1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
令和五年四月二十七日(木曜日)
午前十時開会
─────────────
委員の異動
四月二十五日
辞任 補欠選任
田中 昌史君 武見 敬三君
四月二十六日
辞任 補欠選任
世耕 弘成君 宮崎 雅夫君
武見 敬三君 田中 昌史君
谷合 正明君 下野 六太君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 杉 久武君
理 事
加田 裕之君
福岡 資麿君
牧山ひろえ君
下野 六太君
川合 孝典君
委 員
古庄 玄知君
山東 昭子君
田中 昌史君
宮崎 雅夫君
森 まさこ君
山崎 正昭君
和田 政宗君
石川 大我君
福島みずほ君
佐々木さやか君
梅村みずほ君
鈴木 宗男君
仁比 聡平君
国務大臣
法務大臣 齋藤 健君
大臣政務官
厚生労働大臣政
務官 畦元 将吾君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局刑事局長 吉崎 佳弥君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
警察庁長官官房
総括審議官 谷 滋行君
法務省民事局長 金子 修君
法務省刑事局長 松下 裕子君
法務省矯正局長 花村 博文君
厚生労働省大臣
官房審議官 山本 史君
厚生労働省大臣
官房審議官 斎須 朋之君
経済産業省大臣
官房審議官 門松 貴君
─────────────
本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/0
-
001・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、谷合正明君及び世耕弘成君が委員を辞任され、その補欠として下野六太君及び宮崎雅夫君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/1
-
002・杉久武
○委員長(杉久武君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/2
-
003・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に下野六太君を指名いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/3
-
004・杉久武
○委員長(杉久武君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長松下裕子君外六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/4
-
005・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/5
-
006・杉久武
○委員長(杉久武君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/6
-
007・古庄玄知
○古庄玄知君 おはようございます。自民党の古庄でございます。
刑事訴訟法改正案に入る前に、まず法務大臣にちょっとお聞きしたい点がございます。
私、長い間、大分県で弁護士をやっておりました。いろんな人と接する中で、大きく分けて二つの考え方の人がいるということに感じておるんですけれども、一つは、一つの黒を見逃さないためには一つの白を犠牲にしてもやむを得ないという方と、一つの白を罰しないためには一つの黒を見逃してもやむを得ないというふうに考える方、二通りの方が大きく分けていらっしゃることに気が付いております。
理想的には、黒を適正に処罰して、白を間違っても処罰しないということが理想だと思うのですけれども、現実は理想どおりにはいかないというのが現実だと思いますので、大臣のお考えはこの二つのうちどちらのお考えの方に近いのかということをちょっとお聞かせ願えればというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/7
-
008・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 刑事裁判におきましては、たとえ一人であっても、犯人でない者が処罰されるようなことがあってはならないというふうに考えています。
それとともに、刑事訴訟法は、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適切かつ迅速に適用実現することを目的とするという、同法一条で定めておりまして、真犯人を適正に処罰することも刑事裁判の重要な目的であると考えています。
その上で、検察官は、刑事事件について捜査を行い、起訴、不起訴を決定し、公判を遂行する役割を担うこととされており、こうした刑事裁判の原則を十分に踏まえた上で、無実の者を罰し、あるいは真犯人を逃して処罰を免れさせることにならないように知力を尽くして事案の真相解明に取り組む、こうしたことが求められていると考えておりまして、検察当局におきましても、こうした姿勢で国民の負託に応えるべく職務に取り組んでいるものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/8
-
009・古庄玄知
○古庄玄知君 済みません、お答えにくい質問をさせていただきましたが、刑事訴訟法の改正案についてそれではお伺いしたいと思います。
これにつきましては、四月四日に一度私の方で質問させていただいておりますので、それを前提にして新たな質問をさせてください。
実は、前回、四月四日の法務委員会の後、私の所属する大分県弁護士会の所属弁護士に対して、今回の被害者等の特定事項について被疑者、被告人に秘匿するという、そういう措置についての意見を求めました。それに対して、現場で働いている弁護士たちの中からは、かなり反対意見もありました。反対意見の主たるものは、捜査機関にその秘匿するかどうかというのを判断させると、これは恣意的に流れる可能性が高いということ、それと、おそれがあるという条文であれば緩く広く解される可能性があるので、犯罪をもう特定して限定すべきじゃないかという意見もかなりありました。
やはり弁護人側が最も懸念しているのは、防御権、弁護権の侵害になるのではないかというふうな点であります。この点について、大臣の方はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/9
-
010・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 本法律案におきましては、被害者等の氏名等の情報を保護するために、被害者等の氏名等の個人特定事項の記載がない逮捕状抄本等を被疑者に提示できるようにすると、それから、被害者等の氏名等の個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を被告人に送達できるようにすると、こういった法整備を行うこととしているわけであります。
これらの秘匿措置により、被疑者、被告人側としては、これまで把握できた情報を把握できなくなり得るために、防御活動や、御指摘のように弁護活動に影響が及び得るが、本法律案におきましては、これらに配慮した形で制度を立案し、不服申立ての機会も十分に保障されたものとしているわけであります。
現行法の下におきましても、証拠開示に際して、弁護人には証人の氏名を開示し、被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができることとされているが、いるわけでありますが、もとより、そのこと自体が防御権の侵害として現行法上も許されないものとは考えられていないわけであります。
また、本法律案におきましては、被疑者、被告人の防御権に配慮する観点から、秘匿措置をとる場合には、逮捕状抄本等や勾留状抄本等に記載される被疑事実の要旨について他の犯罪事実との識別が可能なものでなければならないことを明らかにすると、それと同時に、起訴状抄本等に記載される公訴事実についても他の犯罪事実との識別ができるものでなければならないことを条文上要求することとしておりまして、被害者等の個人特定事項が知られないとしても、知らされないとしても、被告人にとっての防御の対象が明らかになるようにしているところであります。
更に申し上げると、勾留手続において秘匿措置がとられた場合につきましては、当該措置により防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、裁判官は、被疑者又は弁護人の請求により、個人特定事項の全部又は一部を被疑者に通知しなければならず、裁判所の決定に不服があるときは準抗告することができることとして不服申立ての機会を十分に保障するとともに、公訴提起において秘匿措置がとられた場合については、原則として弁護人に対し個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状謄本を送達することとして、被疑者、被告人側に防御の準備の機会を確保し、当該措置により防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、被告人又は弁護人の請求により、個人特定事項の全部又は一部を被告人に通知する旨の決定をしなければならないということで、さらに、裁判所の決定に不服があるときは即時抗告をすることができることとして不服申立ての機会も十分に保障をしているところでありますので、弁護権や防御権が不当に害されるということはないと理解をしているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/10
-
011・古庄玄知
○古庄玄知君 現場で働いている弁護人、弁護士の感覚と、被疑者、被告人を訴追する立場の検察官、検事とはかなり感覚、感性が違うと思うのですけれども、これ立法化する前に、現場で働いている多くの弁護士、弁護人から意見などは聴取したのでしょうか。局長にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/11
-
012・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案のうち、御指摘のその刑事手続において被害者等の情報を保護するための法整備に関しましては、法制審議会刑事法部会、これは犯罪被害者氏名等の情報保護関係部会でございますが、こちらにおきまして、令和三年六月から同年八月までの間に四回にわたる調査審議が行われました。その同部会には、刑事訴訟法の研究者のほか、裁判官、検察官、弁護士といった立場の異なる実務家の委員、幹事も御参加いただきまして、それぞれの立場から活発な議論が行われ、その中で弁護士の委員から刑事弁護の視点による意見が多く述べられたものと承知をしております。
そして、同部会における取りまとめを経まして同部会から要綱骨子の報告を受けた法制審議会の総会におきましても、刑事訴訟法の研究者や裁判官、検察官、弁護士といった立場の異なる実務家の委員に加え、一般有識者の委員も参加して議論が行われ、ここでも弁護士の委員から刑事弁護の視点による意見が改めて述べられたものと承知をしております。
本法律案は、こうした多角的な観点からの検討を経てなされた法制審議会の答申に基づくものでございまして、刑事弁護に携わる弁護士の委員の御意見で述べられた被告人の防御権や弁護権への配慮に意を用いつつ、被害者等の情報保護を適切に図る内容となっているものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/12
-
013・古庄玄知
○古庄玄知君 この刑事訴訟法改正案では、主として性犯罪に関するものが多いんですけれども、それ以外でも、二号ですかね、おそれがあると、こういったおそれがあるという場合にも秘匿の対象になるというふうになっていて、そのおそれがあれば、別に性犯罪にかかわらず、ほかの犯罪でもその秘匿の対象になるということなんですけれども、この特定の犯罪に限定していないというのはどういった理由なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/13
-
014・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案は、法制審議会において先ほど述べたような様々な立場の方からの多様な御意見を踏まえて立案されたものでございますけれども、御指摘のとおり、本法律案におきましては、一定の性犯罪の事件の被害者のほか、それ以外の者についても秘匿措置の対象としております。
まず、犯行の態様、被害の状況などに鑑みまして、その個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、被害者等の名誉が著しく害されるおそれや、被害者又はその親族に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる事件の被害者を秘匿措置の対象としておりますところ、これは、こうした事件の被害者の個人特定事項を被疑者、被告人に知られないようにすることが被害者保護の観点から必要かつ相当であると考えられるためでございます。
また、被害者以外の者でありましても、その者の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、その者の名誉等が著しく害されるおそれや、その者又はその親族等に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる者、これにつきましても秘匿措置の対象としておりますところ、これは、被疑事実の要旨や公訴事実としてその中に被害者以外の方の個人特定事項が記載される場合がございます。その個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、やはりその者の名誉等が著しく害され、あるいはその者又はその親族の身体等に対する加害行為等がなされるおそれがあるということが認められる場合がございますので、そのときにはその個人特定事項を被疑者、被告人に知られないようにすることがその保護の観点から必要かつ相当であると考えられるためでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/14
-
015・古庄玄知
○古庄玄知君 その秘匿の必要性があるかないかについては捜査機関の方が第一次的に判断するという立て付けだと思うんですが、そうなると、秘匿することが原則化してしまうおそれもあります。どうして裁判所の方に第一次的に判断させないのか、その辺りについてお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/15
-
016・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
まず、本法律案における制度を説明させていただきたいんですけれども、検察官又は司法警察員は、必要と認めるときは、逮捕状又は勾留状の請求とともに、裁判官に対し、個人特定事項の記載がない逮捕状抄本等や勾留状抄本等の交付を請求することができるものとしております。
裁判官としても、これらの請求を受けたときは、当該請求に係る者が措置の対象者に該当するか否かを判断することになるわけですが、必ずしも十分な判断資料を有しているわけではないため、当該請求に係る者に関する事情を把握している捜査機関の判断を基本的に尊重すべきであると考えられます。そこで、これらの請求を受けた裁判官は、当該請求に係る者が措置の対象者に当たらないことが明らかな場合を除きまして、これらの措置をとることとしております。
次に、本法律案におきまして、検察官は、必要と認めるときは、裁判所に対し、被害者等の個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を被告人に送達する措置をとることを求めることができるものとしております。
仮にこの場合について裁判所が要件の判断を行うということといたしますと、検察官及び被告人側からの意見の聴取や疎明資料の提出などを経る必要があると考えられるため、相応の手続、時間を要することとなります。公訴提起後できるだけ速やかに被告人に起訴状の謄本を送達することとしている刑事訴訟法規則の趣旨に反することとなりかねないということが危惧されるところでございます。そこで、起訴状抄本等の提出があった場合におきましては、裁判所が要件判断を行うことなく、まずはこれを被告人に送達するということとしております。
他方、本法律案においては、勾留状及び起訴状における秘匿措置がとられた場合について、被疑者、被告人又は弁護人は、裁判官、裁判所に対し、個人特定事項を被疑者、被告人に通知する旨の裁判を請求することができることとしておりまして、裁判官、裁判所は、その請求があった段階で、検察官及び被疑者、被告人側の双方からの主張の提示及び疎明資料の提出を受けつつ、要件該当性の判断を行うこととなりますので、所定の要件を満たさないのに捜査機関の判断のみで秘匿措置がとられたままになるということはなりませんし、通知されるべき事案についてはひとしく裁判所の判断を求めることができる制度としているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/16
-
017・古庄玄知
○古庄玄知君 弁護士に対するアンケートの結果でも何人か指摘していたんですけれども、被告人から被害者はどこの誰かというふうに尋ねられたときに、弁護人が教えられないというふうに答えたら、弁護人と被告人、被疑者との信頼関係が壊れてしまうんじゃないかという指摘もかなりあったんですが。
イメージでいいんですけど、まず、法務大臣にお尋ねしたいんですけれども、法務大臣は、被告人に対するイメージというか被告人像、要するに、弁護人がそう言えば、はい、分かりましたというふうに素直に引き下がってくれるのか、おまえ何で俺が尋ねているのに何で答えてくれぬのかというふうに言って、弁護人と被告人との信頼関係が壊れてしまう、そういう被疑者、被告人がおるのか、その辺の被告人像というか、イメージについて、法務大臣、認識を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/17
-
018・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、被告人と弁護人の関係というのは相当様々であろうというふうには思います。
その上で、委員の問題意識は、弁護人に対して被害者等の個人特定事項を被告人に知らせてはならないという条件を付した上で起訴状の謄本を送達する措置がとられた場合には、当該個人特定事項を知りたいと希望している被告人と弁護人の間の信頼関係が崩れると、そういう御指摘であると理解をしています。
先ほども申し上げましたけど、現行法の下でも証拠開示の際の秘匿措置といたしまして、弁護人には、証人の氏名を開示しつつ、被告人には知らせてはならない、そういう条件を付することができるところでありまして、その場合と同様に、御指摘のような場合には、まず、弁護人として、法律上の仕組みや、裁判所から被告人に知らせてはならないとの条件が付されていることを丁寧に説明し、理解を求めていくということになるんだろうと考えられます。そのような説明の中で被告人と十分に意思疎通を行い、例えば被告人の求めが防御の準備を十分に行うために被告人自身が被害者等の個人特定事項を知る必要があるとの理由に基づくものであると考えられる場合には、弁護人において、裁判所に対して個人特定事項の通知請求、先ほど申し上げましたように通知請求することが考えられますし、さらには、その請求に対する裁判所の決定に不服があれば即時抗告することも考えられるわけであります。
どういう被告人像を持っているかというお話でありますが、公訴を、被告人というのは、当然のことながら、公訴を提起され、確定判決を受けるまでの者というふうに理解をしていますが、あくまで刑事訴訟手続における位置付けを示す呼称にすぎないと考えておりまして、被告人とはこういう人物であるというような固定的な人物像のイメージは、私は持っていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/18
-
019・古庄玄知
○古庄玄知君 じゃ、ちょっと局長にも聞く予定だったんですけど、時間の関係でちょっと済みません。
では、次の質問に移らせていただきますが、前回の局長のお答えのときに、今回、数値的根拠、具体的な根拠については把握していないというお話だったと思うんですけれども、こういう防御権の侵害のおそれが懸念される案件である以上、それを納得させるに足りるだけの数値的な根拠を用意すべきじゃないかと思いますし、立法事実として今回はちょっと弱いんではないかなというふうに思うんですけれども、この点について法務大臣の見解をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/19
-
020・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 個人特定事項を知らされることにより名誉等を害されたり加害行為等をされたりするおそれのある被害者には、例えば自己の氏名等が被疑者、被告人側に伝わることを恐れて被害申告を断念した者などが含まれているわけでありますが、そうした方の人数等については、事柄の性質上、統計として網羅的に把握することは極めて困難なんだろうと思いますので、そのような形では把握はしていないものであります。
具体的には、そのような人数の統計を取るためには、被疑者に自己の氏名等を知られることを恐れてそもそも告訴等をしなかった被害者の人数や、あるいはその告訴等をした後に被疑者、被告人側に自己の氏名等を知られることを恐れて告訴等を取り消した被害者の人数などが網羅的に把握できることが前提になると考えるわけでありますが、しかしながら、このうち前者の人数につきましてはいわゆる暗数でありまして、そもそもこれを網羅的に把握すること自体が困難でありますし、また、後者の人数につきましては、告訴等を取り消した被害者からその都度その理由を聴取しなければ把握できないということになりますが、告訴等の取消しに至る経緯や理由には被害者が明らかにしたくないものも含めて様々な事情があると考えられるために、そうした事情を具体的に聴取することはなかなか適当ではないんだろうと思います。
このように秘匿措置を必要とする事例を網羅的に把握しているものではないんですが、様々報道されておりますように、例えば児童に対する強制わいせつの事実について、公訴事実に被害児童の親の実名と続柄を記載して被告人を起訴したものの、被害児童の個人情報を被告人に知られたくないとの被害児童側の意向を尊重し、検察官が公訴を取り消した事例、そういった事例があるものと承知をしているほか、法務省が実施した性犯罪被害者からのヒアリングにおきましても、相手方に氏名が知られるのであれば被害申告しなかった、実名を知られたらSNSなどで特定され報復されるのが怖かった、犯人に氏名を知られることを恐れて被害を訴え出ずに泣き寝入りしている人がいるなどの指摘がなされているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/20
-
021・古庄玄知
○古庄玄知君 ちょっと時間の関係で次の質問は割愛させていただきます。
改正法の二百一条の二の二号イを見ると、個人特定事項が知られることにより名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるなどのおそれがあると認められる者ということで、被害者以外の証人などの情報も秘匿されることになるんではないかなと思うんですけれども、この点について、防御権侵害の程度が大きくなるんじゃないかと思うんですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/21
-
022・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、被害者以外の者でありましても、その者の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、その者の名誉等が著しく害されるおそれや、その者又は親族に対する加害行為などがなされるおそれがあると認められる者について秘匿措置をとり得ることとしております。委員の御指摘はこの点に関するものと存じます。
これは、逮捕状の被疑事実の要旨や起訴状の公訴事実には、先ほども申し上げましたけれども、被害者以外の者の個人特定事項が記載される場合もございますところ、個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、その者の名誉等が著しく害され、またその身体に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められるときは、やはり被害者以外の個人特定事項についても同様に被疑者、被告人に知られないようにすることがその保護の観点から必要かつ相当であると考えられるためでございます。
他方、被疑者、被告人の防御権に配慮する観点から、被害者の個人特定事項の場合と同様、被害者以外の者の個人特定事項について秘匿措置がとられる場合につきましても、被疑者に提示する逮捕状の抄本等や勾留状の抄本等に記載される被疑事実の要旨や被告人に送達する起訴状抄本に記載される公訴事実は、他の犯罪事実との識別ができるものでなければならないこととしておりまして、個人特定事項が知らされないとしても、被疑者、被告人にとって防御の対象が明らかになるようにしております。
また、起訴状抄本等を被告人に送達する措置がとられる場合でも、繰り返しになりますが、弁護人には個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して、起訴状の謄本、個人特定事項が記載されているものを送達することを原則としておりますほか、これ、そういった措置をとることによって防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、裁判所、裁判官は、被告人、被疑者又は弁護人の請求によりまして、個人特定事項を被疑者、被告人に通知する旨の裁判をしなければならず、不服があれば準抗告や即時抗告をすることができるという、同様の不服申立ての機会も十分に保障しているところでございます。
以上のとおり、本法律案におきましては、被害者の個人特定事項の場合と同様、それ以外の者の個人特定事項の秘匿措置についても、被疑者、被告人の防御権に十分な配慮をしているところでございまして、これが不当に害されることはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/22
-
023・古庄玄知
○古庄玄知君 憲法上、こういう身柄拘束に関しては憲法三十一条以下で規定されております。それで、三十一条は法律の定める手続によらなければならないと、三十三条は逮捕する場合には理由となっている犯罪を明示しなければならないと、三十四条は正当な理由がなければ拘禁されないと、三十七条は公平な裁判所の迅速な裁判を受ける権利を有すると、それから、刑事被告人は全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられなければならないというふうに憲法上はなっておりますが、こういう憲法の条文との整合性といいますかね、適正手続の保障を満たしているのか。
それから、被害者の特定事項を記載していない逮捕状が理由となっている犯罪の明示と言えるのか、それから逮捕、拘禁の場合の正当な理由に当たるのか、それから公平な裁判と言えるのか、それから迅速なと言えるのか、それから全ての証人に審問する機会を与えられるという、その辺に当たって合憲だと言えるのかどうか。ちょっとその辺についての法務省の見解を教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/23
-
024・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
結論におきまして、全て憲法上の要請を満たしていると考えております。
順番に御説明いたしますけれども、憲法三十一条による適正手続の要請を満たしているかどうかということでございますが、まず、審判対象の特定ということでございますけれど、本法律案には、起訴状抄本等を被告人に送達する措置をとる場合、起訴状抄本等に記載される公訴事実につきまして訴因を明示して記載しなければならず、訴因を明示するには罪となるべき事実を特定してしなければならないこととされております。その趣旨は、起訴状抄本に記載される公訴事実についてほかの犯罪事実と識別できることを確保するところにあり、仮にその識別ができない場合には、公訴提起の手続がその規定に違反したものとして、刑事訴訟法三百三十八条四号により公訴棄却の対象となると考えられます。
こうしたことに加えまして、これまで御説明いたしましたとおり、本法律案におきましては、被疑者、被告人の防御権に配慮した様々な仕組みを設けておりまして、通知を求める制度でありますとか不服申立ての機会ですとか、そういったことを保障しておりますし、また、検察官による証拠開示や裁判所による裁判書、裁判書きですね、の謄本等の交付等において、個人特定事項の秘匿措置は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合にはとることができないこととし、また、その秘匿措置が所定の要件を満たさないときは、裁判所は被告人又は弁護人の請求により秘匿措置を取り消さなければならないということにしております。
このように、秘匿措置がとられた場合におきましても審判対象の確定に問題を生じることはなく、被疑者、被告人の防御権の保障に配慮して不服申立て等の仕組みも設けているところでございまして、憲法三十一条の適正手続の保障との関係で問題は生じないと考えております。
また、逮捕などの際に理由となっている犯罪を明示するという憲法三十三条の要請を満たしているかという点でございますが、現行の刑事訴訟法二百条一項におきまして逮捕状に被疑事実の要旨を記載することとされておりますのは、御指摘の憲法三十三条の要請に基づくものであり、その趣旨が被逮捕者の防御権の保障にあるとされていることからいたしますと、逮捕状に記載される被疑事実の要旨は逮捕の理由を明示するに足りるもの、つまりほかの犯罪事実との識別が可能なものでなければならず、かつ、それで足りると解されます。
本法律案におきましては、これまで御説明いたしましたとおり、逮捕状等に、抄本等に記載する被疑事実はほかの犯罪事実と区別が可能なものでなければならないというふうな仕組みにしておりまして、そういった形で被逮捕者の防御権の保障という憲法三十三条の要請を満たしていると考えております。
また、秘匿事項を明らかにすることなく勾留できることが憲法三十四条前段による理由を直ちに告げられという要請を満たしているのかという御指摘でございますけれども、憲法三十四条前段が、何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されないということを定めている趣旨は、やはり防御権の保障でありまして、これも他の犯罪事実との識別が可能なものでなければならないということでございますが、この点につきましても守られていると考えていることはさきに申し上げたとおりでございます。
また、憲法三十七条に言う公平な裁判所でございますが、との関係でございますが、お尋ねのその公平な裁判所とは、一般に、構成その他においてへんぱのおそれなき裁判所、すなわち当事者の一方に不当にくみする裁判をするおそれのない裁判所という意味であると解されていると承知しております。
本法律案におきましては、裁判所は、起訴状抄本等を被告人に送達する措置によって防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求によって、これまで御説明したとおり、審査を行って、個人特定事項を被告人に通知する旨の裁判をする、それに、その際の裁判に不服があれば即時抗告をすることができるということで、本法律案において、中立の裁判所の取るべき対応として、被告人の防御権に十分配慮したものとしておりまして、三十七条一項との関係でも問題は生じないと考えております。
さらに、迅速な裁判、三十七条一項による迅速な裁判の要請を満たさないことになるのかということですが、この迅速な裁判は、一般に適正な裁判を確保するに必要な期間を超えて不当に遅延した裁判でない裁判をいうものと解されていると承知しておりますけれども、今回の秘匿措置の要件やその適否をめぐる手続につきまして、現行法上の他の制度と比較しても不当な遅延をもたらすものではないので、この要請にも反するものではないと考えております。
また、個人特定事項を明らかにされていない者に対する尋問に関して、憲法三十七条二項による全ての証人に対する審問権の要請を満たさないことになるのではないかという御懸念に関しましては、三十七条二項は、一般に被告人に審問の機会が十分に与えられない証人の証言には証拠能力は認められないと解されているものと承知しております。
もっとも、個人特定事項が明らかにされていない者について証人尋問が行われたといたしましても、反対尋問の機会が失われることにはなりませんし、仮に、その個人特定事項が、証人の個人特定事項が明らかにされないまま反対尋問をすることになると、信用性の判断に資するような利害関係の有無などの調査を行うといった防御準備が十分に行えない、そしてそのために実質的な不利益を生ずるおそれがあるということであれば、これまで御説明したような通知請求を行ったり裁判所がその旨の決定をすると、それを把握した上で、個人特定事項を把握した上で反対尋問を行うことができるということから、三十七条二項との関係でも問題は生じないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/24
-
025・杉久武
○委員長(杉久武君) 申合せの時間が来ておりますので、おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/25
-
026・古庄玄知
○古庄玄知君 はい。
いずれにしても、なかなか難しい案件ではありますけれども、実際の運用に当たりましては厳格に運用していただきたいというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/26
-
027・福島みずほ
○福島みずほ君 立憲・社民共同会派の福島みずほです。
先日は、名古屋入管と名古屋刑務所と視察をさせていただいて、本当にありがとうございました。
入管制度についてお聞きをいたします。
二〇一三年四月十八日、これジュネーブ時間ですが、国連人権理事会の特別手続である恣意的拘禁作業部会、移住者の人権に関する特別報告者及び宗教又は信条の自由に関する特別報告者が、二〇二三年政府提出の入管法改正案が、改定案が、二〇二一年から修正したものであっても、国際人権法に違反する旨の共同書簡を送りました。
これをどう受け止めているのか、話してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/27
-
028・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、御指摘の書簡が公表をされているということは承知をしております。
特別報告者や恣意的拘禁作業部会の見解は、国際連合又はその機関である人権理事会としての見解ではないと認識をしており、我が国に対して法的拘束力を有するものでもございません。このような共同書簡は、実は前回の改正法案提出時にも受け取ったわけでありますが、前回と同様、今回も、日本政府の意見を聞くことなく一方的に見解が公表されたというものであります。
その結果として、例えばですが、監理措置制度は、逃亡等のおそれの程度のみならず、収容により本人が受ける不利益の程度等も考慮して、監理措置に付すか収容するかを適切に選択する仕組みでありまして、社会的、経済的地位に基づく差別では全くないわけでありますが、監理措置は社会的、経済的地位に基づく差別であるなどと指摘しておりまして、入管法改正法案の内容を正しく理解せずに見解が公表されたものと考えているわけであります。
この点は、我が国から事前に改正法案について説明する機会があれば、立案の背景ですとか内容について正確に御理解いただけたのではないかと考えておりまして、一方的に見解を公表されたことにつきましては抗議をする予定であります。
いずれにいたしましても、現在、出入国在留管理庁において書簡の内容を更に精査をしておりまして、今後、誤認等に基づく指摘等を明確にして、改正法案の内容やその適正性について十分理解していただけるよう丁寧に説明を尽くしていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/28
-
029・福島みずほ
○福島みずほ君 大臣の答弁、極めて残念です。特別報告者は日本も参加している国連人権理事会から役割を与えられており、私人ではありません。この言われた中身の項目など、徹底的に、この国際人権基準を下回っているので、国内法、国際人権法の下での日本の義務に沿うものにするため、改正案を徹底的に見直すことを強く求めます。これ、正しいと思いますよ。
大臣、これは、去年十月に国際人権規約自由権規約において日本の人権状況が審査をされました。二日間において行われ、私もインターネットで二日間見ておりました。日本から法務省も多数行かれて、その質疑応答、ヒアリング、全部対話を行っています。その結果、十一月に総括所見が出されています。この総括所見、入管の部分、大臣どう受け止めていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/29
-
030・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 令和四年十月の自由権規約委員会の第七回対日審査における総括所見の御指摘だったと思います。そこでは我が国の入管行政に関し勧告等がなされているわけであります。
この勧告等では、収容施設での処遇改善計画の進展に関する情報があったこと、あるいは長期収容を回避するための措置を検討していることなど、我が国の入管行政における対応について一定の評価もされていると認識をしています。
勧告の主な内容はここで申し上げると時間の問題もあるわけでありますが、我々どもとしては誠実に対応しているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/30
-
031・福島みずほ
○福島みずほ君 この勧告、パラグラフの十九ですが、大臣、読まれました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/31
-
032・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) ちょっと、今突然何条どうかと言われても、それは答弁はちょっと難しいと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/32
-
033・福島みずほ
○福島みずほ君 この勧告は法務省に対するものがたくさんあります。入管法の改正案を国会に出していらっしゃるわけで、とても重要です。
この国連の勧告、読まれていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/33
-
034・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 重要であるからこそ、事前にいただければしっかりした答弁ができるということでありますし、私は目を通していますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/34
-
035・福島みずほ
○福島みずほ君 私が申し上げたのは、その十一月に国連の自由権規約委員会が出された勧告です。入管のことについても、これはノン・ルフールマン原則に対する、公正な手続に対するアクセスが保障されるべきだとか、外国人が不当な取扱いの対象とされないことを保障するためにあらゆる適切な措置を講ずる、様々あります。ここで言われた勧告は、今回共同書簡で出されたものとほぼ同じです。
何が言いたいかというと、これ、きちっと勧告を踏まえて、日本は国際人権規約自由権規約ももちろん批准しているわけで、憲法にのっとって条約は誠実に履行しなければならないというふうになっているわけで、その勧告について法務省は重く受け止めて、それを判断すべきなんですよ。
これ、十一月に日本弁護士連合会と法務省で交渉しました。その時点で、法務省の入管局、法務省は、この勧告をきちっと検討するって答えたんですよ。検討されたんですか。検討してこの入管法改正法案を出されたんですか。検討したのか、どういう検討をされたのか、この勧告を踏まえて。教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/35
-
036・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず申し上げたいんですけど、そのような網羅的な質問を事前に通告することなくここで質問されるということは、私は十分フェアなやり方だとは思えないということを指摘させていただきたいと思います。
その上で、人権規約委員会の、まず、それから、条約に関して我々は違反をしてはいません。それから、様々な勧告については意見交換をしながらやってきているわけで、その中で見解の相違があるということは、これは致し方ないものだろうと思っています。
いずれにしても、条約についてはきちんと守っているということは強調させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/36
-
037・福島みずほ
○福島みずほ君 いや、根本的なことをお聞きしているんです。
自由権規約委員会から勧告が出た、そこに法務省の役人も多数出席して議論をしているわけですよ、そこで、ジュネーブでやっているわけです。十分そこで法務省は認識しているわけです。勧告が出ました。その勧告を基に、日本弁護士連合会、市民団体、とりわけ日本弁護士連合会と意見交換、対話をやりました。そのときに、これは検討すると言ったんですよ。検討するのかと思っていたら、ほぼ同じような中身の入管法改正法案が国会に提出されたので、極めて驚いたんです。
大臣、大臣は十二月に大臣になられました。この入管法提出に当たって検討したんですか。国際人権水準に合っているか合っていないかどうか、国連の直前の勧告も踏まえて、党内で、大臣、議論したかどうか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/37
-
038・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 党内の議論について私がここでお答えすることは差し控えたいと思いますが、私は、この法案が大変重要な法案であり、そして与野党で大いなる議論になるし、大変私の立場も難しいものになるということを十分承知の上で、承知の上で、今この現状においてこの法案を通すことが私は日本にとっていいという決断をしました。その決断をするに当たって、もちろん法務省の事務方とも相当の議論を重ねてまいりましたし、それから、様々な国際機関からの指摘についてももちろん考えた上で私はこうやって提案をさせていただいているということであります。
そして、内容についてもし御議論をされたいのであれば、一つ一つちゃんと事前に通告をしていただいて、我々もそれについて真摯に答えますから、こういう形でのやり取りは私は余り生産的ではないと思いますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/38
-
039・福島みずほ
○福島みずほ君 省内で、今回、共同書簡については質問通告するというのは言っています。中身は一緒ですよ。国連の自由権規約委員会からの勧告と、それから今回、共同書簡で出た論点は同じものです。同じ指摘が、国際人権法に合致しないという指摘は同じものです。
とても基本的なことで、今回法案を出すに当たって国際人権法ちゃんと議論したんですか。省内で議論したとおっしゃったんですが、ちゃんと議論したかどうか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/39
-
040・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 議論していますし、その内容についてもしここで審議をしたいんであれば、事前に言っていただければ私もきちんと準備をして実りある議論になるように答弁できるので、是非お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/40
-
041・福島みずほ
○福島みずほ君 入管法の議論、あるいはそのほかのときにきちっと議論したいと思いますが、ただ、共同書簡が直前に出されて、これも極めて重要なものだというふうに思いますし、これ公開書簡ですので、このことに基づいて質問しなければならない。こういうのが出ているにもかかわらず、まだ入管法の見直しをしようとしない日本政府の立場は、国内外で批判をされているわけです。それは極めて問題だと思います。
是非、入管法、抜本的に見直すよう、今のをやっぱり取り下げて抜本的に見直すよう強く申し上げます。
先日、子供たち、外国人の子供たちの、例えば仮放免中の子供たちに対して特別在留許可を与えるかどうかについて、検討中だということをおっしゃいました。どうなっていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/41
-
042・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、お尋ねの件は今与野党の間で協議をされている事柄にもなっているということなので、その点についての所感は差し控えたいと思いますが、ただ、その上で、私、子供の問題についてはこれまでも真剣に考えてきたところでありますし、微力ではありますが、私に何ができるか今真剣に考えているところであるということは申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/42
-
043・福島みずほ
○福島みずほ君 是非、特別在留許可を与える、今でもできることですから、与え、かつ、これやっぱり家族の権利ということがありますので、子供だけ日本にいるわけは、できませんので、考慮してくださるようよろしくお願いします。大臣はこれについてはうなずいてくださったので、進展があると期待をしておりますので、よろしくお願いします。
次に、名古屋刑務所を視察したときに、受刑者から職員に対して何と言っているかで、この委員会で鈴木宗男議員が質問されました。先生、あるいは担当さん、あるいは職員さんと言っていて、自由だということだったんですが、先生という呼び名は、これはもうやめるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/43
-
044・花村博文
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
その前に、名古屋刑務所職員による暴行、不適正処遇事案につきましては、極めて重く受け止めております。誠に申し訳ございません。
その上で、委員御指摘のとおり、刑事施設におきまして、受刑者が職員のことを先生と呼んでいる場合や、職員が受刑者の名前を呼び捨てにしている場合があるものというふうに承知をしております。
刑事施設におきましても、社会一般の言葉遣いと大きく懸け離れたものとならないようにすることが望ましいところでありまして、今後の拘禁刑の導入も見据えまして、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰により資するため、受刑者から職員、職員から受刑者の呼び方などの言葉遣いを含めまして、受刑者と職員の関係の在り方についても問題意識を持っているところであり、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/44
-
045・福島みずほ
○福島みずほ君 是非先生というのはやめていただきたいということです。今、うんうんとまた言ってくださっていますが。
それから、職員から受刑者に対して呼び捨てだというのを聞いたんですね、ですから、名古屋刑務所で所長から。さんとか君とか付けないんですかと言ったら、暴力団にさんとか君とか付けることができますかと言われました。その言葉は、私は本当に驚きました。全員が暴力団ではない。それから、暴力団員の人こそ更生してやる、社会復帰ができるようにということこそ刑務所がやるべきじゃないですか。さんとか君とか付けることができますかと言って呼び捨てにするのは間違っていると。相手に対する、基本的な人間に対するリスペクトは必要だと思います。
君というのは、どうしても自分の、年齢が下とか目下の人に対して君とか使うので、やっぱりさんがいいと私は思います。小学校でも今、さん付けです。小学校でももう呼び捨てを先生はしません。ですから、是非、先生という看守に対する呼び名はやめること。担当さん、職員さん、あるいは名前で何々さんでいいと思いますし、受刑者に対する呼び捨てはやめるべきだと思います。さんがいいと思います。
それで、私は、この暴力団に対して君とかさんとか付けることができますかというのは、やっぱりこれ極めて問題だと思います。四割暴力団の人がいると報告受けましたけれど、全員じゃないし、さっきも言いましたが、暴力団員だったら呼び捨てでいいのかというのもまた全然違うと思います。社会復帰、要するに矯正局なわけですから、この点について是非検討してくださるよう強くお願いを申し上げます。
次に、代用監獄制度の問題についてお聞きをいたします。
これも国際人権規約自由権規約委員会から度重なる勧告が出ております。初めて規約人権委員会に行ったのは今から三十五年前、一九八八年、弁護士として行きましたけれど、これ、やっぱり国際的に批判をされている。これ、見直すべきではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/45
-
046・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えいたします。
我が国の刑事司法制度の下におきましては、刑事訴訟法で定められた期間内に、被疑者に対する証拠品の提示、取調べ等所要の捜査を迅速、適正に行う必要がございます。このため、全国的にきめ細かく設置されている警察の留置施設に被疑者を勾留することは現実的な方法であり、代替収容制度は重要な役割を果たしていると認識をしているところでございます。警察におきましては、被留置者の処遇を捜査部門とは組織的に分離された留置部門が行うこととするなど、組織上も運用上も捜査と留置の分離を図っているところでございます。
いずれにいたしましても、今後とも捜査活動と留置業務の分離の徹底を図るとともに、被留置者の処遇については、プライバシーや防御権の行使等、人権の保護にも十分配意し、万全を期してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/46
-
047・福島みずほ
○福島みずほ君 取調べをする側と管理する側が同じであるというのは、幾ら分離していますといっても、制度上は問題です。代用監獄廃止に向けて、新たにまた検討していただきたいということを強く要望いたします。
警察留置場における死亡事例について、十年間分、各都道府県別を出していただきました。年間三十人、四十人、二十人以上というか、亡くなっていらっしゃるということは分かりました。個別は分かりませんが、何とかその死亡事例を減らしていくための努力をお互いにしていきたいというふうに思っています。
例えば、二〇二二年十二月四日、愛知県岡崎警察署の留置施設で、勾留中の四十代の被疑者が死亡。発表された死因は腎不全。男性は延べ百四十時間以上にわたり保護室でベルト型の手錠や捕縄で手足を縛られていたほか、暴行もあったんじゃないかという報道もあります。この被留置者は統合失調症と糖尿病の持病があったが、留置担当は糖尿病の薬を飲ませておらず、医師の診断を受けさせていなかった旨も報道されております。
この岡崎警察署の死亡事例、どう把握していらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/47
-
048・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えいたします。
令和四年十二月四日午前四時三十五分頃、岡崎警察署留置施設におきまして、巡回中の留置担当官が、戒具を使用された状態で保護室に収容されていた男性に不自然に動きがないことに気付いたために、男性の状態を確認すると呼吸や脈拍がないことから、救急隊を要請して岡崎市内の病院に搬送いたしましたところ、同日午前五時三十七分、同病院において死亡が確認されたものと承知をしております。
本事例につきましては、令和四年十二月十三日、警務部長の下で調査体制を構築いたしまして、公安委員会の指導を受けつつ、現在も調査を進めているところでございます。また、調査過程におきまして刑罰法令に触れる可能性も認められたことから、同年十二月十六日、刑事部長の下で捜査体制を確立し、現在捜査を進めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/48
-
049・福島みずほ
○福島みずほ君 調査をされていることはいいと思うんですが、これ、第三者委員会でやるべきではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/49
-
050・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) 本事例につきましては、刑罰法令に触れる可能性などもあることから、現時点におきまして、同年十二月十六日に設置いたしました刑事部長の下での捜査体制で捜査を進めているところでございますので、現時点においてそのような別途の調査体制を設けるということは考えていないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/50
-
051・福島みずほ
○福島みずほ君 私は、今捜査中だからというのでなんですが、いずれ、少し時間がたてば、やっぱり第三者委員会による調査をやっていただきたいと思います。
二〇二二年十二月十七日、大阪府浪速署で勾留中の四十代の男性が死亡。浪速署に十二月十四日に逮捕、勾留された男性は、逮捕時に持病があったということがあるんですが、しかし、脈が確認できなかったため病院に搬送し、死亡が確認。この人の例はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/51
-
052・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えをいたします。
令和四年十二月十七日の午後三時四十八分頃、自傷行為等により保護室で収容されていた被留置者が、あおむけの状態で、呼吸音はあったものの胸の動きが止まったことから病院へ緊急搬送したものの、搬送先の病院で死亡が確認されたと、このような事例であるというふうに承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/52
-
053・福島みずほ
○福島みずほ君 新宿警察署の留置施設で、二〇一七年三月、ネパール人留置者のアルジュン氏が、朝の布団収納時のトラブルから保護室に収容され、戒具できつく拘束され、翌日、腰と手足首を拘束されたまま車椅子で検事調べに搬送されたと。そしたら、取調べ開始時に拘束を解かれた直後に死亡するという事件が発生しております。
裁判で明らかにされた保護室収容時の画像には、アルジュン氏がネパール語で、痛い、苦しい、旦那様許してくださいと懇願しているにもかかわらず、留置担当官始め署員十六名で取り囲み、戒具を装着する姿が映っていると。一審、三月十七日、東京地裁は、この警察留置が違法で、措置が違法であり、アルジュン氏の遺族の請求を認める判決が出ております。この例はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/53
-
054・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えいたします。
御指摘の事案は、平成二十九年三月十五日、留置担当官の指示に従わず激しく暴れたことから、被留置者を保護室に収容し、ベルト手錠及び捕縄を使用していたというものでございますが、その後、東京地検における検事の取調べ中に意識を失い、心肺停止となったため病院へ緊急搬送したものの、搬送先の病院で死亡が確認されたものというふうに把握をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/54
-
055・福島みずほ
○福島みずほ君 拘束具を解いた途端に亡くなったんですよね。ですから、手足を、いろんなところをきつく縛っていたことが問題ではなかったかと。刑務所は革手錠、廃止をいたしました。その縛り方も含めてやっぱり考慮されるべきだというふうに思います。
警察留置場における医療のことなんですが、留置施設には、非常勤も含め医師その他の医療専門員は配置されておらず、医療設備が存在しないということでよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/55
-
056・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えいたします。
留置施設におきましては、医師等の医療専門職員は常駐しておりませんが、刑事収容施設法の規定にのっとりまして、各留置施設ごとに民間の医師を嘱託医として委嘱し、定期健康診断を受けさせるほか、病状などに応じて民間の医師の診療を受けさせるなどして適切な医療の確保に努めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/56
-
057・福島みずほ
○福島みずほ君 法律二百条第二項で、被留置者に対して、おおむね一か月につき二回、管理者が委嘱する外部の医師による健康診断を行うと法律上はされています。しかし、健康診断の中身をお聞きしたら、血圧とか問診とかで、胸部レントゲン検査、要するに施設が全くないわけですから基本的にできないんですよね。ですから、結核がうつって、結核が蔓延している中で結核がうつって、結核で亡くなったという収容者もいます。それ、もしレントゲン検査をやっていたら、結核であることが早期に発見されたんじゃないかというふうに思っています。
刑務所の中における医療、入管における医療も本当に問題ですが、とりわけ警察留置場は、長くいるということを前提にしていないこともこれあり、医師がいない、非常勤もいない、基本的に看護師さんもいない、誰も医療関係者がいない、そして医療施設もないわけですね。ですから、適切な医療を受けずにまさに亡くなってしまうという例も本当にあると思います。
あるいは、これは去年の、去年亡くなった人が合計二十七名ですが、自殺が六名です。精神的な面も含めてのケアも必要ではないかと思うんですが、警察留置場における医療問題、改善はできるでしょうか。改善、必要性あるんじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/57
-
058・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えをいたします。
刑事収容施設法百九十九条でございますが、留置施設においては、被留置者の心身の状況を把握することに努め、被留置者の健康及び留置施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものと規定されております。
被留置者の健康を保持することは、その身柄を拘束している都道府県警察の責務でございます。被留置者の傷病等に関して適切な医療を提供することもその重要な一つであると認識しております。
引き続き、被留置者の医療に関して、その機会を適切に提供するなどして、刑事収容施設法等の法令に則して適正に運用してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/58
-
059・福島みずほ
○福島みずほ君 代用監獄を廃止すべきでないかという質問をいたしました。結局、医療は全くないんですよね。もちろん問診とかはあるけれども、医療施設がありません、ほかの施設のように。医者もいない、医療関係者がいない。ですから、とにかくきちっと医療体制もやるとか、やっていただきたいというふうに思います。今後、この点についても質問していきたいと思います。
次に、保釈の在り方について質問をいたします。
起訴前保釈を認めるべきではないか。それこそ、今日、三回目ですが、国際人権規約自由権規約委員会の十一月三十日の総括所見パラグラフ二十六、委員会は、自由の剥奪の当初から保釈の権利が認められていないこと、締約国が起訴前保釈の実施は不要であると表明していることに引き続き懸念を抱いている。起訴前保釈と申し上げていますが、ここで、パラグラフ二十六で言われているのは、自由の剥奪の当初から、逮捕のときから保釈の権利が認められるべきだと、こういうことを言っています。
この勧告をどう受け止めていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/59
-
060・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘は、令和四年十一月三十日付けの自由権規約委員会による我が国の第七回政府報告に対する総括所見に関するものと思われますけれども、その中で、我が国がいわゆる起訴前保釈制度を設ける必要性は乏しいと表明したことなどに対する懸念が示されているということは承知をしております。
この総括所見に先立ちまして、日本政府としては同委員会に対しまして、我が国においては、在宅捜査を原則とし、被疑者の身柄拘束は、罪証を隠滅し又は逃亡するおそれのある場合に限って行われている上、厳格な時間制限が設けられており、逮捕、勾留及び勾留延長の各段階で裁判官の審査が必要とされていること、また勾留取消しや勾留執行停止によって身柄拘束から解放する制度も設けられていることなどの起訴前保釈制度を設ける必要性が乏しい理由を御説明し、また、証拠をまさに収集している捜査の段階において罪証隠滅や逃亡のおそれのある被疑者を保釈した場合には、被疑者が罪証隠滅又は逃亡に及ぶことにより捜査に著しい支障を生じさせかねないことについて御説明をしたわけですけれども、これに対して十分な理解を得られなかったと考えております。
いずれにしましても、我が国の刑事司法制度について国際的な理解が得られますように、引き続き適切な説明に努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/60
-
061・福島みずほ
○福島みずほ君 今のは、被疑者の権利、自由の剥奪が問題だということではなくて、捜査の便宜じゃないですか。捜査するのに起訴前保釈は認められないという今の刑事局長の答弁は、全く理解されないですよ。全く理解されないですよ。
諸外国ではどうなっていますか。アメリカでは逮捕の段階で保釈が認められていると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/61
-
062・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
諸外国において身柄が拘束された直後に保釈等の身柄拘束を解くことを認める制度ということにつきましてお尋ねでございますけれども、諸外国の法制度を網羅的に把握しているわけではないので全てお答えすることは困難なんですけれども、例えば、アメリカにおきましては、逮捕後に遅滞なく行われる裁判官への冒頭出廷ということがあって、それの後には起訴前の被疑者も保釈の対象となり得ることとされており、ドイツにおいては、被疑者、被告人について、勾留状の執行よりも緩やかな処分で勾留の目的を達成すると期待すべき十分な理由があるときは勾留状の執行を猶予することとされているものと承知しておりますが、アメリカもドイツも我が国とは刑事手続が全く異なっておりまして、身柄拘束期間でありますとか、それに対する審査の仕組みも違っておりますので、それぞれの国の実情に応じて刑事手続は規定されるものと考えておりますし、我が国においては、先ほども申し上げましたけれども、身柄拘束について他国に比べてもかなり細かい段階で厳格な裁判所の審査を受けることになっており、また身柄拘束期間も他国に比べて短いものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/62
-
063・福島みずほ
○福島みずほ君 今言っていただきましたが、諸外国、早く起訴前保釈認めているんですよ。逮捕の段階で身柄を解放するということもやっている。ですから、さっきの捜査に支障があるからとかいうのは、全く、全く説得力ないですよ。国際人権法に全く合致していない。これ、是非検討してくれるように強く求めます。
資料お配りいたしました。
否認する者が自白する者より保釈が認められにくい、あるいは保釈を認められる段階が後の時期になってしまうというのがデータ上明らかになっています。
二〇一六年刑事訴訟法改正の衆参の法務委員会での附帯決議。改正法が度重なる冤罪事件への反省を踏まえて重ねられた議論に基づくものであることに鑑み、その施行に当たり、保釈に係る判断に当たっては、被告人が公訴事実を認める旨の陳述等をしないこと又は黙秘していることのほか、検察官請求証拠について刑事訴訟法三百二十六条の同意をしないことについて、これらを過度に評価して、不当に不利益な扱いをすることとならないようにすることなど、本法の趣旨に沿った運用がなされるよう周知に努めること、政府及び最高裁判所は特段の配慮をすべきであるという附帯決議が二〇一六年にされています。
しかし、このデータを最高裁からもらいましたが、やはり保釈、自白をしないと、否認しているとやっぱり認められないんですよ。勾留期間の後の方になっている。これ、問題ではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/63
-
064・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
まず、一般論として申し上げますと、権利保釈に関する刑事訴訟法八十九条には、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときなどといった保釈の除外事由が定められてございます。また、刑事訴訟法九十条には、裁判所が適当と認めるときに職権で保釈を許すことができる旨が定められてございまして、その際には、被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度などを考慮することとなってございます。
その上で、個々の事件における保釈の判断につきましては各裁判体の判断事項でありますけれども、罪証隠滅のおそれなどの保釈の要件につきましては、各裁判体において事案ごとの事情を勘案し、適切に判断がされているものと承知しております。
お尋ねの自白、否認の別でございますけれども、被告人が事実を否認していることのみによって罪証隠滅のおそれが認められるものではなく、それを含めた事案ごとの事情を勘案してされているものと承知してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/64
-
065・福島みずほ
○福島みずほ君 社説をお配りしましたが、これは、横浜市の化学機械製造会社で、これ起訴が取り消されたケース。一人は拘置所で体調を崩し、胃がんと診断されても保釈を認められず、その後に入院し死亡という、もう本当に会社にとってもひどいもので、無実の罪で長く自由を奪われ、会社の信用も傷つき、これ結局起訴が取り消されたケースですが、保釈が認められないんですよね。だから、六回目の請求でようやく保釈が認められたものの、拘束は三百三十二日間に及んだ。
そして、郵便不正厚生労働省元局長事件でも、起訴された四人のうち、検察官の筋書に沿った内容、虚偽の陳述書に、供述調書に署名押印した三人が起訴後速やかに保釈されたのに対し、罪を犯していないからこそ犯罪の嫌疑を否認し続けた元局長は、起訴から保釈されるまで四か月以上身体を拘束され続けた。
無実であればあるほど、否認すればするほど、保釈されないんですよ。これ、見直すべきじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/65
-
066・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
委員御指摘の人質司法といったことにつきましては、我が国の刑事司法制度について、被疑者、被告人が否認又は黙秘をしている限り、長期間勾留し、保釈を容易に認めないことによって自白を迫るようなものだというふうな御批判をされている場合にそのように称されておられるものと理解をしております。
しかし、次に申し上げますとおり、被疑者、被告人の身柄拘束につきましては、繰り返しになりますけれども、法律上厳格な要件や手続が定められておりまして、制度として人権保障に十分に配慮をしたものとなっております。すなわち、刑事訴訟法上、被疑者の勾留につきましては、捜査機関から独立した裁判官による審査が求められておりまして、具体的な犯罪の嫌疑があるということをまず大前提として、罪証隠滅や逃亡のおそれがある場合等に限って身柄の拘束が認められるという立て付けに我が国の刑事訴訟はなっております。
また、被疑者は、勾留等の決定に対して裁判所に不服申立てをすることもできます。また、起訴された被告人の勾留につきましてもこれと同様でございまして、罪証隠滅のおそれがある場合などの除外事由に当たらない限り、裁判所によって保釈が許可される仕組みとなっております。
その上で、一般論として、被疑者、被告人の勾留や保釈についての裁判所の判断は、刑事訴訟法の規定に基づき、個々の事件における具体的な事情に応じて行われておりまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/66
-
067・杉久武
○委員長(杉久武君) 答弁は簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/67
-
068・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 分かりました。
不必要な身柄拘束がなされないよう運用しているものと承知をしております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/68
-
069・福島みずほ
○福島みずほ君 いや、でも、データ、データは明らかに……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/69
-
070・杉久武
○委員長(杉久武君) 御静粛にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/70
-
071・福島みずほ
○福島みずほ君 あるいは、実例は、否認をしていると罪証隠滅のおそれがあるとして、無実であればあるほど出られないんですよ。袴田さんや様々な、私は冤罪だと思いますが、その問題に関して、とにかく長く拘束して自白を迫ってという、こういう問題がある。
だから、代用監獄制度も問題だし、起訴前保釈を認めないことも問題だし、今局長が人質司法と言って説明されましたが、まさに人質司法という形で出さないというこの制度を、やっぱり、そのGPS捜査以前の問題、GPSを装着するかどうかの以前として、人質司法のこの問題点、代用監獄、起訴前保釈がない、そして、このまさに否認をしていたら絶対出さないという、なかなか出さないという問題などを解決すべきだと思います。
保釈の条件なんですが、実際、例えば辺野古の新基地建設に反対していた人が逮捕されたときに、逮捕、勾留、で、保釈が認められるとき、関係者と会わないようにという保釈条件、関係者って誰というのが分からない。ほかの保釈例でもあります。
それから、これは関西生コン事件なんですが、組合事務所に行かないようにという保釈の条件。でも、その人、組合の専従なんですね。これ、労働基本権の侵害ではないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/71
-
072・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) 御指摘のような保釈の条件に関する事例があったことに関しまして、事務当局としては把握してございませんが、いずれにいたしましても、個々の事案における保釈の条件の適否についてはお答えを差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/72
-
073・福島みずほ
○福島みずほ君 組合事務所に行かないようにというのは労働基本権の侵害だと思います。
それから、検察官が、この関西生コン事件のときに、組合から離脱をするようにというふうに取調べの最中に言っているんですね。これは問題ではないですか。労働基本権の侵害じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/73
-
074・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 恐縮ですが、お尋ねは個別事件に関わる事柄でございまして、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
ただ、それを一般論として申し上げますと、取調べが適正に行われなければならないことは当然でございまして、検察当局においては、引き続き取調べの適正の確保に一層の意を用い、適正な捜査処理に努めるものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/74
-
075・福島みずほ
○福島みずほ君 では、一般論としてお聞きします。
労働組合員の人に対して取調べの最中に組合から離脱するようにと言うことは、明確に労働基本権侵害じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/75
-
076・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 一般論ということでお尋ねでございますけれども、具体的な事例を前提としてのお尋ねでございますので、ここで私がその当否についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/76
-
077・福島みずほ
○福島みずほ君 おかしいでしょう。ILOの関係者としてもこれはおかしいってみんな言いますよ。労働基本権の侵害です。と言ったことは事実なんですよ。そして、やっぱり、取調べのときにやっぱり労働組合から離脱するようにと言うのは、労働基本権の明確な、憲法上の権利の侵害です。やっぱり、そういうことをやるというのはやっぱり本当に問題だというふうに思います。組合への弾圧であり、労働基本権に対する侵害です。
次に、GPS装着についてお聞きをいたします。
私は、GPS装着以前に、その人質司法を変えるべきだというふうに思っています。
このGPS装着をやることで保釈制度は変わるんですか。保釈はより認められるようになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/77
-
078・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 委員がおっしゃっておられるのは本法律案における位置測定端末装着命令制度についてでございますけれども、このように現行法にはないこの制度を活用することによって目的としておりますのは、国外逃亡を防止して公判期日等への出頭の確保がより図られることが期待できると考えているからでございまして、その上で、保釈が許可されるかどうかということにつきましては、裁判所において個別の事案ごとに、逃亡のおそれの有無、程度に係る様々な事情を含めて、当該事案に係る事情を総合的に考慮して判断されることでございまして、この制度を導入したことが保釈の判断にどのような影響を与えるかについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにしましても、裁判所においては、この制度の趣旨も踏まえつつ、適切な運用がなされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/78
-
079・福島みずほ
○福島みずほ君 法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会第八回会議議事録で、弁護士会出身の菅野委員が、日弁連は、日本弁護士連合会は、二〇二〇年十一月十七日、人質司法の解消を求める意見書を発出していますと、で、GPSによる電子監視について議論されることになっておりますが、本意見書において、日弁連は、電子監視制度に関して、人質司法を解消し、被告人を原則として保釈する運用を実現することを前提として、身体拘束より制限的でない代替措置として検討されるべきとしているということを、発言を審議会でされています。そのとおりだと思います。
GPS装着を問題にする以前に、人質司法の問題を解決すべきだということを申し上げ、後日また質問をいたしますし、大臣、入管の、それぞれの、国際人権法に照らして、合致して、どういう検討をされたかについて、また逐一どうか論争させてください。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/79
-
080・杉久武
○委員長(杉久武君) この際、一言申し上げます。
答弁者におかれましては、質疑者の趣旨を体し、簡潔かつ明瞭に行うよう努めていただけますよう、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/80
-
081・佐々木さやか
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
日本の警察、検察に対する国民一般の、治安を維持する、また安全、安心を守るということに関しての信頼というのは私は比較的高いのではないかなと、そういう観点で、日々努力をしていただいている皆様には敬意を表したいなというふうに思います。
ただ、やっぱり今日、福島委員からもいろいろ御指摘ありました、やはり、何というんですかね、この刑事司法に関わる、まあ弁護人とかですね、また刑事司法の当事者になった方々からはやっぱりいろんなお声があるところでございまして、中でもこの身柄拘束に関することというのは、残念ながら実際に不適切な事例も幾つかあると。
そういうところから、やはり、何といいますか、ある種の不信感とか余り信頼できないというようなことが、何というんですかね、感じる方が一定程度やはりいらっしゃるというのは事実でございまして、やはりこの警察、検察、また裁判所も含めて、やはりそういう国民に対する、きちんとこの人権保障しているということなのであれば、説明をやはり努力をするということが私は重要ではないかなというふうに思います。
様々な事案についての調査等もされているということでございましたので、是非そういったことをしっかりと、非常に重要な問題ですので、きちんと調査をして分かりやすいように説明をする、情報開示をする、また今後の改善を行うということの努力を是非積み重ねていただきたいと思います。
今日の質問は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案ということで、今日は、その中のこの保釈若しくは勾留の停止に関して幾つか新しい制度を設けるということでありますので、そのことについてお聞きしたいというふうに思います。
私も、先ほど福島委員がおっしゃったように、今回こういった新しい制度がつくられるというのは、こういった制度を活用して、場合によってはこれまで逃亡等の、証拠隠滅等のおそれから保釈が認められなかった場合にも、こういう新しい制度を活用して認められるということもあるかもしれませんし、いわゆる人質司法という批判に対するやはり改善というところにつながってほしいなということを期待をしております。
そこで、まず報告命令制度についてお聞きをしたいと思います。まず大臣に、ここの報告命令制度、新設をされるということですので、趣旨を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/81
-
082・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 現行法の下では、裁判所は、保釈中又は勾留の執行停止中の被告人の生活状況等やその変化を直接把握できる機会が乏しい現状にあります。特に、事件が長期間にわたり公判前整理手続に付されている場合ですとか、事件が控訴審、上告審に係属している場合などにおきましては、その間被告人に出頭する義務がないことから、このような機会は非常に少ない状況にございます。
そのため、逃亡のおそれを適時適切に判断して、保釈又は勾留の執行停止の取消し等必要な措置を講ずることが困難となる上、実際に逃亡した場合にその事実を速やかに把握することさえできないということになりまして、結果として被告人の所在の把握が不可能又は著しく困難となり、その後の公判の審理等に多大な支障を生じかねないという課題がございます。
そこで、本法律案におきましては報告命令制度を創設をいたしまして、保釈中又は勾留の執行停止中の被告人の逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するため必要があると認めるときは、裁判所は被告人に対し、住居、労働又は通学の状況、身分関係その他の生活上又は身分上の事項を定期的に、あるいはそれらの事項に変更が生じたときは速やかに報告することを命ずることができると、そうした上で、報告命令違反があった場合には保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる、保釈を取り消す場合には保釈保証金の全部又は一部を没取することができる、こういうこととして、これらの事項を裁判所が適時に直接把握することができるようにしようとするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/82
-
083・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今おっしゃったこの運用が想定される場面として、公判前整理手続とか、被告人が余り裁判所に出頭する機会がないようなことを想定しているということでした。
ただ、大体その起訴されているような案件については、一定以上の罪は必ず弁護人も付きますし、そうなると弁護人と被告人との間の打合せというものは日常的にされておりますので、これまでも恐らく、そうした弁護人を通じて裁判所が何か把握したいなと思う場合にはできたのではないかなとは思います。ただ、それを制度として明文化するとともに報告義務を課すということでより実効性を図るという趣旨なのかなとは理解をしております。
今、大臣からも趣旨の中で、何というか、どういう場合を想定しているかというお話もありましたけれども、この報告命令制度に伴う裁判所からの報告を聴取する時期ですとか、それから内容等、この具体的な運用はどのようになるのかということ、これもお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/83
-
084・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
まず、報告すべき時期でございますけれども、報告命令を発する裁判所が適当と認める時期を指定するということになっておりまして、報告命令の際に、定期的なものとして一括して指定するということも、随時、その都度指定をすることも、いずれもあり得ると考えております。
また、報告対象となるその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項ということにつきましては、条文上例示しているもののほかにも、例えば交際、交友関係ですとか、身柄引受人や監督者との関係などが考えられまして、これも報告命令を発する裁判所が適当と認めるものを定めることになります。
また、報告させる方法でございますけれども、どのような方法で報告させるかについても、条文上、特定のものには限定しておらず、個別の事案ごとに裁判所が適当な方法を定めることになりますが、その方法として、出頭させることが必要と認めるときは、裁判所の指定する日時及び場所に出頭して報告することを命ずることもできると、これは法律上そのようにしております。
このように、本法律案においては報告命令制度における具体的な報告時期や報告内容などについて個別の事案ごとに裁判所が適当なものを定めるということにしておりまして、そのようにしている趣旨は、保釈等をされる被告人の事情は様々でありまして、そのことを前提として被告人の逃亡防止や公判期日への出頭確保という報告命令制度の目的を実現するためには、報告を命ずる裁判所におきまして、被告人の生活状況やそれまでの言動、公判手続の進捗状況等の個別の事情を踏まえ、事案に応じて適切かつ柔軟に定めることができるようにすることが必要かつ相当であると考えられるためでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/84
-
085・佐々木さやか
○佐々木さやか君 実際に始まりましたら、新しい制度ですので、やっぱり現場に混乱がないようにといいますか、この対象になった被告人については、様々、丁寧に裁判所の運用としてやっていただければなというふうに思います。
実際には、弁護人が付いていれば弁護人に連絡するのかなとか、被告人に直接連絡が行くのかなとか、あと、最初に、何というか、毎月何日に報告せよというようなことでもし決まった場合には、被告人にもいろんな方がいらっしゃいますので、それをちゃんとずっと自分で覚えて報告できるかどうかとか、それがもし違反したら即保釈が取り消されるというようなことであれば非常に重たいことでもありますので、実際の運用が開始されるまでには、裁判所の運用とはいえ、やはり法務省の方も、現場の混乱がないように是非丁寧に進めていただければと思います。
次に、監督者制度というものも創設をされるそうであります。この創設の趣旨について、まず御説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/85
-
086・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
従来から、裁判実務におきましては、保釈の許可等をする裁判所が、いわゆる身元引受人として雇用者や親族などから、被告人を監督したり公判に出頭させるということを誓約する旨の書面を出していただくことがあると承知をしております。
このような実務の運用は、被告人の逃亡の防止や公判期日への出頭の確保に一定の効果を発揮することが期待されておりますけれども、この身元引受人は、何らの法的義務も負わない事実上のものにとどまっておりまして、また、必ずしも被告人がその監督に服することを期待できる人が選ばれるとは限らないということなどから、被告人の逃亡を防止したりその出頭を確保する上で必ずしも十分なものとは言い難いという問題意識がございました。
そこで、本法律案におきましては監督者制度というものを設けまして、被告人との人的関係として、例えば被告人においてその者に不利益を負わせることとなることを避けようという心理が強く働くためその者の監督に服することを期待し得る関係性がある者など、裁判所が適当と認める者を裁判所において監督者として選任し、監督者に対して被告人と共に出頭することや所要の報告をすることを命じて監督者に義務を負わせ、これに違反したときは監督者が納付した監督保証金を没取し得るということにすることによって監督者による義務の履行を確保することとしているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/86
-
087・佐々木さやか
○佐々木さやか君 これも、今まで身柄引受人というものがあって、事実上運用されていて、それを法律上の制度にして実効性を図ろうという御趣旨なんだろうとは思います。
ですから、冒頭申し上げたように、それによってより保釈が認められる方向に働けばいいなと私は期待をしておりますけれども、他方で、何というか、実際にどういうふうに機能していくのかなとか、きちんと機能するのかしらというような心配も多少あるので、ちょっとお聞きしたいと思いますけれども。
今の御説明だと、そのこれまでの身柄引受人は、例えば、何といいますか、きちんと被告人がその身柄引受人の言うことを聞くかどうかとか、その身柄引受人に対して迷惑を掛けないようにしようというふうに思う者がちゃんと選任されていたかどうかという問題意識があるということでしたけれども、ただ、何というか、今まで身柄引受人というのは、家族とか職場の上司とか、そういう方が多かったですが、それと別に監督者として何かすごくいい人がいるかといったら、実際なかなかちょっと想像が私はできないんですけれども、結局やっぱり家族とか上司とかという方になるんじゃないかなと思うんですけれども、監督者として適当と裁判所が認める、その場合の具体的な要件等についても教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/87
-
088・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
先ほど申し上げたとおり、監督者制度の趣旨は、監督者として選任された方に監督保証金を納めていただいて、いろいろな義務を負っていただき、その義務の違反があったときにはそれが没取され得るということを背景としてしっかりと監督をしていただくということ、それによって逃亡防止と公判期日への出頭確保を図ろうとするものでございますので、適当と認める者に該当するかどうかというふうに裁判所が御判断されるに当たっても、被告人に対して実効的な監督をなし得る関係にあるのかどうか、それから、人間関係として、被告人側の気持ちとしても、その人に不利益を負わせることになったら困るというような心理がより強く働くために監督に服することを期待し得るような関係性があるかどうか、つまり、監督者側のそのお気持ちと、それから被告人側の気持ちと、そういったことを考慮することになると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/88
-
089・佐々木さやか
○佐々木さやか君 具体的な要件というところまで明確にはお答えはいただかなかったんですが、お答えの中で、監督者制度と身柄引受人の違いの一つとして、監督者自身が保証金を納めると、で、それを没取されるというプレッシャーがあるということでした。そうなると、監督者というのはやっぱりある程度の資力がある人、その保証金がどれぐらいの金額になるのか分かりませんけれども、これまではその保釈の保証金というのは被告人本人について恐らく判断していたんでしょうが、この監督者保証金というのはまた監督者自身の資力とかを考えてやるのかなとか、ちょっといろいろ疑問は湧いていきますけれども、恐らく、今の説明では、監督者というのは恐らく一定程度の資力がないといけないんでしょうと。それから、やっぱり人的関係もなければ、被告人を実際に監督することとか、被告人がこの人の言うことを聞こうということも思わないでしょうから、そうすると、私が申し上げたように、やっぱり家族とか職場の上司等がこの有力な候補なのかなというふうに私は理解をいたしました。
そうなると、ちょっと気になるのは、今までは、身柄引受人は、特段、その資力とか、そういったことは多分要件にはならなかったんですが、そうなると、監督者と身柄引受人、何というんですかね、身柄引受人よりもより厳しい条件になるのかなと、監督者の方が。そうなりますと、ちょっと質問が前後するかもしれないんですが、監督者を確保できなくて保釈が認められないという場合もあるかもしれませんし、監督者はちょっと難しいけれども身柄引受人であれば確保できるという場合もあるかもしれません。
なので、ちょっと質問を、五番目と六番目でお願いしていたのをちょっと一緒に聞きますけれども、それで、その監督者と身柄引受人というのはどう違うのかということ、それから、先ほど申し上げたように、監督者の方がより厳しい要件なのであれば、それが選任できずに保釈が認められにくくなるような懸念はないのかどうか、あと、その身柄引受人であれば確保できるという場合もあるでしょうから、今後の身柄引受人のこの運用ということも気になるんですけれども、ちょっとまとめて質問してしまったので多少答弁が長くても結構ですので、よろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/89
-
090・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) ありがとうございます。
お答えいたします。
まず、身元引受人と監督者との違いということでございますけれども、それぞれの性質は先ほど申し上げたとおりでございまして、まとめますと、監督者は、被告人と共に出頭するといったことなどにつきまして監督保証金の没取といった制裁の下で法的義務を負うのに対して、身柄引受人はそういった法的義務は負わない、また、監督者については、被告人がその監督に服することを期待し得る関係性がある者などが選任されるのに対して、身柄引受人については必ずしもそうとは限らないといった点で違いがございます。
監督者制度が施行された後におきましても、いわゆる身元引受人、身柄引受人の運用が禁止されるということではございませんので、監督者として選任されるのではなく身柄引受人となるということはあると考えておりますし、その場合、いわゆるその監督者ではない形での身柄引受人というのは、監督者と比べて、逃亡防止や公判期日への出頭確保の効果の点では比較すれば劣るということにはなりますので、裁判所においてはそのことを前提に保釈を許すかどうかを判断することになると考えられます。
しかしながら、この法律案におきましては、その監督者を選任することができる場合につきまして、裁判所は、保釈を許す場合において、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができるというふうにしておりまして、監督者を選任しなければ保釈が許されないという規定にはしておりません。ですので、監督者となり得る者が見付からないからといって、そのことで直ちに保釈が認められないということにはならないものと考えております。
その上で、保釈を許可するかどうかは裁判所において個別の事案ごとに様々な事情を考慮して御判断されることでございまして、監督者として適当な者がいないということがその保釈の判断を分けることもあるでしょうし、必ずしもそうとも限らないということで、ちょっとその予測的なことを申し上げることは難しいことを御理解いただければと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/90
-
091・佐々木さやか
○佐々木さやか君 最終的には裁判所が適切に判断してくださるというふうに期待はしたいと思いますが、やっぱり今の御説明を聞いても、何というか、これまでの身柄引受人、身元引受人に比べると、やっぱり監督者というのは法的義務を負うと。しかも、自らある程度高額な保証金を納付をして、場合によってはそれを没収されるということが明確になるので、ちょっと二の足を踏む方も恐らくいるだろうなと。身元引受人ならいいですよという方もいらっしゃるかもしれませんし。
そうなると、やっぱり、それほどの責任のある監督者という者を選任ができれば、そうじゃない場合はちょっと保釈難しいけれども、それほどのきちんとした監督者という者がいるんであれば保釈を許そうというような方向で是非運用をしていただきたいなというふうに期待をしたいというふうに思います。
それから次に、このいわゆるGPS、位置測定端末装着命令制度というものも創設をされます。これも、当初、どういう形になるのかなというふうに私も注視をしておりましたけれども、最終的には、基本的には海外への逃亡を防止するというようなことが主な目的になるというふうに理解をしておりますけれども、まず、この新たに制定をされます位置測定端末装着命令制度の趣旨ですとか、それから対象となる被告人の範囲、あと、どういう場合にこういった制度が活用されるのかということという意味から、実施件数の見通しとか、そういったところまで分かれば是非教えていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/91
-
092・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、位置測定端末装着命令をすることができる要件といたしまして、被告人が国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときとしております。
実際、この制度が施行された場合に、この命令をすることができる要件を満たす被告人がどの程度いるのかということでございますが、これは、保釈される者の数ですとか国外に逃亡するおそれのある者の数などに左右されます上、実際にどのような場合にこの命令をすることになるかは、やはり、恐縮でございますが、裁判所の個別の事案ごとの御判断ということでございまして、その件数の見通しにつきましてお答えすることは難しいんですけれども。
ただ、一方で、この命令を発することが想定される場合としてどんなものかと、国外逃亡のおそれということについて申し上げますと、例えば、被告人がその社会的地位や経済力などに照らしまして正規の手続によらずに国外に逃亡させることのできる組織を利用できるですとか、被告人の経済力や人間関係などに鑑みて我が国から離れて生活することが困難ではないなどの事情があって国外に逃亡してしまうおそれが相応に認められる場合には、位置測定端末装着命令がなされ得るのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/92
-
093・佐々木さやか
○佐々木さやか君 なので、これもちょっとこの運用が始まってみないとなかなか分からないところもありますけれども、少なくても法律の趣旨としては、当然ですが、必要最低限、このGPSの装着というのも、やっぱりプライバシーの侵害、まあいろいろ制度は考えていただいているみたいですけれども、そういう被告人の一定の利益を侵害するものですから、やっぱり必要最低限の場合にのみやむなく活用するものという立法趣旨というふうに理解をしております。
ですから、今もおっしゃったような、海外に逃亡するおそれが社会的な立場とか経済力とかいろいろなその周辺の人間関係なんかから一定程度認められる者が対象になり得るということですけれども、かといって、そういう人だから必ず全て付くということではなくて、その中でも特にそういう必要が、やむを得ない必要があるという場合に実施されるということなんでしょうから、恐らく実施件数というのは非常に少ないのではないかなというふうに私は理解をしております。
もう少しその具体的な要件等についてお聞きしたいと思いますけれども、この位置測定端末装着命令制度というのは、所在禁止区域というところに入った場合には、そういったところに入ることを禁止するものというふうに聞いておりますけれども、その具体的な範囲、どういうところを想定しているのかということも教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/93
-
094・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、裁判所が位置測定端末装着命令をするときに、飛行場又は港湾施設の周辺の区域その他の位置測定端末装着命令を受けた者が本邦から出国する際に立ち入ることとなる区域であって、当該者が所在してはならない区域、これを所在禁止区域として定めるということにしております。
これを具体的にどのように定めるかにつきましては、個別の事案ごとに裁判所が具体的な事実関係を踏まえて判断するということにはなるんですが、想定される典型的な区域といたしましては、国外と往来ができるような輸送手段やそのための設備のある飛行場や港湾施設とそれらの周辺の区域が考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/94
-
095・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今の御答弁からやはり明らかなのは、そういう人物が、被告人が海外逃亡を防止するという趣旨なんだと。ですから、その被告人が日頃何をしているかとか、ほかの方法で何か隠れたりとか国内での逃亡を図ろうとか、そういったことまで監視しようという趣旨ではないというふうに理解をしております。
気になるのが、やっぱり具体的にどんなような端末装置になって、その取付けとか、それから取り付けた後の管理、保守とか、その機器を装着している間の監視体制とか、どういった運用になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/95
-
096・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、位置測定端末の機能や構造の要件といたしまして法律で定めておりますのが、位置測定端末が装着された者の体から離れたことなどの事由の発生を検知するとともに、直ちに、かつ、自動的に、位置測定端末装着命令を受けた者にその旨を知らせる機能を有すること、また、人の体に装着された場合において、その全部又は一部を損壊することなく当該人の体から取り外すことを困難とする構造であることなどを定めておりますため、位置測定端末の仕様はこれらの要件をまず満たすものであることが必要でございます。
また、本法律案におきましては、装着方法について、その装着は裁判所の指揮によって裁判所の職員がするものとしておりますので、運用主体である裁判所の責務としております。
位置測定端末情報の閲覧でございますけれども、位置測定自体は本法律案の下で機械的、自動的に行われるわけですが、裁判所、検察官、司法警察職員等がその位置情報を常時閲覧することは許されないということを明記しております。
そして、裁判所、検察官、司法警察職員等がその位置情報を閲覧して把握することが許されるのは、所在禁止区域内への所在や位置測定端末が体から離れたことなどの遵守事項違反が検知された場合や、勾引状や収容状の執行によって身柄を確保する必要がある場合などに限定をし、必要最小限度の範囲内で位置情報を把握するということに、できるということにしております。
以上の点を含めまして、更なるその具体的な運用の在り方につきましては、この制度の運用主体である裁判所におきまして、刑事訴訟法を所管する私ども法務省のほか関係機関とも協議しつつ、制度の趣旨を踏まえて適切な検討がなされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/96
-
097・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ですから、二十四時間付けてはいるんだけれども、その監視というのは常に、常時監視しているわけではなくて、そういう禁止、所在禁止区域に入っていないかどうかと、そういう必要最小限の監視にとどめると。そういったことを様々検討して、被告人のプライバシーの問題等も侵害は最小限のものに考えていただいたんだと思います。
報道等を私も拝見をして、ある指摘としては、例えば、二十四時間付ける端末ですのでできるだけ目立たないものとか、何というか、充電はどうするのかとか、何かいろいろ細かいことも確かに気になりますので、円滑な運用がされるように、実際の実施までにきちんと様々な点について検討、準備をお願いしたいというふうに思います。
それから、他方で、こういった装置というのは海外ではもう運用も始まっているそうでありまして、そうした海外の例では、装置を不正に取り外したりとか、何というんですかね、破壊したりとか、そういったことも、そういう案件も報告されているということであります。ですので、いろいろと、何というか、遵守事項を定めたりはしているわけですけれども、やっぱり物理的にそういった不正というのは働くのではないかという懸念もありますので、そういった不正の防止への対応というのはどのように検討されているのか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/97
-
098・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のような不正への対処は重要でありまして、まず、本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を受けた被告人の遵守事項として、所在禁止区域内に所在しないことのほか、位置を把握する前提といたしまして、その位置測定端末を自己の体に装着し続けること、また、それを損壊する行為や位置測定通信に障害を与える行為などをしないことなどを定めておりまして、被告人がこれらの遵守事項に違反した場合、裁判所がそれら遵守事項違反の発生などを確認することができる機能を有する電気通信設備に信号が送信され、その発生を確認した裁判所は直ちにその旨を検察官に通知しなければならないこととしております。
その上で、このような違反を示す事由が検知された場合は、原則として、まず被告人を勾引いたしまして、その身柄を速やかに確保することができることとするとともに、遵守事項違反があった場合には、保釈を取り消し、保釈保証金を没取することができることとしております。
加えまして、位置測定端末装着命令を受けた者が、裁判所の許可を受けないで正当な理由がなく所在禁止区域内に所在する行為のほか、裁判所の許可を受けないで正当な理由がなく位置測定端末を自己の体から取り外し又は装着しない行為や、正当な理由がなくその端末を破壊する行為、損壊する行為などの遵守事項に違反する行為について罰則を設けて、一年以下の拘禁刑又は六月以下の拘禁刑に処することとしているところでございまして、このように、本法律案におきましては、位置測定端末を取り外すといった不正に対して、これを抑止し適切な対処ができることとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/98
-
099・佐々木さやか
○佐々木さやか君 そういった不正を防止する必要があるとともに、他方で、やっぱり機械ですから、何か故障とかで被告人の責めに帰すべき事由ではない形で異常が生じることもあるでしょうし、そういったことも恐らく弁護士、日弁連とか刑事弁護の関係者の皆さんからは様々な御心配があると思いますので、そういったところに対する丁寧な説明、御理解を得られるように努力をいただきたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/99
-
100・杉久武
○委員長(杉久武君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時五十一分休憩
─────・─────
午後一時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/100
-
101・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/101
-
102・梅村みずほ
○梅村みずほ君 日本維新の会の梅村みずほでございます。本日もよろしくお願い申し上げます。
本日は、閣法第四一号刑事訴訟法改正案の質問をさせていただきますけれども、今回の法案では、国外逃亡のおそれがある保釈中の被告に対して、裁判所の命令によって、位置測定端末、すなわちGPSを装着させることを可能とするものであります。そして、そのGPSを装着している保釈中の被告に対して、飛行場周辺などの所在禁止区域と呼ばれるエリアに入った場合には相応の措置がとることができるようになっているという内容が盛り込まれています。
まずは確認をさせていただきたいんですけれども、人へのGPS装着を義務付ける法律は我が国初であるという認識で間違いないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/102
-
103・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
全ての法制度について所管、把握しているものではございませんのでその点についてお答えすることは困難なんですが、法務省刑事局として把握しております限り、我が国の刑事手続においてGPS端末の装着の義務付けを法律上明文で規定するのはこの制度が初めてであると承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/103
-
104・梅村みずほ
○梅村みずほ君 局長からあくまで所管内での御返答をいただきましたけれども、私もいろいろ調べたところ、やっぱりそのGPS装着の法律というのは本邦初であるという認識でおります。
この法案というのは、二〇一九年末に発生した衝撃的なあのカルロス・ゴーン被告のレバノン逃亡事件というのが立法事実の一つとなっているかと承知しておりますけれども、この痛い教訓からも成立させるべきものだと私個人としても考えております。
一方で、被告のプライバシー侵害のおそれでありますとか、的確に逃亡を阻止できるのかというような点など、懸念点が皆無というわけではございませんので、何点か質問させていただきたく思います。
まず、このGPS装着といいますと、すぐに脳裏に思い浮かぶのが足にはめるタイプのGPSなんですけれども、どのような形状のものを装着するのか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/104
-
105・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) まず、本法律案におきましては、位置測定端末の機能や構造の要件といたしまして、さきにも御答弁申し上げましたけれども、位置測定端末が装着された者の体から離れたことなどの事由の発生を検知、直ちに検知し、かつ自動的に装着命令を受けた者にその旨を知らせる機能を持っていること、また、人の体に装着された場合において、その全部又は一部を損壊することなく当該人の体から取り外すことを困難とする構造であることといった法律上の要件がまずございます。
その上で、具体的な仕様につきましては現時点で決まっているものではございませんで、位置測定端末装着命令制度の運用主体である裁判所において、私ども法務省を含む関係機関とも協議をしつつ、適切に検討がなされるものと考えております。
その際、その形状等につきましては、位置測定端末が備えるべき機能、構造を前提といたしまして、どのような大きさ、形状、重さのものとなるか、また、今御指摘のありましたように、端末を装着していることが殊更に強調されるようなものにならないかなどの諸般の事情を考慮しつつ、裁判所において適切に検討がなされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/105
-
106・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
仕様はこれから細かい部分は決められていくのだと思うんですけれども、局長もおっしゃったように、他者から見えにくい場所というのは非常に重要であろうとも思います。余り目立つものであると、例えば銭湯に行ったとき、夏場で薄着になったときというのは人目に付くということもありますので。
一方で、私、大学時代のエピソードに遡るんですけれども、とある国に行こうとしたときに、気を付けてね、あそこは危ないからと、財布を手に持っていたら手首ごと持っていかれるような国だよと言われたことがあるんですね。ですので、こういったGPS装着というものも、もう必死になれば、凶悪な犯罪であればあるほど、自分の身体の一部を切り離したとしても逃亡したいという者も現れてくるかと思います。ですので、どこに装着するのか、どのように装着するのかというのは非常に重要な点でありますので、細かい仕様についても念入りにその検討をしていただきたいというふうに思っております。
続いての質問でございます。
こういったGPSを装着した保釈中の者が所在禁止区域の中に入ったときには、やはり逃亡のおそれありということで対応ができるようになっておりますけれども、所在禁止区域の具体的想定、まあ空港や港というものはすぐに想定できるんですけれども、そのほかにも思い描いていらっしゃるところがどんなところあるのか、お聞かせいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/106
-
107・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 本法律案におきましては、裁判所がその位置測定端末装着命令をするときに、飛行場又は港湾施設の周辺の区域その他の位置測定端末装着命令を受けた者が本邦から出国する際に立ち入ることとなる区域であって、当該者が所在してはならない区域を所在禁止区域として定めることとしております。
この場所をどのように定めるのかということにつきましては個別の事案ごとに裁判所が具体的な事実関係を踏まえて判断することとなりますが、先ほど委員から御指摘がありましたように、典型的には飛行場ですとか港湾施設またその周辺の区域ということで、そこは、具体的な場所をどのようにというのは今具体的に申し上げられることはございませんけれども、そういったところで、国外に出ていく可能性のある場所ということで指定していくことになるんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/107
-
108・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
飛行場や港を始めとして国外に出ていける場所ということで、ちょっと聞いておきたいのが、米軍基地も時にはこの所在禁止区域となるのかという点でございます。
日米安保体制を中核とする日米同盟関係というのはますますこの昨今の非常にシビアな安全保障環境にあって重要であることは言うまでもないと思っているんですけれども、一方で、米軍兵士による犯罪というのは事実としてこれまでもあり、これからも可能性としては排除できないところでございます。そういったときに、こういった軍の施設、軍の基地から逃亡ということも可能性としては排除できないと思っておりますけれども、逃亡リスクと捉えると対象区域となることがあるのかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/108
-
109・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 委員のお尋ねの趣旨は、位置測定端末装着命令を受けた者が国外逃亡の手段となる飛行機や船舶を利用できるような場所に日常的に所在しているようなときにどのように所在禁止区域を設定するのか、あるいは、勤務先の関係でそのような場所に立ち入らざるを得ない場合に、その場所を所在禁止区域として設定すると、保釈されても働くことができなくなるんじゃないかという問題意識からの御質問と理解をいたしました。
一般論として、先ほども、繰り返しで恐縮ですが、所在禁止区域を具体的にどのように定めるかは裁判所が個別の事案ごとに様々な事情を考慮して判断することとなるものでございまして、お尋ねの場合にその米軍基地が所在禁止区域とされることがあるかどうかについて一概にお答えすることは難しいということを御理解いただきたいと思います。
その上で、仮に所在禁止区域をどのように定めても国外逃亡を防止することができないというふうに認められる場合があるとすれば、その場合にはそもそもその当該被告人には保釈が適当でないということになるのだと思いますし、いずれにしましても、保釈の判断に当たりましては、対象者を適切に見極め、適切な運用がなされるということが重要であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/109
-
110・梅村みずほ
○梅村みずほ君 局長には問題意識を理解いただいて、非常にうれしく思います。
おっしゃるように、港湾、飛行場関係の仕事に就いていらっしゃる方もいらっしゃいますし、その自宅自体がそういった近辺にある者等もありますので、いろんな想定をしていただいて、そもそもこの人を保釈するのが適当であるのかどうかというところも厳しくチェックしてくださるということですので、是非とも御留意いただければというふうに思っております。
次の質問、損壊、取り外しの可能性については他の委員から質問がありましたので、割愛をさせていただきます。
このGPSの活用の今後の可能性についてちょっとお伺いしてまいりたいというふうに思っております。
三年ほど前に、当時の菅政権下で性犯罪者を対象にしたGPS装着というのも検討するというような報道を目にしましたけれども、今後、先例として今回非常に狭く国外逃亡のある保釈中の者という限定がありますけれども、門戸が開かれたということになりますと、様々な議論の展開というのが予想されてまいります。
特に、諸外国では既に実施されていますその性犯罪者、小児に対する、子供に対する性犯罪やその再犯の方々等は真っ先にそういった対象として検討される対象となるわけなんですけれども、日本での今後のそういった性犯罪等を始めとした犯罪者に対する展開の可能性についてお伺いしたく思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/110
-
111・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 今委員お尋ねの性犯罪者につきましては、今年の三月三十日の性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議におきまして、仮釈放中の性犯罪者等にGPS機器の装着を義務付けることなどについては、令和四年度までに諸外国の法制度、運用や技術的な知見等を把握するための調査を行ったところであり、その結果を踏まえ所要の検討を行うとされているところでございますが、一方で、今回の本法律案における位置測定端末装着命令制度につきましては、その装着を命ずる要件として国外逃亡を防止するため必要があると認められるときに限るということにしておりまして、これは、まずは、我が国の刑事手続におきましてはこういった技術を用いる装置を装着させて被告人の位置を把握するという制度が初めて導入するものでございますので、運用に混乱を生じないようにすべきであると。また、そのためには、制度の対象者の範囲は必要性が特に高く、運用に伴う困難も比較的少ないと考えられる者に限定することが適切であるということから、国外逃亡のおそれのある保釈中の被告人ということで限定しているところなのでございますが。
その上で、将来的な制度の在り方ということですけれども、今回導入する位置測定端末装着命令制度の運用状況なども踏まえながら、どのような者を対象とすべきかも含めて必要な検討を行っていくことになるんだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/111
-
112・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
今回のを基に今後の検討が様々なされていくんだろうというふうに受け取っております。この展開ということで考えますと、もちろんその犯罪を犯した者のみならず、時折問題になるのは認知症の方々ですね。家族の方からしょっちゅういなくなるのでGPSを付けたいというような御要望もあって、今もその衣服なんかに付けようと思えば付けられたりとか、様々な工夫のしようがあろうかと思いますけれども、こういった認知症の方々を始めとして、その罪、犯罪と切り離したところに対するそのGPS活用の可能性について、厚生労働省さんにお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/112
-
113・畦元将吾
○大臣政務官(畦元将吾君) お答えいたします。厚生労働省としてお答えいたします。
政府では、令和元年六月に関係閣僚会議で決定した認知症施策推進大綱に基づき、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の方や家族の視点を重視しながら、共生と予防の車の車輪とした認知症施策を推進しております。
認知症の方が住み慣れた地域の中で尊厳を守られ自分らしく暮らし続けることができる社会を実現するためには、御本人の意思を最大限尊重しつつ、認知症の方が安全に外出できるよう、地域の見守り体制や行方不明になった際の早期発見、保護の体制を構築することが重要と考えております。
このため、厚生労働省では、行方不明高齢者を早期発見できる仕組みの構築、運用、認知症高齢者に関する知識のあるボランティア等による見守りのための訪問等の取組について、市町村が行う地域支援事業の任意事業の対象としております。
市町村では、地域の実情に応じて、この仕組みの活用により、認知症高齢者が行方不明となった場合、市町村を通じてあらかじめ捜索協力の協定を結んだ関係機関に捜索協力を要請する仕組み、地域住民による見守りネットワーク等の構築、GPS等の位置情報のシステムを備えた端末の配布や購入費の助成などを実施しているものであります。
引き続き、認知症施策推進大綱に沿って、ICT技術も活用しつつ、認知症の方を地域で見守り支える枠組みを推進してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/113
-
114・梅村みずほ
○梅村みずほ君 本日は、畦元政務官にお忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございます。
GPSの端末を配布するというような取組が既になされているというふうに教えていただきましたけれども、結構この認知症の方々というのは、感覚がセンシティブになる方もいらっしゃって、何かを身に着けていることに対して非常にこだわりがあって、すごく嫌がられるということもあるというふうに私は承知しております。そうなると、これは人権問題だとか様々な議論も巻き起こるところでありますけれども、今後テクノロジーの進化によって小型化していくであろうGPSを体内に埋め込むという発想も当然出てきてしかるべき時代であります。
ここでお伺いしたいのは、法務省に再びお伺いしますが、体内埋め込み型のGPSについて、今回の法制度に絡めて導入をすべきだというような議論等は法制審でなされましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/114
-
115・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 法制審の部会におきましては、御指摘の点についての議論はなされなかったと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/115
-
116・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
この体内埋め込み型というものは、マイクロチップとGPSってまた違うものですので、マイクロチップだともう既に結構実用をされているものというのが世界に目を向ければあるわけなんですね。
本日の配付資料でございます。
こちらの資料は、国土交通省さんから出されているデジタルの活用による生産空間の維持・発展関連よりというような資料の中から、スウェーデンのデジタル化の取組事例が載せられているものです。
半分より下、御覧いただきますと、新たな展開というところで、マイクロチップの体内埋め込みというような項目がございます。特にスウェーデンで盛んに行われているのが、もう既に手のひら、手の甲ですね、にマイクロチップを埋め込んで鍵やクレジットカード、電車のチケットとして利用しているという形で、三千人ぐらいの方が利用されていると。二〇一七年の六月からは、スウェーデンの国有の鉄道会社が体内のマイクロチップを利用する車内チケット予約システムを導入しているということで、もう前回、前々回等の質疑でもテクノロジーの進化について私も申し上げたことございますけれども、高次のパーソナライゼーションの波というのが非常に急速に押し寄せているということを感じます。
そこで、今は、GPSというと、まだまだ充電も必要であるかと思いますし、サイズとしてもマイクロチップよりも大きなものであろうというふうに思っているんですけれども、今後はどんどん小型化されてくるであろうというのは想定に難くないところでございます。
そこで、経済産業省さんにお伺いしたいんですけれども、体内に埋め込めるぐらいのサイズの、あるいは技術の、GPSのこのテクノロジー、技術の発展について今どのような状況にあるのか、教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/116
-
117・門松貴
○政府参考人(門松貴君) お答えいたします。
体内埋め込み型のまずマイクロチップでございますが、先生御指摘のように、報道等によれば、既に海外では決済や個人ID等に活用がなされているものと承知をしております。また、人間の体内への具体的な埋め込み方法、これ様々ございますが、マイクロチップを注射器によって体内に埋め込むものも存在しているというふうに承知をしているところでございます。
ただ、体内埋め込み型マイクロチップは、基本的に電源が、先生もちょっと今お話もされましたが、電源がなくて、また記憶容量が限定的であって、さらに高度な情報処理を行うことができないようなものであると現状は認識をしておりまして、同時に、体外の外部の機器を用いなければ利用はできないというものではないかと思います。
先生御配付の資料のこちらにありますのも、NFCという、今使われているものでいえば、例えば交通系ICカードに使われているような、ああいうものであればこういう形になるのかなというのが現状だと思います。
GPSとして利用するような高度な通信を実現するようなマイクロチップ、これを体内に埋め込むというのは、現状では一般的に普及していないというふうに認識をしているというのが現状だというふうに認識をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/117
-
118・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
この技術の発展とともに今後どんなことができるようになるのかということも、こういった法整備に合わせて将来的な青写真を描きながら、今できる技術とその国民の理解とを総合的に判断すべき必要があろうと思っています。
私ども、スマホを使っていると、こう、ぶさっとコードを挿して充電するイメージがあったのが、最近ではぽんと特定の場所に置くだけで充電が始まったりということを考えますと、体内に埋め込まれたGPSを、じゃ、寝ているときに、その充電器の近くで寝ているだけで充電ができるであるとか、そういったことも十分に可能であろうというふうに思いますし、何が申し上げたいかといいますと、そんな犬猫じゃないんだから何かを埋め込むなんてというような形で抵抗のある方もいらっしゃると思いますけれども、今回も、その保釈される、保釈中の人が海外逃亡防止のために、マイクロチップじゃない、GPSを装着するとなったときに目立たない方がいいというふうになったわけですね。
やはり、罪を犯した方にも人権があるということで、できるだけ目立たないような形で、あるいは認知症のお話も今日お伺いしましたけれども、高齢者の方が、体に付けているのは嫌なんだよっていうふうにすごく拒否反応示される方もいらっしゃるので、そういう方にも抵抗なく、その方々の権利を守るためにそのテクノロジーの進歩というのをどのように取り入れていくかというのが必要だろうなというふうに思っております。
このGPSの体内埋め込みに関しては、厚生労働省の観点からもちょっとその規制に引っかかるところがあるのではないかというようなこともお伺いしていたんですけれども、その辺り、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/118
-
119・山本史
○政府参考人(山本史君) お答え申し上げます。
先生が今お尋ねのあった体内埋め込み型GPS機能搭載のマイクロチップでございますが、例えば薬機法との関係につきまして申し上げれば、このマイクロチップ、あるいはそれを埋め込むための注射器など、薬機法とどういう関係があるか、可能性はございますが、具体的に現時点でどのような製品であるかの詳細が不明であるため、この医療機器、薬機法におきます医療機器に該当するか否かを含めまして、現時点で判断することは困難であると考えております。
例えば、医療機器の該当性について申し上げれば、その判断に当たりましては、個別の事例に基づきまして、薬機法における医療機器の定義に該当するかどうか慎重に検討する必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/119
-
120・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
その薬機法上で、体内に埋め込むからには、医療機器に該当するか否かという議論が必要だというふうに教えていただきました。今後避けられない議論になってくるだろうなと思いますので、テクノロジーに置いていかれないように、その議論というのを先取り先取りしていただきたいなというふうに思っております。
ということで、そのGPSに関しては、プライバシーの問題もあって、リスクとベネフィットが双方にあるものと思いますけれども、ここで齋藤法務大臣にお伺いしたく思います。
今回、日本で初めてGPSの装着を義務付けるというような法律が成立、これ、この法案が通った場合にはするわけですけれども、GPS活用のリスクとベネフィットについて法務大臣の御認識をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/120
-
121・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) GPS端末を活用して、これを装着させた被告人の所在を把握することができるため、保釈中の被告人の逃亡を防止し、公判期日等への出頭を確保する、そういう効果は当然期待できるわけでありますが、一方、制度の仕組みによりましては、対象者にとって位置情報を継続して把握されることにもなり得るために、そのプライバシーを不当に制約しないよう配慮することも必要であるというふうに考えています。
こうした観点から、本法律案で創設する位置測定端末装着命令制度におきましては、裁判所が国外に逃亡するのを防止するために必要があると認めたときに限って装着を命ずることができることとした上で、位置測定自体は機械的、自動的に行われるものの、裁判所、検察官、司法警察職員等が位置情報を常時閲覧して把握できることとはしておらず、閲覧が許されますのは、所在禁止区域内への所在や、位置測定端末が身体から離れたこと等の遵守事項違反が検知された場合や、あるいは勾引状や収容状の執行により身柄を確保する場合等に限定するなど、その権利制約が必要最小限度のものとなるように配慮をしているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/121
-
122・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
この今の法案におけるリスクとベネフィットを主にお答えいただいたと思っておりますけれども、常時監視するわけではないという文言ありましたけれども、先ほども申し上げたように、例えば、これはもう腕を切り落としたとしても、足を切り落としたとしても逃亡しなくてはいけないとなったときに、GPS上と実際の保釈中の方が違うところにあるという可能性があったりだとか、いろんなところから今逃亡を図っているらしいよという情報が入ったときにはやっぱり閲覧をする可能性があったりとか、様々な可能性があるのであろうと思います。
いずれにいたしましても、そのリスクとベネフィットが隣り合わせというのは最先端のテクノロジーに限ったことではありませんので、慎重に検討しながらも、大胆に必要と思ったときには導入していくというのが、厚労分野においても、こういった刑事の分野においても重要であろうと思っております。
殊に性犯罪ですね。性犯罪を犯した者に対するGPSの装着というのはかなり外国でも例が見られるようになってきましたけれども、せっかくの機会ですので、少し私も、この性犯罪に対しては今国会でも議論がいろいろ今後なされるとは思いますけれども、非常に関心がありまして、性犯罪を犯した方は自分で自制が利かないと。アメリカ・テキサス州では、かつて、自分はもう再犯をしないという自信がないから去勢をしてほしいというふうに外科的な去勢というものを申し出て、実施をされたということがあります。
そして、最近では化学的な去勢ということで、テストステロンに作用するような薬物を利用して再犯を防止するというような仕組みもございます。こういった化学的去勢についての是非というものも日本でもっと盛んに議論されるべきでありますし、GPSもしかりであります。
GPSにしろ、その化学的な去勢にしろ、この性犯罪者というものは、基本的には性欲ではなくて支配欲であると、コントロール欲であるというような話も聞きますので、それが根本的な問題解決にはならないというような意見もありますけれども、GPS、化学的去勢等も含めまして、性犯罪者に対してどのような対応を取っていくのかというのを皆様と一緒に議論すべき、議論できる時間がまたあればなというふうに思っている立場でございます。
さあ、それでは、続いての質問でございますけれども、今回は性犯罪被害者を特出しして、その情報の一部を秘匿して手続を進めるということも内容に含まれているわけなんですけれども、先ほど防御権の侵害に当たる可能性があるんじゃないかと他の委員から御指摘もありましたように、本来開示すべき情報を秘匿するというふうになったわけです。
今回は性犯罪者を特出ししているわけなんですけれども、あっ、性犯罪被害者を特出ししているわけなんですが、性犯罪被害者以外に情報を秘匿すべきと考えられる対象者の想定について具体的に教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/122
-
123・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきまして、性犯罪の被害者以外で個人特定事項の秘匿対象となる者は次のとおりでございます。
まず、被害者としては、性犯罪以外でございますけど、犯行の態様、被害の状況に鑑みて、その個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、被害者等の名誉などが著しく害されるおそれや、被害者又はその親族に対する加害行為などがなされるおそれがあると認められる事件の被害者を対象としております。
具体的にどのような者がこれが該当するかは、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものではございますけれども、例えば、各都道府県の迷惑防止条例違反のいわゆる痴漢事件ですとか、あるいは、暴力団幹部による事件で被害申告をした被害者を逆恨みしており、当該暴力団の構成員から被害者に対して報復等がなされるおそれがある事件の被害者などが該当し得ると考えられます。
また、被害者以外の方でありましても、その方の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、先ほどと同じようなおそれがあると認められる者も対象としておりますけれども、具体的にどのような者がこれに該当するかは、やはり個別の事案ごとに具体的には判断されるものではありますが、例えば暴力団幹部の被告人が違法薬物を多数人に譲渡したような事案で、譲受人の氏名が知られると暴力団組織関係者から報復がされるおそれがある場合の譲受人などが該当し得るのではないかと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/123
-
124・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
非常に分かりやすい想定を教えていただいたと思っております。
今回の法案を成案に結び付けて閣法として出されるまでに、法制審の部会というのがそれぞれ、国外逃亡の件に関しては十四回、今回の性犯罪被害者に対する配慮的な法案については四回の審議で終了したということで、一部拙速過ぎるのではないかというような、特に後者ですね、御指摘もあった点についてはどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/124
-
125・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のとおり、本法律案のうち、被害者、刑事手続において被害者等の情報を保護するための法整備につきましては、四回ということで調査審議が行われて結論が出たわけですけれども、その部会では、第一回、第二回会議におきまして、法制審に対する諮問の際に示した要綱骨子に基づきまして、二巡、二回にわたって議論が行われた上で、第三回会議で要綱骨子の修正等について議論が行われ、第四回会議においてはそれらの議論を踏まえて示された修正案に基づいて更に議論が行われ、全体的に非常に活発に議論を行っていただいたと思っております。
このように、その四回ではございますけれども、この諮問に対する議論が尽くされたというふうに認められたことから、全ての委員、幹事が同意した上で部会としての意見の取りまとめが行われたものでございまして、拙速過ぎるという御指摘は当たらないのではないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/125
-
126・梅村みずほ
○梅村みずほ君 審議に当たって、基となるたたき台があるのかないのか、その他いろんな事情によって審議の回数が変わるというのは当然のことだと思いますし、私は、慎重ながらも、必要性のあるもの、論点が明確なものは速やかに審議を終局して法案にするというのが望ましいと思っていますので、今回のスピーディーさというのは大変良かったのではないかというふうに思っております。
翻って、残る時間も少ないんですけれども、私が毎回のように訴えております法制審の家族法制部会、現在二十五回を数えて、非常に議論というのがまとまり切れていないという印象がありますので、こちらについても速やかに議論終局させていただきたいなというふうに願いまして、本日の質疑、終了します。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/126
-
127・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合孝典です。
刑訴法の改正法案について審議に入らせていただきたいと思いますが、先ほど福島委員の質問のことでちょっと気になることがあったものですから、刑事局長に確認をさせていただきたいと思います。
関西生コンの件で、取調べ中にいわゆるその組合の脱退を繰り返し強要されたという話についてですが、事実関係も含めてこれ確認していらっしゃいますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/127
-
128・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 重ねてのお答えで大変恐縮でございますが、個別の事件について、係る事柄でございまして、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/128
-
129・川合孝典
○川合孝典君 事実関係についての確認ということなんですよ。先ほどそのことについて労働基本権の侵害といった御発言がありましたが、ただすわけではないんですが、労働基本権は、団結権、それから団体交渉権、団体行動権、この三権が労働基本権ということでありますので、今回の事例に関しては労働基準法七条の不当労働行為に該当する行為になるのではないのかということであります。
ここで個別の案件にということをお話をされましたけれども、事実関係がどうなのかということ。いわゆる司法判断に影響を及ぼすようなことには答弁は差し控えなければいけないことについて私は否定しません。しかしながら、ここは別に法廷ではございませんので、事実関係がどうなのかといったことについては、これは説明をする法務省には義務があると思っています。
これは労使関係の中で、仮に使用者側がそうした行為、いわゆる組合脱退、組合潰しに該当するような行為を行ったときには、これは労働基準法違反です。法律違反をするということを法務省は是としてやっているわけではないわけですよね。法にのっとって手続を取るといったことを考えたときに、このことについては調べるべきなんじゃないんですか、刑事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/129
-
130・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
お尋ねのその、関西生コン事件でよろしいんですよね、につきましては、現在控訴審が係属中でございまして、係属中の事件でございますので、その事件に関して何らかのお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。少なくとも、その審理の中で今委員が御指摘されたような御主張がなされたという、被告人からそういう御主張がなされたということは承知はしておりますけれども、それ以上のことについては、恐縮ですが、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/130
-
131・川合孝典
○川合孝典君 そこまでは把握はしていらっしゃるということですよね。要は、そういう訴えが被告からなされたということについての把握はされているということで。
これ、大臣に、質問ではないんですけど、聞いておいていただきたいのは、仮にこれが労基法、あっ、労働組合法七条のいわゆる不当労働行為に該当する行為であった場合に、労働委員会の調停だけでもこれは科料が発生するものであり、救済の手続を裁判所がもし認めた場合には、これは一年以下の禁錮、懲役も視野に入ってくるいわゆる不法行為です。したがって、ここで情報をどこまで開示できるのかという話は別にして、そうした行為が、取調べ上の必要性があるにせよ、法の番人が法を破って取調べを行うなどということがあってはいけないと思いますので、この点については是非内部で調べていただいた上で是正をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
では、当初通告をさせていただいた質問の方に戻りたいと思います。
私、既に多くの委員の先生方が様々な切り口から御質問いただいておりますので少しかぶる部分が出てまいりますが、極力かぶらないように質問させていただきたいと思います。
大臣にお伺いしたいと思います。
被疑者が逃走する事件というのが少なからず起こっておるわけでありますが、この逃走事件が発生している理由、それからそのことに対して法務省としての課題認識について、大臣にお伺いをします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/131
-
132・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 近時、保釈率が上昇傾向にあります。この十年余りで一〇%程度上昇している。その一方、被告人の逃亡等により保釈が取り消される人員が増加傾向にあるということであります。
逃亡事案が生じる要因というのは様々でありまして、そうした傾向の理由について一概に申し上げることは困難ではあるんですが、いずれにしても、実際に保釈中の被告人や刑が確定した者等による逃亡事件が相次いで発生をして、その結果、国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼というものが損なわれかねない事態が生じているという、そういう認識を持っています。
本法律案は、こうしたことを踏まえて、被告人等による逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するために所要の法整備を行っていきたいというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/132
-
133・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
次の質問なんですが、このいわゆる被疑者や被告の移送体制ということですね。逃亡をしないような移送体制というものがきちっと整っていないといけないと思うんですけど、この移送体制についてどのようになっているのか、これは刑事局長、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/133
-
134・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 保釈された被告人が逃亡した場合には、検察官の請求等により裁判所が保釈を取り消すことができることとされております。そして、保釈を取り消す決定があったときには、検察官の指揮により、具体的にその収容に関わる者としては、検察事務官、司法警察職員等が被告人を刑事施設に収容することとされております。
被告人を収容する業務につきましては、個別の事案ごとに対象となる被告人の属性や当該事案の性質などの様々な事情を踏まえて対処することになりますが、検察当局においては、迅速かつ確実な収容が実施できるよう、必要に応じて司法警察職員の協力を得るなどして適切な体制を構築しているものと承知しております。
具体的には、例えば、収容に困難を来す可能性がある事案であれば、高検が地検の収容を支援するなどして十分な収容体制を構築すること、また、早期に対処方針を策定して、収容に従事する職員の間で十分な打合せを行い、警察の協力を得る場合には十分な連携を行うことなどといった措置を講じることとしているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/134
-
135・川合孝典
○川合孝典君 今おっしゃった体制を取っていらっしゃった上で逃亡したということなのか、そうした問題が生じたことを受けて現在の体制になっているのか、そこをちょっと確認させてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/135
-
136・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のとおり、いろいろな事件がたくさんございまして、逃走事案が発生いたしましたけれども、発生する前から先ほどのような形で連携を取るように努めていたところではございますけれども、令和元年に逃走した事案が発生したということを受けまして、検察当局において、このような事態を繰り返さないために検証、検討を行いまして、検証結果を公表するとともに、最高検察庁から全国の検察庁に対して、収容体制の整備等に関して、事前準備の徹底ですとかマニュアルの整備、地方自治体等関係機関との連絡体制の構築などを指示をしたものと承知をしておりまして、検察当局においては、このような指示を踏まえて適切な収容業務の実施に努めているものと承知をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/136
-
137・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
だから、問題が生じたことを受けて改善の取組を行っていただいているということなわけですよ。今どうなっているのかということだけの答弁になってしまいますと、問題解決に向けてどうこれまで法務省が取り組んできたのかということを、聞いていらっしゃる方が御理解いただけません。したがって、別に法務省さんとしてアピールしていただく必要はないのかもしれませんけれども、要は、使用前、使用後、ビフォー・アフターでどうなっているのかということについてもきちっと国民の皆さんにも御理解いただけるような御答弁をお願いしたいと思います。
次の質問に行きたいと思います。
保釈の判断基準についてということなんですが、先ほど大臣の方から、保釈された者が逃亡する理由についてということでもう既に御答弁いただいておりますので、この質問を飛ばして次の質問に移りたいと思います。
これまで、保釈中の被告が逃走しても、いわゆる逃走罪に問われない事例があるんですね。なぜそうなるのか、どういった事例なのかということについて、法務省、御説明をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/137
-
138・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
現行の刑法九十七条の逃走罪の要件は、裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が主体で、その人が逃亡したときというふうに規定をされておりまして、保釈中の被告人については、仮に所在不明となった場合でも、拘禁された者という要件を満たさないので逃走罪は成立をしないということに現行なっております。
また、現在の刑事訴訟法においては、保釈中の被告人が所在不明となったり公判期日に出頭しなかったりした場合、保釈の取消しや保釈保証金の没取といった制裁はございますが、公判期日に出頭しない行為を処罰する規定はございません。
このような現行法における対応につきましては、保釈の取消しに従ってまた収容されることになるとしても、元の状態に戻るものにすぎず、保釈保証金を没取することができるとしても、納付したお金を放棄してでも逃亡する人もいるといったことに鑑みますと、被告人に逃亡を断念させるための抑止力としては十分でない場合もあって、新たに罰則を設けることによってその逃亡を防止し、公判期日への出頭等を一層確実なものとする必要があるという判断に至りまして、本法律案におきまして、保釈や勾留の執行停止をされた被告人が公判期日に出頭しない行為などについて罰則を新設することとしておりまして、保釈された被告人が召喚を受けても正当な理由がなく公判期日に出頭しないときは二年以下の拘禁刑に処するというような罰則を設けることとしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/138
-
139・川合孝典
○川合孝典君 拘禁されていない状態から逃げた場合には逃走罪に当たらないと。初めて聞いたときには、にわかに信じられなかったんですけど、大きな穴が空いていたということで、ここを穴を塞ぐための御対応いただくということについては前向きに私は捉えております。
次の質問に移らしていただきたいと思います。
保釈の判断について確認なんですが、裁量保釈、この運用上の判断の基準というものはどうなっているのか、どういった事例でいわゆる職権での保釈の判断を行っていらっしゃるのか、最高裁にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/139
-
140・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
裁量保釈につきましては、刑事訴訟法九十条に定めがございます。定めの内容としましては、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる旨定められてございます。
各裁判体におきまして、この規定を踏まえまして裁量保釈の許否の判断を行ってございます。事案ごとの事情を勘案し、適切に判断されているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/140
-
141・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。ちなみにこの裁量保釈、職権保釈した方の逃亡事例というのはありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/141
-
142・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) 突然の御質問で、ちょっとこちらで具体的なものを把握しておりませんけれども、逃亡した事案において裁量保釈事案だった可能性はあると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/142
-
143・川合孝典
○川合孝典君 済みません、急に言っても数字が出ないのは承知しておりますので、是非それちょっと調べていただいた上でまた御連絡いただければ有り難いと思います。
その上でなんですが、いわゆる保釈中に逃亡した方が逃亡した理由ですとか、その逃亡した方がどういう罪状でいわゆる収監された方なのかといったようなことについての情報というのは集約、最高裁ではされていますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/143
-
144・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) こちらも突然の御質問で、こちらで今手元では把握できてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/144
-
145・川合孝典
○川合孝典君 私自身のその問題認識なんですが、私自身は、できる限り適切な基準に基づいて保釈をするということ自体は実は前向きに受け止めているんですが、他方、その保釈の判断基準が曖昧になることで逃亡する方がたくさん出てしまうことが、またその保釈をするということに対する裁判所の判断が消極的な方向に傾いてしまうことを実は恐れているんですよ。
したがって、どういった罪状で、どういった方が保釈されて逃げているのかということについては、これは各裁判所が、地裁ということなのかもしれませんが、の方で判断をされたときに、やはりそういった情報について最高裁の方できちっと情報集約しておくべきなんじゃないのかなと思うんですが、その点についてどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/145
-
146・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
その保釈中の被告人が逃亡された場合に、その理由を裁判体が把握する方法が類型的に可能かというと、なかなか難しいのではないかと考えております。したがいまして、ひいては統計的に収集するのも難しいのではないかというのが現在の私の発想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/146
-
147・川合孝典
○川合孝典君 大臣にお聞きいただきたいんですけど、実はどういった判断基準で保釈をしたのかということについても全く把握していないんですよ、現状は。したがって、何らかの問題が指摘されて、その問題を解消をしていこうとするのであれば、その問題の背景に一体何があるのかということについては、やはり調査を行った上で分析を行う必要があると思います。
したがって、今やっていないということ、現状では難しいということなのは理解しますけれども、今後、いわゆる司法の、いわゆる裁判、裁判所の機能をより強化する、司法のサービスをより向上させるということを考えたときには、そういったことについても御検討いただいた方がいいと思うんですけど、是非その辺りのところもお持ち帰りいただいて御検討いただけませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/147
-
148・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
可能かどうかも含めて検討させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/148
-
149・川合孝典
○川合孝典君 次の質問に移ります。
刑訴法の八十九条の四号に定める、被告が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときにはいわゆる保釈しないという、いわゆる保釈六要件のうちの一つなんですが、この被告が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由とはどういうものでしょうか。これ、法務省さんに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/149
-
150・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
八十九条、刑訴法八十九条四号の被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときとは、一般に、証拠に対する不正な働きかけによって終局的判断を誤らせたり公判を紛糾させたりするおそれがあるときという意味であるというふうに講学上解されているものと承知しております。
具体的にどのような場合がこれに該当するかは、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものでございまして、一概にお答えすることは困難でございますが、一般論として申し上げれば、該当するかどうかの判断に当たりましては、罪証隠滅の対象や方法などを踏まえたときに、客観的に罪証隠滅の可能性があるのか、あるとしてどの程度なのか、あるいは、被告人に主観的な罪証隠滅の意図があるか、あるとしてどの程度かなどを具体的に検討しなければならないと解されているものと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/150
-
151・川合孝典
○川合孝典君 そのいわゆる基準というか、判断を行う上での基準というものは、これは法務省さんの中で共有されているものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/151
-
152・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 保釈の、恐れ入ります、保釈の判断に関しましては、裁判所が御判断されるもので、検察庁は意見を、検察官は意見を聴かれてお答えするという立場でございますが、今私が申し上げたことは公刊物等にも、解釈本として載っていることでございますので、共有されていると承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/152
-
153・川合孝典
○川合孝典君 法務省さんが判断された上で裁判所の方に要は御連絡を入れていただくという意味で、最終的に判断するのはもちろん裁判所ということ、このことは承知しているんですが、その相当な理由というのが、人によって相当な理由の判断基準が違うんじゃないのかなというふうに思っておりまして、もちろんそれ、明文化できる、どこまでその基準を明示的に示すことができるのかということについては慎重に検討しなければいけないんですけれども、いわゆる保守的に判断をし過ぎることが結果的に適切な保釈の判断につながっていないことが十分に可能性としてあるわけでありますので、この辺りのところのいわゆる判断基準といったようなものについても、具体的な、できるだけ個別具体的な判断基準を共有するべきだと私は思っております。
大臣、聞いていただいて、何度も首縦に振っていただいておりますので、是非その辺りのところについても一度御検討いただければ有り難いと思います。
時間の関係がありますので、最後にもう一問だけ質問させていただきます。
刑訴法の九十一条に定める義務的保釈というものがございます。勾留による拘禁が不当に長くなった場合について義務的保釈を行うことができるということになっておりますが、最高裁さんにお伺いします。実際に義務的保釈の運用実績というのはありますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/153
-
154・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
刑訴法九十一条一項に基づく保釈についてのお尋ねでございます。
地方裁判所における通常第一審において、平成二十四年から令和三年までの十年間に同項に基づく保釈がされた被告人の数は、延べ十三名となってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/154
-
155・川合孝典
○川合孝典君 ほとんどいらっしゃらないと、何年かに一人出るか出ないかということなわけですよね。
ちなみに、この義務的保釈を行う上で、何を根拠にして勾留による拘禁が不当に長くなった場合という判断になっているのかというのは、これも個別事例なので一概にはという、お答えがという話に多分なるんだろうと思うんですけど、不当の判断を、要は、が果たしてこの十数年間の間で十三人しかいないということを考えたときに、その判断基準というものが果たして適正なのかどうなのかということについて、正直ちょっと私は疑問を感じておるんですけど、その辺りのそのいわゆる不当に長くなったの不当というものをちなみに一般論としてどう判断されているのか、これだけちょっと質問させてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/155
-
156・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
その点について、個別具体的な事案を現時点で把握もしておりませんし、私の方から判断基準について一般論にしても申し上げることは差し支えるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/156
-
157・川合孝典
○川合孝典君 これで終わりたいと思いますけれど、この場は法廷ではなくて、法律を改正する上で、要は疑問を少しでも解き明かして、議論を行って、物事を、いい法律を作ろうとするために我々は議論していると思っておりますので、法廷でやり合っているような御答弁は最大限控えていただくよう申し添えさせていただきまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/157
-
158・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、刑事訴訟における被害者や事件関係者の個人特定事項の秘匿の問題についてお尋ねをしたいと思います。
まず大臣に、現行法の下での運用の意義あるいは趣旨について先に確認させていただきたいと思うんですけれども、お手元に、まだ大臣のところには届いていないみたいですが、法務省、ああ、それですね。法務省といいますか、検察庁で今年の三月に発行ということですけれども、「犯罪被害者の方々へ」という、「被害者保護と支援のための制度について」というパンフレットから一ページ抜かせていただきました。
というのは、犯罪被害者をかつて証拠としてしか扱わない、だから、被害の発生時から到底被害者の尊厳を尊重したものとは言えないような取扱いが、これは警察においても検察においても、それから裁判においてもされてきたではないかと、厳しい批判の中で、この間、この被害者保護の法改正や運用がなされてきているわけですよね。
御覧いただいているページには、証人への付添い、あるいは証人の遮蔽、あるいはビデオリンクが紹介をされていますけれども、つまり、証人尋問に当たっての遮蔽措置というのは、刑訴法の二〇〇〇年改正で法定されました。法廷と別室をつなぐビデオリンクでの尋問もこのときにされ、かつ、被害者などからの申出によって、被害者特定事項、今回の法案でもその言葉が使われているわけですけど、氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにしないという、こうした法改正は既に二〇〇〇年代にされています。今申し上げた公開の法廷で明らかにしないというのは二〇〇七年の改正ですよね。
その後、二〇一六年の改正で、この公開の法廷で明らかにしないという決定を証人や鑑定人などにもできるようにすると、かつ、ビデオリンクの証人尋問を裁判が行われている裁判所とは別の裁判所でも行えるようにする、かつ、証人や証拠書類、証拠物閲覧の際に個人特定事項を被告人に知らせないという条件を付して弁護人に開示すると、今日午前中、古庄委員の質問に松下局長お答えになっておられましたけど、そうした改正もこの二〇一六年に行われてきました。
これらの改正とその下での運用というのは、当然のことですが、被害者を刑事裁判上保護しようという趣旨のものだと思いますが、大臣のその被害者保護への認識や思いも含めてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/158
-
159・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 被害者等の方々が被害から回復し平穏な生活を取り戻せるよう、被害者等一人一人に寄り添ったきめ細やかな支援を行うことが必要であることはもう当然のことだと私思っておりますし、それに加えまして、刑事手続の過程において、被害者等の方々が再被害を受けたり、その恐怖、不安を抱いたりすることがないように、制度上も運用上も適切な配慮がなされることが非常に重要であると認識しております。
今回の法改正案も、こうしたことを踏まえて、被害者等の氏名等の情報を保護するために所要の法整備をしたいというものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/159
-
160・仁比聡平
○仁比聡平君 大臣のおっしゃるとおりで、おっしゃるとおりというのは、つまり、犯罪被害者、特に性犯罪被害者の個人特定事項が加害者に知られることで、報復だったり、あるいは名誉、平穏な生活への加害、侵害、あるいはそうした加害を受けるのではないかという不安そのものが、被害申告や法廷での証言をためらわせたり、その中での被害者の強い葛藤、この被害者と言っているのは家族なども含みますけれども、その葛藤によって被害者が傷つけられるという、そうしたことがないようにということは私も一貫して求めてきたことなんですね。そういう意味で、刑事裁判における被害者保護というのは重要だという認識は、とりわけこの二〇〇〇年改正以降、法曹関係者の中で共有されてきていると思うんですね。
ちょっと通告されていないともしかしたら局長おっしゃるかもしれないけど、そうしたこれまでの運用の中で、今回の法案の起訴状、この起訴状に被害者の氏名、もちろん住所は記載しないということは現行法でも可能だし、やられているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/160
-
161・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のとおりでございまして、現行法の枠内でもそれは可能であるという考え方を取りまして、例えば、被害者の名前を書く代わりに、誰、どんな人に対する犯罪であるかということが特定されていればいいという考えの下に、親御さんのお名前を書いてその方の続き柄を書く、誰々の長女とかというような形で書くとか、あるいはLINEでやり取りしているハンドルネームだけしか分からない人であれば、何々においてハンドルネーム何々と名のっている方とかという形で、被害者の名前を特定するというような形での運用上の工夫は行ってまいりました。それが裁判所に認めていただいた例もございました。
しかしながら、現在の裁判実務においては、このような運用上の措置というのは、解釈上、再被害のおそれが高い場合でないと、限定的にやるべきだというような考え方が取られておりまして、どのような場合に秘匿できるのかというのが法律上明確ではないということで、被害者の氏名等の情報を十分に保護することができるとは言えないというのが現状でございまして、それで今回の法案を御提案するに至ったという流れでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/161
-
162・仁比聡平
○仁比聡平君 今お話しのように、既に被害者の名前が起訴状に書いてある裁判でも、公開の法廷でそれを朗読しないと、そこは、名前は言わないという扱いはできるんですよ。かつ、そもそも検察官の判断によって、被害者の名前を書かない起訴というのもできるようになっていると。つまり、それは検察官の言わば判断ということだと思うんですが。
とりわけ、性犯罪において加害者が被害者と面識がないと。多くの性犯罪の場合面識があるんですけれども、だけれども、もちろんないケースもたくさんあって、面識がない、だから被害者がどこの誰かは知らないという加害者がこの裁判手続によって被害者を特定してしまうと。そのことによって恐怖が生まれるということだけは避けてほしいというこの被害者の思いというのは大変よく分かると思うんですよね。
こうした起訴状で被害者氏名を匿名にした事件の数あるいは起訴状の数のようなものというのは、これ、法務当局としては、把握して私たちに教えていただけるものか。
加えて、今もちょっとお話ありましたけど、それでは、起訴状、公訴事実、訴因が特定されていないじゃないかということで求釈明の争いになったりして、つまり防御権が実質的に争点になったようなケースというのは把握しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/162
-
163・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) まず、一つ目のお尋ねの点でございます、そういうことをした件数を把握しているかという点でございますが、大変恐縮ですが、その件数を網羅的に把握しているものではございませんで、そういう工夫をしたのが何件なのかということをお示しすることは難しいのでございまして、そこはちょっと御理解いただければと思います。
一方、そういうふうにその起訴をしたけれども、それがその裁判所において認めていただけずに、裁判所において、その起訴状の公訴事実はできる限り罪となるべき事実を特定しなければならないとなっているわけですが、そのできる限りというのは、その被害者の名前が分かっているのであればそれを特定するべきだというような御判断の下に、このままですと公訴棄却になって、その訴因が特定されていないということで補正を命じられるといったようなことがあったということは、事例があったということは承知をしておりまして、それで、その被害者の名前が出なければならないんであるとすると、これ以上協力はできないということで、公訴を取り消したということがあったということは承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/163
-
164・仁比聡平
○仁比聡平君 つまり、ちょっと難しい法律の理屈の議論にもなりましたけれども、こうした被害者保護の改正とか運用の経過から明らかなとおり、氏名や住所というのは人を特定する最も明確な要素ではあるんですけど、それがなければ特定できないかというとそうではないと。きちんと特定をされ、かつ多くの場合、被疑者、被告人が事実を認めていて、被害者に対してそんな悪い思いを持っていないようなケースにおいては、被害者の不安や恐怖をなくすためのこうした取組というのはおおむね問題のないケースが多いだろうなとは思うんですよ。問題は、否認事件においてこの被疑者あるいは事件関係者の個人特定事項が重大争点になる場合なんじゃないかなと思います。
法案は、検察官のその勾留請求以降の段階では、逮捕のときは異議申立てができないことになっていると思いますけど、勾留請求以降の段階では弁護側が、あるいは被疑者、被告人側が秘匿決定を裁判上争えることとする。で、被害者、関係者の保護と防御権の保障の考量判断、これは裁判所にこれを委ねるという、おおむねそういう仕組みになっているんだと思うんですが、その点まず、局長、それでいいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/164
-
165・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お尋ねのとおりでございまして、本法律案におきましては、勾留、公訴提起及び証拠開示、まあ証拠開示ないのもあるんですが、各段階の個人特定事項の秘匿措置について不服申立てにより争う機会を設けることによって被疑者、被告人の防御権を保障しておりまして、その争う手段は裁判所に申し立てて裁判所に御判断いただくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/165
-
166・仁比聡平
○仁比聡平君 その制度の下で、条文が大変読みにくいのですけれど、お手元に三枚目以降、今回提案されている条文、二百七十一条の二以降が、起訴状に関わる条文ですけれども、そこを御紹介をしました。
私が特に気になっていることを申し上げますと、次のページの二百七十一条の三、どういう場合にこの被告人、弁護人に対して個人特定事項が秘匿された抄本が送られるのか、送達されるのかと。
その二百七十一条の三の三項、御覧いただいたらお分かりですが、検察官が特に必要を認めるときということなんですよね、検察官が特に必要を認めると、弁護人にも個人特定事項は秘匿された起訴状抄本が送達をされます。検察官がそうした起訴をすれば、その四項にあるように、裁判所は、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状抄本等を送達しなければならないというふうに義務付けられています。
これに対して、弁護人が、被告人が、弁護人が争うというのが二百七十一条の五に、次のページですけど、規定されている、今日、局長は通知請求という言葉でおっしゃっている条文ですよね。
私が気になるのは、それの二項なんですよ。この二項というのは、被告人だけじゃなく弁護人にも抄本が送達されている場合、検察官が特に必要と認めて、弁護人にも教えちゃならないということで、そうした措置がとられているときに、次のいずれかに該当するとき、裁判所が、被告人、弁護人の請求により、弁護人に対し、個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して、全部、一部を通知するという決定をする。
つまり、検察官の判断で抄本が送られてきているときに、弁護人にもこうした条件抜きには開示がされない、これはそういう仕組みですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/166
-
167・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のとおりでございまして、本法律案におきましては、裁判所は、起訴状抄本等を弁護人に送達する措置、すなわち弁護人にも秘匿するという措置がとられた場において、その措置によって被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、被告人又は弁護人の請求によって、弁護人に対し、御指摘のような、その被告人に知らせてはならないという条件を付して通知する旨の決定をしなければならないということにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/167
-
168・仁比聡平
○仁比聡平君 つまり、裁判所が、全く知らせないと被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると、そのことを認めて開示するときも、弁護人には教えるけれども被告人には絶対に教えちゃ駄目ですよという、そういう仕組みなんですよね。
これが、その起訴状だけの話ではないというのが、次に私がとても気になるんですが、次の条文、二百七十一条の六の二項なんですけれども、これは今申し上げているような場面において、訴訟に関する書類、これは裁判の証拠として扱われる調書などが含まれると思います、それから証拠物、これを弁護人が刑訴法に基づいて閲覧し、謄写をするに当たって、当該個人特定事項が記載され若しくは記録されている部分の閲覧若しくは謄写を禁じることができる、なっていますよね。禁じることができる。被告人に知らせてはならない旨の条件を付したり、あるいは知らせる時期や方法を指定することができると、指定して開示するということもできるんだけれども、禁ずることもできると、裁判所が。
だから、弁護人にとってみると、検察官の判断によって、弁護人にも個人特定事項が伏せられた抄本が送られてきて、これを防御できないじゃないかといって争って、そうですねといって裁判所が認めるんだけれども、だけれども、その際にも閲覧さえ禁止される。コピーできない、謄写ができないというだけじゃなくて、閲覧も禁じられるという、こういう仕組みだと思うんですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/168
-
169・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) まず、先ほどの御指摘の、弁護人に最初抄本が送られて、それに対して通知請求を行って、弁護人には通知がされますと、で、被告人には教えてはならないということになるという決定が出るということは先ほど御説明したとおりなんですが、そこでとどまるものでもございませんで、弁護人には被告人に知らせてはならないとの条件付で個人特定事項が通知された場合でも、当該措置によって被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるんだというときには、被告人又は弁護人の請求によってまた改めて請求をし、そしてその裁判所において判断をした上で、当該措置に係る個人特定事項の全部又は一部を被告人に通知する旨の決定をしなければならないと、これは改正法の二百七十一条の五第一項第二号でございますが、これによって被告人が個人特定事項を把握し得るという仕組みにはなってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/169
-
170・仁比聡平
○仁比聡平君 裁判所の判断をどう見るかということもあるんですけど、まず、古庄委員が前回聞かれたように、そうした弁護人に対する被告人に知らせてはならないなどの条件に反したときは、弁護士であれば弁護士会に適当な処置をとるべきことを請求すると、裁判所が。言わば懲戒請求を裁判所がやるというような仕組みになっていまして、この仕組みが本当に必要なんですかと、これほど最後まで被告人に個人特定事項を知らせないという仕組みをつくらなきゃいけない立法事実があるでしょうかと。
これまでも、弁護人が何でもかんでも被告人に個人特定事項を共有してきたわけではないと思います。聞きたいという被疑者、被告人がいたとしても、いや、もう知られたくないと言っているよと、私はあなたは知る必要はないと思いますよという弁護士倫理の範疇で説得をするという弁護活動をしてきた弁護士はたくさんいると思うんですよね。
本当に防御の上で大争点になって、どうしてもというときに、裁判所が、現実には、日本の場合、令状請求に対してはほとんどがそれを認める、検察官の起訴をされたら有罪率九九%とよく言われます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/170
-
171・杉久武
○委員長(杉久武君) 申合せの時間ですので、おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/171
-
172・仁比聡平
○仁比聡平君 袴田事件の問題などで申し上げてきたように、証拠開示の問題などでも大変な今、不当性のある裁判の中で、こんなやり方をする必要があるかということをちょっと今日問題提起として申し上げて、時間が来てしまいましたので、大臣に次回冒頭お尋ねしたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/172
-
173・杉久武
○委員長(杉久武君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後二時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01120230427/173
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。