1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和四年十二月八日(木曜日)
午後三時一分開議
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○議事日程 第十二号
令和四年十二月八日
午後三時開議
第一 令和四年度出産・子育て応援給付金に係
る差押禁止等に関する法律案(衆議院提出)
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○本日の会議に付した案件
一、消費者契約法及び独立行政法人国民生活セ
ンター法の一部を改正する法律案及び法人等
による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法
律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/0
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001・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
この際、日程に追加して、
消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/1
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002・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。河野太郎国務大臣。
〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/2
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003・河野太郎
○国務大臣(河野太郎君) ただいま議題となりました消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
社会経済情勢の変化等に対応して、消費者の利益の擁護を更に図るため、消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる範囲を拡大するとともに、取消し権の行使期間を伸長するなどの措置を講ずるほか、独立行政法人国民生活センターの業務として適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行う業務を追加する等の措置を講ずる必要があるため、この法律案を提出した次第です。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一に、消費者契約法に関しては、意思表示を取り消すことができる不当な勧誘行為の類型を改正し、事業者が消費者に対し、霊感等による知見として、当該消費者又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該消費者契約を締結することが必要不可欠である旨を告げることとしています。
この不当な勧誘行為に係る取消し権の行使期間を、追認をすることができるときから三年間、消費者契約の締結のときから十年を経過したときに伸長することとしています。
第二に、独立行政法人国民生活センター法に関しては、独立行政法人国民生活センターの業務に、適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行うことを追加するとともに、和解仲介手続及び仲裁の手続について、適正かつ迅速な審理が実現されるように所要の規定を新設するほか、消費者紛争の当事者である事業者の名称等を公表することができることとするなどの改正を行うこととしています。
その他、所要の規定を整備することとしています。
引き続きまして、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について御説明申し上げます。
法人等からの寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護等を図る観点から、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止し、当該不当な寄附の勧誘を行う法人等に対する行政上の措置などを定めるとともに、寄附の意思表示の取消しの範囲の拡大及び扶養義務等に係る定期金債権を保全するための債権者代位権の行使に関する特例の創設等の措置を講ずる必要があるため、この法律案を提出した次第です。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一に、法人等は、寄附の勧誘を行うに当たり寄附者等に配慮しなければならないことを規定するとともに、寄附の勧誘に関する禁止行為として、不当な勧誘により寄附者を困惑させてはならないこと及び借入れ等による資金調達を要求してはならないことを規定しております。
第二に、法人等が禁止行為に違反した場合の勧告、命令等の行政上の措置等について規定するとともに、当該行政措置に係る罰則について規定しております。
第三に、不当な勧誘により寄附者が困惑して寄附を行った場合における意思表示の取消しについて規定するとともに、扶養義務等に係る定期金債権について、確定期限の到来していない部分を保全するための債権者代位権の行使に係る特例を設けることとしております。
第四に、国は、寄附者等が権利の適切な行使により被害の回復等を図ることができるようにするため、日本司法支援センターと関係機関及び関係団体等との連携の強化を図り、利用しやすい相談体制を整備する等必要な支援に関する施策を講ずるよう努めなければならないこととしております。
その他、この法律の運用上の配慮に関する規定など、所要の規定を整備することとしております。
政府といたしましては、以上を内容とする各法律案を提出いたしましたが、衆議院におきまして、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案につきまして、次の事項を内容とする修正が行われております。
第一に、法人等は、寄附の勧誘を行うに当たり、寄附者等に対して十分に配慮しなければならないとすること。
第二に、法人等が配慮義務を遵守しない場合について、勧告、公表等を可能とすること。
第三に、この法律の規定について検討を加え、必要な措置を講ずるために目途とする期間を、法律の施行後二年とすること。
以上が、これらの法律案の提案理由及びその概要であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/3
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004・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。中田宏君。
〔中田宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/4
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005・中田宏
○中田宏君 自由民主党の中田宏であります。
会派を代表して、消費者契約法及び国民生活センター法改正案並びに法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対して質問をいたします。
まず、岸田総理は、世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会の被害者の方々と内々にお会いをして凄惨な経験を直接お伺いし、政治家として胸が引き裂かれる思いがしたとのことでありますが、改めて、この思いの下、旧統一教会問題にどう向き合っていくのか、その御所見をお伺いいたします。
今回、旧統一教会の被害者救済等に向けて、消費者契約法と国民生活センター法の改正に加えて、新法の制定から成る法整備がなされます。そこで、これらの法案の一体的な対応により被害の防止や救済等に向けた実効的な措置が進むという全体像を国民の皆様に分かりやすく総理から御説明ください。
一方、被害者、被害救済と再発防止に向けてしっかりとした法整備に取り組まなければなりませんが、同時に、法整備となれば、憲法の信教の自由や財産権など、国民の権利義務に関わってまいります。例えば、かつて民法に規定をされていた準禁治産者制度も、自己決定権を尊重するとの考え方により、既に廃止されています。
そこで、憲法に規定された信教の自由や国民の権利義務を守るという観点は、今回の法整備においてどのように配慮されているのでしょうか。総理にお伺いをいたします。
また、真っ当な活動を行い、一般的な寄附を受け取っているNPO法人等からは、今回の法整備で、醸成途上にある我が国の寄附文化に影響が出るのではないかと心配する声があります。さらに、遺族が遺贈寄附を取り消すよう求めてくる場合が増えるのではないかと懸念している団体もあります。
今回の法案は、あくまでも不当な寄附の勧誘を行う法人に網を掛けるものだと理解をしておりますが、本法案の趣旨が誤解され、適切な寄附の勧誘を行っているNPO等の活動や我が国の寄附文化に影響が出ないようにしなければなりません。
そこで、このような懸念に対して政府はどう応えていくのでしょうか。総理の御所見を伺います。
今回の法整備では、まず、霊感等による告知を用いた勧誘に際し、不安をあおり、又は不安を抱いていることに乗じて、契約であるかないかにかかわらず、寄附の申込み等をしてしまったときには、これを取り消すことができます。
また、法人はもちろん、法人格のない団体についても、代表者や管理人の定めのある団体は含まれることとなります。法人等が不当な寄附の勧誘をし、集めた寄附金の帰属先を法人等ではなく幹部等の個人に変えたとしても、規制対象から逃れることができなくなります。
取消し権の行使期間についても、最長で契約締結時から十年となっています。
一方、いわゆるマインドコントロールをめぐっては、個人の心の状況について禁止行為として法律上、直接、客観的に定義し認定するのは難しいことから、政府提出段階では自由な意思を抑圧しないなど三つの配慮義務を設けましたが、これらの事項に十分に配慮がなされず、配慮義務が遵守されていない場合には報告を求め、さらに、個人の権利保護に著しい支障が生じていると明らかに認められている場合などには勧告し、それに従わなければ公表という形に衆議院での審議を通じて修正しております。
このように配慮義務を課すことと、それを怠ったものに対する勧告、さらには公表等により、マインドコントロール下にあって合理的な判断ができない状況での寄附の要求などを防ぐ実効性は相当上がるものと考えますが、この点について改めて消費者担当大臣から分かりやすく御説明を願います。
多額の寄附等で経済的理由から進学を断念するなど、本来であれば受けられた扶養を受けられなかった子供たちや、日常生活を送ることもできないほど困窮に苦しんだ配偶者を救済する法的枠組みも考えなければなりません。
今回の法整備では、民法の債権者代位権の考え方を用いながらも、子供の養育費等については今後発生する債権も含めて代位可能としています。
ただ、債権者代位権を用いるとしても、そもそも被害者の方が未成年であれば、誰が代理人になるのかという課題がありますし、子供が親の意向に反することも難しく、代位権を発動できない可能性もあります。
そこで、あらゆる被害者が今回の法整備で可能となった債権者代位権を実効的に行使できるよう、政府においてはどのような具体的な措置を講じていくつもりでしょうか。消費者担当大臣に伺います。
過去、公的な機関に相談しても、信教の自由や家庭内の問題を理由に相談に乗ってもらえないこともあったといいます。このような相談があったときに、児童相談所など公的な機関において、旧統一教会問題やマインドコントロールなどにも通じた専門家が相談に応じたり、法テラスと連携し一体的に対処したりするなど、適切な対応ができるような体制の整備を進めるべきではないかと考えますが、総理のお考えをお尋ねします。
今回の法整備により、不当な寄附の勧誘の防止や被害者救済等のための法的な枠組みは整うこととなりますが、経済的な問題だけではなく、信教を強要され、社会性を育む機会を奪われたことで孤立に苦しむ方々も少なくはありません。多様なケースが想定される個別事案において、様々な関係者が緊密にネットワークを構築して対処していくことが大切だと考えます。
そこで、施行後三年をめどとしていた規定の見直しは二年に短縮されますが、これはどのような意義があるとお考えでしょうか。さらに、その意義を踏まえ、二年の見直し期間を意識し、施行直後から今回の法整備の実効性や体制の整備等についてしっかりと目を配り、関係者間で成果や課題を共有していくことが大切だと考えますが、いかがでしょうか。最後に、これら二点について総理にお尋ねをして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/5
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006・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 中田宏議員の御質問にお答えいたします。
旧統一教会問題への姿勢、被害の防止や救済等に向けた措置についてお尋ねがありました。
旧統一教会については、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使等により事実把握と実態解明を進める、被害者の救済に向けた相談体制を強化する、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しについてしっかりと取り組んでいく、こうした方針の下、政府として臨んでいくこととしております。
被害の防止や救済については、救済に向けては、消費者契約法の改正法案で、旧統一教会問題等のいわゆる霊感商法や契約に当たる寄附について、取消し権の対象範囲の拡大や取消し権の行使期間の伸長等の措置を講じ、被害防止及び救済の可能性を高めます。あわせて、国民生活センター法の改正により、ADRの活用促進を図ります。
また、新法案では、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、取消しを認める制度としています。
さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定め、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為認定や、それに基づく損害賠償請求の容易化を図ります。
この二法案により、これまで救済できなかった被害をより幅広く救済でき、また将来に向けて被害の防止にも役立つと考えております。
新法案の信教の自由や我が国の寄附文化への影響についてお尋ねがありました。
新法案では、社会において寄附が果たす役割の重要性への留意と、学問の自由、信教の自由、政治活動の自由への十分な配慮が必要である旨を規定しており、運用に当たっては、この規定を踏まえて対応してまいります。
また、禁止規定や配慮義務は、社会通念上、不当な勧誘行為と考えられるものに限っているものであるため、通常のNPO法人等であれば寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化への醸成に対する不当な抑制につながらないと考えております。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり得ると考えております。
今後とも、関係者に御懸念があるようであれば、本法案の趣旨についてしっかりと説明を尽くしてまいります。
旧統一教会問題に関する相談体制についてお尋ねがありました。
先般、関係省庁において総合的な方策を取りまとめ、子供への対応強化も念頭に、法テラスにおける対応窓口や心理専門職等を配置した対応部署の新設などの抜本的な充実強化、消費生活相談員の研修等による相談対応の強化、市町村や児童相談所における虐待対応に関するQアンドAの作成などの宗教二世も念頭に置いた支援の充実、これらの諸施策を盛り込み、旧統一教会に関する相談に関連機関で連携して取り組んでいくこととしております。
加えて、宗教二世の方々に対する相談も含めてしっかりと対応できる体制を構築するため、児童相談所の児童福祉司の増員に関するプランを年内にまとめ、その着実な実行にも取り組んでまいります。
新法案の見直しについてお尋ねがありました。
法律の見直しに当たっては、規定の施行の状況及び社会経済情勢の変化を勘案すべく、一定の法運用の実績を確保する必要があります。新法案については、施行後三年としていた見直しについて施行後二年とする修正案が提出されたところですが、これは、本法案の社会的な重要性にも鑑み、法律の見直しを迅速かつ適時に行っていくことが明確化されたものと理解をしております。
そのような修正の趣旨を踏まえ、執行体制の迅速な整備に取り組むとともに、見直しに必要な運用状況や課題の把握に努めてまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/6
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007・河野太郎
○国務大臣(河野太郎君) 配慮義務の遵守に係る勧告等についてお尋ねがありました。
配慮義務につきましては、適切な判断をすることが困難な状態など、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招くより幅広い行為を捉えることができるものです。配慮義務に反するような不当な寄附の勧誘行為が行われた場合には、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、被害者救済の実効性が高まるものと考えています。
衆議院において可決された修正案は、寄附の勧誘者に対し被勧誘者への十分な配慮を行うことを求めるとともに、配慮義務に違反する法人等に対して一定の場合に勧告、公表、報告徴収を可能とするものであり、いわゆるマインドコントロール下で適切な判断をすることが困難な状態に陥った場合の被害の救済などについても、より一層実効性の向上が図られるものと認識しています。
債権者代位権を実効的に行使するための具体的な措置についてお尋ねがありました。
未成年者の権利行使については、親権者による適切な親権の行使が期待できないなどの場合、親権の停止、未成年後見人の選任、親権者と子との利益が相反するときの特別代理人の選任など、各種の手続が存在します。
もっとも、困窮している未成年者が自ら訴訟等の手続を行うことは実際上困難な場合もあり得ると考えられる上、例えば新法案による債権者代位権の行使等を行おうとする場合には、特に法的な支援を含めた支援が重要になると考えております。
未成年者を含めた家族らの被害救済に資するためには、法律上の仕組みを設けることにとどまらず、個々の事案によりハードルとなる様々な事情があり得ることを踏まえた、債権者代位権の適切な行使により被害回復等を図ることができるようにするための支援が重要と考えており、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備など、支援の在り方も検討してまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/7
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008・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 石橋通宏君。
〔石橋通宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/8
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009・石橋通宏
○石橋通宏君 立憲民主・社民の石橋通宏です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対し、岸田総理に質問いたします。
本年七月八日、参議院選挙応援演説中の安倍晋三元総理が、山上容疑者の銃撃によって命を奪われました。改めて心からのお悔やみを申し上げます。
しかし、その後、この日本国民に衝撃を与えた事件の背景に、旧統一教会による深刻な被害が今もなお存在していた事実が明らかになりました。
私たちは、三十年以上に及ぶ政治の不作為によって旧統一教会による甚大な被害、家族崩壊、人生破壊、二世の皆さんに対する悲惨な人権侵害を許してきた重大な責任を痛感し、一日も早く真に実効性ある法制度をつくり上げる責任を果たさなければなりません。
まず、岸田総理に、過去の反省と、被害者の方々への責任、そして、私たちに課せられた極めて重たい責務をどう胸に刻み、この法案を提出され、この審議に臨んでおられるのか、伺います。
岸田総理が被害者に対する責任を痛感しておられるのであれば、これまでに少なくとも二十二件の民事上の不法行為が裁判で確定してきた事実を踏まえ、すぐにでも旧統一教会に対する解散命令請求を行うべきです。
また、同時に、二〇一五年の旧統一教会の名称変更が旧統一教会の実態隠しに加担して被害を拡大、継続させてしまった問題について、当時の下村文科大臣の関与を含め、文化庁宗務課における旧統一教会との全てのやり取り、政府内での検討プロセスを明らかにするよう命ずる決断をすべきです。岸田総理の答弁を求めます。
私たち立憲民主党は、七月末にいち早く旧統一教会被害対策本部を立ち上げ、これまで三十回以上に及ぶ会合やヒアリングを重ね、被害の実態、現行法制度による救済の限界、具体的な救済の方策等について真摯な議論を積み重ねてまいりました。
特に、被害当事者や支援者、有識者のヒアリングに力を入れ、二十人以上の二世被害者の方々から苦しく悲惨な被害実態をお聞きしてきました。今、その被害当事者の方々や、長年その支援を続けてきた弁護団や支援団体の皆さんが、政府案で本当に被害者救済ができるのかと心配の声を上げています。
岸田総理、法案の審議が参議院に回ってきたこの時点でも、被害当事者の方々がまだ不十分だと訴えておられる声に総理はどうお答えになるのか、被害当事者の方々がこれなら救われると思っていただける新法になるよう最後まで努力する覚悟がおありか、見解を伺います。
その上で、以下、法案についての懸念点を具体的に指摘していきます。
第一の懸念は、政府が本法案による規制の対象を個人から法人等に対する寄附行為に限定してしまったことです。
政府はなぜ規制の対象を法人等への寄附行為にのみ限定したのか、これによって教団との関係性の立証が被害者側には難しい個人の勧誘者が規制対象にならず、救済ができなくなる問題は生じないのか、総理に伺います。
第二に、本法案が寄附行為一般を規制対象にしてしまっていることです。そのため、NPOやNGOなどの非営利組織までもが規制の対象になり、ただでさえ脆弱な日本の寄附文化にマイナスの影響を及ぼすことが心配されています。
政府は、なぜ寄附行為一般を規制対象にしてしまったのか、それが寄附文化への萎縮をもたらさないことをどう担保するのか、御説明ください。
第三に、政府案が規制対象を寄附に限定し、その定義に無償要件を付していることです。その結果、いわゆる霊感商法等による被害が救済対象とならない懸念が生じています。
不当な勧誘でマインドコントロール下に置かれ、通常の判断ができない状態で数百円程度のつぼや経典などを数百万、数千万で購入するような場合は、正当な商取引とは言えず、本法案による規制、救済の対象にすべきだと思いますが、対象になるのかならないのか、無償要件を付した理由も含めて、担当大臣の説明をお願いします。
第四の懸念は、法案第三条が禁止規定ではなく配慮義務にとどめられていることです。私たちは、この配慮義務を禁止規定にすべきだと訴え、修正を求めてきました。
総理は、禁止行為は要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと指摘していますが、第三条の三つの配慮義務、特に一号と三号については、既に過去の旧統一教会に係る裁判の判例で同趣旨の内容が認定されています。また、三号後段は公益法人法十七条三号とほぼ同じ規定ですし、同法第十七条四号ではいわゆるバスケットクローズが置かれ、より抽象的な規定が禁止行為とされています。
本法案で禁止行為とできない理由はないはずですが、なぜかたくなに禁止行為にしないのか、より詳細な説明を求めます。
なお、本日、衆議院において、第三条の規定に十分なを加え、十分な配慮とする修正が加えられました。また、配慮義務の遵守に係る勧告や公表、報告の求めについても修正が加えられました。これらの修正によっていかなる法的な効果と行政の対応が生じるのか、政府の受け止めを御説明ください。
懸念の第五は、寄附の勧誘に際してという要件の解釈です。これが、一回一回の寄附行為が行われるたびごとに禁止行為が行われ、困惑して寄附したことを被害者側が証明しなければならない規定だとすると、旧統一教会の被害実態、つまり、当初は困惑して入信しても、その後、洗脳によって次第に義務感、使命感を感じて進んで寄附や勧誘を行う状態に置かれているケースが救済対象にならない懸念があるからです。
岸田総理は、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できる場合は対象になると述べ、さらに、一連の寄附勧誘と判断できない場合でも、入信時に抱かされた不安が継続している場合に、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば取消し権の対象になると答弁しています。
そこで確認ですが、入信前後から寄附に至るまで一連の寄附勧誘であると判断できるのは具体的にどのような場合なのでしょうか。また、不安が継続していて勧誘側がその不安に乗じているという条件には、マインドコントロール下で寄附の時点では不安を感じずに進んで献金をしている場合も対象になるのか、御答弁ください。
第六の懸念が困惑要件です。さきに述べたとおり、旧統一教会の典型的な手法では、マインドコントロール下に置いた状態で義務感や使命感で寄附をさせます。実際に献金する際には困惑状態にはないのが一般的なのです。
岸田総理は、衆議院で、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、消費者契約法改正案と新法の取消し権の対象になると答弁しました。
しかし、ここでも、不安を抱いていることに乗じてという枕言葉が付されていて、義務感や使命感で寄附を繰り返し行っている状態が取消し権の対象になるのか疑問が残ります。
総理、旧統一教会の被害者がこの困惑要件のために救済から除外されることはないということをここで明確に御答弁ください。
やはり、困惑については、消費者契約法の逐条解説を条文化すべきです。岸田総理は、逐条解説の切り張りを条文化することはできないと答弁していますが、逐条解説では、困惑とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況と定義をされていて、切り張りではなく、条文化できない理由はないのではないでしょうか。総理、お答えください。
第七は、禁止行為第六号の要件に、必要不可欠との規定があることです。マインドコントロール下に置かれている信者に対しては、法人側は、もう一々必要不可欠と告げたり、それに類する言動を行う必要もないために、この要件がかえって現行より救済対象を狭めてしまう懸念すら弁護団から指摘をされています。
岸田総理は、必ずしも必要不可欠とそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同様の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能で、多額の寄附に至るような悪質の勧誘事例の多くはそのような必要性や切迫性を有していると説明しています。そうであれば余計に必要不可欠と書く必要はなく、必要と書けば足りるし、それで曖昧な場合は、必要性又は切迫性を書けば足りると考えますが、総理の説明を求めます。
また、厄払いなどが対象となり得る可能性があるとの答弁もありますが、一般的な厄払いは、霊感により、不安をあおり、困惑させという他の要件から外れるので、対象となる可能性はないはずです。担当大臣の説明を求めます。
第八は、借入れ等による資金調達の要求の禁止についてです。
旧統一教会による被害実態では、資産等を処分して献金するだけではなく、資産等そのものを寄附してしまう例も多く見られています。また、寄附行為の勧誘のたびごとに明示的に借入れや資産等の売却を法人等の側が要求していたことが要件だとすれば、旧統一教会の被害には対応できない懸念があります。
この点、資産等をそのまま寄附することは禁止の対象になるのか、寄附の勧誘の際には明示的に要求がなかった場合も対象になるのか、総理、御説明ください。
懸念の第九は、時効の問題です。
信者の多くは、長期間にわたってマインドコントロールから解けず、寄附行為を続けています。山上容疑者の母親も、今も熱心な信者であることが伝えられています。となると、現実の問題として、政府案の時効十年では短過ぎるのではないでしょうか。せめて民法と同じ二十年にすべきだと考えますが、総理の説明を求めます。
懸念の第十は、この法案の債権者代位の特例では、被害信者の御家族、とりわけ長年にわたって深刻な被害を受けてきた二世信者の方々がほとんど救済されないことです。岸田総理も三名の二世信者の方々とお会いしたと聞いていますが、その二世信者の方々の多くが債権者代位では救済されないと訴えている事実をどう受け止めておられるのか、お答えください。
総理は、成人してからも遡って未成年時代の扶養義務等に係る定期金債権を取り戻すことができると答弁しています。しかし、過去に遡って債務者たる親信者が禁止行為によって困惑した状態で寄附行為を繰り返していたことを立証することは極めて困難ですし、二世被害者の保護者の多くはいまだに熱心な信者であり、立証の協力を得ることは不可能です。
総理、債権者代位で本当に実効性ある救済は可能なのか、是非二世信者の方々に具体的に御説明ください。
私たち立憲民主党は、維新の会と共同で提案した悪質献金被害救済法案で、後見人制度の補助制度を参照した特別補助制度を提案しています。この手法を使えば、マインドコントロール下に置かれて寄附を続けてしまう親信者の寄附行為を止め、家族の破綻や権利侵害を防ぐとともに、不当な寄附を取り戻すことができるようになります。
総理は、第三者が幅広く本人の行った契約や意思表示の取消しができるとすることは財産権の侵害の観点から適当ではないと述べていますが、私たちの案は、幅広く取消し権を認めるものではなく、特定財産侵害行為が認定された場合に限り、その悪質な禁止行為を行った加害者への寄附行為に限り、被害者本人の保護を確保することを目的に極めて厳格かつ限定的に適用されるものです。
岸田総理、本気で二世被害者を救済しようと思うなら、政府はこの案をこそ採用すべきだったのではないでしょうか。今後是非私たちの案を検討していただきたいと思いますが、答弁を願います。
最後に、念書やビデオ証拠の問題について確認をいたします。
衆議院での答弁で、総理は、困惑状態でサインした寄附の一部の返金の和解の合意や、寄附の返金を求めない旨の念書は公序良俗に反して無効になり得ること、念書の作成やビデオ撮影が勧誘の違法性を基礎付ける要素となり得ることなどを改めて述べています。
しかし、この答弁でも困惑状態でという条件が付されていますが、マインドコントロール下に置かれ、念書等を作成した時点では何の疑問も持たない状態である場合にも総理の説明は通用するのか、是非確認答弁を願います。
以上、いまだ残る政府案の懸念点について質問をいたしました。冒頭、岸田総理にお聞きしたとおり、これまで三十年以上に及ぶ政治の不作為で、数多くの日本国民が旧統一教会による被害に遭い、幸福追求権やそして生存権、二世たちの信教の自由などが侵害され続けてきました。
私たちには、その反省を胸に、被害当事者の方々、長年苦しんでこられた二世や御家族の方々、そして被害者を懸命に支援してこられた弁護団や支援者の方々がこれでようやく救済されると実感し、喜んでいただける法制度をつくり上げる責任があります。
岸田総理、そして与党の皆さんにも、この参議院でも最後まで充実した審議を尽くして、被害者救済のために更に良いものをみんなでつくり上げていく努力をすることを要請し、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/9
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010・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 石橋通宏議員の御質問にお答えいたします。
新法案の審議に臨む姿勢についてお尋ねがありました。
過去数十年にわたり旧統一教会の被害が続いてきたことについては、政府として深刻に受け止めなければならないと考えております。
このため、政府としては、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化等による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しという三つの対策を並行して進めていくこととしております。
その中で、政府としては、改正法案及び新法案の早期の成立により、早期の被害者の救済と被害の再発防止に万全を期すべく、参議院においても丁寧に御説明し、最大限努力してまいりたいと考えております。
旧統一教会について、解散命令請求や名称変更に係る経緯の公表についてお尋ねがありました。
旧統一教会については、御指摘の解散命令の請求の適否を判断するためにも、まずは報告徴収・質問権を行使するとともに、弁護士の団体等からの情報も得て、旧統一教会の業務等に関して具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにする必要があり、その上で、法律にのっとり必要な対応を行ってまいります。
また、名称変更の認証申請の過程については、二〇一五年に申請が行われ、所轄庁において、当該申請の内容が法令に規定された要件を備えていることを確認し、認証の決定を行ったと報告を受けております。御指摘の文化庁における旧統一教会とのやり取り等の情報の扱いについては、文部科学省において関係法令にのっとり適切に対処すべきであると考えております。
新法案の実効性を高めるための努力についてお尋ねがありました。
新法案では、現行の日本の法体系の中で、許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約法に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため、取消しを認める制度としております。
さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定め、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合には、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求の容易化を図ります。この配慮義務規定については、衆議院での議論も踏まえて、十分に配慮を行うよう法人等に求めるとともに、勧告、報告徴収の対象とするなどの修正も行われたところであり、更に実効性が高まっていると考えております。
この新法案と既に提出した消費者契約法等の改正法案により、多くの被害者の救済を図ることができると考えておりますが、様々な御指摘をいただいていることも承知をしております。法案の趣旨や解釈について丁寧に御説明するとともに、法案が成立した後においても、法律の解釈の周知に努め、実効性を高める努力を続けるなど、様々な御指摘に対しても最大限丁寧に対応してまいります。
新法案の寄附の勧誘行為に係る規制対象についてお尋ねがありました。
寄附の勧誘をしている者が個人であっても、法人等の行為と評価される場合には新法案の規制対象になります。具体的には、法人等の代表者、役員又は使用人等が行った勧誘行為は法人等が行ったものと認められることになります。また、宗教団体と委任や雇用関係がない信者が当該宗教団体への寄附の勧誘行為を行った場合においても、宗教団体と当該信者間の明示又は黙示の契約の有無など、使用人と同等程度の法人との関係性がある場合には、法人等の行為と評価することができ、新法案の規制の対象になると考えております。
また、現在、社会的に問題となっているような悪質な寄附については、被害者において法人等と表向きの寄附の勧誘者との関係を全く立証できないということはないのではないかと思いますが、こうした点も含めて被害回復の相談に応じることができるよう、体制の充実等を図ってまいります。
寄附行為一般を対象とした理由及び寄附文化への配慮について御質問がありました。
新法案は、宗教法人以外が行う不当な寄附勧誘も対象とすべきもので、宗教法人に絞る必要はないと考えております。また、新法案においては、法の運用に当たっては、NPO法人等、様々な法人の活動における寄附の重要性に留意しなければならない旨規定をしております。
本法案における禁止規定は、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為と考えられるものであり、配慮義務も、真っ当な寄附を募っている法人等であれば当然に配慮されているものに限っています。そのため、通常の法人であれば寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化の醸成に対する不当な抑制にはつながらないと考えております。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり得ると考えられます。
そして、配慮義務を禁止行為とすること及び配慮義務違反の立証についてお尋ねがありました。
禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか明確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。
こうした中で、現在の規定は、いわゆるマインドコントロールによる寄附について、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限禁止行為や取消し権の対象とするとの方針の下、規定を行ったものです。
一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態と、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招くより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えております。
このように、禁止規定について最大限規定を行った上で、さらに配慮義務の規定を行っておりますが、仮に配慮義務を法人等の禁止行為として具体化した場合には、現在禁止規定としている規定、現在禁止規定として規定しているものと同様の内容になると考えております。
なお、御指摘の公益法人法第十七条の禁止行為は、遵守していない場合に公益認定の取消しにつながり得るという効果につながるにとどまることから、最終的に刑事罰にもつながる新法案における禁止行為の規定と一概に論ずることは困難であると考えています。加えて、公益法人法の禁止行為と異なり、新法における禁止行為は寄附の取消し権とひも付いているものもあります。
このように、法律の趣旨が異なるものであることから、公益法人法の禁止行為規定と新法の禁止行為規定を同様のものとして論ずることは困難であると考えております。
そして、取消し権行使の要件についてお尋ねがありました。
御指摘の一連の勧誘行為と判断できる場合は、例えば、入信当初に身内の不幸などを挙げて不安をあおられ、教義と称して、そのような不安に乗じて身内の更なる不幸等の不利益を回避する手段を教え込むことでこの困惑させるような場合は該当し得ると考えられます。
また、一連の勧誘行為と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば、新法の第四条第六号の不安を抱いていることに乗じての要件を満たすことから、取消し権の適用対象になると考えております。
こうした場合において、自分が困惑しているか判断ができない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に本人が主張して取消し権を行使することが可能な場合はあると考えられます。
同様に、寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態で、外形的には義務感や使命感で寄附を行っているように見える場合でも、先ほど申し上げたとおり、後から冷静になって考えると不安に乗じられ困惑していた寄附だったと気付いたということであれば、そのような主張、立証を行って取消し権を行使することが可能であると考えられます。
旧統一教会関係の被害者はこのような被害例が多いと考えられることから、多くの被害者が本法案を活用することで救済され得るものと考えております。
なお、逐条解説を条文化すべきではないかとの御指摘ですが、困惑を分かりやすく解説したものが御指摘の逐条解説であり、表現を入れ替えたとしても何ら法的な効力に変更はないと考えております。
加えて、法律を分かりやすく解説するための表現と用例等を踏まえて規定される条文上の用語は、おのずから異なるものであると考えられます。
一方で、困惑に該当する事例などを更に分かりやすく法律の解釈等において示すことは法律の実効性を高めるために有用であり、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
そして、必要不可欠の要件についてお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり、必要不可欠の要件は、必ずしも必要不可欠という言葉そのままに告げる必要はなく、勧誘行為全体として、それと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えている旨、先日、衆議院において答弁を申し上げました。
他方、御指摘のように、単に必要とすると、御指摘のような曖昧さのみならず、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで対象が広がってしまいかねず、規制の範囲が広がり過ぎるおそれがあります。また、必要又は切迫性がある旨規定すれば足りるのではないかとの御指摘でありますが、必要不可欠とは必要性と切迫性の双方が必要な概念であり、御指摘のような規定を行った場合、やはり規制の範囲は広がり過ぎると考えております。
資金調達要求の禁止規定についてお尋ねがありました。
新法では、居住用不動産や個人等の生活の維持に欠くことのできない事業用資産について、法人等の側からあえて寄附者に処分による換金という手間を掛けさせて寄附するよう要求する行為を禁止しております。他方で、居住用不動産や事業用資産そのものを寄附するよう要求する行為は禁止しておりません。これは、こうした資産をあえて換金までして寄附を求める行為はより悪質性が高いと考えられることに着目したものであります。
また、寄附勧誘の際にこういった資産の売却の求めがなく、自発的に売却し、寄附を行った場合には、寄附勧誘者が第五条に抵触することはない一方で、そのようないわゆるマインドコントロール状態にある人に対する寄附勧誘については第四条の禁止行為に該当する可能性も高く、また、家族も居住している不動産を寄附する場合には、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務に反する、このように考えられます。
取消し権の行使期間についてお尋ねがありました。
民法では詐欺や強迫に関する取消し権を二十年と設定していますが、新法案では、これに該当しない行為についても、一定の悪質性が認められる場合には取消し権の対象としております。
このため、取消し権の行使期間については、民法よりも取消し対象が広がることとの比較考量で短くなりますが、一方で、いわゆるマインドコントロールから脱するために相応の期間を要する事例があることを踏まえ、寄附の意思表示をしたときから十年間とするなど、それ以外の消費者契約法の取消し権の行使期間より長い期間を設定することとしております。
債権者代位権の特例についてお尋ねがありました。
御指摘の野党案については、既に国会に提出された法案であり、政府の立場から意見を述べることは控えますが、政府提出の新法案においては、自ら権利を保全するために必要な範囲で、他者の権利を行使することを認める制度である債権者代位権を活用しやすくしており、これによって、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含めて、家族らの被害救済につなげることができると考えております。
一方、債権者代位権は使いにくいとの指摘があることから、債権者代位権の適切な行使に向けて、法テラスと関係機関が連携した相談体制の充実を進めてまいります。
また、配慮義務の規定では、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持に関する配慮義務を規定しております。これにより、家族自身を当事者とした民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、家族の被害救済の実効性を高めることができると考えております。
なお、扶養債権の範囲を超えて、家族を含めた第三者が幅広く本人が行った契約や意思表示の取消しができるとすることは、個人の財産権の侵害の観点から適当ではないと考えております。
マインドコントロールの下でサインした念書の有効性についてお尋ねがありました。
当時は自分が困惑しているか判断できない状態で、何の疑問も持っていないような状態であったとしても、その後脱会して冷静に考えると、当時、不安に乗じられ困惑していたということであれば、そのような状態でサインした寄附の一部の返金の和解の合意や、寄附の返金を求めない旨の念書は公序良俗に反するとして、無効の主張、立証をすることが可能となり得ると考えております。
そして、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/10
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011・河野太郎
○国務大臣(河野太郎君) 高額のつぼや経典の販売に係る本法案の規制対象についてお尋ねがありました。
御指摘のようなつぼや経典の購入といった売買契約については、消費者契約法の対象となり、不当な勧誘行為により困惑して契約した場合には取り消すことが可能です。また、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求の対象ともなります。
また、安価なものを法外な高値で売買するような契約については、個別具体的な事案によるものの、新法の適用を逃れるために外形上売買契約の体裁を取ったにすぎないと判断される場合には、その実態は寄附と認められ、新法の適用対象となり得ると考えています。
衆議院における修正提案についてお尋ねがありました。
第三条に十分にとの文言を加えることによって、法人等が個々の寄附対象者の状況や実態に応じて、同条各号に掲げられる事項について法人等の配慮義務への注意を更に促し、同条の実効性が高まる効果が見込まれるものと考えます。
厄払いが対象となるか否かについてお尋ねがありました。
一般的な厄払いについては、不安をあおることは余り想定できないかもしれませんが、不安を抱いていることに乗じてに該当する場合は相当程度存在すると考えられます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/11
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012・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 安江伸夫君。
〔安江伸夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/12
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013・安江伸夫
○安江伸夫君 公明党の安江伸夫です。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について質問いたします。
これまでに、世界平和統一家庭連合、旧統一教会に関連をして、霊感商法や不当な寄附の勧誘行為による深刻な被害が生じてきました。そして、今もその被害に苦しんでいる本人やその御家族がいらっしゃいます。
信教の自由の範疇を超えて、他人を不幸に陥れる行為、人権を侵害する行為は許されません。当事者に寄り添い、被害の防止と救済に向けて力を尽くすことは政治の大きな責任です。この決意で、我が党といたしましても、弁護士や関係省庁、有識者との意見交換を重ねた上で、十月の二十八日、政策提言を政府に提出するなど、必要な施策を推進をしてまいりました。
そして、寄附の不当な勧誘行為一般を防止すること等を内容とした法案がここに提出されるに至ったことは、声を上げてくださった方々と、消費者庁を始め役所等の関係者の皆様の昼夜を分かたぬ御尽力のおかげとも感謝を申し上げます。
その上で、本法案を議論するに際して留意すべき三つの視点を申し上げたいと思います。第一に、内容が被害の実態に即しているか。第二に、裁判等の現場でも安定的に運用可能で実質的な救済に資するか。そして、第三に、他の権利利益との均衡が図られているかどうかです。これらの観点を踏まえ、以下質問をいたします。
初めに、消費者契約法における取消し事由の拡大について伺います。
過去に裁判等で問題となった勧誘行為として、例えば、夫の若死には祖先の悪因縁にあり、財産をささげなければ子供も若死にする旨を告げ契約を締結させた例などがあります。しかし、現行の消費者契約法では、そもそも親族の不利益告知は明示的には規制の対象になっておらず、不法行為の成否はともかくとして、こうした行為すら直接的には取消しの、契約取消しの対象とはなっておりませんでした。被害の実態により即した救済を可能とするために、今回、消費者契約法の霊感等による告知を用いた勧誘について取り消すことができる範囲が拡大されることになります。
そこで、今回の改正は、旧統一教会に関連した被害実態にどのように即しているのか、被害救済に具体的にどのように資するものであるかを河野大臣にお伺いをいたします。
今回、取消しの範囲の拡大等を内容とする消費者契約法改正に加え、新たに寄附の不当な勧誘行為一般を規制する法律案を新法として提出をされています。この点、我が党としても、消費者契約法は契約と評価できる行為のみを対象としており、悪質な寄附の勧誘行為全般を捕捉できないことや、規制の実効性の確保の観点から、新法についての検討も促してきたところです。
そこで、今回、消費者契約法等の現行法の改正にとどまらず、新法を提出した趣旨と、新法ではどのように規制の実効性が確保されることになるのかについて、総理にお伺いをいたします。
続いて、配慮義務について伺います。
新法第三条では、寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務として、自由な意思を抑圧して適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることなど、三点にわたって規定をされています。それらは寄附の勧誘を受ける者の保護を図るための当然の理が規定されているものと考えますが、配慮義務として規定することによって被害救済にどのように資するのでしょうか。また、配慮義務としてではなく、禁止行為として定めることが救済の必要性からも望ましいとの意見も踏まえまして、衆議院で配慮義務を怠った場合について行政措置の規定が新たに設けられることとなりました。これらの規定を禁止行為としなかった理由、また修正部分についての御認識を総理にお伺いをいたします。
新法の第三条二号では、寄附により、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることとの配慮義務を定めています。旧統一教会に関連した問題の多くは、寄附等を行った本人のみならず、家族全体の困窮という形で現れている実態に照らせば、この親族等を含めた生活の維持の配慮義務は、家族の権利を守るためにも大変重要な規定です。
この配慮義務の創設は、勧誘を受けた本人の親族等との関係でどのように役立つのでしょうか。親族等が勧誘行為の違法性を主張する際にも活用できるものと理解してよいのでしょうか。河野大臣にお尋ねします。
教育や福祉、文化芸術、スポーツの分野などにおいて、寄附が果たす社会的役割や意義はますます高まってきており、今後も寄附文化の醸成を図っていく必要があります。また、寄附及びその勧誘は、財産権の行使という側面にとどまらず、精神活動の一環として行われる場合も少なくありません。今回の法案は寄附の不当な勧誘行為の防止等を目的としておりますが、こうした寄附が果たす社会的役割や意義に鑑みて、健全な寄附に対する悪影響や寄附文化の醸成を阻害することは断じてあってはなりません。
そこで、寄附が果たす社会的役割等に対する御認識をお伺いするとともに、本法案の運用に当たっても、健全な寄附に萎縮効果が及ばないようにしていかねばならないと考えますが、河野大臣の明快な御答弁を求めます。
新法では、債権者代位権の行使の特則を定め、扶養義務等に係る定期金債権、すなわち養育費や婚姻費用等についての将来債権についても保全することが可能となっています。これにより親族の権利擁護の実効性が高まるものと考えますが、具体的にどのような権利の擁護につながるのかについて御説明をください。
また、家族にも取消し権を認めるべきとの主張や、法案の被保全権利の範囲が狭いとの指摘もありますが、これらの意見についてはどのような検討がなされたのかについて、河野大臣の答弁を求めます。
今回、消費者契約法の改正や新法の創設のほか、国民生活センター法の改正案も提出をされております。取消し権の拡充などで救済の実効性が高まることになりますが、そうであったとしても、実際に訴訟等の裁判を行うことは大きな負担になります。そこで、我が党としても、裁判よりも簡便、迅速かつ低コストで行うことができるADRの機能の充実強化も併せ訴えてきたところです。
そこで、本改正により国民生活センターやADRの機能がどのように強化されることになるのかについて、河野大臣に伺います。
最後に、相談支援体制の強化について伺います。
取消し事由の範囲拡大や悪質な寄附の勧誘行為の規制などの法制度の充実も重要ですが、あわせて、被害の防止と救済の観点から、相談支援体制の強化も言わば車の両輪として不可欠です。
我が党としても、状況に応じた適切な支援につなぐ力の強化も含めた総合的な相談支援体制の充実や必要な予算措置なども訴えてまいりました。
また、新法においては債権者代位権の行使の特則も設けられますが、専門的な知見も必要であり、実際に行使する必要性が高い者には未成年者も含まれることから、とりわけこの点についての丁寧な支援体制の構築が重要であると考えます。
この点、新法の第十一条では、法人等の不当な勧誘により寄附をした者等に対する支援の強化について規定されているところでありますが、相談支援体制の充実に向けた取組を齋藤法務大臣にお伺いをいたします。
本法案が早期に成立をし、不当な勧誘行為等による被害の将来に向けての防止の徹底と救済が図られることを強く念願をいたしまして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/13
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014・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 安江伸夫議員からの御質問にお答えいたします。
新法の提出理由についてお尋ねがありました。
消費者契約法の改正法案は、旧統一教会問題等のいわゆる霊感商法や、契約に当たる寄附について、取消し権の対象範囲の拡大や取消し権の行使期間の伸長等の措置を講じ、被害防止及び救済の可能性を高めます。あわせて、国民生活センター法の改正により、ADRの活用促進を図ります。
それに対して、新法では、新法案では、現行のこの日本の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け、困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、取消しを認める制度としております。さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定め、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定や、それに基づく損害賠償請求の容易化を図ります。
この二法案により、これまで救済できなかった被害をより幅広く救済でき、また、将来に向けて被害の防止にも役立つと考えております。
配慮義務の意義についてお尋ねがありました。
禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか適切に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。
一方、この配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しております。
これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招くより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えております。
また、衆議院において議論が行われ、修正案が可決されましたが、この修正は、寄附の勧誘者に対し被勧誘者への十分な配慮を行うことを求めるとともに、配慮義務に違反する法人等に対する勧告等を可能とすることで、より一層法律の実効性の向上を図る趣旨があると認識をしております。
政府としては、修正の趣旨を踏まえ、引き続き丁寧に参議院での御説明を尽くすとともに、法案が成立した際には法律の適切な運用に努めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/14
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015・河野太郎
○国務大臣(河野太郎君) 消費者契約法改正法の、改正案の取消し事由についてお尋ねがありました。
消費者契約法の改正法案においては、霊感等による知見を用いた告知について、消費者本人の不利益に関する不安のみならず、親族に関するものも対象とすること、将来生じる不利益のみならず、現在生じているものも対象とすること、また、消費者の不安をあおる場合のみならず、不安を抱いていることに乗じた場合も対象とすることとして、取消しの対象範囲を拡大しています。
旧統一教会に関連した被害実態では、例えば配偶者の若死にを祖先の悪縁と言って不安をあおる例や、子供が現在結婚できないのは祖先の悪縁が原因であると告げる例、そうした不安を抱いていることに乗じて契約締結を迫る例などが明らかとなりました。改正法案では、こうした事例に対応して、契約の申込み又は承諾の意思表示を取消しできることになり、被害の救済に資することとなるものと考えています。
新法第三条第二号に規定する配慮義務についてお尋ねがありました。
勧誘を受けた本人の配偶者や親族等との関係においても、寄附の勧誘に当たってその生活の維持を困難にすることがないよう配慮義務が規定されており、これに反する勧誘行為が行われた場合には、親族等に対する民法上の不法行為の認定や損害賠償請求が容易となると考えます。
寄附が果たす社会的役割に対する配慮についてお尋ねがありました。
新法案の運用に当たっては、NPO法人、学校法人、宗教法人や政治団体など様々な法人の活動において寄附が果たす役割の重要性に留意しなければならない旨を規定しています。
また、新法案における禁止規定や配慮義務は、社会通念上不当な勧誘行為と考えられるものに限っているものであります。そのため、通常の法人であれば寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化の醸成に対する不当な抑制にはつながらないと考えています。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながると考えます。
債権者代位権の特則についてお尋ねがありました。
債権者代位権は、自らの権利を保全するために必要な限度で他者の権利を行使することを認める制度です。今回の改正法案では、扶養義務等に基づく定期金債権について、期限が到来していないものであっても債権者代位権を行使することができることとし、制度を活用しやすくすることで家族の被害救済につながると考えています。
制度を検討するに当たっては、家族の権利保護と本人の財産権の保障のバランスを考慮し、家族等の第三者が本人の意思にかかわらず取消し権を行使することができるとすることや、被保全権利の範囲を広げることは困難であると考えました。
国民生活センター法の改正法案についてお尋ねがありました。
今回の国民生活センター法の改正法案には、ADRについて、迅速な審理のため計画的に実施すること、消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益を保護するため特に必要があると認めるときに事業者名を公表することができること、適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行うことが盛り込まれています。
この改正により、消費者と事業者間の紛争の解決が迅速に図られるようになるとともに、被害の拡大防止等が図られることになると考えております。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/15
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016・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 安江伸夫議員にお答え申し上げます。
相談支援体制の充実に向けた取組についてお尋ねがございました。
法テラスと関係機関等との連携を図り、相談体制の充実を図ることは重要だと認識をしております。
法テラスでは、霊感商法等対応ダイヤルを設置し、幅広いお悩みに応じた適切な相談窓口を紹介しております。さらに、法テラスでは、問題の総合的解決を図るため、弁護士、心理専門職等の配置、活用に加えまして、日本弁護士連合会等の関係機関、団体等や福祉専門職を始めとする各種専門職との更なる連携強化、これらの連携の枠組みを生かしたワンストップ型相談会等を行っていくものと承知しております。
法務省としては、法テラスと関係機関、団体等との緊密な連携の下、包括的支援体制の整備、強化を図るとともに、様々なニーズ等を十分把握し、より一層充実した支援を行うなどして、実効的な救済に全力を尽くしてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/16
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017・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 梅村聡君。
〔梅村聡君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/17
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018・梅村聡
○梅村聡君 日本維新の会の梅村聡です。
ただいま議題となりました消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案並びに法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について、会派を代表して質問いたします。
元総理大臣が命を落とされた前代未聞の痛ましい事件から五か月が経過をしました。この間、霊感商法等の悪質商法への対策検討会での議論や、その後の与野党間での協議などを経て、今回の政府案が提出されました。
日本維新の会では、事件後、早急に悪質な献金による被害を救済するための法整備が必要であると考えて党内議論を行い、特定財産損害誘導行為による被害の防止及び救済等に関する法律案を取りまとめ、十月十七日に国会に提出いたしました。一方、政府の法案が今国会に提出されたのは十二月一日です。被害救済のためには一刻も早い国会での議論が必要であるにもかかわらず、政府案の提出がここまで遅れた理由を岸田総理にお尋ねいたします。
以下、具体的に法案の内容について質問いたします。
まず、寄附規制についてであります。
本法案には、寄附の勧誘に際して行ってはならない禁止行為が列挙され、不当な勧誘行為により困惑して寄附の意思表示をした場合の取消し権を認めることとしています。寄附の取消しには困惑という要件が必要となっていますが、宗教法人等による不当な勧誘によってマインドコントロール状態にある寄附者は、困惑することなく、自らの意思で進んで寄附を行うことも多いと言われています。この場合は、本法案による取消し対象から外れることになると思われます。
政府は、自由意思による寄附は規制できないとの見解のようですが、マインドコントロール状態にある者が困惑せずに自らの意思で進んで寄附を行うことは本当に自由意思と言えるのでしょうか。改めて岸田総理にお伺いします。
次に、配慮義務規定に関してお尋ねいたします。
本法案においては、寄附勧誘を行うに当たり、個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状態に陥らせないことなどの配慮義務規定を設けることとしております。しかし、これを配慮義務ではなく禁止義務とすれば、先ほどお話ししたような状態にある被害者などを広く救えるのではないでしょうか。なぜ禁止義務としなかったのでしょうか。その理由をお聞かせください。
また、配慮義務規定により、どのような法的効果が認められるのか。改めて岸田総理から御説明をお願いいたします。
例えば、神社で合格お守りを購入する場合、購入する人は、これによって御利益があるとは思っても、志望校への合格が保証されるとまでは考えないのが通常だと思われます。しかし、長期間の働きかけによってマインドコントロール状態にされてしまうと、購入あるいは寄附こそが志望校に合格する、すなわち救われる道だと考えてしまいかねません。
そこで、少なくとも、寄附の勧誘者は、被勧誘者から質問を受けた場合、この寄附などをしたからといって必ずしも重大な不利益が回避される、すなわち救われるとは限りませんということを勧誘者側がきちんと説明すべきであるという指摘もありますが、こういった考え方について政府としてどう受け止めるのか、岸田総理にお伺いいたします。
次に、借入れ等による資金調達要求の禁止についてお伺いします。
本法案第五条では、勧誘者は、借入れ又は居住用の建物等若しくは生活の維持に欠くことのできない事業用の資産で事業の継続に欠くことのできないものの処分により、寄附のための資金を調達することを要求してはならないこととしております。しかし、住宅や田畑を処分せず、そのまま現物を寄附することを要求することは、禁止対象から外れてしまうのではないでしょうか。対象とならない場合、寄附された者が処分し、金銭として獲得したら、結果として自ら処分して資金調達した状態と何ら変わりません。こうした抜け穴があることをどうお考えでしょうか。現物寄附への対応について、河野大臣にお伺いします。
さらに、これ以外にも、例えば健康を害するような無理な労働を行って資金を捻出するよう要求するなど、規制逃れのための悪質な要求は幾らでも考えられます。そもそも、借入れや住宅等の売却を求めさえしなければ、生活に困窮してしまうような高額の寄附要求を容認してしまってよいのでしょうか。
だからこそ、日本維新の会では、寄附に関する客観的な目安があった方がよいと考えたのです。具体的には、民事執行法における差押禁止の規定を参考に、標準的な年収を得る者においては年間の可処分所得の四分の一を超えるかどうかを寄附の取消し事由となる目安の一つとして、諸事情を考慮して判断するという内容の法案を日本維新の会は提出いたしました。
政府案では、問題が起こるたびに細かい規制を追加し、悪質な法人等は規制逃れのために新たな脱法的手口を考えるといういわゆるイタチごっこに陥る懸念があるのではないでしょうか。河野大臣にお伺いします。
本法案では、取消し権を行使できる期間について、霊感商法が規定されている第四条第六号に挙げる行為により困惑したことを理由とする場合は、追認できるときから三年とされております。追認できるときとは、寄附行為が誤りであったと気が付いたとき、つまり、困惑した状態が解けたときから三年間は取消し権を行使できるという意味であると理解しております。
この困惑が解けた状態とは、教義そのものや寄附したことについて誤りであったと寄附者が自覚している状態を想定されているかと思います。他方、教義自体は以前と同様に信じ続けているが、寄附した金額が多過ぎたことだけを後悔している場合、この場合は困惑が解けた状態に当てはまるのでしょうか。また、この場合では取消し権を行使できるのでしょうか。河野大臣にお伺いします。
消費者教育についてお尋ねいたします。
霊感商法という言葉が世の中に広まった現在では、以前より霊感商法に対して注意を払う人は増えてきていると思います。事前の予防という意味で、一人一人がそれらの悪質商法に注意を払えるようになることが重要です。振り込め詐欺などと同様に霊感商法という言葉が世の中に浸透すれば、悪質な霊感商法の被害を少しでも減らすことができるかと思います。学校教育の中に霊感商法に関する教育を取り入れるべきだと考えますが、文科大臣に見解をお伺いします。
最後に、今後の議論の進め方について質問いたします。
信教の自由は憲法上の権利であり、十分に尊重されなければなりませんが、宗教法人と社会とのあつれきを回避するために必要な規制まで禁止されるべきものではないと考えます。仮に本法案が成立したとしても、それで幕引きとするのではなく、マインドコントロールとは何か、反社会的な活動を繰り返す団体に対してどのような規制を行うべきか、宗教法人法等はどうあるべきなのかといったことについて、各方面からの意見を伺いつつ、引き続き検討を続けていくべきだと思いますが、今後の政府の方針を岸田総理にお伺いしまして、私からの質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/18
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019・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 梅村聡議員の御質問にお答えいたします。
政府法案の提出時期についてお尋ねがありました。
今回の政府提出法案については、消費者庁における有識者検討会を本年八月二十六日に立ち上げ、約二か月の議論を経て取りまとめられた提言を基に、十月十八日に消費者庁において法制検討室を設置し、法律の実効性、憲法上の権利との関係なども考慮しつつ検討を重ね、法案化をしたものであります。その間行われた与野党での議論も参考にし、法案化を行ってまいりました。政府としては、今国会に法案を提出するとの方針の下、最大限速やかに対応してきたものであると考えております。
いわゆるマインドコントロール状態における寄附についてお尋ねがありました。
個別具体の事案によるものの、入信当初に不安をあおられる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で、外形的には自由意思で献金を行ったように見えたとしても、その状態から脱した後に、寄附は自由意思によるものではなく困惑して行ったと本人が主張し、取消し権を行使することは可能であると考えられます。
配慮義務規定についてお尋ねがありました。
禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。
一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりもこうした結果を招くより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えています。
そして、御指摘の被勧誘者からの質問の際の勧誘者の回答については、重大な不利益の回避に寄附が必要不可欠であると被勧誘者に認識させる告知が勧誘者からあった場合には禁止行為に該当すると政府としては考えております。
そして、旧統一教会問題に関する今後の政府の方針についてお尋ねがありました。
旧統一教会については、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使により事実把握と実態解明を進める、被害者の救済に向けた相談体制を強化する、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しにしっかりと取り組んでいく、このような方針の下で臨んでいくこととしております。
法案成立後についても、こうした方針で取組を継続していくとともに、法制度の適切な運用を進め、法律の施行の状況及び社会経済情勢の変化を勘案し、必要に応じて見直しの検討も進めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/19
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020・河野太郎
○国務大臣(河野太郎君) 資金調達要求の禁止規定についてお尋ねがありました。
新法では、居住用不動産や個人等の生活の維持に欠くことのできない事業用資産について、法人等の側からあえて寄附者に財産を処分させて寄附するよう要求する行為を禁止しており、居住用不動産や事業用資産そのものを寄附するよう要求する行為は禁止しておりません。
居住用不動産や事業用資産そのものの寄附については、施設に入居した高齢者が居住用不動産を世話になった法人に寄附しようとするときなど、自発的な意思に基づいて行われるものが想定できないとは言えず、そのような寄附を求める行為も一律に禁止まですることは困難と考えます。
なお、家族も居住している不動産を寄附する場合は、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務の対象となり得ると考えられます。
寄附に関する規制の在り方についてお尋ねがありました。
新法では、第四条において消費者契約法において類型化されている不当な勧誘行為を禁止するとともに、第五条において個人にとって過大な資金調達の要求を禁止し、他方で、第三条において法人等の配慮義務を定めています。
禁止行為の対象とする場合、行政措置や刑事罰の適用にもつながるものであることから、現行の日本の法体系に照らせば、要件の明確性が必要となります。他方、不適当な寄附勧誘のありようは様々なものが想定され、一概に要件を規定することは困難であることから、禁止行為と配慮規定の二段構成を取ることで抜け道をできる限りなくし、規定の実効性が高まっているものと考えます。
例えば、居住用建物自体を寄附することを要求することは第五条の禁止規定に該当しないとしても、第三条の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務の違反に当たり得ることになります。したがって、本法案ではいわゆるイタチごっこに陥る懸念があるとの御指摘は当たらないものと考えています。
取消し権を行使することができるための要件についてお尋ねがありました。
困惑とは、不当な勧誘行為によって困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう、畏怖をも含む広い概念であるとされています。勧誘を受けた者が困惑しているか否かの認定は個別具体的な事案次第と考えられますが、寄附した金額が多過ぎたと後悔していることは、直ちには困惑しているか否かと結び付かないと考えられます。
その上で、例えば、寄附した金額が多過ぎたと後悔していることのみをもって新法第八条に基づく取消し権は発生しないものの、不当な勧誘によって困惑したために、後から後悔するような多額の寄附をしてしまったということであれば、そのような寄附は困惑によるものとして取り消すことが可能です。(拍手)
〔国務大臣永岡桂子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/20
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021・永岡桂子
○国務大臣(永岡桂子君) 梅村聡委員にお答えいたします。
学校教育の中に霊感商法に関する教育を取り入れることについてお尋ねがありました。
文部科学省では、現在の学習指導要領において、消費者教育に関する内容を一層充実いたしました。特に、高等学校では、家庭科に契約の重要性や消費者保護の仕組みといった項目を新規に盛り込みました。
現在使用されている教科書の中には霊感商法に関する記述のあるものも見られるところですが、こうしたことを踏まえまして、各学校では、具体的に悪質商法などの消費者被害の状況に触れながら、消費者契約法など被害救済についても理解できるようにするための指導等が行われております。
各学校においてしっかりと指導が行われるよう、学習指導要領の趣旨徹底に努めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/21
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022・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 大塚耕平君。
〔大塚耕平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/22
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023・大塚耕平
○大塚耕平君 国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。
ただいま議題になりました消費者契約法案、法人寄附不当勧誘防止法案について、会派を代表して質問します。
本法案の契機となった旧統一教会関連の被害救済、再発防止を企図して、国民民主党は、刑法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部の改正を目指す議員立法案を策定済みであり、十一月十一日に参議院法制局の審査を終了しています。
今回の政府案策定に当たり、十一月九日と十五日の二度にわたって、当該議員立法案の内容及びその背景にある国民民主党としての考え方を与党実務協議者及び関係省庁に示した上で、追加的指摘も行いました。
以下、それら内容及び指摘事項への対応を確認する形で質問します。
また、法案策定及び質問通告の段階で消費者庁等と協議を行ったことから、そのラインを踏襲して答弁されることを求めます。
指摘事項の第一は、議員立法案の第一条に関わるものです。同条では、人を偽計、威力その他不正の方法により自己の心理的な支配の下に置き、又は人が偽計、威力その他不正の方法により第三者の心理的な支配の下に置かれていることに乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくはこれを得るような行為を抑止する規定を設けています。
今回の政府案では、ただいま申し上げた観点から、どのような工夫がなされ、具体的な条文としてどのような定めをしたのかを総理に伺います。
第二に、新たな法律の違反者に対し、是正勧告の上で改善命令を発し、従わない場合に罰則を科す必要性を指摘しました。
第三に、心理的支配利用を用いた寄附等の募集に当たって、配偶者及び扶養親族等の家族に不利益を与えないようにする配慮義務の必要性を指摘しました。
第四に、新たな法律に違反する事例が顕現化した場合、家族にも当事者としての権能を認め、民法七百九条の不法行為責任によって損害賠償請求を提起可能とする民法の特例創設の必要性を指摘しました。
以上、第二から第四の点に関する政府案における工夫及び具体的な条文の定めを総理に伺います。
第五に、配偶者及び扶養親族等の家族の不利益救済に関しては、民法四百二十三条の債権者代位権の行使を可能とする手法もあることを指摘しました。
この点に関する政府案における工夫及び具体的な条文の定めとともに、債権者代位権を活用する場合における無資力要件や弁済期到来要件等に関する政府案の内容及び解釈を総理に伺います。
第六に、寄附の勧誘若しくは要求を受けた者又は寄附者の利益を不当に害するおそれのある行為を禁止している公益法人法第十七条第四号と同様の規定の必要性を指摘しました。
第七に、ただいま申し述べた第六の規定を設ける場合には、禁止行為に寄附者の配偶者及び扶養親族等の家族の利益を不当に害するおそれのある行為を加えることの必要性を指摘しました。
第八に、心理的支配利用の結果として生じた損害の立証を容易にするため、損害額の推定規定などの特例を設けることの必要性を指摘しました。
第九に、消費者契約法の改正によって救済範囲を拡大するために、心理的支配利用による契約取消し権の範囲拡大と行使期間延長の必要性を指摘しました。
第十に、消費者契約法第四条第三項を改正し、困惑類型の取消し事由に心理的支配利用に伴う暴利行為を追加することの必要性を指摘しました。
第十一に、現行の消費者契約法は不安をあおる作出行為のみを想定しているため、不安に付け込む利用行為も規制対象に加えることの必要性を指摘しました。
以上、第六から第十一の点に関する政府案における工夫及び具体的な条文の定めを総理に伺います。
第十二に、現行の消費者契約法における取消し事由としては、重大な不利益を与える事態だけを想定していることから、利益を与える行為も含めることの必要性を指摘しました。
この点に関する政府案における工夫及び具体的な条文の定めとともに、仮に条文に明文上の定めがない場合に、法案の該当条文の解釈として利益を与える行為もカバーできるのか否かを総理に伺います。
第十三に、今回構築する被害者救済の仕組みが、現行の消費者契約法等の仕組みよりも厳しくなることを回避することの必要性を指摘しました。
この点に関する政府案における工夫及び具体的な条文の定めを総理に伺います。
第十四に、ただいま質問した第十三に関連して、新法第六条において、内閣総理大臣は、必要と認めるときは、その必要の限度において、法人等に対し、寄附の勧誘に関する業務の状況に関し、必要な報告を求めることができると記しています。
この記述が、現行の消費者契約法等の被害者救済の仕組みと比べて、その適用要件をより厳しくしたものなのか、あるいはそうではないのか、条文の解釈を総理に伺います。
なお、この点に関連し、一つの条文、又は複数項のある条文においては一つの項文において、必要という言葉が三度以上登場する法律があるのか否かを総理に伺います。ある場合には、具体的な法律名と当該条文における必要という記述の果たす役割をお答えください。
第十五に、新法第七条には、寄附の勧誘に関する禁止行為、借入れ等による資金調達の要求の禁止行為が行われていると認められる場合に、当該行為の停止その他の必要な措置をとるべき勧告、命令が行えることとなっています。
国民民主党が策定した議員立法の第三条では、同様の事態において、関係法律の規定による行政庁に権限が適確に行使されることを求める適確権限行使条項を設けています。
新法第七条の法的効果と、ただいま申し述べた適確権限行使条項の法的効果を比較した場合、どのような違い又は共通性があるのか、総理の認識を伺います。
第十六に、被害に対する相談体制等の充実強化に関連し、裁判外紛争解決手続機能の強化、相談業務を行う民間団体への支援機能の創設、法テラスの充実強化等の必要性を指摘しました。
この点に関する政府案における工夫及び具体的な条文の定めを消費者担当大臣に伺います。
最後に、新法は施行後二年をめどに見直しを行うことになっているため、その際の議論に資することを企図し、国民民主党は策定した議員立法を今国会中に提出する予定です。
議員立法の第二条では、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、いわゆる組織犯罪処罰法と、国民民主党の議員立法案に定める禁止行為の違反に対する措置を関連付ける仕組みを設けています。
政府案に定める禁止行為の違反に対しても、組織犯罪処罰法と関連付けることで抑止効果を高めることも一案だと考えますが、総理の所見を伺います。
今回の救済法案は、旧統一教会問題を機に提出されたものです。マスコミ報道や諸文献によれば、この団体の創始者は生前、日本の天皇陛下を自分の前にひれ伏させるという主張を行ったり、日本の女性に対する看過し難い考えを有していたとも伝わります。それらが事実であるとすれば、そのような者の率いる団体に日本国の政治家がくみすることは、国家及び国民に対する重大な背信行為であります。
日本を取り巻く国際情勢や経済情勢が厳しさを増す中、日本の政治家がそのような振る舞いをするようでは、日本の前途には暗雲が立ち込めていると言わざるを得ません。
議場に会する議員各位とともに、政治及び国会が、国民と国家の負託に応えるために、二度と同様な事態を招かないという決意を共有することを訴え、国民民主党・新緑風会を代表しての質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/23
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024・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 大塚耕平議員の御質問にお答えいたします。
国民民主党からの指摘への対応についてお尋ねがありました。
今般の新法、改正法については、御党の御指摘も踏まえて検討し、国会に提出させていただいたものであります。その内容については以下申し上げます。
心理的支配下に置き、不法な利益を得る行為の抑止については、霊感等による知見を用いた告知による寄附等については、消費者の不安をあおる場合のみならず、消費者が不安を抱いていることに乗じた場合も取消しの対象としております。
また、新法では、寄附の勧誘をする際にこうした行為が行われた場合については、勧告、命令等の措置の対象としております。
さらに、新法の第三条第一号の配慮義務として、法人等が寄附の勧誘を行うに当たっては、寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることに配慮しなければならない旨規定をしております。
配慮義務の規定を設けることによって、これに反するような不当な勧誘が行われた場合には、民法の不法行為に基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性が高まるものと考えております。
改善命令に従わない場合の罰則については、政府案においても、禁止行為に違反した法人等に対する措置等として、内閣総理大臣による報告徴収、勧告、命令の規定を設けていますが、命令に違反した場合には罰則の対象としております。
家族に不利益を与えないようにする配慮義務については、政府案においては、第三条第二号の配慮義務として、寄附勧誘に当たり、寄附により、個人又はその配偶者若しくは扶養義務を負う親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることに配慮しなければならない旨規定をしております。
民法の損害賠償請求の特例については、家族に対し、本人の権限である寄附の取消し権を認めることは困難ですが、第三条第二号の配慮義務として、法人等が寄附の勧誘を行うに当たっては、寄附により、個人又はその配偶者若しくは扶養義務を負う親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることに配慮しなければならない旨を規定をしております。
仮に配慮義務に反するような不当な勧誘が行われた場合には、本人のみならず、家族も含めて民法の不法行為に基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性が高まるものと考えております。
債権者代位権については、政府案では、自らの権利を守るために必要な限度で他者の権利の行使を認める制度である債権者代位権を活用しやすくすることとしております。
具体的には、法人等に金銭で寄附をした個人の扶養義務等に係る定期金債権の債権者は、民法第四百二十三条第二項本文に規定されている、その債権の期限が到来しない間は被代位権利を行使することができないという規定にもかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限の到来していない部分を保全するために必要があるときには、当該個人の有する取消し権を代位行使することができる旨の規定を設けております。
なお、債権者代位権については、他者の権利の行使を認める制度であることから、債務者が無資力である場合に限って認められます。
公益法人法と同様の規定については、政府案においては、寄附の勧誘若しくは要求を受けた者又は寄附者の利益を不当に害するおそれのある行為を防止する観点から、霊感等に関する知見を用いた告知などの禁止行為及び勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることなどの配慮義務の規定を設けております。
そして、家族の利益を不当に害するおそれのある行為の禁止については、政府案においては、直接の禁止行為として寄附者の配偶者及び扶養親族等の家族の利益を不当に害するおそれのある行為を規定するものでありませんが、第三条第二号の配慮義務として、法人等は、寄附の勧誘を行うに当たっては、寄附により、個人又はその配偶者若しくは扶養義務を負う親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることに配慮しなければならない旨規定をしております。
心理的支配利用の結果として生じた損害の立証については、政府案では、直接的な損害額推定規定はないものの、民法の不法行為に基づく損害賠償請求が容易となるよう、寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにするなどの配慮義務の規定を設けております。これにより被害救済の実効性が高まると考えております。
契約取消し権の範囲拡大及び行使期間延長についてお尋ねがありました。
政府案においては、消費者契約法等の改正法案に関し、霊感による知見を用いた告知については、消費者の不安をあおる場合のみならず、消費者が不安を抱いていることに乗じた場合も取消しの対象としております。
また、改正後の取消し権の行使期間についても、追認をすることができるときから三年、契約締結時から十年と伸長するとともに、現行の取消し権について、時効が完成していないものにも適用することとしております。
心理的支配利用に伴う暴利行為については、政府案においては、暴利行為そのものを規制することはしてはおりませんが、消費者契約法第四条第三項第六号において、不安をあおるのみならず、不安に乗じて霊感等による知見を用いた告知による勧誘がなされた場合についても取消しの対象として被害救済の範囲の拡大を図っております。
そして、不安に付け込む行為については、政府案においては、霊感等による知見を用いた告知に関し、消費者の不安をあおる場合のみならず、消費者が不安を抱いていることに乗じた場合も取消しの対象としております。
そして、利益を与える行為については、通常はそれ自体が困惑を引き出す行為ではないことから、取消しの対象としては規定しておりません。しかし、例えば、この契約を締結すれば病気が回復に向かうだろうといった趣旨での勧誘は、病気が回復するという好結果を得られないという不利益を与えることを暗示しています。また、病気が回復するだろうという表現のみでは直ちに必要不可欠である旨を告げたとまで評価することはできませんが、例えば、この契約を締結しなければ病気が治癒しないという、利益を得られないという不利益の意味に解することができるものであれば、必要不可欠である旨告げたとみなされ、取消しの対象となり得るものと考えられます。
そして、今回構築する被害者救済の仕組みが現行の消費者契約法等の仕組みよりも厳しくなることの回避については、政府案では、新法と消費者契約法により、これまでよりも被害者の救済範囲を拡大することとしております。
具体的には、契約に該当する寄附は消費者契約法による取消し、単独行為に該当する寄附は新法による取消しの対象とした上で、新法に基づく債権者代位権の行使の特例の対象は両法による取消し権とするなど、柔軟に規定をしております。また、いわゆるマインドコントロールによる寄附の被害に対しては、霊感等による知見を用いた告知に不安を抱いていることに乗じてを加えることによって、更に取消し権の拡大を行っております。
報告徴収に関する条文の解釈についてお尋ねがありました。
御指摘の条文は衆議院における議院修正後の第七条第一項に当たりますが、禁止行為がある場合に勧告等の行政措置の実施も視野に入れた報告徴収の規定であり、消費者契約法にない規定です。このため、適用要件の比較は困難ですが、この規定により被害者救済の実効性が高まるものと考えております。
この報告徴収については、禁止行為が不特定又は多数の者に対して組織的に行われ、その社会的な影響が大きく、被勧誘者の保護を図る必要性が強く、勧告を行う必要があると想定される場合など、一定の要件に当たる場合に行うことを想定し、御指摘の要件を規定をしています。
必要という言葉が一つの項文に三回以上ある例は、船員保険法等、様々な法律にあるものと承知をしており、その趣旨は一概に申し上げることはできませんが、本法案においては、本法案があらゆる法人等を対象とし、かつ、寄附が法人等の活動の重要な基盤となす場合もあることを踏まえて規定したものであります。
そして、新法の規定と御党の適確権限行使条項の関係についてお尋ねがありました。
新法では、業種、業態を問わず、あらゆる法人等を対象に、新法の禁止行為に違反する行為があった場合において、内閣総理大臣が一元的に勧告等を行うことを規定しております。
御指摘の適確権限行使が法令違反への対処に関しそれぞれの法人の根拠法を所管する行政庁による権限に委ねていることと比較すると、その点は異なっております。他方で、新法の運用の際には、消費者庁がそれぞれの法人の根拠法を所管する行政庁と連携して行うこととしており、法の運用の方向性においては共通する側面があるものと認識をしております。
新法の見直し規定についてお尋ねがありました。
まずは、新法の着実な執行を図ってまいります。また、法執行後の見直しに当たっては、現行の日本の法制度の下、どのような措置が許容されるかについては検討が必要ですが、新法の執行状況及び経済社会情勢の変化を勘案し、被害救済の実効性を確保する観点から必要な見直しを行ってまいりたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/24
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025・河野太郎
○国務大臣(河野太郎君) 政府案においては、御指摘も踏まえて検討した上で、新法において、法人等の不当な勧誘により寄附をした者に対する支援として、法テラスと関係機関及び関係団体等との連携の強化を図り、利用しやすい相談体制を整備するなど必要な支援に関する施策を講ずるよう努めなければならない旨を規定しています。
また、消費者契約法及び国民生活センター法の改正法案において、独立行政法人国民生活センターにおける重要消費者紛争解決手続の適正迅速な審理を実現するため、その計画的実施と、これに対する当事者の協力について定め、さらに、適格消費者団体の差止請求関係業務の円滑な実施への援助をセンターの業務に加えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/25
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026・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 山添拓君。
〔山添拓君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/26
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027・山添拓
○山添拓君 日本共産党を代表し、消費者契約法等改正案及び法人寄附不当勧誘防止法案について岸田総理に質問します。
この質問は昨夜、衆議院での採決はもとより、本日午前の総理質疑より前に準備したものです。衆議院での審議を踏まえた熟議と再考を任務とする参議院の審議を形骸化させる運びに強く抗議します。
総理は、拙速な審議で不十分な法案でも通しさえすればよいとでもお考えですか。会期末ぎりぎりの審議となっているのは、総じてこの間の岸田政権の責任です。我が党は会期延長の申入れを行いました。参議院で十分審議を尽くし、実効ある規制とすることをお約束ください。
統一協会の加害行為の中核は、正体を隠して勧誘し、知らないうちに教義を植え付け入信させる、信教の自由の侵害にあります。総理にその認識はありますか。
新法案は、統一協会によるこうした被害実態を十分踏まえたものとは言えず、被害者の主張立証や裁判所の判断次第で救済が大きく左右されるという課題があります。我が党が衆議院で修正案を提出したのは、法案に看過できない不十分さがあるからにほかなりません。
禁止規定の四条六号は、寄附の勧誘をするに際し、不安をあおり、又は不安に乗じて、寄附が必要不可欠と告げることによって困惑させてはならないとし、これらを全て満たす場合に取消し権を行使できるという条文です。
しかし、統一協会による被害は、勧誘され入信し、教義を植え付けられた下で寄附するため、寄附の時点では困惑していないケースも多くあります。この場合、取消し権の行使は困難ではありませんか。
総理は衆議院で、マインドコントロールによる寄附は多くの場合不安に乗じた勧誘であり、取消し権の対象となると答弁しています。不安に乗じた勧誘であれば、自動的に困惑したと言えるのですか。
教義に基づく責任感や義務感から寄附した場合、寄附を勧誘する側には相手が困惑しているとは見えません。禁止規定として明確性を欠くのではありませんか。
統一協会は、入信させる当初は必ずしも寄附が必要不可欠と告げるわけではありません。数か月から数年を掛け伝道、教化し、持たせた信仰を利用して献金させます。入信と献金要求にタイムラグがある場合、寄附の勧誘をするに際し困惑させたと言えるのですか。
衆議院で総理は、入信から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘と判断でき、事後的に寄附当時困惑していたと考えた場合には取消し権の対象になると答弁しています。しかし、寄附の勧誘に際しという文言では、タイムラグが長期にわたる場合まで含むと読むのは無理があります。また、被害者が事後的に当時困惑していたと考えたかどうかで禁止されたりされなかったりするのでは、明確性も法的安定性も欠くのではありませんか。答弁を求めます。
重大な不利益を回避するために寄附が必要不可欠と告げることが要件とされます。単に必要では足りず、不可欠まで求めるのはなぜですか。
衆議院で川井康雄参考人が紹介したように、出家するか、あるいは出家したつもりで二百十万円浄財しなければならないなどと選択肢を示した場合、必要不可欠と言えますか。
総理が幾ら取消し権の対象となると主張しても、最後は司法判断です。裁判で統一協会が、献金は自発的になされ困惑していなかった、不可欠とは言わなかったなどと反論して被害救済が阻まれることのない明確な条文にすべきではないでしょうか。
総理は、配慮義務規定を禁止規定にすべきという指摘に、どのような行為をしてはならないか的確に認識できるよう、可能な限り客観的に明確なものとすべきと述べています。しかし、特に法案三条三号の正体隠しや使途を誤認させる寄附勧誘は、刑法の詐欺罪に当たり得るもので、してはならない行為は明確です。なぜ禁止規定にできないのですか。
衆議院における修正案で、配慮義務違反に対する勧告が盛り込まれています。配慮義務に違反してされた献金を勧告によって被害者に返金させることはできますか。
信者や家族が困窮するほどの過大な献金被害も深刻です。
法案五条は、借入れ等による資金調達の要求を禁止しています。要求されず自発的に献金した場合を禁止しないのはなぜですか。自宅などを売却して現金で献金した場合だけでなく、不動産そのものを寄附する場合を禁止していないのはなぜですか。また、これら過大な要求による寄附について取消し権の対象としなかったのはなぜですか。
統一協会などの宗教二世らが宗教二世問題ネットワークを設立し、法案は被害実態と乖離しているとして修正を求めています。進学、就職、結婚など人生の様々な場面で望まない選択を強いられてきた宗教二世の方たちの声を総理はどう受け止めていますか。
法案が子や配偶者の被害救済のためとして設けた債権者代位権の特例では、取り戻せる範囲が養育費などに限られます。親の無資力が要件となっていることからも、救済はかなり限定されるのではありませんか。
二世被害者の場合、親権者である親が信者であるために裁判の同意が得られず、救済は困難と考えますが、どう認識していますか。
統一協会は、信者に献金等をさせる際、領収書など金品を受け取った事実を示す書面を交付することがほとんどありません。そのため、長年にわたる被害の末に脱会し、賠償請求しようとしても記録がなく、被害の全体像を把握すること自体困難なケースが少なくありません。
一回につき十万円以上など、一定額を超える寄附を受け取った場合には帳簿の作成を義務付け、寄附をした本人等から請求されたときは帳簿の開示を義務付ける仕組みを設けることも検討すべきと考えますが、いかがですか。
総理は、宗教法人法に基づく解散命令請求のために、統一協会の法令違反の組織性、悪質性、継続性を確認すると述べてきました。本日までにいかなる法令違反の事実を把握できましたか。
政府は、一九九四年以降、民事裁判で統一協会の責任が認められた事件を少なくとも二十二件把握しているといいます。新たに判明した養子縁組のあっせんを許可も得ず継続的に行っていた事実は、これだけで重大です。既に確認できた事実に基づき、直ちに解散命令請求に踏み出すべきです。答弁を求めます。
政府は、全国霊感商法対策弁護士連絡会などから、統一協会による深刻な被害に関する情報を継続的に得てきました。ところが、解散命令請求はおろか、調査も行わず、逆に正体隠しに加担する名称変更まで認めてきました。
総理は、国会で、今日まで放置したことは政府として深刻に受け止めなければならないと述べました。深刻な被害を政治が放置してきたのはなぜだとお考えですか。自民党と統一協会が癒着を深め、被害を拡大させてきたという認識はありますか。
総理は、新たな接点が判明した場合には、その都度追加的に報告、説明を行うことを徹底すると述べています。九月に自民党が各議員の自主点検結果を公表した後、追加的に報告、説明した議員は何名で、どのような関係が判明したのですか。
共同通信の調査では、統一協会や関連団体と接点があった都道府県議は少なくとも三百三十四人、その八割以上が自民党といいます。同時に、宮城県の村井嘉浩知事を始め百五十七人が調査に回答しておらず、闇はもっと深いことが疑われます。茨城県、高知県、京都府、千葉県など各地の議会では、統一協会との癒着解明、被害者救済を求める意見書が自民党などの反対で相次いで否決されています。自民党として責任を持って調査し、地方議員を含め、統一協会との癒着を徹底解明するべきです。
以上、答弁を求め、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/27
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028・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 山添拓議員の御質問にお答えいたします。
消費者契約法等の改正案及び新法の国会審議についてお尋ねがありました。
旧統一教会問題における被害者の救済及び再発防止は、今国会における最重要課題の一つであり、消費者庁に対し、総力を挙げて法制度の検討を進め、可能な限り早急に国会に提出するよう指示をしてまいりました。
国会日程については国会がお決めになることであるためコメントは差し控えますが、政府としては、参議院においても法案の趣旨や解釈について丁寧な説明を行い、法律の実効性が高まるよう、最大限努力をしてまいります。
旧統一教会の加害行為に関する認識についてお尋ねがありました。
旧統一教会の活動について、信教の自由の侵害に当たるか否かは一概にお答えはできませんが、個別の事案において、特定の宗教であること等を意図的に隠し、社会的に相当と認められる範囲を逸脱した方法によって勧誘等を行い、献金等をさせたことが不法行為として裁判上認められた事案があります。
こうした問題を重く受け止め、政府案では、寄附の勧誘を行う法人等を特定できる事項を明らかにすること等を配慮義務として定めることとしたところであり、これに反する行為があった場合に、不法行為に基づく損害賠償請求による救済が容易になると考えております。
寄附の勧誘に関する禁止行為についてお尋ねがありました。
入信当初に不安をあおる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に、本人が主張して取消し権を行使することが可能な場合はあると考えております。
また、不安に乗じた勧誘であれば自動的に困惑したと言えるわけではないですが、寄附に至るまでの経緯、そして状況等の諸事情から困惑していたと認められる場合には寄附者の取消し権が生ずると考えられます。
また、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定をしております。
入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合等の取消し権及び禁止行為の取扱いについてお尋ねがありました。
御指摘の答弁は、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断でき、また、事後的に寄附当時困惑していたと考えた場合には、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合であったとしても取消し権の対象となり得るという法案の趣旨を端的に述べたものであります。
また、不適切な勧誘行為を受け困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため、取消し権、取消しを認めるという考え方に基づき条文の整理を行ったものであり、可能な限り明確な条文としていますが、具体的にどのような行為が該当し得るかについては、国会審議や法成立後、法律の解釈を示す中で可能な限り示してまいります。
そして、必要不可欠という要件についてお尋ねがありました。
必要不可欠要件は、必ずしも必要不可欠という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性と切迫性が示されている場合には適用可能と考えており、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くはそのような必要性と切迫性を有しているものと考えられることから、政府案で十分実効的に対応できるものと考えております。
御指摘のように、単に必要とすると、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで対象が広がってしまいかねず、規制の範囲が広がり過ぎるおそれがあります。
また、不可欠の部分については、唯一の選択肢しか示さない場合のみということでなく、御指摘の事案のように、選択肢を示して勧誘する場合にも、必要不可欠である旨告げたという要件に該当する可能性はあると考えています。
こうした点について引き続き丁寧に解釈を説明し、被害の救済の実効性、これを高めてまいります。
配慮義務を禁止行為とすることについてお尋ねがありました。
禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。
一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止対象行為を規定する禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招くより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする、こうした効果が高いと考えております。
御指摘の第三号の規定も、誤認させるおそれといった結果としての状態に関する幅広い概念で捉えるからこそ、被害の救済、防止に資するものであると考えております。禁止行為とするために誤認させるおそれのある行為を規定すると、その範囲が限定的になってしまう可能性があり、適切ではないと考えております。したがって、一定の行為を明確に定めて禁止行為とするのではなく、配慮義務の規定とすることが適切であると考えております。
なお、衆議院における法案の修正において、配慮義務違反に対する勧告が盛り込まれました。この規定の具体的な運用については成立後検討することとなりますが、一般論として、民事不介入の原則があることから、返金を行政指導することは困難です。他方、例えば、法人等に対して返金の相談に真摯に対応するようにといった行政指導を行うことは考えられます。
資金調達要求の禁止規定についてお尋ねがありました。
新法では、居住用不動産や個人等の生活の維持に欠くことができない事業用資産について、法人等の側からあえて寄附者に処分による換金という手間を掛けさせて寄附するよう要求する行為を禁止しており、他方で、居住用不動産や事業用資産そのものを寄附するよう要求する行為は禁止してはおりません。これは、こうした資産をあえて換金までして寄附を求める行為はより悪質性が高いと考えられることに着目したものであります。
また、寄附勧誘の際にこうした資産の売却の求めがなく、自発的に売却し、寄附を行った場合には、寄附勧誘者が第五条に抵触することはない一方で、そのようないわゆるマインドコントロール状態にある人に対する寄附勧誘については、第四条の禁止行為に該当する可能性も高く、また、家族も居住している不動産を寄附する場合は、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務に反する、このように考えられます。
そして、旧統一教会問題の宗教二世の方たちの声の受け止めについてお尋ねがありました。
私も、先日、旧統一教会の被害者の方々と内々にお会いをし、凄惨な御経験を直接伺いました。こうした被害を生じさせず、また救済できるよう、政府として、相談体制の充実や、現在御審議いただいている法律の早期成立と法解釈の明確化による実効性の向上、適正な執行などに全力で取り組んでまいります。
そして、債権者代位権の実効性についてお尋ねがありました。
政府提出の新法案においては、自ら権利を保全するために必要な範囲で他者の権利を行使することを認める制度である債権者代位権を活用しやすくしており、これによって、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含めて、家族らの被害救済につながる、つなげることができると考えております。
一方、債権者代位権は使いにくいとの指摘があることから、債権者代位権の適切な行使に向けて、法テラスと関係機関が連携した相談体制の充実を進めてまいります。
また、配慮義務の規定では、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持に関する配慮義務を規定しております。これによって、家族自身が当事者、自身を当事者とした民法上の不法行為の認定や、それに基づく損害賠償請求が容易となり、家族の被害救済の実効性を高めることができると考えております。
なお、この扶養債権の範囲を超えて、家族を含めた第三者が幅広く本人の行った契約や意思表示の取消しができるとすることは、個人の財産権の侵害の観点から適当ではないと考えております。
宗教二世被害者の救済についてお尋ねがありました。
債権者代位権の行使の前提として、扶養義務等に関する定期金債権を確定するための裁判手続を取る場合や債権者代位権を訴訟で行使する場合には、親権者と子との利益が相反する行為に該当すると認められれば、特別代理人が選任されることになると考えられます。
その際、扶養義務を果たしておらず、ネグレクトに当たるような場合には、児童養護施設や児童相談所の職員において、事実行為として特別代理人の選任の手続を紹介したり、法テラス利用をサポートすることが考えられ、こうした点についてQアンドAの作成などの対応を行ってまいります。
このように、法テラスを中心に児童相談所等の関係機関との連携を強化し、未成年に対する支援の充実、これを図ってまいります。
寄附の記録についてお尋ねがありました。
個人が法人等に寄附した場合、悪質な寄附を勧誘する法人等による記録によらず、個人が銀行から取引履歴を入手するなどして、法人等に対して寄附をした日時や金額について明らかにすることも可能であると考えられます。こうした方法について、QアンドAを通じて適切に周知してまいりたいと考えております。
旧統一教会について、法令違反の事実の把握や解散命令請求、これまでの政府の対応についてお尋ねがありました。
お尋ねの、今日までに把握できた法令違反の事実については、報告徴収・質問権の行使及びその後の対応に支障を来すおそれがあるため、お答えは差し控えます。
旧統一教会については、御指摘の解散命令の請求の適否を判断するためにも、まずは報告徴収・質問権を行使するとともに、弁護士の団体等からの情報も得て、旧統一教会の実務等に関して具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにする必要があり、その上で、法律にのっとり、必要な対応を行ってまいります。
旧統一教会に対するこれまでの対応については、旧統一教会の被害者の方々が存在するということ、様々な形で情報を得ていた中でそれを放置していたことについて、政府として深刻に受け止めなければならないと考えております。
だからこそ、政府としては、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の整備という三つの対策を並行して進めてまいります。
旧統一教会との関係の調査等についてお尋ねがありました。
閣僚を含む多くの議員が社会的に問題がある旧統一教会、その関連団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の皆様の政治の信頼を傷つけたことを率直におわびを申し上げます。
そして、自民党においては、各議員それぞれが旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告し、新たな接点が判明した場合にはその都度追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底すること、これを方針としております。
その上で、九月末以降に新たな接点が判明した各議員の報告、説明の状況については、党として取りまとめの発表は行っておりませんが、党の方針に従い、各議員それぞれが説明をしているとおりであると承知をしております。
いずれにせよ、大切なことは、未来に向かって関係を絶つことであります。自民党においては、旧統一教会及び関連団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、既にガバナンスコードを改訂し、対応、方針について、党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところであり、これを徹底してまいります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/28
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029・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/29
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030・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第一 令和四年度出産・子育て応援給付金に係る差押禁止等に関する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。厚生労働委員長山田宏君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔山田宏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/30
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031・山田宏
○山田宏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、令和四年度出産・子育て応援給付金について、差押えの禁止等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、提出者である衆議院厚生労働委員長三ッ林裕巳君より趣旨説明を聴取した後、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/31
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032・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/32
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033・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121015254X01120221208/33
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