1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年十二月六日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十一月二十二日
辞任 補欠選任
小林 一大君 世耕 弘成君
永井 学君 山崎 正昭君
十一月二十四日
辞任 補欠選任
佐々木さやか君 西田 実仁君
十一月二十五日
辞任 補欠選任
西田 実仁君 佐々木さやか君
十一月三十日
辞任 補欠選任
石川 大我君 野田 国義君
十二月一日
辞任 補欠選任
野田 国義君 石川 大我君
十二月五日
辞任 補欠選任
世耕 弘成君 高橋はるみ君
十二月六日
辞任 補欠選任
高橋はるみ君 山本佐知子君
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出席者は左のとおり。
委員長 杉 久武君
理 事
加田 裕之君
三木 亨君
牧山ひろえ君
谷合 正明君
川合 孝典君
委 員
古庄 玄知君
山東 昭子君
高橋はるみ君
福岡 資麿君
森 まさこ君
山本佐知子君
和田 政宗君
石川 大我君
福島みずほ君
佐々木さやか君
梅村みずほ君
鈴木 宗男君
仁比 聡平君
国務大臣
法務大臣 齋藤 健君
副大臣
内閣府副大臣 和田 義明君
大臣政務官
文部科学大臣政
務官 伊藤 孝江君
厚生労働大臣政
務官 本田 顕子君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局人事局長 徳岡 治君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
内閣官房こども
家庭庁設立準備
室審議官 長田 浩志君
法務省大臣官房
政策立案総括審
議官 吉川 崇君
法務省民事局長 金子 修君
法務省人権擁護
局長 松下 裕子君
法務省訟務局長 春名 茂君
出入国在留管理
庁次長 西山 卓爾君
文部科学省大臣
官房学習基盤審
議官 寺門 成真君
スポーツ庁スポ
ーツ総括官 大西 啓介君
厚生労働省大臣
官房審議官 野村 知司君
参考人
神戸大学大学院
法学研究科教授 窪田 充見君
民法772条に
よる無戸籍児家
族の会代表 井戸まさえ君
国連難民高等弁
務官(UNHC
R)駐日事務所
首席法務アソシ
エイト 金児 真依君
立命館大学名誉
教授 二宮 周平君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/0
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001・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、小林一大君及び永井学君が委員を辞任され、その補欠として山崎正昭君及び高橋はるみ君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/1
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002・杉久武
○委員長(杉久武君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
民法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長金子修君外八名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/2
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003・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/3
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004・杉久武
○委員長(杉久武君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
民法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に神戸大学大学院法学研究科教授窪田充見君、民法772条による無戸籍児家族の会代表井戸まさえ君、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所首席法務アソシエイト金児真依君及び立命館大学名誉教授二宮周平君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/4
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005・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/5
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006・杉久武
○委員長(杉久武君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/6
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007・加田裕之
○加田裕之君 おはようございます。自民党の加田裕之でございます。
それでは、民法等の一部を改正する法律案につきまして、順次質疑をさせていただきたいと思います。
まずは認知無効の訴えのことについてなんですけれども、この認知無効の訴えの提訴権者と出訴期間を制限する意義ということについて、そして、これ、その期間というのが七年間としているんですけれども、この七年間とした理由というのは何かということについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/7
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008・金子修
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
現行法の下では、事実に反する認知、すなわち血縁関係がない者による認知は無効とされ、子その他の利害関係人が無効を主張することができることとされております。この規定につきましては、主張権者が広範で無効主張の期間制限もないことから、子の身分関係がいつまでも安定せず、嫡出否認の訴えについて厳格な制限が設けられていることとの均衡を欠くとの問題がかねてから指摘されておりました。
そこで、今般、嫡出子の親子関係の規律を見直すことに伴いまして、嫡出でない子の親子関係の規律も見直すこととしました。
この見直しは、認知された子の身分関係の安定を図るため、無効を主張することのできる主張権者の範囲を、子、子の法定代理人、認知をした者、子の母に限定するとともに、これらの主張権者は認知等のときから七年間が経過した後は認知の効力を争うことができないこととするものであります。
認知無効の訴えの提訴期間を七年間とした理由につきましては、嫡出否認の訴えの出訴期間とのバランスのほか、民法上の各種制度における期間制限の規定の在り方などを参照するなどしまして、認知がされたことを前提にした身分関係の状態が継続した場合には、もはや覆すことは社会的に相当でないと考えられる時間の経過として合理的と認められる期間を定めたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/8
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009・加田裕之
○加田裕之君 それでは次に、認知無効の訴えに関するこの改正ですね、これまでの規律を大きく変えるものでありまして、やはり先ほど答弁もありましたような中におきましても社会的な影響というものを私は大きいと考えるんですね。
この点の経過措置というようなものはどういうふうなものであったか、そしてまた、これは当事者に対しまして不測の不利益を与えないかどうか、そういう懸念もあると思うんですが、その点につきまして齋藤法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/9
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010・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、本改正法案の認知無効の訴えに関する規律は、経過措置として、本改正法案の施行日後にされた認知について適用されるものとまずしております。したがって、この経過措置の内容は、父子関係について、認知当時において予測できなかった不安定さをもたらすということはないというふうに考えています。
もっとも、御指摘のとおり、従前の規律を大きく変えるものでありますので、その内容につきましては十分かつ適切な周知、広報に努めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/10
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011・加田裕之
○加田裕之君 是非ともその周知、広報をお願いしたいと思います。
それで、次なんですけれども、認知無効の訴えを提起できる期間が経過した後においてでも、事後的に認知が事実に反することが明らかになったケースで、日本国籍を有していないこととなった者が無国籍という形になる場合があり得るとすれば、これを解消していくためには取組が必要ではないかと思いますが、再度、齋藤大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/11
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012・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 無国籍者については、法務局において、日本の国籍を取得するための手続ですとか外国の大使館等における所要の手続に係る案内を、この無国籍者の身分関係やあるいは御意向などを踏まえて行うなどの取組を行っています。また、無国籍者が退去強制手続を受ける、そういうような場合でも、個別の事案に応じて、例えば、本邦で学校教育を受けているなどの事情を考慮し、法務大臣の裁量によって在留特別許可がなされることがございます。
このように、法務省におきましては、無国籍状態をできるだけ解消するための取組に努めているところであります。
その上で、ただいま御審議いただいている民法等の一部を改正する法律案についての衆議院の法務委員会における審議におきましても、この無国籍状態の防止等の重要性が指摘をされております。ですので、無国籍状態をより円滑に解消するための関係機関の連携強化の取組を実施することを今検討しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/12
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013・加田裕之
○加田裕之君 まさに大臣が答弁されましたように、無国籍状態の部分の解消という、そしてまた、先ほどお話、答弁ありましたように、ああいう就学中の場合であるとか様々なケースが想定されると思います。そういう意味においては、本当にこれから、開かれた国、日本ということにおいて、今までの法制度の部分と現状とのミスマッチの解消ということについては、是非ともこれは大臣のリーダーシップできめ細やかに取り組んでいただけたらと思っております。
それで、最後の質問ですけど、無国籍状態を円滑に解消するための取組というのは、逆に言えば、これはちょっと当局側にお伺いしたいんですが、具体的にどのような内容かということについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/13
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014・金子修
○政府参考人(金子修君) 具体的には、法務局が中心となりまして、無国籍になるおそれのある方の情報を収集した上、出入国在留管理庁と連携をし、その情報の共有をすることが考えられます。これによりまして、認知無効が判明した本人を戸籍から消除する前に、あるいは消除後速やかに、可能な範囲で退去強制手続や日本国籍取得に係る事前調整等をすることができるようになると考えております。
このような観点から、現在、戸籍消除後の在留資格がない期間や戸籍に記載されていない期間を短縮することが可能になるような仕組みづくりを検討しているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/14
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015・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。
まさに答弁のとおり、仕組みづくりというのが本当に大切だと思います。まさにこれ、法務局、現場現場の法務局が中心となりましてやっていくことですので、先ほど言いました情報収集、そして共有ということ、そして、これはまた地元自治体とか関係機関とも連携を緊密にしていただきたいと思っております。そのことをしっかりとまた要望、強く要望いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/15
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016・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。民法等の一部を改正する法律案の質疑を担当させていただきます。よろしくお願いいたします。
今回の改正では、無戸籍者を解決するために民法の嫡出推定規定の見直しを行っております。本日午後の委員会で参考人に立たれる井戸まさえさんは、今回の法改正案で救済される人々は、現在でも役所の窓口で、若しくは調停、裁判という形を取れさえすれば戸籍を得られる人々で、そこをターゲットにしても無戸籍者数は実質的には減らないというふうに述べられています。
今回のケースで無戸籍を生み出す根本的な原因となっているのが離婚後三百日推定ルールです。このルールの廃止の必要性については衆議院でさんざん議論がありましたので繰り返しませんが、政府が述べるこのルールの存続理由に仮にそれなりに妥当性があるとしても、そこから生じるマイナスについては最小限に抑える立法努力をやはりするべきだと私は考えております。
そこで質問ですが、この推定期間が三百日である理由を御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/16
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017・金子修
○政府参考人(金子修君) 婚姻の解消又は取消しの日から三百日という期間につきましては、人口動態統計上、出生数のピークは妊娠齢で三十八週から四十週までの間に生まれる子でありますけれども、妊娠齢四十三週以降に出生する子も僅かに存在しており、医学的な見地からは、三百日という期間は婚姻中に懐胎した場合ほぼ全てを包摂し得る期間であるというふうに言えると考えています。
また、嫡出推定制度は、早期に父子関係を確定し、子が安定した地位を得るという意義があることからしますと、婚姻中に懐胎した可能性のある子につきましては広く前夫の子と推定するものとすることが望ましいと考えられるところ、現行法の三百日を維持することが相当であると考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/17
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018・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 日本では妊娠から出産までをよく十月十日と表現しますけれども、実際には四十週、二百八十日が出産予定日の基準です。最終月経日を起点とするため、排卵までの二週間余りはおなかに子供はいないですから、二百六十六日がいわゆる懐胎期間とされています。それより短い早産のケースは結構あるにしても、時期が大幅に遅れる、さっきおっしゃっていた、事例をおっしゃいましたけど、非常にまれなケースだと思うんですね。
今回の立法趣旨が無戸籍者の発生を抑止するとおっしゃるなら、せめてこの非科学的な三百日という期間を短縮すべきだったんではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/18
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019・金子修
○政府参考人(金子修君) この問題を検討しました法制審議会民法(親子法制)部会におきましても、産婦人科の先生などの意見も御紹介しつつ審議を進めていただきましたが、この三百日という期間の合理性について検討した上で、最終的には三百日という期間を維持することとされたものであります。
さきに御答弁申し上げましたとおり、三百日という期間に科学的根拠はあるものと考えておりまして、また、先ほど御紹介したような人口動態統計の数値によっても、婚姻中に懐胎した場合ほぼ全てを包摂し得る合理的な期間であるというふうに考えておりまして、早期に親子、父子関係を確定し、子の地位の安定を図るという嫡出推定制度の意義に照らしますと、これを維持することが相当であると考えたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/19
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020・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 繰り返しますけれども、なぜ非常にレアケースを持ち出すのでしょうか。もう本当にそれ、レアケースだと思いますよ。レアケースが、じゃ、仮にあったとしても、DNA鑑定を始めとして個別に対処すれば十分だと思うんですね。本当に昔の常識と違いますから、今。DNAがあります、DNA鑑定がありますから、そういった非常にレアケース持ち出して科学的というふうにおっしゃるのはちょっと無理が、この時代、無理があると思います。
そもそも、離婚する場合には離婚日前の時期は婚姻関係が破綻しているのが通常ですから、前婚の夫婦間に妊娠の基礎が失われている確率は非常に高いことを考え合わせますと、やはり三百日というのは非常に無理があり、今おっしゃっていた理由というのは理由にならないと思うんです。
衆議院での審議で、DV事案等において、母が嫡出否認の訴えをちゅうちょしないためのIT化の実現や住所等の秘匿制度の周知、広報の必要性等について質疑がございました。その答弁で、本年五月の民訴法の一部改正、これによって人事訴訟の手続についてもウエブ会議による口頭弁論を行うことが可能とする制度が導入されたとの返答がなされていました。
このウエブ会議で、音声のみで映像なしという運用は可能なんでしょうか。DV等の場合には、映像を使うということだけで被害者の側が萎縮してしまうということも十分あり得ますので、その辺をお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/20
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021・金子修
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
嫡出否認の訴えを含む人事訴訟につきましては、現在、口頭弁論期日に出頭するためには現実に裁判所に赴く必要があります。
この点について、本年五月に成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律によりまして、人事訴訟手続についても映像付きのウエブ会議を利用して口頭弁論期日に出頭することを可能とする制度が導入されました。この制度では、映像と音声の双方の送受信が必要であり、音声のみで口頭弁論期日に参加することはできないこととされています。
もっとも、原告が代理人を選任している場合には原告本人が口頭弁論に出頭しないで手続を進めることが可能ですし、最初にすべき口頭弁論の期日については、原告が出頭しなくても被告が出頭している場合には、裁判所が原告が提出した訴状を陳述したものとみなして手続を進めることができます。
また、この一回期日を経た後、弁論準備手続に付されることも多いと思いますけれども、そのような争点を整理する手続である弁論準備手続につきましては、音声のみの電話会議の方法を利用することも可能となっております。
DV事案では、被害者である母が萎縮することのないように、これらの制度を用いていただくということが考えられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/21
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022・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 映像のマイナス面も十分考慮すべきですし、また、DVの被害者の追い詰められた心理状態を考慮して工夫を積み重ねるべきだと思います。
また、これらの制度の周知に努めるという答弁もありましたけれども、具体的にどのような周知方法をお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/22
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023・金子修
○政府参考人(金子修君) 本改正法案や民事訴訟法等のIT化及び住所等の秘匿制度に関する法改正につきましては、国民に広く周知を行うことが重要であると考えておりまして、ホームページ等を活用するなどして改正法案等の内容や意義等の情報を広く広報するということを検討しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/23
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024・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 ホームページ等の広報というのもやっぱりもちろん重要だと思うんですけれども、特殊なケースだけに、該当者に確実に届き、そして確実に読んでもらうというふうにしないと、本人に届かないと意味がないと思いますので、是非、ホームページに限らず、十分なリーチアウトを心掛けていただきたいなと思います。DVのシェルターやDV被害者を救済するNPOなどへの周知の協力を依頼するのも一つの手じゃないかなと思います。
今回の改正案が成立しましたら、女性に対する離婚後の再婚禁止期間が全て廃止されるということになります。
この再婚禁止期間に関しましては、人権に関する国際機関から改善勧告などを受けていました。例えば、国連女性差別撤廃委員会による日本の第七回及び第八回合同定期報告に関する最終見解等です。今回の改正により我が国は一つ国際的な責任を果たしたということで、その点については高く評価させていただきたいと思います。
この勧告に記載されている内容では、まだ夫婦別姓のみが実現していない残された課題となっているんですね。この残された課題への対応につき必要な検討を加速させるべきと考えますが、法務大臣の見解と解決に向けた決意を是非お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/24
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025・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の国連女子差別撤廃条約によります日本の第七回及び第八回合同定期報告に関する最終見解におきまして、夫婦同氏を定める現行制度の改正を求める旨の勧告がなされていることは承知をいたしております。
その上で、夫婦の氏の在り方につきましては、現在でも国民の間に様々な御意見がございまして、今後とも国民各層の意見や国会における議論を踏まえてその対応を検討していく必要があるなというふうに考えています。そのため、国民の間はもちろん、国民の代表者である国会議員の間でもしっかりと議論していただき、コンセンサスを得ていただくため、法務省としては、引き続き積極的に情報提供を行って議論を喚起していきたいというように考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/25
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026・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 法務大臣と法務省には是非積極的に議論をリードしていっていただきたいなと期待しております。
国籍法第三条の改正により、事実に反する認知が判明し、結果的に無国籍となる場合に取り得る対応についての質問につき、前法務大臣からはこのような答弁がありました。本人の帰責性がなくて、日本で教育を受けているような、そういう事情がある方を、それが不利益な扱いがされるということは、やはり政治の責任としても解消していくことが私は必要だというふうに思います、いずれにしても、無国籍者の置かれた立場に配慮して、無国籍状態の解消に向けて、可能な対応をしっかりやっていきたいと思いますという答弁でした。
改正案を前提にすれば心強い答弁だったんですけれども、前法務大臣はいなくなられてしまいました。新大臣も、この答弁の内容を引き継がれますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/26
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027・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 法務省では、無国籍の発生を防止する観点から、令和三年に改めて事務連絡、無国籍等の状態にある外国人からの国籍相談に係る留意事項について発出をいたしておりまして、無国籍状態の解消に向けて、外国の大使館等における所要の手続に係る案内ですとか、日本の国籍を取得するための手続に係る案内を行う等の取組を行っています。
その上で、ただいま御審議いただいている民法等の一部を改正する法律案についての衆議院法務委員会における審議におきましても、無国籍状態の防止等の重要性が指摘されております。
そこで、無国籍状態をより円滑に解消するための関係機関の連携強化の取組を実施することを今検討をしております。私も、前大臣と同様、この無国籍状態の解消というのは重要な課題だと思っていますので、引き続き可能な支援を行っていくべきものと認識をしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/27
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028・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 ありがとうございます。
大臣がおっしゃられた無国籍状態の解消に向けた救済策として、極めて短期間での期間ないし在留特別許可を付与することが考えられます。衆議院でもこのような答弁がございました。退去強制手続においては、外国人が在留を希望する場合などに十分に主張できるように慎重な判断がなされるようになっているほか、退去強制事由に該当する場合であっても、法務大臣の裁量により在留特別許可をされる場合がございますという答弁がございました。
三条三項により国籍を失ったケースについては積極的にこの裁量権を活用してほしいんですが、どのような御方針でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/28
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029・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 一般論としては、在留特別許可の許否判断は、個々の事案ごとに、在留を希望する理由ですとか家族の状況ですとか素行ですとか人道的な配慮の必要性など、諸般の事情を総合的に勘案して行っているところであります。
その判断におきまして、認知無効により日本国籍を認められなくなったことに帰責性がない場合であれば、日本人として生活していた実態があるなどの事情は積極要素として考慮しているところでありますので、今後ともこの方針でしっかりやっていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/29
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030・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 救済措置としての帰化ないし在留特別許可がそもそも何割程度行われているのか、件数を把握して報告や公表することを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/30
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031・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 今後、認知無効などによって当初から日本国籍を有していないこととなった方についての人数を把握することは可能と考えています。ただ、改めて帰化申請をするかどうか、またいつ申請をするか、こういったことは本人の意思次第であるため、帰化の件数とか割合ですとか、そういうことはなかなか把握することは困難かなと思っております。
お尋ねのような統計について今後どうするかは、検討をしていく必要があるかなとは思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/31
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032・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 現在ですから、現在どのぐらいの割合で行われているかという質問ですので、是非、これ把握する必要があると思いますので、把握して公表してください。将来はもちろんその人の意思によると思うんですが、現在という質問ですので。
今回の改正は、この国籍法の規定を除いて、基本的に肯定的に捉えています。懸念が集中しているこの件について、正確に状況を把握するのは大変重要ですし、かつ、やる気さえあれば十分可能だと、繰り返しですが、思いますので、是非お願いします。
この条項の適用を受けた場合、不法滞在となり、退去強制手続を受けることになるというのが政府の説明です。
三条三項の新設の趣旨は偽装認知の防止とのことですが、三条三項適用の具体事例としては次の三分類に整理できます。まず、偽装認知のケース、これは本人に帰責性があるケースとないケースに分かれます。そして、認知者も故意ではない、つまり、そもそも偽装認知でさえないケース。この三分類の取扱いの違い、三条三項適用のケースとそれ以外の通常の不法滞在の場合の取扱いの違いを御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/32
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033・金子修
○政府参考人(金子修君) 国籍法第三条の適用におきまして、血縁上の親子関係にないことが判明するなどして認知が事実に反することが明らかになった場合、当該認知に基づく国籍取得の届出は効力を生じず、認知された本人は当初から日本国籍を有しなかったこととなります。
この結果は、認知された本人が血縁上の親子関係にないことを知っていたか否か、認知による国籍取得に当たって何らかの偽装行為が行われたか否か、そのことに本人が関与したか否かによって違いが生ずるものでもなく、本人の帰責性とは関係がない帰結ということになります。
他方で、認知された本人が当初から日本国籍を有しなかったこととなる場合でも、国籍法所定の要件を満たす場合には帰化により日本国籍を取得する余地があり、その要件の判断におきましては、認知の偽装への関与の程度を含めた帰責性など御指摘の事情のほか、日本人の子として日本で安定的に生活していたことなどの個別事情も考慮され得るところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/33
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034・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほど、認知が事実に反することが明らかとなり日本国籍が認められなかった者に対する取扱いと、それ以外により不法滞在となった場合の取扱いの違いについてお尋ねがございました。
認知無効により日本国籍を認められなくなった者であるかどうかにかかわらず、在留特別許可の許否判断につきましては、先ほど大臣も答弁がございましたとおり、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して行っているところでございます。
その上で、その判断において認知無効により日本国籍を認められなくなった者について、そのことに帰責性がない場合であれば、日本人として生活していた実態があるなどの事情は積極要素として考慮することになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/34
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035・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 そもそも本人に帰責性がない場合でも、故意に不法滞在となった者と全く同じ法律的な扱い、すなわち一律に不法滞在、そして退去強制と処理されてしまう。そして、決して可能性が高いと言えない帰化の要件で考慮されるにすぎないんですね。
本人に帰責性がない場合には、過去に遡って日本人ではなかったことにし外国人の不法滞在とするのではなく、せめて将来効としての措置にとどめるのが比例原則にも沿い、均衡の取れた対応となるんではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/35
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036・金子修
○政府参考人(金子修君) 偽装認知による国籍取得の防止という趣旨に照らして考えますと、帰責性の有無は、国籍取得の場面、その帰責性がないからといって将来に向かってでも一律国籍を取得するという扱いは難しいものと考えています。
ただ、先ほど御答弁申し上げましたとおり、そのような主観的な事情は国籍の取得あるいは在留特別許可等の場面において考慮される、一事情として考慮される余地があるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/36
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037・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 是非私が申し上げた点は御再考を願いたいと思います。
偽装認知の抑止が立法趣旨ということだと思いますが、それを根拠付ける立法事実、すなわち、そもそも偽装認知というのはどの程度あるんでしょうか。近時の傾向も併せて御説明いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/37
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038・金子修
○政府参考人(金子修君) 委員御指摘のとおり、国籍法第三条第三項の立法趣旨は、我が国の国籍を取得することを目的とする虚偽の認知が行われることがあってはならないということを踏まえまして、現行国籍法第三条についての従前からの確立した規律を維持するということを明らかにしたものであります。
平成二十一年一月以降、国籍法の改正により、日本人の父から認知された子については、届出によって日本国籍を取得することが認められることになりましたが、この間、国籍取得届出が不受理となった件数は、毎年十件台から三十件台で推移しております。なお、このうち偽装認知に基づくものの数値は把握しておりません。
また、虚偽認知が事後的に判明することもありますが、この場合にはその者の戸籍が消除されることとなるところ、その処理が市区町村においてされるため、その具体的な事案及びその件数については当省において把握していないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/38
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039・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立法事実が曖昧な状況で、しかも、本人に帰責性がない場合も含めて人生の基盤を土台からひっくり返す処分を行うというのは、本当に適切なのかどうか考えていただければと思います。
無国籍の発生防止と解消は国際的な要請です。国連総会は、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRに対し、無国籍の把握、防止と削減、そして無国籍者の保護という世界的任務を与えました。
そこで、UNHCRは、無国籍が生じることを回避するとともに、無国籍者の人権が保護され、かつ無国籍者が国籍取得への道筋を得られるよう、無国籍者を認定して法的地位を付与する手続を設置するための法令の策定、改善に関して各国政府と協力しています。無国籍者の地位に関する条約、無国籍の削減に関する条約、これらは年々締約国が増加しており、無国籍の発生防止は今日では国際慣習法と言われています。
日本政府も、二〇一八年、国連人権理事会の普遍的・定期審査でなされた二つの条約への締結の検討に対する勧告についてフォローアップするというふうに前向きな姿勢を表明しています。また、二〇一九年、無国籍に関するハイレベルセグメントの際には、無国籍を全ての人にとって大きな懸念の対象である問題であるとして、UNHCRの活動への支持を表明しました。UNHCRも、二〇二四年までに無国籍者をゼロにすることを目的としたIBelongというキャンペーンを展開しており、このキャンペーンには日本政府も賛同しています。
これらの状況を踏まえて、改正後の国籍法の解釈、適用に当たっては、UNHCRによる無国籍に関するガイドライン及び解釈などを尊重するべきと考えますが、法務大臣の見解をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/39
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040・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、このUNHCRによる無国籍に関する御指摘のガイドラインですけど、これは、無国籍者の定義ですとか地位等についてUNHCRとして発表したものであるというふうに認識しています。このガイドラインは法的拘束力を有するものではなくて、国籍法第三条第三項の解釈、適用に当たって同ガイドライン及び法解釈を尊重すべきか否かは、我が国の法制に照らして判断していくべきものだろうと考えております。
法務省といたしましても、無国籍者の発生防止は重要な問題であると認識をしておりまして、引き続き、無国籍者の置かれた立場に配慮しつつ、外国の大使館等における所要の手続に係る案内や日本の国籍を取得するための手続に係る案内を行うなどの取組に加えて、法務局などの関係機関間での連携強化といった取組についても適切にやっていきたいなと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/40
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041・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 是非前向きにUNHCR等からの意見に耳を傾けていただきたいと思います。
時間になりましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/41
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042・福島みずほ
○福島みずほ君 立憲・社民の福島みずほです。
民法改正の法案に入る前に、判検交流についてお聞きをいたします。これは、牧山ひろえ委員、そして鈴木宗男委員からもありましたし、私も十一月十七日に質問しております。
生活保護の引下げについて国を訴えた裁判に関して、国の代理人となっていた者が金沢地方裁判所の裁判官になり、生活保護の引下げについて国を訴えたケースを裁判官として担当をしておりました。
十一月十七日、法務委員会での私の答弁に、裁判の公平性や職務の中立公正な遂行に懸念を抱かせることがないよう、かつて裁判所において担当していた訴訟に関与しないなどの対応を行っているところでございますとありますが、実際、公平性欠いているじゃないですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/42
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043・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、法務大臣としての答弁の前提としまして、国側の御指摘の指定代理人を務めた裁判官出身者が裁判官として復帰した後に担当する事件の在り方につきましては、裁判所において判断される事柄でありまして、法務省としてお答えをする立場にはないのではないかと考えています。
その上で申し上げますと、一般論として、法曹は法という客観的な規律に従って活動するものでありまして、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場においても、その立場に応じて職責を全うするものであるというふうに考えています。
したがって、裁判官の職にあった者をいわゆる訟務検事に任命するなどの法曹間の人事交流につきましては、職務上の問題があるとは考えておりませんし、それ自体が直ちに裁判の公正性、中立性を害するものとは考えていないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/43
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044・福島みずほ
○福島みずほ君 法務省は、わざわざ裁判官に訟務局に来てもらっているんですよ。だから、法務省の問題じゃないですか、まず。最高裁の問題でもあるけれど、法務省の問題でもある。この交流をやっていることをやめてほしいということですから、第一次的に判断すべきは法務省です。次が裁判所です。どうですか。
生活保護の引下げについて、論点は一つ、まあ共通なわけです。訟務検事、国の代理人の筆頭指定代理人やっていた者が次に裁判官になる、同じ論点ですよ。これが続いていた。みんなで交流会をやって、この人とこの人、同一人物じゃないかというのが後から分かったんですよ。裁判やっていたんですよ。どうですか。これって公平じゃないと思いますが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/44
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045・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど御指摘のケースにおいては裁判所において判断される事柄であるというふうに答弁申し上げましたし、一般論については先ほど申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/45
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046・福島みずほ
○福島みずほ君 いや、こういうことが起きているということで、問題だということなんですよ。一般論として公平にやりますと言われたって、ちっとも公平じゃないじゃないですか。公平じゃないんですよ。
この件に関して、二〇一六年二月一日、まさに、全国各地で提訴される集団訴訟において、元訟務部付検事が裁判官職務復帰後に事件担当することに強く抗議し、徹底調査を求める公開質問状が法務大臣と最高裁判所長官に対して弁護団からなされています。これ、どう受け止めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/46
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047・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど御答弁させていただいたとおりでありまして、法曹は法という客観的な規律に従って私は活動されているというふうに思っておりますので、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場においても、その立場に応じて私は高い志を持って職責を全うされているものというふうに考えておりますので、人事交流自体が職務上問題があるというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/47
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048・福島みずほ
○福島みずほ君 しかし、人事交流で、二〇一二年、裁判官と検察官の交流を廃止したんですよ。高い識見を持って公平にやるといっても、問題があるから廃止したんですよ。
私は、裁判官が、民事局や例えば内閣の法制局、参議院の法制局や、そういう立法に携わることなどまでも、行政に、それは否定しません。でも、裁判は原告と被告がとことん争うもので、裁判官はその判決を書く存在なんですよ。ですから、検察官と裁判官の交流をやめたんですよ。だとしたら、訟務検事、つまり国の代理人となる訟務局と裁判官の交流も同じようにやめるべきじゃないですか。じゃ、何で裁判官と検察官の交流をやめたんですか。高い識見を持って公平だったら問題ないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/48
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049・吉川崇
○政府参考人(吉川崇君) 刑事分野における交流を廃止した理由についてお答えいたしますと、判検交流の意義としては、まず大臣から申し上げましたが、法務省が所掌する司法制度、民事、刑事の基本法令の立案、訟務事件の遂行等の事務について、裁判実務の経験を有する法律専門家である裁判官を任用する必要があるという点にあると考えられます。また、別の観点として、裁判官が裁判官以外の法律専門職としての経験、その他の多様な外部経験を積むことが、多様で豊かな知識、経験を備えた視野の広い裁判官を確保することにつながるという点にございます。
御指摘の刑事分野における判検交流につきましては、このうち専ら後者の多様で豊かな知識、経験を備えた視野の広い裁判官を確保するという目的で行われていたものでございまして、様々な御指摘を踏まえた上で、必ずしも検察官の職務を裁判官に経験させる必要はないものと考えられたことから、御指摘のように、平成二十四年度に取りやめることにしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/49
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050・福島みずほ
○福島みずほ君 様々な指摘というのは、公平じゃないということですよね。
ですから、私は、検察官と裁判官のこの交流を廃止したんであれば、国の代理人になる被告のところで被告席に座っているんですよ、国の代理人として、と裁判官、これは、ここだけは訟務局との交流は廃止をすべきだということを強く申し上げます。
司法権の独立があるので、個々の裁判官の訴訟指揮について最高裁が言う立場にはないとは思いますが、先ほどの金沢地裁の例では、裁判官を回避していないんですよ、そのまま裁判続行しているんですよ。そして、忌避が認められた、忌避を原告側がやったら忌避は認められました。忌避が認められたということは、やっぱり公平ではないということなんですよ、公平じゃないんですよ。
全国一斉裁判とかあります。そしてまた、この交流を国の代理人と裁判官がやっている。地方に行けば行政部の裁判やりますよ。国の代理人をやって激しく原告側とやり、これをやった人間が裁判官になっちゃいけないですよ。これは徹底してもう廃止すべきだと。
このことを、だから、裁判官から訟務局に来るのも問題、訟務局からまた裁判所に戻って裁判をやるのは問題。類似事件だってたくさんあります。全国一斉のいろんな、アスベストとかいろんな裁判あります。それの担当をやってはいけないんだと。その可能性があるから、それはたまたま同じ人じゃないのということが全国交流集会で分かったけれども、分からないんですよ。こういうことはもうやめるべきだと思います。
優秀な裁判官を裁判所から連れてきて国の代理人やらせるのではなくて、法務省自ら法律家を養成し、あるいは弁護士事務所に委託すればいいじゃないですか、委任すればいいじゃないですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/50
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051・春名茂
○政府参考人(春名茂君) お答え申し上げます。
訟務局におきましては、これまでも弁護士出身者を一定数採用してきているところでございまして、最近三年間で申し上げますと、令和三十一年四月の時点で在籍した者、任期付弁護士職員として在籍した者は十四名、令和二年四月十五名、令和三年四月十七名と、そして令和四年四月十二名ということで、一定数を採用してきたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/51
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052・福島みずほ
○福島みずほ君 採用数を聞いているんではありません。問題ではないかと聞いているんです。採用数はもう既にもらっています。
つまり、それだけ多くの人が来ている。でも、民事局とかそういうところはいいです。でも、国の代理人になる、つまり法廷に行ってみてください。原告がいて、被告がいて、裁判官がいるんです。ここで原告と被告が激しく争うときに、裁判官とその被告側、国の代理人が、まあ一緒、一緒くたというか、ぐるというか、同じサークルというか、入れ替わり立ち替わりやっているというんだったら、国を相手にやる原告、たまったもんじゃないですよ。これ、もう本当にやめてほしい。優秀な裁判官を裁判所から引っ張ってきて、国の代理人やらせて、そして戻す、こんなことやめてください。
裁判官と検察官の交流はやめたんですよ。やめた理由は公平じゃないからでしょう。被告人、弁護人にとってみたら、裁判所と検察官がぐるというか、行ったり来たり行ったり来たりしているんだったら公平じゃないからですよ。同じことはこの民事でもあるんですよ。刑事でやったら民事でもやりましょうよ。訟務検事、もうこれ、法務省の中で人材養成するか、弁護士事務所に委任してください。このことについては、実現するまで本当にこれは問題にしていきます。
齋藤法務大臣、是非これ考えていただきたい。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/52
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053・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 法曹間の人事交流の意義については、もうこれまで申し上げたとおりであります。
訟務分野における法曹の人事交流について、今、福島委員始め、様々な御意見があるのは承知しております。ただ、人事は、法務省が抱えるその時々の政策課題、その優先順位、人材の状況等を総合的に勘案いたしまして、その都度、適材適所の観点からベストの人事を組むという、この大臣のフリーハンドは堅持をしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/53
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054・福島みずほ
○福島みずほ君 行政内部で配置転換するのと訳が違うんですよ。齋藤大臣が行政部の中で配置転換されてきたことと話が違うんですよ。裁判の公平が問われている。これは廃止すべきだということを強く申し上げます。
民法改正についてお聞きをいたします。
離婚後三百日以内に生まれた子は夫の子と推定するが、再婚して子供が生まれたら、後の後婚の夫と推定する、これ余りにハードルが高いということを代表質問で申し上げました。三百日以内に生まれた子で前婚の夫の子となる可能性って、どれぐらいファクトとしてあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/54
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055・金子修
○政府参考人(金子修君) そこの点は統計として取っておりませんので、分かりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/55
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056・福島みずほ
○福島みずほ君 先ほど牧山ひろえ委員からもありましたが、離婚事件担当した弁護士としては、離婚前にやっぱり関係が壊れているか別居しているか破綻しているんですよ。離婚して女性に子供が生まれたら、それは前の夫の子である可能性は本当に低いと実は私は思います。そのときに夫の子と推定される、再婚しなければですね、することで、じゃ本当にやっぱり出せない、出生届出したら前の夫の子となってしまうわけですから、嫡出否認を今度、母、子供に認めますよと言われてもハードル高いんですよ。
出産した直後に裁判やれと言われても、もう本当に肉体的、精神的、経済的にへとへとのときにこれをやらなくちゃいけない。しかも、一旦戸籍に載っちゃうんですよね、前の夫の子と。DV夫だったりすると本当に交渉を持ちたくない。これの救済ってないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/56
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057・金子修
○政府参考人(金子修君) 出生届を提出しない理由に三百日の推定規定があるということは無戸籍の方々からのアンケートでもうかがえるところでありまして、その点については十分考えていかなきゃいけないということでありますが、その対策として今回の法案がございます。
今御質問いただいた、今の御質問、幾つかの要素が入っているかもしれませんが、まず裁判を起こさなきゃいけないという点につきましては、今までお子さんとかお母さんにそもそも否認権を認めるということがされていなかったわけですけれども、この否認権が適切に行使されることによって、再婚されていない場合で、前の夫の子と推定される場合であっても、否認権が適切に行使されるということによって解消が一定程度図られるものだと思っています。
また、そのような手続についての紹介、あるいは裁判所の動向等、無戸籍者の方に寄り添った支援を今度とも引き続き継続して行っていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/57
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058・福島みずほ
○福島みずほ君 嫡出否認の訴えをやることが、これが困難なんですよ。DV夫だったりしたらコンタクトを取らなくちゃいけない。
答弁で、オンラインがあるとか法テラスで頼んだらいいってあるんですが、法テラスだって、これはお金を返さなくちゃいけない。つまり、経済的に大変な女性にとって、時間、労力、エネルギー、前の夫と交渉を持たなくちゃいけない、それとお金の点でも大変です。それを子供を産んだ直後にやれというのは大変なんですよ。だから、出生届を今まで出せなかった、だから無戸籍になったという問題は変わらないと思います。
オンラインでやるというのも、先ほど牧山ひろえ委員からもありましたが、裁判実務では当事者の意見を聞いてオンラインです。でも、これ、DV夫がイエスと言わないとオンライン使えないということではないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/58
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059・杉久武
○委員長(杉久武君) 福島みずほ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/59
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060・福島みずほ
○福島みずほ君 これは、済みません、細かく質問通告していないので、また、木曜日か別のときにまた質問をいたします。
それで、一つは、三百日という推定規定を削除してほしいというのが一つです。今回それを削除していない。削除していないとしても、百歩譲って、例えば単独認知、自分の子だと、つまり離婚した後ですから、それは僕の子ですと認知をした場合に、じゃ、その場合にその父親と認める、あるいは出生届を出しに行くときに、まさにDNA鑑定をきちっと付して、それで前の夫の子としないということなどできると思うんですよ。
これは、もう法務省は、今までの例でも、例えば医師の懐胎証明書で、離婚後懐胎時期に関する証明書の取扱いについてということで、離婚後三百日以内に出生した子の出生届の取扱いに関する法務省民事局長通達が七年五月七日発出をされています。
ですから、医者が、この前の、離婚後に妊娠したという証明書を作るフォーマットがあって、それを持って出生届を出しに行けば、この通知が、通達を出してもらっているので、役所の窓口は前の夫の子と推定しない。ですから、届出等の審査で、市町村長は、出生届の届出書及び医師が作成した懐胎時期に関する証明書による子の懐胎時期が離婚後であるかどうかを審査すると。
具体的には、証明書記載の推定される懐胎時期が離婚後であるかどうかを審査して、審査するわけですよ、窓口で。届出の受理で、市区町村長は、一の審査によって離婚後に懐胎したと認める場合には七百七十二条の推定が及ばないものとしてやると。ですから、戸籍には七百七十二条で推定されない子というふうに書かれるわけですね。やっているじゃないですか。
だとしたら、このことを、DNA鑑定書を、DNAで、これは前の夫の子じゃないということを付ける、あるいは認知があれば、この七百七十二条の推定を覆すということがやってほしいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/60
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061・金子修
○政府参考人(金子修君) 裁判を経ることなく、戸籍の窓口において、嫡出推定が及んでいる子についてその推定されている父の子としない扱いをすることができるかと、そのための手続として何か考えられないのか、あるいは書面として準備すればいいんじゃないかという御質問かと思いますが。
まず、その嫡出推定制度ということの趣旨に照らしますと、裁判手続によることなくその例外を認めるということにつきましては、高度の蓋然性を持つ資料によって例外的な事情が認められる必要があるというふうに考えております。
今認知のことが挙げられましたが、認知は、認知者の意思表示によってされるものでありまして、母や子の同意は必要がない。認知者の子である蓋然性を前提とした制度とは言い難いと思います。したがいまして、任意認知がされたことをもって、別の方に推定が及んでいるにもかかわらず、その例外的な事情を認めることは困難であろうと思います。
それから、推定が及んでいる場合において例外扱いができないかというお話とは別の問題として、戸籍窓口に離婚後に懐胎したことの証明を、医師の証明書があればその離婚前の夫の子として扱うことができるという民事局長通達についても言及がありましたが、これは、そもそも前の夫の子の推定が及んでいない場合の取扱いでございますので、推定が及んでいるにもかかわらず、その推定と異なる扱いをするというものではありません。
つまり、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定するという、この推定規定の外にあるということが医師の証明書で分かる、つまり、婚姻中に懐胎した子ではない、離婚後の懐胎であるということが分かれば七百七十二条の推定規定は及ばない、だから、離婚前の夫の子でないものとして扱えるという理解の下で通達を出しておりまして、推定の例外を医師の診断書で認めたというものではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/61
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062・福島みずほ
○福島みずほ君 しかし、やはり七百七十二条の問題ではあるんですよ。推定はあるけれども、しかし、医者のその証明書があれば七百七十二条によって推定されないというふうに戸籍に書かれるんですよ。やっているじゃないですか。窓口で審査ができないと言ってきたけれども、やれているんですよ。DNA鑑定でもやったらいいじゃないですか。
父親の推定は何のためにあるのか。子供のためだと思いますよ。子供のためですよ。だから、その推定は昆虫のカブトムシのようにきっちりして覆せないものではなくて、別の事情があるということであれば、薄い膜の推定であって、認知をする人がいればその夫の子ですよ。その人の子で、夫というか、その人の子である。そして、DNA鑑定だったら、まさに前の夫の子じゃないという立証はできるんですよ。
医者の妊娠証明、妊娠の証明だってそうだと思いますよ。それは、まさに前の夫の子じゃないという、離婚後に懐胎したということなわけで、私は、それは工夫はできると思っているんです。だって、これ、みなし規定じゃないんですよ。たかだか推定規定じゃないですか。離婚後三百日以内に生まれた子は夫の子と推定するはみなし規定じゃないわけだから、その推定を覆すための工夫はできるというふうに思っています。
だって、現在だって結婚後二百日後に生まれた子は夫の子と推定するとなっているが、実際は実務では結婚後に生まれた子は夫の子と推定しているんですよ。夫の子としているじゃないですか、まあ推定されない嫡出子ですけれども。だから、できるんですよ。こんな、やっぱり離婚後に妊娠したという証明があれば、七百七十二条で推定されない子としているわけです。
強制認知と任意認知のことを局長おっしゃったけれど、強制認知、裁判やったことありますが、まあ嫌々認知ですよ。でも、任意認知はポジティブに自分の子供だとして認知するんですよ。
ですから、子供のためでしょう、この推定も。だとしたら、何で違うのに前の夫の子と推定して戸籍に書くのか。みんなそれが嫌なんですよ。前の夫と交渉するのも嫌だし、前の夫の子と戸籍に書かれるのも嫌だし、それを覆すために嫡出否認の訴えまでやらなくちゃいけないというのがすさまじい負担なんですよ。
だとしたら、実際、子供の妊娠についての医者の証明で、七百二条によって推定されない子と戸籍に書くわけですから、いいんですよ、それで。父親の欄が空欄でも、その後、女の人は認知を求めるか再婚するか、いろんな方法を考えればいいんですよ。認知と結婚があれば準正になるじゃないですか。いろんな手段が取れる。それをやってくれということなんです。
子供のために、子供というか、まあ子供のためにこの改正をやるんでしょう。だとしたら、やっぱり救済されるように、女性と子供が救済されるように、それをお願いしたいと。三百日の推定規定があるけれども、それは薄い膜であって、違う事情で、DNAとか認知とかいろんな手段でそれは覆すということを是非考えていただきたいということを強く申し上げ、質問を終わります。
今日は嫡出とかいろんなことを聞く予定でしたが、それは木曜日にいたします。お願いいたします。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/62
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063・佐々木さやか
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
私も無戸籍の問題について今日はお聞きをしようというふうに思っております。
先ほど福島委員、また牧山委員からも問題提起がたくさんございました。この嫡出推定の制度自体についての在り方を問う御質問をほかの委員の先生方されたなと思って聞いておりましたけれども、本当に子供を中心に、この無戸籍の状態で様々な厳しい状況に置かれた方々を真ん中に据えて、そのためにはどうしたらいいかということ、今回の法改正ではまだ課題が残っているように思いますけれども、法務省としても、引き続きこの点については真剣に考えていっていただきたいというふうに思います。
今回の改正は、まあそういった側面もありますけれども、嫡出推定について、離婚後再婚した場合にはその新しい夫の子という形になるという点、それに伴いまして女性の再婚禁止期間も削除されると、こういった観点から私は評価をすべきかなというふうに思っております。無戸籍の問題についても、全てではありませんけれども、一部その原因が解消される方向になるわけでございます。
その上で、先ほどからも御指摘があるように、三百日の推定規定自体は残りますので、再婚をしなかった場合、そういった場合には無戸籍者の問題というのは残るわけですけれども、これについては今回の改正ではどのように対応をしているのか、改めて教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/63
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064・金子修
○政府参考人(金子修君) 御指摘のとおり、本改正法案においても、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれた子について、母が子の出生のときまでに再婚していない場合は子は前夫の子と推定されることとなります。本改正法案では、前夫の子と推定される子について、前夫のみならず子及び母にも否認権を認めることとしており、母が再婚していない場合でも否認権が適切に行使されることにより無戸籍者問題の解消が図られるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/64
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065・佐々木さやか
○佐々木さやか君 この嫡出否認の訴えというものを、これまでは提起できるのが夫かつ期間が一年というものであったものを、母又は子も提起ができる、また期間についても三年ということで改正をされるわけでございます。
ですので、こういった新しい制度ができるという点で前進かなとは思いますけれども、今日もほかの委員から御指摘があったように、こういった訴えを、裁判を前の夫に対して提起すること自体が難しいんだと、こういうお声もあるわけであります。おっしゃるとおり、三年という期間、一年はなかなか難しいと思います。出産してから一年以内に、本当に体も大変な中でどこかに相談に行くとかいうことも難しいでしょう。ただ、三年というのもあっという間に過ぎますので、こうした訴えが例えばあるよという制度の周知自体もどうやってするのかとか、それから費用の点もそうでしょう。弁護士に依頼をするとなったらそういった費用も掛かりますし、また、その前の夫がDV加害者だったりということで、なかなかコンタクトを取ることも難しいということもあると思います。
こういったこともきめ細やかな支援、こういった訴えの制度が新しくできましたよというだけではなくて、じゃ、それを実際に使えるのかと。できるだけ必要な方には使っていただけるような支援というものが必要だと思いますが、この点はどのように考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/65
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066・金子修
○政府参考人(金子修君) これまで法務省では、無戸籍者の解消の取組として、市区町村等から把握した情報に基づきまして、法務局や市区町村の職員が無戸籍者の母親等に定期的に連絡をしたり個別に訪問するなど、一人一人に寄り添い、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続が取られるよう支援を行ってきたところであります。
法務省としては、これらの支援を今後とも継続するとともに、施行日前に生まれた無戸籍者、その母親に対しては、新たに自ら嫡出否認の訴えを提起することができるようになったことを個別に通知することなどを含め、あるいは今後想定される手続の内容や法テラスの活用等も含めて必要な取組の周知を含めて、その機会を、訴え提起の機会を失することがないよう、必要な手続を取ることができるよう取組を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/66
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067・佐々木さやか
○佐々木さやか君 そういった支援、できるだけしっかりと行政内の、地方自治体の中の関係部局などもしっかり連携をしていただきながら、できる限りの支援をしていただきたいと思います。
ただ、やはり前の夫の子供として一度は戸籍に載ることをためらったりとか、それから様々な事情でそういった行政とつながれないとか、そうしたことから今後も残念ながら無戸籍となる方が出てしまうおそれはあるというふうに思います。ですので、引き続き、この無戸籍者に対する、そもそもこの無戸籍の方の把握と、それからそれに対する支援、様々なことを本当に今までもやってきてはいただいておりますけれども、今回の改正がなされたからといって、そういったこれまでの取組がおろそかにならないように、むしろより力を入れていただく必要があるというふうに思っております。
この無戸籍者の把握とそれから支援、報道などを拝見しますと、なかなかこの行政の、把握はされているけれども、実際に、じゃ、どんな支援がなされているのか、十分な支援がなされていないんじゃないかという問題提起も聞くところでございます。こういった無戸籍者の把握と支援について今後どのように取り組んでいくのか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/67
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068・金子修
○政府参考人(金子修君) 無戸籍者の方の情報につきましては、無戸籍の方やその母親が市区町村の戸籍や住民票の窓口などに相談に来られた際に把握されることが多いほか、市区町村の福祉担当部署や教育委員会等においてもこれに接することがあることから、これまでも、無戸籍者の情報に接した場合には、市区町村の戸籍担当部署又は法務局に情報提供するよう、それらの機関に対して協力を依頼してきたところでございます。このような把握につきましては、今後とも引き続き継続することとしております。
そして、これらにより把握した情報に基づき、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続が取られるよう支援するほか、各法務局等に裁判費用等について相談があった場合には法テラスの民事法律扶助制度を案内する、法務省に無戸籍者ゼロタスクフォースを設置するとともに、各法務局において市区町村、弁護士会等の関係機関と協議会を設置するなど、関係機関との連絡、連携の下に一人一人に寄り添った支援を行っているところでございますけれども、このような把握と支援の取組、いずれもしっかりと継続するとともに、無戸籍者として把握することができていない方への周知も重要であることを踏まえまして、関係機関、関係団体とも連携して、広く一般向けに法務省ホームページなどを通じて制度の周知を図ってまいりたいと考えております。
また、今後は、特にこの法改正の効果を検証するためにも、無戸籍者の把握を継続していくことが重要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/68
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069・佐々木さやか
○佐々木さやか君 支援ということについて、この戸籍を取得していただくことへの支援も重要ですし、ただ、この無戸籍状態にあるということは、様々な経済的困窮とか、それから子供たちの学習の問題とか、いろんな困難な状況に置かれていることが想像できますので、そういった、まあ法務省の管轄ではないかもしれませんけれども、福祉的な行政支援にもきちんとつながるように連携を取っていただきたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/69
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070・梅村みずほ
○梅村みずほ君 よろしくお願いいたします。日本維新の会の梅村みずほでございます。
大臣、先日の本会議での答弁、大変丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございます。
今回の民法改正は、この子供が誰の子供であるのかといったことでありますとか、また懲戒権の削除ということで、子供に大変関わりの深い法案で重要だなと思っております。
本日の質問は、先日、本会議において大臣から御答弁いただきました大臣のお言葉も基に質問を進めさせていただきたいと思っております。
まず、この民法の改正については、明治時代から変わっていなかった時代遅れの法律がやっと変わったということで、一歩前進だと私も認識しておりますけれども、明治から昭和になっただけで、全然令和にはなっていないなというのが実感のところでございます。それは、先ほど来からこの委員会でも出ておりますDNA鑑定というものを全く想定していないからなんですね。
私は、本会議での質問においても大臣に、この父子関係というのは、DNA鑑定の精度が高いわけですから、これを活用すべきであるというふうに訴えました。そうすると、大臣はこのようにおっしゃったわけです。DNA鑑定による父子決定だと家庭の平穏を害する懸念があるという言葉が出てきたんですね。この言葉、ひょっとして世の中知らない方が幸せなことがあるとでもおっしゃりたいのかなと私は受け止めたわけなんです。
この家庭の平穏を害する懸念がDNA鑑定に起こり得るとした場合、やっぱりその父親とされている男性が本当の生物学、本当のと言ったらあれですね、生物学的な父親じゃなかった場合、その家庭に亀裂が入るじゃないか、これ一定事実だと思うんですよね。実際にそういった家庭というのはこの日本にたくさんあります。
じゃ、生まれた直後にDNA鑑定をして、あのう、お父さん、残念ながらこの子供はあなたの子供ではありませんでしたと言われたときに家庭に入る亀裂、衝撃ですね、これやっぱり家庭の平穏を害する懸念あるわけですよ。
けれども、一方で、じゃ、DNA鑑定を出生後にすぐ行わず、十歳、十五歳と思春期に差しかかるなり、小学生なり、もっと幼児期なりで、生物学的な父親が、実は父親とされていた男性の子供ではなかったということが判明しました。これ、家庭の平穏を害しませんかといったら害すると私は思うんですね。
世の中には、やっぱり成長してから、愛情もお金も時間もたっぷり掛けて育ててもらったはずなのに、ある日そういった事実が判明し、非常に微妙な親子関係になってしまったという方々いらっしゃいます。それは家庭の平穏を害しているというのが私の認識なんですね。
これはもう個別の各家庭のケースによるとは思いますけれども、出生直後と子がある程度成長した後、生物学的な父子関係が認められないと判明した場合は、どちらがより家庭の平穏を害すると考えますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/70
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071・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御質問の中にもありましたが、ケースによって非常に多様になっていると思います。
DNA鑑定のお話もありましたけど、これ、鑑定を私は受けないと言われてしまうと、もう確定できないということにもなります。そういうこともあるものですから、嫡出推定制度のそもそもの意義というのは、婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで、子の出生の時点でしっかりと父子関係を定めて子の地位の安定を図るということでありまして、子の出生時において家庭の平穏が害されないようにするということにあると考えられるわけであります。そのため、血縁関係がないことをもって事後的に法律上の父子関係を否定することを制限することが子の利益や家庭の平穏を維持するために必要ではないかということで考えられているわけであります。
もっとも、嫡出推定制度によって父を定めたとしましても、その後、おっしゃるように、父と子の間に血縁関係がないことが明らかになるような、そういう場合におきましては、結果的に家庭の平穏が害されることもあり得るんだろうというふうに思います。
ただ、冒頭申し上げたことと繰り返しになりますけど、各家庭の状況や父と子の間に血縁関係がないことが明らかになった経緯などによっていろいろ事情が異なると考えられますので、一概にはお答えすることは難しいかなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/71
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072・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
今の御答弁、一定理解もできるんですが、子供中心には考えられていないなというのが正直な感想です。
子供が成長したときに、女の子だった場合に、こう言われる子がいるんだそうです。自分の血のつながっていない娘なんだと分かったときに、複雑な感情をやっぱり父親も抱きますよね。大切な我が子と思って今までどおり育てようと思う気持ちと、でも誰の子供か分からない、俺の子じゃないという娘を目の前にして、ぽろっとおまえは母親に似てきたなという言葉を子供が受けたときに、どんなショックを受けるか想像してみてください。そして、自分の父親と信じて疑わなかったその人に向けられる冷めた目線、そして自分の母親に対して、お母さん、あなたは何てことをしたのというような、まあそれは不貞のことも限りませんけれども、例えば、今回みたいに結婚前の母親自身も現夫の子と信じていたけれども生物学的には違ったと判明したときは、本当に三者三様で苦しむことになるわけです。
特に子供の苦しみというのは、なかなか大人には理解できるものではないと思います。世の中には、兄弟の上の子はお父さんの子供だったけど、僕は違って、お母さんと一緒に出ていくことになったというようなケースもあります。そうなったときに、どうして僕はほかの兄弟と違うんだろうとやっぱり責めることにもなりますよね、いろんなところを責めることになると思います。子供を中心に法律を考えてほしいというのが私の率直な意見なんですね。
自分が赤ちゃんのときに家庭に亀裂が入って、自分の子じゃなかったから、じゃ別れましょうとなったときに、それはそれで悲しいことではありますが、でもそのときには物心がないわけです。生物学的には父親ではない、けれども法的には父親である男性との楽しい思い出も愛情もまだその段階では芽生えていないわけですから、それがその楽しい思い出や愛情というのが芽生えた後に生物学的な事実が判明したときの衝撃だとか子に与える影響というものを考えれば、もっとこのDNA鑑定というものを真っ正面から考えるべきだと私は思います。
この水は酸性なのかアルカリ性なのかとなったときに、いや、もうレモンが周りにいっぱいあるからとか石けんが周りにあるからとかで推定しないですよ、リトマス試験紙持ってくるんですよ。九九・九%の精度のDNA鑑定があるわけですから、やはり様々な推定がされるような事例についてはDNA鑑定というのを積極的に認めるべきですし、特に今日は女性議員から、四名、そのDNA鑑定であるとか、再婚した場合には新しい夫の子供として認められるけれども、再婚していなかった場合はどうなのかとなったときに、女性は知っていますよね、前の夫の子ではないということが分かっていたりもするわけです。それを前の夫との子とされるというのは、もう明治から一歩脱して昭和初期ですか、で止まっていいんですかという話だと思います。是非、DNA鑑定による父子関係の決定というものをもっと前向きに捉えていただきたいというふうに思います。
先ほど大臣がおっしゃった、父が鑑定に応じない際に父の子が確保されないという懸念ですね、これもやっぱり義務化されていないとそうなるわけなんですけれども、もう基本的に義務化すればいいと思っています。特に、こういった離婚、結婚の前後ですとか、そういった不確定要素が大きい場合には義務化する、それだけで済む話なのではないかと思いますし、それは責任から逃げているのではないかというふうに思うわけです。
また、例えば夫婦にもいろんなケースがあって、おなかの子が自分の子ではないと知っていますよと、でも、この子を自分の子として育てるんだ、だからDNA鑑定は要りませんという夫婦の合意がある場合のみに関してはそういったDNA鑑定を必要としないというような法の立て付けもつくれるはずなんですね。子供の幸せというものを第一に置いて考えればもっと違う方法があったのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/72
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073・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほどお話しになったケースにおいて、確かに、成長してから突然事実が分かるというようなケースについては、確かに、委員の御指摘、相当子供に衝撃があるんだろうなというのは理解できるんですけど、一方で、出生した時点できちんと父親を確定をしておく、推定をしておくということもまた一方で重要な、子供の立場に立った議論ではないかと思うんですね。
それで、今、DNAの鑑定の話がありました。繰り返しになりますけど、まず、義務化ができていない、であれば、鑑定に応じなければ子の父が確保されないというまずおそれが生じるということであります。
御指摘のように、夫と妻が合意した場合に限りDNA型鑑定をしたり、しなくても、どっちでもいいんですけど、嫡出推定を及ぼすというような考え方につきましては、実の親子関係は当事者の意思によって処分できないと解されていることとの関係で、やはり慎重な検討が必要なんだろうというふうに考えています。また、そのような合意がない場合において父がDNA型鑑定に応じないときには、子の父が確保されないということであります。
また一方、その義務化することについての是非は、これ恐らく様々な議論があると思いますので、これもまた国民的議論を見極めてからでないと前進させることはできないかなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/73
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074・梅村みずほ
○梅村みずほ君 これ素朴な疑問なんですけど、父親がDNA鑑定を拒否するケースってそんなあるかなと思うんですよ。女性が拒否するという方が多いんじゃないかな、やめてくださいと。だって、女性だけは分かるんですから。実はこの男性の子供ではないということを知っていたら、やっぱりそれ明るみになるとまずいという女性側の心理的な作用で、やめてほしいというのは女性の方が多いんじゃないかなと思います。
男性は、やっぱり一年以内に俺の子ではないというふうに申し立てないと養育費も払い続けなくてはいけないというわけですね。今この日本に生きている方の中では、えっ、俺の子じゃないのって判明した後も渋々育てている、まあ渋々とは言いませんけれども、ケース・バイ・ケースですけれども、複雑な思いで子育てをしている方もいらっしゃるわけです。なので、それを男性が拒否した場合、どれぐらいその数あるんですかねというところも知りたいと思うところでもあります。
いずれにしましても、九九・九%の精度を誇るDNA鑑定による父子関係の決定の是非について積極的に検討すべきと考えますけれども、大臣がどのようにお考えか。また、こういった科学的な技術が確立しているにもかかわらず法に生かさない点が、日本が政治において科学的知見を軽視していると言われるゆえんではないかと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/74
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075・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 若干繰り返しになりますが、嫡出推定制度の意義というのは、婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで、子の出生の時点で父子関係を定め、子の地位の安定を図っていくということに意義があるわけであります。DNA型鑑定等が発達した現在におきましても、このような嫡出推定制度の意義や重要性は私は失われていないのではないかと考えておりますので、この嫡出推定制度を維持することが相当である、このように考えております。
親子法制を含む民事基本法制の見直しに当たりましては、科学的な合理性のみならず、国民の意識や社会情勢の変化なども考慮することが必要なんだろうと考えておりまして、父子関係を定める際にDNA型鑑定を必ずしも用いていないことをもって科学的知見を軽視しているとは私は言えないんじゃないかと考えています。
加えて、法務省が把握している限りにおきまして、諸外国も子の父を定める婚姻関係を基礎とする推定規定を設けておりまして、出生時においてDNA型鑑定を必要とする国などは見当たらないんじゃないかというふうに考えています。したがって、外国との比較をしても、日本が特に科学的知見を軽視しているといった御指摘は必ずしも当たらないんではないかなというふうには思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/75
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076・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
イギリスのコモンローの原則もありますけれども、ほかもやっていないからうちもやらなくていいということで、必要性がささやかれ始めているというか、声が大きくなっているのに、別にこれでいいんじゃないかというふうに私はできないと思っています。これからどんどん科学の技術も進歩していくわけですね。全くもって政治がそういった科学的進歩に追い付いていないというふうに私は認識しておりますので、引き続き前向きに検討していただきたいと思うわけなんですけれども。
ここで、ちょっと質問通告していないんですけれども、大臣は托卵女子という言葉を御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/76
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077・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 済みません、ちょっともう一回言っていただかなきゃ分からないような状況ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/77
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078・梅村みずほ
○梅村みずほ君 托卵女子です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/78
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079・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) いや、申し訳ありません、勉強不足です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/79
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080・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
私も、この民法を勉強するに当たって出会った言葉なんですけれども、カッコウとか、鳥類の中では、違う雄の鳥の卵を、つがいの夫である鳥ですね、雄の鳥に育てさせるという、そのような生態になぞらえて托卵女子という言葉が存在するのだそうです。要するに、婚姻関係にあって不貞でできた子供を夫の子だとして育てるというような場合、托卵女子というらしいんですけれども。
実は、これは離婚、再婚の問題ではなくて、婚姻関係にあって生まれた子供についても、最近は、自分の子ではないというふうに後々生物学的に判明するケースというのも問題になることがございます。
やっぱりDNA鑑定というものは積極的に用いるべきだと私は考えていますけれども、それもやっぱりグラデーションがあると思っているんですね。この離婚、再婚の前後だけというふうにすることもできますし、はたから見て円満な婚姻関係が継続している場合にも導入する可能性というのも今後は検討していかなくてはいけないと思うんです。
先ほど来から申し上げておりますように、やはり父親も子供もお互い親子と信じて疑わずに生活をしていくわけなんですが、ある日、生物学的に親子関係がなかったということになりますと様々な影響があるわけなんですね。これは、例えば離婚をして、前の夫の子供ではないと分かっているのに前の夫の子とされてしまう、特にDVなど問題がある場合は本当に女性にとって負担になって、女性が苦しむことになるわけなんですけれども、こういった托卵女子という存在が家庭内にあって、奥様がまさかほかの男性の子供を身ごもっていたとなると、今度は男性側が非常に苦しまれるということになります。
男性の尊厳を守るためにも、こういったDNA鑑定で父子関係を見るというのは有効であると考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/80
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081・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 今まで御答弁をさせていただいていることに尽きるわけでありますけど、この嫡出推定制度そのものは、出生時において子の地位をとにかく安定をさせなくてはいけないというところから出発をしているものでありますので、そのことにおいては私は適切な制度ではないかというふうに考えております。
その後、様々な、例えば血縁関係、出てきたらどうかというお話もありましたけれども、とにかく出生時においてきちんとした確定をしていくということは私は大事だろうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/81
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082・梅村みずほ
○梅村みずほ君 まさにです。出生時に確定をする、後々親子が傷つかないように出生時に確定するというのが私も問題意識として共通しているところなんですね。なので、出生時のDNA鑑定がとても大事だと思っています。
この爆発物が出生のときにばあんとなって、もうこれどうしようという問題が出たときに、例えばいろんな可能性があります、妊娠って。性暴力によってできた場合は、じゃ、それはしかるべき支援につなげないといけなかったりとか、犯人を捕まえたりとかいう必要性だって出てくるわけですし、やはり、あっ、僕の子供だと思っていたけど僕の子供じゃなかったんだね、じゃ結婚できないよとなったら、それはそこでやっぱり考えるべきなんです。話合いを持つべきであって、真正面から向き合うべき事実が出てきた、それが出生時なのか成長した段階なのか、一生隠し通せたらそれでいいのかという問題だと思うんです。その爆発物が爆発しなかったらそれでいいよねという問題ではないというふうに私は認識しております。
ここで、配付資料を見ていただきたいんですけれども、一昨日のニュースです。横浜市の公園で乳児の遺体が見付かって、二十歳の女性が逮捕されたということです。公園で赤ちゃんが見付かる、亡くなっている、珍しいニュースでは本当に残念ながらなくなってきていますよね。またかと胸がぎゅっと痛くなる、こういったニュースはもうたくさんだと考えている国民も多いと思います。で、やっぱり逮捕されるんです。
六月にもありました。北海道の新千歳空港の近くの千歳駅で、コインロッカーでした、そのときは。女性が、二十二歳、逮捕されました。黙秘を続けています。どんな背景があっただろうと。保護責任者遺棄致死で逮捕されて、これから裁きを受けて罪を償わなくてはいけないんですけれども、そのときにもやっぱり生物学的な父親はどこにいるんですかという問題には、やっぱり皆さん頭をよぎるものの、法律でどうしようという話にはなかなか及ばないんですね。
このページをめくっていただきますと、配付資料なんですけれども、こちらは十月の北海道放送ニュースということで、これは先ほどもお伝えいたしました千歳駅のニュースを受けて関連の記事が出ていたわけなんですけれども、この記事に出てくるのは、ちょっと長かったのでテキストだけ抜かせていただいておりますけれども、どういった概要かといいますと、望まぬ妊娠をした方がいる、軽度の知的障害があります、就労支援施設で働いていたけれどもお給料が少なくて風俗で働かれた、嫌だと言ったけれども身勝手なお客さんによって妊娠させられてしまったというようなケースです。
そうなったときに、やっぱり、この方は支援の手につながることができました。結果、特別養子縁組という選択肢を知ることができてその選択をなさったわけなんですけれども、そういった支援につながらなかったらどうなっていたか分からないとおっしゃっているんですね。そういった女性がたくさんいるんです。
じゃ、この、かずこさんという仮称で出てくるんですけれども、かずこさんを妊娠させたそのお客さんは今何しているでしょうか。同じことしているんじゃないですかねと私は思います。
根本的な問題の解決、どうしたらいいんですかというふうに考えたときに、じゃ、支援施設を増やせばそれでいいんですかと、そうではないですよね、ほかにも打たなくてはいけない手がありますよねといったときにも、このDNA鑑定というものが父子関係の決定に重要、非常に深く関わってくるんだということになると、女性側も男性側も、あっ、これはひょっとしてという危機意識が働いてくると思うんです。逃げられない、黙っていればいいという問題ではないのだという社会にしていく必要性が私はあると思います。
この虐待死や実子に対する殺人というものが、子供が幼ければ幼いほど起こるんですね。本会議でも申し上げましたけれども、虐待死の中でも断トツで多いのがゼロ歳ゼロ日児の死亡事案です。
こういった虐待死、実子に対する殺人を犯した母親のニュースが後を絶えない現状において、生物学的な父親の責任について大臣はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/82
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083・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、民法においては、法律上の父をどのように定めるか、また法律上の父が子に対してどのような責任を負うかといった問題を規律している、これが民法であります。
お尋ねの生物学上の父親の責任、これにつきましては、民法上の規律とは別個に様々な視点から論じられるべき問題であるというふうに考えておりまして、そうなりますと法務省の所管を超える問題になりますので、法務大臣としてのお答えは困難かなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/83
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084・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
そうですね、民法でいうとこうですと。法務大臣ですから、特にこの質疑は民法改正に対する質疑ですから、そのようにお答えになるのは大臣として正しかろうというふうに私も思いますけれども、道義上、責任ないよねとはやっぱり誰も言えないと私は考えるんですね。
じゃ、質問要旨一つ飛ばして、九番行かせていただきたいんですけれども、この別個に様々な視点から論じられるべきという言葉は、本会議でも大臣お使いになっていた言葉です。DNA鑑定等により生物学上の父を明らかにする必要性について、法務大臣は、民法上の規律とは別個に様々な視点から論じられるべきとお答えになられました。具体的にどのような視点から論じられるべきとお考えか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/84
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085・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私の御指摘の答弁は、生物学上の父が子に対して負うべき責任の在り方についてお答えをしたものであります。
その上で、その生物学上の父を明らかにする必要性ということであれば法務省の所管を超えるなというお話をさせていただいたんですが、例えば、具体的にということでしたので、子の福祉をどう考えるかとか、プライバシーの保護をどう考えるかとかいう視点も考えられるのではないかなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/85
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086・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと思います。これは法務省だけではなくて、子の福祉ということで厚生労働省ですね、プライバシーも当然ですし、私は文科省にも関わってくる問題だと思っています、この後聞くことになりますけれども。
本当に様々な視点から論じられるべきトピックというのは、この国政には様々存在しているんですね。悲しい事案、苦しむ人々が生まれるのはどういうときかといったら、全てではないですけれども、やっぱりこういった縦割りの中で、ああ、そこはいろんな視点が必要だよねでおざなりにされがちなところ、ここに人々の苦しみというのが多数存在しているのではないかと思います。
こども家庭庁が今準備に掛かられていまして、まず子供に関わるマターというものは特にそちらに期待が掛かるわけですけれども、本当に負荷が大きいセクションになるだろうなと思っています。なので、こども家庭庁にお任せではなくて、やっぱり法律に何か関わっているのであれば、自分事として取り組んでほしいというのが心からの願いです。
それでは、質問要旨一つ戻りまして、先ほど文科省も関わりがあると思っていた部分について、今日は文科省からも、政務に、大変お忙しい中、恐れ入りますけれども、お答えいただきたく、質問をさせていただきます。
こういった予期せぬ妊娠などに起因する虐待死、これは防止していかなくてはいけないというのは国民の総意と言ってもいいかと思いますけれども、一方で、日本の子供たちというのはまともな性教育を受けられていないというのが私の認識です。特に、女性、男性で分けるわけではないんですけれども、今の法律上、DNA鑑定によって父子関係を確定するということが余り法律上はないわけですから、余りというか、ないわけですから、逃げられてしまうというのが実際あるわけなんですね。
男性の責任というものをしっかりと受け止めていただくために、男の子こそ性教育必要じゃないかと思うんですね。女の子はやっぱりリスクがあるので、母親も必死に教えます。変な人に付いていっちゃ駄目だよと、変な人といっても変な格好をしているわけじゃなくて普通に見えるんだよとか、もう必死に伝えるわけですよ。もうそれは必死に、私も娘いますけれども、息子にも自分なりに、小学校上がる前に性教育は自分で思う一通りのことは伝えています。それを知っておかないとどんなことになるのか。人を傷つけ、人生を狂わせていく、そういったことがあるわけですから。
これはもう性教育というと、セックスの仕方を教えるのかというふうに反対する方々いらっしゃいますけれども、そうではないです。社会保障費の増大にもつながってくることであり、少子化どうするのかの問題にもつながってくるかもしれない。国民の幸福を追求する権利にも深く関わっているものであって、私たちのアイデンティティーにも関わることであって、生命の源にまつわる重要な知識なんですね。
そこで、問題になっているのが学習指導要領の歯止め規定です。妊娠に至る過程とか、精子と卵子が出会うまでとか、そういったことは習うわけなんですけれども、じゃ、どうやったら子供できるんだというところはもうネットで学べと、ユーチューブで見ろと、まあユーチューブでもいろいろ規制掛かって見れなくなりますけれども、いろんなデジタル媒体から子供たちというのは情報取っていますが、それが正しいわけではないですよね。
歯止め規定を廃して義務教育中に性教育を実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/86
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087・伊藤孝江
○大臣政務官(伊藤孝江君) お答えいたします。
学校における性に関する指導につきましては、子供たち自身が性に関して正しく理解し適切な行動が取れるよう、児童生徒の発達段階に応じて、受精、妊娠、性感染症の予防などの身体的側面のみならず、異性の尊重、性情報への適切な対処など、様々な観点からの指導を行うこととしております。
中でも中学校の生徒に対しては、妊娠が可能となる体に成長していることや、性衝動に任せて行動することが予期せぬ妊娠を招く可能性があるということを指導することで、妊娠するおそれのある行動は適切ではないということを理解させることがまず重要であるというふうに考えております。
そこで、中学校における性に関する指導に当たりましては、個々の生徒間で発達の段階の差異が大きいこと、また児童生徒や保護者、教職員が持つ性に対する価値観が多様であることなどから、集団で一律に指導する内容と、個々の生徒の抱えている問題に応じ個別に指導する内容とを区別して指導することとしております。
このような中で、全ての中学生に共通に指導する内容としては妊娠の経過は取り扱わないこととしておりますが、個々の生徒の状況などを踏まえ個別に指導することも含めて、現行の学習指導要領に基づく着実な指導に努めているところでもあります。
文部科学省としては、各学校において、子供たちの性と健康に関する課題に対応するため、個別指導の実施に向けた指導、相談体制の充実を図るとともに、各自治体の保健部局が実施をする性と健康に関する普及啓発、相談対応等について、教育委員会や学校との連携協力が促進されるよう努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/87
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088・梅村みずほ
○梅村みずほ君 伊藤政務官、ありがとうございます。政務官のせいではないということを重々承知した上で、済みません、聞き飽きた答弁です。
個別の発達段階があるから一律の教育とそれぞれの子供に対してと分けなきゃいけないんだ、周囲との合意形成必要だとか、そのそばで何が起こっているか。小学校四年生が小学校四年生と学校のトイレで性行為を行うんですよ。そういう時代だということを分かっていないんじゃないですか。
何回これ言い続けたら子供たちの命守ってくれるんですか。小学生でランドセルしょっているのに妊娠している子供がいるじゃないですか。その危機感が何でこの国会にはこんなに薄いのかと。だから、普通の主婦が国会に来なくちゃいけなくなっているんですよ。国会に来て三年たちます。性教育やってくれやってくれといろんな議会で言ってきましたよ。もうびくともしない。諦めて民間に帰りたくなる。これが政治の実態です。何で言っているか。赤ちゃん死ぬからですよ、命奪われるからですよ。こういう事件に出てくる女性が後を絶たないからですよ。その危機感を是非とも共有していただきたく思います。
では、次の質問ですけれども、十番になります。
今回は国籍法も併せて改正されるわけなんですけれども、この国籍法、日本国籍を取得する子供たち、実は認知の虚偽があったという場合には日本国籍じゃなくなってしまいますよと、これもやっぱりその子にとっては大変悲しいことです。日本人だと思って僕、私、生きてきたと。その子が日本人ではなかったとされたときの衝撃というのは、これもやはりいかばかりかと思うんですね。
これこそ本当に、出生時あるいは認知のときにDNA鑑定を行って父子関係を確定すべきではないかと思いますが、齋藤大臣、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/88
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089・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 民法において、認知の届出をするときにDNA型鑑定の結果の提出、これを義務付けるということになりますと、恐らくその手続的な負担がかえって認知届を提出することの支障になってしまう、そういうおそれもあるのではないかと思っています。
それに加えまして、戸籍の窓口における形式的審査によって、そのDNA型鑑定が適正に実施されたものであるかといった点について的確に判断するのもなかなか難しいのではないかなというふうに考えられるところでありますので、国籍法の第三条に基づく国籍取得の前提となる認知であるか否かにかかわらず、この認知の届出の際にDNA型鑑定の結果の提出を義務付けるということについてはなかなか慎重な検討が必要なんじゃないかなというふうに今思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/89
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090・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
手続的な負担であるとか形式的な審査、適正にDNA鑑定が実施されたのかどうかと比して子供が受ける衝撃はどうですかとなったときに、それはクリアするべく考えるのが政治の役割なのではないかというふうに私は思います。自分の血が日本国籍を引いているか否かにかかわらず、子供たちは元気にこの国で生まれて、生まれてはどうか分からないですけど、育つわけですよね。日本人として途中まで育つわけですよね。そこからそれが間違っていましたと言われたときに子供がどう思うのかという衝撃。もっと子供を大切にしていただきたい。手続というのは煩雑になるかもしれませんが、煩雑になる方が、子供が衝撃受けるよりも問題ですかとなると、一考の余地はあると私は考えております。
では、続きまして、懲戒権についてお伺いしたいと思います。
今回は、この民法の法文から懲戒権という言葉が削除されるということで、私はこれは大変好意的に考えております。特に、虐待を受けても、僕が悪い子だから、私が言うことを聞かないからだと自分を責めて耐え続ける子供がいるけれども、ちょっと待ってください、あなたはちゃんと、手を上げられずに、痛い思いをせずに、御飯もらってすくすく育つ権利があるんだよということを子供たち知らないんですね。
ですから、子どもの権利条約に、一九九四年、日本は批准をしているわけです。日本の憲法上も、そして法律上も、様々子供にとって大切な権利というのは明記されているわけなんですけれども、それを知らないということで、子供の権利についてもっと子供たちに教えていく必要性があるんじゃないですかというふうに先日の本会議で問いましたところ、学校における人権教室を行っていますよという御答弁がございました。
そこで、お伺いします。
学校における人権教室は、全国の小中学校の何%程度実施されているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/90
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091・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねのようなパーセンテージについては把握してございませんが、関連する数値として、小中学生を対象として実施した人権教室の延べ参加人数について申し上げますと、令和三年度、二年度はコロナの関係で若干少なくなっておりますけれども、令和三年度は延べ約五十万六千人でございます。過去五年間のトータルで見ますと、延べ三百十六万六千人というふうになってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/91
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092・梅村みずほ
○梅村みずほ君 全国の小中学生には程遠い数字なのではないかなと思いますし、やっぱりコロナ禍で少なくなってしまうんだというところですね。コロナ禍だろうが何だろうが、子供に教えることが必要な知識ではないですかというところを私は問いたいので。
やっぱり文科省でも必要だという認識から、文科省で学習指導要領で、ちゃんと子どもの権利条約、私は子どもの権利条約が非常に子供にとってなじみやすいというふうに思っているんです。日本の法文、憲法もそうですけれども、法律の法文って非常に難しくて、かなりそしゃくしないと分からない。子どもの権利条約の四十条というのは非常に教えるサイドとしても分かりやすいのではないかということで、私の地元大阪でも学校教育に積極的に取り入れている学校があって、やっぱり効果が出ているんですね。
これ、以前の法務委員会でもちらっと御紹介しましたけれども、生野南小学校の生きる教育といいまして、ちょっと統合ありまして、今、田島南小学校となっているんですけれども、本当に非常に荒れた小学校、子供たちがカッターナイフやコンパスの先を持ち歩いてうろうろしていると、学校の先生にはおはようございますの代わりに死ね、ぼけと言って入ってくると。そういったような学校で、子供たちが、年間に百件以上の暴力沙汰があって、うち三十件病院にかからなくちゃいけなかった。でも、それが、病院に行く件数がゼロ件になって、学力も上がりましたという結果が出ている。そこで何やったかといったら、権利について徹底的に教える。暴力じゃなくて口で言おうねと、国語教育に力を入れていった。そういうやっぱり教育には力がありますので、教育でやっていただかないと、子供の命と体と人生は守れないという認識です。
ちょっと時間があと一問ぐらいしか聞けないかなと思いますので、一つ文科省にお伺いしたいと思います。十五番、質問よろしいですか。
懲戒権に根拠を持つ教職員の叱責、注意が一部の体罰や不適切な指導に結び付いているのではないかと私は考えています。やっぱり指導死という言葉もあるように、学校の先生からひどい仕打ちを受ける、はたから見たら虐待じゃないかと思われるようなケースもあるわけなんですね。それが懲戒権というところに根拠を持っているのではないかと思っていますので、懲戒権という言葉を学校教育法から削除すべきではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/92
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093・伊藤孝江
○大臣政務官(伊藤孝江君) 学校教育法に規定をします懲戒権は、学校が教育目的を達成するため、教育上必要な範囲で叱責や注意、退学、停学等を行うものであり、削除という観点では考えておりません。
ただ一方で、体罰は学校教育法第十一条で禁止をされているとともに、教職員が学校教育法で定める懲戒権の範囲を逸脱し体罰や不適切な行動を行うことは、不登校や自殺のきっかけにもなり得ることから、決して許されないものと考えております。
改訂版の生徒指導提要におきましても、体罰の禁止に加え、威圧的、感情的な言動で指導するといった不適切な指導についても具体的に示すなど、今後も不適切な指導や体罰の根絶に向けて全力で取組を進めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/93
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094・梅村みずほ
○梅村みずほ君 こちらも引き続き議論させていただきたいと思います。
本日は厚労省から本田政務官もお越しいただいたのに、質問ができず本当に申し訳ございませんでした。
以上で質問を終了します。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/94
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095・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合です。
通告に従って質問に入らせていただきたいと思いますが、ここまで質疑を聞かせていただいておりまして、ちょっと金子民事局長に確認をさせていただきたいことが一点あります。
先ほど牧山理事の質問の中で三百日ルールのことについて言及がありましたが、その中で、この三百日ルールには科学的な根拠があるとおっしゃいましたけれど、これ、いわゆる立法時の科学的根拠であって、今のこの医学が進展した時代の中で、もはや科学的根拠とは言えないのではないのかと。法的な根拠があるとおっしゃるのであれば理解できるんですけど、科学的根拠があるというのが法務省の公式な見解という理解をすればよろしいんでしょうか、確認をさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/95
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096・金子修
○政府参考人(金子修君) 出産までの期間、これについては統計がございますので、科学的に十分な根拠があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/96
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097・川合孝典
○川合孝典君 その出産までの日数についても、そのデータ自体がそもそも立法時に考えられたものを根拠としてこの三百日という日にちが設定されているわけでありますから、現在、実際、いわゆる受精してから出産までの期間というものについては医学的に様々な検証がなされているわけですよね。
したがって、法律的にこの問題をどう乗り越えていくのかということについては広く国民の皆さんの合意形成が必要なことですのでそう簡単なことではありませんけれども、三百日というのは科学的に立証されているんだというのが法務省の公式なスタンスなのだとすれば、このことの議論はそこで止まってしまうと思うんです。
だから、まずここの問題について、法的に今三百日ルールというものが日本の民法では大切に守られているというところに立ち位置をきちんと、どこに立ち位置を置くのかということを明確にしないと、このことの議論が将来にわたって進まなくなってしまうと思うんですけど。
大臣、済みません、これも通告しておりませんけれども、三百日ルールというのは科学的な根拠と現代の社会では既に言えなくなりつつあるということについての御認識はありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/97
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098・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 科学的根拠というのは何かという問題があるんですが、妊娠齢である程度、先ほどの局長の答弁も、三百日という期間があれば、性交渉により受精、着床した、出生した子をほぼ全て捕捉することができるものと考えられるという認識を示させていただきましたが、これを科学的というのかどうかというのは、ちょっと私も判断しかねるところがあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/98
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099・川合孝典
○川合孝典君 済みません、急に質問したのにお答えいただきまして、ありがとうございます。
つまり、入口のところで本当こうした問題があるということをどう捉えるのかというところから始めないと、この問題は前になかなか進めていくことができないんじゃないかというのが私の問題意識でありまして、そのことをちょっと指摘させていただきました。済みませんでした。
それでは、通告に基づいて質問させていただきたいと思います。まず、無国籍認定の手続に関して御質問させていただきたいと思います。
今回、新たに国籍法第三条三項が新設されることになりますが、これによって、国籍を失うことで、無国籍になるのかならないのかということの判断を誰がどういった手続を取って認定されるのかということについて、これは民事局長にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/99
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100・金子修
○政府参考人(金子修君) 事実に反する認知に基づく国籍取得の届出は効力を生じず、認知された方は当初から日本国籍を有しなかったことになります。
生地主義を採用していない国で生まれ、かつ父が判明しない場合で、一番目として母が無国籍の場合、それから二番目として母の国籍が厳格な父系血統主義の国である場合などについては無国籍となることがあります。これは一般論です。
日本国籍の得喪につきましては、国籍法の規定に基づき我が国政府において判断するものである一方で、外国の国籍の得喪については、当該外国において判断されるものであり、我が国政府において独自に認定する立場にないため、無国籍ということは日本国籍も外国籍もないということを意味しますが、我が国政府がそういう意味で無国籍であるかどうかということを確定的に審査し判断するということはできないと言うことができます。
法務省においては、事実に反する認知であったために日本国籍を取得していなかったことが判明した者については、その状況等に応じて、日本国籍を取得するための手続を案内することや、その者が関係を有する外国の大使館等において国籍取得などの所要の手続に係る案内を行う等の取組を行っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/100
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101・川合孝典
○川合孝典君 大臣、そういうことです。
ここで、問題提起ということで大臣にお伺いしたいんですが、この無国籍の認定の手続自体が、今、日本にはございません。この手続、無国籍認定の手続を設置する国が近年増えてきているということが指摘されてきておりまして、これは無国籍者の地位条約に入っていない国でもこの手続を設置し始めているということを伺っております。
無国籍認定手続を設置することで、この新たに設置される国籍法第三条三項により発生する無国籍の把握を始め、正確に無国籍者を把握することができるということが指摘されております。また、国籍法二条三号や八条四号における国籍を有しないという者が正しく解釈運用されることで、国籍法の確実な運用にもつながるということも指摘されております。
出生児の無国籍の防止やその後の削減につながるという意味でこの無国籍認定手続は極めて有用だと思われておりますが、この無国籍認定手続を設置することについての認識について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/101
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102・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど局長も答弁しましたが、外国の国籍の得喪については、当然、当該外国において判断をされるものでありますので、我が国政府においてそれを独自に認定するということは不可能なわけであります。我が国政府におきましては、ある人が無国籍であるか否かを確定的に審査し判断することは不可能なんだろうと思っています。
したがって、先ほど無国籍者地位条約のお話もありましたが、この条約におきましても、無国籍者であることそのものを認定する一般的な手続を法令で定めるということについてはこの条約にも規定はありません。さらに、加えて、その国籍の付与についての設置、運用においては各国の裁量もかなりあるというところでありますので、国籍法を所管する当省として、外国のその運用まで含めて国籍の有無を確認するということはかなり難しいのではないかなというふうに考えておりますので、慎重な検討が必要かなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/102
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103・川合孝典
○川合孝典君 実際には、現在、無国籍として入管に登録されている方々のうちにも、五百十三人ですか、要は無国籍者の登録が二〇二一年末時点で登録されていますが、実は国籍ありと登録されている無国籍者もいらっしゃるといったような形で、かなり混乱を来しているんですよね。
この問題をどう整理するのかということについては、相手国との間で確認を行った上でそのことを確定させるということも、もちろんそれが究極の目的ではあるわけですけど、そのことと同時に、日本にいらっしゃる方々をどう取り扱うのかという観点から、日本においては無国籍ということの認定をどう取り扱うのかということは、ある意味切り分けて考えることも私は可能じゃないかと思うんですけれど、その辺りのところについて、大臣、いかがでしょう。いかがでしょうって、ここで決められることではないんですけど、そういう考え方もあるということを踏まえて、この無国籍者をどう減らしていくのかという問題と向き合っていただきたいと思うんですけど、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/103
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104・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 無国籍者を減らしていくということの重要性についてはもうかねがねお話をしているとおりでありますが、先ほど私の答弁にもありましたが、やはり相手国がある話でありますので、その相手国での運用まで全て確認をして全て明らかにしていくということはなかなか現実的にかなりハードルが高い問題なんではないかなというふうに思っているわけでありますが、少なくともその無国籍者が少なくなるように、従来答弁させていただきましたように大使館に紹介したり、そういう努力は積み重ねていきたいなと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/104
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105・川合孝典
○川合孝典君 窓口の設置、相談窓口の設置等も含めて、今できる対応というものもあろうかと思いますので、是非、その辺りのところは前向きに御検討をいただきたいと思います。
もう一つ、確認というか、これは民事局長に御質問なんですが、現在、法務省の民事局が国籍法と戸籍法を運用されていて、入管庁はいわゆる入管法の運用と在留カードの発行等の手続を取っていらっしゃるということで、双方が異なる行政目的のために別々に無国籍かどうかの判断をしていらっしゃるということで、そのことの結果、いわゆる民事局と入管との間で判断に若干の差異が生じているといったようなことが指摘をされております。
これ、効率化のために統一した基準で民事局と入管庁とが系統的にこの問題について調査をされるということが、より、いわゆる法務行政を正確、効率的に運用していく上で有効じゃないのかということを考えるんですけど、この辺りのところについて民事局長はどうお考えになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/105
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106・金子修
○政府参考人(金子修君) 国籍を扱う民事局と入管行政を扱う出入国在留管理庁において、その認識に、あるいは認定にそごがあって問題が生じているというちょっと具体的な例は、私、申し訳ありませんが把握していませんけれども、いずれにしても、同じ法務省の中でその辺のそごがあって御迷惑を掛けるということがあってはいけないと思いますので、その辺については運用上きちんとしておく、きちんとすべきであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/106
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107・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。済みません、通告していなかったのでそれ以上はおっしゃれないと思います。ありがとうございました。
次の質問に入りたいと思います。
先ほど別の委員からも指摘がありましたが、UNHCRのハンドブックとガイドラインのことについてでありますが、いわゆる無国籍審査に際してのUNHCRのハンドブック、ガイドラインの位置付けというものについてどのように捉えていらっしゃるのかをお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/107
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108・金子修
○政府参考人(金子修君) UNHCRの無戸籍者に関するハンドブック及び無戸籍者に関するガイドラインは、無戸籍者の定義や地位等についてUNHCRとして発表したものであると認識しております。
この同ハンドブック及びガイドラインは法的拘束力を有するものではなく、我が国において無戸籍であることを認定する際にその内容を尊重するか否かは、我が国の法制に照らして判断すべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/108
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109・川合孝典
○川合孝典君 二〇〇四年の入管法改正のときに、附帯決議文書の中に記載が入っていることは御承知されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/109
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110・金子修
○政府参考人(金子修君) ちょっと具体的な内容は覚えていませんけれども、何か言及があったことは承知しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/110
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111・川合孝典
○川合孝典君 確認のために読み上げさせていただきますが、これ、二〇〇四年の入管法改正の参議院における附帯決議ということですが、出入国管理及び難民認定に定める諸手続に携わる際の運用や解釈に当たっては、難民関連の諸条約に関する国民難民高等弁務官事務所の解釈や勧告等を十分に尊重すること、これが十八年前に附帯決議の中に入っております。
ということで、もちろん、国内の取扱いのことですから、国内法に基づいてそれぞれの国家、政府が判断するということについて異論はないわけでありますが、その判断をするに当たって、要はUNHCRのガイドラインやハンドブックを尊重すべしということについては既に国会においても附帯決議が付されているということをもう一度改めて再認識していただいた上で運用に携わっていただきたいと思います。
大臣も先ほど金子民事局長と同様の御答弁されましたが、そうした御対応をしっかりお願いできますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/111
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112・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 国会の附帯決議は重く受け止めて対応していくのが当然のことだと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/112
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113・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。
次の質問に参ります。懲戒権の関係について御質問させていただきたいと思います。
私からは、今回の懲戒権の削除に関して、文言修正で健全な発達という表現が入ったことについて、このことについて確認をさせていただきたいと思います。
保護者がしつけと称して虐待を正当化する口実とされてきた今回懲戒権規定の削除、監護や教育を行うに当たって、子の人格の尊重、子の年齢及び発達の程度への配慮の規定の追加は、子の最善の利益の観点から大きな意味があるものと私自身も捉えております。
その上で、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動はしてはならないとする規定のこの健全な発達というものをどう捉えたらいいのかということについて、本会議の質問のときにも類似の質問させていただきましたが、健全な発達とは何なのかということを法務大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/113
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114・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の規定に言う健全な発達とは、心身共に健やかに成長することを意味するものと考えています。
加えて、改正法案、民法第八百二十一条は、子が心身共に健やかに成長することを子にとって重要な利益として位置付け、それに悪影響を及ぼす親の行為を禁じたものという、そういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/114
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115・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
これまでも何人かの委員の先生方から御指摘ありましたが、子供は一人一人人格が異なるわけでありまして、性格や成長の仕方も当然違うわけであります。何をもって健全であると判断するのかということについては何度か御答弁をいただいても疑問が残るわけでありまして、元々の子の心身の発達に有害なや、子の心身に有害なといったような、健全という言葉をあえて入れなければいけなかった理由というものについて、もう少し分かりやすく御説明いただけると有り難いです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/115
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116・金子修
○政府参考人(金子修君) お子さんについては、一人一人が異なって、性格あるいは成長の仕方も異なるということは御指摘のとおりかと思いますが、この改正法案の八百二十一条の心身の健全な発達については、子それぞれの特性に応じてその具体的内容は異なるものというふうに考えています。特定の発達過程等を想定しているものではありません。同条において子の年齢及び発達の程度に配慮すべき義務を規定しているのも、そのような子それぞれの特性に応じた適切な監護、教育の実現を図る趣旨に基づくものでございます。
したがって、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に該当するかは、具体的な事案を前提とした個別的な判断に委ねられることになりますけれども、一般論としては、当該行為の態様や場所的、時間的環境等のほか、子の特性、すなわち子の年齢、健康、心身の状況、発達状況等も考慮されるものと考えております。
また、改正法案八百二十一条に関する法制審議会における議論においては、委員が今言及されましたとおり、単に子の心身に有害な影響を与える言動とする案も検討されたことがあります。
もっとも、同条の趣旨が、親権者が子を監護、教育するに当たり、不当に子を肉体的、精神的に傷つけることを防止することで心身の健全な発達という子の利益の実現を図ろうとする点にあることからすれば、同条の有害な影響に関する判断は、専ら子の心身の健全な発達を害するかどうかという観点から行われるべきものであると考えられ、そのような観点から今回の改正に至っているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/116
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117・川合孝典
○川合孝典君 具体的にどういう行動なんですか、健全なというのは。というか、私も法制審の親子法制部会の議事録等も読ませていただきましたけれども、なぜ健全という言葉が入っているのかということについて、事務当局の説明では、子の心身に有害な影響を及ぼす言動について、これを更に具体化するために健全という言葉を入れたといった趣旨の記述がありました。
具体的と書かれているから、では、この場合の健全という言葉を入れたものは一体何を具体化したのかということについての実は私質問させていただいたんですが、何かスパイラルにというか、理屈、何か訳が分からなくちょっとなってきているということは皆さんお分かりいただけたと思います。
私思うに、考え方や捉え方が結局、子の健全な発達ということについて、これ自体も捉え方や考え方が人によって異なるわけでありまして、判断基準が曖昧なこの健全という概念を入れることが逆に保護者にプレッシャーを与えて、結果的に子供に対して必要以上に厳しい対応を取るといったような逆の意味での懸念というものも決して否定はできないと思っております。
保護者独自の解釈によって、この子は健全でないから厳しくしつけてよいといったような判断をして、むしろ子の心身に悪い影響を与えるような指示や指導を行ってしまうのではないのかといったような懸念の声もあります。こうした指摘があることについては、民事局長、どうお考えになりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/117
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118・金子修
○政府参考人(金子修君) 子の発達の程度は人それぞれであるため、何が子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に当たるか否かも、その子の発達の程度や置かれた状況等を踏まえて判断されることになります。
他方で、このような判断は親の主観に左右されるものとは考えていません。親権者が子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼさない行為である、むしろ健全な発達のために必要な行為であると考えていても、客観的に監護教育権の行使として相当でないと認められる行為は子の心身の健全な発達に有害を及ぼす言動に該当して許容されないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/118
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119・川合孝典
○川合孝典君 時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思いますが、要は、親の主観に左右されないということでありますけれど、親の主観というものと社会通念上どう考えるのかということ、これは、つまりは法的にどう判断するのかということの上ではそういう理屈になりますが、実際に親御さんは親の主観で物事を判断するわけでありますので、この問題とどう向き合っていくのかということがこれからもテーマになってくると思っております。
時間参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/119
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120・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、今回の嫡出推定の見直しで無戸籍者をなくせるのかということについてお尋ねをしたいと思います。
資料一枚目は、政府が平成二十六年夏から調査を始めた無戸籍者の数等についての政府資料です。御覧のとおり、以来、累計で四千三百二十八人、うち解消された者が三千五百三十五人、けれど、なお七百九十三人の無戸籍者が把握をされているというのが二〇二二年、令和四年十一月十日現在の状況なんですね。
これちょっと遡って確認をしたいと思うんですけれども、初めて私がこの資料を拝見したのは平成二十七年のときでしたけれども、二〇一五年、この三月十日時点で把握されていた無戸籍者の累計は六百三十八人、うち解消されたのが七十人で、当時無戸籍者は五百六十七人でした。二年後、平成二十九年、二〇一七年の三月の数字は、累計が千三百五人、解消された者は六百三人で、無戸籍者は七百二人でした。
つまり、累計はもちろんどんどん増えている。うち解消される人はいるんですけれども、新たに無戸籍者が発生するわけですよね。だから、減るどころか逆に増えているというのがこの無戸籍者の現実なんですけれども、大臣、これ何でだと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/120
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121・金子修
○政府参考人(金子修君) 無戸籍者が新たに把握できるということは、お子さんを産んだ方が出生届をしないというケースが起こり続けていて、その方を法務局なりが把握するために増えているということになるんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/121
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122・仁比聡平
○仁比聡平君 大臣、その出生届をしないという状況が続くということについて、次のページですけれども、戸籍に記載されていない理由という調査がありまして、前夫の嫡出推定を避けるため、これが今の数字で五百八十一人で約七三%なんですね。これ、先ほどの二〇一五年の数字でいいますと、三百九十八人で七〇%、うちDVがあるものが四十一人。二〇一七年、平成二十九年の数字でいうと、五百二十九人で七五%、うちDVは五十四人。今回はDVがあるもの五十三人ですね。つまり、変わらないわけですよ。七割の方々が夫あるいは前夫の嫡出推定を避けるために出生届を出せないということになっているわけですね。
ですから、一枚目に戻っていただいて、年齢の区分がありますね、右上ですけれども、ゼロ歳から九歳まで、これ調査が始まった、あるいは今日の無戸籍者ゼロタスクフォースにつながってくる取組が始まったと言っていいと思うんですけど、その時期から考えたっておよそ八年間ですが、だからこの間に生まれた子供たちが四百七十六人、無戸籍者として把握をされているわけですよ。
つまり、この三百日ルール、嫡出推定を避けるためという、つまり嫡出推定が理由となって出生届が出せずに無戸籍児者が今も増えていると。ここに問題があるんじゃないですか、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/122
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123・金子修
○政府参考人(金子修君) 現行制度の下で無戸籍者が増える理由として推定ルール等が挙げられておりますけれども、現行法にはそのような問題があるということは認識しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/123
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124・仁比聡平
○仁比聡平君 資料の八枚目、九枚目、大臣、ちょっと御覧いただけますか。
そもそも無戸籍者問題についての深刻さをどう考えているのかということなんですが、その八枚目のNHKニュースウエブの資料は三十二年間無戸籍の女性のことを報じています。
二〇一五年の当時、私も直接この院内集会でお会いをいたしました。お母さんが前の夫の暴力を理由に別居していた期間に別の男性との間に生まれたんですね。出生届を出すと、民法の規定、推定規定で前の夫の子として戸籍に入ってしまうために出生届を出さなかった。その娘さん、その方は本人を証明する書類が一切なかったために銀行口座もつくれない、アルバイト先の給料は親戚の口座に振り込んでもらっていた。調理師になりたいという夢があったんですが、資格を取るには本籍が書かれた住民票が必要というので諦めざるを得なかった。運転免許も取れないし、アパートを借りたりすることもできないという、それが無戸籍という状況じゃないですか。
実際、今把握されている無戸籍者も小さい子たちだけじゃないんですよ。二十代、三十代の方々も多数いらっしゃるんですね。こういう事態を生み出し続けていいのかと、そのことがこの推定規定の見直しに問われています。
ちょっとその観点で改めて大臣に伺いますけれども、この無戸籍者、政府が把握している数だけでもどんどん増えていると、解消してもまた生まれてしまうと。この事態、どう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/124
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125・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私は、国会でも何度も答弁しておりますが、この無戸籍者問題は何とかこれ減少させていかなくちゃいけないということであります。
それで、御案内のように、なぜ発生するかということは、まあいろんな理由があるんですけど、おっしゃるようなその七五%というものも非常に大きな問題であると思っていまして、これにおきましては、法務省においても、確かに増えてはいるんですけど、平成二十六年から、無戸籍者の徹底した実態把握や全国各地の法務局における丁寧な手続案内等、寄り添い型の取組は行ってきているんですね。
もっとも、このような支援による無戸籍者問題の解消には限界が正直ありまして、将来にわたり無戸籍者問題を抜本的に解消していくためには法制上の課題などに取り組んでいく必要があるというふうに考えられてきたわけであります。
本改正案は、そのような法制上の課題等に対応し、無戸籍者問題を解消する観点から嫡出推定制度に関する規律を総合的に見直して、これにより無戸籍者問題の解消に向けて前進をさせていきたいというふうに考えているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/125
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126・仁比聡平
○仁比聡平君 いや、そうおっしゃいながら、離婚後三百日ルールをそのままにすると。それでは、この政府自身が把握している、それでは届出できないじゃないですかということは何にも解決されない。先ほど福島議員の質問にもありましたけれども、この嫡出推定の少なくとも推定ということの意味を抜本的に政府は改めるべきですよ。
そこで、今回の改正で、離婚後、再婚禁止期間もなくなりますから、だから日を置かずに新たなパートナーとの婚姻届を出すというカップルが生まれます。そうすると、離婚前に、前婚の離婚前に懐胎していた、妊娠していたということであっても、後婚、再婚した新たなカップルのその届出、婚姻届によって、その新たなカップルの子供として推定されることになるじゃないですか。だけれども、三百日ルールはなくなっていませんよね。そうすると、離婚後、前婚の離婚後三百日というその推定が、婚姻届、新たなカップルの婚姻届によって破られるということになりますよね。今回の法改正ってそういう意味でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/126
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127・金子修
○政府参考人(金子修君) 改正法案では、母の婚姻解消後三百日以内に生まれた子であっても、女性が子を懐胎したときから子の出生のときまでに二以上の婚姻をしたときは、子はその出生の直近の婚姻における夫の子と推定する旨の規定を設けています。つまり、再婚後の夫の子と推定するということです。
この場合、前婚の婚姻解消から三百日以内にお子さんが出生している場合は前夫の子との推定が働かないとする根拠はなくて、その推定は残っているものと考えていますが、再婚後の夫の子との推定が優先するもの、これはこちらの蓋然性が高いだろうということでそのような制度とすることにしています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/127
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128・仁比聡平
○仁比聡平君 当たり前ですよね。今回の改正、そういうことですよ。
子供が生まれる、私たちの子よね、幸せになろうねと言って婚姻届出すわけですよ。それを、前の夫の子であるかという嫡出推定がなお働いているというので、そこで重複させる、推定規定が重複するということになってしまったらとんでもないことだから後婚の子という推定規定を置くというのが今回の趣旨だと思うんですけれども。
私が尋ねたいのは、つまり、これまで裁判によらなければ覆せないとずっと言い続けてきた推定は、今回の改正によって、新たなカップルの婚姻届によって覆されるということです。これまでも議論あったように、離婚後の懐胎であるということが医師の証明によって明らかな場合にはこれまでも出生届が出されて受理されてきました。これを更に踏み込んで、まあ前倒ししてといいますか、婚姻中であっても別居という事実が明らかという場合に出生届で子供の戸籍を作るという、こういうふうに変えていいじゃないかと、三百日ルールを、そんなにがちがちの推定をこれから先も続けなくていいじゃないかというのは、これ当然のことだと思うんですね。
法制審の議論の中でも、例えばDVのケースで、実際に住民票が異動していなくても、自治体において、対象となる人がDVなんかの事情で住民票を異動させないまま居住しているということを認定して健康保険証を出したり生活保護の受給を認めたりするというケース、取組が進んできているじゃないですか。自治体は、そこにその親子が、母子が住んでいるということをちゃんと認定している、あるいはDV保護命令の決定書がある、あるいは公的な婦人保護施設の入所しているという事実がある、これが証明できる、あるいは裁判所が婚姻費用分担の審判の中で別居しているということを調査の上でちゃんと認定していると、こういうことがあれば、たとえ婚姻関係が法的に続いている中での懐胎であっても前夫の子ではないということは明らかじゃないですか。
だったらば、その書類を付けての出生届を受理して無戸籍児にはさせない、そういう取組、大臣、すべきじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/128
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129・金子修
○政府参考人(金子修君) 裁判によらずに推定を覆すというのが、そこにどこまで踏み込むかという問題かと思います。
一つは、嫡出推定制度というものをどの程度固いものと考えるのかという今の基本的な民法の姿勢ですね。つまり、婚姻を中心に夫婦に同居義務があり、それから別の方と交渉を持てば、それは不法行為になり得るし、離婚原因にもなり得ると、こういう全体の構造の中で嫡出推定制度というのが維持されてきているわけですけれども、その例外をどの程度認めるのかと。もう抜本的に見直すというのは、それは一つの方策だと思いますが、これは嫡出推定制度自体の意義をどう捉えていくかということをきちんと検証しなきゃいけないという問題になります。
それから、裁判によらずに戸籍の窓口等で、ある事実を認定することによって推定を外せないか。この問題については、法律上の夫婦というものの在り方の問題もありますが、同時に、その運用する戸籍の窓口において、どういう資料であれば、裁判によらなければ覆せないような現行の推定制度を、現行制度の下で推定される父親と違う扱いをするということができるのか。
しかも、これを非常に形式的な審査でしなければいけないという問題もあり、この問題について推定が及ばない子という判例法理があるので、それについて明文化して戸籍で取り扱うようにできないかという議論もしましたけれども、何分、個別性が非常に強い。
裁判においては、その個別性をその事案に応じて扱うということに非常に適していて、夫婦から御事情を聞いて、いつ別居したのかとか、あるいは夫婦の仲はどうだったのかとか、あるいは場合によってはDNA鑑定をするとか、そういう手段があるわけですが、戸籍窓口で限られているその審査の範囲の中でどこまでできるのかということを併せて検討したときに、今回、離婚後ということであれば、これが非常に蓋然性、仁比先生御質問のとおり、蓋然性の問題はありますが、形式的に審査できるということで、ここについては今までと違う取扱いをしようということに踏み込んだということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/129
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130・仁比聡平
○仁比聡平君 前段で一つの方策ですとおっしゃったのは大事なことで、だからこそ法制審でも相当な議論がされているわけですよ。
もう一つは、戸籍の窓口、市区町村の窓口でできないこと、判断できないことがと、そんなこと私はないと思いますよ。離婚後の医師の証明という、離婚後懐胎の医師の証明というこれまでの運用についても、いろんな議論があってそういう運用を定めてきたわけだし、先ほど御紹介したDVケースなんかでは、市区町村の窓口が相当関わって頑張っているでしょう。その同じ親子の推定規定だけは裁判をしないと駄目ですよと、突き放すその自治体の方がよっぽど苦しいじゃないですか、つらいじゃないですか。そこを改めて考えるべきだと申し上げて、もう一問、今日聞いておきたいと思います。
それは、国籍法三条改正に関わる問題なんですが、今日も民事局長が、従前からの確立した規律を維持すると、それを明記するというふうに言うんですが、この従前からの運用ということによって、一度取得をした国籍が遡って失われたという子供たちの件数、それから、その子たちがその後どんなふうに扱われたのか、在留特別許可が何件出たとか、あるいは本国に、とりわけお母さんの国籍のある母国に帰ったとか、その実態というのは一体何件ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/130
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131・金子修
○政府参考人(金子修君) 一旦は届出によって日本の国籍を取得したと扱われる者について、その後、日本国籍が否定された場合についてのお尋ねかと思いますが、その者の戸籍が消除されることになりますが、その取扱いが市区町村においてされているため、その具体的な事案やその件数、それから、その後どういう扱いになったかということについては当省で把握できておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/131
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132・仁比聡平
○仁比聡平君 従前の確立した規律なんて言いながら、その実態が国会で説明できないというのは一体どういうことですか。
これ、二〇〇八年の国籍法改正、そのときの衆参の附帯決議によって行ってきたという説明を事前に伺いましたけれども、それは事実ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/132
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133・金子修
○政府参考人(金子修君) そのように承知しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/133
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134・仁比聡平
○仁比聡平君 おかしいじゃないですか。資料の後ろから二枚目に衆参の附帯決議を配りました。
参議院の附帯決議でいうと二項目めですけれども、虚偽認知が行われることがあってはならないと。だから、届出に疑義があるときにはちゃんと調査をしなさいという附帯決議ですよね。どこにも、何年たっても、あるいは今回であれば七年を超えても、遡って国籍奪いなさいなんて書いてないじゃないですか。なのにもかかわらず、これを根拠にしてやってきたという、確立した規律といいながら、その実態さえ説明ができない。
入管にもお尋ねしますけれども、そうやって遡って国籍がなくなったということになったら、非正規扱いして、退去強制の手続なんだという説明がこの間ずっとあっているわけですけれども、その子供、国籍を失った、遡って失った子の扱いが何件あって、それがどのように扱われたのかという数字は分かるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/134
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135・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 今委員がお尋ねのような統計については作成をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/135
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136・仁比聡平
○仁比聡平君 結局、戸籍、国籍の当局、市区町村の窓口と在留審査の入管というのは全く連携していないんですよ。それを何だか人道的な配慮をこれまでもしてきたかのような、そんな答弁というのは私は到底納得ができない。
この国籍法の三条改正については抜本的に考え直すべきだということを強く主張して、あとは次回に譲ります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/136
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137・杉久武
○委員長(杉久武君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
─────・─────
午後一時三十分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/137
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138・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、高橋はるみ君が委員を辞任され、その補欠として山本佐知子君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/138
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139・杉久武
○委員長(杉久武君) 休憩前に引き続き、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、神戸大学大学院法学研究科教授窪田充見君、民法772条による無戸籍児家族の会代表井戸まさえ君、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所首席法務アソシエイト金児真依君及び立命館大学名誉教授二宮周平君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、窪田参考人、井戸参考人、金児参考人、二宮参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず窪田参考人からお願いいたします。窪田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/139
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140・窪田充見
○参考人(窪田充見君) 神戸大学で民法を担当しております窪田充見と申します。
本日は、このように意見を申し述べる機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。
法制審議会の民法(親子法制)部会には委員として参加をさせていただきましたが、本日は、その審議に参加した一研究者としての立場から今回の法案について個人的な意見を申し上げさせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の民法改正の内容は非常に多岐にわたっておりますが、私からは、嫡出推定制度の見直し、認知制度に関する見直し、そして懲戒権に関する規定の見直しの三点について意見を申し上げたいと思います。
まず最初に、嫡出推定制度の見直しですが、嫡出推定制度は実親子関係を規律する基本的な制度の一つでございますが、今回の改正案では、こうした嫡出推定制度についても改正の提案がなされております。
現行の嫡出推定制度は、婚姻関係にある夫婦において妻が懐胎した子供を夫の子供であるとするものであり、その夫との父子関係について、夫からの嫡出否認によって否定することを認めつつ、一定の期間の経過によって嫡出否認の行使を排除し、法的な親子関係の安定を図るという性格を有するものとして設計されております。
しかし、こうした現行の嫡出推定制度が、DVなどを理由として妻が夫から避難しているような状況において懐胎、出産した子供について、その夫又は前夫と子供との父子関係を否定することができないといったことをもたらし、いわゆる三百日問題と呼ばれた問題、出生届が出されずに子供が無戸籍となるといった状況をもたらしてきました。
今回の嫡出推定制度の見直しにおいては、この点が解決すべき問題として強く意識され、改正もそうした問題を解決するものとして提案されております。
こうした問題に対処するために、今回の改正案においては、特に二つの方向での対応が用意されております。
一つは、父子関係を否定する否認権者の拡大です。
現行制度においては、嫡出否認ができるのは父とされる者だけです。そのため、母や子供の立場からはその父子関係を否定して別の父子関係を成立させることが望ましいとされるような場合においても、そのための仕組みが民法の中では用意されておりません。
こうした否認権者の限定や否認権行使の期間制限は、冒頭にも触れましたように、法的な父子関係を安定させるという趣旨に立つものであったと考えられますが、しかし、父とされる者の関与がないと父子関係を否定することができない、あるいは、これは無戸籍者問題に限定されない問題であると考えておりますが、父とされる者の恣意的な判断によって、母や子供の側では望まないにもかかわらず、嫡出推定による父子関係を解消できなくなってしまうという点で非常に深刻な問題を抱えていたものだと認識しております。
今回、否認権者を拡大し、また否認権行使の期間も延長することによって、母や子供の側から嫡出推定による父子関係を否定することが可能となることが民法の規定においても明確にされることは、無戸籍者問題を解決する上で非常に大きな意味を有しているものと考えております。
もう一つは、女性が離婚した場合について、離婚後の再婚禁止期間を廃止し、嫡出推定が形式的には重複する場合には、後婚の、後の婚姻ですが、後婚の嫡出推定が優先するという仕組みを用意したという点です。
従来は、嫡出推定が重複しないようにするために再婚禁止期間が設けられておりました。しかし、今回の改正案においては、その基本的な枠組みを改めて、むしろ前の婚姻、前婚と後婚の嫡出推定が重複する場合が生じることを正面から認めて、その上で後婚の嫡出推定が優先するというルールが導入されています。このことは、嫡出推定制度の見直しとしては大変に大きな意味を有していると思います。
なお、この二つの関係ですが、無戸籍者問題に対する対応としては、基本的に否認権者の拡大によって母や子供の側のイニシアティブによって嫡出推定による父子関係を否定することが可能となるという仕組みを用意しつつ、再婚の場合には、前婚の夫についての嫡出否認をするまでもなく、より容易な形で解決ができる仕組みとなっているというのが制度全体についての私の理解でございます。
なお、離婚後に再婚していない場合については嫡出推定がそのまま維持されるということについて、ごく簡単に触れておきたいと思います。
諸外国の法制、例えばドイツ法では、婚姻が夫の死亡によって解消した場合には我が国の嫡出推定に当たる父子関係認定が働くとされる一方、離婚の場合には父子関係認定が働かないとされています。その点では、再婚していない場合には離婚した夫についての嫡出推定が働く今回の改正案は不完全なものであるという見方もあり得るかもしれません。
しかし、ドイツの場合には我が国の協議離婚に当たる制度がなく、裁判所の判断を経る必要がありますが、その場合、離婚原因としての婚姻関係の破綻が認められるためには一定期間の別居が必要とされています。そのため、離婚後に生まれた子供について、父子関係認定、嫡出推定に当たるものですが、これが働かないということについては、こうした制度的な背景を踏まえて理解することができるのではないかと思います。
他方、我が国の場合、こうした離婚についての別居等の要件は設けられておりません。また、そもそも離婚原因を問題としない、非常に簡便な協議離婚という枠組みが用意されております。したがって、離婚の場合には嫡出推定が働かないということは必ずしもそれほど自明なものではないように思います。もちろん、協議離婚自体を廃止して離婚の仕組み自体を変更するという選択肢もあり得るかもしれませんし、実際にそうした考え方もあり得るものと思います。しかし、我が国の協議離婚は必ずしも消極的な側面だけを有しているわけではなく、この制度を廃止することに伴う問題というのは非常に大きいように思います。
また、離婚制度を見直さなくても、離婚後三百日の嫡出推定を廃止するという選択肢も考えられないわけではありません。ただ、この場合には、離婚後に生まれる全ての子供について嫡出推定が働かなくなり、離婚した夫との父子関係を成立させることが必要な場合にも新たに認知の手続が必要となります。
もちろん、その子供が実際に離婚した元夫の子であり、その元夫が認知をしてくれればその手続は比較的簡単なんだろうと思います。しかし、そうした任意認知を元夫が拒む場合には認知訴訟が必要となります。このプロセスはそれほど簡単ではなく、当事者に生じる負担も小さなものではないだろうと思います。
もちろん、DV事案におけるように、離婚後の嫡出推定が働かないことが期待されるようなケースがあるということ、それ自体については私も十分に認識しております。しかし、離婚における状況、特に協議離婚に際しての当事者をめぐる状況が非常に様々なものであるというふうに考えられることからは、全面的に離婚後の嫡出推定を否定し、全て認知の問題とすることについては、私自身はちゅうちょを覚えますし、制度の在り方としては慎重であるべきではないかと考えております。
今回の嫡出推定制度の見直しは非常に大きな改正であると考えております。ただ、それは婚姻関係にある夫婦と子供についての親子関係、特に父子関係について、その子供の父親を確保するという視点に立ちつつ、その父子関係の否定と子供の法的地位の安定を図るという現行制度の基本的な考え方を維持しつつ、従来の制度が抱えていた問題を、否認権者の拡大、そして再婚禁止期間の廃止による嫡出推定の重複を正面から認めてそれを解決するというアプローチであるというのが私の認識でございます。子供の法的地位の安定と子供の福祉を図りつつ、一定のバランスが取れた制度改正となっているように思われます。
以上が嫡出推定制度の見直しに関する私の意見でございます。
次に、認知に関する制度の見直しについて意見を述べさせていただきます。
現行法では、嫡出でない子については認知によって父子関係が成立しますが、子の認知については、利害関係を有する者であれば認知無効を主張して父子関係を否定することができます。そして、そうした認知無効の主張について期間制限も設けられておりません。こうした現行の認知制度は、嫡出推定制度において父子関係の安定を図るための工夫が設けられているのに対比すると、子供の法的地位が非常に不安定なものとなっているように思われます。
例えば、認知によって親子関係が成立した父親と子供、こうした父子関係の当事者自身がそうした父子関係を完全に受け入れ、親子として長い間を過ごしていたとしても、別の者、例えばその父親の別の子供が相続に関する利害関係を有するのだからということで、利害関係を有する者として認知無効を主張し、そうした父子関係を否定するという可能性も現在の民法の規定上は排除できない仕組みとなっております。
今回の改正案で、認知無効を主張できる者を子供又はその法定代理人、認知をした者、子の母に限定し、更に認知のとき又は認知を知ったときから七年間の期間制限を設けたことは、認知によって成立した父子関係を安定したものとするという意味でも、非常に大きな意味を有していると思います。このような形で認知による父子関係について見直しがなされたことは適切なものだと考えております。
最後に、親権に関する見直し、特に懲戒権の廃止についての意見を述べさせていただきます。
今回の改正案において、民法の親権に関する冒頭規定に続けて、監護、教育に当たっては子供の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮することが規定され、体罰等の禁止の規定が置かれたこと、更に懲戒権に関する規定が廃止されたことには非常に大きな意味があると考えております。
もちろん、子供に対する虐待、しつけと称した体罰をめぐる問題は、もとより民法の規定を改正しただけで解決できるようなものではございません。虐待に対応する救済の仕組み等、民法以外の法制度の整備や、あるいはその適切な運用を確保することが求められ、それらと一体となって実現されるべきものであると考えております。
ただ、その点を認識しつつも、今回の改正案で、民法において子供が親権の対象、単なる養育等の客体ではなく、尊重されるべき人格の主体であることが明確にされ、親権の行使もそれを前提とするものであることが明確にされたことの意義は大変に大きいものと思っております。
以上が、ごく簡単ではございますが、今回の改正案についての私の理解と意見でございます。十分に御説明できなかった部分も多々残っているかと思いますが、そうした点については質疑の中で必要な補足をさせていただければと考えております。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/140
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141・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、井戸参考人にお願いいたします。井戸参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/141
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142・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) 民法772条による無戸籍児家族の会代表の井戸まさえでございます。
本日は、参考人として意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
私たちの団体は、本日議題になっている民法の嫡出推定規定により推定される父親と実際の父親が違うことから出生届を出せず無戸籍状態になった子又はその子を養育する親たちで結成され、嫡出推定のみならず何らかの事情で無戸籍になっている人々の支援を続けています。二十四時間無料での電話、メール相談や、自治体での窓口交渉、裁判手続に関する情報提供を、無戸籍問題を考える若手弁護士の会などの弁護士の皆さんとも連携しながら行っています。
これまでに相談を受けた無戸籍者は約三千人余り、家族を含めると一万二千人以上の無戸籍問題に並走してまいりました。本日は、その経験から、上程された法律案についての意見を述べたいと思います。
まず、無戸籍者をめぐる状況について共有させていただきます。
二〇〇六年末の新聞報道をきっかけに、それまでなかなか可視化されなかった無戸籍者の方々の存在が社会問題化しました。母親たちの多くはDV被害に遭い、逃げているうちに新たな出会いを得て出産。しかし、生まれた子供は、出生届を出すと前夫にその存在を知られてしまい、どんな危害が加えられるかも分からない。もちろん、子供が無戸籍になると大変です。しかし、それ以上に悲惨なことが起こると想定されるからこそ、やむを得ず無戸籍となっている人が大半なのです。
そんな無戸籍者に対して行政はどのように対応しているのでしょうか。登録できないというのは生きる基盤を得ることができないということです。無戸籍者たちは本来、国や地方自治体からの保護を最も必要とする人々なのに、存在しない子、離婚のペナルティーと言われ、社会福祉の外に置かれてきました。
無戸籍者の実態が明らかになり、国や行政から様々な通知が出されています。国の通知は、離婚後三百日問題が話題となった二〇〇七年と、成人無戸籍者問題として取り沙汰された二〇一四年以降に集中しています。一覧は資料一を御覧ください。
現在、法務省のホームページでは、この通知などを基に、無戸籍でも住民票やパスポート、結婚もできるとして紹介されています。皆さんもホームページ、ちょっとアクセスをしてみて確認してみてください。
もちろん、実際できなくもありません。しかし、資料二の一のように、法務省が把握している無戸籍者でも住民登録は限定的で、四割から五割の人は登録できていない状況です。私たちの団体への相談は、基本的には住民登録はなく、行政サービスも十分には受けていない人々です。行政が把握していない無戸籍者が一定数いることは常に意識しなければいけないと思います。
資料二、資料一のように、婚姻もようやくできるようにはなったものの、望む人全てができるとは言えない現状が資料からも見て取れます。国ができるできると言っても、できない現実が間違いなくあるのです。
次は、司法の対応についてです。
無戸籍者たちが戸籍を得るためには裁判所で何らかの手続をしなければなりません。しかし、その裁判所でも対応のばらつきがあります。資料三は、無戸籍問題を考える若手弁護士の会の高取、尾野弁護士が作成した、無戸籍に関する父子関係の司法手続のうち取下げに着目をして作られたものです。
認知の取下げ率を見てください。ほかに比べて二倍になっています。なぜなのでしょうか。家庭裁判所自体が、血縁上の父を相手とする認知が本来できるにもかかわらず、長年窓口で認知の受付を拒否したり、元夫を相手とする手続を行うように取下げ勧告をするといった不当な対応が横行していることが数字として表れているのです。無戸籍だとこうして国民の裁判を受ける権利の侵害に遭うのだと、当事者や現場で支援する弁護士たちからの批判の声が上がりました。
家庭裁判所は無戸籍問題に対する理解に欠けていると見られても仕方がないのではないでしょうか。法務省もこのことは把握をしており、現在では若干改善をしているものの、こうした過酷な状況の中で、子供の戸籍、そして自らの戸籍を取得することがどれだけ難しいのかお分かりいただけますでしょうか。
こうした状況を踏まえた上で、今回の改正案についての意見を述べます。
まず、再婚後に出生した子は再婚した夫の子とするということについてです。確かに、再婚者が司法手続によらず戸籍窓口に出生届を提出するだけでよいとなれば、これまであったような負担は軽減され、歓迎すべきことだと捉えることもできるでしょう。しかし、出生がたとえ一日でも再婚よりも前であれば前夫の子というのは果たして妥当なのでしょうか。
どちらも前婚中の懐胎です。前夫の嫡出推定を破る基準が再婚の届出と日付で、蓋然性、公平性は保たれるのでしょうか。そもそも、母の再婚の有無で子の父を決めることに対しては違和感があります。子供は親の婚姻状態を確認して生まれてくるわけではありません。今回の立法趣旨に立ち戻り、法に退けられる子供たちを増やしてはならないと思います。
次に、母と子の嫡出否認権への付与についてです。これについては、本会議でも、衆議院、参議院本会議でも委員会でも無戸籍問題の切り札のように言われていますけれども、極めて効果は薄いと思います。
まず、資料四の一を御覧ください。資料三同様、無戸籍事案に関わる司法手続一覧です。これまで司法の場では母と子の嫡出否認はできませんでしたが、親子関係不存在の訴えが利用されてきました。
親子関係不存在の訴えは出訴期間の制限はありません。ただ、嫡出否認も親子関係不存在の訴えも、たとえ父が前夫でないとの裁判所が確定しても、実はその前夫に対して司法手続を行ったこと、つまり前夫の名前が子供の戸籍に記載されます。家裁で苦労して父は前夫ではないという審判を取っても、そうした思わぬ落とし穴があるとは知らず、戸籍ができてから驚き、そして失望します。なぜ前夫の名前が戸籍に入るかという問いに法務省は、前夫が父でないことを強調するためと答えています。これは必要なんでしょうか。
こうしたことは戸籍法の規則で定められているものなので、今回、嫡出否認を母や子に広げること、これが無戸籍解消の突破口であるというのならば、少なくとも施行までに変えないと効果を上げられないと思います。
二〇〇三年、それまで認められてこなかった、前夫が収監されたり海外渡航中以外で、前夫の関与なしで事実上の父を父と定める強制認知の裁判が確定します。画期的な解決方法となるこの先例は、過去の類似判例を基に私がつくりました。この前夫を絡ませないで司法手続を行うことができる強制認知の調停や裁判は広く知られるようになって以降は、親子関係不存在の訴えの件数は激減しました。
資料四、その二のグラフを見ていただければ、特に二〇〇八年以降の激減ぶりを見ていただきたいと思います。その分は認知数の増加という形で反映されています。先ほど見たように、裁判所の認知調停の受取拒否や取下げの勧奨があったとしてもこの数なんです。出生届を出すことができない母親たちにとっては、前夫を絡ませないで嫡出を外せる強制認知は福音だったことが分かると思います。
ただ、御覧のとおり、無戸籍者の数という意味では、無戸籍者たちはこれらの司法手続の中を行き来するだけで、嫡出否認を母子に広げても効果は限定的というのはこの理由からです。
加えて、母と子の嫡出否認権の実効性を担保するために、オンラインであれば会わなくてもいい、法テラスで弁護士を付ければいい、費用の負担等についてもそこで配慮をしていく、こういったことが大臣や民事局長から幾度も答弁が出ています。実際の裁判手続の運用やDV被害の実態が分かっていないのでこういう話になるんだと思います。ある意味、それは夢物語と私たち当事者そして弁護士さんたちは思っています。なので、以下、オンラインについて反論します。
現在、先行して民事、商事事件のオンライン裁判手続が試行されていますけれども、これには条件があるんです。まず、双方に弁護士が付いていること、かつ双方がオンラインに同意したときしか認められません。つまり、こちらが希望しても相手方が拒否したらできないのです。そもそも、家事事件手続のIT化は現在検討段階で、法案とさえなっていません。今回の民法改正案では施行は一年半以内とありますが、施行日に家事事件のIT化は間に合うんでしょうか。
また、現状の家事事件のIT化案件では弁護士代理の案件はないようですが、実際に産後間もないお母さんたちが弁護士を付けずにこなせるのでしょうか。法テラスで弁護士を付けるとしても、当然無料ではなく償還義務があり、DV被害者の生活実態からすれば弁護士の費用負担は大き過ぎます。
また、DV被害者であることの配慮や手続を裁判所にしてもらうためには、DV夫にもその主張が知られるため、逆上を恐れる余り、現実的には母や無戸籍の子は主張できないことでしょう。DV夫がオンラインに反対した場合は、結局そのDV夫と直接会うことになるのです。
このように、家事事件のIT化といったところで、実際の家庭裁判所の手続は使いづらく、当事者に元夫相手の法的手続を求めることは現実的ではありません。家庭裁判所で元夫を相手にするのではなくて、嫡出推定の例外として救済する範囲を広げ、前夫を絡ませない届出受理や司法手続を確保、拡大するしかないのです。
そう言うと、必ず、推定を受ける夫への手続保障として必要だと言われます。しかし、そもそも離婚した妻が自分の子を妊娠しているかもしれないという自覚が前夫にあるならば、別れた後も何らかの接触はするでしょう。生まれるまで知らないとか、何年も何十年もその存在を認識していないなどという事実自体が前夫の嫡出否認に相当するのではないでしょうか。
子の出生時は婚姻解消後なので子は前夫に家族として養われる生活も送らないにもかかわらず、生涯、子の嫡出推定が及び続けることに違和感を覚えます。そう思うには理由があります。私の相談者の中の二十六歳の成人無戸籍者が、この夏ようやく戸籍が取れる見込みになりました。前夫が死亡したからです。前夫が亡くなることを待たなければ戸籍が作れないという現実を委員の皆様にお伝えすることにちゅうちょがありましたが、そうした例は珍しくありません。それが無戸籍の現実だということを御理解いただければと思います。
続いて、離婚後三百日規定の温存についてです。
二十一世紀の今、妊娠期間を三百日と記したものは医学書から母子手帳までどこにもないでしょう。にもかかわらず、この規定を残すことの理由の一つが、法制審議会で専門家の意見を聞いたら妊娠期間が三百日になる人もいるということだったからとも伺いました。しかし、現実的に、法的離婚後三百日で出産する人はどれほどいるんでしょうか。その具体的数を示した上で立法はされるべきです。誠に希有な例外を実数も分からないまま基準とすることで、弊害の大きい推定を残してはいけないと思います。予定日を大幅に超える場合は、二〇〇七年の通達同様、医師の証明書で対応すべきです。
三百日、温存することで懸念されるのは無戸籍問題にとどまりません。医学的、科学的裏打ちされた通常の妊娠期間よりも一か月以上も長い推定期間を置くこと自体で、国家が離婚女性に対して性交渉の相手を前夫と公的に推定をし、離婚後一定期間は前夫の性的拘束下にあることを認めているという別のメッセージを世界に向けて発信することになります。
今年十一月九日の衆議院法務委員会では、葉梨前大臣が三百規定に関して、婚姻中にも不貞行為は自由だという形になってはならないので、やはり三百日という推定はあるんですよと発言しています。つまりは、三百日の規定は今回の改正でも不貞行為の抑止として、若しくは懲罰的効果として置かれ続けるのだという内容の発言です。法律が女性への差別を裏書したとも取られかねません。これは、日本の女性たちが直面するこの国の後進性とも関わるのです。
以上を踏まえて、私の意見をまとめます。
この改正案の趣旨説明や衆議院での質疑で、新旧大臣、法務省民事局長は、無戸籍ゼロを目標にし、それを実現するのが使命だと明確におっしゃっています。ならば、いつまでにゼロにするのか、そのためには原因ごとにどんな方策を講じる予定なのかというロードマップをしっかりと示すべきです。
今回、認知無効の訴えの出訴期間の改正に伴い、国籍法第三条第三項が新設され、国籍取得が無効になることで無国籍者が生じるのではないかと不安が広がっています。本来、この民法七百七十二条嫡出推定規定の改正とともに提出するべきは、存在そのものに対する排除が懸念される法律ではなく、七百七十二条以外の無戸籍者、そして無国籍になるおそれがある場合も含めて、まずは何よりも先に登録されるという法律的枠組みだったのではないでしょうか。
加えて、大臣も民事局長も、今回の法改正では不十分であることは認識しているとの見解を示し、経過を見た上で更なる法改正も必要であれば検討するとの発言もされています。断言しますが、取り残される類型があることが明らかである以上、このままでは更なる対応が必要となることは間違いありません。
法改正までとはいかずとも、例えば今回、嫡出否認権を母や子に拡大するならば、せめて外国法と日本法で嫡出が異なるときに行われてきた、前夫に確認なしで父欄に父未定と記載した上で母の戸籍に登録を認める、又は内密出産のガイドラインの応用を行い、首長の職権での戸籍作成など、今ある法的資源を駆使、運用することでも状況を改善することは可能だと思います。
今回の意見を述べる中では、登録制度としての国籍制度そのものの在り方への意見を述べることが時間の関係上できません。事実婚や同性婚、パートナーシップ婚など婚姻の在り方も、また生殖補助医療なども含めて、子供の出生に至る過程は既に多様化しています。その中で、子の父親が誰か、母は誰かを改めて検討しなければいけない時期は早晩やってきます。いえ、既に今その要請は高まっています。一刻も早く、現在の婚姻家族単位となっている戸籍編製や個人籍など、国民登録簿としての戸籍の改革について、予断を持たず、真剣な議論が開始されなければなりません。
無戸籍者たちの苦悩は、戸籍ができたから終わりではありません。そこから新たな闘いが始まります。学校に行けなかったこと、仕事に就けなかったこと、結婚できなかったこと、自分が誰か分からないこと。戸籍ができた後も、国家に拒絶をされたという強烈な体験は一生消えず、彼らの人生に大きな負荷を残し続けます。
無戸籍は、尊厳を傷つけられたというレベルの話ではないんです。戸籍ができた後も、彼らが貧困、人間関係、家族、職場での様々なトラブルに巻き込まれている姿を見ると、何よりも、登録され、社会がその存在を認め、共に生きるという覚悟をこの法改正においても示すことが必要なのだということを改めてお伝えして、私の意見とさせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/142
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143・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、金児参考人にお願いいたします。金児参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/143
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144・金児真依
○参考人(金児真依君) 御紹介にあずかりました、UNHCR駐日事務所首席法務アソシエイトの金児真依と申します。
私は、マーストリヒト大学で無国籍に関する国際法を研究し、博士号を取得しておりまして、父母が共に知れない子供に関する著書等もございます。本日は、このような機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。
UNHCRは、世界で無国籍の対応を任されている、国連総会によって任されている機関でございますが、各国の国籍法の制定と運用について技術的な助言を行うという任務の下、このような、ジュネーブ本部の決裁の下、国籍法のコメント、今お配りしております、作成いたしました。
そして、本日お配りしておりますのは、私の発言の概要、そして以前私どもが作成いたしました、日本にどんな無国籍者がいるのかという類型に関する報告書。委託して作成いたしました。そして、議員のためのハンドブック、お配りしております。どうぞ御活用くださいませ。
最初に私どもの発言の趣旨を申し上げますと、UNHCRは、今回の民法改正の主な目的である無戸籍をゼロにするための日本政府の取組を歓迎しておりまして、今後のより一層の進展も期待しております。しかしながら、国籍法第三条三項に関しましては、国際法に基づいて、無国籍の防止、そして国籍の恣意的な剥奪の防止、それを確実にするために、そして無戸籍ゼロと一緒に無国籍ゼロ、それを一緒に進めていくために修正が望ましいと考えております。
詳細をお話しする前にグローバルな背景を申し上げますと、現在、世界では少なくとも四百三十万人が無国籍又は国籍不明のままで、実際はもっと多いと思われます。無国籍者の多くは、生涯にわたって人権の行使が困難な状態に置かれます。
UNHCRは、二〇二四年の十一月までに無国籍を世界でゼロにするためのIBelong、全ての人に国籍をというキャンペーンを実施しております。無国籍者保護のための一九五四年の条約締約国は現在百か国に迫っております。そして、六一年の無国籍削減条約の締約国はここ十数年で倍以上に増えております。まだ日本はこの二つの締約国ではございませんが、しかし加入を検討してくださっています。
さて、無戸籍と無国籍は全くの別物と考えられることも多いですが、しかし、国籍や親子関係を証明する書類がない、それが無国籍につながることもあります。無戸籍ゼロに向けた日本政府の取組は、まさに無国籍ゼロに貢献するものです。
しかし、今回の法案のうち国籍法第三条の三項における部分については、UNHCRにとっての関心事項が幾つかございます。
まず、認知による国籍取得について、新たに加わる規律の下では、認知による国籍の取得をした後に反対事実が発覚した場合、既に取得済みの国籍が遡って無効となります。日本国籍の取得が無効になったときにほかの国籍を持っていない、そうすると無国籍になる場合がありますが、この場合であっても三条三項の適用の例外にはなりません。
また、民法については、認知無効の主張に原則七年の期間制限を設けるなどして児童の身分関係の安定を図るという大変肯定的な改正があるのに対し、国籍法については対照的に国籍取得の無効の期間制限がございません。いつまでも遡って、十年たっても五十年たっても国民であったことが一度もなかったものと扱われる、さらに、日本国籍が無効になった瞬間から非正規滞在の外国人として扱われ、再度国籍を取得するまでには数年間無国籍ということもあり得ると理解しました。
もちろん、その国籍の不正取得、虚偽認知ですけれども、政府の懸念というのは正当なものです。日本でも既に届出の時点で判明するよう様々な防止策を取っていると理解しております。しかし、事実に反する認知は、親自身その認識がないことも珍しくないと言われ、さらに、偽装認知であっても基本的に子供は偽装をされた側にあり、帰責性がなく、無国籍という不利益を児童が被ることは正当化できません。
世界人権宣言第十五条は、全て人は国籍を持つ権利を有する、何人もほしいままにその国籍を奪われないとして、基本的人権としての国籍を持つ権利をうたい、国籍の恣意的剥奪を禁止しています。そして、これらが国際法の基本原則であることについては強力な国際的合意が存在します。また、日本が締結した児童の権利条約第七条や自由権規約第二十四条においても児童の国籍取得の権利が保護されています。
UNHCRは、二〇二〇年五月に、国籍の喪失及び剥奪についての無国籍に関するガイドライン第五号を発行いたしました。このガイドライン第五号は、ある人の国籍を国家が否定する行為が、国際法が禁止している国籍の恣意的剥奪に該当するような状況を避けるために、三つの原則を尊重するよう各国に奨励しています。
一番目の原則としては、国籍の喪失、剥奪が法律にのっとって行われること。法令に明確に書いていない理由で国籍を喪失させてはいけないというものです。二番目は、国籍を剥奪することが正当な目的に比例しており、それを達成するための最も侵害性の低い手段であること。結果、無国籍となる場合は、その重大な結果に鑑み、通常、まずこの比例原則が満たせません。そして、三番目は、国籍の剥奪が適正手続にのっとって行われることです。これらのUNHCRガイドライン第五号の三つの原則は、国籍の剥奪の対象者が現在重国籍なので無国籍とはならない場合もひとしく適用されるものです。
こういった原則を反映した外国法制の例ですが、コメント、私どもの本体ですけれども、十四ページからにまとめております。
親子関係が無効になったことによる国籍の無効又は喪失を規定する国籍法の規定を持つ国は、通常セットで、無国籍となる場合は国籍の喪失は生じない旨の例外を設けています。これは、一九九七年の欧州国籍条約の第七条に規定された原則でもあります。
また、これらの外国法は、無国籍とはならない場合でも、国籍の喪失をさせられる期間の制限を設けています。
欧州国籍条約の第七条の規定では、この期間制限の上限は成年未満とされていますが、欧州評議会は、児童の最善の利益の視点から、二〇〇九年の勧告第十三号で、この国籍喪失の成年までという期間は長過ぎるとしており、十年よりも更に短い期間制限を設けても正当化されるだろうとしています。
例えば、フィンランドでは、又はドイツでは、期間制限を五歳又は五年未満としています。また、幾つもの国で一定期間国民として扱われてきている場合、例えばスペインやフランスで十年、ドイツで十二年ですが、国籍を喪失しないとする規定を設けて、子供の利益と国家システムの安定を保護しています。
以上から、四つのことを私どもは提案したいと思います。
第一に、国籍法第三条の三項によって無国籍となる場合は例外とすること。UNHCRとしては、無国籍が生じてしまった後に解決策を講じるよりも、そもそも無国籍が生じないように例外規定を設けることが合理的だと考えております。
第二に、無国籍の喪失が、無国籍を生じさせない場合であっても、既に取得した国籍の剥奪ができなくなる一定の期間制限を設けることを推奨します。
第三に、対象者をただ単に国民であったことが一度もなかった者として扱うのではなくて、個人として聴聞を受ける権利及び不服申立てを行う権利、そういった適正手続を保障することです。例えば、国籍取得の撤回という行政処分とする、又は、少なくとも不利益処分に準じて扱うことなど、何らかの方策が取られることをお勧めします。
第四に、国籍の喪失を検討する際には、当事者と日本のつながりや児童の最善の利益、そういった要素に鑑みた個別の比例性の審査を行うことを御提案します。
日本の現行の国籍法は、無国籍条約とも全体的に合致した様々な無国籍の防止措置を既に備えたものと言えます。だからこそ、今回新設される三条三項は修正が望ましいと考え、以上四つを御提案します。
さて、仮に法案が修正されず、このまま可決される場合には、衆議院法務委員会で採択された附帯決議、これ、より一層明確化することが大変重要となります。
附帯決議の第五項目めでは、国籍取得後に事実に反する認知が明らかとなった場合には、無国籍者の発生防止の観点や日本人として生活した実態等を十分に勘案して、帰化又は在留資格の付与に関わる手続において柔軟かつ人道的な対応を行うこととされ、大変意義深いことです。
この上で、参議院では、現行法をフル活用することで、無国籍者を保護し、無国籍になる時間を最小限にするにはどうしたらいいのか、更に御検討いただき、附帯決議でも明確化することが重要かと存じます。
例えば、入管法第二十二条の二に基づいて在留資格取得許可をすることで、一度も非正規滞在にすることなく滞在が可能になるのではないでしょうか。また、日本国籍法第二条第三号や第八条の四号だけではなく、八条の一号や三号についても御検討いただき、柔軟に迅速に適用いただくことが大変有効と思われます。
また、より根本的な課題として、そもそも日本には、現在、無国籍認定手続というものがない。この無国籍認定手続を設けることで、今回の第三条三項によって国籍を失うことで誰が無国籍となるのか、迅速かつ正確に把握し、保護し、無国籍を削減することが可能になると考えます。
日本の法令には、そもそも無国籍者の定義がありません。一九五四年の無国籍者地位条約によって、無国籍者は、いずれの国によってもその法の運用において国民と認められていない者と定義され、これは国際慣習法の一部としての性質を持ちますので日本にも関係します。また、UNHCRの二〇一四年の無国籍者保護ハンドブック等を活用いただき、インクルーシブな無国籍者の定義とその解釈を採用することで無国籍者を漏れなく把握することができます。
また、衆議院で前法務大臣もおっしゃったように、ごめんなさい、本日もおっしゃっていましたが、齋藤法務大臣、様々な省庁間の調整や政府と市民社会の連携のメカニズム、それが強化されることはどの国でも有効です。また、実用的なマニュアルや研修等、既になされていると思いますが、その一層の充実により、窓口での更に効果的な対応を促進することも大変重要であると考えています。
また、国籍を遡って失うということは、何世代にもわたって国籍がなくなるなど、様々な予期せぬ影響が出てくる可能性があります。そのため、この法律の施行後数年をめどとして、本人の人権への影響だけではなく、国家社会制度への影響等についても調査し、国籍法第三条三項の見直しも含めて、親子関係の否定によって国籍が遡及的になくなることにつながる現在の規律体制、規律全体を再検討することが有用なのではないでしょうか。
無国籍者を生み出さない、無国籍者をきちんと保護して周辺化させない、それは人間の安全保障だけではなく、国家の安全保障にもつながります。UNHCRは、人権、人道に重きを置く国、日本国において今回の国籍法改正法案が修正されるよう期待しております。
無戸籍ゼロと一緒に無国籍ゼロ。UNHCRは、日本政府、そして議員の皆様、これを一緒に実現するためにお手伝いをさせていただく所存でございますので、どうぞ御用命ください。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/144
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145・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、二宮参考人にお願いいたします。二宮参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/145
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146・二宮周平
○参考人(二宮周平君) お手元にレジュメを用意いたしました。大変僣越でありますが、いろんなことをお話ししますので、メモ代わりに使っていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
今回、改正提案の趣旨が御説明されていますが、それにプラスして、親子法改正の理念をやっぱり生かすべきではないかと思いました。これを機会に、国際基準に基づく子供の人権保障の視点、これを改正に加えるべきではないか。
金児さんからも御指摘がありました児童の権利条約七条、児童は出生の際、直ちに登録される、児童は、出生のときから氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知り、かつその父母によって養育される権利を有するとあります。
子を個人として尊重する、個人としての権利、それが出生の登録、日本でいうと、戸籍に記載されること、そして氏名を有し、国籍を取得することです。後段の父母によって養育される権利を有するというところが、今回に関わる、法律上の父子関係の成立と否定に関わることだと思います。この七条では児童という言葉であり、嫡出子、嫡出でない子という子供の区別は設けていません。できるだけ子供を平等に対処する、処遇するということが求められていると思います。
今回の親子法改正では、次の三つが求められると思います。
一つは、血縁の事実の尊重です。
これによって法律上の父子関係が成立します。血縁がない場合には父子関係を否定し、血縁上の父と法律上の父子関係を成立させる手段、子供のアイデンティティーを確保する上でもその手段が必要です。そして、その手段は、手続的負担ができるだけ軽減されるのが望ましいと思います。
二つ目に、親子としての生活事実の尊重です。
血縁がないことから父子関係を否定する、しかし、一定の期間、親子として生活事実が続いている場合にはそれを尊重する。したがって、窪田さんが御説明になったように、出訴権者、出訴期間を制限するということが出てきます。この共通の理念は、身分関係という法的安定性です。それを重視して、血縁がなくても親子であるということを法は認めています。
最後に、子供の平等です。
血縁の事実の尊重も親子としての生活事実の尊重も、全ての子供にとって必要です。嫡出子と嫡出でない子に共通の法理へと展開していく、その格差がある場合にはそれをできる限り小さくしていくということが求められると思っております。
上記の視点から見た今次改正法案の問題点を述べます。
母が離婚後三百日以内に再婚しない場合において出生した子の処遇です。
母が離婚後三百日以内に再婚した場合において出生した子は、窪田さん御説明のように、現夫の子と推定されます。したがって、現夫を夫とする出生届ができます。もう出生届がすぐできると、父子関係が戸籍において明確になります。
ところが、母が離婚後三百日以内に再婚しない、あるいは子供が再婚する前に生まれた、こういう場合については七百七十二項が適用されます。井戸さんが御指摘になったとおりです。したがって、前夫の子と推定され、前夫を父とする出生届を出さざるを得ません。したがって、これを回避するために無戸籍者が生ずるという事態を避けることができません。
配付していただいた資料集、資料編の資料十がありまして、これは無国籍者のうちの分類です。それで、ちょっと私、数値を間違えておりまして申し訳ありません。三百日以内に再婚した後に子供が生まれたというケースは三五・八%です。したがって、再婚をしたんだけど再婚前に生まれた、それから三百日以内に再婚しなかったケースというのは残りの六四・二%ということなので、かなりな無戸籍者が残されるということになります。
今次改正提案の提案者の説明は、嫡出否認権の行使で対応するということでした。この点については、井戸さんが問題点を指摘されたので繰り返しません。父子関係を消滅させるために家事調停、合意に相当する審判、あるいは人事訴訟、これを起こさないといけないので、その手続負担は大変なものになります。
これに対して、出生主義、母の婚姻中に出生した子は夫の子と推定するを採用すると、ここについては窪田さんと私とは見解を異にします、ここで学説上の争いをするゆとりはありませんので、仮に出生主義を取ったらどうなるかということです。離婚後再婚して子が出生すれば現夫の子と推定される、今次提案と同じ結論です。離婚後再婚せずして子が出生した場合には推定する父というのはいません、父のない子になります。だから、父のない子として出生届ができます。前夫を父とする出生届が強制されません。したがって、戸籍にも記載され、無戸籍者は減ります。そして、血縁上の父からの認知も可能になりますので、子の法律上の父と血縁上の父が一致すると、その手続的負担が減少し、子供の平等に近づくと思います。
私見としては、離婚後の法律上の父子関係の成立に関する法制度について検討を継続していただきたい。
出生主義というのは、窪田さんが御指摘になったように、ドイツのように離婚原因として別居期間が要求される。そうすると、別居しているわけですから性的関係はない、したがって出生主義で問題はないということだと認識いたしました。しかし、経験則として、破綻して離婚を考えている夫婦が性的関係を持つでしょうか。性的関係というのは最も親密な愛情の発露の行為です。双方の合意に基づいて、かつ避妊をしないで性的関係を持つ場合に妊娠ということが生じます。そのような現実が破綻した夫婦の間にあるのかどうか。これを踏まえると、出生主義というのはむしろ経験則に合致しているようにも私は考えている次第です。
次に、二ページ目に移ります。
父子関係の否定に関する嫡出子と嫡出でない子の格差です。
出訴権者が限定されました。父若しくは認知者、子、子の母、否認の訴えも認知無効の訴えも出訴権者は共通です。ところが、出訴期間、嫡出否認は、子は、子の出生を知ったときから三年、子、母は出生のときから三年です。認知無効の訴えは、認知者は認知のときから七年、子、母は認知を知ったときから七年です。身分関係の安定性というのは全ての子に共通しています。だとするならば、同一にすべきです。これによって子供の平等も達成されます。
私見として、親子関係の成否について、可能な限り子の平等処遇に資する法制度を検討すべきと思います。
次に、子の身分関係の安定と日本国籍の確保の問題です。
これは金児さんが今御説明されたので多少重複することはありますが、私はまた別の視点から考えてみました。
今次改正提案、金児さん御指摘のように、認知された子の国籍取得について、認知について反対の事実があるときには適用しない、したがって国籍取得は認めない、取得していた国籍も喪失させるという、ここにつながってまいります。
問題点の一、身分関係の法的安定性、これがあるから嫡出否認、認知無効について出訴期間を徒過すると誰も争えないことにして、子の父子関係を確定させます。法律上の父子関係を前提とする法的効果の享受は覆されません。国籍の取得という社会生活の根幹に関わる権利も喪失しないというのがこの論理的な結論です。
児童の権利条約七条は、先ほど、国籍取得を子の権利としました。金児さんが今日御指摘していただいた八条では、今日の資料にありますように、締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する、すなわち一旦取得した国籍、これを保持する権利ということも掲げられているのです。
最高裁大法廷平成二十五年九月四日決定は、婚外子の相続分差別を全員一致で違憲としたものです。ここで述べられている判決理由の一部を紹介します。父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきていると述べています。
仮に不実認知で子が日本国籍を取得したとしても、不実認知をしたのは親であって、子供ではありません。子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として子に不利益を及ぼすことは許されません。子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるというこの判決理由は、国籍法にも妥当するのではないでしょうか。身分関係の安定という法的利益は子に保障されるべきです。
もう一つ、出訴権者の限定です。それは、法律上の父子関係の成否を当事者に委ねると、国が介入することはしないと、だから当事者が否認権を行使し、認知無効の訴えをするということです。認知について反対の事実があることを覚知したときに、どういう経緯で覚知するかは分かりませんが、覚知したときに、法務大臣が日本国籍を遡って喪失させたいというのであれば、認知無効の訴えを起こすべきです。それが手続保障だと思います。
出訴権者に検察官を加えるという、こういう改正があるのであれば一定納得はできます。しかし、同じ出訴権者ですから、二の法理が適用されて、出訴期間の制限には服さざるを得ません。これによって、国家的利益が関わることだといっても、身分関係の安定性という国民の親子関係に関わることを不当に介入することは許されないのではないかと考えています。
虚偽認知という言い方、不正認知という言い方がされますが、それに対する法務省ホームページ、国籍取得の届けに関する詳細な手続があります。認知ということについては、民法ですから、ここには関わりません。でも、認知された子の国籍取得の届出で実に慎重なる対応をしているように思われます。後で御参照ください。
私見として、子供は日本人父との親子関係を基礎として日本国籍を取得するのだから、認知無効の出訴期間の経過により親子関係は確定し、誰も争えない、そうである以上、日本国籍は喪失しないと解すべきだと思います。
不実認知の理由は多様です。知らなかったということもありますし、再婚するので連れ子を自分たちの家族にしようと思って厚意で認知する場合もあります。その全てが国籍の不正取得を目的とするものとは言えません。当事者の家族的事情に配慮した個別対応の可能性も追求すべきです。嫡出子の場合は出訴期間を徒過すると確定する、したがって介入はできないとしています。そういう嫡出子の処遇と同様の対応をすべきだと考えます。このような課題がある以上、国籍の取得、喪失については国籍法の問題として別途検討すべきだと考えます。
時間が参りました。五番、嫡出概念の廃止についてはお目通しいただければと思います。既に国連や欧米諸国では嫡出概念を廃止しています。それによって、その国の法体系、法整備が大変な混乱を生じているということはありません。
以上です。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/146
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147・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/147
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148・加田裕之
○加田裕之君 済みません、自民党の加田でございます。
本日は、窪田参考人、井戸参考人、金児参考人、二宮参考人、本当に師走のお忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございました。
それでは、発表していただきました順にお伺いしていきたいと思います。
まず、窪田参考人にお伺いしたいと思いますのが、私も、今回、この改正の中身について、嫡出推定制度の見直しの動きということについてが、やはりこの親子法制に関する大きな改正の中のポイントであるんではないか、一番大きな柱ではないかと思っております。実際問題、嫡出推定制度に関する規定の見直しはいろいろな検討課題がありましたし、また、この無戸籍者問題ということについても本当にいろいろな議論が、特に窪田先生は法制審の中での意見の議論も加わられておりましたので、その中でのことについてもお伺いしたいんですが。
先ほどちょっとお話しされた内容の中につきまして、特にこの協議離婚のことについてのお話がありました。もちろん、これ、協議離婚といいましても、もう先ほどお話しいただいたように、いろいろな形の協議離婚があると思います。先ほど別居要件のことについても触れられましたけれども、もちろんこの協議離婚の在り方という部分につきましての先生のある意味有益なところということと課題のところということもお伺いしたいと思いますし、そのことについて、実際、先生に、これから実効性のある形で進めるにはどのようにしたらいいかということについてお伺いしたいと思います。
それと併せまして、懲戒権のことについてなんですけれども、もちろん、この懲戒権の廃止の部分について、しつけと称して児童虐待ということはもう大きな社会問題となっておりますし、そしてまた、このことについても様々な声が上がっているというのも承知しております。そうした中において、民法だけではなく、それ以外の法整備も一体となって足らずのことをやっていかなければならないというお話がありましたが、これまた、先生、もちろん、いろいろな、法制審ももちろんですし、先生の御経験の中でどのような部分の足らずの部分があるかということについてもお伺いできたらと思います。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/148
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149・杉久武
○委員長(杉久武君) 済みません、発言の際は挙手をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/149
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150・窪田充見
○参考人(窪田充見君) 申し訳ありませんでした。
御質問いただき、ありがとうございます。
一つは、嫡出推定の制度の見直しということで触れた中でありました協議離婚に関しての御質問であったと理解しております。
私の中でも、協議離婚を廃止するというのは考え方としてはあり得るかもしれないけれど、それほど簡単ではないのではないかということを申し上げましたが、私自身は、協議離婚の一番大きなメリットとしては、非常に簡便であるということ、それ自体がメリットではないかと思っております。国によっては非常に宗教的な意味も元々持っていた婚姻において、それが本来は婚姻の解消というのは制度としてなかったという歴史的な背景もある、西洋においては。それに対して、我が国において、合意によって成立する婚姻が合意によって解消されるというのは、それ自体としてはそれほど不自然なことではないのではないかと思います。
ただ一方で、課題としてありますのは、非常に簡単な形でなされ、公的機関が関与しないことによって、場合によっては何か非常に一方的な犠牲を払うような形での離婚、要するにいろんなことを諦めるから離婚してちょうだいといったようなことが第三者や公的機関の介入によって制御することができないといった問題があるんだろうと思います。そうした点は協議離婚に関して現在でも抱えている問題だろうと思います。
それから、懲戒権の廃止に関してなんですが、先ほど申し上げたように、民法の規定を改正すれば済むというわけではないと思うんですが、その際には、当然ですけれど、これまでもそうであったように、児童福祉法であるとか児童虐待防止法であるとか、必ずしも法務省の所管の法律だけではなくて様々なもの、恐らく文科省の所管による学校におけるそうした問題とも整合的な運用を図っていくということと、ルールを明確にするだけではなくて、そのルールを実際に実現していくための仕組み、場合によっては警察が関与するであるとか、そうした仕組みも整備する必要があるというふうに考えております。その一部はもう既に現在なされているというのが私の認識でございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/150
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151・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございました。
続きまして、井戸まさえ参考人にお伺いしたいと思います。
ちょうど平成十九年の六月二十六日に、ちょうど我々、ちょうど井戸議員とは、井戸参考人とは県議会の同期でございまして、二期目の初当選のときの一発目の質問のときに、民法七百二十二条に関する無戸籍児への対応ということで一番初めに言われました。本当にあのときからの課題というのが、あのときの問題提起という部分につきましてずっと取り組まれていることに敬意を表しますとともに、それで、実際問題、あのときの状況と比べて、まずちょっとお伺いしたいのは、実際、今の時代、あのときはまだ平成の十九年でございますからかなりもうはるかに前の時代になるんですけれども、今のことになりますと、より一層、コロナ禍というのもありましたし、コロナ禍の経験も踏まえた上でも様々な問題というものが顕在化していると思います。
だからこそ、今回もいろいろな改正という部分の議論もありましたし、そういう声も出てきてやっているんではないかと思うんですが、実際問題、自治体の通知という部分で先ほど資料をいただきまして、様々な形で国から訓令、通達という形、回答というのもやられているんですが、実際問題、まず、その時代背景の部分の当時との違い、問題提起されていた当初と今の違いということと、それから、あわせまして、この訓令や通達とか国から発せられた部分について受け止める自治体、兵庫県の方においても結構いろいろその場その場で、まあ議会で提案されたということ、当時県議会で井戸参考人が提案されたということもあったので、ある種、早く進んだというところもありますし、正直な話、スルーされてしまってなかなかその通達とかいうことの存在すら知らないまま不利益を被っている方たちもいると思うんですけれども、その部分についての相違ということについてまたお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/151
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152・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) 加田参議院議員とは本当に兵庫県議会議員時代にも、実はこの二〇〇五年に私が本会議でこれ質問したときにやじが飛んだんです。非常にひどいやじで、それに対して、加田議員も含めてですけれども、非常にそこを守ってくださるようなことをしていただいて、だからこそ、こういった無戸籍の問題もある種、その後もしっかりと問題提起もできたと思います。
二〇〇五年からすると十七年がたっているんですけれども、無戸籍というのが二〇〇六年、七年に毎日新聞がキャンペーンを張ったので、その一年で相当理解は進んだと思うんです。
ただ、じゃ、その無戸籍の問題がなくなったのかといえば、そうではなくて、先ほども、国からの通知出ていますけど、よくよく見ると同じような内容が年度しばらくたってからまた出ていたりとかするということは、例えば地方自治体の方たちなんかは二、三年でやっぱりその担当が替わるので、例えば住民票ができるんだといっても、窓口の方ではできないといって、無戸籍の人たちはその窓口の人たちが言うことが正しいとやっぱり思ってしまうので、そこで諦めてしまって、またうちに相談が来て、そして行政に言って、そしてまた通知を出し直してもらうみたいなことというのは、何か、何回も何回も同じようなことをされているんです。
でも、今、ちょうど住民票というのは、私が、自分が無戸籍の子供を産んだときには、当時、神戸市は絶対に出さないと言っていたのが、今はちゃんと裁判とかやれば無戸籍でも住民票が出るとか、条件付ではありますけど、改善はされてきていると思うんです。
一方で、じゃ、今の無戸籍問題って何かといったときには、結局、この裁判とか調停とかやってもなかなか解決が付かない、そういう意味では長期化、固定化というのが非常に問題なんです。そうなると、やっぱり成人無戸籍者という、年度が行って、今もこの国の調査でも七百数名、八百人近くがいる今の状況でも二百人ぐらいは成人なんですよね。その人たちはマイナンバーも持てない。今、マイナンバーがなかったら働けないんですよ。
というような、より厳しい状況に入っているということも、今回の改正も含めてですけれども、本当に対応がもう今すぐやらないといけないというような状況になっているという意味では、じゃ、本当に変わったのかといったらば、そこではないなと、まだまだ十分ではないなということです。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/152
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153・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。
本当に、実際問題、そうやってマイナンバーとかそういう形をどんどん進めれば進めるほど、逆に言えば、逆に不便に取り残されてしまうということもよく分かりました。また、当時の県議会の皆さんのああいうときのあの熱い議論というものもしっかりと思い出しながら頑張っていきたいと思いますし、また是非お願いしたいと思います。
続きまして、済みません、金児参考人にお伺いしたいと思います。
金児参考人の方におきましては、先ほど無戸籍と無国籍という部分というのを一体として捉えなければいけないということ、本当にそのとおりだなという思いがしました。その一つ一つの課題というものは全て共通しているところも本当に多々あると思います。
本当にこういう部分につきまして、特に無国籍とすることを例外とすることという形での提案ということもあったんですけれども、実際、参考人の方にお伺いしたいのは、具体的に無国籍だと当事者が何が困るのかということ。いろいろこの前も議論もさせていただいたんですけれども、その部分について実際の現場の声というものもよく把握されていると思いますので、そのことをお伺いしたいということと、あともう一点、国籍の虚偽の取得という場合ですね。
実際、国籍取消しの結果、無国籍にしても仕方ないみたいな意見もあるというのも、これは事実でもあるんですけれども、そういうことについて、参考人の方はいろいろな研究機関でも、それから国際機関でも御意見交わされていると思うんですが、その受け止めと、そしてまた御意見をお伺いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/153
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154・金児真依
○参考人(金児真依君) 御質問、誠にありがとうございます。そして、無国籍者の置かれた状況に思いをはせていただき、本当にありがとうございます。
実際のケースを扱われた皆さんとも私ども連携しておりますけれども、まずはこのように聞いております。
まず、日本国籍を遡って失って困ることとしては、国際結婚の場合ですけれども、子孫の国籍も失われる可能性がある。
これはほかの国でも報告されていまして、そうですね、例えば、ドミニカ共和国でハイチ系の人たちが国籍を、ずっとそれまで国民として生まれて、国民としてみなす、こう認められて、ずっと国民として生活してきたんだけれども、突然、二〇一三年の裁判判決によって国籍がなくなった。そうすると、二世代、三世代にわたって送還、ハイチへ送還ということが実際起こったんですね。本当に何万人の単位で起こったわけですけど、でも、ハイチ政府は、しかし彼らを国民としては認めない、国外で生まれているし、国籍法からしても多くの人は国籍の要件を満たさないということが実際に起こったケース、外国事例もあります。
そして、国籍がなくなっても、元からなかったとして、今回私どもが気になっておりますのは、処分ではないことです。元々ありませんでしたから、そういうことで、それを裁判で直接争えないという問題ですね。行政処分ではない。
突然不法滞在の外国人になることで、まずは退去強制の危機にさらされます。原則、収容されてもおかしくない。もちろん、入管庁が仮放免ですとか人道的な措置をとっていただいているケースですとか、私どものこの報告書御覧いただければそういったケースも載っておりますけれども、配慮いただいているかと思いますけれども。
それだけではなくて、突然持っている職を失う、今まで日本人だったのに、急に非正規滞在の外国人になりましたら、あしたから来なくていい、じゃ、生活ができませんと。生活保護をもらおうにも、生活保護って基本、法的には日本国籍というものを前提としている。そして、住民票がないという話になりますから、じゃ、どうやってそれを、保護をもらうのかということもございます。健康保険もなくなり、病院も全部自費負担になります。子供手当ですとか、それもストップいたしますし。まずは、自分も本当にどこにも属さないというアイデンティティーの問題というのも起こるかと思います。今まで、家族の関係にも影響するでしょうし、メンタルヘルス上の問題も生じると思います。
あとは、外国籍を証明する文書を持たない場合というのも。又は、外国籍を得られるか分からない、それは外国籍を取得するまでにかなり時間が掛かるのではないかということもありますし。また、無国籍となって困ることといたしまして、まずパスポートがない。在留資格がある人では在留カード、日本では発行されますけれども、ない場合はどうしましょうという話ですね。きちんとしたものがない。例えば、携帯電話を契約する、アパートを借りる、そして銀行口座をつくりたい、そういったときに、在留カードの表示ですとか無国籍となっているからということで借りられなかった、差別的な扱いを受けたという報告も上がっています。
もちろん、在留資格がある人の場合ですけれども、再入国許可書というものが無国籍者の場合ですとか発行されることがあるんですが、それを持っていても入国できない国が結構多いんですね。また、その再入国許可書というのが日本語で書かれていたりしたのでですね、結構それが難しいということもあります。
あと、無国籍者ということでせめて在留カードに書いてあれば、あっ、無国籍者ですね、あなた結婚したいんですね、子供を認知したいんですね、準拠法、どういう、どの法律に基づいてそれを、結婚するのか、認知するのか。準拠法、日本ですねというふうに適切な対応をしていただけることもありますが、しかし、今、無国籍認定手続がないということを申し上げましたが、それがないと、持っていない国籍が在留カードに書かれている場合、そうすると、いや、でもこの国からは何ももらえないんです、結婚したいんだけれども、独身証明書もらってきてと言われたけれども、いや、もらえなかったです、あなた、どこの誰ですかと言われましたという話ですね。結婚もできない。
でも、送還をしようとしても、なかなかその国が送還を受け入れないという国もあることも、ほかの国の事例でもありますけれども、そうですね、実際収容されたケースというものも、これ二年半ぐらいですかね、そういった例もこちらの報告書にもございますが、もちろん在留特別許可等で対応されて、人道的な配慮をしてきてくださったということは聞いておりますけれども、やはり、私どもとしては、無国籍にしてから対処いただくのではなくて、まずは無国籍としないという例外をつくっていただきたいと考えて、した方が合理的であると考えております。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/154
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155・加田裕之
○加田裕之君 済みません、ちょっと時間が来てしまいまして、二宮参考人、申し訳ございません。また是非参考にさせていただきたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/155
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156・福島みずほ
○福島みずほ君 立憲・社民の福島みずほです。
今日は、四人の参考人の皆さん、本当に示唆に富む御意見、本当にありがとうございます。感謝をいたします。
井戸参考人と二宮参考人は、民法、三百日以内に生まれた子は夫の子と推定するという規定そのものに、もうやめたらどうかという御意見をおっしゃっていらして、私もそのとおりだと思います。もう父が空欄でもその後手続を取ればいいし、前夫は自分の子と思えば親子関係存在確認の訴えを起こせばいいわけで、女性と子供にイニシアチブがあるということが重要なんじゃないかというふうに思っています。
井戸参考人にまずお聞きをいたします。
この三百日推定をやめるべきだと思いますが、三百日推定が今法案の中にはあるわけです。私自身は、この推定はみなし規定じゃないから、固い推定ではなくて柔らかな膜みたいなもので、例えば単独認知を、実際の父親が認知をする、あるいはDNA鑑定を添えて出生届を出せばそれで認定する、それは窓口でできるはずだと。なぜならば、医者の妊娠証明があれば、離婚後に産んだという証明があれば、七百七十二条の推定のない子として戸籍がもうそうなるわけですから、やれると思っているんですね。実際、通達を妊娠証明に関しては出しているわけですから、法務省は。この点についていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/156
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157・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) 福島委員のおっしゃることに私は本当同意をいたします。
やはり、この三百日規定ということ自体がやっぱりすごく広めの推定になってしまっていて、本来掛かるべきでない子供についてもこれが及んでいて、そしてそれを反証するのが非常に司法の、先ほども申し上げましたけれども、手続難しいわけですよね。なので、やはり仮にもしも三百日を残すのであれば、やっぱり元夫というのを関与させないで、母親がイニシアチブを取れるような手続をした方がいいと思うんです。
実は、これって二〇〇七年のときに検討されていて、それは与党の早川先生と大口先生というのが早川・大口案というのを作られて、三つの条件でこれで受け取るということにしているんですね。一つ目が前夫が自分の子ではないと認めていること、だけど、これができなかったときには前夫の意思が確認できない母の陳述書を出せば大丈夫ということと、三つ目がDNA鑑定で現夫の子であることが明らか、この三つのうちの二つができれば、それで窓口でこれができるというようなことを自民党さん、公明党さんの案であったんですけど、これが頓挫してしまって、おっしゃったような医師の証明書という形で、離婚後に懐胎した人については形式的審査で認めるということになったんですね。
これ、いろいろ調べていったときに、当時の長勢甚遠法務大臣に私が聞いたところ、この民事局長通達というのは長勢大臣が自ら書かれて、民事局長名で、それで離婚後のお子さんたちを救っていくというようなことをやっていたんですけれども、今回の法律案というのが、このときに早川・大口案というのが通っていたらば、今回の遡及されて、そして救われるような、三百日ルールの中でも救われる子たちというのはもっといたということを考えると、本当にそういう意味では、この三百日というのが有効にワークしているのかといったらそうではないと思うので、やはり私はこれは見直すべきだというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/157
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158・福島みずほ
○福島みずほ君 じゃ、井戸参考人にお聞きをします。
資料の中に、戸籍に記載されるとありますが、説明していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/158
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159・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) 先ほどちらっと中に言ったんですけれども、頑張って前夫の嫡出否認をしたりだとか親子関係不存在ということをやると、これで父親が前の前夫じゃないということが分かったとしても、戸籍を見ると、そこに、身分事項のところで前の夫の名前、氏名が戸籍に書かれるんですよ。父親欄は、父親じゃない、実際の父親が例えば認知をしているとかいうことなんだけれども、子供の戸籍には前の夫の名前が入ってしまうと。
なぜそれが入るかといったらば、前の夫の子じゃないということを強調したいからというふうに法務省が言うんですけれども、こんなことってやっぱり、何というんですかね、今回も嫡出否認を母と子に広げたから必ずできるはずだ、良くなるはずだというふうに法務省とか大臣もおっしゃるんですけれども、実際にはそれをやってしまうと子供の戸籍に前夫の名前が入ってしまうので、実際できないんですよね。やりたいという人は出てこないので、こういったことを改善をする。これ規則で決まっているので、すぐにでも改善ができると思うので是非やっていただかないと、今回この法律案が成立したとしても、実際に嫡出否認を使う母子というのはいないと思うんですね、こういうことが分かれば。なので、併せてやっていただきたいなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/159
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160・福島みずほ
○福島みずほ君 井戸参考人にまた改めてお聞きをします。
今回の法改正に伴い、遡及される内容とその範囲についてはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/160
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161・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) 遡及をされるのが、結局、嫡出否認をする人たちだけが一年間ということなわけですよね。先ほど資料の方でも説明しましたけれども、嫡出否認をやる人たちというのは前夫とアクセスができる人たちだけなんですよ、そもそも。今まで、じゃ、どうしていたかというと、親子関係不存在というのをやっていた人たちなんです。そうすると、今まで一年前からできるんだったらやっているわけですよね。
そうすると、一年にわたって遡及をするというけれども、そこのところでできる人たちというのは果たしているのかと、もうやっているということになってしまうので、私は、これは遡及されるのは、その再婚後に生まれたんじゃなくて、再婚前に生まれた人たち、今無戸籍になっている人たちの多くは、再婚禁止期間が半年とか百日の人たちだったので、子供が生まれる日には再婚できていないんですよ。
なので、子供が生まれた後に再婚をしたケースに対しても遡及をさせる、これが絶対必要で、先ほどの二〇〇七年の早川・大口案というのはそれカバーしているので、是非それを利用して、今回遡及の範囲というのを法律には載せられないけれども、しかし、通達だとか通知だとか回答だとかという形で是非やっていただきたいなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/161
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162・福島みずほ
○福島みずほ君 二宮参考人にお聞きをします。
婚外差別撤廃などにずっと尽力して研究者としてやってこられたことに心から敬意を表します。
今日は、嫡出ということを書いてくださっていますが、出生届に嫡出である子、嫡出でない子のチェック欄があります。また、嫡出でない子、イレジティメートという言葉は、これは国連からはすごく批判されていることで、嫡出という概念そのものをやっぱりやめるべきだというふうにも思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/162
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163・二宮周平
○参考人(二宮周平君) レジュメの五に書いていることで、読み上げる時間がなかったので割愛いたしましたけど、そこに嫡出概念の廃止と書いております。御指摘の出生届の区別記載欄が続いているということで、パブコメでたくさんの方から見直しという提案がありましたが、残念ながら今期の法案にはまとめられなかったものです。
それで、その根拠の一つとして、最高裁の平成二十五年九月二十六日、婚外子相続分差別違憲判決の三週間後に出たものですけど、小法廷ですが、この嫡出、嫡出でないというのは、事実関係、つまり父母が婚姻しているか婚姻していないかを意味するのにとどまり、差別的な意味合いを含むものとして用いられるものではないと書いています。
でも、それは裁判官の受け止めであって、社会の受け止めは違います。嫡出という言葉の中に含まれている正統な子あるいは跡継ぎ、そういった含意を人々は感じている。したがって、この嫡出概念は象徴的な差別だと思います。それをあえて出生届に残していることによって、法律婚ではない人たちへのスティグマを与えているのではないかと考えています。
ですので、子供を親の婚姻関係によって区別することをやめて、子供の平等へ向けて一歩踏み出す。そのためにも、この継続的な検討課題としてほしいと考えております。
御質問、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/163
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164・福島みずほ
○福島みずほ君 金児参考人にお聞きをいたします。
三条三項というのは大問題だというのは、今日、井戸参考人、二宮参考人、とりわけ金児参考人、UNHCRの立場から非常に強く言っていただいたというふうに思います。三条三項によって無効になることによって生じた無国籍を最小限の時間で解決することが必要とのことでしたが、具体的にどういった場合に無国籍が発生し、どういう解決の手法があるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/164
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165・金児真依
○参考人(金児真依君) ありがとうございます。
お手元の資料ですが、二ページ目の五、資料、一、新設三条三項によって無国籍になる主要パターンという、ちょっと時間がなくて御紹介できなかったんですが、御紹介します。
まず、母が知れない場合。単純化しておりますけれども、母が知れない。次、母自身が無国籍の場合。もちろん父は、真の父が判明していないとか、国籍がないとか、そういった前提ですけれども、母自身が無国籍の場合。そして、母が外国籍を有するが、厳格な出生地主義や父系血統主義などによって国籍を子に受け継がせられない場合。そして、日本人による認知又は日本国籍の取得によって母方から受け継いでいた外国籍を喪失したり離脱したりした場合。日本国外出生の場合もありますので、その場合は国外出生によって取得したり保持していない場合。
これが、まさにどうやってそれを解決するかという問題なんですが、まずこの一番目と二番目のパターンでは、日本で生まれていれば、日本で生まれた場合において父母が共に知れないとき又は国籍を有しないときということですね。こちらは資料の三ページ目、二で条文書いてございますけれども、二番目ですね。生まれた瞬間に日本国民とするという二条の三号というものがあります。出生に遡って日本国籍の確認が再度できるのではないか、なされるのであろうということですけれども、それはすばらしいことですが、しかし、その場合、父母が知れないとはどういうことなのか、そして国籍を有しないとはどういうことなのか、その解釈が包摂的である必要があります。
まずは、その母が知れない、そういう場合ですね。それはどういうことなのかですけれども、まず、外国人のお母さんでフィリピン人だったはずなんだけれども、しかし、行方不明になったり死亡したりして、本人が、何か残っている証拠では本当の母の国籍が確認できない。国籍国の大使館に行っても、いや、こんな人知りませんと言われることもありますけれども、そういった場合というので、実際、日本では就籍審判で、こういったケースですけれども、日本国民として二条三号で認められたりということもありますので、そういった実務が継続されることが、インクルーシブな実務ですね、また期待されますし。
また、日本の無国籍者ですけれども、定義がございませんので、その定義というものが、いずれの国によってもその法の運用において国民として認められないというのが国際慣習法上の定義です。が、これ、運用、というのが違うんですね。法の文言上では、この人は絶対この国籍を持っているはずだということで、午前中、法務大臣、民事局長様もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、外国の法律を見るだけでは、その人が本当に国籍を持っているかどうかというのは分からないわけですね。それがどういうふうに運用されているのかということを見なければいけない。それを本当に確実に、それは外国国籍のことですから、認定することはできません。
ですので、私どもの無国籍者ハンドブックというものがございまして、それにどうやって、じゃ、大使館に問い合わせたけど連絡が来ない場合はどうするのかとか、そういった案内があるわけですね。
三番目のシナリオですけれども、出生地主義を基本としている国ですけれども、確かに大使館に登録さえすれば取得できる国もあるんです。しかし、それは、全てじゃなくて、例えば永住していなければいけない、出生地主義だからその国に戻って定住しなければいけないという、そういう国もあるんですね。又は一年という期限を掛けられている場合もある。その場合はどうするのかという話ですけれども。
あとは、そうですね、父系血統主義という国も大体約二十五か国世界にはございますけれども、そういった国はどうするか。そういった場合、実は結構例外を設けていまして、父系血統主義で、お母さんからは本当は国籍もらえないんだけれども、しかし、父が知れない場合は国籍が与えられますという例外が結構あるんですね。しかし、今回は認知無効というのは制限が掛けられていますので、七年で認知は有効である。そうすると、今度はこの例外も使えないという話になるわけですね。
そうすると、じゃ、八条の四号ですけれども、国籍法の八条の四号を使って帰化させる手もあります。あると思われますが、そうする場合でも、三年間住所を有していなければいけない。日本で生まれてからずっと国籍を有しない、そういった要件を満たせない方も。また、適法滞在が要件となっていますので、そうするとなかなか難しいこともあるかと思います。
第四番目のシナリオですけれども、それは日本国籍を取得したことで失った方の場合ですけれども、それは再取得が可能な場合もあるかもしれないんですが、なかなか帰化というものが要求されていたりして。帰化の場合はそこの国の定住が要求されている。そうすると、帰化をしようにも、なかなかそれはハードルが、もう日本に居を構えて定住していると難しい。
そういった場合もありますので、是非、八条の四号だけではなくて、八条の一号ですとか三号ですとか、日本国籍を失った場合ですとか、そういったことを解釈によって適用していただける可能性もあるのではないか。済みません、長くなりました、と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/165
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166・福島みずほ
○福島みずほ君 時間ですので。帰化も含めて、一旦無国籍になるととても大変だということがよく分かりました。
どうも、参考人の皆さん、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/166
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167・佐々木さやか
○佐々木さやか君 本日は、参考人の先生方、ありがとうございます。公明党の佐々木と申します。
まず、窪田参考人に質問させていただきます。
今回の民法の改正の中で、子の人格の尊重ということで、親権を行う場合の新たな八百二十一条がございます。この規定が新設をされました意義というところと、それから、その規定の中で、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないという文言がございますけれども、体罰というのが、その後に記載があります子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動の例示として記載がされているのかなと思うんですが、その理解でいいか、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/167
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168・窪田充見
○参考人(窪田充見君) 御質問ありがとうございました。
まず最初は、子の人格の尊重が規定されたことの意義ということでございますが、もちろん、今回この規定を改めるに至っては、懲戒を名目とする虐待のようなものを避ける、防止しなければいけないということがございましたが、それだけではなくて、子供が親権の単なる客体ではなく、子供自身が親子関係における主体としての意味を持っていて尊重されるべき存在なんだということを規定したことの意味は大変に大きいように思います。
従来の考え方ですと、親権というのは、どういう意味で権利なのか義務なのかという議論はありますけれど、親を主体的なものと捉えて、子供が客体であったというのに対して、その見方自体を変えるという側面を持っているだろうと思います。もちろん、この規定を変えたことで全てが世界が変わるというふうには思ってはいませんが、基本的にこれからいろんな問題を考えていく上での手掛かりになるものだと思っております。
それから、二番目の御質問、体罰その他の有害な行為ということで、体罰がその例示としてあり、その体罰という言葉に必ずしも該当しなくても、それ以外の有害な行為がここで禁止されているという御理解は、そのとおりのものであるというふうに認識しております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/168
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169・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
次に、金児参考人にこの無国籍の問題についてお聞きしたいと思うんですけれども、この無国籍に関する問題について、これまで我が国は残念ながら余り理解といいますかが十分ではなかったなというふうに今回の議論をしながら私は痛感をしております。
この問題について、様々本日も御示唆をいただいたわけですけれども、御意見の中で、この無国籍認定手続というものを日本で設置するべきではないかという、その必要性に触れられていましたけれども、これはどのような手続で、そして今回の三条三項の問題についてどのように関わってきて無国籍の削減につながるのかというところを教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/169
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170・金児真依
○参考人(金児真依君) ありがとうございます。
無国籍認定手続ですけれども、難民認定手続と結構似て、かなり似ていまして、まずインタビューがあって、書類の提出その前にして、認められると無国籍者としての地位が与えられて保護されるというものですけれども、これ、まず、難民の認定手続もそうなんですが、無国籍の認定も、その事実認定をきちんとするというところから始まって、外国の法の文言だけじゃなくて、運用についての専門知識というものも必要になってきます。
なかなか、外国法どんどん変わりますので、国籍法、私どものIBelongキャンペーンの一環としても、変わっておりますので、そうすると、それをアップデートしながら、そして、しかもどうやって適用されているのかというものも見ながら、そういった手続を持つことで、第三条三項によって国籍を失うと誰が無国籍になるのかということですけれども、それも正確に把握できるのではないかということですね。
国籍を、いつ、どういうときに喪失するのかといった、その要件といったものを、私どもデータベース持っております。そういったデータベースと、そして私どものUNHCR、外国、各国の機関も事務所もございますので、そういった形で政府に対して情報提供ということもできますし、そういった形で、そうですね、お手伝いができるということで。例えば、フィンランドでは移民庁というものが、無国籍認定手続というよりは国籍の認定手続というものを持っていまして、それで、その一環で無国籍の認定もされています。
そこで、この連携が非常に有効でして、その無国籍を認定する行政庁、そして国籍法を運用する行政庁が連携していまして、市役所の依頼で、フィンランドで生まれた、そのままでは無国籍となる者、フィンランド国籍を与えなければいけない者、その人たちを認定する、無国籍かどうかということを移民庁が行って、それを市役所が受け取って国籍の証明書を発行する、まあ日本でいうと戸籍ですけれども、そういった有機的な連携がなされています。
そういった形で、是非、私どもの認定手続のハンドブックですとかそういったものもございますので、是非御活用いただき、誰も取り残されないという運用というものが重要かと思いますけれども、なかなか日本でも、結構、例えば日本だけでなくいろんな国で、例えばパラグアイ人の両親で生まれて、海外で生まれると国籍が得られないわけですけれども、ずっとパラグアイという国籍のまま、無国籍者のために使われる国籍法の条項も適用されることなく、また案内もされず、無国籍者であるということを本人が知らないことが多いんですね。それを本人が、いや、実は国籍あるはずなんだ、お母さんの国籍があるはずだというふうに思い込んで手続をしなかったりとかということもありますし、そういった意味で、支援者と政府の連携等も必要なのではないかと考えております。
入管庁ですとか民事局ですとか、事務連絡ですとか最近本当に出されていて、大変大きな一歩だと私ども考えておりまして、国籍をどういうふうにより正確に把握するかということ、大変重要となっておりますので、そういったものを是非強化すること、それに私どもはお手伝いしたいというふうに考えております。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/170
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171・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
それでは、井戸参考人にお聞きしたいと思います。
改めて、大変貴重な御意見を今日も伺いまして、今回の法改正では解決できない課題がまだまだあるなということを認識したわけですけれども、お話の中で今回の嫡出否認の訴えの拡充がありましたけれども、これではなかなか使い勝手が悪いんだという御指摘でした。
その中で、お話の中に、前の夫との関わり、これを持つこと自体が非常に困難なんだと。そこの事情がなかなか、DV被害とか支援とかそういったことに詳しい方であればぴんとくるんですけれども、なかなかそうじゃないと、そんな前の夫とちょっと手続上必要なことを連絡取るぐらいまあいいじゃないかというか、それはやむを得ないんじゃないかという理解にとどまる場合もあるかと思うんです。
先ほども、戸籍上例えば前の夫の名前が入ってしまうこととか、それから、手続を進めるに当たって前の夫との連絡を取ったり何かしらの関わりが必要とすること、これ自体が困難なんだということを、もう少し補足といいますか、詳しくこの際お聞かせいただければなと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/171
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172・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) 御質問ありがとうございます。
まさにそこなんですよね。やっぱり離婚したその女性たちというのは、先ほども、三百日以内ということは離婚してから間もなくなんですけれども、皆さん非常に大変な思いをしながら離婚をしていると。
簡単な例というか、に関して言ったならば、そこまでの、確かに、調停して、認知調停とかで、今の再婚後の夫とかが協力的ならば前の夫に関わらなくてもできますけれども、そうじゃないやっぱり困難事例が、逆に言うと、前の夫と関わらなければならないので、困難事例ってどんな事例だろうといったときに、例えば私どもの相談者でいったならば、もう本当にひどい暴力で、離婚届をとにかく出してくれといっても出せないので、調停から今度は裁判の、最終的には、DVで、そこも非常に大変だったということも認定されているんだけれども、そこで今度、違う方との間に生まれた子供の、まあ一回離婚しているんですよ、裁判離婚で離婚しているにもかかわらず、改めてまた調停、裁判というものをこの子供の父親を決めるときに、前夫の推定を外すためにまたやらなきゃいけないという例だとか。
あとは、すごい暴力から逃れて、母子寮みたいなところでケアを受けていて、そこでもう詳細にどんな暴力を受けたかとか子供が生まれるまでの過程とか全部書いてあったとしても、その子供と一緒に逃げているにもかかわらず、今度はその子供がお母さんの子かどうかなんか分からないと。そのために、証明するためにはどうするかといったらば、生まれたときの写真を見せろと、自宅でその方は出産したんですけど、へその緒がぴんと張っている写真じゃないと駄目だというんですよね。
というのは、へその緒ってすぐしぼんでしまって、なので、自分が産んだかということが分からないので、お母さんと子供がそうやってぴんと張った写真を持ってきたならば母子関係がまず認定されて、でも、結果的には、その前の夫も今事実上の父親も非常に暴力的だった場合なんというのは、どんなにそんなふうに、ある種、公的機関のところで言って証明になるようなものがあったとしても、それは駄目なんですよ。必ずまた司法の場に行かなきゃいけないので、もう本当にそういう意味では、お母さんたちにそれをやらせるというのは本当に過酷なんですよ。
先ほど福島委員からもありましたけれども、むしろそうだったらば、前の夫が自分の子供と主張するんであれば、親子関係存在という形で前の夫が訴えればいいわけですよね。そうすると、別に身体的に出産後でもないですし、何か全部を、そうやった立証責任みたいなものを母親に負わせるというこのところを変えていかなかったならば、結果的にはもう無戸籍問題は変わらないと思うんです。
先ほど加田委員のお話もありましたけれども、地方自治体なんかもパスポートで無戸籍の人たちをやらなきゃいけないとか、住民票を、だから本当に困っているんですよね。そのためには、とにかく基であるこのやっぱり法律、嫡出推定制度というところをもっとシンプルに、まあ私なんか三百日要らないと思っているので、離婚した後は、非嫡出子、婚外子と同じように空欄とか、若しくはかぶった場合というのには父未定って形で出すということをやった方が、もうその方がすっきりしますし、無戸籍問題の解決にはつながります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/172
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173・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
時間が来ましたので、以上で終わらせていただきます。大変にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/173
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174・梅村みずほ
○梅村みずほ君 日本維新の会の梅村みずほと申します。四人の参考人の皆様、それぞれの御知見から大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。
午前からもこの民法改正に関する質疑が行われておりまして、私も四十分ほど、先ほど大臣を始めとして質疑をさせていただいたところでございます。
私の主張といたしましては、この令和の時代に九九・九%の精度を誇りますDNA型鑑定というものがありますので、推定ではなく確定という形で、感情も推測も余地もない、もう明らかな生物学的な父親という存在をもっと大切にすべきだということを主張してまいりました。あわせて、子供の権利という、子どもの権利条約というキーワードが二宮参考人からも出ましたけれども、私は、この親子法制において、子供に対する影響というものを是非とも主軸に考えてほしいということも訴えていた立場でございます。ですので、参考人の皆様もDNA鑑定に関することを中心にお伺いしたいなと思います。
まずは、井戸参考人にお伺いしたく思います。
先ほど、早川・大口案ということでDNAのお話も少し出たかと思いますけれども、やはり父親は確実に生物学的に一人の男性、一人の女性の間に生まれている子供だということが疑いの余地がないところで、これが三百日、二百日ということではなくて、もう生物学的なDNA鑑定をすれば済むじゃないですか。この液体がアルカリ性なのか酸性なのか中性なのか、リトマス試験紙を使ったらすぐに分かりますよね。もうそういう疑う余地のないそういった検査を活用すべきというふうに私は思うのですが、井戸参考人の御意見、必要性があると考えるのであれば、その御主張も少し伺いたく存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/174
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175・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) ありがとうございます。
嫡出推定制度というのは、婚姻を中心にして、そこで生まれた子供に関して言ったら、妻の夫ということを親子関係で規定していくものなんですけれども、全員に対して、例えばこれDNA鑑定を前提にすると、生まれた子全員にDNA鑑定をするのかというと、またそれはちょっと別な話なので、私どもとしては、推定制度というのは、その機能はあるとは思っているので、その推定制度の今ここで三百日とかというルールは、そこでもう本当に科学的なルールとか、そういうものに関して、非常にないままの、明治の時代のそういう古いルールを改正をしていこうということで言っているんですけれども。
おっしゃるとおり、例えば無戸籍の場合も、認知の調停だとか嫡出否認も親子関係不存在も、基本的に裁判所ではDNAやっているんですよ。なので、もめるケースというか、嫡出が重なるケースだとかについていったならば、やっぱりDNA鑑定というのは非常に有効な手段だと思っていますし、裁判所で認められるのに、しかしながら役所の窓口では駄目というのは何かおかしな話で、役所の窓口で形式的な審査ができないから、例えば早川・大口案なんかについていったならば、例えば母の陳述書とDNAでいいというところを、DNAは、先ほど福島委員の方からもありましたけど、形式的審査はできないというふうなことで、それをやらないということの理由にしているんですけれども、DNA鑑定をそこで、役所で、どっちなの、誰なのかとか、何%なのかということを求めているんじゃなくて、そのDNAの書類を見て、それで前の夫じゃなくて違う人が推定なんだといったら、それを受け付けるということは可能だと思うんですよね。
なんですけれども、そうではないというずっとことだったので、やはり私もそういう意味でいったならば、こういった、まあ早川・大口案というのは、再婚禁止期間の短縮というものを抱き合わせで出したらば、それに反対が多くて通らなかったという案なんです、二〇〇七年に。なんですけれども、今や再婚禁止期間が今回なくなるので、そういう意味では、早川・大口案というのを基軸に今後の対応というのを考えるということは、非常に無戸籍のゼロに向かっていく意味では大きいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/175
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176・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございました。
おっしゃるとおりに、全ての子供にDNA鑑定が必要かどうかというのは、これまた議論があるところだなと思います。このDNA型鑑定というものを利用していくに当たって、もう突き詰めると、国民全員のDNA型をマイナンバーとともに登録し、例えば性犯罪で子供ができましたとなったときも、被害届を出したらすぐに照合して、例えば東京で何か性暴力的なものがあっても福岡在住の誰々さんが父親ですよというふうに割り出される。もうそれがいいのかどうなのか、そういう社会を望むのかどうなのか。究極のプライバシー、そのDNAというものを行政が管理をすることの是非なんというところまでも及んでくるような問題だと思いますので、まずは段階的に、その合理性、極めて合理性の高いところからというふうに考えておりますけれども、本当に生の御意見といいますか御経験に基づく様々な声を生かされた井戸参考人のお言葉というのは本当に参考になるなと、勉強になるなと思った次第です。ありがとうございます。
では次に、私の母校であります立命館大学から今日お越しいただきました二宮名誉教授にお伺いしたく思います。
お配りいただきました資料の一のところに、国際基準に基づく子の人権保障の視点というところから連なりまして、①に、血縁がない場合に父子関係を否定し、血縁上の父との法律上の父子関係が成立する手段の確保、子のアイデンティティーというふうに書いていただいておりますけれども、まさにこの血縁関係を有している生物学的な父親の存在というものをDNA型鑑定で認定することが容易になったこの時代ではありますけれども、DNA型鑑定をこの親子法制に組み込んでいくことの是非、御意見についてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/176
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177・二宮周平
○参考人(二宮周平君) ありがとうございます。
先ほど井戸さんがおっしゃったように、訴訟、審判など、裁判というところに来たときには有力な鑑定の材料になると思います。だから、嫡出否認であれ認知無効であれ、それはDNA鑑定をして結論を出すというのは望ましいと思います。
ただ、今、日本の訴訟法の中にはDNA鑑定を強制するような仕組みはありません。だから、その鑑定をやるといった場合にどこが鑑定をするのか、そしてどの場面に限定されるのか、そして鑑定に協力する義務を当事者に課すのか、そういうような訴訟法上の議論を経なければ、一概にDNAで使ってということにはなりません。だから、相手方がDNA鑑定を拒否してしまうと、それはもう証明不可能ということになって、立証責任負っている方が負けるという、こういう構造になってしまいますので、鑑定協力についてより突っ込んだ議論をして法制化する必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/177
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178・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
父親がDNA鑑定を拒否した場合にというような文言が先ほど大臣からもありまして、いろんなケースを想定することは非常に重要だと思っているんですけれども、やはり子供の利益というものを考えたときに、私はこの親子法制を考えるときに一番胸が苦しくなるのが、子供が成長したときに、これは無戸籍になってしまう子供たちについてもそうなんですけれども、今まで日本人だと信じて疑わなかった、日本の子供だと思って周りの子と同じように日本国民として教育を受けてきた、就職をしたい、恋愛をして結婚をしたいと思っていた、そういったお子さんが例えば国籍法によって日本国籍を剥奪されたときの子供の悲しみと戸惑い、今後に落とされる影というもの。
また、日本人同士の子供であったとしても、成長をしていって、愛情を信じて疑わず、その父母の子供だと信じて疑わなかったところに、ある日、安価でDNA鑑定ができますもので、事実関係を生物学上で知ったときの落胆であるとか、そこに関わって親の態度が変わってきたり、一番被害を被るのは子供たちであるというふうに思っております。
そこで、お伺いしたいのですが、窪田参考人にお伺いをいたします。
大臣にこういったDNA鑑定を使うべきじゃないですかというふうにお尋ねしたところ、家庭の平穏を害する懸念があるということで、私は先ほども申しましたように、成長段階で、また成長した段階で事実が生物学的に判明したときにも家庭の平穏を害する懸念というのはあると思うと、出生のときに分かっても家庭の平穏を害する可能性があると思うと、両方に関して家庭の平穏を害する可能性があると思っていますと。
その上で、じゃ、子供が成長して楽しい思い出や愛情というものが芽生えた段階で分かるというのもこれまた大きな打撃であるということで、私は、もう出生のときに白黒をはっきり付けて、そのときに確かに問題は生じるかもしれないですけれども、例えばそれでシングルマザーになりましたといっても、それはクリアすべき問題ではないかということから、DNA鑑定というものを前向きに検討してほしいと言っていた立場なんですけれども、窪田参考人の御意見をお伺いいたしたく存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/178
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179・窪田充見
○参考人(窪田充見君) 御質問ありがとうございました。大変に難しい問題だと思っております。
基本的には、先ほど井戸参考人から御説明があったとおり、単に事実関係で決まる、血縁関係だけで決まるわけではないというのが現在の仕組みではないかと思いますし、それは単に昔は技術が発達していなかったからというだけではなくて、仮に後から分かったとしても一定の期間が経過したら法的親子関係を確定させるというのは、子供の利益を図った仕組みなのではないかなというふうに思っています。
恐らくこれ、どの国でも同じなんですが、基本的には、かなり細かい差はあるとしても、婚姻関係にある場合にこういうふうな形での父子関係を推定して、そしてそれを覆す場合にはどういう要件が必要かということで、単純にDNA鑑定だけで決めるというよりは、その際にも子供の利益というのを考慮しているというのが全体の枠組みではないかと思います。
血縁関係、DNA鑑定による血縁関係が親子の基本だというのは、それ自体としては十分にある考え方なんだと思うんですが、その場合に一つ深刻な問題が生じるのが、人工授精の場合、第三者提供精子による人工授精の場合にも同じことが当てはまると。それは、ドナーが父親であって、ただ一人の父親であってということになるんだろうと思いますが、必ずしもそれは当然に受け入れられる結論ではないのかなというふうに思います。
それからもう一つ、子の利益という観点からは、恐らく出自を知る権利との関係ではDNA鑑定というのはすごく重要な意味を持っていると思います。この位置付けは国によっても違うんですが、例えばドイツ法では、親子関係を決める基準ではなくて、しかし、それとは別に生物学上の親が誰であるかを知る権利といったものを認めるという対処もしておりますので、いろんな方向性が、対応の仕方があるのかなというふうに思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/179
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180・梅村みずほ
○梅村みずほ君 おっしゃるとおり、生殖補助医療において、今法的に認められた精子提供なんかも、出自を知る権利に照らして子供がやはり望むのであればその精子の持ち主、元の持ち主が分かるようにしますよといったらぐっと提供者が減ってくるわけで、いろいろな問題があるというのは承知をしております。
私も全てにおいて一律に今すぐとは思っていないんですけれども、余りにこのDNA鑑定というものが軽視されているのではないかと思うところもあり、徐々に検討していくべき、前向きに検討していくべきと思っている立場でございます。引き続き、皆様の御意見を参考に議論に加わっていけたらと思います。
それでは、最後になるかもしれませんけれども、金児参考人にお伺いしたいと思っております。
UNHCRさんの活動をいつも敬意を表しながら私も調べたりもしているんですけれども、難民であるとか移民をもっと日本も受け入れるべきだという御主張も、そうしたい思い、多様性を実現した日本をつくりたいという思いと、一方、国防的な観点からするとなかなかその懸念点というのも理解できるという立場から、この日本国籍をどなたに持っていただくかというのも国防的な観点とは切って切り離せない問題にもなるだろうというふうに思っております。
そこで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、二点、国際的に国籍をめぐり、先ほどからも申しておりますDNA鑑定を活用されている事例などがあれば御紹介いただきたく、ない場合は存じ上げませんというふうに言っていただければいいかなと思うんですけれども。もう一点、例えば在留資格のない女性が誰の子供か分からないというお子さんを出産した場合に各国ではどのように対応しているかというので、パターンいろいろあるかと思うんです。在留資格がない女性が旅先なり不法滞在中の国で子供を身ごもった場合、できたお子さんの対応をどうしているのかというのは各国で様々対応があろうかと思いますけれども、代表的な幾つかの事例と、国際的に推奨されるべき、UNHCRとしてこの国は推奨されるべき対応を取っているなという模範的な国がありましたら御紹介いただきたく思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/180
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181・金児真依
○参考人(金児真依君) 貴重な御質問をありがとうございます。
まず最初の、DNA鑑定によって親子関係を認定する国があるかということですけれども、大変申し訳ないんですが、私ども無国籍と難民の保護の対応を任されている機関でございまして、そういったものに関して管轄外になってきてしまいまして、私どもがお答えが難しいんですが。
ただ、そうですね、国際私法会議ですとかいろいろと国際機関もございますので、そういったところを参考にしていただく、HCCHですね、そういったところの情報を参考にしていただくのがいいのではないか。ですとか、私ども、もちろん、児童の権利条約委員会ですとか女性差別撤廃条約委員会ですとか、そういったところが日本の親子法制に関してはコメントを出しておりますので、そういった国際機関、国連機関の情報等を御参考にしていただければと考えております。
在留特別許可というか、非正規滞在の外国人が身ごもった場合の話ですよね。そうですね、非婚ということで、日本人の子とかではなくてということですよね。その配偶者というか法的な親が、父親が在留資格を持っていた場合には在留特別許可がなされるということは日本でも行われることもあるのか。
そうですね、安定した在留資格を持っている方ですとか、あるのかもしれませんけれども、やはりその子供には何の責任もないというところで、児童の権利条約委員会、そして移住労働者の権利委員会といったものがそういったコメントを発表しているんですけれども、そういった、やはり子供の、親のステータスというものによって子供が不利益をなるべく受けないという方向で。
国籍という意味でいいますと、やはり確かに日本が締結している児童の権利条約七条ですとか自由権規約二十四条ですとか、国籍への権利というものがあります。それに関して、非正規滞在で実際国籍がもらえない場合というか、非正規滞在だけではもちろん国籍はもらえるかもしれませんので、そうではなくて、私どもが今考えているのは、無国籍の管轄ですので、無国籍、国籍がもらえない場合ですね、そういった場合にはどういうふうに対応するのかという話で。
そこの部分に関しましてはかなりいろんな国でも議論がございまして、じゃ、七条や二十四条、直接国籍の付与というものを規定していないじゃないかと、そういった国籍、生まれた国に国籍付与する義務はないんじゃないかという話、結構いろいろな国でも議論になっているんですね。
それに関して、子どもの権利条約、二〇一七年の移住労働者委員会との合同一般意見の第二十三号で、国は、自国の領域で出生した全ての子供に国籍を付与する義務は負わないものの、全ての子供が出生時に国籍を有していることを確保するために、国内的に、かつ他国とも協力しながら、全ての適切な措置をとることを要求される、重大な措置の一つは、自国の領域で出生した子供に対し、国籍を付与しなければその子供が無国籍になる場合に、出生時に又は出生後可能な限り早期に国籍を付与することであるという、そういった勧告もしております。
なので、子どもの権利条約七条と二十四条、それだけを見るのではなく、やはり第二条というもの、その国、その子供を領域内に置く国がその国籍取得の権利を確保する、何らかの形で、恐らく、あらゆる適切な対応を取って確保する義務がある。その二条に照らして解釈するべきだというのが私どもの、管轄外な部分も少しだけありますけれども、そういったのが私どもの立場でございます。
済みません、長くなりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/181
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182・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございました。終了します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/182
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183・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合孝典と申します。
参考人の先生方には、貴重な御意見頂戴しまして、ありがとうございました。
私の方からは、まず金児参考人に御質問させていただきたいと思います。
私、午前中の質問の中で、齋藤法務大臣に対して、無国籍認定手続設置の必要性についてということで先に質問をさせていただきました。そうしましたところ、相手国との調整等の必要性などを理由に、この手続機関の設置について必ずしも前向きでない御回答をいただいたわけでありますが、この無国籍認定手続を設置する上で、無国籍者地位条約に入っていることというのが、これ、そもそも前提となっているのかどうかということについて確認をさせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/183
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184・金児真依
○参考人(金児真依君) ありがとうございます。
大変重要な御質問でございますが、確かに無国籍認定手続を持っている国というのは無国籍者地位条約の締約国が多いわけですけれども、その保障、その権利を保障するためにやっぱり認定をしなければいけない、誰ということでですね。フランス、イタリア、スペイン、イギリス、オランダとハンガリー、そういった国が持っておりますけれども、カザフスタンですとか、これはコソボというような国や地域、そういった国は無国籍地位条約は入っていない、入っていないんだけれども、無国籍者の保護の、その人権のため、国内法の規定、そして国際人権法、憲法上の保護、国籍への人権の保護のためにそういった手続を設置している国もございます。なので、私どもとしてはもちろん、日本も、無国籍の地位に関する条約、無国籍削減条約、是非入っていただきたいんですが。
しかし、その前に国籍の認定をより正確に行っていく。各国、民事局のような国籍法を担当している、運用している部署、そして外国人、入管法を扱っている入管庁。また、厚生労働省ですとか、父母が知れない子供は児童養護施設にいて、無国籍又は国籍不明の子がいることがありますけれども、そういった子供というのをやはりくまなく救って、そして保護し、まずは在留資格を与え、そして最終的に国籍法の規定によって、帰化ですとか又は外国籍の取得ですとか、そういったことをするというためのシステム化というものはいつでもできるし、実際に今そういった努力を法務省もされているという、政府もしているというふうに私ども理解しておりますので、それを進めていただく。
そして、無国籍認定手続というものを、その延長線上というか、本当にキャンペーンを始めてからどんどんそういった国が増えておりますけれども、それをつくっていただく。それは、条約に先んじて、条約に入るということは条件では全くございませんので、是非お願いしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/184
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185・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
つまりは、国のやる気があるかどうかというところが設置できるかどうかに関しては問われているという理解でよろしいですかね、金児さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/185
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186・金児真依
○参考人(金児真依君) ありがとうございます。
やはり、日本も人権条約、自由権規約ですとか児童の権利条約、ほかにも様々な人権条約に入っておりますので、それを実現するため、国内法上の権利を守る、そういったためにも無国籍認定手続というものは有用なことと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/186
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187・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
窪田参考人にお伺いをしたいと思いますが、今お聞きいただいたこの無国籍認定手続の設置、まあ可否も含めてということなんですが、先生のお立場からはこの問題についてどのように捉えていらっしゃるか、お教えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/187
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188・窪田充見
○参考人(窪田充見君) 御質問ありがとうございます。
国籍法三条三項に関する問題は非常に重要な問題であるというふうに私自身も認識しております。先ほど冒頭の意見陳述で申し上げなかったのは、それについて触れなかったのは、今回の改正の趣旨というのは、本来、民法上の親子関係に焦点を当てたものということでしたので、そこの部分について中心にお話をしたということでございます。
基本的には、法制審の議論の中でも大変に様々な意見があったところであったというのは記憶しております。
一方の考え方として、恐らく二宮参考人からの御意見というのがその方向だったと思うんですが、認知の仕組みの中自体にこうした国籍の不正取得といいますか、そうしたものを組み込んで認知無効をするという仕組み、これはフランス法などもそうなっていたと思いますが、そういう方向性も考えられるんだろうとは思います。
しかし、親子関係の問題という本来私的な関係の中に公序に関わるような規律を入れて、そしてそれによって親子関係をひっくり返すというようなルールにするよりは、むしろ外の枠に出した方がいいのではないかという議論であったと思います。
その際の議論としては、一般的に親子関係を判断する場合の視点と国籍の不正取得といったようなこと、虚偽認知と言われるようなものについての判断というのはかなり性格の違うものではあるのではないかということがあり、民法の外に出して、なおかつ基本的な考え方としては、これまでの運用をそのまま維持するという形のものが国籍法三条三項であったというふうに理解しております。
ただし、重要な問題だというふうに申し上げましたのは、これまでもそうなっていたんだからこれでいいじゃないかという見方はあるかもしれませんが、恐らく民法の方の認知の規定が変わったことによって、従前のその国籍法に関する運用に関してもそのままでいいのかどうかという議論は当然、自然にも出てくるんだろうと思います。今日伺っておりましても、その国籍法三条三項をめぐる問題というのが非常に深刻なものであって、特に無国籍になる場合ということに関しての一定の対応が必要だということについて私自身も十分に共感を覚えます。
ただ、それが国籍法三条三項の修正という形でいくのか、今日ももう幾つか御示唆があったように、もう少し運用レベルあるいは現行法の解釈のレベルでできるのかということについては、もう少し検討していく必要があるのではないかなというふうに思いました。
不完全だと思いますが、私、専門が民法でございまして、直接、国際法、国際私法の方ではございませんので、不完全なお答えだったと思いますが、御容赦していただければと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/188
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189・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
法制審の議論をリードされるお立場でいらっしゃいますので、どういう御認識をされているのかというのをちょっと聞きたかったということで突然投げさせていただきました。失礼しました。
二宮参考人にもこの問題について御認識をお伺いしたいんですが、この無国籍認定手続というものの必要性について、二宮参考人はどのようにお考えに、お感じになられているか、お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/189
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190・二宮周平
○参考人(二宮周平君) 私は、ここでも御報告しましたように、基本的に民法がベースになるべき、つまり親子の関係性は確定するわけですから、確定したものを国籍の視点から覆すということはできないと考えていますので、そういう範囲で無国籍の方が生じないようにすべきだと考えています。
それができなくて、あるいは確定する前に血縁関係がないということが分かって、それで国が介入するということも、私は、民法の立場からいくと、国家の介入、窪田さんもそういう点では御一緒だと思います。
ただ、もし介入しないのであれば、それは民法の中に検察官というのが入ってくることについていかがかという、こういう御指摘はありましたけれども、公益の代表者として検察官が加わるということはあり得る話だと思います。でも、それもやっぱり期間制限、それで、それ以降は争えないということにすべきではないかと考えています。
無国籍者に対する対応は金児さんの見解に全面的に賛成です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/190
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191・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
金児参考人に追加で質問させていただきたいと思いますが、無国籍になる場合には国籍の剥奪はしないこととするとの例外規定を設けるべきとするのがUNHCRさんの提案と伺っております。
それに対して、葉梨前法務大臣は、現在の国籍法が血統主義と例外的な出生地主義を取っており、その例外になるために難しい、これが法務大臣としての公式の見解ということになっておりますが、この点についてUNHCRさんとしてどう思われる、考えられるのかということについてお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/191
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192・金児真依
○参考人(金児真依君) ありがとうございます。
恐らく、その御答弁の趣旨というのは、日本の国籍法は、父か母が日本人であるという血統主義を基本として、補充的に出生地主義を採用している、つまり、父母が共に知れない又は無国籍である場合で、日本で生まれた場合には国籍を与えるけれども、しかし、そのほか、例えばパラグアイ人の両親で日本で生まれた場合とか、そういった場合というのは両親国籍ありますから、そういった場合は二条の三号ではなくて八条の四号で帰化が容易になっているという、緩和されるという、要件が。ということで、なので直ちに国籍を与えるわけではないということ、そういったことを踏まえての御発言なのではないかと思うんですが。
それが、私どもがコメントの十四ページ以降で御紹介している国ですけれども、こういったオランダですとかノルウェーですとか、欧州の各国ですね、フィンランドですとかドイツですとか、そういった国というのは基本的に日本と同じ血統主義です。日本と同じ血統主義で、出生地主義で、全く条件を付けずに出生地主義で、国籍を与えるという国ではありません。そうすると、血統主義だから例外をつくれない、無国籍になる場合は三条の三項の例外がつくれないというわけではないのではないかと思います。
しかも、更に申し上げますと、この欧州国籍条約七条三項というのは、締約国は、結果として本人が無国籍になる場合、国籍の喪失を規定してはならないとしているわけですが、これは領域内の出生による無国籍、違う、領域外の出生の人たちも含みます。恐らく認知された子供、三条で認知された子供というのは、日本国外で生まれている場合もあるかと思います。
これはそういった欧州の国々も一緒でして、そういった子供たちも含めてまるっと、認知等の親子関係の無効によってその国籍が喪失される場合、それで無国籍となる場合は例外とするというふうにしておりますので、合理的な法制なのではないかと考えておりますし、また、更に申し上げますと、脚注三十で、私どものコメントですけれども、オランダとスイスの国籍法ですが、これは、日本国籍法と同じように、国内で出生した全ての無国籍者が出生により直ちに国籍を得るわけではないんですね。
いろいろと例外があって、オランダでは、生まれたときから無国籍の者は三年滞在したときに申請によって国籍が取得できるとか、そういったことなんですけれども、やはり法律の規定によって無国籍が発生することを防がなければいけないという、そういった政策的な判断もあるかと思いますが、そういった規定になっていると。
いずれにしても、国籍、外国籍を再取得できる人たちというのは、やはり三条の三項で無国籍になった方の中にはいらっしゃると思うんですが、なかなか新たに取得するということが難しいケースもあるかと思いますし、日本にもう既に生活の基盤があるという方が多いかと思います。それまで国民として扱われてきた人が急に無国籍になるというのは非常に大きな損害だと思いますし、やはりわざわざ外国人として退去強制手続にのせるよりは、せめて在留資格取得許可、入管法の二十二条の二ですけれども、そういったものを活用。同じような例で、過去、親子関係が否定されて無国籍と突然なった、失礼いたしました、日本国籍がなくなったケースに関しまして、それが活用された例もあるので、一度も在留資格を失わずに滞在が可能になって、非正規滞在になることがなく滞在できるということもあるかと思いますので、是非そういった規定をフル活用して対応いただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/192
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193・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
時間なので、最後に一点、窪田参考人にお伺いしたいと思います。
この無国籍の問題については、今後法律が改正されることによって様々な問題が出てくることが懸念されているわけですが、この問題については、やっぱり継続的にチェックを行った上で必要に応じて見直しをしていかなければいけないと思っております。
窪田参考人は、この見直しを今後行うことの必要性についてどういう御認識をされているのか、最後にお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/193
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194・窪田充見
○参考人(窪田充見君) 先ほど申し上げたとおり、基本的に、今回の改正においては、一般的な民法上の親子関係というところに焦点を当てての議論ではありましたけれど、その中で、言わば国籍法をめぐる問題というのが、多分これは潜在的には今までもあったんだろうと思うんですけれど、それがより明確になってきたという点はあるんだろうと思います。
ただ、国籍をめぐる問題ですので、多分民法の話とはかなり性格の違う様々な観点からの検討が必要となると思いますし、そのときにどういう仕組みにするのか、あるいは一旦仕組みを採用した上で更に見直すのか、あるいは運用でいって更に見直していくのか等々の継続的な検討というのは当然必要であるというふうに認識しております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/194
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195・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/195
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196・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
まず、窪田参考人にお尋ねしたいと思うんですが、今日もこの参考人質疑でも大きなテーマになっています離婚後三百日問題に関して、親子法制部会の議事録を拝見いたしますと、随分議論になって、けれども、別居後などに婚姻関係が破綻した後に懐胎された子について、裁判上の訴えによることなく、戸籍窓口における届出によって出生の届出を許容するというその取扱い、方策については今回の親子法制部会での見直し事項としては取り上げないという結論を出されて、その理由の、幾つかあるんですけれども、その一つとして次のような記載があります。夫は本来であれば嫡出推定が及ぶにもかかわらず、裁判手続によることなく、妻により、子の出生を知らない間に嫡出でない子としての届出がされることになる。
ちょっとぶっちゃけて言うと、これでなぜ悪いと私などは思うんですよ。離婚が成立した後に生まれている子ですよね。その子の本当の父が誰かということを誰より一番知っているのはお母さん、女性なのであって、まずはそのお母さんによる出生届、これを受理して戸籍はもちろん作るという扱いをすることのどこが悪いのかというのが私には理解がいかないものですから、窪田参考人の御意見を是非聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/196
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197・窪田充見
○参考人(窪田充見君) その点は非常に法制審議会の中でも議論があったところです。恐らく、少しだけ御質問の趣旨からそれるのかもしれませんが、恐らく厳密に言うと、これ三百日問題ではなくて、婚姻中であったとしても同じ問題というのが考えられるということなんだろうと思います。つまり、妻の側で出生届を出すときに、結婚していたとしても、父は不明あるいは父の欄は空欄とするというやり方、これは実際に国によってはあり得る仕組みです。
その点に関して一つ問題になったのが、やはりそのケースであっても、誰が父親であるか母が一番知っているはずだとしても、この人は望ましくない、父であったとしても望ましくないという場合にも記載しない、空欄とすることができるというふうになった場合に、本来、父子関係が嫡出推定制度を前提としての説明になってしまいますが、本来は父子関係が認められ得る場面であるにもかかわらず、本人が全く関わらない形でその父子関係が否定される、存在しないことになるという扱い、それに対する説明というのが十分できないのではないかということがあるんだろうと思います。
実は、フランスで比較的そうした方向での制度が採用されて、空欄にすることも自由だと、母の方が一方的に決めることができる。その場合にはどうなるかというと、本来は夫が父親であるという場合には訴訟を提起する、父子関係あるという訴訟を提起するということになると。それはそれでいいんだという考え方もあるんですが、本来は利害関係の当事者、父子関係についての当事者というのは父と子ですから、その父を外して法的な認定をする、法的な効果が生じることを認めるというのは、私自身は十分には説明できないのではないかというふうに考えております。
御質問の点については、多分御意見が違うんだろうと思いますが、私自身の理解はそういうふうなものでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/197
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198・仁比聡平
○仁比聡平君 今の点に、今の問題について、井戸参考人が反応されたので、ちょっとここでお尋ねしたいと思うんですけれども、二〇一五年に、私も井戸参考人と御一緒にお会いした、三十二歳、三歳まで無戸籍のままで来たという方いらっしゃいました。冒頭の意見陳述の中でも、今、この夏やっと取れた方もいる。それは、父とされた母の元夫が亡くなったからだと。そこまで嫡出推定を覆すことができずに無戸籍のまま来たという方とお会いしたんですけれども、その戸籍上の父が死亡して初めてそうした訴えができるようになる、それまではできないという苦しみ。
一方で、どんな場合なのか私ちょっとよく分からないんですけど、離婚後、あるいは婚姻中かもしれません、もう完全に婚姻関係が破綻していて、その下で生まれた子について、俺の知らない間に嫡出でない子として届出するのはおかしいという、そういう観念に対して、井戸さん、どう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/198
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199・井戸まさえ
○参考人(井戸まさえ君) そうですね、二〇一五年、前夫の方が亡くなって、親子関係不存在をして、それでようやく三十二歳で戸籍を取るというような子と一緒にお会いしていただいたと思うんですけれども、あのときでも、結果的に、前の夫亡くなったけれども、前の夫に対して親子関係不存在やると、検察官相手になるんですけれども、それで、親子関係がないとなっても、出生時に遡って、死んだ人の戸籍をまたよみがえらせて、そこにその三十二歳の方は入って、そこから氏の変更というのをやって、離婚をしているので母親の氏に変わるということをやっているんですね。こんなことをする必要あるんでしょうか。そして、三十二歳までそれで無戸籍で、非常にそういう意味では不安定な状況に置かれると。
身分の安定を早期にこれを確定するために嫡出推定というのがあるんですけれども、しかし、その嫡出推定の範囲だとか、先ほどのお話で、前夫の方に対して、例えば関与なくしていいのかという話は、その立場での方はあるかもしれないですけれども、私の意見陳述の中にも言いましたけれども、そんな自分の子供が生まれているのも知らないというような方にずっと嫡出推定が掛かり続けているというのは本当におかしなことであると思うんです。
なので、私としては、やっぱりそもそものルールがおかしいというのと、それを前夫が関わらずにもできるというふうにしていかなければ、やっぱりこの無戸籍問題って絶対解決をしていかないので、これは、ここは本当に肝のところでもあるので、是非、今回の改正ではそこまで行かないんですけれども、引き続き議論というものをしていただかないといけないかなというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/199
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200・仁比聡平
○仁比聡平君 そこで、二宮先生に、今の法制審の議論の様子とか井戸参考人からの当事者の状況とかいうことも踏まえた上で、改めて二点お尋ねしたいと思っておりまして。
一つは、先ほど少し御紹介ありましたけれども、本来、意見陳述の中で御準備をされた、嫡出概念を廃止すべきだという参考人の御意見をきちんと改めて伺いたいと。その中で、この嫡出という概念の差別性といいますか、これが日本の歴史の中でどんなふうにつくられて、社会の受け止めとして差別の象徴になっているというふうに参考人お話しになっているんですが、そこを少し膨らまして伺わせていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/200
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201・二宮周平
○参考人(二宮周平君) ありがとうございます。
この嫡という言葉は、大宝律令辺りからも出てきている言葉です。跡継ぎ、正統なる相続人というので嫡という言葉がその頃から使われています。
そして、それは、日本の場合は、家制度を構築することによって、家制度の中で、嫡出子と、それから、その当時は庶子、私生児という、子供を三つに分類しました。嫡出子が基本的に家督相続、家の跡継ぎとなるという、そういう言葉で嫡というのを使っていたので、その当時、庶子とか私生児という立場にいる人はかなり差別的待遇を受けて苦しんでおられたと。なので、社会の受け止めはそこから始まっているのではないかと思います。
ですから、歴史的経緯をたどると、私たちの中に位置付けられたのはやっぱり家制度が確立してからだろうと思います。それは、今日は家制度は廃止されましたけど、家父長制の意識はまだまだ残っておりますので、婚姻をして子供をもうけて育てていく、これが正統な家族だという、そのような意識からすると、婚姻外で子供をもうけたり事実婚であるということは、これは規範に反することだという、そういうレッテル貼りがなされてきたのだろうと思います。
今日、そういう意識は多少は緩和されているとは思うんですけれども、やっぱり条文の中に、嫡出子、それから嫡出でない子、すなわち何かではない子という否定的な名称で呼ばれる子というのは、やはりあってはならないと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/201
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202・仁比聡平
○仁比聡平君 ありがとうございます。
もう一度、もう一問、二宮先生に。
そうした嫡出概念の下での嫡出推定という規定、しかも、裁判の困難な訴えによらなければ覆せないという強い推定というこの七百七十二条が差別を生み出し、皆さんを苦しめてきたということはもう間違いないと思うんです。
その下で、仮に先生のおっしゃる出生主義を取らないとしても、今の懐胎主義の下でもこの出生届で推定を覆すということは私はできるし、これまで現にやってきたんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/202
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203・二宮周平
○参考人(二宮周平君) 今を去ることもう二十数年前に、私はそういう主張をしたことがあります。でも、なかなか受け入れられなかったです。それは、現在のやっぱり嫡出という、嫡出という言葉を使いますから、嫡出の推定なんですね。嫡出というのは、婚姻中に妻が懐胎したということが大前提です。つまり、貞操義務があって、一夫一婦制の下で妻は夫以外の男性と関係を持たないことが期待され、義務化されている、そこで妊娠したから夫の子と推定する、それが嫡出子で正統な子供であるという、そういう大前提が根強く残っているからだと思われます。
窪田さんも御紹介にあったように、立法の形式としては、出生届を出すときに父不明という形で出せば、嫡出推定を、まあ父性推定ですね、父、夫の子であるという推定を外すという、そういう立法例はありますので、仁比さんがおっしゃるようなことは立法技術としてはあり得ることだと思います。
でも、私は、やはり懐胎主義、つまり妻が婚姻中に懐胎した、そういう貞操を守り、一夫一婦を守り、けなげな妻、そういう子の産んだ子だから夫の子と推定するという、そういう固定観念が根強くあるのだと思うから、そこは今回の改正でやっぱり変えていくべきではないかと思っています。そういう立場を取ってもおっしゃったような工夫はできるとは思いますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/203
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204・仁比聡平
○仁比聡平君 改めて、抜本的な見直しが引き続き必要だということを確認されたのではないかと思います。
金児参考人に最後お尋ねしたいんですが、国籍法の三条改正の問題について、今日の質疑の中でも、遡って国籍が失われた子が非正規扱いをされるという、その非正規扱いをする入管当局が、市区町村始めとした戸籍、国籍の関係当局とおおよそ連携してこなかったんじゃないかということが明らかになりつつあります。
そんなことはあってはならないので、連携を掛け声だけにするんじゃなくて、ちゃんと市区町村を軸にした無国籍にさせないという取組がとっても大事だと思うんですけれども、そういう自治体の窓口に期待されること、何かあればアドバイスを下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/204
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205・金児真依
○参考人(金児真依君) 御質問ありがとうございます。
自治体の対応、一番最初に窓口として行くところですので、大変重要だと思います。
やはり、まずはその国籍、無国籍。本人は無国籍だということを気付いていないことが多いんですね。ミャンマーのロヒンギャの方たちですとか、教育の問題もありますけれども、自分はやはり有国籍者だとかですね。そういった、自分は絶対に国籍を持っているんだということでいらっしゃることも多くて、そうすると、本人の言うとおりにその国籍が認定され、それは入管庁で在留カードを出すときもそうですけれども、もちろんちゃんとした審査はなさっていると思うんですけれども、やはり正確に無国籍を認定する必要があるということで。
自治体に関し、そうですね、まずは、自治体は恐らく在留資格カード等を御覧になるんだと思うんですね。最初に恐らく皆さん入管庁に行かれて、そこで発行されたもの。ごめんなさい、どっちですかね、順番は分かりませんけれども、それで、市役所では恐らく国籍の認定というものは、いずれにしても、在留カードも認定というわけではありませんけれども。そういったことはせずに、入管庁、そして民事局等に照会されるかもしれませんけれども。
やはり、例えばその無国籍者に在留カードが、両親が無国籍となっている在留カードがあったら、そうしたら、日本国籍法の二条の三号で、じゃ、戸籍を編製することになりますねと、そういう案内というのをしていただきたい。それは必ずしもされるわけではなくて。どこの国でもそうなんです、実は。実は、その市役所の窓口の、一番最初の窓口に座っている皆さんが、日本国籍法ですと二条の三号、そして八条の四号について御存じないということがありまして。そういった事例もこちらの報告書に載っていますけれども。
やはり、それを、こういった国籍法の規定があるよということを全国皆さん、例えば研修ですとかマニュアル化をするとか、又は支援者、弁護士の皆さんですとかそういった方に、どういったケースがあるかとかそういったことを聞き取って、こんなパターンもある、あんなパターンもある、例外もありますし。また、私どもの国籍法データベースもございますけど、どんどん変わるんですね、国籍法が。実は無国籍だと思っていたけれども違った、逆にそういったこともあるかと思いますし、逆もまたしかりですから、そういったことをする必要もあるのではないか。
そして、入管庁が中心に在留カード等も出されて、あとまた民事局も国籍法の運用をされていますけれども、やはり無国籍の認定というのは非常に難しい。なぜかというと、ないことというものの証明というのはすごく難しいんですね。国民として認められていないんですというふうに言っても、それをもちろん確実に証明するということはできません。それは当然で、午前中も政府の方がおっしゃっていましたけれども、まずは有国籍、国籍、外国籍を持っているということも日本政府としては認定できない。それは本当に正しいことでして、できません。でも、無国籍に関しても確実に認定できません。それも正しいんですが、確実に認定しなくてもいいんです。
実は私ども、無国籍認定のハンドブックを持っておりますけれども、そちらにかなり詳しく書いてございますけれども、やはり合理的な程度、無国籍というものが証明されれば無国籍者として認定するんだと。で、合理的な程度ですけれども、つまり、裏を返せば、有国籍だということをかなりしっかりとした証拠によって認められなければ。結局、例えば当局に問い合わせて、当局に問い合わせられない場合はどう対応するかという問題もハンドブックで書かれておりますけれども。
結局、外国籍というものが確認できない。合理的な努力をして、すごく証拠集め頑張って、政府の側も頑張る、無国籍者側も頑張る。やはり無国籍者だけではできませんので、政府の側も一生懸命手伝って、その立証、証拠提出責任というものを負担して、それで認定というのを手伝い、それで合理的な期間内に何らかの国籍を有しているということが認められなければ、ハンドブックでは六か月又は例外的な場合は一年ですけれども、無国籍と認める。これが私どものハンドブックの基準でございまして、そういったものを日本国でも御活用いただけることがあるのではないかと考えています。ごめんなさい、話が長くなりまして。
あと、ごめんなさい、加田先生には先ほどいただいていた御質問に一つお答えしておりませんでしたけれども、私ども、虚偽や詐欺が関わっているケースに関してはコメントの二十から二十一段落で扱っておりまして、基本的に、そういった虚偽や詐欺ということで、無国籍にしても仕方がないという例外というものが、まあ六一年の条約、すごく古くて、それからまた人権法上は発展しておりますけれども。確かにそういった例外があるんですが、それは帰化の場合というふうに大体解されておりまして、こういった身分関係、親子関係が無効となった場合のところには適用がされないというふうに解釈、大体されておりますということを御覧いただければ、二十一から、二十一段落ですね、どうぞよろしくお願いいたします。
済みません、長くなりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/205
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206・仁比聡平
○仁比聡平君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/206
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207・杉久武
○委員長(杉久武君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015206X00920221206/207
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