1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月十五日(木曜日)
午後一時四十四分開会
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本日の会議に付した事件
○農業災害補償法の一部を改正する法
律案(内閣送付)
○積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法案
(衆議院送付)
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001・羽生三七
○委員長(羽生三七君) それではこれから委員会を開きます。最初に農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題に供します。速記を止めて。
午後一時四十五分速記中止
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午後二時九分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/1
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002・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 速記を始めて。次に積雪寒冷單作地帯振興臨時措置法を議題にいたします。本日は衆議院から松浦さん、坂田さん、上林さんが御列席になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/2
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003・小林孝平
○小林孝平君 この提案理由の中に、早期供出奨励金の問題が出ておるのでありますけれども、この提案理由によりますれば、早期供出奨励金は端境期における米穀の出廻りを促進するために定められた制度でありますが、今日ではむしろ單作地帶を保護救済する重要な措置と相成つておるのであります。こういうふうに出ておりまするけれども、この早期供出奨励金は、一方にはこの端境期における米穀の出廻りを促進する意味がありましたけれども、それと同時に、創設の当初から後段のようなこの気象に恵まれない單作地帶の農家の保護救済の意味があつたのであります。それがこの提案理由では、今日ではそういう段階になつたと、こういうふうに書いてありますので、非常に早期供出奨励金に対する解釈があいまいになると同時に、このために、この法律は六十億円の早場米奨励金が三十億円に減額されたと、これをこの三十億円の部分だけを補填するために創設されるものである、制定されるものであるというような解釈が一方には行われまして、この單作地帯の農家は、早期供出奨励金は従来通り六十億円、むしろ六十億円以上の金を出して、頂く、そのほかに、更にこの法律によつて保護をして頂くと、こういうことを要求しておるのであつて、そういうような單に早期供出奨励金の減額部分だけを補填するという意味では困るという要望がありますので、この際この提案理由に書かれてある意義を明確にして頂くと同時に、できればこの提案理由の一部を、誤解がありますから訂正をして頂きたい、こういうふうに考えておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/3
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004・松浦東介
○衆議院議員(松浦東介君) 小林さんの御質問でございますが、私のこの前の提案理由の説明の不備を衝いた御質問であると拝承いたしました。この早期供出の奨励金の解釈の問題でございますが、この早場米奨励金の歴史なり、由来なりについて、非常に御精通になつておられますところの小林委員の御質問でございまして、私はあえてこの前に御説明申しましたことを固執する考えは微塵も持つておりません。ただ表面、字句を見ますというと、飽くまでこれは表向きは早場米は端境期における米穀の出廻りを促進するために定めた制度というように見ましたので、裏面における社会的関係、事情、又は政治的理由、そういうものは十分私も認識いたしておるつもりでございます。只今の小林さんの御意見通りで、私は結構であると思います。なお又この早場米奨励金の三十億円の減つたところを、削減されたところを補填するための法律ではないか、というような誤解もあるというようなお話でございますが、絶対にこの法案は、早場米奨励金の削減補填のために作られたものではございません。第一條に明示されておりますごとく、精華寒冷が甚だしく、経済的に遅れた積雪寒冷單作地帯の農業生産の基礎條件を速かに整備して農業生産力を高め、以て農業経営の安定と農民生活の改善とを図り、併せて国民経済の発展に寄與することを目的として、この法案が立案せられたものでありますことを申上げて置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/4
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005・三橋八次郎
○三橋八次郎君 簡單に申上げますから……この法律案の提案理由によりますれば、根本的理由は、国内食糧の増産を図つて、食糧の自給度を高めるというようなことでありますならば、積雪寒冷地帯のような寒い地方に投資をするよりも、暖地帶に投資をするほうがより効果的であるように考えますが、この点につきまして、政府の御所見如何でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/5
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006・島村軍次
○政府委員(島村軍次君) 我が国全体の農業政策から考えますというと、弱いところを助けてレベルを上げるということも当然行われなければならんと思うのでありまして、只今お話の積雪寒冷單作地帯に限つてやる場合には、暖地における生産力を一層増す方法もあるのではないかという意味のお尋ねでありますが、過去のとり来つた積雪、寒冷地帯に対するいろいろな改良、改善施設に加うるに早場米奨励金等の歴史的存在から考えまして、本法律案の提案は誠に農林省といたしましても適当な措置であると考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/6
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007・岩男仁藏
○岩男仁藏君 これは私は反対じやありませんよ、賛成するんですが、今暖国を代表して四国の三橋君から政府に対する所見を質したのでありますが、ちよつと私もの足らんのであります。もう少し追究して、はつきりしたところを確かめて置きたいと思います。私も九州で暖国であります。九州では私の県には割合そういうことはないのですが、長崎がある、それから熊本の一部、鹿児島、宮崎と、單作地帶が非常に多い、そういうものが欠けておるために止むを得ず單作地帯としてやつておるのですが、これは私観光国策の面から見て、去年の国会ですか、別府の観光都市法案というものを我々の同志が出したのです、これはお蔭で皆さん賛成してくれて通つた、ところが別府だけと思うて我々はおつたんだが、引続いて熱海が来る、伊東が来る、それからまあちつぽけといえば甚だ四国には済まんけれども、松山が来る、まあこれから幾ら来るかわからん。そこで、恐らくこれは通ります。私は通ることを望んでおります。賛成いたしまするが、三橋君の言うように暖国方面から單作問題が又出て、そうしてやりたいというときに、農林省はこれに同情を向けたより以上の国策としてあなたはお考えになつておるか。その点だけをはつきり速記に止めて置きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/7
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008・島村軍次
○政府委員(島村軍次君) 非常にむずかしい御質問でありますが、法律の立案は御承知の通り国会がやるという建前になつておるんですから、出ました場合においてはその都度考えるという態度をとりたいと思うのでありまして、具体的事実によつて判断して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/8
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009・小林孝平
○小林孝平君 積雪寒冷地帶の農家の恵まれないことは申すまでもないのでありまして、今日までこれに対して何らの対策をとられておらなかつたことを甚だ遺憾と思つておるのであります。幸いこの程度のものでも立案され、衆議院を通過いたし、参議院に送付されたということは、甚だ我々は喜んでおるものでございますが、これに関連いたしまして第五條の三項に、「政府は、毎年度、国の財政の許す範囲内において、第一項の農業振興計画を実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。」こうありますが、一体政府はどれだけの熱意を持つてこの予算を計上されるおつもりでありますか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/9
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010・島村軍次
○政府委員(島村軍次君) 單作地帶の対策に対する熱意については、先ほども申上げました通りに、財政の許す範囲において従来の施設を拡充いたしまして、熱心にこの法律の示す範囲においてできるだけの努力を重ねたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/10
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011・溝口三郎
○溝口三郎君 單作地帶の対策につきましては、私は根本的の対策は單作地帶を解消するにあるんだということを従来言うておりましたが、これは技術的にも私は可能性があると信じているのでございます。代表的な單作地帶、新潟とか富山、石川等の日本海沿岸等におきましては、従来耕地整理とか土地改良というものが相当に実は発達をしているのでございますが、現在におきましてもまだそれは二毛作をするという段階には実は行つておらないのでございまして、簡單なことでございますが、私は最近完全乾田化とか変作田ということを主張しているのでございます。二毛作よりかも、もつと三毛作、四毛作もこれはとれるんだと、それは排水路の計画というものをこれは根本的に今度は改革して行こうと、それは今までよりかも一メートルぐらい排水路の敷地を低下して、そしてその一メートルの分を、地下水をポンプで吸上げるのだということにやりますと、全国の平坦部の單作地帶におきましても、これは夏になりますれば、例えば一町歩十枚の水田のうちで、九反歩の水田で今までの一町歩以上の稻の収穫ができるのであります。そうして残りの一反歩においてはこれは肥料作物でも何でもとれるのだ、そうして冬になれば菜種でも「れんげ」でもいい。本当の元全乾田化、変作田と言いますか、そういうものは現在でも少しばかりずつ、これは新潟とか冨山というようなところにモデルタイプもできておる、三、四年完全にできておるのでございますか、こういうものの普及をすれば平坦部の單作地帯は私は解消もできる、そうしてなおこれは山間部におきましておおむね寒冷積雪地帯の單作地帯では潅漑水の問題が私は根本問題だろうと思うのでございますが、山間部等におきまして、大体八月の初め頃の朝の十時頃の灌漑水温というものは二十度以下、十四、五度くらいのものだと思いますが、それを人工の調節で小さな溜池をこしらえて十度くらいの温度を上昇することは、これは技術的に実証されておるのでございます。そうして山間部で十五度くらいの灌漑水温を二十五度くらいに上げて、そうして稻の収穫期を、普通の冷水でやつておるよりかも二週間ぐらい早めることができるのだ、二週間収穫を早めたということで、今まで一毛作よりかも想像したことのないような長野県の木曾の山の中へも二毛作が入つて来るのだということになると、若し單作地帶の対策を根本的に自信を持つておやりになるならば、私は日本の農業経営ということも根本的の改革ができるのじやないかと信じているのでございますが、そういうようなことにつきましても、これは温水溜池といいますか、そういうものが計算からいいますと補助金をもらわなくても実は収支は完全に償うんだというようなことになると、だんだんに予算は減らしてしまう、今までの前例からいいますと、いいものを普及しようということが、何か予算折衝になると、そんなにいい仕事なら補助金は要らんじやないかというようなことで、温水溜池も私は五十万町歩くらいはやる可能性のある土地があると思うんです。大体一万個所くらいもやれば五十万町歩くらいの冷水田の灌漑も解消できるんだ、そうしてそのうちでは二毛作もできて来るんだと、そういう効果のあるものなら自分でやつたらいいだろうというようなことで、二十六年度あたりも予算は全国で五十個所くらいしかやらない、五十個所やつて一万個所やるにはこれは何百年かからなければ解消できないような事情にある。今小林委員の言われたように、こういう法律はこれは通過することも異論はない。そういうものに対して予算措置に対して、農林省は一つ確信を持つてこういうものを完成されるという自信をお持ちになるかどうか。もう一度御明答を頂きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/11
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012・島村軍次
○政府委員(島村軍次君) 農業経営の改善の上には、従来の單なる現状を基礎とした土地改良では不十分であつて、将来大きな計画の下に土地改良計画を進めて行かなければならん、これに関する該博な御高見は御尤もであると思うのでありまして、我々は将来の日本農業経営を改善し、更にその生産力を高め、自給度を高める点から考えましても、是非ともそういう点を取上げなければならんと思うのでありまして、今回の自立経済におきましても、相当の資金を投じて、国家資本を投下してやるという気構えにおいては、全く同感であると同時に、これらに対しては農林省といたしましては積極的に予算化を望んでおるのであります。今日の敗戰後における日本経済の財政の点から考えますというと、なかなかさように思わしく参らんのでありますが、根本的にはこれは農業そのものが、企業であるか、私企業であるかという論議も一つの分れ道になり、又財政の問題が関連を持つことは御了解もできると思うのでありまして、この法律案ができまして、有効適切なる国家投資なり、或いは又予算的措置によつて、強くそれが増産の効果を挙げ得る問題に対しましては、一面農業経営、及びその財政的措置をやつた場合の収益回転等を考えまして、努力を重ねたいと思うのであります。どうぞこれらの問題に対しては農業全体の基本的な考えに対して、只今申上げましたように、公企業としての取扱をするように我々は念願をいたし、御後援、御協力を得ましてさような措置を講じたいことを念願している次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/12
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013・溝口三郎
○溝口三郎君 この法案が通過いたしましてこれを運営するためには、これに附加えて予算的措置か講ぜられることと考えるのでございますが、それについては本法案においては、これは国の財政金融の許す範囲内において最大限度に單作地帯の振興をしたいのだということになつておりますが、私どもはそれを期待いたしたいと思うのでございますが、差当つてこういう予算措置をやる前に政府においても是非ともこの單作地帯の対策を立てたいというならば、これは今あるうちでも実は実行に移そうといえばすぐにできるのじやないかという問題も私は考えられると思うのでございますが、それは農林漁業、資金融通法案が今上程されているのでございますが、その第三條の六項におきまして、この資金の融通を受けたものが災害その他特別の事由のある場合は支拂方法を変更し、償還年限を延期することができるのだという規定があるのでございまして、その特別の事由ということにつきましては、これは提案理由の際に伺いましたのは、不景気などを意味するんだという抽象的なことでございますが、只今問題になつております單作地帶は、これは提案理由を拝見いたしましても、実に現在甚だ不景気な地帶なんです。この資金を貸りて土地改良をやつた場合の、将来経済界の変動等で不景気が来たら、そのときには支拂の方法を変更してできるだけ長い期間に償還をしようとかいうことになつておりますが、現実に日本中で一番不景気な地帯があつて、これがややもすると社会的自然的な條件で最悪の苦境に陥つてしまつて、そうして立つこともできないようなことになるのだ、而もこの地帶は早場米の供出地帯として日本の食糧政策には最も重要な地帶だというようなことから勘案いたしまして、この資金融通法案の特別の事由がある場合は償還年限を長くし、利率も安くしてもいいんだということは農林大臣がきめればできることだと思います。私は特別の事由ということを、将来経済界の変動というようなことに範囲を限らず、もう少し積極的にその範囲を拡大されて暫定措置としてでも、この法案の予算が運営されるまででもいいと思うのです。できるだけこの資金融通法案にありますこういう利率よりかももつと下げ、償還年限もずつと長くして、この積雪寒冷地帯には資金融通法の運用において、実際的に一つお考え頂くようなことができるかどうかを政府当局にお尋ねいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/13
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014・島村軍次
○政府委員(島村軍次君) 特別会計は提案で説明を申上げました通り、現在の各種土地改良或いは林道その他現在の收益の回転を主体において、最小限度の利率の計算をいたしておるのであります。溝口さんも御承知の通りこの中には相当、例えば干拓地の整地というような非常に有効適切な事業も、手つ取り早く増産の効果を挙げるというような問題に対しては取上げておるのでありまして、こういう見地から考えますというと、むしろこの特別会計の本質は償還を早めて行くという、できるだけ償還を早めるということが、その土地に対する負担の軽減も図るということの結果になると思うのでありまして、只今の御意見も御尤もでありますが、要するに収益率が非常に低いところに対しては、只今お話のような点がもつと低い利率によつて貸付けられるということが考えられると思うのでありますが、特別会計の取上げておる現在の土地改良その他の事業は、恐らくかような償還年限を、現在きめられんとしておる償還年限においても私はむしろ早期に償還がなし得る程度のものが取上げられるという段階にあると思うのでありまして、事業の執行の経過から考えまして、只今お話になりましたような点は、差当り心配の必要がないのじやないかと私は思います。ただ本法律案において、他の地方に比しては収益率が非常に少いから、償還年限を特にその地方だけについて延ばすということに対しては現在のところでは特別会計は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/14
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015・羽生三七
○委員長(羽生三七君) ちよつと速記を止めて。
午後二時三十五分速記中止
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午後二時四十九分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/15
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016・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 速記を始めて。それでは本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十分散会
出席者は左の通り。
委員長 羽生 三七君
理事
西山 龜七君
片柳 眞吉君
岩男 仁藏君
委員
池田宇右衞門君
白波瀬米吉君
瀧井治三郎君
平沼彌太郎君
宮本 邦彦君
江田 三郎君
小林 孝平君
三橋八次郎君
飯島連次郎君
溝口 三郎君
衆議院議員
松浦 東介君
坂田 英一君
上林與市郎君
政府委員
農林政務次官 島村 軍次君
事務局側
常任委員会專門
員 安樂城敏男君
常任委員会專門
員 中田 吉雄君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014988X01919510315/16
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