1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十一年五月八日(火曜日)
午前十時四十五分開会
—————————————
委員の異動
四月三十日委員榊原亨君辞任につき、
その補欠として西岡ハル君を議長にお
いて指名した。
五月四日委員石井桂君辞任につき、そ
の補欠として中川幸平君を議長におい
て指名した。
五月七日委員中川幸平君辞任につき、
その補欠として石井桂君を議長におい
て指名した。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 赤木 正雄君
理事
石井 桂君
小沢久太郎君
近藤 信一君
委員
大谷 贇雄君
酒井 利雄君
西岡 ハル君
武藤 常介君
小笠原二三男君
田中 一君
若木 勝藏君
村上 義一君
衆議院議員
瀬戸山三男君
国務大臣
建 設 大 臣 馬場 元治君
政府委員
建設政務次官 堀川 恭平君
建設省計画局長 町田 稔君
建設省道路局長 富樫 凱一君
事務局側
常任委員会専門
員 武井 篤君
説明員
建設省計画局附
建設事務官 前田 光嘉君
—————————————
本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選
○土地収用法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/0
-
001・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) ただいまから委員会を開会いたします。
委員変更の件を御報告申し上げます。四月三十日榊原享君が辞任され、補欠として西岡ハル君が指名され、五月四日石井桂君が辞任され、補欠として中川幸平君が指名され、また同月七日中川幸平君が辞任され、補欠として石井桂君が指名されました。
お諮りいたします。委員変更に伴って理事一名が欠員になっております。この際理事補欠互選を行いたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/1
-
002・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 御異議ないと認めます。
つきましては、この補欠互選の方法は、成規の手続を省略して、委員長の指名によることに御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/2
-
003・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 御異議ないと認めます。
それでは、私から理事に石井桂君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/3
-
004・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 土地収用法の一部を改正する法律案を議題に供します。
本案は去る四月二十六日、衆議院において修正議決されて本院に送付されました。ただいまよりこの修正点について衆議院議員瀬戸山君から御説明を承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/4
-
005・瀬戸山三男
○衆議院議員(瀬戸山三男君) ただいま議題になっております土地収用法の一部を改正する法律案につきまして、衆議院の建設委員会で修正を付し、本会議で可決されましたので、その修正の案につきまして御説明を申し上げます。
修正案の内容についてはすでに御承知の通りでありますので、その理由について申し上げますが、第一に、第四十条の改正規定を削除いたしましたのは、現行法におきましては「協議をすることができないとき、」というふうになっておりますのを、さらにそれを拡張いたしまして、原案におきましては、あっせん委員において当事者の合意が成立しないということであっせんを打ち切られた、こういう場合は協議は必要でない、こういうふうな原案になっておりますけれども、収用手続におきます当事者間の協議の重要性にかんがみまして、あっせんがととのわない場合におきましてもやはり協議を省略するということは妥当でない、こういう考え方から、現行法通りといたした次第であります。
次に、第四十一条及び第四十二条の改正規定を削除いたしましたのは、ただいま御説明をいたしました第四十条の改正規定を削除いたしましたので、それに関連します条文の整理をいたしたわけであります。
第三に、やはり第六十四条の改正規定を削除いたしましたのは、御承知の通り、現行法第六十四条第二項中の「その他相当でない」場合として処理し得るものでありますから、特に改正の必要がない、かような考え方であります。
なお、第百二十五条の改正は字句の整理をいたしたものであります。
以上が衆議院における修正案の要旨でありますが、これは自由民主党、社会党、両党慎重に協議をいたしまして、共同の修正になっておりますので、何とぞよろしく御協賛をお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/5
-
006・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) ただいまの御説明に対して御質疑のある方は、御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/6
-
007・田中一
○田中一君 瀬戸山さんに伺いますがね、原案と修正案との交代した形といいますかね、話し合いの内容ですね、その要点だけを一つ、今の御説明につけ加えて御報告願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/7
-
008・瀬戸山三男
○衆議院議員(瀬戸山三男君) 原案を修正いたしました中心は、大体ただ一つであります。第四十条の規定を削除することが中心の問題になっておるわけでありますが、これは政府提案におきましては、土地収用をなるべくすみやかにいたしたいという趣旨から、ただいま御説明申し上げましたように、あっせん委員において合意がととのわなかった、そういう場合には、さらに起業者と被収用者と申しますかとの協議をするということはむだであるから、そういう時間を省くためにこの改正規定を出したというのが趣旨のようであります。私どもが修正をいたしますときにいろいろ検討いたしましたのは、御存じの通りに、土地収用は公共の公益と申しますか、公益と私権との対立をどの点において調整するかということが中心の問題であります。公益に重点を置くと私権を圧迫する、また私権に重点を置くと公益が後退する、こういう事情にありますが、その調整をするについて、やはり個人の権利というものを相当に尊重するという趣旨は、これはやはり法律的に認めておかなくちゃならない。そういう建前から、こういう協業という個人の話し合い、起業者と所有者との話し合いというものはやはり最後まで尊重すべきである、こういう建前からこの改正の規定を削除いたした、これが真相であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/8
-
009・田中一
○田中一君 私の伺いたいのは、この原案を自民党が出そうと言った場合に、衆議院において社会党が代案を出したわけです。そこで社会党案と政府案との間に、どういう話し合いのもとにこのような修正案に妥協したかということを伺いたいのですよ。理屈はいいです、わかっていますから。その経緯を伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/9
-
010・瀬戸山三男
○衆議院議員(瀬戸山三男君) 御存じの通りに、社会党から土地収用法の一部改正の法難案が議員提案として出されております。その趣旨は、やはり私権をできるだけ尊重するというに尽きておるのです。内容はいろいろ書いてありますが、できるだけ私権を尊重するという趣旨で、いろいろ研究をされまして、その点は私どもも個人の権利を尊重するという意味において、非常に御苦心をされたということについては、深甚の敬意を表しておるのであります。ただ、しかしながら、公益ということ、公共事業その他のいわゆる公益ということも、これは尊重しなければなりませんので、あまりに私権だけを重視して、国家その他の公共の事業が後退するということも、これは必ずしも感心ならない。そこで社会党の考え方の私権尊重という面と政府が考えております公益というものの妥協点として、この協議をするという点だけはやはり最後まで残そう、こういう話し合いで、別に深いいろいろな事情はないということを御了解願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/10
-
011・田中一
○田中一君 もう一つ伺いますが、三月十四日付でもって全国知事会が出しておる意見書がございますけれども、これはどういう形でもってこの意見書に基いた話し合いはいたしましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/11
-
012・瀬戸山三男
○衆議院議員(瀬戸山三男君) 全国知事会からの意見書というのは、第十七条の改正に関するものであったと思いますが、その点については質疑応答はありましたけれども、これは両党とも別にこの点については深く取り上げなかった、こういう事情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/12
-
013・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 別に御発言はありませんか。——では、御発言はこの件についてはないものと認めまして、それでは本案の逐条説明を政府委員から伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/13
-
014・町田稔
○政府委員(町田稔君) まず、第三条第十七号の改正について説明をいたします。第三条は、土地収用法の適用を受けて土地を収用し、または使用することができる公共の利益となるべき事業を列挙しました条文であります。第十七号は、公益事業令による公益事業の用に供する電気工作物を掲げたものでありますが、公益事業令による公益事業と申しましても、その公益事業のうちガス事業につきましては、ガス事業法により第十七号の四として別に掲げられ、残るのは電気事業のみとなっておるのであります。公益事業令は昭和二十七年に効力を失いましたが、電気及びガスに関する臨時措置に関する法律によって、電気事業に関する法律が制定されるまで、なおこれによることとなっております。今回の改正はこの点を明らかにしたものであります。第十七号の三の改正もこれと同趣旨の改正であります。
次に、第十七条第一項に三号として一号加える点について御説明いたします。第十七条第一項は、建設大臣が事業の認定に関する処分を行う事業を掲げたものでありますが、今回これに、事業の性質上、その利害の影響が一の都道府県の区域をこえまたは道の区域の全部にわたって及ぶようなものを加えたのであります。このような性質の事業につきましては、一の都道府県の区域を管轄する立場にある知事よりも、都道府県の区域にとらわれず全国的見地より判断できる立場にある建設大臣において事業認定処分をする方が妥当であるからであります。以上のような性質を有する事業として、具体的にイ以下に列挙し、これらを建設大臣が事業の認定に関する処分を行う事業に加えることとしたのであります。
次に、イ以下各事業について御説明いたします。
イの「港湾法による港湾施設で重要港湾に係るものに関する事業」は、第三条第十号の港湾法による港湾施設のうち、港湾法に定めるところにより重要港湾に指定された港湾における港湾施設に関する事業を取り上げたものであります。
ロの「航空法による飛行場又は航空保安施設で公共の用に供するものに関する事業」とは、第三条第十二号に該当する事業であります。
ハの「国際電信電話株式会社が公衆通信の用に供する施設に関する事業」は、第三条の第十五号の二に掲げてあるものでありますが、そのうち日本電信電話公社につきましては、当該公社法により土地収用法の適用については国とみなされ、事業の認定は建設大臣の所管となっておりますので、これを除いたものであります。
ニの「日本放送協会が放送事業の用に供する放送設備に関する事業」は、第三条第十六号のうち、日本放送協会が行う放送事業の用に供する放送設備に関する事業を取り上げたものであります。
ホの「旧公益事業令による電気事業の用に供する電気工作物に関する事業」は、第三条第十七号に該当するものであります。そのうち電気工作物に関する事業を行う電気事業者の供給区域が一都道府県内に限られているものにつきましては、従来通り、都府県知事が判断すべきものと考えられますので、これは除外いたしました。
ヘの「電源開発株式会社が設置し、又は改良する発電施設又は送電変電施設に関する事業」は、第三条第十七号の二に該当するものであります。
トに掲げる事業はいわゆる付帯事業でありますから、右に述べた本事業とあわせてその事業計画を審査し事業認定をするかどうかを定めるべき性質のものでありますから、特に建設大臣が事業の認定に関する処分を行う事業として掲げたものであります。
第十八条第二項第三号から第五号までのうち、「意見」とあるのを「意見書」と改めるのは、土地の管理者または関係行政機関の意見は書面で述べられた意見を添付すべきものでありますので、「意見書」と改め、土地の管理者または関係行政機関の作成した意見書を添付すべきことを明らかにしたものであります。
第十八条第三項を加えるのは、第二項第三号から第五号までに掲げる意見書、すなわち事業認定申請書の添付書類として必要なこれらの意見書が相当期間経過しても交付を受けられない場合には、起業者においてその事情の概要を説明する書面を添付すればよいこととした規定であります。起業者は、事業認定の申請をしようとしても、その添付書類であるこれらの意見書を相当期間経過しても得ることのできないときは、認定の申請が容易にできないこととなるので、事業の実施にも影響を及ぼすことに触るわけでありますから、今回このような規定を置いて手続の簡素化をはかろうとするものであります。そのかわりに、起業者にかわって事業の認定処分を行おうとする建設大臣または都道府県知事が意見を聞くことといたしました。これが次の第二十一条の改正の理由になるわけであります。
第二十一条の改正は、ただいま御説明いたしました第十八条の改正に対応するものでありまして、「意見書の添付がなかったとき、」を意見を聞くべき場合につけ加え、また第四条に規定する土地の管理者の意見も聞く必要がありますので、これを加えたものであります。第四条に規定する土地の管理者というのは、第四条の規定によれば、現に土地を収用しまたは使用することができる事業の用に供している土地について、これを別の事業のために収用または使用するものは特別の必要がなければならないことになっておりますが、そのような土地についての管理者をさすものであります。ただし書きは、この土地の管理者が実際には不在、不明等の場合も考えられますので、そのような場合には聞く必要がないということをいっておるのであります。
第二十四条第一項の後段を削って第三項を加えましたのは、建設大臣が事業認定申請書及び添付書類を市町村長をして公衆の縦覧に供させるためにこれを送付する際に、都道府県知事を経由することをやめ、市町村長に直接送付することとし、そのかわり、知事には送付後直ちにこれを通知して、当該申請書及び添付書類の写しを送付することとしておるのでありまして、収用手続の簡素化をはかったものであります。
第二十六条第三項の改正は、建設大臣が事業認定をしたとき、都道府県知事に対し第十八条第二項第一号から第四号までに掲げる書類の写しを送付することをやめたものであります。これは、ただいま申し上げました第二十四条第三項により、すでに送付済みだからであります。
第四十条と第四十一条、第六十四条等につきましては、説明を省略いたします。
第百二十五条の改正は、収用委員会の裁決事務の複雑化の現状にかんがみまして、裁決申請の場合の手数料を引き上げるようにするものであります。従来は一万円が最高限でありましたが、これを十万円に改めまして、裁決申請にかかる損失補償の見積り額に応じて手数料を政令で定めることといたしております。
最後に、附則のうち経過規定につきまして御説明申し上げます。
第二項は、従前都道府県知事に事業認定の申請をしていた事業で、この改正法により建設大臣に申請をしなければならないこととなるものでも、すでに申請済みのものはそのままでよいということであります。
第三項は、改正前の法律により、建設大臣が事業認定申請書を公衆の縦覧に供するために関係市町村長に対し都道府県知事を経由して送付したときは、この改正法によらず旧法による手続によって処理すべきことを規定したものであります。
第四項は、裁決申請手数料の額は、改正法の施行前にすでに申請済みのものは、改正法による手数料を納めないでよいことにしたものであります。
以上簡単でありますが、土地収用法の一部を改正する法律案についての御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/14
-
015・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 各条につきまして、また全般につきまして、御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/15
-
016・田中一
○田中一君 この十七条の三ですね、このイからトの間のこのトの方ですが、「イからヘまでに掲げる事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、」とありますけれども、これはむろん電気の関係ですが、これを電流を流導するものが必要なんで、索道、電線路ということが入っておりますけれども、軌道、鉄道の場合にはいいと思いますけれども、索道、電線路というものについて、これは個人の持っている宅地とか、それから立木とかいうものに対して、横暴にそれの空中を通過することがたくさんあるのです。そういう場合には、現に私の知っている範囲では、それに対する補償とかなんとか全然していないのです。空間における使用料なんというものはとっておらないのです。それが実情なんです。そういうものはどういう考え方を持っておるか。従来、新法を作る場合には相当論議してあるのです。実態としては、何ら補償もしなければ了解も求めずして、やるのが多いのです。こういう点はどういう考え方を持っているのですか。索道、電線路の、今主として電線路のことが一番多いと思います。
もう一ぺん言いますけれどもね。個人が持っているところの田畑、宅地、あるいは家屋の上とかいうものを——工事の実体というものはやはり短距離を行けばそれだけ工事費は安くなるのです。従って、どうしてもそういうことをしなければならない。することが多いのです。その場合には補償はしておりません。むろんこれは予備的な調査段階には立ち入りの問題はいいと思いますけれども、こういう場合あると思いますけれども、本工事でもってこれをやることが往々あるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/16
-
017・前田光嘉
○説明員(前田光嘉君) 電線路その他につきましては、土地収用法上は損失を受ける場合には当然損失補償すべきでありまして、実際にも収用委員会の裁定した場合には損失補償を出しておるようでございます。ただ、現在多く出ておりますのは、土地収用法の場合におけるところの補債ではなくて、任意の協議で進めておる場合が相当ございますので、こういう場合には、両当事者間の話し合いの都合によりまして、あるいは正当な土地収用法におけるほどの補償はしないで、ただ当事者間の協議の上で補償する場合もあるわけです。しかし任意の場合におきましても、その下が宅地であるとか、あるいは宅地として相当な価値が出るような土地につきましては、話し合いの上で補償をしておるようにも聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/17
-
018・田中一
○田中一君 あなた、それをほんとうに聞いておりますか。ただ法文がこうなっておるから、そうなっておるのだろうというようなことでは、困るのです。おそらく電線を引くのに、本工事をした場合なら別ですけれども、仮設の場合には、別にもう、人の田畑を通すのに、何も一々聞いてやしませんよ。それが実態なんです。災害がないからいいようなものですが、今の場合には、そのために災害があった場合にどうするかというのです。そこでそういう点がまだ足りないと思うのです。ことにここにはっきりと電線路も電気事業令に該当するからかまわないのだということになると、これは大っぴらにやってしまうのですね。こういう点、実態というものをおそらく前田さんは知らぬよ。それは法文でこうなっているからこうだというだけでは、困るのです。事実はどうなっているかということを伺っているのですが、私が知っている範囲では、そういうことは勝手にやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/18
-
019・町田稔
○政府委員(町田稔君) 事実収用委員会にかからない場合におきましては、今田中先生のおっしゃったようなのが実情だろうと私も思います。今回の改正法でここに掲げましたのは、従来、御承知のように、第三条の三十三号に書いてありますのと同じことを再び掲げてあるのでございまして、これが土地収用法が適用になりまして、収用委員会で裁決をいたします際には、こういうものにつきましても補償の規定に従って補償するということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/19
-
020・田中一
○田中一君 人の田畑の上に電線を通した場合補償するというのは、どういう形の補償になるのですか。またどのくらいが妥当な補償料ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/20
-
021・町田稔
○政府委員(町田稔君) これは非常に事実問題としては評価がむずかしいと思うのでございまして、一体どの程度の損失が下の宅地の所有者等に生ずるかということの算定になりますから、事実問題としてはきわめてむずかしいのでございますが、法規上は具体的に損失が生ずればこれは補償するということになっておりまして、法律としてはそれ以上の規定をすることは困難かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/21
-
022・田中一
○田中一君 それからもう一つ、個人の所有している立木、こういうものが電線にひっかかると思うのです。具体的に、なま木に電線をひっかけるのですから、電流が通って、その部分だけ生長がとまるということはあり得ると思うのです。そういうものは文句を言う対象になるのです。ごめんこうむる、おれの田畑の上に電線を通しては困るのだ、たとえば高圧線が自分の宅地の上を横断するのは困ると言う。現実の損失はどうかと言われても、それは損失などという性質のものではなく、精神的な非常に大きな不安があるのです。こういうものをやはり明確に必ず、そういうものが話し合いの上できまらなければ、補償しなければならぬということになっているはずなんですけれども、今度もう少し事業を遂行するために、さっき瀬戸山君が言ったように、私権よりも公益性の方にウエートを置こうという考えでこの改正はなったわけですが、実際のそういうものの扱いをどうしようとしているかということを一番心配するのですが、精神的な不安といいますか、こういう問題をどう補償するか。補償だけでは済まないのです。これは撤去してもらわなければならないのです、その場合には。そうすれば、そういう所はいけないならいけないと、たとえ補償があろうとなかろうと、金なんか一銭もほしくないのだ、取ってくれ、自分の頭の上に高圧線が通っちゃかなわぬからといった場合を、どうするか。それでも、法律では差しつかえないからやむを得ぬ、損害があるなら損害を言ってこいでは、通らぬと思うのです。私はそういう点が、現実の面において相当この法律の欠陥があると思うのです。またこういうことは再三再四指摘しているのです。ことにここに従来あった三条にこれを入れるということだけなんでしょうけれども、現実通りで現在やっているのです。そういう場合にこういうことが現場において明確に出てきた場合、実際どういう考えを持っているか。
これは酒井先生など、そういう仕事をやっておられるから、おわかりになると思います。おそらくそんなものは全然無視してやっております。そういう点を守るということは、私権を全部公益性でじゅうりんするのだという考え方でなくして、私権を侵さない範囲における公益性の優先ということであって、どこまでも私権を守ることが、憲法の建前からいっても、これは当然なのです。この場合に、こういう精神的な不安といいますか、そういう点を除却する方法があるかどうか。たとえば安全索道でもってそれを守っていくとか、なんとかというようなことが、ほかに政令か何かであれば別ですが、実際はどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/22
-
023・町田稔
○政府委員(町田稔君) ただいま田中先生の御意見のありました点はまことにごもっともでございまして、単に損失を補償をするということだけでは解決のできない場合が多かろうと思います。それで損失を補償する場合におきましても、どういう損失を補償すべきかという点はなかなかむずかしい問題でございまして、これらの点につきましては、今後も御指摘の点につきまして大いに研究をいたして参りまして、適切な行政指導をして参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/23
-
024・田中一
○田中一君 それじゃ、今の御答弁は、そういう点は通牒なりあるいは行政指導でもって、そういう不安の起らないように措置すると、はっきり御言明があったというふうに了解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/24
-
025・町田稔
○政府委員(町田稔君) そのように御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/25
-
026・田中一
○田中一君 それからこまかい問題は、これは政調の方でやったことですから、質問はこれ以上は省きますけれども、先ほど瀬戸山さんも言っておるように、私はこの土地収容法というものは、これは国民の権利を守る法律だという工合に解釈しております。これは決して国民の不利になることを強制する法律でないと、私は考えておるのです。従って、今の私権をある程度制限して公益優先の立場をとるのだという瀬戸山君の説明には、僕は不満なのです。修正した議員もそういう考えを持っておるのでは、実際困るのです。そういうものが議事録に残ることすら困るのです。少くとも私権というものを守るために、公益優先ということがあり得るのです。私はこういう解釈をしておるのです。私がこの改正案に一応賛成しようとする気持も、私権を守るために公益優先という形が現われてくるのだと思う。これは狭義の場合と広義の場合の解釈の問題であってこういう建前を政府がとってもらわなければ困るのです。そこで今回の土地収用法の改正に伴いまして、行政指導なり通牒触りで、どこまでも狭義の私権というものを、あるいは広義の私権というものを、一切守るために公益優先の場合があるのだ。その場合に、どこまでも精神というものは私権の擁護ということに尽きるという考え方から出発するところの改正であるということを、御言明願いたいと思うのです。従って、この改正案が通過した暁にも、どこまでも私権を守るという建前は変っておらないのだという点を明確に説明してもらわぬと、どうも党議の決定では私たちは不満なんです。そういう点は決して言葉のあやでごまかせというのではないのです。この法律を施行する行政官がほんとうのその腹を持ってかからなければ、すべて悪用されるおそれが多分にあるのです。そういう点は一つ局長から明確に態度というものを、考え方というものを表明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/26
-
027・町田稔
○政府委員(町田稔君) ただいま田中先生の御意見でございまして、土地収用法を所管しております者といたしましては、大へんありがたい御意見だったと拝聴いたしたのでございます。私たちも全く、今の先生のお話のように土地収用法を解釈いたしておりまして、この法律によってむしろ私権が守られるということを確信をいたしております。今後この土地収用法を具体的に適用いたします局にありますあるいは地方の土木部長、あるいは地方の建設局長等の会議等におきましても、その点の趣旨を十分に徹底させまして、今の御趣旨に沿うように行政の運用をいたして参りたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/27
-
028・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) ほかに御質疑ありませんか。
ちょっと速記をとめて。
午前十一時二十三分速記中止
—————・—————
午前十一時四十九分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/28
-
029・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 速記を起して。別に質疑がなければ、これで質疑は終局したものとして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/29
-
030・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) では、これから討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにして、お述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/30
-
031・小沢久太郎
○小沢久太郎君 私は自由民主党を代表して、改正案に賛成いたすものであります。
近来ダム、道路等の建設が盛んになるとともに、土地収用法の手続によるものも増加して参りましたが、本改正案は、法の公正かつ迅速なる運用、手続の簡素化をはかろうとするものでありまして、適当なものと私は考えるものでございます。すなわち、従来の建設大臣の事業認定の権限に、主要港湾、飛行場、通信、放送、電気事業等のおもなるものが加わりましたことは、地方におけるこれら事業の促進に役立つことと存ずる次第でございます。また、申請書の取扱い、関係行政機関の意見の聴取その他手続を簡素化しておりますことも、時宜に適しておることと存ずる次第でございます。
私は、右のような理由によりまして、本改正案に賛成いたすものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/31
-
032・田中一
○田中一君 私はやむを得ず本法案に替賛成をするものでございます。
その理由は、この法案は衆議院の先議でありまして、衆議院の審議の過程は、社会党案として単独に出しましたところの法律案と並行審議をするというような話になっておったのであります。ところが、むろん衆議院におきましてもわれわれの方は少数党でございます。従って、出しましてもこれは否決されるという点を考えまして、現在の政府提案の改正案に対しまして、われわれの意図するところを十分織り込んだ共同修正案を作成し、この修正案をもってわれわれは一応、一応本改正案には了承しよう、こういうことにきめたわけでございます。しかしながら、社会党といたしましては、本改正案以上の改正案を準備しております。従って、次国会にはほんとうに土地収用法の精神を生かし、かつ事業の公益性並びに国民の私権というものを十分尊重するような改正案を提案するつもりでおります。
従いまして、今回の原案並びに修正案に対しましては、次善の策として賛成はいたしますけれども、この運用に当りましては、十分私権というものの擁護という土地収用法の精神を体しまして、妥当なる行政措置をとられんことを要望いたしまして、本法案に賛成にするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/32
-
033・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) ほかに御発言ありませんか。——御発言がないようでありますから、討論は終局したものと認めます。
これから採決を行います。土地収用法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の緒君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/33
-
034・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/34
-
035・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 御異議ないと認めます。よって、さように決定いたしました。
それから報告書に多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
石井 桂 小灘久太郎
近藤 信一 大谷 贇雄
酒井 利雄 西岡 ハル
武藤 常介 小笠原二三男
田中 一 若木 勝藏
村上 義一発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/35
-
036・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 速記をとめて。
午前十一時五十五分速記中止
—————・—————
午後零一時二十一分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/36
-
037・赤木正雄
○委員長(赤木正雄君) 速記を始めて。
これをもって閉会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414149X03019560508/37
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。