1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
令和五年六月六日(火曜日)
午前十時開会
─────────────
出席者は左のとおり。
財政金融委員会
委員長 酒井 庸行君
理 事
浅尾慶一郎君
大家 敏志君
西田 昌司君
横沢 高徳君
上田 勇君
委 員
佐藤 信秋君
白坂 亜紀君
馬場 成志君
広瀬めぐみ君
藤川 政人君
古川 俊治君
宮沢 洋一君
宮本 周司君
勝部 賢志君
柴 愼一君
秋野 公造君
横山 信一君
浅田 均君
梅村 聡君
大塚 耕平君
井上 哲士君
神谷 宗幣君
堂込麻紀子君
外交防衛委員会
委員長 阿達 雅志君
理 事
岩本 剛人君
佐藤 正久君
小西 洋之君
平木 大作君
音喜多 駿君
委 員
猪口 邦子君
小野田紀美君
武見 敬三君
中曽根弘文君
堀井 巌君
松川 るい君
吉川ゆうみ君
羽田 次郎君
福山 哲郎君
宮崎 勝君
金子 道仁君
榛葉賀津也君
山添 拓君
伊波 洋一君
高良 鉄美君
事務局側
常任委員会専門
員 神田 茂君
常任委員会専門
員 小松 康志君
参考人
慶應義塾大学法
学部教授 細谷 雄一君
防衛ジャーナリ
スト
獨協大学非常勤
講師
法政大学兼任講
師 半田 滋君
─────────────
本日の会議に付した案件
○我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要
な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出
、衆議院送付)
─────────────
〔財政金融委員長酒井庸行君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/0
-
001・酒井庸行
○委員長(酒井庸行君) これより財政金融委員会、外交防衛委員会連合審査会を開会をいたします。
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、二名の参考人から御意見をお伺いいたします。
御出席いただいております参考人は、慶應義塾大学法学部教授細谷雄一君及び防衛ジャーナリスト・獨協大学非常勤講師・法政大学兼任講師半田滋君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
皆様からの忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、細谷参考人、半田参考人の順にお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず細谷参考人にお願いをいたします。細谷参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/1
-
002・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 今日は、このような貴重な機会に発言をさせていただけますこと、大変光栄に存じます。
私の方からは、今、国際環境は大きく変わりつつあります。その国際環境が大きく変わりつつある中で、このような防衛費の問題どのように考えたらいいか、防衛力の増強の問題をどのように考えたらいいかということを三点を強調してお話をさせていただきたく存じます。
その前に、まず冒頭に大砲とバターのお話をさせていただければと思います。多くの方は御存じのとおり、大砲とバターという言葉が一世紀ほど前からしばしば使われるようになりました。大砲とは防衛費、軍事費に国家の予算を使う。そして、バターとは社会保障や経済のために予算を使うと。どちらにより多くの支出をするかということは、多くの国にとってこの一世紀、常に大きな悩みであり難しい課題でございました。言ってみれば、そのどちらも必要ということを前提にすれば、その中でどのような最適な均衡点を見出すかということが、恐らくは優れた政治の課題だったんだろうと思います。
そのように考えたときに、この参議院の場で財政金融委員会、そして外交防衛委員会の先生方が集まってこのような連合審査会をなさるということは、この均衡点を見出す上では最良の機会ではないかというふうに考えてございます。
一方で、イギリスの歴史家で「大国の興亡」という本を書いて一九八〇年代に随分と話題になりましたポール・ケネディという歴史家がおりました。私の専門がイギリス外交史でございますが、このポール・ケネディは幾つかの本の中で、十九世紀のパックス・ブリタニカのイギリスの強さの根拠とは、十分な軍事力を持っていたことと健全な財政が背後にあったということ、このどちらもがパックス・ブリタニカの強さの秘密であると。
そう考えますと、実は余り十分に考慮されないこの財政の健全さというものが国の強さの根底にあるということを考えますと、改めてこの最適な均衡点、大砲とバターの最適な均衡点というものが重要だということがうかがえるような気もいたしております。そのように考えますと、安全保障環境が改善すれば、当然ながら平和の配当と呼ばれるより多くの支出をバターのために使える。一方で、安全保障環境が悪化すれば、好ましくないと多くの人が考えるだろうけれども、やはり多くの支出を防衛費、軍事費に使わざるを得ない。
そう考えますと、今の日本が、これ一点目でございますけれども、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している、これは岸田総理の言葉でございますけれども、このことが現在のような形で防衛費、防衛関連費というものを増加させる大きな必要の根拠になっているのだろうというふうに感じております。
日本は現在、かつてないほど厳しい安全保障環境の中にございます。日本は、世界の中でも最も不安定で、最も軍事衝突が発生しやすいと考える地域に位置してございます。このことは既に多くの方々が、こちらでも御指摘されていらっしゃる方もいます。そのような中で、日本は防衛力の強化を通じて、侵略や軍事攻撃を未然に防いで平和を維持するための抑止を強化して、さらには安全保障上の同盟国やパートナー諸国との安全保障協力を強化することが喫緊の課題になっているのだろうと思います。
既に多くの方が御存じかと存じますけれども、今から二年前の三月十日には、アメリカのインド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が、アメリカの上院軍事委員会の公聴会で、今後六年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言しました、これは二〇二七年ということになりますが。これについては多くの議論がございます、賛否多くの議論がございますが、今年の一月に日本に来て発言した際に、この退官されたフィリップ・デービッドソン氏は、今年の一月の自民党本部での講演では、この自らの認識に変わりはないということを発言してございます。
さらには、昨年の秋でございますけれども、アメリカ海軍のマイケル・ギルディ作戦部長が、中国による作戦、中国による台湾侵攻が二〇二三年までに起きる可能性は排除できないという見方を示しました。多くの専門家は、必ずしもそこまで中国の軍事侵攻というものを喫緊の問題とは捉えてございませんが、しかしながら、この地域の安全保障環境が悪化しているということは恐らく疑いがないのではないかと思います。
さらには、トランプ政権での対中政策を担当したマット・ポッティンジャー氏が日経新聞の取材に対して、日本の戦略が決定的な抑止力になるという発言をしております。つまり、日本の抑止力というものによって中国の軍事行動に大きな影響を与えられるということが発言の趣旨だろうと思います。
そして次に、三ページに移りまして、今日、本日お話ししたい二点目でございます。
そのような安全保障環境の悪化というものを背景としまして、世界全体で防衛力強化が急速に進んでございます。これはもちろん望ましくないことでございますけれども、それを前提に日本の防衛政策というものも考えなければならない。このような安全保障環境の悪化ということを受けて、世界の主要国は過去二十年ほどの間に防衛費を増大させて、そして防衛力を強化してきました。
例えば、資料の九ページの表の四を御覧いただきますと、アメリカと中国がこの過去二十年間にいかに軍事費を広げてきたかと、この二つの国が今や世界を動かす大きな原動力となっているということでございます。そして、それ以外の国々、特にNATO諸国も、GDP比で二%の防衛費支出というものを数値目標として、それぞれが防衛費を増額しているのが現状でございます。
ドイツ、イギリス、フランスのような主要な民主主義国は、当然ながら国内では大きな問題がございます。コロナ禍での財政支出も増え、そして今はインフレ、そしてエネルギー価格の高騰と、まさに国民はバターを求めて大きな声を上げているわけでございますけれども、そのようなドイツ、イギリス、フランスでも今後急激に防衛費を増やす必要というものが指摘されて、ドイツでも、日本同様に国内のGDP比で二%超へと国防費を増やすということが国内で議論され、政府から提案がされました。
続いて、今度は四ページ目の三番目、最後に私が申し上げたい点ございますけれども、このような世界の大きな潮流の中で、やはり国際社会で日本は責任ある主要国としての義務があるんだろうと思います。
これは、日本が今年、G7サミットの議長国として広島サミットで大きな役割担った、その中で、首脳コミュニケの中で、我々は、より安全で豊かな未来を築くため、中核となる外交政策及び安全保障上の課題に対して結束する。また、我々は、差し迫ったグローバルな課題に対処し、国際システムがこれらの課題に効果的に対応できることを確保するために、幅広いパートナーと共に取り組むという決意を再確認する。言わば日本は、フリーライダーとなって国際社会において十分な責務を果たさないような国家ではなく、やはりその主要国として、責任ある大国として国際社会の平和と安全のために十分な役割を担うべきだろうというふうに考えております。
昨年の二月のロシアによるウクライナ侵攻以来、先ほど申し上げたとおり、日本を取り巻く安全保障環境はより一層悪化し、さらにはAIや無人機、ミサイル技術などの開発が加速してございます。そのような現状を踏まえますと、旧来型の装備や技術というものが日本の防衛力を考える上では日本の弱さになってしまうと、技術開発というものを著しく向上させなければ、このような安全保障環境の中で日本が取り残されて、旧来型の装備というものが日本の安全を守る上では十分でなくなってしまうということが言えるのだろうと思います。
当然ながら、日本にとっては、このような侵略、軍事攻撃が発生しないように、同盟国との信頼関係、協力関係、さらには政府が繰り返し述べているような法の支配に基づいた国際秩序を強化することによって軍事力を使わなくてよいような国際環境をつくることがまず最初に必要でございますが、同時に、そのような秩序が大きく崩れ、今回のウクライナがロシアに侵略されたように、全く想定外の形での軍事衝突が発生したときに、やはり日本政府が、日本国民の安全を守り、日本を防衛をする十分な力を持ち、また、それが発生しないような十分な抑止力を持つということも必要になっているというふうに考え、今回の法案を私は支持いたします。
私からは以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/2
-
003・酒井庸行
○委員長(酒井庸行君) ありがとうございました。
次に、半田参考人にお願いをいたします。半田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/3
-
004・半田滋
○参考人(半田滋君) 本日は、このような機会を設けていただきまして、ありがとうございました。
今、細谷先生の方から、大砲とバターの例え話をなさいました。バランスの取れた国家をつくることの必要性というのは、これは私も全く同感であります。
今日は、その大砲とバターのうち、大砲の中身について詳しくお話をしていこうと思います。
まず、お手元の資料の一ページ目をお開きください。
これは、アメリカ政府から我が国がFMS、対外有償軍事援助という仕組みで輸入をしているアメリカ製兵器の契約額の推移を棒グラフにまとめたものです。ここでお分かりのように、二〇一二年、第二次安倍政権になって以降、急激にこの契約額が増えていることがお分かりいただけると思います。二〇一五年には四千億円を超え、そして二〇一九年には七千億を超えました。
この大幅に増え始めた二〇一五年には、これは防衛費の不足というものが見込まれてきたわけです。これほど、アメリカとの契約額が増えるほど防衛費は比例して増えていきませんでしたので、その分どこにしわ寄せが行ったかというと、国内の防衛産業に行ったということであります。
その結果として、二〇一五年の四月に、防衛省は、最長五年だった国内企業への分割払を最長十年に延長する支出年限特別措置法を成立をさせました。つまり、企業にとってみれば、支払ってもらえると思っていた五年先が実は十年先に延びてしまうことになったと。そうすると、これは当然のことながら、企業としての見込みというのが立ちにくくなるわけでありますから、企業が取引を見切っていくというのは当然であると。したがって、近年、およそ百社ほどの国内の防衛産業が防衛部門から手を引いた、その結果として今回、この国会に防衛産業強化法案が出ているという、そういった巡り合わせになっているんだということだと思います。
次に、もう一ページお開きください。
先ほどのFMSの契約額を更に二〇二三年度まで延ばしたものがこの棒グラフであります。二〇二三年度のFMSによる契約額というのは一兆四千七百六十八億円、第二次安倍政権の二〇一九年の七千億円の実に二倍の契約をアメリカと結ぶことになっているということです。主なアメリカ製兵器としましては、二千百十三億円を投入して四百発購入することにしたトマホーク、そしてまた、下にあるように、これは護衛艦「いずも」、「かが」に載せる予定の垂直離着陸ができるF35B戦闘機、また右上にあるのはイージス・アショアを船に載せたイージスシステム搭載艦、こういったものを建造するということになって過去二倍ということになっているわけ、過去最高額の二倍を記録したということであります。
もう一ページお開きください。
このFMSで購入している兵器が我が国の安全に役に立つということであればこれは全く異存のないところなんですが、例えばここに出てきますグローバルホークの場合、これは実は、陸海空自衛隊が要求したものではなく、防衛省の背広組である内局が要求したいわゆる政治案件というふうに言われています。
日本が購入するのは、これはブロック30という一つ古いタイプのものでありまして、これ三機で五百十億円で契約を結びましたが、後に、これFMSという特殊な仕組みですから、アメリカ側から六百二十九億円と、百十九億円も突然値上げをされたわけです。これは、防衛省の規則で二五%値上げされた場合にはキャンセルできるとなっていますが、この値上げ率は二三%と寸止めをされたのでキャンセルできなかったということです。
今度導入するブロック30については、アメリカ軍が、これは旧式の機体なので中国の脅威に対抗できないということで、保有する二十機を全て廃棄することを決めたということです。まだ我が国にはあと一機入ってきていませんが、あと一機もこれはブロック30というアメリカが使えないと見限ったものがやってくると。
昨年の十二月に青森県の三沢基地にこの運用するための航空隊が発足をしましたけれども、このアメリカが使えないと言ったものを使うための航空隊ができるというのはどういうことなのかと、これは無駄遣いにならないかということであります。毎年の維持管理費百二十億円のうち、そのうち三十億円が三沢にやってくるアメリカ人技術者四十名の生活費に充てられると。一人頭七千五百万円ということですから、これは三沢の物価が高いということではなくて、巨額の費用を渡し過ぎではないかということだと思います。
もう一ページお開きください。
イージス・アショアです。これは、もう既に、二〇二〇年の六月に河野防衛大臣が第一弾ロケットのブースターを安全に落とせないということからこれは中止を言い出して、安全保障会議で中止が決まりました。しかし、この中止を決めたときにはもう既にアメリカ政府に百九十六億円を払っていたと。さらに、ここで全部キャンセルをすると巨額の違約金を支払う必要が出てくるということから、これは本来陸上に置くつもりで大きく造ったレーダーをそのまま船に載せるイージスシステム搭載艦にするということが決まったわけです。実際のところ、アメリカ政府側からは、これは何度も、これは地上版のイージス・アショアですよというふうに言われましたけれども、防衛省は、いや、いいんだということで船に載せることを決めたと。
もう一ページお開きください。
これが本年度の予算書に出てくるイージスシステム搭載艦です。一隻当たり二千二百八億円、地上イージスと比べると一千億円以上高額になっています。これを二隻建造しますので、予定よりも二千億円以上お金を出すことになったということです。
また、このイージス・アショア自体が、イージスシステム搭載艦自体が、大型のレーダーを載せる必要性から幅が四十メートルと。自衛隊の艦艇でイージス護衛艦というのは幅二十一メートルですから、倍の太さになったと。非常に鈍重な船になることが決まったということなんですね。
また、もう一ページお開きください。
これがスタンドオフミサイル、本年度予算に出ているものです。一番上、一二式地対艦誘導弾能力向上型、これを本年度から量産するということです。また、その下にあります島嶼防衛用高速滑空弾、これも本年度から量産をするということです。また、一番下にトマホークというのがあります。これは今年から導入をすると。
これらが入ってくるのは全部二〇二七年度なんですね。三種類の長射程のミサイルが同時に自衛隊に入ってくると。そんなに必要なのかということが当然疑問に出るわけですが、防衛省の説明では、国産のミサイルについては開発の遅れがあるかもしれないと、さらに、量産化に追い付かないかもしれないということからトマホークを補完的に買うというようなことも言われております。
しかしながら、この三文書の閣議決定は昨年の十二月十六日ですから、半年もたたないうちにもはや配備が遅れるというのは見通しが悪過ぎないかということが言えるだろうというふうに思います。
もう一ページお開きください。
これは、昨年の十二月に朝日新聞のインタビューに答えた、海上自衛隊の現場トップだった香田洋二自衛艦隊司令官のインタビューです。今回のGDP比の二%、そして五年間で四十三兆円という、過去の五年間と比べたら十七兆円も増える防衛予算について、このように述べています。
太い字のところを御覧ください。身の丈を超えていると思えてなりません。子供の思い付きかと疑うほどあれもこれもとなっています。また、下の太い字に移ります。陸上から海上へ、大型艦を小型化へと二転三転するイージスシステムは、まさに政治的な迷走の象徴です。今回二%の掛け声が先行し、政治からもあれもこれもやるべきだという声も強かったのではないでしょうか。それに悪乗りしている防衛省・自衛隊の姿が見えるのです。
まあ、傾聴に値する言葉かなというふうに思います。
最後、検証すべき事項。
イージスシステム搭載艦は、全長二百十メートル、全幅四十メートルと報道された。鈍重な艦艇となることから小型化が再検討されている。陸上に置くべきイージス・アショアを艦艇に載せる計画自体が非現実的ではないのか。価格も高騰する。税金の無駄遣いのシンボルにならないか。一二式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、極超音速誘導弾という三種類の国産兵器の開発は実現するのか。多額の防衛費を投入して失敗という事態にならないか。
時間がないので詳細は省きますが、実は一二式地対艦誘導弾の場合、八八式地対艦誘導弾という、短射程から短射程に改良する際に、これ開発に失敗をして、防衛省から開発企業が延滞、遅延損害金二億円を支払わされる、また契約停止処分を受けるということを受けていますので、そういった技術的な問題に不安がないかということであります。
まずは、今回見直すべきはこの防衛予算の中身であって、総枠を大ざっぱに二倍でいいんだということではないだろうというふうに考えるわけであります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/4
-
005・酒井庸行
○委員長(酒井庸行君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/5
-
006・堀井巌
○堀井巌君 自由民主党の堀井巌でございます。
本日は、細谷参考人、半田参考人、大変貴重なお話を誠にありがとうございました。
それでは、まず細谷参考人にお伺いいたしたいと存じます。
先ほど御説明ありましたように、戦後最も厳しい安全保障環境に置かれている中で、我が国がどのようにこの平和をしっかり守り抜くかという観点から、今のこのヨーロッパで起こっていること、このウクライナを少し教訓に物事を考えてみたいと思っております。細谷参考人の資料の中でも、四ページにありますように、国際社会がロシアのウクライナ侵攻をなかなか防ぎ切れなかったというふうな趣旨の記述がございます。
細谷参考人にお伺いしたいのは、ソ連崩壊以来、核放棄や二〇一四年のクリミア併合等々、いろいろ歴史がございましたが、今回、なぜ国際社会はロシアのウクライナ侵略を防ぎ切れなかったのか、原因はどこにあるのか、お考えをお聞かせいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/6
-
007・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 堀井先生から大変貴重な御質問をいただきました。ありがとうございます。
なぜ国際社会はウクライナに対するロシアの侵略を防ぐことができなかったかということは、我々日本の将来の防衛を考える上でも極めて重要な御指摘だと思っております。
基本的には、国際社会の中で安全を確保するための手段は、私は三つあると思っております。一つが国連による集団安全保障システム、二つ目が同盟国との関係に基づいた集団的自衛権、そして三つ目が個別的自衛権に基づく自主防衛ということになるわけでございますが、元々日本国憲法は、国際社会の正義、信頼、公正や信頼に基づくと、こういう国際社会に対する信頼というものを日本の安全の基礎に置いているわけですが、国連の集団安全保障システムが機能するためには国連安保理の五大国の一致がなければ動きません。これは言い換えると、今の米中対立、あるいはアメリカとロシアとの対立というものがかつてないほど国連というものを機能させなくしてしまっている。
これ、大変嘆かわしいことでございますけれども、その結果として、日本もウクライナも、あるいはその他の諸国も同様でございますけれども、自国の安全を守るためには個別的自衛権に基づく自主防衛、自主、自分たちで自分たちの国を守るということ、そしてもう一つは同盟国との関係、この二つしかないわけでございます。日本が中国という日本の五倍近い防衛費を持った、軍事費を持った国に対して防衛をするということになりますと、これは単純に考えても膨大な軍拡というものが必要になるわけでございますから、私は、アメリカとの同盟関係というものに基づいて日本の安全を守るということは適切な施策だと思っております。
一方で、ウクライナは、一九九四年、ブダペスト覚書、これは今のOSCEのブダペストでの首脳会議で開かれたものですが、このブダペスト覚書で、自国に配備されている旧ソ連時代の核兵器を廃棄することに抵抗しておりました。自分たちの国家安全保障が確保されなければ核兵器は手放したくないんだと。それに対して、当時の細川政権、実は細川総理は電話でウクライナの大統領に非核化のために核兵器を放棄してほしいというふうにお願いをしているんですね。そのため、日本は核兵器廃棄のための技術支援や経済支援を行っております。そして、そのために、十二月にブダペスト覚書でアメリカとイギリスとロシアがウクライナの国家主権と領土というものを守ることを約束しているんですね。ウクライナは核兵器を放棄するときに、あくまでもこのイギリス、アメリカ、そしてロシアによって国境線が守れる。
当時、ウクライナが最も懸念していたのはクリミア半島です。当時、ロシアの中で右派民族主義は評価されておりまして、クリミア半島を奪還せよという声が出ておりました。したがって、そのクリミア半島が将来ロシアに軍事攻撃を受けて失うということを恐れて、それに対する保障を求めました。それがブダペスト覚書です。
したがって、二〇一四年のロシアによる一方的なクリミア半島の併合と、そして昨年二月以来のロシアによる侵攻は、このブダペスト覚書を違反し、それだけではなくて、国連憲章、さらには国連憲章の二条四項、さらには一九七五年のヘルシンキ最終議定書、全て違反するものでございます。
つまり、ウクライナは、国際社会に信頼し核兵器を手放し、そして自分たちの領土を守るという決意をしたわけでございます。しかしながら、二〇一四年にロシアの侵略によってそれが裏切られてからは、急速に八年間防衛費を増強しました。当然ながら、日本よりもはるかに経済的な脆弱なウクライナで防衛費を増強するということは大変なことでございますけども、その八年間にもしもウクライナが防衛費を増強していなければ、間違いなく今回は一週間もたずにロシアに占領されて、今やかいらい国家になっていたかもしれません。
つまり、ウクライナの主権と国家の独立が保たれたのは、二〇一四年以降、ウクライナが国家の防衛のために防衛費を増額したということが今のウクライナという国家の存続につながっているということを考えますと、もちろん大砲とバターということで、国民がより多くのお金をバターに求めるのは当然でございます。しかしながら、国家存続のために今の厳しい安全保障環境の中でやむを得ず大砲のためにより多くの国の財政を支出しなければならないというのが、これウクライナのみならずヨーロッパの多くの国々の現在の大きな潮流だろうというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/7
-
008・堀井巌
○堀井巌君 ありがとうございました。
次に、半田参考人にお伺いしたいと存じます。
今御説明いただきましたように、このFMSによる防衛装備の調達というのが日本は増えていますけれども、私、この国内の防衛産業が非常に今厳しい状況に置かれていることを大変危惧いたしております。他方で、なかなか、自衛隊だけが需要であれば、国内の防衛産業もずっと事業を継続することは困難であるというのも現状だろうというふうに思います。
今後、防衛力の整備ということを考えたときに、私はこの国内の防衛産業、御指摘のようにしっかりと育てていくことが重要だと思いますけれども、どのようにしていけばいいのかというのを是非教えていただきたいと思います。
あわせて、そのためには、同志国が日本の防衛的な装備というものについて非常に関心を示していると、そういったところへの移転についても考慮をしていくべきではないかという議論もございますけれども、そういった防衛装備移転についてもどのように考えておられるか、お聞かせいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/8
-
009・半田滋
○参考人(半田滋君) どうも御質問ありがとうございます。
おっしゃるように、国内の防衛産業というのは、ほとんどの場合、市場が自衛隊だけに限られていますから、その分母が小さいことによって苦しいということは、これはそのとおりだというふうに思います。
他方、もう既に我が国は防衛装備移転三原則になっておりまして、輸送とか救難といった五つの条件の下では武器を海外に売ることが可能になっています。ただし、実際に戦争したことのない日本の武器が売れるかという、それは現実的な問題としてあります。
実際に、オーストラリアが「そうりゅう」型の潜水艦が欲しいというときに、日本は手を挙げました。そして、オールジャパンでオーストラリア政府に対して売り込みを図りましたが、結局、オーストラリア政府が望んでいるような通常動力型の潜水艦で、性能、大きさ、全て合致しているにもかかわらず、一度も通常動力型潜水艦を造ったことのないフランスの企業に負けてしまったということなんですね。
それは、すなわち海外に武器を売るということは、一つは、申し上げたとおり、これまで、じゃ、自衛隊は海外で戦争したのかと。今持っている武器というのは戦場で有効なのかということが証明し切れていないということ。もう一つは、やはり外国と商売をする場合には、これは企業に任せるだけでなく、やはり政府が主導してリーダーシップを取っていかなければうまくいかないと。
フランスの場合、ある意味、詐欺的な商法とも言われました。最終的には、このフランスの潜水艦については、アメリカ政府が技術を提供するという原子力潜水艦に取って代わられるわけですよね。これはある意味、その武器の商売というのは大変奇々怪々なところがあると。そこに日本政府が応援をして、日本の企業の後押しをしていくことの難しさというのはまずあるんだということだと思います。
この度、ロシアの、ゼレンスキー大統領がG7に招かれ、あっ、招かれていないのかな、やってこられて、そして今回、自衛隊の持っている車両百台を提供することになりました。これは、日本の車両というのは世界的にも能力が高いということで売れる商品なわけですね。ただ、今まで通常に売っている車両とどこが違うかというと、銃架、銃を置く台が付いているんですね。これによって武器というふうにされて、今まではこれ売るのが困難だったんです。でも、これは実際には銃を付けて売っているわけではないので、銃立てがあるだけで武器、これはちょっと行き過ぎだと思いますね。だとすると、もっと売れるような材料というのは日本中にたくさんあるんじゃないかと。
今回、OSAですね、ODAに加えてOSAが議論されていますけれども、いきなり殺傷力のある兵器ということよりは、もっと足下を見ていけば幾らでも売れるものがあるんではないか。それらを、いわゆるOSAの枠組みをもし活用するならば上手に活用して、それをまず無償で提供するような形で、それをPR材料に使うようなことをして、日本製というものがいいものだと。それは、何も殺傷兵器でなくても、つまり日本という国の信頼度がひょっとして低いかもしれないけど、戦場で使ったことがないという意味で、そういうものじゃないものを選んでいっても十分、日本の防衛産業あるいは日本全体の企業としての海外への発展の可能性というのはあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/9
-
010・堀井巌
○堀井巌君 大変ありがとうございました。
今の質問に関連しまして、細谷参考人にお伺いいたします。
先ほどの御説明の中で、新たな防衛装備についてのお話がございました。時間も、ちょっと済みません、なくなってきてしまったんですが、日本が今後整備すべき分野としてどのような分野なり新たな技術に基づく防衛装備が必要と考えておられるか、お伺いしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/10
-
011・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 今いただきました御質問、大変重要な点かと存じます。
日本の今までの装備は、先ほどの半田先生のお話にもございましたが、やはりなかなか費用が掛かるものが非常に多かったんだろうと思います。一方で、私はこれは平和主義と民主主義のコストだと思っておりまして、例えば一九五〇年代にアメリカ・アイゼンハワー政権が、予算を制約するために、均衡財政のために、核兵器を中心としたニュールックポリシーというものに転換しました。同じようなことを日本ができるかといったら、できません。つまり、平和主義や民主主義というものを前提に専守防衛に特化することによって、非常に日本はコストが高い実は装備になっているんだろうと思います。
そういった意味では、今回、長射程のスタンドオフミサイルを導入するというのは、従来のミサイル防衛だけでは十分に日本が対応し切れないということ、言ってみれば、火事が起きてから火を消すのではなくて、火が付きそうなときにその火を消すというのが私は長射程のスタンドオフミサイルの重要な目的だと思っておりますので、先ほど申し上げたような大砲とバターの均衡点を求めてコストを下げるということと、これから従来の平和主義や民主主義という理念をいかに守っていくかということ、この二つのより難しい均衡というものをこれから求める、そういった装備が必要になっていくんだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/11
-
012・堀井巌
○堀井巌君 ありがとうございます。
今、私も与党の防衛装備、防衛三文書に関するワーキングチームの末席に座らせていただいて、今議論を続けているところでございます。特に今、防衛装備移転三原則についていろいろと議論を行っておりますけれども、今日、今、細谷参考人、また半田参考人から具体的に御示唆をいただいたこと、大変示唆に富むものであるというふうに存じております。本当に今日は貴重なお話をありがとうございました。
時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/12
-
013・福山哲郎
○福山哲郎君 おはようございます。立憲民主党の福山哲郎でございます。
今日は、細谷参考人、半田参考人におかれましては、貴重な時間をいただいて、また本当にいいお話を伺えて大変有り難く思っております。細谷先生におかれましては、本当に歴史家の視点で日頃から本当にすばらしい論考をたくさん発表されておられまして、私も日頃参考にさせていただいておりますし、半田参考人におかれましては、もう現場の声を、防衛省・自衛隊、さらには地域の声をしっかりと取材をして歩かれておられることに心から敬意を表したいと思います。今日もいいお話を伺いました。
まず、細谷参考人にお伺いをしたいと思います。
細谷先生の論考によると、今回のウクライナへのロシアの侵攻は米英の多少ひ弱さが原因だったと、二〇一四年のクリミア侵攻に対してやはり弱腰だったことが今回につながっているという論考を作られています。まさに私はそのとおりだと思いますが、一方であの時期は、やっぱりアメリカは、アフガン撤退、イラク戦争の疲れ、もう本当にオバマ大統領がアメリカの戦争疲れの中でクリミアまで正直申し上げて出ていく力が、そこまでアメリカがなくなっていた証拠だというふうに思っていて、じゃ、その後出てきたトランプ大統領がアメリカ第一主義を言って国際社会のリベラル的な枠組みを本当に粉々にしたと。
これ、どちらもなかなか、アメリカの限界を感じる状況だったのが二〇一四年だったのではないかと思いますが、これ、今も状況は変わっていないと思いますが、この中で安全保障なり国際社会の枠組みをどのように次、見定めていくのかということについて、細谷参考人はどのようにお考えなのか。一時期の中国に対する楽観論がEUにあったのはもう消え去ったので、私はそれはそれでよかったと思っていますけれども、こういう、日本においての安全保障環境が不安定だ、一番危機だというのも僕は理解していますが、国際レジーム自身が壊れかけているということについて細谷先生はどのようにお考えなのかと。
それから、もう一点だけ。
先ほどまさに言われたパックス・ブリタニカの時代に十分な軍事力と健全な財政がある種の平和をもたらすという状況は、日本に当てはめて言うと、健全な財政とはことごとく違っていて、増税か歳出削減か国債発行でしか財源は出てこないわけですけれども、今回のこの法案における四十三兆円の財源は、二年目以降から甚だ不透明なわけです。つまり、バターも物価高も含めて不透明、そして実は大砲も財源が不透明という状況の中で、今回のこの法案、非常に中長期的に不透明な中での大砲を確保するということがどういった悪影響を及ぼすのか、若しくはどのような課題なのか、細谷参考人にお伺いしたいと思います。
もう一遍に言ってしまいます、先生方にゆっくりしゃべっていただきたいので。
半田参考人におかれましては、まさに具体的なお話をいただいて有り難かったんですが、イージスシステム搭載艦というのは非常に新しいチャレンジといえばチャレンジなので、チャレンジとしては意味があるのかもしれませんが、それに関しては余りにもコストとそして技術開発も含めて不透明感が漂っていて、これが逆に防衛省のお荷物になるのではないかという危機も、まあ懸念もあると思います。そして、これも五年後の配備が予定されていますが、スタンドオフミサイルも三種類まだ開発段階です。五年後と言われています。これ、これだけのものを並行して走らせることの能力が防衛省に本当に今あるのかないのかというよりかは、そんな負担を防衛省に掛けることでかえって他の装備に対するケアとか人の訓練とかも含めて、そこに副作用的なマイナスが起こらないかどうかについて非常に懸念をしています。
このことについて、今、半田さんがどのようにお考えになっているのかについてお伺いしたいのと、財源については先ほど細谷参考人にお伺いしたことと同様でして、この財源確保法は、財源確保といいながら、二年目以降は非常に財源が確保できないことを証明している私は法律だというふうに思っていて、このことについては細谷参考人と同様に、同じように質問したいと思いますので、半田参考人の問題意識をお聞かせいただければと思います。
まずは以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/13
-
014・酒井庸行
○委員長(酒井庸行君) それでは、細谷参考人、どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/14
-
015・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 福山先生、大変鋭い御指摘、御質問いただきまして、誠にありがとうございます。二点いただきました貴重な御質問に対してお答えをさせていただきます。
一点目でございますけれども、今後このウクライナでの経験を経てどのような方向で日本が防衛を考えていくべきかというような趣旨かと存じますけれども、私は、やはりこの日本が対外的に間違ったシグナルを送らないということが過去二十年の経験から学べることではないか。
これは、アメリカについて申し上げれば、アメリカはコソボ戦争やイラク戦争で、言ってみれば過剰な介入主義によって、ロシアに対してあたかもロシアの周辺国に対するレジームチェンジを起こすような、そういったような警戒感を与え、カラー革命が行われたとき、二〇〇四年のウクライナでのオレンジ革命のときに、ロシアのプーチン大統領は恐らくそれがアメリカの陰謀によってレジームチェンジをしたというふうに認識したんだろうと言われております。一方で、トランプ大統領の米国第一主義あるいはバイデン大統領のカブールからの撤退の決断というものが、今度は逆に過剰なアメリカの内向きな、リーダーシップの欠如というものの印象を与えてしまった。
つまり、過去二十年間、アメリカがロシアに対して、あるいは国際社会に対して過剰な介入主義と過剰なリーダーシップの放棄というような私は誤ったシグナルを与えてしまった。これは、アメリカの政策そのものを批判するというよりは、アメリカの意図というものがどのように伝わるかというストラテジックコミュニケーション、戦略的コミュニケーションの問題だと思っています。
その誤解というものを、間違っても今のアメリカ政府は今後中国、台湾に与えてはいけない、私はこれ、中国、台湾両方に対して誤ったシグナルを与えてはいけないということだろうと思います。もしもそうだとすれば、私はここでの日本の役割というのはより大きいのだろうと思います。G7において、外交を通じて日本が国際社会にどういったメッセージを送るか、より包摂的な、法の支配に基づいた外交を重視した包摂的な国際秩序を模索するというメッセージ、私は適切なメッセージだと思っております。
そして、二点目でございますけれども、簡潔に申し上げますと、私はこれからの日本の防衛力、つまりは、福山先生がおっしゃるとおりの、日本の他国に比べて非常に大きな財政赤字という中でどのように防衛力を強化するのか。そのときに、私は鍵となるのは技術革新だと思っています。
世界で多くの場合、例えば先ほど一九五〇年代のアメリカのアイゼンハワー政権のニュールック政策について申し上げました。そして、イギリスが二十世紀初頭にドレッドノート型の戦艦を造るときも、多くの場合が財政的な困難が技術革新を生み出した。私はこれが日本にはまだ足りないんだろうと思っています。
つまりは、財政支出を拡大するだけではなくて、財政支出を抑えながら防衛力を強化するための、内側からいかにして日本の技術革新を生み出すか。これは、AIであるとかドローンであるとか、ウクライナが今回の戦争で大量の自国製のドローンを使って防衛をしているわけですから、そういった意味では、日本も新しい戦場、新しい攻撃、これはサイバー攻撃も含まれますけれども、こういったものに対する技術革新とAIを用いたより高度な研究、技術開発に基づいた防衛力というもの、より少ないコストでより効果的な防衛力を充実させることが今後の課題になるだろうと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/15
-
016・半田滋
○参考人(半田滋君) イージスシステム搭載艦のことについてお話をします。
まず、最初、地上に置く、秋田市と山口県萩市に置く予定だったイージス・アショア、この導入の経過を振り返ってみますと、二〇一七年の一月にトランプ政権が誕生して、二月にワシントンで日米首脳会談が行われて、そこでトランプ大統領から安倍首相にバイ・アメリカンと、アメリカ製品を買ってほしいというような要望が出されて、その結果、防衛省で検討した結果、イージス・アショアを買おうということになっていったということだと思います。
このイージス・アショアのこの決定自体が、そもそも我が国が導入しているミサイル防衛システムは、もう既にイージス護衛艦を四隻から八隻に増やすということが決まっていましたし、また、地上配備型の地対空迎撃システムのPAC3も、今三十四基ほどありますが、この能力を向上させると。つまり、既存のイージス艦を増やす、また既存のPAC3の能力を向上させるということで、必ずしも必要だった装備品というふうには考えられないというふうに私は思っています。
また、ここでボタンの掛け違えがあったのは、今までと異なってアメリカ軍と違うレーダーを選んでしまったということだと思います。イージス艦のレーダーというのは、SPY1レーダーといって、日本もアメリカも同じレーダーを使っているのでスケールメリットがあるわけですね。更に言えば、開発費の割り掛け、そして改良費の割り掛けもできるから安くなると。ところが、イージス・アショアの場合には、これロッキード・マーチン社の新しいSPY6レーダーというのを日本が独自に導入をしてしまう。(発言する者あり)あっ、SPY7、失礼、SPY7レーダーを導入したと。一方、アメリカは最新型のイージス駆逐艦にはSPY6というレイセオン社のものを造っていると。
今度、SPY7レーダーというのは二台しか造らないわけですから、まず、コスト面として高くなるのは当然なわけですね。これはアメリカ製と、同じのにすれば割り掛けができたはず。そうすると、導入にお金が掛かるだけでなくて、廃棄まで恐らく二十五年から三十年使うわけですが、そのランニングコストも非常に高額になっていくんだと。これは、本来であればSPY6レーダーの方に切り替えて、そしてまた、船に載せるというようなことをやめるということが必要だと思います。SPY7とSPY6でいうと、レーダーの一辺が一メートルほど大きさが違うものですから、非常にそのレーダー自体が大きくなって、その結果、イージスシステム搭載艦が四十メートルという非常に太った船になっちゃうと。
この際、本来、どうしてもイージス・アショアを置くのであれば、その第一弾ロケットのブースターが落ちても安全な離島などに配備をするということ、船に載せるというむちゃなことをやめるということを一度原点に戻って考え直す必要があるんではないかなというふうに思っています。
もう一つ、あと財源のお話ですが、防衛力強化資金というのは、特別会計から持ってくる、あるいは国有地の売却益を充てる、あるいは借料をここに、防衛費に回す、いろんな、あちこちからかき集めて防衛費に回すものの一つですよね。
そのほかに、決算剰余金の活用とか、あるいは歳出改革とかいろいろありますけれども、いずれにしても非常に不安定な財源であり、今回の防衛力強化資金についても、例えば国有地の売却で財務省の資料を見ると、これで今、我が国が売ることのできる国有地というのはおよそ四千億円程度しかないんですね。到底、その二〇二七年度に不足すると言われている四兆円のうち税制措置で充てるという一兆円以外の三兆円、全然足りないということが言える。また、土地や建物の借料も年間大体四十億円ぐらいしかないんですね。これでは全く安定財源でもないし、足りないと。
そう考えていくと、特に決算剰余金なんかを見てみますと、これは、半分はこれ国債の利払いに充てるし、半分は補正予算の原資に充てているわけですよね。それを全部防衛予算に回すとすれば、これは国債を発行すると。結局、回り回って、防衛費を国債で充てることはしないと言った一九六六年の当時の大蔵大臣の答弁に違反するような形にならざるを得ないと。
要は、この財源が何もはっきりしていないのに、去年、岸田首相はたしか内容、予算、財源を一体で検討するとおっしゃったんだけれども、結局、決まったのは内容と予算だけで、財源を決めないままにこれ決めてしまったと、そこが今回大きな問題として残るのかなと。
今回の法案がこれ仮に通ったとしても、必ずしも安定した財源が永劫続くとは限らないんではないか、そんなふうに私は考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/16
-
017・福山哲郎
○福山哲郎君 ありがとうございます。お二人の先生方においては、大変いいお話をいただきました。
先ほどのFMSの金額がどんどん大きくなることも含めて、そして五年後までに一定の、スタンドオフミサイルや今のイージス・アショアの話も含めて、実は硬直化した防衛予算の使われ方をすることによって、細谷先生の技術革新とか新しい時代に応じたAIとかというものが逆に遅れるリスクはないかということを私も懸念をしているので、その懸念を表明して、私の質疑を終わりたいと思います。
本当にありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/17
-
018・横山信一
○横山信一君 公明党の横山信一でございます。
今日は、細谷先生、半田先生には大変貴重なお話を伺いまして、大変にありがとうございます。
まず初めに、細谷先生に伺いたいと思いますが、先ほどの質問の中にも対話による危機回避というのが通用しなかったというお話があって、それは国連の集団安全保障が機能しなくなっているんだというお話もありましたけれども、先生の事前にいただいた資料の産経新聞の「世界を解く」という中に、米欧がロシアの侵略が始まる前に対話による危機回避を目指したが通用しなかったということが書かれてあるんですけれども、この米欧が何をしようとしてそれがまた通用しなかったのかということ、まず少しお話をいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/18
-
019・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) しばしば今報道でも指摘されているのが、あるいは専門家が指摘しておられるのが、プーチン大統領はもう二〇二一年の夏の時点で侵略の計画を立てていたと。これは第二次世界大戦のヒトラーもそうですけれども、戦争をする側は動員を掛けますから、そういった意味ではいろんな準備が必要になってくるわけですね、あくまでもロシアは特別軍事作戦という言葉を用いていますけれども。したがって、それだけ準備をしていくと、その準備、計画というものを途中で修正するというものが非常に難しくなるわけですね。ですから、ロシアは、私は最初から対話をする意思がなかったんだろうと思います。むしろ、対話をするような姿勢を時に見せながら、軍事侵攻の責任が欧米にある、NATOにあるというロジックをつくることによって自分たちの侵攻を正当化しようとしたんだろうと思います。
重要なのは、相手の意思というものを見抜くということは、決して容易なことでも、場合によっては可能なことでもないと思いますけれども、相手が軍事力行使をどこまで決意しているのか、あるいは相手もまた軍事力行使というものを控えて平和というものを望んでいるのか。第二次世界大戦のときには、ヒトラーの意図というものを間違えていたわけですね。
これは、一九三六年に本格的にドイツがヨーロッパでの戦争計画を進めたときに、あるイギリスの内閣の閣僚はこういうふうに述べているんですね。我々の政策は、依然として、国際協力によって世界の軍備の制限と削減を追求するものである、それは国際連盟規約の下での我々の義務であり、また軍備競争を防ぐ唯一の手段である。
このちょうどほぼ同時期にナチスはもう戦争計画を立てて、もう時間を決めてもう戦争するつもり、そして、後には、この自分の意向が完全に欺く、相手を欺いたことをゲッベルスはある意味では侮蔑して論じているわけですね。我々は戦争計画を立てているのに、イギリスは全くそれを見抜けていなかったということを侮蔑しているわけです。
ですから、我々は、そういった平和の可能性がどこまであるのかということを最後まで諦めてはならないんですが、対話と抑止というもの、そして防衛というものをいかにして組み合わせるか。私は、その意味では、今の東アジアにおいては戦争というものは既定路線だと思っておりません。まだまだ対話というものによって、台湾の問題もそうですけれども、危機は回避できると思っています。
ですので、このウクライナの問題、つまりはプーチン大統領が恐らく前年の夏頃から軍事侵攻を計画していただろうという事情とこの今の東アジアの情勢は私は同様だとは必ずしも思っておりませんので、そういった意味では、この対話と抑止というものの組合せによって未然に私は危機を防ぐということが可能であるからこそ、逆に日本にとっては防衛費というものを増強する、防衛力を増強することが必要になっていると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/19
-
020・横山信一
○横山信一君 ありがとうございます。
もう一点、細谷先生にお伺いしたいんですけれども、今、中国の話も出てまいりましたが、先生の論考の中で、国内、力の真空という言葉を使われているんですけれども、この力の真空という、そういう場面が出てきたときには、そこに軍事侵攻を含めて力による支配が入ってくるという、それを解決するには法の支配による信頼性を回復することが大事なんだというお話をされていて、一方で、先ほどのお話の中で、今もウクライナの話が出ましたが、ウクライナの国民が学んだことは、国際組織も国際法も、それまでのロシアとの交流も国際世論も、自国に対する軍事攻撃を阻止するためには無力だったというお話があって、その法の支配による信頼性を回復して、また、その価値観を共有する国々と連携を強化することがこういう国際的な侵略を防ぐということになっていくんだと。
そういう意味では、日本外交というのは、今の中国というのを見たときに、僕は非常に、この中国の尖閣に対しての行動も、日本は何ら刺激するようなこともしていないのに一方的にどんどん押し寄せてくるみたいな状況を見ていると、非常に威圧感というか、危機感を感じてしまうわけですけれども、こういう現状を踏まえて、先生のおっしゃる法の支配による信頼性の価値観を共有する国々、こういう日本外交というのはどうあるべきなのか、教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/20
-
021・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
簡潔にお答えさせていただきますが、私は、外交と防衛というものをいかに組み合わせるかということが鍵になると思っております。往々にして、この外交と防衛というものは二者背反であるように論じられることがあるわけですけれども、私は一貫して、この二つをいかに組み合わせることが重要だということを考えてございます。
例えば、今回の国家安全保障戦略、日本の防衛力強化というものが柱となっておりますけれども、一方では、五つのそのための手段として、外交が軍事力、防衛よりも先に来ているんですね。最初に来て、私、これ適切な考え方だと思います。
つまりは、外交というものを優先した上で、その上で同時に十分な防衛、抑止力を備えるという考え方、さらには、総合的な防衛体制という形で、単純に軍事力、装備に依拠するだけではなくて、より幅広く日本の国力を用いて防衛力を強化する。例えば技術力というものもその防衛力の根底に含まれると思っています。
そういったもの、より幅広い裾野で日本が総合的な防衛体制を備え、さらには外交というものを日本の安全を実現するためのまず第一の手段と考える。そういった意味では、私は現行の新しい国家安保戦略の示している方向性というものは適切なものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/21
-
022・横山信一
○横山信一君 半田先生にお伺いしたいと思いますけれども、先生が共著で書かれた政策提言の「戦争を回避せよ」というのを読ませていただいたんですが、その中に非常に興味深い部分があって、それは、侵略側の心理が分析されているんですけれども、こちらの意思を軽視するかもしれない、あるいは損害を過小に見積もるかもしれない。さらに、いかなる反撃を受けても断じて譲歩できないと考えるかもしれない、これらはロシアがウクライナ侵攻で示した侵略する側の心理であるというふうに書かれてあって、このウクライナ戦争がどういう形で終結するか分かりませんけれども、それが少なからず今のロシアに対して黙認を続けている中国に対して、その影響というか、結果が影響していくんだというふうにも思うわけですけれども。中国の心理は分かりませんが、少なくとも、中国側からすると、中国を囲むようにフィリピン、台湾、日本があって、海を閉ざされているみたいに見えるかもしれませんが、我々は決してそんなことは考えていないわけで、そういう意味では中国は過剰に反応しているようには見えてしまうわけですけれども。
こうした、ウクライナ戦争が今後どうなるか分かりませんが、少なからずそれが中国に影響を与えていくということを踏まえて我が国はどのようにこの中国に対していくべきなのか、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/22
-
023・半田滋
○参考人(半田滋君) ありがとうございます。
恐らく、習近平国家主席は、今回のウクライナ戦争の成り行きというのを息を殺して見詰めていると思いますね。戦争に突入したいきさつというのは様々語られていますが、しかしながら、一方的に武力で侵攻したということ自体、これは誰もが非難に値すると考えているところだと思います。プーチン大統領が一体いつ、この戦争を続けていていつまでこの最高権力者の座で居続けられるかということは自分にとっても非常に参考になることだというふうに見ているのだろうというふうに思っています。
去年の中国共産党大会で習近平国家主席が総書記を続投して、今年の三月の全人代では国家主席を三期目に入ったわけですよね。去年の共産党大会で習近平氏は、台湾の統一について、武力の放棄は約束をしないということを言いました。今回開かれたシャングリラ・ダイアログで中国の国防大臣が同じことを言っているわけですよね。つまり、中国にとってのレッドラインというのは台湾の独立なんだと。また一方で、中華人民共和国が一九四九年に建国されて以来、台湾というのは自国の内政問題であると、そして一つの中国だと、核心的利益なんだということを言い続けていて、将来の統一というものがこれは必ず果たさなければならない中国共産党の責務であるというふうに考えているわけですね。
今、恐らく中国が気にしているのはアメリカの動向だと思います。特に、バイデン大統領になってから、台湾を防衛するかという質問をされて、三回イエスというふうに答えているわけですね。一度などは、昨年の五月の日米首脳会談を日本で行った後、岸田首相と並んで行った記者会見の場で同じ質問を投げかけられて、イエスと言っていると。ということは、アメリカは直接、台湾との関係というのは、いわゆる貿易上の関係及び台湾関係法に基づく防御的兵器の売却というような、いわゆる商売上の関係、そういったものしかないはずなのに、なぜ台湾を防衛すると言っているんだと。そこが今、中国にとって大きな疑心暗鬼になっているということだと思うんですね。
また、アメリカの中では、残念なことに、共和党、そして民主党を超えて対中強硬策というものが支持をされやすい形になっていると。そうなっていくと、中国をますます刺激していくような流れになっていくだろうと思うんですね。
ここで、我が国が取るべき手段として、今、昨年の安全保障関連三文書によって敵基地攻撃能力の保有を決めました。同時に、南西シフトが具体的に強化されることが盛り込まれていて、第一五旅団、那覇市にある陸上自衛隊第一五旅団の師団化であったり、あるいは那覇病院の地下化であったり、そしてもう既に宮古、石垣、そして奄美大島に地対艦ミサイル、地対空ミサイルの部隊ができていて、我が国として、中国が南西諸島に侵攻しようとすると、その意思をくじくための能力は十分今身に付けたというふうに考えている。
しかしながら、今回の敵基地攻撃能力の保有によって、これらの離島に中国まで届く長射程のミサイルが配備されるということになっていけば、これは中国にとっても一段と身構える姿勢が強くなるということ。同時に、これは、台湾有事でアメリカが参戦するときに、アメリカ側に付いて中国と戦う意思を示しているんではないかというふうに誤解をされる可能性があるわけですね。これはそうじゃないですよと、我が国の、攻撃的兵器というふうにあなたたちが言っているものは防御的な兵器であって、これは決して中国を攻撃するものではありませんよということを言葉を尽くして説明をしなければいけないわけですね。
ですから、今回、敵基地攻撃能力の保有という言葉は三文書に書き込まれましたけれども、一体、じゃ、攻撃対象がその敵基地にとどまるのか、あるいは指揮統制機能まで実はやるつもりでいるのか、また、その攻撃の着手のタイミングというのは何なのかということを、これを外交を通じて明らかにして、日本の考えるレッドラインというのはこれなんですと。
したがって、我々は何一つ専守防衛の考えが変わっていませんよということを明確に説明する責任があると思います。そういった外交を展開していく必要がある。いま一つ説明が足りないというような印象を私は持っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/23
-
024・横山信一
○横山信一君 貴重な御意見ありがとうございました。まだまだお聞きしたいことあったんですけれども、時間になりましたので終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/24
-
025・金子道仁
○金子道仁君 おはようございます。日本維新の会、金子道仁でございます。
本日は、両参考人の貴重な御説明、御意見、本当に傾聴させていただきました。ありがとうございました。
早速質問させていただきたいと思います。
細谷先生にまず最初に御質問したいと思うんですが、既に何回か質疑の中にも出てきました大砲とバターについて、私もそこから一つ御質問したいと思っております。
我が国は、防衛費も倍増、そして子ども・子育て予算も今回倍増ということで、大砲かバターかではなくて、大砲もバターもということで今、国のかじが切られている、そのような考えだと思いますが、他方で、先生が御説明いただいたパックス・ブリタニカの中の健全財政がこの世界の安定に非常に重要であったという御意見もまた貴重だと思います。
大砲もバターもという中で、財政をどのように健全に保っていくのか、先ほど先生、その中で日本の鍵になるのは技術革新であると、技術革新によって少ないコストで防衛力を強化していくことが今、日本に求められていることではないかという御提言をいただきました。それもまさにそのとおりだと思うんです。
ただ、この少ないコストで防衛力を強化するための技術革新を行うということは、日本の社会全体の中で、非常な危機感というんでしょうか、このままでは国ももたないのではないかというぐらいの危機感を持って国民全体がその革新を努力していく、そのような雰囲気が必要だと思っております。
我が党は、そのような意味でも、歳出改革こそが今重要なのではないか、バターも大砲もということをするのであれば、まず無駄を省いていく、抜本的な行財政改革が必要、非常に重要ではないか、それに国民全体が一致して取り組んでいく必要があるのではないか、そのように考えておりますが、細谷先生に是非、専門と少し違うかもしれませんが、国、我が国に対しての提言であったり、現在の各国の取組であったり、このような状況の中での歳出削減、行財政改革について最初に御提言いただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/25
-
026・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 金子先生からとても重要な論点を御提示いただいたと思っております。
私は財政が専門ではございませんけれども、冒頭に申し上げたような大砲とバターをどういうふうに最適な均衡点を見付けるか、これが日本の国力あるいは日本の将来にとって鍵となってくる重要な要素だろうと思っております。
その上で私が考えますのが、私の専門であるイギリスを例に申し上げますと、イギリスでは当然ながら、先ほどにも少し触れましたとおり、今回のウクライナ戦争を受けて、更に従来の二・〇%の防衛費を二・五%まで増やすということをスナク首相が述べております。当然ながら国内に様々な抵抗や批判もございますけれども、イギリスの場合はスペンディングレビューという、つまり歳出のレビュー、見直しですね、つまり定期的にその歳出というものがどの程度健全に行われているかというこのレビューというものが非常に根付いた文化があると思っています。
ですから、政策として、例えば将来どうなるかということがなかなか分からない中で予算を組み、また支出をするわけですから、やはりそれを定期的に点検していくというのが私は鍵になるだろう。言い換えると、当然ながら、私は今回、防衛費、防衛関連費を大幅に増やす中で、本当に必要なものと、実は、実際にそれを検討、導入したとき、整備したときにそうではないものがあるんだろうと思います。
そのそうではないものをいかにして検証するか。先ほどの半田先生の冒頭での御報告はそのような点にも関連していらっしゃったのだろうと思いますけれども、いかにしてその支出、一度支出したものというものを検証し、そしてその中で不要なものというものを変更していくか。私、これがやはり私は、イギリスと比べたとき、日本はまだまだ検討の余地があるんだろうと思っています。
そういった大幅な防衛力増強のための、強化のための支出が必要であるということとセットで、恐らく、そういったイギリスが定期的に行っているスペンディングレビューと同じような形でこの防衛支出の中で本当に必要なものとそうではないものというものを、事後的な検証というものをより積極的に行っていくのが鍵ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/26
-
027・金子道仁
○金子道仁君 ありがとうございます。
我が国であれば行政事業レビューがそのイギリスのスペンディングレビューと対比される制度であるかと思うんですが、制度があったとしても、実際にそれが実効的に行財政改革につながっているかどうかというところは検証する必要があると思います。私も、このイギリスのスペンディングレビュー、また勉強させていただきたいと思っております。
続いて、半田参考人に御質問させていただきたいと思います。
御説明の中で三点ポイントがあったかと思います。まず最初は、FMSの増大による国内防衛産業が圧迫という点。二つ目は、現場の意見を十分に反映していないような防衛力強化の内容が行われていると。三つ目が、国内防衛産業の開発能力に対して疑問があると。その三点が先生の御説明のポイントではなかったかと理解しております。
九ページ目に検討すべき事項という形で懸念の表明がされているわけですけれども、是非先生に、この検討すべき事項を踏まえて、具体的に提言として先生はどのようなことを先生の立場で考えておられるか、どのような形にすることが防衛力の実質的な強化につながるとお考えか、この検討すべき事項を踏まえた提言をお聞かせいただけますでしょうか。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/27
-
028・半田滋
○参考人(半田滋君) どうもありがとうございます。
今、防衛省の中を見ますと、元々いわゆる官僚組織である内部部局、これは内局と言います、それと制服組である各幕僚監部、この距離が今非常に開いている時期になっていると思っています。本来であれば、これは同じ防衛省という役所の中で意思疎通をして、そして現場で武器を使うユーザーである制服組の意見を聞いた上で、そしてまた、そこに無駄はないかとか、あるいは誇張はないかと、そういったことも精査をした上で我が国の防衛予算というものを今までは作ってきたんだというふうに理解しています。
ところが、ここ近年を見ていますと、背広組の皆さんがどうも上の方を見ていると。よく言われることは、首相官邸、内閣人事局ができてから他の役所と同じように官邸の方の顔色ばかり見るようになっていったと。官邸の御意向という形でむしろそれが下に下りてきて、こういった武器を買うという方向で検討しているからよろしくねみたいな話になってくる。先ほど御紹介したグローバルホークなんていうのはその典型でして、陸海空ともどこも手を挙げていないけれど、内局が政治案件として入れているものですね。
また、オスプレイもそうですね。これは沖縄県の普天間基地に海兵隊が二十四機配備をするというときに沖縄から強い反対運動が起きて、であるならば、防衛省・自衛隊が買って安全性を証明すればいいだろうということになって導入してきたと。これは陸上自衛隊が運用していますけれども、このオスプレイ導入を決めた当時、陸上自衛隊にはCH47という大型ヘリコプターが五十五機あって、アメリカ陸軍に次ぐ二番目の保有台数を誇っていたわけですね。空飛ぶロールスロイスとも言われて、大型で高速のヘリコプターを大量に持っていたのに、なぜオスプレイが必要かと。その辺り、つまり現場の意見が内局を通じて政治に逆に上がっていかなくなったと。これによって、非常にゆがんだ形の防衛予算の執行が続いているのが今ではないかというふうに思います。
特に私が覚えていますのは、二〇一八年の十二月に防衛計画の大綱を改定する際に、護衛艦「いずも」型の空母化が決まったことですね。「いずも」型護衛艦というのは、本来は、やってくる外国の潜水艦をいち早く発見して、それを撃退するためのいわゆる防御型の艦艇として開発され、そのとおり運用されてきたわけです。これを空母に変えるということは、まさに攻撃的兵器に変えるわけですから、本来専守防衛である我が国が果たすべき対潜水艦戦の大きな欠落が生まれることになったと。これ今、「いずも」型護衛艦、これは「いずも」と「かが」の二隻がありますけれども、時には空母型、時には対潜水艦戦用というふうに使い分けるというふうに言っていますが、元々これ対潜水艦戦用に設計された艦艇ですから、トップヘビーになって、つまり船首が重たいわけですね。到底空母型の船として使うのはふさわしくない。新しく別に造った方がむしろ安いぐらいなんです。そういった中途半端なことを、これ防衛計画の大綱のときに閣議で「いずも」型護衛艦の空母化を決めてしまったわけですね。
私、その当時、現職の東京新聞の記者として防衛省を担当していて、海上自衛隊の皆さんの落胆する顔というのをずっと見ていました。本来、今までの話と全然違う話が上から下りてくるようになってしまった。そういったその意思疎通の悪さ、そして妙な政治決定というものが続くことによって、我が国のこの防衛の体制というものがゆがんできているのではないかということが言えるだろうというふうに思います。
先ほどの三つの意見ですね、あとはその開発能力の問題ですけれども、これらはある意味やってみなきゃ分からないというところもあります。ただし、一度に同時にこれだけ多くのものを開発をしていくということはおよそ防衛省・自衛隊にとって経験したことがないぐらいの同時開発であり、同時量産開始なんですね。一つのものを計画をしてスタートするまで、今まで大体七年から十年掛かっているのが普通だったんです。それが急に去年の閣議決定に合わせてあれもこれもというふうにどんどんどんどん急激に乗っていったと。これは能力を超えるようなものを今やろうとしていないだろうかと。これ、将来のことはよく分かりませんけれど、将来恐らく禍根を残すポイントというのはどこだったかというふうに考えていくと、大風呂敷を広げて、その枠を埋めるような形で様々な国産兵器、あるいはFMSによるアメリカ製兵器の爆買いをしたことだったのではないかと、そんなふうに反省する日が来ないように、今からでもきちんとこの防衛予算の中身を再検証して、必要でないか、必要なものであるのかということを見極めた上でもう一度考え直す必要があるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/28
-
029・金子道仁
○金子道仁君 ありがとうございます。貴重な御意見、また受け取って、また検討させていただきたいと思っております。
もう時間が迫っていますので最後になるかと思いますが、半田さん、あっ、ごめんなさい、細谷参考人にお伺いしたいことがございます。
今、AIや無人機、ミサイル開発などで非常に技術開発水準が高まって研究開発費が高騰している、そのような指摘が四ページ目にございますが、日本は今、次期戦闘機に関して国際協力を行って共同開発をしていくということがもう進んでいますけれども、サイバーやAI、無人機、そういったところでの国際協力による共同研究開発、その可能性について教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/29
-
030・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) ただいまいただきました御質問も重要な点かと存じます。
日本がイギリス、イタリアと共同開発をして次期戦闘機を開発、導入する方向へと今検討を進めているようでございますけれども、やはり今先生がおっしゃられたとおり、研究費、開発費が今非常に大きな額となっております。
どの国も一国単位でそれを開発し、そして整備をするということは難しくなってございますので、F35、先ほど出てまいりましたF35も、これも国際共同開発、もちろんこれはアメリカが中心ということでございますけれども、したがって、いかにしてどのようなコーリション、国際的な連携をつくるかということが、これは民間レベルでもグローバルサプライチェーンという形で、iPhone一つ取っても、これは日本の技術、韓国の技術、台湾の技術、いろんな技術が入っているわけですね。同じように、やはり戦闘機もそうかもしれませんが、装備の開発においても、余りにもこの装備の費用が高騰していることによって国際的な連携なしには進められない。
そうすると、今起きているのは、一つは、価値を共有する国々との間の連携ということが重要になっている。これは経済安全保障にも関わってくる問題だと思います。その価値を共有する国との連携ということで、イギリスであるとかフランスであるとかドイツ、こういった国々と連携が今重要になっているわけでございますので、従来は、日本はアメリカから装備を買うということが非常に多くございました。これから恐らく、どのようなコーリション、国際的な連携によって研究開発をするかということと、どのような安全保障協力を進めていくかということが連動してくると思いますので、より日本にとっては、外交戦略というものと、また、こういった防衛力の整備の長期的な計画や戦略というものが結び付いて考えることが重要になってくるんだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/30
-
031・金子道仁
○金子道仁君 ありがとうございます。
まだ幾つか御質問したいことありますけれども、もう時間が来ましたので、以上とさせていただきます。
本日はありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/31
-
032・大塚耕平
○大塚耕平君 国民民主党・新緑風会の大塚耕平と申します。
今日は、両参考人の御意見、大変ありがとうございました。
この外交防衛関係の情報というのは、当事者以外は、伝聞情報とか様々な資料に基づいて推測をするしかないわけであります。そういう前提で、お二人がお持ちの情報やこれまでに接した資料からどういうふうにお考えになっているかを二、三お伺いしたいと思います。
この委員会でも、いわゆるLAWSですね、自律型致死兵器に関しても何度か議論になっているんですが、これについて我が国は、二〇一〇年代の早い時期に、国際会議において、我が国はこれを開発しないということを早々と宣言をしている。他国は決してそういう状況にはない。
これは、今後の防衛力抜本強化の中でも大きな意味を持つんですが、この国会での質疑で若干外務省、防衛省の答弁も変わってきた気はしますけれども、今のこのファクトについて、お二人が持っていらっしゃる、あるいは接した資料において、なぜそんな早い時期に日本はそういうスタンスを対外的に明示したのかについて御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/32
-
033・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) それでは私の方からお答えさせていただきますが、装備、武器については半田先生がお詳しくいらっしゃいますので、後、詳しくまたお話しいただけると思いますけど、私は、今、大塚先生がおっしゃっておられた点については、特別な情報、研究者として何か特別な情報であるとかファクツを知っているわけではございませんが、やはり、やや一般論的なお答えになってしまいますが、冒頭のお話をさせていただいた、日本は平和国家であり、また民主主義国家であると、そういったものを前提に、ある意味ではいろいろな方向性を制約というのを、自ら自分を縛っているところがある。
一方で、そういった技術革新というものが、本来あるいは従来あった日本の平和国家としての様々な前提というものを揺るがすような新しい状況、例えば、今議論になっております長射程のスタンドオフミサイルについても、そもそもミサイルというものがここまで大量に開発、配備されなければ、それに対する対処というものも日本の中には必要なかったのかもしれない。
サイバーも同様かと思います。サイバーというものが果たして専守防衛、日本が相手のサイバー攻撃を止める力があるのに、専守防衛で相手が攻撃をするまで一切着手をしないということ、これ、アメリカはもう既に法を、法律を導入して対処できるようになっているというふうにも言われておりますけれども。
そういった意味では、本来、先生がおっしゃられた、平和国家として様々な制約というものが前提として出発する中で、いかにして技術革新と軍事的な現実というものに対応していくかということの、恐らくその葛藤というものが今の先生がおっしゃられた御質問の趣旨の現状ではないかと推察しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/33
-
034・半田滋
○参考人(半田滋君) 今回の安保三文書の中で七本の重点事項というのがあります。その中の一つに無人アセット能力というのが出てきますので、恐らくそれが一番近いのかなというふうに思います。
やはり、世界の潮流としては無人兵器というものがどんどん増えてきているという現状がありますし、実際に、先ほど話題になりましたイギリスやイタリアとともに共同開発を進めている次期戦闘機についても、戦闘機だけではなくて、無人の航空機を手下として従えて、そしてそのそれらの無人の航空機が取った情報も束ねた上で攻撃に活用すると。そういった無人兵器を活用するというのが今もはや当たり前の軍事技術になっているということですよね。実際に、今ウクライナ戦争でもウクライナ軍が投入していると言われている無人の小型戦車のようなものがあって、これはロシアが喉から手が出るほど欲しくて、それを獲得したら賞金を出すまで話になっていると。そういった流れになっているということは我が国としても無視できないなということになってきたんだと思います。
ただ、重要なのは、こういったAI兵器などを使っていったとしても、最終的な攻撃をするか踏みとどまるかの判断は人間がするんだというところにとどめておかないと、機械に任せていくと、今話題のチャットGTPでもそうですけれども、集めた情報を基にしてどんどん先に進んでいってしまうと、それが正しい正しくないではないんですね。機械というのはそこまでは、心がないわけですから、行くわけにはいきません。
だから、我が国は特に憲法上の制約の厳しい国でありますから、専守防衛のスタンスの中でこういったLAWSというものがどんな使い方ができていくのかということを真剣に考えていくときが今来たのかなというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/34
-
035・大塚耕平
○大塚耕平君 ありがとうございます。
もう一つ見解をお二人からお伺いしたいのは、先ほど台湾有事等々の話もございましたけれども、やはり、安全保障ないしは外交をできるだけフリクションを小さくしながら維持していくためには、相手がどういう考えでいるのかということを、まあこれも推測するしかないわけでありますが、そこが割と正確に推測できていれば対応も的確になると、こういうことだと思うんですが、元々、今の米中対立や東アジアのこの緊張の発端は、私の認識では、二〇〇〇年代、まだアメリカが中国を親米的な国にできると思っていたところに、二〇〇七年の米中の各分野の首脳級の協議が行われている中での海軍首脳同士での会合において、アメリカ側の出席者のキーティング司令官が中国側から、ハワイを境に太平洋を東西分割統治してはどうかということを中国側から提案をされたと。しかも、それを二〇〇八年のアメリカの上院で、議会証言でキーティングさんがしゃべったと。
ここからいろんなことがスタートしているように思えるんですが、私個人は、中国はやはりそういう長期的戦略ないしは目標を持っているというふうに推定をしているんですけれども、お二人はこの点についてそれぞれどういう御見解かをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/35
-
036・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 今、大塚先生が御指摘いただいた点も大変重要な問題だろうと思います。
中国、ロシアが地政学的に勢力圏というもの、十九世紀的な勢力圏的な発想で自らの周辺国、つまりは主権国家体制としての前提を超えた、自らの国境を越えて周辺国に対して勢力圏的な発想で言わば緩衝国家、バッファーゾーンにする、あるいは自らの衛星国にする、そういった志向性が非常に強いんだろうと思います。
そのような古典的な、勢力圏的な発想で、例えば領海を越えて国際公共財である公海においても自らの主張というものを貫徹しようとする。ロシアも同様に、やはりウクライナを主権国家としては見ていない、プーチン大統領は主権国家とは見ずに、あくまでもロシアに従属する国家として、まあ言ってみればウクライナの自決権を奪いたいという発想なんだろうと思います。
それが広がったときに、例えば、今先生が二〇〇七年のお話をしましたが、その翌年の二〇〇八年十二月に初めて中国が尖閣諸島の周辺の接続水域に公船を入れてくるということで、明らかにエスカレーションを高めたわけですね。その前年、二〇〇八年には日中間で東シナ海の問題については平和的に解決するという合意をしながらも、それが大きく覆るということで、やはり中国の中では、平和的な国際協調を志向するもちろん意向もあるんだろうと思いますけれども、一方では軍事力というものを背後にして自らの勢力圏を確立したいという強い意向もあるんだろうと思います。
この発想は、アメリカや日本が考えるようなやはり国際協調を前提とした、法の支配に基づいた国際秩序、それぞれの国の主権や自決権を尊重するような思考と、国際秩序観と真っ向から対立するわけですね。それを前提にして、私はこれから数十年は、アメリカと中国が単なる利益を超えて、利益であればこれは調整可能です、そうではなくて、国際秩序観、世界観が対立する中で、今の構造的な対立が継続するということを前提にやはり国家安全保障戦略や防衛力整備というものを考えざるを得ない時代に入っているということを物語っているんだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/36
-
037・半田滋
○参考人(半田滋君) さっきおっしゃった、ハワイを真ん中にして、東側はアメリカ、そして西側は中国という話は、その方だけじゃなくて、もっと複数回アメリカに対して言っていて、アメリカは冗談だと最初は思っていたらしいですが、真面目に繰り返してくるので本音なんだなということが分かってきたと。
一方、アメリカは、元々、海洋国家として自国の安全を維持するために太平洋全域に共産主義勢力を入れないという、これはあの一九五〇年のアチソン・ラインというものが引かれていまして、これは完全に、アチソン・ラインというのはアリューシャン列島、そして日本、フィリピンを結ぶラインですから、完全にその中国の主張と重なるところが出てくるわけですよね。
これは到底アメリカとしてはのめないし、また、今、中国が主張している第一列島線というのは、そのアチソン・ラインをほぼ沿っているわけですが、今、中国は更に一歩進んで、第二列島線といったグアム島のラインの方まで自国の内海化を目指しているというふうに言われていて、さらに、太平洋、南太平洋の国々に対する経済的な支援を背景にして影響力を強めていこうという動きを非常に強く進めています。これは、例えば中南米やあるいはインド太平洋の国々に対して、お金と引換えに自国の関係を良くしていこうと、とりわけ台湾と国交のある国から台湾を引き離して、そしてうちに来いというような形を取っていっているということだと思います。
これらは、広い意味でいえば、台湾を併合しやすくするような環境をつくるということと同時に、また、世界の独り勝ちをしているアメリカに対してその中国が目指す多極的世界の実現のための一つの方策であろうというふうに思います。
ただ、これが力と経済力をバックにした覇権国家としての振る舞いというふうに西側から見たら見えるわけですから、いわゆる債務のわなであったり、あるいは力による現状変更の試みといった言葉で、それが対立の種になっていると。
中国からすれば、当然、自国の経済力、軍事力にふさわしい扱いを受けたい、しかしながら、それは西側の価値観と合わないというところから摩擦がずっと絶えない原因になっているんだろうなと、そんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/37
-
038・大塚耕平
○大塚耕平君 もう時間もありませんので、最後に私の意見を一つ申し上げて、今後の御参考にしていただければ幸いでありますが。
同じようなタイミング、先ほどのキーティング司令官の議会証言と同じようなタイミングで、五年に一回の北京での中国国家主席による北京外交団へのスピーチにおいて、当時の胡錦濤さんが、トウ小平さんの遺言だった韜光養晦、有所作為という言葉に、堅持韜光養晦、積極有所作為と二文字ずつ付け加えて発言をされたと。
私、中国語はよく分かりませんが、中国語にお詳しい方に聞くと、前半は能力を高めろという言葉、後半はやるべきときにはやるという言葉、これに、十数年間それを歴代の指導者が守ってきたところを、二〇〇八年に、引き続き能力を高めることは堅持するけれども、やるべきときにはやるということについてはそろそろ積極的にと言ったわけですね、胡錦濤さんが。
〔委員長退席、財政金融委員会理事西田昌司君着席〕
だから、キーティングさんの議会証言であるとか、この胡錦濤さんの、これは公の場で発言していますので、発言していることとか、先ほどの尖閣への侵入の件等々を考えると、やはり我が国は、先ほど冒頭で聞いた、その直後に今度はLAWSについて従来の感覚で外交的に物を述べているとか、やはり少しこの安全保障とか外交に対する基本的な日本の国としての枠組みを軌道修正する時期に来ているという認識でおりますので、今後も先生方の御意見や著作物を参考にしながら、しっかり考えさせていただきたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/38
-
039・山添拓
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
両参考人には、今日は参考になるお話をいただき、ありがとうございました。
細谷参考人に伺いたいと思います。
敵基地攻撃能力の保有など、安保三文書の方向性について、今年一月の日米2プラス2ではアメリカ側から繰り返し歓迎する旨が表明され、日米の戦略の整合性についても三文書の中でも強調されておりましたが、本法案で財源を確保して進めようとしている軍備の増強は、アメリカのインド太平洋地域における戦略にとってはどのような意味を持つものだとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/39
-
040・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
今のアメリカのバイデン政権は、中間層のための対外政策ということを一つのスローガンと考えて、あくまでも対外政策というものがアメリカの中間層のためにあるんだという、部分的にはこれは前トランプ政権から続いてくるような、米国第一主義的な性質を持っているんだろうと思います。
これは、意味するところは、ウクライナであくまでも、まあウクライナは同盟国、アメリカの同盟国ではございませんけれども、同盟国、友好国の自助努力ということ。これは、例えば、アフガニスタンもある意味ではアメリカが友好国として国家建設を支援してきたわけですけれども、結局は軍事力を撤退させるという決断をせざるを得なかったわけですし、ウクライナに対しても積極的に軍事介入をするかというと、あくまでも装備あるいは経済的な支援にとどまっているということで、やはりアメリカの今の近年の傾向あるいは長期的な傾向として、統合抑止ということでございます。
これは、水平的、垂直的、つまり、アメリカ国内の様々な部局、省庁間の統合をするということと、同盟国、友好国との間での安全保障協力というのを前提に抑止力を高める、これは、単純に言えば、アメリカ一国で十分な抑止力、言ってみれば、アメリカの拡大抑止などのアメリカ一国の力で同盟国を守るのではなくて、あくまでもアメリカによる同盟国に対する拡大抑止は、支援と同時に、その友好国、同盟国独自の自主防衛あるいは自主努力というものの組合せによってあくまでもアメリカは抑止というものを構築しようとしているんだろうと思います。
これは、私は、新しい傾向、従来と同じような要素はございますけれども、これを明確に統合抑止という形でインド太平洋の戦略の中核に埋め込むということは、従来以上により一層アメリカの同盟国の自助努力を促すものだと思いますので、今御質問にあったような、長射程のスタンドオフミサイルであるとか、あるいは無人機等の開発、こういったものは、恐らく日本にとって中長期的にアメリカとの同盟を考えたときに、アメリカに依存し甘えるだけでは恐らく十分に日本の安全は守れない時代に入っているという、そういったアメリカの意向と整合しているものではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/40
-
041・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。
半田参考人にも少し違う角度から同様の質問をさせていただきたいのですが、この法案はGDP比二%へ軍事費の倍増を狙っているものですが、政府は必要なものを積み上げたとしてきましたが、発端は、トランプ政権時代にNATO諸国に対してGDP比二%、そして、それと同等の負担を日本にも求めてきたと、そこにあるのは明らかだと思います。ですから、総額ありきだという批判もされてきました。
アメリカが日本を含め各国に軍事費の増大を求めるその事情といいますか背景について、どのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/41
-
042・半田滋
○参考人(半田滋君) ありがとうございます。
NATOに対してまずアメリカが求めたというのは二〇〇四年だったと記憶しています。当時、ブッシュ政権で、イラク戦争でアメリカが国費を大分使ってしまって、NATOの中でみんな俺に頼るなと、各国が努力して国防費上げろというようなきっかけでGDP比の二%というのを示したということだと理解しています。
確かに、トランプ政権のときに日本にもGDP比の二%という言葉を投げかけたことはありましたが、でも、それがずっと続いたわけではなかったですね。というのは、アメリカから見れば、日本は在日米軍を置くだけで年間五千億円程度の出費をしていると。アメリカにとって見れば、必要な経費の七五%近くを負担しているのは世界の中でも日本しかないと。さらに、在日米軍基地というのは西太平洋におけるアメリカ軍の拠点でもあると。つまり、それは十分に地政的、そして財政的な貢献はしているという考えがあったんだろうと思います。ですから、日本には余り強くそのことは求めてこなかったと。
むしろ、GDP比の二%ってどこから出てきたかなと振り返っていくと、二〇二一年の自民党総裁選のときに高市早苗さんが言い出したのがきっかけ、今回のきっかけはこれだと思います。それは、つまり、まさにアメリカ製兵器の爆買いが続いていて、防衛費がそれほど伸びていないと、このまま行くとパンクするというときに、一気に天井を押し上げてしまえというようなことだったのかなというふうに思っています。その結果として、その内側、五年間で十七兆円増えるその内側の使い道というのは、非常に雑駁な予算の積み上げになってしまったと。まあ防衛費が増えたということは防衛省にとってもいいことでしょうが、しかしながら、実際のところ、この負担をする国民の立場からすれば、納得のいく中身を示した上で提言をしてほしかった、そんなふうに思えるんだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/42
-
043・山添拓
○山添拓君 続いても半田参考人に伺います。
シンガポールで行われたシャングリラ会合の際に、日米豪三か国の国防相会談で共同声明が出されて、米国が提唱するIAMD、統合防空ミサイル防衛で三か国の協力の強化が明記をされています。
今度の安保三文書に盛り込まれたIAMDの強化は、こうした日米同盟の文脈にとどまらず、米国が世界的に進めていくIAMD構想の一環としての位置付けがあると思いますけれども、御意見がありましたらお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/43
-
044・半田滋
○参考人(半田滋君) 世界的な協力の意味合いがあるというふうに私も思っています。
というのは、今回、敵基地攻撃を持つということが閣議で決まりましたけれども、実際のところ、自衛隊というのは、もうずっと長年にわたって専守防衛でやってきたわけですから、そもそも外国の基地がどこにあるかということを正確に分かる情報を持ってないわけですよね。そうすると、敵基地攻撃というのは、少なくともアメリカ軍の情報と重ねていかなければできないものであるということが言えると。
また、アメリカが今目指している統合抑止という考えの中では、これはアメリカ軍の中の一体化というだけじゃなくて、同盟国の軍事力も活用するということを含んでいると思います。
しばらく前に、防衛予算の中で、衛星コンステレーションの話が出てきました。これはアメリカが考えている、弾道ミサイルを探知、発射、飛翔、着弾まで全部この数百個の衛星で宇宙空間から監視をするというものなんですね。これ、日本も参加を検討している項目でありまして、ここに参加をするというのは、これ低い軌道の衛星なので、大体五年ぐらいしか寿命がもたないんですね。数百個の衛星をアメリカだけで打ち上げるというのはこれ財政的に困難だということもあり、つまり、アメリカ製のミサイル防衛システムを導入している日本は、現在アメリカから早期警戒衛星の情報を常にもらっているわけで、じゃ、日本もそこの衛星コンステレーションに参加をして、そして協力をしろというような話が当然出てくるのは当たり前のことですよね。
ですから、日米豪といった枠組み、そこにインドも入ればクアッドになりますけれど、こういった形でアメリカが考えているこういったIAMD構想に入っていくためには日本の協力が欠かせない。その上で長射程のミサイルを持てばアメリカ軍の能力と平仄が合ってくると。だから、非常に第二米軍としての使い勝手のいい組織に自衛隊が変わるんだなということがだんだん見えてきたかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/44
-
045・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。
細谷参考人と半田参考人にそれぞれ伺いたいと思うのですが、今話題にしましたシャングリラ会合でも最大の懸念は米中間の対立であり、しかし、会期中、米中の国防大臣同士の会談は行われずに、アジアや太平洋諸国の大臣からはこの対立が紛争につながることの懸念を示され、また、その米中両大国に対して責任と自覚を求めるような、こういう発言も相次ぎました。
そういう中で、日本が中国との関係を、どのようにこの緊張関係を打開していくのかということは大事な課題だと思います。その点で、日中間には、二〇〇八年の日中共同声明で、互いに協力のパートナーとなり、互いに脅威とならない、こういう合意があります。あるいは、二〇一四年に、尖閣諸島など東シナ海での緊張関係の高まりについて、これは対話と協議を通じて問題を解決していくと、そういう確認をしてきています。あるいは、ASEANが提唱するAOIP、ASEANインド太平洋構想にも両国が賛同する、幾つかの合意が重なっていることがあると思います。
私たちもこうした累次の合意を土台にして日中両国に現状の前向きな打開を求める、こういう提言も行ってきましたが、米中関係の悪化が取り沙汰されている一方で、日中間には今でも確認できる合意が、その蓄積があると考えます。
細谷参考人からは、先ほど、東アジアでは対話によって危機を回避し得ると、こういう御意見も述べられましたが、こうした日中間での合意の蓄積、それを東アジアでの緊張関係の打開につなげていく、その必要性などについて御意見を伺えればと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/45
-
046・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 大変難しい問題だろうと思います。
一つは、やはり日本がこの地域において非常に包摂的な秩序構想、自由で開かれたインド太平洋構想という形で包摂的な構想を掲げていると、これは従来のアメリカのやはり米中デカップリングを前提とする政策とは大分アプローチのトーンが違うんだろうと思います。
日本はRCEPという形で中国との間での一定程度の貿易自由化へ向けた合意がございますし、また、中国は入っていないですが、CPTPPという形で日本がこの地域における自由貿易圏を構築し、中国はこれに対する加盟申請をしていると。こういった形で、この地域において日本が日中での協力というものを前提にして危機を回避する努力をするということは、これは必要なことだろうと思います。
一方で、今の問題は恐らく、中国が従来と比べて、十年前と比べてもうはるかに、世界との間で世界観が、独自の世界観を持っている、これが乖離が非常に大きくなっているということだろうと思います。今の韓国が従来の方針を大きく修正し、アメリカや日本との関係を強化し、今非常に中韓関係は悪くなっております。このこともやはり、中国がかなり独自の世界観を持ち、そして軍事力、圧倒的な軍事力を基に、従来以上にいわゆる経済的な威圧という形で自ら求めるものを周辺国に圧力を掛けていく。さらには、他国と比べても著しく情報公開というものの開示が、透明性がないということで、中国が何を考えているかということが、我々に分からないだけではなくて、多くの中国のジャーナリストや外交官や研究者の方と話していても、恐らく中国の指導層が何を考えているかというのはよく分からないところもあると思うんですね。
そういった意味では、今の状況の中で、私は、日中間で関係を改善をするために、例えば草の根レベル、議員レベル、あるいは軍のレベル、外交官レベル、研究者のレベルでどれだけ交流が進み、信頼関係が進んだとしても、そうではなくて、今の共産党の指導層が一体何を考え、どのようなことをやろうとしているかということを認識を、理解し、そこに影響を与えるということが従来に比べて著しく難しくなっている。このことが、やはり日中関係を改善した上でこの地域の安定を図ることの一定の限界になっているんだろうと思います。
〔委員長代理西田昌司君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/46
-
047・半田滋
○参考人(半田滋君) 対中政策で非常に難しいなと思うのは、日本はアメリカの考えに非常に重なるものが多くて、アメリカの考えに付き従っていくような項目というのは非常に増えていると思います。それが中国をいら立たせていくのかなというふうな考えもできると思います。
重要なのは、台湾をめぐる米中の争いがあった場合に、戦場になるのは中国でもアメリカでもないということですね。実際に今年の一月に、アメリカのシンクタンクのCSISが二〇二六年に中国が台湾を侵攻するというシミュレーションを発表しています。このときに、日本はアメリカに対して在日米軍基地の自由使用をイエスと言う前提でシミュレーションを行っているんですね。その結果として、自衛隊と米軍が中国と戦うことになるわけですけれども、そこで日本は壊滅的な被害を受けるということが分かる。というのは、核保有国に対する攻撃は慎重であらねばならないというふうにCSISは書いているわけです。ということは、中国に対する攻撃はしない、中国もアメリカに対する攻撃はしない、そうすると、台湾と、そして間に挟まっている日本だけが攻撃をされてしまうんだと。
結局、じゃ、日本は、アメリカの基地の自由使用、事前協議に対してノーと言うのかと。ノーと言ったらアメリカからは手ひどいしっぺ返しを受ける。それが両方嫌ならば、アメリカに対しても中国に対しても日本の立場というものをちゃんと説明しなきゃいけないんだろうと思います。これは、中国だけではなくアメリカに対しても言う必要があるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/47
-
048・山添拓
○山添拓君 ありがとうございます。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/48
-
049・高良鉄美
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美です。
今日は、細谷参考人、半田参考人、本当に貴重な意義深いお話をいただきました。改めて感謝を申し上げます。
私は、まず、積極的平和という言葉についてお伺いしたいと思います。
安倍内閣が掲げた積極的平和主義とそれからノルウェーのヨハン・ガルトゥング博士が提唱された積極的平和とは全く似て非なるもの、異なる考え方だと思います。
細谷参考人、半田参考人に伺います。お二人がお考えになる積極的平和とはどのようなものなのか、それぞれお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/49
-
050・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 高良先生、積極的平和についての御質問いただきまして、ありがとうございます。
国際政治学者として、私、大学の講義でもガルトゥング、ヨハン・ガルトゥングの積極的平和について触れておりますし、猪口邦子先生も「戦争と平和」の中で、御本でもたしか触れていらっしゃったと思います。
この積極的な平和というガルトゥングの概念はかなり広く浸透した概念であって、申し上げるまでもなく、消極的平和という単に戦争がない状態だけではなくて、様々な抑圧、人権侵害、貧困というものをなくしていくと。おっしゃるとおり、確かに安倍政権の積極的平和主義に基づく国際協調主義、これの積極的平和主義の概念とは必ずしも全く同じものではございませんが、一方で、例えば今ウクライナで起きているのは、まさにこの積極的な平和ということを考えたとき、ただ単に、例えばウクライナがロシアに占領されて戦争が終わればいいということではないんですね。仮にこれでもしもロシアに占領されたとき、占領地域で多くの人権侵害というもの、あるいは子供が連れ去られる、これ大きな国際司法裁判所でも問題となっております。
したがって、私は、今やはりガルトゥングの積極的平和というものが、このウクライナ戦争が起きたことによって、単に戦闘を停止するだけではなくて、そこにおいてきちんとウクライナの人たちの人権というのが擁護される、あるいはロシアが行っているような子供を連れ去るというようなことをしないようにする、そういった意味で、確かに従来以上に私はこの概念というものが今の世界では重要になっている。同時に、そのことは従来よりもまた実現が難しくなっているということ、そのこともまた、恐らくは日本の国家安全保障戦略の中で、今、高良先生おっしゃったとおり、安倍政権における積極的平和主義とは確かに概念が重なるものではないかもしれませんけれども、ガルトゥングの述べる積極的平和主義というものも恐らく日本の安全保障戦略の中でもより深く組み込んでいく必要があるんだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/50
-
051・半田滋
○参考人(半田滋君) ヨハン・ガルトゥイング博士の積極的平和主義というのは、まさに沖縄にこそふさわしいものだというふうに私は考えています。つまり、台湾有事になれば真っ先に戦場になりかねないのが沖縄だと思います。これを何とか食い止めるために、今、ある意味、安倍首相の提唱した軍事力を用いた積極的平和主義に基づいて、南西諸島の軍事要塞化が今どんどん進んでいるんだと思います。
しかしながら、要塞化を進めるというのは、結局、その地域に住む住民との関わり、この関係において、さきの大戦のときのような県民に大きな被害が出るという可能性も同時に考えなければいけないというふうに思います。
今年の三月に、政府が主催をして、そして沖縄県も関係して、宮古、石垣、与那国などを巻き込んだ離島の避難を図上で行う図上訓練が行われました。五市町村で合計十二万人を安全に九州に運ぶのに六日間あれば足りると、あたかも事が簡単であるかのようなことを見せたわけですが、大事なのは、沖縄本島の避難が今回抜けていたんですね。沖縄県全体、沖縄本島にこそ避難が必要な米軍基地があり、自衛隊施設がそろっているわけですから、実際のところ、沖縄県民百四十六万人を同時に避難させるということを考えなければいけないわけですね。このときの数式に基づいて百四十六万人を何日間で九州に運べるか計算したところ、七十三日間掛かるんですね。七十三日間もの間、皆さん家でじっとしていてくださいと、そんなことは通じるわけはないわけです。
だとしたらば、まさにその積極的平和主義の精神に基づいて、これをただじっと黙って平和を待つのではなくて、働きかけによって、対話、そして貧困の解消、人権の重視といったことを実現していかなければ、真っ先に沖縄が犠牲になる。だからこそ、沖縄にこそ積極的平和主義を実行する責務というものが政府にはあるというふうに私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/51
-
052・高良鉄美
○高良鉄美君 ありがとうございます。
今、人権の関連がすごくありましたけれども、もう一つ考えられるのが、私は、議員になってずっと、対する全ての閣僚の方に法の支配についての認識をずっと尋ねてきたわけです。それ、法の支配の内容である人権の保障、そして憲法の最高法規性、司法権の重視、適正手続、そのいずれもがないがしろにされているんじゃないかという危機感があるからそういう問いをずっとしてきたわけですね。
外交防衛に関して言えば、沖縄県民の、私はとりわけこの適正手続を不適正に使われているんじゃないかと、あるいは法の支配に対する人の支配がもうまかり通っているんじゃないかと、そういうふうに思っています。
半田参考人に伺いますが、今回の防衛費の大幅増額はこの適正手続の面からどのような問題があるとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/52
-
053・半田滋
○参考人(半田滋君) 確かに、おっしゃるように、沖縄における適正手続の欠如というのは辺野古の新基地建設を見ると明らかだと思います。沖縄県の中の住民投票で圧倒的多数が辺野古新基地に反対をしているにもかかわらず工事が強行され続けている、そして大浦湾の軟弱地盤については、しばらくこの事実を隠した上で工事を浅瀬の方から埋め始めてしまったということ、これらは全く適正手続を欠いているというふうに言わざるを得ないと思います。
今回のGDP比の二%にまで増えていくというような防衛費について言えば、これまでの五年間の防衛費、中期防衛力整備計画と以前は言っていました。今回、呼び名が変わって防衛力整備計画に変わりましたけれど、これまでは大体二十五兆円から二十六兆円という枠の中で、五年で割れば年間五兆円ちょっとぐらいの予算の中でやりくりをしなければいけない。その中で、無駄をそぎ落とした上で必要な、真に必要なものを買うということを繰り返してきたわけですね。
ところが、今回、突然十七兆円も上乗せされたことによって非常に雑駁な予算の使い方が出てきたんではないか。そうなってくると、これは、今日お話ししているように、本当に真に日本の防衛に役に立つものであればそれは仕方ないにしても、予算だけを与えてその中を埋めなさいみたいな形になったことにより、適正手続と到底言えないようなものというのが出てきてはしないかという心配があるわけですね。そこを精査していかなければいけない。
また同時に、今日お話ししているようなイージスシステム搭載艦のような、これどう考えても、これ将来完成したとしても、これ巨大な鈍重な船ですから、このイージス艦を守る、イージスシステム艦を守るための船を造らなきゃいけないと。今回の国家防衛戦略で見ますと、イージス艦は今の八隻から十隻に増えるんですね。十隻に増える上に、さらにイージスシステム搭載艦が増えると。これ、ここまで本当に必要なんだろうかと。また、船に載せるようなものかどうかということもちゃんと適正手続に基づいて精査する必要があるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/53
-
054・高良鉄美
○高良鉄美君 ありがとうございます。
半田参考人にはもう一度伺いますけれども、今ちょうど言われた、あるいは先ほどからありましたけれども、資料の政策提言に、戦争を確実に防ぐためには抑止とともに安心供与が不可欠であると書かれています。
実は、私は三月十七日の外交防衛委員会で、この安保三文書は、抑止の視点が強い一方、安心供与の視点がないのではないか、国家防衛戦略と防衛力整備計画が抑止の発想で書かれるのは分かるわけですけれども、国家安全保障戦略で安心供与という視点がないのは大きな問題だと、こう指摘したところなんです。
内田雅敏弁護士が、台湾問題が日中間の四つの基本文書でどう語られてきたかを、「飲水思源 以民促官」というそういう冊子がありますけれども、そこに分かりやすくまとめられています。これを読んでも、中国にとっての安心供与は、台湾独立を日米が支持しないと表明し実践することだと思いますが、今回の国家安全保障戦略では、台湾に関する基本的立場に変更はないと述べながら、台湾独立を支持しないと明言するのを避けました。台湾の独立を支持しないと表現するのではなく、一九七二年の日中共同声明から今日までの対応は一貫していると、変わっていないという説明の仕方を維持していくことが重要であると政府は答弁しています。
仮に今回の防衛費の大幅増額との関係で安心供与を明確にしないということがあれば、日本国民に対しても中国に対しても極めて不誠実だと思いますが、半田参考人は政府が明確にしない理由を何だと思われているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/54
-
055・半田滋
○参考人(半田滋君) それは、やはりアメリカに対する配慮があるのかなと思います。
アメリカは、米中の国交正常化の際に、中国が主張する一つの中国に対して、その発言は認識をするということを言って、非常に曖昧な態度にとどまっています。日本政府もそういった点では余り変わらないというところです。特にバイデン政権になって、台湾の抱え込み、台湾への接近というものが目立つようになってきたと。そうすると、今アメリカがやっているようなことに水差すような表現というのは好ましくないではないかという、そういう考えもあるのかもしれません。
本来であれば、先生おっしゃるように、台湾の独立は支持しないという一文を入れても意味は同じなんですが、その言葉があるかないかということで、受け取る側、つまり中国側や台湾側、そしてアメリカの受け止め方が異なるわけですよね。ですから、安心供与につながらないというのは全くそのとおりで、特に中国に対して安心を提供していくということにはならないと思います。
日本は、憲法の条文は一言一句変わっていないのに、今回、敵基地攻撃能力の保有を決めて、そして、もう既に南西諸島に置かれている一二式地対艦誘導弾、この能力向上型も開発を、そして量産化を決めたわけですから、中国から見れば、日本は憲法も何も変わっていないはずなのに、なぜ急に好戦的になってきたんだろうと、まあ好戦的と言うのはちょっと言い過ぎだとすれば、攻撃的兵器を向ける可能性が出てきたんだろうというふうに不思議に思うだろうと思うんですね。ここで、やはり安心供与ということがだからこそ本来は必要だったんだろうと、そんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/55
-
056・高良鉄美
○高良鉄美君 今、安心供与ということで、同じ質問になりますけれども、細谷参考人の方に、この中国への安心供与という点では、お考えをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/56
-
057・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 私は、今の御質問に対して、国家安全保障戦略では一定程度安心供与の文言が入っているというふうに見ております。
例えば、これは国家安全保障戦略ですが、日中両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって、共に重要な責任を有する。我が国は、中国との間で、様々なレベルの意思疎通を通じて、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含めて対話をしっかりと重ねて、共通の課題については協力をしていくとの建設的かつ安定的な関係を構築していく。あるいは、日中間の信頼の醸成のため、中国との安全保障面における意思疎通を強化する。加えて、中国との間における不測の事態の発生を回避、防止するための枠組みの構築を含む日中間の取組を進める。
ほかにも、実は比較的、中国に対しては一方的な強硬な姿勢を取るというよりは、これは明らかに私は、やはりアメリカの国家安保戦略、昨年出た文書とは大分トーンが違うというふうに見ております。
日本にとって、中国は最大の貿易相手国であるだけではなくて地理的にも非常に近接しておりますので、私は、やはり日本は抑止だけではなくて安心供与というものも一定程度考慮している。しかしながら、それを中国はどう受け止めるかというのはまた別の話だと思いますので、恐らくそれが文言だけと見るのか、あるいはそれが誠実な姿勢で取り組んでいるかということは、中国側は日本の行動を恐らく見ている部分もあるんだろうとは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/57
-
058・高良鉄美
○高良鉄美君 ありがとうございます。
やっぱり沖縄からすると、もうすぐ目の前に、与那国からもそうでしょうけれども、これだけ自分のところの近くにあって、かつ今沖縄の観光というもの、あるいはもう生活そのものが大きく、逆に言うと、余り軍備に力を入れ過ぎると、中国の思いみたいなものも本当に伝わっているのかなというのがあって、やはり不安が非常に強いということを申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/58
-
059・神谷宗幣
○神谷宗幣君 細谷参考人、半田参考人、今日はお忙しい中、ありがとうございます。参政党の神谷宗幣です。よろしくお願いします。
まず最初に細谷参考人にお聞きしていきたいんですけれども、この二年間で大きく世界の情勢が変わっているんではないかというふうに感じております。
一九九一年にソ連が崩壊してからどんどんとアメリカが力を付けて、アメリカの単極化、一極化というふうな情勢がありましたと。そこに対して中国が力を付けてきて、アメリカと中国の二極化というようなことが言われるようになったわけですが、その間にロシアも独自の路線で力を付けてきまして、どっちかというと多極化の世界が繰り広げられていく中で、どうやって台頭してくる中国を封じ込めていくかというふうな、そういった議論がついこの間までされていたように思うんですけれども、ロシアのウクライナ侵攻以降、中国がちょっとどこかに行ってしまって、ロシア、ロシアというふうな形でロシアが注目を集めていくようになりましたと。
それは実は中国からすると物すごくいい状況で、本来なら、安倍総理のときなんかのことを思い出すと、ロシアともかなりいい関係を築いて、アメリカにももちろんしっかりと連携をして、中国は牽制しつつ中国にも間口を開くというふうな形だったんですけれども、もう今回完全にロシアを敵にしてしまったので、ロシアがもう独りでは立ち行かないものですから、当然、中国に物すごく接近してしまったと。接近したといっても、ロシアが上ではなくて中国の方がかなり優位な状況でロシアとくっついていると。
そこで、かつてBRICSと言われるような形で言われましたけれども、そういった第三国ですね、そういったものを、西側ではなくて、どちらかというと中ロの方のグループに流れていってしまっている。で、嫌なの、我々にとって困るのは、中東のサウジアラビアとか、元々アメリカ、西側に協力していたような国もどちらかというと中ロの方に行ってしまっている、イランやシリアも向こう側に何とかパイプを求めようとしているというふうな、そういった状況になってきているように感じるんですね。
そうすると、アメリカの一極が米中の二極化になっていたのに、今度はアメリカをリーダーとする西側と、それから中国をリーダーとする、何と言えばいいですかね、東側と言うとちょっと語弊があるんですけれども、中ロと第三国というふうな状況でのチーム戦になりつつあるというふうな状況に見えてきています。
我々西側の方なのでどちらかというと西側優位の情報がたくさん日本にいると入ってくるんですが、客観的に経済だけを見ますと、中ロ側の陣営の方がこの二年ほど経済が好調で、取引額も世界的には増えているんですね。我々は、うまくロシアを包囲してロシアの軍事的な侵攻を止めようというふうにやってきたわけですけれども、実はそれが、繰り返しになりますが、中ロの連携を強化にし、第三国との連携を生ませて、結局このウクライナの戦争というのは西側からするとかなり墓穴を掘ったような形になってしまっているんではないかというふうな分析もできるんじゃないかと思っています。
そうなると、今回の防衛費の増額、それからミサイルの配備といったものは、そういった状態をちゃんと見越して組まれているのかどうかということに非常に疑問が生まれるんですね。まるで、この間の、アメリカと中国の二極、二大極の争いの中で中国をどう封じ込めるかというふうな視点に基づいての防衛政策であって、チーム戦になっている国際情勢に対応する防衛の整備の仕方でないんじゃないかというふうな、ちょっともう時代が変わってきて、日本の防衛政策というのが少しそれに乗り遅れてしまっているんじゃないかというふうな、そういった感覚を持つんですけれども、細谷参考人はそういった点に関してどういった分析をされているか、聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/59
-
060・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 神谷先生から、大変大きな見取図の中での日本の防衛政策、今後の方向性についての御質問いただきました。
簡単に申し上げれば、今の世界を見る見取図として、アメリカ一極の世界という見方、先ほども先生がおっしゃられました。そして米中二極という見方、そして多極構造という見方、三つの見方ができるんだろうと思います。
先ほど、私がお配りしました資料の九ページ目の表の四で、先ほど御覧いただいた資料ではこれはどれとも見える、つまり、軍事的な実態からすればほぼアメリカ一極にも見えますし、あるいは、アメリカ、中国が他国と比べたときに傑出して軍事費が多い、そういった軍事的なパワーバランスで見たときのアメリカ一極、あるいは米中の二極というのもある程度妥当するかもしれない。
一方で、今先生がお話しになりましたのは、更に外交的なアライメント、どのようにして外交の組替えが行われているか。私も一部共感するところがありますのは、やはり戦争が去年始まって、初期の段階では、昨年二月四日に中国の習近平主席がプーチン大統領と際限のない友情という形で一体化をするような声明を出したことによって、侵略が始まってから随分と批判をされ、孤立した局面もあったと思います。
ところが、ある段階から中国は恐らく、そうではなくて、心理戦あるいは世論戦として、アメリカが戦争の原因をつくり、そのアメリカがつくった戦争の原因でグローバルサウスの国々で食料問題であるとかエネルギー高騰問題が起きて大変な目に遭っている、それを中国が支援をするんだという形で、グローバルサウスに対して中国があたかも今回の戦争における勝者になるような、私は、世論戦を展開し、一定程度効果を収めていると思います。そのことが今先生がおっしゃられたことにも関連してくるんだろうと思います。
だとしますと、私は、どちらかというと、これは新しい軍事的なパワーバランスの現実ではなくて、世論戦における中国の外交的なリアライメントに対する対抗ということになると思いますので、その点で、私は、今回のG7サミットが、G7のお金持ちのクラブが集まるだけではなくて、そこに、グローバルサウスのリーダーを自負するインドであるとか、G20サミットの昨年の議長国であるインドネシアであるとか、あるいはロシアに寄り添ってむしろウクライナに批判的な姿勢を示したブラジルも参加した、この外交的な私はプレゼンスというのは非常に大きかった。つまり、あたかも中国が世界を取り込むように見える中で、そうではなくて、日本がG7とグローバルサウスの国々を広島に招いて、そこで真剣に重要な問題を討議するということですね。
私は、ですから、今回の広島G7サミットは、今、神谷先生がおっしゃられたような大きな国際的な潮流の流れを変えるものだったと思っています。そういった意味で、私は今回のサミットにおいて日本がもたらした貢献というのは非常に大きいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/60
-
061・神谷宗幣
○神谷宗幣君 ありがとうございます。中国の世論戦の部分、私もすごく共感をいたします。
そういった中で、先ほどの質問ちょっと繰り返す部分になるんですけれども、細谷参考人からすると、今回の政府掲げている防衛戦略というのは、決して時流に合わないものではなく、これからの変化を見越した非常に効果的なものであるという、そういう御判断という理解でいいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/61
-
062・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
一つは、まず圧倒的にアメリカの軍事力がまだ強いということ、それを前提に日本がアメリカとの同盟を基軸に防衛戦略を考えると、私はこれ適切だろうと。一方で、このアメリカの優位性というものが中長期的に陰りを見せて、より自助努力が必要という点では、単にアメリカの力に頼るだけではなくて、日本が自ら努力をして防衛力というのは強化する必要がある、まさにこれが今問われていることだろうと思います。
しかしながら、同時に、この軍事力だけではなくて、先ほど申し上げたような、つまり、外交的なリアライメントの中でこの外交と防衛力を組み合わせる、この組合せ方というものがまさにこれは国家安保戦略の中核だと思いますので、その意味では、まだ私は、防衛費を増強した上でどのように外交と組み合わせるのかというのは、私はこれからの実は政府の課題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/62
-
063・神谷宗幣
○神谷宗幣君 ありがとうございます。
それでは、半田参考人にも、一番最初に細谷参考人に聞いた、世界の変化の中での日本の今回の防衛体制の構築の仕方について、大きな話になるんですけれども、どういったお考えをお持ちか、少しお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/63
-
064・半田滋
○参考人(半田滋君) どうもありがとうございます。
グローバルサウスの力が目立ってきたというのは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって国連総会の中で何度かロシアに対する非難決議であったり撤退決議が行われました。その中でかなり多くの国々が棄権をしているということがだんだん目に見えて分かってきたわけですね。よく考えてみれば、アフリカや中東の国というのは、ロシアから食料を輸入している、あるいはそれぞれの国で食べ物を作るのに必要な肥料も輸入している、また一部の国などは武器をロシアから依存していると、そういった国というのは実はたくさんあったわけですよね。ということは、西側の価値観だけでは語れない世界がかなりあるんだと。
去年だったですかね、インドがグローバルサウスサミットを開いた際に、参加した国が実は百三十五か国もあったと。ということは西側の価値観だけではもはや語れないんだなと。特に、G7サミットというのがスタートした四十年前というのはこの七か国だけで世界のGDPの六割を占めていたわけですが、今四割に下がっているわけですね。要するに、経済力が下がるということは政治的な影響力も同時に下がると見なければいけない。
そうだとすると、今どの国が力を持ち始めているかというと、やはりグローバルサウスの中のリーダーシップを取っているインドであろうと。今年の四月には人口を見ても中国を上回りましたね。また、中国の場合には、グローバルサウスには入れるということにはならない国だと思いますが、やはりその立ち位置からしてロシアとも話ができるという国でありますから、今、むしろロシアとウクライナの停戦を仲介するのは、これ中国が重要なプレーヤーになったんではないかなというふうに思います。
これはアメリカだけでは、恐らくウクライナ側に付き過ぎているということから、ロシアが到底のめないということになると思います。したがって、今の力関係、国の、世界の構図というものが大きく変わっていく中でG7サミットが行われて、インドのモディ首相やインドネシアのジョコ大統領などを招いたというのは適切な判断だったとは思いますが、ただ、それが西側諸国に引き付けるというような試みであったように私には映るんですが、そこは必ずしもみんなが納得してそれぞれの国に帰っただろうかという疑問があるわけですよね。
ということは、やはり日本がやるべきことって何だろうと考えていくと、グローバル、日本の特殊性ですよね、軍隊を持たないという、そういった立場を十分に活用した上で、そして日本の持っている武器というのは専守防衛であって、皆さんと同じですと、攻められたら戦うけれども、それ以外は戦わない国ですというような、自分の立場というものを明快により出していくということが必要だと思います。
したがいまして、今回、防衛費のGDP比二%という、これ、はっきり言って丼勘定のような中身でしか私には見えません。こういったことによって、一体、じゃ、そういったグローバルサウスの国々から、日本ってどういう国かなと、どう見られているかということもよく考えなければいけないし、余りにもその立ち位置がアメリカの手下みたいに見えるようでは、これはやはり尊敬を集めることはできないと思います。
中国と対等に話ができる国であるはずですよね。これまで日中の間でたくさんの協定や条約などを結んできた、そういった中国との関係が本来良好であるべき国だという、そこの原点に立ち返った上で、そして中国との話合いを十分にできる国なんだと、そして軍事力というのは専守防衛のために使う国なんだと、そういったことを十分にアピールする、そういったことが本来求められているんではないか、そんなふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/64
-
065・神谷宗幣
○神谷宗幣君 ありがとうございます。
半田参考人にもう一つ聞きたいんですけれども、私も今回の武器の購入というのはちょっと無駄が多いんじゃないですかというふうに考えている人間です。アメリカの軍需産業ですね、まあ軍需産業だけじゃないんですけど、いろんな産業からいっぱい買わされているんで、しかも不当に高いといったことはしっかりと是正していくべきじゃないのかということで思っているんですが、ただ一方で、やっぱり防衛費をしっかり増強して国を守るということをしっかりとやっていくということにも賛同はしていまして、要は予算を何に使うかだということだと思っております。
半田さんでしたら、軍需産業の予算を削ったとして、武器を買う予算を削ったとしたらどういったことに使うべきか、簡単に、時間がないのでお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/65
-
066・酒井庸行
○委員長(酒井庸行君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/66
-
067・半田滋
○参考人(半田滋君) これは、項目は項目で、防衛費は防衛費で、日本を守るために必要なものはこれは削るわけにはいきません。したがって、どこかを増やすために防衛費を増やしましょう、削りましょうと、そういった考え方というのはちょっと取りにくいので、なかなかお答えすることは困難です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/67
-
068・神谷宗幣
○神谷宗幣君 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/68
-
069・堂込麻紀子
○堂込麻紀子君 財政金融委員を選任いただいている堂込と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、両参考人、貴重なお時間いただきまして、誠にありがとうございます。とても参考になりました。
まず、細谷参考人に御質問の方をさせていただこうと思いますが、今日触れていただいております国際社会の平和と安定のための一定の責任を日本としても果たすというお言葉は、まさに本当にそのとおりだなというふうに腹落ちをしておりますし、これまで、主要の民主主義の諸国、過去二十年、防衛費を増大させる努力をそれぞれしてきたけれども、日本は助走するにも財政力が伴わなかったということで、様々なこともあり、結果、日本国内の防衛産業も今しわ寄せが来てしまったという結果が起きているというのはすごく理解ができたなというふうに思っております。また、旧来型の装備においては、それを大事にずっと持ち続けるということもこれも無理があるというふうに私も理解、納得をしているというところでございます。
そこで、産経新聞のコラムの中で、外交と軍事は相互補完的で、適切に組み合わせたときに最も効果的で、かつ安全を確保できるというふうにおっしゃられております。今回、防衛三文書において、日本の今後の外交、また防衛施策の方向性について、相互補完的な役割という観点からして、細谷参考人の評価はいかがなものかというところをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/69
-
070・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) 堂込先生、貴重な御質問ありがとうございます。
おっしゃられたとおり、外交と軍事をいかに組み合わせるかということが私は日本の安全を守る上では鍵になっているということだと思いますが、先ほども少し触れましたとおり、やはり今回の国家安保戦略文書、元々国家安全保障戦略の文書は外務省、防衛省が中心になって、そして国家安全保障戦略で恐らく起草されたことと思いますが、この外交と防衛というものを、特に外交というものをまず最初に使うと。つまりは、紛争を回避し、日本の安全を守るために、まずは日本、外交手段に訴えると。
しかしながら、私は、先ほど申し上げたとおり、今の米中対立であるとかロシアの侵攻によって、外交というのは極めて機能しない時代になっている。さらには、各国共にポピュリズム、ナショナリズムが台頭し、それぞれの国内で強硬な意見が外交に転嫁されやすい。言い換えると、どの国も外交的な譲歩というものが政治的に困難となっている。そのことは、必然的に戦争はより起きやすい時代に入っているんだろうと思います。
したがって、外交と軍事を組み合わせるということの重要性を考慮するとともに、かつてと比べたときに今の世界が極めて外交が困難な時代となっている。しかしながら、一方で、近年の、ここ最近の日韓関係の改善に見られるように、私は、やっぱり外交によっていろいろな難しい問題を解決するということは、困難だけれども不可能ではないと。これからは、恐らく、ロシアとウクライナとの関係も長く戦争が恐らく続くんだろうと思いますが、ある段階から和平の問題になってくる。そうすると、戦争しながら外交によっていかにして戦争を終わらせるかということが重要な課題になってくると思いますので、平和の中にあっても軍事は必要であって、戦争の中にあっても外交は必要、この二つというものをやはりいかに組み合わせるかということが、やはりこれは政治の非常に重要な課題となってくるんだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/70
-
071・堂込麻紀子
○堂込麻紀子君 ありがとうございます。
日本の外交、防衛に関して、しばしば、米国追随であるというふうに批判をされることもしばしばございますが、近年、米国においても国内回帰、第一主義と、国内第一主義ということもありまして、いわゆる世界の警察官的な役割を放棄したのではないかというような指摘も散見されるような状況です。
こうした米国一極とは言えない状況の下で日本政府の外交、防衛における基本姿勢をどのように維持していけばよいのかというところを、是非、細谷参考人の方からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/71
-
072・細谷雄一
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
安保法制のときにも私はこちらで参考人としてお話をさせていただいたときもございましたが、二〇一三年に、実は国連総会で、八十を超える総会決議の中で、実は日本は、アメリカの同盟国の中でフィリピンに次いで最もアメリカと同調していない国なんですね。ですから、一般的なイメージ、日本は常にアメリカに同調しているということで、大体イギリスやフランス、オーストラリアなどが八〇%前後国連総会決議でアメリカと同調しているのに対して、日本は六八%程度ということで、実は三分の一はアメリカと異なる姿勢を示している。
これは、例えば核不拡散の問題に関しても、アメリカ、イギリスは核保有国ですが、日本はむしろ核不拡散ということに対して強いコミットメントをしている。それだけではなくて、実はアジアの諸国、アフリカの諸国との橋渡しをするということを日本は随分古くから外交の中で実践してきたと思っています。
ですから、一般的なイメージで、確かに日本は大きな声を出してアメリカとけんかをするようなパフォーマンスはしていないと思いますが、私は、水面下では日本の外交というものが、実は一般的に思われているよりもはるかにアメリカに対して異議を唱え、そしてアメリカとは異なる姿勢によって外交を進める、その象徴が例えばCPTPP、アメリカ抜きでもこれを実現し、そしてアメリカの中で一部の懸念が見られながらも日EU・EPAという最も大きな経済圏をつくる、これらはアメリカ抜きで日本が進めたものでございますし、RCEPも、アメリカが入らない中で、中国や韓国とともに貿易圏をつくっていると。
一般的に考えられるよりも、日本ははるかに私は自主的な外交を展開し、そのことが、国際社会での実は日本の信頼というもの、アジア、アフリカ諸国における、日本は欧米とは異なる姿勢を示しているという意味での信頼、これを私は、今後、陰りがないように、こういう日本の外交の強みというものは大切にしていくべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/72
-
073・堂込麻紀子
○堂込麻紀子君 ありがとうございました。
続きまして、半田参考人の方にお伺いをしたいと思っております。
先ほど四十三兆円防衛費の積み上げというところのお話もありましたけれども、香田洋二元自衛艦隊の司令官のお話もあったように、身の丈に合ったものになっていないのではないかというところが私も一番気に掛かっているところでございます。まさに現場の声が今通っていないのではないかというところと、自衛官の皆さん、今、既存の方いらっしゃいますけれども、そうした方が新たなまたものを持たされて、今、既存の人数、限られたものである中で、それが本当に身の丈に合っているのかというところは本当に考えなきゃならないところだなというふうにまさに思っております。
そこで、既に税制措置で賄うことが決まっている部分以外の歳出改革、また税外収入による調達を予定しているという部分についても、その実現に懐疑的というふうに思っていらっしゃると、半田参考人は思っていらっしゃると思うんですが、その歳出である防衛費の水準自体、それと、それに見合った形で必要とされるその財源の形というところがどのようなものが望ましいというふうに思われているのかというところをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/73
-
074・半田滋
○参考人(半田滋君) そもそも我が国の国家予算の当初予算でいえば、七割が税収で三割が国債で成り立っているわけですよね。それをそれぞれの予算に区分していくと、やはり防衛費の中にもう既に国債部分というのは入っているのかもしれないというふうに考えられると思います。
したがいまして、防衛費を健全にしていくというためには、本来、全額税収で賄っていくことがふさわしいわけですけれども、今回のようにいきなり十七兆円も上乗せすると、しかも、もう既に二〇二七年度には四兆円不足するということが分かっていると。これらを本来、先ほど申し上げたとおり、岸田首相は昨年の時点では、内容、予算、財源を一体で議論すると言っていたわけですよね。それを議論をした結果、今その税収が一兆円程度しかないとすれば、三兆円どうしましょうかと。結局、財源については余りお考えではなかったんだなと。
何より、去年の今頃でもうこの安保三文書の改定が行われるということは分かっていたわけですから、国会の中で防衛力強化の中身を問われてそういったことを言うんではなく、むしろどういった方面にお金が使えます、財源はこういうものがあり得ますということを一年前に本来はやるべきだったと私は思っています。そこをやらないで、国会、臨時国会が閉じて一週間もたたないで閣議決定で防衛力強化の中身と予算だけを決めてしまったと。この在り方というのは、本来、民主主義の、議会制民主主義のありようとして好ましいとは到底思えないわけですね。
したがって、閣議で決めたものを今になって議会の皆さんでお諮りをして、財源をどうしましょうということを今やっているわけですけれど、はっきり言って本末転倒と言うしかないです。更に言えば、本来、去年の今頃の議会でその内容について、そして掛かる予算について、本来もっと議論すべきだったと思います。それを今になって財源だけどうするということをやるというのは、これは皆さんに重荷を背負わせられていると、国会に対して内閣がその重荷を背負わせているのが今なんだということなんだと思います。
ですから、まあ手遅れだというふうに言ってしまえばそれまでなんですが、今からでも、要するに、今回十七兆円って何で掛かるんだということをいま一度立ち止まって見直すということが必要なんですね。何でいきなりアメリカ政府との契約額が一兆四千億円を超えるんですかと。まとめ買いをするからそこにコスト削減があるんですって防衛省は言うでしょうが、それだけのものが必要ですかということをちゃんと問わなきゃいけないし、いきなり三種類もの長射程のミサイルを同時開発、量産して本当にできるんですかということもちゃんと聞かないといけないですよね。
何より恐れているのは、今回、あの防衛力整備計画、今までは中期防衛力整備計画といって五年間で見直す計画が、今後十年になったんですね。この十年といっても、別表を見ると、あの別表の中で自衛官って一千人しか増えていないんですよ。今回、たくさんの兵器が新しく入ってくる中で、スクラップ・アンド・ビルドで本当に一千人だけでいいんですかと。サイバー要員でも、現在数百人しかいないのに、二万人になるんですね。これで本当に集まりますかと。自衛官の予算で、高給取りになるであろうサイバー要員たちが集まるはずないじゃないですかと。ちゃんと一つ一つ丁寧に見なきゃ駄目なんですよ。丼勘定じゃ駄目なんですよ。これは赤字国債を発行しても駄目だし、妙に税制を偏らせても駄目なんだと。だから、ちゃんと議論するのがこの場というふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/74
-
075・堂込麻紀子
○堂込麻紀子君 ありがとうございます。私のもうお話ししたいことをまさに半田参考人から多くお話しいただいたなというふうに思っています。ありがとうございます。
最後に、政策提言としておまとめになっている「戦争を回避せよ」の中で、日本の安全保障論議が戦争のリアリティーに基づいていないというふうに御指摘もあったというふうに伺っています。これ、政治側の問題というところとともに、国民にとってもより自分事として安全保障政策を受け止めなければならないといったことを意味しているというふうに思われます。
そのような環境を醸成していくために、政治側の責任として何が必要であるかというところを、是非、半田参考人の方からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/75
-
076・半田滋
○参考人(半田滋君) やはり、真剣に外交することだと思いますね。今まで何回か言葉として安心供与という安全保障上の用語が出てきていますけれども、我が国は、中国に対して、そして台湾に対して、またアメリカに対して、あるいは韓国や北朝鮮やASEAN諸国に対して安心供与をしていますかということを、まず自分の足下を見なければいけないと思いますね。必ずしもこの軍事力強化が日本の好戦的な姿勢に変わったということじゃないんですよということの説明がまず必要ですよね。
安全保障政策の大転換って岸田首相おっしゃっているけれども、その大転換の意味ってちゃんと話していますかということだと思います。少なくともこの通常国会の中で、敵基地攻撃の対象について、野党の皆さんが指揮統制機能を含むのか含まないのかと聞いても、それは相手国に手のうちを明らかにすることになるから言えないと言ってお答えにならないですよね。また、一体じゃ敵基地攻撃の着手って何をもって着手とするんですかと聞いても、岸田首相のお答えは同じですよね。相手国に手のうちを明らかにすると。
しかし、相手国ってどこなんですかと。つまり、相手国というのは日本の周辺にある国でしょう。つまり、それらの国は日本を信用していますかということですよね。憲法を一字一句変えないで攻撃的兵器ばかり買いそろえる国に変わっているでしょうと。あなたたち、何をやろうとしているんですかということをちゃんと説明しなければいけない。つまり、外交を通じての安心供与が今欠かせない。それを是非やっていかなければいけない。
これは別に、はっきり申し上げて内閣だけの仕事ではないと思います。やはり国会議員の皆さんにとってもとても大事な仕事であるというふうに私は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/76
-
077・堂込麻紀子
○堂込麻紀子君 ありがとうございます。私も仕事をいただいたというふうに思って、また更なる議論をさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/77
-
078・酒井庸行
○委員長(酒井庸行君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様には、大変貴重なお時間をいただき、長時間にわたり御意見をいただきまして、ありがとうございました。両委員会を代表しましてお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
それでは、本日はこれにて散会をいたします。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121115372X00220230606/78
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。