1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十三年二月二十一日(金曜日)
午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 町村 金五君
理事 高橋 禎一君 理事 林 博君
理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君
理事 猪俣 浩三君
犬養 健君 小島 徹三君
小林かなえ君 世耕 弘一君
徳安 實藏君 長井 源君
横川 重次君 青野 武一君
神近 市子君 佐竹 晴記君
武藤運十郎君
出席国務大臣
法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
出席政府委員
総理府総務副長
官 藤原 節夫君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
法務事務官
(矯正局長) 渡部 善信君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
労働事務官
(婦人少年局
長) 谷野 せつ君
—————————————
二月二十日
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出第八一号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
売春防止法の一部を改正する法律案(内閣提出
第五〇号)
婦人補導院法案(内閣提出第五一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/0
-
001・町村金五
○町村委員長 ただいまより会議を開きます。
売春防止法の一部を改正する法律案及び婦人補導院法案を一括議題といたし、前会に引き続き質疑を行います。
質疑の通告がありますから、これを許します。高橋禎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/1
-
002・高橋禎一
○高橋(禎)委員 売春防止法の一部改正法案、婦人補導院法案につきまして、昨日の委員会で、三田村委員、吉田委員等からも質問がございました。若干その質問に重複するような部分もあるかとも存じますが、申し上げるまでもなく、売春防止法の全面実施の日を目前に控えました今日、私どもといたしましては、どこまでもこの売春防止法の実施によって、この法律の目的としておる売春関係の事犯の絶滅を期さなければならないことはもちろんであります。聞くところによりますと、これまでのいわゆる赤線区域における業者も自発的に転廃業をされて、過去長い間夜の花の咲き乱れたような状態であった吉原等でも、すっかり灯が消えてしまっておるという状態でありまして、これを見ますと、全く一つの革命が行われたというような印象を受けるのであります。また、従業者の人たちのそういう場所から離散していった状態、それにまた、この売春防止法の審議並びにその実施に関連していろいろ政界等においてもいわば一大異変があったような印象を受けるのであります。ある意味においては大きな犠牲とでも申しますか、大変革の場合における苦悶の姿とでも申しますか、そういう事象が起ったその状態等を思いますときに、私どもとしては、どうしてもこの法律を健全にりっぱに運営をして、その法律が意図しておるところの目的を十分果して、そうして世の期待に沿わなければならぬことを真剣に考えるわけであります。せっかくこれだけの法律ができまして、いろいろの方面を騒がして、そうして跡の始末が従来よりももっと悪い事態が起ったというようなことがあっては、法律制定の衝に当った私ども責任者といたしましては、まことに申しわけないわけでありますから、この法律の実施に当っては、もちろん政府当局が中心になっていろいろの施策を遂行していかれなければなりませんが、また、国民全体も、この法律を生かすために協力をしていかなければならない、こういうふうなことをつくづく思っておるようなわけでございます。そこで、まずそういう気持を持って政府のなさる施策等について若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。
まず第一に、この売春防止法が制定され、実施されるに至りまして、国内のこれに対するいろいろの考え方はまずおきまして、やはりこの問題については世界的な一つの関心事だと思うのであります。そういう意味で、国際的な反響と申しますか、世界の人たちは、日本におけるこの売春防止法制定に関してどういうふうな見方をしており、どういう批評をしておるかというようなことを、私どもとしてもやはり知りたいわけであります。それらについて御存じでありましたならば、法務当局その他からこの際明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/2
-
003・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 ただいま高橋委員から、売春防止法の実施ということは日本の社会史上あるいは革命とも言えるほどの大変革である、立法の責任を持っておる議員として、この法律が円満に実施に移され得るかどうかについて非常な責任を感じておられるというお言葉がございました。私どもはまた、この法の実施を担当いたしておりまする行政府の一員といたしまして、同様に強い責任を感じておる次第でございます。その意味から、この画期的の変革に関する問題が諸外国の人々にどういうふうに反映しておるかというようなことについてのお尋ねでございますが、特にこの点について法務省として取り調べたことはございませんが、過般この刑事関係に関するアジアの大会がございまして、その席上この諸国における売春関係のことが非常に論議、検討されたのでございます。ちょうど日本においては新しい立法がまさに実施に移されようとしておる時期でございましたから、これがやはりいろいろと集まった代表者の間の質問、研究の対象となったのでございます。その当時の状況につきまして、列席いたしておりました刑事局長より申し上げてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/3
-
004・竹内壽平
○竹内政府委員 御承知のように、昨年秋、十一月から十二月にかけまして、東京において国際連合主催の犯罪防止等に関するアジア会議というものが開かれました。日本からも代表が出席いたしたのでございますが、そのアジア会議におきましては、犯罪防止に関する少年の非行問題、あるいは矯正施設における処分の問題なども論議されましたが、画期的な一つの議題といたしまして、いわゆる売春問題が論議されたのでございます。日本におきましては、今までいわゆる交娼制度を有する国として、かような国際会議におきましては顔を赤くして論議をせざるを得なかったのでございますけれども、幸いにいたしまして、今や売春防止法を持っておるのでございますし、刑罰規定も本年は四月一日から実施される運びでございまして、いわば全面実施を控えた売春防止法を持ってこの会議に臨んだ次第でございます。日本の代表各位は、今までと違いまして、きわめてこの会議にはプライドを持って臨み得たのでございます。
で、この売春問題についての論議におきまして、いわゆる単純売春を罰すべきものであるかどうかというような問題からいたしまして、これを単に法律的な立場だけでなく、社会学的な見地からもかなり突っ込んだ論議が行われたのでございますけれども、日本の持っておりますこの売春防止法は、さらに刑罰規定とともに売春婦に対しまして保安処分を実施するという含みのもとに今国会にはその保安処分に関する改正法案を出す予定であるということも主張いたしたのでございます。そういたしますと、この売春防止法は、日本国内において画期的なものでありますとともに、統一的な売春法律といたしまして、これはアジアにおいてはもちろん模範となるべき法律でありますことは論を待たないのでございますが、国連の関係当局者も、この法律につきましては非常な敬意と、その内容の優秀である点につきましては口をそろえて賞賛の辞を惜しまなかったのでございます。巷聞ざる法などと言われておりますけれども、決してさようなものではなく、かつまた、その内容も売春問題の国際的な大きな方向にまさしく目標が合致しておるものでございまして、きわめて優秀な、世界に範とするに足る法律であるということは、ひとしく参加した各国の認めるところであったのでございます。
なお、国際連合におきましては、売春に関する条約の取りきめもありまして、日本もこれに参加するかどうかということが懸案になっていたのでございますが、今や売春防止法を持つに至りました以上は、これにきん然と参加することができる次第でございまして、近くこれも今国会に批准案が提案されるのではないかというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/4
-
005・高橋禎一
○高橋(禎)委員 今刑事局長の最後に御答弁のありましたこの売春関係の条約に参加するということに関しては、すでに問題が具体化しておるのであるかどうか、それに関する政府の態度、これらについて法務大臣からお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/5
-
006・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 ただいまお尋ねの売春関係の国際条約についてございますが、政府部内におきましては、これを承認し、批准の手続をとりたいというふうに決定いたしておりまして、過般の臨時国会におきましても、参議院の本会議であったと思いますが、御同様な質問に対しまして、岸総理から、これに同意をする意思があるということを明瞭にお答えになっておるようであります。その点は外務大臣も同様に考えておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/6
-
007・高橋禎一
○高橋(禎)委員 ただいま政府の御答弁によって、売春関係の国際条約に参加をする日が近いし、また、この防止法に関して、世界の文明国の間においては、非情に法の内容の充実しておることに対して敬意を表し、非常な優秀な法律というふうな世界的な評価が下されておると、このように考えられるのでありますが、私どもも、法律そのものは世間でとやかくの批評はありますけれども、決してそう非難さるべきものでない、日本の売春問題の解決のために現在の段階においては最も適当な法律であることを考えておるものでありますが、問題は、これから本年四月一日からの全面実施後におけるこの法律の運用いかんということにかかると思うのであります。
それで、今後の運用の問題に関連いたしまして、まず藤原総務副長官にお尋ねをいたしますが、売春関係の問題についての機関として、内閣に売春対策審議会が作られておって、しかも今日まで同審議会は非常な功績を残されてきたと思うのであります。そこで、今後この審議会を存続されるのかどうか、存続されるとして、その運営についてどのような考えを持っておられるかということと、いま一つは、やはりこの対策は総合的なものでなければならない。法律の点から見ましても、これは法務省に関係し厚生省が関係を持ち、労働省あるいはまた文部省等も相当関係があると私は思うのでありますが、そういうふうな多岐にわたった施策を遂行していかなければならないこの問題は、どこか総合的な、総括的な施策なりまたはその実行なりについてのいわば元締めとでもいう機関が必要であると私は思うのです。そうでないと、法務省は法務省の考えだけで進み、また、警察にしましても、あるいは労働省、厚生省等がばらばらな考えで、法律にある自分の関係のある立場だけを考えてやっておったのでは、この種の問題の解決には効果はないと思うのです。昨日も三田村委員からもいろいろ予算問題等に関係して御質問がございましたが、なお私は、昭和三十三年度の予算に関して、あるいはまた今後の予算問題ということは別といたしまして、やはり予算できまった範囲内における活動、その予算をいかに有効に使用して効果をあげるかといったような問題について、十分な予算がなければないだけに、やはり総合的な元締めとなる機関が必要だと思うのですが、内閣の方では一体その点についてどういうふうなお考えを持っておられるか、この二つについてお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/7
-
008・藤原節夫
○藤原政府委員 ただいまお話がございましたように、売春対策審議会は、過去におきまして、売春防止法の円滑な、しかも完全な実施ができるように、非常に積極的にあらゆる面で御活躍をいただきまして、それぞれ関係各省感謝をいたしておるところであります。いよいよ防止法の実施に至りますと、また新しい意味でいろいろな問題が起ってこようかと思われるのでありまして、この審議会はむろん今後も存続し、一そう今日以上に活発に働いていただきたいと思っておる次第であります。なお、今日までの立法並びに実施の準備の段階においてもそうでありましたが、今後法律を実施するに当りましては、ただいま御指摘のように、各省の間に十分連絡をし、総合的な見地から施策を行なっていかなければならぬという点が一そう強くなってくると思います。審議会そのものが、そういうような趣旨から、各省間の連絡調整についてもいろいろ貴重な意見をいただいており、また連絡の実際に当っても働いていただいてきたのでありますが、政府としましても、むろんその点に十分考えをいたしまして、審議会を総理府に置かれましたのもそういう趣旨からであろうと思いますし、私どもも総理府の立場がそういう各省間の仕事の円滑なる連絡と総合調整ということに重点を置いておりますので、その点については一そう今後も努力して参りたいと思っております。機構といたしましては売春対策審議会の幹事もやっておりますし、内閣の審議室がこれに当りまして十分遺憾なきを期したいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/8
-
009・高橋禎一
○高橋(禎)委員 売春対策審議会は将来存続していく、そして内閣の審議室が責任を持って各省間の仕事の連絡をとって総合対策の間違いのないようにやる、こういうお話です。私は、審議室でどういうふうなやり方をしていらっしゃるか、まだよくわからないのですが、ちょうど各都道府県に売春対策本部というようなものが設けられておる。やはり内閣にもせっかくりっぱな審議会があるのですから、それに対応する、今度は行政を執行するという面の売春防止対策本部とか、そういったようなものを設置されるというような考えはありませんか。そういうものを設置してやっていく必要があるのではないか。審議室にはいろいろ仕事があります、その間にあって片手間のようなことをやっておったのではうまくいかぬと思う。やはり専門的にその仕事と取っ組んでいくというようなやり方が必要だと思いますが、審議室で実際この仕事をやっておられる内容なり、やり方、それから今申し上げた本部設置に対する考えをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/9
-
010・藤原節夫
○藤原政府委員 審議室はいろいろな仕事をやっておりますので手が回らぬのじゃないかということも御懸念のようでございます。事実そういう面も確かにあるのでありますが、各省との総合調整を要する仕事もまた非常に多いのであります。これを実施するために内閣なり総理府に本部を設ければ、確かにその能率を上げる上には役立つところが大きいと思いますが、一面また、非常にそういうものも多いのでありまして、今日そういう形の本部あるいは事務局というようなものが置かれておりますのは、社会保障制度審議会に事務局が置かれておる。今回法案を提出しております青少年問題対策協議会に事務局を置こうというようなことが行われております。また、法律ではありませんが、駐留軍の離職者対策に対しまして、従来特需等連絡会議というものが総理府にございまして、それに離職者対策本部というようなものを閣議決定をもって置いておるというような例はございます。従いまして、ただいまおっしゃいましたような点については十分考慮の必要はあろうと思っておりますが、ただいまのところ売春対策本部というものを内閣なり総理府に置くというところまでは参っておりません。今ありますのは、何と申しましても保護更生について関係の深い厚生省に売春対策推進委員会というものが置かれております。これまた活発に推進をしていただいておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/10
-
011・高橋禎一
○高橋(禎)委員 世間には、せっかく法律はできたけれども、政府はこれを完全に実施して、そうして法律の所定の目的を達するために真剣な措置ができないのじゃないかというような疑問があるわけなんです。私ども考えましても、予算の面から見ましても、それから今お話しになりました機構の問題等からいたしましても、これは徹底してこの問題と取っ組むというような印象を受けられないのです。売春防止法の実施に当っては、先ほども申し上げましたようにいろいろな大きな犠牲を払っておるわけであります。とにかく、こういう犠牲を——いろいろ問題が生起したその後において、法律を実施してみたけれども今までとは少しも変らぬではないか、今までよりもむしろ、悪くなったではないかというようなことによって、再び売春防止法制定以前のやり方の方が正しいんだというようなことが国民の間に生まれてきたら大へんだと思うのです。下手をするとそういうことになると私は思う。それ見よという声が私は一部に起ってくる危険があると思う。外国なんかの例を見ましても、売春防止法的な取締りをしておるところと、またイタリアなんかのように公然と免許制度でもってやっておるようなところとありますですが、そのどちらがいいかということは、やはり世界的な一つの問題だと思うのです。ところが、これについて新しい出発をした日本において、せっかくああいうような法律ができたけれども、どうもやはり前のような制度がいいんだということになったら、日本の将来にこの問題の解決をなすべき時期は再びめぐってこないんじゃないか、こういうことを心配いたしますから、せっかくやったんだし、それはいいことだから、この際力を入れて徹底的にこの問題と取っ組んで解決をつけていこうという考えがなければならぬ。これはもう国民の協力がなければできないことですから、法律を制定する当時においては、日本のそれこそ御婦人の方も青年諸君も、これらの人たちを先頭にして国民の多数がこれを支持したわけなんです。あの空気が一体現在あるかどうか、私は若干疑問を持つ。それはやはり、今度は法律ができたんだから、その責任は政府にある。政府が陣頭に立ってほんとうに国民の協力を受けてこの問題を解決していくんだという態度をはっきり示さなければ、国民の方では失望してしまうと思うのです。そういうふうな意味において、ただいま申し上げた売春防止対策のいわゆる責任者と申しますか、ばらばらの各機関が自分たちの受け持った部面だけは一応やっておるというのでは効果が上らないのです。これは網の目のような関係を持っておるわけですから、総合的な政策推進の責任者というものをはっきりして、それが中心になって関係各省との連絡をとってやっていくというような体制を一つ確立してもらいたい。今のままじゃとても安心できない、こう考えるわけであります。
そこで、続いてお尋ねをいたしますが、各省間の連絡をとるというようなことについて、実際どうやっていらっしゃるのですか。たとえば、法務省とか警察庁とかあるいは厚生省、労働省、文部省等、あるいは予算の関係もあるでしょうから大蔵省をぜひ入れておかなければいかぬですよ。大蔵省がこの問題について認識不足であったんじゃ、ほかの方がどんなに夢中になっても予算の面で行き詰まってしまうのですから、大蔵省の予算関係を担当しておるような人たちをも含めて、どういう連絡をとってやっておられるのか。これは私どもやかましく政府をいじめるという考えじゃないのですよ。心からそう思っているので、うまくやらないと大失敗をする。大失敗をやったら、もうもとへまた返って、もとの方がいいんだ。ということになってしまうのですよ。吉原もやはりあって、あのようにやった方が日本にはいいんだということになったら、この問題は最後だと思う。そこのところを一つ御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/11
-
012・藤原節夫
○藤原政府委員 おっしゃいます通りに、防止法を実施するということは、法律ができさえすれば、実施すればそれで済んだというものではないので、それこそ新しい、ある意味から言えば新しい売春対策が出発しなければならぬのじゃないかというくらいに考えております。従って、その責任はいよいよ行政の任にある政府当局に一そう重きを加えるということは十分自覚をいたしております。そういった意味で、ただいま申されましたような機構上の配慮についても十分考えなければならぬと思っております。ただいまのところでは売春対策審議会が中心になってこの仕事の推進に当っていただいておりますし、行政的には審議室がやっているのでありますが、ただいまおっしゃる各省との連絡につきましては、審議会の幹事に関係各省の責任者になっていただきまして、今おっしゃいますように大蔵省も幹事に入っております幹事会等で十分遺漏のないような措置をとっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/12
-
013・高橋禎一
○高橋(禎)委員 今申し上げた趣旨を十分尊重していただいて、たとえば藤原副長官でも、この問題と取っ組んで、これをすばらしくりっぱに解決したといったら、偉大な政治家だと国民もおそらく尊敬するだろうと思います。これは大問題ですから、審議室でほかの仕事の片手間で一応書類だけの取次をやるようなことをやっておったんでは、とても解決がつかぬと思う。だから、できるだけ早い機会に、先ほど申し上げたような対策本部的な機構を作って、これと取っ組んでもらいたい。取り返しのつかないようなことをやらないようにしなければならぬ。政府がそういうふうな意図を示さないと、国民は協力しないですよ。下手をしたら投げるという気持になっちまうと私は思うのです。その点を特に強く要望いたしておきます。
この売春防止法が実施されましてから世間で心配している問題の大きい点を取り上げますと、こういうことになったので、男性の性欲のはけ口がないんで、善良な婦女に対しての暴行事件等が起ってくるのではないか、もうぼつぼつ起り出したいといったようなうわさがあるのです。そういうことについて私はあとで法務当局等にお尋ねしたいと思いますが、その問題が一つ。それから、花柳病が非常に蔓延するんじゃないかという衛生上の問題からの心配、あるいは取締りの行き過ぎということ、警察あるいは検察関係、特に警察の方面の取締りの行き過ぎ、これを非常に心配する向きがある。それから、業者に対する転廃業等が円滑にいくような措置が講ぜられるかどうかということであります。もしも国民全体がほんとうにこの法律の真精神を理解して協力し、政府もその先頭に立ってまじめにやっていけば、私は、今転廃業をちゅうちょし、あるいは非常に将来に不安を持っておられるような人たちが、これでよかったという、そこまでいかなければならぬと思うのです。政府もそれに協力をしなければならぬ。それからまた、一面、従業婦の人たちも、あのときはいろいろ反対のような気持もあったけれども、これはやはりよかったというところまでいかなければならない。そこで、今いろいろ国民の間で心配をしているこれらの問題を一つ解決していかなければならない。今審議している両法案等もそれに深い関係を持ち、そういう点をも何とか解決しようという考えであることは間違いありませんが、まず第一の問題の、善良の婦女の被害が最近売春防止法の完全実施を前にして特殊な現象として現われているかどうかということ、それがかりに現われておらないにしても、四月一日以後の完全実施になったならばそういうことがあるのじゃないかという不安があるのですが、それらについて、警察当局、法務当局においてはどういうふうな対策を持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/13
-
014・竹内壽平
○竹内政府委員 法務省の立場でお答えを申し上げたいと思います。
売春防止法完全実施を控えて、いわゆる善良な婦女子に対する暴行事件が増加の傾向にありはしないかという御懸念でございまして、この点につきましては、私どもも同様な意味において実は推移を見守っておる状況でございます。確かに婦女子に対する暴行つまり性犯罪は最近ずっと増加の傾向にありますことは否定しがたい事実でございますが、この増加の傾向が直ちに売春防止法の影響であるというふうに断定する資料はいまだ発見されないのでございます。その間の動き方につきましては今後とも細心の注意を払って見守って参りたいと思っております。御懸念のように、売春行為が違法視される段階になりました。また娼家その他も四月一日以降においては灯が消えるわけでございますので、この方面の対策というものは、ひとり牽制策の面だけでなくして、その他の面からも十分これは考究しなければならない問題でございます。特に、私どもの方へ入っております心配の材料といたしまして、御承知のように電源開発その他によりましてある山間僻地に多数の若い労働者が集まっておるような地区におきましては、その人たちの性欲のはけ口としまして、このような施設がなくなることによって良家の子女に向けられるのではなかろうかという懸念が強く心配されておるようでございますが、これらの点につきましても、犯罪としてこれを処理いたしますことのほかに、さらに、そういう者に対する考え方の変化を求める、あるいはもっと健全な娯楽施設を設けるといったような面からも十分考究されて、その対策は別途に立てられなければならないというふうに思うのでございますが、そういう懸念は若干出ておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/14
-
015・高橋禎一
○高橋(禎)委員 法務大臣にお尋ねいたしますが、法務大臣は、警察庁長官とかあるいはまた警察関係の担当国務大臣等と連絡をとられて、今刑事局長の答弁にありました問題についての私の質問、すなわち、善良な婦女子に対する性関係からの暴行事件というようなものを防止する意味におきまして御相談になったようなことがあるのかないのか、もしないとすれば、今後どういうふうにしようと思っていらっしゃるか、それをお伺いしたいのです。と申しますのは、もうすでにこの法実施について起ってくる悪い面の問題について国民の方では非常に不安を持っておる。婦女子に対する暴行事件が多くなるであろうという見通しを持った人も相当いるわけです。また、そういうことのないようにやってもらわなけらればならぬという希望も相当出ておるわけです。すなわち、国民からすでにこの法実施に関してその将来についての一つの大きな警告をされておるという状態であります。もし善良な婦女子に対してこの法実施以後に性的な暴行事件が多くなったというようなことになりますと、この法律の実施ということがその面において非常に不成功ということになるわけであります。断じてそういうことのないように今から対策を立てて、そうしてそれを国民に徹底させて、国民を安心させなければならぬと私は思うのでありますが、そういうことについての御配慮がどのようになされておるか、それを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/15
-
016・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 売春防止法の完全実施に伴いまして、婦女子に対する暴行、性犯罪が増加するであろうというお見込み、また社会がこの見込みのもとに非常な不要を持っておるというお考え、私ども全く同感でございます。この点につきましては、たとえば開港地のような場所とか、また駐留軍のおられる基地付近とか、あるいはダム建設などの大規模の工事が始まりました場合に、屈強の男性がそこへ集まってくる、そういう地区等につきましては、全般的な心配のほかに局地的にまたその心配をされるのでございまして、この点につきましては、警察関係とはよりよりいろいろ心配をして相談はいたしております。まだ結論には達しておりませんけれども、その憂いは全くこれを同じくするものでございまして、何とかさような性犯罪の起きないように、未然にこれを防止する方法を講じたいとせっかく相談をいたしておりますが、それではどういう方策があるかということについては、まだ具体的な案を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/16
-
017・高橋禎一
○高橋(禎)委員 次には、取締りの行き過ぎという問題なんです。売春防止法完全実施を前にして、従来現行の法規を運用するという立場に立ってだいぶ取締りが強化されておるという空気であります。方々からの情報によりますと、なかなか手きびしいやり方をやられておるところもあるようであります。たとえば、旅館等に立ち入って、そこへ男女で泊っておるお客さんに対していろいろ事情を聞いて歩く、あるいは新婚夫婦が泊っておるというので、中に入ることを承諾しないから、ふすまの外で質問をしておるようなところがあるということを聞きましたり、あるいはまた、芸者が泊ったというようなことから、営業停止を大規模に食わすといったようなところもあるようですし、あるいはまた、深夜営業をするような場所で、まだ深夜にもならないうちから私服や制服がごそごそ連れ立って、中に入るのは工合が悪いというのでガラス窓あるいはドアの外からのぞいて見て歩くなんていうようなこともやっておられるようですけれども、これは、私どもの若干の経験からいたしましても、えてしてこういう問題については職員、ことに若い人たちは非常な興味を持つ。これは法務省の方々は御経験があると思うのですが、たとえば若い人を連れていって家宅捜索でもやると、ほんとうに犯罪に関係した証拠の捜索は第二にして、何かたんすの中から春画でも取り出して、おもしろがってそれをながめておるというようなことをよくやるものなんです。それに似寄ったようなことが、この売春防止法実施に関連して、それこそ社会全般でしかもかなり公然とやるというようなことになったら、そういう社会は一体どういうものか、実に暗黒陰惨なものになってくるのじゃないかと私は思う。ですから、そこのところをよほど賢明にやってもらわないと、良識を持った善良な一般の国民が何かいやな感じを持つような社会になってくる危険が、この犯罪取締りの性質から見てありがちだと思うのであります。これはむしろ検察当局というよりは警察方面に多いと思います。警察庁の責任者は本日おいでになっておりませんですが、それは後日お尋ねするといたしまして、しかし、検察官は、警察官と絶えず連絡をとる、——指揮するというところまでは今の法制のもとではなかなかむずかしい面もあるようでありますけれども、十分これらについては善意をもって協議をし、協調をして、そうして取り締るという面においてはやはり連帯責任者ですから、そういう事態のないようにやっていかなければならないと思うのであります。すでに今日先ほど申し上げたような兆候が現われております。四月一日完全実施を機に今のような空気でもってさらにそれが発展していくということになりますと、私は大へんだと思う。刑罰法制定のときに一番問題になるのは警察のファッショ、検察のファッショということであります。それは政府責任者においてそういうあやまちのないように努力されるであろうとは私ども思いますけれども、しかし、この種の犯罪に関しては、一般問題とは違って、捜査官においても悪い意味において特別な興味を持つ、興味を持って深入りをし過ぎるような心配のある問題でありますから、それに対しても一つのしっかりとしたお考えをお持ちにならなければならぬと思うのでありますが、今それについてどういうふうなお考えをお持ちになっておりますか、この際は法務大臣から一つお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/17
-
018・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 これは、お言葉にもありました通り、主として警察の担当する方面かと思いますから、いずれ正式には警察の方からお答えがあった方がよかろうと思うのでございますが、今私の感じを申し上げますと、ただいまのお言葉、全く同感でございます。もちろん、法律でもってこれを犯罪として規定いたしております以上は、取調べといたしましてはどこまでもそれを検察追及しなければなりません。しかしながら、従来もこれは犯罪となっておりまして、そうして、従来の警察で申しますれば、いわゆる臨検というような言葉で言われておりましたけれども、ややもするとこの風俗警察の取締りというものはいろいろの弊害を持ち来たすのでございます。法の精神としてはそこまで追及しないでもよかろうと思うところまで、何か兇悪犯人でも追及するようなつもりをもって、そして爬羅剔抉するということになりますれば、これはもう度合いが過ぎたと言わざるを得ないと思うのでございます。その寛厳の度合いということが非常な問題になり、ここにおいて検察官、警察官の良識に待たなければならぬと考えております。また、この取締りと関連いたしまして、警察方面の者が風俗営業の人たちと接触する機会が多くなりまするから、その半面におきましてはあるいはまた警察の綱紀の問題まで生じてきやしないかという心配も持っております。この刑罰法規の実施に当りましては、警察方面としては、各般の方面に注意を払いまして、十分この法の精神を徹底して参らなければ、ただいま御指摘のような弊害が起きると思っております。いずれ詳しくは警察の方面のお考えがあると思うのございますが、私一個といたしましてはさような考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/18
-
019・高橋禎一
○高橋(禎)委員 今の問題について、パリあたりの話を聞きますと、もうあそこは御存じのように売春禁止をしている。しかし、いわゆる街娼というのが相当たくさんいるらしい。それで、警視庁では取締りのために出したわけですが、あまりにも量が多くて一人一人どうにもならぬというので、警視庁の自動車がサイレンを鳴らして、ちょうど消防自動車がサイレンを鳴らして行くように行くわけです。それを聞きつけてどっかに隠れて、それからまたその取締りの自動車が遠ざかったらのこのこ出てくるという状態があると、これは間接ですけれども聞くわけです。そういうふうな事態になったり、ちょうど売春婦と取締りをする職員とが鬼ごっこしているような格好になったのでは、これは大へんなことだと思う。ですから、そこは、副長官もいらっしゃるから、その審議室で総合的ないろいろな施策を立てられる場合でも、そういう点は警察なり検察庁方面とよく連絡をとりながら方策を立てられてやられないと、せっかく文化国家を夢見て作ったこの法で、だらしもない見るに忍びないような事態が起る危険があるということをよくお考え下さって、一つ真剣に方策を立てていただきたいと思います。
その次には、これは厚生省の方の関係だと思いますが、花柳病が蔓延するのではないか、これに対する心配がやはり国民の常識のごとくになって参っております。私どももやはりその心配を持っている一人でありますが、この売春防止法が実施されましても、いわゆる単純な売春は、これは道議的にはそういうことは許されぬ、してはならぬとなっておりますけれども、しかし、実際問題としてやはりこの段階においては相当あるということを予想するのがすなおな見方だと思うのです。そうなりますと、やはりそれに関連して花柳病が蔓延する危険もあるという見方もまた当然だと思うのでありますが、それに対して政府においてはどういうふうな考えを持たれ、施策を講じておられるか、それを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/19
-
020・安田巖
○安田(巖)政府委員 私は担当の局長ではないのでございますけれども、ちょうどおりませんから、かわってお答えいたします。公娼制度がなくなりまして、花柳病が蔓延するのではないか、これは、こういった法律を設けることの一つの反対論の一根拠にもなっておったようなわけであります。確かに花柳病の感染の原因の七〇%以上が売笑婦からだと言われております。ただ、しかし、最近のいわゆる赤線で行なっているような自主検診と申しますか、実地検診と申しますか、そういうような検診を行なっております場合に、そういった集娼と、それから散娼との有病率がどうであるかということは、必ずしもどちらが多いと言えないような状況もあるわけでございまして、これは合理的な調べ方ではございませんけれども、二、三調べた場合にはそれほど差がなかったような話も聞いているわけであります。そこで、今度売春防止法が施行になるにつきましては、厚生省としましては、売春婦が解放される、廃業いたします前に、一斉に健康診断をいたしまして、病気を持っております者は公費で無料で治療をしてから帰すという方針を実はとっております。すでに愛知県等におきましてもそれを実施いたしております。愛知県の結果でございますと、約二千二百五十人の売春婦の中で一八%が花柳病を持っていたという報告がありました。そのうち一四%が梅毒で、四%がりん病だということで、さっそく治療いたしました。大体治療方法が進んでおりますので簡単になおるようになりましたけれども、梅毒系の方は、晩期の梅毒につきましては若干名がなお治療を引き続きしておるという実情でございます。そういうようなことをやりまして、さらに明年度におきましては、これは一般の花柳病対策でございますけれども、そういった者の健康診断の励行、それから接触者調査、それから軽費の治療ということをやりまして、そういった今後の花柳病の防止、治療等につきまして一段と力を注ぎたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/20
-
021・高橋禎一
○高橋(禎)委員 この問題については後日厚生大臣にでも出席していただいて質問いたしたいと思いますが、この婦人補導院を作って、そこに収容された人々に対して、花柳病防止に関係のある施策、方法等について法務省ではどのように考えていらっしゃるのですか。病気対策、特に花柳病対策等について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/21
-
022・渡部善信
○渡部(善)政府委員 仰せのごとく、婦人補導院に入ってくる者の中にはさような性病を持った者も多かろうと思うのでございます。従いまして、婦人補導院における医療の問題は、補導の内容としては非常に大きなウエートを持ったことだと思っております。従いまして、これについては、特に医療を取り上げまして、さような性病を根治するとともに、本人の更生を妨げるような身体的な欠陥にまでもメスを入れて、それを取り除くということに持っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/22
-
023・高橋禎一
○高橋(禎)委員 これは藤原副長官にお答え願った方がきょうの場合は適当じゃないかと思いますが、文部省あたりもいらっしゃればお伺いしたいところでありますが、国民一般に売春防止に関する考え方を徹底させる、特に売春はこれをしてはならない、道義的に一つの罪悪であるといったような立場に立って売春防止法ができておるわけであります。そういうことを徹底させ、かつ国民全般のこの法律実施についての協力を得るという空気を作らなければならない。先ほど申し上げた通りに、法律制定当時の空気よりはちょっと熱がさめたような印象を受けるわけです。婦人団体あるいは青年団体その他の諸団体に対して、あるいは国民一般に対して、文書だとかあるいはその他の方法によって、いわば啓蒙と申しますか、法律の精神を徹底さすというような方法について何かお考えがあるのですか。現にやっておられればそれを承わりたい。また、将来の施策について具体的な方策があれば、それも伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/23
-
024・藤原節夫
○藤原政府委員 政府の施策あるいは法律を周知徹底させ、これに協力を得るということにつきましては、あらゆる法律、あらゆる施策に対してその方法を考えているわけであります。特に民主政治のもとにおいては一番大事なことだと考えております。力を入れておるわけでありますが、ことに、こういう法律については、法律を理解し、あるいはその内蔵しておる道義の振興ということが法律を円滑に実施する一番根本になろうと思いますので、特別に必要を感ずるわけでございます。ただいまこの売春防止法の実施に当って、この法律を対象として特別の措置を立てて実施しておるわけではございませんが、全般としてそういうことの重要性を感じ、また特にこの法律については啓蒙並びに協力を得る手段を強く推進する必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/24
-
025・高橋禎一
○高橋(禎)委員 重ねて申しておきますが、先ほど刑事局長が言われましたように、外国においては非常に日本の法律を高く評価しておる、むしろこれに対して激賞の言葉すら送られておるというような状況であります。国内においては、ああいう法律ができてもとても実行できるものではないのだ、こういうことで、作るときには大いに熱を上げたが、できてしまってからはむしろその弊害だけを大きく取り上げておる。婦女子に対する暴行事件が起るのじゃないか、花柳病が蔓延するのじゃないか、あるいはまた警察ファッショになるのじゃないかというようなことが大きく取り上げられておる。そして、よいところがどうも十分国民に徹底していない傾向にあるわけでありますから、そこをやはり政府の責任において十分徹底させるよう格段の努力を一つ要望いたします。
次に、業者に対する関係について厚生省側の御答弁をいただきたいのでありますが、その統計数字は調査されたものがここに提出されておりますが、業者の転廃業についての状況、特にその人たちが将来どういうふうな考えを持って転廃業をしていくか、ほんとうに法律の精神を生かそうとしておられるものであるか、あるいは法律をくぐって適当なところでいこうというような傾向があるか、そこは重大な問題であると思います。もしその転廃業についての施策というものがうまくいきませんと、これもまた従業婦問題と同様に非常に憂うべき事態が起る危険があると思うのでありますが、その状況、その指導、政府のそれに対する協力、そういうようなことについて御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/25
-
026・安田巖
○安田(巖)政府委員 売春業者の転廃業の状況等につきましては、昨日も申し上げたのでありますが、昭和三十一年九月の調査と比較いたしますならば、大体三十三年の一月で三〇%ないし三一%が転廃業をしておるというような推計をいたしておるのであります。その業種を大別いたしますと、旅館が多く、そのあとは料理店であるとか飲食店であるとかその他の風俗営業関係のものが多いようでございます。こういうことを実際にやっておりますのは、都道府県に売春対策推進本部というものを置いておりまして、そこでいろいろと警察関係でありますとかその他の関係の部局が連絡し協力してやっておるわけでありますが、私どもの方に直接参りますところの業者などの話を聞いてみましても、今いわゆる擬装転業というようなものを赤線の中でやるということは、少くとも業者は考えていないのじゃないかというように実は私ども見ておるわけであります。業者自身も、本気で転業するのであるからして、何かいろいろと指導なり援助してくれということを申しておる。そのときに、たとえば、かりに赤線でそういうことをやれば、これはやはり警察の方も目をつけておりますし、同時にやはり世間の批判もそこに集中されておるわけでありますから、そんなまずいことはやらない、これは極端な話でありますが、もしやるとすればそのほかでやるのであって、そういったようなことはやらないということを申しておりますので、現在の赤線でいろいろ転廃業が出ておりますのは、正真正銘にそういうものを受け取りまして、もしそういった間違いを起しますならば、これは警察の方でも断固として取り締るということを申しておりますので、そういうようになるものと考えております。その転廃業の許可営業等につきましては、それを許可いたしますときには、十分そのことを徹底させまして、そうして許認可を与えておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/26
-
027・高橋禎一
○高橋(禎)委員 業者に対する考え方、これは売春防止法制定当時からいろいろ論議されておりましたが、やっておることが非常に悪いことなんで、これを罪悪視し、これに対して非常な憎しみを持ったような考えが相当強く出ておったと思うのです。私ども、憎んでみたところで、売春防止法というのは何も業者をいじめつけるという趣旨じゃないので、売春というものが法律に規定されているような形において起らないようにするということに熱心でなければならぬ、こういう建前に立っておるのですから、これはほんとうに理解をさせ、かつその転業にも協力をさせて、一時法網をくぐろうというようなことのないように心から転業し、そうして後日転業をしたことがよかったと思えるところまでいかなければ、この問題の根本的な解決にならないと思います。内閣においても、そういうことを考えて、いろいろ協力すべき点は協力しなければならぬ。今までやっておったことがよくなかったからほっとけとか、少しいじめつけろというやり方をやっておったら、この法律実施は失敗をすると思うのであります。どこまでも誠意をもって、それこそ真剣に売春問題を解決していくためにはどうするかという立場に立って政府は十分な施策を立てられるべきであると考えますから、一つそういうふうに政策を推進されるように要望いたしておきます。
次に法務大臣に伺いますが、この売春関係犯罪の四月一日から実施される刑罰規定運用に関して、いわゆる刑事政策という高い面から、これについては一般犯罪とはまた若干異なった特殊のものもあると思いますから、売春関係犯罪取締りについての刑事政策的な構想を一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/27
-
028・唐澤俊樹
○唐澤国務大臣 四月一日からいよいよ刑罰規定の適用が始まるのでございますが、この関係においての検察の方針というようなことについてのお尋ねでございます。これは、部内におきましても寄り寄り相談いたしておりまして、大体におきまして、一言で言えば、とにかく画期的な取締り法規であるから、急激に断層的にこれを一々犯罪に問うというようなことをすることは少し無理ではないか、法律では明らかに犯罪となっておりましても、ともかく長い問大目に見てこられたその慣習がございますから、やはり漸を追うていかなければならないのではないか、まずでき得る限り訓戒によっていわゆる改過遷善をさせるというような方面から入りまして、すぐに刑罰規定を適用せずに、まずその事前の保護処分にするとか、あるいは刑の言い渡しをいたしましてもこれを保護観察に付するとか、さらに進んでは今御審議を願っておりますような補導員によって保護矯正するというような方面に力を注いでいくというふうにこの法律を実施して参りたい、かように考えておるのが大体の方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/28
-
029・高橋禎一
○高橋(禎)委員 労働省にお尋ねをいたしますが、この保護規定が実施されましてから、約一年の間に少年婦人の対策としていろいろ御努力になったと思うのでありますが、今日までの実績について全体的なお話を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/29
-
030・谷野せつ
○谷野政府委員 労働省におきましては、売春防止につきましてかねてから非常な関心を寄せて、いろいろ調査、啓蒙活動、あるいはいろいろな行政機関と連絡をとりまして、この問題の推移につきまして十分お手伝いをして参ったのでありますが、売春防止法が施行されまして、昨年において婦人少年局の方におきましてとった措置につきまして御報告申し上げたいと存じます。
売春防止の措置につきましては、私どもの所管といたしまして、調査活動と啓蒙活動、並びに婦人少年室を通しましての相談業務の活動がございます。まず、私どもは、売春防止の問題それ自体が婦人の人権に関係いたします問題でございますし、またこの防止が、皆様にこの法律の趣旨がよくわかっていただきまして、すべての方が協力をしていただくことが必要であると存じましたので、昨年度におきましては、特に啓蒙活動といたしまして、売春防止法の全面施行に伴う一般社会のよき理解を得るための啓蒙活動を実施いたしました。つまり、法それ自体の内容と同時に、売春問題に対する正しい社会の認識を高めるような啓蒙活動を実施いたしたのでございます。このために、ポスター、リーフレットなどの啓蒙資料を作成いたしまして、おふろ屋であるとか、あるいは道路でありますとか、あるいはいろいろな行政機関などに配りますと同時に、地方の婦人少年室を通しまして売春の防止の問題についての懇談会を各方面との連絡のもとに実施いたしました。とりわけ、特にこの問題につきまして売春防止の御協力をいただいておりました婦人団体、さらにまた、これから御協力をいただく婦人団体などの皆様とも御連絡をとりまして、講演会、懇談会などを地方の婦人少年室を通して実施いたしたわけでございまして、この結果、特に目立ちますことは、婦人の皆様の協力態勢を深めますと同時に、売春婦の皆様がこの問題について積極的に理解をされまして、婦人少年室に相談に来られる方が非常に多くございまして、更生を進めるためのお手伝いをいたしたのでございます。また、婦人少年局におきましては、特にこの啓蒙活動の実施機関を通しまして、全国の赤線に働いていらっしゃる従業婦の方、さらにまた親元につきまして、転落原因、さらにまたこれから更生いたしますについての問題点などについて実態調査を実施いたしました。この過程において売春婦の皆様からの御相談に応じましたと同時に、親元調査その他にありまして、転落途上にあります皆様もここで救済することができたのでございます。さらにまた、婦人少年局におきましては、婦人少年室が婦人問題の第一線の相談機関でございますので、特に売春婦といわず一般の婦人の皆様の御相談も受けているわけでございますが、特に啓蒙活動、調査活動の過程を通しまして、この問題についてはっきりわかって下さいました売春婦女の方、あるいはまたこれから転落しようとする方々の相談業務を実施いたしまして、昨年におきましては約三千件の相談を実施いたしました。それで、相談の結果、更生された方あるいはまた家庭へ帰られた方、収容された方、あるいは前借金その他の紛争の処理などにつきましても、その他の問題につきまして十分相談に応じて差し上げることができたわけでございます。
以上のような調査活動、啓蒙活動、さらに相談業務を通しまして、私どもは昨年一カ年間に売春防止のためにいろいろと施策をいたして参りましたのでございますが、さらに、私どもは、これから以上のような業務をますます促進いたしますと同時に、婦人少年行政の本来でございます婦人問題の立場から、特に一般的な婦人の地位の向上を通しまして売春問題の解決のためにさらに努力を進めて参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/30
-
031・高橋禎一
○高橋(禎)委員 本日はこれを最後にいたしたいと思いますが、藤原副長官にお尋ねいたしたいと思います。
この売春対策審議会の御意見等を見ますというと、これは具体的な予算問題などは出ていないわけです。そこで、各関係省から大蔵省に予算の要求をする、大蔵省ではうんとそれを削るというので、大蔵省はこの法実施に関連しての熱意があるのかないのか、熱意がないのじゃないかという心配をしておったわけです。これが今の政府の方針のごとくにとられてしまうのです。先ほど来お伺いいたしますと、各省の関係者の方々は非常な自信をもって非常に熱心にこの問題と取り組んだわけです。ところが、予算の面になると実に貧弱なものである。そこに問題があると思うのですから、これはもう、内閣において、この仕事をやるにはこのくらいの予算が要るのだというくらいな具体的な検討までやって、そうして強く出してもらうというふうにやった方が仕事がやりいいのじゃないか、それがほんとうの仕事じゃないか、ただ予算を抜きにして文章を並べるというのではなくして、予算問題もあわせて一つ十分検討していくというようなやり方が、これは責任ある人たちのやり方じゃないかと思うのですが、これは内閣審議室においてもそういうふうなやり方を一つされる必要がある。それをやるについても、私が先ほど申し上げたような機構がまだ不十分である。それを徹底したものを作っていかないと大へんだ。これはそうこまかい問題じゃないのですよ。この法律がうまく運営できて成功するか不成功に終るかということは、日本全体と申しますか、日本の政治に関係しておる者の、日本政府の、これはまあかなえの軽重を問われるというような重大問題ですから、力を入れていただきたい。それについて所見があれば承わりたい。要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/31
-
032・藤原節夫
○藤原政府委員 売春防止法実施に対して予算がどうも不十分であるということでございまして、実は、三十三年度予算の編成の途上におきましても、審議会の各位が非常に心配されまして、わざわざそのために総会を開いて意見を具申するというようなことも行われたのであります。私どもの手元で集計いたしましたものも、そういう意味から申しますと決して満足すべきものではございませんが、かなりしかしその点については財政当局も編成途上において考え方を強くしたと思っております。今後におきましてもそういう点について一そう強力に推進するために機構上の強化をする必要があるという御意見につきましては、十分考慮いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/32
-
033・町村金五
○町村委員長 神近市子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/33
-
034・神近市子
○神近委員 私は、時間がほんの五分間ぐらいしかございませんので、一、二問ちょっと伺いたいことがございます。
それは、高橋委員の御質問のあった性犯罪のことについてでございますが、竹内局長が仰せのように、最近起っておる性犯罪というものが売春防止法施行に伴うものというような印象は持たないというふうにおっしゃったのですが、私もそれはそうではないかと思うのです。今まで売春が野放しになっていた結果でございまして、これは二十六年の婦人少年局の御調査の結論としても、赤線あるいは青線の盛んに売春の行われる周囲に一番事件が起っているということで、性犯罪が最近のような状態に非常に多く起っているのは、日本の長い制度の結果であり、また終戦後の野放しの状態の結果である。今回これが一変するように私どもは考えて立法に当ったように考えます。それで、今犯罪方面からのお取締りの予想というようなものは伺いましたけれども、私は、これは、被害を受ける方の婦人側から多少の考慮を払うべきだというようなことで考えますので、婦人少年局にちょっとお尋ねしたいのでございます。私どもが子供の時代には女が夜外出するということは非常に少かった。少かったけれども、出る場合にはちゃんと同行者を連れるか、あるいは、私どもいなかでございますから、必ずちょうちんを持てというような一種のしつけといいますか、考慮が行われていたのでございます。今は職業婦人が多くなりまして、そういうようなことはできないということは事実でございますけれども、昨年八月、夏でございました。高田市に参りましたが、電信柱にべったり張り紙がしてございます。それは市役所から張ったものでございまして、婦人の夜一人歩きを御遠慮なさいというふうな意味だったのですけれども、ちょうど実施の四月は、婦人少年局にはいつも毎年婦人週間というものがございまして、いろいろな宣伝啓蒙の方法の機会をなさっていらっしゃる。そのちょうど四月実施で、また婦人週間も四月でございますから、この被害を受けそうな側に何らか勧告する。たとえば、なるべく同行者と帰りなさいとか、あるいは無用な外出を夜女の子があまりしないようにとか。私はこの状態は非常に長く続くものだとは思いません。日本の青少年の質とそれから性行為というものには、お金だけではだめなんだ、人間としての責任を持って当らなければならないというこの教育効果を非常に大きく考えているわけでございます。それによって日本の青少年が作りかえられるというふうに感じているのですが、婦人少年局の四月の婦人週間に当りまして、こういうことについて婦人側に警告を与えるというような御意図なり、あるいは御計画なりがあるものでしょうか。もしあるとすれば、どういうふうな方法をお考えになっているか。ないとすれば、この際一つお考えいただいていいのではないか。こういう点について婦人少年局にお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/34
-
035・谷野せつ
○谷野政府委員 売春防止の問題につきましては、婦人の人権に基く問題でございまして、婦人自身が自分の個人の尊厳をはっきりと意識するということが基本的に大事なことであると存じます。ところが、一方、若い人たちの中に、やはり個人の尊厳ということから、自分の意識の過剰から、ともすれば先生がただいま御指摘なさいましたような問題があるのではないかと私も心配いたします。やはり、自己が独立いたしますと同時に、女性としてのいろいろな問題についても絶えず気をつけることが非常に大事なことでございまして、やはり自己を保ちますためにそのような被害からできるだけ防ぐことが必要なことで、そのことに対する良識を若い人たちが持っていただくことは大へん大事なことだと存じます。私ども婦人少年局におきましては、かねがね婦人問題の立場から男女の近代的な交際ということについて啓蒙活動を通して若い人たちの良識を高めるために努力をいたしているのでありますが、特に、この点につきましては、先生がおっしゃっていただきましたように非常に大事なことであると存じますので、先生のお話しのように、婦人週間につきまして、ことしは特に婦人の正しい共同活動を通して婦人の力が役立つようにということを努力の目標として取り上げました。従いまして、私どもは、この婦人週間の努力の目標に応じまして、たとえば共同活動の中に、この性犯罪を防止するために婦人たちが共同の活動を通してどのようにできるかということを家庭も考えていただきますし、あるいはまた婦人団体の皆様も、お母様として、あるいは長上の方としてどのようなことに考えられるかということを考えていただくことができるのではないかと存じます。先生がおっしゃいましたことは、この問題と関連いたしまして、売春防止の問題といたしましても大事なことであると存じますので、私どもも、御趣旨に沿いまして、できるだけ週間を通して努力をするように運びたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/35
-
036・神近市子
○神近委員 これは質問と申しますよりはちょっと藤原副長官に伺いたいのですけれど、ただいま高橋委員に対するお返事で、審議会を今後も継続して存在せしめたいという御意向のようでありますが、私どもも、法の作られる過程よりも、この実施の期間にもっと審議会の意見が反映しなければならないんじゃないかというふうに考えます。私どもが非常に残念に思いますことは、今まで副長官なんか審議会に御出席になったことが一体あるのですか。そして、予算の問題であれ、あるいは行政措置の問題であれ、そういうような少し困難な問題に御協力が十分でなかったというようなことを私感じるわけでございます。それで、これから今お話の通りに非常に強力に協力していただくということをここで約束していただけますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/36
-
037・藤原節夫
○藤原政府委員 どうも政府の審議室なり総理府の協力が十分でないというおしかりでございますが、また私自身出席したかということですが、私もたびたび出席いたしましたし、予算の問題のときも出席しております。先生はあるいは御記憶ないかもしれませんが、その審議会の御活動を願うのに御不自由のないようにということは十分考えておりますが、先ほど高橋委員からも御指摘がありましたように、あるいは政府自体の手が回りかねているということもありはしないかとおっしゃいましたが、そういう点も確かに従来あったろうと思います。御指摘のような意味で、今後はそういうことのないように、十分審議会の御活動に御不自由をかけないようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/37
-
038・町村金五
○町村委員長 世耕弘一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/38
-
039・世耕弘一
○世耕委員 午前中の時間もだいぶ経過したようでありますから、私はこの際数点だけお尋ねしておきたいと思うのであります。主として警察方面の方にお聞きしいたと思いましたが、警察の方はきょうは御都合でおいでにならないようでありますから、同法関係御当局に数点お尋ねいたしたいと思います。
売春関係の法律はざる法だという非難が世間にあることは、しばしば私は耳にすることであります。ざる法を国会が通しておいて、さてうまく取り締れということは、ずいぶん勝手なことを要求するものだ、おそらく事務当局の方々は迷惑そうな顔をしておられるだろうと思う。しかしながら、できてしまった法律だから、最も上手に運用しなければ、かえって社会悪を増発せしむるということにもなるわけであります。端的に言えば、ざるのような法律を作っておいて、ざるで水をくめというような無理を要求しているんじゃないかというようなことも考えられる。そういうことも一応われわれは頭に置きまして、私は二、三点お尋ねしてみたいと思うのであります。
まず第一に、売春の現行犯というのはどんなことをさしているのか、いわゆる売春の予備、未遂、既遂、どこで見当をつけるか、これも実際問題として考えられる問題じゃないか。その捜査に行った者の判断のいかんにより非常に違ってくるんじゃないか、それと、それに伴って、先ほど高橋委員からも質問がありました人権問題が伴ってくる、しかもそういう捜査に当る場合には多くの場合夜間に行われることだ、こういういろいろ悪条件が伴っているのであります。それをこのざる法で片づけていくというのは、よほど名検事、名警察でないと問題が残るのではないか、こういうふうに考えられるのですが、これは私は決して追及するのでも意地の悪い質問をするのでもない。実際問題としてどう扱ったら最も理想的にこれが処理されていくのかということを隔意のない御返事を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/39
-
040・竹内壽平
○竹内政府委員 売春防止法がざる法だと世間で言われているようでございますが、私どもは必ずしもさように思っておらないのでございます。刑事処分の第二章の規定を見ましても、第五条以下十五条に至る間の各規定を見ましても、これはなかなか峻厳をきわめた立法でございます。ただ、問題は、ざる法と言われますゆえんのものは、おそらくはこの単純売春を罰していないという点にあろうかと思うのでございます。この点につきましては、世界各国とも単純売春を罰すべきでないという方向に目標が向けられておりますし、特に、この立法に当りまして、もしも単純売春が罰せられることになりますと、先ほどお話も出たような、夜間人の居室に入っていくといったような警察的な取締り行為が出てくるのでありまして、そういうことは基本的人権の侵害にもなるおそれがあるというふうに考えられた結果、そういうことも考慮に入れられて単純売春を罰しないという建前をとったと思われるのでございますが、これは決して単なる手続上の問題というよりも、売春取締りという世界的な一つの方向がこの点に一致しておるのでございまして、決してこれをもって私どもはざる法だとは考えておらないのでございます。
まずその点を申し上げまして、単純売春は違法でありますことは法第三条がはっきりといたしておるのでございます。しかしながら、違法ではありましても、そのことを罰しておらないのでございまして、従って、売春の現行犯と申しますのは、まず婦女子について申しますならば第五条の違反でございます。これは、ごらんのように、公衆の目に触れるような方法で、あるいは道路その他公共の場所で、いずれも客観的にそれと認められるような方法で勧誘等の行為をする、そういう売春の勧誘を処罰いたしておりますので、そういう状況の目の触れるような場所でやっておりますので、目の触れるような場所で現行犯としては逮捕される場合があり得ると思うのでございます。しかしながら、今御設例のように、部屋の中に夜間飛び込んできて現行犯というようなことは、第三条の関係からいたしましても罰しておらないのでございますから、そういう種類の現行犯は起らないようにというのが立法の趣旨であったかと思うのでございます。その他売春婦以外の六条以下のいろいろな犯罪につきましては、それぞれまた別途ございますが、今お話しのものは、そういう居室に忍び込んで云々というようなことにはならないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/40
-
041・世耕弘一
○世耕委員 今御説明の中で世界的という言葉がありましたが、世界的という言葉は近ごろの通り言葉でございますけれども、案外当てにならない言葉だ、私はかように考えております。統計がありましても、私はその統計は多くの場合間違いの多い統計であると思っておりますから、むしろ現実に即したお話を伺っていきたいと思うのであります。
ところで、売春の現行犯だといいましても、そんなことでございませんといって拒否された場合にどうする。証拠はどこでつかむのですか。確証をあげることはなかなか困難な問題じゃないか。その点が問題になるのじゃないかと思うのです。これを単純とするかあるいは常習とするかということの見解が非常にむずかしい。そこに自白の強要という問題でまた人権問題が起ってくるのではないか。売春をする相手方というものは相当したたか者と考えなければならぬと思う。それを扱いようによっては人権問題が出てくるだろう、こういうことが考えられる。
それから、なお質問を要約する意味においてもう一つお尋ねいたしたいことは、場所の提供という問題が出てくると思うのです。その場所の提供という問題は、これもなかなか困難な問題ではないか、こう考えるのです。その点をもう少し明確にしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/41
-
042・竹内壽平
○竹内政府委員 この五条違反の証拠がなかなかむずかしいだろうという御懸念でございますが、証拠の収集はいかなる犯罪でも同じでございますが、これはなかなかむずかしい問題ではございます。しかしながら、この種の、第五条に該当するような犯罪は、現在におきましても都道府県の売春条例で規定しているものが相当あるわけでございます。それによって処罰される場合が大多数でございますが、三十一年の統計で申しますと、この種の売春条例違反で起訴を受けておりますのが七千五百五十四人という数字に上っております。三十二年は、半年の統計がここにございますが、三千二百八十五人という起訴数字が出ておりまして、いずれも勧誘行為等の違反が多いようでございますが、まずまず取締り上さしたる支障は今までの取締りの実績に徴しますとないように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/42
-
043・世耕弘一
○世耕委員 場所の提供についてどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/43
-
044・竹内壽平
○竹内政府委員 売春防止法の十一条でございますが、「情を知って、売春を行う場所を提供した者は、」という規定でございます。売春そのものは罰せられないことは先ほど申し上げた通りでございますが、売春を行うということの事情を知って旅館がその場所を提供したとかいうことがこれに該当する場合だと思います。こういうことは若干の内偵査察を待ってこの関係を確かめていくほかないわけでございまして、この種の事件も今までの条例その他のものによって検挙の実例はたくさんあるのでございまして、この点もさしたる御懸念には及ぶまいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/44
-
045・世耕弘一
○世耕委員 場所の提供の問題もなかなか実証が困難じゃないかと思う。その間において自白強要、人権の問題が自然付随するものである。私の主としてお尋ねいたしたいのは、人権をじゅうりんする機会が多いのではないか、そういう関係から、女子の人権を守るという目的がかえって女子の人権を阻害する。ある一つの嫌疑を受けて警察へ一ぺん引っぱっていかれた娘さんには、結婚の傷がつく。それは常習じゃなかった、単純だったといえば、これは別ですけれども、世間の人はそう見ない。結婚の話があったが、あの人は一ぺん警察へ呼ばれていったことがあるそうだといううわさが飛べば、その人はまじめな結婚ができないことになります。そこで、娘を持つ親御さんの心を考えてやる。ことに最近の娘さんが相当太陽族化しているかドライ化しているときに、この法律を文字通り実行いたしまするならば、意外なところに不幸を招くことを私は憂うるから、実はお尋ねいたしたいのであります。こういう点が非常に慎重を要する問題ではないかと考えるのであります。
なお、これは厚生省関係に触れてお尋ねいたしたいと思いますが、一昨日も私のところへ私の選挙区からの通信によりますと、最近は花柳病のうちでりん病が非常に減少したけれども梅毒がふえてきた、この数年間梅毒の声を聞かなかったのが、梅毒がふえてきたという。その原因はどこからきたのかと私はまだ突きめるところまでいっておりません。梅毒の蔓延ということになりますと、これは重大問題だから、新たに予算を組むなり何か対策を考えないというと、大きな国家的な問題が出てくるのではないか。もうすでに地方に起っているというこの報告を聞いております。この取締りは今のうちにその対策を講じておかないと、手おくれになと非常に問題が大きくなると思いますから、この点は、質問ではなく、私は注文をして、徹底的な御調査をしていただくということをお願いしたいのであります。
それから、これもついでに厚生省関係にお願いしておきますが、産児制限の問題ですが、産児制限の問題は二、三この委員会でも当局に御質問したことがあるのですが、極端な産児制限ではなくて、いわゆる優生学上の立場から産児制限は注意を払って行うようにしておるけれども、サンガー夫人の言うような産児制限は奨励しておらぬという御答弁があったようであります。それをはき違えて、地方へ行きますと産児制限が相当全般的に波及いたしまして、私の聞くところによりますと、東北地方のある部落では、大体毎年八十人くらい赤ん坊が生まれていたのが、最近は十人しか生まれない、こういう報告が来ているのです。これは極端な例かもわかりませんが、おそらく全国的にそうなるのではないか。最近東京においてももうすでに小学校が百教室から閉鎖しなければならぬという現状にある。これは産児制限の行き過ぎからきたのであります。私は、民族的な立場から、よほどこの点も考えなければならぬ。だから、ある一つの法律を実施する場合には、末端でどういうふうな結果を生むかということも考慮をはらう必要が多分にあるのではないか、われわれは理想を掲げているが、その理想をはき違えていることが悪い結果を生み出しておるということも考えておく必要があるのではないか、かように痛感いたすのであります。
きょうは、時間もございませんから、この程度にとどめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/45
-
046・町村金五
○町村委員長 猪俣君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/46
-
047・猪俣浩三
○猪俣委員 私は、質問は次会に譲りたいと思いますがちょっと矯正局から出されましたプリントに間違っているのではないかと思われるふしがありますので、その点だけ伺っておきます。あるいは私の考え違いかもわかりませんが……。
一つは、婦人補導院法案関係参考資料、この百二十六ページの連戻状のところですが、「前項の連戻収容状については、売春防止法第二十二条第三項から第五項まで、及び第二十七条第五項の規定を準用する。」、こうありますが、これはほかの法律の間違いじゃありませんか。売春防止法は二十七条なんてないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/47
-
048・渡部善信
○渡部(善)政府委員 これは新しい法律です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/48
-
049・猪俣浩三
○猪俣委員 わかりました。
それから、いま一つ、矯正局から出ております婦人補導院法案関係参考資料の九ページに、「婦人補導員収容人員算出基準」とありますが、これではまるで婦人補導員を収容するように聞えるのですが、これはどういう……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/49
-
050・渡部善信
○渡部(善)政府委員 「院」が「員」に間違えられております。どうもおそれ入りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/50
-
051・猪俣浩三
○猪俣委員 それならわかりました。私の質問は次会にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/51
-
052・町村金五
○町村委員長 他に質疑の通告もございますが、本日はこの程度にとどめたいと存じます。次会は二十七日木曜日午前十時三十分より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102805206X00719580221/52
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。