1. 会議録本文
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000・会議録情報
令和五年十二月一日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
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令和五年十二月一日
午前十時 本会議
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第一 国立大学法人法の一部を改正する法律案
(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/0
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001・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
日程第一 国立大学法人法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。盛山正仁文部科学大臣。
〔国務大臣盛山正仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/1
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002・盛山正仁
○国務大臣(盛山正仁君) 国立大学法人法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
国立大学法人は、それぞれの強みや特色を生かして、教育、研究、そして、その成果を生かした社会貢献に積極的に取り組んでいます。最近では、国際卓越研究大学制度の創設や地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの策定など、様々なステークホルダーとともに、研究力の強化に向けて大学の活動を充実させる政策を進めているところです。そのような中で、大学の大きな運営方針の継続性、安定性を確保することや、多様な専門性を有する方々にも運営に参画いただくこと、また、大学の自律的な財務運営を支えるためにも、規制を緩和することが必要です。
この法律案は、このような観点から、国立大学法人等の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図るため、事業の規模が特に大きい国立大学法人についての運営方針会議の設置及び中期計画の決定方法等の特例の創設、国立大学法人等が長期借入金等を充てることができる費用の範囲の拡大、認可を受けた貸付計画に係る土地等の貸付けに関する届出制の導入等の措置を講ずるとともに、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合するなどの措置を講ずるものであります。
次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
第一に、事業の規模が特に大きいものとして政令で指定する国立大学法人には、中期目標についての意見、中期計画の作成、予算及び決算の作成等に関する事項の決議、中期計画等に基づく法人運営の監督、学長選考・監察会議に対する学長選考に関する意見の陳述についての権限を有する運営方針会議を置くこととしております。また、その他の国立大学法人も、長期かつ多額の民間資金を調達する必要があることなどの特別な事情により、体制強化を図る必要があるときは、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を置くことができることとしております。
第二に、国立大学法人等が長期借入金や債券発行できる費用の範囲について、現行制度上可能である土地の取得、施設の設置、整備、設備の設置に加え、先端的な教育研究の用に供する知的基盤の開発、整備についても可能とすることとしております。
第三に、国立大学法人等の所有する土地等の第三者への貸付けについて、あらかじめ文部科学大臣の認可を受けた貸付計画に基づいて土地等の貸付けを行う場合には、現行制度上、個別の貸付けごとに必要となる文部科学大臣の認可を要せず、届出によって行うことができることとしております。
第四に、国立大学法人東京医科歯科大学と国立大学法人東京工業大学を統合し、国立大学法人東京科学大学とすることとしております。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/2
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003・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。宮口治子君。
〔宮口治子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/3
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004・宮口治子
○宮口治子君 立憲民主・社民の宮口治子です。
会派を代表して、議題となりました国立大学法人法の一部を改正する法律案について、盛山文部科学大臣に質疑をいたします。
冒頭、一言申し上げます。
今朝の一部報道によれば、自民党安倍派がノルマを超えたパーティー券の収入を裏金とし、政治資金収支報告書に記載していない金額が直近五年で何と一億円にも上るとのことです。もはや記載ミスでは済まされません。直ちに説明責任を果たすのは当然で、政治的な責任についても考慮すべきであることを強く申し上げます。
岸田政権でも政治と金問題は続出しています。柿沢衆議院議員による江東区長選挙での選挙買収疑惑、派閥の政治団体の政治資金パーティーでの政治資金規正法違反、元文部科学大臣の馳浩石川県知事が官房機密費を使用してのIOC委員への贈答品疑惑について説明責任を果たさないことなど、底なしです。
私の当選のきっかけも大規模買収事件です。盛山大臣は、岸田総理の派閥、宏池会の所属ですね。岸田政権の一員として、この政治と金問題についてどうお考えでしょうか。
核兵器禁止条約についての岸田内閣の姿勢と、文部科学行政の重要課題である旧統一教会問題についても、申し上げないわけにはまいりません。
現在、アメリカ・ニューヨークの国連本部では、核兵器禁止条約の第二回締約国会議が開かれています。日本は唯一の被爆国であるにもかかわらず不参加、オブザーバー参加すら見送りました。参加した他国から広島、長崎の惨事が触れられている現状に、国民として、広島県民として到底納得できません。総理大臣が広島県出身だというのであれば、今の国際情勢も鑑み、せめてオブザーバー参加をしていただきたいと思います。
次に、旧統一教会に対する解散命令請求に係る被害者救済に関し、大臣に質問いたします。
旧統一教会については、早急に実効性ある財産保全を行わなければ今後資産が散逸する危険性があることは岸田総理も認めています。政府が責任を持って財産保全の立法措置を行わない理由を大臣、教えてください。
大臣は、旧統一教会に債権を有する者はいつでも民事保全法上の保全命令を申し立てることが可能だと言い、被害者の自己責任に丸投げです。長年にわたる政治の不作為によって財産を失い、家族崩壊、人生破滅の被害に遭った被害者たちに、この先も自ら闘えと言うのでしょうか。裁判や保全命令を申立てできない被害者は見捨てるというのでしょうか。お答えください。
信者の多くは今もマインドコントロール下にあり、悪質献金等の被害者であることを自認していません。解散命令が出てようやく被害に気付き、返金を求めたとき、既に財産が消えうせていた場合、大臣は責任を取れるのでしょうか。それとも国が救済するのでしょうか。お答えください。
現在、衆議院で、与党法案と私たちの立憲、維新法案が並行審議されています。被害当事者や弁護団は、与党案では全く救済にならないと強い懸念を示しています。私たちの財産保全法案は、衆議院法制局長が予算委員会で答弁したとおり、憲法上の問題はクリアしています。与党案と立憲、維新案を精査し、より多くの被害者を多面的に救済することのできる立法措置を何としてでも今国会中に成立させるべきです。大臣の見解を伺います。
国民は、自民党は旧統一教会との関係断絶などできない、だから財産保全を行うことができないのだと見ています。そうではないというのであれば、与党の皆さん、財産保全のための立法措置、これを成立させようではありませんか。そのことを強く申し上げ、以下、法案の質疑に入ります。
衆議院文部科学委員会では、本法律案の趣旨説明が強行され、野党による対政府質疑は僅か一日しか認められませんでした。そして、質疑を通じて多くの問題点が明らかにされたにもかかわらず、審議が不十分なまま採決となり、参議院に送付されました。熟議の府である参議院においては丁寧な審議が行われることを強く求め、質問に入らせていただきます。
本法律案提出の基となった昨年二月の総合科学技術・イノベーション会議、システィの最終まとめでは、国際卓越研究大学となる大学に関して、合議体の意思決定機関を設置することとされていました。昨年の法案の質疑においても、政府は明確に、国際卓越研究大学以外の大学については同様のガバナンスを求めるものではないなどと答弁していました。
しかし、本法律案では、事業の規模が特に大きいものとして政令で指定する国立大学法人について、合議体である運営方針会議を必ず置くこととされました。東北大学、東京大学、京都大学など五つが指定される見込みとのことです。また、それ以外の国立大学法人も、運営方針会議を置くことが可能とされました。現時点で国際卓越研究大学の認定候補とされているのは東北大学一校のみですが、それ以外の国立大学法人にも同様のガバナンスが求められており、これまでの国会答弁とは明らかに異なります。
国際卓越研究大学となることが見込まれる大学以外についても運営方針会議を置くという重大な方針転換を、一体いつ、そして誰が行ったのですか。明確にお答えください。
本法律案の内容が広く明らかになったのは、今年九月、システィの有識者議員懇談会においてです。そして、十月末には本法律案が提出され、審議が開始されました。
十一月十四日に行われた衆議院文部科学委員会の参考人質疑で、本法律案の内容で国会に提出されることをいつ知ったかという我が党の菊田真紀子議員からの質問に対し、参考人の方々からは、ごく最近、十月の初め、報道を通じて、先週などといった回答が並びました。参考人として呼ばれた現職学長や学長経験者、専門家の方々も本法律案の内容を知ったのはごく最近でした。大学現場の教職員や学生を含むほとんどの大学関係者にとって寝耳に水だったことは想像に難くありません。
文部科学省は衆議院での質疑において、法制上の検討を進める上で、七月から八月にかけて、国立大学協会や国際卓越研究大学に申請中であった国立大学法人の学長とも意見交換を実施したと答弁しています。しかし、本法律案は全ての国立大学法人に関わる内容にもかかわらず、意見交換の対象はごく一部の関係者や学長にとどまっており、全く不十分です。
一部の限られた内輪の人間だけで方向性を決定するのでは、法改正の影響を受ける多くの大学関係者、さらには国民の納得を得ることはできないと考えます。現に、十一月二十四日には、国立大学協会が本法律案の内容に関し、強い危惧や懸念を示す会長声明を出しました。国会審議中の改正案に対し、国立大学協会がこうした声明を出すのは極めて異例です。
拙速に成立させるのではなく、中央教育審議会や有識者会議などオープンな場で幅広い関係者の意見を聞きながら改めて検討し直すなど、丁寧な議論を行うべきであると考えますが、大臣の見解を伺います。
次に、本法律案の最大の問題である運営方針委員の任命における文部科学大臣の承認について伺います。
本法律案において、運営方針会議は学長と運営方針委員三人以上により構成するとされ、運営方針委員は学長による任命に当たって文部科学大臣の承認が必要とされました。
文部科学大臣の承認が必要とされることに対し、多くの大学関係者から学問の自由や大学の自治が脅かされかねないといった不安の声が上がっています。
私は、昨年の国際卓越研究大学法案に対する反対討論で同様の懸念を示しましたが、今回の改正案においてその懸念がより一層大きなものとなりました。大変残念です。
政府は、文部科学大臣の承認について、法人側の申出に基づいて承認を行うもので、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き承認を拒否できないなどと説明しています。
しかし、日本学術会議の会員任命についても、政府が行うのは形式的任命にすぎないと昭和五十八年に中曽根総理から国会答弁があったにもかかわらず、結果として六人が任命拒否されるという問題が生じました。運営方針委員に関する文部科学大臣の承認についても、日本学術会議の場合と同様に、今後、時の政権にとって都合の悪い人間が承認を拒否されないとも限りません。
学問の自由や大学の自治に、破壊につながりかねない文部科学大臣の承認を必要とする規定は不要と考えますが、見解を伺います。
次に、運営方針委員の人選についてお伺いします。
運営方針委員には学外者も委員となることが見込まれますが、外部の運営方針委員が稼げる大学を目指して経営面ばかりを過度に重視した計画や予算の作成を求め、教育研究活動がないがしろにされるということは許されません。
学外者を運営方針委員として選ぶ際には、大学の自治や学問の自由に対して深い理解のある者を選ぶとともに、万が一にも教育研究活動や現場の教職員、学生の意見を軽視することのないようにしていくべきと考えますが、見解を伺います。
次に、大学の統廃合に関連して伺います。
東京医科歯科大学と東京工業大学の統廃合には意欲的とも感じる一方で、心配な点があります。それは、今後、大学の統廃合が過度に進むことはないかという点です。
急速な少子化が進む中で、大学経営は国立、公立、私立を問わず厳しさを増しています。地方の大学や女子大の中には廃止されるものも出てきており、大学の多様性が失われつつあります。こうした中、運営が、経営が振るわないからといって安易に統廃合を進めると、大学の多様性はますます損なわれ、子供たちが多様な選択肢の中から進学先を選ぶことが難しくなってしまいます。
本年九月、大臣は中央教育審議会に対し、高等教育の在り方に関して諮問されています。大学の多様性を確保する必要性について、見解を伺います。
国立大学法人法は、第一条で、大学の教育研究に対する国民の要請に応えるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として掲げています。
約二十年前に国立大学が法人化されて以降、政府は選択と集中を進めてきましたが、一部にばかり集中的に資源を投下して、そのほかは切り捨てるという発想で、我が国の研究力は向上しませんでした。それなのに、過去の反省も総括もないまま、拙速な法改正により運営方針会議を設置する仕組みを創設し、一部の稼げる大学ばかりを大学ファンドで支援したとしても、同じ過ちを繰り返すことになりかねません。
世界と伍する研究大学を実現することの重要性は十分に理解できます。ただ、教育の現場では、小中学校における不登校児童生徒数は過去最高の約三十万人に達し、小中高等学校等でのいじめ認知件数と重大事態の件数も過去最多、自殺者も増えているという悲しい現実があります。その現実をしっかりと胸に刻み、国民が十分に納得できる議論がなされるということを切に期待して、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣盛山正仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/4
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005・盛山正仁
○国務大臣(盛山正仁君) 宮口議員にお答えいたします。
まず、政治と金の問題についてお尋ねがありました。
自由民主党の各派閥の関係政治団体において政治資金収支報告書の訂正があったことについて、岸田総理から幹事長に対して、各政治団体においてできるだけ速やかに適切な説明を行うよう指示されたと承知しております。私としても、各政治団体がこの指示に基づき適切に対応すべきと考えております。
また、御指摘の馳知事の発言については、当該発言をされた馳知事がその後発言を全面的に撤回したと承知しており、また、個々の政治家の発言であるため、コメントする立場にはありません。
次に、旧統一教会の被害者救済に関し、政府が立法措置を行わない理由、裁判や保全命令の申立てができない被害者、旧統一教会の財産が散逸していた場合の責任、被害者救済に係る立法措置についてのお尋ねがありました。
被害者の救済に当たり、損害賠償など被害回復を進めていくためには、どのような保全制度があったとしても、最終的には被害者の方々の被害をそれぞれ明らかにしていくことが必要です。被害者の救済については、文部科学省としても、関係省庁と連携し、必要な情報把握に努めるなど、速やかな救済が図られるよう、現行法の下、最大限努力をしているところです。
一方、解散命令請求を行った宗教法人に対して保全処分を可能とする法律案を政府において内閣提出法案として提出することは、解散命令請求の審理が進行している案件について、解散命令請求を行った所轄庁自身が事後にこの種の法整備を行うことは慎重な検討が必要であると考えています。
現在、自民、公明、国民の三党、また、立憲、維新の両党からそれぞれ法律案が提出され、衆議院で御審議されていると承知しており、政府として、その御審議の状況についてはコメントを差し控えさせていただきます。
文部科学省としては、その結果をしっかりと踏まえ、被害者の適切な救済が図られるよう、法令に基づき最大限努力してまいります。
次に、報告書の提言から変更になった理由についてお尋ねがありました。
総合科学技術・イノベーション会議が取りまとめた報告書では、国際卓越研究大学の条件として、多様なステークホルダーの期待に応えられるような長期の成長戦略を策定するためには、合議体が経営方針を定めて学長の業務運営を監督することなど、自律と責任あるガバナンス体制が必要とされました。
その後、具体の法律案を検討する過程で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、ステークホルダーと共に産学共同研究やスタートアップ創出に先進的に取り組んでいる事業規模が特に大きい国立大学法人については運営方針会議の設置を義務付けることといたしました。また、その他の国立大学法人については、大学からの申請を踏まえ、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することができることとしております。
この点については、本年九月以降、文部科学省から、科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会、国立大学協会の会議に、改正の方向性をお示ししながら検討を進めてまいりました。
次に、本法律案に関する議論の過程についてお尋ねがありました。
文部科学省においては、総合科学技術・イノベーション会議が令和四年に取りまとめた報告書を踏まえ、国立大学法人法における合議体の位置付けについて具体的な検討を開始しました。
法制上の検討を進める中で、本年七月から八月にかけて、国立大学協会や国際卓越研究大学に申請中であった国立大学法人の学長とも意見交換を実施し、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、事業規模が特に大きい五つの国立大学法人については運営方針会議を必置とするとともに、その他の国立大学法人については文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することも可能とする方向性を整理したところです。
その後、公開で開催された科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会のほか、国立大学協会の会議において、改正の方向性をお示ししながら本法律案をまとめてきたところです。
次に、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認についてお尋ねがありました。
現行の国立大学法人制度においては、学長が法人運営の全ての事項を決定する権限を有しており、主務大臣である文部科学大臣が、国立大学法人の申出に基づいて学長を任命することとなっております。
運営方針会議を設置する国立大学法人については、学長の権限、決定権限の一部を運営方針会議に移譲をするため、文部科学大臣が学長を任命する現行制度上の趣旨を勘案の上、必要な手続として、主務大臣である文部科学大臣が承認する規定を設けております。
なお、この承認については、文部科学大臣の学長任命の規定に倣い、承認は特定国立大学法人の申出に基づいて行うものとすると規定しているところであり、大学の自主性、自律性に鑑み、承認しない場合としては、学長の任命の考え方と同様に、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合に限られるものと考えております。
よって、この制度は学問の自由や大学の自治の破壊につながるものではなく、文部科学省としては大学の自主性、自律性を踏まえた法の運用を進めてまいります。
次に、運営方針委員の人選についてお尋ねがありました。
運営方針会議の設置は、様々なステークホルダーの期待に応えつつ、大学を発展させるため、多様な専門性を有する方々にも運営に参画していただきつつ、法人の大きな運営方針の継続性、安定性を確保することを目的としております。
運営方針委員については、御指摘の点も含め、大学自らが運営の当事者として共にその発展に取り組んでいきたいと考える方を学内外から人選していただき、現場の教職員や学生の教育研究活動等の発展に向けて、運営方針会議としての責任と役割を果たしていくことが重要と考えております。
次に、大学の多様性の確保についてお尋ねがありました。
我が国の高等教育の持続的な発展のためには、大学の多様性が尊重され、各大学における自主的、自律的な教育研究活動が展開されることが極めて重要です。
本年九月、私から中央教育審議会に対して、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について諮問し、高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育のアクセス確保の在り方に関する議論を行っているところです。
今後、これらの議論も踏まえつつ、大学改革にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/5
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006・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 中条きよし君。
〔中条きよし君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/6
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007・中条きよし
○中条きよし君 日本維新の会の中条きよしでございます。
私は、会派を代表して、国立大学法人法の一部を改正する法律案について、文部科学大臣に質問をさせていただきます。よろしくお願いします。
あわせて、法人法を通じて、大学研究という日本の希望、若者が集う大学組織の改革が一刻も早く進むよう、意見を述べさせていただきます。
まず、大臣に率直にお尋ねをします。
御自身が高校生の頃、大学でどんな勉強をしたい、どんな大学に行きたいと思って進学先を選びましたか。
かつて、高校生の進学目標といえば、日本一の難関大学たる東京大学でありました。しかし、昨今の優秀な高校生は、東大よりも、最先端の優れた研究ができる海外の大学を目指す傾向が顕著になっています。卒業後、研究者や技術者に対する待遇も国内と海外ではかなり差があり、海外の方が優遇されるなど、この数十年で国内の大学に対する社会的評価も随分変わってしまいました。多くな優秀な若者や技術者が海外へ出ていってしまうこの現状は非常に危機的な状態であり、早急に改善し、国内の大学に対する評価を高める必要がございます。
そのために、十兆円規模の資金を運用し、運用益を大学に配分する。その資金が計画的かつ有効的に研究に使われれば、日本の大学研究は世界と互角の体制となります。今回の法改正では、そういった体制を整えるために必要であると考えます。
大臣は、衆議院での法案審議で、資金提供の対象大学が目指す姿について、世界大学ランキングを目指すのではなく、世界最高水準の研究を実現するとおっしゃいました。私は、この世界最高水準という言葉はなかなか分かりづらいものと感じています。
これに関して、二点、大臣の御認識を伺います。
世界最高水準の研究とは、具体的にどのような目標を描いていらっしゃいますか。また、この制度で給付される助成金は、目標達成できなければ資金の返金をしなければならないというような罰則はございますか。最近は何でも自己責任と言われますが、返金の罰則がなければより高い目標にチャレンジできると考えますが、大臣の御認識をお示しください。
次に、この法改正で新たに設置される運営方針会議の役割についてお聞きをいたします。
有識者が大学改革を進める学長をサポートして改革の進捗をチェックするために設置されるものと受け止めております。つまり、学長だけで改革が進まないときは、外部の人に意見してもらうことでトップダウン的に改革を進めようという意味だと考えます。
そこで、二点、大臣に伺います。
これまでの改革を通じて、現在、国立大学ではかなりの権限が学長に集中していますが、運営方針会議は更に学長の権限を強めるものと理解してよろしいでしょうか。また、トップダウン的な権限を強めるものであれば、ボトムアップ的に現場の研究者の意見を吸い上げる仕組みはお考えですか。併せてお答えをください。
会議のメンバーが幾ら有識者とはいえ、実際の現場にいない部外者に迫られる改革は反発が多いものです。特に、大学研究のように専門性の高い環境では、現場の状況に合わせ、ボトムアップ的に意見を出し合うことが重要になります。トップダウンとボトムアップ、双方のバランスが取れない改革はなかなか進まないのではないでしょうか。
衆議院での審議では、運営方針が形だけのものとならないように制度を周知徹底していくとおっしゃっていましたが、具体的にどのような周知徹底策をお考えですか。大学では既に多くの会議がございますので、制度周知は非常に重要と考えますが、具体的な徹底策も併せて大臣の所見を求めます。
さて、先日、国立科学博物館のクラウドファンディングが話題になりました。膨大な収蔵品を保管するための資金がコロナ禍による入場者の減少と光熱費等の価格高騰によって足りなくなったというもので、目標額の一億円に対して九億円以上の寄附が集まったようです。
国立と名の付く施設なのだから国が解決すべき問題だと思いましたが、今回は職員の方々が、自分たちの思いを強く広める機会にしたかったと、それでクラウドファンディングを実施したようです。分かりやすく、誰もが支持できる内容であり、たくさんの善意が届けられました。
実は、大学の研究プロジェクトに対しても多くのクラウドファンディングが実施されています。しかし、国立科学博物館ほど大規模に成功したケースはなかなかございません。むしろ、お金が集まらず、プロジェクトの規模を縮小又は断念せざるを得ないケースが多々あるようです。
国立科学博物館は、今回のクラウドファンディングで五百万点もの所蔵品が守られたと発表していますが、逆に考えますと、クラウドファンディングがなければ五百万点が失われる危機であったということです。
これは、大学研究のプロジェクトでも同様のはずです。つまり、我々は、お金が集まらないことで実現されなかった多くの可能性を失っているのではないでしょうか。
そこで、提案ですが、クラウドファンディングは個人でお願いするスタイルが多く、反復性が低いんですが、個人ではなく、大学法人が安定して寄附を募りやすくなるよう、出身大学や地元大学への寄附には返礼品を認めるなど、特定の個人のインセンティブを高める取組というのはいかがでしょうか。大臣の御見解を伺います。
最後に、今回の法改正で新たに分類される特定国立大学と準特定国立大学の区分について伺います。
一定の要件を満たす大学を特定国立大学として区分し、運営方針会議の設置を義務付けられる。また、条件は満たすが、自己都合で会議を設置した大学は準特定国立大学と区分するようです。この区分けが非常に分かりづらく、十一月二十八日付けの日本経済新聞では、文科省の苦肉の策と批判されていました。
特定、準特定に関して、今後長い目で見ても特段意味のある区分けとは思えないんですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。大臣の答弁を求めます。
今回の法改正で、日本の大学を取り巻く諸問題が分かりやすく一般の方に知られ、大学改革が進み、成長した研究や事業で日本がより良い国になる。この法改正によって新しく良い環境が生まれることを期待して、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣盛山正仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/7
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008・盛山正仁
○国務大臣(盛山正仁君) 中条議員にお答えいたします。
まず、私が高校生の頃の大学に対する考え方についてお尋ねがありました。
当時、私が担任の先生から御指導いただいたことは、何事にも好奇心を持つということでありました。また、高校生の頃には、公的な仕事をしたいと漠然と思い、医学部に進学できるほど物理や化学が得意ではありませんでしたので、また親元から離れて暮らしたいと思っておりましたので、東京の法学部に進学することといたしました。
私自身も好奇心を持つことが大事だと思い、就職した後も様々なことに関心を持って、自分の目で見て体験をしようと考え、行動してまいりました。
いずれにしても、これからは、進路選択をする高校生には、様々な選択肢から自身にとって最良の道を選ぶことができるよう、今回提出している法律案を始め、我が国の高等教育機関における教育研究の更なる充実に取り組んでまいります。
次に、世界最高水準の研究大学についてお尋ねがありました。
国際卓越研究大学法に基づく文部科学大臣が定める基本方針においては、国際卓越研究大学の目標として、世界トップクラスの研究者が集まり、相互に触発し活躍すること、次世代の一流の研究者集団を育成し、若手研究者が存分に研究できる環境を提供すること、これらを通じ、新しい研究領域を創出し続け、世界最高水準の研究大学となることなどを掲げています。
その上で、目標達成に向けた手段、道筋は多様であることから、基本方針において、各大学が体制強化計画において具体的な目標を策定することとしております。
次に、目標未達成時の対応についてお尋ねがありました。
国際卓越研究大学において体制強化計画の目標の達成が不可能となった場合には認可を取り消す可能性がありますが、国際卓越研究大学の目標が未達成であることをもって助成金の返還を求めることとはしておりません。
次に、法改正による学長の権限強化の有無についてお尋ねがありました。
現行の国立大学法人法においては、学長が法人運営の全ての事項を決定する権限を有しておりますが、運営方針会議を設置する国立大学法人については、学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲することとなっております。
また、運営方針会議には学長も会議の構成員として参画し、共に中期目標への意見、中期計画の作成等の法人の大きな運営方針を決議することとしており、運営方針会議の設置によって学長の権限が強まるものではないと考えております。なお、従来から設置されている教育研究評議会は、教育研究に関する重要事項を審議する機関であり、その構成員は学内者で構成されております。
次に、運営方針会議に関する周知についてお尋ねがありました。
運営方針会議は、法人の大きな運営方針の決議、決議した内容に基づいて法人運営が行われているかの監督、学長選考・監察会議に対する学長の選考に関する意見や解任事由に該当する場合の報告などの機能を持つものとなります。
運営方針会議の設置の趣旨は、大きな運営方針の継続性、安定性を確保し、数多くの多様なステークホルダーと共に大学の活動を充実させていくことで、教育研究体制の整備を図るとともに、その成果を生かした社会課題の解決等に一層貢献していく体制を整えることです。
この趣旨をしっかり周知し、効果的、合理的な運用を図っていくことが重要と考えており、具体的には通知や会議における説明等を丁寧に実施してまいります。
次に、大学への個人寄附についてお尋ねがありました。
大学が自律的な経営を確立していくためには、寄附金などの外部資金を獲得し、財源の多様化を進めることが重要と認識しております。
寄附者に対して記念プレートの掲示や記念品の贈呈などの取組を実施している大学があることは承知していますが、文部科学省としては、大学への個人寄附を拡充していくため、これまでも国立大学法人や学校法人等への個人寄附に係る税額控除等の税制改正に取り組んでおり、令和六年度においてもこれらの更なる拡充について要望しているところでございます。
今後とも、税制改正等を通じて、各大学が寄附金を始めとする外部資金を獲得しやすい環境の醸成に努めてまいります。
次に、特定国立大学と準特定国立大学の区分の必要性についてお尋ねがありました。
運営方針会議の設置は、ステークホルダーの期待に応えつつ、大学を発展させるため、多様な専門性を有する方々にも運営に参画していただきつつ、法人の大きな運営方針の継続性や安定性を確保することを目的としております。
事業規模が特に大きい法人は、数多くの多様なステークホルダーを有し、多様かつ多額の資金を取り扱うなど、ステークホルダーと共に活動を充実させていくことが極めて重要であることから、運営方針会議の設置を義務付けるとしており、このような法人を特定するため、本法案上、特定国立大学法人と表現しています。
また、それ以外の法人は、ミッションや発展の方向性を踏まえつつ、法人運営の安定性、継続性を確保するという観点から、運営体制の強化を図る必要があると判断される場合もあることから、当該法人の申出により、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することができるとしており、このような法人を本法案上、準特定国立大学法人と表現しております。
運営方針会議が必置の法人と運営方針会議を任意で設置する法人との間において、制度の運用上区別する必要はないことから、同じ扱いをすることとしております。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/8
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009・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 竹詰仁君。
〔竹詰仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/9
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010・竹詰仁
○竹詰仁君 国民民主党・新緑風会の竹詰仁です。
会派を代表し、国立大学法人法の一部を改正する法律案について、盛山文部科学大臣に質問いたします。
こどもまんなかやチルドレンファーストは時期を得た政策で尊重すべきであり、その言葉どおりに進めていかなければなりません。
本法律案は、国立大学法人の管理運営の改善並びに教育研究体制の整備及び充実等を図ろうとするものですが、法改正をする根本は、こどもまんなかのように、学生真ん中、学生ファーストになっていなければなりません。大学は誰のためにあるのか、誰のために運営するのか。大学で学びたい、研究したい学生のためにあり、学生のために運営していくべきものと考えます。
盛山文部科学大臣にお伺いします。本法律案は、学生真ん中であり、学生のためになる法改正であると断言していただけますか、御見解を伺います。
大学は学生が支払う授業料で運営が成り立っています。大学は学生からの授業料のほかに国からの支援や寄附等を受けており、授業料を納める学生に、納めた分あるいは納めた以上に教育や研究、文化やスポーツなどでお返しする運営が本筋だと思います。
民間企業では、取締役会や執行役員会の体制を改革したり、管理運営体制を見直したりしますが、改革のきっかけは、会社が提供する商品やサービスに対するお客様からの意見や要望であったり、また、お客様の感触の変化だったり、従業員からの声であったりすることがあります。
本法律案に至るまで様々な有識者や専門家による議論が行われてきたと承知していますが、学部生、大学院生、あるいは研究者や教育者の意見なども聴取してきたのか、つまり、会社でいえばお客様や社員というステークホルダーの意見も反映されているのか、大臣に伺います。
現在の大学三、四年生や大学院生は、多くの時間をコロナ禍で過ごしてきたため、想像していた、夢見ていた学生生活とは全く別物になってしまいました。いつの時代にも想像していなかった危機や変化は起き得るものですが、コロナ禍で授業のほとんどがリモートで、キャンパスにも行かず、友達や人的ネットワークを広げられず、余りにも気の毒です。例えば、特例であと二年授業料負担なしで大学生をやらせてあげたい思いになります。
コロナでアルバイトを失い、生活費や授業料に困窮し退学した人や、大学で学ぶ希望を失い退学した人もたくさんいます。コロナ禍で過ごした彼らにとって大学での教育や研究は何であったのか、それもはっきりと分からないままに社会に出ていきます。大学生の違法薬物乱用、特殊詐欺などの犯罪の背景にコロナの影響があるのではないか、大変気掛かりです。
盛山文部科学大臣にお願いいたします。国の教育行政のトップとして、コロナ禍で多くの時間を過ごした大学生や大学院生にこれからの励みとなる言葉を発信していただけませんか。今日だけでなく、何度も何度も発信していただきたいと思います。
国民民主党の学生部には現在二百二十名以上の学生がいて、全国各地で活動してくれています。学生自らが街頭に立ち、給料が上がる経済、人づくりこそ国づくり、自分の国は自分で守るなどの国民民主党の政策を訴えています。
彼らは、日本が科学技術の分野で世界の後塵を拝していること、大学院や博士課程に進んでもその先の展望が見えにくいこと、奨学金の負担が大きく、将来の希望よりも不安が先行してしまうこと、諸外国は教育予算を増やしている一方で、日本は教育や人への投資が増えず、海外に行って研究するしかないなどとも訴えており、これまでの国の教育政策や予算、そして政策を決めてきた政治に対して悔しい思いをしていることが見て取れます。彼らに起きていることは彼らのせいではないので、申し訳ない気持ちになります。
盛山大臣、こうした学生の悔しい思いに対して大臣はどうお答えになりますか。教育政策、教育予算、科学技術への予算など、人への投資を十分にしてこなかったことが学生の不安にもつながっているのではないでしょうか。優秀な人材が海外に流出してしまったらもったいないです。学生が国は自分たちのことをしっかり考えてくれていると思える大臣の決意を彼らにお伝えください。
本法律案提出の契機となった総合科学技術・イノベーション会議の報告書では、国際卓越研究大学となる国立大学に関して、意思決定機関としての合議体を設置することを求めていました。一方、本法律案では、事業の規模が特に大きい特定国立大学法人は運営方針会議を必置、その他の国立大学法人は置くことが可能とされ、国際卓越研究大学の認定と運営方針会議の設置は直接リンクしていません。なぜ報告書の提言から変更することとしたのか、検討プロセスも含めて大臣に御答弁をお願いいたします。
運営方針会議を置く理由について伺います。
大臣は衆議院での答弁で、運営方針会議の設置理由として、多様な専門性を有する方々が大学運営に参画することを挙げています。しかし、現行法においても、理事、監事は学外者を含むこととされるほか、経営協議会は学外者が過半数、学長選考・監察会議も学内外同数で構成するとされています。
既に学内外の多様な専門性を有する方々が大学運営を担う仕組みがある中で、新たに運営方針会議を設置することとした理由は何でしょうか。世界と伍する研究大学の実現と運営方針会議の設置の関係について見解を伺います。
国立大学法人における責任の所在について伺います。
運営方針会議の新設により懸念されることの一つは、法人内でのガバナンスが複雑化し、責任の所在が曖昧になることです。
現行法において、学長は国立大学法人を代表し、その業務を総理するとされており、これは法改正後も変わりません。一方で、本法律案により新設される運営方針会議は、中期計画や予算などの運営方針事項についても決議するとともに、決議した内容に基づいて法人運営が行われているかを監督する役割を担うとされています。
仮に、運営方針会議の決定した計画どおりとならず、国立大学法人として見込みを下回る成果しか上げられなかった場合、その責任は業務を執行する側である学長と監督する側である運営方針会議のいずれが負うことになるのか、見解を伺います。
運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認について伺います。
運営方針委員は、学長が、学長選考・監察会議との協議を経て、文部科学大臣の承認を得た上で任命するとされています。
大臣は衆議院での答弁で、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き承認を拒否することはできないとの趣旨を明らかにするため、承認は法人側の申出に基づいて行うものとしたと述べています。
明らかに不適切と客観的に認められる場合の基準をあらかじめ示す、文部科学大臣が承認しない場合はその理由を公表するなどの取組が必要と考えますが、見解を伺います。
東京医科歯科大学と東京工業大学の統合により新設される東京科学大学について伺います。
東京科学大学は理系の総合大学となりますが、我が国においては従来から理系に進む女子学生の割合が低いことが指摘されています。
既に東京工業大学では、ダイバーシティー・アンド・インクルージョンを推進する一環として、入試における女子枠の導入や、奨学金において新たに女子学生枠を創設するなどの取組を進めているとのことです。すばらしい取組であり、統合後の東京科学大学においても女子学生や女性研究者の割合を高めていけるよう、国としても大学側の取組を一層後押ししていく必要があると考えますが、認識をお伺いいたします。
最後に、改めて教育、研究に係る予算について伺います。
我が国の国際競争力、研究力が低下した最大の要因は、これまで政府が子供、若者への投資、未来への投資を怠ってきたことにあると考えます。政府は、国立大学法人化以降、運営費交付金を削減し、選択と集中を進めてきましたが、縮小した予算の配分方法だけを考えていては将来展望が見出せません。
将来を担う人への投資の必要性についての見解をお伺いして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣盛山正仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/10
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011・盛山正仁
○国務大臣(盛山正仁君) 竹詰議員にお答えいたします。
まず、本法律案が学生のためになる法改正なのかというお尋ねがありました。
本法律案においては、法人の大きな運営方針を決議し、決議した内容に基づいて法人運営が行われているかの監督を行う運営方針会議を設置すること、長期借入金等を充てることができる範囲の拡大及び土地等の貸付手続の簡素化を図るため、大臣認可を受けた貸付計画に基づく届出制の導入を実施すること、また東京医科歯科大学と東京工業大学を統合して東京科学大学にすることなどの措置を講ずることとしております。
本法律案の目的は、国立大学法人の管理運営の改善を進めるとともに、教育研究体制の整備充実を図ることを目的とするものであり、学生の教育研究活動の充実にも資する改正であると考えております。
次に、法律案の提出に至るまでの意見の聴取についてお尋ねがありました。
本法律案の提出に至る過程では、国立大学の学長等の大学運営に携わる方のみならず、様々な分野の研究者や教育関係者が参画する総合科学技術・イノベーション会議や科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会において、改正案の内容をお示ししながら、法律案をまとめたところです。
次に、コロナ禍を過ごした学生への励みの言葉についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルス症の感染拡大防止のため学生生活が大きく制限される中、現在、大学や大学院に通う多くの学生の皆さんが、様々な創意工夫により教育研究活動に懸命に励まれてきたことに心から敬意を表したいと思います。これから我が国を背負って立つ皆さんが経済的な不安を抱えず安心して教育研究に打ち込めるよう、全力で支えていきたいと考えております。
人生に無駄なことはないという言葉があります。将来の目標を御自身で立てられ、大学や大学院での活動を継続し、充実した生活をなされ、社会に羽ばたいていただくことを心から願っております。
次に、学生に対する決意についてお尋ねがありました。
教育、科学技術は、社会が激しく変化する中で、その変化を力にし、学生の皆さんを始め個人や社会の未来を切り開くために極めて重要であり、国の礎であると考えています。
文部科学省として、これまでも必要な予算の確保等に努めてまいりましたが、将来の社会の担い手である学生の皆さんをしっかりと支えていけるよう、一層文部科学行政を進めてまいります。
次に、運営方針会議を設置する国立大学法人が変更になった理由についてお尋ねがありました。
総合科学技術・イノベーション会議が取りまとめた報告書では、国際卓越研究大学の条件として、多様なステークホルダーの期待に応えられるような長期の成長戦略を策定するためには、合議体が経営方針を定めて学長の業務運営を監督することなど、自律と責任あるガバナンス体制が必要とされました。
その後、具体の法律案を検討する過程で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、ステークホルダーと共に産学共同研究やスタートアップ創出に先進的に取り組んでいる事業規模が特に大きい国立大学法人については、運営方針会議の設置を義務付けることといたしました。また、その他の国立大学法人については、大学からの申請を踏まえ、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することができることとしております。
この点については、本年九月以降、科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会、国立大学協会の会議に改正の方向性をお示ししながら検討を進めてきたものとなります。
次に、運営方針会議を置くこととした理由及び世界と伍する研究大学の実現との関係についてお尋ねがありました。
今回の法律案におけるガバナンス強化の議論の契機となった国際卓越研究大学に求められるガバナンスの議論においては、大学ファンドからの支援を受け、自律的な大学へ成長する大学は経営に係る意思決定機能や執行に関する監督機能の強化のために合議体を設置することが必要とされたところです。
既存の経営協議会や教育研究評議会は、それぞれ経営面や教育研究面における重要事項を審議する機関であり、学長が意思決定をする上で幅広く意見を伺う補助的な機関となります。他方で、運営方針会議は、大きな運営方針について意思決定や業務執行の監督を行う機関であり、経営協議会等とは権限と役割が異なる組織として、今回の国立大学法人法の改正により新たに設けるものとなります。
運営方針会議の設置により大きな運営方針の継続性、安定性の確保及び組織的なコンプライアンスの強化が図られることで、数多くの多様なステークホルダーからの長期的な信頼、支持につながり、社会からの投資も加速すると考えております。
次に、学長と運営方針会議の責任についてお尋ねがありました。
運営方針会議を置く国立大学法人においては、中期目標への意見、中期計画の作成等の大きな運営方針の決議は運営方針会議が行い、業務執行の責任は学長が有することとなります。また、運営方針会議は、当該会議で決定された事項の内容に基づいた法人運営が行われていないと認めるときは、学長に対して法人運営を改善するために必要な措置を講ずることを求めることができ、その場合に、学長は速やかに法人運営を改善するために必要な措置を講じ、運営方針会議に報告しなければならないこととしています。
その上で、運営方針会議の決定した計画を下回る成果しか上げられなかった場合の責任の所在については、その具体の内容や改善に向けた取組、また、その過程において学長や運営方針会議がそれぞれの責任をどのように果たしてきたかなど、個別の状況によって異なるものと考えております。
次に、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認についてお尋ねがありました。
お尋ねのあった明らかに不適切と客観的に認められる場合として、具体的には、候補者に運営方針委員にふさわしくない著しい非行がある場合などが想定されます。また、国立大学法人からの申出を承認しない事態が生じた場合には、文部科学省が当該法人に対してその理由を丁寧に説明する必要があると考えております。当該法人において申出に係る候補者の公表が行われていない場合には、文部科学省から承認しない理由を公表することはありませんが、承認しない理由を社会から問われることになった際にも丁寧に説明を行うことが必要になると考えます。
次に、東京科学大学における女子学生、女性研究者の割合を高めていくための支援についてお尋ねがありました。
我が国の成長に寄与する高度人材を育成する上で、理系に進学する女子学生の割合を高め、そうした女性が社会で活躍することは非常に重要と認識しております。
文部科学省では、初等中等教育から高等教育にわたって女子学生の理系分野への進学を促進するため、女子中高生の理系分野への興味、関心を高める取組の支援、理工系分野の女子など、入学者の多様性を確保する選抜の促進、理工農系の分野に進学する女子学生への修学支援の推進などの取組を行っております。また、女性研究者に対しては、教授、准教授などの上位職登用に向けた支援や、出産、育児による研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるための支援などの充実を図っているところです。
東京科学大学における取組も含め、引き続き、女子学生、女性研究者への支援を進めてまいります。
次に、将来を担う人への投資の必要性についてお尋ねがありました。
国立大学法人運営費交付金は、我が国の高等教育及び学術研究の水準向上や均衡ある発展を担う国立大学が人材の確保や教育研究機関の整備を行うために不可欠な基盤的経費であり、平成二十七年度以降は前年度と同額程度の予算額を確保しています。
文部科学省としては、基盤的経費と競争的研究費の双方を確保することに加え、世界最高水準の研究大学の実現に向けた国際卓越研究大学制度の創設や、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学に対するそれぞれの大学の強みや特色を生かした取組の支援などを通じて大学の機能強化を支援しているところです。
将来を担う人への投資は重要であり、国立大学が人材育成や知的創造活動の基盤として社会の発展を牽引していくために必要な予算の確保に全力で取り組んでまいります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/11
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012・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) 吉良よし子君。
〔吉良よし子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/12
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013・吉良よし子
○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
私は、会派を代表し、国立大学法人法の一部改正案について質問をいたします。
初めに、おととい、東京横田基地所属の米軍オスプレイが屋久島沖で墜落するという重大事故が発生しました。まずは、乗組員の捜索救助に全力を挙げることを求めます。
あわせて、米軍も自衛隊もオスプレイ全機を直ちに運用停止し、事故原因を究明すべきではありませんか。オスプレイは、開発段階から最近に至るまで墜落事故や緊急着陸を繰り返してきた欠陥機です。米軍のオスプレイを撤去し、陸上自衛隊へのオスプレイ導入も中止、撤去すべきです。
以上、防衛大臣に答弁を求めます。
それでは、以下、文部科学大臣に法案について伺います。
本法案は、大学教職員、学生始め広範な人々が相次いで反対を表明しています。
先日は、国立大学協会も、本法案についての危惧と懸念を表明する会長声明を発しました。国大協が審議中の法案に対してこのような意思表示を行うこと自体、極めて異例です。
ここまで本法案に反対する声が広がっているのはなぜか。本法案が、学問の自由、大学の自治を根底から脅かすものだからにほかなりません。
そもそも、日本国憲法第二十三条に学問の自由が明記されたのは、戦前の国家権力が学問の自由を侵害してきたことへの反省があったからです。学問の自由を保障するためには、大学内の構成員が自由に、そして自主的に大学運営に参加できる民主的な仕組みである大学の自治が不可欠です。
にもかかわらず、本法案は、政府が指定する大規模な国立大学法人に委員の大半が学外者となる運営方針会議という新たな合議体の設置を義務付けています。このこと自体が、外部からの干渉を受けず、学内構成員での意思決定、管理運営を基本とする大学の自治に反するものになるのではありませんか。
その上、運営方針会議の委員は、文部科学大臣の承認を得た上で学長が任命すると定めています。この仕組みが、人選への政府の口出しを容認し、大学の人事に国家権力が介入する根拠を与えるものになるのではありませんか。
運営方針会議は、国立大学法人の基本的な方針である中期目標・計画、予算、決算などの大学運営の主要方針を決定、学長の選考基準にも意見を述べ、学長が会議の決定どおりに運営していない場合には改善措置を要求する権限まで与えるとしています。つまり、運営方針会議は学長よりも上に置かれ、大学運営の意思決定から大学の構成員である教職員を徹底的に排除することになりませんか。
運営方針会議の委員はどういう人を想定しているのか。文科省は衆議院で、法人運営や財務経営などの多様な専門性を有する方によって構成される必要があると答えました。つまり、もうけや効率を最優先にするような数人の学外の委員によって、稼げる大学づくりを強力に進めることになるのではありませんか。お答えください。
本法案による運営方針会議の設置は、元々、大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学の認定を受ける条件として持ち出されたものです。
しかし、本法案は、国際卓越研究大学の認定の有無にかかわらず、政令で指定する大規模な大学を特定国立大学法人とし、運営方針会議の設置を義務付け、政令指定されない大学でも希望すれば準特定国立大学法人となり運営方針会議を設置できると、対象が大きく広げられました。
しかも、こうした対象拡大について、国立大学の学長始めほとんどの大学関係者は、十月の法案提出時までその内容を知らされずに来ました。国大協の永田恭介会長は、十一月十七日の記者会見で、法案の内容は閣議決定で法案が出されるまで知らなかったと述べました。こんな乱暴なやり方が許されていいはずがありません。
なぜ国際卓越研究大学以外の大学にも運営方針会議の設置が必要なのか、一体いつから、どのような検討がされたのか、関係者の意見を聞いたのか、お答えください。
特定国立大学法人は政令で指定するといいますが、その政令、基準は、国会で審議することなく改定することが可能です。しかも、政令で指定しない大学までも運営方針会議の設置が可能となれば、運営方針会議の設置が際限なく広がり、全ての大学の自治が壊されるのではありませんか。お答えください。
国大協の会長声明では、国立大学法人法において、特定国立大学法人、準特定国立大学法人及びそれ以外の国立大学法人と、国立大学法人が区分され、差異のある取扱いがなされる可能性があることに強い危惧を持つと表明しています。本法案により、国立大学の序列化や運営費交付金の配分の差が拡大し、これまで以上に選択と集中が進められるのではありませんか。
この間、日本の高等教育への公的財政支出は、OECD加盟国平均の半分以下、最下位クラスをずっと続けています。研究力の低下が進むのは当然のことです。今こそ、法人化以降減らされた国立大学への運営費交付金を抜本的に拡充すべきではありませんか。お答えください。
政府が大学への基盤的経費を減らしながら軍事研究への誘導を進めていることは問題です。安保三文書、国家安全保障戦略に基づき、先端科学技術の軍事利用に向けて、文部科学省も含む関係閣僚会議が設置されました。これは、大学を軍事研究に駆り立てるものではありませんか。
このまま運営方針会議を通じて政財界の意向を押し付ける仕組みができれば、非効率とされる学問分野は再編、淘汰され、稼ぐためとして、軍事研究もいとわない政財界が求める稼げる大学へと国立大学が大きく変質させられる危険があります。
そうでなくとも、国際卓越研究大学には事業収入の増加が求められています。事業収入を増やすために、授業料、学費が値上げされることもあり得ます。事実、国際卓越研究大学制度の検討会では、国立大学法人への規制緩和として、授業料設定の柔軟化、値上げの自由化が検討課題とされています。既に、国が定める上限、授業料標準額の一二〇%まで学費を値上げしている国立大学も複数出てきています。
大臣、事業収入の増加を目的にする国際卓越研究大学や、今回、運営方針会議が設置される国立大学において、現行の授業料の値上げをさせないと断言できますか。さらに、今後も国立大学授業料の値上げ自由化はしないと断言できますか、お答えください。
そもそも、五十年間もの長きにわたって学費値上げを繰り返し、世界で異常な高学費と十兆円にも上る若い世代の借金となる奨学金を押し付け、学生の学ぶ権利を奪ってきたのは政治の責任です。
直ちに国の助成で、国公私立、専門学校、全ての学費を半分に値下げするとともに、入学金を廃止する、奨学金を借金から給付中心に大転換する、奨学金返済を半額にするなど、緊急の対策を取るべきではありませんか。
学問研究の発展は、時の権力者の意向に左右されることなく、学問研究に携わる全ての人が自由に自主的に運営に参加できる民主主義なくしては成り立ち得ません。大学から自由と民主主義を奪う本法案については、徹底審議の上、廃案を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣盛山正仁君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/13
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014・盛山正仁
○国務大臣(盛山正仁君) 吉良議員にお答えいたします。
まず、運営方針会議の設置と大学の自治の関係についてお尋ねがありました。
運営方針委員には、大学自らが運営の当事者として共にその発展に取り組んでいきたいと考える方を学内外問わず人選いただくことが重要です。その上で、運営方針委員の任命に係る文部科学大臣の承認については、大学の自主性、自律性に鑑み、国立大学法人からの申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き拒否することはできないと整理しています。
また、中期目標に関する意見や中期計画の作成等については、経営協議会や教育研究評議会の審議などを経て学長が原案を作成し、その原案について運営方針会議が議論して決定することとなります。これらの提案を踏まえれば、運営方針会議の設置が大学の自治に反するという御指摘は当たらないと考えております。
次に、運営方針委員の任命についてお尋ねがありました。
運営方針委員は、学長と学長選考・監察会議の協議を経て、文部科学大臣の承認を得た上で学長が任命することとしておりますが、この承認は法人の申出に基づいて行うものとすると規定しております。当該規定は現行の国立大学法人法における学長の任命に関する規定に倣って設けているものであり、この承認に当たっては、大学の自主性、自律性に鑑み、申出に明白な形式的違反性や違法性がある場合や、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き拒否することはできないと整理しており、過去の国会においてもその旨答弁されているところです。
文部科学省としては、多様な専門性を有する方々にも運営に参画いただきつつ、様々なステークホルダーとともに、真に活動を充実させていくためには、大学自らが運営の当事者として共にその発展に取り組んでいきたいと考える方を人選いただくことが重要と考えており、大学の人事に対する国家権力の介入にはならないと認識しております。
次に、運営方針会議と学長の関係についてお尋ねがありました。
学長と運営方針会議の関係についても、学長も運営方針会議の構成員であるとともに、それぞれ権限と責任が異なっており、上下の関係とはなっておりません。
また、中期目標及び中期計画に関する事項を含む教育研究に関する重要事項については、学内者で構成する教育研究評議会において審議するなどの仕組みは引き続き存置されるため、運営方針会議の設置により大学運営の意思決定から教職員が排除されるとは考えておりません。
次に、学外の運営方針委員による稼げる大学づくりへの懸念についてお尋ねがありました。
社会課題も複雑多様化している中、その解決に向け国立大学法人への期待も高まっており、多様な財源を確保して財政基盤を強化し、教育研究基盤を強固にすることが重要と考えております。
運営方針委員については、大学自らが運営の当事者として共にその発展に取り組んでいきたいと考える方を学内外から人選していただき、運営方針会議として大学のミッション全体を念頭に議論を深め取組を進めていただくことが重要と考えております。
次に、報告書の提言から変更になった理由についてお尋ねがありました。
総合科学技術・イノベーション会議が取りまとめた報告書では、国際卓越研究大学の条件として、多様なステークホルダーの期待に応えられるような長期の成長戦略を策定するためには、合議体が経営方針を定めて学長の業務運営を監督することなど、自律と責任あるガバナンス体制が必要とされました。
その後、具体の法律案を検討する過程で、国際卓越研究大学であるか否かにかかわらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するという観点から、ステークホルダーと共に産学共同研究やスタートアップ創出に先進的に取り組んでいる事業規模が特に大きい国立大学法人については運営方針会議の設置を義務付けることとしました。また、その他の国立大学法人については、大学からの申請を踏まえ、文部科学大臣の承認を受けて運営方針会議を設置することができることとしております。
この点については、本年九月以降、文部科学省から、科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会や総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会、国立大学協会の会議に改正の方向性をお示ししながら検討を進めてきたところです。
次に、運営方針会議の設置拡大と大学の自治との関係についてお尋ねがありました。
政令で指定する法人以外の法人については、法人自身が運営方針会議の必要性を踏まえて自ら希望される場合にその設置を可能としているものであり、際限なく広がるものではないと認識しております。また、先ほどお答えしたとおり、運営方針会議の設置が大学の自治に反するとは考えておりません。
次に、運営方針会議の設置による国立大学の序列化についてお尋ねがありました。
特定国立大学法人はその事業規模によって政令で特定され運営方針会議の設置が義務付けられるものであるのに対し、準特定国立大学法人は運営方針会議の設置の必要性を踏まえ自らの意思によって文部科学大臣に申請し、文部科学大臣から承認を受けたものです。
このように、特定国立大学法人と準特定国立大学法人は、運営方針会議の設置までの過程は異なりますが、運営方針会議を設置している点においては何ら異なることはありません。また、特定国立大学法人以外の法人は、自らのミッションや発展の方向性に応じて運営方針会議の設置の要否を御判断いただくことが適切と考えていることから、運営方針会議の設置の有無によって一律に運営費交付金の取扱いに差を設けることは考えておりません。
次に、国立大学への運営費交付金の拡充についてお尋ねがありました。
国立大学法人運営費交付金は、我が国の高等教育及び学術研究の水準向上や均衡ある発展を担う国立大学が、人材の確保や教育研究環境の整備を行うために不可欠な基盤的経費であり、平成二十七年度以降は前年度と同額程度の予算額を確保しているところです。
文部科学省としては、各大学が継続的、安定的に教育研究活動を実施できるよう、引き続き必要な額の確保に全力で努めてまいります。
次に、国家安全保障戦略を踏まえた関係閣僚会議についてお尋ねがありました。
御指摘の関係閣僚会議につきましては、国家安全保障戦略を踏まえ、総合的な防衛体制の強化にも資する研究開発を推進するため、政府横断的な仕組みとして創設されたものと承知しております。大学を含め、各機関が実施する研究については、自主的、自律的に進められていくものであり、御指摘は当たりません。
次に、国立大学の授業料についてお尋ねがありました。
国立大学の授業料は、国が標準額を示しつつ、その一二〇%を上限として、各法人が個別に授業料を設定する仕組みとなっています。
国際卓越研究大学は、世界に伍する研究大学となることを目指し、研究活動の発展を支える多様な財源による強固な財務基盤を構築する観点から、年間三%以上の事業成長を求めることとしていますが、単に事業規模を拡大させるための授業料等の値上げにより学生の経済的な負担を増加させることは想定しておりません。
現行制度の中で、標準額を超える授業料を設定する際には、教育研究内容を充実させることや、授業料の値上げにより学ぶ機会を逸することがないよう、真に支援が必要な学生に対して支援することなどの観点を踏まえた上で適切な対応を行うことが重要と考えております。
また、国立大学の授業料の自由化、柔軟化については、総合科学技術・イノベーション会議が取りまとめた世界と伍する研究大学の在り方についてにおいて示されているとおり、授業料水準について国の一定の関与が必要とされる現行の制度趣旨を踏まえてなお、授業料の上限を弾力化する理由があるか、経済条件により教育機会に制限が掛かる懸念があることをどう考えるかといった留意事項も踏まえながら検討することが必要と考えております。
次に、高等教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。
様々な御提案をいただきましたが、文部科学省としては、これまで、低所得世帯を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金の支給を併せて実施してきたところであり、さらに、令和六年度から、多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大することとしています。
これに加えて、多子世帯の学生等に対する授業料等減免について、執行状況や財源等を踏まえつつ、対象年収の拡大も含め、更なる支援拡充を検討し、年末までに具体化を進めてまいります。
また、貸与型奨学金の返還については、返還の猶予や毎月の返還額を減額する制度などにより支援を行ってきたところであり、令和六年度から、この減額返還制度の年収要件を緩和し、更なる負担軽減を図ってまいります。(拍手)
〔国務大臣木原稔君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/14
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015・木原稔
○国務大臣(木原稔君) 吉良よし子議員にお答えをいたします。
米軍オスプレイ事故についてお尋ねがありました。
まず、今回の事故を受け、防衛省・自衛隊としては、人命の救出に全力を尽くしているところです。
米側に対しては、国内に配備されたオスプレイについて、捜索救助活動を除き、飛行に係る安全が確認されてから飛行を行うよう要請するとともに、陸自オスプレイについては、事故の状況が明らかとなるまでの当面の間は、その飛行を見合わせることとしています。
我が国におけるオスプレイの配備は、災害救援や離島防衛を含む我が国の安全保障にとって重要な意義を有し、抑止力、対処力の向上に資するものであり、米軍オスプレイの配備撤回を求める考えはありません。
また、自衛隊オスプレイについても、引き続き、地元自治体に丁寧に説明しながら、計画どおりに配備に向けて取り組んでいく考えです。
以上です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/15
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016・尾辻秀久
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/121215254X00820231201/16
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