1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十五日(金曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 内海 安吉君
理事 荻野 豊平君 理事 高木 松吉君
理事 山口 好一君 理事 逢澤 寛君
理事 瀬戸山三男君 理事 西村 力弥君
大高 康君 薩摩 雄次君
志賀健次郎君 高見 三郎君
中村 寅太君 廣瀬 正雄君
松澤 雄藏君 仲川房次郎君
二階堂 進君 町村 金五君
有馬 輝武君 小松 幹君
三鍋 義三君 中島 巖君
三宅 正一君 前田榮之助君
出席国務大臣
建 設 大 臣 竹山祐太郎君
出席政府委員
建 設 技 官
(河川局長) 米田 正文君
建 設 技 官
(道路局長) 富樫 凱一君
委員外の出席者
議 員 宮澤 胤勇君
議 員 小澤佐重喜君
議 員 楯 兼次郎君
議 員 竹谷源太郎君
専 門 員 西畑 正倫君
専 門 員 田中 義一君
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七月十三日
委員井手以誠君及び今村等君辞任につき、その
補欠として安平鹿一君及び西尾末廣君が議長の
指名で委員に選任された。
同日
委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として今
村等君が議長の指名で委員に選任された。
同月十四日
委員中島巖君辞任につき、その補欠として杉村
沖治郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十五日
委員松尾トシ子君、杉村沖治郎君及び今村等君
辞任につき、その補欠として前田榮之助君、中
島巖君及び鈴木義男君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
三宅正一君が議長の指名で委員に選任された。
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七月十四日
建築士法の一部を改正する法律案(田中一君外
二名提出、参法第一九号)(予)
同月十三日
長崎を起点とする国土開発縦貫自動車道路建設
に関する請願(田口長治郎君紹介)(第四一四
一号)
大曲橋の永久橋工事促進等に関する請願(志賀
健次郎君紹介)(第四一四二号)
放射四号路線駒沢、瀬田間の道路工事中止に関
する請願(三輪壽壯君紹介)(第四一四三号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
国土開発縦貫自動車道建設法案(阿左美廣治君
外四百二十九名提出、衆法第二六号)
派遣委員より報告聴取に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/0
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001・内海安吉
○内海委員長 これより会議を開きます。
国土開発縦貫自動車道建設法案を議題といたします。まず提出者より提案理由の説明を聴取することといたします。小澤佐重喜君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/1
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002・小澤佐重喜
○小澤佐重喜君 ただいま議題になりました国土開発縦貫自動車道建設法案につきまして、その提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。
国土開発縦貫自動車道建設法案の第一の考え方は、国土を縦貫する高速幹線自動車道を開設しようとすることであります。その規模は、北海道より九州に至る延長約三千キロでございまして、わが国土の重要地域を最短距離、最短時間で結ぶとともに、既開発及び未開発の地域を貫通させます。これを二十カ年計画により完成することを期しております。国力の進展によりまして、これより短期間に実現いたしますならば幸いであります。この高速幹線自動車道は、もっぱら自動車の交通の用に供する道たる自動車道でございまして、一般交通に供する道たる道路とは異なることであります。普通の道路は混交交通でありますから、自動車交通は平均時速二十キロないし四十キロを出でることができません。のみならず最近の自動車交通は、高速化に加えて大型化、長距離化の方向に発展しておりますので、従来の道路上を走るだけでは、その交通需要が充足されないのであります。どうしても自動車の専用路線が必要となるのであります。自動車道においては、その速度も三倍の時速六十キロないし百二十キロの高速で走ることができるのみならず、一車一キロ当りの経費もはるかに低減されまして、低運賃、長距離輸送が可能となるのであります。
第二に、この高速幹線自動車道を幹線としまして、これに接続する主要な道路または一般自動車道、合計延長約二千五百キロの整備を促進し、その組合せによりまして、高速自動車交通網を新たに、形成しようとすることであります。これは前述のごとき自動車交通の発展に対処するとともに、その利便を最高度に利用するため、わが国における陸上交通上、従来の道路網及び鉄道網に加えまして、いわば第三陸上交通路たる高速自動車交通網の確立が急務であると考えるからであります。これによりまして近代的陸上交通網の体系を完成し、陸上交通調整をはかり、それぞれの交通手段の適正な整備による効用発揮を期待したいのであります。
第三に、この新たな高速自動車交通網を完成することによりまして、従来他のいかなる手段によりましても達成することができなかった国土の普遍的開発、画期的な産業の立地振興及び国民生活領域の拡大をはかろうとすることであります。これが、本法案を提出いたしました窮極にして最大の目的でございます。
従いまして、高速幹線自動車道の建設、支線となるべき主要な道路または一般自動車道の整備と相待ちまして、沿線地帯における資源の開発、耕地牧野草地の改良、鉱工業の立地条件整備、新都市及び新農村の建設等につきまして、総合的な実施を意図しているのでございます。これによりまして、現在遅々として進まない国土総合開発の施策の展開をはかりたいものと考えるものであります。
高速自動車交通によりますならば、第一に従来の三分一ないし二分一の時間で、国内各地域間が連絡されるとともに、東京または大阪から国内重要都市にすべて半日ないし一日行程で達することができることとなり、第二に同一距離について、従来の六〇%以下の輸送コストで済むようになるのでございます。
このことが国土の普遍的開発、画期的な産業の立地振興及び国民生活領域の拡大の基本条件となるのであります。
今、東京−青森間高速幹線自動車道たる東北自動車道が開設されますならば、東京から現在国道で福島に着く時間、すなわち十時間前後で青森に着いてしまい、同様に大阪−門司−鹿児島間高速幹線自動車道たる中国及び九州自動車道が開設されますならば、大阪から現在国道で広島に着く時間、すなわち十五時間前後で鹿児島に着いてしまうこととなります。そこで従来多かれ少かれ経済僻遠の地として、産業の立地振興も容易に達せられなかった北海道、東北、中部、裏日本、四国、南九州等の地方も、新たな交通利便の経済地域としてよみがえることとなるのでございます。これらの地方は、幸い土地、資源、電源等に恵まれているのでありますから、いわば条件がそろったといえるのであります。またわが国土は狭小といいながら、なおその二〇%足らずの平野地帯に人口が蝟集しまして、残りの山地高原地帯の土地利用度はきわめて低い状況であります。これら山地高原地帯といえども、新たな交通利便がもたらされますならば、広範な範囲にわたって、人の住むに値する領域となるのであります。
高速自動車交通網は、道路網、鉄道網が人口を追っていよいよ平野地帯に錯綜しているのに対しまして、これら未開後進の山地高原地帯をも縦横断するのでありますから、国土のこの残された地帯に向って国民生活領域を拡大していき、外に失った領土を、文字通り内に求めることとなるのでございます。以上によりまして、わが国民経済の地域的偏在である人口産業施設の大都市地区への過集中、地方経済の貧困が逐次解消されていき、国土の普遍的開発が達成され、ここに国内各地域がそれぞれ繁栄する真に民主的国家が育成されるのであります。
かかる事態を何か夢物語と感ぜられますならば、明治時代における道路網、大正時代における鉄道網の整備が、わが国の政治、経済、社会、文化の上に及ぼした影響を見のがすものであります。今日、昭和の後半におきまして、高速自動車交通網の完成を期しまするゆえんは、この歴史的な事態をさらに発展させたいからにほかならないのであります。
第四に、以上の施策によりまして、わが国民経済の拡大発展のための最も重要な基盤が造成されることとなるのでありますが、これらの施策に要しまする経費は、今日及び将来の国民の努力によりまして、国民経済規模の中において十分にまかない得るものであることを確信いたしまして、提案いたしたことでございます。すなわち、高速幹線自動車道の建設に要しまする経費は、年間約二百億円ないし三百億円でございます。この額は、たとえば政府の研究いたしました昭和四十年までの総合開発の構想中で必要と認められている公共投融資の年平均額の六%程度であり、また現在同様に産業発展の基盤造成として重点的な財政投融資している電源開発事業の年経費を下回っている額であります。その他の総合開発事業に要しまする経費は、総合的重点的財政投融資によってまかない得べきものと考えます。
第五に、わが国民経済の拡大発展への過程におきまして、国民の完全雇用を期するためには、相当大規模な就労対策事業の継続的実施が必要と考えるのでありますが、以上の事業は、その最も有効な事業であることであります。
以上申し述べましたかかる画期的な施策の実施に当りましては、政府は、関係者の知能を集め、また関係部局の技術その他の粋を集め、緊密な協力によって、後世に悔いない成果を上げることを期待しておるのであります。
以上、本法案の提案趣旨の説明をいたしましたが、何とぞ慎重審議の上すみやかに御決定せられんことをこいねがいまして、提案理由の説明にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/2
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003・内海安吉
○内海委員長 宮澤胤勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/3
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004・宮澤胤勇
○宮澤胤勇君 ただいま小澤議員より提案の趣旨の概略を申し上げたのでありますが、この計画の概要をお手元に差し上げてありますが、それを要約いたしまして簡単に筋だけを補足して御説明申し上げたいと思います。ただいまも提案趣旨の中にありましたごとく、本建設の趣旨は、何といっても自動車専用道路であるということ、従来の一般道路、混用道路でなくて、自動車の専用道路である。もう一つは、これが建設に当りましては、非常に多額の費用を要しますとともに、利用者において非常な便益を受けていくということになりますので、大部分の計画は有料道路とし、そして費用を逐次弁済をしていく、こういう計画をもって立てていきたいと思うのであります。なお普通の道路でありますれば、人口の多いところを縫っていく方が効率が多いというわけでありますけれども、これは北海道から本州を通って九州鹿児島に至る日本の脊髄に一つ自動車道路を打ち抜いて、そうして総合的な産業開発の重要な一役をこの道路によって果たさせよう、こういう意図のもとに成り立ったのでありまして、おそらくほとんど衆議院における全員の御賛成をえておりますのも、その重要な目的のために、日本の一つ改造をやるのだというような点に皆様が御注意下すって、そうしてこの多数の共同の提案となったわけでありまして、この骨子だけは一つ最後まで貫いて御審議を願いたいと思うのが、この計画の本旨であります。
そうして第一着手といたしましては、やはり何といっても東京−大阪間における工事を、ここ四、五カ年にお有料道路とし、そして費用を逐次弁済をしていく、こういう計画をもって立てていきたいと思うのであります。なお普通の道路でありますれば、人口の多いところを縫っていく方が効率が多いというわけでありますけれども、これは北海道から本州を通って九州鹿児島に至る日本の脊髄に一つ自動車道路を打ち抜いて、そうして総合的な産業開発の重要な一役をこの道路によって果させよう、こういう意図のもとに成り立ったのでありまして、おそらくほとんど衆議院における全員の御賛成を得ておりますのも、その重要な目的のために、 日本の一つ改造をやるのだというような点に皆さまが御注意下すって、そうしてこの多数の共同の提案となったわけでありまして、この骨子だけは一つ最後まで貫いて御審議を願いたいと思うのが、この計画の本旨であいて完成したい。しかしながらこれは東京−大阪を四、五カ年において完成するという途上において、私は日本全体としてこの道に出なければならないというので、東北にも九州にも北海道にも、おそらく時を同じゅうしてこの計画が実施に移されるという機運が向いてくることを期待もいたしまするし、また五、六年後には少くとも一億になんなんとする人口を養っていくには、この道に出るよりほかないのではないか。これにありまするごとく、ほとんど五千万人からの就労対策ともなります。東海道一つにおきましてもそれだけの就労対策にもなるわけでありまして、全国的に及ぼしていけば、資源の開発——資源の開発といっても、単に今までの山岳地帯を開発するにとどまらず、今の原子動力とまではいかないでも、新しい科学の進歩によって、今まで資源でなかったものがどしどし資源として利用せられる時代も近づいておりますので、それと相待ってこの計画が本筋に乗っていくことと思います。
つきましてはなおその上に、これは計画としてはもうすでにいろいろな場合で御承知下すっておる通り、複々線でありまして、片道が二線、それが中央の高速度の方は、自動車でもって時速百キロないし百二十キロ走る。それから外側の普通の道が五十キロないし六十キロを走る。こういうことによりまして、人とか自転車の交通はむろん自動車専用道路ですから許されませんけれども、ドイツあたりにおいてもオートバイ以上はみんなそれに乗って行ける。こういうわけで、そういう計画のもとに東京−大阪間、ごく主要道路あるいはその他の道路は、幅員において二十二メートル、十八メートルぐらいの二種類にしておくことが適当ではないかという一応の案であります。これは今後の実施によってもっと検討さるべきであろうと思うのでありますが、そういうような方法によって、いずれにしましても高速とそれから緩行のものと二つ置いて、しかしながら一般の自動車でなく、オートバイ以上の自動車専用道路である、そうして大部分の場所が有料道路として建設費を償還していく、こういう計画をもつて進めていきたいと思います。なお山岳地帯を通るのでありますから、むろん市街地とか農耕地をつぶすことなくして、そうして山地の間を縫っていく。従ってその点におきましては、この計画に対して各地方でも非常に歓迎をされておる模様でありまして、これが実行に当って、通過する地方の方々との摩擦を起すということも少かろうと思うのでありまして、そういう意味においてこの山岳地帯を貫通するということになっております。
全体で三千キロとなっておりますけれども、そのうち北海道が二線になっておりましてこれが約千キロ、それから青森−東京間が六百五十キロ、東京−大阪間が四百五十キロ、それから大阪から下関間五百キロ、門司−鹿児島間が三百キロ、大よそこれで三千キロでありまして、今のところの計画ではキロ二億円当りで、六千億円を要する、こういうことになっておりますが、これはまあ実際に当ってみなければわかりませんが、大よその計画はこれで完成できる、こういうふうに考えておる次第であります。
なお世間の方々からいろいろ、一体その途中の停車とか、それからバスその他のものは一体どうしてこれを利用するのだとかいうようなことを盛んに聞かれもし、いろいろな方面からそういうお話もあるのでありますが、この自動車道路は、——自動車道路としては御承知のごとくアメリカのハイウェイ、ドイツのオートバーンが世界的な存在ですけれども、アメリカのハイウェイよりも、ドイツのオートバーン、ほんとうの自動車専用道路としての行き方を日本ではとっていきたい。アメリカのハイウェイが、ある意味における一般交通路の補助的な役目をしておりますが、ドイツのようにほんとうの自動車専用だけの意味でやっていく方が、今日の日本の総合開発という意味において、また日本の一つの新しい産業開発の原動力を与えるというような意味において、その方が適当であるのではないか、こういうふうに今考えて進められております。
それからこの道路を利用する面において、一般の道路がなければ不便でしようがないじゃないか。そんな自動車だけの専用のものを高価な金をかけて作って、果して利用の道があるのかというお話も承わるのでありますが、この計画は東京−大阪間においても、途中四十ヵ所の昇降口がありますけれども、あるいは途中でどこででも、地方でつまり上りおりの口をつけようと思えば、どこからでもその地方でつけられる。そうしてそれは幾ら数を多くしても、この道路の利用の本質には一向差しつかえない、こういう行き方になっております。よく停車場はどこへ作るのだという話がありますが、これはむろん停車場はめいめいのうちが停車場で、自分のうちから出発してその道路に乗っていくのですから、めいめいのうちの玄関が全部この道路の停車場というような形においてこれが利用せられていく、こういう構想において一つ進めていきたいと考えておるのでありまして、ごく概略申し上げまして、いずれまた皆さんから御質疑をいただいて、順次お話を申し上げるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/4
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005・内海安吉
○内海委員長 竹谷源太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/5
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006・竹谷源太郎
○竹谷源太郎君 私から国土開発縦貫自動車道建設の要綱について簡略に御説明いたします。
第一に、この縦貫自動車道建設法の目的でございますが、われわれ日本人は、九千万の膨大な人口を擁する大民族でありますが、遺憾ながら土地が狭小であり、資源がきわめて貧弱でございます。このわれわれの生活水準を高め、また自立経済を達成するために、貿易や人口問題のためにスズメの涙程度の植民、移民というようなことだけでは、とうていわれわれの生活を向上させることは困難でございます。しかるに振り返ってみますると、御案内のように狭いといいながら、わが三十七万平方キロメートルの国土の中で、六十八%は山林高原地帯であり、この六十八%を占める山林高原地帯のうち、利用せられているのはわずかに今のところ四〇%で、残り六〇%、すなわち全国土の約四〇%が全然利用せられていない土地が残されておるのでございまして、これを利用し、またその資源を開発することによって、わが国における経済上の原料資源の自給をはかり、また人間の住む土地をこしらえていくということになりますならば、日本の国土が四割方拡大されたと同じ結果になると考えられるのでございます。この国土の多面的開発をはかるのが第一の目的であり、同時に近代高速交通体系を——昔は道路であり、次に汽車ができ、今度は自動車道によりまして日本の高速度交通網を完成いたしまして、そうして日本の政治的な社会的な経済的な文化的な発展を策し、そして新しい農村、新しい都市を形成いたしまして、りっぱな住みよい楽土日本を作ろう、これが縦貫自動車道建設の目的であると存ずるのでございます。
第二の計画について御説明申し上げますが、これはすでにお話もありました通り、北海道から九州まで約三千キロメートル延長の高速幹線自動車道をもって国土を縦貫させ、そうして重要経済地域を最短距離、最短時間で結ぶとともに、既開発及び未開発の地帯を貫通させようとするものでございます。この国土開発縦貫自動車道は、国が大体建設をするという建前でございまして、その総事業費約六千五百億円、一部については一般自動算道として、民間に免許をすることもできるという法案の建前になっておるのでございます。またこの幹線道路のほかに、この縦貫自動車道を中心といたしまして、それから肋骨状に一般自動車道あるいは主要な道路を作りまして、この延長が二千五百キロメートルでございますが、幹線の三千キロメートルのほかに二千五百キロメートルの肋骨状の支線を作りまして、交通網を整備しようというのでございますが、この肋骨状の支線は、その経費約千二百億円を予定いたしておるのでございます。これらの自動車道の建設と並行いたしまして、その沿線地帯の資源を開発し、また耕地牧野の改良、鉱工業の立地条件の整備、新都市及び新農村の建設等の開発事業の計画的実施を促進していこう、こういうのでございます。なお農耕地の壊廃をできるだけ避けますが、やむを得ざる移転というような問題もできてくるかと思いますが、これら移転住民に対しましては、定住地を設定してやるという特殊な補償の方法を講じたい、このように考える次第でございます。
第三に計画実施による経済社会的な効果でございますが、この自動車道ができますならば、今までの日本の交通の時間を三分の一以下に短縮することができまするし、また東京あるいは大阪から全国至るところ、一日ないし半日くらいですべて到達ができる。ヘビのように細長い日本が、卵くらいの円形のものに交通網の完備によって相なるということになりますならば、日本の経済の発展はすばらしいものであり、これによるところの輸送コストの引き下げや、あるいは物資交流の迅速化による産業の発展というものは、期してまつべきものがあると考えるのでございます。また電源開発等につきましても、すでにコストが高くついて、本年度は千七百億円の電源開発の投融資をいたすのでございまするが、非常にコストが高くなって参りました。この自動車道ができますならば、電源開発のコストも非常に安くなりまするし、また鉱工業の立地条件の適正化によりまして、各般の企業が合理的に促進せられる結果になると思うのでございます。また農業上における食糧増産によりまして、二千億円に近い外貨を今支払っておらなければなりませんが、これらは自給することによって、国際収支の圧迫を緩和できまするし、また日本人が食う食糧を全部国内で生産できるということになりますとともに、農家の二、三男問題がこれによって解決できると思います。なおまたこの交通網の完備によりまして、新しい都市が山岳高原地帯にもできまして、大都市に蝟集しておりますところの人口を再配分することができると思うのでございます。またこの自動車道は、国際観光ルートとして世界でもきわめて有数なものになりまして、これによる外貨の収入ということも期待できるかと思うのでございます。またこの事業の推進のみによりましても、十万人くらいの就労が得られまするし、これに伴うあらゆる産業の開発によりまして、完全雇用という目的も達せられるのではないかと思うのでございます。次に実施の方法でございまするが、この実施に当りましては、内閣に建設審議会を設けまして、これが調査、測量、審議、そうして計画の立案をいたすわけでございまするが、提案者の計画といたしましては、昭和三十一年度から二十カ年計画、年間に二百億ないし三百億の財政投融資等をはかろうとするものでございます。
次にこの実施の機関でございまするが、これにつきましては、この建設法案が通りますならば、あるいは公社あるいは民間にやらせる、いろいろ案もございますが、適正な実施機関によりまして、迅速に、しかもりっぱな工事ができまして、この事業を完成させるような、そういう実施機関を設ける必要があると思うのでございます。
第一期事業としては東京−大阪間をとりあえず予定をいたしておるのでございまするが、これが千三百五十億円でございます。なおこの事業のために地方の青年を大規模に組織をいたしまして、約十万人くらい一年間に必要でございますが、これに技術的の訓練を施し、近代的土木の施工に当らしめまして、厳正な工事の施行、能率的工事を期しまして、そうして有為な地方青年の就労自立対策に資せんとするものでございます。
財源の問題についてでございますが、これにつきましては先ほど来お話もありました通り、日本の財政投融資のわずか六%程度で、この事業の実施ができまするのでございまするし、なおまたこの事業のためには債券の発行によって、民間その他の資本の導入をいたさんとするものでございます。この道路は有料線にすべきか、あるいは一部有料一般無料とするかというような問題につきましては、これは今後検討すべきものでございまするが、輸送コストがバス、トラック等についていいますと、一キロ当り約二十円くらいは輸送コストが安くなります。従って一キロ十円程度の通行料をとるということは、あえて至難のことでもないのでございまして、有料制による事業費の償還というようなことも可能なのでありまするが、この問題は国営の事業でございまするから、いかようになすべきか、今後の検討によることと考える次第でございます。なおこの事業によりまして、いわば大きな失業対策事業となるのでありまして、今現にたくさんの国費を使って就労対策事業をやっております。そういう意味合いからこの就労対策事業として、この事業に対しましては応分の国庫の負担も差しつかえないのではないか、このように考える次第でございます。
以上きわめて簡略でございましたが、この自動車道建設の要綱を御説明申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/6
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007・内海安吉
○内海委員長 楯兼次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/7
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008・楯兼次郎
○楯兼次郎君 それでは建設法案の要旨を簡単に御説明申し上げたいと思います。
第一条は、この法律の目的でございますが、先ほど三名の提案者がこまかく御説明になりましたような要旨が載っておるのでありまして、第一に、国土を縦貫する高速幹線自動車道を開設すること、第二に、これとあわせてその支線となるべき主要な道路または一般自動車道の整備を促進し、その組み合せで道路網、鉄道網に次ぐ第三陸上交通路としての高速自動車交通網を新たに形成すること、第三に、この高速自動車交通網の形成を基として、国土の普遍的開発、画期的な商業の立地振興及び国民生活領域の拡大をはかるため、その集約として沿線地帯における新都市及び新農村の建設を促進すること、以上の目的がうたってあるわけでございます。
第二条は、定義でございまして、この法律で国土開発縦貫自動車道とは、もっぱら自動車の交通の用に供する道たる自動車道をいい、道路運送法の適用を受けるものでありまして、これは運輸及び建設両省の共管事項に属するものであります。従いまして道路法の適用を受け、一般交通の用に供するいわゆる普通道路とは、区別して考えなければならないと思います。
第三条は、本法案中最も重要な条項でございまして、国土開発縦貫自動車道、すなわち高速幹線自動車道として、国において建設すべき路線を、予定路線として設定しておるのであります。中央自動車道外六自動車道を予定路線とし、別表にその路線名、起点、終点及び主たる経過地を定めております。その経過地につきましては、一県に一ヵ所ぐらいとしまして、きわめて大筋のルートをきめているのでございます。国土開発縦貫自動車は、わが国の重要地域を最短距離、最短時間で結ぶとともに、既開発及び未開発の地域を貫通する趣旨によりまして、おのずから行くべき道は明らかとなると思うのでありますが、なお予定路線のルートの基礎は一応ペーパー・ロケーションができておるのでありますが、具体的な路線決定をいたします際には、この大筋のルートの範囲で十分に検討すべきものであることは申し上げるまでもないことであります。なお国が国土開発縦貫自動車を建設する場合は、道路運送法中の国営自動車道事業の規定によって行うこととなるのであります。
第四条は、前条により国が建設すべきものと定められている予定路線であっても、その一部について、民間、公共団体等、国以外の者に対しまして、一般自動車道としての建設を免許することができるとしまして、その建設を促進することとしております。この際、第五条及び第八条によりまして、政府は必要な資金の融通あっせんをすることができることとしております。ただしこの場合の免許は、いわゆる解除規定でありまして、被免許者は、道路運送法に定める一般自動車道事業の免許により事業実施をしなければならないわけであります。以上の予定路線中の免許路線につきましても、当然高速幹線自動車道として、一貫した機能を発揮しなければならないものでありますから、自動車道の構造上またはその事業経営上、一定の規格または基準によらしめる必要があるのでありますから、その条件を付することのあることを規定しております。
第五条は、国土開発縦貫自動車道の建設は、陸上交通需要またはその調整上はもとより、国土総合開発上、また国家財政資金計画上重要な意義を持つものでありますから、その所掌は運輸及び建設の両省にあるわけでありますが、そのいずれの路線をいずれの規模でいずれの時期に建設するかの建設線の基本計画の立案を内閣総理大臣の責任といたしまして、関係大臣、衆参両院議員代表及び学識経験者からなる国土開発縦貫自動車道建設審議会の議を経て、これを決定するようにいたしてございます。これは産業の拡大発展の重点事業として電源開発に続くものと考え、電源開発促進法における電源開発の扱いと同様の扱いをしているわけでございます。この内閣総理大臣の決定いたしまする建設線の基本計画を、運輸及び建設両省で実施することとなるのでございます。
第六条は、前条の高速幹線自動車道の建設と並行しまして、第一条の目的を達成するためには、高速自動車交通網を形成させるため、これに接続する主要な道路または一般自動車道の建設を促進し、また国土の普遍的開発、画期的な産業の立地振興及び国民生活領域の拡大をはかるため、新都市及び新農村の建設を促進する必要があるのでありますから、内閣総理大臣に、基本計画に照らして、これらの事項に関する関係省の計画の立案及び実施、免許等の処分について総合調整する権限を与えておるのでございます。以上本条及び前条によりまして、内閣総理大臣に新たな任務が課せられておるのであります。従いまして総理府に、この重要な行政事務を行うセクションが新たに必要となると考えられます。このセクションはまた審議会の事務局ともなるわけであります。
第七条及び第八条は、経費に関する措置を定めたのでございまして、国の予算の場合には財政法第十四条の二の「特に必要がある場合」としまして、継続費の設定を、建設線の基本計画に照らして重要な一般自動車道事業を経営する者に対しては、資金の融通あっせんのできることを定めております。
第九条は、国土開発縦貫自動車道の建設に伴う犠牲者に対し、正当な補償を行うことと相まって行う必要があると認める生活再建及び環境整備のための措置について、政府がその実施に努めるべきものとしなければならないということを明記したわけでございます。先ほど来御提案がございましたように、なるべく耕地であるとか人家を避けまして、比較的山の中を一直線に通していく、こういうことで私どもの考えといたしましては、できるだけ犠牲者を出さない、こういう建前をとっておりますが、もし該当する人たちに対しましては、万全の措置をとっていかなくてはならない、こういうことでこの規定を入れておるわけでございます。
第十条は、内閣総理大臣が建設線の基本計画を立案いたしますため必要な基礎調査を、政府各機関がすみやかに実施すべきことを定めております。その実施方法は、内閣総理大臣が調査基準の決定、実施上の調整及び調査結果の統合を行い、また必要な予算を一括計上しまして、これに基いて必要な経費の移しかえを受け、運輸及び建設両省または関係省がその分担に従い実施するものとすることが最も効果的であると考えられます。高速自動車道の建設は、総合的な技術の集積が必要であり、また国土総合開発の重要なきめ手となるものであるからであります。
第十一条から第十四条までは、国土開発縦貫自動車道建設審議会に関する規定でありますが、本審議会は、本法案におきましては、内閣総理大臣の議決機関として重要な役割をになっておるのであります。
第十五条は、政令への委任事項であります。以上、本法案の要旨について申し述べた次第であります。
この中の第六条に出ておりまする構成につきまして、われわれ提案者の代表といたしましては、お手元に「国土開発縦貫自動車道建設準備室設置案」、こういうプリントをお配りしてございますが、一応このプリントにありますような構成を考えておるわけでございます。簡単に申し上げますると、総理府審議室内に準備室を設置する。構成といたしましては、総理府本官一、運輸、建設各三、通産、農林、経審、労働、厚生各一、出向または兼務官計十二名で構成いたしまして、所掌事務といたしましては、行政事務は内閣総理大臣の事務、建設線の基本計画の立案、右のための基礎調査の総括、建設線の基本計画と関連する事項の調整、資金計画の立案、前各項のための予算の一括計上、必要に応じ移しかえ、審議会事務といたしましては、国土開発縦貫自動車道建設審議会の事務処理、右の幹事会の運営。それから建設線の基本計画立案のための基礎調査実施方法案について申し上げます。総括は内閣総理大臣(国土開発縦貫自動車道建設準備室)、調査基準の決定及び調査実施上の調整、調査成果の検討整理統合、調査費予算の一括計上、必要に応じ移しかえ、実施事項といたしまして運輸及び建設両省、一番といたしましてペーパー・ロケーション(踏査、部分的実測及び地質調査を含む)それから転換交通量調査は運輸省自動車局、建設省道路局、それから総合開発経済調査、誘発交通量調査、これは建設省計画局でやっていただき、事業実施に伴う調査は、公社等実施機関によりましてこれを行なっていく。これは後日の問題でありますが、その構成を図によって一見いたしますと、次に印刷をいたしておりますその構成図によって、このようになるかと考えます。
以上簡単に提案をいたしましたが、先ほど来各提案者が申し述べておりますように、この非常に画期的な大事業に対しまして、ぜひ建設各委員の御協力を得まして、本国会で通過し、明るいわれわれ日本の国が前進のできますように御協力をお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/8
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009・内海安吉
○内海委員長 本案に関する質疑は次会に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/9
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010・内海安吉
○内海委員長 なおこの際お諮りいたしますが、本案に関しまして運輸委員会より連合審査会開会の申し入れがありましたが、これを受諾して連合審査会を開くに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/10
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011・内海安吉
○内海委員長 御異議なしと認めて、さように決しました。
なお開会の日時等につきましては、両委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/11
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012・内海安吉
○内海委員長 御異議なしと認め、さように決しました。開会の日時は公報をもってお知らせいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/12
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013・内海安吉
○内海委員長 次に、さきに議長の承認を得まして北海道における七月の豪雨による水害状況調査のため、委員を北海道に派遣いたしたのでありますが、その調査につきまして派遣委員より報告を聴取することといたします。大高康君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/13
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014・大高康
○大高委員 衆議院規則第五十五条の規定に基き、議長の承認を得て、先般北海道地方に発生した豪雨災害を視察して参りましたので、以下その実情を御報告申し上げます。
今回の北海道における豪雨災害は、地域的に大別して、上川、空知管内と日高管内の二カ所に分類することができるのであります。まず上川、空知地方では、七月三日、オホーツク海に発生した低気圧の南下により 不連続線が留萌に上陸し、石狩、天塩の両水系に分水する山脈に延びて、四日早朝まで降り続く豪雨となったもので、ために石狩川、雨竜川及び天塩川が増水し、ついにはんらんを始め、田畑の浸水面積十一万町歩、浸水家屋一万三千六百戸に達したものであります。日高地方では、前述の留萌に上陸した不連続線が南下して日高地方に達し、三日夜より四日朝にかけて、新冠川上流地方に十二時間で二百ミリ以上の豪雨をもたらし、沙流川、新冠川、静内川、幌別川等に甚大な被害を生んだものであります。
かくのごとく今回の豪雨災害は、この二地方に集中的に発生したものであったために、空知、上川地方を第一班とし、目高地方を第二班とする二班に分れて視察することになりました。中島委員と私とは第一班に加わりましたので、この地方の災害状況について御報告申し上げます。
空知、上川地方の災害の特徴は、全体的に見て冠水面積が多く、従って土木災害よりも、主として農林災害に大なるものがあったのであります。土木災害で特に目立ったことは、橋梁の被害が多かったことで、道及び市町村工事の分だけを見ても、その被害は個所数にして四百八カ所、金額にして二億四千九百万円、これに国費工事を加えると実に四百六十カ所二億八千万円に上るのであります。その被害原因を一応腐朽橋梁の多いことに求めたのでありましたが、橋梁台帳帳を調査いたしましたところは必ずしもそうではなく、二百ミリ以上という未曾有の降雨量のため、上流より次々と流失したもので、全くの水禍にあったものと思われます。
空知地方については、石狩川本川には大した増水はなかったのでありますが、その支川である雨竜川上流には二百ミリ以上の降雨があり、その水系にある雨竜村、北竜村、妹背牛町、秩父別村、沼田町、多度志村等は甚大なる被害をこうむったのであります。ことに北海道電力の発電ダムである雨竜、並びに鷹泊ダムの放水問題については、これが災害誘発の原因とも考えられる向きもあり、加えて昭和二十八年にも同様に水禍にあって、下流町村は降雨ごとに不安と恐怖と被害を受ける実情にありますので、今後引き続き本委員会において、ダムによる災害の原因ないしは管理方法について、十分調査究明されるよう、委員長において取り計らわれんことを要望いたします。
上川地方の天塩川水系につきましても、原因は空知地方と同様、降雨量が多かったことによるのでありますが、当地方は石狩川水系に比して開発がおくれており、戦後急速に開拓が進んで、人口密度も増加した関係上、それだけに河川改修がおくれ、文字通り原始河川が多く、その点、天塩川水系の恒久的な河川改修が、災害防止への根本問題であると考えます。特に同水域の名寄、美深両町付近の惨状は目をおおうものがあり、橋梁の流失、町村道路の破壊により、両岸の交通は全く途絶し、今もって学校も休校の状態にありますので、速急なる復旧が要望されております。
以上、上川、空知管内の被害状況の概略を申し上げましたが、関係市町村は遭難者の救助と被害個所の復旧に日夜涙ぐましい努力を傾けておりますものの、何分にも最近数次にわたる災害でもあり、地方財政窮乏の折柄、政府、国会に対し地元より数々の要望がありましたので、本委員会の所管する事項について申し添えておきます。
一、石狩、天塩、雨竜の各河川の恒久的護岸工事を促進せられたい。
一、雨竜ダム、鷹泊ダムにおける管理方式の改善により、災害絶無の措置を講ぜられたい。
一、町村費支弁にかかる道路、橋梁等の災害復旧費につき、国庫補助並びに起債の増額を認めるとともに、すみやかなる短期融資を措置されたい。
一、国費支弁にかかる道路、橋梁等のすみやかなる復旧を実施されたい。
以上で報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/14
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015・内海安吉
○内海委員長 仲川房次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/15
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016・仲川房次郎
○仲川委員 次に私より高地方災害について御報告申し上げます。
日高地方の各河川は、六月末より七月初めにかけての降雨により、おおむね満水状況に置かれたのでありますが、去る三日及び四日の雨日にわたって降り続いた雨は、最高百三十二ミリに達し、各河川、特に新冠川、静内川は一そうの増水を加え、橋梁の流失、河川のはんらん、堤防の決壊、道路の流失、埋没等が続出し、その被害は土木、産業、住宅等の各般にわたり、人的にも物的にも膨大な損害をこうむるに至ったのであります。
この原因につきましては、日高地方原始河川にひとしい河川管理と、山林の風倒、伐採等による森林の保水力の喪失により、水害発生の危険性がある当地方の町村の大部分が、日高山脈の水系に従い、太平洋に面して点在する立地条件にあったため、このたびの水禍を招くに至ったものと思われるのであります。
特に静内町においては、三日の午後九時から降り続いた豪雨により、静内川及びその支川は急激に水位を増し、四日午前七時御園堤防及び名川支流堤防が決壊し、続いて豊畑、原堤防が決壊、激流は静内堤防を乗り越えて市街に迫り、ついに午前十時市街全域が浸水、全町戸数の約七〇%が流失、浸水等の被害を受けたのであります。
土木災害についても、道路、河川等被害が甚大で、約一億九百万円、その他農林災害、商品災害等を合せると、実に八億五千百八十万円という大災害であったのであります。
静内川と同様、日高山脈に水源を有し、それぞれ並行して太平洋に注ぐ新冠村の新冠川、門別村の門別川、三石村の鳧舞川、荻伏村の元浦川、浦河町の幌別川等も静内川と同様、増水はんらんし、橋梁の流失、河川のはんらん、堤防の決壊等の土木災害を初め、耕地の流失、埋没、家屋の流失、浸水等の被害をこうむったのであります。
そこでこれが対策でありますが、北海道の特殊性にもかんがみまして、以下今回の視察を通じて感じたことにつき、私の所見を述べたいと存ずるのでありますが、これに対する政府の責任ある御見解を承わりたいと存じます。
まず第一は、累年災害をこうむる地方に対する特別措置でありますが、北海道におきましては、先年の十勝沖大地震、さらに昨年の十五号台風とほとんど連続して災害を受け、復旧するいとまなく、住民は疲弊のどん底にあえいでいるのであります。今回提出されておりまする公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の一部改正法案にも、この趣旨が盛り込まれてあることと存じますが、その施行に当っては、北海道地方の災害についても特段の配慮が必要であると考えます。
第二は、過年度災害の復旧を促進することであります。この問題は、ひとり北海道地方のみでなく、全国的なる問題でありまして、従来より繰り返し強調されていることでありますが、北海道においても二十五年災に対する国庫補助金がいまだに交付されていない地方もあり、経済規模の小さい荻伏村等に七百万円余の交付分があるというような実情であります。災害が災害を呼ぶということはわかり切ったことでありますので、過年災の復旧はすみやかに行われるべきであると考えます。
第三は、つなぎ融資の問題でありますが、災害地にありましては、流失住宅、道路、橋梁の復旧は焦眉の急務でありますので、大幅にしかも早急に行われるべきものと考えます。なお北海道といたしましては、復旧費総額五十二億に対しまして、二十八億のつなぎ融資を強く要望いたしております。
第四は、原始河川に対する根本的治水計画を樹立し、これを促進することであります。原始河川と改修河川が相並んで太平洋に注ぐ日高地方を視察いたしまして、両者の被害の差がいかにはなはだしいかをまのあたりに見て災害防止の基本は治水であることを痛感いたしたのであります。確固たる計画のもとにこれを促進されんことを切望するものであります。
第五は、重要橋梁を永久橋にすることであります。北海道の橋梁は本州に比べて木橋が非常に多く、このたび視察いたしました旭川と浦河を結ぶ二級国道旭川−浦河線中、平取町の平取橋は全長二百五十メートルの長大橋でありますが、これが木橋で毎年のごとく流失または破損し、ために食糧、木材、鉱産物等の搬出もできず、日高村等は全く陸の孤島となっている状態であります。かくのごときことは国家的見地からしても大なる損害でありますので、ぜひとも永久橋とされるべきものと考えます。
その他風倒木の災害に与える影響を調査し、これが対策を樹立すること、雨量観測施設を拡充強化すること等、問題は多々あるのでありますが、以上の報告に対しまして、政府側の責任ある御答弁を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/16
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017・米田正文
○米田政府委員 北海道災害に関しましては、ただいまお話のございましたように、当初速報のありましたものよりも、逐次被害が深刻であることが、漸次明らかになってきておるような実情でございます。私どもとしても今回の水害については、十分対策を立てていきたいと全体的には考えております。ただいま御質問のございました要点についてお答え申し上げますと、第一番目の累年災害の問題でございますが、これは今度の御審議を願っております負担法の改正におきましては、ことし災害を受けますと、去年おととしの三年間の災害の総額と標準税収の総額との比較でいたしまして、その三年間の災害額が標準税収を上回る場合には、現在の額よりも高率な補助をするという趣旨になっております。これはまだ本年の災害が途中でございますから結論は出て参りませんが、三十年度一ぱいいたしまして、本年度に起きたそういう災害を総計いたしますと、今日の段階においてまだ結論は出ておりませんけれども、三十年度一ぱいたった上で、そういう措置に概当するかどうかについてはよく研究をいたしたいと存じます。それからこれはもうひとり北海道のみならず、各都道府県及び市町村全部について計算いたすつもりでございます。これによっておそらく相当な府県市町村に至るまでが、高率補助を受ける結果になると思います。
次に過年災につきましては、お話の通りまだことしの予算を執行いたしましても、二十五年度災害の一部が残るような実情でございます。私どもとしては二十五年度災害は三十年度中に片づけたいという予定でございましたけれども、今年度の予算の総ワクが一兆円という結果、やむを得ず二十五年度災害の一部を来年度に持ち越さざるを得ないような実情になりましたが、過年災全体といたしましては今日来年度以降に持ち越します分は、国費にして七百二十億ございます。これは二十五年度災害から二十九年度災害に、至ります分でございます。だから五年分が三十一年度に持ち越されることになりますが、その額は七百二十億であります。その七百二十億はただいまのところ建設省といたしましては、三十一年度以降三カ年間で完了いたしたい、こういう計画でございます。
それから今回の災害のつなぎ融資の問題でございますが、これは先般来各都道府県からのつなぎ融資の申請書に基きまして、大蔵省とわれわれの方と折衝をいたしました結果、去る十三日に北海道、佐賀、長崎、秋田、山形の五道県につきまして、総額一億一千五百万円というつなぎ融資が決定したという旨、大蔵省から通知を受けました。従いましてこの一億一千五百万は、私どもの当初の予定よりやや下回っておる数字ではございますが、第一次融資というような意味合いで、至急にこれが各都道府県に参ることだと思います。これによってできるだけの措置をしていただくことになっております。ただこの中に今申し上げました県及び道が入っておりまして、そのほかにまだ必要であります分は第二次の要求を今しておるところでございます。ごらんになりました北海道の今回の水害についてのつなぎ融資は、まだ出ておりません。今度北海道に二千二百万円というつなぎ融資が決定されましたが、これは融雪災害の分でございまして、ことしの春水の災害の融資でございます。そこで今回の分については今道庁から資料が出てきておりますので、内容を審査しておる状態でございます。今申し上げました五つの道県以外に、さしあたり第二次の融資あっせんとしては、新潟、富山、青森、岩手の四県を要求中でございます。北海道の今回の水害については、近日数字がまとまると思いますので、これによって至急に措置をいたしたいと考えております。
それから原始河川のお話がございましたが、確かに北海道の河川はまだ原始河川の域を出ないものが非常にたくさんございます。これは私どもとしても一応の河川計画を、主要なる河川については立てておりますが、なおそれ以外の河川が相当にございますので、御趣旨に沿ってできるだけ早く河川計画を進めて参りたいと考えております。
それから木橋のお話もございましたが、災害で木橋が流失をいたして——まあほとんど全部流されて、今度復旧するときにどうするかという問題がございます。現地ではコンクリートの橋にぜひ直してくれというような希望が非常に強いのでございますが、私どもとしても、ある一定の基準はございますが、やむを得ざるものについては木橋をコンクリートにかえる考え方も持っております。そういうことによりましてできるだけ永久橋と申しますか、少々の洪水では流れないものを作りたい、こういうふうに考えております。
概要でございますが以上お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/17
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018・仲川房次郎
○仲川委員 詳しく御答弁願いましてけっこうでしたが、私の見ました新冠川の状況は、ちょうど山と山との間で耕地が非常に狭く、完全な河川をとりますとほとんど農地がなくなる。そこで完全なる堤防を作るには、どうしても新冠川の上流に水位調節ダムを作る必要がある。それは道庁の方も非常にそれを賛成しております。こういう点についても十分一つ御考慮願いたい。
それから今仰せられました木橋を永久橋化する。これは新冠川の橋はほとんど木橋でありまして、聞いてみますと毎年々橋が流される。かようなところは努めて永久橋化することに努力してもらいたい。
さらにお願い申し上げますが、問題は、私はこういうような調子で年々災害が起りますと、災害亡国になるということを心配いたしますので、どうしても根本的に治山治水の対策を立てて、この災害を除去することが、まことに必要な今日の国策であると思うのであります。そこで自由党内閣のときに治山治水の国土保全の総合対策を立てて、一兆二千億の金を十カ年でやろうという計画を立てたと存じておりますが、現内閣においては治山治水についてのいかなる計画をお立てになっておるかということを、もしおわかりであったら御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/18
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019・米田正文
○米田政府委員 新冠川につきましては、まだ河川計画のはっきりしたものはできておりませんので、今後立てていきます上において、御趣旨のようなダムの建設ができるかどうかも、十分検討いたして参ることにいたしたいと思います。
それから根本的な、日本の治山治水根本対策の問題でございますが、これは御承知のように、昭和二十八年のあの西日本大災害のあと、政府にこの対策協議会ができまして、この案を建設省と農林省と合体いたしまして、共同で計画を策定いたしました。そのときにこの協議会にかけたのです。内容的には決定をいたしましたが、ただその内容の中で、予算の問題で農林省も合せますと総額一兆八千億でございました。今おっしゃられた一兆二千億というのは建設省の分だけでございますが、その一兆八千億についての総額も、これはやむを得ざるものということで認められましたけれども、十年間という年限が保留になったのでございます。十年間という点はとうとう決定を見ずに、年限だけの問題が延びて、まだ未決のままになっております。私どもといたしましても、この年限の問題を、何かの形でなるべく早い機会に決定を見るように努力をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/19
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020・内海安吉
○内海委員長 ほかに御質問ございませんか。——以上の調査報告は委員会において了承するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/20
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021・内海安吉
○内海委員長 御異議なしと認めまして、さように決しました。
なお東北及び北海道の災害復旧につきましては、当委員会としても非常に重大なる関心を有するものでありますので、後日委員会においてこれを取り上げたいと存じます。
なお公共土木施設災害復旧費国庫負担法の一部を改正する法律案は、本日の質疑はこれを取りやめまして、来る十九日委員会を開き、質疑を続行することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204149X03019550715/21
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