1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十五年二月九日(火曜日)
午後二時十六分開会
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委員の異動
十二月二十九日委員亀田得治君及び山
口重彦君辞任につき、その補欠として
大森創造君及び久保等君を議長におい
て指名した。
一月七日委員大森創造君辞任につき、
その補欠として亀田得治君を議長にお
いて指名した。
二月一日委員大沢雄一君及び亀田得治
君辞任につき、その補欠として平井太
郎君及び大森創造君を議長において指
名した。
二月八日委員赤間文三君辞任につき、
その補欠として植竹春彦君を議長にお
いて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 大川 光三君
理事
井川 伊平君
後藤 義隆君
高田なほ子君
石黒 忠篤君
委員
泉山 三六君
太田 正孝君
津島 壽一君
久保 等君
千葉 信君
政府委員
法務大臣官房経
理部長 大沢 一郎君
最高裁判所長官代理者
経 理 局 長 栗本 一夫君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
(昭和三十五年度法務省関係予算に
関する件)
(昭和三十五年度裁判所関係予算に
関する件)
○派遣委員の報告
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/0
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001・大川光三
○委員長(大川光三君) ただいまより法務委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告申し上げます。去る昭和三十四年十二月二十九日亀田得治君、山口重彦君が辞任され、大森創造君、久保等君が選任されました。また昭和三十五年二月一日大沢雄一君辞任、平井太郎君選任、二月八日赤間文三君が辞任され、植竹春彦君が補欠として選任されました。以上であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/1
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002・大川光三
○委員長(大川光三君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査の一環といたしまして、昭和三十五年度法務省関係予算に関する件及び昭和三十五年度裁判所関係予算に関する件を議題といたし、政府及び裁判所から、関係予算の概要の説明を聴取することにいたします。
まず、法務省関係から御説明を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/2
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003・大沢一郎
○政府委員(大沢一郎君) ただいまから昭和三十五年度法務省所管予算の内容について、その概要を御説明申し上げます。
昭和三十五年度の法務省の予定経費要求額は二百八十六億九千七十九万三千円でありまして、これを前年度の予算額二百六十五億四千百三十一万一千円に比較しますと、二十一億四千九百四十八万二千円の増額となっております。
増額分の内訳を大別致しますと、第一は、人件費関係の十七億五千五百二十七万二千円でございます。第二は、営繕施設費の一億三千八百十八万八千円でございます。第三は、その他一般事務費としての二億五千六百二万二千円となっております。
この増減の詳細については、別途御手元に差し上げてあります資料「昭和三十五年度予算査定額主要科目別分類概要」に基づきまして、順次御説明申し上げたいと思います。
まず第一の、人件費の十七億五千五百万円でございますが、これは昨年七月の人事院勧告に基づく夏季手当〇・一カ月分増額支給に伴う職員特別手当及び中級職員等の給与改善に伴う所要経費並びに一般職員の昇給等に要する職員俸給等が増額されたものが大部分であります。なお、人件費に関連致しまして、三十五年度は定員職員二〇〇名の増員がなされております。
その内訳について簡単に申し上げますと、第一に、法務局の百四十二名の増員でございます。これは法務局における主要事務の登記、台帳事件が逐年増加の一途をたどり、昭和三十四年度では登記、台帳事務の一人当たり処理件数が八千件を上回る状況で、もはや能力の限界をこえるものであり、よって、実際には地方公共団体、農業委員会、司法書士会等の外部の応援によって辛うじてまかなわれている状態であります。今後事件数は上昇するとも下回ることは考えられず、職員の超過勤務による執務強化、事務の簡素化、機械化等による能率化をもってしても処理し得ない実情にありますので、かかる事態に対処し、登記事務の迅速化、適正化をはかるための増員であります。
第二に、検察庁における検事十名の増員でございます。これは著しく当事者主義化した現行刑事訴訟法のもとにおいては、公判審理の促進は、検察官の立証活動の迅速化、活発化に負うところがきわめて大であります。しかるに、現在の検事の数をもってしては、裁判所の「部」の増設等に対応する十分な公判要員が得られないため、公判準備に万全を期することができず、立証活動も必ずしも満足に行なわれているとは言いがたく、これを充実させるためには捜査事務を犠牲にするほかないのですが、これを行なうときは、最近の犯罪情勢、特に青少年犯罪の増加に対処し、適確な処理を行なうことがいよいよ困難とするのみならず、捜査不十分による公判の紛糾、遅延を来たすという悪循環に陥ることになるので、かかる事態に対処し、公判審理の迅速化、充実化をはかり、あわせて捜査事務の弱体化を防止するための増員であります。
第三は、少年院の教官二十五名の増員でございます。最近における青少年の非行化の傾向は、少年院にあって被収容少年の人員の増加とその質の悪化という現象を呈しており、これに対する教化活動はいよいよその重要性を増加しているにかかわらず、これら少年と教育する教官は、人員の不足から、この実情に対処する十分な教化活動を期待し得ない状況にあります。少年の反社会性を矯正するには、教官のしんぼう強い訓練に待たなければならないのであります。かかる事態を解決し、効果的な補導教化をはかるための増員であります。
第四は、東京入国管理事務所羽田空港出張所の事務量増加に伴う入国審査官十五名の増員であります。羽田空港における出入国者数は急激に増加しており、たとえば昭和三十年には一日平均三百五十三人であったのが昭和三十三年には一日平均六百四十五人を数える状況であります。しかも各航空会社のジェット機使用により、この出入国者数は総体的に飛躍的に上昇するのみならず、一時点に集中することが推測されます。かかる事態に対処し、適確、迅速な出入国管理を行なうための増員であります。
第五は、人権擁護局における五名の増員であります。人権擁護局の定員は、現在局長以下十三名にすぎないため、調査事務に渋滞を来たしており、ひいては国民の人権に重大な影響を及ぼす結果ともなりかねないため、かかる事態に対処し、人権侵犯事件調査の迅速化、適正化をはかるための増員であります。
第六は、司法試験法改正と司法試験の事務量の増加に伴い、司法試験の円滑適正な実施をはかるための五名の増員であります。
次に、一般事務費の増減の内容について御説明申し上げます。総体で二億五千六百万円の増額となっております。これは一言にして申し上げますと、主として事務量の増加等にスライドして増額されたものであります。内容的には、前年度予算編成方針と同様三%ないし五%の節約が課せられましたため——三十五年度は原則として標準予算経費については節約対象除外される。——前年度に比較し減額になっているものもございます。また反対に新規に増額されたものもございます。そこで、簡単に別紙資料の順序に従い、科目別にその増減の内訳について御説明申し上げてみたいと思います。
第一に、旅費関係でございます。総額としては一千二百三十六万六千円の減額となっております。しかし増額となりましたものは、三十四年度より実施いたしております現行の不動産登記制度と土地台帳及び家屋台帳の一元化作業にあわせ、計量法施行法の規定による不動産登記法、土地台帳及び家屋台帳の面積の表示を書きかえる作業を、三十五年度より本格的に実施するにあたって、それに要する関係旅費で一千三百六十万円、また在日朝鮮人の北鮮帰還に伴う業務処理に要する旅費として五十万円等が新規にそれぞれ増額されるとともに、検察庁における直接検察活動に要する検察旅費、保護観察所における被観察者等を観察補導するに要する補導援護旅費及び国籍関係調査旅費、人権擁護委員旅費等が、事件数の増加に伴い、それぞれ増額されておりますが、それに対し、前年度限りの経費として計上されておりました参議院議員並びに地方議会議員選挙に対する選挙取締旅費及び刑務所における収容予定人員の減に伴う護送旅費の減額と、節約による減額等がありましたため、総体として一千二百万円の減少となったものであります。
第二に、庁費関係でありますが、これは総額で一億二千三百三十六万六千円の増額となっております。増額のおもなものを列挙いたしますと、次の通りであります。
一、法務局における不動産登記制度
と土地台帳及び家屋台帳制度の一
元化等の作業に要する用紙代等と
して五千九百万円、並びに事務能
率器具購入費として五百万円が増
額されております。
二、刑務所、少年院、少年鑑別所及
び婦人補導院の収容者に対する処
遇改善の一環といたしまして、収
容者に給与するところの日用品の
単価の増額をはかりましたほか、
少年院については一日収容予定人
員で六百人、少年鑑別所で二百人
の収容増加を見込んでおりますの
で、その人員増に伴う経費の増加
分等を含み五千二百万円の増額が
なされております。
三、在日朝鮮人の北鮮帰還業務処理
に要する経費として三百万円が増
額されております。
四、旅費関係と同様事務量の増加に
伴う分といたしまして、登記関係
庁費その他が増額されており、そ
の金額が六千九百万円ほどになっ
ております。
以上の増額に対しまして、参議院議員等選挙取締庁費、及び昨年行なわれた外国人登録証明書の大量切りかえに要した経費がそれぞれ前年度限りの経費として減額されたほか、節約等による減額がありましたため、差し引き総体として一億二千万円が増額になったという次第であります。
第三に、その他といたしまして、取り扱い事件数の増加にスライドしまして、保護司実費弁償金、刑務作業原材料費、収容者作業賞与金及び都道府県警察実費弁償金等がそれぞれ増額になっております。また、最近の公安情勢を考慮いたしまして、公安関係の調査活動費が増額されております。これらを合計しまして一億四千五百万円の増額となっております。
第四といたしまして、営繕費の一億三千八百十八万八千円の増額がございます。営繕費については、このほか、官庁営繕費といたしまして建設省所管に三億三千三百四万八千円が計上されております。これも前年度に比較いたしまして七千五百六十六万円の増額となっております。
以上、簡単ながら増加額の内容について概略申し上げて参りました。
次に、三十五年度予算におきまして新規に予算の計上を見ました事項について御説明申し上げたいと思います。
第一に、非行青少年対策の一環といたしまして、刑事局に青少年課を新設するとともに、前に申し上げました検事及び少年院教官の増員等により、その機能の強化充実をはかることになっております。
それにあわせまして、保護会に収容保護するにあたっての更生保護委託費のうち、食事つき宿泊費の単価を三円五十銭増の八十五円に改定いたし、その内容の充実化をはかるとともに、新たに全国百四十五カ所——主として地方裁判所及び同甲号支部所在地——に、青少年担当保護司を一カ所に二名ずつ配置することにより、青少年の補導援護の強化を期することになりました。それに要する特殊勤務保護司の実費弁償金(一日三百円、月五日)五百二十二万円が新たに計上されております。
参考までに申し上げますが、このほか青少年対策の経費といたしまして、検察庁関係においては、対策資料作成費及び精神鑑定謝金等として二百二十万円ほどの増額がなされております。また少年院においては、日用品単価の増、施設管理維持経費の増額を行なうとともに、映画演劇等、教育謝金の増額により、その処遇教化面の改善、充実化をはかっております。
第二に、本年五月東京において開催を予定されております「刑法における人権擁護に関するアジア地域ゼミナール会議」の運営に要する経費といたしまして二百十三万七千円が新たに増額されております。
以上、法務省所管歳出予算について概略御説明申し上げました。
なお、このほか名古屋刑務所及び福岡刑務所の移転に伴う施設取得にかかる総額十五億五千万円の国庫債務負担行為を要求いたしております。
終わりに、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げておきたいと思います。
昭和三十五年度法務省主管歳入予算額は六十四億六千八十六万五千円でございまして、前年度予算額六十億四千百二十一万六千円に比較いたしますと、四億一千九百六十四万九千円の増額となっております。その増額のおもなものは、罰金及び没収金並びに刑務所作業収入でございまして、過去の実績等を基礎として算出されたものでございます。
以上をもって法務省所管昭和三十五年度予算についての説明を終わります。
よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/3
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004・大川光三
○委員長(大川光三君) 次に、裁判所から御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/4
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005・栗本一夫
○最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 昭和三十五年度裁判所所管の予算につきまして御説明申し上げます。
まず第一に、昭和三十五年度裁判所所管予算要求額の総額は百三十八億三千三百九十三万円でございまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/5
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006・高田なほ子
○高田なほ子君 せっかく今説明をしていて下さるわけですけれども、やはり聞く方の立場に立つと、資料というものと、おっしゃることと突き合わせて伺うことが大へんに都合がいいので、資料がそろわなければ、きょうにわかに急いでおやりにならなくとも、この次の火曜日にまたあるでしょう。そのときに今度は資料をそろえて説明していただくようにしたらどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/6
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007・大川光三
○委員長(大川光三君) 裁判所いかがでしょうか、一応口頭の説明を聞いて、そうして次回までに詳細な説明書を出してもらうということにして、一応説明したらいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/7
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008・栗本一夫
○最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) もう一度繰り返して申し上げます。昭和三十五年度の裁判所所管の予算の要求額の総額は、今お手元にございます昭和三十五年度予算案使途別分類表というのを見ていただますと、最後の合計欄に出て参りますが、結局、昭和三十五年度の予算額は、一番下に書いてございます群三十八億三千三百九十三万三千円という金額になっておりまして、これを今年度の予算額つまり昭和三十四年度の予算額に比較いたしますと、この方は一番下の合計欄に出ております百二十三億九千五百二十八万六千円でございますので、差引十四億三千八百六十四万七千円という増額になっております。
この増加額の内訳を御説明申し上げますと、結局、四つに分かれるわけでございますが、まず、人件費でございまして、人件費は、この表でごらんいただきますとわかりますように、十億三千六百四十七万二千円という増加になっております。次が裁判所庁舎の新営、補修等の経費、いわゆる営繕費でございますが、これは下から六、七行目に書いてございますが、結局、二億四千八百万円増加になっております。つまり昭和三十五年度におきましては、十二億一千四百八十五万三千円でございまして、これが、本年度の九億六千六百八十五万三千円に比べますと、二億四千八百万円の増加になっております。その次が、裁判費、いわゆる裁判に直接必要な経費でございますが、裁判費におきまして一億百八万一千円の増加になっております。最後に、一般司法行政を行なうために必要な旅費、庁費等でございますが、これは、この表では必ずしも明らかではございませんが、合計いたしますと、五千七十八万八千円という増加になっておるのでございます。
大体、増加額の内訳は、大きく申しますと、今申し上げました四つに帰するわけでございますが、さらに重要項目について御説明申し上げたいと思います。
まず、営繕費でございますが、これは、裁判所庁舎の継続工事が二十二カ庁、新営工事額は、十五カ所の新営工事費といたしまして十億五千万円が計上されました。そのうち東京地方裁判所刑事部庁舎の新営工事費分は、その十億五千万円のうちの五億五千万円ということになっております。その他、法廷の増築、裁判所庁舎の補修等の施設整備費といたしまして一億三千万円、それから営繕事務費といたしまして二千四百三十一万円ほどが計上されました。以上、総合計いたしますと十二億円余りになるわけでございます。
なお、このほかに実質上の営繕費といたしまして、裁判所書記官研修所施設取得のために、四億五千万円を限りまして、昭和三十六年度において国庫の負担となる契約を結ぶことが認められたのでございます。いわゆる債務負担行為でございます。
その次に、訴訟の迅速適正な処理に必要な経費といたしまして、結局これは、大きく申しますと五つほどに分かれるわけでございますが、まず第一が、判事二十人の増員が認められました。金額にいたしますと二千七百三万円ほどでございます。それから訴訟促進協議会出席旅費等といたしまして、わずかな金額でございますが、五百二十一万円ほど認められました。それから書記官等の超過勤務手当といたしまして九百八十八万円ほどが認められました。それから自動車二十台の購入費として千五百六十一万円、あとは事務能率器具とか、図書、資料印刷等で一億三千九百万円ほど、以上申しました金額を合計いたしますと、結局、訴訟の迅速適正のために必要な経費といたしまして一億九千六百九十二万円ほどが計上されております。
なお、このほかに、簡易裁判所判事から判事へ三十人の組みかえが認められております。
その次が裁判費でございますが、これは裁判に直接必要な経費でございますが、国選弁護人の報酬とか、証人、鑑定人、調停委員等の旅費、日当、その他裁判に直接必要な旅費、庁費等といたしまして十四億九千二百三十五万円ほどが認められております。
その次に、裁判官等の待遇改善でございますが、これが二つに分かれまして、裁判官の管理職手当と裁判所書記官及び家庭裁判所調査官の号俸調整の問題でございますが、まず、裁判官の管理職手当につきましては、今年度三百八十二人の管理職手当が認められておりますが、これは判事だけでございますが、これに新たに百二十七名を増加いたしまして、合計五面九人分が認められたのでございます。なお、このうち八十七名については支給率が一二%から一八%に増額されております。これらの経費は全部で六千九十四万円ほどになっております。
それから裁判所書記官及び家庭裁判所調査官の号俸調整の問題は、これは八%から一六%に増額することが認められまして、その経費は合計いたしますと一億九百四十九万円という金になっております。
次に、家庭裁判所の整備充実に必要な経費といたしまして、結局家庭裁判所の事件の処理の円滑適正をはかるために、家庭裁判所調査官二十人の増員が認められました。なおこのほかに、家庭裁判所調査官補から家庭裁判所調査官への三十人の組みかえが認められております。これらの費用は、合計いたしますと千五百七十六万余円になります。
最後に、調停制度の充実強化に必要な経費といたしまして、これが二つに分かれるのでございますが、一つは調停委員の日当の増額でございまして、現在は日当四百四十円でございますのを、四百八十円に、約一割弱でございますが、増額する、こういう予算が認められまして、これが金額にいたしますと二千八百六十一万円余りになります。それからその次に、日本調停協会連合会に対する補助金といたしまして六百七十九万円が認められております。これは本年度七百万円ございましたのを、節約がかかりましたために六百七十九万円という端数になったのでございます。これは増額ではございません。
きわめて簡単でございますが、以上が三十五年度の裁判所所管の予算要求額の大要でございます。よろしく御審議を願う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/8
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009・大川光三
○委員長(大川光三君) ありがとうございました。
そこで裁判所の方にお願いをいたしますが、ただいま口頭でしていただきました説明のほかに、昭和三十五年度予算についての説明書を、書面をもって至急委員会に御提出をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/9
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010・栗本一夫
○最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/10
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011・大川光三
○委員長(大川光三君) それでは右予算説明に対する質疑は、次回の委員会においてこれを行なうことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/11
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012・大川光三
○委員長(大川光三君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/12
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013・大川光三
○委員長(大川光三君) 次に、派遣委員の報告を聴取することにいたします。
去る一月二十四日から一月二十七日までの四日間、大阪府及び兵庫県において石黒理事、亀田委員及び私が検察及び裁判の運営等に関し調査を行なって参りましたので、この報告を行ないます。
それでは私から一行を代表いたしまして御報告を申し上げます。
調査は、石黒理事、亀田委員それに私の三人が奥村調査員を伴い、一月二十四日から二十七日まで四日間、大阪、神戸両市で、裁判所法廷内外の秩序保持問題ほか三項目について行ないました。すなわち法廷等の秩序保持、弁護人の証拠書類等閲覧権、被疑者、被告人と弁護人との接見交通権及び不動産の不法占拠の各問題につき、二十五日大阪高等裁判所において、裁判所、検察庁、弁護士会等と各別に懇談を行ない、不動産不法占拠問題については、同日大阪府庁において現地の事情を聴取し、翌二十六日も引き続き神戸市において兵庫県下の事情を聞き、現地を視察いたしました。また、登記台帳一元化問題につきましては、二十五日大阪法務局に関係者の出席を求め、懇談を行なったのであります。
以下、調査項目の順に御報告を申し上げます。
第一、法廷等の秩序保持に関する事項
一、昭和二十七、八年以降最近に至るまで、やや小康を保っていた法廷闘争的現象が再び台頭いたし、法廷周辺の示威運動、法廷内の被告人、傍聴人等による喧騒混乱の事例が少なくなく、裁判の威信保持上憂慮すべきものがあるのであります。大阪高等裁判所管内では、法廷内の事例として、昭和三十四年十月京都地方裁判所の、いわゆる「京都府職労事件」勾留理由開示公判における組合員等による混乱、裁判官に対する侮辱、同年十一月、同裁判所の、いわゆる「学校八分事件」第二回公判における弁護人による裁判官忌避、非難等があげられており、かかる事例の生ずる原因は種々でありましょうが、一部弁護人の不当な同調、扇動行為は見のがさるべきでないとする見方は、注目すべきであります。
二、法廷内の秩序維持は裁判官の責任であり、かつ権限とされるのでありますが、昭和三十一年以降は、法廷等の秩序維持に関する法律の適用を見た例はなく、これは同法の制裁手続の複雑なこと、さらに裁判所の警備能力の不足等がその理由と思われます。それにしても、裁判所側としてはみずからの手で秩序維持に当たらんとする決意は十分うかがわれ、警備職員の増員、弁護人の協力は絶対の要望であり、検察庁側からは、弁護人の出過ぎた行為に対しては弁護士会による自制が必要であるとさえ主張されたのであります。裁判所構内、周辺の喧騒行為、示威運動は、裁判の進行にも影響するので、裁判所、検察庁とも規制立法の必要を認めております。
第二、弁護人の証拠書類等閲覧権、被疑者、被告人との接見、交通権に関する事項といたしまして
一、弁護人の証拠書類等閲覧権問題
いわゆる公安事件など特殊事件について、最近必ずといってよいほど問題にされる点であり、その焦点は、検察官が証拠として取り調べを請求する意思の確定していない手持ちの証拠書類等を事前に相手方に閲覧謄写させることを要するかいなかであります。この点につき弁護側は、人定質問直後の証拠書類等の事前閲覧は、憲法上、訴訟法上の当然の権利であるとするのに対し、検察側は、刑事訴訟法二百九十九条を根拠に、証拠調べ請求の意思のない証拠まで閲覧せしめる義務はないと反論、閲覧の時期、限度は検察官の裁量に属するとし、弁護側の要求を拒否しており、昭和二十七年吹田、枚方事件以来の実情であります。これがため、裁判の実体審理に入り得ないのが通常で、最近特にこの傾向が顕著なのであります。本問題について、大阪地方裁判所の「全逓事件」審理を通じ、最高裁判所は昨年十二月二十四日「検察官所持の証拠書類等につき、公判において取り調べを請求するといなとにかかわりなく、あらかじめこれを被告人もしくは弁護人に閲覧させるべきことを裁判所が命ずることを是認する規定はない」旨の決定を行なったことは御承知の通りであります。従って、証拠書類等閲覧権に関する法律問題も、ある程度解決したとも言えるのでありまするが、法律の問題のすべてが解決されたものではないから、今後もこの問題に基因して審理が渋滞することが考えられ、裁判所並びに弁護士会側からは、現行法を改正し、右閲覧権の範囲等を明確にされたいという意見が強く、今後の研究課題とすべきものと思います。
二、弁護人と被疑者、被告人との接見交通権問題
身体の拘束を受けた被疑者、被告人と弁護人との接見、交通権は確保されなければなりませんが、最近の実情は必ずしも十分でないようであります。まず、逮捕直後ないし逮捕制限時間中は、被疑者の心理から、弁護人との接見が特に重要視される時期であるにかかわらず、警察官による制限がはなはだしく、勾留状発布後も警察留置場に相当期間留置されるのが慣行であります。さらに、選挙違反、贈収賄、公安事件等、特殊事件であって、接見禁止決定の発せられたものについて検察官の行なう面会指定書の制度により制限を受けるのであります。すなわち、検察官は拘置所に対し、あらかじめ一般指定書を発し、別に発する指定書を持参しない弁護人との接見を禁止し、監獄はこの指示を理由に接見を拒否するのが実情のようであります。従って、裁判所は接見禁止決定の請求に慎重を期している現状であります。
本問題に関し法律改正の必要はなく、検察庁、弁護士会の間で協議し、運用の改善をはかるべきものであるとするのが裁判所の意見であり、特に現在の一般面会指定制度は廃すべきであり、救済策として不合理な指定に対しては簡易な準抗告制度を設けること、個別的指定書を発しない場合の救済方法、その他法律改正、代用監獄の廃止等の諸点が考慮さるべきであるとする大阪地方裁判所の意見は、傾聴すべきであります。
第三、不動産不法占拠に関する事項。
一、最近取締立法促進運動の対象となっている不動産の不法占拠とは、不動産の占有を侵奪したものとして占有訴権の成立する場合をさすのでありますが、この現象は、当初、戦後の社会的、経済的混乱に伴い、全国から流入する失業者、浮浪者、戦災者及び台風等の被害者等が、管理不十分な公有土地等に集団的不法占拠地帯を形成したことに始まり、しかもそれが相当の部分を占めるに至り、これに加うるに紛争の解決には、現在の民事訴訟手続は、時間的、経済的に効果がないことから、各都市の商工会議所等からの刑事手続による解決の要望となって現われている問題であります。
二、しかしながら、現在の不動産不法占拠の実態は、他人の土地に一夜のうちに無断でバラックを建て、集団化するや、代表者がボス化し、不用バラック等を買収し、直ちに第三者に転売、賃転貸するのが通常で、中には本建築的なアパート、店舗あるいは劇場を建築し、不法占拠土地のあっせん等を行ない、巨利を得ている者も現われ、地区一帯は暴力団的支配が強化され、近寄ることすらできない状態になっているのが一般であります。
公有地の不法占拠状態を見ますると、昨年末現在、大阪府下では津田川、寝屋川、糸田川等の河川敷、堺市湊海岸の海浜地、交野町、高槻市の道路敷、吹田、大阪両市の土地、堤敷、埋立地等、総計約五千平方メートル(約千五百三坪)、大阪、布施両市の建物百七十平方メートル(五十一坪)が不法占拠の対象となっており、大阪市の場合は、昨年九月末現在で、行政財産、普通財産合計は十五万六千九百九十七・五平方メートル(四万七千五百七十五坪)に達し、昨年四月以降の処理分を合わせ総計千六十六件、十七万二千九百四十六・四平方メートル(五万二千四百八坪)に及ぶのであります。しかも、未処理の大阪市有地面積の六七%が民事的手段に出なければならない現状であります。兵庫県においては河川敷の不法占拠が目立ち、武庫川、市川、夢前川、猪名川等の河川敷約十四万九千五百平方メートル(約四千五百二十坪)にわたり、日雇い労務者、拾い屋、寄せ屋等が集団部落化しており、中でも武庫川の場合、建物に使用が九千平方メートル(約二千七百三十坪)、農耕に使用するもの十三万四千六百二十五平方メートル(四万七百九十五坪)に及び、戸数玉百九十七戸、千九百三十三人が居住するに至っているのであります。神戸市の場合、昭和三十二年六月現在で、終戦から昭和二十四年ごろまでの不法占拠例に土地八万二百三十六・二平方メートル(二万四千三百十四坪)建物二百五十七・四平方メートル(七十八坪)をあげ、おもなものとして新湊川、生田川沿い道路敷、区画整理事業用地約二万七百二十四平方メートル(約六千二百八十坪)があります。
民有地の不法占拠の実態は明らかでありませんが、昨年七月から八月にかけ、名古屋、京都、神戸、大阪の四商工会議所共同で行なった民有不動産の不法占拠の実態調査結果は、その傾向を示すものとして興味あり、また、神戸商工会議所のあげた尼崎市丸島町白石工業株式会社の被占拠実例は、暴力的形態の不法占拠並びに訴訟審理の実態を物語るものとして注目されたのであります。
三、かかる不法占拠の現状に対し、府県市は、今日では居住者の生活実態からして、行政上の強制執行を行なうことさえよくなし得ず、警察としても民事事件不関与の原則に従い、告訴事件にも消極的であり、送検してもほとんどが不起訴に終わるのが現状であります。
四、今後の対策として、民事訴訟手続の迅速化、行政諸法の整備、特に強力な刑罰法規の制定が強く望まれたのであります。しかし、純粋な意味での不動産の不法な侵奪の実数は不明であること、最近の不法占拠の増加の実態が不明確であること、刑事立法といえども現在の事件は依然適用外として残存させざるを得ないこと、また、強制明け渡し、退去措置が講ぜられても、占拠者の転居等について民生的安定をはかる必要があること等の諸点から、裁判所も批判的であったのであります。
第四、登記台帳一元化に関する事項。
一、戦後登記台帳事務の逐年増加、内容の複雑化は、今日、登記所職員の事務の過重負担の大きな原因となっており、昭和二十二年司法事務発足時を一〇〇とすれば、昭和三十四年の甲号事件は五一六という増加であるにもかかわらず、職員は二〇八の増でしかないのであります。
二、登記所の事務負担を過重に陥れる他の原因は、現行登記台帳の二元的制度にあり、かかる制度のもとでは、利用者においても二軍の手数と費用の負担を余儀なくされ、国民の経済的負担をも過重に陥れるものであります。最近かかる不経済、負担過重の除去、緩和をはかり、登記手続を合理化、簡素化するため、登記台帳の統合一元化の論議が活発になり、立法作業も進められているわけであります。そこで、登記台帳を一元化するにあたり、考慮すべき点として、大阪法務局では職員、臨時職員の大幅な採用、疲労回復のための強壮剤、栄養剤の支給、そして超過勤務時の食糧費の支給が訴えられ、現状のままでは負担過重のため法務局機能が麻痺化するおそれがあるとしているのであります。
三、登記台帳の一元化に伴い、当然司法書士と土地家屋調査士の業務範囲が問題となるのでありますが、土地家屋調査士会は、両者の業務範囲についての昭和三十二年九月二十七日付両連合会の統一解釈に従うものであると表明したのに対し、司法書士会は、一元化に伴う両者間の業務範囲については未定であり、一元化立法措置自体、現在の登記所の実体及び全国の地番、家屋番号等の乱脈さなどから疑問であり、国土調査法等との関係から二重手間であると指摘、問題の重要性にかんがみ、慎重を期すべきであるとの意見が述べられたことは注目されました。
四、登記台帳一元化の徹底を期するためには、法務局職員、施設の充実が基本でありますが、戦前から登記所職員の待遇は冷遇というほかなく、これを、地方職員とはいえ、年令、勤続年数とも同等の大阪市役所戸籍係長と比較しても、俸給総額にして法務局の課長はこれの六五%、部長でさえ九五%の低きに甘んじていなければならない現状であります。従って、法務局職員の待遇改善については要望する点多く、等級別定員の改定、号俸調整、課長、支局長への管理職手当支給、交際費の増額、特別昇給率の増加、渡し切り費の増額、超勤手当の増額、そして機構面で地方法務局に次長制を設けること、戸籍、国籍、人権の各専門職を置くこと等があげられたのであります。
また、大阪法務局は二支局二十八出張所を管掌するのでありますが、公簿格納倉庫の安全なのは池田、中野両出張所ぐらいのもので、他はいずれも改修、新営工事を要求している実情であります。まことに登記台帳一元化の重要性の認識と同時に、直接事務を担当する法務局職員、庁舎等、施設の充実こそ急務であると認識させられたのであります。
調査結果の報告は以上でありますが、詳細については調査室の資料等を御参考にごらんいただきたいと存じます。
以上をもって私の報告を終わります。
なお、ただいまの報告について御質問がございますれば、御発言を願います。——別に御質疑もないようでありまするので、派遣委員の報告はこれをもって終了いたします。
以上をもって本日の審議は終了いたしました。
次回は、三月十六日火曜日午前十時より委員会を開き、破防法の適用状況に関する件並びに法務省及び裁判所関係の予算についての質疑を行なう予定であります。
では、これをもって委員会を散会いたします。
午後三時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103415206X00219600209/13
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