1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年十一月二十四日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十一月十七日
辞任 補欠選任
臼井 正一君 磯崎 仁彦君
十一月十八日
辞任 補欠選任
塩田 博昭君 山本 香苗君
十一月二十一日
辞任 補欠選任
山本 香苗君 塩田 博昭君
十一月二十二日
辞任 補欠選任
柴田 巧君 青島 健太君
十一月二十四日
辞任 補欠選任
吉田 忠智君 柴 愼一君
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出席者は左のとおり。
委員長 古賀友一郎君
理 事
上月 良祐君
森屋 宏君
山田 太郎君
塩村あやか君
塩田 博昭君
委 員
有村 治子君
磯崎 仁彦君
衛藤 晟一君
自見はなこ君
広瀬めぐみ君
三宅 伸吾君
山谷えり子君
柴 愼一君
杉尾 秀哉君
水野 素子君
三浦 信祐君
青島 健太君
高木かおり君
上田 清司君
井上 哲士君
国務大臣
国務大臣 谷 公一君
副大臣
内閣府副大臣 星野 剛士君
大臣政務官
内閣府大臣政務
官 中野 英幸君
財務大臣政務官 宮本 周司君
事務局側
常任委員会専門
員 宮崎 一徳君
政府参考人
内閣官房内閣審
議官 大矢 俊雄君
内閣府大臣官房
審議官 小川 康則君
内閣府男女共同
参画局長 岡田 恵子君
警察庁長官官房
審議官 友井 昌宏君
警察庁長官官房
審議官 早川 智之君
警察庁長官官房
審議官 原田 義久君
警察庁刑事局組
織犯罪対策部長 猪原 誠司君
金融庁総合政策
局審議官 三好 敏之君
金融庁総合政策
局参事官 柳瀬 護君
総務省大臣官房
審議官 三橋 一彦君
法務省大臣官房
審議官 松井 信憲君
法務省大臣官房
審議官 保坂 和人君
外務省大臣官房
審議官 實生 泰介君
財務省大臣官房
審議官 内野洋次郎君
経済産業省大臣
官房審議官 澤井 俊君
参考人
日本郵政株式会
社常務執行役 田中 進君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○国際的な不正資金等の移動等に対処するための
国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号
等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの
財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/0
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001・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
去る二十二日までに、臼井正一君及び柴田巧君が委員を辞任され、その補欠として磯崎仁彦君及び青島健太君が選任されました。
また、本日、吉田忠智君が委員を辞任され、その補欠として柴愼一君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/1
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002・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/2
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003・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に塩村あやか君及び塩田博昭君を指名いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/3
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004・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣審議官大矢俊雄君外十四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/4
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005・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/5
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006・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に日本郵政株式会社常務執行役田中進君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/6
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007・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/7
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008・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/8
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009・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 自民党の広瀬めぐみでございます。
質問の機会をどうもありがとうございます。関係各位の皆様方もどうもありがとうございます。
早速質問に入らせていただきます。
今回、日本は、FATF第四次対日審査の経過を踏まえて六つの法律の改正をする予定と聞いております。国際テロリスト財産凍結法、外為法、組織的犯罪処罰法、麻薬特例法、テロ資金提供処罰法、犯罪収益移転防止法であります。
これらの法律は、私たちのふだんの生活では聞き慣れないものでございます。しかし、二〇〇一年のアメリカ同時多発テロ、世界各地における自爆テロ、海外で日本国民がテロリストに拉致され殺害をされるなど、無辜の市民の命が奪われる事件が多発しており、テロリズムの脅威は私たちのすぐそばにあることは間違いございません。
FATFは、マネーロンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与対策のため、多国間で国際基準を策定し、各国が誠実に履行しているかの審査を担う機関であります。
まず、今回の対日審査において、日本が勧告を受けた内容、そして日本が特に重点フォローアップ国とされた理由を教えてください。また、時に勧告に従わない国もありますが、勧告に従わなかった場合のペナルティーなどはあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/9
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010・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
まず一点目、FATF対日審査における勧告内容でございますが、FATFの第四次対日審査におきましては、日本のマネロン、テロ資金供与対策につきまして、国際協力やリスク評価等の点で成果が上がっているとの積極的評価を受けておるところでございます。
ただ、他方、一層の強化に向け取り組むべき事項といたしまして、例えばマネーロンダリングの法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げること、あるいはテロ資金提供処罰法の技術的欠陥の是正、金融制裁を遅滞なく実施するために必要な更なる改善を行うことなどが勧告をされまして、結果といたしまして、この審査結果としては三つのランキング、クラス分けがございまして、通常フォローアップ、重点フォローアップ、観察対象国というわけでございますが、先生御指摘のとおり、日本は重点フォローアップ国とされたところでございます。
次に、この重点フォローアップ国とされました理由でございますが、FATFの審査は、国際基準に沿って法令等が備わっているかどうかという法令等の整備状況という点と、もう一つ、マネロン等の対策が効果的に実施されているかという有効性という、この二つの観点から審査が行われております。その結果を踏まえまして先ほど申し上げました三つの分類になるわけでございますが、それぞれこの法令等整備状況と有効性がどの程度のスコアリングかによりましてこの枠組みが決まってくるわけでございます。
四段階の評価が、たくさんの審査項目があるわけでございますが、四段階の評価が付されておるわけでございまして、日本については、特にこの下位の二つの評価にとどまってしまったという項目が法令等の整備状況で十一個、有効性において八個でありましたことから、FATFが定める審査手続の基準に従いまして、結論として重点フォローアップ国となったというものでございます。
次に、このFATFからの勧告に従わなかった場合のペナルティーという点でございますが、FATFは審査で勧告された事項の改善状況が芳しくないと判断される場合には、まずFATF議長から勧告の対応を求めるレターの送付、これが当該国に対して出されるということになっております。また、さらにはハイレベル使節団を派遣しまして当該国に速やかな対応を求めるということも行われることになっています。それでもなお改善が見られない場合は、マネロン等のリスクの高い国として名指しをされること、あるいは当該国への対抗措置を各国に要請するといった対応に最終的にはつながっていくということでございます。
仮に日本にこうした措置が講じられた場合には、日本の金融機関との取引において他国の金融機関がリスク管理を強化する、つまり海外等との送金や資金の受入れがいささか時間やコストが掛かるとかということになったりいたしまして、最悪の場合は日本の金融機関との取引を回避したりするなどということのおそれもあると、そのように考えているところでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/10
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011・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 どうもありがとうございました。
FATFのその評価によって、日本におけるマネロン対策が成果が上がっていること、その評価、その効果を一層上げていくために更なるその法改正が必要だということがよく分かりました。
マネーロンダリング対策で日本が抜け穴となる懸念などを払拭するためにも、今回の法改正は、日本の国際金融センターとしての地位向上及び国際的なマネーロンダリングへの更なる対応として、国際テロリストの資産凍結措置の強化、それからマネロン対策の強化、暗号資産等への対応強化を行う趣旨があるということも分かりました。
では、各法律の改正について具体的にお聞きしたいと思います。
まず、資産凍結措置の強化でございますが、現行の国際テロリスト財産凍結法では、テロリストの保有する金銭、有価証券、不動産、自動車、船舶、航空機、貴金属などの動産につき、これらを提出させることができることはもちろん、国際テロリストがこれら財産の贈与、貸付け、売却の対価を受けることなどを規制することができるとなっております。
この国際テロリストは、国連安保理決議に基づいて各国が指定したテロリストのことをいい、具体的な人間であり、リストがあると理解しておりますが、我が国で活動する国際テロリストがいるのでしょうか。もし存在しないのであれば、そもそもこの法律の制度趣旨は何なのか。また、もし可能であれば、国際テロリストの財産の管理方法について簡単に教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/11
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012・早川智之
○政府参考人(早川智之君) お答えいたします。
まず、国際テロリストの、我が国の、存在しているかどうかという点でございますが、国際テロリスト財産凍結法は平成二十七年十月に施行されました。本法の施行以来、本法の対象となります国際テロリストで国内に居住している者は把握されておりません。
それから、もしその対象者たるテロリストがいないというならば財産凍結法はどのような趣旨かという御質問でございますが、国際テロリズムを防止、抑止するためには、その手段となり得る資金等を与えず、利用させないことが重要であります。また、一国のみが対策を講じても効果が十分に発揮されず、あらゆる国が協調して対策を講ずることが必要になります。関連する国連安保理決議は、このような理念の下、各国に対しまして国際テロリストの財産の凍結等の措置をとることを求めております。本法は、こうした趣旨から、国際テロリストが行う国内取引に対する財産の凍結等の措置について規定するものであります。
また、国際テロ組織の活動は国境を越えて行われており、今後、我が国に居住する者が国際テロリストとして国内で取引を行うことも否定できず、我が国が抜け穴とならないよう措置を講ずる必要があると考えております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/12
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013・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、ありがとうございました。非常によく分かりました。
我が国には国際テロリストの活動自体はまだないけれども、未然にそれを防止するために、世界の平和維持というのでしょうか、そういう観点からしっかりとこれを規制していくと、そういう趣旨であるということが分かりました。
さて、今回の国際テロリスト財産凍結法の改正では、資産凍結の範囲を拡大すること、すなわち拡散金融について居住者間取引に係る資産凍結ができるようにする、これが大きなポイントになっていると理解しております。
拡散金融とは大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与のことであると理解しておりますので、リストにある国際テロリストだけではなく、更に処罰の対象者が増えるということでしょうか。また、居住者間取引というのは日本国内での取引ということになりますが、結局、この法律の改正によって、どんな方のどのような財産が凍結対象になるのかを教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/13
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014・大矢俊雄
○政府参考人(大矢俊雄君) お答えいたします。
今回、対象が国際テロリスト、公告国際テロリストから拡散金融の関係者に拡大するのは先生仰せのとおりでございます。
その上で、その対象、その対象は確かに拡大をいたしますけれども、大きな方向性としては基本的なところは変わっておりませんで、例えば、現行の国際テロリスト財産凍結法におきましては、何人も、許可を受けていない公告国際テロリストを相手方として金銭等の贈与それから貸付け等の取引を行ってはならないとされているところであります。こちらは基本的に同じでございます。
それから、仮に相手方が公告国際テロリストであると知らずに取引を行った場合、都道府県公安委員会におきまして、まずは情報提供、指導、助言を行いまして、それにもかかわらず更に取引を行ったような場合に、反復して違反行為を行わないよう命令を発すること等とされておりまして、相手方が財産凍結の対象者であることを知らないままに取引をした者が直ちに処罰されることのないよう配慮されているところでございまして、この基本的な枠組みは、今回、財産凍結措置の対象者が大量破壊兵器関連計画等関係者に拡大された場合でも同様に適用されることとしております。
こうしたことから、財産凍結の対象者の相手方、第三者に対しても配慮した制度設計をしているところでございまして、こうした大きな枠組みは変わりません。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/14
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015・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。
私も、全く事情を知らない一般市民が犯罪に巻き込まれてその財産を凍結されるようなことがないかと、そういう心配が、懸念がございましたが、今のお答えで、しっかりとそのようなことはないように配慮をされているということでございますので、それで結構でございます。よろしくお願いいたします。
次に、マネーロンダリング対策の一環として、犯罪収益移転防止法を改正することについてお聞きいたします。
犯罪収益移転防止法は、出所や帰属を隠された犯罪による収益が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持強化に使用されること、犯罪組織がその資金源を元に合法的に経済に介入し市民経済に悪影響を及ぼすことなどを防ぐための法律と理解しております。そして、この法律は、一定の範囲の事業者、金融業や不動産業など、いわゆる特定事業者に取引時における顧客情報の確認、記録などの作成、保存、疑わしい取引の届出義務などを課して、これらの義務に違反した場合、是正命令に始まり、最終的には罰金など重い制裁を科すものでございます。
今回の改正では、行政書士、公認会計士、税理士などの士業に対して、金融機関などの特定事業者と同様、疑わしい取引の届出義務を課すことになっております。しかし、米国やカナダではFATF審査後も疑わしい取引の届出義務を導入していないし、導入している国でも法律事務は対象から除外されていると聞いております。だとすれば、日本でも、法律事務に携わる士業全般に対して疑わしい取引の届出義務を課すのは行き過ぎではないかという懸念を持っております。
そもそも、この疑わしい取引はどのぐらい寄せられているものでしょうか。年間の届出件数と、その届出が検挙に役立ったケースはどのくらいあるのか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/15
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016・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
令和三年中の疑わしい取引の届出件数は五十三万百五十件であります。また、令和三年中に疑わしい取引に関する情報を端緒として検挙した事件の数は千四十五件、既に着手している事件捜査の過程において疑わしい取引に関する情報を活用して検挙した事件の数は千五百一件となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/16
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017・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。
たくさんの、五十三万件以上の情報が寄せられていること、そして、それを端緒として千四十五件、それから千五百一件ものその検挙があったということで、非常にこの疑わしい取引の届出によって犯罪が未然に防止されているということが分かりました。
それでは、次に、なぜこの行政書士、公認会計士、税理士に届出義務を負担させるのか、その改正の必要性を教えてください。また、一方、同じ士業である弁護士と司法書士がなぜ対象外になっているのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/17
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018・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 今回の法改正におきましては、令和三年八月に公表されましたFATF第四次対日相互審査報告書におきまして、士業者が疑わしい取引の届出義務の対象になっていないことは、日本のマネロン、テロ資金対策の有効性を著しく損なう旨、勧告されていることなどの状況にあることを踏まえまして、法制定時の附帯決議や士業者に対する疑わしい取引の届出義務に係る懸念にも配慮した上で、疑わしい取引の届出等について士業者に対して義務を課す規定を整備するものであります。
ただし、弁護士等及び司法書士等につきましては、行政書士等、公認会計士等又は税理士等とは異なり、対立する当事者間の民事紛争解決業務を取り扱うことから、依頼者との信頼関係の構築が重要であるため、疑わしい取引の届出義務の規定を法律で設けることは弊害が大きく、相当ではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/18
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019・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。
FATFの勧告に沿って士業に対するその規制を課したということがよく分かりました。また、私も弁護士でございますが、弁護士と司法書士については、その依頼者との信頼関係、そこをおもんぱかってこの規制から、対象から外されたということも分かりました。どうもありがとうございました。
では、次に、更にこの士業に対する規制についてお聞きしたいと思います。
現在の犯罪収益移転防止法第四条一項は、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などに、例えば司法書士が宅地又は建物売買に関する手続について委任契約の締結をする際など、顧客について本人特定事項の確認を行わなければならないとされております。
ところが、改正後は、この確認事項が拡大をされて、本人の特定事項だけではなくて取引を行う目的も確認する必要があるとされております。また、顧客が自然人ではなく法人である場合には、その法人の実質的支配者の本人特定事項も確認しなければならないということで、司法書士の方々からは、業務が停滞する、さらには委任契約の締結そのものを回避されるんではないかという弊害の懸念が指摘されております。まあ、営業にならないということだと思います。
そもそも、このように確認事項を拡大する必要性があるのでしょうか。また、実質的支配者というのは曖昧な言葉ですが、その示すところを具体的にお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/19
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020・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
今回の法改正におきまして、司法書士等の方々につきましても実質支配者の確認義務というものが生じてまいります。
実質的支配者と申しますのは、例えば法人におきまして議決権の四分の一を超える議決権を持っているといった自然人などが実質的支配者というふうに位置付けられることになります。
実質的支配者につきましては、FATFからもこれを確認するということがマネーロンダリング対策上は極めて重要であるというふうに指摘をされておりまして、そういったことも考慮いたしまして、実質的支配者の確認につきましてもお願いしようと考えているというところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/20
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021・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。
FATFからの勧告、それからマネロン対策の実効性の確保のために法改正が必要なことは理解いたしましたが、司法書士の先生方など有資格者による取引時確認が煩雑になって不動産取引などの円滑性に支障がないよう、司法書士制度などを所管する法務省において、関係省庁や関係団体と緊密に連携し、関係業界に幅広く通知を発出するなど、法改正の内容について政府を挙げた周知、広報に積極的に取り組むことを求めます。これは意見でございます。
次に、今お聞きした士業の確認事項の拡大と関わりますが、暗号資産等への対応の強化についてもお聞きいたします。
犯罪収益移転防止法は、その第十条第一項及び第十条の三第一項において、日本から外国に送金をする際に送金者の本人特定事項を通知しなければならないことになっております。私も、銀行で海外に送金する際、送金目的を含めて聴取されたことを覚えております。そして、今回の改正で、更に相手方の、送金の相手方の本人特定事項を加えることになって、通知事項が増えております。これはマネロン対策の実効性確保のために良いことだと思っております。
さて、今般、日本でも流通が増えている暗号資産についてでございます。
暗号資産は新しい財産の形態であり、その実態を詳しく知る人は少ないと思います。今回、同法の改正で、暗号資産の移転時に送付人と受取人の情報を通知する義務を負担させるいわゆるトラベルルールというものが作られることになっております。
そこで、そもそもこの暗号資産の移転はどのように行うのでしょうか。暗号資産の交換業者は日本ではそれほど多くないと思いますが、ネットで行う取引など極めて流動性が高く、海外との取引も多いと思います。契約を締結する相手方の間で果たしてどれほど実効性のある通知義務を課すことができるのでしょうか。教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/21
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022・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答えいたします。
まず、ブロックチェーンの取引の仕方でございますが、ブロックチェーンに直接参加して暗号資産取引を行う利用者は、ブロックチェーン上で自身を識別するためのアドレスを有してございます。暗号資産を移転する際には、利用者は自身が管理するアドレスに対応した秘密鍵を用いることでブロックチェーン上の指定したアドレスに暗号資産を移転することができます。この場合、全ての取引が記録され、ブロックチェーンの利用者に共有されます。
このように、利用者間で直接取引することもできますが、現在、我々としては、暗号資産の取引においては、一般的には御指摘のありました暗号資産交換業者を経由して行っていることが多いというふうに認識してございます。この暗号資産の取引を暗号資産交換業者を通じて行う場合には、暗号資産の移転に必要な秘密鍵は暗号資産交換業者において管理することになりまして、この場合には利用者が事業者に暗号資産の売買や移転を依頼し、事業者が実行することになります。
このためのトラベルルールがこの暗号資産を移転する暗号資産交換業者に対して課されるものでございますが、先ほど申し上げましたとおり、暗号資産交換業者を通じて行われている暗号資産の取引がかなりの量を占めること、また、とりわけ法定通貨との交換においては暗号資産交換業者を通じて行うことが一般的であることを考えますと、トラベルルールの対象を暗号資産交換業者ということで十分な有効性があるというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/22
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023・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。
暗号資産の交換業者を最終的には個人間の取引であっても通すことになる、そうすることによって未然に犯罪を防止することができるということが分かりました。ありがとうございました。
次に、組織的犯罪処罰法についてお聞きします。
組織的犯罪処罰法は、犯罪組織の資金源断絶やマネロン防止を目的にしていて、一定の組織的犯罪を行った場合に、刑法の規定よりも重い刑を科すことや、組織的犯罪によって得た収益を没収、追徴することができることを定めております。例えば、振り込め詐欺など集団で詐欺を働いた場合、単独の詐欺罪よりも重い刑罰が科されます。
また、この法律では、マネロン対策の観点から、犯罪収益等隠匿罪、犯罪収益等収受罪などの刑罰が規定されており、これらの法律も今回更に法定刑の引上げをするとのことですが、改正の理由とその内容を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/23
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024・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) まず、どういう改正をするかということから先に御説明いたしますと、今委員から言及のございました犯罪収益等隠匿罪、これにつきましては、現行法では五年以下の懲役、三百万円以下の罰金とされていますが、これを十年以下の懲役、五百万円以下の罰金に引き上げます。また、犯罪収益等収受罪の法定刑につきましては、現行の三年以下の懲役、百万円以下の罰金から、七年以下の懲役、三百万円以下の罰金に引き上げることといたしております。
その理由について申し上げますと、令和三年八月のFATFの第四次対日審査報告書におきまして、マネーロンダリング罪の法定刑の上限を、犯罪収益を最も頻繁に生ずる前提犯罪である詐欺罪や窃盗罪、これはいずれも上限は十年以下となっておりますが、それと同水準に引き上げるよう勧告を受けたところでございます。
国内の犯罪実態といたしましても、例えば特殊詐欺を始めとする多くの事案で取引名義の偽装や犯罪収益の隠匿などのマネーロンダリングが行われ、また暗号資産等の新たな形態の財産が利用されるなど、その態様が多様化、巧妙化しているという傾向も見られるところでございます。
そこで、FATFからの勧告をも踏まえまして、マネーロンダリング罪についてより一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、国際社会と協調して更に強力に抑止、防止を行うためにこのような形で法定刑を引き上げるということにいたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/24
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025・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。FATFの勧告によって法定刑を引き上げたということがよく分かりました。
次に、組織的犯罪処罰法は、犯罪収益などとして没収できる財産を規定しております。不動産、動産、金銭債権がその対象でございましたが、今回の改正では、更に暗号資産にもその対象を拡大する方向で整備がされていると思います。
そもそも、これまで過去にこの法律で財産を没収された例というのはどのくらいあるのでしょうか。その総額はどのぐらいになるのでしょうか。また、検挙者数はどのくらいでしょうか。お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/25
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026・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 犯罪収益等として没収された金額などについてのお尋ねでございますが、令和三年三月、失礼、令和三年までの三年間におきまして、通常第一審判決で組織的犯罪処罰法の犯罪収益等あるいは麻薬特例法の薬物犯罪収益等につきまして没収、追徴が言い渡された人員数は合計で一千二百七十三人、合計の金額といたしましては六十七億円、約六十七億円ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/26
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027・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 お答え、どうもありがとうございました。千二百七十三人とたくさんの人たちが捕まっている、それから六十七億円の没収、追徴ということで結構巨額になっていることもよく分かりました。こういう犯罪を未然に防いでいくこと、それが本当に大切だということがよく分かりました。
それでは、最後にお聞きしたいんですけれども、外為法についてお伺いします。
令和四年四月に外為法が改正されて、マネーロンダリング対策が強化されたと思います。これもFATFの勧告に基づく改正でしょうか。改正の理由と実効性についてお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/27
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028・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
本年四月の外為法改正では、これは対ロシア制裁との関係で、暗号資産を利用した資産凍結措置の回避のリスクに対して各国間で抜け穴が生じないようにするとのG7でのコミットメントを直接の背景といたしまして、我が国としても制裁の抜け穴になることを防ぐべく、暗号資産に対する資産凍結措置の強化を行ったものでございます。ただ、これは同時にFATFの勧告上も求められておったものではございまして、そういう意味では、喫緊の課題としてロシア制裁が前面に出て、緊急での国会での御審議、成立をお願いし、そのとおりになったものでございますが、結果的にはFATFのそういうリクワイアメントにも応えたものということでございます。
このような迅速な法的措置を講じました結果、現時点において我が国において特段の弊害は生じていないと解しておりまして、仮にこうした措置をとらなかった場合、暗号資産を使った、我が国が制裁対象者の言ってみれば資産投資先となってしまった可能性も否定はできないところでございまして、そのような状況を未然に防いでいるという評価はできるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/28
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029・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 時間が来ておりますので、おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/29
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030・広瀬めぐみ
○広瀬めぐみ君 国が様々な政策を考えてテロリズムや違法収益団体の根絶を図ろうとしていることがよく分かりました。
現代は、暗号資産など全く新しい形態の財産が出現して、その実態が分からないまま私たちの生活に浸透しております。日々変化する状況の中で、いち早く法律で対応することで少しでも世界平和と安寧に近づけるよう努力をしていただいていること、本当に有り難く思います。
質問を終了いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/30
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031・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉でございます。
本来は、今日、吉田忠智議員とともに質問する予定だったんですけれども、吉田議員がちょっとやむを得ざる事情で質問に立てなくなりましたので、私が七十分間質疑を担当させていただきます。長丁場ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
ごく簡単におさらいをさせていただきます。国際機関の金融活動作業部会、先ほどから話が出ておりますいわゆるFATFが去年の八月、日本に関する審査報告書を公表いたしました。この中で、日本は、中小金融機関の取組が十分ではなかったなどとして、三段階中二番目の重点フォローアップ国とされたのが今回の一連の法改正の出発点ということでございます。二〇〇八年の前回審査では、日本は、先進七か国中最低の評価を受けて、資金洗浄に甘い国だと見られた。こうしたことを考えますと、今回の審査結果は一歩前進と言えるとは思います。
しかし、中身を見てみますと、例えば、対策が有効かどうかを審査する十一項目のうち八項目が基準を満たしておりませんでした。そもそもこのFATFの審査では、十一項目中九項目が基準未達とされた場合など、三段階中最低の観察対象国となることを考えますと、まさにぎりぎりの結果だったとも言えると思います。
こうしたことから、当時のメディアの論調を見ましても、例えば、実質的に不合格とか、ぎりぎり落第を回避したなどという厳しい論調もありました。中には、FATFとの交渉に当たった日本政府関係者の言葉として、観察対象国入りを必死に逃れた、こういうふうに報じている紙面もございます。
そこで、谷大臣に伺います。
今回の審査結果、決して褒められたものではない、率直に言ってそう思うんですけれども、むしろ厳しく受け止めるべきだと思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/31
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032・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘のように、このFATFの第四次対日審査において、国際協力やマネロン、テロ資金供与リスクの評価といった項目について積極的な評価を受けたところではありますけれども、他方で、国連安保理決議に基づく資産凍結、暗号資産等への対応、マネロン対策といった分野において強化の必要性を指摘されており、その結果、三段階評価の中の評価に相当する重点フォローアップ国とされたところであります。
これをどう受け止めるかということでございますけれども、委員御指摘のように、これはしっかりと厳しく受け止めなければならないと思っておりまして、そのために、今御審議いただいているFATF勧告対応法案により必要な法整備を図り、あるいは、法改正を要しない事項についても、FATFからの指摘を踏まえて、その対応を強化すべく、関係省庁で政策会議を設置し、関係省庁で緊密に連携して、精力的に必要な取組を進めているところであります。
引き続き、FATFなどの場を通じて、国際社会と連携しつつ、政府一丸となってマネロン対策等の強化の取組を着実に進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/32
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033・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 厳しく受け止めなければならないという大臣の評価でございました。
ここまでの経緯についても説明いただきましたけれども、今回の審査結果見てみますと、例えばロシア、イタリア。ロシアももちろんそうですけれども、イタリアもマフィアで有名でございます。言葉は悪いかもしれませんけれども、マフィア大国というふうにも言われますけれども、一見して、テロ資金、それからマネロン対策に甘いと見られるこれらの国が日本よりも上のランクの通常フォローアップ国とされました、日本はその下だということなんですが。
では、これらの国より日本の方が評価が低くなった理由、これについてはどういうふうに、大臣、お考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/33
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034・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 杉尾委員御指摘のように、今のFATFの評価では、我が国よりもロシア、イタリア、なかんずくロシアが高いというのは個人的にはややいかがなものかなという気はしないわけではないわけでございますけども、しかし、評価するのはFATFでございますから、その辺をしっかり冷静に事実として受け止めて、今の重点フォローアップ国から更にアップするように頑張らなければならないと思います。
一部、第四次対日相互審査において事実上の不合格という報道はあったということは承知しています。ただ、勧告の時点で合格、不合格といった判断は下されるものではなくて、それをどう受け止めてどう対処するか、それによって合格、不合格ということになるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/34
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035・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 今話がありましたけれども、これからのフォローアップが重要だと、こういう認識だと思います。
ただ、日本の場合は、まあ極東の島国ということもありますけれども、テロをめぐる状況が欧米とはやっぱり少し違うという事情もあるかもしれません。テロ資金、それからマネーロンダリングに対する国民の意識の低さというのもあるかもしれない。これはないとは言い切れないというふうに思います。
そうした中で、大臣に一つ伺いたいんですけれども、今回の、これ衆議院の質疑の中でも出ておりましたけれども、今回のFATFの審査の中で、日本政府、日本側の説明、これが十分ではなかったのではないか。例えば一つの例ですけれども、取組の問題として、今回の第四次の審査報告書、これ仮訳のままなんですよね。やっぱり日本語も少しおかしなところはあります。
こうしたことも含めて、政府によるこの取組、説明が不足していたのではないか、十分ではなかったのではないか、こうした指摘については大臣はどう思われますでしょうか。これは衆議院の中でもやり取りがありました。大臣、お考えお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/35
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036・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 政府の対応が十分でなかったのではないかという御指摘で、一つの例として、全文が翻訳されていないのではないかというような御指摘も確かにいただきました。今、全文について、もちろん翻訳を鋭意進めております、遅ればせながら。そういう意味では、反省すべき点がなきにしもあらずであったことは事実かなというふうに思います。
しかし、政府としては、これを何とか、FATFの勧告なりを、しっかり現実を見ていただくというふうに一生懸命、懸命に努力したということは言えるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/36
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037・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 ちょっとやや苦しいですよね。
で、まだ翻訳進めているんですか。ということですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/37
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038・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 翻訳を精査しながら進めているというふうにお聞きしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/38
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039・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 一年たっているわけです、この審査報告書が出てからですね。で、まだ翻訳しているというのはちょっと理解ができないんですが。
それともう一つ、先ほど会議体を設置して取組を進めたという話がありましたけれども、これ本来であれば、今年の通常国会、常会に法案提出が予定されていたというふうに思います。確かに、行動計画を見ても組織的犯罪処罰法など関係法令の見直しという項目がございまして、当初の予定ではその期限が今年の夏までというふうに行動計画には書かれておりました。当初のスケジュールよりは大幅に遅れたのは間違いありません。去年、あれだけ速やかな対応が必要だというふうに言っていながら、言っていることとやっていることが少し違うんじゃないか。政局を優先したんじゃないか。この春の常会、いろいろ法案が立て込んでいるかもしれない、そして夏が参議院選挙があるということで延長ができないだろうということもあったのかもしれませんけれども、こうしたことからも政府の本気度というのがやっぱり問われるような気がするんですけど、大臣、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/39
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040・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 衆議院におきましても、前回の通常国会に法案を出すべきではなかったかと、馬淵前国対委員長からも指摘を受けたところであります。
ただ、我々といたしましては、FATF勧告対応法案につきまして、昨年八月の審査報告書の公表を受けて、迅速に対応すべく、内閣官房にFATF勧告関係法整備検討室を設けて、この部屋を中心に必要な法制度の整備に向けて精力的に作業を進めてきたところではございますが、ただ、検討項目は多岐にわたることから一定の時間を要し、今般、法案作成作業が終了したことから、この臨時国会に提出させていただいているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/40
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041・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 検討室を中心にずっとこの法案を用意していたということなんですが、やっぱり縦割り行政なんですよね。犯罪収益移転防止法、今日も来てもらっていますけれども、警察庁、外為法は財務省、組織的犯罪処罰法は法務省、それぞれ担当する。そして、金融機関の監督は金融庁が中心となってやっている。
今、内閣官房に検討室を設けて、今回、束ね法案になっておりますけれども、法案は出されましたけれども、これからこの法案ができた後、この一連のテロ資金、マネロン対策、これ司令塔はどこになるんですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/41
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042・谷公一
○国務大臣(谷公一君) マネロン、テロ資金供与、拡散金融をめぐる国内外の情勢は刻々と変化しており、我が国としても国際社会と連携し、こうした変化に速やかに対応していくことが求められている、基本的にそう考えております。
こうした中、政府としても、昨年八月に公表しました行動計画に沿って、財務省及び警察庁を共同議長として関係省庁で構成するマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を設置するなど、政府一体となって我が国のマネロン対策などを推進するための枠組みをつくり上げたところでございます。
今後は、政策会議をマネロン対策などの司令塔として活用しつつ、政府一丸となってマネロン対策などを推進してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/42
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043・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 財務省などの政策会議を司令塔にするということで、ここのやっぱり指揮命令系統というのははっきりさせていただきたい。これは本当に一体で取り組むべきテーマだというふうに思いますので、強力な推進をお願いしたいというふうに思います。
そして、次の質問なんですけれども、つい先ほど質問がありました改正外為法ですね、今年の春成立をいたしましたけれども、これ対ロシア制裁の一連の中で行われたことですけれども、あれから半年たちました。この改正外為法の効果、これについて政府はどういうふうに評価しているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/43
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044・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、本年四月の外為法改正、御指摘の暗号資産を利用した資産凍結措置の回避のリスクに対しまして、各国間で抜け穴が生じないようにすると。これ、G7でロシア制裁は足並みをそろえてこの九か月やってきているわけでございますが、ここでのコミットメントを直接の背景としまして対応させていただいた結果として、措置をとらなかった場合には、やはりその暗号資産を利用した資産投資先となってしまうようなそういう可能性があったものが未然に防がれたと、そのような効果として認識をしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/44
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045・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 抜け穴がないようにということなんですが、今日でちょうどロシアによるウクライナ侵略が始まって九か月なんですよね。で、やっぱり、ウクライナ側有利とは伝えられておりますけれども、本当にこれ泥沼化が非常に強く危惧される、こういう状況になっておりまして、なかなかこの金融制裁、どこまで効果を上げているのか、十分ではないのではないか、そうした指摘もありますけれども、こうした点を踏まえて、今回のその法律の改正、この春の法改正がどういうふうに生かされたのか、この点についてもあと一問教えてください。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/45
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046・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
四月の改正外為法はあくまでその抜け穴を塞ぐということでございまして、九か月たって、戦線このような状況の中で金融制裁を更に強化する余地があるかないかと、こういう点でございます。
やはり、ロシアの主要な十ある金融機関、一つ、ガスプロムバンクという日本にとってもLNGの輸入等で重要性があるところ、ここは各国もほとんど制裁科していないわけでございますが、ここを除いて十のうち九はもう既に資産凍結措置等がとられておるということで、その凍結措置という観点からいうと相当程度のことを既にやっていると。
あとは、今申し上げたような、その改正外為法でやったような抜け穴がどこにあるかと、こういう部分については、G7各国でも、あるいはオーストラリア等G7以外の国も入ったところで実務的に実務者が集まってもろもろ協議は続けてきておりまして、そういうところで見付かった抜け穴はそれぞれ連携して対処をしているというところでございまして、ただ、日本において、現時点で、そういった国際協調の場で日本がここが抜け穴だという指摘を受けるようなことには至っていないと、このような認識でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/46
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047・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 分かりました。
いずれにしても、これはまだ引き続きの大きなテーマということでございますので、この対応もよろしくお願いします。
それと、次はマネロン対策、金融機関のマネーロンダリング対策なんですけれども、先ほども御紹介しましたとおり、FATFの審査報告書におきましては、法制度の有効性に関する評価で十一項目中八項目でM、モデレート、中位、この評価が下される、こうした結果になりまして、依然として課題が残っているということですね。で、このMとされた八項目の中で、例えば当局による金融機関等の監督、それから金融機関等によるマネロン、テロ資金対策という項目でMの評価にとどまっている、これが懸念点の一つということでございます。
そもそも、日本でのマネーロンダリング対策として、犯罪収益移転防止法で規定されている特定事業者は、犯罪による収益との関係が疑われる取引を所管官庁に届け出ることが義務付けられております。これも先ほど質問出ました。疑わしい金融取引の届出状況の推移、先ほどは令和三年度の数字でしたけれども、推移を教えてください。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/47
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048・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
疑わしい取引の届出件数につきましては、令和元年中が四十四万四百九十二件、令和二年中が四十三万二千二百二件、令和三年中が五十三万百五十件でありまして、そのうち金融機関等からの届出件数、これは、令和元年中が四十一万五千二百九十九件、令和二年中が四十万二千八百六十八件、令和三年中が四十九万五千二十九件と推移しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/48
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049・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 資料をお配りいたしました。資料一です。
今、数字、令和元年から三年までの数字を御説明いただきました。この届出の、先ほどの説明ですと、ほとんどがやっぱり金融機関からということですよね。そして、はっきりしておりますのが、令和三年が急に増えていると。そして、この十年間の数字を見ますと、十年間で一・五倍ぐらいになっているんですよね。
この令和三年、去年ですね、急に増えた原因、それから、ここ十年で一・五倍ぐらいになった、これは、疑わしい取引自体が増えたのか、それとも対策が徹底をしてきていて十分に把握できるようになったのか、どちらなんでしょうか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/49
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050・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 届出件数が増加している要因といたしましては、社会全体のコンプライアンス意識の向上に伴いまして金融機関等が不正な資金の移動に対する監視姿勢を強化していること、金融機関等を対象とする研修会等におきまして疑わしい取引の参考事例等を周知している、その効果が出ていることなどがあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/50
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051・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 これまでの対策の効果が出てきているんじゃないかと、こういう分析です。こうしたマネロン対策を効果的に行うには、やっぱり規模とか手口を把握するということが重要になります。
そこで、マネロン対策の成果を知る上でも重要になるのがこうした届出件数の増加とともに警察による検挙状況なんですけれども、警察庁に引き続き聞きたいんですが、検挙件数の推移、それから取締り体制をどういうふうに強化してきたのか、これについて答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/51
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052・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
警察庁では、マネーロンダリング事犯の捜査、訴追や没収に係る関係機関との連携を強化するため、令和三年十月に法務省及び最高検察庁とともにタスクフォースを設置いたしました。さらに、令和三年十二月、都道府県警察等に対しまして通達を発出し、より積極的なマネーロンダリング事犯の取締りや犯罪収益の剥奪に向けた取組を推進するよう指示したところであります。また、各都道府県警察における取組状況や今後の取組方針等の調査、分析をするとともに、各種会議におきましてマネーロンダリング事犯の捜査の強化等を指示したり、研修等を実施したりしているところであります。
なお、マネーロンダリング事犯の検挙件数につきましては、令和三年で六百三十二件となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/52
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053・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 資料二としてお配りしました。
今、六百三十二件って言ったけど、六百二十三件じゃないですか。これ、警察庁の年次報告書の資料そのままなんですけど、違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/53
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054・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) マネーロンダリング事犯につきましては、組織的犯罪処罰法に係る検挙と麻薬特例法に係る検挙がございます。私が御答弁いたしましたのは、麻薬特例法を足した数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/54
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055・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 はいはい、分かりました。六百三十二件ということですね。いずれにしても、ここ十年で二倍以上に増えているんですよね。
この年次報告書にも書かれていますけれども、他人名義の口座がマネロンの主要な犯罪インフラになる、こういうふうにこの報告書の中でも書かれています。この口座の問題というのは、この後少し詳しく質問してまいります。
で、ちょっと視点を変えますけれども、この対日審査報告書の中で改めて注目されたのが中小規模の金融機関のリスクということなんですが、実際に日本の金融機関で、五年前、二〇一七年、五年前に関係者を震撼させる出来事が起きました。当時、一部のメディアが、北朝鮮不正送金疑惑、闇に消えた五億円とセンセーショナルに報じました。国会でも少し取り上げられました。私もその議事録を読ませていただきました。まあ当時はほとんどノーコメントということだったんですが、その後、記事等々が出ておりますので、一つだけ御紹介いたします。
資料三です。
この新聞の記事の三段落目の最後から四行目にこの事案というのが書かれているんですが、左上がこの問題の事案の図なんですけれども、中をかいつまんで御紹介しますが、二〇一七年の春、四国地方のある銀行で、日本在住の会社経営者の男性が、この銀行の支店から五回にわたって、香港の銀行にある貿易会社名義の口座に五回にわたって計五億五千万円を送金をしました。ところが、後に、この貿易会社は経済制裁の対象となっている北朝鮮関係者が役員を務めていた、またこの送金自体が違法の疑いが強いことが分かったというものです。
ちなみに、この記事の中には書かれておりませんけれども、この銀行というのは第二地銀の愛媛銀行で、男性は元々愛媛銀行の、これ関西の人ですから、大阪の方の支店に口座を持っていて、この問題の送金をされた五億五千万円は北朝鮮に流れた可能性が強いと見られているということなんですね。幾つかそれに関する記事もありました。
そして、ここには書かれておりませんけれども、送金先の香港の銀行は、愛媛銀行とは取引がなかったために、いわゆるコルレス契約をしている三大メガバンクのうちの一つ、みずほ銀行に送金の委託をしておりました。愛媛銀行からみずほ銀行、そしてこの香港の銀行と、こういうルートになります。
では、何でこんなことが起きたのか。まず、外形的な本人確認が不十分だったということ、また、このみずほ銀行の、いわゆるメガバンクを含めて、送金目的の照会の網をくぐり抜けていた、擦り抜けていた、把握できなかったということが挙げられるということなんですけれども、そこで伺いますが、この今私が説明した事実関係の基本的な確認、そしてその後の当局の対応、これ説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/55
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056・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
委員御指摘の件に関する報道については承知してございます。ただし、金融機関の個別事案に係る事柄であり、当該報道についてのコメント及び当該金融機関等に対する対応についてのコメントは差し控えさせていただきます。
ただし、一般論として申し上げますと、各金融機関は、犯罪収益移転防止法その他の関連法令等に基づき、厳格な取引時確認や疑わしい取引の届出など適切に対応する必要があります。また、マネロン対策等の観点から、リスクに応じた顧客管理も当然ながら求められるところでございます。
このような金融機関による取組を支援するために、金融庁といたしましても、累次にわたり、マネロンガイドラインあるいはそれのFAQの発出、改定などを行ってきたところでございます。また、このような金融機関の取組が適切に行われているかについても、モニタリングの中で確認を行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/56
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057・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 いや、これ、進行中の事案だったら詳細が言えないというのは分かるんですけど、これ五年前の事案でこれだけの記事になっているわけで、図表まで付いているんですよね。今の答弁は、まあ一般論ということにしてはもうちょっと中身を、やっぱりこれ検証しなきゃいけないわけですから、やっぱり話していただかないと、これから議論ができないと。
で、今、厳格な取引確認、本人確認が必要だと一般論としてお話をされましたけれども、それが本当にできなかったからこういう事件、こういう事案が起きたわけなので、この記事も書いておりますけれども、これをきっかけとして、金融庁が全ての地銀と信用金庫を対象に、マネーロンダリングと不正送金防止策について異例の実態調査を行うと、こういう記事になっております。
これは二〇一八年六月の記事ですからとうの昔のことなんですけれども、この実態調査の結果、どうなりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/57
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058・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
金融機関に対する具体的な我々のモニタリングの結果についてのお答えをすることは差し控えさせていただきます。
しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、金融機関、各金融機関においてはマネロン対策等を適切に行う必要がありまして、それについて我々としても改善を支援する観点から様々な取組を行っておりますし、今回のFATFの審査結果報告も踏まえて集中的にモニタリングを行うといったことの対応も行っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/58
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059・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 具体的な検査内容については言えないということなんですが、これ実際にもう報道で出ているんですけれども、異例の注意喚起を促す通達を、愛媛銀行のケースを、具体的にですね、多額の入出金が突然行われていないか、顧客の送金目的に不自然な点はないか、こうした点について報告を求めたということがどうも中身のようです。
そして、まあその結果なのかもしれません、二〇一八年九月、埼玉県信用組合、埼玉県信組に立入検査が行われて、不正が疑われる海外への送金が過去二年間で十九億円にも上っていることが判明した、こういう報道もあります。
これについて、事実関係、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/59
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060・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますが、個別の金融機関に対する検査等の結果について申し上げることは差し控えさせていただきます。
しかしながら、委員御指摘のとおり、我々といたしましても、各金融機関の実際のマネロンあるいは顧客管理あるいは本人確認等の状況、対応につきまして様々な情報を収集しておりまして、それについて、いわゆる横展開と申しますか、各金融機関に対して、具体的にどのような問題があり得るのか、それに対してどのような改善があり得るのか、それを例えばガイドラインあるいはFAQ、あるいは様々な金融機関との勉強会を通じてフィードバックいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/60
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061・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 こうした幾つかの報道レベルなんですけれどもありまして、そして二〇一九年の四月からFATFの対日審査が始まった、その結果が今回の審査結果ということなんですけれども。
今、二つの例を挙げましたけれども、まあ事実関係の確認はしてもらえませんでしたが、まあここまで報道されているんだからおおむね間違ってはいないんでしょう。間違っていたら言ってくださいね。おおむね間違ってはないというふうに思うんですけど、こういう事案がやっぱり幾つかあるので、特にやっぱり、日本の場合は中小の金融機関のやっぱりチェック体制とかそういうことが問題にされて今回のFATFの審査結果になったんじゃないですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/61
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062・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
FATF第四次対日審査における審査団との間の具体的な議論の内容につきましては、FATFとの情報の秘密保持に関するルールに基づき対外言及できないこととされておりまして、本件事案の取扱いも含め、審査時の議論の内容等についてはお答えを差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/62
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063・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 まあFATFとのやり取りも言えないということなんですけど、この愛媛銀行のケースを見ても、銀行と取引実績のない人物が突然多額の現金を持ち込んだ場合、これ通常であればアラートが鳴って取引中止が、そういうシステムが作動するはずなんですけれども、行っていなかった。そして、この男性が元々愛媛銀行に口座を持っていた、そういうこともあってチェックの網に引っかからなかった、もう本人確認が済んでいるという認識だったようですけれども、ただ、突然五回にわたって五億五千万円という送金はやっぱり、どう考えてもやっぱり異常なわけなので、これがそのチェックで働かないというのはやっぱり大きな問題だと思うんですよね。
こういう抜け穴というか、これは、こうしたその事例を教訓としてどういうふうに具体的に強化されたのか、説明できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/63
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064・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
一般論として、金融庁マネロンガイドライン等においては、金融機関に対して、疑わしい取引の届出につながる取引等について、リスクに応じて検知するため、取引モニタリングに関する適切な体制を構築し整備すること、海外送金等を行う場合に、外為法を始めとする海外送金等に係る国内外の法規制等にのっとり、関係国等の制裁リストとの照合等、必要な措置を講ずることなどを求めてございます。
金融庁では、所管金融機関に対して、二〇二四年三月末までにマネロンガイドラインが求める事項に係る態勢整備を完了するよう要請しておりまして、この観点から、先ほど申し上げましたけれども、例えばマネロンガイドラインのFAQを累次にわたって改正する、あるいは金融機関に対して多数の勉強会、研修会のような形で、先ほど委員からも御指摘のあった、これまでの具体的な事例に基づいた対応について情報共有をいたしておるところでございます。その上で、現時点で、預金取扱金融機関等を中心に、マネロン等管理態勢に焦点を当てた検査を集中して実施しているところでもございます。
金融庁としては、このような検査、監督も通じて金融機関のマネロン等管理態勢を強化してまいりまして、このような強化に向けた取組を引き続き行ってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/64
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065・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 今、二〇二四年までにそのガイドラインをという話だったんですが、具体的な事例を共有ということなんですけど、ここでもそういう具体的な事例をもう少し踏み込んで説明してほしいんですよね。そうでなければ、この国会の中での議論がこれ以上進んでいきませんので、それを一つ課題として指摘をさせていただきたいのと、この件について大臣に一つだけ聞きたいんですが、この今の北朝鮮の不正送金のケースですね、それから埼玉県のある信用組合でのやっぱりその不審な、やっぱりこういうことが相次いだ、こういう実態があるということについて、大臣は、日本の今の現状認識、まあこれは数年前の話で、今取組をしているということなのかもしれませんけれども、大臣自身の認識、このマネロン対策の認識、これについてはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/65
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066・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 北朝鮮による累次のといいますか、特に最近の度重なるミサイル発射など、我が国の安全への脅威が大変高まる中、外為法に基づく制裁の実効性をより一層高めていくことは我が国にとっても喫緊の課題であると、まず基本的に認識しているところであります。
今回の一括法案では、外為法を改正して、本年六月の資金決済法改正において新設されたいわゆるステーブルコインへの資産凍結措置を強化すること、また金融機関や暗号資産交換業者等に対し制裁措置の実施のための態勢整備義務を課すなどの措置を行うこととしており、本法案を通じて制裁の実効性をより一層確保していくことが可能になると期待をいたしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/66
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067・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 そういう認識で取組を引き続き強化していただきたい。
そして、これ、あるテレビ番組で、ある大手の、まあ地方銀行とはいえ大手の地方銀行なんですけれども、現在どういう対策をやっているかという特集がありまして、それをちょっと見てみたんですが、まず徹底した本人確認をしている。それから、モニタリングシステムをしっかりと構築している。それから、マネロン等金融犯罪対策室というのを設置して、これ五十人体制だそうです、この銀行では。それから、AI、そのパターン検知などによって不審な取引、これを即座に検知できるようになっているそうです。
こうした取組をするにはやっぱりお金が掛かる、人員、コストが掛かるわけですよね。これは地方銀行の中でも最大手の銀行ですのでこれぐらいのことできるんでしょうけど、さっき御紹介したような第二地銀、それからもっと規模が小さい信用組合、信用金庫、こうしたところになるとやっぱりコストが掛かるわけですよね。
こうした中小の金融機関のマネロン対策に掛かるそのコストに対する認識、そのコストに対して政府としてどういう取組、サポートをしているのか、これについて説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/67
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068・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
国際的にも高い水準でのマネロン対策等の実施が求められている中、金融機関のコストが増大しており、とりわけ、委員御指摘のとおり、中小金融機関においてシステム整備などを含め大変負担が大きいとの声があることは承知しております。
これにつきまして、まず中小金融機関についてでございますが、まずは、あくまでも自らの業務規模や特性等を踏まえた自らが行うリスク管理に見合ったシステム等のマネロン対策を、これのための体制整備を我々としては求めているということがございます。また、例えば今、全銀協さんにおいて、マネロン対策の高度化のための新会社を設立し、マネロン対策等を共同化し、委員御指摘のありましたAIを使ったりしてその知見やノウハウ等を集約するサービスを提供することが検討されてございます。
当庁といたしましても、このような業界全体の取組を積極的に支援し、それを通じて中小金融機関も含めてマネロンの水準を引き上げていきたいと、このように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/68
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069・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 システムの共同化とか、幾つかやりようはあるんだと思うんですけれども、やはり金融機関のマネロン対策というのは社会性が高いというふうに思います。何らかの政府の支援があってもいいのではないかという識者の指摘の論文も読ませていただきました。
こうした取組を国としてもやっぱり全面的にサポートしてほしい。とりわけ中小の金融機関、ゼロ金利政策もあってどんどん経営が厳しい状況になっているわけですね。そこについての十分なサポートをお願いしたいというふうに思います。
次は、口座の不正利用についてなんですが、こうした資金洗浄の背景の一つに、日本が欧米諸国などと比べて銀行口座の開設が容易なこと、これがよく挙げられております。
そこで、金融庁に伺いますけれども、日本国内にある銀行など預金口座の総数は幾らあるのか、幾つあるのか、そのうち実際に使われていないいわゆる休眠口座、遊休口座、この数、これを教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/69
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070・三好敏之
○政府参考人(三好敏之君) お答え申し上げます。
ただいま御質問ありました金融機関の口座数についてでございますけれども、日本銀行の公表資料によりますと、二〇二二年、令和四年三月末時点において、国内銀行で約七億九千八百七十五万口座となっております。
また、十年以上入出金等の取引がない預金等であります休眠預金の口座数ですけれども、預金保険機構において毎年度の新規発生件数を公表しておりまして、令和三年度は約六百八十七万件が休眠預金になっているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/70
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071・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 口座の総数が八億口座、一人単純計算で六つぐらい口座を持っていると、こういうことになるんですよね。
休眠口座は先ほど六百八十七万というふうに言いましたけれども、実際にはもっと多いんじゃないだろうか。これは十年間実際にその入出金がないというそういう口座ですけれども、実際のこの休眠口座というか遊休口座というか、もっと多いんじゃないか。
で、こうしたその口座がマネーロンダリング等の犯罪に使われる可能性、これは政府としてどういう認識を持っているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/71
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072・三好敏之
○政府参考人(三好敏之君) お答え申し上げます。
まず、休眠口座の口座数についてでございますけれども、これは今現にある全体の口座数といって申し上げたものではございませんで、先ほど申し上げた六百八十七万件というのは令和三年度における新規発生件数でございます。これは預金保険機構において公表されているものでございます。
また、休眠預金口座につきましては、本人や相続人などからの引き出しの依頼があった場合を除きましては出金が停止されております。そのため不正利用のリスクは一般的に低いものと考えておりますが、休眠預金に至っていない十年未満の不稼働口座につきましても、犯罪に使われることがないよう、金融機関に対しましては、不稼働口座が動き出した場合には口座の譲渡あるいは貸与などが行われた可能性を考慮しまして、顧客のリスク評価などの対応を講じるよう求めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/72
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073・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 休眠口座が実際に売買されて暴力団や特殊詐欺組織に悪用されるケースが何件も実際に指摘されています。対策としては本人確認を厳しくするしかないんですけれども、今問題なのは、継続的にこうしたその本人確認をする、そうした金融機関にマンパワー、お金のこともあるかもしれませんけど、そういう体制がない。そして、制度として、海外では、私もアメリカで口座を持っておりましたけれども、本人確認が取れない客の口座を使えなくすることが一般的だけれども、日本ではこうしたケースはなかなか難しいというふうに聞いております。
そうした中で、ちょっと飛ばして、新しい問題が起きているんですが、口座の不正利用に関連した、金融機関の口座での旧姓の、女性の場合のその古い姓の通称使用の問題なんですけど、これを少し取り上げてみます。
口座での旧姓の通称使用、個人認証の厳格化に逆行するんじゃないか、こういう指摘があります。
そこでまず、旧姓による預金口座について、金融機関の対応状況なんですが、普通預金について、旧姓による新規の口座開設にどれぐらいの金融機関が実際に対応しているのか。これ、金融機関別にパーセンテージで示してもらえないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/73
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074・三好敏之
○政府参考人(三好敏之君) お答え申し上げます。
旧姓の通称使用の拡大ということで、これ、政府におきましては女性活躍推進の取組の一環として取り組んでいるところでございまして、預金口座の開設につきまして推進の観点から内閣府と金融庁の合同で調査を実施いたしまして、その結果を本年の九月六日に公表しております。
それによりますと、銀行、信用金庫、信用組合の三業態全体ではおおむね五割程度が旧姓名義による口座開設などに対応しております。
業態別に見ますと、銀行ではおおむね七割程度、七〇%程度、信用金庫では六〇%程度、他方、信用組合では一〇%程度が旧姓名義による口座開設等に対応していると承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/74
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075・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 資料四をお配りしました。
今説明をしていただいたのが、内閣府男女共同参画局と金融庁監督局が共同で行った旧姓による預金口座開設等に係るアンケート結果、その資料なんですね。これを見てみますと、今説明ありましたけれども、旧姓使用に対応しているのが、銀行では約三分の二、信用金庫で半分強、一方、信用組合、信組、それからそれ以外の金融機関では一割かあるいはそれ未満にとどまっているということです。御覧のように、金融機関ごとに対応が大きく異なっているんですけれども、特に旧姓使用に対応をしている金融機関が非常に少ない信組の場合は、共同のセンターのシステムが未対応と、こういう事情がどうもあるようでございます。
それでは、旧姓による預金口座開設に未対応な金融機関、これはどういう理由によるものか。これは、金融庁、どういうふうに把握しているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/75
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076・三好敏之
○政府参考人(三好敏之君) お答え申し上げます。
委員御指摘ありましたように、特に信用組合におきましては、現在のシステムでは旧姓を登録、管理できない等、システム改修が必要となるということから未対応であるということで一割強にとどまっているということがございます。
また、同じ調査結果によりますと、旧姓による口座の開設等に対応していないという理由として、主なものとしては、一つはマネーロンダリング及びテロ資金供与防止対応への懸念が生じるといった意見が出ております。また、旧姓名義による普通預金口座開設のニーズが必ずしも多くないということもありまして、申し上げたとおり、そのコスト対応、システム対応に関するコストとの関係で対応していないという場合があるというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/76
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077・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 今の説明を資料五で、もう一回繰り返しますけれども、今答弁がありましたように、最も多いのがマネロン及びテロ資金供与防止対応に懸念が生じるため、これが旧姓使用に対応していない一番多い理由なんですね。それから、旧姓名義によるニーズがないとか、実際にシステム改修が必要だからと、こういうことなんですが。
ちなみに、今回の旧姓の通称使用へのこうした懸念、これは今回のFATFの審査対象になったんでしょうか、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/77
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078・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
先ほどの繰り返しになりますが、FATFの審査団との具体的なやり取りについてはお答えを差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/78
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079・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 旧姓使用への対応が本格化したのは一九年の末頃からというふうに言われています。一方、先ほども紹介しました審査は一九年春ですから、実際には審査対象にはなっていないのじゃないかというふうに思われます。
問題は、この旧姓の通称使用拡大方針によって不正事案が実際に発生していないかどうか、この金融機関がその懸念が生じるために対応していないというのが一番多かったということですから、現実がどうかということなんですけれども。
そこで、警察庁に聞きます。去年十二月に国家公安委員会が公表した犯罪収益移転危険度調査書というのがあると思います。この中に不正事案の事例が書かれていると思うんですけれども、説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/79
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080・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お尋ねの令和三年犯罪収益移転危険度調査書掲載の事案につきましては、暴力団員が登録を受けないで七回にわたり四名に対し合計三百二十五万円の貸付けを行い、貸金業を営んでいたところ、その返済口座として当該暴力団員の妻が結婚前に旧姓で開設した口座を使用したものとして、平成三十年に検挙した事案であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/80
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081・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 実際にあったんですよね。その懸念が的中したということです。平成三十年ということですけれども、これは去年、令和三年の公安委員会の犯罪収益移転危険度調査書なんですけれども、その中に、暴力団及び準暴力団の実際の事例として、暴力団員が闇金融の返済口座として妻が旧姓で開設した口座を使用した。実際にその旧姓使用で作った口座がこういう不正利用されたんですよね。
これは、今説明をいただきました、これ七回、三百万円強という説明でしたけれども、実際にこういうケースが発生しているんですが、これ以外に警察庁が把握しているケースで同様のケースありませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/81
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082・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 類似事案の件数についてのお尋ねでございますが、そういった観点からの統計は取っておりませず、御指摘の件数等は把握しておりません。お答えすることは困難でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/82
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083・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 統計を取っていないので答えることは困難だと言うんですが、こういう例えば闇金とかそれから特殊詐欺みたいなこういうグループというのは、不正の手口というのはもうすぐあっという間に横に広がっていきますから、これは絶対この一件では済んでいないはずなんですよね。そういうことを考えると、やっぱり潜在的に相当なリスクがあるんだろうと、こういうふうに見られるわけです。
こうした金融機関での旧姓の通称使用の拡大の契機は、高市総務大臣が女性活躍のため、先ほどありました、この推進のためとして始めたマイナンバーカードの旧姓使用が始まった二〇一九年の十一月頃と軌を一にすると、こういう指摘があります。
そこで、ちょっと資料の六の方を御覧ください。
マイナンバーカードの旧姓併記スタートに伴う総務省のパンフレットには、当初、この資料六の左側の図のように、銀行口座が旧姓のまま引き続き使えますと、こういうふうに書いてありました。ところが、いつの間にか資料六の右側のように、これは後ほどのパンフレットですけれども、この中には、旧姓のまま引き続き使えますという表現ではなくて、銀行口座の名前に旧姓が使われる場面でその証明に使えますとしか書いていない。銀行口座、旧姓のまま使える、あるいは旧姓でその銀行口座を作ることができる、そういう表現になっていないわけですよね。
これは何でなんでしょうか。総務省、説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/83
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084・三橋一彦
○政府参考人(三橋一彦君) お答えいたします。
お尋ねのパンフレットにつきましては、令和元年にマイナンバーカードや住民票への旧姓併記の制度が施行される際に、その広報、普及啓発用に作成したものでございます。
御指摘の表現の変更につきましては、広報、普及啓発を行う中で、どの金融機関でも旧姓の口座を開設できるように受け取られてしまう、また、旧姓を使用する際に氏名の変更を届けなくてもよいと誤解されてしまう等の御意見があったことを踏まえまして、当初、保険、携帯電話の契約や銀行口座は旧姓のまま引き続き使えますとしていたものを、各種契約や銀行の、銀行口座の名義に旧姓が使用される場面でその証明に使えますと表現を修正したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/84
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085・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 今の説明ですと、全ての金融機関に対応していないからこういう表現に変えたと言うんですが、実際には、これ銀行協会の方から、婚姻などで氏名が変更になった場合でも届出が不要であるかのような誤解が生じるため文言を修正してほしい、こういう要請があったんじゃないですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/85
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086・三橋一彦
○政府参考人(三橋一彦君) お答えいたします。
先ほどお答えいたしましたとおり、広報、普及啓発を行う中で、どの金融機関でも旧姓の口座を開設できるように受け取られてしまうという御指摘や、それから旧姓を使用する際に氏名の変更を届けなくてもよいと誤解されてしまう等の御意見があったことを踏まえて、このような修正を行ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/86
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087・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 今の答弁を踏まえて、これ金融庁に伺いたいんですが、旧姓の通称使用によるマネロン等へのリスク、これを金融庁としてどういうふうに考えているのか。本当に今のような旧姓の通称使用を拡大するというようなことで安全に運用できるのか。
先ほど来ずうっとありますけれども、これ、FATFの審査の対象に今回なっていないというふうに思われるんですけれども、このままですとこのリスクを放置することになってしまうわけですけれども、金融庁の見解、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/87
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088・三好敏之
○政府参考人(三好敏之君) お答え申し上げます。
アンケート調査の結果にございますように、対応していない理由の一つとして、マネーロンダリング、テロ資金供与対応との関係で懸念が生じるためという意見が出て、回答があるということは事実でございます。また、その関係で、旧姓と本姓の両方をひも付けるためのシステム改修ですとか、あるいはそういうものが必要となるということもありますし、そのためにはシステムの大幅な改修が必要であり、相当程度の作業期間、費用が見込まれるというふうな回答がありまして、これがその対応が進んでいないもう一つの理由であるというふうにも承知しております。また、さらには、委員御指摘のありましたような懸念に対応する観点から、例えば行政機関からの調査にも円滑に対応するための対応整備が必要だということでございます。
金融庁といたしましては、顧客からのニーズとそうしたコストあるいはそういった懸念との対応との関係で、金融機関側の状況ですとか政策上の要請を丹念に、丹念に検討しながら、適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/88
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089・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 何か歯切れ悪いんですよね。最後、適切に対応というふうにおっしゃっていますけど、今も説明されたように、ひも付けるシステムの改修とか必要なわけでしょう。そのコストは誰が負担するんですか。
要するに、こういう制度を推進することによるやっぱりそのリスク、デメリットというのをやっぱり金融庁としてもうちょっとはっきりと言っていただかなきゃ困る。本当に旧姓の通称使用の拡大だけでいいんですかというのが、これは、今回は選択的夫婦別姓がテーマではありませんので、これ以上は申し上げませんけれども。
ゆうちょ銀行の件について、ちょっとこれ、日本郵政にも来てもらっていますので一つだけ聞きますけど、ゆうちょ銀行はこれについてどういう対応になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/89
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090・田中進
○参考人(田中進君) お答え申し上げます。
お尋ねの旧姓での口座利用に関する、今、ゆうちょ銀行の現況を申し上げます。
現在は、政府からの御要請も踏まえまして、二〇二四年一月に向けてそのシステム改修を行っておりまして、その後、改修後、できるだけ速やかに対応できるよう実務上の準備を進めていかなきゃいけないと、そういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/90
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091・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 現状では、旧姓の通称使用での口座開設を認めない、あるいは既存口座での維持、旧姓のですね、既存口座での維持を認めない、現状はこうなっているということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/91
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092・田中進
○参考人(田中進君) 現在は、先生御指摘のとおり、当行で現行システムでその旧姓を管理できる仕組みとしておりませんので、現状ではできておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/92
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093・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 ところが、政府からの要請があって、旧姓の通称使用を拡大してくださいということで、旧姓の口座が持てるようにということで、今システム改修をしている、二〇二四年までに、こういう答弁だったんですけど、これ、一体幾ら掛かるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/93
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094・田中進
○参考人(田中進君) お答え申し上げます。
具体的な金額については差し控えさせていただきますが、原簿へその旧姓情報を登録するとか、あるいは端末から入力をするとかいったような対応をしなきゃいけませんもんですから、概算ではございますけど、数億程度の規模が掛かるという具合に見てございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/94
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095・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 数億程度のお金を掛けて、しかもマネロンに使われるかもしれない、不正利用されるかもしれないそのリスクのある口座に対応しようとしている。おかしくないですかね。
大臣に聞きたいんですけれども、これ極端な例かもしれませんけど、銀行など口座の旧姓による通称使用を拡大すれば、例えば極端な例でいいますと、結婚と離婚を繰り返したら幾つも名前の名義の口座持てちゃうんですよね。実際にそういう方にお目にかかってお話も伺いました。私、幾つかの名義の口座持っています、こういう話でした。もちろんこの方は不正には利用していませんよ、なんですけれども、これ、旧姓の通称使用拡大というのは世界の潮流に明らかに反している。
そして、今もるる質疑をしてまいりましたけれども、混乱を引き起こしたり、金融機関もそれなりの対応をしなければいけませんし、コストも掛かる話ですし、実際には信組、信用組合はまだ全然していないわけですから、これ、もし対応しようとすると、信組、信用組合なんかもシステムの改修まだしなきゃいけないわけですよね。
これ、マネロン対策の観点からもマイナスだと思うんですけど、これ、大臣は男女共同参画の御担当では直接ございませんけれども、こうした懸念について、今回の法案を担当されている大臣としてどうお考えになっているのか。今の一連の質疑を聞かれてどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/95
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096・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘のとおり、私は男女共同参画の担当大臣ではございませんが、しかし、施策を行うときに、いろんな目配りといいますか、バランスを考えて行うことが必要かと思います。
銀行等の金融機関においては、犯罪収益移転防止法に基づき、本人確認や取引目的等の確認が求められており、本人確認に当たっては、公的証明書による確認が義務付けられております。そのため、仮に預金口座の開設、利用に際して旧姓を通称使用する場合であっても、運転免許証などの旧姓が併記された本人確認書類を用いて本人かどうか確実に確認することを求めています。
こうしたことから、旧姓を通称使用したいという顧客のニーズ、これがあることは確かでございますので、そういうニーズに対応する一方で、マネロン対策、これも重要なことでございますので、必要な本人確認は行うということを、まあ両方を目指すような方向で今進めているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/96
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097・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 やっぱり歯切れ悪いんですよね。バランスを取るようにとかっておっしゃっていますけど、双方に目くばせとか、やっぱり基本的に矛盾があるんですよ。やっぱりこれ、もう一回考え直さなきゃいけないと思います。ただ、これ、当委員会のテーマではございませんので口座の話だけにとどめますけれども、これはまた、男女共同参画は内閣委員会の大きなテーマでございますので、これは引き続きやっていきますが。
ちょっともう一つだけ、先ほど士業の話がありましたので、ちょっと司法書士の話を最後に質問させていただきたいんですけれども、今回の法改正では、司法書士など職業専門家に対して、取引時における確認事項として、新たに取引の目的、職業又は事業の内容及び実質的支配者の本人特定事項が追加されることとなりました。
そこで伺いますけれども、こうした職業専門家への新しい制度への周知徹底を含めて、政府としてどういう対応を具体的に取るおつもりか、答弁してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/97
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098・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
ただいま司法書士という御指摘でございました。職業専門家、司法書士などの職業専門家の方々につきまして、今回、一定の確認義務の強化、また、一部の士業者の方には正しい取引の届出の義務、こういったものを設けるといった改正がされるところでございます。
今後も、士業者の方と関係省庁とも連携しながら、しっかりと意見交換をしまして、適切な制度の設計、運用に努めてまいりたいと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/98
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099・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 適切な運用に努めるという非常にアバウトな答弁だったんですけど、やっぱり負担が増えるわけなので、先ほど弁護士さんとかほかの士業の話もありましたけれども、ここはしっかりと周知徹底をですね、新しい制度の周知徹底、これを進めていただきたい。
その中で、今回の法改正で、職業専門家による取引時確認が適切に行われたとしても、関係する業務を取り扱う職業専門家以外の特定事業者においても適切な取引時確認が行われなければ、これはやっぱりマネロン対策においては抜け穴になるということです。例えば、不動産業界、宅地建物取引業者、これは既に法律上の確認義務を課されておりますけれども、それにもかかわらず、実質的支配者等に関する取引時確認の実施が必ずしも十分に行われていないのではないかと、こういう指摘があります。
そこで、今回の法改正を機に、宅地建物取引業者を始めとする既存の特定事業者についても、政府としてこれまで以上に適切な取引時確認などが行われるよう業界団体などに周知徹底を図るべきだと考えますけれども、これについても政府の対応を聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/99
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100・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘の宅地建物取引業者につきましては、おっしゃられるとおり大変数が多い、全国的に。しかも、国土交通省や都道府県が宅地建物取引業者に対して実施する立入検査の中で、本人確認など義務規定に係る履行義務の確認が行っていると承知しているところでございますが、しかし、その徹底を図るために、本年十月三十一日には、国土交通省において、宅地建物取引業におけるマネーロンダリング及びテロ資金供与対策に係るガイドラインを策定したところでございます。
関係機関と連携して、宅地建物取引におけるマネロン等対策の実効性が現実的に更に向上するよう取組を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/100
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101・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 大臣に答弁していただきました。
これ、宅地建物取引業は国交省の管轄でございますので、これは国交省を通じてということで、これは徹底していただきたい。で、これは士業の人以外も、それに関連したいろんな業界ありますので、この周知徹底は是非ともやっていただきたいというふうに思います。
最後の質問になるかもしれませんので、これまでるる質問をしてまいりました。これからもまだ質問続くんですけれども、先ほども少し触れましたが、日本は欧米諸国と違ってテロの脅威を身近に感じる機会が比較的少ないというふうに言われております。それがテロ資金とかマネロンに対する意識の低さの根底にあるのではないか。
先ほど、旧姓使用のその口座の話ですけど、やっぱり欧米などではちょっと考えられないわけですね、こういう対応というのは。しかし、そうした一方で、今回のFATFの審査結果、それから国際的なリスクの意識の高まりなど等々によって、地域の特に中小の金融機関もやっぱり対応を迫られて、実際にはコスト面から海外送金業務をやめるような、そういう金融機関も出ているわけですね。影響はやっぱり徐々に徐々に市民生活の方にも及んできているように思います。
そこで、大臣に最後質問をしたいんですけれども、こうした状況の中で、日本政府としても、これFATFって、大体そもそも読むこと自体が難しくてですね、これは分からないという。ですから、ここのその法案の審議をしている人、これは理解しているかもしれませんけど、ほとんど一般の人はこれ国民理解していませんので、そうしたそのテロ、マネロンを含めたこの理解を国民が、もっと広げる努力、してもらう努力というのが必要ではないかと思うんですけれども、大臣、最後にこの点について考えを聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/101
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102・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員おっしゃるとおりだと思います。
マネロン対策について国民の理解が十分か、十分かと言われますと、必ずしも十分ではない。また、欧米諸国と比べると、我が国の理解度がそれほど高いとは言えないと思います。それだからこそ、しっかりと今後様々な対策を取っていく必要があろうかと思います。
例えば、銀行取引の際に本人確認の手続を踏んでいただく、しっかり踏んでいただく、国民の皆さんの理解を得ながら官民一体となって取組を進めていく必要があり、国民的理解の向上のための取組を適切に進めていく必要があろうかと思います。
これまでも様々な方法で行ってはいるところでございますけれども、より国民の理解が得られるよう更に効果的な手法はないのかどうか、関係省庁間の連携とか、広報内容、ツールの多様化を進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/102
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103・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 時間が来ております。おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/103
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104・杉尾秀哉
○杉尾秀哉君 はい。ありがとうございました。
私のところにも銀行から口座確認の通知が来ましたけれども、これは何だろうなということを、恐らくほとんどの国民はそう思っていると思うんで、これ是非周知徹底、徹底するようにお願いしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/104
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105・三浦信祐
○三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散金融対策のために国際協調を図る上で重要な役割を担っている金融活動作業部会、FATFは、令和三年、二〇二一年の六月に開催された全体会合において、第四次対日相互審査報告書を審議、採択の上、八月に公表されております。
この報告を踏まえ、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法の一部を改正する法律案として今回審議をすることになりました。
本法律案を提出をする意義、重要性と本法律案の早期成立の必要性について、谷大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/105
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106・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘のとおり、本法案は、昨年夏に公表されたFATF第四次対日審査報告書を踏まえ、国連安保理決議に基づく資産凍結措置、暗号資産への対応、マネロン対策等のそれぞれについて強化を図るものでございます。
日本との金融取引に対する信頼性を確保し、国際金融センターとしての地位を向上させるとともに、マネロン対策等で日本が抜け穴となることによって不正な資金の流れに関与することを防ぐ観点から、本法案は重要かつ早急な対応が必要であると考えております。
本法案につきましては、二〇二四年四月のFATFへの最終フォローアップ報告書提出時点で施行されていることが必要でございます。そうなると、本法案は事業者の体制整備等時間を要する取組を含み、こうした取組は法律成立後、施行までの一年半程度の周知、準備等の期間も必要とすることを踏まえれば、今臨時国会での法案成立が是非とも必要であると、そう考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/106
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107・三浦信祐
○三浦信祐君 重要性について整理をしていただきました。
FATF第四次対日相互審査報告書において、法令整備状況、法制度の有効性でそれぞれ評価がなされた結果、二〇〇八年の相互審査以降、指摘事項に対するこれまでの取組が評価をされている項目がある一方で、三分類、すなわち通常フォローアップ国、重点フォローアップ国、観察対象国のうち、重点フォローアップ国とされました。
政府としてこの評価をどう受け止めているのでしょうか。また、これに伴って、報告書にて指摘された事項について、改善状況、三年間毎年報告義務が付けられております。これに対してどのように取り組んでいくのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/107
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108・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
日本、御指摘のとおり、第四次対日審査において重点フォローアップ国とされたところでございます。この審査報告結果につきましては、日本のマネロン等対策の強化に向け取り組むべき重要な課題を示されたものと、そのような受け止めをしてございます。
これを受けまして、政府としましては、審査報告書の公表と同日に関係省庁で構成します政策会議の設置及び行動計画を公表、関係省庁で緊密に連携して、マネロン等対策の強化に向け精力的に現在も取り組んでいるところでございます。
また、御審議いただいておりますFATF勧告対応法案は、FATFから法改正すべきと勧告された事項を盛り込んだものでございます。
これらの取組を着実に進めまして、我が国がむしろこのマネロン対策をリードいたしまして国際社会における安全保障や健全な経済活動を確保していくべきであると、このような気概の下で我が国のマネロン等対策の強化に向け取組を進め、可能な限り全てのFATFの指摘事項の改善につなげていくということが重要かと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/108
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109・三浦信祐
○三浦信祐君 しっかりと取組を進めるべきだと思います。
政府がFATF勧告に対応する、今御答弁のありました法的対処、また実効性確保がなされた場合、重点フォローアップ国から通常フォローアップ国への昇格の見通しとその時期判断はどのようになっていくのでしょうか。テロ予防等、対加盟国として対策推進というのは当然のことではありますけれども、第四次審査の結果、FATF加盟国三十か国のうち通常フォローアップ国は八か国であり、半分以上の十九か国が重点フォローアップ国となっております。
分類が上昇することによる世界的評価とメリットは、改めての確認でありますが、どこにあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/109
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110・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
FATFの仕組み上、個別の評価項目につきましては、フォローアップを受けまして評価が改善されるということはあるわけでございますが、御指摘の三つの大きなくくりであるこの重点フォローアップ等が、これがこの第四次審査の枠内で通常フォローアップ国になるとかそういった格上げがあるという、そういう仕組みにはなってございません。
したがって、この通常フォローアップ国になるかどうかという見通しという点につきましては、これは将来の話になるわけでございまして、具体的には二〇二五年以降、各国に対して順次行われる第五次審査、こちらがあるわけでございます。この第五次審査も視野に入れたところで私どもこの政策会議を設置しまして、もちろん審査基準もまだ、FATFの中で議論が進んでおるわけでございますが、そこにも積極的に関与して、マネロン等対策の強化に向けてしっかりと対応していくというところでございます。
また、こういったそのカテゴリーが上がることがどういう評価やメリットを持つかという御質問でございます。
この取組を進めてカテゴリーが上がるということは、そもそもそのFATFというところから評価される云々以前の問題といたしまして、やはり犯罪収益やテロ資金、大量破壊兵器に関係する資金等の移転を徹底的に封じ込めている極めて安全、安心なシステムを持った国であると、このような国際的な評価を得られると同時に、さらに、これを封じ込めることを先導し、各国にこれを慫慂していくことによりまして、我が国自身の安全保障や健全な経済活動の実現にも貢献することができると、ひいては、これがまさに国際金融センターという我が国が持っておる目標の、そういった地位向上の一助にもなっていくものと、このように考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/110
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111・三浦信祐
○三浦信祐君 まさに国民の皆様に、この結果がイコール世界的な日本の評価につながり、そして生活安全のところにつながっていくと、こういう周知もきちっと大臣も含めてしていただきたいというふうに思います。難しい内容ではありますので、それがどう生活実感の中にあるかというのはなかなか分かりづらいことでありますけれども、その安心というのがこういう努力によって成し遂げられる、そして皆さんに協力をいただかなければいけないということ、これをしっかりとまた広めていっていただきたいと思います。
次に、マネロン対策について伺います。
FATF勧告では、マネロン罪の法定刑上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げることに優先的に取り組むべきであるとしております。本法案ではマネロン罪の法定刑引上げをすることとしておりますが、この法定刑の合理性と必要性について政府に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/111
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112・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 委員御指摘のとおり、FATFからの勧告の中で、マネーロンダリング罪の法定刑の上限を、詐欺罪や窃盗罪、これは今の現行法で上限が懲役十年といずれもなっておりますが、それと同水準に引き上げるようにという勧告を受けたところでございます。
その上で、国内のそのマネーロンダリングに関する犯罪動向といたしましても、グローバル化、デジタル化に伴いまして、資金移転手段等の多様化によってマネーロンダリングの誘因ですとか発覚の困難性が高まっているという状況がございます。また、我が国の組織犯罪の実態としまして、いわゆる特殊詐欺事案を典型として、多くの事案でその犯罪収益のロンダリング、マネーロンダリングが行われているという、こういう実態もございます。
これらを踏まえますと、やはりマネーロンダリングに対しては、国際社会と協調しながらより強力に抑制を図るべき重要性がますます高まっていると認識しておりまして、この度のFATFからの勧告も契機といたしまして、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、それによって強力に抑止、防止していくことが必要であると考えたことから、今回の法案におきましてはマネーロンダリング罪の法定刑を引き上げるということとしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/112
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113・三浦信祐
○三浦信祐君 そうしますと、日本における近年のマネロンの受理人員数、また没収金額はどうなっているのかということをまず確認をしておく必要があると思います。
その上で、マネロン事犯として、組織的犯罪処罰法の法人等経営支配、また犯罪収益等隠匿、犯罪収益等収受及び麻薬特例法に定める薬物犯罪収益等隠匿、また薬物犯罪収益等収受が犯罪化をしているというふうに整理をされていると承知をしております。
近年のマネロン事犯の検挙件数、推移はどのようになっているんでしょうか。これが、届出事項が増えていって数字が仮に増えたとしても、下げられるかどうか、この抑止力が効いたかどうかということに比例すると思いますので、是非御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/113
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114・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 組織的犯罪処罰法と麻薬特例法を合わせましたマネーロンダリング事犯の検挙について御答弁いたします。
マネーロンダリング事犯の過去三年の検挙件数は、令和元年で五百三十七件、令和二年で六百件、令和三年で六百三十二件となっており、令和三年は過去最多となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/114
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115・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 法務省からは、検察において受理した件数という形で御紹介いたしますと、令和三年までの三年間、先ほどと同じ期間ですが、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法のマネーロンダリング罪、今委員から御指摘のあったマネーロンダリング罪で検察当局が受理した人員というのは合計で一千三百七十五人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/115
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116・三浦信祐
○三浦信祐君 没収金額はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/116
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117・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 失礼いたしました。
没収・追徴金額につきまして、同じく令和三年までの三年間におきまして、これはマネロン罪には限りませんけれども、通常第一審判決で組織的犯罪処罰法の犯罪収益等あるいは麻薬特例法の薬物犯罪収益等について没収、追徴が言い渡された人員数はまず一千二百七十三名、合計の金額は約六十七億円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/117
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118・三浦信祐
○三浦信祐君 決して少ない金額ではありませんので、この抑止力を図るということは、今回の法改正、そして実効性を担保するという意味では極めて重要だと思いますので、引き続き対応をお願いしたいというふうに思います。
FATF勧告の中で、NPOがテロ組織などに悪用されることを防ぐ法整備が、四段階中、最低評価となる不適合、NCとなっております。この不適合とされた評価の受け止めと、この評価を受けるに至った分析は必須でありますので、具体的な課題整理の結果はどのようになっているのでしょうか、谷大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/118
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119・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 御指摘のNPOの悪用防止に関する項目については、昨年八月のFATFの対日審査報告書において、一つはテロ資金供与に悪用されるリスクに基づいて監督をしているわけではない、二つにはテロ資金供与に関するNPOに対するガイダンスも最小限であるといった指摘を受けており、その結果、御指摘のように、一番低い不履行、NCとの評価になったものと承知しております。
これらの指摘を踏まえ、政府といたしましては、昨年八月に策定した行動計画において、一つは、NPOがテロ資金供与に悪用されるリスクについて適切に評価を行い、リスクに応じたモニタリングを実施すること、二つには、高リスク地域で事業を実施するNPOの活動の健全性が維持されるよう、テロ資金供与リスクとテロ資金供与対策の好事例に関する周知を行うことを政策課題として掲げ、関係省庁連携の下、必要な措置を講じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/119
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120・三浦信祐
○三浦信祐君 NPOは社会を大きく支えていただくために重要なところであります。一方で、これがテロ組織などに悪用されるということはあってはいけませんので、この実効性をしっかりと担保していただきたいというふうに思います。
本法案では、組織的犯罪防止処罰法の改正にて、犯罪収益等における没収できる財産の対象の拡大を図ることとしております。
没収対象財産の拡大することの合理性とその理由について伺いたいと思います。また、犯罪収益等の財産形態はどのように整理されているのか、確認をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/120
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121・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 組織的犯罪処罰法第十三条一項におきましては、犯罪収益などを没収することができるということを定めておりますけれども、現行の規定は、その財産が不動産若しくは動産又は金銭債権であることが要件とされております。
他方で、近年、情報通信技術の進展や普及に伴いまして、財産の取得、保有、移転が暗号資産を始めとする新たな形態で行われるようになった一方で、取得、移転の容易性や匿名性の高さといった特性から、これが犯罪に悪用されて、犯罪による利益が新たな形態の財産として取得、保有、移転されることがございますが、こうした新しい形態の財産は、今申し上げました不動産、動産及び金銭債権のいずれにも当たらないとして没収の対象にならないという場合がございます。
そこで、犯罪収益等として保有されている財産につきましては、その種類を問わず没収することができるように、その不動産、動産、金銭債権という限定を削除するという形での改正をお願いしているところでございます。
この改正によりまして没収が可能になるわけでございますが、今申し上げた不動産、動産、金銭債権以外の財産といたしましては、暗号資産のほかには、例えば振替株式ですとか、あるいは電子マネーの一部についてが考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/121
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122・三浦信祐
○三浦信祐君 今御答弁ありましたけれども、この暗号資産、そしてトラベルルールについて更に伺っていきたいと思います。
暗号資産取引は、世界的に広がりを見せる中で、インターネット等を活用した非対面取引が主であり、匿名性の高さゆえにマネロン、テロ資金移転に用いられる悪用リスクが高いとされております。
暗号資産交換業者が暗号資産移転を行う際に課せられる通知義務、すなわちトラベルルールについて、本法案では犯罪収益移転防止法改正によって規定をされることになっておりますが、具体的な通知事項、手順並びに義務違反の際の対処方法はどのようになっていくのでしょうか。また、加えて、トラベルルールの監督手法、金融庁の検査体制はどのようになっているのでしょうか。実効性確保の観点で御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/122
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123・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
トラベルルールによって通知すべき事項は、FATF勧告及びそのガイドラインで定めておりますところ、これらに倣った形で犯罪収益移転防止法施行規則で定めることを検討してございます。
このFATF勧告等で定められている通知事項というのは送付人情報及び受取人情報でございまして、そのうち、送付人情報については、自然人の場合は氏名、住所、暗号資産のアドレス、法人の場合は名称、本店又は主たる事務所の所在地、暗号資産のアドレス。受取人情報については、自然人の場合は氏名、暗号資産のアドレス、法人の場合は名称、暗号資産のアドレスが定められております。
この通知の手段についてでございますが、こちらは暗号資産の移転を行う際、また事前に行う必要があるところ、これを適切に実行するため、送付元暗号資産交換業者において顧客の個人情報の安全が確保され、かつ受取先の暗号資産交換業者に適切に通知が行われる専用システム、いわゆるソリューションを導入することが想定されております。
また、義務違反の際の対処方法等についてでございますけれども、当庁における検査監督において暗号資産交換業者が通知義務を適切に実行していないことが判明した場合は、まずは必要な指導や助言を行うことが想定され、これによっても改善が見られない場合には法に基づく是正命令を発出することが考えられます。仮に命令によっても改善されない場合には罰則に処するといった厳格な措置を行うこととなります。
最後に、当庁としての監督事項についてでございます。
当庁といたしましては、今後の暗号資産交換業者に対するモニタリングにおいて国際的に協調して実効性のあるマネロン対策等を実施する観点から、トラベルルールに関しては、暗号資産の送付人である自らの顧客から必要な情報を取得するシステム等の体制が十分か、暗号資産の受取人となる顧客を管理するほかの暗号資産交換業者のマネロンリスク管理態勢の十分性を的確に評価しているかといった点をしっかりと検証してまいりたいと考えておりまして、このようなモニタリング、あるいは場合によっては立入検査に必要な人員についても適切な、適切な数を確保していくと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/123
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124・三浦信祐
○三浦信祐君 やはり最後、人の重要性でありますので、我々もしっかりと支えていきたいというふうに思います。
暗号資産取引は、国内間だけではなくて、国境のないインターネットを活用すれば海外との取引が生じるのは当然であります。その際、日本が整備するトラベルルールが世界で整備されているとは限りません。未整備や法解釈、体系が異なることも想定をされます。
本法改正によって、関連して、トラベルルールがない国との取引における対処方法はどのように整備されるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/124
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125・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
トラベルルールは、現時点では世界多くの国・地域で整備されている状況にはございませんで、我が国は比較的早いタイミングで法制化を行うこととなります。
こうした中で、仮にトラベルルールが実施されていない国・地域に存在する暗号資産交換業者との取引を禁止すると、暗号資産交換業者の業務の執行が困難になり、事業者に多大な負担を課すこととなります。このため、トラベルルールが実施されていない国・地域に存在する暗号資産交換業者との取引の禁止を求めることまでは予定しておりません。
一方で、そのような国・地域に存在する暗号資産交換業者から暗号資産の移転を受ける場合、トラベルルールに基づく通知を受けていないことから、必要な本人確認、本人特定事項が送られていないこととなります。このような状況はマネロン対策の観点から望ましくないことから、疑わしい取引の該当性について適切な判断を行わせるため、我が国の暗号資産交換業者に対し、暗号資産の移転元が誰なのかについて自らの顧客から情報を収集する等の方法で確認することを求めていくことを検討しています。
なお、各国・地域はFATF勧告にのっとってトラベルルールの整備を進めているものと承知しており、トラベルルールに基づく暗号資産交換業者間の取引は着実に増加していくものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/125
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126・三浦信祐
○三浦信祐君 セキュリティーの部分でトラベルルールは、世界に先駆けているということは大変重要なことだと思いますので、しっかりとこれの実効性も担保できるようにやっていただきたいと思います。
トラベルルールは、暗号資産取引の業界が本年四月から自主規制を定め実施をしていると承知をしておりますが、そのような状況下であえてトラベルルールを法律に規定することの必要性、そして審査報告書、報告義務付けとの関係はどのようになっているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/126
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127・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、業界団体である日本暗号資産取引業協会では、今回の法改正に先立ち、二〇二二年四月に自主規制規則に基づくトラベルルールを開始しております。これは早期にマネロンリスクの低減を図るための重要な取組であると考えていますが、トラベルルールの一部の取組を試行的に行うものと位置付けてございます。
FATFからは、昨年の第四次対日相互審査における指摘として暗号資産交換業者をトラベルルールの対象とすることを求められておりますが、このような対応を漏れなく、かつ実効性を担保する形で進めるためには法整備により対応する必要があると考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/127
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128・三浦信祐
○三浦信祐君 法整備に際し、暗号資産取引業者が介在した取引の場合にトラベルルールを適用することができるものの、個人間取引の場合には対象範囲に入りません。ここへの適用は困難が伴うと考えております。
そこで、暗号資産取引での個人間取引の実態把握の状況、体制はどのようになっているのでしょうか。調査自体大変難しいと私は考えております。その上で、犯罪の温床リスクを回避するために、不正防止対策をどのように進めているのでしょうか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/128
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129・柳瀬護
○政府参考人(柳瀬護君) お答え申し上げます。
暗号資産の個人間取引については、現在、本人確認等の義務等、金融庁の監督の対象と法令上なってございません。このため、取引の全体を把握することは困難でございます。
ただし、現時点におきましては、暗号資産は直接の支払手段としての普及は限定的でございますことから、暗号資産での多額の支払等は最終的には業者を経由して法定通貨に換金されることが一般的と考えられます。
このため、現在、FATFとしては、顧客と接点を持つ事業者に対してFATF基準を早期に実施することにより、業者間及び業者と個人の間の取引のリスクを低減し、現在においても取引の決済の軸となる法定通貨の扱いを適正なものとすることができると考えております。我が国においても、このような観点から、暗号資産交換業者における適切なマネロン対策等の確保に注力しているところでございます。
今後とも、暗号資産に係るマネロン対策等の強化に向けて、FATF等における国際的な議論の動向も踏まえつつ、しっかり取り組んでまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/129
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130・三浦信祐
○三浦信祐君 しっかりと合理的に取り組んでいただきたいと思います。
暗号資産取引において消費者トラブルが生じた際、消費者庁等に相談があっても、現実的な対応は警察の皆さんが実施をすることになると思います。暗号資産トラブルの相談を受ける警察庁の体制状況と今後の整備について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/130
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131・友井昌宏
○政府参考人(友井昌宏君) 三浦委員の御質問にお答えいたします。
暗号資産をめぐるトラブルについては、金融庁、消費者庁と連名でトラブルに対する注意喚起を行うとともに、当庁のホームページでも、暗号資産に関連した投資名目でお金をだまし取られたとの相談を紹介し、困ったときは警察等へ相談するよう呼びかけております。
警察の相談窓口としては、専用電話シャープ九一一〇を全国統一番号として設置しており、いただいた相談内容に応じて関係する部署が連携して対応することとしておりますが、暗号資産をめぐる相談が寄せられたときは、これを捜査の端緒とするほか、他の専門機関を紹介するなどしております。
警察庁といたしましては、引き続き、金融庁や消費者庁等関係機関と緊密に連携するとともに、各種研修等を通じて相談や捜査に従事する警察職員の知識、能力を高めるなど、暗号資産をめぐるトラブルに適切に対処できるよう都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/131
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132・三浦信祐
○三浦信祐君 是非、これまでになかったようなことがあった場合には相談をしっかりと受けていただける、そして、人員確保のみならず、体制を整えていただくということは不断にやっていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
次に、疑わしき取引について伺います。
先ほどもありましたけれども、本法律案ではマネロン対処並びに疑わしい取引についての届出義務を課す対象において拡大がなされております。行政書士、公認会計士、税理士を対象追加としたことの狙いはどのようなところにあるのでしょうか。これについて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/132
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133・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 今回の法改正におきましては、令和三年八月に公表されましたFATF第四次対日相互審査報告書におきましても、士業者が疑わしい取引の届出義務の対象になっていないことは日本のマネロン、テロ資金対策の有効性を著しく損なう旨勧告されているなどの状況にあることを踏まえ、法制定時の附帯決議や士業者に対する疑わしい取引の届出義務に係る懸念にも配慮した上で、疑わしい取引の届出等について士業者に対して義務を課す規定を整備するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/133
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134・三浦信祐
○三浦信祐君 犯罪収益移転防止法に基づく疑わしき取引の届出事例の受理件数が増加をしていく中で、どのように捜査に活用されているのでしょうか。また、届出義務拡大に伴って件数増加に対応できることも想定し、警察庁の対応可能体制について十分な備えを図るべきだと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/134
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135・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 令和三年中における都道府県警察等の捜査機関等に対する疑わしい取引の届出に関する情報の提供件数は、五十二万四千四百六十二件となっております。提供を受けた都道府県警察におきましては、疑わしい取引に関する情報を犯罪による収益の発見、犯罪組織の実態解明及びマネロン犯罪等の捜査に活用しているところであります。また、現在、警察庁に置かれている日本のFIUであるJAFICは約百人の職員により構成されておりますが、これらの要員によって、これまで年間五十万件超寄せられる疑わしい取引に関する情報の分析を的確に行っております。
疑わしい取引に関する情報の分析にAIを活用し、業務を合理化するなど効率的な対応に努めており、今後の情勢の変化にも対応できるよう、引き続き、能力向上、体制整備に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/135
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136・三浦信祐
○三浦信祐君 最後に伺います。
今回の対応は第四次対日相互審査に基づくものでありますが、必ず次の審査が実施をされます。現状、二〇二五年以降実施の第五次対日相互審査への対応について、政府として検討している課題、対処の想定等についてどのように取り組むのでしょうか。谷大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/136
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137・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 第五次審査では、まあこれからのことでございますけれども、FATFの勧告の改定や審査基準の厳格化のほか、マネロン、テロ資金供与、拡散金融対策が効果的に機能しているかという有効性評価が更に重視されることとなると承知しているところでございます。
引き続き、関係省庁において、マネロン対策等のために設置した政策会議の枠組みを適切に活用し、将来の来るべき第五次審査に向け、政府一丸となって我が国のマネロン対策等を強化、発展させていくことに全力を挙げてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/137
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138・三浦信祐
○三浦信祐君 有効性評価が多分問われるということでありますので、この法律改正によって体制整えていただいて、しっかりと取り組んでいただきたいということをお願いさせていただいて、質問を終了します。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/138
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139・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時十七分休憩
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午後一時十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/139
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140・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/140
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141・高木かおり
○高木かおり君 日本維新の会、高木かおりです。
本日の議題でありますいわゆるFATF勧告対応法案につきまして、早速質問に入りたいと思います。
まず冒頭ですが、この法案の提出、本来ならさきの通常国会で出てきてもおかしくなかったと聞き及んでおります。その後、秋の臨時国会になった上、国葬の後から十月の開会となり、首相の外遊で国会日程が後ろ倒しになり、大臣がどんどん辞任してしまい、参議院の審議が今になっているというのが現状でございます。
ところが、この間にも、マネーロンダリングやテロ資金供与などを念頭に、疑わしい取引が日々発生しているわけです。警察庁の資料、犯罪収益移転防止に関する年次報告書によりますと、疑わしい取引、これが一日平均で実に千件以上届出受理をされているということでございます。一昨年の令和二年が四十三万二千二百二件、一日平均で一千百八十四件。昨年の令和三年が五十三万百五十件、一日平均で千四百五十二件ということです。
やはり一日でも早く成立させて網の目を整えなければならない、そのような思いから、谷大臣に改めて伺いたいと思います。
今回のFATF勧告対応法案について、通常国会での提出も見送られ、勧告から一年以上経過した現時期の提出となったこと、その間にも、先ほど申し上げたように、疑わしい取引が平均すると毎日千件以上届出され受理されているという現状について緊迫感を是非共有したいと思いますが、谷大臣、どのような認識をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/141
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142・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘のとおり、マネロン対策等については、迅速かつ積極的に推進していくべき重要な課題と認識しております。
御指摘いただきました警察庁の白書によっても、疑わしい取引の届出状況の推移が一日当たり令和三年度中一千五百件近いということから見ても、急ぐべき大変重要な課題と認識しております。
そのため、FATF勧告対応法案については、昨年の審査報告書の公表を受け、迅速に対応すべく、内閣官房にFATF勧告関係法整備検討室を設けて、同室を中心に必要な法制度の整備に向けて精力的に作業を進めてきたところでございますが、検討項目が非常に多岐にわたるということから一定の時間を要し、今般、法案作成作業が終了したことから、臨時国会に提出したところでございます。
今後とも、関係省庁一丸となって必要なマネロン対策などを強力に推進してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/142
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143・高木かおり
○高木かおり君 大臣から、重要な課題だという御認識伺いました。大事な点だと思いましたので、まず最初に大臣に御認識を伺いました。
次の質問に入ります。
今回、昨年に出た勧告に対応する法整備を今やっているわけですけれども、次の第五次FATF審査が令和七年から始まるわけです。いろんな国を順番にやっていきますので日本への審査はすぐではないだろうと思いますけれども、審査の基準自体は来年辺りから徐々に定められていくだろう、そんなスケジュール感も聞き及んでおります。
そんなスケジュール感を念頭に置いての質問なんですけれども、今回、第四次勧告への対応をしながらも、来る第五次審査に向けての準備も同時並行でこれ徐々に進めていく必要があると考えるんですけれども、これ、どのように対応していくんでしょうか。谷大臣、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/143
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144・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 今御審議いただいておりますFATF勧告対応法案は、第四次審査においてFATFから法改正すべきと勧告された事項を盛り込んだものでございます。他方、法律改正を要しない事項についても、政府は、マネロン対策等のための政策会議の設置や行動計画等の策定、公表など、関係省庁で緊密に連絡、連携し、精力的に取り組んでいるところでございます。
これらの取組を着実に進め、日本のマネロン対策等を政府一丸となって抜本的に強化するべく、全力で取り組んでまいりたいと考えております。こうした実効ある取組の中で、将来の第五次審査に向けた準備も進めてまいりたいとも考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/144
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145・高木かおり
○高木かおり君 今大臣から御答弁いただきましたように、やはりこの実効ある取組というのは重要なんだと思っております。法律があってもそれがちゃんと機能しているのか、これ大事な点だと思っています。
今回の第四次勧告で日本より評価が高かった通常フォローアップ国に分類されている国でも、同じ課題を抱えている国があると聞いています。FATFの勧告に対応する法律はしっかり整備しているんだけれども、その法律がちゃんと機能していないから次の第五次審査では評価が低くなってしまうんではないか、そんな状況を抱えている国もあると聞いています。
絵に描いた餅に終わらせず、きちんと社会実装させていく視点、取り組んでいただけますように重ねてお願いを申し上げておきます。
続きまして、次の質問に参りたいと思います。
今、先ほど御答弁いただきました次回審査で達成すべき目標、これを是非伺っていきたいと思います。
国際的なマネーロンダリングやテロ資金供与など、こういった不正送金をめぐっては、監視や規制の網で相対的に弱い国が狙われて抜け穴に悪用される、そういったのが常なのだと思っています。
どれだけ頑張って監視や規制を厳しくしても、やはり日本が一番弱そうだな、緩そうだなと見られてしまったならば、やはりそれを突破できるレベルまで、そういった好ましからざる方々が突破しに掛かってくるんではないか、そういった懸念を持っております。要するに、付け入る隙を与えてはいけないということだと思っております。
そういった理解を踏まえての質問なんですけれども、我が国は諸外国を上回るペースで環境を整備するということが内容的にもスケジュール的にも一層求められていると考えるんですが、来る第五次勧告での達成目標というものをどのように考えておられるか、谷大臣、御見解をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/145
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146・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘のとおり、監視とか規制の網は、相対的に弱い国が狙われるということは、彼らもプロでございますので、当然そういうことかと思います。
それだけに、マネロン対策等は、国民生活の安全と平穏や経済活動の健全な発展の観点から、これを国際的な協調の下で推進していくことが重要であると認識しております。
また、依然として厳しいテロ情勢や大量破壊兵器の開発等が継続するなど、国際社会及び我が国への安全の脅威が以前よりはるかに高まる中、そうした社会情勢等の変化に応じて強化を図っていく必要があると考えております。
引き続き、この対策は、マネロン対策等は国際社会と連携することが大事でございますので、社会経済情勢の変化にタイムリーかつ柔軟に対応し、政府一丸となって我が国のマネロン対策等を強化、発展させていくことに全力を挙げ、その結果として次の第五次審査では通常フォローアップ国との評価を得ることを目指して頑張ってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/146
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147・高木かおり
○高木かおり君 是非、通常フォローアップ国入りを目指すとともに、基準を作るこのFATFの加盟国としてのやはり責任を果たしていくことが重要だと思っております。やはり、日本は来年のG7議長国としても指導力をしっかりと発揮していかなければならないと思っております。是非、今後の取組、御期待を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
次からは、少し細かい論点に入っていきたいと思いますので、政府参考人の皆様へと質問を移らせていただきたいと思います。
昨年の第四次勧告を契機として、政府にマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議が設置されております。警察庁の組織犯罪対策部長、それから財務省の国際局長を共同議長として、内閣官房、内閣府のほか十三省庁と二つの行政委員会が構成員となっていて結構な人数になるわけなんですが、局長級の職員が一堂に会して政府一丸となって取り組んでいくものだと受け止めております。
我が国の体制を整えていくためにも重要な会議体だと認識しておりますが、議事が非公開となっておりますので、実際どんなふうに動いているのか、こういった視点で質問をさせていただきたいと思います。
私たちが見える部分でいいますと、会議そのものは、昨年八月十九日に第一回目が開催されており、その後、大体四か月から五か月ごとに、次が、第二回目が今年の一月二十七日、第三回目が五月十九日、その後は開かれず今日に至っているというふうな部分が見えている部分になるわけです。
その一方で、基本方針という文書があり、このように書かれております。「「政策会議」を活用し、強力に対策を推進していく。」。この基本方針そのものを策定した最後の会議の五月以降、半年間会議が開催されていなくて、動いているのかどうか見えていない、分からない状態です。少なくとも会議はやっていないようですが、これは見えていないだけで、何をやっているのか、その辺りの部分を是非御説明をいただきたいと思います。
この政策会議について、具体的にどんな体制を構築して、どのように対策をこれから推進していくのか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/147
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148・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
御指摘の政策会議、まさにそのマネロン等対策に関する国の政策の策定、実施や関係省庁間の緊密な連携の確保を目的とした局長級の会議ということで、おっしゃるとおり大変重みのあるものというふうに私どもも位置付けてございまして、ここでまさに基本方針の決定、公表など、大きな決定がここでなされておるものでございます。
他方で、この五月十九日に基本方針を出しましたところ、これは多数の省庁が関わって、それぞれがそれぞれの持ち場でやるべきことをやっておるわけでございまして、この基本方針で示されたマネロン等対策の強化に向けて、この政策会議の下で様々な省庁が、まあ言ってみれば関係している省庁が、ここではこういうふうに集まって議論をしようとかそういう形で、課長級以下の事務レベルで非常に密接に、まあ局長にレポートラインをそれぞれ持っていらっしゃる課長さんたち、あるいは課長補佐の方々、係長さんたち、こういう方々が、お忙しい中ですけれども、それぞれに連絡を取り合いながら一歩一歩、項目を御覧いただきますと相当細かいものもございますものですから、そういうものを事務的にどんどん続けて検討をしていると、そのような状況でございます。
引き続きこうした事務レベルの検討を進めまして、節目節目においてはこの局長級の政策会議を開催するという形で、そこがスーパーバイズしながら政府一丸となって我が国のマネロン等対策を強化、発展させていくと、このような心構えでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/148
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149・高木かおり
○高木かおり君 具体的によく分かりました。実務者、課長級レベルの皆さんで分科会のようなものでしっかり集まって、そのそれぞれの持ち場でしっかり役割を果たされているというふうに御説明をいただいたかと思います。
是非、現在は法律、法案成立に向けて動いているわけですけど、この成立後も是非また次の第五次審査に向けて対応していく枠組みとなると思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
この政策会議の関係省庁申合せ文書というのを見ると、やはり必要に応じて分科会を開催することができるというふうにも書かれておりました。その具体的な説明をしていただいて、この分科会をメーンに、より細かな部分を動かしていただいているというのは少し安心をいたしました。
しかしながら、はた目に見ていると、今日御質問させていただいたように、どのように動いているのかというのが分からない。これは、そういう公開状況という中で、この内閣委員会で今聞いて初めてそのように動いているということが分かった次第であります。やはり政策会議のように、出せる情報については出していっていただきながら、その動きが良いものであれば、関係業界ですとか国民の皆さんもやはり危機意識も持ちながら関心も高くなっていくのではないかというふうに思います。関係する実務者が集まって連携できる貴重な場だというふうに今日大変よく分かりましたので、このスキームを生かして引き続き対策を進めていっていただければと思います。ありがとうございました。
続きまして、マネーロンダリングやテロ資金供与などへの対策をより実効性の高いものにしていくためには、金融機関など民間の現場だけではなくて、地方行政の現場にも同じような意識を持っていただく必要があるのではないかと、そんな視点から質問をさせていただきたいと思います。
今回の第四次FATF勧告で、我が国は非営利団体の悪用防止という項目でノンコンプライアント、つまり不合格との烙印を押されてしまいました。ここでいう非営利団体、これ括弧書きでNPOというふうに書いてあるんですが、このFATF事務局が定義する非営利団体は大変広くて、NPO法人に限らず、同じく内閣府が所管する公益法人、文部科学省が所管する宗教法人、学校法人、厚生労働省が所管する社会福祉法人、医療法人まで含むものであります。
ここで重要なのは、こういった法人格を持つ非営利団体が地方行政の現場で設立認可されて、その後も監視をされているということなんです。例えば、ここで大阪の府庁を例に挙げて申しますと、NPO法人は府民文化部の男女参画・府民協働課、公益法人は総務部の法務課、それから宗教法人は府民文化部の府民文化総務課、学校法人は教育庁の私学課、社会福祉法人は福祉部の地域福祉推進室福祉人材・法人指導課、医療法人は健康医療部の保健医療企画課といったように、このFATFが非営利組織としている六法人についても、現場は、地方行政の現場というのは全てばらばらで異なっているということなんです。
確かに、これ資金の動きというだけなら、例えば銀行を始めとした金融機関のモニタリングで足りるのであろうと思いますけれども、その他の部分をほぼ全て、この設立から運営までは、監督しているのが都道府県庁、それから政令市役所、こういった現状があるわけですね。そういった地方行政の部署それぞれにおきましても、第四次FATF勧告を念頭に置いて日々の事務に当たっていただくということが勧告に対応していくための必要条件であるというふうに思っています。
そこで、内閣府に伺いたいと思います。
FATF勧告が言うところの非営利団体は六法人あるんですけれども、例えばNPO法人については、内閣府は、直接認識するもの以外について、地方の現場に対してどのように課題を共有し、対応しているのでしょうか。そして、今回はそれらを所管するのが三省庁、三府省なんですが、ある程度足並みをそろえて対応を進める必要があると思います。例えば、これ、医療法人を担当する地方の部署には厚生労働省から文書を出したけど、宗教法人を担当する地方の部署には文部科学省から文書を出していませんでしたということがあってはならないわけです。
そういった意味で、司令塔的な存在が必要だろうと思うわけですが、こういった地方への対応について内閣府の動きを例示的に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/149
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150・小川康則
○政府参考人(小川康則君) お答えをいたします。
NPO法人を始めとします非営利団体に関しましては、昨年八月のFATFによる対日審査報告書におきまして、リスク評価を実施し、リスクベースアプローチによってモニタリングを実施すると、こうしたことが求められておるところでございます。
こうした対策を進める上では、御指摘のとおり、実際の監督等を行う地方公共団体、更に申しますと、その担当の各部局の果たす役割が大変重要であるというふうに考えておるところでございます。
このため、例えばNPO法人に関してでございますけれども、私ども内閣府におきまして、NPO法人のテロ資金供与リスクに関する文書、これを取りまとめまして、本年六月に全国の所轄庁、都道府県、指定都市ですが、ここに対して周知をいたしまして、モニタリング等の実施を求めたところでございます。加えまして、テロ資金供与への悪用を防止するガイダンスを作成いたしまして、所轄庁から全国のNPO法人に当該ガイダンスのアウトリーチ、説明だとか関与、これを周知を求めているところでございます。
今後でございますけれども、先ほど言及がございました、警察庁それから財務省を共同議長とするマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議、これが政府にございますので、ここを中心として関係省庁が連携をしまして、こうした取組を足並みをそろえて進めていくということによりまして、NPO法人始めとする各種団体のテロ資金供与への悪用の防止、それから、ひいてはFATFによる対日審査の評価改善、これが図られることとなるものと、このように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/150
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151・高木かおり
○高木かおり君 先ほどの質問の中でも伺ったこの政策会議の場を活用しながら、中央の省庁間だけでなくて、地方ともこの課題、それから現状を共有していただく仕組みというものを、是非連携を強化しながら取り組んでいって確立をしていっていただきたいというふうに重ねてお願いを申し上げておきます。
続きまして、国際金融センターに関連する質問です。
今回のFATF勧告への対応は、我が国が国際金融センターを目指すに当たっても地位向上に欠かせないものと思います。言わば必須条件として今回の対応があるわけですけれども、更に地位を向上させていくためにはどのような取組を追加していくか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/151
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152・三好敏之
○政府参考人(三好敏之君) お答え申し上げます。
我が国が国際金融センターとしての地位を確立するためには、我が国がビジネスを行う場として魅力的な国家であるとなることが重要だと考えてございます。
こうした観点から、これまで国内外の金融関係者からの要望を聞きながら、例えば、海外事業者に対する英語によるワンストップでの支援窓口の創設ですとか金融人材の在留資格の特例の創設、あるいは税制の抜本的な見直しなど、海外事業者の参入促進のための策につきまして省庁横断的に取り組んできております。
今後は、こうした参入促進策や我が国の市場の魅力に関する情報発信の一層の強化を図るとともに、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画等も踏まえまして、例えば、スタートアップ等への円滑な資金供給ですとかサステナブルファイナンスの促進など、広く日本の金融資本市場の機能向上に向けた施策にも取り組んでいくこととしております。
金融庁といたしましては、こうした取組を通じまして、我が国の金融市場の魅力向上に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/152
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153・高木かおり
○高木かおり君 ありがとうございます。
国際金融センターとしての地位を目指していくということで、私ども日本維新の会も、国際金融都市・市場の創設という表現をしているんですが、進めていく立場でございます。やはり先ほどおっしゃっていただきましたような、その税制の見直しですとか、また英語でワンストップ対応も行っていただけるとか、在留資格や生活支援等、そういったサポートも是非していっていただいて、やはり特区の制度の活用とかもしていただきながら、是非ともこれ推進をしていっていただいて日本の国の活性化につなげていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
続きまして、今度は、やはりこのFATF勧告対応には人材というのも大変重要だというふうに思っております。
第四次FATF勧告への対応におきまして、来る第五次FATF審査への備えについても、冒頭、質問の方でもこの第五次FATF審査への対応というのもお聞きを、目標等もお聞きしてまいりましたけれども、やはり政府の中をしっかり変えていくと、そして民間にも対応を迫っていくと、そういった役割しっかり果たしていくためにも、やはりこの専門的な人材が一定数必要ですし、育成というのが大変急務であると考えています。
現在の状況と今後の方針を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/153
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154・内野洋次郎
○政府参考人(内野洋次郎君) お答え申し上げます。
人材育成の前に、FATFの中での日本の位置付けについて一言申し上げますと、日本は、FATF自体がG7の合意から発足したという経緯がございまして、言わばFATF創設来のメンバー国ということでございまして、現在もFATF議長諮問委員会の一員として、FATFにおける議論、活動を主導しております。
また、同時に、FATF、様々な国々が関与しておる中にあって、ここに人的な貢献も必要であるということで、創設メンバーとしての責任からも人的な貢献を様々にしてございます。例えばでございますが、FATFのこの活動の中核を成します相互審査は、各国がアセッサーと申します審査員を供給しまして、この審査員が審査員団を組成して日本なら日本に来て見ていくということなわけですが、この第四次審査におきましては、日本政府から、財務省のみならず、警察庁、金融庁、法務省、外務省より合計六名の審査員を既に派遣をしてございます。
また、FATFの事務局もパリ、OECDにあるわけでございますが、こちらに財務省から職員を出向させると、これはもう何代かにわたって出向しておるわけでございますが、こういった貢献をしておるわけでございます。
実際にこの出向経験者が私どもこのFATFを担当している国際局の課の管理職になったりもしておるわけでございまして、このような貢献自体がひいては我が国のマネロン対策における専門人材の育成にもつながるということで、限られた人員でございましてなかなか、FATF関連での増員というのがなかなか認められにくいところではございますが、重要性を粘り強く関係方面に訴えかけながら、今後更に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/154
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155・高木かおり
○高木かおり君 今の状況と取組についても御答弁いただきまして、ありがとうございました。
この第四次勧告の公表を受けて、金融機関を始めとした民間においてもこのアンチマネーロンダリング、AMLと、テロ資金供与対策、CFTについての知識が大変必要になってきたということをお聞きしております。金融財政事情研究会が主催するAML/CFTスタンダードという検定試験がほぼ必須になりつつあるということも聞いております。これに加えて、日本コンプライアンス・オフィサー協会でも金融AMLオフィサー検定試験が設けられていると。民間の方でも自己研さんに向けた機運が着実に高まっているというふうなことも聞き及んでおります。やはり、政府と業界が共に目線を合わせて求められている基準をクリアしていって、よりしっかりと対応をしていっていただくことが重要なんだろうというふうに、私も注視、これからもしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
続きまして、警察庁の考え方、統計の取り方にも関連する質問をしたいと思います。
犯罪収益移転防止に関する年次報告書に疑わしい取引の届出受理件数という数字やグラフがあり、令和三年は五十三万件あったということを申し上げたかと思います。この疑わしい取引という用語について、明確な定義や基準があるのかを伺いたいと思います。
というのは、何をもって疑わしいのかというのは主観によって左右される部分も少なくないんではないかという素朴な疑問なわけですけれども、警察庁の資料、犯罪収益移転危険度調査書を見ますと、主に三つあると思います。架空名義や借名での取引、暴力団関係の取引、不自然な取引と、一見するとなるほどなと思うんですけれども、何をもって線引きできるのか。借名や暴力団関係はある程度分かりやすいかなと思いますが、一番漠然としているのが不自然な取引で、何をもって不自然だと言えるのか、この線引きがないと難しいなと思ったわけでありますけれども、そこで伺いたいと思います。
ある程度の類型化や例示はされていますけれども、どの程度の事案であれば疑わしいとするに足るのか、明確な定義や線引きというものはあるんでしょうか。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/155
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156・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
疑わしい取引の届出に係る判断基準につきましては、各業界における一般的な知識、経験に照らし、各特定事業者において判断していただくこととなっております。
このことを踏まえまして、委員御指摘のとおり、特定事業者それぞれの業界について知見を有する所管省庁におきまして疑わしい取引か否かの判断に資するガイドラインを作成しているほか、疑わしい取引の参考事例を公表しているなど、特定事業者が疑わしい取引の届出義務を履行するに当たり参考となる資料を作成しております。
これらは、できる限り各特定事業者の方々が判断をしやすいように分かりやすいものとするよう努めております。また、適宜内容を見直して改善しております。個別具体の判断によらざるを得ない部分は残るものの、各特定事業者の方々はこれらに基づき疑わしい取引か否かを適切に判断されているところと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/156
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157・高木かおり
○高木かおり君 厳格な線引きはないけれども、多くの事例を共有することで現場にイメージを持っていただいていると、そういった内容の答弁だったと思います。これ、公益性の観点から何をもって疑わしいとするかというのは、最新の状況も加味をしながら年々変動するのかもしれませんけれども、全国で同じような意識を共有しながら実務に当たることができるよう、今後も研究改善をしていっていただければというふうに思います。ありがとうございました。
続きまして、少しちょっと質問飛ばさせていただきまして、十二問目になります。マネロン捜査体制の強化についてですけれども、この地方での捜査、これは警察庁にお聞きをしたいと思います。地方での捜査体制充実という観点から質問をしたいと思います。
キャッシュレス決済がどんどん今普及をしていて誰もが手軽に決済できる世の中に変わってきたことで、便利になった反面、マネーロンダリングの手口も複雑化してきているのではないか、そのような懸念が、これも本当に皆さん共通認識だと思います。
今年四月、警察庁にマネーロンダリングを専門に捜査する犯罪収益対策課が全国で初めて設置されました。その一方で、東京だとマネロンをしにくいから地方でやろうと地方が狙われては元も子もないわけです。東京都以外の都道府県においてもマネーロンダリングへの捜査体制が強化されるように警察庁は取り組む必要があると考えておりますけれども、この点についてお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/157
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158・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) 委員御指摘のとおり、警視庁では、マネロン犯罪の取締り等を専門に行う所属として本年四月に組織犯罪対策部に犯罪収益対策課を新設したと承知しております。
それ以外の都道府県、申し訳ございません、それ以外の道府県警察におきましても、犯罪による収益の追跡、マネーロンダリング事犯の取締りなどを担当する犯罪収益解明班が設置されておりますところ、各都道府県警察の実情を踏まえました必要な体制整備がなされるよう、警察庁として都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/158
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159・高木かおり
○高木かおり君 是非、もう今どんどんこのキャッシュレス決済の普及は、目標値も掲げてしっかりと普及をさせていっているところですので、日常の暮らしも便利になっている反面、この手軽さというのが本人以外の成り済ましが容易にできてしまう、こういったこともあるというふうに思うと、大変危険も隣り合わせだなというふうに思うわけです。そういったリスクと便利さをしっかりと捉まえながら対応をしていっていただきたいというふうに思います。
それでは、最後の質問になるかと思います。
キャッシュレス決済の普及とセキュリティー対策をこれ両立していくという視点で経産省へ質問をしたいと思います。
政府は、今、このキャッシュレス決済の普及について、先ほどもありました、明確に目標を定めております。大阪・関西万博が開催される令和七年六月までにキャッシュレス決済の比率を四割程度まで高めることを閣議決定の上目指しており、昨年は約三三%だったということを聞いております。前年の令和二年に比べますと一・一倍、五年前の平成二十八年に比べますと一・六倍というふうに徐々に上昇していて、四割程度というゴールが現実的になってきたのではないかと思います。
しかしながら、一方で、サイバー犯罪の検挙件数も上昇しているわけでございます。昨年検挙されましたサイバー犯罪は一万二千件を超えており、前年の令和二年に比べて一・二倍、五年前の平成二十八年に比べて一・五倍と、こちらも同じようなペースでやはり急増している状況にあるわけです。こういった状況を踏まえてですが、キャッシュレス決済サービスの普及拡大を図ると同時に、やはりこのセキュリティー面についても対策を進める必要が当然あるかと考えます。
これまでの検討に関する認識と、それから今後の取組についてお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/159
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160・澤井俊
○政府参考人(澤井俊君) キャッシュレス決済のセキュリティー対策についてお答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、EC市場の伸長、それから政府としても二〇二五年のキャッシュレス決済比率四割という目標を掲げている中で、主なキャッシュレス決済手段となっておりますクレジットカード、この不正利用被害額が非常に増えておりまして、昨年には過去最高の三百三十億円に上っているということでございまして、セキュリティーについての課題、これは深刻なものだというふうに認識してございます。
これまでも、クレジットカードにつきましては、安心、安全な利用環境を整備するというために、割賦販売法におきまして、クレジットカード決済を利用する事業者に対しましてセキュリティー対策を義務付けております。具体的には、そのための実施上の指針としてクレジットカード・セキュリティガイドラインというのを設けまして、これを毎年改訂をすることで最新の対策を盛り込むというようなことでやってきておるところでございます。
しかしながら、昨今、攻撃者の方の手口が巧妙化しているということもございますので、本年六月に経済産業省では、セキュリティー対策に関する基本的方向、すなわち、一つは漏えい対策の防止、それから不正利用防止、それから三番目に安全に利用するための周知それから犯罪防止といったような三つの方向性を打ち出しまして、またさらに、八月にはクレジットカード決済システムの対策強化検討会というものを立ち上げまして、更なる実効的なセキュリティー対策の在り方について検討を進めているところでございます。
今後も、警察庁を始め関係省庁と一層の連携を強化しながら、セキュリティー対策を政府全体で進めていきたいというふうに考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/160
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161・高木かおり
○高木かおり君 御答弁、ありがとうございました。
クレジットカードの被害が三百三十億円というのは本当に、もう本当に大変なことだなというふうにお聞きして思いました。やはり、そういった被害に対応するためにも、今回、警察庁の方からも、今年四月にサイバー犯罪対策のためサイバー警察局を発足させて二百人規模のサイバー特別捜査隊を整備して、ランサムウエアを始めとした全国のサイバー事件に当たっているということもお聞きをしているんですけれども、先ほどの、経産省さんの方でもこの秋からキャッシュレスの将来像に関する検討会を立ち上げられて、今後のこの技術やビジネス環境をも予測しながら、将来的に様々な状況に対応をしていっていただけるものと思っております。
やはり、私たちの暮らしの便利さと犯罪対策、これ両立をしながら社会実装をしていくということ、大阪・関西万博も開催まであと三年を切っているということで、これもしっかりとそういった環境整備も整えていくということが大変重要かと思います。
時間がもうそろそろ参りましたので、私の質問はこれにて終了させていただきたいと思います。
本日は本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/161
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162・上田清司
○上田清司君 国民民主党・新緑風会の上田清司でございます。
重点フォローアップ国としての位置付けなどについて質疑を用意しておりましたが、少し重なりましたので、二番目からさせていただきたいと思っております。
拡散金融と北朝鮮のミサイル発射に関連してお伺いしたいと思います。
拡散金融について、FATFは、大量破壊兵器の拡散に対する資金供与を防止するために対象を特定した経済制裁を各国に求めております。しかし、直近の北朝鮮の異常とも言えるミサイルの連続発射は、日本も含めて各国の経済制裁の効果というものが非常に疑問を感じるところでございます。
FATF加盟国の経済制裁をどのように評価しておられるのか。これは政府参考人で結構でございますので、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/162
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163・實生泰介
○政府参考人(實生泰介君) お答えいたします。
我が国としまして、国連安保理決議に基づく特定品目の輸出禁止措置であるとか資金移転防止措置等に加え、我が国独自の措置として北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置をとってきており、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきております。今回のこの措置もそれの一環であるということが言えると思います。
我が国を含む各国それぞれの対北朝鮮措置の効果を一概に申し上げることは困難でありますけれども、北朝鮮の厳しい経済状況と併せて考えたとき、これは一定の効果を上げているというふうに考えてございます。
いずれにしましても、まずは関係国と連携しつつ、引き続き、関連安保理決議の実効性を確保するとともに、我が国としてとっている措置の実施を徹底していくという、そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/163
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164・上田清司
○上田清司君 また、北朝鮮は、多額の暗号資産を違法に取得することで有力な資金調達手段にしていると言われております。その実態についてきちんと把握をされているのか、あるいはこの金額についても把握をされているのか。これも政府参考人で結構でございますので、お答えしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/164
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165・大矢俊雄
○政府参考人(大矢俊雄君) お答え申し上げます。
北朝鮮による暗号資産等の窃取についてお尋ねでございましたけれども、国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネルによります二〇二二年の中間報告書によれば、北朝鮮のサイバー活動が継続していると。報告対象期間、本年の一月二十九日から七月二十七日の間、北朝鮮に関係するサイバー攻撃部隊に帰責、責任を帰する、帰責される活動により数億米ドル相当の暗号資産が窃取されたということが国連関係の公式機関によって記されております。日本円で申しますともう数百億円の暗号資産を窃取をされておると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/165
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166・上田清司
○上田清司君 日本政府として把握している状況にはないんでしょうか。国連の把握、それも非常にばくっとした数字みたいですけど、もう少し丁寧な掌握状況というのはないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/166
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167・原田義久
○政府参考人(原田義久君) お答えをいたします。
委員御指摘のように、国連のパネルにおけるその把握といったものがあるところでございます。
また、我が国におきましてでございますが、我が国においても国内の暗号資産関係事業者が北朝鮮当局の下部組織とされるグループによる攻撃の標的とされていると強く推認されることから、先日、関係省庁と連名で注意喚起を行ったところでもございます。
もろもろの事案はあるわけでございますが、こうした事案につきましては、捜査中のものもあって、詳細についてはお答えを差し控えます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/167
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168・上田清司
○上田清司君 詳細について差し控えると言ったのはどういうことなんでしょうか。ここは国政調査権に基づいて質疑をしております。憲法六十三条に、委員はですね、大臣、総理大臣を始め国務大臣あるいは政府の役人の皆さんたちは、当然証言若しくは発言するために出席しているんであって、差し控えるという言葉はあり得ない話なんです、訴訟中か何かだったらともかく。
何をもって差し控えるという言葉を使うのか、私には到底思えない。差し控えるような根拠を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/168
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169・原田義久
○政府参考人(原田義久君) お答えをいたします。
大変恐縮でございますが、まず、この種事案、認知をしております事案の数というものはそう多いものではございません。また一方で、一件当たりの被害額が大きいということもございまして、把握しております件数ですとか被害額ですとかいった詳しいところを申し上げますと、当方において情報収集あるいは分析を行う能力というものを相手方に察知させることになるおそれがありますことから、お答えを控えさせていただきたいと考えるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/169
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170・上田清司
○上田清司君 能力の高いことを見せるために、件数、金額を出せばいいじゃないですか。
委員長、答弁させてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/170
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171・原田義久
○政府参考人(原田義久君) お答えをいたします。
先ほどお答えを申し上げましたとおり、我が方の情報収集、分析能力を相手方に察知させることの危険というものもございますので、お答えは差し控えたいと考えております。
いずれにいたしましても、北朝鮮は今後もサイバー攻撃を継続するものと考えられ、また最近では個人にも被害が及ぶおそれが生じておりますことから、警察としては、法令に基づき取締りを行うとともに、関係省庁と連携してサイバーセキュリティーの強化に努めてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/171
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172・上田清司
○上田清司君 基本的にブロックをしなくちゃいけないと。それで、我々の能力が見られるから何も発表できないと。要するに私たちは能なしですよというのを見せているようなものじゃないですか、私に言わせれば。冗談じゃないと。
じゃ、今回の法案改正で、北朝鮮のサイバー攻撃について、それをどの程度より高くブロックすることが可能なのか。例えば、件数においては格段にブロックできるとか、あるいは、こういう手段でより高いレベルで違法性とかを摘発できるとか、むしろそういうことを発信することで抑止力になるんではないんでしょうか。
少なくとも、法案成立を前提にして、北朝鮮のサイバー攻撃にどの程度本当により高いレベルでブロックできるのか、この点についてどのように考えておられるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/172
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173・大矢俊雄
○政府参考人(大矢俊雄君) お答えをします。
先生御指摘のとおり、北朝鮮によるミサイル等の大量破壊兵器の発射等の抑止、我が国にとって喫緊の課題と考えています。そのためには、まず北朝鮮による不法な資金調達を阻止する必要があると。我が国は、これまで累次の国連安保理決議に基づく措置、我が国自身の措置として、北朝鮮向けの支払原則禁止にするなど、必要な措置をとってきたところでございます。
加えまして、今回の法案のことでございますけれども、北朝鮮による暗号資産等の窃取、悪用等の対応に関しまして、本法案においては、ステーブルコインに対する資産凍結を強化するとともに、暗号資産交換業者に対して、資産凍結実効性確保のため、必要な態勢を確保する義務を課すことにしております。
万が一、このハッキング、例えば窃取、暗号資産等の窃取がございましても、窃取した後、いかに使いにくくするかということ、その分野に関しまして今回の法案は大いに寄与するところがあると思いますし、先生御指摘のとおり、こうした効果について積極的に情報を発信をしていきたいと、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/173
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174・上田清司
○上田清司君 ちゃんと答えられたじゃないですか。一体、警察庁というのは何なんですか。
大臣、今回の法改正並びに諸手続について、今同じような答弁になるかもしれませんが、まさしく北朝鮮のサイバー攻撃をブロックすることで一定の資金調達に関して阻止をしていくと、こういうことに関して大臣として断固たる決意を表明することも、これは我が国の安全保障にもつながるし、なおかつこの法案の趣旨にも沿うものだと思いますので、御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/174
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175・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 上田委員が御指摘のとおり、北朝鮮によるミサイルなどの大量破壊兵器の発射と、特に最近の異常なまでの発射を抑止するということは、我が国の安全保障の確保にとって喫緊の課題であるかと思います。
もちろん、これまでも、委員御指摘のとおり様々な対応を、国連安保理決議に基づく措置とか、我が国独自とかやってまいりました。加えて、今回、今回の法案において、暗号資産等の窃取や悪用等への対応について、ステーブルコインに対する資産凍結を強化する、あるいは暗号資産交換業者等に対して資産凍結の実効性確保のため必要な態勢を確保する義務を課すこととしております。そして、暗号資産取引の追跡可能性を高める視点から、暗号資産交換業者に対し、暗号資産の移転に係る通知義務を課すこととしております。
こうした取組は、北朝鮮による不法な資金調達を阻止し、ミサイルなどの異常なまでの発射等の抑止等にも資するものであると考えております。
また、委員御指摘のサイバー攻撃への対処はまた別途政府の方で今検討しているところであり、どういう方策が今の不法なといいますか、様々なサイバー攻撃に対処するには有効かということを検討しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/175
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176・上田清司
○上田清司君 ありがとうございます。
なかなか国連安保決議が有効でないことも明らかになっております。資金のブロックというの、かなり有効なものだと思われますので、是非、今大臣が御答弁されたことについて、より丁寧な、かつ深みのある内容を高めていっていただきたいと思っております。
次に、中国警察の海外における派出所問題についてお伺いしたいと思っております。
十一月十七日のワシントン発ロイターで極めて重要な記事が発信されております。読み上げてみます。
米連邦捜査局、FBIのレイ長官は、十七日、上院の委員会で、中国政府が法的に認められない警察署を米国の都市に設置し、影響力工作を展開する可能性があることを深く懸念していると述べた。欧州の人権団体、セーフガード・ディフェンダーズは、九月に出した報告書で、ニューヨークも含む世界の主要都市に数十の中国警察署があると明らかにしていた。報告書は、海外に住む中国人やその親族を中国で刑事罰に問うために帰国を促す取組の一環だとしており、対外的な世論工作を担う中国共産党の中央統一戦線工作部の活動とも関連しているとした。レイ氏は、警察署の存在は把握しており、非常に懸念していると述べた。中国警察が適切な連携なしにニューヨークなどで駐在所を構えるのは言語道断で、主権を侵害し、標準的な司法及び法執行の協力プロセスを回避していると批判したと。
こういうロイター発の記事が出ていたわけでございますが、この点について改めてまた質疑をしますが、松野官房長官の定例記者会見でこの点についての見解を求められたら、我が国の極めて重要な主権侵害に当たる問題にもかかわらず、警察庁に聞いてくれと下請に出したと報道で聞いております。
さて、FBIのレイ長官の米国上院委員会での陳述、またスペインのセーフガード・ディフェンダーズの報告についてどのように分析をされているか、政府参考人で結構でございますので、警察庁に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/176
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177・早川智之
○政府参考人(早川智之君) お答えいたします。
御指摘の報道につきましては承知しているところでございます。他方、事柄の性質上、個別の報道につきまして、具体の取組について申し上げることは差し控えさせていただきますが、警察におきましては、平素より治安維持の観点から様々な情報収集を行っているところでございます。
引き続き、関係省庁とも連携し、必要に応じて適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/177
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178・上田清司
○上田清司君 例えば、警察庁OBの自民党の平沢勝栄議員は、この問題に関してこのように述べておられます。
国際的に情報当局などが他国へ浸透して活動するのは当たり前のことだ、日本の現状は平和ぼけそのもので、諜報に関する無頓着さに改めて驚いている、世界の厳しい現実から目をそらしてはならないとか、あるいは、笑顔で握手する外交の裏では血みどろの問答無用の情報戦が繰り広げられている、中国当局による日本の政財界への浸透や工作は今に始まったことではない、今回の非公式警察署も全容解明に取り組み、警告を発すべきだと、このようなことを夕刊フジのインタビューに答えておられますが、ただいまの答弁みたいに差し控えるというのは国会無視であります。
憲法六十三条に、答弁若しくは証言のために、説明のために国会に出席しているんであって、控えるために出席しているんではないんです。答弁のために出席しているんです。日本国憲法でもちゃんと、天皇を始め、摂政、国務大臣、全ての公務員はこの憲法を尊重することになっております。
国家公務員を辞めるか答弁しないか、どっちかなんですよ、答弁するか。この席に来ている以上は差し控えるという言葉はないんです。違う言葉を探してください。何が答えられて何を答えないのか、ちゃんとした答えを出してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/178
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179・早川智之
○政府参考人(早川智之君) 警察におきましては、平素より治安維持の観点から様々な情報収集を行っているところであります。その情報収集の結果を踏まえ、事実関係を踏まえて適切に対処することが必要であると考えております。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/179
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180・上田清司
○上田清司君 このFBIのレイ長官の話とか、スペインの人権団体でありますセーフガード・ディフェンダーズの報告書は比較的事実なのかどうなのかということを聞いているんです。全てが私も事実だとは思いません。例えば、項目の部分でどこか間違っているとか、箇所付けで実は七十か所じゃなくて七十一か所だったとか、そういうことはあるでしょうけども、日本の警察として極めて重要なこの問題をどの程度きちっと把握しているか、きちっとやっぱり答えるべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/180
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181・早川智之
○政府参考人(早川智之君) 私ども警察におきましては、外国のそういう取組といいますか報道につきましても関心を持って把握をしているところでありますが、ただし、これに関する事実関係のコメントということにつきましては、それは外国当局の話でありますので、私の方からこれに関してコメントすることは、申し訳ありませんが、なかなか難しいことかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/181
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182・上田清司
○上田清司君 それでは、角度を変えて外務省に聞きます。
外交関係のルールでは、ウィーン条約で厳格に運用され、締結国はまさに自国人に関する様々な対応はホスト国が定めた大使館あるいは領事館で行うことになっている、このように私は理解しておりますが、このとおりでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/182
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183・實生泰介
○政府参考人(實生泰介君) お答えいたします。
一般に、外国又はその機関が我が国の領域内において公権力の行使と呼ばれるような行為を我が国の同意を得ずに行うということは、我が国に対する主権の侵害というふうに、当たるというふうには思います。
ただ、その領事関係に関するウィーン条約であるとかそうした個別具体的なものとの関連ということについては、まさにその個別具体的な状況に即して判断するものであり、一概にお答えするということは困難であるというふうに思うので、その部分についてはそのように御理解いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/183
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184・上田清司
○上田清司君 警察庁にも伺います。
第三国の犯罪者などは、日本国内において直接当事者国が取り扱うのではなくて、二国間の取決めなどのルールに基づいて行うものだというふうに私は理解しているんですが、このとおりでよろしいんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/184
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185・早川智之
○政府参考人(早川智之君) 少し、申し訳ありませんが、国際間の刑事の話になりますと、ちょっと私の所掌外でありますので、申し訳ありませんが、この場ではお答えがちょっとできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/185
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186・上田清司
○上田清司君 質問の通告の中で説明していなかったかもしれませんが、別に警察庁の幹部だったら分かるでしょう。第三国の犯罪者などを日本国内でその当事者国が裁いていいかどうか。裁けるわけがないでしょう。イロハじゃないですか。それを確認しているんです。お答えしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/186
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187・早川智之
○政府参考人(早川智之君) 第三国の者が日本国内で犯罪を敢行したということであれば、それは通常、捜査の対象になるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/187
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188・上田清司
○上田清司君 実は、今外務省と警察庁の事務方の方に確認もさせていただいたんですが、スペインの人権団体であるセーフガード・ディフェンダーズの報告書の海外一一〇番というやつによれば、中国の派出所が三十か所、四十二都市、七十か所あると、しかも、中国側は、反体制的人物の追跡、強制帰国にも関与している、その数約二十三万人で、国境を越えた取締りで、悪質かつ完全な違法行為という報告をしておるんですね。
以上のように、FBI、レイ長官の米国上院の陳述、あるいは今申し上げましたセーフガード・ディフェンダーズの報告、これ、既に十四か国がこの問題を取り上げて、調査を開始しているんです。
かつて我が国において、韓国の金大中氏が、まだ大統領になる前ですが、日本滞在中に韓国CIAに白昼拉致されて、取り戻すこともできなかったし、韓国政府に謝罪要求もしても謝罪もしなかった。情けない現実であります。
今回取り上げた問題は、日本滞在中に全ての外国人の人権を守るという日本国主権国家の矜持というものが私は問われていると思っております。大方のことは大体確認をされておられるような節を言っておられますが、しかし、このことについて確たることを申し上げられないようなニュアンスのことも言っておられますが、やっぱり日本国としても重大な関心を持っているということが、私は、日本国の主権国家としての矜持をしっかり諸外国、とりわけ人権を無視するような国々に明らかにすることだというふうに理解をしているところでございますが、大臣に確認をさせてください。
日本国の主権侵害に係る案件が確認されたら断固闘って、日本国の矜持というものを外に見せるということについて、大臣の決意というんでしょうか、そういったものをお伺いしたいと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/188
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189・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 一般的な話になるかも分かりませんが、外国側が、あるいは外国の警察の行為が我が国の主権を尊重せずに活動するということは国際法違反の疑いがある旨をしっかり批判すべきだと思いますし、それこそ委員御指摘のようにしかるべき対処を国としてすべきであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/189
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190・上田清司
○上田清司君 松野官房長官はそういった答弁をなされずに、警察庁に聞いてくれなんと言って、まさに内閣の要の官房長官がそのようなことを言われて、情けない話でありましたので、今、谷大臣のお話を聞いてほっとしたところでございます。
それでは、ちょっと最後に一点だけ、元々用意していたものでお伺いしたいと思います。これはもうまさに大臣にお聞きしたいと思います。
今回の重点フォローアップ国として位置付けられて、各委員から様々な御指摘をいただきました。なぜ日本がこれほど弱いのかということを中心にして御指摘をいただきました。今回の法改正を通じて、いわゆる通常フォローアップ国に引き上げていただく可能性を追求することだというふうに、今回の法改正の目的だと思いますが、まさにこの引き上げられるかどうかについて、担当の国務大臣として、必ずこういうことが可能になり、そして、日本国として、国際金融の場においてまさしくそれ相応の立場をつくることができるということについて、大臣の御所見を聞いて、質問の最後にしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/190
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191・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 委員御指摘のとおり、今回FATFの第四次対日審査報告書を受けた法改正でございますけれども、それに加えて、政策会議で法改正以外のことを幅広く対応するということが必要ですし、また、そのことが実効性あるものにならなければならないと思っています。
それで、最終目標といいますか、次の大きな目標は、更にワンステップ、今の中の段階から上の段階に行くことでございますが、そのためには、FATFのまとめる有効性は何なのかということをしっかりつかんで、そして我が国の施策が有効性を持つものになり、また、そういう世界の動きもにらみながら、日々目標に向けて頑張ってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/191
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192・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 時間が参りました。おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/192
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193・上田清司
○上田清司君 ありがとうございました。
日本国民は本当に立派な国民ですので、人を疑うことも知りません。したがって、国際的には最も犯罪がしやすい国になっておりますので、よろしくお願いいたします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/193
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194・井上哲士
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
国際的なマネロン対策として、本法案が、FATF勧告の指摘を踏まえて暗号資産などを没収可能な財産の対象とする措置や資産凍結の強化などを措置していることは現状を踏まえたものであり、必要な措置であると思います。
一方、本法案が、FATF勧告から指摘されたとしてマネロン罪の法定刑を大幅に引き上げた上で共謀罪の対象を拡大をするということは大きな問題があると考えます。
まず、確認しますけれども、一般的にマネロン罪と言われておりますけれども、法律上の定義はどういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/194
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195・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) いわゆるマネーロンダリング罪という用語、言葉が我が国の法律において用いられているわけではないと承知しておりますが、FATFの関係でいいますと、マネーロンダリングというのは、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約にのっとり犯罪化されなければならないとされておりまして、今の例でいいますと、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約につきましては、その犯罪収益の洗浄として、財産が犯罪収益であることを認識しながら、犯罪収益である財産の真の性質、出所、出どころですね、所在、処分、移動若しくは所有権又は当該財産に係る権利を隠匿し又は偽装することなどと条約においては規定されております。
我が国におきましては、こうした国際的なマネーロンダリングの犯罪化の要請、条約の要請に対応して、その麻薬特例法や組織的犯罪処罰法において条約も踏まえて規定していると、構成要件を規定していると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/195
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196・井上哲士
○井上哲士君 国内的規定がはっきりしない中、使われているなと、言葉が、思うんですね。
法定刑の引上げを議論した法制審議会では、このマネロン罪の有罪判決の内容を見ると、三年以下の懲役刑が六五%、五年の懲役は四%にすぎないことなど、現状における処罰状況からはマネロン罪の重罰化の立法事実は認められないという指摘がなされております。
大臣はこういう指摘をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/196
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197・谷公一
○国務大臣(谷公一君) マネーロンダリング罪の法定刑の引上げにつきましては、法制審議会の諮問の際の総会において、一名の委員から、現状における処罰状況からマネーロンダリング罪の重罰化の立法事実は認められないとの御意見があったものと承知しております。
その後、法制審議会から、その下の部会においてこうした御意見を紹介した上で審議が行われ、FATFの勧告や最近のマネーロンダリングの状況を踏まえると法定刑の引上げを行う必要があるとの御意見が多くの委員から述べられ、採決の結果、賛成七名、反対一名の賛成多数により法定刑の引上げを行うべきであるとの決定がなされたものと承知しております。
その後の法制審議会、また部会から法制審議会の総会に戻ったわけでございますが、一名の委員が棄権したものの、採決に加わった委員十六名全員の賛成により本法律案と同じく法定刑の引上げを行うことが相当である旨の答申が決定されたものと承知しております。
今回の法定刑の引上げは法制審議会の答申のとおりの内容であり、審議会、法制審議会の審議結果を踏まえて立案された適切な内容のものであると考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/197
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198・井上哲士
○井上哲士君 あの法制審の中では、このFATFからの勧告を契機として、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して強力に抑止、防止することが必要だと、こういうことが法務省から言われております。
確かにマネロンの防止、抑止の強化は必要です。しかし、現実に指摘されているように、実際の有罪判決の内容を見れば、この重罰化の立法事実が認められないという下で厳罰化を進めるのが適切なのかと思うんですね。
刑罰というのは、やはり、一方で人権侵害を行うという機能に変じる可能性があることを考えれば、本来、私は抑制的であるべきだと思います。その点、大臣、お考えいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/198
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199・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 委員の御指摘は、実際の処罰における量刑状況が法定刑の枠外といいますか、法定刑の例えば上に張り付いているような場合にこそ改正をすべきではないかと、こういう御趣旨だと理解しましたが、必ずしも、そういうような場合もございますが、必ずしもそうではなくて、その犯罪の多発化、悪質化に適切に対処するために立法を行うというケースもございます。
今般のマネーロンダリングの法定刑の引上げにつきましては、FATFの勧告における指摘、あるいは諸外国の法定刑の状況、我が国の組織犯罪の実態、そういった動向を踏まえまして、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すための必要性、合理性があるものと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/199
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200・井上哲士
○井上哲士君 私、今の繰り返しになりますけれども、全体で抑止、防止は必要ですけれども、厳罰化、こういうことについては抑制的であるべきだと考えております。
その上でお聞きしますけれども、今回、法定刑が引き上げられる犯罪の対象は組織的犯罪集団が関与したものに限定をされているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/200
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201・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) お尋ねの前提が、マネーロンダリング罪、法定刑の引上げをお願いしておるわけですが、その構成要件として御指摘のような限定が付されているかという趣旨であれば、そういった要件というのは付されておりません。
他方で、御指摘の、お尋ねの趣旨というのが、法定刑を引き上げることにしているマネーロンダリング罪について、その組織的な犯罪集団が関与することが現実的に想定されますかということであれば、例えばマネーロンダリング罪につきましては、暴力団組織が犯罪、様々な犯罪収益を獲得してそれを隠匿したり、上納させて収受したりするという意味では、そういう関与が現実的に想定される罪ではあろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/201
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202・井上哲士
○井上哲士君 関与は想定はされるけれども限定はされていないという答弁でありました。
このことも法制審や同法制審の刑事法部会でも議論になりました。マネーロンダリング罪の規定が、いずれも処罰範囲が広いために、当罰性のない、あるいは当罰性が低い行為が処罰対象とされる危険があるという懸念が表明をされました。そして、量刑の相当性を確保するために、組織的犯罪が前提となっていない場合や単発的なセルフロンダリングの場合などの量刑の基準を明確にするべきではないかという指摘がなされましたけれども、この指摘については、法務省としてはどう対応したんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/202
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203・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) マネーロンダリング罪の法定刑の引上げにつきまして、今御指摘をいただいたように、法制審で答申をいただいた際の総会におきまして、一名の委員の方から、マネーロンダリング罪の処罰根拠が明確になりにくい、あるいは処罰範囲が広範囲になるとの懸念が指摘されているですとか、あるいは量刑の基準を明確にすべきであるという御意見が述べられたことはそのとおりでございます。
その上で、この御意見について法務省としてどのように考えるかということを申し上げますと、まず、マネーロンダリング罪というのは、犯罪組織の維持拡大、将来の犯罪への再投資、合法的な経済活動への悪影響などを生じ得るとともに、国際組織犯罪防止条約の定める犯罪収益の洗浄化の犯罪化という義務も実施することを処罰根拠とするものでございまして、その構成要件ですとか処罰範囲というのは明確に限定されたものであるというふうに考えております。
それから、量刑の基準を明確にするという、そういう御指摘でございますが、個別具体的な事案でどのような量刑がなされるかというのは、これは裁判所において犯罪事実や情状を踏まえて判断されるものでございますので、法務当局として何かの基準を定める、そういう事柄ではないんだろうというふうに考えております。
法務当局といたしましては、今回の法律案が成立いたしまして法定刑が引き上げられることになりますれば、マネーロンダリング罪に対して、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、強力に抑止、防止することが必要であるという、そういう立法意思、立法者の意思が示されるということになりますので、それを前提として、引き上げられた法定刑の範囲内で個別の事案における量刑判断がなされるということを考えておりまして、そのような法改正の趣旨も併せて今後周知してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/203
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204・井上哲士
○井上哲士君 そういう意味では、やっぱり現場の実務家の方が、当罰性がないあるいは低い行為が処罰対象とされる危険がある、このような懸念を持っていらっしゃるということは重く受け止めるべきだということを指摘をしたいと思います。
その上で、次に、共謀罪、テロ等準備罪の対象拡大についてお聞きいたします。
我が国の刑法は、犯罪の既遂を処罰することを原則としております。重大犯罪については未遂罪として、さらに、未遂にも至らないけれども、他人の権利、財産などへの侵害する結果の発生など危険性がある予備行為を例外的に処罰をしております。
ところが、共謀罪はその更に前の段階で、計画、共謀、話合いですね、合意、下見、こういう準備行為など、この結果発生の危険性がいまだに具現化しないこの曖昧な段階で処罰をするもので、処罰の範囲を飛躍的に拡大をさせて、我が国の法体系と相入れないものだとして大きな反対運動が巻き起こりました。
当時、参議院では中間報告という禁じ手まで使って強行したわけでありますが、成立後においても、市民や人権団体からは、引き続き廃止を求める声が出続けております。今日においても、その問題性が指摘が続いています。
まず聞きますけれども、今回の法定刑の引上げで新たにこのテロ等準備罪、共謀罪の対象となる犯罪は何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/204
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205・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 前提といたしまして、お尋ねのテロ等準備罪の対象となる罪といいますのは、国際組織犯罪防止条約が定める犯罪化義務を実施するためでございますが、法定刑として死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪であって、かつ組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるもの、これを対象にすることが義務付けられているところでございます。
今回の法律案におきましては、先ほど言及もございました組織的犯罪処罰法の犯罪収益等収受罪や麻薬特例法の薬物犯罪等収受罪の法定刑の、懲役の法定刑の上限を三年から七年に引き上げることに伴いまして、組織的犯罪処罰法の別表第四というのを改正して、こういったこれらの罪をテロ等準備罪の対象に加えることといたしております。
今申し上げた罪などは、法定刑として長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪でございますし、かつ、その組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される犯罪でございますので、法定刑の引上げに伴ってこれをテロ等準備罪の対象犯罪にするということは、これは締結済みの国際組織犯罪防止条約の犯罪化義務を実施する上で不可欠であるというふうに考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/205
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206・井上哲士
○井上哲士君 この共謀罪の適用拡大について、このFATF勧告では言及をしておりません。そして、法制審議会でも諮問されておらず、一切議論をされておりません。そのことを確認したい。そして、にもかかわらず法案に盛り込まれているということは、手続として問題じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/206
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207・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 今回のFATFの勧告におきまして、テロ等準備罪の対象犯罪の拡大について言及がされているところではないのは御指摘のとおりでございますが、先ほど申し上げました我が国が締結済みの国際組織犯罪防止条約における犯罪化義務を実施する上で、テロ等準備罪の対象犯罪にするということが条約上の義務として不可欠であるというふうに考えております。
それから、法制審議会の諮問との関係で申し上げますと、元々テロ等準備罪というのは、平成十四年に法制審議会に諮問をして十五年に答申をいただいた組織的な犯罪の共謀の罪、これを創設する答申を踏まえて立案されたものでございますが、その平成十四年の諮問の際には、対象とする罪について議論がされまして、その結果、答申の内容といいますのは、対象とする犯罪については個別に列挙していくのではなくて、法定刑として死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪の全てを対象とすると、こういう答申でございました。
したがいまして、この答申のとおりの法整備を仮に行うといたしましたら、新設又は改正によりまして法定刑がこのカテゴリー、つまり長期四年以上の懲役、禁錮の罪になったものについては特段の手当てをしないといいますか、言わば自動的に対象犯罪になるということが前提でございますので、そういった答申がある以上は、法制審議会との関係では、その新設や改正によって法定刑が今申し上げたカテゴリーに入った罰則について対象に加えるかどうかということを諮問する必要はないと考えるところでございます。
今般の犯罪、今般の犯罪収益等に、収受罪につきまして、法定刑が引き上げられて長期四年以上の懲役、禁錮となることについてでございますが、これもテロ等準備罪の対象とすることを特に法制審議会にその法定刑の引上げの際に諮問したわけではございませんが、これは、先ほど申し上げた、既にいただいている法制審議会の答申の内容に即したものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/207
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208・井上哲士
○井上哲士君 政府は、共謀罪の創設はTOC条約の締結に不可欠だと当時説明しました。しかし、法案審議の中で、TOC条約は各国国内法の原則に従って法整備をすればよいとしておって、日本は予備罪で対応できるということも明らかにされました。
今、平成十五年の答申を言われたわけですが、法制審のこれ答申は、おっしゃったように長期四年以上の犯罪六百七十六全てを共謀罪の対象としたわけですね。ところが、反対の声が大きく広がって、与党内からも異論が出て、政府は法案提出前に犯罪、対象犯罪を二百七十七に絞り込んだんですよ。ですから、答申どおりの法整備を行っておりません。答申どおりだと国民にも国会にも理解を得られないということを政府自身が認めたわけですね。そうした経過を見ても、平成十五年答申にあるから法制審への諮問の必要はないと、もう議論をする必要がないというのは、私は通用はしないと思います。
私たちは共謀罪廃止する立場でありますけれども、こういう対象拡大が何ら議論なしに行われるということは手続としても大問題だということは指摘をしておきたいと思います。
当時、対象二百七十七にした下で、このいわゆる共謀罪の対象になる行為に関して別表三、別表四と区別をしました。どういう基準で二百七十七に絞って、それをどういう考えでこの別表で分類をしたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/208
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209・保坂和人
○政府参考人(保坂和人君) 別表第三と別表第四というのがございますが、まず別表第三の方は、国際組織犯罪防止条約が二条におきまして組織的な犯罪集団というのを定義しておりますが、その集団が目的とする犯罪、これは重大な犯罪及び条約に従って定められる犯罪というふうに規定されております。
別表第四の方は、条約の第五条が、組織的な犯罪集団への参加の犯罪化という条がございますが、その対象とすべき犯罪、これは重大な犯罪と定めておりますが、それに対応して別表第三、第四という形で挙げているものでございます。
具体的にいいますと、別表第三は、この組織犯罪処罰法における組織的犯罪集団の結合の目的となる罪を挙げたものでございまして、具体的には死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役、禁錮に当たる罪及び別表第一に掲げる罪、これは国際組織犯罪防止条約が、その条約に従って定められる犯罪というのをその組織的な犯罪集団の定義としておりますので、それを、それのうち、組織的犯罪集団の結合の目的となることが現実的に想定されるものを掲げているところでございます。
それから、別表の第四の方につきましては、今申し上げた条約が、締約国に対して重大な犯罪、具体的には長期四年以上の自由刑又はこれより重い罪が法定刑である犯罪、これをその参加罪、組織的犯罪集団への参加の罪の対象犯罪とすることを求めつつ、留保、留保というか、求めつつも、国内法上求められるときには組織的な犯罪集団が関与するものという付加要件を付けることを認めていることを踏まえまして、今申し上げた法定刑が定められているもののうち、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定される罪、これを別表の第四に挙げているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/209
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210・井上哲士
○井上哲士君 当時、政府は絞り込んだと言ったわけでありますけれども、実態は、例えば保安林でのキノコ狩り等を要件とする森林法違反など、国際的なテロ対策と言えないようなものも含まれておりますし、何が犯罪となって処罰対象になるか、これ曖昧なまま、計画や準備行為の捜査だとして人々の話合いや内心に踏み込んで捜査し、処罰するということで、その危険性が指摘をされました。
このことは国際的にも指摘されているんですね。お手元に、国連自由権規約委員会が十一月の三日に日本の第七回定期報告に関する総括所見を公表したものを配っております。その中で、共謀罪が、テロリズムや組織的犯罪とは一見無関係な犯罪を含む二百七十七の行為を犯罪の成立する範囲として広く指定していること、表現の自由、平和的集会の権利、結社の自由といった規約に規定された基本的権利を不当に制限し、自由と安全に対する権利及び公正な裁判を受ける権利の侵害につながる可能性があるということに懸念を表明しております。
大臣は、この指摘をどう受け止めていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/210
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211・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 今般、国連の自由権規約委員会が、我が国が提出した第七回政府報告に対する総括所見を公表し、その中で、テロ等準備罪に関し、井上委員御指摘のような点について懸念が示されたことは承知しております。
テロ等準備罪については、国連の国際組織犯罪防止条約で定められた犯罪化の義務を実施するために設けられた罰則であり、その処罰範囲は明確かつ限定的なものであり、また国民の基本的人権を不当に制約するものではないと承知しております。
いずれにいたしましても、この国連の総括所見につきましては、今後その内容を精査し、我が国の実情等を踏まえ、関係省庁が連携して適切に対処するものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/211
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212・井上哲士
○井上哲士君 今大臣が言われたようなことを法案審議の中で答弁をし、そしてこの国連の委員会でも政府は説明をしているんですよ。その上でこういう懸念が表明されているわけですね。そのことを重く受け止めるべきだと思うんです。
そして、その上で、この総括所見は、テロリズムや組織犯罪と無関係な行為の犯罪化を排除するために、共謀罪法を改正することを検討するべきであると、また、共謀罪法の適用が規約上の権利を不当に制限しないことを確保するために、適切な保障措置及び防護措置を採用すべきであると、ここまで言っているわけですね。
で、この勧告にもかかわらず、そもそも組織的犯罪集団が関与しない一般市民の行為、いわゆるセルフロンダリング、これも処罰の対象となり得る、この二つの犯罪を新たに共謀罪の対象に加えるというのは、私、本当、言語道断だと思うんですね。
少なくとも、こういう指摘が国連自由権規約からされているということを考えるならば、別表四から削除をすることをやめて、先ほど関係省庁で対応すると言いましたけれども、まずその議論をするべきじゃないですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/212
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213・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 自由権規約委員会が公表した総括所見についての受け止め方、関係省庁で今後検討していくということは先ほど答弁したとおりであります。
一方、テロ等準備罪につきましては、国際組織犯罪防止条約を定める犯罪化の義務を実施するため、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪であって、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものが対象犯罪とされているものと承知しております。
今回の法案ではマネーロンダリング罪の法定刑の引上げを行うこととしており、犯罪収益等収受罪及び薬物犯罪収益等収受罪について、その懲役刑の上限を三年から七年に引き上げることに伴い、テロ等準備罪の対象犯罪を定める別表を改正することによって対象犯罪に加えることとしております。これらの罪は、例えば暴力団組織が様々な犯罪によって獲得した収益を上納させて収受する場合など、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される犯罪であることから、法定刑の引上げに伴い、これらの罪をテロ等準備罪の対象犯罪とすることは、我が国が既に締結している国際組織犯罪防止条約の定める犯罪化義務を実施する上で不可欠であると承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/213
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214・井上哲士
○井上哲士君 政府はそういう説明を法案のときもしましたし、今もしているわけでありますけども、そういうことを説明しても、国際自由権規約委員会が幅広い市民の権利を侵害する可能性があると、こういう指摘をしているということをもっと強く、重く受け止めていただきたいと思います。改めて、共謀罪の対象拡大をやめるべきだと強く申し上げたいと思います。
最後に、旧姓の通称使用とマネーロンダリングの問題、午前中も議論になりましたけども、質問したいと思います。
この間、金融機関に対して、旧姓での口座開設についてどのような要請を政府としては行ってきたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/214
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215・岡田恵子
○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。
政府といたしましては、婚姻等によりまして戸籍上の氏が変わった場合でも、希望する方が職場等で旧姓を通称として使い続けられるようにするため、女性活躍推進の取組の一環として旧姓の通称使用の拡大に取り組んでまいりました。
その取組の一つとして、金融機関の業界団体に対しまして、旧姓名義によります銀行口座の開設等に関する要請を行いました。具体的には、内閣府男女共同参画局から全国銀行協会等の各業界団体に対し、平成二十九年七月と令和元年十二月の二度要請文を発出し、口座開設の申込みを行う方等が希望した場合には、各金融機関の実情に応じて可能な限り円滑に旧姓による口座の開設等が行えるよう、傘下の金融機関への周知を要請いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/215
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216・井上哲士
○井上哲士君 二〇二一年の男女共同参画局の会議では、金融機関への働きかけの中で、二つの名前を悪用してマネーロンダリングなどのリスクがあるのではないかという声もございましたと、こういうふうに述べられております。
実際、これは単なるリスクじゃなかったわけですね。これも午前中議論になりました。改めて確認しますけども、二〇二一年十二月に公表された国家公安委員会の調査では現実に悪用されていると事例が紹介されていますけども、具体的にどういうことでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/216
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217・猪原誠司
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
お尋ねの令和三年犯罪収益移転危険度調査書掲載の事案につきましては、暴力団員が登録を受けないで七回にわたり四名に対し合計三百二十五万円の貸付けを行い貸金業を営んでいたところ、その返済口座として妻が結婚前に旧姓で開設した口座を使用したものとして平成三十年に検挙した事案であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/217
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218・井上哲士
○井上哲士君 元々開設されていた口座でありますけども、新たに開設すること、それによってマネロンに使用される可能性を広げることになると思うんですね。
午前中にも紹介されましたけども、金融機関へのアンケートでは、この旧姓使用に対応していない一番の理由が、このマネーロンダリングやテロ資金供与防止対応に懸念が生じると、こういうことになっておるわけであります。
選択的夫婦別姓の世論が広がる一方で、それを進めるんではなくて、通称使用の拡大で済ませようという動きが強められてきました。しかし、このマネロン問題など、通称使用の拡大には様々な限界や問題点指摘されていましたし、そもそも名前は個人の尊厳やアイデンティティー、人権に関わる問題ですから、これで解決しないんですね。ですから、別姓が選択できるようにしようと。これが選択的夫婦別姓であります。もちろん同姓を選択している人もいると。その際に様々な不自由が、通称使用を続けた上で不便がないように改善することあり得ると思うんですけども、一方で、やっぱりマネロン対策を言いながら、その抜け穴のリスクを拡大をするこういう金融機関での旧姓使用の拡大を進めるということは、私は矛盾していると思うんですね。
同時に、こうした問題を抱える通称使用の拡大だけではなくて、選択的夫婦別姓こそ私は進めるべきだと思いますけども、こうしたマネロンと通称使用の問題と、大臣の御見解を最後にお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/218
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219・谷公一
○国務大臣(谷公一君) 銀行等の金融機関におきましては、本人確認や取引目的等の確認が求められており、本人確認に当たっては公的証明書による確認が義務付けられております。また、旧姓を通称使用する場合であっても、旧姓が併記された本人確認書類を用いて、例えば運転免許証などでございますが、本人かどうかを確実に確認することを求めているところであります。このように、旧姓を通称使用したいという顧客のニーズがあることは確かでございますし、そのニーズに対応する一方で、マネロン対策上必要な本人確認を行った上で対応しているものと認識しております。
なお、選択的夫婦別姓制度についてお尋ねがございましたが、私はその所管大臣ではございませんので、お答えは差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/219
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220・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 時間が参りました。おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/220
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221・井上哲士
○井上哲士君 政府全体として是非この選択的夫婦別姓実現の声に応えるべきだということを最後強く申し上げまして、質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/221
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222・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/222
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223・井上哲士
○井上哲士君 日本共産党を代表し、FATF勧告対応法案に対して反対討論を行います。
FATF勧告の第四次対日相互審査報告書が指摘した資産凍結措置の強化や暗号資産等への対応の強化は、マネロンを始めとする違法な金融取引を取り締まる上で必要な対応と考えます。しかし、本法案がマネロン罪の法定刑を大幅に引き上げた上で、犯罪収益等収受罪などの犯罪を新たに共謀罪の適用対象に加え、共謀罪の拡大を図っていることは到底認められません。共謀罪は、市民にとってはどんなことをしたら処罰の対象にされるのか全く不明確なまま、人の生命や身体、財産などの法益を侵害する危険が客観的にはない計画や準備行為を処罰するものです。
日本の第七回定期報告に係る国連自由権規約委員会の総括所見は、共謀罪法がテロリズムや組織的犯罪とは一見無関係な犯罪を含む二百七十七の行為を犯罪の成立する範囲として広く指定していること、表現の自由、平和的集会の権利、結社の自由といった規約に規定された基本的権利を不当に制限し、自由と安全に対する権利及び公正な裁判を受ける権利の侵害につながる可能性があると懸念を表明し、テロリズムや組織犯罪と無関係な行為の犯罪化を排除するために共謀罪法の改正を求めています。
本法案は、こうした勧告にも逆行するものであり、憲法の保障する内心の自由を侵害し、刑事手続に関する人権保障規定を侵害する共謀罪の拡大は断じて認められません。今回のマネロン罪の重罰化については、処罰範囲の明確化なしに法定刑だけ引き上げると、不相当に重い刑罰が科せられることへの危険が懸念をされています。また、現状における日本での処罰状況からは、マネロン罪の重罰化の立法事実は認められないとの指摘は重要です。行政書士、公認会計士、税理士などに疑わしい取引の届出を義務付けることは、個人情報保護の観点から容認できません。
以上、本法案には、暗号資産対策など必要な措置もありますが、基本的人権を侵害する共謀罪の拡大が盛り込まれており、反対であります。
以上、討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/223
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224・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に賛成の方の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/224
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225・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、塩村君から発言を求められておりますので、これを許します。塩村あやか君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/225
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226・塩村あやか
○塩村あやか君 私は、ただいま可決されました国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党及び国民民主党・新緑風会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。
一 司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等に対し、新たに取引時の確認事項として、取引を行う目的、職業又は事業の内容及び実質的支配者の本人特定事項が追加されることから、円滑に取引時確認が行われるよう、法改正の内容を国民に対して十分に周知・広報し、実効的なマネー・ローンダリング対策等の実現に万全を期すること。
二 金融機関等において旧姓等本名と異なる名義により開設された口座がマネー・ローンダリング等に悪用される懸念があることを踏まえ、マネー・ローンダリング対策等を適切に講ずる観点から、必要な対応を検討すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/226
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227・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) ただいま塩村君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/227
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228・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 多数と認めます。よって、塩村君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、谷国務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。谷国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/228
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229・谷公一
○国務大臣(谷公一君) ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/229
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230・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/230
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231・古賀友一郎
○委員長(古賀友一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121014889X00620221124/231
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