1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年六月十三日(月曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第三十一号
令和四年六月十三日
午前十時開議
第一 労働者協同組合法等の一部を改正する法
律案(衆議院提出)
第二 令和四年度子育て世帯生活支援特別給付
金に係る差押禁止等に関する法律案(衆議院
提出)
第三 在外教育施設における教育の振興に関す
る法律案(衆議院提出)
第四 石綿による健康被害の救済に関する法律
の一部を改正する法律案(衆議院提出)
第五 脱炭素社会の実現に資するための建築物
のエネルギー消費性能の向上に関する法律等
の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
第六 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
第七 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴
う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
第八 電気通信事業法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/0
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001・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
日程第一 労働者協同組合法等の一部を改正する法律案
日程第二 令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案
(いずれも衆議院提出)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長山田宏さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔山田宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/1
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002・山田宏
○山田宏君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、労働者協同組合法等の一部を改正する法律案は、非営利性が徹底された労働者協同組合の認定制度を創設するとともに、認定を受けた労働者協同組合に対する税制上の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、提出者である衆議院厚生労働委員長橋本岳君より趣旨説明を聴取した後、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
次に、令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案は、令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金について、差押えの禁止等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、提出者である衆議院厚生労働委員長橋本岳君より趣旨説明を聴取した後、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/2
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003・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより両案を一括して採決いたします。
両案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/3
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004・山東昭子
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
よって、両案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/4
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005・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第三 在外教育施設における教育の振興に関する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長元榮太一郎さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔元榮太一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/5
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006・元榮太一郎
○元榮太一郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、衆議院文部科学委員長の提出によるものであり、在外教育施設における教育の振興に関し、基本理念を定め、国の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他在外教育施設における教育の振興に関する施策の基本となる事項を定めようとするものであります。
委員会におきましては、在外教育施設への国の支援の在り方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/6
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007・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/7
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008・山東昭子
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/8
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009・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第四 石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。環境委員長徳永エリさん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔徳永エリ君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/9
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010・徳永エリ
○徳永エリ君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、衆議院環境委員長の提出によるものでありまして、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対する救済の充実を図るため、特別遺族弔慰金等及び特別遺族給付金の請求期限の延長並びに特別遺族給付金の対象者に係る死亡時期の延長を行おうとするものであります。
委員会におきましては、請求期限の延長期間を十年とした理由、石綿に起因する疾病の治療、研究への支援に石綿健康被害救済基金を活用することの是非、特別遺族給付金の全ての支給対象者への個別通知の必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/10
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011・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/11
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012・山東昭子
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/12
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013・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第五 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。国土交通委員長斎藤嘉隆さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔斎藤嘉隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/13
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014・斎藤嘉隆
○斎藤嘉隆君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、建築物のエネルギー消費性能の一層の向上及び建築物における木材の利用の更なる促進を図ることにより、我が国における脱炭素社会の実現に資するため、建築物エネルギー消費性能基準への適合義務の対象となる建築物の範囲の拡大及び市町村が定める区域において再生可能エネルギー利用設備の設置の促進のために必要な措置を講ずる制度の創設並びに木造建築物に係る建築確認の対象範囲の拡大、防火及び構造に関する規制の合理化、建築物の高さ等の制限に係る特例許可制度の拡充並びに既存不適格建築物に関する規制の合理化等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、省エネ基準適合義務の対象拡大等を踏まえた中小工務店等への支援、建築物の省エネ性能の一層の向上を図るための省エネ基準等の設定、建築物の性能表示の在り方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/14
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015・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/15
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016・山東昭子
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/16
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017・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第六 刑法等の一部を改正する法律案
日程第七 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。法務委員長矢倉克夫さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔矢倉克夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/17
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018・矢倉克夫
○矢倉克夫君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、刑法等の一部を改正する法律案は、刑事施設における受刑者の処遇及び執行猶予制度等のより一層の充実を図るため、懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設し、その処遇内容等を定めるとともに、罪を犯した者に対する刑事施設その他の施設内及び社会内における処遇の充実を図るための規定の整備を行うほか、近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げようとするものであります。
なお、衆議院において、政府は、侮辱罪の法定刑を引き上げる改正規定の施行後三年を経過したときは、改正後の侮辱罪の規定の施行の状況について、外部有識者を交えて検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする修正が行われております。
次に、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案は、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴い、関係法律の規定の整理等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、両法律案を一括して議題とし、川越少年刑務所を視察したほか、参考人から意見を聴取するとともに、拘禁刑を創設する意義及び効果、社会内処遇を充実させる必要性、侮辱罪の法定刑引上げが表現の自由に与える影響、インターネット上の誹謗中傷対策を強化する必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局した後、日本共産党を代表して山添委員より、刑法等の一部を改正する法律案に対して、拘禁刑及び拘留について、これらに処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとする規定を削除するとともに、侮辱罪の法定刑を引き上げる改正を行わないこととする等の修正案が提出をされました。
次いで、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して山添委員より修正案に賛成、両法律案に反対、沖縄の風を代表して高良委員より両法律案に反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。
討論を終局し、順次採決の結果、修正案は否決され、両法律案はいずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、刑法等の一部を改正する法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/18
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019・山東昭子
○議長(山東昭子君) 両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。真山勇一さん。
〔真山勇一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/19
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020・真山勇一
○真山勇一君 立憲民主・社民会派の真山勇一です。
会派を代表して、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律について、反対の立場から討論いたします。
今回の刑法等改正案のように、重要な論点が幾つもある法案を抱き合わせで国会に提出してくるということが、このところ常態化しています。こうした振る舞いは国会での議論を軽視するものであり、猛省を促したいと思います。
本改正案は、受刑者の処遇の充実や改善更生を進め、その一方で、侮辱罪の厳罰化という二つの大きな柱が盛り込まれます。どちらも複数国会をまたいで審議してよいほどの重要な論点です。それを短期間に、しかも一括で審議せよとは余りにも乱暴ではないでしょうか。
本改正案だけではありません。今国会で既に成立した改正民事訴訟法においても、訴訟手続のIT化を議論している中に、抱き合わせでいわゆる期間限定裁判という新たな制度が盛り込まれていました。審理期間を六か月に区切るという諸外国に例を見ないものです。これで裁判の公正さ、適切さが維持されるのか、新しい制度だけに、立法事実を踏まえた上でのしっかりとした検証と議論が必要だったはずですが、短期間の日程で押し切りました。
刑法や民法といった基本法は、国家の、国家と社会の骨格を形成するものです。一たび成立すれば、数十年あるいは百年単位で使われる可能性があります。だからこそ、立法府においては、あらゆる観点から徹底した議論が必要であるはずです。にもかかわらず、重要事項を抱き合わせで盛り込んだ改正案を国会に提出し、短い期日で成立させてしまうという手法を多用することは、明らかに国会軽視であり、これでは熟議などしようがありません。
民主主義を守り、発展させることの重要性については、同じ思いを共有していると思います。与党も野党もないはずです。発展させることの重要性について共有している、このことは、政府・与党の皆さんにはいま一度考えていただき、このような乱暴な法改正を慎まれるよう強く要望いたします。
今回もまた、こうした抱き合わせ法案であることもあり、法務委員会での審議は全く深まったとは言えませんでした。幾つもの重要な論点の詳細が不明のまま、今日の本会議を迎えています。
本改正案は、刑法制定当初からの刑罰である懲役と禁錮を廃止し、拘禁刑に一本化されるという明治以来の大改革です。映画やテレビドラマの法廷シーンでおなじみの被告を懲役○○年に処すといったせりふは日本社会から消えてしまうわけです。悪いことをすれば罰を受けるといういわゆる応報刑論の立場ではなく、受刑者の改善更生に重点を置いたものへと大きく変わることになります。
受刑者の改善更生と社会復帰に力点を置くこと自体は、基本的に評価すべきことではあります。しかし、どのような処遇を行い改善更生を図るのか、委員会の審議で具体的に示されることはありませんでした。拘禁刑を科された受刑者は、今後、作業と指導に服することになりますが、どのような基準に基づいてどのようなカリキュラムが組まれているかなどの詳細はこれから決めるというのです。目指すところはよしとしても、その効果のあるなしが判別できない法律を成立させるのは不安が残ります。
また、作業と指導は法律の条文上、義務とは書いてありません。しかし、受刑者がこれを拒否したら、刑務所内で懲罰を科すことができるようになります。明らかに論理が矛盾しているように思えるのですが、法務委員会の審議では納得できる答弁は得られませんでした。
ほかにも幾つも重要な点が不明なままです。
受刑者には処遇を通じて被害者の心情を理解させるといいます。どうやって理解させるのか、それで被害者とその御家族が納得するのか、政府からは具体的な答弁はありませんでした。また、悪いことをすれば罰を受けるという応報刑論からの転換を図るとの説明がありましたけれども、刑法が犯罪を防止する効果が高まるのかどうか、知見やデータのようなものも示されませんでした。明治以来となる基本法の大改正をこのような生煮えの論議で断行することについて、改めて危ういものを感じます。
もう一つの改正の柱である侮辱罪の厳罰化は、もっと大きな問題をはらんでいます。
侮辱罪には元々、公共の利害に関する場合の特例がありません。名誉毀損罪では、公共性、公益性、真実相当性などが勘案されて有罪かどうかが決まりますが、侮辱罪にはそうした特例がない上に、さらに、法定刑で懲役まで引き上げるという改定を行い、現行犯逮捕も可能にするものです。つまり、条文を読む限りでは、政治家や公務員を批判した国民を侮辱だといって逮捕することが可能になります。こんなことができるのは恐ろしいことです。
実際、選挙演説中に、安倍辞めろと声を上げた聴衆を警察が実力で排除したこともあります。今後は、公権力の側が侮辱を理由に国民を逮捕、拘束できるというのでは、この世は闇になってしまいます。この点は非常に重要ですので、法務委員会では国家公安委員会委員長に対して各会派から何度も何度も質問がなされましたが、絶対に逮捕されることはないという確約はついにありませんでした。
無論、憲法は表現の自由、言論の自由を保障していますので、公権力に対する侮辱が裁判で有罪とされることはないのかもしれません。しかし、たとえ有罪の判決が出ないとしても、不当な逮捕や勾留があり得るのであれば、表現の自由は大幅に損なわれ、萎縮してしまいます。
いかなる理由があっても、一般の国民は逮捕された瞬間に大きな不利益を受けますし、後に裁判に勝訴したとしても、回復は著しく困難になるでしょう。仕事を失い、社会的な制裁を受け、一家離散もしかねないリスクを覚悟しないと権力を批判できなくなります。社会には大きな言論萎縮が発生し、悪いものを悪いと言えない世の中になってしまいます。だからこそ、世界の潮流は、侮辱や名誉毀損を非犯罪化していくというのが昨今の動きです。今回の改正は明らかにこれに逆行するものです。
そもそも本改正案は、深刻な社会問題になっているインターネット上の誹謗中傷事案に対処するものとされます。インターネットにおける誹謗中傷には、一対一、つまり相対で行われるものが多く含まれますが、そうした事案は今回の本改正案の対象の外にあるのです。公然と人を侮辱すれば侮辱罪ですが、SNSのダイレクトメッセージなどで相手を誹謗中傷しても、本改正では対応できないというのです。これでは一体何のための改正か分からなくなります。
百歩譲って、法定刑を引き上げればインターネット上の誹謗中傷が減るという確固とした知見があるのなら改正案を提出する理由になるのでしょうが、そうしたものは全く示されませんでした。今も膨大な数の誹謗中傷が行われており、中には明らかな犯罪行為と思われる事例も多いのですけれども、警察はめったに動いてくれません。厳罰化よりも、犯罪取締りの努力の方が先だと思われますが、国家公安委員会委員長からは具体的な体制整備の話はありませんでした。
以上述べたように、確固とした改正理由もなく、根本的なところでの論理的な矛盾が目立ち、施行の詳細も決まっておらず、効果も疑わしい改正案を成立させる理由は見当たりません。重い法案の改正です。ここに挙げた疑問にきちんと答えられるように準備をして、一つ一つ丁寧に熟議を重ねた上で法改正をすべきであることを強く申し上げまして、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/20
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021・山東昭子
○議長(山東昭子君) 東徹さん。
〔東徹君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/21
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022・東徹
○東徹君 日本維新の会の東徹です。
会派を代表して、刑法の一部を改正する法律案等について、賛成の立場から討論を行います。
本法案は、SNS上の誹謗中傷対策として侮辱罪の法定刑を引き上げ厳罰化するなど、時代の変化に応じて必要とされる対策が含まれており、この点については我が会派も賛成いたします。
しかしながら、法務省は、同じ刑法というだけで、侮辱罪の厳罰化とは全く内容の異なる懲役、禁錮を廃止し、拘禁刑を創設するなどの改正をまとめて一本の法案として提出してきました。関連があれば束ね法案は許容できますが、今回のように全く関連がないと、やはり議論はしづらく、賛否が決めにくいとしか言いようがありません。
明治四十年以来の大改革と言われる刑法の改正です。懲役、禁錮を廃止して拘禁刑を創設することは、社会的影響が大きく、本来はもっと議論が必要なのではなかったのかと考えます。報道を見ていても、拘禁刑の創設よりも侮辱罪に偏っており、国民的な議論も十分ではありません。
このことについて、六月七日の参考人質疑でも、三人の参考人のうち一人の参考人から、侮辱罪とそれ以外との間に密接な関係や集中審議をする必要性を見出すことはできないという指摘があり、また、別の参考人からは、全く違うものを一緒に出してきて、期限の決まっている通常国会で通そうとするのは、こそくであるとまで言われています。
参議院選挙への影響を恐れて、本来議論すべきだった入管法改正案の提出を見送ることにしたため、余った時間ができてしまい、それを埋めるために急いで刑法改正案を準備したのかと思えなくもありません。
参考人は、法務省も法制審議会の議論を急ぎ過ぎたのではないか、その結果、衆参両院での議論でようやく問題が明らかになってきたが、本来はもう少し手前のところで議論した方がよかったともおっしゃっておりました。法務省は、法制審議会の進め方を含め、法案提出までの議論の在り方を反省すべきであります。
本法案では、再犯防止を目的に、懲役や禁錮をなくして、新たに拘禁刑を創設するとしています。しかし、懲役と拘禁刑の違いや、拘禁刑という名称の在り方などについて委員会で質問しましたが、納得できる答弁がありませんでした。
今の懲役でも、性犯罪者に対する矯正プログラムなどを実施しており、制度を変える必要がありません。むしろ、刑の名称を懲役から拘禁刑に変えることで、拘禁刑という名称の周知に時間が掛かる上、国民に対し刑が軽くなったとの印象を与えたり、刑法の目的である犯罪を予防する力が弱まったりしてしまうのではないかと懸念されます。
再犯防止は大変重要なことで、進めるべき課題ではありますが、犯罪そのものを抑止していくことは更に大事なことであり、その議論も必要であります。
名称変更の必要性について、法制審議会で議論すらされていません。拘禁刑の英語訳も、これまでの懲役の英語訳と同じであれば、名称を変える必要はなく、国民の間で浸透している懲役のままでいいのではと考えます。
法務省は、刑の名称に関する他国の状況も把握していません。海外の制度との比較や、世界の流れの中で我が国の制度のあるべき姿を考えることは重要であると、法務省は認識を改めるべきです。
また、本法案では、保護観察付きの執行猶予を受けている者が再犯に及んだ場合でも、二度目の執行猶予を付けることができるようになりました。しかし、こうすることで、本来であれば防げた犯罪を新たに生んでしまう可能性があります。現在の制度でも、単純な執行猶予中の再犯であれば、再度執行猶予を付けることができます。そこで、二度目の執行猶予中に再犯率がどの程度か質問しましたが、法務省は把握していませんでした。
今の制度を改めるために法改正を提案してくるのであれば、せめて、その改正が必要であり、妥当である根拠である立法事実をデータで示すべきです。しかし、法務省は立法事実を示すことができず、全くの準備不足であります。
法務省にはこの法案を提出した責任があり、今後、再犯率の変化など、法改正の効果をしっかりと調査し、そのデータを公表した上で必要な見直しを行うべきであることを申し上げ、討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/22
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023・山東昭子
○議長(山東昭子君) 山添拓さん。
〔山添拓君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/23
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024・山添拓
○山添拓君 日本共産党を代表し、刑法等改正案及び関連法案に反対の討論を行います。
法案に先立ち、名古屋入管でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事件について述べます。
遺族が国家賠償を求めた訴訟の初弁論が開かれました。妹のワヨミさんは、意見陳述で、裁判官と全ての日本市民は少しでも早く姉のビデオを見てください、こんな悲しい思いは姉と私たち家族だけで最後にしてほしいと訴えました。この声に応え、映像記録を始め看守勤務日誌や被収容者診療簿、拒食者報告など、開示を拒んでいる資料を広く開示し、事件の真相と責任の所在を明らかにするべきです。
野党五会派が本院に共同提出した法案を直ちに審議し、国際水準に見合う入管難民行政へ抜本的に転換するよう強く求めます。
以下、刑法等改正案の反対理由を述べます。
本法案は、SNSなどインターネット上の誹謗中傷が社会問題化する中、侮辱罪の法定刑に一年以下の懲役、禁錮、三十万円以下の罰金を追加しようとするものです。これは、実効性ある対策と言えるでしょうか。
衆議院の参考人質疑で、木村花さんの母、響子さんは、必ずしも実名でSNSをやる必要はないが、問題のある発言をしたときには特定できるよう考えてほしいと述べました。大量の投稿が短時間になされ、相互のあおり効果で炎上しやすい、匿名で行うことができ過激化しやすいなど、ネット上の誹謗中傷の特質に応じた対策が必要です。
発信者情報を特定する裁判手続の簡素化が始まりました。プロバイダーに発信者情報の保存を義務付ける対策なども必要です。こうした法整備の効果も踏まえ、ネット空間を安心して利用できるよう、多面的に民事的救済を充実させるべきです。
一方、国連の自由権規約委員会は、表現の自由は人権の促進と保護に不可欠だという認識の上に、刑事責任の追及をなるべく避けるよう求め、刑罰を科す場合も身体の拘束を伴う刑は適切でないとしています。ところが、法務省や外務省は、国連がこうした勧告を出すに至った経緯はつまびらかでない、法的拘束力はないなどと言うばかりでした。
アメリカやイギリス、フランスなどで、非犯罪化や拘禁刑を削除する法改正が進んでいます。しかし、法制審では、日本でどうすべきか、まともな議論は行われず、僅か二回で結論に至りました。拙速と言うほかありません。
法定刑引上げにより、逮捕、勾留できる場合が拡大します。法務省、警察庁の政府統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ、慎重な運用がなされるとしていますが、逮捕するかどうかの最終的な判断は現場の捜査官次第です。
安倍元首相の街頭演説で起きた北海道警やじ排除事件は、主催者からの要請もないのに現場の警察官が判断し、言葉を発して十秒程度で市民二人を実力で排除したものです。警察庁はトラブル防止のためだったと強弁しますが、実際には排除ありきの対応であり、表現の自由や政治的言論への配慮は見えません。
国家公安委員長は、道警の対応を違法とした札幌地裁判決を読んでいないと言いながら、道警の対応は適切だった、言論の自由を圧迫するものではないと繰り返しました。時の首相や政権への異論や批判を封じた事実を直視せず、その反省もないままに、侮辱罪について、慎重な運用、想定されないと述べても、何の説得力もありません。
侮辱罪の起訴人数は年間三十件程度で推移してきました。言論法研究の山田健太参考人が述べたように、そもそも侮辱の定義が曖昧で恣意的な権力行使が可能であり、法定刑が軽いこともあって公権力の行使が抑制されてきたからです。大臣は、法定刑を引き上げるだけで侮辱の定義は変わらないと言いますが、曖昧な定義のまま厳罰化することが問題です。
大臣はまた、政治的な言論、表現は刑法三十五条の正当行為として違法性が否定され得ると言います。しかし、侮辱罪が正当行為を理由に無罪となった裁判例は確認できません。法務省は、いかなる場合が正当行為に当たるか、確定的な答えは困難だと言い、懸念は拭えません。仮に現行犯逮捕などが起きれば、起訴されなくても、自由な言論、表現への重大な脅威となり、回復し難い萎縮効果が生じます。侮辱罪の法定刑引上げはやめるべきです。
本法案は、現行の懲役刑と禁錮刑を廃止し、新たに拘禁刑を創設します。拘禁刑という名称は、身体拘束のみを内容とする刑罰への変更であるかのように聞こえます。しかし、実態は、身体拘束に加えて刑務作業を義務付ける懲役刑への一本化であり、かつ、新たに改善更生や再犯防止の指導も義務付けようとするものです。
国連が被拘禁者処遇の最低基準を示したマンデラ・ルールズは、拘禁刑とは自由の剥奪であり、原則として、それ以上に苦痛を増大させてはならないとしています。改善更生や社会復帰という名で様々に受刑者に強制した時代があったからにほかなりません。
戦前の日本では、治安維持法や思想犯保護観察法の下で、社会主義者や国民主権を求める運動が弾圧され、拷問や虐待だけでなく、再犯防止、再教育の名で転向を促す思想改造まで行われました。いかなる政府の下でも特定の思想を強制することがあってはならず、法律上、その懸念を残すべきではありません。
二十一世紀の日本で、刑務官が受刑者の肛門に消防用ホースで放水して傷害を負わせ、直腸破裂で死亡させた事件、腹部を革手錠で締め付け受刑者が死亡した事件など、一連の名古屋刑務所事件が起きました。その反省の下に出された二〇〇三年の行刑改革会議の提言は、受刑者が自発的、自律的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切であり、受刑者の処遇も、この誇りや自信、意欲を導き出すことを十分に意識したものでなければならないとしています。ここに立ち返るべきです。作業や指導を義務付け、懲罰を背景に強制することは、受刑者の人間性を軽視することにつながりかねません。
大臣は、作業や指導を義務付けることができないとすれば改善更生や再犯防止のための働きかけを行うことができなくなると言います。しかし、受刑者が指導を拒否して改善更生を図れなかったケースがどのぐらいあるのか把握すらされていません。現場の職員は、カウンセリングの技法も用いながら粘り強く働きかけ、本人の意思に基づく社会復帰への取組を促しています。懲罰で強制するべきではありません。
刑事政策学者の石塚伸一参考人は、受刑者の処遇は、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うという刑事収容施設被収容者処遇法三十条の意義を強調しました。刑務作業も改善更生も、あくまで受刑者の自覚に基づき、その希望を踏まえて行うべきであり、そうでなければ効果的でもありません。
日本共産党は、侮辱罪の法定刑引上げを行わず、拘禁刑は文字どおり自由の剥奪のみを内容とすること、刑務作業は受刑者の希望によることとし、刑事施設にはその機会を提供する責任があることなどを定めた修正案を提出しました。
表現の自由を最大限尊重し、受刑者の自発性、自律性、尊厳を尊重する国際的な人権保障の動向に沿った刑事法制が求められていることを重ねて指摘し、討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/24
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025・山東昭子
○議長(山東昭子君) これにて討論は終局いたしました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/25
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026・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより両案を一括して採決いたします。
両案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/26
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027・山東昭子
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
よって、両案は可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/27
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028・山東昭子
○議長(山東昭子君) 日程第八 電気通信事業法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。総務委員長平木大作さん。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔平木大作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/28
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029・平木大作
○平木大作君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、電気通信役務の利用者の利益保護等を図るため、一定の高速度データ伝送電気通信役務を基礎的電気通信役務に位置付ける等高速度データ伝送電気通信役務の提供に関する制度の整備を行うとともに、電気通信役務の利用者に関する情報の適正な取扱いに関する制度の整備を行うほか、第一種指定電気通信設備又は第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務を提供する電気通信事業者の当該卸電気通信役務の提供義務等の創設等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、ブロードバンドサービスに関するユニバーサルサービス制度の在り方、利用者情報保護の更なる強化の必要性、事業者間の卸協議の適正化に向けた取組等について質疑が行われました。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して伊藤岳委員より反対する旨の意見が述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/29
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030・山東昭子
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/30
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031・山東昭子
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午前十時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120815254X03120220613/31
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