1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
令和五年四月四日(火曜日)
午後一時開会
─────────────
委員の異動
四月三日
辞任 補欠選任
山東 昭子君 加藤 明良君
田中 昌史君 野上浩太郎君
山崎 正昭君 小林 一大君
四月四日
辞任 補欠選任
世耕 弘成君 馬場 成志君
野上浩太郎君 田中 昌史君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 杉 久武君
理 事
加田 裕之君
福岡 資麿君
牧山ひろえ君
谷合 正明君
川合 孝典君
委 員
加藤 明良君
小林 一大君
古庄 玄知君
田中 昌史君
馬場 成志君
森 まさこ君
和田 政宗君
石川 大我君
福島みずほ君
佐々木さやか君
梅村みずほ君
鈴木 宗男君
仁比 聡平君
国務大臣
法務大臣 齋藤 健君
副大臣
内閣府副大臣 和田 義明君
総務副大臣 尾身 朝子君
文部科学副大臣 簗 和生君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局総務局長 小野寺真也君
最高裁判所事務
総局人事局長 徳岡 治君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
警察庁長官官房
審議官 親家 和仁君
総務省大臣官房
審議官 三橋 一彦君
法務省大臣官房
司法法制部長 竹内 努君
法務省民事局長 金子 修君
法務省刑事局長 松下 裕子君
法務省矯正局長 花村 博文君
法務省人権擁護
局長 鎌田 隆志君
法務省訟務局長 春名 茂君
出入国在留管理
庁次長 西山 卓爾君
外務省大臣官房
審議官 實生 泰介君
外務省大臣官房
審議官 原 圭一君
文化庁審議官 小林万里子君
─────────────
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
(犯罪被害者等の情報保護に関する件)
(司法アクセスに関する件)
(フィリピン残留日系人の国籍取得に関する件
)
(いわゆる宗教二世に関する件)
(裁判記録の保存に関する件)
(再審請求審における証拠開示に関する件)
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/0
-
001・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日、山東昭子君、山崎正昭君及び田中昌史君が委員を辞任され、その補欠として加藤明良君、小林一大君及び野上浩太郎君が選任されました。
また、本日、野上浩太郎君及び世耕弘成君が委員を辞任され、その補欠として田中昌史君及び馬場成志君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/1
-
002・杉久武
○委員長(杉久武君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、警察庁長官官房審議官親家和仁君外十一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/2
-
003・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/3
-
004・杉久武
○委員長(杉久武君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/4
-
005・古庄玄知
○古庄玄知君 自民党の古庄です。
それでは、時間の関係がありますので、刑事弁護人の立場から今回の刑事訴訟法改正に関して質問させてください。
まず、刑事訴訟におきましては当事者主義というのがありますが、これは簡単に言うとどういうものでしょうか。また、何のために当事者主義があるのでしょうか。またそして、ここに言う当事者とは一体誰と誰のことを指しているのか、この点につきまして法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/5
-
006・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 一般に刑事裁判手続における当事者主義とは、その手続の進行につきまして、裁判所ではなく、当事者である検察官と被告人が手続遂行の主導権を持つ方式、このことを意味するとされているものと承知しております。
現行の刑事訴訟法は、刑事裁判手続につきまして当事者主義を基本としております。これは、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するという刑事訴訟法の目的を達成するために適した方式であると考えられたことによるものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/6
-
007・古庄玄知
○古庄玄知君 そういたしました場合に、刑事訴訟における弁護人の位置付けについて教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/7
-
008・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 刑事訴訟法上、被疑者、被告人はいつでも弁護人を選任することができることとされております。
お尋ねの弁護人の位置付けにつきましては、様々な見解あるいは表現がございますが、一般的には、弁護人は法律の専門家として被疑者、被告人の後見、保護の役割を担うとされているものと承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/8
-
009・古庄玄知
○古庄玄知君 今回の刑事訴訟法改正では、今まで被告人に知らせていた被害者の特定事項を被告人に知らせないということですけれども、かかる立法を行おうとする意図、理由について教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/9
-
010・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 現在の裁判実務におきましては、逮捕状の被疑事実の要旨や起訴状の公訴事実等には被害者等の氏名等を記載することが原則とされており、これらの提示や送達を通じて、被疑者、被告人が被害者等の氏名等を把握できる状況にございます。そのため、それらを通じて被害者等の氏名等を把握した被疑者、被告人が被害者等に対する加害行為に及ぶおそれが生じ得るところであり、実際に、その点について不安を抱く被害者等から必要な協力を得ることができず、起訴を断念せざるを得ないなどの事態が生じております。
今度の法案におきましては、こうしたことを踏まえ、被害者等の氏名等の情報を保護するため、所要の法整備を行うことを予定しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/10
-
011・古庄玄知
○古庄玄知君 被害者の氏名などが特定されることにより告訴などを取りやめる被害者の数と割合はどういったものでしょうか。その数値的な根拠はあるのでしょうか。刑事部長の方、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/11
-
012・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねのような人数等につきましては、事柄の性質上、統計として網羅的に把握することは極めて困難でございまして、そのような形では把握しておりませんが、例えばですが、被害児童の個人情報を被告人に知られたくないという被害児童側の意向を尊重し、一旦起訴はしたものの、名前を隠す形で起訴はしたものの、検察官が結局そういった意向を尊重して公訴を取り消した事例がございますほか、法務省が実施した性犯罪被害者からのヒアリングにおきましても、相手方に氏名が知られるのであれば被害申告をしなかったなどの指摘がなされているところでございまして、実際にそうした事例があるものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/12
-
013・古庄玄知
○古庄玄知君 そうすると、正確な数字的な根拠は今の段階ではないということとお伺いしました。
今は被告人に対して被害者等の特定事項が記載されていない起訴状を送達するということですけれども、今度、その被告人に弁護人が付いている場合、弁護人へ送達する起訴状はどういう取扱いになるんでしょうか。局長、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/13
-
014・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のように、本法律案の下では、被害者等の個人特定事項が記載されていない起訴状抄本等を被告人に送達する措置がとられることを予定していますけれども、その場合、弁護人に対しては、被害者等の個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して、それが記載されている起訴状謄本を送達することを原則としております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/14
-
015・古庄玄知
○古庄玄知君 員面調書や検面調書上の被害者の特定事項についてはどうするのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/15
-
016・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 先ほど申し上げたような措置がとられた場合には、検察官による証拠開示や被告人又は弁護人等の請求に基づく裁判書の謄本等の交付などにおきましても、当該措置に係る個人特定事項について秘匿措置をとることができることとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/16
-
017・古庄玄知
○古庄玄知君 被告人から弁護人に対して被害者の名前を教えてくれと言われたとき、弁護人はどのような対応をすればよろしいのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/17
-
018・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 現行法の下でも、証拠開示の際の秘匿措置として、弁護人には証人の氏名を開示するものの、被告人には知らせてはならないという条件を付すことができるというふうにされているところでございまして、その場合と同様に、御指摘のような場合には、弁護人としては、法律上の仕組みを説明しつつ、被告人の求めに応じられないことについて説明を尽くすことになると考えておりますが、例えば、被告人の求めが、防御の準備を十分に行うためには被告人自身が被害者等の個人特定事項を知る必要があるという理由に基づくものである場合などには、弁護人において裁判所に対して個人特定事項の通知請求をするということも考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/18
-
019・古庄玄知
○古庄玄知君 弁護人がもし被告人からそういう求めを受けたときに、いや、教えられないんだよというふうに回答したときに、弁護人と被告人との信頼関係が壊れてしまうという事態もありますけれども、この辺についてはどのように考えているのでしょうか。また、最悪の場合、それにより弁護人が解任されてしまうという場合も想定されますが、その辺りについてはどのように考えているんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/19
-
020・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねのような場合に弁護人と被告人との間の信頼関係にどのような影響が及ぶのかということについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、本法律案は、先ほど大臣からも御答弁申し上げたように、被害者等の氏名等の情報を保護する必要性があるということを前提といたしまして、被告人の防御権に配慮する観点から、措置をとることにより防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、被疑者、被告人や弁護人の請求により裁判所が個人特定事項を通知する仕組みなども設けつつ所要の法整備を行うものであり、問題はないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/20
-
021・古庄玄知
○古庄玄知君 被告人に対して弁護人が被害者特定事項を教えた場合、その弁護人には罰則はあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/21
-
022・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、弁護人が御指摘の条件に違反した場合の罰則は設けておりませんが、その条件に弁護人が違反したときは、裁判所は、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知をし、適当な処置をとるべきことを請求することができることとしておりまして、この請求を受けた弁護士会等において、当該条件に違反した弁護人に対して、適当な処置として例えば懲戒処分等が行われることはあり得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/22
-
023・古庄玄知
○古庄玄知君 先ほど当事者主義のところで、ここに言う当事者とは被告人と検察官というお話でしたけれども、そうなると、あくまでも刑事裁判における主役は被告人であって、弁護人はあくまでもその補助者にしかすぎない立場だと思うんですけれども、その補助者である弁護人に教えて、主役、まあ主役と言っていいのか分かりませんけれども、その主役である被告人に教えないということは当事者主義に反するのではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/23
-
024・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
確かに、本法律案の下では、起訴状の送達等に関する手続において弁護人は被害者等の個人特定事項を知っていますが、被告人はこれを知らないという場合が生じ得ることになります。
もっとも、現行法の下でも、証拠開示に際して、弁護人には証人の氏名を開示し、被告人には知らせてはならない旨の条件を付することができるところでもございますし、それを踏まえましても、当事者主義の意義ですとか弁護人の役割ということに鑑みても、被疑者、被告人の保護者たる弁護人が被告人よりも多くの情報を把握しているということが当事者主義に反するものであるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/24
-
025・古庄玄知
○古庄玄知君 今局長がおっしゃられたことは、これは被告人が無罪を争っている場合も同様なんでしょうか。それとも、無罪の場合はまた違うんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/25
-
026・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 本法律案におきましては、被害者等の個人特定事項が記載されていない起訴状抄本等を被告人に送達する措置をとり得る要件につきまして、被告人が無罪を主張しているか否か自体によって取扱いが異なるものとはしておりません。したがいまして、被告人が無罪を主張しているとしても、当該措置をとることができないということにはなっておりません。
もっとも、その場合でも、被告人の防御権に配慮をいたしまして、起訴状抄本等に記載される公訴事実は他の犯罪事実との識別ができるものでなければならないということを条文上要求しておりまして、被害者等の個人特定事項が知らされないとしても、被告人にとって防御の対象、つまり、どのような事実について起訴されているのかということについては明らかになるようにしております。
そして、起訴状抄本等を被告人に送達する措置がとられる場合については、原則として弁護人に対し個人特定事項を被告人に知らせてはならないという条件を付した上で謄本を送達することとして被告人側に防御の準備の機会を確保しておりますし、その措置によって防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、裁判所は、被告人又は弁護人の請求により、当該措置に係る個人特定事項の全部又は一部を被告人に通知する旨の決定をしなければならず、その決定に不服があるときは即時抗告をすることができるとして不服申立ての機会も十分に保障しているところでございまして、被告人の防御権が不当に害されることはないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/26
-
027・古庄玄知
○古庄玄知君 今の見解は、被告人が数名いる場合も同様でしょうか。数名いる場合に、被害者の特定、区別はどのようにして行うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/27
-
028・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 本法律案におきましては、被害者の個人特定事項が記載されていない起訴状抄本等を被告人に送達する措置につきまして、被害者が複数である場合、個々の被害者ごとにその改正後の刑事訴訟法の要件に該当するかどうかを判断することとしておりますため、ある被害者については措置をとる要件を満たし、別の被害者については要件を満たさないため、措置の有無が被害者によって分かれるということはございます。
しかしながら、先ほど申し上げましたように、防御の対象が明らかになるように、ほかの事実との区別が付けられるようにということで、他の犯罪事実との識別ができる形で公訴事実を記載するということを条文上求めておりますので、起訴状抄本等に記載される、公訴事実に記載される犯罪の日時、場所、方法などによりまして、他の犯罪事実との識別をすることができると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/28
-
029・古庄玄知
○古庄玄知君 今の御見解は、弁護人が付いていない事件も同様なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/29
-
030・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 本法律案におきましては、被害者等の個人特定事項が記載されていない起訴状抄本等を被告人に送達する措置をとり得る要件につきまして、被告人に弁護人が選任されているか否かによって要件が異なるものとはしておりません。したがいまして、弁護人が選任されていない場合においても当該措置をとり得ることとなります。
その場合でも、先ほども申し上げましたように、被告人の防御権に配慮して、起訴状抄本等に記載される公訴事実が他の犯罪事実との識別ができるものでなければならないということを条文上要求しているということ、また、起訴状抄本等が被告人に送達する措置がとられた場合には、当該措置により防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるという場合には、裁判所に対して個人特定事項の全部又は一部を被告人に通知する旨の決定をするよう請求することができ、裁判所の決定に不服があるときは即時抗告をすることができると、先ほど申し上げたとおりでございますが、そうした不服申立ての機会も十分に保障しているところでございまして、被告人の防御権が不当に害されるということはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/30
-
031・古庄玄知
○古庄玄知君 先ほどの話だと、被告人と弁護人にもたらされる情報の量が違ってくるというわけでありまして、弁護人とすれば、これを被告人に、その被害者特定事項を教えた場合に、場合によったら懲戒の申立てをされるかも分からないということで、だけど被告人からは教えてくれというふうに言われたときに、その両方の間で板挟みになろうかと思うんですけれども、そういうことによって、そういう余計な悩みを弁護人が持つことによって、それ自体が防御権の侵害あるいは弁護権の侵害ではないかなというふうに思うのですが、その点について、法務省の方で、刑事弁護をたくさんやっている弁護人、弁護士の方にその点について御確認をされたりはしたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/31
-
032・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 本法案を提出するに当たりまして法制審議会において審議をしていただいておりまして、その法制審議会におきましては、刑事弁護に携わっておられる弁護士の方々も参加していろいろな御意見を承り、議論がなされたものと承知をしております。
その上で、今のような、その弁護人がお困りになることがあるのではないかというお尋ねでございますけれども、現行法の下でも、証拠開示に際して、弁護人には証人の氏名を開示し、被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができるという制度が既にございまして、そのこと自体で防御権が侵害されるとは考えられていないところでございます。
そして、本法律案におきましては、被告人の防御権に配慮をして、先ほど申し上げたように、他の犯罪事実との識別ができるような形で、名前や個人を特定する情報は記載しないものの、他の犯罪事実とはちゃんと区別できるような形で公訴事実を記載するということを条文上要求しておりますし、もしも個人特定事項が分からなければ防御ができないというようなことがある場合には、先ほど申し上げましたように、裁判所に対してその旨を主張して通知を求めるという仕組み、そして、そうしてもらえなかったときに、その裁判所の決定に不服があるときは即時抗告をすることができるという制度も用意しているところで、不服申立ての機会も十分に保障しているところでございまして、弁護権や被告人の防御権が不当に害されることはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/32
-
033・古庄玄知
○古庄玄知君 済みません、質問事項に入っていないんですが、ちょっと最後に、この秘匿するか秘匿しないかというのは誰が判断するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/33
-
034・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) まず、第一次的には捜査機関において、逮捕状であれば逮捕状を請求する警察等の第一次捜査機関において、勾留であれば検察官が勾留請求をする場合において判断をするということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/34
-
035・古庄玄知
○古庄玄知君 そうすると、当事者の片一方の方が判断すると、そういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/35
-
036・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 最初の段階ではそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/36
-
037・古庄玄知
○古庄玄知君 分かりました。
以上で終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/37
-
038・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。よろしくお願いいたします。
私は、令和二年十一月二十四日付けの横浜地方裁判所相模原支部におけます合議制導入に関する質問主意書において、日本国憲法第三十二条が国民に対し平等に公平な裁判所の裁判を受ける権利を保障していることを前提に、国民間の司法アクセスについての不合理な差異は国として縮小していくよう努力するべきではないかと問いかけました。それによって国民が司法制度をより容易に利用することができるようにするため、裁判所へのアクセスの拡充を図ることは重要であるという答弁を引き出しております。
この裁判所へのアクセスという点で大きな問題となっているもののうち、本日は三つの事例を取り上げさせていただきます。
まず一つ目ですけれども、横浜地方裁判所相模原支部におけます裁判官三名による合議制裁判の実施です。
相模原支部が管轄しております人口は八十五万人を超えております。最高裁自身も、相模原支部につきましては、管内人口は少ないわけではございませんし、事件数も決して少ないわけではございませんと認めているにもかかわらず、合議制の実施が見送られ続けているわけですね。その結果、二十市ある政令指定都市を管内に抱える裁判所のうち、合議制裁判が行われていない裁判所は横浜地方裁判所相模原支部のみとなっているんです。
最高裁は、衆議院法務委員会での答弁で、相模原支部において合議制を取り扱う必要性はないというふうに述べているんですけれども、必要性がないと判断された理由を明確に御教示いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/38
-
039・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
支部で合議事件を取り扱うか否かにつきましては、手続上は最高裁規則に基づき各裁判所の裁判官会議が決定することになっていますが、全国的な観点からの体制整備や司法サービスの充実を検討していく必要があることから、最高裁においても各庁における事件動向等を注視しているところでございます。
相模原支部につきましては、御指摘のとおり、管内人口が八十五万人程度と少なくなく、また事件数も決して少ないわけではございません。事件数に応じた裁判官を配置しているところでございますが、横浜地裁本庁までのアクセスが一時間程度と比較的良好であることや、相模原支部管内の合議事件を取り扱うことになる横浜地裁本庁におきましては、行政事件、知的財産に関する事件、医療事件等を集中的に取り扱う部が設けられ、専門的な知見を要する事件を適正かつ迅速に処理する体制が整備されていることを考慮しますと、現時点で横浜地裁本庁で合議事件を取り扱っているということは事件処理体制として合理性があるものと考えております。
いずれにいたしましても、最高裁といたしましては、限られた人的、物的資源を有効に活用しつつ、利用者の利便性を確保し、司法サービスを充実させていくことが重要であると考えており、今後も、相模原支部等の管轄区域内の人口動向、事件の係属状況、最寄りの合議事件取扱庁までの交通事情等の様々な要因を注視しつつ、必要な事件処理体制の整備に努めてまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/39
-
040・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 単純な比較の視点は用いないということですけれども、相模原市を除く政令指定都市の全てで合議制裁判が行われている状況に、これに鑑みますと、政令指定都市を擁する支部につきましては、特段の理由がなければ合議制を認めないというふうに考えるのではなく、特段の理由がなければ原則として合議制を認めるというふうにするべきだと思うんです。すなわち、挙証責任を転嫁するべきだと思うんですね。現在の判断ですと、最高裁が広大な裁量をいいことに、統一性のない判断を恣意的に行っているように感じてしまいます。
裁判所へのアクセスに関する二つ目の課題ですけれども、藤沢簡易裁判所への家庭裁判所出張所の併設の問題です。
藤沢簡易裁判所所管の五市一町の住民は、家庭をめぐる法律問題に直面した場合、横浜家裁本庁まで行く必要がありまして、より近隣で家庭問題の解決を図れるように地元が強く要望しておりますけれども、こちらも実現していないんですね。
平成三十年三月三十日、衆議院法務委員会において、最高裁当局は、直ちに新設しなければならない状況にあると考えないが、今後とも、まず人口動態、それから交通事情の変化、事件動向、IT技術の進展など様々な観点を注視して、適正迅速な事件処理に支障のないようにしていきたいというふうに答弁しております。
当時、最高裁が示した判断要素のうち人口動態につきましては、藤沢簡易裁判所の管轄にある藤沢市、茅ケ崎市、大和市、綾瀬市、海老名市、寒川町、この五市一町の人口を合わせますと百二十万人を超えております。横浜家庭裁判所の支部のある横須賀支部の約五十四万人、相模原支部の約八十五万人よりも多くなっているわけです。管内に法律事務所を持つ弁護士数も何と百人を超えているんですね。
交通事情で見ますと、藤沢から横浜家庭裁判所本庁まで電車で五十分、茅ケ崎駅から約六十分、綾瀬市の最寄りの駅からですと九十分も掛かるんです。
事件動向では、人口増や高齢化を背景に、最近では離婚や相続などの家事事件が急増しております。現に、横浜家庭裁判所が新規に受け付ける事件数は一年間に約四万五千件と、これは二十年前の二・三倍に増えているんです。五市一町が実施する法律相談も、家庭問題に起因するものが全体の四割を超えているということなんです。今後、藤沢簡易裁判所所轄内の人口はしばらく増加傾向を維持しますし、かつ、所轄内の家庭裁判所取扱事件も、藤沢市に児童相談所があることですとか、成年後見制度の利用拡大もありまして、増加を続けることというのが見込まれているんですね。
平成三十年の法務委員会での御答弁の際に示された各判断要素の現状に関する御評価をお示しいただきたいのと、また、それを受けて、藤沢簡裁の家裁併設要望についてどのような議論が交わされ、そして現在はどのような検討状況なのか、御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/40
-
041・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
裁判所の支部や家裁出張所の配置につきましては、裁判所のアクセス、提供する司法サービス等を総合した国民の利便性を確保するという観点から、人口動態、交通事情の変化、裁判所で取り扱う事件数の動向等を考慮して、またIT技術の進展等も視野に入れながら、委員御指摘のとおりの全国的バランスを見つつ、総合的な利便性の向上の見地から検討していく必要があるというふうに認識しているところでございます。
御指摘をいただきました藤沢簡易裁判所につきましてですけれども、平成三十年当時から現在に至るまで、管内の人口で見ますと、平成三十一年の当時は百十七万数千人というところでございました。これが令和四年現在ですと百二十万人強ということで、若干の増加を見ております。また、同管内の家事事件を取り扱う横浜家庭裁判所本庁における家事事件の新受件数はほぼ横ばいの状況であるというような状況になっているというようなところでございます。
藤沢簡易裁判所からの同管内の家事事件を取り扱う横浜家庭裁判所本庁までのアクセスが四十五分程度と良好であること、上記のような各種事情の変化を考慮すれば、現時点におきましても直ちに藤沢簡易裁判所に家庭裁判所の出張所を新設する状況にあるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/41
-
042・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 まだ併設の実施決定に至っていないとのことですけれども、どのような基準や条件を満たせば併設の実施に至るんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/42
-
043・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
申し上げましたとおり、支部、家裁出張所の配置というのは、裁判所へのアクセスとか国民の利便性を確保するという観点からの人口動態、交通事情の変化、あるいは事件数の動向等を総合的に考慮するということになりますので、それらを総合的に見た上で検討していくということになりますので、こうなったらこうなるというような形で具体的にお示しするということは難しいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/43
-
044・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 横浜家庭裁判所に係る事件数というのは大幅に増加しております。裁判所の都合で裁判期日の間隔が二か月以上空くこともしょっちゅうあるそうです。こういったこともなぜ配慮しないのかなと思うんですけど、いろんな要素があると思うんですけど、これすごく大きいですよ。
百二十万もの市民が家裁事件についての司法アクセスに困難を抱えている状況は、首都圏の司法過疎とも評価されています。最高裁自身が挙げた判断要素の半分以上が併設を行う方向を指し示しているのに、最高裁は決断しようとしないんですね。今まで述べたことに鑑みますと、家庭裁判所出張所を直ちに新設しなければならないという状況にもう既にあると思うんです。是非、併設について前向きに御検討いただければと思います。
司法アクセスに関する問題は、首都圏だけではなくて全国にあります。その司法アクセスに関する諸課題についての要望や要請について受け手である裁判所側は、いつどのような場でどのような検討を行って、そしてどのような基準と理由付けによって結論を導いたのか、これを積極的に公表しようとしないわけですね。
裁判所の組織や運営については、やはりより国民の要望や意見を反映するように、透明性の向上や国民の意見を聞く機会の創出に裁判所は努めるべきだと考えますが、最高裁の御所見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/44
-
045・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
裁判所といたしましても、裁判の利用者など、広く国民の意見や要望等を伺う機会を得ることは重要であるというふうに考えております。
そのために、例えば各地方裁判所、家庭裁判所の運営に広く国民の意見を反映させるために設置されました地方裁判所委員会あるいは家庭裁判所委員会を通じまして意見を伺うというようなことをしているところでございます。また、弁護士会など関係する諸団体との協議も行うなどしているところでございます。
今後とも、これらを利用するなどしまして、国民の信頼に応えることができるよう努めてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/45
-
046・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 今の御答弁だと私の質問に全然答えていなくて、いろんな方々の意見を聞いていますだけで終わってしまっているんです。私が聞いたのは、どのようにその検討を行って、どのように結論に至ったのかという、全然経緯が分からないという答弁で、本当に残念です。その経緯というのがやっぱり公表されないと、皆さん納得いかないと思うんですよ。意見を聞きました、あの団体から意見聞きました、この団体から意見聞きましたじゃ、ちょっと駄目だと思います。
平成十三年に出された司法制度改革審議会意見書の中で、「国民的基盤の確立」と題して以下のように述べられています。「そもそも、司法がその機能を十全に果たすためには、国民からの幅広い支持と理解を得て、その国民的基盤が確立されることが不可欠であり、国民の司法参加の拡充による国民的基盤の確立は、今般の司法制度改革の三本柱の一つとして位置付けることができる。」とされているんですね。
このような議論の際に、最高裁は、司法行政について最高裁は広い裁量権限を持つとよく述べられています。ですが、その裁量権行使の前提として、やはり国民の参加、それから支持に基づいた裁判所であるという必要性が当然あるわけです。であるならば、司法アクセスに関する課題など国民との関係性が強い制度、こういった制度ですね、こういった制度の検討につきましては、裁判所内での具体的な検討結果に関する審議録の作成、公表をきちんと義務付ける必要があると思うんです。そして、判断基準を極力策定し、併せて公表する、ここまできちんと措置を講じるべきではないでしょうか。
この二つの提案について裁判所の御所見をお伺いいたしたいと思いますし、もし取り入れないのであれば、なぜなのかということも併せてお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/46
-
047・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
御指摘の司法アクセスに関する課題等、とりわけ裁判所の支部や家裁出張所の配置につきましては、先ほども御説明いたしましたとおり、裁判所へのアクセスあるいは国民の利便性を確保するという観点からの人口動態や交通事情の変化、裁判所で取り扱う事件数の動向等を考慮して、さらにはIT技術の進展等も視野に入れながら、全国的なバランスも見つつ、総合的な利便性の向上の見地から検討していく必要があるというふうに考えているところでございまして、個別具体的な判断基準を定めるということは困難であるというふうに考えております。
また、裁判所内部での具体的な検討過程につきましても、ただいま御説明したような多種多様な考慮要素について、裁判所内部における意見交換を踏まえて総合的に勘案して判断するという必要があることから、これをつまびらかにすることは困難であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/47
-
048・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 今のやり方だと本当に透明性に欠けていると思うんです。やっぱり審議録の作成、検討結果に関する審議録の作成、そして公表、こういった基本的なことがないと、どうなっているのか全然分からないですね。審議録の作成につきましては、発言者の氏名を黒塗りするなど自由な議論を担保する方法は幾らでもあると思うんです。また、基準につきましては、裁量の余地をなくすようなレベルの基準の策定を求めているわけではないのです。
そもそも、これらの司法アクセスの問題について、当事者であるその地域の住民は最高裁が出した結論について理解をし、納得をしていると最高裁は本当にお感じになっているんでしょうか。通告しておりませんが、更問いですので、最高裁に御答弁ください。納得していると思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/48
-
049・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) 突然の御質問でございますが、裁判所といたしましては、先ほど申し上げましたような様々な要素を総合的に考慮しながら、どのようにしていくのかを考えていっているところでございます。
関係の方々から様々な御意見をいただいているところであり、それはしっかりと受け止めさせていただいておりますけれども、そういう御要望等も踏まえながら、私どもの方でしっかり検討してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/49
-
050・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 先ほどから私聞いているのは、今検討してまいりたいと思いますとおっしゃいましたけれども、どのように検討しているんでしょうかと聞いているんです。でも、全然答えないで、検討しています、いろんな団体から、弁護士会から話は聞いています、これじゃ、本当にどういうふうに検討したのかというのを経緯も全く分からないで、結論だけ、ノーの一辺倒で、これは本当に透明性に欠けるというふうに私は強く思います。
今回、私があえてよく知る地域の課題を取り上げましたけれども、相模原支部の、また藤沢簡裁管轄の住民、関係者は、最高裁が出した結論につきまして理解も納得もしていないのが現状です。そもそも、当局が地元の要望に対し聞く耳を持っていただけないのではと深刻な懸念を感じております。
立場が違いますし、予算やリソースの問題もありますので、全てが全て地元の要望どおりになるとは思っていませんけれども、地元の声に真摯に耳を傾け丁寧に検討してくれた、そして、合理的な根拠や基準に基づいて結論が出されたので理由付けについて理解はできたなどの印象を国民がしっかり持つように最高裁はやはり努めるべきではないかなと思うんですね。そのような努力が、司法制度改革の意見書に記載された国民的基盤の強化につながるのではないかと申し上げているわけです。最高裁の姿勢は、国民的基盤の強化という結論には賛成しながら、具体的な各論になると二の足を踏む傾向があるように私は感じます。
続きまして、司法アクセスに関しては労働審判の問題もございます。
労働審判は、迅速かつ柔軟に個別労働紛争の解決を図ることができるという重要な役割を期待されて創設された制度でございます。実務上もその有用性は認められています。ですが、この労働審判は、原則として各地方裁判所の本庁のみで実施することとされています。そのため、地方裁判所各支部が所管する地域に居住している住民が労働審判を申し立てる場合には本庁まで行かなければならないんですね。
労働審判制度を利用しようとする人々は、解雇されるなどして生活に余裕のない市民などである場合が多いのです。支部管内に居住しているこれらの人々がこの制度を利用する場合には、住所地から本庁までの交通費、移動時間などの過重な負担が発生し、この制度の利用に対する重大な制約となっています。これでは、全国民がひとしく労働審判制度を利用できるメリットを享受していると到底言い難い状況だと思います。
労働審判の支部での実施拡大に関しては、以前、最高裁と日弁連との間で協議が持たれていました。その枠組みの中で、平成二十九年四月から、従来の二支部に加え、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部の三庁でも労働審判が実施されるようになった経緯がございます。ですが、その後、協議は休止状態となり、労働審判もいまだにこの五支部での実施にとどまっています。小田原支部や帯広及び北見支部、八代、太田、土浦、そのほか数多くの支部やその関係者から実施拡大の要望が出ています。
労働審判の支部での実施拡大に向けて、最高裁と日弁連の協議を再開することをこの際検討すべきと考えますが、最高裁の御見解をお伺いします。時間となりましたので、簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/50
-
051・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
裁判所といたしましても、裁判の利用者など広く国民の意見や要望等を伺う機会は重要だと思っております。弁護士会、関係する諸団体との協議というのも大切だというふうに思っております。
労働審判につきましては、労働審判の事件数や本庁への移動の所要時間、あるいは事務処理体制、さらには労働審判員の安定的な確保など、様々考慮する必要があり、地域的事情も総合的に勘案する必要がございます。裁判所の方から、現時点において、直ちに御指摘のような協議を行うということを提案する予定は現時点ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/51
-
052・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 この件につきましては、今後も問題提起を続けてまいります。
時間となりましたので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/52
-
053・谷合正明
○谷合正明君 公明党の谷合です。
今日は一般質疑です。私の方からは、フィリピン在留日本人への国籍付与について取り上げたいと思っております。
UNHCR議員連盟として無国籍問題に取り組む中、例えばロヒンギャの無国籍の問題のみならず、足下で起きているということを知った次第でございます。
フィリピン日系人リーガルサポートセンターの方々の話を何度か伺う機会がございました。フィリピンには、太平洋戦争以前に三万人を擁する豊かな日本人移民社会が存在したわけであります。しかしながら、敗戦を機に日本人の父親と生き別れたことから、今も無国籍状態に置かれているフィリピン残留日本人二世たちがいます。
そこで、まず外務省に確認したいと思います。
問題が起きた歴史的経緯、また現在の課題、そしてまた、これまで日本国籍付与の実績がどうなっているのか、また、これフィリピンだけでなく他国でも同様な課題があるのか等、今日は委員の皆様には資料を配付させていただいておりますので、まず包括的に説明をいただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/53
-
054・實生泰介
○政府参考人(實生泰介君) お答えいたします。
第二次大戦の前に、多くの日本人労働者の方々が職を求めてフィリピンに移住をされました。一九三〇年代後半の最盛期には、フィリピン在留の邦人数は約二万四千人に達したというふうにされております。しかしながら、この第二次大戦とその後の混乱の中で、こうした在留邦人の方々は戦死をされたり、あるいは米軍による本邦への強制送還などということがございました。その結果として、日本人と結婚されていたフィリピンの女性、奥様、あとその子供、これ、我々、残留日系人というふうに呼んでいるわけですけれども、そうした方々の多くがフィリピンに取り残されたということがございます。
これら残留日系人の方々は、この大戦の最中から、フィリピン国内での反日感情の高まりによって戸籍関係の書類を焼却するなど、身分を隠して生活をせざるを得ないという状況がございました。その結果として、この日本人の父親の国籍確認ができないという状態となり、また一九七三年までフィリピンの憲法が父親の国籍を基に子の国籍を認定するという父系血統主義というものを採用していたため、彼らが無国籍の状態になってしまったということがございます。
その後、日フィリピン関係の改善とともに徐々に反日感情が和らいだことを受けて、一九八〇年にダバオという地域でダバオ日系人会ということが発足をいたしました。これを皮切りに、フィリピンの各地に日系人会が組織されたほか、一九九二年にはフィリピンの日系人会の連合会が発足して、残留日系人が一体となって日本国籍の確認を求めるようになったという経緯がございます。こうした状況を踏まえまして、一九九五年以降、日本政府は、この日系人会等の協力を得て、実態調査等を通じた身元確認や就籍、戸籍に就くということですね、を進めてまいりました。
一方で、残留日系人が高齢でおられて、残された時間が少ないにもかかわらず、家庭裁判所等でのこうした就籍の手続のために必要な過去の資料の収集などに時間を要するといった課題も一方でございます。
あと、フィリピン以外の諸外国との間では同様の問題が生じているとは承知してございません。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/54
-
055・谷合正明
○谷合正明君 それで、二〇一五年二月には、フィリピン残留日本人の方々が当時の安倍総理大臣と面会をされまして、総理から、政府として本件を前進させる旨表明があったということであります。また、翌年の二〇一六年一月には、当時の天皇皇后両陛下が現地フィリピンで残留日本人二世八十六人との接見、これが実現をしたと。ここが一つ大きなその後の動きにつながっているというふうに承知しております。
また、日本国籍を取りたいと思っていらっしゃる方々は、日本に来てそこで何か生活したいとか働きたいというよりは、アイデンティティーとして日本の国籍をやはりいただきたいんだという思いを持っているということも聞いております。
ただ、今、外務省の方から説明がありましたが、残された日本人が過去その存在を消して暮らさなければならなかったと。例えば、家族の写真など形見となるようなもの、これを、証明するものを失っているというか、あえてこれを残さなかったという過去があったということであります。
急ぐべき課題というのは、お手元に資料ありますけれども、存命の二百二名、また生死不明四百五十名のうち生存かつ日本国籍取得意思がある方の調査をしっかりやっていかなければなりませんし、日本国籍取得希望者への認定の迅速化というのを急ぐべきであります。
そこで、外務省に問題解決に向けた取組について確認をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/55
-
056・實生泰介
○政府参考人(實生泰介君) お答えいたします。
外務省としては、フィリピンのそうした残留日系人の方々のまさに高齢化が進む中で、これらの方々への聞き取り調査を含め、一九九五年から計十六回にわたる身元確認につながる実態調査を実施してきております。
特に、直近の取組としては、先ほど委員の方からまさにその年代について言及がございましたけれども、その直後の二〇一六年以降、当該聞き取り調査に在フィリピン日本大使館員及びその領事館員を立ち会わせて聞き取り調査の実施及び内容を証明する証明書というものを発行してきているほか、この当該実態調査に係る令和五年度予算を令和二年度から約六倍の約一千二百七十一万円に拡大して、就籍申請に係る書類作業の迅速化や厚生労働省に対する残留日系人の親族の軍歴等の身元照会を支援してきております。
なお、本件に関する日本国籍の認定については、具体的に申し上げますと、申請件数は、二〇一八年に二十一件、二〇一九年に二十件、二〇二〇年に十九件、二〇二一年に十三件、二〇二二年に十二件となっております。日本国籍の認定件数というものが、二〇一八年に十二件、二〇一九年に十九件、二〇二〇年に二十一件、二〇二一年に十一件、二〇二二年に十二件となっております。これ、審査期間によっては年をまたいで認定されることもございますため、年によってはその申立て件数以上に認定がなされるという場合もございますところを御了解いただければというふうに思います。
いずれにいたしましても、フィリピン残留日系人の方々の一日も早い国籍の回復に向けて、我々として、実態調査の拡充を含めて、フィリピン政府とも意思疎通をしながら更なる取組を進めてまいりたいと、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/56
-
057・谷合正明
○谷合正明君 それで、日本国籍を取得希望される場合は二つの手段があって、一つは、日本の市町村役場への出生事項記載申出書を提出していくということと、もう一つは、なかなか証拠が乏しいということもあるので、家庭裁判所に就籍の許可の申立てをまずは提出していくということだというふうに認識しておりますけれども、まずは法務省としてこの手続の確認をしたいのと、加速化に向けた取組についてどのようにされているのか、ここをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/57
-
058・金子修
○政府参考人(金子修君) フィリピン残留邦人、すなわち太平洋戦争終結時までにフィリピンに移民として渡航した日本人男性がフィリピン女性との間にもうけた子であって、太平洋戦争終結後もフィリピンに残留した者及びその子孫の方につきましては、多くの場合、家庭裁判所の許可に基づく就籍届をすることで日本国籍の証明として御本人の戸籍が作成されることとなります。
法務省としては、一般論として、就籍届を含む戸籍の届出について、市区町村において迅速に対応するよう市区町村に対し法務局を通じて助言を行っているところでございます。また、国籍法の所管省庁として、国籍法の解釈に関する他府省からの相談に対応しているところでございます。
この問題については、今後とも市区町村や関係府省庁等と連絡しつつ、連携しつつ対応してまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/58
-
059・谷合正明
○谷合正明君 それで、認定件数が二〇二二年は十二件で、その前の年も十一件で、やはりこのペースでいくと、なかなかこの希望される方全員の、あるいはその可能性のある方の全員の国籍付与というのが非常に厳しいんだと思います。平均年齢はもう既に八十歳を超えていらっしゃるはずで、毎年毎年ある一定数の方がお亡くなりになられるというのも実情かというふうに思います。
これ、フィリピンの政府あるいは司法当局も、例えば残留日本人に対して無国籍者として認定をするとか不法残留を防ぐ手だてもされておりますし、言わば日本側にしっかり、これは日本側の問題なんだよということで、フィリピンとしても最大限の協力はしていただいているというふうには承知をしております。
そこで、法務大臣にお伺いしますが、フィリピン日系人リーガルサポートセンターの弁護士の先生方からは、これは問題の解決から問題の消滅に近づいているという警鐘を鳴らしていただいているところでございます。ほかの省庁、外務省や厚生労働省との連携はもとより、フィリピンの当局やUNHCRですとか、また、今のそのリーガルサポートセンターのようなNGOとの連携というのもこれ必須だと思っております。予算面を含めた措置も当然だと思いますが、やれることはやるというよりも、すべきことをしっかりしなきゃならないというふうに思っております。
そこで、本件の早期解決に向けた法務大臣の決意を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/59
-
060・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) フィリピンに残留した日本人やその子孫の方々におかれましては、さきの大戦を契機にした混乱によりまして、戦後、想像を絶する大変な御苦労をされたというふうに認識をしております。
フィリピン残留邦人の方々は御指摘のように高齢化をしておりまして、実態に即した戸籍への記載について、もう迅速に対応する必要がございます。法務省としては、就籍届を含む戸籍の届出について、戸籍事務を担う市町村において迅速に対応するように法務局を通じて助言をするほか、外務省を始め関係府省と連携しつつ、この問題にしっかり対応していきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/60
-
061・谷合正明
○谷合正明君 本件、岸田総理も、これ予算委員会だったのかな、答弁でしっかり取り組むという旨おっしゃっていただいておりますので、今のこの岸田政権の中で、私が先ほど申し上げたとおり、すべきことをするんだという意思を持ってやっていただきたいというふうに思います。
UNHCRによりますと、世界には四百三十万人の無国籍者の、推定でいいますと四百三十万人いるということでありますが、UNHCRとしては二〇二四年までになくす取組をしています。これは極めて意欲的な取組だと思いますが、今年は四年に一度のグローバル難民フォーラムというものが開催されて、日本が共同議長国ともなります。そんな我が国が、足下にあるこの課題をしっかりとやっていかなければならないということは言うまでもないということを御指摘させていただきたいというふうに思います。
そこで、先々週かな、三月二十四日に、令和四年におけます難民認定者数が発表になったところでございます。難民認定の申請数が三千七百七十二人で、これは前年比に比べると千三百五十九人増加で、これはコロナの影響もあったんだと思います。それから、難民認定手続の結果、我が国での在留を認めた外国人が千九百六十二人。内訳が、難民認定が二百二人、人道配慮が千七百六十人ということで、コロナ禍でこの三年、ちょっと数字がそれまでとなかなか比較対照が難しいかもしれませんし、また昨年来ミャンマーの件があったり、またウクライナの件があったり、ちょっといろいろ、アフガンのこともあったりしていろんな数字が動いているとは思いますが、まず、これ、大臣として、今回のその難民認定者数、令和四年におきます数字について、これをどのように認識して分析していらっしゃるのか、この点について伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/61
-
062・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘のように、令和四年の難民認定申請者数は三千七百七十二人で、前年に比べ千三百五十九人、約五六%増加をいたしました。
これも御指摘のとおり、これまで新型コロナウイルス感染症に対する水際対策のため減少していた新規入国者数が、同対策の緩和などにより増加したことが主な要因であると考えています。
令和四年に、難民認定手続の結果、難民と認定した外国人は二百二人であり、前年に比べまして百二十八人増加をいたしました。また、難民とは認定しなかったものの、人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人は千七百六十人であり、前年に比べ千百八十人増加をいたしました。
難民認定者数は個別に判断された結果の積み重ねでありますので、その増加の要因を一概にお答えすることは困難でありますが、その上であえて申し上げますと、例えばアフガニスタン人の方については、令和三年において難民と認定された方は九人であったところ、昨年のアフガニスタン情勢を踏まえ、令和四年においては百四十七人となっておりまして、このような判断結果の積み重ねも難民認定者数全体の増加に影響したものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/62
-
063・谷合正明
○谷合正明君 今大臣が判断の積み重ねだというふうに言われました。まあそうだと思います。
これ、よくマスコミ等で言われますこの難民認定率なんですけれども、これは実際どのように計算して出されているかというのも、実はマスコミの基準であったりとか、国際的な統一的な指標はないんじゃないかなというふうに思いますが、じゃ、あえてこの昨年の難民認定率を出すとすれば、入管庁としてはどういうお答えになるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/63
-
064・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘のように、難民認定率の算出方法は様々なものが考えられるところでございます。
その上であえて申し上げるとすれば、一次審査で難民と認定された方について、取下げ等を除く処分件数、すなわちは一次審査で認定された件数と認定されなかった件数の和になりますが、これに占める割合を算出いたしますと、令和三年は約一・五%、令和四年は約三・三%となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/64
-
065・谷合正明
○谷合正明君 一・五から三・三ということであります。
ここに例えば人道配慮などを含めていくと、恐らく今年が三〇%近いのかな。数字持ち合わせていますか。じゃ、人道配慮を含めるとどうなるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/65
-
066・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘の、難民とは認定しなかったものの、人道的な配慮を理由に在留を認めた者の合計について、先ほどのように処分件数に占める割合を算出いたしますと、令和三年は約五・〇%、令和四年は約二九・八%となります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/66
-
067・谷合正明
○谷合正明君 それで、これ、何かEUは計算方法としては補完的保護を含めた数で認定率を出したりするというふうに伺っていたりしますし、また、これ不服申立ての処理について、これをまた分母にどう入れ込むのかということについても多分ばらばらなんだというふうに思います。
ですから、この認定率だけ見ちゃうと、なかなかこの高い低いだけでは一概に保護すべき方が保護されているかどうかという正確な物差しには、なかなか実は難しいのではないかなという私は問題認識を持っています。仮に認定率が高かったとしても、そもそも、じゃ、申請できなかったら、そこに難民該当性のある方がたくさんいるとすれば、これは認定率は高かったとしても、じゃ、本当にいいのかどうかという問題も出てきます。
そうすると、我が国として、難民認定に、難民保護に関して、この認定率が本質的な物差しでないとすれば、何が大切な基準なのかということについて改めて示していただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/67
-
068・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) まず、我が国において難民認定申請がなされた場合には、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき難民と認定すべき者を適切に認定するということでございますが、難民とは認定しない場合であっても、出身国の情勢等に鑑みて、人道上、本邦での在留を認めるべき者については在留を適切に認めて保護しているところでございます。加えまして、第三国定住によるものなど、条約難民以外の避難されてきた方々の受入れについても政府全体として対応してきており、入管庁としても関係省庁と連携しているところでございます。
入管庁といたしましては、個々の外国人の置かれた状況等にも配慮しながら、保護すべき人を保護していくことが重要であると、このように認識して、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/68
-
069・谷合正明
○谷合正明君 今、第三国定住の話がありましたけれども、やはり第三国定住ですとか難民留学生の受入れ、ここは実は日本政府の意思が働いてくるわけですね。ですから、この数がどの程度推移しているかというのは、一つの私は物差しにはなると思っています。
伊勢志摩サミットのときに、当時、安倍総理のときに日本政府が表明した、シリア難民の留学生として受け入れようということが始まったと思います。これがパイロットで始まりましたけれども、その後も政策として引き継がれていると思いますが、この制度の趣旨だとか、また評価についてどう分析されているのか、実績を含めて御紹介いただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/69
-
070・原圭一
○政府参考人(原圭一君) お答え申し上げます。
シリア内戦により就学機会を奪われたシリア人の若者に教育の機会を提供し、内戦終結後のシリアの将来を担う人材を育成するため、二〇一七年に、JICAは、シリア人留学生受入れ事業であるシリア平和への架け橋・人材育成プログラムを五年間の予定で開始いたしました。本事業では、二〇二二年までに七十三名の留学生を受け入れております。
本事業は、日本を含む第三国定住を目的とした事業ではございませんけれども、難民支援に知見を有するUNHCRと連携をしまして、家族の呼び寄せ、修士課程修了後を見据えた日本語学習機会の提供、本邦における就職支援等のシリア難民に対する配慮を行っております。このような配慮の結果、修士課程を修了した学生の多くが本邦で就職したり博士課程に進学しております。
このように、本事業はシリア人の人材育成に貢献していることから、当初予定していた五年の事業期間が経過した後も事業を継続しているところでございます。
今後も、シリアと日本の懸け橋となるような人材の育成に貢献していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/70
-
071・谷合正明
○谷合正明君 今のこのシリア留学生の受入れについては、三年前のこの委員会ですかね、私の方からも指摘させていただいて、難民認定者数等の統計公表の仕方の中にも、表の中にも入れていただくということで、なっているところであります。
それで、パイロット事業が終わって、評価されるべきということで継続するということなんですが、であれば、シリアに限定する必要がもうないのではないかなと私は思っております。ですから、保護すべき方を保護するということであれば、今、ミャンマーですとかアフガンですとか、特に日本政府がこれまでこのアフガンの復興とか関わってきたという経緯もありますから、こうした門戸を広げていくことこそが今の外務省の答弁の趣旨に沿っていくことではないかというふうに思っております。
この、ほかの国籍の方も含めた留学生受入れについて、前向きな答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/71
-
072・原圭一
○政府参考人(原圭一君) お答え申し上げます。
世界で社会情勢が大きく変化している中、UNHCRなどによれば、シリア、ミャンマー、アフガニスタンを始め、人道支援を必要とする難民及び避難民の数が過去最大規模に達するなど、人道危機が深刻化していると認識しております。
我が国としましても、こうした人道危機に対して、G7を始めとする関係国、UNHCR等の国際機関と連携しながら、現地のニーズを踏まえた人道支援を含め、困難に直面している難民及び避難民に寄り添った支援の在り方をしっかり検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/72
-
073・谷合正明
○谷合正明君 時間が参りましたけれども、しっかり検討していきたいということなので、これ、しっかり明確に答えを出していただきたいというふうに思っております。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/73
-
074・梅村みずほ
○梅村みずほ君 日本維新の会の梅村みずほです。本日もよろしくお願いいたします。
本日は、まず、前回三月十七日の委員会にて御紹介しましたエホバの証人の現役高校生信者のお手紙をお読みになった大臣の感想から伺いたく思います。
むちによる虐待でありますとか、一般常識とは懸け離れた教義、不条理な厳しい規律に抑制された日常生活、高校卒業と同時に夜逃げを考えているということ、傍観者になってはいけないと子供たちに言う大人たちこそこの問題を傍観しないでほしいという願い、法務大臣に行動を起こしてほしいという訴えもつづられていました。
齋藤大臣、どのようにお読みいただきましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/74
-
075・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先般、御指摘のメッセージを伺いまして、いわゆる宗教三世の方々の生の声ということで、困難を抱える状況、これがいかに深刻であるかということで胸を痛めた、そういう印象を持ちました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/75
-
076・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。問題の深刻さをしっかりと受け止めていただいたというふうにお伝えいただきました。
前回の委員会におきまして、この問題は、人権の問題も含め、そして宗教だけではなく、あらゆる団体でこういった、いわゆる反セクト的な法律も含めて、どういうふうに法律がセットできるのか諮問してはいかがですかというふうに齋藤大臣にお伺いしたところ、どのような諮問ができるかということも踏まえて検討したいと、かなり踏み込んだ御答弁をいただいたと記憶しております。
そして、その齋藤大臣の御答弁から、私もあれからいろいろと考えておりまして、安倍元総理が銃撃されて亡くなられたあの問題は何を私たちに訴えかけているのかといいますと、霊感商法だけではなくて、この国がどのように宗教と向き合っていくのかという国体事の問題ではないかというふうに、私、前回も申し上げたと思います。
信教の自由というのは守られるべきものであって、どの宗教を信仰しても日本人は当然自由なんですね。翻って、日本の神仏というのは、多神教の神、仏といいますか、いろんな神様がある、いろんな仏様、神様があるというような考えもありまして、一方で、海外から生まれております神様の中には、我以外は一切はまやかしの神であるというような宗教もあります。
そして、私が今般問題を提起しておりますエホバの証人でありますとか旧統一教会などは、かなりのアウトリーチ型なんですね。信者をいかに多く獲得していくかということに日夜努力しているというところで、これ、語弊があるかもしれないですけれども、神々たちによる弱肉強食の競争というふうに捉えると、日本の穏やかな神仏が淘汰されてしまうのではないかというような危機感さえも私は覚えるわけでございます。
なので、全体に俯瞰して見ると、どのようなことが問題であるのか、諮問すべき事柄は何であるのかというのを考えると、特別委員会の設置もひょっとしたら選択肢の一つかもしれない、憲法審査会でもあるかもしれないというふうにいろいろと考えを巡らせておりました。
今日は、三副大臣にもお越しいただき、お忙しい中、ありがとうございます。各省庁の皆様では、なかなかこの問題、限界があるということも明らかにしたいと思って質問を用意しておりますので、済みません、質問要旨、早速で申し訳ないんですけれども、三番目から、今日、尾身副大臣にお越しいただいておりますけれども、文化庁の問題、お伺いしたいと思うんですね。
エホバの証人には、脱会をしたいと信者が思ったときに、自由意思によって穏便に脱会するということができなかったりするんです。排斥若しくは断絶ということで、信者側に非があるような形でしかその宗教をやめることができないという実態がありまして、ひょっとしたらエホバの証人以外でもそういったところが存在するかもしれません。
信教の自由があるのであれば信教しない自由というのも当然保障されるべきで、本人の希望による脱会の際、何らかのペナルティーがなく脱会できることを宗教法人法によって保障すべきであると考えますが、どのようにお考えになりますでしょうか。尾身副大臣にお伺いいたします。ごめんなさい、簗副大臣でしたね、申し訳ありません、済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/76
-
077・簗和生
○副大臣(簗和生君) お答えいたします。
ある社会団体に加入する、あるいはしないということは、我が国においては個人の自由であり、そのことは宗教法人法においても同様であります。したがいまして、そのことは宗教法人法に規定するまでもないものと考えておりまして、仮に暴力や脅迫など犯罪行為によって脱会させないようにしている事実があれば、関係法令に基づき厳正に対処されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/77
-
078・梅村みずほ
○梅村みずほ君 簗副大臣の御答弁によって次の質問は必要ないなと判断いたしましたけれども、そうなんです、公益性でありますとか、宗教法人ですので、もうわざわざ明記するまでもないというような観点から、そのような自由意思による脱会云々というものは必要ないというお考えなのだと思っておりますし、私も本当は当然だと思うんですね。やめたいと言ったら、どうぞというふうにやめさせるというのが当たり前であると思うんですけれども、やめさせないと。何か問題を起こした者だけがその団体を出ていくのだというような教団があるというのは、なかなか法律では想定し難いのだというふうに思います。
では、質問要旨の五番目になりますけれども、一の五でございます。
同じく簗副大臣にお伺いしたいんですが、エホバの証人などでは、学校で、子供同士の交流やあるいは行事参加の制限、教師に対する各種証言の強要などがあるんですね。これがかなり児童生徒にとって負担が著しいものになっているんです。このものみの塔聖書冊子協会に対して質問権を是非とも行使していただきたいと思っているのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/78
-
079・簗和生
○副大臣(簗和生君) お答えいたします。
宗教法人法に基づく報告徴収・質問権は、個別の宗教法人について解散命令請求の要件に該当するような事態の疑いがある場合、所轄庁が事実関係等を把握するために行使するものであり、昨年十一月に策定された一般的な基準に基づき判断した上で行使することとなります。
具体的な判断に当たっては、個々の信者ではなく宗教法人について、宗教法人法八十一条一項一号の、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為の疑いがあるか否かを判断することとなります。また、一方当事者の主張のみで判断するのではなく、公的機関において法令違反や法的責任を認める判断がある、又は公的機関に対し法令違反に関する情報が寄せられており、それらに具体的な資料か根拠があるとともに、同様の行為が相当数繰り返されている、被害が重大であることが求められています。
いずれにしても、お尋ねのエホバの証人については、エホバの証人問題支援弁護団の要請を踏まえたこども家庭庁における今後の対応などを注視してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/79
-
080・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
法令に違反しているかどうか、そして公共の福祉に著しく反しているかどうかというのは、実際のところは訴訟の積み上げでしか判断できないところがあるのかなと思っておりますし、やっぱり小さい子供というのは訴訟ができませんので、子供時代にこんな大変なことがありましたよという声がたくさん上がってきても、実際は質問権の行使というのが難しい現状があるのかなと思っております。
そこで、質問要旨の八番になりますけれども、この質問権を行使する条件の見直しというのも必要なのではないかなと思っているんですね。訴訟とか判例の積み上げというのももちろん重要なんですけれども、情況証拠的に、これは質問権などで直ちに解散というわけではないですし、聞いてみるということですので、要件の見直し等に関してどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/80
-
081・簗和生
○副大臣(簗和生君) お答えいたします。
報告徴収・質問権の行使を基礎付ける疑いの判断については、風評等によらず、客観的な資料、根拠に基づいて判断することが相当であるとされているところですが、その資料について、刑事、民事の訴訟に限定しているものではありません。解散命令事由に該当する疑いがあると認められる場合は報告徴収・質問権を行使することとなりますので、その条件を見直す必要があるとは考えておりません。
なお、宗教上の理由が関わる児童虐待についてはこども家庭庁が担当しており、文部科学省としては、同庁の対応を踏まえつつ、連携して対応してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/81
-
082・梅村みずほ
○梅村みずほ君 必ずしも訴訟の結果だけではないということではありますけれども、実際に踏み込もうとしたときに、信教の自由に踏み込んでいるですとかいろいろな声が上がってくることが想定されることから、かなり腰が引けてしまうんではないかという懸念があることは追加でお伝えしておこうと思っております。
さて、副大臣からこども家庭庁という言葉が出ましたので、今日お越しいただきました尾身副大臣に担当の副大臣としてお伺いしたく思います。
エホバの証人では、十二、三歳、物心は付いているけれども判断としては大人には至らないという段階で、バプテスマ、いわゆる洗礼を受けるということがよくあります。一たび洗礼を受けると、その宗教から離れるとなると、先ほど少し申し上げました排斥者として割と村八分に近いような状況に追い込まれることもございます。
この十二、三歳、あるいはその前後ですね、まだまだ子供という年齢においてバプテスマを受ける、こうした行為は妥当だと考えられていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/82
-
083・和田義明
○副大臣(和田義明君) お答え申し上げます。
議員御指摘の個別の宗教に関する御質問につきましては、当該宗教の教義の是非を判断することにもなり得ることから、お答えは差し控えさせていただきます。
その上で申し上げますが、宗教の信仰を背景とするものであったとしても児童虐待は許されないものであり、その防止等を図るため、昨年末、厚生労働省においてQアンドAを作成し、児童虐待に該当し得る行為や、そうした行為が行われている事例に対応する場合の留意点等について、全国の児童相談所等に対してお示しをしたところでございます。
こども家庭庁におきましても、これまで厚生労働省が行ってきた児童虐待防止に関する取組を引き継ぎ、子供の健やかな育ちを守るためにしっかりと対応してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/83
-
084・梅村みずほ
○梅村みずほ君 和田副大臣、ありがとうございました。今日はどうしても何か尾身大臣にお話を聞きたいみたいですので、ついついお名前を出してしまい申し訳ございません。ありがとうございます。
この洗礼というものに関しては、キリスト教の宗派によってはゼロ歳から受ける場合もあって、これはもう西暦がゼロ年イコールキリストの生誕云々ということで、千年以上のこの宗教的価値観と、現代の人権あるいは信教の自由に照らしてどうだという非常に難しい兼ね合いがあるので、御答弁も限られるとは思うんですけれども、結局のところ、信教の自由とはいつから発生するのかという大変難しいテーマでもあろうかと思っております。そういうこともこの一連の宗教問題の一つのフォーカルポイントであろうというふうに思っております。
引き続き、こども家庭庁におきましては、虐待もそうですけれども、子供の権利ということに照らして全力で子供を守っていただきますように、こども家庭庁が昨日スタートしたというニュースから希望も持っておりますので、よろしくお願いしたく思います。ありがとうございます。
それでは、今日は家族法についてもお伺いをどうしてもしたいことがありまして、質問を飛ばさせていただきますけれども、二の一から参りたいと思います。よろしくお願いいたします。
齋藤法務大臣におかれましては、この宗教の問題、また度重なり質問させていただくかと思いますけれども、是非とも、この質疑の場も通じながら、どのような方向性で、日本の子供たち、そしてかつての子供たち、宗教二世、三世問題で苦しむ方々救済できるかというのを、お知恵を賜りたく思います。
さて、家族法に絡みまして、私はかねてより今国会で家族法の改正案を出していただきたいというふうに要望している立場なんですけれども、何でかというと、この日本において、DVを実際はしていないのにもかかわらずDVの疑いを掛けられて、ゆえに子供と全く会えていないという親御さんも存在しているというのも一つの要因でございます。
一つ目の質問でございますけれども、総務省のDV等支援措置というものがあります。これは、法律に基づく制度ではなくて、行政の通知によって制度化されているものなんですけれども、DVを受けている、ストーカー被害を受けている、虐待を受けているというような疑いのある方が、住民票基本台帳を見られたら更なる被害に遭うかもしれないということで、その閲覧をストップするというような趣旨の仕組みでありますけれども、これにおいて、DVの被害者と申し出た方が申請をして、DVの加害者とされる方々からの攻撃を守るために住民票の基本台帳の閲覧を制限すると。その場合に、DVがあったかどうか、どのように確認するのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/84
-
085・尾身朝子
○副大臣(尾身朝子君) お答え申し上げます。
住民基本台帳事務においては、DV等の加害者が住民票の写しの交付等の制度を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止するため、被害者とされた方からの申出により、自己の住民票の写しが加害者への交付等されないよう制限する措置を設けております。
この措置の実施に当たりましては、市町村長は、申出者がDV等支援措置対象者に該当し、かつ加害者が当該申出者の住所を探索する目的で住民票の写しの交付の申出等を行うおそれがあると認められるかどうかについて、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の意見を聴取すること、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めること、以上により確認することとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/85
-
086・梅村みずほ
○梅村みずほ君 警察や相談センター等が措置相当と認めた場合にその決定を下すということだと思うんですけれども、要するにDV加害者と言われている方からの意見は必要ないという認識で間違いはないでしょうか。これ更問いになりますので、役所からで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/86
-
087・三橋一彦
○政府参考人(三橋一彦君) お答えいたします。
先ほど副大臣がお答えしましたとおり、申出者がDV支援措置対象者に該当し、かつ加害者が当該申出者の住所を探索する目的で住民票の写しの交付の申出等を行うおそれがあると認めるかどうかにつきまして、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の意見を聴取すること、又は裁判所の発行する命令等で対応することといたしておりまして、加害者側からの意見を聞く仕組みになっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/87
-
088・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
加害者から意見を聞かなくてもよいということなんですね。これによって何が起こっているかというと、加害者が、違う、私はDVはやっていませんと反論する場がないということなんです。それによって、住民基本台帳の閲覧の制限のみならず、学校に子供に会いに行っても会わせてもらえず、実は会社の方にもそれが知れ渡ってしまって、何々さんはDVの加害者らしいよというようなことも広まってしまっていて、二次的な影響がいろいろと出てきているんですね。
そうして、社会的にはこの総務省の支援措置によってDV加害者といういわゆるレッテルのようなものを貼られるという現状があるということで、今日はお配りしていないんですけれども、配付資料としては、私の手元には二〇一八年の産経新聞で、虚偽DV見逃しは違法、妻と愛知県に異例の賠償命令、支援悪用、父子関係絶つということで、支援措置を悪用した裁判の記事があるわけなんですけれども、そうやって、この裁判はちなみに愛知県の半田市というところであったわけなんですけれども、半田市が謝罪をして和解に至っているというものなんですけれども、こういった虚偽DVというものが起こり得る制度になっております。にもかかわらず、更新が一年置きにできるということなんですね。
翻って、内閣府の方のDV防止法では、保護命令というものを申し立てて接近禁止などを命令として出してもらえるという仕組みがありまして、そちらの必要性が薄まってきてしまっているんですね。社会的にはもうDVから守っていただけるというのがこの支援措置によってできていると。
この更新ですね、支援措置の更新って条件を付けるべきではないかなと思っていまして、ストーカーの場合は別にないかとは思いますけれども、子供さんがいる場合、DVをパートナーから受けていますという場合に、内閣府のそのDV防止法に基づく保護命令の申立てをしているという事実も併せて更新の要件にすべきと考えますけれども、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/88
-
089・尾身朝子
○副大臣(尾身朝子君) お答えいたします。
DV等支援措置については、被害者に係るDV等被害の状況がケースごとに様々に変化し得ることから、期間を一年と定め、申出があれば状況を確認した上で延長することとしております。この確認に当たっては、DV等支援措置の実施開始に当たっての確認と同様に、警察、配偶者暴力相談支援センター等の意見を聴取すること等により、延長の申出があった時点での支援の必要性の確認を行うこととしております。
また、保護命令につきましては、被害者が暴力を受けたことや、今後生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明する資料等を備えた申立てに基づき、裁判所が相手方配偶者等に対して被害者の身辺への付きまとい等の一定の行為を禁止する命令を発する制度であるというふうに承知しております。
住民基本台帳事務におけるDV等支援措置の制度の目的や効果のほか、保護の対象となるケースや申立ての手続負担についても違いがあることを十分に勘案する必要があると考えております。
DV等支援措置の延長に当たっての保護命令の申立てが行われていることを条件にすることにつきましては、市町村の意見を聞きながら慎重に検討する必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/89
-
090・梅村みずほ
○梅村みずほ君 でも、様々な情況証拠を、証拠を出してもらって更新したとしても、結局はDV加害者とされた人からの反論の機会はないということ、そして、実は子供に会えずに追い詰められて亡くなっている人もいると、そんな制度が法律に基づくものではないということは是非とも御理解いただきたいと思います。
私は、この制度が虚偽DVの温床ともなっている側面もあると思っています。虚偽DVなんだと主張する方の中には、実際はDVをしている方もいらっしゃると思います。一方で、本当に虚偽DVの場合もあると思います。是非とも御検討をお願いします。
最後に一問、齋藤大臣にお伺いしたいんですけれども、この保護命令を申し立てたら、中には子供に対する接近禁止命令を出されることもあるわけなんですけれども、この接近禁止命令というのが、これ二の五になります、質問に関しては、接近禁止の命令が出ていない親子間で親子が会うことというのは違法なのかどうかお伺いしたいんですね。よろしいですか、趣旨伝わっていますでしょうか。お願いいたします。接近禁止の出ていない親子間で親子が会うことは違法か否か、大臣にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/90
-
091・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、子と同居していない親が子と会うことについての法的評価や当否等は、個別具体的な事案に即して判断されるべきであるため、一概にお答えすることは困難であります。その上で、一般論としてお答えすると、親子交流については、取決めがあるか否かに関わらず、安全、安心な形で実施されることが子の利益の観点から重要であると考えています。
それで、強いて申し上げますと、取決めがないことのみによって直ちに違法になるというものでもないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/91
-
092・梅村みずほ
○梅村みずほ君 大分オブラートに包まれているなというような印象がありましたので、また続きは次回の議論の場に移したいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/92
-
093・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合でございます。
私は、まず今日は、裁判記録の保存の検討状況について御質問させていただきたいと思います。
委員の皆さんの御記憶にもあろうかと思いますが、昨年、世間を騒がせた重大な少年の殺人事件、神戸家裁で裁判記録が保管をする、長期保存をするということが決められていたにもかかわらず裁判記録が廃棄されていたと、それ以外にも全国の裁判所で裁判記録の廃棄がなされていたということを受けて、この裁判記録の保存に向けた検討が現在始まっているということを伺っております。
定期的にこの検討会議の報告も我々も受け取って目は通させていただいているわけでありますが、これを今後どう対応していくのかということについて、現在の検討状況について、法務省の今の検討状況と今後に向けたスケジュールについて教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/93
-
094・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
最高裁といたしましては、記録の保存、廃棄をめぐる一連の問題を重く受け止めて、これまでの特別保存の運用の在り方が適切であったのか、適切な運用に向けた取組が十分であったか等について第三者の目から客観的に評価をしてもらいながら、将来にわたって記録の管理の適切な運用を確保していくため調査検討を行っているところでございます。
現在、神戸児童連続殺傷事件を含む耳目を集めた少年事件や憲法判例百選に掲載された事件など約百件の事案について個別に調査を行っているほか、各庁の特別保存の運用の実情について調査を行っております。
また、昨年の十一月二十五日に三名の有識者による委員会の第一回の会合を開催しました。それ以降、これまでに合計九回の会合を開催いたしております。会合におきましては、申し上げましたような調査についての意見交換のほか、少年事件の被害者の御遺族や弁護士、その他の有識者の方々から意見聴取を行うなどしているところでございます。
今月、あと三回の会合を予定しておりますところ、有識者委員の意見も踏まえまして、当初目指していた本年四月ではなく五月の報告書の公表を目指して調査検討に取り組んでいるところでございます。今後の記録の適切な保存の在り方についてしっかりと検討を行い、適切な運用につなげてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/94
-
095・川合孝典
○川合孝典君 検討を進めていただいていることについては理解しました。適切であったのかという御発言がありましたが、適切ではなかったから問題が表面化したということですから、まず反省に立って今後の対応を議論していただきたいなと思います。
その上で確認なんですが、今後、いわゆる裁判の手続のIT化や様々なことについてIT化を導入するということで、これから議論もなされるわけでありますが、現在、その裁判記録等が紙ベースで残っているものが既にそれぞれの裁判所に山のように積み上がっているわけでありまして、昨年この問題について指摘させていただいたときに、将来の裁判記録についてはもちろん電子情報化するといったようなことについての答弁いただきましたが、今ある記録についてどうするのかということについては言及がなかったと記憶しております。
したがって、今後、この裁判記録をいわゆる保存するという手続を進めていく中で、過去の裁判記録をどのように扱っていくのか、そのことによって省スペース化を図るのかといったようなことも検討しなければいけないと思うんですが、この辺りのところは議論されていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/95
-
096・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
現在、有識者委員の意見も伺いつつ、各種の調査や問題点の分析等を行い、今後の事件記録等の適切な保存、廃棄の在り方について検討を進めているところでございますが、委員から御指摘をいただきました現在保存されている紙媒体の事件記録等につきましても、将来にわたって残していくべきものを確実に残していけるよう、その適切な保存の在り方や方法等について議論を重ねているところでございます。
委員の方から御指摘をいただきましたが、紙媒体の事件記録等を電子化して保存するということとなりますと、電子化のために多大な作業を要するのではないかといった問題でありますとか、保存するデータ量が膨大になるのではないかというような問題など、電子化に伴うコストの問題が一つはございます。また、紙媒体の事件記録等を電子化して保存するということになりますと、元々原本であった現在の紙媒体の事件記録等をどのように扱っていくのかという問題など、検討すべき課題が多いなというふうに思っているところでございます。
いずれにいたしましても、これらの問題も含めまして、今後の記録の保存、廃棄の適切な在り方につきましては、現在進めております調査検討の結果や有識者委員の御意見も踏まえながら、最高裁において検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/96
-
097・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
改めて確認ですけれども、今指摘させていただいた事項についても、五月の報告のときに何らかの形で報告書に記載をされるという理解でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/97
-
098・小野寺真也
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
報告書の内容につきましては、これは委員会の意見を聞きながら進めていくということでございますので、今ここで確たることを申し上げることは御容赦いただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、この今の検討の中で先ほど御指摘いただいた点についても検討を進めているところでありまして、それも含めて報告書の中で何らかの形で整理していくということになるんではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/98
-
099・川合孝典
○川合孝典君 是非よろしくお願いしたいと思います。
前回のこの問題指摘させていただいたときにも申し上げておりますけど、過去の裁判記録は財産でありますので、この財産を将来に向けてどう保全していくのかということがこの問題には問われているということでありますので、是非この問題、真摯に向き合っていただきたいと思います。
次の質問に移らせていただきたいと思いますが、ちょっと時間が足りなくなりましたので、順番を変えて、調停委員の外国籍の方の登用の件について質問させていただきたいと思います。
まず、外国籍の調停委員の就任について、最高裁は運用で現在は認めていらっしゃらないということでありますが、その根拠が何なのかということについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/99
-
100・徳岡治
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
調停委員は非常勤の公務員に当たりますところ、公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍が必要とすると解されておりまして、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当することから、日本国籍を有しない方を調停委員に任命することは難しいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/100
-
101・川合孝典
○川合孝典君 では、確認をさせていただきますが、調停委員の仕事というのは、役割というのはどういうものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/101
-
102・徳岡治
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
先ほどの役割ということでございますが、民事調停委員あるいは家事調停委員の法令上の権限あるいは職務内容といたしまして、裁判官とともに調停委員会を構成いたしまして、調停の成立に向けて活動を行い、また調停委員会の決議はその過半数の意見によるということとされております。また、調停が成立した場合の調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有するということにもなっております。また、調停委員会の呼出し、命令、措置には過料の制裁があること、あるいは、調停委員会は事実の調査及び必要と認める証拠調べを行う権限を有しております。
こういうことからしますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当するというふうに理解しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/102
-
103・川合孝典
○川合孝典君 調停委員の仕事というのは、私人間の紛争を解決するために裁判所が仲介して当事者間の合意を成立させるための手続ということですよね。
このいわゆる私人間の紛争を解決するための手続のどこがいわゆる国家意思の形成に関わるということになるのかが、済みません、私にはちょっと理解できないので、私に理解できるように御説明いただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/103
-
104・徳岡治
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答えを申し上げます。
若干繰り返しになりますけれども、調停委員につきましては、裁判官とともに調停委員会を構成して、調停の成立に向けて活動を行いますけれども、その調停委員会の決議というのは過半数の意見によるとされております。また、調停が成立した場合の調停調書の記載が確定判決と同一の効力を有することは先ほど申し上げたとおりであります。あるいは、調停委員会が呼び出す、あるいは命令、措置については、任意で応じられる場合もありますが、そうでない場合には過料の制裁ということもございます。
こういうようなことからしますと、調停委員は公権力の行使又は国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当するという理解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/104
-
105・川合孝典
○川合孝典君 私の理解が間違っていなければ、間違っていれば間違っていると言っていただきたいんですけど、調停委員が、要は調停する当事者の双方のどちらかの言い分が正しいかどうかを決める立場ではないですよね。あくまでもアドバイスを行う立場ということだと理解しております。
私がこの問題をしつこく確認させていただいているのは、当然、その外国籍の方がどういわゆる公務若しくは公務に準ずる仕事に関わるのかということについては、そのときの社会情勢や様々な環境があって、その上で判断されていることということは理解しておりますので、これまで最高裁が外国籍の方の調停委員就任について認めないという運用をしてこられたということ自体を否定するものではないんです。
が、しかしながら、この判断をしたときと現在とでは日本の国内の情勢も随分変わってきておりますし、外国人との共生をいかにこれから進めていくのかということを、物すごい勢いで外国人の在留、在日、在留をされる外国人の方が増えている状況の中で考えていかなければいけないということで、今法務委員会でも様々な議論がなされているということを踏まえて考えたときに、いわゆる公権力を行使するということではなく、調停、いわゆるアドバイスを行うという意味では、外国人の方が訴訟、調停の当事者になられる可能性もあるとすれば、多様な価値観に対応できるような調停の在り方というものについても考えるべきに来ているのではないのかという問題意識なんです。
したがって、今すぐどうしてくださいということを私申し上げるつもりはないんですけれども、今後この外国人との共生社会を実現していく上で、いわゆる行政、司法のサービスというものを今後充実させていく上で、この外国籍の方の調停委員というものをどう扱っていくのかということについては考えるべきじゃないかと思っております。
これ、通告しておりませんけれども、齋藤大臣にこの間のやり取りについて所見だけお伺いできればと思います。調停委員は駄目だと言っていますけれども、外国籍の方の弁護士はオーケーなんですよね。ということを考えたときに、ここについては正直、現在の社会情勢の中ではアンバランスが生じているんではないのかなと私は思っているんですが、齋藤大臣はどう思われますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/105
-
106・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) ちょっと突然の御質問なんですが、本件は司法行政上の問題であろうというふうに理解しておりますので、法務大臣の立場で答弁はちょっと控えたいなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/106
-
107・川合孝典
○川合孝典君 むちゃぶりして済みませんでした。答えられないのは当然のことだと思いますが。
ただ、これまで我々が想定していなかったことが、今後この司法行政を取り巻く環境の中でどんどん変わってくるということを前提として、これまで正しかったことが必ずしも未来に向かって正しいかどうかということも、常にやっぱり疑問の目を持って向き合っていかなければいけないということの問題提起だけさせていただきたいと思います。
是非、この問題につきましては、最高裁の方でも、今後この問題をどう運用していくのかということについて御検討を始めていただきたいと思いますが、最後、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/107
-
108・徳岡治
○最高裁判所長官代理者(徳岡治君) お答え申し上げます。
外国籍の方を調停委員に任命できるかどうかということにつきましては、先ほどお答えしたとおりでございますけれども、委員御指摘のとおり、国際化の進展等の社会の変化に応じて当事者が多様な価値観を持っているということも踏まえまして、そのニーズに応えることができるよう、多様な人材を調停委員として確保するよう努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/108
-
109・川合孝典
○川合孝典君 前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございました。
時間が参りましたので、私の質問を終わります。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/109
-
110・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、袴田再審事件と証拠開示についてお尋ねしたいと思います。
袴田事件は、五十七年前、私がまだ二歳のとき、一九六六年に静岡市のみそ製造会社の専務さん一家四名が殺害された強盗殺人事件です。
静岡県警は、被疑者として袴田巌さんを逮捕、勾留し、連日長時間の取調べで自白させようと躍起になりました。ですが、袴田さんは一貫してやっていないと否定され、その肉声が、警察がひそかに録音していた録音テープの中に、取調べ室の中での不当な人権侵害の様子と併せて残されています。このテープも再審請求審でようやく開示されました。
不当に起訴された袴田さんが無罪を求めていた一審裁判の途中、事件から一年二か月も後になって会社のみそタンクから発見されたという五点の衣類が死刑判決の決定的な証拠とされました。そのうち、刑事局長、ちょっと通告していませんが、その五点の衣類のうちズボンは、これ袴田さんには小さくて入らなかったんですね。けれど、そのズボンに付いているBというタグが袴田さんに合うサイズを示しているという、うその捜査報告書が作られました。事件から四十二年後たった二〇〇八年に始まった第二次再審請求審で、ようやくBというのはサイズではなく色のことだという、それまで隠されていた検察官手持ち証拠が裁判所に提出をされたんです。
これ、刑事局長、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/110
-
111・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねは個別事件における事案の証拠関係の問題でございまして、ここで法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/111
-
112・仁比聡平
○仁比聡平君 いや、御存じなんだろうと思うんですよね。二〇一四年の四月二十四日のこの委員会で、同じ問題を法務省に質問をしたことがございます。メーカーは、初めからBは色のことだとしっかり警察に話をしていたのにとテレビのインタビューで答えています。
そうした五点の衣類のDNA鑑定で、これは袴田さんのものでも犯行着衣でもないという結果も出ました。だから、二〇一四年の三月、静岡地裁は画期的な再審開始決定を出して、刑の執行停止、拘置の執行停止で袴田さんは四十八年ぶりに拘置所から出てこられ、けれど、痛ましい様子に、この冤罪というもののむごさ、これ、私は、国民の皆さんおおよそ本当に痛感してこられたんじゃないかと思うんですね。
ところが、あくまで争い続けたのが検察でした。以来、九年がたちました。そもそも、五点の衣類の色合いからすれば、一年二か月もの間、みその中に漬かっていたとは考えられないということが元々この事件の裁判における重要争点だったんですね。
ところが、検察は当然持っていたはずのカラー写真を第二次再審請求事件まで開示しませんでした。さらに、そのカラー写真のネガについて、お配りしている一枚目の資料は二〇一四年八月六日付けの日経新聞の記事ですけれども、ネガはあるはずだと、当たり前だと、だからこれを開示すべきだという弁護団に対して、検察は二度にわたって存在しないと回答していたのに、二〇一四年の三月に静岡地裁が再審開始を決定したら、これに対して即時抗告をして争った上で、その争う中で、地裁の決定後にネガが警察で発見されたと言ってこの存在を認めたんですよね。
これ、刑事局長、事実ですよね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/112
-
113・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねは今後再審公判が予定されている個別事件に関する事柄でございまして、委員御指摘の事実関係の正確かどうかということも含めまして、お答えを差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/113
-
114・仁比聡平
○仁比聡平君 その再審、まず請求事件が、三月十三日の東京高裁の開始決定が確定をしたと、これから再審公判が始まるという段階で、もう争えないわけですよ。その検証、総括、これは、今後同じようなことを絶対に繰り返さないという上でも、この国会での重要問題だと思うんですね。
大臣に一般論としてお尋ねしたいと思うんですけれども、つまり検察官から開示されたそうした証拠、これに基づいて弁護団が提起した実験や鑑定を東京高裁は無罪を言い渡すべき明らかな新証拠とし、五点の衣類は事件から相当期間を経過した後に事実上捜査機関がみそタンク内に隠した可能性が極めて高いと厳しく指摘をしたわけです。その評価はおいておいても、検察官が第二次再審において開示した証拠がこの真実の発見、冤罪を晴らすという形で生きている。これ、良かったと思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/114
-
115・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、個別の再審請求事件において、検察官の活動内容あるいは個々の事実認定につきまして、私からお答えすることは適切じゃないと思っております。
一般論ということで御質問ありましたが、検察当局におきましては、個別の事件の再審請求手続において証拠開示を求められた場合には、法令、その趣旨に従って適切に対応すべきだし、対応してきたものと承知をしてきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/115
-
116・仁比聡平
○仁比聡平君 適切に対応してきたものと承知しているという大臣の答弁は、これはさすがにおかしいんじゃないですか。
だって、半世紀近く隠し続けてきたんですよ。半世紀ですよ。持っていたんですよ、証拠。警察そして検察が自ら描いたストーリーに合う証拠、沿う証拠、これは検察に送って裁判所に出すけれども、そうではない、被告人の無罪方向を示すような証拠は隠し立てをして、裁判で争われ続け、開示を求められながらも、ずっと存在しないと言って隠し続けてきたんですよ。不当じゃないですか、そんなの。
何で適切な判断がなされてきたなんて言えるんですか。そんなことだったら冤罪なんて起こらないじゃないですか。局長じゃないでしょう。大臣、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/116
-
117・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、検察の行った行為、活動につきまして、これはいいとかこれは悪いとか、私が法務大臣として申し上げるのは適切ではないと思っています。
先ほど私が申し上げたのは、あくまでも一般論として申し上げればということを申し上げたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/117
-
118・仁比聡平
○仁比聡平君 だから、そうやって、私が繰り返しこの刑事司法と証拠の問題についてこれまでお尋ねしてきました。そのような答弁されてきましたよ、これまでの大臣も刑事局長も。だけれども、その下でこうした冤罪が深刻な形で明るみになって、ようやくですけど、袴田さんは再審公判を始めることができるようになったわけですよ。こんなことを適切だなんて絶対に言っちゃならない。それを繰り返すことになる。
だからこそ、資料の三枚目にお配りをしましたが、二〇一六年、刑事訴訟法が改正をされたときに附則九条三項というのが置かれました。「政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置、証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について検討を行うものとする。」ということです。速やかに検討を行うものとすると。
これ、再審における証拠の開示についてどんな検討を行い、どんな目途を持っておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/118
-
119・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘の再審請求審における証拠開示につきましては、平成二十八年に成立いたしました刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第九条第三項におきまして検討を行うことが求められております。委員の資料のとおりでございます。
そこで、平成二十九年三月から、この検討に資するよう、最高裁判所、法務省、日弁連、警察庁の担当者で構成する刑事手続に関する協議会を開催して協議が行われてまいりました。そして、令和四年七月からは、同法附則九条により求められている検討に資するため、刑事法研究者等の有識者、法曹三者、警察庁及び法務省の担当者によって構成される改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を開催しておりまして、その協議会においては、取調べの録音・録画制度や合意制度など、平成二十八年の改正法によって導入された各制度に加えて、再審請求審における証拠開示についても協議が行われる予定となっております。
法務省としては、附則の趣旨を踏まえまして、充実した協議が行われるよう適切に対応してまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/119
-
120・仁比聡平
○仁比聡平君 二〇一六年の法改正があってからもう七年でしょう。後の方に改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会というお話をされましたけど、これ、証拠開示、再審における証拠開示の問題は議論さえしていないでしょう。していませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/120
-
121・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
その協議会においてテーマとしておりますのは、先ほど申し上げましたように附則第九条でございまして、第九条に基づく検討事項でございまして、平成二十八年改正法の規定の施行状況を踏まえて検討すべき項目が複数指摘されているところでございまして、それを順次検討しており、この協議会ではまだ再審の関係は議論されておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/121
-
122・仁比聡平
○仁比聡平君 検討されていないんですよ。検討しているのは刑事手続に関する協議会ですが、これ、その協議会そのものは五年前、平成三十年の三月二十九日に一回行われただけでしょう。幹事会だって十八回行われてはいますけれども、令和四年の一月十七日の第十八回の開催が最後でしょう。もう一年前じゃないですか。
これ、何でこんなことをしているんですか。これ、もう終わっちゃったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/122
-
123・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 恐れ入ります。
直ちに回数について今数字を持ち合わせておりませんけれども、検討していないということ、していないとか、する予定がないということではございません。
先ほど申し上げた協議会の方におきましては、今順次検討課題を議論しているところでございまして、再審に関する証拠開示ですとか、その附則において検討するとされていることについても、今後検討される予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/123
-
124・仁比聡平
○仁比聡平君 違うでしょう。局長、在り方協議会の方はこれから検討するというお話かもしれないけど、刑事手続に関する協議会の方は、これ既に七回にわたって再審請求審における証拠の開示について議論しているでしょう。ところが、その議論の中身あるいは成果、今後の目途、これ非公開にしているでしょう。
私が手持ちにある、法務省からいただいている資料ですけれども、刑事局長はその構成員ですよ。局長、構成員でしょう。これ、昨年の、一年前に幹事会も終わって、その後開かれていないから御存じないのかもしれないけれども、これ、終わっていないんだったら、ちゃんと成果を出さなきゃ駄目でしょう。どうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/124
-
125・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
刑事手続に関する協議会は終わってはおりません。第九条に求められている検討に資するために、先ほど申し上げた在り方協議会の方で、九条三項に含まれたものも、あるものも、規定されている、失礼しました、規定されているものも含めまして、そちらの方でまた関係者を増やして議論をしていくということでございまして、検討をやめたということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/125
-
126・仁比聡平
○仁比聡平君 この九条三項の、先ほど御覧いただいた条文のうち、被害者の起訴状における氏名の秘匿に関する措置というのは、今国会に法案がもう提出をされているわけですよ。この再審証拠開示については、一体ほったらかすつもりですかと。そんなことは絶対にあってはならないんですね。
今日、警察庁にもおいでいただいて、お答えいただける時間があればなんですけれども、資料の二枚目、この証拠の問題について、警察から検察に送致さえされていないという証拠が数々大問題になってきました。先ほどのネガも静岡県警が偶然発見したといいます。
そうした証拠のうちの一つに、大津の呼吸器事件の冤罪、再審無罪判決がありましたけれども、その未送致の証拠について、お配りしている資料の真ん中辺の段ですが、滋賀県警が、未送致となっていた理由は調査したが判然としなかったと記者会見で述べていますが、こんな扱いが適切だと言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/126
-
127・杉久武
○委員長(杉久武君) なお、時間ですので、答弁は簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/127
-
128・親家和仁
○政府参考人(親家和仁君) 滋賀県警察におきまして、いろいろその辺りの経緯について確認した結果だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/128
-
129・仁比聡平
○仁比聡平君 というような不適切、不当な証拠隠しと、その下での人権侵害が我が国の刑事司法を大きくゆがめてきたと。だからこそ、まず再審における証拠開示、それは捜査機関手持ち証拠の全ての開示が絶対に必要だということを強く求めて、今日は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/129
-
130・杉久武
○委員長(杉久武君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/130
-
131・杉久武
○委員長(杉久武君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
政府から趣旨説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/131
-
132・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を減少するとともに、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものでありまして、以下その要点を申し上げます。
第一点は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を十五人減少しようとするものであります。
第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少しようとするものであります。これは、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員のワーク・ライフ・バランス推進を図るため、裁判所事務官を三十九人増員するとともに、地方において、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、技能労務職員等を七十人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少しようとするものであります。
以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
済みません、一点ちょっと間違えまして、裁判所の事務官を三十九人増員するとともにの後、私、地方においてと申し上げましたが、他方においてということでございますので、おわびをして訂正させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/132
-
133・杉久武
○委員長(杉久武君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X00420230404/133
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。