1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和五年四月二十六日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十八号
令和五年四月二十六日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(「国家安全
保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力
整備計画」に関する報告について)
第二 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区
域法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
第三 地方自治法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
第四 私立学校法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
第五 合法伐採木材等の流通及び利用の促進に
関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/0
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001・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
日程第一 国務大臣の報告に関する件(「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」に関する報告について)
内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。岸田文雄内閣総理大臣。
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/1
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002・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 政府は、昨年十二月十六日、国家安全保障会議及び閣議において、国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画を決定いたしました。以下、これらについて御報告申し上げます。
国家安全保障戦略は、国際秩序が重大な挑戦にさらされ、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、約九年ぶりに策定されたものです。
本戦略は、外交、防衛のみならず、経済、技術等を含む多岐にわたる分野の安全保障上の問題に対し、総合的な国力を最大限活用して、我が国の平和と安全を含む国益を確保するための安全保障に関する最上位の政策文書です。
本戦略では、我が国の国家安全保障上の目標として、主権と独立の維持、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、国際社会が共存共栄できる環境の実現等を掲げております。
まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。我が国は、長年にわたり、国際社会の平和と安定、繁栄のための外交活動や国際協力を行ってきました。その伝統と経験に基づき、大幅に強化される外交の実施体制の下、今後も、多くの国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集める外交活動や他国との共存共栄のための国際協力を展開します。
同時に、こうした外交を展開するためには、裏付けとなる防衛力が必要です。戦略的なアプローチとして、自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下での外交、反撃能力の保有を含む防衛力の抜本的強化等の方針を示しております。
その上で、我が国を全方位でシームレスに守るための取組の強化等のため、宇宙、サイバー等の新たな領域への対応能力の向上、海上保安能力の強化、経済安全保障政策の促進等、政府横断的な政策を進めることとしております。
必要とされる防衛力の内容を積み上げた上で、同盟国、同志国等との連携を踏まえ、国際比較のための指標も考慮し、我が国自身の判断として、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が現在の国内総生産の二%に達するよう、所要の措置を講ずることとしております。
本戦略に基づく戦略的な指針と施策は、戦後の安全保障政策を実践面から大きく転換するものです。政府として、本戦略に基づき、安全保障に資する取組を着実に進めてまいります。
次に、国家防衛戦略は、国家安全保障戦略の下、特に防衛について、目標を設定し、その達成のためのアプローチ等を包括的に示すものです。
防衛目標として、万が一、我が国への侵攻が生起した場合、我が国が主たる責任を持って対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止、排除するといった三つの目標を掲げております。そのためのアプローチとして、防衛力の抜本的強化を中核に、国力を統合した我が国自身の防衛体制を強化するとともに、日米同盟による抑止力と対処力や、同志国等との連携を強化する方針を掲げております。
特に、防衛力については、相手の能力と新しい戦い方に着目して、抜本的に強化することとしております。そのため、可動率の向上や弾薬、燃料の確保、主要な防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、将来の中核となる能力を強化する方針の下、七つの重視分野を示し、反撃能力の意義や必要性等に関する政府の見解も示しております。
最後に、防衛力整備計画は、国家防衛戦略の下、我が国として保有すべき防衛力の水準を示し、その水準を達成するための計画であり、おおむね十年後の自衛隊の体制や、今後五年間の経費の総額、主要装備品の整備数量を記しています。
例えば、スタンドオフ防衛能力としての一二式地対艦誘導弾能力向上型等の開発やトマホーク等のミサイルの着実な導入、弾薬等の早期整備、部品不足による装備品の非可動の解消や可動数の最大化等の取組を示しております。
これらに必要な事業を積み上げ、二〇二三年度から五年間の防衛力整備計画における所要経費を四十三兆円程度としております。
また、二〇二七年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び二〇二三年度から二〇二七年度までの本計画を賄う財源の確保については、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の創設、税制措置等、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずることとしております。
これらの文書で示された方針は、憲法、国際法、国内法の範囲内で実施されるものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての歩みをいささかも変えるものではありません。
これらの文書の下で、国民の生命や暮らしを守り抜くという政府の最も重大な責務を果たしてまいります。
皆様の御理解と御協力を賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/2
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003・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。堀井巌君。
〔堀井巌君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/3
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004・堀井巌
○堀井巌君 自由民主党の堀井巌です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました国家安全保障戦略等の新たな三文書について、岸田総理に質問いたします。
陸上自衛隊ヘリコプターの事故により、命を失われた隊員の方々の御冥福をお祈りいたします。行方不明の隊員の皆様が一日も早く御家族の元に帰れますよう祈っております。
スーダン情勢が悪化する中、邦人退避に尽力された全ての関係者の方々に心から敬意を表します。政府においては、国際社会と連携し、スーダン情勢が一日も早く鎮静化するよう、引き続き尽力されることを期待いたします。
今、我が国は、かつてない厳しい安全保障環境に直面しています。核を保有し、我が国の考える民主主義とは実質的に異なる体制にある国に囲まれています。また、ウクライナ侵略により、国際法に反する、力による一方的な現状変更が現実になりました。この国難の中、どう我が国の平和と安全を守っていくのかが問われています。
同時に、日本が、東アジア、さらには東南アジアの平和と繁栄に果たす役割への大きな期待もあります。東南アジアの方々と意見を交わすと、どの国からも、日本の積極的平和主義の考え方に理解を示し、地域の平和と繁栄への日本の貢献を期待する声がありました。
そこで、新たな三文書は、これらの課題に正面から向き合い、他国任せではなく、国と国民を自国で守るという決意と覚悟を国の内外に示したものになったと考えますが、御所見を伺います。
また、どのように外交力と防衛力を車の両輪として駆使しながら、我が国、さらに東アジアや東南アジアの平和と繁栄を構築していく考えでしょうか。お伺いいたします。
次に、反撃能力について伺います。
一方的な侵略を阻止するためには、安全保障を取り巻く環境や技術などの変化に対応して、ミサイル迎撃システムのみならず、反撃能力の保有を含む抜本的強化が不可欠です。
反撃能力については、これまでの国会答弁等を見ても、法理的には自衛の範囲にあり可能と解釈され、専守防衛の考え方と整合性が取れていると考えますが、御所見をお伺いいたします。
次に、防衛装備品の移転について伺います。
国際法違反の脅威にさらされている同志国から、装備品移転要請の声が寄せられています。その要請により柔軟に応じることで、我が国も同志国の平和と安全の維持に更に貢献できます。同時に、我が国や周辺地域にとって望ましい安全保障環境も創出できると考えます。
そこで、現下の安全保障環境や防衛生産・技術基盤の状況を踏まえて、同志国への防衛装備品の更なる移転についてどのように考えるのか、お伺いをいたします。
防衛力強化の前提として、外交力も不断の強化が不可欠であります。
今や中国は在外公館の数で米国を抜き、アフリカや太平洋島嶼国などで外交拠点を増やしています。一方で、日本は在外公館の数も人員数も劣っており、日本のODA予算はピーク時からほぼ半分と、危惧すべき状況です。
そこで、昨年十一月、自由民主党外交部会を中心に、外交力の抜本的な強化に向けた決議を行いました。
まずは、防衛予算の拡充と歩調を合わせた外務省予算の拡充が不可欠です。さらに、外務省定員を主要国並みに増強し、今後十年間で八千名体制とすることが必要です。あわせて、在外公館の機能強化と二百五十公館を実現することが大切です。
国家安全保障戦略をしっかりと遂行していくためにも、このような外交力の抜本的な強化が必要と考えますが、その決意をお伺いいたします。
最後に申し上げます。
中国は、米ドルの通貨覇権に対抗し、金の保有量を積み増しています。台湾海峡有事になると世界経済は大打撃、為替も混乱します。日本も原油の九割以上が台湾周辺を通ることから大きな影響を受け、円やドル資産の不安定化も危惧されます。外交力や防衛力、そして経済力や通貨の安定、財政力など、総合的な国力の強化が何よりも重要です。
岸田総理におかれては、国家のリーダーとして、防衛力、そして国力の総合的、戦略的な強化に向けてリーダーシップを引き続き発揮していただくことを御期待申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/4
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005・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 堀井巌議員からの御質問にお答えいたします。
三文書に込めた決意についてお尋ねがありました。
三文書は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、総合的な国力を最大限活用し、我が国の平和と安全を含む国益を確保するために策定されました。
その中で、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要です。自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下での外交や、防衛力の抜本的強化等の方針を示しております。
こうした施策を通じて、我が国の主権と独立の維持はもちろん、地域の平和と繁栄にも積極的に貢献していく考えです。
反撃能力と専守防衛についてお尋ねがありました。
専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった我が国の防衛の基本的な方針です。
反撃能力も、弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合に、そのような攻撃を防ぐために、他に手段がなく、やむを得ない必要最小限の防衛の措置として運用されるものであることから、専守防衛の範囲内であり、整合性が取れていると考えております。
防衛装備品移転についてお尋ねがありました。
国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段となります。
こうした観点から、与党における検討も踏まえつつ、今後議論を進めてまいります。
外交力強化についてお尋ねがありました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、山積する外交課題にしっかりと対応していけるよう、外交力強化に引き続き取り組んでいく必要があります。
昨年十二月に発出した国家安全保障戦略においても、我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素の第一として外交力を掲げたところです。我が国として主導的かつ積極的な外交を展開すべく、御指摘のあった諸点も念頭に置きつつ、ODAの実施を含め、人的体制、財政基盤、在外公館の整備等を進めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/5
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006・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 宮口治子君。
〔宮口治子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/6
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007・宮口治子
○宮口治子君 立憲民主・社民の宮口治子です。会派を代表して質問いたします。
まずは冒頭、総理、覚えていらっしゃいますか。忘れているとは言わせません。ちょうど二年前の四月二十五日、大規模買収事件による参院選広島選挙区の再選挙によって私は議員になり、今この場にいます。今回だけは自民党を勝たしちゃいけん、そういう声の後押しを受け当選いたしました。
選挙の翌月、総理は、当時自民党幹事長だった二階氏に、一億五千万円について国民に明確な説明をするように申入れをされました。党員の気持ちに応え説明責任を果たすことは大事だ、私が党に指示を出せる立場になったら、この姿勢は大事にしたいとも述べられています。いつ説明を行うのでしょうか。もう終わった話、今頃何を蒸し返しているんだというわけにはいきません。二年もたちました。検討はもう結構でございます。広島県の皆様も説明を待っています。党に指示を出される立場に立たれた今、どうぞこの場でしっかり説明責任を果たしてください。丁寧な答弁をお願い申し上げます。
さらに、総理にお聞きします。
和歌山で選挙応援中の総理に対し爆発物が投げ込まれた事件の最中、警備の責任者の一人でもある国家公安委員長が、一報を受けたにもかかわらず、楽しみにしていたうな丼を最後まで食べたと発言したとのことです。広島サミットを前に、こうした事件に対する危機感も緊張感も感じない人物に要人警護、警備の責任を担わせてよいのでしょうか。うな丼大臣は即刻更迭してください。
それでは、本題である安保関連三文書の総理報告について質問いたします。
国家安全保障戦略では、我が国の安全保障上の目標を達成するために用いられる総合的な国力の第一の要素として外交力が掲げられており、大幅に強化される外交の実施体制の下、今後も、多くの国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集める外交活動や他国との共存共栄のための国際協力を展開すると書かれております。
歴史を振り返っても、戦争は常に外交の失敗であり、そもそも安全保障環境の悪化を言うのであれば、その悪化はまさに外交の失敗が招いている事態であることを真剣かつ深刻に受け止めるべきです。
岸田総理は、第二次安倍政権において、四年八か月という戦後二番目に長い期間、外相を務めました。その間の岸田外交が今日の安全保障環境を回避するために、その緊張を緩和するために具体的にどのような二国間、多国間、そして国連外交を主導してきたのか、その岸田外交の実績と真摯なる反省をお示しください。
もう一つの歴史の教訓は、外交の失敗を軍事力の増強でごまかそうとすることです。それがかえって緊張の悪化と戦争の勃発を招いてきたことも歴史が私たちに教えてくれています。
第一の要素として外交力を掲げるのであれば、防衛力ではなく、積極的かつ思い切った外交力の強化にこそ我が国の持てる資源を投入すべきです。しかし、安保三文書には、肝腎の具体的な外交戦略の記述がほとんどありません。代わりに飛び出してきたのは、外交には裏付けとなる防衛力が必要であるという岸田総理の主張です。
そこで、岸田総理にお伺いしますが、国家安全保障戦略で明記されている外交の重要性とその具体的な方策及びその実施体制の大幅な強化の具体的内容についてお示しいただくとともに、それらの外交政策は防衛力の裏付けとして実施するものなのか、見解をお尋ねします。
岸田総理は、反撃能力保有の目的について、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力であり、これにより武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると答弁されています。
しかし、日本に武力攻撃を行う国が現れたときには、日米安保条約に基づき米国が日本を守ることになります。米国は世界でも類を見ない強大な戦力を保有しており、これほどの抑止力はないはずです。その米国の抑止力と、岸田総理が言うかつてなく強固な日米同盟があるにもかかわらず、なぜ日本が反撃能力を保有する必要があるのでしょうか。米国の集団的自衛権の発動、敵基地攻撃能力、あるいは報復攻撃の実行について疑問があるということなのでしょうか。そして、米国による日本への防衛義務がある中で日本が反撃能力を保有することは、武力の行使の三要件にある、ほかに適当な手段がないとの要件を満たすのでしょうか。御説明を願います。
また、三要件の必要最小限度について、政府はこれまで他国を直接攻撃するような攻撃力を行使するようなことは必要最小限度を逸脱するとの立場を取ってきたはずではなかったでしょうか。総理の明確な説明を求めます。
日米の基本的な役割分担について、岸田総理は、二〇一五年の日米ガイドライン上、日本は日本の防衛を主体的に実施する、米国は自衛隊を支援し補完するとともに拡大抑止を提供するとされており、こうした基本的な役割分担は変更しないと答弁されています。他方、ミサイル攻撃への対処については、これまで米国に打撃力を委ねてきました。
今般の反撃能力の保有は、日本が他国領域への打撃力を持つことにほかなりませんが、こうした役割を担うことに方針転換された理由をお示しください。
政府は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合とは、攻撃のおそれがあるにとどまるときではなく、また我が国が現実に被害を受けたときでもなく、他国が我が国に対して武力攻撃に着手したときと解されていると説明されています。この点、岸田総理は、我が国の武力行使は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用されるわけであり、その範囲内で反撃能力についても運用されると述べておられます。しかしながら、幾ら着手段階での攻撃が正当であったと我が国が主張しても、相手国がミサイル発射の意図はなかったと言い張り、国際社会がそれを信用すれば、我が国は国際法違反の先制攻撃を行ったとみなされることとなります。
政府は、国際社会から疑義が呈されない形で着手段階での反撃能力を行使できるとお考えなのか、それは具体的にどのような判断基準に基づくものなのか、岸田総理の見解をお聞かせください。
政府は、反撃能力を保有する理由について、周辺国のミサイル技術の向上に対応する必要性を説明しています。他方、ミサイル攻撃以外にも、戦闘機、爆撃機、無人機などの基地等に反撃能力を行使し得るかについて、武力の行使の三要件に合致した場合には行使できることを否定していません。その上で、岸田総理は、存立危機事態、つまり集団的自衛権を行使する際にも、武力の行使の三要件を満たしていれば反撃能力を行使し得ると答弁しています。だとすれば、米国に対して相手国の戦闘機等から攻撃があった場合、三要件を満たしていると政府が判断すれば、日本が直接の攻撃を受けていないにもかかわらず、相手国の基地等に対してミサイルを撃ち込むことがあり得ることになります。
当初の反撃能力の保有理由から全く懸け離れた武力行使を行い得る可能性を岸田総理は否定しないのでしょうか。そうであれば、それは完全に憲法違反の武力行使になりませんか。政府の見解をお聞かせください。
岸田総理は、NATOを始めとする国々が経済力に応じた相応の国防費を支出する姿勢を示している中で、我が国としても、防衛力強化を図る上で、GDP比で見ることは指標として一定の意味があると述べておられます。その上で、我が国の防衛力強化に必要な経費を積み上げた結果として、GDP比二%に達するよう所要の措置を講ずることとなったと述べられております。積み上げた結果、たまたま防衛費が二%に達したという、そんな偶然があり得るのでしょうか。政府は、防衛費を初めからGDP比二%にする目的で積み上げを行ったのではありませんか。総理の見解をお聞かせください。
政府は、防衛力整備計画において、二〇二三年度から二〇二七年度までの防衛関係費の総額を四十三兆円程度とした上で、自衛隊施設等の設備の更なる加速化を事業の進捗状況等を踏まえつつ機動的、弾力的に行うことで一兆六千億円程度、一般会計の決算剰余金が想定よりも増加した場合にこれを活用することで九千億円程度を捻出し、結果的に四十兆五千億円程度に抑えると記載されています。この自衛隊施設等の整備の更なる加速化を事業の進捗状況等を踏まえつつ機動的、弾力的に行うこととはどのようなことを想定しているのでしょうか。具体的にお答えください。
また、そのことによって、一兆六千億円もの巨額の費用を捻出することが本当に可能なのでしょうか。
さらには、一般会計の決算剰余金が想定よりも増加した場合を事前に織り込んで、今後五年間の防衛計画費の目標を立てることが妥当なのでしょうか。
同計画には、決算剰余金が増加しない場合にあっては、プロジェクトの見直しやコスト管理等によって実質的な財源確保を図るとも記載されていますが、九千億円といえば、例えば本年度の外務省予算が七千五百六十億円程度ですが、これをはるかに上回る額です。このような額が本当に確保できるのでしょうか。これらの見通しを立てるに至った理由と、その妥当性、そして、それが確保できるのだという根拠について、政府の説明を求めます。
防衛力整備計画には、二〇二三年度から二〇二七年度の防衛関係費の総額四十三兆円の後に必要となる経費についての記載もあります。具体的には、二〇二七年度以降の財源確保については、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金、税制措置等、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずるとの記載です。今般の五年間の防衛関係費では、大手町プレイスの売却収入や新型コロナウイルス感染症基金の国庫返納などで一部経費を賄うとされていますが、五年後にこうした資金が利用できるとは限りません。そうした場合、五年後も現計画の防衛費の水準を維持しようとすれば、どこかからか財源を捻出しなければなりません。そうすると、更なる増税議論が浮上するおそれもあるのではないでしょうか。
政府が今般の防衛力整備計画に計画終了後の財源の確保を記載した理由について、また計画終了後の防衛費の在り方、財源確保の見通しと更なる増税の可能性について説明を求めます。
以上、安保三文書について説明をいたしました。
私たちは、今回の安保三文書には断固反対ですし、このような戦後日本の平和を守ってきた憲法の平和主義とその支えとなっている専守防衛を踏みにじるような方針転換を、国会の審議も国民的な議論や理解もなしに、閣議決定のみでこっそりと強行してしまうような、国民を無視するような行為は、決して容認するわけにはいきません。
広島県では、G7サミットに向けて急ピッチで環境整備が行われています。私もG7の成功を願っています。先日、松野官房長官は会見で、G7広島サミットで核兵器なき世界の実現に向けて議論を深めたいという考えを示しましたが、広島市教育委員会は、平和学習ノートの改訂に当たり、「はだしのゲン」に関する記述や第五福竜丸に関する記述をテキストから削除、広島市はホームページから劣化ウラン弾に関する記述を一時削除するなど、看過できない様々な問題が噴出しています。核兵器なき世界の実現の方向と相反していませんか。平和主義を踏みにじるようなことが広島でも行われていませんか。広島県選出、私同様、幼い頃から平和教育を学ばれたであろう岸田総理、これらの問題についてどうお考えでしょうか。
立憲民主党は、現行憲法の平和主義と国際協調主義を尊重し、これからも引き続き、専守防衛に徹しつつ、平和外交の努力によって緊張関係を緩和し、アジアと世界の平和をつくり、育てる努力に全力を傾注することをお約束し、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/7
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008・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮口治子議員の御質問にお答えいたします。
広島における二〇一九年の参議院議員通常選挙をめぐる事件についてお尋ねがありました。
お尋ねの件については、一昨年九月、当時の執行部において、河井夫妻側が作成した収支報告書について、党の公認会計士、税理士が、党の内規に照らして監査をし、そして領収書等の必要書類を添付した上で、法令に基づき広島県選挙管理委員会及び総務省に提出が済んだ等の説明が行われたと承知をしております。説明は行われたと認識をしております。
谷国家公安委員会委員長の発言についてお尋ねがありました。
谷大臣にあっては、出張先において和歌山での爆発物投擲事件の発生について報告を受け、必要な指示、情報収集を行いながら用務を継続したものと聞いております。引き続き職務に当たってもらいたいと考えております。
私の外務大臣時代の実績と反省点、そして外交と防衛力の関係についてお尋ねがありました。
四年八か月にわたる私の外務大臣就任期間中、外交の三本柱である日米同盟の強化、近隣諸国との関係推進、そして経済外交の推進と併せて、軍縮・不拡散等のグローバルな諸課題の解決に取り組み、二国間及び国連を含む多国間の外交を主導してきました。そして、今日、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化することの重要性、これが一層高まっていると認識をしております。
こうした中、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。力による一方的な現状変更や核兵器による威嚇や使用は断固として許さないとの観点から、首脳レベルを始め多層的、多面的な外交を各国、各レベルとの間でしっかりと展開をしてまいります。そのためにも、人的体制、在外公館の整備を含めた外交力の強化に努めてまいります。
防衛力の強化は、こうした外交を実現する上での裏付けとなるものです。外交力、防衛力を含む総合的な国力を最大限活用しつつ、力強い外交を展開し、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出してまいります。
反撃能力についてお尋ねがありました。
近年、我が国周辺で質、量共にミサイル戦力が著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。こうした状況の変化により、武力の行使の三要件の、他に手段がないを満たす場合もあり得ると考えています。
このため、政府としては、米国が日米安保条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いていますが、これに加えて、我が国として反撃能力を保有することで、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。
なお、従来から繰り返し申し上げているとおり、一九五六年の政府見解で述べたような措置を行うことは法理上可能であり、そうである以上、そのための必要最小限度の能力を保持することも法理上許されるものと考えてきております。
日米の役割分担についてお尋ねがありました。
政府としては、米国が日米安保条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いていますが、先ほど申し上げた状況の変化を踏まえ、我が国としても反撃能力を保有し、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させることといたしました。他方、これは、あらゆる種類の能力を有する米国の打撃力とは異なるものであり、また、日米の基本的な役割分担にも変更はありません。
武力攻撃の着手と存立危機事態における反撃能力の行使についてお尋ねがありました。
どの時点で武力攻撃の着手があったと見るべきかについては、その時点の国際情勢、攻撃国の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであり、個別具体的な状況に即して判断すべきものであると考えてきておりますが、先制攻撃はいずれにせよ許されない、これは言うまでもないことであります。
また、存立危機事態は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したからといって無条件で認定されるものではなく、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に認定され、自衛の措置として武力を行使することが許容されます。
その上で、事態認定後の反撃能力の運用については、実際に発生した状況に即して、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置としていかなる措置をとるかという観点から、個別具体的に判断することとなります。
いずれにせよ、反撃能力は、あくまで国民の命と暮らしを守り抜くために、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用されるものであり、憲法違反の武力行使を行わないことは言うまでもありません。
防衛費の規模についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化に当たっては、その内容の積み上げとあわせて、これらを補完する取組として、研究開発、公共インフラ整備を始めとする総合的な防衛体制を強化するための経費等を積み上げました。
その積み上げの結果として、二〇二七年度において、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が現在のGDPの二%に達するよう所要の措置を講ずることとしたものであり、GDP比二%にする目的で積み上げたとの指摘は当たりません。
防衛費を確保するための措置についてお尋ねがありました。
御指摘の一・六兆円程度については、例えば隊舎、庁舎等の整備を進めるに当たり、事業の進捗に応じ、整備を早期化する必要がある場合に対応することを想定しています。このため、一・六兆円については、その財源の在り方も含め、その時々の予算編成の過程で具体的な予算を検討してまいります。
また、御指摘の〇・九兆円程度については、財源確保の一つの方法として想定しているものですが、仮に決算剰余金が増加しない場合にも、防衛力整備の一層の効率化、合理化により実質的な財源確保を図ることとしており、必要な防衛力を整備するため、妥当なものです。
なお、この規模は、前中期防期間中に装備調達等の最適化による縮減額約一・七兆円を捻出したことを踏まえますと、可能であると考えております。
防衛費の財源についてお尋ねがありました。
抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していかねばならず、この防衛力を安定的に支えるためには、令和九年度以降もしっかりとした財源が必要です。こうした点について、防衛力整備計画にも記載をしたところです。
その財源確保に当たっては、国民の御負担をできるだけ抑えるため、あらゆる工夫を検討した結果、歳出改革、決算剰余金の活用、そして、様々な取組により確保した税外収入等を令和十年度以降も含めて防衛力整備に計画的、安定的に充てるための防衛力強化資金の創設、これらの取組により、必要な財源の約四分の三を確保することといたしました。
それでも足りない四分の一については、将来の世代に先送りすることなく、令和九年度に向けて、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での協力をお願いしたいと考えております。
政府としては、こうした方針に沿って、あらゆる行財政改革の徹底などを通じて必要な財源の捻出に最大限取り組むこととしており、更なる増税は考えておりません。
そして、広島市教育委員会及び広島市の対応と、核兵器のない世界に向けた取組の関係についてお尋ねがありました。
広島市等の対応について政府としてコメントすることは控えますが、例えば平和学習教材の改訂については、広島市教育委員会において、その責任の下、児童生徒がより被爆の実相を理解し、その事実を基に考えられるような内容とするために行われたと説明されていると承知をしております。
政府としては、核兵器のない世界の実現に向けて、ヒロシマ・アクション・プランを始め、これまでの取組の上に立って、引き続き、現実的かつ実践的な取組を進めてまいります。
来るG7広島サミットでは、広島と長崎に原爆が投下されてから七十七年間、核兵器が使用されていない歴史をないがしろにすることは決して許されないとのメッセージを力強く世界に発信していきたいと考えております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/8
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009・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 石川博崇君。
〔石川博崇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/9
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010・石川博崇
○石川博崇君 公明党の石川博崇です。
ただいま議題となりました国家安全保障戦略等三文書について、会派を代表して、岸田総理及び浜田防衛大臣に質問いたします。
冒頭、情勢が悪化しているスーダンで、帰国を、出国を希望する在留邦人の大宗が、現地に派遣された自衛隊輸送機や関係諸国との連携により無事に国外に退避できたことを高く評価するとともに、関係者の御尽力に感謝を申し上げます。
さて、ロシアによるウクライナ侵略が象徴するように、今、国際社会は戦後最大の試練のときを迎え、自由で開かれた安定的な国際秩序は重大な挑戦にさらされています。我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展し、力による一方的な現状変更の圧力がますます高まっています。さらに、サイバー攻撃や偽情報の拡散などが日常的に生起する等、有事と平時、軍事と非軍事の境目がますます曖昧になっています。こうした中で、外交力、防衛力、経済力など総合的な国力を活用し、我が国の平和と安定、国民の生命、財産を守り抜くことは、与野党を超えた国政の最重要課題です。
我が国は、今後とも、自由、民主主義、法の支配など普遍的な価値や国際秩序を断じて守り抜く旗幟を鮮明に掲げ続けるとともに、日本の経済的繁栄を主体的に構築しつつ、各国との共存共栄を図る環境を積極的に創出することで、今後とも国際社会の信頼と尊敬を勝ち得ていかなければなりません。
こうした問題意識を踏まえ、今回の安保三文書改定の意義について、総理の御所見を伺います。
現下の安全保障環境を踏まえれば、国民の生命、財産を守るために必要な防衛力の抜本的強化は重要かつ必要な措置です。
一方で、我が国の厳しい財政状況の下、今回防衛力整備計画で示された五年間で四十三兆円程度との防衛費について国民の理解を得るためには、決して額ありきではなく、真に必要な事業のみを積み上げた内容であることを政府が丁寧に説明する必要があります。また、更なる効率化、合理化の徹底によるコスト抑制も不可欠であり、政府に更なる努力を求めますが、総理の御所見を伺います。
近年、北朝鮮など我が国周辺のミサイル戦力は質、量共に著しく増強が図られ、長射程化、予測困難な奇襲発射、多数弾を同時発射する飽和攻撃、さらには極超音速や変則軌道など、ミサイル関連技術が急速に進化、発展を遂げており、これまでのBMD対処による迎撃のみでは対応が難しくなっています。この現実に的確に対応し、国民の生命、財産を守り抜くためには、飛来するミサイルをミサイル防衛網で防ぎつつも、相手からの更なるミサイル攻撃を抑止する反撃能力の保有は必要と考えます。しかし、その必要性について国民の理解を得るためには丁寧な説明が必要と考えますが、総理の答弁を求めます。
反撃能力は相手にミサイルを撃たせない抑止のための措置でありますが、仮に万やむを得ない場合の自衛の措置として武力行使の三要件に基づきこれを行使する場合であっても、憲法、国際法、国内法を遵守し、専守防衛の範囲内で運用されなければなりません。加えて、反撃能力の行使に当たっては、まず武力攻撃事態等の事態認定を行った上で、自衛隊に防衛出動を下令するといった手続が求められます。これらは国会承認事項であり、政府には、事態の経緯、事態認定及び武力行使が必要と認められる理由などについて国民への説明が求められます。
こうした厳正な手続によって反撃能力の適正な運用が担保されるものと考えますが、防衛大臣の認識を伺います。
次に、宇宙、サイバー領域について伺います。
三文書では、宇宙分野での米国ほかの同盟国、同志国との連携強化などが明記され、本年一月の日米2プラス2においては、宇宙空間における攻撃が米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約第五条の発動につながり得る旨が確認されました。これは、宇宙空間を利用した情報収集、通信、測位等にとって極めて重要な意味を持ちます。
また、サイバーについては、対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させていく旨が国家安全保障戦略に明記されました。今後、能動的サイバー防御の導入、組織や法制度を含む体制の整備等の検討が必要となります。これらの課題に今後どう取り組むのか、総理の御所見を求めます。
我が国は、多くの島から成るという地理的特性を有しています。有事において島々から住民を安全に、安全な場所に避難させることは容易ではなく、国民保護に関して、平素から、国、地方自治体、自衛隊、海保、警察、消防など関係機関が連携し、必要な検討、訓練を進めておくことが重要です。
国家安全保障戦略には、国と地方公共団体などが協力して国民保護の体制強化を行うことが明記されました。今後、国民保護に係る共同訓練の実施回数を大幅に増やすことや、特に南西方面において重点的に訓練を実施すべきと考えますが、総理の御所見を求めます。
現状では、防衛装備品の可動率、弾薬、燃料など有事に必要な継戦能力が十分に確保されているとは言えず、さらに、自衛隊施設の約四割は建築基準法改正前に建てられ、耐震基準を満たしていません。こうした状況の改善こそ最優先であり、着実に進める必要があります。
また、我が国の防衛を全うするためには、自衛隊員一人一人がその能力を十分に発揮できる環境整備が欠かせません。国家安全保障戦略においては、自衛隊員を防衛力の中核と位置付け、人的基盤を強化することが明記されました。女性自衛官の更なる活躍や、OB、OG隊員の活用を含め、人的基盤の今後の強化策についてどう取り組むのか、防衛大臣の答弁を求めます。
今回の三文書では、防衛産業を防衛力そのものと位置付けました。防衛産業なくして我が国の防衛力はその能力を十分に発揮できず、低い収益性により事業撤退が相次ぐ我が国防衛産業を取り巻く厳しい環境を改善していくことは極めて重要です。
一方で、今般、防衛装備移転三原則の運用指針の見直しも明記されましたが、防衛装備品の海外移転を防衛産業への支援という文脈で議論すべきではなく、あくまでも装備品の海外移転がいかに我が国及び国際社会の平和と安全に資するのかという観点や、平和国家としての我が国の在り方を十分に検討した上で、国民の理解が得られるよう、丁寧に議論していくことが重要と考えます。総理の見解を伺います。
最後に、我が国の平和を守るためには、備えとしての防衛力の強化とともに、車の両輪としての平和外交を積極的に推し進めていくことが何よりも重要です。
国家安全保障戦略においては、公明党の強い主張を踏まえて、我が国の安全保障の第一の柱として外交力が掲げられました。戦後の国際秩序が揺らぐ中で、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出すること、首脳外交を含めた多層的な外交活動を展開し、自由で開かれた国際秩序の強化に積極的に取り組むことが重要です。また、特に東アジア地域の平和と安定には、中国との建設的かつ安定的な関係の構築は不可欠です。これらについて、本年G7議長を務める総理の御決意を伺います。
最後に、今般の三文書改定を踏まえ、我が国と国際社会の平和と安全、国民の生命、財産を守り抜くために、公明党は今後とも全力を尽くすことをお誓いし、私の質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/10
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011・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 石川博崇議員からの御質問にお答えいたします。
三文書改定の意義等についてお尋ねがありました。
三文書は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、総合的な国力を最大限活用し、我が国の平和と安全を含む国益を確保するために策定されました。その中で、まず優先されるべきは積極的な外交の展開です。同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要です。自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下での外交や、防衛力の抜本的強化等の方針を示しております。
こうした施策を通じて、我が国の主権と独立の維持はもちろん、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、我が国が経済成長できる国際環境の主体的確保、国際社会が共存共栄できる環境の実現等に取り組んでまいります。
防衛費の積み上げと効率化、合理化の取組についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化の検討に際しては、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行い、可動率向上や弾薬、燃料の確保、スタンドオフ防衛能力の強化など、必要な防衛力の内容を積み上げ、防衛費の規模を導き出しました。
こうした取組を進めるに当たり、徹底したコストの管理、抑制や装備調達等の最適化等を通じ、防衛力整備の一層の効率化、合理化、これを徹底してまいります。
反撃能力についてお尋ねがありました。
反撃能力の保有を決定した背景には、近年、我が国周辺で質、量共にミサイル戦力を著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあるという現実があります。
こうした状況において、反撃能力の保有により、日米同盟の抑止力、対処力を一層向上させ、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。反撃能力の必要性について、引き続き、可能な限り丁寧な説明に努めてまいります。
宇宙・サイバー領域における今後の取組についてお尋ねがありました。
宇宙については、安全保障の分野での対応能力を強化することとしており、宇宙領域の把握のための体制の強化や、米国やフランス等との対話、連携の強化を進めています。また、国際的なルール形成においても、引き続き関係各国との連携を図ってまいります。
サイバーについては、我が国のサイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させ、国や重要インフラ等の安全を確保することが喫緊の課題です。
政府としては、対処調整、支援の強化を始めとする能動的サイバー防御に必要な措置や、総合調整の司令塔となる新たな組織の立ち上げ、これらの実現のための法制度の整備や運用の強化についてスピード感を持って具体化に向けた議論を進めてまいります。
国民保護に係る検討、訓練についてお尋ねがありました。
国民保護の体制強化に向け、昨年度は、民間事業者や住民の皆様に必要に応じて参画いただく訓練を全国で四十七回行ったところ、今年度は、こうした国民保護に係る共同訓練を六十回以上行う予定としております。
また、南西地域の住民避難に関しては、先月、国、沖縄県、先島諸島の五市町村が協力して、武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を初めて実施したところ、引き続き、検討、訓練を継続していくこととしております。
今後とも、こうした訓練等を積み重ね、練度の向上や課題の改善を図り、国民保護の実効性の向上に努めてまいります。
防衛産業と防衛装備移転についてお尋ねがありました。
国内防衛産業は、言わば防衛力そのものであり、基盤強化が急務です。調達の見直しにより適正に利益率を算定するほか、国会において審議いただいている防衛生産基盤強化法案による措置等も組み合わせ、力強く持続可能な防衛産業の構築を進めてまいります。
また、防衛装備移転については、国家安全保障戦略にも記載しているとおり、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法違反の侵略を受けている国への支援等のための重要な政策的手段です。
こうした観点から、与党における検討も踏まえ、国民の皆様の御理解を得られるよう今後議論を進めてまいります。
平和外交推進と対中外交についてのG7議長としての取組についてお尋ねがありました。
来月に迫った広島サミットを始め、G7議長として、多層的、多面的な外交を力強く推進して、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を力強く示してまいります。また、自由で開かれたインド太平洋に関するG7の連携についても、首脳レベルでしっかりと確認をしてまいります。
また、対中外交については、昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をする建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築をしてまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣浜田靖一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/11
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012・浜田靖一
○国務大臣(浜田靖一君) 石川博崇議員にお答えを申し上げます。
初めに、反撃能力の適正な運用についてお尋ねがありました。
反撃能力は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用され、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力行使の三要件を満たして初めて行使されるものであります。
政府は、武力攻撃事態等に至ったときには、事態の経緯、事態の認定及び武力の行使が必要であると認められる理由、対処に関する全般的方針、対処処置に関する重要事項について対処基本方針として閣議決定をし、国会の承認を求めるものとしております。
この際、武力の行使の三要件の第一要件である我が国に対する武力攻撃の発生等についても判断されるほか、個別の事態の状況に応じ、反撃能力を含めた一連の武力の行使が必要である理由をしっかりと記載していくこととなります。
これにより、国会承認について御判断をいただくのに必要な情報が提示されることになり、国会の関与を得て反撃能力が適正に運用されるものと考えております。
次に、自衛隊の持続性、強靱性の強化及び人的基盤の強化策についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化に当たり、御指摘の可動率向上、弾薬、燃料の確保、施設の強靱化の加速は、現有装備品の最大限活用のための取組として今後五年間最優先課題であり、着実に推進していく考えであります。
また、人的基盤の強化についても重視しており、女性隊員が更に活躍できる環境の醸成や定年退職自衛官の再任用など各種施策を進めることにより、防衛力の中核である自衛隊員の人材確保をしっかりと行ってまいります。
防衛省としては、引き続き、防衛力の抜本的強化に向けた取組を進めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/12
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013・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 金子道仁君。
〔金子道仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/13
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014・金子道仁
○金子道仁君 日本維新の会、金子道仁です。
私は、会派を代表して、国家安全保障戦略を始めとする安保三文書について御質問します。
我が国を取り巻く国際社会は、パワーバランスの変化、地政学的競争の激化に伴い、国際秩序が重大な挑戦にさらされており、対立と協調の様相が複雑に絡み合っています。そして、この様相を放置すれば、ますます対立と分断の方向に進みかねません。こうした国際環境の中で、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値や国際法に基づく国際秩序を再び堅固なものとして回復していくために、我が国として積極的かつ具体的な行動を起こす必要があります。
先般のWBCの決勝戦後、大谷翔平選手が、日本だけじゃなくて韓国や台湾や中国も、もっともっと野球が大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかったと述べています。スポーツの世界でも、寛容、相互尊重という普遍的価値が人々に強く印象付けられた、すばらしい機会でした。一方、五月に予定されていたアンダー20サッカーワールドカップは、開催国のインドネシアがイスラエル代表の入国を拒否し、大会返上する事態になりました。残念ながら、スポーツの世界を含め様々な分野でも協調と対立が絡み合っており、普遍的価値を維持強化する努力が求められています。
岸田総理は、三月のインド訪問時のスピーチで、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くという大目標を述べられましたが、今回はその大目標の実現のため、この安保三文書はどのように位置付けられるのか、総理の認識をお示しください。
普遍的価値や国際法に基づく国際秩序の回復という目標を単なるお題目、きれい事としてではなく、実効力を持って実現するためには、外交力、防衛力、経済力を含む総合的な国力を最大限活用していく必要があり、その戦略の最上位文書として国家安全保障戦略が位置付けられています。しかし、このほかの二文書は防衛力に関するものであり、外交や経済安保に対する戦略文書がなくバランスを欠いているのではないでしょうか。総理の認識をお聞かせください。
我が党は、将来世代を二度と戦争の惨禍に遭わせないための強固な抑止力を保持することを目的とし、他国の侵略を未然に防ぐに足る軍事、非軍事の防衛能力と、平和的な国際秩序を形成、維持する外交能力の総合力を積極的防衛能力と定義し、その双方を両輪として強化することを訴えています。
悪化する安全保障環境の中、平和憲法に基づき、国民の生命と財産を守るという国の責務を果たすために、自衛のための必要最小限度の実力を持つことは重要です。また、自衛のための必要最小限度の実力は、その時々の国際情勢や周辺国の軍備状況の流動的な要因に応じて変化せざるを得ないと考えます。今回の安保三文書に基づく防衛力の抜本的な強化は、我が国の領土保全、また国民保護という観点で必要かつ十分なものでしょうか。総理の認識をお伺いします。
防衛費の大幅増額に対して、安易な増税や安易な国債発行で対処することは許されません。安易な増税や国債発行は、安易な防衛費の増大をもたらす危険性があるからです。まずは徹底した歳出削減を行い、必要な防衛費を捻出していく努力を行うべきではありませんか。今から増税を念頭に置くのは歳出削減への諦めではないですか。歳出削減への覚悟が全く足りないと言わざる得ません。総理の見解をお伺いします。
国民の生命と財産を守るという観点からは、国民保護体制の強化が重要です。最悪のケースも想定し、迅速な住民避難の実施、避難施設の確保など訓練と準備が不可欠ですが、現状は全く不十分です。今後の訓練計画、国民保護体制の強化に対する総理の決意をお聞かせください。
次に、外交力の抜本的強化について質問と提言をいたします。
外交力と防衛力は我が国の安全保障の両輪です。しかし、今回の安保三文書を経て、防衛力の抜本的強化については施策、財源共に具体的に検討されている一方で、外交については従来の方針の確認にとどまり、抜本的な強化とはとても言えません。
外交力の抜本的強化として、四つの提案をさせていただきます。
まず、首脳外交、外相外交の大幅な強化です。我が国は、今年、G7議長国として広島サミットを主催、また安保理非常任理事国としての役割もあり、総理や外務大臣が外交に充てる時間はどれほど確保しても十分とは言い切れません。他方、G7諸国の中で我が国の首脳ほど国会に出席する日数が多い国はなく、これが首脳外交の足かせになっていることは否定できません。
外務大臣も同様です。先月インドで開催されたG20サミットも国会日程のために参加できず、続くクアッド参加も、僅か半日インドに滞在するだけで遠路往復しておられます。外務大臣が国益を懸けた外交交渉の場に、気力、体力共に充実した状態で臨めるよう配慮すべきではないでしょうか。平成十一年に成立した国会審議活性化法の趣旨、副大臣制度の原点に立ち返り、副大臣が国会審議を分担することで外務大臣の負担を軽減、図るべきではないでしょうか。総理の見解をお伺いします。
第二に、ODAの拡充です。現在、大きな軍事力や経済力を持つ国の意見が国際法を超えて国際社会を支配するのではないか、そのような懸念が広がっています。こうした中で、例えば、我が国の周辺国が領海侵犯事例が多発しても、我が国がこれを看過し、何ら具体的な支援行動を取らなければ、我が国の訴える国際法遵守は机上の空論、絵に描いた餅であり、周辺国の支持を広げることはできません。こうした点で、我が国がフィリピン沿岸警備隊に巡視艇を提供し、フィリピンの領海保全に寄与した事例は、ODAの戦略的な活用の好事例と言えます。我が国にとって最も重要な外交ツールの一つであるODAの戦略的な活用を更に拡大するため、また、我が国は外交力も抜本的に強化したと胸を張って言えるように、ODAの二〇一五年の開発協力大綱から実現していない国際目標であるODAの量、対GNI比〇・七%の拡充について、例えば五年以内に実現するという年限を設けるなど、今年改定する開発協力大綱に一層踏み込んだ記載をすべきです。総理の見解をお聞かせください。
第三に、民間外交の強化です。米国の国家安全保障戦略には、アメリカは中国共産党とは大きな違いを有する、しかし、それは政治システムの違いであり、国民レベルの違いではない、米中間の家族的なきずな、友人関係は変わらず続くとあり、国家と国民を切り分け、民間のつながりの重要性を強調をしています。現下の不透明な国際社会の中で、国家間の外交関係に限らず、民間外交も含めて様々なチャンネルを持つことは非常に有益です。
こうした観点から、市民社会組織を経由した二国間援助の拡大をすることは、我が国の顔の見えるきめの細かい草の根の援助、現地のニーズを的確に把握したオファー型の援助が増えるという開発協力面でのメリットと同時に、市民レベルの交流が一層活発化し、友好関係が広がることも期待できます。開発協力の大綱に、CSOを経由した二国間援助の割合、DAC諸国平均であるODAの一五%という数値目標を明記することを提案します。
最後に、人権外交の強化です。今般のウクライナ侵略において、国際法秩序自体にも混沌が及んでいます。昨年九月のロシアによるウクライナ四州併合宣言により、ロシアとウクライナ両当事国の主張する国境線が異なり国土が重複する状態となり、いずれの国も領土保全という国際法に基づき相手国を非難するという混沌です。これに対して、国際人道法に関しては、両当事国が共に法の遵守を認めつつ、事実認定について対立しています。事実関係の客観的な認定を行うためには、ICC、国際刑事裁判所の管轄権を認めることが最も有効な手段であり、ICC管轄を通した紛争地域の透明性の確保が国際紛争の抑止にもつながります。
国際人道法に基づき人道危機を解決するため、ロシア、中国、またアメリカに対しても、ICCへの加盟若しくは管轄権の受諾を促し、人道問題に関するダブルスタンダードの排除を世界に訴えるべきではないでしょうか。総理の見解をお聞かせください。
国家安全保障戦略の基本原則の中に、国際協調を旨とする積極的平和主義の維持が挙げられています。受動的に平和を享受できた時代から平和維持のための積極的な行動が求められる時代に変化する中で、どのようにしたら平和をつくることができるのか、我が国が平和をつくる者となれるようにこれからも忌憚なく議論していくことを期待し、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/14
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015・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 金子道仁議員の御質問にお答えいたします。
外交上の大目標と安保三文書との関係についてお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり、私は、先般のインド訪問時に実施したスピーチの中で、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くという目標の実現に向けて、自由で開かれたインド太平洋、FOIPを発展させていく新たなプラン、これを表明いたしました。
この点、昨年策定した国家安全保障戦略においては、我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素の一つとしてまず外交力を掲げ、また、FOIPの重要性についても明示をしております。
政府としては、今後とも、積極的な外交を着実に推進することで、我が国の安全保障にとって死活的に重要な地域の平和と安定、これを確保してまいりたいと考えています。
そして、三文書における外交、経済安全保障の位置付けについてお尋ねがありました。
国家安全保障戦略は、他の二文書と一体となって、防衛のみならず、外交、経済安保、技術等、我が国の安全保障に関する分野の諸政策に戦略的な指針を与えるものです。
その中で、外交については、例えば日米同盟の強化、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組や同盟国、同志国等との連携強化などについて記述をしております。
また、経済安全保障についても、我が国の自律性の向上、優位性、不可欠性の確保等に向け、経済安全保障推進法の着実な実施を始めとした各種措置に取り組むことを記述しております。
政府としては、国家安全保障戦略等を指針としつつ、外交、経済安全保障等の各分野の性質や状況等に応じて、適切な形で各種施策を実施してまいります。
防衛力の抜本的強化についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化に際しては、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げています。これにより、自衛隊の抑止力、対処力を向上させ、我が国を守り抜くことができると考えております。
また、自衛隊の強化された機動展開能力を住民避難に活用するなど、国民保護の任務も実施していく考えです。
さらに、防衛力を抜本的に強化し、これを将来にわたって維持していく中で、国際情勢等の変化にも機動的に対応してまいります。
歳出改革についてお尋ねがありました。
防衛力強化のための財源確保に当たっては、決して増税ありきではなく、国民の負担をできるだけ抑えるべく、徹底した行財政改革の努力、これは不可欠です。
その中で、議員御指摘の歳出改革については、防衛関係費が非社会保障関係費であることを踏まえ、社会保障関係費以外の経費を対象とし、骨太方針に基づき、これまでの歳出改革の取組を継続する中で財源を確保することとしております。
こうした考え方に基づき、令和五年度予算においては二千百億円程度の防衛関係費の増額を確保いたしました。令和六年度以降も、毎年度の予算編成において、政府・与党連携して歳出改革を継続し、令和九年度時点において、令和四年度と比べて一兆円強の財源を確保してまいります。
行政の無駄や非効率を排除し、行財政改革の努力を尽くすことで、将来にわたって維持強化していく防衛力を支えるしっかりとした財源を確保することができるよう、最大限取り組んでまいります。
国民保護の体制強化についてお尋ねがありました。
国民保護の体制強化に向け、昨年度は、民間事業者や住民の皆様に必要に応じて参画いただく訓練を全国で四十七回行ったほか、沖縄県では初めて武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を実施したところです。今年度は、こうした国民保護に係る訓練を六十回以上行う予定としております。
また、武力攻撃を想定した緊急一時避難施設の指定を着実に進めるとともに、より過酷な攻撃を想定した施設について、必要な機能や課題の検討を進めているところです。
今後とも、迅速な住民避難につながる検討、訓練を積み重ねるとともに、様々な種類の避難施設の確保等に取り組み、国民保護の実効性の向上に努めてまいります。
国会審議における外務大臣の負担軽減についてお尋ねがありました。
議員御指摘のように、ますます厳しさを増す国際環境にあって、各種の外交活動を積極的に実施していく重要性は言うまでもありません。同時に、そのような外交活動を実施していく上で、国民の理解と支持を得ることは重要であり、国会における説明も重要であると認識をしております。
こうした認識に立ち、これまでも閣僚と国会との関係について国会関係者と協議、調整を重ねてきたところであり、今後、外交活動の必要性及び閣僚と国会との関係について丁寧に国会関係者に説明をし、理解を得ていくよう努めたいと考えております。
いずれにせよ、大臣、副大臣間の分担も適切に図りながら、今後とも、国会の御理解を得つつ、積極的な外交を展開してまいりたいと考えております。
そして、ODAの国際的目標と開発協力大綱についてお尋ねがありました。
現在の我が国の厳しい財政状況を鑑みれば、ODA実績の対GNI比〇・七%という国際的目標について直ちに達成の見通しを示すことは困難ですが、新たな開発協力大綱の下でもODAの戦略的活用を一層進めるとともに、引き続き、官民協力など様々な形でODAを拡充し、外交的取組の強化に努めていく考えです。
市民社会組織、CSOを経由した二国間援助についてお尋ねがありました。
NGO等のCSOは、開発現場の多様な考え方やニーズをきめ細かく酌み取り、状況に応じて迅速かつ柔軟に対応しているODAを実施する上での重要なパートナーです。NGOの知見や経験を活用することで、政府間の支援では手の届かない住民一人一人に対し、より効果的かつ効率的なODAの実施が可能となります。
厳しい財政状況の中、現時点で具体的な数値目標を示すことは容易ではありませんが、新たな開発協力大綱の下でもCSO経由の開発協力を更に強化してまいりたいと考えます。
そして、国際刑事裁判所、ICCについてお尋ねがありました。
ウクライナで起こっている戦争犯罪及びその他の残虐行為に関する不処罰は認められてはならず、我が国を含むG7は、これまでの声明等において国際人道法を遵守するよう求めてきています。ウクライナはICCの管轄権を受諾しており、現在、ICCによる捜査が続けられています。
我が国は、これまでもICC非締約国に対し、国連総会等の機会に、ロシア、中国及び米国も出席する場でICCローマ規程の締結を呼びかけてきており、引き続きこうした取組を進めてまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/15
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016・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 榛葉賀津也君。
〔榛葉賀津也君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/16
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017・榛葉賀津也
○榛葉賀津也君 私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました防衛三文書に対し、総理に質問します。
アメリカCIAのバーンズ長官が、今年二月、中国国家主席が二〇二七年までに台湾を攻撃する準備を整えるよう軍に命じた旨の機密情報を把握している、習近平の野心を過小評価すべきでないと発言し、警鐘を鳴らしました。
また、西側各国で開催されている昨今の安保関連会議では、もはや戦後は終わり、戦前に突入している、第三次世界大戦は絵空事ではないという切迫感と緊張感漂う議論がされていると聞いています。米中が対立関係から敵対関係になりつつある今、外交安保上、日本の存在が極めて重要になってきていますが、総理は欧米諸国と情報や危機感を共有されていらっしゃるでしょうか。お答えください。
防衛三文書により、日本の安保政策に長年こびりついていた基盤的防衛力構想の呪縛から解放されたことは率直に評価します。また、今三文書は、我々立法府が、現実から目を背け、リアリティーのある国防議論を長年後回しにしてきた過去からの決別するトリガーでもあります。
今回の新たな防衛政策の柱の一つが反撃能力の保有です。これは自衛のために必要な、戦争をさせないための抑止力であり、国民民主党はその能力の保有を理解します。反撃能力を自衛権の発動として行使するには国会の承認が必要であり、そうである以上、専守防衛に反するとの批判は当たらないとの指摘もあります。相手国による第一撃着手の認定が難しいのは事実ですが、それ以降の攻撃を抑止するには反撃能力が有用なのは論をまちません。
日本が反撃能力を持つと、相手国が更に軍備を増強するという指摘も論理的ではありません。戦後七十七年間、日本は反撃能力を持たずに来ましたが、それを尻目に軍拡を続けてきたのは中国、ロシアと北朝鮮であります。憲法の範囲内での反撃能力の在り方について、総理の説得力ある説明を求めます。
現代戦の難しさは、平時と有事がシームレスであり、非軍事部門が極めて重要になっている点にあります。ある専門家は、軍事的手段と非軍事的手段の割合は一対四。つまり、戦いの八割がサイバーなどの非軍事部門になっていると明言しました。ウクライナにおいても、侵略の四十日も前からロシアによる大規模なサイバー攻撃が始まっていました。
我が国の致命的な弱点がこのサイバーで、日米同盟の最大の障壁と言われています。二〇二一年にイギリス国際戦略研究所が各国のサイバー能力の分析を行い、世界トップの第一レベルはアメリカでしたが、日本は何とイラン、ベトナム、北朝鮮と同じ最も低い第三レベル、一部を除けば、重大な弱点を抱える国にカテゴライズされました。愕然とします。総理、一昔前までIT国家と言われていた日本が、なぜこんなにも弱体化してしまったとお考えですか。御説明ください。
今の日本に必要なのは、人材の育成と法律の整備です。世界は今、サイバーにおいても、苛烈な人づくり競争をしており、日本はその競争に完全に後れを取っています。つまり、これは国防の問題ではなく、教育の問題とも言えます。国防においてこそ人づくりは国づくりなのです。
日本が参照すべき国があります。イスラエルです。かつてサイバー先進国ではなかったイスラエルは、十年以上前から教育カリキュラムを変え、小中学校でサイバーの基礎を教え、全ての高校でサイバーを必須科目にしました。各大学にはサイバーの研究センターを設置し、最先端技術を軍や民間企業と共有しています。
そのイスラエルに学んだのが韓国です。国防省と大学が連携を強化するとともに、サイバーを専門的に学ぶ学生の学費を免除するなど、韓国も官民を挙げて努力を重ねています。
総理、日本も他国の成功事例を参考にして、本気でサイバー教育の見直しに取り組みませんか。総理の覚悟をお伺いします。
能動的サイバー防御の導入が急務ですが、憲法や法律が障壁となっています。憲法九条との関係では、サイバー空間は領海や領空といったような明確な境界がなく、専守防衛の概念はそぐわず、憲法二十一条の通信の秘密は国民に限定される権利との解釈を明確にすべきとの指摘もありますが、総理のお考えをお伺いします。また、電気通信事業法を始め不正アクセス禁止法やウイルス作成罪などの刑法をまとめたサイバー安全保障基本法等を策定するなど、一刻も早い対応が必要と考えますが、併せてお答えください。
有事の際、最優先すべきは国民保護です。そのための基本的なインフラ整備について、総理にお伺いします。
まず、Jアラートについてです。北朝鮮による常軌を逸した弾道ミサイルの発射で、Jアラートには信頼性の向上が求められています。ミサイル発射から伝達までの時間短縮や軌道の見極めなど、より精度を高めるための改善を強く求めます。
他方、全国で防災行政無線が整備されていない市町村が昨年三月段階で七十三団体もあり、Jアラートと防災行政無線が連携していない自治体も存在し、その中には県庁所在地や中核市も含まれます。論外であります。防災行政無線の設置やJアラートの接続は行政の責務であり、一刻も早く改善すべきと考えますが、総理の見解を求めます。
最後に、有事における自衛隊の輸送や国民保護のための港湾、空港、鉄道の有効利用についてお伺いします。
台湾有事は日本の有事であります。先島諸島を始めとする南西地域の港湾、空港などの整備と利活用は極めて重要です。しかし、現実は、自衛隊の艦船が接岸しようにもできない港が多数存在します。例えば、台湾から僅か百十一キロメートルに位置する与那国島。特定公共施設利用法により利用できるのは与那国島の祖納港だけですが、吃水六メートルの輸送艦や吃水十一メートルの護衛艦は水深僅か五・五メートルの祖納港には入港できません。他の離島も同じような状況です。
総理、南西諸島の港湾に自衛隊の艦船が接岸できないなどあり得ません。改修すべきは早急に改修し、今後は港湾の建設当初から有事を想定した水深の確保をすべきと考えますが、総理の見解をお聞かせください。
空港もしかりです。輸送機や戦闘機の離発着には三千メートル級の滑走路が望まれますが、条件を満たす飛行場は那覇空港と下地島空港の二か所だけです。しかも、下地島空港はいわゆる屋良覚書があり、軍事利用ができません。南西諸島の空の拠点が余りにも脆弱ですが、総理の認識をお伺いします。また、沖縄県民の安全のためにも、屋良覚書について県と真摯に話し合う時期に来ていると考えますが、併せて総理にお伺いします。
今も昔も、鉄道は国防にとって重要なインフラです。自衛隊は、かつての北方防衛の名残から、弾薬の約七割を北海道に備蓄しています。有事の際、弾薬や戦車などを南西方面に輸送するには鉄道貨物が欠かせません。しかし、約五十トンある戦車を載せる貨車やクレーンがない、トンネルが戦車の幅より狭く通過できない、鉄橋が戦車の重量に耐えられないなど、問題は山積です。
また、函館―長万部間を走る函館線は北海道と本州を結ぶ唯一の路線ですが、廃線の危機に直面し、仮に廃線となれば、貨物輸送には重大な影響が出ます。
鉄道インフラの維持整備は国防の生命線であります。採算ベースのみで存続の是非を決めるのではなく、国防の観点から国が責任を持つべきだと考えますが、総理の認識をお伺いします。
理想を胸に秘めながらも、国家と国民を守るために、現実を直視し、行動に移す。まさに安全保障政策こそ対決より解決が重要であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/17
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018・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 榛葉賀津也議員の御質問にお答えいたします。
台湾情勢を含む外交・安全保障における欧米諸国との連携についてお尋ねがありました。
台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要です。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが、従来からの一貫した我が国の立場です。この点、これまでも、一月の日米首脳会談を始め米国やG7各国首脳との間では緊密な情報、意見交換を行ってきており、台湾海峡の平和と安定の重要性について一致をしております。
なお、米中関係の安定は国際社会にとっても極めて重要であり、引き続き、同盟国たる米国との強固な信頼関係の下、様々な協力を進めつつ、中国に対して大国としての責任を果たすよう働きかけてまいります。
反撃能力についてお尋ねがありました。
近年、我が国周辺では、質、量共にミサイル戦力が著しく増強され、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあるという現実があり、我が国はこれらに対応しなければならない状況に置かれています。
このような中、反撃能力は、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力として保有するものであり、これにより武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えております。また、反撃能力は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用され、専守防衛を堅持し、先制攻撃は許されない、こうしたことは言うまでもないと考えております。
そして、我が国のサイバー能力と人材育成についてお尋ねがありました。
我が国においては、これまで、重要インフラ事業者等の多様な主体が緊密に連携し、サイバー攻撃からの防御に努めてきたところですが、サイバー攻撃の深刻化、巧妙化やサプライチェーンの複雑化によりサイバー空間上の脅威が高まっていることから、対策の更なる強化が必要であると認識をしております。
我が国のサイバー教育については、初等中等教育段階ではインターネットの安全な使い方等の情報セキュリティーの基礎知識を身に付けさせるとともに、大学等においてはサイバーセキュリティー分野を含む高度な技術、専門知識を有する専門人材が育成されるよう、教育内容の充実を図っています。
今後とも、サイバー空間上の脅威の高まりに応じて、サイバーセキュリティー分野を含めたデジタル人材の育成、確保に努めてまいります。
能動的サイバー防御と憲法その他の現行法令との関係や早期の法整備等の必要性についてお尋ねがありました。
政府としては、国家安全保障戦略に基づき、能動的サイバー防御等の実施のため、体制を整備するとともに、法制度の整備や運用の強化を図ることとしており、憲法その他の現行法令との関係も整理しつつ、検討を進めてまいります。
また、武力攻撃に至らない場合の措置として実施する能動的サイバー防御が武力の行使に該当することは想定しておらず、専守防衛に反しないということは言うまでもありません。
政府としては、サイバー安全保障分野での対応能力の向上は喫緊の課題と認識をしており、スピード感を持って具体化に向けた議論を進めてまいります。
Jアラートについてお尋ねがありました。
Jアラートについては、国民の皆様が避難する時間を少しでも長く確保する観点から、必要なシステム改修を行っているところですが、同時に、ミサイルの探知・追尾能力をより一層高めることが重要であることから、レーダーの能力向上にも努めているところです。
また、防災行政無線等の整備やJアラートとの自動連携については、財政措置を設けて、全ての市町村で早期に実現されるよう働きかけを行っています。
今後とも、国民の皆様の安全、安心を確保するため、より迅速かつ的確な情報提供に努めてまいります。
有事におけるインフラの有効利用等についてお尋ねがありました。
御指摘のように、南西諸島においては、港湾の喫水の課題や飛行場が限られているといった課題があり、自衛隊が多様な港湾、空港を使用できるよう努めていくことが必要です。
国家安全保障戦略においては、総合的な防衛体制の強化の一環として、空港、港湾等の公共インフラの整備や機能を強化する政府横断的な仕組みを創設することとしており、関係省庁間の連携により、早急に取り組むことが重要です。
また、有事の際には、鉄道を含めた様々な民間輸送力を活用することが想定をされます。そうしたことも念頭に、我が国の基幹的な鉄道ネットワークの維持や機能強化に取り組んでまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/18
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019・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 山下芳生君。
〔山下芳生君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/19
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020・山下芳生
○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。会派を代表し、安保三文書について総理に質問します。
岸田政権が閣議決定した安保三文書は、戦後の安全保障政策を大転換し、敵基地攻撃能力の保有とGDP二%への大軍拡に踏み切るものです。
歴代政権が掲げてきた専守防衛の建前さえかなぐり捨て、憲法九条を真っ向からじゅうりんするもので、断じて容認できません。
まず指摘したいのは、三文書には、東アジアの平和をどう構築していくか、主体的な外交戦略が欠落していることです。
三文書は、ウクライナ侵略のような事態が東アジアで発生することは排除されないとして、防衛力を抜本的に強化していくとの結論を一足飛びに導き出していますが、総理は、侵略に至った経緯と背景をどのように認識しているのでしょうか。
ヨーロッパでは、ソ連崩壊後、ロシアを含む全ての国が参加する欧州安全保障協力機構、OSCEという包摂的な対話の枠組みが発展しました。一九九九年には、欧州安全保障憲章を作り、OSCEを紛争の平和的解決のための主要な機関と定めました。
ところが、NATO諸国もロシアも、その枠組みを生かさず、相互に不信を高め、軍事対軍事の悪循環に陥っていきました。
総理、今回の事態に至った背景には、軍事対軍事の悪循環に陥った外交の失敗があったのではありませんか。
侵略の最大の責任がロシアにあることは当然です。しかし、同時に、なぜこのような事態に至ったのかを冷静に検証すべきです。
軍事対軍事の悪循環に陥り、戦争の危険を高める軍事力の増強ではなく、地域の全ての国が参加する包摂的な対話の枠組みを発展させることこそ、ウクライナの事態から酌み取るべき教訓なのではありませんか。答弁を求めます。
アジアでは、既にASEANが、国連憲章の原則に基づき、武力行使の放棄と紛争の平和解決を義務付けた東南アジア友好協力条約、TACを土台に、徹底した対話によって信頼醸成を図り、友好と協力を前進させてきた先例があります。
今ASEANは、加盟十か国と日本、アメリカ、中国、韓国、ロシアなど八か国で構成する東アジア・サミット、EASを強化し、行く行くは東アジア規模の友好協力条約を展望しようという、ASEANインド太平洋構想、AOIPを推進しています。
憲法九条を持つ日本こそが、ASEANと協力し、包摂的な平和の枠組みを発展させて、東アジアを戦争の心配のない地域にするための積極的な外交を展開すべきではありませんか。
中国が、東シナ海や南シナ海で力ずくで現状を変更しようとしていることを、我が党は国際法に基づいて厳しく批判しています。しかし、中国は、我が国にとって、歴史や文化はもちろん、経済の面でも欠かすことのできない大切な隣国です。日中関係の改善は、東アジアの平和の枠組みを発展させる上でも重要です。
二〇〇八年の日中共同声明は、国交正常化以降の両国間の合意を踏まえ、双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認しています。
また、尖閣諸島など東シナ海での緊張状態について、二〇一四年の合意では、日中双方が異なる見解を有している、つまり紛争問題が存在することを認めた上で、対話と協議を通じて問題を解決することを確認しています。さらに、ASEANが推進するAOIPに対しても、日中両国の政府が共に賛意を示しています。
政府は、こうした日中間に存在する共通の土台を再確認し、平和と友好の関係を確かなものにしていく外交に本腰を入れて取り組むべきではありませんか。
ところが、今、政府は、アメリカに追随して、平和と協力ではなく、対立と分断を拡大する道を突き進もうとしています。
アメリカのバイデン政権は、中国を唯一の競争相手に位置付け、同盟国を巻き込みながら、軍事、外交、経済のあらゆる面で抑え込み、自らの覇権を維持強化しようとしています。民主主義対専制主義の戦いというスローガンの下に、特定の価値観で世界を二分し、米豪印日のクアッドや米英豪のAUKUSを始め中国を包囲する枠組みを強化しています。
三文書は、米国とともに、外交、防衛、経済等のあらゆる分野において日米同盟を強化していくと述べていますが、これは、アメリカの中国包囲網づくりに全面的に協力するということではありませんか。こうしたブロック的対応は、地域の対立と分断を広げ、戦争の危険を高めることになるのではありませんか。
南西諸島から南シナ海に至る地域の島々に長射程ミサイルを配備する計画は、元々アメリカの軍事戦略から始まったものです。アメリカのインド太平洋軍は二〇二〇年に議会に提出した予算要望書で、いわゆる第一列島線に長距離ミサイルを配備する計画を示し、その中核に同盟国を位置付けています。敵基地攻撃能力の保有決定に至る過程でアメリカとどのような協議を行ったのですか。
今アメリカは、同盟国を巻き込みながら、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させた統合防空ミサイル防衛、IAMDを構築しようとしています。
政府は、敵基地攻撃能力の保有に当たり、日米で調整要領を検討するとしていますが、何のために、どういう内容を定めるのですか。
総理は、IAMDに参加するものではない、全く別物だと言います。しかし、トマホークの運用に必要な地形情報や攻撃目標の位置情報を得るためにも、また日米で攻撃目標の重複を避けるためにも、日米の一体的運用は不可欠なのではありませんか。また、日米それぞれが独立した指揮系統に従って行動すると言いますが、飛来する複数のミサイルに日米のどのイージス艦が対処するかを瞬時に判断するためには指揮系統の一元化が必要なのではありませんか。
日本の敵基地攻撃能力がIAMDに組み込まれ、米軍の指揮統制下で運用されることになるのは明らかです。それぞれ明確な答弁を求めます。
三文書は、空港、港湾の軍事利用の拡大やインフラ整備の推進を打ち出しました。
今、米軍は、大規模な部隊を固定した基地に集中させるのではなく、小規模の部隊を一時的に分散、展開させる考え方に移行しています。台湾有事を想定し、米軍のミサイル部隊が南西諸島の島々を転々としながら、中国の艦艇に攻撃を加えるという日米共同作戦計画の原案が策定されたことも報じられています。
空港、港湾の軍事利用拡大も、こうしたアメリカの軍事戦略の具体化なのではありませんか。今後、南西諸島などの空港、港湾で米軍が軍事訓練を拡大することになるのではありませんか。住民を危険にさらす軍事利用の拡大はやめるべきです。
軍事態勢の強化は、国内だけではありません。
三文書は、望ましい安全保障環境の創出や、国際法違反の侵略を受けた国を支援するための重要な政策手段として、官民一体となって武器輸出を進めるとしています。
さらに、同志国の安全保障能力を強化するために、資機材の供与やインフラ整備を無償で行う政府安全保障能力強化支援、OSAも立ち上げました。
総理、望ましい安全保障環境とは何ですか。これもアメリカの中国包囲網を強化することですか。しかも、そこに新たな販路を見出し、国内の軍需産業を成長産業にしようとしているのではありませんか。
戦争で自国の経済を潤すような国にしてはなりません。見解を求めます。
日本国憲法は、二度と戦争を起こさないという決意の下、国と国との争い事を絶対に戦争にしない、外交努力で解決することを求めています。憲法九条を生かし、東アジアに平和を構築するための外交にこそ取り組むよう強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/20
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021・岸田文雄
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 山下芳生議員の御質問にお答えいたします。
ウクライナ侵略についての認識と地域における対話の枠組みについてお尋ねがありました。
ロシアのウクライナ侵略については、プーチン大統領が、平和的解決に向けた各国からの働きかけを聞き入れず、一方的な要求を実現すべく武力行使に及んだことが問題の本質です。
いずれにせよ、ロシアによるウクライナ侵略は、原因のいかんを問わず、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反として厳しく非難されるべきものです。
アジアでは、ASEANが地域協力の中心として重要な役割を担っており、多層的な地域協力の枠組みがあります。引き続き、我が国として、日米同盟を基軸としつつ、ASEAN中心性を尊重し、積極的な貢献を行いながら、自由で開かれたインド太平洋を実現するための協力を一層強化していく考えです。
東アジア外交及び日中関係についてお尋ねがありました。
我が国は、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを一貫して支持をしています。今後とも、ASEANを含む関係国と緊密に連携しつつ、AOIPに示されているような地域の平和と繁栄に積極的に貢献をしていく考えです。
また、中国との間では、昨年十一月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をする建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいります。
日米同盟の在り方についてお尋ねがありました。
国家安全保障戦略においては、外交の基軸として、同盟国である米国と様々な分野で緊密に連携する必要性を示しております。その上で、同志国との連携強化や、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組等、様々な施策を示しています。また、中国については、先ほど述べたとおり、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築してまいります。
我が国は、こうした安全保障に関する施策を重層的に実施していくことにより、地域及び国際社会の平和と安定を確保し、国際社会の共存共栄を実現していく考えであり、米国の中国包囲網づくりに全面的に協力する、地域の対立と分断を広げ戦争の危険を高めるといった指摘は当たりません。
統合防空ミサイル防衛と指揮統制についてお尋ねがありました。
日米間では安全保障政策について平素から様々な協議を行っていますが、反撃能力の保有は我が国が主体的に決定をしたものであります。
その上で、国家防衛戦略に記載されているように、統合防空ミサイル防衛能力の下、ミサイル防衛システムと反撃能力を組み合わせて、ミサイル攻撃そのものを抑止していきます。その際、情報収集を含め、日米が連携することが重要です。
一方、統合防空ミサイル防衛能力は、米国の要求に基づくものではなく、また米国が推進するIAMDとも異なる我が国の主体的な取組です。自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動すること、これは言うまでもありません。
空港、港湾と米軍の利用についてお尋ねがありました。
国家安全保障戦略において、空港、港湾等の公共インフラの整備や機能を強化する政府横断的な仕組みを創設することといたしましたが、これは我が国の総合的な防衛体制の強化を図るためのものであり、米国の軍事戦略の具体化との指摘は当たりません。
先般の日米2プラス2でも、空港、港湾の柔軟な使用に関しては、今後の日米間の議論を通じて、その必要性や日米での協力の在り方を含め検討することとしており、地方公共団体や住民等の協力を得つつ推進していきたいと考えております。
我が国にとり望ましい安全保障環境等についてお尋ねがありました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、我が国の主権と独立の維持、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、国際社会が共存共栄できる環境の実現など、望ましい安全保障環境の創出に向けて取り組むことが必要であると考えています。
そのための手段として、防衛装備移転の推進やOSAの創設等を国家安全保障戦略等で示したところです。
これらは、あくまで地域における平和と安定を確保すること等を目的として実施される施策であり、戦争で自国の経済を潤すような国にするといった指摘は当たりません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/21
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022・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/22
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023・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第二 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員長鶴保庸介君。
─────────────
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
─────────────
〔鶴保庸介君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/23
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024・鶴保庸介
○鶴保庸介君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、スーパーシティ等における先端的サービスを推進するための措置を講ずるほか、国家戦略特区法に規定されている法人農地取得事業について、地方公共団体の発意による構造改革特区法に基づく事業に移行するための規定の整備を行おうとするものであります。
委員会におきましては、特区制度の実績に対する評価、法人農地取得事業に係る懸念、オンライン服薬指導に係る課題、データ連携基盤整備の在り方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、立憲民主・社民の岸委員より反対、日本維新の会の柳ヶ瀬委員より賛成、日本共産党の山下委員より反対の旨の意見が述べられました。
次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/24
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025・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/25
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026・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/26
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027・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第三 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。総務委員長河野義博君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔河野義博君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/27
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028・河野義博
○河野義博君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、地方議会の活性化並びに地方公共団体の運営の合理化及び適正化を図るため、地方制度調査会の答申にのっとり、地方議会の役割及び議員の職務等の明確化等を行うとともに、会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給を可能とする規定の整備、公金事務の私人への委託に関する制度の見直し等の措置を講ずるほか、所要の規定の整備を行おうとするものであります。
委員会におきましては、地方議会の役割及び議員の職務等の明確化による効果並びに議員のなり手不足対策、地方議会に係る手続のオンライン化への対応、勤勉手当の支給を始めとする会計年度任用職員の処遇改善の重要性、公金事務の私人への委託制度の見直しとオンライン納付の今後の在り方等について質疑が行われました。
質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して伊藤岳委員より反対する旨の意見が述べられました。
討論を終局し、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/28
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029・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/29
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030・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/30
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031・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第四 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。文教科学委員長高橋克法君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔高橋克法君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/31
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032・高橋克法
○高橋克法君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教科学委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、私立学校の健全な発達に資するため、理事、理事会、監事、評議員、評議員会及び会計監査人の職務その他の学校法人の機関に関し必要な事項について定めるとともに、予算、会計その他の学校法人の管理運営に関する規定の整備等を行おうとするものであります。
委員会におきましては、参考人から意見を聴取するとともに、私立学校の建学の精神と法改正との関係、評議員会の構成の在り方、理事会と評議員会の相互牽制等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/32
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033・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/33
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034・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/34
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035・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 日程第五 合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長山下雄平君。
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〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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〔山下雄平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/35
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036・山下雄平
○山下雄平君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
本法律案は、違法伐採に係る木材等の流通を抑制するため、川上、水際の木材関連事業者に合法性の確認等を義務付ける等の措置を講じようとするものであります。
委員会におきましては、違法木材対策の効果、合法性の確認方法、制度周知の必要性等について質疑が行われました。
討論に入り、立憲民主・社民を代表して石垣委員より賛成する旨の意見が述べられました。
採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/36
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037・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/37
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038・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 過半数と認めます。
よって、本案は可決されました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115254X01820230426/38
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