1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年四月二十二日(火曜日)
午前十一時十五分開議
出席委員
委員長 竹尾 弌君
理事 岡延右エ門君 理事 甲木 保君
理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君
柏原 義則君 鹿野 彦吉君
坂田 道太君 首藤 新八君
長野 長廣君 平島 良一君
井出一太郎君 笹森 順造君
坂本 泰良君 渡部 義通君
小林 進君 浦口 鉄男君
出席国務大臣
文 部 大 臣 天野 貞祐君
出席政府委員
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
文部事務官
(管理局長) 近藤 直人君
委員外の出席者
文部事務官
(管理局著作権
課長) 柴田 小三郎君
専 門 員 石井 勗君
専 門 員 横田重右衞門君
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四月二十二日
委員根本龍太郎君辞任につき、その補欠として
首藤新八君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(平島
良一君外二十七名提出、衆法第三〇号)
連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法
律案(内閣提出第一四五号)(予)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/0
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001・竹尾弌
○竹尾委員長 これより会議を開きます。
日程の順序を変更いたしまして、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。質疑のあられる方は、これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/1
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002・渡部義通
○渡部委員 神戸商船大学設置問題が、かなり紛議を来したことの理由の一つは、財源問題だと私は思います。従つて、その後、当大学設置の財源がどこから見出されて、その内容はどういうふうになつておるかについて質問します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/2
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003・首藤新八
○首藤委員 神戸商船大学の財源でありますが、すでに御承知かと存じますが、総額を四億一千二百万円と一応想定いたしておるのであります。この四億一千二百万円のうち、半額を地元負担——、これは兵庫県並びに神戸市、この二つの公共団体が半額を支弁し、半額を国庫負担ということになつておるのでありまして、その国庫負担の支出は、すでに二十七年度の予算が通過いたした後でありますので、予備費から支出をするという大蔵省との一応の話合いができておるのでありまして、その予備費を当てといたしまして、六月から開枚いたしたいと、その準備を進めておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/3
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004・渡部義通
○渡部委員 文部当局の在来の見解では、財源的にも、技術的にも、非常にめんどうが伴うという意見であつたはずでありますが、これには、技術的な面も完全に解決され得る見込みがあるかどうか、これは大学学術局長にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/4
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005・稻田清助
○稻田政府委員 前に御答弁いたしました機会におきましては、二十七年度予算査定におきまして、財源の関係をもつて、非常に遺憾ながら不成立であつたと、当時御答弁申し上げたと思います。ただいま首藤委員のお答えになりましたように、すでに財務当局との間におきましては、予備金あるいは補正予算等をもつて財源補填をする約束がついて参りましたので、その点、今日支障ない状態になつておることを御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/5
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006・竹尾弌
○竹尾委員長 ほかに質疑もないようでございますから、質疑はこの程度で打切りますことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/6
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007・竹尾弌
○竹尾委員長 それでは質疑はこれにて終了いたしました。
これより討論に入ります。討論の通告がございます。若林義孝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/7
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008・若林義孝
○若林委員 私は、共産党を除きます各派を代表いたしまして、ただいま議題となつております国立学校設置法の一部を改正する法律案について、賛成の討論をいたしたいと思うのであります。そもそも議題の中の主要なる目的といたしまして、神戸に商船大学を設けるということは、かつて国立学校設置法が本国会に提出されました当時、政府当局の、二十六年度から開設するような運びにするという一応の言明があつたのでありまして、私たち国民の側からいたしまして、必ず二十六年度から開設せられるであろうという気持でおつたのでありますが、諸般の事情によりまして、これが開設を見ることができなかつたのであります。しかしながら、海運関係の各団体、また各委員会におきまして、この大学開設の要望が、ひんぴんと決議要望の形をもつて現われて参つたのであります。
なお、わが国の海運の状況をながめますときに、戰前六百四十万総トンの商船隊が、戰後にはわずか十分の一に転落しておる。しかも世界に雄飛をしておつたわが国の商船隊の実情をながめまして、なおまた、将来わが国が世界の列国に伍して行くための唯一の方途は、海国日本として伸びるということなのでありますが、すでに運輸省等の計画によりまして、昭和三十年度には大体三百八十万総トンまで伸ばして行こうとする計画が立てられ、船員の需要の情勢が日増しに強くなつて来たのでございます。
この点にかんがみまして、本委員会といたしまして重要なる一つの問題として取上げられ、委員各位の熱列なる協力と、また文部当局、運輸当局などの理解ある協力によりまして、この実現が可能な見通しに立ち至つたのであります。われわれといたしましては、この商船大掌の開設が、真に国民の輿論として国会が中心になつて、具現する運びになつたことを非常に喜びとするところのものであります。
考えてみまするのに、この商船乗組みの航海士と申しますか、あるいは機関士と申しますか、とにかく商船乗組みの人たちというものほど、その質の優劣の差によつて、国家の運命というものに対して強烈な影響を持つものはないと考えるのであります。海の上に浮ぶ一つの船でありますが、一乗組員の思わざる過失によりまして、国の厖大なる財産というものが、一瞬にして海底に没してしまう。有形、無形の財産を支配するところのものであり、ひいて国勢を支配するところの影響があることになるのでありますから、この陸上に勤務を持つ者と、海上において勤務をする者との差というものは、ここに非常なる開きがあると思うのであります。そういう意味において、特に海上に勤務するこの乗組員の素質というものを、根本的にりつぱなるものとして養成する必要があると考えるのであります。また、一朝その船が外国の港に着き、上陸をいたしまするときには、過般文部大臣もここで、船員諸君にまことに重大なる使命を與えると同時に、輝かしき希望を與えた御発言をなされたのでありますが、一人々々が日本を代表するところの、外交的にながめるならば、大、公使である、一つの有力なる外交官であるという言葉があつたのであります。そういう意味におきましても、ほんとうに優秀なる、高度の教育を受けた船員の養成ということは、もうここに言をまたないところのことだと思うのであります。
なお、世界一の海運国を目ざしております日本といたしまして、船員の養成は急務中の急務であるということを考えるのであります。特に私は、ここで、商船大学の設置というものにつきまして、もし問題がありとするならば、おそらく需給関係ではなかろうかと思うのであります。船員の需給関係はどうであろうかということが、問題になると思うのでありますが、これは提案理由の御説明にもありましたように、清水の商船大学において、百六十名の者を養成いたしておりますが、これは需要の二分の一にも足らないところのものでありまして、私は海運立国を目ざす日本といたしましては、三百八十万総トンという、これをも目ざす日本といたしましては、早急に優秀なる船員の需用を満たす方途を講じておく必要があると考えるのでありまして、需給の関係から申しましても、その造船計画と照しまして、この大学の設置は必要不可欠のことであるということがいえるのであります。
それからなお、清水の商船大学を擴充して行けばいいではないかという御説もあると思うのでありますけれども、これは地理的にも、やはり機会均等を與えるということが一つ、またお互いに切瑳琢磨をいたしまして、両々相まつて技術をみがいて行くという意味におきましても、東西両商船大学の設置を必要とするのであります。
なお同じ船の中で醜い競争意識が行われるのではないかというような懸念を、われわれ門外漢、いわゆるしろうとは持つのでありますけれども、実際船の中で事に当りますところの者は、学閥その他を超越して、これに協力するものでありますから、それは一つの杞憂にすぎないと考えるのであります。いろいろな意味から申しまして、今日商船大学を設置することが議会の問題になりましたことは、私は適切なる処置であると考えておるのであります。
なお附帶條件というほどの強さはないのでありますけれども、希望條件のごとき気持がありますのは、船員教育という点から、目的を同じゆうしておるところのものが、二つの省の所管になることは、教育目的を遂行する上に不都合ではないかという気持がある。すなわち、元来再教育というものは、現在急速に必要とするものでありますから、ここで海技専門学院のもとにおいて、運輸省がこれを取上げになつておるのでありますが、船員の需給を満たす目的で、この再教育が間に合せのために行われておるのであります。今日この商船大学が設置せられまして、需給の関係がバランスがとれたとするならば、この船員の再教育も、大学の中において、いわゆる船員教育が行われるということが、妥当なことだと考えるのであります。これは運輸当局のいろいろな説明の部分にも、うかがわれたのでありますから、将来この再教育は正規の教育課程で教育するところの方向に転換をして行くことを妥当と思うのであります。海技専門学院が大学に併置せられまして、文部大臣のもとにおいて一貫せる一筋のこの再教育の行われますことを、私たち希望するところのものなのであります。いささか附帶希望條件というようなものを申し述べまして、本案に賛成するのであります。この法案が通ることによりまして輝かしき日本の海運界並びに海上に志を伸べんとする有為なる青年学徒に一大光明を與えることができますならば、幸いと存ずるのであります。
簡單でありますが、共産党を除く各党を代表いたしまして賛成意見を述べた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/8
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009・竹尾弌
○竹尾委員長 次に渡部義通君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/9
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010・渡部義通
○渡部委員 共産党は、この設置法案に反対であります。日本の産業の発展、それを基礎としての貿易、海運業の発展に応じた形での商船学校を設置するというのであるならば、われわれは大いにこれに賛成であるのでありますが、しかし日本の状態というものは、決してそのようなものではありません。第一に、日本の貿易は、日本の政府の主人であるアメリカの政策によつて、まず中国とかソ連とかとの貿易は禁止状態になつておるし、さらに東洋諸国、あるいは世界各国に対する貿易も、アメリカの統制のもとにほとんど押えられておつて、自由がきかない状態に置かれておるわけであります。これはだれも確認しなければならない状態であります。しかも日本の貿易の花形ともいうべき繊維産業は、御存じのように二割、三割の操短をしなければならないような不況にあり、今日では四割の操短にまで及んでおる状態であります。油脂とかゴムとかにしましても、崩壊状態になつており、造船業そのものさえも、非常な苦境、困難にあることは、委員諸君の御存じの通りであります。このような状態のもとで、なぜ商船学校の設置をこれほどに急がなければならないかに、第一の問題がある。
第二は、日本のすべての国力が、あげて再軍備の方向に集中された結果として、われわれ委員会が非常に心配しておりましたように、教育が軽視され、ほとんど教育費が片すみに追いやられておるような状態であるわけであつて、このような際に、なぜ商船学校がこれほど急がれなければならないのか。
それから、その財源を予備費からとり、そして四億数千万をこれに投じ、その半ばを地方負担にまかせるというのでありますけれども、しかしながら、神戸の財政状態はどうであるかというと、すでに昨年度において八億円の銀行借金があつて、どうにもならぬ。その地方財政の困難から、昨年の年度半ばにして、公共事業費を半分も減らさなければならない状態になつておる。その結果、市吏員が一千名も馘首されなければならない状態になつておるという事情であります。同時に、最近では中日本重工あるいは三菱造船を中心として、赤痢が非常に流行しまして、三月二十三日から四月十三日現在、二十日間に二千二百余名の赤痢患者ができたのに、神戸市は、わずかに防疫費が三万円しかないというような状態で、防疫そのことさえもできない、流行病そのものさえも手がつけ得ないような財源的な苦しさにあるわけであります。神戸市を中心として、このような地方財政の困難な場合に、この半額を地方に負担させるということになるならば、その結果として、地方民の負担は非常に大きな困難をしいられなければならない状態になることは、火を見るよりも明らかであります。こういう財源状態にあるにもかかわらず、しかもこういう公共団体の財源に対して、さらに重税を課さなければならないような商船大学を、かくも急がなければならない理由が一体どこにあるのか、これが第三の理由である。
このような状態にあるので、文部当局さえも、財源的にも技術的にも、今年は非常に困難だというのに、なぜ押し切つてまで商船大学の設置を急がなければならなかつたかということは、政党の地盤関係があるというふうに、われわれへ推定せざるを得ないわけであります。しかし、それだけじやない、今、日本の貿易、産業が、申し上げたような状態にあつて、日本の海運業の発展の見通しというようなことは、目下の状態では不可能である。再軍備計画というものを変更して、国民の要望通りに平和産業を急速に発展せしめるという方法をとらなかつたならば、それを前提としなかつたならば、日本の海運業というものの発展は、全然見通しはありません。しかも、こういう見通しのない状態のもとで、商船大学を置いて乗組員をどんどん養成する、またそれに伴つて船をふやして行くというような関係がどこにあるかという本質問題を考えると、今日の状態のもとでは、これは日本の海運業のために、日本の生産の発展に伴う貿易の発展のために用いられる船及び海運ではなくして、結局は、アメリカの戰争準備のための用船になり、その用船の乗組員をつくり出して行くということの結果にならざるを得ないということは、火を見るよりも明らかであります。私が今日この席上で言つたことは、間もなくそういう方向に実現するに違いないということを、諸君は見られると私は考えておる。
こういう意味におきまして、私は本法案には反対であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/10
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011・竹尾弌
○竹尾委員長 これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/11
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012・竹尾弌
○竹尾委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
なお報告及び報告書の提出につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/12
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013・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと認めまして、さよう決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/13
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014・竹尾弌
○竹尾委員長 次に、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案を議題といたしまして質疑に入ります。質疑の通告がございます。浦口鉄男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/14
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015・浦口鉄男
○浦口委員 実はこの前の委員会で私質問いたしたのでありますが、資料の準備が足らなかつたし、時間の関係で、不十分の点がありますので、重ねてお尋ねをいたしたい。
問題は、この間の御答弁で、著作権の保護期間が、死後五十年に改正になつたというその根拠が、連合軍司令部の覚書による、こういうお話があつたのであります。その覚書の内容は、私も手元に持つておるわけでありますが、この中に、五十年という年数の根拠を、不幸にしてわれわれとしては見出すことができないのであります。その点をはつきり御説明を願います。
〔委員長退席、岡(延)委員長代理
着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/15
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016・柴田小三郎
○柴田説明員 外国人の著作権を死後五十年たつたものは効力を消滅させる、こういうようなことは、昭和二十二年ごろからGHQの直接行政の形で行われていたのでございます。それは、たしか民間の業者あるいは業者の団体、そういうようなものに対して、文書の形で出ておりまして、またそれを読書新聞その他のものにも掲載したのでありますが、政府当局にはそういうようなものは来なかつたのであります。ところが、そういうような直接管理は普及徹底しないと見えまして、それに違反する者がかなり多く出たわけでございます。その後直接私たちのところに通知されたものは、昭和二十三年夏ごろに、外国著作権の侵害を取締ることを命じた覚書が来まして、それには日本の一流の出版社で出版したもの百余件について、占領軍の著作権行政に違反しておるからというので、取締り及び調査を命じて来ました。しかし、そのことについて、政府は直接管理については何事も指揮を受けていないので、政府としてはこれを調査することもできないし、また現行法との関係上、それを侵害と認めることもできない。こういうような形で、その一流業者の出版物百余件について、文部省としては大体拒否の形をとつて、うやむやにしてしまつたのでございます。しかし、その後依然として侵害の形が民間の方に起きておると見えまして、司令部としては、何か文部省を通じてそれを普及徹底させたい、そういうような意向から、何らかの形で司令部の管理行政を注意をいたしてくれないか、こういうふうなことでございました。それが大体昭和二十五年ごろでございまして、それについて、二十四年の四月四日に出た覚書によつてやつたらどうか。しかし、この覚書には、そういうふうなものは具体的には入つておりませんでした。しかしこの覚書の第五に、いろいろなことについは、総司令部と相談してみる、連絡云々というふうな項目がありまして、これによつてわれわれとしては、それではそういうふうなことを盛るのか。盛つてもらいたい。向うはそういうふうなことで、それではそういうふうな注意を喚起するということになつて、次官通牒の形になつて出たのでございます。その後またやはり侵害行為が起きまして、また何か覚書のような形が出まして、それをまた具体的に同じようなことをやつたのが局長通牒でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/16
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017・浦口鉄男
○浦口委員 司令部に直接行政があるということは、一応われわれはわかるのでありますが、ちよつとまだここではつきりしておかなければならないことは、文部省が少くとも次官通牒を出すその根拠が、われわれとしてはどうも非常に不明確だと思うのであります。司令部がそうした著作権の保護について指令を出すときは、われわれの承知するところでは、大体ポツダム政令によるとか、あるいは場合によつては、そのポ政令に基いて著作権に対する例外、特例法を設けるとかいうことによつて、まず法的根拠を明らかにされる、そう思います。その実施について具体的な要網を文部次官が事務的にこれを通達をする、こういう形式をとられるのが、占領下の一つの形である、われわれはそういうふうに了承しておるのでありますが、これに限つてそういう法的根拠なしに、いきなり次官通牒というような直接行政のような形で業者にその実行が指令された。そこにわれわれとしては非常に納得の行かないものがあるのでございますが、その点についての文部省の見解をただしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/17
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018・柴田小三郎
○柴田説明員 昭和二十四年四月四日の覚書その他については、そこには日本の著作権法の範囲、適用、形式、そういうふうなことには触れておりません。またGHQの方でも、それは要求しておりませんし、日本政府としても、そういうふうな措置はとりたくないと思つております。しかし、もし死後五十年云々という司令部の直接管理を、法律的あるいはポ政令というふうなものの形によりますと、どうしても日本の著作権法というものの範囲ということが必要になつて参ります。しかし、それは覚書にも出ておりませんし、またそれはできるだけGHQのやつていることを注意を喚起する、そういう程度の趣旨でこの次官通牒ができたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/18
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019・浦口鉄男
○浦口委員 そういたしますと、従来の占領下における司令部の政策の一つの特例である、非常に異例な取扱いである、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/19
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020・柴田小三郎
○柴田説明員 これは先ほども御説明申し上げましたように、どこまでもGHQとしましては注意を喚起してもらいたい、そういうふうな趣旨でございまして、ただそれを今申しました四月四日の覚書に一応足場を置いて出す。四月四日の覚書ではそういうふうな内容には触れておりませんが、ただそういうふうな注意事項を喚起してもらいたいということなのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/20
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021・浦口鉄男
○浦口委員 その注意を喚起するという形が文部次官通牒、こういう形式で出された。それが当時の事情としては、しかたがなかつたという文部省の見解だろうと思うのでありますが、それが当時としては違法でなかつたか、そうすること以外に方法がなかつたか、それをいま一度確かめておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/21
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022・柴田小三郎
○柴田説明員 これを次官通牒で出すことは、日本側として非常に有利である、そう考えまして、次官通牒にしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/22
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023・浦口鉄男
○浦口委員 ところが、その結果によつて五十年という保護期間がはつきりしたことは、これは文部省としても認められると思うのであります。そして、その次官通牒によつて、出版業者あるいは翻訳者がロイアリテイをずつと拂つて来た。これに対しては、この間の委員会の私の質問に対して、文部省は、管理政策は平和條約発効とともに終るが、翻訳者あるいは出版業者が拂つて参りましたロイアリテイの根拠は、いわゆる私契約に基くのであるから、これは平和條約発効後もそのまま継続するものである、有効だ、こういう御答弁がありました。ところが、この私契約の背後の、いわゆるその根拠をなすものが、司令部の占領下の管理政策であり、それに基き、それを強化したものがいわゆる文部省の文部次官通牒である。その通牒によつて業者がそれを実行して来た、こういうことになりますと、これが單なる私契約であるから、講和條約発効後も、それは管理政策あるいは文部次官通牒と関連なく有効に続くものだ、こういう根拠が、非常に私は怪しくなつて来ると思うのですが、その意いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/23
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024・柴田小三郎
○柴田説明員 次官通牒の出る前に、この管理政策の線に沿うて、いろいろ業者と外国人の著作権者との間には、契約が結ばれていたわけでございます。それから管理行政は、次官通牒よりも以前にそういうふうな効果を持つておりましたし、次官通牒によつて、初めて業者がそういうふうなことを知つたわけではないのでございまして、次官通牒は、今言つたように、さらにこういうふうなことがある、それに違反するといろいろ損害賠償や困ることが起るから注意してくれということを喚起しただけにすぎないのでありまして、その点、やはり依然として私契約は私契約として残るものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/24
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025・浦口鉄男
○浦口委員 そういたしますと、管理政策は講和発効とともに終るが、占領下における管理行政によつて発生したこの私契約は、講和発効後も有効に続く、こういう解釈と了解してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/25
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026・柴田小三郎
○柴田説明員 そういうふうに解釈します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/26
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027・浦口鉄男
○浦口委員 その次に、起算日の問題でございます。この間の委員会において、やはり私これを御質問申し上げたときに、それは法律に明記することよりも、むしろ当事者間で決定すべきものだ、こういうことが答弁せられたのでありますが、著作権協議会その他の意見によりますと、非常に、そこが紛争のもとになるということの強い意見があることは、文部省もこの法案が出てからお聞きになつていると思うのです。ところが、私実はそうした業者の団体の意見を、この法案の立案の過程において取入れられたかということを御質問申し上げましたら、そういう意見は十分取入れてあるはずだ、こういう御答弁なんですが、著作権協議会その他、あるいは学識経験者の意見を、私の聞く範囲では、この立案の過程において、かつて諮問を受けたことがない、こういうふうに言つておりますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/27
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028・柴田小三郎
○柴田説明員 それは、日本著作権協議会の何かの誤解じやないかと私は思います。私は協議会におもむいて、現在提出している法案ではございませんけれども、大体これに類似したものを説明いたしまして、政府としてはこういうふうなものをつくりたい、こういうふうなことをたしか二時間余にわたつて説明して来たことがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/28
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029・浦口鉄男
○浦口委員 これは外国著作権の問題でありますので、外国の方には非常に有利となると思うのでありますが、三十年が五十年になつたことによる日本の利害関係は、相当多いと思うのであります。その点文部省では、その利害関係について、何か御計算になつたことがありますか。ということは、こうしたことが、すでにフランスに伝えられて、フランスでは、結局それによつて得る利益は六千万フランというようなことが言われておるそうであります。それを逆に持つて来ますと、日本ではそれだけ損になるということになるのであります。日本の相手は英国あるいは米国等、多数関係を持つておるのでありますが、こうした法律が制定されることによつて、日本の翻訳者あるいは出版業者の受ける利害というものについて、文部省では御検討になつたことがあるかどうか。もしその数字がおわかりならば、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/29
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030・柴田小三郎
○柴田説明員 フランスの方から提出されておる何か通商協定というようなものについて、大蔵省、外務省の方に一応問い合せましたけれども、そういうものは知らない、こういうようなことでございました。また通商協定ができましても、フランスはベルヌ條約に入つておりますし、そういうようなことでは行けないのではないかと考えております。なお、こういうような特例法を設けることが、日本の不利にならないかということにつきましては、すでに平和條約の中に十五條がございまして、私たちとしては、この特例法をつくつて、できるだけ日本に有利にしたいという考えで立案したのでございまして、たとえば保護期間を延長することによりまして、日本としては不利になるだろうとは思いますけれども、それによつて金額がどれだけ出るかというようなことは、計算できないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/30
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031・浦口鉄男
○浦口委員 そういたしますと、第四條の二項が、非常にどうもわれわれとしても大いに検討を要する不明確な点があるのであります。かりに四條の二項を削除いたしたと仮定いたしましても、平和條約の第十五條(C)の二項によりまして、著作権の問題については明確にされておると思うのでありますが、あえて四條の二項を削除されるというお気持はないか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/31
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032・柴田小三郎
○柴田説明員 十五條(C)の二項では、明確にされておるとは考えませんので、それを明確にしたいために四條二項を設けたのであります。十五條(C)の二項だけを見ますと、戰争中に発生した著作権も、戰争中全部の期間が加算される、こういうふうに解せられるうらみがございまして、また日本の利用者もそれで行つては非常に不利でございますから、そこで四條二項を設けまして、そうではない、戰争中発生したものは、そごから戰争の終了した、平和條約の発効までの期間を加算すればよいのだ、こういうようなことを規定したわけでございまして、私たちとしましては、この規定を入れておくことが、非常に日本に有利ではないか、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/32
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033・岡延右エ門
○岡(延)委員長代理 本日の委員会はこの程度して散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。
午前十一時五十九分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01919520422/33
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