1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月十八日(火曜日)
議事日程 第三十六号
午後一時開議
第一 造船法案(内閣提出)
第二 弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案(法務委員長提出)
第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 通商産業省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 経済安定本部設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
議員辞職の件
永年在職議員表彰の件(議長発議)
映画産業振興に関する決議案(倉石忠雄君外四十名提出)
日程第一 造船法案(内閣提出)
日程第二 弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案(法務委員長提出)
日程第二 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 通商産業省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 経済安定本部設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
熱海国際観光温泉文化都市建設法案(畠山鶴吉君外三十二名提出)
伊東国際観光温泉文化都市建設法案(畠山鶴吉君外三十一名提出)
一般職の職員の給與に関する法律の制定施行に伴う関係法律の整理に関する法律案(内閣提出)
午後二時三十四分開議
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/0
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001・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/1
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002・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 議員森戸辰男君より辞表が提出されております。まずその辞表を朗読いたさせます。
〔参事朗読〕
辞職願
一身上の都合に依り衆議院議員を辞職いたしたいから御許可下さるよう御願いいたします。
昭和二十五年四月十五日
衆議院議員 森戸 辰男
衆議院議長幣原喜重郎殿発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/2
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003・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 森戸辰男君から辞表提出について発言を求められております。これを許します。森戸辰男君。
〔森戸辰男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/3
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004・森戸辰男
○森戸辰男君 ただいま議題になりました私の議員辞任の件につき、事情を申し上げて諸君の御了承を得たいと思います。
実は昨春以来、広島大学から、また選挙区を含む広島県民並びにこれを代表する地位にある人々から、再三学長就任を懇請されました。しかし、諸種の事情から私はこれを固辞して参りました。しかるに、今回熟慮の結果これを受諾するよう決意をいたしましたのは、おもに次のような事情によるのであります。
第一に、広島は私を育ててくれた、なつかしい郷土であります。それに私を国会に送つた選挙区の人々が私の就任を強く要望しているからであります。このいわば地方的な事情は別といたしまして、次に私は、青年とその教育に対して特別の熱情と関心を持つて参りました。しかも、それは個人的なすき好み以上に、日本の再建は青年の向背にかかるという私の確信からであります。(拍手)そうして大学こそは、教員養成をその重要な使命といたしておりまする広島大学こそはその最適、最高の場の一つと申してもよろしいでありましよう。
最後に、平和日本にとりまして広島は特別の意義を持つております。広島は日本一の軍都でありましたが、昨年皆さんのお力によりまして代表的な平和都市となりました。世界的に見ましても、原子力時代の世界の平和運動は、今日、ノー・モア・ヒロシマス、もはや広島の惨劇を繰返すなということをスローガンといたしております。かような意味で、日本において代表的な、そして今や世界的に見ても重要なこの平和都市は、それにふさわしい平和主義に立つりつぱな大学を持つべきであります。かような大学をつくりたいというのが、年来平和主義とユネスコと世界連邦の運動に強い関心と努力を拂つて来た私のささやかな念願でございます。
もちろん学長就任につきましては、私の先輩、同僚の間に、学長には別に人があろう、君のような人間はやや場違いかもしれぬが、それだけにどうしても政治にとどまつてほしいという強い勧告をする人も少からずありました。実際私といたしましても、今回議員を辞任し、政界を離れまするにあたりましては、まことに感慨無量のものがあるのでございます。
顧みますと、私が政界に足を入れましたのは、五年前、新憲法制定議会のときでございました。ここに御列席の幾多の諸君とともに、新日本の国是として、わけても天皇を象徴とする新しい民主政治の基本と、絶対平和主義の條章と、生存権、労働権、団結権などの経済的基本人権を含む輝かしい新憲法の制定に参加いたしましたことは、私の生涯忘れるることのできない追憶でございます。いうまでもなく、この憲法に明示せられた新しい国是の大本は、さらに現実の法令施策において具体化されねばなりません。だが最も大事なことは、憲法が紙の上の死文とならないことでございます。国民一人一人の心の中に銘記せられて初めて憲法は生きた憲法となるのであります。(拍手)
私は諸君とともに、かような方向に向つて最善を盡して参りました。私といたしましては、特にこの点に重点をおいて活動いたしました。なぜかといいますに、政界に入るとき、私は自分の分相応に、科学とモラルと教育を政治に導き入れることによつて、戰後の政治にいささかなりとも新生面を開きたいと念願したからであります。しかるに、志のみ高く、力足らず、わずかに一歩踏み出しただけでここに政界を去ることは、まことに自責の念にたえないものがあるのでございます。
内外の情勢を見まするに、今日ほど世界の各国と国内の民衆が日本の政治に関心と期待をかけておる時期はないのでございます。そして日本の政治は、国民の総意を代表する国権最高の機関である諸君の国会に集中されております。私は切にお願いいたします。国会こそは新憲法の三大精神ともいうべき絶対平和と基本人権と民生安定の不動のとりでとなつていただきたいと思うのであります。(拍手)議会民主主義と平和革命を政治的信條といたしまする私は、諸君の聰明な省察と、たくましい努力によつて国民の間に国会の権威と信望とが確立されることを衷心から念願いたしておるのであります。(拍手)
なお、私は、その経歴と性格から、文教政治と教育革命に特別の関心を注いで参りました。同時に私は、新しい日本の建設は政治制度と経済組織の変革だけでは完成されるものでなく、これがためには、人間革命といいますか、精神革命といいますか、新しい人間の育成が絶対に必要であると確信しておるものであります。(拍手)かつて本院が、第九十議会で、文教再建に関する決議において教育の尊重と教育権の独立を強調し、もつて政治における教育優先の原則を確立いたしたのは、まつたくこの精神の表明にほかならないと思います。幸いにして、祖国再建の精神的基礎をなす教育刷新の大事業は、諸君の全面的な御努力によつて、制度的にはほぼ完成いたしました。ただ、最後の、しかし重要な一環をなす標準義務教育費に関する法律と大学管理法とがまだできていないことは、何としても心残りでございます。しかし、これもやがて諸君の教育への御理解と御協力によつて間もなく立法化されることを信じております。祖国再建の重大課題である教育革命の大業が制度上完成される日の近づいたことを思いながらここに政治を去ることは、私の一つの大きな喜びであり慰めでもあるのでございます。(拍手)
以上私の議員辞任の事情を申し述べ、諸君の御理解を得るとともに、不敏な私をして大過なくその職責を果させていただいた同僚諸君の厚誼と友情とに感謝いたし、あわせて祖国再建と議会民主主義確立のため、さらに文教の復興と推進のため諸君の一段の御健闘と御協力とをお願して、そして不肖私に対しましても相かわらずの御交情と御指導とをお願いいたしまして、私の言落を終りたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/4
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005・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 議員辞職願の許否は、衆議院規則第百八十七條によりまして、討論を用いないで決するのであります。採決いたします。森戸辰男君の辞職を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/5
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006・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて辞職を許可するに決しました。(拍手)
————◇————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/6
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007・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) お諮りいたします。本院議員として在職二十五年に達せられました田中萬逸君に対し、院議をもつて功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任されたいと思うのであります。この議長発議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/7
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008・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。(拍手)
ここに議長の手元において起草いたした文案があります。これを朗読いたします。
議員正五位勲三等田中萬逸君衆議院議員ニ当選スルコト十二回在職二十五年二及ヒ常ニ憲政ノ為ニ盡シ民意ノ伸張二努ム衆議院ハ君カ永年ノ功労ヲ多トシ特ニ院議ヲ以テ之ヲ表彰ス
この贈呈方は議長においてとりはからいます。
この場合田中萬逸君から発言を求められております。これを許します。田中萬逸君。
〔田中萬逸君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/8
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009・田中萬逸
○田中萬逸君 一言ごあいさつを申し述べます。
不肖私が二十五年間引続き議席を汚しておりましたゆえをもちまして、ただいま院議をもつて御鄭重なる表彰の御決議をいただきましたことは、まことに身に余る光栄でありまして、ただただ感激のほかはないのであります。
過去二十五年のあとを顧みまするに、いたずらに歳月を過したというのみでありまして、何ら国家に対し、はたまた憲政に対し寸功だもなかつたことは慚愧にたえざるところであります。しかるに、かくのごとき決議を賜わりましたゆえんのものは、まつたく選挙民諸君の終始かわらざる、しかも永年にわたる御援助のたまものであり、さらにまた先輩並びに同僚諸君の御懇切なる御指導、御鞭撻によることは論ずるまでもなきことでありまして、私は平素より絶えず感謝をいたしておつたのであります。
今や民主政治確立の気運に際会して感慨無量なるを覚ゆるとともに、われわれ職責のいよいよ重大なるを痛感するものであります。こいねがわくは、春秋に富ませられる諸君とともに、老駑にむちうちまして、今後ますます祖国の再建と民主政治の暢達に盡さんことを深く期しておる次第であります。
ここに簡單ながらつつしみて感謝の意を表し、ごあいさつといたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/9
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010・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、倉石忠雄君外四十名提出、映画産業振興に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/10
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011・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/11
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012・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
映画産業振興に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。田嶋好文君。
〔田嶋好文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/12
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013・田嶋好文
○田嶋好文君 ただいま上程になりました映画産業振興に関する決議案につきまして、提案者を代表いたしましてその趣旨弁明をいたしたいと思います。
まず案文を朗読いたします。
映画産業振興に関する決議
わが国における映画産業は、長い間みるべき施策がなく諸外国に比して不振のままに放任されている。映画は年間六億の観客を吸引し、一四〇億円を超える入場税收入の大半を占むる一大産業であるにかかわらず、何らの積極的施策がなされず、特にその天然色化に対しては全く顧みられなかつた。
天然色映画は單に大衆娯楽としてのみならず、学術研究、教育文化、外貨獲得並びに観光宣伝用としても、従来の黒白映画に比較すべからざる効果がある。しかして今や世界のすう勢よりして、天然色なくして映画の価値をうん為することは許されぬ時代になつている。これは高度の科学技術の文化面への適用である。
しかるにわが国においては、諸外国に率先、つとに研究、試作がなされ、しかも技術的により進歩しているにもかかわらず、未だに実用化されず、最新の平和的文化的産業としての真価を発揮し得ない現状にある。映画産業をかかる状態に放置しておくことは、文化国家建設途上のわが国として誠に遺憾といわねばならない。
よつて政府は、映画産業の社会的、文化的且つ産業経済上の重要性にかんがみ、速やかに左記により積極的にその振興並びに天然色化の方策を講ずることを要望する。
記
一 映画産業振興のため必要且つ適正なる施策を確立すること。
右決議する。
皆様御存じのように、映画はわれわれ日常生活と切り離すことができなくなつておるのであります。それは年間延人員にいたしまして六億に達する観客の数がこれを端的に証明しておる通りであります。百四十億円を越える税收入のうち映画入場税が大半を占めていることを思いますれば、財源といたしましても映画産業は見直さなければならないのであります。そうでありますのに、政府のこれに対する認識はきわめて薄く、戰前、戰後を通じまして、わずかに文部大臣賞等の奨励金が與えられているにすぎないのであります。産業部門としての取扱い、類別におきましても、その他諸産業と一括されて、まつたく顧みられていないのでありまして、融資面に関しても、産業序列は丙種産業のわくで取扱われていて、わが国の映画産業ほど奪われること多く與えられること少きはないと言つても過言ではないのであります。
映画が四大産業の一つに数えられ、国家の保護助成を必要としない段階にあるアメリカはしばらくおきまして、諸外国の映画政策を見てみますと、まずイギリスにおきましては映画法が施行せられておるのであります。自国映画上映の義務を課しているほか、政府は映画法に基きまして、米貨二千万ドルの資金を製作業者に貸し出し、さらに最近は二千万ドル追加すると伝えられておるのであります。フランスでは、ブルーム・バーンズ映画協定によりまして米国映画の輸入量が定められ、入場税、メートル税を財源といたしまして映画金庫より製作者に貸出しを行い、イタリア、オランダ、オーストリア、メキシコ等も、莫大な補助金を出して、映画技術の向上映画産業の発達をはかつておるのであります。なおまた入場税に関しましても、わが国のごとき高率な国はその例を見ないのでありまして、しかも映画製作は従来の白黒映画時代より天然色映画の競争時代に入りつつありますことは、皆様御存じの通りであります。
天然色映画は、單に大衆娯楽のみではなく、学術の研究、輸出貿易並びに観光宣伝用といたしましても、従来の白黒映画に比較にならない効果を持つております。その上、もはや世界の趨勢から言いますれば、白黒映画は完全に過去のものとなりつつありまして、天然色なくして映画の価値を云々することは許されない時代になつて参りました。今これを諸外国について見ますなれば、アメリカにおきましては、本年度は全映画用フイルムの全量の三分の一が天然色となるものと推定され、ソ連邦におきましては、一部ニユース映画を除きまして白黒映画は影をひそめると伝えられるありさまで、イギリスにおきましてもまた「ヘンリー五世」や近着の「赤い靴」等に見られます通り、すばらしい天然色映画時代を現出しようとしておりますことは、皆様御承知の通りであります。まさに天然色フイルム生産量こそ文化国家の水準を示す尺度であり、これなくしては文化国家という資格なしといつても過言ではないと思うのであります。
しかるに、わが国の現状は皆様御承知の通りでありまして、研究や試作の点から申しまするならば、かなり古くから冨士フィルムや小西六写真工業会社などが始めているにもかかわりませず、いまだに実用の域に達していないということは、まことに残念しごくと申さなければなりません。学術、貿易、観光等單に娯楽面のみからでなく、あらゆる部門で利用できるようにすることが要望されるゆえんであります。従つて、わが国では何ゆえに天然色映画が実用化されないかという原因を探究し、その隘路を打開することは、文化政策上の第一課題として、国会、政府の今すぐにも取上ぐべき問題であると信ずるのであります。
それにはいろいろと複雑な要因もありますが、何と申しましても経済的に引合わないということが第一で、このために、フイルム会社にしましても、映画製作会社にしましても、将来は天然色でなければならぬと思つておりながら、これを敬遠していることが重要なる原因でありまして、経済的條件を改善いたしますなれば、技術的には今ただちに一応の製品ができる現状であります。
これを数字によつて検討してみますならば、黒白映画と天然色映画の製作費と收益を比較してみますと容易に了解されることでありまして、普通八千フイートの劇映画を例にとつてみますと、三十本のプリントをとるものとして、黒白映画では一千五百万円余、天然色映画では四千万円余が製作にかかります。これに対しまして收益は三千万円ないし三千五百万円と推定されますので、現状では天然色映画がとうてい現われない理由が明白でありましよう。これは撮影費では大差がないにもかかわりませず、フイルム代並びに複写プリント代が天然色では黒白の八倍以上もかかるためでありまして、その中に含まれている現行五〇%のフイルムに対する物品税が大きく響いているのであります。
そこで、天然色フイルム映画の製作が一応軌道に乗りますまで、この物品税を天然色フイルムに限つて免除することを、第一に提案いたしたいと思います。この免税によりまして、四千万円の製作費は三千八十二万円程度に下りますが、さらにまた映画興業資本が大なる犠牲を拂うことなく競つて天然色映画に手をつけるまでには、どうしても一つの映画に六百万円程度の国家補助を必要とするとも言えましよう。もちろんその期間は、おそらくは一、二年と想像されるのでありまして、フイルム生産能力から申しましても、一年せいぜい二本以上はできませんから、国家補助を要します総額は、二本として一千二百万円程度にすぎないこととなります。これによりまして、二、三年後には日本の天然色映画の隆盛をもたらし得ることを思いますれば、国民といたしましても決して大なる負担ではないと考えられるのであります。
さらに一言申し上げたいことは外貨獲得に関してであります。伝えられるところによりますれば、外国映画一本について、わが国では最高二千万円、米ドルにして六万ドル前後支拂つているのでありますが、わが国の映画輸出は戰後全然なく、あつたとしても外国に比べまして低級なために、価格がわずかに一本について一千九百ドルくらいで、いわば在米日系二世に見られているにすぎない状態であります。ところが、これを本格的にアメリカで上映できる程度の優秀な映画にしますれば、一本につきまして百万ドル以上の收入を得ることができるのが例でありまして、たとえば一九四七年一箇年間の統計を見ましても、フランスが百余本、イタリアが四十七本、英国が二十二本、ドイツにいたしましても十八本を対米輸出している状態でありまして、日本はかりに十本輸出できますれば、一千万ドルの收入があることになるのであります。
このことは米国一国についてでありますが、その他の国についても、映画を輸出することが有利なことはもちろんであります。映画は他の輸出品と異なりまして收入金額のわずかに五百分の一がその資材費にかかるにすぎないのであります。このことは他の輸出品にまつたく見られない特徴でありまして、英、仏、伊は、この点から重要な輸出品目といたしまして、その発展に努力している現状であります。
以上申し上げましたような理由で、物品税の免除と天然色映画製作に対する国家補助は、さしあたつてフイルム製造会社と映画政策会社を直接利益することにはなりますが、数年を出でずして日本国民全体の利益として返つて来ることと思われるのであります。ここに、この際世界の進運に遅れないため、従来の映画行政に関する政府の方針を改めまして、映画産業発展に必要な、かつ適切なる措置を講じ、現行五〇%の天然色フィルムに対する物品税を免除して国産天然色映画市場への進出を助長し、積極的に外貨獲得の手段とし、あわせて国民の社会的文化的向上に資するため、文化国家国策第一号として、ぜひとも国会の名においてこの提案を御承認になり、早急な映画産業振興策の確立を要望するのであります。皆様の御賛同をお願いしてやみません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/13
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014・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/14
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015・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
この際通商産業政務次官より発言を求められております。これを許します。通商産業政務次官宮幡靖君。
〔政府委員宮幡靖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/15
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016・宮幡靖
○政府委員(宮幡靖君) ただいま満場一致御決議をいただきました映画産業振興の決議は、文化国家の建設を目ざしますわが国として、まことに適切なものであろうと考えております。特に貿易振興をねらつております通商産業省といたしましては、天然色映画によります海外宣伝を試みたいと、ただいませつかくその準備を進めております。ことに御承知のように、本年度の予算におきましては、工業技術振興のために、十分とは申しがたいのでありますが、前年度の予算等に見られない予算を計上いたしまして、この技術振興に当りたいと思つておりますので、従いまして、天然色映画の製作につきましては、まずもつて国立の研究機関におきまして十分研究いたしまして、民間の研究につきまして技術の指導等を提供いたしまして、十分御決議の御趣旨に合うように努力いたしたいと考えております。これをもつて、ただいまの御決議に対しまする通商産業省所管のお答えといたします。(拍手)
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第一 造船法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/16
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017・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一、造船法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長稻田直道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/17
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018・稻田直道
○稻田直道君 ただいま議題となりました造船法案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、去る三月二十九日、本委員会に付託せられまして、四月四日、政府より提案理由の説明を聴取し、これを慎重に審査いたしたのであります。
本法案の趣旨を簡單に申し上げますと、わが国の造船技術は戰時中の低質大量生産に災いされたるため、現在におきましては、世界の水準に及ばないことはもちろん、わが国戰前の域にさえ達していない実情でありますので、これが復旧並びに向上をはかるとともに、造船事業の円滑な運営を期するために、本法案を制定しようとするものであります。
その内容のおもなる点をあげますると、まず第一点といたしましては、一定の大きさ以上の鋼船を製造または修繕し得る施設あるいは設備を新設する場合には、事前にその内容を届け出させまして適切な指導を行うことといたしました。次に第二点といたしましては、船型、推進機並びに機関等について性能試験を行うことによりまして造船舶の優秀化をはかることにしたのであります。第三点といたしましては、造船業の開始または休廃止に対して届出制を規定いたしまして、常に造船事業の現況を把握し得ることといたしたのであります。第四点といたしましては、業務運営の改善並びに技術の向上をはかるために必要な勧告を行い得ることといたしたのであります。
次に本法案に対する質疑のおもなる点を申し上げますと、性能試験を奬励するために手数料を徴收しないようにしてはどうかとの質問に対しまして、政府委員より、目下のところ予算の関係上困難であると答弁がありました。また造船事業の開始について届出制をとつているが、臨時船舶管理法施行規則において、これと同一内容の報告書を提出するように規定している、従つてこの條文は削除すべきではないかとの質問に対しまして、政府委員より施行規則を改正する旨の答弁がありました。その他詳細は会議録に譲ることといたします。
次に討論に入り、日本共産党を代表して上村進君より、また労働者農民党を代表して石野久男君よりそれぞれ本法案に反対の意見を述べられたのであります。
かくて討論を打切りまして、ただちに採決の結果、起立多数をもつて本法案は政府原案通り可決いたした次第であります。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/18
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019・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 討論の通告があります。これを許します。上村進君。
〔上村進君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/19
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020・上村進
○上村進君 私は、この造船法案に対して、日本共産党を代表して反対の意見を表明するものであります。
本法案は、わが国の遅れている造船技術の向上に関し運輸大臣が適時適切な指導勧告を行うとともに、恐慌の激化する世界海運市場の競争に十分耐え得るために、造船業及び関連産業に対し報告を徴し、経営の合理化、企業原価の引下げ、労働の管理等に遺憾のないよう意見を述べ、勧告することを規定したものでありますが、これこそ日本の海運業買弁化とともに、造船業及び関連産業の軍事的、植民地的再編成をねらう吉田内閣の技術管理以外の何ものでもないのであります。
日本の海運業は、去る三月三日のスカジヤツプ覚書による船舶の民営還元によつて未曽有の危機に直面していることは、皆さんの御承知の通りであります。すなわち、外航は形式的に許可されているが、事実上のあらゆる制限と、国際独占資本の恐慌輸入と、飢餓輸出による国内産業の破壊と、荷動きの減退によつて、日本の船舶は、その二分の一に及ぶ八十五万トンの大量繋船と、現在二万四千名に及ぶ船員の失業者、さらに現船員の三分の一の一万余名の船員を整理することと相まつて、アメリカとの裸傭船問題、あるいは英国からの古船購入問題が活発になつたことでも明かなごとく、民営還元、自由運航の掛戸に隠れて、講和のなしくずしのもとに外航制限を半恒久化し、日本海運を国際独占資本の隷属下に置かんとするものである。
造船業もこれと切り離して考えることはできないのであります。表面は單純な枝術指導の立法化に見える本法案も、造船業及び関連産業に対し、事業計画はもちろん、生産、販売、労務及び施設にまで届出制、勧告制をとつて運輸大臣の権限を強化し、集中生産を強行し、この施行によつて中小造船業並びに関連産業の破壊をもたらし、一方においては日本造船業を外国資本に奉仕させる技術の導入をはかり、日本造船業並びに関連産業を急速に隷属化せしめんとするものである。
今や造船業は、日本の海運資本の買弁化と、加うるに鋼材の補給金廃止による値上り、また金利においては、イギリスの年間六百二十五万円に比べ四千六百二十五万円にも及ぶ見返り資金による金利高と、さらには今回の税制改革によつて、現在の船舶税の十三倍にもはね上る一隻一千万円の地方税負担による船価高によつて、海運業者の完全なる造船意欲の喪失をもつて、まつたく崩壊の一途に追い詰められているのである。このときにおいて運輸大臣の権限が拡大強化され、施設や業務、技術に関する勧告がなされた場合に、この勧告に応じ得ぬ業者は実際問題について不利益をこうむると大臣が答弁されたことによつても明らかなごとく、みずからの力を持たぬ中小造船業者は、中小海運業者と同様に、当然破滅に追い込まれることは明らかなことである。
この造船業の危機を打開するには、中国やソ同盟との貿易をやるより以外に道はないのである。たとえばノールウエーからの注文貨物船はトン当り八万六千四百円にすぎないが、ソ同盟からの注文はトン当り十七万一千円で、実にノ—ルウエ—の注文価格の約二倍の高値であつて、一千トン級の船が十隻も来ている。この有利な取引が何ゆえ許されないか。この最大の障害をなすものは、吉田内閣の事実上のなしくずし講和の買弁政策である。従つて、造船業の真の発展をはかる道は全面講和の急速な実現以外にないことは明らかである。
わが党は、以上の理由によつて、この法案に絶対に反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/20
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021・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/21
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022・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/22
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023・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第二は委員長提出の議案でありまするから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/23
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024・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。
日程第二、弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。法務委員会理事北川定務君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/24
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025・北川定務
○北川定務君 ただいま上程になりました弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案の提出理由を説明いたします。
弁護士法は、さきに第五国会において成立したわけでありますが、付属法律としては、ただ一つ、いかなる大学の教授または助教授が弁護士の資格を有するかを定める法律を制定することが残されていたわけであります。そこで、法務委員会においては、二月十四日、弁護士法第五條第三号に規定する大学を定める法律案に関する小委員会をつくり、立案起草に当り、小委員会を開くこと数回、遂に三月二十八日関係方面の了解を得て、その小委員会案を四月十五日法務委員会の成案としたわけであります。
さてその内容を申し上げますと、弁護士になれる大学教授の大学を指定するにあたつて二つの方法があります。一つは、抽象的、原則的、総括的に大学制度によつて大学を指定する方法であります。この方法によるときは、適格のある大学が制度的に定まるわけでありますが、以後大学は文部省の学校教育令や旧大学令によつて決定されて行くわけであります。裁判所施行法では、裁判官になる資格ある大学教授を定めるにあたつて、この方法によつているのであります。他の一つの方法は、具体的、列挙的、個別的に大学を指定する方法であります。これによると、毎年または毎国会に法律を改正して行かねばなりません。しかし小委員会においては、両方法を比較調査した結果、二つの方法は、現実に弁護士の登録申請があつた場合には、結果においてほぼ同様であることが判明したわけであります。それで、立法技術としては第一の方法がよいので、この方法を採用したわけであります。條文についてはわずか一箇條でありますので、特に説明する要もなく、ごらんを願えばおわかりになることと思います。
右簡單ながら提案理由を申し上げました。この法案は法務委員会で全会一致をもつて賛成を得たのであります。何とぞ議員皆様の御賛成をお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/25
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026・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/26
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027・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/27
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028・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第三、恩給法等の一部を改正する法律案、日程第四、通商産業省設置法等の一部を改正する法律案、日程第五、経済安定本部設置法の一部を改正する法律案、右三案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長鈴木明良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/28
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029・鈴木明良
○鈴木明良君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案、通商産業省設置法等の一部を改正する法律案及び経済安定本部設置法の一部を改正する法律案について、内閣委員会の審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず恩給法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案において改正を加えんといたしまする事項は次の諸点に盡きるのであります。
第一点は、現行給與法令が適用される前の俸給を基礎として計算されている恩給年額の改訂に関するものであります。現在支給されております恩給は、その年額計算の基礎となつております俸給の点から見ますると、次の三つにこれを大別することかできるのであります。すなわちその一は、昭和二十三年六月三十日以前に給與事由の生じた恩給でありまして、昭和二十三年七月法律第百九十号恩給法臨時特例別表第三号表に掲げられている仮定俸給年額を基礎として計算された年額に改訂されておるものであり、その二は、昭和二十三年七月一日以後に給與事由の生じた恩給でありまして、現行給與法令が適用される前の俸給を基礎として計算されておる年額のものであり、その三は、現行給與法令による俸給を基礎として計算されておる年額の恩給であります。この三つに大別された恩給は、俸給の支給水準のかわつたことによりまして、現に支給されている恩給の支給水準に、退職の時期により差異ができているのが実情であります。しかして、この低い水準に属する恩給、すなわち前に述べました一及び二に属する恩給につきまして、その年額計算の基礎となつている俸給に対応する現行給與法令に基く俸給を推定し、その推定された俸給に相当する額を基礎として計算しました場合の恩給年額にこれを改訂いたしまして、昭和二十五年一月分から支給いたそうとするのであります。この法律案の附則第二項から第四項まで及び別表がこれに関する規定であります。
第二点は、増加恩給または傷病年金の家族加給及び扶助料の扶養遺族加給の増額に関するものであります。現行恩給法臨時特例によりますると、増加恩給または傷病年金の家族加給及び扶助料の扶養遺族加給の金額は、扶養家族または扶養遺族一人に対して年額二千四百円になつておるのでありますが、先ごろ公務員の在職給與たる扶養親族手当が月額されましたのに伴い、これらの加給の金額につきまして、右の年額二千四百円を四千八百円に増額することとし、現に支給されているこれらの加給につきましては、昭和二十五年一月分からこれを支給いたそうとするのであります。
第三点は、いわゆる多額所得者の普通恩給の一部停止に関する規定の改正であります。現行恩給法臨時特例によりますと、普通恩給年額一万五千円以上で、恩給外の所得年額十五万円を越えるものにつきましては、普通恩給年額と恩給外の所得年額の合算額に応じ、普通恩給の一部を停止することになつておるのでありますが、この法律案によりまして現行給與法令適用前の俸給を基礎として計算されている普通恩給の年額が改訂されることになりますることと、最近の経済状況の推移にかんがみまして、これを改めて普通恩給年額三万円以上で、恩給外の所得年額二十万円を越えるものにつきまして、現行法のような割合で普通恩給の一部の停止を行うことといたそうとするのであります。
第四点は、官吏制度の改正に伴い新たに恩給法上の公務員となつた者に対する恩給法上の措置に関するものであります。海上保安庁の職員の中で、海上警備の第一線に勤務する海上保安士たる海上保安官は、その職務の態様からいたしまして恩給法上警部補、巡査部長及び巡査たる警察官と同じような取扱いをすべきものと考えられますので、海上保安士たる海上保安官をこれらの警察官と同じように取扱い、恩給法上警察監獄職員として指定いたそうとするのであります。また特定郵便局長は、従来、恩給法上準文官たる準公務員として取扱われておつたのでありますが、先般特定郵便局制度が改正されまして、恩給法上文官たる公務員となりましたので、現行恩給法における準公務員たる準教育職員が引き続き公務員たる教育職員になりました場合の取扱いにならいまして、準公務員たる特定郵便局長から引き続き公務員たる特定郵便局長になつた者につきましては、その準公務員としての在職年の二分の一を公務員としての在職年に通算することといたそうとするのであります。
第五点は、恩給法上の特殊公務及び在職年の加算に関する規定の改正であります。恩給法上の公務員が職務をもつて海難、火災その他の災害による危險を救助または防止するにあたりまして、その危險を予断し得るにかかわらず、あえてこれを冒してその職務を執行いたしましたため受けました傷痍疾病、及び職務をもつて機雷の掃海作業に従事中に受けました機雷による傷痍疾病を特殊公務による傷痍疾病として取扱い、また海上保安庁の排水量百五十トン以下の木造巡視船や、排水量二百五十トン以下の木造掃海船の乗組員の勤務につきましても、その不健康な勤務の実情にかんがみ、これを不健康業務の加算のつく業務として指定し、また静岡県加茂郡神子元島及び福岡県糸島郡烏帽子島につきまして、その辺陬にして不健康な環境にかんがみ、これを辺陬または不健康の地域の加算のつく地域として指定いたそうとするのであります。
第六点は、地方自治、警察、消防、教育等の諸制度の改正に伴いまして、それぞれ地方公務員に対する恩給法の準用規定がありますが、これらの規定の内容を整備しようとするのであります。
第七点は、図書館法の制定並びに建設省建築出張所及び教護院の職員の都道府県移管に伴う恩給法上の善後措置に関する規定を設けようとするのであります。以上のほか、法令の改正に伴う字句の修正その他制度の改正に伴い不要となりました條項の整理等をいたそうとするのであります。
本案は、四月五日、本委員会に付託され、ただちに政府の提案理由の説明を聽取し、爾来愼重に審査を続けて参つたのでありますが、四月十七日、質疑を終了した後、討論採決の結果、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。
次に通商産業省設置法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、行政機構の簡素化をはかるとともに、通商産業行政を経済情勢の推移に即応して重点的に施策実施すべく通商産業省の組織を整備するため、通商産業省、工業技術庁及び中小企業庁の各設置法の一部をそれぞれ改正せんとするものであります。
内容のおもなるものについて申し上げますならば、まず通商産業省設置法においては、第一に、通商産業行政の重点を物資行政から企業行政、なかんずく企業合理化行政の推進に指向することを明らかにするため、通商産業省の任務のうちにその旨を特に規定するとともに、同省の権限中に外国為替及び外国貿易管理法の実施に伴う改正を行つております。第二は、通商産業省の内部機構の改組であります。すなわち、同省の内部部局は大臣官房のほか八局でありますが、米国対日援助物資の特殊性にかんがみ、同物資の輸入等に関する業務の円滑なる遂行をはかるため、従来通商振興局で所掌しております同物資の監督業務と貿易公団の取扱業務を統合して新たに臨時通商業務局を設けるとともに、援助物資の経理を特別会計として、これを同局に專管せしめることとしております。また局の次長は通商及び通商繊維の二局に一人ずつ置かれてありますが、通商繊維局の次長制を廃し、通商企業局と新設の臨時通商業務局に各一人を置くこととするとともに、大臣官房調査統計部の所掌事務について整備しております。なお通商企業局の調達賠償部及び地方支分部局たる通商産業局の付属機関として置かれてあります地方電気審議会を廃止するとともに、石炭需給統制の緩和に伴い資源庁の石炭管理局及び石炭生産局を炭政局に統合し、施設部を置くこととしております。
次に工業技術庁設置法においては、人事院規則の実施並びに財政法及び会計法の改正に伴い、多数の職員を有する同庁における人事、会計等の庶務関係事務が一段と増加することとなりましたため、同庁に新たに長官官房を設けることとしております。
次に中小企業庁設置法においては、中小企業行政の強力化をはかるため、中小企業の育成及び発展をはかるべき基本方策の設定、商工組合中央金庫に対する監督等につきその権限を明確にするとともに、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律または事業者団体法の適用について、公正取引委員会との関係を整備しております。
本案は、以上の諸点のほか、他の法令の制定、改正等に伴う所要の改正を行うとともに、附則において、通商産業局の分室廃止の際同局の職員であつた者でこの法律施行の際都道府県の商工資材事務所に勤務する官吏たる者が引続き都道府県の吏員となる者に対して恩給を継続せしめること、並びに通商産業省の機構変更に伴い国家行政組織法の別表の一部を改正することを規定し、本年四月一日からこれを施行しようとするものであります。
本案は、三月二十九日、本委員会に付託され、ただちに政府の説明を聞き、通商産業委員会とも連合審査会を開いて質疑を行つたのでありますが、本案に対し修正案が提出されました。
その内容のおもなる点は、通商産業省設置法に関しては、輸出信用保險法及び輸出信用保險特別会計法の施行に伴いその経理事務を通商振興局経理部に所掌せしめるとともに、通商産業局においても、輸出信用保險の事務を取扱わしめることといたし、また今後貿易公団の全面的縮小が予想されますので、政府輸入業務を臨時通商業務局に所掌せしめることといたしております。
次に工業技術庁設置法に関しましては、工業技術協議会の任命権者を国家公務員法に従つて工業技術庁長官とすることといたしております。
附則に関しては、本法の施行期日を公布の日と改め、都道府県の商工資材事務所の廃止に伴い都道府県吏員となる者に対する恩給継続の規定は本年四月一日にさかのぼつて適用することとし、商工資材事務所の物品を都道府県に無償で譲渡する規定を加える等であります。
かくして質疑を重ね、愼重審査の後、四月十七日、討論採決の結果、多数をもつて修正案の通り修正議決いたしました。
次に経済安定本部設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、経済事情の推移に即応して経済安定本部の組織機構を整備、簡素化せんとするものであります。
おもなる改正の第一は、経済調査庁法の一部改正と相まち、同本部の任務について一部改正を行わんとするものであります。すなわち、従来は経済統制を確保することを任務の一つといたしておりましたのを、広く経済法令の励行を確保することに改めようとするものであります。
第二は同本部の内部機構の改組でありまして、現在の一官房、六局から一局を減じようとするものであります。すなわち、生産及び動力の二局を統合して産業局を設けるとともに、生活物資局を民生局と改称しようとするものであります、また貿易局の所掌事務に関しましては、外国為替及び外国貿易管理法の制定に伴い閣僚審議会の事務を行わせることといたしております。なお局に置かれる次長は、従来生産局に二人、動力局に一人、生活物資局に二人でありましたが、今回産業局に二人、民生局に一人を置くことに改め、すなわち次長二人を減ずることになつております。
第三は、従来同本部に事実上設置されておりまする企業会計基準審議会、国民所得調査連絡協議会、河川総合開発調査協議会及び土地調査準備会を、今回附属機関として法律に明記することであります。
第四は、地方機関の簡素化であります。従来、同本部、物価庁及び経済調査庁のおのおのの地方機関として、地方経済安定局、地方物価局及び管区経済調査庁が置かれ、いわゆる三本建になつておりますが、これらを一本の組織に整理統合し、同本部、物価庁及び経済調査庁の共通の地方支分部局として、管区経済局を全国八箇所に置くこととし、その内部部局は調整、物価、監査及び査察の四部とし、これに関する細則は、経済安定本部令で定めることといたしております。なお経済調査庁法の改正により、地方経済調査庁が地方経済調査局と改称されますので、これを管区経済局の下部機関として、都府県の区域ごとに一つ、北海道に四つ以内を置くこととし、これに関する細則は、経済調査庁法に規定するものを除くほか、経済安定本部令で定めることといたしております。
本案は、以上の諸点のほか、他の法律の改正に伴う所要の改正を行うとともに、附則において、経済安定本部の存続期間に関する規定を廃止するほか、価格改定による価格差益徴収事務を大蔵省に移管することとして関係法令に改正を加え、本年六月一日からこれを施行し、経済調査庁の所掌事務関係及び審議会の整備等に関する一部改正規定は公布の日から施行しようとするものであります。
本案は、四月十日、本委員会に付託され、ただちに政府の説明を開き、質疑を行つた後、四月十七日、討論採決の結果、多数をもつて原案の通り可決いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/29
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030・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) まず日程第三につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/30
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031・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
次に日程第四及び第五の両案を一括して採決いたします。日程第四の委員長の報告は修正でありまして、日程第五の委員長の報告は可決であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/31
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032・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り決しました。
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熱海国際観光温泉文化都市建設法案(畠山鶴吉君外三十二名提出)
伊東国際観光温泉文化都市建設法案(畠山鶴吉君外三十一名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/32
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033・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、畠山鶴吉外三十二名提出、熱海国際観光温泉文化都市建設法案及び畠山鶴吉君外三十一名提出、伊東国際観光温泉文化都市建設法案の両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/33
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034・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/34
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035・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
熱海国際観光温泉文化都市建設法案、伊東国際観光温泉文化都市建設法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長、淺利三朗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/35
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036・淺利三朗
○淺利三朗君 ただいま議題となりました、畠山鶴吉君外三十二名の提案にかかる熱海国際観光温泉文化都市建設法案並びに同君外三十一名提出、伊東国際観光温泉文化都市建設法案の両案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果につき御報告申し上げます。
まず熱海国際観光温泉文化都市建設法案につき申し上げます。
本法案は、熱海市を国際観光温泉文化都市として建設するために、国及び地方公共団体等の関係機関が、その建設事業に対して、できる限りの援助を與えなければならないと規定し、さらにその建設事業の用に供するため必要があると認めるときは普通財産を譲與することができるというのが、本法案の要旨であります。なおその他熱海市長の責務または事業執行者の責務等についても規定されておるものであります。大体さきに本院を通過いたしました別府国際観光温泉文化都市建設法案と同一の内容を有するものであります。
本法案は、三月二十五日、建設委員会に付託され、四月十日、提案理由の説明を提案者より聽取し、次いで十四、十五の両日にわたり大蔵委員会と連合審査を行い、さらに本委員会においても種々熱心な質疑が行われたのであります。その質疑の詳細につきましては速記録に讓りたいと存じますが、そのおもなるもののうち、ただ一点だけを特に申し上げておきます。
去る四月三日、十三日と相次いで生じた熱海市の大火と本法案との関連性をいかように考えるかという質問に対しまして、今回の大火の原因といたしましては、熱海市の都市計画がいささか無秩序であつて、街路網の不備、道路幅員の狭小及び建築密度がはなはだ過密であつたこと等が考えられますので、復興計画の樹立にあたりましては特に防火的都市の建設に留意をし、かつこの際観光都市としての完備をあわせて期したいと考える、従つて本法案が成立いたしますれば当市の都市計画事業の進捗に益するところがきわめて大であり、本法案によつて国際観光温泉文化都市の建設が大いにかつ有意義に邁進されることとなるとの答弁がありました。なお伊東国際観光温泉文化都市建設法案と一括いたして審議いたしました結果、その質疑も大体同様でありました。
質疑を打切つた後、一括討論に入りまして、自由党を代表して田中角榮君より、民主党を代表して小松勇次君より、農民協同党を代表して寺崎覺君よりそれぞれ本法案に賛成の発言がありました。かくて採決の結果、全会一致をもつて可決すべきものと議決した次第であります。
次に伊東国際観光温泉文化都市建設法案に関しまして御報告申し上げます。
本法案は、熱海国際観光温泉文化都市建設法案と同時に提出され、しかもその内容においてまつたく同一のものでありますので、本委員会におきまして熱海国際観光温泉文化都市建設法案と本法案を一括して審議しましたことは、すでに申し上げた通りであります。従つて質疑応答の内容も、先に御報告申し上げました熱海国際観光温泉文化都市建設法案とほとんど同様でありましたので、詳細なる御報告は省略いたします。
本法案も本日質疑を終了し、討論に入りまして、その結果は先刻御報告申し上げた通りであります。
かくて採決の結果、全会一致をもつて可決いたした次第でございます。
右、簡單ながら御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/36
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037・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 両案を一括して採決いたします、両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/37
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038・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
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一般職の職員の給與に関する法律の制定施行に伴う関係法律の整理に関する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/38
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039・山本猛夫
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、一般職の職員の給與に関する法律の制定施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/39
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040・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/40
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041・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
一般職の職員の給與に関する法律の制定施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます、人事委員会理事藤枝泉介君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/41
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042・藤枝泉介
○藤枝泉介君 ただいま議題となりました一般職の職員の給與に関する法律の制定施行に伴う関係法律の整理に関する法律案について、人事委員会の審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
本法案の提案理由とするところは、御承知のように政府職員の新給與実施に関する法律が去る三月三十一日失効いたしまして、それにかわり一般職の職員の給與に関する法律が去る四月一日新たに制定施行せられましたので、これに伴いまして関係法律の規定を整理する必要に基くものであります。「すなわち、裁判官の報酬等に関する法律その他の法律中において「政府職員の新給與実施に関する法律」という部分をそれぞれ「一般職の職員の給與に関する法律」と置きかえんとするのが本法案の要旨であります。
本法案は、四月十三日、本委員会に付託となり、本日政府の提案理由の説明を聽取し、ただちに質疑に入りましたが、その詳細は速記録に譲ります。
質疑終了後、討論を省略し、全会一致をもつて本法案は原案の通り可決すべきものと決しました。
以上御報告申し上げます。(拍子)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/42
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043・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/43
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044・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
これにて議事日程は終りました。本日はこれにて散会いたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705254X03819500418/44
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