1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年二月二十日(水曜日)
午後一時五十八分開会
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出席者は左の通り。
委員長 木下 辰雄君
理事
松浦 清一君
千田 正君
委員
秋山俊一郎君
藤野 繁雄君
委員外議員
高橋進太郎君
政府委員
水産庁長官 塩見友之助君
事務局側
常任委員会専門
員 岡 尊信君
常任委員会専門
員 林 達磨君
説明員
水産庁漁政部漁
業調整第一課長 尾中 悟君
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本日の会議に付した事件
○小型機船底びき網漁業整理特別措置
法案(内閣提出衆議院送付)(第十
二回国会継続)
○水産物増産対策に関する調査の件
(南方真珠養殖業及び李ラインの交
渉経過に関する件)
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001・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。、
小型機船底びき網漁業整理特別措置法案を議題に供します。一応総括質問及び箇條的の質問は終りましたけれども、まだ質問が尽きておりませんので、御質問をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/1
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002・松浦清一
○松浦清一君 これはもうこの問題の審議をやりますたびに同じようなことを発言をしておるのですが、その法律の各條細目に亘つての検討という前に、これだけの船を整理して三億三千万円の補助金を出す。その整理の仕方についてトン当り幾らという説明も承わりましたが、残されておる問題は、整理をされた船主が受取つた補助金の使い方なんです。政府御当局が出しておる資料によりますと、取りあえず数を挙げて四万八千の船員が失業する。こういう数字が当局から示されておるにかかわらず、この失業する船員に対する補助金は補助金の総額の中に入つてない、こういう説明を承わつて、先般の委員会では、長官が何か失業保険に類するようなものに加入をさせることによつて失業の脅威をなくしようということに努力をしておる。こういう御説明であつたのですか、結論から先に申上げますと、その問題が解決をしません限り、私に限つてはこの法律案の通過に同意しがたいわけです。なぜかと言いますと、最初失業する船員に対する補助金が入つていないという御説明を伺つた場合に、殆んどこの小型底びきの船は家族船員が多いので失業という事態が起らんと、こういう御説明を承わつておるわけであります。ところがそういうものも、あるかも知れないけれども、やはり船主と船員という関係で、雇用契約が結ばれて働いておる船員も、数はわかりませんけれども、相当数あるものと思われる。そうすれば家族船員である場合には、一隻の船についてこれこれの補助金というものの中にどれだけ失業手当に相当する額が含まれておるかということは、その家族の所得になるので別に問題はない。若し雇用されている船員の場合には、船員の失業手当が含まれていないということで、若し船主が補助金の中からその手当を出し惜んだりするというようなことがあつた場合、両者の関係がうまく行かない、失業するのだから失業手当をもらいたい、或いは退職手当をもらいたいと、こういう希望が起るであろうけれども、少額の補助金の中からはそれは出せないという、こういう人が出て来たりすると、雇つておる者と雇われておる者との間に紛争が起きるということも予想されるので、三億三千万円のうちに幾ら失業する船員に対する手当が含まれておるかということを明確にしてもらいたい。若しそれができなければ、その失業保険に類する手当を支給する方法が別途考えられるべきである。こう思うので、それを急速に一つやつて頂きたいと思います。これは重ねて、やつておりますということだけでは、どうも私同意しかねるのです、通過には。具体的にこうなつたということが表明せられないというと困る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/2
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003・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 御質問にお答えいたします。小型の減船整理に伴いまして、特に築磯に船を充当いたしました場合には船がなくなるわけでございますので、当然職業を変えなければならない。こういう問題が出て来るわけでございます。この問題につきましては、当初からいろいろ研究をいたしたわけでございますが、御承知のように大部分が家族労働者を使用してやつておるというのがその実態でございます。従いまして純然たる雇用契約によつて雇われております船員は非常に少いわけでございます。もともとこの小型の整理に対しまして国家が補助金を出すということにつきましては、相当議論があつたわけでございます。と申しますのは、大部分のものが無許可船でございまして、この無許可船を整理する場合には取締だけでいいではないかというような議論も相当強くあつたわけでございます。併し今の実態から見まして、相当過半数にまで上る無許可船があつたにいたしましても、これを一定の計画に従いまして整理する場合には、どうしてもこの転換を奨励するために国として何らかの財政的な支出を考えなければならんという結論に達しまして、自発的に、或いは国の計画によつて転換する場合にはそれに対して補助金を出そう、こういう結論になつたわけでございます。そこで以西底びき網に対して前にとられましたような、整理に対して全面的にその損失を補償するという考え方ではなくて、転換をする者に対して国がこれを助成するという考え方が、今度の小型底びきの整理の場合には、そういう方針で以て実施をするということに相成つたわけでございます。といたしましても、いずれにいたしましても、失業者の問題は当然考えなければならんということになつて参りましたので、雇用契約のはつきりある者につきましては、これは只今のところ関係官庁との話合いで失業保険の適用は文句なしにできるというように話合いが進んでおります。雇用関係の明確でない、いわゆる家族労働者を使つてやつておる場合でございますが、そういつた場合でも五はい又は十ぱいのものを集めまして、それを生産組合なり或いは協同組合の自営という形に直しまして、改めて従来はつきり雇用契約のなかつた者を組合の自営の形に引き直すことによつて、そこに雇用関係を法律的にも作りまして、それによつて失業手当を出そうという方法につきましては、只今現地においてもいろいろ調査を進めておりますし、近くその線で関係官庁のほうとの話合いは妥結するものと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/3
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004・松浦清一
○松浦清一君 そういう点についての御努力については、それはもう感謝をして、それが速かに関係官庁と妥結をして、そうして失業手当が出せるようにやつてもらいたい、それができるまで、単なる努力の過程だけではこれを通してもらうというわけにも行かん。こう私は考えておるから、できるだけ速かにその結論を出してもらいたいと思います。
それからもう一つ、先般の委員会で台風等のために相当の漁船が滅失をした所がある。そういう所に転用すれば失業する者もないし、船も使えてよいから、各県を通してそれを調査中である。こういう御説明を承わつたことがあつたのでありますが、その調査の結果はどのようになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/4
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005・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 昨年の十月にルース台風が起りまして、そのために鹿児島県を初め相当全国の府県で漁船の沈没なり或いは損傷があつたわけでございます。たまたまこの小型の減船の話が出ておりまして、小型で減船になる船をそういつた台風で被害を受けた所に廻したらよいではないかという話が出まして、我々のほうでは至急各県から数字を集めまして、今台風等の被害によつて船を新しく求めておるもの、その数量、それから今度の小型の整理によりまして出せるもの、その数を調べまして、両者を突き合せたものを今関係県に配布しております。今後の手続といたしましては、船を需要しておる県と、それから船を出す県との個別的な話合いによつてこの問題を解決して参りたいと思つております。ただちよつと申上げますが、瀬戸内海等でやつております小型の船につきましては、相当外海の場合と船型等において食い違いがございます。で直ちに小型の今度の減船によつて整理されるものを外海のほうに充当するということは、船型その他の点で相当難色があるのではないかということを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/5
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006・松浦清一
○松浦清一君 具体的に言つて、船を求めておる府県、それから整理されて船が余る県、それを調べられたというのですが、その調べられた数字はまだ集つていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/6
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007・尾中悟
○説明員(尾中悟君) ちよつと今手許に持つておりませんが、数字はできております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/7
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008・松浦清一
○松浦清一君 その数字を一つ御提出を願いたいと思います。それから若しそれがわかつた場合には水産庁が斡旋をして、求める県と出したい県との取引をやらせる、こういうことなんですか。それは自主的に、例えば大分県には余つておる、長崎県には足りない、こういうことになれば、大分県と長崎県との間で話をさせる、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/8
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009・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 原則といたしまして、只今数字を各府県に送付しておりますので、その数字に基きまして関係県のほうで話合いを進めるように通牒をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/9
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010・松浦清一
○松浦清一君 小型底曳の船が非常に多過ぎて、違反が多い、相当沿岸漁場を荒しておる。そのことのために整理の必要が起つて、その整理をするという考え方には私どもは賛成しておる、原則的には……。併しその整理をされた船と転用された船との結果がどのようになるかということが明瞭にならないと、余つておる船を整理すればあとはどうでもいいじやないかということにも行かんので、当局のほうでは、この法律案の成立を急いでおるかも知れませんが、急いでその結果、完全無欠とは言えませんけれども、大体了解できる結果的の数字をお示しを願いたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/10
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011・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 先に松浦君から質問された失業船員保険に入るような措置を講ぜられるのは大体いつ頃になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/11
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012・尾中悟
○説明員(尾中悟君) 只今労働省の関係官と水産庁の関係官が現地に赴きまして、いわゆる正式に雇用関係のない、家族労働を使用しております場合の措置を現地で具体的にやつております。それが帰りまして正式な関係官庁との話合いになるわけでございますが、いつまでと明確には申上げられませんが、成るべく早くこの問題を解決いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/12
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013・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 成るべく早くというのは三月中くらいにできる予定でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/13
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014・尾中悟
○説明員(尾中悟君) その前にやりたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/14
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015・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) ほかに御質問はありませんか。ほかに御質問がありませんければこの法案の質問は後日に譲ります。
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016・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) ちよつと皆さんにお諮りいたします。高橋君から委員外の発言を求められておりますが、これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/16
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017・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/17
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018・高橋進太郎
○委員長外議員(高橋進太郎君) 委員外の発言をお許し頂いたことを厚く御礼申上げます。
水産庁長官に最近新聞紙上で問題と申しますか、或いは報道がございましたが、北濠洲のアラフラ海において蘭領と提携して真珠貝の採取業に日本人が進出するという記事があつたのでありますが、これにつきまして、何らか情報等がございましたならば、或いはこの問題について水産庁が何らかの御折衝等がございましたら、その経過等につきましてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/18
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019・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) 今のところ公式な情報連絡というふうなものは何らまだございません。濠洲政府のほうから外務省に何もまだ入つておりません。いずれは新聞に出ているような問題として向うとの外交交渉が始る場合に問題になる事項だとは思つております。
それから政府の方針としましては具体的にはまだ検討を進めてはおりませんけれども、やはり過去における公海自由の原則というふうなものに基いて、本当に野放しに自由に、濫獲ということを顧慮せずに出漁していたというふうな形では、今後は日本人の漁業の世界進出というふうなことは容れられない方向でありますので、その点については何らかの調整措置は必要であろうとこう考えておりますけれども、それを具体的にどうするかというようなところまではまだ至つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/19
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020・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 只今水産庁長官からお話がございましたが、私から申上げるまでもなく、北濠洲におきまする真珠貝の採取業というのは一八六八年、即ち今から約八十四年ほど前に着手された事業でありまして、我が国といたしましても明治七年からこの事業には、当時契約移民のような形において濠洲なり蘭印の企業者とタイアップをいたしましてこの事業に携つて参つたのであります。ところがたまたま濠洲通いの多分日本郵船の機関長であつた丹下君であつたと記憶いたしておりまするが、この事業が単に契約移民というような形で仕事をしていることは十分でなかろう、或いは日本人自身についても企業者としてやり得るのじやないかというような観点から、昭和六年に初めて一ぱいの船を出してこの仕事に従事いたしたのでありますが、極めてその成績が良好であり、且つ又日本人自身が今まで契約移民として雇用されておつたということは、要するにこの真珠貝採取業というものにつきまして日本人の体質なり或いは機敏さなり、或いは忍耐強さなり、あらゆる角度から最もこの事業に適任であるというような長所が見出され、且つ又その長所が発揮できまして、この事業が昭和六年以後年々発展いたして参つたのであります。即ち昭和六年に一ぱいであつたものが、七年には四はいとなり、八年には更に九はいになり、九年には十四はいになり、十一年には八十一ぱいになり、十二年には百四十三ばいとなり、十三年には百七十となるというような盛況を呈して参つたのでありますが、ただこの事業の性質から見ますると、当時主として和歌山県等におきまして匿名組合のような形で小船主が寄り寄り持ち寄つて一ぱいり船を建造し、それに主として和歌山県の出身者がタイバーとして乗込みまして、そうして大体三月頃からその年の十一月までこの仕事に従事しておつた。一方これの取扱につきましては、元の三井物産がアメリカのカード社とよく提携いたしまして、殆んど内地におきまして、或いは基地であつたパラオにおきましてこれを製品とし、それをアメリカに一手に売つておつたというような状態であり、且つ又不合格品につきましては、これを地元である和歌山県或いは大阪府、それらの全くの小企業の貝ボタンの製造業といたしまして作つているというような工合に、この事業自身が一つには大企業でなく、或いは大資本家の経営でなく、全く地元の小資本的な或いは小企業的な性格を持ち、且つ又一方においてはアメリカと強く販売等においては提携しておつたというような歴史的な事情から見まするならば、私は講和回復後真つ先に我が国の水産進出事業といたしましては最も適当な事業でないかと考えられるのであります。而してこの事業自身が前申上げました通り日本人の長所を最もよく発揮できるような事情にあるのでございまして、従つてこれにつきましては水産庁といたしましても十分従来のこの事業の持つた日本人の特異性、或いはこの企業の持つこうした性格というような点から、いわゆる大資本的な進出ではないのでありまして、全く日本の、最もポピュラーな企業形態を持つているのでありまして、是非一つ御助長を願いたいと考えるのであります。ただ今長官がお話になりましたように、過去におきましてもこの事業自身が今申上げました通り、最初一ぱいであつたものが数年の間に十七はいになつた。その結果は非常な濫獲となりまして、一ぱい当りの採取量が極めて少くなりまして、中にはそのために、非常に少い捕獲量のために倒産する、仕込資金が殆ど取れないというような状態で、大分中には困窮に陥つた者がありまして、従つてその後これを統制したというような非常ににがい経験があるのであります。半面これは大資本的な経営でないものでありますから、従つてそういう非常によく行けば盲目的に誰もが船を作る、従つて一遍不況に会うと忽ち崩壊する。こういう小企業的な性格を多分に内蔵している事業でありますので、よほどこれは政府におきましてその間の統制調整をいたさなければ、又二度とこの事業に対する失敗を繰返されると思うのでありますが、只今長官のお言葉によりますと、十分その間の調整をせられ、そうしてこの事業に対する発展等をお考えになるというお話を聞きまして、非常に意を強うしたのでありますが、何かもつと外務省と連繋でも取つて具体的な話の折衝なり、或いは個人的なあれで下交渉でもせられている筋等がないでありましようか、どうか。その点について重ねてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/20
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021・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) 別に外務省のほうを通じ或いは私的な関係を利用して、そういう点について交渉連絡をやつたというあれにはまだ至つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/21
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022・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/22
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023・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/23
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024・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 只今長官から御親切なお話がございまして、非常に我々この事業に対して関心を持つ者としては心強く感じているのでありまするが、その結果、現在でも採取業協会という一つの団体を持ちまして、この事業に極めて関係のあつた丹下君であるとか、或いは山見君、中本君、或いは友信君というような、従来この事業に自分の一身を捧げて来た人人が今なおこれらの事業の発展を祈つておられるのでありまして、従つて今後十分政府におかれましてもこれらの事業に対するにがい経験とか、或いは過去のいろいろな事情なりを十分一つ活用せられ、或いはその事情を聞かれまして、この問題に対する御処理を願いたいと存ずるものであります。
なお最後に、先ほど申上げました通り、この事業の過去においての長い経験から見ますると、渡航する者の教養なり、或いはそれが長い期間、三月から十一月末というような海上におきまする、いわゆる航海におきまする長い期間非常な忍耐を、労苦に悩まされるのでありまして、従つて前には或いは母船を附置いたしまして、これらに対する慰安施設なり或いは医療施設をしたり、或いは当時基地であつたパラオ島においても或いは船員ホームその他の施設を行なつたのでありますが、政府においてそういう点についても、その事業の推進上十分お考えを願いたいと存ずるものであります。なおくれぐれもこの事業は過去においても相当にがい経験を持つた事業であり、又この事業自身は日本人の性格を、或いは特徴を、或いはその性質を発揮する上におきましても相当大きな事業でありますし、当時最盛期におきましては、私の記憶では四、五百万ドル程度の大体の生産額を挙げておつたように記憶しておるのでありますが、且つ又この事業自体が、繰返して申上げるようでありますが、全く販売等についてはアメリカと密接不可分のような形において進めて参つたものでありますから、従つて十分政府におかれましても諸般の事情を洞察されまして、講和後この問題について熱意を持つて十分なる御調査と御推進をお願いをいたしまして、私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/24
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025・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) 高橋さんは本問題については我々よりも実際詳しいぐらいに仕事をやつておられたかたですから、釈迦に説法のような形になるのでありますから、喋々することはやめますけれども、初めからお話のあつた通りにこの問題は、これだけ今まで狭い漁場で働いていた日本の漁民にとつては一つの大きな光明と考えねばならない漁場でありますし、過去の経験もあつたし、やり方次第では十分採算を取りながら、十分の利潤を挙げながらできるという意味においても、或いはドルの外貨獲得という観点から見ても、どうしても出て行きたいというふうな考え方は民間も政府も当然持つておるところだと考えておりますし、そのやり方等につきましては、相手国側の意見も十分尊重しながら進めて行く必要もあろうと思います。又濫獲等につきましては、どうしても今度の場合には十分な調整措置をとりながら、価格の点も見合いながらやはり漁獲も上げなければならん。資源だけでなくそういう点もあるだろうと思いますので、おつしやる通りに従来の経験者の意見を十分我々のほうで聴取した上で、そういうふうな態勢について政府のほうの考え方もきめて参りたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/25
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026・松浦清一
○松浦清一君 アラフラ海で採取される白蝶貝は、これを貝ボタンに加工されて、主としてアメリカ方面に輸出されると、そのことのために、今日本の経済自立上非常に大きな難点になつておるドル貨の不足に対して寄与するところが非常に多いと考えられます。これはできるだけ早く出漁のできるような方途を講ずべきとは思うのですが、問題は講和條約が発効するとマッカーサー・ラインがなくなる。マッカーサー・ラインが解消されるというと、講和條約に参加しなかつた国やその他特定の国を除けば、従来の公海操業の自由というものは確保されると、こういう原則論に立つて考えて見るというと、濠洲との間に漁業條約が締結されなくても、行こうと思えば行つてもいいと、こういうことになるのでしようか。それとも濠洲との間に漁業條約が締結されなければ行つてはいかんと、こういうことになるでしようか、その点どうなんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/26
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027・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) これは公海自由の原則というような点だけを主張して出られるかどうかというふうな点ですけれども、漁場の中には領海も入つておりまするし、それから碇泊その他の関係上どうしても向うの領海に立入らざるを得ない。一般の通商航海條約においては、過去においてはまあ漁船というものは商船とは別で、これは領海に自由に立入るというふうなことにはなつておらないような状態が普通のようでございまするが、どうしてもそういうふうな領海内部にも漁場もあるし、領海の内部に入つて碇泊するとかいろいろしなければならんような関係も考慮いたしまして、又なおその資源の保存というふうなことは、これは日米加協定の線でもあるし、その線を十分今後の同種の国際的な漁業協定においては活かして行くというふうなことを日米加協定の決議の中で謳つてある。これは日本の政府としましても、まあ日本だけじやなくて、協定諸国同様な意見で今後ほかの国との国際協定を結ぶのだというふうな意味での勧告をした決議になつておるのです。けれどもそういうふうな点から見ても、やはり白蝶貝につきましては十分そういう点も考慮しなければならんというふうな関係からして、やはりできるだけ相手国のほうと協定を結ぶなり、十分な了解を遂げた上で出漁するということが望しいのじやないかと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/27
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028・松浦清一
○松浦清一君 もう一、二点伺いたいのですが、向うに採取に出かけて行く人たちが一番問題になるのは、燃料の補給をどこに求めるかということなんですが、結局漁業條約だけでよいのか、通商條約と併行してその協約ができなければやれないのか、その点についてお考え如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/28
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029・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) そこらの條約の詳細な点、内部につきましては、外務省で答えてもらわないとはつきりした答えにはならんかとも思いますが、私が今までいろいろそういう仕事を扱つておつたような知識から判断しますれば、先ほども申しましたように、通商航海條約では漁船は一応外される。領海内、港なりに入つて行く場合には大体商船が対象になります。漁船は外されておるというような建前になつております、一般的には。だからそういう必要がある場合には、その通商航海條約の中に漁船についての特殊なそういう規定、例えば天災その他の原因からして船がどうしても自分の船籍のある国なり或いは寄港できるような港へ寄港できないというような状態になつた場合に、相手国の港のほうに入つて薪炭その他の供給を受ける。こういうような條項ですね、それ以上にその條項を、天災その他の特殊の制限された條件でなくて、もつと広く規定してもらえば、それでもやつて行ける場合もありますし、又それは通商航海條約の部分的な協定として、別にそういうような特例を少し詳しく協定するというような形になりますか、或いは領海内でも漁業をやつてよろしいというようなことになれば、これはやはり本当の、向うの領土権の及ぶ範囲内での漢業でございますから、それは條約で結ばれるか、或いは相手国側の内部的な取扱いでそういうものを許されるというような措置は、條約で縛られないでやつて行きたいというような考え方になりますか、そこいらの点についていろいろと折衝をしてみないと、どういうような形で行われるかは、今のところはつきりと具体的には私としては申上げられない問題かと思いますが、いずれにせよそういう形で何らかの協定は必要だと思いますし、又向うの港に入つて、又領海にも日本の漁船が立入ることができて、それで漁業ができる。漁船に乗つておる船員の人の生活もそういう点で不安をなくするというようなことは、どうしても協定して参らなければ、実際上は漁業はできなくなるということは当然考えられておりますから、そういう点を十分考えて、はつきりしたいという必要はあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/29
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030・松浦清一
○松浦清一君 これは政府の基本的な態度の問題なのですが、向うのほうから何とか協約をやろうじやないかと言いかけて来るのを待つておる。つまり何とかかんとか日本のほうから積極的に出て行つて、條約をやろうじやないかということを話しかける御予定であるか、その辺についてのお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/30
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031・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) その点もむしろ私よりも基本的には外務省から聞いて頂かないと、はつきりしたお答えにはならないと思います。これは漁業上の問題だけでなくして全般的のあれですから、国交を新しく開くというような形で漁業の協定等をやる場合において、それは全体のそういう條約の一部になるわけであつて、全体がどういうふうな形で両国側で話合いをして進むかというようなことと、それからその交渉をやる場合に、一部々々の事項につきまして、どれだけの主導権をどちらの側が持つたほうが適当かというふうな判断によつて、積極的に能動的に働くか、受動的な立場をとるかというふうなところはきまると思いますので、全般の問題を併せてでないとちよつと答えにくい問題ではないかと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/31
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032・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 今水産庁長官からいろいろお話があつたのですが、私ももう一つ松浦委員のお話のあつたように、この問題に対する基本的な態度の一つとしては、先ほど申上げました通り、明治七年から日本人がこの事業に関係しながら、非常にその間何十年という間何ら発展を見なかつたというのは、最初は、即ち昭和七年に日本人が初めて企業として乗り出す前までは、単に契約移民として日本の水産人が向うに雇用されまして、而もその三月から十一月までの間、相当の労働過重でありますので、従つて生活等につきましても、或いはばくちをしたり、或いは向うの女等に使つたりというようなことで、一つも実になるようなこの事業につきましては仕事の仕振りではなかつたのであります。殆んどいわゆる契約移民の例に違わず、その間何らの新らしい、その労働に対する報いがなかつたのでありまして、従つてこの過ちを再び我々としては繰返したくないのでありまして、この事業はどこまでも自主的に、又企業的に進出して初めて意味があり、且つ又それによつてのみ初めて向うへ渡航いたします日本人の、いわゆるダイバーの特異性なり或いはその特徴なりが、本当に国家的にふさわしいような発達ができるのでありまして、これが再び明治七年から長い間雇用されたような形においては、これはむしろ望ましくない形態なんでありますから、今後政府におかれましてこの問題を進められる基本的態度といたしましては、この点の従来のにがい経験を十分念頭において御交渉なり、或いはこの問題の処理に当られんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/32
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033・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) ちよつとそれに関連して私からもう一度長官に御質問いたします。マツカーサー・ライン撤廃後、即ち講和の発効後における南北漁業についてはしばしばこの委員会で討議されましたが、その際私は、白蝶貝の採取ということは自由漁業である、だからマツカーサー・ライン撤廃直後において自由に行くというようなことが万一あつたならば、再び混乱状態を来たして、資源が枯渇し、販路を塞ぎ、再び外国の怨嗟の声を聞くようになる。だからあらかじめ船数の制限をいたして、同時にそれを許可するような措置を講ずるように希望しておきましたが、現在の漁業法においては指定遠洋漁業はきまつている。六十九條の資源枯渇の問題もあるが、これはともかく、濠州までそれを応用するということは不可能だと思いますので、制度としても許可をするように、又あらかじめ限度を定めて置くという措置を今から講ぜられる必要はありはしないか、さように思つておりますので、そのことについてどういう準備をされておるか、一応御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/33
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034・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) 只今の委員長のお尋ねは、我々もマツカサー・ラインの撤廃が平和回復後直ちに行われるというような形になつた場合に、漁業法の指定遠洋漁業以外の形で進出する場合、それをもう完全に自由に放任していいかどうかという点については、これは野放しにはできないと、何らかの措置を必要とする、こう考えております。併しそのやり方についてはいろいろと問題もございますので、今法律的に検討中な状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/34
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035・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/35
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036・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) それでは速記を始めて下さい。別に御質問ございませんか。それでは高橋君の御質問に関連した御質問は終了したものと思います。では次の御質問を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/36
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037・松浦清一
○松浦清一君 かねて李承晩大統領がどういう名称を使うのですか、変な宣言を出したことがあるのですが、それに対して日本政府はどういう態度で交渉しておられるのか、しておられないのか、その経過を一つ御報告願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/37
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038・塩見友之助
○政府委員(塩見友之助君) これは新聞等で御存じの通り、外務省のほうで日本政府の声明を発表すると同時に、韓国側に対して申入れを同様の趣旨でやつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/38
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039・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/39
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040・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて。それでは本日の委員会はこれを以て散会いたします。
午後二時五十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314562X01219520220/40
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