1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年十二月二日(金曜日)
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本日の会議に付した事件
○刑事補償法案(内閣提出・衆議院送
付)
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午後四時三十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/0
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それではこれより法務委員会を開きます。
刑事補償法案を議題といたします。前回に引続いて質疑を継続いたします。尚この際御報告を申上げておきたいと存じますが、かねて皆さまの御意見を参酌いたしまして本案に対するところの修正案は作成いたしましたのでこれを読上げます。
刑事補償法案中修正案
法務委員長 伊藤修提出
刑事補償法案の一部を次のように修正する。
第五條に次の一項を加える。
4 この法律の規定により国が補償をした場合において、その未決の抑留若しくは拘禁、刑の執行又は拘置が公務員の故意又は重大な過失によるときは、国は、その公務員に対して、求償権を有する。
第二十四條第一項中「決定の要旨を、官報及び新聞紙に掲載して」を「決定の全部を、官報及び申立人の選択する三種以内の新聞紙に各一回以上掲載して」に改める。
第二十四條の次に次の一條を加える。
(免訴又は公訴棄却の場合における補償)
第二十五條 刑事訴訟法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができる。
2 前項の規定による補償については、無罪の裁判を受けた者の補償に関する規定を準用する。補償決定の公示についても同様である。附則第三項中「この法律は、」を「この法律中無罪の裁判を受けたことを理由とする補償の請求に関する規定は、」に改め、同第四項を第五項とし、以下順次一項ずつ繰り下げ、第三項の次に次の一項を加える。
4 第五條第四項の規定は、この法律施行後に生じた事項に限り適用する。
同第七項中「第四項」を「第五項」に、同第八項中「前四項」を「第三項及び前三項」に改める。
これに対しまして関係方面の承認は全文に対して受けた次第であります。ただここで一言申添えておきたいと存じますのは、二十五條のいわゆる免訴及び公訴棄却の場合におけるところの疏明方法についてでありますが、これに対しましてはいわゆる刑事訴訟法上のいわゆる証拠というものを要求しておるのではないのであります。刑事訴訟法第四十三條第二項と思いましたが、「決定又は命令は、口頭弁論に基いてこれをすることを要しない。」この手続きによりまして、いわゆる本件の場合においては勿論口頭弁論を開かれまして、その際本来裁判を受くるならば無罪の裁判を受くべきものと認められるという事由を疏明することを以てとこう考えられるのであります。從つてこれに基くところの疏明方法は、いわゆる刑事訴訟法上の証拠という程度のものを要しない、こういう考え方から起草された次第であります。若しこれに対しまして将来裁判の運営におきましてこの疏明に関するところの基本的な手続の規定を必要とするならば、それは最高裁判所のルールによつて定められることは差支ないと考えておる次第であります。
それから二十四條の新聞紙に関する修正でありますが、これは「申立人の選択する三種以内の新聞紙に各一回以上掲載して」こういうように改めておるのでありますが、この趣旨は申立人が自分の欲する新聞を三種指定いたしまして、これに対して裁判所がそのうち二種を入れて差支ない、或いは一種は差支ないという決定をされる。若し三種選定されたとするならば、その三種に各一回以上を裁判所の認定するところの、例えば五回なり十回なり、或いは一回ずつなり掲載する、かような趣旨で起草されておる次第でありますが、その他はお手許の修正案を御覧頂きますれば大体御了承できることと存じますが、ただこれに対しまして衆議院と只今まで交渉した結果を附加えて御報告申上げておきます、衆議院におきましてはこのローマ数字の4と規定しておるところのいわゆる故意又は重大な過失に基いて刑事補償法がなされた場合におきまして、その公務員はいわゆる国家に対して求償権に応ずる義務があるかどうかという問題につきましては、從来の政府のお考え方からいたしますると、苟くも刑事補償法手続によつた場合においては、いわゆるその公務員が故意若しくは重大なる過失ある場合においても求償の責はないのだというような御見解であつたのでありますが、衆議院におきましては、本法はいわゆる国家賠償法の原則に基いてその特例として即ち無過失責任の場合をも含むという意味において立法措置が講ぜられたのであるから、基本的な観念はいわゆる刑事訴訟法と同様な基礎に立つておるものである。從つて若し公務員においては、故意又は重大なる過失のある場合においては、それは原則に基いていわゆる求償ができるものである。こういう見解から、從つて参議院におけるこの項の求償権に関する修正は、いわゆる重複すると考えられるから控除して貰いたい、こういうような御趣旨であります。政府の意見を正しましたところが、政府におきましても、十分その後研究いたしました結果、衆議院と同様な考を今日においては持たれるという御趣旨でありましたから、若しさような御見解であるとするならば、この修正は削除して置きたいと考える次第であります。從つて本項の附則の四に対するところの修正をも必要のないこととなる次第であります。以上大体今日までの経過を御報告申上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/1
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002・牧野寛索
○政府委員(牧野寛索君) 刑事補償法第五條第四項の問題につきまして、只今伊藤委員長からお話がありました通り、衆議院の解釈ごとくに、刑事補償法は国家賠償法の特例になつておるものと思いまして、その範囲が国家賠償法より故意過失のない場合においてもこれを救済しようとする点に置かれてあるのでありまするから、この精神から行きましても、殊にこの公務員が故意過失、重大なる過失をやつたような、そういう不法公務員を何ら保護すべきところの理由はないのであります。むしろこれらの者に対しては、国家において嚴重にその損害というものを求償する必要を認められるものでありまして、そういう観点から行きましても、やはりこれは国家賠償法の特例という立場から行きましても、やはり当然求償ができるものであると解するのが当然ではないかということに考えております。民法上におきましても債権者が変つて他に弁償したいという場合におきましては、当然それが求償できるというような精神もありますし、只今申上げた通りに刑事補償法は国家賠償法の特例という観念から行きまして、やはり衆議院の解釈のように解するのが穏当であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/2
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003・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 尚高橋検務局長の御説明を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/3
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004・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) 只今の政務次官の答弁を若干補足して政府の見解を申上げたいと思うのでありますが、從来国家賠償と刑事補償とが損害の補填であるという点においては同じであるが、一方国家賠償の方は故意過失を前提とし、一方刑事補償の方はそれを前提としない社会保障的な制度である。從つて、別箇の建前であるということ、及び刑事補償におきましては故意過失を前提としないという点に共に若干拘泥いたしまして、刑事補償手続によつて補償を国がいたした場合に当該公務員に故意過失があつても、特に求償の規定を置かない限り国に求償権はないのであるというふうに考えるようにお答えしておつたのでありますが、尚研究いたしました結果、この国家賠償と刑事補償との本質の問題はともかくといたしまして、公務員に故意過失がある場合におきましても、請求する側の者が例えば四百円以内で十分満足するというような場合とか、或いは取敢えず四百円以内の金額だけでも簡單な手続で早く受取りたいというような場合には、国家賠償法によらずに選択的に刑事補償による場合も実際問題として考えられるわけでございます。そのような場合におきましても、刑事補償手続による補償は実質上国家賠償法第一條第一項による国の補償と代替的な性質を持つているものであると考えるのであります。そのような場合に国が当該公務員につきまして故意又は重大な過失というものを立証し得る場合には、当該公務員に対して求償権を有しないというふうに解することが実際上非常に不釣合であると考えるのでありまして、当然そういうような場合には国に当該公務員に対する求償権があるものというふうに解釈するのが相当である。即ちそのような場合には国家賠償法第一條第二項の適用があるものというふうに考えて然るべきものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/4
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005・松村眞一郎
○松村眞一郎君 そういたしますと、二十二條が非常に大切な規定なんですが、私はこの二十二條についていろいろ今まで質問して来たのでありますが、その意味は権利の本質が違うから二十二條のごとき規定があるのじやないかということで私は質問しておつたのですが、只今の御説明によりますと、権利の本質は同じである、こういうことに決めておられるように解釈しますから、それならそれでよろしいのです。そうならば二十二條の規定は刑事補償という関係から請求者の便宜のために差押えなどしないようにして利益を保護する、それだけの規定であるというような工合にお考えになるならばそれで私はよろしいと思う。権利が初めから違つているからこういう規定を置かなければならんのであるという御主張じやないのであつて、今申しましたごとく便宜上の利益を成るべく早くこれを片付けて上げたい、横から差押えなど来ると迷惑を蒙むるかも知れない、こういうような工合に解釈して進むのだということになつて来ないと私は一貫しないと思いますから、私はそういうように思いますが、それでよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/5
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006・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) 只今の点は誠に御尤もでありまして、その点につきましては私も從来からこれは権利の性質から当然こうなればこうなるというようなものではなくて、政策的にどちらに決めるかという問題であるというふうに申上げて参つたわけであります。確かに私共も今おつしやるようにこの方が本人の利益のためにもなるということを考えてこれを規定したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/6
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007・大野幸一
○大野幸一君 そこで念のために申して置きますが、今度二十五條が附加された、新たに修正される。その修正案によりますところの修正案が仮に通過したとして、その場合に、前回これに関連する私の質問にお答えになりまして、免訴又は公訴棄却の場合において国家賠償法が適用になる場合があるからいいじやないかとこういう御趣旨の御答弁があつたのですが、それと今度の二十五條との関係はどういうことになるでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/7
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008・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) 公務員に故意又は過失のあります場合においては、どちらの手続も取れるというふうに考えます。この修正になりました二十五條は国家賠償法でも救うことができないというような場合に直接効果のある規定であると思いますけれども、このような規定が置かれました結果、例えば公務員に故意過失があつたために免訴又は公訴棄却になつた場合でありましても、簡單な手続で、故意過失を立証するまでもなく補償を受けたいという場合には、この規定によつて補償を受けることもできるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/8
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009・松井道夫
○松井道夫君 ちよつと委員会にお尋ねしたいのですが、二十五條の疏明を以て足るということは普通の口頭弁論で調べる答弁とか、場合によつては証人でも調べなければ愼重でない場合があると思いますが、そういうことを別に排撃される趣旨ではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/9
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010・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 勿論その場合におきましては在廷証人というような程度において疏明するということは可能ではありましようし、或いは在廷しない場合において、これを呼出して調べるということは可能と存じます。そういうことを排撃するという意味ではありません。ただ裁判手続のごとく嚴格な意味において証拠という程度まで要求しないということを明らかにして置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/10
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011・大野幸一
○大野幸一君 先程政府委員の話で、故意過失の場合に国家賠償法として賠償されると、これとの関係においてお答えになりましたが、むしろ免訴及び公訴棄却の場合における補償というふうに二十五條を設けたのでありますから、二十五條によつて賠償を求めることができる。又これに当嵌まらなくても国家賠償法によつて請求し得られる場合があるだろう。こういうふうに解釈してよろしいのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/11
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012・牧野寛索
○政府委員(牧野寛索君) その通りに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/12
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013・大野幸一
○大野幸一君 それから委員長の提案理由のうちの説明の一節に、十分なる事由という御説明の中に、疏明で足りる、こういうのでありますが、併し疏明の立証の責任が如何にも請求者にあるがごとく解せられるのですが、私の前回からの質問にもありましたごとく、例えば三百三十九條の「左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。一起訴状に記載された事実が事実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。」と、こういうような理由によつて請求する場合においては、それ自体が十分な理由があるのであつて、請求者側においては、こういう場合においては、今申上げたような場合においては疏明の立証の必要すらないということは当然だと思いますが、この十分なる事由があるときという意味は、強ち請求書に立証の責任を、即ち疏明程度の立証の責任を負わしめに理由でないということは明らかであろうと思いますが、そう解釈してよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/13
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014・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それは只今の大野委員のお説の通りです。ただ裁判所においてそういう認定を誤る虞れのある場合においては進んで疏明し得る、疏明した方がいいではないかという程度であつて、必ずしも疏明を必要とする意味ではありません。
尚先程ちよつと御報告を落しましたが、この修正案の中の二十四條の新聞に関する修正でありますが、これを修正案のお手許に差上げたものには「全文」となつておりますが、これは若し全部を必ず掲載しなくてはならんということになりますると、或いは事件の性質上尤大なるところの決定書がある場合が想像される。さような場合において何十万という漠大な新聞の公告料を支拂わなくちやならんので、国家財政にも相当影響を来たす惧れがあるという意味合からいたしまして、関係方面ではOKされましたのですけれども、衆議院におきましては今日の財政下において「要旨」と改めて貰いたい。こういうい御要求があつたのであますが、この点は「要旨」と改めたいと存じます。
それから尚もう一点申上げて置きますが、本委員会におきまして鬼丸委員から、通常の補償の場合におきまして、二百円以上四百円以下というものは今日の価格等から考え合せて、且つ又疏明の場合と相比較いたしまして、いわゆる二百円乃至四百円の中に慰藉料及び損害賠償を含めるということは事実に過しないではないか。從つて二百円以上六百円以下にすべきである。又松井委員はこれに対しまして二百円以上千円以下にすべきである、こういうような御主張がありました。この点につきまして関係方面と折衝いたしましたのですが、この法案の根本の問題ではなくて、いわゆる国家財政の問題であるから、関係方面におきましては、了承はできるが併し今日日本の財政を基本的に建直そうとしておるところの司令部の考え方としては、補正予算においてすでに二百九以上四百円の枠内においてこれが予算を立てられておる。又来年度の予算もこれに從つて予算を立てておる次第でありますから、将来においてこれを修正するならばともかくとして、現在としてはなかなか困難であるから、この点に対しては反対はしないが将来に廻して貰いたい、こういうような意向でありましたから、この点本案に対して至急国民の利益を保護する意味において公布する場合、その点は将来に保留して置いた次第でありますから、予め御了承願いたいと思います。
他に御質疑ありませんですか。では質疑はこれを以て終局することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/14
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015・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 御異議ないものと認めて質疑はこれを以て終局いたします。直ちに討論に入ります。先程御説明申上げました修正案即ちお手許に差上げました修正案中、この四行目のローマ字の4の求償権の部分を除き、八行目の「全文」とあるのを「要旨」と改め、末行から五行目の「関する規定」は括弧に改めると、こういたしまして、それ以下を消除いたしたところの修正案を委員会の修正案として議題に供したいと思いますが、如何でございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/15
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016・伊藤修
○委員長(伊藤修君) ではこの修正案を議題に供することにいたします。修正案と原案について御討論願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/16
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017・大野幸一
○大野幸一君 私は日本社会党を代表しまして、本案に不満足ながら賛成の意見を発表するものであります。特に第四條の拘留又は拘禁による限りにおいて「一日二百円以上四百円以下の割合」というものは甚だ実情に即しない。先に委員長が各委員の意見についての御披露をお該しになりましたが、私もさように存じます。そもそも法務府がこの法案を作るに当りまして内閣に対し、いわゆる政府に対し、政府の一省として政府の全体に対し、或いは大蔵省、財政官庁に対して熱意が足りなかつたのではないかと思うのであります。新憲法に基いて人権を擁護するために特に一局を設けて相当の費用を使つておいでになります。併しながらこれが財政の方面において制限されるというようなことは、財源が余程の大きいものなればともかくとして、全体の国家予算から見れば少額である。如何に口をすつぱくして、人権擁護を騰いでも、政府みずから人権蹂躙と思われる国家の行為において、国民一人一人に補償する金額について、貧乏であるからと言つてこの限度に留めたことは、人権擁護を口にしながら、人権擁護を国民には與えない、こういう結果を生じているのであります。特にその三の死刑の場合において五十万円以内と言いまして、これは十万円でも五万円でもいいというようなことであつてはいけないのであつて、この最少限、例えば五十万円とするならば二十万円以上とか何とかして国民に安心感を與えなければならない。而も五十万円ということは、これは慰藉料だけの意味かも分りませんけれども、それにしても一名の慰藉料として五十万円と限定したことは過少に失する。かようにいたしまして法務府が予算を編成するに当つて熱意の足らなかつたことを遺憾とするものであります。併しこれは過去のことであつて、将来は、来年度の予算においてはこの点をもう少し考慮せられんことを希望いたします。そうして、予算面において人権の尊重をするという意味において法務府が当該責任者であつたら、これから一層の御鞭撻を希望いたしまして、我々は国の財政の回復と共にこの法案は不滿足であるから、いつなりとも修正する用意がある、又修正する決意を持つておることを申し上げて本案の賛成の意味といたす次第であります。修正案については一部でありますけれども、原案よりは一層一歩進んだ点において勿論賛成の意見を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/17
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018・松井道夫
○松井道夫君 私は修正案並びにその余の原案につきまして賛成の意を表するものであります。世界に稀な進歩しました刑事補償の制度ができたことを御同慶の至りに感ずる次第であります。ただ一点、先程委員長からもお話があり、又大野委員からも触れられたのでありまするが、補償の金額の一日二百円以上千円以下ということに改めたいという強い希望があつたのでありまして、この千円という金額は実情の点から言いまして我慢のできる最低のものであつたのであます。事実二千円以下というような議も上つたのでありまして、実際上拘禁を受けた経験のある星野委員などの体験を聞きましても、千円ではやや低いので、千二百円が相当であるということを言われて大いに意を強くしたのであります。将来なるべく早い機会に国家財政の状況とも照し合せて修正したいものと念願し、只今大野委員も言われたように、基本的人権の擁護というものを直劍に考えれば、窮乏した国家財政の中においてもそれだけのものを捻出するということは、これは今のその衝に当る公務員の素質の向上又職務に対する熱意と相俟つてそう困難なことではないと私は考えておるのであります。この点は遺憾でございますが、その余の点は、殊に第二十五條を挿入することができましたことは、誠に国民のために仕合せなことであつたと存じるのであります。以上を以て私の賛成の討論に代える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/18
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019・來馬琢道
○來馬琢道君 私は趣旨においては異論ありませんが、この第二十五條の新しくできました中に「充分な」という文字がありますが、我が国においては時としては数字の十となつたこともあるし又この「みつる」の充を使つたこともあるのですが、これは国家において一定の用語として貰いたいと思つて始終考えておりますが、参議院がみずからこうして提案することになりますと、これはどうかと思います。この点委員諸君において御研究の結果でありますか、この点明かにして置きたいという希望を持ちます。(「賛成か反対か」と呼ぶ者あり)それがわかりますれば賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/19
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020・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 私は結論におきましては原案並びに修正案共に不十分ながら賛意を表するものであります。日本の歴史からいたしまして、国のなすことすなわち治者のなすこと被治者はすべてこれを從わなければならん、いわゆる治者のなすことはすべて正しきことである、国のなすことは国民としてはこれにはすべて屈從しなければならないというふうな考え方が長年我が国において疑問なく行われて来ておつたのであります。ところが申すまでもなく、公権私権が共に認められておりまする場合におきまして、国が国民に臨む場合におきましても、国といたしましては公権力を発揮する場合あり、その間私権の生じて参りまする場合もあることは言うまでもありません。さればこそ国が国民に、国民の私権を侵害いたしました、場合においては、やはり民法によつてその権利の回復は認められておるのであります。さようなことからいたしまして、既に今日民主国家として、今後国政が運用されます場合におきましては、この公権、私権の使い分けは、国と個人との場合においても、個人相互間におきましても、個人相互間におきましても、共にやはり私権のあるところを何らこの間差別すべき理由はない。この意味におきまして補償法の沿革から申上げますというと、現行の補償法ができましたときにも、恐らくはこの趣旨に適うべき意味において制定されたものと思つております。或いは諸外国にその先例なしということから、遅々としてこの趣旨が徹底していなかつたのであります。併し今回の政府原案によりまして、現行の「刑事補償法」よりも百歩行進いたしておりますることは私共非常に喜んでおるのであります。併しながら公権、私権、殊にこの権利関係においては、国と国民との間においても何らその間に区別する理由はないということであれば、本来はこ「刑事補償法」というものは、今百歩を私は行進をして、当然公権力によつて私権を侵害した場合、やはり、賠償してやるということにならなければ徹底をしないと思います。私が、起訴前のものであつて、拘留或いは拘束を受けたことに対しても、若し調査の結果罪なきことが明白でありましたときは、その声に対して国が賠償して現状に回復さしてやるというのも、実にこの趣旨であります。何分にもこのいわゆる歴史を持つまする我が国におきましては、一躍徹底するということは困難と思います。今日の段階におきましては、只今の政府原案並びに修正の程度において遺憾ながら満足するの外ない。その意味におきまして賛意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/20
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021・伊藤修
○委員長(伊藤修君) この際ちよつと来馬さんの御質問にお答えしておきますが、憲法第三十七條の二項におきまして、「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に與へられ、」この場合におけるところの用語は、この修正案におけるところの充の字、充つるという字が使われておりまして、以来立法の場合におきましてはこの充の字が使われておるように考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/21
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022・來馬琢道
○來馬琢道君 私の発言は少しく立証が足りないかと存じます。この字が間違つているのです。十分という字は、プレンテイーという字は数字の十分というのが本当だと思いますが、憲法が間違つているのだからどうも仕方がない。日本の用語がかようになつたのだとすれば、私は一応いずれはそのうちに又修正して貰うことも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/22
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023・伊藤修
○委員長(伊藤修君) ただ本修正案の場合におきましては今そういう用語例を引用したということを申上げておきます。他に御発言ありませんか。……よろしいですか。他に御意見もなければ討論を終結して、直ちに採決することに御異議ありませんですか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/23
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024・伊藤修
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
先ず修正案を問題に供します。この修正案に対して御賛成の方の御起立をお願いいたします。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/24
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025・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 全会一致、修正案通り決定いたしました。
次に修正案を除く衆議院送付の原案に対しまして採決を行います。衆議院送付の原案につきまして御賛成の方の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/25
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026・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
尚本会議におけるところの委員長の口頭報告の内容につきましては予め御了承願つておきます。
本案につきまして御賛成の方の御署名をお願いいたします。
多数意見者署名
大野 幸一 星野 芳樹
宮城タマヨ 松村眞一郎
鬼丸 義齊 鈴木 安孝
來馬 琢道 松井 道夫
岡部 常 遠山 丙市発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/26
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027・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 日本はこれを以て散会いたします。
午後五時十七分散会
出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
理事
鬼丸 義齊君
岡部 常君
宮城タマヨ君
委員
大野 幸一君
鈴木 安孝君
遠山 丙市君
來馬 琢道君
松井 道夫君
松村眞一郎君
星野 芳樹君
政府委員
法務政務次官 牧野 寛索君
検 事
(検務局長) 高橋 一郎君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100615206X00619491202/27
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