1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和五年五月二十三日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月十九日
辞任 補欠選任
高橋はるみ君 世耕 弘成君
五月二十二日
辞任 補欠選任
梅村みずほ君 音喜多 駿君
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出席者は左のとおり。
委員長 杉 久武君
理 事
加田 裕之君
福岡 資麿君
牧山ひろえ君
谷合 正明君
川合 孝典君
委 員
古庄 玄知君
山東 昭子君
世耕 弘成君
田中 昌史君
森 まさこ君
山崎 正昭君
和田 政宗君
石川 大我君
福島みずほ君
佐々木さやか君
音喜多 駿君
鈴木 宗男君
仁比 聡平君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
参考人
杏林大学総合政
策学部教授 川村 真理君
明治学院大学国
際学部教授 阿部 浩己君
国際基督教大学
人道アクション
ネットワーク(
NOHA)プロ
グラムコーディ
ネーター 小尾 尚子君
特定非営利活動
法人北関東医療
相談会事務局長 長澤 正隆君
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本日の会議に付した案件
○出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和
条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入
国管理に関する特例法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○難民等の保護に関する法律案(石橋通宏君外三
名発議)
○出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和
条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入
国管理に関する特例法の一部を改正する法律案
(石橋通宏君外三名発議)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/0
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001・杉久武
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、高橋はるみ君及び梅村みずほ君が委員を辞任され、その補欠として世耕弘成君及び音喜多駿君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/1
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002・杉久武
○委員長(杉久武君) 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(閣法第四八号)、難民等の保護に関する法律案及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(参第九号)、以上三案を一括して議題といたします。
本日は、三案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、杏林大学総合政策学部教授川村真理君、明治学院大学国際学部教授阿部浩己君、国際基督教大学人道アクションネットワーク(NOHA)プログラムコーディネーター小尾尚子君及び特定非営利活動法人北関東医療相談会事務局長長澤正隆君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、川村参考人、阿部参考人、小尾参考人、長澤参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず川村参考人からお願いいたします。川村参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/2
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003・川村真理
○参考人(川村真理君) この度は、参考人として意見を述べる貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
私の専門は国際法で、長きにわたり難民問題に関連する国際法制度に関する研究に携わってまいりました。また、実務では、UNHCRの国際保護局において人権関連のリエゾン業務に携わった経験があります。入管行政との関連では、現在、難民審査参与員を務めております。過去には、難民認定制度運用の見直し状況検証のための有識者会議及び収容・送還に関する専門部会の委員も務めさせていただきました。
本日は、こうした経験を踏まえつつ、難民条約と人権条約の特徴、入管法等改正法案の規定についてお話しさせていただきたいと思います。
まず、難民条約についてお話しします。
難民条約は、難民の基本的権利と自由のできる限りの保障を考慮するとともに、各国の負担分担や緊張関係の防止も考慮して制定されています。難民条約では、人権条約のような履行確保の監視する措置の設置を規定せず、締約国が独自に難民認定手続を定めること、また、国家が重大犯罪を行った者など国家の安全にとって危険であると認める者等を条約上の保護の範囲外としてよいことを前提に規定されています。その上で、締約国は、国内事情や国内法制を考慮しつつ、条約の規定に従って難民の保護をすることを想定して起草されました。
その後、国際情勢の変化に伴う難民保護の拡充の要請と人権条約の発展を受けて、UNHCRとその執行委員会からUNHCRハンドブックなどの様々な文書が発出されました。
しかし、UNHCRは、条約の適用を監督する任務を有していますが、締約国に実施措置を課す権限はありません。また、執行委員会は、条文解釈のための専門家で構成されている機関でもありません。UNHCRや執行委員会の出す文書は、法的拘束力がなく、資料一の一のとおり、国家の政策決定の指針とはなり得るものの、条約法条約も当事国の合意を確立するものには当たらないと解されています。
次に、人権条約について述べます。
人権条約は、条約の履行確保のための実施措置制度を有しているものが多く存在し、例えば昨年の自由権規約人権委員会の対日審査などがこの履行確保のための実施制度に該当します。この制度を通じ、各締約国は条約の実効性確保に向けた対話の促進などの努力を行い、この対話の促進の過程こそが重要であるとされています。規約人権委員会が発出する意見等にも法的拘束力はありませんが、資料一の二のとおり、条約解釈の補足的な手段として使用され得ることもあります。
また、人権条約の実施制度とは別に、人権理事会の特別手続には収容も扱う恣意的拘禁作業部会などがあります。この特別手続において、法的拘束力のない文書等で独自の見解を発出することがあります。恣意的拘禁作業部会には個人通報手続がありますが、申立て内容に多少の事実誤認があっても、書面で通知を行った一方当事者の意見をそのまま用いて意見を提出することがあり、意見が諸外国の政府に無視されるなど、その実効性に疑問視する見方もあります。
このように、国際機関の意見といっても、各条約の規定ぶりや関連機関の権限等により、発出する文書の性質やその効果も異なります。国際法の見地から申し上げると、国家は、法的拘束力のない諸文書だからといって直ちに無視するのではなく、国際法の遵守にかなうよう参照し、説明責任を果たし、建設的対話を重ねることが重要です。
他方で、各国際機関が発出する文書で指摘を受けたから直ちに国際法違反や国際水準に達していないと非難するのも論理的飛躍があり、国民に誤解を与えかねません。難民入管問題は、人権問題であるとともに、国家の不安定化を招きかねないセンシティブな内容であるということを踏まえて議論を行う必要があると考えます。
例えば、難民法の研究者グッドウィン・ギルは、裁判での規範となるような条約解釈というものと各国への働きかけにとどまる勧告とをきちんと区別すべきで、後者は国家において勧告の趣旨を受け入れられるかどうかを時間を掛けて検討すべき性質のものだなどとしています。
また、他の研究者は、UNHCRやその見解に司法機関のような監視権限やそのような効力を認めることでかえって社会の対立が深まり、保護すべき人が取り残される危険がある、難民保護のためには、国家主権と難民の安全のいずれも考慮した上、民主主義に基づいた政治的コンセンサスを重視すべきなどと指摘しています。
欧米諸国の高いと言われる難民法、人権法の基準も、実際には、例えばカナダに見られるように、入国者への事前のビザ発給の厳しい制限や、安全な第三国協定に基づく入国制限などの入国を希望する外国人に対する厳しい法制度などと表裏一体として実行されているものであることを御認識いただき、建設的な議論がなされることを期待します。
次に、政府提出の入管法等改正法案の補完的保護対象者について述べたいと思います。
改正法案の補完的保護対象者の範囲は、難民条約一条A(2)にある五つの理由以外の理由で迫害を受けるおそれを有する者となっており、迫害の考え方は、公表された難民該当性判断の手引に示されています。手引における迫害に関する考慮事項には、人権の重大な侵害、差別的措置、不利益等の累積が明記されました。これに加えて、衆議院での答弁でも、紛争、拷問等は迫害の考慮事項に含まれ得ることが確認されました。
他国は異なる規定ぶりだという指摘もありますが、重要なのは、どのようなものを対象とするかという点に尽きると思います。例えば、自由権規約七条の送還禁止に関する個人通報事案は拷問に関するものが多くを占めており、政府案は、実際には他国の保護範囲と同等であり、保護すべき者を適切に保護し得ると考えられます。
続いて、送還停止効の例外規定について述べたいと思います。
諸外国でも、公共の安全に危険を及ぼす者や重大犯罪者に対する送還停止効の例外の規定が設けられています。そして、例外の対象者については、国際法上確立した定義や国際社会全体で共有し得る解釈はなく、各国が国内事情を踏まえて国内法で定める性質のものと言えます。
収容・送還に関する専門部会において、難民認定再申請に関する送還停止効についての他国の国内法規定やUNHCRの見解も確認いたしましたが、それらと比較してこの規定自体に問題があるとは思えません。
また、三回目以降の申請者への送還停止効の例外規定の適用について、送還手続に入った段階で入管法五十三条に基づきノン・ルフールマン原則の適用の検討がなされますし、行政判断に不服がある場合には訴訟を提起することも可能となっています。
ただし、送還停止効の例外によってノン・ルフールマン原則が害されないよう、運用において難民認定申請の審査及び送還先の決定等の質の向上を常に行っていく体制を整えることは当然に必要です。
なお、第三者機関創設の議論もございますが、これは非現実的であると考えます。その理由として、資料四のとおり、複数の諸外国では一次審査については入管機関が行っているように、庇護手続は結局は上陸と滞在を認めるものである以上どうしても入管業務との円滑な連携を図る必要があること、また、少人数の独立機関では業務に支障が出て処理が更に遅れるおそれがあることなどが挙げられます。
この点、私も、第三者機関を求める趣旨、つまり、公平公正な審査の必要性については当然理解できます。ただ、私の参与員としての実務経験上、参与員の審査は独立性が損なわれているとは感じません。また、参与員の能力に対する批判もありますが、私の経験上、参与員のみならず関与する全ての者の質の向上が必要であると認識しており、これは第三者機関を設ければ解決する話ではないと考えています。そこで、まずは現行制度において、関与者の専門性の向上と運用上の改善を図っていくべきであると思います。
最後に収容について、規約人権委員会は、入管収容自体は恣意的ではないが、収容の正当性が認められなければならないとしています。
昨年十一月に発出された規約人権委員会の我が国に対する総括所見では、まず、我が国の姿勢について、収容施設の改善、退去強制手続の改正及び長期収容の回避する措置に関する検討等を歓迎する旨表明されています。
収容の上限の導入に向けて取り組むよう言及されていますが、まず、自由権規約の規定において収容上限は求められておらず、また、資料四のとおり、収容期間の上限を設定していない国もあります。
大事なことは、収容期間を短くし、長期収容される者をできる限り減らすことですが、この点に関して、監理措置の導入のほか、三か月ごとの事後的な定期審査によって対応できるものと思います。特に、収容要件を定めた上での監理措置の導入、事後的な定期審査は、規約人権委員会が一般的意見で示した方向性にも一致しているのではないかと思います。今後、条約の趣旨、目的に即した説明責任を果たすとともに、特に監理措置の適切な運用が望まれます。
なお、恣意的拘禁作業部会らからの書簡については、先ほど特別手続の専門家は独自の見解を示すと述べたように、事前の司法審査を求めている点は規約人権委員会の解釈と異なる独自のものと考えます。実際、資料四のとおり、五か国中四か国が裁判所による事前審査を行っていません。我が国は、収容決定後に裁判所へアクセスすることは可能であり、不服である場合は速やかに訴訟提起ができるようにすることとしており、これによって正当性が確保されると考えます。
結論として、大事なことは、自由権規約等、人権条約の趣旨及び目的にかなうようにするということですが、資料五にあるように、規約人権委員会の勧告については、入管庁による運用及び改正法案の施行によって対応できる部分が多いと考えます。今般の改正法案は、国際法の遵守に向けた方向での検討があり、その内容も実施可能で、人権保護の観点からも改善されています。最大多数の合意に基づき新たな入管法の枠組みを規定した後に運用によって更なる改善をしていくことは可能であり、我が国の実情に即し、今回、実現可能な内容の法改正を早期に行うべきと考えます。
難民の保護と入管行政の改善を推し進め、国際的な難民及び移住問題の解決にも貢献できる体制を整えることを期待してやみません。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/3
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004・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、阿部参考人にお願いいたします。阿部参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/4
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005・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 私は、国際法の中で特に人権と難民に関わるテーマに焦点を当てて研究を進めてきました。二〇一二年一月から昨年、二〇二二年三月までの十年余り、難民審査参与員として一つの常設班に所属し、一週置きの月曜日に平均すると二件ずつ、年間で五十件弱の不服申立て案件を担当してきました。
本日は、このような機会を与えていただきましたので、考えを巡らせているところをお伝えさせていただきます。
出入国在留管理庁は、今般の入管法改正案の基本的な考え方として、第一に、保護すべき者を確実に保護することを挙げています。保護すべき者の第一に挙がるのは、日本も締結している難民条約、難民議定書の定める難民にほかなりません。
保護すべき難民を見定めるために必要なのが難民認定手続です。
国際社会において共通の了解になっているのは、難民は難民と認定されることによって初めて難民になるのではなく、難民であるから難民と認定されるということです。難民の認定は、難民を新しくつくり出すのではなく、その人が難民の要件を満たしていることを確認し宣言する行為です。
したがって、難民の要件を満たしている者は、難民認定手続が不適切なため何度不認定になっても、国際法上は難民として保護すべき者であることに変わりありません。このため、難民認定手続の制度設計とその運用は、難民が難民と認定されないような事態を防ぐため、慎重な配慮を行き届かせたものである必要があります。難民認定が適切に行われないと、難民の生命、自由が重大な危険にさらされることは言うまでもありません。
これに加えて、留意すべきなのは、難民問題が国際的な性格を持つものだということです。難民認定は国際協力の精神に基づいて行われるべきものということです。難民が難民として保護されない状態が続いてしまうと、難民の受入れに係る負担を他国に仕向けることにもなりかねず、そうなると、難民条約を支える国際協力の枠組みを脅かすことにもなってしまいます。
もとより、難民条約は難民でない者の受入れまでを求めているわけではありません。この点に関わって、今般、入管庁は、入管法改正の必要性を説明する文書の中で、国会における参考人質疑におけるある難民審査参与員の次の発言を引用し、難民認定制度の現状を説明しています。その発言とは、他の参与員の方、約百名ぐらいおられますが、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です、難民認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、皆様、御理解くださいといったものです。
扱った事案が異なりますので軽々な論評は避けるべきかと存じますが、十年以上難民審査参与員を務めた者として、私は、この方とは大幅に異なる認識を抱いております。
私は、担当した全部で五百件弱の案件のうち四十件弱について、難民と認めるべきという意見を法務大臣に提出いたしました。その過半数はトルコ国籍のクルド人からのものです。しかし、御承知のとおり、トルコ国籍クルド人による申請については、裁判判決後に認定された一件を除き、これまで全く難民認定がなされてきていないものと承知しております。また、少数民族に対する直接的な攻撃を逃れてきたミャンマー出身者の申請も扱いました。文字どおりの教科書的な難民認定ケースというべきものでしたが、ここでも不認定という結論が維持されました。
私が関わった事案について申し上げれば、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状などでは全くなく、また、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということも全くないということをお伝えしておきます。むしろ、難民を難民と認定できない深刻な制度的問題が現状に宿っているという感を強く抱いております。
今般の入管法改正に係る審議がどのような形で落着するにせよ、日本の難民認定手続に宿る制度的問題が改善されることなく、保護すべき者を確実に保護することは困難と考えます。
まず、手続的な面を申し上げれば、代理人制度を整備することが不可欠です。とりわけ問題なのは、第一次審査の段階での面接に代理人の立会いが認められていないことです。第一次審査の段階で作成される供述調書は面接の結果を記したものですが、面接を行った難民調査官と申請者とのやり取りをそのまま記載したものではなく、調査官によって再構成された文書になっています。その調書が難民審査参与員の元に送られてきて、審査請求の場で重要な資料として用いられるのです。そうであるだけに、審査請求の場だけでなく、第一次審査の段階でのインタビューにも代理人が少なくとも立ち会えるようにしておくことが必須です。
欧米諸国、韓国といった国々では、当然ながら、面接への同席や録音、録画が認められていますが、アメリカ、カナダでは、第一次審査で代理人が付いている場合と付いていない場合とで認定率に約三倍もの開きが出ているとの調査結果もあり、全ての段階で代理人が付くことの重要性が確認されています。
次に、難民該当性の判断の仕方について申し上げます。
先ほど申し上げたトルコ、ミャンマー出身者のケースを含め、私の経験からすると、次のような問題が実務の現場で見て取れました。第一に、迫害について極端に狭い解釈が採用されてきたこと。第二に、申請者が国家によって個別に迫害の標的にされていることを求める、いわゆる個別把握の考え方が採用されてきたこと。第三に、迫害主体を国家に限定し、非国家主体による迫害の場合には国家による放置、助長がなければならないという古典的な考え方が採用され続けてきたこと。第四に、申請者に不信の目が向けられ、供述の信憑性が簡単に否定されてしまうことです。
このうち、第一から第三の問題については、本年三月に公表された難民該当性判断の手引において一定の対応がなされているようにも見受けられます。ただ、法務大臣の説明によると、難民該当性の判断において考慮すべきポイントを整理し、これをできる限り明確化したものとのことであり、この説明は、結局のところ、これまでの実務が基本的にはそのまま引き継がれていくということを示すものなのでしょうか。
手引では、難民と認定されるために迫害の現実的な危険がなければならないとされていますが、現実的な危険とは一体どの程度の危険なのか。また、手引が示す迫害についての説明は、極端に狭いこれまでの解釈を踏襲するところに重点が置かれているように読めるなど、懸念点は少なくありません。
何より、この手引は、難民認定実務において決定的な役割を果たす供述の信憑性評価の仕方について、全くと言っていいほど言及していません。出身国情報の収集、分析の仕方にも改善の余地が大いにあることから、この手引をもって保護されるべき難民が確実に認定される条件が整えられたとはとても言えないのが実情です。
難民を難民と適正に認定できる体制がないままに難民申請者の退去強制を可能にすることは、難民保護の要というべきノン・ルフールマン原則を踏みにじる重大な危険性を制度的に生み出すものと言わなくてはなりません。退去強制手続の下で送還先指定を制約する入管法第五十三条三項にこの重大なノン・ルフールマン原則の確保を託すのでは、余りにも制度的に不十分です。
法案改正審議の行方にかかわらず、難民を難民として保護する義務を誠実に履行するためには、難民認否を行うにふさわしい資格及び能力の要件を明確化するとともに、不服申立てを担当する者を含め、難民認定手続に従事する全ての人に、難民要件の解釈の仕方やインタビュー、異文化コミュニケーションなどに係る実務的に意味のある研修を必ず受けてもらう体制を整備すべきです。
この点で、難民条約第三十五条に基づき、条約の適用を監督する責務を担う国連難民高等弁務官事務所、UNHCRとの協力を更に拡充することが必要です。
入管庁は、確実に保護すべき者の範囲を補完的保護対象者に広げています。紛争を逃れてくる者などを保護するために必要だからとのことですが、UNHCRのガイドラインや各国の実務からも明らかなように、紛争から逃れてきた者についても難民条約は当然に適用され得ることを改めて確認しておかなくてはなりません。
補完的保護という言葉は国際社会で広く用いられるようになっていますが、この概念は、出身国で生命が恣意的に剥奪されたり、あるいは拷問や非人道的処遇を受ける危険性がある者を、いかなる事情があろうと、つまり重大な犯罪を犯した者であろうと、絶対に送り返してはならないということを義務付ける国際人権法上の要請に依拠して発展してきたものです。
こうした国際義務の視点が閣法にはうかがえません。閣法では、補完的保護対象者が再び迫害に引き付けて定義されており、迫害の要件解釈など、難民認定のときと全く同じ問題が生じることになります。何より、こうした定義の仕方は国際的に見て極めて特異なものです。
紛争から逃れ出てくる者に迅速な保護を提供したいのであれば、迫害の有無を個別に審査するようなことをせず、UNHCRが国際的保護に関するガイドライン十一で示唆するように、客観的な事情のみに依拠して難民認定を行う制度を整備することを検討すべきではないかとも思います。
閣法の定める補完的保護制度については、導入する必要性についても有効性についても、大いなる疑念を覚えるところです。国際社会では、難民と並び保護すべき者として無国籍者が指定されています。日本はまだ無国籍者条約を締結していないという現状を反映し、無国籍者への関心が閣法からはすっぽり抜け落ちていることも指摘しておかなくてはなりません。
その一方で、今般の改正案は、確実に保護すべき者の脈絡において、在留特別許可手続の適切化を図ることにも向けられています。ここでは、国際人権法上、家族生活の保護や子供の最善の利益の要請が国家の出入国管理権限を制約するようになってきていることを踏まえた運用でなくてはならないことを強調いたします。
外国人の入国、在留について国家に広範な裁量が認められるという国際法の規範状況は、国際人権法の深まりにより大きく変わっています。在留資格がなくとも人を無権利状態に置くことは、今日の国際法上、到底あり得ません。
身体の自由や移動の自由、労働、社会保障、健康への権利といった人間の尊厳を支える基本的人権の最低限の保障は、国家の出入国管理権限を理由に免除されることはありません。国家の利益を中心に据えた二十世紀の国際法ではなく、人間の利益を中心に据えた二十一世紀の国際法の在り方をしっかり反映させた形で入管法が見直されることを念じています。
以上です。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/5
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006・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、小尾参考人にお願いいたします。小尾参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/6
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007・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) 本日は、大変貴重な機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。
私は、国連難民高等弁務官事務所に約三十年間勤め、その間、主に難民、国内避難民などの国際法の分野を担当しておりました。アフリカ、アジアなどの現場の仕事に加えて、ジュネーブ本部では国際保護局にて難民保護に関するポリシーなどを策定する部署でも働いておりました。最後の勤務地は東京で、入管庁の皆さんとは様々な機会を通じて意見交換、研修などをさせていただいておりました。現在は、昔博士号を取得した国際基督教大学に戻り、難民の保護、人道アクションなどについて教鞭を執っております。
本日は、これらの私の経験を基に、今国会に再提出された入管法改正案についてお話しさせていただければと存じます。あくまでも個人的見解としてお聞きいただければ幸いでございます。
まず、難民の保護についてです。
難民の保護の根幹となっているのは、危険が存在している場所に送り返さないというノン・ルフールマン原則で、難民条約第三十三条に規定され、国際慣習法でもあります。一人でも間違って命や自由の危険にさらされる可能性のある場所には送り返されないように、各国がその法令の中に何重にも厳重にルフールマンの予防措置を置いているわけです。
この視点から今回の入管法改正案を見ますと、歓迎すべき点が幾つか盛り込まれているにもかかわらず、この難民保護の中核の部分においてかなり懸念される条項が見受けられます。それが送還停止効の解除に関する条文です。
お手元にお配りした資料の一は、二〇二一年に入管法改正案が提出されたときにUNHCRが発表した見解です。
何より一番の懸念事項は、法案の第六十一条の二の九第四項第二号で、送還停止効を外されるケースに、初めて難民申請した者であって、一次審査の一回目の難民認定の面接を待っている者も含まれるということです。
送還停止効は、初回申請者については、第一次審査と不認定処分に対する不服審査が行われている間は、三年以上の実刑が付いている又はテロや暴力的活動に関与するおそれがあるというだけの理由によっては決して解除されてはならないということが原則です。
しかしながら、難民条約第三十三条二項にはいわゆるノン・ルフールマンの例外規定があるではないかとの御指摘があるかと思います。しかし、この二項の適用は、本来既に難民認定がなされているケースのみに適用されるものであり、申請中の者に適用するものではありません。
にもかかわらず、改正案は、初めて難民申請し、認定の面接を待っている者への適用をも想定しています。これがまず一点目の問題です。
加えて、ノン・ルフールマンの例外規定は、次に挙げる様々な原則にのっとって適用される必要があります。第一に、国際法の一般原則である比例原則にのっとって適用されること、すなわち、国家や社会に対して難民が及ぼす危険が、その難民が出身国に送り返された際に直面する危険を上回るときにのみ可能なのです。第二に、送還は、国家への危険をなくす又は減らすための最後の手段としてしか適用されないこと。第三に、ノン・ルフールマン原則の例外の指標となるのは、過去に犯した罪の重大性や種類そのものではなく、犯した罪に照らしてその難民が社会にとって今後危険な存在となるか否かであるということです。
三年以上の実刑を受けた者が再犯の可能性とは無関係に一律に、しかも自動的に送還停止効の例外となるという案に加え、テロ等の疑いの場合について相当の理由という文言が二重に使用され、証明度がかなり低くなっていること、テロ等への関与の疑いについては範囲が広く、警察や司法が入らず法務省内のみの審査によって決定されることを始めとし、様々な懸念が生じるわけです。
以上から、難民認定の結果が出されていない方、ましてや難民該当性の審査のために一度も面接もされていない方が送還され得るということは、難民条約第三十三条二項との整合性に問題が生じ、それに抵触する可能性があるわけです。よって、送還停止効の例外として犯罪歴等の一定の属性のある者に言及する第六十一条の二の九第四項第二号の削除を提案いたします。仮にこの条項の削除がなされないのであれば、少なくともこの規定から初回申請者は外すべきであると考えます。
懸念はまだあります。
送還停止効が外れても、現行法の第五十三条第三項一号で、難民条約第三十三条一項に規定する領域に属する国を退去強制令書の送還先の国に指定しないという規定があるためノン・ルフールマン原則は担保されている、さらに、括弧書きで、法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除くと例外も規定されており、これが難民条約を担保しているとの立場が政府により示されています。
そもそもこの括弧書きが難民条約のルフールマンの例外を反映するものなのであれば、先ほど申し上げたように、この条項は難民認定された者に適用されるべきものですので、この括弧書きを適用する前に既に難民認定申請の結果を出しているという必要があります。
更に言えば、五十三条三項二号に規定の拷問禁止条約、三号の強制失踪条約、そして入管法に規定されてはいないものの、自由権規約の第六条と七条はそれぞれノン・ルフールマン原則を規定するものですが、そこに難民条約のような国家の安全を理由とする例外はありません。出身国で拷問や強制失踪などに直面する場合は、国の安全への問題があるとして五十三条三項一号の括弧書きに該当しても、結局のところ送り返すことは禁止されているのです。
だからこそ、例えば三年以上の実刑を受けているからといって自動的に送還停止効を外して難民認定審査の結果も出さないということは、これらの人権条約の適用性も判断なされないまま送還される可能性をも高めます。
法案によって初回申請者に送還停止効の解除がなされるのであれば、なおさら第五十三条三項が難民該当性が審査される唯一の根拠条文として大切になります。しかし、五十三条三項がノン・ルフールマンを担保する規定として有効に機能するためには様々な方策が必要です。例えば、五十三条三項の適用性、つまり送還先で迫害を受けるかどうかについて、誰がどの段階で聞き取りをして審査をすることになるのか、入管法は明確ではありません。
入管法第四十五条から四十九条を読むと、入管庁内の三審制の中では、あたかも第二十四条の退去強制事由に該当するかどうかの判断のみがなされているように見受けられます。主任審査官による五十三条三項の適用性の判断に先立って、出身国において直面し得る人権侵害について、面接調査と審査が難民の専門性を持った者によってなされること、常に最新の出身国情報などを考慮し、送還先を見直すことの保障等について明文化することが必要となります。
さて、複数回申請者の自動的な送還停止効を解除することについても本来は望ましくないと考えます。
複数回申請については、しかし、一般論としては、本案の再審査を妥当とする要素があるかどうかを判断するいわゆる許容性審査の手続を設置すること自体は有用な手段と考えられています。ただし、この前提として、既に申請が適正に審査され、最終的に棄却されたことなどが条件となります。
送還停止効を仮に外すとすれば、手続保障が確保されている必要があります。具体的には、送還停止効の例外となることにつながる決定に不服を申し立てる効果的な機会、その間の送還停止を求める権利の保障などです。
今回の改正法案では、送還停止効を解除するという判断には処分性がないため、行政不服審査法上の行政不服審査の対象とはされません。よって、裁判所に退去強制令書発付処分の取消し訴訟などを求めるしか不服を申し立てる道がないのです。司法審査という機会しかないなら、まずは代理人弁護士を確保するため法律扶助を受けられるようにする必要があります。
また、収容・送還に関する専門部会の提言にのっとって送還停止効の例外が仮に設けられた場合には、その規定の適用状況についても第三者チェックがなされることが重要です。この手続保障の必要性は、同条項の二号についても同じです。
今回の改正案では、長引く収容問題、そして送還忌避者の増加という問題の解決のために、送還停止効の例外を設けるということが目玉となっています。しかしながら、それで喫緊の課題が早急に解決されるのでしょうか。むしろ、根本的に解決するには、中長期的な視野を持ち、限られたリソースを送還停止効の例外を設けて運用することに割くのではなく、まず難民として保護されるべき方々を迅速に、しかも初回申請で必ず認定することに割くべきではないでしょうか。
そのためには、公正で効率的な手続を保障すること、現在は不服申立てまで平均三年半掛かっている処理期間を短くすること、一次審査における代理人の支援と同席を保障し、不認定になってもその理由について丁寧に説明することなどが難民認定制度の誤用、濫用の防止につながります。
その意味では、衆議院での修正案に難民調査官の研修や出身国情報収集の充実化等が規定されたことは意義が大きいと考えております。しかし、例えば、研修の対象者を参与員や法務省の決定権者を含む全ての難民認定に携わる人々に広げることも重要でしょうし、出身国情報の収集、分析に関しても、各案件に関してどのような出身国情報が判断の基準となったのかを情報開示するなどして透明性を高めることも重要になってきます。
さらに、不服審査の独立性を確保することを始め、根本的に取るべき方策はまだまだあります。日本が直面しているこれらの課題は、日本特有のものではありません。ヨーロッパなどでは既に一九七〇年代から同様の問題に直面し、それに対応してきました。これらの国々から学ぶことは多くあります。
まず第一に彼らが行ったことは、難民認定制度の質を高めるということです。その精度と信用性を高め、保護を必要としている人を確実に保護することを目指しました。UNHCRなどからのサポートを受け、質の向上に励んだのです。さらに、難民が到着してから定住に至るまで、包括的な法制度を確立しました。その中には、難民として認められなかった人々の取扱いについての規定も含まれています。
さらにもう一つ、日本への移民の受入れについてのきちんとした政策を確立することは、難民認定制度の誤用、濫用の防止にもつながり、日本の未来のためであると考えます。
本日ここにいらっしゃる立法府の議員の皆様の中には、添付資料にあります二〇一一年衆参両院で全会一致で採択された決議の採択の席にいらした方々もおられるのではないでしょうか。このとき皆様は包括的な庇護制度の確立を誓いました。あれから十二年、私たちはどれだけそれを実現できたでしょうか。
日本は、今年十二月のグローバル難民フォーラムの共同議長国を務めます。人道大国日本だからこそ、今こそ包括的な庇護制度の確立のために何が優先的に議論されるべきかを考えるときではないでしょうか。
御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/7
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008・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
次に、長澤参考人にお願いいたします。長澤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/8
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009・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) よろしくお願いいたします。
私は、北関東医療相談会、AMIGOSの事務局長としてお話しします。
私たちは、二十五年以上、東京及び北関東で、困窮する外国人支援をしてきました。とりわけ、今日は仮放免の状態に置かれている外国人の生活状況についてお話しします。
まずは、私たちの活動紹介です。
お手元には資料が行っていると思いますが、私たちは、一九九七年六月に群馬県伊勢崎市から活動が始まりました。きっかけは、オーバーステイのフィリピン人男性が胃がんの治療で開腹手術しましたが、手が付けられず死亡したからです。以来、六十四回、合計三千二百七人の生活困窮した外国人の健康診断と生活支援を行いました。
私たちの支援は、全ての人が健康と平和な生活ができる共生社会の実現を目指し、特に外国籍生活困窮者のための保健、医療又は福祉の増進を図る活動とし、健康診断を中心とした支援する活動を行います。一般的な成人病の健診方法にのっとり、ふだん受診する機会の少ない貧困者に結核、成人病などの健康診断を受ける機会を提供し、胸部エックス線、検尿、血圧、血液検査、医師との診察、歯科健診、希望者には心電図、婦人科検診を行います。また、通訳者支援、弁護士相談、家賃相談、女性相談、食料支援、中古衣料の支援を行ってきました。
二、生活困窮した外国人の現状です。
生活困窮した外国人の特徴は、在留資格がない、現金がない、健康保険を含めた社会的資源につながっていない、言語困窮者が多い、これは話すことができても読み書きができないんですね。ですから、皆様方がまとめていただいたようなペーパーは誰も読めないです。支援体制が整っていない。とりわけ仮放免者は、入管から、働いてはいけない、行動の制限があることによってこれらの特徴は際立ちます。在留資格がないということは、住民票が作ることができず、住宅を借りることもはばかります。
よって、受診対象者には、受診費用の無料、交通費の全額支給、無料法律相談及び病院紹介、治療費は一部負担、上限五万円まで、食料支援、無料低額診療の病院の紹介、診療費がなくても診療可能な病院の紹介といったことをしております。
三、個別医療支援活動。
これは、個別医療支援活動は、健康診断会と電話相談支援要請が来た外国人の支援を行っています。二〇二〇年からは、非正規滞在者の出産についての相談を含めました。これは、県によっては入院助産制度をしていないとホームページに明記してあったからです。
二〇二二年度は、八十人の生活困窮した外国籍住民から問合せが受けました。主たる病気を紹介します。腎臓病、ネフローゼの疑い、出産支援、母親は帝王切開、左心低形成症候群、いわゆる左心室がないという難病です。住血吸虫による心臓病、急性虫垂炎、子宮筋腫二件、狭心症、心臓のステント手術、肺がんの支援、心房細動二件、食道がん手術、三十年にわたる耳の外傷性の難聴、その他糖尿病、高血圧ほかです。
在留資格とがん。
これは新聞にも出ていましたので記憶にある方もいると思いますが、神奈川県に在住のカメルーン人、レリンディス・マイさんは仮放免者でした。二〇一八年に乳がんと診断され、二〇二〇年十月、末期の乳がん患者となりました。家賃が払えずホームレスとなり、当会に支援要請され、十一月に修道院の礼拝会の施設へ収容されました。その後、聖ヨハネ会桜町病院で末期を迎えます。二〇二〇年十一月末に在特を申請し、数度交渉し、翌年、二一年一月七日にようやく認めるという連絡があり、一月二十一日に弁護士に在特が下りた連絡がありました。しかし、本人に在留カードが届いたのは二〇二一年一月二十三日午前十時で、亡くなったのは午前六時二十五分、死亡後三時間経過でした。
あわせて、二〇二一年二月に、南アジアの女性は卵巣がんステージ三、在特申請して都内の病院で手術することができました。手術後に在特が認められ、抗がん治療を六回受け、回復しました。
こういったことから、マイさんの事例は制度として本当にきちっとしていたのだろうか、人が死んでも制度をつくれない今の状態は何だろうというふうに思います。
出産支援として、母親帝王切開、先ほどの左心低形成症候群、難病の治療は難病申請を行いました。さらに、国会議員の方にも理解をいただき、入管に申請をしました。その結果、親子で仮滞在という厚遇を得ました。手術もうまくいきました。
振り返って、もし制度として確立していれば、このように国会議員の仲介がなくとも仮滞在の許可が得られたのではと思います。つまり、入管による在特等の申請は、国会議員の紹介など特別にしなければならないということが前提ではないかと思います。
次に、無料低額診療の病院と外国人についてお話しします。
無料低額診療事業は、社会福祉法によって、低所得者などに医療機関が無料又は低額な料金によって診療を行う事業です。厚生労働省は、低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者などの生計困難者が無料低額診療の対象と説明しています。実施者には、固定資産税や不動産取得の非課税など、税制上の優遇措置がとられています。
無料低額診療事業によって、生活困窮した外国人は随分助けられてきました。しかし、現在の日本は日本人の生活困窮者も多く、たくさん無料低額診療所に来ます。国の政策で、インバウンド活用によって、外国人には高い二〇〇%、三〇〇%の診療費を要求する大学や国立病院も現れ、そのまま仮放免者に適用されています。
先ほどからの国連の自由規約と仮放免者について、私たちは、理事の大澤優真さんと萩原芳子さんによって、昨年、国連で仮放免者のことを訴える機会を得ました。結果は、今回の国連では初めて日本語のローマ字表記「karihomensha」となり、世界の仮放免者の中でも際立った存在となりました。しかし、国連の提言にさえ耳を貸さないという非常に冷たい事態になっております。
仮放免者とは生きていけない人たちですので、私たちは次の要求をいたします。
日本政府から帰国すべきとされていますが、難民で、母国で生命の危機にさらされるおそれがあるから帰国できませんので、認めてください。就労を認めてほしい。仮放免者には生活する手段がなく、働いて収入得ることが一切禁止されているからです。次に、医療保険の加入を認めてください。これも、在留資格がないので全く保険に適用されません。最後に、生活保護法の活用を認めていただきたいと思います。
次に、野党案と政府案の今般の入管法の比較について、私たちの立場をお伝えします。
私たちは、独立した第三者機関、難民等保護委員会の設置を求めています。難民認定を行うには、専門家や有識者の方々に委員として入っていただき、客観性、透明性、納得性ある形で保護すべき方々を適切に判断してください。対象者を現状の制度から広げ、保護すべき難民を積極的に保護し、補完的保護として在留特別許可の在り方も取り入れてください。収容しないことを基本に、収容期間についても上限を設けてください。
野党案では、長期の非正規滞在者なども救済からこぼれないようにしたことを評価したいと思います。日本が国際社会の一員として当然に果たすべき役割としての制度が提案されています。現行の延長のような監理措置制度をつくっても、何も解決とはなりません。また、私たち北関東医療相談会は、現状において監理人の引受けはできないと思います。こういったことから、野党案を支持していきたいと思います。
私の発言は以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/9
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010・杉久武
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/10
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011・加田裕之
○加田裕之君 自由民主党の加田裕之でございます。
本日は、この法案につきまして、四名の参考人の皆様方から、現場に即した御意見、そしてまた、いろいろ研究された、今までの経験された形での御意見をいただきましたことに、まずもって感謝、御礼を申し上げたいと思います。
まず、川村参考人にお伺いしたいんですけれども、川村参考人は、国際人権法の学者委員としまして、先ほどもお話ありました、収容・送還に関する専門部会などの委員も務められたということなんですけれども、専門部会の中の方ではいろいろな御議論あったと思うんですけれども、改めまして、今回のこの本法案に対します評価をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/11
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012・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
それでは、御質問に即しまして、その私の、収容・送還専門部会、こちらのまず経験をお話をさせていただいた後に、考えをお話しさせていただければと思います。
収容・送還に関する専門部会は、大村での収容の問題で、二度と再びこうしたものが起こらないようにということで、様々な学問分野の先生方が会されて、また実務の方も会されて、お話をさせていただきました。
私は、その際に、自分の任務としてその国際人権の観点をなるだけ提言して、そして、この収容のなかなか厳しい状態を何とか変えたいという思いでいろいろお話をさせていただいたところです。関連する国際法の人権の文書、UNHCRの文書、またいろいろ国際法の他のところで議論のある文書なども資料等でお示しをしながら、その考え方を何度も何度もお話をしたというふうに記憶しております。
この専門部会では、その収容、送還というテーマから、やはり送還忌避者という言葉が、なかなか難しい話なんですけれども、その中にもやはり保護すべき人があるだろうということを御提案を申し上げて、難民ではないけれども、保護が必要な人も確実に保護できるような仕組みの新しい御提案というのもその際にさせていただきました。
そして、収容が恣意的でないという形にするにはどうしたらいいのかというようなことも、国際的にお話しされているような文書をお示ししながら、こういうふうなやり方がいいのではないかと、あらゆる角度からお話をさせていただきました。だから、収容の恣意性のみならず、広い範囲でのお話をさせていただいたところです。
それで報告書ができ上がり、今回の法改正案につながっていくわけなんですけれども、今お話をしたような点が法案に反映をされているというふうに私は考えております。
私が御提案をさせて、補完的保護対象者という新しい制度をつくってくださいということでお示しした点も今回法案に入っておりますし、それから、難民申請の手続の際に在留特別許可を御希望の方がお申出になる場が最終のところでしかないということで、今回新しく在留特別申請の手続を新設していただくと、こういった規定も入りました。これも御提案をさせていただいて、そういったものもきちっと入れていただきました。早期に保護できる体制というのもつくっていただきました。それから、収容に関しては、原則収容というものを今回改めて、監理措置制度というのを入れていただく、それから収容をできるだけ短くということで三か月ごとの事後のチェックもしていただくようなこと、多くの新しい取組を、収容、送還のお話で上がってきたところを入れていただいたというふうに思っております。
したがいまして、そうした国際人権の観点からも大きく前進した法案だというふうに捉えておりまして、包括的に見ますとこの法案というのは大変賛成で、是非可決をというふうに思っておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/12
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013・加田裕之
○加田裕之君 ありがとうございます。
やはり、この収容・送還に関する専門部会の中で、ちょっと私も議事録も、いろいろ聞いたんですけれども、大変皆さん提案、提言というものをされておりますし、先ほど言いました、単なる一方面から見るのではなくて、本当に多方面から、どのようにすればこの大村での事案というものを二度と起こさないようにするべきか、その場合を想定した形、それからまた、補完的保護対象者のことについてや在留の特別許可のこととか、そういうのもしっかりと今回新たに盛り込んでという形でやられているということ、専門的な御意見いただきましてありがとうございました。
続きまして、阿部参考人にお伺いしたいんですけれども、阿部参考人の方も本当に、難民の申請のことにつきまして本当に御尽力されて、長年されていることに感謝申し上げたいと思います。
先ほどお話しいただいた中で、年間五十件、参与員として審査されたということで、十年間ということですから約五百件と。先ほどお話あった、そのうちの難民認定率の部分でいいますと、五百件分中の四十件、クルド人とか中心にということを言われていたんですけれども、実際これ、難民の認定の意見が採用されなかった部分が多くあるという御指摘がございました。
実際、ただ、難民参与員というのは三名の中でいろいろ意見もやっていくんですけど、それは三人の中での多数意見だったのか、それとも少数の意見だったのか、この件について、この三人のやり取りの中身についても阿部参考人にお伺いしたいと思います。お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/13
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014・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
全て個別意見、私一人の意見でした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/14
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015・加田裕之
○加田裕之君 じゃ、実際ですね、実際、阿部参考人の方からは一人の意見ということで、あとの二人の方というのは言わば不認定という形で行われたということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/15
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016・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/16
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017・加田裕之
○加田裕之君 はい、分かりました。
それでは、続き、もう一回、阿部参考人の方からなんですけれども、難民認定を担当する第三者機関を設立すべきという御意見もあったんですけれども、この御意見についてなんですけれども、済みません、これ、ちょっと川村参考人の方にお伺いしたいんですけれども、先ほども最後の方に御指摘されたと思うんですけど、第三者機関の設立すべきという御意見というものに対しましての御見解、他の参考人の方も言われているんですけど、川村参考人の方としましてはこの第三者機関の設立ということについてどのように考えるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/17
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018・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
先ほども少し述べさせていただきましたが、私の考えは、現時点で第三者機関の設立というのは反対の立場でございます。
理由は大きく三つあります。
一つは、先ほども触れましたが、入管業務と難民庇護制度というものは非常に連携してくる部分もあります。そして、今日、世界的に見ますと、多くの方が国際的な移動をしていく中で、難民であるのか移民であるのか、何といいますか、そこの判断が難しいのが世界的に起こっておりまして、ヨーロッパやアメリカの厳しい現状などの報道もあるようなところでございます。
また、難民で保護することはもちろんきちんとやらなければいけないんですが、それに、ほかの在留資格での受入れというのも推進していきましょうということが国際社会で言われている流れでございまして、これはやっぱり両方きちっと見ていくという包括的な目で政策を練っていくというところが一つ必要ではないかというのが一点です。
二点目は、この少数の保護だけに特化した体制というのでは、ちょっと今では現実的に大変厳しいのではないかというふうに考えております。それを、今入管職員でやっているキャパのものを、それを入管職員を全部外して新しくということになりますと、相当の人員を確保するということが難しいのではないかということを思いまして、私は、今の体制でとにかく質の向上を図る手だてをしていってより良くしていくのがいいのかということです。
それから、第三者機関でなければならないかどうかという点で一つ付け加えさせていただきたいんですが、その庇護制度の国際法上の根幹的な考え方として、庇護権というのは誰の権利なんだという議論があります。その際に、庇護を申請する権利は個人の人権でありますが、庇護を付与する権利は国家の権利と、こういうふうに整理が付けられております。そうしますと、庇護を付与する権利が国家が行使する、国家の行政が行うということは、実はその原則に沿った運用ということになろうかと思います。
そうした観点も含めて、現体制をより良くしていくという形で十分なのではないかと考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/18
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019・加田裕之
○加田裕之君 川村参考人にちょっとお伺いしたいんですけど、やはり先ほどの御意見を踏まえた上で、実際、難民審査の参与員制度というものについて、これ、いろいろ先ほども議論あったと思うんですけれども、この参与員制度についての維持をすべきかどうかということについて、ちょっと端的にですけれども、御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/19
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020・川村真理
○参考人(川村真理君) 今御紹介もあったところですが、今度は私の経験を少しお話をさせていただこうと思っています。
私が二〇一五年から難民審査参与員を拝命しておりまして、足掛け八年担当させていただいております。その間、思いますことは、今、難民認定数のお話も出ておりましたけれども、恐らく大体年に私は三十件程度、少し少ない方だと思います。大学のこともありまして少し少ない件数ではないかなと、ほかの参与員の方に比べると思いますけれども、そうしますと、今までで大体二百件強ぐらいを担当していたかなというふうに思っております。
そのうち、そうですね、難民認定をしたというと四、五%ぐらいかなと思うんですけれども、一つここでちょっと御紹介したいのは、昨年度は、非常に認定した数、非常にというのもちょっと訂正しますが、増えたという経験をいたしました。そして、私の意見も、多数になった件数が複数出たということがありました。
と申しますのは、昨年、全体の認定数やら、全般が増えているんですけれども、難民審査制度においても、それから審査請求においても数が増えています。また、それはいろいろな要因があると思います。研修も積み重なって、難調官も研修が積み重なってきたし、参与員の方も、この手引作成のところでいろいろ意見を入れたり意識も上がってきました。ですので、だんだんに積み重なって、いい状況にあって、私が少数派に回って認定されなかったというよりか、去年はほぼいけたというような認識がありますので、その辺りも含めて、今の体制でより良くしていくというのがよろしいのではないかというふうに考えているところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/20
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021・加田裕之
○加田裕之君 分かりました。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/21
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022・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえでございます。
参考人の皆様、本日は大変お忙しい中、ありがとうございました。
さて、人権侵害などの不祥事が多発している収容の長期化に対しては、政府案のように収容の代わりとなる監理措置の導入で対処をするという、そういった選択肢と、もう一方で、全件収容主義を撤廃して、収容の開始又は継続時における司法審査を導入して、さらに収容期間に上限を設けるべきであるとする二つの考え方があります。
まず、収容の目的について、政府案では在留活動の禁止とされていますが、各参考人はどのようにお考えでしょうか。阿部参考人、小尾参考人、川村参考人、長澤参考人の、あいうえお順でそれぞれ御説明ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/22
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023・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 収容に関しては、私自身の考え方は、国際人権法に基づきまして、第三者、司法機関が関与し、そして上限を設ける、こうしたことが求められているという考え方です。
在留というものが日本においては外国人の活動を規制する根拠になっておりますけれども、しかし、人間としての最低限の活動、人間としての生存を確保する最低限の基本的人権の保障は在留の資格にかかわらず保障されるべきものでありまして、収容に関わりましても、まず身体の自由というようなもの、これが確実に保障される、そのような基本的人権を前提として、それを確保できる上で、それを最低限必要な限りで制約する、そういうような形でないと収容も難しいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/23
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024・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) 御質問ありがとうございます。
今回の再提出で、収容されている者については三か月ごとに必要的に収容の要否を見直し、収容の必要がない者は監理措置に移行する仕組みが導入されたということは一定の評価をすべきことだと感じております。ただし、その見直しは入管庁内で行われているという理解でございますので、その点がやはり気になるところでございます。
各国連人権メカニズムの勧告等に基づいて収容の最長期限の明文上の設定、収容決定や延長についての裁判所等の、しかも入管庁から独立した機関による迅速、定期的な審査が導入されることがやはり望ましいのではないかと思います。
また、監理措置を含む収容代替措置におきましては、対象者の生活の手段の確保がなされることが必要です。本人の逃亡の予防というのは、懲役や罰金などではなくて、いわゆるケースマネジメントと呼ばれるもの、すなわち個人的にきちんとカウンセリングを行う。日本にもし在留したいのであれば、どのようなオプションが存在しているのか、あるいは、全くオプションが存在していないのであれば、本国への帰還ということも含めてのカウンセリングを第三者、しかも中立な立場にあられる人が行うということは一つ大切な点ではないかと思います。
その上で、自主的に帰還したいと望まれる方に関しては、例えば国際移住機関が持っているAVRRという自主帰還及び彼らが帰国して定住するために必要な支援を行うというプログラムが実は日本でもございますけれども、このプログラムを充実させ、拡充していくということがみそになるのではないかと思います。
加えまして、むしろ二〇〇四年の法改正のときに導入された仮滞在が最大限に活用されていないのではないかというのが懸念事項です。例えば、二〇二二年では、仮滞在の許可率は約一〇%にとどまっています。ですから、仮滞在がより柔軟に適用されるということが必要なのではないかということと。
また、別途、空港で適用されている一時庇護上陸許可が、果たしてどれだけの人が空港で難民申請をし、結果的に一時庇護上陸を許可されているのかという統計が公には発表されていません。ですから、私どもの知るところではないわけですけれども、まず水際で、私は、私を助けてくださいと言った人がどれだけ保護されているのかという現実を知るということは大変大切なことではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/24
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025・川村真理
○参考人(川村真理君) 今回の改正法案におきましては、原則収容をやめると。これはずっと専門部会でも申し上げて、それが形になってきたわけですけれども、その収容目的ということでございました。今回プラスしまして、この法案では収容要件を定めるというのが入りました。収容すべきは逃亡のおそれがある方とか証拠隠滅のおそれがある方ということで、ぐっと絞っての収容。
それから、出国命令で約七割という数字がいろいろに議論されていますけれども、ルールを守って早くお帰りになる方が帰れるような形、今IOMの話も出ましたが、帰りやすい形で帰っていただいて、また来ていただく、一年というようなことができるような仕組みも入れて、収容をなるべく人数を減らして、期間も短くということで、そして要件も絞った。
だから、収容目的は、在留の資格がなくなったから、皆さん、収容ですというのから大幅に変わっております。収容する場合は、逃亡のおそれがあるか証拠隠滅かというふうに、すごく絞ったというところです。今回の法改正案はそこが一つ大事なところと思っています。
それから、事前の司法審査、それから上限の設定についてでございますが、事前の司法審査と述べているのは恣意的拘禁作業部会の方でその文言が入ってくるわけですが、規約人権委員会の方ではその言葉が入ってこないんです、文書の中には。特段それを勧告しているわけではない、独自の条約解釈の権限のある機関はその文言を入れていないわけなんです。そこで、今回は、その事前の司法審査というのは法案には入っていません。でも、公正な判断かどうかということで、事後の裁判所へのアクセスと、これは規約人権委員会もはっきりと述べているので、それが入っていると、文言が入っております。
それから、収容の上限期間の設定についても、規約人権委員会は、その文言を一般的意見なるそういった解釈に使うような文書には盛り込んでいないんですね。それで、今回、昨年の十一月に出ました勧告のところに、少し上限を、ちょっと丸い形で、そういうふうな方向に向かうようにというような言葉は入っているんですけれども、一般的意見の方ではないということで、要は、その上限設定というはっきりした数値を見せるのが難しければ、とにかく短くする工夫を強くしていくんだということで、その三月の定期的な審査とかということで、なるべく少なく、なるべく短くということを専門部会でも議論し、そしてそれが練られてこの法案になっているというところかと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/25
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026・杉久武
○委員長(杉久武君) じゃ、最後、長澤参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/26
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027・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) 在留活動の禁止とされていますけれども、その在留期間が一体どうなっているのか。収容なり仮放免なり、そういうことで難民申請をしてきた人たちが日本にいる期間は一体何年になっているのかと。
私たちが自分たちで調査をしてきた場合には、もう最長で七十代の人もいるわけですよ。この人たちが在留活動を、皆さんがここで知られているような在留活動を禁止したら生きていけませんよ。どうやって生きていくのか。こういうことが背景にあっているのに、ただ単純に収容と目的だけを選別していった場合には生きていけないですね。何かしらの問題を起こします。
ですから、送還をするにつけても、生きていけるような体制をきちっと取ってあげて、長くいる仮放免者で七十代とか五十代の人がいるとか、そういうのはもうそろそろ考え直した方がいいと思います。これは別に私が一人や二人の意見を聞いているわけではなくて、皆さんにお配りした資料に沿ってお答えしているんですね。
日本に来て、三十年生きているわけですよ。どうやって生きているかというと、人のお金に頼って生きている。それでも尊厳を持って生きていますよ。それなしに生きていこうとした場合に、人権の侵害が起きますよ。それは、収容されている人であろうが外にいる人であろうが、何がしかの問題を引き起こす。そういうことは考え直していただいて、生活をしていけるような最低限のことをお考えになっていただきたいなというふうに思います。
人を痛め付けるような収容とか目的とか、そういうことはそろそろ終わりにしてもらいたいと思いますね。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/27
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028・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 次に、収容する際の要件について、それから収容開始や継続に際しての司法審査を始めとする入管庁以外の機関による事前審査の必要性について、それから収容期間の上限設定について、先ほどの順番でお伺いしたいと思います。まだお答えになっていない部分をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/28
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029・杉久武
○委員長(杉久武君) では、阿部参考人から、答弁は残り時間を考えますと簡潔にそれぞれお願いできればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/29
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030・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) どうもありがとうございます。
上限が設定されない収容というのは、仮に結果的に短期間に終わったとしても、非常に強い精神的ストレスを収容される人に与えます。したがって、例えば今年の三月に韓国の憲法裁判所において、上限の設定がなく、第三者機関による審査もない収容については憲法違反であるという判断が下されましたけれども、その中でも指摘されていたとおり、期限がないまま収容され続けるということは非人道的なそのような処遇にも当たるということから、上限の設定、これは基本的人権を擁護する観点から必要なものだと。そして、それをきちんと第三者機関である司法がチェックするという、そういう体制が基本的人権を擁護する観点からは欠かすことができないというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/30
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031・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) ありがとうございます。
私も同意見でございます。
収容期間の上限を設定する、あるいは判例で合理的期間内に制限を行う、又は収容開始後の独立の機関による審査を導入する、この三つの条件を満たしていないのはG7の中では日本のみであるということがあると思います。これは野党案の御説明でも触れられているところでございます。
ですから、これらの設定というのは、そして司法の介入というのは必要だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/31
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032・川村真理
○参考人(川村真理君) 上限の設定についてお話しします。
私も、専門部会のときは上限を設定する御提案をしてまいったところでございます。その後にいろいろと研究を重ねまして、何とかそれが実現できるかどうかというのも考えていろいろと議論もしてきたところなんですが、世界的に見ても上限設定は議論は分かれるところです。基本的人権に沿えば本当にそうするのがいいんだけれども、現実なかなか難しいというような意見もあります。
例えば、イギリスは一度上限設定をしたんですが、これが実現ができずにまた無期限に、法律に上限は今設定されていません。アメリカも、文言は入っているんですけれども、なかなか厳しい現実があるというところで、オーストラリアも上限がございません。
この現実をきちっと踏まえつつ、一番最短で、そしてどの方の権利も守るというところが、この部分はとても難しい議論のあるところだなというふうに感じておるところです。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/32
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033・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) まず、収容期間については上限が設定は必要です。司法審査も必要です。
加えて、先ほどから精神的ストレスというのが非常に問題視されていますけれども、収容所の中から出てくる方において、精神科に通われて出てくる方が非常に多い。私たちの方で全部この人たちの支援をして、お薬も、病院も連れていきます。八割近くの人が一旦必ず病院を行って、そのほとんどの人が精神科の病院に通院しています。非常にストレスが多くて、はっきりしているのがPTSDだという人が何人かいます。
ですから、こういうような設定、こういうような病気が発生する原因になっている収容所については、上限設定するのは当然のことだというふうに思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/33
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034・杉久武
○委員長(杉久武君) お時間になりましたので、質疑をおまとめください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/34
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035・牧山ひろえ
○牧山ひろえ君 はい。
上限設定を始め、参考人の皆様方、おおむね野党提案の内容に近い内容だと思いました。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/35
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036・谷合正明
○谷合正明君 公明党の谷合正明でございます。
参考人の皆様、本日は大変にありがとうございます。
難民認定率という言葉で、その数字で、例えばテレビ報道で我が国の場合〇・一%であるとか、あるいは、この委員会の質疑では、令和四年では、難民、条約難民として認定した者と、いわゆる人道措置で認定した、認定したというか保護した者を含めると三〇%であるという答弁があったり、またあるいは、そのほか、ミャンマーですとかアフガニスタンですとか、あるいはウクライナといった方々の本国事情を踏まえて送還しないという決定も踏まえれば七〇%ぐらいの庇護があるというやり取りもあるんですけれども、私は、いずれにしても、やはりこれは保護をされるべき方が保護されなきゃいけないと思いますし、送還してならない方を送還してならないということだと思います。その結果の数字がこの難民認定率や庇護率だというふうに思っておりまして、それが高いからどうとか低いからどうかというのは、ちょっと余り本質的ではないかなというふうに思っている一人でございます。
その上で、そうした意味でこれからどうしていくかというと、やはり難民認定の、やはり何回も申請を重ねて認定されるべきものではなくて、一回の審査でしっかり的確に判断されてしかるべきだと思いますし、また一方では、条約難民のみならず、我が国の難民に対する姿勢ということでいえば、第三国定住やあるいは留学生としての受入れということももっと積極的にやっていかなければならないという立場の者でございます。
その上で御質問いたしますけれども、今回の衆議院の修正によりまして、難民調査官に対する研修ということが具体的に強化するということで明記をされた次第でございますが、今の参考人の方々からも、調査官のみならず、参与員を含め全ての関係者の方の研修だとか質の向上というのが必要だというふうな話がございました。
そこで、現実に参与員を経験されております川村参考人と阿部参考人に伺いますが、まず参与員の研修について、実際どういうものなのかということと、改善点があるとすればどういったことを改善した方がいいのか。また、参与員のみならず全ての関係者といったときに、どういう方をどう研修することが望ましいと考えていらっしゃるのか、それぞれの御見解を伺いたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/36
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037・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
まず、参与員の研修等についてお話しします。
参与員は、任命された際に研修という形でいろいろな資料をいただいて、手続等の説明があります。そのほかは、年に一回、二回ぐらいですが、研修のお知らせをいただいて、専門家のお話を聞くという機会をいただいたり、それからUNHCRと日弁連の方からの合同のそうした会の機会もいただいたりということがあります。それだけかと言われれば、基本的にはそういった形です。
じゃ、この後どのように、全ての人の研修がどうあるべきかということでございますが、私、全ての方と先ほど申し上げたんですけれども、参与員、もちろん、日々日々その情報をアップデートすると、そういう機会をきちっと設けるということも必要だと思います。難調官もしかりだと思います。それから、入管業務に係る行政官の判断をされる方々にもしっかりと御認識を持っていただく。
それから、もっと広く、代理人の方も、スペシャリストではあるものの、審査の手続のところでお話ししているときに、ちょっとこれはというようなことも起こったりもしますので、参与員への批判はたくさんありまして、それはしっかりと受け止めてやっていかなければいけないんですけれども、やっぱり代理人になられる方もアップデートをしていただいて、そしてスキルアップをしていただく、あるいは、インタビューやその対応もスキルアップをしていただくというようなことも必要かなと、日々の事案の対応からそんなふうに思っておりますので、行政官、それから国のそういった行政に関わる者以外の全ての人ということを考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/37
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038・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
難民調査官の研修についてはかなり重視されてきているわけですけれども、実際に難民認定に関わっているのは難民調査官だけではなく、例えば異議審査審における難民審査参与員というのは非常に重要な役割を果たしています。全ての者というものの中の一番重要なところは難民審査参与員であります。それ以外にも、実際に日本の難民認定の手続の中には入管庁のそれ以外の職員も当然関わっておりますので、そうした人たち全て含めてということです。
具体的な研修の仕方ですけれども、今、川村参考人がお伝えいたしましたとおり、参与員に対しては実質的には研修はないんです。つまり、就任したときに簡単なオリエンテーションがあり、そして年に二回、難民審査参与員協議会というのがこれまで開かれてきて、そこでの内容というのは講演会ですね、専門家の地域研究の方が例えば講演をする、その後、難民認定室長、審判課長から現状説明があるということなんです。その程度であります。
したがって、必要な研修というのはなされていない。何が必要かというと、面接の仕方ですね、インタビューの仕方です。そして、難民条約の解釈をどうするかという、そういう具体的な実際の審査の仕方に係る研修、これが決定的に欠落しているというのが難民調査官以外の関係者に対する研修だと思います。それが今後求められるだろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/38
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039・谷合正明
○谷合正明君 小尾参考人に関連して伺いますが、難民調査官に対する研修の方で、入管庁とUNHCRさんがMOUを結ばれておられます。その中で、難民調査官の調査の在り方についてケーススタディーを実施しているということは国会答弁でも出ているんですけれども、私も先日の委員会で申し上げましたが、更に認定の質を確保する手段として、クオリティーアシュアランスあるいはクオリティーイニシアチブと言われる第三者によるモニタリングの仕組み、これをUNHCRさんも御提言されているんだけれども、これについて導入を検討すべきではないかというような質問もさせていただいております。直ちに導入するというような話にはなっていませんけれども。
そもそも、このクオリティーアシュアランスやクオリティーイニシアチブと呼ばれるものはどういうものなのか、具体的にちょっとイメージを湧くような実例を紹介していただければというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/39
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040・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) 御質問ありがとうございます。非常に重要な課題だと思います。
いわゆるクオリティーアシュアランスあるいはクオリティーイニシアティブというものはイギリスで始まりました。一九九〇年頃だったと思います。その頃、イギリスは、多くの移民、難民の人たちがやってきて、難民の認定制度の質をもっと高めなくてはいけないのではないかという議論が盛んに行われたときにこのイニシアティブが始まったというふうに理解しております。
どういうものかというと、実際のケースを使って、UNHCRとそれから難民調査官の間で、難民認定の審査のやり方、難民の該当性の評価であるとか信憑性の評価、面接の仕方、それぞれ全ての段階において意見交換をするというものでございます。それプラス、出身国情報をどのように集めていくか、それをどのように分析して、個々の案件にどのように活用していくかということも含まれます。
この取組は、例えばイギリスの場合では、大体一次審査のケースのうち二%ほどを抽出して実際に検討されているというふうに伺っています。例えば、ですから一年に四千件一次審査で扱うとすると八十件、八十件のケースの全部のファイルを持ち寄って、一件一件、これについてどのように信憑性の評価が行われたのか、どのような質問が面接のときに行われたのか、それについてUNHCRが一つ一つコメントをして、こういうふうにしたらどうでしょうか、こういうふうにしたらもっと事実を引き出せるのではないかというような助言をしていくというようなものです。
このクオリティーイニシアティブのプログラムについては実際には評価がなされていて、このアシュアランスのプログラムが終わった後、難民認定の率が非常に上がったと、しかも質も向上したという第三者による評価というのがなされています。それを受けまして、イギリスだけではなくて、現在ではヨーロッパのほとんどの国がこのようにしてUNHCRとの対話を重ねながら、実際のケースを使って、これをどのように評価するか、認定に、評価するかということを具体的に検討するというものです。
これについては、その最終的な評価、認定にするか不認定にするかということについてUNHCRは全く意見を出すことはございません。ですから、本当に具体的にその内容についてどのように行うかということです。
ですから、先日の答弁の中でも現在三件について行われているというお話でございましたけれども、将来的にはそれを数十件あるいは数百件の規模でやっていただくということが望ましいのではないかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/40
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041・谷合正明
○谷合正明君 時間が、関係があります。
第三国定住制度について、ちょっとこの法案の中には入ってはいないんですが、ただ、これちょっと大事な問題だと私は思っていまして、我が国の第三国定住はミャンマー難民からパイロット事業で始まりましたが、今はパイロットではなくて、もう少し地域的には広げた形でやっていますが、なかなかその年間の枠というのが、枠というか、年間に入っていかれる方というのは少ないわけですが、とはいえ、アジアの中で日本がこの第三国定住を始めたという意義は大変大きいとは思っています。
そこで、小尾参考人はUNHCRにもいらっしゃったので、今の我が国の第三国定住制度の評価と意見、また、もし川村参考人、この第三国定住制度に御所見があれば御見解を伺いたいというふうに思います。小尾参考人、川村参考人の御順でお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/41
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042・杉久武
○委員長(杉久武君) じゃ、まず小尾参考人、お願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/42
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043・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) ありがとうございました。
在任中は第三国定住についてもいろいろと意見を申させていただいていたところでございますが、実際にパイロットがミャンマーのケースから始まりまして、それがタイのキャンプから三十人という最初のパイロットですね。それがマレーシアに移って、今はミャンマーという国籍を取り払って、むしろアジアで難民として存在している人たちを第三国定住のプログラムの中で日本にお呼びしようというプログラム、これ段階的に拡充してきたということで、非常に喜ばしいものだと考えております。
将来的には、アジアだけではなく、例えば、世界を見渡しますと、アフリカであるとか中東であるとか、難民として過ごしていらっしゃる方の数というのは年々増えているという状況にもございますので、このプログラムの一層の拡充、そして質の向上というのが望ましいことではないかなと思っています。
それプラスもう一つ、日本の中で現在進行形で起こっているのは、いわゆる民間による、大学であるとか民間団体による難民の受入れということも非常に盛んになってきている。これはもう世界に先駆けて、例えば奨学金の制度を使って大学が率先的に難民の学生を受け入れて、将来、例えば国に帰ったときに国づくりに役立つような人材をどんどん育てていこうと、こういったことは世界の中でも非常に注目されているということもございますので、今後は、官のプログラム、民のプログラムというふうに分け隔てするのではなくて、官と民が一体になる形で、難民の受入れというものがどのような形で行い得るのかということを考えていただければよろしいかなと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/43
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044・川村真理
○参考人(川村真理君) 今、小尾参考人からも話ありましたけれども、日本が第三国定住に取り組んだのはアジア初ということで、大変に注目され、国際社会からも評価されているプログラムだと認識しています。
その上で、やはり規模を広げていくということには私も賛成でございます。多く世界を見れば、日本から遠いエリアで、たくさんの難民の方、つらい経験をされている方がたくさんおられて、直接に日本に入ってくることのできない、けれども、最初に避難したところが大変また苦しいお住まいの状況に置かれる方を、日本で新しい人生を始めてみようかと、そういうふうなお考えの方がいらっしゃれば来ていただくというのは、そういう体制を今後も維持していくということはいいことであろうと思いますし、これも小尾参考人と重なってきますが、民間と官の一体化ということ、これは、今度、ウクライナの方々をたくさん来ていただいた経験、この経験を踏まえて、国際社会に日本は人道的な国なんだとアピールする一つの良いプログラムだというふうにも認識しておるところでございます。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/44
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045・谷合正明
○谷合正明君 ありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/45
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046・音喜多駿
○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿です。
初めに、先週行われました当委員会での我が党所属議員による一連の発言は、十分に根拠のない、問題提起の範囲を超えた不適切な内容や、静ひつな委員会の場を乱すものが含まれておりました。不快で、また悲しい思いをされたウィシュマさんの御遺族、多くの関係者の皆様、委員の皆様に、この場を借りて私からも深くおわびを申し上げます。
今般議題となっている法案については、より丁寧かつ真摯に、かつ議論すべきことはしっかりと議論を重ねていきたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
四名の参考人の皆様、本日は誠に貴重な御意見をありがとうございます。
我が党は、人権と出入国管理、治安とのバランスを取って提出された政府の改正案に一定の評価をしております。一方で、改正案の議論をしていく中で、現行の入管行政における幾つかの懸念点もございます。その一つが施設内での医療体制、もう一つが入管被収容者とその支援するグループとの適切な関わり方です。
初めに、実際に外国籍の方に対して医療相談会を提供していらっしゃる長澤先生にお伺いをいたします。
仮放免後の状況については本日詳細なお話がありましたが、収容の施設内、とりわけ医師が常駐していない収容施設では健康観察や診療はどのように行われているか、その実態を御存じでいらっしゃいますでしょうか。その上で、収容所内でも常勤の医師を特に確保して、適切な医療を提供するためにどんな改善点が必要であると考えているか、御見解がありましたらお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/46
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047・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) 基本的に、収容施設というのは国の施設ですから、第三十条の処遇規定に沿ってそれぞれ図っているかというふうに思っていました。しかし、ないということになると、ちょっとそれは問題かと思いますので、適正に外部の医療機関と連携をしていただいて、健康診断を適切にやっていただくのがよろしいかと思います。
それと、当然ながら、いないからといって済む話でもないので、看護師さんとか、それに代わる人員体制が取れるのではないかと思うんですね。そういった方を置いていただいて、常に外部の病院ときちっと、医療という言葉で対応していただきたいというふうに思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/47
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048・音喜多駿
○音喜多駿君 ありがとうございます。
まさに我々、医師確保あるいは医療従事者の確保、これ極めて重要だと思いますので、具体的な計画を早急に立てるべきということは提言していきたいと思います。
次に、我が党が課題意識を持っている被収容者と支援団体との関わり方について、難民審査参与員の経験がおありの阿部参考人と川村参考人にお伺いをいたします。
被収容者と支援団体をめぐる諸課題については、政府の資料にも逃亡事例などの記載があるほか、令和三年八月十日の産経新聞においても、残念ながら複数の逃亡事案に関与をされた団体があること、また令和三年六月二十七日の東京新聞朝刊には、支援団体の方による、暴れたりハンガーストライキを行ったりした人は仮放免されやすいとのコメント、認識を示す内容が記事に掲載をされておりました。こうした、ややもすると社会と被収容者との摩擦を引き起こしかねない支援の団体や内容が入管行政の現場に存在することを難民審査参与員を務める中で耳にされたことがあるでしょうか。
その上で、被収容者と支援団体の関係に課題があるのであれば、これはより良い関係、改善策を模索するべきと考えますが、阿部先生と川村先生それぞれ御見解や御意見がありましたら、あいうえお順で阿部先生からお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/48
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049・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
被収容者と支援者との関係ということに関して、参与員のときに特段そうした、今お伝えいただいたような問題というのは特に認識しておりませんでした。
そして、その上で、支援団体と被収容者との関係がどうあるべきかということですけれども、基本的にはきちんとした制度をまず整えるということですね。被収容者をめぐる制度をきちんと整え、医療制度も含めてですね、そしてそれがきちんと整っているということが大前提でありまして、それを支援者がサポートしていくという形が、これが本来の姿ではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/49
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050・川村真理
○参考人(川村真理君) 難民審査参与員の立場で、またその任務の中で、支援者と被収容者の関係性の問題というのが明らかになったというケースは私の経験上はございません。したがって、ちょっと知識が実体験としては乏しいところでございますので、お答えが少し難しいところでございます。済みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/50
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051・音喜多駿
○音喜多駿君 ありがとうございます。
この支援団体をめぐる課題については、丁寧にまた関係各所からヒアリングを行っていきたいと思います。また、関連するところでは、監理人の規模拡大、また監理人の負担軽減策なども、支援策を構築する必要があると党としては考えておりますので、引き続き我々も議論をしてまいりたいと思います。
続いて、阿部参考人にお伺いしたいんですが、冒頭のプレゼンテーションの中で、参与員として四十名と、五百人中四十名という認定を出されてきたということでありましたが、他の委員からの御質問の中で、これは少数意見、単独意見であったということの回答がございました。この単独の、少数意見になったことの要因を御自身はどのように分析をされているのか。すなわち、例えば難民の審査の参与の人選自体に問題があるとか、あるいは行政からの問題、情報提供に、この参与員、三名でやられると思うんですけれども、そこに課題があったのか。御自身の意見が少数意見になった背景、理由についてお考えをお聞かせいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/51
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052・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
四十名弱というふうに申し上げたんですけれども、いずれも御指摘のとおり少数意見、単独の意見でした。その理由は、ほかの方と意見が合わなかったということになるわけですけれども、ほかの方はもちろん、ほかの方、ほかの二名の参与員の方も御自身の判断基準に基づいておやりになったことであり、それについて私自身は特に論評することは避けたいと思います。
しかし、私自身は、国際難民法の基本的なスタンスに基づいて粛々と認定すべきだというふうに判断を下したということであり、そうした認識が共有されていなかったというところに私がこうした少数意見を書くことになった理由があるんではないかと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/52
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053・音喜多駿
○音喜多駿君 続いて、阿部参考人にお伺いしたいんですが、冒頭のプレゼンテーションの中で、特に最後に、やはり人権を意識した制度運用をしなければならないという旨の発言があられたかと思うんですが、もちろん人権というのは重要な、最重要である反面、やはり受け入れる社会としては、秩序の維持であるとか治安であるとか、国益と言うと少し語弊があるかもしれませんが、持続可能な受入れ体制というのを整えていかなきゃいけないという極めて難しいバランスの中にこうした法律とかその制度運用というのがあると思うんです。
それで、余りにこの理想を追求し過ぎると、やはり、ややもすると社会の秩序が維持できないと。このバランスというのを阿部参考人はどのように捉えて御自身の判断をされているのかというところをもう少し詳しくお伺いできればと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/53
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054・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
先ほど私は、二十世紀の国際法と二十一世紀の国際法という言葉をお伝えしました。二十世紀国際法的な感覚ですと、国家の主権をまず前提に出して、この主権を前提にどれだけ人権を実現していくかというふうな、言ってみれば主権ありきということなんですね。二十一世紀ももちろん主権がなくなったわけではありませんけれども、しかし、その関係性が変容しておりまして、人間の権利まずありきということになっていくわけですね。
しかし、人間の権利があらゆる場面で全て実現するかというと、それは難しいわけでありまして、それを制約する事由というのが人権諸条約にはきちんと明記されているんですね。しかし、拷問を受けるとかいうような場合には、これはいかなる理由があっても拷問は禁止されていますけれども、しかし、多くの人権に関しては制約する事由というのが明記されており、その制約する事由をきちんと精査していくことによってバランスが取れるというふうに国際人権法は制度設計ができているんです。その下で入管もやっていくべきだという、そういうのが私の意見です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/54
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055・音喜多駿
○音喜多駿君 ありがとうございます。御意見を踏まえて、しっかりとこの法案の内容、また審議していきたいと思います。
次に、再び川村先生にお伺いをいたします。
先ほど冒頭申し上げたとおり、我が党は、人権と出入国管理や治安といったいわゆる国益とのバランスを取って提出されたこの政府改正案には一定の評価をさせていただいております。ただ、一方で不十分な点もございましたので、衆議院の方で一部の修正をさせていただきました。この修正内容は、その一つは、難民調査官が難民認定の申請をした外国人に対し、その心身の状況、国籍又は市民権の属する国において置かれていた環境などの状況に応じ適切な配慮をすること、これを義務付けるというような内容になっております。
こうした修正によって、人権を尊重した上で保護すべき人は確実に保護するという法改正の実効性が更に高まったと我々は考えておりますが、これをどのように受け止めていらっしゃるか。この法案の基となった報告書を作成した収容・送還に関する専門部会のメンバーであった川村先生に改めて評価を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/55
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056・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
今御紹介ありました衆院での修正案、大変すばらしい修正案だと受け取っております。とにかく、そうした細やかな配慮、そうしたものもきちっとやっていくんだという姿勢が示されたものであるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/56
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057・音喜多駿
○音喜多駿君 ありがとうございます。
この配慮義務に関しても、違反しても刑事罰や不認定処分の取消しがなくて実効性がないといったような御意見もございますが、これ、法運用面で政府の取組、我々も注視していきたいというふうに考えております。
川村先生にもう一問お伺いいたします。
本法案は、ウクライナ避難民など紛争避難民などが法務大臣の裁量のみで保護されていることを改善し、保護すべき方を確実に保護するための改正も行われています。
この点、日本におけるウクライナ避難民の受入れについて記された川村先生はどのような評価をされていらっしゃるか、この点も改めてお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/57
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058・川村真理
○参考人(川村真理君) 今般のウクライナ避難民の皆様の受入れ、大変に迅速な政府の御判断で、大変国際社会からも御評価があるすばらしい対応だったと思います。ただ、この長期化の様相が見受けられる中で、日本に来られている方々の確実な在留を確保するという観点からも、今回の改正法案に補完的保護の対象者なるものの規定が入ったことは大変有意義であるというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/58
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059・音喜多駿
○音喜多駿君 ありがとうございます。
川村先生には、最後に、ちょっと他の委員からも発言がございますが、難民の認定率、日本は難民の認定率が著しく低いというふうに言われておりますが、そもそもこの難民認定率という数字がどういったことを表す数字で、この難民問題の取組に対して国際比較に用いるのにどこまで適切な数字なのかというところは、これは少々議論があるところだと思うんですが、この評価について川村先生のお考えをお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/59
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060・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
難民認定率を用いて各国の状況の比較等を行うことについては、私は問題があると思っております。これは衆議院の参考人の滝澤参考人も、各国の受入れ体制が違うことによってカウントのされ方が違うんだというようなことも御紹介なさっておられましたが、そこも私も同感でございます。
日本においては、安全な第三国とか、安全な出身国とか、その入国段階で精査するというようなことはやっておりません。皆さん来て、難民申請しても明らかに理由のない方も同じようにカウントの中に入ってくる。他国であればそれカウントに入らないかもしれないという人も一緒にカウントしている。
それから、補完的保護の対象者というものが他国でははっきりと規定がされているけど、日本には規定がされていないというようなこととか、いろいろな体制の違いによって数の取り方も違ってまいりますので、また、地理的な状況においても、どういった国からどのような形の方が来られているか。さっき第三国定住のお話もありましたけれども、そういう形でたくさん受け入れられているところのカウントはどうなんだろうとか、やっぱり余り、この認定率というものを使って評価をするというのは、私は余り好ましくない方法ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/60
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061・音喜多駿
○音喜多駿君 ありがとうございました。
最後に、小尾先生にお伺いいたします。
LGBTと難民というシンポジウムに出られていらっしゃったのを拝見いたしました。先般も、同性愛が犯罪として処罰されるウガンダから出国されてきた当事者の女性が申請が認められず、裁判の判決が出てようやく認定されたという事案がございました。これはもう知識不足の入管庁の情報収集に課題があったと思いますが、こうしたいわゆる性的指向というものは、プライバシーの問題もあって、難民の申請者が主張されても、それが真実相当があるのかどうかというのはなかなか他人から分からないことも多いんじゃないかというようなことも指摘されている中ですが、こうしたものにどう向き合って難民認定というか判定していくのか。そうしたことについて御意見がありましたらお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/61
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062・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) ありがとうございます。
難民の保護の中でも特にLGBTI関係の方の保護というのは非常に難しいと、私もUNHCR時代の経験を基に感じております。
というのは、まず、その方が自らが、自分が例えばゲイであるということを他人に知らせるということがほとんどないわけです。その中で、この人はLGBTIQの方だから特別な保護が必要だと支援者がその人にアプローチして、あなたに必要な保護を差し上げましょうと言うこと、そこまでたどり着くまでに非常に時間が掛かるということがあると思います。
それと同じことがやはり難民認定にもございまして、最初の段階から、LGBTIQの方が、私はLGBTIQであるから迫害されたんだということをおっしゃる方がどれだけいらっしゃるかということになってくるんだと思います。
そのときに、それでは誰の義務になるのか、その人を確実に保護するためには何が必要なのかと言われたら、それは難民調査官、いわゆる面接を行う側が、その人が来た出身国でどのようなことが起こっているのか、例えば、LGBTIQの人を、LGBTIQを禁止するような法律があるということであれば、その人が恐らくいられないような状況がつくられていたのではないかなということを推測することも可能でしょうし、面接の中でその人がどうして日本に逃れてこなくてはならなかったかということを事実を基に引き出すという、何というんでしょう、テクニックと言ってはちょっと語弊があるとは思いますけれども、きちんとした難民認定の基準、そして難民認定の面接の仕方、信憑性をどのように捉えるか、どのようにその人のしぐさ、表現の仕方、そしてその人がおっしゃっている内容を評価していくか、分析していくか。経験とそれから非常に深い洞察力というのが必要になってくると思います。そのことからも、やはり研修の必要性、重要性ということを示唆しているんだと思います。
特に、このように保護が難しい方々、自らがおっしゃらない方、その人たちをきちんと保護していくというのがやはり難民保護の真髄でございますので、そこを重視した難民研修制度のやり方というものが今後も継続して必要だというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/62
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063・音喜多駿
○音喜多駿君 時間ですので終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/63
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064・川合孝典
○川合孝典君 国民民主党の川合孝典と申します。
本日、四名の参考人の皆様には、貴重な御所見を賜りまして、ありがとうございました。
私から、まず阿部参考人に御質問させていただきたいと思います。
先ほどの意見陳述の中で、四十件弱の本来難民認定されるべき方がされなかったということについて言及がございましたが、具体的に、認定されてしかるべきだったのに認定されなかった事案といったようなものはどういったものがあったのかということについて、もう少し具体的にお教えいただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/64
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065・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 先ほどの陳述の中でも幾つか申し上げましたけれども、それに加えて、私がすごく印象に残っている一件申し上げます。
これは、ある国から逃れてきた女性の方なんですけれども、夫が交通事故で亡くなった、そのことを理由に夫の親族から危害を加えられるという、こういうことを訴えて本国を逃れてきた人だったんですね。このケースは、原審、第一次審査の段階ではインタビューもなく書面審査だけで不認定になって回されてきました。恐らく、それは私人間の紛争であり、プラス夫が交通事故で亡くなったことでなぜ妻が夫の親族から攻撃を受けるのか、これが言ってみれば奇妙きてれつな考え方だろうということで、そもそもきちんとした審査に値しないというようなことで不認定になったように見て取れます。
しかし、私は、結果的にこれは認定事案、認定すべき事案だというふうにしました。というのは、出身国情報を調べてみますと、その方の出身国では確かに夫が交通事故で亡くなったというような、いろいろな理由で夫が亡くなったときに妻が夫の親族から攻撃を受けるということが頻繁に行われていて、それが重大な人権問題になっていたんです。そして、そのような事案が欧米諸国では少なからず見られて、難民として認定されているんですね。そういうようなことから、私も様々な情報を収集した上で、この人は特定の社会的集団の構成員を理由にして重大な危害を受ける危険性があるから、本国に戻すのは危険だということで難民と認定すべきだというふうな判断を下しました。
出身国情報が十分に収集されていなかったこと、そして、私人間の紛争だからといって軽視したことが不認定の原因ではないかというふうに思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/65
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066・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
そうした問題が生じたということを踏まえて、今回の法改正で様々な一応措置は講じられているわけですけれど、そのことでもってそうした問題の再発を防ぐことが可能と先生はお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/66
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067・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 研修というのが何度も今日ほかの参考人の方から強調されています。その研修をどのようにやるのか、誰に対してやるのかというところ、これがまず非常に重要でありまして、難民審査参与員も含めて、面接の仕方であったり、供述の信憑性の評価の仕方であったり、出身国情報の使い方であったりという、そういう個別事案に即した研修というのがきちんとなされるという体制が整わないと、同じような間違いが繰り返されていくように思います。
また、その出身国情報を収集し分析する体制が、ここ数年の間少しずつ改善されてきていますけれども、非常に不十分な状況にとどまっているので、ここも懸念の対象であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/67
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068・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございます。
小尾参考人に今の質問に関連してお伺いをしたいんですが、先日、衆議院を通過した法案に修正が加えられて、出身国情報の収集、難民認定研修にまつわる規定等について幾つか書き加えられました。こうした修正に対する小尾参考人の御評価をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/68
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069・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) ありがとうございます。
今回、明文上こうした規定が置かれたことというのは非常に喜ばしく、歓迎したいと思います。
また、研修を実効性あるものとするためには、難民認定手続に関与する全ての当事者への継続的な研修、能力育成が必要になりますので、先ほど来申し上げましたように、難民調査官だけではなく、不服申立ての手続に関わる難民審査参与員ですとか通訳者、弁護士の方も含めてです、それプラス裁判官の方に対しても専門的な研修を行い、それを継続していくことが求められると思います。
特に、難民認定の決裁権を持っていると思われる法務省の政務三役の方、これは以前にもお話が出てまいりましたけれども、現在の一次審査においては、面接を行う、すなわち難民申請者と直接対話をして面接を行うその方が判断権者ではないんですね。その方の意見調書ですか、を基に、ほかの方々、法務省内のほかの方々がそれを御覧になり、最終的にこの人は認定してもいいだろう、あるいはこの人は不認定だという判断が行われるというふうに理解しております。
ですから、面接を行う難民調査官だけに、例えば今回発表されました手引の内容、そしてそれをいかに使うかということを研修するだけでは不十分で、最終的に判断を下される方全て、この手続に関わられる方全てに研修を行うということが必要になってくるんだと思います。
研修の教材についても、例えばUNHCRは、自らが世界の各地でいわゆるマンデート難民審査というのを行っておりまして、その研修の教材も作っております。こういったものを法務省さんと共有させていただいて、一緒に作っていく。しかも、いろいろなガイドラインが例えば新しく発表されたということになれば、それを随時アップデートしていくということも必要になってくるでしょうし、それが実際の難民認定実務に生かされているかどうかということを評価するということも必要になってくるのではないでしょうか。
すなわち、研修をただやりっ放しにして、これで研修をやりました、何かやりました、だから良かったですねというのではなくて、それが効果的に実際の難民認定に確実に反映されているかということを判断するような評価、評価ですね、が行われる必要性があるのではないかと思います。
それから、出身国情報に関してですけれども、これもやはり同じように、最近、先日のお話の中で、五名の方がこの出身国情報の新しくつくられた部署で働いていらっしゃるというお話を伺いました。私が働いていた頃はそういった専門の部署はまだなかったんですね。ですから、この数年の間にそういった専門の部署ができたということは非常に喜ばしいと考えております。
この五名の方というわけですけれども、将来的にはその数も、それから行う範囲ももっともっと拡充していただければと思いますけれども、それプラス、やはりお役所ですから人事異動というのがございます。二年間、三年間働かれて、やっと経験を持ち、そして知識の蓄積が行ったときに、はい、あなたは次の部署に行ってくださいということが実際は起こっているのだと思います。ですから、これまで蓄えられた知識、経験というものをいかに、例えば人事異動を止めるということは恐らく難しいでしょうから、次の人につないでいくことができるのかということも課題ではないかと考えております。
それからもう一つは、出身国情報の収集、分析を単に法務省さんの中だけで完結するのではなくて、これは是非民間と協力して行っていただきたいというのが私の望みでございます。
例えば、他国では、実際に出身国情報を収集、分析している民間団体と、各国の政府の、難民認定を行っている政府の官庁が一緒に協力して、資金を出してそこに託すというようなことも考えられるでしょうし、充実した出身国情報、特にハイクオリティーな出身国情報の分析が行われていると。
しかも、ただ集めるだけではなくて、例えば難民審査参与員、難民調査官の方が、これについてはどうなっているのだろうか、具体的な例は世界のほかの判例にあるのだろうか、そういったクエリーにも答えられるような、そういった体制を整えていかれるというのも一つではないかと思いますし、各国の、そして様々な状況に応じて、こういった出身国情報を私たちは集めましたということを是非公表していただきたい。それを公表、そして共有することが日本全体の難民認定制度の質の向上というものにつながっていくんだと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/69
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070・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
改めて、阿部参考人に御質問させていただきたいと思いますが、我々の立場からは、難民審査参与員の先生方は有識者として捉えて、三審制の最後のところをチェックしていただいている専門家だという認識ではあったんですが、いろいろお話をこの間伺ってまいりまして、研修の必要性だとかということについて皆様が口をそろえてやっぱりおっしゃっているわけであります。
そこで、今更ながらの質問なんですけれども、この難民審査参与員の方々は難民認定の専門家と先生は捉えていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/70
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071・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
難民審査参与員の方々は、それぞれの領域において非常に高度の知見を有しておられる専門家の方々です。例えば、人道支援の領域において長い経験を持っておられる、あるいは法律の領域で専門家である、地域研究の専門家である、そういう意味では専門家には違いないんです。
しかし、端的に申し上げて、誰一人、難民認定の専門家ではありません。少なくとも、難民審査参与員として仕事を始めるときに難民認定手続の専門家ではないんです。だからこそ、どのような御専門の方であっても、難民認定手続に詳しくなるためには研修を受けないといけないんですね。しかし、これまでは、それぞれの領域の専門家であるということを理由にして、非常に、何といいますか、その地位にふさわしい処遇をされてきたといえばそれまでなんですけれども、研修を受けるような必要もないだろうというふうな暗黙の了解があったかもしれません。
そういった点からしますと、専門家かどうかという、難民認定の専門家かどうかという御質問に対しては、難民認定の専門家として仕事を始めるわけではないというふうにお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/71
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072・川合孝典
○川合孝典君 委員の先生方もお聞きいただいたと思いますけど、議論の前提として今の御示唆は極めて重要だと思いますので、私からも指摘させていただきたいと思います。
その上で、川村参考人に、時間の関係もありますので多分これが最後になると思いますが、質問させていただきたいと思います。
今回の法律改正の正当性というか、合理性についてのお話を伺いました上で、川村参考人の方からは、去年辺りから難民認定の数も増えてきたといったようなことも御指摘いただきました。
ウクライナからの避難民の方の受入れのこともありますが、実は去年の三月二日の参議院の予算委員会において、私自身が、ウクライナからの避難民の方を受け入れるためのヒューマンビザの発給、このことを岸田総理に直接申し入れさせていただいております。あわせて、そのときに、林外務大臣にも、コルスンスキー駐日大使が面談を一か月間外務省にストップ掛けられているといったようなことも指摘をさせていただきました。その指摘があった僅か二時間後には大使と林外務大臣が面談された上で、その日の夜にはウクライナ避難民の方の受入れについて総理が言及をされたということです。
指摘をすぐに受け止めて対応していただいたということについて私は極めて前向きに捉えている一方で、これも考えようによっては国会議員の口利きということになるのかなと、いろいろなお話を、先生方のお話聞いていて感じたわけであります。
そこで、川村参考人に質問なんですが、よりいい法律を作ろうということでこのことの議論を今させていただいているんですが、他方、政治の判断で揺らぎが生じるような法律の立て付けになっていると私自身は実は感じています。要は、時の政府が、また時の法務省、法務大臣がどう判断するかで、最終決定権者はそこにあるわけですから、この揺らぎが生じるような状況というものをいかにして抑えていくのかということが私は必要なんじゃないかと思っておりまして、そこで、運用を改善することで、今の、今回の法改正がよりいいものとしていわゆる運用されていくであろうといった趣旨の先生御発言されたので、運用上、今回の法律改正を受けて運用上見直すべき点は川村先生はどこだと捉えていらっしゃるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/72
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073・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
先生の御発言の会議録、昨年の、読ませていただいておりました。
非常に難しい御質問でありますけれども、私が最後に申し上げた運用上で十分に対応できるのではないかというふうな指摘は、まさに今、様々な参考人からの話があった、その難民の認定のプロセスのところをどのように質を高めていくかというようなところ、あるいは、参与員制度に対しての御批判、参与員の能力が低いであるとか独立性が保たれているのかどうかという御批判から第三者機関の創設という新たな案が出ていたというふうに理解をしておりますが、参与員制度でもってその独立性と公平性をきちっと、それぞれの参与員のスキルアップ等々図りながら、そしてその体制の組み方なんかも工夫をしながらというところでより良くできるのではないかと、それが一つございます。
以上でとどめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/73
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074・川合孝典
○川合孝典君 ありがとうございました。
時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/74
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075・仁比聡平
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
四人の参考人の皆さん、本当に今日はありがとうございます。
まず、長澤参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、献身的な支援に心から敬意を申し上げたいと思います。
貴重な仮放免者生活実態調査報告を委員の皆さんにお配りをいただきました。この中、拝見しますと、医療を受けられない仮放免者という、医療にアクセスできない、命が危険にさらされているという仮放免者の実態が伝わってくる思いがするんですけれども。
冒頭御紹介いただいたカメルーン人のマイさんの件について、調査室が委員に配っている資料の毎日新聞の記事によりますと、このカメルーン人、マイさんは、二回目の収容中に、胸が痛い、しこりが気になるというふうに支援者に訴えておられたのに、入管ではまともな医療措置をされなかった。そのまま体調が厳しく悪化していく中で、一八年の二月に仮放免、これは二回目の仮放免になった。そこで先生方につながって、そうすると、先ほど御紹介のあったように乳がんと診断され、そのまま進行していったということのようなんですよね。
同様のケースはマイさんにとどまらないのではないかと、たくさんあるのじゃないのかと。例えば、胆管結石から膵炎を併発して、病院では緊急手術だと、もし手当てが遅れていたら命に関わるような状態だったと言われたペルー出身の男性の件がありますけれども、この方も、その前日、仮放免をされているんですね。
入管収容の間にまともな医療を全く提供しないで、重体になって仮放免と。仮放免されたって、お金もないし、病院に行く当てないじゃないですか、基本は。だから、この御紹介した二人は病院にたどり着きましたけど、入管の仮放免というやり方自体もとても深刻な課題持っているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/75
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076・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) お答えします。
先生おっしゃるとおりで、カメルーンのマイさんの件については非常に良かったと思います。その前に神奈川県の北里大学の先生が非常に熱心に支援をしていただいて、しかし、そのときでさえも、在留特別許可申請をして、二回ほどやったけれども下りなかったと。私たちの方に来てようやく、本当に末期の末期に近づいて、在特申請して下りたと。しかし、許可が出たと言ってから実際に下りるまで二週間掛かっているんですね。この二週間の時間というのは何なんだろうと私は今でも疑問に思う。
それと、胆管結石のこの人はウィシュマさんと一緒ですよ。ウィシュマさんは自分で病院連れていってくれと訴えるわけですよ。大体、そういうふうになる人は皆さん同じです。入管の中で起きているそういう医療関係の問題で、外に放り出すというんですかね、表現が悪い。しかし、そうでない限りは出てこれない。じゃ、なぜ外に出すかといったら、入管の中で死なれちゃ困るんじゃないのかというのが一般的な私たちの受け止め方です。しかし、それすらも追うことができないぐらいにたくさんの人が来ます。
ですから、そういうような問題が収容の問題に関わっているということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/76
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077・仁比聡平
○仁比聡平君 先生、その記事のコメントの中で、入管の長期収容と並んで仮放免後の放置も深刻な問題だというふうにおっしゃっている、そうした意味だと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/77
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078・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) そうですね、はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/78
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079・仁比聡平
○仁比聡平君 もう一点、先ほどのやり取りの中で、精神的な疾患、PTSDも含めた長期収容の中で受けた傷があるということのお話があったんですが、そうした方々も含めて、私は、再収容の恐怖、あるいは収容されるんではないかという恐怖というのは、この仮放免者の皆さんの中に、ずっと苦しめているんじゃないのかと。定期的に、例えば毎月入管に面接に行かなきゃいけないと、その日にもう帰れなくなるんじゃないのかと。こういう恐怖というのは、昨年、東京入管でルカさんという方がむごい自殺をされましたけれども、そうした非正規滞在者の苦しみを生み出しているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/79
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080・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) お答えします。
長期収容を含めて、精神疾患を患った人は、ほとんどの人はもう、また生きて帰ってこれないんじゃないかという、そういう不安の中に生きています。拘禁症というのはもうお聞きになったと思うんですけれども、取調べ受けているときに失禁をするわけですね。決して、本人はもうどうしようもないわけで、そうなってしまったらもうどうしようもないですよね。だけれども、若い人がそういうふうになるまでに入管の中でいじめられるというんですかね、そういうような状態がずっと続いている。最近はそういうのはないのかも分かりませんけれども、現実に起きてきたと。
ウィシュマさんの件と拘禁症の彼の件もそうなんですけれども、あとペルー人の胆管結石の人、この人たちは出てきた途端に倒れちゃって、電話が掛かってきて手術してくれと。たまたま無低の病院が知り合いがいて、じゃ俺のところへ連れてこいよという話になって、診てもらえて手術が受けられたと。そうでなかったら、たらい回しになって、その時点で亡くなっているというようなケースですね。しかし、全然、入管の中にいるときは誰もそれを診ようとしない。
大村の収容所で、一昨年ですか、がんじゃないかといううわさが飛んだ人がいて、私たちのところに来たのは、三月にやって六月で、そのときには、ところが、そこの、肺がんの状態だったんですけれども、確定診断をしてもなかなかがんの最終的なチェックができなかった。しかし、先生の方で総合的に診て、これはもう肺がんの末期に近い、三の状態だということで、ステージ三だということで、それで診断書を作ってもらって、入管の方に弁護士さんと一緒に出した。で、下りたんですけれども、下りて、その後、四か月後に亡くなりましたね。
一体何のためにその処遇規定第三十条があるのか。中に入っている人と外に出ている人についても全く同じように診なきゃいけないのに、何もそれについて規定の中に取り上げられていない。これこそまさに入管らしい扱いだなと。だから、そういう非人道的な病気の扱いについては、やはりちょっと問題提起を考えていただきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/80
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081・仁比聡平
○仁比聡平君 長澤先生にもう一問だけ、できれば端的にお答えいただきたいと思うんですけど。
そうした医療を受けられない、極めて不安定だし、この調査にあるように、食料も住まいも極めて厳しい状況にあるという中でも、でも、日本で生きていくと。
例えば、日本で育った子供たちが、ここにいさせてという、何というんでしょう、横断幕で国会の前においでになったりしているんですけれども、しかも、子供だけ日本で在留特別許可が出ればいいというんじゃなくて、家族が一緒にいるということが大切というふうにおっしゃる。このここにいさせてという思いを長澤先生がどんなふうに受け止めておられるか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/81
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082・長澤正隆
○参考人(長澤正隆君) お答えします。
基本的には、家族は一緒でないと家族ではないですよね。お父さんだけが元に戻って子供が生き残っていくというのはちょっと考えられないですね。最終的には、きちっと家族が残れるような体制をするというのが新しい入管法の中できちっとうたわれて、うたっていただきたいというふうに思います。
もうこの一言ですね。お時間があるので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/82
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083・仁比聡平
○仁比聡平君 残る時間が少しになって申し訳ないんですけど、小尾参考人、阿部参考人、川村参考人の順で同じ問いにお答えいただければと思うんですが、先ほど小尾参考人からも、あるいは阿部参考人からも、今の難民認定行政が、供述の信憑性という意味でのインタビューという面でも、あるいは比例性の考慮という面でも、手続保障できていないんじゃないかという趣旨の御発言があっていたと思うんですけれども、今、入管庁は、退去強制令書の手続の中で難民認定の該当性もちゃんと審理できているから、退令が出たら、それに応じなければ送還忌避者だというふうに一くくりにしています。
その送還について、せんだって入管庁はこの国会で、国家にとって好ましくない外国人の在留を禁止し、強制的に国外に退去させることであり、それは国家の主権に関わる問題として、本質的に行政権であるというふうに答弁をしているんですが、それぞれ参考人の皆さん、どんなふうにお感じになられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/83
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084・小尾尚子
○参考人(小尾尚子君) ありがとうございます。
その点に関しては、私の意見陳述でもかなり詳しく御説明させていただいたかと思いますけれども、確かに国家の主権で、この国にいてはいけない人というものを特定し、その方には退去していただくということは、国家の裁量範囲なんだと思います。
ただ、それをする場合でも、国際人権条約、そして難民法、難民条約があって、こうしたときには送り返してはいけない、もし送り返すのであればこうした審査が必要である、手続保障もきちんとしてほしいというものが具体的に記載されているわけですね。
ですから、それときちんとバランスの取れた、そういった人権条約、難民条約を加味し、考慮した上でその裁量を行っていただくということが必要になってくるのではないかと思います。
今回のこの入管法の改正の案の中に入っている三年の禁錮ですか、を受けた人はもうそのまま、例えば難民の審査もせずに帰っていただくということは、やはり少し乱暴なのではないかなというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/84
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085・阿部浩己
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
出入国を管理する国家の権限が強いというのは、これは二十世紀に確立した国際法の在り方です。しかし、二十世紀の後半から二十一世紀にかけて、人間の権利を実現するという、そういう価値が非常に強くなってきています。したがって、例えば在留資格がないという人であったとしても、最低限の人権を保障するという義務が国に課せられるようになってきているんです。それを各国は合意しているんですね。
例えば、先ほどのお示しいただいた例などでは、子供の最善の利益、親子を分離するようなことは子供の最善の利益にかなう場合でない限りにはやってはいけないと、これは出入国の場面であっても駄目だという、こういうふうな基本的人権を擁護するという考え方が強くなってきているということからすると、先ほどお示しいただいたような国家主権によって全てを説明するということは、今は法的にはできないというふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/85
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086・川村真理
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
基本的な考え方、国家にどういう方が入っていただき、どういう方に退去していただくかというのは、国家の権利であります。国が決めるべき権利であると、そこは変わらないことだと思います。
その上で、退令が発付された後の送還に至るまでのプロセスのところの問題を一つ御質問いただいているのかなというふうに受け止めておりますが、これも収容・送還専門部会のときにも議論をしまして、やはりきちんと理由を示すことですね、ということ。そして、先ほど来、難調官、難民申請のところだけに研修をとかという、特別のスキルをという話が出たんですけれども、最終のその場面のところでやっぱりノン・ルフールマン原則をきっちりと収容に関わる職員の皆様も知っていただくというようなこと。そして、それを踏まえた上で、その本人にもきちんと説明をするという手続をしっかり取っていただきたいというようなことを部会でも述べたように記憶しておりますが、そうしたプロセスも一つきちっと確保していくことが大切ではないかと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/86
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087・杉久武
○委員長(杉久武君) お時間ですので、まとめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/87
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088・仁比聡平
○仁比聡平君 ありがとうございました。
現実にこの日本社会で生きている皆さんを国家にとって好ましくないといって一くくりにするようなことは、私はあってはならないというふうに思います。御意見を受け止めて、徹底して審議を尽くしていくべきだと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/88
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089・杉久武
○委員長(杉久武君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115206X01620230523/89
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