1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六十年十二月九日(月曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第七号
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昭和六十年十二月九日
午前十時 本会議
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第一 農林漁業団体職員共済組合法の一部を改
正する法律案及び私立学校教職員共済組合法
等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/0
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001・木村睦男
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
日程第一 農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案及び私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
両案について、提出者から順次趣旨説明を求めます。佐藤農林水産大臣。
〔国務大臣佐藤守良君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/1
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002・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、高齢化社会の到来等社会経済情勢の変化に対応し、公的年金制度の長期的安定と整合性ある発展を図るため、公的年金制度の一元比等の改革の一環として、他の公的年金制度の改正と同様、農林漁業団体職員共済組合制度についても所要の改正を行おうとするものでございます。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、農林漁業団体職員共済組合制度に基づく給付につきましては、原則として、基礎年金に上乗せして支給する給与比例年金とすることといたしております。
第二に、本制度により支給する年金の額につきましては、厚生年金相当部分の年金額に職域年金相当部分の年金額を加えたものをもって年金額とすることといたしております。
第三に、既裁定年金者の年金額につきましては、いわゆる通算年金方式により算定した額に改定することといたしております。なお、これにより現在受けている年金額が減額することがないよう、従前の年金額は、これを保障することといたしております。
第四に、農林漁業団体職員共済組合の給付に要する費用につきましては、使用者である農林漁業団体と組合員との折半負担とすることといたしております。また、国庫補助につきましては、公的年金制度共通の措置として、基礎年金に要する費用に一元化することとし、組合が納付する基礎年金拠出金の三分の一を補助することといたしております。
第五に、本制度による年金の額につきましては、消費者物価による自動スライド制に改めることといたしております。
第六に、農林漁業団体職員共済組合の組合員等につきましては、基礎年金制度を適用するための所要の法的措置を講ずることといたしております。
最後に、今回の制度改正の施行期日につきましては、昭和六十一年四月一日といたしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/2
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003・木村睦男
○議長(木村睦男君) 松永文部大臣。
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/3
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004・松永光
○国務大臣(松永光君) 私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
私立学校教職員共済組合の年金制度については、共済組合設立以来、国公立学校教職員の年金制度に準じてその充実を図ってまいりましたが、近時、人目の高齢化の進行等により年金制度のよって立つ基盤そのものに大きな変化が生じてきております。
このような社会経済情勢の変化に対応し、長期的に安定した年金制度が維持されるよう公的年金制度全般にわたる見直しが必要となり、政府としては、制度全体の長期的安定と整合性ある発展を図るため、公的年金制度の一元化を展望しつつ、その改革を推進することといたしたところであります。
今回、提出いたしました法律案は、私立学校教職員共済組合の組合員等についても、国公立学校の教職員と同様に、国民年金の基礎年金の制度を適用することとし、同時に、共済年金制度における給付と負担の長期的均衡を確保するため、給付水準の適正化を図る等の措置を計画的に講ずることとするものであります。
次に、この法律案の概要について申し上げます。
第一に、共済年金制度に基づく給付は、原則として基礎年金に上乗せして支給する報酬比例年金とし、給付の種類としては、退職共済年金、障害共済年金及び遺族共済年金等といたしております。
第二に、長期給付の給付額の算定の基礎となる平均標準給与月額は、組合員であった期間の全期間平均の標準給与の月額としております。
第三に、長期給付の支給等に関する事項については、国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案における該当規定を準用することといたしております。
このことにより、共済年金の年金額については、厚生年金と同様の算定方式による厚生年金相当部分の年金額に、その二割に相当する職域年金相当部分の年金額を加えたものをもって年金額とするほか、支給開始年齢については、経過措置を
短縮し、昭和七十年から六十歳となるようにいたしております。
また、退職共済年金について加給年金制度及び低所得者に対する在職中支給の制度を設け、障害共済年金について事後重症の制限期間を撤廃し、遺族共済年金について給付率を引き上げる等の措置を講ずるほか、公的年金の併給調整の実施、所得制限の強化等を行うことといたしております。
さらに、既裁定年金の取り扱いについては、改正後の年金額の算定方式に類似している、いわゆる通年方式により算定した額に改定することといたしておりますが、従前の年金額はこれを保障することといたしております。
なお、年金額の改定方式については、消費者物価による自動スライド制を採用することといたしております。
第四に、共済年金の給付に要する費用については、使用者としての学校法人等と組合員との折半負担とすることとし、国庫補助については、基礎年金拠出金の三分の一とすることといたしております。
最後に、この法律の施行日につきましては、各公的年金の制度改正と同様に昭和六十一年四月一日といたしております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/4
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005・木村睦男
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。本岡昭次君。
〔本岡昭次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/5
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006・本岡昭次
○本岡昭次君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました農林漁業団体職員共済組合法改正案並びに私立学校教職員共済組合法等改正案に対しまして、総理並びに関係各大臣に御質問を申し上げます。
まず、総理、大蔵大臣に伺います。
御承知のように、私学共済は昭和二十九年に、また農林共済は三十四年に厚生年金から分離、独立したものであります。この独自の制度を設立しました背景には、いわゆる民間であります両職域の中に、職員の相互扶助によって高い負担をしても、より充実した老後保障を確保したいという要請が強かったことがあります。したがいまして、積立方式を前提にし、また、保険数理に基づき給付に応じた掛金を納付してきたのであります。しかも忘れてはならないのは、厚生年金なども同様ですが、これらの制度が保険の手法を採用しているということであります。
そこで、基本的な問題として、保険と共済制度とはどう異なるのか、経過措置があるとはいえ、保険契約期間中における保険内容の変更は、憲法を頂点とする法秩序に照らして問題はないのかどうかという点について伺います。また、現共済組合員の財産権の侵害、あるいは一般的な契約法上の指導原理に反しないとの見解を持たれるとしても、最低限契約内容の変更には契約者間の合意が必要なのではないか。さらに、根拠法の改正という行為があれば法秩序に違反しないとの見解を政府が持たれるとしても、このような制度の根拠法を改正する際は、国会が責任を持つという上から全会一致となり得る制度として成立を期すのが政府のとるべき姿勢であり、その方向に沿って努力することが基本ではないかと考えます。このような点についての見解もあわせて明らかにしていただきたいと存じます。
次に、国鉄共済年金の財政救済について伺います。
国鉄再建プランによる人員削減、首切りが招く国鉄共済年金給付の急増という事態は、国の政策から発生する緊急事態であって、今回の年金改革とは全く別の次元の問題であります。したがいまして、農林共済、私学共済が国鉄共済年金に昭和六十三年度以降拠出金を出す事態はないと考えてよろしいですか。さらに昭和六十五年度以降についても同様と考えてよろしいか。また、国の財政特例期間中の措置として国庫負担四分の一カットしてきた分を、今回の制度改正に際し、運用利子相当分も含め農林共済、私学共済に返済をして新制度に移行させるべきだと考えますが、いかがですか。
次に、改正内容について伺います。
まず、基礎年金制度の適用についてであります。
今回の改正によって基礎年金制度が共済年金制度にも適用されることになるのでありますが、特に共済組合員の被扶養配偶者に対する基礎年金の給付に関して問題があると考えるのであります。被扶養配偶者は、組合員と婚姻関係にあった期間については、基礎年金の給付要件の期間としてのみ算定し、いわゆる空期間となるのであります。一方、その被扶養配偶者が国民年金に任意加入し、独自に納付してきた保険料は、基礎年金の保険料としてカウントされることにしかならないのであります。
例えば、施行日に四十五歳の婦人を考えてみますと、国民年金制度が発足した昭和三十六年には二十歳であり、そのとき共済組合員と結婚し、旧国民年金に当初から任意加入してきた者の場合には、受け取ることのできる基礎年金額は六十万円満額となり、さらに年金に応じて支給される振替加算額が十一万円以上つくため、この者の年金総額は七十一万円強となるのであります。一方、同年齢の既婚婦人であっても旧国民年金に任意加入してこなかった者の場合は、受け取ることのできる基礎年金額は、施行日以降十五年分に当たる二十二万五千円となり、振替加算額を加えても年金総額はようやく三十三万円を超える額にすぎず、任意加入していた者の半分以下の金額になってしまうのであります。これでは婦人の年金権を確立したなどと到底言える内容ではありません。
さらに、共済年金が世帯年金であることを考えると、その掛金の中には被扶養配偶者の分も含まれていると考えることが妥当であり、国民年金に任意加入してきた妻は掛金を二重に納めてきたと考えるべきであります。にもかかわらず、この付加的な保険料に見合う年金が全く消えてしまっているのであります。このようなことでは、年金制度を維持する上で最も必要な制度の信頼性が全く失われ、国民年金に任意加入してきた者を裏切ることになります。したがいまして、共済組合員との間に婚姻関係にあった期間については、妻の基礎年金給付額算定の基礎として見るべきであります。また同時に、国民年金制度への任意加入期間については、やはりこれまでの制度の趣旨と任意加入者の期待権、既得権を保障する上から、付加年金分として扱うべきだと考えますが、厚生大臣の見解を伺いたいのであります。
関連して、基礎年金の国庫負担について伺います。
基礎年金を横割り年金としてすべての年金制度の基礎とする考えはよいとしても、問題は国庫負担のあり方であります。政府原案のように社会保険料を主とし、国の負担はわずか三分の一というような基礎年金制度は世界に例がないのではありませんか。衆議院で政府・自民党の参考人の方も述べておられるように、国の負担を三分の一から三分のニへ、さらに全額国庫負担へと段階的に国庫負担を増大させていかなければ、せっかく農林共済、私学共済に基礎年金を導入しても年金制度の安定にはつながりません。そのために税方式の導入による財源確保がどうしても必要なのではないでしょうか。大蔵大臣に伺います。
また、この四月に国民年金、厚生年金法を改正する際、基礎年金の導入に当たって、政府は、社会党の提案で、基礎年金の水準、費用負担のあり方などについては今後検討すると、附則の法律修正をしております。農林共済、私学共済にも附則を入れて同様の修正をすべきだと考えますが、厚生大臣並びに農林水産大臣、文部大臣にお伺いをいたします。
次に、年金額算定の基礎となります平均標準給与のとり方について伺います。
農林共済、私学共済においては、これまで厚生年金と同様、標準給与制をとってきております。組合員の過去の給与記録がそろっているにもかかわらず、改正される国家公務員共済の特例措置に準ずることとされているのであります。この結果、私学共済には、全組合員期間の平均標準給与がほほ同一水準で推移してきた組合員が非常に多いことから、これらの者は補正に基づく減額を余儀なくされることとなり、年金水準が厚生年金を下回る例が出るおそれさえ生ずるのであります。ちなみに、施行日前五年間の平均が全期間の平均を下回る者は、全組合員三十四万人中およそ六万人にも上ると推定されております。少なくともこの場合、給与記録がある以上、その額を算定し、それと比較していずれか高い額を用いるといった調整を図る必要があると考えますが、文部大臣、農林水産大臣の見解を伺います。
次に、既裁定年金のスライド停止と併給調整について伺います。
農林共済、私学共済の年金受権者の大多数は、戦後の私立学校や農漁業の再建のため、当時、極めて低い賃金で耐え忍び働き続けてこられた人たちでございます。したがって年金額も当然低く、毎年の年金スライドによって何とかその年金額の実質的価値を維持してこられた皆さんに、年金スライド停止は全くむごい措置であり、年金制度の信頼を裏切るものであります。政府は七十歳以上の老齢加算方式による対応を検討しているようでありますが、それよりも上限を決めて停止の措置をしてはどうかという意見もあります。いずれにしても、既裁定者の一律スライド停止は暴挙であると私は考えます。
また、併給調整の実施についても、一律の併給禁止ではなく、例えば平均的な年金額までは一部併給を認めるなどの経過措置を設けるべきであると考えます。これらの諸点について厚生大臣並びに農林水産大臣、文部大臣の見解を伺います。
次に、特に私学共済にとって深刻な問題として、六十五歳以上の在職者に対する年金支給問題があります。
厚生年金であれば、六十五歳以上になると、在職中であっても老齢厚生年金を支給されることになっています。しかし、共済制度においては、退職共済年金であるために在職中の年金支給はありません。ところが私学共済では、私学の特殊事情によって、他共済と比較し六十五歳以上の組合員の割合が際立って高いのであります。国家公務員の場合をとりますと、千五百人、全体の〇・三%程度に対し、私学共済では六十五歳以上の組合員が約一万五千人、四・五%が在職しているという状態であります。
さらに、現在、私立学校には厚生年金に加入している者がかなり存在していることも見逃すことはできません。今回の制度改革によって、同じ私学に勤務していながら、年金支給のあるなしが生じるばかりでなく、厚生年金には設けられていない所得制限があることなどの違いが加わって、私学間の処遇上の格差が顕著になるということであります。その結果、私学における人材の確保あるいは交流に重大な支障を来し、私学の発展を阻害するおそれが出てくるのであります。文部大臣は、各共済制度固有の歴史や役割を無視した結果生じるこれらの障害にどのように対応しようというのか、明快な方針を示していただきたいのであります。
次に、支給開始年齢引き上げ措置の圧縮問題について伺います。
農林漁業団体におきます今日の定年の実態は、その多くが五十六歳前後となっております。今後も単協等の経営基盤の実態から、速やかに六十歳定年に移行するとも思えないのであります。この実情に照らして、農林水産大臣はこの圧縮問題についてどのような見解を持たれておりますか。自衛官や警察官などには若年定年の実態に応じた経過措置が設けられることになっております。これらの者とほぼ同様の定年実態にある農林漁業団体役職員について同様の措置がとれないのかどうか、農林水産大臣の御見解を伺います。
最後に、私は、本案の審議には十分時間をかけ、慎重に審議を尽くし、その上で政党間の話し合いによってまとまれば、政府は誠意を持って修正すべきであることを中曽根総理に強く要請して、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/6
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007・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 本岡議員にお答えを申し上げます。
まず、保険と共済制度の相違の問題でございますが、共済年金は、社会保険方式により、退職、死亡、障害に際しまして基本的な所得保障を行うものでありまして、厚生年金等と同様、世代間扶養の仕組みにより年金額の実質的価値を長年にわたり維持するという機能を有するものであります。さらに、共済年金は、当該職域における相互扶助事業としての性格も強く存するものであります。一方、民間保険は、積立貯蓄的性格のものであり、より豊かな老後生活を送るために、個々人の努力により公的年金を補完するという役割を期待しておるものなのでございます。
契約期間中における保険内容の変更の問題でございますが、今回の共済年金の改正は、世代間扶養の仕組みをとる公的年金制度に対する国民の信頼を確保するため、給付と負担の均衡を図り、制度の長期的安定を図るために講ずる措置でありま
す。したがって、公的年金制度に対する国民の信頼にこたえるためには今回の改正はぜひとも必要であり、国の社会保障に対する責任上もその早期実施を図るべきものであります。
次に、契約変更の問題でございますが、給付と負担の均衡があって初めて長期に安定した公的年金制度の維持が図られることは、国民各位に御理解いただけるものと存じます。そして、このような公的年金制度につきましては、国会の御承認が基本であると考えております。今後さらに国民の皆さんの御理解が深められるように努力をいたしたいと思います。
次に、根拠法の改正の問題でありますが、今回の共済年金の改正は、給付と負担の均衡を図り、制度の長期的安定を目指すものであることは申し上げましたが、その成立はぜひとも不可欠であると考えております。提出している法律案は、種々検討を重ねた結果得た成案、十分御審議の上御賛同願いたいと考えております。
国鉄共済年金については、財政調整五カ年計画の終わる昭和六十四年度までは、政府として、国鉄の経営形態等の動向を踏まえつつ、国鉄の自助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、支払いに支障のないようにする考えであります。以上については、昭和六十一年度中に結論を得、その後できるだけ速やかに具体的立法措置に入ることとする考えでおります。なお、昭和六十五年度以降分については、その後速やかに対策を講じ、支払いの維持ができるように措置する考えでおります。
繰り延べた年金国庫負担の返済の問題でございますが、行革関連特例法による年金国庫負担金の減額分については、国の財政改革をさらに一層強力に推進する等誠意を持って対処し、積立金運用収入の減額分を含め、将来にわたる年金財政の安定が損なわれることのないよう、今後国の財政状況を勘案しつつ、できるだけ速やかに繰り入れに着手する所存でございます。
修正要求に対しましては、今回の年金制度の改正は、長寿社会の到来に備え、公的年金制度の一元化を展望しつつ、給付と負担の均衡を図り、公平で安定した年金制度を確立することを目的とし、基礎年金の導入と給付水準の適正化等を行おうとするものであります。現在提出している法律案は、この方向に沿い種々検討を重ねた結果得た成案でありまして、政府といたしましては最善のものと考えております。同時に、今後の国会における審議の推移を見守りつつ、慎重に対応いたしたいと思います。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤守良君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/7
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008・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 本岡議員にお答え申し上げます。
まず、基礎年金の水準、費用負担に関する検討条項についてでございますが、基礎年金の水準、費用負担のあり方につきましては、国民年金法の附則の規定によりまして、今後検討が加えられるべきこととされております。また、農林漁業団体共済年金としても、組合員等に基礎年金が適用されることにかんがみ、適切に対処してまいりたいと考えております。
次に、施行日前の平均標準給与の算定に関するお尋ねについては、今回の改正により、年金額算定の基礎となる平均標準給与については、これを組合員期間全期間の平均額としております。この場合において、施行日前の期間については、制度加入期間が団体により長短があること等の事情がございます。そこで、原則として、施行日前五年間の平均額に全体としての一定の補正率を乗じて、施行日前の組合員期間全期間の平均標準給与とみなすこととしております。
この補正率につきましては、施行日前五年間の平均額に対する全期間の平均額の標準的な比率として、組合員期間の年数により区分して定めることとしております。その際、比較の対象とする全期間の平均額につきましては、過去の給与水準を現時点における給与水準に再評価し直したものとしており、特段の支障は生じないものと考えております。
次に、既裁定年金のスライドの停止についてでございます。
御指摘のとおり、既裁定年金のうち共済方式から通算年金方式に裁定がえをされた受給者は、各共済年金共通の措置として一定期間スライドが停止されます。しかし、スライドを実施することについては、年金受給者と現役組合員との給付と負担の均衡、施行日以後に新たに年金を受ける者と既に年金を受けている者との給付のバランスを図る必要があること等を考慮すると困難であると考えております。
次に、併給調整に関するお尋ねでございますが、今回の農林漁業団体共済年金の改正は、年金受給者と現役組合員との給付と負担の均衡を図るとともに、あわせて年金受給者相互間における給付の均衡を図り、現行制度における給付の重複を解消し、より必要性の高いものに給付の重点化を行うこととしております。併給調整の措置についても、以上のような趣旨から、厚生年金や他の共済年金と同様に行うものでございます。
次に、年金の支給開始年齢の引き上げの経過措置の圧縮についてでございますが、今回の年金の支給開始年齢の繰り上げの経過措置の短縮は、自衛官等法律制度上特殊なものを除き、各共済年金制度共通の措置として行うものでございます。
農林漁業団体の定年制は、基本的には民間団体における労使間の問題でございますが、定年年齢と年金の支給開始年齢との間に空白が生ずることのないよう、今後とも指導を行ってまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/8
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009・松永光
○国務大臣(松永光君) お答えいたします。
私に対するお尋ねの第一点は、基礎年金の水準、費用負担のあり方等について、今後検討が加えらるべき旨の規定を国民年金法と同様、私学共済法にも設けてはどうかという御指摘でございますが、今回の制度改正が成立した場合、私学共済組合の組合員及びその被扶養配偶者についても基礎年金についての国民年金法の規定の適用がなされることになります。したがって、別途私学共済法に御指摘のような規定を設ける必要はないものと考えます。
次に、改正法施行日前の組合員期間に係る平均標準給与の算出方法についてでありますが、これは、私学共済の組合員の一部に過去期間の給与記録のない者があること、従来から私学共済が準ずることとしてきました国共済においても、施行日前五年間の標準給与を補正することで平均標準給与を求める方式をとっていることなどから、他共
済と同様に、今回のような方式を御提案申し上げているところであります。これに加えて、御指摘のような算定方式を新たに導入して、いずれか高い額の平均標準給与をとらせることにすることは、他の共済制度との整合性の上からも困難であると考えます。
次に、既裁定年金者のスライド停止についてでありますが、戦後における私立学校の発展と今日の学校教育において私学の果たしておる重要な役割は、現在、私学共済の年金者となっておられる方々を初め、関係者の御協力のたまものであると考えております。
そこで、今回の制度改正において、これら既裁定年金者の年金額については、いわゆる通年方式に裁定がえをしますが、これが従前額を下回る場合においては、従前額を保障することといたしております。そして、裁定がえ後の額が従前額に追いつくまでは年金額のスライドは停止するということにいたしておるわけであります。この措置は、世代間の給付と負担の均衡を図るとともに、同一世代内における公的年金の給付水準の均衡を図ることとするものでありまして、受給者の方々にぜひとも御理解を願いたいと考えておるところでございます。
次に、併給調整についてでありますが、今回の新しい年金制度においては、各制度においてそれぞれ適正な給付水準を定めることとしており、過剰な給付を避けるため、制度内、制度間を通じて一人一年金の原則のもとに併給調整を行うこととしたものであります。この措置の実施に当たり、一部併給等の経過措置を設けることは、さらに現役組合員の負担の増大を来すことにもなるため、世代内及び年金受給者間のバランスのとれた公平な制度を目指す今回の制度改正の趣旨にかんがみ困難であると考えておるところであります。
次に、六十五歳以上の在職者に対する年金支給についてでございますが、私学共済年金は、退職後の所得の喪失を補てんし、生活を保障するための給付であり、六十五歳以上であっても、他の共済制度と同様、在職中は原則として年金を支給しないことにしております。しかし、今回新たに低所得の在職者に対する一部年金支給の方途を講じておるところであります。共済制度間の整合性を図る観点からすると、私学共済についてのみ六十五歳以上の在職者に年金の一般的支給を取り入れることは困難であると考えます。また、御指摘のように、私立学校の教職員の限られた一部分が創設当時の経緯から厚生年金に加入しておりまして、私学共済と年金支給についての差があることは事実でありますが、このことが私学の均衡ある発展に支障を及ぼすとは考えられないのであります。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/9
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010・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 本岡さんの第一の御質問は国鉄共済年金の救済策、これは総理から、官房長官が先般発表いたしました統一見解に基づいてお答えがございました。ただ、「諸般の検討を加え、」、こういう一項がございます。これが他制度からの財政調整を含むかどうかと、こういうことに対する御疑念であろうかと思っております。国鉄の自助努力も幾らかということも、現時点では必ずしも正確に申せることではございません。国の負担につきましても、理屈のあるものしか出せないというのが一応の現実的なお答えでございましょう。理論的には他制度からの連帯というものはあり得るわけでございますが、強いて申しますならば、現時点では考えておりませんということでもってお答えといたします。
それから次の問題は、財政特例期間中の問題でございます。
これも総理からお答えがございましたが、返済の具体的内容につきましては、今後の国の財政状況を勘案する必要があるため現時点で明らかにできないということは御理解をいただきたいと思います。ただ、政府といたしましては、国の財政改革をさらに一層強力に推進する等誠意を持って対処して、今後、積立金運用収入の減額分を含む年金国庫負担の減額分のできる限り速やかな繰り入れに着手するという考え方でございます。
それから、年金制度安定のためのいわゆる税方式ということについての御意見を交えての御質問でございます。
我が国の公的年金制度は、これまで本人と事業主の拠出によります保険料と公的負担による社会保険方式で運営されておって、そのことが既に我が国に定着しておるということが一応は考えられると思います。そして、基礎年金の財源を全額税負担によって賄ういわゆる税方式ということになりますと、新たなる巨額な新負担を課することにつきまして果たして国民の合意が得られるかどうか、そしてまた、保険料を拠出した者と拠出しない者との公平が図れるかどうか、このような問題がありまして、今回の改正におきましては、引き続き社会保険方式を維持するということにいたしておるところでございます。ただ、審議会、あるいは先般社会党で御発表になりました目的税構想等々に私どもも将来の課題として興味を持っておることをつけ加えさせていただきます。(拍手)
〔国務大臣増岡博之君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/10
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011・増岡博之
○国務大臣(増岡博之君) お答え申し上げます。
最初に、共済組合員の妻であった期間の取り扱いについてでございますけれども、御提案のような形の給付を行うことにつきましては、給付水準のあり方、あるいはこれに必要な保険料負担の問題などから見まして、これをとることはできないものと考えておるところでございます。
次に、御指摘の国民年金法附則の規定につきましては、今後その趣旨を踏まえ十分検討を行ってまいりますが、基礎年金の費用負担につきましては、既に我が国社会に定着しておる社会保険方式を引き続き維持することが妥当であると考えております。
最後に、併給調整のあり方についてでありますが、今回の改正では、年金の重複、過剰給付の問題を解決するため一人一年金の原則を導入したところでございまして、この場合、同一人に複数の年金の受給権が発生しても、所得保障の必要性がそのまま上乗せ、上積みされるということにはならないものと考えておりまして、御指摘のような形での一部併給を行うのは妥当ではないと考えておるところでございます。
以上でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/11
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012・木村睦男
○議長(木村睦男君) 刈田貞子君。
〔刈田貞子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/12
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013・刈田貞子
○刈田貞子君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました農林漁業団体職員
共済組合法の一部を改正する法律案並びに私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対して、総理並びに関係各大臣に質問をいたします。
我が党は、かねてより、高齢化社会の到来を控えて、公的年金制度の一元化を図る必要性を訴え、その第一歩として、共済年金に基礎年金を導入することは当然であると考えております。しかし、今回の改正案においては、それは全く形式だけのことであり、互助組織による保険としての特色を失うばかりか、共済年金の給付水準を引き下げ、国庫負担も不十分なまま、将来は掛金を二倍、三倍に引き上げるばかりか、国鉄共済年金の救済策を初めとする共済年金制度全般にわたる将来のあり方が明確に示されておらず、したがってこれでは国民の十分な理解と協力は得られないと思うのでありますが、これら諸問題について総理並びに大蔵大臣の基本的認識を伺いたいと思います。
以下、具体的な問題について伺ってまいります。
第一に、いわゆる掛金と給付との関係についてであります。
今回の改正案では、掛金とその利子相当分の給付を十分に保障しないと言われており、この点について政府は、保険である以上やむを得ないとしておられますが、しかし私は、あえて保険とはいえ余りにもその落差が大き過ぎると思うのでありますが、御所見はいかがですか。また、政府において保険という点を強調されるのであるならば、民間である私学や農林漁業団体における雇用契約の一環として存在する共済制度に対する強制加入や掛金と給付のあり方について本来自由であるべきと思いますが、この点どのように考えられますか。
また、国家、地方両公務員共済と異なり、私学、農林両共済には独自の審議会がなくしたがって被保険者の意向が改正案に十分に反映されているとは言いがたく、契約者間の合意の形成についてどのような手続を経たのか、お伺いしたいのであります。
第三に、改正に伴う経過措置についてであります。
改正法の施行日の前日に組合員期間が二十年以上ある者にあっては、その期間の年金額は保障されるものの、中には施行日以降の掛金が完全に掛け捨てになることもあるという大きな欠陥が指摘されます。したがって、少なくとも施行前の組合員については、現行制度に基づく給付を保障すべく明確な区分を設ける必要があると思うのでありますが、御所見をお伺いいたします。
第四に、年金の支給開始年齢と定年制の関係についてであります。
とりわけ農林漁業団体の定年は、その多くが五十七歳程度であり、しかもこれら団体の経営実態から見て、六十歳定年制の実施が昭和七十年までに可能とは言いがたく、六十歳へ引き上げるための目標年限を現行の昭和七十五年から改正案のごとく七十年に圧縮するのは甚だ不合理だと考えます。年金制度は、その制度の趣旨から退職後の生活を保障するものでなければならないと考えます。したがって、六十歳定年制を実施していない職域にあっては、その職域の定年実態に応じた支給開始年齢を設定すべきであると思いますが、いかがですか。
第五に、両年金制度の職域年金部分について共済年金相当分の二〇%程度の加算がなされるということについてであります。
本来、これら両年金制度は、国家公務員共済、地方公務員共済と異なり、民間ベースのものとしてその運営は主体的であってしかるべきであり、職域部分についても当然自由な設計が可能な制度として認めるべきであると思います。既に、厚生年金における報酬比例部分の三〇%以上を保障できる多くの民間企業においては、その負担能力に応じ自由に設計できる企業年金制度を実施しております。特に、当面財政的に何ら問題がないにもかかわらず、一律に制度改革を強いられることにより、既得権や期待権が著しく損なわれることになっている私学共済にあっては、多くの民間企業が実施しているこうした企業年金と同様、実情に応じて職域加算部分を自由に拡大できる措置を講ずるなど、きめ細かい配慮を行い、納得できる制度改正を図るべきであると考えますが、いかがですか。
第六に、私学共済固有の具体的問題についてであります。
まず、年金額の算定の基礎となる標準給与月額のとり方について、今回の改正案では附則第四条で「退職前五年間」となっておりますが、厚生年金方式でなく、なぜ五年となったのか。また、私立学校では高齢組合員の割合が極めて高いことにかんがみ、厚生年金の場合に準じて、六十五歳以上の在職者に対し退職共済年金を満額支給する措置を講ずるべきでありますが、御意見を伺いたいと思います。
第七に、農林共済に関連して農林漁業町題についてであります。
農林漁業団体については、その経営基盤が脆弱で賃金水準が低いことから、年金支給額は社会保障水準以下にある人が多い現状にあります。加えて、掛金負担は、今回の改正によって、これら関係団体に一層重い負担を強要することになり、そのためにもこれら関係団体の経営基盤を強化する必要があると考えますが、我が国農林漁業を取り巻く情勢が甚だ厳しい中にあって、農林漁業の経営基盤強化についていかなる具体的対応をなされる用意があるのか、お伺いをいたします。
最後に、女性の立場から婦人の年金権について伺います。
このたびの一連の年金改正の中で政府は声高に婦人の年金五万円を強調してきましたが、果たして婦人の年金権は保障されていくのでしょうか。今回の改正案では、組合員の妻の基礎年金分の掛金は夫の掛金に含まれておりながら、結婚期間は空期間ということで基礎年金の給付要件の期間としてのみ算定され、給付額算定の基礎となる保険料納付済み期間としては算定されないのであります。したがって、当分の間、組合員の妻にあっても実際の個々の年金額に差が生じてくることになり、五万円満額すべての人が保障されるわけではありません。また、女性自身が組合員であって共済年金を支給される場合に、その支給開始年齢については厚生年金の場合に比べて不利な立場に置かれる事実が存在するなど、婦人の年金における多くの課題について今後どのように取り組んでいかれるのか総理に伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/13
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014・中曽根康弘
○国務大臣(中曽根康弘君) 刈田議員にお答えをいたします。
まず、共済制度の給付水準の問題でございますが、今回の改正は、公的年金制度の一元化を展望しつつ、給付と負担の均衡を図り、公平で安定した年金制度を確立することを目的としているものなのであります。長寿社会を迎えまして、現行制度のままでは今後、現役組合員の掛金負担が大幅に増加せざるを得ない、そういう状況にもありまして、このような事態に対応していくためにも、今回御提案申し上げているように、年金の給付水準を適正化するとともに、将来における組合員の負担の増加を軽減していく措置が必要であると考えた次第です。今回の改正は、これらの措置によって長期的に安定した制度の確立を図ろうとするものでありまして、御理解をいただきたいと思う次第でございます。
婦人の年金権の御指摘でございますが、サラリーマンの妻については、従来は国民年金に任意加入とされてきましたが、来年四月からは全員加入することとなり、将来は五万円の基礎年金が保障されることになります。この場合、当面は任意加入してきた方と、そうでない方との岡で年金額に差が生じることとなりますが、これは基礎年金が社会保険方式を基本とするものである以上、必要なことであると考えます。なお、改正法においては、過去任意加入していなかった妻にも一定額の基礎年金を支給する経過措置を設けております。
五万円は少ないではないかというお話でございますが、改正法の基礎年金は老後生活の基礎的な部分を保障するものでありまして、高齢者の現実の生計費等を総合的に勘案して月額五万円、夫婦ともにして十万円の水準といたしたものであります。これをさらに引き上げることについては、将来の保険料負担との関連や今日における極めて厳しい財政状況を考えると、当面困難であると考えざるを得ません。
国鉄共済の問題でございますが、これは前から申し上げておるとおり、財政調整五カ年計画の終わる昭和六十四年度までは、政府としては、経営形態の動向を踏まえつつ、国鉄の自主努力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、支払いに支障のないようにする考えです。今回、その点については、六十一年度中に結論を得て、その後できるだけ速やかに具体的立法に入る考えであります。六十五年度以降については、その後速やかに対策を講じて、支払いの維持ができるように措置する考えでおります。
一元化の問題については、さきの国民年金、厚生年金保険の改正及び現在御審議いただいている共済年金法の改正を踏まえ、昭和六十一年度以降さらに制度間調整を進めることとしておりますが、その具体的内容や手順については今後政府部内で検討することといたしております。
残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
〔国務大臣佐藤守良君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/14
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015・佐藤守良
○国務大臣(佐藤守良君) 刈田議員にお答え申し上げます。
まず、共済制度と保険についてでございますが、農林漁業団体共済年金などの共済年金は、社会保険方式によりまして退職、死亡、障害に際しまして基本的な所得保障を行うものであり、厚生年金等と同様、法律に基づく世代間扶養の仕組みによりまして、年金額の実質的価値を長年にわたり維持するという機能を有するものでございます。さらに、共済年金は、当該職域における相互扶助事業としての性格も強く有するものであります。一方、私的契約による民間保険は、積立貯蓄的性格のものであり、より豊かな老後生活を送るため、個々人の努力により公的年金を補完するという役割を期待すべきものであると考えております。
次に、今回の改正内容をどのように考えているかとのお尋ねでございますが、今回の農林漁業団体共済年金の改正は、世代間扶養の仕組みをとる本年金制度に対する組合員等の信頼を確保するため、給付と負担の均衡を図り、制度の長期的安定を図るために講ずる措置でございます。したがって、農林漁業団体共済年金制度に対する組合員等の信頼にこたえるためには今回の改正はぜひとも必要であり、国の社会保障に対する責任上もその早期実施を図るべきものと考えております。さらに、給付と負担の均衡があって初めて長期に安定した制度の維持が図られることは、組合員各位に御理解いただけるものと考えており、今後さらにその理解が深められるよう努力いたしてまいる所存でございます。
次に、施行日前の組合員を明確に区分すること並びに現在の組合員についての公平確保措置につきましては、今回の農林漁業団体共済年金の改正は、給付水準の適正化により世代間及び同一世代内における給付と負担の均衡を図り、制度の長期的安定を目指すものでございます。この給付水準の適正化を進めるに際しては、年金額の急激な変動を来さないよう長期にわたる経過措置を設けるとともに、現行の退職年金の受給資格でございます二十年以上の組合員期間を有する者については、施行日の前日における現行制度による年金額の保障を期待権尊重の趣旨から特例的に講じているところでございます。施行日前の組合員を特に区分して現行制度の給付を保障することについては、年金受給者と現役組合員との給付と負担の均衡を失することから困難であると考えております。
次に、組合員の意向の反映等の改正案作成に当たっての手続についてのお尋ねでございますが、今回の農林漁業団体共済年金の改正は、非常に重要な問題であり、これを円滑に進めるには、組合員、年金受給者、事業主団体等の合意の形成を図る必要があると考えております。このため、改正法案の作成に当たっては、組合員、事業主団体、年金受給者の代表、学識経験者等から構成される検討の場を設け、関係者の御意見を十分配慮したところでございます。また、最終的には、社会保障制度審議会において御検討いただいたものでございます。
次に、年金の支給開始年齢と定年制との関連についてでございますが、今回の年金の支給開始年齢の繰り上げの経過措置の短縮は、警察官等法律制度上特別なものを除き、各共済年金制度共通の措置として行うものでございます。農林漁業団体の定年制は、基本的には民間団体における労使間の問題でございますが、定年年齢と年金の支給開始年齢との間に空白が生ずることのないよう、今後とも一層の指導を行ってまいる所存でございます。
次に、職域年金部分を自由設計にすべきではないかというお尋ねでございますが、農林漁業団体共済年金は、農林漁業団体に優秀な人材を確保するため、同一地域における市町村職員と同様の年金制度を設けるという趣旨から、昭和三十四年に発足したものでございます。近年におきましては、数次の改正を経て、地方公務員、国家公務員の共済年金と全く遜色のないものとなっており、今回の改正における職域年金部分についても他の共済年金と同様の水準となっております。この職域年金部分を自由設計にすることにつきましては、多種多様な農林漁業団体の職員の福祉の向上、相互扶助を一体として行うことをねらいとする共済年金制度としては適切ではないと考えております。
次に、農林漁業団体の経営基盤の強化方策についてでございますが、農林漁業団体は、基本的には、農林漁業者の自主的協同組織として、我が国農林漁業の発展と農林漁業者の経済的、社会的地位の向上に大きな役割を果たしてきております。近年における農林漁業を取り巻く厳しい情勢のもとで、これら農林漁業団体の果たすべき役割への期待は一層増大しております。このため、農山漁村の混住化、兼業化の進行等の組織基盤が変化する中で、農林漁業者の自主的協同組織としての本来の使命を再確認し、常にその業務運営のあり方を見直し、組合員のニーズに応じた事業活動と経費節減による経営合理化の推進が必要と考えており、農林水産省としても必要に応じまして適切な指導を行ってまいる所存でございます。(拍手)
〔国務大臣松永光君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/15
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016・松永光
○国務大臣(松永光君) お答えいたします。
まず、私に対する質問の第一点は、共済制度と保険との関係についてどう認識しているかということでございましたが、共済年金は、社会保険方式により退職、死亡、障害に際して基本的な所得保障を行うもので、世代間扶養の仕組みになっておると思います。そしてさらに、当該職域における相互扶助事業としての性格も強く有する制度であると認識しております。一方、民間の保険は、積立貯蓄的性格のものであり、より豊かな老後生活を送るため、個々人の努力により公的年金を補完するという役割を期待すべきものであると考えております。
次に、保険者と被保険者間の契約という関係から今回の改正内容をどう考えておるかというお尋ねでございますが、社会保険方式により世代間の扶養を行う共済年金と、個々人の私的契約による民間保険とはその性格を異にするところであります。今回の改正は、共済年金の長期的安定を図るため、年金の給付水準を適正化するとともに、世代間の給付と負担の公平性を確保しようとするための措置でありまして、ぜひ御理解を願いたいわけであります。
次に、現組合員についての公平確保のための経過措置についてのお尋ねでございますが、今回の改正は、給付水準の適正化により世代間及び同一世代内における給付と負担の均衡を図り、制度の長期的安定を目指すものであります。この給付水準の適正化を進めるに際しては、給付額の急激な変動を来さないよう長期にわたる経過措置を設けるとともに、現行の退職年金の受給資格である二十年以上の組合員期間を有する者については、施行日の前日における現行制度により算定した給付額を保障するなどの措置を講じており、現組合員についてもできる限りの配慮を行っているところであります。
次に、施行前の組合員の給付の保障についてでございますが、先ほども触れましたけれども、今回の改正案では、既裁定年金者の年金については、従前額を保障するが、通年方式に改定した額がスライドにより従前額に達するまではスライドは停止するということにいたしております。このような措置は、今後、現役の組合員について、給付の適正化を図ってもなおかつ掛金負担が増加せざるを得ない状況にあるということから、現役組合員と退職者との間において給付と負担のバランスを図るため必要であり、施行日前の組合員とそれ以後の組合員と区別して扱うことは困難であると考えているところであります。
次に、改正案作成に当たっての被保険者の意向の反映をどうしたかという点でございますが、今回の制度改正に当たっては、被保険者である私学関係者や学識経験者などから成る研究委員会が設けられて慎重に検討がなされたところであります。この検討の結果に基づき、制度改正に当たっての要望書が私学団体や私学共済組合から文部省に提出をされました。文部省としては、この要望書に十分配慮するとともに、できるだけ広く私学関係者の意見も聞き、かつ関係審議会での検討結果や他共済との均衡にも心がけながら改正案を作成したところであります。
次に、支給開始年齢の引き上げと定年年齢についてでございますが、私立学校における平均的定年は六十三歳であります。昭和五十九年度に退職年金を受けることとなった者の退職時の平均年齢を見ても六十三・八歳となっております。今回の改正においては、支給開始年齢の経過措置を短縮して、昭和七十年には支給開始年齢が六十歳となるよう段階的に引き上げることとしておりますが、右申し上げました私立学校における定年の実態から見て特段の支障は生じないというふうに考えております。
次に、職域年金部分の自由裁量権についてでありますが、私学共済における職域年金相当部分については、民間における企業年金の普及状況や組合員の負担能力等を考慮して給付水準の設定を行っているところであります。また、私学共済は幼稚園から大学までのさまざまな規模の学校を対象としており、これらの学校の教職員についてひとしく国公立学校の教職員と同等の年金を保障しようとする今回の措置は極めて妥当であり、それ以上一律の水準を設定することは制度の整合性からも困難であると考えます。なお、各学校において別途独自の年金を設けることは可能なものと考えております。
次に、組合員の既得権及び期待権の配慮についてでありますが、現在の私学共済の年金財政は他制度に比べれば健全でありますけれども、今後、私学共済にあっても年金受給者の増大は必然であり、それを支える組合員が従来のように増加することは考えられません。また、組合員の高齢化の進展も予想されますので、遅かれ早かれ他の年金制度と同様に厳しい状況に立ち至ることは明らかであります。
なお、給付水準の適正化を図るに際しては、年金額の急激な変動を来さないよう、長期にわたる経過措置を設けるとともに、現行の退職年金の受
給資格である:十年以上の組合員期間を有する者については、施行日の前日における現行制度による年金額を保障し、また、既裁定の年金については従前額を保障する措置を講じておるところであります。
次に、改正法施行日前の組合員期同に係る平均標準給与の算出方法についてでございますが、これは、組合員の一部に過去期間の給与記録のない者があること、従来私学共済が準ずることとしてきた国共済においても、施行日前五年同の標準給与を補正することで全期間の平均標準給与を求める方式をとっておることなどから、他共済と同様に、今回のような方式を御提案申し上げたところであります。
次に、六十五歳以上の在職者に対する年金支給についてでありますが、今回の改正においては、新たに低所得の在職者に対しては年金の一部支給を行う措置を講じているところであります。私学共済年金は、他の共済年金と同様に、退職後の所得の喪失を補てんし、生活を保障するための給付であり、六十五茂以上であっても、他の共済制度と同様、在職中は原則として年金を支給しないこととしております。私学共済についてのみ対象者が多いということから、六十五歳以上の在職者へ年金の一般的支給を行うことは、共済制度全体の整合性からして困難であると考えておるところであります。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/16
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017・竹下登
○国務大臣(竹下登君) 刈田さんの御質問は二つでございます。
一つは、今回の改正そのものに対する御意見を交えての御質疑でございましたが、総理からもお答えがございましたが、何せ今回の改正は、公平で長期的に安定した年金制度の確立を図るためのものであることは言うまでもございません。公的年金の一元化、こういう観点からいたしますと、今までいわゆる国鉄、光電電、元専売、国家公務員、この共済組合の統合に始まりまして、その次が国年、厚年の改正、そして今回が今御審議いただいておる各種共済年金制度の改正であって、全国民共通の基礎年金を導入する、そして少なくとも給付水準の適正化を図っていくということが眼目であるというふうに御理解を賜りたいと思う次第であります。
それから国鉄共済について明確に救済策が示されていない、こういう御質問でございます。
政府統一見解につきましては既に総理からもお答えがあっておりますが、まず私どもといたしましては、今後の課題といたしまして、いわゆる国鉄の自助努力、そして他制度からの財政調整、こういうような議論も理論的には存在するでございましょう、そうしたもろもろの問題を総合的に勘案いたしまして、先ほど総理からお答えがありましたような順序で順次お示ししていく、こういう基本的な考え方でございます。(拍手)。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110315254X00719851209/17
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018・木村睦男
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十二分散会
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