1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年七月十五日(金曜日)
午後二時十一分開会
―――――――――――――
委員の異動
本日委員小林亦治君辞任につき、その
補欠として赤松常子君を議長において
指名した。
―――――――――――――
出席者は左の通り。
委員長 成瀬 幡治君
理事
剱木 亨弘君
宮城タマヨ君
市川 房枝君
委員
中山 福藏君
藤原 道子君
赤松 常子君
一松 定吉君
羽仁 五郎君
国務大臣
国 務 大 臣 杉原 荒太君
政府委員
防衛庁防衛局長 林 一夫君
防衛庁装備局長 久保 龜夫君
法務政務次官 小泉 純也君
法務省矯正局長 渡部 善信君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 眞道君
説明員
法務省矯正局矯
正調査課長 樋口 忠吉君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
○少年院法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
保護法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/0
-
001・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。
まず、少年院法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案について御質疑のおありの方は、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/1
-
002・一松定吉
○一松定吉君 ほかでもないですが、私は字句の点ですが、少年院法の一部改正条文の第八条の二、とこに「在院者が矯正教育を受けるに際して、けがをし、又は病気にかかった場合において、これによって死亡したとき、又はなおったとき身体に障害が残ることが明らかなときは、法務省令の定めるところにより、手当金を与えるととができる。」とこうある。この在院者が矯正教育を受けるに際してけがをする、在院者が矯正教育を受けるに際して病気にかかる、その場合において法務省令の定めるところによって手当金を支給する、こういうのです。そうすると矯正教育を受けないときは、在院者が在院いたしておるのに矯正を受けておらん。今現に矯正教育を受けようとしているときに、受ける場所に出かけようとしておるときに、病気した、あるいはけがをしたというようなときはどうなるのですか、これは「矯正教育を受けるに際して、」とこういうふうに明確にやってしまうと、受けるときに限ってけがをし、もしくは病気にかかった、あるいは死亡したときに手当金を支給するというのですが、矯正教育を受けない、あるいは教育を受けに行く途中、あるいは受け終った後、そういうようなことがこのうちに包含されるのかされないのか。されないならばなぜ矯正教育を受けるに際してとしぼって、その受けるに際しての前後というときは、なぜこれを救済する必要がないのか。これはこの第八条の二のととろでそういう質問ですが、それと同じように質問を簡略にするために引き続いてやりますが、その第二ですね、「在院者が死亡した場合の手当金は、死亡した者の遺族に与える。」との在院者が死亡した場合というのは、矯正教育を受けるに際して死亡した場合なのか。すなわち第一項の「矯正教育を受けるに際して」ということを受けておるのか受けておらんのか。受けておらんとするねらば、この前のとの八条の二のときには矯正教育を受けるに際してけがをし、病気し死亡したときにやるのであるか、二項のときでは矯正教育を受ける、受けんにかかわらず死亡した場合にやるのか、なぜこういう区別を設けるのか、この点を明らかにしてもらいたい。これは足りないところがあったら補充してもらいたい。その点を一つ政府委員から御説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/2
-
003・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 私からお答え申し上げます。
私はこの法案の実は審議途中から矯正局長といたしまして御答弁申し上げることに相なりました。今までの規則等につきまして、つまびらかにいたしておらない点もあるかと思いますので、あるいは重複する点があるかもわかりませんが、その点あしからず御了承のほどをお願い申上げたく存じます。第八条の二に書いてあります「矯正教育を受けるに際して、」というこの字句の表現でありまするが、これは少年院法の第一条を受けまして、少年院は矯正教育を授ける施設ということに相なっておるわけでありまして、その在院者が少年院におきまして矯正教育を受ける際の負傷、死亡等についての手当金ということを考えておるわけであります。しかしながらとの「矯正教育を受けるに際して」というこの意味につきましては、私らが現在考えておりまするところは、この少年院における矯正教育のうちで職業の補導ということを今大体考えておるわけであります。これは職業を補導いたします際少年がけがをし、死亡するというような不幸な結果を招来いたしました際の手当金というものが、従来何ら規定がありませんでしたので、これを救済するという意味から、この条文を設けたわけなのであります。従いましてただいま仰せのような際につきまして、「矯正教育を受けるに際して」ということはただいま申しますような大体職業の補導ということにつきましての、際しての負傷もしくは死亡というふうにわれわれ解しておる次第であります。
なお第二項の「在院者が死亡した場合の手当金」という場合は、死亡した者の遺族に与えるという趣旨でありまして、第二項は第一項を受けた規定というふうに解釈いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/3
-
004・一松定吉
○一松定吉君 それじゃわからん。私のお尋ねするのは矯正教育を受ける、これから受けようとして出かけておったときにけがをしたとか、死亡したとか、あるいは矯正教育を受けてしまって、今度は自分の部屋に帰ろうとしたときに、けがをして死んだ、あるいは病気にかかったというようねときにはどうなるのか。それが「際して」、というのがそこまで範囲が広がるのかどうか、こういうのです。範囲がそこまで広がるのか。あるいは非常に厳格に、これから矯正教育を受けようとして出かける途中で、まだ受けない場合そのときにけがをした、あるいは死亡したというときにはどうねるのかそういう点、もっと字句を明確に規定しなければ、解釈に疑問があってはいけないからと、こういうわけです。その点を答えてもらわんと、「際して」、という言葉は教育を受けるときか、あるいは受けておる間か、あるいはとれかう受けに行くときも入るのか、さあこれから行こうとして自分の部屋を出て行くときに、まだ受けない、そういうようなときは「際して」、という言葉に入るのかどうかこういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/4
-
005・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) それでは申し上げます。われわれといたしましては、この「矯正教育を受けるに際して」と申しますのは、ただいま申し上げましたごとく、「矯正教育を受けるに際し」ということになりますと、実を申しますと、少年院における教育全般がとれは「矯正教育を受けるに際し」ということに入ると思います、これは広く解しますと……。従いまして、少年院における少年たちの行動は、すべてこの「矯正教育を受けるに際して」ということに相なると考えるわけであります。しかしながらわれわれのとりあえずの考え方といたしましては、その中で特にしぼりまして、職業の補導ということを中心として考えたいと思っておるわけであります。従いまして、この職業の補導ということに際しましての負傷、死亡ということをわれわれはその中でしぼって現在のところは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/5
-
006・一松定吉
○一松定吉君 それならば、それならばそういう文句で明らかに書かなければいけない。たとえば少年院在院者死傷手当金支給要綱案とここに規則があるね、「第二」によって見ると、「矯正教育として職業補導をうけるに際して、」と、ちゃんとこう書いてある。今あなたの解釈がそういう意味であるならば、との八条の二の「在院者が矯正教育を受けるに際して。」を矯正教育として職業補導を受けるに際してと書いたらいいじゃないか。それを書かなくて、こういうのはおかしいのみならず在院者というのは、矯正教育を受ける立場におるんだから、「際して」ということになるのだと言うねらば、「矯正教育を受けるに際して」というのは要らないじゃないか。在院者がけがをしたり、もしくは病気にかかった場合に、ということにしぼったらいいじゃないか。しかるにとういう文句をことに入れる以上は、今これから、「矯正教育を受けるに際して」と、これまではまだ矯正教育を受けてはないのだ。それならば、受けてしまった後にけがしたとか、死亡したときには、どうするのだということが当然疑問になるのですから、それを明らかに、疑問がないようにこの法文を整理したいということで今質問をしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/6
-
007・小泉純也
○政府委員(小泉純也君) ただいま一松先生の、「矯正教育を受けるに際して」という時間的、その前後の関係についての御講論はごもっともであると思うのであります。一松先生の御質疑の点を伺っておりますと、在院中全体を通じて、その時間内は全部「矯正教育を受けるに際して」というふうに解釈してよろしいのか、あるいは今局長が答弁をいたしまして、矯正教育が在院者の建前であるから、職業補導というような面に、その時間内におけるけがに対して見舞金を出すとかというような点で、いろいろの疑問が生まれると思うんでございまして、その「矯正教育を受けるに際して」という、在院中の時間的な関係、矯正教育を受けるについてのその前後の関係等につきまして、矯正局の樋口調査課長をして詳しく説明さしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/7
-
008・樋口忠吉
○説明員(樋口忠吉君) ただいま局長からも大略御説明申し上げましたが、「矯正教育を受けるに際して」ということの限界と申しますと、これは少年院に少年が入って参りまして、出るまでが一応矯正教育をする期間でございますので、一応そのすべてがかかるということに解釈できようかと思うんであります。しかしながら、矯正教育と申しましても、いろいろな面がございます。たとえば少年院法の第四条に、矯正教育の内容を大体あげておりますが、少年院の矯正教育は、在院者を社会生活に適応させるため、その自覚に訴え紀律ある生活のもとに、左に掲げる教科並びに職業の補導、適当な訓練及び医療を授けるものとする。」というふうに、一応少年院法の第四条で矯正教育の内容を抑えております。従いまして、このままでは、一応すべての場合が該当するということも考えられるんでありますが、しかしながら、実際問題といたしまして、矯正教育をいたします際に、けがをするとか病気にかかというようなことは、普通の生活をしておりましてのけがとか病気というようなものでなくって、これはただいま一松先生から御指摘ありましたように、まあ省令案を一応まだ素案ではございますけれども用意してございますが、それでは一応この第四条の中の職業補導というものを中心にしてやったらどうだろうかというふうに一応研究中でございます。なおでなますれば単に職業補導の場合だけでなく、たとえば少年院に火災が起って子供が消火に従事し、そうしてけがをしたような場合も、これは何とかめんどうをみてやる必要があるのじゃなかろうかというようなことも考えております。しかしながら「矯正教育を受けるに際して」といたしておきませんと、そういうような補業補導以外の場合も一応法務省としてはなるべくこうした手当金をやりたいと考えているものですから、職業補導というふうな限定した言葉でなくて、矯正教育というふうなまあ広い意味の言葉を使った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/8
-
009・一松定吉
○一松定吉君 よくわからんのですが、私の尋ねることを答えてもらいたいのです。矯正教育を受けるに際してけがをしたり、病気をしたり、死んだときに、この手当金を支給するというのであるが、矯正教育を受けるに際しない前、少年院に入っておって矯正教育を受けない間に、これから矯正教育を受けに行こうとして出かけて行く途中で病気になり、途中で死んだ、途中でけがをしたときはどうなんですかということなんです。あなた方のように、この少年院にいるのは矯正教育を受ける目的でいるんだから、そのときは「矯正教育を受けるに際して」のうちに入るんだというなら、こんな矯正教育を受けるに際して」、という言葉は要らないわけです。なぜならば在院者はけがふし云々という、「矯正教育を受けるに際して」というものは、これから受けるんだと言って出かけて行く途中は、まだ「受けるに際して、」でない、それまでに病気をしたり、けがをしたり死んだときは、金はやらんのだというならばとれもわかる。わかるように文句を、疑問のないようにこれを書かなければ
いかんのじゃないか、これが私の質問であります。だからして「矯正教育を受けるに際して」というだけではまだわからんから、職業補導を受けるに際してと、こういうふうにした方がいいとあなたがおっしゃるならば、そのように書いておけばいい、それを書かないで、こういうあいまいな文字を使うから今の質問が起る。これは八条の二に対しての質問です。八条の二のその次の「在院者が死亡した場合」という、この在院者が死亡するというのは、矯正教育存受けるに際して死亡した場合も含むのか、あるいは「在院者が死亡した」と言うんだから、矯正教育を受ける受けないにかかわらず、在院者である者が死亡した場合には、この死亡した者の遺族に手当金をやるということになるのか。それならばその第一と第二の、一方は矯正教育を受けるに際して、けがをし死亡をし、病気した、二の方では矯正教育を受けるに際してという文字を使っていなくて、「死亡した場合」ととうある。とするとこれは状態を二つに分けていると思うんです。それを一つの状態か、二つの分けている状態か、それを明らかにしたい、こういうのです。よく疑いのないようにとの文句をすればいいのです、質問はね……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/9
-
010・樋口忠吉
○説明員(樋口忠吉君) 御質問の御趣旨大体わかりましたが、「矯正教育を受けるに際して」と申しますのは、これは少年院法の第一条で「矯正教育を授ける施設とする。」とうたってありますので、少年院に入りますことが矯正教育を受けることになるわけであります。従ってこれから矯正教育を受けに出かけるとか、矯正教育を受けて帰ってきたというようなことは、一応考えておりません。少年院の中に収容されておりますことが矯正教育を受けておるというふうに私ども解釈しております。それからもう一つの御質問の第二項の点でございますが、第二項の「在院者が死亡した場合の手当金は、死亡した者の遺族に与える。」という規定はこれは第一項の規定を受けております規定一でございます。第一項の規定で、けがをいたしましたり、何かいたしまして障害が残った場合には、その手当金はこれは本人に支給する建前になっております。しかし死亡いたしました場合には、本人はこれは死んでしまいますので、支給する者を一応明らかにする必要があろうと考えますので、第一項の場合で死亡した場合の手当金はその遺族に与えると、こういう趣旨でございます。従って第二項は第一項と全然別の独立の規定であるとは解釈いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/10
-
011・一松定吉
○一松定吉君 よくわからんね、答弁が。在院者というものは少年院法の第一条の規定によって矯正教育の施設の中に入るのが在院者であるとするならば、「矯正教育を受けるに際して」という文字は要らんじゃありませんか。在院者がけがをし、または病気にかかった場合においてはこれこれとすればいいのに、特に「矯正教育を受けるに際して」という文字を入れるから問題が起る。と同時に第八条の二の2だね。在院者が死亡した場合、在院者が死亡するのについては矯正教育を受けるに際して死亡する場合と、矯正教育を受けるに際せずに死亡した場合とある。それらをあなたは在院者が死亡した場合というのを矯正教育を受けるに際して死亡した場合に限って死亡したということにこれを解釈しようとするとむずかしい解釈だ。在院者が死亡するのに矯正教育を受けるに際して死亡する場合と、受けないで死亡した場合とあるならば、二項の2の場合においては両方の場合を含む。両方の場合を含むにかかわらずこれを矯正教育を受けるに際して死亡した場合に限るのだということは、それは無理な解釈並んだ。その辺を明らかにして、疑いの起らんようにこの文句を使っちゃどうですかというのが質問の趣旨ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/11
-
012・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) この「矯正教育を受けるに際して」の字句の解釈でございますが、ただいま一松委員仰せのごとくあまりばく然としたきらいがないでもありませんですが、これは少年院法の第四条に矯正教育としてここに矯正教育の内容を記載いたしておるわけであります。われわれといたしましては生活指導と申しますことと、それから教科の指導、それから職業の補導、それと医療、こういうふうに実は考えておるわけでございます。従いまして在院、これは矯正教育を受けるための施設でありますが、たとえば少年が寝ておりますときにあるいはかような事態が起った、けがをした、あるいは病気にかかったという場合は、私はこれには入らないと思うのであります。いわゆる第四条の矯正教育に際してというふうに解釈すべきものだというふうに考えております。ただ、法務省令で在院者死傷手当金支給要綱案というものをお手元に配っておりまするが、取りあえずのところはわれわれの考えておりますのは、その教育の中で職業補導というところに取りあえずのところはしぼってこれを支給いたしたいと思っておりますが、できますればわれわれといたしましては、この矯正教育を授ける際の全般にわたってかような事態が起ったときに手当金を支給するような方向に持っていきたいという念願をわれわれ持っておるわけであります。しかしながら取りあえずのところ、ただいま申しますように職業補導ということに中心を置いて、まず手近なところから進めていきたいというふうな意向を持っておるわけであります。
第二項の方の在院者が死亡した場合の手当金というのは、これは第一項を受けた規定でございまして、死亡した場合は全部手当金を支給するという趣旨ではなくて、ただいまこの一項を受けまして、矯正教育を受けるに際して死亡した場合をさして、その手当金は死亡した者の遺族に与える。すなわち第二項の規定は誰に支給するかということを主とした規定というふうにわれわれは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/12
-
013・一松定吉
○一松定吉君 そうすると、伺いますが、在院者の死亡するというのは、矯正教育を受ける場合よりほか死亡する場合がないのですか。矯正教育を受ける場合以外にも死亡することがあるならば、その場合もこのうちに入るのじゃないか、在院者が死亡した場合に。それを特にあなたが金を遺族に支給することのみに重きを置いて、在院者が死亡したということを、矯正教育を受ける場合に死亡するものと、矯正教育を受けない場合に死亡する場合と二通りも三通りもあるでしょう。それならば、在院者が死亡した場合とあるのは、在院者が矯正教育を受ける場合に死亡した場合というならば、前項の事情に基いて死亡した場合とかということがあれば、矯正教育を受けた場合の死亡に当るのだが、それがない場合には、在院者の死亡というのは、矯正教育を受ける場合に死亡する場合も、矯正教育を受けぬ場合に死亡する場合もあるのだから、両方含むということに解釈されるじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/13
-
014・中山福藏
○中山福藏君 私は一松委員の質問に関連して、これははっきりさしておかんといかんと思うので、ちょっと一言私のも加えて御答弁願いたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/14
-
015・一松定吉
○一松定吉君 ではどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/15
-
016・中山福藏
○中山福藏君 私これは御説明なさる方と起草者と違うのじゃないかという気がするのですね。起草された方々はこれはあなた方の御説明になるような趣旨で起草されたものじゃないと私は見るのです。これは一松委員がおっしゃる通りに、これは「際して」という字とその次のこの条項との区別というものははっきりこれは私は起草者が考えてこれは文字を遣わしたものと私は見るのです。で、ここにこういう疑問を持たれてお尋ねになるのはこれは当然でしてね。これは起草者の意思を一応お聞きになってはっきりされないというと、いいかげんなことをおっしゃるというと、全然なんですよ、成文というものが根本からやり直さなきゃならぬことになると思いますが、これはどなたが一体起草されたものか。それを一つあわせて私は答弁を承わっておきたいのです。そうしないというと、ただ無理にこの場でつじつまを合せるようね御答弁になると、とんでもないことになると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/16
-
017・一松定吉
○一松定吉君 つまりね、在院者が死亡する場合に二通りあるでしょう。矯正教育を受けるに際して死亡する場合と、矯正教育を受けるに際してでなくて死亡する場合があるでしょう。この第二項については、ただ在院者が死亡した場合とあるのだから、二つの場合を含むのだと解釈するのが普通の法律解釈ですね。ところが、そうじゃないのだと、矯正教育を受けるに際しての死亡のことだけをいうのだというのであれば、この文句が足りないのです。前項の矯正教育を受けるに際して死亡した場合云々ということを入れなければ、死亡した場合が二つあるのだが、その一つだけをこれに入れて解釈するというのはそれは間違いなんだ。その点を明らかにせにやいかん。疑問のないようにしなきゃならぬ。疑問があるなら疑問のあるところを疑問のないように法文を直して、それで後日法文を運用する場合に疑問なからしめるようにしておくことが、実際に適応するゆえんだ。それを無理にあなた方のように在院者が死亡した場合というのは、いわゆる矯正教育を受ける場合に死亡したのだというと、受けない場合に死亡したのは入らんのかという疑問がすぐ起ってくる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/17
-
018・樋口忠吉
○説明員(樋口忠吉君) 私から御説明いたします。なお中山先生から起草者が違うのじゃないかという御注意がございましたが、私は初めから一応この案の作成について、いろいろ下準備を命ぜられていたしましたので、大体の経過は一応承知しておると考えております。ただいま一松先生からも、第二項と第一項との関係について御質問がありましたが、第二項で「在院者が死亡した場合の手当金は、」とこう書いてございますが、この少年院法で在院者が死亡いたしました場合に、手当金をやり得るというのはこの八条の二の第一項だけでございます。ほかにそういう規定はございません。従って第二項の「在院者が死亡した場合の手当金は」ということは、それは文理解釈上第八条の二の、ただいま御審議願っております第八条の二の第一項の場合にだけということに相なろうかと考えるのであります。でこの場合の手当金は、死亡した者の遺族に与える、こういうふうに押えておりますので、従って矯正教育を受けない場合の、その他の死亡というものは一応入らぬのだという解釈を私どもはとっておるのでありますが、大体こういう書き方で「在院者が死亡した場合の手当金は」というのはこれは第一項を当然受けておるのであって、その他の場合の死亡というものは入らないというふうに私ども解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/18
-
019・一松定吉
○一松定吉君 そう解釈するならば、第八条の二の「在院者が矯正教育を受けるに際して、けがをし、」云々という場合はこれから矯正教育を受けに行く途中で病気になって死んだらどうなんです。あるいは今矯正教育を受け終って、部屋に帰って死んだらどうなんです。そういうことはこのうちに入れるのがいいならばなぜ入れないのです。同じ保護する必要があるならば、矯正教育を受けるまっ最中に死んだ場合も、それがためにそれが原因になってうちへ帰って部屋で死んだ場合も、同じように保護しなきゃならぬのに、前のものは保護して、あとのものは保護しないという立法の精神はどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/19
-
020・樋口忠吉
○説明員(樋口忠吉君) この矯正教育を受けるに際して、いろいろけがをしたり、病気になったような場合ということは、矯正教育とけがとの間の因果関係、これは相当因果関係があれば、一応部屋へ帰って発病するとか、死亡するとかいうような場合も当然入ると解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/20
-
021・一松定吉
○一松定吉君 そういう解釈はなりませんよ。矯正教育を受けるに関係してとか、受けるによってとかいうならば、今のあなたの言うような原因結果の関係があるからいいけれども、「際して」という文字の解釈はそんなに原因、結果まで及びますか。そういう法理の解釈がありますか。矯正教育を受けるによって、死亡し、けがをし、云々というならば、矯正教育を受けてうちに帰って死んでしまう、部屋に帰って寝ておるときに病気が起ったというふうに、この病気の起った原因は、矯正教育を受けたことが原因にして死んだのだということだから、よってもって因果関係があるからいいということになるが、「際して」ということをそこまで広く解釈するのですか。いいかげんに解釈しちゃいかぬよ、僕も専門家だから。あなたの言うことならば、矯正教育を受けたるによってとか、あるいは原因してとかいうような因果関係の文字を使わなきゃならぬ。因果関係じゃないですよ、「受けるに際して」なんだから。この「に際して」というととと原因結果の関係というものは、必ずしもイクオールじゃないでしょう。そうすると矯正教育を受け終って、今部屋に帰ってきてやっておるときに病気になった、死んだというようなときには、なぜ保護しない。また矯正教育を受けるために、今出かけていく途中でにわかにけがをした、それに「矯正教育を受けるに際して」じゃないんだから保護しないというのなら、なぜそれを保護しない。同じように矯正教育を受けるためにその少年院に入れられておる者がちょっとした区切りのところで、ここは矯正教育を受けるに着手して死んだのだから保護しなければならぬ。また着手前に死んだのだから保護しないでいいというようなことはありようはずがない。原因結果の関係ということならば、いわゆる矯正教育を受け終って部屋に帰って死んだ、病気になって死んだ、もちろん原因結果の関係があるのだから、それは保護されて金をやる必要があるのだということの解釈はいいのですよ。「際して」という解釈を、原因結果の関係にまで持っていくということがいいのですかね、そういう解釈の仕方がいいのかね。悪いところは悪いで、お互いに協力して直せばいいのだから、無理にこの案を、この通りの字句を使わなければならぬということはない。要は目的を達すればいい。僕らはお手伝いする意味で、この文句じゃ少し悪かったら、こういうふうに変えて通そうじゃないかというのが、われわれの趣旨なんですからね。無理に反対してこれを審議未了に終らせるとか、無理に政府の意思に反して修正しようという考えはないのですよ。それはよく考えてもらわないと困る。法の解釈は、よくそういう問題が起り得べき問題だから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/21
-
022・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) ただいまお話しでございますが、別にこの字句ここだわるわけじゃございませんけれども、「矯正教育を受けるに際して」と申しますのは、われわれの社会感情から申しまして、大体その矯正教育を受けるに際してという範疇に入り得るわけで、けがをいたしましたものならば私入ると考えていいのじゃないかと思うのでございます。ただここに「これによって死亡したとき」というのがありますが、これはただいま申しましたように、因果関係、相当因果関係の及ぶ範囲内というところで考えたらよくはなかろうかと私思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/22
-
023・一松定吉
○一松定吉君 この程度でよろしい。あとは議論になるから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/23
-
024・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) 今の第一項と第二項との関係でございますが、ただいま樋口説明員から申し上げましたように、この第一項の方が手当金の支給の、これは何と申しますか、根元を止す規定であり、第二項の方は、この第一項を受けまして、「在院者が死亡した場合の手当金」、この手当金は死亡した者の遺族に与えるというふうに読むべきもので、第二項で全部の者に手当金を支給するという、何と申しますか、創設的な規定じゃないというふうにわれわれ考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/24
-
025・一松定吉
○一松定吉君 私の質問は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/25
-
026・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 新しい局長を迎えまして、前局長が中途でおかわりになりましたことは大へん残念でございますけれども、この新しい局長は少年法及び少年院法に対しましての権威者でもあられますし、かっては少年審判所長として、名所長として私ども尊敬しておりましたお方でございますので、今度の少年院法の一部改正につきまして、これはほんとうに今も一松先生がおっしゃったように、大事な子供の問題でございまするから、この子供をいかにしてよくするかという点について私どもは考えます以外には、他意はないこともよく新しい局長におわかりになっていることと思っておりますので、この法案を審議していきます上に私は大へん喜びを持っております。
そこで前に、前局長にもちょっと伺ったことでございますが、この条文についていろいろな質疑がまだ残っておりますが、きょうは根本問題についてちょっとお伺いしたいと思っております。それは少年法で守られます少年の年令が上りましたということ、十八歳から二十歳に上ったというこのことと、それからそのためあるいは現在の社会情勢がこういうことになりましたためも加わりまして、保護される矯正教育を受ける少年の質が非常に悪くなりましたということ、つまり数におきましても質におきましても、たくさんの問題を持ってきたということが、この少年院法の一部改正をしなければならなくなったことと思いますけれども、ここに私は根本問題として伺いたいことは、まだこの今度出ておりますこういう問題を考えます前に、ことに根本問題があるのではないかということ、つまりこの少年院におきましての矯正教育をいたしますというその矯正教育、少年院は教育の場であるということが、今日だんだん行刑の場であるというように変わっていっておるのではないかということを心配いたしますことは、この今度出て参ります少年院を逃走いたしました少年の連戻しに対しまして、少年院の職員に判事の令状を必要としたり、あるいは手錠をはめることを、もうそうでなくても今まで一体どういうことに基いて手錠がはめられておりましたか知りませんが、事実におきましては少年院の子供は手錠をはめられております。その上に手錠をはめる規則を作るなどということは、私はこれすなわち保護が行刑に変っていくのではないかということを非常に心配しておりますが、新しい局長の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/26
-
027・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) ただいま宮城委員から、現在の少年院の教育が行刑の臭味が非常に加わってきたのではないかという御懸念でございます。私は実はまだ着任早々でございまして、現実の姿はまだ見ておりません。しかしながら私も今まで聞きましたところにより、またわれわれの念願いたしておりますのは、決して少年院を行刑の場にするというようなことは、もってのほかのことでありまして、われわれといたしましては、行刑は行刑であり、少年院は古い伝統を持った矯正教育の場なんであります。私はこの少年院の矯正教育というものは昔の伝統をどこまでも守ってりっぱな花を咲かせたい、この気持にわれわれ一ぱいになっておるわけであります。今後ともこの矯正教育の徹底ということにつきましては、われわれのできるだけの力を尽してこれは守っていきたいということを固く信じておるものでございます。ただ、ただいま宮城委員の仰せのごとく、少年院における教育は非常な今困難に立ち至っておる。現実の姿は非常に困難に直面しておるということを一つ御理解願いたいと私思うのであります。と申しますのは、ただいま宮城委員の仰せのごとく、年令の引き上げという措置のために、質的に、また量的に少年院に入っております子供たちが、非常に昔の比では安い状態を現在かもしておるのであります。現実の姿といたしまして、昔の少年院にはいなかったような子供たちが現在少年院に入っておるのであります。この少年たちをいかにして矯正教育を施していくかということが、われわれに課された現在の一番大きな苦難であり、また解決しなければならないこれは重大問題だと私考えておるものであります。従いましてこの現在のこの現実の姿を目しまして、いかにこれを矛盾なく処理していくかというための、われわれの手当なんであります。ただいま御指摘になりました手錠の問題、一つずつ申し上げまするが、手錠の問題から申し上げまするが、たしかこちらの方でも久里浜の特別少年院に御視察に相なったと思いまするが、その際ごらんになりましたごとく、あそこの施設は私決していいものとは思っておりません。これは戦後急激に施設をふやさなければならない羽目に立ち至りまして、やむを得ず刑務所の施設そのままを特別少年院に転用いたしました。ほんとうにわれわれとしてはやむを得ない措置なんでありまして、あの施設を何とかほんとうの教育の場に直していきたいというふうにわれわれ考えております。しかしながら、あそこに入っております子供たちをごらんになりましてもお気づきになったことと思いまするが、すでに大体二十歳になんなんとする子供たちであります。しかも腕には入れ墨をしておるというような連中が相当多いのでございます。体力的に見ますると、むしろ少年院の教官をしのぐような体躯の所有者も多々入っておるのであります。かような少年たちが、これは一時の激情にかられまして彼らの通有性と申しましょうか、ちょっとした刺激にも動じやすい彼らなんでありますが、一時の衝撃にかられまして乱暴をしでかすというような場合、あるいは自暴自棄に陥りまして自傷行為を行い、あるいは自殺を企てるというような、こういうふうな事態も往々にして起って参るのであります。それが現実の姿なんであります。かような場合にいかにして少年をかような事態から守るかということを考えますると、決してわれわれとしては望むところではありませんが、これを守るためには手錠をはめてそれを防ぐという行為も、これは万やむを得ない措置として、われわれ現実の姿としては認めざるを得ないのじゃないか。そうして気持の落ちついたところで徐々に矯正教育を施していくという方向に持っていかざるを得ない。これは最後のほんとうのやむを得ない措置として手錠を使用するということも、また現在の矯正教育をやっていきます上においては、例外的に認めていただきたい措置なんであります。
それからもう一つは、ただいま御指摘になりました連戻しの際の判事の令状の点でございます。なるほど判事の令状というようなものを突きつけまして少年たちを連れ戻すということ、これはわれわれとしては決して好ましいことではないのであります。との少年院法の十四条に、「在院者が逃走したときは、少年院の職員は、これを連れ戻すととができる。」というこの規定でございますが、これによりまして、もしも少年が逃げ出しましてその連れ戻しに参りましたとき、それをどうしてもがえんじない場合に、強制力をもってそれを連れ戻すことができるというこの規定なんでありまするが、これもやはり最後の手段として使うべきこれは規定だと私は思っております。どこまでも少年たちを連れ戻す際にはよく説得いたしまして、そうして納得さした上で子供たちを連れ戻す、この方法を現在少年院でも使っております。ただどうしてもやむを得ないときには、この十四条によりまして、強制的に強制力によって連れ戻すという措置に出でざるを得ないということに相なるわけであります。その場合に、この判事の令状を四十八時間を経過した場合には、令状を取ってそれによって執行するという規定を今度設けるわけでございますが、これはたとえば少年たちが、これは小さい子供はさような場合もございませんが、二十に近いような大きい子供たち、しかもこれらはえてして環境の非常に悪いところに起居いたしておる者が多いのであります。あるいは盛り場だとか、あるいはよからぬ場所に少年たちが逃走いたしまして逃げ込んでおるというような場合が往々にしてあるのであります。かような所に少年院の職員が参りまして、連れ戻そうといたしましても、周囲の者がそれをさせないという場合も往々にしてあるのであります。さような場合に手ぶらで参りますと、令状も持たないで連れ戻すというのは何事だということで、非常な反抗を受け、抵抗を受けてやむを得ず連れ戻すことができずに帰ってくるというようね場合も往々にして起るのであります。かようなときにこの令状を示しまして、その権限を明らかにし、さようなところから連れ戻していくという方法もやむを得ない措置として、私認めていただきたいというふうに考えるのであります。少年によりましては、ただいま申しますような、かような強制の措置は警察官にまかしたらいいじゃないか、少年院の職員がさような強制的な手段を弄するというのは、教育の本旨にもとるんじゃないかというお説であります。これはもごっともなお説と考えるのであります。しかしながら相手方の少年の身になって私強く考えてみる必要があるんじゃなかろうか。警察官によって強制的に連れ戻される方がいいか、常に親しく指導を受けておる先生方から連れて帰っていただいた方がいいか、少年の立場に立って考えてみますと、見ず知らずのおまわりさんに連れて帰ってとられるよりも、むしろ先生に連れて帰ってもらった方が、少年たちもかえって帰りやすいんじゃないかということも私考えられるんじゃなかろうかと思うのであります。かような趣旨からいたしまして、少年院の職員にもやはり令状による連れ戻しということも、最後の手段としてやはりその道も開いておいていただきたいということを考えるのであります。ことにいわゆる強制力によりまするかような手段の際には、現在の法制の建前からいたしますると、これを立証する令状というものを伴うことを大体根本原則といたしております現在の立法の建前からいたしましても、これらの人権の尊重という趣旨から申しましても、やはり一応令状ということは必要ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。ただいま宮城委員の仰せになりました御危惧は、われわれといたしまして十二分に、今後かようなことのないようにやっていきたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/27
-
028・小泉純也
○政府委員(小泉純也君) ただいま宮城先生の御質問に対しまして、新局長として赴任して参りました渡部局長から少年院のあり方についての根本の考え方を申し述べたのでございまするが、これに関連いたしまして、私からも一言述べさしていただきたいと思うのであります。御承知の通り、少年院のあり方が矯正教育の場でなければならないにもかかわらず、行刑のほうへ漸次傾いていって、本来のいわゆる指導精神をば失いつつあるのではないかということが、宮城先生初め本委員会、また世間の心ある方々の非常に憂慮せらるるところでございまして、当局におきましてもさようね点をなからしめ、むしろ矯正教育の真髄をいかにして発揮していくかということに非常に努力をいたしておるのでございます。前矯正局長の中尾君も非常に誠心誠意をもって努力をされましたが、今回中尾前局長の退任にあたりまして、その後任につきましては、当局としてはいろいろの角度から非常に苦心をいたしまして、今日初めて当委員会に参りました渡部氏をば新局長に実は起用をいたしたようないきさつがあるのでございまして、そのいきさつの一つといたしましては、渡部局長の今まで歩いて来られた御経歴からいたしまして、また今いう少年院に対するあり方に対する非難にかんがみるところがございまして、宮城先生が常に信念を持って御主張いただいております愛をもって、あくまでも教育をもって善導をしていかなければねらないという精神を、いかに全職員に徹底せしめて、少年院のあり方をば、より意義あるものにするかということに苦心を払われまして、渡部新局長の着任となったのでございます。渡部新局長が着任せられまして私の部屋にごあいさつに見えられましたときも、私はこの矯正局長の任務は、現在いかなる点が重大な転機にあるかということをば、私の浅い経験をもってよくお話しを申し上げまして、渡部局長も非常底意気込みと決意をもって、微力ではあるけれども、世の非難にこたえて、いかに教育の場たらしめるということに前進をするという大きな情熱をもって自分は着任をしたということを、私と二人の間にもお話があったくらいでございます。宮城先生があくまでも愛と教育、犠牲的精神をもって、真に恵まれざる少年院のかわいい子供たちを善導しなければならないという御精神は、今日全国の全職員にあまねく徹底をいたしておりまして、今回の渡部新局長もその精神をいかに具現するかということが、自分の局長として課せられたる使命であることをば痛感をして、着任をしておらるることと私は信じて疑いません。ただいま新局長が初めて宮城先生の質問に対して一つの抱負を述べられたのでございますが、私もそれに付言をいたしまして、あくまでも教育の場であるということをば具現することに、新局長を中心として当局が渾身の努力を払う決意を持っておることをことに申し述べまして、御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/28
-
029・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そこで私どもは新しい局長に非常に期待を持っておるわけでございます。今まあ私の申しましたことにも御同意いただいたのでございますが、私が、どうも教育から行刑に移るのではないかという心配をしておりますその一つは、手錠をはめるとか、あるいは連戻しに判事の令状を要するとかいうことも、政府当局が考える前に、もっと何か手の打ちようはないかということをどうして工夫して下さらなかったか。つまり頭が少し傾いているので、教育の面からはずれているのではないかということを私は伺いたいのでございます。重ねて伺います。それは私は十八から二十才に子供の年令が延びたのでございます。あの当時も非常に議論がございまして、ようやく、少年法で守られる子供が二年延びたのでございますが、いろいろな難点はございますけれども、しかし保護される子供の年令が二年延びたということは、大体において非常に私仕合せだと思って、その意味から申しましても私ども喜んでおるのでございます。でございますから、むずかしい点を克服する意味合いにおきまして私はこういうことをなぜ考えていただけなかったかと思っております。その一つはもう少し処遇の分類をお考えにならなかったか、つまり今四つに少年院が分類されておりますけれども、どうしてもあれでは足りない。手錠をはめなければもう始末がつかないほどの程度の高い高度の乱暴者があるというような者を、それでも何とかできないかというつまり名前はどう申したらいいのでございますか、特別少年院のまた特別少年院といったような、その内容の処遇におきましては少年刑務所とほとんど同じようなものであって私はけっこうだと思っております。私は今日の少年院の処遇の方法なんかについて、もっと厳格にきびしくやっていかなければならん場面がたくさんあるのじゃないか、あまり今日子供を甘やかし過ぎておる。これは家庭においても同じでございますけれども、もっともっと愛のむちをあてなければならないような場面が、ずいぶんあるのじゃないかと思っておりますが、それは他日に譲りますけれども、もう少し分類の方法なんかをどうして考えて下さらなかったか。そうして端的にこういう法律を出されますと、それこそ初等少年院にもあるいは手錠をかけるようなことが出てきます。それは職員の質の問題でございますが、どうしても人間はやすきにつきやすいものでございますから、私ども心配するのでございます。でございますから、その分類の仕方、それからいま一つ私は御赴任早々いかがでございましょうかと、ちょっと控えた方がいいかと思いますが、まあざっくばらんに申しますというと、一体矯正局に、つまり刑務所と一緒に少年院を入れておって、それを一緒の局に置いてあるということが、私は刑務所の処遇の頭をもって少年院を考えられては、そんなことは万ないと思いますけれども、しかしどうしてこれをもう一ぺん保護局に返したらどうだろうかという一体お考えはないのか。そんなことを考える余地がないほど、一体御当局は行刑に傾いていらっしゃるのか。それは子供に手錠をはめたら一番楽でございます。もっともっと子供に捕縄をかけて、がんじがらめに縛れば、職員は昼寝をしていてよろしゅうございます。だけれども、それは私は大事な日本の子供を損すること莫大なことだろうと思っております。先ほど局長は逮捕、連戻しをするにつきましても、警察にまかせるより少年院の職員が行く方がいい、ほんとうにごもっともなことでございます。私はそうしてほしい、警察を使いたくない。だけれども、手錠をもって、逮捕状を突きつけて子供を連れてくるような連れ方なら、私はそれは少年院の職員にしてもらっちゃ困ると思うのでございます。それはどうぞ警察にしてもらって、そういう万に一つの場合が出た場合は警察を使うように、今度は一部改正をするのでございますから、そうしてもらって、少年院の職員は手錠もはめず、令状も要らない、ほんとうに愛情と責任をもって心配しながら尋ねておるということで、私は連れて来てほしいのでございます。そうしてそれができないような矯正教育をしておるとするならばその職員を私はもう一ぺん入れかえてほしいと思います。何か私はそれについて新しい局長の御抱負がございましたら伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/29
-
030・赤松常子
○赤松常子君 関連して。私は非常に本質的な問題だと思うのでございます。少年院のあり方につきまして、またその補導の仕方についての御苦労はよくお察しいたしおりますが、突然こういう手錠が飛び出たり、逮捕状が出たりする改正が出ますと、私はほんとうに将来の少年院の方向というものに大きな不安とそれから疑惑を持たざるを得ないのでございます。今局長もおっしゃいましたように、いろいろ御困難がございますならば、もっと施設を増設するなり、職員の質をよくするためのいろいろなことをなさったり、また職員を増員したり、そういうもっと別の観点から少年院のあり方を明るく希望的に運営していけるような御構想があってしかるべきだと思うのであります。そういう点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますのか。いきなりこういう改正を持ち出されますと、私どもは繰り返して申しますように、将来に大へん危惧と不安を感ずる次第でございますので、そういう点の根本的な御構想、御計画があれば伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/30
-
031・藤原道子
○藤原道子君 赤松委員の質問にちょっと付随して一言、同じことですが、私は宮城委員、赤松委員の言われたことと同感なんです。私は矯正教育の根本精神が最近くずれてきていると思う。私は年令を引き上げたからむずかしくなったというようなことは許さない。年令を引き上げたらかくなるべきという、その当時考えなければならん、それならそれで対策が立てられなければならぬ。それと同時に過日参考人を呼びましたときに、参考人の方とあとで懇談したときに、増員ができるならば、つまり職員の充実ができるならば手錠をはめなくても済むとはっきり言っておいでになる。それならばなぜ職員をふやすことに努力しないか。私はこの少年院法の精神から申しましても、手錠とかあるいは令状などという言葉は聞きたくないのでございます。そういう点からどういうふうにこの少年院法に対してのお考えをお持ちになっておるか、なぜそういう点を最初にお考えにならなかったかという点をちょっと関連してお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/31
-
032・小泉純也
○政府委員(小泉純也君) お三方の御質問の施設、人員の関係についてだけ。私から一言申し上げたいと思います。今赤松先生からも施設の方面についてのお話がございましたし、宮城先生からも年令別に分けるとか、分類というような御高説を拝聴いたしました。また最後に藤原先生からも人員をふやせば、手錠を使わなくっても事が済むというような参考人の意見もあったということを述べられましたが、これはことごとく予算に関係のある問題でございまして、いかに当局が構想を立てましても、予算の裏づけがなければいかんともするととはできないのでございます。現に私どもが委員の方のお供をして現地を視察いたしましても、建物その他が教育の場ではない、教育の雰囲気にない、いわゆる世の非難を買っている刑務所と同じような建物と雰囲気の中に少年院があるではないかということも、私ども自身も痛感をいたしまして、予算がありまするならば、適当血地域に少年院らしいいわゆる明るい、子供をば感化するに足るところの明朗な建物を建てて、そこに収容したいことは万々願っておるのでございまして、人員の点につきましても、今度の予算編成にも増員を要求いたしました。しかし大蔵当局はがんとしてこれを承服いたしません。むしろあべこべに行政整理によるところの減員すら押しつけられるというのが実情でございまして、もちろん当局として努力が足らなかったとお叱りを受けまするならば、それは甘受いたしますけれども、しかしこういういわゆる仕事に対する大蔵当局は実に理解のないやり方でございます。また予算の面について民主党と自由党が折衝をしてあと増額をした分なんかのときにも、私は何とか法務省関係の費用にも回してもらいたいと言って、微力を尽しましたけれども、御承知の通り建設省とか農林省とかそういうところは何十億という大きな金がぽんぽんと行きましても、一千万、二千万という金すらわれわれのとういういわゆるじみな仕事をしておるものには増額されないというのが、今日日本の政治の実情でございます。もちろん今後とも私どもは十分に努力をいたしまして、大蔵当局に認識をさせ、設備、人員その他に十分でなくても、今日以上の態勢を整えまして、今おしかりを受けておりますような非難がないように、またわれわれは非難あるなしにかかわりませず、あくまでも教育の場としてりっぱに、朗らかな環境によって少年を指導し、愛撫し、そうして更生をさせたいという念願に燃えておるのでございまして、職員の質、人員、設備、これはことごとく予算がなければ、いかにわれわれが熱望いたしましてもいかんとも手のつけられない問題であるのでございます。
ただ一言付言いたしますれば、大藏当局等の認識不足は、これは先生方はよく御存じでございますが、国民全般というものが、少年院のあり方にまだ十分な認識を持っていないということを非常に遺憾に考えるのであります。それはいわゆる歴史が、新しく創設されたものでございますから、少年院そのもののあり方、その目ざすところの精神、そういう設備というものに国民全般の理解がいまだ薄いということも、大藏当局などで予算を出し渋る大きな原因ではないかと考えておりますので、こういう点もわれわれが今後努力いたしまして、予算の面にも十分なる努力をし、大蔵当局の理解を深めて漸次改善の一途をたどっていきたいということを念願をいたしておるということを申し添えまして、今日までの予算関係の段階においては、全くもう大蔵省のごときは、こういう仕事に一顧だに与えないというととが実情であるということをば申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/32
-
033・藤原道子
○藤原道子君 これは容易ならないことだと思います。法務当局が予算獲得に努力はされたけれども、これは予算が得られなかった。大藏当局は理解がないという点は私はわかるのです。大藏当局は何でもきんちゃくのひもを締めればいい、そうしてわれわれからいえばいかがかと思うようなととろには、予算はどんどん出しております。これはあなたと私はその意見は同じであります。けれども、だからといって、予算が取れないからといって、その犠牲のしわ寄せが子供の手錠となって現われるということになれば、手錠をはめているのだからいいのだということになれば、これが常態化してくる危険性がございます。従いまして予算が取れないからという理由によって、この法案改正に当って手錠をはめるということには私は納得が参りません。それでよろしいとお考えでございますか。むしろそういう予算が削られたことによって仕事ができないというその実態をもって、私は予算獲得に邁進すべきだと思うのでございますが、御見解を伺いたい。とんでもないことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/33
-
034・小泉純也
○政府委員(小泉純也君) ただいま藤原先生の御意見も承わりましたが、何か一部私の申し上げたことのうちに、私の言葉の足りなかったせいか、誤解があるのではないかと非常に恐縮をいたすのであります。私は予算をくれなかったから手錠が必要だというようね、手錠の問題等には全然触れて答えをいたしておりません。その全般の関係において人員と設備その他において非常なる努力をしたけれども、今日までのところはわれわれの努力足らずして、そういうような予算の獲得はできなかった。人員をふやすとか、建物をよくするとかいうことの面は予算の裏づけがなければ、いかなる構想を立てて熱意を持っておっても、今直ちには予算獲得ということを前提としなければできないことであるから、しばらくごしんぼうを願いたいというような意味の気持で申し上げたのでございまして、予算が取れなかったから手錠が必要であるというような、私はそういう飛躍した心持で申し上げたのではないことを御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/34
-
035・藤原道子
○藤原道子君 それは言葉のあやではないのです。結果論としてはそうなるのです。結局人員をふやせば、手錠がなくてもやってゆけるというのです。だから私はなぜ人員をふやすことに努力してくれないか、もっと矯正教育という面から、子供の人権尊重の面から考えていただきたいというふうに申し上げたのです。ところがあなたは、努力したけれども予算が取れなかったのだ、こうおっしゃる。ということになれば、結果的には予算が取れないから、子供の方に犠牲のしわ寄せがゆくということになるのです。ですから予算の取れない政治の貧困さを、子供の手錠によって解決するということには、私たちは了承ができない、こういうことになるじゃございませんか、いかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/35
-
036・小泉純也
○政府委員(小泉純也君) まだ私の心持を御理解が願えないので、はなはだ私の不徳のいたすところと申しわけないと思いますが、手錠の問題とそれから人員をふやすという問題、そういうことに全然私は結び合して御答弁申し上げたのではございませんで、宮城先生の分類の問題、赤松先生の建物等の設備の問題、それに藤原先生の人員をふやせば、こういう意見もあったではないかというような、そういうことをひっくるめまして今言う人員の増加、それから職員の質の向上、建物の改善、完全に分類をするというような事柄は、いわゆる予算の裏づけがなければなかなか実現できないことであって、というようなことを、それに重点を置いて申し上げたのでございまして、手錠の問題等は全然考え及んでおりませんし、また、予算獲得の場合に、少年院関係の予算をふやしてくれなければ、手錠を使わなければならなくなる。予算をふやしてくれて人員を増加すれば、手錠の必要はないのだというようなことは、そういうことを大藏当局と交渉した事実は全然ございません。そういう点はどうぞあしからず一つ御理解をいただきたいのでございまして、今後も人員の増加、教官の質の向上等には、われわれ予算の面もさることながら、あらゆる努力を傾けてゆく所存でございますが、今回のこの少年院法の改正に現われましたる手錠の問題と、人員の増加が認められなかった、大蔵省で予算がけられたから手錠の問題が起ったという、そういう面からは全然関係しておりませんので、そういう問題は結びつけないでお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/36
-
037・藤原道子
○藤原道子君 あなたのお立場もおありになると思いますので、その点は追及いたしません。しかし私が非常に憂えますことは、過日も私どもが少年院の開所式に行ったときに、建物はまるっきり監獄の建物、しかもそれは新しくできた建物なんです。新しく設計し、建築された少年院がまるっきり刑務所の建物であった。私どもが参りましたときに、子供たちが着ていた服装は、これは寝巻であった。結局昼間の着物を着れば、これは監獄の囚人と同じ服装をさしてあるので、きょうはお客さんたもがおいでになるから着せられない。幸いにきょうは寝巻が新しいのがあるから、寝巻の方がさっぱりして見えるからといって寝巻を着て、そうして式に参列さしてある。この理由を私聞きましたところが、それは青い着物が余っていたからこれは少年に着せたのだ、こういうことを言っておる。私はこの精神がいやなのです。ほんとうに矯正教育で、りっぱな社会人として教育によって更生させようという親心があるならば、やはり囚人と同じきれ地が残っていたから、便法的にこれを子供に着せたのだということは私は許せない。けれども現実にそれがやられておる。現在手錠を使って、手錠という言葉は法律のどこにも出ていない、けれども現実に手錠をすでに使っておるのです。これがいよいよ公けになった結果を考えるときに、私たちはりつ然とするのです。どうしても水は低きに流れるという点から、私どもはこういうことを憂えておるのです。一体子供の人権はどこにあるのですか。どこにも訴えることのできない子供たちは一体どうなるのです。だから何とかそとに考え方があるのじゃないかと、私たちはそれをお伺いしている。手錠でもってこの困難な状態から逃げようとするよりも、むしろ宮城委員が言われるように階級を別にするとか、あるいは年令を別にするとか、どうしても仕方がない子供は私ども涙をのんでがまんいたします。けれども少年院法全般にこういうものが出てきたということに私ども納得がいかない。これを何とか打開の道があるのかどうか。何とかしたらこれをやっていけるというようなお見通しは、ほんとうにないものでございましょうか。手錠をしなければならないのでしょうか。子共の教育に当る職員が令状を持って連戻しに行かなければ、ほんとうにほかにやり方はないのでございましょうか。それをもっと真剣に私はお考えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/37
-
038・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) ただいま政務次官から予算関係のことにつきまして答弁されたわけでありますが、ただいま藤原委員から御指摘のありました事柄、われわれといたしましては最も注意して、今後の少年教育をやっていかなければならぬということを痛感いたしておるのでございまして、ことにとの少年たちの処遇の問題でございます。宮城委員からも御指摘のありましたごとく、もう少し処遇を、対象の少年の段階によって合理的に運営できないものかという御意見でございます。私ら全く同じく考えております。なるほど現在では少年院を四種類に分けておりますが、この少年の性格いかんによりましては、さらに細分する必要も私あると存ずるのであります。現在矯正局におきましても、いわゆる超特別少年院とでも申しましょうか、特別少年院の中でも、さらに悪性の強度なものに対する措置ということも目下検討中なのであります。相手によって、法を説くとも申しますが、われわれといたしましても、それぞれの対象を類別いたしまして、同種のものにつきましてはそれにかなうた、適応した矯正教育をほどこていきたいということをわれわれは考えております。従いましてわれわれの与えられました施設の範囲内、また予算の範囲内において、最もこれを高度に効果的にいかにしたらば教育の効果があがるかということを今後さらに研究し、御趣旨に沿うような方法で今後実施していきたいとかように思っております。なお、増員の点、また職員の質の点でございます。これもわれわれといたしましては、どうしても予算上それが可能でないということになりますれば、量の点を質の点でわれわれは補っていかなければならない、かように考えております。従いまして、少年院の今後の職員に対する教育、これをさらに徹底いたしまして、真に少年の教育に挺身し得る職員を今後どんどん養成していきたいと、かように思っておる次第でございます。どうぞわれわれといたしましても決してやすきにつくということでやっているわけございません。この点を十分一つ御裡解をいただきたいと思うのでございます。やむを得ないときにに使えないでは困りますので、その点法的な根拠を満たして、だれからも非難を受けられないだけの手を尽しておきたいという趣旨にほかならないわけであります。決してこれをもって全般を推していき、これを普遍化するというような愚図は毛頭ないわけでございまして、最後の手段として手錠を使わなければならない暴行行為ふする、あるいは自殺行為をするという場合に、やむを得ず使わなければならない場合に、やはり法的な根拠を与えていきたいというわれわれの念願でございます。どうぞその趣旨をおくみ取りいただきますようにお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/38
-
039・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 ちょっと、今の予算獲得につきまして御当局の御苦心もよくわかりますのでございますが、とにかく政府は女、子供はどうでもいいというように考えておるわけでもございませんでしょうけれども、(「その傾向がある」と呼ぶ者あり)全体といたしまして今年度予算の統計をまだ私出してみませんけれども、大体から言いますと、日本の国全体の子供の対策について使っておる金は、三%に上っていないのです、全体の。それは法務省の子供たち、厚生省、労働省、そういったようなものを集めてみますというと、実にもう雀の涙ともいかない、蚊の涙ぐらいです。これをもうそれこそ文化国といわれるようなところのパーセンテージで見ますというと、三〇何%も、多いところは四〇%以上も使っておるところがあるようでございますが、そういうことからいいましても、これはもう法務省の当局ばかり責めるということは、実にこれは当を得ないことにもなるかもしれないと思いますので、ここで皆さんの御同意を得まして、私は次の委員会に、すぐでなくてもよろしゅうございますから、一ぺん大藏当局を呼んでいただきたいとお願いするのでございます。これは委員長にお願いするのです。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
それから今度少し小さいととになりますが、局長に伺いたい。今度の第十四条に、在院者が逃走したときは、少年院の職員は、これを連れ戻すことができるという、これを前の局長のときにだいぶ私どもいろいろ申しまして、結局は法制局がこれを強制力をもって連れ戻すのだという解釈に落ちつきましたのでございますが、旧法には、連れ戻すという言葉ではなくて、もっとむずかしい逮捕という言葉、「逮捕スルコトヲ得」とあったと思っておるのです。ところがそれは逮捕という言葉から今度は連れ戻すという言葉に、私は少年院法の非常に妙味があると思うのです。そこで私は不必要なときは子供を連れ戻さなくてもいい場合もあると思うのでございます。大いにあると思います。そこでこれを強制力をもって全員強制的に連れ戻すのだととう解釈しないで、その妙味をそのままに使ったらどうか。それで一方では少年院処遇規則か何かになりますというと、その第二条には、「在院者の処遇にあたっては、慈愛を旨とし、併せて医学、心理学、教育学等に基く知識の活用につとめなければならない。」という言葉が使ってある。「つとめなければならない。」そうしてこちらは「連れ戻すことができる。」と、私はこういうところに非常にこの妙味があると思っておるのでございますが、これは新局長はどういうふうに御解釈になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/39
-
040・渡部善信
○政府委員(渡部善信君) これは宮城委員の仰せになりましたように、前は逮捕という言葉が連れ戻すという言葉にやわらかく変って参っております。これは結局、少年院法の私進歩だろうと思っております。しかしながら、この条文自体の字句から申しますと、強制力をもって連れ戻すことができると、可能であるということを新しく創設した規定だと私考えております。ただいまもお話しにありましたように、少年院から逃げ出しました子供たちが、あるいは父母のもとで、両親のむとで保護者のもとで、正常な生活を取り戻しておるというような事態がもしも新しく形成されたという場合、これを連れ戻すかどうかという問題になりますと、これは私はこの十四条の問題じゃないと思うのであります。これはさような、もうすでに新らしい、何と申しますか、平穏な一つの環境が形成されました者を無理やりに連れ戻すということは、少年教育の本旨から申しまして妥当を欠くものであろうと私考えます。その場合には何らかほかの措置を講じなければならないと思いますが、それはあるいは何と申しますか、仮退院の措置とか何とかいうふうなほかの面からの措置をとりまして、保護委員会の方と連絡をとり仮退院の措置というふうなことを私は考えたらいいじゃないか、かように考えておるのでございます。どうしても連れ戻さなければ環境上放っておけないという事態の場合は、これはどうしても連れ戻さなければいかんと思うのであります。本人の意思、あるいは保護者の意思を無視してでも、これは連れ戻さなければならんと思います。そのときにこの十四条の規定が生きてくる。この十四条の規定によって連れ戻してくるということに相なると私考えておるのでございます。この処分変更の規定というふうなことも、目下われわれとしては検討中でございます。しかし・とりあえずのところは、更生保護委員会の方との関係の仮退院の措置を活用したらいかがなものであろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/40
-
041・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記をやめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/41
-
042・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 速記を起してさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/42
-
043・羽仁五郎
○羽仁五郎君 先ほど宮城委員から御希望のありました、少年院法の実施について、財政上の問題について大藏当局をお呼び下さるということは、委員長でお諮り下さると思うのですが、かなり政策的のことに関係しますから、やはり大藏大臣が来ていただくことが必要じゃないか。第二に、委員長にお願いしたいのは、今度の少年院法の法律改正によってやろうとしていることを、従来どういうふうにやってく今まできたのかということですね、従来どういうふうにそれをまかなっておられたか。それについての個々の実例をあげての資料を出していただきたい。それを法務省の方に要求していただきたい。従来こういうふうな問題ですね、それぞれにつきまして、連戻しあるいは手錠などの場合、従来どういうふりにしておられたか、その結果がどうであったか、現在法律改正によって達成しようとされる点を、従来はどういうふうに処置しておられたか、そうしてその従来のそういう措置の結果がどういうことであったか、そういうことの資料をお出しになっていただきたい。これは実は要求しなくても、こういう法律案を提案される提案者は、そういう資料についてお出しになることは当然だと思うのですが、幾ら探してみてもございませんから、それを要求するのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/43
-
044・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) ただいま羽仁委員あるいは宮城委員から御要求のありました大蔵当局に対する措置は、適当な機会に御要望に沿うようにしたいと思います。
他に御発言がなければ、本案の審議は一応この程度にいたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/44
-
045・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 次に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一部を改正する法律案を議題に供します。
本案について御質疑のおありの方は、御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/45
-
046・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この議題になっておりますいわゆる防衛秘密保護法の一部を改正する法律案について、この際順を追って二、三点伺ってみたいと思います。
その第一は、現在の本法が本院において討議せられました当時の本番員会における討議の模様は、当然政府当局においては十分ごらん下すつていることと前提をいたします。本法は、本法成立当時に重大な問題が幾つかございました。で、それについてはかなり本委員会においても各委員が重大視せられまして、まあ本法成立はきわめて圧倒的な多数ではなくして、ほとんど賛否同数に近いところで通過しておりますので、そういう意味では本法の安定性ということにも十分問題があると思います。で、特にこの際参議院におきまして、この法律案について参考人から意見が述べられ、そしてまた本委員会において討議せられました重要点につきましては、十分ごらん下さっておることとは思うのですが、重ねて注意を喚起することを許されたいと思います。私が心配をしております点、二、三を特に申し上げたいと思うのでありますが、
第一は、本法は教唆、扇動を独立罪として取り扱っておる異例の法律であります。で、私が詳しく申し上げるまでもなく、わが国の刑法の体系におきましては、教唆、扇動を独立罪としては扱ってはいないのです。で、詳しく申し上げることは恐縮でありますが、教唆、扇動を独立罪とする弊害は実におそるべきものがあります。そのために、わが刑法は体系的に、システマティックには教唆、扇動を独立罪とすべきものではないとう立場に立っておる。しかるに本法は、刑法の体系をくずして、教唆、扇動を独立罪にしておる。これはわが刑法の体系に対して署しい悪影響がございますし、従ってまた国民の人権を守る上からも重大な問題があろうと思います。私は、当時、こういうことが単行法の上で、特別法の中で繰り返して行われてきますと、ついには刑法の本来の体系がくずれるおそれがあろということを主張いたして、これには強く反対をしたのでありますが、しかるに当時の当局は、どうしてもとういうふうにしておかなければ機密が守れないというお答えでもって、こうなっております。この問題は、私は、現在政府がどういうふうにお考えになっておられるのか。で、特に改正をなさいますので、範囲が広がっていくんでありますが、それと関連をいたしまして、私は断然政府はこの本法施行以来の経過にカンガミテ教唆、扇動を独立罪にまでして守らなければならないほどの危険はないという判断に到達せられましたならば、この教唆、扇動を独立罪としております本法の条項は、削除せられることが当然であろうと思います。国民の権利を不当に制限していることは、一日といえども許されるべきではない。現在当局は依然としてこういう教唆、扇動を独立罪として行わなければ、秘密が守れないというお立場の上に立っておいでになりますか。もししかりとするならば、いかなる事実があってそのようであるか、その事実を御説明を願いたいと思います。教唆、扇動を独立罪、とすることによって初めて機密が守られて、こういう場合があるという事実の根拠に基いてお示しを願いたいと思います。これは私のこの改正法律案に対しまして第一に政府のお考えを、十分に高いレベルから伺っておきたいと思うのであります。どうか一つ杉原国務相におかれましては、ただいま申し上げました点の、私の申し上げます真意をよく御了脚下さいまして、今の点にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/46
-
047・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) お答え申し上げます。この本法は防衛上の秘密の必要という点と、それから基本的の人権といったような原則的な大事な事柄とも、調和といいますか、その関係からできていると思うのでありますが、そうしてまたこれができます際に、国会におきましても衆参両院とも、それぞれの委員会において非常に熱心な御審議があったことを私ども承知いたしているのであります。ことに参議院の委員会におきましては、いろいろとこの内容にわたって深く御研究、御審議があり、そうしてその結果または法案自体についても、改正が加えられた、それからさらに、これの運用上きわめて大事なこととして、法文自体の中に、この法律の条項というものは、決して拡大的に解釈運用してはならないという趣旨の規定も特に捜入せられていたことを承知しております。ただいまの羽仁委員からの御質問でございますが、今日までのこの本法が実施せられました後の経過を見ますると、今日まで本決の現実の適用を受けた事例というものは一つもございませんのでございます。もちろんこの運用に当りましては、法律の本来の精神に基きまして注意深く取り扱ってきているわけでございます。ただいま御質問のこの教唆、扇動を独立罪とすることは、刑法の大きな体系から見て、非常に例外的な、また体系をどうかすると乱すようなことにもなるようなそういうものであるから、これはむしろ削除する意思があるかどうか、こういうお尋ねでございます。もともと、この法律を立案いたします際に、そういう点いろいろと研究した結果こういうことに相なっておりまして、この法律の対象といたしておりまする事柄の性質等から見まして、やむを得ずこの教唆、扇動というものを独立罪として規定したものと存じております。ただいまのところこれをにわかに改正するというところまでは考えておりません。ただし、この運用につきましては、この法律の基本的人権等との関係からいたしましても、十分適正を期しておかなければならない、特に注意してやっていかなければならんことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/47
-
048・羽仁五郎
○羽仁五郎君 ただいま御説明の中にもちょっとお述べ下さいましたのですが、本法が実施せられてから、適用された場合が全く安いという御説明でございましたが、果してそうでありましょうか。それからその本法が適用せられて、その犯罪として裁判があったという終局的なところまでいかないにしても、本法によるであろう疑いがあるとして、あるいは御調査になったり、あるいはいわゆる内偵のごときものが行われたり、あるいは逮捕が行われたりしたようね、つまり本法に直接触れる事件はあったのか、なかったのか。それから本法に触れるものではないかという疑いを抱かしめるような、あるいはそれに類するような事件がございましたでしょうか、ございませんでしょうか。それについて実はこの本法改正をお求めになります際には、当然そういう資料の御提示があることだというふうに期待しておりましたが、今日までございませんでした。あるいは御用意になっているかもしれないと思いますので、そういう資料をいただきたいということを、これは委員長を通じてお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/48
-
049・林一夫
○政府委員(林一夫君) ただいま羽仁先生がお尋ねになったような事例は、今まで全然ございません。詳しく申しますと、そういう用意があって、調査したり、内偵したり、あるいは逮捕したというようなことも全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/49
-
050・羽仁五郎
○羽仁五郎君 これは、本法を施行してから今日までどれくらいになりますか。今の御説明の通り伺っておきますが、しかしなお御調査下さいまして、幾分本法に触れるのじゃないかということで御研究になったような場合があるのじゃないかと……、もしございましたら、これはやはりぜひ一つ御親切に、ないものを出せと申し上げるわけでは安いのですが、何かそういう関係の材料があればお示し願いたいと思います。それによって本法改正の参考上非常に大きい利益があろと思いますが、それをお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/50
-
051・林一夫
○政府委員(林一夫君) ただいま申し上げましたように、そのような嫌疑で調査したようなこと、あるいは内偵したような事例は、今まで全然ございませんから、それで御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/51
-
052・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それでは次に伺っておきたいのは、本法を実行する上に、つまりいわゆる防衛秘密を保護する上に、この法律によって今日までどういう処置をとっておいでになるのか。つまりそれによって幸い本法に触れるような事件が起らなかったというのでしょうか。どういうような処置を、つまり本法施行が適正に、一方においては人権を侵さず、他方においては防衛秘密が侵されないということのために、どういう処置をとっておられるか、それを伺っておきたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/52
-
053・林一夫
○政府委員(林一夫君) ただいままでで私の方でとっておりますものは、これも一つのその措置でございますが、昨年参議院におきまして付帯決議がありまして、こういうような法律の趣旨は広く知らしめて、善意の者がいたずらに迷惑をこうむるというようなことのないように措置せよというような御意見もありましたもので、さっそく新聞なんかを通じまして趣旨を徹底いたしましたとともに、またこのような秘密に属する装備品を修理する会社もあるわけで、その方面につきましても、たとえば日経連とかこのようなところを十分通じましてお話をしますとともに、またこのような機関紙を通じましてその趣旨を徹底いたしておるのであります。御承知のように、この防衛秘密と申しますのはきわめて高度のものでございまして、また数も非常に少く、なかなか一般の方々の目に触れるような所にはございません。十分注意しておれば、全然迷惑を与えるというようなことはないかと思っております。まあいろいろの点でそのようなことのないように十分注意はいたしておるのであります。今までのところはそういうような状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/53
-
054・羽仁五郎
○羽仁五郎君 そこで杉原国務相に質問を許されたいのですが、今お聞きのように、本法施行以来本法に触れるような事件は一つもなく、その疑いのあるような事件も一つもない。で、なぜそれがないかというと、ただいま御説明もございましたように、本法が保護しようとしている秘密がきわめて高度の秘密であって、一般の人の目に触れるようなものでない、つまり防衛庁、自衛隊内に、かなり深い所にあるのであって、一般国民の目に触れる所にはない秘密なのだと……、そうでございますね。こういうような秘密を保護せられるには、当然一般国民の権利を制限するような特別措置によるべきでないということは、当時われわれは主張したことであり、また本日今までの御説明を伺いましてもそう思うのです。これは誤解してお聞きになりますと、非常に困ると思いますので、日本の官僚主義の悪弊がまだ今日も残っていますから、使わない法律だったら廃止せよと言われるので、やはり使っておかなければねらないというようなことは、これは新しい民主主義によって作られた防衛庁なり、あるいは杉原国務相のような新しい識見を持ってこの責任を負っておられる方には、万々ないと思いますから、そういうふうにお聞き下さると全く困るのですが、事実これは防衛庁の内部規律として十分措置できる問題ではないか。つまり一般官庁において秘密として取り扱うという形式がありますが、その形式でやれることではないかということを主張したのですが、今の御説明を聞きまして、私は一そうその感を深くいたしました。
そこで先ほどの教唆、扇動を独立罪とするという規定を削除するというにとどまらず、この点は一つ杉原国務相がよくお考え下さいまして、事実これは行政官庁内部の規律の保持によって解決できる問題であるということであるならば、一般国民の権利を脅かすような法律を存置しておくべきでないという結論に到達されるととが私は当然であろうと思うのです。最近御承知のように濃縮ウランをアメリカから貸与を受けるという問題につきまして、外務委員会で私が質問したのに答えて、外務当局は濃縮ウランの秘密の保持ということについて立法の必要はないというようにお答えがあった。そうして、しからば濃縮ウランの受入れに伴う協定の制限を守るということをどうしておやりになれるつもりかと言ったらば、やはりこれは内部の規律でもって守れると思う。濃縮ウランというものはきわめて局限せられた場所に置かれるものでありますから、それに直接タッチしている人がその取扱いを誤まらなければ、協定にそむくようなおそれはない。従って一般国民の権利を制限するような立法の必要はない、こういうお考えだろうと思うのです。濃縮ウランと、本法が、あるいはこの改正法律案が対象とする対象とは性質を異にいたしますけれども、しかしながらやはり私は濃縮ウランが、協定が与えようとしておるところの制限というものの重大性と、それからこの本法案が考えておるところの秘密の重大性というものでは、性質は違いますけれども、しかしながらいずれがきわめて重く、いずれがきわめて軽いということでもないと思うのです。大体似たような問題ではないかと思うのです、性質は違いますけれども。そこでやはり私は、この現在濃縮ウラン貸与を受けるについて、内部の規律でもってやれる、国民の権利を制限する立法までする必要はないというお考えの方が、私は現内閣のお考えではないかと思うのです。それで本法律案及びその基礎になっております本法の考えというものは、現内閣の政治上の方針というものとは違っている点がありはしないかと思うのです。でありますから、私はことで先ほどの御答弁がございましたから、重ねて御質問を申し上げるのではねいのですけれども、その点を十分一つお考えをいただきたいと思うのです。つまり本法のようなもので国民の権利を広く一般に制限しておる必要があるのかないのか。で、もしないということであれば、本法そのものを廃止せられて、それで内部規律によって本法の目的としているようなところに到達することができる、それが民主主義的な政府として当然なさるべきことだと考えますが、その点について杉原国務相の御意見を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/54
-
055・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 一般に刑罰的の法規はなるべくこれを少くするにこしたととはございません。また刑罰的の法規というものは、それはむしろなるべく、あるいは全然現実には発動をみないという状態がむしろ望ましい状態であるとは存じます。本件の場合防衛庁内部的の規律という行政的措置のみで足りるじゃないかという御意見でございますが、内部的の行政措置もこれは必要ではございます。ただそれだけでは乗り切れない場合も予想せられないわけではないと思うのであります。たとえばいわゆる防衛産業に従事する、秘密の対象物となっているものの修理とか、そういう関係で防衛産業に従事している関係者がこれに関与するという場合など考えてみますというと、行政措置のみではそこをカバーし切れないというような場合も予想されまするし、さらにまた特別に意図をもって行動するスパイ活動というものが全然ないとは言えないと思いまするので、やはり一般の、善意の一般国民というむのには、そういうことは適用されないことは事実ですけれども、そういった今申し上げましたような場合等も考えられないわけではないわけでありますけれども、単に行政措置のみをもってしては十分でない場合があると思います。いろいろ御意見でございまするが、実際の必要といいますか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/55
-
056・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の御説明の中にスパイという言葉をお使いになったのですが、これは申すまでもなく現在の日本の国の法律ではスパイというものの規定はございません。それでこれは本法提出の際に十分論議された問題であります。現在わが国には軍事的な機密、あるいはいわゆる国家的な機密としてそれを通謀する、敵国と通謀するというような意味におけるスパイという観念は、憲法が許していないし、刑法もこれを許していない。ただ本法が特別法としてそれに似たような考え方を、この中に特別法としてだけ規定してありますが、従って一般的にスパイという言葉をお使いになることは、私はやはり本法の精神に違反しているんじゃないか。本法の場合にもスパイを防ぐというのではなくて、貸与されているものであるから、その貸与に伴う義務を果すという、MSA協定の義務を果すというのにとどまるのであって、一般的にスパイという意味にお使いになったのでは毛頭ないと思いますが、念のために重大な問題ですから伺っておきますが、どういう意味でお使いになったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/56
-
057・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 私申し上げました趣旨、私の言わんと欲しましたことは、特にわが国の安全を害する目的をもって行動するというようね者が絶無じゃない場合も予想されます。そうして御承知の通りこれは必ずしも国籍が日本にあるものだけに適用されるものではない。日本の法権のもとにある者には適用されると思いますのでそういうことの趣旨で申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/57
-
058・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それはますます問題ですよ。あなたのお考えは旧国防保安法と同じようなお考えになっている。それでしかも保安庁や自衛隊の最高の責任をおとりになります、最高の識見をお示しにならなければならないあなたが、そんなお考えじゃ第一線に立っておられる方は、旧国防保安法そのままの考えになってしまう。その点は一つ今のお答えは私は本委員会においてちょうだいすることは絶対できないのです。で、国防保安法は廃止されている。旧刑法第八十五条以下も廃止されている。それでその問題はここに本法が本委員会で提議されました当時十分問題になったところであります。これはつまりそのスパイを取り締るということよりも貸与されているものの、アメリカにおいてその貸与されているものが取り扱われると同じような取扱いを日本でするということに目的があるので、広く一般にわが国の安全を害する目的をもって行動をするということが一般的な規定として、しかも最高の責任をおとりになります方の口から述べられることは、私は杉原さんのおっしゃるお気持がわからないわけじゃありませんが、その及ぼす弊害、悪い影響というものはおそるべきものがあろうと思う。現在わが国の憲法は、日本があくまで平和の立場に立って、国際社会において相互に信頼の立場を占めるということを目的としているのであって、相互に安全を害するというような立場を前提としてわが憲法は成立していないのです。ですから、わが憲法の建前からいえば、日本は相互に安全を害するというふうな考えを前提としているのじゃない。相互に平和に共序していくという建前をとっていく。従って本法は場合によっては憲法違反の疑いがあるのではないかという議論も生じたのですが、それが憲法違反の疑いがないということがもし言えるとするならば、それはただいま申したように一般に国の安全を害する目的をもってこういうような行動をするスパイというものを前提としてではなくて、そのアメリカから貸与を受けるものについて、そのものがアメリカで取扱われていると同様の取扱いをしてほしいという、いわゆるMSA協定に基いてこの法律が提案されているのである。そっちからこの法律は、この立法の精神はそこにあるのじゃないか。国の安全を害するような行動をするものを一般に前提とされて、この法律ができておるなら憲法違反だ。ですからどうか一つ、おっしゃることをこまかに追及するという気持は毛頭ないのですが、あなたのような高いレベルの方が軽々しくスパイという言葉をお使いになりますと、一般自衛隊、あるいは保安庁の内部に旧国防保安法、あるいは旧刑法第八十五条以下の考え方がだんだん育成されていくおそれがあります。それでは何のために今日憲法のもとにあなたが監督しておられるような機関が設けられているのか。これは国民を裏切ることになりますから、いま一応お考えを述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/58
-
059・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) この法律で保護の対象になる秘密事項というものがアメリカにおいても一つの秘密として保護される。その意味においてはアメリカの秘密であるというととはもちろん言えると思うのですが、同時にこれは日本において供与を受けて、そうして日本において日本のために使う役立つものでありまするからして、これは日本の利益、日本の秘密というものであることは申すまでもないことだと思うのであります。そうして日本の、つまり端的に申しますならば、日本の秘密でもあり、アメリカの秘密でもある、こういうものだと思うのであります。実質的に申しますると、日本の場合におきましては、いうまでもなく、その法律それ自体によって日本の秘密ということに相なっておるわけでございます。先ほど申しましたように、スパイ的の行為というふうに申しましたのは、私それほど、それからさらにわが国の安全を害すべき云々と申しましたが、これは羽仁委員のおっしゃいますことは、よく私わかるのでありますが、私が申しました趣旨は、すでにこの法律それ自体で一つの目的として、「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもって」というような犯罪の構成要件としてそういうのをあげております。そういうのを見て実は申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/59
-
060・羽仁五郎
○羽仁五郎君 そうすると御答弁の御趣旨は、スパイという言葉を用いたけれども、それは一般に適用される概念でなくして、本法に違反するというものに限るのだ、こういう御答弁と伺っておきます。これは私は重大な問題だと思いますけれども、こまかい点、しかも行政権に立ち入るようなことを申し上げるつもりはありませんけれども、やはりスパイという言葉は、どうも日本では一般に新聞その他でかなり不用意に使われておりますし、それによって国際信義の見地というものが害される場合がございますから、高いレベルにある方におかれましては、そういう点の厳格なる規定をお守り下さいまして、スパイというふうな言葉をお用い下さらないで、本法に違反する疑いのある場合というふうにお願いをしたいと思います。こんなことまでお願いするのは恐縮ですが、お願いする真意は御了解下さることと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/60
-
061・成瀬幡治
○委員長(成瀬幡治君) 別に御発言が安ければ、本日はこの程度で散会いたします。
午後四時二十五分散会
――――・――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102215206X01619550715/61
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。