1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託事件
○國家賠償法案(内閣提出、衆議院送
付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
送付)
○岐阜地方裁判所多治見支部を設置す
る請願(第十一号)
○帶廣地方裁判所設置に関する陳情
(第四十九号)
○刑事訴訟法を改正する等に関する陳
情(第六十号)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
送付)
○連合國占領軍、その將兵又は連合國
占領軍に附属し、若しくは随伴する
者の財産の收受及び所持の禁止に関
する法律案(内閣提出)
○昭和二十一年勅令第三百十一号(昭
和二十年勅令第五百四十二号ポツダ
ム宣言の受諾に伴い発する命令に関
する件に基く連合國占領軍の占領目
的に有害な行爲に対する処罰等に関
する勅令)の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
を改正する法律案(衆議院送付)
○皇族に身分を離れた者及び皇族とな
つた者の戸籍に関する法律案(内閣
送付)
○家事審判法案(内閣送付)
○函館市に札幌高等檢察廳支部設置に
関する陳情(第百四十号)
○法曹一元制度の実現に関する陳情
(第百四十五号)
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昭和二十二年八月十五日(金曜日)
午後一時五十二分開会
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本日の会議に付した事件
○罹災都市借地借家臨時処理法の一部
を改正する法律案
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
つた者の戸籍に関する法律案
○家事審判法案
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/0
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは委員会を開きます。最初に罹災都市借地借家臨時処理法の一部を改正する法律案、これを上程いたします。提案者の武藤運十郎氏にこの説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/1
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002・武藤運十郎
○衆議院議員(武藤運十郎君) それでは提案者といたしまして簡單に提案理由を御説明申上げます。実は先程も御注意があつたようでありますが、改正案の場合には改正さるべき現行法をお手許にまず差上げまして、その現行法と改正さるべき改正案との個所を御対照願います方が大変御審議の上御便宜だと思いまして印刷をしようと思つたのでありますけれども、それがまだ間に合いません。司法省の方へお問合せして頂きますと、なにか薄いもので印刷したものがあるそうでありますからこの次までに司法省から取寄せましてお手許にお届けするようにいたします。今日は誠に申訳ありませんが、現行法なしのままでお聽取を願いたいと思うのであります。そういと次第でありますからして、極く簡單に先ず改正をさるべき現行法の要点を申上げて見たいと思います。
御承知の通り戰災、それから疎開によりまして日本の半数以上の都市が焦土と化した実情でありまして、その後その土地の上にバラックを元の居住者借家人が建てております者もありますしそれから菜園に使つておる者もありました。この臨時の土地使用関係を律するために臨時緊急措置法という準拠法に基ずきまして、御承知の通り戰時罹災土地物件令というものがございました。これによりますと、燒跡の居住者や借家人は、その燒跡に元の家主や元の借地権者の承諾がなくてもバラツクを建てることができ、又これを菜園に使うことができる。借地権者の借地権は一時冬眠状態に、言ひ換えますれば権利を行使できない状態におかれるというようなことになつておつたのであります。その後終戰になりまして、この戰時罹災土地物件令の根拠法であります戰時緊急措置法が廃止されました、從つて戰時罹災土地物件令もその基礎を失いましたので、これに代るべき借地借家関係を整理する法律を必要とすることになりまして、第九十議会に提案されたものが、司法省から提案されました本日その改正を求められておりますところの罹災都市借地借家臨時処理法であります。これは第九十議会におきまして政府原案のまま通過をいたしまして。昨年の九月十五日から実施をみたのであります。この戰時罹災都市借地借家臨時処理法の極く概要を御説明申上げますと、先ず罹災都市に住つておつた者、その土地にあつた家を借りておつた借主、そういう者と家を建てております者は尚一年間、菜園に使つております者は尚六ケ月間これを使うことができる。それからさような人々は若しその土地にすでに借地権者がある場合には、その借地権者に対してこの法律施行の日から一年内に限つて、言い換えますならば昨年の九月十五日から今年の九月十五日までの間に限つて、他の者に優先して建物所有の目的でその土地の賃借権の讓渡の申出をすることができる。これに対しては借地権者はみずから建物所有の目的でその土地を使用する必要がある場合、その他正当な事由がある場合でなければその申出を拒絶することができないこういう状態になつております。又その土地に借地権がない場合にはさような居住者、借主、借家人はその地主に対して賃借権の設定を求めることができる。言い換えますならば、その土地の賃借を申出ることができる。その條件はやはり借地権讓渡の場合と同じように施行の日から一ケ年以内に優先的に申出をすることができるのでありますし、それに対して土地所有者は正当な建物所有の目的でみずから使用する必要がある場合、その他正当な事由がなければこれを拒絶することができないということになつておりまして、居住者、借家人はこの法律によつて優先借地権又は優先借地権讓渡の申出をする権利を與えられることになつております。それから疎開地の場合につきましては、罹災地と同じに扱かつておる部分もありますが、区別して扱かつておる部分があります。それは戰災地、罹災地につきましては借地権者は借地権が消滅をしておらない。從つて冬眠状態からこの罹災都市借地借家臨時処理法の施行によつて醒めて、借地権者として当然に借地権を行使しうる状態におかれたのでありますけれども、疎開地の旧借地権者は疎開によつて借地権が消滅したといわれ、新たに借地権をうるためには改めて借地の申出をしなければならないというように、区別をして取扱を受けておるのであります。尚この罹災都市借地借家臨時処理法は三十五條というやや大きい法律でありまして、特にしまいの方から説明をした方が分りがいいというようなやや難解な法律であります。でいろいろまだ御説明を申上げなければならないところもあるのでありますけれども、先程申上げましたように原文をお手許にさし上げまして一應御覧願いましてから又御説明を申上げます方が、便宜かと思いまして、罹災都市借地借家臨時処理法の要点の御説明はこのくらいにいたしたいと思います。
次にこの法律の改正であります。お手許にさし上げてあります議案を御覧下さいますというと「第一條中「災害」の下に、「又は火災、震災、風水害その他の災害」を加える。」こういう改正であります。御参考までに第一條の前文を朗読いたしますと、第一條「この法律において、罹災建物とは、空襲その他今次の戰爭に因る災害のため減失した建物をいひ」云々とこういうふうになつております。この法律の目的は罹災都市の借地借家関係だけを整理することを目的とした法律でありまするから、空襲その他今次の戰爭による災害、これだけを範囲の中に含んでおるのであります。ところがお手許に印刷をしてさし上げてありまする通り、最近非常に火災も風水害も多いのであります。昨年の五月から今年の五月までの一ケ年の状態を見ましても、四百戸以上纒つて燒けたところが八ケ所もございます。こういう地方は丁度戰災を蒙つたと同じように、一瞬にして五百戸千戸という建物が燒けてしまい、或いは倒潰をし、或いは流出をしてしまつたというようなわけでありまして、その被害の状態、その後の借地借家関係の問題などは全く戰災の場合と異なるところがないのであります。そこで火災、風水害によりまして罹災をいたしました地方から、私共の手許に是非とも罹災都市借地借家臨時処理法をかような戰災以外の火災、震災、風水害の場合でも同じように適用ができるように法律を改正をして貰いたいという要望が非常に多いのであります。そこでこれを私共が採り上げまして、それでは本來はこの罹災都市借地借家臨時処理法は戰災都市の借地借家関係だけを救済する目的でありますけれども、便宜上この法律を僅かに改正することによつて緊急にかような状態を救済することができますならば、大変便利であると考えまして、第一條の改正ということを考えた次第であります。次に「第二條中「一箇年」を「二箇年」に改める。」こういうことであります。第二條を朗読をいたしますと、先程申上げました優先借地権の借地の申出の條項でありまして、第二條「罹災建物が滅失した当時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地に借地権の存しない場合には、その土地の所有者に対し、この法律施行の日から一箇年以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによつて、他の者に優先して、相当な借地條件で、その土地を賃借することができる。但し、その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき、又は他の法令により、その土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合に、その許可がないときは、その申出をすることができない。」二項以下を略します。そこで先程申上げましたように、この九月十五日を過ぎますと、折角居住者借家人に対して優先借地の申出をする権利優先して賃借権の讓渡を求めることのできる権利、左様な権利を行使する期間が九月十五日限りでなくなつてしもうのであります。ところが御承知の通りこの法律は司法省関係の熱心な御努力にも拘わらず、まだ十分に一般居住者に理解をされ、知悉されておると限らないのでありまして、又優先借地権のあることをよく知らない者も可なり多いのであります。それから御承知の通りインフレーシヨンの昂進、資金資材、労務の不足及び建築許可の困難というようなことはますます甚だしきものがあります。更に疎開をいたしておりますものにつきましては、轉入難交通難、食糧難、旅館難、そういうようなもののために疎開地又は避難地から燒跡に戻つて来ることは本法制定当時よりも一層困難な実情に立ち至つております。更に東京、大阪、名古屋その他の大都市になりますればなります程、建策が復旧をいたしておりません。特別の小地域を除いては殆ど大部分が御覧の通りの燒跡のまま残つておるような状態であります。かような次第でありまして、居住者、借家人の中に來たる十五日までに優先借地の申出をすることも非常に困難なことが多いのでありまして、そこで九月十五日の期間を延長をして貰いたいという意向が各地から非常に強いのであります。或いは向う三ケ年延ばして呉れとか、或いは向う五ケ年延ばして呉れとかいうような要求もあるのでありますけれども、私共はかような要求の中、取り敢えずもう一年これを延長をいたしまして、それで大体の処理ができれば結構でありますし、尚情勢に應じて延長する必要がありますならば、又その時になつて適当に延長をすることにいたしまして、取り敢えずは向う一年間だけ延長しようというのが、この第二條の改正理由であります。
その次は第七條第一項の中六ケ月を一ケ年に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/2
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003・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 本会議が始まりましても、この委員会は継続してやり得ることに議長の許可を取つてありますから、さよう御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/3
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004・武藤運十郎
○衆議院議員(武藤運十郎君) 「第七條第一項中「六箇月」を「一箇年」に同條第三項中「六箇月」を「一箇年」に改める。」御参考までに、第七條の改正さるべき個所を朗読いたします。「第七條、第二條第一項の借主が、」先程朗読したものであります。「同條の規定による賃借権の設定又は第三條の規定による借地権の讓渡を受けた後(その賃借権の設定又は借地権の讓渡について裁判があつたときは、その裁判が確定した後、調停があつたときは、その調停が成立した後)、六箇月を経過しても正当な事由がなくて、建物所有の目的でその土地の使用を始めなかつたときは土地所有者又は借地権の讓渡人は、その賃借権の設定契約又は借地権の讓渡契約を解除することができる。但し、その解除前にその使用を始めたときはこの限りでない。」これが第七條第一項であります。それから第三項は「前條第一項又は第二十九條第一項本文若しくは第三項の規定により土地を使用する者がある場合には、第一項の六箇月は、その使用の終つた時から、これを起算する。」こういうことであります。これを改正いたします理由といたしましては、先程申上げましたようにインフレーシヨンの昂進、資金、資材、労務の不足、及び建築許可の制限等によりまして、建築はますます困難でございます。折角第二條及び第三條の規定によりまして、居住者、借家人が借地権を得ましても、それから六ケ月以内に建築に着手いたしませんと、その権利を失うというのが、只今朗読いたしました第七條第一項と第三項であります。それでは折角権利を與えましても意味をなさないのである。居住者、借主の不可抗力によつて権利を失わされるというような実情にも立ち至りますので、この際その六ケ月という期間を一ケ年に延長をして、その期間に建築の許可、その他準備をさせる余裕を與えたい。これが第七條を改正したいという理由であります。その次は第九條でありますが、これは分りにくい條文ですけれども、「疎開建物の敷地については、旧令がその施行の日から準用されてゐたものとみなし、且つ疎開によつて借地権者が借地権を失つたものについては、これを失はなかつたものとみなして、前七條の規定を準用する。但し、公共團体が疎開建物の敷地又はその換地を所有し、又は賃借してゐる場合はこの限りでない。」こういうふうに改正したいというわけであります。第九條の現行法を朗読いたしますと、「疎開建物が除却された当時におけるその敷地の借地権者その当時借地権以外の権利に基いてその敷地にその建物を所有してゐた者及びその当時におけるその建物の借主については、前七條の規定を準用する。但し、公共團体が、疎開建物の敷地又はその換地を所有し又は賃借してゐる場合は、この限りでない。」只今朗読いたしましたこの九條の中、但書は変更がないのでありますけれども、本文の方だけを先程申上げましたような工合に改正をいたしたい。こういうわけなのであります。その理由を申上げますというと、第一に強制疎開は戰災とその意義を同じくいたすものと考えます。即ち両者とも誤れる戰爭の犠牲であり、自己の意に反し或いは不可抗力によつて借地上の建物を失つたものであります。故に強制疎開地の借地権者が戰災地の借地権者と同様に保護されなければならんことは申すまでもありません。然るにこの罹災都市借地借家臨時処理法は戰災地の借地権については、これを借地権として保護するに拘わらず、強制疎開地の借地権については、これを消滅したものとして、何らの保護を加えないという実情であります。これは誠に公平を失した不合理の処置と申さなければなりません。最もその不合理がはつきりいたしますのは、同じ番地で境一つでありました二軒の家が、一方は強制疎開に遭い、一方は戰災に遭つた場合に、戰災地の借地権者は直ぐ借地権が復活いたしまして、無條件でその土地へ來て家を建てることができるのでありますけれども、隣りの強制疎開を受けた借地権者は無條件にその土地ヘ帰つて來て家を建てることができないというような、これを対照いたしますというと、誠にはつきりと如何に不合理であるかということが、又不公平であるかということが分かるのであります。第二に、第九條は強制疎開地の借地権者に対して、疎開で失つた借地権の目的土地について、借地権設定の請求権を與えておるのであります。併しながらそれでは甚だ不十分であります。当然に借地権が復活をするというようにならなければ、戰災地と公平を失することになるのであります。のみならず目的土地の上にすでに権原によつて建物が建てられておる場合には、その借地権の設定の請求もできないというようなことになつておるのであります。第三に強制疎開地の借地権と、戰災地の借地権とを区別する理由といたしまして、前者は疎開の際借地権の補償を國庫から得ておるが、後者はこれを得ていないからというように申す者がございます。成る程その通りでありますが、これは單なる外面的な法律論でありまして、実情に適しておりません。若し左樣に申しますならば、戰災者は建物に対する相当多額の戰爭保險金、これは御承知の通り保險会社を通じてなされた國家補償でございます。この戰爭保險金を受取ることによつて或る程度借地権の補償を受けたということもできるのでございます。而も疎開による借地権の補償は一方的でありまして、極めて少額のいわゆるあてがい扶持でありまして、借地権者はこれを一種の戰災と観念し、戰爭後は当然借地権が自分に戻つて來るものと考えない限り、決して默つて收まる筈はなかつたのであります。否借地権者の大部分は疎開によつて、借地権が保障され、消滅させられたということを知らないで、強制疎開によつて建物は除却されましたけれども、戰災地と同じように借地権はいわゆる冬眠状態のまま依然として存続するものと考えていた者が非常に多いのであります。第四に、然るに当局は昭和二十年四月頃に至りまして、突如として強制疎開を解除し、借地権者保護のために何等の法制的善後措置を講ずることなく、土地を無條件で地主に返還をいたしました。喜んだのは地主であります。地主は直ちにその土地を高い権利金を取つて第三者に賃借した。第三者の中には自己のための建物所有を目的とする者もありましたけれども、中にはこれを奇貨といたしまして、土地の借占めをした惡質ブローカーも非常に多いということを聞いているのであります。これがために地主とブローカーが不当な利得を得まして、眞面目な借地権者は意外にも借地権を失つて路頭に迷うという状態であります。第五に、強制疎開地の借地権を復活すると、すでに建物が建つている場合には原状を変更することによつて混乱を生ずると言う者があるかも知れません。併しその点は戰災地についても全く同樣でありまして若しその点を理由として反対をいたしますならば、戰災地の借地権をも否認しなければならないと存じます。これは借地借家人を保護することを目的とする本法そのものを否認するような結果になるのではないかと考えます。第六に、本改正案と同趣旨の意見は去る九十議会において、先程申上げましたように、この現行法の草案が審議の際に強く主張せられ、東京弁護士会からも本院に陳情せられたのでございますけれども、本案がすでに貴族院において先議可決され、その成立を急ぐ客観的な事情にもあつたのでありまして、その実現を見なかつたのであります。我々はこれを甚だ遺憾とし、暫く法律運用の経過を注視することにいたしたのでございますけれども、不幸にして本法施行後の状況は、裁判所、裁判外において疎開地に関する借地借家問題が続出をいたしまして、且つその解決は困難を極めるものがございます。以て如何にこの改正の必要が切であるかということがお分りになるでありましようと存じます。第七に戰災建物の借家人及び居住者が旧令によつて、旧令というのは先程申上げました戰災罹災土地物件令でございます。この旧令によつてその居住権を保護される如く、疎開建物の疎開人借家人も亦旧令によつて居住権を保護せられなければならないこと借地権の場合と全く同じでございます。稍稍長くなりましたけれども以上がこの第九條を改正の理由でございます。
次は改正案の「第十二條中「一箇年」を「二箇年」に改める。」この條文でございます。第十二條の現行法を朗読をいたします。「第十二條 土地所有者はこの法律施行の日から一箇年以内に、第十條に規定する借地権者(罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された後、更に借地権を設定してゐる者を除く。)に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内に、借地権を存続させる意思があるかないかを申し出るやうに催告することができる。若し、借地権者が、その期間内に借地権を存続させる意思があることを申し出ないときはその期間満了の時、借地権は、消滅する。但し、借地権者が更に借地権を設定してゐる場合には、各各の借地権は、すべての借地権者が、その申出をしないときに限り、消滅する。」この第十二條の改正理由は先程申上げました第二條、第七條の改正とほぼ理由を同じくするものでありまして、これによつて借地権を保護すると同時に、地主をも保護しようとするものであります。尚第十二條第四項中「区裁判所」を「地方裁判所」に、第十八條中「区裁判所」を「地方裁判所に、」第十九條第二項中「地方裁判所長」を「地方裁判所」に、これはいずれも御承知の通り裁判所法等の制定に伴いまして、この法律中区裁判所の管轄になつている個所を地方裁判所の管轄にする必要があるという形式的な條文中の字句の整理に過ぎないのであります。
それから最後に、次に「第二十九條第一項中「一箇年」を「二箇年」に改める」。第二十九條の現行條文を朗読をいたします。「第二十九條罹災建物の敷地につきこの法律施行の際現に存する旧令第四條第一項の規定による賃借権は、建物の所有を目的とするものについては、この法律施行の日から一箇年間、その他のものについては、この法律施行の日から六箇月間に限り、なほ存続する。但し、その敷地につき、旧令第三條 第一項の規定の適用を受ける借地権を有する者、(旧令第四條 第一項の規定による賃借権に基いて、その敷地を他の者に使用させてゐる者を除く。)についてはこの限りでない。」こういう條文であります。これを改正をいたします理由は、これ又第二條、第七條、第十二條等を先程申上げました改正の理由にほぼ同じでございますから省略さして頂きます。
最後に改正案の附則でございますが「この法律施行前、旧第九條に基き、裁判、調停又は裁判上若しくは裁判外の和解により、既に確定したものは、その効力を妨げられない。」先程申上げましたように疎開地の借地権者と戰災地の借地権者とを区別して扱うのでございますことは非常に不公平でございまして、色々すでにドラブルが起つておる例が非常に多いのでございますけれども、そうして又現に裁判外又は裁判所に繋属中のものもあります。併しすでに解決を見たものがあります、解決を見たものについて、更にそれを遡つて同様に扱うということは一旦決りました法律、秩序を変更するというようなことになりまして宜しくないと考えますので、この第九條の改正は既往に遡らない。現に爭いのあるもの、今後の問題だけについてこの法律施行後に適用をいたしたい。こういうふうに考える次第でございまして、所謂これは経過的な規定でございます。以上申しましたことがこの改正案の提出をいたしました大体の理由でございます。
実は御説明の最初に申上げました通り、只今改正案として問題に上つております各点につきましては、我が國の各所からこれを改正して貰いたいという要望が非常に多いのでございまして、私共はそれの整理をして集約をいたしまして改正案といたしました次第でありまして、これは決して申す迄もなく私個人の意見ではないのでございます。更にこの改正案を是非この第一囘の國会で審議、通過をさせて頂きたいということは先程申上げましたように、この九月十五日を以て折角與えられました優先借地の申出をいたします期限が切れるのであります。誠に居住者や借家人は困るような立場になりますので、是非共この議会で通過成立をさせまして、引続いて、折角與えられましたところの借家人居住者、借他人等の権利を保護をし同時に借他、借家関係を適正に調整をいたしたいというわけであります。尚これを提出いたします前にも、司法省の方の御意向も伺いました、大体において趣旨において御賛成であるというふうに伺いまして、私共も非常に意を強うして提案をした次第でございます。提案後におきまして司法省の方面の御意見を承りますというと、大体この趣旨においては賛成であるけれども技術的な方面において多少御意見もあるようであります。私共もこの趣旨が通ればいいのでありまして、原案の字句その他につきましては敢えてこれを固執するものではないのでございますから、どうか、委員会の皆樣におかれましても十分に御檢討を下さいまして、この方が良くはないかというような御意見がございますならば、どうか御遠慮なく御批判、御訂正を下さいましても、終局において私が只今縷縷申上げました修正をいたしたい趣旨が実現をいたしますならば、決して異議のあるものではないのであります。尚最後にお願いして置きたいことは御承知の通り第一囘國会でありまして、今度は名前の如く民主國会として私共國会が自主的に立法をする機関という地位を憲法によつて名実共に與えられた次第でございます。從來は政府案というものが圧倒的に多くて、その通過率が非常にいいけれども、議院提出案というものは、数も少いし、それが通過する率も非常に少いというのが実情でございました。けれどもそれは古い憲法下における議会がいわゆる行政府の從属的な立場におかれたときのことでございまして、國会というものが自主権を囘復いたした立法府となりました以上は、是非この議院の提出案というものを今までとは反対に多くするように、又多く通過するようにいたしたいと愚考する者でございます。この法案は、議員提出法案といたしましては第一番目のものでございまして、深い意義を持つておるものと私共考えております。どうか十分に御審議の上で、是非通過させて頂きますようにくれぐれもお願いをする次第でございます。長い間有難う存じました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/4
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005・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 只今の法律案に対する質疑は他日にゆづりたいと存じますが、御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/5
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006・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 御異議ないと認めます。左樣決定いたします。それでは次に皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律案を議題に供します。先ず政府委員の御説明をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/6
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007・佐竹晴記
○政府委員(佐竹晴記君) 大臣お差支えで、私より只今上程されました皇族の身分を難れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律案について提案理由を御説明申上げます。
日本國憲法の施行に伴い、旧皇室典範並びに皇族親族令及び皇族身位令と共に明治四十三年法律第三十九号「皇族ヨリ臣籍ニ入リタル者及婚嫁ニ因リ臣籍ヨリ出テ皇族ト爲リタル者ノ戸籍ニ関スル法律」が廃止されましたが、これと同時に現行皇室典範の施行を見るに至りました。そして現行皇室典範の第二章には皇族がその身分を離れられる場合及び皇族以外の女子が皇族となられる場合について、数ケ條に亘つて規定いたしておるのでありまして、このような場合には、その方の戸籍をいかに処理するかを定める必要があるのであります。即ち先に廃止されました前述の明治四十三年法律第三十九号に相当する法律が当然必要となつてまいるわけであります。この要請を満さんがため立案されましたものが、この法律案でありまして、言わば本法律案は、皇統譜令と戸籍法との橋渡しともいうべき法律案なのでございます。次にこの法律案の内容の要点を申上げます。第一点は、皇族がその身分を離れられた場合の戸籍に関する規定であります。先ず皇族が皇室典範第十一條の規定によつて皇族の身分を離れられた場合には、その方について新戸籍を編製することにいたし、更にこれと同時に、皇室典範第十三條の規定によつて皇族の身分を離れられたその方の妃、直系卑属及びその妃がある場合には、これらの方々も共にその戸籍に入ることにいたしました。第一條がその規定であります。次に、皇族以外の女子で親王妃又は王妃となられた方が、その夫を失つた後に皇室典範第十四條第一項又は第二項の規定によつて皇族の身分を離れられた場合、又はその方が離婚によつて皇族の身分を離れられた場合には、いずれも原則として婚姻前の戸籍に復籍し、又皇族女子で他の皇族の妃となられた方が、夫を失い又は離婚された場合に、それ以前すでにその直系尊属が皇族の身分を離れておられるがため、みずからも皇族の身分を離れられることがあるときには、原則としてその直系尊属の戸籍に入ることにいたしました。第二條がそれであります。第二点は、皇族女子が天皇及び皇族以外の者との婚姻によつて皇族の身分を離れられる場合には当然戸籍法の適用によつてその夫の戸籍に入られるのでありますから、これにつき特別の規定を設ける必要はありませんが、唯その方がその後離婚される場合には、復籍すべき戸籍がない訳でありますから、その方について原則として新戸籍を編製することにいたしました。第三條がその規定であります。第三点は、皇族以外の女子が皇后又は妃となられた場合には、その方を從前の戸籍から除籍いたすことにいたしました。第四條がその規定であります。第四点は、以上のような皇族の身分の得喪があつた場合における戸籍の届出について規定したことであります。即ち、皇族がその身分を離れられた場合には、その方から、皇族以外の女子が皇族となられた場合には、その四親等内の親族から、それぞれ所定期間内に一定の届出をなさしむることにいたしました。第五條乃至第七條の規定がそれであります。かかる届出に基いて、市町村が戸籍法の規定に則り、それぞれ戸籍記載の手続をすることとなる訳であります。
以上が、この法律案の大要であります。何卒愼重御審議の上、速かに可決せられんことを御願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/7
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008・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは家事審判法案を上程いたします。これに対する政府委員の御説明を簡單にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/8
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009・佐竹晴記
○政府委員(佐竹晴記君) 只今上程されました家事審判法案について、提案理由を申し上げます。
日本國憲法の施行に伴いまして、個人の尊嚴と両性の本質的平等の大原則に則りまして、民法中身分法の分野において一大改正を加えることとなり、既にこれが改正法律案を提案いたしたのでありますが、由來身分関係に基く家庭内や親族間の紛爭につきましても訴訟制度の下におきましては、夫婦、親子、兄弟、親族が互いに原告、被告として法廷に対立し、黒白を爭わねばならず、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図るという見地からは理想に反する遺憾な点があるのでありまして、家庭内や親族間の紛爭を理想的に解決いたすためには、裁判官に民間有識者を加えた機関が、訴訟の形式によらないで、親族間の情誼に適合するように紛爭を処理することが望ましいことであります。夙に各方面からかかる要請を充足する制度といたしまして且又家庭内や親族間の重大事項について後見指導をする制度といたしまして家事審判所制度の設置が要望され、しばしばその趣旨の建議や請願があつたのであります。司法省におきましてもかかる要望に應えるために、夙にこの家庭内や親族間の紛爭と重大事項、即ちいわゆる家庭事件について審判と調停を行う制度として、家事審判所制度の設置について調査研究を進め、その一環として、昭和十四年に家庭事件について調停を行う制度として人事調停法の制定を見、相当の成果を挙げておるのであります。然しながら、改正民法に從い、國民が平和な家庭生活と健全な親族共同生活を営みますためにはこの機会に、家事審判所制度を全面的に採用することを必要といたしますので、茲に本法案を提出して御審議を仰ぐ次第であります。
次に本法案の内容といたしまする主要な諸点を挙げて御説明申し上げます。第一は、家事審判所は、家庭事件のみを取り扱い、その手続も訴訟手続によらないのでありまして、訴訟事件を取り扱う裁判所とは処理する事件及び処理する手続を異にいたしますので家事審判所を家庭事件のみを取り扱う地方裁判所の特別の支部といたしました。第二は、家事審判所が取り扱う事件でありますが、家庭事件のうち、離婚事件、離縁事件等、その性質上訴訟手続によつて処理することを必要とする事件を除いて、それ以外の家庭事件は、総て審判事件とし、又禁治産事件失踪事件等、その性質上調停に適さない事件を除き、それ以外の家庭事件は総て調停事件といたしますと共に、この審判の対象とならない訴訟事件については調停前置主義を採り、又調停に適する審判事件については、何時でも調停に付し得ることといたしまして、家庭事件は総て一應家事審判所において処理することといたしますと共に、家庭事件を可及的に関係人の互讓によつて円満に且自主的に解決するようにいたしました。第三は、審判は、原則として家庭審判官が参與員の参與によつて行い、調停は原則として家事審判官と調停委員を以て組織する調停委員会が行うことにいたしまして、法律專門家である裁判官と世故人情に通じた徳望ある民間人が、一体となつて、親族間の情誼を考慮し、家庭事件を具体的妥当に解決するように措置いたしました。第四は、現行人事調停法に比し、調停を強化いたしまして、婚姻又は縁組の無効事件、嫡出子の否認事件等の調停におきましても、当事者間に合意が成立した場合には、必要なる事実を職権で調査した上、その合意に相当する審判をなし得ることといたしますと共に、家庭事件について調停が成立しない場合には、強制調停をもなし得る途を開きまして、可及的に家庭事件を訴訟によらず調停によつて処理するようにいたしました。第五は参與員及び調停委員について祕密漏泄の罰則を設けまして、家庭内の祕密が世間に暴露されることを防止して、当事者が安んじてこの家事審判所制度を利用し得るようにいたしました。
以上諸点の外、審判及び調停につきましては、非訟事件手続法を準用してその手続を簡素にいたしまして、事件の迅速な解決と費用の軽減を図りました。
只今申上げましたのが、本法案の概要でありますが、その他の詳細な点につきましては、御質疑に應じて御説明申上げます。何卒愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願い申上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/9
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010・伊藤修
○委員長(伊藤修君) この本案に対する質疑を他日続行いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/10
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011・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では左樣決定いたします。委員会はこれにて散会いたします。
午後二時五十二分散会
出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
理事
松井 道夫君
委員
大野 幸一君
齋 武雄君
奧 主一郎君
鬼丸 義齊君
小川 友三君
來馬 琢道君
松村眞一郎君
山下 義信君
阿竹齋次郎君
衆議院議員
武藤運十郎君
政府委員
司法政務次官 佐竹 晴記君
司法事務官
(民事局長) 奧野 健一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100114390X01419470815/11
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