1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和五年十二月五日(火曜日)
午前十時七分開会
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委員の異動
十二月五日
辞任 補欠選任
末松 信介君 田中 昌史君
斎藤 嘉隆君 勝部 賢志君
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出席者は左のとおり。
委員長 高橋 克法君
理 事
赤池 誠章君
赤松 健君
今井絵理子君
蓮 舫君
伊藤 孝恵君
委 員
上野 通子君
臼井 正一君
末松 信介君
田中 昌史君
高橋はるみ君
橋本 聖子君
本田 顕子君
勝部 賢志君
古賀 千景君
宮口 治子君
下野 六太君
安江 伸夫君
金子 道仁君
中条きよし君
吉良よし子君
舩後 靖彦君
国務大臣
文部科学大臣 盛山 正仁君
副大臣
文部科学副大臣 青山 周平君
事務局側
常任委員会専門
員 武蔵 誠憲君
参考人
国立大学法人東
京医科歯科大学
学長 田中雄二郎君
総合科学技術・
イノベーション
会議常勤議員 上山 隆大君
北海道大学大学
院教育学研究院
准教授 光本 滋君
金沢工業大学大
学院教授 高橋真木子君
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本日の会議に付した案件
○国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/0
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001・高橋克法
○委員長(高橋克法君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。
理事会が延びてしまいまして、大変定刻を過ぎて御迷惑を掛けました。申し訳なく思います。
委員の異動について御報告いたします。
本日、斎藤嘉隆君が委員を辞任され、その補欠として勝部賢志君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/1
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002・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。盛山文部科学大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/2
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003・盛山正仁
○国務大臣(盛山正仁君) この度、政府から提出いたしました国立大学法人法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
国立大学法人は、それぞれの強みや特色を生かして、教育、研究、そして、その成果を生かした社会貢献に積極的に取り組んでいます。最近では、国際卓越研究大学制度の創設や地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの策定など、様々なステークホルダーとともに、研究力の強化に向けて大学の活動を充実させる政策を進めているところです。そのような中で、大学の大きな運営方針の継続性、安定性を確保することや、多様な専門性を有する方々にも運営に参画いただくこと、また、大学の自律的な財務運営を支えるためにも、規制を緩和することが必要です。
この法律案は、このような観点から、国立大学法人等の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図るため、事業の規模が特に大きい国立大学法人についての運営方針会議の設置及び中期計画の決定方法等の特例の創設、国立大学法人等が長期借入金等を充てることができる費用の範囲の拡大、認可を受けた貸付計画に係る土地等の貸付けに関する届出制の導入等の措置を講ずるとともに、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合するなどの措置を講ずるものであります。
次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一に、事業の規模が特に大きいものとして政令で指定する国立大学法人には、中期目標についての意見、中期計画の作成、予算及び決算の作成等に関する事項の決議、中期計画等に基づく法人運営の監督、学長選考・監察会議に対する学長選考に関する意見の陳述についての権限を有する運営方針会議を置くこととしております。また、その他の国立大学法人も、長期かつ多額の民間資金を調達する必要があることなどの特別な事情により、体制強化を図る必要があるときは、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を置くことができるとしております。
第二に、国立大学法人等が長期借入金や債券発行できる費用の範囲について、現行制度上可能である土地の取得、施設の設置、整備、設備の設置に加え、先端的な教育研究の用に供する知的基盤の開発、整備についても可能とすることとしております。
第三に、国立大学法人等の所有する土地等の第三者への貸付けについて、あらかじめ文部科学大臣の認可を受けた貸付計画に基づいて土地等の貸付けを行う場合には、現行制度上、個別の貸付けごとに必要となる文部科学大臣の認可を要せず、届出によって行うことができることとしております。
第四に、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合し、国立大学法人東京科学大学とすることとしております。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/3
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004・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
速記を止めてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/4
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005・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 速記を起こしてください。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/5
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006・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
国立大学法人法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に国立大学法人東京医科歯科大学学長田中雄二郎君、総合科学技術・イノベーション会議常勤議員上山隆大君、北海道大学大学院教育学研究院准教授光本滋君及び金沢工業大学大学院教授高橋真木子君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/6
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007・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/7
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008・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、田中参考人、上山参考人、光本参考人、高橋参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず田中参考人からお願いいたします。田中参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/8
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009・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) 田中でございます。
おはようございます。東京医科歯科大学学長の田中雄二郎でございます。
まず、私たちの大学等が含まれている法案を御審議いただいておられる当事者の一人として、心から感謝申し上げます。
また、今日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございます。せっかくの機会ですので、当事者として、本学と東京工業大学の法人統合に絞って私見を申し述べたいと思います。
資料を御覧ください。資料の二ページを御覧ください。こちらが資料になります。
これまでの経緯を御説明申し上げます。
令和三年の秋に、今から二年少し前になりますが、本学から東京工業大学に統合を打診し、令和四年春に統合形態について東工大、東京工業大学から具体的な提案があって、ここに記されているとおりの経緯で今に至っております。
次のページ、三ページを御覧ください。
一法人複数大学の先行事例もありましたけれども、私たちは一法人一大学を選択することといたしました。つまり、両大学は一つの新しい大学になるということです。一法人一大学を選択した理由は、両大学に重なる学部がないこと、メインキャンパスが電車で三十分程度と比較的近接していることから、統合した方がより多くのシナジー効果が得られると考えました。
次のページ、四ページを御覧ください。
統合に至った背景について御説明いたします。
これまで両大学は、指定国立大学法人として広く理工学及び医歯学に関する知見を創出して、自在に応用できる人材の育成を通じて、産業の発展と医療の進歩を牽引してきたと自負しております。
しかし、人類は、これまで想像し得なかった地球環境の悪化や新興・再興感染症の世界的流行、少子高齢化の急速な進行など様々な課題に直面しています。これらの地球規模の課題や今後起こり得るであろう未知の問題の解決に向けて、両大学はその知を結集して、より大きな役割を果たすことが社会から期待されていると認識しております。
資料五ページを御覧ください。
これは経済産業省の大学発ベンチャー実態調査の資料です。少し字が小さいですが、縦軸は会社の数であり、横軸は過去五年間順番にどうなっていったかということを示しています。バイオヘルスケア分野は、その赤枠で囲ったところですけれども、IT分野とともに過去五年間でベンチャー数は急速な伸びを示しています。
下段に示す横長の棒グラフですけれども、これはその割合を示していますけれども、バイオヘルスケアだけでもその数は三割近くに及び、医療機器や素材、IoTなどを含めると、二つの大学で統合する、カバーする領域は八〇%を超えるというもので、極めて大きいことが分かっています。このように、カバーする大学発のベンチャーが多いということは、単に外部資金の獲得が増えるということにとどまらず、社会貢献の度合いが大きくなると考えました。
次のページ、資料六ページを御覧ください。
このような背景から、両大学のこれまでの実績、伝統と先進性を生かしながら、統合によってかつてどの大学もなし得なかった新しい大学の在り方を創出することを目指すこととしました。このために、両法人の統合と新しい大学の設立を実現し、国際的に卓越した教育研究拠点として、社会とともに活力ある未来を切り開く決意を固めました。これが統合の目的になります。
次のページ、七ページを御覧ください。
新大学の目指す姿については、大きくは四点について合意しております。
まず、一点目としては、両大学のとがった研究を更に推進することです。研究者にそれぞれの興味に根差した研究を行える環境を提供します。
二点目としては、医師、理工学、さらにはリベラルアーツ、人文社会科学を含む様々な学問領域が自由な発想で融合するコンバージェンス・サイエンスを展開することです。
三点目としては、高度専門人材、特に博士人材の輩出です。教養教育と専門教育を有機的に関連させた総合知の教育を充実させます。これにより、真に解決すべき課題を設定でき、その解決を導く人材を育成します。
四点目としては、構成員に高度なダイバーシティーを実現することです。この下で、世界に開かれた知の創造と人材育成の場を構築したいと考えています。
次のページ、資料八ページで、新大学のキーワードであるコンバージェンス・サイエンスについて御説明いたします。
下段のように、現時点で私たちはグリーンテクノロジーから再生医療に至るまで幅広い分野で先端的な研究を展開していますが、統合によって、中段にあるように、地球環境、ウエルビーイング、トータルヘルスケアという社会課題に直結する新しい研究領域をつくることができると考えています。上段のように、さらに未来は、社会課題を率先して発見し、柔軟に新しい学術領域を創成して、社会とともに解決する大学であり続けたいと考えています。
次のページ、資料九を御覧ください。
コンバージェンス・サイエンスを実現するために知の循環を重視します。
スライドの下に、総合研究院と書かれた枠がありますけれども、この研究院をつくり、異分野融合の研究が研究者同士の交流から自然発生的に生まれるように大学で支援します。研究者同士が交流する場を創設することによって自然発生的に生まれるということを期待するわけです。
それに対して、スライド上にある未来社会創成研究院、これも新しくつくるものですけれども、大学が重点領域と考えた分野にインセンティブを用意して、医工連携を始めとする異分野融合の研究を促進する予定です。要は、言わばミッションで動いていくという、そういう研究院です。
さらに、社会実装が近づいた段階では、これも新設ですが、新産業創成研究院というものをつくり、そこで企業とともに実用化を図っていきたいと考えています。特に、医工連携については、医療工学研究所の設立を考えています。
次のページ、十ページを御覧ください。
大学病院は診療報酬に依存する今日の医療だけで財政的にも精いっぱいな現状があります。本学附属病院は、コロナ重症患者を当初から多く受け入れた病院で、社会からも大きな評価をいただきました。それは私たちの励みとなっています。しかし、ワクチンを含め、新たなコロナの治療薬の開発ができたわけでは残念ながらありません。明日の医療にまでは十分手が回らなかったということです。
この反省を踏まえ、新大学では、明日の医療を支える研究と人材開発を積極的に行うため、財政的にもこの部分を別会計にする予定です。別会計の財源は産学連携等の外部資金に求める構想となっています。
資料十一ページを御覧ください。
さて、新大学において、従来の日本の大学が陥りがちであった閉鎖的な組織文化を完全に払拭したいと考えています。本来アカデミアが持つべき自由でフラットな人間関係を構築することが極めて重要であると考えています。その下で、精神の余裕を取り戻した構成員による広く社会に開かれた創造空間を構築したいと考えています。
その実現に向けて、一点目は、全ての構成員の専門性と役割の尊重です。教員、職員、学生の別にかかわらず、一人一人が自らに誇りを持ち、お互いをリスペクトし協調できる組織文化を目指します。二点目は、試行錯誤を恐れず、イノベーションに挑戦する文化の醸成です。三点目は、大学の構成員自身のウエルビーイングの実現です。大学の構成員自身が余裕を取り戻すこと、それが自発性を生むことになり、大学の知の創出の源となるために必要不可欠であると考えています。
資料十二ページを御覧ください。
先ほど、構成員にチャレンジすることを、そういう文化をつくりたいとお話ししましたけれども、大学自身も常に変わり続ける組織でありたいと考えています。時代に先駆けた研究、教育、経営ポートフォリオの不断の見直しと、ポートフォリオに基づいた研究教育組織の改革、財務戦略の策定、病院事業の改革が重要で、それらを実現するために、学内の教育、研究、診療現場からのフィードバック、社会情勢を踏まえた運営の観点からのフィードバックが重要だと考えています。
次、十三ページです。
細かい数字が並んでいますが、要は、両大学が統合することで、職員数、経常収益が二倍の規模となり、研究実績なども国立大学の上位五位に入ることになります。しかし、我々は、一プラス一が二ではなくて三にも四にもなるような統合を目指したいと思っています。
次のページ、十四ページを御覧ください。私たちがそれが可能だと思う理由をお話しさせていただきます。
東工大に行きますと、東工大のキャンパスの一番手前の建物に二二〇〇年までの未来年表が掲げられています。未来から今を考えて研究するという姿勢がよく分かります。他方、医科歯科大学では、病院における目の前の患者さんから研究が始まります。言わば、今から未来を考える視点です。このように、バックキャストとフォーキャストの視点が融合することで、単に理工学と医歯学が交わる以上の効果が期待できると考えています。そして、その視点で社会とともに課題を解決していきたいと考えています。
最後ですけれども、大学統合に当たっての要望を申し上げたいと思います。
これからも社会の変化に伴い様々な理由で統合を目指す大学が出てくるのではないかと思います。そのような大学のためにも、大学統合が行いやすいように、このページにある二つの点について御配慮をお願いしたいと思っております。もちろん医学科のように国レベルで定員管理している学科は別ですけれども、現在の分野別の大学ごとの厳格な定員管理は、例えば入学後の進路変更の妨げにもなり得ます。学生の定員管理の柔軟化を今後御検討いただきたいと思います。
また、世の中の変化に迅速に対応できるように、これまでの学生総定員の中であれば、その大学に許されている学生総定員の中であれば、新たな学部の創設や再編等の取組を行うことが必要になると思います。その際には設置審での様々な手続がありますけれども、できる限り軽減していただければ有り難いと思っています。
また、統合前後は教学管理システムや労務管理システムなどの統一が必要になります。これには非常に経費が掛かることが予想されています。科学大学でも、様々な統一作業は統合後も数年は掛かると見込んでいます。統合に関する一定期間の予算支援をお願いしたいのです。これによって、ほかの大学も統合を考えたときに、それに対してちゅうちょすることがなくなるのではないかというふうに思っております。
以上で私の陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/9
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010・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 田中参考人、ありがとうございました。
次に、上山参考人にお願いいたします。上山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/10
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011・上山隆大
○参考人(上山隆大君) おはようございます。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議、我々CSTIと呼んでおりますけれども、そこの常勤議員をしております上山でございます。
このような機会をいただきまして、今回、国立大学法人法の改正についての御審議をいただくと伺っており、この間、数年間にわたってCSTIと文科省で図ってきた政策の最終的な形として法案に至ったということを大変有り難く思っております。このような形で意見陳述をさせていただくことは、この法案の成立に向けての大きな一歩となると思いますので、是非とも御審議をいただきたいと思っております。
この数年間、文科省と一緒になりまして、内閣府のCSTIでは、この法律の背景にある国際卓越大学制度、十兆円のファンドを動かしながら国際卓越大学を制定していくというスキームをつくってまいりました。同時に、それと補完する形ではありますけれども、地域中核・特色ある研究大学振興パッケージというものをつくり、トップ層の大学のみならず全ての国立大学に、あるいは私立大学、公立大学も含めて支援をしていくという背景をつくってまいりました。
このような動きの中の背景を二つほど申し上げます。
まず一つは、二〇〇四年の国立大学の法人化以来、国立大学に対する運営費交付金は毎年一%ずつ、十二年間にわたって削減を徐々にされてまいりました。もちろん、その資金というのは競争的資金へとして、決して全体としてのフレームワークは変わりませんけれども、国立大学の自由に使える運営費交付金というものが毎年一%、十二年間にわたって削られていったということは、大学のパフォーマンスを考えるときには非常にシリアスな問題であると考えたのが一つの背景でございます。
もう一つは、各国のトップ層の大学の研究あるいは教育のシステムががらがらと大きく変わりつつあるこの二十年間を見据えなければいけないということでございました。例えばトップ層でいうとスタンフォード、ハーバード、MITといったところですね、に対する国家の支援は急速に伸びております。全般として、世界のどの国においても、アカデミア、大学、研究に対する国家的な投資というのは確実に増えている、しかもまた、その増え方が加速度的に増えているという現状でございます。
同時に、国由来の資金だけではなかなか手当てのできない非常に複雑な研究と教育の在り方に関して、例えばハーバード大学は独自の基金を一九七〇年ぐらいから積み上げてまいりまして、今大体六兆円ぐらいの独自の基金を持ち、その基金を世界中のマーケットに投資をして、毎年九%ぐらいの利益を上げ、そのうちの五%を必ず大学の研究と教育、フェローシップ、学生への支援に向けるということをやっております。すなわち、毎年国由来の資金でないものが二千億から三千億円ぐらい各大学に入っているという現状でございます。この間、各国のトップ大学は、その財務構造を見ますと、ほぼ大体毎年七%ぐらいの勢いで確実に伸展をしている。七%で伸びるということは、十年たつとその大学の財務構造がほぼ倍になるという激しい勢いで各大学の、各トップ大学の競争力を高めているという現状でございます。
翻って、我が国の研究大学、いわゆるトップ、大型大学を見ますと、相変わらず運営費交付金と僅かな民間からの資金を得ながら、東京大学、例えば例を挙げますと、年間の財務が大体二千五百億円でございます、これは病院収入も入れてですが。例えば、私のよく知っているスタンフォードなどですと、今もうほぼ一兆円に迫ろうとしています、年間の予算がですね。これがこの十年間でほぼ倍になりました。この倍になる勢いというのは、もちろん国家による公的な税金由来の資金が入ったということもありますが、同時に、スタンフォードで今大体四兆円から五兆円ぐらいの基金を持って、かつ寄附を拡大させながら、財務構造を健全化させているという現状でございます。
果たして我が国においてそのようなトップ大学は何校必要なのか、あるいはあり得るのかということについてはいろんな議論がございますが、恐らくは五校から八校ぐらいの間の研究大学が世界におけるトップトゥエンティーに入り、そういったトップ校と競争していき、様々な大学からのリクルートメントで研究者を引き抜きながら競争しているという現状に対して、どのような方策を我が国のトップ研究大学はなすことができるのかということが問題の背景としてございました。
もしハーバードやスタンフォードが数兆円規模の研究基金を持っているとすれば、それを到底各大学が今の現状ですぐに確保することができない。だとすれば、その彼我の差を埋めるためにも十兆円規模の基金をつくって、その基金を国として回して、国として投資の仕方をモデルをつくって、各研究大学にそのモデルを引き受けてもらうと。そのためのある種の種銭としての十兆円を考えてほしいということが我々の希望でございましたし、同時にそのことを文部科学省では非常に切実に強く受け止めていただいて、タッグを組んでこの十兆円規模の国際卓越大学用のファンドというのをつくったところでございます。
同時に、先ほど第一点と申し上げましたように、トップの研究大学だけではなくて、全ての研究大学に対してのやっぱり研究支援を国家としてやるべきだということの中から、改めて財政当局と図って二千億円の資金をつくったところでございます。今この二千億円については六十九校の大学が申請を出してきて、今申請の審査の最中でございますが、先般二十七大学に絞り、さらにまた、恐らくは十三大学ぐらいまで絞ることになると思いますが、その目的というのは、トップ層の支援する研究大学のみならず、幅広い国立大学、公立大学、私立大学にも視線を向けながら、研究の在り方、教育の在り方に対して国家的な支援をしていくというフレームワークでございました。
このようなことを考えますと、我が国の研究大学あるいは大学に置かれている世界における環境は極めて劣後していると思います。
かつ、世界中の国々がなぜ大学にこれほどの資金を入れるようになったかと申し上げますと、それは、明らかに全ての国において知識基盤型の社会がもう到来をしているということです。従来のような産業社会ではなくて、新たな知恵を生み出し、新たな人材を生み出し、新たなスタートアップ企業を生み出していって、そして社会の負託に応えることができるような大学をつくっていく、そのためにも国家的な投資を拡大しなければいけないという背景があったと思います。言わば、その知識基盤型社会における大学の在り方を考えますと、単に十八歳の学生がやってきて、四年間、企業に行くまでの間の教育をやっているという大学の形では、到底世界の中でのこの劣後環境を改善することはできないと強く信じております。
そうすると、単に大学の研究者だけが考える大学でいいのか。社会の負託に応えるためにも、様々な社会の声を大学の中に引き受け、その声を大学のシステムの中に反映するような第三者のアドバイスが必要だろうと考えたことも事実でございます。それは何も第三者が大学の自治を侵すということではなくて、むしろ大学の在り方、研究の在り方、教育の在り方に関して幅広い社会のステークホルダーの声を反映させる組織として、運営協議体、日本もつくるべきだと考えたことは事実でございまして、それは、とりわけトップ層の大学についてはこれは国際的に活動をしていかなければいけませんから、そのステークホルダーというのは、単に国内のみならず、海外のステークホルダーの声も反映するような第三者委員会が必要だろうと考えました。
しかしながら、これは単にトップ校だけではなくて、恐らくはこのような意識を持っている大学は今後増えていくだろうと、そのような大学をサポートするような組織体というのもあり得るかもしれないと考えたことは事実でございます。今回の国立大学法人法の中でその範囲が広がり過ぎているという声があるとは理解をしておりますが、我々は、基本的にこれは国際卓越大学のフレームワークの中で考えたことでございまして、それが、そのような方向が正しいと考えられる、お考えになるような、国立大学においても同じようなシステムが広がっていくかもしれない、それはそれぞれの大学の御判断に任せるべきだというふうに考えております。
その意味で、しばしばなされるような大学の自治を侵すとか、あるいは学問の自由を侵すということはかけらも考えたことはございません。むしろ、このような潤沢な資金をもって国家がサポートをし、あるいは幅広い社会のステークホルダーがサポートすることによって大学の自治が守られる、あるいは学者の自由が守られる、そのような方向性をずっと探ってまいりました。
外部の運営方針会議なるものができますけども、この運営会議は、先ほど申し上げましたように、幅広い社会の声を反映させる一つのメカニズムにすぎない。また、その運営会議の在り方に関しては、大学の中における教員、学生の方々の声が反映されて決まっていくものですから、最終的にはそれは大学の自治の中できちんと担保されるはずだと強く信じております。最終的にその方向性が大臣によって承認されるという構造についても様々な議論があるとはお伺いしておりますけども、これは今の国立大学においても最終的に学長の承認についてはやっぱり文科大臣の承認が必要だということになっておりますので、そのことの整合性については、新しいシステムとこれまでのシステムとそれほど大きな差異はないだろうというふうに考えてございます。
また、特定大学あるいは準特定大学という用語が飛び交ってあるとは聞いておりますけども、これは何も大学を二つに分けるとか三つに分けるということを恐らくは文科省はお考えになっておられないと思います。CSTIの中ではそのような議論をしたことはございません。
私たちのところでは、まずは特殊、非常に強い研究大学をつくる、そのためのファンドを形成をし、それに重点的な支援をし、かつそれを多くの大学の中にその成果を広げていくということだけを考えておりまして、その意味では、今回の国立大学に関する法人法が順当に成立することによって、改めて、今既に始まっております国際卓越大学のフレームワークを更に前に進めていき、そしてまた、そのような大学だけではなくて、幅広い研究大学、あるいは教育大学、あるいは地域に対して大きな貢献をなすような大学に対しても国家としての支援を広げていっていきたいと、あるいは広げていっていただきたいと、こういう強い希望を持ってございます。
この間のプロセスについては、できる限りトランスペアレンシーを持って、透明感を持って様々な関係者に対して御説明を申し上げてまいりましたし、CSTIの中でも専門調査会を開き、その中でも多くの方々に来ていただいて、御批判をいただきながら、国際卓越大学のフレームワークをつくったところでございます。
でも、やはり何十万人といるそれぞれの研究者の中には様々な御疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますので、今後はこのプロセスを推進していくとともに、できる限り多くの大学の関係者、教職員、学生たちとも対話を重ねながら、私たちが意図していること、あるいは文科省とともにやってきたフレームワークが決してこれまでの大学のシステムを壊すものでもないし、むしろ我々は強い応援団としてアカデミアを支えていきたいと、大学あるいは研究者、学生たちに対する強い応援団であっていきたいと思って、このシステムを進めてまいりました。
今回の国立大学法人法の改正というのは、その最終的なメルクマールでございますので、是非とも先生方には真摯な御検討をいただいて、この法案に対して積極的な御賛同を賜れば大変有り難いと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/11
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012・高橋克法
○委員長(高橋克法君) ありがとうございました。
次に、光本参考人にお願いいたします。光本参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/12
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013・光本滋
○参考人(光本滋君) おはようございます。光本滋と申します。
私は、北海道大学大学院教育学研究院の教員です。専門は教育学です。特に関心を持っておりますのは、青年期以降の教育です。教育は人格の完成を目指しという言葉が教育基本法にありますけれども、このような教育を高等教育にも実現していきたい、高等教育において人格の完成を目指せるような教育を実現していけるような大学法制の在り方について探求しております。
さて、本日は、参議院文部科学、失礼しました、文教科学委員会におきまして、参考人として意見を陳述し、また委員の皆様の質問に答える機会を賜りましたこと、お礼申し上げます。
と同時に、参議院だけでなく衆議院を含めた本国会の審議の状況に関しても一言申し上げたいことがございます。
国立大学法人法の一部を改正する法律案は、十月三十一日に閣議決定され、国会に提出されました。法案は既に衆議院本会議で可決されておりますが、昨日確認しましたところ、衆議院のホームページに掲載されている本会議の議事録は十月二十三日までのものでした。文部科学委員会の議事録は十一月一日までのものでした。本法案の審議に関する議事録は、いまだ一切公表されていないわけです。しかし、参議院の法案審議も始まってしまいました。なぜこんなに急ぐ必要があるのか。参議院の審議は、参考人だけでなく、多くの大学関係者、国民が衆議院の審議の状況を知り、更に検討すべき点などについて意見を持つようになってから始めるべきなのではないでしょうか。おまけに会期末は十二月十三日です。残り期間に十分な審議を行うことは非常に難しいのではないでしょうか。
また、法案自体にも問題があります。詳細は省きますが、本法案、大変複雑な構造になっておりまして、全体が大きく二つの部分に分かれているんですね。この二つをつなげないと法案が理解できないんですが、そういった資料が実はないのです。仕方がありませんので、私は二つの部分を一本にまとめて、条項の番号も整理して、自分で整理したんです。果たして委員の皆様はどのようにして法案の全体像を理解されていますでしょうか。
昨日の午後、昨日です、参議院の事務局から国立大学法人法の一部を改正する法律案、閣法第一〇号参考資料、ここに、机上にあるものと同じですね、というのが送られてきました。ありがとうございます。
その中には、本法律案の概要というのがあって、条文の解説や関連資料も載っているので理解の助けになりました。しかしながら、ここにも改正後の法律を一本にまとめたものはありませんでした。
このような状況で、果たして法案を理解し、きちんと審議することができるのでしょうか。会期末までに法案審議を終結させてしまってよいのか、良識の府と呼ばれる参議院の文教科学委員の皆様には是非考えていただきたいと思っております。
さて、法案、本題に入ります。
私、本日ここに参りますまで、本法案の内容、どのような方が作ったのか分かりませんので、ひょっとしたら内閣府の意向もあるのかなとかいろいろ考えていたのですが、今の上山参考人のお話を聞いて、伺いまして、それもちょっと違うのかなと少し混乱しております。
法案の問題点につきましては、衆議院でも既に指摘されている点も多々ございます。本日は時間限られておりますので、ここでは三点に絞って指摘したいと思います。
率直に申し上げて、本法案を作った方は国立大学法人法制というものを理解していない、ないしは関心がないのではないかというふうに思っております。そういったことが浮き上がるのではないかというふうに思っております。
さて、第一の問題です。運営方針会議を置く国立大学法人を政府が指定するということです。
先ほど、上山参考人は、国際卓越の制度が広がっていくことがあるかもしれない、しかし、それはそれぞれの大学の御判断に委ねるべきとおっしゃいました。私も全くそのとおりだと思います。
ところが、この法案はそれと異なっております。国際卓越研究大学ですとかあるいは指定国立大学法人というものがございますけれども、いずれも、大学設置者、国立大学の場合は国立大学法人が応募し、文部科学大臣が認定や指定をすることになっております。つまり、大学側に選択の余地があるわけです。ところが、本法案では、運営方針会議の設置という国立大学法人のガバナンス体制の大きな変更を、当該の大学の意見を聞くこともなく、言わば上から決めているわけです。特定の国立大学法人の指定は政令によって行うわけですから、これを増やしたり認定を取り消すことも政府のさじ加減次第ということになります。
このような制度は、従来の国立大学法人制度との関係においても異常なものです。国立大学法人とは、中期目標期間の業務実績に対して評価を行い、評価結果を参考に組織、制度を見直したり、次期の中期目標、中期計画を策定していくことを根幹とする制度です。このこと自体にも批判はありますが、言わば政治主導により始められた国立大学法人化の議論が独立行政法人通則法をベースにした法人化の道を選んでしまったことから、現在の形に落ち着いたのです。そして、そのような中にあって、憲法上の要請である大学の自治を侵害しないようにするために、中期目標の策定や評価の方法に工夫を凝らしてきたのです。
ところが、今回の法案は、こうした国立大学法人の評価制度と関わりなく、国立大学法人の組織、この文言は改正後の目次にあります、の中に特定国立大学法人等の特例等を創設しようとしています。つまり、特定国立大学法人とは、従来の評価制度、国立大学法人法制を無視した、あるいはこれとは異質な制度なのです。
続いて、第二の問題です。
運営方針会議は、国立大学法人が自発的につくった場合でも重大な事態を生じます。法案では、運営方針会議は、運営方針事項、すなわち中期目標についての意見に関する事項、中期目標の作成又は変更に関する事項、予算作成に関する事項等を決議することにより決定するとされています。当然、現在の国立大学法人の諸機関が持つ権限を制約します。なぜこのようなことが可能になるのか。
盛山正仁文部科学大臣は、衆議院の審議において、今回の改正法案により学長の決定権限の一部を移譲する、つまり譲り渡すものだと説明なさっています。これは奇妙な論理です。国立大学法人の学長は、大学の長と法人の長という言わば二つの顔を持つ存在です。国立大学法人法を改正することにより学長の権限を移譲することができるとしても、譲り渡すことができるのは法人の長としての権限にとどまるはずです。
国立大学法人以外の独立行政法人、中期目標管理法人というのがありますが、ここでは法人の長が中期目標について意見を述べるということを規定していません。一方、国立大学法人法は、文部科学大臣が中期目標を策定する際に国立大学法人の意見を聞くことを義務付け、学長が中期目標に関する意見を述べる権限、すなわち中期目標の原案策定権を持つと定めています。これは、国立大学法人が他の独立行政法人と異なり、大学の教育研究の特性に配慮した仕組みとなっているためです。つまり、学長が中期目標の原案策定権を持つというのは、学長が法人の長だからではなく、そうすることが大学という組織にとって必要だからなのです。
このことについて、国立大学法人法が国会審議された当時の遠山敦子文部科学大臣は、委員会質疑の中で、中期目標に関する国立大学法人の原案への配慮義務を規定いたしました国立大学法人法案第三十条第三項は、教育研究の特性への配慮を定めた第三条と相まって、国立大学法人が作成する原案を最大限尊重するという趣旨であるというふうに考えておりますと答弁しています。
ところが、本法案では、第十一条第三項が定める学長が決定権限を持つ事項の第一号、中期目標についての意見の括弧書きというのがその中にあるんですが、この説明をこっそり書き換えています。これにより、学長が決定権限を持つのは、大臣に対して述べる意見、中期目標原案の内容ではなくなり、大臣に対して意見を述べること、つまり中期目標原案を提出する行為だけとなりました。そして、新設の条文、第二十一条の五第一号の方で、中期目標についての意見に関する事項の議決権を運営方針会議に与えています。
一方、運営方針会議の権限や組織に関しては、教育研究の特性へ配慮する規定は何もありません。衆議院の議論で明らかにされたように、民間企業の経営の実務経験がある人を委員として想定しているなどと言われています。
国立大学法人法では、教育研究評議会は、中期目標についての意見に関する事項、中期計画に関する事項に関する審議権を持っています。このことに関して、盛山文部科学大臣は、衆議院の委員会において、改正案が成立した場合には、中期目標に関する意見や中期計画の作成等については、経営協議会や教育研究評議会の審議などを経て学長が原案を作成し、その原案について運営方針会議が議論して決定することになりますと述べています。運営方針会議が原案について議論する。遠山文部科学大臣のように、原案を最大限尊重するとは言わないんですね。
このように、本法案が成立することは、国立大学法人法が制定以来保ってきた大学が持つ中期目標の原案策定権の意義を喪失させかねない、国立大学法制史上の重大事件だと言わなければなりません。
第三の問題。法案策定の経緯が不明であり、改正の必要が分からないことです。
既に述べたように、本改正法案は、国立大学法人のうち、規模が特に大きなもののうち政令で定める法人に対して運営方針会議の設置を義務付けるとしています。国際卓越研究大学制度と関わりなく、大学の自発性に基づくこともなく、特定の大学に合議体を設置させるという重大な方針変更は、いつ、誰によって行われたのでしょうか。
運営方針会議、最高意思決定機関としての合議体というアイデアは、先ほど上山参考人が申されました十兆円の大学ファンドを原資として助成を行う国際卓越研究大学に関する議論の中で生まれました。というよりも、国際卓越研究大学に限定した話でした。
二〇二二年二月にCSTIの最終まとめが公表されまして、ここでは、国際卓越研究大学に対して独自のミッションを与え、認定条件として最高意思決定機関としての合議体を置くということを提言しています。その後、この最終まとめを基に作られました国際卓越研究大学法が昨年の通常国会で成立しました。国際卓越研究大学法は、国際卓越研究大学の認定を受けようとする大学に対して、文部科学省令で定める基準に適合していることを求めています。そして、この法律の規定を受けて、省令により合議体の設置が必要とされているのです。
国際卓越研究大学法の法案審議、参議院の委員会において、当時の増子宏高等教育局長は、国際卓越研究大学は、多額の運用益が回ってくるということで、一人の学長だけではなかなかその辺の責任が果たせないだろうということで合議体を設けておりますので、その辺の、その他の国立大学法人につきましては通常どおり学長のリーダーシップで大学運営を図っていただくと述べています。
方針変更の経緯を示す文書は、一般の国民はもとよりですが、私ども大学教職員にも一切示されておりません。衆議院の参考人質疑で明らかにされたように、国立大学の学長、元学長の方々、本日見えられています田中参考人も衆議院の参考人質疑で申されておりましたが、ですら、法案の内容を知ったのはごくごく最近だというお話です。
したがって、国立大学法人法をなぜ改正しなければならないのか、私には分かりません。本日、私から質問することはできないと思いますが、もし御存じなら上山参考人に教えてもらいたいです。政府内できちんと審議、検討したのであれば、その過程を公表すべきです。それが行われない限り、本法案の立法事実は不明です。立法事実不明の法案を成立させることがあってはなりません。
最後に、法案が成立した場合に予想されることを述べます。
今から約二十年前、国立大学の法人化が行われました。当時、積極的賛成派と言えばよいか、法人化すれば国立大学は自由度が高まる、経営上のメリットがある、社会との積極的な交流が生まれると言っていた方々もいました。一方で、消極的賛成派あるいは容認派は、法人化によっても大学は変わらない、変えてはならないと言っていた。もちろん、当時反対していた方々もいました。
二十年たった現在、どうか。未来を予想することは困難であるとしても、国立大学法人の、国立大学法人化の結果の予測はそれほど難しいことではなかったはずです。当時から、国の統制が強まり大学は自由を失っていく、大学は独立採算を求められるようになり、授業料が引き上げられたり、経済的な観点から教育研究組織や大学が再編されていくことになると予想し、法人化を批判してきた方は少なくありませんでした。
大切なことは、予想どおりになったかではなく、予想が違ったなら違ったで結構ですから、それを認め、なぜそうなってしまったのか反省し、同じ見当違いを繰り返さないようにすることだと思うのです。当時法人化の旗を振ってきた人々の中で、現在そうしている人がどれだけいるのか。現在、運営方針会議をつくろうとしている人たちの中に、二十年後、十年後でもいいですけれども、この改革のてん末が誰の目にもはっきりしたときに責任ある行動を取る人が果たしているのかと考えると、この改革を支持することは私はできないなという気持ちになるのです。
大学に数々の被害をもたらす重大な問題を持つものであり、立法事実も分からない、こんな法案は当然廃案にすべきことを述べて、私の意見陳述を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/13
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014・高橋克法
○委員長(高橋克法君) ありがとうございました。
次に、高橋参考人にお願いいたします。高橋参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/14
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015・高橋真木子
○参考人(高橋真木子君) ありがとうございます。高橋真木子と申します。
私は私立大学の教員ですが、今日は法律改正に関連する二つの経験を持った者として意見を述べさせていただきます。
一つ目は、本法案に係る省庁の審議会などへの委員としての関与です。
具体的には、まず一つ目として、今までも話題に出たと思いますが、文部科学省科学技術・学術審議会の大学研究力強化委員会です。この議論を通じて、現在、選考、認定の過程にある、国際卓越とパッケージである、対を成す地域中核・特色ある研究大学強化促進事業の検討、審査を担う事業推進委員会の委員も務めております。
これに加えて、昨今と申しますか、済みません、昨今じゃないです、この十年以上、二十年以上ですね、大学の機能強化はもちろんいろいろなところで議論され求められてきたところですが、そのうち、大学の機能を少し分化させていくという意味では、研究力の強化は非常に重要な議論として一つのトピックでありました。その研究力強化の議論をした指定国立大学創設の議論、また、科学技術・学術審議会の下に設置されている産学連携関係の委員会の委員もさせていただいております。
なぜこのような若輩者の私がこのような委員をさせていただいたかというと、今、光本参考人からおっしゃられた、二〇〇四年以降の国立大学の激変に実務者としてその荒波の中で仕事をしてきたという実体験からです。
まず一つは、この委員としての経緯に関わったところと、自分自身が、この国立大学が変わっていく中で、その必要性と難しさ、そして課題があるけれども、それでも進めなくちゃいけないかというところを、私は今日この場で少し自分の経験も含めて申し上げたいと思います。
二つ目の観点というのがまさにそれでして、今、日本の大学にはURAという研究推進支援の専門人材が、日本全国で、たったですけれども千六百人ほどおります。この方たちは、二〇一一年以降、文部科学省の政策により、大学の中で主に研究者とともに研究推進支援の役割を担う専門家として徐々にその定着を図ってきたところです。
私自身、分子生物学で修士学を取った後、三十年間、約、いわゆるURAのような仕事をしてまいりました。現在では、そのコミュニティー、日本の中での千六百人をまとめるような形でのコミュニティーの形成にも貢献しておりますし、その中で、国際的な学会のようなものがありますけれども、ネットワークにも関与する機会を恵まれました。そこで得たのは、日本の大学の圧倒的な世界の流れに対しての蚊帳の外感であり、これでは非常にまずいという危機感です。
今日、三つのことを申し上げたいと思って参りました。
まず一つは、もう共有されているとは思いますが、日本の科学技術力低下に関する現状認識です。
これはもう一定の認識を持っていらっしゃると思いますので非常に簡単に申し上げたいと思いますが、国際比較でいうと、各数字が非常にシビアな現状を示しています。
主たる理由は四つほどあると思っておりまして、大学の基盤的経費の削減、競争的資金による事業の増加、ここが増えたことによって激増した大学及び研究者の事務コスト増、また、三点目として現役研究者の研究時間の減少、特に若手で顕著です。四点目は、研究者の任期制割合の増加。これらはいずれも連関する現象であり、これがひいては、一つとして科学者という職種への魅力の減少、二つ目は博士課程進学率の減少という、国に中期的に、中長期的にもうボディーブローのように利いてくる負のスパイラルを加速させています。今までの三人の参考人の先生方がおっしゃった意見も、このそれぞれの事象を捉えてどうすべきかということに刺さっているのだと思います。この危機的な状況を幾つかの大学の先生方が、総長、学長のリーダーシップで何とか変えていく方策、今回のこの事業というのはその方策の一つだというふうに私は理解しております。
まず、これが一点目の科学技術力低下に関する現状認識です。
この根拠、どうしてこの認識についてこの対策があり得るのかということと、このシステム、制度が動いたときに実際次にどのようなことが必要になってくるのかということについて、私の現場感覚を含めて申し上げたいと思います。
まず、最初に申し上げた、世界から取り残されるという圧倒的な危機感と、どうすればうまくいくかということについては、連関するのでまとめて申し上げたいというふうに思います。先ほど私の実務経験と申し上げたユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーター、研究推進支援の専門人材に関連するところです。
欧米諸国のどの大学でも、今、いわゆる大学の二大職種、事務方と研究者以外に、大学をうまく回していくためには、それ以外に重要な専門家がいます。田中参考人がおっしゃった、新しい大学において産業界と窓口になるような組織、これには知財の専門家、契約の専門家、コンプライアンス、データ、それのような、大学の今までの方たちにはなかなかなし得ないような、また、今後も新しい、世界が動く中で大学が果たす役割を果たすためにいろいろな専門家が必要になります。そういう方たちをどうやって大学の中の一員として担わせて、大学の中に職種として定着させて、大学として組織がうまく回していくのか、これは非常に重要な問題で、日本だけの問題ではありません。もちろんアメリカもヨーロッパもそれに対して手を打ってきています。その一つの職種が、総称すればユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーターです。
圧倒的な危機感ということについて、私は、そういう意味では、概念ではなく、今年の五月に体験した惨敗する思いを申し上げたいと思います。
私は、日本のURAのコミュニティーの代表者ですが、この五月、南アフリカのダーバンで開かれました国際大会に行ってまいりました。参加者は世界四十か国から五百人程度、URAの専門家が集まる会議です。ここでは、二年に一回開かれているわけですが、アメリカやEUの大学のうち、いわゆるアフリカに対して連携を取りたいという人たちが非常に積極的にアフリカの大学に対するアプローチをしていました。
今、我々が国内でアフリカの大学をどう認識しているかというと、指標で見れば、まだまだそんなに私たちの存在を脅かすものではないと思います。むしろ地域的だったり学術的なダイバーシティーの観点から、うまくイコール、うまくパートナーシップを結べるような相手だというふうにきっと思っていると思います。
しかし、その五月のダーバンで感じたのは、ヨーロッパに関しては、ヨーロッパの連携、EUフレームワークというのがありますけれども、アフリカの大学といかに人としてつながり、ファンドをきちんとして共同で回し、そこから研究成果を生み、ひいては研究をうまく連携して共同研究で持っていくか、そのためのアプローチのために応援団、視察団を送っていました。また、アメリカの大学の方は、いかにアメリカのファンドをアフリカの大学と一緒につくって動かしていくかというために、アフリカのシステムについて、あっ、アメリカのシステムについてアフリカの大学に直接説明をするような、そういうセッションを多く持っていました。
では、日本はどうかというと、あいにくその五百人の参加者のうち、私がその国際機構の二年間チェアを務めたんですけれども、私ともう一人、一緒に付いてきた人たちだけです。なぜかというと、一つには、まだURAの歴史が日本では浅いから、千六百人しかいないからですし、個々の大学でも活動をし始めていますけれども、そういう人たちがまだ大学の中で、あしたの仕事には関わらないかもしれないけれど、五年、十年先の国際連携のために大切だからそういうところに人を送るという判断がなかなかできないからだと思います。これは単に一つの例です。
やはり、大学がこれから自分の大学の強みを生かし、場合によっては五年、十年先の投資のためにアフリカまで人を出すですとか、うちの大学の研究資源として最もいいパートナーはアフリカなのでという形で積極的な手を打っていくようなことをなかなか今の日本の大学ではしにくい、ここが一つ致命的に日本の研究力にとってダメージになるというふうに私は思っております。
これには、これを解決するのはそう簡単なことではないです。もう既にいろいろな御議論がされていますし、お金も投じているということも理解しています。しかし、やはり私の実務経験から思うのは、個々の施策がピンポイントで連携をつなげるのがどうしても組織レベルではなかなか難しいということです。
今の経験に基づくと、一番いい打てる手というのは、やはり大学のトップが自分のこととして、自分の資源でどう資源配分をし外の資源をうまく使えるかという、もう少しそのハンドリングを大学側に持たせること、そのためには今回の国際卓越と地域中核という政策パッケージは非常に有効であると思っております。このシステムをうまく回すために、今回の法案に関して、地域目標や地域計画が一人の学長の領域を超えて組織として意思決定をうまく進めていくために非常に重要だと思っております。
以上です。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/15
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016・高橋克法
○委員長(高橋克法君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/16
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017・高橋克法
○委員長(高橋克法君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、末松信介君が委員を辞任され、その補欠として田中昌史君が選任されました。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/17
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018・高橋克法
○委員長(高橋克法君) これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/18
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019・高橋はるみ
○高橋はるみ君 自由民主党の高橋はるみと申します。
今日は、参考人の皆様方に対する質疑の、質問の時間をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれ四人の参考人の皆様方、それぞれの専門分野から大変意義ある御発言をいただきましたこと、まず冒頭、御礼を申し上げたいと思います。
それでは、時間の許す限り、四名の参考人の方々にそれぞれお伺いをしてまいりたいと思います。
まず、最初に意見をおっしゃっていただいた田中参考人にお伺いをいたします。
東京科学大学への統合を進めようとしておられるわけであります。その御説明の中で、コンバージェンス・サイエンスの展開を目指すといったような大変わくわくするようなお話をいただいたところでありますが、更なるこの統合大学の飛躍を目指すために、本法案では大学の統合以外も、合議体の設置等の規定もあるわけでありますが、本法案の他の規定の施行について、統合後の大学の活動の場を更に広げていくため、どのように活用していこうと考えておられるのか、お伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/19
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020・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) 御質問いただき、ありがとうございます。
まず第一に、運営方針会議については、やはり社会のステークホルダーとともに大学を運営していきたいというのは、東京医科歯科大学でコロナ対応したときから感じていたことでございますので、それは活用していきたいというふうに思っています。ですから、いろんなステークホルダーの方に参加していただく形が望ましいと思います。
それから、二番目の規制緩和なんですけれども、これは大変有り難いと思っておりまして、東京科学大学ではまだ新たに大学債を発行する、法人債を発行する予定は今のところありませんけれども、これが発行する段階になったときに、言わばハードだけでなくてソフトの部分にも使用が可能になったということは、大学の運営にとっては将来非常に有用なことだと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/20
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021・高橋はるみ
○高橋はるみ君 失礼しました。
ありがとうございました。
それでは、次は上山参考人にお伺いをいたします。
今回の改正法案は、日本の大学が世界トップレベルを目指す国際卓越研究大学に必要なガバナンスとして合議体の設置を求めることにつながるものでございますが、本法の施行によりどのように研究力強化につながっていくとお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/21
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022・上山隆大
○参考人(上山隆大君) 我々とすると、この間の二十年間にわたる研究力の、低下とは言いませんが、まあ足踏み状態ということに対して、非常にシリアスに考えて政策を議論をしてまいりました。何よりも、この合議体が入ってくるということは、大学の中において研究のレベルでもとてもポジティブな影響があると思います。
なぜかといいますと、この研究の内容は多岐にわたるように拡大、多様化しておりまして、例えば、最近でいえば、地球環境の問題、感染症の問題、社会の様々な課題に関して研究者は一体どういう方向で更に研究力を発展させていけばいいのかについて当然ながら考えなければいけませんが、そのような情報を外部のステークホルダーの方々からいただく、また、それに関してどのような形で財務的にそれを支えるのかという議論は、恐らくはこういう外部の有識者の議員の方々から大学の中に入ってくるということでございまして、そのことは研究力の向上にほぼ直結すると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/22
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023・高橋はるみ
○高橋はるみ君 ありがとうございました。
次に、光本参考人にお伺いをいたします。
先生からは、大学の自治の観点など大変深みのある意見を述べていただきまして、興味深くお伺いをしたところであります。
全国には八十六、展開する国立大学があるわけであります。大変規模の大きい総合大学もございますが、また、それ以外にも様々な分野をカバーする多様な大学が存在し展開をしていると、こういうふうに理解をするところでありますが、こういった多様な国立大学がその大学運営をこれからもしっかりと進めていく上でどのような視点が政策的に必要とお考えになるのか、御所見をお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/23
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024・光本滋
○参考人(光本滋君) 御質問ありがとうございます。
多種多様な国立大学がそれぞれ発展していくためにどのような政策的な視点が必要か、これは本当に一言で申し上げるのが逆に難しいといいますか、大学の多様性というものを政策当事者が理解し、その意義や課題をそれぞれ考えていく必要が当然あるかと思います。
本法案との関わりでいいますと、誰がそれを考えていくべきかということが問われているんじゃないかなというふうに思います。運営方針会議をつくる大学では、これまでの大学のガバナンスシステムの上に合議体をつくって、そこで大学の方針を決めていくということになるわけです。言わば、大学の決めたことをある意味相対化するといいますか、問い直すということになろうかと思います。
今、上山参考人の御発言の中にもありましたけれども、社会の様々な意見を聞くということ自体は私も必要だというふうに思っておりますが、ただ、それは合議体でなければできないのかという疑問は持っております。
私の見解ということになりますけれども、大学が現に社会と様々な形で、各研究分野、教育分野もそうですし、大学そのものもそうだと思います、つながっておりますので、その現在大学が持っている社会とのつながりを生かして大学の在り方を決めていく、そうしたことを励ますような政策であってもらいたいと思いますし、資金の面からもそういった大学の活動をサポートしていただきたいというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/24
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025・高橋はるみ
○高橋はるみ君 ありがとうございました。
そして、高橋参考人にお伺いをいたします。
高橋先生からは、日本の研究力をもっと高めていかなければならない、そしてそのためにURA、ユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーターと呼ばれる専門的なスタッフというか、人材の重要性ということを強く強調をしていただいたところでございますが、こういったURAをもっともっと増やしていくために政府に対してどのような政策展開をすべきとお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/25
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026・高橋真木子
○参考人(高橋真木子君) 御質問ありがとうございます。
本法案との絡みでいうと、URAのような新しい機能が必要だというふうな御説明もさせていただきました。その上で、意義を御理解いただき、ありがとうございます。
URAはまだ千六百人です。八割が任期制のポジションで大学に仕事をしております。やはり、安定的な雇用、そして魅力的なポジション、キャリアアップというのが必要になります。
政府としては、そういう魅力的な仕事が大学の研究者以外にも大学の仕事の中であるんだというようなことを、また、いろいろな人が、いろいろなキャリアを持った人たちが入ってくることによってこの職種の魅力も高まると思いますので、そういう意味では、例えばインダストリーでRアンドDの経験を持った人や知財の経験を持った人たちが転職をして大学にも行くような、その人のシフトのしやすさのようなものをつくっていただければと思います。
ありがとうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/26
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027・高橋はるみ
○高橋はるみ君 時間が参りましたので、これで終えさせていただきます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/27
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028・宮口治子
○宮口治子君 おはようございます。立憲民主・社民の宮口治子と申します。
本日は、参考人の方々から貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。
本法律案の内容が広く明らかになりましたのは、今年九月のCSTIの有識者議員懇談会においてです。そして、十月末に本法律案が提出され、審議が開始されました。
十一月十四日に行われた衆議院の参考人質疑で、本法律案の内容で国会に提出されることをいつ知ったかという我が党の菊田真紀子議員からの質問に対して、参考人として呼ばれた現職学長、そして学長経験者、専門家の方々も、本法律案の内容を知ったのはごく最近だったと、先ほどのお話にもあったかと思います。大学現場の教職員や学生を含むほとんどの大学関係者にとって寝耳に水だったということは想像に難くありません。
そこで、改めて、参議院でも参考人の方全員にお尋ねをしたいと思います。法案がこのような内容となって国会提出される、なるということをいつお知りになったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/28
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029・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) 今御指摘ありましたように、私、衆議院の参考人にも出ておりまして、そのときに十月頃ではなかったかと思うと申し上げたんですけれども、その後、大学に戻りまして、いや、もっと前に文部科学省から説明がありましたということを事務から指摘されましたので、ちょっとここで訂正させていただきます。
概要ではありますけれども、七月の二十六日に文部科学省の法人支援課長が医科歯科大学に来られまして、私とそれから東京工業大学の益学長と二人で、医科歯科大学で法案のポイントについてお話を伺いました。そのときに伺ったお話というのは、正確には覚えていないんですけれども、運営方針会議という名前だったかどうかちょっと覚えていないんですけれども、そういうものができるということと、それは限られた大学に設置されるけれどもそれ以外の大学も望めばできるということが言われたということと、規制緩和の話が、詳しくはありませんでしたけれども、法人債の話があったかと思います。あとは、統合についてですから、私たち当事者でしたので、その点については詳しく伺いました。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/29
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030・上山隆大
○参考人(上山隆大君) 御質問をどうもありがとうございます。
私がこのガバナンスと規制緩和の内容について具体的な方向性についてお伺い、文科省からお伺いしたのは、九月の二十七日のCSTIの有識者議員懇談会でございました。その間において、この大学のガバナンスはどうあるべきかについては、あくまでブレーンストーミングしていろんな話は伺ったと思いますが、これがこういう形で決まった、方向性として正しい方向だというふうにお伺いしたのは、先ほど申し上げましたように、九月の二十七日のCSTIの有識者議員懇談会でございました。あっ、四月七日ですね、ごめんなさい。あっ、ごめんなさい、九月七日ですね、九月、失礼しました、九月七日でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/30
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031・光本滋
○参考人(光本滋君) 私は正確に何日だったかということを記憶はしておりませんが、たしか学術・科学技術審議会の大学力強化委員会のホームページを見ておりましたところ、そこに載っていた図が今回の法案の内容を示しておりまして、それを見たときが最初だったかと思っています。開催日は九月二十八日のものです。その後、調べまして、同じものが九月七日のCSTIの有識者懇談会で最初に公表されたということを知りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/31
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032・高橋真木子
○参考人(高橋真木子君) 私はその研究力強化委員会の委員でありましたので、少なくとも会議の日には聞いておりました。それ以外にもその前提の議論というのはなされておりましたので、少なくともというところでいうと会議の日になります。九月の研究力強化委員会の日になります。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/32
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033・宮口治子
○宮口治子君 ありがとうございました。
それでは、続きまして、光本参考人にお聞きしたいと思います。
文部科学省が七月から八月にかけての大学関係者らと意見交換を経て省内で検討し、一定規模以上の国立大学にまで運営方針会議の設置を義務付けるというふうにしました。それを裏付ける公文書が非公開、非開示のままで法案が採決されたとすれば、そのことをどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/33
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034・光本滋
○参考人(光本滋君) 先ほどの質問に対する回答の中で田中参考人から、七月の二十九日とおっしゃいましたっけ、法人支援課から説明があったというお話がありまして、私これ初めて伺う話ですので、大変驚いております。ひょっとしたら衆議院のときに文部科学省の方がおっしゃっていたのはこうしたことだったのかなというふうに思いますが、いずれにせよ、文書を、私はそんなものあるというのは全く見たことありませんし、全然知りません。非公開だとしたら、とんでもない話だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/34
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035・宮口治子
○宮口治子君 ありがとうございます。
それでは、続けて、光本参考人にお聞きしたいと思います。
本法律案において、運営方針会議は学長と運営方針委員三人以上により構成するとされていて、運営方針会議は学長による任命に当たり文部科学大臣の承認が必要とされました。
文部科学大臣が学長の解任を決定できる現行の規定だけでも大学の自治を脅かすおそれがあるにもかかわらず、文科大臣の承認を受けた運営方針会議が学長の解任等に関し意見を述べることができるようになると、文科大臣が恣意的に学長の解任を促すことができるようになりませんか。
現行制度で学長が解任された例、また大学側から学長の解任の申出があったにもかかわらず解任されなかった例があれば教えていただきたいんです。あわせて、今回の改正案が学長の解任における文科大臣の影響力の強化につながるのではないかとの懸念についても御意見をお述べいただけたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/35
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036・光本滋
○参考人(光本滋君) ありがとうございます。
解任された、大学からの申出により学長が解任された例は、これまで唯一、私が勤務しております北海道大学で二〇二〇年の六月に名和豊春前学長が解任された例がございます。
この名和氏の解任をめぐっては、様々な経緯の不透明性ですとか、解任事由が明確でないなどということも取り沙汰されておりまして、現在、名和氏本人は北海道大学を被告として裁判を提起しておられます。
それからまた、二〇二一年になりまして旭川医科大学、同じ北海道でございますが、で当時の吉田学長を解任申出を大学がいたしております。ただ、旭川医大の場合は、翌年、二〇二二年の二月だったと思いますが、大学側が解任の申出を取り下げました。なぜ取り下げたか私にははっきりとしたことは分からないんですが、解任までの、文科省がなかなか解任決定をしないので、このまま年度をまたいでしまうのはまずいという判断があり、大学側は泣く泣く取り下げたというような新聞報道が地元紙ではなされております。
文科省の扱いにどうも差があるのではないかというふうに私は思っております。文科大臣の権限が、まあ強化と言っていいかどうか分かりませんけれども、悪い形で大学の学長解任を通じて大学に影響を及ぼしているということは懸念しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/36
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037・宮口治子
○宮口治子君 ありがとうございました。質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/37
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038・下野六太
○下野六太君 公明党の下野六太でございます。
本日は、大変お忙しい中に四人の参考人の皆様お集まりをいただきまして、ありがとうございます。大変、参考人の皆様の御意見をお伺いしながら、もう勉強になるような思いであります。
まず初めに上山参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の改正案によりまして、私も大学は、日本の大学はもっとやっぱり世界と勝負できる大学になるべきだと常々思うところはありまして、今回の改正によって日本の大学が世界と勝負できる、そのぐらいの位置に行けるというような見通しを持つまでというか、実際そうなるまで、大体、全てがうまくいったとしてどのくらいの期間が必要だというふうに考えておられるかというのをちょっとお伺いできたらと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/38
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039・上山隆大
○参考人(上山隆大君) これはあくまで私の個人的な見通しにすぎませんのでそれが最終的に実現するかどうかは分かりませんが、アメリカ、イギリスその他の国々の大学のこれまでの歴史的変遷を見ますと、大学という組織は非常に複雑で様々なステークホルダーが重なっていますので、ここでもいろんな議論が出ていますように、それぞれ違った意見を持っている人たちが集まっているがゆえに大学の良さがあると思いますね。
そういう大学が一つの組織として動いていくときには、とても時間が掛かります。企業であれば利益を最大にしたかどうかということが明確になりますから、それはその中での意見集約をしていくことは比較的易しいと思いますが、それでも様々な、外部の取締役を入れたりしながら、外部の意見を入れるということをやっておりますね。
ですから、大学というところが変わっていくのが非常に難しいとしても、このような新たな大胆な、これ実は世界においても類のない形で大学のサポートが始まっていると思います。これは、多くの国々の政策当局者が、これどういう形でやろうとしているのかと聞かれている状態です。
こういうものを使ってそれを加速度化していくとすれば、私の個人的な見通しでは、十年ぐらいで一つの兆し、大きな兆しが出てくるのではないかという期待感を持っております。十年というと、財政規模もかなり拡大をしていくでしょうし、それから日本の大学の国際化も進んでいくという期待の下でですが、十年ぐらいかなと。
実際に、アメリカにおける大学の改革が始まったのが一九八〇年代前半。九五年に大きなGAFAのようなのが出てくるときが十年ですから、スタートアップ一つを取ってみても恐らく十年ぐらいで何らかのメルクマールになるような兆しが出てくればいいなと、そういう期待があります。
同時に、その十年間、アメリカにおいて大学の改革は進みましたけれども、これ、先ほど言った複雑な様々なステークホルダーの人たちみんなが、これ、資金が取れるところ、取れない分野、いろいろありますけれども、むしろ僕は、競争的資金でなかなか獲得できないような、そういう分野の方々の研究は強くサポートされたと思います、財政的に見てですね。
その意味での全体としての満足感は高まっていったと私は思っていますので、今のお答えするとすると、十年を一つのメルクマールとしたいなと、するべきじゃないかなと思っているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/39
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040・下野六太
○下野六太君 ありがとうございます。
希望を持って今回の改正案を是非、世界の大学と勝負できる日本の大学を私たちもつくらねばならないと、使命感を持って臨んでいきたいというふうに思っております。
さらに、もう一問、上山参考人に質問させていただきたいんですけれども、今回の国際卓越研究大学の想定をする大学が大体五つぐらいだというふうに聞いているんですけれども、それ以外のやはり大学のモチベーションを下げないように、あるいは、今回の改正案によってやはり大きな成果を上げられる大学が出てきて、あるいは個人の研究者等が出てきて、自分たちもやればできるんじゃないかというような、そういった気持ちが湧いてくるというようなことで研究の底上げにつながるとか、そういったことで、上山参考人は、今回の国際卓越研究大学の想定されているその大学以外の大学、まあ国立大学法人の先生方の、教員たちの、教職員のモチベーションをどのように保って向上させていけばいいのかということを考えておられるのかというのをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/40
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041・上山隆大
○参考人(上山隆大君) ありがとうございます。
まず、国際卓越大学が五校かどうかというのは、これは何も決まっておりません。専門調査会を開いていたときに、グローバルに本当に例えばハーバードやスタンフォードに並び立つような大学が日本で何校存在できるのかという議論をしたことがございます。そのときに、イギリスでいうとほぼ大体四校ぐらいなんですね。イギリスの人たちともいろんな議論をしましたが、人口比からいうと日本はまあ最大八校かなという議論も出ました。もちろん、しかしながら、これは何校かという決め打ちをするべきではなくて、それが増えれば増えるほど結構なことだと思っております。
実は、これをやるときに、全ての国立大学の財務構造を全て見ました。いわゆる大型大学、ここで特定研究大学と書かれているところとそれ以外のところ、ちょっとやっぱり財務的にも構造的に大きな差があるんですね。それは、この間の運営費交付金の削減ということが相当効いていると。これは、どういう大学が大きなそういった削減の結果、財務的にサポートされなくなったのかということもかなり調べました。
そういう大学にもし様々な形の支援が行けば、恐らくその大学の研究者の研究環境は相当アップするであろうし、それをどのような形でか広げなければいけないと思って、特色ある研究大学のパッケージを作りました。そういう大学は間違いなく選ばれるでしょう。そして、その結果として、卓越的な大学へと進化していくということを考えておられる大学も僕はあると思います。
ファーストラウンドは今、東北大学になりましたけれども、これがどの時点で何校かということはまだ分かりません。しかしながら、この大学ファンドのシステムは二十五年間にわたっての長期にわたるサポートですから、その過程の中で、先生が先ほどおっしゃったように、意欲のあるそれ以外の研究大学がこの大学ファンドにチャレンジしてくるであろうということは想像はしております。そのことが将来の我が国の大学環境にとってベターになるだろうと、そのことも期待して、内部ではそんなことは議論はさせていただいております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/41
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042・下野六太
○下野六太君 ありがとうございます。
続いて、田中参考人にお伺いしたいと思います。
東京科学大学になるに当たって、医療の分野と工業の分野とが一緒になって科学ということになっていくわけですが、大きなこれまでにない新しいイノベーションが生まれるような、そういう期待を非常に持たせていただいています。
その際に、私は大事にしなきゃいけないなと思っているのが、倫理観であったり哲学であったりするようなことをしっかりやっぱり大学で学んでいくということも非常に重要なことではないだろうかというふうに思っています。やはり、倫理観なき科学が暴走することがないように、しっかりその辺りをやっぱり押さえていくことに関してはどのような見通しをお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/42
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043・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) ありがとうございます。非常に重要な点だと思っております。
私たちの大学、つまり医科歯科大学には生命倫理研究センターというのがあって、生命倫理の専門家たちがおります。今度、東工大と一緒になって、この生命倫理の部分は更に拡充して、今教育範囲が医学部、歯学部になっておりますけれども、また広い範囲で、今、現時点でも東工大はそういう部門、そういう教授たちがおられますけれども、一緒になって、更に重要、重視した教育を行わなければならないというふうに考えています。
そして、それだけではなくて、やはりそれを日本のほかの大学にも発信していくような大学でありたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/43
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044・下野六太
○下野六太君 済みません。時間の関係で、光本参考人と高橋参考人にお伺いできずに時間が来ましたので、以上で終わらせていただきます。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/44
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045・金子道仁
○金子道仁君 日本維新の会、金子道仁でございます。
本日はお忙しい中、このような貴重な説明の機会、与えていただいて、聞かせていただいて、本当にありがとうございました。
四人の参考人の皆さんに、それぞれ、運営方針会議というキーワードでそれぞれ異なる御質問をさせていただきたいと思っております。
まず最初に、田中参考人にお伺いいたします。
資料を拝見させていただき、非常に貴重な内容を教えていただいて、ありがとうございました。十一ページに、自由でフラットな人間関係をつくるための組織文化、御説明の中では、閉鎖的な組織文化を打破していくというような今後の大学の方針を御説明いただき、また、十二ページでは、常に変わり続ける組織を目指していくというような説明がありました。非常に、時代が変化し、社会環境も変化する中で、大学の組織もそれに応答していくような形で、学長がガバナンス、リーダーシップ取っていく、非常によく分かる話だったんですが、それと今回の運営方針会議という組織を新たに設置することに関しては少し矛盾があるのではないか。そういう新しい組織が出ると、閉鎖とは言わないにしても、また新しい組織が出て、そこにしっかりと話を通さなきゃいけないとか、いろいろしがらみも出てくると思うんですが、その辺り、大学の方針と今回の運営方針会議の設置についてどのようにお考えか、お聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/45
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046・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) ありがとうございます。
十二ページを御覧いただきますと、インターナルフィードバックとエクスターナルインプットというのがございますけれども、主に言えるのは、運営方針会議はこのエクスターナルインプットに相当する部門ではないかと思っております。
ですから、この時点ではまだ国会の審議も途中でございましたので、ここには運営方針会議のような言葉は入っておりませんけれども、このエクスターナルインプットに相当するところにそういうものが存在するということと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/46
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047・金子道仁
○金子道仁君 ありがとうございました。
続けて、上山参考人にお伺いしたいと思います。
今回の法改正の一つの背景になるのが、知識基盤型社会が到来して、それに応答するために第三者の知見であったり幅広いステークホルダーの意見を大学の運営に組み込んでいく必要があるということで運営方針会議ができた、そのように御説明いただきました。その点に対しては本当によく理解できます。
で、一点、御質問は、現在の組織の中でも経営協議会というものがあって、経営に関する学外の有識者が入ったそういう組織があり、学長にそれを、意見を具申していると。そのような組織があるのに、更にその屋上屋を重ねるようなもう一つ新しい組織をつくる。しかも、大学がどうやって運営方針会議の委員を探すのか、なかなか難しさがある中で、経営協議会のメンバーも兼任が可能な組織だというふうにも理解しています。同じ方が違う組織に在籍するというのは、何ともちょっと、本当に必要なのか、そもそもその運営協議会自身の機能を強化する、役割を変えるだけでもよかったのではないかと思うんですが、その辺りの審議の経緯を教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/47
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048・上山隆大
○参考人(上山隆大君) ありがとうございます。
運営協議会、(発言する者あり)あっ、経営協議会ですね。これは私もある大学、関西の大きな大学の委員でございました。そこには産業界の方も入っておられましたけれども、そこの議論は、先生が御期待されているような社会の様々な課題を大学と真摯に話し合うという形にはなかなかなり得ない。なぜかといいますと、大学というのはこれまで、やはりどちらかというと閉じられた組織でございましたから、いきなり協議会のその会議体に出てきた資料、分厚い財務の構造とか書かれていても、ほぼ何も議論のすべがないというのが現状でございました。
今回、運営方針会議ということが出てくると、協議会を更に発展された形で、大学の中の情報共有に関して更に進むと思います。大学の中には様々な先ほど言いました多様な意見がございますので、その多様な意見に関しても、あっ、こういう部門の方々はこういうことを考えているんだなということの情報共有ははるかに進むだろうと思います。また、そこに関わる委員の方々も、単なる、何かを聞かれて自分の感想めいたことを述べるというような形ではなくて、大学の経営の中に関してもきちんとした意識を持って御発言をされる方が増えてくるというふうに思います。
これは、実際のところ、諸外国の大学ではまさにそういうことが行われているので、そのような方向が適切な形で大学の中に入っていくということを期待をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/48
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049・金子道仁
○金子道仁君 ありがとうございました。
続いて、光本参考人にお伺いします。
お話の中で、複雑な構造の形になっている、私もそのとおりだと思いまして、私たちも党の中で、筆をなめなめ、組織を自分たちで描いてみたので、後で是非、図案を比べてみてチェックしてみたいなと話を聞きながら思いました。
その問題点の二つ目として、運営方針会議は国立大学が自発的に設置したとしても重大な問題を起こす危険性があるといったところ、特に中期目標、計画の策定、今でも役員会の方にそれの議を経るというような書き方をしていますけれども、それが運営方針会議に移行することによってどのような問題が起こるか、もう少し詳細に教えていただけますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/49
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050・光本滋
○参考人(光本滋君) ありがとうございます。
運営方針会議はまだできておりませんので、もちろんできてみないと分からないことはあるわけですが、少なくとも、現在、中期目標に対する意見ですとか中期計画の案というのは、今お話が出ました経営協議会、あるいは教育研究評議会で審議した結果をまとめる形で役員会で審議し、学長が決定しているかと思います。言ってみれば、決定の過程が二段階なわけです。ところが、運営方針会議ができますと三段階目ができるわけですね。
意見陳述でも申し上げましたけれども、それぞれの段階で参考にしながら決めていくということになりますので、ひょっとしたら、中期目標に対する意見が運営方針会議の意向でかなり変わってしまうこともあり得るかなというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/50
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051・金子道仁
○金子道仁君 ありがとうございます。
最後に、高橋参考人にお伺いしたいと思います。
このURA、非常に参考になる、事務でも研究職でもない第三のそれ以外の専門家が大学のガバナンスを強化していく、研究力向上に非常に資する、そのことを本当におっしゃるとおりだなと思って伺っていました。
東北大学の、今回、国際卓越研究大学に選ばれた理由は何なのかいろいろと考える中で、その役員会の下にあるSLTというんですか、ストラテジック・リーダーシップ・チーム、これが言わばこのURAのような第三者としてガバナンスというか方針をしっかり組織内で共有していくような働き、これが今回評価されたんじゃないか、私はそのように理解しているんです。
そうすると、今回のその運営方針会議の設置というものがガバナンスに強化する、先生の話ですと、そうじゃなくて、東北大学が出しているようなそのSLTのようなものが入った方がガバナンス強化になるんじゃないかというふうな結論になるかと思うんですが、先生はどうして運営方針会議が、置くことがガバナンス強化になるとお考えなのか、もう一度教えていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/51
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052・高橋真木子
○参考人(高橋真木子君) ありがとうございます。
世界は急速なスピードで、非常に速いスピードで激変していると思っています。そういう意味では、やはり多様な意見を、かつ大学の中のことをきちんと理解した上で、その基本的な情報に基づいて自分の見地から理解し指摘するという機能はやはり大切だと思っております。
そういう意味では、二枚が三枚になるというお話もありましたが、私はそれのプラスの面を捉えておりまして、機能するというふうに思っております。
東北大のプランのところについては、詳細、私、国際卓越に関しては関与しておりませんので理解しておりませんが、そのSLTの恐らく果たすようなミッション、大学の業界ではインスティテューショナル・リサーチと申しまして、大学の研究力、教育力を把握する指標をきちんと自分たちの分析としてやるというのはもう非常に重要になります。そういうものも踏まえた基礎情報を経営に生かしていくというところで機能をするんだと思います。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/52
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053・金子道仁
○金子道仁君 時間が参りましたので、以上で終わります。
ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/53
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054・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 冒頭、光本参考人に伺います。
廃案を強く求められました。立法事実が不明瞭であることに加えて、この運営方針会議の権限、特に学長の解任発議に係る権限についての疑義、賜りました。
一方で、では、現状維持でガバナンスやコンプライアンス、こうしたものに問題点はないのか、また日本の凋落にどう向き合うのかという思いも湧いてまいります。御所見があればお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/54
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055・光本滋
○参考人(光本滋君) ありがとうございます。
私も大学の現場におりますので、現場の意思が反映される大学運営が望ましいなと日々思ってはいるんですが、ただ、現場の意見が常に正しいとか、現場の意見だけで物事を決めるべきだと思っているわけでもありません。もちろん現場も様々です。いろいろな意見を闘わせていく必要ありますし、それらを一つの組織としてまとめていくということも当然必要だと思います。
そういうことでいいますと、他の委員からの御質問の中にもありましたけれども、旭川医科大学では、前任の学長を、言わばリコールって言うんでしょうかね、解任の発議をする際に、教職員の方々が学内で署名を取られて、過半数の署名を取ったという事例がございます。これなんかは、大学の組織運営が行き詰まったときに現場の自浄作用が働いたと、一つの例ではないかと思います。実際の大学の中に蓄積されているこういった事例、事実を生かす形で改革を進めていくことが大事だと思っております。
日本の凋落というのは、ちょっと話が大きいので、済みません、ちょっと私からは今、直ちにお答えすることは難しいかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/55
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056・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 では次に、高橋参考人にお伺いしたいというふうに思います。
世界に伍していくための、餅は餅屋、すばらしき研究にはすばらしき伴走者がいる、こういった点は合点いたします。一方で、一連の日大のガバナンス不全を目の当たりにすると、外部識者を入れても結局変われなかった組織というものについて、これURA観点でお感じになる点があれば教えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/56
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057・高橋真木子
○参考人(高橋真木子君) 日大のことはオンゴーイングであり、私もきちんと正確な情報を全て理解しているわけではありませんが、外の意見を自分の組織の経営に取り込むということについて、その現場、学内の組織でスタッフとして支える観点から申し上げたいと思います。
多様性というのは、言うはやすしで、それを、その実効性を担保するのは非常に難しいものだと思っております。異分子が入ってきて違う言葉で違う観点から意見を言ったときに、そのエッセンスになるような意味情報をきちんとそしゃくして、それを更に自組織の経営に生かすというのは本当に大変なことで、だからこそ基本的には言葉が通じる人間で組織を回したいという人間として自然の気持ちがあるかと思います。
しかし、今回それを超えて多様なステークホルダーというのには、それこそがその多様な意見を入れることによって組織が強くなるということに尽きると思います。多様性というのはそもそも意思疎通のコミュニケーションが掛かるので、それができた組織というのは逆にロバストであり、いろいろな観点で柔軟性と強さを兼ね備えることができると思います。
そういうような意味では、私は、多様なステークホルダーによって、例えば三人であったとしてもいろいろな意見を言い、その意見のエッセンスを組織に取り込むという過程においてその組織がエクササイズとして強くなっていくと非常に思いますので、多様性というのはこの経営方針会議に必要な要素だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/57
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058・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 次に、上山参考人にお伺いしたいというふうに思います。
諸外国と比較した日本のアカデミアの劣後についての背景分析、合点いたしました。
二点伺いたいと思います。民間投資を呼び込む税制の具体、きっと腹案がおありになるかと思いますので、それらを教えていただきたいのと、国立大学の有期雇用研究者が今回十年ルールによってかなり雇い止めに遭って、結果、この脳が、ブレーンがですね、海外に流出、実際にしています。こういうものを捉まえて、その経済安全保障上の問題について御所見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/58
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059・上山隆大
○参考人(上山隆大君) 大学への民間の資金の投資を高めていくこと、これは我々CSTIとしてもかなりいろんなことを考えてやりました。つまり、具体的に言うならば税制ですね。
例えば、アメリカの場合は寄附が、あそこは寄附が多いですよねと、だから文化としてありますよねという声があるんですが、あそこにおいては、裕福な方がインベスターとして大学に寄附をするときに、その人の所得の税と、それからキャピタルゲインの両方の税の控除があると、このことを念頭に置いて税制は何とかやるべきだということはずっとやってまいりました。ある意味で、大学に自分の金融資産あるいは土地資産を提供するということはその人個人にとっても決して悪いことではないという環境をつくっていくことがとても重要だと思っております。その方向でもずっと議論をさせていただきました。
十年ルール、これは非常に頭の痛い問題だと思います。実際のところ、テニュアを取って、きちっとその人が長期にわたって、生涯にわたって雇用されていくということが一番いいわけですけども、この十年ルールという割と形式的な形でそれを阻害しているというふうには思います。したがって、ここでもやはりフレキシブルな人材の雇用の形ということを大学の本部がきちんと考えて、それに対して経営方針として対応していくことができるフレキシブルな体制ということがこの今の運営方針会議の中でも恐らくは議論されると思います。
その意味で、今形式的になされているような雇い止めと言われているものを、大学の中におけるリーダーシップによって個々のケースに応じて対応していくことができる、そういう世界があるべき姿じゃないかなと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/59
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060・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 更問いで恐縮ですが、これ、今何とかしなければ、向こうに渡ってしまってはもう取り返しが付かないわけです。今この瞬間がとても大事な中で、もちろん制度としては有期雇用の方を無期雇用にするための制度をつくった、が、しかし、運営費交付金というのは、冒頭のお話でもありましたとおり、少なくなっている。じゃ、どうやって雇い続けたらいいんだよというような悲鳴にも似た声が大学から聞こえてくるところではありますけども、これは各々が経営方針として頑張ってくださいというもの以外に、まさにCSTIなどではどのような話合いが行われているか、今この瞬間どうするかというものについて御所見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/60
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061・上山隆大
○参考人(上山隆大君) その先生が今おっしゃったこと、まさにそのことが我々にとっての、我が国の国益としてのアカデミアをどう考えるかというのが大前提でございましたから、例えばその大学ファンドで選ばれるようなところ、あるいは地域振興パッケージのところで選ばれるところの資金というのは、まさに裁量的な資金として大学に行きますので、大学の中において適切な人材の雇用の仕方ということに使われるお金になっていくわけですね。
運営費交付金が一律ずっと削られていたということがある意味で大学の経営の手足を縛ってきたわけです。運営費交付金はほとんどもう大学の中における人件費に全部使われているわけですが、その人件費がほぼ頭打ちになって何もできない、この状況を変えるためには裁量権のある資金をつくらなければいけないということは我々の最大の関心でございました。今回の大学ファンドにおける資金というのは間違いなく裁量的な資金として使われるでしょうし、あるいは地域振興パッケージの中で使われているお金もそのような形になっていくと思います。
実際、先生がおっしゃるように、CSTIでこれまで大学の財務構造に対する様々な実は手を打ってまいりました。大学経営力強化資金とか、あるいはイノベーション資金というものを、その当時はまだ小さかったです、たかだか全体として五十億あるいは二十億でしたが、これ全て裁量権のある形で使ってくださいということをやってまいりました。
今回の大学ファンドあるいは地域振興パッケージというのは、まさにそのような裁量権のある資金をできる限り拡大をさせていき、運営費交付金の削減のマイナス効果をできる限り早く解消して、先生がおっしゃったような、まさに喫緊の課題に対して各大学が柔軟に対応できる体制をつくっていきたいというふうに考えて議論させていただいたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/61
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062・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 では、最後に田中参考人に伺います。
政治家は、とかく大学ランキングとか論文数とかとすぐ数を見たがるんですけれども、私、見るべきはやっぱり基礎研究の割合だと思うんです。御所見をお聞かせください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/62
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063・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) 基礎研究の割合は非常に重要で、基礎研究がなければ応用研究にも発展しないわけですが、基礎研究ができる環境をつくるためにも大学は余裕を持たなければいけない、財政的な余裕を持たなければいけない。ですから、東京科学大学では、大学債も東京工業大学で発行しておられますし、医科歯科大学は土地の長期借入金収入を得ることを努力しておりますし、そういう資金的な余裕を獲得することが大学にとって必要で、ですので、国際卓越研究大学も良い仕組みだと考えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/63
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064・伊藤孝恵
○伊藤孝恵君 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/64
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065・吉良よし子
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子でございます。
今日は、四人の参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございます。
それでは、早速ですが、上山参考人にまず伺いたいと思うんです。
先ほどの御答弁の中で、本法案の内容について知ったのは九月七日であったと、ただ、その前にもガバナンスについてブレーンストーミング等でいろいろなお話をしたことはあるんだと、そういうお話でありました。
〔委員長退席、理事赤池誠章君着席〕
一方、参考人が常勤議員を務められている総合科学技術・イノベーション会議、CSTIにおいて、世界と伍する研究大学の在り方についての最終まとめにおいては、この本法案の運営方針会議に当たる合議体の設置というのは、国際卓越研究大学の認定の条件だということが結論だったかと思うんです。それは間違いないのかと、その会議としての結論としては間違いないのかという点が一つと、あわせて、じゃ、それが、結論が出た以降、その九月七日までの、今年九月七日までの間に政府に対して国際卓越研究大学以外にもこうした合議体が必要だということを提言されたことがあるのか、あるとしたらそれはいつのことなのか、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/65
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066・上山隆大
○参考人(上山隆大君) まず最初に、国際卓越大学に関する専門調査会を開いたときには、国際卓越大学とはどのような大学なのか、その国際卓越大学に限ってガバナンスがどうなのかという議論はさせていただきました。それは、その制度を制度として成立させるのを前提としてお話をしたことは事実でございます。
したがって、その過程において他の国立大学のことを話したことはございません。つまり、他の国立大学も、当然、我々は、研究力の強化とか研究時間の担保ということに関して、幅広い意味でアカデミアのことは議論をしておりましたけれども、その専門調査会ではあくまで国際卓越大学の対応のことでございました。
同時に、ほかの大学はどうなのかということも当然ながら考えざるを得なかったとは思います。考えざるを得なかったというのは、具体的に言うと、ほかの大学に対する資金の提供をどういう形が可能なのかということは、相当専門調査会の以外のところでも議論はしました、内部においてですね。
具体的に言いますと、先ほど申し上げたように、運営費交付金によって傷んでいる多くの研究大学、あるいは地域の大学にどのようなサポートができるのかという議論をしたわけですね。それについて、恐らく、運営費交付金だけではできない大学の裁量的資金については、国際卓越大学以外においても民間資金というのが必要であるだろうという議論はいたしました。その民間資金が獲得できるような状況をつくるために合議体が必ず必要だということまでは専門調査会では踏み込みませんでした。ただ、その過程の中で、国立大学はどうあるべきなのか、我が国における大学はどうあるべきなのかについては、当然ながら、ブレーンストーミングで話をしましたけれども、先ほど委員からの御指摘にありました、CSTIがこの他の大学に対してもこの合議体を拡大させるべきだというふうに明示的にお話ししたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/66
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067・吉良よし子
○吉良よし子君 CSTIとしては明示的に、他の大学にもこうした合議体が必要だと明示的に示したことはないんだと、そういうお話で、やはり、じゃ、なぜこの法案の形になったのかという点についてはまだ疑問が残るところではあるわけですけれども。
あわせて、もう一点、上山参考人に伺いたいのですが、この運営方針会議、まあ合議体について、この総合科学技術・イノベーション会議の最終まとめ、世界と伍する研究大学の在り方についての最終まとめによれば、合議体の構成員の相当程度は学外者とすることが適当だとされているわけですが、とすると、具体的にはこの学外者、どのような人物を想定、望ましいとお考えなのか、教えていただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/67
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068・上山隆大
○参考人(上山隆大君) これは、もうあくまでケース・バイ・ケースだと思いますし、私自身がどのような人がいいかということを明示的に申し上げることはちょっとできないと思います。
〔理事赤池誠章君退席、委員長着席〕
恐らく、考えられるのは、例えばその大学の卒業生で、その大学に対する非常に強い愛着をお持ちで、そして各方面で御活躍をされていて、これは別に財、産業界かかわらずですが、そのような方々が、大学に対してのポジティブな意見を申し上げたいという人がいるだろうとは思います。そのような方々を大学の中で選び、そこに入っていただく。これ、実は、引き受けるとなると相当時間が取られることは間違いないわけですね。そのような人たちをどのように見付け出してきて、そして運営方針会議の中に入ってくださいとお願いするかは、これはもうあくまでそれぞれの大学の中で御判断をされることだと思って、想定してどの人間ということはもちろんございませんでした。
ただ、恐らく考えられることは、一つは、大学の財務構造についてちゃんと分析できる人がいた方がいいんじゃないかなという気持ちはございました。というのは、非常に財務的にも限られた財源の中でこの国際的な競争環境の中に勝っていかなければいけないとすると、どのような形で大学の中に資金を呼び込むことができるのか、あるいは大学の中において資金の構造を考えるような人は恐らく必要ではないかなと当時は思っておりました。だけど、それはあくまでそれぞれの大学が御判断することだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/68
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069・吉良よし子
○吉良よし子君 少なくとも財務分析できるような方がいればいいんじゃないかという思いはあったというお話でありました。
しかし、そうした外部の少数となるであろう運営方針会議の委員が本当に大学の主要な方針である中期目標、計画を決定して推進していくということで、一体どういうことになるのかというのは非常に危惧をするものです。
光本参考人に伺いたいんですけど、最初のお話の中で、この法案を進めることによるてん末に責任を誰が持てるのかと、そういうお話もありましたけれども、これ本当に進んだらどういうてん末が予想されるのかと。私は、やはり少数の学外者、もし財務とか経営とかに強い方が中心となって進めることになれば、稼ぐためには軍事研究とかそういうものもいとわない、そういう稼げる大学づくりへ進むと、そういう懸念もあると思うんですけど、その辺りも含めて、このてん末についてどう危惧されるのか、お話しいただければと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/69
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070・光本滋
○参考人(光本滋君) ありがとうございます。
これも未来の話ですから本当のことは分からないわけですけれども、例えば今起きていることでいいますと、私が勤務しています北海道大学では来年度、二〇二三年度から工学部の情報エレクトロニクス学科の定員を五十名増やすことになったんですね。で、ちょっと済みません、事業名、今忘れてしまったんですが、これは政府の事業で、他大学でもこういったことがかなり取り組まれているかと思います。
今、五十名増員と申しましたけれども、純粋に五十名増えるんでしたらそんなに問題はないと思います。ですが、これは五十名、本当は増やすという話ではなくて、五十名分、増えた五十名分を他の学部等から削らなければいけないんですね。これを第四期中期目標期間中にやらなければいけないということが申請の条件となっていまして、そんな条件を本学の役員会で、こっそりと言うと言い過ぎかもしれませんが、余り現場に聞くことなく決めてしまいまして、それが採択してしまいました。ですので、このためにいずれどこかの定員が五十名削られるわけです。
これはまさしく、このエレクトロニクス学科が本当に社会的要請が必要な分野なのかもしれません。しかし、じゃ、では削られる五十名は社会的要請がない、ないしは今回増えた学科よりも価値が何か劣る部分なのかというと、私はそんなことはないと思います。
こういった取捨選択といいますか組織の改廃というものが、ますます今度は合議体の決定という形で頻繁に行われていくことになるんではないかということを大変危惧しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/70
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071・吉良よし子
○吉良よし子君 いや、本当にそういうことがもし進んでいけば、強力に進んでいけば、やはり大学への自治の問題だけじゃなくて学問の自由が本当に侵される危険がある中身じゃないかなという危惧、新たにしたものです。
今日はありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/71
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072・舩後靖彦
○舩後靖彦君 れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
本日は、田中参考人、上山参考人、光本参考人、高橋参考人から貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
私は、ALSという難病で人工呼吸器を付けているため、声を出すことができません。事前に作成した質問をパソコンの音声読み上げで質問させていただきます。お聞き苦しいところがあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。
では、質問に移ります。
まず、田中参考人、光本参考人にお尋ねいたします。
現在、国立大学法人には、学内者で構成される教育研究協議会と、外部構成員が加わる経営協議会、役員会、学長選考・監察会議があり、学長が最終的な意思決定者となっています。ここに更に運営方針会議が加わり、中期目標、中期計画、予算を最終決定するとされています。
しかし、現在、運営方針会議がなくとも、多様なステークホルダーの意見を取り入れ、中期目標、中期計画、予算を策定しているはずです。そうであれば、運営方針会議の必要性はどこにあるとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/72
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073・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) 御質問ありがとうございます。
運営方針会議は決定権を持つというところで非常に重い会議だと思いますが、私は、ここにはやはりどの人に委員になっていただくかというこの人選こそが本質的な問題だと思っております。
それで、私は東京科学大学ではこの議論はしていませんけれども、仮に医科歯科大学でこの会議体を持つとしたら、それはやはり医科歯科大学のミッションとそれから学問の自由ということに関する深い理解のある方に限られると思っております。ですから、具体的には、例えば教育研究評議会、それから経営協議会、あるいは学長参与という方々いらっしゃいますけれども、そういうことを経験されて十分にそういうものを理解された方になっていただく、そのときには運営方針会議が意味を持つと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/73
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074・光本滋
○参考人(光本滋君) ありがとうございます。
重要なことは、制度そのものに問題はあるかもしれませんが、まずは大学が多様なステークホルダーと対話する努力をしていくこと、現行の国立大学法人法制の中でベスト、ベターな方向を模索していくことだと思います。
経営協議会の学外委員は大学のことが分からない、意見を言いづらいということをよく言われます。上山参考人の御発言の中にもそういった御指摘あったかと思います。大学の財務についても、単に数字がどうだというのではなく、経営の問題と教育や研究などの問題がどのようにつながっているかを理解してもらうことが必要だと思います。
そうした努力を重ねた先に、運営方針会議のようなものが必要だよねということになれば、国立大学法人が自発的につくることはあってもよいし、そのために必要な法改正をすればよいと思います。現在法案で提起されているような、政府がつくらせる運営方針会議は必要ないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/74
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075・舩後靖彦
○舩後靖彦君 ありがとうございます。
次に、光本参考人にお伺いいたします。
衆議院の参考人質疑において、今回の法案でトップダウンと文科大臣の承認という二つの要素を兼ね備えた運営方針会議が持ち込まれた場合、下からの牽制機能がほとんど働かない現在の国立大学において、大学自治、学問の自由は危険水域にあるという危機感が表明されました。
国立大学の教員のお立場から見て、運営方針会議の設置の影響についていかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/75
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076・光本滋
○参考人(光本滋君) 衆議院の参考人質疑において、隠岐さや香参考人が示した学問の自由度の国際比較の資料というのがございました。それに関連する御質問だったかと思います。
学問の自由がなく大学自治だけがある社会というのは、理論上あり得るかもしれませんが、およそ自由な社会とは言えません。社会が自由であるためには、人々が物事を自由に、批判も含めて、考え、議論し合い、探求していく、そういう自由が不可欠です。そうしたことは、大学においても当然許されなければなりません。大学にそういう自由がなければ、仮に大学に学問の自由があったとしても、それは社会の自由を広げることにはつながりません。
大学の組織運営に社会の声を取り入れることは必要だと再三私も申し上げてきましたけれども、現在の議論されているような合議体は、そういった大学の自由を広げることにつながるかということは大変疑問を持っております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/76
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077・舩後靖彦
○舩後靖彦君 ありがとうございます。
次に、田中参考人、光本参考人、高橋参考人にお尋ねいたします。
二〇〇四年の法人化以来、運営費交付金の減額、傾斜配分がなされ、二〇一六年に指定国立大学法人制度、昨年、国公私立を問わず、国際卓越研究大学が導入されました。
今度は、国際卓越研究大学に認定されなくとも運営方針会議の設置が義務化された特定国立大学法人と、任意で設置できる準特定国立大学法人が導入されようとしています。
国立大学協会が十一月二十四日に声明を出されましたが、今以上に大学間格差が拡大するのではないかという懸念についてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/77
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078・田中雄二郎
○参考人(田中雄二郎君) やはり、大学がどういうふうに存続していくかというのはお互いに知恵を絞っているところで、最近の傾向としてはクロスアポイントメントというのがよく行われるようになっています。
これは、例えば、ある大学から別の大学に教員が移るというのは、別の大学にとってはプラスになるわけですけれども、元々引き抜かれた大学にとっては研究力低下にもなります。教育力低下にもなります。ですので、例えば六対四とか、そういう形で両大学に軸足を残すというやり方が最近増えていて、医科歯科大学でも増えています。
これは、多分、大学がこの変化に適応しようとしている行為だと思っていて、やはりこれを例えばサポートするような仕組みが行政や立法府でもあると有り難いと思っております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/78
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079・光本滋
○参考人(光本滋君) 大学間格差が今以上に広がるのではないかという懸念、まさしく私もそうだと考えております。
国大協が十月、十一月二十四日でしたか、に出した声明の中では、準特定国立大学法人という呼び名をやめるべきだと言っています。法案ではこれは不可能ですね。少なくとも修正が必要です。これは、私でなくて大臣が答弁してもこういう答えになると思います。
また、国立大学法人と他の国立大学法人の間に扱いの、あっ、特定国立大学法人と他の国立大学法人の間に扱いの差を設けるべきではないとも言っています。
文科省は、法案に盛り込んでいない事柄として、運営方針会議を置く国立大学法人には特典として中期目標期間をまたぐ繰越し協議の廃止、つまり一貫した基金の造成を認めるといったようなことを議論しております。この扱いをやめるか、あるいは他の国立大学法人にも同じことを認めるでない限り、扱いに差を付けないと言っても、これはうそになってしまうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/79
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080・高橋真木子
○参考人(高橋真木子君) 御質問ありがとうございます。
大学間格差という言葉を使うときに、ここにいらっしゃる方や我々アカデミア以外の人間の多くがあいにく自分の大学の入試を受けたときの偏差値のような形で大学を見ることにはとても残念だと思っております。
格差が進むというより、むしろ、この二十年間、分化が進んできたと思っています。分かれるという意味ですね。そういう意味では、国立大学だったときには一様の形態であったものが、法人化した後にその特性を生かすというところで、先ほど、運営費交付金が減ってきたことに伴いまして、非常にシビアな生存環境の中で、個々の大学はそれぞれ自大学の強みを生かさずにもう生き残れないというところまで来ていると思います。
そういう意味では、格差が広がるというよりは、むしろこの二十年間、私自身の職務経験でも、やはり順当ではなかったにしろ、変化は痛みを伴いながらも、いわゆる富士山型から八ケ岳型へ日本は分化しているのだと思っております。そういう意味では、その契機になる一つの事業としては、今回の変化はプラスに捉えております。
以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/80
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081・舩後靖彦
○舩後靖彦君 本日は貴重な御意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。
質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/81
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082・高橋克法
○委員長(高橋克法君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼を申し上げたいと思います。
参考人の皆様には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215104X00520231205/82
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