1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月二十三日(水曜日)
午前十時三十一分開会
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委員の異動
五月二十二日委員木村篤太郎君辞任に
つき、その補欠として高橋衛君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 青木 一男君
理事
野本 品吉君
宮田 重文君
千葉 信君
島村 軍次君
委員
青柳 秀夫君
井上 清一君
木島 虎藏君
西郷吉之助君
佐藤清一郎君
江田 三郎君
菊川 孝夫君
田畑 金光君
松浦 清一君
吉田 法晴君
豊田 雅孝君
廣瀬 久忠君
堀 眞琴君
国務大臣
国 務 大 臣 船田 中君
政府委員
防衛政務次官 永山 忠則君
防衛庁次長 増原 恵吉君
防衛庁長官官房
長 門叶 宗雄君
防衛庁防衛局長 林 一夫君
防衛庁教育局長
事務取扱 都村新次郎君
防衛庁人事局長 加藤 陽三君
防衛庁経理局長 北島 武雄君
防衛庁装備局長 小山 雄二君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
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本日の会議に付した案件
○国防会議の構成等に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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001・青木一男
○委員長(青木一男君) これより内閣委員会を開きます。
委員変更についてお知らせいたします。
五月二十二日付をもって木村篤太郎君が辞任されまして、高橋衛君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/1
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002・青木一男
○委員長(青木一男君) 国防会議の構成等に関する法律案を議題に供して質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/2
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003・江田三郎
○江田三郎君 委員長ちょっと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/3
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004・青木一男
○委員長(青木一男君) 速記停止。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/4
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005・青木一男
○委員長(青木一男君) 速記開始。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/5
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006・堀眞琴
○堀眞琴君 私はまず防衛庁を国防省にという考え方があるかないかということについて、昨日松浦君の質問に対しまして、長官は現在はそういうことを考えてもいないし、研究もしておらぬ、こういう御答弁があったわけです。しかしあなたの前の長官である砂田さんが、いわゆる砂田放言といわれた数々の放言の中に、防衛庁を国防省あるいはその他の独立の省にしようという考え方があることを明確にされて、そうしてそのための検討もある程度しているんだ、こういう御答弁であったわけです。昨日の船田長官の答弁によりますというと、現在は研究もしておらぬ、こういうお話でありますが、しかし少くとも自衛のための軍隊が必要である、こういう見解をとっていられる政府の立場から申しますというと、ファンクションといいますか、国家の機能という観点から申しまして、軍事的な機能を独自の機能と考えるであろうということはいうまでもないし、それからまた、近代国家の成立当初からの国家のファンクションという立場から見ていくならば、当然防衛あるいは自衛のための行政機構上に独立の省が必要になるということは、あなた方の立場からいえば、当然考えられることだと思うのです。従ってこの点に関しまして、昨日の松浦君の質問に対する答弁だけでは、必ずしも納得ができない。もし私が軍隊が必要である、自衛のためには軍隊をどうしても置かなければならぬという論者であるとするならば、当然そういうことは考えなければならぬと思うのです。そのファンクションという立場、国家の政治機能と申しますか、そういう考え方から申しまして、防衛庁を国防省にするという考え方は、依然としてお持ちにならない、研究もしていない、こういう立場なのかどうか、それを重ねて、まず最初にお伺いしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/6
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007・船田中
○国務大臣(船田中君) 昨日私が松浦委員の御質問に対してお答え申し上げましたときに、ただいま堀委員の御指摘になりましたような点において、多少誤解があったように思います。それは昨日の御質問の主たる要点は、調達庁の問題にあったわけでございまして、調達庁を防衛庁に統合するかどうかという問題に関連いたしまして、今直ちにそのことを考え、また調達庁を防衛庁に統合するから防衛庁を国防省に昇格しなければならない、そういうふうに、その間に不可分の連絡関係があるという、そういう意味において国防省の設置ということを考えておるのではないという趣旨を申し上げたわけでございまして、ただいま堀委員がおっしゃったように、今日防衛関係の仕事は、相当に国家の機能のうちにおいて大きな役割をいたしておりまするし、また、防衛庁及び自衛隊の規模が、とにかく相当大きくなっておりまして、他の省に比較をいたしますれば、優に一省をなすだけの規模になっておるわけでございますから、私といたしましては、できれば防衛省あるいは国防省という一省に昇格することが望ましいとは考えておるのでございます。ただ、先ほどお断わり申し上げましたように、現在問題になっておりまする調達庁の移管の問題あるいはこれを統合するという問題と関連して、今直ちに国防省を設置するということを考えておるわけではない、かような趣旨で申し上げた次第でございまして、その間におきまして多少私の発言の意味がはっきりいたしておらなかったことがあるかもしれませんが、ただいま申し上げるように私は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/7
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008・堀眞琴
○堀眞琴君 私は、調達庁を防衛庁の中に移管しようとしまいと、そういうことは第二の問題だと思うのです。第一の問題は、やはり自衛のための軍隊を必要とする立場からいえば、当然国家機能としての軍事というものを相当重大視しなければならぬし、それからその仕事の量が多いとか少いとかいうようなことは、これまた私はそう大した問題ではないと思う。少くとも近代国家が近代国家として発足した当初から、国家機能の沿革あるいはその発展等から見て、当然あなた方の立場においては、国防省なり防衛省なりということは考えられてしかるべきだという工合に結論されてくるわけなんです。今のお話ですと、長官の個人の考えとしては、当分はとにかくとして、将来は防衛省なり国防省にしたいというお話のようでありますが、その点もう一度確認いたしたいと思いますから、明確におっしゃっていただきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/8
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009・船田中
○国務大臣(船田中君) 大体ただいま堀委員の御指摘になりましたような考え方において研究調査は続けてやっております。ただこの問題につきましては、本年の初め、行政機構の改革の問題が起りましたときに、一応話題には上ったのでございますが、しかし時期が熟しませんで、行政機構改革の中にはこれが取り入れられなかったのでございます。しかし行政機構の改革も、内政省の設置その他の、今現に提案いたしておるものだけで満足すべきものではなくして、なお、行政機能を十分に発揮し、効率的に運営をするというような建前から考えますと、さらに第二段、第三段の行政機構の改革ということを考えて参らなければなりませんし、鳩山内閣といたしましては、行政機構の改革には、さらに一段の努力をしていかなければならぬ、いくつもりでおりまするので、それらの問題と勘案いたしまして、この国防省への昇格問題ということも研究を進めて参りたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/9
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010・堀眞琴
○堀眞琴君 その防衛庁を設置することが、元々私は憲法上の大きな疑義のある問題だと思うんです。私どもは防衛庁設置法案が国会に出ました当時、憲法問題に関連さして、これらの問題についての質疑をいたしたのでありますが、今のようなお話で、もし防衛庁をさらに拡大して、防衛省なりあるいは国防省なりに昇格せしめるということになりますというと、ますます現在の憲法とは抵触することになるだろうと思うんです。特に憲法第九条のあの規定をここにあげるまでもないと思うんです。そうしますというと、あなたのお考えは、現在の憲法のもとにおいて、果してそういうお考えを行政機構改革の一環として実現されるということになりますというと、ますますもって私はこの問題は大きな疑義を国民にも与えるし、少くとも憲法をあくまでも順奉しなければならないという立場においてそういう構想を実現されるということはどうかと思いますが、この点に関しましてはどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/10
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011・船田中
○国務大臣(船田中君) その点につきましては、堀委員のお考えと私は違うかと存じますが、政府といたしましては、総理大臣から、しばしばこの席におきましても明言申し上げておりますように、現行憲法の九条は、自衛権を否定しておらないし、従って自衛権を行使するに足る最小限度の自衛体制を整備するということは憲法の禁止するところでない。こういう解釈をとっており、これを実行してきておるわけでございますから、従いまして将来防衛庁を防衛省なり、あるいは国防省に昇格するというようなことがありましても、何らこれは憲法の禁ずるところではない。憲法に抵触することはないと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/11
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012・堀眞琴
○堀眞琴君 自衛力を持つことができるかどうかというような論争はもうたびたびこの委員会でも、あるいはそのほかの委員会においても繰り返されている問題ですから、ここではあらためて私は蒸し返そうとは思いません。ただやはり私は第九条の第二項なり、あるいは第二項の、後段なりの規定というものがこの防衛庁設置そのものに対して憲法上から疑義がある。いわんやこれを昇格せしめるということになりますというと、ますますその疑義が大きくなるだろうと思う。政府の見解では、自衛体制を整えることは何ら憲法に抵触するものではない、こういう態度を終始一貫してとっておられることは私も承知しております。しかしそうは言っても、憲法解釈上、政府のとっておる立場というものが果して合憲的なものかどうかということについては、憲法学者の間でも相当の問題の存するところです。そういうような疑義のある、憲法に抵触するだろうと思われる考え方を政府の方では一方的にあくまでも遂行していく。こうなりますというと、ますます憲法解釈上の疑義というものが大きくなってくる。私はあなたの構想は、国家機能の立場という点から、私が先ほど質問したような考え方で省に昇格せしめるということは憲法には抵触しないのだという立場においては、当然かと思う。しかしそれはその解釈そのものが実は問題なわけなんです。従って政府の考え方、将来これを防衛省なり国防省にするということは非常に大きな私は問題だと思う。憲法が改正される。そしてその上に立って、ということならば、またこれは問題は別になると思うのです。しかし憲法の改正についても、私は憲法のまあ世界的な通則として、改正には一定の限度があり、少くともその基本的な規定についてはこれを修正の手続によって改正することはできないという見解がおそらく世界的な憲法解釈上の通則だと思うのです。そういう観点から申しましても、憲法改正後においてそういう構想を実現するといたしましても、憲法の解釈上からそれは不可能ではないか、このように思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/12
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013・船田中
○国務大臣(船田中君) 憲法改正については、堀委員の御意見と違います。国防省なりあるいは防衛省という、現在の防衛庁の省昇格の問題は、この憲法解釈とは私は何ら抵触するものではないと存じます。その省の昇格ということはこれは国家機能をいかに有効に、効率的に発揮するか、そのためにどういう組織がよろしいかということから省の問題が論ぜられるべきものでございまして、そういう意味におきまして、先ほど申し上げたように、一般行政機構の改革ということとにらみ合ってこの防衛庁の省昇格の問題も研究して参り、適当な結論を得たいというふうに考えておる次第でございます。この自衛体制を整備するという問題は、これは私は現行憲法において許されておることでございまして、その問題とこの省の昇格の問題とが必ずしも今、堀委員の御指摘のような因果関係において、ともに憲法違反の疑いがありはしないかということには私はならぬと思うのでありまして、これは別個に考えていくべき問題ではないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/13
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014・堀眞琴
○堀眞琴君 どうも憲法の問題になると、もう少しやはり長官の御意見を伺わないというと、私も納骨できないのですが、しかし今日は憲法問題はできるだけはずして、一般的な質問の方へ進もうと思ったのですが、政府の見解と、私どもの見解が最初から対立していることは、私もこれを認めているわけなんです。私どもの見解にどうしても御同意がないわけなんですが、しかしそれはそれとしまして、自衛体制を整える、これはいいです。あるいは自衛権というものがあるのだ、これも私は決して否認、否定するというところまで行ってないんです。ただ自衛体制を整えると言っても、第九条の第二項の規定がある。いわんや交戦権を持たない、こういう規定もあるわけです。これは鳩山さんへの質問のときに時間がないので、私はしり切れトンボのようなことになってしまったのですが、交戦権の問題ですね、これを政府の方ではどのように考えられているか。交戦権という場合には大体二つの意味があると思うのです。交戦権の内容として考えられるのは、一つは国際法上の交戦をなし得る権利、もう一つは国家が戦争をなし得る権利、大体まあこういう工合に従来考えられてきた。もっとも交戦権という考え方が、国際法上一応まとまった形をとったのは、まあ不戦条約以後だと思いますが、まあそれ以前からの国家が戦争をする権利ということに関して今日までとられてきたいろいろの解釈の中で、それを要約して行くというと、狭い意味では国際法上の交戦をなし得る権利、もう一つはもう少し拡げて、国家が戦争をなし得る権利だというような見解に要約できるのじゃないかと思うのです。政府としては交戦権というものを、どのような考え方でおとりになっているか。それをまず伺わしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/14
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015・船田中
○国務大臣(船田中君) この問題につきましては、先般総理大臣及び当時出席しておりました林法制局長官から御説明申し上げましたように、憲法第九条の交戦権ということは、戦争状態に基いて戦時国際法上の交戦国に認められている権利、今、堀委員も御指摘になりましたように、そういう大体のこれは国際法学者の通念であるかと思いまするが、すなわち戦争をし得る権利というよりも、戦争状態になったときに、交戦国の持っている権利、たとえば戦時禁制品を積んだ中立国の船舶を拿捕するとか、あるいは占領地行政を行うことができる、こういうような一連の権利を交戦権というように政府は解釈をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/15
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016・堀眞琴
○堀眞琴君 きわめて明確に交戦権の概念を説明されたと思うのです。それはその通りだと思うのです。そういう交戦権を持たないということを憲法では規定したわけです。規定したというよりは、むしろ内外に宣言したと言った方が当っているかもしれません。そういう交戦権を持たない日本の自衛力は、外国からの侵略があり、戦争しなければならぬ、こういった場合に、そういう交戦権を持たない、こういう規定の上から言うと、結局日本の自衛力といえども、これとどういう形で戦争をすることができるのか、国際法上の交戦権を持たない日本の戦争というものをどのようにごらんになっているのか、それを御説明願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/16
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017・船田中
○国務大臣(船田中君) 自衛権の行使ということは、必ずしも交戦権の問題と今御指摘のような密接不可分の因果関係を持っているというふうには私は見ないでいいのではないかと存じます。すなわち自衛権の行使ということは、侵略がありました場合に、これにわが国土を守るために、自衛のための武力行使をする、事実上において武力行使をする、こういうことでありますから、交戦権を憲法九条において放棄しておりましても、その自衛権の発動としての武力行使はできる、それは憲法の否定しておるところではない、かように私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/17
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018・堀眞琴
○堀眞琴君 その今の問題ですがね、交戦権を持たない日本の武力の発動ですね、これが果して有効な戦闘行為、まあ中立国の船舶に対するいろいろな権利であるとか、あるいは占領地に対する占領行政の問題であるとか、そういう問題もありますが、同時にまた交戦国家は、もちろん交戦団体といえども、一応戦時国際法上認められた権利の行使に、権利に基いて武力行動をやるわけですから、従って交戦権を持たない武力の発動、あるいは武力の行使ということは、これは結局において国際法上からはナンセンスだ、こう見ても差しつかえないと思うのですが、その点はいかがなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/18
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019・船田中
○国務大臣(船田中君) 交戦権を伴わない、事案上の武力行使、すなわち侵略に対する正当防衛としての反撃、武力行使ということは、非常な不完全なものがあると存じます。国際間のいわゆる戦争状態になった場合における法律上の手続、あるいは法律上の立場から言えば、非常に不完全なものだとは考えますけれども、しかし交戦権を放棄いたしておりましても、武力行使はできる。すなわち自衛のための武力行使はできる、私はそういうふうに考えます。また政府もその方針を今までとってきておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/19
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020・堀眞琴
○堀眞琴君 たとえば具体的に申しますと、ある国が日本に侵略をした。その侵略に対抗するために自衛上日本が武力を発動した、そこで戦争になりますね。その戦争は、たとえば日本の国土内、日本区域の中で行われる場合ももちろん問題があると思いますが、さらにまたその戦争のためには、たとえば日本海に、あるいは太平洋の公海の上にもさらに戦闘行為が発展していくという場合も考えられますね。そうなった場合に、たとえばあなたのあげている中立国の船舶に対する交戦国としての権利ということは行われないわけです。中立国の船舶が、たとえば敵国に対して禁制品を運んでいくとか、あるいは禁制品ばかりではなくて、敵国の軍人をも輸送するというような事態が起った場合には、これに対して何らの権利もこちらの側にはない、こういうことになりますね。そういう場合、果して有効な国内の防衛ができるかどうかという問題になってくるだろうと思う。その点はどういう工合にお考えになっていられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/20
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021・船田中
○国務大臣(船田中君) もし日本の国土に侵略が起ったというような場合においては、現在におきましては日米安保条約の規定によりまして、まず日本政府とアメリカ政府との間においていかなる共同措置をとるかということについてまず協議をする。それでその場合において、わが方といたしましては、憲法なり国内法の範囲内における自衛行動をとる、こういうことになると存じます。従いまして今御指摘のような場合においては、おそらくアメリカ側でそういう問題を負担するということになるかと存じますが、その侵略の形態、規模等によりまして、そのときどきに具体的にきまっていく問題でございますが、大体行政協定二十四条の規定によりまして、そういうような場合には、面もに日本政府とアメリカ政府との間において、いかなる共同措置をとるかということについて協議をするということになると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/21
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022・堀眞琴
○堀眞琴君 次の問題は、日本の防衛計画に関する点であります。
その第一点は、アメリカの防衛計画との関連、この問題も昨年の同じ法案が出ました二十二国会においては相当論議の対象になった問題です。しかしその際にも、この問題に関しては必ずしも十分な説明が得られないので、野党側と申しますか、私どもの方では納得できなかった問題であります。というのは、日本の防衛計画は、日本の独自の立場でこれが行われているかどうかという問題、もっと具体的に言うならば、日本の防衛計画はアメリカの防衛計画の一環として組み入れられているのではないか。もちろん安保条約があり、行政協定があり、両者の間に今のお話のように日米合同委員会が設けられ、戦争の場合においては、両者の間に緊密な連係がとられるであろうということは想像できるわけですが、それにしても、またそれであるからこそ、むしろアメリカの防衛計画の一環として日本の防衛計画が立てられている。日本の独自の立場において日本の防衛計画が立てられているのではないのではないか。このことは、警察予備隊が設けられたあのいきさつ、それからその後の自衛隊に至るまでの発展、これを見ますというと、きわめて私は明瞭だと思うのです。決して政府の言うように、政府独自の立場において、アメリカとの共同作戦ということは一応考慮されるにしても、日本の独自の立場において防衛計画が立てられているのではない。たとえば地上軍を十八万、三十五年度には十八万にするという政府側の考え方にしましても、これは向う側との関連において十八万という数字が出てきている。最近は十八万が三十数万ということが向うによって要請されているということも、これもまた隠れのない事実だと思う。今日は三十五年度までに十八万を完成するという計画で進んでいる。しかしその計画は、今言ったアメリカの防衛計画の一環として、アメリカ側からの要請に基いてそういう計画が立てられているのではないか、このように考えられますが、その点に関しましては長官はどのように御説明されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/22
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023・船田中
○国務大臣(船田中君) 日本国土の防衛については、日米安保条約によりまして、日本とアメリカとが共同の責任において防衛をするということになっておることは御承知の通りでございます。その日本の国土の防衛ということが、同時にアメリカの大きな意味における国防に寄与するということも、これは当然考えられることであろうと存じます。しかし日本の防衛に関する限りにおきましては、それが同時にアメリカの利益になるにいたしましても、日本の国土の防衛ということは今日日本の独力ではこれを全うすることができませんから、従ってアメリカの協力得て日本の国土の防衛をする、こういうことになるのでございまして、従って日本国土の防衛ということにつきまして日米間において緊密な連絡をとり意見の交換をするということは、私は当然であると存じます。また従来もやってきておることでございます。しかし、さればといって日本の防衛を、自衛体制をどのように整備するかということにつきましては、もちろん日本は独立国でございますから、これは日本の自主的に決定していくことでございまして、その決定に当りましては、もちろんアメリカ側にも十分な連絡はいたします。しかしそれによって日本の防衛体制を整備するについての自主性を失っておるということはございません。ただ自主性を失わないということは、日本の独力で日本の国土の防衛ができるという意味ではないのでありまして、日本の自衛体制の範囲、あるいは限度、量的の制限、そういうような問題につきまして、もちろん日本は自主的にこれを決定していく、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/23
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024・堀眞琴
○堀眞琴君 アメリカとの緊密な連携のもとに日本の自主的な立場において防衛計画を立てられていく、こういう今の御説明であったわけです。もちろんアメリカとの関係では日本は一応は独立しておりますから、何もかも向う側の私は言いなりになっているという意味で申し上げているのではないのです。少くとも防衛計画、たとえば十八万の地上軍を日本の方では三十五年度までに完備する、こういう見解についても実は向う側が極東防衛という観点から十八万ぐらいあればどうやらアメリカの極東防衛ができる、こういう見解の上に立っているのだ。私は時間がないので探すことはできませんでしたが、ただ西ドイツの防衛計画についてアイゼンハワーがまだ総司令官であった当時、末期にアメリカの上院に喚問されまして、そうしてヨーロッパの防衛問題についての証言を求められたことがあります。そのときにアイゼンハワーは明確にヨーロッパにおけるアメリカの防衛のために西ドイツにはこれだけの軍備が必要である、フランスにはこれだけの軍隊を保持してもらわなければならない。フランスやイギリスの場合は北大西洋条約の理事会において決定された数字があり、これはそれぞれの国が承認をいたしまして、そうして一応のヨーロッパ統合軍隊の整備ということが目標とされるわけでありますが、しかし西ドイツの場合にはそうではなくて、アリメカのヨーロッパにおけるところのいわばアメリカの防衛のために西ドイツに対してこれこれの軍事力がどうしても必要であるということを証言しているわけです。日本の場合についても同じようにやはり極東防衛の観点から日本こそがアジアにおけるアメリカの防衛のために一番中心の勢力にならなければならない。そのためには日本はこれこれの軍備がどうしても必要なんだということがペンタゴンにおいての私は決定された意向だと思うのです。その意向に従ってたとえば池田・ロバートソンのMSA協定のための会談のときの具体的な数字である、あるいは向うのペンタゴンの代表者とこちら側との間の話し合いというようなものを通じて、そういうものが決定されてきていると思う。日本の独自の立場において十八万が日本の財政経済の上からいって最大限度、あるいはそれがぎりぎりの線だという形でこれがきめられた、しかもそれが防衛のために十分な地上軍の兵力であるという工合にしてきめられたというのではなくて、やはりアメリカのペンタゴンの意向というものが強く反映してそういう計画が出されたものだと思いますが、その点についてはいかがなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/24
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025・船田中
○国務大臣(船田中君) 日本の防衛が同時にアメリカの自由主義を守るために寄与するであろうということは、私は今堀委員の仰せられたようにやはりそういう関連性はもっておると思います。しかし日本から見れば、それがアメリカの利益になろうとなるまいと、日本の防衛は今日日本独自の力では防衛ができませんから、アメリカの協力を得て日本の国土の防衛に任じておるということでございます。従って先ほども申し上げましたようにアメリカ側と日本との間においては、日本防衛のために常に緊密な連携をとり、また意見の交換もいたしておるのでございますが、しかし日本の防衛体制をどの程度にするか、また時期的にどういうふうにやっていくかという決定はもちろん日本政府の自主的な決定によるわけでありまして、アメリカの制肘を受けておるわけではございません。この日本防衛のために日米間において緊密な連携をとり意見の交換をしているということは、これは事実でございますが、それをもって日本の防衛体制整備について自主性を失ったというふうには私は言えないのではないか、もちろん日本の防衛については日本は自主性をもってやっておるということを申し上げて差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/25
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026・堀眞琴
○堀眞琴君 アメリカ側の意向、あるいはアメリカの軍部当局の意向と言った方が適切かと思いますが、かつて東洋学者であり、国務省の顧問をやっておりますオーエン・ラチモアが日本をアメリカはどう見るか、アメリカの政府あるいは軍部当局がどう見ているかということに関しまして、こういう適切な言葉を述べたことがあるのです。日本という国は極東における最も進んだ軍需工場地帯である、それから日本という国は沈まない航空母艦である、それから日本という国は最も勇敢な兵隊さんを供給することのできる国であり、しかも人口の数からいっても非常にたくさんある。これがアメリカの極東防衛という観点のいわば最も基本的な考えになっているのだ、こう述べたことがあるのです。私は今でもその見解はアメリカ側では変っていないと思う。こういうオーエン・ラチモアの表現が向う側の対日政策といいますか、あるいは極東防衛の一環としての日本の防衛というものの根底に横たわっていると思いますが、そういう考え方に対しては長官はどのようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/26
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027・船田中
○国務大臣(船田中君) オーエン・ラチモアがそういうようなことを言っており、またアメリカのその他の評論家の間にもそういうような意見を言っている者もあるということは私も承知いたしております。しかし先ほど来申し上げておりますように、アメリカ政府から日本政府に対して日本の防衛体制はどういうふうにした方がいい、あるいはどうしてもらいたいというような要請を受けておることは全くございません。日本の防衛についての日米間のお互いの緊密な連絡及び意見の交換ということはやっておりますが、しかしアメリカ政府が日本政府に対してこういう程度の自衛体制を整備してもらいたいとか、あるいは陸上においてどれだけ作った方がいいだろうとかいうようなことについて、アメリカ政府から要請を受けたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/27
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028・堀眞琴
○堀眞琴君 次にお尋ねしたいのは、これもきのう松浦委員から質問のあった点です。例の米軍撤退の問題であります。本年度は一万一千人さらに撤退することにきまっておる。で、三十五年度に地上軍が十八万になった場合においては、米軍撤退のいわば上台ができるのだ、基礎ができるのだ、こういう御説明であったわけでありますが、日本の防衛当局としてはその基礎ができた場合に、アメリカ軍が撤退することはアメリカの当局においてきめるだろうというお答えもあったわけですが、防衛当局としてはそういう基礎ができた場合に、アメリカ軍が撤退するか、それは全部が撤退するのか、それともそうではなくて、現在も行われている一部がさらにまた多数兵力にわたって撤退するのか、その点についてどのようにお考えになっていられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/28
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029・船田中
○国務大臣(船田中君) 昭和三十五年度におきまして防衛庁の持っておりまするいわゆる長期防衛計画の試案が達成されるといたしますれば、今堀委員の御指摘のように米軍撤退の基礎はできます。しかしその場合におきまして全部の陸、海、空三軍にわたって撤退するかどうかということは、これは主として国際情勢によることでございますが、これは何といっても日米間の国際情勢についての見通し、そして日米間の合意によって行われることでございますから、その時期を今明言するというわけには参らぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/29
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030・堀眞琴
○堀眞琴君 御承知のようにアメリカでは昨年の大統領の年頭教書以来、国防当局としては海外の軍隊を少くとも地上軍についてはできるだけ早い機会にこれを撤退するという方針、なお、国内においても地上軍においては三百五十万から二百八十万ないし八十五万まで減らすという方針を立てて、昨年来それを着々やっておるわけです。ただし海軍、空軍についてはむしろこれを増強する、こういう方針を明らかにして、そして特に空軍等についてはむしろヨーロッパにおいても強化されつつある現状だと思うのです。日本の場合についてもやはり地上軍は撤退するかもしれないが、空軍、海軍等は現状維持あるいはさらにまた国際情勢のいかんによっては強化されるという方針のように見受けられるのですが、その点に関しましては防衛当局としてはどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/30
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031・船田中
○国務大臣(船田中君) 地上の戦闘部隊は昨日も官房長から大体御説明申し上げましたように、早い機会に撤退していく計画が着々実行されつつあります。従いましてこれと見合ってわが方の陸上自衛隊をなるべく早く整備するということは必要があると考えて、また政府もその方針で従来増強を実現しつつあるわけであります。今後におきましても、この昭和三十五年度における十八万の陸上自衛官を持つという方向に向って進んで参るわけであります。しかし今お話のありましたように、海、空についてさらに増強されるかどうかということは、今のところこれは全くそれを予想する何らの資料も持っておりません。またそういうことにつきまして、少くとも私の接触するアメリカの軍官辺の意向としても、そういうことは何ら示されてはおりません。ただ私の推察によりますと、アメリカが友好国に対する軍事援助なりあるいは共同の防衛というような問題についてやっておりまする方向は、その被援助国が漸次自力でもって防衛のできるような、少くともその国の経済力あるいは財政と見合って、その国なりの防衛体制が整備されるようにと、そしてそれをアメリカの援助によって漸次育成するという方向には進んでおるように見受けられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/31
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032・堀眞琴
○堀眞琴君 今の問題は、同時にまた日本の自衛体制の整備ということに私は関連してくると思うのです。アメリカの国防当局は地上軍を、海外に派遣している地上軍をできるだけ撤退する、そのかわりそれぞれの国における防衛体制を、その撤退した分だけ、それに見合うだけの地上軍を整備するということが、ヨーロッパでもアジアでものアメリカの防衛方針だと言うことができると思う。これは私が言うのではなくして、アメリカの側においてそういう見解をとっているわけです。ですから日本の十八万の軍隊にしろ、あるいは西ドイツの何十万になりますか、今のところはまだ最終的には決定しておりませんが、しかし北大西洋条約理事会において決定された、たとえばドイツの四十万とか五十万というような兵力というものは、全部これアメリカの地上軍の撤退に見合うものとして、いわばアメリカの地上軍にかわるものとして、それぞれの国において、日本ならば再軍備、ドイツの場合でも再軍備、その他の国においても、これは北大西洋条約に参加した国が、それぞれ条約上の義務に基いて兵力を整備する、こういうことになっておると思う。日本とドイツの場合は明らかに——北大西洋条約に参加している、たとえばイギリス、フランスのような立場においてアメリカとの共同作戦ということを考えているものではなくて、全く一方的にアメリカ側の要請に従ってアメリカ軍にかわる防衛体制を設ける、私はそういう見解の上に立っていると思うのです。それからその空軍等の増強の計画については、これは私はたくさんの新聞を見ていないからわかりませんが、たとえば最も代表的なニューヨーク・タイムスなどを見ると、ほとんど毎号といっていいほど、たとえば対ソ戦略に対する記事なりあるいは毎号といっていいほどに空軍基地あるいはそれに加えて海軍の基地をも含めたアメリカの対ソ基地、ヨーロッパ並びにアジアにおける基地等に関する記事が載っておるわけです。これはもちろんアメリカの国民に対してアメリカの国防がいかに万全であるかということを知らせる一つの意味を持っておると思いますが、しかし同時にまたアメリカの考えている対ソ戦というものに対する一つの大きなデモンストレーションの意味も含んでおると思う。私は五月十三日のニューヨーク・タイムスをここに持っております。これの五ページにもほとんど半ページに及ぶような大きな地図がありまして、たとえばイギリスには十七個所、ドイツには二十個所空軍基地が整備されておる。昨年の十一月のニューヨーク・タイムスの記事によりますと、たとえば西ドイツの場合は十四個所、イギリスの場合は十八個所で、一個所減っております。フランスは八個所、五月十三日号によると、さらにまた八個所から十一個所にふえておるという工合で、アメリカの海外におけるところの基地群というもの、特に空軍を中心とする基地群というものが非常に強化されてきております。日本の場合にも、この地図では、日本の場合は十八個所となっております。昨年の十一月の記事は、補充基地を除いて、重要なる基地は十二個所という工合に出ております。これを見ますと、十八個所になっております。その増加すると予定された部分についての説明は別に書いてありませんが、しかしこれがアメリカの両院において相当の論議の問題になっているという見出しで、実はニューヨーク・タイムスの五月十三日号に出ておる。こういうような記事から見ましても、一方地上軍はそれぞれの国においてアメリカ軍が撤退するに応じてこれを整備する。しかし空軍基地を中心とする、海軍を含めての基地はさらに強化するという方向に向っていると、こう思うのです。この点に関して防衛庁当局はどのようにお考えになっておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/32
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033・船田中
○国務大臣(船田中君) 今お示しの点については、私詳細承知いたしておりませんので、的確なことを申し上げることができませんが、大体の方向としてはそういう点において、先ほど申し上げましたように、被援助国の自衛体制がその国の力によって漸次整備されるということに努力をする、その育成のために努力をするという方向をとっておるように存じます。従いまして昨日もお話しがございましたように、防衛生産の問題についても、今までのようにただ既存の既製品を供与するというだけでなくて、技術なり、あるいは科学上の知識も供与して、そうしてその国の防衛生産がだんだん育成され、発展していくようにしまして、そうして防衛体制が整備されるようになるという方向にもっていこう、そういう方向に進んでおるように見受けられます。しかしその空軍の基地の問題につきましては、私はその詳細なことを知りませんので、これについて的確な意見を申し上げることはできないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/33
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034・千葉信
○千葉信君 議事進行について。今本会議が始まったようですが、今日の本会議で第二番目の案件として、昨日この委員会で採決になった運輸省設置法案の審議があるわけです。どなたが委員長報告をされるかしりませんが、委員会としては当委員会にかかった法案が本会議で審議されるときに欠席していいということにはならんと思うのです。この際休憩してその本会議における議案の採決に加わることが至当だと思います。この際委員会を休憩していただきたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/34
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035・青木一男
○委員長(青木一男君) 委員長は本会議中も本委員会を開くことに議長の許可を得ておりますから、質疑を継続する方針でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/35
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036・千葉信
○千葉信君 本会議の最中、委員会を開くということについては、委員長は議長の許可を受けておられるでしょう。それは私も認めます。しかしそれは他の場合であって、この委員会で採決した法律案が本会議にかかっておるときに、その採決に本会議で加わらなくてもいいということにはならんと思います。当然の措置だと思いますので、暫時休憩して、その本会議における法律案の審議が終ったあとでまた再開するように、当然なことですから……。(江田三郎君「終ったらすぐ始めたらいい。こちらの法案だけ上ったらすぐやったらいい」と述ぶ)当然のことだろう、君。筋の通った話だろうが。それは強引に押すべき筋合の問題じゃない。筋の通る話はやはり聞かなければならぬ。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/36
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037・青木一男
○委員長(青木一男君) それでは本会議における当委員会の関係法案が議了したら、堀君の質疑を継続いたします。そういう了解で暫時休憩いたします。
午前十一時三十八分休憩
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午後零時一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/37
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038・青木一男
○委員長(青木一男君) 休憩前に引き続き会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/38
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039・堀眞琴
○堀眞琴君 アメリカ側の最近の戦略態勢として、先ほど申し上げた地上軍の海外からの引き揚げと、海空軍、特に空軍基地の増強、それからもう一つは、最近は原子兵器の拡充ということが、戦略態勢あるいは世界政策の上からアメリカ側では必死になってその態勢を整備しようとしております。もちろん原子兵器にもいろいろありましょうが、戦術兵器としての大型水爆、あるいはその他の原子兵器、並びに小型のたとえば飛行機に積むことができるような、あるいは砲弾の先にくっつけることができるような戦術的な原子兵器というものを拡充していく。しかも戦術的な原子兵器については、これはそれぞれの国にもこれをアメリカ側から供与するなり、あるいはそれぞれの国においてこれを作るなりして、将来とも原子兵器を中心としての態勢を作り上げる。これが私はアメリカ側の最近の戦略的な、あるいはまた世界政策の上からいう態勢だと見ることができると思うのです。現にアメリカの軍部当局は、ヨーロッパ側に関してはきわめて近い将来に原子兵器を拡充させるようにする。西ドイツには原子砲がすでに何門かいっていることは、昨年のこの法案が審議されているとき、ちょうど日本にオネスト・ジョンが持ち込まれたというニュースと一緒に論議の的になったのですが、日本に対してもアメリカ側としては、アメリカ駐留軍がこれを整備するというだけでなく、将来は日本の自衛隊に対しても小型のつまり戦術的な原子兵器を持ち込もうとする意図があるようにうかがわれるのでありますが、この点に関しましては長官としてはどのようにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/39
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040・船田中
○国務大臣(船田中君) 原水爆をわが国に持ち込む問題につきましては、これは重光外務大臣とアリソン・アメリカ大使との間の協定によりまして、その場合には事前に必ず日本政府の同意を要するという取り扱いになっておりますので、日本政府としては原水爆を日本に持ち込むということには賛成しないという方針をもっておるわけであります。従って自衛隊といたしましては、今御指摘もありましたような、たとえ小型でも原子兵器を持つというような考えは、原水爆を持つというようなことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/40
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041・堀眞琴
○堀眞琴君 たとえば、昨年のオネスト・ジョンの持ち込みの問題ですが、当時の外務政務次官が本委員会におきまして、たしか三月の下旬ごろにそういう話があったということを発表された。その後外務大臣からその政務次官の言葉に対して否定的な御発言がありました。だいぶこの委員会もこの問題で紛糾をしたことがあるのです。ちょうど二十二国会の末期でありまして、国防会議構成法案が成立するかしないかというせとぎわであり、そこへオネスト・ジョンの問題が持ち上って、この問題が論議されたわけです。で、外務大臣のそのときの発言では、いつ向うから話があったということについては何ら説明がなく、原子兵器——広い意味では原子兵器になるかもしれぬが、現実にはたとえばオネスト・ジョンは弾頭に原子兵器を使わない、従って原子兵器ではないという説明があったのです。私どもはそのオネスト・ジョンが原子兵器であることは、これは間違いないという考え方を持っており、政府の方では弾頭に原子弾をくっつけない以上は原子兵器でないということで対立したままに国会が終ってしまった。あのときの論議のときにも明らかになりましたように、なるほど重光さんとアリソン大使との間に話し合いが行われたことも、私どもその当時政府の発表によって知ったのです。ただしそれは単なる口頭による約束である、こういうことでありまして、駐留軍がもし駐留軍の防衛という観点から日本にたとえば小型の戦略的という意味よりは戦術的な武器としてこれを持ち込むというような場合についても、あの去年の例に示したように、日本政府の承認を得なければ、ということなんですが、あのときのいきさつからいって政府がこれに対して承認を与えるということは、あとになって発表されたことで、政府は初めは知らぬ知らぬという応答をわれわれにはしておったわけです。今後もおそらくアメリカの全体的な戦略態勢からいって、ヨーロッパには小型の原子兵器を供給するなり、あるいはそれぞれの国にそういう原子兵器を作らせるなり、そういう方向がとられていくと思うのですが、日本の場合にはまだ原子兵器を作るという段階にまで原子に関する研究が進んでおりませんでしょうし、また日本の国内においてそういう原子兵器を作るというようなことは、これはできないことです。そうなりますというと、結局アメリカ側から日本に持ってくるという場合も生じてくるのじゃないだろうかということが懸念される。で、政府の説明の通りに、たとえ小型のものにしろ、日本に持ち込む場合においては日本政府の承認を必要とするのだということで、あくまでも通せるかどうかというと、これまた国民が一様に懸念している問題なんだ。私はアメリカの全体の態勢からいって、将来日本にそういうような武器があるいは兵器が打ち込まれるだろうということを心配するのあまり、今の御答弁のように政府としてはあくまでも向うから話があることだろうし、それに対しては政府当局としてはあくまでもこれを拒否する態度である、こういう御答弁でありますが、それをあくまでも通していただきたいし、しかしまた他方においては、アメリカ側としては日本との間に安保条約があり行政協定がある、それから今日の国際情勢の上からいってどうしても原子兵器を持ち込まなければならないのだというもし見解をとったとすれば、日本政府に対しては一応通告するでありましょうが、これに対して拒否することができないような態度で向う側が臨むということも想像される。現に西ドイツに対する原子砲の持ち込みに対して、新聞等によりますというと、かなりの反対の意見も行われておるような情勢であります。そういう情勢のもとで、果して政府はきぜんとした態度を持って、アメリカ軍の原子兵器持ち込みに対してこれを拒否することができるかどうか、これは私ばかりじゃない、全国民が非常に大きな疑念を持って、あるいは危惧の念を持って見ているところだといっても差しつかえないと思う。その点に関してもう一度、長官の御説明をお願いしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/41
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042・船田中
○国務大臣(船田中君) 原水爆を日本に持ち込むという場合においては、先ほど申し上げましたように、あらかじめ日本政府の同意に要するという話し合いになっております。そうして日本政府としてはこれを持ち込んでもらいたくない、また自衛隊といたしましても、原水爆を持つというようなことは全然考えてもおりませんし、またそういう計画も持っておりません。このことは今後も十分その方針を貫徹し得るものと私は信じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/42
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043・堀眞琴
○堀眞琴君 なお、これに関連して、これは吉田内閣時代によく言われたことですが、憲法上にいう戦力というのは、近代戦を遂行し得る戦力である、その実体は何かといえば、たとえば原子兵器、こういうことが当時はしばしば言われた。アメリカ側の意向としても、確かにその方向に沿っていると思う。日本政府の同意を必要とするのだ、こういう話し合いになっているから、向うから持ってきた場合においては、日本政府としては、これに対して独自の立場において、あるいは拒否する、あるいは受け入れるかということの態度はおきめになると思いますが、もちろん日本ばかりじゃない、アメリカ政府では、ヨーロッパの場合についても、それぞれその国の政府当局の同意を得てやっているわけであります。近代戦を有効に遂行し得るという戦力としての原子兵器の重要性ということは、これは申し上げるまでもなく、非常に大きいもので、おそらくは決定的な意義を持っていると思う。有効な防衛体制を作り上げるということになれば、当然原子兵器の問題も、日本の国内でもやはり防衛当局としては考えざるを得ない段階にいくのではないだろうかということが懸念される。そのために私は、この問題については特に防衛当局のきぜんたる態度を望みたいというわけで、それでお尋ねしている。もう一度その点、確認したいですから、長官の御答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/43
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044・船田中
○国務大臣(船田中君) 自衛隊が原水爆を持つというようなことは全然考えておりません。今後におきましても、ただいまいろいろ御指摘がありましたが、いわゆる近代戦争を遂行し得るに足る軍備というようなことではなくして、しばしば申し上げておりますように、わが国の国情に相応する自衛のための最小限の自衛体制を整備するというにとどまるのでありまして、それ以上に、よその国に脅威を与えるような再軍備をしようというようなことを考えておるのではございません。これは参考のためにつけ加えて申し上げておきますが、先般国防次官のロバートソン氏が見えまして、日本の防衛体制も見て行かれたのですが、それから南韓国に、極東軍司令官のレムニッツアー大将とともに行かれまして、そのときに京城で各国の記者諸君の会談がありまして、そのときに南韓国の新聞記者がロバートソン、レムニッツアーに対して、日本の自衛体制をアメリカが支援して、そうして自衛体制が整備していったときに、それがやがて韓国を初め、西太平洋における国々の脅威になるような心配はないかという露骨な質問があったそうでございまして、これに対しまして、ロバートソン及びレムニッツアー将軍からは、明瞭に、日本の自衛隊は日本防衛の最小限度のものを作っておるということを自分たちは承知しておる、またアメリカから相当艦船、飛行機等の供与をしておるけれども、その日本自衛隊の整備の方針を逸脱するものではない、従って韓国を初め、西太平洋の諸国に脅威を与えるというようなことは絶対にない、そういうことにはならぬから御安心を願いたいという趣旨の答弁をはっきりせられておりまして、そのことは私、直接そのときに携わっておった極東軍司令官からも私は聞いております。また外国の新聞にもそのことは出ておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/44
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045・堀眞琴
○堀眞琴君 次に、軍縮の問題についての見解をお尋ねしたい。原子兵器を含む軍縮の問題は、昨年のジュネーヴの四巨頭会談でも話が出て、それがきっかけになって、昨年の八月の末から国連での軍縮小委員会が開かれて、今日までなお続いておるわけであります。しかも具体的な案が英仏側からも出る、ソビエト側からも出る、あるいはアメリカ側からも出る、そうしてそれが漸次歩み寄りの形になっておる、まだその成果を見るまでには至っておらない、しかし一応の見通しがつくところまでは私は来ておると思うのです。それともう一つ、ソビエト側では昨年六十五万の兵隊を削減したし、それからフィンランドにある基地を返還しておるというようなことも、当時新聞で伝えられた。また今年になりますというと、今月の半ばでありますか、さらに百二十何万という軍隊を削減するという発表が行われておる。これに対しまして防衛当局としては、軍縮の方向等についてどのような見通しをつけられておるか。このことは同時にまた、日本の防衛体制を整えるという問題と重大な関連があると思いますので、防衛当局の最近の軍縮に関する御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/45
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046・船田中
○国務大臣(船田中君) 私もそういう国際情勢及び軍縮の問題についての専門的な知識を持っておりませんので、堀委員の御質問に対して的確なお答えができるかとは存じませんが、軍縮、世界的に軍縮の方向に進みつつあることは、ただいま御指摘の通りだと思います。しかし、これは結局、東西の勢力の均衡という問題が、一番大きな問題になると思いますが、自由主義国家群の方では、米英を初めとして、いずれも第二次大戦後、一応みな復員をいたしまして、終戦直後においては平時編成にみな返っております。ところがソ連だけは、全然平時編成に返らずに、ずっと増強をいたしておるわけでございまして、それを昨年、今御指摘のように六十五万減らし、あるいは本年百二十万減らすことになりましても、それが果してソ連の実質的な軍縮になるかどうかということを私は相当疑問があると存じます。米ソの関係のそういう軍縮についての方針、あるいは軍縮をやろうとしておる努力に対しましては、私はもうそれを認むるにやぶさかではございませんけれども、しかしそれが東西間の勢力の均衡がいかようになりましょうとも、日本としては別に仮想敵国を持っておるものではないのでありまして、独立国といたしまして、自衛の体制を、最小限度の自衛の体制をぜひ整備しておきたい。これは要するに今までのいろいろな過去の歴史、周辺に起った事実から見、あるいは中近東の今日の情勢、いろいろそういう国際情勢から見まして、たとえ第三次世界大戦、すなわち原水爆をもってするような大規模の戦争がないといたしましても、さればといって部分戦争なり冷戦が全く終息してしまったものではないという今日の国際情勢を見て参りましたときに、やはり日本といたしましては、国力及び国情に沿う、最小限度の自衛体制を整備するということが絶対に必要である、この整備することによりまして、少くとも日本に対する侵略の方図を事前に阻止し得る効果が、それによって発揮せられるのではなかろうか、かように考えますので、世界的軍縮の問題の成功は希望し、またそれを期待いたしまするけれども、しかしそれにもかかわらず、やはり日本としては最小限度の自衛体制をすみやかに整備することが適当であると考え、またその方針に従って政府は漸次自衛体制を整備して参りたい、(「と、ダレスが言った」と呼ぶ者あり)かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/46
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047・堀眞琴
○堀眞琴君 ソ連の兵力削減計画に関しまして、きょうの朝日新聞には、ニューヨーク・タイムスのレストン記者の書いた記事が載っています。ソビエトの兵力削減に対しまして、ダレス長官が述べている考え方というのは、今、船田長官のおっしゃられたことと全く同じなんであります。(「レコードを買ってきたのだ」と呼ぶ者あり、笑声)ダレス長官はこう述べているのです。「ソ連に原子兵器を造られるより百二十万のソ連兵に見張り兵に立ってもらっている方がよい」、こう言って兵員削減の価値を疑うむねの表明を行なった。ところが一方ウィルソン国防長官は、これを非常に歓迎する、「正確な意味は分らないが、モスクワ発表は正しい方向への一歩前進である」、こういう工合に述べておる。あるいはまたスタッセン氏は、さらにまた希望的な意見をも含めて、ソ連にこういう問題についてのイニシアチブをとってもらいたいとわれわれは願っていた、今度の計画の発表はきわめて歓迎すべきものである、こういう工合に発表している。レストンという人は御承知の通り世界でも軍事通の記者として有名な人であり、そしてこのレストン記者の観測は、アメリカ国内ばかりでなく、世界の各国においても、少くとも軍事面に関する限りは非常にこの人の意見を尊重している。(「ダレスを除いては」と呼ぶ者あり、笑声)そこでアメリカの政府ですらダレス長官が述べていることと、国防長官なり、あるいはスタッセン氏の述べていることがまるで違っている。むしろ国防当局の側においては、軍縮の方向に一歩前進したものだ、こういう工合に見ているのですが、日本の国防当局としては、この問題について、ダレス長官と同じような見解を持っておられるのですか、今のお話ではどうもダレス長官のお話と全く同じように思われるのですが、いかがですか。(「まだ新しいレコードがきていない」「向うが似ているのだ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/47
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048・船田中
○国務大臣(船田中君) ここで軍縮論議をしようとは私は思いませんが、しかし私の軍縮問題についての見解をお尋ねでございましたから、私は率直に申し述べたわけでありますが、別に今のダレス長官がどういうふうに言われたかということを調べて申し上げたわけではございません。軍縮の方向に進むということは、これは私は非常に望ましいことであり、またそれに大きな期待をかけてよかろうかと思いますけれども、しかしその軍縮の問題と別個に、わが国といたしましては最小限度の自衛体制を整備するということに努力していくことが、独立国といたしまして、あるいは起るかもしれない侵略の意図を阻止する上において、これは有効な手段である、どうしてもそれだけのことはやっておきたい、おくのが国家としては必要である、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/48
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049・堀眞琴
○堀眞琴君 先ほどのお話の中にあったのですが、第三次大戦の起る危険はないだろうと思うが、しかし部分的な戦争の危険は依然として去らないというお話があった。おそらく具体的には地中海の東の方の地域を指している、中近東方面を指しているのだろうと思う。確かに中近東方面においては、かなり切迫した事情のあることも大体において認められると思う。しかしその切迫した事情、新聞等によりますと、国連の事務総長等が奔走いたしまして、これを未然に防ぐという方向が大体において明らかになっておる。最近の世界の諸問題、紛争問題に対する傾向は、実際の物理的な力によってこれを解決するのではなく、むしろ平和的な手段によって解決するという方向が確立されていると思うのです。昨年の十月のジュネーヴの四国外相会議、あれは何ら成果を見なかったと言われていますが、しかし依然としてジュネーヴ精神は生きているということの一点については四国外相ともこれを承認したわけです。あれ以後の国際情勢を見ますと、力によって解決する力の政策というものが次第に退いて、今日では平和的な手段による解決ということが、国際政治上の一定の方向として確立されてきているのではないか。そうなりますと、部分的に戦争の危険があるということでもって、自衛体制を整えなければならぬというその根拠が非常に薄弱なものになってくると思う。もちろん部分的な紛争問題は、これは今後とも全然なくなるとは私も予想しないのです。いろいろなところに、いろいろな問題が起ってくると思います。しかしそれらの紛争が、大体において力によって解決するのではなくて、平和的な方向において解決されるという世界政治上の原則です。国際法上の原則ではないでしょうが、国際政治上の、世界政治上の原則が今日確立されているということは、これは認めなければならぬと思う。従って部分的な戦争の危険があるからということは、最近の国際政治の方向にも私は反するのではないかと思いますが、その点重ねて御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/49
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050・船田中
○国務大臣(船田中君) 軍縮に向いつつあるという傾向、これは私認めます。しかし先ほど来申し上げているように、部分戦争なりあるいは局地的の紛争ということの全然なくなったということは、これはなかなか手放しで楽観はできないと存じます。そこでこれは堀委員も御承知の通り、永世中立国と言われておるスイスにしても、あるいは北の理想境と言われるスエーデンにいたしましても、相当な軍備を持っておることは御承知の通りであります。私宅数口前にちょうどインド大使に会いまして、最近の日本の政治家の諸君が非常にネール首相の理想にあこがれて会いたいということを言っておる者も多いが、というようないろいろ話をしましたときに、聞いてみまするというと、インドの予算総額のうちの大体一八%四というものは軍事費が占めておる、ごく最近まではインドでも共産党を弾圧しておった、最近はそれはなくなったというような話をしておりまして、この点についてはどうも多くの日本の友人たちは、そういうインドの事情を多少誤解しておる向きもあるのではないかというような話もあった。これは決して私はそれをどうこう申すのじゃありません、ただ御参考のためにですが、やはり独立国であり、そして従って部分戦争やあるいは局地紛争というようなことが絶対になくなってしまったという安心のできない今日の国際社会におきまして、最小限度の自衛体制を持っておるということは、私はこれはどうしても必要である、かように考えますので、理想はもちろん軍備というようなものを全然全廃できるような、すべての国が一つになって、そして文化国家を建設するという方向にでも進んでいくことができますれば、まことにけっこうだと思いますけれども、しかし今日の実情におきまして、また近い将来の国際情勢を見て参ります場合において、やはり日本としては最小限度の自衛体制を整備する必要あり、かように結論せざるを得ないと私は存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/50
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051・堀眞琴
○堀眞琴君 私もおっしゃる通り局地的な紛争はなくなるとは申し上げてないのです。局地的な紛争は今後も起るだろうと思うのです。ことに中近東方面の事情は非常に複雑でありますから、そこへもってきましてフランスの植民地もあることだし、それらが独立をしたいというのでいろいろ問題が起っておる。キプロス島の問題などについてはあのような新聞の報道もあるわけです。今後とも植民地と植民帝国といいますか、それを領有している帝国主義国家との間に問題が起っていくだろうと思います。しかしそれかといって、おっしゃる通り局地的な紛争が局地的な戦争にまで発展するかどうかということの見通しは、私はあなたの考え方と違うのです。もちろんその危険はある、戦争になる危険が全然ないとは申し上げない。しかしそれをどうにかして未然に防ぐという努力が行われていることも事実です。そしてその努力が最近はいずれも成功していると、こういう世界の情勢ではないかと思うのです。ですから戦争の危険はあっても、戦争の危険をできるだけ関係国家間あるいは大国間の話し合いで解決するという方向が確立していると思うのです。のみならず、国連の機構そのものが、四大国なりあるいは中国を含めれば五大国になりますが、この大国間の協調という基礎の上に国連憲章が打ち立てられ、その運営も行われるという方式になっているわけです。その一つの現われが安全保障理事会におけるところの拒否権の問題だと思う。つまり、大国間の協調ということが国連の精神でもあり、今後の国際紛争を解決する手段でもあるという工合に見なければならぬ。ただしこの大国間の協調も、おそらく政府の側ではおっしゃるだろうと思いますが、一九四七年のトルーマン・ドクトリン、あるいはマーシャル・プランというようなものから協調が次第にあやしくなってきたという事実もあります。しかし、少くとも朝鮮の休戦、インドシナの休戦、そうして去年のジュネーブ会談という諸過程を通じて、また大国間の協調へ戻ろうとする空気が非常に強くなってきた。局地間の問題についても、やはり関係国なり大国間の話し合いで解決するというのが今日の世界政治の方向だと思う。従って、局地問題が起ったにしろ、それがただちに戦争に発展して行くだろうということを考えるということは、私は最近の国際政治の方向に照らして逆行するものじゃないかというような工合に感じられるわけです。政府の方では、そうじゃないのだ、あくまでも局地戦争の心配がある、だから最小限度の自衛体制を整備するのだ、こう言う一本槍だが、もう少し私は国際情勢等について目を向けてもらいたい。そのことがひいては日本の国際的地位を高めることにもなるのではないかという工合に考える。特にそれで防衛庁長官のそれらに関するところの見解をただしたわけです。もう一度、この最近の国際政治あるいは世界政治の方向、軍縮をも含めてそういう方向と、それから自衛体制を整備するという日本の考え方、この二つの間の問題をどのように考えていられるか、もう少し具体的にお話を願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/51
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052・船田中
○国務大臣(船田中君) 今御指摘のように、国際情勢が緩和の方向に進んで歩くだろうということは、これは私も認めてよろしいと存じます。昨年の七月十八日から行われたいわゆる巨頭会談の際には、非常にジュネーブ精神が高潮され、平和の空気が高まった。ところが、その後十月末の四国外相会議のときには、またこれが幾らか逆転した。また、その後はフルシチョフあるいはブルガーニンがインドやその他を旅行したときの空気は、また非常によくなかった。しかし最近の状況は、今堀委員のお話の通りに、だいぶいい方向には進みつつあるように存じます。しかし、さればといって世界の歴史が、過去何千年かしりませんけれども、とにかく少くとも有史以来二千年の歴史が証明するがごとくに、全く何らの戦争がないということを今断定するということは私は不可能だろうと思います。ですから、私らは戦争の起らないようにむしろ自衛体制を整備することが必要である。これは、最近起っている幾多の紛争を見ましても、またあの第一次大戦、第二次大戦のときの状況を見ましても、お互いに侵略すれば非常な損をするということがはっきりわかれば、私は侵略はしないと思う。ですから、日本が自衛体制を整備するということによりまして、へたに侵略したらたいへんだ、侵略しない方がいいということで、侵略の意図を事前に阻止するということが非常に大切なことであり、そのためには、私はどうしてもやはり最小限度の自衛体制を整備することが必要である、これがもっとも安価な独立国の保障である、かように私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/52
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053・千葉信
○千葉信君 動議。本日はこれにて散会。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/53
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054・青木一男
○委員長(青木一男君) 堀君、質疑はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/54
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055・堀眞琴
○堀眞琴君 次の機会にゆずります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/55
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056・青木一男
○委員長(青木一男君) 堀君の少しならやっていただいた方がいいと思います。どうぞ質問を継続願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/56
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057・堀眞琴
○堀眞琴君 なお、私の質問は軍縮問題その他国際情勢に関する問題は外務大臣に御答弁を願わぬと納得できないので、これも近い機会に外務大臣に御出席願って質問をしたいと思いますから、そのようにお取り計らい願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/57
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058・千葉信
○千葉信君 きょうは大体午前中ということですから、十二時四十分あたりは午前中という常識に入るのか入らぬのか、常識に従ってここらで一つ散会しなさい。(「時間は厳守しようじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/58
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059・青木一男
○委員長(青木一男君) 正十時から始まっていればまたということもありますが、きょうは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/59
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060・島村軍次
○島村軍次君 まあ三十分ということだから、あとは限定してきょうは散会されたらどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/60
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061・青木一男
○委員長(青木一男君) 委員長が質問をしない人にしいて質問させるわけにいきませんから、本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05019560523/61
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