1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十六年十一月十日(土曜日)
午前十時三十七分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 長島 銀藏君
理事
森崎 隆君
高良 とみ君
紅露 みつ君
千田 正君
委員
大谷 瑩潤君
木村 守江君
玉柳 實君
宮本 邦彦君
内村 清次君
カニエ邦彦君
片岡 文重君
杉山 昌作君
木内キヤウ君
政府委員
大蔵政務次官 西川甚五郎君
大蔵省主税局理
財局長 石田 正君
—————————————
本日の会議に付した事件
○委員長の報告
○在外公館等借入金の返済の実施に関
する法律案(内閣送付)
○証人喚問に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/0
-
001・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) 大変お待たせいたしました。只今より在外同胞引揚に関する特別委員会を開催いたします。九日の日に委員長と、それから紅露理事とが御一緒にシーボルト外交局長を訪問いたしまして、その結果を只今より委員長から御報告申上げたいと思います。
昨日の十一時半というお約束でシーボルト外交局長にお目にかかつたのであります。シーボルト局長は十二時十五分頃まで約四十五分間に亘りまして非常に厚意のある御態度で我々の申入れを御聴取下すつたのであります。速記を止めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/1
-
002・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) 速記を始めて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/2
-
003・千田正
○千田正君 私が渡米いたしまして委員長の重責を十分に全うすることができませんでしたことを非常に遺憾に存ずる次第でありますが、国会を代表いたしまして、漁業関係の日米間の交流という立場から参りましたのでありまするが、又引揚の特別の委員長といたしましてアメリカにおきましても十分に国務省その他といろいろ意見を交換して、又懇請する点は懇請して参つたわけであります。その点につきましてはいずれも改めて後日申上げる次第でございますが、長い期間私の留守中現委員長並びに各位におかれましてはこの委員会の運営に終始誠意を以て当られたということに対しまして私から厚く御礼を申上げると同時に誠に至らなかつたことをお詫び申上げる次第であります。以上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/3
-
004・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) それでは只今から在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案、この提案理由の御説明をお願いいたします。西川大蔵政務次官に一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/4
-
005・西川甚五郎
○政府委員(西川甚五郎君) 只今議題となりました在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案の提案の理由を御説明申上げます。
在外公館等借入金につきましては、在外公館等借入金整理準備審査会法に基きまして、政府は、鋭意在外公館等借入金の確認事務を進めて参つておりますが、これが返済につきましては、先に制定されました在外公館等借入金の返済の準備に関する法律に基きまして、借入金を表示する現地通貨の評価基準、返済の方法その他借入金の返済の実施に関する事項を定める必要がありますので、先般の第十一国会にこれに関する法律案を提出したのでありますが、会期中に審議を終るに至りませんでしたので、今回重ねてこの法律案を提出いたした次第であります。
次に、この法律案につきまして概要を申上げますと、
第一は、外務大臣が国の債務として承認した借入金の返済の請求権者に対しては、本邦通貨を以てこれを返済することといたしたのでございます。
第二は、右の返済金額につきましては、在外公館等借入金評価審議会の答申に基きまして決定いたしました別表の在外公館等借入金換算率によりまして現地通貨表示金額を本邦通貨に換算いたしました金額の三割増といたしたのでございます。更に在外公館等借入の返済の準備に関する法律第二條に規定されているところに従いまして、国民負担の衡平の見地から、返済金額が同一人につきまして五万円を超えるときは、これを五万円とすることにいたしたのでございます。
第三は、借入金の返済に必要な金額は、毎会計年度、予算の定めるところによりまして、一般会計から国債整理基金特別会計に繰入れ、これを通じて支払を行うことといたしたのであります。
その他返済に関する事務の一部の日本銀行への委託、返済手続の細目等によりまして規定いたした次第でございます。
以上がこの法律案を提出した理由及びその内容の概要でございます。何とぞ速かに御審議の上よろしくお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/5
-
006・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) 次に在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案、このものの逐條説明をお願いしたいと思います。石田理財局長と上田外債課長とお二人が今日はおいででございます。取りあえず石田理財局長からお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/6
-
007・石田正
○政府委員(石田正君) 只今御審議を願いまするところの法律案につきまして逐條的に一応御説明を申上げます。御承知の通りにこの問題につきましてはすでに二つの法律が出ておるのでございまして、第一は在外公館等借入金整理準備審査会法でございます。この法律におきましては、終戦の際におきまして、在外公館、或いは邦人の自治団体、或いはそれに準ずるような団体が、引揚費でありまするとか、救済費でありますとか、その他これに準ずる経費に充てるため、国が返済するという條件の下に、在留邦人のかたがたから借入れました資金につきまして、その現地通貨におけるところの借入金を将来返済すべき国の債務として確認するという事務を外務省のほうにおいて行うということが骨子に相成つておるわけでございます。この承認をいたしまする場合におきまして、将来どういうそれが国の債務として内容を具体的に持ち、又どういう状況、條件において支払をするかということにつきましては、法律によつてこれを定め、又予算の範囲内においてこれをきめると、こういうふうに相成つておるわけでございます。その法律に引続きまして、在外公館等借入金の返済の準備に関する法律というものがございまして、この法律におきましては、今申上げましたような在外公館等借入金整理準備審査会法によりまして、承認いたしました現地通貨額の借入金の返済を行うにつきまして、そういう現地通貨の評価基準であるとか、或いは返済の方法、その他借入金の返済に関しまして必要な事項を定めるところの基準と、返済いたしまするについて必要な法律案をこの法律の次の国会において提出しなければならないというのが第一でございます。それから第二といたしまして、この借入金の返済方法は、国民負担の衡平の見地から、公正且つ妥当な基準に基いて定めなければならないということに相成つております。第三といたしましては、在外公館等借入金評価審議会というものを置きまして、大蔵大臣がこれに諮問をいたしまして、返済を実施いたしまする法律案の準備に資するために必要な現地通貨で表示する現地借入金の評価に関することを調査審議するということが、内容と大体なつておるわけでございます。今回の法律案におきましては、以上二つの法案におきましてこの借入金の具体的な返済の実施を定めようといたすものでございます。
第一條に規定いたされておりますることは、本法律案の趣旨を示しておるのでございまして、在外公館等借入金の返済の実施というようなことについては、この法律の定めるところによつて行うということを示しておるわけでございます。それから第二條におきましては、言葉の定義をいたしておるのでありまして、この法律案におきまして、在外公館等借入金と言いまするのは、先ほど御説明申上げました在外公館等借入整理準備審査会法の規定によりまして外務大臣が国の債務として承認した借入金を言うのであるということと、その略称を示しておるわけでございます。第三條におきましては、大蔵大臣は、国に対して借入金の返済を請求するところの権利を有するかたがたに対しまして、本邦通貨を以て借入金の返済を行うのであるというので、返済手続の問題につきまして規定しておるわけであります。
それから第四條は、先ほども申上げたのでございまするが、この借入金の返済をいたしまするところの借入金の具体的な内容を規定したものでございまして、借入金の金額は借入金……先ほど申しました整理準備審査会法に基きまして、借入金の確認証書を外務省において発行いたしておるのでありまするが、それに記載された現地通貨表示による金額をこの法律案の別表として示しましたところの在外公館等借入金換算率表というものによりしまて、円に換算した金額の百分の三十、即ち三割増というものをとりまして、そして更にそれを同一人において計算いたしました金額の合計額が五万円を超えまする場合には、それを五万円といたしまして、これが円といたしまして国が返すべきところの借入金の確定的内容であるということを示しておるのでございます。それから第五條におきましては、これは国庫金及び予算の関係におきまして、その整理の仕方を規定しておるのでありまして、大蔵大臣が毎会計年度予算の定めるところに従いまして、その会計年度に返済すべき借入金の金額、その返済に関する準備をする経費に相当する金額を、これは一般会計から国債整理基金特別会計に繰入れます。そして国債整理基金特別会計においてこの返済をいたすと、ということを示しておるのでございます。それから第六條は、この事務を行うにつきまして、国庫金取扱銀行、国債代行機関でありまするところの日本銀行にその事務の一部を取扱わせることができるということ、それからもう一つは、借入金の返済につきまして必要な資金につきましては、あらかじめ日本銀行に前渡いたしまして、そして返済請求がありましたときに円滑にその支払ができるようにいたしたい、こういう次第でございます。
それからなおこの返済につきましてはいろいろと細かい点の規定を要するかと思うのでございますが、これは大蔵省令で定めるということにいたしましたのが第七條でございます。なお附則のほうにおきましては、先ず第一に、この法律は公布の日から三カ月を超えない期間内におきまして、政令の定めるところにおいて準備が整い次第施行するということを規定いたしました。あとにおきまして大蔵省がこのことを行います関係上、それに伴いまして、その事務が行えまするように官制の点を修正いたしますというのが、その次に規定されておるわけでございます。それから又これに伴いまして、在外公館等借入金評価審議会及びこの在外公館等借入金の返済の準備に関する法律案、その他の点につきまして、字句的に修正をいたそうということを規定いたしておるわけでございます。
甚だ大ざつぱな説明でございますが、一応これでとどめることにいたしまして、なお御質疑等がありますればお答えすることにいたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/7
-
008・千田正
○千田正君 内容の審議に先立ちまして疑義を質したいと思うのであります。それはこの在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案の、一応実施に対する法律の規定をこの提案の中に書いておりまするが、これによつて、憲法上の疑義から言つて、個人の財産権が侵害されないかどうかという問題、又これによつて打切られた以外の人たちが、国に対してその支払方の返還に対する行政訴訟を提起した場合において、この法律はどういうふうな関連を持つて行くかという、この点を明らかにして置いてもらいたいと思うのであります。政府の御見解を表明して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/8
-
009・石田正
○政府委員(石田正君) この在外公館等の借入金の問題につきまして、憲法上の点についてお尋ねでございますが、この借入金と申しまするのは、これを法律的に申しました場合におきまして、現地において在外公館その他諸団体が借入をいたしましたところの事実、この事実は疑いもなく現存するという前提に立つておるわけでございます。併しながら法律的に見た場合に、それが確定したところの国の債務であつたかどうかということにつきましては、これはその借入をいたすにつきまして、予算、法律その他の措置を講じまして、そうして国会の協賛を経て行われたものではないのでございます。従いましてそういう手続がとられておりません限りにおいては、国の確定債務ということは法律的には言えないであろうという見解も先ず立つておるのでございます。そこでこの問題をどういうふうにそれでは法律的に処置するかということにつきましては、先ず先ほど申しました第一の法制的な処置というものは、在外公館等借入金整理準備審査会法から始まつておるのでございます。この法律におきまして、はつきりいたしました点は、二点あろうかと思うのでございます。この借入金につきましては、今申しましたような工合に、その借入に先立つて国の債務であることが一点疑う余地がない、又それに必要な手続というものが行われずしてやられたということ、それから又その当時の事情といたしまして、これの借入金の本当にどれだけ必要であつたろうかというような金額の点、或いはいろいろな事情がございまして、その借入金が現実に提供されるに至つたところの、供給されまするところのほうのいろいろな事情、それから又その使途がどういうふうに具体的に行われたかということにつきまして、遺憾ながら事後的に見て参りますると、必ずしも明確でない点もあるのでございまするが、これはその行われました事情を考えまして、道義的に、又政治的に政府において責任を持つべきものであるという考えに基きまして、先ず現地通貨で表示されましたところの借入金をば、その政府が返します場合にはどういうふうな工合に返すか、どれだけの金額をどうして返すかということは暫らく将来の決定に委ねたまま、とにかく現地通貨で表示された借入金を将来返すべき国の債務として承認して、そうしてとにかく確認事務を行うということが先ず第一に行われたわけでございます。この第一回の法律におきまして、この現地通貨借入金というものが国の債務といたしまして、具体的に確定的な内容を以ちまして、返済條件等を定めておるかどうかという点については、まだきまつておらんという解釈を我々はとつておるわけでございます。
それから第二回の法律に申しましたところの在外公館等借入金の返済の準備に関する法律の中におきまして、借入金の返済方法というものは国民負担の衡平の見地から公正且つ妥当な機関に基いて定められなければならんということで、その確定的な内容をどうきめるかについての一つの基準が与えられておるということと、それからして又先ほど申したのでありまするが、この処置というものは早くせなければならないのであつて、今申しました法律が通りました次の国会に、その具体的な返済等に関するところの法律案を出さなければならないと、こういうことに相成つておるわけであります。今回の法律案におきましては、その残されましたどういう内容のものとしてどう返すかということをここで主としてこの第三條、四條においてきめておるのでございます。この三つの法律を併せ考えました場合に、段階的な推移がございまするが、一番初めに申しました成規の手続をとり、明確なる疑うべからざるところの国の債務としてなつておらなかつたということ、この三つの法律案によりまして、国の確定的な債務として、その内容を定め、その返済を実施しようというものでございまするので、憲法におきまして、国がその債務の、初めからきまつておるところの債務を打切る、こういうようなものではないというふうに、私考えておるわけでございます。従つて憲法違反の問題はないものと考えておる次第でございます。
それからなおこの法律の趣旨は、そういう借入金につきましては、一括してこの法律によりまして、最終的な処理をしたいというふうに考えております。なおお話がありました点につきまして、このほかにおいて行政訴訟が起つたらどうなるか、或いは民事訴訟さえも考えられるかと思いますが、それらの訴訟を提起されますることにつきまして、一般にそういう不服を申されるかたがたの訴訟提起権を奪うということは、法律案には何ら規定しておらないのでございまして、これは訴訟を提起されるかたの御自由であろうかと思つております。なお提起しました場合につきまして、どういうふうな結果が、裁判の結果といたして現われて参るであろうかということにつきましては、これは行政府でなく、裁判所その他の、他の機関によつて決定されることでありまして、我々としてその結論をこうなるであろうと申上げるのは如何かと思われる次第でございます。なおもう一つ申し加え置きますが、これはこの法律案に、三つの法律案の対象は在外公館等借入金でありますが、これは在外公館、その他の団体が引揚費、救済費、その他それに準ずるところのものとして、借入れたものについて規定しておるのでございまして、それ以外のものがありまする場合において、それはこれらの法律とは関係のないことでありまして、それらの点につきまして、裁判が行われるという場合には、これらの法律以外の範囲において決定が下されるのではないかと、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/9
-
010・千田正
○千田正君 そこは非常にむずかしい点なのでございまして、今理財局長のおつしやられた点において、いわゆる国の債務としてこれを確定して、それにおいてお払いをするという前提の下に、この法案ができておるということと、その国の債務を誰が決定するのか、誰が一体これを国の債務として認めるかという問題は、いわゆる審議会がいろいろ当時の証拠品、その他を審通会において愼重審査の結果、これらを国の債務として認めるものとして、政府にこれを通達したものを国の債務としてお払いすると、そう考えて差支えないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/10
-
011・石田正
○政府委員(石田正君) この確認を、主としてこれは外務省のほうでいたしておるわけでございます。大蔵省のほうでも一枚それに加わりまして、その事務に携わつておるのでございます。その関係で御答弁を申上げますが、外務省において行われておりますところの確認事務は、即ち先ほどの第一回の法律に規定いたしましたところのものに該当するかどうかということを確認いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/11
-
012・千田正
○千田正君 これは水掛論になつてはいけないので、一応念を押しておきますが、今の内閣総理大臣であるところの吉田茂氏が、当時の外務大臣として出先在外公館に向つて当時の避難状況を考えて、恐らく当時の状況からいたしまするというと、各国占領軍によつて日本の在外公館の機能が一切停止された。当時海外におつた日本の居留民、若しくはその他軍隊に所属しておつた人たちとか、祖国に帰るべき何らの方途もない、而も日本人の財産というものは殆んど剥奪に等しい立場に置かれて、まさに餓死する直前においてどうしてもこれを救わなければならないということで、当時の外務大臣であつたところの吉田現在の総理大臣から訓令を発して、その下において行われたものであるから、飽くまでこれは国の債務として請求するというのが現在のこの引揚者の人たちが叫んでおる問題なのであります。
それで然らばどういう一体そういう証拠品があつて、どういう請求権があるのかということを、今審議会が設けられ、外務省及び大蔵省若しくは当時の関係団体の長の人たちが集まつて、審議会を作つて、その認定の方法を考えて今日まで来られたのでありますが、さてそれによつて認定されない人たち、仮に実際には貸したのであるけれども、残念ながら帰国の途中においてその証拠物品をなくした。或いは当時それを認定する人がすでに内地に帰つて来てから死亡して、何びとも自分の貸したものを証言することができない、こういうような不幸な立場にある人は恐らく今度のこの実施に関する法律案の適用を受けられない状況にあるのではないかと私は考えるのであります。こういう人たちに対する方法はどういうふうにして我々はこの人たちの正しい請求権を国民の立場から守つてやるかという点からいうと、やはり何かそこに考えて上げなければならないと我々は考えるのであります。それでそういう数は大体相当あると思うのでありますが、選びに選んで一応の案を経てこの法律案が出て来た。この法律案の適用を受ける人は、或いは過半数、或いは七〇%ぐらいあるでしようが、残る三〇%の人たちはこの法律案の適用を受けられない。この人たちも一体実際に貸したのだけれども、その請求権はどこへ行くのだろうか。ここに我々の委員会として愼重にその点も考えなければならぬ。そこでこの法案を出される前に一応当局のお考えを質したわけであります。只今のお話によるというと、行政訴訟の権利は別個にある。それは又別の問題として、この規定する範囲内にということになりますと、その点から漏れる人たちには、やはり三〇%ぐらいは少くともあると私は思考します。それでこの人たちに対する方法は、政府としては全然考えておられないのかどうか。この点を伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/12
-
013・石田正
○政府委員(石田正君) このお話の点でありますが、外務大臣の訓令、これが一つの大きなモメントをなしているということはお話の通りであろうかと思います。ただこの全体の法律案を通じてでありますが、先ほど国の確定債務ではないかという点にも関連いたすのでございますが、細かいことを申上げますと、この電報というものは当時外務省において在外公館のあります地域に対して発しました訓令なのであります。従つて例えて見ますると、朝鮮、或いは台湾、南洋というようなところにおきましては、この訓令は正式に参つてないわけです。併しながらそういうことが実際伝え聞かれる、或いは又いろいろの人の往来によつてわかる。又それらの地域におきましてもこの在外公館の訓令が行きましたところの公館の所在地におきましても、連絡不十分等によりまして、正式な、いわゆる先ず在外公館地において、それがその管下の各領事その他に通知するという点について欠けるところがありましても、それは事実上の連絡等があります。そうしてこの借入が行われた。そこでこの法律の大体の趣旨から行きまして、そういう点につきましては、いわゆるこの訓令が本当に行つたところの地域だけを限るということはいたしませんで、こういう事態がまあそのときの状況として行つたところが然るべきであろうか、又それを知つて、それを伝え聞いている地域は一括して処理することにいたしたい。これは法律論とは別でございます。そういう気持があります。それからなおその次にお話の点で、そういう貸付金をいたしたのであるけれども、その証拠がなくて実際においては漏れるものはどうか、こういう点が一つあろうかと思います。この点につきましては率直に申上げまするが、当時のことでございましていろいろ現地においてむずかしい事情がございます。従つてこういう内容を確定するについて遺憾のないような書式になつているものもございますけれども、併しその書式といたしまして、いわゆる第三者が見ますると非常に疑問に属するものもあるわけでございます。そこでそういうようなものを外務省におきまするところの確認事務をいたす場合において、どういうふうにいたしておるか。この点につきましては大体借入をされました当初のかたも日本に帰つておられまして、大体こういう書式で出したのだ、或いはここに金額だけ書いてあつて、日附等も或いは例えば別の紙の裏とかいうところに書いたものである。併しそれはその人の書いたものだというようなことのお話があります場合においては、できるだけそういうふうなものを認めるという趣旨で進んでいるのでございます。ただ全然お持ち帰りにならないというものにつきましては、これは行政当局といたしましてもそれを確認するということもできませんものでございまして、その点におきまして遺憾の点があろうかと思つております。併しそういうふうなものにつきまして全般的に救済方法を考えるという点につきましては、これは御承知かとも思うのでございますが、一般的に現地におきまするところの財産関係、或いは債権債務関係というふうなものはたくさんあるのでございまして、そういうふうなものとの区分その他をどういうふうにしてやるかというところが非常にむずかしいんではなかろうかと考えるのであります。それから又そういうふうなものを一般にどう処置するかという点も、まだこれは極めて率直に申上げますると、在外問題一般に関する問題を今後どうして行くかということもまだ未定でありまするので、その点について私から今どういうふうに措置するつもりかとういことについてお答えをいたしかねるという気持にある次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/13
-
014・千田正
○千田正君 余り私から質問しても切りがありませんから、ただ二点だけお伺いします。さつき行政訴訟というような問題が起きても、この法律は確実に規定された範囲内の法律の適用以外には拡張するわけに行かないという御説明があつて、御尤もと思いますが、そういう場合に、或いはこの法律を一つの楯として、もう在外公館等借入金の返済の実施に関する法律というものができているから、この法律において一切やるのであつて、行政訴訟法にこの法律が、場合においては先行するという場合もあり得ると思いますが、これはそういう場合においては、その法律が行政訴訟の法律に先立つものであるかどうか、そういう見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/14
-
015・石田正
○政府委員(石田正君) 政府がこの法律案を提出いたしまして、ここに御審議を願いまする意図は、本在外公館等借入金の問題については、これによつて最終結着をいたしたいということが意図でございます。そこで在外公館等借入金につきまして仮に行政訴訟が行われまする場合において、これらの二つの法律、及びこの法律案というものが若し通過いたしまするならば、この三つの法律を準拠として行政裁判が行われる、これに該当する限りにおいては……、そういうふうに我々は解釈いたしておるわけであります。併しながらその点についてどういう結論が出るかいとうことは、今度は判決を下される人の立場でありまして、私どもの意図はそうでありまするから、結論的なことを申上げるわけには参らない、こう申上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/15
-
016・千田正
○千田正君 理財局長の御答弁によりますと、少くとも在外公館等借入金に関する問題につきましては、たとえ行政訴訟が起きたとしても、これが先行するというふうにとられるのですが、恐らくそういう意図の下に政府はこの法案を出したものと我々は考えて差支えないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/16
-
017・石田正
○政府委員(石田正君) 政府としてはその意思であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/17
-
018・千田正
○千田正君 その点を明らかにしておきたかつたのであります。
それからもう一点、五万円ということに額を決定しておりますが、これは非常に、恐らく審議の大きな問題だろうと思いますが、各委員も相当研究しておられるのでありまするが、これは勿論国民負担の衡平から、という立場においてきめられたようでありまするが、これは申請した人たちの平均の額が、大体この辺が一番の標準になつておるのかどうか、その点を一応伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/18
-
019・石田正
○政府委員(石田正君) この五万円というものが、申請されておりますときに対して、どういうふうな地位にあるかとういお尋ねであろうかと思うのでありますが、この点につきましては、私たち先ほど申上げましたような工合に、確認請求の事務は外務省でいたしております。そこで外務省におきましていろいろその数字等を出しておりまするものを私たちは取りまして、やつておるのであるということを先ず御了承願いたいと思うのであります。いろいろと確認請求の件数は、大体二十万件くらいあろうかと思います。そのうち先ほども申したのでありまするが、これは本件に該当するということになろうかと思われますものは、大体十三万件くらいじやないかと思つております。そうしてそれでは十三万件なら十三万件という件数を基準といたしまして、五万円未満の数字は一体どのくらいになるかと言いますると、これはもう少し詳しく申上げたほうがいいかと思いますが、大体十三万件と申しましたが、十三万二千八百件くらいに相成るかと思います。全体の数字、確認されます数字は十三万二千八百件のうち、五万未満でありますところの数字は十三万五百件でございまして、従つて件数の上から申しまするならば、五万円未満のほうが遥かに多い、こういう結論に相成ろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/19
-
020・千田正
○千田正君 百分の百三十に相当する金額という、この百分の百三十と出したのは、頗る我々は奇異に感ずるものがある。三十というのは、これは政府の親心と言いますか、ここ六年間というものをほつたらかしておいたから、三〇%ぐらい付けて、一つ利息のつもりでこれをつけてやろうという考えで、一三〇%というふうに決定したのであるが、その辺が甚だ疑問なのであります。私は若し仮にこれに不服であつたような場合においては、百三十という、三〇%ぐらいの程度で五万円で打切られるということになると、恐らく引揚げて来られて、これに非常に期待をかけられた引揚者の人たちが、非常に失望するだろうと思うのであります。百三十というのはどういう気持で一体のこの法案の中に盛られたのであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/20
-
021・石田正
○政府委員(石田正君) この問題の処理は問題だと思いますが、非常にむずかしい問題でありまして、我々もこの法律案を作りましについて、いろいろい思い悩んだ点も多いのでございます。ただこれは率直に申上げまするが、大体先ほど申しましたような工合に、初めから確定的な国の債務であるかどうかということについては問題があるわけであります。その点を先ず我我は頭に置いたということを率直に申上げます。それから第二に、現地通貨による借入金でありますが、金銭債権であるということを先ず第二に考えたわけであります。それからこれを払いますのに、或いは現地通貨でやつたのだから現地通貨で返したらいいじやないか、こういう議論もあるかと思いますが、これも先ほど申上げたのでありますが、それらの現地通貨は現在存在しないというものが多いのであります。結局日本の円によつて返すのが妥当であろうかという観点に立つたわけであります。それから評価の問題につきましては、これは又あとでいろいろ御質問でありまして、お答えすることになろうかと思いますが、借入時におきますところのピークをとりまして、それによつて日本の円で幾らであろうかということを定めましたのが、別表の換算率表でございます。これを円に換算いたしておるわけであります。これはその意味におきまして換算いたしますると、現地通貨が円の額として幾らという数字が出て来るわけであります。それでそれはそのまま、何と申しますか、そのままでやつてもいいではないかという議論も他方にある、併しこの本件の審議については非常に遲れておる、遲れたのはいろいろむずかしい問題がございまして遲れたわけでございますが、とにかく遲れたということは事実である、そこでそれらを勘案いたしますると、これは金銭債務を一体支払うといたしました場合に、遲れた場合どうするか、国の金銭債務として遲れた場合はどうするかという、こういう問題が先ず考えられるわけであります。で私たちのこの法案を作りました気持は、金銭債務で、先ほど申しましたような工合に、この法律案によつて国の債務ということが創設的に確定するのだから、そのときから払えばいいのだという法律論もございますけれども、併しその創設が遲れた、こういう事情は考えなければならない、そこで仮にこの金額をどういうふうに、その点をどう見るかという点につきまして、若し借入という時を基準にいたし、或いは確定する時を基準にするということになりますと、この実際の支払が行われまする期間というものは、人によつて区々になつて来ると考えられるわけであります。そういうようなことを仮に考えまして、個別的にその遲れた事情を斟酌するということは、殆んど事務的に不可能であろうかと思いまするし、又妥当ではないのじやないかというふうに、かように考えたわけであります。そこでとにかく終戦後すでに六年を経過しておる、こういうことを考えなければならない。それから又他方におきまして、いわゆる何と言いますか、法定利息というものが今それはどのくらいかというと、五分ということである、そこらを勘案いたしまして、何と申しますか、百分の百三十というような数字を作つて、これがまあ公正妥当という気持に合うのではないか、公正妥当な内容をきめるというやつの一環として適当なのではないだろうか。かような気持であることを申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/21
-
022・千田正
○千田正君 そういたしますと、この法文によると、三〇%、年五分というものを換算した総額が五万円ということになりまするというと、仮に五万円を貸しておる、貸したとしておるところの引揚者の人たちが五万円で、更に年五分の六カ年というものもつかずに、五万円以下の計算によつて最高の受取つたかたが五万円というわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/22
-
023・石田正
○政府委員(石田正君) 今一番最後のところの話し方が少し舌足らずでありまして、御了承願えなかつたと思いますが、結局どういうふうにお返しするかということは、公正妥当にきめなければならん、その一環といたしまして、いわゆる百分の三十を加算するということと、それから五万円で切るということを両者併せて考えたのであります。五万円の人、仮に五万円の人があつたら、その人に利子を払わん、他の人のところに利子を払う、こういうような考え方ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/23
-
024・千田正
○千田正君 いろいろこれは愼重に議さなければならないと同時に、この借入金をめぐりまして、引揚者の間に相当社会社的な悲慘ないろいろな問題が起きたのであります。過去において自殺する人もあれば、当時に状態を訴えて、行政訴訟に出ようとした人、或いはいろんな重大な問題がこの借入金をめぐつて過去の六カ年という間というものは、誠に言語に絶するところの社会問題が起きておつたのでありますが、なお現在に続いておる。この現状に鑑みまして、委員の皆さんも恐らく長い間この問題につきましては御検討願つておると思いますので、いずれ逐條審議の過程におきまして皆さんの御意見を承わつていろいろ政府との間に質疑応答が繰返されると思いますので、私の質問は一応これで打切りたいと思いますが、でき得るならば皆さんがたにお諮りを願つて、実際の衝に当つておる多くの代表者のかたがたの非常に苦しんでおられる、こういう人たちの意見も国会法の規定に基いて証人として喚問いたしまして、十分に御検討いたいことは要望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/24
-
025・内村清次
○内村清次君 先ほどの千田委員の質問に対して政府委員からの説明によりますと、その憲法違反の問題、それから行政訴訟に対する先行の問題、これは又私としても当時の事情から勘案いたしまして納得ができないのです。勿論この憲法二十九條におけるところの、財産権の不可侵の問題や、又私有財産に対するところの正当な保障の問題、これは私は重大な問題でありまして、この当時の情勢といたしまして、先ほどの説明では、国家がいわゆる国会をして法律立法ができなかつたのだ、だからしてその憲法違反の問題も、画然たる政府の責任というようなことも明確でないというようなことを言つておられたようでありますが、当時の混乱の状態であればこそ、外務大臣の即ちこれを国の債務として補償するんだというこの弁明によつて、あの混乱の中からやはり皆が財産を分けて、そうしてことを貸付けたと、こういう事実は、これは侵すことのできない問題だろうと思います。ところがこの今日六年の間政府のほうではこれに何ら手を着けない、漸くにして国会が、或いは又そういうかたがたの熾烈な声によつて漸く立法措置がなされて来た。而も立法措置の過程においては、今日出されたところのこの法案の内容を見ましても、どちらかと申しますと、底に流れる精神というものは、やはりこれは少額の金を以て政府みずからが借入金を踏み倒すような底意が生れて来る。何ら当時の状態に関係されたところのそういうかたがたの御意見を十分聞こうとせずして、そうして大蔵省のほうではいわゆる審議会においても、審議委員の任命に対しても或いはこの條項の中にありまする五万運以下はこれを切り捨てるというような、そういうようなことも皆底に流れておるところの精神というものは、もう当時の重大な事態を鎭圧したところの国の大きな債務を閑却して、そうして少額で踏み倒そうという精神が流れておるように私たちは見受けるのです。そこで国家が立法措置をしなかつたから、こういうことになつておりますが、新憲法におきましては、これは公務員の、即ち損害に対してさえも、これは賠償の責任を各人が請求するところの権利を持つておるわけですね。そうして見ますると、大臣も、次官も或いは又公務員も公務員法によつてこれは国家の公務員である、こういうような関係にあるところのかたがやつた行為というものが、憲法の條項をこれを絶対に底意として縮小するような法律立法というものが憲法違反にならないということは私はないと思います。これは納得の下に許べき問題であつて、而も又先ほどの行政権に対してこれは先行するものであると言われておるけれども、憲法においてはやはり司法の分立というものははつきり明記されておる。そうして見ますると、石田政府委員の言われたように、これは先行するというようなことも私はやはりあながち言われない問題ではないかと思います。これによつて確かにほかの問題も相当に手続上において損失をしてほられるかたもある。而もこの事情は当然権利が国民にあるとすれば、法廷におきましても主張して、その法廷におきましても十分納得の行くような証拠、又は証人こういうようなかたがたの証言がはつきりといたしましたならば、やはり法律違反におきましても、そういう損失の補償の途ということは政府が考えなくてはならない義務がありはせんかと私は思うんですが、この点に対しまして再度一つ御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/25
-
026・石田正
○政府委員(石田正君) 実体論と法律論と両方ございまして、大分お話の点が混雑しておつたのではないかと思います。法律論といたしましては、国の債務がもうすでにはつきりいたしておる、法律上国の債務であるということがはつきりいたしておる、一点非の打ちどころのないものを今度の法律によつて打切る、こういうものではないと政府は考えておるということを申上げたのであります。要するに国の債務として正式に一点非の打ちどころのないようなものとしてすでに成立しておるのであつて、これらの法律によりまして、国の債務ということが法律的にはつきりして来るものである、かように思つておる次第でございます。それから訴訟のほうの問題でございますが、先ほど先行というお話がございました。これは千田先生のお話がありましたが、その先行という意味がどういう意味であるかがはつきりわかりませんので、あえて申上げなかつたのでございます。私の申上げました意味は、行政訴訟、それから或いは民事訴訟もございましようかと思いますが、それらの場合におきまして、いろいろと事がありました場合におきましては、原告のかた、それから被告であるところの立場、それらのもののいろいろ主張もございましよう。いろいろ証拠もあると思いますが、その結果において判断されると思いますが、併し何と申しますか、審議の過程にありましてこういう法律がすでに国会において通つているということは、これは考慮の中に入つて来るものであろうか、こういうものをまるきりなかつたものとしてあれされるかどうかということにつきましては、そういつたものがあつたということは一応は考えらるべきものであろうか。それから又その法律を作つたときの訴訟のことを考えて見ますると、被告側でありますところの政府として、どういう意図であるかということについては、こういう意図でございましたということを申上げることになるであろう、こういうふうに御答弁申上げたのであります。ああいう裁判所におきましては、勿論独自の立場に立つて御裁断願うわけでありまして、行政府がこう考えているからその通りすべてやるのだということはないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/26
-
027・内村清次
○内村清次君 その点で相当今後の問題になり、而もその点に対しては、今あなたが言われたように司法の独立権のためにあえて行政がこの法律というものに先行するというような態度でもないのだということは明確になりましたね。そういたしますと、今回の第二條に「外務大臣が国の債務として承認した借入金」とありまするが、これは一貫して流れる精神というのは、やはり在外公館が当時の状況としてこの公館を通じて借入れた金であるということはこれはもう間違いない。そのほかの金に対して、更にこの審査会が審査をしようとも考えておらないが、又借入金ということも考えられないのですね。そうして見ますと、やはり当時の外務大臣が在外公館をして借入をやつたという事態については、やはり国が将来においてこれを補償するのだ、戻すのだというようなことは、これは流れておつたはずですね、あなたのほうでは……。立法措置がなかつたから確実ではなかつたのだ、審査会が認定して初めて借入金という名前が付いたのだというように、生やさしいものじやないことはこれはおわかりであろうと思いますがどうですか、この点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/27
-
028・石田正
○政府委員(石田正君) 先ほども申上げましたのですが、在外公館等の借入金の問題につきまして、外務大臣が出しました電報、これが宛先等の問題はございまするが、それを受けた地方、それから受けなくても伝えていた地域、そういうものがございまして、それに基いてと言いますか、それを見てそれを知つての上でこういうことが行われた、或いは在外公館の名前を借りたものもございましよう。それから大部分はこういう自治団体の金なんでございます。そういう事実があつたことを否認するという意図は毛頭ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/28
-
029・杉山昌作
○杉山昌作君 只今局長のお話ですと、この借金は法律問題と実体の問題とは違うのだ、法律問題としてはこの借入金返済の実施に関する法律によつてそういう債務が創設されたのだ、こういうような御解釈のように承わつたのですか、併しこれはこの前の在外公館等借入金の返済の準備に関する法律を見ましても、更にその前の在外公館等借入金整理準備審査会法を見ましても明らかなように、この借入金はすでに政府の借入金として外務大臣の認定によつてはつきり国家の債務としてできているわけである。今度の法律によつて初めて債務ができたのではない。今度の法律は債務を創設するというような法律的意味があるのじやなしに、この前の返済の準備に関する法律の二條を見ましても明らかなように、今度の法律はただ単純に借入金の返済の方法をきめるべきものであつた。そういうような解釈からここでは借入金がこの法律によつて創設されたのじやないので、もうすでに今までの一番初めの法律によつて外務大臣が認定すれば、それによつて法律的にはもう再検討ができたのだ、如何にして返すかということが今度の法律の問題であるべきはずと思いますが、その点如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/29
-
030・紅露みつ
○紅露みつ君 今杉山委員が言われた通り、私どももそう思つております。債務が国の債務として今認められたのだなんてそんなことはないはずだ。臨時法案ができたときにすでにあれは国の債務として方法を考究されたはずなんですね。だから理財局長はこれまで余りおいでになりませんけれども、私どもが申しますことはそうした国の債務であるということは確定しておりますのに、一方的に債務者のほうが五万円よりほか払わないということは、およそ私は通らない理窟だと思うのです。だからそれをどういうふうに解釈していらつしやるか、まだ今後にもこの問題は続きますよ、今日でおしまいになさろうなんといつてもなかなかこれは真劍な問題だから、今どういうふうにお考えになられますか。私は杉山委員の、国の債務だということを確認しての上の法律だということを前提としては私は今申上げておりますのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/30
-
031・石田正
○政府委員(石田正君) 説明が悪かつたのかと思いますが、もう一遍詳しく申上げたいと存じます。段階が非常にありますので、そこで紛らわしくなるのかと思います。憲法論をやります場合に、在外公館等借入金整理準備審査会法から始めているのではないのであります。いわゆる終戦後におきまして、現地においてこういう借入金に該当するものの資金の授受があつた、こういう事実があつたときからの話を憲法論としては申上げているわけであります。要するにこの在外公館等借入金整理準備審査会法以後、いわゆる何と申しますか、法律的に見ますれば必ずしも明確でないものを国の債務としてはつきりさせて行くということをとられて来たということは、私は何にも異存を申上げているわけではないのであります。それから私は今度の法案によつてその債務が創設的にできるということを申上げておるのではないのであります。結局前の二つの法律と今度の法律案、この三つの法律案におきまして、この法律のない前の借入金でございますが、在外公館等借入金と申しますものが国の債務となつて参りますことが行われるのである。そうしてそれが国の債務としてはつきりなつて参りますが、それが一遍にならないで、段階的な経路をとつておる。確定的な内容のものとしてどういう国の債務としてどうして返済するかということは、三つを通じてはつきりして参るのだ、こういうふうに申上げておるのでありまして、従つてこの一番初めの法律におきましても、現地通貨の表示のものといたしまして、借入金として確認書を出すことはその通りであろうかと思います。併しその場合におきまして、それではどういうふうにして返すかということは中身の問題でございますが、この点については法律の定むるところに従い予算の範囲内に置くということが被つているのでありますが、その点も先ほどお話がございましたごとく今度の法律案を以て確定して参る、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/31
-
032・杉山昌作
○杉山昌作君 いや、その通りなんでして、債務は初めの準備法によつて外務大臣が確認することになつているのだ、ただその債務は外地通貨を以て確認されておるのでなくて、これが支払をする方法についてこの換算の問題がある、或いは一度に払うとか年賦償還にするとか、方法の問題があるということはわかるのです。その方法をきめたのが今度の法案なんです。そこに五万円で切るというふうなことが果してそういうような段階において行われ得るものかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/32
-
033・石田正
○政府委員(石田正君) これは先ほど申したのでありますが、在外公館等借入金整準備準審査会法ができます場合に、あの前の二つの法律と、それから今度の法律案と合せたようなものが一遍にきまつてしまいますれば、御疑問はなかつたかと思いますが、そこで今の点はとにかく現地通貨で以つて借りたのだ、それを国の債務で以て償還したのだ、あとはそのままにして換算する、或いは返済後どうするかということだけが残るのだと、こういうお考えだと思います。こういうお考えに対しましては、私たち政府の者の考え方は多少違つておるのでありまして、これは一番初めの在外公館等借入金整備準備審査会法等におきまするところの「法律の定めるところに従い、」と書いてございまする、又「予算の範囲内において、将来返済す全き国の債務」というところにかかつておると思うでありまして、従つてその確認はいたしまするが、その確認したものをどういうふうにして返すかということの方法ばかりでなく、中身まで法律の定めるところに従い、予算のあれで以つてできると、かように解釈いたしておるわけであります。それからなお準備に関するところの法律の第二條におきまして「返済の方法」という言葉が使つてございますが、国民負担の衡担の衡平の見地から公正且つ妥当な金額で定めなければならないということは、時期とか換算率ばかりでなく、大体どの程度において返すかと、こういうことはいろいろ国のそのほかにおけるところの債務とか、これはまあ対外的なものもございまするし、対内的なものもあると思います。それから又債務でなくとも、国が責任をとられるような立場にあつて、そうしてそれが将来外国の債務として処理しなければならないようなことになる案件は多々これからあろうかと思うのでございます。それらのものとの関係等も考慮いたしまして、そうして定めるものであると、そういうふうな点が今回の法律案におきまして定めんとしておる事項であると、かように解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/33
-
034・紅露みつ
○紅露みつ君 この問題はなかなか複雑でございまして、借入れた時も違うし、主体も違うし、そして又この法案になつて見ますと換算率にも不満があるし、時期にも不満がある。頭打ちにも勿論不満があるというふうに、これは相当に複雑で大きな問題であつたのでございますのですが、先ほど千田委員から御提案になりましたように、ここで一応当事者である各団体の代表を証人に喚問いたしまして、そして事情をもう少し掘り下げてですね、委員会としては調べる必要があると思うのです。その上で更に政府には又御出席を願つてお話を進めたほうがよろしいと思いますので、私は先ほどの千田委員の動議に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/34
-
035・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) よくわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/35
-
036・木村守江
○木村守江君 私はこの法律案がいいとか悪いとか、そういうことをまあ今論じませんが、先ほどからその在外公館等借入金というものは国の確定債務ではないということを申しておりまして、この在外公館等借入金というものが在外公館等借入金整備準備審査会において認めたものが、認めて初めて外務大臣がこれを国の確定債務と認めるのだということになるのですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/36
-
037・石田正
○政府委員(石田正君) 外務省で確認事務をいたしておりますが、その確認事務におきまして整備準備審査会法における借入金に該当すると、こういうふうに確認されましたものが国の債務としてだんだんとどういうふうに返すか、最後になりましてどういうものをどういうふうに返すか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/37
-
038・木村守江
○木村守江君 返す、返さないはいいのですが、これは国の確定債務、決定債務とは、在外公館等借入金整備準備審査会法によつてきめたいものを外務大臣がそれを認めて初めて国の確定債務となるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/38
-
039・石田正
○政府委員(石田正君) 国の債務として、現地通貨といたしましては、確認がありますればそのときに現地通貨だけの債務になると、こういうふうに考えております。その内容の、返すことまで考えましての……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/39
-
040・木村守江
○木村守江君 返す、返さないということは別なので……、ちよつと先ほどの在外公館等借入金というものは国の確定債務じやないというお話でしたね。その国の確定債務となるのはですね、この第二條の経過を経て来たものが確定債務となるわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/40
-
041・石田正
○政府委員(石田正君) 御意見の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/41
-
042・木村守江
○木村守江君 それでしたらその確定債務となつたものを債務者のほうでですね、幾らと打切ることは憲法違反ではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/42
-
043・石田正
○政府委員(石田正君) 先ほど来も申しておるのであります。国の債務としてですね、するかしないかということは、確定債務とするかしないかということは整備準備審査会法によつて始まつておりますが、どういうふうな国の債務としてするかというような内容の問題につきましては、将来の問題としてあると、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/43
-
044・木村守江
○木村守江君 そうすると、この在外公館等借入金整備準備審査会で以て結局五万円頭打ちというように決定されたからこういうような法律案ができたということになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/44
-
045・石田正
○政府委員(石田正君) まあ政府のやつておることを具体的に申上げますと、外務省において在外公館等借入金確認書というものを出しております。これはどういうかたがどういう通貨でそうしてどういう人に対しましていつ貨したかという項目を書きまして、これはこの法律の第一條にかかりますところの借入金であるということをあれしておるのでありまして、まだ国の確定債務としてこうであるというふうな、この何と言いますか、確定債務ということの内容でございますか、中身でありますね、円でするとか何で返すとかいうような内容についてははつきり書いてないのでございまして、大体債務と申しますことは、そういうすべての、何と言いますか、債務を負いました場合に、どういう金をどこでどうしてどういうふうに払うかということが確定債務の内容かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/45
-
046・木村守江
○木村守江君 それでわかりました。どうもちよつと……。
もう一つ聞きますが、この在外公館等借入金整理準備審査会ですね、これで在外公館借入金の証書を発行しますね。その発行したやつは何でもそれは幾ら幾らと借りた金を、借りた実際の金を証書を出すのですね。その証書を出したときにすでにその借入金というものが国の確定債務となるわけじやないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/46
-
047・石田正
○政府委員(石田正君) この確定という言葉がですね、使い方があれでありますが、国のこの借入金を国の債務として何か処理せねばならなんのだということははつきりいたしておるわけであります。どう処理するかという問題は、それだけではまだはつきりいたしていないと、そういうことを申しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/47
-
048・木村守江
○木村守江君 私はこれが五万に切るのがいいとか悪いとか言つているのではない。ただ憲法違反であるとかないとか言うから言つているのですが、今あなたが言つているように在外公館借入金証書というものを発行しておいて、而も換算率はこの別表にあるように換算率をきめておいて、そしてその五万円に切るのだと切つておいて、これでいわゆる私有財産に関する憲法の違反にならないという解釈がちよつとおかしいと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/48
-
049・石田正
○政府委員(石田正君) これは第一回の法律にありまするように、法律の定むるところに従い、予算の範囲内において、という言葉があるのでありまして、そのものを法律に定め、将来国が返す場合は、法律の定むるところに従い、国の予算の範囲内においてということが書いてございます。若し外務省におきましてそういう條項を除いたところの債務の確認の仕方をしたというのなら、これこそ法律違反の行為を外務省でやつたと、こういうことになるのかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/49
-
050・木村守江
○木村守江君 それではこの国の確定債務と認めたものをですね、その前の法律のいわゆる国の予算の許す範囲内においてというやつに当てはめて五万円と切つたわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/50
-
051・千田正
○千田正君 木村委員の質問は我々も同様に非常に疑問に思うのです。それはいわゆる今の五万円に切るということは憲法の第三章の第二十九條に該当しないかということなんです。いわゆる個人の財産権を侵害しないか、勝手に政府が思う通りこれはもう予算の都合上どうにもならんからこの辺で打切つて、このくらいあればこれで納得してくれということが、片方で納得しなかつた場合においていわゆる憲法第三章の国民の権利と義務の第二十九條におけるところの個人の財産権の侵害にならんかということを木村委員が質問しておると私は思うのです。その点なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/51
-
052・森崎隆
○森崎隆君 この問題は根本的な問題で随分いろいろ私たちも意見を申上げたり、又質疑したいことはたくさんございます。ただ時間の関係もございますので、特に最高責任者のかたがたに是非とも出て来て頂きまして、とくとまあはつきりしたいという点もございますので、次回には是非ともこの在外公館等借入金整理準備審査会の会長さんですか、その他認定をされたその責任者のかたがた、こういうかたに御出席を頂きまして、今日はこの審議はこのあたりにお願いしまして、ただ残されました公聴会の問題だけは一応今日具体化されまして、そのあたりで今日御散会頂いたら如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/52
-
053・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) それでは皆さんにお諮りいたします。先ほど来千田委員並びに紅露委員から、只今森崎委員からも御意見がありましたが、この問題はなかなかそつとやちよつとで片付かんと思いますので、御質疑はこの程度にして頂きまして、証人喚問をどういうふうにして行くかということについてお諮りしたいと思いますが、来る十一月十四日水曜でございますが、この日を大体予定したいと思うのでございます。それから証人喚問は何名にしていいかという点につきましてまあ四、五名……七、八名とすると一日ではどうしてもいけませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/53
-
054・木村守江
○木村守江君 只今の日にちと人員の問題ですが、委員長、理事にお任せいたします。やはり余りたくさんごたごたしていると聞かれないから、何かはつきり聞かれるような人をせいぜい四、五名くらいにして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/54
-
055・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) 只今木村君からも質疑がございましたが、それでは人数は委員長、理事に一任ということでお差支えございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/55
-
056・長島銀藏
○委員長(長島銀藏君) それではさよう取計らうことにいたします。それでは日時は十一月十四日の水曜日ということに確定したいと思います。長時間に亘りまして有難うございました。本日はこれで散会をいたします。
午前零時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214356X00419511110/56
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。