1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十四年二月十日(火曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 早川 崇君
理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君
理事 坊 秀男君 理事 山下 春江君
理事 石野 久男君 理事 佐藤觀次郎君
理事 平岡忠次郎君
荒木萬壽夫君 奧村又十郎君
加藤 高藏君 鴨田 宗一君
小西 寅松君 進藤 一馬君
西村 英一君 濱田 幸雄君
藤枝 泉介君 細田 義安君
山村庄之助君 山本 勝市君
田万 廣文君 廣瀬 勝邦君
松尾トシ子君 山下 榮二君
山花 秀雄君 横山 利秋君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
出席政府委員
大蔵政務次官 山中 貞則君
大蔵事務官
(主計局長) 石原 周夫君
大蔵事務官
(主税局長) 原 純夫君
大蔵事務官
(理財局長) 正示啓次郎君
大蔵事務官
(管財局長) 賀屋 正雄君
大蔵事務官
(銀行局長) 石田 正君
大蔵事務官
(為替局長) 酒井 俊彦君
委員外の出席者
専 門 員 抜井 光三君
—————————————
二月七日
砂糖消費税法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一七号)
関税定率法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一八号)
同月九日
関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第一三八号)
入場税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二二九号)
関税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
四二号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
七号)
砂糖消費税法の一部を改正する法律案(内閣提
出第二一七号)
関税定率法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一二八号)
関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出第二二八号)
入場税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二二九号)
関税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
四二号)
税制に関する件
金融に関する件
外国為替に関する件
国有財産に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/0
-
001・早川崇
○早川委員長 これより会議を開きます。
去る三日付託になりました物品税法の一部を改正する法律案、去る七日付託になりました砂糖消費税法の一部を改正する法律案、関税定率法の一部を改正する法律案、及び昨九日付託になりました関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、入場税法の一部を改正する法律案、関税法の一部を改正する法律案、以上の六法律案を一括して議題といたします。
政府より提案理由の説明を求めます。大蔵政務次官山中貞則君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/1
-
002・山中貞則
○山中政府委員 ただいま議題となりました物品税法の一部を改正する法律案外五法律案につきまして、提案の理由及びその概要を説明いたします。
まず、物品税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
物品税は、多種多様の物品を課税対象としている関係上、生産業界はもとより、国民経済にもきわめて密接な関係を有するものでありまして、政府は、その改正につき、一昨年以来各方面の意見を十分に参酌しながら、実体的にも計数的にも深く掘り下げて検討を続けて参ったのでありますが、ようやくその成案を得るに至りましたので、ここにこの法律案を提出した次第であります。
まず、改正案の基本的な考え方を申し上げますと、各物品の消費の性質及び担税力に応じて負担の均衡をはかるとともに、手工業その他零細な中小企業の製品で税負担の転嫁が困難な事情があるものについて所要の減免措置を講ずることとし、その一方、現行の課税物品との権衡上非課税となっているしとが明らかに不公平であると考えられる物品について、この際新たに課税しようとするものであります。
次に、改正案の概要でありますが、第一に税負担の減免を目的とする改正部分について申し述べます。
まず、課税段階の変更でありますか、サッカリン、ズルチンにつきましてはは、その製造がきわめて容易である等諸般の事情によって、従来の製品課税の方式では課税上適正な執行に困難を感ずる面が少くなかった点に顧みまして、今回その原料段階においても課税できることとし、同時に、税率を現行の一キログラムにつき三百円から百円に引き下げ、これに対する課税の適正化をはかることとしております。また、室内装飾用品、メッキ製品など八品目につきましては、現行納税義務者の規模が零細で執行上の難点が大きく、課税最低限を相当引き上げて高級品に限って小売段階で課税する方がより適切な課税ができるものと考えられますので、そのように改正することとしているのであります。
次に、消費の性質、消費支出弾力性等から考えて、他の課税物品との税負担の均衡上軽減を必要とする物品につきましては、税率の引き下げを行うことといたしました。このため、化粧品、釣用具など十四品目の税率を引きトげ、それぞれの実情に応じ、二〇%から最高六六%程度の範囲で税負担の軽減をはかることとしております。さらに、製造者が零細であり、転嫁が困難である等の事情が顕著であるもの、また、以上検討したような物品の消費の性質から見て現在非課税となっている物品との均衡上、この際その課帆を廃止する方が適当であると認められるもの、すなわち口中剤、玉ラムネ、一部の課税物品の部分品などにつきましては、これを非課税物品とすることにしているのであります。
なお、これらの方法のほか、課税最低限の引き上げの問題があります。主として零細企業の製造にかかる物品につきましては、右に述べた通り、小売課税に移行する等によるほか、課税最低限の引き上げによって対処することも一つの有力な方法として考えております。ただし、この措置は、政令事項でありますので、今後なお十分検討を加えて具体案を確定して参りたいと考えております。
第二に、現在物品税の課税対象とされていないことが著しく課税上の不均衡を生じていると認められている物品については、これを新たに課税対象に取り入れることとしております。すなわち、現行課税物品と同種の物品であるトランジスタ治ラジオ、テープレコーダー及びチクロ系甘味料に課税することといたしました。また、衣料品につきましては、一昨年来続けております間接税体系の根本的再検討に際して、消費支出弾力性等客観的資料に基く判断から、これを課税対象外としていることが物品税の大きな欠陥であると認められるのでありまして、この際特に高級織物を課税物品に追加して物品税体系の全きを期そうとしているのであります。これらの物品の税率は、他の課税物品との権衡を考慮し、トランジスターラジオは性能に応じて五%または一〇%、テープレコーダーは一〇%(二年間は暫定的に五%)、チクロ系甘味料については一キログラム当り三十円、高級織物については一〇%といたしております。なお、高級織物については、小売段階において課税しようとするものであります。
第三に、物品税課税の適正を期するため、第一種の物品の委託販売が行われる場合にはその受託者を、展覧会において主催者が第一種の物品を販売する場合にはその主催者を、それぞれ納税義務者とするとともに、新規課税物品である高級織物が既製品として販売される場合には、その付属加工料を控除した価格を課税価格とするなど必要な措置を講ずるほか、輸出物品の免税手続をでき得る限り簡素化するよう、所要の規定の改正を行うこととしております。
なお、この法律案による改正規定は、本年四月一日から施行することといたしておりますが、小売課税に移行する部分及び新規課税の部分につきましては、関係業者の準備の都合も考慮し、五月一日から適用することといたしております。
次に、砂糖消費税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、国内産糖に対する保護育成をはかるため、別途に御審議をお願いすることとしております関税定率法の一部改正と相待って、砂糖消費税の一部を関税に振りかえようとするものであります。
第一に、国内産テンサイ糖につきましては、従来から政府買い上げの措置によってその育成をはかって参りましたが、テンサイ及びテンサイ糖の生産を奨励するためには、それが生産者の自主的な採算によって生産されるような体制に置くことが望ましいことはいうよでもないのでありまして、この際、砂糖に対する関税率を引き上げる反側、これによる増収額に見合って砂糖旧費税を引き下げて、テンサイ糖の生在体制を自由化する方向への条件を整えることとしたのであります。すなわち、この措置によりまして、従来輸入糖に対しコストが割高であるため、そり発展がはばまれていた沖縄産分みつ糖に対しても、十分な保護育成措置となる次第であります。
以上のような理由で、第二種の砂糖(分みつ糖)に対する一キログラム当り四十六円六十七銭の現行税率を二十一円に引き下げ、その他の砂糖類につきましても、これに準じてそれぞれその税率を引き下げることとしております。
第二に、国内産及び沖縄産のたる入れ糖に対し一そうの助成措置を講じようとするものであります。すなわち、これらのたる入れ黒糖に対しましては、従来からも特別軽減税率を適用してきたのでありますが、今回はさらに、容器の制限を撤廃するとともに、糖度を現行の八十六度から九十度に引き上げてその品質の向上をはかり、また、その税率も一キログラム当り現行の六円六十七銭を五円に引き下げることとしております。
第三に、砂糖消費税につきましても、他の消費税と同様の証紙制度を設けて、課税の適正を期するほか、計量単位をメートル法による単位に切りかえる等、所要の規定の整備をはかることといたしております。
なお、旧関税率による関税のみが納付され、砂糖消費税は未納である砂糖類が昭和三十四年四月一日現在に所持されている場合には、砂糖消費税の旧税率と新税率との差額を徴収する等、経過的な措置をとることといたしております。
次に、入場税法の一部を改正する法律案につきまして、その概要を申し上げます。
この法律案は、一昨年以来続けて参りました間接税の根本的再検討の一環として、入場税負担の合理化をはかるため、映画、演芸等に対する入場税の税率の過度の累進性を緩和するとともに、低額料金による入場者の税負担の軽減及び税務執行の簡素化に資するため、臨時施設等における臨時興行について免税点を設け、あわせて所要の規定の整備をはかるため、入場税法の一部を改正しようとするものであります。
まず第一に、税率改正について申しますと、昭和二十九年の改正の際、低額入場料金について、その税負担を大幅に軽減することとしたため、現在第一種の催しもの(映画等)の基本税率は、五十円以下一割から百五十円をこえるもの五割に至る急激な累進税率となっており、他の消費税の税率等との権衡から見ますと、二割の税率を中心に、例外的な一割の軽減税率及び三割の加重税率を加味することが適当と考えられます。従って、これを五十円以下一割、百円以下二割及び百円をこえるもの三割の税率に改めることといたしました。同時に、演芸、音楽及び見せものについては、従来から軽減税率を適用していた催しものとの区分について問題が多かったので、これらの税率を、演劇と同じく五十円以下一割、三百円以下二割及び三百円をこえるもの三割に軽減することといたしました。第二に、第一種の場所で行われる催しもの(映画、演芸等)のうち、仮設小厘とか小中学校の講堂等で行われる臨時の催しものについて新たに三十円の免税点を設けるとともに、第二種の場所展覧会場等)への入場についても、現行の免税点の二十円を三十円に引き上げることといたしております。
第三に、入場税課税の適正を期するため、入場券に関する規定を改正する寺、所要の規定の整備をはかることといたしました。
なお、この法律案は本年五月一日から施行することといたしておりますか、経過的な取扱いといたしまして、九月一日以降に入場する入場券を四月一日以降に前売りする場合には、新税率を適用できるようにいたしておりますとともに、五月一日以降六カ月間に限り尻込み料金が減税相当額だけ引き下げられない場合には、原則として旧税率を適用することといたしております。
以上申し上げました軽減措置による入場税の減収額は、昭和三十四年度において約十九億円、平年度において約二十三億円と見込まれます。
次に、関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、国内産テンサイ糖及び沖縄産糖の保護育成をはかるために砂糖の関税率を引き上げるとともに、インド蛇木根、マグネシウム及び鉛の関税率について、それぞれ所要の改正を行おうとするものであります。
以下、改正の内容を簡単に御説明申し上げます。
まず、砂糖につきましては、昭和二十八年に施行されたてん菜生産振興臨時措置法によって政府買い入れ等の措置がとられ、国産テンサイ糖の生産は着々増加しておりますが、なおその生産費は輸入糖に比べて相当割高になっております。また、沖縄産糖は、本邦へ輸入される際に関税を免除されておりますが、生産費が高いため、その他の地域からの輸入糖の関税込み価格と比較してもなお相当割高となっております。従って、これら国内産糖及び沖縄産糖の生産の保護育成に資するため、原料糖の関税を一キログラムにつき現行の十四円から四十一円五十銭に引き上げ、あわせて関連品目の関税率について所要の調整を行うこととしております。なお、別途、砂糖消費税法の一部改正により、ほぼ関税率引き上げに見合う砂糖消費税率の引き下げが行われることになっております。
次に、インド蛇木根についてでありますが、これは、高血圧の治療に不可欠な医薬品の原料となるものであり、しかも、現在その全部を輸入に仰いでおりますので、その関税率を現行の一割から無税として、国民保健の向上に資することとしております。
次に、マグネシウム及び鉛につきましては、最近における需要増加に伴ってこれらの国内生産が増加し、現在では国内需要の大部分を国内生産で充足できるようになってきておりますが、その価格は外国産品に対してなお若干割高となっております。従って、これら国産を保護するため、マグネシウム地金及び鉛地金の関税率をそれぞれ現行の五分から一割に引き上げるとともに、関連品目の関税率について所要の調整を行うこととしております。
次に、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
この法律案は、最近の経済状況等にかんがみ、昭和二十九年に制定されました関税定率法の一部を改正する法律の附則を改正し、本年三月三十一日で期限が到来する関税の暫定的減免制度について、その期間をさらに一年間延長し、あわせて、電子計算機及び触媒等の一部を免税品目に追加するとともに、一部品目の整理及び軽減税率の調整をしようとするものであります。
以下、改正の内容を簡単に御説明申し上げます。
まず、従来暫定的に関税の減免を認めている重要機械類、学童給食用乾燥脱脂ミルク、原子力研究用物品及び小麦、A重油、四エチル鉛、航空機等の課税免除物品並びに原油、B、C重油、揮発油、ピグメントレジンカラーベース等の軽減税率適用物品につきましては、諸般の事情を考慮して、なお一年間その減免の期限を延長することとしております。
次に、事務管理の向上並びに企業合理化に資するために、電子計算機及び石油化学工業用の触媒等を新たに課税免除品目に追加し、また皮革産業の発展に資するため、合成なめし剤について現行の軽減税率をさらに引き下げ、あわせて繊維製品の染色用として使用されるピグメントレジンカラーベースについて、国産保護の見地から、現行の軽減税率を若干引き上げることとするとともに、国産保護の見地から、カーボンブラックを減税品目から削除することとしております。
最後に、関税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、最近における外国貿易の実情に顧みまして、姫路港及び佐賀関港を開港に、伊丹空港を税関空港にそれぞれ追加するとともに、開港が開港でなくなる基準を合理化しようとするものであります。
以下、改正の内容について簡単に御説明申し上げます。
まず、姫路港及び佐賀関港につきましては、ともに貿易実績も多く、港湾設備及びその将来性についても他の開港に比して遜色がないので、両港を開港に追加し、伊丹空港につきましては、昨年三月に接収を解除され、外国貿易に使用されることとなったので、これを税関空港に追加し、これに伴う税関管轄区域の整備を行うこととしようとするものであります。
また、開港を閉鎖する場合の基準につきましては、現在は、輸出入額の基準と入出港船舶隻数の基準との二基準のうち、いずれか一方を満足すれば開港として存続することとなっておりますが、これを、二基準のうち隻数の基準を半分にゆるめた上で、二年継続してその二基準の双方を満たすことができなかったときは、開港でなくなることに改めようとしております。なお、これにつきましては、現在実績の少い開港の事情をも考慮いたしまして、改正規定の適用を一カ年猶予し、来年末までの実績を見ることとしております。
以上が、六法律案の提案の理由及びその概要であります。
何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛成を仰ぎますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/2
-
003・早川崇
○早川委員長 これにて提案理由の説明は終りました。本案に対する質疑は次会に譲ることとし、午後零時より佐藤大蔵大臣に対し財政一般について質疑を行うことを許可することになっておりますので、大蔵大臣が出席するまで、暫時休憩いたします。
午前十一時十三分休憩
————◇—————
午後零時三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/3
-
004・早川崇
○早川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び国有財産に関する件について調査を進めます。
質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/4
-
005・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大蔵大臣に質問いたしますが、自民党は、昨年の選挙に公約して、八百億の減税を断行するということをいわれておりました。そこで、国民は、三十四年度からは八百億の減税が実現するものとして、大きな期待を持ったのであります。しかるに、これがいつの間にか七、八百億減税にすりかえられて、しかも今年度からではなく平年度七百億円ということにごまかされてきたのであります。すなわち、今年度は、国税において四百三十二億、地方税において百一億、合計五百三十三億になっておりますが、公約とはだいぶ距離もありますし、これでは国民を愚弄したといわれてもやむを得ないのでありますが、これに対する大蔵大臣の明快なる御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/5
-
006・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 昨年の選挙に際しまして、自民党は七百億減税を公約いたしました。これはもう御指摘の通りでございます。ただ、ただいま八百億と言われました八という数字は申しておらないはずであります。これは明らかに七百億減税を言っておるわけでございます。そこで、それは一部におきましては、七百億減税だというから、初年度から七百億というような感じを持つ向きもあるかと思いますが、しかし、専門家であられます大蔵委員の皆様方は、過去の幾つかの例からごらんになりましても、減税は初年度にはフルに減税のできないことはよく御承知であられると思います。従いまして、公約事項といたしましては、いわゆる平年化された金額であるということ、これはもう大蔵委員の皆様方は私より以上に御承知のことだと思います。国民の皆様方に対しましても、こういう点はどうか大蔵委員の皆様方からよく実情を御説明願いたいと思います。で、問題は初年度の減税額でございますが、この点で私どもが幾分か期待に反したとでも申すべきものがあるといたしますならば、国、地方を通じての減税ということを公約し、地方減税分について相当多額のものを予定したと思うのでございます。しかし、減税案そのものは、お示しいたしますように、国税減税が中心になっておりまして、地方税の方が十分減税の処置がとれなかった、かように実は感ずるのでございます。これは取り扱いました当局として率直に表明をいたすわけでございます。しかしながら、納税者の側から考えてみますと、国税だろうが、地方税だろうが、納税者の負担には変りはないのでございまして、国、地方を通じての減税額七百億というものは、これで達した。そうして、過去の公約事項におきましては、大体の目標数字をいつも申し上げまして、その内輪に減税案がきまったように思いますが、今回は七百億という線は堅持し、それより以上の減税をいたしておるのでございまして、この点では、国民から、公約に非常に忠実なる政府、政党として信頼を得ておるように、私は自負いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/6
-
007・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 岸さんの弟さんでありますから、なかなか言葉が上手でそつがないことは認めますが、いずれあとで平岡委員等からいろいろと質疑があると思いますので、大まかなことだけを私から質問をいたしまして、大蔵大臣の所見を承わりたいと思います。
今いろいろお話がありましたが、具体的に数字を見てみますと、三十三年度の国民所得が八兆四千百二十億、それで税負担は国税のみで一四・一%、それから国税、地方税を合せまして二〇・二%、それから三十四年度では国民所得が八兆九千二百八十億に対して、税の負担が一四・二%、地方税を合せますと二〇・三%になって、若干租税負担は多くなっております。それのみならず、政府が減税々々と言いながら、今度は、きょうもありましたが、織物課税などの物品税の新設、それからガソリン税、これも百九十二億となっておりますが、ガソリン税の値上げなどの関係上、大衆との関係が非常に深い税金が予算の上にかかってくるようになっております。これを見ましても、実質的には租税負担は一向に軽くならない、逆に重くなっているような事態が出ておるわけでございます。こういう矛盾を大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。言葉だけでごまかさずに、実際には、私たちからいえば、これは公約の違反じゃないかと思いますが、どういう所見を持っておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/7
-
008・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいま御審議をいただいております減税案については、これは七百億円以上になっておることは、この減税の実態からよくおわかりかいただけると思います。問題は、そういう減税をやりながら、他面において増税をしておるじゃないか、負担者である国民から見たら同じことじゃないか、こういう点だろうと思います。なるほど、今回は、物品税等におきまして、あるいはガソリン税等におきましてこれを増徴する、こういう観点に立ちますと、減税の効果がよほど減殺される、こういうようなことを一部から注意もされておるのでございます。しかしながら、物品税の織物消費税について申しますと、今回この織物消費祝の課税対象として取り上げますものは、いわゆる高級品でございまして、多数国民がさような高価なものを常用しているとは考えられない。しかも、絹織物全般から見ましても、わずか〇・三%程度の品物に対して課するのでございまして、私はこれは大衆課税という筋のものではないと実は考えるのでございます。それより以上に、やはり物品税については大幅の調整をはかっていただいてはおりますものの、こういう際にこそ、国民負担の均衡を得せしめるということ、これが税といたしましてはどうしても堅持すべき本筋ではないかと思うのであります。この意味におきまして、織物消費税については実施の面でいろいろ工夫を要下る点があろうかと思いますが、いわゆる大衆課税というものでない。この点はぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。
また、ガソリン税の増徴にいたしましても、これは、申すまでもなく、道路整備といういわゆる目的税の増徴でございまして、この使途も非常に明白になっておる。こういう意味では、いわゆる大衆課税というものとはおよそ区別さるべきものだ、かように考えますので、今回の税制の整理は、一面において減税もし、また一面におきまして税負担の公平、こういうような観点に立って増徴すべきものは増徴する、あるいに課税すべきものは課税する、こういうように税制の合理化をはかっておる、かように私どもは自負いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/8
-
009・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 いずれ審議の過程でいろいろお伺いしょうと思いますが、ただ私たちが心配いたしておりますのは、わが党としては、物品税は全部戦時課税だからということで反対をしておる立場上、わずか六億二千万の織物課税でありますけれども、政府は、今言われるように、一メートル五千五百円、それから絹織物にしても二万五千円という比較的高額なものであるから、大衆には迷惑はかからぬだろうというような予測のもとにお出しになったという説明でありますけれども、しかし、これには根の深い面がありまして、将来織物消費税と同じような形で課税をするのじゃないか。大蔵省は、そこに原政府委員もおられますが、財源の関係上千三百億くらいの織物課税をねらって、一応世論の動向を見て、その後にやろうという深い意図があるようにも考えられるので、こういうことは他日またお話を承わろうと思っておりますが、とりあえず私たちはこれは氷山の一角であるというように考えておるのであります。
ガソリン税は、昨日もガソリン税の関係の方とお目にかかったのですが、これは毎年税金がかかって、この二、三年の間に約三倍くらいになった。こういうやり方は、政府は、一方においては減税を唱えながら、弱い者には課税をする、こういうそしりを免れない点があると思うのであります。まあ時間がありませんし、あとで平岡君からもいろいろその問題の続きがあると存じますが、一方においては税負担を軽くする。それから地方税の問題については、これはいろいろ自治庁と大蔵省との関係があって、相当もめたことは聞いておりますが、相当大幅な減税をやるということをいいながら、実際には大山鳴動ネズミ二匹というようなことで、法人事業税などは、大蔵省の原案では平年度百六十億になっていたものが、わずか三十億というようなまことにスズメの涙ほどしか減税になっていないわけでございます。しかも、地方債をうんとふやして、地方交付税は大蔵省原案よりも四十一億もふやしておる。これは、おそらく、今春の参議院の選挙あるいは地方選挙を控えて、昨年減税々々といったと同じように、選挙民をつるために、大衆の負担よりも、地方の知事とかあるいは地方の選挙を有利にするために、そういうようにやられる意図もあるんじゃないかというようなことが憂えられておりますが、こういう点についての大蔵大臣の所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/9
-
010・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 物品税、それからその他の税につきましていずれ御審議をいただくことになります。その際またさらに詳しく御説明をいたしたいと思いますが、ただいま佐藤委員から御質問がありました点が、まことに一部誤解を受けておるように感じますので、この機会に明確にいたしておきたいと思います。
第一は、織物消費税の問題でございますが、これは氷山の一角じゃないかという話をされておる。しかし、審議の過程といいますか、原案作成の過程等におきましても、私どもは十分検討いたして参ったのでございますが、これが大衆課税にならないようにということに特に留意し、洋服地等につきましても、国産品にはほとんどかからないような金額を実は指定いたしておるのであります。これは、氷山の一角でなくて、織物に関する全貌である。これは非常に明確になっておる全貌である。この点を誤解のないように願いたいと思います。私が織物消費税といいますのは、さようなものを考えておるわけではございません。今日までこれにかかっていなかったということ、これはどういう理由であったにいたしましても、これを見のがしていたということは、他の物品税の建前から見ましてもまことに相済まないことであったのではないか、かように私どもは考えておる次第であります。
第二のガソリンの問題ですが、なるほど、ガソリンにつきましては、過去におきましても二回かガソリン税の引き上げをいたしておると思います。これはいわゆる弱者に対して強いという感じではもちろんございません。過去のガソリン税の計画は、その都度当初の計画がゆがめられた結果、いつも道路整備計画と合わないで今日のような状態になってきておる。この点は私どものまことに遺憾に思う次第でありまして、これはやはり道路の整備計画に合せ、その財源確保という観点に立ちまして、なるほど苦しいことには違いございませんが、あるいは石油業界に及ぼす影響、あるいは運輸業界に及ぼす影響、さらにまた国民一般の日常の生活との関連等から考えまして、道路の整備の急務であること、これらのことを考えて参りますと、やはりこの際にはっきりした財源を確保しておくことがよろしいのではないか、過去のように問題を起さない、今回のガソリン税の改革に際しまして、抜本塞源的な税制を樹立すべきじゃないか、かように実は思うのであります。過去の計画をごらんになりますと、いつも計画が途中において変ってきておる、変更を余儀なくされておる、そういう点が何回も同じような増税を計画する結果になっておるのではないかと思います。
次に、法人税についてただいま佐藤委員からお話がございましたが、私ども、法人税については、国の税においても、また地方税においても、法人負担を軽減させたいという長い間の念願を持っておるものでございます。ところが、法人と申すと、いかにも大法人が利益を受け、中小企業の経営しておられる法人などは利益を受けないかのような印象で、一部からはいつも批判を受け、法人税の軽減などはけしからぬという反対を受けて参ったことが実はあるのであります。私どもは、この法人税の軽減に際しましても、ひとり大企業だけを利益するような考え方で法人税の減税などは考えてはおりません。いわゆる個人事業税、また法人事業税の軽減が中小企業に及ぼす影響の非常に大きいことも考えておるのでございます。問題は、法人税の軽減に対しまして一率であることが望ましいのか、あるいはそこに軽減率、いろいろその規模によりまして段階をとることが望ましいのか、そういう議論なら私どもも十分検討いたしたいと思いますが、法人税軽減だというと、直ちにそれが大企業の法人の負担軽減だ、こういうような意味の批判を受けまして、過去においても非常にむずかしかったのであります。幸いにいたしまして、佐藤委員から法人税もさらに減税さるべきではないかという御意見が出ておりますが、私ども非常にありがたく思います。ただ、私が申し上げたいのは、今回の法人の負担の問題にいたしましても、国と地方を通じて政府として考えました場合に、いわゆる所得税の軽減ということもさることだが、地方税としての法人事業税の軽減もこれまた非常に大事な部分だ。この所得税といわゆる法人事業税との負担割合なり、税の構成なり、こういうことは十分検討を要する問題だ。そういう意味で、当初におきまして、事業税自身が経済の変動に非常に影響を受けるものだ、こういう意味では、地方財源として、恒久的財源としては不適当ではないか。あるいはまた法人の所在等も都道府県によりまして相違があるのであります。こういうことを考えますと、法人事業税についての負担軽減はやはり考究すべきだということで、いろいろ工夫をいたしたのでございますが、結果におきましては、いわゆる国の財源並びに地方団体の財源、こういうものの基本的分配が十分考慮されておらない現状におきましては、この際にこれを強行することは非常に危険なものを持つということで、実は取りやめたような次第でありまして、一部の減税は実施をいたしましたが、七百億減税の場合に、その不足分等を国税によったということであります。ただ、問題は、今回の減税によりまして一部の減税は実施されましたが、税のあり方として、ことに企業課税のあり方としては、今後の問題として私ども十分研究したいと思いますし、同時に、これにも関連を持つことですが、国、地方を通じての税源の分配というようなことも当然考慮すべきものだと思いますので、今回は税制審議会を設けて、そういう意味においての基本的な調査をはかっていきまして、税制の合理的なあり方をきめていきたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/10
-
011・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 今の大蔵大臣の答弁から、二つの問題を私たちは看取します。ガソリン税の問題は、今後絶対に値上げしないという明言を得ましたが、来年度からは必ず揮発油税を増徴しないかというその点のことと、もう一つは、物品税の、高級織物の消費税の問題でありますが、これは大蔵大臣御承知のように今店頭課税になっておりますから、税金をとる方法として非常にむずかしい問題が起きる。一々税務署の吏員がたとえば洋服屋へ行って調べるというような、非常に繁雑な問題が起きるわけでございます。これはひいていろいろ犯罪が出るわけで、そういう問題についていろいろいかがわしい問題があるということが、業者に非常におそれられております。そういう点について、大蔵大臣は、そういうような迷惑をかけても、どうやってもとる、わずかなことだがとると言われますけれども、この前昭和二十九年度のやはり織物消費税の問題のときにもそういう問題がからまりまして、店頭課税から卸売製造課税というようなことになって、この法案はつぶれてしまいました。そういうような非常に危険のある物品税の課税でありますが、この点について、今のガソリン税の問題と物品税新設の問題についての大蔵大臣のはっきりとした所見を承わって、他日これは問題にしますが、この際もう一度大臣からお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/11
-
012・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ガソリン税は、原案が成立いたしますならば、当分このガソリン税を上げるということを計画する考えはもちろんございません。おそらく、ガソリンの消費の伸び等考えますと、道路計画を進める上において十分財源が確保される、かように確信をいたしております。従いまして、原案が成立することを心から願っております。
第二の問題の点でございますが、高級織物、いわゆる着物あるいは洋服地の問題でございますが、私は、この種の高価なものは扱われるところが非常に限られておるというのが実情ではないかと思っております。申し上げますならば、百貨店であるかあるいは専門店であるか、そういうところに実は限られるものではないかと思っております。しかし、一部におきましていわれておりますように、さようなものはどこでも扱う、こういうようなお話でございますならば、納税者と税務署との関係でございますが、どこまでも申告を忠実にしていただきますならば、過去のようた危険はまずないものだ、かように確信をいたしております。問題は税務署員につきましていろいろ誤解がある。税がとれるというようなことになると、痛くない腹まで探られる。わずか二、三着のものを扱ったばかりに、全部の所得の精査を受けるとか、こういうようなお話をしばしば聞くのでありまして、来てもらうものにしても、税務署の役人とどろぼうにだけは来てもらいたくないというお話を聞くのでありますが、私は、税務署の役人はほんとうに国民から信頼され、親しまれるようでなければいかぬ、そういう意味におきまして、いわゆる苛斂誅求をしない。また納税者の方であまり法規等についても詳しくない、こういうようなこともありまして、納税の手続でも非常にお困りの点があるだろう。そういう点はできるだけ時間を作って親切に教えてあげるようにすることが必要だということを、実は申しておるのであります。私は、今御意見にありましたように、今回の服地やあるいは絹織物について課税するというようなことになって、一部でいわれているような弊害が生ずるとは絶対に思いません。むしろ申告をしていただくことによりまして、その申告を信頼することによりまして、また実際の扱い方から見まして、一年に一着や二着作られるものまで根掘り葉掘りして探し出して課税するというような窮屈な考え方をしているものではない。これだけはまことにしろうとらしい言い方をするようにお考えになるかもしれませんが、これがまた税の実際でもありますので、その点は誤解のないように願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/12
-
013・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大蔵大臣は、知らぬが仏で、税務署の末端を知らないし、今まで民間よりもむしろ役所の方でずっと生活しておられて、税金で暮してこられたので、わからない。おそらくどこの税務署へ行ってごらんになってもわかりますが、そんななまやさしいことで税金がとれるはずがありません。やはり相当突っ込んでいかなければ税金はこれるものでないし、現実に銀座を通られても、現在の織物課税反対のあれが立っておりますが、そういうことをおそれて、税の額よりも、むしろそういうような店まで全部調べられるおそろしさを非常に感じておることを御理解願いたいと思う。これは平岡君からもいろいろ質問、意見もあると思いますから、これ以上追及はしませんが、そういうおそろしい税金であるということは、大蔵大臣になった以上は考えていただかなければなりませんし、現実に末端の税務署を一つ調べてもらえば、いかに庶民がこういうような税金で困るかということは、皆さん方のようなお役所の方がお考えになるよりも、もっともっとわれわれのような民間出の者が痛切に感じていることを、肝に銘じておいていただきたいと思います。
税金の問題はそれだけにいたしまして、ほかの問題に移りますが、今回の予算は公約予算といわれ、一面にはこうやくばりの予算だといわれております。そこで、自民党の公約である国民年金制度の創設、文教施設の充実、道路整備、港湾整備等の公共事業に対するような構想は一応は整っております。いいことでありますが、しかしこれには非常に無理があって、今までの洗いざらしのあらゆる財源を全部とって財政支出に充てたというようなことであります。これは、失礼でありますけれども、また佐藤さんは、大蔵大臣をやめられて、この六月には幹事長になられて、いつまでも大蔵大臣をやっていられないということもありますので、食い逃げされるおそれもありますから、これ以上申しませんが、とにかく、三十三年度の予算にいたしましても、これは今後相当の予算を見込んでもらわなければ困るのじゃないかというふうに、われわれは考えておるわけです。そこで、いわば今度の予算の配分は、選挙目当ての総花予算だ。それから経済の安定を考えるよりは、経済の成長ということに重点を置いて、いわゆるインフレ積極財政のように考えられます。だから、一部の真面目な銀行家では、これは景気の過熱のおそれがあるというようなことも一般に心配されております。こういう心配がないかどうかということも、一応佐藤大蔵大臣から伺っておきたいと思います。
それから、もう一つは、財政投融資の問題でありますが、五千百九十八億に対しまして、三十三年度の当初予算は三千九百九十五億円で、約三〇%上回って、千二百億の増加になっております。これはかつて積極財政といわれました三十二年度の財政投融資の前年度に対する増加額六百二十億の約二倍になっております。さらに、当初計画の内容、資金の分配面から見まして、輸銀向けの支出の急増を筆頭に、国鉄、電電、道路公団、港湾整備、住宅建設などの事業規模の拡大が目立っております。これらの公共事業は一面には非常に民間の産業を刺激する。こういうものは一般会計でほんとうはやるべきではないかとわれわれは考えておりますが、こういう諸点についての大蔵大臣の御意見を承わりたいと思います。
それから、今度は、非常に盛りだくさんの選挙公約が消化しきれなくて、財政投資の方へたくさん向けられております。これには大蔵予算がどうも政治的な効果をねらってやっておられるのじゃないかということが思われ、また経済の成長の表だけを見て、実際的には日本の経済は竹馬経済であって、完全に立て直っていないのにかかわらず、こういうような投融資を多くするということは、われわれは問題があるのではないかというふうに考えておるわけです。こういう点で、原資調達面においては、財政に不健全性があるということもいわれるのであります。過去の蓄積資金を全部動員したばかりか、郵便貯金の千億円、民間資金の活用八百八十八億円などの過大な見積りを行なっておりまして、一歩これが運用を誤まるとインフレになって、そうして金融の混乱が起るのじゃないかということも一面には心配されております。たとえば、三十一年度の景気の行き過ぎ等、その後の不況を招いた最大の原因は、積極財政といわれた金融政策であり、そのために資金の機能を麻陣してしまったのであります。大臣は、今後の経済の安定の見通し、あるいはこういう信念で自分はやるというような、確固たる御信念を持ってこれをおやりになったのかどうか。三年ばかり前に神武景気が来るといって、実際にやってみると神武以来の不景気が来たということは、これは政府は勝手にやりますけれども、そのために民間が泣いた時代もあります。こういうような点について、大蔵大臣が今度非常に膨大な予算を組まれたにつきまして、確たる御信念があったと思いますが、その点われわれの納得のいくように一つ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/13
-
014・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいまのお尋ねは、今回の予算編成の基本に触れ、さらにまたわが国の経済の動向なりあるいは今後の経済の見通し、またどういう点に重点を置くかという各般にわたってのお尋ねでございます。一部におきましての批判を代表しての御意見であるような節も見受けられるのでございますが、この機会に、少し時間がかかりますが、一通り私どもの基本的な考え方を申し上げてみたいと思います。もうすでに、財政演説におきまして、基本的な構想は詳細に述べましたので、ダブらないように申し上げて簡潔にその要点だけを申してみたいと思います。
まず第一は、今回の予算を作りました場合に、これは企画庁で取り扱っております三十四年度の経済見通し、これと対応して作っておるのであります。同時に、企画庁で作っております経済見通しは、わが党の主張による経済長期計画、この線とどういう関連にあるかという基本的な考え方をとってみておるのであります。過去のいわゆる神武以来の好景気といったものが、神武以来の不景気になったというような面もございますが、いわゆる経済の長期計画の伸びから見ますと、ややその期待に沿わないといいますか、三十二年、三十一年というようなものは、いわゆる長期計画をよほど上回る数字できていた。それがやや停滞ぎみなことで、いわゆる長期計画の線に近づいてはおりますが、また、ものによりましては、長期計画の線をくぐっておるようなものもございますが、今日の経済の動向そのものは、私どもが想定しておる長期計画の伸びに大体相応しておる。これは、雇用の面から見ましても、就労人員の面から見ましても、大体その線になっておる。たとえば、就労人員は、私数字をはっきりただいま覚えておりませんが、おそらく四千四百二十三万くらいの数が、三十四年度では想定されておるのではないかと思います。これはたしか長期計画から申せば四千三百三十万人くらいの数字になっておると思います。そういたしますと、これは大体その線に合っておる。雇用の面では二千六十七万人に対して長期計画では二千三十六万人、そういたしますと、三十四年度の経済見通しは、大体長期計画の線に沿っておるということが言えるのであります。これを基礎にいたしまして、今回の予算を組んで参ったのであります。収入の面におきましては、経済の成長率に合うような収入が一応予想できるということで歳入予算を見積るし、また、歳出の面におきましては、経済の伸びを想定いたしまして、その経済の成長にふさわしい予算を組んだつもりでございます。巷間では、今回の予算は「一兆よいくに」の予算だと言っております。そういう点はただいま申す経済の成長にふさわしい予算ということで、そういう意味の好評を得ておるのではないかと思いますが、とにかく経済の成長にふさわしい予算を組んだのであります。
ところで、問題になりますのは、過去の神武以来の好景気といったものが不景気になったではないか、あるいはまた最近の国際変動に対応するような予算になっておるかどうか、こういうことになると思うのであります。過去の非常に好景気が叫ばれた際のものが、設備投資過剰というようなことから、金融の引き締めをせざるを得ないような状態になってきた。また、ちょうどそのときが、日本の国内でもそうなったが、世界経済も不況の波が来て、貿易などは思うように伸びなかった。非常に苦しい思いをして今日まで二年近くを経過してきましたが、ようやくその不況、沈滞を脱して、上昇の傾向に向っておる。これが先ほど来申す経済の成長ということでもございますが、その際に、過去のような誤まりを二度とやらないために、私どもが特に注意をしなければならないものは、いわゆる経済の体質改善ということになる。この経済の体質改善は、同時に国際の競争場裏に立ちましても、ひけをとらないような健全なものにしていくということでなければならないと思うのであります。先ほど、財政投融資の面において、非常に金額が膨張しておるじゃないかということを御指摘になりましたが、わが国の経済の各分野のバランス等を考えてみました場合に、まず第一に目について指摘されることは、民間経済は非常に活発な様相を呈してきておるにかかわらず、その経済の基盤をつちかうような産業についてはやや立ちおくれておるのじゃないか。はっきりいたしますことは、たとえば道路の整備がおくれておるのではないか。あるいは最近のように大きな船で貨物を輸送しない限り、なかなかコスト下げができないというような場合に、日本の港湾の設備では、非常に水深が浅いとか、航路が狭いとか、あるは埠頭の数が足らないというようなことから、やはり港湾を整備していかなければならぬ。あるいは、住宅の問題につきましても、もう少し力を入れていかなければいかぬ。道路の整備に合わして、日本の国内の交通幹線である国有鉄道も機能を発揮していくようにしていかなければいかぬじゃないか。こういうようないわゆる基幹産業の面についてのアンバランスというものを、この際是正していくことが、将来の経済の成長に対してふさわしい、均衡のとれた経済を作るということにも実はなるのであります。こういう意味で、財政投融資の面で、今までおくれておるようなものに特に力を入れていくという計画を立てておるのであります。過去におきましては、たとえば電力が非常に不足だ、電力の開発には特に力を注ぐ、あるいはまた石炭の開発については特に力を尽すとかということで、動力源の確保に非常な努力が払われたことは御承知の通りでありますが、電力は、幸いにして、まず経済の成長には対応できるようになっております。石炭自身は、最近の動力源の変化等から、今後は石炭産業をいかにするかという一つの対策を立てる段階になっておりますが、この体質改善で一番大きく目につくものにそういうものがございます。
さらにまた、もう一つ体質改善の面で今後気をつけていかなければならないことは、日進月歩の科学の進歩におくれをとらないような産業設備を持つということであります。そういう意味では、古い設備が新しい科学的に進んだものに変っていかなければならない。今日いわゆる繊維関係が非常に不況だといわれておりますが、繊維関係の最近の技術の進歩などを考えてみますと、原綿や原毛によるよりも、化学繊維の分野は非常に拡大されてきておる。また、繊維の作り方等にいたしましても、過去のものからよほど変ってきて、私どもが名前の知らないような繊維がどんどん出てきておる。こういうような科学の進歩におくれをとらないような体質改善をしていかなければならない。同時にまた、これは日本産業構造の特異性からきておると思いますが、地方においてはいわゆる小地主による農村というものがあり、また経済の面におきましては、大企業もあるが、どうしても中小企業というものに対しても力を入れていかなければならない。これを育成しない限り、日本の経済は健全ではあり得ない、こういう形にもなるわけであります。いわゆる体質改善というものは、広い分野にわたりましてこれを検討していく、そうして経済基盤を強固にしていくということでなければならないと思うのであります。ただ、さように申しましても、なお経済の面は、国内においても国際の面においても、これは共通するのでございますが、たとえば大企業と中小企業は、一面競争はしておりますが、他面において同時に協調して、相互の繁栄を期しておる面も多分にあるのであります。佐藤さんは、もう専門だから、さようなことは仰せられないかと思いますが、社会党の諸君の一部には、経済政策だといえば、中小企業を痛めつけて、大企業独占資本ばかり育成するのではないかというような批判をされる方がございます。これは、競争の面だけをごらんになって、協調、お互いに協力し合っている面を忘れておられるのではないかと思うのであります。私は、中小企業と大企業の間におきましては、競争もするが、同時に相互に共助し合っているという、この面を十分考えて参りますならば、施策が大企業だけに集中されず、中小企業の育成にも効果があるということがおわかりになるかと思うのであります。先ほど来御指摘になりました金融の措置等につきましても、中小企業に対しては、中小企業の金融を専門に扱う資金の確保もいたしておりますが、同時に、大企業についての資金を確保することによって、中小企業も救われておるということは、これは申すまでもないところだと思うのであります。今回の予算は、さような意味において経済の体質改善ということに特に力を尽す考え方でございます。
そこで、総体としてはやはり何と申しましても、相当積極的な意欲的な予算であることは見のがせないだろうと思います。その点は先ほど御指摘になった通りでございます。同時にまた、この予算の実施に当って、もしも金融のあり方等で誤まるならば、いわゆる過熱といいますか、経済発展の不均衡を来たす、そういうところで非常な破綻を来たすのではないかというような意味においての、いわゆる過熱論なるものが一部にあることは、私どもも百も承知でございます。ただいまいわれております——財界の一部で言っておる過熱論、あるいは金融関係の人たちが申しておる過熱論、これなどは、今後予算を遂行していく上におきまして起るであろうところの事態に対して、今日から警戒をしておる姿でございます。この警戒がある限り、またそれだけの注意をみずからしている限り、過去のような過誤を私は再びするものではないと思って、むしろかような意味においての自粛、警戒の言葉が出ていることを、心から実は賛成している者でございます。
そこで、国の問題につきましては大体の事情を申しましたが、国際的な関係においての問題でございます。国際的の関係では、昨年来いわゆる通貨の交換性が拡大された。この意味において、貿易は一面で非常に拡大もされやすいが、同時に競争も非常に激化していくであろう。円の姿なるものから申しまして、その競争に立ちおくれを来たすのではないかというような点で御心配になる。あるいは欧州における共同市場、それに類似のいわゆるコンモン・マーケットの思想が一部に出たりして、今後の貿易のあり方等についていろいろ注意される方もございます。方向といたしましては、必ず自由貿易の方向にいくに違いない。これは今日から予想されるところでございますか、しかしながら、一部で考えられるように、非常に短期間に直ちに自由貿易の方向にいくということは、これはないだろうと思います。今日通貨の交換性を回復したと申しましても、それらの国々においても、貿易政策の基本については何らの変更を来たすものではないということを、はっきり申しておりますように、そういう事態であるたろうと思います。しかしながら、大筋として自由の方向へいくだろうという基本的な考え方は十分堅持いたしまして、それに対する対策は絶えず立てていかなければならないと思うのであります。
そこで、私は、先ほど国内の問題で申しましたが、そうすると、国際的には非常に競争が激化し、日本の競争の条件では立ちおくれをするのではないかという御指摘があろうかと思います。その点につきましては、わが国経済が健全であり、基礎が強固である限り、国際競争の場に臨みましても、ひけをとることはないだろうと思います。同時にまた、一面競争の場ではあるが、協力共助の場であるということも、私たちは十分念頭に置いていいと思うのであります。それこそが、IMFなどの考え方というものがやはり一つ示しておりますように、国際協力ということも強く出ているのであります。私は、こういう場に対処いたして参りましても、その点では十分ひけをとらないように、基本的な通貨の交換性に対処し、また貿易の自由化に対処するだけの用意を今日からいたしまして、これでひけをとらないようにする。同時にまた、国際的協力の場におけるこの働きを十分生かしていくようなことを考うべきではないかと思うのであります。
私は、かように考えて参りますと、一面通貨価値の安定ということが非常に重大な意義を持つと思うのであります。通貨価値の安定こそは、経済発展だろうが、国民生活の向上だろうが、あらゆる面において基幹をなすものである、こういう意味におきまして今回の予算を作り、また財政投融資を作り、また民間の協力をも望み、しかもただいま申す基本線を守り抜いていくという考え方でおるのでございます。
大変長い時間説明いたしましたが、これは基本の問題でございまするので、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/14
-
015・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大蔵大臣の御高説を拝聴いたしました。いずれあらためて質問をいたします。
ただいま当委員会で問題になりました国際通貨基金並びに世界銀行に対する出資増加についてでありますが、これは当然本予算に組まれてしかるべきであったにかかわらず、あえて財政法による疑義を顧みずに、三十四年度の補正予算に組んでこられたことは、どういう意味があるのか。これは大蔵大臣が「一兆よいくに」などというような言葉にとらわれて、そうして膨張財政の印象を隠すためにわざわざやられたのではないかというぐらいいわれておりますが、そういう点についてもここではっきりした御答弁を願いたいと思います。
なお、増資の財源につきまして、私は、この前、接収貴金属のうちで日銀に帰属すると見られる六十二トン、二百五十億の金地金の評価がえのことを問題にしたのでありますが、これを国庫納付にして、そしてこれを世銀の方へ貸与することになっておるようですが、これは非常に大きな問題がありまして、実は今法案が参議院にいっておりまして、しかもこれは二回とも流れております。政府は、勝手に法律を無視して、しかも財政法上疑義のあるようなこの資金に対して、なぜこういうようなことをやったのか、この点について大蔵大臣の所見を承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/15
-
016・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 IMF並びに世銀の出資につきまして補正予算を出しましたことについての第一のお尋ねでございます。またおそらく、お話では、かようにわかっておるものならば、なぜ本予算に組まなかったかという御注意だろうと思うのでございます。この問題は、率直に申し上げまして、ぜひとも御了承を得たいと思います。決して今言われますような、本予算が割にうまくできてごろ合せがよくなったから、そのごろ合せに忠実だったのだろうというような意味では毛頭ないのでございます。これは、私、昨年皆様方の御了承を得ましてインドに参りました。世銀、IMFの総会に参りましたが、そのときに世銀やIMFの最近の活動から増資を必要とするということであり、増資の決議を実はいたしたのであります。また、わが国といたしましては、そういう際には、日本の経済もよほど立ち直ってきておるし、日本の経済力をもってするならば、特別出資割当をぜひとも願いたい、アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダに次ぐような意味においての高額割当を希望するというような申し出もいたしておりましてこのインドにおける決議の経過を実は十分気をつけて見ていたのであります。従いまして、非常に早い時期にこれが予見されるような事態になりましたならば、もちろん本予算に計上すべき筋のもの、かように考えていたのであります。しかし、IMFや世銀におきましては、増資をきめますのにまことに慎重でございまして、この理事会で増資の内容をきめましたのは、たしか昨年の十二月十九日に、理事会でこのニューデリーの総会の決議によりまする報告を取りまとめ、そうして理事会で決議案なるものを作成いたしたのであります。これは、理事会に、そういう権能があるか、増資を決定する権能がありますならば、この十二月十九日の理事会の決議でもう非常に増資がはっきりすることになるわけでありますが、理事会といたしましては総会に諮るべき議案を作成するだけの権能しかないのでありまして、それ以上には一切進まないのであります。そこで、この決議案を作りまして、十二月の二十二日でありますが、この決議案なるものを二十二日に各加盟国にあてまして送付をしてそうして投票を開始いたしたのであります。このIMF並びに世銀の規定によりますと、所定の期日までにIMFにおきましては五分の四の賛成が必要だ、また世銀におきましては四分の三の決議が必要だということでございます。
問題は、一体どの時期を見てこれが予見をされる時期と考えるか、いわゆる財政法に基きまして予算に計上すべき条件はいつきまったかということになるのであります。ただいま申すように、二十二日に各国総務に草案を発送し、同時に投票開始となったのであります。日本は、日本の割当についての投票は一月の二十九日に投票をいたしております。もちろん賛成投票をしておるわけでありますが、この一月二十九日——これは向うの時間では二十八日の午前十時現在になりますが、それまででは日本に対する賛成投票は六五%であります。また、世銀の方は、二十七日の午後五時現在で投票率は六九%ということになっております。そこで、私どもは、この予算編成に当りまして、増資割当はインドに行ったときから問題になり、日本も非常に熱心にこれを希望しておるのだから、本予算に計上することが、一体どの辺でするのがいいかまでに注意をいたしたわけであります。私どもは、非常に熱心に希望しておるのだから、一日も早く予算に計上することが望ましいという議論でもあります。しかし、同時に、このIMFや世銀というのは各国で構成しておるものだから、それらの人たちに対して敬意を表するというか、これを簡単に一国だけの希望だけで予算を計上するということは、投票権に対しても非常に失礼に当るのじゃないかということも実は心配をした一つであります。そこで、最終的に一月の三十一日になりまして、はっきり八〇%を越したということが確認されたのであります。正式には二月の二日が投票締め切りでございます。そうして二月二日で可決が確認された。そこで可決されたそのときに閣議で決定をし、そうして補正予算を組んで国会に提案をしたという経過に実はなっております。
そこで、問題は、財政法上等の関係から申しまして、一体いつ予見したということになるのか。これは当方の希望から申せば非常に早く出したい気持は多分にあります。もちろんみずから進んで特別割当まで要求しておるような問題でございますから、これは早い方がいい、かように思いますし、日本政府の意思はここではっきり決定したということもいえるのであります。しかしながら、ただいま申すような投票によってきまる問題でございますので、まだ投票も済まないうちに予算に計上することは、いかにもこれは相手方に対して思惑的な行動をしたということで、いろいろ誤解も受ける。これはやはり最終的に決定の見通しがついたところで、確定したところで予算を組まざるを得ないのじゃないか。そうすることがこういう国際間の問題を扱うのに最もふさわしい取り扱い方だ、こういう考え方であります。そうすると、今度は、問題は本予算の総括質問をしておる際にこの補正予算を出すことが一体どうなのか。これは確かにあまり好ましいことでないこともよくわかります。しかし、私ども考えましたのは、国会内でももう特別割当の問題はよく御承知のことでもあるしするから、意思を決定したら一日も早く国会に提案するのが望ましいことではないか、同時に、そのことが、一面投票した国に対しましても、日本はみずから進んでその処置をとったということで、国際的にも非常に効果のあることじゃないかということで、実は非常に早急にこの問題を取り上げたのでございます。この点ではいろいろ誤解も受けて、もう少しうまく、出すなら本予算の審議が相当進んだところで出すべきじゃなかったかという御批判もいただいておりますが、これは国の内外において日本の特別増資割当ということがあまりにもはっきりいたしておりますので、そういう点はむしろ率直に扱うことが望ましいのじゃないかということで、あえてその処置をとったわけでございます。大へんおそくなりましたが、ぜひとも御了承をいただきたいと思うのでございます。
第二の問題といたしまして、今度はその出資の財源を何にしたか。この点は、ただいまのお尋ねにありましたように、日本銀行が保有いたしております金地金六十二トンの評価差益によりまして、これを出資することをきめたのでございます。ただいま御審議をいただいております接収貴金属の問題があり、また一面にかような出資の問題等がありますので、その接収貴金属法案の成立の問題とどういう関係があるか。あるいは日銀の保有しておる地金の再評価を今日出すということについて、それが適当かどうかというようないろいろの問題があると思います。そこで、いろいろ重ねてのお尋ねがあろうかと思いますから、基本的な考え方たけについて御説明をいたしてみたいと思います。
本来はどこまでも接収貴金属等の処理に関する法律案の成立を心から急いでおります。この法律案は、もうすでに数回——数回というか、毎回の国会に提案をいたしまして、御審議をいただいておるのでございます。一度は衆議院を通過したが、参議院で通過を見なかった、また前国会はかような事情でこれが流れておるということでございますので、今回の通常国会におきましてはぜひともその法律の成立を心から願っております。これが成立いたしますならば、国や日本銀行が保有しております金の帰属も、この法律で非常に明白になる。もちろん、民法によりましても、その所属を明確にする方法はございますけれども、いわゆる接収貴金属として一括して処理する基本法を作ることが望ましいことは申すまでもないところであります。また、一般民間の接収された貴金属等の処理も、この法律案が制定されることによって処理ができるのでございますから、どうしてもこの法律案をこの国会においては成立を期したいと、心から念願をいたしております。この意味では、社会党の皆様方にも心から御協力、御支援をお願いしておる次第でございます。この法律が成立いたしますれば何をか言わんやで、おそらく問題は解決するでございましょう。しかし、今日御審議の過程というか、その中間におきまして、成立を心から希望しておる政府ではございますが、しかし、でき上るとかなんとかというような意味で、国会の審議権についての見通しなどはいたしません。一に皆様方の御審議の結果を待っておる次第でございます。
そこで、この法律案とは別にいたしまして、日本銀行が保有しておるこの金の評価差益というものが、幸いにして六十二トンでただいま申すような二百五十億に近い評価差益が出ますので、これで出資ができ上るわけでございますが、こういう評価を今回なぜするかとか、時期はそれで適当かとかいうようなお話があろうかと思いますが、それは別といたしまして、この日本銀行が保有しております金そのものは、最近通貨の交換性等の問題から見ましても、やはり金の保有はできるだけ持つようにという御希望も各方面から出ておりますし、政府自身も金の保有量はふやしたい考え方でおりますが、その金そのものの評価というのは、そういう意味をなすものでありますし、またこの金はなるべく動かしたくない金であることも、その意味ではおわかりがいただけるだろうと思います。で、問題は、IMFや世銀に出資いたしますことは、どちらかと申しますと、今の世銀の性格から申しまして、金準備的な性格を多分に持つものであります。言いかえますならば、日銀でそういうような機能を発揮さすものを、今度は世銀やあるいはIMFを通じてそういう働きをもなし得るものだ、こういうように考えますので、今回の評価差益で出資するということがまず望ましい方法じゃないか、かように実は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/16
-
017・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 都合のいいことだけは大体先へ自分の方で話をする。なかなか答弁は微に入り細にわたって先々に言われる。時間がありませんのであまり追及はいたしませんが、ただ先回当委員会で酒井為替局長、賀屋管財局長の意見を聞いてみますと、九月一日までにこれが間に合えばいいということなのであります。しかるに、片方で予算委員会にも審議中にこういう法案を突如出すというようなことは、まことに片手落ちの観があるんじゃないか。同時に、外国の方での見通しが確定しないから本予算に組まなかったと言う。しかし、今お説のような接収貴金属の法案は現実に通ってない。そういう場合はどうであろうと予見して先にやるというような、非常に都合のいい解釈でおやりになっておる。われわれは、こういう点で、どうも、大蔵省自体は、事務的な自分の方の都合を考えて、国会なんかどうでもいいというような、国会無視の考えがあるんじゃないかということを非常におそれるわけでございます。これは、事国際的なことはわれわれも多少知っておりますから、無理のない点もありますけれども、しかし、たとえば接収貴金属のような問題は、先回も銀を勝手に使われたというときにも、非常に国民から非難がありました。国のものなら勝手に処理をして、民間のものはほったらかしていいのかという意見が出て、非常に反対がありました。もし大蔵大臣にほんとうに誠意があるならば、この接収貴金属処理法案も、現在の法案を撤回して、政府の分だけを先に出して、そうして民間の所属のはっきりしないものはあとから出すような方法をとられるのが親切じゃないか。この間賀屋官財局長の意見を聞きますと、法案は通らぬでも勝手に処理するというような答弁でございました。おそらく、そういうことになると、都合のいいときだけは勝手にわれわれに押しつけて、都合が悪くなれば勝手に大蔵省でやるというようなことで、非常に国会を無視するということを言われても、これはやむを得ないと思うのです。そういう点で、国際的な問題は、われわれもこれは重大な問題でありますから、世銀とかIMFの方の問題もあることはありますけれども、やはり国会が予算の審議権を持ち、またわれわれはそういり委託を国民から受けて国会に出ておるのでございます。都合のいいときだけ勝手に大蔵省がやるならば、国会がやらずに、適当に大蔵省独裁でおやりになったらいい、こういうように考える。こういう点について、山中政務次官でないけれども、問題の火の粉はいつも大蔵省から出ている。いわゆる財政法の違反とか、あるいは国会の予算審議中に少くとも補正予算を出すようなことで、いろいろ問題があるわけです。こういう点について、国の財政の問題を取り扱う大蔵省といたしましては、やはり国民の意見も十分に聞いて、ある程度まで予見のできるようなことは予見をして予算に組んでいただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
大蔵大臣から、先回りして、なかなかいい答弁がありますから、それは他日大臣を呼んでいろいろと意見を聞くつもりでありますが、要するに、今度の予算についての国民の疑念、あるいは減税を公約しておきながら、一方においては新税を作ったり、あるいはガソリン税を上げるというような非常に片手落ちの問題、そういうような問題についてわれわれはいろんな意見を持っておりますが、時間もありませんので、私は李岡君に譲りますが、こういう点について、少くとも大蔵大臣は重要な岸内閣のかなめであります。どうか、国民の疑惑のないように、なお接収貴金属などにつきましても、いろいろと私の方にも投書があり、最近はいろんな意見を言ってくる人がありますが、国民が非常に心配をしておる。また政府の都合のいいときだけ勝手に自分たちが処理するようなことをやられたのでは、われわれ国民はたまらないというような意見が間々あるわけでございます。そういう点について、大蔵委員会あるいは予算委員会などにもいろいろ問題があると思いますが、どうか、国民が納得をして、片手落ちのないように、国民が政府を信頼してやれるような方法を今後ともとっていただけるかどうか。今なお三十四年度の補正予算のことについては議運などでも問題になっておりますが、こういう誤解のないように、今後やっていただけるかどうかということを大蔵大臣にお伺いいたしまして、私の質疑を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/17
-
018・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 お答えいたします。いろいろおしかりも受けたようでございますが、この点では幾分か誤解があるのではないかと思いますので、重ねて私どもの真意を御披露いたしまして、どうか御了承を得たいと思います。
ただいま、国会を軽視するのじゃないか、どうもやっておることがふに落ちないというお話がございましたが、しかも、国会を軽視するとか、無視するような考えはもちろんございません。この点は、どうか、根本の問題でございますから、御了承いただきたいと思います。ただいま、補正予算を提案したことによりまして、あるいは時期が不都合だと言われるようなおしかりも受けますが、ああいうような異例な時期であるということを承知しながらも出しておりますゆえんも、これは国会を尊重しての余りでございますし、もしも私どもがずるくかまえますならば、こういう問題の起るときになど出さない方がいいということもございましょう。しかしながら、私どもは、国会の御審議をいただく上から申しまして、でき上った事態、それに対して必要なものは国会に時期を失せず提案するという考え方でございます。
また、接収貴金属の問題につきまして、過去において造幣局で銀貨を鋳造いたします際に一部これを使った結果、これは政府の持ち分が非常にはっきりしたものについてさような処置をとったわけでございますし、あるいはIMFの出資の金につきましても、過去において十五トン現送いたしたこともございます。これなどもいろいろおしかりを受けたものだと思いますが、どこまでも国会の審議が第一であることは申すまでもないことでございます。先ほど政府委員の説明が意を尽さないで、おそらく皆様方からとっちめられた結果、最後のところを申し上げたと思うのでありますが、異例な処置はどうしても政府としてはとりたくないのであります。この意味からしても、接収貴金属の処理に関する法律の制定を心から願っております。この点では、これは政府の所有の金あるいは貴金属の処置ということもさることですが、民間の方々の心からの希望もこの点にかかっておると思います。また政府と民間との問題がお互いに交錯しておるような貴金属もあるやに伺いますので、どうしてもこの接収貴金属処理に関する法律案が成立することが心から望ましいのでございます。もしもこの法律が通らなかったらどうするか、そこまで詰められますと、それはそのときになって考えればいいことでございますが、皆様方のお尋ねになることがまことに上手に誘導なさるから、その真意でもないことを実は申し上げたのだと思います。私どもはどこまでも本筋でこの問題を処理したいと思います。
また、幸いにして、この国会におきましても、なるほど党は違っておりますが、心から御審議を熱心にいただいておる現状でございますので、今回の大蔵委員会なりまたその他の委員会等を通じましても、どうかその意味で十分御審議を賜わりまして、本筋の法律案が早く成立可決できますように、この上ともよろしくお願いいたします。私の決意のほどをただいま御披露いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/18
-
019・早川崇
○早川委員長 平岡忠次郎君。ちょっと平岡君に申し上げますが、予算委員会との申し合せで二時までということになっております。ただし大臣以下政府委員は昼食を全然とっておりませんので、大体二時十分くらい前で一応御質疑を終るようにお取り計らい願いたいと思います。残余はまた別の機会に取り計らいますから、さよう御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/19
-
020・平岡忠次郎
○平岡委員 私も食事をしておりません。ですからこれはお互いのことなんで、この際、最小限で一時間はちょうだいしないと困りますので、一つ空腹でございましょうが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/20
-
021・早川崇
○早川委員長 予算委員会を開くことになりまして、それを含んで御質問願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/21
-
022・平岡忠次郎
○平岡委員 私もそのつもりでやりますけれども、あまり時間を切らずに……。
ただいま同僚委員から各般にわたる質疑をいたしました。私がこれからお尋ねすることも多少重複することもあろうと思うけれども、今の応答を聞いておりますから、その点はなるべく避けてお尋ねしたいと思います。
最初に公定歩合の問題、次に欧州諸国の自国通貨の対ドル交換性回復の問題、三番目に公約減税に関連しながら租税の問題、この三点を主要テーマとしてお聞きしたいと思います。
まず最初に、公定歩合の問題につきましてお伺いしたいと思います。
同僚佐藤委員からただいま申し上げたのでございますが、三十三年度の当初予算に比較いたしまして、今回の三十四年度予算案を見ますと、千七十一億円の増になっております。しかも三十三年度の予算中には四百三十六億円の例の経済基盤強化資金が含まれており、しかもそれが凍結状態にあったのでありまするがゆえに、三十四年度の予算の実質というものは、三十三年度に比べまして、やはり千五百億程度増加になっておると私どもは考えております。他方、財政投融資計画におきましても、千二百三億円の増加となっております。それに今まで過去に蓄積したものを使うとか、あるいは国際収支の黒字が続くという原因からしまして、大臣自身がすでに御説明になっているように、三十四年度における国庫収支の散超が二千四百億円をこえるであろういうこと、このことはかなり確定的な見通しでございます。そこで、こうしたことは当然金融の緩慢化を招来いたします。あなた自身が財政演説のうちに触れられておりまするが、こうした際こそ公定歩合の弾力性の回復あるいは金利体系の整備、社債市場の育成等、今まででのペンディング・クェスチョンを全部解決する、こういう絶好な機会であることも御指摘しておられます。ところで、こうした金融緩慢の背景下に、あなたの御指摘されておる公定歩合の弾力性回復の問題が当然当面の重要課題だと思うのです。ところで、あなたの六日の記者会見におきまして、この問題に触れまして、今その時期ではないということをいわれております。他方、それに引き続きまして、日銀総裁の方は、つとにそうした機が熟しておるということを別なところで発表しておると聞いております。ですから、公定歩合の引き下げ論をめぐりまして、大蔵大臣と日銀総裁が不一致の談話を発表しておる。私は、このいずれが妥当であるかということにつきましては、これは甲論乙駁していろいろあろうと思いますが、中庸な説をなす人は、これが十月ごろであったなら、日銀総裁の言われた第三次公定歩合の引き下げのチャンスであったことは間違いない、こう言われます。ですから、それは三カ月前であったらという条件をやはり付しております。このことはどういうことかと申しますと、逆に言いますならば、明年度の予算と財政投融資計画案の刺激的な要因のために、オーソドックスの引き下げ論が危ぶまれているということであろうと思います。公定歩合を引き下げまして、日本の高い金利水準を国際水準までに低下させるという金融正常化の方途を大蔵大臣みずからが危うんでおられるのは、自分で組まれたところの三十四年度予算案と財政投融資計画に不安を覚えておるからである、こういうふうに私どもは考えるのです。大蔵大臣のこのことにつきましての御所見をまずお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/22
-
023・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいま六日の日の新聞記事からいろいろのお話が出ておりますが、まず第一に基本的な問題についてぜひとも御了承いただきたいことがございます。それは何かというと、公定歩合の問題ですが、公定歩合の問題は、日本銀行というか、民間において決定すべき問題で、政府自身がこれには決定権がないということを一応御了承おき願いたいと思います。その意味から政府の発言そのものもいろいろの含みを持つだろうと思いますが、ただいま申し上げるように適当な時期でないという言い方まではっきりはいたしたつもりはございません。ちょうどこの委員会にも当時の記者諸君もおられるように思いますが、やはり公定歩合の引き下げで最も必要なことは、市中金利が下っていくことが必要だということを、実は特に強調いたしたものでございます。同時にまた、公定歩合の動きという実勢力も一つよく見ていただきたいということを申しておるのであります。そこで、いわゆるコールの金利の動きということが一つの問題だということを指摘いたしたのであります。今度は、このコールが非常に高いところにあるならば、これはやはり思い切って公定歩合も下げなければならないだろうが、コールの実勢が二銭を切るようなことになったときに、公定歩合自身は名目的なものだから、場合によっては公定歩合をいじらなくとも、それで金融は正常化しているともいえるだろう、いわゆる低金利の方向にいっているということがいえるのではないか、こういうまことにわけのわからない話をしたように、ただいま思い起すのでございます。過去の公定歩合の引き下げに際しましては、日本銀行並びに政府は、相当意欲を持ちまして、コール・レートをとにかく相当下げたいという気持であり、また市中金利も下げてほしいという意図をもちまして、公定歩合の引き下げを実施いたしたのでございます。しかし、過去二回の公定歩合の引き下げによりまして、今度は金融の自然の情勢にある程度まかせてよろしいのじゃないか、こういうような感じをただいま持っておるのであります。その意味におきまして、いろいろ今日の金融情勢についての批判をいたしたのが六月の記事になっておるのでございますから、この点は御了承をいただきたいと思います。
そこで、金利の動きは一体どんなふうになっておるのか。ちょうど今手元に持っております金利の動き、これは平岡さん御自身が財界にも関係の深い方であられますから、よく事情はおわかりだと思いますが、この一月から十二月まで全部読んでみることは少し煩瑣でございますから、そのうちを抜き抜きにして読んで御披露してみたいと思います。三十三年一月の全国金利は二銭三厘六毛五朱となっておりますが、これが五月は二銭三厘六毛八朱、それから、私が大臣になりましてからが、六月ですが、二銭三厘六毛一朱、これからだんだん下って参りまして、九月は二銭三厘五朱、それが十月には二銭二厘八毛七朱、十二月には二銭二厘六毛六朱と、わずかずつではありますが、金利が下って参っております。この下っておりますこと自身が、最近の——ただいま申しましたのは銀行の貸し出し平均金利でございますが、過去二回の公定歩合の引き下げによる効果というものは、まあ三カ月以上あるいは六カ月以上たって効果が現われるものでございますが、金利自身がただいま申すように順次下ってきておる。こういう状況にあることをまず御了承いただきたいと思うのであります。今後の問題といたしまして、先ほど申しますように、これは影響するところが非常に大きいですから、いついかなる時期にどういう処置をとるということは、事前に申し上げる筋のものではございません。ただ、私どもがあらゆる機会に申し上げておりますように、金利のあり方としては国際金利水準にさや寄せする方向であってほしいということを絶えず申しておりますし、日本銀行におきましてもその事情をよく把握いたしておりますので、今後の金利のあり方においては間違いはない指導をするであろうと、実は期待いたしておる次第でございます。
そこで、問題になりますのは、今年の予算の実行に当り、また同時に散超の状況から申しまして、私どもが期待するように、この機会に金融の正常化が実現すれば非常にけっこうでございますが、われわれの期待を裏切って、金融の混乱、言いかえますならば、不当貸し出し競争をするとか、その他のような弊害を生ずることのないようには気をつけなければならない。ことに、いわゆる日銀の貸し出し残というものをよく気をつけるようにはいたしておりますが、この点は、揚げ超は貸し出しとの関連には大きな意味を持つと思いますが、それ以外にも、やはり一般民間の需要というか、企業熱といいますか、これが非常に金融の実際に強い影響を持つものでございますから、今後の経済のあり方といたしましては、一面金融について誤まらない指導をいたしますと同時に、一般財界の需要というものについて絶えず注意をいたしまして、これが行き過ぎにならないように気をつけていくということで、誤まりなきを期して参りたい、かように実は考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/23
-
024・平岡忠次郎
○平岡委員 大蔵大臣が仰せられたように、日銀総裁の所管事項である、ですから大蔵大臣としては直接その衝にはないと言われますが、日銀総裁の任免権は明確に内閣にある。日銀総裁はやはり総理大臣とか大蔵大臣の顔を見ながら事務をとる傾向になっておると思います。これは非常によい傾向ではないのです。ヨーロッパの、たとえばイギリスにしましても、ドイツにしましても、金融と財政というものは画然と区別しておる慣行が成り立っておる。日本では、あなたはそう言葉ではおっしゃるけれども、相当影響力を持っておると思います。ところで、あなた自身が今申されたように、オーソドックスな方途としては、国際金利水準に近づけるように逐次低めていくことが望ましい。国際市場におけるコンペティティヴな立場をとり得るためにも、そのことは当然望ましいわけです。しかし、こうした機運はつとに成熟していると私どもは考えております。ただいま大蔵大臣がこの十カ月ほどの金利の推移をお示しになりました。そこで、二銭二厘まで大体下ってきておる。だから、そういう下降状況にあることも事実なんです。ただ、これでもまだ少な過ぎるという批判はあるとしても、下降状況にあるということは事実です。それから、もう一つ、新聞記者諸君に発表している中にも、一月における揚げ超は九百億ほどあることを暗黙の前提としておると思いますけれども、大筋の金融は緩和していることは間違いはないのです。それですから、この機会に、私がさっき申したように、十月ごろやればよかったという議論はかなり傾聴に値するということを申しましたけれども、今でもおそくはないと思います。今やっておかぬと、いわゆる下期におけるところの過熱状況になったとき、今度は金利を逆に引き上げる、公定歩合を引き上げるという効果を一そう持たしめるためにも、踏み切った方がいいと思いますが、ただ、その場合におきましても、やはりいろいろな弊害が起りましょう。いわゆる銀行筋の過当競争の貸付、あるいは石油とかいろいろな企業の過剰投資の傾向を馴致する、こういう懸念があろうとは思うけれども、これは大筋からいって国際水準に近づけるために引き下げるということと、あとのことを調整するということは、別個の問題として取り扱えば私はいいと思います。たとえば、今まで、銀行の過当競争というものを押えるためには、せっかく二年前にこの委員会を通してあったところの準備預金制度、この率を設定する。この設定はむろん日本銀行の所管事項になって、大蔵大臣はこれを認可するという形になっておりますけれども、こうした問題、あるいは、商社の過剰設備を誘発しているのは、やはり設備による輸入の割当ということがガンになっておると思うのです。これは、砂糖にいたしましても、羊毛にいたしましても、すべて設備というものを前提にして、その規模において割当をする。今現在輸入を割り当ててもらえば必ずもうかるのですから、何としても設備を多くして割当をよけい取るということがガンになっておるのです。ですから、そういう問題を克服するためには、例のAAシステムの方をうんと拡大していく、こういう形にします。今言った銀行に対しては預金準備率を設定して、日銀にかなり大きな金を吸い上げるということと、企業に対しては今言ったガンであるところのAAシステムを拡大することによって、不当な過剰投資の動機というものを押える、こういう措置をあわせ行うならば、弊害は少くて、しかも大筋の引き下げ、国際水準への近寄せということはできるわけですね。こういう点は大臣としてもお考えになっていると思うのですけれども、今申したような理由で、やはり大筋は大筋としていくべきであろうと私どもは思っております。そういう点につきまして、これは、いろいろな思惑とか、いろいろな問題がからむと、あなた御自身のお立場からなかなか言いにくいかもしれないと思います。これは、大蔵委員会としますれば、今言った西欧の自由経済といいましょうか、この交換性回復をすることによる自由市場の角逐戦というものが非常に前進して参りますについて、日本の国際的な競争力を真につちかうというような大筋からいって、やはり踏み切っていい問題だと思う。この点につきまして、お差しつかえない程度で、一つ御回答いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/24
-
025・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 お答えいたします。平岡さんは非常に御研究なすっていらっしゃいますので、ただいまの御高見を実は拝聴いたしたのでございます。しかして、本来でございますれば、御意見は御意見として伺っておきますというのでいいのかと思いますけれども、ただいま非常に打ち割った話で誤解のないようにしたいからということでございますので、私の感じも率直に御披露してみたいと思います。ただ問題は、くれぐれも誤解のないように願いたいことは、具体的な問題として申し上げるのでないことでございます。どこまでも、最近の通貨の交換性なり、あるいは金融の緩慢な場合にどういうような処置をとるかという抽象的な、いわゆる原則的な意見としてお聞き取りをいただきたいと思います。具体的な問題でないことだけ御了承をいただきますればけっこうでございます。
お話のように、金融が緩慢になりました場合に、いろいろの方法があるだろうと思いますが、金融の正常化をはかります意味において、もうすでに法律ができ上っております準備預金制度、こういうものも必要があれば活用するということだろうと思います。今日の時期においてその必要は、これは具体的に申してもいいと思いますが、まだそういう必要はないと私は考えておりますが、必要があれば、そういうものも考えたらいいだろうと思います。私は、財政演説でも申し上げましたように、こういう機会にこそ金融の正常化をはかるべきである、こういう意味では、まず第一は日銀依存のあの金融のあり方を直すべきだということを指摘し、同時にまた金融の相互の過当競争その他の問題について姿勢を正すことを強く要望しておるのでございます。この点は変りはございませんから、これらの点は具体的に申し上げてもいいことだろうと思います。問題は、そういうような場合に基本的に考えておる金利の引き下げというものを、公定歩合の引き下げなり、あるいは日常の指導なりでどういうように扱っていくか、こういうことに一にかかっていくのでございます。これは先ほどお答えしたところでお許しを得たいと思います。そこで、この国内緩慢金融に対して警戒すべき点は、ただいま御指摘になった通りでございますし、私どもの気持からも、同じような気持で、今後の金融状態の推移を十分把握し、そうして時期を失しないように、今までしばしば言われますことは、政府もいろいろ考えるだろうが、後手々々と来ているのじゃないか、もっと先手々々に囲るわけにいかぬかというような御批判をいただくのでございます。問題は、いろいろ政府自身で工夫し考案しておることもございますが、発表の時期はあるいは後になりまして、ただいま言われるような批判を受けるようなものがあったかとも思います。ただ問題は、事前に、確定しないうちにこの種の問題が外に出ますことは、非常に鋭敏な経済界あるいは金融界に非常な動揺なり影響を及ぼしますので、この点は、政府といたしましては、どこまでもそういうような悪影響をかもし出さないように、慎重に扱っていくつもりでございます。
そこで、次の問題になりますが、貿易の問題と国内産業の整備の問題とからみ合してのいろいろの御注意でございます。私ども、しごくごもっともな問題だと実は拝聴いたしておるのでございます。大蔵当局におきましては、もうすでに為替の問題と取り組んでおることは御承知の通りでございます。前臨時国会等でもお話し申し上げて、為替関係の法規はほんとうの専門家でもなかなかわからないほど手続が煩瑣だ、こういうことでは、今後の為替の取引の実際に合わないから、まず手続の簡素化をするということをお約束し、その意味においての審議会を作って、いろいろ手続の簡素化をはかっておりますが、今日の段階になって参りますと、これはただ単に手続の簡素化というような問題じゃなくて、為替、さらにまた貿易等の今後のあり方が、いかにあるべきかという根本問題について、十分学識経験者の意見を徴して、官僚の独善にならないようにいたしたいものだと、せっかくただいま審議会を開いて問題を検討しておる最中でございます。そこで、一部におきましては、過去におきまする輸入割当というものが、今後の貿易の実際に合わはいのじゃないかということで、まず取り上げられる。御指摘になりますAAシステムの非常な拡大というようはことがいわれるようになっております。あるいは為替ユーザンスの問題にいたしましても、在来のような考え方、硬貨軟貨の区別なんかは、もうそういう時期じゃなくなっている。だから硬軟貨の区別はしないようにさしあたりの措置は実はとっておりますが、今後は為替貿易の自由化の方向へ大きく踏み出すとして、根本的な問題と取り組んでいく、こういう気持で各方面の意見をただいま調整しておる最中でございます。かように御了承いただきたいと思います。御指摘になりました点は、今後の経済のあり方、私どもが申す経済の姿勢を正すとか、金融の姿勢を正すとか、あるいは経済の体質を改善していくとか、こういう面から起る基本的な問題でありますし、これこそは、今後の大きな根本的な課題として、私どもも十分力を入れるつもりでございます。どうか、その意味におきまして、またいろいろ御高説も聞かしていただきたいと思います。これは非常にむずかしい問題ではございますか、今の状況から申せば、当然そういう問題を掘り下げてみなければならない、その時期にきておる、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/25
-
026・平岡忠次郎
○平岡委員 私先ほど申したように三点のテーマでお伺いするつもりで一つだけ終ったのですが、時間を見ますと、この最後の五分かそこらで問答をしても効果が上らぬと思いますので、これはあっさりと次の委員会に譲ります。その権利を保留いたしまして、私のきょうの質問は一応終らしていただきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/26
-
027・早川崇
○早川委員長 この際委員長より報告いたしたいことがあります。国有財産に関する小委員長押谷富三君、専売事業に関する小委員長山下春江君が理事に就任されましたので、この際小委員長を辞任いたしたい旨申し出でがありますので、この際これを許可して、その補欠に、国有財産に関する小委員長に荒木萬壽夫君、専売事業に関する小委員長に濱田幸雄君を指名いたします。御了承願います。
本日はこの程度にとどめ、次会は二月十二日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103104629X00819590210/27
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。