1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和五年五月九日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
四月二十七日
辞任 補欠選任
宮崎 雅夫君 世耕 弘成君
下野 六太君 谷合 正明君
五月八日
辞任 補欠選任
世耕 弘成君 馬場 成志君
田中 昌史君 友納 理緒君
五月九日
辞任 補欠選任
馬場 成志君 高橋はるみ君
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出席者は左のとおり。
委員長 杉 久武君
理 事
加田 裕之君
福岡 資麿君
牧山ひろえ君
谷合 正明君
川合 孝典君
委 員
古庄 玄知君
山東 昭子君
高橋はるみ君
友納 理緒君
馬場 成志君
森 まさこ君
山崎 正昭君
和田 政宗君
石川 大我君
福島みずほ君
佐々木さやか君
梅村みずほ君
鈴木 宗男君
仁比 聡平君
国務大臣
法務大臣 齋藤 健君
大臣政務官
内閣府大臣政務
官 自見はなこ君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総局刑事局長 吉崎 佳弥君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
政府参考人
警察庁長官官房
総括審議官 谷 滋行君
こども家庭庁長
官官房審議官 野村 知司君
法務省大臣官房
司法法制部長 竹内 努君
法務省民事局長 金子 修君
法務省刑事局長 松下 裕子君
法務省矯正局長 花村 博文君
出入国在留管理
庁次長 西山 卓爾君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/0
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001・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、下野六太君、宮崎雅夫君及び田中昌史君が委員を辞任され、その補欠として谷合正明君、友納理緒君及び馬場成志君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/1
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002・杉久武
○委員長(杉久武君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと思います。
理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/2
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003・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認めます。
それでは、理事に谷合正明君を指名いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/3
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004・杉久武
○委員長(杉久武君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長松下裕子君外六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/4
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005・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/5
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006・杉久武
○委員長(杉久武君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/6
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007・友納理緒
○友納理緒君 自由民主党の友納理緒でございます。この度は質問の機会をいただき、ありがとうございます。
それでは、早速、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
まず初めに、今回の法改正の意義について質問をさせていただきます。
今回の刑訴法等の一部を改正する法律案は、被告人や刑が確定した者の逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するとともに、刑事手続において犯罪被害者等の情報を保護することを目的としています。ここでは、前者の出頭等の確保に関連してお伺いいたします。
衆議院における答弁を拝見しましたが、今回新設される各制度が保釈等の判断に与える影響は一概には言えない、あるいは、本法律案は保釈率の動向自体に影響を与えることを意図するものではないという回答がなされていました。
しかしながら、最も強力な出頭確保策というのは身柄拘束を続けることであると考えますので、今回の改正は取りあえず被告人の保釈を前提としていますので、時に人質司法と批判されることがあります我が国の刑事司法の現況にとってプラスの意義があるものと捉えたいと考えています。むしろプラスの影響がなければならないものだと考えています。
そこで、各論の質問に入る前に、本改正の前提となる日本の保釈制度について質問をさせていただきます。
まず、日本の保釈率の推移はどのようになっていますでしょうか。直近十年は確かに一〇%程度上昇しているようですけれども、それ以前、昭和四十年代頃からの状況を分かる範囲でお教えください。最高裁参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/7
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008・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
地方裁判所の通常第一審におきまして勾留された被告人のうち保釈が許可された人員の割合、いわゆる保釈率でございますが、こちらは昭和四十年代は四三%から五八%程度で推移してきましたところ、昭和五十年代以降は徐々にこれが低下いたしまして、平成十五年には一二%台になりましたが、その後は徐々に上昇し、ここ数年はおおむね三三%前後で推移しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/8
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009・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
昭和四十年代に四三%から五八%のものが、昭和五十年代から減り出して、平成十五年には一二%ということですけれども、このように保釈率が低下してきた理由、今はちょっと三三%ということですけれども、昔から見れば低下してきていると思いますが、その理由をどのように捉えておられますでしょうか。法務省参考人、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/9
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010・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
保釈率は個々の事案における裁判所の判断の集積でございまして、保釈の理由は事案に応じて様々なものが考えられますため、法務当局としては、保釈率の低下の要因について一概にお答えすることは難しいと考えております。御理解いただければと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/10
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011・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
日本の保釈率が低い要因の一つとして、これまで保釈後の被告人の行動を監視、監督する制度がなかったこともあるのではないかという意見もあります。今回の法改正により、新たな制度が有効に機能すればですけれども、少なくとも逃亡のおそれに関する判断がより実質的なものになるのではないかと期待しているところです。
ただ、あと、依然として残る問題として、罪証隠滅のおそれについての判断があると考えています。裁判員裁判の導入などによって、その有無が抽象的にではなく、ある程度、事件の内容、証拠関係に応じて具体的に判断されるようになったと言われていますけれども、現在でも、無罪を主張したり黙秘を続ける被告人が起訴後早い段階で保釈される事例というのは少ないというように感じます。私の実感としましても、やはり被告人が無罪を主張していたり、あと酔っていて覚えていないという主張が多いですけれども、そういった状態ではまず保釈は難しいという感覚を持っています。
ただ、実際は無罪を主張する事案こそ打合せが必要になるものが多く、私も毎日、小菅の東京拘置所に通ったことがありますけれども、その際、裁判資料は差し入れられても、やっぱり検討したい箇所を詳細に検討したりですとか動画を見たりすることは難しく、打合せが大変大変だったという状況がありました。
この点、第百九十回通常国会の参議院法務委員会、平成二十八年五月九日の附帯決議、同様のものが衆議院の法務委員会でも決議されていますけれども、その附帯決議において、保釈に係る判断に当たっては、無罪主張の有無や黙秘をしていることなどを過度に評価して不当に不利益な扱いをすることがないように留意することなど、本法の趣旨に沿った運用がなされるように周知に努めることというふうにありますが、これを受けてどのような取組をしてきたのでしょうか、お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/11
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012・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
御指摘の附帯決議の内容につきましては、最高裁判所から全国の裁判所に宛てて文書を発出して周知をしてございます。
また、個々の事件における保釈の判断につきましては各裁判官の判断事項ではございますけれども、保釈の判断につきましては従前から裁判官の間でも議論が重ねられてきておりまして、先ほど御指摘のありましたとおり、罪証隠滅のおそれの有無等の保釈の要件につきましては、抽象的にではなく、個々の事件の実情に応じて具体的に丁寧に判断するという判断の基本を改めて徹底すべきであるとの議論がされているところでございます。
最高裁判所としましても、今後も裁判官の議論の場を確保することにも努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/12
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013・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。引き続き、そういった裁判官での議論の場というのを設けていただいて、適切な保釈の運用をしていただければと思います。
適切に保釈がなされないと、被告人の防御権という観点からも問題がありますし、それが長引きますと、失職をしたり監督などが期待される家族との関係が壊れたりと、被告人が社会に戻るための環境が壊れてしまうことがございます。この状況は適正手続を保障した憲法三十一条の趣旨に反しますし、無罪の推定の原則、あと冤罪の可能性があることも忘れてはならないと思っています。
今回の改正により、我が国においてより適切に保釈制度の運用がなされることを願いまして、次の質問に移らせていただきます。
次は、今回の刑訴法九十五条の四に新設されます報告命令制度についてお伺いをいたします。
本制度の趣旨は、裁判所が公判期日間においても被告人と接点を持つ機会を増やすことによって逃亡を抑止することにあります。通常、争いがない事件ですとか定期的に期日が開かれる事件では、逃亡防止の観点から報告命令制度の必要性は高くないと考えますが、具体的にどのような事件において報告命令がなされることを想定されているのでしょうか。法務省参考人にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/13
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014・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
報告命令制度におきましては、裁判所は、逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するために必要があると認めるときに、被告人に対し、住居、労働又は通学の状況等、法律に規定された内容につきまして、裁判所の指定する時期に、あるいはそれらの事項に変更が生じたときに速やかに報告することを命ずることができることとしております。
具体的にどのような場合に報告命令を発するかは、個々の事案ごとに裁判所において判断されるべきものではございますけれども、とりわけ必要がある場合として、例えば、事件が長期間にわたり公判前整理手続に付されている場合、あるいは、事件が控訴審、上告審に係属している場合などにおきましては、その間、被告人に出頭する義務がないものですから、裁判所が保釈中又は勾留の執行停止中の被告人の生活状況等やその変化を直接把握する機会が非常に少ないという状況にございますため、こうした被告人の逃亡を防止し、公判期日への出頭を確保するため、報告命令制度を活用するということが考えられると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/14
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015・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
この報告命令制度についての質問を続けますが、法九十五条の四第一項に規定されます、その住居、労働又は通学の状況、身分関係その他その変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所が定めるものというのは、具体的にどのようなことを報告することを想定されているでしょうか、お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/15
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016・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
報告対象となる、その変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項につきましては、条文上例示されております住居、労働又は通学の状況及び身分関係のほかにも、例えば交友関係ですとか身元引受人や監督者との関係などが考えられますが、個別の事案ごとに報告命令を発する裁判所が適当と認めるものを定めることとなります。
具体的にどの程度の変更があったときに報告を要することとするかにつきましては、裁判所において個別の事案ごとに様々な事情を総合的に考慮して判断することとなるものですので、一概にお答えすることは難しいんですが、被告人の逃亡防止や公判期日への出頭確保という報告命令制度の趣旨を踏まえて適切に判断されることとなると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/16
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017・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。その報告する側がある程度報告しやすいような指針を示していただければというふうに思っています。
また、第九十五条の四第一項二号に、当該事項に変更が生じたときは速やかにその内容、変更内容について報告することとありますが、変更が生じたときからどの程度の期間の間に報告することを想定しているのでしょうか。現状、具体的にお答えするのは難しいかと思いますけど、大体、その速やかというのが人によってかなり判断が異なってくると思いますので、どの程度を想定しているかということと、またその方法などは事前に指定されたりはするのでしょうか、お教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/17
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018・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
速やかにが具体的にどの程度の期間をいうかにつきましては、恐縮ですが、個別の事案ごとに様々な場合があり得ますので、一概にお答えすることは難しいんですが、一般に速やかにとは時間的に遅れてはならないことを示すというふうに講学上はされておりますことから、被告人の逃亡を防止し、公判期日への出頭を確保するために、裁判所が把握する時機を失することがないよう早期にということで報告をすることが求められることとなると考えております。
どのような方法で報告をするかということにつきましては、この法律案におきましては特定のものには限定しておりませんで、個別の事案ごとに裁判所が適切な方法を定めることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/18
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019・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。衆議院の質疑では、オンラインでの報告など様々な方法が検討されていたと思いますので、そういった報告がしやすい制度というのを、手段を取っていただければというふうに思います。
この報告命令制度については、その違反が保釈等の取消しという重大な効果をもたらすものであることからしますと、弁護人の関与も必要ではないかと考えています。被告人にも様々な状況、状態の方がおられますので、必ずしも自ら自発的に必要とされる行為を行うことができるとは限りません。
この点、衆議院の法務委員会では、弁護人への通知や付添いを許容するか、法律上特段の規律は設けていないと、裁判所は個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断するとの答弁がなされていましたけれども、被告人の保護のためには、個々の裁判所の判断に任せるのではなく、特に出頭しての報告が命じられる場合などにおいては、被告人又は弁護人からの請求があった場合は立ち会わせるといった運用をすべきだと考えますが、この点についてはどのようにお考えになるでしょうか。法務省参考人にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/19
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020・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
裁判所が被告人に対して出頭して報告をすることを命じた場合におきまして、その報告に弁護人が立ち会うことを許容するか否かにつきましては、法律上特段の規律を設けているものではございませんが、裁判所において個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断することとなると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/20
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021・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
弁護人の立会い、取調べの問題もいろいろありますけれども、前向きに検討していただければというふうに思います。制度に慣れていない被告人のためにも、報告の時期が近づいたら通知をしたりですとか、報告の書式等を裁判所側で作成するなど、適切な報告がなされるように体制を整えていただければというふうに考えます。
次に、監督者制度についてお伺いいたします。
現在でも保釈申請を行う場合には身元引受人を立てるということを行っていますけれども、これとは別にこの監督者制度を創設するということで理解をしています。もっとも、実務におりますと、身元引受人すら探すことがすごく難しいことがありますので、さらに監督者というのはかなり厳しいという印象がございます。
今回、監督者には監督保証金の没収というサンクションまでありますので、被告人との間でよほどの信頼関係があるですとか、常時被告人を監視できる立場にいるような人でないと引き受けるのが難しいのではないかと考えています。身元引受けはしてもよいが監督保証金は出せないですとか、あるいは、法的義務があることにちゅうちょして監督者になりたくないという人が大半ではないかと思っています。
そうしますと、この制度が有効に機能するためには、もう少し監督者を引き受ける側に立って考える必要があるのではないかと思っています。例えば、監督者がもう少し自身の負う義務について明確になっていれば少しは引き受けやすいのではないかというふうに考えるんですが、そこで改めて、監督者の負う義務をお教えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/21
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022・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
監督者制度は、監督者に対して被告人の逃亡防止と公判期日への出頭確保のための監督を一般的に義務付けた上で、納付した監督保証金が没取され得ることとして監督者による監督義務の履行を確保するとともに、被告人に、監督者に迷惑を掛けない、不利益、監督保証金の没取による不利益を負わせることを避けようという心理を働かせることによって監督者による監督を有効に機能させ、被告人の逃亡防止と公判期日への出頭確保を図ろうとするものでございます。
その監督者がどのような監督をするかということでございますが、刑訴法、改正後の刑訴法九十八条の四第三項におきましては、監督者に対して、被告人の逃亡を防止し、及び公判期日への出頭を確保するために必要な監督をするということを一般的な義務として義務付けておりまして、またさらに、その同条の四項におきましては、裁判所は、監督者に対し、被告人が出頭しなければならないときは、その出頭すべき日時、場所に被告人とともに出頭すること、また、被告人の住居、労働、通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所が定めるものを裁判所の指定する時期に、あるいは、それらの事項として裁判所の定めるものに変更が生じたときは速やかに報告をすることという、いずれか又は全てを命じるということとしておりまして、これらの個別の命令を遵守する義務を負うことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/22
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023・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
監督保証金を没取され得る場合として、監督者が出頭命令や報告命令に違反して裁判所により解任されたときのほか、被告人が逃亡し保釈等が取り消された場合も含まれている制度ですけれども、適切な監督をしていても被告人が逃亡することはあり得ますけれども、その場合の対応はどうなるのでしょうか。法務省参考人にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/23
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024・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のとおり、監督者が出頭命令や報告命令に違反して裁判所に、あっ、被告人が逃亡し保釈が取り消されたときなどに監督保証金が没取され得るということになっていますが、このとき、裁判所は決定で監督保証金の全部又は一部を没取することができることとしております。
被告人が逃亡するなどして保釈等が取り消される場合でありましても、監督者が監督義務を怠ったとは言えないということもあり得ると考えられますので、監督保証金の没取は任意的なものというふうにしておりまして、裁判所においては、個別の事案ごとの具体的な事情を踏まえて監督保証金の没取の当否及び範囲について適切に判断するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/24
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025・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
監督者の側からしますと、その九十八条の四の第三項にある必要な監督というものがどういうものか見えにくい部分があるかと思いますが、そういったサンクションがある以上は、この方法を具体的に示すですとか、適切な監督とは何かの指標になり得る事項というのを示す必要があると考えますけれども、どのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/25
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026・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
先ほども申し上げたとおり、改正後の刑訴法九十八条の四第三項におきまして、監督者に対して、被告人の逃亡を防止し、及び公判期日への出頭を確保するために必要な監督をするということを一般的に義務付けることとしているところでございますが、その必要な監督の具体的な内容といたしましては、例えば、被告人の日頃の生活状況等に留意しておく、逃亡につながり得るような事象の発生を察知した場合には適切な指導や助言を行う、また、被告人が召喚を受けるなどして出頭を求められている場合には被告人を出頭させるために適切な働きかけを行うといったことが考えられます。
そして、監督者は、被告人の逃亡防止及び公判期日への出頭確保について相応に重い責任を負うこととなること、また、監督者の負う義務の内容や監督保証金の没取の制度を理解させることは、その義務の着実な履行にも資すると考えられることから、改正後の刑訴法九十八条の四第二項におきまして、裁判所は、監督者として選任する者の同意を得るに当たっては、あらかじめ、その者に対し、監督者の負う義務の内容等を理解させるために必要な事項を説明しなければならないこととしているところでありまして、こうした趣旨を踏まえて、裁判所において、監督者に対する説明についても適切な運用がされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/26
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027・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。必要な事項の説明ということですので、具体的に、監督者が困らないように説明をするような運用をしていただければというふうに思います。
一定のケースを前提としますと、身元引受人では保釈は難しいけれども、監督者が選任されれば保釈許可ができる場合があると想定していますけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/27
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028・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
監督者といわゆる身元引受人を比較いたしますと、監督者は先ほど申し上げたような法的な義務を負っているのに対して、身元保証人は何らの法的義務も負わない、また、監督者については、特に被告人がその監督に服することを期待し得る関係性がある者などが裁判所によって選任されるのに対して、身元引受人については必ずしもそうとは限らないといった差異があることから、身元引受人よりも監督者の方が被告人の逃亡防止及び公判期日への出頭確保の実効性がより高まることになると考えられます。
その上で、保釈を許可するか否かは、個別の事案ごとに裁判所において、監督者の選任の有無だけではなく、逃亡のおそれの有無、程度に関わる様々な事情を含め、事案に係る事情を総合的に考慮して判断すべき事柄でございますので、お尋ねについて一概にお答えすることは困難でございますが、いずれにしても、裁判所におかれては、監督者制度の趣旨を踏まえつつ適切な運用がなされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/28
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029・友納理緒
○友納理緒君 同様の前提があれば、やっぱり監督者が選任されることで、保釈される場合というケースというのはある程度拡大されるというのが通常だと思いますので、そういった形での運用をしていただければと思います。
これまでも保釈が許可される基準というのは被告人側からすごく見えづらく、さらにその中で新たにオプションが増えるということですので、このオプションがしっかりオプションとして十分機能するように、実務に関与する裁判官、弁護人との関係の中で適切な運用基準を見出せる制度にしていただければというふうに思います。
あと、監督人を立てられなくても不利益はないということですけれども、積極的に監督を引き受ける者がいないという消極の評価につながり得るものですので、事実上の不利益が生じる可能性があるのではないかという懸念は持っています。制度創設後もその運用が適切になされるかを確認していただければというふうに思っています。
次に、位置測定端末装着命令制度についてお伺いいたします。
被告人のプライバシー権などの観点から、安易にこの制度が利用されるべきではないとは考えますが、他方で、勾留されている状態はほぼプライバシーがない状況ですので、より制限的でない代替措置の一種として限定的な場面で利用されることが望ましいというふうに考えています。
衆議院の法務委員会の答弁では、本制度の創設が保釈や保釈金額の判断への与える影響は一概には答えられないということでしたけれども、保釈保証金の納付の制度のほかに新たにこの制度ができるわけですから、現状では対象事件が少ないとしても、保釈されるケースが増えるように運用していただきたいと考えています。
そこで、質問です。
本制度は、被告人の所在場所を常時継続的、網羅的に検知するものではなく、義務違反を検知したときに端末位置情報を閲覧することができる制度になっているかと思います。その上で、必要がないことが明らかな場合を除き被告人を勾引するものとしていますが、改めて、この際の勾引の要件と具体的な手続の流れをお教えください。法務省参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/29
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030・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
済みません、先ほどちょっと私、答弁で、身元保証人というふうに言い間違えてしまいまして、身元引受人の誤りでございます。訂正させていただきます。
今の御質問に関してでございますが、本法律案におきましては、位置測定端末が装着された者の体から離れたこと、位置測定端末が所在禁止区域内に所在することなどの遵守事項違反が確認された場合には、明らかに勾引の必要がないと認めるときを除き、位置測定端末装着命令を受けた被告人を勾引することができることとしております。
こうした遵守事項違反が検知された場合の手続としては、裁判所が遵守事項違反の発生等を確認することができる機能を有する電気通信設備にその遵守事項違反についての信号が送信され、遵守事項違反の発生を確認した裁判所は直ちにその旨を検察官に通知しなければならないこととしております。
その上で、裁判所は検察官の請求により又は職権で被告人を勾引することができ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、勾引状を執行するときは、裁判所の許可を受けて当該被告人の端末位置情報を表示して閲覧することができるものとしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/30
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031・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
今御説明いただいた制度の実効性を高めるためには、義務違反が発生した際、即時に対応する必要があると考えますが、夜間も含めて対応するには、裁判所ではなく、例えば捜査機関が対応する方がスムーズであるとも考えられます。現状では裁判所で夜間に対応する部署も限られていますし、人的な問題も、マンパワーの問題もあるかと思います。運用主体を裁判所とした理由をお教えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/31
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032・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、位置測定端末装着命令は、裁判所が保釈を許す場合において、被告人が保釈中に国外に逃亡するのを防止する必要があると認めるときに発するものでございます。位置測定端末装着命令を受けた被告人の位置情報を把握できるようになるものでございますので、そのプライバシーに適切に配慮するとともに、その制度の公正さを担保する必要があるということから、この制度の運用主体は捜査機関ではなく裁判所としているところでございます。
その上で、遵守事項違反が検知された場合には被告人の国外逃亡が切迫している蓋然性が高いことから、身柄の確保に向けた具体的な体制につきましては、こうした仕組みの下で可能な限り速やかに勾引状を執行してその身柄を確保することができるよう、関係機関において制度の施行に向けた適切な連絡体制が構築されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/32
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033・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。主体を裁判所にした理由というのは理解いたしました。
プライバシー等の観点から、閲覧をするのは義務違反発生時のみとすることは適切だと考えますが、システムとして被告人の位置情報の履歴などは保存される仕組みになっていますでしょうか。参考人にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/33
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034・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
端末位置情報を閲覧できるのは、御指摘のとおり、遵守事項違反があった後でございますが、その場合に閲覧可能な端末位置情報につきましては、システム上のデータ保存期間や閲覧の理由による制約などはあるものの、遵守事項違反発生前のものが含まれることとしております。
これは、遵守事項違反に至った経緯や理由を把握するためなど、違反の発生が検知される前の端末位置情報を閲覧することが必要な場合があると考えられるためでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/34
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035・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
新たなこういった機器を導入するにはそれなりのコストが掛かります。法制審でも議論があったようですが、今回適用になるケース以外にも、より制限的でない代替措置をとるべきケースは今後あるかと考えますので、今後を見通したシステムにしておいていただきたいと思います。本制度は初めて採用されるもので、ハード面ですとか訓練等のソフト面、様々な準備が必要になります。制度開始までに必要な準備をしっかりと進めていただきたいと考えています。
次に、再保釈の規定の改正についてお伺いいたします。
現状、再保釈については、刑訴法三百四十四条で、禁錮以上の刑に処する判決の宣告後は権利保釈の規定は適用されず、裁量保釈が認められるのみと規定されています。実務においては、再保釈の際は保釈保証金の上乗せを求められるといった運用がなされているのが現状です。
もっとも、本来この再保釈は通常の保釈請求よりも認められやすくあるべきだと考えています。理由は、裁量保釈の要件でもある罪証隠滅のおそれは、第一審判決が宣告されている以上、有罪判決を証明するための証拠は全て裁判所が取調べ済みですので、それ以降の証拠隠滅はできません。また、逃亡のおそれは、第一審裁判の際に保釈が許されていて逃亡せずに判決期日に出廷していますので、逃亡を疑う相当な理由も認められないということがあります。
今回新設される三百四十四条二項では、九十条に規定されています身体の拘束の継続により被告人が受ける様々な不利益が著しく高い場合でなければ裁量保釈が許可されないと規定されています。
これについて、再保釈の現状よりも厳しく判断することを前提としているという見解がありますが、この点についてはどのようにお考えになりますでしょうか。法務大臣のお考えをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/35
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036・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 改正後の三百四十四条二項の趣旨は、拘禁刑以上の実刑判決の宣告によりまして被告人が逃亡するおそれが一般的、類型的に高まり、刑の執行を確保するため被告人の身柄を拘束する必要性が高くなる、そういったことに鑑みまして、刑事訴訟法が本来予定している裁量保釈の判断の在り方を条文上明確にするというものでありまして、現行法の下で認められるべき裁量保釈の範囲を殊更に限定しようという趣旨ではございません。
したがいまして、御指摘のように、再保釈の判断を現状よりも厳格なものとすることを前提とする、そういう規定にはなっていないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/36
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037・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。現状よりも再保釈の判断を厳格にするものではないということを伺いましたので、運用上もそのように判断をしていただければと考えています。
最後に、犯罪被害者等の氏名等の個人特定事項の秘匿措置についてお伺いをします。
刑事弁護をしていますと、性犯罪でなくても犯罪被害者の氏名の秘匿が必要だと感じる事案もあります。他方で、刑事司法制度の中では検察側と被告人側の情報の格差というものを大きく感じることがあります。秘匿の範囲がむやみに拡大されるべきではないというふうにも強く感じるところです。このバランスがとても難しいということを実感しております。
そこで、まず、これまでの秘匿措置をめぐる経過についてお伺いいたしますが、平成二十八年改正で証人等の氏名及び住居の秘匿措置が定められて、三年後見直しが予定されていました。法二百九十九条の四の運用状況について、どのような検証がなされているでしょうか。こちら、法務大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/37
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038・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘ありましたけれども、平成二十八年成立の刑事訴訟法等の一部を改正する法律によって新設をされました刑事訴訟法二百九十九条の四によりまして、検察官による証拠開示において、証人等の氏名、住居について秘匿措置をとり得ることとされたところであります。この規定に基づきまして、平成三十年から令和四年までの間に秘匿措置をとった証人等の数は二百六十四名であります。
同条の秘匿措置につきましても、平成二十八年成立の改正法附則第九条により検討が求められているということでありますので、現在開催しております改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会において、今後、運用状況を共有しながら協議が行われることとなると、そのように承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/38
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039・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
そちらの秘匿措置の検討の結果を受けて本制度ということがあればもしかして良かったのかもしれませんが、こちらの新たにできる制度につきましてもそういった検証というのを行って、続けていただければというふうに考えます。
この制度について、ちょっと時間経過を追って確認をしていきたいんですが、まず、時間の関係上、ちょっと追ってと言っても捜査段階における措置のみの確認になりますが、性犯罪等の一定の事件について、被疑者に対して個人特定事項の記載のない逮捕状、勾留状の抄本等を提示するということになっているかと思いますが、被疑者段階では弁護人が勾留状謄本交付請求等をすることがありますが、この段階においては、弁護人に対しては、秘匿に関する、秘匿をするという規定がないという理解でよろしいでしょうか。参考人にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/39
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040・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のとおりでございまして、本法案においてはその規定はございません。といいますのも、その勾留状の謄本請求、交付請求につきましては、刑事訴訟法ではなく、その下の規則で定められているところでございます。
ですので、本法律案にはお尋ねのような規定は設けておりませんけれども、本法律案による法整備に合わせて規則の改正が行われるということが今後考えられますが、その際は、本法律案と同様の考え方に立つとすれば、勾留状の謄本請求においても起訴状の謄本請求と同じような形で秘匿措置をとるといったようなことが行われることになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/40
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041・友納理緒
○友納理緒君 ありがとうございます。
被疑者段階というのは、受任時の利益相反の判断ですとかその後の弁護方針、示談交渉のために重要な時期ですので、現状は、検察官に連絡をして、被害者の許可を得て氏名を聞いて示談交渉などを行っていますが、弁護人にはできる限り秘匿がなされないような対応、今、規則が変わるかもしれないということですが、できる限り秘匿がなされないような対応を求めたいというふうに考えています。
済みません、残る質問、省略をいたしますが、時間の関係上。ただ、やはり今回、弁護人にも秘匿する制度というものがございますけれども、弁護人はあくまでも被告人とは異なる第三者ですので、それを前提として、弁護人にまで秘匿をするケースというのはかなり限定的に判断し、解していただければというふうに考えています。
今回の刑訴法改正による各制度が適切に運用されることで、保釈制度、日本の保釈制度というのが適切になされるということを祈念して願い、質問を終えさせていただきます。
ありがとうございました。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/41
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042・杉久武
○委員長(杉久武君) それでは、手短にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/42
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043・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 申し訳ございません。
起訴状の謄本請求と先ほど申し上げてしまいましたが、起訴状の抄本を被告人に送付する場合に、弁護人に起訴状の謄本を交付するということでございました。申し訳ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/43
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044・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。
本日の刑事訴訟法改正の質疑を担当させていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、法務省にお伺いいたします。
平成二十八年、刑事訴訟法第九十条の裁量保釈に関する規定を改正する際に、衆参の各法務委員会で、政府及び最高裁判所に対して、保釈に関わる判断に当たっては、被告人が公訴事実を認める旨の供述などをしないこと又は黙秘していることのほか、検察官請求証拠について刑事訴訟法第三百二十六条の同意をしないことについて、これらを過度に評価して不当に不利益な扱いをすることとならないよう留意するなど、本法の趣旨に沿った運用がなされるよう周知に努めることとの附帯決議がなされております。ですが、ここで求められていることが実務に浸透しているとは評価できないとの指摘もございます。
こうした指摘も踏まえて、どのように周知に努められたのかも含めて、現行の釈放の在り方の適切性について見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/44
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045・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
周知の主体としては最高裁になるかと存じますので、私の方からお答え申し上げます。
御指摘の附帯決議の内容につきましては、最高裁判所から全国の裁判所に宛てて文書を発出して周知してございます。
また、個々の事件における保釈の判断は各裁判官の判断事項ではございますけれども、保釈の判断につきましては、従前から裁判官の間でも議論が重ねられておりまして、罪証隠滅のおそれの有無などの保釈の要件につきましては、抽象的にではなく、個々の事件の実情に基づいて具体的に丁寧に判断するという判断の基本を改めて徹底すべきとの議論がされているところでございます。
最高裁判所としましても、今後も裁判官の議論の場を確保することにも努めてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/45
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046・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 この件に関しましては、被告人が自白した事件では保釈が認められやすい、その一方で、否認事件では長期間認められないケースが少なくないという声が弁護士などから寄せられております。
保釈された被告人の保釈時期を見てみますと、自白事件では七割以上が初公判前だったのに対し、否認事件は約四割にすぎず、被告人が長期勾留される現状は変わっていないと指摘されております。個々の裁判官の独立に逃げるのではなくて、データが示す傾向に基づいた問題意識をしっかりと持つ必要があると思います。
さて、今回の改正のきっかけの一つとなったゴーン被告人の事案をめぐっては、その逃亡以前当時から、日本における勾留期間や取調べ環境に対してフランス・メディアなどを中心に批判的な議論がございました。また、同被告人が海外逃亡後に我が国の刑事司法制度全体について批判を表明し、そして、政府としてこれに対する反論の意見を出したということもございました。
さらに、米国の国務省が二〇一九年版の人権報告書において、ゴーン被告人の長期間の身柄拘束に関しまして、日本の司法制度に懸念を示したということもございました。具体的には、計四回の逮捕による同被告人の拘束が自白の強要のために使われているといった見方や、保釈時に妻との接触禁止が条件となったことについて罰則的との見解が記されたということです。
それぞれの国において刑事司法制度は大きく異なることは理解しておりますけれども、こういった指摘が度々寄せられていることに対して、我が国の制度に改善の余地がないのか検討を行っていくことも必要であろうと考えております。
米国の国務省の人権報告書の指摘に対する見解をお伺いしたいということとともに、制度の見直しの必要性についても見解をお伺いしたいと思います。法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/46
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047・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 被疑者、被告人の身柄拘束につきましては、法律上厳格な要件及び手続が定められており、人権保障に十分配慮したものとなっている上、一般論として、勾留や保釈についての裁判所の判断というものは、刑事訴訟法の規定に基づき個々の事件に応じて行われておりまして、不必要な身柄拘束がなされないよう適切に運用されているものと承知をしておりまして、いわゆる人質司法という指摘は当たらないと考えています。
ただ、我が国の刑事司法制度について正しい理解を得るということは極めて重要であると考えておりますので、関係省庁とも連携をしながら適切な説明に努めていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/47
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048・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 日本では、被告が否認や黙秘をすると証拠隠滅のおそれがあるとして身柄拘束が長期化しやすく、そして捜査機関が自白を強要する素地になっているとして非難されてきました。海外からの日本の司法制度に対する理解不足とする見解もありますけれども、海外からの批判には相応の根拠に基づいておりますし、日本国内からの声とも一致しております。時代が求めている要請と認識すべきだと思います。
次に、位置測定端末装着命令制度についてお伺いいたしたいと思います。
制度設計や位置測定端末の機能等についてはこれまで委員の皆さんから様々質問がありましたけれども、私からは今後のスケジュールについてお伺いしたいと思います。
この制度の施行は公布日から五年以内とされておりますが、まずはその趣旨についてお聞きしたいと思います。また、最高裁判所におきましては既に位置測定端末の開発に向けた実証事業を開始していると承知しておりますが、現在どういった段階で、施行に向けて今後どのようなスケジュールで進めていくのか、御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/48
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049・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
我が国の刑事手続において、人工衛星信号等による測位技術を用いる装置を被告人に装着させて位置を把握する制度というのは、本法律案による改正で初めて導入するものでございます。
そのため、この制度の運用を開始するには、施行までの間に、本法律案において求められる機能や構造を踏まえ、位置測定端末等の同制度に用いられることとなる機器やシステム整備の仕様の詳細を検討してその開発などを行うとともに、所在禁止区域をどのような場所にどの程度の広さで設定するのが効果的かについて、各地の空港や港湾施設の実態などを踏まえて、あらかじめ綿密に検討していくことが必要でございます。
それに加えて、所在禁止区域内への立入りなどの遵守事項違反が検知された場合に、装着命令を受けた者の身柄を迅速に確保するための方策などの運用に関わる様々な事項について、関係機関が連携し、開発した位置測定端末等の実機を使用するなどして実証的な検討を行う必要がございまして、これらには相当の期間を要すると考えられます。
そこで、御指摘のとおり、本法律案におきましては、こうした準備に要する期間を考慮して、位置測定端末装着命令制度については、公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/49
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050・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 このスピードの速い時代に、五年までには終わらせるということでしたけれども、五年はいかにもやっぱり長いです。端末の開発に時間が掛かるとのことですけれども、必要なスペックや機能、要件については国会を始め有識者、関係者、国民の意見を聞くにしても、モジュールについては既に実施が先行している諸外国の技術を活用するなりして、やはりスピードアップを図るべきではないかと考えております。
位置測定端末装置命令制度は、刑事手続において、人工衛星信号等による測位技術を用いる装置を被告人に装着させて位置を把握するという我が国初めての仕組みを導入するものでございます。本法律案では、端末の装着から位置情報閲覧可能な場面、遵守事項違反が発覚した場合の勾引までの手続等が整備され、これらの具体的な運用が注視されるところです。
そこで、本制度の施行後においては、運用状況について検証し、新たな課題等に対処するため、位置測定端末装着命令を受けた被告人の数や位置情報閲覧の状況等、位置測定端末装着命令の運用状況を取りまとめ、公表する必要があると考えますけれども、運用状況の公表について見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/50
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051・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
位置測定端末装着命令の運用状況の公表につきましては、その必要性のほか、被告人の逃亡防止、被告人のプライバシーの保護の観点などを考慮しながら、その在り方について今後検討してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/51
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052・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 保安に関する内容ですので、全てを公表できないということは理解します。ですが、国民、そして国会は、今回の措置がどのように運用され、そして保釈中の逃亡阻止という制度目的にどの程度貢献したかを知る必要があると思うんですね。そのことを御留意いただいた上で制度設計をしていただくことを要望したいと思います。
裁判所は、保釈を許す場合において、被告人が本邦外に逃亡することを防止するため必要があると認めるときはGPS端末の装着を命じることができるとされていますが、その具体的な要件、すなわちどのようなケースが装置装着の対象となるのでしょうか。そして、そもそも保釈中の海外への逃亡事案数というのはどの程度あるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/52
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053・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) まず、具体的にどのような被告人に対して位置測定端末装着命令をすることになるかというお尋ねと理解しましたが、これにつきましては、裁判所において、制度の趣旨を踏まえて、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものでございますが、例えば、被告人がその社会的地位や経済力などに照らして正規の手続によらずに国外に逃亡させることのできる組織を利用でき、被告人の経済力や人間関係等に鑑みて我が国から離れて生活することが困難ではないなどの事情があり、国外に逃亡してしまうおそれが相応に認められる場合には、位置測定端末装着命令がなされ得ると考えられます。
また、保釈中に被告人が国外に逃亡した事案の件数等につきましては、不法出国等もあり得ることでございますので、逃亡先が国内か国外かを網羅的に把握することは事柄の性質上困難でございますが、保釈中の被告人の逃亡に関する統計について私どもで把握している限りで申し上げますと、令和三年において通常第一審終結前に保釈が取り消された九十一件のうち、逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとして取り消された件数は二十七件、逃げ隠れをしてはならないとの条件に違反したとして保釈が取り消された件数は十一件であったと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/53
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054・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 少なくとも当初段階ではかなり限られた規模でのスタートとなるようですね。また、海外での死亡事案数について厳密な数字を挙げられない事情は分かるんですけれども、プライバシー侵害の立法行為を行う以上、もう少し現状を把握する努力をされるべきではないかと感じます。
位置測定端末装置装着命令を受けた者が所在禁止区域に所在することが許可される場合や位置測定端末を自己の身体に装着しないでいることを許可される場合におけるやむを得ない理由とは、どのような内容をそれぞれ具体的に想定しているのでしょうか。そしてまた、位置測定端末を自己の身体に装着しないでいることを許可した場合に、位置測定端末を取り外している間の国外逃亡の防止をどのように担保するのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/54
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055・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お尋ねは改正後の九十八条の十五第一項前段と六項に関するところであると理解しましたが、どのような場合にやむを得ない理由により必要があると認められるかは、個別の事案ごとに裁判所において具体的な事情を踏まえて判断されるべき事柄でございますが、判断に当たっての考慮事情としては、所在禁止区域内に所在することや位置測定端末を自己の身体に装着しないでいることを必要とする用務の内容、その用務の必要性の程度、また、その用務のために所在禁止区域内に所在することや位置測定端末を自己の体に装着しないでいることの必要性の程度、また、所在禁止区域内に所在したり位置測定端末を自己の身体に装着しないでいるとした場合に、国外逃亡を防止するほかの措置の内容、その効果の程度などを考慮することになると考えられます。
そして、所在禁止区域への所在や位置測定端末を自己の身体に装着しないでいることが許可される場合には、逃亡防止のための別途の措置がとられなければならないこととはしておりませんけれども、そうしたほかの措置がとられるか否かは、やむを得ない理由により必要があるか否かを判断するに当たって考慮されることとなると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/55
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056・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 制度の施行までにいろんなケースを想定されて、対応策を練っていただきたいと思います。
位置測定端末装置命令を受けた被告人の国外逃亡を防止するためには、所定の事由を検知した場合に速やかに勾引することが必要だと思います。具体的なイメージとしましては、所在禁止区域立入りや端末を外したりした場合に発信されるアラートが裁判所に届き、位置情報が表示されるということですが、裁判所は直ちに検察官に連絡して、そして検察官や警察官が身柄拘束に向かうということになるかと思います。
信号を受信してから被告人の拘束までの具体的な手続や要する時間の想定についてはどの程度と考えればよろしいのでしょうか。そして、信号受信後、速やかに身柄拘束に駆け付けるための警察や検察の配置に関する体制整備についてはどのようなお考えでおられるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/56
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057・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
遵守事項違反が検知された場合の、裁判所の端末にその通知があることですとか、その点については御指摘のとおりなんですが、こうした手続によって被告人の身柄を確保するまでに要する時間につきましては、その検知がなされた時点における被告人の所在、そのときの位置関係ですとかその後の被告人の行動等の事情によるため、一概にお答えすることは困難でございますが、できる限り速やかに対応することが望ましいというふうに考えております。
また、検察及び警察でどのような体制が整備されることになるのかという点でございますけれども、遵守事項違反が検知された場合には被告人の国外逃亡が切迫している蓋然性が高いことから、身柄の確保に向けた具体的な体制につきましては、先ほども申し上げた仕組みの下で可能な限り速やかに勾引状を執行してその身柄を確保することができるよう、関係機関において制度の施行までに適切な連絡体制が構築されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/57
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058・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 せっかくGPSで位置情報を捕捉したとしても、検察官等が駆け付けたときにはもう既に空の上ということでは意味がないと思うので、普通に考えますと、逃亡しようとする被告人は事前にGPS端末を外すんじゃないかなと思うんですね。そして、その時点からのスピード勝負になると思うので、綿密なシミュレーションと準備がやはり必要だと思います。
遵守事項違反への対応ということに関連しますと、保釈を決定した各地裁等が監視を担当するのでしょうか。それとも、どこか一か所の裁判所が日本全国のGPS端末の状況をモニタリングするのでしょうか。また、イギリス等ではGPS端末の運用を民間委託しているそうですけれども、我が国においても民間委託がなされることもあるのでしょうか。その場合においては、どのような点に留意することが必要なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/58
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059・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
まず、位置情報のモニタリングの在り方についてお尋ねでございますが、位置測定端末の開発等に関わる事項でございまして、位置測定端末は、本法案が成立後、施行までの間、五年以内に開発等を進めていくことになることでございます。現時点で運用の在り方についてお答えすることは困難でございますけれども、裁判所としましては、本法案の成立後、その定める機能及び構造を備えた端末等の検討を進めるとともに、効果的、効率的な運用の在り方を検討していく予定でございます。
また、民間委託の件についてお尋ねでございますけれども、この点につきましても、運用の在り方について直ちにお答えすることは困難でございますが、端末の機器や装置そのものの開発、調達、保守について、当然のことながら裁判所自身で行うことは困難でございますので、民間事業者の協力を得ることとなると想定してございます。
他方で、位置測定端末装着命令の運用に当たりましては、本法案上、保釈の取消し、被告人の勾引、検察官に対する端末位置情報の閲覧の許可などの裁判所でなければ行い得ない手続が明示的に規定されてございます。
このような制度設計がされていることを踏まえながら、効果的、効率的な運用の在り方を、この点につきましても検討していく必要があるものと認識してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/59
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060・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 体制の整備も重要だと思うんですけれども、効率の視点もやっぱり軽視できないと思うんですね。先ほどの質疑にありましたように、当初段階では小規模でスタートとなる公算も併せて考慮するべきだと思います。
本法案において、端末位置情報の閲覧ができる場合を法定するとともに、それ以外の場合に閲覧してはならないと規定しています。プライバシー侵害の可能性も考え合わせますと、制度設計は性悪説に立って行うべきではないかなと思います。すなわち、ただ単に法律で閲覧の制限を規定するだけでは足りず、システム上、条件を満たす場合以外の閲覧を制限するか、閲覧した場合の録画、削除できない状態で保存されるなど、システム的、機能的に閲覧制限がなされるようにするべきではないかなと思います。
当局の御見解をお示しください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/60
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061・吉崎佳弥
○最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君) お答え申し上げます。
先ほど来御答弁申し上げていますとおり、現時点で、開発する位置測定端末のシステムの内容について具体的にお答えすることは困難でございます。
裁判所としましては、本法案の成立後、今の議員の御指摘も踏まえつつ、当該システムの機能の検討を進めてまいりたいと考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/61
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062・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 時間ですので、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/62
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063・福島みずほ
○福島みずほ君 立憲・社民の福島みずほです。
二〇二二年十一月三十日、国際人権規約自由権規約委員会は勧告を出しております。多岐にわたりますが、入管制度についても、パラグラフ三十三など勧告を出しております。国際基準にのっとった包括的な難民保護法制を早急に採用すること、以下、ノン・ルフールマン原則が実際に尊重されなど、(f)まであります。これをどのように検討されたんでしょうか。
昨年、日本弁護士連合会と法務省が交渉したときに、これ、検討いたしますというふうにおっしゃいました。具体的にどことどのような検討をしたんでしょうか、教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/63
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064・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) まず、前提といたしまして、我が国が締結している人権諸条約が定める義務を誠実に履行しており、我が国の入管制度がこれに違反するものではないと考えております。また、御指摘の自由権規約委員会の勧告は、我が国に対して法的拘束力を有するものではないと承知をしております。
そして、政府報告審査とは、数年ごとに締約国が委員会に条約の実施報告を提出し、委員会が報告に対する意見を送付するという対話のプロセスでございます。他方で、勧告につきましては、その内容を十分に検討すべきであるところ、入管庁としましても、勧告の趣旨を尊重しつつ、我が国の実情等を踏まえた検討を行ったところでございます。
例えば、勧告は収容期間の上限の導入のために取り組むように求めておりますが、その趣旨は、不必要な収容の回避と収容の長期化の防止にあると考えられます。そして、収容期間に上限を設けた場合、その上限まで送還を忌避し続ければ、逃亡のおそれが大きい者を含め全員の収容を解かざるを得ず、確実、迅速な送還の実施が不可能となるため、収容期間に上限を設けることは相当でないと考えたところでございます。
そこで、改正法案におきましては、送還忌避者の長期収容の解消、防止は、収容が長期化する前に迅速、確実に退去等をさせるとともに、収容しないで退去強制手続を進める監理措置によって実現することとしたところでございます。さらに、今回の改正法案では、旧法案に修正を加えまして、三か月ごとに収容の要否を見直す仕組みを導入し、より実効的に長期収容を防止することといたしました。
今後の政府報告審査におきましても、引き続き、本法案における改正後の法制度や取組について合理的な理由とともに説明し、条約の義務を誠実に履行していくことを示してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/64
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065・福島みずほ
○福島みずほ君 質問にもう少し答えていただきたいと思います。
勧告が出ていて、この勧告の中身をしっかり検討すると言って、私の質問はどことやりましたかということです。UNHCRや弁護団や当事者やNGOや、そういうところときちっと協議をされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/65
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066・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 改正法案の検討過程におきましては、例えば、UNHCR本部及び駐日事務所との間で複数回意見交換を行って、我が国の法制度の在り方や改正法案に対する考え方を説明してきたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/66
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067・福島みずほ
○福島みずほ君 例えば、ここの(a)では、国際基準にのっとった包括的な難民保護法制を早急に採用すること。日本が採用していないからですよ。入管制度の中に組み込まれているからですよ。この勧告を踏まえて、国際人権法にのっとった法律、議員立法で今日、四会派五党で私たち出しました。難民保護法制と、それから入管法の改正法案です。この議員立法こそ、まさにこの勧告を生かしているものだと思います。
なぜ法務省は、この勧告が出て、そしてきちっと検討すると言いながら、ほぼ一昨年廃案になったのと同じものを出したんですか。大臣、検討すると法務省答えたんですから、しっかり検討すべきでしょう。名古屋入管事件があって監獄法の改正をやったくらい、やっぱり入管はきちっと改正をすべきだと思いますが、なぜ抜本的な改正がないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/67
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068・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) まず、前提として、先ほど委員から御指摘があった議員立法に提出された法案につきましては、私どもとして何かしらコメントをすることは差し控えたいと存じます。
その上で、今回の改正法案は、旧法案に対する様々な御指摘、御意見の趣旨を踏まえて立案したものでございます。具体的には、保護すべき者を確実に保護した上で、在留が認められない者については迅速に送還可能とする、長期収容を解消し、収容する場合であっても適切な処遇を実施するという考え方の下、様々な方策を組み合わせ、パッケージで課題を一体的に解決し、外国人の人権を尊重しつつ、適正な出入国管理を実現するバランスの取れた制度にしようとするものでありまして、適切な内容であると考えております。
引き続き、本法案の重要性につきましては、広く国民の皆様に御理解をいただけるように丁寧に説明してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/68
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069・福島みずほ
○福島みずほ君 難民認定制度、日本は恥ずかしいですよ。この委員会でも質問しましたが、二〇二一年、カナダにおけるトルコの難民認定率九七%、日本はゼロですよ。トルコのクルド人が初めて裁判で難民認定された、裁判でですよ、一件、去年、一人だけです。これが日本の難民認定の状況で、だからこそ出入国管理と分離して難民保護法制を作るべきだという議論じゃないですか。それを出すべきなのに、一昨年と同じものを出して、これ国際人権法上認められないですよ。間に勧告があったわけですから、しっかりこれを踏まえて出すべきであったというふうに思います。
かつて刑務所が行刑改革会議やって改正をやったぐらいの意気込みを入管は示すべきですよ。今出している法案は廃案しかありません。そのことを強く申し上げますし、また、このことについて、国際人権法にのっとった点について更に質問していきます。
難民認定、裁判でなされたケースに関してデータ出していただきました。二〇一七、ゼロ、二〇一八、一、二〇一九、一、二〇二〇、二、二〇二一、ゼロ、二〇二二、一です。配付資料にしておりますが、五名、裁判で難民認定されています。この人たち、頑張って裁判起こして勝訴をしたから難民認定されたけれども、でも、今度、この法案で、二回難民申請して却下されれば基本的に送還されるとすれば、これらの人たち救済されないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/69
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070・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) お尋ねの点につきましてでございますけれども、この難民該当性についての判決につきましては、様々な点に、事案に応じて様々なことがございますので、一概に申し上げることは困難かと思います。
また、具体的に、その該当性に当たって、難民該当性判断に当たって留意すべき点がある事案につきましては、敗訴判決の確定を受けて当該判決の要旨を伝達した上で、客観的情報の正確な把握、活用といった分析、検証結果を踏まえた指示を適時行っているところでございまして、引き続きこの難民認定について適正に判断できるように努めているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/70
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071・福島みずほ
○福島みずほ君 答えてないですよ。
まさにこの人たち、裁判やって、物すごく高いハードル越えて、裁判でようやく勝訴しているんですよ。この五名帰したら、まさにこの人たち難民ですよ、裁判所が認めた難民、帰したら、まさに虐殺、虐待、弾圧受けること明らかじゃないですか。そういう人たちを帰そうとする法律だから問題です。
今回の政府提案の中では、まさに二回申請して、三回目申請していても原則として送還忌避罪で送還するというものです。三回申請して難民認定された人の数について、二〇二一年まではゼロ、二〇二二年は三名ということでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/71
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072・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 三回目以降の難民認定手続により難民と認定された者は令和三年までは存在していなかったけれども、三回目の申請で認定された者が令和四年中に三件存在するということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/72
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073・福島みずほ
○福島みずほ君 その人たちの国籍、教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/73
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074・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) 中国が一で、ミャンマーが二でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/74
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075・福島みずほ
○福島みずほ君 ミャンマー、中国なわけですよね。この人たち、もし帰していたら、二回目、送還忌避罪、送還していたら、虐待受けている、弾圧受けている可能性がある人たち三名いるんですよ。
法務省は、そういう人たちがいる、三回目の申請で難民認定した人が三人いることを知りながら、何で三回目申請で帰そうとするんですか。この人たち貴重ですよ、三名。もっといるかもしれない。この人たちの命を救わなくちゃいけないと思います。その意味でも、今出されている法案、欠陥ありと。だって、この人たちは三回目に難民認定されたわけですから、欠陥があるというふうに申し上げます。それを撤回すべきだと考えます。
大臣、この間、仮放免の子供たちの在特について議論をしておりますが、在特は速やかにされるということでよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/75
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076・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私も国会で答弁しているように、この問題については私としても真剣に考えているところであります。
その上で、現在の入管法改正法案では、在留特別許可の判断の透明性を高めるために新たに考慮事項を法律で明示することとしておりまして、御指摘のこの親子の関係、子供のことについては、法律で明示された考慮事情のうち、家族関係又は人道上の配慮の必要性として考慮をされるということを明示をしたい、していると、考慮事項でですね。それで、在留特別許可の許否判断に当たっては、個別の事案ごとの、最後は諸事情の考慮ということが入りますけれども、適切に判断をしていきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/76
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077・福島みずほ
○福島みずほ君 速やかに、在特、今でも法律、まあ法律というか、今でも認めることができるわけですし、子どもの権利条約にのっとり当然に親子で在特を出すべきだと考えますが、よろしいですね。念のため質問させてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/77
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078・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 今申し上げたとおりなんですけど、この改正法案ができましたら、考慮事項ということで、法律でこの明記を、在留特別許可の判断について明記をするということになっていて、その中で、親子関係についても、法律で明示された考慮事項のうち、家族関係又は人道上の配慮の必要性として考慮をされることとなるということであります。
私も何回も国会で申し上げたように、私としてもこの問題真剣に考えているということでありますので、在留特別許可の許否判断に当たっては、もちろん個別の事情ということは踏まえるわけでありますけれども、適切に私が判断していきたいと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/78
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079・福島みずほ
○福島みずほ君 留置施設における被留置者の死亡についてお聞きをいたします。
これについて様々な資料を今まで出していただきましたが、昨年、二〇二二年度中の二十七名の死亡の性別、年代、死因を出していただきました。配付資料として出しております。
これに着目をすると、五番、肺動脈血栓塞栓症、十五番、肺動脈血栓塞栓症、十九番、急性循環不全、二十番、汎発性血管内血液凝固症、それから二十六番、肺動脈血栓塞栓症、つまり、エコノミークラス症候群ではないですが、足とかにできた血栓がばっと心臓や肺に行って詰まって死ぬという、そういう状況ではないかと思うんですね。
これ、十六番の熱中症と推定というのは、空調が壊れていたという非常に悲惨なケースだと思いますが、今申し上げた番号、これ、拘束、配付資料で出しておりますが、金属手錠や様々な、ベルト手錠、あるいは保護室に入れられていたか、あるいは捕縄されていたか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/79
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080・谷滋行
○政府参考人(谷滋行君) お答えをいたします。
令和四年中、肺動脈血栓塞栓症で亡くなった被留置者が三名、急性循環不全で亡くなった被留置者及び汎発性血管内血液凝固症で亡くなった留置者、これがそれぞれ一名となっておりますが、いずれの事案でも戒具の使用はございませんでした。
保護室への収容につきましては、急性循環不全で亡くなった事案につきまして、体調不良で緊急搬送をされる前まで保護室に収容をしていたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/80
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081・福島みずほ
○福島みずほ君 今日は時間がありませんが、また詳しく教えてください。
次に、刑務所の保護室の利用についてお聞きをいたします。
これも配付資料をお配りしておりますが、三十日以上が何と五十九件、長い人は百三十四日です、札幌刑務所だと聞いておりますが。一時的な手法という位置付けから大きく懸け離れているのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/81
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082・花村博文
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
保護室への収容は被収容者の心身に影響を及ぼすおそれがあることから、収容の期間等の制約が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第七十九条に定められているものと承知しております。
このため、保護室収容中の被収容者に対しましては、速やかに収容の要件が解消されるよう、様々な職員がその動静を的確に把握するとともに、心情の安定を図るための働きかけを試みるなどの対応を行っているものの、被収容者の中には、法に定める収容の必要がなくならないため、施設の規律及び秩序を維持する観点からも、やむを得ず継続して収容しなければならないこともあるものと承知をしております。
いずれにいたしましても、引き続き、様々な手法を取りながら保護室収容中の被収容者の心情の安定を図り、速やかに保護室収容を中止できるよう、問題意識を持ちまして指導監督してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/82
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083・福島みずほ
○福島みずほ君 法律七十九条は、七十二時間以内、ただし、特に継続の必要がある場合には、刑事施設の長は四十八時間ごとにこれを更新することができる。
保護室、名古屋刑務所の事件があった保護室や、今回も保護室、保護室入りました。金庫みたいじゃないですか、まさに。物すごく密閉されている、窓もない、そんな中に百三十四日も入っていたら、本当にこの人、大丈夫かと思います。余りにひどい実態だと思ったんですね。もっと短いと思っていたんです。これは本当に各施設、考えていただきたい。
そして、これは、刑事施設の職員である医師の意見を更新する際に聞かなければならないとありますが、六十何回、医師はこれオーケーと言っているんですか。まさに、これはちゃんと面接をしているんですか。どういう状況でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/83
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084・花村博文
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
被収容者を保護室に収容し、又はその収容期間を更新した場合には、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第七十九条第五項の規定に基づきまして、刑事施設の長は、速やかにその被収容者の健康状態について刑事施設の職員である医師の意見を聴取する対応をしております。
その運用に当たりましては、医師が被収容者の健康状態を直ちに把握できる場合を除き、看護師又は准看護師にその状況を把握させ医師に報告させる取扱いとしており、報告を受けた医師におきまして診察の要否を判断するものと承知をしております。
当局といたしましても、保護室収容及び期間の更新時における被収容者に対しては、その心身に与える影響等を考慮し、今後とも医師による健康状態の把握が適切に行われるよう、継続して指導監督してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/84
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085・福島みずほ
○福島みずほ君 医師は本人見ていないんですよ。職員やそういう人たちから連絡を受けて、はいと言っているだけの可能性も非常に強い。医者が基本的に四十八時間ごとにやっぱり面接して、精神的におかしくなっていないか、大丈夫かというのをやっぱり確認すべきだと、そのことを是非やっていただきたいということを申し上げます。
被害者の氏名等の秘匿についてお聞きをいたします。
これは、私も、性暴力、セクシュアルハラスメントなどの裁判をやってきた弁護士なので、DVもたくさん担当してきました。ですから、怖いとかいう理由も、怖いというか、氏名の秘匿についての必要性は理解するんですが、もう一方、弁護士として、被告人、弁護士の攻撃防御の観点というのもすごくあるというふうに思っています。
これは、例えば、三人のA、B、Cの女性と夜お酒を飲んで楽しく騒いだ、本人は楽しく騒いだと思っていたら後から強制わいせつだと言われた、A、B、C、誰か分からない、でも、そのうちの一人から例えばLINEが来て、楽しかった、また誘ってねとかある。一体誰なのか、誰が被害者なのか、自分には身に覚えがないなんという場合に、これ本当に攻撃防御ができない。
弁護士が知っていたって意味ないんですよ、基本的に。だって、本当のことを知っているのは被疑者、被告人で、その人間が被害者との人間関係を知っているわけです。誰なのかが分からない限り、弁護士、手の打ちようもないんですよね。LINEやいろんなので、この人はこうだ、同級生だ、だからこれ自分は違うと思うとかいう被告人の、被疑者の発言が封じられるというのは問題だと思います。
これに関して、法制……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/85
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086・杉久武
○委員長(杉久武君) 会派としてのお申合せ時間が来ています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/86
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087・福島みずほ
○福島みずほ君 はい、時間。
法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会第二十二回会議議事録で、まさに村木厚子さんが、テレビ、顔にモザイクが掛かった人が出てきていろんなことをしゃべって被害に遭ったと言うぐらい、物すごく不安定なものだと批判をされています。
この制度、条文では性暴力だけではなく、もっと拡大をしております。一般的に危害を……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/87
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088・杉久武
○委員長(杉久武君) 福島委員に申し上げます。会派としての時間が来ています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/88
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089・福島みずほ
○福島みずほ君 分かりました。はい。
ですから、これは慎重に取り扱うべきだということを強く申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/89
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090・佐々木さやか
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。よろしくお願いいたします。
今回の刑訴法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
今日は、犯罪被害者等の情報の保護に関することについて幾つかお聞きをしようというふうに思います。
今日も、ほかの委員の先生方から問題提起が様々ございました。私も、やはりこの被害者の保護ということと、そして被告人の若しくは被疑者の防御の利益、やはりこれを、両方をバランスを取るということが非常に重要であろうというふうに思っております。
被告人、被疑者の防御というのは非常に重要なものでありまして、中にはやはり無罪というような事件もありますし、そうした身の潔白を証明をしていくという中で、非常に重く配慮、重要視しなければならない利益なわけです。
ただ、他方で、やはり今までの日本の刑事司法手続、捜査手続というのは、この被害者の方々を余り当事者視しないといいますか、余り手続に主体性を持って参加をさせない、捉えないというような傾向性がございました。そういったところから、特に性犯罪関係の被害者の皆様への配慮ということの必要性が近年強く議論をされて、また意識をされてきたという背景があるというふうに思います。
やっぱりこの社会状況の変化の中で、今、例えば犯罪被害者、特に性犯罪被害者の方々に関する情報がネットに載ってしまったりとか、SNS等でそうした被害に遭うと。もしそうなると、インターネット上の情報というのは基本的には永久的に消せないわけで、そうした取り返しの付かないような被害が生じてしまうという、この時代の変化というものも私は十分に考えながら、この刑事司法手続に関する被告人、被疑者の防御の利益と犯罪被害者等の保護ということを考えていく必要があるかなと思っております。
そこで、大臣にまずお聞きをしようと思います。
この今回の刑訴法案、改正案の特に犯罪被害者の氏名等の秘匿に関する措置、この改正を行った背景といいますか、趣旨との関係で、これまでもこうした配慮ですとか、現行の制度、そして運用状況というものがあったわけでありますけれども、その内容と、それからそこではどのような課題があったのか、そしてそういったことが今回の改正案に反映されているものと思いますけれども、その点についてまず御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/90
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091・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 現行法の下でも、実務上、被害者から被疑者、被告人に自己の氏名等を明らかにされたくない旨の申出があった場合や、検察官が事案の性質等から被疑者、被告人に被害者の氏名等を明らかにしないことが適当であると判断した場合などに、例えば起訴状の公訴事実において、被害者の氏名等に代えまして、被害者の旧姓ですとか被害者の親族名と続柄ですとか被害者の通称名などを記載するといった工夫がなされることがあるということでありましたけれども、もっとも、現在の裁判実務におきましては、このような運用上の措置は、解釈上、再被害のおそれが高い場合など、限定的な場合にしか認められないとされております。また、どのような場合に秘匿できるかが法律上明確でないことから、被害者の氏名等の情報を十分に保護することができているとは言えない状況にあると考えております。
そこで、被害者等の名誉等が著しく害され、あるいはその身体等に対する加害行為等がなされるおそれがある場合、こういった場合には被害者の氏名等の情報を秘匿することができるようにするとともに、秘匿の措置をとることができる場合について、裁判所による個別の解釈に基づく判断に委ねるのではなく、被疑者、被告人の防御権に対する配慮も含めて法律で明確に規定し、安定した運用を実現すると、こういった目的のために本法律案における法整備を行う必要があると考えているものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/91
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092・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
おっしゃっていただいたように、被害者の保護という、被害者の情報の保護という観点からも、今の現行の制度、運用状況では必ずしも十分でない場合もあったと。そして、やはり法律の制度ではありませんので、やはり個々の場面場面によってどうなるか分からないという不安定さがあったと。それは反面、大臣からもおっしゃっていただいたように、被告人、被疑者の防御の利益という観点からも、おっしゃるとおり、やはり、こういう場合にはこう、こういう場合にはこうというふうに法律できちんと明確化していくということ、それは非常に重要だというふうに思います。
ですので、そういった今回のここの当該箇所に関する改正の趣旨というのは、私が冒頭申し上げた、こういった被害者の情報の保護ということと、そして被疑者、被告人の防御の利益ということのバランスを取ろうと、かつ、しっかりと両方の部分を実現をしていこうという趣旨だというふうに理解をいたしました。
そこで、個々の要件について幾つか確認をさせていただこうと思います。
質問通告ですと③番になるんですけれども、今回、逮捕状ですとか起訴状等に、犯罪被害者等の情報を秘匿するということで、具体的に個人特定事項という言葉がございます。この個人特定事項というのは、氏名及び住所その他個人を特定させることとなる事項をいうということでありますけれども、氏名、住所は分かりますけれども、そのほか個人を特定させることとなる事項というのはどういうものをいうのか、その範囲、具体例等についてまずお聞きをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/92
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093・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
氏名、住所以外に具体的にどのような事項がこれに該当するかということにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものでございますが、例えば被害者の勤務先や通学先、あるいは配偶者や父母の氏名などがこれに該当し得ると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/93
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094・佐々木さやか
○佐々木さやか君 その辺りは個別の判断ということですので、何というんですかね、先ほど申し上げたような被疑者、被告人の防御の利益というところからすると、必ずしもこの法律上の要件としては明確ではないですので、今後の成立した場合の運用の中で、やはりある程度この予測可能性ですとかそういったところを裁判所にも考えていただければなというふうに思います、あと警察庁ですね。
そういったものが個人特定事項として想定をされるということでありますけれども、この個人特定事項が秘匿されるケースとして想定をされておりますのが、一つは性犯罪関係の事件であります。
それだけにとどまらず、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者の個人特定事項が被疑者に知られることにより、被害者等、これは被害者のみならず、被害者が死亡している場合などにはその配偶者ですとか御家族も対象になるそうですけれども、こういった方々の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるなどのおそれがあると認められる場合と、それからもう一つは、そうしたその者若しくはその親族の身体、財産に害を与え、又はこれらの者を畏怖、困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる場合というように、今包括的な場面が規定をされております。
一定の性犯罪等の犯罪類型として規定がされるというのが一番明確でありますけれども、それに加えて、こうしたそのほかの場合のことについても規定しているわけですけれども、やはりこれがどういう場合に認められるのか、この具体例等を明らかにしておく必要があるかと思います。想定をしています具体例等について教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/94
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095・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、御指摘のとおり、被害者の個人特定事項の秘匿措置をとることができる事件といたしまして、性犯罪の事件以外にも、犯行の態様、被害の状況などに鑑みて、その個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、被害者等の名誉等が著しく害されるおそれや、被害者又はその親族に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる事件を対象としております。
具体的にどのような事件がこれに該当するかにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものでございますけれども、例えば、各都道府県の迷惑防止条例違反のいわゆる痴漢事件、また、暴力団の幹部による事件で被害申告をした被害者を逆恨みしており、当該暴力団の構成員から被害者に対して報復等がなされるおそれがある事件などが該当し得ると考えられ、その場合には、その事件の被害者の個人特定事項について秘匿措置をとることができることとしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/95
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096・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
痴漢事件は性犯罪に該当するというふうに思いますけれども、迷惑防止条例違反ということで、この具体例、刑法犯として挙げていただいている事件には該当しませんので、個々にカバーされるということでありました。それから、暴力団関係者による事件で報復のおそれがあると、そういった場合にも、確かに社会生活の平穏ですとか、それから身体、財産への危害、こういったことも懸念されるということで、ある程度類型化できるのかなと思います。
やはり、先ほど申し上げたとおり、被告人、被疑者の防御の利益というものも重要なものでありますので、今御答弁いただいたようなケースというのが一つの今後の運用の指針になればなというふうに私も思います。
個別のそのほかの状況については、やはり最終的には裁判所の判断というもの又は検察官の判断というものもあるかと思いますけれども、それに当たっては、この法改正の趣旨というところ、目的というところ、今日の審議でも様々御指摘がありましたので、そういったことを是非踏まえて運用をされることを期待したいというふうに思います。
それから、今は、この個人特定事項が秘匿される内容と、それからどういうケースに秘匿されるのかということをお聞きしたわけですけれども、先ほども申し上げたとおり、被害者、必ずしも被害者ではなくても個人特定事項が秘匿される対象、秘匿される場合があるというふうに理解をしておりますけれども、この被害者以外の者で個人特定事項が秘匿される対象となる者の具体例についても教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/96
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097・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
御指摘のとおり、本法律案におきましては、事件の被害者以外の者につきましても、その者の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、その者の名誉などが著しく害されるおそれや、その者又は親族に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる者について秘匿措置をとり得ることとしているところでございます。
具体的にどのような者がこれに該当するかは、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されるものではありますけれども、例えば暴力団幹部の被告人が違法薬物を多数人に譲渡したというような事案で、譲受人の氏名が知られますと暴力団組織関係者から報復がされるおそれがあるといった場合の当該譲受人などが該当し得ると考えられ、その場合、その者の個人特定事項について秘匿措置をとることができるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/97
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098・佐々木さやか
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
それから、この個人特定事項の秘匿というのは、基本的には被害者の利益を保護する、被害者の情報の保護というところにあると思いますので、被害者の意向というものがやっぱり一定程度重要なのではないかなというふうに思います。
この被害者の意向については、例えば現行の制度ですと、公開の法廷で被害者に関する事項を秘匿する場合なんかには、被害者若しくはその法定代理人、それからその委託を受けた弁護士などからの申出がある場合には被告人や弁護人等の意見を聞いて判断するというような制度になっておりますけれども、今回法改正で新しく規定をされます逮捕状、それから起訴状と、捜査段階のものもありますけれども、こういった場面で個人特定事項の秘匿をするに当たって、被害者の意向の確認等についてはどのようにされるのかということを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/98
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099・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきましては、検察官は、個人特定事項を秘匿する必要があると認めるときは、裁判所に対しその記載のない逮捕状に代わるものや勾留状に代わるものの交付を請求すること、また、裁判所に対し個人特定記載事項のない起訴状抄本等を提出して個人特定事項が被告人に知られないようにすることを求めることができることとしております。
その必要性の判断に当たりましては、捜査機関、検察官が、捜査の過程において被害者に個人特定事項を秘匿してもらいたいという意向があるかどうかということをお尋ねするなどして把握をし、その意向を重要な要素として判断をすることになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/99
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100・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今御説明があったように、法律の制度上は、この捜査段階についての個人秘匿というのは、被害者若しくはその代理人等からの申出というのは規定されていないようでありますけれども、事実上、検察官若しくは捜査機関の方でそういった意向をきちんと確認をしていただくということのようであります。
そこの過程で重要なのは、これもこの被害者保護というもの、私は非常に重要だと思いますので、丁寧にその意向、若しくは、その被告人、被疑者等に知られることによって生じ得る不利益等について説明をしていただきたいというふうにも思うんですが、他方で、何といいますか、やはり被疑者、被告人の防御の利益ということ、これについても、やはり検察官も公的な立場にあるわけですから、一定の配慮をしっかりとしていただきたい。
ですから、そこにおいて、被害者の方の心情としては、もちろん元々面識があるような事件についてはそうとも限らないかもしれませんけれども、知られたくないと思うのが普通だと思いますので、そこについて、何といいますか、仮に知られた場合にも、その方の社会生活の平穏とか名誉とか、また身体、財産等に対する危害が加わらないように、こういうふうに全体としてきちんと守るようになっていますよとか、それから、犯人側と思っていらっしゃる側の利益について説明してもちょっとなかなか難しいかもしれませんけれども、司法手続として、被告人、被疑者側の防御ということから弁護士さんの活動上こういう必要性がありますということとか、そういったことを丁寧に御説明をいただいて、そこを御理解いただきたいなというふうにも思います。
非常に難しい作業ではありますけれども、先ほど申し上げたように、法律上の制度としては組み込まれてないようですので、やっぱり捜査機関ですとか検察の方で、しっかりとこの被害者の保護というところと刑事手続上の被告人、被疑者の防御の利益というところ、しっかりと理解の上で、できるだけ分かりやすく被害者の方にお話をしていただければというふうに思います。
他方で、やはりどうしても被害者の方というのは証人として証言をしていただいたりとか供述調書等を取る必要が非常に高いですので、その証言や供述調書を、そもそも被害届の取消しなどもされると立件できない場合もあるかもしれませんので、やはり捜査に協力をしていただく、それによって適切に刑事手続を進めていくということも重要でありますので、そういった観点から、今回のような被害者情報の秘匿の保護がなされるというのは重要なことかなというふうにも思っております。ですので、今後の運用に当たって、この改正案が成立した際には、そうした捜査機関、検察側の努力というものを求めたいというふうに思います。
それから、今、被害者の方の意向の確認というお話をしましたけれども、例えば被害者の方が自分の個人情報については秘匿をしてほしいというふうに希望していたと、しかしながら、それについて最終的に認められないで記載がなされてしまうという場合、若しくは、氏名、住所とかその他幾つかのプライバシーに関する事項を知られないようにしてほしいというふうに希望したけれども、そのうちの一部については秘匿することが難しいとか、そういったことがあるのかどうか。
被害者の方の意向の確認ということ、必ずしもそのとおりにいかない場合ということについてちょっと御説明をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/100
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101・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
先ほども答弁申し上げたとおり、検察官は、捜査の過程で被害者に個人特定事項を秘匿してもらいたいという意向があるかどうかということをお尋ねして把握するというふうに考えられますけれども、実際にその後、秘匿措置をとるかどうかにつきましては、それを検察官又は司法警察員において判断することとなります。
すなわち、本法律案におきましては、いわゆる性犯罪の事件の被害者のほか、犯行の態様、被害の状況等に鑑みて、その個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、先ほども申し上げましたけれども、被害者等の名誉等が著しく害されるおそれ、また、被害者又はその親族の身体等に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる事件の被害者について、その個人特定事項を秘匿措置の対象としているところでございます。
そして、逮捕状における秘匿措置に関しては、検察官又は司法警察員が必要と認めるときに逮捕状抄本等の請求をすることができ、起訴状における秘匿措置に関しては、検察官が必要と認めるときに起訴状の謄本の送達により当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができることとしているところでございます。
このように、本法律案においては、被害者の個人特定事項のうち、検察官又は司法警察員が法律の要件を満たすと認めた上で必要と認める限りにおいて秘匿措置を行うことができることとしているところでございまして、このような要件該当性については、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断されることとなりますので、被害者が秘匿を求めている個人特定事項であっても秘匿措置がとられないということはあり得るところでございます。
もっとも、通常、その必要性の判断に当たっては、被害者等が秘匿を希望しているかどうかが重要な考慮要素となると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/101
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102・佐々木さやか
○佐々木さやか君 なかなか悩ましいといいますか、被害者の情報の保護という観点から、被害者の方の意向を私も重要視していただきたいというふうに思います。その上で、しっかりと法律上の要件を満たす場合、まあ当然そうですけれども、その判断を現場で適切にしていただければと思います。
それで、ですので、今回の法改正とは直接関係しませんけれども、やっぱりこの犯罪被害者の方への様々な支援ということ、これもこれまでも法務省も取り組んできていただいていますけれども、被害に遭ったところから相談ですとか、またその後の刑事手続の流れとか、そういったことの情報というのを丁寧にやっぱり御説明をして、この個人特定事項の秘匿のみならず、いろんなことといわゆるパッケージでしっかり被害者の方を支えていくということが重要なのかなと思います。
前に一般質疑のときにもちょっとお聞きしたかもしれないんですけれども、例えば痴漢被害の方から、痴漢被害に遭われた学生さん、若い方からお話を聞いたことがあるんですけれども、例えば、痴漢被害に遭って、朝電車で犯人を捕まえるというか、この人が犯人ですということで申告をして、警察の人が動いてくれたんだけれども、その後、要するにその方が、被害者の方がどうなるのかということ、全く初めてのことですので当然分からないわけなんですけれども、警察署に行って丸一日待たされて、夕方まで掛かって供述調書を取られたとか、結局その日は学校に行けなかったとか、それから実況見分なんかで被害の再現をさせられるというのも一般の方にとっては非常にストレスの高いことですので、そういったところから一つ一つ是非丁寧に取組を進めていただきたいというふうに思います。
それから、起訴状においても個人特定事項の秘匿というものが場合によってはなされるわけですけれども、被告人の防御の利益という観点からですけれども、やはりこの弁護人も、そうした被害者の方、被害者の方等の情報を知ることによって弁護活動を行えるという部分があるわけであります。
ですので、例えば、起訴状に被害者の個人特定事項が秘匿されてしまった場合には、具体的には、まずその弁護人になろうとする人は、この被告人、依頼者との利益相反関係というのも確認したりしますけれども、その相手方になる方、具体的にはその被害者と自分が今まで何か関係性がなかったかとか仕事上の相談を受けたことがなかったかとか、そういったことの利益相反ということを確認するわけです。しかしながら、起訴状にそういった記載がなければ誰が相手方なのかが分かりませんので、そういった確認もできないという懸念もあります。
それから、その被害者の方との示談交渉をして示談書を交わしたりとか、また被害弁償をしたりとかということも弁護活動としてありますけれども、そのときにも相手の方がどなたか分からなければ動くことができませんし、それから、その被害者の方の証言等について争うような必要がある場合には、その方についてどういう方なのかということを知った上で証拠に関する調査などもする必要もあると思います。
こういった弁護人による弁護活動に不当な支障が出ないようにするということは非常に重要でありますけれども、ここについて、弁護人による弁護活動、被疑者、被告人の防御の利益とのバランス、ここの関係性についてどのように認識をされているのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/102
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103・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
まず、前提として、刑事手続において、弁護人による弁護活動に対して適切な配慮がなされることは重要であるというふうに認識をしております。
それで、そのうち、まず御指摘のうち、利益相反の確認の必要性という、その点について申し上げますと、弁護人となろうとする者ということで、逮捕段階の問題として考えますと、現行法の下におきましても、逮捕状の提示を受けたとしても、被疑者自身がそこに記載された面識のない被害者の氏名を記憶しているとは限りませんで、そのような場合には、弁護人となろうとする弁護士としては被疑者を通じて被害者の氏名を把握することはできないこととなりますけれども、そのために結果として利益相反の有無がその時点では判明しないとしても、そのことが逮捕状や勾留状の提示の趣旨に反して弁護権を侵害するものとは現在の制度上も考えられてはいないところでございまして、本法律案において、個人特定事項の秘匿措置がとられた場合に、弁護人となろうとする弁護士が被疑者を通じて被害者の氏名を把握することができないとしても、弁護権の侵害になるとは考えられないところですけれども。
いずれにしましても、その弁護士が被害者との間の利益相反の有無を確認する方法といたしましては、例えば捜査機関において、弁護人となろうとする弁護士からの問合せを受けて、被害者に対して当該弁護士に委任や相談をした事件があるかどうかといったことを確認し、これをその弁護士にお伝えする、あるいは、利益相反に該当するか否かを判断する上で必要となる被害者等に関する情報のうち、被害者等から同意を得るなどして伝えても支障がないということが確認されたものを弁護士にお伝えするといった運用上の工夫をすることが考えられ、利益相反の有無の確認に不当に支障が生じることはないのではないかと考えているところでございます。
次に、示談交渉の点について申し上げますと、現行の刑事訴訟規則上、弁護人は勾留状謄本の交付を請求することができ、これを通じて被害者等の個人特定事項を含む被疑事実の要旨を把握することができます。本法律案における法整備に合わせて刑事訴訟規則の改正が行われることが考えられることは先ほど別の御答弁で申し上げたところですけれども、その際、本法律案と同様の考え方に立つとすれば、勾留状の抄本を被疑者に提示する措置がとられた場合に、弁護人は個人特定事項を被疑者に知らせてはならないとの条件を付されて勾留状謄本の交付を受けることができ、これを通じて原則として個人特定事項を含む被疑事実の要旨を把握し得ることとなると考えられます。
また、起訴状抄本等を被告人に送達する措置がとられた場合には、原則として弁護人は個人特定事項を被告人に知らせてはならないとの条件を付されて起訴状謄本の送達を受けることができ、これを通じて個人特定事項を含む公訴事実を把握し得ることとなると考えられます。
したがいまして、本法律案における改正によって殊更に示談交渉に不当な支障が生じるということはないと考えております。
最後に、防御のための証拠の調査という点につきまして申し上げますと、本法律案は、被疑者、被告人の防御権に配慮をして、個人特定事項の秘匿措置がとられた場合でも、先ほど申し上げましたとおり、弁護人は原則として個人特定事項を把握することができることとした上で、防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、被疑者、被告人や弁護人の請求により、裁判所が個人特定事項を被疑者、被告人に通知する旨の裁判をしなければならず、その裁判に不服があるときは不服申立てをすることができることとしているところでございます。
したがいまして、防御のための証拠の調査に不当な支障が生じることはないと考えておりますけれども、本法律案が成立しました際には、秘匿措置の適正な運用がなされるよう、本法律案の趣旨及び内容を適切に周知してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/103
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104・佐々木さやか
○佐々木さやか君 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、今申し上げたやはり弁護人による弁護活動、被疑者、被告人の防御の利益というところもしっかりと重視をするべきだというふうに思います。
今、この証拠調査のことについても答弁いただきましたけれども、本当は証拠開示のところもお聞きしようと思ったんですが、やっぱり、今日ほかの委員の先生からもありましたけれども、弁護人というのは被告人そのものではありませんし、やはり社会正義の実現、人権保障という観点から活動する専門家でありますので、基本的には弁護人に伝えて、そしてそれを被疑者、被告人には伝えないでくれと、そういう条件を付せば基本的にはそれで大丈夫というとちょっと簡単な言葉ですけれども、それ以上に、弁護人にまで秘匿しなければならない場合というのは非常に限られているというふうに思います。
そういった具体例が私はちょっと現段階では頭の中に思い浮かべることができないんですけれども、ですので、制度上、そうした最終的な担保ということが必要なのかもしれませんけれども、やはり運用ですね、今後の法改正が成立した場合の運用においては、しっかりとそうした点を重視をした判断がなされるように期待をしていきたい、期待をしたいというふうに思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/104
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105・杉久武
○委員長(杉久武君) 午後三時に再開することとし、休憩いたします。
午前十一時五十分休憩
─────・─────
午後三時開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/105
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106・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、馬場成志君が委員を辞任され、その補欠として高橋はるみ君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/106
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107・杉久武
○委員長(杉久武君) 休憩前に引き続き、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/107
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108・梅村みずほ
○梅村みずほ君 本日もよろしくお願いいたします。日本維新の会の梅村みずほでございます。
本日は、前回委員会に引き続きまして、閣法四一号、刑訴法の改正案の質疑時間でございます。
私といたしましては、逃亡のおそれのある被告人への位置測定端末装着においてはプライバシーを適切に守っていただきたいということ、そのためには体内埋め込み型のGPSなど最新テクノロジーの活用についても可能性を探っていただきたいこと、また、逃亡を確実に防止するため、所在禁止区域については軍基地等も含めて幅広の想定をし、様々なシーンをシミュレーションしていただきたいということ、犯罪被害者の氏名等の情報秘匿制度に関しては、被害者の権利や名誉をしっかりと守りつつも、情報秘匿の範囲がむやみに拡大せぬよう、防御権の侵害につながらぬよう留意しながら運用していただきたいことなどなど、疑問点というものを御提示いたしまして、御答弁をいただきました。
その上で、本法は必要なものであるというふうに納得をいたしましたので、通告をしております数点の質問を本日はさせていただければと思っております。
今日は、お忙しい中、こども家庭庁担当ということで自見政務官にお越しいただいております。お忙しい中、ありがとうございます。
私は、この法務委員会の中でも、日頃から、子供に関わる政策は子供を中心に、まさに政府がおっしゃっているこどもまんなかという視点でお考えいただきたいということを申し上げ、親権や刑事責任年齢等についての質疑を行ってまいりました。
親権問題で必ず出てくるのは、親子交流や養育費というキーワードでございます。私は、子供の健やかなる成長には親との触れ合いもお金も両輪で必要なものであるというふうに認識をしております。しかし、先頃、こども家庭庁担当大臣であり、また男女共同参画の担当大臣でもいらっしゃいます小倉大臣から、配付資料にありますように、二〇三一年までに養育費の受領率を四〇%に定めるというような旨の御発言があったのを知りまして、驚いております。余りにも低い数値ではないかと。
これ、裏を返せば、六〇%の子供たちの養育費は受領できなくてもいいと受け取られかねないような発言であると思っていまして、この四月からスタートしましたこども家庭庁、縦割りの隙間で子供が悲しむことがないようにと創設され、子供のためにと縦割りの弊害を解決していくためのこども家庭庁の担当大臣からの発言とは思えないとびっくりしたんですけれども、これ、あくまでも、一〇〇%というと、世の中に一〇〇%というものはどれぐらいあるんだという話なんですけれども、限りなく一〇〇%を目指すべきであると私は思っております。
見直しが必要ではないでしょうか、政務官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/108
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109・自見はなこ
○大臣政務官(自見はなこ君) お答えいたします。
養育費の履行確保につきましては、政府として取り組むべき重要な課題と認識をしておりまして、昨年策定をいたしました女性活躍・男女共同参画の重点方針二〇二二におきましても、養育費の受領率に関する達成目標を設定することが明記をされたことを踏まえまして、先日になりますが、養育費の受領率の達成目標を設定したところであります。具体的には、二〇三一年に、養育費の取決めをしている場合の受領率を七〇%、また養育費の取決めの有無に関わらない全体の受領率を四〇%と掲げたところでございます。
この達成目標につきましては、これまでの養育費の受領率の推移を踏まえ、このトレンドを上回るよう目標を設定しているとともに、今後の養育費の受領率の結果も踏まえ必要な見直しを行うものとしておりますが、委員と問題意識同じでございまして、こども家庭庁といたしましても、希望する全ての一人親家庭が養育費を受領できる取組を進めることが極めて重要であると考えているところであります。
養育費の履行確保におきましては、法制審議会家族法制部会におきまして議論が進められているところと承知をしておりますが、こども家庭庁におきましても、離婚した一人親家庭が養育費を受領できますように、離婚前後の親支援モデル事業によりまして、養育費確保に関する弁護士等による相談支援、また公正証書の作成支援、また保証会社におけます保証料の補助などの養育費の履行確保に関する取組を行う自治体の支援を行っているところでございます。
こうしたモデル事業を活用した自治体の取組につきまして周知を図るなど、一人親家庭が養育費を受領できるよう引き続きしっかりと進めてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/109
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110・梅村みずほ
○梅村みずほ君 御答弁ありがとうございます。
取決めをしているのに七〇%を目指すって、これまた低過ぎるんですよ。取決めしているのに七〇%って何ですか。不履行三〇%あってもいいんですかというところ、子供側じゃなくて、女親あるいは男親の目線、親の目線に立っているとしか言いようがないと私は思います。
その三〇%の子供、何なのかなと思っているんですけれども、これ、単独親権制度というものが大前提になっていませんか。先ほど親権の問題がこの法務において審議されているというのは承知いただいているという旨の発言ありましたけれども、ならば、子供のために親権制度どういうものが理想なのかというのも、縦割りの弊害というのをぶち壊して子供の味方に立つというのがこども家庭庁の意義なんですから、そこ、親権問題踏み込んで発言してもしかるべきと私は思っております。
ここで政務官に御質問させていただきたいんですけれども、DVや児童虐待がある場合を除いては、両親が高葛藤である場合においても、子供にはお金、養育費ですね、そして愛情や触れ合い、親子交流ですね、両方必要であるという認識は共有できますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/110
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111・自見はなこ
○大臣政務官(自見はなこ君) お答えいたします。
養育費の履行確保につきましては、政府としては取り組むべき重要な課題と認識をしておりまして、法制審議会家族法制部会におきまして議論が進められているところと承知しておりますが、こども家庭庁としても、できることから取り組んでいくことも重要であると一方で考えております。
また、御指摘いただきました親子交流につきましては、民法に位置付けられているところではございますが、父と母が離婚した場合でありましても、父、母のいずれもが親であることには変わりがなく、一般論としては、父と母の離婚後も適切な形で親子交流が実施されることは子供の権利の観点から非常に重要であること、こども家庭庁としてもそう考えてございます。
こども家庭庁におきましては、離婚前後の親の支援モデル事業や親子交流支援事業によりまして、養育費の履行確保に関する取組や親子の交流事業を行う自治体の支援を行っていくところでありまして、引き続きこれらの取組をしっかりと進めてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/111
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112・梅村みずほ
○梅村みずほ君 政務官、ありがとうございます。この認識は共有させていただき、非常に重要という、非常にというところに言葉の強さを感じることができました。是非とも御協力をいただきたいと思うところです。
残念ながら、子供のための養育費も不履行があります。親子交流も不履行があるんですね。双方共に私は問題が大変大きいと思っています。ですので、次の質問に参りますけれども、親の離婚のときに、先ほど公正証書という言葉も政務官からありましたけれども、共同養育計画を取り決めるというのを公正証書にして、養育費の支払及び親子交流のルールというのを明確化することを義務付けて、違反や不履行があればペナルティーを科す、養育費においてはもうマイナンバーに登録された銀行口座から自動的に引き落とされる、もうそれぐらいやった方がいいと私は考えております。
そういった仕組みにする方がよほど養育費の受領率というのは格段に高まると考えますが、いかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/112
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113・自見はなこ
○大臣政務官(自見はなこ君) 繰り返しになって恐縮でありますが、養育費の履行確保につきましては、政府として取り組むべき非常に重要な課題というふうに認識をしておりまして、現在、法制審の家族法制部会におきまして議論が進められているところと承知をしております。
このため、今委員が御指摘いただきました手法につきまして、こども家庭庁としてお答えすることは困難でございますが、いずれにいたしましても、養育費の受領率を高めていくことは非常に重要であるというふうに考えております。
そうした中で、こども家庭庁におきましては、様々な、先ほど来から申しておりますような離婚前後の親の支援モデル事業など自治体の支援を行っているところでございまして、こういった取組を通しまして、一人親家庭がきちんと養育費を受領できるようにしっかりと努めてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/113
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114・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
こども家庭庁としては発言しにくいというような旨の一部の御答弁あったんですけれども、そのためにこども家庭庁が生まれたわけです。一歩、本来だったら、ここは所管ではないけれども踏み込めるのがこども家庭庁だと思って、私もこども家庭庁、心から応援をしておりましたけれども、例えば、いじめ問題が所管がこども家庭庁に移管できなかったり、幼稚園はやっぱり文科省に残ったりということで、これからどうなるのかなと、期待と不安ない交ぜにして見守っているという立場ですので、この四〇%は余りにも低過ぎると、親目線のまま変わっていない。是非とも、この配付資料、写真に小さくあります、こどもまんなかって書いてあります。こどもまんなかで御検討いただきますように、是非とも再考をお願いしたく思います。
では、子の養育費に絡みまして、法務大臣にも御質問させていただきたいと思います。
養育費や親子交流に関して、調停において取り決められた内容に対して不履行や違反などがあるのが現状でございます。先ほども言いましたように、ペナルティーが私、必要だと思っていまして、例えば養育費は、これ、強制執行、間接強制執行などもあるというふうに理解はしているんですけれども、調停やっても、審判やっても、履行勧告出ても、間接強制の決定までなされても、子供を別居親に会わせなくて済むならお金払いますというケースもあるということをしっかりと認識していただかなくてはいけないと思っているんですね。
ですので、養育費や親子交流に関して、調停において取り決めた内容に照らして違反や不履行があれば、親権の停止なども含めたペナルティーを本来科す必要があるのではないかと思いますけれども、齋藤大臣の御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/114
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115・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、養育費の履行確保は、何よりも子の健やかな成長のために重要な課題であるというふうに考えています。
また、父母の離婚等に伴って父母の一方と子が別居することとなった場合において、適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると認識をしています。
現行法におきましても、御指摘ありましたが、家庭裁判所の調停により養育費や親子交流の取決めがなされたにもかかわらず、父母の一方がその取決めに従った履行をしない場合には強制執行の申立てが可能とはなっています。
ただ、今、法制審議会におきましては、このような前提の下で、養育費や親子交流の取決めの実効性を向上させる方策、これを含めて、今、父母の離婚後の子の養育の在り方について様々な角度から調査審議が進められているということでありますので、こうした調査審議が十分に、かつスピード感を持って行われるように我々も協力をしていきたいと今考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/115
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116・梅村みずほ
○梅村みずほ君 ありがとうございます。
自見政務官からも齋藤法務大臣からもありましたように、親子交流の適切な形での、ここが非常に重要なんです、この適切な形というのが、親にとっての適切な形と、子供にとっての適切な形、違いますよ、ケースによっては。
ゴールデンウイーク中に、私は、共同親権を求めるデモがありまして、参加してまいりました。初めて顔を出させていただいたんですけれども、あるお子さんにお会いしました。小学校五年生です。親が離婚されて、まあ離婚かな、離れて暮らしていらっしゃって、本人の意思とは関わらず、父親方で過ごしていました。お母さんに会いたくても会えなくて、会いたくても会えなくて、逃げてきたんですよ、お母さんの元に。
そういう子供と直接話を聞いて、こういう子が一体日本にどれぐらいいるのかなと。子供の声を是非聞いてください。こどもまんなかって本当は何なのかと、親にまだ軸足置いているんじゃないかということを政策一つ一つの決定において省みていただきたいんです。切にお願いいたします。
それでは、時間、もう一問聞く時間がありそうですので、全く同じ認識で、子供にとって何がいいのかということで、刑事責任年齢のお話でございます。
以前の質疑で、私は、今十四歳で刑事責任年齢になりますと、ハッピー・バースデー・ツー・ユー、君、今、今日から刑事責任年齢に達したから、悪いことしたら責任を負うんだよと話をする御家庭は少ないと、もう入学式、卒業式のときに、親もいる、教育者もいる、子供たちもいるというところで、法律の重要性を伝えながら、君たちは悪いことしたら今から責任を負うんだよということをお伝えしてはいかがですかと、これは凄惨ないじめ事件もあるからです、その方が子供にとって腹落ちするんではないですかと申し上げたところ、大臣からは御答弁いただきまして、あの際はありがとうございました。
一般的、類型的な成熟度を示す年齢ではなく年度を基準とすることに合理性があるのか、そのような定め方をした場合、人によって誕生日が異なるため、出生から刑事責任が生じるまでの年月として最大で一年近く差が生じると、そこに合理性があるのかと、そういった問題がございます、したがって、今のような定めだとおっしゃったんです。
その合理性があるのかどうかというのを検証するのが法務大臣や法務委員会の役目だと思うんですね。それ、検証したのかという話なんです。これ、検証していただかないといけないと思うんですけれども、七番の質問になりますが、双方の、十四歳か中学入学相当でコンセンサスが取れますよ、三者のコンセンサスが取れますよという節目なのかという、時代に合わせたてんびんに掛けての合理性、検証してくださいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/116
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117・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 先日も御答弁しましたが、刑事責任を負わせるというためには、物事の善悪を判断する是非弁別能力ですとか、その判断に従って行動する行動制御能力、こういうものが必要であると。これはやはり一つ年齢によって判断をできるのではないかという話をさせていただきましたが。
検証について言うと、やはり同様の答弁になるかもしれませんが、一般に、人は、出生から年月を経るにつれて、家庭生活、学校教育、社会生活などの経験によって様々な影響を受けながら精神的に成熟をしていくというものと考えられ、年齢は一般的、類型的な成熟度を示すものとして考えられているということもありますので、刑事責任が生じる時期ということに関して言いますと、この年齢によって画することに合理性があるのではないかと考えているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/117
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118・梅村みずほ
○梅村みずほ君 刑事責任年齢が十四歳となった明治四十一年のときとひょっとしたら答弁変わらないんじゃないかなと思います。この点、また引き続き議論させていただきたいと思います。
終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/118
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119・鈴木宗男
○鈴木宗男君 齋藤大臣、御苦労さまです。
二十五日の委員会でも大臣にお尋ねしました。袴田事件で三者協議をやって、検察側は検証に三か月掛かる、何ゆえに三か月かと。静岡地裁で九年前に判決が出て、そして東京高裁でも判決が出て、そして検察は熟慮に熟慮を重ねて特別抗告もしなかったわけですね。私は、あとは再審の場で堂々と検察の主張をすればいいという考えなんですけれども。
そこで、大臣として、検察をつかさどる立場にあるわけでありますから、率直に検察は何ゆえに三か月かということを聞いてこの委員会で報告をいただきたいという質問をさせていただきましたので、その返事を今日はお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/119
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120・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、事務方が用意したものをお読みした上で私の考えを申し上げたいと思います。
まず、この三者協議というものの性格でありますが、この三者協議は、裁判所が非公開でやろうといって、それに我々が参加をしているというものであります。したがいまして、その非公開で行われている議論の中身について、検察がこう言ったとか、向こうがこう言ったとか、そういうことを、裁判所が非公開でしているものについて、行政側の人間である私がオープンにしていいのかというところについては、正直、私もこれ考えてきたんですよ、正直、本当にいいんだろうかと。司法権の独立もありますし、裁判所と行政の関係もあるので……(発言する者あり)ちょっと、まだ続きあるんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/120
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121・鈴木宗男
○鈴木宗男君 大臣、私は中身を聞いているんでないんですよ。何ゆえに三か月掛かるかということを聞いているんですよ。裁判所が何をした、こう言ったということを言っているんじゃないんです。何ゆえに三か月。私はあしたにでもできると思っていますよ、決断すれば。それを聞いているんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/121
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122・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) それで、その裁判所がそういう形で非公開だということについてやっているわけですから、その三か月というふうに検察が言ったということ自体、私は外に言うことがいいのかどうかということがあるんです。前回の御質問の中で鈴木先生は三か月とおっしゃっていましたけど、私は、それはあの答弁では言っていないんですね。なぜなら、三か月というのは、裁判所が非公開で行えと言ったところでの検察の発言なので、私はそれを認めるわけにはいかないんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/122
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123・鈴木宗男
○鈴木宗男君 大臣、そういうのをすり替えの議論と言うんですよ。役人の言いぶりですよ。
三者協議しました、弁護団が記者会見しているんですよ。そこで検察は三か月時間掛かると言ったと公になっているのを、これ皆さん方も知っているじゃないですか。だから、何ゆえに三か月かということを私は検察に聞いてくれと、この場で大臣に言ったんですよ。それなのに何でストレートに聞かないんですか、何ゆえに三か月必要かということを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/123
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124・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、もう鈴木委員、本当に叱られると思うんですが、三か月ということを向こう側が、多分弁護側が公にしているんだろうと思うんです。それを行政の方で、我々の方で三か月でしたということを本当に言っていいのかというのがまず一つありますと、私の懸念が。それはやっぱり裁判所が非公開だと言っているものでありますので……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/124
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125・鈴木宗男
○鈴木宗男君 大臣、もっと男らしくやりましょうよ、政治家同士でやりましょうよ。
いいですか。あなたは検察を指揮監督できる立場にあるんですよ。難しい話を聞いているんじゃない、私は。なぜ三か月かと検察が言ったかということ、それを確認、私はしているんですよ。だから、検察が言った話じゃない、弁護側が一方的に言った話だ、これ皆さん方も、一対一の話になれば言った言わぬで通りますけれども、三人以上入ったとき、しかも関係者が何人か入ったとき、つじつま合いませんよ。弁護側が、じゃ、うそを言っているということになりますよ、大臣の今の言いぶりからすれば。
検察は検察で、三か月と言ったならば、何ゆえに三か月掛かるか、それ聞くの、大臣、当たり前じゃないですか、大臣としても。おまえたちの主張は何なんだと、おまえたちの考えの根幹は何なんだと聞くの、当たり前じゃないですか。中身の話じゃないんです、これは。これ正直に、大臣、答えてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/125
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126・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、繰り返しになってしまうんですが、裁判所が外に言ってはいけない、非公開だという会議で検察側がどういうことを言ったかということを私が、弁護側が言うのはいいですよ、弁護側が言うのは。ただ、そこは、鈴木先生、理解してほしいのは、やっぱり……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/126
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127・鈴木宗男
○鈴木宗男君 大臣、外に言っちゃいけないという話が、大臣、外に出て首になっている大臣もいるんじゃないんですか。そういう子供じみた答弁は、大臣、齋藤健たるものが言うべきじゃないですよ。しかも、将来あるあなたですよ。本来、官僚を監督するのがあなたの立場じゃないですか。国民世論として何で三か月も掛かるんだと思っているんですから、その声に応えるのが当たり前じゃないですか。外に言った言わないじゃなくて。中身の話じゃないんですから。何ゆえに時間が掛かるかということなんですから。
じゃ、弁護側が三か月と言って、誰か批判している人いますか、この場でも。ああ、そうだったのかと、そんなに時間が掛かるのかなというのが、みんな不思議な思いでいるんじゃないんですか。何でそれを、大臣、私はこの開かれた委員会という場で言っているんですから、次の委員会でその答えをいただきたい。ストレートに、何で、なぜ時間が掛かるか、かくかくしかじかで三か月なんです、検察の考えはこうでしたと言うのが筋じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/127
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128・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、その三か月ということを私が、裁判所が非公開だと言っているものについて……(発言する者あり)ああ、それは、それは中の話ですから、それは行政の中でやっているやり取りというのは、それは当然あります。ありますが、それを外で、裁判所が三か月ということについて、我々が三か月でしたと、非公開の会議で、信頼関係で少なくとも裁判所とやっている話につきまして、三か月でしたと私が公にするということ自体が、私は裁判所との関係の、信頼関係の問題が私はあると思うんです。
先生は多分分かっていただけると思うんですけど、その上で、私が中で考えましたのは……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/128
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129・鈴木宗男
○鈴木宗男君 私は、法務委員会の委員として聞いているんですよ。開かれた国会の場で、裁判所がそう言ったから、言った言わぬじゃないんですよ、表に出た以上、我々は真実を明らかにする責任があるんですよ。それを問うているんですよ、大臣。言っていいとか悪いとか、判決の中身だとか、あるいはその場での細かいやり取りを聞いているんじゃないんです。
袴田さん八十七歳、もう人生限られている。それを考えたら、一般の、私のところにも何万という声来ていますよ。何で三か月なんだということで。何で、大臣、人間的に、私の言っていることに無理ありますか。それならば、こういう理由で三か月なんだというのなら分かりますけれども、検察の側に立って、それで都合よく裁判所の判断に我々は口を挟まぬと言うけれども、判決に何か物を言えと私は言っているんじゃないんですから。
三者協議なんていうのは、大体これオープンの場みたいなものなんですよ、実際は。協議して詰めているわけですから、日程を。何も難しい議論じゃないんですから。それを何で、大臣、正直に答えられないんです。委員長、ここは、委員の皆様方も、私の言う話、無理ありますか。常識的に考えて、当たり前の真ん中の話じゃないですか。
何で、大臣、何のための大臣かということ、閣議では総理大臣も大臣も五分なんです、国務大臣として。大臣の立場は重いんですよ。検察といったって、一部は、みんな独立した機関だと思っているけれども、こんなもの、法務省の組織の一部であって、大臣の指揮命令系統の下にあるものなんですよ。行政の一部なんですよ。それを、なぜ大臣は国民目線じゃなくて検察の方に目を向けて答弁するんです。
なぜ三か月だったのか、正直に答えてくれればいいんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/129
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130・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私は、鈴木先生にはずっと御指導いただいておりますし、鈴木先生がおっしゃっていることの意味、思いは十二分に理解していますし、私も人間齋藤健であることは、やっぱりそういう存在でもあるわけです。
ところが、ここで、一方で、やはり繰り返しになりますが、裁判所と行政の関係、それから私と検察との関係というのは、またその個人的なものを超えて、ここはお気持ちは分かりますけど、ここはやっぱりしっかりと引くべき線は引いておかないと、私は、今後……(発言する者あり)いや、ですから……(発言する者あり)いや、遊びではなくて、さっき申し上げたように、裁判所が非公開だと言っているものについて、私が三か月と言ったんですというふうに公にすることについては、行政としてやはり私は慎重であるべきだと。それ、人間齋藤健であると同時に、やっぱり行政と裁判所との関係も大事にしなくちゃいけない法務大臣の立場として、それはあるんですよ。その上で、私の……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/130
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131・鈴木宗男
○鈴木宗男君 大臣、少なくとも私は大臣の三倍以上国会議員やっています。昭和五十八年に出てきてから、私は様々な経験してきた男ですよ。私自身、天国と地獄を見てきた男なんです。だから、私は袴田さんのことを人ごとでないんですよ。
大臣、信頼関係だとか約束言いますけれども、間違いなく三か月掛かると言ったから今も時間は過ぎていっているわけですよ。言った言わないじゃなくて、言ったんですよ、現実として。だから、もう三者協議からは一か月過ぎるわけですから。
いいですか、大臣。二十日が特別抗告のタイムリミットだったわけですから。そこでやめたわけですから。特別抗告をしなかっただけでも、私は、検察は正しい判断をしたと私は理解しているんですよ。
ならば、その三か月と言ったらば、かくかくしかじかで我々としてはこういったことをしたいとか、そういう答えを言うのが大臣じゃないですか、聞いて。信頼関係とかなんとかいう次元じゃないんですよ。これ、先生方も聞いていて、信頼関係なんという言葉、必要じゃないでしょう。大臣と現場のやり取りなんですから、何も、大臣として聞く必要あるし、当然国民もまた関心持っているわけですから。どうしてそういう視点に立って、大臣、頭づくりしないんでしょうか。何ゆえに三か月なんだということを、ここは大臣、また次の委員会で私やりますので、もう一回きちっと検察とすり合わせをして答えていただきたいと、こう思います。
あと、委員長、私がこの委員会でも再三言ってきたのは、入管法の改正もありますから聞くんですけれども、入管庁が畳の部屋で、今もホームページ等出ていますね。外国人が住んでいる……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/131
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132・杉久武
○委員長(杉久武君) 鈴木委員に申し上げます。一応会派としての申合せの時間が過ぎておりますので、まとめていただけると。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/132
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133・鈴木宗男
○鈴木宗男君 はい、分かりました。
それで、少し国際スタンダードにすれということを私は古川大臣のときから再三言ってきているんです。それ、どうなっているのか。今なお法務省の入管庁のホームページは畳で、何年か前と同じで変わっていません。予算がないなら予算付けるべく、もう概算要求は来月で大体まとまりますから、応援もしますから、言ってください。やっぱり少しでも私は外国人の人が居心地がいいというか、いた方がいいと、こんなふうに私は思っております。
あと、大臣、もう一つ。大臣ですね……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/133
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134・杉久武
○委員長(杉久武君) 鈴木委員に申し上げます。もう会派の時間が、申合せの時間を過ぎておりますので、御協力をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/134
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135・鈴木宗男
○鈴木宗男君 はい、分かりました。じゃ、もう一つだけですね。
NHKのテレビで、涙の告白というのを見ましたでしょうか。私、あれ見て、これ委員の先生方も見た方がいいと思うんですが、ウィシュマさんの同情等、皆さんしているけれども、ウィシュマさんはウィシュマさんで自責の念を持っているんです。男が脅かしている、本国に帰れば罰を与えるなんて言って。ここら辺もっと、入管庁、その男についてしっかりと事情を聞いて、警察とも協議して対処をすべきだと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/135
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136・杉久武
○委員長(杉久武君) 鈴木委員、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/136
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137・鈴木宗男
○鈴木宗男君 そこら辺もしっかり私はやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/137
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138・杉久武
○委員長(杉久武君) もう時間が経過しておりますので、もう時間が大幅に経過を、会派としての時間が経過をしておりますので、質疑は……(発言する者あり)十五時半まででございましたので。(発言する者あり)じゃ、大幅という言葉は取り消させていただきます。(発言する者あり)大変失礼いたしました。(発言する者あり)
じゃ、齋藤法務大臣、答弁を簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/138
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139・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 鈴木委員のせっかくの御質問ですので、ちょっと今日は時間がないそうなので、次回しっかり答弁させていただきます。(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/139
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140・杉久武
○委員長(杉久武君) 大幅という言葉を私は訂正をさせていただきます。
それでは質疑を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/140
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141・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合です。質問を始めにくい空気ですね。
大臣、通告しておりませんが、今の鈴木委員とのやり取りを聞かせていただいていて、いわゆる三権分立をしっかりと守らなければいけないということはもう言うまでもないことなんですが、そのいわゆる司法権の独立というものがどこまでをもって司法権の独立というのかということについては、受け止め方は人によって当然違うと思います。
今回の事例に関して言えば、秘密会で裁判所が仕切った内容の文言が外に漏れたことでこういった問題が生じているということでありますので、そのことに対しての説明責任を負うということが、それすなわち司法権の侵害に当たるとは、私は実は話を聞いていて思わなかったわけでありまして、その辺りのところも含めて、漏れたこと自体が問題であるということであれば、その漏れたことで世間に疑念を生じさせたことに対してはやはり一定の説明責任を果たすべきなんじゃないのかなという、一般市民の感覚として感じたことをまず冒頭申し上げさせていただきたいと思います。
その上で、質問、通告した質問に入らせていただきたいと思います。
ゴールデンウイーク前、四月二十八日に、名古屋刑務所での暴行事件について、そのうち十三人の刑務官が名古屋地検に書類送検をされたという記事が出ました。この件について少し確認をさせていただきたいと思います。
新聞の記事を拝見したところ、今回の事件を受けて、全国の刑務所や拘置所、少年院などの職員へのアンケート調査を法務省として行われたということでありますが、名古屋刑務所と他の施設との間でアンケート結果に何らか際立った差があったのかどうか、このことについてまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/141
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142・花村博文
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
その前に、過去に受刑者の死傷という不祥事が発生した名古屋刑務所におきまして再び複数の職員による暴行、不適正処遇事案が発生したことは極めて重く受け止めております。誠に申し訳ございません。
御指摘のアンケート結果によれば、例えば、仕事上のストレスの原因として最も大きいものを被収容者との関係と回答した職員の割合は、名古屋刑務所では二四・四%であり、他の施設の平均一四・三%よりも高いほか、直近三年間で被収容者から暴言や侮辱するような言動をされたことがあると回答した職員の割合は、名古屋刑務所では五六・六%であり、他の施設の平均四四・〇%よりも高く、被収容者は刑罰などの理由があって収容されているのだから多少つらい目に遭っても仕方ないと回答している職員の割合は、名古屋刑務所では二三・一%であり、他の施設の平均一一・三%の二倍以上高かったことが確認されており、職員のストレス面や被収容者に対する意識等におきまして名古屋刑務所と他施設との間で差が生じているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/142
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143・川合孝典
○川合孝典君 その差が生じている背景に何があったと分析していらっしゃるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/143
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144・花村博文
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
現在、名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案に係る第三者委員会におきまして本件の背景事情や再発防止策の検討がなされているところ、お尋ねの点につきましては、関係職員の人権意識の欠如、受刑者の特性に応じた処遇方法が十分に検討、共有されていなかったこと、若手職員が一人で処遇困難者に対応する勤務体制といった事情が事案の背景として指摘されているものと考えております。
さらに、同委員会の委員からは、規律秩序を重視する刑事施設特有の組織風土も本件の背景事情の一つであるとの指摘がなされており、この指摘に関しては、先ほど申し上げたアンケート結果に加えまして、矯正職員は被収容者の反則行為を見逃さず、施設の規律秩序を維持する強い存在であるべきであると回答している職員の割合が名古屋刑務所は他施設よりも高いといった結果が得られておりますことからも裏付けられるものではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/144
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145・川合孝典
○川合孝典君 名古屋と他の施設との間でそういった意識の差が生じる背景について何があるのかということなんだろうと思うんですけど、素朴な疑問なんですが、刑務官に他の施設との間での何らかの定期的な人事異動といったようなものはあるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/145
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146・花村博文
○政府参考人(花村博文君) お答えします。
刑事施設における職員の人事異動につきましては、業務運営上の必要性並びに本人の適性、希望及び家庭の事情等、総合的に勘案して実施しております。
刑務官のうち幹部職員につきましては、職員の職務能力の向上等を図る観点から定期的に人事異動を実施しておりますところ、一般職員につきましても、長期間の在職の弊害を避けるため、所内における配置換えを実施したり、可能な限り他の刑事施設における勤務を経験させるよう努めておりますものの、令和五年二月一日現在、名古屋刑務所本所で勤務している一般職員で他施設における勤務経験がある者は約二二%となっております。
人事異動につきましては、職員の家庭の事情等も踏まえる必要がありますものの、他施設での勤務に触れる機会も重要でありますことから、現在、第三者委員会において本件の背景事情や再発防止策について御議論いただいているところであり、当局におきましても、同委員会の御指摘を踏まえながら、人事管理の一層の適正を期してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/146
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147・川合孝典
○川合孝典君 数字おっしゃっていただいて、ありがとうございます。七八%の方は同じ、同一施設内で勤め上げられるということなわけですね。
ということは、結果的にやはりその施設内で先輩、上司の方々から教え込まれた仕事ややり方や価値観、こういったものが色濃く反映されるということになるわけでありますので、したがって、こうした今回、名古屋の事案で生じたようなことを解消するためには、やはり定期的な、刑務官が様々な職場で経験を積むことによって、いわゆるバランスのいい刑務官としての役割が果たせる人材育成というものをやっぱり真剣に考えなければいけないと思います。
あわせて、定期的な外部の研修ですとかそういったことについても、日々の業務に追われるということでなかなかそこまで手が回っていないんだと思いますけれども、是非この機会に考えていただきたいというふうに思います。
次の質問に移りたいと思います。
先日、名古屋の刑務所、視察をさせていただいた折に、高齢受刑者の方のいわゆる車座になってリハビリやっていらっしゃるところを拝見をさせていただきました。高齢受刑者の方のリハビリのニーズというのが非常に近年高まっているということの説明も受けたわけでありますが、ちなみに、現在、介護を要するような長期受刑者の方というのはどのぐらいいらっしゃるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/147
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148・花村博文
○政府参考人(花村博文君) 刑事施設におきましては、個々の受刑者について、医学、心理学、教育学その他の専門的知識及び技術等を有する職員による処遇調査を実施し、その特性の把握に努めておりますものの、お尋ねのような介護を要する受刑者数については統計としては把握しておらず、お答えすることは困難であります。
他方、一部の刑事施設におきましては、入所受刑者のうち入所時年齢が六十歳以上などの受刑者に対して認知症スクリーニング検査を実施しているところ、令和三年におきましては、検査を実施した九百七十三人のうち認知症が疑われると判定された百八十三人に対し医師による診察を行った結果、そのうち五十五人、約五・七%が認知症と診断されております。
また、令和五年度からは、全国の刑事施設における入所時年齢が六十五歳以上などの受刑者を対象に認知症スクリーニング検査を実施することとしたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/148
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149・川合孝典
○川合孝典君 大臣、今数字をお聞きいただいて、十施設だけで調査をしてもこれだけの人数が出てきているということでありまして、長期にわたって収容されている受刑者の中には、正直、刑務所内での生活がおぼつかなくなっていらっしゃる方がいらっしゃる。その方をどうするのかということは、受刑者自身のQOLの観点からの対応となると同時に、刑務官にとっても極めて大きな負荷になっていると私は実は感じました、拝見しておって。
したがって、これ刑務官のいわゆる負荷軽減という観点、それから受刑者の方のいわゆる介護、看護といった観点からも、施設内でのそういった対応というものについて検討を始めるべきじゃないのかと私は思うんですけど、大臣、済みません、通告していませんけど、今のお話聞かれていて、必要性感じられませんでしたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/149
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150・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 恐らく、これから増えていくんじゃないかなという、高齢化が日本全体進みますし、当然受刑者の高齢化も進むんだろうと思いますので、こういうケースは増えてくるんだろうなというふうに思っています。
今後どうするかについては、突然の御質問なので責任ある御答弁はできないかもしれませんが、やはりしっかり頭に入れて今後対応していくべき問題だろうというふうには思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/150
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151・川合孝典
○川合孝典君 検討をいただけるということで、有り難いことだと思っています。
医療刑務所はあるわけですが、冗談ではなく介護刑務所が必要になってくるんじゃないのかと。若しくは、刑務所内に介護施設というものを併設するといったようなことも考えられるのかもしれませんが、そうしたことも含めて御検討を進めていただければと思います。
次の質問に移ります。
刑訴法の法案の内容について、少し確認をさせていただきたいと思います。
保釈について質問させていただきます。
起訴前保釈についてですが、諸外国では起訴前の保釈が導入されている国が多いですが、日本の場合には起訴前保釈がこれまで採用されてきませんでした。その理由を、大臣、お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/151
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152・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘のように、我が国の刑事訴訟法におきましては、起訴前の身体拘束について、逮捕、勾留、勾留延長の各段階で厳格な時間の制限が定められるとともに、裁判所の審査が必要とされて、その都度、被疑者の身柄拘束の要否等について判断される制度となっているわけでありますが、起訴前に勾留されている被疑者の身柄拘束を解く制度としては、裁判所は、勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、検察官、勾留されている被疑者等の請求により、又は職権で、決定で勾留を取り消さねばならずと。それから、適当と認めるときは、決定で、被疑者を親族等に委託し、又は被疑者の住居を制限して、勾留の執行を停止することができることとされていると。
いわゆるその御指摘の起訴前の保釈の制度を設けることについては、こうしたことを前提としてかつて法制審議会の部会においても議論がなされておりまして、その際、我が国における被疑者の身柄拘束期間は諸外国と比較すると短期間に限られている上、逮捕、勾留、勾留延長の各段階で裁判官の、先ほど申し上げたように裁判官の審査が必要とされていることなどから、起訴前の保釈制度を導入すべき必要性が大きいとは言えないという一方で、起訴前は捜査機関による証拠収集が終了していないため、勾留の要件を満たす被疑者を保釈した場合には罪証隠滅に及ぶおそれが大きく、実際に罪証隠滅がなされた場合には捜査に著しい支障が生じることになると、そういう問題点が指摘をされておりまして、慎重な検討が必要だという結論に至っているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/152
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153・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
保釈制度全体というか、法律全体の立て付けが諸外国と日本とは違うということですから、全体の法構成を考えた上でそうだとおっしゃれば、そうなんだという、そうなのかと受け止めるしかないわけでありますが。
刑事局長で結構です。諸外国で、この起訴前保釈を行うことによって何らか不都合が生じているのかどうかということをお聞かせいただきたいのが一点。それともう一点は、日本と諸外国、起訴前保釈を採用している諸外国との間で、法律の立て付け上で日本が起訴前保釈ができない決定的な違いが何なのかということについて、今御答弁できればお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/153
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154・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
今、突然のお尋ねでございまして、その不都合という点については承知をしておりませんけれど、制度の違いということについては若干御紹介をできるところがございまして、我が国においては、一つの事件について、逮捕後、起訴までの身柄拘束期間は最長でも二十三日間に制限をされているところでございますが、アメリカでは、逮捕から大陪審による起訴まで三十日間の身柄拘束が認められ、一定の場合には更に三十日の延長が認められておりまして、最長で合計六十日間というのがアメリカの制度でございます。また、ドイツでは、起訴の前後を通じまして原則として六か月以内の身柄拘束が認められ、事案に応じて無制限に延長可能とされていると。
二つの国だけ御紹介させていただきましたけれども、そういうことでその起訴の判断に至るまでの期間の制限が日本と今御紹介した国とは異なっているというところがございまして、それも、どのぐらいの嫌疑で起訴するのかというところについてのその刑事司法制度の立て付けが今御紹介した国々と日本とでは異なっているということもございまして、そういうことでいろいろ制度の違いということを申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/154
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155・川合孝典
○川合孝典君 身柄拘束期間が日本より長い国があるということなわけですが、長い身柄拘束期間を設定しているにもかかわらず、起訴前保釈も採用されているということなんですよね。だから、そこにどういった差があるのかというところが実は私、知りたいんです。この場で突然の通告でありましたから、これ以上困らせるつもりはありませんので、今質問した内容について、後日別途で結構ですので、是非資料を頂戴できればと思います。
時間の関係がありますので、次の質問に入りたいと思います。
監督者制度について、既に何人かの委員の先生から監督者制度についても御指摘がございました。私、この監督者制度を入れることについて素朴に疑問を感じたのは、罰則というか、ペナルティーが付された形で監督者制度が導入された場合に、本当に監督者になってくれる人いるんだろうかというのは素朴な疑問として出てきたわけであります。
現実に、身元引受人をこれまでやってこられた方も監督者にはなりたくないとおっしゃっている方も少なからずいらっしゃるという情報も入ってきておりますので、この監督者制度が導入されることによって監督者を受けてくれる人がいなくなった結果として、いわゆる身柄の拘束されている期間というのが増える事態というのが生じないのかどうか、この点についてどうお考えになられているのか、これを法務大臣にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/155
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156・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) まず、身元引受人はなくなるわけじゃないということです。
本法律案につきまして、裁判所が保釈を許す場合において、必要と認めるときは、適当と認める者をその同意を得て監督者として選任することができるというようになっていまして、監督者を選任しなければ保釈が許されないというものではない。さっき申し上げたように身元引受人は残るわけでありますので、従来から運用で行われている身元引受人から書面を徴することが禁止されることになるわけではないということ、プラスアルファで講じられるということであります。
その上で、保釈を許可するか否かは、裁判所において個別の事案ごとに、監督者の選任の有無だけではなくて、逃亡のおそれの有無、程度に関わる様々な事情を含めて、当該事案に関わる事情を総合的に考慮して判断すべき事柄であることから、監督者制度の創設が保釈の判断にどのような影響を与えるかについて一概にお答えすることは困難ではありますが、いずれにしても、裁判所においては、監督者制度の趣旨を踏まえて適切な運用がなされていくというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/156
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157・川合孝典
○川合孝典君 つまりは、これまでの身元引受人制度だけでは保釈に至らなかった人間が、監督者制度を導入することによって要は保釈の対象になり得る可能性があるという理解でよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/157
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158・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
今大臣から御説明申し上げたこの監督者制度を活用することで、何らの法的義務も負っていらっしゃらない身元引受人の場合と比較すれば、公判期日等への出頭の確保がより図られることが期待できることとなると考えられますけれども、その上で、保釈を許可したり、あるいはその勾留の執行停止をするかどうかということにつきましては、裁判所において個別の事案ごとに、監督者の選任の有無だけでなく様々な事情を含めて総合的に考慮して判断される事柄でございますので、監督者制度の創設が保釈や勾留の執行停止の判断にどのような影響を与えるかについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにしても、裁判所においては、監督者制度の趣旨を踏まえつつ適切な運用がなされるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/158
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159・川合孝典
○川合孝典君 法務省としてはそうとしか答えようがないんだろうと思いますけれど、実際にこの制度が導入された後の運用状況を注視していきたいと思います。
時間がありませんので、これを最後の質問にしたいと思いますが、保釈金について質問させていただきたいと思います。
カルロス・ゴーンの事例では、保釈金、多額の保釈金、十四億だか五億だかの保釈金を積んで出たわけですが、結果的に逃亡してしまったということ。このことを受けて、逃亡抑止の実効性を高める上での適切な保釈金水準というものがやっぱりあるんじゃないのかと、さすがにこれ置いて逃げられないという状況というものが何か必要なんじゃないのかなということをふと感じたんですけれども、大臣は保釈金水準の適切な水準というものについてどういった御認識をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/159
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160・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 結論を言えば、人によるんじゃないかと思うんですけど、刑事訴訟法上は、裁判所は、保釈を許す場合には保証金額を定めなければならないということになっていますし、その保証金の額については、犯罪の性質、情状、証拠の証明力、被告人の性格、資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額と、そういうものでなければならないと定められているわけであります。
その具体的な金額はといえば、裁判所において、この規定に基づいて個別の事案ごとに、逃亡のおそれの有無、程度に関わる様々な事情を含め、当該事案に関わる事情を総合的に考慮して判断していくと、そのようになりますので、お尋ねの点について一概にお答えすることは困難でありますけれども、裁判所においては、保釈を許す場合には、保釈保証金の趣旨も踏まえて、先ほど申し上げたように、被告人の出頭を保証するに足りる相当の金額でなければならないということを踏まえて、適切な金額を定めることになるんだろうと承知しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/160
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161・川合孝典
○川合孝典君 時間が来たのでこれで終わりたいと思いますが、今回の事例に関して言えば、適切ではなかったと言わざるを得ない状況だということだけは指摘をさせていただきたいと思います。
これで終わります。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/161
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162・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
法案の質疑に入る前に一問入管にお尋ねしたいと思うんですが、ウィシュマさんの事件に関する監視ビデオを昨日当委員会で、二回目といいますか、前回一回目は七時間の法務省が編集したビデオ、そして昨日は裁判所に証拠提出をされた五時間のビデオを閲覧をいたしました。
まず、入管に確認をしたいのは、最後ウィシュマさんが亡くなられる三月六日の十四時七分頃から十四時十二分頃にかけてのビデオの中で、ウィシュマさんはあおむけで寝たまま右側に首をかしげた形で、呼びかけにも全く反応しないと。体をたたかれたりしても反応がないと。そういう中で、看守職員が体を触るわけですけれども、指先が冷たくなっているようだと。そして、カメラを通じて、上司なんでしょうか、指示を仰いだ上で、脈が取れるかということで脈を確認しようとしますが、脈は取れなかった様子の中で、他の職員も入ってきて対応しようとするわけですよね。そのプロセスの中で、その看守職員が愕然としたようにええっと小さい声で声を漏らす、そういう場面が私はあったと思うんですけれども、そのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/162
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163・西山卓爾
○政府参考人(西山卓爾君) ビデオ映像の内容の詳細を申し上げるのは差し控えさせていただきたいのですが、今委員も御指摘のなられた場面、三月六日当日の搬送直前の場面でございますけれども、そのビデオ映像において、職員がウィシュマさんの様子を見て御指摘のような声を出す場面があった、部分があったというのは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/163
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164・仁比聡平
○仁比聡平君 お認めになりました。
大臣、就任された当時から、このビデオは閲覧をしたというふうにおっしゃっておられまして、私の今紹介と次長の今の答弁で思い出されたんじゃないかと思うんですが、私がこの七時間のビデオと、それからそこに含まれていない五時間のうちのビデオですね、これ全部、二月の二十二日からの監視ビデオを拝見をする中で、看守勤務者がこのウィシュマさんの急速に悪化する体調について愕然とした様子を示したのはこれが初めてだったんじゃないかなと思うんですよ。
もちろん、そぶりや声に表れていない動揺みたいなものは職員の中にもあったかもしれませんけれども、愕然としたように、つまり自分が触って指先が冷たい、脈が触れない、たたいても反応しない、そこで初めて愕然とした様子というのは一体何を意味するんだろうかと。
四月の十八日の当委員会での質疑で、バイタルチェックをしようとしてもバイタルが取れないという状態が三月の四日から五日、そして六日の当日も続いているじゃないかと、声掛けても反応しないというのはこれは急激な衰弱を示しているじゃないかと、普通ならここで救急車呼ぶでしょうと、私、指摘をいたしました。
けれど、そうしたプロセスの中でも、例えばウィシュマさんに対して、大丈夫、大丈夫と声を掛けたり、あるいは最近よく眠っているねみたいな形で声を掛けたり、あるいは職員同士の会話の中で笑い声が出たりという、このウィシュマさんの体調悪化についてさほど気にしていないという、そういう様子がずっと続いて、最後、全く反応がなくなって、体が冷たくなって、そこで初めて愕然として、ええっという声を出すと。
やっぱりこれ、入管収容における人権保障というのは一体どうなっているんだと思いますが、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/164
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165・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) ちょっと、私、ビデオ、確かに全部見て、最後の場面のところはおっしゃるようによく覚えているんですけど、それ以外のところで具体的にどうだったかというのを詳細ちょっと覚えていないです。ただ、最後のところは、おっしゃるように愕然として、それで騒ぎになったところはよく覚えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/165
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166・仁比聡平
○仁比聡平君 私、そういう点も含めて、今度、今度といいますか、二年前のウィシュマさんが名古屋入管収容所で亡くなられてしまったというプロセス、それから、二〇〇七年以降、入管収容所内で十八件の死亡事案が起こっている、このことについて徹底して検証をすべきだというふうに申し上げてきたんですけれども、これ改めて求めていきたいと思うんですが、こうした事案というのは、四月二十日の質疑のときにも申し上げましたけれども、個別の事件としてとか、あるいは個々の職員の資質の問題で起こっているのではないと思います。
二十日の質疑のときに、大臣直接お答えにならなかったんですが、私、こう申し上げました。収容がおよそ入管組織の裁量によって行われる、その必要性や合理性について第三者、とりわけ裁判所のチェックもない、無期限に行われる、被収容者が帰国できないと言う以上、送還忌避者だというふうに呼んで、帰国意思を示すまで自由を奪い続けると、そういう構造になっているから、だから、そうした下で、職員の判断もあるいは言動もむごい人権侵害ということになってしまうのではないんですかと。
これ、大臣、政治家として、このこれまでの入管収容と、それから難民認定と、この問題についてどう認識して変えていくのか、そこが問われていると思うんですけど、大臣、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/166
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167・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 今までも答弁しているんですけど、二つに分けて考えなくちゃいけないと思っていまして、一つは、調査報告書において、第三者含めて調査をされて、そこにおけるウィシュマさんに対する医療的対応の在り方について様々御意見、御指摘をいただきながら事実を確認をしてきたという、そういう一つの流れがございます。
その流れの中で、調査報告書では、危機意識に欠け、そもそも組織として事態を正確に把握できておらず、こうした事態に対処するための情報共有、対応体制も整備されていなかったと、こういう指摘などもいただいているところでありまして、こういう指摘を踏まえて、入管庁においては、これまで、人権と尊厳を尊重して職務を行うための使命と心得の策定ですとか、それから、被収容者の生命と健康を守ることを最優先に考え、行動することを心構えとする緊急対応マニュアルの策定ですとか、そういうものを行いながら職員の意識の改革を行ってきているということ、これが一つの流れだと思います。
もう一つの流れは、今回の入管法の改正の中に幾つか盛り込まれておりまして、それはもう委員御指摘のとおりだと思いますけれども、こういった調査報告書のやつに加えて、今回の改正法案では、入管収容施設において常勤医師の確保に支障になっている常勤医師の兼業要件の緩和ですとか、それから、全件収容主義で批判されている現行法を改めて、監理措置を創設して、収容しないで退去強制手続を進めることができる仕組みとした上で、収容した場合であっても三か月ごとに収容の要否を見直して不必要な収容を回避するですとか、それから、体調不良者の健康状態を的確に把握して柔軟な仮放免判断を可能とするために、健康上の理由での仮放免請求については医師の意見をしっかり聞きなさいですとか、そういう健康状態に十分配慮して仮放免判断に努めると、こういうもう一つの流れとしてこの改正法案の中に盛り込まれているので、両者相まってこの改善が図られていくものというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/167
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168・仁比聡平
○仁比聡平君 先ほどの袴田さんの再審公判に臨む姿勢の問題でも同じだと思うんですけど、今大臣がおっしゃったような、ウィシュマさんの事件を反省したと言ってというか、調査報告書があって改善をこんなふうにしているとか、あるいは今回の入管法改定案でそうした改善点があるんだというような説明をされてきた。
それは、法務省としてされてきたし、大臣も繰り返しされてきたけれども、だけど、今、国会に向かって、それでは変わらない、逆に悪くなるという声がたくさん上がっているでしょう。とりわけ、当事者やその支援をしてきた人たち、あるいは弁護団の皆さんから猛然と抗議の声が上がっているじゃないですか。その声を聞くべきじゃないですか。法務省の中の声だけじゃなくて、国民の声をそれこそ聞いて歴史的な転換を図っていくというのが政治家の仕事じゃないですか。それが大臣の責任じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/168
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169・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 私は、申し訳ないですが、改悪とは思っておりませんので、この直す部分について理解を深めていただくように、国会それから記者会見においても全力を尽くしているということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/169
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170・仁比聡平
○仁比聡平君 引き続きの議論をするとして、入管、もうここまでで、あと質問ありませんので、次長、退席いただいて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/170
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171・杉久武
○委員長(杉久武君) 西山次長は御退席いただいて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/171
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172・仁比聡平
○仁比聡平君 法案の質疑をさせていただきたいと思うんですが、前回の二十七日に、法案について私がやや誤解を招くような問い方をしてしまって、刑事局長にもう一回確認をしたいと思うんですけれども、個人特定事項の秘匿に関わって、この法案で、起訴されて証拠調べの手続が始まる、そこに向かって弁護人がその書類や証拠物についての閲覧請求をする、そのときにその閲覧そのものが禁じられるということがあるのではないかと私申し上げたんですけれども、これ、どうやら弁護人には氏名などの特定事項を明らかにしなさいと、だけど被告人には知らせてはならないよという裁判所の決定が出たときには禁じられないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/172
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173・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のとおりでございまして、被告人に対して個人特定事項を知らせてはならない旨の条件を付されてという規定が、ということができるということになっているんですけれども、当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは知らせる時期や方法を指定して閲覧、謄写を認めるということが可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/173
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174・仁比聡平
○仁比聡平君 もう一点。その質問に関わっての局長の前回の答弁で、被告人には全く知らされないのかというと、弁護人に対して防御の必要性があるからということで裁判所が開示を認める、だけど被告人には知らせてはいけないよという決定になったときに、再度、被告人にも知らせなきゃいけないんだという手続を、手続というか請求をして被告人が個人特定事項を把握し得るという仕組みにはなってございますとおっしゃったんですが、それはそういう理解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/174
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175・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/175
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176・仁比聡平
○仁比聡平君 どんな場合ですかね。つまり、検察官は被告人には知らせてはならないから、だから、そもそも起訴状からも秘匿をしているわけですよね。で、弁護人にも秘匿をしなきゃいけないと、特別のおそれを認めて弁護人に抄本が来ているわけじゃないですか。これを被告人にも明らかにしていいですよと。つまり、弁護人にも、弁護人にはもちろんのこと、被告人にも明らかにしますという場面というのは、これ、どんな場面を想定しているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/176
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177・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案におきまして、弁護人に対しても抄本が、起訴状抄本が送達されて個人特定事項を秘匿する措置がとられた場合も含めて、被告人に起訴状抄本等が送達されて個人特定事項の秘匿措置がとられた場合において、例えば、被告人に対する秘匿措置がその要件を満たさない場合又は被告人に対する措置により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合には、被告人又は弁護人の請求により、被告人に対して当該措置に係る個人特定事項を通知する旨の決定をしなければならないという仕組みを設けてございます。
ここにいうその防御に実質的な不利益を生ずるおそれとは、刑事訴訟法二百九十九条の四において既に証拠開示の際に証人の氏名等を秘匿する措置の要件で用いられている防御に実質的な不利益を生ずるおそれと同様でございまして、秘匿措置の対象者の個人特定事項を被告人自身が把握できないことにより、その者の供述の信用性の判断に資するような利害関係の有無などの調査を行うなどの防御の準備を十分に行うことができなくなるおそれがある場合がこれに該当し得ると考えられます。
具体的にどういう場合なのかというところにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/177
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178・仁比聡平
○仁比聡平君 結局、条文を説明いただいただけなんですよ。
実際には、今の刑事裁判、刑事訴訟の実務的な感覚として、警察や検察の逮捕状、勾留状の請求というのはほぼ認められるじゃないですか。起訴状は、当然その裁判所には判断のしようがないですから、起訴段階で、検察官の必要性を認めたというとおりに抄本が送られるということになるわけですよね。で、証拠調べを求めるというときに、袴田さんの事件もそうですが、証拠開示に対して、捜査機関、当然消極ですけれども、裁判所だって、その証拠開示を行わない、積極的な訴訟指揮をしないという、それが今の日本の裁判の現実ですよ、刑事裁判の。その中で、弁護人あるいは被告人の防御というものが行われる。だからこそ、実質的な当事者対等のために弁護人という制度があり、そして被告人、被疑者の弁護を受ける権利、この保障というのは憲法上極めて重要なものなんですよね。
そこで、大臣にお尋ねをしたいと思うんですけれども、被告人に絶対に知らせてはなりませんと弁護人に開示された、もしこれが防御、裁判の必要上、徹底した否認事件で、これが争点だと、被告人に意見を聞かないことには駄目だということでこれもし開示すると、被告人に知らせると、裁判所から弁護士会に懲戒の申立てがされるといいますか、その懲戒の申立てを含む処置請求がされるということになるんですね。それが、大臣が提出されている法案なんですよ。
それは結局、当事者対等、本来第三者的な審判権者である裁判所と検察、被告人、弁護人という当事者構造が、被告人とそれ以外の法律家、弁護士は知っているけれども被告人だけが知らない、身柄を取られてから上訴審、控訴をしても、最高裁に上告しても分からないという、そんな状態になりませんか。それって危うくないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/178
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179・松下裕子
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。
本法律案において規定しております個人特定事項の秘匿措置に関しましては、重なる部分もあって恐縮でございますけれども、これまで御説明しておりますとおり、秘匿措置によって防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるというふうに認めるときには、裁判所は被告人又は弁護人の請求によって個人特定事項を被告人に通知する旨の決定をしなければならず、裁判所の決定に不服があるときには即時抗告をすることができることといたしまして、不服申立ての機会も十分に保障しているところでございます。
ですので、例えば、被告人自身がその個人特定事項を知らなければならないと、それでなければ防御ができないというような事情がある場合でございましたら、それは裁判所に請求を、通知請求を行っていただき、それが、その裁判所の判断に不服があるときには不服申立てをしていただくなどの制度はしっかりとつくってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/179
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180・仁比聡平
○仁比聡平君 だから、その制度の下で警察や検察の、もうそこまで局長がおっしゃるから私も言いますけど、言いなりの、警察や検察言いなりの刑事司法というのは現実にあるんですよ。だから冤罪が起こってきているんですよ。
多くの事件で懸念はないということだと思いますよ、前回申し上げたとおり。だけど、そういう場面で、これまでは弁護士の倫理に任されていたところを裁判所による懲戒申立てというような強制をするというのは、これ、大臣、おかしいんじゃないですか。前回も答弁されなかったんだから、ちょっと一言、答弁、最後、ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/180
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181・杉久武
○委員長(杉久武君) 申合せの時間になっておりますので、簡潔な答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/181
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182・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) 結論を申し上げますと、本法律案におきまして、起訴状における個人特定事項の秘匿措置については、トータルとして、被告人、弁護人の防御権、弁護権にも十分配慮した、トータルで見ていただければ仕組みとなっているというふうに考えておりますので、御理解いただければなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/182
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183・杉久武
○委員長(杉久武君) おまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/183
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184・仁比聡平
○仁比聡平君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/184
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185・杉久武
○委員長(杉久武君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/185
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186・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党を代表して、刑事訴訟法等改定案に対し反対の討論を行います。
本法案は、被告人を保釈するに際して、国外逃亡を防止するため、裁判所の判断でGPS、位置測定端末を装着させることができるようにするものですが、GPSによる位置情報の把握は、当然に無罪推定を受ける被告人のプライバシーを侵害します。
その侵害度合いは強く、二〇一七年最高裁判決は、警察が無令状でひそかに車両に付けるなどして行ったGPS捜査について、その性質上、公道上のもののみならず、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて、対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする、このような捜査手法は、個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うとして、憲法三十五条に照らし、証拠能力を否定しました。
法案が導入する位置測定端末は、身体に装着させることでより詳細に個人の所在と移動状況を把握するもので、プライバシー侵害の度合いはより強く、制約の必要性、合理性が厳格に検討されなければなりません。
ところが、法案では、装着させる装置の大きさや装着させる部位など、どの程度の自由制限をもたらすかは今後の検討に任されています。国際線や国際航路を利用可能な空港や港湾は全国各地に所在しますが、それらにどの程度接近すると保釈条件違反になるかも不明であるなど、法律上、制約の必要性、合理性は明らかでなく、賛成できません。
また、単純逃走罪の拡大と厳罰化や公判期日への不出頭罪新設などに立法事実が認められるのか、監督者制度の創設や実刑判決後の裁量保釈に身体拘束の継続による不利益等の程度が著しく高くなければならないとの要件をすることで、保釈される範囲が狭まらないのかのおそれもあります。
また、犯罪被害者、特に性犯罪被害者の個人特定事項が犯罪加害者に知られることで、報復のおそれや社会的な名誉、平穏な生活の侵害、その不安から被害申告や法廷証言のちゅうちょ、強い葛藤により被害者が二次的に傷つけられることなど、刑事裁判における被害者保護は重要ですが、本改正案の個人情報秘匿制度は、捜査機関が必要と認めた場合、性犯罪被害者だけでなく、重要な事件関係者の個人特定事項を被告人は捜査段階から公訴提起、証拠調べ、一審判決から上訴段階に至るまで一切知り得ない裁判類型を創設するところに特徴があります。
従来、起訴状等や証拠書類に表れる被害者などの個人特定事項を弁護人が全て被告人に知らせてきたかというと、そうではなく、被告人から知りたいと求められても、知る必要はない、絶対に接触してほしくないとのことだなどとして被告人を納得させることも高度の弁護士倫理の範疇で行われてきました。
本法案が、裁判所が被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれを認めて弁護人には情報を開示した場合にも、被告人に知らせてはならないなどの条件に反すれば懲戒申立てなどの制裁を受けることとしていることは、被告人の弁護を受ける権利を侵害し、実質的当事者対等のための弁護人制度を脅かす危険があります。にもかかわらず、こうした制度を必要とする立法事実は質疑を通じても明らかにされたとは言えません。
法制審議会で最高裁判所の委員が法制度の在り方についても更なる検討の必要性を指摘したように、真摯な検討が引き続き行われることを求め、討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/186
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187・杉久武
○委員長(杉久武君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/187
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188・杉久武
○委員長(杉久武君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、牧山君から発言を求められておりますので、これを許します。牧山ひろえ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/188
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189・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 私は、ただいま可決されました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会及び国民民主党・新緑風会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 位置測定端末の規格の設定等に当たっては、位置測定端末を装着していることができるだけ外部から目立たず、身体の動きを極力妨げないものとする等、保釈中の被告人のプライバシーの保護及び行動の自由等に十分に配慮したものとすること。
二 位置測定端末を装着した被告人の所在禁止区域への立ち入り等が発生した場合に、迅速に状況を確認し、勾引をすることができるよう、十分な訓練の実施や関係機関との連携体制の確立等に努めること。
三 保釈中の被告人に係る端末位置情報を表示して閲覧することができる者及び閲覧することができる場合を限定した趣旨に鑑み、閲覧設備の運用に当たっては、端末位置情報が漏出することがないよう適切な措置を講ずること。
四 位置測定端末装着命令を受けた被告人の数や装着を終了した人数等、位置測定端末装着命令制度の概括的な運用状況を公表すること。
五 位置測定端末装着命令制度について、その対象範囲を、被告人の国外逃亡を防止するために真に必要があると認められるとき以外に拡大しないよう厳格に運用すること。
六 監督者を選任して行う保釈については、監督者として選任される者にとって過度の負担にならないよう留意するとともに、監督者を得られないことを理由として保釈される場合が限定されることがないよう、制度の趣旨を周知すること。
七 本改正における逃亡防止措置の新設の趣旨を踏まえ、被告人や刑が確定した者等の身柄の確保及び護送等の場における逃亡防止に万全を期すとともに、必要な体制の整備に努めること。
八 犯罪被害者等の氏名等の情報秘匿制度の運用に当たっては、性犯罪の被害者等の権利の保護という目的の実現を図るとともに、公判における被告人の防御に実質的な不利益が生ずることがないよう、被害者側及び被告人側の双方の権利に十分に配慮するよう努めること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/189
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190・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいま牧山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/190
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191・杉久武
○委員長(杉久武君) 多数と認めます。よって、牧山君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、齋藤法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。齋藤法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/191
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192・齋藤健
○国務大臣(齋藤健君) ただいま可決されました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/192
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193・杉久武
○委員長(杉久武君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/193
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194・杉久武
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01220230509/194
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