的な教員採用の促進、学校における働き方改革、教職の魅力向上等の取組を総合的に進めるとともに、中央教育審議会での議論を踏まえ、質の高い教師の確保に向けた更なる方策を検討を進めてまいります。
次に、失効、休眠状態の免許状の扱いについてお尋ねがありました。
いわゆる休眠状態も含め、現に有効な教員免許状については、本法案の施行日となる本年七月一日をもって有効期間のない免許状となります。一方、本法律の施行日前に更新を行わなかったことにより教員免許状が失効した者は、自動的に復活することはありませんが、再申請をすれば有効期間のない免許状の再授与を受けることが可能であります。
このため、円滑な再授与を可能とする手続の在り方について都道府県教育委員会と検討を進めるとともに、法律施行後の免許状の取扱いについて分かりやすく周知、広報を行ってまいります。
次に、教員免許更新制の教師への負担についてお尋ねがありました。
教員免許更新制については、更新講習を受講しなければ教師自身の身分の得喪に関わる精神的な負担感や、個人で受け取ることの時間的、金銭的負担感が指摘されており、私としてもこの点は課題と認識をしております。
次に、教員の身分と地位の確立についてお尋ねがありました。
教師は、子供たちの人生を変える存在です。そうした大きな役割を担う教師は、十分なやりがいがあり、人との関わり合いの中で自身も成長することができる大変魅力ある職業だと考えております。他方で、教師という職業の社会的役割の重要性や大きなやりがい以上に学校現場の勤務状況が厳しいものとなっており、この状況は一刻も早く改善する必要があると考えております。
現在、中央教育審議会で教師の在り方について包括的な議論をいただいており、その結論も踏まえて、高度専門職業人としての教師の地位を高め、教師が誇りを持って働くことのできる環境整備をしっかりと取り組んでまいります。
次に、主体的で自由な研修の重要性についてお尋ねがありました。
本法案では、教師が主体性を発揮しつつ、個別最適な学びを学校組織全体として実現できるよう、校長等の管理職と教師が対話を行うこととしております。その際には、単に知識、技能の修得だけではなく、教師間での協働的な学びなども重視する必要があると考えております。このような教師自身の学びが児童生徒の学びのロールモデルになることを通じて、児童生徒の主体的、対話的で深い学びの充実につながるものと考えております。
次に、研修等に関する記録の内容についてお尋ねがありました。
研修等に関する記録の内容については、研修名、研修内容、オンライン型等の研修形態などのほか、教員育成指標との関係などが考えられますが、個々の研修の態様や性質に応じて、任命権者である教育委員会において適切に定められることとなります。
文部科学省としては、多様な内容、スタイルの教師の学びがある中で、教師が自身の学びを振り返ることができるよう、記録自体が過剰負担とならないよう留意しつつ、教育委員会の意見も聞きながら、記録すべき事項等を国のガイドラインで示すことを考えております。
次に、勤務場所を離れて行う研修の記録についてお尋ねがありました。
研修等に関する記録の作成につきましては、教育委員会が自ら実施する研修のほか、教育委員会が必要と認めるものを記録することとしております。
文部科学省におきましては、教育委員会の判断に資するよう、記録すべき事項についてガイドラインで例示する予定であり、その中で御指摘の職専免研修も記録が望ましい事項に含めたいと考えております。
次に、研修記録の個人情報管理と教員本人の閲覧についてお尋ねがありました。
研修等に関する記録は各教師の個人情報に該当するものであり、各任命権者において、個人情報の保護に関する法律等に基づき適切に対応すべきものと考えております。
また、研修等に関する記録は、教師の適切な学びを進めるため、個々の教師の置かれている状況やこれまでの研修履歴等を踏まえまして、現状把握と目標設定を行う足掛かりとなることから、教師個人が自らの研修履歴を閲覧、確認することは前提と考えております。
次に、研修受講の記録と人事評価の関係についてお尋ねがありました。
今回の法改正により教育委員会が行う研修等に関する記録は、校長等管理職による各教師の資質の向上に関する指導、助言等の際に活用されるものであり、人事評価制度とはその趣旨と目的が異なるものでございます。研修等に関する記録自体や研修量の多寡そのものが人事評価に直接反映されるものではありませんが、研修を行った結果として各教師が発揮した能力や上げた業績については、人事評価の対象となるものと考えております。
次に、研修の指導、助言についてお尋ねがありました。
本法案では、校長等の管理職と教師が過去の研修等の記録を活用しつつ対話を行い、今後能力を伸ばす必要がある分野などの研修について、教師から校長等へ相談することや、校長等から情報提供や指導、助言を行うことを想定しています。
この指導、助言等につきましては、教師が自らの学びを振り返りつつ、適切な現状把握と目標設定の下、自らの研修ニーズや学校の教育課題に対応した必要な学びを行っていくことが期待されるものであり、管理職等から一方的に指導するものでなく、対話の中で行われることが基本だと考えております。
次に、働き方改革についてお尋ねがありました。
今回の法案で提案申し上げている新たな研修の仕組みが円滑に運用されるためには、教師の負担軽減や必要な研修を適時受けることを可能とするための環境整備が重要でございます。
文部科学省の調査結果では、時間外勤務は、平成三十年度以降、一定程度改善傾向にあり、学校における働き方改革の成果が着実に出つつあるものの、依然として長時間勤務の教職員も多く、引き続き取組を加速させていく必要があると認識をしております。
このため、文部科学省としては、教員の負担軽減を図るため、令和元年の給特法改正による教師の勤務時間の上限等を定める指針の策定、小学校三十五人学級の計画的な整備や高学年の教科担任制の推進等、教職員定数の改善、教員業務支援員を始めとする支援スタッフの充実など、様々な施策を総合的に講じているところです。今後、こうした働き方改革の様々な取組と成果等を踏まえつつ、本年度に勤務実態調査を改めて実施する予定です。
引き続き、国、学校、教育委員会が連携し、あらゆる手だてを尽くして取組を進め、働き方改革を不退転の決意で推進してまいります。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/8
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009・山東昭子
○議長(山東昭子君) 伊藤孝恵さん。
〔伊藤孝恵君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/9
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010・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。
冒頭、ウクライナの地で戦火の中、引き裂かれ、奪われ、失われた命に哀悼の誠をささげます。
全世界が足並みをそろえてロシアと厳に対峙し、民主主義国家が連帯して難民の受入れと支援を進めることはもちろん、我が国のジェノサイド条約加盟に向け、国内法との整合性に鑑みた現実的な議論を始める必要があります。官房長官に、ロシアへの制裁の現状も含め、答弁を求めます。
教育委員会制度や男女共学化など、現在の日本の教育制度の礎は、その多くが戦後、アメリカの提言によりなされたものです。そんな時代背景下で、旧文部省の官僚たちがアメリカ側を説得してようやく産声を上げたのが昭和二十四年公布の教育公務員特例法です。
本法第二十一条には、教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならないと記されています。加えて、第二十二条には、研修を受ける機会が与えられなければならないと書かれています。つまり、研修は義務であると同時に権利でもある、ここに立法の趣旨があります。
そして、なぜ教員の学びがそれほどまでに大切かと問われれば、我々の目の前にいる子供たちに良質な学びを贈ることこそがこの国の未来に連なる可能性そのものだからです。
昭和二十四年の公布から七十二年、大戦の傷癒えぬ中にあって、どうか未来世代が豊かで幸せな学校生活を送れますようにと、教員たちの奮闘に期待し、この法律を送り出したであろう先人たちの願いに思いをはせながら、以下、文部科学大臣に質問させていただきます。
教員の学びを保障するには、免許更新制や研修の是非よりも、まず先に世界一多忙と言われる労働環境の改善について議論すべきだと思います。大臣の見解を伺います。
OECDが二〇一八年に実施した国際教員指導環境調査によると、日本の教員の一週間当たりの労働時間は、小学校、中学校共に調査参加国の中で最長にもかかわらず、知識や専門性を高めるための職能開発の時間は最短でした。授業に向けて研さんするのではなく、事務作業や部活動など、課外活動に多くの時間を費やしている実態があります。今年度は教員勤務実態調査が行われます。この結果を基に、働き方を再考し、定額働かせ放題の給特法の抜本見直しに向けた検討が開始されるものと理解しています。
教員が疲弊していては良い授業はできません。子供たちを愛するには、愛せるだけの心の余裕が必要なのです。諸外国は軒並み教員の身分や待遇を改善する教育政策を取っているのに対し、我が国の教員の給与は右肩下がり、非正規教員の課題も放置されている現状について、大臣はどのような意思をお持ちなのか、また、それらが子供たちの学びにいかなる影響を及ぼしているとお考えか、伺います。
やることは明確です。業務過多に陥っている教員たちの仕事のどこをどのように減らすのか。教員をサポートする人材やデジタル技術など、いつまでにどのくらいの規模の投資をするのか。いかなる人材をいかなる方法で、賃金水準で計画的に増やすのか。全ては子供たちの毎日の学びを支えるための海図を大臣に見せていただきたいのです。答弁を求めます。
劣悪な労働環境が認知されている昨今、二〇二一年度採用の公立小学校の教員試験倍率は過去最低の二・六倍となり、中学校、高校も大幅減となりました。教員のなり手はいないのに、二〇二五年度には小学校の全学年で三十五人学級となります。これに伴って、学校現場には新たに一万三千人を超える教員を迎え入れる必要があります。新卒並びに社会人教員採用におけるそれぞれの取組の具体策について大臣に伺います。
教員免許更新制は、免許を有しながら教職に就いていない社会人が教員を目指す上で高いハードルとなっていました。かく言う私も、四半世紀前に教員免許を取得しましたが、現行法制下では免許は休眠状態です。教員を目指す場合、仕事の合間を縫って三十時間の免許状更新講習を受講しなければ教壇に立つことはできません。
文部科学省が昨年、免許状を有する民間企業の勤務者などを対象に行ったアンケートでは、教員への転職ボトルネックとして、教員免許が休眠状態又は失効中であるとした割合が三割弱、免許状更新講習を受講する時間がないとした割合が二割強に上りました。本法律案により更新制が廃止されれば、講習を受けなくても教壇に立つことが可能となります。
今後、文科省として、免許状が休眠状態又は失効中となっている社会人に対してどのような働きかけをしていくのか。学校現場の疲弊のみならず、子供たちが多様な経験や感覚を持つ社会人教員から学べるメリットを思えば、政府広報や専用相談窓口などを設けてでも人材を確保すべきと考えますが、大臣の御所見を伺います。
教員免許更新制は、自民党政権が紆余曲折の末に実現させた政策です。不適格教員の排除という目的を、周囲の批判をかわすため、教員の能力開発という美辞麗句で覆って変質させた結果、一体これは何のため、誰のためという制度ができ上がり、今日の迷走を招きました。
文科大臣が我が国の子供たちに示しておられる学習指導要領の冒頭には、主体的、対話的で深い学びの実現が掲げられております。大臣には、是非、当該制度の導入を主導した政治家たちに、主体的、対話的な深い問いを投げかけていただきたいと思います。
そもそも、中央教育審議会のまとめで指摘されている制度の不備の多くは、導入前から危惧されていたことです。にもかかわらず、政治主導でいつの間にか進められてしまったことに問題の核心があります。
子供や現場の視点に欠けた政策決定を二度としないために、大臣はどのように主体的に検証に関わっていかれるおつもりか、なぜ廃止の決断に十三年もの時間を要したのか、教えてください。
最後に、本法律案では、教員免許更新制を廃止するだけでなく、教育公務員特例法も改正し、研修受講履歴の記録作成を義務化することになっています。研修記録を作成すること自体を否定するつもりはありません。私が伺いたいのは、その記録が教員の成長、ひいては子供たちの学びにとって有益であるというエビデンスの有無と、制度設計の詳細です。大臣の認識をお示しください。
エビデンスなき理念先行の義務化は、教員免許更新制と同じ過ちを繰り返すことになりかねず、教員による主体的な学びを求める一方で、研修を受講しない場合は懲戒処分になり得るという立て付けは、現場の不安を呼んでいます。
教員は、生徒たちを目の前にして、自分の使命とは何か、自分は彼らの人生にとってどのような存在になり得るのかを、いつも考えておられます。
教え子が自ら命を絶ち、なぜ、どうしてと問い続ける終わらない苦しみの中、レジリエンス教育を学び出した先生に会いました。担当した生徒がヤングケアラーだったことを同窓会の席で初めて知らされ、どうしてあのとき自分は気付けなかったのか自問自答した末、ヤングケアラー支援団体でボランティアを始めたという先生がいました。教室で一言も声を発しない外国ルーツの生徒と話したい一心でポルトガル語を習い出した先生や、耳の障害のある保護者と目を見て対話したいと手話を習得した先生もいました。
教室の中で子供たちが先生から学ぶように、先生たちもまた、子供たちの一人一人から多くのメッセージを受け取っています。ここから生まれた課題感や後悔や、もっと知りたい、まだまだ足りない、そんな気持ちを応援する仕組みが研修であるべきなのではないでしょうか。大臣の見解を伺います。
大人になる過程では、たくさんの失敗や裏切り、孤独や孤立にさいなまれることがあります。そんなとき、若き日に出会った恩師や、ふと掛けられた言葉にその後の人生を支えられることがあります。この国で生きる子供たちに、そんなかけがえのない時間を贈るための改正にこれらがなることを心から願い、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/10
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011・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 伊藤議員にお答え申し上げます。
まず、教師の労働環境の改善について、優先的議論についてお尋ねがありました。
昨年三月の中央教育審議会の諮問においては、五つの諮問事項のうち教員免許更新制の抜本的見直しについて、令和二年九月から中央教育審議会で包括的な検証が行われていたことや、臨時的任用教員の不足等が課題となっていたことを踏まえ、早急に必要な教師数の確保とその資質、能力の確保の両立を図る必要があることから、先行して結論を得ることとされました。文部科学省では、昨年十一月に審議まとめが報告されたことを踏まえ、本法案を国会に提出したところであります。
一方、新たな教師の学びの姿を実現する上で、教師の勤務環境を改善していくことが重要です。文部科学省では、令和元年に法改正を行い、教師の勤務時間の上限等を定める指針を策定するなど、学校の働き方改革に取り組んできたところです。引き続き、文部科学省が先頭に立ち、教育委員会や学校と連携して働き方改革を強力に推進してまいります。
次に、教師の処遇についてお尋ねがありました。
教師の給与水準については、人材確保法を踏まえ、現状でも一般行政職を上回っておりますが、一方で、長時間勤務の実態等に照らして様々な御指摘があることは承知をいたしております。
今後は、これまで推進してきた働き方改革の様々な取組と成果等を踏まえつつ、本年度に勤務実態調査を実施し、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況をきめ細かく把握する予定です。その結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含め、検討をしてまいります。
また、教職員の任用形態は任命権者である教育委員会が判断するものですが、安定的に学校教育を実施していくためには、計画的な正規教員の任用が基本であると考えております。
文部科学省としては、小学校における三十五人学級の整備や、小学校高学年における教科担任制の推進に向けた定数改善を計画的に進めるとともに、より一層計画的な正規教員の採用、人事配置を行うよう、各教育委員会に引き続き促してまいります。
次に、教師の労働環境が子供の学びに及ぼす影響についてお尋ねがありました。
教職は我が国の将来を担う子供たちを育む重要な仕事であり、教師のこれまでの働き方を見直し、教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、子供たちに対して更に効果的な教育活動を行うことができると考えております。
このため、国、学校、教育委員会が連携し、あらゆる手だてを尽くして取組を進め、教師が教師でなければできないことに全力投球できる環境を整備できるよう、文部科学省が先頭に立って必要な取組を進めてまいります。
次に、教育現場の環境の改善についてお尋ねがありました。
学校における働き方改革は、何か一つやれば解決するといったものではなく、国、学校、教育委員会が連携しつつ、それぞれの立場においてあらゆる手だてを講じていく必要がございます。
このため、文部科学省としては、様々な施策に総合的に取り組んできたところです。特に、令和元年の給特法の改正を踏まえ、教師の勤務時間の上限等を定める指針を策定するとともに、小学校三十五人学級の計画的整備や高学年教科担任制の推進、教員業務支援員や部活動指導員など支援スタッフの充実、教師用端末の整備や学校DX推進本部における校務の情報化の更なる検討などに取り組んでおります。
今後は、引き続き教育現場の体制整備を進めるとともに、働き方改革の様々な取組と成果等を踏まえつつ、本年度に勤務実態調査を実施し、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況をきめ細かく把握する予定です。その結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含め、検討してまいります。
次に、新卒並びに社会人の教員採用についてお尋ねがありました。
近年、公立学校の教員採用選考試験の採用倍率の低下が続いている中で、教師の人材確保は喫緊の課題と認識をしております。
現在、中央教育審議会におきまして、教員採用選考試験の実施時期の在り方や、特別免許状の更なる活用による多様な人材の確保などを含め、教師の在り方に関する包括的な議論をいただいております。文部科学省としては、この議論を踏まえつつ、多様で質の高い教師の確保に向けた取組を進めてまいります。
次に、社会人に対する働きかけについてお尋ねがありました。
免許状が休眠状態又は失効している方などが、学校現場に携わりたいという意欲を有するようになった場合などに教師として活躍してもらえるようにすること、また、教育界内外から人材を確保することで多様な専門性を有する質の高い教職員集団を実現することは大変重要でございます。
本法案成立の暁には、文部科学省としても、ホームページやSNSなどあらゆる機会や手段を通じて、法改正の趣旨、目的や、施行後の免許状の扱い、社会人向けの特別選考の実施状況について分かりやすく周知、広報を行ってまいります。
次に、教員免許更新制導入の施策検証についてお尋ねがありました。
教員免許更新制につきましては、中央教育審議会における包括的検証の状況を踏まえ、昨年三月に中央教育審議会に令和の日本型学校教育を担う教師の養成、採用、研修の在り方について諮問した際に、必要な教師数の確保とその資質、能力の確保が両立できるよう、教員免許更新制の抜本的な見直しの方向について先行して結論を得ることを求めたところであります。
昨年十一月には、中央教育審議会の審議まとめにおいて、現行の教員免許更新制の発展的な解消の方向性が示されました。これを受けて、私としては、速やかに新たな仕組みに移行する必要があると判断し、本法案を準備し、政府として今国会に提出をしたところでございます。
次に、教員免許更新制の廃止についてお尋ねがありました。
近年、社会の変化が早まり、非連続化するとともに、オンライン研修の拡大や研修の体系化の進展など教師の研修を取り巻く環境が大きく変化するなど、更新制導入時になかった状況の変化が生じております。
こうした変化を踏まえ、研修等の記録や指導、助言等の義務付けなど新たな教師の学びの姿に向けた方策の実施により、教師の個別最適な学び等をより効果的に進められる環境を整うことから、このタイミングで更新制を発展的に解消することといたしました。
次に、教員や子供たちにとって研修記録の意義についてお尋ねがありました。
本法案は、中教審の審議まとめにおきまして、各地域や学校で既に行われている研修履歴の記録の状況を踏まえ、一人一人の教師が、客観的に現在の姿を自覚するとともに、将来の姿を適切に設定できるよう、研修履歴等を手掛かりとした教師と管理職等との対話や研修の奨励が確実に行われるべきと提言されたことを踏まえ、それを具体化したものでございます。
このような主体的で個別最適な学びは、教師自身の成長につながるだけでなく、教師の学びが児童生徒の学びのロールモデルになることを通じて、児童生徒の主体的、対話的で深い学びの充実につながるものだと考えております。
次に、教員の研修のあるべき姿についてお尋ねがありました。
教師は、職務の遂行のために絶えず研究と修養に努めることとされており、教師の研修については自主性が重要であることは言うまでもございません。加えて、変化の激しい時代におけるこれからの教師の学びの姿としては、主体的な学びや個々の教師のニーズ、課題に対応した個別最適な学びのほか、単に知識、技能の修得だけでない、教師間での協働的な学びや地域や学校現場の課題に対応した多様なスタイルの学びなどが必要でございます。
文部科学省としては、新たな研修システムによって、これからの時代に必要な教師の学びを実現してまいりたいと考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣松野博一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/11
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012・松野博一
○国務大臣(松野博一君) 伊藤孝恵議員の御質問にお答えをいたします。
難民の受入れとジェノサイド条約についてお尋ねがありました。
ウクライナ避難民の方々の我が国への受入れについては、政府一体となって避難民の円滑な受入れと生活支援等を行っています。具体的には、一時滞在場所の提供や生活費、医療費の支給を始めており、今後は、カウンセリング、日本語教育、就労支援等、受入れ後の各場面に応じた具体的な支援策を実施することとしております。
ジェノサイド条約について、我が国は、ジェノサイドのように国際社会全体の関心事である最も重大な罪を犯した者が処罰されずに済まされてはならないと考えています。こうした犯罪の撲滅と予防に貢献するとの考えの下、国際刑事裁判所ローマ規程の締約国として、その義務を誠実に履行しています。
その中で、ジェノサイド条約は、締約国に対し、集団殺害の行為等を犯した者を国内法により犯罪化する義務を課しているところ、今後、ジェノサイド条約の締結を考えるに当たっては、我が国におけるジェノサイド条約締結の必要性や、締結の際に必要となる国内法整備の内容等につき、引き続き慎重な検討が必要と考えています。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/12
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013・山東昭子
○議長(山東昭子君) 片山大介さん。
〔片山大介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/13
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014・片山大介
○片山大介君 日本維新の会の片山大介です。
私は、会派を代表し、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案について、文部科学大臣に質問します。
本法律案の主な内容は、教員免許更新制を廃止するとともに、公立学校の教員などに関する新たな研修制度を導入することです。
その背景として、平成二十八年の教育公務員特例法の改正により、各地域の課題やニーズに応じた体系的な研修の実施が図られるようになってきたこと、教員についてもコロナ対応を契機にオンライン化された学びが急速に広まってきていることなどが挙げられています。そして、このような社会的変化や学びの環境の変化を受け、教員の学びの在り方もまた変化することが必要であるとしています。
文部科学大臣に伺います。
それでは、これまでの教員の学びの在り方について、どのような点に課題があったと認識しているのでしょうか。また、教員の学びの在り方は今後どのようになっていくべきと考えているのでしょうか。お答えください。
教員免許更新制は、当初、教育改革の名の下に開始されましたが、導入当初から批判は強く、近年は教員の多忙化やいわゆる教員不足の原因の一つとされ、制度の抜本的な見直しが求められていました。その結果、制度開始から十三年ほどで教員免許更新制の廃止を内容とする本法律案が提出されたわけですが、教員免許更新制についてどのように総括されているのか伺います。また、更新制を維持しつつ、制度の改善、改良で対応することはできなかったのか、併せて御見解をお示しください。
政治主導で一旦導入が決められたものの、その後見直された近年の教育改革にいわゆる大学入試改革があります。大学入学共通テストにおける記述式問題の見送りや、英語民間試験を活用した大学入試英語成績提供システムの見送りです。
これについて、大学入試のあり方に関する検討会議は、およそ一年半掛けて議論を行い、制度の改善に係る意思決定の在り方にまで踏み込んだ提言をまとめ、今後の大学入試改革に係る意思決定は、議論の透明性、データやエビデンスの重視、そして多様な意見聴取などに留意することが必要であるとしています。
教員免許更新制の導入についても、導入時に議論の透明性が担保されていたのか、データやエビデンスが重視された意思決定となっていたのか、そして意見聴取は広範に行われていたのかといった点を検証していくことは、今後の教育政策の意思決定をより良いものにする上で重要だと思いますが、何らかの形で教員免許更新制導入時の経緯を検証することは考えていますでしょうか。
そして、大学入試や教員免許更新制に関するもののみならず、今後のあらゆる教育改革を行っていく上で、議論の透明性、データやエビデンスの重視、多様な意見聴取などに留意する必要があると思いますが、御見解を伺います。
本法律案で、新たな教師の学びの姿を実現するための手段として、新たな研修制度を導入し、公立学校の教員について研修記録の作成などが義務付けられます。
文部科学大臣に伺います。
まず、なぜ研修記録の作成を義務付けることなどの新たな研修制度を導入することが新たな教師の学びの姿を実現していく上で必要不可欠であると考えているのか、その理由を教えてください。
本法律案では、都道府県教育委員会などが一人一人の教員の研修記録を作成しなければならないとされています。令和三年度に文部科学省が実施した研修受講履歴管理状況調査では、小中学校などの正規教員の研修受講履歴を管理している都道府県の教育委員会は、四十七都道府県のうち三十六とのことでした。既に多くの教育委員会で研修を受講した記録を作成していることになりますが、研修記録を作成している教育委員会の研修制度にはどのような特徴があるのでしょうか。
また、研修記録を作成していない教育委員会と比べ、教員研修の内容や効果、教員の学びの姿にどのような違いが見られるのでしょうか。研修記録を作成することのメリットを分かりやすく教えてください。
また、逆に言えば、十一の都道府県の教育委員会では研修受講履歴が管理されていないことになります。令和五年度から全ての都道府県の教育委員会などが研修記録の作成を行えるようにするために、文部科学省として、まだ研修記録を作成していない都道府県の教育委員会などに対し、どのような支援を行っていく考えでしょうか。
ところで、研修を受講したという記録と人事の評価について双方をリンクさせることは、余り良いとは思えません。良い人事評価を受けるために、目の前の子供たちを置き去りにして研修ばかり受けるとなってしまっては本末転倒だからです。研修受講の記録と人事評価はどのような関係にあるのか、文部科学大臣の見解を伺います。
肝腎なことは、研修履歴の記録よりも、研修で何を学び取ったかです。研修の履歴そのもので人事評価はしないが、研修を行った結果として各教師が発揮した能力や上げた業績については、人事評価の対象になるとされています。それであれば、人事評価をより公正に行うためにも、研修の成果を客観的に評価する仕組みが必要ではありませんか。今後、研修制度を更に改善していくためにも必要なことだと考えますが、大臣の御所見をお聞かせください。
教員免許更新制は、教育職員免許法に規定されているもので、国立、公立、私立を問わず、原則として大学及び高等専門学校以外の全ての学校の教員が対象とされていました。なので、本法律案で教員免許更新制が廃止されれば、国立、公立、私立全ての学校の教員は、施行期日以降、免許状更新講習の受講が不要となります。
一方で、本法律案のうち、研修記録の作成を義務付けるなどの新たな研修制度の導入は、教育公務員特例法の改正により行われるものなので、公立学校の教員などが対象です。そうなると、公立学校の教員は教員免許更新制の廃止に合わせて何らかの制度改正が行われる一方、国立、私立の学校の教員にとっては、本法律案は教員免許更新制を廃止するだけのもののようにも見えます。
国立、私立の学校の教員が教員としての資質を向上させるために、教員免許更新制を廃止すること以外に、本法律案においてどのような措置が講じられているのでしょうか。仮に、何ら措置が講じられていない場合、国立、私立の学校の教員の資質向上に向けて、法改正以外にどのような取組を実施していくお考えなのか伺います。
最後に、教職員の待遇改善についてお尋ねします。
既に教員給与特別措置法、いわゆる給特法の見直しの議論も進められています。給特法は、一九七一年に制定されて以来、抜本的な改革は、改定はなく、四%の教職調整額という設定も実態に合わなくなっており、廃止も含めた見直しは当然です。
給特法の見直しに当たっては、個々の教員の努力や実績が反映される仕組みを考慮すべきと考えますが、現在文科省が検討している給特法の見直しの方向性をお示しください。
我が党は、義務教育だけでなく、幼児教育、高校、大学など全ての教育課程の完全無償化を憲法上の原則に定めることをマニフェストに掲げる党として、全ての子供たちへの教育の保障と教職員の皆さんが教育に専念できる環境を実現させるために全力を尽くすことをお誓い申し上げ、私の質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/14
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015・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 片山議員にお答え申し上げます。
まず、教員の学びの在り方についてお尋ねがありました。
グローバル化や情報化の進展によりまして、社会が急速に変化するとともに、教育をめぐる状況の変化もスピードを増しております。こうした中、例えばGIGAスクール構想や特別なニーズを有する児童生徒への支援の充実などに、それぞれの現場の課題を踏まえて適時適切に対応することが求められております。
こうした社会の変化により適切に対応していく上で、これまでの免許更新制の下での十年に一度の講習は、常に最新の知識、技能を学び続けることと整合的でないことや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難といった課題がありました。
こうした中、これからの教師の学びの姿として、各学校において一人一人が置かれた状況に照らして、適切な現状把握と具体的な目標設定を行った上で、個別最適な協働的な学びを行うことが必要であると考えております。
次に、教員免許更新制の総括についてのお尋ねがございました。
教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、大学による教師の資質、能力の向上に対する関与の拡大など、一定の成果を上げてきました。一方で、これまでの免許更新制の下での十年に一度の講習は、常に最新の知識、技能を学び続けることと整合的でないことや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難であるといった課題がございました。
このため、教員免許更新制の下で大学等が形成した良質な教育コンテンツを継承しつつ、個々の学校現場や教師のニーズに即した新たな研修システムにこれからの時代に必要な教師の学びを実現させることとし、現行の教員免許更新制を発展的に解消する本法案を提出したものでございます。
次に、更新制導入時の経緯の検証についてのお尋ねがございました。
教員免許更新制の導入に当たりましては、有識者や関係団体等の意見聴取、各種調査等も含めて様々な観点から検討を行った上でまとめられた中央教育審議会の答申を踏まえて制度設計を行ったところです。このため、先生御指摘の観点も含め、適切なプロセスが踏まれていたものと考えております。
いずれにせよ、教育政策を推進するに当たりましては、より効果的、効率的な教育政策の企画立案等を行う観点や、国民への説明責任を果たす観点から、客観的な根拠や議論の透明性、多様な意見聴取を重視してまいります。
次に、新たな研修制度を導入する理由についてお尋ねがありました。
変化の激しい時代におけるこれからの教師の学びの姿としては、教師一人一人の置かれた状況に照らして、適切な現状把握と具体的な目標設定を行った上で、個別最適で協働的な学びが行われることが必要であると考えております。
このため、今回の法改正においては、過去に教師が何を学んできたかを客観的に記録することを義務付けるとともに、これを基に教師の資質向上に対し指導、助言等を行うという管理職の役割を明確にすることが必要であると考えております。
次に、研修記録作成のメリットについてお尋ねがありました。
現在、研修等の記録を作成している教育委員会は、教師一人一人による研修履歴の振り返りと受講計画の作成や、学校管理職等による教師への研修受講指導などに活用していると承知をいたしております。
今回の改正における研修履歴の記録とこれを活用した指導、助言等により、全ての学校において、個々の教師の強みや専門性が明らかとなり、教師自身が更に資質、能力を向上する基礎となるほか、学校管理職が個々の教師の強みや専門性を生かした学校運営が可能となるものと考えております。
次に、研修記録を作成していない教育委員会への支援についてお尋ねがございました。
今回の改正による研修等の記録の作成は、任命権者であります教育委員会が行うこととなりますが、具体的な方法については、各教育委員会が教員研修計画で必要な事項を定めることを想定しております。
研修の記録方法については、記録自体が過剰な負担となることがないよう留意する必要があります。文部科学省としては、各教育委員会の判断に資するよう、研修等の記録の基本的な考え方等をガイドラインで示してまいります。
次に、研修受講の記録と人事評価の関係についてお尋ねがありました。
今回の法改正によりまして、教育委員会が行う研修等に関する記録は、校長等管理職による各教師の資質の向上に関する指導、助言等の際に活用されるものであり、人事評価制度とはその趣旨と目的が異なるものでございます。
研修等に関する記録自体や研修の多寡そのものが人事評価に直接反映されるものではありませんが、研修を行った結果として各教師が発揮した能力や上げた業績について、人事評価の対象となるものと考えてございます。
次に、研修成果の評価についてお尋ねがありました。
研修成果の確認は重要です。これまでも、研修報告書の提出などの方法により修了状況を確認していますが、今後は、校長等の管理職が、期首面談、期末面談等の場を活用しつつ、個々の教師の目標設定を踏まえて研修成果を確認することを想定しております。
あわせて、今回の法改正に伴いまして、文部科学大臣が定める資質向上に関する指針の改正を予定しており、その際、研修の内容、態様に応じた成果の確認方法を明確化することを考えております。
次に、国立、私立の学校教員の資質向上への措置についてお尋ねがございました。
これらの学校については、設置者が自主性を発揮し、所属教師の資質、能力の向上に努めていくことが原則ですが、国としても、研修の奨励を受けながら主体的に学ぶことができる環境づくりを促していくことが重要であると考えております。
このため、文部科学省では、公立学校の取組内容等を情報提供するとともに、教職員支援機構が公開している研修動画コンテンツ等の活用や機構が実施する各種研修への参加の促進により、国立、私立学校においても研修の充実が図られるよう取り組んでまいります。
次に、給特法についてお尋ねがありました。
公立学校の教師の処遇を規定している現在の給特法の仕組みでは、教師の職務は自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きく、どこまでが職務であるのか切り分け難いという特殊性等を踏まえ、時間外勤務手当を支給しない代わりに、勤務時間内、勤務時間の内外を包括的に評価するものとして教職調整額を支給しております。
一方、給特法制定から半世紀が経過し、教師に求められる仕事の内容も変化しております。また、平成二十八年度に実施しました調査においても、法制定時の想定を大きく超える長時間勤務の実態が明らかとなっております。これらを踏まえ、令和元年に法改正を行い、教師の勤務時間の上限等を定める指針を策定するなど、学校の働き方改革に取り組んでいるところです。
今後は、こうした働き方改革の様々な取組と成果等を踏まえつつ、本年度に勤務実態調査を実施し、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況をきめ細かく把握する予定です。その結果等を踏まえ、給特法の法制的な枠組みや、御指摘の点の、御指摘の観点も含め、検討いたしてまいります。
以上でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/15
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016・山東昭子
○議長(山東昭子君) 吉良よし子さん。
〔吉良よし子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/16
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017・吉良よし子
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
私は、会派を代表して、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案について文部科学大臣に質問します。
本法案により、政府は、教員免許更新制を発展的に解消するとしています。しかし、なぜ廃止ではなく、発展的に解消するのでしょうか。
そもそも、教員免許更新制は、教育職員の身分を人質に取り、十年ごとに義務付けられた三十時間以上の講習を受けなければ免許を失効させるという制度でした。これは、教職における身分保障について、あくまでも保護されるべきとするユネスコの教員の地位に関する勧告に明確に反するものです。
中央教育審議会の審議まとめでも、免許状を更新しなければ職務上の地位の喪失を招きかねないという状況の下で、教師の主体的な姿勢が発揮されてきたと評価することには慎重にならざるを得ないなどとし、教員免許更新制が教師の学びの阻害要因になると考えざるを得ないとまで言っています。
さらには、教師が多忙な中で、経済的、物理的な負担が生じている、臨時的任用教員等の人材確保に影響を与えているとの中教審の指摘にあるとおり、更新講習に係る時間と費用に対する教員の負担感、うっかり失効が生じる制度上の不備、未更新からくる教員不足といった事態が生じる下で、全国の教育現場から教員免許更新制の廃止を求める声が高まっていました。国会でも、日本共産党始め野党各党が早期の制度廃止を求めてきたものです。
もはや、教員免許更新制の制度的な破綻は明白でありませんか。とすれば、発展的解消などではなく、きっぱり廃止すべきではありませんか。お答えください。
本法案では、教員免許更新制をなくす代わりに、新たな教師の学びの姿を実現するためとして、任命権者である都道府県教育委員会による研修の記録の作成と、管理職による指導、助言を行うとしています。中教審では、これらの方策の実施により、これまで教員免許更新制が制度的に担保してきたものを総じて代替することができると言います。
では、これまで教員免許更新制が担保してきたものとは何なのでしょう。中教審では、教師に学びの契機と機会を提供し、教師が最新の知識、技能を修得できるようにすることとありますが、そもそも、教職員の学びの機会である研修制度は、教員免許更新制ではなく、教育公務員特例法に位置付けられているのではないですか。
教育公務員特例法は、二〇一六年に改正され、国による教員の資質向上に関する指針を参酌して、都道府県教育委員会等が教員育成指標と教員研修計画を策定することが義務付けられました。
例えば、東京都の場合、一年目から三年目の基礎形成期、四年目以降の伸長期、主任教諭となる九年目以降の充実期、指導教諭や主幹教諭となる十一年目以降、そして、教育管理職候補者、副校長、校長という勤務年数や役割に応じたそれぞれの段階ごとに求められる能力や役割として、学習指導力、生活指導・進路指導力、外部との連携・折衝力、学校運営・組織貢献力などに分類して示した詳細な指標を策定しています。そして、初任者研修などの法定研修に加えて、この策定した指標に合わせた各段階で受けるべき研修の内容を教員研修計画に細かく示しています。さらに、東京都では、既に研修の受講履歴も記録され、教育委員会や管理職などから盛んに都教委の研修を受けなさいなどと指導されるそうです。
こうした既に膨大な研修が行われており、さらに、現場でそれらを受講したことの記録や受講を奨励する指導が既に行われていてもなお、教員の研修機会の確保や知識、技能の修得が不十分だというのでしょうか。
むしろ、本法案は、三十時間の講習を強制してきた教員免許更新制の代わりに研修の記録や指導、助言を義務付けることで現在の研修の管理統制を強化するものではありませんか。それは、教師の主体的な学びの姿勢を阻害するものではないですか。お答えください。
本法案により規定される指導、助言は、管理職による対話と奨励として、人事評価の面談、期首面談や期末面談において行うことが想定されています。衆議院では、指導、助言は人事評価制度とは別物だと答弁されていますが、人事評価の面談と同じタイミングでの指導、助言は、本当に人事評価と明確に区別される、区別できるというのでしょうか。
人事評価の面談の場で研修受講の有無などを確認されることは、教育委員会、管理職の意に沿う研修を受けなければならないという義務感、そんたくにつながり、パワハラの温床となる可能性もあります。衆議院では、指導、助言は対話の中で行われることが基本なのでパワハラにつながらない、パワハラにならない形で取り組んでいくとの答弁がありましたが、パワハラにならない形とは何ですか。指導、助言の場でパワハラを防ぐ根拠となる条文はありますか。お答えください。
問題はパワハラだけではありません。中教審審議まとめにおいて、必ずしも主体性を有しない教員に対する対応として、管理職等の期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合は、職務命令に基づき研修を受講させることが必要と明記されています。衆議院では、この研修を命じる職務命令に違反した場合には厳正な措置を講じることもあり得るとの答弁もありました。それはつまり、懲戒処分を行うということですか。お答えください。
教員の研修について今問われているのは、膨大な研修を押し付けることではなく、個々の教師が自主的、自律的に学び、研修できるゆとりと時間をどうやって保障するかということです。
全日本教職員組合青年部の調査によれば、勤務時間内で授業準備をする時間はどのくらいですかとの問いに、一日三十分以内又はないと答えた教師が小学校で六一%、中学校で六九%に上ります。
自由記述にも、元気だった若手教職員が病気による休暇、療休に入った、あしたは我が身、もう体がもたない、何度も辞めようと思いながらやっている、朝七時から十九時まで働くのは当たり前、十九時に帰れればまだよい方、楽しい授業がしたいのに、勤務時間内には報告書、テストの丸付け、校務分掌、やってもやっても次の仕事、やることが山積みで、一番大切な授業準備ができないなど、多くの若手教職員の悲鳴があふれています。文科省の調査でも、教師の一日当たりの学内勤務時間のうち、公務としての研修時間は小学校で十三分、中学校で六分しか取れていないことが分かっています。
休憩時間もない、授業準備もままならず、学校現場を片時も離れることができない状況で、いつ、どうやって膨大な研修を受講できるのでしょう。その条件があるのか、お答えください。
教師の自主的、自律的な学び、研修する機会を保障するためには、教職員の長時間過密労働を解消すること、教員一人当たりの持ちこま数を減らし、足りない教職員を抜本的に増やすことこそ急務なのではないですか。
教職員は、子供たち一人一人の学びと人格形成を支える教育の専門家です。全ての教職員が、教育の専門家としての広い教養、深い専門的な知識や技能を自主的、自律的に学べる時間と環境を保障することこそ必要であると申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/17
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018・末松信介
○国務大臣(末松信介君) 吉良議員にお答え申し上げます。
まず、教員免許更新制の廃止についてお尋ねがございました。
教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、大学による教師の資質、能力の向上に対する関与の拡大など、一定の成果を上げてきました。一方で、これまでの免許更新制の下での十年に一度の講習は、常に最新の知識、技能を学び続けることと整合的でないことや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難であるといった課題がございました。
このため、教員免許更新制の下で大学等が形成した良質な教育コンテンツを継承しつつ、個々の学校現場や教師のニーズに即した新たな研修システムによって、これからの時代に必要な教師の学びを実現させることとし、現行の教員免許更新制を発展的に解消する本法案を提出したものでございます。
次に、教職員の学びの機会と知識、技能の修得の必要性についてお尋ねがありました。
平成二十八年の教育公務員特例法の改正により、全ての都道府県教育委員会において、教師の資質向上に関する指標に基づく教員研修計画が策定され、教師の資質、能力の向上のための体系的、計画的な研修が充実してきたと考えております。
その一方、変化の激しい時代におけるこれからの教師の学びの姿として、教師一人一人の置かれた状況に照らして、適切な現状把握と具体的な目標設定を行った上で、個別最適で協働的な学びが行われることが必要であると考えております。
このため、過去に教師が何を学んできたかという情報を客観的に記録することを義務付け、これを基に校長等管理職が教師の資質向上に関し指導、助言等を行うという役割を明確にすることを趣旨とした教育公務員特例法の改正を行うものでございます。
次に、本法案と教師の学びの姿勢との関係についてお尋ねがありました。
本法案では、校長等の管理職が、教師自身の過去の研修等の記録を活用しつつ、今後能力を伸ばす必要がある分野など、研修について、一人一人の教師から相談を受けたり、情報提供や指導、助言を行うことを想定しています。
これにより、教師が自らの学びを振り返りつつ、適切な現状把握と目標設定の下で自ら必要な学びを行う、主体的で個別最適な学びが実現されるものと考えております。したがって、本法案は教師の管理統制を強化するものではありません。
次に、資質向上に関する指導、助言と人事評価の関係についてお尋ねがありました。
今回の法改正により教育委員会が行う研修等に関する記録は、校長等管理職による各教師の資質の向上に関する指導、助言等の際に活用されるものであり、人事評価制度とはその趣旨と目的が異なるものでございます。
なお、今回の改正に基づく指導、助言等を人事評価の期首、期末の面談の場を活用して行うことを想定しているのは、この指導、助言等を過度な負担とせず、学校現場で効率的かつ合理的に行われることを意図するものであり、人事評価と異なる趣旨であることに変わりはございません。
次に、指導、助言の場におけるパワハラ防止についてお尋ねがありました。
今回の法改正は、あくまで、教師と管理職等が対話を繰り返す中で、教師が自らの研修ニーズと、自分の強みや弱み、今後伸ばすべき力や学校で果たすべき役割などを踏まえながら、必要な学びを主体的に行っていくことが基本だと考えております。
御懸念のパワハラを防ぐ根拠条文については、労働施策総合推進法により、その防止措置が事業主に対して義務付けられております。今後も、様々な機会を捉えて、同法に基づく指針を踏まえた適切な対応について、各教育委員会に対して指導をいたしてまいります。
次に、研修を命ずる職務命令と懲戒処分についてお尋ねがございました。
校長等の管理職が研修の受講についての指導、助言を繰り返し行ったにもかかわらず、期待される水準の研修を受けているとは到底認められない場合などやむを得ない場合には、職務命令として研修を受講させる必要もあると考えております。万が一、職務命令に従わないような事例が生じた場合は、法律に定める要件に当たり得ることから、事案に応じて任命権者の判断により懲戒処分を行うこともあり得るものと考えております。
次に、研修時間の確保についてお尋ねがありました。
これからの教師の学びの姿としては、教師一人一人の状況が異なることなどから、学ぶ内容や量もそれぞれ応じたものになることが予想され、想定されます。また、教師の負担を軽減するとともに、必要な研修を適切なときに受けることを可能とするために、文部科学省ではこれまでも学校における働き方改革を推進してきました。
今後、研修の厳選、重点化やオンラインの研修コンテンツの活用などによりまして、効果的、効率的な実施、研修環境の整備に取り組んでまいります。
次に、学校における働き方改革と教職員定数の改善についてお尋ねがございました。
新たな研修の仕組みが円滑に運用されるためには、教師の負担軽減や必要な研修を適時に受けることを可能とするための環境整備が重要でございます。
文部科学省では、令和元年に給特法を改正し、教師の勤務時間の上限等を定める指針を策定するなど、学校の働き方改革を推進しております。時間外勤務は、平成三十年度以降、一定度改善傾向にあり、改革の成果が着実に出つつありますが、依然として長時間勤務の教職員が多く、引き続き取組を加速させていく必要があると認識をしております。
また、令和四年度予算では、小学校高学年における教科担任制の推進等のための教職員定数の改善により、持ち授業時数を軽減するとともに、小学校三十五人学級の計画的な整備等のための定数改善や、教員業務支援員を始めとする支援スタッフの充実なども図っております。
引き続き、研修時間の確保を含め、教師が教師でなければできないことに全力投球できる環境整備を進めてまいります。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/18
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019・山東昭子
○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/19
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020・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第一 旅券法の一部を改正する法律案
日程第二 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長馬場成志さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔馬場成志君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/20
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021・馬場成志
○馬場成志君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、旅券法改正法案は、旅券に関する国際的な動向及び情報技術の進展を踏まえ、旅券の発給申請手続等の電子化に係る関連規定の整備、査証欄の増補の廃止、一般旅券の失効に係る例外規定の整備、大規模な災害の被災者に係る手数料の減免制度の創設、未交付失効旅券の発行費用の徴収のための規定の整備等の措置を講ずるものであります。
次に、震災特例旅券法廃止法案は、東日本大震災から十年が経過し、令和三年三月十二日以降、東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律に基づき震災特例旅券の発給の申請が行われることは想定されないため、同法を廃止しようとするものであります。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、査証欄の増補の廃止と国際民間航空機関の勧告への対応、旅券の手数料を発給申請時に徴収できない理由、電子化された申請手続の利便性、被災者に係る手数料の減免制度を柔軟に適用する必要性等について質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、順次採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/21
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022・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより両案を一括して採決いたします。
両案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/22
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023・山東昭子
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/23
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024・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第三 関税暫定措置法の一部を改正する法律案
日程第四 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。財政金融委員会理事森屋宏さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔森屋宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/24
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025・森屋宏
○森屋宏君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財政金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、関税暫定措置法の一部を改正する法律案は、ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、G7と連携し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を一層強める等の観点から、貿易優遇措置である最恵国待遇を撤回しようとするものであります。
次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案は、同様の観点から、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう、制裁の実効性を更に強化しようとするものであります。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、ロシアに対する経済制裁の在り方、ロシアからの輸入品に対する関税率引上げの影響、暗号資産に関する規制の実効性確保に向けた取組等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、両法律案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/25
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026・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
まず、関税暫定措置法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/26
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027・山東昭子
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案の採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/27
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028・山東昭子
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X01820220420/28
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